【旅団】温泉でお花見で新人歓迎会?
これは旅団シナリオです。
旅団『恋華荘』の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えないショートシナリオです。
●ここではないどこかの温泉郷
「あ、そろそろ桜の花も満開になりそうですねぇ」
などと不用意に彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)が呟いてしまったのが、今回も騒動の発端だった。
ここはどこかの世界にある龍神温泉郷に建つ温泉女子寮の恋華荘。
古い温泉旅館が、猟兵用の女子寮に鞍替えしてからもう1年以上経つ。その間に住むことになった寮生も増えてかなり賑やかになってきた。特に今年になってから新たに入ってきた人も増えているので、どこかで歓迎会的な事はしたいな、と、そんな空気もあったりする。
で、管理人のいちごは、一仕事を終えた後共用ロビーで一休みしている所だった。
「桜の花が満開になりそうなら、そろそろお花見の季節ですわね」
「……といいつつ、りんごはお酒飲む理由がほしいだけなのよ……」
いちごの呟きを拾って話しかけてきたのは、共に寮の仲間の黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)と湯上・アリカ(こいのか荘のアリカさん・f00440)だ。なんかこのやり取り前にも見たぞ。
「そういえば恋華荘の周りの桜も綺麗ですよね」
「最近は露天風呂からも咲いているのが見えるようになりましたし」
やはり通りがかった茅乃・燈(“キムンカムイ”は愉快な仲間で力持ち・f19464)と鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)も会話に混ざってきた。
「ですわよね。やはりそろそろ花見はやらなくてはいけません」
「りんごさんは本当に飲む理由が欲しいだけなのでは……と言っても、この桜を見ていると、そういう気分になるのはわかりますか」
かれんは苦笑しつつ小首を傾げるが、かれんもすでに成人している身。花見で飲むお酒の誘惑にはなかなか勝てない様子。
「桜といえば、いちごの妹の名前もそれよね。
戦争真っただ中に恋華荘に来てるから、歓迎会的な事もやってないし」
「妹様だけではありません。BBは新しい人の歓迎会は必要だと言います」
やはり通りかかった葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)とベアトリス・バスカヴィル(デジタルデビルBB・f23871)は、桜という事で思い出した管理人の妹の話から、新入寮者歓迎会を提案してきた。
「歓迎会ですか……そうですねぇ。確かに花見に合わせるのはいいかもしれません」
そのアイデアは、管理人のいちごもなるほどと納得する。
いちごとしても、最近立て続けに入寮の受け入れがあった事で、新人たちと以前からいる寮生たちとの顔合わせとかはしてみたいとは思うのだ。特にいちごは、寮で暮らす全員が家族同然という考え方の持ち主なので。
「あら、旦那さま。わたくしの歓迎会ですか?」
自分だけではないとわかっていながら、アテナ・パラステール(亡国の姫騎士・f24915)は、あえてこうしていちごをからかうように言う。ちなみに本人も言っているが、アテナ自身も今年になってからの比較的新しい寮生だ。いちごを旦那様と呼ぶ真意は計り知れないが。
「あ、いえ、その、アテナさんももちろんですけど、アテナさんの妹さんも始め、他にも大勢いるわけですし……」
案の定、旦那様などと呼ばれているいちごは、からかわれているとわかりつつもしどろもどろになっていたりする。
「ほら、アテナもそれくらいに。いちご困ってるよ?」
助け舟を出したのは、やはり通りすがりのメリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)だった。もっとも、次の台詞からして、助け船になっているかは実に怪しい。
「で、花見って今回もまた温泉でやるの?」
今回も、というのは、昨年末に忘年会を温泉でやったからなのだが……。
「い、いえ、近くの丘にピクニッ……」
「もちろん!恋華荘での宴会は温泉でやるに決まっているのよ!」
否定しようとするいちごの声に被せるように、アリカがきっぱりと断言してしまうのだった。
「あ、いえ、アリカさん、それは……」
「ですよね。私もそう思っていましたよ。今更温泉での宴会を拒みそうな人は恋華荘にいないでしょうし。いちごさんを含んでいても」
「BBも大歓迎といいます」
止めようとするいちごの言葉を打ち消すように、かれんとベアトリスも賛意を示す。
「いちごさん、今更無駄な抵抗だと思いますわよ?」
「そういう流れなのだから、覚悟決めなさいな」
りんごとアリスはもう、諦めろとはっきりといちごに宣告するのだった。
「い、いえ、ですけど!
年末の忘年会も温泉でやってるのですし、いくら新人歓迎会っていう名目が増えても、温泉での宴会だと前回と大して変わらないのでは?」
それでも抵抗するいちご。確かにメタ的に言えば、多少メンバーが変わったとしても、同じ舞台で同じことをするならリプレイの展開もそうそう変わらないかもしれない。だいたいにおいて(傍から見ると幸運かもしれないが本人的には)被害者ポジションであるいちごとしては、抵抗したくなるものだ。
「あら、ならば新しい人も溶け込めるように、皆でゲームでもすればいいと思いますわ」
しかし、新しい人であるアテナからそんな提案をされてしまうと、いちごとしても言葉には詰まってしまう。
「いいですわね。宴会でのゲームとなるとやはり?」
「ええ、もちろん王様ゲームでしょう♪」
そしてなぜか意気投合しているりんごとアテナ。ただ面白そうだと(主にいちごの反応が)思っているのはバレバレかもしれない。
そして。
「というわけで、いちご。日程は今度の三連休くらいがいいと思うの。
準備よろしくなのよ!」
そしてアリカの宣言で開催が決まってしまい、今回もやはり準備は管理人のいちごに押し付けられたのだったとさ。
雅瑠璃
こんにちは。またはこんばんは。
雅です。
というわけで今回は温泉で花見という恋華荘の旅団シナリオになります。
なので当然ですが、参加可能なのは恋華荘の団員だけです。ご了承ください。
OPにもありますが、日時は今度の三連休を想定。
日付的には連休初日の20日でしょうか。
執筆もその三連休で行いますので、プレイングの提出は、19日8:31~20日8:30までの間にお願いします。この間に提出していただけると、締め切りが連休明けの月曜の朝になりますので。
それまでは旅団で相談等してもらえればいいと思います。
また、ただ温泉での宴会となると、昨年末の忘年会と一緒になりますので、今回は余興としてゲームを付け加えることにしました。
すなわち王様ゲームです。
王様ゲームに参加するキャラクターは、【命令】と【リアクション記号】を、下記のフォーマットに従って提出してください。その命令をランダムで組み合わせて、フルアドリブなリプレイにします(笑)
あ、公序良俗に反する命令はダメですよ?
※王様ゲーム※
【命令】「●番が○番に◆◆する」という形で固定です。
番号は、①~⑩で適当に入れてください。誰がどの番号になるのかはこちらで決めます。人数が11人以上の場合には、王様ゲームのグループが複数ある扱いになりますので、気にしなくて大丈夫です。
【リアクション記号】ノリノリでやるなら「▲」、恥ずかし気にやるなら「▽」
どんな命令がくるかはわかりませんが、イメージでどちら?というくらいです。
もちろんフォーマットを見ればわかるとおり、あくまでもおまけです。
プレイングの本筋は、旅団の仲間との交流に当ててくださいませ。
当然、OPにわらわらと雅のMSキャラ(全員恋華荘に所属)が出てきていますが、それぞれにかかわるようなプレイングを書いてくれれば、いろいろ適当に絡ませますです。
他に質問等あれば、旅団でお聞きください。
それでは楽しんでいきましょう♪
第1章 冒険
『ライブ!ライブ!ライブ!』
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POW : 肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!
SPD : 器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!
WIZ : 知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!
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如月・水花
※アドリブ等なんでもOK
お風呂でお花見ですかあ…これもまた新鮮ですね。
でも、私としてはやっぱり、いちごくんに目が行っちゃうかな?
ふふ、日頃頑張っもらってるご褒美に、ぎゅーってしてなでなでしちゃおうかな?
遠慮なんかしないで?むしろ、私がいちごくんにしたいって思ってるぐらいだから…♪
とと、新しい人たちとの交流も忘れちゃいけませんね。
皆さんはどういった経緯でこちらに来たのでしょうか?
私は元いた世界が滅ぼされて、彷徨っていたところを助けてもらいましたが…
【4番が8番に脇腹つっつき】
うーん、あまり捻った感じのは思いつかないかも…?
でも、こういうくすぐり系ならよさそうかも?
サエ・キルフィバオム
アドリブ等歓迎です
・寮に入った理由
そうだね~、……面白そうだったから。って感じかな?
(意味ありげににやりとしながら、周囲の人間関係を見て)
後は……、自由がききそうなのも大きいね
(出かけると帰りが遅い事も多い)
・温泉
ん~、やっぱり体の芯からあったまるのはいいよね
(体を無防備に湯につけ、伸びをしてます)
……さてさて、どんなお楽しみが見れるかな♪
(周りで何やらとらぶる?の流れになると、完全に自分が巻き込まれる事は想定せずに、人間観察の体勢に)
・王様ゲーム
【4番が2番にとっておきの口説き文句を言う!】
私に王様ゲームが振られたら、……ガチめにノリノリでやっちゃう
白銀・ゆのか
ふわわ、裏方でなく参加するのは、ちょっと新鮮と言うか、恥ずかしくなってくるんだけど…
…うん、みんなでお風呂しながらお花見、なんだかほっこりするかも。(ふふ
とりあえずいちごちゃんのお背中を流…って、智悠璃さん!?わ、わたしはお世話する側であって、されるのは…ひわー!?(お世話され馴れない&むにふにやわらかマッサージに、変な声出しちゃいそう…!)
はうはう、ちょとマッサージでいつもの【怪力】もふにゃふにゃだけど…あんまりにも公共良俗てきにアウトなことはめ、ですからね?…からね?(でも止められるかどうかは…
・王様ゲーム
▽【命令】3番が7番の脇をこちょこちょしちゃう。
ミネルバ・パラステール
アテナ姉様やいちご様、マイエ様初めとした新しく入った皆さまと、湯船で交流出来れば…かしら。
ふと…姉様が生きていて、神様生き写しの方がいて…
此処は、色んな人が、暖かで、楽しそうでいる……。
実はこんな光景が見たかった、なんて処刑前の妄想だったのかもしれない。
そう思える位、ここは暖かいのです。
(湯に浸かり、少し左足の傷をなぞりながら…)
尤も、此処の皆様が斜め上な羽目を外されて、あ、現実…なんて思ったりもありますが(くすくす
良ければ…皆様がいらした経緯や…神様の事をどう想っていらっしゃるのかとか…お伺いしたい所ですわね
・王様ゲーム
▽【命令】
2番が9番をハグして、おでこにキスをする…なんて、如何かしら?
パニーニャ・エルシード
メイン『アザレア』
サブ「パニーニャ」
歓迎会でいちごに甘えてあわあわする様子堪能してたけど…
パニーニャがりんごのとこ行った金枝の事、気にしてるっぽい?
「ちょっと様子変に思っただけ…大丈夫かなって」
『あたしら含め、アレな影響うけたからねー…真面目なのほど割り切るのは難しいか』
『寧ろあれだけの目に遭って、旦那さんの記憶戻ってる時点で、相当な精神力な件…想われてるねぇ…』(こそこそ
「アザレア、あっさり快楽堕ちしそうだし?」
『失敬…快楽堕ちするのはいちごのアレだけ』
盗み聞きばれたら、素直にごめんなさい(×2)
・王様ゲーム
▲「1番が7番にバストマッサージ♪」
とても恥ずかしいの来たらパニーニャ(▽)に交代
詩羽・智悠璃
私は自身が桜ですし故郷も年中満開ですから見慣れた光景ですが
こういう限りのある桜吹雪もロマンがありますね…いい事です
にしてもゆのかさん、いつもお疲れさまです
今回は湯の中でマッサァジして差し上げますわ
肩に腕に腿に、お望みなら他も、ふにゃふにゃ解しましょう♪
…まあ本題はインタビュウですが
割と依頼でハメを外して気分転換すると【情報収集】で聞きまして…
どの様な外し方ですか?どうです、幸せは感じられますか?
必要なら年上の女らしく、アドバヰスだって致します
だってソコには彼が…いちごさんが絡んでいる、そうでしょう?
▽【1番が8番に愛の告白】
無論本気でなくて構いません
耳打ちでも大丈夫です
表情の変化が見たいのです
ジオレット・プラナス
新人さん歓迎の宴でもあることだし…私の歌も、桜の下での宴会芸くらいにはなるかしら?
恋歌でも、演歌でも、ドラマやアニメの歌でも、今日は何でもガイドボーカルしてあげる。
お風呂で歌うと声も響くし…キミも良ければどうだい?(特に新入りさん狙って、お歌、誘ってみようかな?)
というわけで…いちごやさくら達も良かったら合いの手、ヨロシク(なんて無茶ぶりしてみたり)
特にさくらは随分肩ひじ張ってそうだし…積極的に巻き込めれば、いいなって。
「兄妹という割には、随分お兄さんに入れ込むね……好きなの?」なんてストレートに聞いてみようかな、なんて。
…少なくとも、ラブ度を測定できるらしい時点で無関心とは程遠そう…かな?
マイエ・ヴァナディース
綺麗な花びら…♪(うっとり手を翳す)
こうしていちごさん達と裸で向き合っていると
初めてお会いして救われた時を思い出しますわ…
尤も、いちごさんはお召し物がありましたけども♪
ところで(新入りの)皆さんは、どうしてこの寮へ?
わたくしは廃墟のシャワーにて助けられた際、
いちごさんより庇護の提案を受けた為ですわね
故郷へ帰る術を探す道中にも雨避けは要りますもの
それにいちごさんからは『父』の様な安らぎを覚えます
実際こうして皆に慕われる様を見ていると
直感通り人徳はあったと納得しておりますわ
ふふっ♪
▽【3番が9番の手の甲へ王子様っぽくキス】
かつて異性装(実はメイド)だった『父』
ですが、それはもう紳士の鏡でしたのよ?
ヴィクトーリヤ・ルビンスカヤ
※分裂
●クト
▽【4番が2番にハグ】
りんごお姉さま、綺麗な日本酒を見つけたの
一緒に飲んで、酔わせてほしいのよ?
(春限定ボトルを提供してしなだれかかる)
飲める娘はいらっしゃーい、みんな一献どうぞなの♪
りんごお姉さま、クトも感謝してお慕いしてるのよ…♪
(酔うと大胆、抱きついて甘える)
●トーリ
▲【5番が10番の首筋にキス】
いちごさんは未だ16歳
でも今日は無礼講、コレは如何ですの?
んく、はぷ…んぅーっ♪
(シャンメリーを口移し&ディープキス)
私は亡霊にして聖騎士
でも見ての通り、いちごさんを心底お慕いしております
故に「『想い人の剣』足り得る騎士」が今の目標ですわ♪
(騎士・剣士談義へ爆弾投下&小悪魔スマイル)
刑部・みさき
えへへ♪ふーぐさーん、こーちらーっ♪
※ユベコで人魚化&温泉遊泳、ベルと2人で戯れ
※いちごを中心にグルグル回って足止め
はわ、つかまっちゃうっ?
いちごくんたすけてー、なんてねっ♪
※いちごに抱きついて人化、遠慮なく巨乳押し付け
※この一年で、一部身体的な成長が見られる…?(精神は不変)
ほわぁ…タイさんみたいにさくら、ふわふわひらひらしてる♪
いちごくんベルちゃん、みてみてっ、きれいだよー♪
うん、わたしもしあわせっ♪
※ベル共々胸で『いちごサンド』しつつ桜吹雪鑑賞
※飲酒してないのに酔った様な振る舞い&陶酔赤面顔
▲【10番が1番をペロペロ】
はわ、ジュースかかっちゃった…
そういうのペロペロするとおもしろいかな?
不知火・桂花
※眼帯なし
さくらってさ、ホントはコレ位したいんじゃない?
ちょ、いちご動かないで!こすれるっ!?
(いちごの背に抱きつくも、赤面・半自爆)
うん、口では色々言っちゃうわよねー?
ほら、アタシもそういうクチだから…
(以下3行:さくらに耳打ちで【挑発】兼アドバイス)
でも目線追ってると、どこかで嫌ってないって感じるの
変わりのない兄妹なんだし、少し甘えてもいいんじゃない?
ま、ココの娘なら、別に怒ったり悲しんだりしないしね♪
…はい、ご馳走様♪(いちご開放)
他の新入りさんにも、ちょっかい出そうかしら?
▲【7番が6番にマッサージ】
美脚・豊乳から肩揉み・激痛ツボ押しまで何でもアリ
あ、もちろん場所の選択権は王様持ちね?
牧杜・詞
歓迎会……歓迎とかされていいのかって気持ちはあるけれど、
せっかくのみんなの好意だし、気持ちは嬉しいかな。
温泉は大好きだし、参加はするけど、
きらきらした雰囲気とか楽しい会話とか、混ざるのはかなり苦手なのよね。
たのしそうなところをみているのが嫌いなわけではないから、
のんびり温泉を楽しみながら、雰囲気を楽しもう。
おなじような気持ちの人がいたら、
温泉の端っこで、みんなを見ていっしょに微笑んだり、
そのくらいはできるかな。
●王様ゲーム
ゲーム? なにか考えないと、なの?
それじゃ、2番の人が4番の人にデコピンね。
中途半端はダメよ、全力でお願いね。
人によっては大惨事になるかもだけど、それがゲームよね。
白雪・まゆ
歓迎会をしてもらえるなんて思っていませんでしたので、
ちょっとびっくりの、嬉しいのです!
歓迎会ということですので、
みなさまにご挨拶をしたら、さくらさんとお話ししたいですね。
ライバルでもありますですけど、仲良くもしたいのです。
アンナさんとも、お話しできると嬉しいのです。
おねーちゃんの話題なら、きっと盛り上がるのですよ-!
温泉ではダイブして、泳いでいたら、
叱られる(おねーちゃんとかアリカさん?それ以外の人でも可)くらいにしておきたいと思いますのです。
いちど叱られたら、おとなしく入ることにしますのですよ。
●王様ゲーム
わたしは、7番の人が10番の人に、全力で告白をする。なのです!
菫宮・理緒
温泉で歓迎会かぁ、なんだかすでに懐かしい……。
わたしもみんなとちゃんと会ったのは温泉での忘年会だったなぁ。
……あのときはまだおとなしかった……(笑)
アリカさんに、わたしのいない間のいちごさんの話を、
いちごさんの小さな頃のお話や、わたしが引きこもってた間のお話は、
やっぱり聞いてみたいよね。
セナさんには恋話をふってみよう。
現在好きな人とかよりは、理想の人とか妄想話のほうがいいかなーなんて思ってるよ。
そしてめいっぱい照れてもらおう、照れるセナさん、かわいいんだよねー♪
●王様ゲーム
わたしは、2番の人が5番の人に、グミを食べさせる、です。
もちろん、めいっぱいえっちに、ね!
アンナ・オルデンドルフ
いちごさんとさくらさん、まゆさんなどとお話ししたいと思います。
妹さんとも仲が良さそうでちょっとちょっと嫉妬しちゃいそうです。
この寮へ来たきっかけは、女性だけの寮を探してて偶然、という感じです。
さて、温泉へ。桜の花がきれいです。
あ、この温泉は裸で入るものなのですね。
ちょっと恥ずかしいのでほんとなら水着を着たいところですけどね。
着てきてよいのなら着てきますが……。
(着るなら多分シンプルなスクール水着です)
ああっ、みなさん裸なんて……私には刺激が強すぎます。
私も、まだそういった経験はないもので……(もじもじ)
▲【2番と9番でキスをする】
でも、ノリノリでこんな命令出しちゃいますね。
霧沢・仁美
なんか、あたしもすっかりここに馴染んだ感じかも…いやここに住んでるワケじゃないんだけどね(別の学生寮在住)
でも、みんなと仲良くできれば幸いではあるかな。新しく来た皆、よろしくね。
…新しい人だと、アテナさんとサエさんが割と大きい方、かな(自分ぐらい大きい胸の人が来てくれると自分の胸が目立たなくていいな、と思っている模様)
ともあれ、あたしも温泉に入るよ。
桜が咲くと春が来たって気分になるよね…でもまだ少し寒いから、温泉の温かさが有難くもあって。
…で、それとなくいちごくんの隣まで行っちゃったりして?
▽【6番が9番の耳に息吹きかけ】
…地味に効くと思うんだ、これ。
アウレリア・フルブライト
改めましてアウレリアですわ、皆様どうぞよしなに。
何やらアイリスさんには親近感を覚えるところですわね。こう、他人という気がしないと言いますか…。
それに、此処には騎士であられる方が結構多いんですのね。私も、騎士は名乗っておりませんが似たようなものですかしら?
桜の花に温泉、風流なものですわね。
…しかし、女性のように愛らしいとはいえ、殿方と混浴というのは少々気恥ずかしいですわね…。
裸身を晒すは生涯を共に過ごす方へのみ、と思っておりましたし…(処女&貞操観念割と固め)
▽【8番が2番に何か飲み物をあげる】
お風呂の中ですし水分補給も兼ねまして。
フロウヴェル・ゼフィツェン
温泉でみさきと追いかけっこするの。
むー、人魚モードで泳ぐのはずるいの。
いちごの周りを回ってるから先回りしにくいけど、タイミングを見て…えいっ。
…って、いちごが間に入っちゃったの。でもみさきも捕まったしオッケィなの。折角だし、いちごにもこのまま…
(ぎゅっと抱きつき胸押し付け。なんか前より大きくなったような?)
…ん、桜、綺麗なの。
いちごとみさきと、他の皆と。揃って一緒にこうしてお花見して…楽しくて、嬉しいの。
いちごは、どうなの?
(みさきと一緒にいちごサンドしつつ)
▲【9番が7番にハグ】
ここはシンプルにいくの。スキンシップは良いものなの。
ネウィラ・カーレンベート
賑やかな中、桜を存分に楽しむ
『本当に見事です。こんな綺麗な桜の下で温泉に入れるなんて』
お酒を楽しむ人もいる中、成人済だがお酒とは無縁なので代わりにハーブティ。なんだそれ!
ネウィラからも何か一言と促され
『そうですね……それでは、新しくいらした皆さんが仲良くなれるおまじないを』
と、ウィザードらしいおまじないかと思いきや
『右手と左手、なかよくあわせてしあわせハート~♪』
言いながら両手でハートを作り静止
引っ込み思案の彼女にとって相当思い切ったオリジナル芸だったが、不思議な空気に真っ赤になり思わずいちごさんに抱きつこうと
『ごめんなさい!聞かなかったことにーっ!』
▽
【命令】3番が7番のいいところを三つ言う
リアトガルト・ネイトロン
『ああ、いいお湯ですわ……』
『それにしても、末席に加えて頂いて本当に間もありませんのに……恐れ多い気持ちですわね』
少しの緊張と照れ
『私のこととはいえ、何からお話しすればいいやら……』
自己紹介に迷っていると、いきなり訊かれるはあの露出した服装の話
『あれですか?あれは趣あ、いえ、デバイスの色に合わせたものでして』
趣味という言葉は気のせい。ツッコミ待ちとか言わない
打ち解けた頃、ベアトリスさんに興味津々
ネットワークに近い存在として親近感を覚え
『なんとなく、ベアトリス様とは良いお友達になれそうな気がいたしますわ』
ソーシャルネットワーク上でも親しくなる気満々である
▽
【命令】8番が1番を一日「お姉様」と呼ぶ
アイリス・ヴォルフェルト
アウレリアさん、うん。私も親近感覚えますね。そんなはずなのに、何故か鏡を見てるような感じがして
特に似ている部分はないはずなんですけどね?
前回のように騎士組とお話です
正直いちごさんは好きだけどそれは主や人としてはで、異性としては節操なしな点で無いと思ってたのに、あんなことに……
今でも正直異性として好きかと言われれば素直に頷けないのに
なのに何故こうなったんでしょうね?(アテナさんにジト目)
え、どんな剣士になりたいか?
私は剣士というか騎士だし、剣より盾に重き置いてますけど
あえて言うなら守護騎士として皆を護れるようになりたいです
▽【9番が1番の頭を撫でる】
こ、これぐらいなら、まぁ無くはないですよね?
音取・金枝
左胸、心臓のところに手術跡
金枝も新人ではありますが、金枝は歓迎会に混ざるというよりは主治医のりんごさんに色々相談がありました
そしたら此処に連れ込まれましたけど
本当なら夫以外の男性に肌を見せるようなことはしたくないのですが、彩波さんにはその抵抗が酷く薄くなっているのが問題ですね
そのことも含めてりんごさんには相談が
この前の依頼で脳を弄られ洗脳されてしまい、実は愛する夫の記憶が彩波さんと入れ替わっているのと二重になってまして
夫があの人と彩波さんの二人いるような状態に、いえ時間経過で彩波さんの記憶は薄れつつありますが、どうにかなりませんか?
あの、真面目に相談しているのですが
▽【10番が4番の髪を洗う】
織笠・アシュリン
※アドリブ等ご自由に!
いーちーごー……やっぱりモテモテだなぁ(ぷぅ)
まぁ、今日は新しい寮生の歓迎会だしね!
新しい子と話していこうかな!
あ、さくらー!
「どう、ここの生活には慣れた?」って気軽に話しかけるよ
そう言えば、さくらといちごの距離感って、肉親というよりはあたしたちみたいな……
「ねぇ、さくらって、いちごのこと、どう思ってる?」
もしかして……なんてねっ
あと、新しい子たちとも絡みたい!
剣談義とかもあるみたいだけど、それ以外の武器はどうなんだろう?
「へー、参考になるっ!次に意識してみるねっ!」
▽【3番が5番の腕を抱く】
あたしがやるのは、ちょっと恥ずかしいかな……
い、いちごとなんて期待してないよ!?
アイ・リスパー
▽「2番が9番に得意技を披露する」
「わあっ、今回はお花見ですね!
龍神温泉郷の桜は綺麗ですね!」
SSWの研究所にあったスペース・ブロッサム(うねうね動く)を思い出しながら、桜の綺麗さに見惚れます。
「では、もうちょっと演出を加えましょうか」
【バタフライ効果】で小さな風を起こし、舞い散る桜の花びらを温泉の上から雪のように降らせましょう。
「さて、私は普段あまり話をしない方々と親睦を深めましょうか」
いちごさんや恋華荘の皆さんの話題なら、共通の話題として盛り上がるはずです。
ついでに、いちごさんを巡るライバルが誰なのか、この機会に情報収集しておきましょう。(胸のサイズも
これは対抗策を練らなければなりません。
天樹・咲耶
▲「5番が7番に隠された封印の力を解放する!」
「ふふふ、彩波いちご!
最近、行動を共にしてだんだん分かってきたわ!
あなたのその身に封じられた力……覚えがあるわ!
あれはそう、私の前世のこと。
銀河を守る戦士である私には共に戦う心強い仲間たちがいた……気がするわ!
その中でも私の片腕だったのが、触手マスターの異名を取る戦士!
そう、いちごの前世の姿だったのよ!
まあ、みんなが驚くのも無理はないわよね。
私だって、つい最近、おぼろげに前世の記憶を思い出してきたところだもの。
けど、あなたと一緒に戦うことで思い出してきたのよ。
……それと、前世の敵であった、銀河系を滅ぼそうとする大魔王りんごのこともね!」
残りおまかせ
彩波・さくら
▲「5番が8番にだけ、こっそりといちごへの想いを明かす」
「みんな、今日は歓迎会開いてくれてありがとうね」
新入りの一人として、企画してくれたみんなにお礼をいうね。
「いつも、いちごがお世話になってるけど、これからもよろしくね」
寮の人たち一人ひとりに改めてお礼を言って回ろうかな。
あ、何か飲む?(お酒組にはお酌)
寮の人たちと会話をしたりゲームをしたりしつつ、妹の勘を発動!
相手のいちごラブ度を数値化するよ。
「いちごラブ度53万……
これは危険人物だから要注意かな」
私がいちごをどう思ってるか聞いてくる人がいるけど、
私がいちごをどうにか思うわけないじゃない?
とらぶるしてるいちごには冷たい視線を向けるよ。
蒼龍院・静葉
※アドリブ及びハプニング含め絡みはご自由に。
猟兵として過ごしつつ恋華荘も人が増え賑やかになってますね。
基本見守るスタンスは変わりませんが、賑やかなのは嬉しい事です。
髪を結い身体のスタイルの良さを隠さず王様ゲームを見守りながらのんびり温泉と桜の花見に。
「時の流れは早いものじゃの……。」
忘年会から数ヶ月を振り返りながらぽつりと呟く。
王様ゲームには不参加、どんなハプニングが起こるか見てる方が楽しいというもの。
「とはいえ巻き込まれるならそれも良き事じゃな」と妖しくも優しい微笑みを浮かべる。
ヴェール・フィエーニクス
ここはカタメカクレ同盟で温泉お花見をしていきます、ですっ!
お二人がデジタルなあれこれなお話しをしてる事に
自分もできるようになりたい、です…!と思ったり
また、途中でセナさんがご一緒の希望を出されたら、歓迎しちゃいます、ですっ!
そうしてお話しを進めていたら
アリカさんから恋についての話題が出てきちゃうかも?
その時は
あ、アリカさんが、わ、わたしに、聞いちゃうの、です
…!?!?
と、急にものすごくドキドキししちゃう事に!?
そんなドキドキもあって
みんなでまったりする時は、一足先におねむになっちゃうかも…?
▽【7番が10番とほっぺたあわせ】
お互いがOKでしたら、懐きあうようにほっぺたどうしですりすりも?
産土・水咲
いつもの格好がメイド服なのに
あんまりそれにふさわしいことが出来てないと思い起こし
こうしてみんなで集まる時に、家事が出来そうな人に
交流がてら、色々アドバイスとかをしてもらえたら、と思っています
その中で、いちごさん周りのあれこれに関する話題が出てきて
しかもその話題で盛り上がってる所にいちごさんがやって来て…
色々(あぶなくない範囲で)みんなで実践しようとしちゃうかも!?
いちごさんを、たっぷり!きれいにしちゃいますっ!
でも(やっぱり?)それが元でとらぶるが連鎖しちゃうかも!?
▽【9番が1番と洗いっこ】
どう洗いっこするかはお互いに相談の上で
いけないことに飛び火しちゃわない程度にっ
剣・士
洋の東西を問わず、剣を使う人に
自分がどんな剣士になりたいかを聞いていきたいと思います!
私は
「勝つことも大事ですが、戦いと剣術の研鑽を通して、心身ともに強くなっていきたい…というのが私の考えですね。」
…いろんな意味でおっきくなれたらいいのですが…と密かにぼそっと呟きつつ…
また、みんなが質問に答えてくれたら、感心したり、共感したり
内容によっては驚いちゃう事も!?
それでうっかり飛び上がってしまい
何もかも丸見えになっちゃった所を
いちごさんに見られちゃうかも!?
▽【9番が3番の体を洗ってあげる】
色んな意味でやりすぎ注意でっ
また、私がする時は、ちっちゃい身体で
恥ずかしがりながらも懸命にこなしていきます
セナ・レッドスピア
忘年会の時はご一緒できなかったですし
理緒さんとアリカさんがお話ししてる所にご一緒させていただきますっ
でも場所に合わせた2人の姿が目に入ったせいで
とってもドキドキしてしまい、なかなかうまく話せなくなっちゃうかも!?
勿論話題を振られた時は頑張って答えちゃいます
…でももし恋の話だったら
気恥ずかしさで答える前にばくはつしちゃうかも!?
その後でのんびりタイムに入ったら
3人一緒にぽかぽかまったり過ごしていけましたらっ
▽【4番が7番の首筋をはむっ、としちゃう】
思わず噛んじゃって、痛くしちゃダメですのでっ
私がする時は、大体ドキドキしながらする事に…
相手次第では、それがとってもたっぷりになっちゃうかも!?
カメリア・エスパディア
りんごさんに、クリスマスの時の事を謝ったりしつつ
クトさんの呼びかけもありますし
お酒を飲める人達で集まって飲みながらお話しをします
流石に王様ゲームもありますし、飲み過ぎて羽目を外さない程度にっ
それから、こうしてみんなと楽しく過ごせるのも
りんごさんがお誘いしてくれたおかげですので
入寮理由を聞かれたらそれをお答えして
りんごさんには、歓迎会が終わり際に、改めてお礼をしていきます
ひょっとしたら、その後にりんごさんから
「お返し」があるかも…?
▽【1番が5番に食べ物を「あーん」してあげる】
相手を嫌がらせちゃいけませんから
普通の食べ物限定で
あと、食べ物で悩んでいたら
ストロベリーサンデーをお勧めしちゃいますね
琴代・しらべ
もし一緒にいられるなら
アリスさんを始め、ここの寮にいる電脳魔術師な人と
知識の共有や交流ができれば幸いね
(タブレットは防水ケースに入れてるから大丈夫よ)
…気のせいかもしれないけど
電脳魔術師のみんなの視線が少し下の方に向けられてる気が…
…それにその時の表情を見てると、なんだか申し訳ない気持ちに…
▽【10番が1番に壁ドン&何か一言】
一言の内容は、照れちゃうものでも驚いちゃうものでもいいけど
言われて傷つく事は言わないように
私がする時は、いつものクールな様相を保てなくなると思う…
それから、喋る必要のある命令は、タブレットでの意思表示で代用
どうしても喋る必要がある物は、申し訳ないけど断る事になりそう…
ニーナ・ライト
ここにやって来た理由を聞かれたら
いちごさんに助けてもらった縁から、だったね。
あの時はホントにあぶなかったし…
と、ここまで答えて、改めてその状況を思い出したら
色んな意味ですごい状況な所をいちごさんに見られていた事も
思い出してしまい、恥ずかしさから湯船に身体を沈めちゃう!?
そして、過酷な世界からこんな素敵な所にご招待してもらえたし
いつかはいちごさんに恩返ししていきたいな
と、(なぜか)顔を赤くしたまま答えちゃうね
▽【2番が6番に添い寝してあげる】
自分の身体を枕代わりにしてもOK
温泉の中でする場合はおぼれちゃわない&させないように!
自分がする時は、ちょっとのぼせ気味な状態でする事になっちゃうかも!?
清里・柚月
今日入居させてもらった清里柚月だよ、みんなよろしくね♪
ここでは年長な方のお姉ちゃんだから、どんどん頼ってくれちゃっておっけーだからね。
えへへ、リンちゃん(りんごさん)久しぶりー♪
なんか変わりない感じで嬉しいな、お仕事ない時だらだらしたりとかしてなーい?もしお部屋散らかってたら、わたしが片付けに行こうかな…(お酒ぐいっ)
…うわぁぁぁんっ!また会えて良かったよぉぉ!!(泣き上戸発動)
聞いてよぉ、わたしね…(数ヶ月前から先日までグリードオーシャンに飛ばされサバイバル生活を余儀なくされていた模様)
▲【5番が10番の額にキス】
なんかおでこにキスって、お口同士でするのと違った良さがあるよね。
●3月、恋華荘。花見の開始。
恋華荘のある龍神温泉郷は、ちょうど今頃が桜が咲き始める季節だ。
寮の自慢の露天風呂の周りにも、見事な桜の木がいくつも立っていて、温泉に浸かりながら桜の花を愛でることができる。
「だからといって、花見まで温泉でやる事はないと思うんですけどねぇ……」
恋華荘の管理人たる黒一点の彩波・いちご(ないしょの土地神様・f00301)は、脱衣所から真っ先に出てきて露天風呂へと向かう道すがら、そういって天を仰いだ。
「あら、せっかくこんな立派な露天風呂があるんですもの、ここでやらなければ勿体ないではありませんか?」
「そうなのよ! 温泉はみんな大好きなのね!」
そんないちごに追いついて明るい笑顔で声をかけるのは、今回の花見のある意味発起人である2人、黒岩・りんご(禁断の果実・f00537)と湯上・アリカ(こいのか荘のアリカさん・f00440)だ。2人ともまるで肌を隠すことなくいちごに声をかけている。りんごの大人の女性として完成されたプロポーションと、アリカのまだ幼い顔つきと年齢ながら立派に育っているトランジスタグラマーなスタイルが目に入り、いちごは慌てて目をそらした。
当たり前だが、温泉でやるという事は皆が裸だという事で。
脱衣所からは続々と、今回の参加者たちが出てきている。もちろん裸で。
「別に私はいちごに見られるくらいは何ともないけど、あまり他の人見てるんじゃないわよ?」
「見ませんよっ?!」
いちごに釘を刺すようにジト目で見ているのは、いちごの双子の妹である彩波・さくら(龍神の聖女・f25299)だ。双子の兄妹だから、互いに裸であっても羞恥はないのだろう。さくら自身は特に裸のまま気にせずにはいるのだが、いちごが他の女の人の裸を見るのは断固阻止の構えであった。
余談だが、いちごとさくらは性別も種族も異なる二卵性の双生児なのだが、その容姿は一目で兄妹だとわかるほどによく似ている。髪の色や瞳の色などは瓜二つだ。ただ、さくらが背も低く胸も薄いため、双子というよりは年の離れた妹のように見えるのは仕方のないところだろうか。さくらの悩みの種でもある。
「えー? わたしはおねーちゃんに見られるのは全然かまわないのですよー?」
いちごとさくらの言い争っている(というかさくらが一方的にいちごをやり込めている)現場に飛び込んできたのは、いちごのもうひとりの妹の白雪・まゆ(月のように太陽のように・f25357)だ。もっともまゆはさくらと違い血のつながった妹というわけではない。とある事情からいちごに救われて以来、いちごをおねーちゃんと呼び慕っているだけだ。慕われること自体はいちごは全然かまわないのだが……。
「私がかまいますからっ?!」
「ていうかまゆちゃん、いちごにしがみつくのやめなさい?!」
裸のままでも全くかまわずに、いちごに抱きつきタックルを仕掛けてくるのは、いちごとしても勘弁してほしいところではある。いくら幼く薄い胸でも、さすがにこうやって密着されたら微妙な柔らかさも感じられてしまい、いちごは赤面してしまう。
「あはは……みんな見てるから、そのくらいに、ね?」
そんな姉妹3人(?)のやり取りに、やりすぎないようにと釘を刺すのは、恋華荘が寮ではなく旅館だった頃からの若女将、白銀・ゆのか(恋華荘の若女将・f01487)だ。いちごとも幼馴染でさくらが恋華荘に来る前に暮らしていた神社の娘のゆのかは、いちごにとってもさくらにとっても家族のような立場ではある。
そんなゆのかは、昨年の忘年会の時もそうだったが、基本的には裏方に回ることが多いため、今回飲み物や食べ物も最小限で裏方の必要がほとんどないなんていう状況は、かえって戸惑ってしまう様子。成長途上のプロポーションを恥ずかしそうに腕で抱いて隠しながら、苦笑いを浮かべていた。
「……こんなにのんびりだと、ちょっと新鮮と言うか、恥ずかしくなってくるんだけど……」
「まぁまぁ。ゆのかさんはいつも働きすぎなのですから、こういう時くらいのんびりしませんと」
ゆのかに声をかけるのは、頭に桜の花を咲かせている桜の精で恋華荘の住み込みメイドの詩羽・智悠璃(湯煙に舞う添桜・f22638)だ。智悠璃もまたゆのか同様に普段は裏方役なのだが、ワーカホリック気味のゆのかとは違い仕事を離れた楽しみもちゃんと満喫する気のようだ。ちなみに病弱だった名残の白い肌も、ゆのか同様の小ぶりの胸も、晒すことには特に抵抗ない……というか満開の桜の方に気を取られてそこまでは気にしていない感じか。
「そうですよ。それを言うなら、いつもの格好がメイド服なのに、全然お手伝いとかそれらしいことができていない私が申し訳ないくらいです」
などと言いながら声をかけてきたのは、産土・水咲(泉神と混ざりし凍の巫女・f23546)だ。スタイルのいい白い肌を少しだけ朱に染めながら話しかけてきている。確かに水咲は普段着がメイド服のような格好ではあるのだが、割となぜその姿なのかは謎であった。本人も気にしているのか、今後お手伝いできるように、家事の上手な人に話を聞きたいと思っているとか何とか。
「でも……やっぱり何かしてないと落ち着かないのよぅ……」
「いやいや、せっかくの機会なんだから、普段働いている分のんびりしなきゃ。……なんて普段ここに住んでないあたしが言うのもなんだけどね」
でもとまだ渋っているゆのかに、さらに声をかけたのは、今回の花見の参加者の中では2人いるゲストの1人、昨年の忘年会にも参加していた霧沢・仁美(普通でありたい女子高生・f02862)だ。いちごと親しい事もあって恋華荘にはよく遊びに来ているので、仁美もすっかりこの場に馴染んでいたりする。ここの温泉にも慣れているためか、110センチだという豊か過ぎるバストも惜しげもなく晒していた。
ところがまぁ、そんな巨大なものをぶら下げていると、じーっと見てくる視線はあるもので。
「くっ……相変わらず仁美さんは強力ですね……他にもライバルがいないかリサーチしないと……」
仁美の方をじーっと見てライバル視しているアイ・リスパー(電脳の天使・f07909)である。以前はいちごとお風呂でバッティングするのは恥ずかしく、なるべく時間をずらすようにしていたアイだったが、今はいろいろ経験しているせいかその方面の羞恥はあまり見られない。代わりに積極的に動くためにもリサーチは欠かせないのだ。
なお念のために言うと、仁美のことは胸でライバル視しているわけではない。比べるのが可哀想すぎるほどの差はあるので。
「ほっといてくださいっ?!」
《……?!》
「ビックリした。アイ、なにしてるの?」
急に声を荒げたアイに驚いたのは、防水タブレットにわざわざ「?!」と表示させてあわあわしている琴代・しらべ(The Glitcher・f25711)と、恋華荘では珍しい幼女の葛葉・アリス(境界を操る幼き女神・f23419)の2人だった。
同じ電脳魔術師という縁もあって仲のいいアリスとアイだが……クールなアリスとドジっ子なアイでは、どちらが年上なのかたまにわからなくなる。
しらべは珍しい組み合わせではあるが、同じ電脳魔術師として、アリスやアイには興味があるらしく、交流ができればと近づいてきたところであった。ちなみにしらべは、己の身に課された呪いのため、ほぼ口はきけず、話せる言葉はせいぜい1単語くらい。なのでコミュニケーションにはタブレットが欠かせないのである。
「な、なんでもないですっ」
「くす。そうね、なんでもないという事にしておきましょうか」
アイの視線の先に仁美がいたことで、アイが何で声を上げたのかはなんとなく察したアリスは、くすくすと笑っていた。ついでにしらべは、なんとなく申し訳なさそうに自分の身体を見て俯いていた。なお、しらべの特徴にはスタイルが良いの文字がしっかりと刻まれている。
「えっと、それよりですね、せっかくの歓迎会なんですし、いろいろ情報収集……じゃなくて、普段あまり話をしない方々と親睦を深めましょう」
慌てているのか、本音が色々と透けて見えている気もするが、アイの言葉にはアリスも同意し、しらべも嬉しそうに頷く。今回は花見であると同時に、今年になってから大勢新しく加わった寮生の歓迎会も兼ねているのだから。もっともアイの場合は、ライバルのリサーチが主目的なのかもしれないが。そんなアイの内心を見抜いているのかアリスはやはりくすっと笑った。
「くす。そうね。私もせっかくだし、あまり話したことない人とも話したいわ。ベアトもそれでいい?」
「BBも同意すると言います」
そんなアリスのあとからやってきたのは、アリスに生み出された電脳悪魔のベアトリス・バスカヴィル(デジタルデビルBB・f23871)だ。褐色肌に抜群のプロポーションが眩しいBBことベアトリスは、一緒にやってきていた、対照的に白い肌で、同じように抜群のプロポーションのネウィラ・カーレンベート(銀糸の術士・f00275)に振り向いて、相変わらずの読めない表情のまま言うのだった。
「というわけで、今回はBBはネウィラさんとは別の方とお話ししたいと言います」
「あ、はい、わかりました。私もせっかくですし、新しい人とお話してみたいですしね」
昨年の忘年会で仲良くなって、それ以来よく話している2人だが、だからこそこういう機会には交友を広げたい模様。特にBBは電脳系の人たちとの悪だくみ以外ではなかなか交友関係もないので、大勢の寮生が集まるこの会はいい機会ともいえる。
「そうですねっ。私も、いろんな人にお話を聞いてみたいで、すぅー!」
そんなベアトリスの後ろからふわふわ飛んできたのは、寮で唯一のフェアリーの剣・士(フェアリーの剣豪…を目指して鍛錬中・f25015)だ。寮での最年少かつ最小で小さく薄い身体の士だが、向上心はとても大きい。士の視線の先にいるのは、恋華荘で剣を使う面々、主に騎士組だ。
「本当にここの賑やかさには圧倒されますね、姉様」
「本当よね。国があったころの社交の場でも、これだけ賑やかなのはなかったかもしれませんわね」
姉妹揃って抜群のプロポーションを晒しながら並んでやってきたのは、ミネルバ・パラステール(亡国の戦姫・f25785)とアテナ・パラステール(亡国の姫騎士・f24915)の騎士姉妹だ。この2人は、故郷である国を失って猟兵となったのだが、猟兵のなるまでの経緯が異なっており、寮に来たのも別々だ。つい最近10年越しの再会をしたばかりなのである。ちなみに姉であるアテナの方が年齢は若いが、これはアテナがアリスラビリンスに囚われていた期間を加齢していないからだ。妹のミネルバは姉が行方不明になった後、国が亡びるのを目の当たりにし、落ち延びてここにたどり着いている。
ただ、再会してみれば、姉は色々とイイ性格だったので、妹としても戸惑う事も多かったり……。
「賑やかなのはいいですけど、ちょっといろいろはしたなくはないですかね?」
アテナの横で眉をしかめているのは、こちらも恋華荘騎士組の1人、アイリス・ヴォルフェルト(守護騎士・f15339)だ。アテナの性格には色々やられてしまい、いろいろと言いたいこともたまっている様子。薄い身体を恥ずかしそうに隠しながら、ジト目でアテナを睨みつけているが……アテナは特に気にした様子もなさそうだ。
「確かに……女性のように愛らしい方とはいえ、殿方と混浴になるのは少々気恥ずかしいものがありますね」
アイリスの様子を見て小首を傾げながらも、その言葉には頷くアウレリア・フルブライト(輝くは黄金の闘志・f25694)である。それなりに豊かなスタイルの持ち主だが、貞操観念も強い彼女はいちごの存在に恥ずかしそうに身体をタオルで隠しているのだった。ちなみに一応彼女も騎士組の1人ではあるのだが、剣ではなくもっぱら拳のため少々様相は異なっている。
「そうですね……皆さん裸だなんて、私には刺激が強すぎます」
同じく恥ずかしそうにタオルで身体を隠しているのは、アンナ・オルデンドルフ(真っ直ぐな瞳・f17536)だ。恥ずかしいのは胸が小さめだからではない。そもそも温泉に裸で入ること自体が恥ずかしいようで、できれば水着を着たかったと考えていたりもする。
「まぁまぁ、郷に入っては郷に従えと言いますし、ねぇ、りんごさん?」
「そうそう。男の娘も1人いるにはいますけど、基本的に女同士なので、そんなに恥ずかしがることもありませんわよ?」
いつのまにかりんごと合流していたカメリア・エスパディア(先生は魔狩りの魔剣・f21767)だ。カメリアも、ある意味もう慣れたのか、背は低いながらもメリハリのあるプロポーションを晒しながら、隣にいる2人と一緒に、りんごを囲んで話していた。
「それにしても、リンちゃん。来たばっかりのわたしも混ざってよかったのかしら?」
りんごのことをリンちゃんと呼ぶのは清里・柚月(N.D.O・f26171)だ。柚月はりんごと古くからの知り合いだったが、つい先日まで行方知れずになっていて、グリモアが新しい世界とつながったことでようやく帰ってこれたという経歴の持ち主である。そんな彼女が恋華荘に入寮したのは、まさにこの花見当日。初日から年上のお姉さんらしい抜群のプロポーションを晒すことになったわけだが、そこはあまり気にしていないようだ。初顔合わせになる周りの面々に、しきりによろしくと挨拶をしている。
「あなたはまだしも……私はそもそも何でここにいるのかしら……? りんごさんに相談に来ただけなのに……」
そう溜息をつくのは、寮生ではないゲストの1人で、主治医のりんごのもとに通ってきている音取・金枝(若奥様は秘密の変身ヒーロー・f25315)である。本当はたまたま悩み相談のためにりんごを訪れただけなのだが、そのままりんごに捕まってこの宴会へと連れ込まれてしまったのだ。
「りんごお姉さまのお友達なら、全然問題ないのよ。いいお酒用意したから、一緒に飲むのよ」
そんな柚月や金枝を歓迎しつつ日本酒の一升瓶を持ち出しているのは、ヴィクトーリヤ・ルビンスカヤ(スターナイトクルセイダー・f18623)のうちの主人格であるクトだ。童顔ゆえに幼く見られがちのクトだが、実際のところちゃんと20歳は越えているので飲酒には問題はない。少々言動は幼いが、メリハリのあるプロポーションは確かに大人の女性と言えた。
なお、ヴィクトーリヤは2つの人格それぞれに分割して行動することも多いのだが、第2人格であるトーリは今回は既に別行動のようだ。
「お酒ですか。いいですね。たまにはそちらに混ぜてもらおうかしら……?」
そんなりんごを中心とした酒盛りグループに声をかけたのは、こちらも見た目は少々幼いが成人済みな鷹司・かれん(メイド探偵が見ています・f22762)であった。ちなみに見た目が幼いというのは童顔気味なことを言うのであって、壁のように薄い胸の事を刺しているわけではないので念のため。
「くっ……」
普段かれんは、仲の良い年下の友人2人と一緒に行動することが多いのだが、今回そのうちの1人は都合がつかなくて不参加、そしてもう1人は……。
「ふふふ。思い出してきたわ、いちご。やはりあなたは私の前世の……」
「な、何言ってるんですか?! っていうか離れてくださいっ?!」
……と、中二病全開な言動で、瑞々しく均整の取れた体を惜しげもなく晒しながらいちごに迫っている天樹・咲耶(中二病の二重人格・f20341)の裏人格のサクヤの姿を遠目で見て、かれんは深くため息をつくのだった。
表人格の咲耶ならともかく、裏人格のサクヤには付き合いきれないという所か。もっともかれんも複数の人格を持っている身なので、これが中二魂を理解できる花凛だったら、ノリノリでその咲耶に付き合ってしまいそうなのが困りもの。今は主人格の花恋なのでため息をつくばかりである。
「あちらはいいのです、かれんさん?」
「……サクヤさんになっている間は放っておいた方がいいのです」
りんごから声をかけられ、苦笑交じりに返すかれんであった。
「まぁ、あちらはあちらで大変だとは思うケド……」
『こっちはこっちで気になるというか……』
サクヤから逃げ回るいちごと、りんごたちのグループとを見比べて、パニーニャ・エルシード(現世と隠世の栞花・f15849)は、己の内なるもう一つの人格と会話をしていた。ちなみに額の宝石の色が赤なので、現在表に出てきているメインはパニーニャではなくアザレアの方だ。アザレアは、メートルサイズな豊満なバストを持ち上げて強調している……訳ではなく普通に腕を組みながら、思案顔である。気になっているのは、りんごの所にいる金枝のことか……先日色々あったのを近くで見ていたのだから。
というわけで、アザレアはりんごたちの方の様子を見ようと思ったようだが、いちごはいちごでまた大変なことになっているのだった。
「いちごさんは相変わらずですわね」
「トーリさん、見てないで助けてくださいよ……はうぅっ?!」
サクヤから逃げていたいちごは、話しかけてきたヴィクトーリヤの別人格で分身して出てきている黒髪のトーリの言葉によそ見をしていた結果、誰かにぶつかってしまう。
「あんっ?!」
「ひゃっ?!」
「あわわ、すみません、水花さん、桂花さん」
いちごがぶつかった相手とは、並んで歩いて露天風呂へとやってきた巨乳な2人、如月・水花(輝き秘めし水宝玉の姫・f03483)と不知火・桂花(逆弦紅娘・f05277)だった。より正確に言えば、その両者の胸のクッションによって激突ダメージを緩和されていた。もっとわかりやすく言うと、2人の胸にぶつかってしまっていた。
「大丈夫大丈夫。いちご君、気にしないでもいいし、何ならもう少し埋まっていく?」
と、水花の方は気にしていないどころかもっとする?と甘やかしモードになっていたりする。さらに……。
「ほんっと、いちごってば胸が好きよねぇ。私だったら、胸よりも足の方が自慢なのに……」
いちごに対してツンケンしながらも、胸ではなく美脚をアピールする桂花とに挟まれて、ますますいちごの逃げ場がなくなっていた。
「なるほどー。これが噂のトラブルなんだね?」
いちごとサクヤのやり取りからいちごとトーリ・水花・桂花との出来事までの一部始終を見て、くしししと楽しそうな悪戯っぽい笑みを浮かべているのは、サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)だった。まだ14歳のサエだが、プロポーションの良さは水花や桂花にも決して劣っていなかったりする。
「そうそう、これが恋華荘のある意味日常なのよ」
そんないちご達の様子を見て、アリカもまたサエに同意するように、くすくすと含み笑いをしていた。
「ま、毎日が、いっぱいドキドキなん、です……」
そのアリカの傍らには、何故かすでに赤面しているヴェール・フィエーニクス(「涙を拭う手」のアサシン・f00951)がいた。年齢通りの幼い身体で、アリカにぴとっとくっつきながら何故か顔が真っ赤なヴェールは、いちごが目の前で繰り広げているあれこれを見ているせいか、それとも……?
「ほーんと、いちごさんってばしかたないんだから、ねー?」
そしてアリカとヴェールと一緒にいるのは3人揃ってカタメカクレ同盟となる最後の1人、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)だ。明るい感じで軽く言っているが、目が微妙に笑っていないかもしれない。引きこもり特有の白い肌がなんとなく紅潮しているように見えるのは、温泉の湯気のせいだと思いたい。
「え、えっと、理緒さん……?」
そんな理緒の様子に何やら不穏なモノを感じたのか、おそるおそるセナ・レッドスピア(blood to blood・f03195)は声をかけた。こちらはこちらで白い肌が若干紅潮しているのだが……セナの場合は恥ずかしがり屋だからだ。ましてや、仲のいい理緒と裸で一緒になっている状況というのも、セナが緊張している理由でもある。
「ううん、なんでもないよっ」
「そ、それならいいんですけどっ」
なので、笑顔で理緒が振り向いたのを見て、セナがますます顔まで赤くなっていくのだった。
「それにしても温泉で歓迎会かー。わたしもみんなとちゃんと会ったのは温泉での忘年会だったなぁ……なんだかすでに懐かしい」
理緒は恋華荘にはかなり初期からいたのだが、引きこもりだったので1年近く他の人とは関わらないようにしていた。なので忘年会の時はほとんど周りの観察で終わってしまった感じはある。
「でも他のみんなと話す機会あまりなかったんだし、新人さんほどじゃなくても、理緒も今回いい機会でしょ?」
そういって話を振るのは、こちらも理緒とは仲のいいメリッサ・ウェルズ(翡翠の吸血姫・f14800)だ。理緒に比べて年は若いが、身体の厚みでは勝っているメリッサ。もっとも理緒の場合は、アイやさくらのように胸の差はさほど気にはしていないようだが。
「ほら、新しい人たちがぞろぞろと……」
メリッサの視線の先には、歓迎される側の少女たちが数名連れ添ってやってきていた。もちろん、ここまでにも新人歓迎の対象になる人は、さくらやまゆを始め大勢いるわけで、新人は彼女たちだけというわけではないが……少なくとも寮生とまだほとんど顔を合わせていないという意味では、こういう場が貴重な面々ではある。
「それにしても、末席に加えて頂いて本当に間もありませんのに……恐れ多い気持ちですわね」
そう言いながら現れたのは、入寮してから皆の前に顔を出すのはほぼこれが初めてなリアトガルト・ネイトロン(アズールディーヴァ・f25055)だ。すらりとした綺麗な肢体なのだが、どことなく不思議な雰囲気を漂わせている。
そしてリアトガルトに続くように、更に2人続けてやってきた。
「こんな素敵な所にご招待してもらえて……なんだか申し訳ないね」
「いちごさんに助けていただいたこと、感謝しませんと」
どちらも、たまたまアポカリプスヘルに訪れていたいちごに助けられたことで恋華荘へとやってきたニーナ・ライト(Automatic-Buddy「Ψ-7174」・f24474)とマイエ・ヴァナディース(メテオールフロイライン・f24821)の2人だ。境遇的には似通っている2人だが、プロポーションも雰囲気も対照的な2人であった。
「ほーんと、いちごってばどこでこんなにひっかけてくるんだか……」
そんないちごに助けられた2人を見ながら頬を膨らませているのは織笠・アシュリン(魔女系ネットラジオパーソナリティ・f14609)だ。やはりいちごに対してはいろいろと言いたくなってしまう様子。ちなみに彼女の特徴にあるスタイルの良さは、湯気に隠れていてよく確認できない。いまだ未観測状態なのである。
「いちごくんだからねー」
「仕方ないの。みんないちごには恩とかいろいろあるの」
アシュリンの呟きに答えるのは、寮でも仲良しなコンビ、刑部・みさき(おひさまのゆりかごぷかぷかまぁめいど・f05490)と、ベルことフロウヴェル・ゼフィツェン(時溢れ想満ちて・f01233)の2人だ。年齢に反して幼い言動のみさきと年齢に反して落ち着いた言動のベルだが、実にウマもあっていて、忘年会以降よく一緒にいる姿が見られる。バレンタインの日にも2人で一緒にいちごに迫ってチョコを渡していたらしい。
そんなみさきは、湯船に早く浸かりたいと、パタパタと駆けだしていき、ベルもそれを追って駆けていった。
「あ、こら、こんなとこで走るなー?」
「……まぁ、いいんじゃないかしら。こんな日だもの、無礼講で」
止めようとするアシュリンを、ジオレット・プラナス(月夜の鎮魂歌・f01665)は静かに諭した。確かに公衆浴場などでは走るのはマナー違反だろうが、ここはどうせ身内しかいない寮の露天風呂だ。細かなことを言っても仕方ないだろう。
「そうですね。賑やかなのはいい事です」
ジオレットと同じように、一歩引いたところでの見守り体勢な蒼龍院・静葉(蒼闇の果てに着きし妖狐の戦巫女・f06375)も、それには同意する。小柄な人形のようなジオレットと大人びたスタイルの良さを誇る静葉では見た目はかなり違うが、寮の面々に対しては見守りスタンスなのは共通しているようだ。共に賑やかなのを嬉しそうに眺めている。
「……まぁ、楽しそうなのを見ているのは嫌いではないから、いいけど」
それはもう1人、牧杜・詞(身魂乖離・f25693)も同様の感想のようだ。もっともジオレットや静葉と違い、詞は本来歓迎されるべき新人なのだが……詞はその賑やかな中へと混ざるのは苦手そうだ。大人びた美人の顔つきに反し薄い身体を隠すように身を縮めながら、比較的隅っこを歩いて湯船へと向かっていた。
「えっと、今回の参加者はこれで全員かな?
それじゃ、飲み物お配りしますねー」
最後に集まった人数を確認して、茅乃・燈(“キムンカムイ”は愉快な仲間で力持ち・f19464)が皆に飲み物を配っていく。
総勢44名の仲間たちが揃ったところで、恋華荘3月の花見兼新人歓迎会は開始されたのであった。
●スーパー妹大戦?
「みんな、今日は歓迎会開いてくれてありがとうね」
今回は花見であると同時に新入寮者の歓迎会でもある。なので全員湯船に浸かって乾杯した後、新入寮者を代表して、いちごの妹のさくらが挨拶をしていた。
「いつも、いちごがお世話になってるけど、これからもよろしくね」
さりげなくいちごの妹であるアピールも欠かさない挨拶が終わり、堅苦しい場面はここまで、皆はそれぞれに談笑を始めるのだった。
「さて、寮の人たちひとりひとりに改めてお礼を言って回ろうかな……?」
そう言いながら、さくらは露天風呂の中を歩きだした。もちろん挨拶回りも目的だが、さくらにとっては兄に近付く要注意人物のチェックも目的の内。妹センサーを全開にしてお湯をかき分けて進んでいくのだった。
宴が始まるとともに、きれいな歌声があたりに響いていた。
それは管理人にして温泉郷のローカルアイドルのいちごの歌声……ではなく、余興の一環として歌いだしたジオレットの歌声だった。
歌っていたジオレットだが、さくらが近付いてきたことに気が付くと、歌を中断してさくらに声をかけてみた。
「本職ほどじゃないけれど、リクエストは聞くよ。
……それとも、さくら、一緒に歌ってみる?」
「私? いちごじゃないんだからいいわよ」
兄とは違い人前で歌う趣味のないさくらは首を振って拒否するが、それならば、合いの手をヨロシクと言われ、しばしジオレットの歌に付き合うのだった。
ジオレットとしては、さくらのいちごへの対応とか寮で見ていて、なんとなく肩ひじ張ってそうだと思っていたので、積極的に巻き込むつもりではある。
ジオレットの歌に耳を傾けていたさくらだが、そのとき急に彼女の妹の勘(?)が反応する。
「むむ……いちごラブ度53万……これは危険人物だから要注意かな?」
いきなり意味不明の数値を叩きだしているさくらだが、その視線の先にいるのは、どうやらアイと理緒のようだ。どちらに対しての判定なのかはさくらにしかわからない。そもそもどうやって計測しているのかも、謎ではある。
「それにしても龍神温泉郷の桜は綺麗ですね」
「うんうん。こんなきれいな桜の中で温泉に入れるの幸せだよー」
どうやらアイと理緒は、アリスやしらべとともに、電脳魔術師組で集まって話をしているようだ。
「ここは本当にいい場所ですね」
「BBもこの温泉はとてもいいものだと思います」
電脳魔術師組の中にはリアトガルトとベアトリスも一緒にいるようだ。電脳悪魔にソーシャルディーヴァなので、ある意味近似の属性という所か。
「では、もうちょっと演出を加えましょうか」
そんなグループで話をしている中、アイはふと思い立って、電脳魔術を駆使して小さな風を起こし、桜の花びらをまるで淡雪のように降らせるのだった。
「!」
《それ電脳魔術? どうやったの?》
アイの使った術に興味津々なしらべはタブレットに表示された文章をぐいぐいと押し付けるようにして、アイを質問攻めにしていた。
「さくら、どうしたの?」
「い、いえ、なんでも……」
ジオレットに問われたさくらは、いったん電脳魔術師たちの会合から目を離すが、妹の勘はさらに、自分に近づいて者に反応しているのだった。
「む……さっきよりは低いけど、いちごラブ度は感じる……誰かな?」
「あ、さくらさん。改めてよろしくお願いします」
さくらが感知したのは、どうやら近付いてきた水咲だったらしい。
「水咲さん、だったっけ。こちらこそよろしくお願いね」
水咲は水咲で、家事の上手そうな人に話とか聞きたいなと思ってうろついていて、それでジオレットの歌に合いの手を入れていたさくらを見かけてお話しようとやってきたのだ。さくらにとってもそういう話は歓迎なので、2人はそのまましばらく家事の話で盛り上がる(?)のだった。
「……とまぁ、こんな感じで、参考になったかな?」
「はい、いろいろありがとうございます」
さくらもいちごほどではないが十分すぎるほどの家事の達人なので、口頭でのコツの伝授だけでもかなり勉強にはなっただろう。
水咲の用事やお話としてはこれで済んだのだが、さくらの用事はここからが本番だ。いちごラブ度を感じた以上は探りを入れなければ……!
「で、水咲さん、あなたもいちごに……」
だが、水咲に話を聞くよりも早く、どぼーんと大きな水柱が立ったので、水咲との会話は中断されてしまう。
「な、なにっ?!」
水柱の中から出てきたのは、まゆだった。
「気持ちいいのですよ!」
「……まゆさん、気持ちいいからって、他の人も入ってるお風呂に飛び込んだらダメです」
そしてそんなまゆを、おねーちゃんこといちごが軽くお説教(?)をしている。
「ごめんなさいなのです。歓迎会してくれたのが嬉しくて、テンション上がっちゃったのですよ」
「気持ちはわかりますから、もうしたらだめですよ?」
そういって優しくまゆの頭を撫でているいちごを見て、むっとした顔のさくらが、水咲とジオレットを残してひとり近付いてきた。
「またまゆちゃんになにしてるの、いちご?」
「またとか言わない?! 何もしてないってば……」
普段敬語口調のいちごだが、さくらに対してだけは敬語抜きで喋っている。というか敬語を使うとさくらが怒るので、無理に口調を変えているのだ。
「ほんとうに……? まゆちゃん、変なことされたらいいなさいよ?」
「変な事なんてないのです。おねーちゃんにしてもらうことなら、わたしはなんでもおっけーなのですよ!」
さくらの言葉に反発したのか、まゆはそういうといちごに思いっきり抱きつくのだった。今更だがここは温泉の中。なので当然裸で抱きついているので色々と絵面がまずいことになっている。
「ちょ、まゆさんっ?!」
「なにしてるのいちごっ?!」
「待って、責められるの私っ?!」
そして当然そんな時、さくらが責めるのはまゆではなくいちごになる。
いつものパターンなら、このまましばらく2人の妹が意地の張り合いになるところなのだろうが……。
「……さくらさんもおねーちゃんに抱きつきますか?
さくらさんはライバルでもありますですけど仲良くもしたいのですよ?」
今回は、歓迎会の雰囲気のためだろうか、まゆの方がそう言いだしたから話がまたややこしくなってきた。
「あ、えっ、と、仲良くしたいのは、私もだけど、だからっていちごに抱きつくとかはあり得ないわけで……」
まゆの言葉に毒気は抜かれたものの、さくらとしてはだからと言って、自分以外にいちごの妹など認めるわけにはいかない。
この場合どうしたものかと逡巡していると、さくらではなく、別の人がいちごに抱きつくのだった。
「さくらだってさ、ホントはコレ位したいんじゃない?」
「ひゃっ?! え、ちょ、……桂花さん?!」
いきなり現れて、いちごの背後から抱きついたのは桂花だった。桂花の豊かな胸が、いちごの背中に押し付けられて形を変えている。
いちごはもちろん、押し付けられる感触に真っ赤になっていた。
それを見て一瞬呆気にとられたものの、すぐに正気を取り戻したさくらは、いちごの方を冷たい視線で射貫くように見ている。
「いちご、さいってー」
「だからなんで私?!」
文句を言ういちごに対し、さくらはなぜか自分から仕掛けたにもかかわらず真っ赤になっている桂花の方を指さして言うのだった。
「だって、ほら桂花さん真っ赤になってるじゃない。いちごなにかしてるんでしょ?」
「なにもしてないからー?!」
実際いちごは何もしていない。抱きついて胸を押し付けてみたものの、自分の方が恥ずかしくなってしまった桂花の自爆である。
だが、さくらはいちごが何かしたのだろうと、冷たい視線のまま問い詰めるのだった。
「あー、またさくらはやってるねー」
「いつ見ても仲が良さそうで羨ましい限りですね」
もっとも、そんなさくらといちごのやり取りは、傍から見ると痴話げんかのようにも見えるらしく、近付いてきたアシュリンとアンナからもこんな感想が出てきていた。
「仲良くなんかないわよ!」
「そうですか? この仲の良さはちょっと嫉妬してしまいそうですけれど」
さくらは否定するが、アンナからはその否定をさらに否定されてしまう。アシュリンに至っては、こんなことを聞いてくる始末だ。
「ねぇ、さくらって、いちごのこと、どう思ってる?」
「はぁ? どう思うも何も、私がいちごをどうにか思うわけないじゃない?」
呆れたような返事を返し、そしていまだに桂花とまゆに抱きつかれているいちごに冷たい視線を送りながらさくらは肩をすくめるのだが……その言葉は、歌を中断して近付いていたジオレットにさらに突っ込まれてしまう。
「そう? 兄妹という割には、随分お兄さんに入れ込んでるし……好きなの?」
「好きとか?! そりゃ唯一の家族だからってのはあるけど、好きとかそういうのは意味が違うわよ」
だが、周りの追及はおさまらない。いちごに抱きついている桂花が、さくらに顔を寄せて囁いてくるのだった。
「でも目線追ってると、どこかで嫌ってないって感じるの。
変わりのない兄妹なんだし、少し甘えてもいいんじゃない?」
「……少なくとも、ラブ度を測定できるらしい時点で無関心とは程遠そう……かな?」
更に桂花に続けるように、ジオレットも追い込んでいく。
「はぁ?! 普段の私の行動実ったら、どうしてそういう感想になるのよ。私はいちごが周りに迷惑かけないように見張ってるだけだってば」
が、一応は2人の言葉もきっぱりと否定するさくらではある。
とはいえ、まゆも桂花もアシュリンもアンナもジオレットも水咲も、そんなさくらの態度をある意味微笑ましく見ているのだった。
「ま、口では色々言っちゃうわよねー?」
アタシもそういうクチだから……とは口に出さずに、桂花は笑いながら、いちごを放し、他の新しい子にかまいに行こうかと言って離れていくのだった。
あとに残されたのは、いちごとさくらと寮生たち。
「違うからね?」
「分かってるから……」
そんなさくらといちごのやり取りを、周りの皆は微笑ましそうに見ているのだった。
●電脳とソーシャルの宴
さて、さくらといちごから離れた桂花はというと、アリスとベアトリスとリアトガルトとしらべが話し込んでいた場所へとやってきていた。
このあたりには先程はアイと理緒もいたのだが、そちらはまた別の所へと向かったようだ。
《なんだかさっきまで、アイと理緒の視線が少し下の方に向けられていた気が……》
「気にしなくていいわよ、ええ」
その移動した2人の表情を思い出し、なんだか申し訳なさそうにタブレットにメッセージを表示させたしらべに、アリスは割とどうでもいいという感じに答えていた。
「BBも気にしなくていいと言います。所詮はもたざる者の負け犬の遠吠えだと、BBは言いましょう」
「……いや、ベアト、普段から見せびらかしてるあんたが言うなって話だけど?」
アリスのツッコミは入ったが、BBは、しらべ以上のボリュームではあっても普段から露出させているのであまり驚きはない。普段着痩せしているしらべが意外とあったからこそ、アイとかはいろいろ情報収集したくなったのだろう。
「そうねぇ。BBやそっちの……リアトガルトだっけ?は、普段着が普段着だから、スタイルも目立つしねぇ?」
そしてそこに声をかけてきたのは、こちら側に移動してきた桂花だ。
「私ですか? あれは趣あ、いえ、デバイスの色に合わせたものでして……」
急に話を振られたリアトガルトは、一瞬本音が出そうになったけれども、そういってごまかした。慌てたのか、若干頬が朱に染まっている。
《趣味なのですかっ?》
でもそのわずかな言葉を、しらべは聞き逃さなかったらしく、タブレットにそう表示させて真っ赤になってあわわとしている。もっともタブレットでのツッコミなので、リアトガルトは画面を見ていないようで気付いていないようだ。
「……ツッコミ待ちなのかと、BBは問います」
「違いますっ?!」
なので代わりにベアトリスが口にした。もっともベアトリスも人の事は言えないのだが。ともあれリアトガルトの普段着はかなり露出度は高く、それが趣味なのかと問われても本人的には困るのだろう、きっと。だからといって、ソーシャルディーヴァだからそんな恰好をしてると思われたら、他のソーシャルディーヴァにもきっと迷惑だ。
「あなたたち2人、いいお友達になるんじゃないかしら?」
アリスはジト目でそういうが、リアトガルトはまんざらでもなさそうだ。ベアトリスの方はいつものように表情が読めないが、リアトガルトの様子からすると、普段から、ネットワーク上でも友達になる気満々という所か。
「BBはそれもありだと言います」
一応、ベアトリスの方も特に不満はないようである。
そのまましばらく話し込むベアトリスとリアトガルト。そしてリアトガルトへのツッコミ文章(タブレット表示)が尽く無視されてバタバタしているしらべ……というか気付いているっぽいベアトリスが尽く視界を遮っていて、まるでベアトリスとしらべでバスケットボールのポジション争いのようになっている……そしてそんな3人の様子を楽しそうに眺めていて、時々調べに声をかけて慰めているアリス。
こんな感じで、こちら電脳組は和気あいあいと(?)話も弾んでいくのだった。
●りんごの人生相談
さて、時間は少し巻き戻そう。
さくらの挨拶も終わり、ジオレットの余興の歌が響く中、20歳を超えた大人の女性たちは1ヵ所に集まって、酒盛りを始めていた。
その中心にいるのはもちろんりんごだ。
「くぅ~。やっぱり、温泉に浸かりながら飲む日本酒は最高ですわねぇ」
早くも酔っ払い全開なりんごである。普段から寮の中でも酒飲みで有名なりんごだ。
「はい、りんごお姉さま。まだまだお酒はあるのよ」
そんなりんごにつきっきりでお酒を注いでいるのはクトだ。りんごをお姉さまと慕う百合娘のクトは、実に楽しそうな笑顔を浮かべてりんごのお世話をしている。
「ありがとう、クトさん。でもクトさんも飲んでいいのよ? せっかくの珍しいお酒なんでしょう?」
「ううん、いいの。りんごお姉さまの為に用意したお酒なのよ」
本当にりんごのお世話をするのが嬉しそうだ。りんごもそんなクトを可愛がるべく、お酌はもういいからと隣に座らせて、軽く肩を抱き寄せてみたりする。
そんな平和な光景を微笑ましく見ているのはカメリアだ。
「なんとなくりんごさんたちの姿を見ていると、クリスマスの出来事を思い出しますね」
「ふふ、そんなこともありましたわね」
カメリアも一緒にお酒を飲みながら……昨年のクリスマスにりんごと一緒に温泉で過ごしたことを思い出して頬を朱に染めていた。一応お酒のせいだと思いたい。
「あの時は、なんていうかご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、たいしたことではありませんし。何なら、あの時の続きでもします?」
悪戯っぽく微笑むりんごに見つめられ、カメリアはますます赤面してしまうのだった。入浴しながらお酒飲んでますからね、赤くなろうというものです、ええ。
「そ、それはともかくですねっ。こうして楽しく過ごせるのも、りんごさんが恋華荘にお誘いしてくれたおかげですので、感謝しています」
「なんだか、リンちゃんは相変わらずみたいねー」
りんごとクトやカメリアとのやり取りを見て、いろいろ心当たりがあるのか、柚月はそんなことを呟いている。何せこの湯月、りんごとは古い馴染みの友人という事なので、かつて魔王と呼ばれた武勇伝もいろいろ知っているのだろう。
「あら、そうかしら? これでも最近は大人しくしているつもりですけれど?」
「そーぉ? お仕事ない時だらだらしたりとかしてなーい?」
昔馴染みゆえに、柚月は、自分の事に対してはだらしのないりんごのこともよく知っているようだ。部屋には飲み終えたまま放置してある酒の空き瓶がごろごろしているりんごは、その言葉に苦笑するしかない。
「りんごお姉さまのお部屋は、いっつも散らかっているのよ?」
「そういえば、寮では下着姿でよく出歩いていますよね?」
「クトさん?! カメリアさんも?!」
そして、りんごが口にしなくても、仲のいいクトやカメリアがいろいろ暴露してしまうのだった。
「あー、やっぱり。お部屋散らかってるなら、わたしが片付けに行こうかな……?」
「クトもお世話しに行くのよ?」
そういう2人の厚意に、りんごも苦笑いするばかりで、ただただ酒を口にしているのだった。つられて柚月もクトもカメリアもお酒が進んでいる。
「……ええと、そろそろ話しかけてもいいかしら?」
そんな中、躊躇いがちに金枝がりんごに声をかけた。新人歓迎会の宴会だというので、一応ここまでは空気を読んでいたらしい。
「え、ええ。もちろんかまいませんよ、金枝さん」
「あの、真面目な相談なので、お酒は置いてもらえますかね……」
とはいえ、金枝としてはそもそも主治医に相談に来たら巻き込まれて連れ込まれた立場なので、いい加減真面目な話はしたいところではある。
「あ、そうね。えっと、それじゃクトさん、お酒のお代わりとってきてくれるかしら?」
「はーい。いってくるのよ」
ちょうど酒も尽きたところだしと、りんごはクトをお使いに出しつつ、金枝に向き直る。クトを行かせたのは、この後の話を彼女に聞かせるとややこしくなるからか。なぜなら、今回の参加メンバー中唯一クトだけは、いちごのことを女子だと思っているからだ。認識的には男のモノが生えている百合女子……らしい。
閑話休題。
柚月とカメリアも、真面目な話だという事で空気を読んで様子を見ていた。
「それで相談、何かしら? 傷跡が痛むとかそういう事ではないのでしょう?」
「ええ……何と説明したらいいのか……」
金枝の左胸には手術痕がある。執刀したのはりんごではないが、その後の経過は主治医となったりんごが診ているのだ。が、今回はその話ではなく。
「今回も流されるままに来てしまいましたが……彩波さんもいるのに、なんだか抵抗がなくなってしまって……」
金枝は人妻である。愛する夫がいる身である。なので本来はそれ以外の男子……つまりいちごに肌を見せることなど考えられないのだが、今はその抵抗が薄れてしまっているという事らしい。
「なるほど……それって、先日皆でいった依頼のせいかしら?」
「あ、あはは……あれはいろいろとすごかったですしね」
りんごの問いかけに、カメリアが乾いた笑い声を上げる。なにせその時はカメリアも一緒していたので。
「ええ、あの時洗脳されたことで、夫と彩波さんが重なってしまうような錯覚が……どうにかなりませんかね?」
金枝としては実に深刻な話である。
「そうねぇ……一応、オブリビオンを倒した後は洗脳も薄れているのでしょう? だとしたら、今はしばらく時間経過を待つべきだとは思いますが……」
「あたしら含め、アレな影響うけたからねー……真面目なのほど割り切るのは難しいか……」
『かなりひどいことになったものね……』
少し離れたところでこっそりと、アザレアは内心のパニーニャと会話しながら、そんな金枝の様子を見ていた。パニーニャが金枝の様子が気になるということで、アザレアのいちご観察も適当に切り上げて、こうして様子を窺っているのである。なにせアザレアも同じ依頼で一緒していたからだ。
「でも、寧ろあれだけの目に遭って、旦那さんの記憶戻ってる時点で、相当な精神力……旦那さん、想われてるのねぇ……」
『アザレア、あっさり快楽堕ちしそうだし?』
「失敬な……快楽堕ちするのはいちごだけよ」
内心から揶揄するパニーニャの言葉に、ついついアザレアは声を出して反論してしまった。
「いちごちゃんがどうしたの?」
そしてその声を、酒のお代わりをもってきたクトが耳にする。
「え? あ、いや……その……?」
「いちごちゃんなら、そこにいるのよ?」
そしてクトの示すほうには、確かにいちごがいた。
妹達から逃れてきたのだろうが……代わりに別の人に捕まって振り回されているいちごが……。
「相変わらずあわあわしてるわね、いちご。……私も甘えに行こうかしら」
と、アザレアはそちらに絡みに行こうかと思って移動しようとするが、その前にかれんが立ち塞がるのだった。
「ああ、あれには関わらない方が身のためですわ……」
何故か疲れたような顔をしているかれんである。
「……うわぁぁぁんっ! リンちゃん、また会えて良かったよぉぉ!!」
「な、突然なんですか? というか柚月さん、酒癖の悪さ治ってませんね?!」
何事とかというと、金枝との真面目な相談の間暇していたのか、残っていたお酒を飲みほしていたらしい柚月が、突然泣きべそをかいてりんごに抱きついてきたのである。カメリアも止めようとしたのだが時すでに遅かった。
「ちょっと、真面目な相談してたんですけどっ?!」
真面目な話を強制的に中断させられた金枝が苦情を言うが、泣き上戸になった柚月は構わずりんごに抱きついたまま泣きじゃくっている。
「ああ、すみません、金枝さん。相談の続きはまた後で……。で、柚月さん落ち着いてくださいな?」
「だっでぇ……聞いてよぉ、わたしねぇ……」
以下、数ヶ月前から先日までグリードオーシャンに飛ばされサバイバル生活を余儀なくされていた話を語り始める柚月に、金枝も口を挟めなくなるのだった。
「ま、まぁ、相談の続きはもう少し落ち着いてからで……。それにあの時はほら、私やいちごさんもいろいろおかしくなっちゃってましたから……気に病み過ぎてもどうかとは思いますし」
「はぁ……そうですね。りんごさんが言うように時間が解決してくれるなら、しばらく彩波さんとは顔を合わせないようにしておけばいいかしら……?」
同じ依頼で、同じようにあれこれあったカメリアに宥められて、金枝もため息をつくのだった。
そしてカメリアに視線でお礼を言って、りんごは柚月を宥めていくのだが……騒動はまだ終わっていなかったりする。なぜなら……。
「見つけたわ! 前世の敵、銀河系を滅ぼそうとする大魔王りんご!」
「さ、サクヤさん、そろそろ離して……」
裸のまま堂々と仁王立ちしてビシッとりんごに指をつき付ける咲耶がその場に現れてしまったからだ。しかも何故か、小脇にヘッドロック気味にいちごを抱えたまま。
話を少し戻そうか。
事の起こりは少し前。いちごが妹たちと別れたすぐ後くらい。
「ふふふ、ようやく巡り合えたわね、彩波いちご!」
「……サクヤさん、最近色々と酷くなってません? 咲耶さんも苦労しているでしょうに……」
いちごを見つけてビシッと指をつき付けるサクヤと、その傍らでため息をつくかれんが、いちごの前に現れたのだった。
「ああ、サクヤさんにかれんさん、どうかしましたか……?」
さすがに裸ゆえ眼帯をしていなくても、声の調子からいちごにも咲耶ではなくサクヤだというのはすぐにわかっている。咲耶の親友であるかれんでなくとも簡単な話だ。まぁ、最近は咲耶よりサクヤとの付き合いの方が多いので当たり前か。
かれんも、一応冒頭の時は、放っておいた方がいいと言っていたものの、親友の咲耶があとで困るのは明白なので、一度はいちごからサクヤを引き剥がしてはいたのだが……。
「やっぱり放っておくべきだったかしらねぇ……?」
多分かれんも主人格の花恋ではなく中二魂のわかる暴れ者の花凛であれば気が楽だったのだろうが、それではいちごにかかる迷惑も激しくなるので押さえつけたらしい。
「最近、行動を共にしてだんだん分かってきたわ!
あなたのその身に封じられた力……覚えがあるのよ!」
「えっ?」
いちごの中に封じられている力といえば邪神なのだが……もちろんサクヤの言っているのはそうではなく。
「あれはそう、私の前世のこと。銀河を守る戦士である私には共に戦う心強い仲間たちがいた……気がするわ!」
いわゆる一昔前のオカルト雑誌の読者通信欄でよく見かけた、光の戦士の仲間を探しています的なアレです。
「その中でも私の片腕だったのが、触手マスターの異名を取る戦士!
そう、いちごの前世の姿だったのよ!」
「ええー……」
さすがにいちごもげんなりしている。というか触手マスターって何ですか、と声を大にして言いたいのだが、残念ながら普段の行動からして、いちごに賛同する女性陣はいないだろうと思われる。
「さぁ、共に大魔王と戦いましょう!」
というわけでいちごの首根っこをぎゅっとホールドしたまま、大魔王の下に向かうサクヤだった。
「……なるほど、それでわたくしが大魔王」
「そうねぇ……リンちゃんは昔っから魔王で有名だったものねぇ……」
サクヤに指さされて頭抱えたりんごだったが、ここでまさかの柚月の裏切りである。昔馴染みゆえに学生時代のりんごの魔王っぷりもよくご存じの様子。
もちろん、サクヤの妄言とは何の関係もない百合の魔王という通称なのだが。
「なんですって?! 私だって、最近ようやくおぼろげに思い出してきたところなのに、もうこんなに記憶を取り戻している人がいたなんて!」
「リンちゃんが魔王なのは有名だからねぇ~」
話がかみ合っていない。サクヤは妄言だし、柚月は酔っ払いだからだ。
「だけれどもあなたの記憶は私にはないわ。私も前世からの運命のパートナーであるこのいちごと一緒だから思い出してきたところだというのに……」
記憶がないのも当然。何せ柚月は今日入寮したばかりなので、サクヤとはまさにこれが初対面だからだ。
「今日入居させてもらった清里柚月だよ~。年長のお姉ちゃんだから、どんどん頼ってくれちゃっておっけーだからねぇ」
酔っぱらったまま自己紹介をする柚月。まったく頼れる姿ではない。
「なんてこと、まさか前世の私に姉がいたなんて……!」
そしてサクヤの妄言も進行中です。誰か止めてあげて。そろそろヘッドロックされてるいちごの息の根も止まりそうだから。
「あー、とりあえずそろそろいちごを放してあげようか?」
「いちごちゃん、顔色紫になってきてるのよ?」
結局合流したアザレアとクトによって、ようやくいちごは解放された。
「はぁ……りんごさん、私もお酒貰えます?」
そして疲れたかれんは、ちびちびとお酒を煽るのだった。
●新人たちのお話
「あー、いちごくん、お疲れさま。……本当に大変だったみたいね?」
「あ、水花さん……ええ、なんとか、です……」
サクヤからようやく解放されたいちごが、ふらふらと露天風呂内を歩いていたら、今度は水花たちの一団に捕まったのだった。
「ふふ、日頃からお疲れないちごくんだもんね。いつも頑張ってるご褒美に、ぎゅーってしてなでなでしちゃおうかな?」
「え、あ、ちょっと……それはさすがに遠慮しておきま……」
「遠慮なんかしないで? むしろ、私がいちごくんにしたいって思ってるぐらいだから……♪」
というわけで、今度は水花に捕まって抱きつかれるいちごである。
もっとも先程のようなヘッドロックとは違い、水花の豊満な胸に埋もれて頭を撫でられるというある意味幸せな状態ではあるが……冷たい視線が突き刺さるので、いちごとしては決して安らがないのである。
その冷たい視線の主とは……。
「むー。やっぱりいちごさんは胸は大きい方がいいんですねっ」
親睦を深めようと普段話しない人の所を歩き回っていたアイである。
「……っ、ち、がっ……もがっ……」
「あん、いちごくん、そのまま喋らないで。くすぐったいよぉ」
水花の態度とバストサイズを見て、要チェックだと脳内のライバル閻魔帳に書き込むアイであった。
「あ、あはは……出会ったときとのギャップが激しいね……」
「なんというか、私の父もそうでしたが、この手のタイプの方は母性本能をくすぐるんですわねぇ……しかしこうして慕われる様を見ていると、直感通り人徳はあったと納得しておりますわ」
そしてそんな様子を見て苦笑いをしているのは、ニーナとマイエの2人。
「旦那様ですからねぇ……」
「ふと……姉様が生きていて、神様生き写しの方がいて……これは処刑前の走馬灯が見せた夢か幻か、なんて思う事もあるのですけど、こういう羽目を外された光景を見ると……あ、現実、なんてあらためて確認するような感じはありますね」
逆に楽しそうに笑っているのは、アテナとミネルバのパラステール姉妹。
ちなみに姉のアテナはいちごのことを旦那様と呼び、妹のミネルバはいちごのことを神様の生き写しと呼ぶ。これはこの2人が亡国の姫であることと関係があるのだが……それは後述しよう。
ともあれ、いちごが来る前は、アイと水花とニーナとマイエとアテナとミネルバの6人でお話していた様子。
「それで、いちごくんも来たことだし、お話の続きにしよう? 何の話だっけ?」
「あ、そうでした。皆様が恋華荘に来た経緯を聞いていたのでした」
いちごを相変わらず抱いたままの水花が話を戻し、ミネルバがそう補足すると、アイも冷たい視線をやめて、ニーナとマイエの方へと向き直った。
「確か2人とも、いちごさんに助けられたんだとか?」
「え、その話ですか……?」
水花に抱きしめられつつもようやく息ができるようになったいちごも、その話に反応する。
なぜならニーナとマイエも、経緯こそ違うものの、どちらもアポカリプスヘルで偶然いちごに救われて、恋華荘へやってきたのだから。
「旦那様に助けられてですか」
「ある意味私達もそうですから、皆様の話は本当に気になりますね」
パラステール姉妹も興味津々で身を乗り出しているので、仕方ないと覚悟を決めて、まずはニーナから話し始めた。
「うん。そうだね。あの時は本当に危なかったし、いちごさんが偶然通りかかってくれなかったらどうなっていたか……」
ニーナとの出会いは、アポカリプスヘルでの依頼帰り。恋華荘の仲間たちと一緒に依頼をこなしたいちごは、帰りがけに、同じ依頼に参加していたもののトラップにかかっていたままリタイアしていたニーナに気付いて助け出したのだ。
「あ、あのときは……えと、助けられてよかったです」
「本当いろんな意味ですごい状況で……」
そしてその時の光景……ニーナが襲われていたあぶない状況を思い出して、いちごも真っ赤になるし、ニーナも赤面して湯船に潜ってしまうのだった。
「怪しい……何があったんですか、いちごさん?」
またしても白い目になるアイである。水花も問い詰めたそうだ。
「い、いえ……それは……」
「状況はともかく、そんな過酷な世界からこんな素敵な所にご招待してもらえたし、いつかはいちごさんに恩返ししていきたい、かな」
誤魔化そうとするいちごだが、それに被せるようにニーナが、赤面したままそんなことを呟くものだから、ニーナも結局アイの閻魔帳には書かれるのである。
「くすくす。詳しい状況はわかりませんが、ニーナさんも恥ずかしいところを見られた感じですね?」
そんな2人の様子を笑い飛ばして、次はマイエが語り始める。
「も、というのは……?」
というミネルバの問いには、当たり前のように笑顔で、マイエは答えるのだった。
「わたくしも、いちごさんに助けられた時は裸でしたし……」
初っ端から爆弾発言で。
どういうことですかといちごが睨まれる中、マイエは状況を語り始める。要するにマイエは、アポカリプスヘルへと転移させられた後、しばらくとある廃墟を拠点にしていたのだが、そこでシャワールームを使っている最中に危機に襲われ、いちごに助けられたわけなのだが……まぁ、シャワー中の出来事だったわけなので。
「そういう初対面でしたけれど、いちごさんは不思議と父のような雰囲気があったので気を許して、庇護の提案を受けたわけですわ」
実際にいちごとマイエの父親が似ているのかはわからないが、マイエの父親は男でありながらメイドを職業としていたらしく、女装つながりという事なのだろう。
「むむ……これはファザコンなんでしょうか。それとも……?」
アイの閻魔帳には要注意と記されるのだった。
「それにしても旦那様も、父に似ているとか神様に似ているとか、属性過多で大変ですわね」
くすくすと笑うのはアテナだ。当然、いちごを旦那様などと呼ぶアテナも、アイ的には要チェックな相手である。
「その神様に似ているというのはどういう事なんです?」
「ああ、それは、私達の国の神様なんですけど……」
ミネルバが語る話は、ニーナ以上に壮絶だった。何せ彼女は滅びた国のお姫様だ。それも落ち延びた先でついに追手に捕まり、処刑される寸前にその神様の加護で姉の元へと転移して助かったのだ。そしてその神様というのが、どうも話を聞く限り、龍神温泉郷の神様、すなわちいちごの中の邪神と同じものらしいのだ。世界は異なるが、神様の同位体とでもいうべきなのか。それでいちごのことを神様の生き写しと呼んでいるわけである。
「ミニーはその神様に助けられたのだから、旦那様に助けられたのも同然ですわね」
ちなみにそういうアテナは、国が亡びるよりも前にアリスラビリンスに囚われていて、いちごのグリモアに導かれる形で記憶を取り戻してラビリンスを抜け出しているので、こちらもいちごに助けられた格好になる。ちなみにミニーというのはアテナが呼ぶミネルバの愛称のことだ。
「なんだかいちごさん、いつもどこかで女の子を助けてはひっかけて連れてきてる感じですね……?
「そ、そういうわけではないんですけど……」
アイのジト目のツッコミに、肩をすくめるいちごである。実際に助けられているニーナもマイエもミネルバもアテナも、苦笑するしかないのだった。
この後、他の人にも話を聞きに行くというアイやパラステール姉妹と、水花から解放されたいちごは別の所へと移動していくのだが、水花とマイエとニーナは、これを機に打ち解けたらしく、そのまま仲良く話し込んでいくのだった。
●カタメカクレ同盟プラスワン
「あ、理緒理緒、こっちなのよー!」
「電脳魔術師のみんなとの話はもういいの?」
「いたいた、アリカさん、メリッサさん。今そっち行くねー」
電脳魔術師の集まりから移動していた理緒は、アリカとヴェールの仲良しコンビの所にやってきた。そこにはコンビと一緒に話をしていたメリッサもいる。
理緒とヴェールとアリカの3人、前髪で片眼が隠れているから、カタメカクレ同盟である。
特に最近アリカと理緒の仲がとてもいい。理緒の電脳魔術と、恋華荘の建物自体が本体であるアリカの念写能力とを組み合わせた悪戯的な事の相性がとてもいいためで、他にもアリスやベアトリスやアイなども巻き込んで色々やっているとかやらかしているとか。
そんな2人の盛り上がりを、ヴェールはニコニコと眺めているのだった。ヴェールは、専門的な話には加われないが、2人と一緒にデジタルなあれこれをやってみたいとも思っていたりする。
メリッサはメリッサで、理緒には妹分的に可愛がられていたりする。こちらは身体を動かすのが好きなタチなので、自分で電脳に関わることはしないし、趣味のプロレス話で気が合ってるわけでもないのだが、何故か理緒的には自分の娘のような感覚なのだとか。前世で因縁でもあったのでしょうかね?
そこに、通りかかったセナが声をかけてきた。
「あの、私もご一緒していいですか?」
「あ、セナさん、もちろん、来て来てー」
「歓迎しちゃいます、ですっ!」
理緒が笑顔で向かい入れ、アリカもヴェールもメリッサも特に反対もなく、そこからは5人での会話になっていく。
理緒とセナもとても仲がいい。理緒は昨年の年末の忘年会にいちごに引きずり出されるまでほぼ引きこもっていたのだが、そうして表に出てきてしまえば、アリカやヴェールやセナとあっという間に打ち解けてしまうのだった。
「わたしもみんなとちゃんと会ったのは温泉での忘年会だったなぁ。……あのときはまだおとなしかった……」
まだ3か月前のことなのに、もう遥か昔のような気がしている理緒である。実際本当に引きこもりをやめてからは活躍が激しい。
「忘年会の時はご一緒できなかったですし……」
その時を思い出してか、セナもなんだか懐かしそうだ。……もっとも、どことなくセナの頬が赤いのは、たぶん温泉の熱のせいではなさそうだ。そのあたりは、アリカの隣に座って頬を染めているヴェールとも似たような状況だろう。きっと。
「そう、その忘年会の前の話聞きたいな。わたしのいない間のいちごさんの話とか、いちごさんの子供の頃の話とかもアリカさんなら知ってるよね?」
「いろいろ語れるエピソードはあるのよ?」
理緒の問いに、悪戯っぽく微笑むアリカである。幼い頃からいちごをずっと見てきたアリカゆえに、本当にエピソードには事欠かないのだろう。
「ボクも恋華荘に来てから長いけど、いちごと一緒する機会はあまりなかったし、興味はあるかなー?」
「いちごなら、とらぶるのお仕置きとしてプロレス技の実験台にぴったりだって?」
「そういう意味じゃないよ?!」
などなど、アリカがメリッサをからかったりしつつも、しばらくはいちごの話で盛り上がっていたのだが、やがてそのうち……アリカはちらっとセナの方を見て……。
「あとはー……いちごのコイバナとか聞きたくない? 例えば、セナといちごのコイバナとか!」
「ええっ?! わ、私ですかっ?!」
急に話を振られたセナは先程以上に真っ赤になってしまった。
心臓のドキドキバクバクが止まらなくてあわわわわとなってしまったセナは口も回らなくなってしまう。
「聞きたい! そういえばセナさんといちごさんはどんな縁でここに来たのか聞いたことなかったし!」
セナにコイバナ振るなら、理想の話とか妄想の話とかでもいいかなーと思っていた理緒だが、いちごとの話となると聞きたくなるのは当たり前で。そして理緒が喰いついてきたならば、セナも頑張ってこたえようとするのだが……。
(「ど、どう答えればいいんでしょうー?!」)
依頼の際の偶然でまだ名前も知らない段階から色々あったなんてことはさすがに言えず、おろおろしてしまうセナの様子を見て、アリカは助け船を出すことにした。
「んー、セナは考え中みたいなので、先にヴェールのコイバナから行ってみるのよ?」
「あ、アリカさんが、わ、わたしに、聞いちゃうの、です
……!?!?」
突然話を振られて瞬間的に沸騰してしまうヴェールである。何せヴェールはアリカに対してちょっぴり百合な想いも抱いているので……それを知ってか知らずかアリカ本人から話を振られてしまっては、心臓バクバクのドキドキでオーバーヒートしてしまうのだった。
そんなセナとヴェールの様子を見て、理緒はいちごの話を聞いていた時以上にご満悦なのだった。
「あーん、2人とも可愛いなー。照れる2人は可愛いんだよねー?」
「ねー?」
理緒とアリカは、照れて真っ赤になってしまった2人を、更に可愛がっていくのだった。
「……2人とも話聞きたいというより、セナやヴェールを可愛がりたいだけなんじゃ……?」
ま、気持ちはわかるけどね、とメリッサも苦笑するのだった。
●女将さんの休日?
恋華荘の女将ことゆのかは、珍しく今回は裏方の必要がないという事でのんびりしていた。
「……うん、みんなでお風呂しながらお花見、なんだかほっこりするかも」
桜を見ながら、手足を伸ばしてのんびりと湯に浸かって、普段とは違って気を緩めて弛緩しきっている。
「私は自身が桜ですし故郷も年中満開ですから見慣れた光景ですが……こういう限りのある桜吹雪もロマンがありますね……いい事です」
ゆのかの隣で同じようにのんびりしているのは、サクラミラージュ出身の桜の精でありながら恋華荘でお手伝いをしている智悠璃だ。
2人とも普段は裏方なので、こうしてのんびりできる時間はとても貴重かもしれない。なので2人とも騒いでいる面々から距離をとって、のんびりゆったり過ごすことにしたらしい。
「本当に見事です。こんな綺麗な桜の下で温泉に入れるなんて……」
「それにしても、恋華荘も人が増え賑やかになってますね。このあたりはのんびりですけれど、いろいろなところで騒ぎが聞こえてきますし」
ゆのか達の近くで同じようにのんびりしているのはネウィラと静葉だ。2人とも賑やかな面々とは距離を置いて見守る方ではあるが、別に賑やかなのを嫌っているわけではない。
「こうしていると、忘年会を思い出すの……時の流れは早いものじゃ」
「あの時も賑やかでしたねぇ……いちごさんもいましたけど……」
静葉の声に、お手製のハーブティを飲みながら頷くネウィラ。忘年会の時は、いちごがいたおかげでひと騒動があったわけではあるが、今回はいちごもいないのでなおさらのんびりと。
「それにしてもゆのかさん、いつもお疲れ様です」
「ひゃゎっ?! 智悠璃さん!?」
のんびりとしている中で、突然智悠璃がお湯の中でゆのかの身体を弄り始めた。
「や、やめ、くすぐった……」
「ふふ、お疲れのゆのかさんにマッサァジして差し上げますわ♪」
突然のことにゆのかは戸惑ってしまっているが、あくまでもこれは智悠璃のマッサージ。肩や腰を撫でて揉んで、ゆのかの身体をほぐしていく。
「わ、わたしはお世話する側であって、されるのは……ひわー!?」
そして人に何かしてもらう事に慣れないゆのかは、思わず大きな声を上げてしまうのだった。
「ふふ、おぬしら、あまり大きな喘ぎ声を出すと、周りに気付かれてしまうぞ?」
と静葉は面白そうに2人を眺めているのだが、智悠璃は構わずゆのかを攻め立てる。もとい、マッサージしていく。
(「……まあ本題はインタビュウですが」)
いや、この内心からすると、攻め立てるの方があっているのかもしれない。
「なんだかすごい声がしていましたよ? ……あ、私もここお邪魔させてもらいますね」
そしてそこに、ゆのかの声を聞きつけたわけでもないだろうが、アイもやってきた。アイとしては、いちばんのライバルとも言うべきゆのかへのリサーチ目的なのかもしれない。
「どうぞどうぞ。アイさんもゆのかさんがいちごさんとしていたストレス解消、気になりますよね?」
「詳しく!」
智悠璃はこの際、ゆのかを解してふにゃふにゃにすることで、ゆのかから色々聞きだそうとしているのだ。特に、依頼で羽目を外して気分転換をしているという事について詳しく。
そしてそんな話をされれば、案の定食いつくアイであった。
そうして智悠璃がゆのかを攻め立て、アイがその言葉に興味津々でいる頃、ネウィラと静葉は、そんな面々から少し離れたところで湯に浸かっている詞を見かけ、声をかけていた。
「ほら、そちらも1人で離れていないで、一緒しませんか?」
「い、いえ……私は……」
とはいえ詞は、賑やかな所は苦手だし、歓迎会の厚意はありがたく思っているのだが、自分が歓迎されてもいいものなのかと疑問も持っているしで、なかなか輪には入りにくい所。
(「温泉は大好きだけど、きらきらした雰囲気とか楽しい会話とか、混ざるのはかなり苦手なのよね……」)
とはいえ、詞だって、楽しそうなのを見ているのは決して嫌いではない。
だから、輪には入るのはためらっても、傍で見ていたいという思いはあるのだ。
「なるほど、お主も見守り型かの?」
そんな様子を見て、自分と同じようなタイプかと判断して、静葉は自分から詞へと近づいていく。ネウィラもそれに続いていった。
「え、えと……そういうわけでも」
「ちょっとわかりますよ。仲良くはしたいけれども、なかなか踏ん切りがつかない感じですよね?」
そしてネウィラも、引っ込み思案な所で共感したのか、詞を気にかけて声をかけている。
「そ、そういうわけでも……それに、見ているだけで、雰囲気は楽しんでるし……」
「まぁまぁ。そうです、せっかくなので、詞さんも皆さんと仲良くなれるおまじないを……」
しきりに遠慮する詞に対し、ネウィラはウィザードらしくおまじないをかけるのだった。
「右手と左手、なかよくあわせてしあわせハート~♪」
と歌いながらくるくると。踊る用にポーズを決めて、両手でハートを作って笑顔を向ける。ネウィラ渾身のオリジナル一発芸だった。だったのだが。
詞は当然のようにぽかーんとしていた。
「……お主、少しずれてるとか言われぬか?」
「あわわ……」
沈黙に耐えきれずにネウィラは真っ赤になってしまう。
沈黙の中、静葉の静かなツッコミだけが響いていたが……そこに、3人めがけて物理的に何かが飛んできたのであった。
時間を少し戻して、ゆのかと智悠璃とアイのいるあたり。
智悠璃がゆのかから色々と聞き出そうとしているところだった。
「そ、それは、いちごちゃんが……」
聞かれると赤面してしどろもどろになるゆのかである。
「えと、私がどうかしましたか?」
そして、真の悪いいちご本人が、そんな場面にやってきてしまうのだった。
「ひわ?! い、いちごちゃん?!」
「あ、はい、私です。さっきなんだかゆのかさんのすごい声が聞こえたので気になって……」
静葉の言っていたように、大声を出してしまったことでいちごを呼び寄せてしまったらしい。アイより少し遅れたのは、水花たちの所を離れるタイミングがその分遅かったからだろう。
「いちごさん、今来たら
……?!」
そして今まさに、いちごとしていたストレス解消のあれこれを智悠璃に問いただされていたゆのかは……恥ずかしさのあまり真っ赤になって、アイの警告も間に合わずゆのかの照れ隠しがいちごに炸裂する。
「あんまりにもアウトなことはめっ、ですからーー!」
「や、ちょっ?!」
マッサージでふにゃふにゃになった身体でも変わらない怪力で、ドンっといちごを突き飛ばしてしまうのだった。
というわけで、物理的に飛んできたのはいちごである。
ゆのかに突き飛ばされたいちごは、静葉と詞とネウィラのところに突っ込んでいき、静葉の胸に埋まってしまうのだった。いつものお約束的に。
「……とはいえ私が巻き込まれるのは……まぁ、それはそれで良き事じゃろうか?」
「いちごさん、やっぱり胸がいいんですかー?!」
そしてアイが悲鳴を上げるのもまたお約束。
更に今回の場合は、さきほどのおまじないの沈黙に耐えられなかったネウィラが、近くに文字通り飛んできたいちごを見て、真っ赤になって抱きついたりしたからまた酷い事に。
「うわぁーん。さっきのは聞かなかったことにーっ!」
「もがもがもがーっ?!」
ネウィラのそれは見ていないので状況はつかめず、何の話ですかーとでも言いたげないちごだったが、静葉とネウィラの胸に挟まれてしばらく呼吸困難になるのだった。
「あらあら、まぁ、この反応だと、ゆのかさんが何をしていたのかはお察しでしょうか?」
そんな様子を見て、智悠璃はくすくすと微笑み、そしてゆのかはまだ真っ赤になったまま呟くように言うのだった。
「アウトなことはめっ、ですからね?……ですからね?」
「というかいちごさん、いい加減に離れてくださいー?! やっぱり胸がいいんですかーっ?!」
このあといちごがアイによって救出され、そして改めてこのメンバーで平穏にお話再会できるまで、しばらく時間がかかったという……。
「ねぇ。いつもこんな感じなのかしら、いちごさん」
「……まぁ、だいたいは?」
今までいちごと一緒に出掛けていてもトラブルがほぼなかった詞だ。さすがにこの光景には目をぱちくりさせるしかない。
「そうですよ。詞さんがいちごさんと出かけた時の話聞いてみたいです」
そしてアイ的にも、最近いちごと2人で出かけることも多い詞も怪しい所なので、これを機に親しくはなりたいと話を振っていく。
「え、その……」
どうやら詞も、これ以上は離れて見ていることはできそうになさそうだ。
●話は弾む、たゆんも弾む
「いやー、期待していた以上に楽しいねぇ。ここは」
周りの喧騒を眺めながら、サエはけらけらと笑っていた。
「だよねぇ。あたしはここに住んでいるわけじゃないんだけど、なんだかこの大騒ぎが、すごい馴染んじゃって……」
そんなサエと一緒になって湯に浸かって話をしているのは仁美だ。
仁美は自身も言っている通り、別の量で暮らしていてこの寮の住人ではないのだが、もうすっかり恋華荘の一員といってもいいくらい馴染んでしまっている。
「ん~、やっぱり体の芯からあったまるのはいいよね~。桜も綺麗だし、極楽極楽」
そういって思いっきり身体をのばして伸びをするサエ。年齢の割にはとても豊かなたわわがぷかぷかと湯船に浮かんでいた。
「そうだねぇ……桜が咲くと春が来たって気分になるよね。でもまだ少し寒いから、温泉の温かさが有難くもあって……」
仁美も同じように身体を思いっきり伸ばす。やはりこちらも、恋華荘メンバーでも最大級の大きなたわわがぷかぷかと湯船に浮かんでいた。
実をいうと仁美がサエに話しかけたのも、新しく来た人の中で胸が大きい人だったからだ。自分くらい大きい人が来てくれると、自分の胸が目立たなくなっていいかな、なんて考えているとは、さすがにサエ本人には言えない。
「仁美さんもどうせなら引っ越してくればいいのに」
「あはは。なかなかそうもいかなくてねー」
とはいえ、胸が大きい者同士、胸同様に話も弾むようだ。
「えー、でも、こっちに来たら毎日、いちごくんのトラブル見放題じゃない?」
実際サエが恋華荘に入居したのは、ここに来れば面白そうだからということに他ならない。一応少しくらいは時間に自由がききそうだという理由もあるのだが、メインはやはりいちご周りの人間関係ととらぶる見たさだ。
というわけで、ケタケタ笑いながら、サエはまさに今トラブっているいちごの方を指さすのだった。
そのいちごはというと、今度はみさきとベルことフロウヴェルに捕まっていたりする。
事のきっかけはもちろん、みさきとベルの仲良しコンビからだ。
「えへへ♪ ふーぐさーん、こーちらーっ♪」
「むー、人魚モードで泳ぐのはずるいの」
下半身を人魚モードにしたみさきは、湯船を泳いでフロウヴェルと追いかけっこをしていた。
2人の追いかけっこは、他の湯船でのんびりしている面々からも微笑ましくは見られていたのだが、とはいえ波が立つので、りんご達のように飲んでいる者の迷惑にはなるから、さすがにいちごは近づいて注意をしようと思ったのだが……。
「ああ、いちごの周りグルグルと……」
「えへへー。つかまらないもーん♪」
そのいちごを中心にして動きまわるものだから、さすがにいちごも立ち往生してしまっていた。
「みさきさんも、ベルさんも、あまり湯船の中で波立てるような事は……」
「えいっ!」
「はわ、つかまっちゃうっ? いちごくんたすけてー、なんてねっ♪」
注意しようとするのだが、みさきを捕まえようとするフロウヴェルと、いちごに助けを求めるみさきとがかち合った結果、見事にいちごを挟んで抱き合う格好になってしまったのである。
「ん、これはこれでオッケィなの」
「えへへー、いちごくぅん」
早熟ボディがさらに成長して胸も大きくなっている2人位前後から胸を押し付けられる格好でサンドにされたいちごは、しばらく真っ赤になって固まっているのだった。
「ほわぁ……タイさんみたいにさくら、ふわふわひらひらしてる♪
いちごくんベルちゃん、みてみてっ、きれいだよー♪」
「……ん、桜、綺麗なの。いちごとみさきと、揃って一緒にこうしてお花見して……楽しくて、嬉しいの」
そしてその体勢のまま、みさきもフロウヴェルも周りを舞う桜の花びらに見とれて、花見の本分を思い出したりしているものだから、いちごとしては本当に困り果てるのだった。
「ええと、桜をのんびり見たいので、離していただけると……」
「うん、わたしもしあわせっ♪ いちごくんは?」
「いちごはどうなの?」
そしてやっぱり話を聞いていない2人。
今のいちごが幸せというと……少なくとも温もりと感触は幸せかもしれないが、幸せだとは断言できない気がします。はい。
「ま、まぁ、確かにいちごくんの周りは、ああいうの日常茶飯事だけどね……」
さすがにこの光景を見て苦笑するしかない仁美であった。
ちょっとだけ笑顔が引きつってしまったかもしれない。
「見てて飽きないよね~」
というサエの言葉にも、頷きはするもののちょっとだけ生返事になってしまうのである。
「本当に旦那様は相変わらずですこと……」
「あはは……姉様も混ざりたかったり……?」
そこに通りすがってきたのは、パラステール姉妹だ。
「あ、アテナさん、ミネルバさん。2人にもきちんと挨拶しておきたかったんだ」
仁美はこれ幸いと、いちごの方から視線を外し、アテナとミネルバに話しかける。特にアテナは、サエ同様に、新人の中では大きな胸を誇っているので、そういう意味でも挨拶はしておきたいところ。
「旦那様の通い妻の仁美さんでしたわね。よろしくお願いしますわ♪」
「言い方ぁ?!」
アテナのあんまりな言い方に、でもあまり反論はできないかもしれない仁美であった。
●騎士たちの宴
「何やらアイリスさんには親近感を覚えるところですわね。こう、他人という気がしないと言いますか……」
「ん。私も親近感覚えますね。そんなはずないのに、何故か鏡を見てるような感じがして……特に似ている部分はないはずなんですけどね?」
アウレリアとアイリスは、挨拶するなりこうして意気投合していた。
理由は定かではないが、なんとなくお互いがお互いに抱く親近感。まるで自分の真の姿が目の前の相手のような、そんな感覚。理由は定かではないが、まぁ意気投合する分にはいい話だろう。
「仲良きことは美しきかな、ですわね。ふふ、改めて、恋華荘騎士組にようこそですわ」
そんな2人のやり取りを、トーリは微笑ましく見ていた。
もちろんトーリだけではない。
「騎士組という事は、わたくしやミニーも混ぜてもらえるのかしら?」
「恋華荘にこんなに騎士の方がいらしたんですね」
パラステール姉妹も、仁美との挨拶を終えた後こちらに顔を出している。
騎士組も、忘年会の時に比べると、別の所で話し込んでいるセナを含め一部メンバーが足りないが、代わりに新人が加わったのでむしろ人数は増えている感じだ。
そして騎士5人に話しかけてくるのがもう1人。
「わ、私も一緒していいですかー? 洋の東西を問わず、剣を使う人にお話聞いてみたいので、すぅー!」
恋華荘最年少にして最小の士も、その小さな身体で懸命に声をかけてきていた。
「ええ、もちろんですわ♪」
「かまいませんけれど……私は騎士とは似て非なる感じですわよ?」
トーリが代表して歓迎の意を表する。もっともアウレリアは正確には騎士でもなければ、剣を使うわけでもないので、あまり参考にはならないかもしれないとは言うけれども。士はそれでも構わないらしい。
「皆さんがどんなふうに剣を振るっているのか聞いてみたいのです。私は、勝つことも大事ですが、戦いと剣術の研鑽を通して、心身ともに強くなっていきたい……なんて思ってやってま、すぅー!」
小さな身体を目いっぱい使って主張する士の姿に、皆ほっこりとした気持ちになったとか。
なお、士がそのあと小声で……いろんな意味でおっきくなれたらいいのですが、とぼそっと呟いた言葉は、一応誰にも聞こえなかったようだ。
「そうですわね……わたくしやミニーは、失われたもののを取り戻すために剣を振るっている感じですわね」
「はい、姉様の言う通りです。この場所が温かいからこそ、それをもう失わないために……というのもありますね」
アテナに続いてミネルバも、そう答える。さすがに亡国の姫騎士姉妹はいろいろと重かった。
ミネルバは答えながら、左足の傷跡にそっと触れながら、改めて決意したようにさらに続けるのだった。
「此処は、色んな人が、暖かで、楽しそうで……守らないといけないなって思います」
「私も、ミネルバさんたちほど重い話じゃないけれど、聖騎士として守護騎士として、皆を護れるようになりたいですね……剣士ではなく騎士なので、剣よりも盾に重きを置いてますけれど、戦うのはそんな理由です」
重い空気を少しだけ変えようと、務めて明るく、アイリスは答えた。
「なるほどなるほど、皆さんすごいですっ」
そして答えが出るたびに、士は、大袈裟なほどに頷いて感嘆していた。
アウレリアがノブレスオブリージュの精神を語れば、トーリもまた聖騎士としての心構えを説いていく。
「……故に『想い人の剣』足り得る騎士が今の目標ですわ♪ ええ、私はいちごさんを心底お慕いしておりますから」
最後に話の方向性を思いっきり別方向にしてしまう発言を残して。
そしてその言葉に思いっきりむせて吹き出してしまうアイリスである。
「トーリさん、こ、ここでその話に持ち込みますか……?」
「あ、でも、良ければ私も、皆様が神様の事をどう想っていらっしゃるのかとか……お伺いしたい所ですわね」
そしていいきっかけだとばかりに、ミネルバもその話に乗ってきたから、ますますアイリスは焦りだしてしまうのだった。
「ミネルバさんまで?!」
「ふふ、タイミングいいのではありません? 先日のこともありましたし」
そしてそんなアイリスの様子を見てくすっと悪戯っぽい笑みを浮かべたアテナは、ここぞとばかりに囃し立てる。
「うぅ……アテナさん……」
恨みがましい目でアテナを見つめるアイリスである。無理もない。何せアテナの姦計によっていろいろと大事なナニカが失われてしまったのだから。
「正直いちごさんは好きだけどそれは主や人としてはであって、異性としては無いと思ってたのに、あんなことに……」
「アイリスさん、いったい何があったんです……?」
「聞かないでっ?!」
アイリスの様子に心配になったアウレリアが声をかけるも、さすがに詳しい事は話したくないアイリスである、
「今でも正直異性として好きかと言われれば素直に頷けないのに……なのに何故こうなったんでしょうね?」
アイリスは、恨みがましいジト目で、アテナをじっと見つめるのだった。
「姉様……いったい何が……」
ミネルバに問い詰められたアテナは、あっさりとアイリスの初めての手伝いを導いたことを口にするのだった。もちろん詳しい詳細は言っていない。なんの初めてなのかも言っていないのだが……。
「アテナさん、いったい何をしたんで、すぅー?!」
湯に浸かっていた士は、驚きのあまり湯船から跳びあがってしまい……。
そしてそこに間の悪い男がやってくる。もちろんいちごだ。みさきとベルから逃げてやってきたところらしい。だがこのタイミングはいかにもまずかった。
「ふがっ?!」
飛びあがった士が思いっきりいちごの顔に張り付くことになってしまった。
言うまでもなくお風呂に浸かっていた士なので裸で、しかもフェアリーの士なので身体の大きさはちょうど普通の人間サイズにしてみたら顔と同じくらいで……なのでいちごの顔面に張り付いてしまったという事は、その幼い肢体が丸っといちごの顔に密着しているわけで、そういえばちょうど口の当たりが士の胴体にあたる感じで……。
「そ、その体勢で、喋っちゃだめで、すぅー!」
そしてもちろんそんな状態なので、いちごが喋ろうとするたびに身体を舐められてしまう羽目になる士であった。
「あら、旦那様、そんな幼子にまで激しい事……」
「これだからいちごさんはー?!」
そしてアテナやアイリスをはじめ、周りの皆が反応して大騒ぎになるのだった。
貞操観念の強いアウレリアは、いちごが来たことで真っ赤になって身体を隠すように湯船に潜ってしまったし、まだとらぶるに慣れてないミネルバは赤面して固まってしまったし、アテナは楽しそうだし、アイリスは呆れかえっているし……。
そしてトーリは……。
「まぁまぁ、いちごさん、とりあえず飲み物でも飲んで落ち着いてくださいな」
と、士を何とか引き剥がしたいちごにシャンメリーを渡そうとして……水かrなお口に含み、素早くいちごに口移しを仕掛けるのだった。
「ん、んんーー?!」
ごくっ。
口移しで飲まされては、ノンアルコールのシャンメリーでも、一気に顔を真っ赤にしてしまういちごである。
「ふふ、今日は無礼講ですし?」
「い、いちごくん、大丈夫ー?!」
そして真っ赤になってふらついたいちごは、いちごの姿を見かけてさりげなく近寄ってきた仁美に抱きかかえられるようにして支えられるのだった。
「あははっ。やっぱりここは見てるだけで楽しいね~♪」
そんないちご周りの様子を見て、サエはけらけらと楽しそうに笑っているのでした。
仁美に抱きつかれていることに気付いたいちごが慌てだしたり、トーリやアテナがいちごに迫ったりして、それから逃れようとしたいちごが、近くで見ているサエを巻き込んでしまうのも、時間の問題かもしれないけれど。
●王様ゲーム第1組
「あ、そろそろいい頃合いかしらね?」
などなど、賑やかにというか騒がしくしていた中で、アリスが急にそんなことを言い出し、マイクを取り出して露天風呂にそれぞれ散って話をしていた寮生たち全員に聞こえるように、余興の開始を告げるのだった。
「それじゃ、そろそろお待ちかねの余興の王様ゲーム、1回目を始めるわよ。
参加メンバーは……まずはそのあたりにいる貴方たちでいいわ。集まって来なさい?」
アリスが指名したのは、先程までアリスの近くで会話していた、さくら、まゆ、アンナ、アシュリン、水咲、ジオレット、桂花、しらべ、リアトガルト、ベアトリスに加え、無理やり連れてこられていちごを含めて11名。
え?私も?という表情を浮かべている者もいるがお構いなくその面々を集めた幼女神は、横暴にも開催を宣言してしまうのだった。
かくして、王様と①~⑩までの数字の書かれた籤を、アリスの指示のもと11人は毎回毎回引いていく。
「王様だーれだ」
「あ、わたしが王様なのです!」
最初に王様が当たったのは、まゆだった。視界のアリスにマイクを向けられ、ちょっと思案しながらも笑顔で命令をぶっこんでくる。
「えーっと、じゃあ、⑦番の人が⑩番の人に、全力で告白をする、なのです!」
「いきなりぶち込んできたわね、まゆ。じゃあ、該当の2人、手を上げて?」
手を上げたのは、アシュリンとアンナの2人。アシュリンが告白する側だ。
「ぜ、全力で……って言っても……」
「いいじゃないですか、こういうのは楽しんだもの勝ちですよ」
意外と楽しそうに乗り気なアンナと違い、真っ赤になってアンナの顔といちごの顔とを見比べるアシュリンである。
が、だからと言って免除されるわけもない。覚悟を決めて、アシュリンはアンナの手を取って言った。
「あ、ああ、アンナ! 好きだよっ!!」
「……こ、これは照れますね」
正面から全力でぶつけられ、先程までの余裕とは裏腹に赤面してしまったアンナに、本意じゃなくてゲームだからと真っ赤になって言い訳するアシュリンであったとか。
「王様だーれだ」
「あら、今度は私なのね?」
次に王様を引き当てたのは、さくらだった。
「んじゃあ……私も告白系にしようかな。⑤番が⑧番にだけ、こっそりといちごへの想いを明かすってことでどうかな?」
「ちょっと?! なにそれ?!」
さくらの命令に分かりやすく悲鳴を上げたのは、言う側の番号になった桂花である。さくらにとっては、いちごラブ度の高い相手を引き当てて、ある意味ガッツポーズであった。
「聞き役は誰かな?」
さくらがあたりを見回すと、そっと手を上げるしらべの姿が。
呪いで言葉を話せないしらべならば、言った内容が漏れる心配もないだろうと少しだけ安心する桂花。とはいえ、正直に言うのは、さすがに恥ずかしすぎる。
桂花は、真っ赤になったまましらべに耳打ちをするのだった。
え? 内容ですか?
典型的なツンデレの桂花さんなので、内容はお察しという事で。
聞かされたしらべの方が、恥ずかしそうにあわあわとタブレットをお手玉してしまうような内容だったみたいですよ?
「王様だーれだ」
「私ですね。えっと……それでは⑨番が①番と洗いっことかどうでしょう?」
次の王様は水咲だった。そしてせっかくのお風呂なのだからとそんな命令をしてみる。どういう風に洗うのかはお互いの相談の上でとは付け加えて。
「はいはい! 洗われるのはわたしなのです!」
元気よく手を上げたのはまゆで、そして真っ赤になりながら手を上げたのは……。
「えっと、背中だけで、いい、ですよね……?」
いちごだった。
「おねーちゃんが洗ってくれるですか? 背中だけじゃなくて、全部洗ってほしいのですよ! 前みたいに!」
最愛のおねーちゃんとの組み合わせに全身で喜びを表すまゆである。もちろんおねーちゃんが洗ってくれるなら、軽く背中だけで満足などするものか。
ちなみに前というのは、恋華荘の地下で匿われていていちごが面倒を見ていた時期のことを差すのだが……具体的な内容は語るまい。
もちろんこんな組み合わせになってしまえば、さくらだって黙ってはいない。
「いちご!? まゆちゃんに何するつもり? サイッテー!」
「何もしませんから?! 背中流すだけです?!」
「背中しか洗ってくれないのです……?」
「なんで寂しそうなんですかー?!」
かくして、再びスーパー妹大戦が勃発するのであった。犠牲者はいちごばかりなり。
あ、いちおう、命令は背中だけ流して終わりました。
「王様だーれだ」
「はい……」
何とか返事だけをして手を上げたのはしらべだった。
しらべは多くの言葉は話せないので、タブレットに命令を表示する。
《⑩番が①番に壁ドンして、何か一言。一言は照れちゃうものでも驚いちゃうものでもいいけど、言われて傷つくとこは言わないように》
そんなしらべの優しい命令を受けることになったのは、ともに2回目の登場になるアンナとまゆだった。
かくしてアンナはまゆを壁際に追い詰め、手をドンっと。
「あなたの秘密を知っています」
「えっ? ええっ? ええーーーーっっ?!」
妙にノリノリでそんなことを言うアンナである。まぁこのノリの良さからすると、ホントに秘密を知っているわけではなくネタのようではある。
が、真に受けたまはが、黙っててくださいとしばらくお願いするのでした。何か人に言えない心当たりでもあるんですかね?
「王様だーれだ」
「アタシだわ。どうしよっかしら……?」
次の王様は桂花だ。桂花は悩んだ末に、こう命じた。
「⑦番が⑥番にマッサージってことにしましょ。肩もみでもツボ押しでもいいわよ?」
というわけで、その命令を引き当てたのは、アシュリンとリアトガルトの2人。
「ま、またあたしがする側かー。肩もみでいいかな?」
「あ、はい。お願いします」
頷いて白い背中を晒すリアトガルトに、妙に色気を感じて早くも赤面するアシュリンである。
その後も、肩を揉まれるたびに、「んっ……」「あ……っ」などと妙に艶めかしい声を無自覚で上げるリアトガルトに、やっているアシュリンの方が真っ赤になっていくのでした。
「王様だーれだ」
「あ、次は私ですね」
マッサージを受けてほっこりした様子のリアトガルトが次の王様だった。
「では、⑧番が①番を『お姉様』と呼ぶというくらいで」
「またわたしが受ける側なのです!」
というリアトガルトの命令、受ける側になったのは3回目の登場になるまゆだった。では誰がこのザ・妹という感じのまゆをお姉さまと呼ぶことになったのかというと……。
「まゆ、お姉様……」
しらべであった。なんとか呪いの中でも喋れる範囲ギリギリのその言葉を引き出してそう呼ぶしらべ。普段のクールな様子がまるでない、真っ赤になってそう呼ぶ姿は、命令が恥ずかしかったのか、それとも呪いのためか。
「もう1度、もう1度呼んでくださいです!」
そして新鮮な呼称に興奮したまゆにせまられて、ますますクールを保てなくなるしらべであった。
やはりあわあわとお手玉されることになるタブレットには、恥ずかしいので勘弁してくださいと表示されていたとか何とか。
「王様だーれだ」
「あ、あたしか」
次の王様はアシュリンだった。
「えーっと、じゃあね、③番が⑤番の腕を抱く!」
命令を言いながら、何となく赤面していちごをちらちら見ているのは、自分がやる事を想定でもしたのだろうか。だがもちろん、命令した王様がそれをやる事はない。
命令を受けたのは、水咲と桂花だった。
「えっと、これでいいですか?」
「ち、近いわね……女同士だからいいケド」
ぎゅっと桂花の腕を抱くようにしてくっつく水咲。抱かれた桂花の腕が水咲の胸に押し付けられる。
お互いこれで相手がいちごなら、などと思っていたとか、いないとか。
まぁ、相手がいちごの場合、どっちのパターンであっても、押し付けられた胸で真っ赤になってしまうのだろうけれど。
「さて、そろそろ第1回はラストかしら?」
アリスの宣言に、まだ王様になっていない面々がざわつく。もっとも、巻き込まれたいちごとジオレットは、回ってこなくてもいいと思っていたが……。
「王様だーれだ」
「私ですね」
最後に引き当てたのは、アンナだった。最後まで引き当てられなかったベアトリスはがっくりとしている。
「BBも命令したかったと言います」
「まぁ、まだ命令される側では当たるかもしれないし……?」
がっくりしているベアトリスをジオレットが慰めている間に、アンナは命令の内容を決めたようだ。
そして、意外なほどにノリノリなアンナは、ここでも爆弾を落としてしまうのだった。
「②番と⑨番でキスをするという事でお願いしますね」
自分の手元の番号を見て、同時に立ち上がった2人、それはベアトリスでもジオレットでもなく……。
「えっ?! さくら?」
「いちご?! って、いちごとキスとか冗談やめて?!」
まさかの、いちごとさくらの兄妹だった。
「王様の命令は絶対よ?」
組み合わせを見て、グッジョブとアンナにサムズアップしながら、心底楽しそうに促すアリス。アンナも、それから他の面々も、期待と羨望の眼差しで2人を見つめている。
「あ、あの、キスって、場所の指定はないですよね……?」
なんとか唇は逃れようとするいちごだがアリスの目はそれではだめだと無言で訴えている。王様のアンナを見ても、ノリノリな彼女は期待しているようだ。
では他の面々はというと、まゆあたりが代表的だが、さくらに変わってほしいとでも言いたげな視線が刺さっていたり、兄妹の口付けに期待する視線があったり。
「……あー、もう、しょうがないわね。いいわよ、どうせ兄妹なんだから、キスくらいなんでもないんだから」
「さくら?!」
そしてとうとう観念したのか、さくらはそう覚悟を決めていちごに近づいてくるのだった。初めてってわけでもないんだし、と小声で漏らしつつ。
「それともいちご、まさか妹とのキスでまで変なこと考えていたりするんじゃないでしょうね?」
「そういうわけではない、けど……」
「じゃあ、問題ないわね。さっさと済ませましょ?」
「しかたない、か……」
そして、はたして見ていた人の期待通りだったのかそうではないのか、お互い覚悟を決めた兄妹は、ささっと軽く唇を触れ合わせるだけのキスを済ませるのだった。
「んっ……」
「……っ、はい、これで終わり!」
周りは大いに盛り上がったが……兄妹の、特に妹の心の内は、誰にも分らないのである。
「という所で、最初の組み合わせはこんな所ね。では、次のメンバー探しに行きましょうか」
そして王様ゲームはまだまだ続く。
アリスは次のグループの所へと向かっていくのだった。
●王様ゲーム第2組
「じゃ、次のメンバーは……」
「アリスさん、こちらの面々でいかがです?」
次のメンバーを探していたアリスに、りんごが声をかける。
もちろんりんごが指し示したのは、自分を中心に話をしていた面々だ。
「なるほど、いいわね。りんごは参加者側?」
「……んー。アリスさんと一緒に司会しようかしら?」
そしてりんごは一抜けで視界側にまわり、ならばとりんごの周りにいた面々を中心に、燈が籤を配っていく。
「あら、もちろんいちごさんは継続参加ですよ?」
「なんでですかー?!」
そして、1回目のメンバーに入っていたのでこれで終わりだと安心していたいちごも、巻き込まれていくのだった。
というわけで2回目のメンバーは、クト、カメリア、柚月、金枝、アザレア、かれん、サクヤ、水花、ニーナ、マイエ、そして無理矢理継続させられたいちごで11名。
ちなみにいちごが続けて参加することに対しての異論は一切出なかったという。
「では第2組の視界はわたくしりんごがお送りしますね?
1組目に負けないよう、盛り上がっていきましょーう!」
アリスからマイクを受け取ったりんごは、ノリノリでMCを始めるのだった。
「ではでは、王様だーれだ!」
「ふっふっふ……どうやら私の前世には王族というのもあったようだわ」
わざとらしく邪眼を隠すようなポーズで立ち上がった最初の王様はサクヤだった。王様になったことで何か設定も追加され多っぽいが、妄言なので気にしてはいけない。ついでに邪眼もあくまでもポーズなので実際にそんなのはない、はず。
「王たるサクヤが命ずるわ! ⑤番は⑦番に隠された封印の力を解放せよ!」
まるで瞳から鳥の羽ばたきのような強制力のイメージでも飛び出しそうな口調とポーズで無理難題を言い放つサクヤである。
「5番は私だけど……」
そしておずおずと立ち上がったのはアザレアだ。王様ゲームそのものには割とノリノリだったのだけど、命令があまりにもあれなので戸惑いは隠せない様子。
(「パニーニャ、これどうすればいいと思う?」)
(『と、とにかく相手が誰か次第かしら
……?』)
内心のパニーニャと一緒に頭をひねらせていると、相手方に指名された水花も立ち上がった。案の定思いっきり戸惑った状態で。
「隠された封印の力って……」
「水花かー……えー、どうしようこれ? パニーニャ、パスっ」
これは難しいと考えるのを諦めたアザレアは、あっさりと内心のパニーニャへと後退してしまうのだった。
「えっ、ちょっと?!」
額の宝石の色が変わり、アザレアからパニーニャへと表の人格が変更される。
そして、水花と向かい合ったパニーニャはそのまま戸惑い困惑しているが、サクヤは構わずに急かしてくる。
「なるほど、水花が選ばれた戦士なのね。ならばその身に秘められた力……見せてもらいましょうか」
「「選ばれた戦士って何
??!」」
結局パニーニャと水花は、サクヤが満足するまで、真っ赤になって中二病的な封印解放儀式ごっこをさせられたのだった。
「王様だーれだ?」
「あ、今度は私ね」
次の王様はニーナだった。ニーナは少し思案気に首をひねると、ポンと手を叩いて命令を発する。
「②番が⑥番に添い寝してあげる……というのでどう?」
先程のサクヤと比べて、実に優しい命令だった。
……ただ、ここで番号を引き当てたのがサクヤでなければ、だが。
「なるほどカメリアさんね……魔剣カメリア……魔王りんごを倒すための武器というわけね! なるほど! つまりこの命令は、魔剣を抱いて眠ることで、魔王と戦う力を取り戻せと言う事なのね!」
「え、ええー?! 私の魔剣、そういうものではないんですけどー?!」
中二病全開中のサクヤの認識ではこうなるらしい。
確かにカメリアは、剣が本体であるヤドリガミで、『知られざる魔狩りの魔剣士』が振るった魔剣ではあるのだが、サクヤの前世設定とは当然何のかかわりもない。
だが結局、王様の命令は命令なので、湯船に浸かりながらサクヤに剣として抱きしめられてしまうカメリアだった。
そしてサクヤはいい加減疲れたのか、カメリアを抱いたまま本当に眠ってしまったという……。
「湯船で眠ったら溺れてしまいますよー?!」
カメリアの嘆きは、サクヤには届かないのだった。
「王様だーれだ?」
「あ、リンちゃん。次の王様はわたしみたい~」
次に名乗り出たのは柚月だった。柚月はまだお酒が残っているのか、かなりノリノリで命令を下す。
「⑤番が⑩番の額にキスってことでどうかなー? なんかおでこにキスって、お口同士でするのと違った良さがあるよねー?」
というわけで選ばれた番号の主はというと……。
「また私?!」
キスする側が、先程の命令が終わった後、また人格交代して表に出てきたアザレアで。
「あらあら。わたくしですか?」
キスされる側はマイエだった。
というわけで、アザレアはマイエの傍に行き、前髪を書きあげて額を露出させる。
「ま、さっきのと違ってこういう命令なら平気よねー」
「わたくしは、わりと恥ずかしいというか、照れるのですけれど……」
やはり体勢が体勢なのか、それともキスするほどに近付くことで、アザレアのメートル級な胸がいやがおうにも意識してしまうからなのか、マイエは頬を染めて恥ずかしそうにしていた。
「あまり恥ずかしそうにされると、こちらも妙な気分になるんだケド……んっ」
「あんっ……」
そうしてアザレアはマイエの額に軽くキスをする。
「王様だーれだ?」
「あ、今度は私だわ」
次の王様は、先程まで何度か命令を受けていたアザレアだった。自分がされた命令のお返しとばかりに、悪ノリを込めてアザレアが放つ命令とは。
「①番が⑦番にバストマッサージ♪」
「ぶーっ?!」
アザレアが悪ノリで出した命令を聞いた瞬間、いちごが噴き出した。
「あは♪ いちごくんがマッサージしてくれるんだ?」
そして実に嬉しそうな声を上げるのが、マッサージされる側にあたった水花である。
「あ、あのバストマッサージってどういう……?」
おそるおそる尋ねるいちごに対し、水花はいちごの手を取ると、何のためらいもなく自分の胸へと導く。
ふにゅん。
「水花さんっ?!」
「んっ……こうやって揉んでくれればいいんだよ?」
「それマッサージじゃないと思うんですけどー?!」
いちごの手には水花の大質量の柔らかい感触があり、それを水花が自分の手でいちごの手を押し付けて揉むように動かし始めて……これではたして命令実行になっているのだろうか。
ちなみにいちごには、グサグサと色々な視線が突き刺さっていたという。
例えば見物していた妹の冷たい目とか。
「王様だーれだ?」
「今度は私みたいですね」
次の王様はカメリアだった。カメリアは、アシスタント役として籤を配っていた燈を捕まえると、用意されていたデザートを持ってこさせた。ストロベリーサンデーである。
「というわけで、①番が⑤番に『あーん』してあげるということでどうでしょう?」
嫌がるような命令は雨ですねと、ここまでのを見て学習したカメリアらしい優しい命令だった。だったのだが……。
「また私ですか。でも、あーんくらいなら……」
食べさせる側に問題があった。
(『いちごちゃんからのあーんいいな……代わって?』)
(「イヤよ。いちごのあーんは譲らないんだから」)
パニーニャとアザレアの間で、どちらがあーんしてもらうかの主導権争いになって額の宝石の色が赤と青に目まぐるしく変わっていく。
「あ、あのどちらでもいいので……」
「『そういうわけにはいかないのっ』」
結局、2人に分裂して両方やってもらえばいいという事に気付くまで、不毛な主導権争いは続くのだった。
「はい、あーん」
「あーん♪」
「そちらも、あーん」
『あーん♪』
最終的には2人とも満足したみたいで、よかった、のかな……?
「王様だーれだ?」
「あ、今度は私だね? それじゃ、どうしようかな……?」
次に王様になったのは水花だ。
命令がなかなか思いつかないようで、小首をひねって少し思案している。
「うーん、あまり捻った感じのは思いつかないかも……?」
そのまま少しだけ悩んで、そしてポンと手を打った。
「④番が⑧番に脇腹つっつきでどうかな?」
こういうくすぐり系ならいいかも?という事で発した水花の命令、実行するのは、柚月と金枝の大人2人になった。
「……まぁ、参加してしまった以上はやりますけれど……はぁ、ホントなんでこんなことになってるのかしら?」
「えへへ、それじゃ金枝さん、やるわねぇ~?」
つつく側の柚月が、つつかれる側の金枝の元へと行く。
金枝にとっては、先程りんごへの相談を邪魔された因縁の相手と言えるのかもしれない。
「つんつんつん~」
「や、やめなさい、も、もういいでしょう、くすぐったい……っ?!」
まだ酒が残っているのか、柚月はそのまま視界のりんごからやめさせられるまでひたすら金枝の脇腹をつついていくのだった。
「王様だーれだ?」
「はぁはぁ……今度は私ね……」
先程くすぐられて笑いすぎてお腹が苦しそうな金枝がその直後に王様になった。
「はぁ……まぁ、されたからって仕返しみたいな真似はやめておきましょうか。
⑩番が④番の髪を洗うくらいでどうかしら?」
「割とおとなしい命令だけど、それでいいの、金枝さん?」
先程のくする地のお返しでもするかと思っていた司会のりんごは、意外そうな顔をして金枝に尋ねるが、金枝はある意味ヒーローらしく答えるのだった。
「ええ、やってやり返してでは不毛だもの……それで、当たったのは誰かしら?」
手を上げたのは、マイエと柚月の2人だった。
図らずも、先程金枝をくすぐった柚月の番号を引き当てていたので、やっぱり仕返し的な命令にしておけばよかったかと少し悩んでしまった金枝である。
「お客様、かゆいところはありませんか?」
マイエも、少しだけ恥ずかしそうにしながら、洗い場に行って柚月の頭にシャンプーをかけて、髪を洗い始めた。
「えへへ~、大丈夫よ~。人に洗ってもらうって気持ちいいね~、リンちゃん」
「ですわねぇ。そういう命令はちょっとうらやましいかも?」
柚月も実に気持ちよさそうに司会に話しかけるのだった。
「王様だーれだ?」
「あら、今洗い場から戻ってきたばかりですのに……」
次の王様は、柚月の髪を洗い終えて戻ってきたばかりのマイエだった。
「ええと……それでは③番が⑨番の手の甲へ王子様っぽくキスということでいかがかしら?」
「じゃあ、クトがお姫様役なのね?」
キスをされる側として名乗り出たのはクトで。
「王子様っぽく……って……?」
キスをする側に当たったのはニーナだった。
クトは湯船のへりに腰掛けると、恥ずかしそうに少し頬を染めながら、そっとニーナに向けて手を差し出した。
「ええと……それじゃ、こう、でいいのかな?」
ニーナはその手を恭しくとると、そっと唇を寄せる。
「あはっ、なんだかクトもすごく照れちゃうのよ」
「……す、する側もかなり、照れるね」
そのまましばらく赤面している2人だったとか、なんとか。
「それじゃ、2組は次あたりを最後にしましょうか?
王様だーれだ?」
まだ王様が当たっていないのは、かれんといちごともう1人……。
「あ、最後はクトが王様なのね?」
その最後の王様はクトが引き当てたのであった。
「やれやれ、これはわたくしは最後まで見学者ポジションで終わりそうですわね」
「私もできればその方が良かったですよ……」
結局王様に当たらなかったかれんといちごはそうやって苦笑いをしている。かれんと違い、いちごの方は命令遂行で出番はあった分、声に疲れがにじんでいた。
「じゃあ、クトの命令は、④番が②番にハグ、なのよ?」
命令を聞いて、かれんといちごはやっぱり顔を見合わせていた。
「あ、こちらも外れましたね。いちごさんは?」
「私も外れです。当たったのは……あ、あの2人みたいですね」
ハグをする側に当たったのは柚月で、ハグを受ける側はサクヤだった。
「は~い。それじゃ、お姉ちゃんが優しく抱きしめてあげますね~」
と、優しげに語り掛ける柚月に対し、サクヤの反応はまた一味違った。
「まさか魔王四天王の1人に抱きしめられることになるとは……」
どうやらりんごの昔馴染みという事で、魔王四天王に任命されたらしい。サクヤの設定の中だけでは。
そして魔王の配下に絆されるわけにはいかないと考えたサクヤのとった手段とは?
「はい、ぎゅ~っと」
「え? え? どういうことですかこれ? なんで私、見知らぬ女性に裸で抱きしめられてるんですかー?!」
……サクヤから咲耶へ人格を切り替える事だった。
ちなみに咲耶は主人格ではあるのだが、サクヤが活動中の記憶は残らない。サクヤが参加を決めた花見なので、咲耶自身はそもそも参加の記憶すらなかった。
さらに今日この日に入寮したばかりで、この花見の中で初顔合わせの自己紹介をしていた柚月とは、咲耶としては完全に初対面の知らない人なのである。
というわけで、しばらく混乱しながら喚く咲耶なのだった。
なお、まだお酒の残っていた柚月は、咲耶の状態には構わず、しばらく抱きしめ続けたという……。
「という所で、今回の組み合わせはこんな所ね。では、次のメンバー探しに行きましょうか」
そして王様ゲームはまだまだ続く。
アリスとりんごは、さらに次のグループの所へと向かっていくのだった。
●王様ゲーム第3組
「さてさて、次のメンバーは……」
「りんご、こっちにする?」
次のメンバーを探していたりんごとアリスに、アリカが声をかける。
当然のようにアリカも今度は司会側に加わって、そしてアリカの周りにいた面々が第3組として指名されたのだった。
すなわち、理緒、ヴェール、メリッサ、セナ、ゆのか、智悠璃、ネウィラ、静葉、アイ、詞。そしてやっぱり連れてこられたいちごを含めた11名。これが第3組のメンバーであった。
「王様だーれだ♪」
今度の号令役はアリカだ。例によって燈が配った籤の中かから、最初の王様を引き当てたのは、詞だった。
「え、私が王様……? なにか考えないと、なの?」
いきなりの指名に首をひねらせた詞だったが、すぐに思いついたようで、さっそく命令を言い放つ。
「それじゃ、②番の人が④番の人にデコピンね。中途半端はダメよ、全力でお願いね?」
という命令を受けておずおずと手を上げたのは、ゆのかとネウィラの2人。
「ゆのかさんのデコピンですか……?」
「あ、あのね、全力というのはちょっと……」
何せ怪力自慢のゆのかだ。その力は恋華荘の皆にも知れ渡っているゆえ、ゆのかのデコピンと聞いてネウィラは嫌な汗をかいてしまう
「まぁ、人によっては大惨事になるかもだけど、それがゲームよね?」
そして詞の無情な宣告に、とほほと肩を落として、ゆのかはネウィラの前に立つのだった。
「え、えっと、ごめんなさいね?」
「い、いえ、よろしくお願いします……」
申し訳なさそうに謝りつつ、ゆのかは言われるままに全力デコピンをネウィラへと解き放った。
結論だけ言うと、ネウィラは額からぷすぷすぷすと煙を上げつつ、湯船に沈んでしまったのだった……。
「王様だーれだ♪」
「あはは、今度は私が王様みたい」
そしてデコピンの恐怖も冷めないうちに、次の王様はゆのかになった。
「そ、それじゃ、③番が⑦番の脇をこちょこちょしちゃうということで……」
デコピンした方もトラウマになっているのか、ゆのかからの命令は比較的簡単なものだった。
ただ、組み合わせはなかなかのクリティカルで。
「おー、つまりわたしはセナさんにくすぐられるのか」
「す、すみませんっ、王様からの命令ですのでっ」
真っ赤になりながら理緒の脇腹をくすぐるセナである。ドキドキという心臓の鼓動が、くすぐられて笑い声をあげている理緒には聞こえていないのが幸いだったか。
「あははは、ははははははっ、だめ、くづぐった……ああっっ」
そして理緒の反応にますます赤くなり、ドキドキしてしまうセナだった。
「王様だーれだ♪」
「こ、今度は私、ですねっ」
理緒をくすぐっていた興奮が冷めやらないのか、まだ赤面しているセナが次の王様になった。
「ええと……それでは、④番が⑦番の首筋をはむっ、と甘噛みしちゃうという事で、いかがでしょうかっ。あっ、思わず本気で噛んじゃって、痛くしちゃダメですのでっ」
ダンピールで、オブリビオンの血を喰らうセナらしい命令ではある。
「おお、今度は、ネウィラさんにかぷっとされるのかっ」
「え、あれ、また理緒さん当たっちゃいました?!」
命令したセナの方がビックリしてしまう。何と理緒は命令実行される側として2連続だからだ。
「ええと、それでは失礼して……」
恥ずかしそうに真っ赤になったネウィラが、意を決して理緒の首筋にパクっと食いついた。
「あんっ……こ、これはちょっと気持ちいいかも……?」
今度いちごに甘噛みしてもらおうと決意する理緒であった。
「王様だーれだ♪」
「あ、今度は私ですね。それじゃあ、③番が⑦番のいいところを3つ言う」
次の王様はネウィラだ。
そしてネウィラのした命令が、やっぱりどこかズレてるネウィラらしく(?)、実現がかなり難しいものだったりする。
「おお、またわたししてもらう側かー♪」
なんと3連続で、理緒は受け身になってしまうのだった。
では理緒をほめちぎる役を仰せつかったのはというと。
「わ、私ですかっ?!」
セナだった。なんと先程のくすぐりと同じ組み合わせに。
「えへへ。それじゃ、セナさんは私のいいところなにをあげてくれるのかなー?」
仲のいい友人が自分のいいところ探ししてくれるのだ。理緒はとても楽しそうな笑顔で答えを待っている。
だが、恥ずかしがり屋のセナにとっては、仲のいい友人のいい所を本人に聞かせるなんて、むしろ拷問に近かったかもしれない。
「えっと、えっと……理緒さんは素敵な人ですっ」
「わーい♪」
「電脳魔術も、すごいですっ」
「アイさんほどじゃないけど、ねー?」
「それからそれから、えっと……とてもかわいい人ですっ」
「セナさんほどじゃないと思うけど、なー? でもありがとー♪」
自分のために頑張ってくれたセナに、思わず感謝の抱擁をしてしまう理緒である。当然、セナは顔を真っ赤にしてオーバーヒートしてしまうのだった。
「王様だーれだ♪」
「わ、私、ですっ」
次の王様はヴェールだった。ヴェールは、命令を言う前からすでにドキドキして顔を赤くしていた。自分の命令で何が起きるかを想像するだけで、赤くなってしまうのだ。
「命令は、⑦番が⑩番とほっぺたあわせ、ですっ」
「またわたしかっ?!」
なんとまたまた理緒が命令の対象になってしまったのだった。
「ほっぺた合わせ、って……」
そして今回理緒と頬を合わせてすりすりするよう求められたのは、詞だった。
「よーし、それじゃ、詞さん、ほっぺすりすりしよー?」
「や、やるの……仕方ないわね」
もう命令されるのも4回目だからか、とても楽しそうな理緒と、まるで慣れていないために戸惑っている詞の、実に好対照な組み合わせだった。
理緒が言葉に近づいていって、肩に手を乗せて顔を近づけていく。さすがにここまですれば、ノリノリだった理緒だって恥ずかしくはなるようで、頬を朱に染めて、その頬を詞の頬に重ね合わせるのだった。
「えっと……すりすり」
「や、ちょ……そこまで、するの?」
照れながらも頬ずりまでやってのけた理緒に対し、やはり最後まで戸惑いを隠せない詞だったとさ。
「王様だーれだ♪」
「あ、今度はわたし、だー♪」
次の王様は、ここまでさんざん出番のあった理緒その人だった。
「えーと、それじゃーねー……」
理緒は燈に頼んで、用意されていたデザートの中からグミをとってきてもらった。
「②番の人が⑤番の人に、グミを食べさせる、です♪」
「ほっ……簡単な命令でよかったのよ」
食べさせる側の番号を引き当てていたゆのかは、ほっと胸をなでおろしたのだが……まだそれは気が早い。
「もちろん、めいっぱいえっちに、ね!」
「えっ?!」
理緒の命令は最後まで聞きましょう。
「え、えっちに、ですかっ?!」
食べさせてもらう側になったヴェールも、その命令の追加部分を聞いてどぎまぎしていた。
「というかえっちに食べさせるってどうすればいいのよー?!」
ゆのかは悲鳴を上げるが……命令は実行しなければいけないのだ。
「えっと、それじゃ……あーん……?」
ゆのかは戸惑いながらも、指先で摘まんだグミを、ヴェールの前に差し出す。
「は、はい……あむっ……れろっ……」
そしてヴェールは、ゆのかの指ごとグミにぱくついて、そのままゆのかの指を持舐めていた。
2人とも、こんな感じでいいですかと目で理緒に訴えているが……さて、理緒が満足して2人を解放するまで、何個のグミを食べることになるのでしょうね?
「王様だーれだ♪」
「やっと私の出番ですねっ!」
次に王様を引き当てたのは、アイだった。
今回の籤はかなり偏っていたようで、王様にも対象にも選ばれていなかったアイなので、せっかくの出番に張り切っている。
そんなアイが出した命令はというと。
「②番が⑨番に得意技を披露する、でいきましょう」
「またわたし? それに得意技って
……?!」
披露する側に当たってしまったのは、またしても連続になるゆのかだった。
「今回の籤はなかなか偏っておるようじゃな」
「出番ないのは助かりますよ……」
やはりここまで出番のなかった静葉といちごがそんな話をしている中、ゆのかの得意技を披露される相手になった智悠璃は、ゆのかに何をするつもりなのか尋ねてみた。
「ゆのかさんの得意技というと……怪力でしょうか?」
「あはは……そ、そうなるの、かしら……?」
でもどうやって披露すればいいのかと悩んで、結局ゆのかは、重量挙げの要領で智悠璃を湯船から引っこ抜いて頭の上まで掲げてみるのだった。
そのあとお姫様抱っこをしながら、アイにこれでいいかしら?と目で尋ねている。
「ああ、私も昔ああやってゆのかさんに持ち上げられたことありましたっけ……」
「昔からゆのかさんそんなに力持ちだったんですか?」
そんなゆのかの様子を見ながら、いちごは懐かしそうに目を細め(ついでにゆのかから視線を逸らし)、アイにゆのかの怪力についての話をしていたのだった。
「さて、それじゃ3組目も次でラストにするのよ!
王様だーれだ♪」
アリカの号令で、第3組のラストゲームになった籤が引かれる。
ここまで王様になっていないのは、智悠璃といちごと静葉の3人だった。果たして新しい王様が誕生するのか、それとも今までのメンバーが2回目の王様になるのか。
答えは、智悠璃だった。
「最後の王様いただきますね。ええと、それでは……①番が⑧番に愛の告白といきましょう」
「えっ? 8番は私ですけど、1番は……?」
告白を受ける側になったアイがあたりをきょろきょろ見回すと、真っ赤になって手を上げているいちごの姿があった。
「い、いちごさんですかっ?!」
そしてこのクリティカルな組み合わせに、アイも真っ赤になってしまう。
「むろん本気の告白でなくてもかまいませんが、ちゃんと愛は囁いてくださいね?
その時の表情の変化が見たいのです」
そして智悠璃から、助け船……に見せかけた追い打ちが下る。
「ほらほら、早くしなさいな?」
「みんな待ってるのよ!」
司会のアリカやりんごからも急かされ、赤面したままのいちごが、アイの前に連れてこられる。アイもまたこの状況に真っ赤になってはいるわけだが。
「ふぅ……はぁ……」
何か言わないと終わらないので、いい加減覚悟を決めたのか、いちごは深呼吸をしてから、アイに向き直り、正面からアイの目を見た。
「アイさん。……私はその、優柔不断で、好意を寄せてくれる他の人たちを振ることもできない情けない身ですけれど……」
真面目に語りだしたいちごに、アイも頬を染めながらじっといちごを見つめて聞いている。そんな雰囲気にのまれて、第3組のゲーム参加者も、それ以外の観戦者も、固唾をのんで言葉の行く末を見守っていた。
「そんな私で許されるのかはわかりませんけれども、でも、これが私の正直な気持ちなんです。アイさん、あなたが好きです。私と付き合ってもらえますか……?」
「は、はい……」
頬を染めたアイが、そのままこくりと頷いて、告白シーンは終了した。
しばらくの静寂。そして次の瞬間広がるざわめき。
「いちごちゃん、なに、今の?!」
「いちごさん、もしかしてマジ告白?!」
「いちごくんそうだったのっ?!」
あまりにも雰囲気が真に迫っていたため、いちごを慕う女性陣が一斉にいちごを突き上げてくるが、当のいちごはそれらを無視して、ちゆりに向かって叫ぶのだった。
「と、こんなところで勘弁してくださいー?!」
「ああ、はい。実に真に迫ったいい告白でしたよ。役者なのですね、いちごさん」
そのやり取りを聞いてようやくゲーム用の演技だったか……と安心した空気になる。
だがまぁ、演技だとしても告白シーンのインパクトは大きくて。
……アイはもうしばらく余韻に浸っているのだった。
「それじゃ、このグループのゲームはおしまいなの。
最後にいい爆弾が出てとても楽しかったのよ!」
最後の〆の挨拶をアリカが入れて、アリスとりんごは最後のグループを集めに回るのだった。
そして、アリカに向かってアイが叫ぶ。
「あ、アリカさんっ、今の告白シーン、アリカさんの力で保存できてませんかっ?!」
「あ、アイ、復活したのね? ……もちろんなのよ♪」
「よしっ。永久保存しなくてはっ」
「あああ、アリカさんっ、アイさんっ、やめて、そんなの残さないでーっ?!」
アイとアリカのやり取りを聞いたいちごの絶叫が響くが、いちごはそのままりんごに連行されて、最終組の方へと連れていかれるのだった……。
●王様ゲーム最終組
「さて、最後に残ったメンバーは、と」
アリスはまだ王様ゲームに参加していない面々をきょろきょろと探していた。
「あちらがまだですね。ちょっと集めてきましょうか」
りんごが示した一団に、燈がてきぱきと籤を配っていく。
というわけで、王様ゲーム最終組は、サエ、仁美、みさき、フロウヴェル、アテナ、ミネルバ、アイリス、アウレリア、トーリ、士、そしてもちろん最後まで強制的に参加させられるいちごで11名。
「じゃ、最終組始めましょうか?」
最後の司会役は頭に戻って再びアリスである。
「王様だーれだ」
「あ、私ですね」
最終組のトップバッターはアウレリアだった。
「それでは……⑧番が②番に飲み物をあげるということで。お風呂で長時間過ごしていますし、水分補給も兼ねてみました」
そんな優しい命令から始まった。
対象になったのは、トーリと仁美。
「それでは、先程いちごさんにも飲ませてあげたシャンメリーにしましょうか」
「えっ、まさかいちごくんにしたように口移しとか、じゃないよね……?」
先程いちごがトーリに口移しで飲まされるのを目撃していた仁美だ。まさかとは思うが、トーリの悪戯めいた笑顔からは、本気具合が読み取れない。
じりじりと迫るトーリに、じりじりと後ずさる仁美。
とはいえ、王様の命令は絶対なので。
観念した仁美はトーリに身を任せるのだった……。
「さすがにいちごさん以外には口移しなんかしませんけどね」
「ほんとにびっくりしたよー……」
普通に瓶からラッパ飲みさせられました。
「王様だーれだ」
「あ、次はあたしだね」
次の王様は、ちょうどいまトーリとのやり取りを終えたばかりの仁美だった。
「それじゃあ……⑥番が⑨番の耳に息を吹きかける、で。地味に聞くと思うんだ、これ」
というわけで、今回選ばれた番号の主はというと。
「え、いちごさんに息を吹きかけるんですか?」
「はい、なんかその、すみません」
アイリスがいちごの耳に息を吹きかける役となった。
「うぅ、王様の命令は絶対ですし、しかたありません……」
そういってアイリスはいちごに寄り添うように近づいていく。
当たり前だが、耳に息を吹きかけるためには、ほとんど横から抱きつくくらいに接近しなければいけない。身長的にはほぼ同じ……実はアイリスの方が若干背が高いくらいなので、背伸びとかしゃがみとかしなくていいのは助かるが、むしろ逆にほとんど腕を組むとか抱きつくとかの体勢になってしまう。しかも裸で。
(「さっきいちごさんの話したばかりだから、変に意識しちゃうじゃないですか、もー……」)
いろいろな思いが頭の中をぐるぐるして頬を染めながら、アイリスは意を決していちごの耳に息を吹きかける。
「ふーっ」
「ひゃぁあ?!」
そしてやっぱり吹きかけられたいちごは、その感覚にぞくっとして声を上げてしまうのだった。
「変な声出さないでー?!」
「すみませんー?!」
「王様だーれだ」
「はーい、わたしー。えっとね、それじゃね、⑩番が①番をペロペロ~♪」
次の王様はみさきだった。
相変わらずの無邪気さで、説明が足りていないような気もするが、みさき曰く、ジュースがこぼれてべとべとになったところを、ぺろぺろ舐めて綺麗にする、という事らしい。
「ん、それじゃ、ペロペロするの」
「お、お手柔らかにお願いしますわね……?」
そしてこの命令に当たったのは、みさきの親友でそういうスキンシップは大好きなフロウヴェルと、貞操観念も強くそういったスキンシップにはまるで免疫のなさそうなアウレリアだった。
実に対照的な組み合わせになったものである。みさきの天然が最適の組み合わせを呼んだのだろうか。
「それじゃ、軽くジュースをかけて……ぺろっ」
「ひゃっ?! やだ、くすぐった……ああっ」
湯船から上がって、アウレリアの身体にジュースをひっかけ、そしてそれを自らの舌で舐めとっていくフロウヴェル。
フロウヴェルの舌が動くたびに、アウレリアの艶めかしい声が響き、そしてすべて舐めとられる頃には、アウレリアはすっかりぐったりとしてしまったのだった。
「王様だーれだ」
「私で、すぅー!」
次の王様は、最小最年少の王となった士だった。
「それでは、⑨番が③番の体を洗ってあげるでっ。色んな意味でやりすぎ注意でっ!」
士からの命令に手を上げたのは、いちごとミネルバだった。
「また体を洗う命令ですかっ?!」
いちごは、最初のゲームでまゆの身体を洗う事になったので、それでまたという感想になっている。
「神様に洗ってもらうなんて光栄ですわ」
そして今回洗われる側のミネルバも、まゆとは別ベクトルながら、いちごを神様と慕っているために洗われることには抵抗はないようだ。面倒がなくていいとはいえる。
「え、と、それでは失礼して……」
洗い場に向かったいちごは、背中を向けたミネルバの、その白く艶めかしい背中を洗い流していく。
まゆの時と違うのは、ミネルバは成人した大人の女性という事で……いちごはまゆの時以上に緊張しっぱなしだ。
「いいわねぇ、ミニ―。旦那様に洗ってもらえるなんて」
「姉様は、ゲームに関係なく神様に迫りそうですけれど……?」
「それはやめてくださいね」
時々こうしてアテナにからかわれながらも、いちごは何とかミネルバの背中を流すミッションを終えたのだった。
その時ちらちら見えたもろもろは、気にしない事にしよう。ええ。
「王様だーれだ」
「あ、今度は私だね。んー、どんな命令にしたら面白いかなー?」
次の王様はサエだった。
サエとしてが、恋華荘の人間関係やとらぶるをもっと見て楽しみたい。前回のゲームでいちごとアイの組み合わせとか、見ている分には実に楽しかった。
ということで、サエの出す命令はこうなった。
「よし、決めた。④番が②番にとっておきの口説き文句を言う!」
と、命令して、内心でサエは4番にいちごが当たったりしないかなーと少し期待していたのだが……。
「はーい、わたしがよんばーん」
残念ながら、今回の口説き役はみさきだった。
ちなみに2番を引いたのは仁美なので、みさきが仁美に口説き文句を言うという事になる。
「んーとね。それじゃ、ひとみちゃん」
「うん、何かな、みさきさん」
実は仁美とみさきは年は1つしか離れていないのだが、みさきの言動が幼いがゆえに、仁美からしたら幼い女の子を相手にしているような感覚になっているのかもしれない。笑顔でじっとみさきの言葉を待つのだった。
「ひとみちゃん。すきっ、すきぃ、だいすきっ♪」
そして、語彙の少ないみさきだ。口説き文句と言ってもこんなストレートになるのだろう。
「うん、ありがとう、みさきさん」
「えへへー。ひとみちゃんのふぐさんも、いかさんやくらげさんやなまこさんとおなじくらいすきだよー♪」
「えっ」
なお、みさきは、あらゆるものを海産物に例える癖がある。
フグは乳房の事で、イカやクラゲはいちごの召喚物、そしてナマコは……。
もっとも例えの意味の分からなかった仁美はただ戸惑うばかりだった。
「王様だーれだ」
「あ、私ですね。じゃあ、⑨番が①番の頭を撫でるで。これぐらいなら、まぁ無くはないですよね?」
というわけで次の王様になったアイリスからは、簡単な命令が下された。
「また私ですか」
そして今回のゲームはどうもいちごが巡ってくるらしい。3回目の登場である。
「ま、まぁ、頭を撫でてもらうくらいなら……」
そして対象はアウレリアだった。
貞操観念も強く、裸身を晒すは生涯を共に過ごす方へのみと思っていたアウレリアだったが、恋華荘の雰囲気に流されたのと、いちごの容姿が女子のようだという事もあって、混浴自体への抵抗はだいぶん薄れてきていた。
ただし、いちごが近付いてきたならば話はまた別。
頭を撫でるだけといっても、アウレリアとしてはかなり緊張する出来事であった。
なでなで。
いちごとしては、頭を撫でるくらいならそれほど意識はしない。無意識的に女の子の頭を撫でてしまう事もあるのだからなおさらか。もちろんアウレリアの肌が目に入らないように視線は微妙に逸らしている。
「えっと、いつまで撫でていればいいんでしょう?」
なでなで。なでなで。
アウレリアが恥ずかしさに止まってしまっているので、延々と頭を撫で続け、更にアウレリアが止まるという悪循環を繰り返してしまうのだった。
「王様だーれだ」
「ん、ベルが王様なの」
次の王様はフロウヴェルだった。スキンシップが好きなフロウヴェルだから、この命令になるのはある意味必然だったのかもしれない。
「ここはシンプルにいくの。スキンシップは良いものなの。だから、⑨番が⑦番にハグするの」
「また私ですかっ?!」
連続登場になるいちご、最終ゲームでは通算4回目である。
「おおー? つまり噂のいちごくんが、私にハグしてくれるってわけかー」
そして対象の相手はサエだ。
普段あまり接することのない相手に、いきなりのハグ。もちろんお風呂中なので互いに裸と、かなり難易度の高い命令ではあるのだが、サエ自身はかなりノリノリであった。
「命令と逆になるけど、来ないなら私の方から抱きしめに行っちゃうぞー?」
「勘弁してくださいっ?!」
ノリノリでいうサエに苦笑いしつつ、いちごもやがて覚悟を決めてサエに近付いていく。
「そ、それじゃ、失礼しますね」
サエに近付いたいちごは、正面から手を広げて抱きついた。
いちごよりも背は低いが、出るとことはドドンと出ていてボリューム感のあるサエだ。ハグの為に背中に手を回そうとすると、必然的に2人の間で柔らかい塾らみがぎゅっと押しつぶされることになる。
「んー、もっと強くしてもいいよ~?」
「そういうわけにはっ?!」
サエからの軽口のようなリクエストに顔を真っ赤にするいちごであった。
(「さっきのトラブル巻き込まれもいいけど、こういうガチ目なのもいいかもねー」)
なんだかんだで恋華荘を楽しんでいるサエさんでしたとさ。
「王様だーれだ」
「あら、私ですね」
次の王様はトーリだった。どんな命令をするのか悩んだトーリだが、最終的にはこういう命令で落ち着いた模様。
「⑤番が⑩番の首筋にキスでおねがいしますね」
「わかりましたで、すぅー!」
勢いよく跳びあがったのは、5番が振られた士だ。
「番号逆でなくてよかったの」
そんな士の様子を見て、フロウヴェルはほっと一安心。
何せ逆の場合、フェアリーの小さな首筋にキスをするという難易度の高いミッションになっていたからだ。
「それでは失礼しますっ!」
ぱたぱたぱたと飛んできた士は、フロウヴェルの肩の上に腰掛けた。士的には、ちょうどいいベンチのようなものである。
「ん、よろしくなの」
そして顔を真っ赤にしながら、フロウヴェルの首筋へと顔をのばし、唇を軽く触れさせたのだった。
……ただ、フェアリーの唇は本当に小さいため、キスされたことに最初フロウヴェルは気が付かなかったとか……。
「えっ、もう終わってたの??」
「がんばりましたっ!」
「さて、それじゃそろそろ、余興自体も終わりの時間かしらね?」
「王様ゲームのラスト、いきますわよー」
アリスとりんごがゲームのおうぇありを示唆する。さすがに温泉に浸かりながらの宴会も時間が経ってきたので、これ以上はなびかせると全員が逆上せてしまいかねないし。
「王様だーれだ?」
「……私、ですね」
最後の王に選ばれたのはミネルバだった。これで結局、このグループではアテナが王様になれず、あと、いちごは4ゲームフル参加だというのに1回も王様になれなかったという逆の意味での轟運を見せつけたのだった。
「ミニー、王様いいなー」
「姉様は残念でした。……えっと、それじゃ命令しますね。
②番が⑨番をハグして、おでこにキスをする……なんて、如何かしら?」
ミネルバのした命令に、手を上げたのは、いちごと仁美の2人だった。
「今度はハグするんじゃなくてされる方ですか……すみません、仁美さん、お願いします」
「う、うん」
抱きつく相手がいちごになったという事で、仁美は頬を恥ずかしそうに赤く染めながら、いちごに近づいてくる。
恋華荘に慣れたという事もあって、いちごの前で肌を晒して混浴するのはもう慣れたが、さすがに直接接触はまだ照れや恥ずかしさが勝る。
「えいっ」
それでもせっかくの機会なんだしと……仁美は正面からいちごを抱き寄せたのだった。
「むぐぐっ?!」
そしてそうなると、いちごは、お約束のように仁美の胸の中で溺れてしまう(物理)。
さすがに呼吸困難になっていちごは仕切りに仁美の身体をタップする。
そもそもこうして抱きしめているだけでは、命令の半分しか遂行していないのだから。
なんとかもがくいちごが、仁美の胸の谷間から頭を飛び出したところで、仁美はそんないちごの額にそっと唇を寄せたのだった。
「んっ……これで、いいかな?」
命令を達成し、ちょっとだけまだ頬を染めながらも、笑顔を向ける仁美だった。
……なお、いちごはまだ仁美の胸の谷間に挟まっている。
これを最後にゲームが終了したので、いちごを想う女性陣が一斉に瞳からいちごを取り返そうと殺到するのだが……またそれは別の話だろう。
●宴の終わり
王様ゲームを終えた後は、再びそれぞれに散っては和やか会話と、一部のとらぶるを楽しんでいく恋華荘の面々。
露天風呂の中に桜の花びらが散っていく中、賑やかな時間もやがて終わりを告げていく。
いつまでも入っていたら逆上せてしまいますからね。
それでも、今回は、普段あまり関わりのない者同士でもいろいろ交流できたのではないだろうか。
それならばきっと、この花見も、歓迎会も、大成功だったはずだ。
楽しんでもらえたなら幸いです。
まぁ、管理人の苦労は、ますます増えそうですけどね!
大成功
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