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かみさまつくろ(作者 城嶋ガジュマル
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●傀儡の祈り
 小さく水を吐いて、水面を見上げる。
 水底には、仲間だった“何か”が砂に埋もれるように横たわるだけ。
 最初に殺されるのは、次に溺れるのは、僕かもしれない。あの子かもしれない。
 哀れにも迷い込んだアリスかもしれない。
 あ、ほらまた隣に存在していたはずの彼がただの長靴になってしまった。こうなればもう、生きていたことすら定かではない。
 そういえば、この間、僕らの目の前から消えたアリスが必死に唱えていた誰か。
 呼べば救ってくれると言うならば、僕らの平穏を取り戻してくれると言うならば。
 助けて、助けて!!
 たすけて。
「かみさま」
 それが、泡沫の安寧だとしても。

●探求者の愉悦
 ここはグリモアベース。
「聞きたまえ、皆の衆!!」
 美しい紺色の髪を揺らすエルフの女性、染葉・ラヴィニア(自由への逃亡者・f18335)は眼鏡をきらりと光らせて猟兵たちに呼びかけた。その声に驚いた猟兵は、次々と彼女に目を向ける。
「フッフッフッフッ! ご清聴願おう、何を隠そう依頼なのだよ!! 実に興味深い場所が見つかったのだ!!」
 彼女はそう一頻り大声を上げていたが、猟兵達からの何だこいつ……という視線に、爛々と輝くガラス越しの瞳が、正気を取り戻した。
「おっと失礼、興奮しすぎたね。こほん……場所はアリスラビリンス。私はそこに、比較的新しい不思議の国を発見したんだ」
 うんうん、と頷く猟兵達に、ラヴィニアは「しかもね」と情報を追加した。
「その小世界は水中にある。あぁ安心して。その世界のメインフィールドは大きな泡に包まれてて、水中呼吸ができない人でも活動できるから」
 泡の中の世界。息をしながら水天井を眺める贅沢さ。美しいものが好きな者は想像するだけで溜息が出るだろう。

 それをぶち壊すように、エルフは自分の長い耳の端をつまんだ。
「そこの住民の様子がおかしいんだ」
 その口から語られたのは、惨状だった。
「不思議の国の不思議な仲間たち〜なんて謳えないくらいには退廃的な連中しかいない。世界の様子もゴミだらけで、無残に荒れ果てたものだ。もはやメルヒェンの欠片もない、ただの汚れた海底だね」
 肩をすくめる彼女に、猟兵はその原因を問うた。それを聞くと、彼女は満足そうににやりと笑む。
「よくぞ聞いてくれたな! 彼らは等しく、オウガへの感情で、傀儡になっているようなのだ」
 ここでオウガが出てくるのか、と猟兵のひとりが納得したように頷く。猟兵達に声をかけられたという時点で、オブリビオンが関わっていないことはありえないのだ。
「恐怖、逃避、防衛。理由は様々なのだが、根本的な原因はオウガがすぐ側に生きているという事に他ならんだろう。彼らが住まう巨大なあぶくには、まだオウガは侵略していない筈なのだが、オウガは、彼らにも察知できるほどにすぐ近くにいる。確定的な死がいつ襲ってくるかわからないという状況から考えると、中々に内臓を痛めそうではないかね?」
 なる程、つまり彼らが動けなくなっている理由は、過度なストレスからかもしれない。
「つまりだ!! 彼らを安心させ、世界の発展を手伝い、彼らの懸念事項であるオウガを彼らの目の前で退治することにより!! 我ら猟兵にとってのセーフゾーンを広げよう!! という目論見なのだ!!」
 目的はわかった。これは猟兵の仕事で間違いないだろう。
 だが、どうやって? と思考を巡らせだす猟兵に、ラヴィニアはずいっと顔を近付けた。

「神様になりたまえ」

 かみさまになりたまえ。
 どう考えてもそう言っていた。
 ぽかんとする猟兵達を放置して、ラヴィニアは青い目を愉快そうに細めた。
「無論、個人に“神”を背負わせるつもりはない。言うなれば、“猟兵様”とでも言ってやろうか」
 その言葉に困惑する猟兵もいれば、身を乗り出す猟兵もいるかもしれない。
「彼らの心の支えの第一候補を猟兵にする、と言い換えれば、“神”という名を冠することを忌避する者も減ろう」
 心底可笑しそうにラヴィニアは猟兵達を見回す。
「……最も、“神”は種族として確かに存在している。フフ、種族関係なく、己が“そう”だと言うのならば普段通りに振る舞い、己の信者をつくってもよかろう。それもまた“猟兵様”たりうるのだからな!!」
 でも、何故、“神様”でなくてはいけないのか? 眉間に皺を寄せた猟兵がラヴィニアに疑問を投げかけた。
 ラヴィニアは、真っ直ぐに答えた。
「彼らが求めていたからだ。“救世主”でもなく“改革者”でもなく、“神様”を」
 そう言うと、彼女はほんの少しだけ、皮肉っぽく目を伏せた。

 だがすぐに彼女はこほんと咳払いをする。その頬はほんのり赤い。
「……と、ともかく、君達には、“猟兵様”として彼らの信頼を得て、世界の発展を手伝って欲しいんだ。“神”に抵抗がある人や、熱狂的に信じてる神様がいる人は、ちょっと向かないかもだけど、自分こそが“神”だ! って思うような人や、皆に沢山慕われたい! って思う人ならならこういうの、楽しめるんじゃないかな?」

 ラヴィニアは、光で出来た杖をひと振りする。そのたびに輝きの粒がさらさらと零れて消えた。彼女のグリモアだ。
「さぁ、こころとからだの準備が整ってる君から転送するよ。いっておいで、“猟兵様”」
 ぶわりと蒼い魔法陣が杖先を向けられた猟兵の足元に展開された。
 その先は、君たちが救う世界だ。





第2章 日常 『泡の中の国』

POW遠見の道具で外の景色を観察する。
SPD人が乗れる泡に乗って浮遊による観光を楽しむ。
WIZ子供達と一緒にシャボン玉を作って遊ぶ。
👑5 🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【連絡】
第二章の断章は2020/3/22 23:59までに提出予定です。受付は断章が提出された時点からいつでもお受付いたします。
ですが、今回の章も何回か再送をお願いするかもしれません。連携アドリブについても、一章と同じです。また、二章からのお客様も勿論歓迎いたします。
参加される方は、心の器を更に広げておいてください。
●ライフ・ワーク
 泡の中は、今までにないほどに活気づいている。世界にやっと生命力が感じられるようになっていた。地に伏していた愉快な仲間達は一つ残らず動き出していて、絶望しか無かった胸に希望を宿して。
 誰か個人を信仰していた愉快な仲間も、猟兵同士が仲間であると知ったため、誰を崇めていたとしても、猟兵であればちゃんと命令を聞いてくれるようだ。
「猟兵さま」
「かみさま!」
「ぼくらになんなりとお申し付けください!」
 様々なものがそう猟兵達に人懐っこく擦り寄ってくる。救いをもたらしたことで、彼らにそれ程までに信頼されているということだろう。

 だが、君達は気付くはずだ。
 その中でも、未だに少し表情が暗いものがちらほらいることに。
 それに、動き出したはいいもののどうやって“生きる”のかわからないものもいる。
 半分枯れかけてた、泡を吐く草木も少しずつ生き返ってきているようだが、手入れをするともっとはやく回復するかもしれない。
 それはそれとしてこの世界は美しい。不思議な海底を散策し、愉快な仲間たちと語らうだけでも有意義な時間になることだろう。

 世界の安定や発展を考えるも良し、来たる敵に備え情報収集をするも良し、信者達と優しい時間を過ごすのも良し。

 “猟兵さま”よ、彼らに生き方を命じてあげてくれ。
【MSより】
今回の章の推奨行動欄はあまり気にしなくて大丈夫です。貴方が好きな行動を取ってください。
馬飼家・ヤング
「生きる」とはどういうことか、ねえ……
笑いはさっきやったから、今度は「食」でみんなを元気にする番かのう
栄養補給は命の源。腹が減っては戦はできんっちゅーやろ?

よっしゃ!そうと決まれば早速タコパや、タコパ!
タコパ知らんの?「たこ焼きパーティー」やがな!
熱したたこ焼きプレートに、ダシで溶いた粉を注いで、その中に一個ずつタコのぶつ切りを落としてく。
程よく焼けたら先っぽの尖ったたこ焼き返しで端っこからちょちょちょっと返していって、くるん!
どや、おもろいやろ?
コツさえ掴めば簡単やさかいレッツチャレンジ!
ソースと青海苔、お好みでマヨもかけて完成や!

めっちゃうまー!
な、自分で手を動かして作った料理は格別やろ?


●生命燃焼、またはカロリーは世界を救う
 無事に温まった海底に、馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)は頭部の画面を一仕事終えたという風にきゅっと拭いた。ちなみに「額に汗かいとらんやんけ!」というツッコミ待ちである。無論、物たちは初めての笑顔に夢中になっていて気が付いていない。
 内心、少し寂しく思いつつも、先程彼らに投げかけられた疑問をそのたこ焼き頭に放り込んだ。
「(「生きる」とはどういうことか、ねえ……)」
 それは決して簡単に考えられることではない。人によって返答は変わってしまう。
 だが、ヤングには確固たる哲学があった。
「笑いはさっきやったから、今度は「食」でみんなを元気にする番かのう」
 栄養補給は命の源。腹が減っては戦は出来ぬ。ついでに言うと医食同源、病は気から。
 笑い、食べる。どんな苦境でも、これさえあれば何とかなるものなのだ。
 ヤングは、パンパンッ! と手を叩き、物たちの視線を集めた。
「よっしゃ! そうと決まれば早速タコパや、タコパ!」
「たこぱ……?」
 聞きなれぬ単語に、物たちがざわめく。だが、嫌なざわめきではない。ヤングが聞きなれた、期待の予兆だった。
「タコパ知らんの?「たこ焼きパーティー」やがな!」

 ヤングがどこからともなく用意したのは半円状のクレーターがいくつもある鉄板だ。
「かみさま~、なあにこれ」
 欠けた陶器の皿が首(概念)を傾げると、ヤングがニヤリと絵文字を変えた。
「聞いて驚き! その名もたこ焼きプレートや!!」
 ジャジャーン!! と効果音でも出そうな勢いで、そのたこ焼きプレートを掲げると、暗い表情をしていた物たちもすすっと近くに寄ってきた。
 更にヤングは、これまたどこからともなくたこ焼き用の粉が詰まった袋と出汁が入ったボトル、そして大粒のタコが沢山入ったパックも取り出し、脚が三本の机をちょいちょいと呼び寄せるとその上にそれらを置いた。
「いけそう?」
 そのヤングの言葉に、机は明るく応える。
「だいじょーぶ!! バランスとるの、楽しいね!!」
「おっイケとるやん! そら良かったわ」
 机を信じたヤングは、そこに漂っていたひび割れたボウルも呼び寄せた。だが彼女は体を揺らして拒否する。
「わたし、底が割れてるわよ。それに砂だらけで汚いもの! 使えないわ!」
 だがヤングはビッと細長い長方形の何かを高く掲げてサムズアップした。
「そんなんラップ巻けば余裕や!」
 おぉお!! と様々なところから歓声が聞こえる。
「ほんまやったら洗ったり、金継ぎとか出来たら話は早かったんやろけどなぁ。ま、いけるいける」
 謎の自信と共にラップを引き抜き、ヤングはボウルに隙間なくラップを敷いた。
「おらん調理器具は自前のモン使わしてもらうで。カンニンな!」
 そう言いつつ、ボウルに粉と出汁を入れ、調理箸でちゃっちゃと溶かしていく。
「ダシで溶いた粉を注いで」
 説明しながら、ヤングはごくごく薄い黄色の液体を鉄板に流し込む。瞬間、じゅわ! っと液体が焼ける音がして、物たちから歓声があふれた。
「その中に一個ずつタコのぶつ切りを落としてく」
 手慣れた様子で、ヤングはひとつひとつの窪みに吸盤の付いた魚介を投入していく。
「ふわわ、いい匂い!」
「せやろ? もーちょい待っとってや。我慢の子やで」
 その言葉に、物たちはにこにこしてじっとその未知を観察している。
 しばらくすると、香ばしい香りと共に、液体が固体に変わっていく。ヤングはそれを確認するとしゃきん! と細長い棒状のものを取り出した。
「程よく焼けたら先っぽの尖ったたこ焼き返しで端っこからちょちょちょっと返していって……」
 かりかりと固まった薄黄色を鉄板から剥がしていき、窪みに棒の先を差し込む。
「くるん!」
 その掛け声と同時に、焦げ目がついた綺麗な円形の食べ物、たこ焼きが生まれる。
 その光景に、物たちはうわぁ! と色めきだった。
「わー!! すごい!!」
「色がちがうくなったー!!」
「どや、おもろいやろ?」
 ヤングは、にっこりと笑い、傍にいたステッキにたこ焼き返しを渡した。
「コツさえ掴めば簡単やさかいレッツチャレンジ!」
 だが、ステッキは不安そうに少し後ずさった。
「ぼく、燃えない?」
「気ぃ付けたら大丈夫や! 怖いなら、わしがボクの手、持ったろか? 手どこか知らんけど」
 ヤングの言葉に、ステッキだけではなく、遠巻きに見ていた物たちも笑みを浮かべる。
「うん!!」
 陶器の皿に、たこ焼きが盛り付けられていく。ヤングはそれにソースとマヨネーズをかけ、青海苔を机に置いた。
「完成や!!」
 出来上がったものを、ぱくりと口に放り込むと、ソースとマヨネーズの合わさったハーモニーと、出汁の風味が混然一体となってヤングに襲い掛かった。
「めっちゃうまー!! ほれ、食うてみ!!」
 許可を貰った物たちも、我先にと皿に寄ってくる。みるみるうちに丸い幸せは数を減らしていくが、作ることを気に入った物たちが追加をつくっている。ここにいる全員に行きわたる事は簡単に想像がついた。
「なにこれ~!! ふしぎ~!!」
「これが、うまい!?」
「すごいすごい!! たのしいね!!」
 きゃっきゃとはしゃぐ物たちに、ヤングは満足げな表情を作った。
「な、自分で手を動かして作った料理は格別やろ?」
 そう言ったヤングに、物たちは適当に返事してたこ焼きを頬張る。
 丸い笑い声と丸いたこ焼き。それは生まれては浮かんでこの世界になる丸い泡のように優しさを広げていった。
 ……そういえば。
「いや、作っといてなんやけど、自分ら、どっから食べてんの……????」
 不思議な世界の不思議な仲間たちは、本来の彼らの愉快さを表すように、コメディアンに悪戯っぽく笑いかけた。
大成功 🔵🔵🔵