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風の期日

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●いのちの行く先
「無茶だ」
 村の酒場で男が言う。その顔は諦観したように覇気がなく、傾いた手のボトルからはウィスキーが垂れていた。
 貴重な酒を無駄にしていることに気づいても、男は表情を変えない。
「無茶でしょうね」
 対する女が浮かべていたのは、柔和な笑み。
 おおよそ、戦闘に身を投じる者の顔ではなかった。そもそも、戦闘に慣れた人間の体つきですらなかった。
「でもね、決めたの。いくら無茶でも、私はやらなきゃならない。だから――」
「無茶だって言ってんだろッ!!」
 怒声とともに、ウィスキーのボトルが飛ぶ。
 鈍い音とともにバンダナを巻いていた頭から、一筋の血が垂れる。
「ハンナ、お前の所為じゃない!この街の、みんなの所為だ!誰も気づかなかったから……」
 気付いてやれなかったから。
 だんだんと、弱々しくすすり泣く男。それはきっと、罪の意識からだろう。
「大丈夫」
 男の涙を拭いたのは、女性の袖口だった。
 自分の血を拭うより先に、男の涙を拭う。
「それにね、アレックス。私がやるのは誰かの所為とかじゃないの」
「それなら……!」
 男は、噛み殺すように言う。
「ここに残れよ……ッ」
「……それはできないわ」
 困ったような表情を浮かべてから、決意の固い声で答える。

「だって、今立ち止まってしまったら私はきっと、死んでからもずっと後悔してしまうから」

 悲鳴が響く。
 竜と幻想が蔓延るアックス&ウィザーズにおいて、このような事態は十分にあり得ることだった。
 いつかは来るだろうと思っていた。
 けれど、今日来るとは思わなかった。
 だからこそ人々は逃げ惑う。しかし、全ては遅すぎた。
 遅すぎたのだ。
 空を覆うほど、巨大なドラゴンが迫る。その羽ばたきと咆哮は、容易に村を消し滅ぼす。
 目指すは、村のその先。
 果たしてドラゴンは、村の正面に立ち向かうようにして待つ女性を見た。

●グリモアベース
「一つ、村が滅んでしまうわ」
 前置きもなく、橘・ワセは集まった猟兵に対し言い放つ。
「アックス&ウィザーズ、行き止まりの街と言われる片田舎の村に、ドラゴンが襲来するの。それもとびきり強力な」
 表情は薄いまま。
 しかし自然と早口になるその口ぶりは、放っておけば凄惨な結末が待っていることを物語っている。
「けれど、目的は村の破壊ではないみたい。どうやら、村の先にある”何か”に惹かれてやってくる――村はその途中にある、ただそれだけ」
 まさに路傍の石を蹴るように。
 飛翔のための羽ばたきと、威嚇の咆哮。
 それが、村を滅ぼすのだ。

「ドラゴンの襲来までの猶予は一日。無論、ドラゴンが飛んでくるの自体を防ぐことはできない――でも、ルートを変更することは出来るかもしれないの」
 聞いて、と地図を広げる。
「ドラゴンのお目当ては、村の先にある荒野。そこにはいくつもの墓標が立っている――不自然だと思わない?おそらく、その墓場にドラゴンの目的の何かがあるわ」
 続いてワセは、村を指さす。
「この村にはその昔、生贄信仰があったそうよ。それもドラゴンに捧ぐ、ね。ヒントがあるとすれば、きっとこっち」
 もしかしたら何かを知っている村人がいるかもしれない、と付け加える。
「ひとまずは村で情報を集め、荒野の墓場にあるであろう原因を突き止め、取り除く。タイムリミットがあることだけは忘れないで」
 謎が解明できなければ、村は滅ぶ。
 そのことを強く念押しして、ワセは猟兵たちを送り出す。


空想蒸気鉄道
 この度は空想蒸気鉄道へご乗車ありがとうございます。

 滅びが迫る村。救えるのは猟兵だけです。
 村で手がかりを掴み、荒野の墓場で原因を解明しましょう。

●行動について
 連携や一緒の行動をご希望であればお申し付け下さい。
 戦闘シーンでは連携可能であれば書きやすいです。

 それでは、良い旅を。
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第1章 冒険 『風の墓標』

POW   :    荒野を踏破し探索、或いは盗賊団を圧倒して情報を得る

SPD   :    町や酒場で情報を得たり、地図や痕跡から推測する

WIZ   :    魔力で探査したり、荒野の獣や精霊に助力を求める

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シーラ・フリュー
【SPD】で判定

生贄信仰…本では、読んだ事ありましたが…実際やっていた所も、やっぱりあるんですね…
それにしても…何かって、何でしょうね…。そういうの、とても気になります…
解明すれば、気になっていた事も分かりますし、村も救える手掛かりも手に入る…一石二鳥です…?
ですので…私も微力ながら、お手伝いします…

酒場で、猟兵になってから少しづつ鍛えた【コミュ力】で、聞き込みします…
上手く喋れるかは、分かりませんが…頑張ります…

荒野に、沢山の墓標があったのを、見ました…。何かあったんでしょうか…?
いえ…そういう話を、聞いて旅をするのが…趣味なもので…
等と聞けば、何かヒントが得られたり、しないでしょうか…?



「共同墓地、ですか……?」
「あぁ」
 酒場のマスターが相槌を打つ。
 提示されたワードを頭の中で反芻させながら、シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)は考える。
「なんでも昔、村を救った英雄があの荒野で亡くなったのがその始まりらしい。英雄を讃えるように、或いは一人にさせないために。以来、この村で誰か亡くなれば遺体はみーんな、そこに埋没されるってワケさ」
「な、なるほど」
 シーラが思考する間もマスターは淡々と語る。

 話すのが苦手なシーラにとって、酒場のマスターは好都合だった。
 話しかけやすい。気さくな雰囲気の人間であること、まだ昼頃で他に客がいないことも幸いした。
 何より、一を聞けば十とはいかぬものの、八くらいは話してくれることが、シーラにとってはありがたかった。
 旅人という体で話を聞いているのも、功を奏しているようだ。
「ところで、その……」
 と、シーラが切り出す。聞きたいことは、もう一つあった。
「ん、なんだい?」
「……この村には昔、生贄信仰があったと……聞きました」
「……あー」
 生贄信仰。グリモアベースで得た情報。
 その単語を聞いて、マスターは苦い表情を浮かべる。
「どこから聞いたんだか……悪ぃな嬢ちゃん、オレも詳しくは知らない。それほど昔のことらしいからな……。村長なら、何か知っていたかもしれないが」
「村長さん、ですか?」
 シーラが言葉を返すと、マスターは頷く。
「あぁ、我らが村長。齢100まで生きた生き字引」
 そして……。

「今は件の、共同墓地の下さ」


「お話、ありがとうございました」
 帰り際、礼を述べる。少しは上手に話せただろうか。
 そんな心配を知ってか知らずか、酒場のマスターが笑顔を向ける。
「おう、今度は夜にでも」
「えぇ。それから、少し気になることがあるので、今から荒野へ行ってみようかと、思います」
 そう聞いたマスターは、表情を変える。
「それは……やめておけ」
「……?」
 首を傾げるシーラに、マスターが続ける。
「最近、荒野周りを賊が張ってるらしい。アンタが冒険者ならともかく、それでも近づくのはオススメしないぜ」

 店内へと戻っていくマスターの背中に、シーラはここまでの情報を繋げる。
 共同墓地、生贄信仰。亡くなった村長に、山賊の気配。
「……一体何が」
 まだ、竜の輪郭はおぼろげに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
どこの世界でも、人は驚異と戦ってるんだね。
いや…驚異に晒されている、っていう方が正しい事の方が多いかな。
助けられるのなら、みんな助けてあげたいけれど…

生憎、私は魔法とか、あんまり詳しくないんだよね。特に、調べ物とか探知とか、そういうのは。
だから…村での手がかり探しを手伝ってみようかな。

そういえば、猟兵の存在って知られてないんだっけ…
それじゃあ…ユーベルコード、茉莉歌。
ふふ…人を癒す不思議な歌を歌う、旅の吟遊詩人。
詩の題材にするために、この村のドラゴン信仰について聞きにきた。なんて、どうかな?

お話を聞くなら、やっぱり過去を知る人だよね。
長老とか、歴史学者とか。そんな人いないかな?

【連携描写歓迎】


在連寺・十未
竜に生贄を捧げる……ってのは古来から伝わる良くあるお伽噺の一つ……だと思ってたんだけどな。さすがは斧と魔導の世界ってわけね。なんにせよそれの巻き添えを受ける人に取ってはただの理不尽な災害だよなぁ

【SPD】
「コミュ力」技能を使って件の村で情報を集めるよ。えーっと、ハンナさん、だっけ。もしくはアレックスさんか。村の先にある墓標の群れについて聞いてみる。その後は直接その墓標の場所に向かって現地調査だ。「地形の利用」はお手のものだから、何かしらは見つかると思うんだ


※アドリブや連携などご自由に


華折・黒羽
●方針【POW】
人と話すのは苦手だ。
しかし獣達もドラゴンに怯えてしまってあまり姿を見ない。
ならば残された方法は自分の足しかないだろう…俺は荒野で目ぼしい情報がないか調べてくる。

●行動
・ユーベルコード<黒帝の楔>で黒帝を召喚し移動速度を速める
・<野生の勘>も併用して探索
気になる箇所を見つけたら逐一調べ、「この土地の歴史」或いは「ドラゴンに関わる何か」を探す。
※盗賊団には出くわさない様気を配るが、万一出くわした場合は黒帝に騎乗したまま手持ちの剣で攻撃していく。鞘からは抜かない。
優先順位は、情報>戦闘


呼称:名前+さん
いつも外套のフードを目深かに被っている人付き合いの苦手な猫獣人
アドリブ・連携歓迎



 歌声が、村に響く。
 村の中央にある広場から聴こえる、普段では聞き馴染みのないその音色。
 ソプラノと優しい花の香。それに惹かれてか村人たちが集まる。
 果たして歌の正体は、まだ幼い少女。妖狐の耳と尻尾が風に揺れる。
 優しいひとときを過ぎて、やがて音色がゆるやかに終わる。いつしか出来ていた人だかりは、拍手を巻き起こした。

「吟遊詩人さんなのですね!」
 話を聞いた村人の一人が目を輝かせる。
 歌でこれだけ喜んでもらえるならば歌った甲斐もあるものだと、パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)はまんざらでもない様子で微笑む。
「この村に、何かいい題材はないかな?例えば、何かの信仰とか」
 やんわりと訊ねてみると、それぞれがうーんと頭を悩ませるも、答えとなるものは出て来なかった。
「ごめんなさい……少なくとも今は、そういう話はないわね」
「そっか……じゃあ、何か題材にできそうなこと、詳しそうな人はいない?長老さんとか……」
 長老という言葉に、少し表情を曇らせる人がいた。パームがそれに疑問を投げかけるより先に、一人の村人が言う。
「あ、なら……村長の娘さんはどうかしら!あの子なら村長から何か面白い話、聞いてるかもしれないね!」
「……村長の、娘さん?」

「ここみたい……」
 教えられ、やってきた家はいかにも村長の家といった、他より少し大きな家屋。
 その扉の前に、一人の女性が立っている。
「こんにちは」
 おおよそアックス&ウィザーズの世界にそぐわない服装に、彼女もまた自分と同じ猟兵であると理解する。
「こんにちは」
 在連寺・十未(アパレシオン・f01512)に挨拶を返すと、パームは扉をこんこんと叩く。
「はーい!……あら」
 出てきたのは、二十代も中頃の女性。
「ハンナさん、ですか?」
「村長の娘さんですか?」
 同時の発言にお互いに顔を見合わせ、申し訳なくしているのを見て、ハンナと呼ばれた村長の娘は微笑む。
「ふふ。えぇ、わたしがハンナ。亡き村長の娘です」

「率直に聞くけど」
 切り出したのはパームであった。
「この村のドラゴン信仰について聞きたいんだ」
 その言葉に、ハンナは固まる。
「なぜ、それを」
「質問を質問で返すのはよくないよ」
 十未が言うと、少し迷った後にハンナは語り出す。
「……生贄信仰。正確に言えばドラゴンへの生贄、ですが。みなは過去のことのように話しますが、それは今でも続いております」
 毎年、村の長が生贄を山へと捧げるというのが、生贄信仰の正体らしい。
「その物言いだと、生贄って人間ではないんだね」
「流石にそれだと、村のみなも知らない顔はしないでしょう。生贄は動物の肉ですよ」
 ただ、とハンナは苦い顔をする。
「村長は急死でした。なので、詳しい方法を本人から教えられてはいないのです。幸い、まだ期限は一年ありますし、村長の遺した手記も……」
「ちょ、ちょっと待って!」
 待ったをかけたのはパーム。
「な、なんでしょう……?」
「今、期限は一年あるって言った……?」
 パームの問いかけに、ハンナが頷く。
「今年のぶんは確かに、村長が捧げて……」
 そこで、ハンナは目を見開く。
 それは、何かに気づいたときの顔だ。
「ねぇ、村長はいつ亡くなったの?もしかして――その捧げものの最中じゃないの?」
「そ、そんなはずは……!確かに、亡くなったのは生贄の日ですが、その手元に捧げものは……」
「生贄を捧げる場所は山なんだよね?なら、捧げものをどこかの獣が持って言った可能性は?何より……」
 生贄が捧げられたのを、誰かが見ていたのか。
「あ、あ……」
 ハンナは目を見開いたまま、固まっている。
「これは……」
「間違いないようですね」
 原因は、見つかった。

「――ありました!」
 書斎へ飛び込んだハンナが、すぐに飛び出してくる。
 その片手には、件の村長の手記。
「なんて書いてあったの?」
 パームが訊ねると、ハンナが息を整えて手記を読む。
「生贄を捧げるには『竜の眼』と呼ばれる宝玉が必要なようで……村長がいつもつけていた首飾りに形状がよく似ています」
「それは今、どこに……」
 十未の言葉に、苦虫を噛み潰したような顔をするハンナ。
 聞くまでもなかった。
「……荒野の墓地!」
 パームと十未が顔を見合わせる。これで合点がいった。
「ま、待ってください!荒野の周りに山賊がいると報告が来ています、危険です!それに、部外者の二人の手を煩わせるのは……!」
「今はそんなこと言ってる場合じゃ……!」
 言い返そうとしたパームを、十未が手で遮る。

「今立ち止まってしまったら僕はきっと、死んでからもずっと後悔してしまう」
「……!」
「……心配してくれてありがとう。だけど、僕たちはこのためにここに来た」
 そう言い残すと、十未は足早に村長の家を後にする。
「いっちゃった……」
 残されたパームは、十未を見送るとハンナへ向き直る。
「さ、ドラゴンはどうにかするけど、もしもがあるからね。陽が落ちるまではまだ時間があるし、村の人を避難させよう!」
 提案されたハンナははっとして、気持ちを切り替える。
「えぇ……。……ありがとうございます」
 その言葉は、目の前のパームに。
 そして、十未へとかけられた言葉だった。

 陽がだいぶ傾いて来て、ようやく十未は墓地へとたどり着く。
 道中、すでに盗賊と思しき集団がノびていたのもあって、特に足止めを受けることもなかった。
 それは既に、こちらにも猟兵が来ているということ。
「……いた!」
 十未の目が捉えたのは、一際大きな黒い虎。野生の獣ではないことは確かだろう。つまり……。
「手伝ってくれ!宝玉のあしらわれた首飾り、もしくは最近出来たばかりの墓!」
 その呼びかけに、黒い虎の持ち主が顔をあげる。
「……」
 返答はなかったが、フードの奥の頭が頷いたのは見えた。
 華折・黒羽(掬折・f10471)は漆黒のライオンに呼びかけるように背を叩く。
「俺達には、野生の勘がある……すまないが、黒帝に道を開けてくれ」
 大きな雄たけびをあげて、黒羽を乗せたライオンは墓を疾走する。
 荒々しい歩調ながら、墓石を蹴るようなことはなく。それでいて獣の瞳は鋭く、一つ一つの墓を丁寧に観察していく。
 荒野を照らす夕暮れが、獣の瞳を一層光らせる。
 ドラゴンの気配を既に感じたのか、当たりに他の獣がいる様子はない。
 ……此処にいるのは、漆黒のライオンとキマイラの少年だけ。
 やがて、彼らは一つの墓石にたどり着く。
 そこには、青い髪に微笑みをたたえた女性が立っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
【POW】盗賊団を圧倒して情報を得る

荒野を虱潰しに探してる時間はなさそう
知ってそうな人に訊く……力技で
体も温まるだろうから

「教えてほしいことが、ある」
「この近くの村とドラゴンとか、生贄のこと」
「この喧嘩に、私が勝ったら教えて」

攻撃力重視で【トリニティ・エンハンス】
出来るだけ纏めて【薙ぎ払い】する
盗賊でも、人は人だから怪我する箇所が少ないように各人一撃でリタイアしてくれるといいな
粘るなら訊き方を痛みに訴える方に変える【覚悟】くらいはあるから
大人しく負けて情報を吐いて欲しい

一通り事が済んだら最後に改心を勧める
私に圧倒されるなら、盗賊向いてない
次来た時まだ盗賊してたら、もう一度暴れる
…もう来ないけど



「教えてほしいことが、ある」
 そう告げたのは、まだ十代の少女。
 短く切った髪と服装からボーイッシュな印象を受ける。
 対して、それを聞いたのは見るからに柄の悪い三人組。
「この近くの村とドラゴンとか、生贄のこと」
 金色の瞳で、三人組をじっと見る。
 少女のものにしては、些か圧のある瞳だ。
「なんだぁ、おめぇ?」
「知るかよ、んなこと」
「ただまぁ、どうしてもっつーんなら考えてやらなくもねぇがなぁ?お?」
 卑しい表情を浮かべた一人が、少女の肩に薄汚い手を乗せようとした――その時。

「――あ?」

 男の身体が、空中に投げ出される。まるで、何かに掴み飛ばされたように。
 否、掴み飛ばされたのだ――その少女に。
「もちろん、タダでとは言わない」
 男が地面に強かに打ち付けられるとともに、ルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)が言う。
「この喧嘩に、私が勝ったら教えて」

「砂にしちまえ!!」
 残る盗賊は二人。ナイフを構えた男が迫る。
「喰らえーーッ!」
 突き出すようにナイフをルーナの腹部へ向ける。それを、一歩飛びのいて回避すると、今度はルーナの番。
 風の魔力で強化するのは足。飛び退きから姿勢を低くして、勢い余って近づいてきた男めがけて蹴り上げる。
 細い脚からは想像できない鋭い蹴りが、男の顎に直撃する。悲鳴を上げる間もなく、力なくダウンする。
「や、やりやがったなー―!!」
 最後の一人はこん棒を構える。
「どう?リタイアしたほうがいいとおもうけど」
「誰がするかよ!!」
 飛びかかり、叩きつけるように振り下ろされたこん棒をルーナは手でいなす。
 強力な打撃ではあるものの、威力を受け流すことで相手の隙を突く。
 掌底が鳩尾を突くと、空いた片手を捻りあげて背に回る。最小限の力の立ち回りで、そのまま体重をかけて組み伏せる。
「痛ッ~~~~!!」
「まだやるの?」
 冷徹な声で告げて、組みついた腕を捻るとやがて男は降参する。
「し、知らねぇ……!本当だ!荒野の墓場にある目ぼしいお宝漁りにきただけなんだって、俺達……!」
「ふうん」
 対して情報も得られないと、早々に諦めて手を離す。
「どうしよう……」
 顎に手をやり、考えるルーナ。

「――馬鹿め、これでも喰らえ!!」

 と、組みつきを解除された男が再び、懲りずにこん棒を振りかざす。
 ルーナの死角からの一撃。少なくとも、回避は間に合わない。
 ――だが。
「君、盗賊向いてないよ」
 風の魔力を纏った手刀が、こん棒を斬る。
 文字通り、太いこん棒が真っ二つに斬られて、呆然とする男。
 その顔面に、切断された木片が蹴っ飛ばされて激突する。
「次来た時まだ盗賊してたら、もう一度暴れるから」
 その言葉に、反応する者はもう誰もいない。全員、気絶しているからだ。
「まぁ……もう来ないけど」

大成功 🔵​🔵​🔵​

氏神・鹿糸
ドラゴンが村をねえ。荒野のお墓…何があるのかしら。

とりあえず、精霊術士だもの。その特性を生かして【WIZ】で精霊達からお話を聞いてみましょうか。

まずは村の先の荒野へ。一通りあたりを散策しましょう。
ユーベルコードを、攻撃するためではなく精霊たちを呼ぶために使ってみましょうか。

「最も美しき者。無形の隣人。少し、お話しましょう。」
自らの精霊を踊らせながら、荒野に住まう精霊を呼ぶわね。

「こんにちは、素敵な貴方。お聞きしたいことがあるのだけど…」
「この荒野の住み心地はどう?あなたの住む、この土地について知りたいわ。」
精霊たちから、村の人達が知らない昔の話、生贄信仰について等を聞けたら良いわね。



「最も美しき者、無形の隣人」
 歌うような、揺蕩う声が墓地に響く。
 精霊術士の呼びかけ。透き通った声に、何かが答えた。
 それを聞いた氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)は、小さく微笑む。
「えぇ――少し、お話しましょう」

「この荒野の住み心地はどう?あなたの住む、この土地について知りたいわ」
 花のような日傘を差した鹿糸が訊ねる。周囲には、可視化した精霊が漂っている。
 可視化したとはいえ、精霊は明確な形を持たない。制御の難しい自然現象を介した方法だからかもしれないが、それでも話を聞くには十分だった。
 音としてではなく、心へ精霊はメッセージを送る。対して鹿糸は言葉で質問をする。
 独り言のような光景だが、ここには誰もいない。
 不思議に思うものは、誰も。
「――え?」
 ふと、精霊のメッセージに首を傾げる。
「よくないものが、ある……?」
 精霊の導を頼りに、それが一体何であるかを確かめに行く。
 気付けば、世間話も過ぎて夕暮れになっていた。日傘が鹿糸の顔を隠すと、いい光と影のコントラストを作る。
「ここ……」
 導かれるがままに、たどり着いたのはひとつのお墓。
 その墓石には、金色に輝く宝玉の首飾りがかけられていた。
「これが、よくないものなのね?」
 訊ねれば、肯定がかえって来る。出来るなら、どこか遠くへ持っていってほしいとまで言う。
 一体これが何なのか。皆目見当こそつかないものの、今回の件の何か手掛かりになるかもしれない。
「分かったわ」
 短くそう告げると、周囲を漂う精霊がくるくると回る。
 そしてそのまま、精霊の光は鹿糸の唇につんと触れて、消えていく。

 漆黒のライオンがやってくるのは、この少し後の出来事。

大成功 🔵​🔵​🔵​

五曜・うらら
ほほう、”どらごん”ですか!
いいですねっ!そういった相手を斬れるというのは!
是非是非手合わせ願いたいものですっ!

まあ、それはそれとして。
村の人を食べられては困りますからねっ!
昔は生贄を差し出していたそうですが!

うーん、生贄…お墓…
考えるより実際に行ってみましょうっ!
お墓荒らしがいたりとかするのかもしれませんし!
私、走るのは得意ですのでっ!

もしそうだった場合、どらごんさんには過去に
生贄さんとのろまんすとかあったのかもしれませんねっ!
彼女の眠りを妨げるものは許さんぞー、みたいなっ!

そういうのじゃなくても行ってみればきっと何かわかります!
私、そういうの見つけるの得意なのでっ!
では、行きますよーっ!



「”どらごん”ですか!」
 はい。
 来たる飛龍の襲撃に今から闘士を燃やすのは五曜・うらら(さいきっく五刀流・f00650)。
「まぁ、それはそれとして!」
 手をパンと叩き、笑顔を浮かべて。
「村人が襲われては困りますからねっ!まずはできることから、やっていきましょう!」

 うららは今、荒野の墓地へと来ている。
 考えるよりも行動に移すタイプの彼女は、原因を探ることにした。
 とはいえ、情報不足は否めない。何から手をつけるか考えあぐねていた。
「生贄……お墓……」
 墓荒らしとかいないよね?と訝しみながら墓地の探索を進める。
「それにしても、なぜどらごんさんは生贄を求めるのでしょう?」
 むむむ、と頭を悩ませる。
「――はっ!」
 そして行きついた答えは――。
「生贄さんとのろまんすがあったのかも!そして彼女の眠りを妨げるものは許さんぞー、みたいなっ!」
 そうだね。
 とはいえ、荒唐無稽な話と笑い飛ばせるものでもない。手がかりの少ない今だからこそ、可能性は広く抑える必要がある。

 そんな難しい話を知ってか知らずか、シュレディンガーのコイバナに思いを馳せているうららの耳が、ある音を捉えた。
「――……?」
 静に墓石の影に身を潜める。
 聞こえたのは、何かを引きずる音。
 そして――複数人の足音。
「……まさか」
 続いて聞こえてきた卑下た声に、うららは確信する。
 山賊だ。
 堕ちた悪人。もはやモンスターと呼ぶに遜色ないとされる存在。
 そのへんにノびていた盗賊とはワケが違う、本物。

「まさか、ホントに墓荒らしが来るなんて……!」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「荒野の墓地に、山賊が現れたわ」

 グリモアベースにて、橘・ワセは告げる。
「悪逆に落ちた人間。……いえ、この世界において、もうあれはモンスターよ。人間ではない」
 無表情の瞳を細めて、そう断言する。
「ドラゴン襲来を回避できなかったのは、村が生贄を捧げたつもりでいたこともあるけれど、おそらくアレも原因のひとつね。大方、墓荒らしに来て件の宝玉を粗雑に扱ったのかしら。それにドラゴンが怒った……とかね」
 あくまで想像だ。しかし、可能性は十分にある。
「命と取るかは自由……けれど、既に人ではない以上、生かしておく必要もないわ」
 最終判断は各人に任せる、と付け足して。
「竜の眼の宝玉は既に回収済み。けれど、アレを倒さない理由にはならないわ。放っておけば、村はすぐそこ。ドラゴンに襲われずとも、遠からず被害を及ぼす」
 分かってるわね、と瞳で促す。

「往きなさい、悪い子にはお仕置きの時間よ」
夜の墓地に、冷たい風が吹いた。
五曜・うらら
ややや、よもや山賊に出くわすとは!
いいですね、わかりやすくていいです!
山賊さんを倒せば解決するってわけですねっ!
あれ、その場合はどらごんを斬れなくなるのかな?まあいいです!

さてさて、正面から戦うのも楽しそうですが
囲まれちゃったら面倒ですっ!
ここは遠くから一人ずつずばっといっちゃいましょう!
私の刃は距離を選びませんからっ!

まあ、普段は五本あれば十分ですが
別にそれが限界という事もありません故っ!
山賊さんの獲物もちょちょいと私の力で拝借してしまいましょう!
攻防一体でいい感じだと思いますっ!

ささ、変幻自在の刃、どうぞご覧あれ!
お代は命で結構っ!
まあそんなものもらっても、私には必要ありませんけどねっ!



 ――刃が、山賊の群れへと飛来する。

「っ!?」
 慌てた様子で山賊が散開する。その一人へ向けて、今度は大型の何かが飛びかかる。
「せいっ!」
「がぁ!?」
 華麗な蹴りがうなじにヒットすると、大柄な山賊の一人はそのまま意識を失う。
 蹴りを起点にもうひとっ跳び、砂を蹴るように五曜・うらら(さいきっく五刀流・f00650)は着地する。
 襲来した山賊をその直近で目撃していたからこそ、一番最初に飛び出したのは彼女だった。
「な、なんだァ……!?」
 動揺する山賊たちに、うららは告げる。
「よもや山賊に出くわすとは思いませんでしたが、これも何かの縁ですっ!変幻自在の刃、どうぞご覧あれ!お代は……」
「げひゃ、ひゃはは!!女だ!!」
「殺せ、コロセ!!」
 前口上も終わらぬうちに、山賊がうららへと迫る。
 それを見たうららは、しかし快活な笑みを収めることはない。

 否、それは既に快活などではない。
 戦狂いの獰猛な笑み。
「――命で結構っ!」
 腕を薙ぐように振り向ける。何もない、虚空の挙動。
 それで十分だ。
「げひゃ、ひゃッ」
 先頭を走る山賊が突如として、全身から血を噴き出す。
 辿るは5本の軌線。不可視にして理解不能の攻撃を前に、山賊の脚が一瞬止まる。
「これで終わりじゃありませんよっ――!!」
 最初に飛ばしたまま地面に刺さったままの刀と、先頭にいた山賊のナイフを拾い上げ、低空を滑走するように山賊の群れへと突撃する。
 両手に持った刃は、次の標的を前に斬りあげられる。狙われた痩せぎすの山賊に寸でのところで受け止められるも、念動力によって宙を舞う無影の刃はすかさず痩せぎすの男を斬り裂いた。
「この……女ァ!!」
 三人目を仕留めたうららの背後を取るように、巨漢の山賊が迫る。今度の手合いの武器は、こん棒。
 刀やナイフで受け止められるものではない。そう判断したうららは墓石を飛び越えるように宙返りで、こん棒の一振りを避ける。
 巨漢の山賊は不可視の攻撃が見えない刀による攻撃と判断したのか、近くにうららが居らずともこん棒を振り回す。
(あれでは無理に”さいこきねしす”も使えませんね……)
 で、あるなら。うららは握った刀とナイフに力を込める。そして――。
 一度、深呼吸。

「――よし!」
 墓石の影から飛び出し、巨漢の山賊へ迫る。
 狙うは首。その一点を狙うように、まずはナイフの初撃を突き出す。
「ガァ――ッ!!」
「――っ!!」
 獣のような低い声とともに、こん棒が突き出した腕を弾く。腕自体に直撃こそしなかったものの、ナイフは空中へ放り出される。
 二撃目は、自前に刀。ナイフより刃渡りの長い、確実な得物。
 だが。
「……っ!」
 巨漢の山賊が、首を振る。まさに首の皮一枚、あと少し足りない。
 巨漢の男は二撃をいなし切ると、卑下た笑みを浮かべた。残るは、空中に残る少女のみ。
 こん棒はナイフを弾いた勢いで、少女の丁度頭上にある。振り下ろせば、華奢な少女など一撃だろう。
「……?」
 両手でこん棒を振り下ろそうと、こん棒に視線を向けた男はふと気づく。
 何かが足りない。
 空中にあるべき、何かが足りないと――!

「”さいこきねしす”っ……!!」

 弾かれたはずの刃は、うららの口へと戻っていた。歯で掴んだ一振りが、ついに無防備な男の喉を――切り裂いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パーム・アンテルシオ
出たね、人型の魔物。
どうせなら、思いきり人型から離れた姿になってくれると嬉しいんだけど。
やっぱり、人を倒すって、あんまり気持ちのいいものじゃないし、ね?

さて、泣き言も言っていられないし、お仕事お仕事。
ユーベルコード…月歌美人。
私は私で、得意な事で行動させて貰うよ。
流す歌は…ふふ、ロックな曲でも流してテンション上げちゃおうか?
変な雄叫びなんて聞こえないぐらい、耳に入らないぐらい。賑やかにしてあげるよ。

さて、あとはみんなにお任せ…といきたい所だけれど。
強化の発生源を放置、なんて甘い真似はしてくれないだろうね。
みんなが守ってくれるなら嬉しいけど…蹴ったり逃げたり、自衛ぐらいはしないとね?

【連携歓迎】


在連寺・十未
パッと見どうみても人間なんだけど区分的にはモンスターなのか……どうなってるんだこの世界

まいっか。こういうの相手取るのは僕は凄く得意だ。一対多の『戦闘知識』は心得てる

武器は鋼線とフック付ワイヤー、それとユーベルコードを起動して現れたものを使用。『ロープワーク』『敵を盾にする』『第六感』を使って敵を捌いて縛り付けて翻弄する感じでやる。
場所が起伏にとんだ墓地なら『地形の利用』も追加で使用

取り敢えず叫び声をあげようとしても直ぐに首を落とせる状態で転がしておく。モンスターと呼ばれる所以を観察して見たい。

……成る程ね。文字通り人でなしか。仕方無いな。糸を引き切るよ


※アドリブや連携など大歓迎です


華折・黒羽
眠る者達の地を荒らし、下卑た笑みを浮かべる貴様らを人とは思わない。
…後悔も懺悔もその身が朽ちた後でするといい。

●戦闘
喚び出していた黒帝と呼吸を合わせ対で攻撃を仕掛ける。
積極的に間合いを詰めながら「隠」の≪盾受け≫≪おびき寄せ≫で山賊共の注意を引き、隙が出来たところで黒帝が攻撃
黒帝が山賊の注意を引いていた場合はこちらから黒剣「屠」で攻撃を仕掛ける
他の仲間が近くにいた場合は同様の行動で“囮役”を引き受け攻撃は任せる

俺は慈悲深くはなれない。
生かしておくつもりも、無い。
「ーー思い知れ、それが貴様等の罪の重さだ」

壊せない障害物が多い場所なので烏の羽翼は今回未使用
呼称:名前+さん
※アドリブ・連携歓迎



「マズい、な」
 苦い表情で在連寺・十未(アパレシオン・f01512)在連寺・十未(アパレシオン・f01512)は両手を上げる。
 その正面には、山賊。それも複数。
(仕込みさえ間に合えば都合がよかったんだけど……)
「ぎひひ、ハハハ……女、女!!」
 なるほど確かにモンスターだ、と。
 声には出さず、心の中に留めておく。
 両手をあげていても大して効果はなく、山賊たちはずかずかと近づいてくる。
 いよいよマズいか、力づくの突破を試みるかと頭を回している――その時だった。

「――黒帝ッ!」
 闇に沈んだ荒野を、黒い影が山賊目がけて突撃する。
 突然の出来事に、幾人もの山賊が突き飛ばされる。
 その――黒いライオンに、十未は見覚えがあった。
「さっきの……」
「無事か」
 黒いライオン――黒帝から飛び降りた華折・黒羽(掬折・f10471)が声をかける。
 十未は頷き、向き直る。
「黒羽だ。手助けは必要か」
「在連寺・十未。時間を稼いでもらってもいい?」
「承った」
 言葉と同時に、黒帝が爆ぜるように地面を蹴る。
 獣の俊敏性で、飛び交う石礫をするりと避けていく。
「ギ、こいつ……ッ」
 複数の山賊を相手取ってもなお優勢なのは大型動物が故か。
 そして攻めあぐねた山賊の背後へ、黒羽本人が忍び寄る。
「眠りの地を、騒々しくするんじゃない」
 黒い刀身は夜闇に溶け、肉を断つ。
 意識を失うように倒れる山賊を一瞥し、黒羽は残る敵へと鋭い視線を向ける。
「グオォォォォ――――!!」
 と、その時。山賊の雄たけびがあがる。
 下賤な雄たけびは、本気を出すサイン。本能的な肉体の強化。
 だが――。

「――私の声を聞け!」

 凛とした、高い音の歌声が響き渡る。
「これは……」
 UDCアースの人間である十未は、その曲調に聞き覚えがある。
 ロックだ。
「ガ、ぁ……?」
 それは雄たけびをかき消し、強化を解除する。
 歌声の出どころへ、山賊たちが視線を向ける。
「遅くなってごめん!村の人たちの避難は終わったよ」
 パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)はそう言って笑う。
 桃色の明るい色をした髪と服装は、暗闇に沈んだ荒野の墓地に一際目立っていた。
「――コロセ!」
 強化を阻まれた山賊が、パームへと殺到する。
 武器を振りかざす山賊。それに、強い意思の瞳で立ち向かうパーム。
 戦闘に慣れておらずとも、戦場に立つ過酷さは理解している顔だった。
「させない」
 だからこそ、それに応える人がいる。
 黒羽の持つ漆黒の盾が、こん棒やナイフを防ぐ。そして今度はこちらの番だと、黒帝の前脚が大衆を薙ぎ払う。
「ありがとう!」
 パームの言葉に、黒羽は小さく頷く。意思の疎通は、それで十分だった。
「テッ、てめぇら――武器を捨てろォ!!その歌をやめろォォ!!」
 残された山賊が吠える。
 彼が握るナイフの切っ先は、足元に倒れる男に向いている。
「あれは……村人か」
「多分。……でも、あんな人いなかったよ。いたら避難してるし」
 二人が悩む中、十未は一人心当たりがあった。
「……アレックスさん?」
 村の調査の際、出会うことのなかった人物。酒場にも、村長の家にもいなかった彼が、なぜここに。
 暗闇に目を凝らせば、アレックスと思われる人物には既に、複数の打撲の痕があり、大柄な肉体に反して弱々しい様子が窺える。
 もし、あの状態のまま本来の当日を迎えれば、きっとドラゴンに太刀打ちする力は勿論、精神的な余裕もないことだろう。
 これで完全につながった。
 十未の、いつの間にか握っていたこぶしに力が入る。
「武器を捨てろっつってんだよォ――!この男がどうなっても――」
「うるさい」
 そのまま、何かを引きよせるようにこぶしを振るう。
 それと同時に、人質を取っていた山賊が倒れる。転ぶように倒れてから、次いで手に持ったナイフにも何かの力が加わり、どこかへ飛んでいく。
「ァー―?」
 見回せば、残った他の山賊も地に伏している。或いは、背を合わせ何かに拘束されたように座り込んでいる。
「文字通り人でなしだね、君達」
 ふと、雲間の月明かりが荒野を照らす。
 在連寺・十未は言う。
「じゃあ、仕方無い」

 ――月下の墓場に彼らは、鋼糸の煌めきを見た。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルーナ・ユーディコット
【シーラ・フリューと連携(f00863)】

墓地に来たのはいいけど、また賊
人じゃないって言われるくらい悪逆に落ちるって、呆れる
生死はともかく、再起不能にはする

援護射撃が期待できそうな人がいる
連携お願いしてみよう

「シーラさん、突っ込むから援護射撃……欲しいな」
「私の攻撃が上手くいったら、確実に敵を落としてほしい」
「……何発撃ってもいいけど私に当てないでね」

シーラの援護を信じて【ダッシュ】で集団のド真ん中まで切り込む
後は【捨て身の一撃】を【覚悟】して人狼咆哮で纏めて叩く
ドラゴンにここに脅威が居るぞと伝わる程叫ぼう
倒し漏らしたのは……シーラや他の猟兵が落としてくれるかな

上手くいったらシーラにお礼言おう


シーラ・フリュー
【SPD】判定
ルーナさん(f01373)と連携

なるほど。大体の情報は把握できましたが…なかなか、問題が多そうです…。
とりあえず、まずは山賊をどうにかしないと、ですね…。

…今回は前衛が居てくれて、助かります…。援護は、任せてください。
なるべく、当てないように…気を付けます…。
ええと、その、ないとは思いますが…もし当たったら、すみません…。

【スナイパー】とユーベルコード【鷹の目】使用で、遠距離から狙撃しますね…。
【早業】と【クイックドロウ】も合わせて、どんどん撃ちます。
狙うのは、ルーナさんの背面に居る山賊を最優先、次点で倒し漏らし、です…。
なるべく、安全に戦えるように、配慮していきたいですね…。



 始まりはひとつの銃声だった。
 一瞬遅れて、山賊の大男が膝をつく。そのまま伏して、動かない。
「――ふぅ」
 シーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)はひとつ息を吐くと、スコープの先へ意識を向け直す。
 遠く向こうでは、山賊の群れが。そして、その中央で戦う一人の少女の姿があった。
「――――」
 少女の背後を取ろうとする動きを、スコープ越しの視線は見逃さない。
 静かな呼吸に合わせて――、一撃。
 薬莢が渇いた音とともに落ちる。

 先刻にて。
「シーラさん、突っ込むから援護射撃……欲しいな」
 ルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)の提案に、合流したシーラは目を見開く。元からの無表情にさほどの機微は見られないが、ルーナはそれに気づいてか気づかずか、話を続ける。
「私が前に出るから、シーラさんには後方から確実に敵を落としてほしい」
 対するルーナも、喜怒哀楽に乏しい表情。しかし、状況に対する真面目な態度はしっかりと見て取れる。
「……分かりました」
 取り出したのは、星のマークがついたスナイパーライフル。夜目を通すためのナイトビジョンゴーグルを首にかける。
「援護は、任せてください」
 その言葉に、ルーナは目を伏せて応える。
「あぁ、そう……何発撃ってもいいけど私に当てないでね」
「ええと、その、はい。なるべく、当てないように……気を付けます……」

 往く手を遮る山賊に、ルーナが飛びかかる。
 脚が彼の首に巻き付くようにかかり、蹴り飛ばす容量で捻りを加えて跳ねる。
「がァー―!」
 短い叫びに一瞥をくれて、少し高い視界から周りを見回す。
 だいぶ群れの中央へと迫ることが出来た。
 しかしそれは同時に、全方位から攻撃の危険があることを意味している。
(シーラさんの狙撃があっても、無傷では済まないかなーー)
 視界外から狙撃を続けるシーラへ視線を向ける者はいない。今、ここにいる山賊は、みな跳躍したルーナを見ている。
「――少し、気恥ずかしいな」
 着地を狩るように、ナイフを振りかざす山賊の手元を蹴りつけ、顔面に着地する。
 そこから、転がり落ちるように地面に足をつけ、身を低くかがめた状態で山賊たちの足元を駆け抜ける。
 頬をナイフが撫でる。こん棒が腕を掠る。どれも致命的な一撃は回避しているが、この辺りが潮時だろう。
(……さて)
 大きく息を吸う。覚悟の時間だ。
 最後にもう一度、今度は小さく飛び上がる。
「――心して聞け」
 それは山賊へ向けてか。
 はたまた来たるドラゴンへ向けてか。

 壊音の咆哮が、荒野の墓場に響き渡った。

「――――は」
 玉汗を額から零し、ルーナは呼吸を整える。
 人狼咆哮。激しい音の打撃は、山賊の群れを中央から文字通り破壊した。
 立っている者は、もう誰も――。
「が、がっ……!!」
「――!」
 死角から、生き残った最後の一人が迫る。
 捨て身をかけた全力の一撃の後。気づくことは出来ても、手が回らない。
「く――」

「――いいえ、終わりです」

 銃声。それも、すぐそこから。
 倒れる山賊の影から見えるのは、リボルバーの銃口。
「お疲れさま、でした……ルーナさん」
「……シーラさん」
 労いを伝えるために近寄っていたシーラによる、零距離射撃。
 それを理解したルーナは、少し疲れたような顔で。
「――ありがとう」
 しかし、どこかその口元は緩んだように見えて。
「……はい。こちらこそ、ありがとう……ございました」
 シーラも、頬が緩む。少しだけ、優しくなれた気がした。
 緊張から放たれたのか、シーラがその場にへたれこみ、続いてルーナもしゃがみこむ。

 こうして、山賊の襲撃は幕を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ワイバーン』

POW   :    ワイバーンダイブ
【急降下からの爪の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【毒を帯びた尾による突き刺し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    飛竜の知恵
【自分の眼下にいる】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    ワイバーンブラスト
【急降下】から【咆哮と共に衝撃波】を放ち、【爆風】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「みんな、山賊退治お疲れさま」
 特に怪我もなく終わってなによりと、橘・ワセは告げる。
「夜が明ける前に終わらせてくれたおかげで、少し時間はある。英気を養いながら聞きなさい」
 そう言うと、グリモアベースの景色が変わる。
 荒野の墓場から、また別の広い地形。しかし、今度は眼下に森や、目を凝らせば村も見えることから、標高の高い場所だと思われる。
「ここは例の、ドラゴンの棲む山よ。わざわざ村に来るのを待つ必要はないわ。むやみに危険に晒すだけだもの。だから――こちらから出向いてやるわ」
 言葉に凄みを帯びた様子で、そう言い放つ。
「舞台は夜明けの陽射しが差し込む山頂付近。岩陰ことあれど、木々のような遮蔽物はなし。思う存分やりなさい」
 白む空を背に、ワセは瞳を閉じる。
「長い年月を生きたドラゴンよ、とても強力な力を持つ。けれど……あなたたちが一丸となれば敵わない相手ではないわ。無理せず、隣に立つ友を頼りなさい」
 手ではなく、言葉で背を押す。自分にできるのはこれだけだから、だからこそそれを大事にして。

 ――さぁ、夜が明ける。
シーラ・フリュー
【SPD】判定
ルーナさん(f01373)と連携

お陰様で山賊もなんとかなりましたし、残す所はこれだけですね…
実際に見るのは初めてですが…大きいです…
…怖気づいてはいられないです…私も、お役に立てるよう…頑張りますね…
どうぞ、後ろは…任せてください…

【スナイパー】での遠距離攻撃が主です
陽動もありますが、なるべく【目立たない】ように…岩陰に隠れながら、攻撃しますね

飛んでいると近接の方が、なかなか攻撃し辛そうですね…
ですので、ひたすら翼を狙って、撃ち落としを狙います…
鱗の部分は堅そうですし、翼の飛膜を重点的に狙ってみます…

もし撃ち落とせたら援護は引き続きしますが、後は近接の方にお任せしましょう…!


ルーナ・ユーディコット
【シーラ・フリューと連携(f00863)】

人質、守るもの特になし
相手は本命の討伐対象、ならここで全力だね
「前に出るから、よろしくね」

飛べる相手にただ殴りかかるのでは芸がないね
知恵比べって程じゃないけど、連携ってやつ……もう一回やろう
「信じるよ」

戦闘は基本孤狼【彗星】を発動させて行う

高速の【ダッシュ】と衝撃波を交えつつ敵の気を引く陽動
陽動は避けられても構わない、敵が私を注視してくれればいい
飛ばれたとしても仲間の攻撃が隙を作るのを信じて粘る
「こっちを見ろ、トカゲモドキ」

隙が出来たら【串刺し】を【捨て身の一撃】で叩き込む
命を燃やす猟兵としての【覚悟】がある今、傷や無茶を厭って好機を逃す気はない



 舞い降りたドラゴン――ワイバーンを前に、二人は立ち塞がる。
「前に出るから、よろしくね」
 さっきと同じように。
 返答を待たずして、ルーナ・ユーディコット(Basilico・f01373)が突撃する。
 連携を組んだ実績が、他のどの猟兵よりも早い行動へと繋がる。
「……どうぞ。後ろは……任せてください」
 残されたシーラ・フリュー(天然ポーカーフェイス・f00863)は小さくひとつ頷く。ルーナの突撃をかいくぐったワイバーンの爪の一撃を回避して、砂埃の中、岩陰へと潜り込む。
 役割は山賊戦と同じ。ルーナが前線で戦い、シーラがそのフォローに回る。
(けれど――)
 一筋縄ではいかない。身体が理解している、その殺意を。存在感を。
 震える指を、ほぐすように動かす。
 岩陰で伏せて、狙撃銃の銃口を向ける。砂埃が、彼女の戦闘の幕開けを示す。

「――!!」
 その間を持たせるのも、ルーナの役目。
 羽ばたきからの爪による薙ぎ払いを、ダッシュの勢いのまま飛び越えて回避する。それでも、強力な風圧に着地がおぼつかなくなる。
 その隙を更に攫うように二撃、三撃と追撃がルーナへ迫る。翻り――しかし、追いつかれる。
(流石に、強い――!)
 命を屠る一撃が当たる直前、爪の軌道が逸れる。次いで、狙撃音。
 シーラの狙撃が、ワイバーンの翼の皮膜を打ち抜いたのだ。小さな痛みに、僅かに攻撃が逸れたようだ。
 流血した肩を抑える。間一髪で致命傷を避けるも、その威力は凄まじい。山賊とは違う、語り継がれる竜の力をその身に感じながらも、毅然とした瞳を向ける。
「こっちを見ろ、トカゲモドキ」
 狙撃手を探すワイバーンに向けて、ルーナが言う。
 シーラが狙われてしまえば、陽動自体が意味をなさなくなる。
 無論、約束も。
 覚悟は既に決めている。
「――――ッ!!」
 爪の振り下ろしを、飛び越えるように回避する。
 残像のように、青い炎を遺しながら――。
「――孤狼【彗星】!」
 青き流星が疾る。

 《コメット》――その青い炎は、命が燃えた跡。
 高速移動が生じる衝撃波が、ワイバーンの羽ばたきを一瞬でも妨げた。
「――ここだ!」
 月桂樹の偃月刀を握り、突き刺すように突撃する。
 後続へと続ける為の大きな一撃を放つ好機は、今しかない。
「――――!!」
 ワイバーンも只やられるわけにはいかない。空中まで迫るルーナを、再び地面へと叩きつけんとその翼を、爪を振り上げる。
 青い炎と、翼竜の爪の激突――。

「――そこです」

 小さな流星は果たして、ルーナの顔横をすり抜けて爪を穿つ。次いで二発目が、翼の骨を砕く。
 高速の二連射撃。驚愕し、翻り距離を計ろうとするワイバーン。
「命燃やす孤狼の疾駆、宵闇を切り裂く彗星と知れ」
 しかし、そうはいかない。
 青い炎を纏った偃月刀が、ワイバーンへと迫る。
 はたき落としにかかったその尾を――先端から貫き通す。
「――!――!!」
 風の悲鳴をあげながら、尾に含んだ毒と竜血をまき散らす。

「く――!!」
 片手をバネのようにした、一度翻り着地する。
「無事、ですか……?」
「……うん」
 駆け寄るシーラに、ルーナが頷く。
 強力な一撃に、空中で身もだえるワイバーン。
 しかし、しばらくすれば体勢を立て直し、また鋭い殺意の眼光を向けてくるだろう。
 次は、もっと獰猛に。凶悪に。
 命をかけて、全力を向けてくることだろう。
「信じるよ」
「……はい」
 二人は翼竜へ向き直る。

 ――まだ戦いは、始まったばかり。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五曜・うらら
ついにどらごんと戦える時が来ましたか!
これは楽しみですっ!
倒しちゃえば生贄もいらなくなって楽ですしね!

ううん、飛べるからって空からの攻撃ばかりですか!
私の剣は遠くまで届きますが
どうせならこの手で、近づいてきたところをずばーっと斬りたいですっ!

そうなるとあの急降下の瞬間を狙って…
でも尾の攻撃が厄介…と思いましたが!
私、わかっちゃいました!あの攻撃の弱点っ!

あの爪での攻撃を当てられない限りあの尾っぽは当てられません!
身体の動きに無理がありますっ!
ならば最初の一撃に集中して…避けるっ!

さあ、私の剣たち!
あのどらごんの技を封じちゃってくださいっ!
…あれ、そうするとこっちに降りてこなくなっちゃいます?



 翼竜を正面に据え、にやりと笑う少女の姿があった。五曜・うらら(さいきっく五刀流・f00650)である。
「――ついにどらごんと戦える時が来ましたか!」
 ついに会敵した、ドラゴン。
 嬉々とした表情の直後、一足でワイバーンへ距離を詰める。
 両手に携えた刃が十字を裂くのを、ワイバーンは空中へ飛び立ち逃れる。
「ううん、飛べるからって空からの攻撃ばかりですか!厄介ですね!」
 空から突き刺すように放たれる爪の一撃を飛び退って回避して、体勢を立て直す。
 山賊の攻撃とは比べ物にならない、高威力の一撃は前と違っていなすことはできない。
 考えた末に、うららは一つ息を吸う。呼吸を整え、構える。

「なら――これならどうですっ!」
 真下へと走り出し、その途中で放り投げるようにして放った刀は、空中で新たな力が加わえられる。
 そのまま、穿つ杭が如く迫る刃。ワイバーンは旋回してそれを避けてみせ、攻撃へと転ずる。
 急降下して狙うは――本体。うららを狙って爪が迫る。
 徒手のうららが、脇差を抜く。
「っ!!」

 先ず、うららの腹部から血が滲み出した。
 鋭い斬撃の跡に、しかしうららの表情は動かない。
「――いただきました」
 次いで、ワイバーンの爪がずるりと落ちる。
 鋭い斬撃の跡に、ワイバーンが吠える。

 最後に、脇差の鞘がパキリと割れる。
 首の皮一枚ならぬ、刀の鞘一つの差で、うららの居合が小さくも決定的な勝敗を決める。
 攻め入ることで攻撃を誘発させ、爪への居合切りを当てる。
 そして最後――。
 せめてもの追撃と、尾の先端をうららへと向ける。その先端は、先の相手に酷く損傷し、内包する毒液は殆ど垂れて抜け落ちてしまっていた。
 しかし、それでもまだワイバーンの奥の手たる凶撃として、十分な力を持っていた。
 だが――。

「――その動きは、通りませんよっ!」

 言霊が、攻撃行動を阻む。飛んでいった刀が、ワイバーンの向こうで翻って、再度飛来する。
「さあ、私の剣たち!あのどらごんの技を封じちゃってくださいっ!」
 浮遊する刃は、楔のように光の陣で尾を結ぶ。その効果は、言わずもがなワイバーンの近接攻撃封じ。
 爪を破壊され、尾による突き刺しさえも封じられたワイバーンは、一度飛翔する。
 後退するワイバーンを見て、されど無事ではないうららはそれでも笑う。

「さぁ、まだまだこれからです――っ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

茲乃摘・七曜
心情
人の営みの為に申し訳ありませんが討たれていただきましょう

指針
飛行による高度の優位を奪い仲間を支援する
「いつまでも飛ばれる訳にはいきませんしね

行動
ワイバーンの動きを見定め翼をたたむ、旋回をやめる等急降下の前兆を確認
仲間に牙を向けている場合は『流転』で片翼を拘束し攻撃のチャンスを作る
「さて、人の力も侮れないと見せてみせましょう

防御
自身が狙われた場合はAngels Bitsと自身の三重の【歌唱】で
風【属性攻撃】【範囲攻撃】【マヒ攻撃】(弾ける空気の散弾)を歌い、ワイバーンの攻撃の勢いを削ぎ
【盾受け】【激痛耐性】で耐えて仲間の攻撃のチャンスを作る
「頭を衝撃で揺らせば平衡感覚に影響が出ないでしょうか


在連寺・十未
ドラゴン、竜種、ファンタジーな存在。……こう、もっと感動とか色々あると思ったけど。状況が状況だからか、害獣駆除の延長にあるような、そんな気分だ。……やーれやれ。

「地形の利用」「罠使い」で、岩陰の間に鋼線を張って足止めしつつヤツの背中になんとか乗りたい。……伊達や酔狂じゃなくてね、危ないから。範囲を無差別に滅茶苦茶にするのを使う……ユーベルコード起動。これ、ドラゴンはバラバラになるかな。試せて良かった


※アドリブや絡みなど大歓迎です。


氏神・鹿糸
燃えるような色の、綺麗なドラゴン。素敵な生き物を倒すのは気が引けるわね。
仕方がないわ。ドラゴン狩りよ。

「あなたが向くのは、こちら!」
基本は戦闘の補助。
一応、[オーラ防御]をまとっておくわ。
他の人が確実にドラゴンにダメージを与えられるように、ドラゴンの気を引き付けたり、後方から適宜にユーベルコードを放つわ。

「古い慣習は過ぎるもの。貴方も、時代と共に退く頃合いよ。」
少し、隙が出来たら[全力魔法]を込めて、ユーベルコードで[2回攻撃]。

村の人たちを、生贄進行の名残から解放してあげましょう。

(アドリブ・連携可)


パーム・アンテルシオ
守りに入らず、時にはこちらから。
ふふ、そういう積極性も必要だよね、戦いには。

遮蔽物なし。障害物が無いっていうのは…個人的には、戦いにくいなぁ。
…相手が空にいるとなると、余計に、かな。
こっちに逃げ場は無し、相手は自在に飛び回る。
最初に、この状況をどうにかしないとね。

ユーベルコード、山茶火。
ふふふ、君には見えないだろうね。それが、この技の特徴なんだから。
そして…この戦いでは、きっと一番の長所。見えない腕なんて、予測しようがないでしょ?

動きを止められれば。
引きずり下ろせば。
一人では無理でも、二人で、三人で落とせるなら。
これは私が倒さないといけない戦いじゃない。
隣の友を頼っていいんだから。

【連携歓迎】


華折・黒羽
「黒帝、ありがとう。少し休んでいろ」
空中への攻撃は黒帝には不利だろう
今一度必要になる時までは召喚を解除しておく。

●戦闘
此処でなら、翔べる
烏の羽翼を広げ空中戦を仕掛ける
誘導・囮の役目を担いつつも攻撃の狙いは「ドラゴンの飛膜」
囮:烏の高い視力で仲間内の行動を常に観察、攻撃の当たりやすい所に敵を誘導
攻撃:右手に『屠』、左手に片手半剣を持ち隙があれば飛膜を引き裂いていく
間合いは慎重に判断
剣で間に合わなければ牙や爪での攻撃も視野に

※飛翔中自身の動きのみでは避けられない攻撃がきた場合は黒帝を喚び身体をぶつけ合い弾く事で回避
※飛ぶ事で仲間と連携出来る行動があればそちらを優先

台詞等お任せ
※アドリブ・連携歓迎



 尾を封じられ、爪を断たれたワイバーンは怒りに狂う。
 その瞳は、最初に見た時よりももっと獰猛に、猟兵たちを睨む。
「――こっちよ!」
 氏神・鹿糸(四季の檻・f00815)が告げる。ワイバーンの、爬虫類の瞳がじろりと向く。
 先の三人のおかげで、こちらの準備も完了した。加えて、既にいくらかダメージが通っているのも確認している。
 仕掛けるには、絶好のタイミングだ。
 急降下するように翻り、一瞬のうちに距離を詰めるワイバーンにしかし、物怖じせずに鹿糸は指先をワイバーンへと向けて――。

「――バン」

 天から差し込んだ白光が、その突撃を妨げるように放たれる。
「――――!!」
 間一髪で、飛ぶ向きを変えたワイバーンへ、二度、三度とさらに追加で光の柱が差し迫る。
「いいねーーそこなら」
 前に出たのは、パーム・アンテルシオ(桃色無双・f06758)。
 光の柱に、身動きの制限されたワイバーンを見つめる。
「――引きづり下ろせるよ」
 不意に、翻り続けるワイバーンが動きを止める。
 それは、翼を翻して起こる停止ではなく――何者かの力による、不自然な停止。
「――?――!――――!!」
 一瞬の訝しみの後、ワイバーンを襲ったのは灼ける様な感覚。
 飛ぶ力を瞬間であれ失ったワイバーンは、当然のように墜落する。……見えない炎の腕に抱擁されながら。
「私にできるのは――ここまで」
 地に堕ちたワイバーンに、パームはそっと目を閉じる。
「任せたよ」
「あぁ」
 短い返答とともにその背後から飛び出したのは、華折・黒羽(掬折・f10471)。
 黒い軌線を残すように疾走し――飛びかかる。
 回転するように、両手の剣で翼を裂く。一瞬で、何度も。
 それに合わせるように、鹿糸も天からの光による連撃を放つ。
「――!!」
 孔の空いた翼が、さらに傷めつけられるのをワイバーンもただ見過ごすわけにはいかない。
「…………?」
 ワイバーンの腹部が、空気を溜め込んで膨らむ。
 黒羽の背に、悪寒が走る。
「――黒帝ッ!!」
 言うが早いか、遅いか。
 ――咆哮の衝撃波が、山頂を震わせる。

「……、ぅ」
 爆発のような衝撃波に、パームの身体は至る所を打ち付けていた。
 それでも無事でいられたのは、黒いライオンがその身を護っていたからか。
「ぁー―」
 力なく意識を失うライオンの頭を撫でて、よろよろと立ち上がる。
「……無事、のようね」
「鹿糸――!」
 岩陰から現れた鹿糸に、パームが駆け寄る。
 オーラ防御が働いたのか、岩陰に隠れることができたのも大きいのだろう。大した怪我はない様子だった。
「……黒羽は」
 黒いライオンの主の名が、口から漏れる。
「――あそこよ」
 鹿糸の視線を辿る。

「――――」
 夜明けの日差しが、赤い翼と漆黒の羽根を讃えるように映す。
 烏の羽根を広げ、飛び立ったワイバーンへと追撃をかける黒羽の姿が、そこにはあった。
 額は割れ、血が垂れる。
 漆黒の衣服もボロとしながら、牙や爪さえも駆使して追撃する。
 それに対抗するようにワイバーンも、切り取られていないもう片方の爪を向ける。
 もしこれで、尾の一撃まで使われていれば黒羽もここまで拮抗できなかっただろう。
 しかし、もうすぐ尾に掛けられた封印も解ける頃合いである。
「く――っ!」
 あと一手、足りない――。

「お待たせしました。――封印術式『流転』」

 銃声。それに連なるように、空中に幾重もの魔法陣が形成される。
 刻印された魔術の回路が、やがて一つの封印術式を為す。
 茲乃摘・七曜(魔術人形の騙り部・f00724)は、鍔の広い帽子に表情を隠しながら――不敵に笑う。
「――!――――!!」
 片翼を、術式に閉じ込められた翼竜は再び、地に堕ちる――。
 それと同じくして、黒羽もまた役目を終えて地上へと放り出される。
 それを、七曜が受け止める。
 黒と、黒の邂逅。
「ご苦労様でした。あなたのおかげで、好機は訪れました」
 慈母のように優しく、彼の闘いの終わりを告げる。
 そして、翼竜へと向き直る。
「さて――人の営みの為に、申し訳ありませんが討たれていただきましょう」

 墜落したワイバーンは、術式を剥がそうと必死にもがく。
 割れた爪で、ようやく動かせるようになった尾で。
 しかし、どれも術式を破るに至らない。
 じろりと、七曜たちのいる方へと視線を向ける。
 距離はあるものの、咆哮は届く。
 一矢報いるため、今一度咆哮を放とうとした――そのときだった。

「――――?」
 喉から、溜め込んだ空気が抜けていく。
「全く……お前のソレは面倒だな」
 靴底が、ワイバーンの鱗を踏む。それは、その背中に誰かがいることを表している。
 死角により、視線を向けることができないワイバーンはしかし、強烈な殺意だけど滲ませる。
 しかし、声の主はそれに臆した様子はない。
「……ま、滅茶苦茶なのは僕もお前も変わらないな」
 同情に近い声色に、ワイバーンは咆哮をあげようとする。
 しかし――やはり喉から空気が抜ける。
 それもそのはず。ワイバーンの喉は、既に裂かれているからだ。
「害獣駆除みたいな気分だけど、まぁ――試せて良かったよ」
 在連寺・十未(アパレシオン・f01512)は、竜の最期にそう告げた。

 かくして、誰も命を落とすことのない――今日が訪れる。
 山頂には、竜骨の墓標だけが遺された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月24日


挿絵イラスト