帝竜戦役②~ドラゴン化したドラゴン
●皆殺しの平野
こなは群竜大陸の入り口。
オブリビオンをドラゴン化する、風の吹く荒野。
既に多くの猟兵がこの地での戦いを経験しているだろうが、この地に現れるオブリビオンはドラゴン化し、ドラゴンの翼・うろこ・角を生やして、猟兵がこの地に踏み込むと空から襲いかかってくるのだ。
●グリモアベースにて
「なぁなぁ、みんな知っとったか?」
集まった猟兵たちを前に、最近グリモア猟兵になったばかりの関西弁人形メラン・ネメシス(ダークネス・トレーダー・f27087)が問いかける。
「なんでもな、ドラゴン化したオブリビオンの身体の中から、竜胆石ってゆーきれいな宝石が手に入るんやと」
1匹につき1個取れて、金貨40枚……日本円にして40万円の価値があるのだと、メランは力説している。
「ええなぁ、うちも出掛けてって、ぎょうさん拾ってきたいわぁ……」
瞳をキラキラと輝かせて語っていたメランだが、突然ガックリと肩を落とした。
「せやけど、うちは予知してしもうた身やし、ここからアンタらを送り出すことしかできんのや……酷い罠やねぇ……」
しばらくメランはガックリとして、グリモアベースに脆弱が訪れた……。
少し経って、ようやく現実を受け入れたのか、メランは本来の依頼の内容を語り始める。
「ま、てなわけで、群竜大陸に帝竜が出現したから、攻め行ってぶったおしたれ、って話やね。
んで、まずみんなに行ってもらうんは、その入り口に当たるここ、皆殺しの平野というわけや」
吹き荒ぶ風により、あらゆる敵がドラゴンと化すこの平原。
メランの予知によると、今回現れる敵は、翼のない走るドラゴン『ランナーズイーター』だという。
「翼のないドラゴンに、翼が生えて……って、それ普通のドラゴンやないかーい!
……って、ツッコミたくなる気持ちもわかるけどな?」
翼を生やしたランナーズイーターは、動く対象を空から急襲してくるらしい。まずはその対処が必要になるだろう。
「んでな、もともと硬い鱗持っとるくせに、さらに鱗が増し増しになって、ますます固くなっとるんよ」
急所といえば、鱗の隙間を狙うしかないが……。
「なんで、対処法はこれしかないで。
ケツパイルや!ケツにパイルバンカーでもかましたれ!」
は?と猟兵たちの目が点になる。
要するに、元々ある生物としての穴、目や口、あるいはお尻というところまでは鱗には覆われていないので、狙うならそこだと言いたいらしい。
本当に尻に鉄の棒を突っ込む必要はない。一応。
「まあ、ケツパイルはともかく、上手いこと急所狙って、なんとかしてや?
ちなみに元のランナーズイーターの肉は脂身が少なくさっぱりとした味わいらしいで?」
食べるかどうかはともかく、まずは空から来るランナーズイーターの対処をしなくては先には進めない。
というわけで、メランは猟兵たちを転送させるのだった。
雅瑠璃
このシナリオは戦争シナリオです。
集団戦1章のみになります。
というわけで、こんにちは。またはこんばんは。
雅です。
アックス&ウィザードでの戦争となりましたね。
まずはここ皆殺しの平野から先に進んでいきましょう。
現れる敵についてはオープニング参照で。
今回のプレイングボーナスは、以下の通りとなります。
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プレイングボーナス……空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する。
====================
ちなみに急所は、メランのいう通り、目や口、あるいは鼻とか……お尻の穴も、生物的な穴の部分になります。
さて、戦争シナリオですので、基本的には完結優先で書けるだけの方針です。
特に今は他に抱えているシナリオもありますので、全採用は約束できません。ご了承下さい。
それではプレイングお待ちしてます。
第1章 集団戦
『ランナーズイーター』
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POW : スニークイーター
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【牙】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。
SPD : ハングリーランナー
全身を【硬質な鱗】で覆い、自身の【食欲】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : ハンティングタイム
【別集団のランナーズイーター】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
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●皆殺しの平野
平野に降り立った猟兵たちを出迎えるのは、空から急襲するドラゴンの群れ。
1体1体の大きさは3メートルから5メートルくらいと小型のドラゴンだが、とにかく数だけは多い。
空からの攻撃に対処し、鱗の隙間を狙い、この群れを撃滅せよ!
ソラスティベル・グラスラン
恐竜に翼が生えたなら、それはもうドラゴンですね!
しかしドラゴンの要素が2倍で、ただでさえ硬い鱗も更にですか…
ふむっ、こういう時も【勇気】で勝利を引き寄せるのが『勇者』です!
こちらも翼を広げ【空中戦】、一方的な優位は与えません!
【盾受け・オーラ防御】で守りを固めて受け身の作戦
敵の動きを【見切り】、全体での敵の動きを把握します
噛み付き攻撃には盾を噛ませ、カウンターに【怪力】で抑え込み
その隙だらけな大口に、至近距離から【怪力・鎧砕き】の大斧を突っ込みます!
お、お尻はかわいそうですからね!勇者としても相応しくないのですっ
フレミア・レイブラッド
変な事言うから、何だか妙に戦い難く感じるわね…。…わたしはお尻に叩き込んだりしないわよ?流石に愛槍を叩き込む気は無いわ…。
自身の周囲の空間に【サイコキネシス】と【念動力】の念の網による不可視の結界を展開。
敵がスニークイーター等で結界範囲に入った瞬間に全て拘束し、一体ずつ炎の魔力を付与した魔槍【属性攻撃、怪力、早業、串刺し】で急所を串刺しにしたり、口から炎の魔力【属性攻撃、高速詠唱、全力魔法】を叩き込む等して内側から焼き尽くして仕留める等していくわ。
脂身の少ない肉というと、鳥のささみとかそんな感じかしら?
竜胆石を確保するのと併せて、折角だからお肉も確保してみようかしらね♪
白雪・まゆ
いよいよ戦争ですね!
今回はご褒美付きみたいですし、将来のいろんな資金のためによりがんばりますのですよ!
【Vernichtung durch Granaten】で飛びながら【Feldwebel des Stahles】のロケットで移動。
あいての背後をとって【Cannonball Crush】に【衝撃波】を乗せて、お尻を狙って振り抜きます!
あ、いちおう大事なハンマーなので、お尻は叩く感じで、入らないように気をつけます。気をつけます。気をつけます(3回)
ランナーズイーターのお肉は、持って帰っておねーちゃんにお料理してもらって、いっしょに食べるのですよ!
……最初くらいはたべてもいいですよね?
●たとえ弱点とわかっていても
「いよいよ戦争ですね!」
群竜大陸に降り立った猟兵達。
その先頭で、巨大なハンマーをブンブンと振り回しながら、白雪・まゆ(月のように太陽のように・f25357)は気合を入れていた。
もっとも、これからの戦いのための気合化というと、必ずしもそうではなく……。
「今回はご褒美付きみたいですし、将来のいろんな資金のためによりがんばりますのですよ!」
瞳をキラキラさせて、ご褒美……ドラゴン化した生物の中にあるという宝石ゲットを狙うまゆは、まるでバラ色の未来を夢見る恋する乙女のよう。……もっとも、その絵がいた将来の図が、敬愛するおーねちゃんに飼ってもらう事だなんていうのは、その純真無垢で無邪気な見た目からは想像できないだろうが。
もちろん、同行した2人も、そんな倒錯した想いは知らないし気付いてもいないので、まゆに引いたりすることなく傍で上空のドラゴンを見つめている。
「あれですか。確かに恐竜に翼が生えたなら、それはもうドラゴンですね!」
上空に舞うのは、本来は翼を持たない地を駆ける竜……恐竜じみたランナーズイーターである。この地の特製でドラゴン化し、見事な翼を持って宙を舞っている。
「ドラゴンの要素が2倍で、ただでさえ硬い鱗も更にですか……でもっ、こういう時も勇気で勝利を引き寄せるのが『勇者』です!」
上空を見上げながら、まゆとは別種の気合を入れている勇者、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)である。
「まぁ、その固い鱗も、覆われていない場所はあるのだし、そこを狙えばと、グリモア猟兵は言っていたわね」
多少ベクトルは違えど、戦いに際して気合を入れている2人とは打って変わって、どことなくいや~な顔をしているのは、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)だ。それは強敵に対して臆しているわけでは、もちろんない。
「弱点か……グリモア猟兵のあの子が変な事言うから、何だか妙に戦い難く感じるわね……」
グリモア猟兵の言葉を思い出すと、なんとなく遠い目になってしまうのを避けられないフレミアである。今のフレミアは、グリモア猟兵の言い放った言葉……『ケツパイル』が脳内リフレイン状態であった。
「あー……」
「ああ……」
まゆとソラスティベルもその言葉を思い出したのか遠い目になり、そして、一斉にフレミアの方を振り向いた。
より正確に言えば、フレミアの手に持つ朱い槍を。
「えっ? い、いやよ。わたしはお尻に叩き込んだりしないわよ? 流石に愛槍を突っ込む気は無いわよ?!」
パイルバンカー。杭打機。この場で一番それに近い形状の武器を持っているのは間違いなくフレミアである。なのでどうしてもフレミアがドラゴンのお尻にそれを突き刺すシーンを想像してしまうのだが……さすがにそれはフレミアも断固拒否の構えである。
「で、ですよね! お、お尻はかわいそうですからね! 勇者としても相応しくないのですっ」
ソラスティベルも慌てて首を振ってその想像を頭から追い出しながら、真っ赤になってそう言う。
そしてまゆも。
「わ、わたしも、いちおう大事なハンマーなので、お尻は叩く感じで、入らないように気をつけます」
ハンマーを両手で構えてそう心に誓う。
「……いや、さすがにそのハンマーは入らないでしょ。どれだけ穴を拡張すればいいのよ……」
「気をつけます」
フレミアのもっともなツッコミも耳に入っていない様子で、まゆはただ同じ言葉を繰り返す。大事なことだから2度……。
「気をつけます」
……大事なことだから3度繰り返すのですね。わかります。
などと漫才じみた会話をしている3人に気が付いたか、上空からランナーズイーターが急降下して襲撃してきた。
「っと、いつまでもしゃべってる場合じゃないわね! わたしが押さえつけるから、2人は迎撃して!」
慌ててフレミアは【サイコキネシス】の念動力で、自身を中心に見えない結界を展開する。そしてそれを受けて、まゆとソラスティベルの2人は上空へと飛び出していった。
「そ、それじゃ、行きます、ですっ!」
「空中戦ならこちらも! 一方的な優位は与えません!」
まゆは自らのサブフライトシステム『Vernichtung durch Granaten』の乗って、竜の背後を狙うべく回り込むようにして大空を駆けていく。もちろんその手には愛用のハンマー『Feldwebel des Stahles』を構えたままだ。
逆にソラスティベルは、ドラゴニアンとしての翼を広げ、盾を構えてオーラで自らの身を守りながら、あえて正面から竜に突っ込んでいった。
正面から突っ込んでいったソラスティベルだが、もちろん無策ではない。
「さすがに正面からだといっぱいきますね。相手にとって不足なしです!」
正面から行くのは危険もある、が、敵の動きが良く見えるという事でもある。襲い掛かってくる敵の動きを観察しながら、しばしソラスティベルは防御に徹していた。
やがて、ソラスティベルが空中で身を守っている間に、ランナーズイーターの群れは、フレミアの不可視の結界に触れて動きが一瞬止まる。そしてこの隙に、まゆが敵の背後に回りこんでいた。
「お尻に入らないよう、気を付けますっ!」
まだ同じことを呟き……いや、叫びながら、背後をとったまゆは、そのまま空中でコマのように自分を中心にグルグルと身体ごとハンマーを回転させる。ハンマーの噴射口から吹き出るロケットでブーストもかかった遠心力の勢いのまま、ランナーズイーターのお尻に向かって叩き付けられる【Cannonball Crush】の一撃。ハンマーそのものはもちろんお尻には入らないが、叩き付けた衝撃波はきっちりとお尻から体内へと浸透し、内側から衝撃で砕け散るようにランナーズイーターは一撃で絶命した。
「入らないように気を付けました!」
……まだ言ってる。
そして、フレミアの結界で動きが鈍ったうえにまゆの攻撃で包囲の一角が崩れたことで、ソラスティベルも攻撃に転じる。
「ここからは反撃の時間です!」
大口を開けて噛みつこうとしたランナーズイーターの攻撃タイミングを見切って、大盾を構えたまま、開けた大口へと突っ込んでいく。
がしっっと大盾を咥えさせ、それがつっかえ棒になって口を開けたままのランナーズイーターに、その口の中に叩き付けるとうにソラスティベルの斧……【我が名は神鳴るが如く】のよる雷を纏った大斧の一撃が振るわる。それは、口をそのまま全身にまで裂けさせていくようにして、ランナーズイーターの命を刈り取った。
「上は任せても大丈夫そうね。なら、こっちは……」
フレミアの結界は上空から目に見えて強襲してくるモノだけでなく、死角から忍び寄り喰らいつこうとするモノまで自動的に捕えていった。
そして死角から密かに近付いてフレミアに牙を立てようとしていたランナーズイーターのスニークイーターの牙が止まった一瞬に、フレミアは朱槍を振るう。
「お尻には刺さないけれど……口からぶっ刺してあげるわ!」
炎を纏った朱槍を口を開けたランナーズイーターの口腔内に突き刺し、そして内側から炎で焼き尽くしていく。
「……中の竜胆石まで焼けちゃわなければいいけれど」
この後も3人はそれぞれに戦い、このあたりのランナーズイーターはほどなく全滅した。
竜の体内から竜胆石を回収できないかと探る中、ふとフレミアの炎で焼けただれた死体の肉が目に入る。
「そういや、脂身の少ない肉だったっけ? 鳥のささみとかそんな感じかしら? このまま焼き鳥みたいに食べられるかしらね?」
「お肉は持って帰っておねーちゃんにお料理してもらって食べるつもりでしたけど……最初くらいはたべてもいいですよね?」
「そうですね、お腹すいちゃいました」
まゆもソラスティベルも賛同し、少しだけ3人は腹ごしらえを楽しむのだった。
大成功
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鍋島・小百合子
POW重視
翼を持たぬ竜が飛ぶとはこれが帝たる竜の力かえ?
空を飛ぶ敵が相手なれば同じ土俵で相手をいたすまでぞ
「わらわの勇を覆せるものならば覆してみせよ!」
UC「黄金勇霊装」発動
黄金の甲冑を纏い勇気に比例した戦闘力を得たら飛翔能力を持って空中戦を展開
自慢の視力をもって敵の鱗が覆われていない部位(目、鼻、口、鱗の隙間等)を見定めつつ敵からの攻撃を見切りながら矢劇薬を塗り込んだ矢を番えた長弓で狙撃(スナイパー、目潰し、部位破壊、マヒ攻撃、毒使い、鎧無視攻撃、制圧射撃併用)
全周囲に目を配り不意討ちを警戒、懐まで入られたら腰の小太刀で咄嗟の一撃を当てる
前線で戦う猟兵の援護射撃も視野に入れ共同戦線を張る
リリスフィア・スターライト
強気で接近戦が得意の人格リリスで挑むわ。
翼が生えて飛べるようになって
晴れてドラゴンになったという所かしらね。
全翼天開で飛翔して空中戦を挑むわ。
空中戦は慣れっこだし、負けるつもりはないわよ!
高速で一気に接近して死角に潜り込んでから
炎を纏った剣で急所を斬り裂き焼いてあげるわ。
この際だから尻でも何だろうと
急所であるなら躊躇うつもりはないわよ。
どうせ焼き尽くすだけだしね。
お腹の部分も呼吸とかであまり固くするわけにも
いかないだろうから柔らかい部分もあるのではないかしらね。
ランナーズイーターの反撃や奇襲にも注意を払い
動きは決して止めないわ。
一体でも多く殲滅ね。
「この地に相応しく皆殺しにしてあげるわ!」
曾場八野・熊五郎
ドラゴン肉食べ放題ツアーと聞いてきたでごわす
皆殺しの平野……つまりおかわり無制限でごわすな?(ジュルリ)
(pow)
真・野生王の我輩に不意打ちとは片腹痛いでごわすな
風上の警戒は臭いを、風下からは音を重点に警戒するでごわす『追跡・野生の勘』
発見したら突撃オヌシが晩御飯でごわ。食べ放題はスピードが命、他に取られる前にいただくでごわす『ダッシュ・ジャンプ』
真正面から突っ込むでごわす
口が開いたら口から、そうでないなら目から行くでごわすよ
タンも目の肉も美味しいでごわすからな
【犬ドリる】で抉りながら食べ進むでごわす
『怪力・捕食・トンネル掘り・傷口をえぐる・大食い』
犬の餌より美味しいでごわすな。おかわり行こ
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎
「――急所を狙う。なら私の出番でありますよ」
まずは、完全自作の背嚢型の高出力ブースタ【完武】で飛翔、【空中戦】を仕掛ける。飛行速度等も負けるつもりはない。
内蔵のミサイルランチャーを【一斉射撃】して弾幕で【目潰し】して動きを制限させる。(援護射撃)
そして、本命は手に持った『[K's]Sisius』(鎧無視攻撃)。ノータイムの連続狙撃(スナイパー、2回攻撃)で急所を確りと撃ち穿つ。
仰々しい二つ名、嘘じゃないところを証明してみせる。
――それにしても、肉はおいしいのだろうか。そこがきになるきょうこのごろ。
●弱点は狙うものでしょう?
さて、ここは同じ皆殺しの平野の中でも、少し離れた別の戦場。
こちらには4名……いや、3名と1匹の猟兵が集合していた。
「ドラゴン肉食べ放題ツアーと聞いてきたでごわす」
のっけから食欲満開な発言をしているのは誰かというと、1匹の方だ。
すなわち賢い動物である曾場八野・熊五郎(ロードオブ首輪・f24420)だ。
「まぁ、確かに倒せばその肉は好きなだけ食べていいと思うけども」
上空に舞うドラゴンの群れを見上げながら、リリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)は苦笑していた。ちなみに多重人格者であるリリスフィアだが、今は、強気で接近戦が得意な人格のリリスが表に出てきている。
「……つまりおかわり無制限でごわすな?」
リリスの言葉をそう解釈して、熊五郎はじゅるりと涎を垂らした。
「食べるのは彼奴らを倒した後じゃぞ?」
今にも食欲のまま野生に還りそうな熊五郎に対し、鍋島・小百合子(朱威の風舞・f04799)はそう言って釘を刺した。食べた後に採れた肉を食べるのはいくらでも構わないが、その前に食べられるようにしなければ……もとい、ちゃんと退治しなくてはいけないのだ。
「……肉か。肉はおいしいのだろうか。そこが気になる」
そして最後の1人、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)は、あまりに肉の話題になっているからか、その肉がどんな味なのか気になって仕方ない今日この頃。
「グリモア猟兵は確か、脂身が少なくさっぱりとした味わいだと言ってたでごわす」
やはり肉の話題だからか、熊五郎はしっかりとグリモア猟兵の言葉を覚えていたらしい。
「脂身の少ない部位……例えるなら、もも肉とかヒレ肉とかかしらね?」
「鶏肉の方が近いかも?」
リリスや智華は、その味を想像して牛や豚などの既存の肉と比べて味を想像していた。
「じゃから、肉の話はあとじゃ。ほれ、奴等めこちらに気付いたようじゃぞ?」
そして脱線し始めた話を元に戻すべく、やはり今回も小百合子が再び〆る。
そんなやり取りをしていた4人をめがけて、羽を生やしたランナーズイーターが襲い掛かってくるのだった。
「翼を持たぬ竜が飛ぶとはこれが帝たる竜の力かえ?」
「翼が生えて飛べるようになって、晴れてドラゴンになったという所かしらね?」
小百合子とリリスは、そんな会話をしつつ、それぞれにユーベルコードを使って空へと舞い上がる。【黄金勇霊装】による黄金の甲冑の力で宙を駆ける小百合子は、空空で弓を構え、矢を放ち、【全翼天開】にて光り輝く翼を広げたりリスは、小百合子の矢の援護を受けながら高速飛行で一気にランナーズイーターの元へと飛んでいった。
「飛べるのがそちらだけだと思わない事ね」
更に智華も、背嚢型の高出力ブースター『完武』のエンジンに火を入れ、一気に宙へと舞い上がってくる。そこに内蔵されたミサイルランチャーからの一斉射による弾幕が、次々とランナーズイーターを巻き込んで爆煙をあげ、足止めをしていく。
「空中戦は慣れっこだし、負けるつもりはないわよ!」
弾幕により宙で急に動きを止めたランナーズイーターに対し、高速飛行を活かして一気に刺客へと潜り込んでいくリリス。本来であれば 宙から舞い降りてくるランナーズイーターに対し、真っ向の空中戦となり、位置エネルギーで勝る敵に対しての振りは否めなかったが、智華の弾幕がその差を埋めたことで軽々に背後に回りこむことが可能となっていた。
「この際だから尻でも何だろうと、急所であるなら躊躇うつもりはないわよ」
背後に回りこんだリリスは、そのままランナーズイーターの鱗に覆われていない尻に向けて、炎を纏った剣で斬りかかる。
「どうせ焼き尽くすだけだしね!」
その切っ先が、鱗の無い尻からランナーズイーターの身体を切り裂き、炎が身体の中を燃やしていく。
智華のミサイルによる爆煙が晴れる頃には、リリスは既に数体そうして次々と焼き斬っていたのだった。
しかし、煙が晴れてしまえば、ランナーズイーターは次々と、己のフィールドである空に深入りしてきたリリスを取り囲むようにして襲い掛かってくる。
リリスも十分警戒し、動きは止めずにかっ込まれぬよう飛び続けているが、このままでは分も悪い。
「こちらに背を向けるとは、甘く見られたものじゃな?」
だが、当然仲間たちがリリスを見捨てるわけはなく、リリスに気を取られて背を向けていたランナーズイーターの尻に矢が突き刺さる。
言うまでもない。小百合子の弓矢による狙撃だ。
自慢の視力でしっかりと距離が離れていても急所を見定めて矢を構えていた小百合子にとっては、リリスに気を取られていた相手を射抜くことなど容易いこと。
さらに追撃として放った矢が、鱗の無い穴を矢に貫かれて悲鳴を上げてのたうち回るランナーズイーターの目に突き刺さり、眼窩から脳にまで達したその一撃により絶命した竜は、そのまま地へと落ちていく。
もちろん小百合子ばかりではない。
「急所を狙う。なら私の出番でありますよ?」
ミサイルをうち尽くした智華だが、本命の攻撃はむしろこれからだ。
手にしているレーザーライフル『[K's]Sisius』の銃口をランナーズイーターへ向けて、引き金を引く。
「仰々しい二つ名、嘘じゃないところを証明してみせる」
紅眼の射手の名に恥じぬ正確な射撃が、ほぼタイムラグなしに連射され、次々とランナーズイーターの急所へと突き刺さっていく。尻から体の中を撃ち抜かれ、眼から頭を撃ち抜かれ……次々と落命して墜落していくランナーズイーターたち。
空中を飛び回りながら狙撃位置を変え、距離を保ちながら急所への祖気を続ける小百合子と智華。そしてその援護を受けながら炎の剣を振るい、空中で大立ち回りをしているリリス。
ではもう1匹はどうしているのかというと……?
「くっ……なりふり構わなくなってきた?」
せめてリリスだけでも落そうというのか、ランナーズイーターたちは狙撃による犠牲もいとわずにリリスに集中攻撃を仕掛けてきていた。
やがてリリスは背後を取られ、死角から大きく口を開けたランナーズイーターの牙での奇襲に晒されることとなる。
「匂いが隠せていないでごわすよ?」
だがその背中には、おんぶのように張り付いていた小動物……言うまでもなく熊五郎がいた。
「真・野生王の我輩に不意打ちとは片腹痛いでごわすな」
文字通りの意味でリリスの背中を預かっていた熊五郎は、無防備にも大口を開けて近付いてきたランナーズイーターの口の中へと飛び込んでいく。
「突撃オヌシが晩御飯でごわ。食べ放題はスピードが命、他に取られる前にいただくでごわす!」
……さすがに誰も盗りはしないと思うが、そこはそれ。
大きな口の中に飛び込んだ小動物は、当然鱗になど覆われていない口の中から【犬ドリる】で抉りつつ侵入、身体の中を食べながら掘り進んでいく。
そして、不意打ち奇襲を仕掛けた先頭の1体の動きが止まって統制の乱れたところに、小百合子の矢と智華の狙撃による十字砲火が降り注いでいった。
「こちらを無視してもらっても困るのぅ?」
「背中は私達に任せるでありますよ!」
敵がリリスに集中して手の空いた分、2人の援護はより正確にランナーズイーターを射抜いていく。
そしてリリスもまた、振り向きざまに炎の剣を一閃させ、危機を脱した。
やがて、口の中に飛び込んだ熊五郎も、そのまま身体の中を食い荒らしたのちに外に飛び出して、再びリリスの背中に着地する。
「タンも美味しいでごわすからな」
とは熊五郎の弁。
「ありがとう、助かったわ」
「犬の餌より美味しいので問題ないでごわす」
食べて満足したという顔でむふーっと鼻息も荒い熊五郎に、リリスもクスッと笑みをこぼす。
「おかわり行こ」
「ええ、そうね。この地に相応しく皆殺しにしてあげるわ!」
「だんだん数も減ってきたし、もう一息じゃな」
「最後まで行くであります!」
その後は、小百合子の矢が乱れ飛び、智華のライフルが狙い撃ち、前線ではリリスと熊五郎が斬って食べて。
程なくしてランナーズイーターの群れは残さず駆逐されたのだった。
戦い終わって、肉がどれくらい食べられたのかは、想像にお任せしよう。
大成功
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