帝竜戦役⑤~トリオレの祈り
●友愛
溢れる力をこの身で受けたことは覚えている。
世界が染まり、その後の記憶は途切れている。
けれど、私が今。この世に生として存在しないことは分かっている。
それは良い。その覚悟を持って、私は旅立ったのだ。
けれど――あの子は大丈夫かしら? きちんと、愛する人と再会出来たのかしら?
この旅が終わったら、愛する人と結婚をする。
そんなことを、同じ年頃の私に嬉しそうに語ってくれた大好きな親友。
私は、彼女の為にこの身を捧げても良いと思った。だって、私には待っていてくれる人なんて、誰もいなかったから。
だから私の分まで。あなたには幸せでいて欲しかったのだ。人生で初めて、共に笑い合えた彼女には。
――私達にだって。普通の女の子として幸せになる権利は、あるはずだから。
●流れる星に願いを
「皆さんに向かって頂きたいのは、かつて勇者達が生前のヴァルギリオスと相打ちして、全滅した場です」
大きな苺色の瞳に強い真剣さを宿し、ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は言葉を紡ぐ。群竜大陸は広大だが、そのひとつであるこの場にはかつて戦いが起きた証として大きく穿たれた竪穴がある。そこには今尚、全滅した勇者達の強い残留思念が漂っているのだという。
今回は、その戦場を漂う残留思念の勇者の力を借り、共に戦うと云うお話。
「現れる敵はドラゴンです。かつては、人々の願いを叶える吉兆の存在と言われていたみたいですけど……」
冒険者達に討伐された結果、流れ星のドラゴンは厄災の予兆として存在している。強い願いを不幸へと繋げる彼は、人々の想いにより凶悪さも変化する。
そんな敵を倒すには――残留思念である、勇者に協力を頼むのが最適解。
「勇者……フィリスさんと云う方は、闇の力を得意としてるらしくって」
彼女と共に戦えば、敵の目くらましをしてくれるだろう。敵の視界を、奪うように。そうなれば、猟兵達の勝利は容易いこと。
だから、まずは彼女と心を通わせて欲しいとラナは告げた。
勇者――フィリスと云うエルフの少女は、先程言ったように闇の力を持っていた。
しかしそのことで人々に疎まれていた過去を持っている。
そんな彼女が勇者として旅立ったのには、訳がある。勇者として旅をしていた少女と出会い、仲良くなったから。初めて自分を見て、受け入れてくれた彼女と共に旅をしようと、思ったから。だから彼女は、この場まで辿り着いた。
自身が強い力を持っていたからこそ、出来たことなのは確か。それは、まるで運命のように。――だからフィリスにとっては、勇者として旅をしていた時間が一番幸せだった。
自身の世界を変えてくれた親友が、彼女にとっては一番。
その親友がよく話していたのが、彼女の故郷のこと。自然豊かな村に残してきた、大好きな人のこと。この戦いを終えて帰ったら、その時には――そんなことを、毎日のように聞いていたらしい。
だから、いざ2人に命の危機が訪れたこの場で。フィリスは親友を、逃がそうとした。
自身が盾となり。人々に疎まれた原因である闇の力を、守る力へと変え戦った。
「自分よりも、大切な人を守りたかったみたいです……」
しっかりと守れたかは、不明。
この場に訪れた勇者は数千人もの人数になるが、この場で亡くなったと云う情報は確かだろう。戦いの後帰った者もいたかもしれないが、その割合は少ない筈。
――けれど、どの程度の勇者が生きて帰還出来たかは。ここで漂い続ける彼女の思念は知らない。その為、その辺りは多少デリケートな話になるかもしれない。
分かることは。ただただ、親友は帰れたのだろうかと。心配の気持ちが積み重なり、彼女は苦しそうにしていると云うこと。
「だから、安心させてあげられれば。きっとお力を貸してくれると思います」
瞳を伏せ語ると、ラナはきゅっと唇を結ぶ。
その安心させる方法は、各々に任せるかたちになる。フィリスは確かに過去は悲しかったかもしれない。けれど、親友との時間が輝かしいものだったから。あまりその辺りは気にしていないようだ。
彼女にとっては、勇者として旅をした時間こそが自分の人生だから。
真実を語る。優しい嘘を重ねる。敢えて語らず、彼女に共感する。少しきつい物言いをする。――彼女と語る内容に、正解は無い。全ては、語る猟兵の強い想い次第。
「手段もお話の内容も、皆さんにお任せします」
どうか、無事に帰って来て下さいねと。ラナは祈るように添え、猟兵達を送り出す。
勇者として旅立った者達の中には、大切な人を残してきた者も沢山いた筈。
しっかりと別れを告げ旅立った者。何も言わずに旅立った者。再会の約束をした者。一生の別れを告げた者。勇者の人数が多い為、その結末は様々だけれど。
この場に漂う想いは、大切な人を残した本人では無い。
そんな人を支えた少女の、物語。
公塚杏
こんにちは、公塚杏(きみづか・あんず)です。
『アックス&ウィザーズ』での戦争シナリオをお届け致します。
●勇者『フィリス』
亜麻色の髪に真紅の瞳のエルフの少女。年頃は18歳くらい。
闇の魔法を操ることを得意としています。
残留思念としての彼女は、勇者として共に旅した親友の無事を気にしています。
故郷に愛する人を残してきた親友の為に、自身が犠牲となり彼女を逃がそうとしました。
その親友の生死は不明。
OPも参照しつつ、彼女と親友のことを考えて頂ければ。
●プレイングボーナス
・勇者の残留思念と心を通わせ、そのパワーを借りる。
以上を意識したプレイングを頂いた場合のみ、反映致します。
フィリスに対してだけでなく、彼女の言う親友への想いも含みます。
方法については皆様のお心のままに。
●シナリオフレームについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「帝竜戦役」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●その他
・心情と交流重視での描写予定。戦闘はあっさりで大丈夫です。
・同伴者がいる場合、プレイング内に【お相手の名前とID】を。グループの場合は【グループ名】をそれぞれお書きください。記載無い場合ご一緒出来ない可能性があります。また、3人以上での団体様は優先順位が下がりますご了承下さい。
・少人数での運営となる可能性がございます。
・受付と締め切り連絡は、マスターページにて行います。お手数ですがご確認下さい。採用は先着順ではありませんが、状況によって短時間での募集になる可能性がございます。
以上。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
第1章 ボス戦
『アストラム』
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POW : ヴォーテクス・サテライト
【オブリビオンの願いを叶えたい】という願いを【自身を利用するオブリビオン】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。
SPD : 星辰集中
【睡眠】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
WIZ : ダスク・ティアーズ
【流れ星の群れ】を降らせる事で、戦場全体が【夢か悪夢】と同じ環境に変化する。[夢か悪夢]に適応した者の行動成功率が上昇する。
👑11
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千波・せら
それだけ大切な人だったんだね
私は、私はね
守れなかったんだ
強くなかった、力も無かった
大切な人たちが海に沈んで行く様を見る事しか出来なかった
君もきっと凄く凄く、大変な想いをしたはず
親友がどうしているか
死んでもそうやって心配をするくらいだから
本当に大切だったんだろうなって思うよ。
信じていれば、なんて簡単には口に出来ないけど
君がずっと心配をしていたら
きっとその親友も心配になっちゃうよ
信じてあげて。
きっと、大丈夫。
君が思ったように故郷で結婚式をあげて
それから子供も生まれているよ
子供の名前は何かな
君の名前をつけているかも
それから、大きくなった子供を連れて
この地を訪れてほしいな
そしたら久し振りを言いたいね
●
注ぐ光が、千波・せら(Clione・f20106)の水晶の髪を照らして輝かせる。
自身の煌めきには気付かぬまま。せらは目の前の少女の、瞳から伝う煌めきに目を奪われるように瞳を瞬いた。
そのまま彼女は、静かに笑むと――溜息を零した後、言葉を紡ぐ。
「それだけ大切な人だったんだね。私は、私はね」
――守れなかったんだ。
彼女の想いと重ねて、自身のことを。
せらは、強くなかった。力も無かった。
だからかつて、大切な人たちが海に沈んで行く様を見る事しか出来なかった。
その時のことを想うと、締め付けられるように胸が軋む。だから、今苦しむ彼女の気持ちが分かる気がするのかもしれない。
きっと凄く凄く、大変な想いをしたはずだと。親友がどうしているのか、死んでしまっても、残留思念となり心配をするくらいだから。言葉で大切だと言われるよりもずっとずっと、大切だったのだと感じることが出来る。
だからこそ、言葉を紡ぎたい。
信じていれば、なんて簡単には口に出来ないけれど。
「君がずっと心配をしていたら、きっとその親友も心配になっちゃうよ。信じてあげて」
きっと、大丈夫。
――だって、フィリスは勇者。力があるのだ。此処まで来れた、力が。
煌めく眼差しで、優しい笑顔で。
せらが紡げば、彼女の瞳や髪も美しく煌めく。
その煌めきにか、せら自身の言葉とその想いにか。フィリスは眩しそうに瞳を細めた。
真紅のその眼差しを受け止めて、せらは笑うとその唇からは未来が語られる。大好きな彼女は、その後はフィリスが思ったように故郷で結婚式を挙げて、それから子供も生まれているだろう。
子供の名前は何かな。
君の名前をつけているかも。
それから、大きくなった子供を連れて。この地を訪れて欲しい。
「そしたら久し振りを言いたいね」
夢描くように瞳を閉じ、楽しげに語るせら。その言葉は真っ直ぐで、まるで真実のようにも感じる。いや、信じたいと願う程に煌めく世界。
そんな楽しい楽しい、もしもの世界を耳にして――。
『そうだと、いいなあ』
夢見るようにとろける笑みを零し、勇者は紡いだ。
大成功
🔵🔵🔵
皐月・灯
ユア(f00261)と
ここには、数千って数の勇者がいたんだってな。
そしてその大部分が、帰還できなかったって聞いた。
……アンタの友達が無事に帰れたかどうかは、誰にもわかんねーよ。
けどな。
それでも信じろよ。信じてやれよ、幸せになったって。
敵を倒そうとしたヤツらの中で、アンタは誰かを生かすために命を懸けた。
生きて帰った連中は、皆アンタみてーなヤツに守られたんだ。
そうだな、ユア。
時々アンタを思い出して、少しだけ泣いて。
そして、また顔を上げたのさ。だって、アンタに世界を見せた女なんだろ?
ユアに続いて懐に入り、迎撃を【見切】って【カウンター】を叩き込む。
おう、任せろ。
――醒めねー眠りの中に、送ってやる。
ユア・アラマート
灯(f00069)と
勇敢だったんだな。だからこその勇者か
さて、少し話をしようか、レディ
疎まれた力を、守るための力に変えて戦ったことを素直にすごいと思うよ
だから、そんなお前に全力で愛された親友も、きっと幸せだったんだろうな
結末がどうであれ、お前も彼女にとって唯一無二の大切な存在だったんだ
その想いを、そのための力を無下にするほど世界は残酷じゃない
大丈夫、きっとお前の親友は笑っていたよ。なあ灯
さて、まだ話足りないが。その前にこの悲しい子には眠ってもらおうか
風の術式を起動。身に纏うことで速度力を強化
竜が目覚めて次の行動を起こすよりも速く、間合いに飛び込んで一撃を喰らわせる
ああ、灯。仕上げの方は任せたよ
●
「勇敢だったんだな。だからこその勇者か」
目の前の少女の物語を胸に――ユア・アラマート(ブルームケージ・f00261)は瞳を細めながらぽつりと零した。そのまま彼女は真っ直ぐと少女を見つめ、唇を開く。
「さて、少し話をしようか、レディ」
さらりと、風が彼女の銀の髪を揺らした。
煌めく色にどこか眩しそうに瞳を細めながら、こくりとフィリスは頷く。その様子を見て、ユアは口元に笑みを浮かべると――言葉を紡ぎだす。
疎まれてた力を、守る為の力に変えて戦ったこと。それは素直にすごいと思う。
「だから、そんなお前に全力で愛された親友も、きっと幸せだったんだろうな」
幸せ――その言葉に少女はどこか曖昧な表情をする。そんな彼女の様子を見て、ユアの隣から皐月・灯(喪失のヴァナルガンド・f00069)が口を開いた。
「ここには、数千って数の勇者がいたんだってな」
そして大部分が、帰還できなかったと聞いた。
そう、灯は真実を口にした。――伝承に伝え聞いてきた、勇者のことを。
「……アンタの友達が無事に帰れたかどうかは、誰にもわかんねーよ」
フードから覗くのは、橙と薄青の瞳。
フィリスの様子を確かめるようにじっと見つめれば、少女は固まったように瞳を見開き身動き一つしない。風に亜麻色の髪が揺れ、視界を邪魔していても。まるで、発せられた言葉の理解が出来ないでいるかのように。
けれど、分からないのは確かな話。
彼女の求めている最適な応えなど、誰も紡ぐことは出来ないのだ。
だって、行方は不明なのだから。
けれど、だからこそ――。
「それでも信じろよ。信じてやれよ、幸せになったって」
想いを伝えるために、灯は一歩踏み出し強く強くそう語る。
「敵を倒そうとしたヤツらの中で、アンタは誰かを生かすために命を懸けた。生きて帰った連中は、皆アンタみてーなヤツに守られたんだ」
それは、勇者の人数の中では極々僅かな割合だけれど。彼女の、フィリスのような勇気ある者のおかげで、彼等は守られたのは確かだから。
彼の言葉を聞き、心を閉ざしがちな彼の語る姿を見て。ユアは笑みを落とし、改めて少女へと向き直る。
「結末がどうであれ、お前も彼女にとって唯一無二の大切な存在だったんだ」
その想いを、そのための力を無下にするほど世界は残酷では無い。そう、信じている。
「大丈夫、きっとお前の親友は笑っていたよ。なあ灯」
だから、安心させるようにユアは紡ぐ。大丈夫だと。幸せだったと。
そんな彼女に問い掛けられれば、灯はそうだなと頷きを返す。フィリスの姿も、彼女が大切に想った親友の勇者の姿も。本来の姿は見えてこない。けれど、こうして過去の記憶を知ったうえで、フィリスと対話すればわかることもある。
「時々アンタを思い出して、少しだけ泣いて。そして、また顔を上げたのさ。だって、アンタに世界を見せた女なんだろ?」
――それほどに、2人の間には絆があったということを。
確かに感じたから。その言葉を口に出来た。――彼の言葉に応えるように、フィリスも俯かせていた顔を上げ、真っ直ぐにユアと灯の姿を見る。
視線が交差する。けれど――そんな彼等を邪魔するように、現れる影が。巨体に瞬く星々を宿した彼は、ひとつ声を上げると猟兵達を睨むように見る。
「さて、まだ話足りないが。その前にこの悲しい子には眠ってもらおうか」
言葉と共にユアは風に術式を起動すると、身に纏い自身の強化をする。すると駆け出した彼女の速度が上がり、懐に入り込むとダガーを巨体へと突き立てた。
「ああ、灯。仕上げの方は任せたよ」
「おう、任せろ。――醒めねー眠りの中に、送ってやる」
敵への更なる傷を、灯に託して声を掛ければ――膨らませた魔力を、超高温のプラズマにして放つ灯の姿が。
眩い光が戦場を包む中。
2人の姿を見てかつての戦いを思い出すように、フィリスは瞳を細めていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンティ・シェア
勇者殿に、まずは感謝を
命がけで戦ってくれたあんた達のお陰で、今の世界がある
ありがとう。それ以上言えねーのが心苦しいくらい
案じる人が居るってのは、多分、幸せなこと
その人のために出せる力ってのもあるし…あんたは、そうやって守ったんだ
疎まれる力なんてあるかよ
誰かのために使えるものは、全部尊いんだ
あんたが案じてる誰かの行方を、俺は知らない
ただ、その未来を守り切るには、目の前の敵を倒さなきゃならんことは、知ってるつもり
酷かもしんねーけど、もう一回力を貸して欲しい
…案外、あんたのこと待ってるんじゃねーの、その親友も
こんな所で心配してねーで、行ってやりゃいいと、俺は思うけど
そのためにも、全力で殴り飛ばすかね
●
目の前に居るのは、かつて世界を救った勇者の残留思念。
その姿を見て、エンティ・シェア(欠片・f00526)はひとつ吐息を零すと。
「命がけで戦ってくれたあんた達のお陰で、今の世界がある。ありがとう」
開口一番、彼は想いを言葉にした。
――これ以上言えないのが、心苦しいくらい。
そう想う気持ちは言葉にはしない。けれど彼は、そのこころを表すかのように深く深く息を吐く。眉を寄せ、はらりと零れ落ちる鮮やかな前髪の奥の瞳を細める彼の姿を見て、目の前の少女――勇者フィリスは、顔を上げてじっとエンティの言葉を待つ。
彼女は、かつて人々に疎まれたという。
勇者としての人生が彼女に光をもたらしたという。
そんな彼女の抱えているものは、詳細は歴史という物語を知らないエンティには分からないことが多い。分かるのは、目の前の彼女の真紅の瞳が涙に滲んでいると云うこと。
案じる人が居るってのは、多分、幸せなこと。そう、エンティは想う。誰も信じられなかった彼女が、その人の為に出せる力を用いて。確かに守ったのだ。
だから――。
「疎まれる力なんてあるかよ。誰かのために使えるものは、全部尊いんだ」
どこか不愛想に。けれど強い眼差しでしっかりとフィリスを見て、彼は紡ぐ。
その言葉にほろりと瞳から雫を零した少女は、息を吐きながら苦しそうに唇を開いた。
『……私は、この力がずっといらなかった。けれど、彼女と旅をして。彼女の為に力を使って、初めて自分を認められたの』
その力は、尊かったのでしょうか?
自分を認めても。他人から認められることなんて無かった。苦しげに告げる彼女の言葉に返そうとした時。エンティと勇者の間に星瞬く竜が降り立つ。翼を広げ、威嚇するようにエンティを見る敵を見返し――彼は、その視線を勇者へと移した。
「酷かもしんねーけど、もう一回力を貸して欲しい」
その力を、また誰かの為に使って欲しいと彼は紡ぐ。
彼女が案じる誰かの行方は、知らない。ただその未来を守り切るには、目の前の敵を倒さなければいけないと知っているから。
だから――。
「……案外、あんたのこと待ってるんじゃねーの、その親友も。こんな所で心配してねーで、行ってやりゃいいと、俺は思うけど」
不愛想な彼の口に浮かぶ笑み。その笑みと言葉に勇者は瞳を見開く中――エンティは迷うこと無く、敵の懐へと入る為に駆け出した。
大成功
🔵🔵🔵
バンリ・ガリャンテ
ようフィリスさん。俺はバンリ。
あなたとお話がしたくてここにいるよ。
とても大切な、あなたの全てだと言える方の話を。
優しい方だったんだな。優しく隔てなく、勇気あるひと。
あなたの中の勇気を見つけてくれたひと。
俺ね。あなたの心を拭ってやる事はできねぇんだ。
彼女のそれからを俺は知らないから。
でもね。聞いて。また蹂躙されちまう。あなた方が守ろうとした世界が。あなたが守ろうとした彼女の、明日になるかもしれん未来がね。また。
彼女と歩んだ道々を未来に繋げよう。
其処にかの人は在る筈だから。
一緒に、俺達と。おねがい。
過去に呪われた願いなど誰が聞く?
俺の明日をかけて滅ぼそう。
かえがたい人の、明日の為に
●
「ようフィリスさん。俺はバンリ。あなたとお話がしたくてここにいるよ」
同じ年頃の少女へと、バンリ・ガリャンテ(Remember Me・f10655)は語り掛ける。煌めくようなピンクの瞳でしっかりと、少女の涙が滲む真紅の瞳を見つめて。
――語りたいのは、とても大切な。彼女の全てだと言える方の話。
優しい声を掛けてくれたのだろう。力を恐れずに、真っ直ぐに見てくれたのだろう。想うだけで、目の前の少女と共に此処まで歩んできたという勇者の姿がぼんやりと浮かぶ。
「優しい方だったんだな。優しく隔てなく、勇気あるひと」
――あなたの中の勇気を見つけてくれたひと。
煌めく瞳を細めて、どこか耽るように笑みを零すバンリ。彼女の言葉にこくりと頷くと、素直な想いをフィリスは口にする。
『そう、彼女はいつだって真っ直ぐで勇気のある子だった。だから私は……』
守りたかった。
零れる言葉は悲痛を込めた言葉で。その声色と彼女の苦しげな表情を見て、バンリは眉を寄せた。苦しむ彼女に寄り添うことは、出来ない。だって、バンリは。
「俺ね。あなたの心を拭ってやる事はできねぇんだ。彼女のそれからを俺は知らないから」
嘘を包まぬ、真っ直ぐな想い。
それは、バンリが真っ直ぐに彼女と向き合っている証拠でもある。
だから――フィリスは顔を上げ、改めてバンリの姿を見返した。それは迷い苦しむ先程までとは少し違う色を宿していて。バンリの真っ直ぐな心に、彼女が興味を持ったのだ。
だからバンリは、言葉を続ける。今の、この世界の状況を。また、蹂躙されることを。フィリスの、勇者たちの、守ろうとした世界が。――守ろうとした彼女の、明日になるかもしれない未来が。
彼女と歩んだ道々を未来に繋げよう。
其処にかの人は在る筈だから。
「一緒に、俺達と。おねがい」
手を差し出しバンリが紡げば――フィリスが動く前に、立ちはだかるように現れる星を纏う竜。キラキラと輝く姿はどこか神秘的だけれど。
「過去に呪われた願いなど誰が聞く?」
惑わされずバンリは、先程までとは違う強い眼差しを浮かべ竜を見る。そのまま彼女は、敵と対峙する為に自身の記憶を辿る。
俺の明日をかけて滅ぼそう。
かえがたい人の、明日の為に。
――古の存在に、願うことなど無い。
大成功
🔵🔵🔵
シリウス・ノーム
フィリスさん、と言うのか
あなたは凄いな
自分が盾となり、親友を逃そうなど中々出来る事ではない
……申し訳ない
正直に言うと、俺はあなたの親友の安否を知らない
けれど、そこまで想われた人が
不幸なはずはない、と俺は思う
うまく話せなくてすまない
けれど、あなたの想いは尊い
今、まさにあなたと親友に似た苦境に立たされている者が多いんだ
悲しむ人を増やしたくない、と思う
力を貸してもらえないだろうか
もし力を貸してくれるなら
心からの感謝を捧げ
全力を尽くそう
レプリカクラフトで仕掛け罠を作り、アストラムを嵌める
俺が囮となって罠まで誘導しよう
罠に嵌ってくれたら傷口を抉る攻撃を
ーー荒っぽいやり口ですまない
どうか安らかに眠ってくれ
●
瞳を滲ませ、苦しげに空を見る少女。
そんな彼女を見て――。
「あなたは凄いな。自分が盾となり、親友を逃そうなど中々出来る事ではない」
零れるように、シリウス・ノーム(星雲地脈・f27085)の口から言葉が紡がれた。
その言葉に少女は顔を上げると、不思議そうにシリウスを見る。その真紅の眼差しを受け止めて、彼は申し訳ないと首を振った。
彼女の悩みを解きたい。けれど――。
「正直に言うと、俺はあなたの親友の安否を知らない」
その悩みを解く術を、シリウスは持たない。けれど、心から想うのだ。そこまで思われた人が、不幸なはずは無いと。
うまく話せないと、自分で思う。遠慮がちな性格故に、紡ぐ言葉はどこまでも選んでしまう。けれど――零れる言葉は心からのもの。目の前の少女の抱える闇を払うように、シリウスは懸命に思考を巡らせ、言葉を紡ぐ。
「今、まさにあなたと親友に似た苦境に立たされている者が多いんだ。悲しむ人を増やしたくない、と思う」
自身達も、彼等勇者と同じようにこの地で大きな戦いを行っているということを。自分よりも他人を大切に想う彼女ならば、きっとこの想いに応えてくれると信じて。
だから、シリウスは願うように言葉を繋げる。――力を貸してもらえないだろうか。
頭を垂れれば、さらりと流れる淡い茶色の髪。
その姿を見てフィリスは、驚いたように瞳を見開いた。
『……危機が、また訪れているんですね』
この地で命を落とした彼女は、親友の未来を知らなければ世界の未来も知らない。
けれど、この地にシリウス達猟兵が訪れたことは。世界が閉ざされた訳では無い何よりの証拠だ。だから彼女はその未来を受け止めるように、きゅっと唇を結ぶ。
そんな彼女の様子を見遣りシリウスが口元をやわらげた時――天に羽ばたく竜の姿が見え、シリウスは真剣な眼差しを浮かべる。そのまま彼は辺りに少し造りの荒い罠を仕掛けていく。あの巨体だ。降り立てば罠が発動するだろう。その隙に傷を抉れば、十分ダメージを与えられるはず。
敵が降り立つのを観察するように見るシリウス。
荒っぽいやり口だとは思う。けれど、彼はこの先に行かなければいかないから。
だから迷うこと無く、敵を討つ。
――思念となってもまだ勇気を忘れない、少女への感謝を浮かべながら。
大成功
🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
⚫︎アドリブ歓迎
千夜子(f17474)と一緒
【SPD】
【心情】
……友達かぁ……ぼくにとって千夜子がその一人、この物語を聞いてるとすごく暖かい感じがするね。
【フィリスに寄り添う】
友達がいたんだね、自分の命に代えても守りたい人が。
ぼくの生まれた世界では、人はいつか転生して、生まれ変われるんだ。
だから、ぼくは君をここから解放したいんだ、すごく時間はかかるかもしれない、でもね、奇跡ってきっとあるんだ。
君の面影を憶う人のところへたどり着けるはず、その一歩はフィリス次第だと思うんだ。
【戦闘】
睡眠には眠りを妨げる秘密兵器!コッコちゃんに任せよう!
(鶏🐓のような超機械仕掛けの鳥が起こしに飛んでく)
薄荷・千夜子
鈴鹿さん(f23254)と
フィリスさんにとって、とても大事な友人だったのでしょうね
鈴鹿さんは大事な友人…私も何かあればきっと彼女を護るために全力を尽くすでしょう
鈴鹿さんを見て、そしてフィリスに寄り添い
だからこそ、その想いは強いもの
きっとその想いは届いて貴女の大事なお友達は無事だったと思います
そしていつかフィリスさんがもう一度お友達と会えますように
【祈り】を込めて『神楽鈴蘭』を鳴らします
鈴蘭の花言葉は再び幸せが訪れる…貴女の素敵なお友達は大丈夫、そしてお友達は貴女の幸せもきっと願っていますよ
大事な友達と、相棒の白銀の狼と並び立ち
星、コッコちゃんに続いてください!と攻撃指示
●
自身より、たった1人の友を大切だと想い、守った少女のお話。
友達。それは国栖ヶ谷・鈴鹿(未来派芸術家&天才パテシエイル・f23254)にとっては、共にこの地を歩む薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)が、その1人だと。傍らの少女を見て思えば。彼女もどこか耽るように、緑色の瞳で遠くを見ていた。
「この物語を聞いてるとすごく暖かい感じがするね」
そんな千夜子を現実へと戻すように、鈴鹿から紡がれる言葉。その言葉にはっとすると、千夜子は静かに頷きを返す。――千夜子だって、鈴鹿を大事な友人だと思っている。何かあれば、きっと彼女を護る為に全力を尽くす。
だから、なんとなく勇者の気持ちも分かる気がするのだ。
大切な人を、守るということが。
悲しげに瞳を滲ませ、空を見上げる少女。フィリスの元へと近付くと、大きな紫色の瞳で少女を見つめながら鈴鹿が口を開く。
「友達がいたんだね、自分の命に代えても守りたい人が」
零れた言葉に、フィリスが反応する。
続く言葉を待つように鈴鹿をじっと見つめる真紅の瞳を見返して――鈴鹿は、言葉を続ける。彼女の生まれた世界では、人はいつか転生して、生まれ変わると。
「だから、ぼくは君をここから解放したいんだ、すごく時間はかかるかもしれない、でもね、奇跡ってきっとあるんだ」
桜咲く世界での生命の廻りが、此処にもあるならば――そんなことを夢見るように、鈴鹿は語る。此の世界で生命がどう廻るのかは、正確な情報は無い。もしかしたら、あの世界のように。巡り、再び生まれ変わることが出来るのかもしれない。そう、期待をして。
君の面影を憶う人のところへたどり着けるはずだと。その一歩を踏み出すのは、フィリス次第だと。鈴鹿は、強い意志を瞳に宿し語る。
そんな彼女の言葉を聞き、そっと彼女に寄り添うと。千夜子も静かに頷き、鈴鹿の言葉に乗せるように、言葉を紡ぐ。
「だからこそ、その想いは強いもの。きっとその想いは届いて貴女の大事なお友達は無事だったと思います」
千夜子が浮かべる眼差しもまた、真っ直ぐとしていて。
確信は無い言葉だけれど、けれど煌めく光のような温かさを持っている。
その想いを届けるかのように――しゃん、っと涼やかな音色が戦場に響いた。
涼しい、大きくは無い音。けれどしっかりと耳に届く、心に響く音色にはっとして。フィリスはその音の出所――千夜子の手元を見た。
千夜子の手に握られているのは、鈴蘭。いや、それは本物の鈴蘭では無く、鈴蘭を模した神楽鈴。花弁の中には本物の鈴があり、千夜子の動きに合わせ音を奏でるのだ。
しゃん、っと再び音が響く。遠い遠い、世界に届けるように。
いつか、フィリスがもう一度友達と会えるようにと――祈りを込めて。
「鈴蘭の花言葉は再び幸せが訪れる……貴女の素敵なお友達は大丈夫、そしてお友達は貴女の幸せもきっと願っていますよ」
笑みを浮かべ千夜子がそう紡げば――鈴鹿も頷き、少女を元気付ける。
真実は語れない。
けれど、彼女の為に祈ることは出来るから。2人は、願うのだ。勇者の幸せを。
すると響く音色に引き寄せられたのか、星を纏う竜がすぐ傍へとやって来た。慌てて千夜子は音色を止めると、鈴鹿と共に臨戦態勢へ。
どこか寝ぼけ眼でぱちぱちと瞳を瞬く竜へ向け――。
「睡眠には眠りを妨げる秘密兵器! コッコちゃんに任せよう!」
声高らかに鈴鹿が紡げば、機械仕掛けの鳥が飛んでいく。その様子を眺めた後、千夜子は傍らの白銀の狼へと視線を下ろすと。
「星、コッコちゃんに続いてください!」
指示を口にすれば、彼はひとつ鳴き声を上げ敵へと真っ直ぐに駆ける。
――願いを届ける為には。
――まずは世界の平穏を、取り戻さなければいけないから。
心優しい2人の戦う姿を見て、勇気づけられたかのようにフィリスは。手にしていた杖をきゅっと握り締めた。
大成功
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白峰・歌音
フィリス姉の親友さんがどうなったかは分からない。でも、親友の人は笑っているフィリス姉である事を望んでるはずなんだ!
生きてるならきっと、故郷を見せたかったとか、幸せを祝ってほしかったとかあったと思う。それに……フィリス姉とずっと一緒に生きたかったとかもな。
それが叶わなかったのなら…親友さんは、フィリス姉が笑って見守ってくれるように生きようとしていたはずだぜ!
だから、フィリス姉、顔を上げていこうぜ!親友さんが一番望んでるのも、フィリス姉が幸せになる事だったはずなんだからな!!
【ダッシュ】で接近、強力なUCの蹴りの一撃を打ち込む!
アドリブ・共闘OK
●
悲しげに瞳を伏せる自分より年上の少女。
その姿を見れば白峰・歌音(彷徨う渡り鳥のカノン・f23843)の心はざわつくよう。悲しげな顔は、見たくない。それはきっと、自分だけでなく――。
「親友の人は笑っているフィリス姉である事を望んでるはずなんだ!」
彼女の言う親友がどうなったのかは、分からない。これだという証拠はどこにもない。
だからもしも、を語るしか出来ない。それでも伝え聞いたかつての彼女達のことを想えば、これだろうという未来は視えてくるようで。
もしも、生きているなら。故郷を見せたかったとか、幸せを祝って欲しかったとかあったと歌音は想う。
「それに……フィリス姉とずっと一緒に生きたかったとかもな」
歌音の言葉に、フィリスははっとするように瞳を開いた。
自分が、生きる未来は見えていなかったのだ。彼女の為に、自分の身を捧げて。それで彼女が幸せでいてくれればいいと思ったから。
自分だって彼女と幸せを歩みたかった。
『でも、あの時はこうするしか無かった。他に道なんて無かった……』
そう、その夢は叶わなかったのだ。フィリスが今、此処にいることがその証明。
それならば――。
「親友さんは、フィリス姉が笑って見守ってくれるように生きようとしていたはずだぜ!」
幸せを、笑って――。
その言葉を聞けば、フィリスは滲んだ瞳を瞬いた。
笑う。それは倖せの象徴なようなもの。彼女が教えてくれたもの。
「だから、フィリス姉、顔を上げていこうぜ! 親友さんが一番望んでるのも、フィリス姉が幸せになる事だったはずなんだからな!!」
強く強く歌音の唇から語られる言葉。
『今』の自分にも出来ることがあるのかと――勇者はどこか遠くを見るように、空を見上げて深い深い息を吐いた。
大成功
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ランツェレト・ドゥトロワ
(アドリブ、マスタリング共に歓迎)
_
…貴方は、大事な友を護った…いや、今も護り続けているのですね。
友が歩んだこの歴史を、友が愛した人たちを、
そして、友の心を。
レディ。──フィリス。
私も貴方を護りたい。
──今ばかりは、貴方の剣となることをお許しください。
_
▼戦闘
残留思念と言えど、フィリスに攻撃を向けさせたくない
彼女を背に庇う
ダスク・ティアーズにて夢、もしくは悪夢を見せられ
私の前に立つのがアストラムではなく、『私の親友である男』の姿をしていたとしても
私は──
──俺は、剣を抜く
「吠え立てろ──絶劍《アロンダイト》」
かつてその『男』を殺した剣で
俺はまた、その『男』を──殺すのだ
_
(──《太陽、失墜》)
●
悲しみに濡れた真紅の瞳。
風に揺れる亜麻色の髪の少女を見て、ランツェレト・ドゥトロワ(湖の・f22358)は深い深い息を吐く。
「……貴方は、大事な友を護った……いや、今も護り続けているのですね。」
零れる言葉。
眩く見える小さな少女を見て、彼は鋭い瞳を細めた。
友が歩んだこの歴史を。友が愛した人たちを。そして、友の心を。
守る小さな少女の存在に、ランツェレトの心が締め付けられるよう。俯くことなんて赦されない。眩い彼女の心が、彼の心を照らすようで。
「レディ。──フィリス。私も貴方を護りたい」
悲しむ彼女の繊細な心に優しく触れるランツェレト。彼はその場で膝を突くと、頭を下げ言葉を続ける。──今ばかりは、貴方の剣となることをお許しください。
その言葉の真意は、虐げられ他人と交流をしてこなかったフィリスには分かりにくかったのか。けれどランツェレトの行動には慌てたように瞳を瞬き、迫り来る星を纏うドラゴンに気付き、鋭く睨むランツェレトを静かに見つめた。
どうすれば良いのか、悩む少女を背に庇い。ランツェレトは敵を捉える。
――彼女がいくら残留思念と云えど、攻撃を向けさせたくないと云うのは彼が騎士だからか。それとも、かつての呪いのせいか。
敵は降りゆく際に、天から流れ星の群れを降らせてきた。星を纏う彼の夢見るその攻撃を受け――ランツェレトの眼には、彼の前に立ちはだかる姿が。
「私は――」
その姿は、星纏う竜では無かった。
一瞬のためらい。けれど彼は首を振ると、そのまま剣を抜いて真っ直ぐに構える。
そのまま彼は、剣を振るう。高らかな言葉と共に。
大成功
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ユディト・イェシュア
フィリスさんの気持ちがよくわかる気がします…
俺の異能も他の人にとっては未知のもので気味悪がられましたから
だからその力を受け入れてくれた友人が大切な気持ちはよくわかります
そして心配な気持ちも…
今すぐにはわかりませんが
情報を教えてくだされば彼女がどうなったか調べることもできます
もし会えたのならあなたの気持ちや言葉もお伝えします
俺の命は義父と義姉に救われたようなものです
あなたが自分の身を顧みず大切な人を守りたかった気持ちもわかります
俺もきっと同じことをするから
あなたの闇の力は疎まれる力じゃない
救いの力なんです
この力もきっと誰かのために与えられたのだと…
そう願うんです
フィリスさんと協力して敵を討ちます
●
フィリスの気持ちがよく分かる気がする――そんな風に、ユディト・イェシュア(暁天の月・f05453)は柔らかな眼差しを細め心に想う。
彼の人が纏うオーラが色彩を伴って視えると云う異能も、他の人にとっては未知のもので気味悪がられた。
「だからその力を受け入れてくれた友人が大切な気持ちはよくわかります」
そして、心配な気持ちも――。
優しげな眼差しで、自身と似た境遇を語るユディトの言葉に。フィリスは興味を抱いたように顔を上げ、じっと彼を見る。その真紅の眼差しを受け止めて、静かに笑むとユディトは更に言葉を紡ぐのだ。
今すぐには分からないが。親友の情報を教えて貰えれば、彼女がどうなったか調べることも出来ると。
「もし会えたのならあなたの気持ちや言葉もお伝えします」
それは、確かな未来への道筋。
そっと優しく照らされた光に、フィリスは驚いたように瞳を瞬く。
友の未来は、分からない。分からないこそ苦しんでいる。
けれど、いざその道筋が照らされると。悩んでしまうのは何故だろう? 苦しい胸を抑えるように、胸元で手を握る彼女の姿を見て、ユディトは安心させるように言葉を紡ぐ。
ユディトの命は、義父と義姉に救われたようなものだと。
だから、フィリスが自分の身を顧みず。大切な人を守りたかった気持ちが分かるのだ。
――だって、ユディトもきっと同じことをするから。
静かな瞳に温かさを宿しながら、彼は語る。人間不信だった彼が、今のように穏やかに過ごせるのは彼等がいたから。きっとフィリスも、同じような想いなのだと思っている。
「あなたの闇の力は疎まれる力じゃない。救いの力なんです」
伏せていた瞳を上げ、真っ直ぐに少女を見つめ彼は零す。
数多の人々に疎まれ。邪険にされた力。
けれどおかげで、掛け替えのない友を得られた力。
その最後が、幸せは不幸かは、彼女は知らない。
けれど――救いの力だと認められれば、心に満ちる温かさを感じる。
『……私の力は汚らわしいって、ずっと言われていたんです』
闇に恐怖を覚える者もいるのだろう。それ故に、彼女はずっと虐げられていたのだ。けれど認められれば。親友以外の者からの言葉は、どれほど彼女の背を押してくれるか。
「この力もきっと誰かのために与えられたのだと……そう願うんです」
瞳から雫を零す彼女を優しく見つめながら。ユディトは小さな声で零す。
特別な力は、きっと神が与えてくれた贈り物だから――。
大成功
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呉羽・伊織
俺はきっと、気の利いた事は言えない
殆ど独り言になるが、少しだけ、いいかな
吉兆が、凶兆に
疎まれた闇い力と、輝かしく残る思い出
――何れも妙に心が騒ぐ話
元は守護の祈りの下に作られながら
多事多難の果てに呪詛纏い忌まれたこの身
其を明るく照らしてくれる友人達と出会い歩んできた日々
――俺もそんな経緯で
嗚呼
守りたかったよな
幸せでいてほしいと願わずにはいられないよな
心の底から
ずっとずっと
…君が望む答えは持たずで、悪い
でも
綺麗事でも、俺は
君と、君の友人の、想いと絆
何よりも心身を強めてくれる其が在ったなら、果たせたと信じてる
その輝く記憶が残る地を翳らせる闇を止める為
我が友人達も笑顔で在れる未来を切り開く為
――どうか
●
悲しむ少女を見つめ、呉羽・伊織(翳・f03578)はどこか悲しげに瞳を伏せた。
「俺はきっと、気の利いた事は言えない。殆ど独り言になるが、少しだけ、いいかな」
ひとつ、前置きをして。勇者である少女へと語り掛ければ。彼女は伊織とよく似た色の瞳でじっと彼を見つめて、小さく頷きを返す。
その肯定の仕草を見て。伊織は一つ息を零すと――紡ぎだす。吉兆が、凶兆に。疎まれた闇い力と、輝かしく残る思い出を。
――何れも妙に心が騒ぐ話だ。
元は守護の祈りの下に作られながら。多事多難の果てに呪詛纏い忌まれたこの身。それを明るく照らしてくれる、友人達と出会い、歩んできた日々を。
――俺もそんな経緯で。
「嗚呼、守りたかったよな。幸せでいてほしいと願わずにはいられないよな」
心の底から、ずっとずっと。
瞳を伏せ、ぽつりぽつりと伊織の口から零れるその言葉は――弱点とも成り得る話の一部。けれどそれは、どこか少女と似ているようで。少しの闇に触れ、小さな少女は微かに震えながら。けれど真実を吐露する彼へと、信頼の眼差しを送っている。
だから伊織は、その眼差しに応えるように彼女を見つめる。
「……君が望む答えは持たずで、悪い」
そっと浮かべる笑みは、いつものへらりとした笑みとは違う微笑み。眉を寄せ、申し訳なさそうに彼はそう紡ぐけれど――でも、と言葉を続けた。
「綺麗事でも、俺は。君と、君の友人の、想いと絆。何よりも心身を強めてくれる其が在ったなら、果たせたと信じてる」
その結末が分からないからこそ。輝かしい未来を夢見ることも許される筈。
真実が分からない中、辛い未来を語られるよりもよっぽど彼女の心には響くはずだから。そしてその未来は、伊織にとっても望むこと。
だから、その輝く記憶が残る地を翳らせる闇を止める為。
我が友人達も笑顔で在れる未来を切り開く為。
「――どうか」
深く深く、礼をして。伊織はかつて世界を救った少女へと願う。
彼のその行動と強い意志を込めた言葉に。友の笑顔の為と語るその姿に。確かに少女は、心打たれたように。きゅっと唇を結んだ。
まだ瞳に涙は滲んでいるけれど。また、誰かの為に。力を使うことが出来るのだから。
大成功
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紅呉・月都
自分よりも、大切な人を…ふぅん
アイツと一緒だな
俺の元持ち主も自分の大切なもんを護ろうとしてた
自分がズタボロになろうが
ぶっ倒れようが
んなもん関係ねえ
アイツは二度と大切なもん失いたくねえって足掻いた
あ?俺?
俺は元々アイツの為に作られて
それからずっとアイツといたんだ
考え方は変わんねえよ
大事なもん護る為に作られたナイフがジッとしてられると思うか?
んで?お前は親友を信じてんだろ?
お前の親友はそこらで倒れる程弱かったか?
すぐもうダメだっつって諦めるやつだったか?
違うんだったら
信じてやれよ
そいつがちゃんと故郷に帰ったってこと
さて、と
アイツがそうしたように
俺も俺の大切なもんを護る
ヤツらなんぞに壊されてたまるか
●
「自分よりも、大切な人を……ふぅん」
――アイツと一緒だな。
目の前で悲しそうに空を見上げる少女を見て、紅呉・月都(銀藍の紅牙・f02995)は思い出を手繰るようにそんなことを想った。
アイツ――それは月都の元の持ち主。
守護を担う者に使われていたナイフのヤドリガミである彼を持っていた主は、自分の大切なものを護ろうとしていた。
自分がズタボロになろうが。倒れようが。
そんなものは関係ない。二度と大切なものは失いたくないと、足掻いていた。
零される言葉にフィリスはじっと月都を見つめる。あなたは、どうなのかと。言葉にせずとも何かを問いかけるようなその眼差しに、月都は鋭い眼差しを向けると。
「あ? 俺?」
荒々しい口調で、そう紡ぐ。
その眼差しと言葉にフィリスは、少し恐れるように身体をびくりと反応させた。けれど、月都は怒ったわけでは無い。その証拠に、彼は彼女の問いに答えるように言葉を紡ぎだす。自身は、元々は元の持ち主の為に作られて。それからずっと一緒に居た。
だから、考え方は変わらない。
「大事なもん護る為に作られたナイフがジッとしてられると思うか?」
だって自分は、その意志を宿して作られた存在なのだから。
荒々しい言葉と眼差しの奥に光る、強い強い彼の意志。
その意志の煌めきを見つけて、フィリスは眩しそうに瞳を細めた。
そんな彼女の様子に気付いているのか、いないのか。月都は変わらず鋭い眼差しを向けると、ひとつ問い掛ける。
「んで? お前は親友を信じてんだろ?」
彼女が迷う、彼の存在のことを。
信じてると言われれば、どこか曖昧な頷きが返る。だから、彼は更に言葉を続ける。
お前の親友はそこらで倒れる程弱かったか?
すぐもうダメだっつって諦めるやつだったか?
「違うんだったら。信じてやれよ。そいつがちゃんと故郷に帰ったってこと」
信じる――その言葉は眩しいほどに輝く言葉。
『あの子は……きっと……』
その眩さに、確かめるように言葉を紡ぐフィリス。その言葉を紡ぐ姿は、先程までの涙に濡れていた彼女とは違う。そう、月都には見えたから。
「さて、と。アイツがそうしたように、俺も俺の大切なもんを護る」
銀色に輝く瞳で前を見て、星を抱く竜を見上げる。
――ヤツらなんぞに壊されてたまるか。
燃えるような、意志を宿しながら。
大成功
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雛瑠璃・優歌
嘘は苦手な方
「あたしはこの世界の人間じゃない。前の戦いも歴史としてしか知らないくらい」
だから貴女の大切なお友達の安否は分からないの、ごめんね
「でもこの群竜大陸の下の大地に多くの命が生きてるのは知ってる。街や村で今も人々が命を繋げてる」
貴女達のお陰
そうでなくちゃ全部滅びてた筈だよ
だから
「信じてもいいんじゃないかな、大切な人の無事を」
勇者達が全滅したなんて聞いてない
大好きだった人はきっと強かったんでしょ
弱くて強い、それが命だもんね
「信じてあげてよ、その子の事。その子を好きになった自分の事。そして出来たら、」
UC発動
「私達の事も信じて貰えると嬉しいな」
スタァは星
夢も現も駆け抜けて煌めきの刃を振るおう
●
「あたしはこの世界の人間じゃない。前の戦いも歴史としてしか知らないくらい」
だから貴女の大切なお友達の安否は分からない。
嘘は苦手だと――紡ぐ通りに、雛瑠璃・優歌(スタァの原石・f24149)は真っ直ぐに素直な言葉を紡ぐ。ごめんねと、謝罪の言葉を添えられれば。同じ年頃の勇者はいえ、と首を振った。
その姿はどこまでも寂しそうで、かつて世界を救う旅をしていたとは思えない程弱々しく見える。だから、という訳では無いが。優歌はでも、と言葉を続けた。
この広い世界では、多くの命が生きているのは優歌も知っている。街や村で今も人々が命を繋げていることを。
「貴女達のお陰。そうでなくちゃ全部滅びてた筈だよ」
過去に世界が滅びていれば、今の姿も無い筈だ。
人々が幸せに、穏やかに、溢れる程の自然に囲まれて過ごすことは。
優歌の見た、今の世界が何よりの証明だ。かつての勇者の頑張りと、その未来の。
「信じてもいいんじゃないかな、大切な人の無事を」
溢れる程の希望が、潰えていないと云うことを――。
だって優歌は、勇者たちが全滅したなんて聞いていない。目の前の彼女の語る大好きな人は、きっと強かっただろうから。弱くて強い、それが命だから。
「信じてあげてよ、その子の事。その子を好きになった自分の事」
真っ直ぐに真紅の瞳を見つめる、大きな蒼い瞳。
美しい瞳に吸い寄せられるように見つめるフィリスに向け、優歌は笑みを浮かべると――そして出来たら、と云う呟きの後力を発動させると纏う衣装を変える。
愛らしい装いから、凛々しい装いと佇まいへと。
その姿に驚いたようにフィリスは瞳を瞬く。そんな彼女を見て、笑みを浮かべると。
「私達の事も信じて貰えると嬉しいな」
その言葉の後、優歌は立ち上がり敵を見据える。
星を瞬く竜に対抗する自身も、スタァだ。だからこそ、彼には負けない。悪夢を見せる星には。――夢も現も駆け抜けて煌めきの刃を振るおう。
蒼玉を陽光に煌めかせ、優歌は細剣を優雅な所作で振るい悪星へと対抗した。
大成功
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クリス・ホワイト
宵くん(f02925)と
知っているかな、この世界には多くの勇者の伝説が残っているんだ
君の願いや祈り、その輝かしい時間がこうして今も確かに在るように
けれど...すまないね、僕たちは君たちの結末をまだ知り得ない
故に、確たる真実を告げる事はできないんだ
君の想いにも誠実に応えたいから、嘘は吐けないよ
ただ言えることは
宵くんの言う様に、強い想いがあればこそ君たちはここまで来たのだろうからね
心配以上に──どうか、君の大切な親友の幸せを信じてあげてほしい
肩を並べて戦ってきたんだ
親友の強さを一番知っているのは、他でもない君だろう?
僕もこの杖を花と変え、戦おうとも
微力ながら力になるよ。背中は任せておくれ、宵くん。
逢坂・宵
クリス君(f01880)と
かれらひとりひとりにも想いがあり、叶えたかったことがあり、そして物語があります
フィリスさん、あなたのご親友の行方は僕たちにもおそらくわかりません
けれど……あなたはそれゆえに、勇者として世界に記録されました
自らを犠牲にすることは、そうそうできることではありません
強い想いがなければ成せないことです
あなたのどうしても叶えたかったことは、とても素晴らしいものです
きっと、ご親友にも……あなたのその想いは、伝わっていることでしょうから
はい、頼りにさせていただきますね、クリス君
正面はお任せください
敵に対しては「全力魔法」「属性攻撃」による
【天航アストロゲーション】で攻撃します
●
悲しげに瞳を伏せる少女。
その姿を見れば、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)はシルクハットの角度を調整し、黄金と青の瞳で真っ直ぐに少女を見つめ口を開く。
「知っているかな、この世界には多くの勇者の伝説が残っているんだ」
小さな身体で紡がれる言葉は、凛として紳士らしい落ち着いた声色で。そんな彼から紡がれる言葉は、悲しみに満ちた少女の心にするりと落ちていく。
君の願いや祈り、その輝かしい時間がこうして今も確かに在るように。続く言葉を紡ぎながら、揺れる瞳をしっかりと見返すクリス。そんな彼の傍らへと一歩踏み出した逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は、静かに笑むと。
「かれらひとりひとりにも想いがあり、叶えたかったことがあり、そして物語があります」
そんな数多の勇者の数だけ、伝説が残っているとフィリスへと告げた。
勇者の存在はしっかりと人々に刻まれ。愛おしい伝承となり語り継がれていると。
そんな愛ある報告は迷いはしない。けれど、彼等は他に伝えなければならないことが。ある。暫しの間の後、すまないと口を開いたのはクリスだった。
「僕たちは君たちの結末をまだ知り得ない。故に、確たる真実を告げる事はできないんだ」
彼女が守った、親友の行方を――。
クリスから紡がれる言葉は、その真剣な眼差しからも真実だと分かる。真剣に想う少女に、誠実に応えたいと思うから。嘘は吐けないと彼は語る。
そしてそれは、宵も同じ想いだった。彼女に嘘は、吐けないから。
「フィリスさん、あなたのご親友の行方は僕たちにもおそらくわかりません」
真っ直ぐに少女を見て、宵の口から語られる言葉。
分からない。それは未来は謎に包まれたままで。未来が閉ざされてしまった、闇に包まれてしまったような感覚がフィリスを襲う。残留思念になる程の想いが、揺さぶる。
そんな彼女の不安を振り払うように、けれど――と、宵は口を開いた。
「あなたはそれゆえに、勇者として世界に記録されました」
自らを犠牲にすることは、そうそう出来ることでは無い。強い想いがなければ成せないことだ。大好きな人の、幸せを願う。そのどうしても願いたかったフィリスの願いは、とても素晴らしいものだと心から想う。
「きっと、ご親友にも……あなたのその想いは、伝わっていることでしょうから」
和らげた眼差しと口元。
紡がれる温かな声。
そんな宵の言葉と姿に、フィリスは唇を震わせた。
「宵くんの言う様に、強い想いがあればこそ君たちはここまで来たのだろうからね」
真実が闇に包まれた乙女の姿は、クリスには随分と小さく見えた。不安で不安で、仕方が無いのだろうか。揺らぐ心に注がれる温かな言葉に、今はまだ不安定のようだから――繋げる言葉を、クリスは紡ぐ。
「心配以上に──どうか、君の大切な親友の幸せを信じてあげてほしい」
危険である此処まで、肩を並べて戦ってきたのだ。親友の強さを一番知っているのは、他でもない君だろう? ウィンク交じりにそう告げるクリスの言葉は真っ直ぐで、先程彼が言った通り嘘は無いことが分かる。
分からない、と素直に言ってくれることが優しさなのもフィリスには分かっている。
そのうえで、大丈夫だと声を掛けてくれる温かさも。
それは、フィリスが今まで他人から与えられてこなかったもの。――親友以外には。
人の温かさを感じれば、少女はその口元を僅かに綻ばせる。慣れぬ温もりに浮かべる笑みはどこかぎこちないけれど、それは悲しみに暮れていた姿よりもずっと魅力的で。クリスと宵は瞳を交わし、どこか嬉しそうに笑む。
すると――星纏う竜が、彼等の元へと降り立った。
瞬く翼を広げる姿はまるで威嚇しているかのよう。ひとつ声を上げ足を踏み出す彼に負けぬように、クリスは手にしていたステッキで地を叩き音を鳴らす。
「微力ながら力になるよ。背中は任せておくれ、宵くん」
「はい、頼りにさせていただきますね、クリス君」
信頼の眼差しで語る彼等。すると戦場には杖から零れ咲くバイカウツギの花びらと、空から降り注ぐ隕石で満たされる。
背を任せ、信頼して戦う姿。
――それはまるで。
――かつて戦っていた自分と親友の姿のようだと、少女は想った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
チルル・チルレ
フィリスさま、はじめましてなの
まずはスカートを摘んで丁寧にお辞儀をするのよ
チルも悪魔の力を借りるから
フィリスさまにはなんだか親近感を覚えるなの
チルはね、お友達がいないなの
だから、うまく伝えられないかもしれないなのよ
でも、嘘はつきたくないなの
フィリスさまの親友さんが助かったかどうか
それはチルたちにはわからないなの
とてもひどい戦いだったと聞くなのよ
最悪な結果になったかもしれないなの…
でも、フィリスさまの思いは
親友さまの心を守ったと思っているなの!
心を守るのは、とても大変なことだと思うなのよ
親友さまはきっときっと幸せだったと思うなの
フィリスさま、どうか胸を張って、なのよ
アドリブ歓迎なのね
●
「フィリスさま、はじめましてなの」
煌めく銀の髪を揺らし、優雅にスカートの裾を摘まんで丁寧なお辞儀をしたチルル・チルレ(銀の夢を見る・f27305)は、目の前の自分よりお姉さんな思念体の彼女を見る。
チルルは、悪魔の力を用いる。だから闇の力を持つ彼女には、なんだか親近感を覚える。だからこそ、その力を持つ彼女に添いたいと想うのだ。
チルルには、友達がいない。
だから上手く伝えられないかもしれないと、不安はある。
けれど、嘘は付きたくない。嘘で彼女を喜ばせても意味が無いと、チルルは想う。
きゅっと胸元で小さな手を握り、唇を結ぶ。どんな言葉を紡げば良いのか、迷うように生まれる間にフィリスは不思議そうに首を傾げた。
けれど、彼女はチルルから視線は逸らさない。彼女が、自分に挨拶をしたから。続く言葉を待つように、深紅の瞳でじっと小さな少女を見遣る。
その眼差しにどこか温かさを感じて――ひとつ深呼吸をすると、チルルは唇を開く。
「フィリスさまの親友さんが助かったかどうか、それはチルたちにはわからないなの」
嘘の無い、本当のことを。
伝え聞かれるほどにひどい戦いだったと云う。最悪な結果になったかもしれない。そんな、どこにも嘘など無い言葉が小さな少女から紡がれる。
幸せを紡げる証拠など何も無いのが事実。だって、この地では幾千人の命が失われたことは事実だから。その言葉を聞けば、フィリスは悲しそうに顔を伏せるけれど――。
「でも、フィリスさまの思いは、親友さまの心を守ったと思っているなの!」
強い眼差しで、心の力を表すようにきゅっと両手を握りチルルは言葉を紡ぐ。
生死は不明。けれど――心を守れたことは、確かだと。そう強く強く、想うのだ。
未だ爪痕が残るような大きな戦い。命を守ることは勿論大変だろうけれど、心を守るのもとても大変なことだと、チルルは想う。けれど親友さまは、きっときっと幸せだったと。チルルは信じているから。
「フィリスさま、どうか胸を張って、なのよ」
綻ぶ笑顔はどこまでも純粋で、真っ直ぐで。
その笑顔を見たフィリスは、眩しそうに瞳を瞬いた。
『私も、私にも、誰かを守れたのかなあ……』
くしゃりと笑顔を零し、瞳から雫を伝わせ、勇者は零す。
その姿はどこまでも真っ直ぐな。勇者としてでは無い、ただの女の子の姿。
そんな彼女の姿を見れば、チルルは彼女へと近付いて――小さな手で、フィリスの手を取り、大きく頷いた。
大成功
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星野・祐一
勇者と会ったらまずは挨拶と自己紹介済ませて
「何か悩み事でもあるのか?初対面で言うのもなんだけど悩みがあったら聞くぜ?」
って感じで切り出して
話出してくれたら相槌打ちつつ顔を見てしっかり聞こう
…親友が無事に帰れたか、ね
そりゃ勿論帰れたんじゃないか?
いやだって君が自分の全てを使って守ろうとしたんだろ?
ならきっと帰れたさ…全滅したって話は聞いてないしな!
あと多分だけど天国?辺りで親友待ってるんじゃねえか?
だから辛気臭い顔やめて笑顔で会いに行けよ
親友の話してる時の顔綺麗だったし親友もその方が喜ぶぜ
…所で頼みたい事があるんだけどいい?
勇者の力で視界を奪い流星で攻撃
闇夜に輝く流れ星を見せてやる!
アドリブ歓迎
●
目の前に佇む、悲しげな濡れた瞳を持つ少女を見て。星野・祐一(スペースノイドのブラスターガンナー・f17856)は挨拶の後、自身の名を名乗りこう問い掛ける。
「何か悩み事でもあるのか? 初対面で言うのもなんだけど悩みがあったら聞くぜ?」
そんな屈託無い笑顔で。
その言葉と笑顔に、少女は安心したのか。残留思念と云えどずっと1人でこの地にいて、誰かに話を聞いて欲しかったのか。それは定かでは無いけれど、ぽつりぽつりと言葉を零す。友人が、無事かどうかが心配で仕方が無いと。
他人との交流が不慣れな彼女が零す言葉は、どこかつたない。けれど祐一はしっかりと相槌を打ち、彼女の顔を見て真剣に話を聞いた。そして、話を終えた時――。
「……親友が無事に帰れたか、ね。そりゃ勿論帰れたんじゃないか?」
祐一は、迷うこと無くそう紡いだ。
その言葉に、隣のフィリスは驚いたように瞳を見開く。あまりの迷いの無い言葉に、あっけにとられた様子で。
そんな彼女の様子に気付いた祐一は、むしろ不思議そうに言葉を紡ぐ。
「いやだって君が自分の全てを使って守ろうとしたんだろ? ならきっと帰れたさ……全滅したって話は聞いてないしな!」
それは、心からの言葉。
祐一の眼差しを見れば分かる。裏表無く、本気で彼はそう思っているのだと。
彼女達勇者が生きた時代よりも、ずっと未来を生きる猟兵達。そんな彼等の元に、すべての勇者はこの地で滅びたとは伝え聞いていない。勇者の伝説の中には、僅かだが生き残った者も居ると伝え聞いている程。
だから、その親友が亡くなったという証拠は無いのだ。むしろ、必死に守ろうとしてくれた存在が居たから、きっと無事だと。そう心から信じるように、祐一は笑う。
「あと多分だけど天国? 辺りで親友待ってるんじゃねえか?」
生きて帰ったとしても、天寿を全うしていることだろう。それならば、天国で親友が来るのはいつかと待っているのに違いないと。どこまでも明るく述べる彼の言葉はどこか信じることが出来る力を持っている。
辛気臭い顔やめて、笑顔で会いに行けよ。
「親友の話してる時の顔綺麗だったし親友もその方が喜ぶぜ」
溢れる自信で述べられた言葉に、フィリスは瞳を伏せると――。
『……幸せなお話、聞けるかな』
笑みを零し、ぽつりと零した。
不安では、ある。けれど、そんな幸せを信じたい気持ちも強い。
迷う心は未だあるようだけれど。前を見る少女の姿に祐一は笑みを浮かべると――頼みがあると、先程までとは違う真面目な顔で言葉を紡ぐ。
その言葉を聞けばフィリスは真剣な話だと察し、背筋を正した。
彼が此処に居るのは、すべては敵を倒す為。だから協力をして欲しいと頼んだ時。不意に星を纏う敵が現れ、慌てて祐一は熱線銃を構える。
彼女は、まだ頷いてはいない。
けれどきっと――力を貸してくれると。
強い確信を、祐一は抱いていた。
大成功
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アンリエット・トレーズ
おや
髪色がお揃いですね
アンリエットと同じくらい素敵な髪ですよ
幸せになってほしかった人が、いたのですね
愛していたのですね
友愛と呼ぶのでしょう
アンリエットは知っていますよ
わたしにもたった一人、いましたもの
残念ながらわたしは守られた側だったのですけれど
わたしは、恋をしていましたけれど
あの人を守りたかった
その気持ちはきっと同じです
あなたと、そしてあなたの親友と同じように
さあ、終わりの鐘を鳴らしに往かなければ
フィリス、アンリエットに力を貸してください
いつでも、いつまでも
あの人がわたしに世界を守ってほしいと願っていることを、願っているのです
もう、確かめられないから
だからどうか一緒に
《十二時の鐘》を鳴らして
●
ふわりと、風に揺れる波打つ亜麻色の髪が見えた。
「おや、髪色がお揃いですね。アンリエットと同じくらい素敵な髪ですよ」
その色を伏せがちな空と海を揺蕩う瞳で見つめた後、ぽつりとアンリエット・トレーズ(ガラスの靴・f11616)は言葉を零した。
彼女の言葉に、瞳を向けた少女の色はアンリエットとは対照的な真紅。煌めくようなその眼差しを見返して、彼女は瞳を細め想いを言葉に乗せる。
しあわせになってほしかった人がいたのだと。愛していたのだと。
「友愛と呼ぶのでしょう。アンリエットは知っていますよ」
友愛――その言葉を聞いてフィリスは瞳を開くと、そのままこくりと頷いた。
そう、愛していたのだ。彼女を。たった1人、自分を初めて認めてくれた彼女のことを。友人として、愛していたのだ。
その想いを心に溢れさせ、瞳から雫を零す少女。その様子を見て、アンリエットはひとつ息を吐いた後――。
「わたしにもたった一人、いましたもの」
自分の心を、素直に言葉にした。
それはフィリスの心を引く言葉だったのだろう。彼女は顔を上げると、そっとアンリエットの続きの言葉を待つ。だから彼女は、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。
残念ながら自分は、守られた側だったけれど。アンリエットは、恋をしていたけれど。
「あの人を守りたかった。その気持ちはきっと同じです」
――あなたと、そしてあなたの親友と同じように。
同じ想いを抱く、同じ年頃の少女。
そんな彼女が真っ直ぐに自身を見て、言葉を掛けてくれる。
それはどれほどフィリスの心を打っただろうか。同じ想いを抱く彼女は今、前を向いて此処に立っている。
「さあ、終わりの鐘を鳴らしに往かなければ。フィリス、アンリエットに力を貸してください」
カツリと蹄の音を鳴らし、一歩近づくとアンリエットは少女へと手を差し伸べる。
いつでも、いつまでも。
「あの人がわたしに世界を守ってほしいと願っていることを、願っているのです」
――もう、確かめられないから。
勇者の守ったこの世界を。大好きな人が生きるこの世界を。目の前の、少女の願う未来を。真っ直ぐに感じたフィリスは、悲しみに滲んだ瞳に色を宿す。
だって彼女は、かつて勇者として旅した存在。
一緒にとの言葉に、そっと頷きを返すと。しっかりと彼女は杖を握る。
迫り来る星纏う竜の巨体。その動きを跳ねのけるように、アンリエットの竜の舌じみた触手を束ねた一撃と共に――世界を、守る力を込めた闇が覆った。
大成功
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