隙間を埋めるが雨ならば
●ステルスレイニーデイ
晴れの夜、嵐の夜にそれが聞こえてきた事はない。
ただ、荒れてもいない静かな雨降りの、静まり返った深夜の隙間。
ぽつり、ぽつりと啜るような弱い音が、漏れ聞こえる気がするのだ。
寝て起きた騒がしい明るい時間帯、世間話のついでに近辺住人達は日々、噂する。
夜な夜な聞こえる不吉の小言。
声だという事はわかる、なのに何を言っているかまでは聞き取れない。
どうやら影朧救済機関「帝都桜學府」の索敵網から漏れて溢れた影朧が、夜の雨を伴に、嘆くようだ。巣食うとあれは、思い詰めた魂の叫びを祓われなければ見境がない。
事件の類だ、そろそろ帝都桜學府に駆け込まなければならないだろう。
そうだとも、あれらには正常な判断など、できないのだから。
……あゝ、今日もまた、誰かの声が――耳に憑く。
興味に負けて夜の帳に触れて叫びが短く響いて、途絶える。
……あゝこれで何人目だろう。
手を引かれ、――誰かがまた、姿を消した。
●雨に紛れて
「声を上げるのは、何のため?」
ソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)が狐火を手のひらに灯して、問う。
蒼い炎を越しに、朧な影を、覗き見るように。
「悲しい死に方をしたから?それとも、後悔かな」
どちらでもないかも知れないし、どちらもかもしれない。
寂しいから、聞いてほしいから、その場に同類を見たから。理由は様々あるだろう。
「サクラミラージュの、大抵の存在が寝静まる時間に、影朧が溢れる場所があるらしくてね。つまりほら、なんていったっけ……」
夜な夜な戦い慰めただ駆ける帝都桜學府が、時折隙間を見失い、時折対処を後回しに放棄する場所がある。
"逢魔が辻"。誰かが呟けば、多分それだね、とソウジは笑って返事を返した。
「何の変哲もない街中の裏通り、人通りは無いよ。その通り沿いの人たちは、朝早くの勤務の人ばかりらしくてね。寝静まってて、静かなものだよ」
何の因果か寄り集まった影朧が、空間を綻ばせて、真っ黒闇の帳を降ろしおかしな空間を作り出している。
寝静まった住人たちが聞くのは、おかしな空間から漏れ出る声だ。
「夜の帳、というのは比喩表現じゃないよ?入ってみると裏通りと全く同じ見た目が広がる街々なのに、幻朧桜の花びらだけが灯りの不自然な空間だからね」
建物内部に侵入しても、元の姿を全く同じに写しているのに誰も居ない。
下宿の宿やカフェ、それ以外の店の類も細々あるにはあるが提灯なども消えており、幽霊通りと表現するにふさわしい。
「"影朧が原因で生まれた隙間の空間"であることは忘れないでね、その場での破壊活動はちょっと罪悪感が君たちを襲うだけだけどぉ」
逢魔が辻として存在する空間だ、誰にも迷惑は、掛からないだろう。心配は、ない。
「……ああ、そうだ。空間の中も、現実の裏通りもどちらも雨が振っているようだよ」
それは決して偽物ではない。
通常の天候、なるべくして降る、雨だ。
「ただ……逢魔が辻として現れた、内部の雨は、どういう意味の雨だろうね」
現れた空間の中で降る雨は、現実を写す意味など無い。
彼らが嘆く、涙に類するものと考えたら、頷けるものもあるだろうが……。
「集団で現れる存在は、現れた時点で影朧としては大分薄いね……転生を、促す余裕はないかなぁ。彼らに休みを、与えるべきなのもきっと僕らの仕事のうちだよ」
雨は雨だから、身体が濡れてしまうかも知れないけれど。
「造られたのに消された誰か、その誰かを隙間から覗いては嘆いていた誰か……大切なものを守りきれなかった誰か……」
大きく分けて三種の悲しみは、空間に広がる。
だからこそ、その空間はあり続けてはいけない。
「誰よりも深い悲しみを、持っているのは羅刹のようだね。その子に癒やしや転生を与えられるかは、君たち次第じゃないかなぁ」
余地はあるだろう。ただ、雨が降る空間の主は、羅刹。
鬼として振る舞い、話を聞かないこともあるだろう。
「君たちがどちらを選んだとしてもね、影朧の声を聞く人は必要なのさ」
灯した狐火を、ソウジはふぅ、と吹いてかき消す。
「それができる、強い人でなければならないからね」
その場に残されるのは、其処に灯った名残として残る、熱さだけだ。
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
雨音に導かれ集まってしまった影朧は、空間に踏み込んだ存在を襲うのです。
しとしと、あめがふるならば。
其処には意味は、あるのでしょう。
空間内に突入した後から、シナリオは始まりますので。
探す必要は特になく、集団は猟兵を敵と見定めます。
ボスもまた、敵とみなして来ますので、探す必要はやはりありません。
転生の余地があるかどうかは、OP内で記載していると思いますので、多くは言いませんが、そうですね。ボスに限り、猟兵の行動次第かも知れません。
雨の中でも灯る桜の花びらが、この場所の灯り。
決して暗い、見えづらいということはなく、ただ、幻想的な風景が広がるばかり。
雨降りで、花びらが舞う、摩訶不思議の戦場の、異空間。
足場が悪くなることはないので、特に気にしなくても、構いません。
第1章 集団戦
『旧帝都軍突撃隊・旭日組隊員』
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POW : 怪奇「豹人間」の力
【怪奇「豹人間」の力】に覚醒して【豹の如き外見と俊敏性を持った姿】に変身し、戦闘能力が爆発的に増大する。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD : 怪奇「猛毒人間」三重奏
【怪奇「ヘドロ人間」の力】【怪奇「疫病人間」の力】【怪奇「硫酸人間」の力】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ : 怪奇「砂塵人間」の力
対象の攻撃を軽減する【砂状の肉体】に変身しつつ、【猛烈な砂嵐を伴う衝撃波】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:i-mixs
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
土も在る、泥も在る。風も多少あった。
舗装された道の上、雨に打たれ嘆く複数の人影は君たちを見た。
「我らが戦うべきは、何のためか」
「命をかけて帝都軍のために戦う事が理由だ!」
頷き合い、存在の意味を肯定し合う、白い旧帝都軍の部隊。
見た目だけならば、彼らは一様に普通の軍人にしか見えない。
サーベルを抜く。そう、飾りではない。
「怪奇の力を持ってして、制圧を行うが、我らの役目だ!」
中性的な外見を怪奇に変質させて、戦う特殊な突撃部隊。
彼らが其の力を使って、軍のために地を走る日は――来なかった。
「我らの力を!此処に示そう!」
「我らは!命の限りに、戦える特攻部隊であったと!!」
雨が平等に降り注ぐ。
歴史の影に秘密裏に消された彼らは戦う為の剣であったと。
隊員たちにとって、――目の前の存在を脅威と、障害とするのは誰でもよかった。
朧な影を、ただ、――敵とみなすものであれば。
御剣・刀也
体を変異させるか。まるで特撮だな。
野生の獣と人間は武器を持ってようやく対等
が、相手が悪かったな。武器の扱いに精通した奴と素人じゃ理屈が違う
お前らに見せてやるよ。脈々と受け継がれた武術の力をな
豹の如き外見と俊敏性を持った姿に変わっても、焦らず第六感、見切り、残像で相手の攻撃を避け、カウンターで斬り捨てる。
相手の動きが速くても、慌てず、焦らず、明鏡止水の心で落ち着いて対処する
「速く動ければそれだけ相手の隙をつけると思ったか?素人ならそうかもしれんが、俺は武術を習った人間だ。お前らの思うようにはならんよ」
●木登りしない素人
ぱしゃぱしゃと、水たまりを踏んで走る旧帝都軍突撃隊は、怪奇の力を開放して勇む。降り方の甘い雨粒の隙間、彼らの体は爛々と光る紅の双眸をそのままにひとえに怪奇な現象を顕に姿を変えていく。
中性的な顔であったのはもう、見る影もない。
「進め!そして心せよ、我らの双眸は既に敵対者を殺すと定めたぞ!」
旧軍服から覗く人の部位は、髪と同質の淡黄褐色に斑模様。
敵対するのは、猫……いいや、もっと危険で獰猛だ。駆ける足も加速し、一息の踏み込みで最速の特攻を可能とし、弾丸のように突っ込んでくる。
レイピアの刺突で、心の臓を一撃で貫く事を目標に掲げて。何本もそれらが振るわれるのならば、標的は逃げ場もなく群れに刺殺されるだろう。
「……体を変異させるか。まるで特撮だな」
しかし、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は冷静だった。
目に見えて姿が変わる、なんて現象は夢幻の世界の話。
それこそ、何か仕込みがあるものにも思えたのだ。摩訶不思議な事は数多くあるだろうが、そうも容易く獣の特徴を持ってパワーアップするなど……。
「なんてな、野生の獣と人間は武器を持ってようやく対等、って言葉もあるんだ」
獣の俊敏さと、獰猛な見た目で臆させようという気概は買おうと思った刀也。
携えた日本刀の煌めきは、直線的過ぎるレイピアを弾き、獅子が吼えるが如きの獰猛さで打ち払う。迂闊に一歩下がれば別の一つの細剣の刺突。
右や左。相手をする獣の数は速さに誤魔化され増えていくのが分かった。
軍隊として、包囲の陣形でも練習を重ねた事があるのだろう。
――明確な攻撃者は数少なく選出され、残りは陽動。
――速さで撹乱して、隙を見つけた瞬間串刺し、といったところか。
思考しながら残像を残す足さばきで細剣を避け、バランスを崩した敵を筆頭に周囲の敵ごと、蹴り飛ばす。
「……相手が悪かったなぁ。武器の扱いこそ、そこそこのようだが、戦術はまるで素人。いや、それ以下か?」
剣術を受け継ぐ者として、単調すぎるとぽつり、と感想を述べる。術技で殺そうという者がとる行動というより、集団でのみ行動に意味を成すパターンだ。単体になれば、全ての意味を失ってただ殺されるだけの格好の的となり得るだろう。
「我らは軍での厳しい訓練を積み、皆伝までたどり着いている!」
「そうか。旧政府軍の強化訓練とやらは、お遊びなんだな」
――この力量で、変異の力を使うのも命がけ。
――ははあ、消された理由も悟れそうなもんだ。
「速く動ければそれだけ相手の隙をつけると思ったか?」
「我らの統率は完璧で……」
「それは違う。変異したその力を、存分に振るえてないのは明確だぜ?俺なら……」
話す刀也の背後から、力いっぱいの加速で単調な、単体のレイピアが迫る。
地を踏む音がある、ひとつ、ふたつと近づく音も。切羽詰まった息遣いも。
「レイピアだけじゃなく鋭利な爪で狙うがな……まず第一に」
――慌てず、焦らず。
――明鏡止水の心得だ。落ち着いて、見極め対処する。
「敵に作戦を気付かれた瞬間に、死を覚悟する」
身を反らすように軽く避け、豹は獅子たる刀に利き手を切り落とされる。
細剣を持つ手を斬り飛ばし、僅かに血濡れた刀身さえも、鋭く輝き美しい。
「剣技と速さ以外、もっと生かさなければ実戦投入も夢のまた夢だろ?利き手を失ったら次はどうするっていうんだ。命乞いか?」
「ぐ、軍人に在るまじき行動に決まっている!」
手数を失えば死。明確な考え方では在るが。
「俺は武術を習った人間だが、そう簡単に死は選ばない。せめて、ほらもっと――足掻けよ」
「ひえ……っ!?」
刀也の青い双眸に、怯え生唾を飲む豹人間が、尻尾を巻いて逃げ出そうとするのにそう時間は掛からない。だが、刀也の手にした日本刀が、獅子が、逃げる獣の群れを両断し、――消し飛ばし喰らい尽くすから。
大成功
🔵🔵🔵
花盛・乙女
護国を果たそうとした気概を見た。
その刃、振るわれることがなかったのが貴様たちの不幸だろう。
喜べ。この羅刹女が、最大の脅威となって貴様らを存分に働かせてやるぞ。
刀は構えず無手にて相対する。
皆瞳に宿るは国の為、命を投げ捨てんとする煌きだ。
死を厭わぬ覚悟と言うのは、私は好ましく思う。
その獣人の姿で、存分に駆けろ。思う様吼えろ。
「怪力」「グラップル」の素手による破壊を試みる。
さぁ、貴様らの眼前にある敵は強大だ。なにしろ鬼だ。
余力など残すな、枯れ果ててなおかかってこい。
私に刀を抜かせる気概を見せられたら…瞬歩の居合【雨燕】にて、首を落とそう。
安らかに逝けるよう、悔いを残さぬよう、死力を尽くすがいい。
●悔い無く吼えろ
旧帝都軍突撃隊が名を挙げて、戦い生き様を見せつけるにふさわしい戦場。
降り注ぐ雨に濡れ、整えられていた意味を成さない軍服。
見据える双眸には、相応の決意が映っている。
「護国を果たそうとした気概を見た」
決意の評価は出来るが、決して褒められる戦術を組めて居ないのが惜しい部分だと花盛・乙女(羅刹女・f00399)は思う。
「その刃、在るべき場所で振るわれることがなかったのが貴様たちの不幸だろう」
本来ならば、いつか何処かの戦争の秘密兵器として名誉在る死を迎えていた。
しかし、今は戦場を求めた彷徨う者となっている。
「力は振るうもの。これらの雨のように、摂理に後押しされて、自然に」
苛つくように美貌を崩し、淡黄褐色に斑模様の変貌を起こしていく。
今も尚、儚いもの死した者。
もう二度と普通の一般兵でいることはない。
「この手は、体は変異のチカラで……自然すらも味方につけよう!」
地を蹴るブーツからは靴を突き破る爪が飛び出した。
がご、と瞬発力を最大限に活かして、豹の顔で牙を向く。
「うぉおお!!」
雄叫びまで獣化してはいないが、気合の入った声が上がる。
「喜べ。この羅刹女が、最大の脅威となって貴様らを存分に働かせてやるぞ」
ニィ、と乙女の口角が自然とあがる。一体今、どのような表情かなど……向かってくる豹の苛つく顔を見ればわかるものだ。
どのような生い立ち、闘い方であったとして。否定するに能わず。
「抜くか?いいぞ、だが――私は抜かない」
乙女は得意とする剣術、刀を構えず立ちはだかる。
細剣を振り抜き、乙女の細首を見据えて貫かんとする様すら、動じない。
「我らの力を侮っているのか!」
「抜け、二つ名を名乗る女であろうと容赦せず殺すぞ!」
「――ああ。皆瞳に宿る色は国の為、命を投げ捨てんとする煌めきだ」
手刀にて、無刀。修行により得た経験は、その手にも宿る。
旧帝都軍の豹に、返す言葉は感想だ。
不安定な影となっても、失われない愛国心とは、なによりだ。
「女。軍人はそれも気にするのか。難儀だな」
「――死を厭わぬ覚悟というのは、私は好ましく思う」
首を狙った細い剣を、手で鷲掴み威力を機動力を一切に殺す。
「は、離せ!馬鹿力め!」
「いいとも。斬り捨てられない非力を思う様にただ、吼えろ」
ばきり。
容易く砕き折って見せて乙女は砕いた剣の破片を無造作に地へと落とすのだ。
「さぁ、貴様らの眼前にある敵をよく見るがいい。誇れ、挑め。何しろ鬼だ」
二つ名などではない、正真正銘に羅刹。
鬼だ。向かい合う赤い目が、豹の頭をひとつふたつと見据えて動く。
「飾りでこの外見をしているわけではない、鬼が何だ!進め!!」
折れた細剣を投げ捨てて、鋭い爪で今度こそ、と体を切り裂かんと俊敏に、機敏に動き回る。一人ならば穴がある。しかしこの豹は群れを成す。
じゃりと踏む音が、爪が雨降る夜を賑やかに染めていく。
どこからどの個体が一番槍と来るか予想は……。
「余力など残すな、枯れ果ててなお掛かってこい」
「鬼であろうと、女は女。同時に掛かれ!標的を絞らせるな!」
息切れを零し始めたのは、走り回る足ばかりの負担ではないだろう。
もとより短い時間を、この"戦争"に全てを持って挑んでいる。
「この生命!最期まで、国のために!!」
豹が前に立つ者の背を踏み、強力な足で思い切り上から爪を降らせるも間合いに入った瞬間手刀により叩き落される。
「馬鹿め!一人の特攻で、我らの爪は鬼すら狩るぞ!今だ、やれ!!」
レイピアを持った第二隊が、背を踏んで、突き刺さんと防御を鑑みない攻撃に移行した。実行しろ、戦果を上げろ――殺れ。
――早くても、威力が在っても。儚さで上回っても。
乙女は呼吸を止めて。獣たちが間合いに入るその刹那。
瞬歩の居合に、ああ、届く。
ぼとり。
ぐしゃり――ごろり。
幾つも転がるそれらは的確に落ちる。
それは変異が解けれること無く地に落ちた豹頭の群れだ。
数秒遅れてぐしゃりと首なしの胴が崩れて煙と消える。
「痛みはないだろ?」
抜いた剣の閃きが、誰か一人でも見て取れたことか。
いや、誰でもいい。見ていたものでもいいだろう。
――強敵の眼を生き様を視て、"生きた"と過去で吼えろ。
大成功
🔵🔵🔵
樹神・桜雪
…特殊な力、使われなかった刃…か。
ボクは少し戦えるだけの人形だけど、お相手はするよ。
全力で、かかってきなよ。異形の力を使う兵隊さんたち。
さて、どうしよう。ちょっと数多いね。
可能なら先制攻撃で思いきり凪ぎ払おう。勢いつけて2回攻撃しちゃうよ。
相手の攻撃に対しては第六感で回避を試みる。厳しそうなら捨て身の一撃でUCを打ち込みに行くね。
雨…やまないね。雨、いいよね。全部流してくれるから。
ね。あなた達の嘆きも流して貰えると良いね。
歴史の裏に消されたのは、悲しくて寂しいもの。
●やまない雨
「……特殊な力、使われなかった刃…………か」
樹神・桜雪(己を探すモノ・f01328)は自分の体をふと眺める。
「ボクは少し戦えるだけの人形だけど、お相手するよ」
この体は、ヒトではないから多量に抜け落ちた過去がある。
薄く遠い、燃えた向こう側の記憶。
目の前の彼らは過去が未来を失って声を荒げる者たちだ。
同じようで違う。桜雪は業火の向こうに無くしただけ。
彼らは、栄光を謳う未来を理不尽に喪っただけ。
「何からする?いいよ、全力で掛かってきなよ」
彼らは軍事を行いたかった影だろうと、挑発するように、誘う。
「おいでおいで、異形の力を使う兵隊さんたち?」
返事はない。しかし、雨に打たれながら、兵隊たちは体をさらり溶ける砂へと変じさせてサラサラ溢れる。挨拶代わりに体を変異させた砂塵を、周囲と束ねて衝撃波を応用し、粒を強固に巻き上げる風を起こす。
差し向けるのは、一斉で最大の回転数を誇った時。
砂塵人間の怪奇状態で、彼らは命を惜しまない。
一部は砂塵を操るためのギリギリ人間をやめていないが、桜雪を囲んでいた半数以上が全て砂となり渦巻き暴れる嵐と化している。
「それ殆どが、君たち?さて、どうしようかな。ちょっと数、多いね」
軍人を目の前に、その人形は関心を持たないような声色で話す。
攻撃方法の思考に敵の数を数えようかとも考えたが、すぐにやめた。
――数えなくていいね。単純で、わかりやすいじゃないか。
ざりりと雨に負けずに嵐の威力を強める砂の衝撃波が、向けられるのも時間の問題だ。文字通り、――その変異の形状には命が、掛かっている。
「ねえ命をそうして溜めるだけ?――ならこちらからいくよ?」
桜雪は踊るように袖を振り、サァアアと溶けて浮かぶ武器だった氷の花びらを操るように、愛でるように囁く。
「おいで、おいで。冷たきもの――ほら、凍てつかせるにふさわしいものだよ」
ふわり、と氷の花びらが砂嵐に紛れるように飛んでいく。
パキパキパキと、音を立てて冷気に当てられ凍りついた砂粒が衝撃波から脱落し、質量を削った。
「吹き飛ばすつもりか!否、これは命の重さを持った砂塵!」
「単純なそれでは、心までも凍てつくものではない!」
多少の脱落にもめげず、人間として残る兵隊が叫ぶ。
あと少し、最大の威力を出すための回転は、あともう少し。
「命を削れ、この一撃で屠る暴風となれ!」
声を発した軍人の近場の仲間が砂に消える。
発する者は、桜雪が目の前にするただ一人だけとなった。
「ふうん?そうなんだ。なら……遠慮はいらないね」
「遠慮など、軍人に向けるものではない!これは――戦争である!」
仲間の命を束ね、それを操る彼の命も削る砂塵の衝撃波が開放され、放たれる。
渦巻く暴風は先程よりも威力を増し、少し大きい。
「大人数が単体を滅ぼす、戦争かぁ……小さいね」
――キミたちには、意味のあることなんだろうけれど。
「何……」
「命がけの行動で、助けるべき軍隊は此処には居ないんだよ」
体に雨が、当たっている。
冷気の相性がいい、雨が降り続き、彼らもまた浴びている。
「戦う理由を覆す気はないけれど、雨は……いいよね、全部流してくれるから」
袖を返すように奮って、武器に戻していない花びらに合図を送る。
灯るだけの桜に混ざる氷おの花びらはずっと砂塵に紛れて飛ばされていた。
冷気を放たず、ただ飛ばされる桜として。
それらが一斉に冷気を、砂と変じた人間たちの心の底から物理的に凍結させていく。唯一人の姿を保っていた目の前の男の体が、体の中から凍えるように嗚咽を僅かに零して。じわじわと内側から凍っていく。
砂塵の化した一部を介して内側から、侵略されるように体が、心が内側から凍る。
「ね。あなた達の嘆きも流して貰えるといいよね」
冷気に当てられて、体が固まっていく影の顔が僅かに歪んだ。
「歴史の裏に消された事実もまた、悲しくて寂しいもの」
ぐっ、と手のひらを握り込み無数の氷を元の姿へ戻すと同時に凍った者は砕け散る。人形がどんな表情でそれらを見送る言葉を告げたのか、見届けた男が眼前に焼き付ける前に砕かれた。足元に散らばるのは、砕けた砂が殆どだ。
止まない雨に晒され流されて。貯まる水に紛れて。
知らずに運ばれて、時間の闇に何処へなりとも――消えてしまうだろう。
大成功
🔵🔵🔵
真宮・響
【真宮家】で参加。
雨は、涙雨ともいうね。もしかして、目の前にいる奴らの涙かも。軍の為に体を改造されたあげく、その力を使う機会を与えられなかった、悔しくて、無念だろう。でもアンタたちの居場所は、戦地は存在しないんだ。
【目立たない】【忍び足】で敵の集団の背後を取る。背後を取ってから【残像】【見切り】【オーラ防御】で敵の攻撃を凌ぎ、【ランスチャージ】【二回攻撃】【串刺し】【範囲攻撃】で敵の強化ごと飛竜閃を使って貫く。さあ、もう眠りな!!戦争はもう終わってるんだ!!
真宮・奏
【真宮家】で参加。
人の悪意で怪奇な体に改造され、その身体を活かす機会も与えられず消された・・・悲しみは良く分ります。戦うことを許されず、永遠に奪われた無念。私も戦いに身を置くものですから。出来る事は、その悲しみを終わらせてあげることだけです。
トリニティエンハンスで防御力を高め、【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】【盾受け】【拠点防御】で防御を固め、攻撃を凌ぎきります。攻撃の機会がきたら、【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】【範囲攻撃】で攻撃します。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
この雨は目の前にいる方達の悲しみの雨ですかね。さぞや無念かと思います。体を怪奇にされて、その身体で何かを成す事なく消されたのは。確かに軍の為に敵を倒す事、それしか残ってないんでしょうね。でも気の毒ですが、この世界に貴方達の居場所はないんです。
まず【オーラ防御】を展開してから、【高速詠唱】【全力魔法】【二回攻撃】で月光の狩人を発動、鷲の攻撃に併せて【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】で攻撃します。貴方達の戦争はもう終わりです。おやすみください。
●静かに眠れ
手に当たる、雨。
降り注ぐ、雨。雨。雨。
「この雨は目の前にいる方達の悲しみの雨ですかね」
雨音のように静かに、手に落ちた雫を握りながら神城・瞬(清光の月・f06558)がそう言えば、真宮・響(赫灼の炎・f00434)は頷き肯定を示す。
「雨は、涙雨ともいうね。もしかしたら、本当に、目の前にいる奴らの涙かも」
止めどなく降るそれらは、激情と共に強くなることはなくただずっと身を濡らすそれを落とし続ける。
朧気な旧帝都軍の隊員たちの顔色を雨で彩るものは、無念と怒りだろう。
「人の悪意で怪奇な体に改造され、その身体を活かす機会も与えられず消された……悲しみは良く分ります」
真宮・奏(絢爛の星・f03210)は人の温度を忘れた影に、寄り添うような声色で語った。そう、これらは空間を埋め尽くす、悲しみだ。
「悪意での改造ではない……自ら志願したことである」
「我らは皆、国のために惜しむ命など、持っていないのだから!」
ジュウウウ、と溶かすような音がする。ごぽりごぽりと重い泡が弾ける音も。
彼らの体から、異臭変異の三重奏がじわりと、沸き立ち奏でられる。
手に体に、触れる事を拒みたくなる色が顕になって、変異が促す力が、体に周囲に干渉して音を立てるのだ。
武器はもはや触れば溶けて崩れて無くなってしまう、彼らが触れれば害となる殺人兵器。故に、特攻部隊として走る彼らに迷いはない。
「それでも、さぞや無念かと思います。体を怪奇にされて、その身体で何かを成す事なく消されたのは」
――紛れもなく、事実なのでしょう?
接近に伴い、匂いを毒素を肌に感じる前に、瞬はオーラを身に纏った。
「戦うことを許されず、永遠に奪われた無念……計り知れません」
――私も戦いに身を置くものですから。
炎と氷と風の魔力で自身を包み、奏は徹底防衛に努めて、瞬よりわずかに前へ出た。魔力によって阻まれて、蝕まれる前に……せめて、彼らに安らかな眠りを。
奏にヘドロ化した腕が触れる。いや、その腕で波打っていた泡の一部が、か。
ばちん、と重い泡が弾けて異臭が周囲に弾けて、付着した場所が腐食し溶けていく。三重の魔力で編まれたオーラがなければ、突き破り溶かされ、腕は愚か、彼らの手は奏へ届いたかも知れない。
奏へと飛んだ硫酸の飛沫は、炎が瞬時に燃やし尽くして拒絶した。
物体であるなら焼き尽くせば残らない。
「……兄さん!いまのうちに」
頷き返した瞬が、高速で詠唱を始め次なる毒素の体が迫る前に召喚を成功させる。
「さぁ、獲物はそこですよ!容赦は不要ですから、……お願いします!」
ばさああと翼を広げ羽撃く月光の狩人たる、胸に数字を刻まれた数多くの狩猟鷹。
此度の彼らの標的は、周囲を埋め尽くす変異の異形たちだ、猛禽類はその眼に捉えた。――獲物ダ、狩リヲ始メヨウ。
「これなら敵の数も攻撃手段も関係ありません。そう、変異しても頭が在る事に変わりませんし……」
月光の狩人たちが、声を上げて空から攻撃するぞと高い声で啼く。
賢い鳥が、そうするのは、思考する生物に焦りを与え、思い描く場所に誘導する為。
集団あわせて67。
それらが標的と定めて、敵の頭を鋭い鉤爪で薙ぐため一斉に飛来する。
「鳥の餌になる我らではない!」
「むしろ、我らが鳥を餌食にしてやろう!」
「軍の為に敵を倒す事、それしか残ってないんでしょうねぇ……でも気の毒ですが、この世界に貴方達の居場所はないんです」
怪異の毒物である今の彼らに、その言葉はどこまで真面目に受け取られたことか。
まるで水晶のような杖を握った瞬と、剣を握る奏が背を預け合ってお互いへの接近を阻む。氷の衝撃波で足元を狙い、攻撃の手が届かないようにすれば、敵側から軽く舌打ちが届く。
気をそらした敵を、瞬の召喚した鷹が命の終わりと影を刈り取り終わらせる。
「出来る事は、その悲しみを終わらせてあげることだけです」
「貴方達の戦争はもう終わりです。おやすみください」
――そうですよね、母さん。
いつの間にか、人影がひとつ消えていることに旧帝国軍は鳥と対処に負われて気が付けない。毒物特攻により殺し尽くす戦争。悲しいだけの命の利用。
「……アンタたちの居場所は、戦地は存在しないんだ」
目立たず忍び寄り、集団の背後を取った響が、ブレイズランスを構えていた。
気持ちの色を灯し、赤熱として煌々と熱量を発揮し、雨粒が当たるたび音を立てて蒸発する。
「うちの子に、触れられるものなら触ってみな!それより先にアタシがアンタたちを終わらせるよ!」
母たる志を胸に、響がランスを手に、勇猛果敢にランスチャージの構えで走る。
その一撃は、神経を研ぎ澄ませ、心の負担を減らし考える余地を極力減らす事で、その足を早める。
――うちの子たちを、信じているから大丈夫。
「確実に当ててみせるさ、撃ち漏らしはないよ!さぁもう眠りな!!」
貫くは渾身の一撃、飛竜閃の機動は幾つもの命を容易く貫き砕いた。
瞬の鷹は、母の一撃による撃破を狙っていた。
奏の動きは、そんな母の移動を敵から隠しきり、好機の一撃に繋いで見せのだ。
「よく見なよ、この偽りの街を!戦争はも終わってるんだ!」
静寂の街。戦いの色はどこにもない。
「……終わって、いた……?」
「我らの命は、ただ、……」
変異した体の代償求められたのは、"我らはどこにも必要なかった"という呪いに似た呪縛の毒素。蝕まれきった軍隊は、不安定な心を囚われて、代償を払いきれなく成り自己崩壊していった。
――彼らには、払い続ける寿命すら、風前の灯火だったのだ――――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
出雲・八雲
ジャスパー(f20695)と
別に雨は嫌いじゃねェが、この雨はいけ好かねェなァ。
なァに、個人的な意見だ。
嘆くのは勝手かもしれねェが、限度っつーのがあるだろうよ。
そろそろ嘆けき疲れておネンネの時間だ。
おい、 前衛はお前さんに任せたからな。…頼りにしてるぜ?(にぃ、と笑って)
【地獄の獄卒】で動けない自身を守りつつジャスパーの援護
存分に暴れても構わねェよなァ?
身体が砂になってようが何だろうが敵なら倒す、それだけだ。
ジャスパー・ドゥルジー
八雲/f21561
「狐」が言うと妙に説得力あるなァ?
……それにしても、雨は苦手なんだよ
普段より「燃えづらく」なる
言いながら己の腕に歯を突き立て【ジャバウォックの詩】
全身を炎で包む
燃えづらきゃ出力上げるだけさ
相手にとって不足はねェ、突き進むぜ
おゥ、任されたぜ
しーっかり守ってやっからよ
奴らが強化の術で疾く動けるなら
敢えて避けず矢面に立ってやる
殺してみろよ、死なねェから
挑発交えおびき寄せた豹どもを燃える四肢で薙ぎ払う
距離を取ってくるなら炎のブレスをお見舞いさ
八雲が狙われるようなら
UCが解除されねえように【かばう】
●その双眸は愚直に燃えて
桜の花びらが幻想的に灯るその場所で、狐の耳に当たる雨粒。
煩わしいといわんばかりに、出雲・八雲(白狐・f21561)は僅かに獣の耳を倒す。
「……別に雨は嫌いじゃねェが、この雨はいけ好かねェなァ」
この雨は、ただの空より降り注ぐものではない、気がしたのだ。
なにかの思惑がこの雨を降らせている。
「なァに、個人的な意見だ」
面白おかしい、と言わんばかりに八雲を見ている男が直ぐ側にいる。
その男、ジャスパー・ドゥルジー(Ephemera・f20695)はニィと陽気に笑った。
「"狐"が言うと妙に説得力あるなァ?」
言の葉に乗せる意味も然り、しかし、ソレを発する存在が言うと意味も変わることがある。狐と雨は妙に縁が在ることが、多いから。
だから逢魔が刻の雨がやまないのか、といえば全く異なることではあるのだが。
「……それにしても、雨は苦手なんだよ」
「あァ?……その心は」
「普段より"燃えづらく"なる」
言いながらジャスパーが流れるように、自身の腕に歯を突き立てる。迷いなく立てられた歯が皮膚を幾分と突き破り、鮮明な色がじわりと溢れ――ぽたぽたと。
二人の敵がほのぼの話をしている、と旧帝国軍が観察していた所で流れる空気の色が、変わっていく。
目の前の男は一体何をしているのか。
分からない、自傷以外のなにものでもないのだ。
「痛そう?――イカれてる?そんな目だな」
齎した体への痛みに応え、ジャスパーの体が量に応じた黒い炎に包まれる。
雨の中でも轟々と、燃えるものならば、それは炎。
「燃えづらいなら出力はを更に上げるだけ……だがまァ、十分か?」
ギラつく悪魔の如き炎に臆することなく、視線の届く隊員が赤い双眸以外の面影を豹たる獣に変異させ牙を剥いた。
「命を賭けて勝利を持ち帰ることである、故に、我らは臆さない!」
「戦いで死するならば、それはただ、名誉在ることである!」
地を踏む獣の足は加速を促す。
その後ろで、砂状に身を溶かし水に濡れて硬さを増す者たちが砂嵐を起こす準備を整えはじめる二段構え。
「嘆くも勇むも勝手かもしれねェが、限度っつーのがあるだろうよ」
猟兵たちを脅威と見た、旧帝都軍突撃隊の戦力を分けた選択。
思わず溜息の一つ零して八雲はくいっとジャスパーに顎をしゃくる。
「おい、前衛はお前さんに任せたからな。……頼りにしてるぜ?」
にぃと笑って言えば、返されるのは了承の笑いだ。
「おゥ、任されたぜ。しーっかり護ってやっからよ!」
早駆けしてくる豹を見やれば燃えるを恐れない怪奇の群れでしかない。
本命は恐らく後ろからの力を溜めて強化した衝撃波での襲撃。
それを成すための捨て身の特攻の群れだというなら、悲しいものだ。
「相手にとって不足はねェ!ほら来い、殺してみろよ」
群れの矢面に立ち、言葉と共に指でちょいちょいと挑発するジャスパー。
「これは戦争だ!殺さずして勝利する事はありえない!」
「故に殺す!噛み殺す!斬り殺す!進め、我らは敵より多いのだ迷うな、進め!!」
レイピアを抜き放ち、豹らは燃える炎に誘導されるように挑みかかる。
牙を剥き、必ず殺す決意を殺気に変えて、がおうと獣のように吠えながら。
斬りつけられてもその一切を無視して、ジャスパーは燃える四肢で殴り掛かり、立ち回り、蹴り飛ばした。隙あらば、爪を立て噛みつこうとする猫どもを、ジャスパーはからかうよう翻弄し、燃やす尽くす。
指を指して驚いた顔などのフェイントを混ぜたりすれば、性根が生真面目なのか容易く引っかかり、周囲ごと飛び蹴りで薙ぎ払われた。
目の前に迫る者は豹より猫、猫より世間知らずの子猫。
ジャスパーの個人的な評価はどんどんと可愛いものへと変わっていく。
これらは脅威と、よべないものたちだ。
「……準備完了、いけるぞ!」
「ついに完成する我ら最大の一撃を、その身に受けて倒れろ敵軍!!」
「我らの悲願は、彼岸は、此処に意味を成す!」
大きく渦巻く砂塵が、仲間の豹すら取り込んで大きな衝撃波となって吹き荒び飛んでくる。練り込まれたのは命の数。変異した旧帝都軍全体の数を含むものだ。
「軍?俺ら、いつからそんな大それたモンに?」
「知らねェなァ勘違いだろ。敵なら倒す、それだけだ」
冷静に、指をぱちんと鳴らして合図を送るのは、八雲自身と同等の強さを持つ牛頭鬼と馬頭鬼。召喚され、彼らは召喚主の指示を待つ。
「……敵が一人だけと見定めるのは勝手だがなァ、何。一応な、動かない方も敵は敵だぜ?」
地獄の獄卒。何が迫っても、臆することなく、容赦の欠片もない。
死したことのある存在の逃亡を地獄(それ)は、一切許さない。
「もう存分に暴れたんだ。こっちも暴れて構わねェよなァ?"戦争"なんだもんなァ?」
八雲を手を上げ、下ろす動作をすれば地獄の獄卒は、鼻息荒く応える。
ジャスパーより前に、勢いよく飛び出す立つ2体が、問答無用に猛烈な砂塵を金棒の振り抜きで破壊し、それでも余波があると、徹底的に破壊し尽くす。
どんなに大きく強大でも死者が成す技を、番人は許さない。
「そろそろ嘆けき疲れておネンネの時間だ、もう満足だろ?」
特攻した仲間から置いて逝かれた者たちほとばしるものは、絶望。――特攻を失敗した獣や残された土塊に残る寿命も長くは持たない。
彼らは戦いに用いられなかった短期決戦兵器。
生きての帰還は元々、持ち合わせてはいないのだ。
「どうせなら獄卒に打たれて消滅のほうがいいって?痛みを知ってこその戦いだっていうのに」
手向けとごおうと炎のブレスをお見舞いすれば、残党として残された毛皮の一隊がみるみるうちに火だるまへ。熱量に負けて、水を吸い続けた耐久力の上がっていた怪奇の体もまた、耐えきれなくなり崩れて周囲に散らばった。
獣の焦げた匂いが鼻をくすぐる、確かに彼らは"此処に居た"。
しかし、それもその時だけだ。霞んで消えて、何も居ない。
サァアアアと雨は降り注ぎ続け――周囲に満ちた熱量が段々と冷えていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーナ・ユーディコット
存分に死合おう
貴方達の最後の特攻……私はその相手の1人だ
説得する余裕もないから理解も同情もしない
貴方達は存分に信念を叫び、そのために死力を尽くして仕掛けてきたらいい
私が応戦し打ち勝つ事が手向けになればいいと思う
獣みたいな様相で機敏によく動く
それでも私の攻撃範囲に存在が確認できる形で入ってくるのならやりようはある
開闇見星の攻撃範囲にいる敵全てを対象として斬撃を放つ
暗い空間に光を増やすくらいの事は出来るだろうし
それもまた、闇に葬られた貴方たちへの手向けになったなら……
余りにも攻撃を避けられるなら、相手の攻撃を捨て身の覚悟で受け止めて至近距離で放つ
彼らの心の雨は果たして
……考えても仕方ない、かな
●開闢の煌めき
「存分に死合おう」
向かい合って即座に彼らにそう言い放ったのは、ルーナ・ユーディコット(桂花狼娘・f01373)。言葉数は少なく、しかし指し示す事柄は的確で。
「貴方達の初めてで、最後の特攻……私は、その相手の1人だ」
旧帝国軍の彼らからすれば脅威の一員であり、紛れもない敵対者。
目の前に立ちはだかる、存在を証明するに値する、敵。
――説得する余裕もない。
――理解も、同情もしない。
言い渡すのは、ただ其れだけ。口をつぐみ、ルーナは睨む。敬意と受け取ったのか、宣戦布告かサーベルを一度、ルーナに向けて、目を細めて睨んで返した。
「私はこの剣の煌めきに、誓う!必ずや、我らが望む勝利を!」
「旭日組、我らの前に立った事を必ずや後悔させてやろう!」
ざわり、と男の像が揺れる。個別の名は既にない。
怪奇と結びついたその身はもう、親しみすら覚えるほどに溶け込んで。
本当にただの一般的な人間であったことなど、無残に散って遠い昔。
名はその時一緒に消え去った。
「打ち合う事に、感謝を。そして、死を齎そう!」
勇ましい言葉の数々を吐く顔は、男かどうかもう怪しい。
毛並みは黒い単色。
元の面影は何処にもなく、淡黄褐色の群れの中一体だけが周囲から浮いている。
黒変種、同等の怪異の中でも稀に、現れる黒豹だろう。
薄暗いこの場において、斑紋があまり見て取れず、ただ黒い猫にしか見えない。
――貴方達は存分に信念を叫び、そのために死力をつくして仕掛けてきたらいい。
舌舐めずりする獣の群れは、人と呼ぶには獰猛だ。
「右と左、同時に疾走れ!」
「攻めろ、追い立てて牙を剥け!」
黒豹が指揮を取るように一隊に指示をだすと、一斉に獣達は動き出す。
たったひとり、ルーナを相手に大人数が動き出した。
――獣みたいな様相で、軍事的な指示に従順。
――機敏で、よく動く。
ちら、ちらと視線でそれらの動向を伺いながら、手を出してくる個体への対処を考える。毛皮が雨を弾き、走る彼らもまた、こちらを伺いながら寿命を燃やしている。
「生きた証を!この力を実践で使える喜びを!」
「「「叫べ!」」」
団結した一言は全体から聞こえる。そうして獣の同様に声の限り吼えるのだ。
お互いを鼓舞するように、在るべき――生き様を見せつけるように。
「今夜の空は――星がきっと、多いね」
ルーナの間合いに届く範囲に獣が侵入している。
それら全てを攻撃対象に、静かに斬撃を打ち放つ。
一刀から放たれる閃刃は漆黒。――終わりを平等にもたらす暗闇。
腕が飛ぶ、頭が飛ぶ。獣の感で強引に避けようとした体が、袈裟斬りに落とされる。命中した数だけ、逢魔が刻の暗い空間に、星のような光が輝き、瞬いた。
開闢の鏖殺。敵であることに、変わりはない。
――闇に葬られた貴方たちへの手向けになったなら……。
溶け消えた星々を躱し、身を低く素早く踊り迫る獣のサーベルが体を掠っていく。
「近いね、あなた」
黒豹だ。ルーナを刺突しそこねて、獣の顔で舌打ちする。
「でもその覚悟は……」
最も至近距離、赤い双眸は既に覚悟を決めていた。
「否、否だ。豹人間はもう人間とも言えない。戦に散れるは、軍人にって――」
二度目の刃は首を確実に、撥ね飛ばす。
吹き飛んだ獣の頭部はギリギリまで言葉を零すのを、ルーナは聞いた。
――ただただ、"誉"であると、知るが良い。
――感謝する。
煌めく光に彩られ見送られ、ルーナの前にはもう、誰もいない。
「彼らの心の雨は……」
――やんだり、したのかな。
ルーナは頭を軽く振る。――もういないのだ、考えても仕方がない。
濡れた髪から雫を、――払うように。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
なんだったんだろう
力を求めた理由、戦えなかった理由
基本は人々のためだと思ってるけど
例外もあるかもしれないからね
制圧って言ってるし
まぁでも…話し合う余地も無さそうだから
正かもしれない
悪かもしれない
それでも僕は…解放するために、戦うよ
翼は水を含むと重くなるから
★Venti Alaにも風魔法を宿し【空中戦】
砂は水に弱いよね?
水魔法と【オーラ防御】を組み合わせ
周りに水の膜を作り砂嵐が体に届く前に固めて落とす
視界が塞がれても【聞き耳】で砂嵐や彼らの足音を聞き回避
砂が止んだら…こっちの番
水の【高速詠唱、属性攻撃】で砂状の肉体を固め
【催眠歌唱】で操る【破魔】の【指定UC】で【範囲攻撃】
心も体も浄化してあげる
●風のワルツ
――なんだったんだろう。
栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は疑問に思う。
目の前の彼らが、力を求めた理由。そして、戦えなかった理由。
悲しみ、不安定な存在と成りこのような場所で影となった、ワケ。
――基本は人々のためだと思っているようだけど。
その方針の中に、例外だって存在する事もあるだろう。
何かを護るための軍への入隊だったとして。彼らは確かに行ったのだ。
"制圧"と。
――言った言葉の、意味を知って、言葉に出したのだろうし……。
――まぁ、でも……話し合う余地も、無さそうだから。
澪の語りかけるような視線に、旧帝都軍は恐ろしい者を見るように、ざわざわと小言を零す。
「目の前に居るのは本当に脅威か……?」
「本当に存在しているか……?」
ふわりと翼を広げたオラトリオ。
雨粒のせいか、澪は自身の翼が水を含んで少し重く感じた。
身軽さに特化した靴、Venti Alaを風の魔法を宿した手で撫でるように、促す。
魔法の力で空を歩める小さなが靴に生える。
雨にも負けない飛行が可能になり、澪が空を征く。
「何かが来るぞ、防御陣形を固めろ!」
「飛ぶというなら、落とせばいい!構えろ!敵は一人だ!」
雨に濡れる砂塵の群れが、砂だらけの衝撃波を澪に向けて投げ放つ。
砂利まざりの第一刃の旋風を、空を散歩するようにふわり、と避ける。
風の流れに逆らわず、靴の羽の力もあって、それはもう歩くような身軽さで。
「……砂は、水に弱いよね?」
周囲に満ちた水を利用しない手はない。
手をかざし、周囲に水の膜を作り、砂嵐の直撃を防ぐ障壁として展開する。
「弱かろうと、先に敵を殲滅すれば弱さなど飾りとも言えるだろう?」
容赦のない二射目の旋風が、一斉に飛来した。
敵を討つ、その心だけが影朧をその場に留めている、ようでもある。
……澪の周りに高められた水気の強さが、降り注ぐ雨の水量を上回り、嵐が届く前にうち放たれた風は周囲に溶けて、土は水で固めたれてぽとりと力なく落とされる。
「正面からでは駄目だ、囲め!閉じ込めろ!」
「周囲を塞げ!数なら我らの方が断然有利だ!」
砂塵人間たちの連携で、水の膜の内側に居る澪ごと、暴れ狂う砂嵐の中に閉じ込める。サァアアアア、と周囲を荒れるのはただの砂が擦れる音。
だが耳を澄ませば、聞こえるものもある。
閉じ込めた澪が動けない内に、次の攻撃を、と砂塵の利用を話す声と、足音が。
――実際の戦争は、こんなにも得るものが、ないのだろうか――――。
――人間相手に、これは人間と、呼べるだろうか――――。
――殺し合いで得るものとは、我らが本来得るべきだった栄光とは――――。
――ひたすらに、虚無だったのではないか――――。
影の囁き。口から漏れない、彼らの疑問。
不安定な彼らの力であるこの風が、――伝えてくるのはなんだろう。
「"正"かもしれないし、"悪"かもしれないけれど……その気持ちを開放するために、戦っているよ」
――僕は、ね。
嵐を貫いて、土塊のダイレクトな殴る拳をひらりと回避して、澪は告げるのだ。
たった一撃とはいえ、奇襲の意味が無くなったと慣れば潔く閉じ込めるための嵐は霧散する。
「砂遊びは、……終わりだね。こっちの、番だよ」
周囲に沢山の砂上の個体を確認し、高速で声を零し詠唱を始めた。
ふわり、と不安定な空間で幻想の音符が浮かぶ。
影朧の迷いを晴らさんとする迷い子へ、逢魔が辻の不思議な力が後押しする。
歌うような声色で、眠りを誘う影を正す破魔の力を込めて。
音符に優しく触れ、無数の音の刃を一斉に打ち放つ。
刺さり飛ぶは刃。動けなくなった土塊たちは切り刻まれて、浄化される。
――戦えなかったのは、本当だ――――。
――しかし、強いものと死合えた事もまた、本当か――――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
勤勉は結構だが生きている間だけにしておけ
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン、及びその全行動
高速詠唱を『刻真』で更に無限加速し「瞬く間もなく」展開
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
内から外へは何もできず逆は自由な理不尽の檻だ
存分に憤れ
『解放』を通じ全力で魔力を注ぎ強度と自壊速度を最大化
必要な魔力は『超克』で“外”から汲み上げ供給
出口は自身に設定
迷宮か俺、好きな方を破壊してみろ
破壊の手段も自壊対象故に容易ではないがな
仮に辿り着く個体があれば『討滅』を乗せた打撃で対処
自身へ攻撃が届くなら『刻真』で異なる時間へ飛ばし影響を回避する
※アドリブ歓迎
●論理の壁
「勤勉は結構だが生きている間だけにしておけ」
戦うというなら、それもいい。
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)はただ、手を翳した。
「生をまだ感じるならそれでもいい。だが"惑え"。ただ、ひたすらに」
高速詠唱を更に、狭間の空間に流離い不安定な万象を捕らえる光が揺れて、踊った。世界を刻む刻真による光の反射が無限加速を呼び起こし、彼らは動く隙すら与えられず、アルトリウスの術中に陥った。
ああ、隙がない。――それがアルトリウスという存在だ。
戦場全体に、旧帝国軍突撃部隊を捕らえる檻が織りなされる。
それは、アルトリウスが仕掛けた消去する自壊の原理で織りなされた迷宮。
――対象は、戦域のオブリビオン。及び、その全行動。
理に閉ざされた存在は、ただ困惑を心内に抱えることだろう。
「なにを、した……?」
「原理は此処に編まれた。それは内から外へは何も出来ず、逆は自由な理不尽の檻」
すぅう、と彼らの眼前の壁を指差すアルトリウス。
しかし、彼らにそれが視認できない。きょろきょろと、無様に視線を彷徨わせる。
その目には、何も見えておらず"何か"にぶつかりはするが、触らないと"何か"を認識できない。
なにしろ、それは広範囲に展開された論理の牢獄。
壁は目の前に存在するだろう、ただし……人間を辞めてもいいと多量多種の怪奇の因子の移植を肯定した戦闘兵たちだ。
論理の壁を目視する資格がない。
人の命を、自身の命を鑑みなかった為に、……被人道的だと存在自体抹消されたが世界の選択は、正しい。
「存分に憤れ。見えないなら、それがお前たちの罪だろう」
漂う光、開放の力を現して全力で魔力を注ぎ込み、壁と迷宮の強度を上げて、自壊速度を最大に加速する。
全体を消失させる程の魔力は膨大だ。
世界を超える超克の光が繋ぐ、"外"より導かれる最古の理が湧き踊る膨大な魔力を組み上げて。供給と循環の準備を、環境を整えていく。
「これの出口は、存在する。迷宮か俺。どちらでもいい、好きな方を破壊してみろ」
ひとつしかない出口の行き先は、アルトリウス。
見えない迷宮から抜ける唯一の場所が目の前にあるのに、彼らは届かない。
阻まれ不確かな体が綻ぶように溶けそうになる。
「何かに阻まれてるというなら、破壊すればいい!」
「数なら此処にある!一人でもいい、我らの一人でも、勝利すれば我らの勝ちだ!」
砂塵へと変異する体、命の残り火など、彼らは気にせずに砂状の体を力に砂の礫が壁に辺り主に戻る事無く飛散する。
「破壊の手段もまた、内部では自壊対象。故に容易ではないな」
「「「「「黙れ!!!」」」」
砂塵は乱舞する。しかし破壊には至れない。
何しろ、壁は何処にでもあり、それらを彼らが見て取れないからだ。
撃ては撃つ程、砂と成って消えていくのは命。彼ら自身。
「その場所が、戦争であるべき理不尽さだ」
常に生き残れる保証など無い。
「特攻するとはそういうこと。覚えておけ」
願わくば、論理の果に。
論理の内側へ戻る輪に再び属するように。
「私は……敵を、傷つける事無く、…………」
さらりとひとすくいの砂を残し、影の気配が塵と崩れて消え去った。
命を賭けたタイムリミットのうちに、アストリウスへとたどりつけたはない。
考える時間も攻撃する時間も、全て利用してこその戦い。
彼らはそれを、――命でさえ攻撃の為の犠牲と考えて居たために。
"生きて敵に勝つ事"など、頭の隅にも置いていなかったのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
白寂・魅蓮
今日は随分と不思議な雨が降ったものだね
時に雨は人の心を洗い流すこともあるけれど、今宵の雨はひどく悲しみが込められている
まるで泣いている誰かの涙のよう
それがこの怪異を生み出しているのなら、受け止めてあげるのも僕達猟兵という傘の役目かな
今の相手は目の前を屠ろうとする獣のようだ
なら【脚光の舞「美しきもの」】で敵の注目を集めつつ、自分を強化しながら攻撃を迎え撃とう
扇子を扇いで敵の攻撃を受け流しつつ、蹴り技などで応戦しよう
今となってはもう昔のことかもしれないけど…せめて後悔なく、君達のことをいかせるように相手しよう
(他猟兵との絡み、アドリブ歓迎)
ヴォルフガング・ディーツェ
おやおや、雨に花とは風情があるじゃないか
…しかし、その雅さには反する輩もいるようだね?
日の当たらぬ者よ、歴史の陰に埋もれる者よ
その生きざま、この老骨がしかと最期まで見届けよう
故に、安心して死ぬが良い
持参品の【ヘルメス】を「メカニック」で強化し使用
相手の攻撃動作やパターン、体内器官を把握
UCで宿した魔狼の力を解放しよう
狙うのは先の分析で得られた彼らのより脆弱な部位
爪で切り裂き、尾で刺し貫く
重要な器官を潰せば如何に怪奇人間であろうと生きてはいられないだろうさ
相手の防御は真っ向から打ち砕く、それが軍人に対する俺の餞だ
猛毒の三重奏は【全力魔法】で宙にルーンを描き弾く
防護のアルジス、全てを阻む障壁となれ
心禰・白雨
お前らが命をかけた帝都は歴史からお前らを消した。
命を捧げた者が望むならそれを叶えて去る事も生き様だ。
それをよしとせず、反する行動を取るのは逆賊じゃねえか?
まあ、気晴らしの喧嘩なら付き合ってやるよ。
羅刹って奴は戦狂いさ。
一戦もせずにただ消えるんじゃあ。その鍛えた怪奇の力が惜しいよな。
そうしたらお前らがどれだけできたのか認めてやるぜ。
赫絲で豹人間と化した隊員を捕まえる。
ネコ科は素早くて身体が柔らかいから手ごわい。
しかし速さに追いつく必要はねえ。
蜘蛛のように網を張り巡らせた待ちの戦法で行く。
糸の影に糸を隠し、網に追い詰めたら一機に怪力で絞め上げて倒す。
技能、ロープワーク、怪力、フェイントを使用する。
●三種の演舞
その少年、雨降る中で白寂・魅蓮(蓮華・f00605)は独り言のように言葉を零す。
「今日は随分と、不思議な雨が降ったものだね」
宵の深まる夜に、わざとらしくこの出会いに"こんにちは"、と声を添えて。
「時に雨は人の心を洗い流すこともあるけれど、今宵の雨はひどく悲しみが込められている」
つい、と緩やかな動作で指差すのは、旧帝国軍突撃部隊。
彼らの体ではなく、顔だ。
「ああ、まるで泣いている誰かの涙のよう」
既に数多くの、同じ部隊の隊員を喪った影は頬を濡らすように雨に濡れていた。
真実に涙か雨粒なのか、それの判別はつかない。
それを知ってか知らずか、ヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)が紛れて舞う花びらを見つけて。
ぼんやりと灯るさまに目を細める。
「雨、雨、雨のなかに……おやおや、花びら。雨に花とは風情があるじゃないか」
ひらり、と花びらが雨に打たれて脆く叩き落とされる。決して失わない灯った色は、隙間の辻でも、どこでも姿を忍び込ませる幻朧桜の存在感か。
朧な空間でも、ここが紛れもなくサクラミラージュであることの証明だ。
「……しかし、その雅さには、反する輩もいるようだがね」
「それがこの怪異を生み出しているのなら、受け止めてあげるのも僕達猟兵という傘の役目かな」
ヴォルフガングは魅蓮の言葉にこくり、と頷いて。
「日の当たらぬ者よ、歴史の陰に埋もれる者よ」
此処に目撃する者はいる、と。
「その生きざま、この老骨がしかと最期まで見届けよう」
――故に、安心して死ぬが良い。
言葉に怒りを顕にするように、旧帝国軍は唸り声を上げる。
最期まで、"戦いに勝つ"と戦っても居ない相手に勝利宣言を貰うのは兵士の恥だ。
――今の相手は、目の前を屠る事にしか目がいかない獣のようだ。
「怒って勇んで、吐き散らして……心を啼くせば、更に影を濃く歪ませるものでしょう」
魅蓮の舞い踊るは、脚光の舞。美しきものは演じられる。
どのような場所であれ、それは心持つものならばピタリと思考すら止めるだろう。
雨降るこの場所で、獣猛る群れの中に躍り出て、注目を大いに集めるその人狼。
舞踊で魅せようとした霊魂から視たとして、彼らの在り方は実に悲惨の一途を歩き続けているもの。
誰かが止めて、気付かせなければならない。
「……ほら、足も手も止まっているよね」
敵の間を踊りながら抜ける動作で、体を扇子で扇いで通り抜けていく。
移ろいの紫陽花の柄が、夜の隙間によく映える。
「砂でも豹でも好きに変異すればいいさ、ただし」
ぱちん、と勢いよく閉じて、先端を口元に当てる。
「攻撃が全て、必ず通るなんで通りはないからね」
体を砂状の肉体に溶かして、腕を薙ぐように砂の衝撃波として飛ばすのは、彼らのせめてもの抵抗。
風をそよがせるように踊る動きで受け流し、歩み寄って渾身の砂を蹴り崩す。
雨に濡れた砂の体は、元の人間姿からは大分遠く。
変異としても、人としても、戻る姿を想像するに安くない。
「今となってはもう昔のことかもしれないけど……せめて後悔なく、君達のことをいかせるように相手してますよ」
向かい合う別の個体に投げかける声が在る。彼らの視線の先に、その姿はあった。
「お前らが命を掛けた帝都は、歴史からお前らを消した」
事実は事実。口に出したのは、心禰・白雨(赤糸結び・f02212)。
「国のため、命を捧げた者が望むならそれを叶えて去る事も生き様だが……」
片目を閉じて、見据えるのは制圧を口にする、彼らの逸るばかりの言葉の数々。
「それをよしとせず、反する行動を取るのは――逆賊じゃねえか?」
「我らが在るべき時間から消えた今、賊なっても異を唱える上官はいない!」
吼える豹は、獰猛な足で白雨に近づき、力の限りの突進する。
避けずに受けて、白雨はその姿に、同じくらいの声色で返すのだ。
「……まぁ、気晴らしの喧嘩なら付き合ってやるよ。羅刹って奴は、戦狂いさ」
わざわざ飛び込んできた個体を掴み、力の限りに地面へ叩きつける。ドゴォと地面が砕けちり、勢いで破壊された舗装されていた道が、瓦礫を跳ね上げた。
「一戦もせずにただ消えるんじゃあ、その鍛えた怪奇の力が惜しいよな……」
ほら、こいよと手で合図する。
猫をじゃらすように、挑発する運びの手が、豹と成り果てた豹人間を誘う。
「そうしたら、お前らがどれだけできたのか認めてやるぜ?」
ふわり、と手が風を撫でるように動く。
「縁が紡ぐ世界との確かな繋がり。手繰るは見えない運命が此処にある」
指に触れた感触が、これだ、と運命を掴み取った。
くん、とソレを引くと猫科特有の動きを可能とした豹の隊員を手近に捉えている。
「……な、なんだ!?」
「素早い体、素早さに特化した獣。しなやかさがあり、柔らかいから手強い」
低く、声色を落とし白雨は囁く。
細く長く、しなやかな生糸。結んで絡んだからには逃さない。
「しかしなぁ、速さに追いつく必要はねぇ」
――そして他の隊員が視認する必要も、ねえ。
捕まえて、止める。
縫い留められた豹は糸に、運命に絡め取られる。
運命の終わりが、刻一刻と命の時間を削っていく。
張り巡らされた蜘蛛の巣に、気付かない彼らは自分の足で運命に絡まっていくのだ。足が早かろうと、動けなくなればただの、ヒトもどきでしかない。
「なあ、どう……終わりたい?」
まあ答えは聞かないけど、と忍ばせた糸に一気に怪力を込めて、首を絞まる。
かくんと無造作に落ちる首が、呼吸をしているかなど、気にかけるつもりはない。
まだ牙を向くのなら、相応の相手が出来るというものだ。
すっ、とヴォルフガングが所持品のヘルメスの双目鏡越しに彼らを覗き込む。
見える色は、敵たる怪奇人間の情報。存在、在り方。影に霞む不安定な部分。
行動パターンから動作、癖。パターンが見えるよう。
齎すイメージは恐らく、現実だ。体内器官の在り方さえ、手にとるように理解した。今の姿は上から下まで確かに豹人間。
人の部位はそのままに、豹だと評価する部位がないわけではない。
戻りきれなかった砂の部位、まだまだ変異できると遺され隠された部位すら在る。
――見切った。"やはり心がない"。
「……我が身を一時捧げよう、終幕に向けて、ね」
呪詛が身を纏う。禁忌の術は体を蝕む呪いとして、確かに存在するものだ。
それすらも力として振るうのが、相応しいと、ヴォルフガングは判断する。
駆け出す足に力を込める。撃ち抜き刺し穿つべき箇所は、ただ一つ。
ガッ――!
ダイレクトに突き立てた魔狼の腕は、手近な兵隊の胸を容赦なく貫いた。
履きこぼされる吐血。滴る血は不思議と赤く――ない。
「掛かったなぁ!……私は猛毒に特化した怪奇を」
「ああ、知っているよ」
――だから、こうした。
魔狼の手がぐ、と心の臓を握りつぶす。
吐き零された猛毒の三重奏は、宙に防護を示す文字を綴ることで退ける。
全力で込められたなぞる字体は、魔術を込められたルーンだ。
「防護のアルジス、……全てを阻む障壁となれ」
輝ける文字は意味を為して、力を流すことで体への汚染を防ぐ。
ぼこぼこ、と泡立つヘドロがそのまま地面を溶かしていく。
汚染した場所から湧き上がる臭いは疫病を、人体を内側から破壊へ導くだろう。
「体の内側に、特殊臓器があるわけじゃあないいんだろう?それを潰されてはそれ以上吐き零す事もできやしない」
違うか?と睨まれれば、動く力を喪って絶命する。
答えはない、しかし、防御しても真っ向から貫き、潰せば同じこと。
「ほら、ほら。軍人なんだろう、俺の餞を存分に受け取るがいい」
鋭く光る赤い双眸が、特攻する変異の軍隊を、ひとりまたひとりと正面から絶命させていく。
生き残る者は居ない。――流された血が、足場を赤く染めていくが……降り続ける雨が、その色を徐々に薄めていくのも時間の問題だろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『怪奇『隙間女』』
|
POW : 怪奇『隙間女』
肉体の一部もしくは全部を【隙間女】に変異させ、隙間女の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
SPD : いつもみています
【隙間からのぞき込む視線】を披露した指定の全対象に【目が離せないという】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
WIZ : いっしょにいきましょう
小さな【隙間の中の自分】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【隙間空間】で、いつでも外に出られる。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
静かになった裏通りに人知れずスゥウ、花びらのように綺麗な手が伸びる。
ただただ白く、先程まで別の影朧が居た場所を、撫でて触り、止まった。
不思議なことに、手より先は見当たらない。
「あゝ、貴方様はそうやって、また残さず消えてしまうのですね」
「今度こそ、同じ時を共に居られますようにと願っておりましたのに……」
嘆き悲しむ影朧を、狭間へ誘い込んだのはこの女。
「ええ。戦闘を隙間よりずうと見ておりました。確かに、貴方様は」
「この場所に、居られましたとも。女より先に先立つなんて、罪深いお方……」
ぶわああと家々の間、猟兵が破壊した地面、到底人が入り込めない空間から。
手。手。手が伸びてくる。
「私はいつも、どこからでもみています」
「隙間という隙間、貴方様が寂しいと思えないくらいに、ずっと」
――でも、貴方様は私から見える所からは消え失せてしまいましたので……。
多数の手が、一斉に猟兵にこちらへどうぞ、手を差し出してきた。
綺麗に整えられた華が、咲き乱れて招くように雨風に揺れながら。
「次は貴方様。この手をお取りくださいませ。見ておりましたもの、お恥ずかしながら――気に入りましたの」
「強い、強い貴方様。私だけの隙間の間に、お連れいたしますわ」
怪奇、隙間女。顔を覗かせないのは、気恥ずかしいからか、理由は知れない。それは集団で、気に入ったものを引き込んで、隙間に迷い込ませる怪奇人間の総称だ。
「――鬼ごっこ、いたいましょう」
「捕まえたなら私の勝ち。逃げ切り殺しきれば勿論、貴方様がたの勝ち」
ふふふ、ふふふと周囲の隙間から、雨に紛れて微笑む声が耳に響く――。
真宮・響
【真宮家】で参加。
どうも。今更出て来たのかい、お嬢さん達。こそこそ覗き見は良くないねえ。連れて行かれる訳には行かないが・・・遊んであげることは出来るよ。
手にするのは赤い魔宝石。炎の戦乙女、先行してくれるかい?
アタシは【二回攻撃】【串刺し】【槍投げ】で牽制しながら、奏が敵を引っ張り出してくれるのを待つさ。
敵が隙間から引っ張り出されたら、槍を投げるのを範囲に拡大して、槍衾のようにして敵の動きを止める。瞬の一撃はそこからだ。さあ、一発ガツンと痛いの喰らわしてやりな!!
真宮・奏
【真宮家】で参加。
ええと、こんにちは?観察ご苦労様です。観察する相手を倒した事は申し訳なく思いますが、隙間からおいでになる方達もこのままにしておけない故。
【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】で風の刃を何度も飛ばし、牽制。隙間女の手が少しでも見えたら、蒼の波動で手を掴んで、強引に引っ張って、隙間から出て頂きます。容赦なくどんどん出て頂きますよ~。
隙間女の皆さんに複数出て頂いたら、衝撃波を範囲に拡大してどんどん攻撃していきます。怪奇はここまでです!!
神城・瞬
【真宮家】で参加。
倒される軍人の皆さんを観察していたと?(冷たい笑み)軍人の皆さんを引き込んだのも貴女達ですか。戯れが過ぎますね。寂しいのは分からないでもないですが・・・やり方が危険過ぎるゆえ。
響母さんと奏と協力して光を纏わせた誘導弾で牽制。光の玉で輝きを見せて、隙間から出てくるように気を惹きますか。
響母さんの攻撃の後に全力で【範囲攻撃】で裂帛の拳を連打。【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】を乗せた渾身の一撃です!!あ、もちろん【オーラ防御】を展開して防御を固めるのも忘れません。
●その手は"死"を喚べず
「ええと、……こんにちは?観察ご苦労様です」
聞こえた声に、真宮・奏は思わず挨拶で返した。
「どうも。いまさら出てきたのかい、お嬢さん達?こそこそ覗き見は良くないねえ」
真宮・響が隙間より覗く気配を指摘する。
鬼ごっこだ、と身体全てを隙間に滑り込ませたのは戯れではない。
点々と隙間から隙間へ飛び込む女の影が親子にも見えた気がするが、言うより早く、すでに遊びは始まっているのかも知れない。
「さあ、どこから手を伸ばしましょうか」
「ふふふ、ふふふ」
その姿は視認するには早く、移動を続ける。
影から影へ、尋常ではない狭さにも潜り込むように滑り込む。
「ところで……倒される軍人の皆さんを観察していたと?」
「ええ、ええ。そうですよ。貴方様も、あの方々も、ずうとです」
神城・瞬が冷たい笑みを浮かべて、返答する影を睨みつける。何処にでも居て、何処にでも居ないというのなら、意味はないかも知れない。
「軍人の皆さんを引き込んだのも貴女達ですか。戯れが過ぎますね」
「素敵な方々ですもの、そんな方がお困りでしたら手を差し伸べるものです」
見ているだけ、空間内部に閉じ込めただけで気が済んだというのなら、この影朧の考えもまた危険思考だ。
手を引いて、連れ込んで。それで女達は、引き込んだ者と関わるわけでもないという。
「連れて行かれる訳には行かないが……遊んであげることは出来るよ」
響が手にした赤い、赤い魔宝石を放る。魔力が込められたそれが、勢いよくパキンと砕けると同時に燃える戦乙女が躍り出た。
「炎の戦乙女、先行してくれるかい?」
こくりと頷く戦乙女がごおうと地面を踏みしめて、隙間に逃げ込む女に迫り手にした赤熱した槍を打ち込む。
「燃え盛る炎の如く、さぁ逃さないよ!」
続いて響が攻撃を重ねて、自身の槍で隙間を潰す。
例え狭く小さな隙間でも徹底的に潰し壊せば、入り込むことすらできない。
「寂しいのは、分からないでもないですが……やり方が危険過ぎるゆえ」
響の連撃に合わせ、瞬が光を纏わせた誘導弾で隙間女が逃げ込む場所を限定するように打ち込む。
飛ばされた光弾に奏が風の刃とする衝撃派を上乗せして加速させれば、鬼と称する女たちより速度を瞬間的に上回る。
追いつかれ、煌々と輝く魔弾に、驚いたように女の悲鳴がそこら中で響く。
夜の闇と同列に、あまり灯りのない空間で。
それらがあまりに煌々と輝いていたものだから、潜む女は目が焼かれたのだ。
「きゃあ!!」
目の眩んだ女が、引き込む手を伸ばしていた手を怯ませる。
「……いきますよ、鬼を、…………捕まえましたから!」
奏がぐ、を力いっぱい手を握り、まるで綱を引くような動作を行うと、くん、と怯んだ手が隙間より強引に引きずり出される。
手を目視ししたことで、誰にも見えていない奏から溢れる波動に絡め取られ、
瞠目し、何が怒ったかわからない、という顔の女が地面にただ、転がった。
「……私、"ひとり"だけを捕まえたと、いいました?容赦なくどんどん出て頂きますよ~」
次々と、遠距離の壁その隙間から、見えない波動に捕まった女が見える範囲に引きずり出される。
「……観察する相手を倒した事は申し訳なく思いますが、隙間からおいでになる方達もこのままにしておけない故」
逃げようものなら、衝撃派の範囲を拡大した奏に足を払われる。
立てない。隙間が遠い。逃げられない。
「怪奇はここまでです!!」
いいや違う、"逃げ切れない"!
「そう!つまりどうするかって言えば――!」
好機、と響と燃える戦乙女の動きがピタリと重なる。
光弾により導かれ、娘により姿を暴かれた今。攻撃する気がないような、女は怯えるような顔だ。
槍を投げる範囲を拡大し、槍衾の如く勢いよく投擲して動きを更に制限させる。
サクサクと、眼前と体の周囲を赤熱した槍が刺さった。
「瞬!さあ、一発ガツンと痛いの喰らわしてやりな!!」
呼ばれてこくり、と頷いて。
「僕にも、思いっきり殴りたい時が……あるんですよ」
女たちは怪異に染まり過ぎて人をやめてしまった影朧だ。
仕舞う嘆く、を繰り返しココロの寂しさをただ埋める事を望む、不安定な……。
「目を激しい光で焼いた事はお詫びしますが、それとこれとは、話は別です」
その素手は、裂帛の速度で影朧を捉えて叩く。
……間近からの拳を見た女は一体どんな顔をしただろう。
広範囲に劈く音を響き渡らせて、真正面から打ち砕き破壊する。
隙間という心の支えに再び手を伸ばせぬままに、転がされた女達が消えていく。
儚く脆く、雨の中。彼女たちは支えを全て失って。
鬼ごっこを成せぬままに悲しむ啜り泣く声を、朧気に残しながら――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
樹神・桜雪
な、なに…その手…少し、怖い。
とにかく、逃げ切るなお姉さんを倒せば良いんだよね?
捕まりたくない…。
あちこちに沢山の手があるし、下手に動き回ると捕まりそうかな?
それならば、先制攻撃で思いきり凪ぎ払ってみるよ。
いっそ正面から受けて立った方が良いのかな。もちろん背後にも気を払うよ。あのお姉さんどこから来るか分からないし、手が多すぎるし…手、多すぎるし…。…苦手かもしれない。
スキマに引きずり込まれそうになったら、捨て身の一撃でカウンターしようかな。
あまり一緒にはいきたくないなあ…。
●隙間の華畑
それはざわり、と嫌な予感が周囲を包んでいる気がした。
この雨の感触は、先程までよりどことなく、突き刺すように余計に冷たい。
隙間に手が生えている、という表現が明らかに正しい。
「な、なに……その手……少し、怖い」
何処からでも伸びる手に、雨露が降りて狂気を見る樹神・桜雪。
「いっしょにいきましょう?怖さなども隙間の奥に連れて行ってさしあげます」
「お断りだよ、捕まりたくない……」
――とにかく、逃げ切る。
心に決めた事は、紛れもなく正直な気持ち。
「お姉さんを倒せば、それでもいいんだよね?」
「ええ。方法はどのようなものを選んで頂いても」
その声は一体何処からか。――わからない。
――あちらこちらに沢山の手があるし、どの手もみんな罠にみえるね。
雨風に揺れる沢山の手が、余計に裏通りを不気味に彩る。
影朧の青白い手が余計に、不気味さを加速させているのだ。
――下手に動き回ると、袖とかを掴まれて、捕まりそう……。
「じゃあ、鬼さんこちら。音の鳴る方へ!」
ふぉん、と音を立てて華桜を振るって映える華を思い切り凪ぐ。長さも在って風と共に音が遅れて届くが、刃に灯る花びらが雨に濡れてくっついた。迷いない先制の切り込みに、逃げ遅れた手は切断されて煙のように簡単に消え去る。
「音より早く切り込むなんて、なんてひどい……」
「逃げるのは簡単だけど、鬼ごっこをしに来たわけじゃないからねえ」
あえて逃げず、正面から女の声を聞いた。
悲しむような声色を投げかける割に、虎視眈々と隙間から狙っているのを伺える。
――確か、後ろにも隙間と呼べそうなところがあったかな。
背後にも、ふわあと手が飛び出してくる気配を感じて、容赦なく切り落とす。
「どこから来るかはわからないけれど、お姉さんたち数が多いからさぁ」
ぽとり、と落ちた誰かの右手。
対を失った左はどこにあるだろう、――いや、探したくない。
「とにかく手が多すぎるし……」
――右を見ても左を見ても後ろも同じで、最悪下にも出てくるつもりだよね?
なんだかじんわりと、苦手意識を抱えたような。
綺麗な手を複数見るのが以降怖くなるような……気がした。
「……手が多すぎたら、どうするのかしら」
「期待に応えて、お迎えに行けばいいかしら」
桜雪の足を周囲を、群がるに両手が咲き誇っていく。
ひとつふたつと足を捕まれ、感情が今宵は不思議とよく動く。
「"つーかまーえた"」
こんな体験などそう多く体験したくない、と考えながらも、女達に声を返すのだ。
「それはどうかな、"鬼さん"たち……隙間がボクにも身近に見えるよ?」
掴まれた、凄い力が引きずり込もうとしてくる。
幾つもの手だ、怪力などなくとも抵抗をしても、数が上回っていて振りほどけそうな気配がない。
ただ……桜雪は、隙間の奥の対象を見据えて護符をハラハラとばらまく。
無理に投げなくとも、こんなに近ければどれでも必中で、"当たる"。
「え、……あ!?」
隙間に入り込むのは怪奇の力。
しかし、吸い込む力を促すものは少し異なり、ユーベルコードによるものだ。
故に、女たちの吸い込む力が封じられる。
驚いたあまりに、隙間の奥から溢れるように女達が吐き出される。
「あまり、一緒にはいきたくないからさあ……?」
――これは、手向けだよ。
持ち手の深紅とは真逆、澄んだ青の瞳と一瞬だけ視線があった。
「ボクの勝ち。――それでいいよね?」
足を引いた女達を、幻朧桜の花びらがついたままの淡桃色で切り払って。
桜雪はただ、――白い華を散らした。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「あら残念。最初の戦に乗り遅れてしまったようですね」
UC「桜吹雪」使用
隙間の中まで桜吹雪を送り込んで隙間女を斬り刻む
「あらあら、鬼が自分達だけだと何方がお決めになられたの?全てを滅した者だけが、最後に鬼を名乗れるのに」
「愛しいから哀しい。でも貴女達は、そこに人を引き摺り込もうとした。慰撫されるべき存在から、討伐されるべき対象に堕ちてしまった。だから貴女達を、欠片も残さず滅しましょう」
隙間女からの攻撃は第六感や見切りで避け
制圧射撃やカウンターからのシールドバッシュで一定以上には近づけさせない
「これで貴女達の苦しみと哀しみは終わるけれど。心残りがあるなら転生なさい。次はきっと掬い上げてあげるから」
●花びらひらり
「あら、残念。最初の戦に乗り遅れてしまったようですね」
桃色の髪を靡かせて、御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)はふわりと雨の中で微笑む。しかし、逢魔が辻が全て消え去ったわけではない。
まだ在るのだ、不安定に居座る、彷徨う者が。
「此処の場所もまた、帝都。隙間も影も。ええどこであっても、帝都です」
言葉尻を厳し目に、影朧が居座る場所はどこにもないのだと桜花が言えば、隙間女たちからは抗議の声が上がる。静かな雨の降る夜、辻が繋がって初めて、彼女たちの手は、朧の空間から帝都に届くのだ。
晴れてても、荒れ狂う夜でも、静かな月明かりであっても条件は満たさない。
ただ、――嘆きも濡らす、優しいだけの雨ならば。
「帝都も影も、隙間も何処へでも。どこからでも私達は手を伸ばせます」
「そうですか。あなたの手が"何処にでも届く"というのでしたら……」
ぱちん、と高らかな音を響かせて指を鳴らす桜花。合図と同時に自身が所有する武器がふわり桜へと姿を変えて解け、周囲に舞い踊る。
「桜の雨もまた、"何処にでも"降り注ぐことでしょう」
桜となったそれらは、人が手を伸ばすより小柄で桜花の望む場所へ降り注ぐ。
指差す先、望む場所はただ、入り込むには難しい狭くて小さな――隙間。
隙間女が移動する隙間の中に、刃の如き鋭さを誇る桜が滑り込む。
ひらひら、舞う姿はただ、普通の桜と変わりはないだろう。
だからこそ、敵の女達は油断した。それが力を持たないただの綺麗な吹雪だと。
「……私たちが鬼だといいましたのに」
「あらあら、鬼が自分たちだけだと何方がお決めになられたの?」
緑色の瞳を細めて、もうひとつ、ぱちんと指を鳴らす。
隙間の奥で、桜吹雪が吹き荒れる。隙間女達が作り出しているユーベルコード製の隙間空間のなかで鋭利な小さな刃となって、吹き荒れるのだ。
肌が切り裂かれ、思わず隙間から飛び出さずにはいられない。
「きゃあああ!」
「全てを滅した者だけが、最後に鬼を名乗れるのに」
女達の悲鳴を何処ゆく風と、鬼ごっこの概念を覆す、滅ぼした者勝ちを宣言し、桜花は鬼の在り方を語りかける。
「それに、愛しいから悲しいと?でも貴方達は、そこに人を引き摺り込もうとしたでしょう。そうですよね?」
いつから怪奇と成り果てたのか、それは誰にもわからない。
だが、女達は自分の気持ちを優先で、手伸ばしたのは事実。
「慰撫されるべき存在から、討伐されるべき対象に堕ちてしまった。ああ、なんて可哀想に。方法を間違ってしまわれたのですね」
――だから貴女達を、欠片も残さず滅しましょう。
「今からでも慰撫されるに値します。ええ、だから、"いっしょにいきましょう"?」
切り刻まれて、血まみれの手が桜花に伸びる。
爪を立てるように袖をぐ、と掴まれた。
「生憎ですが、そのお誘いはお断りです」
一定以上に近づかれたが、隙間の外にあぶり出された女には、引き込む力が発動しない。それでも隙間女は乞い願うのだ。
「どうか、ね?いっしょに、いきましょう……?」
すぅう、と手をあげて。桜と化した吹雪を呼び集める。
ふわあああと風が桜花を中心に渦巻いた。
「何度でも返す言葉は"いいえ"です。悲しみがあり続ける為に、願ってしまうのでしょう。ならば、解決の手立ては単純で、簡単な一つを選ぶ事が正しいのです」
上げていた手を、下ろすと同時に、花びらが質量を持って降り積もる。鋭利な雨が、女達に降り注ぐ。桃色の中に赤い色が混ざって、悲鳴と共に弾け散る。
「貴女達の苦しみと哀しみは此処で終わるけれど。心残りがあるなら転生なさい。次はきっと掬い上げてあげるから」
隙間という隙間、その奥に隠したままの想いを打ち明けたく成ったなら。
また、――"手"を伸ばして、みればいい。
大成功
🔵🔵🔵
出雲・八雲
ジャスパー(f20695)と
覗き見とは良い趣味してンなァ。
ハッ、ごっこ遊びなンざ所詮何でもありなンだよ。
ア"ァ?鼻だァ?
そりゃ多少は効くだろうがよ…。
急にどうした?
…嗚呼、なるほどなァ。
【管狐】を使用
そういう事なら任せろ
索敵ならコイツらが得意だ。
それにしたってなァ、匂いで探せっつー割にはお前さんの血の匂いしかしねェぞこンにゃろう…
まァいい、お前さんの血の匂いじゃ無ェ匂いが敵って事だ、援護するぜ。
女が鬼になる話はよく聞くが、『ごっこ』でもおっかねェなァ。
嗚呼怖い怖い
ジャスパー・ドゥルジー
八雲(f21561)と
鬼への攻撃が許されるものを
果たして鬼ごっこだなんて呼べるのかね?
なァ八雲、狐って鼻は効くのか?
俺が気づいてねェ奴がいたら教えてくれよ
場所さえ判りゃ狩るのは得意だ
【九死殺戮刃】使用
寿命削る代わりに己を斬り
握るは攻撃回数を増やした無数の刃物
束になって襲ってくるならそれを四方八方に向け牽制
一人だけ突出してくるなら全撃集中で仕留めきってやる
おっかねえ女は大好きよ
楽しい(イタイ)目に合わせてくれそうだから
けど帰れねえ場所に連れ込まれるわけにゃいかねえんだな
――ばいばい♪
●手の鳴る方へ
出雲・八雲の耳が声を拾った。
そして、それに応じた分だけ浅く溜息を吐く。
「……覗き見とは良い趣味してンなァ」
感情のままに手を伸ばして隙間の空間に引き込んで。
捕まえた存在を、ただ見ているだけときた。
「ところで、鬼への攻撃が許されるものを、果たして鬼ごっこだなんて呼べるのかね?」
ジャスパー・ドゥルジーの頭に浮かんだ細やかな疑問。
先程、隙間女は確かに宣言した。
あちらはただ捕まえると言ったが、猟兵に提示した事は"逃げ切り殺しきれ"と。生死を問わずどころではなく、捕まりたくないならコチラを殺し尽くせと言ったのだ。
「ハッ、ごっこ遊びなンざ所詮なんでもありなンだよ。自分ルールを出されたら乗るしかねェ」
不安定に堕ちた異形が言う言葉だ。
おそらく悪意はないだろうが、怪異は力を持つと厄介な方向に実体化する。
それ自体がこの場で意味を持ち、"捕まりたくないなら殺してくれ"と言うのだから、やることの明確さは、自ずとはっきりしているともいえるのだが。
「何でもあり!そりャいいねェ!なァ八雲、……ズバリ狐って鼻は効くのか?」
「ア"ァ?鼻だーァ?」
今の流れのなに繋がりで鼻が、と大分反射的な強さの濁点塗れの言葉が八雲から飛び出した。
「……そりゃ多少は効くだろうがよ、……急にどうした?」
「見えてるモンが全てじゃないらしいからよ、俺が気づいてねェ奴がいたら教えてくれよ」
とんとん、とジャスパーが自身の鼻先を叩いてアピールする。
「場所さえ判りゃ、狩るのは得意だ」
「……嗚呼、なるほどなァ。そらァそうだ、そういう事なら任せろ」
75の管狐の同族が八雲の傍にするりと姿を表すと同時に鼻を鳴らして、周囲を見渡す。倍もある双眸が、隙間という隙間。相手の動きを見据えて逃さない。
100を超えた視線から逃げるように、隙間から隙間へ、怪奇の力で捕捉されないように逃げ続ける。
その姿が、全く鬼ごっこの鬼役らしくなかった。まるでそう、――袋のネズミだ。
「よおし任せた!」
短い確認を済ませ、ジャスパーが軽く目を伏せる。
次に開いた瞳は妖艶に怪しく輝き、――ああ、隙間の奥と、目が合った。
「いつでも見ています。どんな時でも、どんな姿で何をしていたとしても」
目が離せない、そんな気分に駆られるがジャスパーはお構いなしだ
「おっかねぇ女は大好きよ?」
女が不用意に伸ばした手を、殺戮せんと切り刻む無数の刃物の連撃で、群れ事血塗れの海に鎮めて嗤う。
「楽しい(イタイ)目に合わせてくれそうだから」
攻撃回数を増す代わりに、握ったカッターで時折自身をギィイと斬りつけ、派手に血飛沫を跳ね上げる。
視線が合った女を始め、ごっこと言った女はジャスパーの死角から手を伸ばさんとしたが、四方八方を牽制するようにアクロバットに立ち回るジャスパーに隙はない。
見落としても、八雲から声が飛ぶのだ――正確には言の葉を乗せた八雲の管狐が、ジャスパーの肩を叩くのだが。
誤って味方を斬りつける事などありえない。
それをするくらいならと、寿命代わりに己を切り裂く。
殆どの切っ先は白く華やかな腕を斬り裂き落とし、赤々と染める為、雨の匂いに混ざり周囲を埋め尽くすのは……。
「鼻がどう、と言ったのはどこのどいつだ?匂いで探せっつー割にはお前さんの血の匂いしかしねェぞこンにゃろう……」
切り飛ばし、消し飛ばした血煙よりも、断然ジャスパーの鮮血の方が派手だった。
此処に居る、と存在感をとても主張する――濃厚な赤い匂いが、広がっている。
「……まァいい、お前さんの血の匂いじゃ無ェ匂いが敵って事だ、援護するぜ」
手の空いた管狐が一斉に駆ける。
「見たいなら思う存分どうぞ」
視線の数で囲み、沢山の視線に赤面した顔を隠すように、隙間女はボロボロの腕で顔を隠そうとした。
「あゝ、どうしましょう……!!」
「女が鬼になる話はよく聞くが、『ごっこ』でもおっかねェなァ」
八雲の言葉が早いか、ジャスパーの動きがその先を魅せたか。
「照れてるトコ悪いけど、帰れねえ場所に連れ込まれるわけにゃいかねえんだなー」
女に向けて、絶命の一撃を存分に切りつけて、ズタズタに裂き――殺す。
「――バイバイ♪」
次なる隙間、狭間へ逃げ込もうとしていた女は壁際で、壁ドンならぬ壁の前で爆ぜて血滲みとなった。隙間に染み渡るものは、絶命前に見た"鬼"の満面の笑顔だった。
――嗚呼、怖い怖い。
すう、と視線を逸らした八雲がどんな表情であったのかなど。
誰も"見て"いないだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
生憎間に合っている
空理で消去
目標は戦域のオブリビオン
条件を満たす個体を全て纏めて始末
引き込みたいのなら、姿を見せれば気付いた個体は勝手に此方へ興味を向ける筈
無防備に見える様子であれば尚更だろう
故に特に何もせずとも条件を満たす
一手で戦域全てを殲滅とは行かないだろうから、移動しつつ終わるまで繰り返し実行
目標外へは影響皆無。遠慮も不要
自身への攻撃は『絶理』『無現』で否定し影響を回避
必要魔力は攻撃分含め『超克』で“外”から汲み上げ供給
通過点に時間は掛けん
速やかに終える
※アドリブ歓迎
栗花落・澪
色んな思いがあってこそとは思うけど…
それはちょっとわがままが過ぎるってものじゃないかな
女心の移ろいやすさは知ってるつもりだけどね
それじゃあの人達もいたたまれない
貴方達も…いたたまれない
誰でもいいは崩壊の元
みんなまとめて救いましょ
万一のために【激痛耐性のオーラ防御】を纏い
翼と★Venti Alaの【空中戦】で翻弄しながら
鬼ごっこくらい付き合ってあげるけど
僕が勝ったらもう、僕以外連れて行かないと約束してくれる?
それならいいよ
1人とは言ってないけどね
【指定UC】で分身を呼び
【破魔】を宿した光の【高速詠唱、属性攻撃】の一斉発射で【範囲攻撃】
隙間に逃げても、入り込む光は防げない
本来の愛情…思い出してよ
●いのちがけの"あそび"
"いっしょにいきましょう"、"鬼ごっこをしましょう"。
そんな隙間女の誘いに一分の隙もなく言葉を端的に返した男がいる。
「生憎間に合っている」
普段どおりの鋭い視線のまま、アルトリウス・セレスタイトは微動だにしない。
その男は目標の始末にのみ、考えを巡らせていた。
――まずは隙間に隠れている女をなんとかしなければならないが。
思考に導かれた唯一の答えは単純だ。
何もせずとも、ただ――誘き出して、やればいい。
故に、アルトリウスはキッカケと条件の起動を優先して、自らを囮に無防備を装う。言動も服装も、表情ですら隙がないと隙間女達は思ったが、不思議なことに無防備に見えた。アルトリウスもまた、先程の戦いで強さを主張した者。そんな存在が、無防備となれば当然女達の関心は、狙い通りにアルトリウスに向かう。
「そんな事をおっしゃらずに。……ねえ?」
欲しがる心が興味に一気に傾いて、己が一番安全に身を隠して居られるはずの隙間から、体を踊りだし瞬間的に手を伸ばし、アルトリウスに向かう。
一人の両手では手に余る、数で攻めれば一人くらいは……!
隙間女にも、焦りはある。
殺されつくされるのは、寂しいと。
胸の孔がどんどん増すような、しかし真逆の息苦しい、気が逸らせる。
「何体飛び出した?」
「さて。何人でしょう?逃げる気がないのであれば、逃しません。どうかこの手を」
"いっしょに"、隙間女たちはそう強く思っていた。
この手が触れたなら、きっと隙間空間につれていける。
アルトリウスが手を差し出すようにするので、余計に嬉しくなった。
「……凪げ」
隙間女達は感じた。
アルトリウスの言葉を受けて世界どこかがひび割れたように、空気の流れが変わったことを。戦域に広がるように隙間の影から覗いていた別の個体もまた、見た。
手を伸ばしていた複数の個体が、存在を消されるように悲鳴も断末魔も何もなく虚無に消えた女たちを。
アルトリウスは一歩も動いていない。
ただ、――力ある言葉が全てを無視してこの場所から。誰もが認識できない隙間へと存在を還すように消し飛ばし、削除したのだということは、分かった。
――色んな思いがあってこそとは思うけど……。
栗花落・澪は隙間女の不安定さを垣間見た気がした。
猟兵の力で虚空へ消えた者も、未だ此処に留まる者も。
雨に濡れた手すら拭くこともない。怪奇人間が、心に隙間を抱えている。
恐らくそれは、自身でも埋められない、"隙間"だ。
誰かで、それを埋めようと、物理的に手を伸ばす。
「それはちょっと、わがままが過ぎるってものじゃないかな?」
「殿方もご婦人も、区別をしてるはおりませんが……」
「うーん、そういう意味じゃないかな。女心の移ろいやすさは、知ってるつもりだけどね」
――先に還ったあの人達もいたたまれない。
――貴方達も、いたたまれない、……かな。
澪は苦笑するように、向き合う女を見た。
「誰でもいいは崩壊の元だよ?」
――みんな纏めて、救いましょ。
何が在ってもいいように、予め激痛を齎す可能性を排除するようにオーラを纏っている澪。翼と、靴の羽の力を利用して、隙間から隙間へまるで念動力のように浮遊しながら移動する女を翻弄する。
「鬼ごっこくらいなら、付き合ってあげるけど……」
空中を散歩するように、ふわりふわりと避けて躱すが、女たちが手を伸ばすので躱す事は容易。しかし、捕まらず倒されない鬼ごっこは永遠に終わらないもの。
「僕が勝ったらもう、僕以外連れて行かないと約束してくれる?」
「あなた、いがいを?ええ。ええ!約束いたしましょう。いっしょにいってくださるならば」
女は嬉しそうにした。
だが澪の返答は、女にとって予想外の言葉であった。
「それならいいよ。一人とは、言ってないけどね」
極めて小さい分身を、澪は呼ぶ。
その数を、女達が正確に数えることは出来なかっただろう。
小さな天使たちが破魔を宿した光を瞬時の詠唱で両手に集めて、広範囲――隙間をもめがけて――――照準を合わせた。
一斉に放つ光は、移動スピードすら上回る。
「隙間に逃げても、この光は入り込むよ。本来の、愛情を……思い出してよ」
輝ける光を消滅する程に浴びて、消え去る瞬間に。
「……目の届かないところで、置いていかれるのは」
――枕を何度濡らしても、耐えられるものでは……。
怪奇に成り果てる前、"閉まってでも"目を離すべきではなかったという後悔が聞こえた気がした。
「さて。どちらの力で還えされたい?」
アルトリウスの言葉は、誰が聞いても終わりの誘い。
「せめてもの安らぎを、というなら僕が……」
しかし、未だ捕まえ捕らえる事を諦めていないのであれば。
「この戦いは通過点だ。時間を掛けるつもりはないし、猶予は秒でしか与えない」
"鬼"さんこちら。
まるでそう促す背中を二人は見た。
"鬼役"をいつの間にか引き受けた形になった猟兵は、勿論その背中を逃さない。
見事に"殺して還した"この遊びは――紛れもなく、"猟兵の勝ち"だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルーナ・ユーディコット
嘆いたと思えば口説いてきて
尻も頭も軽いのか
或いは
隙間の利点、自分の優位をよくわかっているのか
……侮れない
ここは私自身を囮にして一網打尽にするのが最善手かな
捕まえに来るというのなら敵は必ず射程に入ってくる
周囲の隙間を纏めて攻撃するのなら私が使うべきは刀じゃない
咆哮だ
広い場所を探して、そこに駆け込む
出来るだけ自分の周りに奇襲を仕掛けられるような隙間は減らす
視線が交わって目が離せなくなったとしても、構わない
体が動けばいい
可能な限り多くの敵を引き付けて
引きずり込まれるギリギリで人狼咆哮を放つ
悪いけど、私には帰る場所がある
情熱的に見つめられたとしても
慕う人も顔見知りも居ない隙間に寄り道する暇はない
白寂・魅蓮
何もせずにただただ眺め見ていただけなのに、自分より先立つのは罪だなんてね…随分な人だこと
悪いけどあなた達のような悪いお姉さんに連れていかれるほど、僕は優しくないからね?
さぁ、隠れてないで一緒に踊ろうか。影踏み鬼なら得意だよ
彼女の隙間に少しでも触れれば危ない予感がする
【見切り】【ダンス】を駆使して敵の攻撃を避けつつ、一手に集めるように動こう
ある程度相手が密集したり、攻撃を加えてきたら【幽玄の舞「泡沫語リ」】で一気に散らしてしまおう
悪いけどお姉さん達にかまっている暇はないからね。
これで終わりにさせてもらうよ
(他猟兵との絡み、アドリブ歓迎)
心禰・白雨
「鬼ごっこ」?
羅刹に向かって自分が追う側の鬼とは大きく出たな。
逆だ逆。鬼が出た時逃げ隠れするのはてめえらの方だよ。
怪力で自分に掴みかかる隙間女の腕を逆に掴み
引きずり出して櫻狩で首を手折る。
お前が何を見ようと何処へ隠れしようと構わねえさ
しかしお前達の隙間が埋まろうと
俺の隙間を埋めるにはお前達じゃ役が足らない。
お前達は強い奴より寂しがり屋の仲間でも探すがいいさ。
怪力、第六感、武器受け、手をつなぐ、を使用します。
アドリブや絡みなど歓迎です!
●寄り添うモノが華ならば
「嘆いたと思えば口説いてきて」
――何だ、これは。
思わず何より先に訝しいんだ、ルーナ・ユーディコット。
「尻も頭も軽いのか、或いは……」
――隙間の利点、自分の優位をよくわかっているのか。
ふふふ、と笑う声はただ優しいが、それでいて底知れない声色。
「……侮れない」
ルーナの小さな呟き。
白寂・魅蓮が舞扇を閉じてそれに同意を示し、隙間女を見据えた。何処に居るかよく解らなくても、隙間から伸びた手の先に、女は確かに在るだろう。
「何もせずただただ眺め見ていただけなのに、自分より先立つのは罪だなんてね……随分な人だこと」
「先立たれるのは誰もが嫌に思うでしょう?ですから、貴方様も」
ゆるり、と差し出されるのは隙間から伸びた右手。
「悪いけど、あなた達のような悪いお姉さんに連れて行かれるほど、僕は優しくないからね?」
しかし、魅蓮は頷かない。目を細めて、口元に扇を当てて。
言葉の雨を降らせて"誘う"だけだ。
「さぁ、――隠れてないで、一緒に踊ろうか。影踏み鬼なら得意だよ」
ざわざわと揺れる隙間の華。
「…………」
ルーナが視界を振って、何処を見ても見えるのは、生き物感の薄い手ばかり。
捕まえようとするのなら、敵は必ず手の届く範囲に必ず入る必要がある。
何しろ"捕まえる"とはそういうことだ。
――周囲の隙間を纏めて攻撃するなら……。
なるべく広い場所を探して、突然駆け出し、身を滑り込ませるルーナ。
家々の隙間、野外に添えられた店の軒下。
どこからでも飛び出せるだろう女たちの奇襲の可能性を一つでも多く潰すため、成るべく隙間からは身を遠ざける。
――私が使うべきは、きっと刀じゃない。
「どちらへ向かわれておりますの?でもご安心くださいませ、いつでも見て、おりますから」
足が踏んだ水たまり越しに、隙間から覗き込んでいる視線がぶつかった。
捕まえたら絶対愛でるように大切にする、そんな感情すら狂わせて支配する可能性を齎す……慈愛に満ちた視線だった。
「それは別に、構わない」
生唾を飲み込んで、視線を離せない気持ちを僅かでも揺らがないものかと試みるが、囚われたのは感情だ。
どうすることもできなかった。だが、……体は不思議と、動く。
「まあ。まあまあ。それではずうと私を見ていてくださいませ。迎えに行きますから」
隙間から飛び出してくる複数の隙間女。
ルーナに手を伸ばして、引きずり込もうと力を込める。
「そう。でも、……」
そのあと、喉から飛び出したのは言葉ではなく威嚇するような激しさを持った衝撃波とよく似た声量の咆哮だ。
自身の耳にも届くその声色は、どう見繕ったとしても獣のもの。
無差別で、近寄ってきた女全てを対象に、拒絶の声を上げたのだ。
放たれた咆哮の威力にその体を吹き飛ばされて、周囲の壁に女達は無慈悲に体を打ち付けられる。
「悪いけど。私には帰る場所がある。例え、情熱的に見つめられたとしても……」
女達からの視線が断ち切れて、感情が自由になったルーナは目を伏せた。
「慕う人も顔見知りも居ない隙間に寄り道する暇はない」
隙間に攫われた先は、壁の前で頭を垂れる女しかいない。
ならば、ルーナは……全て、否定する。
「触れられても動じないとは……」
触れられれば危ないと予感を持っていた魅蓮は考えが正しかったと内心で頷く。
「消えされない程に、諦められないなら何度でもどうぞ」
踊るように伸ばされる手からその身をずらし、躱す。
まるで見切るように隙間と隙間、飛び出してくる移動を、見る。
周囲の隙間の数は多くない。移動は殆どが、直線。
わずかに軌道を変えて、隙間から隙間へ恐ろしい速度で――跳ぶ。
手は移動の"隙間"に伸ばされている。触れられれば、同じ速度で体は攫われ、見知らぬ狭間へ連れて行かれることだろう。
「機会をありがとうございます。ではいっしょにいきましょう」
見切ったハズの手が、一度確かに触れた。触られた。
いいや、最後のは。魅蓮はわざと、触れられた。
「隙間の中のお姉さんが触れていたら、話は違ったかもだね。でも、今のお姉さんは、……外にいるね?」
「ええ。でも、隙間までお連れする方法を別に用意すればいいだけのことですから」
一切抵抗しない猟兵は、居ないだろう。
仮に居たとして。それは回避、もしくは撃破に考えがあるためだ。
「諦められないならば、――心逝くまで、溺れるような渇望に、身を堕とし続けていただきます」
演じる言葉と同時に、装備の品々が一斉に夜の闇の中で咲き誇るように、姿を変じ、黒き蓮の花びらが、ふわああと重力を無視して舞い上がる。白い腕の華と合わせてモノクロに逢魔が辻の通りを染め上げていく――。
「まあ。綺麗……」
「お別れの花束にしては、闇色に黒々しているけれど」
――悪いけど、お姉さん達に構っている暇もないからね。
見える範囲、それらに向けて蓮の花びらは舞い踊り、死を誘う。
どんな表情をしていただろう。
死を間近に改めて認識して、寂しさに頬を濡らしたか?
存在する女の命の色を赤に染め、黒く黒く吸い込むにも惜しくなる闇色の美しさの中に消し飛ばす。
「桜の花びら、蓮の花びら。そして雨の中に咲く白い花々。――ああ、ほらどうしようもないほどに、夢物語のようでしょう」
蓮から元の武器に戻した扇を、一度開いて。
音を立てるように、演舞の終わりを教えるように――ぱちんと閉じる。
「……んで、なんだって?『鬼ごっこ』?」
幾つかの命が儚く消えたあと、その疑問符は、魅蓮の耳に届いた。
誰もが囁いた言葉を心禰・白雨は誰とは言わずに投げて返したのだ。
「羅刹に向かって自分が追う側の鬼とは大きく出たな?」
それでいて、追いかけ回す対象は猟兵で、誰でも構わないという。
拒絶されても手を伸ばそうとするのは、不安定な存在というだけでなくどうやら業も深いものであるのだろう。
「戯れに捕まえるのが……鬼というものでしょう?であれば私も同じようなものです」
隙間女が返答した内容に、白雨は疑問を浮かべるように首を軽く倒す。
「ああ、逆だ逆。……鬼が出た時逃げ隠れするのはてめえらの方だよ」
鬼役はあくまで"役"。鬼ごっこに当てはめて、女は、そう言葉にした。
しかし、その場に鬼がいないことで、"役"は演じられる。
もしその場に本物の鬼が、羅刹が現れたとしたら――影朧も追われる側だ。
「鬼っつーのは!」
隙間女から逃げ延びた者たちから、影朧は白雨へと標的を変える。
"鬼役"が鬼を捕まえる、その言葉もあまりに滑稽だ。
もしかしたら、最後のチャンスかもしれないと期待と不安が胸の中で渦巻く。
「お前が何を見ようと、何処へ隠れようと構わねえさ」
ただ見ているだけならこちらから、と白雨が隙間から伸びた手近な手を掴んだ。
形式上はまるで、握手のようだった。
しかしがっ、と怪力で力いっぱいに勢いよく引きずり出して、空中に放り投げる。
「しかしなぁ、お前達の隙間が埋まろうと、俺の隙間を埋めるにはお前達じゃ役が足らない」
赤い瞳を光らせて、白雨は女の手ではなく首を掴む。
「お前達は、強い奴より寂しがり屋の仲間でも探すがいいさ」
ごきり、と一つの華が摘まれた。
遠慮せず握り潰した喉元は、造作もない程に脆く。
怪奇に身を染めたこれは人間だった、と命を終えた女から、白雨は手を離す。
手折られた華の喉からは、たた色付けるように鮮血が――ごぽりと溢れた。
呆気ない程の終わり、ああ、見られているような雨が止んだ。
隙間からの視線が、――途絶えたようだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『花時雨の菖蒲鬼』
|
POW : 桜散らしの雨
【呪詛の雨】と【己の剣技を補助する大鬼の手】の霊を召喚する。これは【戦場全体に降る生命力を奪い己へ還元する雨】や【対象の攻撃を予測し弾き返す引っ掻き】で攻撃する能力を持つ。
SPD : 遣らずの雨
自身に【攻撃した対象に狂気が伝播する妖刀の呪詛】をまとい、高速移動と【対象の攻撃よりも先に繰り出す無数の斬撃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 身を知る雨
【周囲を漂う死霊の怨念】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【対象の悲しみを想起させる雨降る花菖蒲の沼】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:ゆきえなぎ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「千桜・エリシャ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●雨の中の剣鬼
――雨足が、不思議と強くなる。
先程までと異なって、雨粒はどこか重い気がした。
質量的にも重く、空間を作り出した誰かの影響が少なからず在るのだろう。
「ああ、いつの間にか居た誰かは消えてしまったんですね」
それが誰だったのか興味がないように、冷たい視線が向けられた。
雨の音は、しとしと、等とは生ぬるい。
瞳が映す色は、見かけよりも色濃く重い、花時雨。
逢魔が辻の中で舞い踊る桜のはなびらを、呪詛に染まりきった紫の雨が通り雨のように撃ち落とす。彼から齎される悲しみ、それが雨を呼び、傘を叩く。
「言うだけなら自由はあるでしょう。ですが――」
大切なものを守る為の力が、"その時"なければ意味はない。
刹那的な、その瞬間にこそ意味があるもの。
「この場所は、僕だけの庭。誰の立ち入りも許可できません」
例えこの場所が、現世の雨で綻ぶよな儚い辻だとして。
現世の雨と連動して――雨を降らせ続ける場所に、したとして。
「どうぞお引取りを」
誰に場所を潰される理由も無いはずだ。
剣鬼は意味を成さなかった妖刀を握り、切っ先を猟兵に向ける。
大鬼の手が、ぼおうと補助するように寄り添った。
「僕の庭への不法侵入のお詫びに、――首を置いていって頂きましょう」
御剣・刀也
ガキとも女ともとれる外見のやつだな
やりにくいが、その殺気は本物
こっちもマジで行かないとやばそうだ
雨で生命力を奪われつつも大して気にせず、鬼の手でこちらの攻撃を予測してはじき返すというのなら、はじき返せないような捨て身の一撃を反撃を恐れず、勇気をもって打ち込み、真っ向から両断する
不利な状況であろうと、相手が有利であろうと、闘いの場に立てばそれが自分のベストコンディション。よくなることも悪くなることもないので、大して気にせず、強い相手との戦いを楽しむ
「お前が強いことはよくわかった。行くぞ。お前の前に立ってるのは、人間だと思わないほうが身のためだぜ」
真宮・響
【真宮家】で参加。
お嬢さん、でいいのかい?アンタの居場所に踏み込んだのは申し訳なく思うが、ここが逢魔が辻で、アンタが影朧である以上、放っては置けないんだ。
アンタは誰かを護れなかったらしいが、いつまでも後悔を引きずっていてはいけないよ。転生して、新たに守る人をみつけたらどうだい?(真の姿解放。黒髪金眼になり赤いオーラを纏う)
牽制は子供達がやってくれるから、赤いオーラを纏って【ダッシュ】。【オーラ防御】【見切り】【残像】で攻撃を凌ぎきる。これがアンタの後悔なんだね。でももう終わりだ。【二回攻撃】を併せた浄火の一撃で邪心を燃やし尽くしてやるよ。
真宮・奏
【真宮家】で参加。
人を護れなかった、ですか。私も大切な人を護るのを信念とする故、その後悔のお気持ちは良く分ります。でもその後悔の気持ちをいつまでも引きずっていますと、先に進めないと思うのです。貴方が転生して、次の道に歩めるように、努力させて頂きます。(真の姿解放。黒髪金目になり青いオーラを纏う)
本命は母さんの攻撃です。蒼の戦乙女を発動し、上空を飛び回りながら【属性攻撃】【二回攻撃】【衝撃波】で牽制します。飛んでくる攻撃は【オーラ防御】【盾受け】【武器受け】で耐えます。必要なら上空から【二回攻撃】して即座に離れるなどヒットアンドウェイ戦法で相手を惑わせます。
神城・瞬
【真宮家】で参加。
(後悔の念を滲ませる麗人の姿に目を伏せ)無念ですよね。お気持ちは良く分ります。でも、こんなところにいつまでも彷徨ってはいけません。誰かを護れる強さを持つなら、転生して、新たな気持ちで生き直すべきです。お手伝いは、しますよ。(真の姿を解放。両目が赤くなり、銀髪になり銀のオーラを纏う。
月読の同胞を発動。同胞の攻撃と共に【誘導弾】【鎧無視攻撃】【マヒ攻撃】【目潰し】【部位破壊】【武器落とし】で攻撃します。本命の攻撃は響母さんです。容赦なく手足を狙い、刀での攻撃の冴えを鈍らせます。この攻撃が貴方の次の生への一歩の手助けになることを祈って。
御園・桜花
「いいえ。この地も帝都の一角に過ぎません。故に帝都の民が入り込む。貴女が何を想おうと、今の貴女は帝都の一市民…それを、ご理解いただきます」
UC「精霊覚醒・桜」で戦闘力強化し他の猟兵と共闘
攻撃を見切りや第六感で躱しながら、カウンターからの破魔乗せシールドバッシュで前線維持
戦いながら
「貴女を守って戦った者達のために独り自分を守り続ける。貴女に寄り添うのは、貴女の思い出の中の仲間だけ。もう一度それを手にしませんか。仲間の熱を、声を」
結界が緩み雨雲から空が少しでも覗いたら
鬼抱え帝都の空へ
「ここに貴女が守ろうとするもの、貴女を守ろうとするものがあります。今度は絶対独りしないから…転生、していらっしゃい」
●幽玄の夜叉
――しゃらり、ゆらり。
足元で鈴が鳴る。
妖刀を握り、落とす首を選ぶように周囲を見渡すそれは鬼。
雨の中でも姿は凛と、動きに合わせてリンと鳴る。
「ええと?お嬢さん、でいいのかい?」
「……ガキとも女とも取れる外見のやつだな」
真宮・響がそれとなく聞き出そうとすれば、御剣・刀也はストレートに疑問をぶつけた。しかし、花時雨の菖蒲鬼は悲しげな笑みを浮かべただけだ。
「さて、どちらだと思いますか?」
慣れているとでも言わんばかりにはぐらかし、わざとらしく、そう答える。
「ガキでも女でもそれ以外でも、やりにくさは変わらない」
はぐらかされた答えより、刀也は身に感じる明確な殺気の方を信じた。
女子供だろうと、眼前に佇むものは羅刹。――殺意がある。
――こっちも、マジで行かないとやばそうだ。
刀也が、生唾を呑むのを横目に、響はやれやれ、と溜めた息を吐き出した。
子を持つ母としては、一言物申したい気持ちも在ったからだ。
「性別は置いておくとしてもね、アンタの居場所に踏み込んだのは申し訳なく思うんだよアタシも」
「謝罪の言葉より、誠意の方が大事に思いますが?」
響が足元を指差して、首を横に振る。
「ここが逢魔が辻で、アンタが影朧である以上、放っては置けないんだ」
作り出した存在すれば曖昧なまま消え去らない夢幻が、逢魔が辻。
此岸と彼岸の境界すら雨の橋渡しで曖昧に繋いでしまう庭を、知ってしまったからには。
「……そう、この地もまたどのような形であれ、帝都の一角に過ぎません。幻朧桜の花びらが、この場所にも届いていますもの」
ふわりと灯る花びらの一欠片を優しく握り込む御園・桜花。
微笑みを湛えて見据えながらも、
「どのように言い繕っても、帝都の一角。故に帝都の民が入り込む。貴女が何を想おうと、今の貴女は帝都の一市民……それを、ご理解いただきます」
「帝都の一市民の影朧が、此処で雨に濡れているだけ。それの何がいけないのでしょう?」
視線を流すように、猟兵を見て薄く笑った。
「それと、わざと"僕"といったつもりなんですが……まぁ、いいです」
雨脚が局地的に激しくなる。体に当たる粒が、刺さるような痛さを引き連れて雪崩込む。目を凝らせば降り注ぐのは紫の雨粒。
「"ひとつ、数える彷徨う無念の声の数々を"……」
悲しみの詰め込まれた呪詛は濡らす肩から、負担を強いて、流れていく。
奪われるような脱力感。鬼が紡ぐ声色に、何かが持って行かれているような。
「……アンタは誰かを護れなかったらしいが、いつまでも後悔を引きずっていてはいけないよ」
響は赤いオーラを纏い、真の姿を晒す。燃える情熱の赤は何者にも崩せない。
普段は茶色の髪と瞳を、黒髪と鋭い金眼に彩る。
「母さんの言うとおりです、人を護れなかった、ですか。私も大切な人を護るのを信念とする故、その後悔のお気持ちは良く分ります」
真宮・奏もまた、青いオーラを身に纏って向かい合う。
茶色の髪を黒に染め、紫の瞳を金に煌めかせて。
「後悔の気持ちをいつまでも引きずっていますと、先に進めないと思うのです」
「……無念ですよね、僕も解らなくはないんです。むしろお気持ちはよくわかります」
神城・瞬もまた、無念の気持ちに同情するように言葉を紡いだ。
「でも、こんなところにいつまでも彷徨ってはいけません。誰かを護れる強さを持つなら、転生して、新たな気持ちで生き直すべきです」
目を伏せた瞬の長い金髪が次第に銀へと染まっていく。同時に体を銀のオーラが包み込む。
両目を開いて鬼を見返す時にはどちらも赤に染まっており、普段と異なる姿を親子揃いで見せつける。
「貴方が転生して、次の道に歩めるように、努力させて頂きます!」
「お手伝いは、しますよ」
「"ふたつ、常世に阻まれるは怨嗟の灯火"……」
雨脚を強め、呪詛の雨で叩く鬼は、聞き流すように言葉を紡ぐ。
雨を止めるつもりはないらしく、開いた傘に当たる粒の音を楽しそうに耳を澄ましている。
「"みっつ、不安定な身を隠した雨を"……」
「私は精霊、桜花精。呼び覚まされし力もて、我らが敵を討ち滅ぼさん!」
渦巻く桜吹雪を身に纏った桜花が、呪詛の雨粒を自分の周囲に寄せ付けない。
散らしても振り続ける呪詛を、浴びなければさしたる問題ではないと判断した。
「雨で生命力を奪っているのか?……ふうん?」
疲労の理由をなんとなく悟るが刀也はただ、現実として受け止めただけだった。
――鬼の手がこちらの攻撃を予測して弾き返すというのなら。
――なあに、弾き返せないような一撃を打ち込むだけだ。
「ほら、ほら剣を合わせたらなんとやら、だ!」
勇気を心に携えて。
日本刀を信じ真っ向から打ち込む刀也に羅刹は応じて妖刀で応じた。
「理解できるものがありますか?」
鍔迫り合いを通して刀也が理解出来るものは多くない。
質量として、冷たい呪詛が妖刀を強化していること。
心が凍りつくほど重く、焼き焦がされそうな程暴れる呪詛だ。
「……さあな」
「敵対者が一人とお思いなら、剣士というのは目の前に一途なのかしら」
桜花が羅刹の剣技に追従する鬼の手による追撃を、交わして見切る。
手しかその目に見えないが、質量の在る霊体。
そんな彼女が手にするものは、帝都であればよく見かけるもの。
退魔刀と同じ素材を元に作り出されたというそれは、銀に輝き、爪先を拒絶した。
バチィと音を立てて鬼の手が飛び退くように動いた事で、桜花に視線が行く。
「……そちらは?」
「ああ。こちら破魔の銀盆といいまして、戦うメイドならコチラの方がよく合うでしょう?」
キラリ、と見事に輝く御盆。
現役で働くパーラーメイドはどこでも職場感覚で持ち歩くものなのだろうか。
モンスタークレーマーを盆でいなし、先に進ませないと前線を維持するのに一躍を買っている。
「……貴女を守って戦った者達のために独り自分を守り続ける。貴女に寄り添うのは、貴女の思い出の中の仲間だけ。もう一度それを手にしませんか。仲間の熱を、声を」
桜の精はそう呼び掛ける。
「流石、言葉選びがお上手ですね」
「お褒め頂き光栄です」
立場を持って戦う者の、他人行儀のお世辞。
どちらもそれを押し付け合うが、その拮抗を切り裂く者もまた、あるもの。
「お前が強いことはよくわかった。行くぞ。お前の前に立ってるのは、人間だと思わないほうが身のためだぜ」
羅刹の握る妖刀に、怪力に抑え込まれて日本刀を振るわなかったわけではない。
周囲を飛ぶ大鬼の手の対処を任せて、考えていたわけでもない。
――不利な状況でも、相手がどんなに優位であろうとも。
――此処が戦いの場であるなら、身を置く俺は常にベストコンディションだ。
「この切っ先に、一擲をなして乾坤を賭せん!!」
呪詛を放つ妖刀を前にして、一歩後ろに飛び退き、持てる力を振り絞り大きく構えた上段からその太刀は振り下ろされる。
「……あなたもまた、見事な剣技ですね。お礼に首を頂こうかと思いましたが…………」
慌てて退くも間に合わず、羅刹は片角を落とされる。
額を一筋血が流れていくのを、雨が流すように霧散させていく。
刀也を見て、思わず口元が歪んでいた。
「でも、そうですね。お客様はお待ち頂けないようです」
溜息を一つ、何かをしようとしている別の方向に視線を向けた。
「月読の同胞、力を貸してください!」
瞬が発した言葉に応じ現る者は、月読の紋を付けた戦士。
弓を持つ者たちと剣を持つものが召喚され、同胞の、召喚者たる瞬の言葉を待つ。
「同時です、いきますよ!」
瞬と同時に、誘導の矢が放たれる。雨をも上回る切っ先の連撃。
「ああ物騒な雨ですね、でも……」
紡いでいた言葉を止めて、妖刀を軽く降って剣舞のように舞い踊る。
剣技を補助するように、大鬼の手が引っ掻くように矢を掴み、握り潰した。
「集中して振るのは優雅ではないですね」
距離を詰めてきた戦士の剣を、妖刀に流し込まれた渾身の呪詛で押し返して微笑んだ。剣を通して流し込まれた呪詛で体がまるで薪のように、轟々と黒に燃える。
「優雅で戦えるなら、戦いは常に綺麗なものですよ!」
ふわりと希望を身に豪華絢爛な青いドレス姿を纏って、上空を軽やかに飛翔するのは奏。透き通るような水色の翼を生やして、雨を気にせず飛び回る。
蒼の戦乙女が空よりブレイズセイバーを振るい、地上の鬼へと二重に放つものは水刃のように鋭利で鋭い、衝撃波。
「そうですね。綺麗なのは壊しがいがあります、とても良いと思います」
リン、と鈴を鳴らして大鬼の手が手のひらを切り刻まれるような剣戟を、抑える。
「飛ぶだけですか?呪詛は平等に降り注ぎます。"私"は特に困りませんよ」
ヒットアンドウェイに急降下してくる奏の剣を、呪詛を流した妖刀で受ける。
剣を交わした事で呪詛が雪崩れてくる感覚を持ったが、耐えて何も無かったように振る舞う奏の反対方向より、容赦なく足を杖で襲うのは瞬。
兄妹な二人の思惑は一つ。本命の攻撃は、自分たちではないから。
――今です、母さん!!
赤いオーラが、鬼の視界の隅で走っている。全力のダッシュは軽やかで、何者も止める者はいない。
雨粒を無視して、体に纏ったオーラを燃やし、残像を発生させて。
呪詛の雨を触れる前に燃やし尽くすような、熱い心意気で防ぎきっている。
「ははぁ、これがアンタの後悔の粒なんだね?でももう終わりだ」
ダッシュの勢いをそのままに響は浄火の一撃を繰り出す。
情熱の込められた一撃を、今日はおまけ。邪心を解かし燃やし尽くす二連撃で。
妖刀で受けた鬼の呪詛が揺らいで、霧散した。
真正面過ぎる攻撃に、祓われるものが、あったのか。
「二度三度、祓われる程度であったなら、私は此処で嘆いてはいませんね……」
改心を求められるだけでは――呪詛と嘆きを齎す雨は、やまない。
悔やむ心に振り続ける呪詛は、――刀身を何度でも覆うだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
春霞・遙(サポート)
UDC組織に所属して、UDC関連の一般病院に勤務している小児科医です。
行動の基本方針は困っている人が居るなら助けたい、人に害をなす存在があるなら退けたい。
戦う力はあまりないですけど、自分が傷を負うとしてもみなさんのお手伝いができれば嬉しいです。
基本的に補助に徹します。
「医術」「援護射撃」「情報収集」から、【仕掛け折り紙】【葬送花】での目くらましや演出、【生まれながらの光】【悪霊祓いのまじない】で照明や目印を付けるなども行えるかと思います。
攻撃は拳銃による射撃か杖術が基本で、その他はUCを使用します。
【悔恨の射手】【未来へ捧ぐ無償の愛】は基本的に使用しません。
シリアス以外ならいたずら好きの面も。
花盛・乙女
ははっ!剣士と仕合うのは久方ぶりだ!この羅刹女に業前を見せてくれ!
【黒椿】と【乙女】の二振りで先制攻撃。
鬱陶しい雨と化生の手が厄介だな。先ずは化生の手から捌く。
化生の手を狙い受けさせ、弾かれる前にもう一刀で重ねて押し斬る。
私の怪力は並じゃない。無事でいられるなどと思うなよ。
生命力の減少など気合でどうにでもしてやるさ。
貴様はこの雨のようにじめじめとしているな。
背中に剣は振れん。なれば、道を開く為に振るうのが剣。私はそう思うが貴様はどうだ?
二刀を構え、剣戟を楽しもう。
ひりつくような緊張感、一手先を読む、剣士の戦とは正にこれだ。
隙をみせれば、我が必殺の居合いをくれてやろう
■アドリブ共闘歓迎です
●忘却にて一閃
「ははっ!剣士と仕合うのは久方ぶりだ!」
目の前に現れたこの空間の主。
心持ち、足取りが軽い花盛・乙女は第一声に喜ぶ気持ちを隠さない。
「この羅刹女に業前を見せてくれ!」
その手に在るは、極悪刀・黒椿。在り方こそ悪刀、なれど花盛が振るうなれば、重く醜い刀であっても、無双の名刀となり敵を屠る。
そしてもう一対、小太刀・乙女がそれを支え暴れに華を添えていく。
どちらもを携えれば、羅刹女に無双の文字を背負わせ、勇ませる。
「……楽しそうで、なによりです。"私は"あまり好みませんね」
既に配置された布陣。
――鬱陶しい雨と、化生の手が厄介だな。
まず叩くべきは、と二振りで先制を仕掛け鬼の手に狙いをつけ、駆ける。
「残念。そこは意見の相違だ、なぁ!」
力任せに、黒き化生の手を黒椿で撃つと、予測された動きで指がデコピンをするように動く。
近づいてきた羽虫を扱うような動作。しかし弾かれるより前に、もう一刀、小太刀を重ねて勢いに任せ、爪を断たんと押し図る。
「二撃目は予想してませんでしたが、それもまた弾き返しましょう。雨に濡れる限り、最大火力には程遠いでしょうからね」
呪詛の雨にじりじりと削られるのは正常な呼吸を乱していくもの。
ぎりぎりと小太刀は手に押し付けられ続ける、異常な耐久力で、ばぎ、と嫌な音が響くまで。
「……!」
大鬼の爪は、ヒビがあった。
小太刀に斬られたものではない。これは……。
「私の怪力は、並じゃない。此処にいるは羅刹女だと言ったはずだ!」
――生命力の減少など気合でどうにでもしてやるさ。
押しに押されて、爪が砕けると同時に指が押し切られ切断された。
「無事でいられるなどと思うなよ」
「少し侮りました事はお詫びしますが……」
「あのうお取り込み中すみません。今、お困りですか?」
唐突に。しかし単刀直入に、春霞・遙(子供のお医者さん・f09880)が問いかける。相手の身なりは自身が担当する病院で、よく見かける頃合いだ。
――いえ……正々堂々の勝負となると、必要は無いのでしょうが。
同一の年齢頃、と問診票も無しで想定するには想像しづらい物があるが。
ふわりとしていても、問診と割り切るのなら困り事は正しく聞く義務がある。
「さて、どうでしょう。今この状態に困りはしていますが……」
――何故、そんな事を?
尋ねるのか、と疑問の感情が羅刹の胸にわずかでも渦巻いた。
「了解しました。重篤な病魔が此処にはあるようです」
ずるううと遙の白衣より、絡みつく紫の触手の群れが伸びる。
「いくつか質問をしますからね。怪我は?病状は?症状を細かく教えて下さい、どうですか?」
「角と大鬼が少々流血以上を少々。あと、即座に首を落したい苛立ちがわりと」
周囲に残留するものの、姿を保てない雑霊の類が近場で彷徨っている。
それを知っているのは、花時雨の菖蒲鬼が呪詛に慣れ親しむ体に染まっていたからか。自分以外の存在は、この場所に別に無くていい。
その気持ちに一切の迷いはなく、死霊の怨念を容易く遣い潰して武器の封印を解く。一瞬ながら溶ける妖刀から滲むのは、まるで刀身こそ雨といわんばかりに地面へ溢れ浸さんばかりの水。
雨降る花菖蒲の沼が、どろどろと足元に広がっていく。
薄く水面に移るものは、この場所と全く関係がなさそうな幻影。
面影は目の前の羅刹とよく似ている小柄な人影が、ふたつ。
――どこの、いつの、風景なのでしょうか。うーん?
「これでどぼん。そうすればもがき苦しんだ後に取れますね?」
愉しくないですけど、と小声で呟いていたが、遙の耳には届いていない。
それよりもむしろ、小児科医としてとても取り乱した。
「……流血!それはダメですよ、絶対ダメです!」
伸びた触手は羅刹の周囲にまで伸びて、何かを喰らうように咀嚼を繰り返す。
くちゃくちゃと、音が聞こえてくるが、目に見えて"何か"を食べているようには見えない。
「……これは、首を差し出されていると思っていいですか?」
「ヤンチャな玩具が欲しい年頃なんですね、分かります。人間相手の方が多いですけど、ホントたまにいるんですよね……」
触手の群れが喰らっていたのは、この状況への疑問。
わずかながらにでも、行われたのは遙が見た光景を、巣食った病魔と例えて一時の忘却を齎した。
「そうそう。それをしていいのは少なくとも……今を生きている子だけですよ」
「ふむ。……貴様はこの雨のようにめじめとしているな」
雨露を浴びながら、そこら中を埋め尽くす呪詛の水溜りが映すものは、どんよりとした黒々とした色。水にしては汚れがあり、重苦しく、乙女がいうようにジメジメが物理的に広がっていた。
「背中に剣は振れん。なれば、道を開く為に振るうのが剣。私はそう思うが貴様はどうだ?」
「護れるものは手の届く範囲まで。勿論限界はあるでしょう」
妖刀は形を取り戻し、菖蒲鬼が手で、すうう、と刀身を撫でる。
「……何をしても、"殺す"または"殺される"事は必要でしょうね」
「だな!それが己の道を閉ざす障害なら、剣士たるもの、強さに関係なく剣で語れ!」
菖蒲鬼は一時的に一部の記憶を忘却したことで――晴れやかな気分だった。
子供なら、愉しく遊ぶのが一番、と小児科医が施した処置がこれだ。
――"鬼は鬼と、あそぶべし"。ただし、ほどほどにですよ!
二刀を構え、剣戟の連撃を乙女が叩き込む。
呪詛の勢いを高めて怪力の限りに、菖蒲鬼が妖刀を振り抜くのを、皮一枚に躱す。
「剣士の戦とは正にこれだ。ひりつくような緊張感」
乙女がニィと口角をあげたと同時に、仕合う相手もまた、少し楽しげに笑った。
「では今此処に我が必殺の居合いをくれてやろう。とくと味わえ!」
わずかの刹那身を屈めて、渾身の力で地面を踏み敵目掛けて懐に飛び込む。
怪力の込められた跳躍。その速度はまるで、弾丸の如し。
閃く一閃が疾走る。一文字に切り抜けた切っ先が、鬼の血を滴らせていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
樹神・桜雪
【WIZで判定】※絡み、アドリブ歓迎。
……そうだね。『大切なもの』を守る力はその時になければ意味はない。その通りだよ。
同意はする。理解もなんとなく出来る。でも、やってる事に同意も理解もしたくない。
ちょっと痛いところを刺されちゃったから動きほ荒め。
覚えていないけれど、胸が痛い。なにこれ。
悲しみを蜂起させる花のせいなのかな。なら、刈り取らなくちゃ、ね?
凪ぎはらって花は刈り取る。そのまま武器を変換させて捨て身の一撃でUCを相手にぶつけるよ。
攻撃は第六感で見切って回避するね。
栗花落・澪
1人は寂しいよ
抱え込むのは辛いものだよ
吐き出す事くらい…許されるんじゃない?
【呪詛耐性】と【オーラ防御】を組み合わせた魔力のバリアで身を守り
それでも差し伸べる片手の平
無理に話せとは言わないよ
話したくない事もあるでしょ
どんな行動にも動機が存在するもの
僕は貴方を否定しない
【空中戦】で極力距離を取りながら
【優しい祈り】を乗せ
【催眠歌唱】で奏でる鎮魂歌
貴方に必要なのは、導きかもしれないね
花菖蒲の花言葉は優しい心
貴方の記憶にも残るなら
どうか思い出して
足元に★どこにでもある花園を生成
【指定UC】に合わせて風の【高速詠唱、属性攻撃】で舞いあげた
【破魔】の花弁を合わせて
命を奪う為ではない…心の闇を祓えるように
●花束をあなたに
斬られた分の反動で、よろり、とバランスを崩す菖蒲鬼。
その足取りにも関わらず、リンと鈴の音が規則正しく鳴らされる。
「斬り捨てるなら、いっそもっと派手にすれば良いんです。簡単に、そうされるつもりはないですけれども」
「……そうだね。"大切なもの"を守る力は、その時にないと意味がない。その通りだよ」
独り言のように、静かな同意で返すのは、樹神・桜雪。
――理解も、なんとなく出来る。でも……。
「君のやっている事に、真に同意も理解も示したくないね」
「だって1人は寂しいよ。ずうと此処に1人は、抱え込み続けるにも辛いものだよ」
――言葉を吐き出すことくらい……許されるんじゃない?
斬られても尚、諦めようとしない鬼を見て、栗花落・澪はそう思う。
「理解者は得られなくてもいいんです。"私"は此処で、静かに過ごしたいだけ。そう……邪魔さえしてくださらなければ、それで」
周囲に漂う重苦しい重圧が、ひとつ。またひとつと暗い紫に吸われるように。
微かな灯火として存在を主張する唯一と、燃えるように一瞬発光して、消える。
「だから、逃さないというならそれでも構いません」
ごおうと妖刀から溢れ出すのは、封印解除状態が齎す深い深い悲しみを思い起こさせる深淵。降り続ける雨によって領域を拡大していく、沼のような呪詛の領域。
暗い紫が炎のように、揺らめく。
「その代わり、"私"に首を落とされたとしてもご容赦ください」
妖刀を軽く振りかぶり、怪力をその足に。
リンッ、と鈴が激しい音を立てて、桜雪に剣先を向ける。
「ほおら、鬼を相手にするなら戯れられる事も考えないと」
薙刀の柄で受け流そうとしたものの一足遅く、振りかぶられた剣先に追従した呪詛の深淵が斬られると同時に纏わり付く。
人形の体に、想起させる雨が入り込む。
「……ッ!ちょっと痛い所を斬られちゃったなぁ、間合い的には避けられると思ってたのに」
ブン、と正確さが欠けた普段よりも粗さが目立つ振り抜きを、羅刹は飛び退いて躱す。斬られた傷よりも、チクリ、と痛む箇所は果たしてどこか。
――無くしたのは"いつ"だった?
――いいやそれは覚えている。"あの時"だ。
どうしようもない。断片。
今思い出す必要のない、桜雪が内心悲しいと思い続けている事。
――ボクの"無くした"モノの始まりは……。
「ううん、惑わすなら別の人にやりなよ。ボクは今も探しているんだよ、始まりは"痛み"の地点かも知れないけれど」
桜雪は胸を抑える。痛いと、思った。
斬られた事よりも、胸がただ、痛かった。
「正確に、鮮明に覚えてないのに……胸が痛い。理不尽な事を突きつけないでよ」
――悲しみを奮起させるあの花菖蒲のせいかな……?
「身を持って、確かな悲しみを知る事はいい機会ですよ。忘れているなら尚の事ね」
呪詛を通さないようにと耐性を上げて組み上げた魔力のバリアの中で、空中うから情緒が移り変わる様を見ていたオラトリオ。
「ううん、それは明確な拒絶かな。そうされても、……それでも差し伸べるよ」
澪は伸ばす、片手の平を。
「無理に話せだなんて、言わないよ。誰にでも話したくない事も、あるでしょ」
――どんな行動にも、動機が存在するもの。
「僕は貴方を否定しないよ」
「誰に否定されてもいいです。私が護れなかった事は、事実……」
羅刹との距離を保ちながら、短く歌を紡ぎ始める。
優しい祈りを乗せた睡眠歌唱で奏でられるモノは、鎮魂歌。
「貴方に必要なものは、導きかもしれないね」
――だって、花菖蒲の花言葉は"優しい心"。
「……"私"に、この庭を閉めて」
密かに荒れた心も、悲しがる気持ちも。
何もかもを鎮める祈りを乗せた歌声を、長く長く聞いていたのなら。
「眠るように忘れて」」
思考する誰もが、歌の中に眠りを見出していくことだろう。
「――"還れ"と、言うわけですね?」
「貴方の記憶にも、残る言葉があるのなら……」
ふわああ、と澪の足元に歌声に導かれて花弁の刃がふわりと溢れてくる。
舞わせるだけなら、彩られた綺麗で華麗な刃だろう。
息を吸う短い間。次の節に歌を切り変わる微かな歌の隙間。
澪は歌唱の短い合間に、高速で詠唱する。
それは、破魔の属性を、舞わせた無垢な刃に力を付与させる神秘的な断章。
「――どうか、思い出して」
紫菖蒲に彩られた羅刹に、花弁の刃が飛ぶ。それは、祈りによって形を定められた、命を奪う事を目的としていない楽園の欠片。
――心の闇を、祓えるように。
羅刹はその祈りに答えるように無防備、という動きはみせなかった。
"刃"である以上、立ち向かい切り伏せる。
切り伏せられた事で、足元へ花びらは落とされた。
一面が毒々しい色合いを、徐々に美しい花畑に変えていく。
「……ね?僕は、この花畑と同じように。手を伸ばし続けるから」
「でも、花だというなら、……刈り、取らなくちゃねぇ?」
足元を花畑に囲まれている羅刹に、桜雪は果敢に攻撃を仕掛ける。
切り結ぶ薙刀と妖刀では少々相性は悪かったが構わない。
刀に柄を叩かれる。何度も、何度も。何度も。
猛攻を受ければ薙刀の刃はどうしても届かない……が。
上ばかりの狙いに目をつけて、桜雪は留守の足を凪ぎ払う。
「足元を攻めるのも戦略には必要だよね、さぁ――仕上げだよ!」
大きく振りかぶった薙刀で、今度はこちらが首を刎ねる番、振るい風圧で吹き飛ばすのは封印を解かれ生き生きとしていた呪詛の沼。
払いのければこちらのものと、手にした武器にそのままの勢いで手放して。
冷たきモノが覆い尽くす吐息の如く、散り吹き荒れる氷の花びらへと変えていく。
殆ど距離はない。
その間近な距離から氷を束ねた即席の"花束"で、横薙ぎに。
冷たくて痛い、力で捨て身の覚悟でぶん殴る。
「刈られても尚、美しいモノが、"花"と言うそうですよ……?」
反撃と、ばかりに差し向けられた大鬼の手を見切って。
躱せしてみせれば、羅刹は流石に――嫌そうな顔をした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
出雲・八雲
ジャスパー(f20695)と
言葉は時に呪詛となる__
チッ。
俺は無責任に甘い言葉をただ連ねるのは嫌いなんだよ。
悪ィが言葉に責任が持て無ェ以上は屠らせて貰うぜェ。
あの世で転生できるよう、閻魔に泣きつくンだなァ
首が欲しい?
…(にィと笑って)
構わねェぜ?こンな骨で良かったらだけどなァ!
【餓者髑髏】
狂気?狂喜?まァ俺らにしちゃどっちも一緒だなァ
大将さんよォ、敵味方関係なく暴れて良いぜェ?
その方が楽しいだろ?
あァ?策士ィ?
あーはいはい、うるせェ
…ったくよォ。
一人で楽しく敵と踊りやがって
偶には俺も前に出て楽しませろっつーの
それ以上怪我したら憑り付いて治療すんぞ
ジャスパー・ドゥルジー
八雲/f21561
転生だ説得だなんてのは他のお人好しに任せるさ
そこまで面倒見てらんねェよ
ただまァ、『敵』を思いっきり斬るってェのも
それなりに気が晴れるかも知んねェよな
一肌くらいは脱ぎますか
ナイフ片手に肉薄
妖刀に身を斬られながらも喰らいつく
髑髏にゃ有難く巻き込まれさせて貰うさ
――狂気の伝播?
悪ィな、俺とっくに正気じゃねーんだわ
身を裂かれる歓喜を隠しもせずに嗤う
こんなんじゃ足りねェよ
仕留めてえなら本気で斬れ
あの骸骨よりもっと忘れらんねェ痛みを
なあ、はやく頂戴?
斬撃を無防備に受け
あがる血飛沫は【ユーフォリアの毒】で生成した猛毒
俺も倖せ、こいつも倖せ
俺ってば最ッ高の策士だと思わねえか、なあ八雲?
●意味在る言葉を
「"言葉は時に呪詛となる"__」
出雲・八雲はゆるりと長い袖を振って、その言葉をも転がすように呟いた。
誰が吐き出した言葉でも、それは確かな意味を持つ。
鬼でも狐でも、呪言として吐けば意味はさらに強まる。
例えば降り続ける雨が、呪詛に染まりきっているのと同じように。
呪詛と存在の証明は簡単だ、だが逆を叩きつけるとするならば……。
――チッ。
内心も、現実もどちらで舌打ちを二重に鳴らす。
「……無責任に甘い言葉をただ連ねるのは嫌いなんだよ」
「俺は転生だ、説得なんてのは他のお人好しに任せるさ」
ハハ、と笑いが漏れるジャスパー・ドゥルジー。
「そこまで面倒見てらんねェのよ」
すうと取り出したナイフを片手に。
頬を濡らすような雨が、鬼の目元を濡らしているのを流し見て。
「ただまァ、『敵』を思いっきり斬るてェのも……それなりに気が晴れるかも知んねェよな?」
これから使おうとしている刃を軽く、ちろりと舐めて。
ジャスパーの割り切った考え方と対象に、八雲はやや眉根を寄せた。普段の八雲の口の悪さのままストレートに言葉で殴るなら、多少は迷いがなかっただろうが。
此処はサクラミラージュ。相手はただのオブリビオンより不安定だ。影朧が、何らで傷ついた誰かであるなら余計に、少なからず言葉に責任が生まれる。八雲が仮に"癒やす"言葉を口にしたとして、ただ甘いだけの嘘だと自身を嫌悪しただろう。
「……悪ィが言葉に責任が持て無ェ以上は屠らせて貰うぜェ?」
「どちらも正しい意見だと思います。"私"がそちら側ならそうしたかも知れません」
菖蒲鬼はそれこそ無責任な言葉に、どちらとも言えない笑みで返答した。
「口は災いの元ともいいますからね、黙って切り結ぶくらいがよろしいかと」
妖刀を構えて、雨の寄って集まってきた行き場の無くし、形も無くした影朧を呼び集める。
ふわ、ふわと。振るう刀に寄って舞い踊るモノは黄泉にも行かぬ亡霊の残滓。
どれもこれもが何処かで傷ついた、誰かの破片。
「……まァなんだ。あの世で転生できるよう、閻魔に泣きつくンだなァ」
「よおし、じゃあ改まった黄泉送りに一肌くらいは脱ぎます、かッ!」
溢れる殺意を纏った菖蒲鬼が駆け出すと同時に、ジャスパーが疾走る。
「ひとはだ。成程、首の皮一枚までは誤差ですね!」
「ああ、……首が欲しいんだッたか?」
殺意から零れ落ちる戯れるような無邪気な雰囲気を持って菖蒲鬼が狙いをつけているのは、先程から同じ場所。
――……。
八雲の口角が不意に上がる。
ニィと笑って、ただ一度、音の通る拍手をひとつ。
「構わねェぜ?出て来いよ大将」
起き上がるのはガラリガラガラ音を立てて髑髏が起き上がり立ち上がる。
カタカタと何処からともなく音を鳴らして、八雲の声に応えて呼ばれて応えた骨を積み重ね。どんどん巨大化していく。
埋葬されずの怨念が、呪詛を道しるべに集まり力をためて手を伸ばす。
ああ、――これぞ妖怪餓者髑髏。
その手のひらからすれば、花時雨の菖蒲鬼は童の一人と大差ない。
「――こンな骨で良かったらだけどなァ!!」
「……なっ!?」
ジャスパーが肉薄するよりも早く、振るわれていた剣鬼の剣戟。
あまりの手際の良さに、鋭い剣風がバシバシとジャスパーに刺さり、容赦なく体を抉る。ナイフの刀身を当てる為に、斬られたとして怯まない。
そして一瞬の油断に肉薄し、喰らいつく。
「つゥかまーえた♪」
ぐうと腹部にナイフを突き刺して、にっこり笑ったジャスパー。
「大将さんよォ、敵味方関係なく暴れて良いぜェ?その方が――楽しいだろ?」
八雲の言葉にウォオオオオと大気を震わせる叫びを上げて、髑髏が大きく揺れる。
次の瞬間には、ジャスパーの頭上に髑髏の手のひらが降ってきた。
刺されたナイフをぐりぐりとされて、剣鬼諸共直撃を受ける。
敵もジャスパーも区別せず、餓者髑髏がカタカタ音を立てるばかり。
「狂気の呪詛に身を斬られても、そんな間近で私に触れても……なんとも無いのですか?」
かは、と吐き零された血に諸共に巻き込まれたジャスパーが首を傾げて。
「――狂気の伝播ァ?悪ィな、俺とっくに正気じゃねーんだわ」
痛みを受けながらも尚嗤うその顔で、べ、と覗かせる舌。
敵の攻撃で狂気が広がる事なんて、始めから頭の中に存在しなかった。
「狂気?それとも狂喜か?まァ俺らにしちゃどっちも一緒だなァ」
どちらも親しく恐れるものではない。
むしろ、共存して愉しむ感情と言い切ってもいい。
「――……狂ってる」
「いいねェ?褒め言葉だ。だがなァこんなんじゃ足りねェよ」
妖刀で真一文字に胸を切り裂かれ、一歩分飛び退いた鬼にジャスパーが畳み掛ける。
「仕留めてえなら本気で斬れ。あの髑髏よりもっと忘れらんねェ痛みを」
紫とピンクが入り交じる瞳を煌々と輝かせ、ナイフで自身の首を叩く。
「なあ――はやく頂戴?」
「遺すだけその首は戯言ばかりを語るのでしょう。ええ、……容赦しません」
首元の鈴を鳴らして、恐れを忘れたように剣鬼は相手を切り裂く剣戟を繰り出し続ける。ジャスパーは不思議とそれを無防備で浴び続ける――避けもしない。
避けもせずに、受け続け飛び散る血飛沫は、どんよりしたこの庭に彩られる目を喉を、ただ焼く紅となる。
呪詛を上回る流血の猛毒。直に浴びて、見に受けたら最後、多幸感が身を襲う。
「俺も倖せ、こいつも倖せ。俺ってば最ッ高の策士だと思わねえか、なあ八雲?」
剣鬼は、敵を切った数だけ浴びた血で、毒に溺れ、悲しみを忘れるだろう。同じく斬られた分だけ、痛みに今を楽しんでるジャスパーとなら、ウィンウィンの関係だ。
「あァ?策士ィ?あーはいはい、うるせェな……ッたくよォ」
斬って斬られて嗤い踊って。
その姿は実に幸福そうであると、八雲も認めるしかなかった。
「一人で愉しく敵と踊りやがって。……偶には俺も前に出て楽しませろっつーの」
文句も込みで、八雲の餓者髑髏がその手を振りかざす。少し待て、と止められていた、溜めていた残り二度の攻撃を、両手が両者に同時に降り注がせる。
「それ以上怪我したら、憑り付いて治療すんぞ」
「あ、それはそれでアリなのでは?」
愉しそうな声に、誰よりも血だらけの男が笑うのだから。それはそれ、――これはこれ、なのだろうが。攻撃から逃げ送れた剣鬼が、何度目かの血を吐いて睨んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
終わったものが滲み出てくるほうが、不法というものだぞ
自身への攻撃は『絶理』『無現』で影響を否定し回避
破界で掃討
対象はオブリビオンとその武装及びそれの全行動
高速詠唱を『刻真』で無限加速
『解放』で全力の魔力を注いだ天を覆う数の魔弾を「瞬く間もなく」生成
目標を押し包む形に誘導しながらの斉射
射出の瞬間を『再帰』で無限循環させ一切間を置かず射出を継続
魔弾も『刻真』で加速し射出と同時に到達させ、攻撃の密度速度で封殺
必要魔力は『超克』で“外”から汲み上げ供給
対象外へは無害ゆえ遠慮もなし
視界は遮るので他の者の動き次第で調整はする
以後消去まで継続
どこか似た容姿の女将がいたらある程度のところで任せる
※アドリブ歓迎
心禰・白雨
あんたがこの「雨の宿」の主人か。
俺は「花の宿」で似たような事を言う鬼に会ったよ。
どういう関係かは知らねえけど、どちらもいただけねえのは同じだな
雨は呪詛耐性で凌ぐ
羅刹旋風で妖刀白雨を回す
羅刹なら誰でも知っている技、相手も羅刹なら知っている筈
鬼の手は此方の動きを予測する。だがそれでいい
第六感と怪力、武器受けで大鬼の手を両手で凌ぐ
それで奴は剣技を使う、狙いは恐らく首
羅刹旋風を掛けた剣は両腕を押さえ握れずと、思わせた所でフェイント
鞘を膝で弾き霊刀櫻鬼斬を抜き、真横に噛み咥え破魔の力を宿した刀で斬る
一人じゃあんたの相手も無謀かも知れねえ。
だが、まだまだ現世にこんな馬鹿な羅刹もいると教えてやらねえとな……
ルーナ・ユーディコット
首を寄越せと言われて差し出す訳が無い
私は往来に自分の庭を広げた貴方にお引き取り願いに来たのだから
敵の攻撃で想起される悲しみは
ヴァンパイアに蹂躙される故郷から逃げた日の事
無力だった頃だ
力の目覚めは
天涯孤独になった後
悲嘆に暮れて死に急ぐように戦っていたこともある
自分の殻に閉じこもろうとしたことだってある
そんな私には差し伸べられた手があった
この羅刹はどうだったのだろう
悲嘆の雨の中ずっと一人だったのか
差し伸べられた手はなかったのか
訊いた所で果たして答えは
もし私と貴方の失った後の事が真逆なのだとしたら
私がかけられる言葉はないだろう
ただ力を示すことは出来る
私には再び大切を失わないための力がある、と
ヴォルフガング・ディーツェ
俺の良く知る友人に似た君よ、儚く、されど力強き君よ
この雨は遣らずの雨に非ず、要らずの雨であったというわけか
非礼なら詫びる事に異論はないが…其れで許しはすまい?
なら、此れより先は殺し合いのみだ
お前が愛した者の幻を見せるなら、俺はお前の未練を見せようか
魔導ゴーグルで相手を分析し、見切りで斬撃をいなして懐に飛び込もう
異形の爪で引き裂き「ハッキング」「精神攻撃」で鬼の心を抉る
教えてみろ
未練を何だ
願いは何だ
この庭に眠るものは、何だ
世界は残酷だ、だが希望はある
真に祈り願うのならば輪廻の路は開けよう
この場に留まる事は認められない
いつか…真に鬼へと堕ちる事は許さんよ
楽になりたいか、足掻きたいか
決めるのはお前だ
白寂・魅蓮
…不思議な人だ
貴方を見ていると妙にある女の人の顔が浮かんできそうなんですよ
もしかして彼女に近しい方なのでは…なんて思うのは、僕の勝手な思い込みだろうけどね
雨は好きだからお兄さんとは気が合いそうと思ったけど…この雨は僕の傘には好かないみたい
悪いけど首は置いていけない…代わりに僕が貴方に手向けの花を贈ろう
呪いのかかる雨を遮るように常に傘は手に持ちつつ、相手の呪詛は【呪詛耐性】で凌いでみせる
敵の刀が届く前に【刹那の舞「白夜公」】で白狼切の剣舞で一撃を与えてみよう
菖蒲の花…か
それでも僕は紫陽花のほうが雨には似合うかな
(アドリブ、他猟兵との絡み歓迎)
シズル・ゴッズフォート
アレンジ、共闘歓迎
―――そもそも、『過去』であるそちらが『現在』に不法侵入してらっしゃるのでは?
一先ずはお引取り願いましょう。その顔、どうにも主殿を思い出してしまっていけませんので
刀と大鬼の腕の攻撃を冷静に●見切り、騎士剣と楯での●武器/盾受けで防御に専念
雨に命を奪われている事を承知で半持久戦に持ち込み、菖蒲鬼の攻撃パターンを分析。防御精度を上げていく
楯を掴まれれば●バッシュで押し退け潰し。騎士剣を失おうとも騎士刀と槍があります。必要とあらば投げつけることさえ厭いませぬとも
この身の役は、防護と、時間の創出。勝つために、如何様にもお使い下さい
●暗く濡れし儚き黄昏の『雨の宿』
「首を寄越せと言われて差し出す訳が無い」
赤いロングマフラーで首をぐいっと隠しながら、ルーナ・ユーディコットは遠くを見るように、言う。
「私は往来に自分の庭を広げた貴方にお引き取り願いに来たのだから」
「雨と花が静かに濡れるだけで、ただ思い耽っていただけでしたのに。……『現世』は『幽世』の夢を見ないのでしょうか」
ここはどう在っても、境界が揺らいで不安定な者が勝手に集まってきてしまうのに。現世へ手を伸ばしていたのは、隙間に入り込んで勝手をしていた者たちだ。
菖蒲鬼はただ、さめざめと降り続ける想い重い雨を、傘に弾ませて佇んでいたに過ぎないという。
「――そもそも、『過去』であるそちらが、『現在』に不法侵入してらっしゃるのでは?」
「同意する。終わったものが滲み出てくるほうが、不法というものだぞ」
アルトリウス・セレスタイトもまた、そうだと思っていた。過去は過去、滲み出して不法占拠している事が問題なのだ――故に、重ねて同意を示す。
「一先ずは、やはりどうあってもお引取り願いましょう。この場に在るのは看過できません。……その顔は、どうにも主殿を思い出してしまっていけませんので」
シズル・ゴッズフォート(Cirsium・f05505)は渦巻く何とも言えない気持ちを逃がすように視線を逸らした。
「ああ。あんたがこの"雨の宿"の住人か」
心禰・白雨が強き者を見るように、ただ挑戦的に。
名指しするように、思ったことを口にする。
「俺は『花の宿』で似たような事を言う鬼に会ったよ。どういう関係かは知らねえけど、どちらもいただけねえのは同じだな」
"首"と聞くだけでも思い浮かぶ、此処には居ない常夜を思わせる桜鬼。
そう、此処には居ない。
その鬼が、此処に居たならば、どちらも同じ言葉を言っただろうか。
「本当に……不思議な人だ」
白寂・魅蓮はポツリ、と目にした感想を。
「奇遇、というよりは皆さん同じ、ある女の人を思い浮かべている気がしますけどね」
――もしかして彼女に近しい方なのでは……なんて思うのは、僕の勝手な思い込みだろうけど。
言の葉に乗せないのは、此処に居ない誰かに確かめていない事であったから。
憶測で尋ねるほど、目の前の誰かと親しいわけでもない。
知り合って、視線を交わして未だ一息の呼吸分しか知らない誰か。
「俺の良く知る友人に、似た君よ、儚く、されど力強き君よ」
ヴォルフガング・ディーツェは指差すように、幼子を見るように言葉を転がす。
「この雨は遣らずの雨に非ず、要らずの雨であったというわけか」
来客を帰さない為の雨と、いうものもある。
だがこれは、全くの逆とヴォルフガングは考える。
「非礼なら詫びる事に異論はないが……其れで許しはすまい?」
来客をもとより眼前の鬼は、求めていない。
この場の主はただ、不安定な身のまま此処で過ごして居たかったのでは、と。
「そうですね。"私"を見て"私"ではない誰かを観ているのが少々……失礼すぎやしませんか」
「そうかそうか。なら、此れより先は殺し合いのみだな」
言うが早いか先に動いたのは剣鬼。降り注ぐ重い雨より早く、自身が遣らずの雨となり。訪れた者の首を刎ねんと軽い足取りで駆ける。
その足取りはとても軽く、靭やかだ。
妖刀に狂気たる呪詛を重ねて纏い、剣鬼が魅蓮へ切っ先を向ける。
狂気の色に瞳を染めて。しかし握ったままの傘がぽつぽつと音を上げて。
「雨は好きだから、お兄さんとは気が合いそうと思ったけど……この雨は僕の傘には好かないみたい」
降り注ぐ雨は呪詛に侵され、綺麗な色とは表現し難い。
「悪いけど首は置いていけない……代わりに、僕が貴方に手向けの花を贈ろう」
先に届いた無数の斬撃を、雨を避けるようにするりと避けて。
重苦しい音を立てる雨は、先程までと重さも気配も大分違ったので魅蓮もまた、傘で受けている。
2種類の雨を受ける傘が、花開いたまま相まみえるのは、実に優雅の饗宴だ。
「手向けるモノは花よりも、欲するものは」
首、と言いそうだと察しがついた魅蓮はその言葉を、瞬時に抜いた脇差で妖刀を受ける事で遮った。
美しき刀身の銀が、きらりと光る。
魅蓮の瞳が一瞬の技の冴えを、その手に体に示して軽く息を吸う。
冴えた輝きを湛えて、閃く剣舞は凶悪な魂を纏う事で凍える程の冷たさを増す。
「白夜の闇へ、剣閃で消える事ができたならその首を添えてあげるから」
受けた妖刀を振り払い、夜叉と呼ばれた魂が狙う思惑を体が再現し、魅蓮自身、踊るように足を運んで剣閃を撃つ。
優雅に翔ぶ銀の白刃が、闇色幽世の色を鋭さで上回り切り裂いた。
遣らずの雨は、もうこの場に振らせない。
「菖蒲の花……か。それでも僕は紫陽花のほうが雨には似合うかな」
雨に似合う花が、彩る人が違うように。
咲く場所は誰もが選んで良いはずだ。
「雨が似合う?"私"以上に?戯れを……身を知る雨に浸るといいですよ、肩口どころか全身を、ね」
周囲に漂う形なき死霊の数は、猟兵が訪れたときよりも大分少なくなっていた事だろう。しかし悲しみに、呪詛に怨念にそれらは生者が有る場所に少なからず集い戻ってくる。怨念を使い潰して剣鬼の妖刀は封印を解かれ、本来の力を呼び醒ます。
広がるものは雨降る場を埋める幽鬼が好む、花菖蒲の沼。
怨念の有るかぎりに広がって、それらはその場に咲き誇る。
「……あ」
ルーナの足が、止まった。
「見事だが、しかしこれは行き止まりだ」
埋め尽くす程に広がった菖蒲の沼。
それを広げた羅刹。アルトリウスはそれらを、排除せんと動き出す。
胸の内に僅かに高鳴る鼓動が詠唱など不要とする――既に必要な文言は、高速にて必要な分は紡がれた。
障害を無視し万象を根源から消去する方向性を付与された蒼光の魔弾を放つのだ。
全力で魔力を注ぎ込んだ魔弾は、天を覆う数に展開される。
その総数を数える隙などあれば、300を超える煌々と光る星々の欠片だと、気がつけただろう。
「逃げる場など作らせない。瞬く間も無く、全てを身に受けてもらおう」
沼が破壊できなければ何度でも。
幾度となく降らせ続ける『再帰』の理また、アルトリウスがやめない限り繰り返され続ける。無限に循環する射出も、放つ魔弾ですら理によって補正と程を付与させているのだ。放つだけなら誰でも可能であろう。
攻撃の速度を加速させ、最高速度に到達させた所で差し向ければどうなるか。
蒼光の煌めきが、周囲一体の呪詛ごと吹き飛ばしてみせるだろう。
常に全力で放つ魔力の供給は、理の外から充填及び供給を果たしている。一部の隙もありはしない。
ずどどどど。
音だけならば、放られた弾丸の着弾。これらは永続的に続けられる。
無限充填され続けるガトリングが集中して砲火されていると言えば早いか。
砕かれた地面の煙があろうと。無残にえぐられた花菖蒲が宙を舞おうとも。
アルトリウスに容赦という言葉はない。
「対象外へは無害ゆえ、遠慮も無し」
すぐ近くに立つルーナが、術中に落ちたのか動かない事を気にはしているが。
相手が首を刎ねに来ない内に再び動き出せればいいと、攻撃を仕掛け続けて鬼をひたすら遠ざける。
気がつけば雨を浴びて、沼の中にぽつんと立ち尽くすような感覚。
それを自覚したのルーナが想起されたのもの。
――ヴァンパイアに蹂躙される故郷、か。
目に浮かぶようなその光景。
――私が無力だった頃だ。
暴虐が、破壊の限りを尽していた。
今もずっと鮮やかな色だ。
ルーナの頭の奥を焼いているそれは、忘れない。
――天涯孤独になった後、悲嘆に暮れて死に急ぐように戦っていたこともある。
悲しみは消える事無く、どんなに過激を極めても色濃く残るイメージを遺した。
――自分のからに閉じこもろうとしたことだってある。
――でも、そんな私には。
「……差し伸べられた手が、あったよ」
足を止めたルーナは、悲しみを胸に立ち向かうように相手を見据えた。
魔弾を打ち込まれ続けても尚、生存したままだろう菖蒲鬼に向けて。
――この羅刹は、どうだったのだろう。
――悲嘆の雨の中、ずっと一人だったのか。
「貴方へ差し伸べられた手は、なかったの?」
尋ねて見たいことは、考えれば考えるほど思い浮かぶ。
此処にずっと居た中で、"過去"でありながら、何を見て何を考えたのか。
「そのような手があったなら。きっと此処で雨を見てはいませんね」
剣を結び命を、体を削り合う事も。
妖刀の力を存分に発揮して、訪れた生者を追い立てる事も。
「"私"が護れなかった者は、私を亡くした事で少なからず救われているかも知れませんから」
「………そう」
いつの間にか止んでいるアルトリウスの作り出していた魔弾の豪雨が止んでいる。
果敢にも妖刀にて打ち払っていたのか、所々、衣服をボロボロにした剣鬼が佇んでいるのが、見える。
息を乱して。羅刹は立ちふさがるのだ。
その姿を確認して、ルーナは目をわずかに逸らして力を示す事を選んだ。
――ただ、力を示すことは出来る。
自身を焼く恒星の如き白き輝きは、ずっとその身を覆っていた。
現実ではない逢魔が辻の夜を照らす、強く輝く太陽のように赤い炎を放り、羅刹を炎の海に沈める。
「私には、再び"大切"を失わないための力がある」
「ああ、熱い熱い。痛いですよ。なんて事を」
自身の流血を指で掬って僅かに口に。
思っている事は本当だろうが、痛がる素振りは少々他人行儀に映った。
「そろそろ気が済みました?幻を消し飛ばして残る者はないでしょう?」
お引取りを、というのは口ぶりで。
僅かに手を空に示して呪詛の雨を、更に強める。
魔弾ほどの苛烈さはなくとも、身を叩くには痛いものを。
そんな雨を袖で僅かに凌いで、白雨が妖刀白雨を盛大に振り回す。
耳を済まさずとも聞こえている雨音とは違う、別種の雨音が周囲に微かに木霊する。白霞む妖刀が、その音を発しているのだ。
広範囲に降る呪詛の雨の中、振るう妖刀の意味を悟ってか、菖蒲鬼は僅かに黙った。その技は、羅刹であれば誰でも知っているモノ。
剣鬼もまた羅刹であるというのならこの技の意味を知っているだろうと、白雨はニィと強きに笑って。
「先を捕るのは、どちらでも良い」
何処を、何をと尋ねるのは無粋な行為。羅刹にその問いかけは果たして必要か。
怪力の限りに地面を踏みしめて、剣鬼を狙うがその攻撃は。
「届くモノはあるでしょうが」
子鬼の攻撃を、大鬼の手が予測し受け止める。
「届ききらねえと?どう、かなあ!」
受け止めて来るだろう箇所を第六感が予め感じていた。
予測ほど正確ではないにしても、怪力を込めた自身の妖刀であるならば両手で凌ぎきる事ができると。
「だってほら、両の手が多忙過ぎます。そろそろイイ時間になるでしょう?」
近場で聞こえるその声は、剣技を補助する大鬼の手を囮に、真一文字に切断せんと構えられていた。
敗北者に与える安らぎと、剣鬼は赤で彩る場所をふわりと見据えて笑って。
「だな」
嘘もなく、ざっくばらんにそう応え白雨が大鬼の手に掛り切りだと言うのは誰の目にも明らか。後は落とされる首があるだけ。
少なくとも、――菖蒲鬼はそうだと思った。
「俺は鬼であって武士でなし。ハイそうですかで落とされる理由は、ないけどな!」
白雨が使う刀は一振りではない。
もう一振りの鞘を膝で弾いて霊刀、櫻鬼斬を宙で抜く。
抜身の刀を真横に噛み咥えて赤い目を細める。
首を刎ねるならば、刀の届く間合いに来るもの。故に霊刀に、破魔の力を際限なく込めて子鬼が見せる悪あがきと、近づいた体を容赦なく斬る。
「……お見事。これは、一本取られましたね」
単身での相手を立ち回るには、白雨にはそれが限界だった。
「ヤンチャな事を考える羅刹が、まだまだ現世に居るものなんですね」
感慨深く思います、と菖蒲鬼は感想を述べる。
「お前は愛した者の幻を見せるのか?俺はお前の未練を見せようか」
魔導ゴーグルを着用し、ヴォルフガングは相手を分析し始める。
羅刹であるがゆえに、相応に立ち回って見せているが、終わりとはあるもの。
――では、その終わりの終着点は、なにか。
「未練なんて、朧気に見せるものであって叩きつけるものでは無いですよ」
危機を感じるのか、妖刀を向ける先を定めて、その足は軽やかに標的を狙った。
「では分析の間は私が」
狙われたのがヴォルフガングだと悟って、冷静に見切り、その間に剣と楯を持ってシズルは割り込む。
細身の剣にして、重く悲しい気配が込められた剣を、彼岸花の大盾で受ける。
地面に固定と穿つスパイクのある、護るに特化した蝶の模様もある大盾だ。
楯が妖刀何度も受けては、カキィイン、と耳に響く高らかな音が鳴る。
「絶対に通しはしません」
通さない決意を持って動きを制限されても、動かない。
絶対の防御をしてみせるという、硬い決意で更に防御を固めて。
それを、無敵城塞として自身を間に立てて、隔ててみせる。
「剣と盾。それは貫き見事に刎ねてみろという挑戦と受け取りますが宜しいですか?」
ガッ、と理不尽なほどの怪力で、大鬼の手で楯を掴まれるが、バッシュで押し退け潰すことで対処する。
実態があるのだ、潰せないわけはない。
「剣と楯、どちらもあれば防衛も、そして騎士剣があれば攻撃もまた出来るものです」
呪詛の雨は防ぐ覚悟を持ったところで命を奪われる事は変わらない。
楯と剣、決意を奪われないならば、立ち塞がり続ける。
シズルは、半持久戦に持ち込む覚悟で妖刀での連撃を受け流す。
「私の誇る防御の壁を越えられるのでしたら、どうぞ」
「楯だけだと油断するのは、良くないと思うが」
妖刀が楯に阻まれる瞬間を見切り、懐に飛び込んでヴォルフガングの腕は異形へその姿を変える。
瞬時のことだ、呪詛で変貌させるその手の爪は菖蒲鬼の体を逃がす距離にない。
ガッ、と叩くように異形の爪は物理的に抉り、流血を齎した。
分析した事柄からハッキングした言葉を、膝を折るその鬼へ、ヴォルフガングは振らせて二重に抉る。
「教えてみろ」
「……なにを、ですか」
「未練を。何だ。願いは何だ」
この羅刹が、この場で雨を見ている理由。
この場に引きこもっていたい理由。
「この庭に、眠るものは、何だ」
「……ここには、"私"が遺してしまったモノへの悲しみを隠しているだけですよ」
自身を亡くし、残された誰か。
自身もまた、護りたいものを護れなかった悲しみが、深い。
「成程。理由にしては脆く儚いな」
しかしヴォルフガングは否定しない。
「世界は残酷だ、だが希望はあるもの。真に祈り願うのならば、輪廻野の道は開けよう」
この庭を破壊しに来たのは間違いないが、良く知る友人に似た誰かに道を示して見るのは、一興。
「この場に留まる事は認められない。いつか……真に鬼へと堕ちる事は許さんよ」
「あゝ成程。どちらにせよ、この庭を終わりにさせたいんですね」
血塗れの菖蒲鬼が得たものは、果たして在ったか。
「楽になりたいか、それでも尚足掻き続けたいか――決めるのは、お前だ」
「……」
桜を散らす雨は、徐々に弱まっていく。
呪詛混じりの、重苦しい雨も。それに伴った、雨雲も晴れていく。
隙間だけでなく、外の、本来あるべき帝都の空も、晴れてきたのだろう。
「なんとなく、なんですけど。"私"を見て"私"ではない誰を思い描いていたのか、――分かった気がします」
きっと、この羅刹が護れなかった大事な"誰か"だ。
それも何人もが気にかける程の、存在となったのだろう。
「"過去"は"過去"。今を見るには"私は"『幽世』の雨に当たりすぎたのでしょう」
――なら。
「此処で、暗く重い雨に当たり続けているわけにもいかないですね……」
排除しようとする気持ちがなくなったのか、それとも既に限界だったのか。
羅刹の少年は徐々に無数の桜の花びらと姿を変えて散っていく。
「次を生きようとするかどうかは、――流石に"私"の勝手ですよね?」
「そうだな?好きにすると良い」
雨雲の隙間に空いた夜空に桜の花びらは舞い上がって飛んでいく。
花びらを舞い上がるのを見て、迷子にならないよう連れて行く、とその場で見守っていた桜の精が鬼だったもの抱えて帝都の空へ抜けていった。
「この場所は確かに閉じるけれど。今度は絶対独りしないから……転生、していらっしゃい」
誰かの願い。誰かの想い。それらが正しく受け取られたのなら。
雨の庭は、再び何処かで、何処かと何かを繋ぐ場所に居を構えるだろう。
常に降り注ぐ、雨に導かれたら――きっと、またあいましょう。
"その心の隙間を、埋めるものが、雨ならば"。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2020年02月06日
宿敵
『花時雨の菖蒲鬼』
を撃破!
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