グリムポテウティス海賊団の危機
●とある海賊団の親分ピンチ
ぎぃ、ぎぃ、と足元の板が鳴る。人一人が立つのには十分な幅があれど、その先はもうない。あと一歩踏み出せば海へと落ちるしかない。
落ちるだけなら縛られ、傷ついたこの体でも十分だ、泳ぐことだってできる。運が良ければ助かるだろう。もっとも、鉄甲の戦車と幽霊兵士共が獲物を狙って待ち構えていなければだが。
グリムポテウティス海賊団の伝統ある処刑法に則っているふりをしながら実態は卑劣に、確実に、殺しに来ている。あまりの仕打ちにヒレがひりつくようだ。
「ははっ、毒爪よぉ、いいご身分じゃねぇか!」
そんな動揺を吹き飛ばすためにも笑ってみせる。
「多数の部下を従えて逆らったものは皆殺し。前のお前さんならそんなことはなかっただろうに! 海賊の誇りも何もかも忘れちまったか?」
「そうね、そんななぁんにもならないものは捨てたわ」
メガリスの試練で死んじまう以前と変わらぬ物腰柔らかな声が、以前と変わって毒を携えて答えてきた。
「時間を稼いだところで助けが来るわけでもないのだし、早く飛び降りなさいな。あなたの部下達が順番待ちをしているわよ?」
●救助求ム
「えー、グリードオーシャンの、とある島でー……元部下のコンキスタドールを倒そうとした、グリムポテウティス海賊団という、方々が、ですねー……返り討ちにあって、処刑されそうになっていますー」
寧宮・澪はグリモアベースにて、猟兵達へ呼びかける。
新世界グリードオーシャンは異世界から落ちてきた島を奪い合う海と戦乱の世界。故にそこで生きる海賊達はより力を求め、メガリスへと手を伸ばす。失敗すれば死んでコンキスタドールとなってしまうが、それでも力は魅力的だ。そうして生まれたコンキスタドールはその海賊団が責任持ってケリをつける、という掟もあるのだが、今回はうまく行かなかった。
「近年、コンキスタドールが強くなってましてー……対処しきれなくなりつつありますー」
澪が予知した海賊団もその事例だ。コンキスタドールとなった部下の始末をつけようとしたが返り討ち、処刑されそうになっている。
「なので、彼らを助けてほしいんですよー……」
まさに処刑が行われるその場へと送り届けるので、まずはコンキスタドールの部下を蹴散らして海賊団を助けてほしい。
コンキスタドールの部下はアポカリプスヘル由来の武装をしたデサントタンク小隊。特殊部隊の幽霊兵士が操るタンクの主砲や機銃を用いて集団で襲い掛かってくる。彼らを蹴散らせば、グリムポテウティス海賊団の面々は隙見て逃げ出せるだろう。
部下を蹴散らした後はコンキスタドールの対処だ。毒を用いる海蛇型深海人で、元は優れた身体能力と航海術、そして柔らかな物腰で仲間を支える海賊団の柱だった。けれど今は残虐で卑劣な行いも辞さないらしい。うまく海賊団を助けていたなら、彼らが説得や、強くはないがユーベルコードで力を貸してくれるだろう。
「無事に助けられたら、助けた海賊団と交流するのが、いいですねー……」
彼らの根城になった島、ポテ島はキマイラフューチャーから落ちてきた島で、どこか未来的でポップな島。撮影が盛んで、近海の魚と一緒の撮影会がよく行われているようだ。助けた海賊団と一緒に騒ぐもよし、島民と交流するもよし。仲間を悼む心に寄り添ってもいいだろう。澪もその場にはいるので、声をかけてくれれば一緒に行動するようだ。
「ま、全ては救助からですー……ダンボオクトパスが親分の、グリムポテウティス海賊団ー……船員も深海人多めの一団の、救助ー……お願いします、ねー」
そう救助対象の情報を呟いて、澪はグリードオーシャンへの道を紡ぐのだった。
霧野
ひらひらヒレがふるふる震える。
よろしくお願いします。霧野です。
●シナリオについて
コンキスタドールとなったかつての部下に返り討ちにされ、ピンチな海賊団を救助し、彼らの根城となった島で海賊団や島民と交流する。
そんなシナリオです。
一章:海の上に突き出した板から飛び降りさせられそうな海賊団の親玉を狙うデサントタンク小隊を蹴散らしてください。救助プレイングがなくても構いません。小隊が倒されれば海賊団は逃げ出せるでしょう。
集団戦です。
二章:コンキスタドールを倒してください。無事に海賊団が逃げ出していたら、頼めば何かしらの助力が得られるかもしれません。頼まなくても貸してくれるかもしれません。
ボス戦です。
三章:救助した海賊団の本拠地、ポテ島でおさかなとの撮影会を楽しめます。ぱーっと騒いで撮影して無事を祝うもよし、かつての仲間に思いを馳せてしんみりする彼らと静かに過ごすも、元気づけるもよし、撮影会をのんびり楽しむもよし。機材なんかは澪が運んで来ているので、用意の心配はいりません。
日常です。
●複数人で参加される方へ
どなたかとご一緒に参加される場合、プレイングに「お相手の呼び名(ID)」を。
グループ参加を希望の場合は【グループ名】を最初に参加した章にご記入いただけると、助かります。
●アドリブ・絡みの有無について
割とアドリブ入れることがあります。
以下の記号を文頭に入れていただければ、絡まなかったり、アドリブ入れなかったりさせていただきます。
◎ アドリブ・絡み歓迎。
△ アドリブ歓迎・絡みNG。
× アドリブNG・絡みNG。
〆 負傷OK。
第1章 集団戦
『デサントタンク小隊』
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POW : 目標を確認した。速やかに制圧射撃を行う。
【機銃か主砲もしくはロケットランチャー】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 目標を確認した。敵の視界外から榴弾を投下する。
【デサント兵が指】を向けた対象に、【主砲を高射砲に転用した攻撃】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 戦況劣勢に付き増援を求む。速やかに派遣されたし。
【LMGやミサイルランチャー】で武装した【特殊部隊員】の幽霊をレベル×5体乗せた【装甲を装着した巨大なトラック】を召喚する。
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●絶体絶命のその時に助けが現れた
目の上のヒレを震わせて、小さなダンボオクトパスの親分は海を見る。かつての頼りになった、今は自分を処刑しようとする子分を思いながら。
『一緒に子分達を守りたいから、危ない儀式も、自分は大丈夫よ。もし万が一があったら──そのときはよろしくね?』
「ははっ、すまねぇな。約束を守れなくってよぉ」
優しいアイツはそう言っていたのだ。けれど今や自分はこのざまだ。自嘲の笑みが浮かんで仕方ない。
「先に海に逝ってるぜ、お前達! 運が向いたら、また会おう!」
ほんの一歩踏み出せば機銃とやらが体に穴を開けるだろう。その覚悟を決めたその時。
猟兵達が海の世界へと現れた。
テイク・ミハイヤー
◎
その処刑、ちょーっと待ったぁ!あ、これいつか言ってみたかったんだよな。
この世界では海賊がヒーローなんだろ?だったら俺の出番ってワケだ!
UC【加速迎撃】親分一人に向けるにしては御大層な重火器じゃん。俺の事も構ってくれよ!
【存在感】でデサントタンク小隊の目を引いて飛来する弾を撃ち落とすぜ。
隙が作れれば親分さんが逃げる時間も稼げるだろ。
それにほら、猟兵は俺だけじゃないんだぜ?
●ヒーローのヒーロー、大暴れ
今まさに、ダンボオクトパスの親分が覚悟を決めて飛び込もうとした瞬間、元気な声がその場を切り開く。
「その処刑、ちょーっと待ったぁ! あ、これいつか言ってみたかったんだよな」
グリモア猟兵に送られて、テイク・ミハイヤー(セイギノミカタノミカタ・f16862)が処刑の行われる帆船の上、一番高い帆のヤードに堂々と現れた。突如現れた存在にその場の注目が集まっていく。
「この世界では海賊がヒーローなんだろ? だったら俺の出番ってワケだ!」
そう、ヒーローに守られていた彼が、守ってくれるヒーローを守りたい。そう願ってヒーローを守るヒーローを始めたのだから。故にこの状況は間違いなくテイクの出番である。
真紅のマフラーを青い海と空に派手にたなびかせ、巨大な動力機付きのモンキーレンチをデザントタンク小隊へと突きつけて、彼の在り方を証明せんと笑ってみせる。
「親分一人に向けるにしては御大層な重火器じゃん。俺の事も構ってくれよ!」
ハキハキとした声で口上を上げるテイトは確かに目立ち、その場にいる者の気を引いた。新たに現れた敵性勢力にデザント兵は指を指し、その方向に向けて海に浮かぶ戦車の主砲を急角度に上げて撃つ。勢い良く放たれた砲弾は、ぐんぐん上空にいるテイトへと砲弾が迫りくる。
「せいっ!」
テイトはスチームモンキーでを振り抜き、目の前に来た砲弾を撃ち落とした。跳ね返った砲弾は海に落ち、爆発、大きな水柱が上がる。
「ヘヘっ……って、うおおお!?」
一発目を狙い通り叩き落とし、少し自慢げに笑うテイトだったが、次いでいくつも迫りくる砲弾の雨に慌ててヤードを蹴って、前方の海へと飛び降りる。いくつかは打ち返したか、返しきれなかった砲弾が帆に当たり爆発していた。
テイトは手近な戦車へと乗り移り、デザント兵をスチームモンキーで叩きのめして海へと落とし、戦車が無力化されればまた次の戦車へと乗り移る。
(こうして隙が作れれば親分さんが逃げる時間も稼げるだろ)
板の上を見れば、ダンボオクトパスがじりじりと板の先から船の方へと移動していた。このまま暴れていればうまく逃げ出せるのではないか。
「それにほら、猟兵は俺だけじゃないんだぜ?」
そう、ここに来るのはテイクだけではない。
頼もしい猟兵達がまだまだ訪れ、彼らを蹴散らすのだ。
成功
🔵🔵🔴
三上・チモシー
◎
うみー! 広い海に海賊船!
すごいね、ワクワクするね!
でも処刑なんて物騒だよね
助けにいこうか、ライ麦ちゃん
えっと、グリ、グリム……ポテウ、ティス?
言い難いねー
巨大化したライ麦ちゃんに乗って、空を飛んで移動
敵の砲撃はできるだけ【見切り】、場合によっては海に潜って回避しつつ接近、『鯰遁走曲』で敵の戦車に勢いよく体当たり!
そのまま幽霊兵士たちに追撃
ねぇ知ってる? ナマズってね、ぼんやりしてそうな顔だけど、結構俊敏なんだよ
特に、ご飯食べる時はね
ライ麦ちゃん! ご飯の時間だよー!
●カラフル鉄瓶海を舞う
「うみー! 広い海に海賊船!」
どこまでも広がる広大な海。そこに浮かぶは海賊船。
グリードオーシャンの空へと送り出された三上・チモシー(カラフル鉄瓶・f07057)は、大きな桃色の瞳を輝かせた。巨大化したレッドテールキャットのライ麦ちゃんの背中で、今日もカラフルな小袖を振ってはしゃぐ。
「すごいね、ワクワクするね!」
この大海原、行く先々に未知の光景が待ち受けているに違いない。海の先に見えるものは何なのか、思わず心が浮き立つというものだ。
「でも処刑なんて物騒だよね。助けにいこうか、ライ麦ちゃん」
しかしながら今は未知を探しに飛び出している場合ではない。今まさに物騒な目にあっている一段があるのだから。
その助ける対象の名前は何だったか。
「えっと、グリ、グリム……ポテウ、ティス? 言い難いねー」
同意するかのようにひらりと紅色の尾を翻すライ麦ちゃんへ指示を出し、二人で海面へと向かって急降下していく。
空から降ってくる巨大な鯰に向けて、デサントタンク小隊の砲撃手はロケットランチャーを向ける。落とすことを第一目標とし、命中させようとよく狙いを定めていた。
けれどライ麦ちゃんはまさに空を泳いでいる。泳ぐ魚を狙うというのは大概難しいもので、砲撃手も撃つタイミングを掴めないでいた。パラパラと周囲の兵士が手にしたアサルトライフルの音も聞こえるが、ぬるりと泳いで避けてみせ、そのまま海中へと潜っていく。
ターゲットを見失った小隊は辺りを警戒するが、周囲に魚影なし。どこへ行ったかと警戒を強める兵士達の足元、海に浮いた戦車が突如大きく揺れた。
「ごーごー!!」
潜ったライ麦ちゃんとチモシーが海の中から戦車の底面目掛けて体当たり。ばっしゃーんと空中に飛び上がるその勢いに押されて戦車はひっくり返る。もはやそうなればただただ上下逆さまになって浮いているだけ。その周囲に幽霊兵士が浮かんでは、浮き輪状態の戦車にしがみついていく。
そんな彼らに水を得た魚のライ麦ちゃんがゆらゆらと近づいて、チモシーはにっこり笑う。
「ねぇ知ってる? ナマズってね、ぼんやりしてそうな顔だけど、結構俊敏なんだよ。特に、ご飯食べる時はね」
ぐあ、とライ麦ちゃんが大きな口を開けた。
「ライ麦ちゃん! ご飯の時間だよー!」
そのまま素早くバクンと幽霊兵士も戦車の一部も飲み込んで、お腹へと仕舞っていった。
お腹を壊さないかちょっぴり疑問に思うが、多分問題ないだろう。強い良い子だし。
成功
🔵🔵🔴
灰神楽・綾
【不死蝶】◎〆
海賊なんだから海賊船で砲撃なら分かるけど
戦車だなんて何か変なの
ま、この世界は何でも有りなんだっけ
呑気に感想言いつつ
新しい世界と獲物を前に楽しげに武器を構える
親分さん、頑張って逃げてね
君にはまだやることがあるんだから
自身の手を斬りつけUC使用
梓のドラゴン達が氷の妨害をしたのを合図に
一気に駆け出し戦車へ飛び乗る
その立派な得物で処刑するつもりだったようだけど
残念、処刑されるのはお前達の方だよ
幽霊兵士の持つ武器に注意し
強化した反応速度を活かして
ジャンプやスライディングで躱しつつ接近
Duoによる2回攻撃で手早く蹴散らしていく
幽霊ってちゃんと斬れるのかなぁ?と
心配だったけど問題無いね
乱獅子・梓
【不死蝶】◎〆
格好良く死ぬ覚悟を決めたところのようだが
まだ死ぬには早いなキャプテン!
かつての部下に殺された挙げ句
そいつがこれからも暴虐の限りを
尽くすだなんてやるせないだろう
手助けしてやるから改めてケリを付けろ
主砲や機銃を乱射されたら面倒だな
UC使用、氷属性のドラゴンを召喚
敵が行動を起こすよりも早く接近し(先制攻撃
戦車へ氷のブレスを浴びせる
一番の狙いは砲口・銃口
氷でガチガチに凍らせて攻撃を阻害
無理に放とうとすれば暴発するぞ?
綾!幽霊共の相手はお前にさせてやる!
その間に相棒ドラゴンの焔には
逃げる海賊団の様子を見に行かせて
敵が危害を加えないか監視・護衛
近くを元気に飛び回って励ましてやるのも良いな
●死なずの蝶と白い焔の竜、舞う
「海賊なんだから海賊船で砲撃なら分かるけど、戦車だなんて何か変なの」
送り出されたその先、海賊船のヤードに立ちながら灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は、潮風に漆黒の髪を靡かせながらのんきな感想を呟いた。雄大な青い海に海賊船と戦車が並んで浮かぶさまは違和感が半端ない。余りにチグハグすぎてどこか滑稽さすら感じる。
「ま、この世界は何でも有りなんだっけ」
「そうだな、この光景もこの世界の理だ。焔、行っておいで。ちゃんと見張るんだぞ」
ヤードの上で仔ドラゴンの焔を送り出しながら、また別のドラゴンを呼び出す乱獅子・梓(白き焔は誰が為に・f25851)の言葉も、ならいいか、と軽く流す。そんな違和感よりも新しい世界と見たことのない獲物を前にした楽しさの方が勝った。Duoを構え、両の刃にとんとんと手の甲を当てる。つ、と赤が流れば、手にした二対の大鎌の大きさが軽くなったように感じた。
羽のように軽くなった大鎌を両手に収めて。そのまま視線を下にずらせば、縛られたままで逃げるグリムポテウティス海賊団の親分の姿が見えた。
猟兵達がデサントタンク小隊を薙ぎ倒し始めたことで、コンキスタドールの監視が緩んだ。その隙に逃げ出した親分は、一度身を潜めた樽から這い出て子分達を探している。いろいろな衝撃で大きく揺れる広い甲板の上を、ずりずりとはいずるような動きで浮いて進んでいく。
甲板の縁まで移動し、海面に目をやれば新入りのボウズカジカの部下が幽霊兵士に狙われているところだった。ボウズカジカは全く気づかず、逃げるのに必死だ。
「ボウズ、危ねぇ!!」
子分を守るも親分の勤め、なればこそ逃げる身で大声を出して気を引いてみせよう。なぁに、海の上の銃口がこっちを向いたが怖くねぇ。そう決めて体を精一杯大きく膨らませて見せた。
ゴォ、と音が鳴る。
散る覚悟を再び決めた親分の目の前を氷の息吹が覆っていく音だった。
「格好良く死ぬ覚悟を決めたところのようだが、まだ死ぬには早いなキャプテン!」
堂々たる佇まい、あふれる自信が目に見えるような梓の声がその場に響く。先程呼び出した小型の氷のドラゴン達がその息吹で銃弾を落とし、ボウズカジカを狙った幽霊兵士を薙ぎ倒していたのだ。
梓はヤードから飛び降りながらいくつも浮かぶ戦車を見据え、呼び出したドラゴンへと大きく手を振り払って彼の意を伝えた。
「銃口を凍らせろ!」
50近い小さな氷のドラゴンが、戦車や幽霊兵士の持つ銃の先めがけて氷の息吹を吐いていく。飛び交う小型のドラゴンを即座に撃ち落とすのは難しく、みるみる銃口が真っ白な氷で覆われていった。
「さあ、無理に放とうとすれば暴発するぞ? 綾! 幽霊共の相手はお前にさせてやる!」
「はいはい。親分さん、頑張って逃げてね。君にはまだやることがあるんだから」
「お、おお!?」
梓の言葉を待つことなく、氷のドラゴンが動くのと同時に綾はヤードから飛び降りていた。親分にひと声かけて大口径の主砲すら凍らされた戦車目掛けて船から飛び移る。
「その立派な得物で処刑するつもりだったようだけど。残念、処刑されるのはお前達の方だよ」
そう言いながら戦車の上に群れた幽霊兵士達へDuoを無造作に二度振るえば、僅かな手応えが返る。その身を両断された兵士二人は、あっさりと煙のごとく消え去っていた。
「幽霊ってちゃんと斬れるのかなぁ? と心配だったけど問題無いね」
運良く氷のブレスから逃れた銃口から出る弾をスライディングして躱しながら、大鎌を楽しげに振るって幽霊兵士を蹴散らしていく。少々殺し合いと言うには物足りないが、その速度が衰えることはない。
「きちんとこなせよ? 手抜きは許さんぞ」
尊大な目付け役のようなことを言いつつも、梓は綾が戦いやすいよう他にも浮かぶ戦車の主砲や、そこに集う幽霊兵士の持つ銃を凍らせるよう氷竜達へ指示を出す。
氷の息吹が舞ったあとには黒と赤の羽ばたきが起こり、幽霊を切り捨てまた別の場へと舞うのだった。
なおこの間、焔は逃げる海賊団の面々を励ましつつ、小隊の動向を監視、梓へと頑張って伝えていたのだった。
「キュー! キュー!」
「なんか応援されてらぁ……がんばるぞい」
成功
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吉備・狐珀
約束が守れずすまないと言うわりに随分諦めがよすぎではありませんか?
(この状況なら仕方ないのかもしれませんが)
UC【破邪顕正】使用
白狐ウケに霊力を高めてもらい(破魔)(属性攻撃)を強化した御神矢を幽霊兵士に(一斉発射)し攻撃。
幽霊に破魔の力は(毒)のように体を蝕み(麻痺)させるでしょう。
幽霊兵士が攻撃してきたら黒狐ウカの宝玉で風(属性攻撃)を強化した月代の(衝撃波)で弾道を変えつつ、海賊団が巻き込まれないように(オーラ防御)で防ぎます。
海賊団が責任をもってケリをつけるのでしょう?ならばその覚悟を決めるのは早すぎます。約束を守るためにもう一度戦いましょう。
生きているから運は貴方に味方するのですから
●
ゆらゆらと振動で揺れる海賊船の一番高いマストの上に立ち、三つ編みにした髪の房と中華風のマントを潮風に翻しながら吉備・狐珀(狐像のヤドリガミ・f17210)は弓を構えた。御神矢をつがえ、弦を引きながら、子分のいる方へと浮かんでいく親分を見つめる。
「約束が守れずすまないと言うわりに随分諦めがよすぎではありませんか?」
先ほど子分を守ろうとしたときといい、転移直後の行動といい、ダンボオクトパスの親分は簡単に命を投げ出し過ぎではないかと思ったのだ。
(確かにこの状況なら仕方ないのかもしれませんが)
鉄甲の戦車と幽霊兵士がひしめく海上で逃げ場もないとなれば、すべての状況をひっくり返すような強大な力や奇跡でもない限り、諦めてしまうものだろう。けれどももう少し諦めずに生き延びる努力をしてほしい、そうも思うのだ。
白狐のウケが咥えた巻物を広げ、集中を始めた主の霊力を高めていく。呼吸を整え、場が清められていくのにあわせて狐珀は祝詞をはっきりと唱えた。
「一二三四五六七八九十 布留部 由良由良止 布留部 霊の祓」
清めの詞を矢に込めて、びょうと弓を放つ。一本だった御神矢が二つ、四つ、八つ、十六──更にいくつにも分かたれて、狐珀から70m以内の幽霊兵士全てへと突き刺さる。一度で浄化し切ることが叶わずとも、破魔の力は毒のように幽霊兵士達を蝕み、動きを鈍らせた。
鈍れども銃口を向けてくる幽霊兵士。そのうちの一部、狐珀達を狙わず浮かぶ親分を狙うのが見えた。
狐珀はマストの天辺を蹴り、親分の側を狙って飛び降りる。落ちる狐珀を狙ってばらばらと打ち出された弾は、黒狐のウカの宝珠で風を強めた仔竜の月代が衝撃波を放って弾き飛ばした。そして親分を狙った弾は、狐珀の操るオーラが防ぐ。
浮いた親分のほど近くの戦車に乗り移り、矢を清めて討ちながら、狐珀は声をかける。。
「もし、親分さん」
「おう!?」
ちら、とコンキスタドールのいるであろう海賊船を振り返り。
「海賊団が責任をもってケリをつけるのでしょう?ならばその覚悟を決めるのは早すぎます。約束を守るためにもう一度戦いましょう。生きているから運は貴方に味方するのですから」
「そうさな……死んじまったら終わりだしな。あんがとよ、お嬢ちゃん」
もう一度あがいてみるぜ、といくつもある足をひねって、力強く親分は応えたのだった。
成功
🔵🔵🔴
クラウン・アンダーウッド
◎
アハハッ、面白い状況だねぇ。ボクも仲間に入れてよ♪
海賊船の親玉さんが立たされていた場所はここかな?よっと。
板の先端に立ち、大量の投げナイフを持たせた10体のからくり人形に命令をする。
さぁ皆、目につく敵は全て穴だらけにしておくれ♪
命令を受諾したからくり人形達は、それ以降クラウン自身が操っているように見せかけて一時的に自立行動させる。
フフフッ、よく狙っておくれよ♪
板の先端で自身のUCの準備を完了させ、相手のUCを誘う。
攻撃を受けた後その攻撃を無効化して相手の位置を特定、からくり人形達の自立行動を解除させ相手に向けて一斉に放出させる。
一度やってみたかったんだよ、「全砲門、一斉掃射。打て!」ってね♪
●道化師と人形、穴を開ける
「アハハッ、面白い状況だねぇ。ボクも仲間に入れてよ♪」
場の混乱は極まれり。猟兵達はデザントタンク小隊を思い思いになぎ倒す。あと僅かで逃げ出した子分も海に浮かぶ親分のもとへと至るだろう。
「よっと」
その最中、クラウン・アンダーウッド(探求する道化師・f19033)は道化服の裾を翻して船から突き出された板の上に立つ。中々の高さの看板から突き出た足場は自身の重みや船の揺れでしなり、かなり不安定だ。けれどクラウンは危なげなく立ち続ける。まるでサーカスの道化師が悠々とバランスを取っているだけのように。
そんな彼の周囲には10のからくり人形達。人のような柔らかさを備えた彼らが持つは投げナイフ。ギリシア文字の名を持つ彼らは主の命令を待っている。
「さぁ皆、目につく敵は全て穴だらけにしておくれ♪」
歌うような楽しげな声音が人形達に告げる。クラウンが振るう腕に従って、右方向へと向かっていく。戦車の上の幽霊兵士へ空中からいくつものナイフを投げつけて、その手に持った銃を取り落とさせ、海を移動する海賊の子分達を狙った機銃には、回転部にナイフを放り込み。いかにもクラウンの命令に従ったように行動していく。
それを見ていれば、幽霊兵士であれど思うだろう。命令するものを倒せばからくり人形は止まるのではないか、と。
デザントタンク小隊の兵士が指を上げる。その先にあるのは、板の上に立ったままのクラウン。そちらに向けて主砲の照準がセットされる。規定の手順を踏んで──砲弾が射出された。
先程までと違い、船の揺れに合わせてぐらりと揺れるクラウンの体。しかしその程度で外すわけもなく、目標通りに着弾するが爆発しない。それどころかクラウンは無傷で板の上で姿勢を立て直した。
デサント兵がいぶかしむ間もなく爆発が起こり、戦車は骸の海へと戻っていった。
再び板の上で立ったクラウンは、他の戦車が狙っているのを確認する。
(フフフッ、よく狙っておくれよ♪)
主砲が発射されると同時に脱力、受け止めた砲撃の威力を自立行動をといたからくり人形から一斉に放出、戦車を藻屑へと変えていく。
「一度やってみたかったんだよ、「全砲門、一斉掃射。打て!」ってね♪」
その言葉通り戦車の砲撃を人形から放出して戦車を一斉掃射、なぎ払ったのだった。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『殺戮航海士ヴェノム・サーペント』
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POW : あらあら、隙だらけよ。
肉体の一部もしくは全部を【エラブウミヘビ 】に変異させ、エラブウミヘビ の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : そんじゃ……かますわよっ!
【毒爪や毒投げナイフ 】による素早い一撃を放つ。また、【襟高の海賊服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 真実が美しいとは限らない。そうでしょう?
【誘惑と挑発 】を籠めた【手厳しい正論口撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【戦意と自尊心】のみを攻撃する。
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●棚引くのはグリムポテウティス
グリムポテウティス海賊団の面々へ近づいていく、一隻の海賊船。マストに高く掲げられたその旗はダンボオクトパス、別名グリムポテウティスをモチーフにした海賊旗。
そう、この船は親分の命一度は離れたグリムポテウティス海賊団の海賊船だった
猟兵達デサントタンク小隊を蹴散らしたことで、親分達を救助することができたのだ。
「どこのどいつかは知らねぇが、助力あんがとよ」
親分は小さいながらも堂々と浮き上がり、猟兵達へと礼を言う。
「あとはコンキスタドールのあいつだけだ……すまねぇ、もうちっと力を貸してくれねぇか!」
優しくて、頼りになった航海士だった。喧嘩や争いは弱くなかったが、どちらかと言えば穏便に済ますやつだった。無駄な殺生はしなかった。
海賊団を家族だ、と言ってくれたやつだった。
そんなあいつを、自身の力で止めたかったが届かない、と悔しげに親分は猟兵へと頭を下げた。
猟兵達とグリムポテウティス海賊団を、コンキスタドールは彼の船の船首で待っている。毒の爪を研いで待っている。
−−−−
・無事グリムポテウティス海賊団の親分及び子分達を助けることができました。2章のコンキスタドールとの戦いでは、彼らの力を借りることもできます。
・親分達は勝手に説得したり、強くはないですがユーベルコードを使うことがあります。頼めば指示通り動いてくれるでしょう。彼らの使うユーベルコードは、「眠れる力を呼び起こせ! 」、「ホエール・スプラッシュ」、「シャーク・トルネード 」のいずれかです。
・親分達の手伝いがいらない場合、プレイングの頭に「▼ 」を入れていただければ何もしません。
・コンキスタドールになる前の情報はすでに聞いているでしょう。うまく親分達と説得できたら、コンキスタドールの爪が鈍るかもしれません。
テイク・ミハイヤー
◎
無事で何よりだぜ親分さん、もといダンボオクトパス!
俺はアンタの心意気を買うぜ。自分の非力さを悔む気持ち、俺にはよく分かるからな!
UC【英雄再起】。コンキスタドールになったヴェノムはもう倒すしかねぇ。そんなことは分かってる。
でも最期にダンボオクトパスとサシで話しをするくらい、いいだろ。
親分さんの思いのたけを【眠れる力を呼び起こせ!】で伝えてやれよ!
ヴェノムがそれを聞いても敵意を弱めないなら、【咄嗟の一撃】で迎撃して親分さんを守るぜ。
●
グリムポテウティス海賊団の船と、ヴェノムの乗る船。二つの船の船首が徐々に近づいていく。相手はすでに準備万端、毒の爪を磨いて迎え撃つ気のようだ。
「逃げていれば後悔しなくてすんだのにねぇ」
「海賊の掟は、守られなきゃいけねぇ」
そんな風にかつての親分と子分は睨み合う。その間を赤が駆け抜けた。トレードマークの赤いマフラーを翻し、テイクは相手の船の船首へ飛び出していったのだ。
「無事で何よりだぜ親分さん、もといダンボオクトパス! 俺はアンタの心意気を買うぜ。自分の非力さを悔む気持ち、俺にはよく分かるからな!」
かつて非力な一般人だったテイクには、親分の無念さ、悔しさがよくわかった。だから思い入れもひとしおに、スチームモンキーを振りかざし、テイクはヴェノムへと向かっていく。その背中には彼がかつて助けた、誰かのヒーロー達がテイクへ協力するために現れていた。
船首に立ったヴェノムはやってくるテイクへ向けて、怪しい紫色に光るナイフをいくつも投げて迎え撃つ。
「うおおおおお!」
毒の塗られた投げナイフを仲間が弾いてくれるから、テイクは迷うことなく真っ直ぐに突っ込むことができる。そして勢いのままスチームモンキーを一直線に振当てて、ヴェノムを海上へ押しだした。
(コンキスタドールになったヴェノムはもう倒すしかねぇ。そんなことは分かってる)
浮遊しながらも近くに来たテイクへと毒爪を振り抜き、一撃を食らわそうとしてくる。素早いそれを躱すのは難しいが、英雄再起の仲間がヴェノムのバランスを崩すことで辛うじて避けられた。
(でも最期にダンボオクトパスとサシで話しをするくらい、いいだろ)
「親分さん、思いのたけを伝えてやれよ! 眠れる力、呼び起こしてやれ!!」
「おぉ、あんがとよ! ヴェノム! お前が俺達を好いていてくれたように、俺達もお前を好いていた! だから非道をさせる前に止めてやるぜ!! 今ここでなぁ!!」
親分が高らかに、その思いを宣言する。かつての仲間がこれ以上非道を起こさないために、今ここで止めると、覚悟をぶつける。その心を感じ取ったテイクに、猟兵に、子分達へ深海の海のようなバトルオーラが力を貸していく。
「あんたはいっつもそうだったわね……でも、敵対するなら無残に殺してあげるわぁ!!」
「ヴェノム!」
ほんの少しだけ優しく笑うヴェノムの爪が一度は降りる。喜色の浮かぶ親分。けれどすぐに持ち上がり、毒爪が親分へと迫る。
「させるかよ!!」
しかし、咄嗟に駆けつけたテイクの銀のモンキーレンチが割って入り、その爪が届くことはなかったのだった。
成功
🔵🔵🔴
三上・チモシー
◎〆
こんにちは、ウミヘビの航海士さん
ここはとってもいい海だね!
航海士さん、海賊団のこと家族って言ってたんだってね
いい海にステキな海賊団、物騒なことは似合わないよね。だから、航海士さんの邪魔しちゃうよ!
家族を傷つけるなんてこと、させたくないものね
ライ麦ちゃんの背に乗って【空中戦】
敵の爪が届かない距離を保つようにして『不動火剣』使用
火精霊のもち麦ちゃんに炎の勢いを強めてもらって、【破魔】の力も込めて攻撃
敵が狭い隙間に待避しても、周辺ごと焼き尽くす
ごめんね、乱暴な止めかたしかできなくて
●
チモシーはライ麦ちゃんの背中に乗って、浮遊するヴェノムの下へと向かう。
「こんにちは、ウミヘビの航海士さん。ここはとってもいい海だね!」
「そうねぇ、欲望に満ちたいい海よぉ」
毒爪が届かないように距離を取るようにライ麦ちゃんに動いてもらいながら、そんな言葉をかわして。チモシーとヴェノムは互いに傷つけることなく、すれ違う。空中を泳ぐライ麦ちゃんの機動は流動的で、ヴェノムの爪はチモシーにもライ麦ちゃんにも届かない。けれど勢いある爪は、一度油断すればチモシーもライ麦ちゃんも切り裂くだろう。気を抜かず、それでもチモシーは語りかける。
「航海士さん、海賊団のこと家族って言ってたんだってね」
「そんな、事も言ったかしらねぇ」
彼のその言葉に、家族という言葉に、ほんの少しだけ、爪の勢いが弱まった。僅かな、しかしこの戦いでは大きな差だ。
「いい海にステキな海賊団、物騒なことは似合わないよね。だから、航海士さんの邪魔しちゃうよ!」
チモシーの手の中の三鈷剣が熱を帯びる。
(家族を傷つけるなんてこと、させたくないものね)
これ以上ヴェノムに親分を、かつての仲間達を傷つけさせたくないから、ここで止める。チモシーの優しい覚悟の強さに応じるかのように三鈷剣から強い金色の炎が吹き出す。
何かしようとしているのを感づいたヴェノムが爪で切りかかるが、ライ麦ちゃんがぬるりと避けていく。
「不動明王に帰命し奉る。一切障碍を滅尽したまえ」
集中したチモシーが唱える真言が動かぬ守護者、怒りの面で衆生を救わんとする不動明王の炎を呼び出した。火精霊のもち麦ちゃんもヒレをふりふり力を合わせ、勢いを増すばかり。
そうして、短剣状の三鈷剣から溢れる炎がヴェノムへと迫る。
するとヴェノムはエラブウミヘビに変じ、海に逃げ込む。海底の岩場に身を潜めやり過ごそうというのだ。
けれど破魔の炎は海の中でも燃えていた。岩場の僅かな隙間に逃げ込んでも逃さない。浄化の炎がその身を、隠れた隙間ごと焼いていく。
「ごめんね、乱暴な止めかたしかできなくて」
多少の痛手は追わせただろうか。もっと穏便に止められると良かったのに、と少しだけ浮かない声でチモシーは呟いた。
成功
🔵🔵🔴
灰神楽・綾
【不死蝶】◎〆
そっか、優しい人だったんだね
此処がサクラミラージュの世界なら
説得して転生させるという道もあったんだろうけど…
でも親分さんも航海士さんも
万が一の時の覚悟は出来ていたんだろう
ならせめて後悔が無いように
きっちりケリを付けさせてあげないとね
…というわけで
俺の相手をしてもらうよ航海士さん
UC使用し確実に「ヴェノムの全ての攻撃を防ぎきる」
毒爪は両手に構えたDuoで武器受け
毒投げナイフは此方もナイフを投げつけ相殺
親分さんはまだ君に伝えたい事があるだろうからね
邪魔は一切させないよ
さぁもう良いかな?
毒爪が此方に向かった瞬間
毒も痛みも厭わず掴みかかる
一瞬でも動きを止められればいい
あとは宜しく、梓
乱獅子・梓
【不死蝶】◎〆
仲間を、家族を守る為に力を得ようとしたのか
それが今仲間を害する存在に
なってしまうとは皮肉な話だが…
きっとかつての本人も望んでいないだろう
さぁグリムポテウティス海賊団のキャプテン
綾が身を挺してヴェノムの攻撃を凌いでいる
今なら誰にも邪魔されずに
奴に思いの丈をぶつけられるぞ
ユーベルコードを食らわせてもいい
ステゴロで一発ぶん殴ってもいい
馬鹿野郎って喝を入れてもいい
逆に感謝や謝罪の気持ちを伝えてもいい
これが最後の機会だ、悔いの無いようにしろ
…よし、よくやった綾!
綾の行動によって、親分の言葉によって
僅かでも隙が生まれた瞬間を見逃さず
UCで威力を増した成竜の焔の一撃を食らわせる
●
「仲間を、家族を守る為に力を得ようとしたのか。それが今仲間を害する存在になってしまうとは皮肉な話だが……きっとかつての本人も望んでいないだろう」
「そっか、優しい人だったんだね」
もしもここが幻朧桜の舞う世界なら、説得して次の生に送り出すことができたかもしれない。しかしここはグリードオーシャン、力と海の世界。違う世界の道を辿ることはできないし、それに。
(でも親分さんも航海士さんも、万が一の時の覚悟は出来ていたんだろう)
彼らの覚悟を無下にすることなどできないのだから。
「ならせめて後悔が無いように、きっちりケリを付けさせてあげないとね。梓」
「その通りだ、綾。行くぞ。俺達なら容易く出来る事だ」
傲岸不遜に言いながらも親分を気遣う視線を向ける梓に、綾もにっこり笑ってみせた。
海から上がってきたヴェノムに対して綾が向かう。
「さあ、俺の相手をしてもらうよ、航海士さん」
向けられる毒爪を愉しげに見つめ、Duoを携え駆け抜ける。すぐ側を通る毒爪を大鎌の刃で受け流し、目を狙った腕は柄で押しやる。距離を取ったときに投げてきたナイフには綾もJackを投げて撃ち落とした。
向けられる殺意に歓喜を覚えながらも攻撃すべてを防ぎ切り、ヴェノムを引きつけてみせる。
「あはは、楽しいねぇ」
「楽しくないわよ! まったく、邪魔ねぇ!」
「親分さんはまだ君に伝えたい事があるだろうからね。その邪魔は一切させないよ」
「さあ、キャプテン」
その後ろで親分とともに見守っていた梓は声を上げる。
「綾が身を挺してヴェノムの攻撃を凌いでいる今なら、誰にも邪魔されずに奴に思いの丈をぶつけられるぞ」
ユーベルコードを食らわせてもいい、ステゴロで一発ぶん殴ってもいい。馬鹿野郎って喝を入れてもいい。何でもできる、と親分を励ました。先に捕まった時と状況は全く違う、今ならヴェノムに届かせることができるのではないか、と。
「逆に感謝や謝罪の気持ちを伝えてもいい。これが最後の機会だ、悔いの無いようにしろ」
堂々と佇み語りかける梓の言を聞いていると、本当にそうなるような気がしてくる。サングラスで見えない目が優しく見守っているような錯覚すら覚えるのだ。焔も再び励ますようにキューと鳴いていた。
「そうさな、そうだよな……」
バトルオーラを纏った親分が、綾の持つDuoに爪を押さえられてじりじりと一点に留まり睨み合うヴェノムを見つめ、びょんと飛び出した。
「ヴェノム! いい加減にしろ!!」
「っ痛ぁ!!」
べしんと親分の腕の一本が、動けないヴェノムの頭を叩いた。
「いつもは俺がこうやって窘められる方だったな……あんがとよ、ヴェノム」
そして続くのは感謝の言葉。これまで自分を支えてくれた子分への親愛の言葉だった。そして、別れの気持ちでもある。
少しだけ、ヴェノムの力が緩んだ。そのタイミングで綾がDuoから手を離し掴みかかる。毒の爪が刺さって皮膚を切り裂いて痛みが走ったって構わない。しっかりヴェノムの腕を握りしめた。
「もう逃げられないよ。あとは宜しく、梓」
「……よし、よくやった綾! 焔!」
綾の足止めを逃すことなく、梓は相棒の仔竜へ合図を、力を送る。
見る間に大きく、成竜へと成長した焔の口から出るのは白い高温の炎。先程までの仔竜の時とは威力も射程も、全てが強力になった炎。
綾を避けるように吹き出された炎はヴェノムの身を焦がしていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
吉備・狐珀
◎
親分さんも、お仲間の皆さんもご無事で何よりです。
さぁ、頭を下げている暇はありません。けじめをつけましょう。
真の姿になりて使うUCは【鎮魂の祓い】
ウミヘビに体を変異させる前に(先制攻撃)といきましょうか。
(祈り)を込めて魂迎鳥で奏でるのは航海士の残虐な心をかき消す調べ。親分さん達の声が届くように、忘れた海賊の誇りを取り戻すように。
それでもウミヘビに変異しようとするのなら。
ウケの(毒耐性)の(オーラ)で自分や海賊の身を守りつつ月代の(衝撃波)で海賊達に近づけないように(なぎ払い)、ウカの雷(属性攻撃)で(麻痺)させ動きを封じる。
もう一度、共に海を渡ることは叶わないけれど。せめて仲間殺しになる前に
●
真摯に願う、親分の演説を受け止めて、狐珀も言葉を返す。
「親分さんも、お仲間の皆さんもご無事で何よりです。
さぁ、頭を下げている暇はありません。けじめをつけましょう」
そう言って彼女が一度目をつぶれば、青い冷たい炎がその身を包む。一瞬で解けた後、現れたのは目元を覆う青い染料で飾られた狐の面を付け、房菊綴をあしらった水干装束の巫女。澄んだ氷のような霊気を身に纏い、艷やかな黒髪を高く結い上げて、狐火を従え鉾鈴を携えた狐珀はヴェノムへと向き直った。
ヴェノムは大分弱ってはきているが、まだその目からは荒ぶる魂の意志が消えていない。かつての仲間であろうとも、己の敵を残虐に容赦なく切り刻む、その思いは弱まっていない。
じっとその姿を見据えてから鈴をしゃん、しゃん、と振り場を清め、改めて口に寄せるは淡い桃色に染まった魂迎鳥。その姿をあしらった笛に息を吹き込んで霊力を込め、祈りを奏でる。
動いた狐珀を狙ったヴェノムの爪が届く前に、笛の音が鳴り響く。指が動く。
海賊団の親分達の声が届くように、忘れた海賊の誇りを取り戻すように。残虐な心をかき消すように奏でる笛は、荒れた海すら慰め、鎮めるような音の心地。遠い冥土に往来する鳥の鳴き声。それは海の世界に現れたオブリビオンを幽世へと導く先導でもある。
狐珀へと爪を突き刺す前に止まったヴェノムの体がぐらりと揺らぐ。流れる笛の音が彼を包むたび、瞳に宿る暗い何かが払われるように薄れては濃く、濃くなっては薄くなる。まるでかつての優しい魂が、今の荒ぶる魂とせめぎ合うかのように。
(もう一度、共に海を渡ることは叶わないけれど。せめて仲間殺しになる前に)
その前にどうか止まるよう。その手を仲間の血で穢さぬよう。ウミヘビに変わることもできず、弱った体で頭を振って抗うヴェノムへと音が満ちていく。
せめてもの救いが訪れるよう、狐珀は祈りを、優しさを注ぎ、指をしなやかに動かして鳥の声を奏で続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
クラウン・アンダーウッド
◎〆
家族は大事さ。まぁ、ボクにとっての家族は一緒に語り合う仲間やこの子達(からくり人形)のことだけどね。ボクだって家族を守れるならこの命、惜しくはないさ♪
さぁ、皆。遊んでおいで♪器物のみを残し自身の肉体の全てを代償に10体のからくり人形に魂を宿らせて子供らしい仮初めの自我を確立させる。
からくり人形の一体が器物を回収して身に付ける。
「遊ぼう!遊ぼう!」「ヘビ可愛い♪」「海風気持ちいい」
からくり人形達は各々戦闘を開始したり、やたらとコンキスタドールと絡んだり、日向ぼっこをしたりと自由気ままに行動する。
●
クラウンは周囲に浮かんだ人形達の頭を順に撫でてやりながら頷いた。
「家族は大事さ。まぁ、ボクにとっての家族は一緒に語り合う仲間やこの子達のことだけどね」
ナイフを携えたからくり人形達もクラウンの側で、表情が大きく変わらずともどこか嬉しげに回っている。家族と一緒にいられるのが嬉しいといった風情だ。
「ボクだって家族を守れるならこの命、惜しくはないさ♪」
「……そう」
ヴェノムがつきりどこか傷んだような顔をする。そう、家族を守れるなら──親分のようにこの身を捧げたって構わないのだ。
だから、とクラウンは続けて言う。
「さぁ、皆。遊んでおいで♪」
その言葉と共にクラウンの姿が消えた。そこに残ったのは、煤けて動かぬ懐中時計。
急にかき消えたクラウンの奇襲を警戒するヴェノムの目の前で自分一人でなど動かないはずの人形が、一人で懐中時計を拾い、身につけた。
その途端、その場に響くのは──歓声。
「わーい!」
「遊ぼう! 遊ぼう!」
「……え?」
先程まで大人しく主に従っていた人形達が急に思い思いに動き出した。無邪気に笑い、のんきに走り、ヴェノムへと切りかかってくる。その鋭さは侮れず、子供らしく突発的な動きでヴェノムの隙をついてどんどん手傷を増やしていく。ときにはナイフではなく直接手で触ったり、炎で燃やしてきたりもする個体もいた。
「ヘビ可愛い♪」
「ちょ、なによこれっ!?」
「あはははは♪」
「痛っ、焼けちゃうじゃない!!」
かと思えば親分のそばでのんきに見守る人形もいたりして。護衛のつもりなのかもしれない。
「海風気持ちいい」
「お、おう。そうかい……」
くるりと遠距離からナイフを操り、ときには拳で殴り、地獄の炎すら扱ってみせるこの人形達。クラウンが仮初の体を代償に、人形達の自我と己の技術を使える存在を生み出したのだ。クラウンが動けずとも彼の家族が動いてくれる。
遊び盛りの子供達は残酷なまでに敵と遊ぶ。そしてその技術はクラウンのものそのままで。
ヴェノムはからくり人形達に翻弄され、ついには──海へと還っていったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『おさかな撮影会』
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POW : 魚系キマイラをメインに撮影会
SPD : 深海人をメインに撮影会
WIZ : 猟兵をメインに撮影会
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●おさかな撮影会
「あんがとよ、あんたらのおかげで助かった」
ヴェノムの散る様を最後まで見送った親分、ダンボオクトパスはにっと笑って猟兵達へと礼をいう。
「礼をしたい。俺らの島に来てくれ!」
グリムポテウティス海賊団の危機の船に乗り、彼らの島ポテ島へと招かれた。
キマイラフューチャーから落ちてきた島らしく、どこかポップで近未来的な建物が草木に埋もれながら存在している。
島民も深海人やキマイラっぽいものが多そうだ。
「この島じゃあおさかな撮影会が流行りでな」
親分が腕の1本で示したのは海に沈んだドームのような場所。
「あのドームで泳ぎながら撮影会が楽しみ放題だ」
ドーム内には魚が多く放されており、海中で一緒に泳ぎながら撮影ができるのだ。ドームをコンコンすれば、海中でも呼吸できるアイテム(飴玉やらアクアラングやら)が何故か出てくるという。撮影機材もこの島で作れるレトロなものを貸し出しているし、自分で持ち込んでもいい。
陸地のような場所もあるので宴会の用意もするという。
「目一杯楽しんでいってくれ!」
=====
・おさかな撮影会が楽しめます。この商からの参加もぜひどうぞ。
・魚系キマイラの島民や海賊、深海人の島民や海賊と撮ってもいいですし、猟兵同士楽しんでもいいです。普通のおさかなと楽しんでももちろん大丈夫です。PSWあまり気にせずに楽しんでください。
・水中での呼吸は考えなくても大丈夫です。撮影機材も貸出されます。
・宴会も用意されています。海鮮料理を楽しめます。海賊団の一部はここでかつての仲間を偲んでいるかもしれません。
三上・チモシー
◎
ポテ島ってかわいい名前だねー
海のドーム? すごいすごーい、お魚いっぱい! 綺麗!
わーい! ライ麦ちゃん、もち麦ちゃん、遊びに行こー!
ライ麦ちゃんに乗ってお魚と一緒に泳いだり、借りてきたカメラで写真を撮ったり
ナマズは淡水魚?……大丈夫大丈夫、細かいことは気にしない!
海賊さーん、一緒に写真撮らない?
ほら、ライ麦ちゃんに乗って乗って
ねぇねぇ、海賊さんたちって、どんな冒険してきたの?
お話聞かせて聞かせてー♪
ウミヘビの航海士さんのお話も聞きたいな
●
「ポテ島ってかわいい名前だねー」
「おう、数代前の親分がなぁ、ここを見つけたときに海賊団の一部から取ったらしいぞぉ」
チモシーの言葉に鮫を連れた子分が由来を答えてくれる。その時ポテトを食べながら思いついたとかなんとか。
どこかポップで近未来的な建物の名残があるこの島、一番の目玉はやはり海のドームらしい。島民の憩いの場にもなっているのだそうだ。
半分海に沈んだ形のドームに入れば、空間の半分ほどは水に満たされている。水に沈んだ部分の壁は透けていて周りの海がよく見えた。
もちろんドーム内部にもカラフルな魚や可愛らしい魚、ユニークな魚が多く放されていた。
「すごいすごーい、お魚いっぱい! 綺麗!」
チモシーはうきうきと手近の床をコンコンち叩き、出てきた水中呼吸用の飴玉を口に含み、カメラを借りて海に向かう。
「わーい! ライ麦ちゃん、もち麦ちゃん、遊びに行こー!」
淡水魚のライ麦ちゃんは海に入って大丈夫だろうか。そんな気も一瞬したけれど、細かいことは気にしない、きっと大丈夫。そうおもいながらチモシーはライ麦ちゃんの背中に乗って、海の中へと入る。飴玉の不思議パワーで苦しくないし、水中でもよく見えた。キラキラと光る魚や、鮮やかな色の魚がチモシーとライ麦ちゃん、そばを泳ぐもち麦ちゃんの側へと寄ってきた。
「おー、すごいね!」
気ままに泳ぐ魚達と一緒にライ麦ちゃんの背にくっついて泳いだり、借りてきたカメラで群れの中央や、下に入り込んで撮影してみたり。
自由に楽しんでから浮かび上がると、ドームにいくつか浮かべられた足場の上にグリムポテウティス海賊団の面々が見える。海鮮料理を広げながら酒を味わったり語らったりしているようだ。
「海賊さーん、一緒に写真撮らない? ほら、ライ麦ちゃんに乗って乗って」
「おー、いいぞぉ」
一部の子分がチモシーの招きに応じて海に入ってくる。自由に泳いだり、ライ麦ちゃんの背中にのったり、もち麦ちゃんをなでたり、一緒に写真を撮影して。
そして、チモシーは海賊達へと聞いてみる。
「ねぇねぇ、海賊さんたちって、どんな冒険してきたの?
お話聞かせて聞かせてー♪ウミヘビの航海士さんのお話も聞きたいな」
「冒険かぁ。最近だと巨大タコに遭遇したことかなぁ」
「あんときのヴェノムは、慌てる親分を引っ叩いて「落ち着きなさいな!」って一喝入れててな」
「でも頑張ったら褒めてくれんだぜ」
優しい航海士の思い出に、少しだけ痛い表情をする者もいるけれど、明るく彼らの思い出をチモシーに語ってくれるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
吉備・狐珀
◎
倒せてよかった、と喜ぶ気にはなれませんが…。
でも親分さん達も船も無事で良かったです。
親分さんのお言葉に甘えて月代、ドームに入らせてもらいましょうか。
海は久しぶりでしょう?あ、お魚さんを捕まえたり、食べたりしてはいけませんよ?
月代によく言い聞かせてから、月代をドームの中へ。
私は撮影機材の使い方を教えてもらいながら魚と泳ぐ月代を撮影。
月代…じっとしていませんけど、ちゃんと撮れているのでしょうか…。
泳ぎと撮影を楽しんだら宴会へ。
美味しい海鮮料理を頂きながら頼りがいのある優しい航海士さんの話を聞きながら海賊団の方たちと過ごします。
●
(倒せてよかった、と単純に喜ぶ気にはなれませんが……)
事情を思えば素直に喜ぶことはできない。海賊団は大事な仲間を失ったのだ。けれど、それでも彼らは無事でいる。
(でも親分さん達も船も無事で良かったです)
それは猟兵の、もちろん狐珀の成し遂げた成果なのだ。
今は切なく悲しくとも、昇華して進んでいくのだろう。
「親分さんのお言葉に甘えて月代、ドームに入らせてもらいましょうか」
親分の招きに応じ、月代と一緒にドームに入る。中からは外と変わらぬ潮の香り。よく澄んだ海面はきらきらしている。そこからは悠々と泳ぐ魚達がよく見えた。
「海は久しぶりでしょう? あ、お魚さんを捕まえたり、食べたりしてはいけませんよ? あまり遠くに行ってもいけません」
うきうきそわそわと海を眺める月代によくよく言い聞かせ、月代を海の中へと放す。早速近くの魚とぐるぐるおいかけっこをする仔竜を写真におさめるため、狐珀は撮影機材の使い方を教わる。基本ボタンを押すだけでOKという機器を水中に入って構えながら、ちょっぴし不安がよぎった。
(月代……じっとしていませんけど、ちゃんと撮れているのでしょうか……)
あちらにこちら、上下左右。きらきらとした魚や変わった形の魚を興味津々、めっちゃ動き回って追いかける仔竜に少々手こずる予感を感じながらも、機材を向けてボタンを押す。
後で確認すれば、多少ぶれたりフレームアウトしているときもあったが、楽しげな月代をよく撮れていたのだった。
月代も狐珀も満足するまで海を堪能し、点在する陸地の一つに上がる。そこではグリムポテウティス海賊団の面々が猟兵達のために、と様々な海鮮料理を用意して宴会を開いていた。
「おー、お嬢さん。魚はどうだい?」
「タコもイカもあるよー」
「ありがとうございます」
声をかけてきた海賊達へと礼を返し、月代を膝に乗せて宴会に参加する。
新鮮な海の幸をたっぷり目の前に置かれた狐珀は、月代に取り分けてやりながら、無事を祝う海賊達としばし歓談し。
「そういえば航海士さん、どんな方だったのですか?」
「そうさなぁ、気風も良かったが優しい人でなぁ」
「嵐のときでも的確に指示出してくれるし、新入りがへこんだときもフォローしてくれて……いい人だったよ」
彼らの航海士の思い出を聞いて、共に偲ぶのだった。
大成功
🔵🔵🔵
テイク・ミハイヤー
深海!?行けるのか!なら行くっきゃねぇよな!
いっぺん行ってみたかったんだよな。深海生物とか見てるとワクワクするもんな!
【SPD】折角だしダンボオクトパス率いる船員達と記念撮影をしようぜ。
慰めてやりたい気持ちはあるけれども、事情も知らない俺みたいな奴から慰められても困るだろうからそこは黙っておくぜ。
地上じゃ滅多に見られない深海人とシャッターを切って、はいピース!っしゃ!SNSに投稿しよ。
……いいや、やっぱ言っとかないといけねぇよな。
ダンボオクトパス、アンタは悪くねぇ。お節介かもしれねぇけど、またコンキスタドールで困った事があったら、俺を呼んでくれよな!
●
「深海!? 行けるのか! なら行くっきゃねぇよな!」
テイクはわくわくする気持ちを抑えきれずに笑う。
「いっぺん行ってみたかったんだよな。深海生物とか見てるとワクワクするもんな! なあ、あんたらも一緒に行こうぜ!」
むにょーんとした形だったり、透明だったり光ったり、不気味なものかわいらしいもの、面白いもの様々な深海生物。そういうものを間近で見られるなんて逃す手はない。
それにテイクだって、仲間を失った海賊団を慰めてやりたい気持ちはある。けれど事情も知らない外部の人間からから慰められても困るだろうから、海賊達の提案に乗って楽しんで、そこは黙っておくのだ。これだってテイクなりの優しさである。
コンコンして出てきたガジェット風のダイビングセットを早速装着し、海賊達と連れたってテイクはゆっくりとドーム内の海へと潜る。
10m、20m、50m。上で泳ぐ魚の腹を見上げながら沈んでいけば段々と暗くなり、底に置かれた照明が深い海をぼんやりと照らし出す。
暗い青の世界では海面とは違った魚達の様子が楽しめる。ヒレのようなものがついたタコ、透明で骨が光る魚や灯りを灯す魚。
(はいピース!)
そんな海の生き物達と、自由に泳ぐ深海人の海賊達と並びシャッターを切ってもらう。
(っしゃ!SNSに投稿しよ)
後でデータを送ってもらうよう頼めばいい。そうしたらSNSに投稿して皆にも披露するのだ。行き以上にゆっくりと浮上して行けば、ちょうど宴会の輪から少し離れたダンボオクトパスがいた。目があった彼はふよふよと浮いて近寄ってくる。
「おう、楽しんでるかい?」
「おう! すっげーな、いろんなのがいたぜ!」
「いいもん見れたみたいだな、よかったぜ」
ククク、と笑う親分はそれでも少しだけしょんぼりして見えた。
(……いいや、やっぱ言っとかないといけねぇよな)
だからテイクは、一度は黙っておこうと思ったことを言うのだ。
「ダンボオクトパス、アンタは悪くねぇ」
無論、航海士が悪いわけでもない。誰も悪くないのだ。だから元気を出してほしいと思うのだ。
「……なあ、お節介かもしれねぇけど、またコンキスタドールで困った事があったら、俺を呼んでくれよな!」
メガリスを狙う勢力が現れないとも限らないのだ。その時は精一杯戦ってみせよう、とテイクは力こぶを作ってみせた。
「おう。あんがとな、坊主。その時は頼りにさせてもらうぜ!」
大成功
🔵🔵🔵
灰神楽・綾
【不死蝶】◎
うーん、撮影会も気になるけど…
個人的には宴会にお邪魔して
海賊団の皆と最後に会っておきたいかな
撮影会は不参加になるけど
もし海中の記念写真とか売っていれば
それをお土産に持って帰りたいね
そんなこんなで宴会に顔出し
海鮮料理をありがたくご馳走になる
捕れたて新鮮って感じで美味しいね
刺身を食べながらもっとわさび無いかなと
その辺をコンコンしてみたり(←激辛料理好き
タイミングを見て親分さんの所へ
部下がコンキスタドールになったら
その海賊団が責任持って始末するのが掟…なんて
覚悟は出来ていたとしても
そう簡単に割り切れるものでもないよね
ねぇヴェノムってどんな人だったの?
と雑談を持ちかけて時間を過ごしてみる
乱獅子・梓
【不死蝶】◎
奇遇だな、俺も同じ事を考えていた
ここまでずっとお節介を焼いてきたんだ
こうなったら最後まで焼いてやるとするか
ズラリと並んだ見事な海鮮料理に感心
…だが、海賊団や島民って
魚系キマイラや深海人が多いらしいが
これはある意味共食いか…?
そんな野暮な考えは止めて美味しく頂く
興味津々な焔にも料理を分けてやる
こいつ、貝料理を殻ごと食ったな…
綾と共にダンボオクトパスに会いに行く
宴会会場を見渡していても
馬鹿騒ぎからは一線を引いて
物思いにふけている団員もいくらか居るようだ
それだけヴェノムは慕われていたという事だろう
ヴェノムに一撃喰らわせた時の
キャプテンはいかしていたぞ
彼なりに折り合いは付けられた事を願おう
●
「うーん、撮影会も気になるけど……個人的には宴会にお邪魔して海賊団の皆と最後に会っておきたいかな」
「奇遇だな、俺も同じ事を考えていた」
綾と梓、焔は海に潜らず、まっすぐに海賊団が宴会をする場へと向かっていく。
撮影会は不参加にはなるが、それよりは気のいい彼らのとの交流を望んだのだ。
「ここまでずっとお節介を焼いてきたんだ。こうなったら最後まで焼いてやるとするか」
「顔に見合わず面倒味がいいよね」
「顔に似合わず、は余計だ」
軽口を叩きあう二人を海賊団の面々は心よく迎えてくれた。
「おう、兄ちゃん達さっきは助かったぜ!」
「若ぇのやるじゃねえか!」
二人と一匹にも助けられたという海賊団はあれもこれもと料理をどんどん置いていく。ありがたく馳走になることにした。
「捕れたて新鮮って感じで美味しいね」
魚を切っただけ、という刺身に何故かある醤油とわさびをつけながらも綾には物足りない。つい、床をコンコンとしたらわさびっぽい調味料のチューブが出てきた。
さこれ幸いとぎゅむっとひねりだし、山盛り刺し身に乗せて口に放り込む。取り敢えずめっちゃ辛い。ツーンとわさびの辛味が鼻に抜け、その後にしょうがが香り、魚の旨味と一緒にプチプチ弾ける炭酸風味が更に辛味を増す。これはありだ。
出てきたチューブは水中呼吸用の辛味型調味料であった。プチプチ弾けるのは口に含んだことで出てきた酸素っぽい。
劇物と化した刺身を喜んで食べる綾の横では梓が並んだ海鮮料理に感心していた。洒落た料理は少ないが、新鮮な魚や貝、イカやタコやエビといった海の幸が豪快に所狭しと並べられ、エールやワイン、ラム酒の入った木のジョッキが海賊達の手に握られている。無論二人の前にもどんどん置かれていくのだが、梓はふと思ってしまう。
(……だが、海賊団やこの島の島民って)
見渡せば魚系や深海人。つまり水中の生き物達の特徴を持った人種だ。
(これはある意味共食いか……?)
いや、ヒトである以上すでに別の生物なのだろうか。ともかくそんな野暮な考えは止めて美味しく頂くことにする。小魚や貝、エビなどの半端なところをトマトで煮込んだブイヤベースっぽいものを啜ると、ぎゅっと潮の香り、海産物の旨味が押し寄せてくる。バゲットっぽいパンをひたしてもうまい。
目の前のごちそうに興味津々な焔にも、貝を焼いたものや、スープの具材を平皿に貰って分けてやると、キュッと鳴きながら、ぼりばりと音をさせて味わっている。
(こいつ、貝やエビを殻ごと食ったな……)
腹を壊しはしないだろうが、美味しいのだろうか。表情は幸せそうだが。相棒の新たな一面を思いがけず発見してしまった。
先程中座した親分がふよふよと戻ってきたのを見て、綾と梓は酒のジョッキを手に向かう。
(部下がコンキスタドールになったら、その海賊団が責任持って始末するのが掟……なんて覚悟は出来ていたとしても、そう簡単に割り切れるものでもないよね)
胸中を完全に理解することなんてできないけれど、思いやることはできるのだ。
宴会会場を見渡していても、馬鹿騒ぎをして晴らすものがいれば、物思いにふけるもの、しんみりと語り合うものだっている。悲しみや偲び方もそれぞれだ。
(それだけヴェノムは慕われていたという事だろう)
親分にだって大事な子分だったのだ。彼にも偲ぶ時間は必要だろう。
「やあ。ごちそう美味しかったよ」
「キャプテンも飲むか?」
「おう、兄さん達か。あんがとよ」
二人から酒を受け取って親分はぐいっとジョッキを空ける。
「ねぇヴェノムってどんな人だったの?」
「ヴェノムはな、なんていうか……俺にないものを持ってたな」
ぽつぽつと、優しいところ、頼れるところを語る親分の横で、二人と一匹は静かに聞いている。
「ヴェノムに一撃喰らわせた時のキャプテンはいかしていたぞ」
「そうかい?」
「うん。かっこよかったよ」
「ああ。安心するだろう」
誰が、とは言わないけれど、梓のその言葉に面映そうに親分は笑う。
(彼なりに折り合いは付けられた事を願おう)
この海賊団の行く先に幸あれ、と綾と梓は願うのだった。
帰り際に海賊団の一人から、海に潜ってなかったし、とポストカード大の写真を渡される。
広げてみるとこのドームの海中の写真と、宴会の中の海賊団と二人、そして一匹を撮ったものであった。
大成功
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クラウン・アンダーウッド
◎
心情 (ボクはボクらしく周りを笑顔にしよう。それが一番やりたいことだから。)
さぁさぁ、宴会を盛り上げてみんなで楽しもうじゃないか♪
人形楽団と共にクラウンは楽器演奏を行いながら様々な魚の形に変化する地獄の炎を操り、宴会会場を音楽と魚達で満たす。
からくり人形達は、給仕をしたり相手を見つけてダンスを行ったりとクラウンの指示の下に行動する。
海賊と猟兵が入り乱れる宴会会場をからくり人形の一体に撮影させる。
●
(ボクはボクらしく周りを笑顔にしよう。それが一番やりたいことだから)
悲しみで沈んだっていい。落ち込んだっていい。けれどその涙は流しっぱなしではいけないのだ。顔を拭いて、前を向いて、もう一度歩いて行かなくては。
その為にクラウンはおどけてみせよう。
クラウンの一番の願いを叶えるために、家族であるからくり人形も、人形楽団も動き出す。
「さぁさぁ、宴会を盛り上げてみんなで楽しもうじゃないか♪」
賑わう宴会会場の一角で、ペコリと大仰にクラウンは一礼する。何だ、何が始まるのかと辺りの海賊達が注目しだした。
その中心で、口元に構えた笛で奏でるのは明るいマーチ。前を向いて歩いていく為の行進曲だ。時折滑稽に失敗するその笛の音は、悲しみに沈んだものの心をそっと撫でていく。
(さあ、こっちを向いて。笑ってみせて♪)
その笛が奏でる旋律に合わせて人形楽団の音が続く。時に明るく弾け、時に静かに囁き、時に変拍子で。時折奏でる人形達がスウィングしたり、派手な動きで演奏してみたり。
海賊達が手拍子叩いてはやし立てれば、からくり人形がエスコート。大きなサメと小さな人形が、小さな貝と人形が、手を取りくるりくるり巡って踊って浮いている。
盛り上がる会場を炎の魚が泳いでいく。クラウンから生まれた様々な魚の形の炎達はひらりひらり、ヒレを緩やかに動かして、踊る人形と海賊を照らしながら宴会会場に満ちていた。
美味しい食事を楽しみ、暖かな癒やしの炎に暖められ、楽しい音楽に踊って、歌い出す海賊すら出る始末。音痴だったり、不思議と上手で聞き惚れたり。宴会に混じった猟兵も楽しそうに笑い出す。
(うん、こうじゃなくっちゃ♪)
一際大きな魚を生み出して注目を集めて、クラウンは笑う。孤独は嫌だし、目立つのが好きだ。
それに、写真は笑顔で写ったほうがやっぱりいい。
ぱしゃり、ぱしゃり、からくり人形の一体が、暖かな宴会を写真に撮る。写ったものは皆、明るく優しい炎に照らされて笑っていたのだった。
大成功
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