●桜狩
みしり、みしりと床板が軋む音が響いて、私は虚ろな意識を無理矢理起こす。
ここは学舎のすぐ傍の学生寮だ。既に時刻は深夜――こんな時間に誰だろう?
『…………』
不意に気配を感じる。扉が開く音は無かった。
いつの間にか、何者かが真横に……いる。
(だ、誰……?)
身体が動かない。顔を向けられない。
聞こえたのは鈴の音の様な可憐な声色。そして。
『……合格よ』
その言葉を最後に、私の意識は途切れた。
「という夢を……予知を視たの」
グリモアベースの会議室に集った猟兵達へ向けて、喜羽・紗羅(伐折羅の鬼・f17665)がこれから起こるであろう悲劇を防ぐ為に言葉を続ける。
「場所はサクラミラージュ。帝都桜學府所属の凛星館女学院、その学生寮よ」
予知の内容は深夜、その学生寮で事件が起こるという事。しかし何故そんな事がいきなり起こるのだ、と一人の猟兵が問う。
「逢魔が辻、って奴みたい。それも特定の条件が揃った時だけ発動する結構特殊な……呪いの様な現象だから……これまで全く気付かれなかったの」
つまり常日頃から発生している訳ではない『現象』だからこそ、定められた時に合わせて対処しなければ、必ず予定された悲劇が発生するというのだ。
「夢の中で私はそこの学生になっていた。そして影朧に攫われて……」
そのまま拉致されそうになり……紗羅は目覚めた。意識を重ねていた相手がそれからどうなったかは分からない。無論その子が誰であるか、全く見当もつかない。
「今回はこの拉致を防ぐ事が最初の目的よ。面倒だけど敵は複数いるわ――夢の中、足音は一つじゃなかったから」
不特定多数の中から不明な女学生を人攫いの影朧の群から守り切る。出来れば纏めて一気に倒してしまいたい所だが、そう易々と事は運ばないらしい。
「建物への侵入を塞いでしまうと影朧は現れない。だから屋内で待伏せて迅速かつ隠密に処す――余り派手な武装の扱いは厳禁ね。眠っている子達を起こしちゃいけないし」
万が一女学生が目覚めて戦場へ出て来たら命の危険に晒す事となる。それは必ず防がなければならない。更に闇夜の屋内戦で視界も悪い――地形を変えてしまう様な強烈な装備や技は厳禁だ。だが今ある地形や状況を上手く利用すれば、一方的に立ち回る事も可能だろう。ここは腕の見せ所だ。
では女学生を守り切ったら後はどうすればいいのだ? という猟兵の問いに、少し難しい表情をしてからゆっくりと紗羅が答える。
「この事件の黒幕を倒す。それが何だか、実は分からないんだけど……その内姿を現すと思うわ。出てきたら、やっつけて頂戴」
申し訳なさそうに頭を垂れる紗羅。つまり真実は戦いの中でしか分からないという事だ。最初に現れる影朧の群だって、どういう意図があって拉致を企むのか――最早この世の者では無い彼女らに問う事は叶わないが、とにかく悲劇は防がなければならない。
「転送後は夜の学生寮に送り込むわ。建物の見取り図は皆に渡してあるけど、くれぐれも彼女達を巻き込まない様に注意してね」
スマホからグリモアのゲートが開き、桜の香気がふわりと広がって学生寮の廊下に繋がる。薄暗い桜花の園に戦場の空気が流れて、過去から未来を護る戦いが始まった。
ブラツ
ブラツです。
今回のシナリオはサクラミラージュにおいて、
終始刀剣で乱舞する感じです。
第1章は集団戦です。薄暗い深夜の学生寮での屋内戦です。
静かに近接戦闘を行う事でプレイングボーナスとなります。
第2章は集団戦です。先の戦闘を見て学習した敵が相手です。
前章とは違う戦い方がプレイングボーナスとなります。
第3章はボス戦です。転生の余地はありますが、詳しくは各章よりご判断下さい。
皆様のプレイング次第では結末が大きく変わると思います。
アドリブや連携希望の方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
プレイングの募集は各章幕間追加後にお伝えいたします。
募集期間前後に頂いたプレイングは流れる場合がありますのでご注意下さい。
プレイング締め切りは最初の失効に合わせ策定致します。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『旧帝都軍突撃隊・桜花組隊員』
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POW : 疑似幻朧桜の鉄刃
自身の装備武器を無数の【自分の寿命を代償に起動する鋼鉄の桜】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 疑似幻朧桜の霊縛
【舞い散る桜の花びら】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 疑似幻朧桜の癒やし
【自分の生命力を分け与える桜吹雪】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
👑11
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●静寂破り
夜風が心地良い。今宵は幾許か暖かいから。
満月の下、僅かに開けた廊下の窓より、ひらりと桜の花弁が舞い落ちる。
それはちりちりと音を上げて、僅かに火を起こして、燃え尽きた。
後に残った大気に溶けそうな程、ほんの少しの白い灰。
燃え尽きた、燃え尽きた、青い春を赤い血に染めて。
焼き焦げた、焼き焦げた、真っ白な未来を真っ黒な時が刻んで。
ここは凛星館女学院学生寮、又の名を旧帝都軍特殊装備研究所。
灰の跡にゆらりと乙女の影が起き上がる。
ああ、懐かしき我等が学舎。
ああ、悍ましき戦争の記憶。
さあ実験を始めましょう。何処からともなく鈴の音の様な声が聞こえる。
ええ始めましょう。どうせ皆、また居なくなる……その前に。
かくして乙女の花園は今再び、彼女達の戦場になる。
ああ、懐かしき鬨の声。
ああ、悍ましき幸福よ。
降りる事を忘れた亡者の群が、生者の時間を侵そうと蠢く。
しかし忘れる無かれ。
覗く者は須く覗かれているという事を。
地上三階地下一階、元は堅固な研究施設だったとはいえ、戦術級の兵装使用は躊躇われる。
それでも、闇に紛れて階下に角に、あるいは真正面から迎え撃つのも自在なり。
僅かに廊下を照らす薄明かりの下、亡者の相手をするのは埒外の超弩級戦力。一人ずつでも纏めてでも構わない。誰一人逃さなければ全て良し。
びゅうと不意に風の音が鳴り響いて……そして、戦が始まる。
※プレイング募集 3/11(水)8:31 〜 3/14(土)8:30迄
東雲・一朗
●
▷兵装
帝都軍の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。
▷斬獲
特殊装備研究所…この場に満ちる淀みは果たして怨嗟か悔恨か、どちらにせよ帝都軍人の勤めを果たすのみ。
私は正面から静かに立ち入り、敵の気配を【見切り】暗闇の中でも的確に敵を捉えて【剣刃一閃】一刀両断、長年の軍務に裏打ちされた【戦闘知識】による立ち回りで二刀を巧みに操り、殺到されても冷静に斬り払い【武器受け】し霊気の【オーラ防御】で攻勢を防ぎ、1人ずつ確実に斬り伏せていこう。
「花組、まこと勇猛にして強者なり…されど精鋭たる第十七大隊を預かる私には届かぬよ」
雪華・風月
●
学友の危機見逃すわけには行きませんね
はい、同じ桜學府所属の者として微力ながら頑張らせて頂きます!
闇夜の戦闘…暗闇に目を凝らし
まずは影朧が来るまでに少しでも目を慣れさせましょう
耳をすまし敵の出現に警戒を…
現れたら闇夜に紛れ黒塗を複数【投擲】!
この暗闇の中黒く塗られた短刀を避けることは困難!
そして更に投擲した短刀の数本をこっそり影に向かって
秘技、影縫…動きを止めさせて頂きました
単独であればそのままわたしが雪解雫の一刀にて!
他合わせであればその方にお任せ致します
哀れな亡霊であれ、生者の生を脅かすのであれば!
安らかに眠りなさい
●交刃
月明かりが差す廊下、ふわりと桜の花弁が舞い散る。否、それは幻の桜――そのまま何事も無かった様に空気に溶け消えて、その先に鈍く光る切先が見えた。
「――安らかに眠りなさい」
雪華・風月(若輩侍少女・f22820)は刀身を僅かに振るい張り付いた花弁を落とす。今しがた出くわした影朧を一人斬り伏せた所だった。
「それにしても、数が……」
そう言いながら肩で息をする風月。着衣は乱れは無いものの、頬を伝う一筋の汗がここまで激しい戦いがあった事を想起させる。
「……多い」
あくまで静かに、呟くように吐き捨てると共に片手で短刀を投げ放つ。曲がり角より姿を現す幾つかの影がその動きを止めた。超常の影縫い、察した先には矢張り敵がいた。
「しかし学友の危機、見逃すわけには行きません――」
再び諸手で刀を構える風月。迷いは無い。かつて帝都を護った先達だったとはいえ今は影朧、平和を脅かす魔の手先ならば、せめて一思いに払うのが今を生きる自分の役目――そう言い聞かせじわりと間合いを詰める。刹那、足元より這い出る蛇の様な影が風月を襲う。
「――うむ、見逃す訳にはいかん」
それは影朧が放った決死の一撃。じゃらりと鎌首をもたげた超常の幻桜は突如現れた黒い影にその先を制された。
「花組、まこと勇猛にして強者なり……されど」
黒い鋼鉄の刃を絡め取る様に切先が躍る。もう一振り、二刀が幻の使い手を貫いて再び花弁が舞い散った。
「精鋭たる第十七大隊を預かる私には届かぬよ」
風月の背後より忍び寄ったそれは、東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)の手によって瞬く間に制された。
「あ、ありがとうございます……」
「礼には及ばぬ。若手ながら見事な手並み」
まるで闇に溶け込む様に外套が翻る。一つ、二つと動きを止めた影朧を屠り、刃が月光に染められて淡い光を放った。
「特殊装備研究所……この場に満ちる淀みは果たして怨嗟か悔恨か」
通称特装研。一朗の記憶にある古い戦の匂いは、対峙した過去が放つギラギラとした殺気に興味を向けた。非人道的なプロセスを経て運用された彼女達――一歩間違えれば、自分ですらそうなっていた恐れもあった。故に。
「――どちらにせよ帝都軍人の勤めを果たすのみ」
誇りを胸に、せめて散らせた花を汚さぬ様にと、二振りの刀を抜いたまま一朗は歩みを進めた。その足取りに迷いは無い。
「はい、同じ桜學府所属の者として微力ながら頑張らせて頂きます」
呼吸を整え一朗に続く風月。ここに居るという事は目の前の上官も既に幾度と無く交戦していたのだろう。だがその動きに一切の乱れや疲れは無く、張り詰めた緊張以外の何も感じない。
「……恐らく」
言いながら一太刀、風を切る音が響く。道すがら待ち伏せていたのだろうが、一朗には見えていた。
「この手合いは前段に過ぎない。本命は更に後――」
一閃、斬り結ぶ音も無く超常の一撃が幻桜の刃ごと影朧を斬り裂いた。
「油断するな、地の利は敵にあり。その機先を制する事が」
「はい。確実な作戦遂行に……哀れな亡霊であれ、生者の生を脅かすのであれば」
その先の影に向け風月の手元から黒い刃が投げ放たれる。奇襲封じ、その短刀が影朧の胸元を貫いて幻の桜吹雪が廊下を彩った。
「――それを鎮めるのが、我等の使命」
その光景は美しくも、どこか悲し気な色を感じさせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御園・桜花
「…とても私と似通った方々。だから…小細工なしに、押し潰させていただきます」
他の猟兵と共闘
UC「精霊覚醒・桜」使用
視界は暗視で確保
戦闘力を上げ一気に敵陣に飛び込む
桜鋼扇に風の属性攻撃を纏わせ敵の首を叩き折るようにどんどん振り抜く
敵からの攻撃は第六感及び見切りで被害をなるべく抑え込む
戦闘力を上げるために体に纏わせた桜吹雪を敵の鉄桜を反らすためにも使用
効果は薄いが場合によっては盾受けも
また相手へのダメージが増すと思えばカウンターからの破魔乗せシールドバッシュも
寝ている女学生に被害が出ないよう殲滅するのを優先
自分の怪我は度外視
戦闘後
それでも彼女達が転生出来るよう慰めと破魔を乗せた鎮魂歌を小声で捧げる
吉岡・紅葉
●
夜の学生寮で、女学生の拉致事件!
いいですね~、犯罪の匂いがぷんぷんしますよ!
おっと失礼、なにせ桜學府内で起きる事件なもんですから、
つい盛り上がっちゃいました。
一階の窓や、用務員さん用の勝手口なんかを警戒しておきましょう。
敵の正体と、「逢魔が辻」の発生条件も気になりますねぇ。
武器はこの退魔刀と…鉄パイプを改造した
チープウェポンを用意しますよ。
あなたは、女学生さん!? 私はてっきり、
変質者さんかと思ってましたよ!
鋼鉄の花吹雪は、前転で躱したり、
鉄パイプの<早業>で打ち払いつつ接近。
独自に編み出した奥義『散り紅葉』で一刀両断にしますよ。
今日はもう遅いんですから、皆をぐっすり眠らせてあげてください。
●桜襲
澄んだ歌声が静寂にしんと染み渡る。静かな旋律の中心には、桃色の桜の精。
「……とても私と似通った方々」
その歌声に引き寄せられたか、闇より桜の枝を手にした影が一人、二人と姿を現す。全ての生を恨むような眼光は鋭く、じわりと桜の精を囲む様に間合いを詰めて。
「だから……小細工なしに、押し潰させていただきます」
道が交差する広めの十字路で、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は僅かに口元を歪ませる。歌声はいつの間にか、止んでいた。
「夜の学生寮で、女学生の拉致事件! いいですね~、犯罪の匂いがぷんぷんしますよ!」
夜道の散歩を盛り上げる様に廊下をひたすら進む吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)は、まるで警備員の様に警棒じみた鉄パイプ風の鈍器を片手に持って、施設の勝手口から順繰りに闇の中を歩んでいた。
「少々、騒がしくはありませんか?」
「おっと失礼、なにせ桜學府内で起きる事件なもんですから、つい盛り上がっちゃいました」
突風が吹いて、紅葉の目の前にモノトーンの嵐が現れる。その白と黒の桜吹雪の中から可愛らしい声が紅葉の耳に届いて――。
「皆様を起こしてはいけません。ですから――」
いつしか白と黒の花弁は空に溶けて消える。音も無く止んだ嵐の中より現れたのは桜花。更に鉢合わせた二人を囲み、影朧が行く道を塞ぐ様に続々と現れた。
「廊下は静かに、ですね」
状況は理解した。器用に片手で刃を抜き放った紅葉は、背中合わせになる様に桜花と即席の陣を組む。
「ええ。そして掃除は手早く済ませましょう」
再び舞い散った白い花吹雪が合図となって、二度目の戦いが始まる。
「あなたは、女学生さん!? 私はてっきり、変質者さんかと思ってましたよ!」
先ずは紅葉が手にした鈍器で桜の刃を押さえつける。超常の発動などさせない――機先を制してもう一振り、片手の退魔刀が瞬く間に影朧の懐を闇色に染めた。
「それは大変、警察にお伝えしないと。あと――」
軽口を叩きながら舞う様に桜花が影朧へと詰める。ほんの一瞬、首筋に伸ばされた白い腕が振るわれると共に影朧が黒い花弁へと姿を変える。桜花が手にした桜紋様の鉄扇がその首をへし折ったのだ。
「そんな得物を振り回すあなたの方こそ、どうかされた方かと思いましたわ」
瞬間、蛇の様にのたうつ黒い刃が一斉に桜花へと飛び掛かる。しかしそれらは既に見切られ、桜花より放たれた白い桜吹雪が絡みつく様にその切先を押さえつけた。破魔の威を込めた超常の花弁が、積年の呪いを打ち消したのだ。
「それは失敬、鈍器では無く桜の枝の方が良かったかな……」
桜花に続き、紅葉の退魔刀から清浄なる炎が放たれる。それは桜を滅ぼす呪いが刻まれた超常――その名を持つ影朧だけに狙いを定めて、一太刀振り下ろした後の先をそのまま炎で焼き尽くす。
「今日はもう遅いんですから、皆をぐっすり眠らせてあげてください」
「ええ、あなた達もせめて……安らかに」
そして桜の花弁が寄り集まった壁の様な塊が、燃える影朧を鎮める様に押し潰す。
「何と豪快にして雅な…………ふむ、あなたでしたか」
炎と花弁が全てを鎮め、その形を消した後、澄んだ歌声が再び廊下に響いた。女学生を起こさぬ様に小さな声で奏でられたそれは、桜花の鎮魂歌。
「ま、これで終わりって訳では、無いでしょうなぁ」
したり顔で闇を睨む紅葉。未だ消えぬ戦の匂い……この事件の真相を暴く為に、猟兵達は再び歩を進めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
鈴木・志乃
第三人格【ナナシ】で行動
女学生さんを起こさないように戦闘か
けれど相手が使うのは鋼鉄の桜……
防音措置をどうするかな
【オーラ防御】展開
鋼鉄の桜吹雪の被害と音を極力減らしてみよう
さらにUCで想像から光の鎖を生み出す
僕が志乃にあげた物だけど、光で出来た武器だから
普通の金物よりかは音が立ち辛いだろう
必要に応じて【高速詠唱】で簡易バリアを張る
攻撃は【第六感】で【見切り】光の鎖で【早業武器受け】
からの【カウンター】【なぎ払い】
……【念動力】と【ロープワーク】の要領で
密かに銀の糸を動かし、絞殺を狙う
悪いね、これも未来の為だよ
しかしこの世界は思ったより不穏だ
一見平和に思えたが……もう少し注視しておこう
●漆黒
月明かりの淡い光が廊下を照らす。その中を音も無く動く影――鈴木・志乃(ブラック・f12101)は浅く被ったハットを軽く押さえて、僅かに滲む殺意に身を潜めた。
「女学生さんを起こさないように戦闘か――」
目の前の曲がり角、ぼんやりとした灯りが迫る敵の影を大きく映す。相手が使うのは鋼鉄の桜……防音措置をどうするか。
「道理で、僕が出てくるわけだ」
僕――志乃が秘める第三の人格『ナナシ』が独り言ちて、廊下に置かれた掃除用具入れにピタリと身を寄せる。いつまでも隠れている訳にはいかない――数は二人、ならば一気に攻め立てるか。
「騒々しくは出来ないからね、さて」
仕事の時間だ。月明かりに合わせて志乃の身体が薄く輝いた時、じゃらりと伸びた刃の群れ――鋼鉄の桜の花弁が一斉にその光へ飛び掛かった。
「静かにしよう、就寝時間だ」
しかし放たれた刃はどれもが、光り輝く鎖に絡め取られてその威を失う。僕からの贈り物――無論、ナナシから志乃に対しての、であるが――上手く使ってくれているみたいだ。体に馴染んだ光の鎖は、その超常はいとも容易く二人の影朧を空中へ放り投げて、そのうち一人をあっという間に志乃の下へと手繰り寄せる。
「悪いね、これも未来の為だ」
すっと少女めいた影朧が志乃に抱きかかえられる。そしてそのまま抵抗する間も無く、真っ黒な桜の花弁に形を変えた。
『…………!』
一瞬だった。まるで踊る様に抱かれたその腕から同胞の姿が消えたのは。何をされたのか分からない――だが次は、恐らく自分。
「だから、静かにしよう」
空中に放り投げられたもう一人は、残る片手から鋼鉄の刃――鋭利な桜の花弁を蛇の様に続けて伸ばす。だがそんなものがもう一本増えた所で、志乃の相手では無い。
「既に――終わっているんだ」
伸びた刃も再び光の鎖に絡め取られて、そのままグンと志乃の方へ引き寄せられる。いけない、何が仕込まれているかは分からないが……近づくのは危険だ。
「しかしこの世界は思ったより不穏だ。一見平和に思えたが……」
引き寄せられた影朧は志乃に抱き寄せられる事も無く、通り過ぎたまま花弁へと化した。後に残るのは一筋の銀の糸――月明かりがきらりと照らして、仕掛けられていた罠の存在を明確にする。手繰ればそのまま仕掛けた糸が致命の一撃を。相対した時点で既に仕込みは、戦いは終わっていたのだ。
「もう少し注視しておこう。この世界の行く先を」
くるりと手首を返して、鎖を、銀糸を仕舞う志乃。漆黒は再び闇に紛れ、後に残った花弁も掻き消える。こうして一夜の遭遇戦は、音も無く終結した。
成功
🔵🔵🔴
鞍馬・景正
●
暗夜、且つ隠密に事を遂げねばならぬ――。
ならば得物は大小が最適ですね。
夜を寂寞なままに終わらせましょう。
◆伏撃
見取り図から、女生徒の部屋に繋がる通路や階段を抽出。
他猟兵の手薄なところに陣取るか、問題無ければ階段脇の壁際に。
刀の鯉口を切り、鞘鳴りせぬ迅速な抜刀を心掛けておきます。
刃筋も立て、肉や骨を無暗に潰したり削って無用な音も奏でぬようにせねば。
◆戦闘
敵が曲がり角に差し掛かる寸前で歩み寄り、【影踏】にて抜き打ち。
外されるか、二人目以降がいれば、そのまま進んで――狙いは肋骨の四本目と五本目の間。
心臓のある位置を貫かせて頂く。
三人より多ければ、そのまま左右からの袈裟懸けを【早業】で連続させ一掃。
玉ノ井・狐狛
※アドリブ連携などお任せ
夜は静かに眠れ、って学生時代に言われなかったか?
ま、アタシみたいな遊び人に言われても納得はしかねるだろうけどよ。
ともあれ、静粛に遂行しろとのお達しでねぃ。
派手が好みじゃァあるが、ここは指定どおりにやらせてもらおうか。
つーワケでステージ変更だ、幻術の内側で勝負といこう。
恐怖で心を削って、甘いウソで心理的な逃げ道を与え、最終的には戦意を折る。
◈UC►麗▻催眠術▻恐怖を与える▻傷口をえぐる▻言いくるめ▻慰め
泣こうが叫ぼうが外にゃ聞こえねぇし、相手がUCで粘ってもそれだけ体力を削れる。
そのまま削り倒せればよし。幻覚が破られたら、消耗してるうちに►カードを▻投擲して落とす。
▻破魔
●桜禍
闇の中、階段を登る影が五つ。誰もがその手に蛇のようにしな垂れた黒い刃を携えて。じゃらり、じゃらりと段の上を滑る様に、音を立てながら登っていく。
(暗夜、且つ隠密に事を遂げねばならぬ――)
その上で一人の侍が伏せている事を彼女達は知らない。元はと言えば自身らの塒。勝手知ったる慢心が、徒党を組んだ驕りが僅かに判断を鈍らせた。
(ならば、得物は大小が最適ですね)
柄に片手を添えて、ゆるりと鯉口を切る。五つの影がひたひたと侍の下へ近づいて――刹那、音も無く一閃が鞘走る。
「――夜を寂寞なままに終わらせましょう」
昇りは浄土の道ではない。彼女らを地獄へ戻す戦の鬼が、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)が悠然と聳え立っていた。
『!』
攻防という形も無い。二階へ辿り着いたと共に斬り伏せられた一人目、返す刃で肩口から裂かれた二人目、黒い桜花が乱舞して、引いたその手は後ろを取った三人目に神速の諸手突きを繰り出す。その一撃をかろうじで捌いた影朧が超常めいた剣舞を制しようと、力を籠めた僅かな隙に影正が組み打って、華奢な影朧を宙で回す。
「良く稽古された動きだ、だが」
綺麗過ぎる。くるりと回った全身が天を仰ぐと共に、逆手に握られた業物がそのまま影朧の心臓を串刺しにして――血染めの代わりに撒き散らされた墨染めの桜が、廊下一面に広がっていった。
とてもじゃない。三つ数える間に三人、瞬く間に斃された。月明かりに照らされた鬼の角がまるで血糊の様にぬらりと煌いて、残された影朧達が戦慄を覚える。
「……続けるか?」
血振りすらせず張り付いた桜の花弁を指で弾いて、下段の構えで静かに迫る影正。答えは一つ、命を賭してその技を封じ――逃げる他無い。
「確かに賢明な選択だ。だが」
鬼は一人ではないぞ。無論、本物の鬼では無いが……。桜吹雪に包まれて、あえて追わずに再び辺りに気を張る影正。脱兎の如く廊下へと駆け出した影朧を目で追って、影正は静かに愛刀を鞘に納めた。
「夜は静かに眠れ、って学生時代に言われなかったか?」
駆ける音は消えた。代わりに響くのは陽気な女の声。
「ま、アタシみたいな遊び人に言われても納得はしかねるだろうけどよ」
違う――自分達の駆ける音が、急に響かなくなった。更に女の声が徐々に、逃げる影朧へと近付いてくる。
「ともあれ、静粛に遂行しろとのお達しでねぃ」
さも面倒そうに、あるいは愉快そうに蓮っ葉な声色が響いて。いつの間にか廊下だった空間は、見覚えのある悍ましい――あの時の、戦場の姿へと変貌していた。
「派手が好みじゃァあるが、ここは指定どおりにやらせてもらおうか」
そしてどろんと煙が目の前に――現れたるは妖狐、玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)の姿だった。
タタタン、タタタンと機関銃の炸裂音が響く。時折鈍い音が混ざって、その度に一人、二人、いや……もっと沢山。仲間達は散っていった。
『……!』
必死の形相で癒しの業を――血と硝煙が立ち込める悪夢の様な戦場に、癒しの桜が舞い踊る。せめてこの子だけでも、残り僅かの私の命が誰かの役に立てるのならば。
「止めとけ、もう手遅れさ」
狐の声が聞こえる。五月蠅い。あと少し、あと少し……で……。
「ほぅら、終わった」
決死の治療の代償に、少女は命を落とした。その生を受けたもう一人が、縋るような目つきで狐の顔を覗く。
「生きたいんだろ、生きなきゃな。だったら、こっちだ」
狐が駆ける。その後を追って少女が走る。それがこの悪夢の様な、戦場の出口ならば……私は、その先へ……。
「こっちが出口だ――地獄へ続くがな」
唐突に闇が少女の視界を覆った。そしてぐらりと歪んで二転、三転――階段を転げ落ちた影朧は、断末魔の叫びも上げずに果敢無く、再び生命を散らした。
「――見事」
階段の上、腕を組んで消え行く墨染めの桜を影正はじろりと見やる。その横には狐狛の姿が。
「勝手に自滅しただけよ。っていうか」
全て狐狛の超常、まやかしの凶夢が心身をへし折って、希望に見せた絶望が終わりへ導いただけの事。しかし幻の中、明らかな違和感を狐狛は感じ取っていた。
「アイツら、喋れないのかねえ」
「ふむ……」
確かに、先の戦いで彼女らの声を二人は一度も聞いていない。だが予知では何者かの声が女学生を誘ったという。であればこの事件の黒幕は未だ健在――どころか、眠る女学生に迫る魔の手は一向に消えていないという事に。
「ですが、今はかの敵を討つ事だけが彼女らを守る術」
「ああ、仕事はきっちりやるさね」
そして二人は狩場へ戻る。それぞれの牙を秘めたまま、来たるべき敵に備えて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
●
女学院の学生寮…
俺には敷居が高すぎる…
紗羅の仕事じゃなきゃ来なかった
ぜってぇ目立てねぇわ…
ドライバー懐に仕舞い
でもま
やるこた一緒だ
覚悟決め
何の目的か知らねぇが
女子の寝込みを襲うなんざ褒められた話じゃねぇ
影朧なら尚更だ
予め見取り図確認し
寮内の待ち伏せ出来る箇所を探る
ドアの陰や階段の裏
身を潜め出来るだけ気配殺し
侵入気づいたら一気に間合い詰めグラップル
暗殺交え急所狙いUC
まずは一丁上がりっと
攻撃はよく見て見切り
花受ける前に距離詰め
姿勢低くし足払い
一ヶ所に留まらずハイド&シーク
数が多い場合は影や気配ちらつかせ
誘き寄せたり暗所に引き込んだりし
一体ずつ素早く確実に倒す
見え見えなんだよ
ほんと…狙いは何だ?
紅葉・華織
※アドリブ・連携歓迎
うーん、剣戟とか音が響いちゃうだろうから、『月華』には鞘の中で御留守番してもらおうかなあ……。うん、そうしよう。なんか、物言いたげに見えるケド、気のせい気のせい。
という訳で、直感(第六感、見切り)で敵の攻撃を回避したり、いなしながら、【カウンター】を決めていく事にする。
「剣がなければ雑魚だと思った? 残念。私、天才でした!」
赤枝流武術【熟機】――敵の行動を観察する事で、適切な攻撃、回避パターンを見出す――まあ、私の十八番……ではないけれど、これでも赤枝流の免許皆伝……コイツで仕留めさせてもらうよ!
「いいのかなあ、私に時間を与えちゃって。――もう、遅いケドネ!」
●潜滅
「女学院の学生寮……俺には敷居が高すぎる……」
陽向・理玖(夏疾風・f22773)は溜息交じりに辺りを見渡しながら、足音を殺して闇を進む。知人のグリモア猟兵の話じゃ無ければ、好き好んでくるような場所じゃあない。
「こんなん、ぜってぇ目立てねぇわ……」
「そうだよね……うーん、剣戟とか音が響いちゃうだろうし、しょうがない」
残念そうにドライバーを仕舞う理玖。隣を歩く紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)も声を揃えて、愛刀を鞘に納めて歩く――折角の戦日和だというのに、残念。そんな声が聞こえた様な気もするが気にしない。気のせい気のせい。
「でもま、やるこた一緒だ。それに女子の寝込みを襲うなんざ褒められた話じゃねぇ」
覚悟を秘めて前へ、前へと進む理玖。予め記憶した見取り図通り、狙いは一階階段裏――程無く辿り着いたそこで一息つきながらも、昂る闘志を隠さずに言葉を紡ぐ。
「そうだよね。でも女の子同士! そういうのはどうなの!?」
そんな理玖へわざとらしく話を振る華織。そうなのだ、今回の影朧は女学生だったモノ、女子が女子の寝込みを襲うというシチュエーション、ああこれが私のお姉ちゃんだったらそうよもう止まらないこのパッションを一体何処へぶつければいいのかしら!?
「あ、いや、別にそういうつもりじゃ……」
「んっふっふ……って駄弁ってる場合じゃないわ」
違うそうじゃない、そんなつもりじゃ――しどろもどろに応答する理玖を揶揄う華織が、ふと表情を改めた。しんと静まっていた外の気配が、変わった。
「ああ、視えたぜ」
強化された理玖の視覚聴覚がその音を捉える。あと僅かで遭遇――何者かが徒党を組んで階段へ向かっている模様。遊びは終わり――ここから先は、狩りの時間だ。
「何が目的か知らねぇが、こっから先は通行止めだ」
ゆっくりと歩む影朧の耳へ唐突に声が聞こえた。瞬間、手にした桜を変化させる間も無く一人の影朧が地に組み伏せられる。そのまま華奢な首を握りしめたまま、残る腕で鳩尾に一撃を喰らわせる理玖。超常が研ぎ澄ました心が、拳の冴えを加速させて、更に。
「見え見えなんだよ――そんなんで」
組み伏せてしゃがんだ姿勢のままの理玖の頭上に桜吹雪が舞い降りる。刹那、巻き起こった風が――衝撃が花弁を吹き飛ばして、飛び出した理玖が桜の使い手の顔面に強烈な痛打を放った。あと僅か遅れたら取り込まれていた。技を封じる超常をかろうじで躱して、必殺の一撃が二人の影朧を黒い桜の花弁へと変えていった。
「ハッ!? 得物が無い……」
一方、飛び出した華織は颯爽と愛刀を抜き放とうとするも、やけに腰が軽い。それもその筈、先のやり取りの最中に安全の為、階段裏にまとめて置いて来たのだ。しかし丸腰で飛び出した愚を笑うでもなく、ひきつった表情の影朧達は一斉に手にした桜――鋼鉄の刃を振り下ろした。
「なんて、剣がなければ雑魚だと思った? 残念。私、天才でした!」
だが斬撃は届かない。身体を半身に起こして捌き、流れる様な動作で間を詰める華織。くるりと回って大地を蹴り、そのまま鮮やかな膝蹴りが影朧の顎を穿つ。一閃、吹き飛ばされながら黒い桜吹雪が辺りに舞って、着地と共に獲物を睨む華織の姿を見やり、影朧達は一斉に距離を取った。確かに間合いは影朧達の方が長い。慌てずに致命の一打を喰らわせられれば、それで終わる筈。
「いいのかなあ、私に時間を与えちゃって。――もう、遅いケドネ!」
それこそが華織の狙いとも知らずに。一挙手一投足、敵の動きを一つずつ備に解体して戦術をリアルタイムに組みなおす。最早術中に嵌った彼女らに勝機は無い。
「もう終わりだよ、バイバイ!」
天才の超常――赤枝流の免許皆伝の技が月明かりの下に冴え渡る。程無くして階段下は墨染めの桜が埋め尽くし、僅かな時の後にその漆黒は大気に溶け消えた。
「まずは一丁上がりっと。しかし」
消えた影朧達の跡を見やり思案する理玖。彼女らの動きは見つけた相手を手当たり次第襲っている様にも見えた。
「ほんと……狙いは何だ?」
「さあ……少なくとも夜這いじゃあ無いみたいね」
どの影朧も直接女学生の部屋に押し入る感じでは無い。嗅ぎ取った不穏を胸に秘めて、二人は再び闇に紛れる。脅威をこれ以上、ここから広げない為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
シン・コーエン
近所迷惑にならぬよう静かに戦おう。
こういう制限下で戦うのも良い経験だ。
灼星剣を顕現し、「君達が幸せな転生を迎えられる様、祈りを込めて戦おう。」と宣言。
彼女達の攻撃は【念動力で花びらを遠ざけつつ、身体に纏うオーラ防御】で防ぐ。
その上で一人ずつ「苦しかったんだね、でも、その苦しみももう終わりだ。次は幸せに生まれ変わってきておくれ。」と慈愛と転生への祈りを込めたUC:灼閃・清浄招で一人ずつ悪念を斬って浄化し、無事に転生できるようにする。
(このUCなら彼女達の身体は傷つけません。)
転生する彼女達には「縁が有ったら今生でまた遭おう。」と再会を望む言葉を餞として贈ります。
●幻星
「近所迷惑にならぬよう静かに戦おう」
シン・コーエン(灼閃・f13886)はまるで散歩でもするように、軽やかな足取りで廊下を進んでいく。こういう制限下で戦うのも良い経験だ――手ぶらのまま食堂へそっと顔を出した時、不意に幾つもの黒い桜の刃が牙を剥いた。
「――そんな顔をしないで。台無しだよ」
火花を散らして刃が不可視の壁にぶち当たる。うっすらとシンの全身を光が包んで、または操り糸に引っ張られる様に刃を振り下ろせないでいる影朧もいた。サイキックエナジーの賜物――そして一人の影朧が、光の刃に胸を貫かれる。
「苦しかったんだね、でも、その苦しみももう終わりだ」
音を立てる事も無く、一人の影朧が花弁へと姿を変える。いつの間にかシンの手には、深紅に輝く理力の剣が握られていた。その様子を見てようやく状況を察した影朧達が一人ずつ徐々に距離を取る。だが、もう遅い。
「次は幸せに生まれ変わってきておくれ」
闇の中、月明かりの下――桜吹雪の中で星が舞った。
「せめて、君達が幸せな転生を迎えられる様――祈りを込めて戦おう」
発現したシンの超常は、魂か肉体かどちらかのみを攻撃する奇跡の刃。この一撃ならば痛みを伴う事は無い。
「縁が有ったら今生でまた遭おう」
サイキックの迸りが光を呼んで、あたかも雷の様に縦横無尽に駆け巡るシンの攻撃は散開した影朧達を一人、また一人と墨染めの桜へと変えていった。慈愛と転生への祈りを込めて、無事に転生出来る様に――世界の理に従ってシンが成す事はただ一つ。餞の言葉が静かに響き、光剣の軌跡が指揮棒の様に黄泉路への葬送曲を奏でれば、僅かな間に食堂は真っ黒な花弁に埋め尽くされていた。
「……桜、か」
音もたてずに黒い桜の花弁はその姿形を空へ溶け込ませる。何も無かった様に――否、彼女達はここに居たのだ。それは決して、忘れてはならない。心にそう、刻み込んで。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・つかさ
事前に建物の構造は頭に入れておく
足音に気を付けつつ、建物の内部を巡回
目は暗闇でも全く効かない訳では無いけれど、それより頼れるのは音と気配
敵らしき異常を察知したら速やかに隠れ、可能な限り不意打ちで仕掛ける
戦闘に入ったら急所(頭部、首、心臓等)を狙い【鬼神鉄爪牙・握凄破】発動
不意打ち成功で直撃させたらそのまま無造作に握り潰す
しくじっても掴めたならそのままその部位を握り潰し、そのダメージで怯んだ隙に改めて急所狙いで再発動する
集団に当たった時も同じ
凄惨な死に方を見せつける事で隙を生ませる事ができれば、実質体勢も崩れるでしょう
大人しくしていれば、綺麗な顔のままで逝けるわよ。
貴女は、どうする?
……残念ね。
アメリア・イアハッター
●
学生寮かぁ
皆で寮生活っていうのも楽しそうだよね
明日の学校生活を楽しみにして眠ってる子達を気持ちよく寝させてあげるためにも、静かに敵を倒していきましょ!
視界に頼らず敵を探知するためUC発動
この状況下で動くのは敵か猟兵かしかいない筈
風を感じた方へと静かに向かう
それが猟兵だった場合は協力を要請
狭い空間であるから、可能なら探知と戦闘で担当を分ける事を提案
味方が戦闘に優れていれば自分はUCにて敵を探知
探知に優れていれば、見つけてもらった敵に対し格闘戦を行う
勿論敵が集団の場合は共に戦闘
敵に対しては高速で接近し、声を出させぬよう縛霊手「Vanguard」にて敵の首を掴み、そのまま首を握り潰すことをまず狙う
●赤鬼
「まさかつーちゃんがいるなんてね」
「アメリアこそ……ここ、飛べないわよ?」
偶然出会ったアメリア・イアハッター(想空流・f01896)と荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)は、揃って三階の廊下を歩いていた。あくまで隠密に声量を落として語らう二人の姿は、秘密を語り合う年頃の女の子の様だ。今のところは。
「にしても学生寮かぁ。皆で寮生活っていうのも楽しそうだよね」
「そうね。きっと楽しいわ」
賑やかな日常を想像して――そういうのは嫌いじゃない。しかし今は戦いの時、甘い話は後にして、曲がり角で二人はぴたりと足を止める。
「ま、明日の学校生活を楽しみにして眠ってる子達を気持ちよく寝させてあげるためにも、静かに敵を倒していきましょ!」
「ええ、静かに――出来ればだけど」
二人には分かっていた。この先に倒すべき敵が潜んでいる事を。その影朧を倒さない限り、先は無いという事も。静かに漂う気配を察して、鬼が口元を歪める。
「さあ、鬼ごっこの時間よ」
「つーちゃん、曲がり角の先に二人。接触まで五秒」
アメリアの超常はあたかも衛星レーダーの様に周囲の状況を詳らかにする。そこに居るだけで風が語り掛けてくれるのだ……いかにしんと静まり返っていても、大気の流れは、人の動きは決して誤魔化せないから。
「アメリア、早い、早いわ」
つかさは苦笑して曲がり角の前に。ああ、感じる。戦場の匂い――桜の香気と、血の臭いが鼻を刺して、瞬間、鬼が風よりも早く剛腕を向けた。
「ねえつーちゃん、何したの?」
「秘密よ。次は?」
秘密、乙女の秘密。でも風の流れが教えてくれた。鬼の両腕が二人の影朧の首を掴んで、怪力でそのまま頭をぶつけ合わせていた事を。
「次ね、その先……二人、あと三秒!」
「了解」
舞い散る墨染の桜を払ってつかさが駆け出す。あと僅か、アメリアの支援があれば取りこぼす事も不意を打たれる事も無いだろう。だからこそ安心して己が力を振りかざす事が出来るのだ。残り一秒――月明かりがゆらりと影の形を伸ばして、飛び掛かった鬼の腕と交差した。
「大人しくしていれば、綺麗な顔のままで逝けるわよ――貴女は、どうする?」
恐るべき超常。頭部さえ破壊されればどんな生物も大抵は絶命する。更に超常じみた怪力が上乗せされて、指先が強く頭にめり込むだけ何かが爆ぜる音と共に影朧が黒い桜の花びらとかした。
『…………!』
しかし、つかさの恐るべき怪力と超常を目の当たりにしても、彼女は決して引かなかった。否――引く事を教えられていなかったのだ。
「そう……残念ね」
小柄ながら圧倒的な膂力を誇る鬼の娘と対峙して、影朧が蛇の様にのたうつ黒い刃を解き放つ。鎖のようにつかさへ絡みついたそれは、そのままつかさの皮膚に食い込んで尚――血を流させる事すら敵わなかった。
「綱引きがしたいの? いいわよ」
ぐいと連なった刃を引き寄せるつかさ。体躯から想像出来ぬ異能の怪力は影朧を宙へと投げ放ち、そのままつかさへ覆い被さる様に飛んで来た。
「……じゃあね」
一撃。重なる様に当てられた顎への一撃がそのまま影朧の頭部を砕いて――墨染の桜が一面に散らされた。
「わ、キラキラしてるね」
月光が舞い散る桜吹雪に影を落とすと同時に、僅かな水気を照らして輝く。風に舞う夜桜――屋内でそんな風情も無いが、血の代わりに漂う香気が幾何かの安らぎを感じさせた。
「アメリア、この階にはもう――」
「うん、終わったよ。終わった」
勝手にがらりと廊下の窓を開けて換気するアメリア。影朧が溶け込んだ大気と外の冷気が混ざり合って、僅かに身が引き締まる。
「……もしかしたら、ここだけが彼女達の思い出だったのかな」
「戦争以外の――唯一の執着だった、とでも?」
そんな気がするの、とアメリアが続ける。風がそう伝えてくれたから。そして。
「あの子たちだけじゃないわ。他にも沢山いる、多分」
「そう……どちらにせよ、叩くだけよ」
何が出てこようとね。微笑しながら言葉を紡ぐつかさ。既にここは戦場だから。
だからこそ黒幕を倒し、一刻も早く平穏な日常に戻さなければ。
その答えを風はまだ、教えてくれない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
秋山・小夜
●アドリブ歓迎
「室内だと、火器類が使えないから厄介ですね。本音を言うとブッパしたいですが。」
右手に妖刀 夜桜、左手に幻月をもって敵の襲来に注意する。なるべく大きな音をたてないように、可能なら不意打ちを狙ってみる。戦闘開始序盤からユーベルコードを発動しておく。
可能ならユーベルコード【千本桜】(プロフィール参照)も発動し、敵の制圧を狙う。
銃火器類が使いづらいであろう戦場ではあるが、がんばってみる。
不利になったら全力で逃げるとします。
●幻刀
火は立たず、されど僅かな戦の匂いが闇の中に立ち込めた頃、秋山・小夜(お淑やかなのは見た目だけ。最早歩く武器庫。・f15127)は静かに現れた。
「室内だと、火器類が使えないから厄介ですね――」
本音を言うとブッパしたいですが。二振りの刀を携えしずしずと廊下を進む小夜。既に多くの幻朧が骸に還り、桜の香気が徐々に掠れていくのが分かる。にも拘らず充満した思い――怨念か、あるいは恐怖か。彼女らに秘められた戦の記憶が、立ち塞がった幾人もの猟兵との邂逅が、施設中に目に見えぬ何かを残したのだろうか。
「ま、がんばってみる」
気配を感じたのだ。今更引けるものかと手にした刃に力を籠めて、小夜はゆっくりと戦禍の中に身を投じる。
場所は二階の廊下――一階も、三階も凡そ制圧され尽くされた。幸い女学生はまだ夢の中。表の悪夢に鉢合わせた者はいない。
「さて――行こうか」
敵は三つ。曲がり角の奥、非常階段の方からゆっくりと近付いてくる。手には鋼鉄の桜、ここに来て大きな音を立てては隠密行動が台無しだ。すうと静かに息を吸って、そのまま止める。三、ニ……両の刃を静かに下ろして、距離と間合いと間隔を身体に刻む……一。瞬間、幻の様な白い影が躍り出た。
『…………!』
白刃が月明かりに照らされて、円弧の様な軌道を彩る。風を纏って放たれた神速の斬撃が一人の影朧の首筋を綺麗に斬り裂いて、残る一刀が正確に胸元を貫く。超常の剣戟――発動した艶やかな大円舞曲は伴奏も無く、倒れ伏せた影朧がそのまま廊下を墨染めの桜で満たした。まるで濁流の様に広がった桜花の中で、白き踊り手が二刀をそのまま高々と掲げて――されど最後の一人は臆する事無く、手にした黒い鋼鉄の桜を腰溜めに構えて小夜に突進した。
「――静かに、ね」
わたしだって我慢している。小夜が手にした二振りの刃が不意に消えて、辺りには真っ白な桜吹雪が舞い散った。咄嗟に放たれた零距離の制圧攻撃――踊る花弁が影朧に纏わりついて、二人の交錯の刹那、恐怖と共にその命を撒き散らす。神速の斬撃が花弁の様に、縦横無尽の攻撃と化したのだ。
「……舞い散れ」
小夜の背後で静かに、新たな墨染めの桜が広がっていった。
「それにしても、この子達は何の為に」
明確な意思を持っているというより、手あたり次第の殺意が見て取れた。その真意は分からない――虐殺をするならば、御しやすい相手は幾らでもいるだろうに。
今は淡い月明かりだけが、全てを静かに見守っていた。
成功
🔵🔵🔴
リア・ファル
POW
「なに、昔からあったでしょう? 女学生の幽霊の……怪談」
UC【電子幻想の申し子】使用
館内施設、廊下の一画へ幽霊のように降り立つ
「この廊下は僅かに月明かりが入る。……いい夜だね。
ゼロとイチ……夢と現の狭間にようこそ」
レイヤーを矢羽根模様の袴スタイルへ変更
(早着替え、迷彩)
ポルターガイストのように
館内の照明や物品を電脳魔術で操りながら戦う
音声も響かぬよう配慮しようか
(暗視、地形の利用、拠点防衛、罠使い)
鋼鉄の花弁が、映像を斬っても揺らめくばかり
「ここは通さないよ。……ヌァザ! 現実干渉開始!」
再び背後に顕現し、佩いた『ヌァザ』で、
円月殺法、斬り伏せる
「骸の海へと還り……微睡み眠れ」
●鎮魂
影朧が、最後の桜花組が立てこもったのは学生寮の小さな講堂。講義や雑談、催し物――戦だけじゃあない。彼女達の、淡い、青い思い出。
「なに、昔からあったでしょう? 女学生の幽霊の……怪談」
しんと静まり返った座席に、凛とした涼やかな声が響く。怪談――ああ、そういえばあった。そういう話には事欠かない。ここはそういう……研究所だった。ここに居てはいけない。ここに居ては、次は私の番だ。隠れていても見つかってしまう。残る影朧はゆっくりと大仰な扉を開く。その先は――長い長い、一本の廊下だ。
「この廊下は僅かに月明かりが入る」
不意に窓辺の月明かりが光量を変える。雲が晴れたのか、廊下に備えられた時計や、照明や、古めかしい電話や、ありとあらゆる器物の輪郭を鮮明に映し出して。
「……いい夜だね」
びゅうと風が吹いた。瞬間、それらが彼女達を歓待する様に宙へと浮かび舞い踊る。
「ゼロとイチ……夢と現の狭間にようこそ」
違う……こんなの、悪夢だ。
飛び交う物体が影朧擦れ擦れに降り掛かる。ああ懐かしい、この時計は未だ、現在という時を刻んでいるのか。
『……!』
鋼鉄の桜が刃を成して、舞い上がるそれらを真っ二つに斬り裂く――否、形はそのまま、崩れはしない。
「お行儀が悪いね、お嬢さんら」
静かな声が再び――目の前の矢羽根模様の袴を穿いた儚げな少女が、優し気な瞳を向けて口元を歪ませる。
『…………』
チカチカと照明が踊る様に明滅を繰り返して、続けて電話と花瓶が影朧の方へ。一人がそれを捌き、一人がそれを叩き落とし――音一つ鳴らない、狂った空間を抜け出す様に正面へと駆ける!
「ここは通さないよ。……ヌァザ! 現実干渉開始!」
ブン、と空間が震える。途端、目の前の少女の姿が猫と化す。物の怪か――帝都を脅かすのであれば、それを屠るが我等の使命。僅かに足を止め、それぞれが上段と下段の構えを取る。心に刻まれた存在意義が、生命を賭した青春の日々が鮮やかに蘇って――蘇る?
「骸の海へと還り……微睡み眠れ」
するりと銀の腕があの子の胸を貫いた。ああ、そうだ。私達はもう『終わっていたんだ』――猫は何処にも居ない。もうこんな時間、今宵も月が昇る頃合いかなぁ。
「――ここは君達の居場所じゃあ無い」
銀の腕は、白刃がまあるい円を描いて、私の上に……。美しい……。
「だけど、決して忘れないよ」
その思いの積み重ねが時間を、歴史を作ったのだから。リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の示した超常の幻影は残る影朧を須らく、あるべき場所へと還す。
後には墨染めの桜を払う様に、穏やかな風が吹いていた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『紅き妖刀』
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POW : 人を喰らい、人を斬る
自身の【宿主の生命力】を代償に、【妖刀を装備し、身体能力を強化した宿主】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【達人級の剣術】で戦う。
SPD : 心を喰らう呪い
自身に【忌まわしき呪いのオーラ】をまとい、高速移動と【精神を蝕む呪いの刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 奥義:紅刃十連撃
【宿主を操り、必殺の奥義】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
👑11
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●血壊
影朧は――同胞は祓われた。
これでは当初の目的と違う、違うのよ。
私の目的はそれじゃ無い。
仲間を求めて、新たな同胞を。
残る禍の基は、全て血に還して。
施設がみしりと揺れる。
地震か――ほんの少しだけ、地下から唸る様な音が響いた。
その音に呼応するかの様に女学生が一人、一人と目を醒ます。
大丈夫、戦いは終わった…………否!
彼女らが手にした刃は、未だ降伏せず。
真紅の刃が、重ねて闇を彩るのだ。
それは訓練用の旧式の退魔刀。
大きく重く、鍛錬の為に使われる――その前は、数多の影朧の血を啜った妖刀。
古い、古い戦の記憶だ――嗚呼、仲間は討ち果たされたか。
では仇討ちだ。復讐の時だ。呪われた刃がびぃんと歪な音を響かせる。
だが、あの妖刀が女学生の意識を制するならば、刃だけ砕けば彼女達は救える筈。
そしてそれが出来るのは、猟兵だけだ。
最早隠れる必要は無い。
血の雨が降る前に、古き呪いを鎮めるのだ。
※プレイング募集期間 3/18(水)8:31 ~ 3/21(土)8:30迄
秋山・小夜
●アドリブ歓迎
「まだ来るんですか。諦めが悪いですね。」
右手の妖刀 夜桜は変わらず、左手に巨大メイス 崩山を展開し、とりあえず叩きのめす。ユーベルコードは最初から発動しておく。
可能ならユーベルコードの【千本桜】も発動して制圧を試みます。
●乱戦
「まだ来るんですか。諦めが悪いですね」
妖刀を手に立ち塞がる影朧を前に、秋山・小夜(お淑やかなのは見た目だけ。つまり歩く武器庫。・f15127)は顔色一つ変えずに対峙する。
「……こんな月夜に、刃傷沙汰とは」
いつの間にか左手に身の丈以上の巨大なメイスを携えて、がらがらと超重を引き摺りながら前進する。
「まるで、わたし向けの舞台、みてえだな」
ニヤリと鮮紅が走る。風が巻き起こる。異常を孕んだ超常の風が、口元をぐにゃりと歪ませた小夜と共に――まるで暴風、そこにはもう、先程までの気だるげな少女の姿は無い。
「――悪く思うな、同じなんだよ」
月光の下、妖刀の剣技が冴える。突風と共に間合いを詰めた小夜の斬撃が影朧の手元を払い、戦鎚が降り掛かる上段の剣戟を無残にも払い落とす。剣に狂わされたのは影朧だけでは無い。それは小夜の超常も同じ――戦の女王が歓喜を上げてたたらを踏む。一つ、二つ、三つ、踏み込みと共に繰り出される追撃が徐々に影朧を壁際に追い詰めて、狂った様に振るわれる戦鎚が援護を許さない。
「ほらよ、どうした、足が止まってるぜぇ!」
四つ、五つ――狙いは上段。圧倒する剣筋を遮らんと大振りに振り被った刹那、片脚を軸に回転した小夜はそのまま戦鎚の一撃をがらあきの真正面に喰らわせた。
『――!』
暴風と共に吹き飛ばされた影朧がそのまま妖刀を落として、今度は小夜の追撃がそのまま、妖刀が射出された炸裂槍で粉々に砕いた。
「ハッ! さっきとは段違いだ、やり易いったらありゃあしねえ」
こそこそ隠れるなんて性に合わん。妖刀の本質、戦の狂奔が薄暗い廊下を蹂躙する。必死の形相で続いた影朧もその剥き出しの闘志に圧されて、一歩足を引いた――直後、戦鎚を離した小夜の飛び込み面が彼女を真っ二つに……否、咄嗟に振り上げた妖刀を真っ二つにへし折った。
「鈍らが、粋がるんじゃねえ」
つまらなそうに倒れる影朧――女学生を見やり、口端を吊り上げる小夜。幸い獲物はまだまだいる。今宵の狩りは終わらない。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・つかさ
●
【赤鬼】
様子見してこちらの手札の中身を伺っていた訳ね。
それなら、相応に対策を練らせてもらおうかしら。
今度は私が支援に回るわ。
作戦は……(耳打ち)
大丈夫よ、任せて頂戴。
前に出て接近戦、と見せかけて【妖術・九十九髪】発動
伸ばした髪で普通に拘束するように見せかけ、迎撃(切り払い)させる
初手で拘束できたならそれはそれでOK
切り払われたなら、切られた髪をも操り鼻や耳、口、服の中へ侵入
中で滅茶苦茶に暴れさせ咳やくしゃみ、擽りによる呼吸困難を誘発し、行動不能を狙う
刀への対処はアメリアに任せ、私は拘束に専念
私の髪なら、術のお陰で……ほら、元通りよ。
でも、そうね。温泉は行きたいわ。
ええ、楽しみにしてるわね。
アメリア・イアハッター
●
【赤鬼】
む、操るタイプの敵だったのね
さっきの覚えられてたりするのかな
よし、今度は前衛後衛交代な感じでいってみましょ!
学生を傷つけないためとはいえ、ほんとにやるの?
つーちゃんがいいならいいけど…学生、記憶残ってないといいなぁ
先程と同じ様に後ろに下がって補助、と見せかけておく
敵への拘束が成った後、飛び出しUC発動
風を引き連れ、屋内の壁床天井を蹴りつけながら加速し、拘束された敵の刀を横ばいから思いっきり蹴りつける
刀は横からの攻撃に弱いって聞いたことあるわ!
折れずとも、勢いと強風を利用して刀を遠くへと飛ばそう
つーちゃん、髪大丈夫?
これ終わったら温泉にでも行って髪のお手入れしましょ
私が洗ってあげるね!
●紅蓮
「む、操るタイプの敵だったのね。さっきの覚えられてたりするのかな」
「様子見してこちらの手札の中身を伺っていた訳ね……それなら、相応に対策を練らせてもらおうかしら」
交差路でアメリア・イアハッター(想空流・f01896)と荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)を囲む様に現れた影朧は、九歩の間合いを保って四方を塞ぐ。明らかに先の戦いを意識した布陣――つかさの剛腕に掴まれば命は無い。だからこその持久戦。陣を崩せられれば綻びが出来る、その一瞬を狙って。
(今度は私が支援に回るわ……)
(え、ほんとにやるの?)
背中合わせの二人が耳元で囁き合う。敵も達人ならこちらも埒外――つかさの提案を聞いて僅かに動揺するアメリア。表情には出さずとも、その一手が並みならぬ技である事は容易に想像がついた。それでも。
「大丈夫よ、任せて頂戴」
「……ヨシ!」
出来ない事を言う様な子じゃ無い。そして今まで必ず実行してきたのだ。仲間の提案を信じて、アメリアは構えを解く。先の戦いの様に精神を研ぎ澄ませて――そして。
「待たせたわね。それじゃ、行くわよ」
静かに鬼が一歩前に出ると、風と共にその影が大きく膨れ上がった。
「流石、古強者は伊達じゃないみたいね」
影は超常が齎した妖の技。噴火した火山の如く爆発的に伸びたつかさの髪が、まるで洪水の様に四方の廊下を埋め尽くす。不意に視界を埋め尽くした漆黒の波に影朧はその腕を、足を捕らわれ――それでも僅か、振るう斬撃で四肢の拘束を解き放ち全力で駆け出した者もいた。
「相手が普通だったら、だけど」
顔色一つ変えずに、人形遣いの様な手つきで長髪を自在に操るつかさ。それは切られた髪も同じ。地に落ちた幾重もの漆黒の束が、駆ける影朧の足元に絡みついて必死の前進を阻害する。
「……駄目よ、逃がさないわ」
つかさが開いた掌を強く握ると共に、影朧の顔に這い上がった黒髪がその口元を強引に塞ぐ。幾ら操っているとはいえ肉体を、正常な運動能力そのものを防いでしまえばどうなるか――亡者の様な目つきで睨む影朧を一瞥して、両腕を抱き締める様に交差した刹那、一陣の風が吹き荒れた。
それはアメリアの超常。発揮した凄まじき風が漆黒を吹き飛ばして、たじろいだ影朧の一瞬目掛けて赤い影が走る。狙いは妖刀――その刀身。正眼に構えたまま動きを封じられたそれに、疾風の如き飛び蹴りをぶちかます。
「刀は横からの攻撃に弱いってね――本当かどうか、試そうか!」
壁を蹴り、三角飛びで迫るアメリアの一蹴りが妖刀の腹を真っ二つにへし折って、煙の様に噴き出した怨念と共に呪われた鋼が砕け散った。
『…………!』
影朧達は読み違えていた。先の戦いの通り鬼の娘が前衛だろうと。だが実際は鬼が――つかさが補助で、攻め手はアメリア。その実力は見た通り……楽観出来る様な軟弱では無い。続けて足元を滑る様に風が吹いて、真紅の延髄斬りが上段のまま動きを止めた妖刀に炸裂する。
「二つ目、まだまだ行くわよ!」
この拘束さえ解ければ――しかし鬼より出でしその漆黒は尋常では無い怪力を以って影朧を締め付ける。油断すれば即座に昇天……呼吸を止められ、力が抜ければ打つ手は無い。全身に力を籠めて迫る真紅の風を見据えるも、まるで稲妻の様に上下左右を飛び跳ねる動きを見切れない。瞬間、下段のまま動きを止めた妖刀に鮮やかな滑り込みが突き刺さる。
「三つ目――あと一つ!」
僅か五秒、立ち所に三つの刃はへし折れた。残る一つ、最後の一刀はつかさの背後――吹き荒れた風がアメリアの飛び蹴りと共に八相に構えた妖刀を前方へ、つかさの背中へ弾き飛ばされる。黒髪がそれを捕らえてつかさの下へ……意外にもその妖刀をつかさは拾い上げた。
「私を操る? 残念ね――刀は足りてるわ」
そういう事なのだろうと、微かな希望に賭けたのだろうとつかさは察した。髪を伝って流れた妖刀の怨念は、増幅された思念は、戦への――現世への怒り、嘆き、悲しみ。それを以ってこの鬼を御そうとしたのだ……だが。
「それに、あなたは鍛錬が足りてない」
「そっちの意味じゃないと思……何でもない」
何を思い惨劇を起こそうとしたのか。それは呪われた――虐げられた存在の解放の為。だからと言って、一時の哀れみで惨禍を見過ごす訳にはいかない。握りしめた柄ごと、最後の妖刀は粉々に砕け散った。
「つーちゃん、髪大丈夫?」
「私の髪なら、術のお陰で……ほら、元通りよ」
バッサリぼろぼろになったつかさの長髪は、戦いが終わると共にすっかり生え変わった。艶やかな黒髪が月光に照らされて、小柄な体躯がきらりと輝く。
「すっごーい……でも、これ終わったら温泉にでも行って髪のお手入れしましょ」
その黒髪を手で掬いながらアメリアが提案する。乙女の命なんだから、大事にしなきゃと続けて。
「そうね。温泉は行きたいわ」
静かに――それでも、心なしか上ずった声で返すつかさ。戦いばかりの日常なのだ。偶にはそういう日があってもいい。
「楽しみにしてるわね」
その為には一刻も早く首謀者を成敗しなければ。倒れた女学生を介抱しつつ、二人は再び闇に紛れた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
紅葉・華織
●
たかだか刀に魅入られるとか、腑抜けてるんじゃあないかなあ。とはいえ、悪いのは刀の方だしね。
最初は当初のように素手で相手しつつ、位置取りを調整して『月華』を回収する。
「おまたせ、『月華』!」
そして、赤枝流で学んだ剣と直感(第六感、見切り)で向こうの攻撃を捌きつつ、刀めがけて一太刀。(【選択UC】,鎧無視攻撃)
この手のヤツって刀さえ壊してしまえば、どうにかなる筈。まあ、お約束みたいなものだよネ。
「――全く、魅入られるのなら私のお姉ちゃんの方がいいヨ。まあ、実際にそうなろうものなら、お姉ちゃんには近づかせないケド」
なんか『月華』が物言いたさげな気がするケド、ただの刀だし、気のせいダヨネ。
●散華
「はあ……たかだか刀に魅入られるとか、腑抜けてるんじゃあないかなあ」
一階の階段横、荷を取りに戻った紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)を待ち伏せていたのは、妖刀の影朧に支配された女学生達。その眼は最早正気のそれでは無く、丸腰の華織の首を獲らんとじわじわ間合いを寄せていった。
「まあ動きは中々のものだけど――甘い!」
瞬間、華織の姿が消えて――否、正面に対峙した影朧の懐へ滑り込む様に、神速の突きをぶち当てる。よろめきながらも決して妖刀を手放さない影朧の脛に直蹴り、体勢を崩した所で腕を取り締め上げる。こうも密着されては援護も出来ず、包囲を詰めつつにじり寄る影朧達へ、華織は捕らえた一人を強引に肩から投げ飛ばした。
「よっと。お待たせ」
その足で階段裏へ。しかし入口を残る影朧達に塞がれて――このままでは逃げ場はない。だがそれでいい。面倒事はまとめて片付けるのが一番だ。
「さあ行こうか、『月華』!」
すらりと愛剣を抜いた華織の眼に妖しい光が宿る。それは狩られる側の顔ではない。猟兵はいつだって、狩る側なのだから。
狭い用具置き場に白刃が殺到する。位置をずらして正面三方からの連続突き――成程、元は歴戦を潜り抜けた戦士の魂か。それでも華織には届かない。顔面を狙った迷い無き突きを軽く往なして手元を叩き落とす。右脇腹に迫る突きを手首の動きだけで払い、更に上から飛び掛かった一刀を逆袈裟の要領で弾き落として――三人の影朧は瞬く間に無力化された。そのまま華織は正面に飛び出して、両者の位置は逆転する。
「――全く、魅入られるのなら私のお姉ちゃんの方がいいヨ。まあ、実際にそうなろうものなら、お姉ちゃんには近づかせないケド」
くるりと向き直り地に伏せる影朧を見やる華織。手元の妖刀が何か言いたげな気がしたが――気にしない。ただの刀の戯言に聞く耳など持たぬ。
『……!』
「何とか言ったらどうなの……ネエ」
影朧が顔面を突き出して――地を這う様な斬撃が華織を襲う。成程、本体を狙われないならそういう事を考えるか……小癪な。
「この手のヤツって刀さえ壊してしまえば、どうにかなる筈だよネ」
その一刀を巻き上げて空中で両断。続けて刀身を隠し脇構えで迫る影朧を蹴り上げて、落ちた妖刀を逆手で貫く。
「……どうしたの? あとは君だけだヨ?」
ニタリと笑みを浮かべて迫る華織の威容に圧されて、それでも果敢に飛び掛かった影朧に神速の突きを――一瞬身を引いた刹那、軌道を変えた斬撃が手元を払った。
「転生して出直してきな。まだ若いんだかラ」
がらんと落ちた妖刀に無慈悲な白刃が迫る。風を切る音と共に、最後の一刀も砕かれた。ここに敵はもう居ない。
「……月華」
余計なこと考えちゃ駄目ヨ。心の中で呟いて、華織は再び闇に駆け出した。
成功
🔵🔵🔴
鞍馬・景正
●
あの刀に憑かれている――という事でしょうか。
ただ斬って捨てるより遥かに難事ですが、やらねばなりますまい。
◆戦闘
二刀を構えるまま、女生徒の前に接近。
此方からは手を出さず、【水月移写】にてあらゆる攻撃を凌ぎましょう。
如何なる斬撃とて、勢いの乗り切る寸前に迎え込むように払うか受けるかすれば太刀先が届く事はありませぬ。
攻防の途中に隙があれば、【水月移写】を解いて刀の鍔元に【早業】で打ち込み。
【怪力】を籠め、【鎧砕き】の要領で叩き折ります。
女生徒を無事救助できれば安全な場所まで運び、そのままもう一度眠っていて貰いましょう。
その後も操られている生徒をひとりでも多く助け出すべく、寮を巡りましょう。
鈴木・志乃
●
せっかく休めていた彼女達を巻き込んで……まったく、無粋だとは思わないのか。
迂闊な真似は出来ないな。一撃でも当たれば危険だ。
まさか僕がこれを捧げる側になるとはね……。
UC発動。もう静かに戦う理由もない。
【大声】で【破魔】の力のある大祓詞を唱える。
志乃の体にある【祈り】を、天上に御坐す神々に捧げよう。
必要ならば【全力魔法】で範囲と威力を拡大。人命がかかってるんだ、出し惜しみしていられないからね。
妖刀ならば、呪詛を纏うならこの祝詞は良く効くだろう。
操られた女生徒が回復すれば避難を促す。
【オーラ防御】展開
攻撃は【第六感】で【見切り】光の鎖で【早業武器受け】
【念動力】で捕縛して間近で祝詞を食らわせる。
●天剣
「あの刀に憑かれている――という事でしょうか」
開けた玄関口にて、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は蠢く無数の影朧の群れを見て、ぼそりと呟く。誰しもがその手には赤々と光る妖刀を握り、正気を失くした表情で静かに景正を睨みつけていた。
「せっかく休めていた彼女達を巻き込んで……まったく、無粋だとは思わないのか」
その傍ら、鈴木・志乃(ブラック・f12101)はその身に友の――昨夜の魂を降ろして、蠢く哀れな影朧達を静かに眺める。影朧とは言え本体は罪無き女学生、出来るだけ穏便に済ませたい所だ。
「迂闊な真似は出来ないな。一撃でも当たれば危険だ」
「ただ斬って捨てるより遥かに難事ですが、やらねばなりますまい」
背中合わせの二人は視線を合わせる事も無く、それぞれがやるべきを果たす為に――一度だけ軽く頷き合い――再び、闇に紛れた。
「まさか僕がこれを捧げる側になるとはね……」
幽霊だというのに――凛とした大声が響く。いつの間にか影朧達の背後へ回った志乃が、白髪を揺らしてその場に座り込んだ。降伏では無い――神に祈りを捧げる超常の儀式だ。最早出し惜しみはしていられないと、全力で祝詞を唱える志乃の、昨夜の声に中てられて、徐々に影朧達はその動きを止め――続々と、その場に倒れ伏せた。
「ふむ……抵抗しますか」
それでも、声に抗い暴れる影朧が脱兎の如く志乃の方へと駆け寄る。この声の源さえ絶ってしまえば――しかし、その企みは崩れ去る。目にも止まらぬ妖刀の一撃は立ち塞がった影に制されて、続く一太刀が手元から妖刀を叩き落とした。
「見事な太刀筋。だが」
景正だった。二振りの刀を手に、一刀が斬り結び、一刀が手を払う。不意を打たれた影朧はそのまま二の太刀を刀身に受けて、粉々に砕け散った。
「遅れはとらぬ」
志乃を止めるには景正を制さねばならない。滾る闘志で祝詞を耐えた精鋭が景正を囲み、剣鬼を屠らんと次々に躍り掛かる。その剣筋を鮮やかな二刀は舞う様に往なしては、もう一振りにて軽々と払い落とす。その場から動かず、群がる妖刀一人ずつ確実に無力化――これこそが『水月移写』、鍛えた技が発する超常にはありとあらゆる動きが、水面の様に研ぎ澄まされた心に映されるのだ。それを心で追えれば、後は身体が勝手に舞う。
「流石、歴戦の猛者といった所か」
最後の一人、迂闊な踏み込みでは立ち所に己が身を――妖刀を押さえられると踏んだ影朧は、全力でその柄を握りしめる。打突の瞬間以外に無駄な力を籠めるのは愚の骨頂。しかしこの相手には、その常識が通じない。ならば奇策を、こちらが力を籠めるという不意を打てば、必ず隙が生まれる――その考えが浅はかだった。
「ここにいる限り、何れ消えて無くなる」
刹那、僅かに動きを止めた隙に二刀の剛剣が襲い掛かる。鎧すら砕きかねないその一撃は鍔元を強烈に打って、甲高い音が響くと共に刀身が根元から真っ二つに折れた。
「傷つけさせはしない、絶対にね」
更に折れた刃を――景正に打ち据えられて転がり落ちた妖刀共々、志乃が伸ばした光の鎖が巻き上げる。
「その刃も、かつては人の為に振るわれたのだろう」
光の鎖は世界を照らす祈り。そして呪いを払う祝詞が影朧を――妖刀に深く染み入れば、一斉に赤い光が晴れて再び静寂が場を支配する。
「志は続く――安心して、お逝きなさい」
音も無く納刀し終えた景正が倒れた女学生を、消えていった影朧を薄く見やり呟いた。次は彼女達を保護しなければ……今宵はやる事が多い。
「ええ。この場も清められました。彼女達を――」
面を上げて立ち上がった志乃が続く。かくして女学生の一夜は守護者達によって守られた。願わくばこれらが、悪夢にならない事を祈って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
玉ノ井・狐狛
※アドリブ連携などお任せ
なるほど確かに、必殺の奥義ってのはフカシじゃねぇな。
……ってのは、“本来なら”の話だ。
動作が体格に合わせてチューンされてねぇし、刀(てめぇ)の寸法も使い手に最適とは言えない。
どれだけ身体を好き勝手したって、体重不足を筆頭に歪みはある。
それを見つけるのが、こっちの勝機ってワケだな。
▻見切り▻視力
連撃中の、本来は存在しねぇハズの間隙をつく。
腕を取って床に投げ落とす。
武器を手放させるのが目的だ、ちっとくらい痛いのは勘弁願おうか。
▻カウンター
宿主が必要ってことァ、本体だけでやんちゃはできねぇんだろうが。
念のために札でも貼っとくか。
▻破魔
ったく、柄でもねぇ真似をさせてくれるぜ。
●戦舞
「なるほど確かに、必殺の奥義ってのはフカシじゃねぇな」
殺意を漲らせた一撃を躱して、玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)が薄く笑みを浮かべる。ここは二階、月光冴える廊下にて、狐狛は前後を影朧に塞がれていた。止めど無く続く剣戟を捌き、光の膜が弾き、繰り出される斬撃を形を合わせる様に往なす姿は、まるで舞の様だ。
「……ってのは、“本来なら”の話だ」
しかし狐狛は知っていた。如何に達人の超常だろうと、それは本来の持ち主ならばの事。今の使い手は華奢な体躯の女学生、そしてこれは訓練では無い――息を整える間も無い実戦で、全力の打ち込みを続ければどうなるだろうか。
「どれだけ身体を好き勝手したって、歪みはあるんだぜ」
道は違えど過酷な修行を耐え抜いた琥珀ならばこそ、眼光鋭く動きを見切った刹那――一転、影朧の懐に小柄な琥珀の身が滑り込む。
「そんなデケェ刀じゃあこの距離は……どうする?」
死の間合い、されど一寸先は事無き。切先を躱した琥珀がそのまま強烈な痛打を影朧に見舞う。ぐらりと体勢を崩した影朧に二つ、三つと雪崩の様に連打を繰り出し、僅かに柄が手元を離れた隙に、肩を入れて大きく投げ飛ばした。
「……ちっとくらい痛いのは勘弁願おうか」
倒れた影朧の手元に駄目押しの蹴りを喰らわせて、妖刀ががらんと床を滑る。僅か三秒――手練れの反撃は見事に殺気漲る使い手を無力化した。残るは一人。
「動作が体格に合わせてチューンされてねぇし、てめぇの寸法も使い手に最適とは言えない」
その体格ならば、本来はもう少し小振りな刀が最適。刀の重みに身体が引き摺られては、自由闊達な動きなど望むべくも無い。そして長くに渡り打ち込み続けた疲労は、操った女学生の身体から容易く自由を奪う。動かしたくとも、最早身体が追い付かないのだ。
「仕舞いだよ」
それでも、と一気呵成に突っ込む影朧の一太刀を容易く躱して、すれ違い様に破魔の符を貼り付ける狐狛。柄でもねぇ真似をさせやがって――瞬間、ピタリと動きを止めた影朧が倒れ伏せて、赤く輝く妖刀が光を失った。
「念のため、お前もだ」
そして先に倒れた影朧に――女学生に静かに寄って、同じ札を貼る。静寂を取り戻した廊下に月光が映えて、狐狛の影を大きく伸ばした。
「――まだ居やがるな。面倒くせぇ」
徐々に妖刀の気配は消えている。恐らく仲間が上手くやっているからだろう。だがその奥、更に深い所から嫌な気配が滲み出ている。からりと声を上げて、狐狛は気配がする方へと静かに足を進めた。
大成功
🔵🔵🔵
吉岡・紅葉
あの人たちは…昔の學徒兵ですか? では、私の先輩ですね。
刀…どうやら影朧の邪気にあてられて、
妖刀に変わってしまったんでしょうか?
すごい殺気ですけど、負けませんよ。
私は、明るい明日を夢見るハイカラさんですから!
敵の攻撃は苛烈ですが、必ず生命力の代償を伴います。
まずはその辺の物品を拾い上げ、チープウェポンとして利用します。
妖刀の斬撃を<咄嗟の一撃>で打ち払い、
一撃ごとの相手の消耗を待ちます。
狭い場所に誘い込んだり、床に転がったりしながら
やり過ごして時間を稼ぎ、チープウェポンが
耐久限界を迎えたら、<破魔>の力を宿した退魔刀で
【強制改心刀】で<早業>の居合いを。
きわどいですが、うまくいきますかねぇ?
●骸徒
「あなたたちは……昔の學徒兵ですか?」
対峙した虚ろな表情の女学生――影朧を静かに睨み、吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)は独り言ちる。三階の行き止まり、いつの間にか端へと追い詰められた紅葉は、それでも臆する事無く言葉を続ける。
「では、私の先輩ですね」
まず構え方が違う。最近に流行りは正眼をやや傾けて手元を隠す護りの形。しかし相手は何れも、真っ直ぐ己の中心に刀身を置く正々堂々とした熟練の手並み。
「すごい殺気ですけど、負けませんよ」
言葉は無い。だが音も無くにじり寄るその姿は修羅の如し――刀……どうやら影朧の邪気にあてられて、妖刀に変わってしまったのだろうか。まあいい。転がっているモップを手に取って、紅葉も同じく影朧と相対した。
「私は、明るい明日を夢見るハイカラさんですから!」
ニヤリと口端を緩めて、声高らかに宣戦を布告する。陰気臭いのは性に合わない――陽気にこの場を突破してやると思いを込めて。
まず動いたのは影朧だった。最速の挙動――諸手突きが紅葉の喉元に迫る。風を切るその一撃を、刀の腹を押さえる様に捌いて、そのまま返す手首でモップの頭を薙刀の様に伸ばして脛にぶつける。
(とまあ、こんなので怯むとは思いませんけど――)
瞬間、ぶつけた用具から無数の紐が伸びて影朧に絡みつく。たかが紐だ――それでも、僅かに動きを鈍らせるには十分。拘束を解かんと妖刀の切っ先をそれに向けた刹那、白刃が迸った。
(きわどいですが、うまくいきますかねぇ?)
強制改心刀――邪神のみを斬り裂く超常が女学生の腹を打ち据える。居合の要領で抜き放った一撃に倒れ伏せる影朧――妖刀は輝きを失って、次の影朧が果敢に紅葉へと飛び込んだ。
「いいや、遅いですよ」
道端においてある学習机を掴んでは投げ、それを斬り伏せる間に間合いを詰める紅葉。二つ目――鮮やかな剣捌きが続く影朧の悪意を斬り裂いた。
「さて、お次は……!」
三つ目、最後の一人は悠然と妖刀を構えたまま、紅葉と一定の間合いを保つ。成程、手練れだ……安っぽい目くらましも通用しないだろう。
「では、尋常に勝負と行きましょう!」
紅葉は下段の構え、正眼の間合いにじりじりと近寄って徐々に制空権を侵していく。切先を徐々に上げながら、刃が触れる瞬間、影朧が大きく妖刀を上段に構え直した所を紅葉が一気呵成に詰めた。
「まるで基本の動作だ、ですが!」
相手の打突が僅かに速い。引きながら紅葉の切っ先を押さえんと振り下ろされた剛剣が退魔刀を弾いて、ぐらりと紅葉の体勢が崩れる。そしてそのまま喉元に迫る妖刀――急な攻め手もしかし、片手に縛り付けた塵取りの盾が一撃だけその猛威を凌ぐ。
「戦いは刀だけじゃない、って事です!」
剣に圧されて弾け飛んだ塵取りを払って、片手で決死の突きを極める紅葉。魔を断つ一撃がそのまま妖刀の光を奪って、辺りには静寂が戻った。
「……っと、大分散らかしてしまいましたなぁ」
さてお掃除と、救助をと。
ハイカラさんはそれでも、陽気に世界を渡っていくのだ。
成功
🔵🔵🔴
雪華・風月
●
あの刀が彼女等を操ってるのですか、ならば早急に砕きましょう
とはいえ、妖刀というだけあって強化された彼女達を傷つけずに砕くというのは今のわたしでは力不足…
で、あれば…
同じ妖刀の力をもって…
我が家に伝わる妖刀…紅蓮刀を開放します!
背の大太刀を一息に抜き放ち…
自身を刀剣の霊力で強化…放たれる呪いの刃への耐性に【呪詛耐性】
相手の高速移動を【見切り】、黒塗で牽制。退路を防ぎつつ超強化された身体能力で追い、その刀、呪いを斬り割く!
こほっ…代償は少々響きますが、
後は黒幕のみ…気合で残り一戦に臨みましょう
陽向・理玖
●
その子達はあんたらの同胞じゃねぇ
返して貰うぜ
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!
ダッシュで間合い詰めグラップル
フェイントで敵の攻撃誘い
動き見切り妖刀武器受け
カウンターで部位破壊
弱い箇所探り刃を拳で叩き折る
…無事か?
女学生の状態確認し
出来るだけ女学生にダメージ与えないように心掛け
可能であれば刀持っている手を払ったり
足払いで体勢崩させ
刀取り落とさせたりしてからの破壊も狙う
攻撃は残像纏い見切り
出来るだけ離れず自分の間合いで戦う
間合い詰めりゃ振り回せねぇだろ
UC起動
避け切れぬ時は痛みは激痛耐性
呪いは覚悟で耐える
そんな攻撃効くかよ
寿命削った分脆くなった箇所を一気に壊す
一体ここで…何があった…?
●龍華
「あの刀が彼女等を操ってるのですか、ならば早急に砕きましょう」
「ああ。その子達はあんたらの同胞じゃねぇ――返して貰うぜ」
雪華・風月(若輩侍少女・f22820)と陽向・理玖(夏疾風・f22773)は、二階の廊下に居並ぶ影朧達を見やり、決意を新たにする。悪いのは妖刀だ――それさえ砕けば、女学生達は元に戻るだろう。
(とはいえ、妖刀というだけあって強化された彼女達を傷つけずに砕くというのは今のわたしでは力不足……)
華奢な体躯で達人の風格を醸し出す影朧の圧に、風月は歯噛みした。上の位の者と対峙すれば、剣士なら誰しもが分かる……実力差は、この場でいきなり埋められるものではない。だからこそ奥の手を、我が家に伝わる妖刀の力を以って……!
「紅蓮刀の封印を解除します!」
「変身ッ!」
瞬間、赤と青の光の奔流が鮮やかに乱舞した。その中から柄にもない大太刀を担ぐ風月に、蒼き装甲に身を包んだ理玖。己が身を超常に晒して、轟音と共に戦端が開かれた。
(速さはこっちの方が上――それでもアレを喰らっちゃ不味いな)
理玖の脳裏に過るは超絶の太刀を振るう戦姫の姿。あれ程では無いにしろ、影朧の攻撃も凄まじい。それらを捌き、返す拳が詰めた間合いの勢いと共に妖刀を打ち砕く。
「先ずは、一つ!」
残心と共に襲い掛かった二人目を、しゃがんだ姿勢で足払い――崩れた所に追撃に肘打ちを喰らわせて、手元から強引に妖刀を奪い捨てる。
「二つ! まだまだ!」
敵の数は多い。だがこっちも幾度と無く死地を潜り抜けた身。護る為の戦い――上等だ、幾らでもかかって来いと己を震わせて、理玖は渦中へ飛び込んでいく。
「…………」
一方、静かに抜き放った大太刀を八相に構えて、幾人もの影朧と対峙する風月。その眼は静かながら闘志に満ちて、目の前の練達に決して遅れはとらない。
『……!』
瞬間、飛び掛かった影朧の斬撃を縫うように絡め取り、巻き上げて手元から払い捨てる。梃子の要領――大太刀の間合いならば、懐に入られる前に無力化するのも容易。格の違いを見せ付けて、たじろぐ影朧の方へ一歩ずつ間合いを詰める風月。
「…………!」
影朧が引いた刹那、黒い影がその動きを縫い留める様に投げ放たれる。風月の暗器――黒塗の短刀が闇を裂いて、影朧の足元を穿ったのだ。そして僅かに乱れた足並みを風月は見逃さない。
「……斬り割く!」
呪いを退ける破魔の太刀で手元を払う様に打ち据えて、鍔元から妖刀が砕かれる。威が違う、技が違う――たかが百年の戦場を生き長らえた妖刀と、戦国の世から今までを駆け抜けた大太刀とではそもそもの格が違うのだ。
「随分と派手にやってるみたいだな……!」
大物を振り回す女子は矢張りおっかない。床に転がる妖刀を一つずつ砕きながら、風月の威容に溜息を漏らす理玖。直後、背後に迫った影朧の奇襲がその刃を突き立てて――空を裂いた。
「そんな攻撃効くか……残像だよ」
拳が唸る。かろうじで拳を背面で受けた妖刀から呪詛の籠った波動が装甲を侵食して――その痛みを耐えて、握りしめた拳が尋常ならぬ握力で刀身を圧し折った。
「……無事か?」
目の前で崩れ落ちる女学生を支えて――意識は無いものの呼吸はある。そっと床へと下ろす理玖。まだまだ影朧は溢れている。このままでは埒が明かない。
「こほっ……代償は少々響きますが」
すらりと大太刀の刀身が鏡の様に側に寄った。風月だ。口元から血を零して、それでも敵を見据える瞳に迷いは無い。
「ここを抜ければ後は黒幕のみ……気合で残り一戦に臨みましょう」
「気合、ね」
不意に笑みが零れる。そうだ、ゆっくりしている場合じゃない。
「じゃあ行こうぜ――一気に終わらせてやる!」
パチンと音が鳴り響いて疾風が巻き起こる。理玖の超常が、命を懸けた速さが縫う様に影朧の手元を打ち据えて、手品の様に妖刀が宙を舞う。
「成程……これなら、ば!」
やり易い。狙いは妖刀のみ。一気呵成に風月が足並みを揃える。自身の五体も超常に強化されているのだ。動きを追う位ならば問題無い――その勢いを以って、続々と落ちる妖刀を打ち砕く風月。
(しかし一体ここで……何があった……?)
風を纏い影朧を屠る理玖の脳裏に一抹の不安がよぎる。これ程の数の影朧が一斉に、しかも二種……並々ならぬ呪いがまだ秘められているのではないだろうか、と。
しかし今は眼前の敵を討つのが先決。
曇り無き戦士達は、妖しき赤を続々と砕いていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
東雲・一朗
●
▷兵装
帝都軍の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。
▷退魔の真髄
「妖に身を浸し、妖刀に堕ちた退魔刀…祓い救わねば戦友達も浮かばれぬか」
なれば、帝都軍の古参として示さねばなるまい。
退魔刀を砕く、いや、妖刀と化した退魔刀の中に潜む妖気のみを断つ業を。
「退魔刀の真の使い方、見せてやろう」
【戦闘知識】に裏打ちされた【見切り】で敵の斬撃を【破魔】の霊気纏う【オーラ防御】影切にて斬り払い【武器受け】し、機を逃さず妖刀に向けて【強制改心刀】を2連【二回攻撃】で叩き込み妖気を討ち祓う。
「退魔刀の真髄は影朧を斬るに非ず、影朧を救い祓う事なり」
さてこの先にいるのは…懐かしさも感じるが。
リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎
紅き妖刀……か
この場にイルダーナを呼ばずとも、
ルーの権能は我が内にあり!
相手の挙動を演算して解析把握
後の先こそボクの神髄
(情報収集、カウンター)
奥義に合せて魔剣を振るう!
タイ捨流もかくやの体術混じりで、その剣、捌き受け流す
(武器受け)
これぞ、太陽神の百芸のひとつ!
UC【光神の権能・百芸反撃】! その剣、解析(みき)った!
相手の剣技を進化させ、応じ技として放つ!
「ヌァザ、流水を絶つが如く! 銀閃よ、閃け!」
(破魔、武器落とし、早業)
「その古き恩讐を鎮め給え。
今を生きるサクラミラージュの人々の為に」
●破邪
「妖に身を浸し、妖刀に堕ちた退魔刀……祓い救わねば戦友達も浮かばれぬか」
懐かしき剣風。一糸乱れぬ影朧達の構えは東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)の脳裏に戦火の記憶を呼び起こす。一階裏手の搬入口、だだっ広いホールめいた閑散とした場に立ち並ぶ威容に、一朗は薄く目を閉じた。ならば、帝都軍の古参として示さねばなるまい。すらりと佩いた旧式退魔刀を抜いて、かつての戦友達と黙したまま対峙する。
「紅き妖刀……か」
不意に銀光が辺りを染めた。可憐な少女が――リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が姿を現して、そっと一朗の側に寄る。
「援護します」
「感謝する」
一言交わしてリアも己の魔剣を手の内に――この場にイルダーナを呼ばずとも、ルーの権能は我が内にあり。煌く刀身が眩い光を放った刹那、地を踏みしめる音と共に戦端が開かれた。
先ずは小柄な少女から――幾ら達人とはいえ、側の者を護りながら戦うのは倍の労苦だろう。妖刀を霞に構えて吶喊する影朧はリアの方へと間合いを詰める。しかしその認識が浅はか――彼女もまた達人。揺れる魔剣は手品の様に妖刀を吸い寄せて、竜巻の如くそれを巻き上げる。
「甘いよ、戦争はこっちの世界にもあったんだ」
戦闘経験で負けるつもりは更々無い。数え切れぬ程の練達の戦いを間近で見ていたリアにしてみれば、此度の戦もその一つ。流れる様な動作で跳ね上げられた影朧の上体に直蹴りを喰らわせて、怯んだ所に一朗の一太刀が綺麗に振るわれる。
「――退魔刀の真の使い方、見せてやろう」
滅ぼすのは邪心のみ。取り付いた戦の怨念はたちまち霧散して、続く影朧の追い打ちを手先の妙だけで摺り上げる。僅かに崩れた体勢に諸手突き――的確に急所を穿った一撃が妖刀を元の刀へと戻して。
「ヌァザ、流水を絶つが如く! 銀閃よ、閃け!」
リアの威勢が影朧達を居竦めて、駆け出した一撃は鮮やかに妖刀のみを打ち払う。相手の挙動を演算して解析把握――後の先こそボクの神髄。起こりを潰せば如何なる攻撃も封じる事が出来よう。相手が百戦錬磨なら、こちらは千変万化の太陽神の奥義。相手の剣技を進化させ、応じ技として放つのみ!
「その気迫では帝都を脅かすなど……余りにも未熟!」
そして一朗の一喝が、居並ぶ影朧の心を更に揺さぶる。声無き声が、ガタガタと赤き刀身を震わせて、影朧は一斉に二人へと斬りかかった。
「突撃か、かつてもそうだったな」
僅かに笑みを含んだ一朗が静かに退魔刀を下ろす。起死回生の一手、精神が肉体を凌駕した時こそ勝利――そんなまやかしが、幾つもの若き生命を奪ったのだというのに。
「無謀なる戦がたまたま勝利を齎したにすぎん。だが」
貴官らはそれを繰り返すというのか。仮初の若き身体を以ってしても――内に昂る闘争の炎がそれを選ぶというのならば、同輩として諫めるのが私の役目か。
「勝ち得た平和を捨てるなど、殊更許す訳にはいかんのだ」
一朗の眼が鋭く光る。敵は四方より来たり。一つ、流水の如き足運びで。二つ、背中越しの気配を見据えて、三つ、疾風の如き体捌きで、四つ、悪しきの核を穿つ。逆袈裟、袈裟斬り、横一文字、平突き――目にも止まらぬ四挙動が、瞬く間に取り囲む影朧の妖気を討ち祓う。
「退魔刀の真髄は影朧を斬るに非ず、影朧を救い祓う事なり」
邪気を振り落とし刀を納める。もう一方――神の威を持つ少女も、尋常ならぬ早業で事を終えていた。
「そうやって生命を粗末にする事を……ボクは認めない」
距離、敵数把握。会敵までコンマ五秒。挙動選択――動きは見切った。
「生きる為、生かす為に生まれたボクだ……だからこそ」
エンゲージ。足を踏み肩を入れて、手元を叩き落とす。ちょっと痛いかもしれないけど、ゴメンね。続けて半歩後退、片手で斬撃を跳ね上げて、持ち手を伸ばして更に高くより叩き落とし、圧し折る!
「せめて、再び見える時は健やかに」
横一閃を獣の様にしゃがんで躱し――小柄で良かった。昇竜の如き猛烈な勢いで鍔元を跳ね上げる。最後、正面から打ち合って鍔迫り合いから足掛け――逆手に持って、妖刀を打ち砕く。
「その古き恩讐を鎮め給え。今を生きるサクラミラージュの人々の為に」
破魔の祈りが静かに響いて、魔剣を虚空へと戻すリア。いつの間にか足元には銀虎の猫がすり寄っていた。
「制圧完了だ――そちらは無事か?」
「はい。ですが嫌な反応は未だ消えません……」
静寂の中を一陣の風が吹き抜ける。倒れた女学生を介抱し終えた二人は、再び一階を哨戒しながら、互いに感じた嫌な気配について話し合った。
「矢張りか。この建物……一つだけ、見ていない場所がある」
「ええ。地下ですね。しかし何の反応も無い……」
旧特装研の地下一階は一朗も与り知らぬ所であった。リアの探知も、そこに何も見出せない。だが……。
(さて、この先にいるのは……懐かしさも感じるが)
それは戦友との再会が齎したリフレインか。あるいは。
胸に去来した思いは未だ、正体を現さない。
それを見極める為に、二人は禁断の地へと足を進める。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御園・桜花
「元は此方で大切に使われていたのでしょうに、影朧になるとは…お可哀想に」
UC「桜鋼扇殴打」使用
破魔の属性攻撃乗せ刀身をぶん殴る
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せない攻撃は盾受け又はカウンターからの破魔乗せシールドバッシュで対応
女学生を傷つけず敵を倒すのを目指す
「道具として使われたいという願いならば分かりますけれど。人を贄としてでも存在したいという願いは見過ごせません」
「使い手を守る剣、護国の剣が貴方達の基であった筈…このまま滅したくないのなら、願って下さい転生を。貴方達がヤドリガミになれるよう、私も願いますから」
破魔と慰めのスキル乗せた鎮魂歌を歌う
戦闘後は女学生に活いれ起こし部屋への避難手伝う
●桜剣
びゅうと強めの風が吹く。施設の屋上、小さな庭園の様に置かれた大小の可愛らしい鉢植えは女学生達の物だろうか。暗雲を払う様に風の音が響いて、しかし月光の下に蠢く影は尋常ならぬ赤と黒の群れだった。
「元は此方で大切に使われていたのでしょうに、影朧になるとは……お可哀想に」
その影の真ん中に桜色が一つ――御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は放った言葉の通り、哀れみの視線を振り撒いて取り囲む影朧達を一瞥する。その手には鋼の扇が。ちりちりと桜の花弁が桜花の周りを舞って再び強めの風が吹いた刹那、妖刀を手にした影朧が一斉に飛び掛かった。
「しかし――道具として使われたいという願いならば分かりますけれど。人を贄としてでも存在したいという願いは見過ごせません」
がきん。風よりも早く振り下ろされた一刀が鉄扇に捌かれる。押さえられた刀身から湯気の様な黒い煙が……否、邪なる気を、桜花の破魔の一念がじわりと鋼の身を癒したのだ。女学生を傷つけずに敵を倒す。その答えが、徹底した迎え技。威力は先方が持てばよい。その向きをすいと変えてやるだけで、悪しきは勝手に自滅する。
「使い手を守る剣、護国の剣が貴方達の基であった筈……」
二つ、三つと繰り出される超常の剣戟を、流れる様な動作で弾き、往なし、押さえ込む。その度に紡がれた破魔の精霊が、超常が、影朧を包み込む様に広がった桜の花弁と共に、その汚れを癒していく。
「このまま滅したくないのなら、願って下さい転生を。貴方達がヤドリガミになれるよう、私も願いますから」
祈る様に鎮魂の歌が響く。空に染み渡った桜花の祈りが、舞い散る花弁と共に影朧を癒すのにそう時間は掛からなかった。
「皆様、大丈夫でしょうか……?」
倒れた女学生を起こして、一人ずつ安全な屋内へと戻す桜花。幸いにして妖刀は鎮められ、操られていた女学生も無事だった。
「ここから先、暫くは戦場になるでしょう――ですが、お任せください」
先の戦いの記憶が残る子も、もしかしたらいるかもしれない。血生臭い事は無かったと思うが――それでも、決して良い思い出では無いだろう。だから。
「戦が終わりましたら、ぜひ当店へお越しくださいまし」
それまで死んでは成りません。安全な所へ避難して――と、続けて。桜花の見据える視線の先には感じ取った最後の怨念。この建物の最も深い場所に、それは居る。
成功
🔵🔵🔴
シン・コーエン
女学生を傷つけず妖刀の犠牲にさせず、如何に勝利するか・・・。
選んだUCは【刹那の閃き】。
【第六感・見切り】と併せて全ての攻撃を読み切り、舞うような動きで回避。
「(妖刀に)殺気を出し過ぎだ。いくら早くても剣士としては二流だな。」
刃から放射される呪いの余波は【呪詛耐性とオーラ防御】で弾く。
こちらからの攻撃では、まず【念動力】で宿主たる女学生の腕の動きを止める。
当然、妖刀の動きも止まるので、妖刀が宿主から独立した動きをする前に、灼星剣による【早業・2回攻撃・光の属性攻撃】の一瞬の斬撃で、妖刀を浄化しつつ断ち斬る!
これを繰り返して妖刀殲滅。
尚、女学生が倒れて怪我しないよう【念動力】で静かに座らせます。
●道
「女学生を傷つけず妖刀の犠牲にさせず、如何に勝利するか……」
思った以上に敵は多い。仄暗い廊下――一足先に悪しきの根源、地下一階の一室へつながる廊下へと辿り着いたシン・コーエン(灼閃・f13886)は、目の前に居並ぶ無数の女学生――影朧の姿を見やり、嘆息する。見た所六人程か……いいだろう。顔色一つ変えずに光の剣を顕現して、シンは悪意の渦中へと躍り出た。
相手は丸腰に近い、光る剣らしきものを手にしているがこの数には敵うまいと妖刀達は思案していた。戦いは数だ。先の戦の見取りもある。左右同時に上段と下段から斬撃を繰り出せば、躱す事もままならんだろう――だが、その浅はかな思いは、刹那の後に砕かれる。
「確かに速い、だが……」
剣が来る。剣圧と共に、頭をかち割る様に、胴を薙ぐ様に。その太刀筋は美しい――だが、それ故に分かり易い。剣筋が不意にピタリと止まる。見えない鋼線に引っ張られる様に、ガタガタと全身を震わせて刀が振り切れない。
「……殺気を出し過ぎだ」
一閃――目にも止まらぬ連撃が、動きを止めた影朧の、妖刀の邪心のみを打ち据える。ぐらりと体勢を崩して、静かに座り込む女学生――赤い光はとうに消えていた。
再び、正面から雪崩れ込む様に無数の剣閃が迫る。光の壁が剣圧を弾きながら、それらを全て目で追い捌く。追いたくて追える速さでは無い――しかしシンの超常はそれら全てを容易く見切る。故に幾ら来ようと関係無い。弾丸の様な二の太刀三の太刀を軽々と手にした光剣で往なし、返す刃が影朧の手元ごと打ち据える。
「幾ら早くても、それじゃ剣士としては二流だな」
舞う様に殺到する殺意の間を潜り抜け、空いた手で指揮者の様に指先を振るえば、不可視の念動が影朧の動きを押さえて彫像の様にその場で止める。
「戦いは数だ。でも質が伴わなければ――」
打突後のがら空きの立ち姿に光剣が迸った。それは赤く妖気を発する刀身を塗り潰す様な眩い光を放って、二つ、三つと立て続けにそれらを無力化していく。
「それだけでは、生き残る事は出来ない。いいね」
残心。振り切った光剣が虚空へ姿を消すと共に、念動に支えられた女学生達が静かにその場でへたり込んだ。最早、意思を害する影朧の妖気は、ここに存在しない。
「さて……この奥が本丸か」
ぎい、と重苦しい音が響く。振動と共に開かれた重い扉の奥――旧特装研地下一階の正体が、遂に明かされるのだ。
「…………何故、こんな所に」
目の前には灰色の巨大な桜の樹。幻朧桜では無い、似た様で違う、異質なモノ。それを取り囲む様に大小様々な機械が配されて――まるで広大な実験場の様だ。
『こんな所だから』
凛とした声が響く。かつんと軍靴を鳴らして影が迫る。
『こういったモノがあるのだ。嘆かわしいと思わないか?」
そしていつの間にか無数の銃口が、開かれた入り口を捉えていた。
成功
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第3章 ボス戦
『『影朧の守護者』鷹宮・花蓮』
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POW : 帝都軍戦技・六式《剛》
【軍制式採用拳銃の3連射撃 】【旧式退魔刀による連続斬り】【しなやかな脚から繰り出す蹴り】の連撃】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : どうしてアナタは戦うの?なぜ私達を攻撃するの?
対象への質問と共に、【自らの霊力でこじ開けた転移門 】から【自身が組織した影朧共生派の軍隊】を召喚する。満足な答えを得るまで、自身が組織した影朧共生派の軍隊は対象を【軽機関銃の掃射や、刀による斬り込み】で攻撃する。
WIZ : 強制改心刀《影式》
【強烈な霊力と情念】を籠めた【旧式退魔刀】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【敵意と戦意】のみを攻撃する。
👑11
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●哀刀
かつて、戦争があった。
人々はその戦禍から生き残る為だけにあらゆる手を講じた。
それがたとえ人の道を外れるものであったとしても。
その中で沢山の人々が傷つき、生命を失った。
『――嘆かわしいと思わないか? その所為で彼女等は生まれた』
影朧。傷つき虐げられた者達の『過去』から生まれた、不安定なオブリビオン。輪廻の輪を外れ永劫にこの世を彷徨う、生ある者の影。
『何が転生だ。そんな事で彼女等を、彼等を、我等を無かった事にしようなどと……』
軍服の少女が憤りを湛えて言葉を続ける。その表情は修羅か羅刹か――傍らにて小銃を構える兵士の影朧達が、鈍色の銃口を静かに向けて彼女の怒りを体現する。
『戦の穢れと称されて……ただひたすら国の為に命を賭した者達を、たかが現世を生きていないだけで滅する事が、果たして正義なのか?』
物言わぬ桜の巨木が――総身に機械の蔦を這わせた、物言わぬ幻朧桜じみたモノがじわりと明るみを帯びて。これこそが罪、先の戦いで対峙した疑似幻朧桜の接木の一つ。数多の生命を冒涜した、偽りの神秘の桜。
『そんな事を、許せるものか。だから我等は』
逢魔が辻、隠された罪と罰が詳らかにされる妖の刻。彼女の背後に聳える灰色の桜が、悍ましい花弁を散らして、淀んだ幻影が続々と姿を現した。
『――この灰色の桜を以って、世界へ宣戦を布告する』
鋼鉄の桜を携えた、最早人の形すら無い影朧の群れが、軍靴の音を鳴らして迫る。
『全ての影朧を開放する為に』
そして開幕の銃声(ベル)が、暗闇の中で轟いた。
【特殊条件】
・敵からの先制の銃撃があります。これを回避した後、首魁たる『影朧の守護者』鷹宮・花蓮への追撃が開始される為、先制に対するプレイングはボーナスとなります
・戦場は薄暗い広大な地下空間、雑多な機械が占拠する遮蔽物の多い場所です
・鷹宮・花蓮への対話は内容によりプレイングボーナスとなります
・形無き影朧への対処は特に考えなくても問題ありません
※プレイングは3/30(月)8:31 ~ 4/1(水)24:00 迄募集します。
※今回、当方事情により再送が発生する見込みです。
お手数ですが詳細はマスターページよりご確認下さい。よろしくお願い致します。
秋山・小夜
●アドリブ歓迎です。
「自分の目的の為に命を欲するとは、それ、本気で言ってます?」
先制攻撃対策として、ユーベルコード【千本桜】を防御、回避のために転用。その後、可能ならユーベルコード【荒城の月】を発動。
回避がうまく行ったら、右手に妖刀 夜桜、左手に二〇式戦斧 金剛を展開して近接戦闘に持ち込む。
近接戦闘に持ち込めそうにないなら金剛を砲撃モードにチェンジして、敵に57mm砲弾(榴弾)をお見舞いする。
状況不利になりそうなら一旦退く。
「周りがあなた方を忘れても、少なくともわたしはあなた方を忘れませんよ。」
鞍馬・景正
●
貴殿の言い分も分かる。
が、今を生きる者たちに害を加えるなら、看過は出来ぬ。
――その行いを許せば、過去の繰り返し故に。
◆対処
肩を突き出す偏身となり被弾面積を最小限に。
同時に縦一線の斬撃による【衝撃波】で銃弾を切り落とし。
それで防げぬ銃弾は、刀を盾にしての【武器受け】で防御を。
◆戦闘
その後、頭目に向けて疾走。
三連射は銃口を【視力】で観察し、軌道を予測し回避。
斬り合いの間合となれば此方も刀を合わせ、連続斬りの太刀筋を【見切り】つつ【怪力】で受け止め。
重心の変化があれば蹴りへの用意と見て、一歩踏み込み、軸足の爪先を踏み潰させて頂く。
最後は【天暁不露】にて、その怨みごと切り伏せさせて頂く。
●乱戦
爆音と爆炎が暴力の嵐を巻き起こして、居並ぶ敵対者へ怨嗟の衝撃を解き放つ。硝煙の中明滅する鋼の牙が、まるで舞い散る桜花の様に戦場を蹂躙して――否、桜の花弁が無数の鋼を食い潰さんと、幻想的な薄紅の壁を構築する。
「自分の目的の為に命を欲するとは、それ、本気で言ってます?」
それは秋山・小夜(お淑やかなのは見た目だけ。つまり歩く武器庫。・f15127)の超常、千本桜。己の武装を護りの壁へと変幻し、あたかも咲き乱れた桜の様に怨嗟の弾幕を包み込んだ。
「単純な力比べで、いや――その程度で」
一歩、一歩少女が進む。狙うべきは幻の兵団ではない。倒すべきはただ一つ――渦中の諸悪の根源のみ。敵を見据えて、小夜は荒れ狂う弾雨の中を駆け抜けた。
『抜かすか……狙撃兵!』
野太い声が戦場に響く。途端、弾幕を形成する前衛の更に奥から研ぎ澄まされた一撃が放たれた。遅れて甲高い音が小夜の耳に届いた――嵐の中の一矢、精確に猟兵を狙う一撃が、その進撃を押し留める。しかし。
「――その行いを許せば、過去の繰り返し故に」
きぃん、と、鋼がぶつかる音が。千本桜が防いだ弾雨を切り抜けたのは一人ではない。下段半身でその一撃を――針穴を通す様な必殺の狙撃を、鬼が一刀のもとに斬り伏せた。
「貴殿の言い分も分かる。が、今を生きる者たちに害を加えるなら、看過は出来ぬ」
再びの狙撃。炸裂音と共に火花が散る。散ったのは鉛玉――鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)は冷静に、不可視の衝撃と斬撃で音よりも早い殺意を事も無く断ち切った。
「そういう事です。見えましたよ」
そして景正の背後で小夜の桜が姿を変えて――元の形、妖刀と戦斧を携えた人狼が、ゆらりと巨大な斧を敵陣に向けて言い放つ。
「この距離なら外しません。砲撃開始」
瞬間、新たな爆炎が敵陣を赤く染め上げた。
『この距離で……砲撃だと!?』
小夜が放った至近距離での支援砲撃――戦斧に仕込んだ57mm榴弾砲が破壊の花を無慈悲に裂かせる。僅かに乱れた戦列――それだけで十分。その綻びを、蒼瞑の剣鬼が風の様に駆け抜けた。
『て、敵しゅ』
「遅い」
剣閃が迸る。その度に真紅が咲き乱れ、墨染めと共に空へと溶け消えた。対多数乱戦――刀は本来、こういう局面でこそ武器としての真価を発揮する。長大な白刃が触れるもの皆骸に変えて、途端に人垣が潮の様に引いていく。
「退け」
距離を取って包囲銃撃、その判断が戦線を脆く崩した。真紅の血道が赤絨毯の様に一筋の道を切り拓き、後に続いた小夜の追撃が道を更に押し拡げてゆく。
「銃剣突撃……出来ないでしょう、吹き飛ばしますよ?」
迂闊に纏めて飛び込めば57mmの洗礼が待ち受ける。一度でもその恐怖を覚えてしまえば――後は容易い。吹き荒れた旋風が有象無象を散らすだけ。乱れた戦列の中を駆け抜けた二つの影は、いとも容易く銃火の壁を突破したのだった。
『……ほう、あの中を抜けてきたか』
軍刀を片手に花蓮は戦鬼と対峙する。もう片方の手――軍用拳銃を景正に向けて、怨嗟に満ちた声が続いた。
『これ以上、邪魔をするな』
「断る。これが仕事でな」
正眼に構えて九歩の間合い、気迫の圧し合いがちりちりと目に見えぬ火花を散らし――途端、言葉の代わりに炸裂音が静寂を裂いて殺意が飛び掛かる。
(成程、素直な攻撃だ)
超常めいた戦技とはいえ、その銃撃は花蓮の性格の様に真っ直ぐ景正の胸元へ迫り来る。故に見切るのは容易い……僅かに切先を上げて、蝕刃が殺意を振動に変えて手首を揺らした。軌道がずれた銃撃が景正の頬を通り過ぎ、手元を狙った二つ目の銃撃を鍔元で軽く往なし、三つ目の銃撃を刃先の曲線で受け流しながら――獣の様にその身を沈めて、景正は大地を蹴り上げた!
(音が途切れた――今!)
白刃が空を舞う。圧倒的な踏み込みが地を揺らして、花蓮の視界から景正の姿を隠す。途端、地を這う様な斬撃が烈風と共に襲い掛かった。
『見事! 流石の手練れだ……だが!』
その斬撃を半歩引いて、開いた半身と片手の軍刀がかろうじで凌ぎ切る。火花が散って、鋼が打ち合う音が響いて、舞い上がった砂埃が二人の視界を僅かに曇らせば――更に二人目の追撃が、花蓮の頭上より割って入る。
『それだけでは、足りない!』
小夜の奇襲――兜割りの要領で振り下ろされた一撃を、拳銃の側面で僅かに弾いて。揺れた切っ先が空と共に外套を掠めれば、ひらりと漆黒が空に舞った。
『それだけで我等の悲願を……ここで止める訳にはいかない!』
裂帛の咆哮と共に鋭い蹴りが小夜を襲う。躊躇なく振り上げたしなやかな健脚が小夜の懐にぶち当たり、その反動で鍔迫り合いを続ける景正も僅かに揺れる。
「いいや、止める」
しかしその衝撃を堪えて、踏み込みが小夜の爪先を強引に踏み潰す!
「その通り……もう容赦はしねえ」
直蹴りを戦斧で受け止めていた小夜が叫ぶ。その手に刃は無く――取り出したるは武骨な炸裂槍。
『これを躱すか……猟兵!』
「散れ、天暁の前の露が如く」
「その恨みごと、撃ち貫く!」
花蓮の頭上より破裂音が……炸裂槍の弾倉が回転し、圧倒的な暴力が解き放たれる。
花蓮の軍刀が巻き上げられて、大上段から超常の白刃が烈風と共に振り下ろされる。
二つの威力が花蓮の中で交差した瞬間、墨染めの瘴気が止めどなく溢れた。
『馬、鹿な……これほどの、力……とは……』
血の代わりに真っ黒な、凝集した怨嗟をぶちまける花蓮。超至近距離での巻き上げ大上段面打ちに、鋼鉄すら貫く鉄槍の一撃。尋常では無い苛烈な攻撃に晒されて、最早花蓮もsの姿を保ってはいられない。
「そのまま逝け」
「周りがあなた方を忘れても、少なくともわたしはあなた方を忘れませんよ」
『いいや……衛生兵……!』
血の代わりに闇色の呪詛を吐きながら幻の兵団を呼び寄せる花蓮。景正も小夜もまだ健在――しかし背後より聞こえた炸裂音が、これ以上の追撃を許さなかった。
『一旦、引く……!』
血煙と共に花蓮は姿を隠す。その前には命懸けで終結した精鋭達。たとえその身が朽ちようと、彼女に忠誠を誓った同志達が、再び猟兵達の前に立ち塞がる。
「……しつこいですね」
「いいだろう。何度でも討ち倒すだけ」
再び愛刀を構える小夜と景正。
恐れるまでも無い――悪意はこれ以上のさばらせはしない。
全ては今を生きる者たちの為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
吉岡・紅葉
●
あれ、ここは学生寮じゃない…。
どうやら逢魔が辻が発生したようです。
黒幕はあの學徒兵…私達の先輩だったんですね。
【先制攻撃】
〈戦闘知識〉で銃の弾道と射程を見極め、
〈地形の利用〉も駆使してやりすごしますよ。
物陰に潜みつつ〈忍び足〉で接近戦を挑みます。
相手はかなりの手練れのようですから、
正攻法では勝てないかもしれません。
でも私は諦めませんよ。誰がなんと言おうと
私達猟兵は今を生きる人々の味方です!
〈情熱〉を込めて叫び、【愛国進軍曲】を発動!
後光から生み出した光の旗を、共感した
全ての人に与えますよ。
「明るい明日を迎えるために! 一緒に戦ってください!」
武器を手に駆け出し、〈破魔〉の一撃を
繰り出します。
雪華・風月
●
…現世で生きてない事や影朧であること関係なく我が学友、知人を傷つける貴方はわたしにとっての間違いのない悪です
お国やらわたしには到底理解できぬスケール…
しかし、その宣戦がわたしの知ってる人を傷つけるのであれば…
わたしはただ、知ってる人達を守る…
そのために刀を振るう…それだけです
銃撃を射線、指の動きから【見切り】回避…
共生派の攻撃は背を低く前傾に、黒塗を【投擲】し牽制しつつ動き回って回避を
ここが地下…それも研究施設であるならアレ(霊脈)は確実にあるはず
あとはそれに乗って懐に…雪解雫の一刀にて
●鉄火場
「あれ、ここは学生寮じゃない……」
肌を掠める炸裂音が、ここは戦場であると声高に告げる。
「どうやら逢魔が辻が……発生したようですね」
「それは、捨て置けない……きゃあ!」
二人の學徒兵――吉岡・紅葉(ハイカラさんが通り過ぎた後・f22838)と雪華・風月(若輩侍少女・f22820)は、乱れ飛ぶ銃弾の雨から身を隠し互いに反撃の機会を伺う。幸い雑多な機材が壁となって一時凌ぎはかろうじで出来た。
「……現世で生きてない事や影朧であること関係なく我が学友、知人を傷つける貴方はわたしにとっての間違いのない悪です」
「そして黒幕はあの學徒兵……私達の先輩だったんですね」
視線の先、機関銃を構える幻の兵団の後方に花蓮は立っていた。自分達と同じくらいの年恰好――されどその表情は、本物の戦場を潜り抜けてきた者だけが帯びる、世界に絶望し、そして怒りに満ちたものだった。
「正攻法では勝てないかもしれません。でも私は諦めませんよ」
銃火の奥を見据えて隙を伺う紅葉が目を細める。そう簡単に突破は出来ないだろう――それでも、やらなければならない。
「お国やらわたしには到底理解できぬスケール……しかし、その宣戦がわたしの知ってる人を傷つけるのであれば……」
ぼそりと風月が呟く。途切れぬ火線、さながら花蓮の怒りの咆哮を体現したようなそれが、もしも帝都で振るわれたとすれば――その先は想像もしたくない。
「わたしはただ、知ってる人達を守る……そのために刀を振るう……それだけです」
だから、ここで止める。二人が反撃の決意を滾らせた時、不意に薄紅色の花弁が戦場に舞った。
「これは……まさか」
「風が吹いた――好機です!」
僅かに鉛玉の雨が遮られる。そしてその僅かな時さえあれば十分――二人は學徒兵、帝都を守護する者だ。何を恐れるか――瞬間、黒い影が刹那の隙を駆け抜けた。
『ユーベルコヲドか、だがこの程度』
檄を飛ばす花蓮。前線は既に猟兵の奇襲で破綻しつつある。それでもこの兵力、数では圧倒的に上回っているのだ――仄暗い偽りの幻朧桜がじわりと闇を滲ませて、続々と影朧を解き放つ。
『全軍、陣形を崩すな。斃れるべきは君達ではない……!』
「でも私は諦めませんよ。誰がなんと言おうと私達猟兵は今を生きる人々の味方です!」
不意に明るい声が響いて、光り輝く錦の御旗が花蓮の目に入る。掲げられた旗の印は帝都桜學府のもの――悍ましい仇敵の、かつての自身が掲げていたそれだ。
『邪魔をするな、この……新兵風情が!』
抜き打ち。光の射す方へ速射――三発の弾丸が空を裂いて旗を破る。されど怯まず、光の御旗は力強くその輝きを増して。
「新兵だろうと、わたし達が引く訳には参りませんので――!」
翻った旗の根元から漆黒の刃が飛び掛かり、花蓮のこれ以上の射撃を許さない。そして旗が二つに、二手に分かれる。桜の超常が拓いた道を、紅葉と風月が駆け抜けたのだ。
『貴様らも見てきただろう、理不尽に虐げられた影朧の末路を!』
「その理不尽を力で解決する事が、正しいとは思いません!」
漆黒の刃――風月が投げた黒塗りの短刀を軍刀で捌いて、反対の側面から迫る紅葉の奇襲へしなやかな蹴りで応戦する花蓮。
『甘い、教科書通りではな!』
地形を利用し身を隠して迫るも、歴戦の手練れには早々通用するものでは無い。そのまま銃口を突きつけた花蓮に対し、それでも紅葉は明るく返す。
「教科書通り、そうです……怯むものですか。全ては明るい明日を迎えるために!」
『そうやって暗がりの現実を隠すのだ、貴様らは!』
怒りを込めて、引き金に指が掛かる。じっと紅葉の眼を見つめて、怒りと、悲しみが入り混じった表情が崩れた――刹那。
『何……だと……』
引き金は引かれない。遅れて届いた音と共に、拳銃を握る花蓮の片腕が宙を舞った。
(ここが地下…それも研究施設であるならアレは確実にあるはず)
時は僅か前に遡る。密かに距離を詰めた紅葉の奇襲が不発に終わった直後、風月は二人より離れた場所にいた。このまま走っても花蓮の反撃には追い付かない。ならば自らの超常――霊脈に乗って加速して一気に攻め立てる他、この状況を打開する方法は無い。そしてこの地は歪められたとはいえ、影朧が溢れる逢魔が辻――ならば、霊脈はきっとある。
(あとはそれに乗って懐に……!)
ドクン、と心音が響く。否――その音はこの地の霊脈、魂の道筋。そして幸いその道は花蓮の足元へと続いていた。ならばやる事は一つ――すうと静かに息を吸って流れに身を委ねるのみ。手にした刀、雪解雫に力を籠めて風月は静かに目を閉じた。
「…………逃がさぬ!」
瞬間、風月は風となった。
『……霊脈に乗ったか、見事』
がらん、と軍刀ごと花蓮の腕が地に落ちる。正に一瞬、砂埃を巻き上げて斬り抜けた風月は正眼に構えて、更に離れた所から花蓮を囲む様にじりじりと近寄って。
『だが……甘いな』
花蓮が口元を歪めた直後、その影より武装した兵団が続々と姿を現した。
「まさか、あなたは……!」
止めの機会を伺っていた紅葉が間合いを取って、花蓮に問う。
「この地の霊脈を利用して、そして偽りの桜の魔力で……兵隊さん達を」
『そういう事だ。故にここで立つ限り、私は決して斃れない!』
ぐらりと、落ちた腕より闇が生じて――そのまま花蓮に再び接合した。
「そこまでして、どうして……!」
『何度も言わせるな。全ての影朧を開放する為……!』
声高に風月へ言葉を返した直後、ぐらりと花蓮の足元が揺れた。連鎖爆発――まるで地雷の様な、そんな罠など何処にあったというのか。
「即興ですが仕掛けさせて貰いましたよ。さあ!」
それは紅葉のチープウェポン。幻の兵団から盗み取った火薬の類を、咄嗟に地形に仕掛けていたのだ。兵の囲いが崩れた今ならば、三度の奇襲を仕掛ける好機。
『フン、これは教科書通りではないな。しかし!』
火線が再び紅葉の行く手を遮る。風月の方にもその音が轟いて。
『不利な戦場に留まるほど間抜けではない。全軍迎撃!』
そう言い残し花蓮は闇に消える。残るは無数の幻の兵団のみ。
しかし二人の攻撃は届いたのだ。現在が過去に敗れる事は無いのだ。
その威を示す様に仄暗い桜が舞う戦場で、錦の御旗は煌々と輝いていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
御園・桜花
「貴女の怒りは正当なものに思えます。それでも。共生できない願いである以上、私は貴女を滅し、転生を望みます。生きて、桜學府で、その望みに邁進することが、より多くの影朧を、そして貴女自身も救うものになると思いますから」
自分への先制攻撃は、第六感・見切り・盾受けで最小限に抑え込む
UC「癒しの桜吹雪」使用
他の猟兵の怪我を一気に治癒
その後も重傷者が出れば即使用
暗視で視界確保
桜鋼扇に破魔と炎の属性攻撃乗せ前線で花蓮と殴り合い
花蓮の攻撃は第六感や見切りで躱す
躱せない攻撃は盾受け又はカウンターからのシールドバッシュ
「その怒りが活かせる場所に生まれるまで…何度でも転生していらっしゃい」
破魔と慰めのせ鎮魂歌で送る
●桜吹雪
まるで桜吹雪の様に鉛弾の嵐が吹き荒れる。
「貴女の怒りは正当なものに思えます。それでも――」
その中を一歩、女が――御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)が歩み出る。凛とした姿勢で臆する事無く、災いの根源を見据えて。
「共生できない願いである以上、私は貴女を滅し、転生を望みます」
強き言の葉が空間に響き渡る。淡い光を纏って――超常が、徐々にその輪郭が確かなものになる。
「生きて、桜學府で、その望みに邁進することが、より多くの影朧を――」
不意に薄紅色の花弁が舞った。彼女のものでは無い。その強靭な薄紅色は鈍色の悪意を尽く防いで――僅かながらの隙が、もう一つの桜の発現を促す様に桜花の周りを彩った。
「そして貴女自身も救うものになると、思いますから」
再び嵐が巻き起こる。優しい桜色の慈雨が、猟兵達に降り注いだ。
『これは……何だ、桜?』
突如降り注いだ桜色の奇跡に、幻の兵団はたじろいだ。恐るべき威力ではない。優しい香りがする――戦場には相応しくない彩りにそっと指を添えた刹那、暖かな光に包まれて兵は姿を消した。
『馬鹿な、即効性の毒か!?』
否。それは身体を蝕むものでは無い。生ある者には癒しを、呪われしものには祝福を。輪廻の輪から外れた歪められた魂を癒し、元ある場所へと還す超常――それは強き力ではない。それでも、否応なく呼び出された彷徨える魂を元の場所へと誘うには、十分過ぎる力を持っていた。
「そこを通して下さいませんか?」
光が迫る。薄暗い空間ではただでさえ目立つ、その神々しい桜花の姿に兵達はそっと道を開く。凛とした優し気な声色は……ああ、懐かしい帝都の香りが。ここは薄汚れた戦場では無い。我々は帰って来たのだ。
「……いつかきっと、その魂が廻る事を」
その時は何時でもお待ちしております。ぼうと光に包まれて、まるで灯篭流しの様に癒された魂が還っていく。
『……魔女め』
ただ一人、憎悪を滲ませた漆黒の魂を除いて。
「その怒りが活かせる場所に生まれるまで……何度でも転生していらっしゃい」
『否。ここで終わりにする。そう決めたのだ……!』
白刃が僅かな光を反射して、闇色の呪詛と共に迸る。いつの間にか間合いを詰めたその一撃を、躊躇なく桜花は受け止めた。
『何故だ……何故届かない
……!?』
花蓮の斬撃は敵意と戦意を攻撃する改心刀の奥義。影式の太刀筋は尋常で見切れる程柔では無い。しかし攻撃する対象が――敵意と戦意が無ければどうなるだろうか。切るべきが無ければ、刃は自ずとその身を逸らす。肩口で止まった一太刀を桜花は銀盆でそっと受け止めて、滑り込む様に反撃の鉄扇を花蓮へと喰らわせた。
「私は、あなたを救いに来ました。私だけではありません……」
癒しの桜吹雪は全ての猟兵を包み込み、そして幻の兵団を包み込み、遍く魂に救済の慈雨を降らす。
「誰もが皆、争いを止める為に来たのですから」
『ふざけるな! その様なまやかしに踊らされる程、私は――』
鉄扇を防いだ軍刀から力が抜ける。それでも、奮い起こした怨嗟が花蓮を衝き動かして、衝動の儘に手にした拳銃が火を噴いた。
「その血煙が、魂を汚した……」
『だとしても、今更引く訳には!』
二つ、三つ、放たれた弾丸は正確に桜花の身を穿つ。しかし桜色の超常はそれらが当たる傍から、まるで何事も無かったかのように桜花の身を直ちに癒した。
「私はあなたを、赦します」
『止、めろぉぉぉぉッ
!!!!』
激高と共に放たれた直蹴りを銀盆で往なして、舞う様に破魔の鉄扇を叩き込む。桜花を纏ったその一撃は、正確に花蓮の首筋を打ち据えた。
『猟、兵…………ッ!』
途端、しゅうと白い煙が花蓮より立ち昇る。しかしそれも僅か、漆黒の呪詛が花蓮の全身を包み込んで――そして、花蓮の姿は消えた。
「――今は届かなくとも、何れ」
未だ銃声が鳴り止まぬ空間に歌声が響く。
それは破魔と慰めの思いを込めた、桜花の鎮魂歌。
ただひたすらに、心より影朧達の安寧を願って。
成功
🔵🔵🔴
玉ノ井・狐狛
先制の弾は、障壁で止める。
軍の拳銃なら、コストや安定性の都合で、威力はそう高くねぇだろうが、何枚か重ねとこう。
►紗▻オーラ防御
連撃の型か。
妖刀被害者の嬢ちゃんたちとは違って、さすがは軍人サン。技が板についてらァ。
初手の銃弾は、開幕同様に受け止める――
そう、銃で来るよな?
さっき動かず止めたのは、そう誘導する――「銃で牽制すれば動きを絞り込める」と認識させるため。
刀を大きな動きで避け、体勢が崩れたところに来るだろう蹴りに、
触れてベクトルを逆転。防ぐと同時にダメージを与える。
◈UC▻カウンター
こんなのは、正義だ何だの話じゃない。
むかーしアンタがやってた戦争と同じで、ただの利害の衝突だぜ、軍人サン?
●転化
「ったく、鬱陶しいったらありゃしねぇ……な!」
炸裂する火線は突如現れた障壁に阻まれる。その奥には妖狐が――玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)が気怠げな雰囲気で立っていた。
「そんなハジキは三下の得物だっての――疾く去ねぃ」
『ひっ……』
狐狛の手には二、三の護符たる絵札が掴まれていた。全身を淡い光が――薄絹の様な力場で包み、殺到する暴力の嵐を事も無げに防ぎ切る。まるでヤクザの出入りだ、などと場違いな思考が脳裏を過って、堂々とその場を後にする狐狛。狙いは頭目……こんな半端モノどもでは無いのだから。
「よぅ軍人サン、一局どうだい?」
『博徒風情が……舐めた真似を』
闇の色が特に深い袋小路で、傷ついた体を休めていた花蓮の前にふらりと現れた狐狛。挨拶代わりの銃撃が音を裂いて放たれるも、先の様に何も起こらない――障壁は健在、超常と言えど拳銃弾程度でそれを貫く事は叶わない。
「だからさァ……効かねえっての」
呆れた口調で応じる狐狛に言葉も無く、疾風の如き斬撃で返す花蓮。しかし切っ先が触れる事は無く、狐狛は舞う様にくるりとその一刀を軽やかに躱し切った。
『先を潰された――馬鹿な』
「さすがは軍人サン。技が板についてらァ」
まるで照明の無い舞台。いつの間にか手にした宵闇の万年筆が『止レ』と命じれば、下ろした刃が岩に刺さったかの様に動きを止める。ならば、とその間隙――花蓮の剛脚が小柄な狐狛の側頭へ大鉈の様に振るわれた。しかし。
『――ッ!?』
「まあ聞いとくれよ。こんなのは、正義だ何だの話じゃない」
それこそが狐狛の狙い。牽制と本命を防げば、残る手札はあと一つ――そいつをひっくり返せば、この場はアタシの勝ちだ、と。発動した超常が逆転の一撃をそのまま花蓮へと浴びせ、尋常ならぬ衝撃が花蓮の全身を音も無く吹き飛ばしたのだ。
「むかーしアンタがやってた戦争と同じで、ただの利害の衝突だぜ、なァ?」
地に伏せて転がる花蓮へ問う狐狛。手段は違えどここは鉄火場、先に心根が折れた方が負ける――故に、狐狛は一切の暴力を振るわない。圧倒すればいい。この者には敵わないと心の底から分からせれば、敗者は場を降りる他に道は無いのだから。
『だからと言って』
「おっとその先は……言っちゃあ駄目だ」
だからと言って止められない。そうしてボロボロになった奴をごまんと見てきた。だから、それ以上言ってはならないのだ。言の葉に魂が宿るのならば、思考を止めるという思考を選択してはならない――それこそが、狐狛の最後の手札。
「答えが廻りゃあ上がれねえ。分かるかい?」
そうして親の総取り――何もかも毟り取られて素寒貧になっちまえば、後に残るのは憎悪だけだ。だが降りれば、再起する事だって叶うかもしれない。しかし魂だけが若い花蓮がそれを選ぶ事は、今はまだ出来なかった。
「そっちじゃねえよ――ったく」
世の理を識る前に逝った因果か……ブンと溢れ出た呪詛の闇が花蓮を包んで、再びその姿を闇の奥底へと隠し通す。後に残るは――響く軍靴の音だけだ。
「なあ兄さん達、手持ちは十分か?」
徒党を組んで己を囲んだ幻の軍勢に、ニヤリと歯を見せ笑う狐狛。
今夜は大入りだ、飽きる迄付き合って貰おうかい。
大成功
🔵🔵🔵
紅葉・華織
※アドリブ・連携歓迎
直感(選択UC,第六感,見切り)に従い、回避行動。
ふぅん、成程、そこにいて、そういう手段をとるのかあ……。
「ま、いいよ。敵がいるのなら、ただ屠る。強そうな相手がいるのなら、斬る。武の人間として、それ以上の理由が必要カナ?」
得物は勿論『月華』(鎧無視攻撃)。コイツも妖刀らしいケド、私にはコイツは別にただの良い刀にしか見えない。でも、あなたには、どうなのカナ!?
「――戦いに理由はいらない。勝つか負けるか、だよ。私はあなたの敵。だから――来なよ。満足するまで、付き合うからさ……!」
とか口では言うけど、本音はとっとと帰ってお姉ちゃんとイチャコラしたい。てへ。
――速攻で決める。
●烈華
(ふぅん、成程、そこにいて、そういう手段をとるのかあ……)
薄暗い空間を硝煙が埋め尽くす。間断無く銃火が幽鬼の群れの様に火花を走らせて、更にその奥――鷹宮・花蓮の姿を時折浮かび上がらせた。
(手数は流石だけど、これだけじゃあね)
ちらちらと薄紅色の花弁が舞った刹那――僅かな隙に口元を歪ませた紅葉・華織(奇跡の武術少女/シスコン師範代・f12932)が、脱兎の如く敵陣の中を駆け抜けた。薄紅色の花弁が射線を遮って――この好機を逃す訳にはいかないと身体が勝手に動く。倒すべきはただ一つ、あの軍人だけなのだから。
「という訳で、邪魔をしないで欲しいな」
ぞろりと鈍色の影が、その手に鋼鉄の桜を携え紅葉の前に。されどそのどれもが――先程まで相対したどの敵と比べるまでも無く、脆い。
「敵がいるのなら、ただ屠る。強そうな相手がいるのなら、斬る。武の人間として、それ以上の理由が必要カナ?」
『……!』
剣閃が走る。すれ違い様に撫でる様にその腹を、肩口を、両の脚を、青白い妖刀『月華』の刃が問答無用で骸に還す。相手にならない、何故ならば自分は天才――これでは人形相手に打ち込み稽古でもしていた方がまだマシな方。ただそこにいるだけで、この赤枝流師範代を止められると思ったら大間違いだ。
『本当に、しつこい……』
紅葉の目の前、灰色の桜を背にして軍服姿の少女が佇む。その手には尋常ならぬ気配を湛えた旧式退魔刀が。あれも妖刀か?
『何故そうまでして、我等の邪魔をする? 再び現世に戻った魂に自由を――なぜそんな、当たり前の権利を奪おうというのだ?』
この月華は妖刀らしいケド、私にはコイツは別にただの良い刀にしか見えない。などと思考を巡らせながら、花蓮の一挙手一投足を推し量る様に視線を交して。
『貴様――人の話を聞いてるのか!?』
「あー、ゴメンゴメン。大丈夫、聞いてるよ。でもね」
その問いかけは超常。答えられねば無限に敵が――花蓮の同胞たる兵士が歪んだ空間より湧き出るのだ。しかし紅葉はあえて答えない――その必要は無いと言わんばかりに、切先を花蓮に向けて。
「戦いに理由はいらない。勝つか負けるか、だよ。私はあなたの敵。だから――来なよ。満足するまで、付き合うからさ……!」
瞬間、炸裂音と共に返礼の鉛弾が合図となって新たな戦いの火蓋が切られる。抜刀した歩兵隊が紅葉の方へと殺到し、あっという間に桜の前を黒い影が埋め尽くした。
「そう来なくっちゃ――じゃあ行こうか!」
言葉と共に紅葉の姿が掻き消えた。否、発動した超常が、天性の武人の勘が殺意の尽くを捌き、躱し、往なしては返していく。墨染めの血煙が吹き荒れて、辺り一面を漆黒が覆い尽くし――次第に途切れる炸裂音を他所に、遂に花蓮自ら動き出す。
『答えは不要、か……ならばこれ以上の問答はいらぬな!』
機関銃の援護を受けて、八相に構え戦場へ飛び込む花蓮。大立ち回りを続ける紅葉に必殺の一撃を叩き込まんと――だがそれこそが紅葉の狙い。相手も軍人なら、武人なら、この立ち回りを見て引こうなどとは思うまい。
「来たね、遅い……よ!」
『こ、の――!』
背面受けからの巻き落とし逆胴。剣筋そのものを剛腕で捻じ伏せて、僅かに上がった手元から脇腹へ叩き込む玄妙なる技。そんな一撃を喰らえば、たとえ歴戦の軍人と言えどただでは済まない。
「……逃げたか。まあいいや」
吹き出た墨汁の様な闇に紛れて姿を消す花蓮。後に残るは雑兵の類――こんな奴等とっとと倒して、お姉ちゃんとイチャコラしたい。てへ。
「後は――速攻で決める」
不遜な思いは胸に秘めて、再び紅葉が走る。
青白い刀身が煌き――ねえ、あなた達にはどう見えるかな?
答えはいらないけど。墨染めの桜が裂き乱れた。
成功
🔵🔵🔴
荒谷・つかさ
【赤鬼】
正義がどうとか難しい事言ってるけど、要は貴女とそのお仲間が転生したくないだけでしょ。
敢えて言うわ……お前たちの主義主張なんか知った事じゃないのよ。
例えそれが真っ当な主張だったとしても、影朧であるからには斃さねばならないんだから。
開幕の射撃は手頃な大きさの遮蔽に隠れてやり過ごす
それが怪力で持ち上げられるなら担ぎ上げ、無理そうなら可能な物を探す
担ぎ上げた機械を盾代わりにし、アメリアを守りながら突撃
近接戦闘に持ち込むと見せかけつつも、間合いに入る前に【鬼神剛腕砲】発動
担いでいた機械をぶん投げて先制攻撃しつつ、その陰に隠れて至近距離まで接近
今度は敵を掴んで天井へとぶん投げ、アメリアへパスする
アメリア・イアハッター
【赤鬼】
想いはわかる、恨みも聞くよ
でも残念だけど、貴女達は現世を生きていないだけじゃない
未来を壊す、世界の敵なんだ
私達も嘗ての貴女達と同じく、未来のために戦ってる
だから迷いはない
全力で鎮めさせてもらうよ!
開幕直後手頃な遮蔽物へ素早く身を隠す
そのままつーちゃんのパワーであれば持てて、盾になるだろう機械を探す
無くても幾つかをかき集めればいけるでしょ
発見次第つかさの後ろにぴったり隠れ、UC発動
ミサイルの半分程を牽制として盾の後ろから発射しつつ進む
爆発で気を引いた所で、つかさによる奇襲が決まれば完璧
空へ浮いた敵に向かい、残りのミサイルを全部叩きつける!
その彼女等とやらは、本当に転生を望んでいないの?
●闇祓い
「わ! 思ったより多い……かも」
「大丈夫よ、任せて」
炸裂する火線の中、荒谷・つかさ(『風剣』と『炎拳』の羅刹巫女・f02032)はアメリア・イアハッター(想空流・f01896)の前に立ち、躊躇無く地面を叩きつけた。その破壊力は正に超常――震動しひび割れた大地が壁の様にめくれあがって、あっという間に火線を遮る。そのままもう一発、更に大振りの剛腕が真っ直ぐに大地に巨大なひびを入れて、正面の桜目掛けて稲妻の様な道筋を作り上げた。
「ついでに道も開けたわ」
「まるで塹壕ね……よーし、行きましょ!」
筋肉が切り拓いた道は丁度遮蔽物の様に聳え立って、つかさはアメリアが拾ってきた用途不明の機材を弾除けにと大きく掲げた。
「これを担いでいけば……ね」
「だったら足は私が出すよ!」
内心呆然と開かれた道を見据えて、アメリアは愛車を彼方より呼び寄せる。幸いこの地下施設までは寮の入り口から一直線だ――甲高いエキゾーストを響かせて現れた『エアハート』に二人は跨って、切り拓かれた道を閃光が切り裂く。
『な、何なんだあれは……』
『構うな! 撃てッ!』
ありえない。こんな所に単車などと――しかし現実、稲妻の様な光を放って、それも巨大な鋼鉄の塊を掲げたマシンが眼下を激走しているのだ。分厚い鉄板が火花を散らして、せり上がった地面が容易に狙いを付けさせない。兵達が瞬きする間も無く、爆音と共にアメリアとつかさは鉄火場の下を潜り抜けたのだ。
「どうという事無かったわ」
「当たらなければって……重量ギリギリだったかも」
サスが軋む音を立てて、二人は目的の場へと降り立った。目の前には軍服の少女――鷹宮・花蓮が何事かという表情で二人を睨みつける。
「という訳で、待たせたわね」
『呼んだ覚えはないぞ……鬼めが』
相変わらず巨大な鉄塊を担いだままのつかさに悪態をついて、スラリと退魔刀を抜いた花蓮。
『正義も無くただ徒に力を振りかざす貴様らに――退く訳にはいかないわ』
「はあ……正義がどうとか難しい事言ってるけど、要は貴女とそのお仲間が転生したくないだけでしょ」
つかさが言葉を終える前に花蓮が走る。そんながらくたを担いでは自由に動けまい――当然の判断だ。しかし花蓮はつかさの実力を大きく見誤っていた。
「つーちゃん!」
「――敢えて言うわ……お前たちの主義主張なんか知った事じゃないのよ」
その小柄な体躯からは想像も出来ない膂力が、超常の一投が機械の塊を花蓮の方へぶん投げる。まるで迫撃砲――それを水平投射とは、その威力は語るまでも無い。独逸の八十八粍砲めいた莫大な運動エネルギーが風を巻き込んで、花蓮の歩調を容易に乱す。
『だから力で訴えるという訳か。我等の想いも、何も知らずに!』
「想いはわかる、恨みも聞くよ。でも残念だけど、貴女達は現世を生きていないだけじゃない」
その一撃を辛くも避けて、反撃の銃声が轟いた。しかし『零式』――巨大な出刃めいたつかさの得物が壁となって、アメリアに向けて撃たれた連射を容易く弾き返す。そしてアメリアは言葉を紡ぎながら虚空に円を描いて――生じた超常、魔法のミサイルが花火の様に放たれる。
「貴女達は――未来を壊す、世界の敵なんだ」
『勝手な事を! 人ですら無い器物が生を語るなんて!』
「それはあなたの方でしょう。影朧であるからには斃さねばならないんだから――分かるかしら?」
僅かな時間に正体を見破るのは――流石、元々優秀な軍人なだけはある。しかしその無礼な物言いを許せるほど、つかさは出来てはいない。蹴り返されたミサイルを超常めいた筋肉が掴み返し、再度花蓮の方へと投げ放つ。それを迎え撃つ弾幕――いつの間にか呼び出された花蓮の同志達が、必死の形相で二人の猛追を凌ぐ姿が見えた。
『よく知っているわ。だからそれを、終わりにする!』
「いいえ、やらせない。私達も嘗ての貴女達と同じく、未来のために戦ってる。だから迷いはない――」
力を籠めてアメリアが言い放つ。刹那、群がる白兵隊を掴んでは投げ飛ばし、まるで竜巻の様な暴威を以ってつかさが花蓮の下へと詰める。弾幕はミサイルの迎撃で手一杯――破れかぶれか退魔刀を霞に構えて吶喊する花蓮を見やり、つかさも自身の愛刀を抜き放つ!
「小娘が侍の真似事か! 小癪な!」
「伊達に戦国の世を潜り抜けてはいないわ。アメリア!」
放たれた花蓮の諸手突きを首の皮一枚で躱し、手元を押さえ込む様に『暁』の刃を滑りこませて――そのまま組打ち。行儀のよい作法など戦場には不要。零距離間際に暁を離して、花蓮の手首と襟元を掴めば肩を入れて思い切り投げ飛ばすだけ。三度放たれた剛腕一投が花蓮を空中へ大きく放り投げる。
『まだだ、頭上ががら空き――!』
空中でふらつく花蓮が拳銃をつかさに向けた瞬間、迫るのはアメリアの隠し刃――潜めていた残りのミサイルが一斉に花蓮の方へと飛翔したのだ!
『これは――ユーベルコヲド!』
「全力で鎮めさせてもらうよ!」
「そのまま沈めてあげるわ」
そして、花火の様な鮮やかな彩りが鈍色の空間を染め上げた。
『クッ……まだよ、まだ我等は』
どしんと抵抗も無く落下した花蓮がアメリアを睨みつける。だがその言葉には先程までの勢いは最早無い。
「我等……本当に貴女達は皆、転生を望んでいないの?」
悲し気な口調で花蓮に問うアメリア。しかし視線を逸らした花蓮はそのまま闇に消えて、後にはもう何も残らない。
「消えたわ。でも、もうすぐね」
同時に花蓮の同志達も姿を消した。度重なる戦いが花蓮を消耗させた為か、遠くに聞こえた銃声も徐々に小さくなってきた。この戦いが終わるのも近いのだろう。だからせめて、その魂に安らぎをと祈らずにはいられなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シン・コーエン
「ろくでもない実験を此処で実施したのが原因か。すまない、来るのが遅すぎた(と花蓮達に詫びる)。」
「真相公開して上の連中にも責任取ってもらうよう動く。」と約束し、彼女達の想いを汲んだ上で戦闘。
敵先制攻撃は【念動力による高速水平移動】で、【残像】を撃たせつつ遮蔽物に隠れて回避。
花蓮の攻撃は、遮蔽物を【地形の利用】しつつ、【第六感で予測して見切る】か、【残像】を攻撃させる方法で回避。
「君の影朧たらんとする誇りに敬意を払い、今を生きる人の為、己が全力で君を倒す!」と、【2回攻撃、光の属性攻撃、衝撃波】を加えたUCにより花蓮を斬り上げ斬り下げて討つ。
依頼後は超弩級戦力の地位を利用して約束を守るべく動く。
●罪と罰
「すまない、来るのが遅すぎた」
途切れ途切れの銃声が嫌が応にも戦いの終局を想起させる。実際、シン・コーエン(灼閃・f13886)程の腕前もあれば、残像と念動力でその程度の攻撃を躱す事は容易い。故に灰色桜の下で虚空を眺める花蓮の下へ辿り着くのも難しい事では無かった。
『遅すぎた……だと』
ゆらり、と視線をシンの方へ向ける花蓮。表情は虚ろ――度重なる戦いが、彼女に蓄積された呪詛めいた力を殆ど使い果たしてしまったからだろうか。そんな花蓮に向かい、悔恨の念を込めてシンは言葉を続けた。
「真相を公開して、上の連中にも責任取ってもらうよう動く」
『今更もう遅い……』
ぐらりと、花蓮がシンの方へ歩み寄る。肩も揺らさず、マシンの様に――されど上体を左右に揺らして、まるで夢遊病者の様な歩法。そして。
『それで止まれるならば、初めからこんな事していないわ!』
激高と共に白刃が抜き放たれた。しかし斬り伏せたのはシンの残像――だがそんな事で、花蓮の連撃は収まらない。
「君の影朧たらんとする誇りに敬意を払い、今を生きる人の為、己が全力で君を倒す!」
『勝手な言い草ね、本当に――!』
発砲音が重なって、三つの弾丸がシンの眉間に飛び込んだ。残像の位置取り、風の流れ、それだけで本体の位置は凡そ分かる。更に花蓮へ手を下すならば、最適な場所は一つしかない。だがそれはシンも同じ――致命の箇所が狙われるならば、そこを護れば良いだけだ。瞬間、手元から迸った灼熱のサイキックエナジーが真正面から飛来する弾丸を焼き溶かして、音も無く真っ二つに叩き割る。
『……私が何を考えているのか、分かって?』
「何となくは。だから」
ひらりとスカートを揺らして、花蓮の飛び蹴りがシンを襲う。そのまま踏み込んで横一文字。蹴りを捌いて刃を交差し斬撃を受け止めれば、そのまま押し上げて鍔迫り合いの形に――ただ斬るだけではいけない。きっとその魂を救わなければ、何度でもこのような惨劇は、逢魔が辻は起こされてしまうだろう。
「だから、君を止める。絶対にだ」
その決意に迷い無く、解き放たれた超常が――灼滅の衝撃が花蓮を包み込んだ。
『何、この……光は……!』
「言っただろう。己が全力で君を倒すと」
一閃、手首を跳ね上げて正面から真っ二つに花蓮を斬り伏せたシン。だがこれで終わりではない。
「唸れ――灼星剣!」
そして下段から必殺の追撃が花蓮を襲う。溢れる闇を光が塗り潰して、そして花蓮の姿が消えた。
「……後はあの桜だけ」
真に倒すべきはこの灰色桜。此処でかつて、ろくでもない実験でも行われていたのだろう。だからもう二度と、そんな過去を呼び起こしてはならないのだ。
「もう一つ……これで、終わりにしよう」
手にした超常の刃が大きく伸びて――まるで巨人の剣の様に広がった光の刃が、悍ましくそそり立つ灰色桜に振り下ろされる。そして灰色の桜花は呆気なく、光に飲み込まれて消え失せた。
「後は事の真相を――」
戻り次第、この事件の記録を桜學府に問い詰めなければなるまい。
これ以上悲劇を、過去より起こさない為に。
大成功
🔵🔵🔵
東雲・一朗
●
▷兵装
帝都軍の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。
▷対先制
桜花の霊気を発し【オーラ防御】で守りを固めつつ、火線を【見切り】二刀にて【武器受け】する二重の防御にて銃撃を防いだ後に【切り込み】をかける。
「転生こそ救い、それこそが我らの教義だったはずだろう…花蓮」
▷転生へ
「無かった事になどならない、滅する事などない、この世が続きあの悠久桜が散らぬ限り貴官らも私も、たとえ朽ち果てたとしても無にはならない…もう一度、人々の中へ還ってこい!」
影朧に寄り添う彼女の気持ちはわかる、私とて情に流されればそうもなるだろう。
だからこそ、私は全霊の【桜花封神】を以って花蓮を転生へと導く。
陽向・理玖
●
変身状態維持
あんたの事は他人事には思えねぇ
俺も…師匠が助けてくれなかったら
けど
…もう、いいんじゃね?
なかった事にしようって言うんじゃねぇ
けどこのままでいいとは思えねぇ
いつまでも立ち止まってていいのかよ
世の中理不尽な事ばっかだ
あんたも俺も
そんな目に遭ってる
けど俺はそんな理不尽な目に遭う奴をなくしたい
だから戦ってる
あんた達だって
いつまでも縛られる事の方が理不尽じゃねぇのか
攻撃見切り
遮蔽物利用し姿隠しつつ距離詰め
UC起動
懐に飛び込み拳の乱れ撃ち
ヒット&アウェイ
残像交え的にならぬよう一所に留まらず
影から現れ足払いでなぎ払い
頑張ったよな
もういい
あんたの想いは俺が覚えとく
次は普通の女の子になれるといいな
リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎
そうだね、過去をどう踏まえるかは
重要なことさ
貶められて良いモノではない
……祭り上げられるべきでもない
明日を奪う、その一点に於いて
ボクの答えは変わらない
「今を生きる誰かの明日の為に! ボクは戦う!」
「キミが転移門をこじ開けるなら……ボクも全力で対抗しよう!
ヌァザ……多元干渉、最大出力!」
問答が終われば花蓮との決着は誰かに任せ、
『イルダーナ』で回避攪乱、軍隊を引きつけ
『ヌァザ』を掲げ、相手取る
射線上に大体乗ったら、次元の門を開き
UC【今を生きる誰かの明日のために】を発射!
キミはキミの成したことに胸を張れ
ボクはその事を覚えていよう
先の未来に語り継ぐには、ボクなら適任さ
●散華
『報告! 第十七大隊総員現着しました!』
「うむ。手勢は僅かとはいえ侮るな……相手は歴戦の影朧だ」
『承知しました。総員射撃準備――斉射!』
入り口付近で最後の抵抗を試みる幻の兵団に、東雲・一朗(帝都の老兵・f22513)率いる第十七守備大隊が反撃の牙を剥く。こうなれば物量戦、そこかしこに散らばる機材を盾代わりに、最後の銃撃戦が爆音を轟かせて開幕した。
「では往くぞ諸君……花蓮は恐らく、ここには居ない」
「ここには居ないって、どういう事だよ少佐殿」
思いもよらぬ一朗の言葉に、蒼い装甲を纏ったままの陽向・理玖(夏疾風・f22773)が聞き返す。この地下実験場で確かに、鷹宮・花蓮は兵達に檄を飛ばしていたはずだ。
「成程、最早戦局は決定的。しかし玉砕覚悟の突撃……では無く」
ふわりと光を纏って、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は一朗の側へ。手元にホロモニタを表示させ――そこにはこれまでの戦闘経過と交戦結果が表示されていた。
「この動きは籠城戦に近い。ならば時間稼ぎと考えるのが妥当、ですね」
既に鷹宮・花蓮は猟兵達と複数回に渡り交戦し、相当な手傷を追っていた。現に正面の歩兵部隊も最初程の勢いは無く、断続的な発砲音はむしろ、わざとらしくここに戦力を引付けさせる為の囮にも見えた。
「話が早くて助かる。部下達が引きつけている間に向かうぞ」
それこそが一朗の予想――あの鷹宮・花蓮がむざむざとやられる訳が無い。ここで手傷を負ったとして、必ずや逃げ果せて次の作戦に繋げてくるだろう。だからこそ――此処で決着を付けねばならないのだ。
「分かった。じゃあ行こうぜ……時間も無いだろう?」
両の拳を打ち付けて理玖が吼える。最後の狩りが始まった。
『何故、分かった』
凛星館女学院学生寮――地上広場。かつては演習も行われていた広大な空間に、花蓮はぽつんと佇んでいた。
「君が優秀な兵だったからだ」
『あなたに言われると――嫌味にしか聞こえないわ』
静かに告げた一朗へそう返して――そして、歪んだ空間から無数の、最後の軍隊が姿を現す。
「って、何か一杯出て来てんぞ!」
『答えて。溢れる影朧を無かったモノにして、あなた達は世界をこのままにしておく心算?』
それは問いかけに満足な答えを得るまで、永遠に仲間を呼び続けるという超常。それぞれが機関銃や軍刀で武装して、整然と花蓮の前に隊列を作った。そして花蓮は猟兵達へ最後の問いかけを続ける。
『罪を償うべきは今を生きる者……でなければこんな事、起こる筈がない!』
「そうだね、過去をどう踏まえるかは重要なことさ――」
冴え渡る月光の下、最初に口火を切ったのはリアだった。
「貶められて良いモノではない……祭り上げられるべきでもない」
『だったら……だったらどうすると!』
静かに一朗の前へ歩み出て、手にした銀剣を花蓮の方へ突きつける。
「今を生きる誰かの明日の為に! ボクは戦う!」
「あんたの事は他人事には思えねぇ。俺も……師匠が助けてくれなかったら」
そして理玖がリアに続く。仮面でくぐもったその声色はどこか愁いを帯びて、それでも花蓮に必死の思いを込めて叫ぶ。
「けど……もう、いいんじゃね?」
『何を! このまま捨て置けとでも!?』
抜き放った退魔刀を理玖の方へと向けて悲痛な叫びが空に響いた。しかし臆する事無く、理玖は言葉を続ける。
「なかった事にしようって言うんじゃねぇ。けどこのままでいいとは思えねぇ」
拳を握りしめ一歩前へ。リアと同じ様に一朗を隠す様に――少佐殿は最後の一手だ。まだ前線に立つべきは俺達だと言わんばかりに。
「――いつまでも立ち止まってていいのかよ。世の中理不尽な事ばっかだ。あんたも俺も、そんな目に遭ってる」
『その通りだ。生も死も理不尽だ……好き好んでそうなった者ばかりでは無いというのに!』
不意に花蓮が歪めた空間が徐々にその口を閉じ始める。理玖が導いた答えが、遂に花蓮へ届いたのか――ならば、と畳みかける様に、理玖は思いの丈をぶちまけた。
「けど俺はそんな理不尽な目に遭う奴をなくしたい。だから戦ってる。あんた達だって――いつまでも縛られる事の方が理不尽じゃねぇのか?」
『それは……それでも……!』
それでも――再び空間が大きく歪む。しかし不安定な入口からは先程までの勢いで軍隊は現れない。だがその声と共に最後の軍隊は一斉に猟兵へと襲い掛かった。ここが正念場――機関銃が火を噴いて、白兵隊が抜刀突撃を敢行する。
「キミが転移門をこじ開けるなら……ボクも全力で対抗しよう! ヌァザ……多元干渉、最大出力!」
しかしそれを黙って見ているほど、猟兵達はお人好しでは無い。リアの声と共に銀剣が七色に煌いて――発動した超常は多元干渉デバイスの真骨頂、因果律を狂わせて、あるべき結果を破滅へと誘う。瞬間、沸騰した様に空間の歪みから異様な爆光が溢れ出て、現れた軍隊の尽くを文字通り破壊した。
「少佐! ここは任せて!」
「行ってくれ。決着をつけるのはあんただ」
合わせて飛び出た理玖が音も無く白兵隊を瞬殺する。機関銃の様に放たれた鋼鉄の拳が兵士の軍刀を圧し折って――超常の高速戦闘形態が雪崩の様に押し寄せた軍隊を吹き飛ばし、一朗の前に活路を開いた。
「協力感謝する! 帝都第十七大隊東雲一朗……推して参るぞ!」
そして帝都の老兵は遂に、影朧の守護者――かつての戦友、鷹宮・花蓮と対峙した。
「転生こそ救い、それこそが我らの教義だったはずだろう……花蓮」
『そう信じていた。そう願っていた。だが現実は――どうだ』
きぃんと、刃が重なる音が響く。花蓮の苛烈な撃ち込みを刃を合わせて防ぎ、飛び散る火花がその剣戟の激しさを物語る。
『誰だって、死の淵で思い残す事くらいあるだろう』
半歩引いて飛び込み胴――それを手首を返して防ぎ、反動を利用して側頭を叩き割らんとする一朗。
『それを、何もかも一纏めに悪しきモノと断罪する……そんな事を許していいのか!?』
「だがそれを鎮めなければ、我等に未来は無い。十分理解っているだろう!」
瞬間、手にした拳銃が火を噴いて再び間合いが開く。実力は完全に拮抗――それもその筈。双方手の内は遥か昔より体で覚えているのだ。それぞれの剣筋に自然と身体が動く様は、あたかも達人同士の形稽古の類に見える。
『そうやって滅ぼすのだな、私も、彼等も、彼女らも……無へ還すのだな』
「無かった事になどならない、滅する事などない、この世が続きあの悠久桜が散らぬ限り――」
片手軍刀術に拳銃を合わせた変則的な構え――そして蹴りが飛び出す独特の戦法は些か『行儀が悪い』などと揶揄われた事もあったが、確かに君は強かった。
「貴官らも私も、たとえ朽ち果てたとしても無にはならない……だから」
だから最後はいつも、私の全力を以って応じていた――この様に。超常の桜花の霊気が一朗の全身を淡い光で染め上げて。
『ああ、だから……』
だからお前と相対する時だけは、小細工は無しだ。この一刀で仕留める。拳銃を投げて両手で退魔刀を握る花蓮は漆黒の闘気を膨らませて。
「もう一度、人々の中へ還ってこい!」
『もう二度と、影朧が泣く世界を作らない為に』
相正眼からじわりと間合いを詰めて――刹那、二つの影が重なった。
「危ねえ所だったぜ少佐殿。流石の手練れだ」
不意を打とうと軍刀を腰溜めに吶喊した兵士を殴り飛ばし、理玖が変身を解除する。もうここに敵はいない――静かに礼を返す一朗の膝には、倒れた花蓮の姿があった。
「頑張ったよな。もういい」
その姿を見て理玖がそっと近づく。花蓮の表情はどこか穏やかだった。
「あんたの想いは俺達が覚えとく。次は普通の女の子になれるといいな」
それこそが一朗の奥義『桜花封神』の御力か――入れ替わる様に近付いたリアが、そのまま言葉を続ける。
「キミはキミの成したことに胸を張れ。ボクはその事を覚えていよう」
勇敢に戦った優しき戦士の事を。既に空間は元に戻り、淡い月の光が佇む三人の影を長く伸ばしていた。
「先の未来に語り継ぐには、ボクなら適任さ」
「安心しろ、まだくたばるつもりは無い」
リアの言に一朗が返す。老兵とはいえまだまだ引退する気は無いという意志を込めて――その様子を見て、花蓮の口元がほころんだ。
『フフッ……』
そうだ――張り詰めた鬼のような形相より、その方が似合っている。
『ああ、安心だな、一朗』
影朧に寄り添ったお前の気持ちはわかる、私とて情に流されればそうもなるだろう――だがそれは、今限りだ。
『いつか、また』
ああ、いつか。そっと花蓮の瞼を閉じれば、その姿が虚空に溶けていく。
びゅうと風が吹いて――桜吹雪が一朗の手元を撫でる様に吹き抜けた。
まるで花蓮の魂を、幻朧桜へ運ぶかの様に。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年04月13日
宿敵
『『影朧の守護者』鷹宮・花蓮』
を撃破!
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