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隠恋慕(作者 壱花
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●ふたりのアリスと生きている花園の国
「アリスが! アリスたちが来たよ!」
 美しく花々が咲き乱れる花園の中、一際高い声がそう告げた。
 喜色満面のスイセンに他の花人たちはちらりと視線を向けてから、別の花人たちと視線を交わし合う。以前もそう言ったスイセンの言葉を思い出し、そうして悲しかった出来事も芋づる式に思い出して――キュッ。花弁に僅かな皺がよった。
「スイセン、僕らのアリスはもう――」
「あ、違うんだ、違う。違うアリスたちが来たんだよ」
「でもそれは」
「ううん、今度は間違いなく『ちゃんとした』アリスだよ」
 それでも花人たちはひそひそと囁きあう。
 君は早とちりがすぎるからなぁ。
 こないだだってそうさ。
 でもさ、スイセンが言っていることが本当だったら?
「君たちもおいでよ。アリスたちが困っているんだ。助けてあげよう」
 アリスのためだと言われれば他の花人たちも顔を見合わせ、そうしてしっかりと頷きを返すのだった。

●雪白と薔薇紅
 その日、『生きている花園の国』にふたりの少女――アリスが現れた。
 花園が広がる丘の上に現れたふたりが最初に覚えたのは、困惑だ。
 ふたりを見つけた花の姿をした不思議なヒトたちが話しかけてくるけれど、ふたりにはどう返せばいいのか解らない。
 それもそのはず、『召喚』されたばかりのアリスには決まって記憶が無いのだから。
 この世界のことも、自分たちのことも、なにひとつ解らない。
 一緒にいる女の子が知り合いなのかすらも、ふたりには解らなかった。
 例えその手が、ずっと、繋がれていようとも。

 ふたりのアリスの小指は、約束事を交わす時のように絡められて。
 けれどふたりの意思でも絡んだまま離れない。
 気付いたららこの世界にいて、気付いたら彼女といた。
 何も思い出せないふたりだけれど、アリスたちは少しも不安にはならなかった。
 ひとりじゃ、ないから。

「名前をつけてくださらない?」
 長い真っ直ぐな黒髪に、赤い薔薇の髪飾りのアリスが僕たちへ口を開いた。美しく綺麗な声の彼女へ僕は視線を向け、首をかしげる。彼女は《アリス》だ。愛しさを込めて僕らはアリスと呼ぶのに、他の呼び方がいるのだろうか。
 周りのハナたちも僕と似たような顔でアリスたちを見ていた。
「私たち、お互いをなんて呼べばいいかわからないの。だからお花さん、名前を授けてくださらないかしら」
 柔らかなウェーブの栗色の髪に、白い薔薇のアリスが口を開く。春風のようにふわりと優しい声の彼女は、少しだけ困ったような顔で隣のアリスを見て、お願いよと僕らに微笑んだ。
 アリスのお願い。アリスにお願いをされたら、僕らはなんだって叶えてあげたくなる。
 君たちがそう望むのなら、僕らは叶えよう。叶えられなかった、あの子の分も、僕らは叶えよう。
 けれど突然名前と言われても、困ってしまう。僕らには《アリス》で、アリスと呼ぶことしか考えられない。チューリップはチューリップと呼ぶし、スイセンの僕はスイセンと呼ばれる。そう、僕らに名付けのセンスなんてものはなかったのだ。
「あ、ねえ。『雪白』と『薔薇紅』はどう?」
 スイートピーが愛を語るように口にした。自分の頭を指差してアリスたちの髪飾りの事を示せば、アリスちは指が絡まっていない外側の手でそれぞれの頭に触れる。そこで初めて気付いたのだろう。鏡写しのように、髪飾りをつけていることに。
 アリスたちはそっと窺うように顔を見合せ、小さく頷きあう。
「とても素敵なお名前」
「ありがとう、お花さんたち」
 雪白と薔薇紅が笑う。アリスが笑う。
 僕らは、ああ、とても嬉しい。

●猫の語り
「アリスたちをね、助けてあげてほしいんだ」
 花人の愉快な仲間が暮らす『生きている花園の国』。そこに現れたふたりのアリスは、優しい花人たちと暮らし始めた。例え記憶が無くとも、例えふたりが離れられなくとも、知らない世界に慣れようとして。
 初めは困惑の表情が多かったふたりも、過ごす内に笑顔が増えていった。
「ずっと幸せに花人たちと暮らしていく――そう思っていたところだったのだけれど、ね。予知を、見たんだ」
 オウガが現れて、アリスたちと花人たちを襲う予知だ。
 その日、アリスたちは花人たちと薔薇園に行く。
 生垣迷路を抜けて、薔薇園に行って、ちょっとした遊びをしようと黄色の薔薇が誘ったのだ。白い薔薇に『ないしょ』を囁いて赤い薔薇に染める『かくれんぼ』。隠したら目印のリボンをして、探すのも楽しいよ、と。
「幸せになろうとしている彼らを守ってあげてほしい」
 グィー・フォーサイス(風のあしおと・f00789)の掌の上に手紙が踊る。封が開いてパッと飛び出た便箋に、何事か文字を書き込む仕草をすれば道は開かれる。
 行き先はアリスラビリンス。
 新たなアリスが訪れた美しい花園の、不思議な国。





第3章 日常 『Under the Rose』

POW――あのね、だぁれにもないしょだよ。
SPD――ねぇ、しってる?
WIZ――君にだけ教えてあげる。
👑5

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。