オトモダチ大作戦! ドラゴン様ヒャッハー軍団来襲!!
●ヒャッハー!
「……はぁぁぁぁ~っ……」
現れた鉄の塊に、老人はぺたりと尻餅をつく。
ここはアポカリプスヘル。文明復活の兆しは未だ見えぬ絶望の荒野。
そんな時代、その場所でかの老人は一人細々と暮らしていた。
他の家族もすでになく、自分用の畑を世話して暮らす日々。
大きな実をつけるようになった畑に、自らの成長と喜びを見出だした所に彼らは現れた。
真っ黒い鉄の体。団子虫のようなずんぐりとした外観に地を走る足は攻撃的に尖り、無数の足跡を刻みながら群れで移動する。
赤い瞳は老人を睨み付け、更に彼らの背中には満面の笑みを浮かべた、性別も年齢も、服装もばらばらな人々が乗っている。
彼らは減速、老人眼前で停止。ずらりと並ぶその群れは絶景であるが、赤く光る目やそれに跨がる人々の笑みが殊更に恐怖を煽る。
「下ろしてください」
『はーい!』
先頭の破れたスーツ姿の男。彼の言葉に黒いメカは元気に答えると、側面の装甲を開き、五指の腕を伸ばして彼を捕まえ地に下ろす。
その間も男の顔は変わらない。
「ありがとう、オトモダチ」
『どういたしまして、オトモダチ!』
なんかカルト臭いぞ?
男は老人へと歩み、よれたネクタイを正し彼を立たせようと手を伸ばす。
「初めまして、我々はレイダーです」
「!? は、はわわわっ……はーっ、はーっ……!」
心拍数激上がりなお爺ちゃんに、男は初めて表情を変え、心配そうな顔をする。
レイダーなんて名乗られて落ち着ける訳ないよね。
「お爺さん、我々はここに実る食料、そして全ての備品の一切合切を強奪さします。
よろしいですね?」
よろしくないよね。
「い、いかん、いかんぞぅ! 全てを奪われては実を成らせることも出来なくなってしまう。そうすればもう終わりじゃ。
だが……だが……! 残せば野菜ができる。毎年、毎年野菜ができるのじゃ。それがあれば生きていける、貴方がたに分けることもできるじゃろう!
そうすれば食糧を奪い合う必要もない。今日よりも明日なんじゃ!」
力説。
圧倒的武力差を前に力説。なんという胆力。
しかし薄汚れたホワイトカラーは悲しそうに首を横に振る。全て奪う、と。
「はーっ、はーっ! な、なんでじゃ! 話を聞いとったんか、このうんこたれー!」
「私たちは一所に留まれないのです。あとうんこたれてないです」
男が振り返ると、三人の男女がメカの上を滑り台のように滑り降りる。危険行為禁止。
彼らは笑みを止め、お爺様の前に立つ。
「聞いてくださいご老体! 我ら決して悪人ではございません!」
「物資を奪うのはあくまでオトモダチ、私たちではないのです」
「そもそもオトモダチが食糧を奪うのは我らの為、怒らないで下さい!」
君らに怒ってるんだけど?
しかしさしもの老人も、三人に囲まれて大声を上げられては背を丸めるしかない。悪質過ぎません?
「私たちは悪魔ではありません。お爺さん、貴方も私たちのオトモダチになりませんか?」
「な、なん……じゃと……?」
「私たちと共に、この大地を協力しあって生きていくのです。
この鉄のオトモダチ、デッカイザー君たちは私の町から資機材を一切合切強奪しました。冬の日、どう過ごしていけばよいのかと思わず弱音を吐いた私たちに、彼らはオトモダチになってくれたのです」
よくレイダーと友達になれたな。
男の後ろではデッカイザーたちが、『まだかなー?』『お話ながーい』と暇をもて余している。
「彼らは良く、尽くしてくれました。
寒い日には自らを暖房器具にし、暑い陽射しや雨からはその装甲を開いて物陰とし、良く尽くしてくれました。腹が減れば食糧も強奪してくれました。
だから私は考えたのです。彼らが物資を強奪するのなら、強奪された皆さんともオトモダチになり、行動を共にすればいいのではないか、と!」
はっはーん、こいつヤベー奴だな? 言ってる内容がイってるもの。
お爺さんはそれに気付くと、とりあえずこの場をやり過ごそうと考えを改め、両手を挙げる。
降伏の意思を示した老人に、男は感極まったように言葉を詰めつつ、ありがとうと呟いた。
『お話終わった~?』
「ああ。さあオトモダチ、全部持っていこう。野菜を潰さないように気をつけてね」
『はーい!』
明るく仲良く元気良く。皆で並んで野菜を引っこ抜いたり、ザリガニのような腕で家屋の解体を始める団子虫たち。
さすがに家も根こそぎ破壊されるとは思っていなかったのか、ばったりと倒れる老人。
「ふっ、ふへひ、ひっひひー!
殺せー! もう殺せっ、ワシを殺せ~!」
大の字に寝転んで叫ぶも、危ないから退いてねとばかりにデッカイザーは丁寧に移動させて解体作業に戻る。
優しいって残酷。
『あっ、ネジ見~っけ!』
『ボルト転がっちゃったぁ、待て待てー!』
慌ただしく動くそれらを背後に、ホワイトカラーは老人に声をかけた。
「私たちと、オトモダチになりませんか」
「なんじゃー、うんこたれー、ワシの目の前から消え失せろー。お前の澄んだ目が怖いんじゃー」
「うんこたれてません。お爺さん、叫んでみて下さい。
ドラゴン様ヒャッハーッ!! と」
「何言ってンじゃお前」
何言ってンのよお前。
しかし男はジジイの言葉にもノンノンと指を振り、言葉を繰り返す。喧嘩売ってるのか。
とは言えジジイ、すでに望みを絶たれた身。男たちの説得により嫌々ながらもその言葉を何度も叫ばされて数分後。
「ドラゴン様シャッハッハーッ!」
『ドラゴン様ヒャッハーッ!』
『どらごん様ひゃっほーっ!』
楽しそうにドラゴン様ヒャッハー軍団の先頭を往くデッカイザーの上で叫ぶ老人の姿が荒野にあった。
●集団心理って怖い。
「やる気出ないし、手短にいくぞ」
好みの女性がいないせいか、ぐったりした様子でブライアン・ボーンハート(熱き血潮のサイクロン、ブロンズハート!・f22409)は集まった猟兵らへ状況の説明を行う。失礼過ぎやしないか。
「今回アポカリプスヘルのあちこちを荒らし回ってるのは『ドラゴン様ヒャッハー軍団』、見ての通りのおカルトでございますわよって感じだな」
軍団名を叫んでハッピーに浸る。実際、相当数の人間がこれをやるのだから、生まれる一体感は圧倒的だ。
彼らはただの人、故に更正が望めるとブライアン。その表情は面倒だとばかりであるが。
「ま、そんな訳で奴らへの攻撃は厳禁だ。そして今回はこんなお役立ちアイテムを授けよう」
ここで彼が取り出したのは重たそうな茶色の紙袋。中にはボルトやナット、ネジがぎっしりと詰まっている。
「何の目的か、デッカイザーは特にこういった部品を集めている。投げて気をそらしたり、情報集めの餌に使えるかも知れん」
それはドラゴンのこと。彼らのすうする様子は見えるが、仔細不明だ。
「まずはお爺さんの相手をしてやってくれ。彼の考え方はこの時代に貢献する。
必ず生かして、カルト教団を更正させ、文明復活の一歩に繋げるんだ」
頭ちきん
頭ちきんです。
アポカリプスヘルにおけるレイダー軍団の討伐をお願いします。
オープニングではおカルトの皆様、お爺さんを生かすようにグリモア猟兵は指示していますが、シナリオの成否に関係する要素ではありません。
それでは、本シナリオの説明を行います。
一章ではお爺さんの相手をし、信頼を得て下さい。猟兵の言葉を受け入れやすくなります。
二章は集団戦です。おカルトの皆様はオトモダチなので戦闘に巻き込まれないようオブリビオンが配慮しますが、お馬鹿なのであまり信用しないで下さい。
二章から参加される方も彼らの餌となる締め付け材等の部品をグリモア猟兵から受け取っているものとします。
三章はレイダーキングとの決戦になります。強敵ですが、二章で情報を得れば戦い易くなるかも知れません。
注意事項。
アドリブアレンジを多用、ストーリーを統合しようとするため共闘扱いとなる場合があります。
その場合、プレイング期間の差により、別の方のプレイングにて活躍する場合があったりと変則的になってしまいます。
ネタ的なシナリオの場合はキャラクターのアレンジが顕著になる場合があります。
これらが嫌な場合は明記をお願いします。
グリモア猟兵や参加猟兵の間で絡みが発生した場合、シナリオに反映させていきたいと思います。
第1章 日常
『ヨスミのじいさん。』
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POW : ヒャッハー!その種もみを寄越しな、ジジイ!……と言って種もみを分けて貰う。これが合言葉らしい
SPD : み…水………っ!……喉がカラカラだ。迫真の演技で水を分けてもらおう
WIZ : 今日よりも明日なんじゃっ!!……なにか困っているらしい。久しぶりに人間を見た気がする。助けてあげよう
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三日月・蓮華
んぬぅ、この紙袋重いのです……蓮華は杖より重い物なんて持ったこと無いのに……。
まぁとりあえず、信用を得たらいいのですね?んー、蓮華は賢いのでお爺さんのお悩みを解決できるかも……(いざとなったら賢者の書の知識で何とかするです)
蓮華のお目目を見れば疑うなんてしないでお悩みを話してくれる筈!(多分)
●スパッと解決、天才白うさぎ!
荒野の道をよたよたと、小さな影がひとつ。
三日月・蓮華(自称天才ウィザード・f25371)は杖を肩に片手で支えつつ、茶色の紙袋を重そうに引きずっていた。底部分は布でカバーしているようだ。
「んぬぅ、この紙袋重いのです……蓮華は杖より重い物なんて持ったこと無いのに……」
やる気の全く見えないグリモア猟兵の軽薄な笑みを思い出しながら、思わずこぼす。それなりに量を減らしてもらったものの、それでも五十センチにも満たぬ彼女には重たいのだ。
容赦ない陽射しもつば広の帽子が防いでくれるが、時折吹く寒風だけは防げない。対策の難しい気候も問題だと故郷の森を思い出しながら長い耳を垂れた道先で、件の老人の家を見つける。
一見みすぼらしい一軒家だが、きちんと隙間なく造られており居心地は良さそうだ。
「な、なんじゃ? 野菜泥棒か!」
現れたうささんに警戒心マックスのジジイ。おめーうささんに何か恨みでもあんのか。
「待つのです! 蓮華は悪いうさぎじゃないのです。むしろお爺さんを助けに来たのです」
「なにをう? うさぎ如きになにができるものか! この荒れ果てた大地で巨大イナゴを千切り、空飛ぶアナゴを投げ捨てたこのヨスミの爺様と恐れられたワシを舐めるでないぞ!」
よくわからんけど凄さは伝わってくるクソジジイの必死の形相に、蓮華も万事休すかと思いきや。
そっ、と杖と紙袋とを地に置いて、大きな帽子を取ると胸元で構え。
「お爺さん、蓮華はただの天才ウィザードなのです。お爺さんの悩み事の解決に来たたけで、悪いことなんてこれっぽっちもしないのです。蓮華のお目々を見ても悪い子だと思うですか?」
「なにぃ? ──うっく!?」
きらきらと純真無垢に輝く藍色の瞳。まるで涙を湛えたかのように潤んだ眼の奥で煌めく三日月の色は、お爺さんの胸をきゅんきゅんと締め上げた。
「はうあっ! ……はーっ、はーっ……」
大丈夫かジジイ。
(お、おのれ何とあざとい! しかし女子供ならば通用しそうなものの、ワシは既に還暦を迎えた身、お主のようなうさ吉が産まれる頃にはこの大地を耕しておったんじゃ!
そのワシが、自分から天才と名乗るようなたかが小動物に不覚を取ることがあろうものか!)
「そうじゃのー、レンゲちゃんはイイコじゃから悪いことするはずないのぉー、お爺ちゃんテヘペロじゃよ。
トマト食うか、ん?」
大丈夫だったわジジイ。
チョロいお爺さんを丸め込んだ蓮華もそのように考えたのかは分からないが、重そうな紙袋を持ってくれた彼に誘われて家の中へ入れば、今朝の採れたてというトマトが机の上に乗っていた。
しかし。
「な、なにかぶつぶつしてるのです」
トマトの表面にはぶつぶつが出来ており、見てくれも悪い。
悩み事だと唸るお爺さん。農薬を使わずに育てた自慢の野菜は味に自信があるものの、虫に食われて見てくれが悪く、かじった程度の知識では伝染病の疑いもある。
人体に影響はないものの、これらを人に分け与えるとなると食用ならまだしも、種やその他から他の野菜へ病が広まる恐れもあるのだ。
そこで農薬を使わねばと探し始めた訳なのだが。
「それでのう、それらしい物は集めたし、予備もどこそこにあるのかの検討もついとるんじゃが」
部屋の奥からごそごそと、引っ張り出してきた物を見て蓮華も思わず目を閉じる。
固形、液体、様々なものが入ったボトル。ラベルは陽に焼けてすっかり読めなくなっているが、混ぜるなキケンの文字があったりと使うには躊躇う物もある。
「つまり、蓮華はこの中から農薬を選べばいいのですね」
ふむふむとしたり顔で頷く蓮華。
しかしこれは知恵と言うよりも単純な知識の問題。蓮華にわかるものであろうか。
そこで彼女が取り出したのはのは月が表紙に飾られた分厚い本、【賢者の書】だ。机の上にどっかと乗せて、ぱらりと開いた内容を興味本意でお爺さんも覗くが、可愛い絵や見たことのない文字らしきものがあるばかりで解読できそうもなく。
「なるほどなのです」
大きな虫眼鏡で手元の書物とボトルやら袋やらを一頻り見比べた後、蓮華はふふん、と得意気な顔で部屋の隅を指差した。
「お爺さん、あの辺りの壁の隙間にある箱を開けてみるのです!」
「箱? ……そんなもん……あったわい」
何で分かるんだとばかりのお爺さんが箱を開くと、中にはすっかりシワの寄った雑誌が入っていた。
二冊目の六十七ページ。蓮華に導かれるままに開いたそこには、赤いキャップと黄色の特徴的な形をしたボトルがあった。
「はうっ! こ、これは、……『元気凛々ハイパーすげえ農薬』……っ、間違いない、農薬じゃ!」
間違いないね。
お爺さんが机を見れば、ラベルの文字は読めないが同種と思われるボトルがぽつり。
「……はーっ、はーっ……! な、なぜっ……分かったのじゃ
……!?」
「蓮華は天才なので!」
さも当然と答える白うさぎ。
「そーじゃのー、蓮華ちゃんは天才じゃものな~」
ジジイはほっこりした顔で納得した。
天才で済む辺り、彼女は本物の天才なのかも知れない。
大成功
🔵🔵🔵
才堂・紅葉
蒸気バイクを立ち乗りし、器用に足で【操縦】して登場
蒸気ギターを乗りの良い世紀末形メタルで【楽器演奏】で弾き鳴らす【気合い】の入った【パフォーマンス】
「ヒャッハー!その種もみを寄越しな、ジジイ!」
種もみを分けてもらったらバイクから降り、召喚符を用いて【早着替え】で大人しい私服姿
「どうも、ありがとうございます、お爺さん」
お嬢様コースで学んだ【礼儀作法】で一礼しましょう
土地の流儀とは奥深いものだ
後はお茶を出しておじいさんと談笑し
「見てくれはいまいちですが、雨露を防ぐ程度にはなります」
アルダワ脅威の技術力でインスタント式住居を提供しよう
センスの悪い学生共の試作品なので、どうにも見苦しいのだけが難点だ
加賀・龍顕
おう、ご老人、こんな所で一人暮らしをしておるのか?
(奪還者と名乗り、二章で来るであろうレイダーを壊滅する為に追っていると自己紹介。何か知らないかと尋ねるところからコミュニケーションを図る)
レイダーを追う=倒す自信があると思わせる事で、信頼構築を企図。
(必要であれば『操星奪命』(アイテム参照)などを披露して実力を見せ、信頼を得るよう努めます)
しかし、この畑、立派な物じゃ。試行錯誤をして此処まで来たのであろう。その知識、この世界の復興に一役買うじゃろうなぁ。
アドリブOKです。
●燦然と瞬く星の如く。
その他の薬の使い道も分かり、悩み事も解決したところで扉を叩く音。わざわざノックする知り合いはいないと、今の時代に礼節を弁えた来訪者へ逆に不信感を募らせるお爺さん。
鍬を体の後ろに隠しつつ、扉の前に立つ。蓮華は見てくれは悪いものの、甘いトマトに夢中な様子だ。
「どなたかな?」
「奪還者としてあちこちを放浪しておる、加賀・龍顕(武神・f25359)という者じゃ」
「奪還者!」
その名を聞いて慌てて扉を開く。この世界で平和を願う者たちは、奪還者を無下に扱う者などいないのだ。
扉の先に佇む者は、ヨスミのお爺さんと見比べても遜色がないほどに年を経ており、頭が禿げ上がっているもののたっぷりと蓄えた白髭、雄々しい白の太眉から覗く眼光は鋭く、精気に満ちている。
一見痩身と見えたが肩幅も広く、安定した佇まいに何らかの武道を修めていることは素人目にも明らかだ。
「おう、ご老人であったか。わしとそう変わらぬように見えるが、こんな所で一人暮らしをしておるのか?
…………ん?」
部屋の奥で満足そうにお腹を叩いて、可愛らしく噯気を漏らした蓮華と目が合う。
(……賢い動物……世界に合わぬ服装を見ると、同業かのう)
(……あのお爺さん……鷹みたいで目が怖いのです)
互いの印象はさておき、同じ猟兵であろうと結論する両者。ヨスミのお爺さんは龍顕の視線に気づいたようで、奪還者とは違うようだが悩みを解決してもらったのだと紹介する。
蓮華も椅子から飛び降りると、ちょこんと頭を下げた。
「ふむ。可愛らしく、利発そうな娘じゃのう」
「利発どころではないのです。蓮華は天才なのです!」
どやっ。
龍顕は自信家だなと認識を改める。とは言え、悩み事を解決したというのだから実力も伴っているはずだ。
ヨスミのお爺さんへ視線を戻し、実はと用件を切り出した。
「最近、この辺りを荒らしておるレイダーの集団がおってな、わしはそれを退治に来たのよ」
「レイダーの集団? 何か、名前などは分かりますかの?」
「うむ。その名も、……『ドラゴン様ヒャッハー軍団』……! と、言う」
ドラゴン様ヒャッハー軍団。
その名に目を見開くお爺さん。しばしの間を取り、ぶっほと噴き出して腹を抱える。
「い、いくらこんな時代とは言え、そんなふざけた名前を掲げる野盗がいるはずないではございませんか!」
「かぁーっはっはっはっはっは! ……いちゃうんじゃよなぁ……」
さすがにヨスミのお爺さんまでそのような名前の軍団入りする未来は伝えなかったものの、龍顕の様子からレイダーを探していることは事実かと顔を引き締めるヨスミのお爺さん。
その様子では何も知らないのだろうとする龍顕に、お爺さんは神妙な顔で頷く。ドラゴン様ヒャッハー軍団相手にこの雰囲気は必要?
「しかし、奪還者様は見たところお一人のご様子。徒党を組んだレイダー相手では遅れを取ることもありましょう。ずっと先になりますが、他の奪還者様の集まる拠点があります。
そこなら、ド、うぷっ、ドラゴン様ヒャッハー軍団の情報や、戦力を集めるのに苦労しないと思いますが」
何を笑うかジジイ。お前も愉しそうにその名前を叫ぶようになるんだぞ。
しかしそれでも考え方は非常に建設的だ。端から見れば無謀と思える龍顕の行動に釘を刺すように、角を立てぬ言い回しで戦力の増強を提案する。
その心遣い、痛み入る。
龍顕はその顎に蓄えたたっぷりの白髭を撫でて唇の端を歪めた。屈辱ではない、笑みの形だ。
「強くなくては甕星流、伝承者の道は歩めぬ! どれ、ひとつ心配事を消してやろう」
龍顕が向かったのは彼の畑だった。この世界で見ても形は悪いが大きく育った野菜たちは、彼の献身が身を結んだのだと考えるに相違ない。
「この畑、立派な物じゃ。試行錯誤をして此処まで来たのであろう。その知識、この世界の復興にも一役買うはずじゃ」
「そう言っていただけると」
「……しかし……」
アレは邪魔だ。
龍顕の鋭い眼光に射抜かれたのは、畑に鎮座する巨大な岩だ。
元々は家が日陰になるようにと、一塊の岩山が隆起した土地に畑を起こしたのだが、度重なる雷雨、嵐により砕けた岩が畑に落ちてしまったのだ。
家が潰れなかったことを幸いとしつつも、畑のスペースをだいぶ奪われてしまっている。
「町の奪還者に頼みもしたが、削岩機のような道具もなく……そのままにしておりますじゃ……」
「だから言ったであろう、心配事をひとつ、消そうとな」
何をするつもりか。
見つめる老人と蓮華の視線に返すでもなく、胸元で左右の五指を合わせて目を閉じた龍顕。彼の体を中心に鮮やかに色を変える光が溢れ出した。
力強い輝きは、やがてその手中へと収束し玉へと変ずる。
「ぬうん!」
開いた目から溢れる輝きは命の力か、迸る力の帯を纏う龍顕が手を掲げれば、光の玉が弧を描いてその頭上へと回る。
「危ないから下がっておれよう。えやっ、甕星流! 【操星奪命】!」
気合一閃。
光玉が輝きを増すと岩塊へ直進、その身を抉り入る。
「穿ッ!」
開いた手を握ると同時、岩塊から光が溢れ出し、一瞬にして粉々に粉砕した。
お爺さんや蓮華へ飛ぶ礫を片手で弾き、口をあんぐりと開けた姿の二人へ振り返る。
「どうじゃな?」
「……み、甕星流……! ま、まさかあの一子相伝の伝説の流派!?」
知っているとは博識な。
驚いた様子で白髭を撫でる龍顕に、こんこんと語り出すヨスミの爺様。
曰く、一子相伝の暗殺拳。
曰く、陰と陽、影となるふたつの流派あり。
曰く、養子が増えたら崖から突き落として這い上がってきた方を伝承者とする。
曰く、その割には凄い知れ渡ってる。
曰く。
「うん。それ多分、別の流派じゃわい」
ぽこぽこ出てくる曰く節を叩き折って、龍顕はひっそりと溜め息を吐いた。
●世紀末よりの使者!
ひとまずの休憩と、ヨスミのお爺さんの家から蓮華が一手間加えたお茶を持ち、二人へと渡す。
お礼を言って飲めば舌に広がる旨味。お茶というよりも汁物のようだ。
「陽が落ちた頃に飲みたいのう」
「なあに、暑い日中に熱い茶を飲むのも良いものじゃよ」
語らう老人二人。様に成りすぎていて心配してしまう。
蓮華は甲斐甲斐しくお茶のおかわりの準備をしていたが、家に向かう途中でその大きな耳をぴんと立てた。
続いて僅かな振動を感じ取り、龍顕は鋭い眼を巡らせた。
その変化の元は、地平線より迫るひとつの影。砂塵を巻き上げ疾走する鉄の塊。
「──ahhHHHHHH!!」
響く叫びは丸鋸の回転音を思わせる程に攻撃的で、同時に荒野をつんざく音はこのアポカリプスヘルのように破滅的。
「……はあぁあぁあ……っ、はーっ、はーっ!」
その姿を見たヨスミのお爺さんは、恐怖の余りに腰を抜かして尻餅をつく。
それは【試験用蒸気バイク】──、バイシクルに乗って現れた。乗っていた、と言うべきか。
蒸気機関の推進力を借りているとは言え、ペダルとハンドルに足を片方ずつ乗せて器用に操作するその者は、空いた手に【蒸気ギター】を抱えている。
掻き鳴らす音は雷鳴の如く。閃く指は弾丸の如く。回る腕は風車の如く。
「私はレイダーッ、お山の大将ッ! 喧嘩自慢の輩だぞぅおア!
HEELLLL YEAAHHHHHHHH!!」
喉も千切れろとばかりのシャウト。歌詞はともかくノリの良い音楽であるが、初体験となるのか蓮華は目を白黒させている。龍顕は激しいながらも耳障りの良い音に感嘆の声を漏らすも、レイダーの言葉に目を細めた。
(オブリビオンではない。だが、現地民のレイダーなのかのう?)
「はわわわ、……はわっ……! レイダーじゃ、どっからどう見てもレイダーに違いない!」
ヨスミのお爺さんなどは完全にレイダー認定だ。普通はそうする。
女は爪先をハンドルにひっかけ、器用に車体を起こすと龍顕の砕いた岩塊の欠片を飛ぶ。
空中で足の位置を変えて前輪を下方向へ向け直し、ひとつのタイヤで着地した彼女はそのまま三人の前へと滑走する。
「ヒャッハーッ!」
唸りを上げて半回転した蒸気バイクは砂塵を巻き上げ、断頭台を思わせる踵が荷台に叩きつけられて龍顕の眼前、後輪を大地に下ろす。
立ち込めた砂煙を切り裂いて、現れた女は悪意に満ちた目で叫んだ。
「その種もみを寄越しな、ジジイ!」
「!!」
ジジイに衝撃走る。
その辺の廃材で作ったようなトゲ付肩パットややたらと短いホットパンツに刷り切れた革のジャンパー、やはりレイダーに違いない格好だ。
「ふむ。人間を相手にしたくはないが、ヨスミの、少し下がっておれ」
「お爺さんなら家に行ったのです」
あれ?
腰を抜かしたはずの老人のゴキブリの速さに思わず振り返れば、家から駆け出るところであった。その手には大事そうに小さな包みを抱えている。
まさか、件の種もみか。
龍顕の制止を無視し、包みの中から種もみを数粒抜き取り、叫んだ姿勢のまま固まる女へ包みを渡したお爺さん。力強い視線を女と交わす。何してんの?
そのまま龍顕の元へ駆けるとわざとらしく転ぶ。いつの間にやらその背中には槍が突き刺さり──、否、刺さっておらず、パーティーグッズのようなどっきり玩具を取り付けただけのようだ。
「……う……う……、あ、明日……明日が~……」
零れ落ちた種もみを涙ながらに集めるお爺さん。何してんの?
「きさまも地獄へ送ってやるぜ~!」
蒸気バイクから飛び降りた女はお爺さんの種もみを一緒に拾いつつ叫ぶと、熱い眼差しを龍顕へ送る。ジジイもそれに続く。
「……えぇ……」
何がしたいのだ。
困惑する龍顕の後ろで分厚い賢者の書を読み解いた蓮華は、なるほどと頷いた。
「龍顕さん、『てめえらに今日を生きる資格はねぇ!』と怒りに任せて吠えるのです!」
「き、急にそんなことを言われてものう」
凄いやりづらそう。しかし子供のように純真無垢なきらきらのお目々三人分に見つめられて、龍顕は覚悟を決めると咳払いをひとつ。
龍顕の覚悟を感じ取り、彼に台詞を叫ばせる為にヨスミのジジイは再び目に涙を浮かべた。
「あ、明日……明日が~……」
「きさまも地獄へ送ってやるぜ~!」
続く女の叫び。バトンを受けて、龍顕は息吹く。
肩幅に足を開き、かっ、と目を見開き、大きく口を開いて。
「てめえらに今日を生きる資格はねぇ!!」
ずっしりと腹に溜まる、ドスの利いた恫喝の叫びに拍手喝采が鳴り響いた。
茶番の後、落とした種もみもきちんと集めたヨスミのお爺さんは、他にもふたつの包みを用意して龍顕、蓮華へと手渡した。茶番のお礼ということか。
女はその間にも薄い金属板で出来た【機構召喚符】を用いて大人しい服装を召喚し瞬時に着替えている。
それが普段の格好かと龍顕は舌を巻いた。
「先程はお騒がせを。改めまして、私は才堂・紅葉(お嬢・f08859)と申します。お爺さん、種もみをありがとうございます」
所属するアルダワ学園で学んだ一礼は、お嬢様コースを通して会得したものであるだけに礼儀正しい。
彼女の出した紅茶を受けながら、こちらが素になるのかと驚く三人。知らぬが仏である。
「しかし、どこでその合言葉を?」
「ここに来る途中で会った人がいまして。その方から服装も頂きました」
紅葉の言葉にお爺さんは見当がついたようだ。外で出会った者が本当に服を譲るのか疑問であるが、これもまた知らぬが、というものだ。
ここで紅葉は先程とは別の召喚符を取り出した。種もみのお礼だとするそれは、アルダワ学生の作品を利用した【アルダワ符術:機構召喚符(ガジェットカードアマ)】。
「これぞ、アルダワ脅威の技術力で製作された、インスタント住居! 『ラクタテール参号くんだ!』です!」
「イ、インスタント住居じゃとぉぉぉ!?」
驚異の技術。蒸気の煙と共に現れたそれは、出入口となる門の上に馬の頭が……その……賢くない感じの馬の頭が取り付けられ、屋根には羽や壁に足などがついている。
何の為についたのかは分からないし目的も不明だが、馬を模したようだ。何故?
「うわぁ、可愛いのです!」
「……う、うん……」
「……そうじゃな……」
蓮華には好評であったが老人二人には微妙なご様子。これ驚異じゃなくて脅威だったわ。
「ま、まあ、見てくれはアレかも知れませんが、雨露風を防ぐ分には十分ですし、なにより移動可能、インスタントと遠出の際の急な嵐に対応できます」
何より高齢な身。畑作りに力を入れるにはその身を健康に保たなければならない。
猟兵三人の心遣いに、今度は演技ではなく本物の涙を一滴落とし、ヨスミのお爺さんはありがとう、と彼らの手を握った。
大成功
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第2章 集団戦
『資材略奪用兵器群デッカイザー』
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POW : よーし、ジッとしてるね!
全身を【全電磁塗布装甲を閉じ、熱血防御モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 僕たちの邪魔をしないでよ~!
【装甲を展開し防御力を下げ、各種内蔵兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 超最強っぽい地上走行戦艦グレート・デッカイザー!
【群れが合体変形し、非常に強力な】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【数多く】の協力があれば威力が倍増する。
イラスト:8mix
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●資材略奪用兵器群、デッカイザー登場。(おカルトもいるよ!)
ふむ。
跨がるデッカイザーへ彼から受け取った双眼鏡を返し、小さく唸る男。
『どうしたのー?』
「情報と違い、お爺さんだけではないようですね」
『そうなの?』
『じゃあオトモダチが一杯だ~!』
よく解らずにきょとんとする者もいれば、能天気に前部の装甲を展開、メインアームとなる鋏を掲げて喜びを示す者も。
破れたスーツにネクタイを正し、薄汚れたホワイトカラーの男は喜ぶデッカイザーに同意した。
振り返れば群れと続く同型と、それに跨がる様々な人々の姿。
「皆さん、この先にいらっしゃるのはお爺さん一人ではないようです。ですが、我々はこのイレギュラーを喜ばねばなりません。
なぜなら、新しいオトモダチが一杯だからでドラゴン様ヒャッハーッ!」
演説の途中で叫ぶな。
『ドラゴン様ヒャッハーッ!』
『どらごん様ひゃっほーっ!』
歓喜に堪えられなかったのか叫ぶホワイトカラーに続くおカルトの皆様、そしてデッカイザー君たち。
彼らの魔の手がヨスミのお爺さんに迫ろうとしていた。
・集団戦です。とんでもない数の敵が出てきますが、とんでもない知能指数なので同士討ちではりきって勝手に壊れていきます。
・敵はオブリビオンのため猟兵を敵視し、オトモダチにはなれません。グリモア猟兵からもらったボルトなどの餌を使用してください。尚、二章から参加する方も貰っているものとします。
・彼らから三章のボスとなるレイダーキングの情報を引き出すことが可能です。
・おカルトの皆様はお爺さんをよってたかって洗脳しようとしますが、対処する・しないにしてもシナリオの成否に関わりありません。
御園・桜花
目そらし
「カルト堕ちしたお爺さまの改心ではなかったのですね…恥ずかしい」
疎開者の如く大荷物で参加
背中のリュックは調理器具と食料
ボルトは手提
「…鯉の餌やり?」
ボルト撒いて敵が集まるのを邪魔しながらUC「エントの召喚」
地面の下からの串刺し攻撃で敵をどんどん貫き移動不能にした上で枯葉吹雪で切り刻む
敵からの攻撃は制圧射撃による移動阻害+撒き散らしたボルトの跳ねる音で注意剃らし、第六感や見切りで避ける
「奪うだけでなく仲間として養った貴方達は誉められるべきです…可能ならば善き転生を」
慰めのスキルを乗せて歌ってからヨスミに
「移動手段のなくなった彼等に生活方法を教えて差し上げて、此処を村にいたしませんか?」
才堂・紅葉
「可愛らしいですね。でも、ちょっと危険すぎるので処理が必要ですね」
お爺さんに近寄る奴等を自動小銃で牽制しつつ、デッカイザーズへの対処を行う
方針は【戦闘知識と情報収集】で奴等の群れの動きを観察し、予測進路に「六尺棒」を突き刺し、そこに例の茶色の紙袋をぶら下げ【罠作成】
第二段階で、奴等の接近に合せ起爆。ボルトやナッツ、ネジが出来るだけ四方八方にばら撒かれるように工夫しよう
狙いは、最前列を急停止させる事での玉突き事故。及び、一斉に部品を集め始めることでの現場の混乱と集中だ
「一体、どうしてあんな物を集めているのかしらね」
リボルバーに詠唱弾を装弾し【封印を解く】
「まぁ、ひとまずまとめて吹っ飛びなさい!」
加賀・龍顕
話には聞いておったが、実際に見ると異様じゃなぁ。
ヨスミ殿には洗脳を試みて来ると聞いておる、心を強く持つように。
耐えている間にカルト共のよりどころ(オブリビオン)を撃破する、と助言。
いよいよ戦闘になれば
『香香背男』を発動、天空に舞い上がり、グリモア猟兵から得たボルトやナットを投じてヨスミ爺さんやカルト集団とデッカイザーを切り離します。
その後にボルト、ナットを適時投入して同士討ちを誘い、ある程度、減った後に殲滅を目指します。
上空からの『香香背男』の効果により威力の増した『弾気星雨』で広範囲攻撃を。
敵POWUCで防御モードになった場合は目の前にボルトを落として動かします。
アドリブ歓迎
●邪魔しないで欲しいんだよ! 根は良い子なデッカイザーズ!
「……はぁぁぁぁ~っ……」
現れた鉄の塊に、老人はぺたりと尻餅をつく。
ここはアポカリプスヘル。文明復活の兆しは未だ見えぬ絶望の荒野。
そんな時代、その場所でかの老人は一人細々と暮らしていた。
他の家族もすでになく──、しかし、今は頼れる存在が傍に立つ。
様々な人を背中に乗せて、彼らの前に止まる団子虫のような機械の群れ、デッカイザー。
先頭であるデッカイザーに跨がるホワイトカラーの男は、満面の笑みを浮かべていた。
「凄い、オトモダチが一杯です! ドラゴン様ヒャッハーッ!」
『ドラゴン様ヒャッハーッ!』
『どらごん様ひゃっほーっ!』
ホワイトカラーに続く人々とデッカイザーの声に、ヨスミのお爺さんも完全に腰を抜かしてしまったようだ。
普通に怖い絵面だからしょうがない。
オトモダチ扱いされた彼らの内の一人、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はちらりと、たゆたう桃色の髪を揺らして一瞬だけ老人へ目を向けた。
「……カルト堕ちしたお爺さまの改心ではなかったのですね……恥ずかしい」
結論で言えば違うけど、このジジイちょろいから即堕ちだよ?
メイド服に疎開者のような大きなリュックサックを背負い、手にはグリモア猟兵から受け取った件の紙袋と重装備だ。
リュックの中身は調理器具や食料食材であるが、装備は装備なのだ。
『ねーねー、オトモダチ。あのお爺さんとは仲良くできるけど、他はダメなんだよー』
『そーなんだよ~』
「なんですって?」
オトモダチ一杯にトリップするおカルト集団を現実に引き戻すデッカイザー。そのまま妄想の中に生きていてもらいたいが、そうもいかないようだ。
デッカイザーたちは中腹部の装甲を展開し、中から現れた五指の腕で彼らを降ろす。
『あの人たちは猟兵だから、倒さないとダメなの』
『敵だよー、敵、敵!』
「猟兵?」
「奪還者のことかしら?」
『早く離れて~』
緊張感のない口調であるが、今までにない断固とした態度に戸惑いを隠せない人々へ離れるようお願いし、猟兵らへと向き直る。
群れの一機が先頭に立ち、その敵意を受けるように前に進み出た加賀・龍顕(武神・f25359)と対峙する。
『邪魔しないでどっか行って!』
『そうだそうだ!』
『しっしっ!』
威嚇するように後部の尻尾を逆立てて振るデッカイザー君。後方に続くデッカイザーも、蟹のように鋏型メインアームを振り上げ威嚇する。
ぷりっとしてて可愛い。
「ふむ、敵意はあれども悪意は無しか。しかしのう」
片目を閉じて白髭を撫で梳く。鋭く覗く眼は強い光を帯びて、デッカイザーを睨み付けた。
「悪意は無くとも人々の家を、拠り所を荒らすのはいただけんな。悪いが、退く訳にはいかんのじゃ」
「その通り。可愛らしいですが、ちょっと危険すぎるので処理が必要ですね」
龍顕の背後から顔を覗かせて、才堂・紅葉(お嬢・f08859)も言葉を繋ぐ。
退く気配のない彼らにデッカイザーズは『どうする?』とばかりに顔を見合わせたが、おカルトなオトモダチに更に離れるように、ついでに腰抜かしたジジイにも離れるようにお願いする。
「なんだか、悪い子という感じじゃありませんね」
「そうじゃなあ」
ヨスミのお爺さんを助け起こしながら、残念そうに龍顕と桜花は息を吐く。
龍顕の言葉通り、彼らに悪意は無い。だからこそ友好的な態度を人間にもするが、その機械の頭脳に刻まれた行動目的は人々の為に資機材を収集する事にある。
暗黒の竜巻による影響が彼らをオブリビオン化し、群れの維持の為の略奪へと目的が変化してしまったのだ。人々の為の行動をプログラムされたお陰か略奪はしても、不必要に攻撃的な態度を取らず、友好的に接するという矛盾が見られる。
だが、それでも彼らはオブリビオンであり、猟兵とは敵対する。そして彼らが存在する限り、主要施設は破壊され材料として略奪されるのだ。
無節操に規模を広げようとする彼らの行く末は自滅に他ならない。デッカイザーについていく人々も、地に足のつかぬ生活ではやがて飢え、絶える事となるだろう。
悪意の有無は問題にならない。被害を拡大するその存在に問題があるのだ。
『よーし、後悔してももう遅いぞーっ、やっちゃうぞー!』
ヨスミのお爺さんが離れたのを確認すると、先頭のデッカイザーが身震いして、逆立てた尾の装甲を展開する。
空へと打ち上げられたのは閃光弾。群れの中からも幾つかそれらが放たれて、まさかと紅葉は冷や汗を垂らした。
続け様に四方八方から上がる閃光弾は、こちらが囲まれている証だろう。徐々に強まる地響きの音がそれを報せていた。
●集結、荒野を渡る黒き波!
『敵襲だーっ!』
『急げ急げ~っ!』
これは絶景だ。
四方八方から迫る黒の波に、思わず呟いたのは誰だろうか。眼前で得意気なデッカイザー君はさておき、このままでは彼らの到着だけで轢き殺されかねない。
「だいぶ増えましたね、オトモダチ」
「そうですねぇ」
のんびりと呟く彼らの言葉から、デッカイザーズが害虫としか見えなくなった猟兵ズであるが。
この光景な対しても笑顔のままのドラゴン様ヒャッハー軍団の面々には背筋に走るものがある。
話には聞いてはいたが、見ればやはり異様だとは龍顕の言。
「ヨスミ殿、奴らはヨスミ殿を取り込もうと洗脳を仕掛けてくるやもしれん。心を強く持つように。
ヨスミ殿が耐えている間にカルト共のよりどころ、あのデッカイザーとかいう者たちは我々が退治てくれよう」
「……奪還者様……!」
肩を叩かれ、希望を見出だすヨスミのお爺さん。
そのまま離れれば、いよいよと迫るデッカイザーたちの群れ。当初からいる群れのひとつに動きがないのは、ヨスミのお爺さんが近いからだろうか。
(とは言えこの状況をどうするか)
周囲を見渡す紅葉であるが、その背後から龍顕は桜花とともに二人を抱えこんだ。
「な、なにをっ?」
「状況が状況じゃからのう、許せよお嬢様がた」
その体より溢れる闘気、真夏の太陽の如くぎらついて瞬間、眩い閃光は光量を絞り、白金へと色づいていく。
瞬く暇すらなく空へと舞い上がる龍顕。桜花は何が起こったのかと目を白黒させていた。
「甕星流の奥義の一つじゃ。これで一旦、包囲を抜けるぞ」
ユーベルコードによる甕星流奥義、【香香背男(カガセオ)】無尽蔵に溢るる闘気として力へと変換する、その名の如き奥義である。
『あっ、お空に逃げた!』
『撃てーぃ、対空放火だぁ!』
『どっかーんっ!』
眼下のデッカイザーズが尻尾を逆立てて振るい出せば、装甲が展開し赤色の機銃や誘導弾と思われる発射装置が顔を覗かせる。
「ぬう!」
凄まじい白煙を上げて迫り来るそれをするりと抜けて龍顕は唸る。
当たる気は更々ない。しかし、数が多すぎる。
「お任せを!」
「援護します!」
龍顕に抱えられた二人が、各々の得物を構えた。片手で扱える程に軽量化された【軽機関銃】を構えたメイドと、対UDC用の自動詠唱機構を備えた【アサルトライフル】をレイダーも真っ青な笑みで構える少女。
二人の連射は弾幕となり、地上から迫る白煙を次々と貫いて誘爆させる。
『わ~ん!』
『たっくさん攻撃されてるよーっ!』
空から降り注ぐ弾幕の雨霰に、緊張感はないまでも慌てふためくデッカイザー君たち。
烈火のような敵の攻撃に生じた間隙を見逃さず、即座に空を駆ける龍顕。そこで敵の攻撃を迎撃する紅葉は、群れのひとつが妙な動きをみせていることに気がついた。
「……あれって……」
小銃のスコープを覗けば、包囲を狭める黒い波の一角が前触れもなく進路を変えて、後続に大きな影響を与えている様子。
先頭のデッカイザーは嬉しそうに何かを──、締め付け材を拾っている。
所詮は機械なのだ。戦闘行為よりも収集行為の優先度が高く設定され、このような結果となっているのだろう。
「なるほど。大分効果があるようですね、グリモア猟兵のくれた物は」
「どうかしたんですの?」
紅葉の言葉に疑問符を見せた桜花へ眼下の光景を指し、同時に崩れた包囲網の中に戻るよう龍顕に言う。
より群れに混乱を来す為の処置。龍顕は小さく唸ると了承し、二人を地上へと降ろした。
「早速、試してみましょう。それっ!」
手に持つ茶色の紙袋から、豆でも撒くように部品を投げつける桜花。警戒して前進しながらも尻尾を逆立てたデッカイザー君たちであったが、すぐにその正体に気づくと興奮して声を張り上げる。
『わーい、ボルトだー!』
『ネジだ~、ネジネジ!』
『あの猟兵、もしかして良い人?』
『どったの?』
『わ~ん! 急に止まらないでよー!』
中腹部の装甲を展開し、サブアームを数本伸ばして我先にと部品を目指すデッカイザーズ先頭組。しかし状況の分からないデッカイザーズ後続組はその動きに対応できず玉突き事故が発生。やはり緊張感のない悲鳴を上げているものの、圧倒的物量に踏み潰されるデッカイザーの面々もある。
アホ可愛いが少し可哀想でもある。
「…………。これってあれですね、鯉の餌やり? のような」
「確かに、地上だと鯉もこんな感じになりそうですね」
後も先も考えない食い付きっぷりに思わず頬を引き吊らせる桜花と紅葉。だが、それを見てばかりもいられない。
迫る群れを中心に、こちらへ近づかないよう散らしながら銃撃する桜花。進路を変えるデッカイザー君たちの側面を叩きつつ損害を与え、またこちらに近づかないようボルトナットの餌投げを行い余念がない。
「数が……数が多いですの……!」
「ごめんなさい桜花さん、もうしばらく耐えて!」
歯を食い縛る桜花へ言葉を投げる紅葉。この数を相手に足止めを願うのは無茶な注文と言えるが、後続の砲撃の囮となっている龍顕にこれ以上の援護を頼むこともできない。
だが彼女が桜花に頼み込めたのは、同じ猟兵であるだけでなく、共に戦った経験があるからこそ、その実力を信じているのだろう。
以前の戦場と比べれば、デッカイザー君たちでは緊張の度合いが違うのだ。
とは言えその物量、危険に変わりはない。紅葉は急ぎ包囲を狭めるデッカイザーズの内、特に数の多い群れを確認する。
「そこ!」
群れの進行方向目掛け、槍投げの如く投擲するアルダワ特殊鋼製の【六尺棒】。
狙い違わず地面に衝き立つそれの先端には、括りつけられた茶色の紙袋の姿。
『ありゃ、お空から何かの部品が降ってきたぞ!』
『ほっときなよ~』
数体はそれに気付いたようだが、資材としての価値は低いと判断したのか拾うつもりもない様子。
ならばこそ好都合。紅葉はにやりと笑い、六尺棒が群れに飲み込まれると同時に起爆装置を使用、六尺棒が倒れる直前に紙袋が炸裂し、四方八方へ大量の締め付け材が拡散する。
『おおっ!』
『あーっ!』
嬉しい悲鳴を上げて錯綜する群れは、他の群れとも衝突し一気に混乱が拡散。最早、包囲網の体を成していない。
あちらこちらで互いにぶつかり合い、比喩でなく正に鯉のを思わせる跳ねっぷりとスクラップ化を見せるデッカイザーズ。
火薬で弾き飛ばした為に最後尾にも影響が発生し、対空放火の数も激減する。
「この瞬間を待っておったぞ!」
敵の攻撃が減り、余裕の出来た龍顕も締め付け材の投擲を行う。群れの状況に混乱している様子で足を止めたデッカイザー君たちの前へと投げ落とせば、それに気付いた周囲のデッカイザー君たちが正面から衝突してしまう。
更に敵が集中してしまえば。
「……甕星流──」
その身に纏う白金が輝きを増し、彼の前に幾つもの礫を形成していく。
渦を巻いて現れた白金の弾丸は大量で。
「弾気星雨!」
発射された攻撃はその名に混じる弾の雨もかくやと、一所に纏まるデッカイザーズをその装甲ごと貫き、爆音と共に荒野の砂塵を巻き上げた。
香香背男により強化された必殺の一撃から逃れる術なしと、龍顕は考えていたのだが。
「む?」
一方、桜花と紅葉も完全にこちらを見失ったようなデッカイザー君たちへの攻撃を続行中だ。
「おいでませ我らが同胞。その偉大なる武と威をもちいて、我らが敵を討ち滅ぼさん。
──【エントの召喚】!」
桜花の始動したユーベルコードは、木の牧人の霊を召喚するもの。神霊の力によりデッカイザー君たちの立つ地面が隆起し、地表を突き破る根が彼らを下から串刺しにしてしまう。
『うひゃーっ』
『動けないよーっ』
容赦なく貫かれているのだ、絵面は酷いものだが機械故か人工知能の性格故か、悲壮感が無いのが唯一の救いだろうか。
しかし、それでも迎えるのは生命体ならば死となる、破壊である。
「奪うだけでなく、仲間としてこの荒野に放逐された人々を養った貴方たちは、元凶とは言え誉められるべきです。
可能ならば、善き転生を」
希望を託した祈りの言葉。広範囲を纏めて吹き抜ける枯れ葉吹雪が、串刺しにされたデッカイザー君たちをばらばらに切り刻み、破壊した。
崩れ落ちた仲間を資材としてサブアームで拾い上げつつ、後続のデッカイザー君たち俄然やる気を見せるように鋏型のメインアームで、進行の妨げとなる氷柱のような根の棘を切り倒して行く。
『僕たち~、木材があるぞう。オトモダチ専用の燃料にするんだ!』
『おっけー。どらごん様ひゃっほーっ!』
仲間の残骸にも嬉々として集まり始めるその姿は、台所の天敵を連想させる。やめてよね。
しかし締め付け材ほどの優先度はないのか、あくまでも猟兵へ向かう道での回収だけだ。
とは言え作業の片手間、進行速度が大幅に減少し一纏まりになっている機会を猟兵が逃すはずもなく。
「一体、どうしてあんな物を集めているのかしらね。……まぁ、一先ず……」
もっともな疑問を溢しつつ、紅葉は足を開いて腰をしっかりと落とし、対衝撃体勢を取る。
その両手には青い紋章が揺めき、握られるのは古き刻印の成されたシングルアクションの【古びたリボルバー】。
『コード:ハイペリア承認。高重力場限定展開ランク2実行』
抑揚の無い男の声が何処からともなく流れ、紅葉の構えた拳銃に不穏な空気を纏う。弾倉に装填された弾丸はただの弾丸ではない、重力子マグナム弾。
そして、彼女の両手に浮かび上がる【ハイペリアの紋章】は、重力術式の刻まれたマグナム弾にその力を相乗し、着弾地点を擬似重力崩壊現象へと導く。
つまりは、彼らの行動や目的の疑問を一先ず置いて。
「……一先ず……まとめて、吹っ飛びなさい!」
獰猛な眼光をその双眸に宿し、引き金を絞る。
放たれた弾丸は、『よいしょよいしょ』と木の根を切り倒すデッカイザー君の一体に着弾し膨張、空間に刻まれる術式が力となって周囲の存在を中心へと引き込んでいく。
同時に、その力点に耐えられなくなった空間は重力崩壊を起こし、爆発を生じた。
重力崩壊とは言え、擬似的な事象だ。飲み込む質量も少なければ原子に纏わる威力もなく、しかし壊滅的な力で行進する群れの一角ごと消し飛ばしたと思えたものの。
「…………」
砂塵から現れた数体のデッカイザー。
身を縮こませていた彼らは爆心地点にいた内の生き残りであるが、その身に傷らしきものは見当たらない。
『ふ~。危なかったーぁ』
『【熱血防御モード】になって正解だったね!』
ネーミングセンス。
彼らデッカイザーの大きな特徴は、その行動目的の他に体をよろう電磁塗布装甲にある。
各装甲を全て閉じることで彼ら自身動けず、攻撃も出来ないが装甲表面に形成された電磁膜が効果を発揮し、攻撃を無効化するのだ。
電磁界如きで重力を防げる訳ないと思うが防いでるからしょうがない。ユーベルコード、ここに極まり。
『そういう訳だから、ジッとしてる間はそっちの攻撃なんて効かないもんね~!』
へへーん、と得意気に龍顕の攻撃から生き残った個体が解説する。
これアカンやつ。てかもう周りの奴ら破壊されてる時点で効果覿面なんだけど。
「動かなければ、のう」
龍顕は空に浮かんだまま、手元の締め付け材に目を落とした。これやっぱりアカンやつ。
桜花の持つ締め付け材へ、彼女とともに視線を向ける紅葉と明らかに対処法が判明してしまっている事に気付かないデッカイザー君たち。
未だに締め付け材を拾って混乱の直中にある彼らに希望はあるのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月守・咲凛
どろごん、どろごん、ひゃっはっはー。
音程の外れた適当な鼻歌を歌いながら、もらったネジをひとつひとつ地面に置いていって、ヘンゼルとグレーテルのようなネジの道を作っていきます。
最終地点に【気紛れな迷路】で落とし穴を作って、落とし穴の上に残ったネジをまとめて置いておくのです。
落とし穴に落ちた敵さんからレイダーキングの情報を聞きますけど……言わない?じゃあ撃ちますね〜。
情報漏洩の如何に関わらず殲滅しておきます。
おじいさんにはとりあえず敵の攻撃から守るポーズでも見せておけば大丈夫でしょうか?戦えない人なので守るべき対象だとは思うのですけど、命の危険とかが全くないのでなんとなく扱いが雑になります。
●この人でなしっ! 情け無用の殲滅戦!
話は遡ること十数分程前。
青い髪と赤い瞳、儚げな白い肌を守る機械の鎧に身を包んだ少女が一人、荒野にぽつんと佇んでいた。彼女もまた、猟兵である。
デッカイザー君たちが信号弾を打ち上げる頃、ヨスミのお爺さんとまだ合流していなかった月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は間昼間でも目立つ光の玉を見上げていた。
続け様に放たれるそれらと地響きの音にふむりと頷き、グリモア猟兵から貰った茶色の紙袋を持ち上げる。
多少振ったところで音がでないほど、中にぎっしりと締め付け材が詰まっている。それなりの重さであるが、袋を開けた咲凛はひとつずつ摘まみ、森に連れられたヘンゼルとグレーテルよろしく、地面に並べて行く。
「どろごん、どろごん、ひゃっはっはー」
音程の外れた、というよりも元より守るべき意思のない適当な鼻歌を交えての行動は、迫るレイダーを釣るためのもの。先程のデッカイザーズの狂乱ぶりを知らない者からすれば不足に過ぎると思うだろう。
そう、彼女の仕掛けたこの餌が、包囲網の穴となった訳だ。
『おっ、ネジ発見!』
『わ~っ! 急に方向転換しないでよーっ!』
先頭の一体が方向を変えたことで後続のデッカイザーが対応できず、次々と群れの行進に巻き込まれていく。
しかしそれも、やがては先頭に続いて大きく進路を変えてしまう。
『ねーねー、なんでこっちに進むの?』
『わかんない』
『行けばわかるさ、ゴーゴー!』
君たち考えるのを放棄するのは良くないぞ。
しかしその無頓着な性格、あるいは思考パターンのお陰で大いに助かるのも事実。
先頭のデッカイザーが拾えなかった締め付け材は後続のデッカイザーが拾いつつ、他にないかと探す彼らは咲凛の姿を確認する。
『あっ、あの子の持ってる紙袋。あの中にまだまだありそうだよ』
『でもあの子、猟兵じゃない?』
『きっと良い猟兵さんなんだよ。おおーい、部品くださいな~!』
疑うことを学んで欲しい。
咲凛は能天気に鋏を振ってアピールするデッカイザー君に気づくと、離れた所に紙袋を置き脚のスラスターを起動、空へと舞い上がる。
デッカイザーズは『やったー』とばかりにサブアームで少女へ手を振る。
先頭のデッカイザーが拾い上げれば、中々の主にほくほく顔だ。表情はないので雰囲気でしかないが。
『よーし、早速これを──、うひゃーっ!』
突如、彼の足下が解けるように消え去り、地中へと落下する。
これは咲凛のユーベルコード、【気紛れな迷路(クッションラビリンス)】による迷路作成を応用した落とし穴だ。彼女の気分で自由自在に操れる布っぽい謎の物体で穴を隠し、彼が乗ると同時に解除したのだ。
『ストップストップ! 落とし穴だーっ!』
『押し出される~!』
『うわーん!』
デッカイザーたちの叫びも虚しく、後続が早々と前方の異常に気付くこともなく。
群れの大部分が地下へと落下した。下層のデッカイザー君たちも群れの重みに耐えられず破壊されたようだ。
『僕たち、大丈夫~?』
『うーん、上の僕たちは大丈夫だけど下はダメそうだね』
『他の僕たちも呼んで、出られるように穴堀りしよっか』
『さんせーいっ!』
地上に残った十数の個体は他の戦力を呼びに穴から離れる。それを見計らって穴へと近づく咲凛。
「こんにちは~」
『あっ、猟兵だ。こんにちは!』
『こんにちは! 皆、気をつけろぉ、敵襲だ~!』
挨拶を返しながらも慌てふためくデッカイザー君たち。そもそも落とし穴を作った張本人であるが、少女の姿を確認した者はとっくに穴の底でお煎餅状態だ。
それを活かして、出れずに困っているのかと咲凛が問えば、素直に困っていることを明かすデッカイザーズ。
「質問に答えてくれたら、出るの手伝うのです」
『本当? やったーっ』
『良い猟兵さんだ!』
似たような考えの個体はお前らの下敷きになってるぞ。
それはともかく、すっかり信用した様子のデッカイザーズへ咲凛は言葉を投げる。
「どうして部品を集めているのです? どらごん様とかいうのと関係あるんですか?」
『どらごん様は人間のオトモダチが言ったんだよね?』
『ねー?』
『どらごん様っていうでっかいオトモダチがいるんだけど、部品とか色々足りないみたいなの。だから僕たちが集めたり、整備してあげてるんだー!』
『ねー!』
なるほど。
元気に答えるデッカイザーズへ少女は頷く。未完成、あるいは修理中の体を完成体へと近づけている個体がいるのだろう。
それが今回の頭目となるレイダーキングか。どちらにせよ、叩くなら今を置いて他にない。
「ご協力、ありがとうございました」
『はーい。じゃあ出すのを手伝って~!』
「わかりました。じゃあ、撃ちますね~」
『えっ? うひゃーっ!』
『うわーん!』
『人でなし~っ!』
両腕部に装備された兵装ユニット、【トマラナイアシオト】の装甲が展開され、砲身を見せるガトリング砲とキャノン砲。
慌てるデッカイザーズを容赦なく、慈悲なく破壊する少女の顔に色もなく。非情な光景のはずが、やはりデッカイザー君たちの緊張感のない口調が悲惨さを軽減しているようだ。
「ふう」
『あっ、猟兵だっ!』
『僕たちがやられちゃったー!』
落とし穴に落ちたデッカイザーを屠り、一息つく少女の背後では仲間を引き連れ戻ってきたデッカイザーの姿。
彼らの声に振り向き様、照準を合わせる咲凛であったが敵機はすでに踵を返し、仲間らの所へ逃げ出しているようだ。
「私も、皆さんの所に行きましょう」
髪の結晶体が陽の光を浴びてきらりと輝き、空に舞う少女の姿を彩った。
●死闘・決闘・総力戦、デッカイザー!
次々と破壊されていくオトモダチことデッカイザーの姿に、ホワイトカラーは目を見張る。
一刻も早く状況を打開せねばならない。男はヨスミのお爺さんを仲間に引き込み、もといオトモダチとして猟兵たちの説得を考えていたが、お爺ちゃん全くオトモダチになってくれない。
グリモア猟兵の予知の状況と違い、仲間がいることが彼の心を強くしたのだ。
「仕方ありませんね、ならば少々強引な手を使ってでもオトモダチになっていただきます。
カムヒア、力のオトモダチ! 力瘤三兄弟!」
『ドラゴン様ヒャッハーッ!』
センスが無さすぎて逆にセンスがあるのではないかと錯覚する名で呼ばれたのは、風にも負けずがっちり固められたモヒカンと、照りつく太陽にも素肌を晒した上半身裸の屈強な男たち。
否、肩パッドやベルトを着けているため裸ではないが変態的である。
「ヒャッハーッ」の掛け声が素晴らしく似合う彼らはドラゴン様ヒャッハー軍団の問題解決担当、つまりは見た目通り力押しの男たちだ。
「全くよォー、この軍団に入らないなんて馬鹿見てるぜジジイ~!」
「ヒャッハーッて言ってりゃおまんまにありつけるんだ、入らないテはないぜ~っ!?」
「今は狼も豚になる時代よぉ、ゲス同士仲良くしようじゃね~か、えーっ、ジジイよ~っ!」
ボディラインや各部位の筋肉をアピールするポーズをつけつつ、ジジイに迫るモヒカンども。マッスルポーズは威嚇ではなく、己のマッスルをかっこよくアピールする為のものだぞゲロカス。
その脅威的な動作にオトモダチたちも思わず生唾を飲み込む。
「ま、まるで心の底からそう思っているような迫真の演技!」
「あれで墜ちないオトモダチは今まで一人もいなかった。さすがは力瘤三兄弟!」
『ドラゴン様ヒャッハーッ!』
多分、心の底からそう思ってるんじゃないかな。
ヨスミのお爺さんはしかし、迫るモヒカン筋肉を睨み付けると腕を組み──、否、自らの胸と股間を隠すように手をやった。とっくに隠れてるぞジジイ。
「そんなこと言ってこのヴィンテージな魅力を醸す老骨を乱暴する気なんじゃろ? エロ同人みたいにっ!」
『?』
? 何ゆってんだジジイ。
「それ以上、近づくんじゃない~っ! それ以上近づけば、ワシは舌を噛み切って死ぬぞ~っ!」
「はわっ!?」
「うっく!」
「…………! ジ、ジジイ~っ! 何がお前をそこまでさせるのだぁぁ~っ!?」
一瞬、時が止まった中で爆弾をぶちこんできたジジイが理解できない様子のモヒカンども。多分、皆わからないのじゃないかな。
ヨスミのお爺さんは、モヒカンの問いに不適な笑みを見せた。
「男が漢である為に……必要かね……理由が……?」
やかましいわ。
モヒカンは「ぬぐぐぐ」と唸っていたが、しゃらくさいとばかりに足を踏み出す。
ヨスミのお爺さんの決死の覚悟に対し、力で押し通すことに決めた力瘤三兄弟。力担当だからしゃーないね。
だが、その足下に銃弾が撃ち込まれ荒れ地が砕ければ話は別だ。
「な、なんだぁ?」
「あ、あれを見ろ兄弟ィィーッ!」
「な、何ィィーッ!?」
分かりやすく驚きを現してくれた三人の男が双眼鏡で見つけたもの、それはデッカイザーズに囲まれながらもこちらを銃撃した紅葉の姿である。
力瘤三兄弟がこちらに気づいたのを彼女も察したようで、彼らより悪どい笑みを見せて喉元をかき切る仕草を見せた。
「……あ、あんな所から……」
「あれで女か?」
「……マブいぜっ……!」
口を慎めゲロカス。
戦力差と同時に何やら色々と悟った様子のモヒカンども。彼らの目が他に向いている間に、上空より舞い降りた咲凛がお爺さんを拐っていく。
「オ、オトモダチがっ!?」
舞い上がるジジイに驚愕するドラゴン様ヒャッハー軍団。
ヨスミのお爺さんは見知らぬながらも自らを助けてくれた咲凛を、他の猟兵らと同じく奪還者仲間だと考えているようだ。
「何度も危機を救っていただき、ありがとうございます!」
「いえいえ。じゃあ、この辺りでいいですね~」
「へ? ──ぎゃふんっ!」
彼の家に影を作る、巨大な岩塊の上に雑に放り投げる咲凛。危機とは言え命の危険を感じないやり取りに、少女の対応も大変雑なものとなってしまっている。
ヨスミのお爺さんはとりあえず助かったかと辺りを見回して、すぐに顔を青ざめさせた。
「…………っ、……こ、これは……どうやって降りればいいんじゃ……?」
『ゴーゴー!』
『ひゃっほーっ!』
「ぬう!」
自らの体を台として。
次々と乗り重なり、レールのような高台と化した群れの上を走り、跳躍するデッカイザー。
龍顕は即座にかわすが、メインアームやサブアームを伸ばしたデッカイザーらに危うく捕まる所だ。
『うわーん!』
『惜しいっ!』
勢い良く飛び出したはいいが、戦果を上げられずにそのまま地上へ激突、破損するデッカイザー。それでも気にせず突っ込んで来るのは、機能停止に対する恐怖がない故か。
(ならば!)
孔雀の羽が如く、広げた腕を回し空間に作り出した波。揺蕩う波動に導かれて渦を巻き現れる光の弾丸。
「つぇいっ!」
放たれた闘気の礫が足場となるデッカイザー群体の中腹部を直撃。力の玉は機械の装甲を抉り貫き、龍顕の腕の振りに合わせて虚空を巡り、次々と穴を開けていく。
「……甕星流、操星奪命……!」
破壊された敵機は上部を支えることができず数多のデッカイザーたちとともに地上へ落下していく。
「学ぶ力はあるようだが、死に対する恐怖がないことが致命的じゃな」
防御を考えぬ猪突猛進。打撃を受ければ大損害を招く。しかし数の暴力はまだ翳りを見せていない。
『まだまだまだまだーっ!』
『一斉砲撃だーっ!』
落下し地面に激突する間際までも誘導弾を狙い射つ敵の姿に思わずほぞを噛む。態度や口調はともかく、敵意は本物だ。対象の撃滅の為に自らの被害はもちろん状態さえも省みない。
「くっ!」
迫る白煙に自らの闘気を放射して迎撃するも間に合わず。
しかし現れた刹那の光。拡散するレーザー光が誘導弾のシステムを焼き切り、空飛ぶ木偶と化す。
「大丈夫ですか?」
「猟兵かの? 助かったわい。わしは加賀・龍顕じゃ」
「月守・咲凛、よろしくなのです」
変調式火線砲【シュンリン】を携えて少女。ビームの収束率を変えることの出来るこのライフルで、咲凛は誘導弾の迎撃を行ったのだ。
互いに空を飛ぶことが可能。視線を交わして頷くと、デッカイザーの頭上を高速で飛翔する。
『も~。弾幕薄いよー、何やってんの!』
『速すぎて照準が追いつかないよ~!』
高速で飛び交い的を絞らせないようにする二人の影は空を跳ね、あたふたと右へ左へ火線を向けるデッカイザー。龍顕と咲凛からすれば足の止まってしまった集団などただの的だ。
弾気星雨やビームを収束させたシュンリンに薙ぎ払われるデッカイザーの群れは然したる抵抗も出来ていない。
『このままじゃ全滅だよ~!』
『うーん。しょうがない、目標変更ーっ!』
『りょーかーい!』
メインアームを展開、目標を地上で構え、その他の群れを迎撃する紅葉、桜花へ向ける。
「紅葉さん、敵の増援です!」
「今でも手一杯だって言うのに!」
軽機関銃を持つ桜花を背中越しに、六尺棒を構える紅葉。
跳ねるように迫るデッカイザーズらに押し潰されないよう、そのreachでもって弾きつつ、桜花の援護射撃で確実に数を削ぐ戦法を取るものの、対応数にはすでに限界が見える。
その体躯からまともに打ち合う訳にもいかず、受ける重圧は如何ほどのものか。
『ぎゅんぎゅーん!』
『押し潰せーっ!』
「可愛い声で怖いことを!」
「えいっ!」
『うわーん!』
紅葉は声を上げるデッカイザーを六尺棒で、その影に隠れてさりげなくそろそろと、近づいて来たデッカイザーを桜花は退魔刀と同じ素材で製作された【銀盆】で打ち返す。
しかし物量の前にじりじりと間合が詰められていく。すでに餌となる締め付け材もなく、絶え間ない攻撃にユーベルコードを始動させる暇すらないのだ。
「紅葉さん、いよいよとなれば私がどうにか時間を稼ぎますから、先程の一撃をお願いします!」
「…………、多少の無茶はやむを得ない、か。分かりました!」
『いやっほーっ!』
覚悟を決めた二人の前に、突如として仲間を踏み台にデッカイザーが躍り出る。
身を呈して紅葉の前で盆を構えた桜花。だがデッカイザーは着地すると攻撃をするでもなく、その身を固めた。
『今だ、一斉発射~!』
「!」
前衛デッカイザーズはメインアームを自らの体内へと収め、がっちりと防御の体勢を取った。
燃え立つような電磁塗布装甲の電磁界がデッカイザー君たちの周囲の景色を紫色に歪めている。
自らを壁とし、後衛デッカイザーズからの集中攻撃。迫る白煙から覗く弾頭へと二人は銃撃するも、誘爆する炎の中から次々と新たな誘導弾が顔を見せる。
「ま、ま、まずいのです!」
咲凛は先程と同じくシュンリンを広域拡散し誘導弾を無力化するも、その数は衰え知らず。
龍顕の飛行速度でも間に合わないかという場面に、桜花は思わず盆を頭の上に屈み込み、紅葉も遮蔽物を探して視線を滑らせる。
敵機に囲まれた状態。絶望的な光景に思わず唾を飲み込む紅葉の腕を、桜花が引いた。
「こちらです!」
『あーっ!?』
直後に降り注ぐ火薬の塊は大爆発を巻き起こし、デッカイザーの円陣を中心に火柱を噴き上げた。
巻き上がる熱風を払い、苦い顔を見せる龍顕から僅かに遅れて咲凛が顔を見せる。
爆心地となった大地は大きく抉れ、防御姿勢を取ったデッカイザーズの姿があるのみ。
「あの二人も猟兵、生きているとは思うが……無傷とも……」
「……そんな……!」
姿の見えない二人を探すその下で、敵を倒したとデッカイザー君たちが万歳をする中。
前衛となるデッカイザーズは一機の仲間を見つめていた。
『どうする?』
『うーん。他の僕たちは喜んでるみたいだし』
『じゃあ僕らも万歳しよっか!』
『おっけーっ!』
明らかに不安要素を放置する提案と、それを受け入れるデッカイザー君。他の個体らと共にメインアームを振り上げて万歳をしているが、君たちそれ人間社会で通用しないからね。
と。
無邪気に喜ぶ彼らの下から、木の根が槍の如く突き上げた。
『うわーん!』
『うひゃーっ!』
その光景に『あれーっ!?』とばかりに驚く阿呆はさておき、龍顕は嬉しそうに口角を引き上げた。
「うむ、よくぞ無事じゃったな。紅葉、桜花!」
串刺しとなるデッカイザー君たちの下から這い出す女が二人。
「げえっほ、げほ、げほっ!」
「うぐぐ、喉が、鼻が、……肺が痛いです……!」
煤にまみれて必死の顔を見せた二人の姿に、こてりと首を傾げた咲凛。
「…………、無事?」
「い、いやまあ、うむ」
思いの外に元気そうではあるが、明らかに無事とは言えない様子に龍顕も言い淀む。
あの爆発の直前、屈み込んだ桜花は正面のデッカイザー君の足下ががら空きなのに気づき、咄嗟に紅葉と共に退避した。しかしそれだけでは爆発の熱から身を守れないと考えた紅葉は抱き合い、互いの顔を衣服で押さえて内蔵を守ろうとしたのだ。
結果として肺が焼かれるようなことは無かったが、ご覧の通り無傷とはいかずも元気な様子である。
「……よくもとんでもない目を見せてくれたわね……!
返しは痛いわよ!」
『けけけ、結構です~!』
怒りに歪む鋭い眼に射抜かれて、デッカイザー君は万歳の手がそのまま降伏の形に変わったようにも見える。
無論、彼らの言葉に聞く耳など持たず、熱で焼けたリボルバーを構うことなく引き抜いて、諸手に光を宿す。
封印解除。
「いっけぇええっ!」
放たれた超質量の弾丸は、先程よりも広範囲のデッカイザーズと大地を吸い込み、大爆発を引き起こした。
大地から覗く木の根がその爆風から紅葉を守り、さすがに二度目は嫌だと桜花は胸を撫で下ろす。
『やっぱりこのままじゃ全滅だよ~!』
『うーん。しょうがない、戦略的後退ーっ!』
『りょーかーい!』
みんなまとめて元気良く。
踵を返すデッカイザー君について、疑問の余地もなく荒野を猟兵から逃げるように走り出すデッカイザーズ。
「逃がすかぁーっ!」
余りにもあっけなく、と言うには甚大な被害を受けてはいるが逃げ出す彼らの背中に蒸気バイクで追い縋る紅葉。
『うひゃーっ、おっかない!』
『あの丘の後ろに隠れろぉーっ!』
大分削がれたとは言え、大量な数での移動。それも目の前で叫ばれて行き先が分からないはずもなく、追い立てる紅葉が丘を見据えてハイペリアの紋章をその手に輝かせると同時。
「紅葉さん、その丘から離れるのです!」
咲凛の声が響く。
少女の腕にはめられた【見た目は可愛い腕時計】、実は空中投影も可能な情報端末である。シマエナガバージョンである本機から投影されたシマエナちゃんの情報により、拡大する熱源反応を補足したのだ。
ただ敵が集まっただけではなく、数値を上昇させる要因のひとつとして動力炉の直結、即ち何らかの方法で合体していると咲凛は予測した。
そして、彼女の言葉に急ブレーキをかけた紅葉の目に、丘の後ろから現れた巨大な百足の如き鉄の怪物が立ち上る姿が映る。
『超・さいきょーっぽい合体!』
『超・どきゅー地上走行戦艦!』
『グレート・デッカイザーだ!』
さいきょーじゃないのね。
姿が見える部分だけで数十メートルはあろうかと言う巨大な百足が、デッカイザー君たちの集合体だ。各部の装甲を展開し、露出した内部を組み合わせて合体したグレート・デッカイザーは、別に人口知能が統一されているわけでもないのに完璧な統率でもって紅葉を複眼で見下ろしている。
この為に単純過ぎる思考にしたのかもしれない。
「……あははは……どうも」
『どうも~! それじゃいっくぞ僕たちー!』
『とっつげきぃ~!』
『ゴーゴー!』
『ひゃっほーっ!』
「どわーっ!」
色気も何もない悲鳴を上げて、今度は紅葉が後退する番だ。地上に叩きつけられるように着地したグレート・デッカイザーの前部はそれだけで地震かと錯覚する衝撃を生み、大地を揺らす。
各デッカイザーがそれぞれ足となって電磁塗布装甲を利用した連結を行っている為にダメージはないようだが、それがなければ自壊しかねない質量だ。
逆に言えば、それが彼らの弱点だ。
グレート・デッカイザーの性質を見抜いた猟兵たちは即座に動きを見せる。
「一手は私にお任せ下さい。エントの召喚!」
桜花のユーベルコードによりグレート・デッカイザーにも負けず劣らずの巨大な木の根が大地より突き出せば、機動性を持つ彼らはこれを当然の如く回避、その先の紅葉を追う。
「今なのです!」
その瞬間、グレート・デッカイザーの質量が足となるデッカイザー君たちへ大きな負荷を与えた瞬間を見逃さず、シュンリンと収束火線砲【ハナシグレ】を組み合わせた大型ライフルにより、強力な火線を収束照射、電磁塗布装甲の電磁膜の弱まったデッカイザー君たちを焼き払う。
『おおっ、ととととと~!?』
『滑るぅう!』
大量にある足も、少しでも失えばその巨大な体を支えるのは不可能だ。回り込む動きを見せていたグレート・デッカイザーは踏ん張りが効かずに大地を滑走する。
「おおぉっ、せいりゃあぁーっ!」
滑る巨体の背中に向けて、大地に仁王立ち力を溜める男の姿。
その迸る闘気に衰えは一切なく、気合を爆発させて大地を支えに、迫るグレート・デッカイザーの横腹に拳を叩きつける。
噴き出す光は黒き巨大な壁を前に針にも見えようが、その力強い光源は正しく夜空の一番星。
それもそのはず、甕星流奥義、香香背男により強化された究極の拳なのだ。
合体だけですでに負荷のかかる電磁膜など紙も同然、その下の装甲ごと突き破り、そのまま反対側の装甲を蹴破って巨体から脱出する。
「はあっ、はあっ、よし、ベ、ベスト・ポジション!」
蒸気バイクの上で息を切らし、龍顕の開けた風穴へ銃口を向ける紅葉。
『コード:ハイペリア承認。高重力場限定展開ランク2実行』
「今度こそ、まとめて吹っ飛びなさい!」
輝く諸手から放たれた一筋の光はグレート・デッカイザーの内部を抉る。
炸裂した爆発は連結するデッカイザー君たちを巻き込み、戦いの終わりを告げる花火のように盛大な爆炎の壁を荒野に咲かせた。
「オトモダチの為に、あなた方は本当に、よくされたのだと思います」
だからこそ、これ以上の被害が増える前に。
桜花の慰めの言葉が彼らに届いたのかは分からない。だが咲凛は彼女の優しい心に、きっと届いたのだろうと焼けた鉄へ視線を向ける。
しかし、落とし穴の一件は特に省みることはしなかった。
●助けてどらごん様ーっ!
内部での連鎖的な爆発により、直結していたデッカイザー君たちは正しくまとめて吹っ飛んでしまった。
猟兵は互いの健闘を讃えつつもまず行ったのは、ドラゴン様ヒャッハー軍団の拘束だ。
とは言え縛るような物など一切ないが、デッカイザーとの人知を超えた戦闘を目の前で見た彼らが抵抗などするはずもなく、大人しく荒れた大地に正座している。いい大人がこの数で正座してるのは凄く心苦しい光景である。
ちなみにヨスミのお爺さんは力瘤三兄弟によりすでに救出されていた。やるじゃん。
「私、思うんですけど」
結局の所、抵抗出来ない力に対し、生きるために、そして生かすための道を選んだ彼らが悪人ではないと理解した猟兵たち。
桜花はひとつ、手を上げて口を開く。
「移動手段のなくなった彼等に生活方法を教えて差し上げて、ここを村にいたしませんか?」
デッカイザーによる大規模な破壊活動はお爺さんの畑にも影響を与えている。ならばいっそ人手を増やし、同時にデッカイザー君たちの残骸を利用して村を築く、というのも選択として正しいだろう。
ヨスミのお爺さんも助けられた本人である。彼らが悪人ではないことは重々承知のようだ。
「ワシ、野菜作りしかわからんが……特に反対する者がいないのなら……」
「い、いいのですか? 我々はここに略奪に来たのですよ?」
「そうかも知れんが、お主らなにも盗んでおらんじゃろ」
「……しかし……!」
「過ぎたことは、忘れようぜ?」
格好をつけてサムズアップ。すでに村長の風格を見せようとするヨスミのジジイに、ホワイトカラーの男は涙ながらに抱きついた。
これにて一件落着、アポカリプスヘルも文明復興の道を着実に進み始めたという訳だ。目出度い。
「?」
しかし大団円に不穏な水を差すアラート音。シマエナガちゃんが咲凛を呼べば、火花を散らし、残骸から身を起こすデッカイザーの姿。
しかしすでにぼろぼろの彼に戦う力が残っているようには見えない。
「それでも立ち向かうか。やはり、オブリビオンじゃな」
龍顕が哀れみを見せながらも止めへ向かうが、デッカイザーは一つの玉を空に打ち上げ、そのまま機能を停止する。
最期の抵抗か。拳を下げた龍顕に対し、紅葉は警戒を強めた。
「……信号弾……本命が来ます、お爺さんたちは戦いが終わるまで離れていて下さい」
振り返る紅葉の頭上で空を赤く染める閃光は、決戦の狼煙であった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『未完成のメカドラゴン』
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POW : 完成予想図
無敵の【完璧な機体を持つ姿】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : カラダ集め
非戦闘行為に没頭している間、自身の【心臓部】が【異常に発熱し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
WIZ : クラッキング
見えない【電流】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
イラスト:ひえのひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●空を泳ぐ屑竜。
信号弾が打ち上げられてしばし。
空に現れた赤い光は流星の如く尾を引いて、大地へと激突した。
地面を揺らし、巻き上がる砂塵から覗く赤の光は光源を強め、生み出す風が煙を吹き飛ばす。
扇いだのは鉄の羽、否、羽とも言えぬ鉄の塊。骨のような体に剥き出しの核、どう見ても完成形に見えないその体には部品になりそうにないものまで扱われた、屑の竜と呼ぶにも構わぬ風貌だ。
その装甲を繋ぐため、締め付け材をデッカイザーたちは集めていたのだろう。
彼らの残骸が山となる文明の滅びた荒野に鎮座する屑竜は、このアポカリプスヘルを象徴する光景として猟兵たちの目に焼き付いた。
彼を守るように、残骸の中から満身創痍のデッカイザーたちが姿を見せる。それは忠誠心か、それとも同じ大地に変異し生まれた仲間だからなのか。
鉄屑どもとの、否、鉄の魂を持った者たちとの決戦が始まる。
・月守・咲凛により、レイダーキングが現状全ての力を発揮できないこと、戦闘だけでなく資材の収集が目的であることが判明しています。
・レイダーキングとの決戦ですが、戦いを生き延びた十三体のデッカイザーが彼に協力します。
・デッカイザーは戦闘中もレイダーキングの整備を続け、修理・強化しますが防御能力も攻撃能力もなく、戦闘終了後には機能停止します。
・戦闘を生き延び知恵をつけた為、十三体のデッカイザーは回避も行います。修理中、材料集め中などに攻撃するか、範囲攻撃で巻き込みましょう。
・レイダーキングとデッカイザーは、デッカイザーの残骸を使っての強化修理を行います。
・レイダーキングは喋れませんが、人語を理解する高度な人工知能を持ち、彼の素材や行動などの隙を突いて自信を失わせる事が可能です。
才堂・紅葉
「蒸気王!!」
指を鳴らして召還する
でかい!重い!強い!の蒸気ゴーレムだ
こいつならレイダーキングにも当り負けしない
「……って、思ってたけど。きついわね……」
豪快に打ち合うが形勢は不利だ
まずレイダーキングがクソ強い
そしてこちらは損耗していくのに、相手は常に修理・強化されていくので勝ち目がない
こちらの優位は頼れる猟兵仲間の存在だ
チームバトルで勝とう
方針
レイダーキング相手の正面は可能な限り引き受ける
重心をしっかり落としたストロングスタイルで勝負だ
驚異的な頑丈さと【気合い】で耐えて、戦況の変化と勝機を待つ
勝機には奴を抱えあげ、バーニアジャンプからの雪崩式ダイヤモンドカッターを狙いたい
【アドリブ連携歓迎】
月守・咲凛
おっきいのです。でも壊しやすそう?
でっかいさんが補修しているのも面倒ですけどそっちは味方がやってくれるかな?私は竜の方を叩いておくのです。
あの赤いの……弱点ですよね?
露骨な弱点にちょっと警戒しつつ、とりあえずアジサイユニットで羽根を落としておくのです。
赤い部分をチラチラと気にしながら敵の攻撃を躱したりムラサメユニットでパーツを切り落としたりちまちまと戦っていきますが
……やっぱり気になるのです!
コード・パニッシャーのレーザー砲ユニットを召喚、髪のソラノナミダから魔力を供給してレーザーの一撃を赤いところに叩き込むのです。
加賀・龍顕
また、デカブツが出て来たのう。これは確かに「ドラゴン様」じゃわい。
まあよい。貴様を倒して今回の仕事を終えるとしよう。
『闘気』を纏い戦闘態勢へ。緒戦は『弾気星雨』『操星奪命』を織り交ぜて小手調べ。(何気に『弾気星雨』を撃つ際はデッカイザーを巻き込む様に)
『天舞星遊』により戦場は地上空中問わず。
敵POWUC対策
ほう、それがお主の理想の姿か……じゃが。
(ここで彼の素材となっているデッカイザーの装甲を手に取り、闘気を纏った拳で砕く)
この通り、強度が足りぬようじゃな。さあ、行くぞ。
(揺さぶりをかけてから一気呵成に攻め、体勢を崩させたところで『一撃必殺』を放ちます)
御園・桜花
「九頭竜でなく屑竜…なるほど」
「頭がたった1個しかなくても、着けた傍からボルトが零れる鉄屑でしかなくても、まだ動けるという一点だけは誉められても良いかもしれません。偉かったですね、デッカイザー君」
「…いえ、どう頑張ってもギリギリ動くだけの鉄屑です。デッカイザー君の献身的な介護がない限り動けない屑おじいちゃんです」
UC「精霊覚醒・桜」使用
シールド構え飛行しカウンターからの風の属性攻撃乗せシールドバッシュ
更に派手に部品をばらまかせる
「胴体も四肢も半壊以上…完璧なんて想像すら出来ない状態ですが?」
「デッカイザー君の資材で家を作りましょう。彼らは善き隣人でした…」
戦闘後スープ振る舞い村作りお手伝い
●決戦!! の前にですね。
レイダーキング、廃材を身に纏いながらも完全とは程遠い姿の巨大な兵器に付き従う十三体のロボット。
荒野に散らばる残骸の中、睨み合う猟兵とオブリビオンの間に静かに張りつめる緊張は、次第に勢いを強める炎にも似て。
「またデカブツが出て来たのう。これは確かに『ドラゴン様』じゃわい」
感嘆の声を上げて加賀・龍顕(武神・f25359)は自身の白髭を撫で梳かす。
続く月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)も赤い瞳でそれを見上げた。
「おっきいのです。でも壊しやすそう?」
『はーい、注目ーっ!』
出し抜けに声を上げたのは片眼が破損し、背中の装甲も剥がれたデッカイザーだ。
『よいしょ、よいしょ』とメカドラゴンの羽まで登り、人型のサブアームから箱状のスピーカーを持ち上げる。
『どらごん様はお喋り出来ないので、僕が代行しまーす!』
『おぉ~』
『偉い!』
それ必要?
猟兵側に流れた微妙な空気など気づくはずもなく、同型機に誉められて照れた様子のデッカイザー君。この状況に陥っても君たちは本当に君たちだね。
不動のドラゴン様の羽にすがりつき、何事か頷いたデッカイザーは猟兵らへ顔を向ける。
『えー、本日はお日がらも良く、暑い中にも関わらずお集まり頂きありがとうございまーす!
我々オブリビオンは日々、感謝の心を忘れず、猟兵の皆様と切磋琢磨し──』
『恨みの心を忘れず、じゃないのー?』
『違う違ーう。噛み砕かれたくなければイケニエを捧げよー、って言ってるんだよ!』
『ペグラティモンルユスレヘネパナトラギ』
『あ、この僕、言語機能が壊れちゃってる』
やいのやいの。
メカドラゴンは少し困ったように視線を羽のデッカイザーに向けると、双眸を瞬かせる。デッカイザー君は『あれーっ?』と声を上げて下に降りて行く。
『どったの?』
『交信システムが壊れてるみたいだから、無理に通訳しないでいいって!』
『へー、だからモールス信号を目の光で代用したんだね!』
割りと応用力あるのね君たち。
「のう、そろそろ良いか?」
溜め息を吐き、龍顕が声をかけるとデッカイザーたちは互いに顔を見合せた。
『じゃあ、部品集めるからもう少し待っててね!』
「待たないのです」
『うひゃーっ!』
こちらの好意につけこもうとしたデッカイザー君を、咲凛のキャノン砲が狙い撃つがすんでの所でかわされる。
どれもこれも満身創痍であるにも関わらず、こちらの攻撃に対応したデッカイザーに才堂・紅葉(お嬢・f08859)は目を細めた。
「どうやら、戦闘の知識を学習しているようですね」
「尻尾のないデッカイザー君もいますし、彼らに攻撃は出来なさそうですが」
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は言葉を切り、メカドラゴンを見上げる。彼らの台詞を鑑みれば、戦闘中にもこのドラゴン様の修理を行うだろう。咲凛から得た情報もある。
スクラップ寸前の廃材を寄せ集めて作ったような姿に、桜花は思案げに顎先へ手を置いた。
「九頭竜ではなく、屑竜……なるほど……。
頭がたったひとつしかなくても、着けた傍からボルトが零れる鉄屑でしかなくても、まだ動けるという一点だけは誉められても良いかもしれません」
自覚の有無はさておき、露骨に煽っていくスタイル。
メカドラゴンの目が光を強めると同時に、胸の赤い光も白煙を上げて光量を増す。
怒りか。どうやら言葉は通じるようだと龍顕は表情を引き締めて迎撃の構えを見せた。対してドラゴン様は──、しゅんとして頭を垂れる。
『あーっ! どらごん様に意地悪しないでよ~!』
『どらごん様が泣いたらどーするの!』
『えっ、泣くの?』
『あれーっ? 泣かなかったっけ?』
その兵器に落涙機能とかあったら真っ先に削ぎ落とすわ。
非難轟々のデッカイザーズに、構えた腕が自然と落ちる龍顕。打たれ弱くないですかねドラゴン様。
「……あー……、このドラゴン様も、もしかしてこういう感じの?」
「締まらんのう、どうも」
頬を引き吊らせた紅葉に、うんざりとした様子の龍顕。となればやりづらいと感じるのは桜花だが、元より容赦のない咲凛にとってはお構い無しとばかりだ。
それでも、敵は敵なのだから。そして、相対する者は人を滅ぼし、世界を破壊する者たちで、それだけの力を持つ。
立ち直りに成功したのか、無機物の体を軋ませて再び顔を上げるメカドラゴン。その双眸に宿る赤光は攻撃的で、闘志を宿しているのだと見るに易く。
「それじゃあ始めましょうか」
気を取り直したのはこちらも同じく。
紅葉は青く輝く右手のハイペリアの紋章をオブリビオンに見せつけるように掲げた。
「出ろぉぉお! 蒸気王おおおっ!!」
掲げた手を左肩に。勢いをつけて振り上げて指を鳴らす。乾いた音が破壊された大地に響いた時、ヨスミのお爺さんの家を守る岩塊に亀裂が走る。
「な、なんです?」
否、亀裂というには余りにも綺麗な切断面。左右に開いたそれはヨスミのお爺さんの家を押し潰し、中に鎮座するは蒸気機関を持つ武骨な兵器、その名も【蒸気王(スチームジャイアント)】。
アクシデントがあった気がするので、とりあえず視線をメカドラゴンへと移す猟兵一向。
『…………。ねー、今、……お爺さんの家……』
『あの猟兵さん悪い人だね!』
他の猟兵さんは皆触れてないんだぞ、空気読めデッカイザー君たち。
岩塊の中から熱と蒸気を巻き上げて、砂塵に映るは青の輝き。起動した蒸気王は岩塊を弾き飛ばして立ち上がる。砂塵の中から歩む巨兵に、メカドラゴンは更にその頭上から蒸気王を見下ろしている。
高さで言えばメカドラゴンが上だが、その幅、屈強さで言えば蒸気王か。
歩く度に地響きを鳴らす蒸気王に大喜びのデッカイザー君たち。
『でかーい!』
『重い!』
『絶対強い!』
『かぁっくぃい~!』
壊れたメインアームやサブアームを上げて大喜びのデッカイザー君たち。気持ちは分かるよ。
「これがゴッドにもデモンにもなれる、魔導蒸気文明の申し子!」
そして。
ちらりと押し潰された家に目を向ける。どういう仕組みかは知らないが、演出の為だけに転移されたであろうこと、その結果に紅葉はこめかみに青筋を浮かべた。
(あのマッド共、いつか締める!)
●叩いて壊せ、メカドラゴン!
青の光を伴う巨人と赤の光を伴う巨竜が真っ向からぶつかり合う。鉄と鉄が火花を上げて軋む時、蒸気王の動きのトレース元である紅葉も確かに重みを感じた。
「こいつならあのメカドラゴンにも当たり負けしない……って、思ってたけど……きついわね……!」
噛みつこうとするメカドラゴンに対し、右の抉り込むようなアッパーがその顎に直撃する。
一発で粉々にも出来そうな質量でドラゴンの巨体が跳ね上がった。それでもその身、顎先すらも欠けてはいない。
見た目以上の頑強さだ。
「おらあ、いけええええええっ!」
左肩から蒸気を噴出。続く蒸気王の左ストレートががら空きの胴体、核を守る肋部分に炸裂、弾き飛ばす。
砲撃かと耳を疑う程の音を轟かせ、稲妻の如き火花を咲かせるも、敵は後退しただけに過ぎない。それどころか、正面からぶつかり合う間にその背面へと、同胞の残骸を持ってよじ登るデッカイザーズが修理・補強を行っている。
今は背面部分だけだが、このままでは正面を破壊する前に背中の補強が終わってしまう。
「硬い、硬過ぎるしあのデッカイザーズが厄介ね!」
「私が隙を作りましょう」
けろりとした様子で蒸気王に迫るメカドラゴン。桜花は警戒する紅葉の隣へと並ぶ。
目を閉じて、精神を研ぎ澄ます彼女の耳に届くのは、異なる世界からの桜の大樹の囀ずり。柔らかな風にささめく葉の音が聞こえた時、どこからともなく現れた桜の花弁が一陣の風に引き連れられて桜花を包みこむ。
「我は精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさん!」
ユーベルコード、【精霊覚醒・桜】。己の意志の力に合わせて戦闘能力と飛翔能力を得る。
桜花は鮮やかな桃色の風に乗り、携えた銀盆と共に巨竜へと飛翔する。
小さき者に構わず蒸気王へ集中するメカドラゴン。桜花はそのまま背後に回り込み、補強を続けるデッカイザーへ向かう。
「こんな状態でもあれだけの攻撃に耐えられるようにするなんて、偉かったですね、デッカイザー君」
『それほどでも~!』
『ピリッピロヲホソムネヤ』
照れるデッカイザー君たち。あと自分の言語機能を先に直したほうが良いのではないか。
「…………。いえ、やはり先程は誉められると言いましたが、どう頑張ってもギリギリ動くだけの鉄屑です。デッカイザー君の献身的な介護がない限り動けない屑おじいちゃんです」
『またひどいこと言った~!』
ぎしり。
鉄の軋みが止まる。
「貰ったぁ!」
その隙を見逃さず。
まるでロケットの発射かとも思わせる盛大な白煙を吐き出して体を浮かべた蒸気王。
くるりと身を回して放つのは渾身のドロップキックだ。
『うひゃーっ!』
『うわーん!』
最大急の衝撃にデッカイザー君たちもメカドラゴンから落下、桜花は補強途中であった装甲板へ高速で接近し、銀盆を振るう。
「たぁぁっ!」
同時に銀盆から風の力を放ち、放出された力が部品を派手にばらまいた。これですぐに修理とはいかないだろう。
地上で部品集めに奔走するデッカイザーズ。
「貴様を倒して、今回の仕事を終えるとしよう」
龍顕はすでに闘気を纏い、戦闘態勢を築いている。
「甕星流、操星奪命!」
輝く闘気を両の掌に灯し、五指を合わせて輝きを増せば、放たれるのは甕星流の技。
龍顕の意思に従い飛ぶ光球は、態勢を崩した蒸気王へ反撃を狙うメカドラゴンの目の前を横切った。
鬱陶しく飛ぶそれに注意を奪われ噛みつけば、すいと避けられた挙げ句に立ち上がり様の拳がメカドラゴンの左顎を撃つ。
同時に右から光球の一撃と爆破を受けて大きく傾ぐ巨体。
「どうした、まだほんの小手調べじゃぞ!」
甕星流、【天舞星遊】により空へと舞い上がる龍顕。身に纏う闘気がほつれて渦を巻き、複数の気の弾丸を練り上げる。
「甕星流! 弾気星雨!」
大量にばら蒔かれた力の玉はメカドラゴンの全身を叩くも、蒸気王とも殴り合ってけろりとしていた相手。全く堪えている様子はない。
しかし、これは彼の言う小手調べ、だけでなく狙いはもうひとつ。
『!』
地上で部品集めに奔走するデッカイザーだ。
かわす者もいたが、注ぐ雨の如き玉の数に逃げられず、装甲を失った体に浴びて機能を停止する者も。
その様相に気付いたメカドラゴンの意識が下方へ転ずると同時に、飛来したブレードガーディアンユニット【アジサイ】がその身を回転するビームチェーンソーで突撃、メカドラゴンの羽を刻む。
流石の頑強さに一太刀とはいかないが、チェーンソーとビームブレードの特徴を活かせばまとわりついて破壊することも可能だろう。
(補修するでっかいさんが面倒ですけど、龍顕さんに任せれば大丈夫かな?)
浮遊するそれらを操りながらも咲凛の思考は別の物へと向いていた。そう、あからさまに目立つ胸部の核である。
(……あの赤いの……弱点ですよね?)
いやまさかそんなはずは。
幾らなんでもと目立つ位置のそれから意識を逸らすが、時折、輝きを強めるでかでかとした赤いそれに吸い寄せられる。
「むっ」
遠隔操作するユニット、その反応を咲凛だと解析したメカドラゴンが尾を振り上げて、鋭い穂先をピストン運動で連打する。
機関銃のような速度をひらりとかわす咲凛。それでも尚もと迫る鉄の槍に、少女の前へ姿を見せたのは桜花だった。
「それ!」
迫る鉄の尾を銀盆で見事に打ち返せば、炸裂する風が自らの攻撃に耐えられなかった尾先をばらばらに吹き飛ばす。
メカドラゴンが尾を引き戻せば、すでに根本によじ登っていたデッカイザーが修理へと向かっている。
(すぐに修理される体、このままじゃジリ貧だけど、こちらの優位は頼れる猟兵仲間の存在ね。
チームバトルで勝つ!)
紅葉は重心を落とし、ずっしりとした構えを蒸気王に取らせる。プロレスでいうストロングスタイル、かわすでなく受け止める構えだ。
「正面の攻撃は私が引き受けます!」
「わかりました!」
「了解なのです!」
メカドラゴンの注意を反らすように軽機関銃で射撃しつつ、桜花は右から、咲凛は左から攻め込む。
アジサイの攻撃する羽目掛けて、近接攻撃用ビーム兵装ユニット【ムラサメ】を諸手に構えた咲凛。
「やぁーッ!」
唸りを上げて回転するビームの刃が鉄の羽へと食らいつき、見事にその羽を斬り落とす。
反撃に転じるも、高速で接近した桜花の銀盆ごとの体当たりがその巨体を揺らし、更には真正面から蒸気王がメカドラゴンをがっちりと抑え込む。
背面には回り込んだ龍顕の雨の如き攻撃が、その背によじ登るデッカイザーたちを容赦なく撃つ。
完全に敵を封じ込めた攻勢。レイダーキングであるメカドラゴンの頑丈さは目を疑うものであったが、無敵ではない。このまま続けば時間はかかるも完全破壊も可能だろう。
──などと楽観視する猟兵はいない。
何故ならこのオブリビオンは、まだその手の内を見せてはいないからだ。
「あっ?」
次の羽を目指し、回転するユニット・アジサイの方向が不意に変わる。
制御不能に陥ったそれは桜花を狙い、不穏な空気を感じた龍顕の攻撃によって弾かれた。
「せ、制御が効かないのです!」
「……何が……、っ!?」
桜花の構えていた銀盆も彼女の意思に反して宙を舞い、アジサイと共に盾となり、龍顕の攻撃からデッカイザーを守る。
「サイコキネシス!?
…………、に、似た何かの能力か!」
紅葉の予想の通り、メカドラゴンの放つ不可視の電流による遠隔操作である。
さすがに蒸気王ほどの巨体を動かせはしないようだが、小型の物ならご覧の通り、という訳だ。
『今の内に修理だー!』
『急げ急げ~!』
「うぬぅ、仕方あるまい!」
気の弾丸を雨と降らせ目眩ましにしつつ、直接デッカイザーを叩きに向かう龍顕。
させじと振るわれる尻尾を闘気の炎で固めた拳でいなす。だが高速で狙う刺突に前へ進めず。
「桜花、頼む!」
「お任せを!」
龍顕の言葉を受けて、時速三桁はあろうかという速度で飛来する桜の精霊が身を翻し、メカドラゴンの修理を行うデッカイザーへ蹴りを放つ。
『ピリューヴ!』
「ごめんなさいっ」
どてっ腹に風穴を開け、抵抗も出来ずに吹き飛ぶデッカイザー君に思わず謝る桜花。
『あれーっ、もう僕たちしかいないの?』
『まあ、僕たちは僕たちでどらごん様の修理を頑張ろう!』
『りょーかーい!』
せっせと持ち運んだ同胞の残骸を継ぎ足していくデッカイザー。その数は既に二。
悪いと思いつつも攻撃の手を緩める訳にはいかない。修理を頑張るデッカイザーへ向かう桜花に、メカドラゴンの支配する銀盆とアジサイげ唸りを上げた。
「……手癖の悪い……返して貰いますね! 咲凛さん!」
「狙い撃ちます~!」
その撃をかわしつつ、銀盆を流れに合わせて掴み取り、更に迫るアジサイを跳ね除ける。
その瞬間を待っていたとばかり、シュンリンとハナシグレを組み合わせた大型ライフルを構える少女の一撃がメカドラゴンの後頭部に炸裂。
乱れたアジサイと尾の動きに隙を見て、同時に飛翔する桜花、龍顕の蹴りが残るデッカイザーを打ち砕いた。
「これで残すは
、…………!?」
あとひとつ。
その言葉は屑竜の変化により途切れた。赤々と輝く胸部の核がその強さを増し、大きく広がり始めたのだ。
「ぬおっ!」
「!? あ、熱いですぅ~!」
「目標の温度急上昇、離れるのです!」
「今度はどんな隠し球よ!」
荒野すらも焼けつく熱に後退する猟兵たち。
灼熱と化したメカドラゴンは、砕け散ったデッカイザーたちの残骸をその腕に抱き上げた。項垂れた頭部に力は無く、その姿は仲間の死を悼む感情あるべき者の姿であった。
だが、その熱は止まることを知らず、彼の抱き締めた残骸すらも溶解し、火を上げた。
だからこそ、その仲間の体を。
拡大していく赤い光に包み込まれたデッカイザーたちの装甲は、メカドラゴンと溶け合いひとつとなる。
光が縮小し熱が収まる時、そこに立つのは黒き竜。デッカイザーの装甲を身に纏い、完成されなかったはずの足や翼を取り戻したメカドラゴンの姿だった。
開いた顎から放たれた鋼の咆哮は大気を揺らし、デッカイザーの額のエンブレムを胸部に刻んで堂々と大地に聳える巨竜は翼を開く。
その皮膜に従えた推進機に青い炎が灯ると、轟音を響かせ蒸気王へ突進する。
「……このっ……!」
受け止める構えを見せるも増大した質量に加速する巨体は、すでにそれ自体が砲弾だ。巨兵の体すら易々と弾き飛ばして空へと舞い上がる黒竜は、肩に載せた砲台を地上へ向けた。
「させるかぁ!」
その身を盾に、立ち上がる蒸気王が腕を開き、砲弾の雨を浴びる。
「皆さん、ここは私が耐えます! その間に奴の弱点を!」
「……弱点と言っても……、あ。打たれ弱さ?」
桜花の言葉に紅葉は頷く。
完璧に仕上がったように見えても、所詮鎧とはその身を守る物でしかない。己の心の弱さを守る力は無いのだ。
再び突撃する黒竜に真っ向から右拳を叩きつける蒸気王であったが、逆にその腕が粉砕されてしまう。
スピード、パワー、ボディ、そのどれもが先程までの屑竜とは比べ物にならない。ならばこそ、その心を敗らなくてはならないのだ。
鉄の拳が蒸気王の腹を打ち、その体を浮かせた。
「ぐ、こいつは厳しいわ、ね!」
頭部を狙う左ストレートを易々とかわし、返しの左フックを壊れた右腕で受け止める。
しかし、それでも薙ぎ倒されそうな衝撃を気合で耐える。性能では完全に逆転されているのだ、後はもう自らの精神力と、味方との連携しかない。
「紅葉さん、お願いします、耐えて下さい!」
「任されて!」
桜花の言葉に応えた紅葉と、その気持ちに応える蒸気王。
龍顕はその姿を見て、傍に転がるデッカイザーの欠片を拾い上げる。
友の体をその身に纏い、ここまで成長するのならばそこまでの想いがあるのだろう。しかし、それはこちらとて同じ事なのだ。
「先程までが嘘のようじゃな。それがお主の理想の姿か。──じゃが」
その拳に闘気を纏い、見せつけるように握り潰す。砕けた欠片はその手から崩れ落ち、黒竜の赤い眼がそれを追う。
「この通り、強度が足りぬようじゃな。さあ、行くぞ」
闘志が漲り、闘気を纏う。流星の如く地表を滑走して一条の光となった龍顕が、黒竜の足へ蹴りを放つ。
一矢の如く、深々と突き刺さった足撃は黒竜の右膝を打ち砕く。
「ぬうああああっ!」
気合を解き放つように雄叫びを上げ、一気呵成と乱れ撃つ拳の連打。右足を崩され、バランスを崩した黒竜の胸に蒸気王の左拳が打ち込まれた。
無敵とも思えた装甲に亀裂が入り、その力が大きく弱まっている事を裏付ける。
龍顕に砕かれ中身の見えた右足は空洞で、胸部の亀裂からは赤い光が漏れ。桜花はその様に胸が痛みつつも、言葉を刻む。
「鎧を纏った所で……胴体も四肢も半壊以上…完璧なんて想像すら出来ない状態ですが?
それでも貴方は自分が戦えるつもりなんですか?」
桜花の言葉に反応するように、胸部の傷が大きく開く。同時に飛翔する彼女の銀盆がその羽を貫き、同時に疾る彼女の体当たりが左膝を砕く。
「おっと、そうはいきません!」
堪らず飛ぼうとする黒竜を逃すまいと、咲凛が残る羽の推進機をビームで貫き爆散させるが、その目は光の漏れる胸部へ向けられていた。
「──勝気ッ!」
足を失い、空を翔ぶ力を失い。
度し難い隙を晒した黒竜へ背中を向けた蒸気王。その左腕と肩で敵の頭部を挟み込み、跳躍と同時にスラスターを起動、釣り上げるようにその巨体毎空を舞う。
「雪崩式! ダイィヤモンドッ、カッタァアア!!」
落下。
仰向けに大地へ落下した巨兵とうつ伏せに落下する黒竜。超質量の巨体が二つ、その全質量が挟み込まれた頭部へ集中する。
万力に挽き潰されるように、抵抗すら出来ずに頭部が破損。しかし、赤々と輝く核は強さを増し、更なる強化を予期させた。
「やらせんわ!」
熱を生じる炎を噴き上げる胸部を、闘気に輝く龍顕の拳が貫いた。その一撃は易々と装甲を突き破り、その先の赤く焼けた核へと至る。
衝撃。
確かな手応えも、鮮血の如く噴火する溶けた鉄に舌打ちして離れる。あと一撃、あと一撃が足りない。
「…………、やっぱり気になるのです!」
咲凛が叫んだのは輝きを拡大していく黒竜に、仕切り直しになるのかと桜花が歯噛みした直後だ。
『パニッシャー発動、対象の消去を開始します』
感情のない言葉が響くと同時に、咲凛の頭上を緑色の光が幾条と駆け巡る。
複雑な軌跡を空に描き出し、組み上がるのは巨大なレーザー砲のワイヤーフレーム。
咲凛の手にゆっくりと落ちると装甲が召喚されその身を実体化させる。
上体部分を後方へと滑動し冷却菅を露出させた砲身に稲妻が走った。
「……な、何かヤバそうな雰囲気……!」
猟兵らの強烈な攻撃を受けて、未だ動くに至らぬ黒竜から離れた蒸気王。
紅葉はその巨駆を壁に龍顕と桜花を呼ぶ。
【コード・パニッシャー】。咲凛の始動したユーベルコードは彼女からの魔力供給を受けて作動するレーザーキャノンユニットだ。
その髪に煌めく魔力蓄積用の結晶体、【ソラノナミダ】。その幾つかが砕け散り、砲口から閃光が走る。
放たれたレーザー光は針の如く、でありながらも周囲を溶解する強烈な力の余波を放つそれは正確に黒竜の核を貫き、圧倒的熱量でもってその巨体を完全に破壊した。
●激戦の後で。
咲凛の砲撃により大きく抉れた地表の熱も冷める頃、ヨスミのお爺さんと元ドラゴン様ヒャッハー軍団の面々は破壊された家や畑を惜しみつつも猟兵らの勝利を祝福した。
家を壊したのは戦闘とは全然関係ない所であったが、それを口にする野暮な猟兵は誰一人としていなかった。
「それにしても、あれほどの大技があるとは思いませんでした」
「とは言え、あそこまで追い詰めなければかわされるか、耐え切られるかしたかもしれんのう」
思わず呟いた紅葉に龍顕はにやりと笑う。確かに、あの威力で持ってしても倒し切れるようには思えない程の気勢を黒竜からは感じた。
友の身を纏うその姿は、魂ある者としての意思の強さが確かにあったのだ。
ならばこそ供養も必要か。
「村を作るなら、デッカイザー君の資材で家を作りましょう。……彼らは善き隣人でした……」
「…………、そうですね」
桜花の言葉にホワイトカラーは頷く。寝食を共にした彼らには、デッカイザーたちに思う事も多いのだろう。彼らの居場所を奪ったのは間違いなく彼らだが、元凶とは言え彼らを受け入れ、彼らに尽くしたのもまた事実。
「でっかいさんたちでお家を作るのです?」
「ええ、そうですね。彼らの体や、彼らの集めてくれた資材で村を作り上げましょう。きっと良い仕上がりになるはずです」
デッカイザーの略奪品や彼ら自身の残骸。紅葉の蒸気王により一点に集められたそれを龍顕がてきぱきと仕分けしていく。
「おお、ありがとうございます奪還者様」
「スープもどうぞ~」
「夜は冷えるのです。これで暖まって下さい!」
桜花が運び込んだ大量の食材でスープを作る桜花とそれを配る凛花。
すっかりと日が暮れた頃、各々の道を辿る猟兵らを見送った人々は冷えた大地にも関わらず、その心に暖かな熱と活力を漲らせていた。
それこそは文明を復興させる、否、人として生きる為の道を示すものだと、誰もが気付いているようだ。
「さて、まずは寝床だな。女子供は優先して村長のよくわからんセンスの家に寝てくれ」
「あれワシのセンスじゃないもん」
紅葉から受け取った脅威の『ラクタテール参号くんだ!』が活躍する中、一先ず風避けをと力瘤三兄弟を中心に男手を率いてデッカイザーの残骸を集めていると。
「…………? うおおっ!?」
『……うーん……、あれっ。ここどこ? 僕、誰だっけ?』
残骸の中から現れたのは、壊れかけのロボットであった。
後にヨスミ村として名を馳せるこの一画は大きな村となり、付近の拠点へ野菜を分け与える一大勢力となる。作物を育成する技術と知識は人と共に各地に運ばれ、まるで種が風に乗り各地で芽吹くように、文明復興の兆しとなるだろう。
村の発展には人々の強い結束と、村長となったヨスミの功績が大きい。だがその影に、オトモダチと呼ばれる異形の戦車の力があったという。
絶望の大地、アポカリプスヘル。しかし、そこには確かに人々が生き、そして希望も根付いている。人々の心が息吹く限り、この世界もまた死に絶える事はなく、道は続くのだ。
大成功
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