3
炎も血も赫々と

#ダークセイヴァー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー


0





「予知しちまった。……赤い景色だったよ」
 ダークセイヴァーでの事件とあって、タハニ・クルツリンガー(乱暴者は乱舞する・f03635)の口は重い。
 規模は小さいわけではない町のことだとタハニは言う。歴史も浅くないその町へ到来したヴァンパイアは亡者を引き連れ、町へ火を放ったのだ。
「住人は無事に逃げれたようだが、燃えたままってわけにもいかねえ。亡者と、亡者を連れてきたヴァンパイアをぶっ倒してほしいんだ」
 亡者は墓地公園を徘徊し、火を放っては辺りを焦土へ変えようとしている。
 篝火を持つ彼らを掃討しないことには、町を包む炎が消えることはない。急ぎ対処すべきはこの亡者どもだ、とタハニは告げる。
「亡者が片付いたら、町の中央広場に陣取ってやがるヴァンパイアを殺す」
 華やかな刀剣を手にするヴァンパイアは血の色を好む。
 攻撃はもちろん、嗜好としても血を見たがるだろう、とタハニ。
「悪趣味な野郎だよな」
 このヴァンパイアも放っておけば、血を求めて町の人々を襲いかねない。
 そうなる前にここで倒してしまう必要があるだろう。
「亡者とヴァンパイアをぶっ倒す。それで充分といえばそうなんだが……」
 敵を倒しても、町が焦土となってしまっている状況は変わりがない。
「特に、亡者が焼いた墓地はひどい有様だからな。墓地公園の修復くらいは手伝ってもいいかもしれないな」
 決して楽しい行為ではないかもしれないが、彼らの心を慰める大切なこと。
「炎といい血を見たがるところといい、嫌な敵共だが……とにかく、待ってるぜ」
 そう言って、タハニは彼らを転送するのだった。


遠藤にんし
今回はダークセイヴァーです

第一章は墓地公園で亡者と戦闘、
第二章は町の中心部でヴァンパイアと戦闘、
第三章は町(墓地公園)の修復です
第一・第二章において住民は避難しているため、避難誘導等のプレイングは不要となります

●本作の特記事項
戦闘において、敵・猟兵ともに「ダメージ描写」を重点的に書いていく予定です
第一章では火傷、第二章では切り傷や失血の描写を多めにしていきますので、そういった描写がお嫌いな方はお気を付けください。
また、ダメージ描写はフレーバー要素のため、判定等には反映されません

皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
100




第1章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ニレ・スコラスチカ
町が燃えている……わたしが異端を狩らなければ。

罪は明白、審問の必要はありません。武器の生体鋸を振るい、炎に紛れて先制攻撃を。後続のためにも【咎力封じ】と【気絶攻撃】で敵戦力を減らしつつ、派手に動いて囮になります。敵の反撃は【激痛耐性】で耐えましょう。……痛みには慣れています。

「例え身体が焼かれようと……わたしは使命を果たす」



 町は燃えている。
「……わたしが異端を狩らなければ」
 ニレ・スコラスチカ(旧教会の異端審問官・f02691)は呟き、墓地で火をつけて回る亡者へと生体鋸を振るう。
 立ち上る炎は小柄なニレの姿を隠し、突如として現れたニレの姿に亡者は対応できない。
 肉をえぐる感覚が鋸に伝わる。こぼれ出た血は炎に焼かれて泡立ち、亡者はニレの姿を認めて殺到した。
「……来なさい」
 拘束ロープで締め上げられた亡者は抵抗も許されず炙られ、ローブの中の肉をぐずぐずと溶かしていく。露出した内臓の焦げる臭気が辺りに充満したが、その臭気の中にはニレの膚が灼ける臭いも含まれていた。
 赤々とした篝火がニレへと突き付けられ、血に汚れた洗礼聖紋へとニレ自身の溶けた皮膚が落ちて染みを作る。
 激痛耐性のお陰で、それでもニレの攻撃の手は緩まない。痛みには慣れているから、盛る篝火に舐められてもニレは亡者の中身を抉り出し、罪に汚れた心臓を炙り捨てる。
「例え身体が焼かれようと……わたしは使命を果たす」
 顔の半分を赤黒く濡らしながらも、ニレの斬撃は止まらない。

成功 🔵​🔵​🔴​

フォーネリアス・スカーレット
「関係ない、全員殺す。それだけだ」
 集団戦か、楽でいい。いくらでも殺せる。自分のダメージなど知った事か。手足が動けば殺せる。
 どうも影に触れると避けられるようだな。なら、空中戦を主体にする。フックロープも使ってなるべく地上に立たないように気を付けよう。
 炎は丸盾で防ぎつつそのまま殴り、リニアブレードで首を刎ねる。
 距離があるならフックロープで捕らえて引きずり込んで殺す。パイルで心臓を貫いて殺す。死ななければ頭を貫く。
 集団で固まってたら飛び込んで横薙ぎに対艦チェーンブレードでまとめて薙ぎ払って殺す。
 猟兵としては初仕事だ、景気よく殺していこう。



 風切り音に振り向く暇もなく、亡者の首が飛ぶ。
 赤と白の断面が鮮血に染まって倒れ込む。その骸をクッション代わりに踏んで、フォーネリアス・スカーレット(復讐の殺戮者・f03411)は更なる敵へ向けて跳躍した。
 爪先を炎が撫でたがそれはフォーネリアスには関係のないこと、影を踏まないようフックロープを巧みに操るフォーネリアスは、正面にある火柱を丸盾で受け止める。
 盾越しであっても伝わる灼熱が手に熱い。表面に熱を孕んだ丸盾で亡者の顔面を殴り飛ばせば、皮膚が剥がれて丸盾へとこびりついた。
 リニアブレードで首を刎ねようと迫るが少々遠く、フォーネリアスはロープで亡者の首を絞め上げるとの巻き上げ機構によりこちらに引き寄せ、パイルバンカーで胸を貫いた。
 肉片に変わった心臓を振り捨てるフォーネリアスへと立ち向かう亡者の顔には皮膚がない。どうやら、先ほど殺した亡者を操る亡者がいるらしいが、フォーネリアスにとってはそんなことは知ったことではない。
「邪魔だ」
 首が二つ飛んでどこかへ行く。折れた背骨の小気味よい音を耳に残しながらフォーネリアスは己を焼く炎の中に突っ込んでいくが、手足はまだ十分に動くようなので問題は無かった。
 轟轟と燃える炎に包まれた腕を振るい、延焼したパイルバンカーで亡者の脳天を貫く。チーズと同じくらい柔らかい脳みそは炎に溶けたのか、とろりと後を引いて心地よく亡者とフォーネリアスの顔面を温めた。
 フォーネリアスが腕を振るうたびに、跳ぶたびに命が潰れていく。
 フォーネリアスの猟兵としての初仕事は、景気よく殺戮を撒き散らすことから始まるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
赤々と燃える町を見ていると暗い感情が湧いてくる。憤怒、憎悪、殺意――それらは鎧の呪いと呼応し、暗黒の力を強め、私を狂気へと誘う。

亡者どもの炎と私の暗黒の炎、どちらが上か試してみましょうか。
それとも、無残に斬って捨てられたいのなら前へ進み出るといい。
火傷の痛みなど意に介しません。

狂乱の殺戮、肉の焦げる臭い、血風吹き荒ぶこの場所は、私好みの戦場だ。



 眼前の業火は、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)の内側を昏く満たしていく。
 憤怒、憎悪、殺意――鎧の呪いと呼応したそれらはセシリアの持つ暗黒の力を強めて、狂気へと誘い掛ける。
「無残に斬って捨てられたいのなら前へ進み出るといい」
 そんなセシリアの言葉が聞こえたのかどうか、亡者どもがセシリアを取り囲み、一気に殺到した。
 腐臭を漂わせながらセシリアへ篝火が投げつけられ、首筋が焼けていくのが感じられた。あっという間に広がる炎はセシリアを呑み、あと僅かでも鎮火が遅ければセシリアの眼球の水分を全て奪って破裂させていたことだろう。
 しかし、そうはならないのはセシリアの暗黒剣が亡者の眼科に突き立てられ、横に引き裂いたから。
 断裂した眼球の中は空洞。コロンと落ちたはずが蒸発してへその緒程度の炭に変わり、赤を覆うように深淵業火なる暗黒炎が戦場へ放たれた。
 燃えた枝が落ちてきてセシリアの耳を焼いた。耳を包む薄い皮膚と薄い肉は焼け落ちて、露出した軟骨は微かな脂を乗せてパチパチと耳元でけたたましい。
 そんなものは狂乱の中にいるセシリアにとってはどうでもいいこと。焦げた肉が亡者のものでも他人のものでも、それだってどちらでも良いことだった。
 血風吹き荒ぶ中で、セシリアは嬉々として暗黒と共に在る。

成功 🔵​🔵​🔴​

セツナ・アネモネ
【SPD】
街の人の避難が終わってるのは幸いだけど。この火じゃ、後が大変だね……
吸血鬼狩り……の前に、亡者を蹴散らそうか。

相手が多くたって、弾ならたっぷりある。
とにかく突っ込んで数を減らそう、必要であれば体術も交えて。

……爆弾でもあれば楽なのに。いや、魔法かな?

(アドリブ、他者との絡み等々は歓迎です)


霹靂神・霆
おお、住人はきちんと逃げ果せたのじゃな?
それは不幸中の幸いじゃな!
では後の始末は妾等がつけてやらんとなぁ。

※技能・怪力を常時使用

なるべくなら町への被害は抑えたいのぅ。
そんなわけで町に火を点けとる輩共から殴り飛ばしていくのじゃよ!
なるべく周囲に影響の無いユーベルコードを選んだのじゃが、ちょうどいい。妾等と汝等、灰燼に帰すは何方かと教えてやろうぞ!

延焼が止まぬなら建物を壊して延焼を防ぐのも手かのぅ…あまりやりたくはないが。
ひとまずは亡者を倒せば鎮火しなくともそれ以上は燃えまいと、拳を振るうとしよう。


ルチル・ガーフィールド
「町の皆さんも、後ろ髪ひかれる思いでしたのでしょうね・・・でも無事避難が済んでいてよかったです~」【優しさ】

「わたしと同じ系列のコード使い手たちなのですね・・・ こちらの威力が勝ればよいのですけれど・・・」ロング・ルーンボウを水平に構え、ウィザード・ミサイルの魔力を込めると炎の弦と五本の矢が生成される。
「炎の鏃たちよ、邪炎の使い手を払って~!!」矢は放たれるとレベル本に分裂、敵に降り注ぐ【属性攻撃】

「そう、こちらに向かってきてください・・・わたしが焼かれればその分、墓地公園への損害は減りますから・・・」相手の攻撃には、逃げずに正面から迎え撃つ。



「町の皆さんも、後ろ髪ひかれる思いでしたのでしょうね……でも無事避難が済んでいてよかったです~」
 優しく微笑するルチル・ガーフィールド(魔法仕掛けの家政婦さん・f03867)の言葉にうなずきつつ、セツナ・アネモネ(記憶の果て・f04236)は呟く。
「この火じゃ、後が大変だね……」
 辺り構わず放たれた炎は墓地全体を包み込み、墓石は割れ、草木も根絶やしとなってしまうことだろう。
 人々の犠牲が出ていなくとも、彼らにとって大切な場所はこうして荒らされているのだ――そんな思いがセツナの胸に去来する中、霹靂神・霆(龍筋龍骨・f11112)は炎の中へと踏み出し。
「では後の始末は妾等がつけてやらんとなぁ」
 言うが早いか篝火を掲げる亡者を怪力で抱え上げ、ぶん投げた。
 火の粉を落としながら暴れていた亡者は地面に叩きつけられ、半分ほどの大きさに圧縮された肉塊となって炎上。
 ルチルは炎の中へは入らず、ロング・ルーンボウを構えて魔力を籠める。
「こちらの威力が勝ればよいのですけれど」
 生み出されたのは炎の弦と五本の矢。
「炎の鏃たちよ、邪炎の使い手を払って~!!」
 放たれると同時に、一本の矢は十七本にまで分かれて亡者へと降り注いだ。
 天からの恵みを受けるかのように、亡者どもはルチルの差し出す炎を受け取るほかない。
 頭から炎を被った亡者は毛髪も皮膚も焼け落とし、それでもなお篝火を手放そうとはしなかったが、霆はその手をひねり追ってはちぎり投げ、セツナは亡者の脳みそか心臓を弾丸で台無しにしていく。
「……爆弾でもあれば楽なのに。いや、魔法かな?」
 取り囲まれたセツナは肘打ちで亡者の鼻を潰して対抗するが、数が多く次第に追い込まれていく。
 ついに背後を取られた――瞬間、ルチルの放った炎が亡者の頭を爆裂させ、脳漿と血肉のジュースを辺りに振りまきながら亡者は形を失った。
 亡者はルチルの元へもじわじわと寄り付くが、ルチルは決して逃げはしない。
「そう、こちらに向かってきてください……わたしが焼かれればその分、墓地公園への損害は減りますから……」
 亡者の手にする炎がルチルを呑んだ――いつかのようにスリープモードへ入りそうなほどの激烈な業火。
 その炎の勢いが弱まったのは、亡者の体が腰のあたりで真っ二つに折りたたまれたからだ。
「灰燼に帰すは何方かと教えてやろうぞ!」
 霆は力任せに亡者の背中を叩きつけ、僅かな前傾姿勢となったところへ怪力で負荷を掛け強引にへし折った。二つ折りの亡者が炎の中へ投げ込まれると、溢れ出る血液によってだろうか、炎の勢いは弱まり始めたところだった。
 セツナの弾丸によって亡者の体に開いた穴へと霆は手を突っ込むと引きちぎり、炎の中へと投げ込む。くべる薪としては湿りすぎている体のせいで炎は収まりつつあり、これならば延焼も防げることだろう。
 ルチルの放った炎の矢が一際激しく燃え上がり、亡者を消し炭に。
 ルチルによる炎が収まって周囲を見渡せば、亡者たちは姿を消し、辺りの炎も収まりつつあるようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 墓地公園での戦いに勝利を収め、猟兵たちは町の中心へと急ぐ。
 ――枯れた噴水の前に立つその姿は、威圧感を持って猟兵たちを出迎える。
「ようやく来たのかい」
 口元の牙を隠しもせず、赤い瞳に宿る嗜虐心を隠しもせず、ヴァンパイアは美しく笑う。
「さあ――君たちの血を奉じておくれ」
フォーネリアス・スカーレット
「知った事じゃない、死ね」
 敵に長々と喋る趣味は無い。炎剣を抜き、丸盾を構えて正面から斬りかかる……だけで接近させてくれるほど間抜けな相手ならいいが、そうでもあるまい。フックロープと竜の跳躍も併せて立体的な機動力で接近する。
 接近さえできれば私の距離だ、炎剣で切り裂く……だけで倒せるのならいいが、やはりそうでもないだろう。炎剣も使いはするが囮だ。弾かれて取り落とした風を装って、手首に固定したパイルバンカーの楔打ちを本命とする。
 相手はヴァンパイア。白木の杭ではないが、杭は杭だ。心臓に撃ち込めれば殺せるだろう。易々と心臓に当てられるとも思っていないのでまずは当てる事に専念するが。



「さあ――」
「知った事じゃない、死ね」
 フォーネリアスは炎剣を抜いて地を蹴る――ヴァンパイアも豪奢なる刀剣を抜き去り、油断なくフォーネリアスと距離を取った。
(「さすがにそこまでの間抜けではないか」)
 剣と盾を構えた格好の直線的な突撃では届かない。フックを噴水の縁に掛けてロープで接近し、竜の跳躍でもって天へ。立体的な機動で迫ったフォーネリアスは、炎剣を振り下ろす。
「届くとでも思ったのかい?」
 嘲るようにヴァンパイアの刃が炎剣を打つ。そのままフォーネリアスの手首へと斬り込めば動脈が横一文字に斬られ、こぼれた血にヴァンパイアは歓喜の声を漏らす。
「ああ、ああ! 美しい血だ!」
「黙れ」
 取り落とした剣に手を伸ばしたかのように見せかけて、フォーネリアスはパイルバンカーから打ち出した杭でヴァンパイアを狙う。
 白木ではないが杭は杭。心臓を穿てるなら話は早いが、今はまだその時ではない。そう判断したフォーネリアスは血の止まらない手で杭を射出し、少しでもヴァンパイアへダメージを与えようと宙を切る。
 フォーネリアスがパイルバンカーを繰るたびに少量とはいえ血が宙を舞い、そのたびヴァンパイアは歓声を上げる。長々と喜びの声を上げるヴァンパイアの言葉を遮ろうと、フォーネリアスは更なる杭を打ち出す。
 ――当てることは容易ではない。
 刀剣に裂かれ金髪を赤に汚しながらも、フォーネリアスはヴァンパイアから目を逸らさない。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セシリア・サヴェージ
生憎と、お前のような下種に差し出すような血はない。
代わりといっては何だが、我が血濡れの刃をとくと味わうがいい。

ユーベルコード【ブラッドウェポン】で暗黒剣を強化。
奴の攻撃は【武器で受け】止めよう。防ぎきれぬとしても私には出血など恐れぬ【覚悟】がある。傷の痛みも【激痛耐性】を持つ私には歩みを止める理由にはならない。
着実に前進し、奴を追い詰め、【恐怖を与え】、我が凶刃で切り裂いてくれる。

血は嫌いではないぞ?それが私のものであれ敵のものであれ、私を昂らせ、暗黒の力を強めるのだから。存分に流すがいい。


クラト・ディールア
「古から伝わるヴァンパイアらしくて、倒しやすく感じます」
それならば、ヴァンパイアらしく倒させていただきます。
『フェイント』で出来た隙に『ドラゴニアン・チェイン』で捕縛します。
『翼竜の槍』を『槍形態』にしてから、『槍投げ』で投げて『串刺し』にします。
「ヴァンパイアといえば、串刺しですから」 
念のために『呪詛』も籠めて、爆破をしてしまいましょう。
攻撃は『第六感』でしますが、慢心しないように『黎明・龍牙刀』で受け流す事も視野にいれておきます。
「お前が死んだら何処に帰るかはわからないですけど、地獄への門の前でケルベロスの血を啜っているのがお似合いです。出来るかは不明、ですがね」


ルチル・ガーフィールド
「血が…ご所望なのですか・・・?」あくまでも礼にかなった、うやうやしいしい言葉をかけ、注意をひく【礼儀作法】「献じるのは構いません・・・ご所望とあらば・・・」コードをハルバードに纏わせ大ぶりな仕草で斬りかかり相打ち覚悟で一撃を入れる。自らの鮮血がほとばしる「くぅ…」鮮やかな真っ赤な血…しかしそれは血ではない。「そうです・・・痛いですし、流れ過ぎると死んでしまうのは同じですけれど・・・これは血ではありません・・・ 貴方様は、血のように赤いインクを撒いても、愉悦に浸れるのですか?」一瞬でいい…相手の動揺を誘い、仲間の攻撃の糸口を作れれば…そう思っての攻撃。命は惜しいので、味方の攻撃の間に退避します



「――ふむ。余裕ぶるだけはありそうじゃな」
 フォーネリアスと交戦するヴァンパイアの様子に霆は独りごち、龍筋龍骨の域にまで鍛え上げた肉体に力を入れて跳躍する。
「おや」
 ヴァンパイアはひらりと回避し、霆の攻撃は届かない――しかし地面に激突した拳を中心に辺りの地形が歪められ、猟兵たちはヴァンパイアを囲みこむ。
「生憎と、お前のような下種に差し出すような血はない」
 言葉と共に、セシリアは暗黒剣で指先を切る。
 膨らむ血の粒にヴァンパイアが歓喜の声を漏らし、舐め取りたいとばかりに舌なめずり。
 しかしセシリアはその血をヴァンパイアではなく、己の暗黒剣へと飲ませた。
「勿体ないことを……」
 溜息をつくヴァンパイアは、未練たらしくセシリアへと刀剣を向ける。
「君の血だまりを啜ろうか」
 セシリアへと放たれた刀剣を受け止めるが、四方からの攻撃全てに対応することは困難を極める。
 背中へ走る衝撃と同時に、首の後ろがかっと熱くなる。激痛耐性を持つセシリアだからこそ耐えることは出来たが、常人であれば痛みと失血のショックに失神していたころだろう。
 何度目かの歓喜の声はヴァンパイアのもの。耳障りな声にクラト・ディールア(黎明の黒龍・f00868)は黎明・龍牙刀を握る手に力を籠める。
「古から伝わるヴァンパイアらしくて、倒しやすく感じます」
 セシリアの影のように血だまりが伸びる。鼻につく鉄臭さはセシリアを昂らせ、暗黒剣もまた力を増していった。
「血が……ご所望なのですか……?」
「勿論だよ、お嬢さん。君の血は甘い香りがするのかな」
 ルチルの恭しく、礼儀を弁えた言葉が気に入ったのかヴァンパイアの視線はルチルへと。
 ――その隙をついてクラトは鎖でヴァンパイアの脚を絡め取り、ルチルは口元に指を添えて囁きかける。
「献じるのは構いません……ご所望とあらば……」
 ハルバードは炎を立ち上らせ、大ぶりな一撃でルチルはヴァンパイアへと立ち向かった。
 刀剣はヴァンパイアの体の前へ、真正面からの敵を突き刺すようにずらりと配列され――
「くぅ……」
 滴る、と呼ぶには多すぎる量の血が地面を汚す。
 衣服から覗く腰に負った傷は特に深く、青いリボンの色も分からなくなるほどだ。
「そうです……痛いですし、流れ過ぎると死んでしまうのは同じですけれど……これは血ではありません……」
「――?」
 ルチルの言葉に、ヴァンパイアは訝るように目を細める。
「貴方様は、血のように赤いインクを撒いても、愉悦に浸れるのですか?」
「なっ……!」
 愚弄されたとでも感じたのだろうか、そう言って息を詰まらせるヴァンパイアへと、クラトは翼竜の槍を投擲。
「ヴァンパイアといえば、串刺しですから」
 ヴァンパイアの肩を貫いた槍は呪詛により爆発。爆風の中にはヴァンパイア自身の肉片も混じり、クラトは告げる。
「お前が死んだら何処に帰るかはわからないですけど、地獄への門の前でケルベロスの血を啜っているのがお似合いです。出来るかは不明、ですがね」
 赤黒く半身を汚しながらも、ヴァンパイアは蝙蝠を生み出して猟兵たちへ殺到させる。
 しかし猟兵たちもそれに対抗すべく、ヴァンパイアへと攻撃を仕掛ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セツナ・アネモネ
【POW】
ボスのお出ましだ、悪いけどアタシには被虐願望も血を見て喜ぶ趣味も持ち合わせてないんでね……
さっさと狩らせてもらう。

さて……ヴァンパイアにはヴァンパイアをぶつける、って訳じゃないけれど。
今回はバスタードソード……もとい、ティルフィングで戦うとしようかな。
ユーベルコード「血統覚醒」、そして【2回攻撃】、【捨て身の一撃】を加えて攻撃。
反撃は【武器受け】でいなせればいいんだけど。

さぁ、アンタの血を頂こうか……なんてね。

まぁ、でも。【吸血】される吸血鬼……なんてのも面白いかもしれないね?


ニレ・スコラスチカ
「届かないなら届かせる」

あれがこの事件の元凶、異端達の主ですね。罪の自覚がないなら、わたしがその贖罪を代行致しましょう。

距離を保つようなら伸縮する生体拷問器を伸ばし【なぎ払い】を。ただ、わたしの武器はわたしの血で動く…大量に出血してしまえば戦闘能力の低下は免れないでしょう。【激痛耐性】もどこまで持つか……
ですが、もしそうなってもまだ術はあります。【ジャッジメント・クルセイド】を使い攻撃。暗闇を歩く異端には、浄化の光は少々眩しすぎるかもしれませんね。


フォーネリアス・スカーレット
 初手で使うてでは無かったか。バンカーは捨てもう一本取りだした炎剣を手に取り再び斬りかかろう。距離を離されると面倒だ、剣の届く距離を維持する。
 殺気を漲らせた深呼吸と連動する自己治癒魔法で利き手の傷を仮初に塞ぎ、丸盾と炎剣で斬り合う。血を見るのが好きか、なら斬られようか。調子に乗れば隙も出来る。それに、この距離にいる相手を無視はできない。その隙は、必ず誰かが突いてくれる。自分で殺す事に拘りは無い、最終的に殺せればいい。
 隙を見てこっちの本命を打つ。炎剣と丸盾を捨て、腰に下げた二本のリニアブレードを両手で抜き、二刀十字電磁居合斬りを仕掛ける。それまで腕を持たせられれば十分だ。


霹靂神・霆
あれが親玉かのぅ?
ふむ。余裕ぶるだけはありそうじゃな。
気を抜かずに参ろうぞ!

※技能・怪力を常時使用

グラウンドクラッシャーで上から攻撃。
本当は荒らしたくないんじゃが、外しても地面を叩いて地形を変えるのじゃよ。
石飛礫で動きを止められれば善し、そうでなくても味方の攻撃に繋がる様にわざと避けさせるのじゃ。
変わった地形が味方の邪魔になりそうならもう一度叩いて均すぞ。

クルーエルオーダーにはなるべく逆らわんが、いざという時は覚悟を決めて破り捨ててやろう。
仲間を庇って契約者を掻き集めたりしても良いの。
いちいち宣告しなければならんのなら、その隙を突く。契約書を拳に張り付けてそのまま殴り倒してやるのじゃ!



「気を抜かずに参ろうぞ!」
 殺到する蝙蝠どもを前に霆は声を上げ、地面へ手をついて力を籠める。
 めきめきと重い音を立てて先ほど構築した地形は均されていく中で、ニレは呟いた。
「届かないなら届かせる」
 霆が地形を均したお陰で、ニレは伸ばした生体拷問器で蝙蝠ごとヴァンパイアを薙ぎ払うことが出来るようになった。
 生体拷問器は蝙蝠を両断、小さな心臓が乱舞したかと思えば黒いボロ雑巾のようなものが地面に散らばる。キイキイという耳障りな蝙蝠の鳴き声も、やがて途絶えた。
 とはいっても、全ての蝙蝠を払うことが出来たわけではない。攻撃をかいくぐった蝙蝠は猟兵たちへと殺到し、セツナは蝙蝠とティルフィングでいなしながら血統覚醒。
「悪いけどアタシには被虐願望も血を見て喜ぶ趣味も持ち合わせてないんでね……さっさと狩らせてもらう」
 ヴァンパイアと化したセツナはヴァンパイアへ向かって駆ける。
 刀剣の切っ先が己を、猟兵たちをも狙うのが分かったが、今は狩るのみと決めたセツナの視線は動かない。
「さぁ、アンタの血を頂こうか……なんてね」
 刃がヴァンパイアを捕捉し、その肉を寸断する。
 指輪に嵌る、赤く艶やかな宝石のような血液がヴァンパイアの中から噴出し、セツナへと吸い取られていく。
 ただでさえ色の悪い唇をより青くするヴァンパイアへとセツナはもう一度斬撃を浴びせかける――ヴァンパイアの刀剣は左右からセツナへと傷を与える。
 どちらのものとも分からないまま真紅を浴びる二人。
「美しい血だ、君もヴァンパイアなら分かるだろう?」
「……さあね、興味ない」
 言葉を交わしながら、二人のヴァンパイアはどちらからともなく距離を取る。
 セツナの失血は深刻だった。視界が暗く瞬きだし、これ以上の捨て身の攻撃は命すら危うくなりそうだ。
 深刻な失血にセツナは後退するが、同じく大量の血を失っているはずのヴァンパイアはまだ余裕があるのだろうか。嗜虐的な笑みを血まみれの顔に張りつかせ、ゆらりゆらりと視線をさまよわせる。
「麗しい血が欲しいところだ、では――」
 刀剣が狙いを定めたのはニレ。ヴァンパイアの言葉に従うように、刀剣は宙を切ってニレへと迫る。
 己の罪も理解しないまま、豪奢な飾りを全て血の色に鈍らせた刀剣がニレを貫く。ニレの小さな体が揺れて溢れ出たせいで、ニレの血を求める生体拷問器の動きも鈍りだした。
「……贖罪を代行致しましょう」
 激痛耐性があってなお悲鳴を上げたくなる痛みに、ニレはそんな言葉を漏らす。
 ヴァンパイアへ、そこだけは血に濡れず白いままの指を差し伸べれば天からの光が差す。眩い輝きに全てを照らし出されたヴァンパイアは悲鳴を上げ、自身の目を覆って光から逃れようとする。
 刀剣を操ることはままならず、ヴァンパイアは誓約書を投げつける。
「やらせぬのじゃ!」
 霆は拳で受け止め、契約書を張りつかせたままの拳でヴァンパイアの顔面を殴打。
 横に吹っ飛びながらも下された命令は『攻撃をしない』というものだったが、宣告を受けていないフォーネリアスは気にせず炎剣で切りかかる。
 距離を離されないようじりじりと迫れば、ヴァンパイアも刀剣でそれに応じる。
 殺気漲る呼吸は利き手の傷を仮初に塞いでいるから、戦う上での有利も不利もない……しかしあえてフォーネリアスが刃を受けると、幾筋もの血が丸盾へと飛沫を飛ばした。
「綺麗だ――とても綺麗だ!」
 飛沫にヴァンパイアの視線が移り、興奮したように声が上ずっている。眼前の敵より血液が愛しいか、とフォーネリアスは内心で毒づいてから自身の得物を捨て去り、腰に下げたリニアブレードへと手を伸ばす。
 腕はまだ断たれることなく生きていた。両手に持った二本のリニアブレードが放ったのは、十字の居合刀だ。
「ああ、血が――!」
 目の前を鮮血のみが埋め尽くしたのだろう、ヴァンパイアは歓喜の声を上げる。
 しかし、己の血を見つめる瞳も認める脳も、フォーネリアスの刃によって破壊された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『墓地を再び綺麗な姿に』

POW   :    墓石や獣除けの塀に使う材料を調達。力仕事を頑張ろう。

SPD   :    壊れたり汚れた墓地を綺麗な場所に整えよう。匠の技を示そう。

WIZ   :    死者が眠るに相応しい土地に霊的に改善しよう。見えざる力にその手を伸ばそう。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 亡者とヴァンパイアは去り、町の危険は去った。
 そうは言っても、辺りは荒れ果て、焦土と化した墓地公園の土は掘り起こされたままだ。
 ……このままでは、死者に安らぎは訪れない。
 そう感じ取って、猟兵たちは町の修復を開始する。
セツナ・アネモネ
【喫茶ダリア】から一人、助っ人を呼んで。
……いや、墓場を直すって事が頭からすっかり抜けてたね。無茶しすぎてまだクラっとするよ。
……やっぱり、血が昂ってた……ってことかな。

あぁ、ダリア。来てくれてありがと。
大丈夫、ちょっと血が足りてないだけだから。
……アンタね、ヴァンパイアが暴れたとこで吸血なんてできないでしょ……せめて人気の無い所とかにして。

ほら、行った行った。ちゃんとバイト代出すからしっかり働きなよー。

……さて、アタシも荷運びくらいはしようかな。
壊した分、創らないとね。


ダリア・ミフネ
【喫茶ダリア】から参加です!

うふふ、セツナさんから誘ってくれるなんて……
ボク、張り切ってやっちゃいますよ!
……えと、セツナさん、大丈夫です?すんごく顔色悪いですけど……

ええっ、ヴァンパイアと斬り合いって、大変じゃないですか!
……えへへ、ボクの血……吸っても良いんですよ……?
まー座っててくださいよ、墓場を直すのはボクがやっておきますから!

よーし、綺麗にするぞー!
壊れちゃった墓石は修繕して……うわ、血みどろのもある……落とすの大変だなぁ。

荒れた地面も均さなきゃ……うー、忙しい!


霹靂神・霆
よぅし! 悪は滅したな!
して此処からが本番よ。
復興無くして救ったとは言えんからのぅ。

※技能・怪力を常時使用

力仕事なら妾に任せて貰おうかっ!
運ぶだけなら力加減も間違えまい。
さあさ、何でも幾らでも運ばせると善いぞ?

グラウンドクラッシャーで障害物の撤去と地均しも行おうかの。
ただし元々は破壊の技じゃ、細心の注意と人を払ってから使うのじゃよ。

逃げ出した住人が戻ってきておるなら意見や要望なんかも聞きたいのぅ。
妾だけでは更地にしてしまうかも知れんからの!


フォーネリアス・スカーレット
 ……特に、何もする事が無い。私は殺す事しか能がない。力も特別強くは無いし、技術も無い。霊的と言われても分からん。
 時間の無駄だな。早く次のオブリビオンを殺しに行かねばならぬ……その衝動は私の中で燻り続けている。常に殺気立った奴と一緒に居たい奴など居ないだろう。早々に立ち去る事にした私は、一つの墓が目に留まり立ち止まる。
 ……姉の墓は、立派だった。だが、あの墓の下には何もない。それすらも叶わなかった。私は、結局一度しか訪れていない。
 単なる偶然。別に一致している訳でも無い、だが……よく似た名前の墓に、無尽の鞘から取り出した青いブローディアを供えてその場を去った。



「よぅし! 悪は滅したな!」
 亡者とヴァンパイアのいなくなった町で霆は声を上げ、ここからが本番と気合を入れ直す。
 復興無くして救ったとは呼べない――そんな気持ちを抱きながら、霆は瓦礫をいくつも持ち上げる。
 怪力を持つ霆にとって、力加減を考えなくて良い荷物運びは簡単な仕事。大きな瓦礫や岩が撤去され綺麗になった墓地公園へと、ダリア・ミフネ(あの人の王子になりたい・f04831)が駆けつけた。
 ダリアの顔に小さく微笑があるのはセツナに誘ってもらったから……だったのだが、青白い顔でふらつくセツナの姿にダリアは顔を曇らせる。
「……えと、セツナさん、大丈夫です? すんごく顔色悪いですけど……」
「あぁ、ダリア。来てくれてありがと。大丈夫、ちょっと血が足りてないだけだから」
 はりきりモードから一転して心配そうなダリアへと頭を押さえつつ言うセツナ。
 墓地を直すのが抜けていて無茶が過ぎただろうか、セツナがまだクラっとするのは、血が昂っていたからかもしれない。
「ええっ、ヴァンパイアと斬り合いって、大変じゃないですか!」
 通りで血が足りなくなるはず、と呟いてから、ダリアはさも名案だという風に。
「……えへへ、ボクの血……吸っても良いんですよ……?」
「……アンタね、ヴァンパイアが暴れたとこで吸血なんてできないでしょ……せめて人気の無い所とかにして」
 ほら行った行った、と小さな岩々の方へとダリアを押しやるセツナ。
「ちゃんとバイト代出すからしっかり働きなよー」
「まー座っててくださいよ、墓場を直すのはボクがやっておきますから!」
 綺麗にするぞー! と腕まくりして、ダリアは墓石の修繕を始める。
 割れてしまった石を合わせて、転がった石は元の場所へ。
 白の大理石の石を拾い上げたダリアは、石の半分が血みどろになっているのに気付いて小さくぼやく。
「……落とすの大変だなぁ」
 それでも石を傷つけないよう、丁寧に拭っていく。
「……さて、アタシも荷運びくらいはしようかな」
 休憩を終えて、セツナは立ち上がる。
 壊した分、創らないと――原状復帰を行うかたわら、霆は戻ってきた住人へと町を直していく上での要望も聞いていく。
 道を広くしてほしいという要望には、グラウンドクラッシャーで地均しをして応え、柵の配置換えは軽々と柵を持ち上げて応える。
 グラウンドクラッシャーを使う前には周囲の人を退避させて怪我をしないように気を付けながら、町は彼らにとっての良い形を取り戻していった。
 これからも彼らが住む土地だから、より住みやすく出来るように。
 そう心を配って霆は町の改善に乗り出していく。
「もっと聞かせてほしいのじゃ。妾だけでは更地にしてしまうかも知れんからの!」
 にこりと笑って言えば住人の顔にも笑顔が戻り、更にあれこれと要望が出てきて霆は大忙し。

 ――そうして修復されゆく墓地公園から、フォーネリアスは去ろうとする。
 殺すことだけが出来るフォーネリアスにとって、戦いの終わった今、出来ることなどは何ひとつなかった――胸にあるのは衝動だけ。次のオブリビオンを殺さなければならないという、衝動だけだった。
 自身でも抑えきれない殺気が漏れているという自覚はあった。これでは他者から疎まれるだけだと、フォーネリアスは誰にも見つからないように去ろうとして――ひとつの墓石が目に留まった。
(「……姉の墓は、立派だった」)
 墓碑に刻まれた名前を見下ろして、フォーネリアスは思う。
 立派だった姉の墓は、しかし、その下には誰も眠ってはいない。それすらも叶わなかったその場所へ、結局フォーネリアスは一度しか訪れることはなかった。
 一致しているわけでもなく、ただの偶然だとは分かっていた。
 ――それでも、よく似た名前の墓を見つめているうち、フォーネリアスの手は無尽の鞘へと伸びる。
 青いブローディアを添えて。
 そっと、フォーネリアスはその場を後にするのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト