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嗚呼、素晴らしき珈琲浪漫

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●シロップひと匙、ミルクは少なめ
 沸騰していくお湯。
 ロートへと上がっていくのを確認してから、フラスコの火を止める。
 えぐみを出さないためには、ここの見極めが肝要だ。
 もう何十年も繰り返した作業だが、まだまだ極めるには程遠い。

 豆は魔法学園最新の温室で育てられた最上級品。
 私も収穫を手伝わせて貰ったが、真っ赤に熟したコーヒーチェリーのなんと美しかったことか。

 それを、スタンダードなハイローストで焙煎する。
 なんだかんだで、王道には王道たる良さがあるのだと、この歳になってようやく気付いたのだ。

 水も、温めてあるコーヒーカップまで、すべてが拘り抜いた品。
 日々、世界の為に災魔に立ち向かっているのだ。この程度の贅沢なら、ばちも当たるまい。

 さあ、今日もうっとりするような香りの珈琲ができあがった。
 後はこれに、特製のシロップとミルクを加えれば……。

●私、紅茶派なんですよね
「皆様、お集りいただきありがとうございます。世界コードネーム:アルダワ魔法学園にて、オブリビオンの出現が確認されました」
 シスター服に身を包んだグリモア猟兵が、自分の呼びかけに応じてグリモアベースに集った猟兵達へ語りだす。

「かの世界では災魔と呼ばれるオブリビオン達。今回は、地下迷宮に封じられたそれが、地上へ向かって侵攻を開始するのですが……」
 つまり、そのオブリビオンの軍勢を食い止めるのが今回の猟兵達の役割か。

「いえ、アルダワ魔法学園の住民は決して無力な存在ではありません。優れた蒸気文明、魔法文明を有する彼らならば、皆様のお手を煩わせずとも、災魔を見事撃退してみせるでしょう。ええ、そのはずでした」
 でした。

「……その、迎撃の為の蒸気装置を管理する研究チームが、『珈琲のシロップが切れたからやる気出ない』と言い出しまして。ええ、ええ。私も皆様と同じ気持ちです、何言ってんだあの馬鹿どもと思っておりますとも」

 曰く。
 拘り抜いた珈琲を飲まないとやる気が出ない。
 身体がカフェインという快楽を欲する。
 周りがボイコットするって言うから空気読まないと。
 紅茶党の魔法装置チームにやらせろよ。
 えとせとら。

「ちなみに、紅茶党とやらは全員が幻の茶葉がどうとかで学園外に居ます。自分らの仕事わかってるんですかね一体」
 説明するグリモア猟兵の顔がどんどん険しくなっていく。

「まあ、無視して皆様でオブリビオンを撃退してもいいのですが、学園側からも、今まで貢献してきた研究チームの為にシロップ調達に協力してほしいとのこと。渋々頑張りましょう」
 仏頂面から戻らなくなったグリモア猟兵から、猟兵達に今回の仕事に関する資料が配られる。

 オブリビオン、フラスコスライム。
 迷宮ではよく見るモンスターであり、日々雑魚として蹴散らされている。
 しかし、魔法学園の長年続けた無駄な研究により、フラスコに溜まったスライム部分を特殊な工程を経て加工することで、極めて上質なシロップを作ることができると判明しているのだ。

「というわけで、この子達を狩って狩って狩りまくり、スライムを持ち帰るのが皆様のお仕事となります」
 ひたすら雑魚狩り。楽な任務だぜ!
 そう気を緩める猟兵達に、グリモア猟兵が一言付け加える。

「ただ、スライムが居る区画。最近大物のオブリビオンの目撃情報が上がっておりまして。目撃者によって姿形も全然違いますから、見間違いの可能性もあるのですが、一応お気をつけて」
 どんなに楽な仕事であろうとも、地下迷宮はオブリビオンのテリトリーだ。決して油断していい環境ではないだろう。

「そうそう。今回の仕事にあたって、通常の報酬の他にも、研究チームから温室カフェの無料券が頂けるそうですよ。魔法学園の最新の技術によって作られた温室、一度足を運んでみるのも悪くは無いのではないでしょうか」

 研究チームご自慢の珈琲とやらも、協力の対価に淹れさせてもいいかもしれませんね。
 そう笑ったグリモア猟兵の背後でグリモアがひときわ強く輝き、次の瞬間、猟兵達の姿はグリモアベースから消え去っていた。


北辰
 アンティークなコーヒーメーカーに、若干のスチームパンクを感じます。北辰です。

 今回は日夜大騒ぎというアルダワ魔法学園が舞台。
 ネタ、という程ではありませんが、コメディ色強めのシナリオになると思います。

 1章ではスライム採取のお時間。
 普通に倒してから散らばったスライムを集めるのも良いですが、敵のユーベルコードを利用してやるくらいの気概で挑んでいただけると、効率的に集まるのではないかと思います。
 なお、シロップの原料だからといって、未加工のスライムを飲むのはオススメしません。お腹壊しますよ。

 もちろん、スライムを持ち帰るまでがお仕事。
 帰り道には十分お気をつけて行動していただけると幸いです。

 3章はいわゆる日常パートにて、魔法学園のお菓子や、研究チームのコーヒーを楽しんでいただきます。

 1点お断りすることとして、日常パートは要求される青丸の数が少ないため、早めにプレイングを頂いた猟兵様に関して、他の猟兵様を待つ意味で、リプレイのお返しを故意に遅らせる場合があります。
 とはいえ、期限である3日以内にはお返しいたしますので、プレイングの送信に関しては、特にあれこれ考えずに、気軽に送ってくださると嬉しいです。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『フラスコスライム』

POW   :    スライムブレス
【ねばつく液体のブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    スライムバイト
自身の身体部位ひとつを【奇妙な獣】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    フラスコアブソープション
小さな【自分のフラスコ】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【フラスコ空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シェーラリト・ローズ
スライムがシロップの原料…世の中色々あるねぇ
まーいいや
やる気が出してもらうようがんばろー

スライムは散り散りになると集めるの大変だし、【マヒ攻撃】でマヒさせてあまり散らばらないよーにしてみるね
スライムがわたし達をまとめて攻撃しようとした所をうまーく狙えたらいいんだけど
マヒさせるのが目的なので敵を倒すよりできるだけ多くの敵を攻撃していくよー

スライムブレス、スライムバイトは【第六感】【聞き耳】で攻撃前に気づいたり、【見切り】で対処
フラスコアブソープションされちゃったら内部でちょっと様子見
わたしの方がいつでも外に出られるようでないなら、【全力魔法】なり【2回攻撃】なり嫌がりそうなことをして出してもらう


バラバ・バルディ
珈琲といえば、わしが随分昔に飲んだ珈琲は、ザリッとしてて黒いわ苦いわ酸っぱいわの正にえげつない代物(誤解)じゃったが……ふぅむ、人の好みも色々じゃなあ。やはり人は面白いわ!

さて、あのスライムらをいっぱい集めて持ち帰れば良いんじゃな?
そうじゃなあ、なればまずは【地縛鎖】であやつらの居所を探ろうかのう。次に【地形の利用】であやつらを最適な場所へ追い込み、そこを【からくり人形】で一気にガバッと大量捕獲じゃあーはっはっは!
うむ、もちろん全て上手くいけばの話じゃが、やってみる価値はあろう?


【アドリブ、絡み、作戦変更、他諸々歓迎です】



●レベルで言うと1

 テクテクと。
 迷宮の中を2人の猟兵が進んでいく。

 入口ですれ違った学生たちは、軽い会釈をしただけで通り過ぎて行ったが、猟兵としての力、いかなる姿であっても周囲の住民に違和感を持たれない隠蔽能力が無ければ、三度見位はされたのではないだろうか。
 それほどまでに、この2人の組み合わせは異様であった。

「スライムがシロップの原料……世の中色々あるねぇ」
 まーいいやと、のんびりとしたトーンながら、とりあえずの意気込みを入れるオラトリオ、シェーラリト・ローズ(ほんわりマイペースガール・f05381)はまだいい。
 髪にピンクのバラを生やすオラトリオの姿こそ、この世界には存在しないものではあるが、蒸気機関を利用した拡声器を握りしめ迷宮を進む少女の姿は、魔法学園の学生たちとほぼ変わらないものだ。

 問題はその後ろを歩くもう片方。
 バラバ・バルディ(奇妙で愉快な曲者爺さん・f12139)である。

 シャーマンズゴーストとしては高いであろう、その長身。
 いつオブリビオンが現れるとも分からない迷宮の中で、金色の瞳を弓のように細めて、楽し気に歩く悠然とした佇まい。
 なにより、頭のてっぺんから足の先、手に持った杖に至るまで、徹底してカラフルな色に染め上げたその風貌は、蒸気と魔導機械で作られたこの世界において、圧倒的な存在感を放っていた。

「拘り抜いた珈琲のう……ふぅむ、人の好みも色々じゃなあ。やはり人は面白いわ!」
 長い時を生きてきたバラバ。
 当然、コーヒーを嗜んだこともある。
 もっともそれは、ザリッとしてて、黒いわ苦いわ酸っぱいわ。
 えげつないという言葉が相応しい代物であった。

 ああいうのが好きな物好きもおるんじゃなと、研究チームに聞かれたら涙を流して抗議されそうな呟きを漏らすバラバの前で、シェーラリトの足が止まる。
 思わず、彼女の純白の翼に触れてしまいそうな寸前で止まりながら、バラバもその視線の先に目を向ける。

 居た。
 今回の目的である、フラスコスライムである。
 迷宮の雑魚敵としてお馴染みの彼らは、自分たちを見つめる視線に気づく様子もなく、コロコロと辺りを転がっている。

 あれは、一体何をしているのだろうと、不思議に思った直後、シェーラリトはその理由に気づく。

 フラスコスライムは、その名の通りスライムがフラスコの中に入った姿のオブリビオンである。
 そして、そのフラスコは、底が平らになっている訳でもない球形。
 つまりコイツ等、自力で立てない。
 迷宮にできた溝に嵌まったのか、遠い目で静止しているのまでいる。

 事前に聞いてはいたが、それでもなお驚愕に値する、ゆるい生態。
 コレ、一方的に攻撃していいものなのか。
 自分の嫌う理不尽な暴力に該当するのではないかという小さな葛藤を振り払い、シェーラリトが狩りを開始する。

 丁度よく群れているスライムたちに対して、襲い掛かる花弁の嵐。
 不意打ちを食らったスライムたちが慌てて転がり、逃げていくが、一部はその場から動こうともしない。
 【空に星を、地に花を(ソラニホシヲチニハナヲ)】。シェーラリトの有するユーベルコードの一つである。
 名前を与えられなかった花びらは、今この時はシェーラリトの力により、獲物の自由を奪うマヒの毒花と化していた。

 動かないフラスコをゆっくり摘まみ上げたシェーラリトが、さてスライムをどう取り出したものかと考え込む。
 その隙に、せめて一矢報いようとしたスライムが、フラスコの口から飛び出した。
 身体を獣の口に変え、シェーラリトの喉元へと迫る。

 もっとも、それもシェーラリトには見切られ、軽く躱される。
 フラスコスライムは、本当に弱っちいオブリビオンなのである。
 悲しいまでに。

「フラスコに吸い込まれたなら、色々暴れちゃおうかと思ったんだけど……」
 わざわざ抵抗せずに吸い込まれて、追撃を与えていくのも、良心が痛む。
 こんな楽な仕事でいいのかなと思いながら、飛び出したスライムを持ち替える為の容器に移していくのだった。

 一方で、逃げたスライムたち。
 彼らにもまた危機が迫っていた。

 逃げる先、逃げる先で、なんかカラフルででっかいの――もちろんバラバである――が先回りしてくるのだ。
 彼が所有する、地を這う者を補足する鎖、地縛鎖。
 そして、フラスコスライムの移動手段は地面をただ転がる事だけ。

 有り体に言えば、詰んでた。

 そうして追い込まれたのは行き止まり。
 スライムたちを追い込んだバラバが、今日イチの笑顔でジリジリ迫る。

 後はからくり人形でガバっと捕獲すれば、大漁間違いなし。
 今回のMVJ(Most Valuable Jaeger)はわしで決まりじゃ、あーはっはっは!
 なんて考えながら、その指で操る人形をスライムたちへ差し向ける。

 ガバッ。
 パリン。

「あ゛……やってもうた」
 彼の弁護をするならば、その作戦が優れたものであったのには間違いない。
 けれど、彼は過大評価をしてしまっていたのだ。
 スライムたちの、フラスコの頑丈さに対して。

 捕まえたスライムたちは確かに多い。
 これならば、学園で待つ研究チームも大喜びだ。

 けれど、割れたフラスコから迷宮の床に消えていったスライムも多い。
 持ち切れないほどのスライムを抱え、それでも損をした気分で入口へ戻っていくバラバであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリンデ・エーデルシュタイン
珈琲ですか。上質の珈琲は香りも味も良いと聞きますし、飲んでみたいですね。

その為にもまずはフラスコスライムの確保を。
このスライムをシロップとして使っていたなら捕獲する方法や注意点などあると思います。まずは情報収集をしてからスライム確保に向かいましょう。
スライムを入れておくための水漏れしない袋も忘れずに持って行かないと。

さて、倒してフラスコを割ってしまうとスライムが漏れてしまいます。ならばまずは聖光示すは神苑の階をスライムの群れの近くに当てて威力を見せ、スライムたちがフラスコ空間に逃げ込むように追い込んでいきましょう。
フラスコに入ったらそれを袋に回収し、必要なら聖なる光で止めを刺しておきましょう。


メリー・ユメノコウジ
「コーヒーのシロップの材料?甘いのかな?でも美味しいものを飲んだら幸せになれるからがんばりますめぇ。」
ただし、珈琲は甘いのしか飲めない…なので少しでも美味しく感じられるようにはなりたいなと思う。
スライムは可愛く見えるのでなんとなく気が進まないが【覚悟】して向かう。
基本は他者の援護や連携、怪我人の有無は重視。
不利な状況を避け【おびき寄せ】で1対1厳守。
回避は【第六感】【野生の勘】使用
攻撃時は【高速詠唱】でめぇめぇさんを召喚し、体当たりなど試行。
「もっふもふのめぇめぇさん、お願いするのですよ~♪」
フラスコの中に入った場合、【聞き耳】で様子を確認。
【コミュ力】等でどうにかできないか試す。
アドリブ歓迎



●安全安心マトリョシカ

「コーヒーのシロップの材料? 甘いのかな? でも、美味しいものを飲んだら幸せになれるから、がんばりますめぇ」
 言葉に、ちょっと変わった語尾を付けながら歩く緑角の少女。
 メリー・ユメノコウジ(夢渡る羊・f00748)は、スライムから作られるシロップとは、どのような物なのかと思いをはせながら、迷宮を進んでいく。

 正直に言えば、メリーは珈琲が得意ではない。
 たっぷりのシロップで甘さを強めたものでないと、舌が受け付けないのだ。
 だからこそ、研究チーム拘りの珈琲というものには、結構な興味がある。
 魔法学園の最精鋭たちが誇る物ならば、自分でも美味しく感じられるのではないか、と。

 そんなメリーが少し開けた広場に出ると、そこには既に先客が息を潜めていた。

 アルトリンデ・エーデルシュタイン(神なき祈り・f00243)が、背後からの気配に気づき、メリーへと振り返る。
 迷宮内において張りつめていた彼女の表情も、同じ猟兵であるメリーの姿を認めたことで、少しだけやわらぐ。

「おや? あなたもスライム集めですか?」
「ええ。研究チームの皆さんの、拘りの珈琲というのも気になりますしね」
メリーの問いかけに、アルトリンデが薄く微笑みながら答える。

 なお、2人ともにお互いを同年代だと思っているが、実際にはそこそこ歳の差がある。
 大人びたアルトリンデと、子供っぽいメリー。
 ある意味では、バランスの取れた2人であった。

 さて、アルトリンデが此処で立ち止まっていたのには理由がある。
 しっかり者の彼女は、普段スライムを調達している者たちからスライム狩りのコツを聞き出していたのだ。
 フラスコを割らないように仕留めなければならないこと、転がることで意外と早い速度で移動すること(ただし普通に追いつける)。
 そして。

「聞いた通り……ここがスライムのたまり場なんですね」
 餌でもあるのか、フラスコスライムがわらわらと姿を現す。
 まだ、猟兵達の姿には気が付いてないようだ。

「わあ、あんなに。どうしましょうか、1匹ずつ捕まえると逃げられてしまいますけど……」
「ええ、それについても、いい方法を聞いてきたのです。いいですか……」
 アルトリンデが声を潜めて伝えてくる内容に、メリーの顔にも笑みがこぼれる。
 確かに、そうすれば一網打尽だ。
 さっそく行動に移るとしよう。

 呑気に転がるフラスコの群れ。
 それに迫りくる影が一つ。

「天よ光を与えたまえ」
 アルトリンデが、自身を猟兵たらしめる力を解放していく。

「我らが闇に惑わぬよう、神の庭へと至る道を照らしたまえ」
 スライムたちへと突きつけられた銀のグレイブから放たれる聖なる光。
 アルトリンデの有するユーベルコード、【聖光示すは神苑の階(ルクセント・ハインリヒ)】がスライムたちに襲い掛かる。

 とはいえ、着弾するのはスライムの群れから少し離れた迷宮の床。
 しかし、アルトリンデは問題ないという顔で、追撃を加えるための詠唱を速やかに行っていく。

 次々と襲い来る光の矢。
 慌てふためくスライムたちの逃げ場は少しずつ減っていき……。

 逃げるスペースを確保するために、スライムたちの行動にも変化が訪れる。
 あるスライムが別のスライムのフラスコへと吸い込まれていき、吸い込んだスライムもまた、別のスライムへと吸い込まれていく。
 外敵から逃れるため、スライムたちは逆再生のマトリョーシカのごとく同胞の体内への避難を繰り返す。
 そして、最後に1匹が残り。

「キャッチ。ふふふ、捕まえましためぇ」
 派手な光に紛れて回り込んでいたメリーに捕獲される。
 しかし、ここで誤算が生じる。

「ん? ひゃあああああ!?」
「え、メリーさん!?」
 どんどん吸い込まれていくスライムを、ちょっと可愛いな、なんて思っていたのがいけなかったのか。
 純粋に、ドジっ子としての本領を発揮してしまったのか。
 フラスコスライムを掴んだメリーは、そのままフラスコ内部へ吸い込まれてしまったのだ。

 フラスコ内部。
 そこはオブリビオンの腹の中。
 むざむざと迷い込んだ獲物を、溶かし、食らう。

「もっふもふのめぇめぇさん、お願いするのですよ~♪」
 そういうホームステージでも蹴散らされるのがフラスコスライムである。
 【めぇめぇさん(メェメェ・サン)】で呼び出された羊が、体当たりでスライムたちを吹き飛ばしていく。

 最初は、平和裏に話し合いでもできないかと考えていたのだ。
 でも、スライムたちは痛くもない体当たりを此方に繰り返すだけだし。
 そもそも律義に1匹ずつ来るから簡単に躱せるし。
 出ることに関しても、何故かご丁寧に階段が上方のフラスコ出口まで伸びてるし。

 慎重派のメリーであっても、コレ焦る状況じゃないなと理解するのに、時間はかからなかった。

 いくらかスライムを弱らせたメリーがフラスコから出てきて、心配していたアルトリンデに文句を言われながら、数十匹分のスライムが詰まったフラスコを持ち帰るのはもう少し先になる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リアナ・トラヴェリア
…やっぱり変な人多いよね、ここ。
色々揃ってるからかも知れないけど、うん。
…こういう人ばかりじゃないって知ってもらいたいなあ。

とりあえずスライムをドラゴニアンチェインで捕まえて、他のスライムにぶつけて倒していくね。
やることは簡単だけど、これからシロップって作れるんだ。
…それにしてもブラックって言う選択肢はなかったのかな?

ブレスで反撃してくるなら、その分も回収できるようにお鍋くらいは持っていこうかなあ。あと瓶と漏斗も。

ブレス撃って軽くならないのかな。
ユーベルコードだから大丈夫……なのかな。

所でシロップって普通アイスコーヒーに使うものじゃ……。
普通ホットなら粉砂糖だよね?


ナノ・クロムウェル
実は私カフェ…好きなんですよね。
もちろんコーヒーも好きですよ。
…という訳で手伝わせていただきますね。
…スライムを持ち帰る仕事…それなら「ガジェット」を使いましょう。
今回持ち込むガジェットはバズーカ型です。
これは翠炎の「属性攻撃」に「マヒ攻撃」を乗せた特別な炎弾を発射し対象を痺れさせて捕らえます。
痺れさせたスライムは後でちゃんと「医術」で痺れは取り除きます。
敵の攻撃にはユーベルコード「超速機構」で回避し「ガジェット」による反撃を行いましょう。
事前の情報収集で私達の退路はあらかじめ確保しておきます。
帰るまでが依頼ですからね。



●迷宮のスライムは駆逐されました(2日で戻る)

「……やっぱり変な人多いよね、ここ」
 黒剣を手に、少し疲れた声色で呟きながら、トボトボと迷宮を進む。
 リアナ・トラヴェリア(ドラゴニアンの黒騎士・f04463)にとって、このような呑気な仕事が回ってくることは、必ずとも否定すべきことでもない。
 生きるために、必ずしも必要ではない嗜好品に拘る。
 それは、この蒸気と魔法の世界が、様々な意味で満たされていることを示しているのだ。
 オブリビオンと戦う猟兵として、この世界が平穏に未来へと進んでいることは、歓迎するべきなのだろう。
 けど、それでも。

「……こういう人ばかりじゃないって、知ってもらいたいなあ」
 魔法学園の制服に身を包む者の立場から見れば、あの研究チームだけを見てこの世界の印象を決められてしまうのも困るのだ。
 学園の者の多くは、世界のため、命を懸けて災魔へと立ち向かう英雄だ。
 猟兵ならぬ身で、必死にオブリビオンに抗う姿は、尊く、手を差し伸べるに値する。
 ただちょっと、今回の英雄さんたちは頭のネジが緩いだけなんだ。

「そうですか……? 私は、カフェもコーヒーも好きなのですが……」
「え!?」
 突然横からかけられた声に、リアナの肩がわずかに跳ねる。
 いつの間にやら、遅れて迷宮に入ってきたナノ・クロムウェル(翠炎のメタルサバイバー・f02631)が追い付いてきていたのだ。

「ああ、失礼しました。同じ猟兵の方とお見受けしたので、よければ同行させていただけないかと思いまして……」
「あ、うん。大丈夫だよ、ごめんね? 驚いちゃって」
 ナノが丁寧に申し出れば、リアナもにこやかに返事を返す。
 こうして、少女猟兵たちの即席ペアがここに誕生した。

 そうして2人は、迷宮の奥へと進んでいく。
 通路の脇を見れば、割れたフラスコがいくらか落ちているのが分かる。
 目的の相手はそう遠くはなさそうだ。
 そう思っていた矢先に、通路の曲がり角から、小さな影が飛び出してくる。

「あ、いた! って、結構な数がいるね……」
「迷宮に入る前に聞いた、1匹見つけたら30匹はいると思えという情報。冗談ではなかったのですね」
 フラスコスライムだ。
 それも大群。
 戦って負ける相手ではないが、これだけ居れば流石に面倒かもしれない。
 そう思案するリアナの横で、ナノが背負っていた獲物を構える。

 バズーカ砲であった。
 正確にはバズーカ型のガジェットであるのだが、用途は変わらない。
 ロケット弾を撃ちだし、目標を粉砕してしまうアレである。
 どう考えても、雑魚敵相手には過剰な火力であった。

「ちょ、ちょっと! そんなの撃ったら、辺り一面にスライムが散っちゃうよ!」
「ええ、通常の火器ならそうでしょうね。ですが、ご心配なく」
 これが撃ちだすのは、形ある砲撃ではありませんので。

 そう答えたナノが引き金を引けば、ガジェットから、反動を受け止めるガスの噴出と共に、弾丸が放たれる。
 ブレイズキャリバーとして、ナノの身体から生みだされる翠の炎弾。
 ガジェットを通して対象の身体を縛るマヒの弾丸と化した翠炎は、スライムの群れの中心へと寸分違わず着弾し、その大部分の身体の自由を奪う。

 それを確認したリアナも、討ち漏らしを捕らえるべく前線へと躍り出る。
 彼女とて、世界を渡りオブリビオンと戦う猟兵の1人である。
 問題ないと理解できれば、その判断は非常に素早くなされるのだ。

 フラスコを割らないよう、手加減したドラゴンオーラがスライムに命中した次の瞬間には、オーラの鎖でリアナの右手と繋がれ、拘束される。

 【ドラゴニアン・チェイン】を発動させたリアナが、そのまま捕まえたスライムを振り回していく。
 即席のモーニングスターの完成だ。
 丸いフラスコではそこまでのダメージは出せないが、ひ弱なスライムたちを相手取るのなら、かえって都合がいい。

「おっと。ふふ、備えあれば憂いなしって奴だね」
 ブレスを吐いて抵抗してくる個体もいるが、左手で構えた鍋にスライムを受け止めてしまう余裕すらあった。

「リミッターを解除……これが私の最速形態です。変身!【超速機構(アクセルフォーム)】!!」
 既に壊滅状態のスライムたちに対して、ユーベルコードを発動したナノがダメ押しとばかりに突っ込んでくる。
 もはやオーバーキルという言葉すら通り過ぎた事態になっているが、彼女は真剣にスライムを捕らえていく。
 だって、カフェが好きだから。

 生きる為、心の大半を金属と電子回路に置き換えた彼女にとって、『好き』という言葉は貴重なものである。
 わずかに残った『ナノ』の残滓。
 それを思えば、相手がどのような存在であっても、気合も入ろうというものだ。

 かくして、2人の猟兵は容赦なくスライムを捕らえていく。
 ナノが元の形態に戻る頃には、抱えきれないほどのスライムを捕まえていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『シェイプシフター』

POW   :    思考の簒奪
【自身を対象の姿へと変化させ思考を読み取り】対象の攻撃を予想し、回避する。
SPD   :    血肉の簒奪
戦闘中に食べた【対象の血肉】の量と質に応じて【捕食した対象の姿と戦闘経験を簒奪し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    秘技の簒奪
対象のユーベルコードを防御すると、それを【強化し体内へ取り込み】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狩る時間→狩られる時間

 ある者は、もうちょっと捕まえられたなと名残惜し気に。
 ある者は、拘り珈琲の味に思いをはせながら。
 ある者は、ブラックじゃダメだったのかな、なんて思いながら。

 スライムを捕まえた猟兵達は迷宮の出口を目指し、一人、また一人と合流していく。

 そうしてひと塊となった猟兵達が他愛のない話をしながら進めば、魔法学園の制服を着た学生とすれ違う。

 瞬間。

 無防備な背後から、首を狙った一撃を、歴戦の勘で察知した猟兵がすんでの所で躱す。

「あああ、あれあれれれあれ。どっどどどうして、あた当たらないののかなあああ?」
 不意打ちを躱された学生の姿が歪に変じ、その正体を現していく。

「まままま。まああいいいや、ちち力、こ、心、いいのいの、命」

 ぼくに、ちょうだい?

 最後だけ鮮明に発せられた言葉が、かえってその不気味さを引きたてる。
 姿を騙り、迷宮に迷い込んだ命を食らう異形の怪物。

 シェイプシフターが、猟兵達へと、その一つきりの瞳を向けた。
リアナ・トラヴェリア
…これだね。大物って言うの。
確かにスライムと同じ半流体だけど、そんなに弱い相手じゃないみたい。
それに様子を見る限りだと、もう誰か被害が出てるね。…ここで倒しておかないと、犠牲者が増えちゃう。きちんと倒さないと。

剣に炎のエンハンスを乗せて斬りかかるよ。
あいにく私があなたにあげられるのはこれくらいだから。剣ごと取り込まれないように、衝撃波に乗せて攻撃していくね。
相手の回避は多分ひとりずつしか出来ない感じだから、なるべく他の人とタイミングを揃えて攻撃するよ。

攻撃をコピーされたらすぐにエンハンスを水属性に変えて武器で受けるよ。
自分の技なんだから、自分でなんとか出来るようにしておくのは普通だよね?


バラバ・バルディ
フラスコスライム……弱い弱いとは聞いとったが、まさかあそこまで弱いとは!惜しいことをしたのう。じゃがまあ、皆の分も合わせこれだけ集まったんじゃ、当分の間はもつじゃろう。さて、あとは溢さぬよう慎重に持ち帰れば任務完了じゃな!美味い珈琲に美味い菓子!ぬははっ楽しみじゃなー!

【SPD】
うぬぅ、言ったそばから不意を突かれるとは……わし、今日はちと気が抜けすぎかもしれぬなあ。しかし、わしらが集めたフラスコスライムは絶対に渡さんぞ!力も心も命もじゃ!

からくり人形を操りながら【地形の利用】【フェイント】【かばう】【逃げ足】を駆使してスライムを庇いつつ攻撃を避けます。余裕があれば、仲間の攻撃範囲に誘導します。



●偽物

 弱い弱いとは聞いていたが、まさかあそこまでとは。
 もったいない事をしてしまったが、他の猟兵とも合わせれば、十分すぎる量のスライムが集まった。
 これをちゃんと持ち帰れば任務完了、美味い珈琲に美味い菓子はすぐそこだ!

「うぬぅ、言ったそばから不意を突かれるとは……わし、今日はちと気が抜けすぎかもしれぬなあ」
 猟兵達にとって幸運だったことの一つは、オブリビオンの奇襲を受けたのが、最後尾を歩いていたバラバであったことだろう。
 数秒反応が遅れれば首を切り飛ばされていたにもかかわらず、呑気な口調で返す彼。
 その長年の経験による勘がなければ、猟兵達はより凄惨な光景を目にしたことだろう。

「……これだね。大物って言うの」
 すぐ近くを歩いていたリアナも、黒剣を構えて敵を睨みつける。
 その身体は、ついさっきまで追いかけていたスライムと同じ、半流体なのだろう。
 けれど、不気味に此方を見つめながらゆっくり距離を詰めてくるその様は、スライムとは比べ物にならない強さを感じさせる。
 なにより。

「様子を見る限りだと、もう誰か被害が出てるね」
 どうして、と目の前の存在は口にした。
 これが初めての襲撃ではないのだろう。
 誰かが同じように背後から襲われ、きっとその時はなすすべもなく倒れてしまったのだ。
 放置すれば、また誰かが犠牲になる。
 猟兵として、このオブリビオンはここで倒さねばならない存在だ。

 武器を携えた2人の猟兵が、シェイプシフターへと攻撃をしかける。
 バラバが指を巧みに動かせば、からくり人形は主の意のままに、オブリビオンへと切りかかる。
 迷宮の天井を利用し、真上からの袈裟斬りを躱されれば、素早く距離を取り、バラバ自身の鎖による牽制を交えて、再びの突撃。
 しかし、そのことごとくがオブリビオンに躱されてしまう。
 はがゆい。いや、躱されることはいいのだ。自分ひとりで戦うわけではない。
 腹立たしいのは!

「なんっじゃ、その姿はぁ! それでわしのつもりか、わしはもっとハンサムでシュッとしとるわい!!」
 バラバの最初の攻撃から、オブリビオンの姿が変わっている。
 カラフルな衣装に身を包む、長身のシャーマンズゴースト。
 間違いなく、バラバの姿を模したものであった。

 なんという屈辱、真似るなら真似るで、もっとオリジナルに忠実な、男前なUDCであるべきだろう。
 カラーリングもなっていない。
 自分の、見る者を楽しませ、場を笑顔で満たす華やかな色合いを、このオブリビオンは全く理解できていない!
 老いた猟兵の闘志に熱い炎が灯る。

 横で戦うリアナからすれば、並ばれると見分けられないかもしれないレベルの模倣であることは、伝えぬ方がいいのだろう。
 シャーマンズゴーストにしか分からない違いとかも、あるかもだし。

 若干の困惑を振り払い、リアナも炎を宿した黒剣で切りかかっていく。
 敵がバラバに意識を向けている、今がチャンスなのだ。

 リアナの動きを察したバラバも、頭の隅に残した冷静さで、自身とオブリビオンの立ち位置を少しずつ誘導していく。
 からくり人形による手数と、長く生きた経験による、状況への理解の早さ。
 派手な装いに反して、仲間の力を活かすための、支える役回りもまた、バラバの得意とするところであった。

「よし……そこっ!」
 バラバのフェイントに合わせるように、リアナが炎剣による刺突を放つ。
 衝撃波と共に襲い来る一撃は、シェイプシフターの身体を吹き飛ばし、大きな風穴を穿ってみせた。

「いい痛痛、痛いなぁあああぁああ!」
 その穴を流動する身体ですぐに塞いだシェイプシフターが、今度はリアナの姿をとる。
 けれど、その憤怒の形相を見れば、確かなダメージを与えていることに間違いはないはずだ。

 オブリビオンが自らを傷つけたのと同じように、生みだした黒剣に炎を纏わせていく。
 ギリギリのところでコピーを許してしまったか、と思考しながら、リアナは真っすぐにその姿を見つめる。

「おお、おおお、おかええしいいぃい!!」
 奪ってやったという愉悦と共に、炎を纏ったオブリビオンがリアナへと切りかかる。
 偽物と言えども、まともに食らえば火傷程度では済まされないだろう。
 それでもなお、焦ることのないリアナが何かを呟けば。

「ぐうう!? な、ななな何でえ!!」
「……自分の技なんだから、自分でなんとか出来るようにしておくのは普通だよね?」
【トリニティ・エンハンス】。
 3つの魔力を操るリアナの黒剣は、先ほどとは対照的な水の魔力を纏い、オブリビオンの炎剣を真っ向から打ち払ってみせた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シェーラリト・ローズ
「お、おお? ……よし」
こほんと咳払い
「あああ、あれあれれあれ。どっどどどうして、こう攻撃するののかなあああ? まままま。まああいいいや、ちち力、こ、心、いいのいの、命…わたし、あげたくない」
相手に解るようにお断りしないとねぇ

【第六感】【聞き耳】で動きをよく見て回避しつつ【情報収集】
普通に考えれば、マヒさせて動きを止めればいいんだけど、カウンターでマヒが決まると怖いなー
思考の簒奪…ひとまず目視を潰して手段がなくなるのか試そう
ユーベルコードの防御がし難いよう味方の攻撃直後を狙ってセイクリッド・ランスを【2回攻撃】で狙ってみる
【マヒ攻撃】は一緒に決まってくれるといいんだけど

無事に帰る為にがんばろー


メリー・ユメノコウジ
「わぁ…か、可愛くないのです…。」
至極悲しそうにシェイプシフターに感想述べつつ【覚悟】して立ち向かう。

基本は味方の援護や連携、怪我人の有無は重視。
回避は【第六感】【野生の勘】、最後には神へ【祈り】
援護の際は【援護射撃】、自身の攻撃には【高速詠唱】召喚でのめぇめぇさん。
「もっふもふのめぇめぇさん、よろしくなのですよー♪」
めぇめぇさんが取り込まれた場合は、再度召喚し攻撃されるようなら迎撃と防御に転用する。

「ふぇ…危ないのです。ごめんね、めぇめぇさん…。」
しょんぼりと羊を撫でようと。
フラスコスライムちゃんのほうが可愛かったなぁと自分の持つスライムに思いを馳せる。

アドリブ・協力歓迎



●聖なる槍と、勇敢な羊

「わぁ……か、可愛くないのです……」
 悲し気な表情で、メリーがシェイプシフターを見つめる。
 その姿は既に一つ目の怪物のものに戻っており、長い間見ていたい姿だとは、お世辞にも言えない。
 同じような流体のオブリビオンであるフラスコスライムたちには、まだ可愛げがあったのにと少し落胆しながらも、猟兵として戦う覚悟を決める。

 しかし、どのように戦うべきか。
 先の2人のように引き付ける役と攻撃する役に別れるのも悪くは無いが、囮をする側に危険が伴うのは事実だ。
 相手が此方の攻撃を真似てくるというのなら、あえて先手を譲る方が安全なのかもしれない。
 けれど、シェイプシフターも自分の能力は把握しているのだろう。
 両者の緊張はそのままに、状況は睨み合いの形に移ろうとしていた。

 いつまでもにらめっこではいけない。
 他の者を危険に晒すくらいならば、いっそ私が。
 そう、メリーが決意を固めようとしたその矢先。

「お、おお? ……よし」
 こほんと発声練習。
 シェイプシフターとしっかり目線を合わせたシェーラリトが口を開く。

「あああ、あれあれれあれ。どっどどどうして、こう攻撃するののかなあああ? まままま。まああいいいや、ちち力、こ、心、いいのいの、命…わたし、あげたくない」

 シェーラリトの名誉のために断るが、彼女にシェイプシフターの口調をからかうような意図はない。
 ただ、相手と同じような口調の方が、伝わりやすいだろうという、マイペースな彼女なりの心遣いであったのだ。

「ば、ばば。ばばばばばばばばばば馬ああああ……!」
 もっとも。

「ばぁぁかにいいい! す、するなぁぁぁぁぁああああ!!」
「ええ!?」
 その心が目の前のオブリビオンに察せられるかというのは、また別の話である。

 その意思はどうであれ、シェーラリトの挑発は、この上なく有効に機能した。
 怒りに染まった思考の下に、オブリビオンは猟兵達へと襲い掛かる。

「もっふもふのめぇめぇさん、よろしくなのですよー♪」
 激情に任せた単純な突撃を、メリーが呼び出した【めぇめぇさん】のふかふかもふもふの羊毛が受け止めていく。
 時折、鞭のようにしならせた腕がめぇめぇさんをすり抜けてくるが、冷静さを欠いた攻撃では、メリーを捕らえることはできない。

「じゃぁ、じゃじゃ邪魔、邪魔ああああ!」
 思うように目的の女、シェーラリトへと攻撃することができずに、シェイプシフターの苛立ちはどんどん募っていく。
 けれども、激しい感情は長続きするものでは無い。
 少しだけ頭が冷え始めたオブリビオンの、流体の身体によるアッパーが、メリーを守るめぇめぇさんを吹き飛ばす。

「ああ! ふぇ……ごめんね、めぇめぇさん……」
 加わった衝撃は大きかったのだろう、大きく吹き飛ばされ、迷宮の壁に打ち付けられるめぇめぇさん。
 それでも、瞳を潤ませ駆け寄る主を心配させまいと、めぇめぇさんは立ち上がる。
 もふもふの身体の中に秘められた闘志は、まだ折れてなどいないのだ。

「太陽、月、星……生者の味方の光よ、滅びの運命を貫き、砕き───彼らに安息を与えたまえ!」
 そして、勇敢な羊が稼いだ時間は、決して無駄にはならない。
 【セイクリッド・ランス】。
 シェーラリトの聖なる槍は、すでにシェイプシフターの瞳を捕らえていた。

「もう、君にあげるものは何もないよ」
 のんびりした口調はそのままに、強い意志を宿した瞳でオブリビオンを見据えるシェーラリトの言葉と共に、光の槍が放たれる。

 鬱陶しい羊を吹き飛ばすことに執心していたシェイプシフターは、大きく体勢を崩されながらも、それを躱してみせる。
 けれども、槍に合わせて再び駆けだした羊の突進を受け、先ほど自分がしたように壁に打ち付けられれば。

 敵を縛る麻痺の力を持った、二本目の槍を躱す余力は、もう残されてはいなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナノ・クロムウェル
…もうすぐコーヒーが飲めると思ったのに…
それに…命を頂戴ですか…
…私の生存を脅かす者……敵は排除です
真の姿を開放して相手をしましょう

厄介な相手ですが「蒸気式飛行ユニット」による飛行を織り交ぜた「翠炎剣」で戦います
「怪力」を利用して思い切り「なぎ払い」をすることで追い詰めていきましょう
思考が読まれてしまうのなら、読んでも避けられない状況に誘導するだけです
壁際に追い込むように誘導しつつ攻撃します
追い込んだら「煉獄の強襲」を発動します
感情の封印を解き、大ダメージを狙います
(発動中は口調変化)
楽しみを邪魔してナノを殺そうとするなんて許さないんだから
ほらナノの怒りに合わせて炎が激しくなったよ


アルトリンデ・エーデルシュタイン
なるほど、姿を変えるオブリビオンですか。いろいろな姿の目撃情報がある訳ですね。

外見だけでなく能力も奪うのでしょうか。だとすると多少の搦め手も使いましょう。

まずは相手に当てないように聖光示すは神苑の階を撃ち、聖域を敷きます。
聖域の上で私自身の能力を増強し、シェイプシフターと戦いましょう。

相手の攻撃を武器で受け、オーラで防御し、攻める隙を伺います。フェイントも織り込みながら相手の攻撃を捌き、隙を突いて聖光を直撃させます。
防げない一撃ならば、貴方にでも届きますから。



●因果応報

 視覚を失い、痺れで移動もままならないシェイプシフターが、その腕を振るい、やみくもに暴れ始める。
 その場しのぎにもならない抵抗ではあるが、当たってしまえば、軽い負傷では済まされないだろう。

「……もうすぐ、コーヒーが飲めると思ったのに……」
 焼かれ、斬られ、瞳を潰され、既にシェイプシフターは弱っている。
 それでも、ナノの怒りは燃え続けている。
 言うに事を欠いて、こいつは自分の命までも欲している。

 自分が生きていることは、決して当たり前なんかじゃない。
 この命にしがみつくために、多くの代償を払い続けているのだ。
 右手の翠炎は、失われた筈の彼女の感情を表すように、燦爛たる熱と共に、彼女の姿を覆いつくす。

「……私の生存を脅かす者。……敵は、排除です」
 炎が晴れたその場所に、可憐な少女の姿は既になく。
 右目に宿る炎の激しさだけがその心の熱を示す、冷たい機械に覆われた猟兵の姿があった。

 自分の怒りをその全身で表現するナノとは対照的なのが、アルトリンデだ。

「姿を変えるオブリビオンですか。いろいろな姿の目撃情報がある訳ですね」
 これまでの戦いから得た情報、そして、迷宮に入る前に伝えられた情報を冷静に整理する。

 機械に心を食われながら、それでも己を失わないことがナノの強さであるならば、自分を律し、絶えず這い出る隙を伺う、魔性たる己に立ち向かい続ける姿こそが、アルトリンデの強さだ。

 既にオブリビオンを追い詰めた状況であっても、アルトリンデの思考に油断は無い。
 それは、希望を掲げる聖者として、無辜の人々に立ち向かう猟兵として相応しくないからだ。
 救済を祈る誰かのために、神ならぬ身であろうとも、このオブリビオンはここで討ち払う。
 確実にトドメを刺すために、アルトリンデは思考を回し続ける。
 だからこそ、シェイプシフターの、最後の失敗に気づくのも、アルトリンデであった。

「あの腕、地面近くばかりを狙ってる……?」
 これまでの戦いで、一時的に天井を利用する者はいても、猟兵達は地に足をつけてシェイプシフターに立ち向かっていた。
 ゆえに、シェイプシフターにとっても、警戒するべき敵は大地を駆けて迫りくる猟兵達なのだ。

「了解。私の役目ですね」
 空中を駆けるナノにとっては、その呟きだけで、自分の果たすべき役割を理解するのには十分だった。

 蒸気式飛行ユニットを起動させたナノが、天井スレスレを飛びながらオブリビオンへと迫っていく。
 その轟音は当然シェイプシフターにも届くけれども、飛ぶ猟兵を見ていない彼は、 それまで見た猟兵達がいる高さへと腕を振り、そのすべてがアルトリンデのオーラと聖剣に受け止められる。
 迫りくる、もう一つには気づけない。

「残念、こっちですよ、私は」
 声と共になぎ払われる、炎を纏った巨大剣が、シェイプシフターの身体を大きく吹き飛ばす。
 そうして壁に叩きつけられるシェイプシフターは、眼を奪われた故に気づけない。
 そこが既に、アルトリンデの光によって浄化された、聖域であるということに。

「ぐぐぐぐうううう!? 痛、痛いいい!!」
 うめき声を上げて苦しむオブリビオンへと、最後の別れを告げる為に、猟兵達が歩を進める。

「失われた感情よ……此度の声と共に蘇り、黒と翠の炎と共に私に宿りなさい」
 あつい。
 ほのおだ。
 にげないと。

「天よ光を与えたまえ。我らが闇に惑わぬよう、神の庭へと至る道を照らしたまえ」
 まぶしい。
 みえないのに。
 にげないと。

「ままま、待って。待ってええええ!」
 にげないと。
 にげないと。
 にげないと!

「やだよ、楽しみを邪魔してナノを殺そうとするなんて、許さないんだから」
「奪い続けたあなたに、報いを受ける時が来ただけです」
 激しく燃え盛る二つの炎と、聖者の答えを示すただ一つの光。

 【煉獄の強襲(ヘルズアサルト)】と【聖光示すは神苑の階(ルクセント・ハインリヒ)】。
 二つのユーベルコードを受けたことにも気づけぬまま、シェイプシフターの身体は、この世界から消え失せた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 日常 『花やかなお茶会』

POW   :    カフェでまったり過ごす

SPD   :    お菓子を購入する

WIZ   :    温室の花を観賞する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●はい、シリアス終わり!

「いやぁ、ありがとう皆さん! これで最高の珈琲を楽しめるよ!」
 にしても、やたら疲れた顔をしてるね、と。
 呑気な研究員の言葉が、帰ってきた猟兵達の神経を逆なでする。
 彼にとっては、スライムを倒すだけの楽な仕事だった筈なのだから、仕方ない事ではあるのだが。

 猟兵達が持ち帰った大量のスライムは、研究チームの特製蒸留装置へ運び込まれ、シロップへと作り変えていく。
 余談ではあるが、この装置は、対迷宮の防衛設備のものよりも数段気合の入ったセキュリティで守られている。
 もはや、そこにツッコむ気力も惜しいのだけども。

「そうだ、コレ、約束していたカフェの無料券だよ。紅茶もお菓子も選び放題! 我が学園自慢の温室カフェ、是非堪能してくれたまえ!」
 それも重要だが、もっと別に渡すものあるよな?

「珈琲? そんな約束はしていない筈だが……いや、淹れるさ! 協力してくれた君たちの頼みなら喜んで!」
 少し怯えた口調の研究員が、一部気の立っている猟兵に睨まれたとたん、快く約束してくれた。
 脅すつもりなんてなかったんだけどね、ちょっと大物と戦ったからピリピリしてるだけですよ。



 暖かな温室。本来、共に見られるはずの無い、色とりどりの花の数々。
 決して主張しすぎることはなく、それでいて嗅ぐ者の心を和らげる香り。

 焙煎された豆の香りは、確かにその気品を感じさせながら、自然と花の香りと溶け合っていく。
 世界を救うその役目も、ほんの少しだけ忘れてしまって。

 少しの休息を、楽しもう。
メリー・ユメノコウジ
「疲れも美味しい飲み物で吹き飛ばしていきたいですめぇ♪」
研究者達も嬉しそうでほんわかと。

折角頑張ったので珈琲を注文。運ばれてきたのをまじまじ見つめながら一口。
前に甘くない珈琲を一口飲んだ時と似てて苦い、でもあの時よりは美味しい気がする…でも甘くしたくなってミルクとお砂糖(3杯いれる)を。
頑張って飲めば紅茶も注文。
「はぅ…苦かったけど、前に飲んだのより美味しいかも…あっ、紅茶もくださいめぇ。」
こちらも一口目は必ずストレート、その後にミルクと砂糖(こちらも3杯いれる)を。

お茶請けのお菓子と共にしばらく景色を楽しむ、少しでも記憶に焼き付けたい。

「ごちそうさまでしたっ♪」
ぺこっと一礼

アドリブ歓迎。


バラバ・バルディ
ほほっ!やれ嬉しやのう、ようやっとお楽しみの茶会じゃな!ささ、早う行こう!ぬはははっもう待ちきれん、わしは先に行くからの!
【POW】
見慣れぬものが多かったのでな、ひとまず並んでおった菓子を端から端まで貰ってきたんじゃが……うむ、改めて見ると結構な量じゃな!はっはっは!食べきれんかったら持ち帰って土産にでもしようかの。

しかし……うぅむ、良い。良いのう。暖かく花も元気で、何より皆とまったりするのは楽しいのう!皆で頑張った甲斐があったというものじゃ。それに加えてこの美味い菓子に美味い……美味いのう!なんじゃこの……珈琲!?ひょぉおっ、まさかこれがあの珈琲!とは!ぬぅ……さすが凄腕じゃな、研究員君!


シェーラリト・ローズ
温室カフェ…
わぁ、お花たくさん…

あ、注文しないと
コーヒーとパンケーキがいいなぁ
折角だからシロップもいれよー
苦いのも飲めるけど、折角だし飲んでみたいよー
パンケーキはふわふわのがいいなぁ
あまり家では食べないような可愛くてキレーでおしゃれなやつがあったらそれにしよー

「スライムでこんな風に甘くなるんだねぇ」
食べられるオブリビオンって他にいるのかなぁ
考えたことなかったけど、研究員さんすごいよねー
コーヒー以外にも活用してほしいけど
「まー今後に期待だねー」
ごちそうさま


おなかいっぱいになったらお花見て回るんだー
でね、小声でもいいから【慈悲深きコンソラトゥール】歌うー
皆きれいでかわいいから、ありがとーって感謝!


ナノ・クロムウェル
ようやく終わりましたか…。
さて、今日はもうゆっくりのんびりカフェで珈琲でも飲みましょう。
もちろんシロップとミルクは入れさせてもらいますよ。
温室の花を眺めながら香りを楽しみます。

…しかし色々な猟兵がいるものですね。
共に戦った人、ここの研究員、グリモア猟兵の人…。
そうした人達を眺めながら過ごすのも楽しい物です。
私自身は珈琲を飲んでるだけですがね。
あ、珈琲のおかわりお願いします。

…今日くらいは何もかも忘れて……楽しみますか。
すいません、珈琲のおかわりを。
…え、頼みすぎですか?


アルトリンデ・エーデルシュタイン
折角ですし、のんびりお茶を……いえ、ここはやはり、珈琲をいただきましょうか。

おいしい珈琲を飲む機会もあまりなかったですし、見識を広げる為にもここはブラックで……にが(小声)

芳醇な香り、コクのある苦みがとてもいいですね。
ですがやはり、味の変化を楽しむのも珈琲ならではですよね。ではシロップを少し……うん、おいしいです。
ですが、折角ですのでミルクも足してみましょう。

クッキーを摘みながら珈琲をいただいて、のんびり過ごすというのもたまにはいいですね。
心が安らぎます。
あ、珈琲お替りいいですか?はい、カフェオレというのをお願いします。


リアナ・トラヴェリア
…学園の人の事はなんかごめんなさい。
悪気が無くても、ダメなものはダメだよね。

ともかく私も一息つこうかな。
最後の相手はちょっと疲れたし。…そうだ、あとであの辺りでいなくなった人がいないか聞きに行かないと。報告もしておかないと。

学園も完全に平和ってわけじゃないよね。ここだけで済んでるからまだ大丈夫だけど…。
「コーヒーを一杯」か…、考えてるだけじゃ何も変わらないし、どんどん動いていかないとね。

まあでも、少しだけ休んでいくよ。
…うん、美味しい。
あの人達が自信をもって出すだけはあるね。
(ケーキのかけらをコーヒーで流し込んで)

さてと、私は次の旅へ行くね。
それじゃまた。



●少しずつ、確かな希望を振りまく貴方達へ

 大きなガラス張りの建物。
 外からでも、その中の色々な植物の姿を見ることができる。
 オブリビオン狩りを終えた猟兵達を出迎えるために、巨大な温室の中に作られたカフェでは、店員たちがせわしなく準備を進めている。
 一部、白衣を着た人間も混じっているが……例の珈琲のために来てくれた研究員だろうか。

「ほほっ! やれ嬉しやのう、ようやっとお楽しみの茶会じゃな! ささ、早う行こう! ぬはははっ、もう待ちきれん、わしは先に行くからの!」
 そう言うや否や、バラバがカフェスペースへと駆け出していく。
 今回集まった猟兵の中では、ぶっちぎりの最年長であるはずなのだが、一番落ち着きが無いのも、また彼である。
 しかしそれは、決して周りに不快感を与えるものではなく、むしろ、釣られて笑ってしまいそうな陽気さだ。
 そんな彼の、花々に負けず劣らずカラフルな後ろ姿を追いながら、猟兵達は学園随一の温室へと入っていく。

 そうしてカフェに着けば、洗練された作法で店員たちが出迎える。
 各々がテーブルに案内されながらも、店内を見渡すシェーラリトはあることに気が付く。
 自分たち以外のお客さんが、一人もいないのだ。

「不思議だね……こんなに綺麗なお花がたくさんあるのに……」
「確かに、人が少なすぎますね、どういうことなのでしょう?」
 シェーラリトの疑問に同調したアルトリンデの呟きを聞いた店員がにこやかに答える。

 今日は、猟兵たちの貸し切りであると。

 その返答に顔を見合わせる2人の少女猟兵。
 確かに、ユーベルコードを振るい、オブリビオンと戦うことのできる猟兵はまさしく英雄だろう。
 けれども、ここまで特別な待遇を用意されても、それはそれできまりが悪い。
 そのような彼女たちの様子に気が付いたのだろうか、店員が言葉を続ける。
 きちんと、料金は研究チームから受け取っていると。

 自然と二人の視線も、カウンターの内側で珈琲のサイフォンを手入れする初老の研究員へと移る。
 サムズアップを返された。
 深く考えないで、楽しんでもいいのかもしれない。

 そんな2人をしり目に、既に珈琲を楽しみ始めている者もいる。
 カフェ好きのサイボーグこと、ナノである。
 添えられたミルクとシロップは投入済み、コーヒー豆特有の香りに、ほんの少し混ざった柔らかで甘い香りが心を和ませる。
 口に含めば、ミルクでやわらいだ苦みが、心地よく喉を通る。
 舌に残る甘味は、確かにただの砂糖とは異なる、どこか瑞々しさを思わせるものであり、珈琲の酸味と互いを引きたてていく。

「……しかし、色々な猟兵がいるものですね」
 ふと、温室の花を愛でていた視線を、カフェでの時間を楽しむ猟兵たちに向けてみる。
 キマイラにオラトリオ、シャーマンズゴーストやダンピール、そしてドラゴニアン。
 世界を渡る猟兵にでもならなければ、その存在すら知ることは無かったであろう種族も存在する。
 事後処理の話し合いだろうか、温室の隅で何かを話している研究員とグリモア猟兵も、本来は出会うことすらない筈の存在だったのだろう。
 美しい花々に負けず、この場を作る人々を眺めるのも楽しいかな、なんて思いながら、ナノの手は絶えず口元とテーブルを往復していく。

 そんなナノの下に、シェーラリトとアルトリンデがやってくる。

「折角だから、一緒に飲もうよ……って、それ何杯目!?」
「まだ、5杯目ですが……?」
 何に驚いているのか、さっぱり分からないという様子で、ナノが首をかしげる。
 空のカップの数に、思わず大きな声でツッコんでしまったシェーラリトも、深くは追及しない。
 好みというのは、人それぞれであるのだから。
 そんな野暮なことに触れるよりも、珈琲と、見事な温室の花々を楽しむ方が、よっぽど有意義じゃないか。

 そんなことを考えるシェーラリトと、アルトリンデの下にも、淹れたての珈琲が届けられる。
 それぞれが頼んだ、パンケーキやクッキーも到着だ。

「スライムで、こんな風に甘くなるんだねぇ」
 さっそくシェーラリトは添えられたシロップを淹れて、珈琲を楽しむ。
 ブラックで飲むのも嫌いではないけれど、折角苦労して捕まえてきたのだ、試してみなければ損というものだろう。
 無料チケットがあるのを良いことに、パンケーキも、分厚く、それでいてふわふわ。果物や生クリームまで乗せられた、一番の高級メニューを注文してみたのだ。
 このカフェを、心行くまで楽しむという気迫すら感じられる布陣であった。

「それにしても、食べられるオブリビオンって他にいるのかなぁ?」
 どう見ても食用に向かないスライムが、上質なシロップへ生まれ変わるのだ。
 他のオブリビオンにも期待してもいいかもしれない。
 しかし、その問いに答える者はいない。
 ナノはちょうど10杯目を注文しており、アルトリンデは……

「……にが」
 見識を広めるための戦いを始めていた。

 アルトリンデは王道を歩む。
 まずは、ブラックで飲んでみて、そのコクや香りを楽しむべきだと考えたのだ。
 しかし、この珈琲は、研究チームが本業の合間に試行錯誤を重ね、コーヒーサイフォンなどの機器から、ミルク、シロップに至るまですべての要素に拘り作られた珈琲である。
 ミルクとシロップを前提としている以上、ブラックでの風味は完璧とはいえないのだ。

 断じて、アルトリンデ・エーデルシュタイン(13歳)が子供舌であるとか、そのような事実はないことを此処に記す。

「……やはり、味の変化を楽しむのも珈琲ならではですよね」
 苦かったわけではない、これが自分の珈琲の楽しみ方なのだと何処かに言い訳をしながらシロップを加えてみる。
 うむ、美味しい。ミルクも足そう、まろやか。

「のんびり過ごすというのも、たまにはいいですね」
 サクサクと軽い食感のクッキーも楽しみながら、ゆっくりとリラックス。
 そんな風にのんびり飲んでいたら、珈琲が無くなってしまった。
 折角だから、今度はちょっと違うものを頼んでみようか。

「あ、珈琲お替りいいですか? はい、カフェオレというのをお願いします」

 その言葉を聞いた店員の顔色が微かに変わる。
 ついでにテーブルの向かいに座るナノの顔色も変わる。

 カフェオレ。
 世の中の人間には、これを、カフェラテと混同する者は少なくない。
 興味のない人間だと、カプチーノやカフェモカまでごっちゃの括りにしている者すらいる。
 抽出方法などからして別物であるが、ここで重要になるのはコーヒー豆の挽き方である。
 カフェラテやカプチーノに使われるのは、エスプレッソに適した極細挽きの豆。
 しかし、現在猟兵に提供されているのは、スタンダードな中挽きにされたコーヒー豆であり、研究チーム拘りのこの豆は、極細挽きなんてしようものなら風味が一気に吹き飛ぶ繊細な物なのだ。

 この少女は、それを分かってカフェオレを注文している……!
 日々、客からカフェモカだの、フラットホワイトだの、豆の性格をまるで分かっていない要求を受け、心をささくれ立たせていた店員の瞳に、熱い炎が灯る!
 ついでにテーブルの向かいに座るナノも、同好の士を見つけたかと熱い視線を送る!

「……?」
 なお、アルトリンデが、そもそも珈琲を飲む機会もあまり無かった少女であることを説明する人物は、この場には存在しない。

一方で、別のテーブルでは、バラバとメリー、そしてリアナが神妙な面持ちで珈琲を見つめていた。

「……学園の人の事はなんかごめんなさい。悪気が無くても、ダメなものはダメだよね。」
 沈黙に耐え切れなくなったリアナが、話を切り出す。
 シェイプシフターに関しての報告は後で行うが、知らないからといっても、危険な迷宮から帰ってくる猟兵を迎えるのがあの調子では、2人も面白くは無いだろう。
 リアナが悪いわけではないけれど、2人よりもこの世界との関わりが多い者として、彼らに変わって謝罪の言葉を述べる。
 しかし、

「……なんのことですめぇ?」
「いや、アイツら迷宮入る前からあんな感じじゃったろ?」
 タイプは違えど、共におおらかなこの2人。
 研究員の間の抜けた言動は、たいして気にしてはいなかった。
 それよりも、2人にとって問題なのは。

「それよりコイツじゃ。いつまでも見つめてたら、冷めてしまうぞ」
「めぇぇ……前に飲んだのは、甘くなくて苦かったですめぇ」
 黒くて苦いあんちくしょう。
 珈琲である。

 2人とも、珈琲を飲んだ経験はあるのだ。
 そしてそれは、美味しくは無かった。
 その記憶が気がかりで、最初の一口を飲む踏ん切りがつかないのだ。

 その様子に苦笑しながら、リアナがまず珈琲を口にする。
 美味しい。
 スライム狩りをさせられている間は、ブラックじゃダメなのかとか、甘さをつけるにしても、ホットなら粉砂糖でいいのではないかとか、様々な疑問が頭をよぎった。
 けれど、飲んでみれば分かる。
 珈琲の苦みを甘さで誤魔化すのではない、苦みを引きたてながら、それを何杯でも飲みたくさせるような力が、このスライムシロップにはあるのだ。

 ニコニコと珈琲を飲むリアナを見て、メリーとバラバも恐る恐る珈琲に口をつける。

「なんじゃこの……珈琲!? ひょぉおっ、まさかこれがあの珈琲!」
「苦い、でもあの時よりは美味しい気がしますめぇ」
 昔飲んだのは泥水か何かかと感動するバラバの横で、メリーがドンドンミルクとシロップを投入していく。
 確かに美味しいが、苦いものは苦いのだ。
 カウンターの向こうで、研究員が悲し気な顔をしているが、それでもミルクを入れる手は止まらない。
 折角淹れてもらったのだ、頑張って飲み干さなければ。

「はぅ……苦かったけど、前に飲んだのより美味しいかも……あっ、紅茶もくださいめぇ」
 頑張って飲み干し、注文した紅茶をまた律義にストレートで飲もうとするメリーを、まったりとしたバラバが優しく見つめる。
 種族は違えど、おじいさんと孫とでも呼べそうな2人の姿に、リアナの頬も釣られて緩む。

 やっぱりメリーがミルクとシロップを入れ始めれば、バラバも自分の目の前に広がるお菓子を食べ始める。
 スコーン、マフィン、ケーキにワッフル、ドーナツなどより取り見取りだ。
 この爺さん、無料チケットを良いことに、店の菓子を制覇する勢いである。

 そんな姿に苦笑しながら、自分が選んだケーキを食べ、リアナは思いにふける。

 今この時、学園は平和だと言っていいだろう。
 けれども、地下の迷宮には災魔が蠢き、その最下層では大魔王を名乗る者まで現れている。
 別の世界では、この世界よりもより追い詰められた世界だってあるのだ。
 猟兵達を必要としている世界は無数にある。
 自分たちは、これからもどんどん動いていかなくてはならないのだ。

 休息も、ほどほどにすべきだろう。
 そう考えたリアナの耳に、微かな歌声が聞こえてきた。

 我ら手の届かぬ遙かなテール・プロミーズ
 久遠なりし豊穣の地より
 恵みの雨を風にて運び
 慈しみの陽光と安寧の夜を
 此の歩みに勇気の火を

 【慈悲深きコンソラトゥール】。
 珈琲を飲み干し、花畑を見始めたシェーラリトがつい口ずさむその歌が、妙に優しくリアナに届く。

「わぁ、疲れも、吹き飛んでいきますめぇ♪」
 確かにそれは、癒しの力を持つユーベルコードである。
 しかし、メリーの笑顔は、はたしてその力だけによるものなのだろうか。
 誰もが笑っていられる約束の地を想う歌は、ただ戦いの為にだけ生み出された力なのだろうか。

 次の旅に向かうのは、その疑問の答えを見つけてからでもいいかもしれない。
 ケーキを流し込もうとした珈琲のカップを置いたリアナは、なんとなく、そう思ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月25日


挿絵イラスト