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アルダワ魔王戦争3-D〜ハウリングロード

#アルダワ魔法学園 #戦争 #アルダワ魔王戦争 #大魔王 #レオ・レガリス #オブリビオン・フォーミュラ


 或は、獣が躍動する様を生命力と評するならば、それは生命そのものと言ってもよかった。
 果てもないような坑道の底。
 いつまでも続くような蒸気回廊の先。
 天を衝くかのような大樹を抱く森林が、そこにはあった。
 その中に我在りと、その身で体現するかのように闊歩する獣。
 獅子か、虎か、何者でもないのか。それが歩き、或は一声上げるだけで、木々は身震いし、騒めく梢はそのただの一声にかき消される。
「臭うぞ……知性体どもの臭いだ。わざわざ喰らわれに来るとは……」
 喉を鳴らし、低く唸るように言葉を発するは、大魔王第二形態「レオ・レガリス」
 正気かどうかも不明なその形相には、何かを思案するようで、そうでないような不可思議な色が浮かんでいる。
「……何と言ったか、飛んで火にいる……まあいい! 矮小な言葉など不要だ」
 ぎりぎり平衡を保っているかのような知性が、その暴力性に押しつぶされる。
 力強く握りしめられた拳にはもはや謀略とは無縁の力が宿る。
「せいぜい、知恵とやらを転がすがいい。その小さな武器諸共、俺の力が踏み潰す!」
 そうして声高に吼える声が、恐怖と暴力を知らしめる何よりも雄弁な言葉として、森林に響くのだった。

「さてと、アルダワでの戦争も、なかなか順調に進んでるそうじゃないか。今回の話もそれに因んだものだよ」
 グリモアベースはその一角、リリィ・リリウムは呼びかけに集まった猟兵たちを見やると、険しい表情で話を続ける。
「みんなが今も攻略中のファーストダンジョンの中に、大きな樹とそれを抱くような森林地帯があるらしいんだが、今回私が見たのは、そこを根城にする強大な敵の一人……大魔王第二形態「レオ・レガリス」……そう、大魔王の一体だ。いったい何体いるんだ、こいつらは……」
 顔をしかめつつ、今だ多くをダークゾーンに埋めるファーストダンジョンの簡易マップ上の一区画を指し示す。
「敵に文句を言っても仕方ない。とにかく、今回の相手はこのレオ・レガリスだ。場所も判明しているから、送り届けたらすぐに相手をすることになるだろう」
 しかし、とリリィは帽子越しに頭を掻いて腕組みする。
 例によって、有力敵であるレオ・レガリスとの戦いでは、相手の先制は免れない。
 それゆえに、かの大魔王の先制攻撃をどう凌ぐかが、戦う上では重要となるだろう。
「考えることより、絶対的な暴力と恐怖で襲い掛かってくる……脳筋ってやつだな!
 シンプルなだけに、恐ろしい相手さ。奴の言うところの、小さな武器を駆使して戦うことになるだろうな。
 もちろん、力比べをしたいなら止めはしない。相応の自信があるなら、だが」
 目を細め皮肉めいた事を言うのは、戦いに赴く猟兵たちを思ってだろうか。
 とにかく、かの者を倒す事が、やがて出てくるであろう最後の強敵との戦いに影響することは想像に難くない。
「恐怖するのは、己の心だ。相手にじゃない。どうか心を強く持って、そして、生きて帰ってきてほしい」
 最後に帽子を取って一礼すると、リリィは強い眼差しでもって、猟兵たちを送り出すのであった。


みろりじ
 どうもこんばんは。流浪の文章書き、みろりじと申します。
 大魔王第二形態との戦い、その一つのみのシナリオフレームです。
 久しぶりの順戦闘フレーム。
 例によって、強敵の一人なので、相手が先制します。
 その対策が、なっちゃいない! なっちゃいないぞ! ということになると、ドンッ! とぶっとばされる……かもしれません。
 うまい返しを用意し、有利に戦闘を進めましょう。
 それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作っていきましょう。
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第1章 ボス戦 『大魔王第二形態『レオ・レガリス』』

POW   :    巨大なるもの
【知性体を喰らいたいという渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    オールイーター
自身の身体部位ひとつを【あらゆるエネルギーを喰らう魔獣】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    王たる脅威
【一瞬のうちに繰り出される爪の連続攻撃】を披露した指定の全対象に【攻撃のダメージに応じた大魔王への恐怖の】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
👑11
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高柳・零
POW
厄介な能力持ちですが…その能力、利用させてもらいましょう

「自分は色々な情報を記録しています。知性生命体の中でも食べれば美味しい方ですよ」
自分を良い餌と思わせる事で魔王の欲望を加速させます。
その事で巨大化を早めます。

ここは迷宮です。
大きくなれば動きは制限されて、攻撃の動きが単調になる筈です。そこを見切って攻撃を回避してます。避けられない時はオーラ全開で体を覆ってから無敵城塞を発動し、激痛耐性で耐えます。
また、食べられそうになったら、型が近い魔道書を口に放り込み「食べた」と誤解されて回避します。

大きくなり過ぎて避けられない所にメイスで鎧砕きを叩きつけ、防御力を下げて味方の攻撃に繋げます。



 趣味こそものの……という言葉ある。
 興味を持ち、好んで進む道にこそ、それに相応しいだけの実力が備わるということもある。
 もちろん、無いこともあるが。
 少年の強い意志は、それを実現した類のものであろう。
「臭う……臭うな……知性とやらの臭いだ……! どこにいる!?」
 洞窟の中とは思えない広大な森林地帯の中で、狂気をはらんだ声が鳴り響く。
 赤銅色に輝く肉体を覆う燃えるような鬣が、自らの咆哮でびりびりと逆立つ。
 背の高い樹林の中でもなおその巨体が際立つ存在感。大魔王の名にふさわしい異様と言えよう。
「目の前にいますよ! 小さくて見えませんか?」
 その立ち姿のみであらゆる生物を畏怖させんとする大魔王第二形態『レオ・レガリス』に敢然と立ち向かう小さな人影。
 人としては小柄。いや、人よりも小さなテレビウムという、言うなれば妖精のような存在でありながら、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)は、健気に諸手を挙げて存在をアピールする。
「ぬうう? なんだその貧相なナリは……だが、言葉を発するからには、お前も矮小な知性を繰るものか」
「そうですよー! 小さいのは認めますが、こんなでもパラディンなんですよ!」
「フハハハ! そんな小さな体で、何を守ろうというのだ!」
 ぴょんぴょん飛び跳ねつつアピールする零を見下ろすレオ・レガリスの哄笑が、森を揺るがすほどの振動を生む。
 圧倒的な存在感を持つ者は、一挙動とて周囲に影響を及ぼすようだ。
「だが好かろう! その昔にも騎士を自称する者は大勢いた。この俺に馬鹿正直に向かってくる、大馬鹿どもだ! 俺はお前のような大馬鹿が大好きだ!
 いいぞ、真正面から叩き潰してやろう!」
 豪快に笑いあげ、気が高ぶるままに四本足のうち後ろの二本のみで直立すると、巨大な獣は、自らの戦意を更に高ぶらせるように吼える。
 その身に滾るのは、すべての知性体を喰らう渇望。その渇望がより深いほどに獣の獣性、そしてその身は巨大になっていく。
「自分は色々な情報を記録しています。知性生命体の中でも食べれば美味しい方ですよ」
「なにぃ? それは本当か! フハハハ、そんなことを言ったところで、俺に力を与えるだけだぞ!」
 唐突にもたらされた零本人の情報によって、レオ・レガリスの渇望はますます増大する。
 歓喜に震えるその声だけでも、もはや脳天に響くほどやかましい。
 周囲の木々が、巨大化するレオ・レガリスの肉体に押しつぶされていく。
 もはや大樹を超えん限りの体躯を手に入れたレオ・レガリスにはもはや、全てのものが矮小に見えていた。
「フハァ……もはや、全てのものが小さく脆い……お前などひと摘みで……むぅ!? どこへ行った!?」
 最早、今のレオ・レガリスの視界には、眼下に広がる小さな森しか見えない。
 ただでさ身の丈の小さな零一人を探すのは、至難の業である。
 さらに言えば、ここは強大なれど迷宮の一室。
 巨大になりすぎた体は、全力で動こうとしても迷宮の岩壁などに妨げられて思うように動けなくなっていた。
「く、せっかく広い場所を選んだというのに、なんということだ……! 俺が強すぎるせいで動けん!」
 四本足で身悶えし、憤慨した尻尾が振るわれるたびに、森の木々がそれこそ木っ端のように弾け飛んでいく。
 零もまた、大魔王の知れぬ間にその衝撃で吹き飛ばされていたりもしたが、なんとか地面にへばりついて踏ん張っていた。
 巨大化したパワーは凄まじいものがあったが、それでも大きくなるほど動きはより緩慢に単調にならざるを得ない。
 余波を受けはしたものの、零自身はほぼ無傷で耐えきった。
「うぐぐ、凄い能力……ですが、だからこそ逆手に取らせてもらいましたよ」
 吹き荒れる暴風のような状況を凌ぐべく、今度は【無敵城塞】で絶対的な防御壁を作り出し、耐え忍ぶ。
 今度は回避せず、相手が見失っているうちに好機を見つける。
 巨大な前足が通り抜け、近くに降りて盛大な土砂を巻き起こす。
 今だ!
 防御を解き、零は振り上げたメイスを力いっぱいすぐ近くの足の指へ向かって振り下ろした。
「えーい!」
「ぐおおっ!? ゆ、指はやめろぉ!」
 迷宮中に響く声も聞かず、零は構わずメイスを振り続ける。
 この巨体に対してどれだけ有効かはわからないが、どれだけ強靭な肉体を作り上げようと、その骨身がある限りはやがて砕け、弱るはず。
 そして、どうやら人と同じように小指をぶつけるのは嫌らしい。
「ええい、待て待て! そんな針の刺すような攻撃で、イタタタ! よせぇい!」
 さすがに続けざまに殴られ続けるの苛立ったのか、打たれた辺りを吹き飛ばすように足を振るうと、防御を解いた零はなす術なく蹴とばされてしまう。
 何度か地面をバウンドして、零はよろよろと立ち上がる。
 さすがに振り払うだけの動作とはいえ、大きさに差があると、それだけで脅威だ。
 しかし、立ち上がった零の目の前には、元の大きさに戻ったレオ・レガリスの姿があった。
「サイズを合わせてくださるとは、お優しい。全力で叩き潰すのはやめにしたんですか?」
「……認めてやろう。お前は確かに知性体だ」
 グルグルと喉を鳴らすレオ・レガリスは悔しげに唸る。
 テレビのような顔面に浮かぶ汗の絵文字を拭う。どちらかと言えば、ダメージを負ったのはこちらのほうかもしれないが、くじけている場合ではない。
 戦いはこれからなのだ。パラディンの意地を見せるのは、ここからではないか。
 自分のやってきたことは、きっとこの先に続く仲間の行動につながる筈だ。
 パラディンを志した時と全く変わらぬ強い意志が、すり傷だらけの体を奮い立たせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ソラスティベル・グラスラン
第2形態は自然の化身ですか…さすが大魔王、底知れません
ですが何が相手でも退かぬが勇者
さあ、力比べと行きましょう!!

知性を持つ者に対する食欲…成程
ならばわたしは知性を捨て!真なる【勇気】の権化となります!!

【盾受け・オーラ防御】で守り、【怪力】で受け【見切り】受け流す
捨てた知性を補う為、【第六感】で敵の動きを感じ取る
目的を極限に絞る、近づき大斧を叩き込むことのみに
頭で考える言葉は三つだけ
【勇気】、【気合い】、根性!!

思考を単純にし、鋭化
知性を落とし、わたしに対する魔王の渇望を弱くする

前へ、ただ只管に前へ
この大斧が届くまで
此処に誓うは不退転の意思、勇者とは愚直なる者

これがわたしの【勇者理論】!!



「第二形態は自然の化身ですか……」
 既に荒れ始めた森林に降り立ったソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、目の当たりにしたレオ・レガリスのその威容に、背筋を冷たくしながらも、身震いするものを抑えられなかった。
「さすがは大魔王、底知れません。ですが」
 足場が確かなことを確かめつつ、その身に帯びた大斧を構えると、目の前の暴力の権化のような姿を見据える。
「懐かしい目だ。何度となく、そういったものに見つめられてきたが……思い出せんなぁ! お前も、喰らわれに来たか」
 空気が震えるのが肌でわかる。
 吼え猛る大魔王のその姿だけで、全身を穿つような威圧感があった。
 風もないのに周囲の木々が騒めくのが、何よりの証左であろう。
 だがそれでも、ソラスティベルは退かず、風に嬲られるかのようにその髪を泳がすばかりで、白い頬には微笑すら浮かぶ。
 神話に聞く巨大な敵。それを前にする者は、そう、勇ある者こそ強敵に退かず。
 そうあらんと常に欲してきた彼女は、絶大な暴力を前にむしろ立ちはだかる道を選ぶ。
 蛮勇と揶揄されることかもしれない。しかし、蛮勇を生き抜いてこそ、真の栄誉である。
 だが、そこに立つのはただの年端もゆかぬ少女である。
 強固な防具に身を固め、戦うための武器を構えてはいるが、その細腕で、その小さな体躯で何ができる?
「小娘一人、それしきで俺を倒す気なのか? それが知性体の行動なのか?」
「ならば、試してみればいいでしょう?」
「バカめ……質問を、質問で返すなぁっ!」
 会話できるということ。それが知性の証明であるとばかりに、レオ・レガリスの右腕が無造作に振るわれる。
 圧倒的な体格差から振るわれる一撃は、右腕一本とはいえ木々の一本や二本は楽にへし折ろう。
 シンプルなその一撃に反応できたのは僥倖と言えよう。
 竜の翼を象った意匠の通り、竜の化身とされる黒い盾でそれを受けた瞬間、衝撃は全身を伝わり、ソラスティベルの体を二、三歩分は後ずさりさせる。
 人並み外れた怪力と魔術的な加護がなければ、腕ごと引きちぎられていたかもしれない。
「止めたか。だが妙だ。正面から殴り合いでもしたいのか? 知性を感じぬな」
「力比べが怖いんですか?」
「フハハハハ! 言うたな、小娘!」
 ぼこりぼこり、とレオ・レガリスの両腕が盛り上がった。
 暴力の権化ともいうべき存在と真正面から殴り合うなど、馬鹿馬鹿しいほどに無謀。
 しかしだからこそ、勇気を持たねばできぬ行動ともいえる。
 ダカカ、ダカカと蹄のような足音が跳ねる。猛烈な気配と共に、盾を構えるソラスティベルの思考は白く染まる。
「むぅぅん!」
「ああぁぁ!!」
 体当たりを盾で受けつついなし、振るわれる拳を受け、或は流す。
 体で覚えた今までの戦いの歴史と、第六感で機先を制しては、鈍化する思考を鞭打つ。
 戦うための思考を支えるのは、ただ、勇気と、気合と、根性。その言葉だけに過ぎない。
 野獣のごとく降りかかる暴力を、体が覚えた戦技で受け流し、流しきれずとも倒れない。
 腕が痺れる。まだ動く。
 心臓が早鐘を打つ。勇気があれば破れない。
 血で視界が赤く染まる。まだ見える。
 口の端から漏れる、涎とも血ともわからぬものと獣のような気勢。
 機を待て。それまで凌げ。
 白く染まりつつある頭の中で目標とするのは、自慢の斧を叩き込む絶好の瞬間を逃さぬこと。
 もう眠い、体がだるい。
 鈍化しそうになる思考を気合でたたき起こす。
 真正面からの力比べ。それはなんとも愚行と言ってもおかしくないものだ。
 だがそれでいい。
 前へ、ただ只管に前へ。
 この大斧が届くまで。
 此処に誓うは不退転の意思、勇者とは愚直なる者。
「それがわたしの【勇者理論】!!!」
 気が付けば、振り抜いた大斧が、大魔王の胸元を一閃していた。
 入った! そう確信した瞬間、ソラスティベルの足腰から急激に力が抜ける。
「グヌゥ……俺と正面から殴り合い、一撃くれるだと……?」
「はぁ、はぁ……」
 息が荒い。自分自身の呼吸音がうるさくて、うめき声をあげるレオ・レガリスの言葉すらうまく聞き取れなかった。
 思わず斧を突き立てて杖代わりに地を覗いた拍子に、ぼたぼたと赤い滴がこぼれる。
 寒い。だけど、胸が熱い。
「美しいな。知を捨て、俺に挑むとは、なんという馬鹿もいたものよ」
「まだ、まだ……これから、ですよぉ……!」
「フフフ、そうだな! もっと、もっと見せてみろ! お前の勇を!」
 無理やり笑顔を作って見せるソラスティベルに対し、己の手傷もものともしない様子で、レオ・レガリスは十全の力が発揮できないこともお構いなしに、少女の勇を称え手を広げる。
 暴力、知性、そんなものを超えた、ただ力への渇望がそうさせるのか。
 或は、少女の持つその勇に魅せられたのか。
 ただ二人、もう少しの間だけ、殴り合っていたかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナイ・デス
いったい何体だと、言っていましたが
勝利には大魔王、少なくとも100体は倒さないと、だとか
100分の1以下だと思えば……いえ、脅威は変わらない、ですね
では

教えましょう。恐怖にも、暴力にも屈さないものがいる、と!

【覚悟】決め、先制受ける
【激痛耐性、継戦能力】致命傷でも
『私は、死なない。私は、死ねない』
私はヤドリガミ。『いつか壊れるその日まで』死ねない
光る。再生し、負傷(恐怖)に比例して強く輝き

私は、勇者のパートナー
どんな恐怖にも、絶望にも、屈しない!
世界守る、猟兵、です!

【カウンターに、念動力で自身吹き飛ばし】突撃
筋肉な【鎧無視して串刺し零距離射撃】刃から
【生命力吸収】する光放ち、飲みこみ喰らう!



 いったい何体……グリモア猟兵の人がそんなことを言っていた気がする。
 この戦争に勝利するには、少なくとも100体もの大魔王を退治せねばならないという話をまことしやかに聞いた気がする。
 ともすれば、ここで相手にする大魔王の一片としても、脅威はおよそ100分の1以下ということになるだろうか。
 それが正しいとも言い切れないが、脅威そのものがそこまで減るだろうか。
 いや、脅威には違いなかろう。
 森林に降り立った少年猟兵、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はその惨状を見て、わずかに眉を動かす。
 暴風でも吹き荒れたかのような、力任せになぎ倒された木々に混じる、飛び散った血の飛沫。
 その先にいるのは、四足の獣に人にも似た上半身を乗せたような、巨大な獣。
 大魔王第二形態そのものの姿に酷似しているそれと、対峙する姿は、既にあちこちが傷だらけだった。
 外傷はあれど、それが致命傷には至らない、ただ長続きすれば確実に消耗するだけの手傷を負っているのは明らかだった。
 それを不利であるか継続戦闘可能か、普段の彼ならばそれを冷静に鑑みたところだろうが、
「そこを、どけ!」
 それを見た瞬間、ナイは飛び出していた。
「水を差すか……来るがいい、知性体!」
 全身を覆うように変形させた黒剣を呼び戻し、腕から生やすようにして刀身を繰り出すも、振り向くレオ・レガリスの両腕が動くほうが早かった。
 大きな腕の大きな動き、ただのそれだけで、ナイの体は宙を舞う。
 突き出した剣は鋭い爪に弾かれ、浮いた体には続けざまに繰り出された爪によって引き裂かれる。
 その体に装着されたあらゆる防御機構、術を施された何もかもが、無残に手当たり次第に暴力の嵐にさらされ、荒れつくされる。
 仕上げとばかり地面に叩きつけられたナイは、もはや生きて首と胴が繋がっているのが不思議なほどだったが、それでも、それでも片方潰れた瞳が向くのはまだ闘志を失っていない証拠だ。
「ふん、他愛ない……しかし、なぜ、恐怖を抱かん……? もう諦めたか?」
「そ、れは……」
 血の泡を吹くナイの唇が動くと、その体が見る見るうちに光を放って癒えていく。
 潰れた瞳やちぎれた手足、砕けた骨や破れた臓器どころか引きちぎられた衣服すらも急速に癒えていく。
 その異様ともいうべき回復力に、さしもの魔王も目を見張る。
「私は死なないし、死ねないから」
 致死的な攻撃を受けても、その心に戦う意思が残っている限り、そのユーベルコード【いつか壊れるその日まで】は、彼を再生し続ける。
「ハハハ、なんとおぞましい小僧だ。なおの事、切り裂く甲斐があるというものだ!」
「やれるものなら、です。しかし、覚えて、おきなさい。恐怖にも、暴力にも屈さないものがいる、と!」
 光を帯びたまま、レオ・レガリスを見上げるナイは、わざわざ治りきるまで待ってくれていた隙を逃すことなく、自身を念動力で加速させ肉薄する。
 そして、鎧から呼び起こした黒剣を今度こそレオ・レガリスの肉体に突き立てた。
 それだけに留まらず、体に帯びた光を黒剣に流し込むと、その力の赴くまま、突き立てたレオ・レガリスの体からその強靭な生命力を吸収し始める。
 これにはたまらずレオ・レガリスも体を大きくゆすりつつ、しがみつくナイを両手で振り払った。
「……おのれ、忌々しい。壊したと思えば治る。奪ったと思えば奪われる……なんなのだ、お前は」
「私は、勇者のパートナー。どんな恐怖にも、絶望にも、屈しない!
 世界守る、猟兵、です!」
 着地しつつ、腕から生えた黒剣を構え、まっすぐに立つ姿は、最初に受けた印象とは程遠い力強さを感じるものだった。
 レオ・レガリスは、最初の攻撃で彼を倒しきれなかった事を後悔する。
 そして同時に、これほどの意志を、知性を抱く若者を喰らう好機に歓喜する。
「おぞましき知性体。だからこそ、お前を喰らいたくなってきたな!」
 吼える大魔王の獣性は、まだ健在のようだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルディート・ラーガ
ヒヒヒ。脳ミソ食ったら頭良くなるワケでもあるまいに。
なンならお魚食う方が効いたりしねエんかしら。

コチラの対策は、素っ裸。…や、や、肝心なトコは収納式ですし……ダメ?
許される範囲で服を脱ぎ、武器も無しの丸腰に。四つ脚の姿勢でのしのしと進み出やす。
こうなると傍目にゃ野生オオトカゲ、とても知性体にゃ見えねエ筈。
この姿での対峙で渇望を薄れさし、パワーアップを弱化さすのが狙いです。

敵サンのUCの効きを確認しやしたらば、コチラもUC発動。
【九つ頭の貪欲者】。エエ。敵サンにこちらの知性は最後まで気取らせますまい、己から理性をブン投げて参りやす。
野性を全開にして、敵サンを締め上げ焼き潰しにかかりやしょ!


ニレッド・アロウン
……つまり私が知性体でなければいいのですね。ウホッ!ウホホッ!ウホウホ!

という事で相手のサイズが増大する中、全力で【挑発】です。
そんなことをしたら狙われる?上等です。
魔力障壁全開で【オーラ防御】展開。翼を強く羽搏かせ、木々の間を抜けながら逃げましょうか。
それで攻撃を受けようが上等です。時間稼ぎで結構、能力の条件にもどんどん当てはまっていきますからねー。

瀕死になったところで決死の【覚悟】を携え、全身に強化術式付与し【限界突破】を試みます。
瀕死ですから相手も多少なりとも油断はするでしょう、その隙に強化された肉体で【怪力】を生かし、自分の体と水晶鋏を鏃とした突撃による【捨て身の一撃】を実行します。



 戦いの形跡の残る、へし折られ横たわる木の上にバルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)は降り立った。
 既に戦いは始まっているらしいが、少なくとも争いの形跡に理性的な何かは感じない。
 そして目的の敵である大魔王第二形態『レオ・レガリス』のその立ち姿から感じるのは、人間的なそれに近いものとはいえ、
 おおよそ文明社会に触れたようなそれではないように感じた。
「また来たか。わざわざ喰われに来るなど、物好きな連中だ」
「ヒヒヒ。脳ミソ食ったからって、頭良くなるワケでもあるまいに」
「なんだと?」
「なンならお魚食う方が、効いたりしねエんかしら」
 存在そのものが嵐のように苛烈な気配を覚えながらも、バルディートはその軽口を控えるつもりはないようだ。
「それはお前の好物か?」
「ヒヒヒ、それ食えんのかと来たモンだ」
 自らを蛇と称するバルディートは、竜派のドラゴニアン特有の鱗を持つ外見からしても、トカゲか蛇のような姿に近い。
 尖った瞳孔、口を閉じるとしゅるりと伸びる舌。それらが皮肉気に歪めば、それが自然体とばかり軽口が飛び出す。もはや、嫁や神前だろうとそれは変わらないのかもしれない。
 時に御法にも触れるようなこともやったかーもしれないために、ここアルダワではちょっとしたお尋ね者なのだが、猟兵として選ばれた手前、お国の危機にやってきたというわけだ。
 ただ、まさか大物を正面切って相手にするというのも、なんだか違う気もする。
 正直、パワー勝負では分が悪いのではないか……手がないわけではないが。
 強敵を目の前にしつつ、いつ抜くか抜かざるか、そう考えていたバルディートの背後に羽ばたく音が聞こえる。
「少々遅れてしまいましたか……先客がいるみたいです」
 表情の見えないオラトリオの女性、ニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)の登場に、バルディートは参ったなと思わずそのつるりとした頭を掻く。
 まさか女性が同行するとは。
 考えていた作戦を敢行するハードルが一つ上がった気がする。
 だが、ふと彼女の姿を見て思いとどまる。
 女性としての魅力は十二分に備えた丸みを帯びた体躯……は、まぁ置いておくとして……。
 子供の背丈ほどもありそうな水晶の鋏も、ひとまず置いておく。
 一番目を引いたのは、顔を覆うような目隠しの存在だろう。
 どうして彼女がそんなものを身に着けているのかは不明だが、それは今の今のバルディートにとって都合のよいものに思えた。
「お嬢さん、その目隠し、どうかお外しになんねぇようお願いしやす」
「別に、頼まれても外しませんが……どうしてです?」
 小首をかしげるニレッドには答えず、バルディートはおもむろに身に着けた衣服を武器を含めてすべて脱ぎ始めた。
 別に女性の前だからというわけではなく、はじめからそうするつもりだったのだ。
 ちなみに言えば、ニレッドも目隠しこそしているものの別にそれで視界を閉ざしても周囲の環境が感じ取れないわけではないため、バルディートが服を脱ぎ始めたことはすぐに気づいた。
「ほう、何をするつもりかと思えば……なんだ、降参するつもりか?」
「いやいや、こちとら下賤な三下なもんでね。足りない知性をひり出して考えたンでやすよ。知性を投げ捨てる手段をねぇ」
「なんだと?」
 言うが早いか、四足で這い回る真似事をして見せれば、それは大きめのイグアナっぽい何かにしか見えない。
「おたくの親戚におわしやせんかね? こういう具合の」
「殴られたいようだな」
 煽るように舌を出して見上げて見せれば、気分を害したのかレオ・レガリスの四足がダカカッと蹄のような音を立てて迫ってくる。
「ヒヒヒ」
 野生オオトカゲスタイルのバルディートは、意外にも素早く駆け回り、レオ・レガリスの追撃をかわしていく。
 知性体を喰らおうとする渇望を力とする魔王の身体増強能力は、あまり力を発揮できていないらしい。
「なるほど……つまり私が知性体でなければいいのですね。心得ました」
 その様子を見ていたニレッドが、何かを思いついたらしく、大きく息を吸いがに股でのしのしと歩き始める。
 清楚なドレス姿ではあるが、その実は野蛮で冷酷。そして、あんまり深く考えない。
 有効と思えば、自分が痛い目にあうことになろうともやるべき。
「ウホッ! ウホホッ! ウホウホ!」
 腰を落として、上半身を揺らすようにして大げさに歩き、まさしくゴリラじみた声を上げる。
「く、何処へ行ったトカゲめ……む、今度は何の真似だ!」
「ウホウホ? ウホホ?」
「馬鹿め、そんな声色を使ったところで、俺が見紛うとでも思っているのか」
「ウホッ?」
「ええい、やめろ!」
 いつまでもゴリラ言葉をやめないニレッドに業を煮やしたらしいレオ・レガリス、ついに手が出る!
 先ほどのトカゲよりかはいくらか知性的に感じたのか、殴られたニレッドはその勢いで森の中ですっ飛んでいく。
 女性一人、殴られればひとたまりもないかと思いきや、ちゃっかり防御魔術を展開していたらしく、大きなダメージはなかったものの、大魔王はそれで逃がしてくれるわけではないようで更に追撃を駆けんと迫ってくる。
「ウホッ、ウホッ」
 木々を即席の盾としながら、機動性を活かしてその追撃をかわしながら尚もゴリラ言葉を投げつける。
 それは、単純にレオ・レガリスを煽り立てる色を含んでいた。
 それこそが彼女のユーベルコード【喧嘩上等・反骨精神】である。それは、自分をあえて不利な状況に追い込むことで効果を発揮する。
 つまりそれは、
「馬鹿め、遅いわ!」
 猛然と迫る軍馬のような体躯が、巨岩のような質量を伴って体当たりを仕掛けてきた。
 回避しきれないと判断したニレッドは全力でそれを防御するが、それら防御機構が一瞬のうちに突破され、弾き飛ばされたニレッドが木々と共に木の葉のように吹き飛ぶ。
 ろくに防御もできない状態で地面に叩きつけられたニレッドを、さらに大魔王の体躯が踏みつけにかかる。
 ばきばきと、巻き込まれた木々に混じって、何かが色々折れるような鈍い音が聞こえたような気がした。
「ぐ、ぶ……」
 胃の腑から何かがせり上がるような不快感。とうに体のあちこちが痺れて感覚が遠くなる。
 だというのに、脊髄と結びついたかのような強い意志が、武器だけは手放すまいと、その手を緊張させる。
「ほうほう、まだ息があるのか」
「あ、うぅ……」
 瓦礫のように粉砕された木々の中から頭を捕まれ、引きずり出されたニレッドは、その意識をかろうじて繋いでいる状態で、言葉の代わりにうめき声を上げるしかない。
「わからぬな。何故、そのように感覚を塞ぐ物をつけたがる?」
 直立できぬほど弱ったニレッドのその顔にまだへばりついている眼帯に伸ばすその手が、ふと止まる。
 レオ・レガリスの手を止めさせた違和感。それは足元から下半身全体を絡めとるように巻き付き、そして締め上げ始めた。
 黒く長い、朽ちた縄のような大きな蛇。
『まあ、お待ちなすってぇ』
「ぬう、トカゲか。大きく育ったなぁ!」
 姿を消し機を伺って【九つ頭の貪欲者】と化したバルディートは、その変わり果てた姿でもって、薄れゆく理性の中でも軽口でもってレオ・レガリスの体を締めあげる。
「なんという姿だ! 俺たちに近しいではないか。ふはは。遊んでほしいか! ふははは!」
 みしりみしりと物騒な音を立てて締め付けてくる巨大な蛇を相手にレオ・レガリスはなおも嬉しそうに、その幾つもある黒い蛇の頭を殴りつけあるいは振り払おうとする。
 そして、片腕では埒があかぬと、ニレッドを掴んでいた手も放そうとしたが、その腕が動かない。
「悪いこと、する、手は……この手、ですか……ぁ?」
 剥がれかかった眼帯の向こうに金色の瞳をぎらぎらとさせつつ、血まみれの口の端が歪む。
 強く握り返したレオ・レガリスの腕に、もう片手に握りっぱなしだった大鋏の切っ先が突き刺さる。
「く、まだ動けたのか……!?」
 あえて窮地に追い込むことで力を発揮するとはいえ、ニレッドの肉体は限界を超えてその力を発揮していた。
 そして、めきめきと腕に食い込み続ける大鋏に気を取られていたレオ・レガリスは、今もなお締め付ける蛇の口腔が灼熱の光を湛えていることに気づく。
 だがもう遅い。
 紅蓮の炎を浴びせられて、三人諸共が炎に包まれる。
「ぐおおっ!?」
 火にまかれてはさしもの魔王も焦ったらしい、三人もつれ合ったままあちこちを転げまわる。
 その拍子にニレッドはついに片腕を切り落とすには届かなかったものの、なんとか大火傷を負う前に放り出され、よろよろと立ち上がる。
「あー、あっついあっつい……ひどい目に遭いやしたぜ」
「ご無事、でしたか。トカゲさん」
 そこへ同じくよろよろと、あちこちからまだ燃えている部分を残しつつ元のドラゴニアンの姿に戻ったバルディートも戻ってくる。
 仕留めたわけではないらしい。ただ、自分ごと燃やそうとするほど理性が吹き飛んだのに危機感を覚えたのか変化を解いて逃げざるを得なかったらしい。
「かの者は……?」
「まだ燃えてやすが、ピンピンしてまさぁ」
 鋏を杖代わりに、一応聞いてみたものの、バルディートの返答はニレッドの予想の域を出ないものだった。
 まだ魔王の命には遠い。なんという生命力だろう。
 だが、ならば、動かなくなるまで戦うまでだ。
 意気込むとともに、ニレッドは剥がれかけた眼帯を締めなおし、
「……ひとまず、服を着ましょう」
「おっと、こりゃごめんなすって」
 ちらっと目が向いたのは、ほんの単なる好奇心だったのだが、なるほど、内側にしまい込めるのか!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エーカ・ライスフェルト
魔王からの防御方法?
【フォースオーラ】を活性化して【念動力】で頑張って押し止めるしかないわね
【属性攻撃】で作った火か炎の矢で、眼球を狙うのもいいかも

「私は恐怖しても足は止まらないけど恐がりなのよ。……うーん、今回深刻に拙いわ」(迫ってくる爪を見て冷や汗が出る)
「前衛猟兵が近くにいれば良かったのだけどね」
【宇宙バイク】を必死に【運転】して距離をとって時間稼ぎも、出来ればいいわね(遠い目)

私のUCが使えるようになったら【魔力の縄】でグルグル巻きにするわ
他猟兵と連携出来るなら、巻いた時点で止めを他猟兵にお願いする
連携出来ないなら【念動力】で首をコキッと折ってやろうとする
「固っ。こうなったら我慢比べよ


アリス・レヴェリー
獅子に人……恐ろしい風貌だけど、彼自身もまだ降って湧いた知性に困惑している部分もあるのかしらね

あの頭部……距離を取るにもただ離れるだけでは追いつかれそうだし、樹々が並ぶ【地形】を頼りに、彼の動きを可能な限り観察しつつ逃れるわ

ある程度距離をとったら、腰の『刻命の懐中時計』の結界を展開。魔獣はエネルギーを喰らうようだから念の為多重に展開して【時間を稼ぎ】、その間に【選択UC】を発動。大地と炎を御する金獅子、ダイナを召喚、騎乗しましょう

そこからは土の防壁を駆使して妨害、それが吸収や噛み砕かれたら砂として操作して足止め
共有した生命からダメージは全てわたしが引き受けて、隙を作り出したら大火柱をぶつけるわ



「むう、何の音だ……ここの平穏を乱すとは……ん、平穏?」
 炎上する鬣や肌の炎を振り払い、ひと吼えするだけで森を燃やす炎を吹き消すと、耳障りなエンジン音に、レオ・レガリスはいち早く気付いた。
 ふと湧いた己自身の言葉に対する疑問は、闘争の気配にかき消されてしまう。
「まあいい。とびきりの知性体を寄越すがいい。まだまだ、ただの一人も喰ろうでいないのだからなぁ!」
 空間が撓んで陽炎のように見えるほどに、その咆哮はけたたましく、そして周囲の生命体を委縮させる。
 宇宙バイクにまたがって颯爽と登場したエーカ・ライスフェルト(ウィザード・f06511)も、肌を泡立たせる凄まじい咆哮によって、思わず加速を緩めてしまう。
「参ったわね。手が震えてくる」
 圧倒的な暴力。それが形を成しているかのような超自然の権化。獣の摂理をその身に帯びているかのような得体のしれない恐ろしさが、スペースシップワールド出身のエーカにとっては、強すぎる生命のように感じたのだろう。
 宇宙船の中で、人の生命はか細く儚い。それがわかるからこそ、何をしても生き抜いてきそうなほどの生命力を感じる相手には、果てしないものを感じてしまうのだ。
「……策はある?」
 猟兵として幾多の敵と戦ってきた自負もある。戦う術が全く無いではない。
 しかしだからこそ、慎重に相手を選ぶ必要もある。
 意見を求めるべく、宇宙バイクの後ろに同乗するもう一人の猟兵に言葉を投げる。
「獅子に人……恐ろしい風貌だけど、彼自身もまだ降って湧いた知性に困惑している部分もあるのかしらね」
「え、なに?」
「いいえ、あの絶大な生命力と正面からぶつかるのは危険だわ。こちらの機動性を活かしましょう」
 宇宙バイクの後ろ、体が小さいミレナリィドールなので直立してエーカの肩を抱くようにして乗り付けたアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)は、その長い金髪が風に泳ぐのを手で払いつつUターンを指示する。
「どうにか時間を稼いで、動きを止める。とっておきのやつを食らわせる!」
「とっておきがあるのね。じゃあ、こっちも動きを止めるのに、一生懸命やらなきゃいけないわね……」
 迫りくるレオ・レガリスを前に、宇宙バイクを反転させつつ、エーカは自分に活を入れなおし、再びバイクを走らせる。
 文明の利器たるバイクの移動速度は、壊れかけの森林の中という悪路ながら、倒木や木々を器用に避けて走る。
 対する四足の下半身を持つレオ・レガリスは、歩きなれた地元だけにか、直線スピードではバイクに譲るものがありながら、巧みな足さばきで時には立ち並ぶ木々すら足場にしながら、エーカたちのバイクに迫る。
「ハハハ、よく駆ける足を持っているな! そら、急がねば、追いついてしまうぞ!」
 岩山をも軽く踏破する偶蹄目の如く弧を描く動きで飛び跳ねるように襲い掛かってくる大魔王が、その質量を余すことなく鋭い爪を振り下ろしてくる。
「私は恐怖しても足は止まらないけど恐がりなのよ。……うーん、今回深刻に拙いわ」
 着地のたびに地面を抉る爪が土煙を上げる。
 その振動をハンドルに感じるたび、エーカの肌は泡立ち、背筋に冷たいものが奔るのを感じる。
「恐怖を感じるぞ。その柔肌では、振れるだけで血袋が破れはずだものなぁ!?」
「……うるさい!」
 降りかかる笑い声を振り払うように、バイクを運転しながら後ろに向かってウィザードロッドから火の矢を放つ。
 狙いは特につけていないが、もとより動き回る相手にバイクを運転しながらあてられる保証はない。ただ、目を封じられれば少しは時間が稼げたかもしれないとは思う。
 こんな時に後ろのアリスは何をしているかと思ったが、なにか術の準備、バイクで通った後に何かを設置しているらしいことまではわかったが、それ以上は余裕がなかった。
「うぐっ! フハハ、やはりこうでなくては」
 魔法の矢を幾つ撃ったか、その一つが念願かなってレオ・レガリスの片目を捉えた。
 さしもの魔王もそれには一瞬だけひるむが、
「手が二つでは足りぬ。ならば喰らうために口を増やそう」
 逆立った鬣の奥から口だけ大きくなったような別の頭が幾つも現れる。
 即席に生んだそれは、首を伸ばして腕と同様にバイクの二人へ噛みつこうと迫る。
 急に数を増やした攻撃に対応できず、ハンドル操作だけでは避けきれないと判断したエーカは、自身の念動力によって練り上げたフォースオーラを展開し、それらを押し返そうとする。
 不可視のオーラに押しとどめられた複数の口ががちんがちんと歯を鳴らす。
 念動力で押しとどめられる力場を無理矢理こじ開けようとするその筋力に、エーカは歯を食いしばって耐える。
 ひどい頭痛が彼女を苛む。背後には凄まじい存在感を持った圧力。
 いつまで、いつまで逃げればいい?
「準備が整った。直線に誘導して一瞬だけ距離を作りましょう!」
「りょう、かい……!」
 悲鳴のようなアリスの指示に辛うじて返答し、振るえそうになる手でエーカはハンドルを切る。
 直線。それは賭けである。今まで蛇行して進行を悟らせないように、いわゆる小細工を駆使してレオ・レガリスの攻撃を凌いできた。
 直線で逃げるということは、その先を読まれるということだ。
 おそらくは、この森林の悪路の中でほぼ直進すれば、一瞬にして追いつかれる。
 だがアリスは、準備は整ったと言った。
 決める時が来たのだ。
「飛んだ……! 今だ!」
 後ろを見ていたアリスがおもむろに懐中時計を取り出す。
 色とりどりの宝石のような結晶を文字盤にはめ込んだ『刻命の懐中時計』は、世界の雫と呼ばれるエネルギー結晶を用い、堅牢な結界を作り出す。
「ぬう!?」
 虹色のガラスのような八面体に空中で覆われると、レオ・レガリスは失速したようにその場に落下する。
「こんなもので、俺を止めたつもりか!」
 すぐさま魔王の爪や牙が、その強固な結界を数発で殴り壊してしまうが、前もって多重に張り巡らした結界は、壊されるたびに再生し、レオ・レガリスの動きを封じ続ける。
 そして結界がはじけ飛ぶたび、アリスの手にする懐中時計の文字盤にはめ込まれた結晶が砕けて霧散する。
「ここからは、分かれよう。おっきなのを使うから、エーカさんは近くにいちゃだめ」
「乗り物は、いいの?」
「友達がいるの!」
 術の連続行使で、元より体力に優れているわけではないエーカは既に疲労している。
 そんな状態のエーカに、アリスは力強く笑って見せ、ユーベルコード【友なる金獅子、勇猛の調べ】によって呼び出した金の獅子にまたがる。
 大地と炎を御するという獅子の力を得たアリスの、おそらくそれが奥の手というものなのだろう。
 見送ろうと手を振りかけたエーカは、しかし呼吸を整えるように深呼吸する。
「……ここで帰ったら、かっこ悪いわね……もう一仕事……」
 前衛猟兵が近くにいれば。などと贅沢は言わない。戦う術が、その意志が残っているなら、戦わなきゃ嘘なのだ。
 サイキックエナジーで力比べをやった影響で、いまだにひどい頭痛だ。
 だかしかし、視界の奥に跳ねる鬣と、きらめく金髪。
 それを見てしまうと、がたつく膝をブッ叩かずにはいられないのだ。
「我慢比べよ……!」
 バイクに差したウィザードロッドを引き抜き、汗だくの顔でエーカは不敵に笑った。
「ヌアアアッ!! 手ぬるい、手ぬるいぞ、わっぱめ!」
 ガラスが砕けるような音と共に、もう幾度目かの結界が引き裂かれる。
 その隙間を狙って、金獅子から生まれた火の玉を撃ち込むが、目新しい手傷を負わせるには至らない。
 レオ・レガリスの生み出した口は、エネルギーを喰らうとその力を吸収して自信を治療する。
 結界で動きをある程度封じたとはいえ、投げ込む炎が食われては、攻撃もほぼ通らないのと同じだった。
 埒が明かない。他ならぬ自分自身が作った結界が、決定打を欠く結果になってしまっている。
 かといって、解除すれば、あの魔王を正面から戦うことになる。
 金獅子ダイナの力を信用していないわけではないし、いざとなればつながった命、ダメージを自分が肩代わりする腹積もりだ。
 それに動きを封じる手立ては一つではない。
「覚悟を決める時かな……」
 結界ほど安全な手段ではないのが気がかりだが、いずれにせよ刻命結界はそう長くはもつまい。
 その瞬間を狙って、別の手立てを出すしかないが、そのタイミングは相手も同じように狙うことだろう。
 覚悟を決め、ダイナの鬣をなでつけると、答えるように低く唸る。
 そうして、最後の結界が悲鳴を上げて壊れると、レオ・レガリスの増えた首が我先にと飛び出してくる。
「そう、その瞬間を待っていたわ」
 まさしく誰よりも、その瞬間を待っていたかのように、光の縄がその首に巻き付いた。
 それは、ウィザードロッドを振るうエーカのその長い髪と同じ淡いピンクの輝きを帯びる。
「ムグ、ムグゥ……!?」
「大人しくなさい。口を塞がれたら、噛みつくも何もないはずだわ」
「エーカさん!?」
 木にもたれかかるようにしてユーベルコードによる【魔力の縄】を使うエーカに、アリスは再び悲鳴のような声を上げるが、それすらも耳障りそうに目を細めると、
「これ、疲れるんだから……はやく、やっちゃいなさいよ……!」
 悪態のような言葉を投げつけて、にやりと口元に笑みを浮かべる。
「……! わかった、ダイナ!」
 アリスの指示のもと、金獅子が吼えると、周囲の大気が収束するようにして、レオ・レガリスの体を覆わんばかりの火柱が立つ。
「グオオオッ!!」
 炎に包まれる大魔王のシルエットを確認したところで、ようやくエーカはユーベルコードを解く。
 そしてしてやったりといった様子でサムズアップしてみせると、膝の笑うまま腰を下ろした。
 それを見つめるアリスも小さくサムズアップ。
 ダイナも親指を立てようとして、失敗して小首をかしげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宮入・マイ
シュバルツちゃん(f14572)とっス!

おおー大魔王だけあってレオちゃんするどいっスね…なんせマイちゃん、喰らわれに来たんっスから!
何を隠そうマイちゃんは寄生虫!
喰われることこそ宿命…というわけで、レオちゃんにバラバラに引き裂かれて食べやすいサイズにっス!
わざわざ喰らいたいって言ってるんっスから素通りは嫌っスよ?

無事お腹の中に収まれたら…【Xとの邂逅】発動っス!
でもこれあれがやってくるまで時間がかかるんっスよねー…だからそこはシュバルツちゃんに気張ってもらうっス!
マイちゃんも『ロイコちゃん』でサポートするっスから!

そろそろ時間っスかね?
…ほらほら怖いのがやってくるっスよ~!

きゃっきゃ。


シュバルツ・ウルリヒ
宮入(f20801)と

第二形態、…第一と第三とはまた随分と変わったな、面影があるのは体型ぐらいか?
…まあいい、どんな姿になろうと僕は斬るのみだ、行くぞ宮入…む、何だ?作戦がある。 …大丈夫なのなそれは…?ただ突っ込むよりはマシか。…いいだろう、それでいくか。

先制対策 【残像】を出しながら森林の樹などを盾にして防ぐ、奴はUCの力で更に巨体になっている。つまり範囲や威力は高いが…攻撃の隙が大きく何とかなる筈だ。…だが一応、食らった時の事も考えて斧で防御の構えは録っておこう【激痛耐性、武器受け】

そして、宮入が奴の体内で作戦通り仕掛けたから反撃だ、UCの力で身体能力を強化、そして斧で奴を攻撃だ



 煌々と燃え立つ火柱が、その中に立つ大魔王の腕のひと薙ぎでたちまちかき消される。
 猟兵たちによる予想外の攻撃の数々に、さしもの頑健さを誇る大魔王『レオ・レガリス』も、さすがに疲労の色を見せ始めてきた。
 手傷は決して浅くはない。
「ヌウウ……一方的に喰ろうてやるつもりが、なんという体たらく……そろそろ、何か口にせねば、空腹で参ってしまうな」
 焼けて潰れた左目に手をやりつつ、またも新たに来訪した侵入者の気配に、レオ・レガリスはその体を起こす。
「第二形態、……第一と第三とはまた随分と変わったな。面影があるのは体型ぐらいか?」
 二人の猟兵のうちの一人、少年のように小柄ながら身の丈を超えるような両刃の大斧を担ぐ仮面の戦士シュバルツ・ウルリヒ(黒剣・f14572)は、醜く焼けただれた大魔王に臆することなく、何かに祈るかのように密やかに十字架を握りしめる。
「あれらと同じと思わぬことだ。何より飢えているからなぁ。
 しかし、なんだな。痩せこけた小僧よりかは、そっちの大きい娘のほうが、食いごたえがありそうだ」
「おおー大魔王だけあってレオちゃんするどいっスね」
 値踏みするかのように見下ろしてくる大魔王に、こちらもまた臆することなく2メートル強の長身の猟兵が、ちょっと間の抜けた調子で答える。
 おどけたような調子のわりに、その表情は表情らしいものを浮かべていない。
 それもそのはず、バイオモンスターである宮入・マイ(奇妙なり宮入マイ・f20801)のその女性の姿を象っているのはおびただしい数の寄生虫の集合体なのである。
 つるりと卵のようにつやつやの顔は、言うなれば寄生虫による擬態、殻のようなものらしい。
「わざわざ喰われに来るとは、殊勝なことだ」
「……おい宮入、本気か?」
「んまぁ、大丈夫っスよ……ちょっとした作戦っス」
「大丈夫なのか、それは……」
 こっそりと作戦のために言葉を交わす。
 あっけらかんとするマイは、きわめて死にづらいせいだろうか、ちょくちょく自分を大事にしないことをしがちだ。
 対してヒーロー活動もしているシュバルツからすれば、マイは一応女性である。志を同じく戦場に立ったとはいえ、その立案には承服しかねるものもあったが……。
「……無策で突っ込むよりかは、マシか。……いいだろう、それでいくか」
 結局、力押し以外の代案が出てくることもなく、シュバルツは覚悟を決める。
 心中で知り合った間もない彼女の武運を祈るほかない。
「何をこそこそと……策を弄したとて、俺の暴力がすべて台無しにするぞ!」
 話が終わったところを見計らったかのように、大魔王がその巨体を割り込ませるように体当たりを仕掛けてきた。
 咄嗟に飛び退いてかわす二人だったが、別方向に跳んでしまっては連携も何もない。
 狩猟者の本能なのか、巨体によるぶちかましは、それだけで陣形を突き崩す。
「チッ、しまった……」
 仮面の奥で毒づくシュバルツとよそに、レオ・レガリスは二人のうち致命的な隙を見せたマイの方へと手を伸ばす。
「まずは一人!」
 鋭く窄めた巨腕がマイの胸を貫いた。
 背中まで一気に腕がねじ込まれると、マイはその背筋をのけぞらせ、苦痛にあえぐように喉を鳴らし、力なく突き刺さった腕を抜こうとするも、マイの体を軽々とぶら下げる大魔王の腕はまったく揺るがない。
 実のところ、マイ自身、その動きは迫真の演技によるものだったりする。
「ハハハハ、何と容易い! もうしばらく余韻に浸っていたいが、すまんな。腹が減っているので、さっそく頂かせてもらう。いつくたばっても構わんぞ。ハハハ!」
 ご満悦といった様子で、大魔王は腕につり下げたマイの腕をちぎり、足をちぎり、それらをほぼ一飲みで胃の腑に収めていく。
 力任せにねじ切られた下半身からは臓腑が垂れ、それすらも啜られれば砕けた肋骨や背骨が覗いた。
「クッ……もう少し適当に作っておけよ」
 ある程度離れたとはいえ、シュバルツはその食事の光景から目を背けそうになる。
 食事中とはいえ、相手は大魔王、ひと時とて目を離すわけにはいかない。
 しかし、作戦のうちとはいえ、女性が目の前でぼりぼりと喰らわれるというのは、精神衛生によろしくない。
 やがて残すところ頭だけとなったマイが、その体全てを食われるその瞬間、ヒビの入ったその口の端が一瞬だけ歪んだように錯覚する。
「フゥ……やはり、なかなか喰いごたえがあるではないか」
 さて、と、優雅にすら見える仕草で、レオ・レガリスはシュバルツに向き直る。
 さて、と、シュバルツもここからが正念場とばかり、大斧を構え、仮面の奥で周囲をさりげなく確認しておく。
 マイを取り込んだことで、知性体を喰らいたい渇望を得た大魔王は、その体躯を二倍近いものにしていた。
 もはや逃げるなどという選択肢は無いに等しいが、それでもどうしても時間を稼がなくてはならない。
「お前はデザートだ! 食後に食す! そして、その食後にも更に食してくれる!」
「……馬鹿を言え」
 無造作に薙ぐように振り抜かれた腕による一撃をどうにか横っ飛びに回避し、シュバルツは木々の残る森林へと戦場を移す。
 知性を感じさせない言葉にわざわざ返答をするのも馬鹿馬鹿しかったが、会話をすることで時間が稼げるなら御の字だ。
「どうした? 餌が逃げるな!」
「そういわれてもな……!」
 雑な攻撃だ、とシュバルツは思った。おそらくは、マイを食したことで、レオ・レガリスは優越感に浸っている。
 木々を軽々と腕一本で薙ぎ払うのは凄まじい腕力だが、それでもあくまで超能力だとか魔法だとかそういうものでなく、肉体一つでしかも体の部位を振り回すようにして打ち付けてくる攻撃は、おそらく馬鹿でも躱せる。
「むう、少し遊びが過ぎたか……?」
 なかなかシュバルツを捉えられないことに、レオ・レガリスは徐々に違和感を覚え始める。
 いくらなんでも当たらな過ぎる。
 シュバルツの動きが、緩急をつけた残像によりなかなか本体を掴ませない。それもあるのだろうが、これではまるで、わざわざ当たらないよう、操作されているかのようだった。
「……効いてきたのかな。そろそろ」
「なんだと……?」
 何かを確信したシュバルツは、防戦に回っていた引き足を戻し、攻撃に転じる構えに変更する。
 そのマスクの赤い輝きではないもので、視界が赤く染まるのを感じる。
 ダンピールである彼が、祖にもつその【血統覚醒】を促すのは忌避したいものではあるが、それでも、使える力は自分のものだ。
「体は動くか? それは、お前の意思か……?」
「なにを……言っている?」
「おぞましい、何かの……足音が聞こえないか……?」
 ヴァンパイアの力に目覚めたその圧倒的身体能力でもって斧を振りかぶり、加速するその一撃を、レオ・レガリスは腕で受けようとするが、胃の腑に感じた違和感に意識が向いてしまう。
 何かが居る。
 それは、マイが敢えて食われたことによって効果を発動していた。
 【Xとの邂逅】それによって、おぞましい何かを引き寄せるフェロモンを発していた胃袋には、いつの間にかそれがあった。
 目には見えない。おそらくはフェロモンによって何処よりやってきた何者か。
 それが空腹のはずだったレオ・レガリスの胃袋をはちきれんばかりに腫れさせ、ついには内側から突き破って出てきた。
「ぐはぁっ!?」
 体勢を崩したところ、更にシュバルツの大斧が振り下ろされた。
 受けるしかないそれは、今までの戦いで傷ついた片腕を寸断することに成功した。
「おい、無事だろうな?」
「うーん……ちょっとあっちに残してきたほうとはコンタクトが取れないッスね」
 確実にダメージを与えた大魔王からしばし退き、急ごしらえで再構築したらしきだいぶ縮んだマイの裸体をなるべく見ないようにするシュバルツに、マイのほうだいぶ見当はずれな答えを返す。
 次も同じ手が通じるとは限らないが、大勢ある寄生虫の中でマイ本体がひとまず無事であることをまずは喜ぶべきだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

虎熊・月霞
【雷鳴団】で参加するよぉ。

おー、だいまおーって感じだねぇ。まぁ今回は3人もいるんだしぃ、三人寄れば折れにくいって事で。まだまだ強くなるみたいだしぃ、第二、第三の魔王が出て来る前にサクッと倒しちゃおー。……流石に増えないよね?

 先制攻撃は武が引き受けてくれるみたいだしぃ、抜き足差し足【忍び足】で回り込むよぉ。爪が飛んで来たら【武器受け】で受け流して【見切り】。恐怖の方は手持ちの棒手裏剣で足を刺して正気を保つようにするよぉ。【激痛耐性】あるし動きに支障はないだろうしねぇ。
 上手く隙を見て【部位破壊】しながら【傷口をえぐる】、おっきくなったんだったらその分、腕なり脚なりを削いでいけばいいよねぇ?


天道・あや
【雷鳴団】で参上!

第2形態!…そうだよね!第1があるなら第2もあるよね!…え、これが第3のあの姿に…!?う、うーん一体何が…分からない!でも魔王には変わりないんだし…倒す!左に月霞よしっ!右に武さんよしっ!そして…あたしよし!それじゃいっくぞー!

敵の先制攻撃はレガリアスをフル稼働させて全力【ダッシュ】で【見切り】ながら避ける!恐怖?三人いるから怖くない!

攻撃を避けた後は武さんに魔王の正面を任せつつ、少しは武さんへの負担を減らすべくUCを発動!(歌唱)武さん!頑張って!

そして月霞が攻撃を仕掛けたらあたしも魔王に接近して追い討ち!自分の歌でパワーアップしてるしきっと効くはず!【属性攻撃雷、鎧砕き】


十文字・武
【雷鳴団】3人

さて、こいつが第2形態。正しく暴力の化身てな感じだが、こっちもそうやすやすとはやられんよ
孤独な王と違って人は群れでの狩りが得意なんでな
あや、月霞……やるぞ

先制で巨大化した身体で振るってくる爪を武器受け・なぎ払いで……と、流石にこりゃ受けきれんかっ!【激痛耐性】
自分に嘘は吐けん。正直、大魔王の前に立つ恐怖にぶるっちまってるが……盾のオレが二人の前でそんなの見せられんよなぁ!【団体行動・覚悟】

あやの歌で強化された今のオレならまともに打ち合える筈
真正面で【挑発・おびき寄せ】二人へ向く攻撃を【かばう】の盾役だ

流石大魔王、攻め切れんか?
なら……指定UC発動
一分弱の超強化
火力二人への隙を作れ



「グヌゥ……とんだ食わせ物が現れたものだ……だが、戦いはこうでなくてはな……」
 腕を一本取られ、腹を食い破られた大魔王第二形態『レオ・レガリス』は、もはや軽傷で片付けられるダメージではなかった。
 特に内部から食い破られたのがまずい。大魔王だけあって、負った傷は回復しつつあるのだが、それでも戦い続けるには大幅なパワーダウンとなろう。
 そんなことなどお構いなしに、猟兵たちは次々とやってくる。
 そして、挑み続ける勇ある者には、立ちはだからなければならないのが魔王というものである。
「そうだ、俺はただ、食い散らかすのみ……!」
 暴力の化身たるものならば、そこに矜持など不要。強い者、知性体を喰らえればそれでいい。
 切り落とされた腕の骨だけが伸び鋭く尖る。
「おー、だいまおーって感じだねぇ」
「第2形態! ……そうだよね!第1があるなら第2もあるよね! ……え、これが第3のあの姿に……!?」
 次々とやってくる猟兵たち。今度は3人揃ってやってきた。
 旅団で知り合った3人のうち、虎熊・月霞(電紫幻霧・f00285)がぽやっと能天気な感想を述べれば、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)は他の大魔王の姿を思い浮かべて、その違いに目を白黒させている。
 同じ女性でありながら、小柄にボリュームのある体系と、スレンダーで均整の取れたスタイルで随分と違いがある。
「こいつが第2形態。正しく暴力の化身てな感じだが、こっちもそうやすやすとはやられんよ」
 そして、両手に華……もとい二人を守るように立つ3人目は二刀を携え獣性を帯びた瞳を魔王に向ける十文字・武(カラバ侯爵領第一騎士【悪喰魔狼】・f23333)。
「ハハッ、3人がかりとは! そんなに遊びたいか? 命を投げ捨てる遊びだぞ!」
 凶暴に笑う大魔王のその威圧は、ただ声を上げるだけで正対する者の肌を泡立たせる。
 だが、強敵ならば立ち向かう3人もまた幾度となく相手をしてきた。
「まぁ今回は3人もいるんだしぃ、三人寄れば折れにくいって事で」
「左に月霞よしっ!右に武さんよしっ!そして…あたしよし!それじゃいっくぞー!」
「そうだな。孤独な王と違って人は群れでの狩りが得意なんでな。
 あや、月霞……やるぞ」
 これ以上強くなってもらっても困る。手傷を負っている今のうちにサクッと倒してしまおう。
 3人の意志は改めて固まった。
 それぞれに展開する動きを見せつつ、正面からは武が出る。
「ヌアアッ!!」
 雄叫びを上げるとともに振るわれる強靭な爪を、二刀を並べるようににして受けきる。
 いや、受けきったかのように思えたが、凄まじい衝撃の余波が刀だけでは受けきれずに武の体を傷つける。
「受けきれんか! だが、ぬるいぜ!」
 これくらいは痛みのうちに入らない。だが、それよりも厄介なのは、振るわれる爪よりむしろ、大魔王が放つその圧倒的な存在感、その威圧感であろう。
 強い者は、その存在自体が強い。存在の格が高い者を前にすると、知らずのうちに威に屈して膝を折りそうになる。
「どうした小僧。勇んで出てきた割に、子犬のように縮こまりおって。もっとうまそうに吼えてみせい」
「うるせぇな、この野郎……ブルッてるからなんだってんだ。武者震いってんだよ!」
 圧力で押してくるレオ・レガリスの威の前に笑いそうになる膝を叱咤するように、武は歯を食いしばる。
 虚勢を張ったところで、大魔王には見透かされる。偽ることはできまい。
 たとえオオカミの狂気を宿したオウガブラッドといえど、かの者にとっては子犬程度というのか。
 しかし、それでも意地を張らずにいられないのは、あやや月霞の盾になるという覚悟があるからだ。
 突き崩されるわけにはいかなかった。
「子犬だって、噛むときは噛むぜぇ……気を付けんだな!」
「ハッハッハ、噛んでみせよ!」
 鉄板同士が打ち合うような激しい衝突音を響かせ、哄笑する大魔王の攻撃にだいぶ打ち負けながらも、武は致命傷をさけ、猛攻を凌ぐ。
 空元気でも吐き続けなければ、あっという間に折られてしまいそうなほど重く、間断の無い攻めは、武を消耗させるが、
 大魔王の背後にひらめく影。
「ぬぅ!?」
「背後ががら空き、だよ」
 少女の身の丈に達するような野太刀が、レオ・レガリスの後ろ脚を捉える。
 武が正面を引き受けている間に気配を殺して回り込んだ月霞が、足を奪うべく加えた一撃だったが、さすがに巨体を支えるだけに断ち切るまでには至らなかった。
「更にもう一撃!」
 月霞の攻撃に目が向いた隙を更について、変則的な軌道で飛んできたあやが、その足先に履いたインラインスケート型の武器を頭上に叩き込んだ。
 ちょうど片目が潰れていたために、そこは死角となっていた。
 さすがに脳天への一撃は、効果ありだったとみえ、魔王の動きは一瞬だけ止まる。
「ククク……さすが、ここまで踏み込んでくる者どもよなぁ!」
 静かに笑う大魔王に危険なものを感じた3人は、それぞれに跳び退ろうとするが、次の瞬間に至近距離から咆哮を浴びてしまう。
 それは、命あるものならば誰もが感じる根源的恐怖。人間が生来から闇の中を嫌うような、どうしようもないただの恐怖だった。
「う、ぐ……くそ……」
 凄まじい空気の振動に、思わず膝をつく武。
 波に飲まれた毛糸のように体に力が入らない。
「う、あ……ああ……」
 瞳の焦点がぶれて、腰が砕ける月霞。
 咄嗟に棒手裏剣で以て足を刺して気つけを試みようとするも両腕に力が入らない。
「うあ……」
 そしてあやは、凄まじい音の波に頭を抱えそうになるが、武器を手にすることを考えなかっただけに、状況に対応する判断もまた彼女らしかった。
「うわあああああっ!!」
 四肢に力は入らなかったが、腹には力が入った。日頃のボイトレの賜物だろう。
 その大声はヘッドセットを通じて、咆哮を掻き消すほどの音量に達する。
「みんな、頑張れぇっ!!」
 思い切りのままに、ユーベルコード【サウンド・オブ・パワー】を発揮する。
 本能のままに楽器をかき鳴らし、音階に乗せてエールを送る。
 それがかの咆哮の王の恐怖を打ち消していく。
「そうだ、頑張れ……俺!」
「そうだ、こっからだ、よぉ……!」
 食いしばった口の端から苦いものをこぼしながら立ち上がる武。
 自身の武器で肉を抉り脳神経を無理矢理叩き起こして太刀を担ぎなおす月霞。
「小癪な娘だ。お前から喰ろうてやるべきだったか!」
「てめぇの相手は、俺のはずだろうが、大魔王ちゃんよ!」
 歌うあやに手を伸ばそうとするレオ・レガリスに立ちはだかる武は、その手を払いながら、左手の義手に内蔵した魔法石を起動させ【法石起動・雷帝開放『巨人騙り』】を発動させる。
「ほんの、1分ちょっとだ。付き合ってもらうぜ……!」
 獣のように獰猛に笑う武の双眸に雷光が迸る。
 義手からあふれ出る青白い輝きが雷光となって全身を駆け巡ると、その身が総毛だつように常人に非ざる力が漲る。
 今ならなんだってやれる気がする。
 獣の王にでもなったかのような万能感に酔いしれそうになるが、相手は名高き魔王。
 不足はない。
 二刀を携えた獣が吼えた。
「うおおおおおおっ!!」
「ぬおおっ!?」
 これが、先ほどまで恐怖に膝を折っていた男の太刀筋なのか?
 困惑と歓喜、痛みと恍惚が、レオ・レガリスの心身を切り刻んでいく。
 何という輝き。これが知性体の作り出すものであるというのか。
 見たい、もっと見せてみろ。
「フハハ、もう両腕が壊れかけだ……なんと心地よい痛みだ」
「なに、喜んでやがる……困るのは、これから……だ、ぜ」
 だが、終わりはやってくる。
 膝を折って座り込むようにして昏倒するその姿は、先ほど恐怖に膝を折ったものとはまるで違う価値があるように思えてならない。
 だが、ふと持ち合わせることになった知性の中で、それを何と評していいか、レオ・レガリスには言葉が出なかった。
 そうして心動かされたからだろう。その背後でユーベルコードの準備を終えた月霞に気づいたときはもう、手遅れだった。
「奔れ飛電、断ち斬れ紫電――雷切流の原点を魅せてあげるよぉ!」
 紫電を纏う雲耀の一撃。それを後ろ脚に受け、今度こそ魔王の足は砕けてちぎれ跳んだ。
「さらに、追い打ちの一撃ィー!!」
 片足では足りぬとばかり、月霞に続いてインラインスケート型の武器、レガリアスによる一撃は、自らの歌声によって強化されたものである。
 これもまた大魔王の後ろ脚の一本を砕いていく。
 さらにあやは抜け目なく、月霞に目配せする。
「月霞、動ける?」
「もうちょっとなら」
 そうして短い問答をかわして、力尽きて眠る武を二人がかりで回収し、一時戦場を離れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミフェット・マザーグース
大きな怪物をやっつけるのは勇気
絵本で読んだ通りに、いつも通りに頑張ろう

WIZで判定
ティエル(f01244)と一緒だよ!

髪の毛に擬態した触手を高質化させて、ティエルといっしょに「盾受け」
「怪力」で吹き飛ばされないように「激痛耐性」で耐えるよ

耐えたら「歌唱」で自分と猟兵たちみんなの心を「鼓舞」するよ

UC【田園を照らす暖かな陽の光の歌】
迷宮の外の世界のイメージを作って、歌に共感してくれた人の心を癒すよ
みんながまた勇気を奮い立たせることができるように

ティエルの罠で敵に大きなスキができたら
ミフェットも髪の毛をドリルにして「トンネル掘り」の「串刺し」攻撃だよ!

※アドリブ、連携、大歓迎


ティエル・ティエリエル
WIZで判定
ミフェット(f09867)と一緒だよ♪

大魔王の先制攻撃はミフェットと協力して防御するね♪
ミフェットが髪の毛で盾受けしているところにボクが「オーラ防御」のオーラを流し込んでダメージを減らすよ!
友達のミフェットと一緒だもん!大魔王の攻撃なんて全然怖くないぞー☆

攻撃を耐えたら、ミフェットのお歌に後押しされてレイピアを構えて突撃だ!
風を纏わせたレイピアでの「属性攻撃」でチクチクしながら
相手が再び連続攻撃をしてこようとしたところを「カウンター」で【妖精姫の括り罠】に掛けちゃうぞ☆
動きが止まって大きな隙が出来たところに、目を狙った「鎧無視攻撃」で手痛い一撃を叩き込むよ!

※アドリブや連携も大歓迎


フランシーヌ・ゴールデンルール
やぁやぁ、大魔王くん!
元気にしてるかい?
私は大いに頭の中まで元気だとも!
知性体を喰らいたいとのことだけれど、それは何故だい?
腹を満たすだけなら、そこらの草とか花とかなんなら獣の方が美味しくないかい?
そこであえて知性体というカテゴリをチョイスしているのか是非ともご教授願いたいね!


ふと閃いたのだけれど。感情を爆発させようとしている時に思考に意識を割かせたらどうなるのだろう?
その分、感情の強さも減るんじゃないかな!
思い付きだけどね!

首尾よく事が運んだら、小さな体を活かして森林に隠れながら移動し、人形に搭乗!
獣相手ならば火が一番だろう!
火炎攻撃装備に換装し、森ごと焼き尽くすよ!

【アドリブ、連携歓迎】



「ヌゥ……見事なり……あの戦いぶり、そして引き際よ……。思えば、理性あるからこその引き際ということか……。引き際? 退くだと? 馬鹿な……」
 度重なる猟兵の、それはもう死に物狂いの猛攻を一身に受けた大魔王の一かけら、レオ・レガリスは、もはや滅びかけていた。
 幾度となく火を浴びせかけられ、矢を受け、刃を受けて、獰猛な両腕の爪は綻びが目立ち、片目は焼けただれ、四足のうちの2本は砕かれ斬り飛ばされた。
 胸にもらった傷、無数に受けた傷、傷、傷。
 なんと心地よい痛みだろうか。
 野生のままに全てを開放して戦うことの、なんとすがすがしいこと。
 生きているとはまさにそれだ。
 かつて挑んできたあれやこれ。そう、奴らもまた英雄だった。それに相応しく、輝いていた。
 なんと心躍るひと時だったろうか。
 その身を砕き、引きちぎり、命が終わるその瞬間までも愛おしい。
 命とはかくあるべきだ。そこには知性などなく、純粋な命の取り合いがあった。
 なんと甘美で、愛しい時間だろうか。暴力があれば何も必要でない。
 暴力だけで解り合えばよいではないか。
 勝つものが勝ち、負けるものは喰らわれる。それでよいではないか。
 引くだと? 仲間だと? そんなものは必要でない。純粋でない。
 そうだ、引くなどありえない。
 どれほど微睡んだろうか。ほんの一瞬だったかもしれない。
 決め手に欠いた猟兵たちが攻撃を加えに来るでもなく、別の新たな猟兵の気配に反応したのは、やはり暴力に生きたが故だろうか。
「やぁやぁ、大魔王くん! 元気にしてるかい?」
 ふらりふらりと風になびく木の葉のような光跡を引いて飛んできたのは、本当にそれ可愛い衣装なの? というようなスポーツブラとホットパンツに白衣を纏ったフェアリー、フランシーヌ・ゴールデンルール(マッドフェアリー・f11911)。
「さあて、元気者ばかり相手にして、少々空腹かな」
 陽炎のように舞うフランシーヌを目で追いつつ、胡乱気な眼差しを向けるのは、彼女が腹の足しになるかどうか値踏みしているかのようだった。
 そんな野生の獣そのもののような歯止めのきかない危険物を目の前にしたことを、フランシーヌは早くも後悔し始めていた。
「純粋な疑問なんだけどもさ。知性体を喰らいたいとのことだけれど、それは何故だい?
 腹を満たすだけなら、そこらの草とか花とかなんなら獣の方が美味しくないかい?」
 こんな獣そのもののような相手に理屈が通用するのだろうか。
 いや、これは彼自身が持つ矛盾を突くことで、それをあえて考えさせることにこそ意味がある。
 数ある食物を自由気ままにできるだけの力を持ちながら、知性体を喰らわねばならない理由はあるのだろうか。
 それは策でもあったが、純粋な好奇心から気になることでもあった。
「はて、何故だろうな? 胃の腑を満たすだけでよいなら、それで満足できるな……時に、お前のような小さな者でも、腹は減るのか?」
「へ? そりゃまぁ……食べるには食べるけど」
 まさか大魔王の方から質問を返されるとは思わなかった。それがひどく穏やかで、危ういものをはらんでいるのを感じ、フランシーヌは言葉を濁しつつ、退路を用意するべく視線をさまよわせる。
「ふむ……何かを捕って食うようには見えぬが……しかしどうだ。お前の目。それは、欲する者の目だ。お前も渇望しているのではないのか? ここの満足を」
 自身の頭を指さすレオ・レガリスの、思いもよらぬ理性的な言葉に、フランシーヌはぞくりと背筋を凍らせる。
 深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている。
 ふと得た知性に戸惑っている? これがそうだというのか?
 馬鹿な、こいつはもう答えを掴みかけている。
「っ!!」
 ぶおん、と無造作に振るわれた腕をかいくぐるように後退する。
 すんでのところでフランシーヌは攻撃を回避するが、レオ・レガリスの体はいまだ傷だらけのままで、どこも巨大化する様子はない。
「ふむ、渇望が足らぬか……やはり、こんなものではな」
 思考するという事を得始めている暴力の大魔王の感情は、冷静に思考しようとするほど揺れ動かなくなってきている。
「あぶなーーーーい!」
「ぐへっ!?」
 さて大魔王の攻撃をどう凌ぐかと考えていたフランシーヌは、しかしいきなり横合いからタックルを浴びてカエルのような悲鳴を上げる。
「大丈夫だった?」
「わき腹が痛いけど、大丈夫」
 ぶつかってきた人物を見やると、それはフランシーヌと同じフェアリー。同族だからこそわかる範囲でいうならば、随分若いように感じた。
 ずれた眼鏡を直しながら居住まいを正し平静を装うものの、実のところわき腹がかなり痛む。きっと体育会系だ。
「さあ、ボクたちが来たからには、大魔王ったって、もうおしまいなんだぞー!」
 そうしてフランシーヌの心配もそこそこに、白銀に輝くレイピアを手に、びしっとポーズをとるは、ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)。
 そしてその言葉尻に「たち」とつくのに気づくとともに、黒くうねうねしたものがどーん、と降り立って少女の形を成す。
「大きな怪物をやっつけるのは勇気。
 絵本で読んだ通りに、いつも通りに頑張ろう!」
 ティエルを守るように黒い髪の毛に擬態した体を盾のように構えるのは、ブラックタールの少女、ミフェット・マザーグース(沼の歌声・f09867)。
 友人であるティエルと共に、最後の戦いを挑みにやってきたというわけだ。
「ふ、ハハハハ! 終いにはわっぱどもを寄越すとはな! このレオ・レガリスも嘗められたものよ。
 だがいいぞ。わっぱほど純粋でなければ、俺とは語れまい!」
 純粋な輝きを宿した子供たちの参戦により、大魔王は憤慨するでもなく、その気概を取り戻したようだった。
「あちゃあ、やる気取り戻しちゃったよ。どうしよっかなぁ……まあでも、あいつももう死に体か」
 水を差されたようにも感じたフランシーヌは頭を抱えるが、しかしこれもまた好機と考えたか、密かに二人に前衛を任せ、自身はからくり人形を起動し、騎乗する。
「俺が滅びるが先か、お前たちが胃の腑に収まるが先か……試してみようか!」
 根源的な恐怖を呼び起こす獣の咆哮と共に、大魔王の爪が躍る。
 後先など考えない連続した爪の応酬に、ティエルとミフェットは正面から向き合う。
 多くの猟兵たちを恐怖させ、踏み入ることを戸惑わせたその咆哮を前に、二人は退かない。
 そこにはなけなしの勇気と、子供ならではの純粋さがあった。
 すなわち、
「友達のミフェットと一緒だもん! 大魔王の攻撃なんて全然怖くないぞー☆」
 友と共に戦場に立つこと、そして友人を必死に守る黒い触手の盾、風の守護が相互に守り合うことで、大魔王の攻撃はほぼ最小限のダメージで抑え込まれていた。
 無論、レオ・レガリスが消耗していることもあるだろう。
 そして、その攻撃がようやく途切れる頃に、歌が紡がれる。
「目を閉じて ほんの少しだけ
 思い出して 胸のそこにしずんでる 暖かいばしょ
 その陽の光は いつでもみんなを照らしてる」
 決して、迷宮のそこには届かぬ陽光。それに照らされる美しい本物の自然と、人々の営み。
 その情景を思わせるユーベルコードによる歌唱【田園を照らす暖かな陽の光の歌】は、本物の陽光のように信じて疑わないティエルの体を覆い、日の出のような髪をきらきらと輝かせる。
 今なら無限に戦える気がする。
「ふ、ロマンチストねぇ。陽の光なんて、けっこう浴びてないかもしれないな」
 あまりにも純粋でちょっと趣味から外れるらしいフランシーヌは、しかし懐かしむように目を細め、自身も【黄金宮殿】によってからくり人形の装備を火炎放射型に換装し、二人の援護に加わる。
「横やりいれちゃうよ! やっぱ、獣には炎が一番だろう!」
「ありがと! ボクたちもいっくぞー!」
 高温度の燃えた液化燃料を吹き付けるフランシーヌのからくり人形に合わせるように、ティエルは歌の加護を受け加速した連続攻撃を加えていく。
 風を纏ったレイピアの攻撃は、火を纏わせる火炎放射と相性がいいようで、斬りつけた先から火が回っていく。
「ふはは、やるな小童どもめ。だが、そう近づかれては、叩き落としてくれと言っているようなものだぞ!」
「やってみるといいよ!」
「ハハハ!」
 ティエルの誘いに乗るように両手を広げて持ち上げた瞬間、
 ミフェットの黒い髪の触手が先端を窄め、掘削ドリルのように回転しながらその両腕を貫いた。
 動きが完全に止まった。
「いまだー! 引っかかっちゃえ!」
 さらにダメ押しとばかり、ティエルのユーベルコード【妖精姫の括り罠】により、何処からともなく出現したくくり罠がレオ・レガリスを完全に動けなくしてしまう。
「ティエル、行って!」
 その隙を逃すことなく、ティエルは最大加速まで一気に駆け上がり、渾身の一撃をレイピアに込める。
 その切っ先が大魔王レオ・レガリスの眉間を貫いたとき。
 それまで周囲を支配していた圧倒的な存在感が揺らぐのを誰もが感じた。
 致命的なものが壊れた。
「はぁ、はぁ……」
 驚くほど軽い手ごたえで抜けてしまうレイピアを手に、ゆるりとティエルは降下する。
 度重なる術とユーベルコードの行使により、背中の翅は鮮やかな光彩を失いつつあった。
 既にミフェットの触手も、ユーベルコードによる拘束も、フランシーヌのからくり人形をも解かれていた。
 それほどまでに、もう目の前の存在感が薄れ始めていた。
「見事だ……わっぱども……どうやら、満たされてしまったようだ」
 ほうぼうの体で、大魔王は消えかかる体を引きずり、燃え盛る森林へと歩いていく。
 その存在を、他の猟兵の誰もが追おうとしない。
 やがて、その姿が火にまかれて見えなくなると、そのシルエットだけが燃え盛る中で壊れた拳を突き上げる。
「勇者たちよ、見事なり! 遠からん者どもよ、旅の手向けに俺の生き様を持って往くがいい! さらば!!」
 そうして燃える森を揺るがさん限りに響く大魔王最後の咆哮は、この戦いに参加した猟兵たちの心に、その名を刻みつけることとなっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月10日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト