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帝竜戦役⑤~鋼を黄金に~

#アックス&ウィザーズ #戦争 #帝竜戦役 #群竜大陸


●アダマンチウム・クラブ
 群竜大陸に空いた大きな竪穴。静謐にして荘厳な空気を一杯に蓄えたその穴は、勇者の墓標として知られるかつての戦いにおいて最大級の激戦地となった場所の名残である。
 帝竜ヴァルギリオスと数千の勇者たちが相討ち、尊い人々の犠牲がかつての大戦を終結に導いた正にその中心地こそがこの大穴なのだ。
 内部には穴の入り口から差し込む微かな光を糧にした植物が壁面を覆い尽くし、まさに墓石の如く天から墜ちた巨石が聳えるその穴の底は深い闇に包まれ覗き見ることはできない。
 そして目を凝らせば多くの朽ちた武具が転がっているのが見えるだろう。質実剛健であったり、荘厳美麗であったり、剣であったり、槍であったり、斧であったり、弓であったり、杖であったり。鎧があり、兜があり、あるいは魔力を高めるという宝石を嵌め込んだ装身具もまた錆付き腐食するに任せて草の中にその身を沈めている。
 此処は勇者の挺身の象徴にして、かの暴虐の帝竜の墓所“だった”場所。それを荒らす不信心ものは居なかったし、居たとしても彼らが財貨を手に帰ってくることは無かった。
 竜の呪い?
 否。
 勇者の祟り?
 否。
 何故ならば、それは――彼が存在するが故。
 勇者の墓標の墓守にして、勇者の遺産を喰らうもの。
 体内で生成した合金を甲殻に生やした巨大な陸蟹――鉄鋼蟹。
 勇者たちが持ち込んだ世界最高峰の至上の武具を餌に、規格外の強度へと進化を遂げた異形の怪物。
 その甲殻は例え猟兵の攻撃とて易々と徹すことはない。

●切り札は勇者
「ミッションを発令します」
 緩やかに回転する部隊章を目印に集った猟兵達を視認して、パルはそれぞれの眼前にホロディスプレイを滑らせる。
「作戦目標は群竜大陸南部中央の巨大竪穴――通称勇者の墓標の制圧です」
 北部に陣を張るこの戦争の最大目標たる帝竜ヴァルギリオス攻略の、そして道中で迎撃準備を整える帝竜たちを迅速に殲滅するため、まず大陸中部への侵攻ルートを確保する必要がある。その最短距離を突っ切るには、この大穴を攻略するのが必須なのだ。
「竪穴と言うだけあって険しい地形ですが、入ってしまえば天井の高い洞窟も同然です。よほど不用意な機動をしなければ滑落の心配はしないでいい充分な広さがあります」  地形そのものは――平地ほどとは行かないが――進軍の支障にはなるまい。念の為のロープなどの道具も出撃前に配布される。
 だが問題が一つ。この洞窟に棲む巨大な蟹のオブリビオンのひとつ、鉄鋼蟹がルートを阻害している。
 強敵ではあるが猟兵ならば取るに足らない相手、とは言えない。何故ならばこの個体、かつての勇者達が持ち込んだあらゆる武具を餌に自身を強化し、果てにユーベルコードすらも通用しない頑強な甲殻を獲得してしまったのだ。
「甲殻の隙間を狙って倒す、という手段も不可能ではありませんが……敵の巨大さと戦場の広さを勘案すると現実的ではありません。何より僕らには時間こそが必要、手間を掛けている場合ではありませんから」
 だからズルをしちゃいましょう、とパルは口元で人差し指を立てた。
「この洞窟内では勇者の残留思念……亡霊、といいますか。そういった物が存在しているので、彼らの力を借ります」
 蟹のデータを映したディスプレイが切り替わり、一人の若い女性の肖像画を映し出す。白地に黄金の装飾をあしらった祭服を纏った儚げな白金の娘だ。
「黄金の聖女ゾーイ・マイダス。以前の戦争に参戦した勇者の一人で、あらゆる金属を黄金に変える魔法の使い手だったと言われています」
 主に財政面で勇者たちを支えた聖女ゾーイだが、全身を未知の合金で隙間なく覆った鉄鋼蟹相手にこれ以上無い相性を持つ勇者でもある。彼女の力を借り、蟹の装甲を柔らかな黄金に変えてしまえば――というのが作戦だ。
「聖女ゾーイの残留思念は既に捕捉し、彼女の側に転送を行います。でも、彼女が協力してくれるかは皆さん次第」
 武勇の勇者たちがヴァルギリオスと刺し違えてようやくかの帝竜を打ち倒し、しかしヴァルギリオスだけが蘇った今の世界に聖女は悲観的だ。
 猟兵達がヴァルギリオスに挑んでも、良くて過去の大戦の焼き直しにしかならないのではないかと怖れている。
「彼女に猟兵は負けないと、絶対にヴァルギリオスを倒してみせるという意志を示して信じてもらう。皆さんなら迂回ルートを選ぶよりそちらのほうが近道だって、僕は信じてますから」
 それでは蟹退治の後の帰路でまた、と敬礼したパルの部隊章が輝き、猟兵達を英雄たちの眠る墓所へと送り出してゆく。


紅星ざーりゃ
 こんにちは、紅星ざーりゃです。
 今回も戦争シナリオとなります。今度は書けるだけの方を書かせて頂きたい所存。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の敵は鉄鋼蟹。の、変種。
 勇者たちの武具を喰らい、通常種以上の硬度を手に入れた化け蟹です。
 が、勇者の残留思念――黄金の聖女ゾーイの助力を手に入れれば、それは柔らかな黄金蟹へと変わることでしょう。
 というわけでおなじみプレイングボーナスは、
 ・勇者の残留思念と心を通わせ、そのパワーを借りる。
 後方支援型でやや悲観的な聖女ゾーイはヴァルギリオスを倒すことは出来ないのではないか、仮に倒せたとしてまた多くの犠牲を払い、それでもいずれ復活してしまうのではないかという恐怖から戦いに消極的です。
 皆さんがヴァルギリオス討伐にかける想い、犠牲を出さないという誓い、何でも構いません。とにかく――“勇気”を示し、彼女に再び立ち上がる力を与えてください。

 猟兵がいる限り人類は負けない。いつものように、人々に勇気を与える貴方たちでありますように。
 それでは皆さんのご武運をお祈りしています。
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第1章 ボス戦 『鉄鋼蟹』

POW   :    鉱石砕く牙
戦闘中に食べた【金属類】の量と質に応じて【全身が再生、より強靭性を増し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    聳える鉄砦
【あらゆる物理攻撃を跳ね返す迎撃状態】に変形し、自身の【移動速度】を代償に、自身の【攻撃力】【防御力】【カウンター性能】を強化する。
WIZ   :    木々断つ鋏
【あらゆるものを切断する巨大な鋏】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
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 ――私は臆病で役に立たない勇者でした。
 いえ、勇者というのも烏滸がましく思います。
 だって私に出来ることは、黄金を創り出すというただそれだけ。
 確かに本当の勇者様たちの旅路をいくらか豊かには出来たでしょう。けれど一度だって戦いで力を振るったことはなく、また私の力で勝てる局面もありませんでした。
 本当の勇者様たちは強く、凛々しく、気高く、そして優しかった。
 役に立たない私を最後まで、此の地に至るまで守り、励まし、支えてくださった。
 嗚呼、勇者とはあの方たちをこそ示すのだと、あの方達が必要としてくれるならば私も勇者であれるのだと私は信じていました。
 そしてきっと、あの方たちならばヴァルギリオスを討ち倒すと、そう信じていました。

 ――けれども、ヴァルギリオスの一撃で死にゆく私が見たのは、かの悪逆の帝竜と相討つ多くの勇者様たちの背中。
 あの方たちが命を捨ててようやく倒せるような怪物相手に、私の出番などありはしなかったのです。
 優しさからの同情を真に受け、思い上がり、そして呆気なく死んだ。私を守ろうとしてくださった勇者様の奮戦を水泡に帰すように、あっさりと。
 そんな私に勇者を名乗る資格は無く、だから今、此の決戦の地で魂を縛られている私に世界が何を望むのかが分からない。分かりたくない。

 勇者様たちはヴァルギリオスと刺し違え、そしてヴァルギリオスだけが再び蘇った。
 この時代の人々も多くの勇者を此処に遣わし、今度こそヴァルギリオスを倒そうとしているのでしょう。
 …………どうせ無駄です。勇者様たちですら相討ちがやっとだった怪物なのです。
 多くの犠牲の上に倒せたとしても、どうせまた復活する。
 私はもう、勇者様たちの死を見たくはありません。だからじっと、この仄暗い洞窟でいつかこの魂が擦り切れ消えてしまう日まで――

 だから、ねぇ。新たな勇者様。
 悪いことは言いません。後悔に縛られる前にお帰りなさい。
 愛する人と抱き締め合って、最後の一時まで後悔なく日々を生き抜きなさい。
 勇者を最も近くから見てきた勇者に非ぬ女からの、これは助言です。


 うっすらと透けるような白金の女は、長い髪を手指で弄びながら後悔を独白し、憂いを帯びた瞳で猟兵達を捉えた。
 その魂は永い年月を経て擦り切れ、諦めに染まってしまったのだろう。ヴァルギリオスの復活もまた、彼女の絶望を深めてしまった要因に違いあるまい。
 どうせ勝てぬ、どうせまたあのときの繰り返しになる。聖女の言葉はなるほど過去の時代を見届けた勇者の一人として、たしかに重みのある言葉かもしれない。
 だが彼女はひとつ間違えている。此処に居るのは猟兵で、世界を幾つも救ってきた者たち――筋金入りの勇者たち――だということ。そんな猟兵に今更世界の危機の一つや二つで怯むものなど居はすまい。
 後悔を融かし、諦めを砕き、彼女を救えるのは勇者たる猟兵を置いて他に居ない。
 竪穴の奥から大蟹の蠢く音がする。彼女を説得し、そしてそれが嘘偽りでないと示すために、かの怪物を打倒するのだ。
ベール・ヌイ
『無音鈴』を使った「ダンス」による舞を奉納します
ある程度踊ってから声をかけましょう
「ボクは、お昼寝が好き。天気のいい日に、皆で並んでお昼寝をするのが好き
でも、今の状態だとできないから、ボクは戦う。単純なことだけど、やりたいことができなのは辛いから」

【不死鳥召喚】でフェニクスを召喚します。代償の痛みは「激痛耐性」で耐えて
「ボクが皆を癒やす、いやして戦う。だから、どうか力を貸してください」
そういってから鉄鋼蟹に向かいます
フェニクスの地獄の炎をヌイの『氷火双銃』で「援護射撃」しながら攻撃。ダメージは癒やしの炎で治癒します
アドリブ等歓迎です


ソラスティベル・グラスラン
彼らの誇りが無惨にも食われゆく
悪しき竜の体を切り裂き、世界を守る為の力が
―――許せるわけがありません!!

【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、渾身の体当たり!
武器から離れなさい!
そして古の勇者に語り掛けつつ攻撃を【見切り】耐え抜きます

確かに敵は強大です
傷つき倒れ伏すかもしれません、帝竜もまた復活するかも
しかし戦わねば勝てないのです!戦わねば、誰かが犠牲になるのです!
だから貴方たちは戦った!『勇者』となったのでしょう!

恐れを孕む目で世界を見るのは、もうやめにしましょう
今の時代の『勇者』を信じて、【勇気】を胸にこの手を取って
偉大なる『黄金の聖女』よ!

彼女の魔法と【怪力】を以て、【鎧砕き】の雷斧を!!


鈴木・志乃
貴方の涙は、拭う人がいるのかな。
アド連歓迎、開幕UC発動


うん、ごめん、私も戦いに来たんだ。
これ以上誰も犠牲にしたくないから。

……ゾーイさん、今までずっと苦しかったんじゃないかな。
自分は後ろから見ているだけで、目の前で皆が血塗れになっていく。助けることも出来ずに、ただ、皆死んでいく。

また同じことになるかもしれないって
また沢山死ぬんじゃないかって
怖くてたまらないよね
誰もこの先に進むなって、それ以上行くなって

……そんな貴方がこれ以上傷つかなくて済むように
私、コイツラぶっ飛ばしに来た
貴方も、この世界の人も、皆が生きていられるように
このまま誰かが怯えるなんて、そんなの私は嫌だ!

皆を生かす為に、行こうよ


神酒坂・恭二郎
こいつは凄い蟹さんだ
俺の一刀が勝るか否か、命を賭けて一勝負と行きたい所だが
悲しむレディを置いて、自分の愉しみを貫くようじゃスペース剣豪は名乗れない

聖女さんに呼びかける
あんたの力を貸して欲しいと

聖女さん達が繋いでくれたから、奴をここで倒せる
もし蘇ったとしても、今日を繋げば明日の誰かが奴を倒してくれる
それを信じてもらいたいのだ

「あんた達が繋いでくれたから、奴を打倒する今があるんだ。有難う」
【礼儀作法】で一礼し。
「そして俺達も次の奴らに明日を残したいんだ。あんた達みたいにな」

誠意を篭めて頭を下げ
彼女が何か言葉をくれたなら、【覚悟】を秘めた涼やかな笑みを返す

後は成否を問わず、無心の一刀で蟹に挑みたい


水貝・雁之助
ああ、うん
命を賭して倒した敵が復活したと考えたら悲観的になっちゃうのは仕方ないよね

なら、大丈夫だって証明するのは今を生きる僕等の役目さ

ねえゾーイさん
猟兵には僕みたいに一芸に秀でた者もいれば色々な事が出来る人もいる
其れは君達勇者とだって負けないんだ


猟兵が平和を掴み取ると証明する意味も込めて『地形の利用』技術を魅せる様に戦闘
竪穴という『地形を利用』し悉平太郎と雁之助が『見切』った足場に出来る突き出た岩場を跳躍しながら敵を上から目等の『部位破壊』をしつつ戦う
時に『地形の利用』をした『罠(使い)』を用い敵を動き難い足場に誘導して耐性を崩させたり『敵(の体自体)を盾にする』様に誘導したりしながら戦う


フィーナ・ステラガーデン
(聖女の意向聞き中)なるほどね!気持ちはよくわかったわ!
それはそれとして蟹食べましょ!カニ!
あそこに美味しそうなのがいるのよ!見てみなさい!あれだけ大きいなら一杯身も取れるわ!
あんた他の世界に行ったことがないから蟹の食べ方と素晴らしさをよくわかってないのよ!
蟹刺しは甘い香りを放ちながら口の中で溶けて
焼き蟹は殻の香ばしさがプラスされて肉も弾力が出て噛めば甘みの宝石箱よ!
そして蟹鍋よ!蟹エキスが鍋一杯に広がって、最後に入れるご飯までもがすんごい蟹!そう!蟹雑炊になるのよ!あれを食べずに成仏とかありえないわ!!
え?食べれない?お供えしてあげるわ!!
ほら!はやく!!

UC 焼く ウマ
(アレアド連携大歓迎


彩波・いちご
【恋華荘】
「勇気を出してもらう方法…?」
悩んでると、私にいい考えがありますとばかりにアイさん理緒さんが飛び出していって
えっ、カニ鍋?

目の前のが魔物ではなく食材だと思えば、勇気も出るかもしれません…ってそれでいいのかしら?
あと、その場合、作るの私ですよね?
え、私からも一言です?
ええと…
「任せてください、ゾーイさんの協力があれば、最高に美味しいカニ鍋が作れますっ!」

とにかく約束したのでカニ鍋作りましょう
まず必要なのは巨大な鍋!
【幻想よりきたる魔法の演者】で生み出す巨大鍋のオブジェクトに、作り出した水のオブジェクトを流し込んで、アイさんたちの熱線でゆでてあげましょうっ!

調理は任せてくださいねっ!


アイ・リスパー
【恋華荘】
「聖女ゾーイさん、あなたの力を貸してください!
……蟹鍋のために!」

勇者の武具を餌にして成長した蟹が美味しくないはずがありません!
ここは蟹鍋の出番です!

「というわけで、ご協力くださった暁には蟹鍋をおすそ分けしますので、ゾーイさん、どうか手伝ってください!
あ、茹蟹の方が良ければ、そっちでも!」

ゾーイさんの協力が得られたら、食材の捕獲です!

【チューリングの神託機械】で情報処理能力を向上。
【アインシュタイン・レンズ】で重力レンズを生成。光線を束ねて射出します!

「蟹はほどよく灼けてくださいっ!」

遠距離攻撃ですから、反撃も怖くありませんね。

「さあ、みんなで蟹鍋パーティです!」

え、誰かに似てます?


菫宮・理緒
【恋華荘】

かにかにかーにー、かにすき、かにしゃぶ、かにちりー♪

勇者の武具を餌にして成長した『蟹』が相手なら、
終わったら鍋ってことにすれば、やる気出るよね!

いや、わたし甲殻類苦手だけど。
まぁ、みんなが美味しそうならおっけーだよね。

蟹がでてきたら、アイさんとタイミングをあわせて、
【Nimrud lens】でダブル熱線攻撃。
「火は通しておかないとね!」

しっかり倒したら、蟹鍋もーど。

レンズの火をそのまま使って、
えっと、武具持ってるなら盾くらいあるだろうし、
鍋の代わり、それでいいよね。

それとゾーイさん『黄金の聖女』さんなんだよね。
出汁もってるよね? 出して?

え?ないの?黄金っていえば出汁じゃないの!?


織笠・アシュリン
【恋華荘】

え、鍋?
うん、確かに鍋なら……うん?
ま、いっか!

「そう、この蟹を鍋にする! 他の魔物も料理できるってこと! つまり、この群竜大陸を平らげることができるってことだよ!
やろうよ、ゾーイ様!その第一歩として……蟹鍋を!」
焼き魚とか焼き鳥とかワニのステーキとか、色々と料理のイメージを吹き込むよ!

蟹が出てきたら、戦闘だよ!
「ナナカマドの破邪よ、浄化の炎となりて、戦士を癒やす糧の礎となれ!」
【ウィザード・ミサイル】を火力の足しに!
「生煮えの場所を作ったらもったいないしね!」

煮えたらみんなで鍋!
多分食器はいちごが作るから、配膳して……
「誓うよ、こんな風に群竜大陸を平らげるって!」
空の鍋を見て……!


ヴィヴ・クロックロック
か、蟹!?しかし蟹と侮って居ては普通にやられるな…。下手な竜よりよほど強いんじゃないかあいつ…

まあ蟹には弱気になった私だが、ヴァルギリオスに勝てるという確信はある。銀河最強の銀河皇帝に始まって、猟兵たちは何時だってどんなフォーミュラーにも勝って来たんだ。今回も、確実に。必ず勝つ。だから君の力を貸してくれゾーイくん。我々はヴァルギリオスには勝てるがこのままでは蟹に勝てないからな…

協力を取り付けられたら話は早い、ダイナマイトであいつのエサをある程度間引きおびき寄せ、脆くなった装甲を貫手で穿つ!
こういう時はシンプルな方がいい。

(共闘アドリブ歓迎です)


シキ・ジルモント
◆POW
力を貸してもらう為、聖女と対話を試みる

少なくとも今は、あんたにしか出来ない事がある
それにこのまま退けば、それこそ後悔しか残らない
あんたの仲間も、そう言われて諦めるような者たちではなかっただろう?

帝竜が蘇るなら何度でも、復活できなくなるまで倒し続けるだけだ
あんたが力を貸してくれれば、この敵にもヴァルギリオスにも勝つと約束する
一緒に戦ってくれないか、ゾーイ・マイダス

助力を得る事ができたら、黄金に変わった敵へ攻撃を仕掛ける
脚へユーベルコードを撃ち込んで体勢を崩し、
再度のユーベルコードで甲殻ごと中身の破壊を試みる

どうせ勝つなら圧倒的に
力を貸してくれた聖女に少しでも希望を持たせる事ができれば、と


棒・人間
……ゾーイと言ったか。貴様がそのように悲観的になるのも分かる。それは貴様が思う以上に貴様が優しい人物であるからだ。
だが考えてみろ、多くの犠牲を払って竜が倒された時から今に至るまで人間はこうして今の生活を取り戻す程立ち直っているではないか。人間とはそう易々と折れるものではない、俺はそう考えている
そして俺達は猟兵だ。世界を股にかけ修羅場を越えてきた者しかいない。嘘だと思うか?なら俺と蟹の戦いを見て考えるがいい

いくぞ!ユーベルコードで敵の一撃を受け止める!この盾は決して砕けない!そして想いがあれば単純な力など比べる必要もなし!壁まで押していくぞ!かつての勇者よ!俺に希望を見出したのなら力を貸すのだ!


ユエイン・リュンコイス
連携アドリブ歓迎
戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を述べる…軍略における有名な一節だ。
黄金しか作れない?もしマンサ・ムーサが聞けば笑い出すだろうさ。戦いとは剣を振るう事だけで成り立たないのだから。

確かに敗北したのは悲劇だろう。かつては相討ちで終わったのだろう。だが、相討ちにまでは持って行けたんだ。なら、勇者とボクらの力が合わされば今度こそ完全消滅を果たせる。
だから、『勇者』ゾーイ。キミの力を貸して欲しい。もし言葉だけで信じられぬというならば、行動で示そう。
(戦場に残る想いを借り受け、UC起動。動きを封じた後、敵へ機人の鉄拳を叩き込む)
キミの祈りは決して無力じゃない。さぁ、今こそ叛逆の刻だ。


鞍馬・景正
戦友たちが苦難の旅の末に相討ちと果てたのなら、世を儚むのも無理はありません。
しかし其れで諦めるなら最初からここに立っていないのです。
それはきっと、嘗ての貴女達のように。

◆説得
聖女殿に申し上げる。
ご忠告は有難くも、我らが此処で退けば、より多くの民が犠牲になる。
何より自らの命を賭してまで帝竜を討った貴女方の志を無為にしてしまう。
私にはその方が余程怖ろしい。

能うなら未熟な後進に力を。
もしそれが叶わずとも、ここで去る事もあり得ませぬが。

◆戦闘
聖女殿の助力があろうと無かろうと、すべき事は変わらず。
全霊の【怪力】と【鎧砕き】の太刀筋による【鞍切】で一閃。

我が刃鉄、遠慮なく召されよ。
胃も殻も砕け散ろうがな。


ブレイブ・ブレイド
※アドリブ歓迎、共闘可

POW判定

・行動
三体のサポートメカと力を合わせ連携しながら鋼鉄蟹に立ち向かう
口元を集中攻撃することで金属の摂取量を減らし戦闘力を削ぐ

・UC
決して諦めずに戦う姿で勇気を示し鼓舞することでUCを発動
勇気のオーラを皆に付与して一緒に戦ってもらう

・セリフ
勇気とは諦めないこと!
どのような敵が相手でも私は立ち向かいましょう
それが私に心をくれた人たちへの恩返しなのですから!

私は一人ではなく
未来を望むすべての人々と一緒に今ここに立っています
オブリビオンよ、この世界に生きる人々の想いを知るがいい!


ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
か、蟹だー!?でもこの蟹は食べれそうに…はともかく
勇気を示すって難しいね。しっかり戦って、相手の技を破ったら力を貸してくれるかな?
よし、それでいこう

まずは通常攻撃で遠距離から弓で目や口、スキマを中心に攻撃して削っていきたいね
敵がちくちく刺さる攻撃を嫌がって迎撃状態になったら真剣勝負!
見ててよ聖女様。こうやって殻に籠ってたってしょうがない。どんなに厳しい状況だって私たちなら超えていけるってとこを見せてあげるよ
【アインス】。私の最強の矛で敵の最強の盾を一気に貫かせてもらう
そして見事貫いたらトドメに力を貸してね聖女様
さ、こじ開けよう


月汰・呂拇
何だ……しけた面しやがって
先の事なんて分らねえよ。だから戦うんだ!
諦めたら世界終了だってジジィが言ってたからな
だから俺は絶対に諦めねえぞ
これ以上終わりを迎えるなんてさせるものかよ!

それに今こそアンタの力が必要だ
あの蟹の甲羅を全部柔く出来ないか、その奇跡で
少しだけでいい、俺のメガリスに力を分けてくれ

近づいたら鋏で攻撃してくるんだろ
だったら距離をとって戦えばいい。俺は賢いんだ
ロッドが燃えて腹から放たれるUC
ばらまかれた炎が蟹に当たった時
ゾーイの力が発動すれば装甲を柔く出来る筈だ
上手くいったら反撃の時間だ
武器改造で合体したアックスの
限界を超えた捨て身の重量攻撃で打ち砕く!
カニカマの材料にしてやらぁ!


ケンタッキー・マクドナルド
はァ、ンだ時化た女だな……
だがありがてェ。
勇者を最も近くから見てきたッつったな。
んじゃァテメェの知ってる勇者って奴を教えろ。洗い晒い吐け。

なんで?必要なんだよ勇者って奴の情報、ナリとカタチと魂がどんなだったかが。
くそったれな竜の親玉だか何だかブチ殺すのによ。

こンな小せェ成りで出来る訳ねェ?ハッ、言ってろ。
俺ァやるって決めたら絶対にやる。

それでも渋るってンなら好きにしろ。あの蟹ブチのめした後でしっかり聴くからな。
あ?助け?いるかよそこで指咥えて見てろ。

おら勇者の武器ども、力貸せや。
武器ォ集い固めて人形腕に。ブチ凹む迄何度でもブッ叩く。

……ンだ、やれば出来ンじゃねェか。然し便利だな其れ。


アリシア・マクリントック
貴方はわかっていませんね。今ここにいるのは私達です。かの悪しき竜が一度たりとも見たことのない私達。なぜこちらが負けると思うのでしょうか?かつての戦士たちが稼いだ時は無駄ではありませんでした。
……なぜなら。それがあったからこそ私達が、滅びの前にここに至ることができたのです。

過去にあったものでは勝つことは叶わぬかもしれません。それならば私は新たな刃を作り明日を切り拓きましょう!……変身!ヘパイストスアーマー!
思い描くのは明確なイメージ。鋼を切り、竜を切る聖なる刃。今ここに産まれいでよ!新たなる剣!
これはあくまで前哨戦。このようなものは一太刀で終わらせて差し上げましょう!


レッグ・ワート
何をどう助ける為の言葉だろうな。

コード通らない合金マジ何、金属だけでこんななる訳あるか。とりま防具改造で値弄ったフィルムで忍び足と迷彩。糸使って武具類こっそり回収してくわ。寄られたら捕まりそうな攻撃は見切り避けて、他は鉄骨で武器受けつつ形状の情報収集。避けたり妨害する時の糸の張り方に活かすよ。変換後は被膜置換で武器の形は残して触れ斬るぜ。

仕様上後悔とか無いからなあ。後悔中の最悪から逃がすのも繋ぐ時間稼ぎも仕事だし。とまれ俺達追い返したいならって、装備の勇者達との話を頼んでみるか。話の上で成果は無かったと断言してもしなくても、折角オブリビオンじゃない側で居座ったんだ。元現役としてもう一戦どうよ。




 鉄鋼蟹が現れる。
 壁面にナイフのような節足を突き刺して、重厚な体躯を軽々と持ち上げ穴の底よりその怪物はやってきた。
 鉄色の甲殻に剣の如き金属の結晶を生やした大蟹は目だけがギラギラと紅く輝き、牙のような大顎がガチガチと蠢き猟兵達を威嚇する。
 死者の時間を妨げるなかれ――そう告げるように、まるで墓守のように在る彼は、しかし実のところは餌場に踏み込んだ余所者を排除しに来ただけなのであろう。
 足元に突き刺さっった宝剣を鋏で器用に引き抜き、顎でばりばりと噛み砕いて捕食する大蟹は次の獲物とばかりに黄金の聖女ゾーイの残留思念の直ぐ側に転がる金の錫杖に視線を向けた。
 いつもの様に余所者を追い散らし、彼らの持つ餌を千切り取った次に食べるものはそれだ、と。
 勇者たちの誇りが、彼らが世界を救った証が無残にも喰われゆく。
 悪しき竜を切り裂き、世界を守るための力が失われてゆく。
「――許せるわけがありません!!」
 悲しげにそれをただ見守るしかできない聖女に背を向けて、ソラスティベルが大蟹に向けて駆け出してゆく。
 盾を構え、裂帛の気合いを込めて。彼女は竜でありながら勇者、魔王を討ち世界を守る者。その偉大なる先達が遺したものを貪る怪物を到底許してはおけないと、魂の叫びとともに勇者の盾が大蟹の鋏に激突しそれを跳ね上げる。
「その武器から離れなさいっ!!」
 金属の巨体からすれば遥かに小さな少女にぶち当たられ、大蟹が節足をがしゃがしゃと揺らしてよろめいた。
 だが怒りの視線をぎろりとソラスティベルに向けた大蟹が、鋭利な鋏の先端を向けて突き刺すように振り下ろす。
「なんの!! 俺には信頼できる仲間がいる……聖女よ見るがいい!」
 これが今代の勇者、猟兵の力だ。ソラスティベルを庇うように割り込んだ棒人間が薄っぺらな盾を構えて鋏と激突する。
 無茶だとゾーイは言った。無敵の盾をも砕くような一騎当千の勇者たちの武具を貪り喰らった大蟹の鋏は聖剣にも匹敵する攻撃力のはず。
 それをそんな、見た目は立派でもあまりに軽く柔らかな盾で――玩具で受け止められはしない、と。
「いいや聖女、この盾は決して砕けない! 想いがあれば単純な力など比べる必要もないのだ!!」
 棒人間は背負った仲間たちの想いを――それが現実であるかどうかは彼にとってどうでもいいことだ――胸に抱いて、到底耐えられないはずの一撃を受け止め大蟹を跳ね除けた。
「……ゾーイと言ったか。貴様がそのように悲観的になるのもわかる。それは貴様自身が思う以上に貴様が優しい人間であるからだ」
 だが考えてみろ。多くの犠牲を払って竜が倒されたあの時から今に至るまで、人々は多くの苦難を乗り越え日常を取り戻したのだ、
「多くの人間に貴様と同じ絶望を味わわせまいとする優しさはよく分かるが――人間はそう易々と折れるものではない。俺はそう考えている!」
 人を信じ、己を信じるハリボテの勇者の魂の叫び。
「その通り! 確かに敵は強大です。私達も戦いの中で傷つき倒れ伏すかもしれません。帝竜もまた復活するかもしれません」
 姿勢を起こした大蟹が薙ぎ払うように振るった鋏を棒人間とともに盾で受け止めながらソラスティベルは聖女に暖かく優しげな表情を向ける。
「――しかし戦わねば勝てないのです! 戦わねば誰かが犠牲になるのです! 貴女たちもそうだったのでしょう、だから戦い、『勇者』となったのでしょう!!」
 長く苦しい戦いの中で摩耗していった想いを、勇気を呼び起こすソラスティベルの言葉が凍りついた聖女の心を僅かに揺れ動かす。
「貴女が世を儚むのも無理からぬこと。しかし私達とて其れで諦めるようなら初めから此処に立ってはいないのです。貴女方が嘗てそうだったように」
 二人の勇者が大蟹の鋏を受け止めるこの好機を逃すまじ。景正が駆け、守り薄い鋏の付け根へと刀を一閃。
「駄目です、それは――!」
 聖女の叫び。如何なるものも断ち切る濤景一文字が火花を散らして弾かれる。
 よもや化け蟹の甲羅、かくも硬かろうとは。されど景正のすべきことは変わらない。たとえ刃が通らぬとて、この怪物を討ち果たし帝竜への道を拓くのだ。
「ご忠告は有難くも、我らが此処で退けばより多くの民が犠牲となりましょう」
 その地獄を貴女は知るはずだ。それに何よりも――
「自らの命を賭してまで帝竜を討った貴女方の志を無為にしてしまう、私は帝竜と刺し違えるよりそのことが余程恐ろしい!」
 全霊を込めた太刀筋は甲殻に微かな傷を刻むばかりだが、絶対に景正は退かない。
「能うなら化け蟹の一つも斬れぬ未熟な後進に力を。叶わずともここで去る事もあり得ませぬが」
 勇者二人が止めた鋏が退き、もう片側の鋏が襲いかかる。それを刀で受け止めた景正は、言葉の通り絶対に退かない。
 三人の猟兵を前に押しきれぬとみたか、蟹はがさかさと脚をざわめかせて一度下がってゆく。

「…………無茶です。敵わない相手に立ち向かったって傷つくだけ」
 決して諦めていないのは敵も同じ。ぎょろぎょろと紅い目玉を回して隙を伺う大蟹が今度攻めてくれば、致命傷を与えられない猟兵たちはじりじりと追い込まれあの大鋏の餌食となってしまうだろう。
 帝竜と比べれば硬いばかりの敵でも歯が立たないのであれば充分に脅威。そんなものに挑んで、傷だらけでこの場を切り抜けたとして。帝竜はもっと恐ろしいし、そんな恐ろしい怪物を仮に倒せてもまた蘇ってしまうかもしれない。
 だったら傷つくだけ無駄ではないか。聖女は猟兵達に再び立ち去るよう促そうとする。が、開きかけたその口を噤ませるように猟兵が言葉を発した。
「貴女はわかっていませんね」
 何を、と戸惑う聖女にアリシアは告げる。
「今ここに居るのはかつての勇者たちではありません。私達です。かの悪しき竜が一度たりとも見たことのない私達」
 私達が以前の勇者に勝るとは限らない。けれど猟兵は帝竜はおろかかつての勇者たちにとっても未知数の存在。
「そんな私達が負けると、なぜ戦う前からそう思うのでしょう。そしてもう一つ」
 ――貴女たちの戦いは、貴女たちが稼いだ時は無駄ではなかった。
 アリシアの言葉は聖女に幾らかの救いを与えただろうか。勇者たちの戦いが伝説となる程の時間を、人類は笑って、泣いて、人らしく生きることが出来たのだ。
「そしてそれがあったからこそ私達が、決定的な滅びの前に此処に至ることができたのです!」
 そうさ、と言葉を繋ぐ者がいる。異形の姿を揺らして、抱き上げた犬の毛並みを撫でながら雁之助は言う。
「猟兵には僕みたいに一芸に秀でた者がいる。一つだけの強みは無いけれど、たくさんのことをこなせる人もいる。それは君たち勇者だってそうだったんじゃないかな?」
「……それは、」
 聖女ゾーイは黄金を生み出すことしか出来ない弱い勇者だ。
 けれどそれは幾千の勇者たちの中で唯一の力で、彼女なくして勇者たちの笑顔が守れなかった局面だって確かにあった。
 戦いが得意な代わりに他がからっきしな者が居た。弁舌が立つ代わりに戦えない者も居た。
 全てをそつなく為せるが、全てが他の勇者に及ばない者も居た。
 その誰か一人でも欠けていればヴァルギリオスのもとへたどり着くことすら叶わなかったのではないか。
「…………それは、でも」
 もし猟兵達が勇者と同じ様に多才多芸の集団だったとしても、勇者と同じ末路を辿らぬと言い切れぬ。
 ゾーイはそれが恐ろしい。彼女の勇気を刈り取るほどに、ヴァルギリオスとは絶対的な強者だったのだ。
「何もあんたに帝竜退治まで着いてこいとは言わない」
 聖女の怯えを見透かすような落ち着いた声音でシキが呼びかける。
「それは俺たちの仕事だからな。だが少なくとも今は、あんたにしか出来ないことがあるんだ」
 猟兵たちを餌食とするべく鋏を打ち鳴らす大蟹を討ち倒すには、ゾーイの力が必要なのだ。
「それにこのまま退けばそれこそ後悔しか残らない」
 戦って、帝竜と相討ち死を後悔するのと、逃げ帰り多くの命を見殺しにしてしまった後悔を背負って生き続けるのと。
 どちらが辛いのか、今のあんたにはわかるだろうとシキはゾーイの瞳を見つめて問うた。
「……あんたの仲間は、今のあんたの言葉に頷いて諦めるような者たちではなかっただろう?」
「……………………はい」
 こくり、とゾーイが頷いた。
 けれど、彼らならぬ非力の女に今更何ができようというのか。

「キミはこんな言葉を知っているだろうか。“戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を述べる”――軍略における有名な一節だ」
 ユエインの言葉は異世界の戦史研究のフレーズだ。この世界の住人で、そして軍事はその分野の勇者に委ねていたゾーイにはその言葉の意味することを理解するだけの知識が足りていない。
 けれどユエインはそんな戦いを知らぬゾーイの力をこそ、“戦争”という大規模な戦闘行為において必須不可欠のものだと説く。
「黄金しか作れない? もしマンサ・ムーサが聞けば笑い出すだろうさ。戦いとは剣を振るうことだけでは成り立たないのだから」
 かのアラビア黄金王は富を大いに振る舞うことで周辺諸国に国家の強さを示したとも言う。何事も使い方次第、かの王の如くともすれば放蕩のような散財を是とするものではないが、黄金を生み出す力が役に立たぬなどということは決してありえないのだ。
「だからゾーイ。キミたちの力とボクらの力が合わされば、今度こそヴァルギリオスに完全勝利できるかもしれない。完全消滅を果たせるかもしれない」
「私は、わたくし、は…………でも、怖いのです。もう目の前で誰かが傷つき死んでゆくのを見たくはないのです!!」
 初めて聖女は感情を露わに叫び、その声が竪穴を反響する。
「ゾーイさん、今までずっと苦しかったんだね」
 実体のない背中を撫でるように、死して尚恐怖に竦む聖女を慰め志乃が優しい声を掛けた。
「自分はただ後ろから見ているだけ。目の前で皆が血まみれになっていくのを助けることも出来ず、そして皆死んでしまった」
 もし自分が彼女の立場だったならば、この絶望に耐えられただろうか。
 勇者と、聖女と語られるようなゾーイも決して内面まで超人ではないのだ。むしろ戦えぬ彼女は多くの勇者たちの中でもっとも“人間”だったのだろう。
 その彼女が竦み、膝を折ったことをどうして責められよう。
「また同じことになるかもしれないって。また沢山死ぬんじゃないかって、怖くてたまらないよね。だから貴女はこの先に進むなって、それ以上行くなって言ってくれたんだよね」
 ありがとう。志乃はゾーイを支えるように手を添えてふっと微笑んだ。
「…………ならば、貴女は――」
 志乃はゾーイの期待を宿した瞳から視線を外して、首を横に振る。
「うん、ごめん。私も戦いに来たんだ。これ以上誰も犠牲にしたくないから。優しい貴女がこれ以上傷つかなくて済むように」
 あぁ、とゾーイの嘆くような息遣いが聞こえる。
 あの時と同じだ。勇者たちもかつて、志乃のような表情で戦場に赴き――そして目の前でひとり残らず死に絶えた。
「私は相討ちになる気はないよ。貴女も、この世界の人も、皆が生きていられるようにコイツらをぶっ飛ばしに来たんだ。だから――皆を生かす為に、行こうよ」
 手を差し伸べた志乃。僅かに逡巡して、黄金の聖女ゾーイ・マイダスはその手を取った。

「蟹……蟹!? 下手な竜より強いんじゃないかあいつ……」
 遅れて登場したヴィヴは、猟兵達を相手に互角以上に立ち回る蟹の姿に絶句する。
 一騎当千の強者たちの攻撃を軒並み甲殻や鋏で受け止め弾き、頑強なそれらを振り回して猟兵を追い散らす。
 知性在る竜ほどの悪辣さはないが、単純に生物としての強度が違いすぎるのだ。
「これはいよいよゾーイくんの協力が必要だな……何、蟹には弱気になった私だが、ヴァルギリオスに勝つという自信はある。銀河最強の銀河皇帝から、ドン・フリーダムに織田信長、クライング・ジェネシスに大魔王……君にはわからないだろうけれど、ヴァルギリオスに匹敵するどんなフォーミュラーにだって勝ってきたんだ。だから今回も確実に、必ず勝つ。そのために力を貸してくれるね?」
 我々はヴァルギリオスには勝てるがこのままではあの蟹に勝てないからな……と情けなく苦笑するヴィヴに、ゾーイは力強く頷いた。
「…………わかりました。あなたたちを、この時代の勇者様たちを信じます。私の全力であの大蟹を黄金に変えればよろしいのですね?」
 ゾーイの力が及ぶのはあくまで金属に対してのみ。彼女だけで大蟹を倒すことは出来ないだろう。あくまで本命は猟兵。そして、
「あれだけの巨体ともなればいま暫くのお時間をくださいませ。全力を尽くしますが、死者の残念のみでどこまで私の力が及ぶかわかりませんから」
 時間を稼いでくれ。聖女からの頼みに力強く頷いて、猟兵達は鉄壁の大蟹に向かって挑みかかる。
 彼らの背中を嘗てのように見送って、聖女ゾーイは錫杖を手繰り寄せる。
 黄金以外の部分はずいぶんと朽ちてしまった。魔力の通りも悪く、一握りの鉄くずを金貨に変えるのも昔のようには行かないだろう。
 だがそれはやらぬ理由にはならない。ヴァルギリオスを倒し、世界を――人々を守ると約束してくれた若き勇者たちを助けるため、聖女は全力を奇蹟の行使に傾ける。
 その負荷を和らげるように、魔力の流れを柔らかく滑らかに変える者がある。
 ベールだ。しゃらりしゃらりと不可思議な鈴の音を鳴らしながら彼女が舞えば、激戦の残滓として重く淀んでいた魔力が一陣の風に撹拌されるように薄く伸ばされ流れ出す。
「ボクは、お昼寝が好き。天気のいい日に、皆で並んでお昼寝をするのが好き。でも、今の状態だとできないから、ボクは戦う。単純なことだけど、やりたいことができなのは辛いから」
 ベールは問う。聖女は何のために再び立ち上がるのか。猟兵たちの頼みを聞き届けただけ、ではないだろう。始まりの、最初に勇者として旅立った時。なぜ戦えぬ聖女は帝竜討伐という危険な旅に加わったのか。
「私は……財貨ではどうにも出来ない不幸を多く見ました」
 竜やその眷属による暴虐。彼らが齎した天変地異や、治療法の見つかっていない病毒。
 ゾーイがいくら人々に金を与えようと、竜に黄金を差し出し交渉することなど出来ない以上は何の役にも立たなかった。財貨を使うような商売も竜によって壊滅し、いよいよ食うに困るに至って作物の代わりに金で税を収めようにも、そのような村々はすでに国に見捨てられ、徴税人すら近付くことは無かった。直接的に竜の被害を受ける辺境ほど貧しく、だが富があったとてそれを使って救われることは出来なかったのだ。
「この苦しみから人々を救うには、竜を斃さねばならぬと思ったのです。私に力は無かったけれど、勇者様たちの支えにならなれると」
「時化た面もちったァマシになったな、聖女サマよ」
 初めの誓いを思い出し、速度を増した魔力の流れをその身に集め血色良く亡霊のような存在の希薄さが幾分か良くなった聖女の側を、目付きの悪い黒い妖精がふわりと飛んだ。
「あン? 俺が前に出て何になるっつうんだよ。テメェと一緒だ、俺は俺の戦場でやる。決めたからには絶対にな」
 さァ、黄金の聖女サマよ。俺の戦いの為に勇者って奴を教えろ。洗いざらい全部吐け。
 横暴としか言いようのない物言いの妖精――ケンタッキーに促され、聖女は静かに目を閉じる。しかし、何故?
「あ? なんでって必要なんだよ勇者って連中の情報が。ナリとカタチ、魂がどんなだったかが。くそったれな竜の親玉だかなんだかをブチ殺すのによ」
 聖女の声ならぬ疑問を封殺し、不遜に妖精は言い捨てた。帝竜を二度殺すため、一度目を成した勇者がいればより勝利の可能性は高まるはず。
「テメェは勇者を最も近くから見てきたッつったろ」
「――ええ、私は勇者様を最も近くから見てきた……あの方たちの背中に守られてきた弱い人間です。ですから、だからこそあの方たちの魂の輝きは今でも思い出せます」
 聖女をもっとも近くで守り続けてくれた、朴訥で心優しい大盾の――鉄壁の勇者。
 聖女の下に敵がたどり着かぬよう、常に側で目を光らせ百発百中の矢で飛竜をも射落とした、凛とした森の狩人。
 公私ともにもっとも親しかった、あらゆる魔法を人並み以上に操る“秀才”の魔女――他にも勇敢な剣士が居て、狡猾な槍使いがいて、豪快な重戦士が居て、使命感に燃える何処かの貴族令息だという騎兵がいて――幾千の勇者の中でゾーイ・マイダスが知るものは一割にも満たないが、その分知っている相手ならばその細かな所作だって思い出せる。
「ありがとよ。ンじゃァ一丁始めるか。おら勇者の武器ども、力貸せや」
 ケンタッキーが繰る人形の腕が、からからころころと関節を鳴らしながら転がる武具を掴み取る。
 頑強な大盾を、強かな短弓を、質素な魔法の杖を、流麗な長剣を、重厚な戦斧を、麗しい騎槍を。
「さァ行け!! 俺様がもう一遍命を吹き込んでやらァ!!」

 猟兵たちの盾が蟹の打突を弾き返し、剣戟は甲殻に阻まれる。一進一退、しかし無尽蔵に等しい体力を持つ大蟹のほうが僅かに猟兵を押し込み始めた、その時。
「こいつはすごい蟹さんだ。俺の一刀が勝るか否か、命を賭けて一勝負と行きたいところだが……」
 自分の愉しみを貫くばかりではスペース剣豪を名乗るに能わず。
 恭二郎は奇蹟を喚ぶべく詠唱を開始した聖女の脇をすり抜けるように、苦戦する友のもとへと駆け出した。
「あんたが力を貸してくれるなら心強い。聖女さん、あんた達が今日に繋いでくれたからヴァルギリオスを倒せる今がある。たとえまた奴が蘇っても、次の奴らに明日を繋げれば誰かがきっとまた奴を倒してくれるさ。あんた達がそうしたみたいにな」
 だから――今日を遺してくれてありがとう。勇者への深い敬意を込めて頭を下げた恭二郎に、心救われた聖女はいいえ、と返した。
「過去の後悔に囚われた私にもう一度勇気を見せてくださったのは貴方たち。お礼を申し上げるのは私の方です」
 その言葉に振り返り、にっと涼やかな笑顔を向けて。
「美人に頼られちゃ覚悟決めなきゃな。行くか、ルエリラ」
「そうだね、しっかり戦って蟹ごときに負ける猟兵じゃないって力と勇気を示そう」
 恭二郎を飛び越えて、前線で戦う景正やソラスティベル、棒人間をもすり抜けて蟹の目玉を狙った矢が飛来する。たまらず防御するように腕を掲げた大蟹の足元はがら空きだ。
「この命を賭けて、全てを繋いでみせるよ」
 隙だらけの足元にしゃらりと光の鎖が伸びた。志乃の放った希望を繋ぐ鎖は、大蟹の尋常ならざる膂力でも千切ることはできない。
 節足を数本纏めて縛り上げ、曳かれた鎖が蟹を地面に引き倒す。
「今だ、皆!」
「――ああ、任せろ!」
「合わせます、今度こそその大鋏を斬り落としましょう!!」
 体勢を崩した蟹の無防備に晒された鋏の付け根。これを目掛けて、恭二郎の大上段からの振り下ろしと景正の鋭い斬り上げが鋏のごとく精緻にすれ違う。
「これぞ風桜子一刀流、銀河一文字――」
「――鞍馬の名に懸けた我が刃鉄、遠慮なく召されよ。胃も殻も砕け散ろうがな」
 二人の剣豪が刀を鞘に収めた時、ばつんと凄まじい轟音を伴って蟹の片腕が地に落ちた。

「逃がさないよ!」
 片腕を失った蟹が選んだのは逃走であった。
 勇者の武具と同等の威力を得るほどに成長したもう片腕を使って己を戒める光の縛鎖を断ち切ると、凄まじい勢いで後退していったのである。
 蟹は左右にしか移動できないと言ったのは誰だったか――世の中にはそうでない蟹もいるではないかと悪態を吐きながらそれを追うのはルエリラとヴィヴ、そして雁之助。
「まずいね……ゾーイくんの魔法が完成したとしても、餌場に籠もられては黄金化したそばからまたもとの甲殻を作られかねない」
 もしその予想が的中していたならば、ゾーイも含めて持久戦となるだろう。
 そして撤退と捕食を繰り返すことで無限に等しく継戦し続けられる大蟹を相手にそれが悪手であることは間違いない。
「確かに動き回られると厄介だねえ。よし、ここは僕が動きを封じよう」
 策はあるのかい、と問うたヴィヴに、もちろんと頷く雁之助。
「封じ込めた後の食事の邪魔と餌の片付けは任せるよ。いいかい?」
 ルエリラとヴィヴは頷いて、尖った岩場の上を軽やかに跳んで大蟹を追う雁之助を送り出す。
 追手の接近を黙って見過ごさないのは大蟹とて当然のこと、片方残った鋏を振り回し急所を狙う雁之助と彼の愛犬悉平太郎を寄せ付けない。
 一進一退の攻防に見える。互いに責めきれず、むしろじりじりと後退を成立させている大蟹がやや有利とも見えたその立ち合いはしかし、戦闘としては蟹の優勢でも戦術としては雁之助の圧勝だった。
 ずるり。蟹の爪先が滑り、巨大な体躯が傾いてゆく。
 雁之助たちとの交戦に気を取られるあまり、大蟹は起伏に富んだ岩場の隙間に深く脚を突き刺してしまったのだ。
 身動きを取るにはあまりに深く食い込んでしまった脚はちょっとやそっとでは引き抜けまい。
 暫し藻掻いた蟹はこれが逃げられぬと理解するや、野生生物ならではの潔さでその脚を自切してのけた。
 これでは歩けないが、蟹にも奥の手はある。隻腕の鋏を伸ばし、そこらに数多眠る勇者の武具を摘み上げ大口を開けてそれを喰らう――その瞬間をルエリラは逃さない。
 開いた口内に餌より速く飛び込み突き刺さった矢は、蟹に大きなダメージを与えて狂乱させる。
 ばきばきと剣や斧を貪りながらも再生より防御を優先して身を丸めた大蟹へと、ルエリラは一矢引き絞って相対する。
「ここからは真剣勝負だよ! 私の最強の矛であなたの最強の盾を貫かせてもらう!」
 どんなに厳しい状況でも、どんなに不可能だと思える苦境でも、私達なら越えていける――その証明の為に。
 魔力の矢が放たれ、真正面から蟹の甲羅にブチ当たる。
 矢は甲殻を貫いて、びしりと鋼鉄の鎧に罅を刻み――それを砕いて金属の下の蟹本来の甲羅を曝け出した。
 悲鳴のような軋みを上げて手当り次第、岩ごとに武具を根こそぎかき集めて捕食しようとする大蟹。
「そうはいかない。これ以上君に回復されると困るからね」
 ――蟹は見た。ヴィヴの仕掛けたダイナマイトの導火線が今まさに燃え尽きるその瞬間を。
 それが何を意味するかはわからぬまま、蟹は爆炎に飲み込まれる。
「やったか!!」
「ヴィヴ、それはフラグだよ!」
 ガッツポーズを決めるヴィヴをルエリラが嗜めれば、案の定蟹の“失われたはずの”片腕が、その鋏が勢いよく炎を切り裂きヴィヴへと迫る。
「うわっと……! くっ、一手遅かったかな。それでも完全回復じゃあなさそうだね」
 一回り小さくなった鋏の一撃を貫手で弾き返したヴィヴは、炎から姿を現す大蟹の姿を見た。
 甲殻も鋏も、再生した部位はかつて程の大きさではない。
 鋏は小ぶりに、甲殻にそびえた結晶もその威容とも言うべき威圧感を大きく減じている。

 とはいえ。
「コード通らない合金マジ何」
 ひっそりと岩陰に身を隠し、光学迷彩フィルムで姿を消して忍び寄るレグは猟兵たちの渾身のユーベルコードを弾き、致命傷を避けて見せた鉄鋼蟹の異様な強度を誇る甲殻に思わずそう言わざるを得ない。
 唖然とする彼のすぐ側にひるひると回転しながら突き刺さった勇者の武器もまた、至近距離でダイナマイト発破を受けて尚原型を留めているあたりこの世界の伝説の武具は理解の及ばない金属製なのだろうと思考を一旦クリーンアップし、レグはカーボン糸を放って飛散した武具を静かに回収する。
「俺は仕様上後悔とか無いが――」
 誰かが後悔するその最悪の状況から逃がすのも、最悪の到来を遅らせ希望を繋ぐまでの時間を稼ぐのも奪還支援機の任務である。
「何をどう助けるための言葉だったんだろうな」
 あの聖女がどんな心境で猟兵達に語りかけていたのか、今は聞くだけの余裕がない。だが彼女が取り戻したこの希望を見事に眼前の絶望から逃した後ならば、あるいはそれも訊けるだろうか。
「天空王! 大地王! 海洋王! 皆私に続け! 一斉攻撃だ!」
 再生を果たし暴れる大蟹へと勇敢に挑むのは勇者ブレイバーことブレイブと、そして(自称)勇者棒人間だ。
「俺達は猟兵だ。世界を股にかけ修羅場を越えてきた者しかいない。貴様ごとき蟹に折られる根性などとうに捨てている!!」
 棒人間のシールドバッシュが蟹の大鋏を打ち返し、小鋏の連撃をブレイバーとそのサポートメカ達が手数で迎え撃つ。
「天空王、口元を狙うんだ! これ以上再生させるわけにはいかない!」
 いつまた手足を自切して逃げるか分からない以上、再生手段を封じるのは先決。
 勇気のオーラを身にまとったブレイバー達は大蟹の節足動物とは思えない巧みな攻撃を受け流しながら、剣を折り鎧を砕き盾を曲げる強靭な顎の牙を幾度も攻撃して傷つけてゆく。
「勇気とは諦めないこと! たとえ攻撃が通じなくとも、どのような敵が相手でも私は立ち向かいましょう! それが私に心をくれた人たちへの恩返しなのですから!!」
 勇者ブレイバーは一人ではない。未来を望む全ての人類の勇者たらんとする彼は、帝竜に抗う人々の願いを背負って此処に居る。
 そしてそれは彼だけではない。勇者の名を背負って此処に立つものはもうひとり。
「貴女にはその眼差しこそが相応しいと思います。恐れを孕む目で世界を見るのは、もうやめにしましょう」
 ふたりの勇者が宿した勇気がもうひとりの勇者に力を与える。
「今の時代の『勇気』を信じて、勇気を胸にこの手を取って!」
 竪穴を突き刺すように天に雷鳴が轟き、落雷――神鳴りが勇者ソラスティベルへと落ちた。
「これぞ我が勇気の証明! 至る戦火の最前線! 今こそ応えて、蒼雷の竜よ――黄金の聖女よ!」
 青白き稲光が宿った大斧が、化け蟹の甲殻を頭上から強か打ち据える。
 そして竪穴に黄金の輝きが満ちた――

「……はぁ、はぁ……皆さん、今です…………ッ!」
 黄金の聖女ゾーイは荒い息を吐き出し呼吸を整え、万一に備えた次の詠唱をすぐさま開始する。
 非力な勇者だが、無能な勇者ではない。勇者の側であり続けた彼女は、力なき者だからこその臆病さで危険に備えることを是としていた。
 そして彼女の起こした奇跡によって甲殻の過半を黄金と化し、勇者の雷斧で半壊に等しいダメージを負った大蟹はまだ、異様な生命力でこの世にしがみついている。
 だが無敵の護りは破られた。今こそ好機、聖女の奇蹟が塗りつぶされるより速く、猟兵達は今度こそ巨蟹を仕留めるべく最後の攻勢に出る。

「俺は先のことなんて分からねえ。だから戦うんだ!」
 勇者ならぬ青年、呂拇が叫ぶ。諦めたその瞬間こそ世界終了の時だと、彼の育ての親たる「ジジィ」は言っていた。
 彼にとっての世界、ジジィと共に過ごしたあの島がコンキスタドールに滅ぼされたあの時、呂拇は誓ったのだ。絶対に諦めぬと、これ以上終わりを迎えさせはしないと。
「だからアンタの力を借りるぜ、ゾーイ。まずは遠距離攻撃だ!!」
 金の甲殻は柔らかい。柔らかいとはいえ金属に変わりはないし、それが純金であるという保証もないのだ。
 もっと柔らかくしてから叩くべきだし、接近戦は危険だと先んじて挑んだ剣士や勇者の苦戦から呂拇は学んでいる。
「俺は賢いんだ、喰らいやがれ!」
 手にしたバスターロッドが輝き、呂拇の鎧に覆われた腹から炎の矢が飛翔する。
「炎なら、ボクも――大罪の内、怠惰の悪魔ベルフェゴールの名を借りて命ず。我が肉を喰らいて現われろ。汝は死より再生せし不死たる悪魔なり」
 呂拇に続いて火焔の不死鳥を呼び起こすはヌイだ。
 呼び起こされた紅蓮の妖鳥は使役者とともに黄金蟹へと突進してゆく。
「くっ……うぅ……」
 召喚の代償、我が身を焦がすような炎の痛みを噛み殺し、聖女に猟兵の意志を見せつけるように駆け抜けたヌイ。不死鳥の撒き散らす炎は黄金蟹とヌイには痛みを、そしてそれ以外の人々には癒やしを与えてゆく。
 大蟹との激戦で傷ついた者たちが活力を取り戻してゆく。反対に大蟹は呂拇とヌイの猛攻で金の甲殻をどろりと融かされ、無事であった合金に流れ落ちた黄金が滴り絡みつく。
「――そこ、っ!」
 呂拇が連射を止め、不死鳥が離脱する。そこへヌイが氷の弾丸を撃ち込めば、急速に冷やし固められた黄金が巨蟹の動きを封じる枷へと変わってゆく。
 そうして再び動きを止められた蟹へと、ケンタッキーの繰る人形の腕が絡みついた。
 その数は先より数倍。レグが手繰り集めた武具をも握りしめ、一個の軍勢となった人形達が大蟹へと襲いかかる。
 しかしてそれらは朽ちた武具に他ならない。金属として如何に強固であろうと、錆付き溢れた刃は鈍器として以上の意味を持たず、そして黄金と化した蟹に対しても多少の打撃はダメージには至り得ない。
「だが関係ェねえ、ブチ凹む迄何度でもブッ叩く!」
「――いや、そのまま叩き斬れ」
 それを承知で鈍器上等の打撃戦を繰り広げようとするケンタッキーを制して、レグは武器本来の用途――剣ならば斬り、槍ならば突くように促す。何故ならばケンタッキーとともに聖女の語る勇者の記憶を学習した彼は持ち前の演算能力でかつての武器たちの威力を――竜すら斬るその鋭さを再現してのけたから。
 レグが演算により導き出された往時の切れ味を錆びついた武器の外側に被せ、ケンタッキーが勇者の技量を演じて攻める。
 かくて無数の武器が黄金蟹の甲殻に突き刺さり、その節足を撥ね飛ばした。
「折角オブリビオンじゃない側で居座ったんだ、元現役としてもう一戦どうよ」
「ンだ、やれば出来ンじゃねェか勇者ども。オラ聖女サマよ、俺はやり遂げたぞ! 次はテメェの番だ!」
 二人の咆哮に、聖女は今再び錫杖を掲げ祈りを捧ぐ。

「私は今代の勇者様たちを送り出しましょう」
 かつて守られるだけの弱い勇者だった娘が。
「かの悪逆の帝竜を今度こそ討ち滅ぼしてくれる者たちを」
 それでも死にゆく中であの戦いの最期を見届けたものとして。
「黄金の聖女ゾーイ・マイダス、私には過ぎたる称号だと思っていました」
 しかしきっと、私の勇者としての役割は今日この日に至るまでを使命としていたのだ。
「勇敢なる人々に、黄金の祝福を贈ることこそ私の役目だったのでしょう。多くの人々の願いを背負い、ヴァルギリオスを今こそ完全に滅ぼす為に――」
 聖女の祈りが黄金の輝きを伴って、再び巨蟹を照らしゆく。
「――キミの祈りは決して無力じゃない。さぁ、今こそ叛逆の時だ」
 数多の勇者の残留思念、人格を残すまでに至らなかった者たちをかき集めたユエインが、
「あんたの祈りに感謝する。だから俺たちはあんたに希望を返そう」
 拳銃に特注の弾丸を詰めたマガジンを叩き込んだシキが、
「ああ、俺のメガリスに力が溢れるようだぜ。こうなりゃカニ如きにこれ以上梃子摺っていられねぇ!」
 杖と銃身を勢いよく接続し、完成した巨大な斧を肩に担いだ呂拇が、
「貴女の祈りを受けて、私達は新たな刃を作り明日を切り拓きましょう――変身!」
 紅蓮の鎧を纏い、帯びた炎の中から創り出された一振りの聖剣を引き抜くアリシアが、
「――――新たなる勇者様。猟兵よ、貴方たちこそが黄金の夜明けを齎す者であると私は信じます!!」
 聖女の光を背に受けて、脚を奪われ藻掻く巨蟹へと挑みかかる。
 このまま迎え撃つのでは不利と、黄金に変わりゆく鎧をなんとか作り直すべくケンタッキーの繰る人形から武具を奪い取り喰らおうとする黄金の巨蟹。
 それをさせるまいと、ユエインの呼び出した勇者たちの思念が蟹に組み付き動きを一瞬止める。
「今だシキ、合わせてくれるかい」
「任せておけ!」
 防御が緩んだその一瞬、ユエインの操る巨大な鉄人形、鋼鉄機人の拳が蟹の顔面に食い込んだ。
 ルエリラやブレイバーの攻撃で傷ついた牙がへし折れ、辺りに飛び散る。
 脚の足りぬ蟹はその衝撃に耐えきれずたたらを踏んで仰け反った。――好機をその射手は逃さない。
「どうせ勝つんなら圧倒的に、だ」
 特注の弾丸の速射が両の鋏をかち上げ黄金の甲殻を砕き、防御をも許さぬまま破壊された顎から蟹の体内に吸い込まれてゆく。
 致命傷である。が、しかし蟹は死に往くまでの僅かな時間を報復のために消費することを選んだ。
 足りぬ脚で支えきれぬほど重い黄金の身体を引きずって、破壊された口元から体液を流しながら聖女へ迫る巨蟹。
 思念である聖女自身には干渉できまいが、彼女の依代たる錫杖は蟹にとって我が身を癒やしうる可能性を秘め、それでいて奪い取れる可能性のある唯一の武具だ。
 凶悪な蟹の鋏が迫るのを、しかし臆病だった聖女はまっすぐ見据えて退かない。
「やらせるかよォ!! 叩き砕いてカニカマの材料にしてやらぁ!!」
「これは勇者の想いを受け継ぎ、人々の明日を望む願いが生んだ剣! この一太刀で終わらせて差し上げます!」
 右の鋏を紅蓮の呂拇の大斧が地に打ち付けて粉砕し、左の鋏をアリシアの竜を斬るための聖剣が両断する。
 それはかつて聖女を護り戦った勇者たちの背中の再演の如く。
 懐かしく頼もしい光景を幻視した聖女は、柔らかく微笑み頬に一筋の雫を伝わせる。

 ――黄金の巨蟹が両の鋏を潰され、体内を破壊されて生命力の全てを使い果たし地に沈む。
 ぶくぶくと泡立つ口元が完全に沈黙すれば、この竪穴を塞ぐ脅威の一つが死に絶えたことに猟兵達は安堵した。
 しかしこの激戦で少なからず消耗したのも事実。ベールの不死鳥が傷こそは癒やしたものの、失った体力は迅速な再進撃を掲げるには心許ないのだ。
 グリモアベースに帰還すればある程度休息は取れるだろうが、猟兵によってはその暇もなく次の任務へ、ということもありうる。
「そういうことならばここはカニ鍋の出番です!!」
「かにかにかーにー、かにすき、かにしゃぶ、かにちりー♪」
 ため息を吐く猟兵たちの下に現れた、エプロン姿の少女たち――恋華荘の住人たちとプラスアルファで美味しい食事の気配に釣られたフィーナの提案は渡りに船というか――えっ、何て?
「いいからカニよカニ! カニ食べて元気を付けるわよ! ひぃふぅみぃ……あのデカいカニなら身も二十人前くらい余裕で取れるわ!」
 フィーナが捲し立てれば、聖女ゾーイは困ったような表情で戦った猟兵達に助けを求める。が――半数は疲れることには関わりたくないし危険はないだろうとそっぽを向き、もう半数のさらに半分はカニ、いいな……とむしろ乗り気を示して、残った半分は勇者の遺した武具の調査に意識を向けて――聖女を助けるものはない。
「なるほどあれも魔物とはいえ蟹は蟹、食材と思えないことも……ってその場合作るのは私ですよね?」
 いちごが首を傾げれば、細かいことはいいのよ蟹刺し焼き蟹カニ鍋よろしく! と背中を叩いて持ち込んだ飯盒を魔導の火で炊き始めるフィーナ。
 締めのカニ雑炊は任せなさいとドヤ顔を披露する彼女に圧される形で調理を始めたチーム恋華荘もといいちご。
「仕方ありません、やるからには最高に美味しいカニ鍋を作りましょう!」
 すでに猟兵によってある程度解体されているカニから金属甲殻を引き剥がし、魔法で召喚した大鍋に放り込むいちご。脚も半分は鍋につっこみ、自切した分も含めて残りを蟹刺しと焼き蟹に。
 さて、鍋に鎮座する巨大カニに茸や野菜、豆腐を添えていくアイと理緒、アシュリン。
「……実はわたし、甲殻類苦手なんだよね」
 理緒がぽつりとこぼした言葉にアシュリンがぴくりと反応する。
「そうなの? うーん、甲殻類はアレルギーとかも出やすいし無理に食べられないよね。まあこのカニが食べられるなら他の魔物も食べられるってこと、つまりこの群竜大陸を平らげることができるってことだよ!」
 次はドラゴンステーキだ、と慰めだかなんだかわからないようなセリフを吐けば、ゾーイが懐かしいですね、と苦笑した。
「かつては勇者様たちも多くの魔物を料理して食べていたものですよ」
 ゾーイの黄金で補給に困ることは無かったが、人里で買えてかつ長期の旅路に耐える食材といえば塩漬けや干物のようなものばかり。新鮮な食料を求めていろいろな魔物に挑戦した日々をゾーイは思い出す。
「鉄鋼蟹は食べたことはありませんが、ヴァルギリオスとの決戦前には竜の眷属を捌いて食べましたね……私は蛇のようでどうにも苦手だったので、塩漬けのお魚を食べたのですが」
「へぇ……あ、ゾーイさん、出汁だして?」
 伝説の時代の勇者たちが食した群竜飯に一同が想いを馳せる中で、理緒は至極ナチュラルに聖女に出汁を要求する。
「だ、ダシ? とは何でしょう……?」
「えっ、黄金の聖女なんだよね? 黄金出汁……ないの!?」
 ありませんよ、なんですかそれはと困惑するゾーイとなんでなんで、あると思って準備してないよと慌てる理緒。
 食文化の違い――というより聖女の能力への拡大解釈に由来する悲しき行き違いが此処にあった。アウトドア飯で食材を持ち寄る時、調味料や皿、箸などの地味めなアイテムは皆持ってきていないものと想定して自分が多めに準備するのが当日バタつかないコツである。
「まぁまぁ理緒さん、カニを茹でれば出汁もでますよ。さ、鍋を火にかけましょう!」
 アイが仲裁に入って理緒を連れていけば、アシュリンと三人で鍋に火を付ける。
 三人娘が鍋の火加減を調節するのに集中しているので、焼き蟹用の火をどうしたものか――持ち込んだ火種では些か身が巨大過ぎる――と思案するいちごは、飯盒を幾つも纏めて飯を炊きながら打ち捨てられた黄金の外殻を弄るフィーナに気がついた。
「あ、すみません。よかったらあっちの炭に火をもらえませんか?」
「ん? いいわよ! 任せなさい! 焼き蟹のあの香ばしい殻の香りに弾力プルプルで噛めば噛むほど甘みの染み出す味のためならお安い御用だわ!」
 次第に竪穴に立ち込める美味しそうな匂い。蟹刺し、焼き蟹、カニ鍋――蟹味噌の甲羅焼きもある。
 聖女の知らぬ和風カニ料理。それは猟兵たちの空腹を癒やし――そして聖女自身は食べられぬとも、供えられた新たな群竜大陸飯に過去を想うことで活力を与えてゆく。
「聖女さま、あたしたち誓うよ――こんな風に群竜大陸を平らげるって!」
 アシュリンの誓いには苦笑して、けれど聖女は祈るだろう。
 猟兵たちの齎す明日が、永遠に続く黄金の時代に繋がりますように、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月08日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト