帝竜戦役②〜毒竜羽ばたく
●どこからか吹く風
風が吹いている。その荒野の名は皆殺しの平野。
吹きすさぶ風はオブリビオンたちを撫で、変異を促す。すなわち、ドラゴンへの変貌を誘う。
竜の翼を。猛き角を。身体を覆う堅牢な鱗を。
──木々が揺れ、花が風にさらされる。
●毒花咲き乱れ
「アックス&ウィザーズで戦争だってよ」
君たちを迎えたのは皮肉げに口角を上げた黒髪の男。グリモア猟兵エリオス・ダンヴィクトル。
「その名も『帝竜戦役』だそうだ。読んで字のごとく、相手は竜。聞くだに厄介だろ?」
ははは、乾いた笑いがむなしい。帝竜ヴァルギリオスだってさ。名前からして強そうだよな。
「とは言え、やらないとならないんだよなぁ」
連中のいる群竜大陸は広大だ。端から順に攻め落として行くしかない。
「で、まず向かってほしいのは皆殺しの平野ってとこだ。戦争全体としては前哨戦ってところか。今回みんなに相手にしてもらうのは、植物と合体したドラゴン。いや、植物がドラゴン化したやつ、って言うのが正しいのかな? とにかくそういうやつだ。面倒なことに植物もただの植物じゃないぜ、毒花だ」
花粉が飛んでくればくしゃみじゃ済まないし、雑草並みの生命力でそう簡単に“除草”させてはくれなさそうだ。翼もあるから飛ぶし、空中から攻撃してくる。鱗は硬いし攻撃もなかなか通らない。
「って、色々言ったけど弱点が無いわけじゃない。要は植物と竜が変に合体して飛んでるわけだから……」
たとえば、翼を狙ってみるとか、植物と竜の隙間を狙ってみるだとか。
「んーーー、まぁ、その辺はみんなに任せるわ!」
丸投げする。
「あっ、そうそう。倒すと竜胆石(りんどうせき)っていう財宝が手に入るらしいぞ。1匹につき1個取れるんだそうだ。欲しいやつは戦利品に持ってくといい」
そんじゃ、後は頼んだぜ。
「Good Luck」
みみずね
こんにちは。はじめてのせんそう。みみずねです。
本シナリオは一章で完結する戦争シナリオです。
●プレイングボーナス
『空中からの攻撃に対処し、硬いうろこに覆われた「急所」を攻撃する』ことにより状況が有利になり、プレイングボーナスが発生します。
●財宝
オブリビオンを倒したときに手に入る竜胆石ですが、見た目は美しい宝石で、現地の金貨で40枚くらい、UDCなどの貨幣でいうなら40万円程度の価値があるそうです。欲しいかたはどうぞ、おひとりさまひとつまでお持ち帰りいただけます。
オープニング公開直後より受付開始いたします。
執筆期間は5月2日昼〜となる予定です。よろしくおねがいいたします。
第1章 集団戦
『シュヴァルト』
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POW : プラント・イクリプス
肉体の一部もしくは全部を【植物】に変異させ、植物の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : ダルウィテッド・バース
自身の【切断されると増殖する体質】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ : フォール・リユニオン
【花】から【花粉】を放ち、【死者と再会する幻覚】により対象の動きを一時的に封じる。
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界立・図書館
「ドラゴンには……ドラゴンスレイヤーです」
依頼に出るのは本人ではなく姿そっくりの式神の司書です。
UCでキリスト教の聖人ゲオルギウスを召喚して協力してもらいます。
司書はサーチライトで敵に魔法陣を投射して攻撃したり、携帯印刷機で地面に対空地雷の魔法陣をいくつか張って攻撃します。
●再演:毒竜退治
「ドラゴンですか……」
見上げてそう呟いたのは、界立・図書館(読書と映画鑑賞と音楽鑑賞に追われるヤドリガミ・f16005)……の、式神である司書だ。彼女自身はヤドリガミとしての本体である建物の図書館から離れられず、分身体もまた図書館で忙しく働いている身だ。それでも、本体に姿はそっくりだし、能力だって劣るところなどない。
「ドラゴンには……ドラゴンスレイヤーです」
図書館は記憶の中から毒竜への対処を探る。蔵書の中にもあったはずだ。毒を吐く竜を退治したという偉人。名前は通称聖ゲオルギウス。
「読み込み……完了……」
図書館は聖ゲオルギウスの登場する書物からその来歴をトレースし、イメージし、彼の霊を召喚する。
「協力、お願いしますね」
図書館が柔らかく言うと、聖ゲオルギウスも頷いた。
「ゴォアアアアアアアアア
!!!!!」
雄叫びをあげる竜に向かって、聖ゲオルギウスは槍を構える。かつてそうであったように、毒を吐くその口を狙って。だが今回の相手は空飛ぶ飛竜だ。このままでは伝承の通りとはいかない。
「落ちてきてもらいましょう」
司書は携帯印刷機で手早く魔法陣を印刷してばら撒く。魔力の籠もった魔法陣は、ひらひらと空中に舞っていく。それらに印刷された魔法陣の紋様は対空地雷。ただの模様に見えて、触れるだけで一枚一枚の魔法陣が小さな爆発を起こす!
「ギャ?!」
「それからサーチライト」
……とは名ばかりの、魔改造懐中電灯を竜に向ける。印刷機と同じく魔力の込められたそれは、魔法陣を空中の竜に投射し、地上からの直接攻撃を可能にしている!
「ギェエエエエ?!」
予想外の攻撃に、毒竜は数発の攻撃を翼に受け、そのまま地面に落下する。当然、落下した先にはすでに召喚されていた聖ゲオルギウス。槍の一突きが、竜の口を貫いた。
「さすがですね」
蔵書に記された伝承と違わぬ活躍を見せた竜殺しの英雄聖ゲオルギウスに、図書館(の式神の司書)は思わず感嘆の声をあげた。
あとは仕上げにキッチリとどめを刺す。伝承の竜とは違って、口を塞いでも花から毒の花粉が出てしまうから仕方がない。
そこはそれ、新たな竜の伝承として誰かが新しい文書として書き記してくれるかもしれない。いつの日か、この戦争について記した本も蔵書として図書館に収められるかもしれない……。
そんなちょっとした野望を胸に、彼女は戦場をあとにするのだった。
成功
🔵🔵🔴
ソラスティベル・グラスラン
植物が変化したドラゴンですか、それはそれは……
よく燃えそうですね!竜の先達としてブレスのお手本、見せてあげましょう!
空を飛ぶ敵にはこちらも翼を広げ【空中戦】
一方的な有利は与えません、こちらから行きます!
敵の動きを見切り包囲されないように注意
マフラーで口元を覆い、【オーラ防御】を展開し花粉を遮断
敵に近づきすぎない距離から炎のブレスを放ち、周囲一帯ごと焼き払うように【範囲攻撃】
毒花粉ごと燃やし尽くし反撃の隙も与えません!
炎が燃え移ったり明確な隙が出来たら即座に【ダッシュ】、急所に【鎧砕き】の大斧を!
ふふふ、竜胆石は代金としていただいちゃいますね?
群竜大陸の奥では、もっと凄いお宝が待っていそうです!
●ドラゴニック・空中バトル!
「ほーう」
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は空を見上げる。上空を羽ばたくのは見紛う事なき竜。毒の花粉を振りまく迷惑極まりないドラゴンだ。
「植物が変化したドラゴンですか……」
それはそれは。しかし、いかに鱗に覆われたドラゴンとはいえ、元は植物。
「よく燃えそうですね!」
ソラティベルはやる気に満ちる。相手は竜。でもこっちだって竜、ドラゴニアンだ。竜の先達としてブレスのお手本、見せてあげましょう!
ソラスティベルは翼を大きく広げると、毒竜たちの待ち構える空中へ飛び上がる。密度の高い群れからはなるべく離れ、包囲されないよう注意を払いながら、そのうちの一体に狙いを定めた。
「こちらから行きます!」
勢いをつけて竜へと向かう。だが、それに気付いた毒竜も当然反撃を試みる!
身体に咲く花から毒の花粉が噴出される。吸い込めば戦闘不能、空中でそうなっては地面に叩きつけられるのは必至だ。しかしそこは慌てず騒がず。ソラスティベルはマフラーで口元を覆い、オーラ防御も合わせて花粉を遮断する。
ごう、と舞い散った花粉が炎に包まれる。周囲一体を巻き込むように、ソラスティベルが炎のブレスを放ったのだ。
「ギィイイイイイ
!!!!!」
まさか自分の撒いた花粉が炎と一体化し、空中での逃げ場をなくすとは思いもよらなかっただろう、毒竜は炎に包まれ悲鳴を上げながらも空中でのたうち回る。
燃えているのは──先ほどから花粉を放っていた、あの花だ!
ソラスティベルはすぐにそれが毒竜の弱点だと見抜いた。
「そこ!」
空中を恐るべき速度で駆け上がると、大斧を振りかざし、燃える花と毒竜の間に突きたてる!!
「アアア、ガアアアアアア!!」
力なく落下した毒竜はなんとも呆気なく、活動を停止した。
さて、ここからはついでの……いや、ご褒美の時間だ。
「ふふふ、竜胆石は代金としていただいちゃいますね?」
そう、噂に聞いたお宝『竜胆石』である。冒険心溢れるソラスティベルはワクワク顔でそれを懐に納めると、早くもこの先の旅路に期待をふくらませる。
まだ群竜大陸の冒険は始まったばかり。この大陸の奥では、もっと凄いお宝が待っていそうです!
大成功
🔵🔵🔵
サンディ・ノックス
知らない花を知るのは最近できた俺の目標のひとつだけど戦場では眺めている余裕もないか
俺も、たぶん敵も命を賭けて戦うわけだから
UC伴星・傲慢な飛輪を発動
右手から飛輪を作りだして翼の皮膜を狙い【投擲】
一度で落ちないなら何度でもくらわせてあげるよ
落ちてくるか怒って向かってくるかはわからないけど接近してきたら暗夜の剣を抜剣
黒騎士の異形化を限定的に行い、暗夜の剣を鎖鎌に変形させて
首なり脚なり鎖を巻きつけやすい凹部に向かって投擲
結びつけたらそのまま【怪力】を活かし地に引きずり落として
剣かUCで竜と植物の境目をえぐる
俺は植物の特性に詳しくないから敵に行動される前に倒しきりたい
攻撃を受けても攻撃行動を優先する
●名も知らぬ花
知らない花が咲いている。
明るい茶色の髪の少年、サンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)は我知らずそれを観察していた。空を飛ぶ竜の体に、様々な色の花が咲いているのが地上からでも見える。
知らない花を知るのは最近できた彼の目標のひとつだが、ゆっくり眺めている余裕はない。
(俺も、たぶん敵も命を賭けて戦うわけだから)
互いに生き残りを賭けて戦うのだ。そう、ここは戦場なのだから。サンディは気持ちを切り替える。
「刻んであげる」
右手で作り出した漆黒のチャクラムで、まずは翼の皮膜を狙う。竜の鱗は硬くとも、皮膜にはそれはないはずだ。一発、二発、三発……!
鱗ほどではないけれど、硬い。それでも。
何度でも、効果が現れるまで投げ続けてあげよう。
さあ。もっと。四、五……。
そして。
バキリ。
奇妙な音がした。よく見れば硬質な毒竜の翼に、ヒビが入っているのだ。そのヒビははじめは小さく見えたが、竜が翼を羽ばたかせるごとに大きく広がっていく。
「ァアア、ギェアアアア!!!」
竜は苦悶の雄叫びを上げながら、傷んだ翼を庇うようにしてゆっくりと降下してくる。……否、サンディめがけて突撃してくる!
(それも折り込み済みだよ)
黒騎士のつるぎ、サンディの暗夜の剣が鋭く反応する。形状変化。限定的な異形化に伴う変形。剣は鎖鎌へと姿を変じる。
(首? ……いや)
狙いを定めたのは脚。絡め取るのにちょうどいい。チャリ、チャリチャリ。翼を傷付けられバランスを崩している竜の脚は、鎖鎌にたやすく絡め取られる。
「 落 ち ろ ! ! ! 」
怪力に任せて引き寄せる。元よりサンディに向かっていたはずの毒竜だが、別の方向へ力を加えられたことで着地地点を見失う。その巨体は無力にもただ地面に叩きつけられることとなった。
これでとどめ!
再び出現させた飛輪で、竜の身体から生える植物に見えるそれを刈り取ると、竜はピクリとも動かなくなった。
はあ。ようやく一息つく。
その段になって初めてサンディは、足元に名も知らぬ小さな花が咲いていたことに気がついた。
大成功
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スパイニア・ソーン
あらゆる存在をドラゴンにする風が吹く荒野か。竜と化した毒花が相手となれば私にうってつけの獲物じゃないか。腕が鳴る。
開けた場所で相手は空から。射手としてはこの上なく不利な戦場だが、まあ何とかやってみせるか。
竜胆石というのも、手に入ったら最高だね。売り払って新しい装備の足しにしようじゃないか。
・対策
なるべく丈の高い草の茂みに、迷彩外套の技能【迷彩】で身を隠して翼の付け根や植物と竜の境目を集中的に狙撃。
シュバルトが放つ毒の対策は、一度わざと花粉を浴びることで体内の毒腺で対抗毒を作成して効果を軽減する。
ありとあらゆる毒を生成できる蠱毒の特性、きっちり生かさせてもらうよ。
● 以 毒 制 毒 ス
荒野に、ひとりのキマイラの女がいる。にんまりとした笑みを浮かべて、空の様子を伺っている。青い肌に赤い瞳の彼女はスパイニア・ソーン(致命の一矢・f03958)。
「竜と化した毒花が相手となれば私にうってつけの獲物じゃないか」
腕が鳴るとはこのことだ。毒なら得意分野中の得意分野だ。毒を相手取り、相手以上の毒を以て敵を屠る。まさにスパイニアの戦闘スタイルが活かされるときだ。
ただ、戦場が荒野だというのはいただけない。射手としてはこの上なく不利な条件だと言っていい。何故なら本来射手というのは物陰など相手の視界の外から攻撃するのがその利点だからだ。
だがそれでも。
「何とかやってみせるか」
支度を整えながらも、スパイニアは倒した後のことを想像する。噂にきいた竜胆石というのも、手に入ったら最高だね。
にいと笑ってスパイニアは走り出す。迷彩外套を羽織れば毒竜からこちらはほとんど見えない。よく狙って、矢を放つ。翼の付け根、植物と竜の境目を集中的に狙撃する。放っては移動し、また狙っては走る。
「アアァアア、ガァ?」
姿の見えない射手からの攻撃に業を煮やした毒竜は、方向を定めず闇雲に毒の花粉を撒き散らし始めた。
(待ってました)
たが、スパイニアはそれをものともしないどころか、むしろわざと花粉を浴びながら淡々と攻撃を続ける。本来なら幻覚を発生させる強い毒のはずだが、彼女にはそれすら大した効果がない。むしろ、敢えて毒を浴びることによって、彼女は自身の体内にある毒腺で対抗毒を生成することができる。対抗毒は毒竜からの花粉毒を中和し、効果を軽減する。
(ありとあらゆる毒を生成できる蠱毒の特性、きっちり生かさせてもらうよ)
空中から一方的に毒を撒く竜と、地上から一方的に矢を放つ攻防はやがて終わりを告げる。
翼に矢を受け続けた毒竜は飛行の力を失い、地に落ちた。それから後も、相変わらず見えないどこかから攻撃を受け続けのたうつ竜の姿は見るに悲惨である。
ついには毒の花粉を発していた花の根が射られ、こぼれ落ちたことで、竜は今度こそ動かなくなった。
スパイニアの手の中にはシーフの手際で手に入れた竜胆石。さあ、これは売り払って、また新しい装備の足しにするとしようじゃないか。
大成功
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