アルダワ魔王戦争1-D〜トンネル&トローリング
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グリモアベースの一角、会議室に集まった猟兵達を見渡し、グリモア猟兵であるミーナ・ペンドルトン(中学生妖狐・f00297)は唇を開いた。
「みんな、集まってくれてありがとう。 戦争なわけだけど……経緯を知らない子もいるかもしれないから、かるーく状況を説明するね」
アルダワ魔法学園の地下に広がる広大な迷宮。 その地下深く。
この地に災魔を封じた頃に建造され、今では迷宮の一部と化した校舎が存在した。
いわば旧校舎だ。
その旧校舎の下、大魔王を封じたはじまりの領域『ファーストダンジョン』へと猟兵達は到達した。
しかし、ファーストダンジョンは大魔王の放つ闇『ダークゾーン』に覆われており、このままでは侵攻は困難を極める。
闇を晴らすには、繰り返しダンジョンを探索・攻略していくほかないのだった。
「暗中模索するわけにもいかないからねー。 進んで明かりを灯して、既知領域を広げようってことだね……で、ここからが今回の依頼のお話。 みんなには『迷宮坑道』の探索を行って貰いたいんだ」
ぱんっ、と手を叩いて注目を促したミーナは、ホワイトボードに写真を貼り付けながら説明を始めた。
1枚目は、どこまでも暗闇が続くかのような廃坑。 『迷宮坑道』の名が示す通り、迷路の如く複雑に広がる坑道だ。
廃坑になって久しく、古びた蒸気機械や蒸気トロッコなどが打ち捨てられており、錆びの浮いた線路が闇の中へと延びている。
「似たような通路が多くて凄く迷いやすいから、マッピングなりなんなりして迷わないように注意してね?」
あ、蒸気機械はまだ動くと思うけど、なにぶん古いからあんまり信用しちゃダメと付け足しながら、次の写真の説明に移る。
2枚目は、丸っこいシャチのような生き物が群れている写真だ。
「これは遭遇が予想される災魔でスライムオルカってゆーやつだね。 数十匹の群れで行動してて、可愛い見た目のわりに何にでも食いつくし素早いから要注意。 詳しいカタログスペックは配布した資料を参考にしてね」
まあ、得てしてカタログスペックは当てにならないことも多いけど、とぼやき。
ミーナは唇に指をあてながら言い忘れはないかと小首を傾げた後、ぽんと手を打つと続ける。
「あ、坑道だけあって天井が崩落する危険性もあるから、天然のトラップにも気を付けて」
それじゃあ、いってらっしゃい。
彼女はそう言い、猟兵達を送り出すのだった。
神坂あずり
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アルダワ戦争シナリオ1本目になります。 神坂(こうさか)あずりです。
以下、シナリオの補足説明になります。
・迷子にお気を付けください。
・集団戦ですが、探索やマッピングに注力することも可能です。
・崩落によって道が塞がっている場合があります。
また、脆い箇所は探索中に崩落する危険性もあります。
・坑道にありそうなものは大体転がっており使用できますが、安全性には難があります。
使用する場合は安全に気を付けていのちだいじに。
ご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『スライムオルカ』
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POW : スラオルカアタック
【見た目からは想像もつかない勢いで放たれた】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【群の仲間達】の協力があれば威力が倍増する。
SPD : オルキヌスミューカス
自身に【相手の動きを封じる猛毒の粘液】をまとい、高速移動と【その粘液】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : ハイドロブレス
【口】から【膨大な量の水】を放ち、【水圧や】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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メグレス・ラットマリッジ
光源よし、燃料よし、ヘルメットよし。
探検に必要な物を一通り揃えたら安全第一に潜っていきましょう。助けに来たつもりが救助待ち、なんて格好がつきませんからね。
俗にいう左手法に倣いながら進み、後続の方が迷わないように分岐路ではチョーク等で印をつけます
粘液の跡が残っていればスライムを警戒して消灯、暗闇に目を慣らして先制攻撃の準備をします(追跡)
戦闘では物陰に隠れての射撃で接近を誘い、近づいてきたらUCで躱しつつ斧で一閃します
先制できそうで一息で片付けられる数ならいきなり切り込んでもいいかもしれません。とにかく大きな音を立てず崩落は予防したいですね。
むっ、もう燃料が心許ない。一度戻るとしましょうか。
アネット・レインフォール
▼心情
かつて災魔を封印した者達もこの坑道を通ったのだろうか?
そう思うと感慨深いものがあるな。
…しかし、だ。
災魔を外に出さない故の工夫かもだが、
地図だけはどうにかならなかったのだろうか…。
▼POW
予めランタンを用意し腰にでも。
割と古典的な手だがマッピングに加え、
左の壁沿いに進む左手法を採用してみる。
崩落や陥没など不安定な所も注意点として記入を。
もし行き止まりになったら、
一つ前の分岐まで戻るが迷うよりはマシだろう。
接敵時は【流水戟】で霽刀を振るい迅速に無力化を。
アルダワのスライムと言えばとろりんだが…
また変わった形のが出てきたな。
凶暴性も高そうだし、手心を加える必要は無さそうだ。
連携、アドリブ歓迎
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暗闇に包まれた廃坑に光が差す。
それは眼を焼くような眩い光などではなく、獣油によるどこか心許ないほの暗い光だ。
ジリジリと、小さな音を立てながら明かりを灯すカンテラの揺れに合わせ、ふたつの人影がゆらゆらと揺れる。
アネット・レインフォール(剣の異邦人・f01254)は、こうして坑道を探索していると少し懐かしい気持ちが呼び起こされた。
そういえば、以前にも坑道を探索したことがあった。 あれはドリアッド領の夜露の谷だっただろうか……。
益体もないことを考えながら、アネットは手元の紙へと地図を記してゆく。
そんな彼の隣で、左側の壁にチョークで目印をつけているのはタカ派の平和主義者、自称14歳のメグレス・ラットマリッジ(襤褸帽子・f07070)だ。
そう、誰が何と言おうと平和主義の14歳なのである。 少なくともツッコミ不在のこの場では。
さて置き、そんな二人がなにゆえ一緒に行動しているかというと……単純に二人揃って同じ方向、左へ左へと進んでいたからだ。
左手を壁について歩けばいずれは出口に到着する。 迷路で馴染み深い左手法である。
どうせ同じ方向へ行くのなら、この災魔溢れる迷宮では互いに協力した方が安全で効率的である。
「それにしても、災魔を外に出さない故の工夫かもだが、地図だけはどうにかならなかったのだろうか」
「鉱脈に沿って掘り進んだから煩雑になっただけじゃないですかこれ」
「そんなものか? しかし、今回出てくるスライムはまた変わった形のだな。 アルダワのスライムと言えばとろりんだが……」
とろりんとは、ダンボールに入った虹色のトロトロボディを持ち、『なかまに なりたそうに こちらをみている!』といった目を向けてくることで有名なスライムだ。
確かに、よく見かけるところではあるが……。
「とろりんですか? アルダワのスライムと言えば蜜ぷにではないですかね」
蜜ぷに。
それは甘い甘い花の蜜のような味のする至高のスライムである。
容易に倒せる上にお菓子扱いで学生人気が高い甘味だ。 もとい、スライムだ。
アルダワスライム業界において何がメジャーかと言えば聞く人によるだろう。
中にはフラスコスライム――フラスコに入ったスライムであり、経験を積むと強力な個体に進化すると言われているもの――がメジャーだと言う人もいる。
スライムは高い増殖性と多様性により、種類が豊富なのだから致し方ないことなのかもしれない。
――閑話休題。
言葉を交わしながらも歩みは進む。
幾度目かの分岐を左へと折れると、数メートル先の床に地面ではないものが見えてきた。
遠くまで見通すようにメグレスの掲げられたカンテラの光を、床を半ば満たすように覆った大きな水溜まりが反射する。
いや、てらてらと光を返す水面は、ただの水というには少し粘度が高いようにもみえる。
「これは……粘液でしょうか?」
「だろうな。 罠のつもりか、それとも近くに群れでもいるのだろうか」
周囲に敵の気配は感じられないが、念のため目立たないようにランタンの火を落としたメグレスは息をひそめながら進む。
粘液溜まりを避けて通り抜け、曲がり角からそろりと顔を覗かせ様子を窺うとそこには……。
「……特になにもいないですね」
「ふむ……そうやって安心したところを、というのもよくあるが、今回はなさそうだな」
闇に慣れてきた目で周囲を確認すると、右向かいの壁に白いものが視界に入った。
それはしばらく前にメグレス自身がチョークで書いた目印だ。
「どうやら途中の分岐の一つは、ぐるりと大きな円を描くように一周していたみたいです」
「あの番号は……ここか」
手元の地図上に記された記号に、新たな道が記される。
それはまだまだほんの一角。 広大な坑道探索は、まだまだ終わりが見えそうもなかった。
大成功
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花盛・乙女
だんじょん探索か。
これは単身で挑むより数人で行動した方が良いだろう。
前提として、他の参加猟兵の助力として挑もうか。
私に出来ることは戦ごと。頭を使うことにはとんと向いていない。
なので、岩やら邪魔な障害物があれば「怪力」で退けよう。
しかしこれは…不謹慎だが、面白い。
冒険という風情があるな。うむ、精精楽しめる内は楽しませてもらおう。
厄介な魚共から他の猟兵を護るように前に立とう。
「先制攻撃」「敵を盾にする」「第六感」使える技能は全て使う。
出会う相手が悪かったな、魚共。いや、魚なのか、貴様ら?まぁいい。
この羅刹女、視界全てが間合いと知るが良い。
【鬼吹雪】で全て蹴散らしてくれよう。
■アドリブ連携歓迎です。
照崎・舞雪
アイテム【蒸気式自動筆記魔道メモ】を使って周囲の状況、歩いてきた道を自動入力
それを逐一確認しながら坑道を進んでいくのです
着色料を入れた武器【巨大注射器】を雪花繚乱で氷の花びらに変えます
すると着色性の氷花弁ができあがるのです
道中で目印を付けたい時などにはこの花びらを使い、分かりやすい目印をつけるのです
常時展開しておけば、敵と遭遇しても素早く対処できますしね
仮に敵に私自身の動きを封じられたとしても、雪花繚乱までは封じきれはしないでしょう
茲乃摘・七曜
心情
脆い廃坑ですか…、気を付けないといけませんね
指針
Angels Bitsで歌声を超音波へと変換し周囲を調査
「崩落を招かないように小刻みに短時間で調べていきましょう
行動
『流転』の魔術杭を応用し、坑道に打ち込むのことで目印と光源を兼ねた道標を作りながら移動
「調査範囲を広げるためにも他の人にもわかりやすく…ですね
対災魔
音に惹かれ災魔が現われることを警戒し壁に打ち込む魔術杭以外に『流転』発動用の浮遊弾を仕込んでおく
戦闘は基本、Pride of foolsを用いた引き撃ちで距離を維持しながら戦い、相手が多い場合は『流転』で動きを封じ撃破を狙う
「水流で坑道を破壊される訳にはいきませんから動きにも警戒を…
■
探索を始めてどれほどの時間が経っただろうか。 日の光の差さぬ地下では、時間という概念は刻々とその形を失ってゆく。
淡い光に包まれたこの場所には、獣油の燃える匂いもしなければ、目を刺す電灯の光もない。
この場で光源となっているのは、壁に突き立った1本の杭であった。
茲乃摘・七曜(魔導人形の騙り部・f00724)の打ち込んだ魔術杭から溢れ出す光は、土行から金行へ流れる温かな陽の気だ。
そんな穏やかな明かりの下で、花盛・乙女(羅刹女・f00399)は岩塊を軽々と持ち上げ、通路の隅へと押しやっていた。
「すみません、瓦礫の撤去をお任せしてしまって」
「なに、頭を使うことにはとんと向いていない私に出来ることは、力仕事と戦ごとくらいなのでな。 それに……不謹慎だが、少し面白い」
七曜の言葉に気にする必要はないと笑みを浮かべて首を振った乙女は、退かした岩があった場所に目を向ける。
そこには、おそらく不運にも崩落に巻き込まれたのであろう見たこともない生物の骨や、壊れた機械の破片などが転がっていた。
自身の知らない土地や物、未知の発見は、冒険という風情があって乙女にはとても好ましいものなのだ。
「探検っぽくて楽しいですよね。 それに七曜さんが道を調べて、乙女さんが道を拓き、私が道を記す。 適材適所なのですよ」
そう語るのは、照崎・舞雪(未来照らし舞う雪の明かり・f05079)だ。
彼女達3人は、互いに得意分野が異なる。 それは安全で堅実な探索を可能としているということだ。
舞雪の手の上で、カリカリと忙しなく音を立てていた蒸気式自動筆記魔道メモが、地図を描き終えてその動きを止める。
「自動記入が終わったのです。 七曜さん、探索をお願いするのです」
「はい、お任せを。 少しお静かにお願い致しますね」
七曜の声に応えるように、周囲を浮遊していた多機能型小型蒸気機関式拡声器Angels Bitが正面へと浮き上がる。
ゆったりと唇を開き、崩落を招かないように静かな声音で歌を紡ぐ。
音の波が周囲を撫でるように広がり通り抜け、それは壁面に反射して彼女の下に戻ってくる。
反響定位によって七曜の脳裏に形作られた地形には、不自然に中空に幾つもの影が浮かんでいた。
「なにかがこちらに向かってきています。 これは、スライムオルカのようですね」
「おっと、これは私の出番だな。 前衛は任せてもらおうか」
周囲に光源となる魔術杭を撃ち込んだ七曜が後方へと下がるのと入れ違いに、乙女が腰に佩いた刀を引きながら歩み出る。
そして、僅かな空白の後、微かな風切り音が耳朶を打ち……数十匹にものぼるスライムオルカが空中を滑るように姿を現した。
それは一見すると間抜け面だが、よくよく見ればその口はいささか凶悪であり、実際にオルカの名に恥じぬ悪食だ。
噛みつくかれればただでは済まない。 だが、乙女はオルカの群れへと躊躇なく足を踏み出す。
「やあや、盛況であるな。 魚か何かは分からぬが、一つお手合わせ願おうか」
敵の群れに身を躍らせ、すれ違いざまに右の刀を一閃!
一匹のオルカを上下に捌き、続けて体当たりを仕掛ける一匹を、腰に差した小太刀を左手で逆袈裟懸けに抜き放ち、前後にすっぱりと分割する。
乙女の攻撃の隙を埋めるように、二挺拳銃から放たれた弾丸が、スライムオルカの身体を弾けさせた。
数匹で纏まって水流で足止めをしようとしたオルカ達に、舞雪の手繰る氷の花びらが襲い掛かり、水流を放つ間もなく氷結粉砕されて消えてゆく。
「万物流転、有限が作り出す無限の円環……封印術式、起動。 幽玄たる時間の監獄へようこそ」
「雪花繚乱、無数の花に凍えて砕け散るです」
壁に撃ち込まれた魔術杭に刻まれた魔導回路が輝き、敵の動きを縫いとめる。
運よく、その範囲から逃れたものも続く氷雪の花に飲み込まれて動きを止め……瞬間、黒鉄閃く。
「これで終いだ」
刀を鞘に納めると共に、スライムオルカの群れは一息に寸断・粉砕され、蒸発するようにその姿を崩して失っていく。
いかな凶悪悪食といえども所詮はスライム。 多少数が揃ったところで雑魚である。
戦闘も終わり一息吐いたおり、ふと微かな振動が足元に伝わってきた。
「なんだか揺れてますね、地震です?」
「いいえ、これは地震の揺れ方ではないと思われます」
「どこかで崩落でもしたのやもしれないが……いずれにしても近くではないようだな」
遠方へと意識を向けても、その原因が見えてくるわけではない。
今は目の前のやるべきことが優先だと、3人は気を取り直すと探索を再開するのだった。
大成功
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ミア・ミュラー
ん、暗くて道がややこしくて、迷っちゃいそう、ね。これが、ダンジョン……。
ここは、周りをよく見て、落ちてる機械とかトロッコを目印にして進もう、かな。面白そうな機械がたくさんあるから、いい目印に、なる。目は良い方だから暗くても、平気。崩れそうな場所を見つけたら、危ないからプリンセスハートをぶつけて先に崩しちゃう、よ。
敵はシャチの、スライム?シャチはすごく強い生き物なんだ、よね。気をつけないと。走り回って傘で攻撃を弾きながら、ブレスがきたら真正面からぶつけるように【風槍】を撃つ、よ。水を切って進めば、ちょうど口の中に、当たる。
周りをよく見ながら、道を覚えて、敵も倒す……ダンジョン攻略は大変、だね。
ヴィクティム・ウィンターミュート
古典的なダンジョンアタックってやつだな
如何にしてマップを明らかにしていくかが重要になるだろうよ
ドローンに先行偵察させてもいいが…
行った先で遭遇してもどうにもならんし…ここは"人手"を増やすか
『Team UP』
俺の分身を2体呼び出す…所謂実体ホログラムさ
警戒心を最大にさせて先行させて、状況逐一共有する
接敵したら【早業】と【クイックドロウ】でクロスボウを高速展開して射出、口を縫い付けるようにボルトで串刺し、口を開けんようにする
口が開かなきゃ大量の水だって出しようがないはずさ
あとはナイフで切り刻んで終いっと…本人は動かずして、分身がやってくれんのは楽でいいな
さぁ、さっさと踏破して終わらせてやるぞ
アララギ・イチイ
探査やマッピングならこの装備(UC)が活用出来そうねぇ
【選択UC】発動よぉ
UCの効果で召喚した690基の威力偵察ポッドを用いて坑道内部を調査するわぁ
私自身は偵察ポッドから得られたデータの【情報収集】を行い、坑道内部のマッピングを実施、上記のデータを元に安全性が確保された場所を移動するわぁ(ただ、安全が確保されても油断はせず
敵を補足(ポッドが接敵)したら、敵の動きを【見切り】、搭載されているミニガンの【乱れ撃ち】の【範囲攻撃】で自衛戦闘ねぇ(なお、ポッドは使い捨ての装備でもあるので【捨て身の一撃】も可
数的有利を確保する為に、接敵したポッドの周囲に存在する他のポッドも援護に向かわせようかしらぁ?
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……は?
その言葉が漏れたのは、果たして誰の口からだったのだろうか。
いや、正直そんなことはどうだっていい。
ひとまずは、この訳の分からない状況に思考を巡らせ整理するのが先であろう。
事の起こりは数刻前、グリモアの転移によって坑道へ送られた猟兵達は、幾つかのパーティに分かれて探索を開始した。
崩落の危険性がある坑道探索だ。 一人で動いて、万が一崩落に巻き込まれた場合を考えると、ある程度まとまって行動するのは道理だろう。
そしてこの場に集まったヴィクティム、ミア、アララギの3人もそんな中の1パーティだ。
彼らには、『ほとんど明かりを必要としない』という共通点があった。
各々手段は異なるが、微かな光で探索することができるのならば、敵に察知されにくいという大きなアドバンテージになる。
実際に、彼らは探索は実にスムーズで、既に坑道の奥深くまで到達していた。
多数の威力偵察ポッドを動員したアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は、その物量でもって情報を収集、ミニガンで敵を掃討。
対して、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は、実体ホログラムの分身を先行させて素早くクリアリングを行い、暗殺者の如く静かに敵を屠る。
その鮮やかな手際は、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)が手持無沙汰になるほどであった。
では、そんな順調な旅路に一体何が起こったのか。
一言でいうなら波だ。 それも圧倒的で暴力的な波であった。
それは、暴力的な水量を誇る波というわけではない。
「暴力的な波ねぇ……」
威力偵察ポッドが最後に送信してきた映像を眺めながら、イチイはぽつりと呟いた。
「画面を覆い尽くすほどのスライムオルカが、ピラニアみたいな勢いで喰いついてくるって意味でか?」
まあ、確かに暴力的だ。 比喩ではなく物理的に。
数発攻撃を入れれば倒せるスライムなど、数十匹程度は大した脅威ではない。
だが100を越えたそれの不意打ちは、無数のポッドや分身を瞬時に喰い尽くすほどの脅威足り得るのだ。
本人は動かずして分身がやってくれんのは楽でいいなー、なんて考えていたのはどこの馬鹿だ。
「俺か」
「ん……?」
一見無表情に見える顔に不思議そうな色を乗せて小首を傾げたミアに、ヴィクティムはなんでもないという風に首を振ると足元に視線を落とした。
小石がカタカタと音を立て、少しずつ揺れが大きくなっている。 つまりは、音の発生源が近付いているということだ。
さっき見た映像からして、なにが来るのかなど考えるまでもないだろう。
「敵は多いが、こんなところで爆発物をむやみに使うわけにもいかねーか」
「敵はシャチの、スライム? シャチはすごく強い生き物なんだ、よね。 気をつけないと」
「ふふっ、思わぬ乱戦になりそうねぇ。 まずは敵の動きをとめないといけないかしらぁ?」
イチイによって前面に無数の浮遊盾、自動防御用シールドビットが展開される。
ヴィクティムは素早く右腕のクロスボウに装填されたボルトの残数を確認し、ミアは魔法の傘をぎゅっと握って小さく唇を開いた。
直後、轟々と低い唸りを伴い、坑道の奥から水流が押し寄せるのが視界に映るがそれだけではない。
本当の脅威はその水流の中にある無数の黒だ。
あと僅かで接触というところで黒が蠢きだし、水流を突き破って飛び出す!
スライムオルカの放つ突進――スラオルカアタック――は、ただでさえ素早い。
だが今は、ハイドロプレスによって勢いを得ることによって神速と化し、ぶち当たったシールドビットを拉げさせ、自身の体を飛散させるほどの勢いに達していた。
次々と飛び出すスライムオルカと共に、膨大な水流がシールドビットに衝突し、堪え切れず押し切られるかと思われた瞬間。
「……穿ち、吹き飛ばせ!」
普段の彼女とは違うはっきりとしたミアの声と共に完成した風の槍は、シールドビットの隙間を縫うように直進し、水流の中央を押し広げるかのように引き裂き突き進む!
風の槍の後を追いヴィクティムが駆ける。 裂かれた水流の先に……見えた、ハイドロプレスを吐き続ける群れだ。
敵の群れ近く、左右の壁と天井に視線を走らせ、右腕を構える。
「ヒューミゲイションスタート」
性質変換モジュールによって右腕に内蔵されたボルトが爆発性物質へと作り変えられる。
放たれたボルトは狙い過たず岩盤の亀裂に突き立ち、鈍い音を立てて炸裂。 崩壊した岩盤が水流を発生させていた敵の群れを飲み込んでゆく。
そして、突然水流を失った特攻隊は宙に投げ出され、ずべーっと地面を滑る!
「さてぇ、反撃の時間ねぇ」
「ん……貫け、マッシブ・アロー」
破壊を免れた威力偵察ポッドの7.62mmミニガンが、数多の魔法の矢が慌てて浮き上がろうとしたスライムオルカへと降り注ぐ。
あとに残るは蹂躙ばかりであった。
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ぴちゃり、ぴちゃりと暗い坑道を行く。
光は遠く、未だに終わりは見えそうにもない。
「ダンジョン攻略って、こんなに大変なんだ、ね」
「流石に、さっきみたいなのはかなり特殊な状況だったと思うわよぉ」
「まったくだ。 今みたいな集団にはそうそう会いたくねーな」
一難越えて足取り軽く猟兵達は進む。
されどその瞳は慎重さを失わず、注意深い。
歩みの先に光は灯る、出口はきっともうすぐだ。
大成功
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