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きみと紡ぐ物語

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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●水鏡の卵
 コポ、コポ。
 トプン。
 チャプ、チャプ。

 生まれるよ、生まれるよ。
 もうすぐ生まれる、あなたの分身。あなたの友達。あなたの家族。
 もっともっと近付いて。
 映してごらん、あなたの心。
 触ってごらん、水鏡の卵。
 コポッ、コポポ。
 優しい水の音色が歌い、水鏡の卵が揺れたなら。

 ――ほら、生まれた。
 “はじめまして、よろしくね”
 そんな言葉達を贈り合って、あなたはその子と巡り会う。

 *・*・*

『待っていて、私ももうすぐ会いに行くから』
 私のお友達は、何処かしら?
 こっちかな? それともあっちかな?
 あぁ、何だみーんな此処に隠れてたのね。
『ふふっ、みぃーつけた……! ねぇみんな、私とお友達になりましょう?』
 不快な金属音を立てながら少女は歩み寄って来る。ゆらゆらと不気味に揺れる長いドレスの下から研がれた刃を取り出せば、鈍い煌めきを放つ凶器が友と呼ぶ相手の四肢を切断し、腕に抱くぬいぐるみにその一部を詰めていく――。

●不思議の国へのご案内
「どなたか、お力添えをいただけませんか?」
 グリモアベースの片隅で通行人に声を掛けているのは、ミンリーシャン・ズォートン(f06716)だった。彼女は歩みを止めてくれた猟兵に感謝を述べると、言葉を紡ぎだす。
「アリスラビリンスの世界に、新しい不思議の国が見つかりました。その国に現在存在しているものは“水”のみです。大地の代わりに足首が浸かる程度の水。一見すると森のようで木々や茂みも在りますが、それらも全て水で出来ているようです。此れから其の場所へと赴き、水の森の何処かに在るという“水鏡の卵”を探して来ていただけませんか?」
 水鏡の卵とは――、己の姿や心を映す事で初めて孵化する不思議な卵なのだと彼女は説明した。
「新しい命が生まれたら、その子達が暮らしやすくなるように何か素敵な贈り物をしてあげて欲しいのです。水の森の奥には“御伽の世界を映した本”というものが在ります。本の頁を捲って、水の子達に与えてあげたい何かを見つけたなら、頁に手を添えて言葉にします。そうすれば其れは水の国で具現化し、水の子達の助けとなるでしょう」
 例えば美しい庭園だったり、美味しい果物が生る樹だったり。豪華なお城やお茶会を開く為のテーブルとイス。与えられる物は自由なのだと彼女は語る。
「ただし、本から具現化する事が出来るものは一人につき一つまでです。悩んでしまうかもしれませんが、貴方が心を込めて選んだものならば、きっと水の子達は喜んでくれる事でしょう。そしてその後は……其の国と、水の子達を護って来て貰えませんか?」
 此処からは先程までの柔らかな口調では無く、真剣な眼差しを伴い彼女は言を紡いだ。
「実は、此の国にもうじきオウガが現れます。其のオウガは少女の姿をしており、友を求めて沢山の不思議の国を彷徨っているようなのですが、彼女は友と定めた者を決して逃がす事はありません。捕らえて、弄んで、最後には其の命をも情け容赦無く奪うでしょう。どうか彼女から生まれたばかりの国と水の子達を護ってあげて下さい。宜しくお願いします」
 ミンリーシャンは金色の眩い花弁を周辺に出現させると、準備が整った猟兵から順に不思議の国へと転送を始めた。


ぺこ
 ぺこです。とても久しぶりにシナリオをお届け致します。
 舞台はアリスラビリンス。

 【一章】水の森の中で<水鏡の卵>を見つけて下さい。ご自身を映した卵からどんな姿で、どんな子が生まれてくるのかを教えて頂けると幸いです。
 ※ご希望が無かった場合はぺこが考えます。

 【二章】水の森にある<御伽の世界を映す本>から、一人につき一つだけ。水しか存在しない此の国に新しい何かを生み出していただきます。
 お城だったり、庭園だったり。皆様の心の赴くままご自由にどうぞ。
 具現化したものは水の子達が仲良く使います。

 【三章】友達を欲して不思議の国を彷徨うオウガの少女「テレサ」との戦闘になります。戦闘判定は確りと行う予定です。
 ※テレサは友達を欲っしてはいますが、容赦無く潜めた凶器類で襲い掛かってきますので、油断せず撃退して頂けたらと思います。

 ※お連れ様がいらっしゃる場合、〆切日が同じ日になるように提出をお願い致します。また、お相手の方の呼び名や関係も教えて頂けると幸いです。

 プレイング受付状況はお手数ですがマスターページを確認していただけると助かります。それでは、ご縁がありましたら宜しくお願い致します。
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第1章 日常 『水鏡の卵』

POW   :    高いところを探す

SPD   :    広い範囲を探す

WIZ   :    こまごましたところを探す

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●はじめまして
 水鏡の卵から生まれる水の子は、心や姿を映した人によって其の姿を様々に変える。
 孵化したばかりの身体は水で出来ているけれど、温もりや心だって、ちゃんとある。
 傷つけられれば悲しみ、痛みと共に朽ちゆく尊い命。ゆっくりと時間をかける事で身体が色づき、身体は水では無くなっていく。
『ぱぱ、まま』
 生まれたばかりのまだ心許ない小さな声は、きっとあなたをそう呼んでくれる。
 あるいは名前をきちんと教えてあげれば、友として其の名を呼んでくれるかもしれない。
 自分を形作ってくれてありがとう、と感謝のキモチを添えながら――。
樹神・桜雪
不思議な世界。全部水で出来てるんだね。
さて、<水鏡の卵>を探そうか。相棒、手伝ってくれるかな。
見つけたらそっと触れてみる。
本当に不思議。ボクの心はどう映るんだろうね。
記憶がない人形に映すものがあるか分からないけれど、ボクは君と出会えるのを楽しみにしているよ。
そうだね、ここまで歩いてきた思い出を。
相棒と一緒に駆け巡った沢山の世界の欠片を。
過去はないけれど、現在はすごく色鮮やかに煌めいているんだ。

生まれた姿はボクに似た小さな子供。
初めまして。「おうせ」と呼んでくれたら嬉しいな。
ゆっくり沢山、お話しようね。
世界はすごく綺麗なんだ。見せてあげたいな。
大丈夫。なにがあってもボクと相棒が守るよ。




 歩けば波紋が広がる水の途を静かに進むのは樹神・桜雪(f01328)という青年だった。
 水の森の何処かに在るという水鏡の卵を探す為此の地を訪れた彼は、葉色の瞳に美しい森の姿を記憶していく。
「相棒、手伝ってくれるかな」
 桜雪が声を掛ければ、彼の肩の上でまぁるくなっていたふわふわの相棒が、チュリリと鳴いて空へと羽搏き、ほんの少し旋回した。
 ほどなくして戻って来た相棒は、桜雪を誘導するように空を飛び、彼は宙に浮く水鏡の卵を見つける――。

 君にボクは、どう映るだろうか?
 多くの事を忘れてしまった身だけれど……大切な人の名も、顔すらも、陽炎のように揺らいで思い出す事は出来ないけれど。それでも人の優しさも、温もりも、掛け替えのない宝物なんだ。

 コポ、コポ。
 桜雪の姿を映した水鏡の卵が泡沫を伴い踊り出す。卵に触れる寸前に肩の上へと留まる相棒が、早く早くと急かすように囀った。
「あぁ、そうだね相棒。君と共に巡り歩いた世界の思い出は色鮮やかに煌めいているんだ」

 その思い出も、此の心も、全て卵に映そう。
 ――さぁ、生まれておいで。

 桜雪がそっと水鏡の卵に触れたなら、卵は更に揺れて動いて音色を奏でる。

 *・*・*

「君に会えるのを楽しみにしていたよ。――初めまして、ボクの事は“おうせ”と呼んでくれたら嬉しいな」
『おーせ……?』
 生まれたばかりで舌足らずな小さな水の少年が、こてりと首を傾げる。
 そうだよ、宜しくね。そう紡いだ桜雪の表情はほんのり柔らかかったかもしれないけれど、それを知るのは今此の場に居る者だけだ。
『おーせ、おーせ。よぉーしくね』
 交わす言葉がいとおしい。
「君にも見せてあげたいくらい世界は凄く綺麗なんだ。沢山お話ししてあげる」
 生まれたばかりの小さな命。何があっても守ってみせる。
 けれど今はもう少し君と心を通わせていようと、桜雪は小さな命と向き合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

田中・イラリヤ
・心情
わーいっ、初めてのところ…なのに、なんだか初めてじゃない気がするの、なんでだろ……御主人様がいた世界なのかな?!

・行動
えぇっと卵みつければいいんだよね?
まっかせて、ボクの鼻はごまかせないんだからねっ!
「ここかな、ごーしゅじんも、いたりしませんかー?」
他の猟兵さんが探さないような小さな隙間とか、あ、なんかみーっけた!
ボクと同じわんわんかな、猫さんかな、どんな子がうまれてくるんだろう
わくわくしちゃうなぁ…
ねぇねぇ、ボクとお話してほしいなっ




 よいしょ、よいしょ。
 ハッハッ。息を吐きながら小さな舌を垂らして水の中を犬かきしている人物……否。犬が居た。彼の名は田中・イラリヤ三世(f25905)。賢いサモエドである。
 ふわふわの毛並みをわざわざ濡らし進むのには理由があった。そう、イラリヤは一見とても愛らしいわんちゃんだけど、其の正体は猟兵で、此の世界へは逸れてしまった御主人捜しも兼ねつつ水鏡の卵を探すという依頼を担い訪れている。
 数分前までは彼も浅瀬をチャポチャポと歩いていたのだけれど、他の猟兵が探さないような場所に行こうと考え進んだ結果、今に至っていた。
 初めての場所なのに何処か懐かしい不思議な世界――。
 もしや此処に御主人が居るではとイラリヤは心躍らせる。水の中でなければ尻尾も振っていたに違いない。小さな濡れた鼻をひくひくさせて、彼はひたすら水をかき分ける。
「たーまごー、たーまごー。ごーしゅじんー。も、いたりしませんかー?」
 “クゥゥン……”
 返事が返ってこないと、ちょっぴりションボリしてしまう。
 暫く泳いでいると再び水位が低くなり、イラリヤは水鏡の卵を発見した。
「あ、みーっけた!」
 ふよふよと水面を漂っていた水鏡の卵にイラリヤは己の姿を映し、そっと掌球をのせてみる。……つまり、お手のポーズです。
 生まれてくる子はどんな姿をしているんだろう、なんてワクワクしながらその時を待ち侘びていると、水鏡の卵がグルグルと揺れ、水の音色を奏で始めた。

 *・*・*

「ねぇねぇ、ボクとお話してほしいなっ」
 イラリヤが話しかけているのは、生まれたばかりの水の仔犬。
 彼と同じくふわふわ……ではなく、チャプチャプしている可愛い仔犬。
『うんっ、おはなし、なにする? なにかおしえて、ぱぱっ』
 ふわふわの尻尾とチャプチャプの尻尾を左右にぶんぶん。
 二匹が此れから語り合うのは、やっぱり御主人様についてかな?

大成功 🔵​🔵​🔵​

メドラ・メメポルド
はなさん(f00523)と

まあ、まあ
たまごを探すの?まるでイースターね
いいわ、メドも探しにいきましょう

メドが探すのは茂みのなかよ
高いところは届かないもの、はなさんにお願いするわ
どんな卵なのかしら、つるつるしてる?ひんやりしてる?
見つけたら、そおっと両手で包んで拾うわ
はなさんはなさん、見つけたわ

この子、どんな子になるのかしら
くらげになるのかしら、ひとになるのかしら
おんなのこでもおとこのこでもいいわ
生まれてきたら口付けしてあげましょう

はじめまして、ごきげんよう
はなさんの子はどう?
ふふ、元気そう。はなさんそっくりね

……まま
そう、ね。メドもはなさんもこの子達のママなのね
ふふ、そうね、お名前考えないとね


霄・花雫
メドちゃん(f00731)と

あは、確かにイースターっぽいかも!
ちょっと楽しみだねー、どんな卵なんだろ?

あたしは木の上とか探したいな
あった!ひんやりまんまる、真珠みたいに綺麗な卵
不思議、ひんやりしてるのに何だかあったかい気がするの
両手で掬い上げて、胸元にきゅっと優しく抱き締めてメドちゃんの所に戻るよ

メドちゃん見てー!
って、メドちゃんも見付けたんだね
どんな子になるのかなぁ、空とか海とか好きになってくれると良いな
でも、この子の命はこの子のものだから、好きなコトして、とにかく元気で生まれてくれたら良いなぁ……

おはよう、かわいいコ
ふふ、ままなんてちょっと照れちゃうなー
名前とか考えてあげた方が良いのかな?




「まぁ、まぁ……」
 ふよふよ髪を靡かせて、ほぅっと柔らかな表情を浮かべた女の子。アイスクリームのように溶けてしまいそうな甘い声を零しながら、卵を探すなんてまるでイースターのようねと紡いだ。
「あは、確かにイースターっぽいかも!」
 ひらひら鰭が揺蕩う少女が花唇を綻ばせ、甘い言の葉に返事をする。
 霄・花雫(f00523)は僅かに色の違う蒼の双眸に、共に此の世界を訪れた友人のメドラ・メメポルド(f00731)を映し満開の花のように綻ぶと美しい世界を見渡しゆるりと足を前に出した。
 卵探しに出掛けようと、二人のキマイラの少女は水音を引き連れ水の森の奥へと入って行く。

 チャポチャポ、トポン。
 暫くして、メドラは水の茂み、花雫は水の木の上を探し始める。
「かくれんぼ、しているようね」
 なかなか姿を見せてくれない、水鏡の卵。
 つるつるしてるのかしら? ひんやりしてるのかしら?
 ふわふわひらひらの二人の少女が、どんな卵なのかと思いを募らせ間も無く、あっ、と殆ど同時に声があがる。
「はなさん、はなさん。見つけたわ」
 メドラが真白な掌でふんわり包むように卵を掬えば、水鏡の卵がコポ、コポ。と小さく揺れ始めた。
「メドちゃーん、見てー! ……って、メドちゃんも見つけたんだねっ」
 メドラが今にも孵化しそうな卵を抱えてくれば、花雫も真珠のようにまぁるい卵をきゅっと優しく包むように大事に抱いて木から降りる。
 二人の少女の腕の中で、水鏡の卵が踊り音を奏でた。

 ――コポ、コポポ。

 生まれてくる子は、どんな子かしら。くらげかしら、ひとかしら? おんなのこでも、おとこのこでも、どちらでもいいわ。無事に生まれてきてくれたなら、メドがあなたのママになって、守ってあげるわ。

 ――チャプン、チャプ。

 あたしを映す子、これから生まれてくるキミも、あたしと同じように空や海が好きだと言ってくれたら良いな。……あぁ、でもやっぱりこの子の命はこの子のものだから、好きなコトして、とにかく元気で生まれてくれたら良いなぁ。

 掬った時は冷たかった水鏡の卵は、二人の優しい少女の腕に抱かれ其の姿と心を映す間にどんどん温かくなっていく。
 愛されて開く花のように、あなた達に応えたいと卵が揺れる。
 もっともっと、姿を映して、心を映して。
 そして――……。

 *・*・*

『まーま、まーま♪』
 ひらひら、スカートのような鰭を持つ幼魚には翼が生えていた。
 ぱたぱたと小さな翼を動かしながら、花雫の傍へと擦り寄って来る。
「ふふっ♪ おはよう、かわいい子。……ままなんて、ちょっと照れちゃうなー」
 なんて言いつつも、花雫はとても甘えんぼなその子が可愛くて仕方がない様子。ふにゃりと顔を緩ませて、そぉっと指でよしよしと撫でた。
「ふふ、かわいくて、元気そう」
 はなさんにそっくりね。そう紡ぐメドラの腕の中で、ふぁぁっと欠伸する女の子は、メドラを更に小さくしたような姿だった。どこかふよふよしていて、とても眠たそう。
「はじめまして、ごきげんよう」
 ふわり、優しく挨拶をしてメドラは生まれた子の額にそっと口付けた。
『まま、おなかすいたー……』
 目を擦りながらそんな事を言うものだから、メドラと花雫は思わず瞳をぱちりと瞬かせ、顔を見合わせ笑い合ってしまう。
「メドも、はなさんも、この子達のママなのね」
「メドちゃん、この子達の名前、考えてあげた方が良いのかな?」
『なまえっ、なまえー♪』
 甘えんぼな幼魚は、早く名前を付けてほしくて、ぐるぐると花雫の周囲を泳ぎまわる。
「ふふ、そうね。お名前、考えないとね――」
 すっかりママになってしまったメドラと花雫。二人の少女は自分達の分身ともいえる水の子達を、ふわりふわりと優しく撫でる。

 可愛い子、愛しい子。
 あなた達の名前はね――……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふわぁ、ここは水の世界なんですね。
ここのどこかに水の子さんが生まれる水鏡の卵があるんですね。
私とアヒルさんは恐らくイメージが別のはずです。
ということは、どちらが先に見つけられるか競争ということですね。

私は可愛い水の精霊さんのイメージです。
アヒルさんはきっとやんちゃで勇敢なヒヨコさんのイメージでしょうね。
(勝負の判定はお任せします)




 グヮ、グヮ、グヮ。
 小さな鳴き声を伴って、空色の大きな帽子を被ったアリスは不思議の国の水の森を歩き出す。
 チャプン、チャプン。歩く度、踊るように跳ねる水音が何だか楽しくなってきてしまう。
「ふわぁ、ここは水の世界なんですね」
 フリル・インレアン(f19557)がアヒル型ガジェット“アヒルさん”に声を掛けた。
 此の森の何処かに在るという水鏡の卵、一緒に探しましょうねと言を紡ぐけれど。
 友達の姿が見えなくて、一瞬キョトンとしてしまう。
「ふえ? アヒルさん、一体何処に……」
 キョロキョロ辺りを見回せば、水の上をすい~っと優雅に進むアヒルさんが、彼女よりも遥か先に見えて――。
「ふぁぁっ!? も、もしかしてアヒルさん、私よりも先に卵を見つけて、孵化させるつもりですかっ?」
 もわもわ。フリルの脳裏に浮かぶのは、自分よりも先にアヒルの姿を映した水鏡の卵から、アヒルさんよりもっとやんちゃなヒヨコが生まれるシーンだった。二羽で忙しく鳴く姿を想像すれば……それはそれでとても可愛い気がしてほんのり胸の奥がホクホクするけれど、でもやっぱり己の姿を映してみたいから、少女は早足でアヒルを追いかける。どちらが先に見つけるか、競争ですよと綻んで。

 *・*・*

『まま』
 孵化したその子は、可愛い女の子の姿をしていた。透き通った小さな掌をフリルへと伸ばし、ぎゅぅと抱きついてくる。
 勝負に勝ったのはフリルだった。友達のアヒルさんが見落とした水鏡の卵を見つけ、先に姿を映したのだ。
 ままと呼ばれるのは擽ったいけれど、まるで水の精霊のような可愛い水の子をそっと抱き返してフリルは微笑む。
「初めまして、よろしくお願いしますね」
 柘榴のようにきらきらとした瞳で見つめれば、それを映した水の子は同じ色で見つめ返してくれる。
 その時、アヒルさんの鳴き声が耳に届いた。
 フリルは表情を更に柔らかにして、水の子を抱き歩きだす。大事なお友達に、早くこの可愛い子を紹介してあげたくて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ライカ・ネーベルラーベ
自分の事もよく知らない
空っぽのわたしが何かを生み出そうっていうの?可笑しいね
一番可笑しいのは、何でこの場所に来たのか覚えてないわたし自身だけど

卵?卵を探さないといけないのは覚えている
あてもないけど、彷徨い歩けば何かあるだろうと

漂白されて混濁している内面を写すかのように、水鏡がうねり渦巻き何も映さない
ああ、でも歪んだ笑顔だけは映ってる
コレは誰だろう
「頭痛い……」

矛盾と混沌が渦巻いていても、奇跡は起きる。何かが生まれる
「ドラゴン?」
小さい、弱々しい、でもいのちの力に溢れている
竜の幼体を抱えて、途方に暮れたように立ち尽くす
きれいな瞳でこちらを見上げてくる、これは一体わたしの何なのだろう

名は、アズール




 チャポン――……。
 細く儚い、されど美しい金糸を靡かせ水の途を歩むのはライカ・ネーベルラーベ(f27508)。

 何故、此処へ来たんだろう……何の為に?
 自分の事もよく知らない、空っぽの自分。
「卵……。卵を探さないと……」
 ふらりふらり。水の森を波紋を伴い独り彷徨うライカ。
 卵を見つけても、“空っぽのわたし”じゃ何も生まれて来ないかもしれない。
 姿を映し、心を映す水鏡の卵。
 もしも無事に生まれたとしても、それは本当にわたしの心を映した姿なのか。それすらも分からないのならば、いっそ、見つけられなくとも――。
「……っ」
 虚ろだったオッドアイの瞳が、ほんの少しだけ揺れた。
 彷徨い、出会えた水鏡の卵。
 戸惑いながらも近付いて、真白な繊手でそっと触れてみる。
 水鏡に映る自分の顔は、歪んだ笑顔のように見えて、ライカは僅かに眉を下げた。
「――っ、頭が、痛い」
 コポ、コポポ。
 卵が震える。
 奏でる水音は次第に大きくなり、うねり渦巻いて、そして――。

 *・*・*

 奇跡は起きるものなのだとライカは思った。
 今自分の目の前にいるのは生まれたばかりの小さな竜。
「ドラゴン?」
 小さな小さな、其の命。水で出来た身体にそっと触れてみればとても温かくて、とくん、とくんと脈打っている。ライカの指に幼竜が擦り寄った。
 小さくて、弱々しい。けれど生命力に溢れたその瞳は、きらきらと輝いてライカを見つめて来た。
 此れは一体わたしの何なのだろうかと、答えの出ない考えをぐるぐると脳裏で巡らせてしまう。
『……ままっ、まーま』
 仔犬のように尾を振るその子を腕に抱いて、途方に暮れたように立ち尽くしてしまうけれど、腕の中の優しい温もりは、貴女は独りでは無いのだと教えてくれた。
「アズール……。宜しくね」
 名を貰った水の子が、嬉しそうにライカに身を委ねる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御心・雀
たまご?
たまごっていうのは、あかちゃんが生まれてくる、あれのこと?
……それを、じゃくがそだてて、だいじょうぶかな……?
だって、じゃくはまだちいさいし、りくちのこともよくわからないし……でも、まず、どこを探したらいいのかな。
でも、水の中ならとくいだもの。きっとなんとかなるよ。

ああ、もしかして鏡っていうのは、そういうことかしら。
たまごから、じゃくみたいなちいさくて、よわくて、なあんにもしらない子が生まれてくるのかしら。
ふふ、それならきっとじゃくみたいにとうめいで、やあらかい子になるのね。でも、じゃくよりもっとかしこいといいのに。
じゃくがおねえちゃんになって、いろいろ教えてあげないといけないのねえ。




 トポンッ。
 小さな水の精霊が、すいすいと泳ぐように自由に歩く。
 透いた身体が水の森と混ざり合ってしまいそうな少女は御心・雀(f27642)。
 雀は今、初めて陸地へ上がった時のような気持ちだった。

 水鏡の卵――、どこを探したらいいの? わたしが育てても大丈夫かな?
 そんな不安がほんの少し頭を過ったけれど……でも、大丈夫。
「きっと、なんとかなるよ」
 自分で自分に言い聞かせ、此れから出会える新しい命に思いを募らせ、小さなセイレーンは水の森へと冒険に赴くのだ。

 少女の頭上で、水の木の葉が揺らめいた。
 全てが同じ環境では無かったけれど、深海で生まれ育った雀は此の水の森に心地好さを感じてしまう。
 じぃっと上を見上げていた少女は、葉っぱではない、木の実でもない、まぁるく煌めく其れに気付くと動きを止めた。
「みつけた……っ! みつけられたわっ。じゃくは、できるこ……っ」
 ぇへへ、嬉し気に小さく綻んで。高鳴る胸を押さえながらソーダ水の雨を降らせた雀は、近づいた水鏡の卵にそぉっと自身の姿を映し出す。
 コポ、コポ。
 小さな泡が揺らめいて、卵が踊り始めた――。

 *・*・*

「ああ、もしかして鏡っていうのは、そういうことだったのかしら」
『……?』
 雀は生まれたての小さな水の子を見つめ、そう言葉を零していた。
 自分のように……否。それ以上に小さくて、弱々しい。何も知らない、透明な水の子。孵化したばかりのその子は、きょとんとした瞳で雀を見つめる。
『まま……?』
 同じように透明で、柔らかそうな可愛い子。わたしよりももっと賢く育ってくれたらいいな、なんて思いながら、気付けばふふっと顔が綻んでしまっていた。
「はじめまして、わたしは、じゃくっていうのよ。――じゃくが、あなたのおねえちゃんになってあげるわ」
『じゃくおねーちゃん、よろしくね、よろしくね』

 不思議の国の水の森に、また新しい命が生まれた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クララ・リンドヴァル
※アドリブ・連携OK
とても綺麗な森ですね……。
わ、よく見たら木も水で出来てます。不思議な所ですね……。

【WIZ】
水鏡の卵……探してみます。それにしても、どんな形でしょう。
名前からだと、透き通ってて、割れやすそうな気はしますね……。
足元に気をつけながら、茂みや木の間を慎重に探して行きましょう。
一歩、また一歩……うわわっ。

卵を見つけたら慎重に扱います。
心の準備を終えたら、優しく卵を抱いて、ご対面。
では……いきます。
自分の心……やっぱり、恥ずかしがり屋だったりするのでしょうか。
どんな姿形でも、性別がどちらでも、他の子を虐めたり、蔑ろにしたりしない……。
優しい子になって欲しいです……ね。




 チャプン。
 一歩、また一歩と進む度に足下から聴こえる水の音色。
 黄昏色の瞳に水の世界を映す魔女の名はクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)。
 人見知りで、いつも森の書房に篭ってしまいがちな彼女だけれど、今日はほんの少し違った。真白なローブの裾を摘まんで、本の中に描かれているような美しい水の世界を瞳に記憶しながら、ふわりと水の森を歩く――。

 水鏡の卵。其の名称からして透明で割れやすそうな印象を抱いてしまうけれど、一体どんな形をしているのかな、なんて考え事をしていたら、それまで足元に気をつけながら慎重に卵を探していた彼女はツルっと滑ってしまって――。
「――っきゃ!」
 パシャンッ。
 弾けた水が、水の茂みとぶつかった。
 恥ずかしくて、冷たくて。じわりと瞳が潤んでしまうけれど、幸いな事に彼女が転んだ姿を目撃した者は居なかった。
 そして、見つけた――。
 探していた水鏡の卵は、足元の水をまるでお布団の代わりにしているように沈んでいて、クララは卵の上に転ばなくて良かったと心の底から安堵する。そして神秘な卵を慎重に抱き上げた。

 生まれる子は、やっぱり恥ずかしがり屋さん?
 どんな姿形でも、性別がどちらでも、大丈夫――。
 けれど出来れば、優しい子に育って欲しい。
 ……さぁ、もういいですよ。
 私の姿を映して、心を映して、生まれてきて下さい。
 クララの願いに応えるように、水鏡の卵は音を奏でた――。

 *・*・*

『ままぁ……抱っこ……』
 生まれた水の子はそう言った。翼の生えた小さな本。
 甘えんぼな本は、クララが大事に抱いている本を見ると、切ない声と共にぱた、と翼を動かした。
「ぁ……、抱っこですね。いいですよ」
 ままと呼ばれるのは少しばかり恥ずかしいけれど、クララは自分を映し生まれたその子が愛おしかった。
 ふわりと抱けば、不思議と温かい。
「どうぞ宜しくお願いしますね」
 優しい音色でそう紡げば水の子は嬉しそうに、よろしくね、ままと返事した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夕時雨・沙羅羅
みずのかおり
馴染みがある、いや、自分から漂ってくる、僕と同じ香り
なんだか親近感

そんな、ふわふわと少しだけ浮き立つきもちで、卵を探す
《雨》のみんなにも手伝ってもらって、見つけたのは、小さな、それ
小さくてまるいのは、かわいい
でも、こんな小さなものからいのちが生まれるのは、不思議
つん、と突けば、顔を出す
…おはよう
ああ、やっぱり不思議な気持ち
胸のあたりが、きゅうってかんじ
なんだろう

生まれた子は、みずみずしい
まるっこい水のさかなのかたち
…僕に似るのなら、色はつかないかも知れないね
でも、きれいなものを食べたら、きれいになれる
きれいなものを好きになって、きれいに育って欲しい
…「l’eau(ロー)」、水の君




 ふわりと届く馴染みある水の香りは、己を取り巻く世界からか、それとも己からなのか――。
 大事な物は無くさぬように己の体内に呑み込む透明人魚、夕時雨・沙羅羅(・f21090)は、ほんの少しだけ、ふわふわとした気持ちだった。
 此の世界が心地好いのもあるけれど、何よりも早く卵を見つけたかった沙羅羅は“雨”を召喚した。
「さぁ、みんな。――手伝って」
 沙羅羅を囲むように宙を揺蕩う水の玉。そのうちの一つを手に取った彼は、ふぅっと息を吹き、“いっておいで”と心内で紡ぐ。
 それを合図に次々と四方に水の玉が散りゆけば、水鏡の卵を見つけるのに時間はかからなかった――。

 つん、つん。
 細い指が卵を突く。
 小さくて、まぁるくて、可愛らしい水鏡の卵。こんなに小さな卵から命が生まれてくるなんて、不思議だ。

 ……僕に似るのなら、色はつかないかも知れない。
 でも綺麗なものを食べたら、美しくなれるかもしれないね。
 僕と同じように美しいものを愛で、綺麗に育って欲しい――。
 ねぇ、早く生まれておいで。僕の心を、姿を映して、早く僕に会いにおいで。

 コポ、コポ……。
 卵が揺れる。
 待っていて、今、会いにいくよ。
 そう応えるように、卵がうたう。

 *・*・*

『ぱぱ、ぱぱ』
 生まれてきた子は、沙羅羅をそう呼んだ。
 瑞々しくて、まるっこい。小さなおさかなの子。
 そんなに愛らしい声で名を呼ばれたら、胸の辺りがきゅうってしてしまう。
 ぱぱと呼んでくれた其の声は、ぱぱのからだ、とってもきれい、と言ってくれた。
「ありがとう。君も綺麗なものを食べたら、きっと綺麗になれるよ」
『ほんと? ぱぱみたいに、なれる?』
 わーい、わーい。と嬉しそうに沙羅羅の周りを泳ぎ回る水の子が可愛くて、いとおしくて……。
「――……l’eau」
 ぽつりと零した音色を聞けば、水の子がぴたりと動きを止める。
『ロー? それが、ぼくのなまえなの? ……ロー、ロー♪』
 水の子は気に入ったのか、何度も其の発音を繰り返した。
 可愛い水の君。
 本当に、可愛い。
 どうぞ宜しくと、互いに心を交わしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

高塔・梟示
水遊びにはいい季節だが
本当に水しか無いとはね
けれど涼しくて綺麗な場所だ

森の奥、木陰にひそりと
隠れた卵に触れて

長生きってのは不便なものだ
連合いはすぐ居なくなる
家族なんてものは縁遠く、子供にも恵まれなかった
…欺瞞だとも、分っているさ
それでも、此処にある命は本物だ

おいで、生まれておいで
音色に額を寄せ
心が映るなら
君は願われた子だと分るだろう

…ああ、そっちに似たか
黒髪に顔立ち異なる姿は神体の水鏡
幼くも懐かしい顔はヒトと似て
不思議と青い瞳を得た

やあ、初めまして
生まれてきてくれて有難う

呼ぶ声に優しく目を細め
…わたしは君の父親じゃない
友人さ、よろしく頼むよ

名前をあげよう、最初の贈り物だ
瞳に似合う名、イエルハと




 足首まで浸かる大地も、瞳に映る森も、其の全てが水だった。
 水遊びにはいい季節ではあるけれど、本当に水しかない其の世界。
 水の大地に佇む高身長の男性、高塔・梟示(f24788)は暫しの間其の景色を眺めていた。
「美しくて、涼しい場所だ」
 ぽつりと零した言の葉は己の耳に少しだけ残して、あとは水に溶けていった。
 梟示は木陰にかくれんぼしていた水鏡の卵を見つけると、漆黒の手套を外し卵に触れる。
 コポ、コポ――。
 水鏡の卵が、泡沫を伴いうねり出した。

 おいで、生まれておいで――。

 梟示は卵に心を注ぐ。
 水の音色を奏でる其の子にそっと額を寄せて、君は望まれて此の世界に生まれるのだと伝えた。

 生まれたい、生まれたい。

 想いを返してくれるように揺れる卵に、梟示は更に想いを強くしていく。
 さぁ、出ておいで、と――。

 *・*・*

「……ああ、そっちに似たか」
 再び零れる言の葉を、今度は聞いてくれる者がいる。
 生まれた水の子はまだ色を持たぬ透明だったけれど、一目見ればすぐに判った。
 ヒトと似た容姿。
 幼くも懐かしい其の顔立ち。
『ぱぱ……?』
 長生きというのは、不便なものだ。
 連合いはすぐ居なくなり、家族なんてものは縁遠く、此れまで子にも恵まれなかった。
 欺瞞だと分かっているけれど、それでも……今己の眼前に居る命は本物だ。
『ぱーぱ、ぱーぱ』
 生まれたての水の子が、よちよち歩きで梟示の許へと近づいて来る。
「ぁ……」
 何だか微笑ましくて見守っていたら、目の前でこてんと後ろにひっくり返ってしまった。
『……ぱぁぱっ』
 ふるふるふる。くしゃりと顔を歪めて泣き出しそうな水の子をそっと抱き上げれば、水で出来た其の身体は、ほんのりと温かかった。
「……わたしは君の父親じゃない。けれど、友人にはなれるよ。君に相応しい名を授けよう、わたしからの、最初の贈り物だ」
“イエルハ”
 そう名前を呼んであげれば、水の子は嬉しそうに顔が綻ばせる。
「やあ、初めましてイエルハ。――生まれてきてくれて有難う」

 そうして二人は、よろしく、と互いに言葉を贈り合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『お伽噺の世界』

POW   :    元気よく楽しむ

SPD   :    知的に楽しむ

WIZ   :    優雅に楽しむ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●~水の森~
 此処は生まれたばかりの不思議の国。
 先程まで水達が奏でる音色だけが聴こえていた此の森には、今たくさんの優しい声が溢れていた。

 ぱぱ、まま。
 ありがとう、よろしくね。

 水鏡の卵から生まれた水の子達と此の森を訪れた猟兵達が奏で響き合う幸せの音色。
 次々と溢れる沢山の幸福な感情が水に溶け森中に広がれば、新しい生命の誕生を祝福するかのように、水の森が歌いだした。

 水の森の奥深くで輝く“御伽の世界を映す本”。
 頁を捲れば、其処には物語に出てくるような沢山の“何か”が描かれていた。
 美味しい食物を実らせる不思議な木、綺麗なお城。
 魔法の杖や、お菓子の家。
 本に描かれている品々は、此の森で生きていく水の子達の助けとなるだろう。
 しかし、制限もあった。
 本から何かを取り出せるのは“猟兵”のみ。そして一人につき一つだけ。

 ――此の国に、水の子達に、何を贈ってあげようか?
高塔・梟示
ほんの一時で随分賑やかになったものだ
大丈夫?ちゃんと歩けるかい?
手を繋いで行こう、ゆっくりでいいとも
皆と不思議な本のところへ

一つきりしかあげられないなら、何をあげようか
読み聞かせるように頁を繰って
水の子達に此処ではない世界を教えながら

命あるといってもヒトじゃない
生きるために必要な物は何だろう
出来れば、他の猟兵の皆の贈り物で
足りないものを贈りたいところだが…

もし寝床がないのなら
常に清潔で、良い夢が見られる
鳥の巣のような大きくて丸いベッドを贈ろう
夢の中でもこの子等が幸福であるように

どんな贈り物でも、使い方は彼ら次第だろう
それなら皆で分ち合えるものを贈りたい
健やかに満ち足りて、育っていけるように


リヴェンティア・モーヴェマーレ
ロマお姉さん(f19210)と一緒に行動デス
アドリブ歓迎な気持ち!

POW
「わーい!ロマお姉さんと一緒にお仕事嬉しい気持ち!
一緒にこの場所を盛り上げていきたい気持ち!」

ふむふむ。
“御伽の世界を映す本”から何かを取り出せばよいのですネ?

「とっりましょ~とっりまっしょ~さってさって何が~でってくるカナ~?」

手をクルクル回して歌を歌いながらルンルン気分で取り出しマス

「ハイ!出ましタ!ジャイアントきゅるんと号まーくつー!デス!」
「やっぱり物資を運ぶ為にはモノを持てる荷台?みたいなのが必要だと思ったノデ」
どうですカ?どうですカ?とロマお姉さんに目を輝かせて聞いてみまス

「ロマお姉さんのも素敵な気持ち!」


ロマネ・カーディナル
リヴェちゃん(f00299)と共に
アドリブ大歓迎

WIZ
やぁねぇ…出遅れちゃったわ。ワタシ達だけがこの本から何かを取り出せるのね?なにそれロマンティック~♪

リヴェちゃんは一体何を取り出すのかしら?
まぁまぁ!いつもリヴェちゃんが乗ってる大きなカピバラさんの2号機なのね?
確かに物資を大量に積んで移動できそうだわ…考えたわね…(そして可愛いわ…)
グッジョブよ!

ワタシはどうしようかしら?
やっぱり、食べ物は大事よね?
そうなってくるとやっぱり…『ふんっ!』(突然の雄)

美味しいスープが出来る噴水よ★
(その中央には美しい石像がたっているわ。え、ワタシに似てる?うふふ~そんなはずないわ~♪(ある)


フリル・インレアン
えへへ、アヒルさん、今回は私の勝ちだったみたいですね。
こんなに可愛い水の子さんが誕生したんですよ。

ところで、アヒルさん、隣にいるもう一羽のアヒルさんはどなたですか?
まさか、アヒルさんも水の子さんを誕生させたのですか?
違うのですか、水の子さんでもアヒルさんでもなくてアヒルボートなんですね。
あ、もしかして、御伽の世界を映す本から作り出したのですか?
ふえぇ、水の子さんに何をプレゼントしようか悩んでいたのに。
でも、水の子さんも楽しんでくれているみたいですし、よかったのかもしれませんね。
それにしてもあのアヒルボート、水の子さんにサイズがぴったりです・・・ね。


ライカ・ネーベルラーベ
アズール、竜の子
ライトブルーの鱗を持つ子
みずのいろでそらのいろ

キミに何を与えろというのか
キミが何を欲するというのか
壊すことしか知らない壊れたわたしが
生まれたばかりで何も知らないキミが

ここには青がある
どこまでも透き通って広がるような青が
……これは、多分わたしの好きな色
青に満たされていれば、何も要らないんじゃないだろうか
そらのいろでみずのいろ

嗚呼、でも、わたしは『識って』いる
竜は寒さを嫌った
成長すれば帯びる魔力で幾らか調節できるはずだけど
生まれたての雛竜ではそれも難しいはず

なぜわたしはこんなことを知っている?

だからわたしはキミに熱を贈ろう
其は雷より生まれ、ヒトの征く道を照らしたもの

『消えない篝火』


夕時雨・沙羅羅
慕われるというのは、やっぱり少し、くすぐったい
僕がアリスを慕うように…とは、また違うのだろうけど
でも、ありがとうを言ってくれるなら、それに見合う何かを返したい
このきもち、なんて言うんだろう…ね、ロー

開く頁、捲る挿絵
何が、あなたに相応しいだろう
僕は森で生まれて、森で育っているから、建物はあんまりピンと来ない
生きるためには、実の成る木だろうか
綺麗な花も咲くと良い
宝石のように透けて煌めく、けれどやわらかな花
実は甘く瑞々しく、宝玉のよう
蓬莱の玉の樹…といったところか
きっと花や実をローが食べたら、宝石箱みたいにきれいになるだろう
…それ以上に、食べ物の美味しさ、食べることの楽しさも知ってほしいけれど、ね


クララ・リンドヴァル
※アドリブ連携OK
……(ぽーっとした表情)
そんな……まだ結婚どころか恋人もいないのにママだなんて……。
こんなに幸せな気分で……良いんでしょうか……。
(水の子を抱き止め、優しく撫でる)

水の子……姿だけでなく、私の心を映した者……。
……はい、決まりました。
小さい庵を一つあげますね。

見た目は……屋根がとんがってたり煙突がぐねぐねしてたりして
魔女の庵みたいですけど。
でも中は結構綺麗でしょう?
本棚と本が沢山あります。
この子、狭い所が好きそうですし、
遊び場所と隠れ場所が両方必要かなと思いまして。

中にある本は誰でも好きに使って下さいね。
水の子の要望に応じて書架をUCで増やしてあげましょう
魔女からの贈り物です


樹神・桜雪
※アドリブ等ご自由に

小さな手を引いて次に行く。
君たちが成長するために、ボクは何をあげられるかな。

どうしようかと思案する。
なにがいいかな、どれが君に合うかと考えてる。
うん、ボクの根底に近いものだし、これが一番かな。
ボクが出すものは叡知が集う場所。大きな大きな図書館だ。
ボクもかつてこういうとこにいたらしいんだよ。
本は情緒も知性も育ててくれる。ここにはありとあらゆる知識がある。きっと君の心を豊かに育て上げてくれるて思う。
さ、何か読んでみたい本はある?
相棒が探してきてくれるから何でもお願いして。
本が見つかったら君を膝に乗せて一緒に読む。
読み聞かせは苦手だけど、頑張るね。 
棒読みでも笑わないでくれる?。




「ほんの一時で随分賑やかになったな…‥。イエルハ、ちゃんと歩けるかい?」
 “イエルハ”と名付けて貰った水の子は、名付け親の男性へこくりと頷いた。
 やはりよちよちと頼りない足どりで歩く小さな子。
 梟示(f24788)は手を繋ごうと言った。ゆっくりでいいとも。そう優しい言の葉を重ねていけば、イエルハは瞳を輝かせ、小さな小さな手でぎゅっと梟示と手を結ぶ。すると、コポっと水音を伴いイエルハの腕が更に生えてきた。新しい二つの手も、大好きな彼の手を大事にぎゅっぎゅと掴まえる。梟示は瞳を瞬かせたあと、より自分に似てしまった水の子と二人仲良く輝く本へと歩いて行く。

『ぱ……きょーじは、どれにするの?』
「んー……、何にしようか」
 命あるといってもヒトではない君達が生きるために必要な物は何だろうか。出来る事ならば他の皆の贈り物を見て、足りないものを贈りたいところだけれど……。
 真摯に思考を巡らせる梟示の心中など露知らない傍らのイエルハは、これは何? こっちは?と本に載っている己が知らない物を次々と指差して問うてくる。彼は腕が多い分、問われる品も多くて梟示は全然集中出来ない。けれどもそんなイエルハが可愛くて、梟示は肩を震わせながら頁を繰り、読み聞かせるように順に説明していった。

「ああ、此れが良さそうだ」
 梟示が心惹かれた物。それは鳥の巣のような大きくて丸いベッドだった。
 常に清潔でイエルハも皆も良い夢が見られそうなふわふわな寝床。
 皆で温もりを分け合い、健やかに満ち足りて、育っていけるように――。
 梟示は淡く輝く本へ手を翳し冀った。
 水しかなかった森の中に、“ふかふかのまぁるいベッド”が出現する。
『わぁぁ……っ!』
 其の大きなベッドへ一番乗りしたのは勿論イエルハだ。しかし他の水の子達も遅れをとらず、真白なベッドの上へ次々と飛び乗って、思わずぽよんぽよんしちゃう。
 使い方は彼ら次第ではあるけれど、今はすっかりオモチャにされているベッド。
 水の子達の反応を見れば、彼らが心から喜んでくれている事が分かる。

『『『ありがとう!』』』
 梟示は沢山の声を受け取って、夢の中でも君達が幸福であるようにと胸裏で零した。


「成程、ワタシ達だけがこの本から何かを取り出せるのね。……んもぅっ、なにそれぇ、ロマンティック~♪」
 柔らかな唇を口付けるように尖らせて甘い声音を零すのは、ロマネ・カーディナル(f19210)。そしてスラリとした長い美脚からひょっこりと顔を覗かせるのは、小さなゴリラの姿をした水の子だ。
『ぱ……まま、はやく、はやく』
 弱々しくも愛らしい声が逸る気持ちを抑えきれずにドキドキワクワクしながらそう紡いで彼を急かすけれど、当のロマネは、ん~、どうしようかしら~。なんてじらしちゃう。
『ろまがきめられないなら、わたしたちがさきだもーんっ。ね、まぁーまっ♪』
 其の声は、他の水の子達よりも少しだけお喋りが上手だった。
 他の子達よりも更に小さく生まれたハムスターの子は、まぁるいお耳をぴこっと動かして、自身がママと呼ぶリヴェンティア・モーヴェマーレ(f00299)の頭上から輝く本の上へとぴょんっと飛び降りる。
『おっさきにーなキモチ~♪』
 生まれてから僅かな間にもう彼女の口癖がすっかりうつってしまっている。
「フムフム。此の本から何かを取り出せばよいのですネ? ――では!」
 リヴェンティアの紫水晶の瞳がキランッと煌めいて、そして本に手を翳す。
 ルンルン♪ とっても素敵なメロディを口ずさみ、体を左右に揺らしながら彼女が取り出した物。その正体は――。
「じゃじゃ~~ンっ☆ ハーイ、出ましたっ! “ジャイアントきゅるんと号まーくつー”デス!」
 リヴェンティアの取り出した“荷車”が彼女の理想を具現化し、ゴットンと姿を見せる。
「まぁ,まぁあっ、いつもリヴェちゃんが乗っている、あの大きなカピバラさんの二号機なのね!」
「デスデスっ♪ 物資を運ぶ為の荷台みたいなものも、やっぱり必要かと思ったノデ! どうですカ? ロマお姉さん、どうですカ?」
 美しく煌めく紫水晶の双眸がキラキラをロマネを見上げれば、彼もまた桔梗のように気品溢れる瞳で笑みを零した。
「物資を大量に積んで移動出来るなんて、とても便利だわっ! リヴェちゃん、よく考えついたわね。――グッジョブよ!」
 そして何より、可愛いわ~。
 ジャイアントきゅるんと号まーくつーを見つつ、ほうっとしていたロマネの服の裾を、ゴリラの子がくいっと引っ張れば、次はロマネの番。

 やっぱり、食べ物は大事よね? そうなってくると、此れしかないわね……。
「――……フンッツ!!』
 力む必要は全く無かったけれど、強く願っているうちに突然雄になっちゃうのは、仕方がないのだ。
 ロマネから水の子達への贈り物、其れは……。
「“美味しいスープが出来る噴水”よ☆」
 乙女のようにきょるんっとしたロマネは、次いでドヤ顔に仁王立ちという男らしいセットもつけて、己が具現化したスープの湧き出る噴水を見遣った。
 やっぱり必要の無い、己の美しい石像のオマケ付きだったけれど。
「ワァ! ロマお姉さんのも素敵な気持ちっ。ロマお姉さんの像、とーっても綺麗デス~っ!」
「えぇ~~! ワタシに似てるかしらぁ? そんなはずないわ~、うふふふふ~♪」
 此のおとk……げふんげふん。此の乙女、確信犯ではあるけれど、ロマネの足元からとててっと離れて噴水のスープを口にしたゴリラの水の子は、キラキラと瞳を輝かせた。己を孵化させてくれた大好きな人の石像付きだから尚の事嬉しくて――。
『ぱ……、まま、だぁーいすきっ』
 ぎゅぅぅってくっついちゃう。ロマネも、ワタシもよと返事して、水の子を高い高いした。
『ままがだしてくれたこれはどうやってつかうの?』
 ハムスターの子がジャイアントきゅるんと号の荷台にちょこんと乗れば、ロマネもゴリラの子を荷台におろして、リヴェンティアとロマネが遊びながら使い方を説明していけば、何処からか他の水の子達も集まって来た。
 それ、なぁに?
 どうやっつかうの?
 まぜて、まぜて!
 可愛い可愛い声の共演。
 いつしか荷台は水の子達でいっぱいになって、もう暫くは荷物では無く水の子達が乗り回す事になるのかもしれない。


「アズール」
『なぁーに?』
 何処までも果てしなく広がっている蒼昊を、澄んだ水の大地と森。そして小さな竜の身体が映し其の色に染まって見えた。
 空の色、水の色――。
 “青”はライカ(f27508)の好きな色。
 此の青の世界に満たされていれば、他には何も要らないのではと思ってしまうけれど。
 アズール……小さな竜で、水の子供。
 キミに何を与えろというのか。
 キミが何を欲するというのか。
 壊すことしか知らない壊れたわたしが、生まれたばかりで何も知らない純粋無垢なキミに、何を贈れるのか……。
 名を呼んで、黙ってしまった母親を心配するようにアズールがそっとライカに触れる。
『まま、まま。大丈夫?』
 傍に居るよ。そう彼女に伝えるように、幼竜はライカに寄り添うのだ。

 ――わたしは此の温かさを識っている。
 竜は寒さを嫌う生き物だ。成長と共に次第に蓄えらるようになっていく魔力によって、身を守る事も出来るけれど、生まれたてのアズールには其れは難しい事かもしれない。ならばわたしは――……。
 温かで、美しい。
 優しくて、甘えんぼな竜の子をライカはそっと撫でる。
「アズール……わたしの心を映した竜の子。キミに、キミ達に私から贈りたいものがあるの」
 受け取ってくれる? そう囁くように言の葉を零して、ライカは光を放ち続ける本へと手を翳した。
 其は雷より生まれ、ヒトの征く道を照らしたもの――。
「“消えない篝火”」
 強く願うと、本の光が強くなった。そして水の世界に新たに生まれたあたたかな篝火。其れは宙に浮きゆらゆらと揺れて、水の世界を暖め始めていく。キラキラと火の粉が零れていくけれど、触れても不思議と熱くない。水の子達を守っても、決して傷つける事の無いライカの優しい心のようだった。
『まま、すごく、あったかい……』
 ありがとう――。
 青を映した小さな竜は、ポカポカと温かい其れが気に入ったのか、篝火の傍で小さな寝息を立て始める。



「えへへ、アヒルさん、今回は私の勝ちだったみたいですね。……ほら見て下さい。こんなに可愛い水の子さんが誕生したんですよ」
 そぉっとそぉっと……ぎゅぅぅぅ。確りと腕に抱いた水の子を、フリル(f19557)は友人である機械仕掛けの“アヒルさん”に見せて柔らかに微笑んだ。そしてアヒルさんも腕に抱いて、輝きを放つ本を見つめる。
「どうしましょうか……」
 水の子さん達は何をプレゼントして貰ったら嬉しいのかな、帰るおうち? 遊べる遊具? それとも――……。
『――まま』
「え?」
 フリルがうーんと頭を悩ませていると、水の子がフリルのふわふわの髪を少しだけつん、と引っ張って来て、見ればアヒルさんが翼をちょん、と一つの絵に触れさせていた。
 湖面を優雅に泳ぐ、白鳥の舟。
「アヒルさんは此れがいいのですか? ……もしかして、水の子さんも?」
 本当に此れで良いのかと首を傾げるフリルの問いに、小さな二つの頭がこくりつ頷く。四つのキラキラした期待の眼差しにフリルが抗える筈も無く、すぐに白旗をあげてしまった。
「いいですか? それでは、いきますよっ」
 願いを込めて、想いを込めて。小さなアリスの掌が美しい絵の上に重なれば、一際美しく本が煌めき、舟が現れた。けれど――。
「……あれ? スワンボートじゃなくて、“アヒルボート”になってます……?」
 何処かアヒルさんの姿に似た其の舟にフリルは首を傾げるけれど、アヒルさんも水の子も、嬉しそうにボートに飛び乗り遊び出す。
 そんな様子を眺めていたら、楽しんでくれていてよかったと、心がふわふわしてきて。

 暫くすると、わいわいと賑やかな声が聴こえてきた。
 長身の優しそうな男性と藍色の長い三つ編みの女性が引く、やたらと可愛いカピバラ姿の荷車から顔を出す小さな水の子達。
 みーんなぴょんぴょん荷台から降りてきて、アヒルボートで仲良く遊び始めちゃう様子を、今は静かに見守った――。


「このきもち、なんて言うんだろう……ね、ロー」
『なぁに、ぱぱ? どんなきもち?』
 沙羅羅(f21090)の傍でひらひらと小さな鰭を動かすのは、彼が孵化させた水の子だ。まぁるい身体にまんまるおめめの魚の子。
 逆さまになってプカプカと泳いでみたり、すい~っと彼の周囲を遊泳しながら、ローは沙羅羅に聞き返した。

 沙羅羅が二心無く想いを寄せるアリスを慕う気持ちとはまた違うかたちの感情。
 ローがありがとうと伝えてくれる度に、少しだけ擽ったくなるんだと伝える。ローの想いに見合う何かを返してあげたい、と。
 そうして淡く輝く本の頁を繰りながら、其処に描かれた挿絵達をそっと指で順になぞっていく。
 大きくて、豪華なお城が在った。ローも沙羅羅の隣でじっと其れを見つめていたけれど……。森で生まれ育った彼に、其のお城での生活はいまいちピンと来なかった。
 生きるためには、実の成る木が必要だろうか? 綺麗な花も、咲くと良い。
「ロー、此れにしよう」
 沙羅羅が選んだ其れに手を翳し瞳を閉じれば、ふわりと風が吹き波紋が広がった。
 煌めく本から具現化したのは、“蓬莱の玉の樹”。
 けれど物語とは少し違う。
 透けて煌めく宝石花は柔らかに綻び、其の実は宝玉のようだけれど、甘くて瑞々しい果実。根は銀色に輝いて枝は黄金で出来た華美なる樹。
 あなたが花や実を食べたら、きっと宝石箱みたいに綺麗になるだろうか。
 ……いや、それ以上に生きる事に必要な食べ物の美味しさを、食の楽しさも、あなたに識って欲しいと思った。
 そんな沙羅羅の願いから生まれた蓬莱の玉の樹をローは水の身体に映してじっと見惚れていると、辺りから他の水の子達の声がし始めて。
 きらきら、きれい~!
 これ、たべられるの?
 小さな愛しい声が集まれば、ローは其の実を我先にとぱくっと食べる。
『たべられるよ、おいしいよ。ぼくのぱぱが、くれたんだよ!』
 綺麗と美味しい。其の二つを覚えたローは、大好きなぱぱを自慢して泳ぐ。


『わたしのままだって、すごいんだから……』
 ぽつり、ぽつりと震えるように声を零したのは、翼の生えた小さな本の水の子だった。本の子はいつしか集まった他の水の子と、その親達である猟兵が次々と本から贈り物を具現化していく様子をずっと見ていた。
『ままは、とってもきれいで、やさしくて……まほうだって、つかえるの』
 べた褒め祭りです。他の水の子が、まほーってなぁに?と訊ねるけれど、本の子はすぐに答えられずに、しどろもどろしてしまう。
『ぇぇーっと……それは……』
 まま――。
 小さな声が、助けを求めてクララ(f17817)を呼んだけれど。
「そ、そんな……。まだ結婚どころか恋人もいないのに、ママだなんて……」
 すっごく照れていた。火照った頬を両手でぱたぱたと煽ぎ、冷やしていた。
 こんなに幸せな気分良いのかと自問自答していたけれど、魔法について知りたがっている水の子達の視線が自分に注がれていた事に漸く気付けば、こほん。小さく咳払い。
「魔法はですね、えっと……あ、でもその前に、ちょっと待って下さいね」
 クララは輝く本へと手を翳し、“小さな庵”を贈りたいと願った。

 水の世界に現れた、どんがり屋根のぐねぐね煙突。
 本好きな魔女が願った小さな庵には、綺麗に整理整頓された本が隙間なく棚に並べられている。
  水の子達の遊び場所と隠れ場所。
 そして自分を映した此の愛しい子が安心出来る場所だ。
「中にある本は誰でも好きに使って下さいね。――そして、いきますよ」
 クララが詠唱した事でたちまち出現した書架の迷宮に、水の子達は大喜び。
 わぁぁぁ!
 すごい、すごいね!
 水の子達から喝采を浴びて、クララは再び頬をほんのりと染める。
 初めて目にする本の迷宮。ゴールとなるのは、魔女の庵。
 誰が一番乗りできるか、いつしか追いかけっこが始まっていて。
 楽しそうな水の子達の声が、森に響く――。


 桜雪(f01328)はゆるりと歩みを進めていた。小さな水の少年の手をひいて、その子が転ばないように、輝く本の在る場所へ。
 桜雪達が到着した時其の場所には、賑やかな水の子達の声と沢山の贈り物が溢れていた。
 此の子たちが成長する為に必要なもの。ボクは何をあげようかな、そんな事を思案しながら立っていると、小さな声が耳に届く。
『おうせ』
 桜雪の足下で、手を握っていた水の子が彼を見上げた。
 最初はきちんと其の名を呼べなかった水の子は、いつのまにか正しい発音で彼の名を呼べるようになっていた。
「――今、君に何を贈ろうかと考えていたんだ」
 頑張り屋さんな君。何も知らない君。君達が成長するに伴い、きっと色々な知識が必要となる筈だ。ならばボクからの贈り物は、此れにしよう――。
 桜雪が本に手を翳せば、本は輝きを増していく。
 ボクの根底に近いもの、叡知が集う場所。
 水しかなかった此の世界に、新たに現れたのは“大きな図書館”。
『わぁあ……!』
 水の少年が大きな建物に瞳を輝かせ、二人は確りと手を繋いだまま中へと入る。
 何処かの世界の沢山の書物達が、扉を開けた者をようこそと出迎えてくれた。
「ボクもかつて、こういうとこにいたらしいんだよ。……本はね、情緒も知性も育ててくれる。此処にはありとあらゆる知識が眠っているんだよ。此処はきっと、君の心を豊かに育て上げてくれると思う」
 さぁ、読んでみたい本はある?
 桜雪がふわり訊ねれば、水の少年はその大切な手の温もりを一時離し、とててっと急ぐように小走りした。
 ――べしゃん。
 そして転ぶ少年を、慌てて抱き起こす。
「大丈夫……? 本は相棒が探してきてくれるから、何でもお願いして」
『……ん、だいじょう、ぶ……っ』
 痛くて涙目になっちゃうけれど、そう、桜雪が居てくれれば、大丈夫。
 ドキドキして、ワクワクするような本を読みたいと水の子がふわふわの相棒に伝えれば、桜雪の相棒は一冊の児童書を示してくれた。

 読み聞かせは苦手だけれど、君の為に頑張ろう。
 水の少年を膝に乗せる。
「むかしむかし、あるところに……ちょっと、棒読みでも笑わないでくれる?」
 小さな身体を震わせて、楽し気に揺れる小さな身体。
 今度はちょっと雰囲気を出しながら読んでみた。
 桜雪と水の子はいつしか本の世界を彷徨い歩く――。

●猟兵達からの贈り物
 “アヒルボート”でいっぱい遊んで、お腹が空けば“美味しいスープが出来る噴水”と“食べられる蓬莱の玉の樹”でお腹を満たす。
 “小さな魔女の庵”と“大きな図書館”で寛ぎながら知識を得たあと、みんなで“ふかふかのまぁるいベッド”で眠るのだ。
 “ジャイアントきゅるんと号まーくつー”という名称のカピバラの荷車に本や食料を沢山積んだなら、みんなで引っ張る。そして暖かくて心地よい“消えない篝火”がみんなの心と体をあたためてくれるだろう。
 これらは全て、此れから水の子達が送るようになる生活。
 猟兵達から水の子達への贈り物――。

 何も無かった水の世界は、沢山の命と沢山の贈り物、そして笑顔が溢れていた。
 “御伽の世界を映す本”はいつの間にか消滅していて、そして――……。

 ぐしゃり、ぐしゃり。
 まっ黒なクレヨンで紙を塗り潰したような、ぐるんぐるんの穴が出現した。

 ずずず……。其処から這い出る一人の少女。
 穴から出れば、疲労しているようにはぁ、と深く、長く息をついた。
『あぁ……何だか、楽しそうな声がする……待っていて、私も今、行くから』
 水の大地に、滲む色。
 鉄の臭いを漂わせ、美しい世界を赤黒く染めていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『友だち狩りの』テレサ』

POW   :    みんなで一緒に遊びましょ?
自身が装備する【禍々しい白色テディベア 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    私のお友だちになって
【友だちが欲しいという欲求を迸らせる事 】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【ドレスの下に潜めていた凶器の群れ】で攻撃する。
WIZ   :    ずうっと一緒にいようね?
【執着心 】を籠めた【無限に伸び、自由自在に動く黒髪】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【心】のみを攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ダグラス・ブライトウェルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 少女が来るよりも先に動いたのは猟兵達だった。
 世界を穢す殺気、オウガの気配。
 水の子達を一先ず図書館の中へと避難させ、武器を構えて扉の前に立ちはだかる。
『私のお友達を隠したのは、あなた達なの? どうして邪魔をするの……? どうして、どうして……どうしてどうしてどうしてどうして……』
 呪言のように、黒い感情を混ぜた言の葉。
 私はただ、お友達と仲良くなりたいだけなのに。
 そう紡ぐ少女の華奢な身体がぐらりと不気味に揺れて、抱いていた白のテディベアがぼとりと顔から落ちた。
 細い腕がドレスの下へと潜る。そして彼女が取り出したのは、血に濡れたままの凶器だった。倒れていたテディベアが、血を流しながら一人で立ちあがる。

 猟兵達が此の世界へ呼ばれたのは、今此の瞬間、彼女から貴いものを救う為だ。
 大切な水の子達を、美しい此の世界を、護る時が来た――。
リヴェンティア・モーヴェマーレ
今回もロマお姉さん(f19210)と
アドリブOK

ロマお姉さんとは旅団が一緒の仲良しさんデス

「アナタはお友達が欲しいのデス?」
「お友達と楽しく過ごしたいノニ、そんな怖い事するのデス…?」

お友達が欲しいのはわかりマス、私も沢山お友達が欲しい、いっぱい楽しい事をして遊びたい、笑いあっていたい、そう思っているのハ一緒のはず――なのに…

「どうしてこんなにも違うのでしょウ…?」

数には数でUCを仕掛けて応戦デス
一か所に攻撃を仕掛ける場合は残ってる機体を一か所に固めてドカンなのデス

「この世界には分かり合えない事もたくさんたくさんあるのでスネ…」
しょんぼりデス
でもロマお姉さんに撫でて貰って心がほっこりする気持ち


ロマネ・カーディナル
引き続きリヴェちゃん(f00299)と共に
アドリブ大歓迎

リヴェちゃん…
そうね、この子は少しだけあり方を間違ってしまったのかもしれないわね…

(それを一概に否定することは出来ないけれど…)
でもね、やっぱりお友達が欲しいからって傷つけてもイイって事にはならないわよ?

こんなの悲しみの連鎖しか産まないわ
だからここで断ち切ってあげる
全力で攻撃を仕掛けるわ
遊戯を奏でるように舞いながら

願わくば…生まれ変わって産まれてきた子達と共に楽しく過ごせる人生をおくれますように――
(その子がまだ残っているなら抱き締めて送ってあげたいわね)

しょんぼりしていそうなリヴェちゃんの頭を撫でて微笑みかけてあげましょうね


田中・イラリヤ
・心情
わわ!知ってる!これ、悪い子っていうんでしょ?
悪い子は、おしおきなんだって!


・行動
猟兵としては初仕事だから、まずは皆さんの動きをみて、どんな風に戦ってるか見極めるね?
ひとまず、皆様が討ち残した敵を牙でがぶーとするよ!
【部位破壊】で、1番噛みやすい所を徹底的に、がぶがぶしちゃうね!基本的に、一体倒したら近くの敵に、って繰り返していくよ!
「悪い子だと、ご主人様に会えなくなるんだよー!」
だから、メッってしちゃうね!


ライカ・ネーベルラーベ
赤黒い染み
馴染んだ色
見慣れた色
――大嫌いな色

いつもよりは頭がしゃっきりしてる
いつもなら、戦う理由すらロクに思い出せないのに

「今は、思い出せる。わたしは……この子達を守る為に此処に来た」
「だから!アンタは生かして返さないってのォー!最速最短で躯の海へ帰れ!」

【血統励起・雷竜】によって肉体が半竜半人の姿に変化
凶器の群れにも構わず、再生力と速度に任せて突っ込む
狂気の促すまま、獣の如くテレサに格闘戦を仕掛けていこう
「ワタしは、戦ウ!戦わナけレバ、何モ守レナカっタ!」
――何を失ったのかなんて、もう思い出せやしないけど

あの子が見ているんだもの、苦戦も許されない
わたしの全性能をもって、圧倒してあげる


フリル・インレアン
ふぇ?水の子さん達はあなたと会うのは初めてのはずですけど、いつの間にお友達になったのですか?

ふえぇ、お友達に会うのにそんな凶器はいらないと思います。
えっと、こんな時はガジェットショータイムです。
これは前にも出てきたことがあるので分かります。(『【Q】紫の光が導く海原へ(作者 吾妻 銀)』)
アヒルさん、早くここから離れてください。

このガジェットさんは磁石です。
磁石でその凶器は没収させていただきます。
ふ、ふええええぇ、どこにこんなにたくさんの凶器が入っていたんですか?




「あのぉ……水の子さん達は、あなたと会うのは初めてのはずなんですけど……、いつの間にお友達になったのでしょうか?」
 青いリボンが飾られた愛らしい帽子を被った少女。フリル(f19557)は広いツバを指先で摘まみ、そぉっとオウガの少女へ問いかけた。
『みんな私のお友達よ。……生きていようが、死んでいようが関係無く、私がお友達だと決めたらそうなるの』
 虚ろな瞳がフリルを――否。猟兵達の後ろの建物へと視線を注ぐ。
「アナタは……お友達が欲しいのデス?」
 次いで声を掛けたのは、リヴェンティア(f00299)だった。
 生き物が好きな彼女の周りには、いつも小さなお友達が沢山居た。
 遊んで、笑って。楽しい時間を共に過ごしたいと願う友達――。だからこそリヴェンティアは眼前の少女の行動に混乱し動揺してしまう。
「お友達ニ、何故そんな怖い物をヲ、向けるのデスか……!」
『……お友達は、ずぅっと一緒に居るものでしょう? ふふ、ふふふっ。そう、ずっと一緒なの。私とお友達の絆は永久なのよ……! だぁ~か~ら……』
 捕まえて、刻んで、詰め込んで、入りきれない分は、食べちゃうの。
 そう紡いだテレサは邪魔者を消そうと、どす黒い欲望を絡ませるように髪を靡かせ血のような深紅のドレスを翻し、リヴェンティアへと疾走した。手に握る刃を彼女の小さな身体へ深く食い込ませようとする。――その瞬間、強い力によって其の動きが阻まれた。
「ずっと一緒に居たいからって……、傷つけてもイイ理由にはならないわよ」
 低い音が、静かに降る。ロマネ(f19210)がぐっと力を籠めれば、腕を掴まれたオウガの少女は微動だに出来なかった。
 ロマネはそのまま小さな身体を抱き締め、真の友情について説きたかった。愛情を示し、他人との接し方や温もりを伝えてあげたいと思う――。
 けれど此の少女はオウガなのだ。己の邪魔をするロマネへと黒い髪を巻き付けようとしてくれば、ロマネはテレサの腕を離しリヴェンティアと共に間合いをとった。
「ロマお姉さん……」
 悲しみを携えたか細い声がロマネを呼ぶ。私達と彼女はどうしてこんなにも違うのかとぽつり零した。
「リヴェちゃん……。そうね、一概にあの子を否定する事は出来ないけれど、あの子は少しだけ、在り方を間違ってしまったのかもしれないわね」
 そう、自分達は彼女の事を何も知らない。けれど理解したところで、生まれたばかりの貴い命を、はいどうぞと渡すわけには行かないのだ。ロマネは傍らの少女の頭をぽふっと撫でると、安心させるように微笑みを浮かべる。

「――わん! わんわん!」
 威嚇するように、イラリヤ(f25905)が吠える。
 テレサが抱いていたテディベアが、水の子達が居る図書館の方へとゆっくりと進んでいたからだ。
 初めての仕事。初めての戦闘。緊張だってするけれど、引くわけにはいかない――。
「悪い子は、メッてされちゃうんだよっ!」
 ガブッ! 勇気を出してテディベアの足に噛みついて、ぶんぶん首を振り回し食い千切る。破けた箇所からドロッとした何かが、べしゃり、落ちた。
 異臭を放つ肉の塊。テレサが別世界で誰かを殺し、其の身体を詰めたものだ。
 絶対に水の子達に近づけではいけないと、イラリヤが警告するように唸り声を上げ、牙を剥く。


 美しい世界に滲む赤黒い染み。ライカ(f27508)にとって其れは馴染みの色だった。そして……。
「――私の、大嫌いな色」
 ライカの零した声を聞いたテレサが、不気味に微笑む。
『私は、大好きな色』
 刃も、其の身体も……友人の血で染める少女の言葉に、ライカの手がぴくりと震える。
「わたしは……あの子達を守る為に此処に来た。だから……っ、アンタは生かして返さないってのおぉぉお!」
 ドクン――!
 跳ねるライカのメガリス。体内を巡る血が早足で駆け抜け、彼女の華奢な身体は半竜半人の姿へと変化した。狂気を纏い、獣の如くテレサに仕掛けようとするライカに応戦しようと、テレサはドレスの下から凶器の群れを出現させる。
「あぁああああああぁ!!」
『邪魔しないでぇええ!!』
 二人同時に叫び声を上げ、力が激しく衝突した瞬間足元の水が津波を引き起こした。
「ふえぇ……っ!」
 激しい戦闘の衝撃にフリルの身体は転げそうになってしまうけれど、ぐっと堪えて。
「お友達に会いに行くのに、そんな凶器はいらないと思いますっ」
 機械仕掛けの友人。アヒルさんに図書館内へと急ぎ入るよう促したフリルは、友人が図書館の中へ避難したのを確認すると超強力な磁石のガジェットを召喚した。
「その凶器は没収させていただきます!」
 ライカを襲っていた無数の刃が、フリルの召喚したガジェットへと引き寄せられる。ガチン! 何度も音を鳴らして、みるみる集まった凶器の山。
「ふ、ふええええぇっ、どこにこんなに沢山の凶器が入っていたんですか!?」
「――ッ!」
 わたわたするフリル。そんな彼女を一瞥したライカは生まれた好機を逃すまいと己の拳に力を籠めた。
 あの子達が、窓から此方を見ている。心配をかける訳にはいかない。
「最速最短で――躯の海へ帰れっつ!」
『……――ッ!』
 ライカの重い拳がテレサの腹部へ食い込むと同時、骨の砕ける音が聞こえた。其の儘深紅のドレスを纏った少女の身体を、遠くへ吹き飛ばす――!


 千切れた部位など気にも留めないテディベアが、ずるずると這って進んでいく。
 応戦するのは、イラリヤだ。誰よりも鼻が利く彼にとって、異臭を放つ敵との戦闘は酷なるものだったけれど、それでもイラリヤはテディベアに噛みついて、何度だって図書館から遠ざけていった。
 大切なご主人様に恥ずかしくない自分でいたい。いつかまた逢えた時、よく頑張ったねって抱きしめて欲しいから、……何度だって、頑張れる!
「……――ギャワンッ!」
 テディベアの鋭い爪が、イラリヤの身体に突き刺さった。自慢のふわふわの毛並みが、べっとりとした血で絡まる。
 痛みで身体が震えるけれど、イラリヤは渾身の力を振り絞り己を貫く爪の束縛から逃れると、再び立ち上がった。
 目の位置にあったボタンが落ちて無くなっても、イラリヤを追ってくる敵。彼もまた、満身創痍でテディベアへと駆けだして――。
「負けられない。守るんだ、絶対に……!」
 強い想いを宿した噛みつき攻撃を再び繰り出そうとするイラリヤ。刹那、呪に塗れた敵の身体に一輪の美しい薔薇が咲く。
「BANG――♪」
 仲間を傷つけたテディベアへ、ロマネが指先を向けて立っていた。
 其れが再びヨロヨロと立ち上がる度、幾度も薔薇の結晶を撃ち込んでいく。
 そして、テレサのテディベアはついに動きを止めた――。
「大丈夫デスカ!?」
 小型の機械兵器を連れたリヴェンティアがイラリヤの傷を見て心配したが、イラリヤは尻尾を振って、大丈夫だと伝えた。

 誰もが自分の信じる道を歩いている。
 どうしても解り合う事が出来ず、互いが大切な物を守る為に刃を交えてしまう事もあるけれど、心があるから、他人を想い合える。
 戦場に立つ猟兵達は、それぞれが色々な想いを抱えているけれど、
 “テレサを倒し、水の子達を護る”
 共通している其の想いを胸に強く抱き、理不尽な暴力に抗っていった。

『まま、ぱぱ……』
 小さな窓から、猟兵達を心配そうに見つめる水の子達。
 フリルのガジェットのアヒルは、そんな子達に寄り添った。
「グヮ、グヮ」
 この戦いは、もうすぐ終わる。そう告げるように鳴いて――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

高塔・梟示
随分教育に悪そうなお友達だ
…いや、こっちも十分教育に悪いか
仕事とはいえ綺麗に戦うのは難しい

やあ、寂しいお嬢さん
目の前にも友達はいると思うがね?


味方と連携を心掛け
UC、技能での援護を行う

テレサを狙い、鎧砕く怪力を載せた一撃を
攻撃の成功に関わらずドロップテーブル
マヒで動きが止まれば幸い、素早く追撃する

敵の攻撃は、可能なら残像でいなし
激痛耐性で脚を止めず、反撃へ転じよう
あの子達は君の玩具じゃない


…さて
この国から脅威は去った
仕事も終わりさ。お別れだ、愛し子達

イエルハ、多臂の神は遍く他者を救うもの
お前は友達を助けてあげなさい
わたしの元に生まれてきてくれて有難う

どうか君達の生に幸いを
何時か訪れる死に幸いを


夕時雨・沙羅羅
どうして友達と遊ぶ邪魔をするのか?
…それなら、どうして子ども達と遊ぶのを邪魔する
邪魔をするなと言うのなら、お前こそ邪魔をするな

ざざん、波打つ、雨を散らす
礼儀知らずは、とぷりと飲み込んでしまおう
そもそも友達は、そんな一方的に決めつけて迫るものじゃない
友達、…親子も、きっと恋仲だって、関係性とは互いに思い合うからこそ
まだ会ってすらいない相手に、何を言っている

オウガは憎い仇敵だ
ひとつの同情心も湧かなければ、心を傷つけられようが、いつまでも憎悪に燃える怒りが消えることは無い
何より、僕に特別な感情を教えてくれた、ローの為にも
お前をこの国に、ひとかけらも残すものか

おおきなさかなになって、のみこんでしまおう


クララ・リンドヴァル
※アドリブ連携OK
「これがオウガ……」
その何処まで真っ直ぐな殺意に、思わず息を飲んでしまいます。

「友達が居ないのは……寂しいですよね。ええ、わかります。でも、そのやり方では……」

「“不変”のリンドヴァル、参ります……」
前衛で盾役をしつつ、味方の支援をします。
物理攻撃は【激痛耐性】、それ以外は【呪詛耐性】を使い、ひたすら耐えます。
凶器の群れ……鎖分銅など敵の足元と鎖で繋がっているものを放って来た時が好機。
腕で絡め取り、酸化の呪詛レッドロットを直接流し込みます。
鎖を伝い、錆が他の鉄の武器すらも侵し抜くでしょう。

「この先へは通しません……!」
「あなたは……あの子たちの……友達じゃありません……っ」




 水の大地に深紅の花が揺蕩う。束の間美しい世界に身を任せていた少女は瞼を開けると、幾らか砕けてしまった肋骨を押さえながら再び身体を起こした。
「やあ、寂しいお嬢さん」
 子供達が見ているなか綺麗に戦うのは難しい。礼儀をもって梟示(f24788)はテレサへ声を掛けてみるけれど、其の想いに丁寧に応じてくれる筈も無く彼女は猟兵達へ殺気を向けてきた。
 その様子に息を呑むクララ(f17817)も、一歩も引きはしない。彼女達の後ろには生まれたばかりの愛おしい命が、今此の瞬間も怯えながら自分達を信じて待ってくれているから。
『……ねぇ、どいてよ。私、戦いに来たわけじゃないの。前のお友達が壊れてしまったから、新しいお友達を探しに来ただけなの。だから――……』
「だから邪魔しないで。……とでも言うつもり? 邪魔をするなと言うのなら、お前こそ邪魔をするな」
 友達が壊れた? 壊したのはお前だろう?
 互いに思い合うのが本当の友達。一方的に決めつけて迫るのは友達じゃないと、沙羅羅(f21090)が言を継いでいく。
 麗しの人魚を睨む少女に、クララも勇気を出して心を紡いだ。
「あなたはあの子達の友達じゃ、ありません……っ」
 友達が居ないのは寂しい。其の気持ちは痛い程に解る。けれどそのやり方ではいけないのだと懸命に伝えて、先程よりも強い意志で其処に立つ。
「この先へは通しません……!」
「あの子達は、君の玩具じゃない」
 先へ通すつもりも、逃すつもりも毛頭無い。そんな猟兵達の想いがオウガの少女に強い怒りを抱かせた。
『だったらみんな死んじゃえええええええええ!!』
 激昂に駆られたテレサが継ぎ接ぎだらけのテディベアを召喚していく。渡り歩いてきた世界で友を殺し、其の肉体を刻んで潰して詰め込んだ縫いぐるみ達が勇ましく梟示へと飛び掛かった。
「“影踏むばかり粛々と”」
 静かな詠唱。そして其の言の葉が紡ぎ終わると同時に天から絞縄が幾つも垂れ、一体も残す事無くテディベアを吊し上げ其の動きを止めていった。
 それでも少女の攻撃は止まらない。次いでテレサはクララを狙う。
 水面を揺蕩うドレスの下から、鋏、刀、鎌と様々な凶器の群れを出現させ優しい魔女へと放っていった。
「――っく、ぅ……!」
 矢継ぎ早に己を襲う凶器の群れ。クララは右へ三歩進む。華奢な身を翻し可能な限り躱していくけれど、其れでも避けられない幾らかの刃が彼女の身体を刻んでいった。柔い肌に走る鋭い痛みに耐えながら、クララは好機が来るのを待つ。そして、その機会はすぐに訪れた。
 テレサのドレスの裾から分銅鎖が伸びる。クララを拘束しようとする鎖に自ら腕を差し出し絡めとると、魔女は詠唱した。
「“不変”のリンドヴァル、参ります……!」
 赤、青、黒――。呪詛の錆が鎖を伝えば、途端にテレサが隠し持っていた凶器全てが腐食していく。切れ味の落ちた刃では、猟兵達に立ち向かう事は不可能だろう。
『……――っ!』
 往生際悪く、テレサが駆ける。
 水の大地に足を掬われ満足に走れないけれど、それでも諦められなくて――。
『私の、友達……っ、そこに、すぐそこに、いるの……っ!』
 まだ遠い図書館の扉へと腕を伸ばす。けれど――。
 ぽつ、ぽつ。……ザァッと雨が降る。
 見上げれば、巨大な水の魚。
 透けた身体は美しく、優雅に天を泳ぐその姿は見る者を魅了するけれど、憎悪を含んだ黄金の瞳が、ギラリとテレサへ降り注いだ。
 ひとつの同情心も湧かない。己に特別な感情を教えてくれた、“ロー”の事を傷つける者は許さない。
 お前をこの国に、ひとかけらも残すものか――!
 水の魚と化した沙羅羅がテレサの身体を飲み込んだ。水中で足掻く少女の身体を、更に氷の魚が追撃し、貫く――。
 ザブン! 波が立ち大地が揺れて、辺りは次第に静けさを取り戻していった。

 チャプン、チャプン。
 波打つ大地の音が聴こえる。
 揺り籠の中に居るような心地好さに微睡む少女が、涙を零した。
 独りは怖い。
 独りは嫌だ。
 だから、殺した。
 死をもってしても分かつ事の出来ない友情を欲して、幾つもの世界を彷徨ってきた。
 けれど、その長い旅も、此処でおしまい。

 動けぬオウガの少女を猟兵が囲む。
 クララは瞳に涙を滲ませ、沙羅羅は報いを受ける少女を見下した。
「次に生まれて来たときは、友達を大切にな」
 そして、梟示が覇気を纏わせた手刀を振り下ろす。
 死神の最後の一振りで、オウガの少女は息絶える。
 少女の零した涙が大地に染み込む前に、テレサの身体は消滅した。

●また逢う日まで
『ぱぱ、ぱぱぁ……っ』
『……ぅ、ぐすっ、ままぁっ』
 えぐ、えぐっ。ぐずんっ。
 幼いながらに涙を必死に堪えようとする子もいれば、ぴーぴー泣いちゃう子も大勢いた。

「あぁんっ、もう! そんなに泣かないのっ、ワタシまで連られちゃうじゃない!」
『ぱぱぁ……っ!』
 がしぃっとゴリラの姿の水の子とオネエが熱い抱擁を交わす。
 ボクも大きくなったら、パパみたいになる。そう紡ぐ水の子は、これからオネエへの道を歩み始めるのかもしれない。

「ふえぇ、お別れは、寂しいですけど……私とアヒルさんの事、忘れないで下さいね……っ」
『ままも、わたしのこと、わすれないでね……っ』
 大きな帽子を被ったアリスの少女は、小さな水の少女の手をぎゅっと握った。

『おうせ、いっちゃやだ……っ』
「ほら、泣かないで。また相棒と会いにくるから」
 また本を読んであげる。約束だよ――。繋いだ手を大切に握り合う二人。
 少年の肩にいた小さな小鳥が、水の子の肩へと飛び移る。

『きょーじ……』
「イエルハ、多臂の神は遍く他者を救うものだ。お前は友達を助けてあげなさい。それから……」
 わたしの元に生まれてきてくれて、有難う――。
 心優しき死神の心を受け取った小さな水の身体から涙が零れる。別れを惜しむように互いに抱き合い、そっと額を重ねた。

「クゥゥン……」
『キュン、キュゥゥンッ』
 悲しい鳴き声は二匹分。傷だらけのパパを心配した水の仔犬がサモエドを舐めれば、傷だらけの親犬も可愛い我が子を舐め返し、大丈夫だと伝えていく。

『ままっ、ジャイアントきゅるんとごーまーくつー、ずっとたいせつにするからっ』
 一番お喋りが上手で、一番小さなハムスターの姿をした水の子が、大好きなキモチ!と言葉を添えて母親の指先にひしっしがみついてきた。
「私も大好きなキモチ! うわんっ!」
 泣いてない。泣いてないけど、ちょっと泣きそうになっちゃう。

「アズール、元気でね――」
 そう呟いた少女は、視線を合わせなかった。さきの戦闘で怖がらせてしまったのではという畏怖の感情が別れの邪魔をする。
『まま! まま、すっごくかっこよかったよっ、まもってくれて、ありがとうっ』
 だから、ママのようになるんだと、こっちを向いてと紡ぐ小さなドラゴンを、少女は強く抱き締めた。

『『ままぁ……っ』』
 小さな二つの声が重なる。甘えんぼな幼魚と、腹ぺこ少女。
 甘えんぼな娘たちを抱き締めるのは、美しい少女達だった。
「あたしのかわいいコ。みんなと仲良くしてね」
「……おなかが空いたら、きちんとごはんを、たべるのよ?」
 大好きなママ達に頷いて、互いに別れを惜しみあう――。

『じゃくおねーちゃん……』
「げんきでね……。また、ね」
 溶け合うように抱き合って、小さな別れの音色を重ね合う。
 透いた身体の小さな少女達が再会する時は、二人共今よりちょっぴり大人になっているのかな。

『まま、ままぁ……っ』
 白い魔女の腕に飛び込んできたのは、翼の生えた水の本。
「どうか、お元気で……。皆と仲良くするんですよ」
 腕の中で泣く小さな我が子にそっと紡ぐ声もまた、震えていた。

「ロー、沢山食べて、綺麗に育って――」
 澄んだ心の可愛い子。
 己をぱぱと呼ぶ愛しい子。
 ローと呼ばれたまんまるの小さな水のお魚が、頬にお別れのキスをしてくる。
『ぱぱみたいに、綺麗になるよ』
 約束するよ。だからきっと、また逢いに来てね。

 *・*・*

「ごめんね、もう、行かなくちゃ……」
「お別れだ、愛し子達よ」
 猟兵達が帰還しようとした、その時――。
 パパ! ママ! 水の子達にそう呼び止められた。
 “元気でね、また逢おうね!”
 “ありがとう、本当に、ありがとうっ”
 “ずっとずっと、大好きだよ!”
 沢山の愛しい言葉達が降り注ぐ。
 チャポチャポ跳ねて、手を振って、尾を振って。別れを告げた。

 どうか君達の生に幸いを――。
 何時か訪れる死に安らぎを――。

 このあと、猟兵達が居なくなった水の世界で子供達は暫く泣いてしまうけれど……。
 猟兵達が残したもの、紡いだもの、護ったもの。
 優しい心、あたたかな想いは、まだ此処に在る――。

 きっと、いつかまた――。
 そのときまで、おげんきで。

~fin~

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2020年07月20日


挿絵イラスト