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汝、強さを求めるならば克己せよ

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「うふふ、これが貴方なのね! ありがとう、貴方は私の糧になったわ!」
「あ、貴方、私の姿で何を言っているのっ……? その喋り方も、私の真似……? 止めてよ、お願いだから止めてよ……」
 1人の学生が2人になった、そのとき。1人は腰を抜かして座り込み、1人はもう1人を見下ろして邪悪に笑っていた。
 そして邪悪に笑う口の端が釣り上がり……、やがて人には不可能な角度まで釣り上がった口が、表情ごと弾けてのっぺらぼうになる。姿すらどろどろに溶けて、オブリビオンは生徒に化ける前の黒い姿に再び戻った。
「サア、ツギはダレにシヨウ。オマエか? オマエでもイイ。オレにジョウホウをクレ!」
 黒いオブリビオンは、周囲の学生たちを睥睨し、不快な声を周囲に響かせる。
「オマエのツヨサをオレのモノにスル。オマエのドリョクごとイタダク! サア、ヨコセ、ヨコセ!」
 迷宮の奥底から上ってきた悪意は、溢れんばかりの強欲さで更なる犠牲者を求めている――。


「皆さまの中には、より強さの高みを目指して、日々研鑽を積んでおられる方がいらっしゃることかと思います。――わたしも、そのうちの1人ですけれど」
 淡々とした枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)の語り口は、穏やかであると言うよりはむしろ、不機嫌さを押し殺しているように見える。
「そのような研鑽をあざ笑うかのようなオブリビオンが、迷宮を逆侵攻してきています」
 オブリビオンの名はシェイプシフター。あらゆる情報を求め、対象のすべてを簒奪しようとする貪欲の化身である。
「相手の思考をトレースし、相手の血肉を経験とともに喰らい、ユーベルコードすら真似してみせる、厄介な相手です。なにより真っ当に研鑽を積むものから見れば、唾棄すべき相手に相違ありません」
 シェイプシフターはクレイゴーレムを配下として、攻め上がってきている。数頼みのクレイゴーレムをけしかけて、その間に貪る相手を見定める。そんな狙いを持っているのかもしれない。
 しかし学園側とて無策ではない。土塁を積み上げて簡易的な防御陣地を構築し、数の暴力に対抗する準備を整えた。あとは、そこで戦う猟兵が必要だ。
「皆さまにお願いいたします。どうか、シェイプシフターを撃破し、その悪意を打ち砕くために力をお貸しいただけないでしょうか」
 それに、と涼香は続ける。
「自分の姿を写し取られるという敵の相手をすることは、自らの技、経験を客観視できるまたとない機会ともいえるでしょう。その経験を元に訓練を積めば、先の展望が見えてくる……、というのは少々楽観的かもしれませんけれど、己自身を乗り越えるための契機にはなるかも知れません。――そんなことばかり考えてしまうのが、武を尊ぶ者の性でしょうか」


Oh-No
 こんにちは、Oh-Noです。

●目的
 わらわらといるクレイゴーレムを蹴散らす。
 人の姿に化けたりするシェイプシフターをぶっ飛ばす。
 戦い方を顧みて、反省会をする。あるいは、その場にいるメンバーで模擬戦闘をしてみる。

●シナリオの流れ
 1章:ボス配下の排除
 2章:ボスの撃破
 3章:ボスや配下と戦った経験を糧に、戦闘訓練をする。

●ボス&配下を迎え撃つ場所について
 オブリビオンを迎撃するために学園側は急遽、迷宮内の広いフロアに土塁を積み上げ、簡易的な防御陣地を構築しました。クレイゴーレムは数の暴力で押してきますが、陣地の中にいる限りは集中攻撃を受けるようなことはないでしょう。
 クレイゴーレムは、大きな上官を呼んで土塁を乗り越えようとしたり、味方を踏み台にしてわらわらと乗り越えてきたり、といった感じで攻めてきます。

●戦闘訓練について
 訓練相手を指名していただいてもいいですし、1人で訓練を行うのも良いかと思います。
 もし相手が欲しいが適当な相手がいないなどありましたら、涼香を指名していただいても構いません。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『クレイゴーレム』

POW   :    上官を呼ぶ
自身の身長の2倍の【クレイゴーレム】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    仲間を呼ぶ
レベル×1体の、【額】に1と刻印された戦闘用【クレイゴーレム】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    配下を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【クレイゴーレム】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シエル・マリアージュ
自分の写し身との戦いか、自分の殻を壊す機会になるかな。

土塁の上に蜘蛛型にしたアラクネの紅玉を目立たないように配置して、防御陣地の向こうから迫ってくる敵を監視させ大まかな戦力を把握しておき、その情報は他の猟兵にも共有する。
防御陣地の内で「死は闇より来たれり」を使って戦闘力を高めておく。
敵が鈴蘭の嵐の射程に入るまでは、土塁を盾にしながら聖銃剣ガーランドの射撃で【マヒ攻撃】を初弾とした【2回攻撃】で少しでも敵の数を減らし、敵が鈴蘭の嵐の射程に入ってきたらまとめて攻撃。
土塁を越えた敵には「死は闇より来たれり」からの【2回攻撃】で最優先で仕留めにいく。


デナイル・ヒステリカル
見たところ同系統のUCを使用する相手の様子ですが、
数に任せた戦闘ならば僕の得意とするところです。

【情報収集】を用いて戦場を俯瞰し、額に何も刻印されていない……つまり敵陣のクレイゴーレムの中でも本体のみを探し出します。
同じ戦列へ加わる仲間の猟兵たちへ情報を共有します。
ユーベルコードを使用する本体を優先的に撃破することにより、それ以上の敵増加を防ぐ狙いです。

そして僕もユーベルコードで召喚した機械兵器を防御陣地へと配置し、戦闘へ寄与します。
防御を考慮せずに進軍する敵より、遠距離火力と陣地の防御力を備えたコチラの方が有利なはずだと判断するよ。


シェーラ・ミレディ
訓練のためにサンドバッグを用意してくれるなんて、中々気の利いたオブリビオンじゃないか!
そもそも僕の技は銃を何丁も必要とするので、そう易々と真似られることはないと思うが……ユーベルコードまで模倣できるとなると、いささか厄介か。気を引き締めていこう。

先ずはクレイゴーレムを片付けるぞ。
「華燭之典」で、防衛陣地から連射する。
何、配下を呼ばれようが弾幕で圧倒すればよろしい。
敵の脚を狙い撃って侵攻を妨げつつ、倒せそうなものがいれば止めを刺していこう。
使えそうな技能としては拠点防御、地形の利用、時間稼ぎ、スナイパー辺りだろうか?
技能は豊富にあるからな! 使えそうなものがあれば試していくか。


鞍馬・景正
己の写し身――なるほど、興味深い。
しかしその前に雑兵どもを一掃せねばならないとは少し手間ですな。

◆戦闘
・POW
大型ゴーレムに突破されぬよう、接近してくる個体に狙いを付けて確実に撃破して参りましょう。

土塁から【ジャンプ】で跳躍し、その脳天から地軸まで全霊の【怪力】と【鎧無視攻撃】による【鞍切】で斬り徹して御覧にいれる。

切り落としたらそのまま包囲されぬようすぐ陣地まで駆け戻り、再び大型個体が現れればその都度に撃退して参りましょう。

……これをどこかで観察されているかと思えば妙な気分になりますが、問題はありますまい。
鞍切は基本のすべてを基本のままに使う型、妖刀魔剣の類では無し。

さて、次の敵は――。


アララギ・イチイ
血肉を経験とともに喰らうボスぅ?
それは同類(趣味持ち的に)として実に興味深い、どんな味なのかしらねぇ♪

防御陣地に事前に155mm榴弾砲×4を設置しておくわぁ
榴弾砲の運用は召喚・機械人形ズ×20(5チーム×4)で対応、(範囲攻撃)の榴弾を装填させて(援護射撃)させるわぁ

私はアース・アララギ号を運用ねぇ
召喚・自己幻影でもう1人の私を呼び出して、分身=砲手、操縦=本体で運用かしらぁ
武装は大型連装砲と機銃だから、連装砲は左右交互撃ち(2回攻撃)で(範囲攻撃)の榴弾と撃ち込み、機銃で弾幕を張るわぁ
接近されたら履帯で(踏みつけ)で潰してみようかしらぁ?それでも無理なら本体が下りて武器を構えて近接戦闘ねぇ


御狐・稲見之守
どのように鍛錬し質を高めようと、量の前には適わんものよ。
しかし、である――

[WIZ] UC荒魂顕現、此れより我成すは一切神事也。
来たれ炎の竜巻、そして荒ぶる業火の龍となれ。
「範囲攻撃」「全力魔法」で土くれすら消し炭に変えてやろうぞ。
まあ普段は遊んでるから制御さぼったり暴走させたりしとるが
この程度はなぁに、つまらん児戯よ。
陣地も壊してしまうかもじゃがそれ以上に土くれを焼けばよい。

――しかし、それは同じ次元であればの話。
見せてやろう次元の違いを、積み上げてきた功夫が違うのじゃ。


九龍・輝羅
猿真似野郎ってのはマンガとかでよく聞く奴だな。
上等だ、アタシがアタシを乗り越えるための糧になって貰うぜ。

【コーデチェンジ】で攻撃力を高めた衣装に着替えるぞ。

「放つ一撃はドラゴンファング♪クリムゾンスパルトイコーデ!オラァッ!!」

土嚢を上がってこようとする連中に的を絞ってその脳天に全力でマギブレードをシュートする。
デカい上官とやらが見えたら両足を狙い撃ちして動けなくした後にに脳天をブチ砕く。

複数バトルってのは中々できねェ経験だ。
アタシの腕が上がらなくなるのが早いか、お前らが打ち止めになるのが早いか勝負と行こうじゃねェか!!

行くぜ! ゴー・シューーーーーーート!!



 防御陣地の縁に載せた蜘蛛型の小型ドローン『アラクネの紅玉』から、シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)に送られてくる映像には、広間を埋め尽くすような数のクレイゴーレムたちが、通路から吐き出されていく様子が映し出されていた。サイズは概ね大、中、小の3通り。数は小さいタイプのクレイゴーレムほど多い。
「クレイゴーレムたちが続々来てるね。シェイプシフターらしき影はまだ見えないかな」
 土塁に背中を預けて身を隠しながら、仲間たちに聞こえるように、シエルは状況を口に出す。
「ふむ。相手の首領を相手取る前に、雑兵どもを一掃せねばならぬというのは、少々手間ですな」
 鞍馬・景正(竜胆の剣・f02972)は、すぐ間近まで迫っている敵になんの感慨も抱いていないかのように、朴訥と呟いた。
「相手は数に任せた戦法を使うようですが、それは僕の得意とするところでもあります。――数と数なら、遠距離火力と陣地を備えたコチラの方が有利。そう判断してるよ」
「こっちの準備も万端よぉ? 155mm榴弾砲4門が榴弾を雨あられと降らせるわぁ」
 デナイル・ヒステリカル(架空存在の電脳魔術士・f03357)は眼鏡の縁を押し上げて自信ありげに微笑み、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)も、赤髪を手櫛で梳きながら嗜虐的に笑っていた。
 すでに陣地内には数えるのも馬鹿らしくなるほどの小型兵器と、長大な砲が設置されており物々しい。
「ハッハッハ、実に壮観じゃないか。僕も多数の銃を使うスタイルだが、ここまでじゃあない。しかし、僕にとってはこの4丁こそが最適な数だと、これから実戦で見せてあげよう」
 シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)は、ホルスターに収めた4丁の精霊銃を自信満々に叩いてみせた。
「イイねえ、イイねえ。ゴキゲンじゃねェか! で、いつ始めるんだい? 準備がいいなら、とっととおっ始めようぜ!」
 すでに攻撃のタイミングが待ちきれない様子で、九龍・輝羅(喰い殺し怒羅魂・f10346)は唇を釣り上げ、獣の牙と見紛う歯を覗かせた。
「そうだね、もう引きつけは十分だよ」
 映像を見ながら、シエルはあくまで淡々と応じる。
「ならば、開幕はわしに任せてもらおうかのう。なに、派手に行くが故、期待してくれていいんじゃゾ?」
 言うが早いか、御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)は土塁の上に飛び乗った。
 見下ろせば、視界を埋める土塊、土塊、土塊の群れ。もうあと数歩の位置まで、物言わぬクレイゴーレムたちが攻め寄せてきている。
(「随分と数を揃えおってからに。たしかに、どのように鍛錬し質を高めようと、量の前には適わんものよ。しかし、である――」)
 ニンマリと笑った稲見之守は、不意に表情を真剣なものへと変えて、両腕を突き出し呪を諳んじる。
「荒魂顕現、此れより我成すは一切神事也」
 迷宮の中に、風が吹いた。風は、瞬く間に勢いを増し、渦を巻き、クレイゴーレムたちの中で荒れ狂う。
「来たれ炎の竜巻、そして荒ぶる業火の龍となれ。――そら、土塊の一片まで消し炭に変えてやろうぞ」
 呪が完成するやいなや、竜巻と化した風が炎を孕んだ。業火はクレイゴーレムたちを撫ぜて、炎に巻いてじっくりと焼き上げていく。
(「――しかし、それは同じ次元であればの話。見せてやろう、次元の違いを。積み上げてきた功夫が違うのじゃ」)
 荒れ狂う炎を見て、稲見之守は満足そうに頷いた。

 だが、数に勝るクレイゴーレムたちは如何に燃やされようとも、仲間の残骸を踏み越えてひたひたと迫り来る。
 そのなかに、ヒュルヒュルと弾着した榴弾が、破裂してクレイゴーレムたちを弾き飛ばした。
「撃ち方、始めなさぁい! 私はアース・アララギ号を出すわぁ」
 猟兵たちの陣地から、アララギとデナイルが設置した兵器からの射撃が続々と放たれていく。その最中、アララギは己が分身を砲手に据えて、自らは操縦手となり汎用宇宙戦車アース・アララギ号を発進させた。ひしめくクレイゴーレムたちの中を、履帯で疾駆するアース・アララギ号は、寄るゴーレムを弾き飛ばし、あるいは連装砲で土塊に変え、ひたすらに蹂躙していく。
 一方のデナイルは、自らが召喚した数千にも及ぶ兵器を、陣地から視線でコントロールする傍ら、クレイゴーレムたちの姿を冷静に観察している。
「ただ倒すだけじゃ芸がない。皆さん、いいですか? 額に何も刻印されていないクレイゴーレムを狙っていきましょう。あれこそが、奴らの本体。ユーベルコードを使用する個体から倒せば、自ずと数は増えません」
「何、配下を呼ばれようが弾幕で圧倒すればよろしい。と言いたいところだが、せっかくだ、その案に乗ろうじゃないか」
 デナイルの落ち着いた、実に当を得た判断に乗ったシェーラは、弾幕の狙いだけをわずかに変えた。
 4丁の銃を順繰りに撃ち放ち、様々な精霊を纏わせた弾丸を乱射していくスタイルは変わらない。クレイゴーレムの脚を狙い打ち、寄せる速度を落とす狙いも変わらない。
 ただ、その合間に何も描かれていないクレイゴーレムの額を、銃弾が撃ち抜いていくだけだ。
「遠慮するな。馳走してやろう!」
 そう言って笑うシェーラが銃爪を引くたび、クレイゴーレムに穴が穿たれていく。

 クレイゴーレムたちが弾幕の嵐を抜けて土塁に張り付いたとて、それはまだ終点を意味しない。
 銃形態へと変じた聖銃剣ガーランドで一体ずつクレイゴーレムを片付けていたシエルは、土塁に取り付いたクレイゴーレムを見て、ユーベルコードを発動させる。
「こちらの陣地の中には、1体たりとも侵入させない」
 シエルが翳した聖銃剣ガーランドが、急に光り輝いて、鈴蘭の花びらとなって散ってくいく。それらの花びらはシエルを中心とした花嵐となって、意志を持つかのようにクレイゴーレムたちを切り裂いた。ここに至るまでぼろぼろになっているクレイゴーレムたちは、ひとたまりもなく崩れ去る。
 それでも残ったクレイゴーレムたちは景正が切り伏せ、あるいは輝羅が脳天にマギブレードを打ち込んでとどめを刺す。
「なるほど、中小のゴーレムたちに煩わされないのは楽ですな。しかし、大型ゴーレムが残っているようだ。私にまかせていただこうか」
 何重もの弾幕が削り倒していく中でも尚健在な大型クレイゴーレムを見やり、景正が呟いた。
「ヘッ、てめぇだけにいい格好はさせられねぇな!」
 その景正の言葉に一言叫んで応じた輝羅は、先んじて飛び出した。土塁を蹴り飛ばし、空中で一回転、光りに包まれる。
「放つ一撃はドラゴンファング♪ クリムゾンスパルトイコーデ! オラァッ!!」
 輝羅が着地して光が失せたとき、輝羅の身体は攻撃力を高めた新たな衣装を纏っていた。そして、そのまま敵の真っ只中を目指して駆け出していく。
「複数バトルってのは、中々できねェ経験だ」
 ゴーレムとすれ違うたび、ガジェットから放つマギブレードを撃ち込んで、足は止めない。
「アタシの腕が上がらなくなるのが早いか、お前らが打ち止めになるのが早いか、勝負と行こうじゃねェか!!」
 そして、ついに輝羅は一体の大型クレイゴーレムに狙いをつけた。
「てめぇが上官って奴か? 相手になってやるぜ!」
 クレイゴーレムが振り下ろす大きな足をかい潜り、足首あたりにマギブレードを乱射する。そのまま逆の足に回って、そちらの足首も狙い撃ち。
 関節を破壊された大型クレイゴーレムは、その場に膝をついた。
「だらしねぇな、行くぜ! ゴー・シューーーーーーート!!」
 すかさず飛び上がった輝羅は、手頃な位置に降りてきた大型の脳天部に渾身のシュートを叩き込み、いくつもの小片へと頭部を粉砕する!

「……元気が余っているようですな。こちらも参りましょうか」
 輝羅の勢いに若干虚を突かれた景正だったが、やや遅れて土塁から大跳躍を敢行する。
 それは、軽やかな跳躍だった。全身の撥条を無駄なく足場へ伝えれば、余計な音など発しようがないものだ。
 迷宮の天井近くまで飛んだ景正は、くるりと反転し、ゆらりと武州下原を振り上げて、大型の頭頂部に狙いを定める。
 ――天井を蹴る音も、軽やかであった。けれど、大地に向かって矢の如く放たれた景正の剣閃は、まさに剛剣。
「――鞍馬の名にかけて、貴様を斬る」
 全霊の力を以て放たれた刃は、大型の脳天より股までを一直線に叩き割る。
 地面に降り立った景正の背後で、2つに割れた土塊が地面に倒れて砂埃を上げた。
 ……ふと、視線を感じた気がした。シェイプシフターのものだろう。
(「見られていると思えば妙な気分にもなりますが、問題はありますまい。鞍切は基本のすべてを基本のままに使う型、妖刀魔剣の類では無し」)
 基本を積み重ねた先で至るものであるならば、なにも秘するべきことはない。周囲の有象無象も叩き切って、景正は陣地へと足を向けた。

 ――そして、狂騒の時は過ぎた。あまりにも苛烈な攻撃を猟兵たちが仕掛けたが故に、土塁による防壁もあらかた崩れてはいるが……、もう問題はないだろう。
 押し寄せてくるクレイゴーレムたちも、ついには尽きたのだから。
「さて、次の敵は――」
 景正が流し見た先に、黒い姿、シェイプシフターが現れる。シェイプシフターは、時折この場にいる猟兵たちの姿を写し取っては、すぐに元に戻ることを繰り返していた。
「己の写し身――。なるほど、興味深い」
 シェイプシフターを見て、景正は剣呑に薄く笑った。
「……自分の殻を壊す機会になるかな」
「猿真似野郎ってのは、あれだろ、マンガとかによくいる奴だろ。上等だ、アタシがアタシを乗り越えるための糧になって貰うぜ」
 聖銃を手にシエルが独りごちれば、輝羅が敵の有り様を笑い飛ばす。
「銃を何丁も必要とする僕の技が、そう易々と真似られることはないと思うが……。ユーベルコードまで模倣できるとなると、いささか厄介か。気を引き締めていこう」
 自信家であるはずのシェーラは、どこか控えめに見えた。
「で、血肉を経験とともに喰らうんだってぇ? イイじゃない、そんなあなたがどんな味か確かめてみたいわぁ」
 舌なめずりをして、アララギは艶やかに笑う。
 そんな猟兵たちの前に堂々と姿を見せたシェイプシフターは、迷宮中に響く不快な甲高い声で囀っている。
「オマエらのコト、タップリとミせてモラッタ。ゼンブ、ノコサズ、クラッてヤルコトにキメタ。サア、ダレからタベテホシイ? ケケ、ケケケ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シェイプシフター』

POW   :    思考の簒奪
【自身を対象の姿へと変化させ思考を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    血肉の簒奪
戦闘中に食べた【対象の血肉】の量と質に応じて【捕食した対象の姿と戦闘経験を簒奪し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    秘技の簒奪
対象のユーベルコードを防御すると、それを【強化し体内へ取り込み】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

デナイル・ヒステリカル
先ほどの戦闘を写し取られましたか。
しかしまだ見せていない伏せ札がありますし、何より姿を見られなければ写し取られることもないと判断します。
想定内です。

他の猟兵の方の攻撃による閃光や轟音に紛れて自分自身に光学迷彩を施し、シェイプシフターが大技を繰り出すまで潜伏します。
敵が攻撃に移る直前に、その腕を掴み上げ、直接雷属性攻撃のUCを流し込みましょう。

例え防御されたとしても問題ありません。
ダメージを与える事ではなく、思考と行動を停止させることが目的です。
そうすることで生まれた隙を、味方は見逃さないはずですから。

今まで僕が見せていた後方支援型の戦闘方法ではなく、意表を突く奇襲戦で攻めようと思います。


シエル・マリアージュ
最初はトリニティ・エンハンスで防御力を強化して戦闘に挑む。
「実際に対峙してみれば、こうも厄介とは」
自分と同等の力を持つ相手を出し抜くなら、この身に染みついた技をどう活かすかの創意工夫、そして覚悟の違いでしょうか。
トリニティ・エンハンスを攻撃力強化に切り替えて仕掛ける。
【2回攻撃】の1撃目に【クイックドロウ】で【誘導弾】を撃ち、その攻撃を自分が避けるならどう動くか予想した先を2撃目の狙いとして、聖銃剣ガーランドを剣に戻して敵の間合いのさらに一歩踏み込んだ【捨て身の一撃】を2撃目として仕掛け、それに合わせて1撃目の誘導弾を【目立たない】ように敵の背後に誘導、剣と銃弾の2択を迫る攻撃で勝負をかける。



「サア、マズはオマエ……からですね」
 シエルの姿へと変じた途端、シェイプシフターの高慢さが消え失せた。対象の姿形だけではなく内面まで写し取るというのは、どうやら本当のようである。
(「先ほどの戦闘を写し取られましたか」)
 他の猟兵の間に紛れて姿を隠しながら、デナイルはシェイプシフターの様子を観察する。
(「しかし、まだ見せていない伏せ札もありますし、何より姿を見られなければ、写し取られることもないと判断します。――想定内です」)
 今見た限りで得た情報からは、考えていた対策は十分誤差の範囲内に収まっていそうだ。そう判断したデナイルは、崩れ落ちた土塁の影を渡り、敵の近くまで回り込む。最適のタイミングを掴み取るために。
 潜伏しチャンスを待つデナイルを横目に、シエルは自らの姿を取った敵へと真っ向から仕掛けた。
「私はあなたです。あなたの考えることは、わかります」
(「実際に対峙してみると、こうも厄介とは」)
 斬りつけてみても、まるで予定調和のように躱されてしまう。同じ姿態をした2人のうち片方が、一方的に仕掛けているにも関わらず一撃も入らないさまは、よく訓練された演武のようにすら見える。
(「ならばこの相手に勝つために創意工夫を積み重ね、『今』の自分を乗り越えて、真似のできない境地に至るのみです……!」)
 この身に染みついた技とて、今までの使い方、組み合わせ方だけが全てではない。そして何より自分には、この覚悟がある。
 シエルは防御に回していた三属性による強化を、すべて攻撃に回した。握っていた剣を軽く振って銃に変形させ、弾丸を撃ち放つ。
「狙い筋は読めていますよ」
 わざとらしくギリギリで躱しながらうそぶく敵の言葉には耳を貸さず、すぐに剣の様態へと戻した聖銃剣ガーランドを手に、懐に潜り込んだ。
「出す手がなくて捨て身ですか。読むまでも……、なッ」
 シェイプシフターが避けた弾は誘導弾だったのだ。外れた弾は大きく楕円を描いて、背後に回り込んでいる。
 ようやくこのとき、シェイプシフターはシエルの狙いに気づいた。銃弾と斬撃、どちらを受けるかとシエルは問うている……!
「くっ……」
 シェイプシフターは、銃弾を受ける方を選ぶ。銃弾を背中に受けながら剣をすれすれで躱し、そこでシエルの姿をかなぐり捨てた。
「ナラバ、オマエのチニクをクラッテヤル!」
 黒い影が至近距離のシエルを切り裂こうと、長大な爪を振りかざす。
 ――しかし、シェイプシフターの腕が振り下ろされることはなかった。その腕はしっかりと、デナイルが掴んでいたのだ。
「このタイミングを待っていました」
「ク、ハナセ!」
「そう言われて誰が話すものか。――PSIプログラム実行。チャージ完了。これが雷霆だ……!」
 シェイプシフターの手首を釣り上げるデナイルの右手が強く握り込まれた次の瞬間、右手を起点に稲光が奔った。
「……グッ、シカシ、オボエタゾ!」
「そうですか、ならば貸しにしておきますよ。……すぐ返してもらいますけどね」
「――!?」
 デナイルの電撃は、それ自体がシェイプシフターにダメージを与えたわけではない。けれど、動きを少しの間止めるだけの働きがあり、そしてそれで十分だった。
 至近距離には、シエルがいるのだから。隙を作ったのならば、後は任せれば良い。
「私をもうお忘れですか? 先ほどはあんなに嬉々と真似していましたのに」
 高々と掲げた剣を、シエルは鋭く振り下ろす――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
私より練達の士などは幾らもいる。
しかし自分とそっくり同じ相手となれば――却って究竟に存ずる。
同一の運剣と同一の技倆で、何が結果を分けるか……勝負。

◆戦闘
シェイプシフターめが自分の姿に化けたなら、存分に挑むとしましょう。
手札を知られたとて、私の模倣で反撃してくるなら条件は同じ。

無形の構えに付け、如何なる太刀筋への変化を可能としたままに切り結ぶ。
到底、一筋縄ではいかないだろうが……【打草驚蛇】にて勝機を【見切り】、【覚悟】を決め、相討ち覚悟での【捨て身の一撃】を叩き込む。

――上手く斬り込めたなら、そうだな。
『昨日の我に今日は勝つべし』と、我が師の一人の言葉を体現できたというだけの事。



 景正はただ静かに、己の姿と向き合っていた。
 相手は己に化けたシェイプシフターである。ただ姿形を真似ただけではなく、まるで己自身のように剣を振るうという。
 己より練達の士など、幾らもいよう。望めば、仕合うことも出来よう。
(「しかし自分とそっくり同じ相手となれば――却って究竟に存ずる」)
 この場に臨み得たことで得られる学びは如何ほどか。
「同一の運剣と同一の技倆で、何が結果を分けるか……勝負」
 道を究めんと欲する景正の魂が、震えた。

 景正は抜いた刀を、ただ重さを支えているだけのような自然体で構えている。対するシェイプシフターは、攻め気を滾らせて上段に構える。
 先に仕掛けたのは、シェイプシフターだった。
「――!」
 裂帛の気合を上げて踏み込み、刃を振り下ろす。景正は半円を描くように足を引き、半身になって躱した。追ってくる刃を今度は後ろに飛んで逸らし、過ぎ去ったところを逆に薙ぎに行くが、これは相手に受けられる。
 ――互いに手の内を知る者同士の攻防だ。攻めても躱され、後の先を狙っても端から筋を読まれている。それは相手も自分も同じこと、ただ今あるもののみで組み立てるなら、勝負が着くはずもなかった。
 ならば、どうするか。
 そんなことは決まっている。先の先を読んで技を繰り出すのではなく、今このとき振るう刃で決めると、覚悟を持って踏み出すこと。
「藪蛇となるか、虎児を得るか――勝負」
 己のことなのだから、相手がどう打突を組み立てているかは手に取るようにわかる。こちらの打突にどのように応じるかさえ。
 その想定を超えた切込で、己の枠を踏み越えてみせよう。
 ――そう明示的に考えたわけではないのだが。
 常ならば引くであろう機で、景正は踏み込んだ。有効な斬撃となる前に、振るわれる刀の内側に入り込む。怯んで一呼吸遅れれば、斬り捨てられるところだが、そんな惑いはすでに振り切っている。
 シェイプシフターは、その踏み込みに対応できない。そんな手を知らないのだから当然だ。
 刀の内側に入り込まれてどうすることも出来ないまま、景正が振るう刀がシェイプシフターを切り裂いた。
(「『昨日の我に今日は勝つべし』……か」)
 いつか師の一人が云っていたこと。
 どうやら今日は、体現できたようである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アララギ・イチイ
んー……よーし、予定通りに進めましょうぉ
シェイプシフターちゃん、私は今からUCで攻撃を仕掛けるからしっかりコピーしなさいよぉ♪

UCの愉快合体~を使用するわぁ
装備品のアララギ号を合体、グレートイェーガーを組み立てて、それに搭乗して攻撃を仕掛けるわぁ(攻撃力重視
アララギ号の武装を使用出来る(設定)だから射撃武装で遠距離攻撃、その攻撃を防御して敵がロボをコピーしてくるか楽しみねぇ
コピーして来たらドリルパンチなど近接戦闘に切り替えて格闘戦よぉ
ある程度楽しんだら、相手の機体に自爆コマンドを送信するわぁ、コピーして来たんだから暗証番号とか起爆システムも同じでしょぉ(

機体大破とか活動時間終了なら私は脱出よぉ



(「んー……。よーし、予定通りに進めましょうぉ」)
 景正の刀で切り裂かれたシェイプシフターを見て、腹案を実行するなら今だと判断したアララギは、敢えて攻撃のタイミングを明示する。
「シェイプシフターちゃん、今から仕掛けるから、しっかりコピーしなさいよぉ♪」
 そしてスポットライトが当たった舞台俳優のように、姿勢良く立って大音声で叫んだ。
「アララギ号、カムヒア!」
 声と同時に鳴らした指に応じて、アクア、スペース、アースと3機のアララギ号が亜空間から飛び出してくる。3機のアララギ号は、それぞれに変形しながら、互いに引き寄せあって、合体。
 ここに大型ロボである、グレート・イェーガーが降誕した!
「まずはお試しからよぉ」
 グレート・イェーガーの大きな手にすくい上げられて搭乗したアララギは、あえて防御させるように機銃での攻撃を選択。
「オマエのワザ、オボエタゾ!」
 案の定、ユーベルコードを学習したシェイプシフターは、己の姿自身を黒い大型ロボットの姿へと変えた。この形態を仮に名付けるとするならば、ブラック・イェーガーといったあたりか。
 これが、アララギの狙いであった。
「いいわぁ、じゃ大型ロボ同士で殴り合いしましょうぉ♪」
 右手をドリルに変えたグレート・イェーガーで、アララギは嬉々としてドリルパンチを繰り出す。ブラック・イェーガーは、ドロップキックでそれを迎撃、大地を揺らす派手な格闘戦が始まる!
 だが惜しむらくは、1ラウンドが最大5分であること。制限時間が迫る中、アララギは奥の手を繰り出す。
「そうれ、自爆コマンド、送信っ!」
「……ククク、コチラがデキナイトデモ、オモッタカ!」
 しかし、同じユーベルコードなのだから、できることは同じである。相互確証破壊的に自爆コードを送りあったグレート・イェーガーとブラック・イェーガーは、お互いに大爆発、派手に有終の美を飾ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

九龍・輝羅
よう、猿真似野郎。
今のアタシの強さってのを、ちょっと見せてくれよ。

奴がアタシならマギブレードのぶつかり合いになる。

「3・2・1 ゴー・シュート!!」

の掛け声でマギブレードをシュートするぜ。
何千何万回と繰り返した動きだ。
考えるより先に動いてみぜる。

てめぇの技はアタシの経験をなぞっただけってのがよぉく解ったぜ!

てめぇの技にはなァ!
立ち上がれなくなるまで繰り返した特訓の辛さも!
それでも尚相手に届かなかった悔しさも!
絶対ェ強くなってやると誓った想いも!

そして何より!リンドヴルムとの絆を感じねェ!!

輝け!リンドヴルム!アタシの魂と共に! 輝 龍 覚 醒 !!

ブ チ 砕 け ェ ーーーーーーーーーッ!!!



 爆発の中から落ちてくるシェイプシフターを待ち受けていたのは、輝羅である。
「よう、猿真似野郎。次はアタシの番だぜ。今のアタシの強さってのを、ちょっと見せてくれよ!」
「アナドルなヨ……、望むところだ!」
 空中で輝羅に変じたシェイプシフターはくるりと反転して着地し、輝羅と向き合った。
 互いに突き出したのは、マギランチャー。にらみ合う2人の姿は、まるで西部劇の決闘のようだ。
「「3・2・1 ゴー・シュート!!」」
 緊張が限界に達したところで、2人は同時に動き出した。輝羅にとっては、何千回、何万回と繰り返してきた動きだ。
 愚直な反復こそが、技を極みに高め上げる。考えるまでもなく、狙った位置にマギブレードを飛ばすためにどうすればいいか、身体が知っている。
 シェイプシフターと輝羅は、同じタイミング、同じ動作でマギシュートを放ったはずなのに、シェイプシフターが放ったものと、輝羅が放ったものとでは、マギシュートが発する圧があまりに違った。
「てめぇの技は、アタシの経験をなぞっただけってのがよぉく解ったぜ!」
 渾身の一撃を放った、輝羅が吠える。
「てめぇの技にはなァ! 立ち上がれなくなるまで繰り返した特訓の辛さも!」
 ――手のマメが潰れても、繰り返し放ったマギシュート。
「それでも尚、相手に届かなかった悔しさも!」
 ――好敵手に及ばなかったアタシ。
「絶対ェ強くなってやると、誓った想いも!」
 ――超えるべき壁が、明確に見えたあの日。
「そして何より!リンドヴルムとの絆を感じねェ!!」
 ――今日この日まで、共に歩んできた何よりの相棒。
 それら輝羅を形作ってきたもの全てが抜け落ちて、ただ上辺だけをなぞったシェイプシフターの技は空虚だ。
 そんなものに負ける訳にはいかないと、輝羅は己が闘志をますます高ぶらせて叫ぶ。
「輝け! リンドヴルム! アタシの魂と共に! 輝・龍・覚・醒!!」
 これほどまでに熱い想いに、相棒たるリンドヴルムが応えないはずはない。マギブレードと化して飛びゆくリンドヴルムはドラゴンウィングを解放し、より鋭い刃を展開してその殺傷力を増した。
「ブチ砕けェーーーーーーーーーッ!!!」
 リンドヴルムは輝羅に化けたシェイプシフターの胸元を下からえぐるように直撃、シェイプシフターの身体を天高く吹き飛ばす!
 そうして迷宮の床に投げ出されたシェイプシフターの身体は、いつの間にか元の姿に戻っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御狐・稲見之守
【御劔姫子f06748と同行】如何に猿真似しようとも所詮はひとり、なれば姫子殿よ力を合わせて……おや、姫子殿?(様子がおかしい様子に気付き)

[WIZ]七星七縛符、シェイプシフターの動きを封じさせてもらおうか。姫子殿、気を確かに持つのじゃ。ここは戦場ぞ、心乱せば命にかかわる……ワシの知る姫子殿はここにおる、そうじゃろ? 【手をつなぐ】ことで姫子殿を落ち着かせよう。

さて、改めて用意は良いかの姫子殿。ワシが動きを封じるのでその隙に彼奴に斬り込むのじゃ。なに、いつもの姫子殿ならやれる。信ずるぞ姫子殿。


御劔・姫子
(※姫子は、過去のシナリオで生き別れの双子の妹(姫子自身は妹がいたと言う事実を知らない)の幻覚を見たため、『自分と同じ姿の幻覚等』を見ると動揺します)

っ!? またこないなの…っ! はよぅ消えてっ! 【表奥義・蛟卸し】っ!!
…えっ!? よ、避けられたっ?ど、どないしよっ!?

えっ、御狐はん(f00307)? (【手をつなぐ】)
…大丈夫、落ち着いたさかい。 目の前におるんが偽物でも、幻でも…うちは構わへん…。
うちを信じてくれはる人がおるんなら…うちはその人を信じるっ!
【禁じ手・鏑劔】…御劔の技やない、うち自身の技…。これで迷いを…裁ち斬るっ!!

(※連携希望、アドリブ歓迎です)



「グギギ、マダダ、マダオワルワケニハ……! オレはキョウシッタオマエタチのチカラデ……、もっと強くなるんや……!」
 いまやシェイプシフターは満身創痍である。それでもなお、貪欲に力を求めるシェイプシフターが次に選んだターゲットは、御劔・姫子(はんなり剣客乙女・f06748)だった。
 化ける様子を見た稲見之守は、もはや何度目だと鼻で笑う。こちらの力を写し取ることは脅威だが……、ただそれだけのこと。
「如何に猿真似が上手だろうとも所詮はひとり、なれば姫子殿よ力を合わせて……おや、姫子殿?」
 協力すればいかようにでも片付けられよう。そう考えて信頼する相方である姫子へと視線を向けたところで、異変に気づいた。
「っ!? またこないなの……っ! はよぅ消えてっ!」
 シェイプシフターが姫子の姿を取った直後から、姫子の視界には己を模した姿しか見えていなかったのだ。稲見之守に声を掛けられたことになど気づかずに、姫子は身体をわななかせて駆け出していた。
「 『表奥義・蛟卸し』っ!!」
 恐れか、憎しみか、あるいはまた別の感情か。うまく分離できない焦燥感に駆り出され、僅かたりともその姿を見ていたくはないと、手にした剛刀で斬りかかったが……。
「……えっ!? よ、避けられたっ? ど、どないしよっ!?」
「うちがそんなに怖いん? ……そう」
 乱れた心で振るう刃は、あっさりと躱された。シェイプシフターは浸け込む隙を見つけたと、唇を歪めて笑う。
「少し黙っておるのじゃ!」
 稲見之守は七星七縛符をシェイプシフターに投げ放ち、姫子を背中にかばうようにして間に介入した。
 命中した七星七縛符は、シェイプシフターを無事捕縛できたようだ。だが、いつまでも続くものではない。この一瞬を無駄には出来ぬと、稲見之守はシェイプシフターに背中を向けて姫子に向き直った。
 姫子の視線は、いまだ己と同じ姿を憎々しげに見つめているだけで、稲見之守が傍にいることにすら気づいてはいない。そんな姫子の手を、刀を握った上から両の手で優しく包み込み、優しく、されど強く、声を掛ける。
「姫子殿、気を確かに持つのじゃ。ここは戦場ぞ、心乱せば命にかかわる……ワシの知る姫子殿はここにおる、そうじゃろ?」
「えっ、御狐はん?」
 稲見之守の真摯な呼びかけは、姫子の心を無事に呼び戻した。ようやく稲見之守の存在に気付いた姫子は、大きくひとつ深呼吸をする。
「……大丈夫、落ち着いたさかい。目の前におるんが偽物でも、幻でも……うちは構わへん……」
 その瞳の奥に正気の光を見て取って、稲見之守は強く頷いた。ならば、やることはひとつ。
「さて、改めて用意は良いかの姫子殿。ワシが動きを封ずるから、その隙に彼奴に斬り込むのじゃ。なに、いつもの姫子殿ならやれる。信ずるぞ姫子殿」
「うちを信じてくれはる人がおるんなら……うちはその人を信じるっ!」
 稲見之守の手が姫子から離れ、姫子もまた、刀を構え直す。
「小癪な……! やけど、次に封じられるのはあんさんや!」
 すでにシェイプシフターは、七星七縛符の束縛から逃れていた。そして覚えたばかりの七星七縛符を逆に姫子たちへと投げ放つ!
「なんの……! もう一度封じてくれるのじゃ」
 稲見之守もまた、とっさに前に出ながら七星七縛符を投じた。ふたつの七星七縛符は、稲見之守とシェイプシフターの身体を互いに束縛し……。
「ワシのことは構うな! 今こそ彼奴を斬るのじゃ!」
 姫子は稲見之守の言葉に背中を押され、懐に秘めた守り刀を投じた。そしてその後を追い、振り上げた剛刀を手に、全力で踏み込む。
「『禁じ手・鏑劔』……御劔の技やない、うち自身の技……。これで迷いを……裁ち斬るっ!!」
 投げ放たれた守り刀は、シェイプシフターの胸元へと吸い込まれていく……! シェイプシフターは逃れようとするが、稲見之守の七星七縛符に封じられ、身動きがとれない。
 続く姫子の袈裟斬りは、避雷針に落ちる稲光のごとく、胸元に突き立った守り刀目掛けて振り下ろされた。
 迷いのない深く鋭い一撃に、姫子に化けたシェイプシフターの身体は斜めに両断され――、やがて元の黒い姿となって、それすらも風の中に溶けていく。
 そのさまを見届けてから姫子は守り刀を拾い上げ、懐の鞘へと収めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『猟兵達の戦闘訓練』

POW   :    肉体を鍛える訓練をする。

SPD   :    速さや技量を鍛える訓練をする。

WIZ   :    魔力や知識を高める訓練をする。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍により、オブリビオンの攻勢は無事に食い止められた。
 攻め寄せてきたのは、無闇矢鱈と数の多い敵に、こちらの姿を写し取り、技すらも模倣してくる敵。いずれも癖の強い相手だっただけに、その戦いを振り返れば学ぶことも多いだろう。
 この経験を次に活かす。それもまた、猟兵たちの大事な仕事だ。
 場所と時間は十分にある。
 ――さて、どうしようか。
御狐・稲見之守
【御劔姫子f06748と手合わせ】
見事であった姫子殿、もう大丈夫じゃの。先ほどの礼として手合わせ願おうぞ。一度やってみたくての…ワシに勝てば「今雷光」「神斬り」と名乗れるやもじゃぞ。

荒魂顕現、来たれ「風の乱気流」「氷の大隆起」ワシを中心に周囲一帯を暴風と隆起した氷で覆い「稲妻の嵐」で姫子殿を追い立てようぞ。並の武芸者ならば近付けず構えることも儘ならんよ。並の武芸者なら、じゃが。さあ姫子殿、ワシはここぞ!一太刀浴びせてみせよ!

ふふ、人間とは愛しきものよ。短き一生の中でいくら転び倒れようと立ち上がり歩みを進める。そしていつの世もアヤカシを討つのは人間、なればその命の輝きその道理、今ここに試そうぞ。


御劔・姫子
【御狐さん(f00307)と手合わせ】
御狐はんっ、今日はほんまにありがとうなぁ。お礼したいさかい、何でも言ってな?…え?手合わせ?うちで良かったらいくらでもえぇよ♪

【POW】
――御狐はんとは何度も一緒に戦ってきたさかい戦い方は分かる。一番の怖いんは荒魂顕現…大きな自然現象を盾にされたらうちは近づけへん。
でも、【表奥義・蛟卸し】…水害の化身を斬ったとされるこの技やったら、嵐も斬って前に進めるはずっ!
【第六感】【ダッシュ】【見切り】【残像】の全部を駆使して、近間に入れたんなら【妙手・風紅葉】参乃型(命中率重視)…と、見せかけて【鞘撃・室玄能】で仕掛けるっ!
これがうちが今出せる全力…受け取ってっ!



「見事であった、姫子殿。もう大丈夫じゃの」
「御狐はんっ、今日はほんまにありがとうなぁ。お礼したいさかい、何でも言ってな?」
 無事に試練を乗り越えた姫子へと、稲見之守は慈しむように笑いかけた。姫子の方も憑き物が落ちて、すっきりとした明るい笑顔を見せている。
「ほぅ、何でも? ふふふ、言ったな? 今から後悔しても遅いでの……、いや冗談じゃ。ならば、先ほどの礼として手合わせ願おうぞ」
 わざとらしく黒い笑みを見せてから、真摯に告げる。
「……え? 手合わせ? うちで良かったらいくらでもえぇよ♪」
「そうかそうか、一度やってみたくての。……ワシに勝てば『今雷光』あるいは『神斬り』と名乗れるやもじゃぞ」
「いややわぁ、からかわんといて。ほな、はじめよか」
 姫子はそう躱したが、さて、稲見之守はどこまで本気であったろうか。

 稲見之守と姫子は程々の距離をとって向き合い、一礼した。
 姫子は抜き放った剛刀を正眼に構え、稲見之守に目を向ける。
(「――御狐はんとは何度も一緒に戦ってきたさかい戦い方は分かる。一番の怖いんは荒魂顕現……大きな自然現象を盾にされたらうちは近づけへん」)
 ならばここは、先手を取りに行くべきだろうか。
 ――否。
 稲見之守はきっと、己の技を正面から打ち破ってくることを期待しているだろう。ならば、逃げるような真似は出来ない。
 そんな姫子の思いを知ってか知らずか、稲見之守は悠々と詠唱する。
「我成す一切神事也、天裂き地割る神業畏み畏み奉願祈るべし。――荒魂顕現、来たれ『氷の大隆起』、並びに『稲妻の嵐』!」
 詠唱が進むに従って、稲見之守の周囲を妖気が渦巻く。そして、限界まで妖気が高まったとき、大地から隆起した氷柱が稲見之守を囲うように乱立し、にわかに暴風が巻き起こった。暴風は雷雲を呼び、稲妻を孕み、姫子をこの領域には立ち入らせまいと追う。
「並の武芸者ならば近づくことはおろか、構えることすら儘ならんよ。並の武芸者なら、じゃがの。さあ姫子殿、ワシはここぞ! 一太刀浴びせてみせよ!」
 氷柱の狭間から、稲見之守の大音声が響いた。姫子は目を閉じてその声を聞きながら、ただ静かに気を高めていく。
(「確かに、あれを押し通るのは楽やない。でも、【表奥義・蛟卸し】……水害の化身を斬ったとされるこの技やったら、嵐をも斬って前に進めるはずっ!」)
 姫子の中で、己の刀が嵐を斬るさまが像を結んだ。ならば次は、この像を現実に投影するだけだ。
 目を見開いた姫子が、嵐の只中へと駆ける。嵐の中を奔る稲光を恐れることなく、剛刀を振り上げた。
 斬るべき相手は形あるものではない。だが斬れる、斬れるのだ。
「これが御劔の技……奥義・蛟卸しっ!」
 裂帛の気合を込めて振り下ろす剛刀から、剣気が迸る。迸った剣気はその刃が届くもののみならず、その剣閃の先の先まで全てを真っ二つに断ち、現象すら絶った。
 斜めに斬られた切断面で滑り落ちる氷柱の影に、稲見之守の顔が見えた。刀を構え直し、そこへと真っ直ぐに距離を詰めていく。
(「ふふ、人間とは愛しきものよ。短き一生の中で何度転び倒れようと、幾度でも立ち上がり歩みを進める。そして、いつの世もアヤカシを討つのは人間である。なれば、その命の輝きその道理、今ここに試そうぞ」)
 またたく間に近づいてくる姫子を見、稲見之守は感情が沸き立つのを感じた。だが、まだだ。まだ、その先を見せてもらわなければならぬ。
 霊刀を構えて待ち受ける稲見之守へと、姫子は刃を振るった。嵐を斬り裂いた一撃とは打って変わり、その太刀筋を容易に読ませぬ変幻自在の柔らかな刃である。
 だが稲見之守は右手に握った霊刀でそれを受けきってみせた。左手が結んだ印には稲光が迸っており、それを姫子へと差し向けようとする――。
「あと一歩じゃったの」
「まだや、まだ終わりやない!」
 姫子の左手が剛刀の柄から離れ、腰の鞘を逆手に握る。
「――室玄能っ!!」
 至近距離で引き抜かれた鞘の先が跳ね上がり、稲見之守の顎先を撃つ寸前で止める。
「……これが、今うちに出せる全力や」
「ああ、姫子殿。たしかに、たしかに受け取ったぞ」
 武器を下ろした姫子は、荒い息をつく中でにこりと笑ってみせた。対する稲見之守もまた、とても満足そうに頷いて満面の笑みを見せたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シエル・マリアージュ
「涼香さん、相手お願いしてもいいかな?」
朱の大太刀、その大太刀の扱う涼香さんに興味があったから。
涼香さんに朱の大太刀で練習相手をお願いして、私は黒剣の二刀流で【2回攻撃】に【フェイント】や射撃の牽制などを交えた私らしい戦い方で挑みます。
訓練の後は、お茶でも飲みながらお話しない?クッキー用意してきたんだ。
「その大太刀を軽やかに扱えるのは、刀の重量バランスとそれを熟知した動きかな?その姿が綺麗だった!」
剣技だけでなく覚悟のある踏み込みや鋭い一撃が涼香さんの強みかな、そんな互いの動きの評価とか刀剣の話とか話ながら楽しい時間が過ごせたらいいな。
「また、こうして話が出来たらいいな」



 相手をお願いしてもいいかなと涼香を誘い出したシエルは、先ほどまで戦っていた迷宮の隅で涼香と向かい合っていた。
「シエルさん、訓練にお誘いいただきましてありがとうございます」
 そう一礼して大太刀を抜いた涼香に対し、シエルは二振りの黒剣を構える。
 シエルとしては、大太刀という武器を使う涼香に興味があったのだ。比較的似た傾向の能力を持った2人だが、戦闘スタイルは両極とも言ってよいほどに離れていると思えた。
 何にせよ、肌身で感じるには実際に刃を交えてみるに限る。
「それじゃ、遠慮なくいくよ」
「いつでもどうぞ」
 シエルは言葉を交わしてすぐに、一気に間合いを詰めた。
 相手の武器は長物だ。間合いで負けるが、内に入り込めればしめたもの。
 あえて防御させようと、左手の黒剣を突いて応答を探る。涼香は大太刀を薙ぎ、突きを払いながら斬撃を仕掛けてきた。
 シエルは自分から左手を引きながら、斬撃の外側を回り込む。懐に入り込めば、もう大太刀は振るえない。右手の剣を振り下ろす――が、後ろに跳ばれて躱された。
 すぐさま黒剣を銃に変形させて、射撃。向こうから距離を詰めてきてくれれば、その勢いを利して間合いを詰め返してやろう……。

 ひとしきり訓練を終えたら、次はおしゃべりの時間。
「お茶とクッキーを用意してきだんだ。すこしお話していこうよ」
「わあ、準備がいいですね。もちろん、喜んで」
 落ち着ける片隅に敷物を敷いて、並んで座ったふたりは、お茶で乾杯した。
 香ばしいクッキーを頬張りながら、先ほどの訓練を話題にする。
「大太刀を軽やかに扱えるのは、刀の重量バランスとそれを熟知した動きかな? その姿が綺麗だった!」
「この一刀を長らく使ってきたおかげでしょうか。……綺麗だなんて言われると照れてしまいますが」
「それに剣技だけじゃない。思い切りの良い踏み込みや、鋭い一撃が涼香さんの強みかな」
「基本的に猪武者なだけですよ。だいたい最後は大太刀に頼りますから。……シエルさんは、多彩な武器を使いこなされて、引き出しが多いですよね。どこから攻撃を仕掛けられるか読めなくて困りました」
 少々話題に偏りがあったが、それも猟兵ならでは、か。しばらく話していたふたりだったが、お茶が尽きたところで、解散することになった。
「また、こうして話が出来たらいいな」
「ええ、本当に。楽しいひと時でした」

大成功 🔵​🔵​🔵​

デナイル・ヒステリカル
今回はこちらの手札を真似てくるオブリビオンを倒すため、見せていない伏せ札を利用しました。
しかしこの方法、本質的には敵を凌駕したとは言えません。
なぜならばこれは初見殺しでしかないからです。

手品が通じるのはトリックが知られていないから。
もし次にまた同じオブリビオンが発生し、僕の攻撃パターンを覚えていたとしたら……。

あまりこういった事は好みませんが、やはり戦闘行動を洗練させるしかありませんね。
今回の戦いのログを読み込んで、次に備えることとします。



 デナイルは喧騒から離れ、岩に腰掛けていた。思い返すのは、先ほどの戦いのことである。
 先ほどはこちらの手札を真似てくるオブリビオンに対して有利に立つため、伏せ札を用意していた。それが見事にはまり、隙を突くことが出来たのだ。
「……けれど、この手では本質的に相手を凌駕したとは言い難いでしょう。初見殺しでしかないのですから」
 手品が通じるのは、トリックが知られていないからに過ぎない。用意できるトリックはいつか尽きるだろう。
 そのとき、こちらの手の内を知り尽くした敵、例えば今回の敵が何度も立ちはだかったとしたら、果たして、今回のように勝てるだろうか。
 ――それは怪しいと言わざるを得ない。
 ならば、どうするか。
「……やはり戦闘行動を洗練させるしかありませんか。こういった訓練は、あまり好みではないのですが」
 バックアップメモリから読み込んだ先ほど戦闘記録を、電脳ゴーグルに映し出して、自分がどのように行動したか、仲間たちがどのように戦っていたか反芻する。
「――手の使い方を、多様にしてみる。あるいは、他の手と組み合わせてみる。そうすればパターンは……」
 あの時、何を考えていたか。他に手の打ちようはなかっただろうか。デナイルはひとり静かに、この戦いでの動きを、あるいはそのイフを考える。
 いつか来るかも知れない、極限の状況に対応するために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

萌庭・優樹
【roost】

景正さんお仕事お疲れ様ですっ
皆でお稽古がんばるぞ!

おれの得意はダガーとガジェット
代用に短い枝と…指鉄砲?

小回りと素早さ勝負で
初手から攻めるのがおれのやり方
不意の【盗み攻撃】で懐を裂き
返る攻撃は【見切り】で回避
遠距離はガジェットでばーん!

って動きが常套なんですが
み、皆さんの堅い守りは崩せないし
おれはガードがガラッガラ…

景正さんの剣は揺るがぬ基本の大切さ
オルハさんのカウンターは感覚と業の鋭さ
エリカさんの盾受けは守りと気概の強さ

戦術に顕れる色は違えどお強く
何より皆さん隙が無い…

ああッこれはもう学ぶとこだらけ
隙の埋め方、ご指南くださ――い!

…お勉強は大事で
でも何より、とっても楽しいですっ


エリカ・ブランシュ
【roost】
手合わせでは相棒の盾の代わりに木製のお鍋の蓋を使うわ!

【オーラ防御】で体の守りを固めてから【盾受け】でチャンスがくるまでひたすら耐えるわ。
アタシには皆みたいに攻める技術はないけど、どんな攻撃だって恐れない【勇気】と【覚悟】はあるんだから!
あとは攻撃に耐えながら距離を詰めれたら盾で寸止めの一撃を決めたいところ。

基礎を大切にして極めたからこその洗練された動き
一瞬の油断も出来ない早業による反撃の鋭さ
速さを活かした遠近柔軟な翻弄してくる戦術
攻撃って上手く行えばここまで隙が無くて個性も出せたりするのね。
「これは皆に攻撃の仕方を教わるチャンスね!」

今日は楽しかったし、また手合わせしたいわね!


オルハ・オランシュ
【roost】
みんなで稽古を兼ねた手合わせ
三叉槍のかわりに長い木の枝を使うね

【早業】の【カウンター】が一番得意
出方を窺うような攻防を経て
相手の大技を待ってから体勢を整えられる前に素早く突くの
もちろん今日は寸止め
受ける攻撃は【見切り】か受け流しで凌ぎたいけど
渾身の一撃が来たらそう上手くはいかないかも

流石……!景正みたいに基本を極めるのは大事なんだね
感覚だけで槍を使うの、そろそろやめるべきかな
エリカの護りは誰よりも鉄壁だったし、
優樹の相手を翻弄する立ち回りも凄いよ

見学してて圧倒された戦法はべた褒め
だって本当に凄いと思ったんだもの

みんなで出掛けられた上に手合わせまで!
ふふ、得る物の多い時間だったなぁ


鞍馬・景正
さて、感覚の残る内に稽古するとしましょう。

◆訓練
【roost】の方々と合流。
全員と交代で手合わせして参ります。

◆試合
木太刀で攻防しながら、隙あれば鞍切を寸止めで披露いたす。

間合、呼吸、剣筋――全てを基本のまま繰り出す初歩にて奥義。
正剣も極めれば如何なる魔剣妖術にも勝るという当流の考えを代表する型です。

見学の際は一手一挙動を観察し、出された技や動きは試合後に詳しく伺いたいところ。
的確に後の先を狙う隼と飛燕の如き沈着さ、堅牢不抜なる護りからの堂々とした反撃、遠近隙なき捷径なる機動――驚かされるばかりです。

――しかし真剣勝負を生き残った喜悦にも勝り、仲間と高め合う稽古の何と清々しき事か。



 景正は【roost】の仲間たちを招き入れ、訓練を行うことにした。
「景正さん、お仕事お疲れ様ですっ」
 元気に声をかけてきた優樹を筆頭に、エリカ、オルハがやってくる。
「景正、疲れてない? 大丈夫?」
「心配ご無用。むしろ、感覚の残る内に稽古しておきたいですからね」
 エリカは少々景正を心配するが、快活に笑う姿を見て安心した。
「それなら良かったよ。遠慮なく、やらせてもらうからね」
 とオルハもまた明るい笑顔を見せたところで、さっそく訓練開始。まずは優樹とオルハが手合わせをすることとなった。
「準備はいい? ……はじめ!」
 審判を買って出たエリカが、ふたりの間に立って合図を送る。
「それじゃ、いきますよ!」
 直後、短い木の枝を手に優樹が駆け出した。
「ええ、優樹の技を見せてよ」
 相手の出方を見ることに決めていたオルハは、自然と受けに回る。
 オルハが手にするのは三叉槍――の代わりに長い木の枝だ。間合いに踏み込めなければ勝負にならない優樹は、軽快なフットワークでオルハを惑わしにかかった。
 真っ向から突っ込む、と見せて中途で真横に跳ねとんで側面を狙う。こちらの動きに嫌気が差した相手が不用意な攻撃でもしてくれれば、その隙を盗み、一気に懐まで潜り込む心づもりだ。
 だが対するオルハは枝を身の近くに引きつけて、受けに徹しており、なかなか誘いには乗ってこない。
 埒が明かないと優樹は、今度は遠距離攻撃を仕掛けた。
「えいっ!」
 飛ばしたのは、弾丸代わりの木の実数個である。
「……!」
 不意に飛んできた飛来物を、オルハは枝で払った。
 ……ここだ! もう、ここしかない! 覚悟を決めた優樹は加速して、枝の下を潜り込んで懐に潜り込もうとする。
「そうはさせないよ!」
 けれど、オルハの得意技はカウンターである。素早く手元に枝を引きつけ、オルハの進路上目掛けて突き出した。
「ひゃあ!」
 慌ててブレーキを掛け、尻餅をついた優樹の眼前で枝先は止まる。
「これはオルハの勝ちね!」
 そしてエリカの審判が明るく下されたのだった。

 続いては、エリカと景正の手合わせである。
「よし、はじめ!」
 今度はオルハが審判を務めることになった。
 先ほどの速度に乗った勝負に比して、エリカと景正の立ち上がりはゆっくりだ。相棒の盾の代わりに木製のお鍋の蓋を持ったエリカと、すらりと長い木太刀を手にした景正がじりじりと間合いを詰めあっている。
 先に仕掛けたのは景正だ。
「セイッ!」
 気迫を込めて振り下ろされる木太刀を、オーラに覆われて防御力を増したエリカの盾――ではなくて鍋の蓋が受け止めて、乾いた音を立てた。景正はそのまま、牽制を交えつつ幾重にも剣閃を重ねるが、その全てを鍋の蓋は的確に受け止めた。
 エリカにとって攻めは得手ではないが、守りには自信がある。どんな攻撃が来ようとも、それを恐れない勇気と覚悟で受け止めて、跳ね返すのだ。
 そして一撃を受け止めるごとに、エリカはわずかずつ間合いを詰めていった。詰めた距離を離されぬよう、景正の動きに食らいついていく。
 ――そしてついに、間合いの短い鍋の蓋で、景正を狙える位置まで詰め切った。ずっと防御に徹してきた。それもここまでだ……!
 鍋の蓋が、ついに牙を剥いた。平たい面を景正を打ち付けるべく、空気を割いて蓋を振るう。
 しかし、それは最大の隙でもあった。
 詰め切られた間合いにあって、その隙間を縫うように景正の木太刀が走る。いや、自然に捌かれた躰が、木太刀を振るう余裕を作り出している。幾度となく繰り返された素振りによって景正の躰に染み付いた型に沿って、淀みなく木太刀を振るい、鍋の蓋を跳ね上げて、エリカの首元へとその切っ先を突きつけた。
「――これが鞍切にて」
 間合、呼吸、剣筋――全てを基本のまま繰り出す初歩にて奥義。正剣も極めれば如何なる魔剣妖術にも勝る、その思想を形にした型であった。

 それからしばしの間、相手を入れ替えながらの手合わせが続いた。
 それも一段落ついたところで、怒涛の反省会に突入する。
「おれはどうでしたっ!?」
「優樹の相手を翻弄する立ち回りは凄いよ。いつ回り込まれるかってヒヤヒヤしたもの」
「でも、皆さんの堅い守りが全然崩せなかったし、おれは逆にガードが……」
「そうは言うけど、速さを活かした遠近柔軟な翻弄してくる戦術を相手にするのは、ずっと気を張り詰めてないといけないから大変よ」
「ええ、遠近隙なき捷径なる機動、良いものを見せてもらいました」
 どんなに褒められても、結局一撃も入れられなかった結果からは学ぶことがいっぱいだと必死な様子だったり。
「次はアタシでいい?」
「エリカの護りは誰よりも鉄壁よね」
「堅牢不抜なる護りからの堂々とした反撃、なかなか出来ることではありません」
「守りと気概の強さのまえにタジタジでしたっ」
「みんな、守りを褒めてくれてありがとね。でも、課題は自分でもわかってるの。ねえ、攻撃の仕方を教えてくれる?」
 自分が次に何を学ぶべきか、はっきりと見出していたり。
「私の感想も聞きたいな」
「キレッキレな技の前に、おれじゃ為す術もなかった……」
「ほんと、早業からの鋭い反撃が怖くて、一瞬の油断も出来なかったわ」
「的確に後の先を狙う隼と飛燕の如き沈着さ、といったところですね。安易に踏み込めば、その瞬間に突かれそうでした」
「実はこっちも結構ヒヤヒヤしてたんだよ。ギリギリでなんとか受け流した、なんてことばかりだったし」
 実情を素直に明かしてみたり。
「景正はさ、見てると基本を極めるのは大事なんだって実感する。私も感覚だけで槍を使うの、そろそろやめるべきかな」
「ちょっと翻弄しようとしたくらいじゃ、微塵も揺るぎませんもんね」
「その洗練された動きは、基礎の積み重ねの先にある。アタシも頑張らなきゃね」
「基礎を重んじるは、まさに当流にとって大事な考え方。参考になったなら幸いです」
 最後まで落ち着いていたり。
 三者三様に弁を述べたが、皆が今日の手合わせに満足していたことだけは一緒だった。
「今日でよくわかりました。……お勉強は大事だって。でも何より、とっても楽しかったですっ」
「得るものが多い時間だったよ。私も満足」
「ええ、また手合わせしたいわね!」
 そんな様子を見て、景正は得心する。
(「――しかし真剣勝負を生き残った喜悦にも勝り、仲間と高め合う稽古の何と清々しき事か」)
 この時間のかけがえのなさと、心許せる仲間たちのありがたさに感謝して。
 皆でなおも語らいながら、帰路につく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

九龍・輝羅
技術と経験が同じっつー猿真似野郎との戦いを自分なりに分析するぜ。

アタシはヤツが持ってないメンタルの部分で勝った。
力と技術が同一でメンタルが強い方が勝つなら、
メンタルが同一なら力と技術が高い方が勝つって事だ。

そして、メンタルがアタシと同じかそれ以上の連中なんて、そこらじゅうにゴロゴロいる。

ならば、あとはそのメンタルをねじ伏せるだけの力を身に着けるだけだ。

うん、単純な事だな!

マギブレードの基本は素振りだ。
腰を落とし、ランチャーを構え、ストリングを引く。
これを1000回。
更に腕に徐々に重りを追加していく。
腕が上がらなくなってからが本番だぜ。

アタシとリンドヴルムは、まだまだ上に行けるハズ!!



 ――自分が猿真似野郎に勝てたのは何故だったのか。
 輝羅は深く自問自答する。
 力も技術も、同じであったはず。なにせヤツは自分をコピーしたのだから。そんな相手と自分の間で、どうして勝敗が分かたれたのだろう。
(「メンタルだ。ヤツはメンタルの強さを持ってなかった。つまり力と技術が同一でも、メンタルが強ければ勝てる」)
 ならば、逆にメンタルが同じか、それ以上な相手だったら? そんな相手は、きっとそこら中にゴロゴロといるだろう。
(「メンタルで勝てないなら、そんときゃメンタルを力でねじ伏せてやりゃあいい。うん、単純なことだな!」)
 どこかひとつ、相手を上回れるところがあるのなら、そこで勝てばいい。それは輝羅らしいシンプルな回答だった。
 なにより、何をすればいいかわかりやすい所が良い。メンタルをねじ伏せるだけの力を身につける。それはつまり、いつも輝羅がやっていることに他ならない。
 納得した輝羅は立ち上がり、いつものルーチンを始めた。
 マギブレードの基本は、何をおいても素振りである。
 腰を落とし、ランチャーを構え、ストリングを引く。
 それをひたすら愚直に1000回。腕につけたウェイトを、段々と増していくことも忘れない。
 そうやって素振りを続けていれば、疲れた腕はいつか上がらなくなる。
 ――そこからが本番だ。限界を超えるためには、限界を迎えなければならない。輝羅はいつだってそうやって鍛えてきた。
「アタシとリンドヴルムは、まだまだ上に行けるハズ!!」
 輝羅は自分に限界なんてないと、本気で信じていた。そして、そう信じている限り、本当に限界は来ないだろう。
 今日も輝羅は明日のために、トレーニングを積み重ねるのだった。

 猟兵たちはそれぞれに戦いを振り返り、あるいは訓練を重ね、大事な学びを得た。それを活かす機会には、きっと事欠かない。
 オブリビオンが我が物顔に闊歩する世界がある限り、猟兵たちの戦いに終わりはないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月01日


挿絵イラスト