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希望へと続く道~自由と尊厳のために

#アポカリプスヘル #希望 #希望へと続く道 #ロージスシティ


● グリモアベースにて
 天使像の中で生きているフラスコチャイルドを救い出す。
 猟兵達の決断に頷いたパラス・アテナ(都市防衛の死神・f10709)は、グリモアで収集した情報を伝える前に現状を確認した。
「現場は、アポカリプスヘルにあるロージスシティ。この街の周囲には、オブリビオン・ストーム多発地帯と呼ばれる危険地帯がある」
 昼夜を問わず発生するオブリビオン・ストームがこの地域一帯を完膚なきまでに破壊し、人の侵入を拒んでいる。無謀にもこの地帯へと足を踏み入れようとする探索者を止めるため、猟兵達は決死の踏破行を敢行。無事に物流倉庫へと辿り着いた。
 だが、そこには人が住んでいた。周囲をオブリビオン・ストーム多発地帯に囲まれた街は不思議とオブリビオンの襲撃もなく、比較的平和で豊かな街だった。
 この街を、オブリビオンが襲う。オブリビオンの襲撃を退けた猟兵達は、街の守り神として信仰を集める天使像に、ある秘密が隠されていることを知った。
 パラスはグリモアで映し出した天使像を見た。
 そこに映し出される、荘厳な祭壇と天使像。ゆったりとしたローブを纏い、憂いを帯びた微笑みを浮かべる有翼の女性像の中に、生きたフラスコチャイルドがいるという。
「この像を置いたのは、「教授」と呼ばれた男。青い目をした初老の男らしいが、詳しいことは分からない。この街が巨大なオブリビオン・ストームに飲まれそうになった時にフラリと現れて像を設置した」
 設置された天使像は迫るオブリビオン・ストームを吸収し、街を守った。
 だがそれ以降、この街の周囲にはオブリビオン・ストーム多発地帯が発生。その代わりこの街はオブリビオンや人間のならず者達の襲撃もなく、平和で豊かな生活を送れている。
 だが、この像を狙ってオブリビオンが大規模な襲撃を仕掛けてきた。大本が叩けない今、次はいつ襲われるか分かったものではない上に、その時予知が間に合う保証もない。
「……何よりこの子は生きている。理不尽を見過ごす訳にはいなかい。そうだろう?」
 確認するように見渡すパラスの視線に、猟兵達は力強く頷いた。

● 自由と未来のために
 決意を新たにする猟兵達に頷きを返したパラスは、表情を曇らせると一つため息をついた。
「この像のことをグリモアで見てみたが、必ず救出できるという確証は無かった。だが、救出できてもできなくても戦闘は発生する。この像が吸収してきたストームの残滓が、全てを破壊しようと襲いかかってくる。戦いの準備を怠るんじゃないよ」
 パラスの警告に、猟兵達は深く頷く。フラスコチャイルドの救出が成功したら、彼女を守りながらの戦闘が予想される上に、ここは街の中心部。絶対に負けられない戦いになるが、それで怯む猟兵たちではなかった。
 頼もしそうに猟兵達を見たパラスは、予知の最後に響いた言葉を猟兵達に伝えた。
「去り際に教授が言ったこの言葉に、フラスコチャイルドは深く影響を受けている。参考になるだろう」

 ーーせめて年に一度くらいは、この子のために音楽を奏でてやってくれないか? 歌が好きな明るい子でね。きっと喜ぶ。

 その言葉通り、この街では年に一回盛大な祭りが開かれた。にぎやかに音楽が流れ、人々は歌い、踊り、飲み食べ騒ぎ、天使像に感謝を捧げる。
 この祭りは、いつしかこの街の人々の支えにもなっていった。
 例年ならば祭りが終わり次第閉鎖される教会だが、今年は違った。祭りの最終日にあった襲撃の後も解放され、人が出入りしている。
 フラスコチャイルドは起きているかも知れない。そんな憶測が成り立った。
「情報は以上だ。これっぽっちの情報で訳の分からない機構の天使像から生きたままフラスコチャイルドを救出する。分の悪い賭けだが、最善を尽くすんだ。それがアタシ達にできる唯一のことだからね」
 パラスは資料を閉じると、グリモアで猟兵達を転送した。


三ノ木咲紀
 オープニングを読んでくださいまして、ありがとうございます。
 アポカリプスヘル三部作の第三部をお届けに参りました。
 第一部、第二部を読まなくても問題はありません。あらすじはオープニングの通りです。

 希望へと続く道~危険地帯踏破行( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=21023 )
 希望へと続く道~取捨選択の狂躁曲( https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=22075 )

 今回は、ほとんど情報が無い状態からフラスコチャイルドを救出するということになります。
 そのため、判定は厳しめにさせていただきます。
 全体的に心情がメインのシナリオになると思われます。
 この天使像の機構は、機械と魔導両方の技術が応用されています。
 機械や魔導的なアプローチだけではなく、声掛け等もフラスコチャイルドに力を与え、成功率を高める助けになることでしょう。

 プレイングは断章投下後すぐお受けいたします。受付したプレイングはなるべく早くお返し致しますので、突然窓が閉まる可能性があります。
 単独での描写が多くなるかと思われます。
 連携プレイングは全てのプレイングを受領してから書き始めます。なるべくお待ちしますが、タイミングによってはお返しする可能性があります。
 なるべく揃えていただけると助かります。

 それでは。よろしくおねがいします。
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第1章 冒険 『自由と尊厳のために』

POW   :    力業で解放

SPD   :    素早く解放

WIZ   :    知恵で解放

👑11
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● まどろみのなかで
 闇の中で、フラスコチャイルドはいつも眠っていた。
 夢に見るのはいつも同じ。
 フラスコの中から見る歪んだ世界。わずかに伝わる振動。
 誰かがこっちを覗き込んでいて、目を歪めるとあちらの目の形も変わった。
 フラスコから出て「教育」を受けて。
 知っているのは、自分がいるのは「研究所」で。
 そこでは毎日たくさんの「実験」があって。
 「実験」は辛くて悲しくて、痛くて苦しくてしんどくてぐちゃぐちゃであぁ。
 たくさんの「きょうだい」達がいなくなったけど。
 最初に覗き込んでくれた「教授」が「うた」をうたってくれる時は「たのしかった」
 たぶん。だから生き残れたんだ。

 それからどのくらい経っただろう。
 今は夢ばかり見ている。いつのまにか、さいしょの場面に逆戻り。
 夢だって分かってるよ。夢じゃない自分がいるから。
 繰り返し繰り返す悪夢。でも自分をなくさないのは。
 くるしいことを「うた」が消してくれるから。
 「うた」はすき。「うた」を聞いていると「たのしく」なるから。
 ときどき。たまに。
 夢から覚めて聞こえてくる「うた」がだいすき。

 ……でも。なんだろう。
 いつもの「うた」じゃない「うた」がきこえる。
 「うた」を聞いても「たのしく」ならない。
 研究所にいたときみたいに悲しくなる。
 また眠ろうと思っても眠れない。たくさんの「おと」が入ってくる。
 悪夢が消えない繰り返さないこちらに気付いた怖いこわいコワイ。
 ーーそうして。じぶんのそばにこわいものがいることにきがついた。
エリス・シルフィード
アドリブ・連携可
実験体として閉じ込められたフラスコチャイルドね
…正直、機械・魔導技術は専門外
…でも、この子を救うために、私に出来る事はある
…教授が奏でられた曲が爪弾ければ一番良かったのかしら
…大丈夫
目覚めれば、あなたは一人じゃない
皆の想いが、あなたを寂しくなんてさせない
辛い気持ちにさせない
慰めて、寄り添ってくれる
…出ておいで
私達があなたを「まもる」から
その悪い夢から…こわいものから、あなたを守ってみせるから
だから、起きてきて
…一緒に生きよう?
春風のライラを楽器演奏しながら優しさ+祈りを籠めたUCを歌唱するわ
この歌は、傷ついた誰かを癒す歌
怖いものへの恐怖を和らげる…『天使の歌』だから



● 闇を照らすは天使の歌声
 天使像にそっと触れたエリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)は、そこから感じる恐怖の波動に目を閉じた。
 目を閉じ、耳をこらせば感じる恐れ。恐怖は恐怖を呼び、オブリビオンに力を与えてしまう。
 実験体として閉じ込められたフラスコチャイルド。この天使像には最新鋭の機械・魔導技術が使われていることが想像できたが、エリスは正直、専門外の分野だった。
(「……でも、この子を救うために、私に出来る事はある」)
 春風のライラを爪弾いたエリスは、美しい旋律を奏でた。
「……教授が奏でられた曲が爪弾ければ、一番良かったのかしら」
 フラスコチャイルドを癒やし、元気づけたという教授の歌。そのはじまりの歌ではないけれど、エリスの指はライラを奏でる。
 透き通る程に美しい心と体を癒す歌声が、教会に響き渡る。作業を進める猟兵達も手を止め、ひとときその歌声に聞き惚れた。

 ……大丈夫。目覚めれば、あなたは一人じゃない。
 皆の想いが、あなたを寂しくなんてさせない。
 辛い気持ちにさせない
 慰めて、寄り添ってくれる

 心を込めて一曲歌い終えたエリスは、沈黙する天使像に手を差し伸べた。
「……出ておいで。私達があなたを「まもる」から。その悪い夢から……こわいものから、あなたを守ってみせるから」
 エリスの決意は空気を震わせ、天使像を包む。未だに動かない天使像へーー天使像に眠るフラスコチャイルドへ向かって、エリスは続けた。
「だから、起きてきて。……一緒に生きよう?」
 フラスコチャイルドに優しく訴えたエリスは、祈りを込めた【天使の歌う交響曲(エンジェリック・シンフォニア)】を歌い上げる。
 この歌は、傷ついた誰かを癒す歌。怖いものへの恐怖を和らげる『天使の歌』
 フラスコチャイルドの手を取るように握ったエリスは、再び春風のライラを爪弾く。
 心を癒やす天使の歌声が、教会の中を高く低く響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​


● やみのなかで
 夢だと思ってた。こわいゆめ。
 でもゆめじゃなかった。だってこわいのはここにいる。
 ずっとずっと手招きしてる。こっちにおいでって。
 おまえもいっしょだって追いかけてくる。
 夢だから耐えられた。夢だから自分でいられた。
 だけど、ああ。現実だったなんて。
 闇が迫る。

 呑まれかけたフラスコチャイルドの意識に、美しい歌声が聞こえてきた。
 閉ざされようとした意識に差し込む、一筋の光。
 心を癒やす歌声が、フラスコチャイルドの心を支える。
『……出ておいで。私達があなたを「まもる」から。その悪い夢から……こわいものから、あなたを守ってみせるから』
 天空から差し込む一筋の希望に、フラスコチャイルドは目を開いた。
月水・輝命
アド◎
フラスコチャイルド……それが、天使の像として生きたまま、ここに。
昔、助けた女の子のように、いいように扱われている。そう考えるだけで、静かに憤りを感じますわね。
……必ず、助けますわ。

シンフォニック・キュアを兼ねて「歌唱」。歌うように語ります。
今までずっと、怖い思いをして過ごしていたことでしょう。
たった一人で、誰にも助けを求めることが出来ずに。
もっと、早く来られなくて、ごめんなさい。
でも、もうあなたは一人ではありませんわ。
「破魔」「オーラ防御」……わたくしの光を、あなたに送ります。
寂しさに震えることがないように。暗闇に怯えることのないように。
ですから……共に参りませんか? 光ある、未来へ。


ジフテリア・クレステッド
多分、あなたの事情を聞いて戦ったからこそ芽生えたこのUC…まずはあなたのために使うね。
UCを発動する事で私の体内の毒素を癒しの力に変換。【毒使い】としての技能を全て癒しの力に変えて天使像越しにその癒しの力を【優しさ】を込めて流し込む。「うた」が好きだって言うんなら【歌唱】付きでね。

ここからどんどん視力を失っていくけど代わりに私はなんでも成功する…!
【学習力】を利用して【救助活動】と【医学】の知識を完全活用。天使像の壊しても問題ない部分を【部位破壊】していく。魔導の知識なんてないけど、機械の無駄な部分を削っていくぐらいはできる…!

どうせ元から大して見えちゃいないんだ…例え光を失っても、君を…!



● 孤独な子供を癒やす歌
 教会中に響く美しい歌声に、澄んだ声が調和した。
 高く響く声に寄り添い声を響かせた月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、天使像を見上げながら歌うように語りかけた。
「今までずっと、怖い思いをして過ごしていたことでしょう。たった一人で、誰にも助けを求めることが出来ずに」
 語る輝命の脳裏に、かつて助けた少女の姿が浮かび上がる。
 あの少女もそうだった。周囲からいいように扱われ、意思も人格も否定されて辛い中に晒されて。
 天使の像として生きたまま、ここに。フラスコチャイルドとして生まれた少女もまた、同じ苦痛を背負っているのだろう。そう思うと輝命の心に静かな憤りが湧き上がった。
「……必ず、助けますわ」
 輝命が決意をもって語りかけた直後、天使像に変化が起きた。
 今まで何の変化もなかった天使像が、血の涙を流す。肚の底に響くような怨嗟の声が教会に響き渡り、祭壇から黒い靄が発生する。
 猟兵達の癒やしを、脅威と判断したのだろう。鳴動する祭壇は天使像を靄で包み、猟兵たちから引き剥がそうとする。
 弱くなる天使像のーーフラスコチャイルドの鼓動に、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は駆け寄った。
 天使像を包み込む靄をものともせずに手を伸ばす。黒い靄は無数の手となり足となり顔となり、ジフテリアを排除しようと身体に、心に襲い掛かる。
『この子を起こすな』
『連れ去るな同胞を』
『ストームを消すために』
『ストームから守るため』
『払われた私達の犠牲を無駄にするな!』
「うるさい!」
 黒い靄の声はジフテリアの精神に干渉し、ほんのわずかな距離、ほんの数秒の時間を無限に感じさせる。心を折る無限に抗った時、ジフテリアの耳に歌声が響いた。
 輝命達の歌が癒やしとなり、天使像を、ジフテリアを包み込む。歌われる重なる歌は魔を祓い、ジフテリアを精神干渉から救い出す。
「もっと、早く来られなくて、ごめんなさい。でも、もうあなたは一人ではありませんわ」
 輝命の光が、闇を祓う。黒い靄の夢の中眠ろうとしたフラスコチャイルドを、癒やしの歌声達は救い上げる。
 癒やしを込めて歌い上げる輝命の声に、天使像が淡い光を放つ。深い闇の中その光はいかにも頼りなく脆い。だが確かにあふれる光を感じた輝命は、その思いをジフテリアへも届けようと歌う。
 たった一人、躊躇なく闇へと飛び込んだジフテリアの背中。決して癒やされることのないジフテリアの傷は、輝命の手には余る。
 だが今は。今だけは。共に戦い共に歌う今だけは。ジフテリアにも癒やしを。孤独な彼女にも救いの手を。
「……わたくしの光を、あなたに送ります。寂しさに震えることがないように。暗闇に怯えることのないように。ですから……共に参りませんか? 光ある、未来へ」
 共鳴する輝命達の声に、ジフテリアは目を見開く。無限に続く混沌の闇を一人駆けていた彼女は、見えた白い希望に手を触れる。
 石膏の冷たい感触に、身体を強引に近づける。ついに靄の攻撃を抜けたジフテリアは、天使像に額を付けると目を閉じた。
 受け取った全ての思いを、魂の奥底から湧き上がった力を、ユーベルコードに乗せる。
「多分、あなたの事情を聞いて戦ったからこそ芽生えたこのユーベルコード……。まずはあなたのために使うね」
 静かに告げたジフテリアは、ガスマスクを外すと床に放り投げる。ジフテリアの呼気から溢れ出す毒素は天使像を蝕み、侵食するはずだった。
 だが、呼気から生まれたのは癒やしの力。毒使いとしての全ての技能を癒やしの力と変えて、歌として天使像へと送り込む。
 深い深い闇の中。聞こえてきた同胞達の声。
 生きているフラスコチャイルドだけじゃない。この子を生み出し生かすために、多くのフラスコチャイルドが犠牲になっている。額を通じて流れ込んでくる天使像の歴史を学び取ったジフテリアは、脳裏に浮かぶ情報を他の猟兵へと伝えた。
 ジフテリアには魔導の知識はないけれど、機械の無駄な部分を削っていくぐらいはできる。救助に必要な部位を、残すべき場所と壊すべき場所を特定して歌うように叫ぶ。
 天使像に額をつけたまま動けないジフテリアの代わりに破壊される祭壇に、靄の圧力が徐々に弱まる。
 閉じた目はもはや光を映さない。だけどそれでも構わない。
「どうせ元から大して見えちゃいないんだ……例え光を失っても、君を……!」
 ジフテリアの祈りにも似た叫びは、天使像を包む靄を少しずつ打ち消していった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



 開いた目に映るひとすじの光に、フラスコチャイルドは手を伸ばした。
 あの光から「うた」が聞こえてくる。いつもきこえてくる「うた」じゃないけれど。教授がうたってくれた「うた」じゃないけれど。
 どうしてだろう。あの光の方へ行けば、もっと聞けるかも知れない。
 聞きたい。聞き続けていたい。あの「うた」を。
 そう思うと、はじめてのきもちが胸に宿る。そうしてはじめて、自分がからっぽだったことに気付く。

『今までずっと、怖い思いをして過ごしていたことでしょう。たった一人で、誰にも助けを求めることが出来ずに』

 優しい声が聞こえる。そうかな。そうなのかな。
 たすけをもとめるとどうなるの? もっとうたを聞けるの?
 歩み寄るフラスコチャイルドを、小さな手が押し止める。
「いっちゃだめだよ」
 ああ。きょうだいたちだ。いなくなったきょうだいたちは、すぐそばにいたんだ。
 きょうだいたちが「うた」ってくれる。そうだね。「研究所」でも一緒にうたったね。
 あの「うた」は、きょうだいたちがうたってくれてたんだ。ならへいき。
 だんだん眠くなってくる。眠ろうとした時、ふいにきょうだいたちがいなくなった。
 眠気が覚める。またひとりだ。だれもいない。
 どうして? どうしていなくなったの? 眠らないとまたあの怖いのが……!
 がむしゃらに伸ばした手を、力強い手が握る。
「どうせ元から大して見えちゃいないんだ……例え光を失っても、君を……!」
 闇に響く「うた」じゃない声に、フラスコチャイルドは目を見開いた。
 
影見・輪
機械や魔導とは対極の位置にある存在の自分が
技術的なアプローチなどできるはずもない
だから、せめて声を届けるよ

逃げ続けてもいいけれど
そのままでは怖いままだ
覚悟を決めよう
そしてよく見るんだ
現実は確かに怖い
けれど
君をすくい上げる手だってここにある
あとは君がこの手を掴むだけ

僕もかつては箱の中に仕舞われていた
かつての自分は思っていた
自分にはどうしようもない現実があるなら
何も見えず何も聞こえない闇の中で、そのまま朽ちていった方がましだと

けれど
思いもよらず箱から出され
改めて向き合った世界は
諦めていたかつてとは違って見えた

だから君にも外の世界を見て欲しい
怖いものもある
けれど世界は思ったよりも悪いものではないから



● 鏡写しの少女
 靄が晴れて、天使像の姿が再び顕になった。
 天使像ーーいや、天使像があったはずの場所には、一人の幼い少女がいた。
 こちらに両手を差し伸べるように伸ばした腕の中には、卵型の大きなフラスコが抱かれている。ナス型フラスコとも呼ばれる大きなフラスコには液体が満たされ口は栓され、複数のチューブが天使像の奥へと繋がっていた。
 青白く輝く水の中で胎児のように丸まった少女は、長い髪を水の中に泳がせながら眠り続けている。
 息を呑む猟兵達の耳に、声が響いた。
『……だあれ?』
 幼い少女の戸惑う声に、影見・輪(玻璃鏡・f13299)は一歩前へ出た。
 機械や魔導とは対極の位置にある存在の自分が、技術的なアプローチなどできるはずもない。だから、せめて声を届けよう。
「はじめまして。僕は影見・輪。君の名前は?」
『なまえ……?』
 名前という概念が理解できないのか。フラスコチャイルドはそれっきり黙ってしまう。戸惑うフラスコチャイルドに輪が声をかけようとした時、再び靄が現れた。
 天使像から滲み出た、複数の子供の影。フラスコチャイルドと同い年くらいの輪郭のぼやけた子供たちは、フラスコチャイルドを守るように頬を寄せた。
『だめだよ』
『眠ろう』
『眠ったらこわいのはいなくなるから』
 口々に言い募った子供たちは、フラスコに次々抱きついていく。顔のない子供たちが抱きつくたびに、フラスコは天使像へ溶けるように消えていく。
 眠りに就こうとするフラスコチャイルドを、歌が包み込んだ。フラスコチャイルドを癒やし、寄り添い守ろうとする歌声に、フラスコチャイルドのまぶたがピクリと動く。
『うた……?』
「そう。君を守るうただ。……こわいのはそこにいるのかい?」
『眠らないとこわいのが来るの。もうすぐそこにいるの。眠らないと……』
「逃げ続けてもいいけれど、そのままでは怖いままだ。覚悟を決めよう」
『かくご……?』
 敢えて厳しい声を掛けた輪は、怯えるフラスコチャイルドにかつての己を見た。
 呪われた鏡として、旧家の座敷牢の奥に仕舞われていた鏡。それが輪の本体。人々は座敷牢へやって来ては、醜い感情を吐き出して去っていく。
「僕もかつては箱の中に仕舞われていた。君と同じように、ずっと暗闇の中にいたんだ。……かつての自分は思っていた。自分にはどうしようもない現実があるなら、何も見えず何も聞こえない闇の中で、そのまま朽ちていった方がましだと」
『……ずっと眠っていたかったの?』
「そう。君と一緒」
『いっしょ……』
 少女の問に、輪は頷く。あのままずっと闇の中にいたら、おそらく輪は歪んだだろう。人々の負の感情しか知らず、閉じ込められたままならきっと。
「けれど、思いもよらず箱から出されて。改めて向き合った世界は、諦めていたかつてとは違って見えた。世界は広くて美しくて、人の感情は闇だけじゃないって知った」
 輪の言葉に、フラスコチャイルドを包む影が徐々に離れていく。影はフラスコチャイルドに近づこうとするが、薄い膜に阻まれるように近寄ることができない。
「だから君にも外の世界を見て欲しい。怖いものもある。けれど世界は思ったよりも悪いものではないから」
『でも……。こわいのがくるの』
「よく見るんだ! 現実は確かに怖い。けれど、君をすくい上げる手だってここにある」
 怯えるフラスコチャイルドに、輪は手を差し伸べる。
「あとは君がこの手を掴むだけ」
 必死に伸ばす輪の手に、少女は目を開いた。

成功 🔵​🔵​🔴​



 肉体の目を見開いたフラスコチャイルドに、祭壇が鳴動した。
 低く唸るような声が響き、黒い靄が再び祭壇を包み込む。
 切り離された祭壇が、フラスコチャイルドを天使像ごと飲み込もうと迫る。
 物理的に取り込もうと迫る祭壇に、猟兵達は動いた。

 目をひらくとまぶしい。
 そんなことにようやく気付く。
 眠ること。悪夢を見ること。それでもじぶんであること。
 教授は最後にそれだけ言ってた。
 眠っていると怖い夢を見る。でもこわいのは来ない。
 起きているとたのしい「うた」が聞こえる。でもこわいのが来る。
 どっちもこわい。だったら、起きてみたい。
 そう思った時、きょうだいたちが呼び止める。

「さみしいよ」
「いっちゃだめ」
「こわいのがくるよ」
「おねがい置いていかないで」

 きょうだいたちが呼び止める。
 さみしいのはいや。こわいのもいや。
 きょうだいたちはだいすき。置いていけない。
 どうしようどうしよう。どうしたらいいんだろう。
ティファーナ・テイル
SPDメインで
※アドリブ・協力は可で

「頑張っちゃうぞ!」と笑顔でガッツポーズをします!
『ゴッド・クリエイション』で百眼神アルゴスを創造して、周りや地面と障害物を注意してもらいながら、テイルは『スカイステッパー』で空気を蹴りながら翼羽根や髪の毛と蛇尾脚でバランスを取りながら素早く速さを重視して、大きな障害物は拳や髪の毛で排除して触れるのが危なそうな物や地点には『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビームで攻撃や除去をします!

テイルも猟兵にも『エデンズ・アップル』でカットフルーツを創造して食べたり配ったりします。

「ボクは神様なんだから危険や困難から人々を救い助けて『正義の味方』を見せるんだ!」



● 神が誓う救いの手
 ジフテリアが読み取った天使像の歴史から割り出された、壊すべき場所と残すべき場所。
 魂を削るような叫びに応えたティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は、床を蹴ると右側の祭壇へと駆け出した。
 黒い靄が晴れた祭壇は禍々しい気を放っていて、祭壇本体を見通すことができる。武者震いが全身を駆け巡ったティファーナは、笑顔で明るくガッツポーズをした。
「頑張っちゃうぞ!」
 その言葉に恥じることなく、ティファーナはユーベルコードを詠唱した。
 ティファーナの創造した百眼神アルゴスが、その巨体の脚を折った。
 ティファーナにひざまずく百眼神アルゴスの姿に大きく頷いたティファーナは、指示のあった祭壇を指差した。
「私があの祭壇を切断するわ。あなたはそれを破壊しなさい!」
 ティファーナの命令に、百眼神アルゴスは深く頷くと立ち上がる。その姿に翼をはためかせたティファーナは、空へ舞い上がると全体を観察した。
 神話のワンシーンか何かの意匠をした祭壇は、よく見ると継ぎ目がある。そこを狙い蛇尾脚斬刺突刃・超長髪斬刺突刃を振り上げたティファーナは、狙い違わぬ斬撃を放った。
「そこね! 諸悪の根源を絶たせてもらうわ!」
 鋭い刃物となった金色の超長髪が、わずかな隙間を断ち切る。断面から黒い靄を発生させた祭壇は、うめき声を上げながら禍々しい気を放ち続ける。
「今よ! 壊してしまいなさい!」
 ティファーナの命令に、百眼神アルゴスは拳を振り下ろした。桁外れの筋力によって放たれた一撃が、祭壇を粉々に破壊する。
 その働きに頷いたティファーナは、天使像に抱かれて眠るフラスコチャイルドを見た。猟兵達の言葉や歌にまだ目を覚まさないフラスコチャイルドを元気づけるように声を掛ける。
「ボクは神様なんだから、危険や困難から人々を救い助けて『正義の味方』を見せるんだ! 助かったらエデンズアップルでカットフルーツを食べさせてあげるから、待っててね!」
 ガッツポーズした手を伸ばしサムズアップ。フラスコチャイルドにウインクしたティファーナは、次の祭壇へと振り返った。

成功 🔵​🔵​🔴​

館野・敬輔
【一応POW】
アドリブ連携大歓迎
成功数過多なら却下可

参ったな
魔導も機械も、ついでに歌も知識はからっきしだ

それでも、物理的に手が出せるようになったのなら
僕でもできることはあるだろ
ある意味「壊す」のはお得意だし

「世界知識、第六感、視力」で生命維持に必要と思われる部位を見極め
「かばう、オーラ防御」でフラスコチャイルドを黒い靄から守りながら
生命維持に関係なさそうな部位を「吹き飛ばし、部位破壊」+【魂魄剣・一撃必殺】で破壊
祭壇は生命維持に必要なものと聞いているが
実際はストームを吸収する装置の本体か?

声かけなんて気の利いたこともできないから
僕は行動で示すだけだ
ここには歌を、声を届けてくれる人がたくさんいる



● 今の自分にできること
 黒い靄が広がる天使像の左へ駆け寄った館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は、靄の向こう側に見え隠れする祭壇に眉根を寄せた。
「(参ったな。魔導も機械も、ついでに歌も知識はからっきしだ」)
 そんな敬輔の背中を押すように、仲間からの連絡が入る。祭壇を破壊するように指示された敬輔は、改めて祭壇を見た。
「祭壇は生命維持に必要なものと聞いているが、やっぱり実際はストームを吸収する装置の本体だったのか」
 祭壇の内側へ行った猟兵の言葉に、敬輔は深く頷く。靄の中に見える壮麗な祭壇は、指示された場所と同じに思えた。
 物理的に手が出せるようになったのなら、敬輔でもできることはある。
 意を決した敬輔は、この世界の知識を総動員して壊すべき場所を見極めた。祭壇に施されたレリーフの意匠を注意深く観察し、告げられた場所へと黒剣を突き立てる。
 直後に溢れ出した膨大な量の黒い靄が、敬輔を襲う。咄嗟に防御した敬輔は、靄の向かう先を振り返った。
 背筋に氷が落ちる。濃度を増した靄は、必死に情報を伝えるジフテリアへと向かっている。
 黒剣を引き抜いた敬輔は、上段に構えると祭壇へ向かい合った。オブリビオン・ストームにも似た靄は祭壇から溢れ続けている。まずは元を絶たねば。
「一撃で壊してやるよ……壊れろ!」
 裂帛の気合いとともに放たれた攻撃が、祭壇を破壊する。吹き飛ばされ、瓦礫の山と化した祭壇は、靄を吹き出すのをやめる。
 残された靄が、ジフテリアを襲う。床を蹴り、間に入った敬輔は怖気のするような不快感を何とか耐え抜く。
 ようやく消えた靄に、安堵の息を吐く。破壊された祭壇の残骸は未だに靄が漂い、暗黒物質のような様相を呈している。
 この祭壇に吸収されたオブリビオン・ストームが貯められていたのだ。顔を上げた敬輔は、天使像に抱かれたフラスコチャイルドの姿に目を細めた。
 無垢な幼子に見える少女は、猟兵達の問いかけにたどたどしく応えている。敬輔も何か声をかけるべきか。考えを巡らせたが、小さく頭を横に振った。
 声かけなんて気の利いたこともできないから、敬輔は行動で示すだけだ。
「ここには歌を、声を届けてくれる人がたくさんいる」
 それだけ告げる敬輔に、再び指示が出される。靄を上げる祭壇に敬輔は駆け出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

櫟・陽里
医療用の機械って繊細だからなぁ…
乗り物知識でどこまで通用するか分かんねーけど
分かる範囲のメカニック知識で
壊しやすそうなパーツを威力重視で狙い撃ち
機械ってのは基本、動力源があるはず
燃料か魔力の類か他のもんか…
何にせよ本体と繋ぐ線がみっかりゃいいね

ナノマシンで腕を硬化して祭壇からパーツを引き剥がしまくるのもいい
目を引くものがあればとっておく
謎の男の手がかりになるかもしれないし
この天使ちゃんの個人情報が手に入るかもしれない

声かけは…あー…うーん?
逃げるための方法や言い訳を考える時間は長くて辛く感じるもんだ
つまんないよ
明るい方に踏み出して、たくさんの新しい事を知るといい
夢中になれるもんがきっと見つかる


レパイア・グラスボトル
アドアレ絡みお任せ

ま、ワタシら瓶詰を部品にするのはおかしい話じゃないけどね。
とはいえ、瓶に皹が入ったら御終いだよ。
そこから余計な物が入るからね。

【SPD】
最新鋭っていうけど、何時頃の最新鋭なのかね?
この文明も何もかも終わったこの世界でな。

呼び出すのは歳を重ねたレイダー達。
崩壊前の知識を持つ専門家たち。数が揃えば当たりもいるだろう。
彼等にて祭壇の機能を救出に向けて解析させる。

かつてレパイアを発掘したインテリレイダー(父親共)。
その後の育て方は酷いけど。

とりあえず産声上げないガキを泣かせるぞ。

そのまま偶像(部品)でも良いけどな。
自分で”うたう”のも楽しいものだぞ。
どんな歌でもアンタの自由だ。



● きっと「家族」と呼べるもの
 時は少し遡る。
 ジフテリアの指示に従い建物の裏側から像の裏側へ駆け込んだレパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)は、天使像裏にあった空間に小さく口笛を吹いた。
 メンテナンスを想定されているのだろう。たくさんの機械やメーター類が並び、機械だけではなく魔法陣やねじくれた機械が数値を上げ下げしている。二つの巨大モニターの間には、壁に埋め込まれるように同じ天使像がこちらに腕を伸ばしている。フラスコチャイルドは、普段はこちら側にいたのだろう。
 巨大モニターには、天使像の姿とナス型フラスコがそれぞれ映し出される。レパイアの医療知識でその数値を読み解けば読み解くほど、生体部品の一つとして監理されていることが分かる。メンテナンスも無しに数年間も正気を保っていたというのが信じられない。それだけ、このフラスコチャイルドにとって「うた」は重要なのだろう。
 読み解きをやめたレパイアは、天使像に近づくと手を触れ額を付けた。
「そのまま偶像(部品)でも良いけどな。自分で”うたう”のも楽しいものだぞ。どんな歌でもアンタの自由だ」
「そうだよな」
 掛けられる声に焦って振り返ったレパイアは、遅れてやって来た櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)の姿に顔を上げた。レパイアの隣に立った陽里は、同じように天使像に手を触れる。
「逃げるための方法や言い訳を考える時間は長くて辛く感じるもんだ。つまんないよ。明るい方に踏み出して、たくさんの新しい事を知るといい。夢中になれるもんがきっと見つかる」
 語りかける陽里の姿に、レパイアは改めて天使像を見上げる。表の天使像と全く同じ天使像は表情を変えず、ただ静かに二人を見守っていた。
 顔を上げた陽里は、改めて周囲を歩き回りながら見て回る。白衣を翻しモニター前に戻ってコンソールを叩くレパイアに、陽里はお手上げという風に両手を挙げた。
「医療用の機械って繊細だからなぁ……乗り物知識でどこまで通用するか分かんねー」
「乗り物知識は役に立たないぜ。フラスコチャイルドを生かしてたんだ。強いて言うなら必要なのは医療や生命工学だろう」
 言いながらも手を止めたレパイアは、顔を上げてどこか懐かしい風景に目を細める。レパイアもかつては、医療特化型のフラスコチャイルドとして創られ、何らかの事情でそのまま遺棄されていたのだ。フラスコチャイルドの製造ラインはどこも似たようなものだろう。
「ま、ワタシら瓶詰を部品にするのはおかしい話じゃないけどね。とはいえ、瓶に皹が入ったら御終いだよ。そこから余計な物が入るからね」
「そうなのな」
「どうせ後で力仕事が待ってる。それまでは大人しく見てな」
「じゃ、必要になったら指示よろしく」
 室内を見て回る陽里から、意識は機械の方へ向く。これがフラスコチャイルドの生命維持やオブリビオン・ストームの吸収機能に関わっていることは分かるが、専門家ではないのでそれ以上は分からない。
「最新鋭っていうけど、何時頃の最新鋭なのかね? この文明も何もかも終わったこの世界でな。……ま、餅は餅屋だ。さぁ、出てきな! 楽しい楽しい解析の時間だぁ」
 コンソールから手を離したレパイアの詠唱に現れたのは、多くのレイダー達。年配のレイダー達は、召喚者であるレパイアの姿に口の端を上げた。
「久しぶりじゃねぇかレパイア」
「無駄口はいいんだよ親父共。アンタ達ならアレの解析、できんだろ?」
 最前列にいた男は、レパイアの顎が示す機械に一歩近づいた。それに続くようにぞろぞろと計器に歩み寄ったレイダー達は、あちこち触りながら興味深そうな声を上げた。
「面白ぇじゃねぇか。お前を発掘した日を思い出すぜ。なぁ?」
「うるせぇよインテリレイダー。さっさと産声上げないガキを泣かせな」
 文字通り尻を蹴るレパイアに、崩壊前の知識を持つ専門家達は一斉に作業に取り掛かる。飛び交う専門用語にその場を任せたレパイアは、机を漁る陽里に声を掛けた。

● 過去と未来を繋ぐもの
 レイダー達を召喚して解析に当たらせているレパイアを見送った陽里は、楽しそうな声を聞きながら周囲を探索して回った。
 餅は餅屋。たしかにそうだ。今陽里にできることは、せいぜい邪魔にならないように情報収集することくらいか。
 ふと横を見た陽里は、古びた机に目をやった。ごくシンプルで飾り気のない机は、作業用のものか。こういう備品があるということは、この天使像を設置した教授とやらはここに戻ってくる予定だったのだろう。
 何気なく引き出しを開けると、一枚の写真が出てきた。家族写真だろうか。白衣を着た青年と女性、その娘らしい6歳ほどの少女が写っている。
 背景は何かの機械のようだが、陽里には分からない。裏返すとそこには「S&A生命工学研究所にて」とだけ書いてある。
「S&A生命工学研究所……なんかヤバそうな名前」
「なにしてんだ? 面白いもんでも見つかったのか?」
 声を掛けるレパイアに、写真を見せる。写真を受け取ったレパイアが何かを言おうとした時、レイダー達が声を上げた。
「テメェら手伝え! 無駄飯食ってんじゃねぇぞ!」
「んだとコラ! そういうことはいいメシの種持ってきてから言えよな!」
 軽口を叩くレパイアに、レイダーは機械の左右を指差した。計器類の隣にはチューブが延び、壁の向こうに消えている。
「あのチューブを同時に壊せ。その先にはオブリビオン・ストーム貯蔵槽がある。外の連中に連絡して、そいつも壊しちまいな!」
「おいおい、ずいぶん乱暴だな」
「仕方ねぇだろ。チンタラやってる暇はねぇんだ」
「おっけ了解! わかりやすくていいね」
 ふいに真剣な表情になるメカニックに、陽里は腕をまくる。外の猟兵にも連絡をして、タイミングを測る。
 号令と同時に、銃声が響く。壊しやすそうなパーツを威力重視で狙い撃ちにした陽里は、狙いにくい場所に残ったパイプをナノマシンで硬化させた両腕で引き剥がす。
 破壊音が響いてしばし。モニターが真っ赤に染まる。あちこちの計器が異常を知らせ、警告を知らせる。
「さぁテメェらずらかるぞ!」
「本当に大丈夫かよ!」
「後はガキ次第ってところだ!」
 豪快にサムズアップしたレイダー達が消える。両側の壁から響く唸るような声に、陽里達はその場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



 どうしようどうしよう。どうしたらいいんだろう。
 いままでそんなこと、考えたことなかった。
 おしえられたこと。眠ること。夢をみること。それだけなのに。
 どうしてこんなに、ぐるぐるするんだろう。

『ボクは神様なんだから、危険や困難から人々を救い助けて『正義の味方』を見せるんだ!』
 せいぎのみかた?
 きいたことない。でもかみさまは知ってる。
 うたに出てくるすごいひと。

『ここには歌を、声を届けてくれる人がたくさんいる』
 うた。そうだね。きこえてるよ。
 きれいなうたも。たくさんの声も。

『自分で”うたう”のも楽しいものだぞ。どんな歌でもアンタの自由だ』
 じぶんでうたうの? うたえるのかな?
 声をだしてみるけど、うたえない。

『明るい方に踏み出して、たくさんの新しい事を知るといい。夢中になれるもんがきっと見つかる』
 あかるいほう。
 そう。目をひらいたらあかるくなった。
 あかるくなったらうたが聞こえる。

 うたがききたい。
 もっとうたが。
九十九・白斗
さて、どうする少尉

ん?あれはジフテリアか・・
なんだか無茶してるようだ
あいつもフラスコチャイルドだし、何か共感するところもあるのかもな
フラスコチャイルド仲間でバンド組もうとしたり、過酷な状況のアポヘルで精いっぱい頑張ってるからな

あの天使像の中身もあいつと同じフラスコチャイルドだっていうし、なんとか救ってやらなきゃな

とはいえ、俺は戦争屋
こんな時にどうしていいかわかりゃしねえな

歌なんて歌えもしねえしな

とにかく呼びかけてみるか
おう、そんな像に入ったまま過ごすつもりか?
歌が好きなら出てきて聞きな
そんな像の中じゃ良く聞こえないだろ
外に出て仲間と一緒に歌えば良いじゃないか


ユウキ・スズキ
【歌って語りかけてみる】
魔術も機械も正直得意ではないが……
歌か。歌ね。
「あんまり気の聞いた歌は知らなんだが……ヘタクソでも笑わないでくれよ?」
今は遠い故郷を憂う歌。大好きな歌だ。
昔流行った、田舎道の歌。
「まぁ、ウェイトバージニアは私の故郷ではないがね。だが、場所は違えど故郷を思わせてくれる歌は良い。お前に故郷があるのかは知らんが、少なくともそこがお前の故郷じゃないだろう? 少なくとも、そんな冷たい石の中じゃ無い筈だ。出てこい、お前は自由になるべきだ……それを望んでいる者が居る。故郷が無いなら探せば良い。生きて一緒にお前の故郷を探すつもりはないか?」



● 強い行動 強い意志
 時は少し遡る。
 教会に現着した九十九・白斗(傭兵・f02173)は、己の視力を犠牲にしてまで情報を得るジフテリアの姿に眉を顰めた。
「ん? あれはジフテリアか……。なんだか無茶してるようだな」
 同じ旅団に所属するジフテリアは、白斗としても知らない間柄ではない。彼女はフラスコチャイルドだ。何か共感するところがあるのだろう。
 フラスコチャイルド仲間でバンド組もうとしたり、過酷な状況のアポカリプスヘルで精いっぱい頑張っているのは白斗もよく知っていた。
「あの天使像の中身も、あいつと同じフラスコチャイルドだっていうし。なんとか救ってやらなきゃな」
「あぁ、そうだな」
 白戸の隣で頷くユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は、戦場の様子に何か考え込んでいる。
 ジフテリアと、彼女の指示で動いた猟兵達の活躍で祭壇は次々と破壊されている。今更助太刀に行くほど苦戦している様子もない。声を掛けようと思うが、気の利いた言葉がすぐに出てくるほど口が上手い訳でもない。白斗は腕を組んだ。
「とはいえ、俺は戦争屋。こんな時にどうしていいかわかりゃしねえな。歌なんて歌えもしねえし。さて、どうする少尉」
「魔術も機械も正直得意ではないが……。歌か。歌ね」
 眉間に皺寄せて呟くユウキの声に、白斗は相棒を覗き込んだ。

● 懐かしき我が故郷
 相棒の視線に気づいた様子もないユウキは、現在の作戦で己に求められていることを改めて反芻した。
 最終目標はフラスコチャイルドの救助。そのためには天使像と祭壇を何とかしなければならない。
 フラスコチャイルドは姿を表し、説得と祭壇の破壊は既に佳境だ。響く歌声に、フラスコチャイルドを動かす力があることは証明されている。
 ならば。ユウキにできることは一つしか無かった。
「あんまり気の聞いた歌は知らなんだが……。ヘタクソでも笑わないでくれよ?」
 珍しく言い訳するように言ったユウキは、教会内に朗々とした声を響かせた。軍で鍛えた声量はマイク等のデバイスが無くとも教会中に響き渡り、猟兵達の視線を集めた。
 今は遠い故郷を憂う歌。大好きな歌だ。
 昔流行った、田舎道の歌。
 決して技巧に優れている訳ではない。だがそれだけに心に響く歌を歌い上げたユウキは、歌を終えると照れたように頬を掻いた。
「まぁ、ウェイトバージニアは私の故郷ではないがね。だが、場所は違えど故郷を思わせてくれる歌は良い」
『こきょう……?』
 戸惑ったようなフラスコチャイルドの声に、ユウキは続けた。
「お前に故郷があるのかは知らんが、少なくともそこがお前の故郷じゃないだろう? 少なくとも、そんな冷たい石の中じゃ無い筈だ」
『こきょうってなあに? うたにでてくるけど、しらない』
 まっすぐに尋ねるフラスコチャイルドに、白斗は答えた。
「故郷ってのは、自分が生まれ育った場所のことだ。自分を作った場所でもある」
『じゃあ、ここがこきょうだよ』
 白斗の声に応えたフラスコチャイルドが手を動かした。初めて大きな動きを見せたフラスコチャイルドに言葉を重ねる。
「だとしても、だ。そんな像に入ったまま過ごすつもりか? 歌が好きなら出てきて聞きな。そんな像の中じゃ良く聞こえないだろ。外に出てきょうだいと一緒に歌えば良いじゃないか」
『きょうだいと……いっしょに?』
 頭を殴られたように、フラスコチャイルドは目を見開く。後ひと押しだ。ユウキは手を差し出した。
「出てこい、お前は自由になるべきだ。……それを望んでいる者が居る。故郷が無いなら探せば良い。生きて一緒にお前の故郷を作るつもりはないか?」
『こきょう……』
 ゆらりと動いたフラスコチャイルドが、こちらに手を伸ばす。必死に伸ばした指先がフラスコに触れた時、大きな変化が訪れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



 こえがきこえる。

「場所は違えど故郷を思わせてくれる歌は良い」
 こきょう。こきょうってなんだろう。
 自分がうまれた場所。
 自分がそだった場所。
 じぶんのこきょうは、ここだ。

『だめだよ』
 きょうだいの声がきこえる。
『いっちゃだめ』
 かなしそうにくびをふる。
『こわいのがくるよ』
『たべられちゃうよ』
『さみしいよ』
『おねがい、いかないで』
 きょうだいたちの声に、またぐるぐるする。
 実験のときを。悪夢のまいにちを。
 いっしょにうたってのりこえたきょうだいたち。
 おいていけない。

「外に出てきょうだいと一緒に歌えば良いじゃないか」
 聞こえてくる声に、電気ショックをうけたときみたいになる。
 そうか。いっしょにうたえばいいんだ。
 そうなんだね。
桜雨・カイ
確かにこの世界には、こわいものもあります。
けれど独りで立ち向かう必要なないんです
あなたを助けたいと思う人達はいっぱいいます(今まで関わってきた人達を思い出しながら)
そして、こわいものだけでなく きれいなものもいっぱいありますよ

…あなただけではなく、きょうだいもここにいるんですね
だからためらいがあるんですか?
分かりました、ならば彼らも救います

【援の腕】発動
祭壇に突っ込み、きょうだいを浄化します

犠牲になったというのなら
あなたたち(きょうだい)ももう暗闇から出て救われていいんです。
一緒に行きましょう。

あなたたちの「うた」は暗闇の中縛るためではなく
光の下で支え合うために歌って下さい



● すべてを救う意思
 フラスコチャイルドの指がフラスコに触れた時、大きな変化が訪れた。
 自分の体が動くことをようやく思い出したかのように、姿勢が崩れる。胎児のように丸まっていたフラスコチャイルドが、ゆっくりと身体を起こす。
 今まさに目覚めようとするフラスコチャイルドの姿に、 桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は近寄った。
「確かにこの世界には、こわいものもあります。けれど独りで立ち向かう必要なないんです。あなたを助けたいと思う人達はいっぱいいます」
『たすける……?』
「そう。たすけるのです」
 フラスコチャイルドの声に、カイの脳裏に今まで関わってきた人達の姿がよぎる。カイの力だけでは、フラスコチャイルドを動かすことはできなかった。彼らの尽力があってこそ、フラスコチャイルドを動かすことができたのだ。
 大きく動いたフラスコチャイルドに、小さな黒い影達が一斉に動いた。フラスコチャイルドと同じくらいの大きさの黒い影は、猟兵達を教会から追い出すように出口へと押しやろうとする。
『だめだよ!』
『おきちゃだめなの!』
『寝ないとこわいのがくるの!』
「こわいものだけでなく、きれいなものもいっぱいありますよ」
 子供と視線を合わせるようにしゃがんだカイは、黒い影の頭を撫でるとフラスコチャイルドを見上げた。
「……あなただけではなく、きょうだいもここにいるんですね。だからためらいがあるんですか?」
 カイの質問に、フラスコチャイルドは小さく頷く。その答えに立ち上がったカイは、フラスコに触れると【援の腕】を発動させた。
「分かりました、ならば彼らも救います。……あなた達を照らしますね。真っ直ぐに。迷わず、あなた達が向かうべき先の、道しるべになるように」
 詠唱と同時に、カイの両腕から浄化の光が溢れる。同時に感じるフラスコチャイルドの闇に、カイは目を見開いた。
 今までフラスコチャイルドが見てきた「悪夢」が、カイの心にのしかかる。冷たく暗い悪夢に、知らず涙が溢れる。
「犠牲になったというのなら、あなたたち(きょうだい)ももう暗闇から出て救われていいんです。一緒に行きましょう」
『……いきたい。いきたいよ! おねがい、たすけて……!』
 初めて語られるフラスコチャイルドの意思に、フラスコがぐらりと傾いた。天使像の腕から落ち、床に迫る。慌てて受け止めるがその勢いをいなしきれず、カイの身体が大きく傾く。
 頭から床に倒れ込みそうになったカイを、駆けつけた猟兵達が支える。カイの腕を離れ転げ落ちそうになるフラスコを受け止め、そっと床へと下ろす。
 未だフラスコからは出られず、コードに接続されたまま。だが確かに己の意思を示したフラスコチャイルドは、最初の一歩を踏み出したのだ。
「あなたたちの「うた」は暗闇の中縛るためではなく、光の下で支え合うために歌って下さい」
 カイの言葉に、フラスコチャイルドは大きく頷いた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『各実験用消耗品』

POW   :    未完成な兵器
【生身の体を壊しながら、搭載された兵器で】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    慈悲を乞う者たち
【救いを求める掴みかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【のし掛かりや無意識的な近接武器での攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    お前も俺になれ
【攻撃】が命中した対象を爆破し、更に互いを【自らの情報を送受信する配線】で繋ぐ。
👑11
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● それは「かぞく」
 フラスコチャイルドが天使像の手から離れた時、祭壇が大きなうめき声を上げた。
 瓦礫となった祭壇からは黒い靄が立ち込める。靄はやがて黒い渦となり、教会内に極小のオブリビオン・ストームを巻き起こした。
 瓦礫を、天使像を巻き込みストームが吹き荒れる。フラスコを繋ぐチューブを切った猟兵達は、間一髪祭壇から離れ距離を取る。
 ストームが未だ吹き荒れる中、声が響いた。

『かえして』
『もどして』
『その子がいれば』
『街を守れる平和を守れる』
『私達も、きょうだいも、その子も』
『そのために創られたんだ』
『私たちは一緒だ』
『約束したんだ』
『だからお願い』
『『『『その子を連れて行かないで』』』』

 口々に叫び声を上げながら、異形が這い出してくる。
 その姿を見たフラスコチャイルドは、目を細めながらゆっくりとガラス面に手を付き呟いた。
『かぞくだ。かぞくもいっしょに、うたったよ? きょうだいたちはいっしょ。だから、かぞくもいっしょ。はやくいっしょにうたおうよ』
 無垢で無邪気なフラスコチャイルドの視線に、猟兵達は目を伏せる。彼らはもはやオブリビオンと化し、救う手立てはない。そのことを理解しないフラスコチャイルドは、ただ静かに首を傾げる。
 フラスコチャイルドが「かぞく」と慕うオブリビオンを倒さなければ、この街は崩壊する。
 だがそれは、彼女の「かぞく」を殺すこと。
 フラスコチャイルドを奪い返そうと襲い来る「かぞく」達を前に、猟兵達は得物に手を掛けた。

※おしらせ
 フラスコチャイルドが「かぞく」と慕うオブリビオンとの戦闘になります。
 同じ研究所内で生まれたフラスコチャイルドですが、祭壇に組み込まれた時点で彼らは死んでいます。魂は残り、オブリビオン・ストームを吸収して寄せ付けない結界の一部となっていました。
 現在は祭壇奥のストーム貯蔵槽から発生したオブリビオン・ストームによりオブリビオンと化しています。
 フラスコチャイルドを奪い返そうとしてきます。護衛がなかった場合、奪い返されますのでご注意ください。

 プレイングは5/1朝8:31~5/4中までは確実に、それ以降はロスタイムとなります。
変更があった場合は、マスターページ又はTwitterでご連絡します。
 それでは。哀れな魂に救済を。
ジフテリア・クレステッド
造り手が示した製造目的のままに生きる…それこそが私たちフラスコチャイルドのあるべき姿。そういう意味では、あなたたちは『いい子』なんだと思う…クソ喰らえだ。

…これを言うのは私の醜さだと分かった上で、聞くよ。この子を『きょうだい』と呼ぶのなら、この子の幸福を―――うん、分かってたよ。会話にならないことくらい…。

本当はあなたと仲良くなりたかったんだけど…恨んでくれていいよ。
私はあなたの『きょうだい』を永遠に眠らせる。

掠れた視界だけどUC効果でこの子を近くで守って癒しながら【スナイパー】技能でライフルによる狙撃を成立させて、あの子たちを撃ち抜き続ける。



教授、か…ここまでの憎悪は本当に久しぶりだよ…。



● そんなことは分かってた
 現れた異形のオブリビオン達は、フラスコチャイルドを呼びながら手を伸ばす。
 小さく笑みを浮かべながら手を振り返すフラスコチャイルドの視界を遮るように、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は立ちはだかった。
 断ち切られたフラスコから伸びるチューブは、一定の場所で封がされている。フラスコチャイルドが進む意思を定めた時に機械的にパージされたのだろう。中の水が汚染されたり急激に減ってしまったりということはない。
 無垢な目を向け、手を振る細い指を見ても見ても分かる。フラスコチャイルドは心から彼らをーー各実験用消耗品となり果ててしまった「かぞく」達を慕っている。
 浄化を受け、魂としてフラスコチャイルドの周りを漂う「きょうだい」達のように救えればいい。だが、オブリビオン・ストームを受けてオブリビオンとなってしまった以上、救うことはできない。倒すしかないのだ。
 そして、オブリビオンと成り果ててしまった「かぞく」がフラスコチャイルドを取り戻したいと願うのは、とても自然なこと。
 それはジフテリアにも分かっている。痛いくらいよく分かっている。
「造り手が示した製造目的のままに生きる。……それこそが私たちフラスコチャイルドのあるべき姿。そういう意味では、あなたたちは『いい子』なんだと思う。……クソ喰らえだ」
 吐き捨てたジフテリアは、知らず手を握り締める。向かってくるオブリビオンはフラスコチャイルド。姿形が変わってしまっても、ジフテリアの同胞だったことに代わりはない。
 ジフテリアは一歩前へ出ると、「かぞく」へと問いかけた。
「……これを言うのは私の醜さだと分かった上で、聞くよ。この子を「きょうだい」とーー「かぞく」と呼ぶのなら、この子の幸福を――」
『私達は、人々のしあわせを守るために創られたんだ』
『人々の暮らしをオブリビオンから守るために存在するんだ』
『だからーー』
「ーーうん、分かってたよ。会話にならないことくらい……」
 口々に同じことを繰り返す姿に、ジフテリアの目から一筋の涙が落ちる。オブリビオンとなってしまった以上、どんな声掛けも彼らには響かない。分かっていたことじゃないか。
 溢れた涙を拭おうともせず、ジフテリアはフラスコチャイルドに歩み寄った。ユーベルコードの代償で失った視力は、フラスコチャイルドをぼんやりとしか映さない。初めて触れたときと同じようにフラスコに額を付けたジフテリアは、そこに感じる無垢な視線に語りかけた。
「本当はあなたと仲良くなりたかったんだけど……恨んでくれていいよ」
『どうしたの?』
 戸惑う声に背中を預けたジフテリアは、迫る「かぞく」達に銃口を向けた。
「私はあなたの「かぞく」を永遠に眠らせる。同族よ……あなたは救われるべきなんだ」
 詠唱と同時に、掠れた視界が暗くなる。フラスコの表面から伝わる波動で分かる。天使像からーー生命維持装置から離れたこの子のフラスコ内環境は刻一刻悪くなっている。身体から溢れる毒を癒やしに変換したジフテリアは、その力を惜しみなくフラスコチャイルドに送り込みながらも「かぞく」の眉間に照準を合わせた。
 放たれる弾丸に、「かぞく」が倒れる。敵対の意思と受け取った「かぞく」達は、態勢を整えると一気に襲いかかってきた。
 堰を切り迫る「かぞく」を続けざまに射抜く。その姿に何を思ったのか、沈黙するフラスコチャイルドには構わず狙撃を続ける。銃声が声を消してくれる。それを救いに思ってしまう。
 ユーベルコードの代償に、視界なんてもうない。それでも撃たなければ。この子のために。この子の家族を。
(「教授、か……。ここまでの憎悪は本当に久しぶりだよ……」)
 フラスコチャイルドや「かぞく」の生みの親である教授への憎しみを胸に宿したジフテリアは、襲い来るオブリビオンに引き金を引く。
 戦い続けるジフテリアは、背中に小さな気配を感じた。フラスコチャイルドの手だ。そう思った時、脳裏に声が響いた。
『うたのひと。ねえおねがい、うたって?』
 じれたように告げる声に、ジフテリアは目を見開く。
 見えない目を閉じたジフテリアは、さっき歌った歌を歌った。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリス・シルフィード
【風のグリモア猟兵団】
アドリブ・他猟兵との連携可
*フリーウインド(f10650)は姉さん,優希斗(f02283)は呼び捨て
(救えない『家族』に祈りを捧げながら)
…御免ね。
あの子達を救うのは私達にはちょっと難しいの
だからせめて、あの子達の魂だけでも安らかに…
そして、生きている『あなた』に祝福を
(唇を強く噛み締めて)
…姉さん
…優希斗
御免…ありがとう
フラスコチャイルドの傍でこの子の『かぞく』達の死を極力見せぬようにして、この子を守りながら、鎮魂の祈り+優しさを籠めて
春風のライラを楽器演奏し、この子のために歌った歌を歌い続けて姉さん達を癒すわ
…歯痒いわね本当に
私に出来るのは…こうして祈ることだけなんて


エリス・フリーウインド
【風のグリモア猟兵団】
*表記はシルフィード(f10648)はエリス
私は姓で
他猟兵との連携・アドリブ可
貴方方は、人々に益を齎す為に作られた生贄ではないかと思います
たった一人の『成功体』の為に犠牲にされた、哀しき残滓と
ですが、エリスが約束したのです
貴方達の『かぞく』であるこの少女を、生の世界に迎え、彼女を守る、と
であれば…姉である私が手を貸さぬ理由はございますまい
優希斗殿。私達のために、申し訳ございませんが、どうかあの子達の鎮圧を
私は、盾受け+拠点防御+オーラ防御を重ねたUCでエリスとフラスコチャイルドを守る結界を作成
常にフラスコチャイルドとエリスを庇える態勢に
状況に応じて、優希斗殿に援護射撃を


北条・優希斗
【風のグリモア猟兵団】
フリ(f10650)はエリスさん、シルフィ(f10648)はエリス
*詳細お任せ
アドリブ・他の猟兵との連携可
(死者達の怨念の声に耳を貸しながら)
ああ、そうだな
あの子がお前達の『かぞく』なのは理解出来る
だが、例え『かぞく』でも
生者と死者の間には、決して逃れ得ぬ溝がある
許せ、とは言わない
だがあの子を真に思うのであれば、お前達は骸の海へと還れ
…無理だろうけれどな(霊達の声を聞きながら)
四刀はジャグリング
現れた魂達に先制攻撃+早業+ダッシュで斬り込み
掴みかかりを見切り、カウンター+範囲攻撃+二回攻撃でUC発動
敵を殲滅
救いを求める声は、覚悟を持って聞き流す
これがお前達の、本当の最期だ



● ある家族の絆
 始まった戦闘に、フラスコチャイルドは目を見開いた。次々に倒されていく「かぞく」達の姿に何を思ったのか、何も言わずにそっと目を閉じる。しばらく目を閉じていたフラスコチャイルドは、やがて目を開けると困ったような顔でエリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)を見上げた。
『うたのひと、だよね。おねがい、うたって?』
「どうしたの?」
 フラスコチャイルドの視界を遮るように立ったエリスは、身を屈めて視線を合わせる。無垢な目でじっとエリスを覗き込んだフラスコチャイルドは、ゆっくり戦闘を指差した。
『おきてるのに、こわいゆめをみるの。いつもとちがうけど、こわいゆめ。……おうたが聞こえると、みんなもとどおり。だからうたって?』
 純真無垢なフラスコチャイルドの言葉に、エリスは視線を逸らす。フラスコチャイルドは「かぞく」が殺される悪夢を見続けていた。だから目の前の光景も悪夢だと思っている。
 目覚めて、うたを聞けば元通り。その言葉に、エリスは首を横に振った。
「……御免ね。歌を歌っても、あの子達は元には戻らない。あの子達を救うのは私達にはちょっと難しいの。だからせめて、あの子達の魂だけでも安らかに……。そして、生きている『あなた』に祝福を」
 エリスの言葉に、きょとんとしながら首を傾げるフラスコチャイルドが、他の猟兵達に同じ問を投げかける。やがて歌われる歌に合わせ、エリスも春風のライラを爪弾いた。
 救えない「かぞく」に祈りを捧げながら歌い続けるエリスは、ずっと自分たちを守って戦ってくれている2つの背中に唇を噛み締めた。
(「……姉さん。……優希斗。御免……ありがとう」)
 フラスコチャイルドの大切な「かぞく」を救うためには、エリスだけでは荷が勝ちすぎる。助力を願うエリスの声に、エリス・フリーウインド(夜影の銀騎士・f10650)と北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は快く応えてくれた。
 彼らが守ってくれたから、フラスコチャイルドと向かい合うことができた。言葉と歌とライラを届けることができた。
 その歌声は戦場に響き、フリーウインドや優希斗達を癒やす。戦いを見守るエリスは、己の無力さに大きく息継ぎをする。
(「……歯痒いわね本当に。私に出来るのは……こうして祈ることだけなんて」)
 乱れた歌声に振り返ったフリーウインドは、歌い直すエリス語りかけた。
「エリス。あなたは誓ったのでしょう。この少女を、生の世界に迎え、彼女を守る、と。であれば……姉である私が手を貸さぬ理由はございますまい」
 フリーウインドの励ましに、エリスは目を見開く。そうだ。エリスは誓ったのだ。フラスコチャイルドを守ると。生の世界へ迎え入れると。
 エリスはエリスにできることをすればいい。決意を新たにしたエリスは、鎮魂の祈りと優しさを込めた春風のライラを爪弾き歌を歌った。
 力を持ち直した妹から視線を外したフリーウインドは、前衛を抜けて踊り来る「かぞく」の姿にユーベルコードを詠唱した。
「我は闇にして影なる騎士。故に守るべき者は心得ている」
 漆黒の聖鎧と破邪の結界を想像から創造したエリスは、生身の身体を壊しながら強力な銃弾を放つ「かぞく」の攻撃を防ぎ切る。
「貴方方は、人々に益を齎す為に作られた生贄ではないかと思います。たった一人の『成功体』の為に犠牲にされた、哀しき残滓と」
『お前に、何が分かるっていうんだ!』
 半狂乱になりながらも再び銃弾を放つ「かぞく」の胸に、ランスオブダークを貫き通す。
「エリスと約束したのです。あなたに手を貸すと。ここは一歩も通しません」
 決意を込めて「かぞく」を倒したフリーウインドは、先程倒した「かぞく」を視線で追う優希斗に語りかけた。
「優希斗殿。私達のために、申し訳ございませんが、どうかあの子達の鎮圧を」
「ああ」
 言葉少なく応じた優希斗は、戦場へ視線を向けると響く「かぞく」達の声に双刀の柄を握り締めた。
 エリスに向かった攻撃を蒼月・零式で武器受けした優希斗は、爆破の衝撃をいなすと繋がれた配線から流れ込んでくる思念に眉を顰めた。
『かえして。その子は私達の家族。希望の光なの!』
 痛いほど伝わってくる思念に、優希斗は応える。
「ああ、そうだな。あの子がお前達の「かぞく」なのは理解出来る」
『なら……』
「だが、例え「かぞく」でも生者と死者の間には、決して逃れ得ぬ溝がある」
 「かぞく」の訴えを切り捨てた優希斗は、月下美人で配線を断ち切ると駆け出した。
 双刀を手に、一体を屠る。続けて現れた「かぞく」の救いを求める掴みかかりを見切り、カウンターを叩き込む。素早く倒した優希斗を驚異と認識したのか。「かぞく」達は口々に叫ぶと、一斉に優希斗に掴みかかった。
「これがお前達の、本当の最期だ」
 迫る敵の気配に、優希斗は蒼月・零式と月下美人を空中に放り投げた。
 直後に抜刀。抜かれた月桂樹と鏡花水月・真打も空中に投げた優希斗は、詠唱を開始した。
「この刃は、全ての罪と闇、そして……人々の意志を刈り取る死神の息吹」
 優希斗の声と同時に、落下を始めていた四振りの刀が宙に留まる。刀身を一斉に「かぞく」達へ向けた優希斗は、刀達を一斉に解き放った。
 雨のように降り注ぐ刀達が、「かぞく」達を斬り裂いていく。口々に叫ばれる救いを求める声を覚悟を持って聞き流した優希斗は、消えゆく「かぞく」達に小さく祈る。
「許せ、とは言わない。だがあの子を真に思うのであれば、お前達は骸の海へと還れ」
 祈りを捧げる優希斗に、仕留めそこねた「かぞく」が剣を振り上げる。優希斗を切り裂く攻撃はしかし、届くことはなかった。
 フリーウインドの放つランスオブダークが、「かぞく」を貫く。
「……無理だろうけれどな」
 手にかけた蒼月・零式から手を離した優希斗は、消えゆく「かぞく」に呟いた。
 次の瞬間、新しい「かぞく」達が生み出される。
 脚を強化した「かぞく」達は、優希斗達の頭上を飛び越えるとフラスコチャイルドに肉薄。
「次から次へと!」
 眉を顰めた優希斗は、再び得物に手を掛けると駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月水・輝命
アド・連携◎
SPD
説得できるか分かりませんが……やらないよりましですわね。
ただ、今の彼女、フラスコチャイルドさん……天使さんに宣告はあまりにも酷でしょう。このように伝えたい。
天使さん。あの『かぞく』は、姿を見せたなお今も過去という名の暗闇に閉じ込められているのです。助けるには、あの者達を倒さないといけません。
あなたもわたくし達と一緒に、彼らを助けませんか?

常に鏡移り-道-が発動できるように、天使さんを鏡に映しておき、
天使さんに念の為「破魔」の「オーラ防御」を送っておきましょう。
かぞくが天使さんに触れても、ある程度は保護できますの。
支援はお任せくださいませ。


レパイア・グラスボトル
家族を守るのは当然だな。
そしてアンタらがこの子を奪われたくないというのも当然だ。

でもな、アンタらみたいな病人と一緒に生まれたばかりの子供は置いておけないよナァ?

【WIZ】
他の世界の魔法とか使うヤツラと違って、ワタシは只の医者だからな。
死人は治せないんだよ。

爆破のダメージは【医術】で応急処置をしつつ、繋いだ配線から受け取った情報を理解しつつ、増幅した処理能力で逆洗脳を行い、相手の意識を堕とし、とどめを刺す。

フラスコチャイルド:
家族の子供達とそう離れていない子供に多少甘くなる。
新しい病人になっても困るからな。

他の世界にはオブリビオンを味方にする方法があることを教える。
彼女の未来の選択肢として。


桜雨・カイ
そんな…
あの子のきょうだいも、みんな助けたいと言ったのは嘘ではなかったのに…

彼女を庇いながら、状況を説明します。
「きょうだい」がオブリビオンになった事、倒さなくてはいけない事を。
同時に「きょうだい」の武器を落としたり【念糸】で拘束しながら
無力化できないかやってみます

それでも駄目なら……
『この光景を前に、私は何もしない卑怯者にはなりたくないのです』
以前ある人に言われた言葉を思い出す。
ひとりだけ目をそらすわけにはいきません

ごめんなさい。それでも…あなただけでも守らせて下さい。
彼女を背に庇い、【援の腕】で浄化。
できるだけ「きょうだい」が倒される姿を見せないように。



● 過去と未来
 時は少し遡る。
 始まった戦闘をじっと見つめていたフラスコチャイルドは、困り果てた目で月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)を振り仰ぐとゆっくり戦闘を指差した。
『うた、うたってほしいの。……あのね、おきてるのに、こわいゆめをみるの。いつもとちがうけど、こわいゆめ。……おうたが聞こえると、みんなもとどおり。だからうたって?』
 その言葉に、輝命はそっと目を伏せる。無垢な瞳に陰りはない。フラスコチャイルドにとって「かぞく」が殺されるのはいつもの悪夢。辛くて苦しいけれど、ここを乗り越えて歌を聞けば「かぞく」はまた蘇る。
 そう信じて疑わないフラスコチャイルドに、輝命は首を横に振った。
 歌を歌っても、「かぞく」は元には戻らない。二度と。この宣告は、無垢なフラスコチャイルド……天使にはあまりにも酷。だから少しでも傷つけないように、言葉を選んで静かに告げた。
「天使さん。あの「かぞく」は、姿を見せたなお今も過去という名の暗闇に閉じ込められているのです。助けるには、あの者達を倒さないといけません。あなたもわたくし達と一緒に、彼らを助けませんか?」
『いま? かこ?』
 きょとんとしたフラスコチャイルドは、一生懸命考える。やがて顔を上げたフラスコチャイルドは、せがむように言った。
『わかんない。ねえうたって! いつもの悪夢じゃないの。はやくおうたを聞かせて!』
 もどかしげに言い募ったフラスコチャイルドは、フラスコに背中を預けて戦うジフテリアに語りかけた。
『うたのひと。ねえおねがい、うたって?』
 フラスコチャイルドの語りかけに、ジフテリアは歌を歌う。フラスコチャイルドを救った歌に合わせて、輝命も歌を歌う。重なる美しい歌声に、エリスもライラを爪弾いた。
 戦場に再び響く美しい歌声に、フラスコチャイルドは目を閉じる。
 しばらく聞き惚れていたフラスコチャイルドは、再び目を開き変わらない現実に、不安の声を上げた。
『……どうして? どうして「かぞく」はもとどおりにならないの?』
「「かぞく」がオブリビオンになったからです」
 そうはっきりと告げた桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)の言葉に、フラスコチャイルドは呆然と呟いた。
『オブ……リビ、オン?』
「そうです。ああなったらもう、救うことはできません。倒すしか、ないのです」
 カイの言葉に、フラスコチャイルドは輝命を振り仰ぐ。期待を込めた眼差しはしかし、静かな頷きで否定された。
 カイが見守る中、フラスコチャイルドは自分を守り戦う猟兵達を一人ひとり見る。カイの言葉を誰も否定しない。なるべく見せないようにしているが、それでも見える戦闘に、言葉を失ったように何も言わない。
 そんなフラスコチャイルドに寄り添ったカイは、フラスコに額を付けると目を閉じた。
「ごめんなさい。こんなことになって。あなたのきょうだいも、みんな助けたいと言ったのは嘘ではなかったのに……」
 懺悔するようなカイに、白い影が寄り添う。カイの浄化を受け、オブリビオン化を避けられた「きょうだい」達の霊が、カイを励ますようにくるくると舞う。
 祭壇に埋められてしまった「かぞく」は救えなかった。だが天使像に埋められていた「きょうだい」は救えたのだ。そのことが、カイの心を少し癒やす。
 息を吐いたカイは、迫る気配に鋭く振り返った。
 防衛網を飛び越えて現れた「かぞく」が、フラスコチャイルドに迫る。一瞬の隙を突かれて伸ばされた腕に念糸を放ち拘束する。
「お願いです、やめてください! この子は生きているんです!」
『違う! この子は私達の希望! オブリビオンから都市を守るための要石! お願い邪魔しないで!』
 現れた「かぞく」は拘束された腕を、ものすごい勢いで引き剥がしにかかる。力比べは拮抗するが、狂気の力で突き進む力にジリジリと接近を許してしまう。
 無力化は困難。奥歯を噛み締めたカイは、脳裏に響く声に目を見開いた。

『この光景を前に、私は何もしない卑怯者にはなりたくないのです』

 以前ある人に言われた言葉が胸に蘇る。彼の人の決意を、責任を背負う覚悟を思い出したカイは、四色精扇を繰り出した。
「ひとりだけ目をそらすわけにはいきません」
 背中から放たれる攻撃に、「かぞく」が苦痛の叫びを上げる。切なる思いで伸ばされた指がフラスコに触れた時、どうと音を立て倒れて沈黙する。
 目を見開き言葉も出ないフラスコチャイルドに、カイは膝を折り再び視線を合わせた。
「ごめんなさい。それでも……あなただけでも守らせて下さい。いいですか?」
 倒れた「かぞく」を見下ろしたフラスコチャイルドは、やがてカイを見つめて頷く。肯定の意思に、カイは詠唱を始めた。
「あなたを照らしますね。真っ直ぐに。迷わず、あなたが向かうべき先の、道しるべになるように」
 フラスコを抱きしめた両腕から、浄化の光が溢れ出す。優しい浄化の光に包まれたフラスコチャイルドに頷いたカイは、立ち上がるとその背で守る。
 これ以上フラスコチャイルドを傷つけたりしない。できるだけ「きょうだい」が倒される姿を見せない。決意を新たにしたカイは、念糸を繰り出した。
 その背中に再び黙り込んでしまったフラスコチャイルドに、レパイア・グラスボトル(勝利期限切れアリス・f25718)はそっと歩み寄った。首だけを巡らせて縋るように見るフラスコチャイルドの視線を合わせてしゃがむ。
「色んなことが一度に起きすぎて、辛いだろうなぁ。苦しいよな訳わかんねぇよな。だけどよ、ワタシが一つだけ、いいことを教えてやる」
 言葉を切ったレパイアに、フラスコチャイルドは視線で応える。何かを期待するような視線に、レパイアは続けた。
「他の世界には、オブリビオンを味方にする方法があるんだよ。勿論、今は無理だ。骸の海、ってとこに返さなきゃならねぇ。だが、いつかは。いつかはアンタの「かぞく」も救えるかも知れねぇ。アンタの未来の選択肢として、教えといてやるよ」
 それだけ言ったレパイアは、立ち上がると「かぞく」と相対した。
 レパイアの家族の子供達と歳もそう離れていないフラスコチャイルドに、多少甘くなる自分がなんだかおかしい。
「ま、新しい病人になっても困るからな」
 そう結論づけたレパイアは、床を蹴ると迫る第二波の攻撃に相対した。
『返して』
『彼女は私達の希望なの』
『その子をこちらに』
 迫る「かぞく」は、口々に言い募りながらフラスコチャイルドへと迫る。医療ノコギリで迫る「かぞく」を打ち払ったレパイアは、おかしそうに笑った。
「家族を守るのは当然だな。そしてアンタらがこの子を奪われたくないというのも当然だ」
『分かってくれるかい? さすがは同胞。さぁ、こちらに……』
「でもな、アンタらみたいな病人と一緒に、生まれたばかりの子供は置いておけないよナァ?」
 肩を竦めたレパイアは、続けざまに医療ノコギリを振るった。見るからに歪められた姿の「かぞく」達を、むしろ気の毒そうに見下ろす。
「他の世界の魔法とか使うヤツラと違って、ワタシは只の医者だからな。死人は治せないんだよ」
『だまりなさい!』
 声と同時に放たれた配線が、レパイアの腕に巻き付く。同時に巻き起こった爆破に防御姿勢を取ったレパイアは、起こる煙に咳き込みながらも繋いだ配線に意識を向けた。
 発動するユーベルコードは、脳の演算速度を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。医術を駆使して「かぞく」の記憶にアクセスする。

 レパイアがアクセスした先の記憶には、似たような白衣を着た二人の男がいた。
 金髪碧眼で痩せぎすの初老の男と、黒髪黒目で体格の良い若い研究者が言い争っている。今後の研究方針を言い争っていた青年は、交渉決裂したように背を向けて視界からいなくなる。
 ため息をついた初老の男は、壁に貼られた地図をじっと見る。
 そこには、×印と共にこの街の名前。そこから北東にマークされていた×印には、「S&A生命工学研究所」と書かれていた。

 意識が戻ったレパイアは、得た情報を脳裏に刻み込むと配線を通じて逆洗脳を行った。膨大な情報で「かぞく」にとどめを刺したレパイアは、反動で襲い来る睡魔に膝をついた。
 その隙を突いた「かぞく」が、フラスコチャイルドに迫る。すかさず猟兵達の攻撃が入り、「かぞく」の足を止める。口を開いた「かぞく」は、フラスコへビームを放つ。
 白い光がフラスコを破壊しようと放たれるが、輝命が張った破魔のオーラ防御の結界が弾き返す。
 更に攻撃を仕掛けようとする「かぞく」に、銃弾が放たれた。
「させるかよ」
 アルジャーノンエフェクトの副作用で眠っていたレパイアが、目覚めた瞬間倒れた姿勢からアサルトライフルを放つ。
 倒れた「かぞく」を踏み越えて迫るオブリビオンに、輝命は【鏡移り-道-】を詠唱した。
「さぁて、行きますよ」
 複製された鏡に映ったフラスコチャイルドと共に、離れた場所で応戦していた味方猟兵の後方へとテレポートする。
 フラスコチャイルドが今までいた空間を噛むように飛びつくオブリビオンに、レパイアは医療ノコギリを振り下ろした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



 ああ。
 また怖い夢だ。
 目を覚ましたはずなのに、また怖い夢がやってくる。
 「かぞく」が殺される怖い夢。繰り返されるいつもの夢。また眠ってたんだ。

『本当はあなたと仲良くなりたかったんだけど……恨んでくれていいよ』

 響く声に首を傾げる。
 うらむってなに? どうしてうらむの? いつもの夢なのにどうして?
 起きなきゃ。うたを聞かなきゃ。
 起きてうたを聞けば、みんなまた元気になるから。
 
『……御免ね。歌を歌っても、あの子達は元には戻らない。あの子達を救うのは私達にはちょっと難しいの』

 うたのひとのこえに、くろいものが胸にくる。
 むずかしいってなに? うたえばみんなもとどおり。そうじゃないの?

『あの「かぞく」は、姿を見せたなお今も過去という名の暗闇に閉じ込められているのです。助けるには、あの者達を倒さないといけません』

 過去ってなに?
 悪い夢を見る。「かぞく」が殺される。うたで目覚める。「かぞく」が元通り。
 そうじゃないの?
 歌えばみんなもとどおり。そうじゃないの?
 ねえおねがい、うたって!
 うたってくれる声に、目を閉じる。
 うたはきれい。きれいなうた。目を開けたら、きっとみんなもとどおり。
 ……なのに。
 どうして? なんでみんなもとどおりにならないの?

『「かぞく」がオブリビオンになったからです』

 きこえる声に、頭を叩かれたみたいに痛くなる。
 オブリビオン。
 そのことば、聞いたことがある。
 教授が言ってた、「かぞく」も言ってる。
 くりかえしてた、あの言葉。

『オブリビオンから街を守る。そのためならば、私は何度でも地獄に堕ちよう。君たちを付き合わせてしまって、すまない。だが私には、この研究を進めるしか道は無いんだ』

 オブリビオンってなに?
 そう聞こうとしたとき、「かぞく」がフラスコに触れた。
 そこから感じる、こわい気配。
 眠っていると怖い夢を見る。でもこわいのは来ない。
 起きているとたのしい「うた」が聞こえる。でもこわいのが来る。
 「かぞく」から、こわいののけはいがした。

 どうしよう。どうしようどうしよう。
 こわいのはオブリビオンだったんだ。
 「かぞく」や「きょうだい」がいてくれたから、苦しくてもがまんした。
 うたを聞いたらもとどおり。だからじぶんでいられた。
 でも「かぞく」はオブリビオンなんだ。

『他の世界には、オブリビオンを味方にする方法があるんだよ』

 ほかのせかいってなんだろう。
 どこで何がおきてるんだろう。
 わたしはどうしなきゃいけないんだろう。
 わたしはどうしたいんだろう。
 わたしは……。
ユウキ・スズキ
寂しいのは分からんでもないがな。
いつまでこの子を縛り付けるつもりだ、貴様らは。
「いいか? お前らはもう“死んでいる”んだ。死んでるんだよ、もう。だが⋯⋯だがこの子は違う! この子は生きている! お前たちは唯一生き残ったこの子まで道連れにするつもりかッ!?」
この子には恨まれるかもしれんな。
⋯⋯だが、それでもこの子を救うというのならば致し方ない事なのだろう。
たとえ恨まれたとしても、彼女が生き残るためならば⋯⋯⋯⋯手段は選ばんよ。
「⋯⋯今から私は君の家族を手に掛ける。君の家族はもう助からない。恨みたければ恨め⋯君にはその権利がある」
俺はこいつらを殺すが、白斗はどうする?
その子に恨まれる覚悟はあるか?


九十九・白斗
恨みを買わない戦場なんてあったか少尉?
少女のスナイパーに隊を半壊されたこともあった
軍服着てない一般人が平気で撃ってくるんだ
戦場で敵と判断した相手を殺すのに躊躇はしねえ
戦場から帰って平和ボケした奴らに女子供、老人を殺しただの罵られるのも慣れたもんだ

グリモアのパラスがオブリビオンだって判断したんだ
殺せばいい

まあ、その子には見せない方がいいだろう
他の猟兵が何もしないなら見えないところに連れて行って、そこから俺は狙撃で対処するよ

銃声で、フラスコチャイルドの耳に彼らの声が聞こえないようにガンガン撃っていく

まったく、パラスの予知する依頼はきついのが多いぜ
帰ったら飯でもおごらせてやる



● 生きるために死を
 転移してきたフラスコチャイルドと輝命を受け止めた九十九・白斗(傭兵・f02173)は、呆然とするフラスコチャイルドの姿に眉を顰めた。
 少し離れた場所で応戦していた白斗たちには、あちらの戦場での会話までは聞こえてこない。一緒に転移してきた輝命に話を聞いた白斗は、小さく舌打ちした。
 フラスコチャイルドにとって、家族が殺されるのは「いつもの悪夢」なのだという。例え家族が目の前で殺されても、うたを聞けば元通り。
 さながら怖い映画を繰り返し見続けているような感覚だったのだろうが、フラスコチャイルドはいくらうたを歌っても「かぞく」は蘇らないことを、「かぞく」が自分が遠ざけていた「こわいもの」ーーオブリビオンであることを知ったのだという。
 ならば。この子にはここから先の戦闘は見せないほうがいい。ここから先は酷すぎる。白斗はどこか完全に隠せる場所がないか周囲を見渡したが、元々広い礼拝堂のこと。死角になりそうなスペースは見当たらない。
「まったく、パラスの予知する依頼はきついのが多いぜ。帰ったら飯でもおごらせてやる」
 ぼやきながら頭を掻く白斗に、隣に立ったユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は顔をしかめた。
 ここから先、フラスコチャイルドがどんな反応をするのかは分からない。だが恨まれこそすれ感謝はされないだろう。
 なにせ、ユウキ達はこれから「かぞく」を殺すのだ。夢ではなく、現実で。
「この子には恨まれるかもしれんな。……だが、それでもこの子を救うというのならば致し方ない事なのだろう。たとえ恨まれたとしても、彼女が生き残るためならば……手段は選ばんよ」
 苦虫を噛み潰したような表情をしたユウキは、フラスコチャイルドの前にしゃがみ込む。硝子のように透明だった表情に、今は戸惑いや不安の色が浮かんでいる。
「……今から私は君の家族を手に掛ける。君の家族はもう助からない。恨みたければ恨め。……君にはその権利がある」
 容赦のないユウキの宣告に、フラスコチャイルドは目を見開く。フラスコの壁に手をつき何事か言っているが、敢えて無視して立ち上がった。
 視線を転じると、そこには「かぞく」の姿がある。猟兵達と交戦しながらもなおこちらへ攻め寄る姿に顎をしゃくる。
「俺はこいつらを殺すが、白斗はどうする? その子に恨まれる覚悟はあるか?」
「恨みを買わない戦場なんてあったか少尉?」
 腕を組み顔をしかめた白斗は、否応なく脳裏によぎる記憶に眉をしかめた。
 少女のスナイパーに隊を半壊されたこともあった。
 軍服を着ていない一般人が、平気で撃ってくるのだ。
 戦場で敵と判断した相手を殺すのに躊躇はしない。
「戦場から帰って平和ボケした奴らに女子供、老人を殺しただの罵られるのも慣れたもんだ」
 「きょうだい達と一緒に歌えばい」そう言った直後に「かぞく」を殺す。えげつない状況だが、オブリビオンと化してしまった以上救うことなどできないのだ。
「グリモアのパラスが、オブリビオンだって判断したんだ。殺せばいい」
 そう言いながらアンチマテリアルライフルを構え狙撃態勢に入る白斗に、ユウキは頷く。迫りくる「かぞく」達につま先を向けたユウキは、歩み寄ると彼らに向けて語りかけた。
「寂しいのは分からんでもないがな。いつまでこの子を縛り付けるつもりだ、貴様らは」
 静かな怒りを込めた言葉に、「かぞく」達の足が止まる。一瞬顔を見合わせた「かぞく」達は、口々に言い募った。
『この子を返して』
『帰っておいで』
『私達はたくさんの人を守るために生まれたんだ』
『だから……』
「いいか? お前らはもう“死んでいる”んだ。死んでるんだよ、もう。だが……だがこの子は違う! この子は生きている! お前たちは唯一生き残ったこの子まで道連れにするつもりかッ!?」
 怒鳴り声と共に、フラスコチャイルドを指差す。猟兵達と何事か話すフラスコチャイルドの姿に、「かぞく」達は手を伸ばした。
『そう。その子は生きなければならない』
『私達の手の中で』
『それこそが、私達の生まれた意義なのだから』
「話にならねぇな……」
 大きくため息をついたユウキは、シュバルトライテ用弾薬を召喚するとSturm Gewehr G3 Ku 【Schwertleite】に装填。「かぞく」に狙いを定めると弾薬をばら撒いた。
 「かぞく」達用に特化した弾丸は、次々に打倒していく。そこから漏れ、大外から回り込もうとした「かぞく」の眉間を、アンチマテリアルライフルの重い大口径弾が貫いた。
 遠方から狙撃を続ける白斗は、「かぞく」を確実に屠る。
 銃声が、彼らの声をかき消せばいい。せめてフラスコチャイルドに聞こえないように。
 祈りを込めた銃弾が、次の「かぞく」を貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

影見・輪
フラスコチャイルドの護衛メイン

「かばう」を中心にこの身を盾に攻撃を受けよう
必要なら「捨て身の攻撃」の上【ブラッド・ガイスト】使用
「傷口をえぐる・生命力吸収」も併用するね

こういう時、耳障りの良い言葉を言うのは好きじゃないんでね
事実を伝えるよ

残念だけど
君の家族はもう救うことができない
彼らは過去だ
君の命と未来を奪ってしまう存在になってしまった

だから僕らには、彼らを殺す選択肢しかない

君が彼らの元に戻ったら、君は死んでしまう
君は家族と一緒なら死んでもいいと思うかもしれない

けれど、僕は君に生きて欲しい
必要なら家族を殺すことしかできない僕を恨んでもいい

生きるんだ
そしてこの理不尽を跳ね返せるほどに強くなるんだ


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

たったひとつの目的のために、創られたかぞくたち
しかし同時に…犠牲者でもある

オブリビオンとなったら、もう…倒すしかない
今、君たちを解放する

【魂魄解放】発動
基本はフラスコチャイルドの護衛
常に「かばい」続け、指一本触れさせない
奪おうと接近するかぞくを優先的に「早業、2回攻撃」で斬り伏せ
敵の攻撃は回避せず「激痛耐性、オーラ防御」で気合で耐え抜く

万が一一時的にかぞくの手に落ちたら
「ダッシュ、怪力、グラップル」+高速移動で突撃して奪い返す

余裕あればフラスコチャイルドに声かけ
かぞくとの別れはいつか来るもんだ
だが…離れてもかぞくとの思い出は残る
ほら、今がひとりで歩き始める時だよ


ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ・共闘は可で

「ボクも猟兵もプロレスラーも人々を笑顔と幸せの為に闘争しているんだ!」
『ゴッド・クリエイション』で慈愛の女神を創造して優しく光に包み込みます。
『スカイステッパー』で高速で移動しながら敵のUCを『神代世界の天空神』で空間飛翔して避けながら『天空神ノ威光・黄昏』で封印/弱体化させつつ、『ヴァイストン・ヴァビロン』で強化した『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で辛さや怖さを伴わない♥ビームをして「光に還るんだ!」と放ちます!
抵抗されたり避けられたら止む終えなく『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で素早く確実に“終焉”を迎えさせてあげます。



● 誰が為のさみしがり
 少し離れた戦場から危機回避のためにテレポートしてきたフラスコチャイルドは、目の前で繰り広げられる戦闘に大きく目を見開いた。戦いの様子に手を伸ばし、フラスコの内側から「かぞく」の顔をそっと撫でている。
『すこしちがうけど、いつもの夢だよね? いつも見ていた怖い夢。うたをうたえば、すぐに元通り。……そうだ。別のうたをうたって? きっとみんな。このうたが嫌いなんだよ。だから』
「こういう時、耳障りの良い言葉を言うのは好きじゃないんでね。事実を伝えるよ」
 不安を覆い隠すように言い募るフラスコチャイルドに、影見・輪(玻璃鏡・f13299)は目線を合わせた。
 フラスコチャイルドはいつも、「かぞく」が殺される夢を見ていた。死んだ「かぞく」達はうたによって元に戻り、共にひとときの時間を過ごす。
 だから今も、うたを歌えば家族は蘇ると思っている。否、思おうとしている。
 この現実に向き合わない限り、フラスコチャイルドが外の世界で生きていくことなんてできない。
「残念だけど、君の家族はもう救うことができない。彼らは過去だ。君の命と未来を奪ってしまう存在になってしまった。……だから僕らには、彼らを殺す選択肢しかない」
『ころす……。うたっても、目を覚ましても、もう、みんなに会えないの……?』
「そう。それが「死」というものだ」
『死……』
 呆然としたフラスコチャイルドは、ぽつり呟くと黙り込む。与えられた情報を咀嚼するように目の前の光景をじっと見たフラスコチャイルドは、ぽつり呟いた。
『ひとりはいや』
 ただ真っ直ぐな目で戦場を見つめる目に狂いはない。目を見開く輪に、静かに告げた。
『わたしは、オブリビオンから、みんなを守るために夢を見なさいって言われたの。怖い夢を見て、みんなが死んで。でもうたを聞いたらみんなえがおで。だから、がんばったの。だけど……』
 輪を見上げたフラスコチャイルドは、頬を歪めた。初めて見せる泣きそうな顔に、輪は息を呑んだ。
『みんながオブリビオンになったら、わたしがみんなを遠ざけるの。みんなを守りたかったから、がんばったのに、とおざけたら、わたし、ひとりぼっち。ひとりで怖い夢を見るの。なら、わたしも一緒に行く』
 呟くフラスコチャイルドに呼応するように、複数の鋭い影が空を飛んだ。猛スピードで空を飛ぶ「かぞく」は、猟兵達の迎撃を退けると防御網の内側に着地した。

● 自分で生きていくために
 空を駆けた「かぞく」が着地すると同時に、攻撃が激しさを増した。最後の足掻きとばかりに攻撃を仕掛けて来る「かぞく」達の前に、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が立ちはだかった。
 今までずっと輪の説得を聞きながら周囲を警戒していた敬輔の反応は早い。腕を伸ばす「かぞく」の背中に黒剣を振るい、返す刀で後続を貫く。
 次々に襲い掛かってくる「かぞく」は、敬輔に救いを求めるように掴みかかってきた。
『行こう』
『一緒に街を守ろう』
『いつまでもみんな一緒だ』
『さあ!』
「待て!」
 叫んだ敬輔は、足止めするように抱きついてくる「かぞく」ののしかかりを斬り伏せながら叫んだ。
 たったひとつの目的のために、創られたかぞくたち。だがしかし同時に……犠牲者でもある。
 オブリビオンになる前に解放できたら、どれだけ良かったか。だが、もう遅い。オブリビオンとなったら倒すしかない。だから。
「今、君たちを解放する!」
 黒剣から放たれる光から、そこに宿る魂たちが現れる。敬輔を守るように周囲を舞う魂たちに、敬輔は語りかけた。
「頼む。俺に力を貸してくれ。あの子を連れて行かせる訳にいかないんだ!」
 敬輔の声に、少女たちの魂が呼応する。軽くなる身体を感じた敬輔は、黒剣を握り締めると衝撃波を放った。
 吹き飛ばされる「かぞく」達の後ろから、次々にやってくる。波状攻撃を仕掛ける「かぞく」達に、輪も動いた。
 迫る「かぞく」の手からフラスコチャイルドを庇い、払いのける。自身の傷を厭わず攻撃を受け止める輪は、殺戮捕食態へと変じた鮮血桜を胴に叩き込んだ。
「この子は連れて行かせない!」
『もらったぁっ!!』
 大外から回り込んだ「かぞく」が、フラスコチャイルドに迫る。フラスコに手がかかる寸前、その姿が消えた。
「そうはさせません!」
 蛇尾脚斬刺突刃・超長髪斬刺突刃を振り上げたティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)の一撃が、間一髪「かぞく」を消し去る。フラスコチャイルドを守るように駆け込んだティファーナは、迫りくる「かぞく」達に得物を構えた。
「ボクも猟兵もプロレスラーも、人々の笑顔と幸せの為に闘争しているんだ! あの子は連れて行かせないぞ!」
 叫んだティファーナは蛇尾脚斬刺突刃・超長髪斬刺突刃を縦横無尽に振るい、「かぞく」達を退ける。フラスコチャイルドを守るティファーナに、腕を伸ばした「かぞく」がのしかかった。
『お願い。あの子を連れて行かないで。私達は一緒にいたいの!』
「ごめん!」
 切なる願いを込めた掴みかかりはしかし、宙を切る。回避された両腕に顔を上げた「かぞく」は、なおも搭載された件でティファーナへと攻撃を繰り出す。
 連続攻撃を背中の羽の飛翔で回避したティファーナは、唇を噛むと声を張った。
「君たちはオブリビオンなんだ! これ以上世界を崩壊に導く前に、ボクが“終焉”を迎えさせてあげる! 光に還るんだ!」
 叫びと共に超神武闘必殺技を繰り出したティファーナの攻撃が、「かぞく」を捉え大ダメージを与える。
「ごめんね。でも、人々の笑顔と幸せの為に安らかに眠って」
 着地し立ち上がったティファーナは、消え去る「かぞく」を背中で見送ると戦場へ駆け込んだ。
 鬼神の如き働きを見せるティファーナに、敬輔は床を蹴る。同時に迫りくる「かぞく」を二人まとめて薙ぎ払った時、影が動いた。
 同時に襲いかかった「かぞく」を囮に、別の「かぞく」がフラスコチャイルドへと駆け寄る。一瞬の空白を突いた「かぞく」は、フラスコを抱きしめた。
『さあ、おいで。いっしょに行こう?』
「させるかぁっ!」
 フラスコを持ち上げ、天使像へ走る「かぞく」の背中に、敬輔が肉薄する。ユーベルコードで得た高速移動能力にダッシュの加速を加えた敬輔は、即座に前に回り込むとフラスコに掴みかかった。
 怪力でフラスコを抱いた敬輔は、分厚い硝子の感触にやむを得ず力を加減する。両端から奪い合う敬輔と「かぞく」の力は、しばし拮抗。
 均衡を破ったのは敬輔だった。足を踏み込み捻じりの力を入れた敬輔が、フラスコを奪い返す。更に奪い返そうと手をのばす「かぞく」を、殺戮捕食態に変化した鮮血桜が喰らい尽くす。
「馬鹿!」
 フラスコに駆け寄った輪は、黙って見つめるフラスコチャイルドに叫んだ。フラスコを叩き、意識をこちらに向かせる。その衝撃に驚いたように首を竦めたフラスコチャイルドは、涙を流す輪に目を見開いた。
『どうして……』
「君が彼らの元に戻ったら、君は死んでしまう! 君は家族と一緒なら死んでもいいと思うかもしれない。けれど、僕は君に生きて欲しい!」
『いきて……?』
「必要なら家族を殺すことしかできない僕を恨んでもいい! 生きるんだ。そしてこの理不尽を跳ね返せるほどに強くなるんだ!」
『でも、「かぞく」がいないとさみしいよって……』
 なおも言い募るフラスコチャイルドに、敬輔はそっと寄り添った。視線を合わせ、優しく諭すように声を掛ける。
「かぞくとの別れはいつか来るもんだ。人は誰も、いつかは一人で生きていかなきゃいけないんだ。だけど……離れてもかぞくとの思い出は残る。思い出の中でまた会えるさ。ほら、今がひとりで歩き始める時だよ」
『ひとりで……あるく……』
 噛みしめるように呟くフラスコチャイルドに、敬輔は頷く。その時、纏っていた少女たちの魂が敬輔から離れた。
 ーーおいでよ。
 ーーもう大丈夫。怖くないから。
 少女の魂達はフラスコチャイルドの周囲で息を潜めていた「きょうだい」達に語りかける。おずおずと出てきた白い光が、フラスコチャイルドの周囲をくるくる回る。
 寄り添う「きょうだい」達の魂に、フラスコチャイルドは頬を緩めた。


 どうしよう。
 どうしようどうしよう。
 眠って、起きて、うたを聞いても「かぞく」がもとに戻らない。
 どうしよう。
 どうしようどうしよう。
 「かぞく」がオブリビオンになった。
 オブリビオンから守るためにわたしはいるのに。
 どうしようって思っていたら、世界が歪んだ。
 見えていた天使像が遠くなる。
 代わりに現れた、うたのひと。

『……今から私は君の家族を手に掛ける。君の家族はもう助からない。恨みたければ恨め。……君にはその権利がある』

 てにかけるって何? うらむって何?
 皆口々に言うけれど、よくわからない。
 「かぞく」が死ぬのはいつものことで。
 でもうたっても帰ってこないのが嫌で。

『残念だけど、君の家族はもう救うことができない。彼らは過去だ。君の命と未来を奪ってしまう存在になってしまった。……だから僕らには、彼らを殺す選択肢しかない』

 きっとそれはほんとうのことで。
 今だって「かぞく」がころされて。
 うたはきこえるけど、みんなおきてこなくて。
 みんなはわたしが遠ざけるオブリビオンになって。
 このままだと、ずっと一人。ずっとずっと一人かも。
 そう考えたら、ほんとうに「かぞく」が恋しくなって。
 ひとりはこわくて。

 起こる混乱。
 「かぞく」の気配が近くなる。
 触れる「かぞく」の気配はやっぱりオブリビオンのそれで。

 フラスコにふれる明るい力と、フラスコにふれる暗い力と。
 暗い力が遠くなって、その代わりに明るい力が強くなって。
 フラスコに感じる衝撃。はいってくる、たくさんの気持ち。
 生きて欲しいって。
 死なないで欲しいって。
 そのためならなんでもするって。
 「かぞく」がいなくてさみしくても。
 わたしのために掛けてくれる声に、胸が熱くなって。

『離れてもかぞくとの思い出は残る。思い出の中でまた会えるさ。ほら、今がひとりで歩き始める時だよ』

 思い出。
 「かぞく」で過ごした楽しい思い出。
 会えなくても会えるって思うと、こころが軽くなって。
 今まで声を掛けてくれたみんなはオブリビオンじゃなくて。
 そう思ったら、「きょうだい」達がそっとフラスコに触れて。
 きょうだい達はオブリビオンじゃない。あたたかな気配に、また心が軽くなった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『破滅の因子』ヒルコ』

POW   :    蹂躙する無形
【自在に変形する肉体】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    並行多重思考演算
【敵対者の思考パターンを模倣することで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    生命という邪悪
【自身に関する情報】を披露した指定の全対象に【対象自身を含む全ての生命を殺したいという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

● 残滓
 全て倒された「かぞく」達の姿に、天使像は大きくわなないた。
 唸るような低い声を上げる。目から血の涙を流した天使像の背中の羽が大きく広がり、倒れる「かぞく」達の死体が次々と天使像の許へ集まる。
 やがて巻き起こったオブリビオン・ストームが、天使像を包み込む。黒い竜巻が収まった時、そこに物言わぬ異形が現れた。
 様々なものが混じり合い、融合したオブリビオンは、欲求のままにフラスコチャイルドへ手を伸ばす。
 その手を繋ぐようにフラスコの中から手を伸ばしたフラスコチャイルドは、目を伏せると頭を横に振った。
『……おねがい。たすけて。たすけて、あげて』
 フラスコチャイルドの懇願に、猟兵達は駆け出した。

※ おしらせ
 プレイングは断章公開後より5/9(土)夜9時まで受付致します。
桜雨・カイ
……はい、分かりました。必ずたすけますね

やることは同じです。【援の腕】での浄化。
あの子(フラスコチャイルド)の無事を確保しつつ
彼女がが望んだように、
彼女の代わりに手を伸ばして、オブリビオンの手と思われるものを握る
(触れた事による苦痛は【激痛耐性】で受ける)

もう一度言いますね。あなた達ももう苦しまなくていいんです。
そして彼女も一人にはしません、だから。
『もう、苦しくないですか?』
その問いに望む答えが返るまで、浄化しつづけます。

…終わったら、お墓を作ってあげましょうね
街を救った「天使」ではなく、あなたの大切な「かぞく」のお墓を。
そして、あなたの名前も決めましょうね。何か希望はありますか?



● 「かぞく」を救う浄めの光
※ 構成の都合上、戦闘後のプレイングは最後のプレイング返却時にまとめてさせていただきます。
完結通知を受け取られましたら、ご確認をお願いします。

 ヒルコに必死に手を伸ばすフラスコチャイルドの姿に、桜雨・カイ(人形を操る人形・f05712)は深く頷いた、
「……はい、分かりました。必ずたすけますね」
 目の前で融合した「かぞく」達はもはや自我意識があるのかも怪しく、ただ周囲の生命を蹂躙するだけの存在と成り果てている。
 倒すしかない。そんなことは百も承知だ。だが、ここでヒルコをただ骸の海へ還すことなどカイには到底できなかった。
 カイがやることは同じ。報われず求め続ける生命を浄化しつづけることだけ。頑なな「ヒルコ」の中に、「かぞく」達の魂が消えずに残っているだなんて、希望以外の何物でもない。だが、カイにとっては縋るに値する希望だった。
 ヒルコに手を伸ばしたカイは、手と思われる部位に手を伸ばした。
「あなた達を照らしますね。真っ直ぐに。迷わず、あなた達が向かうべき先の、道しるべになるように」
 反射的に引かれる手に、更に手を伸ばす。ついに掴んだ手から流れ込む「かぞく」達の思念と、生けるものを侵食するヒルコの肉体が齎す激痛を辛うじて耐える。
 意識が飛びそうになるくらい流れ込んでくる、「かぞく」達の思念。犠牲となった彼らの魂が少しでも癒やされるよう。彼らの思いが少しでも昇華されるよう。
 ーーフラスコチャイルドの望みが、叶えられるよう。
 手を離さないカイに、ヒルコの気配がわずかにたじろぐ。そこに希望を見たカイは、ヒルコに語りかけた。
「もう一度言いますね。あなた達も、もう苦しまなくていいんです。そして彼女も一人にはしません、だから」
 背中に感じるフラスコチャイルドの視線に、カイは目を細める。真っ直ぐ見つめ続ける彼女の強さを受け取ったカイは、ひとつの問をヒルコに投げかけた。

『もう、苦しくないですか?』

 カイの問に、ヒルコは弾かれたようにカイを振り払う。距離を置いても溢れる浄化の光に、ヒルコは苦悶のうめき声を上げる。
 カイの問いに望む答えが返るまで、浄化しつづけよう。
 「きょうだい」達のように救えなくても、せめて苦しくなくなるように。
 フラスコチャイルドの隣に立ったカイは、ヒルコをじっと見つめ続けた。
 浄化の光が消えないように。
 希望の光が消えないように。

成功 🔵​🔵​🔴​

月水・輝命
アド・連携◎
WIZ
えぇ、勿論ですわ……

……私に、任せよ。
(真の姿の狐纏いを発動)


武器は神焔扇。

ふむ、この期に及んで、まだその幼子を手にかけんとするのかえ?
重なった死が願いを狂わせたか。哀れじゃな。
狐火・子狐召喚で、幾つもの子狐を召喚。
「破魔」を纏わせ、我が炎の「範囲攻撃」にて「なぎ払い」攻撃をしようぞ。
「破魔」を兼ねた「オーラ防御」で、私自身と幼子を守っておこうかの。
子狐を数匹、守りに向かわせる。
ま、きょうだいとやらもおるじゃろうが。
情報は覚えておくが、お主らのような一時の感情で動かされるほどやわでは無い。

……幼子、選択する機会はこれからもある。
存分に悩み、お主自身で答えを導くのじゃ。


ティファーナ・テイル
SPDで判定を
*アドリブ・共闘は可で

「正義の味方なプロレスラーは悪には決して敗けないぞ!」と拳を向けます。
殺したいと言う感情も思考パターンも“お子ちゃま”なので考えて動くよりも本能で動きます。
『天空神ノ威光・黄昏』で敵のUCを封印/弱体化させつつ『神代世界の天空神』で空間飛翔しながら攻撃を避けて『セクシィアップ・ガディスプリンセス』で♥ビームを撃ちながら隙があれば髪の毛と蛇尾脚で『ガディスプリンセス・グラップルストライカー』で攻撃をして『スカイステッパー』で避けつつ、🔴が付いたら『超必殺究極奥義』+『ヴァイストン・ヴァビロン』で苛烈な猛攻を仕掛けます!

「正義は敗けない!笑顔と平和を守る!」



● 銀と金の連舞
『……おねがい。たすけて。たすけて、あげて』
 フラスコチャイルドの懇願に頷いた月水・輝命(うつしうつすもの・f26153)は、静かに頷くとフラスコにそっと手を触れた。
「えぇ、勿論ですわ……」
 頷いた輝命は、フラスコチャイルドを背中で守りながら神焔扇をパラリと開いた。
 多くを望まないこの子が望むことを、少しでも叶えてあげたい。輝命は神焔扇に顔を伏せそっと目を閉じると、自らの裡に在る白狐に語りかけた。
「……私に、任せよ」
 輝命の声に、内なる声が応え淡い光に包まれた。
 その瞬間、輝命は真の姿を顕した。
 青みを帯びた銀の髪が、白にも似た銀色へと変わる。九尾を顕し神格を帯びた目をした輝命の中にいる白狐は、フラスコチャイルドへと迫るヒルコへ神焔扇を差し向けた。
 低い唸り声を上げるヒルコは、ヘドロのような身体を飛ばす。神焔扇にまとわせた霊力で薙ぎ払い迎撃した白狐は、手の甲に飛んだヘドロに眉を顰めた。
 都市を守り、平和を守る。そのための礎となる。それだけを目的に生かされてきた「かぞく」達は、それを成すための要石であるフラスコチャイルドを取り戻そうと必死に手を伸ばしている。そんな感情が来るかと思ったが、このヘドロから感じる感情はただ一つ。
 殺せ。ただそれだけだった。
 未だ解放されずに、ただ一点を見つめる「かぞく」の成れの果てに、白狐は眉を顰めた。
「情報は覚えておくが、お主らのような一時の感情で動かされるほどやわでは無い」
 小さくため息をついた白狐は、手についたヘドロを振り払った。
 できた隙を突いたヒルコが、白狐に掴みかからんと猛突進を仕掛ける。ヒルコの手が白狐を掴む寸前、金の光が舞い込んだ。
「さっせないぞー!」
 蛇尾脚斬刺突刃・超長髪斬刺突刃でヒルコの腕を断ち切ったティファーナ・テイル(ケトゥアルコワトゥル神のスカイダンサー・f24123)は、白狐を庇うようにヒルコの前に立ちふさがると、握り締めた拳をヒルコに差し向けた。
「正義の味方なプロレスラーは悪には決して敗けないぞ!」
 叫んだティファーナは、【威光】と【後光】でヒルコを次々と照らしだす。最後の【天空神護光】を放つ寸前、爪がティファーナを襲った。
 反射的に回避するものの、同時に【天空神護光】も回避される。戦力を削っただけで良し。そう切り替え戦意も高く戦いに臨むティファーナに、ヒルコは憎しみの視線を向ける。その視線を真っ向から受け止めたティファーナは、剣に変じた超長髪を振り上げた。
 神速に繰り出されるティファーナ斬撃を、ヒルコはまるで読み切ったかのように避ける。踊るように斬撃を繰り出したティファーナは、プリンセスガディスハートからの攻撃も織り交ぜながらヒルコを徐々に追い詰めていった。
 それらを回避していたヒルコだったが、苛立ったようにティファーナを爪で薙ぎ払う。その攻撃を待ってましたとばかりに口元に笑みを浮かべたティファーナはサッと身を沈めた。
「隙ありじゃな」
 ティファーナが引きつけている間に神焔扇に小狐をまとわせた白狐は、優雅にそれを一振りする。
 放たれた子狐達が、次々とヒルコに向かって突撃を仕掛けた。噛みつき、体当たりを仕掛けていく子狐達は、着実にヒルコの体力を削っていった。
 嵐のように続く攻撃に、ヒルコは叫んだ。咆哮を上げながら放ったヘドロがフラスコチャイルドへと向かう。鋭く放たれたヘドロはしかし、フラスコの前に飛び出した子狐達が盾となり、傷一つ与えることはできない。
 子狐達の後ろから、「きょうだい」達が現れた。フラスコチャイルドを守ろうとしたのだろう。魂たちは子狐達を気遣うように、礼を言うようにふわりと舞った。
 フラスコチャイルドの側へ戻った白狐は、哀れな目でヒルコを見下した。
「ふむ、この期に及んで、まだその幼子を手にかけんとするのかえ? 重なった死が願いを狂わせたか。哀れじゃな」
「正義は敗けない! 笑顔と平和を守る!」
 強く踏み込んだティファーナの拳が、ヒルコの腹に突き刺さる。その様子に鼻を鳴らした白狐は、くるくる回る「きょうだい」達に目を細めると、かたわらのフラスコチャイルドに目を細めた。
「……幼子、選択する機会はこれからもある。存分に悩み、お主自身で答えを導くのじゃ」
『わたし、じしんで……?』
 首を傾げるフラスコチャイルドに、白狐は大きく頷いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユウキ・スズキ
「敵の誘導了解……さぁ、終わりにしよう……これで」
敵にライフルを乱射しつつ白斗の仕掛けた爆薬に誘導。
思考パターンを読めるようだが、思考そのものは読めんだろう。
誘導する間の思考パターンを読まれても問題はない。
一番当てやすい胴体を狙い射撃しつつ誘導し、白斗の爆薬近くでライフルを放棄。
UCと共に拳銃を引き抜き、思考パターンを再度読まれる前に脚部に銃撃。足を破壊する。
放つ弾丸はフラスコの中の少女と町の人々、そして目の前のオブリビオン。
その全てを守り救おうとして戦った者達が流した血の結晶。
「思いを受け取れ、大馬鹿者共。そして……"R.I.P."今までご苦労だった。安らかなる眠りがお前達にあらんことを」



● 頑なな魂に安らぎを
 教会内に、苦痛の声が響き渡った。
 カイの与える浄化の光に抗い続けるヒルコの姿に、ユウキ・スズキ((自称)不審者さん【少尉】・f07020)は続けざまに銃を放った。
 浄化の光に苦しみながらも、危機を察する本能は残っていたのか。続く銃弾を回避したヒルコは、ユウキに向けて大きく吠えた。脳内をスキャンされるような衝撃に眉を顰めたが、特別問題はない。
 最も狙いやすい胴を狙ってライフルを乱射。注意を引きつけ最も狙いやすい射線に誘導するという思考パターンを読まれたのか、射撃はことごとく回避される。だが、それは問題ない。
 思考パターンは読まれても、思考そのものは読まれないのだから。
 存分に無駄弾をくれてやりながらも、注意はこちらに引きつけ続ける。業を煮やしたヒルコは、咆哮と共にヘドロを放った。
 生あるものを溶解するヘドロが、ユウキの腕をかすめる。走る激痛に眉を顰めるが、ユウキはこれを待っていた。
「敵の誘導完了……さぁ、終わりにしよう……これで」
 突進してくるヒルコの足をライフルで撃ち抜く。破壊された両足に動きを止めた一瞬の隙を突き、ユウキはライフルを投げ捨てた。
「あぁ、猛き鮮血は祝福が如く……終わりなき戦場を住家とし……やがて血は失われる……貴公の罪の重さを知り給え……」
 詠唱と同時に、拳銃を引き抜く。マガジンに装填された弾丸は、一発だけ味方や自分の流血を固めたSkuld用弾丸に変質していた。
 それは、フラスコの中の少女と町の人々、そして目の前のオブリビオン。その全てを守り救おうとして戦った者達が流した血の結晶。
「思いを受け取れ、大馬鹿者共。そして……"R.I.P."今までご苦労だった。安らかなる眠りがお前達にあらんことを」
 祈りを込めた弾丸が放たれる。ユウキが放った弾丸は、銀の光となり頑ななヒルコの魂の鎧を打ち砕いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリス・シルフィード
【風グリ】
共通:他の猟兵との連携・アドリブ可
呼び:エリス(f10650)→姉さん 優希斗(f02283)は呼び捨て
表記は私がエリス、姉さんが姓
ええ…分かったわ
あなたの願いは、私達が必ず叶える
でも、一つだけ約束して
あなたはこの先『生きる』ことになるわ
でも、『かぞく』の皆に向けられたその優しさと愛情を
決して忘れないで
そして…今度は外の『みんな』に教えてあげてね
お姉さんとの約束よ?
…姉さん、優希斗
後は、任せたわよ(同時に両目が金の瞳=真の姿化)
今まで彼女に聞かせ続けていた子守歌の音調を変えてUC発動
優しさ+祈りを籠めて、歌を歌い続ける
あの子達の苦しむ姿を見せぬよう、地形を利用しこの子を守りながら


エリス・フリーウインド
【風グリ】
呼び方:エリス(f10648)→エリス、優希斗(f02283)→優希斗殿
他猟兵との連携・アドリブ可
ええ、分かっています、エリス
私達も力を貸さない理由はございませんから
ただ、哀れむことは偽善だと承知の上で申し上げさせて頂きます
…神よ
あの娘の『かぞく』のなれの果てたる者達に安らかな眠りを与えたまえ
エリスの支援を受けつつオーラ防御+武器受け+拠点防御+盾受け+庇うでエリスとフラスコチャイルドを庇う結界を張りUC発動
…残念ながら私の情報は、これでも全てでは無いのですよ
故に貴方方のUCで、私を操ることは出来ませぬ
感情は覚悟で耐え抜き
UC+援護射撃で優希斗殿を援護しつつ私も積極的に攻勢に出ます


北条・優希斗
【風グリ】
呼び方:エリス(f10648)→エリス、フリ(f10650)→エリスさん
…皮肉な話だ
俺の思考パターンを模倣するならば
この技ならどうなろうがお前達も深手を負う
何でかって?
強すぎる英雄の力に、その器が傷つくからさ
ダッシュ+残像+見切りで肉薄、UC発動
月下美人と蒼月に二回攻撃+フェイント+グラップルを加えて攻撃
エリスさんの攻撃支援を受け
残り二刀を抜刀ジャグリングし
早業+二回攻撃+見切り+鎧無視攻撃+属性攻撃で追撃
追打ちで夕顔で傷口を抉る+騙し討ち
…悪いな
これは俺の思考で制御出来る程、生易しい技じゃ無い
だから眠れ
骸の海で永遠に
出来なければ…お前達の声と想いの全てを、ただ、俺が受け止めるだけさ



● 姉妹の祈り
『……おねがい。たすけて。たすけて、あげて』
 フラスコチャイルドの願いを聞いたエリス・シルフィード(金色の巫女・f10648)は、フラスコチャイルドと目線を合わせるとゆっくりと頷いた。
「ええ……分かったわ。あなたの願いは、私達が必ず叶える」
『ありが……とう』
 呟くフラスコチャイルドは、顔を上げて遠くを見る。「かぞく」達が融合し、変異してしまったオブリビオンーーヒルコは、猟兵達と交戦状態にあり既に大きなダメージを受けている。ここは絶対に通さない、という意思を実力で示されて尚、フラスコチャイルドのことを諦めた様子はない。
『そんな所にいちゃだめだよ』
『さあおいで。一緒に帰ろう』
『……っ』
 ヒルコの声に、フラスコチャイルドは泣きそうに頬を歪める。言いたいことがうまく言えない。そんなフラスコチャイルドの姿に、エリスは視線を合わせた。
「でも、一つだけ約束して。あなたはこの先『生きる』ことになるわ。でも、『かぞく』の皆に向けられたその優しさと愛情を、決して忘れないで」
『あいじょう……?』
「そう。そして……今度は外の『みんな』に教えてあげてね。お姉さんとの約束よ?」
 フラスコの表面に差し出した指に、フラスコチャイルドは真似して自分の指を差し出す。ガラス越しに触れ合う指に、エリスは立ち上がった。
「……姉さん、優希斗。後は、任せたわよ」
 戦場に向かい合ったエリスは、前線で戦うエリス・フリーウインド(夜影の銀騎士・f10650)と北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)の背中に語りかけた。同時に両目が金色に輝く。真の姿を顕し音階を変えた子守唄を歌うエリスの歌声に、フリーウインドは深く頷いた。
「ええ、分かっています、エリス。私達も力を貸さない理由はございませんから」
 ランスオブダークを構えるフリーウインドの背中を、エリスの歌が押す。子守唄はやがて変調し、エリスの歌に魅了された風の精霊の即興曲がフリーウインドに力を与える。
 一瞬視線を外したエリスに、ヒルコのヘドロが迫った。エリスの歌をやめさせようと次々に放たれるヘドロの攻撃に、フリーウインドは結界を張った。
 構えた破邪の大盾から溢れ出す複雑な文様の結界が、エリスとフラスコチャイルドの前に展開する。呪詛を帯びたヘドロは破邪の大盾に、光の結界に阻まれ滑り落ちる。
 盾越しに感じる感情に、フリーウインドは眉を顰めた。
 背中に庇ったエリスの分も感じる。「かぞく」達の嘆きが。悲しみが苦痛が悲哀が。たった一つの存在意義であった望みも絶たれ、必死に取り戻そうとする強い意志が。
 融合しヒルコと成り果てていたオブリビオンの殻が破壊され、溢れ出す感情の渦にフリーウインドはユーベルコードを詠唱した。
「黒き翼を持つ例え、下賎なる異端の聖騎士にも、神は等しく大切な者を守る力を下賜下さいます」
 神より授けられた魔を払う漆黒の聖衣姿に変身したフリーウインドは、覚悟を持って意思に抵抗した。
 彼らの感情は理解できる。希望を断つという行為の罪深さも。だがそれを背負ってでも成したいことが、フリーウインドにはあった。
「……残念ながら私の情報は、これでも全てでは無いのですよ。故に貴方方のUCで、私を操ることは出来ませぬ」
 ついに止むヘドロの攻撃に、大盾を納めたフリーウインドは優希斗の加勢に駆け出した。
 ただ哀れむことは偽善だと、承知の上でも祈らずにはいられない。
「……神よ。あの娘の『かぞく』のなれの果てたる者達に安らかな眠りを与えたまえ」
 祈りを捧げるフリーウインドに、優希斗が応えた。

● 剣王の舞
 時は少し遡る。
 脳内をスキャンされるような叫び声を上げたヒルコの咆哮に、優希斗は眉を顰めた。試しに、とばかりに繰り出した月下美人の斬撃が、最小限の動きで避けられる。返す刀で繰り出される拳を腹に受けた優希斗は、大きく後ろに飛ぶと改めて得物を構えた。
 ヒルコのユーベルコードは敵対者の思考パターンを模倣することで回避する。このままでは打撃を与えることもままならないと判断した優希斗は、静かに詠唱を開始した。
「剣王よ、我が体を依り代としてその力を彼の地に顕現させよ」
 詠唱と同時に、契約せし剣王の魂が優希斗に宿る。溢れ出す強大な力に思考パターンを模倣しようとしたヒルコが一瞬たじろぐ。
 次の瞬間、優希斗の姿が消えた。残像を残しつつダッシュで駆けた優希斗は、月下美人と蒼月・零式を続けざまに繰り出した。
 優希斗の思考パターンを読み、回避しようとするヒルコの動きが一瞬止まる。思考を読みきれないとでも言うように停止した動きに、双刀が唸りを上げる。
 すれ違いざまに繰り出された攻撃に、優希斗は双刀を空高く放り投げた。
 相対するヒルコは、優希斗に宿った剣王の思考パターンを模倣しようとするが、その情報量の膨大さにフリーズしたかのように動きを止める。
 その姿に、優希斗は口元を歪めた。
(「……皮肉な話だ。俺の思考パターンを模倣するならば、この技ならどうなろうがお前達も深手を負う」)
 何故ならば、この技は強すぎる英雄を憑依させその力を借りる技。人知を超えた領域にあるその力に、器を傷けてしまうのだ。
 双刀を持ち替える一瞬の隙を突いたヒルコが、長く腕を伸ばして掴みかかる。救いを求めるように伸ばされた腕が、黒い閃光に断ち切られた。
 ランスオブダークが繰り出され落ちた腕に、持ち替えを完了させた優希斗は床を蹴った。
「……悪いな。これは俺の思考で制御出来る程、生易しい技じゃ無い」
 血の涙を流しながら蒼の双眸を輝かせた優希斗は、月桂樹と鏡花水月・真打を同時に繰り出す。
「だから眠れ。骸の海で永遠に。出来なければ……お前達の声と想いの全てを、ただ、俺が受け止めるだけさ」
 鋭い攻撃を胴に受けたヒルコは、身体を真っ二つにされると床に崩れ落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

まさか、黒剣の中の魂の少女たちまで力を貸してくれるとはな
…ありがとう、寄り添ってくれて

きょうだいたちは、君と共に在る
だから今は…全力でかぞく達を解放しよう!

指定UC発動後、フラスコチャイルドの護衛優先
フラスコからは絶対目を離さない
手を伸ばすようなら「ダッシュ、かばう、怪力、武器受け」で
フラスコを遮るように立ちはだかり、手を受け止めた上でそのまま斬り落とす!

攻撃できそうな隙があれば「ダッシュ、切り込み」+高速移動で突撃
「早業、2回攻撃、部位破壊」+衝撃波で肩口から腕を斬り落とす
このまま骸の海に還れ!

戦闘後、一息つきたいところだけど
早くビレントタウンへ物資、届けないと


影見・輪
引き続きフラスコチャイルドの護衛メイン
「かばう」を中心に対応
敵への攻撃は「鮮血桜」を使用し「生命力吸収、捨て身の一撃」併用

敵からの攻撃を「見切る」事ができたら
【鏡映しの闇】使用

生命は時に邪悪だろうね、それには同意する
けれど、自分も他者も含め
殺したいと思うほどの強い愛情は僕は持っていないから
これは君に返すよ

(「たすけて、あげて」に)
そうだね
オブリビオンとなっても君のことを想ってくれる彼らを
あんな異形の中に囚われて利用されてしまっては、本当に浮かばれない

君の「かぞく」を生きて助けることはもうできないけれど
その死を冒涜されることなく利用されることなく
今度こそ安らかに眠れるように
解放してあげなくてはね


櫟・陽里
オブリビオンになったなら
そのかぞくは住む世界が変わっただけ、あちら側に存在しているって認識だ
そしてまたこの世界に出てくる事もあるだろう
この世界で生きる人々をいかに守るかという視点で考えてしまう
慰めるような言葉が出なくてごめん
かぞくに置き去りにされる人へかける言葉…俺はまだ見つけられてないんだ

さっき見つけた写真を手渡すか迷ってる
天使ちゃんの様子も見ながら考えよう
何か心の支えが必要なら…渡してもいいのか…?
誰かに相談しようか…

バイク持ち込めるかなぁ
変形が厄介だから何とか動きを制限したい
エンジン音で威嚇してみて…
ダメなら銃とワイヤーで何とかするしか
周囲の物を壊して利用して敵の動きを制限できないかな?



※ 構成の都合上、戦闘後のプレイングは最後のプレイング返却時にまとめてさせていただきます。
完結通知を受け取られましたら、ご確認をお願いします。

● 奇襲 そして……。
 胴を真っ二つに割かれ、床に落ちたヒルコの姿に館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)は油断なく黒剣の柄に手を掛けた。
 床に落ち、染みのようになったヒルコは動かない。横目で確認しながらもフラスコからは絶対に目を離さない敬輔に、「きょうだい」達がふわりと近寄った。
 魂の呼びかけに、黒剣の中の少女たちの魂がさわりと沸き立った。
 まるで友達同士のような交流の気配に、思わず頬が緩む。黒剣の柄に手を掛け、反対の手を差し出した敬輔は、魂たちに語りかけた。
「まさか、黒剣の中の魂の少女たちまで力を貸してくれるとはな。……ありがとう、寄り添ってくれて」
 その言葉が聞こえたのか。フラスコチャイルドは真っ直ぐな目で、じゃれるように指先になつく「きょうだい」達を見つめていた。
「きょうだいたちは、君と共に在る。だから今は……全力でかぞく達を解放しよう!」
『うん。ありがとう』
 微笑んだフラスコチャイルドは、「きょうだい」達に指を伸ばす。その時。
 弾かれたように宙に舞った「きょうだい」達は、警告するように明滅する。それと同時に、黒剣の少女たちが叫んだ。
 ーーおにいちゃん、きをつけて!
 ーーくるよ!
 魂の少女たちの叫びに顔を上げた敬輔の視界の端に捕らえた影に、敬輔は目を見開いた。
 視線を転じたその先に、ヒルコから分離した肉体の一部が息を潜め、死角から音もなくフラスコチャイルドへと手を伸ばしていた。
「皆! こっちだ!」
 叫んだ敬輔がユーベルコードを発動させるより早く、バイクの音が教会に響いた。
 敬輔の声に即応した櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)はライのハンドルを握るとフラスコチャイルドの背後に忍び寄っていたヒルコに向けて教会の椅子を弾き飛ばした。
 大きな破壊音を上げながら、瓦礫となった長椅子がうず高く積まれる。補修用ワイヤーも併用して巧みに蹴り上げ、ヒルコ達の前にバリケードを築く。
 バリケードを前に立ち止まったヒルコは、両腕を突き出すとバリケードに手を掛ける。破壊し進もうとするヒルコに、エンジン音が響いた。
「わかる奴にはわかるだろ!」
 騒音ではない、断じて!
 そんな陽里の叫びと同時に、エンジン音が鳴り響く。パワー重視に設定したライが咆哮にも似たエンジン音を鳴り響かせたとき、ヒルコ達の行動速度が緩む。
 即座にエンジン音の給仕を楽しんだ敬輔は、【魂魄解放】を詠唱すると再び黒剣の魂の少女たちを身にまとう。
「もう一度力を貸してくれ!」
 今にも触れそうなヒルコの腕を、黒剣が弾き飛ばす。返す刀で間近に迫る腕を切り落とした敬輔は、フラスコチャイルドの間に割って入ると真っ直ぐ駆け寄った。
 ヒルコの懐に潜り込み、黒剣を一閃。下から上に振り上げられた黒剣は、ヒルコの腕を肩口から断ち切った。
 落とされた腕に奇襲失敗を悟ったヒルコは、低い唸り声を上げた。その声に導かれるように、反対側で戦っていたヒルコが大外を回り合流する。
 再び一つになったヒルコは、こちらをじっと見つめるフラスコチャイルドへ再び手を伸ばした。
『また、一緒に街を守ろうよ』
『私達その為に創られたんだ』
『幸せを作ろう一緒に幸せを』
『邪魔者は殺す殺す殺す殺す』
 口々に訴えるヒルコに、フラスコチャイルドは唇をギュッと噛みしめる。表情を曇らせるフラスコチャイルドは、手を伸ばすと語りかけた。
『……いっしょに、いきたい。いこうよ。だって一緒だった。ずっとずっと、一緒だった。だから……』
 心の底から湧き上がる声に、影見・輪(玻璃鏡・f13299)は目を閉じ頷いた。
「そうだね。オブリビオンとなっても君のことを想ってくれる彼らを、あんな異形の中に囚われて利用されてしまっては、本当に浮かばれない」
 目を伏せた輪は、腕を伸ばしては斬られ、斬られながらも進むのをやめないヒルコの声に玻璃鏡を構えた。
「ヒルコ」
 輪の呼びかけに振り向くヒルコに、輪は鏡を見せる。そこに映った姿にたじろぐヒルコに、輪は語りかけた。
「生命は時に邪悪だろうね、それには同意する。けれど、自分も他者も含め殺したいと思うほどの強い愛情は僕は持っていないから、これは君に返すよ」
 淡々とした輪の声と共に、ユーベルコードが跳ね返される。跳ね返されたヒルコは自らが発した声に殺戮衝動がないまぜになり、ついに動きを止める。さっきまでの鋭い動きが嘘のように動きを止めたヒルコは、ふと視線をフラスコチャイルドへ向ける。彼女をしばらく見つめていたヒルコは、ぽつり呟いた。
『……やっと分かった』
『どうしてあなたが来ないのか』
『あぁ……。そうか』
『私は、私から、街を守らなきゃいけないんだ……』
 呆然とした声を上げたヒルコは、大きく下がると鋭い刃と化した己の腕を振り上げた。
 殺意を込めたヒルコの刃が、ヒルコ自身を貫く。己に対する殺意を明確に攻撃を続けるヒルコの姿に、フラスコチャイルドの叫びが響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジフテリア・クレステッド
まずは辛いことを終わらせて、ちゃんと休もう。皆でごちゃごちゃ言っちゃったけど…全部、それからだよ。

出番だ、起きろアウトブレイク。
ヒルコの位置は【第六感】でなんとなく分かるからそこに1人で特攻する。治療を受けたわけじゃない今の私は殆ど何も見えちゃいないけど、だからこそいい。今の私は見えないままになんとなく暴れてるだけ。思考を模倣したところでどうしようもないはず。
毒素と侵食する毒弾をとにかくバラ撒く【一斉発射】の【範囲攻撃】で3回攻撃…の【2回攻撃】。私というストームで【蹂躙】してあげる。

私ができるのって、ここまでなのかな…(泣きながら)
もっと、ちゃんと助けたかったっていうのは傲慢…なのかなあ…!



● 例え心を殺しても
 自らを傷つけ続けるヒルコに、フラスコチャイルドの叫び声が響いた。
『いや! やめて、おねがい! そんなの悪夢で一回も無かった……!』
 今まで驚くほど淡々と戦闘を、自分の「かぞく」が傷つけられる姿を見守っていたフラスコチャイルドが、初めて激しい感情を顕にする。夢から醒めたかのように目を見開き、フラスコを必死に叩いて命乞いの声を上げる。
 初めて聞くフラスコチャイルドの激しい懇願に、ジフテリア・クレステッド(ビリオン・マウスユニット・f24668)は手を握り締めた。
 ユベルコードの代償で、ほとんど何も見えていない。だが場を満たしていた殺意の行き先が、猟兵へではなくヒルコ自身に向いている。それだけで何が起きたのかを察することができた。
「大丈夫。私があなたの「かぞく」を殺してあげる」
 床を蹴りヒルコと相対したジフテリアは、直感でヒルコの腕を撃ち抜いた。
「まずは辛いことを終わらせて、ちゃんと休もう。皆でごちゃごちゃ言っちゃったけど……全部、それからだよ」
 ヒルコの自傷を止めさせたジフテリアは、自らに眠る偽神兵器に語りかけた。
「出番だ、起きろアウトブレイク」
 ジフテリアの呼びかけに、ジュニアスナイパーライフルが偽神細胞に飲み込まれる。偽神兵器アウトブレイクとなったライフルを構えたジフテリアは、ヒルコの気配に駆け寄った。
 ヒルコの位置を第六感で感じ取ったジフテリアは、最も鋭い気配がしていた場所に向けて毒素の銃弾をバラ撒く。
 ヒルコがうめき声を上げる。ジフテリアの毒に冒され苦しそうに暴れまわる気配がするが、構うものか。
 巨大化したアウトブレイクから連続して毒が、銃弾が放たれる。抵抗したヒルコが脳内をスキャンする叫びを上げる。その叫びに安堵する。
 それでいい。抵抗しろ。ここは戦場。お前達が殺されるのは、あの子にとって「いつものこと」。日常は日常であればいい。私はお前を殺す。あの子を守るために。
 例えそれが、ジフテリアにとって守るべき同胞だったとしても。
 ユーベルコードの代償で見えない視界がありがたい。今のジフテリアは見えないままに、なんとなく暴れているだけ。
 押さえきれない衝動に従い、引き金を引く。毒素と侵食する毒弾をとにかくバラ撒く。
 敵も味方も関係ない。
 全てを私というストームで【蹂躙】してあげる。
 荒れ狂う嵐に身を委ねたジフテリアは、のたうつヒルコの姿に知らず涙が溢れた。
「私ができるのって、ここまでなのかな……。もっと、ちゃんと助けたかったっていうのは傲慢……なのかなあ……!」
 本当は、助けてあげたかった。「かぞく」も、「きょうだい」も。
 でもジフテリアには破壊することしか、殺すことしかできなくて。
 意識を飛ばしかけたジフテリアは、激しく掴まれる肩を振りほどき更に攻撃をしようと引き金に指を掛ける。
「やめて、ジフテリアさん! あの子が、『天使』が外に……!」
 響くカイの叫びに、ジフテリアは目を見開いた。

● ありがとう 元気で
 ジフテリアの巻き起こす暴風のような攻撃から避難した猟兵達は、背後から聞こえる異音に振り返った。
 フラスコチャイルドが、必死にフラスコを叩いている。「「かぞく」の自傷」という想定外の事態に魂を揺さぶられたのだろう。必死になって叩かれる圧力に、フラスコの表面にヒビが入る。
 入ったヒビを、更に叩く。非力で小さな手の圧力だが、一度入ったヒビは元には戻らない。ヒビが臨界に達した時、ついにフラスコが割れた。
 触れる外気に、フラスコチャイルドが激しく咳込む。肺の中の水を吐き出し自分で呼吸しようとするフラスコチャイルドに、猟兵達は即座に動いた。
 フラスコチャイルドを結界で包み、癒やしの歌を歌う。
 カイもまた癒やしを施そうとするが、ユーベルコードは未だ解かれない。こちらの様子に気づかないジフテリアに、カイは駆け出した。
 味方への攻撃を厭わない毒に、息が詰まる。だが躊躇なく駆け込んだカイは、自分をも傷つけるジフテリアの肩を強く引いた。
「やめて、ジフテリアさん! あの子が、『天使』が外に……!」
 カイの声に、我を取り戻したのか。ジフテリアは攻撃をやめ、その場に座り込む。落ち着いたジフテリアに安堵の息を吐いたカイは、フラスコチャイルドを振り返った。
 ほとんど歩いたことはないのだろう。細い足は弱々しく地面を踏み、立ち上がろうとするがうまくいかずに膝をつく。四つん這いになりながら、膝で立ち立ち上がろうとしながら。怪我も厭わずに前に進むフラスコチャイルドに、全員の視線が集まる。
 手を貸してあげたい。でもそれをしてはいけない。あの子はこれから、自分の足で歩かなければならないのだから。猟兵達はただ、外気に触れるフラスコチャイルドを癒やし、外気から守り続けた。
 初めて自分の足で前に進んだフラスコチャイルドは、ジフテリアの背中に手をついた。
 その衝撃に、弾かれたように後ろを振り返る。ジフテリアに縋って立ち上がったフラスコチャイルドは、ジフテリアをまっすぐ見ると必死に口を開いた。
「……ぁぃ、……とぅ」
 咳き込みうまく声にならない言葉に、ジフテリアは目を見開く。ジフテリアが何か言う前に手を離したフラスコチャイルドは、必死に這うと再び前へと歩き出す。
 やがて真っ直ぐヒルコと相対したフラスコチャイルドは、そっと手を伸ばした。
 無垢で小さな手が、ヒルコの頬に触れる。醜い肌に触れたフラスコチャイルドは、花のように微笑むとはっきりとした声を上げた。
「あいが……とぉ……」
 硬直するヒルコに、カイは自らが掛けたユーベルコード【援の腕(タスケノカイナ)】が解除されるのを感じた。
『もう、苦しくないですか?』
 カイが掛けた問に、満足がいく答えが得られたのだ。
 浄化の光がヒルコを包む。浄めの光を受け入れたヒルコは、フラスコチャイルドの頬にそっと触れた。
「……元気で」
 ふわりとほどけたヒルコが、無数の白い光に変わる。丸い光となったヒルコーー「かぞく」達は、フラスコチャイルドの回りをくるりと回ると溶けるように消えていく。
 フラスコチャイルドは必死に手を伸ばす。消えた光を掴もうとして、果たせずその場にへたり込む。
 大きな目に涙を浮かべたフラスコチャイルドが、産声を上げる。

 この日。
 アポカリプスヘルの片隅で、一人のフラスコチャイルドが世界に生まれ落ちた。

● 後日談
 その後。
 ロージスシティの周囲で吹き荒れていたオブリビオン・ストームはぱったりとやんだ。猟兵たちの踏破さえ拒んでいた領域は、ただ荒涼と広がる岩砂漠となった。
 今後よその拠点とも連絡が取れるようになると、そことのトラブルも予想されたがそれはこの街の住人が解決すべき問題である。
 敬輔の懸念していたビレンドタウンへの支援は早急に行われ、死にかけていた町の住人からはようやく一息つくことができたと喜びと感謝の声が上がった。
 いずれは2つの街の間に、道が敷かれることになるだろう。だがそれは、まだもう少し先の話だ。
 この事件には、未だ解決されない謎が残されている。
 この街に天使像を置いた謎の組織は何者なのか。またオブリビオン達を裏で糸を引いていたオブリビオンの存在も不明なままだ。
 そのことはいずれ、道路を整備しながら話をしてみるのもいいかも知れない。

 そして。
 天使像唯一の生き残りであるフラスコチャイルドの処遇は揉めにもめた。
 様々な意見が出されたが、とりあえず市長の養子として引き取られることになった。
 だが、この街は決してフラスコチャイルドにとって住み心地が良い街とは言えない。今後本格的な身の振り方は、考える必要があるかも知れなかった。
 そんな騒動が起こるのは、まだ少し先のこと。

● きっといつでも会えるから
 時は少し遡る。
 天使像が破壊され「かぞく」達を見送った猟兵達は、カイの発案で街の外れに墓を作った。街を救った「天使」ではなく、フラスコチャイルドの大切な「かぞく」のお墓を。
 墓地の一角を貰い受け、刻まれた墓碑銘には「親愛なるかぞくへ」とだけ彫り込まれている。
 墓の下には、フラスコの欠片が埋められている。ヒルコの消滅とともに消え去った「かぞく」達は、瓦礫以外何も残さなかったのだ。
 これで、ここに来ればいつでも会える。フラスコチャイルドの周囲をふわりと舞った「きょうだい」の魂達も、「かぞく」の墓の回りをくるくると回る。その姿に手を伸ばしたフラスコチャイルドは、四角い石をそっと撫でた。
「……ほんとうに、死んじゃったんだね」
 戦いの最中のような、夢と現実を混同した声ではない。この数日で「かぞく」の死を本当に受け入れたフラスコチャイルドは、悼むように呟く。
 その声に、陽里は静かに語りかけた。
「あくまで俺個人の意見なんだけどさ。……オブリビオンになったなら、そのかぞくは住む世界が変わっただけ、あちら側に存在しているって認識だ。そしてまたこの世界に出てくる事もあるだろう。そうしたら……」
 そこまで言った陽里は、じっと見上げるフラスコチャイルドの視線に口をつぐんだ。浄化を受けて消えたのだから、おそらくは大丈夫だろう。だが、もし万が一この世界に現れたら。その時は再び骸の海へと還さなければならない。例えどれだけフラスコチャイルドが泣いても。だがそれは、今のフラスコチャイルドに告げるには酷だろう。
 この世界で生きる人々をいかに守るかという視点で考えてしまう陽里は、小さく息を吐いた。
「慰めるような言葉が出なくてごめん。かぞくに置き去りにされる人へかける言葉……俺はまだ見つけられてないんだ」
 頭を下げた陽里は、懐から一枚の写真を取り出した。
 家族写真だろうか。白衣を着た青年と女性、その娘らしい6歳ほどの少女が写っている。
 背景は何かの機械のようだが、陽里には分からない。裏返すとそこには「S&A生命工学研究所にて」とだけ書いてある。天使像裏のメンテナンスルームで見つけた、あの写真だ。
「これ、渡しとくよ。関係あるかも分からないけどさ。何かの支えになるんじゃないかな?」
「……ありがとう」
 渡された写真を受け取ったフラスコチャイルドが、嬉しそうに微笑む。その笑顔に目を細めたカイは、フラスコチャイルドを覗き込んだ。
「あなたの名前も決めましょうね。何か希望はありますか? 」
「なまえ……?」
 首を傾げたフラスコチャイルドは、写真をじっと見つめる。青年の顔をそっと撫でたフラスコチャイルドは、何かを思い出したように目を見開いた。
「……メル。教授が、私のうたのメロディーがすきだからって、ときどきそう呼んでたの」
「メルですか。いい名前ですね」
 微笑むカイに、フラスコチャイルドは……メルは嬉しそうに頷くと再び墓に手を合わせる。
 猟兵達も、鎮魂の祈りを捧げる。天使像を巡る物語は、ひとまず終わ理を告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年05月12日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アポカリプスヘル
#希望
#希望へと続く道
#ロージスシティ


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアポリオン・アビスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト