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和邇喰らう貪婪(作者 金剛杵
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●故あっての無人島
 その島は朽ちていた。
 恐らくはサムライエンパイア辺りから落ちて来たのであろう、特徴的な木造建築が多く見られる島なのだが、そのどれもが見事に朽ち果てている。
 それも潮風や時の流れに晒されたが故ではない。明らかに何者かの攻撃を受けて破壊され、その末に放棄されたが故の寂れ方をしていた。
 そこはもう誰も居ない孤島。
 そんな沈むのを待つだけの島に何が有るのか、周囲の海には夥しいまでの鮫の大群が棲み付いていた。

●いざ欲望の海を越え
「わにわにわにわに……」
 グリモアベースの一角、テーブルに齧り付く様にして何かを描き続ける少女が一人。
 ぺちぺちと尾鰭で床を叩くその少女はクレト・クシリナ(八尋和邇姫・f26500)だ。
 書いているのは依頼書に付属する資料の一つ。それを、集まってきた猟兵達に気付いたクレトが胸の前で開いて見せた。
「わにです!」
 そう言う彼女が見せた資料には見紛う事の無い立派な『鮫』が描かれていた。
 鰐ではないし、爬虫類ですらない。
 どう見ても魚類であり、どう考えても鮫である。
「鰐ではなく、和邇と呼ぶそうです」
 と、訝しげに、なんなら「こいつ頭大丈夫か?」と口にさえしていた猟兵達に向かってクレトは訂正を入れる。
 その指が示すのは資料の端、『和邇』の二文字。
 どうやらそれが『わに』と読むらしく、そして和邇とは鮫の事を指すようだ。
 ……だからどうした。
 と言う心の声が聞こえたのか、クレトがやや慌てた様子で依頼書の方を持ち上げて見せる。
「無人島探索の依頼です!」
 そう言って、漸く話を進め始めた。
「メガリスを予知にて発見しました。
 場所はサムライエンパイア由来の孤島。ですが、細かな位置は不明です。
 皆様方には島に上陸して頂き、手掛かりを探して頂きたいのです」
 そう言いながら次の資料を示す。
 今度は鮫の絵ではなく、島の大まかな地図だ。予知を頼りに作った物で精度はお察しだが気になる点や分かった事などは事細かに書き込んである。
「詳細は省略しますが、探索して頂きたい場所は三つ。
 一つ目は島中心にある崩れた神社。
 二つ目は島唯一の廃集落。
 三つ目は周辺の海です。
 前二つは単純に情報が有るならその辺りではないかと。最後の海に関しては、やけに鮫が多い事が気になりまして……」
 と、そこまで言ってクレトが少しだけ眉根を寄せ、困ったような顔で続ける。
「聞き流して下さって構わないのですが、あの、その近海からやって来たと言う鮫がですね。『助けて、あそこは怖いのが居る』って言ってたんです。
 なんとなく、そんな気がしたって言うだけですけど、それを切っ掛けに予知まで見てしまったので、もしかしたら……」
 いくら何でも不確か過ぎますよね、とクレトは苦笑する。
 聞けば、予知で見た光景も特に海中ではないらしい。
 更に言えば周囲は鮫だらけとか。
「そう! 鮫です!! 鮫が沢山居るんです!!!」
 うるせえ。
 急にテンション爆上がりしたクレトがさっき描いていた鮫の絵を突き付ける様に示す。
 そこには島を中心にして多種多様な鮫の群れが描かれており、次いで鮫の情報がびっしりと書き込まれている。
「力作です」
 だが余計である。
 役に立ちそうなのは『猟兵に襲い掛かる可能性が有る大型の鮫も多数存在する』と言う事ぐらいか。
「危険且つ広範囲なので特に有効な手も考えも無く探索する様な場所では有りません。ただ鮫と戯れたいなら是非。
 集落と神社には破壊の痕が有りますので、それがメガリスと何らかの関係が有るかと思います。かつて居た筈の島民の痕跡が見付かれば手掛かりになるかと。
 後は、私では気付けなかった事に気付いたならそちらをお願いします」
 ざっくりとした説明と共に広げられた島の地図は随分と小さく、入り江近くに集落、山を登って神社、それ以外はほぼ全部森だ。
 流石に海の中の地図は無く、グリードオーシャン特有の荒れた海流に大量の鮫と言う事しか分からない。
 それでも、それでも猟兵達ならきっとなんとかしてくれるはず……!
 そう信じてクレトはぐっとグリモアを突き出した。
「メガリスを見付けて回収、ついでにそれを狙ってきたコンキスタドールを返り討ちにする。それが今回の依頼です。
 この島が平和になったとしてもう島民が帰る事は有りませんが、集った鮫達の楽園になるかも知れません」
 そしてそれは即ち鮫好きにとっても楽園である。と、私欲丸出しで言い放つ。
 だがそれでこそ。
 欲望の海に漕ぎ出すのならば、奪われる前に奪うくらいの気概が有った方が良い。
 予知曰く、メガリスの奪い合いは避けられない。
 しかし猟兵にとっては災いではなく幸いである。
 メガリスの収集とコンキスタドールの撃破。一石二鳥、一挙両得とはこの事だ。
「さて、急がないと鮫がメガリスを食べてしまう可能性も有りますし、そろそろ参りましょう」
 待ちきれないといった様子でクレトが資料を片付け、代わりに片手を差し出した。
 手を取る様に伸びた指先に浮かぶのは蒼いグリモア。
 その輝きは海に差し込む日差しの如く。

「いざ、欲望の海へ――」





第3章 ボス戦 『微笑みの海神』

POW ●陸を呑み込む食欲
【周囲の海水を吸収する能力】を使用する事で、【より強力な毒を持った触手】を生やした、自身の身長の3倍の【全てを呑み込む欲望の巨神】に変身する。
SPD ●物欲ショットアンドドレイン
命中した【散弾のように飛ばした金貨や宝石群】の【形状そのもの】が【エネルギーを奪い本体に送るイソギンチャク】に変形し、対象に突き刺さって抜けなくなる。
WIZ ●肉欲バッカルコーン
【タコやイカなどの吸盤を持つ触手による拘束】【快感を刺激する毒を分泌するクラゲの触手】【とっておきの太く禍々しい触手】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアリュース・アルディネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●和邇喰らう貪婪
 海神。
 海の神、あるいは海そのもの。
 その名を持つコンキスタドールも正に海そのものだ。
 海水で出来た身体を人の形へと変じて現れたコンキスタドール『微笑みの海神』は、己の一部を津波に変え、配下達を乗せて猟兵達へと放つ。
 押し寄せる軍勢と壁の如き高波は猟兵達を鮫諸共押し流すだろう。
「見つけてくれてありがとぉ」
 溶けるような甘ったるい声で言うと海神は笑う。
 あれだけ見付からなかったメガリスを猟兵達は容易く発見してくれた。その事には感謝しなければならない。
 異界の海神の娘、その神の力が宿ったメガリス。それを取り込めば、微笑みの海神は更なる力を得られるだろう。
 欲深き海グリードオーシャンを体現する海神はただ欲する。
 力を。
 命を。
 宝を。
 全てを。
 故に与える。
 海神の配下が持っていた財宝を奪われようと気にしない。
 欲しければ持って行くと良い。
 ただ、全ては海に返る。
 全ては、海神の物となる。
 全てを配下に加えたならば、配下の持つ者は全て海神の物と同じ。
 だから好きに奪うが良い。
 好きに抗うが良い。
 全てはやがて海に返る。
 微笑む海神の、昏き胎の中へと。