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焼き菓子は甘い蜜と共に

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「……あれ?」
 アルダワ魔法学園の家庭科室。そこでは調理部に所属している部員たちが部活動の一環としてお菓子作りの真っ最中、だったのだが。
 オーブンの前で首を傾げる生徒に、声をかけた別の生徒が同じくオーブンを覗いてみた。
「うわぁ、火力が弱くなってる。これじゃ、ちゃんと焼けないよ!」
 オーブン内にセットされた鉄板の上、そこに平たく並べられた丸い生地は普段ならばサクサクに焼き上げられ香ばしさと甘い匂いを解き放って生徒たちを魅了する一品となるはずだった。
 しかし、現状は明らかに不十分な生焼け。このまま弱い火力で焼き続けたとしても結果はパサパサのボロボロ、期待とは程遠いものができることだろう。

「ん? あー、こいつだな。魔石が終わってるわ、力が出ないはずだ」
 一旦、停止させたオーブンを弄っていた生徒が声をあげ、黒ずんだ石のようなものを取り出す。
 どうやらこの石が火力の素らしく、周りの生徒達も原因の納得と、だからこその落胆の顔をしてざわつき出す。
「迷宮で……でも、これってあれからから採るやつでしょ?」
「どこに居るかわからなくない? 他で代用とかしたほうがいいんじゃ」

「……いや、さっき先生たちが外で話してたんだけどさ。ちょうど今、迷宮から上ってきてるらしい」
 その言葉に、先程までとは別のざわつきが起こった。
「えっ!? それって」
「あぁ、聞いた話じゃ……」


「やっほー、集まってくれてありがとっ。早速、説明を始めちゃおうっかな」
 空中に投影された映像のように少しだけ床から離れてぷかぷかと浮きながら、グリモア猟兵のカンパネルラ・ラフィナートはニッコリと笑う。
 バーチャルキャラクターの彼女の周囲には様々なモニターが浮かんでおり、そのうちの一つを指でなぞるように操作してから、最後にボタンを押すかのような動作。
「今回の目的は、これだーっ!」
 バッと片手を横に広げ、背後に大きく投影した映像に猟兵たちを注目させるように告げた。

 そこに映されていたものは、様々な焼き菓子。
 さくさくクッキーにしっとりタルト、ワッフルはふわふわでパウンドケーキやマドレーヌは視線を釘付けに存在感があった。

 ごくり、と猟兵の誰かが喉を鳴らす……。

 その様子に首を傾げたカンパネルラは背後を見て……慌てて、映像を切り替える。
「おわぁ!? こっちはさっきまでわたしが見てたやつだ! えーと、これじゃなくて、こっちこっち」
 大画面に映されて問答無用で見せつけられた焼き菓子のインパクトを場に残しつつ、新たに映し出されたのはアルダワ魔法学園の迷宮と思わしき場所と、ゴツゴツとした岩のようなゴーレム。
 そこまで映ってからゴーレムの腹部を拡大したものが一回り小さな画面にコピーされ、赤く透き通る宝石らしきものが表示された。

「えー、今回みんなに行ってもらうのはアルダワ魔法学園。迷宮を上ってきているのはこのゴツゴツゴーレムさん。見ての通りめっちゃ固くてパワーもあって、大変面倒くさい。ただ動きは遅いみたいだから、戦い方次第では楽かもしれないねー」
 映像内のゴーレムの周りに、力強い! 動き遅い! などのメッセージが追加されていく。

「それで、こっちはゴーレムのお腹の中にある石だね。魔力を多く含んでいて、力を加えると熱を生み出すんだよ。この熱でお菓子を焼くとサクサクふわふわになってとっても美味しい……そんなわけで倒したら回収して欲しいんだよね。結構頑丈だから、戦うときは気にしなくて大丈夫だよっ」
 ゴーレムを倒し、この石を回収する。それが猟兵たちの今回の目的となる。
「どうやらねー、学園の調理部が使ってたオーブンが駄目になっちゃったらしくて、この石が必要なんだってさ」
 だから任務とは無関係なんだけど、と言ってから……あははっ、と笑うカンパネルラ。

「オーブンが直ったら、お礼に焼き菓子をごちそうしてくれるって言うんだよねっ。しかもしかも迷宮には甘ーい蜜を持ったスライムもいて、その蜜で作るものがまた絶品なんだってさー!」
 今日一番の笑顔で告げながら、ビシッと宣言する。
「では、美味しいお菓子のため……ではなく、学園のために頑張っていこうー!」


よいづき
 皆さんはどんなお菓子が好きですか?
 マスターのよいづきです。
 今回はお菓子作り……とスライムとゴーレムをボコボコにします。

 1章で甘い蜜をゲットして、2章でお菓子を焼くためのオーブンの部品を手に入れ、3章で焼き菓子を作ったり食べたりが全体の流れとなります。

 カンパネルラが説明しましたように、ゴーレムが持っている魔石につきましては気にせずに戦闘プレイングを送っていただいて構いません。
 最後にポロっと落ちます。
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第1章 集団戦 『蜜ぷに』

POW   :    イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ   :    ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

雪華・グレイシア
【POW】

やれやれ、ここは暢気だね。相変わらず……
とはいえ、甘いモノはボクも嫌いじゃない
少しお仕事と行こうか

歌と共に霜の巨人を呼び出して、勇者ぷに と戦士ぷにの相手をさせるよ
凍ってしまうのは苦手だろう? キミたち

巨人に引きつけてもらってる間にボクは本体の蜜ぷにへダガーで切りかかって、呼び出しのを消してもらうとしようか
こういう知的なやり方が怪盗のやり方ってわけさ
見た目だけが可愛いくらいじゃダメってことだよ


十河・アラジ
スライムかぁ……これなら戦い慣れてないボクでも相手できそうだね。
アルダワに来るのも初めてだし、ちょっと楽しみだ。

戦闘では基本を大事に、できれば仲間と連携して戦うのがベストかな。
敵の攻撃には絶望の福音で対応してなるべく攻撃を受けないようにするんだ。

この蜜ぷにはどうやら仲間を増やすみたいだね……
厄介そうなのは賢者ぷに、かな?
とりあえず召喚されたら優先して攻撃するよ。

戦闘では体内に封じられてる鎧を右腕と両足の部分だけ解放して装着して戦うよ。
武器は使い慣れてるこの十字剣(黒剣)を持参していくね。

美味しいお菓子、ボクもすごく興味あるからがんばるよ。
父さんや母さんにもお土産に持って帰れたらいいなあ……


氷室・癒
「クッキー、タルト、ワッフルー、パウンドケーキにマドレーヌっ!」
おっかし! おっかし! 蜜の味!
女の子は甘いものが大好きっ! いやしちゃんも当然大好きっ!
たくさん集めて焼き菓子ゲットです!

スライムさんたちをまとめて倒すようなことはできませんが、気合だけは満タン!
甘いものへの情熱でがんばりますっ!

具体的にはスライムさんたちを集めますっ!
以前も微笑めば集まってくれましたし、きっとできるはずです! ……で、できるといいな!
そしてそれを別のスライムさんたちにぶつけます!
目には目を! 歯には歯をっ! そしてスライムさんにはスライムさんですっ!

ふふふふっ! 今度は囲まれたりしませんからっ!
ごーごーごーっ!




「ぷにっ」
「ぷにぷにー?」
「ぷにっぷにっ」
「ぷにーっ!」

 ……なんだこれ。
 十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は目の前でくりひろげられる光景に困惑を隠せなかった。
 この場には自分だけではなくもう一人、迷宮内で鉢合わせになった氷室・癒(超ド級ハッピーエンド・f00121)という元気いっぱいな少女がいる。今はぷにぷに言っている。
 迷宮内で鉢合わせになり、しばらく行動を共にすることになったのだが……何故か彼女は今、集まった蜜ぷにたちと楽しそうにしている。

 迷宮を進んだ先で遭遇した蜜ぷにへ、初めて対峙する存在にアラジが注意深く観察していると、癒が笑顔を向けてきたのが始まりだった。
「アラジさん、ここはいやしちゃんにお任せです!」
「この蜜ぷにはどうやら仲間を増やすみたいだね。なら先に倒すべきは……え、何かいい手があるの?」
「はいっ!」
 自信満々の笑顔。その笑顔を信じたアラジは、癒にこの場を預けることにした。

 一体なにをするのか。アラジが見守る中、まるで散歩でもしているかのようにとことこと無防備に蜜ぷにへと近づいていき……。

「ぷにーっ! いやしちゃんですよー!」

 両腕を広げながら、満面の笑顔を咲かせる癒。無垢な子供のような仕草と、愛らしい表情には彼女の魅力がぎゅっと詰まっていた。地上に舞い降りた天使とは、彼女のことを言うのかも知れない。
 
 最初は驚いた顔をしていた蜜ぷにであったが、可愛らしい笑顔に当てられたのか、癒が持つふんわりとした空気に流されたのか、ぷにーぷにーと鳴き声をあげて笑う。
 ぷにぷにと言い合う癒と蜜ぷに。その声に惹かれていくように、段々と集まってくる蜜ぷにたち。
 今では癒の声なのか蜜ぷにの鳴き声なのか判断が難しいほどに、ぷにぷにのオーケストラが始まっていた……。


「やったやったーっ! いっぱい集まってきました!」
 見渡すかぎりの蜜ぷにを前に、これで蜜もいっぱいだと喜ぶ癒へ、アラジは問いかける。この後はどうするのかと。まさか集めるだけ集めて目的達成、なんて無いと。今一度、彼女を信じたかった。

「ふっふーん! こうするんです!」
 癒は近くにいた蜜ぷにを一匹、掴み。
「目には目を! 歯には歯を! そしてスライムさんには……スライムさんをー!」
 
 ――投げる!!

「えぇ……?」
 困惑するアラジの声
 ふわーっと投げられた蜜ぷには、別の蜜ぷにへとぶつかり、そして……ぺたっとくっつくだけに終わった。

 静まり返る周囲。
 沈黙を破るように投げられた蜜ぷに、そしてその様子を見ていた蜜ぷには笑うのを止め、人間に敵対する魔物として明確な敵意をぶつけてきた――アラジに向かって。
「なんでっ!?」

 アラジは叫び声と共に、体内に封じ込めていた呪鎧を解放。
 右腕と両足が装甲に覆われたのを確かめてから、手にした巨大な十字剣を振り下ろす。
 それは飛びかかってきた蜜ぷにをやすやすと切り裂き、勢いのまま叩きつけた床へ蜘蛛の巣状の亀裂を描き上げた。
 蜜ぷにたちは次々と飛びかかってくるが、それらは全て剣で防がれ、飛び退くように避けられ、そして動きに合わせるように斬られていく。まるで何をしてくるか、わかっているかのように。

 五匹、十匹……もはや蜜を採る暇もなく次々と蜜ぷにを迎撃していくアラジだが、内心は余裕がなかった。
 なにせ数が多い。しかもこっちは一人だ。いや、もう一人居るけど、投げた蜜ぷにと蜜ぷにをくっつける作業で忙しそうなので安全っぽいうちは放置しておくことにした。

「踏ん張り時だけど、さっすがにシンドいなぁ」
「なら、お手伝いしようか?」

 その言葉と同時に、アラジの後ろから伸びてきた腕が蜜ぷにを殴り飛ばす。
 地面を転がっていく蜜ぷにの体は徐々に凍りつき、蜜を含む氷の塊へと変わっていた。

「ふぁ……くしゅっ!」
 ついでに癒の可愛らしいくしゃみが響いた。


「やれやれ、ここは暢気だね。相変わらず……でも、こんなに集まるなんて珍しいかな。実はパーティの最中だったり、なんてしない?」
 氷の結晶を思わせる青い髪と瞳、そして顔を隠すマスク。怪盗の格好をした雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)は、自身が呼び出した霜の巨人を傍らに立たせながら、首を傾げる。
 緊張感の欠ける蜜ぷにたちは相変わらずとして、ここまで集まっているのは何か理由があるのか。上がってきている災魔が原因なのだろうか、と。
 仮の姿として普段はアルダワ魔法学園に生徒として通う雪華は、迷宮についても二人より熟知している。だからこその疑問だったのだが……。
「まぁ、うん、色々あって……あ、助けてくれてありがとね。ホント助かった」
「あっ! はじめまして、ぼくはいやしちゃんでーす! 助けてくれてありがとうー!」
 二者二様の反応をするアラジと癒に、構わないと手を振る動作で応える雪華。

「それじゃ、少しお仕事していこうか。一網打尽もいいけど、あの手のやつは……」
 霜の巨人が動き始める。大きく腕を振りかぶり、咆哮を放ちながら蜜ぷにが集まっている場所へ冷気を纏う拳を叩きつけた。
 直撃したものは氷を砕くように粉々に、周囲に居たものはピシピシと表面に氷を張られていく。
「ぷにぃぃ!?」
 その様子を脅威と感じ取った蜜ぷにたちは、巨人を止めようと次々に飛びかかる――だが、その内の数体は動きを止め、溶ける雪のように体が崩れて蜜の溜まりへと変わっていった。
 
「凍ってしまうのは苦手だろう? キミたち……だからわかるよ。隠れるなら、もう少し上手くやるべきかな」

 巨人と戦う蜜ぷにたちから少し離れた場所に、ダガーを持ったまま雪華は静かに足元に広がる蜜を見る。
 凍らされるのを嫌がり、他とは少し違う動きをするもの。呼び出した蜜ぷにに戦わせ隙を伺っていたものを、怪盗の目は見過ごさなかった。

「凄い……よし、ボクも負けていられないな!」
「いやしちゃんも頑張りますよー!」
「え? まだやるの……?」
「はいっ!」

 そこからは猟兵たちの猛攻だった。
 数は多いとは言え、一匹一匹が独断で動くだけの魔物。仲間に背を預け、助け合いながら戦う猟兵たちに叶うはずもなく。

「えーいっ!」
 癒に投げられた蜜ぷにが他の蜜ぷにとくっつく。
 くっついた蜜ぷにの体は、即座に霜の巨人が放つ凍てつく空気に当てられ離れることも動くこともできず、その場で置物のように固まっていく。

「とーりゃーっ!」
 癒に投げられた蜜ぷにが他の蜜ぷにと……。
「前は任せて! コイツで、一気に!」
 飛び込むように地面を蹴り上げ、十字剣を後ろに引くように構えながら突撃していくアラジ。凍りついた蜜ぷにと、冷気で動きが鈍い周囲の蜜ぷにを――横薙ぎで一気になぎ払う。
 大型の剣、そしてアラジ自身の力が加わった横薙ぎは周囲を切り裂き、余波で蜜ぷにを吹き飛ばしていった。

「どうだーっ!」
 癒に投げられた蜜ぷにが……。
「もう全て見極めたよ。あとは、終わらせるだけだ」
 その声は飛ばされた蜜ぷにの傍から。他のものには目もくれず、呼び出した本体と思わしき蜜ぷにたちを次々と刈り取っていく雪華。
 懐に手を忍ばせ、最後に残った一匹へそれを放つ。

「君のお宝……ではなく、甘い蜜を頂くよ」

 怪盗の予告状が突き刺さった蜜ぷには、静かに沈黙した。


 そうして最後の一匹が蜜へと変わり、三人の力で蜜ぷにの軍勢を撃退した。三人の力で!!
 甘いものは嫌いじゃない、蜜を詰めたビンを手に取りながら口元に小さな笑みを浮かべる雪華。
 ここの用事は済んだと別のエリアへ向けて歩き出す雪華を、癒が引き止める。

「あのあのー! せっかく仲良しになったんですから、このまま一緒に行きましょーよー!」
「おや、ボクは見ての通りの怪盗だよ、そこまでつるむ義理立てはないと思うんだけどね。というか、仲良くなった気もないんだけど」
「えー! 一緒ならハッピーいやしちゃんなのにぃ! むぅむぅー怪盗さんのいじわるー! アラジさんはどうですか! 一緒のほうがハッピーですよねっ!」
「……え?」

 頑張って集めた蜜、そしてこれで作るお菓子。美味しいって聞いたけどどれくらいなんだろう。父さんや母さんへのお土産にも欲しいし、持って帰りたいな。
 色々な激闘を終え、蜜を集めながら思い馳せていたアラジは癒の言葉にやっと状況に気づき……そっと雪華の隣に歩み寄る。

「あー、うん。もちろんボクもそう思うな!」
 答えながら、そっと肘で雪華をつつき、小声に。
「頷かないとずっとこのままだと思う。あの通りだし……」
「……だろうと思ってたけどね」
 イエスしか受け付けてません、とでも言いたげなキラキラした瞳を受けながら、ため息混じりにこくりと頷く雪華。

「やったーっ! それではでは、次へゴー! おっかし! おっかし! 蜜の味~」
 ぱぁっと笑顔の花を咲かせてから、ご機嫌な歌と共に歩いていく癒。
 顔を見合わせて肩をすくめてから、アラジと雪華はその背中へ続いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エリカ・ブランシュ
(※アドリブなど歓迎)

報酬に美味しいクッキーを食べれると聞けば気合も入るわね!
で、その為にスライムって奴の甘い蜜と、ゴーレムって奴の石が必要と。
とりあえず、先に見つけた奴から倒せばいいわね。って、言ってたら早速……ってなにあれ!
「か、かわいいわね……。ねぇ、一匹連れて帰っていい?……ダメ?」

とりあえず、【オーラ防御】と、トリニティ・エンハンスの光の魔力で防御力を高めてから可愛いのを【おびき寄せ】て、相手の攻撃は【盾受け】で凌ぎながら味方の攻撃チャンスを作るのに専念するわ。
(攻撃しにく過ぎるのよ……。あの子達……)

「ねぇ……。やっぱり一匹連れて帰りたいんだけど……」


リーファ・レイウォール
※連携・アドリブ歓迎

さてと魔物から取れる蜜で作るお菓子ね
蜂蜜みたいなものかしら?
見た目もグミとかキャンディみたいだし……
スライムなら、近いのはゼリーかしらね?

食事は辛い物が好きだし、辛いお菓子も好きだけど……
甘いお菓子は、やっぱり美味しいものね
俄然気合が入るわ
「お菓子の材料になってもらうわ」

行動指針【WIZ】
UC【梨花の暴風】に【全力魔法】【高速詠唱】を乗せて一気呵成
背中に背負った【第八聖典】を花びらに変えて
「梨の果汁も蜂蜜もないけれど、喰らいなさい」

通常攻撃は魔法で遠距離から【属性攻撃】(紫青色の炎)が主体
近づいてきた敵には『Frisches Blut』で【なぎ払い】×【衝撃波】で攻撃




 甘い蜜を使った美味しいクッキー、任務後に待つお楽しみに気合十分と迷宮に訪れたエリカ・ブランシュ(寂しさに揺れる白い花・f11942)は、そこで出くわしたものに予想外の苦戦を強いられていた。
 甘い蜜を持っているというスライム。その姿は……。

「か、かわいいわね……。ねぇ、一匹連れて帰っていい?……ダメ?」
 その呟きは誰に向けられたものなのか。

 ゼリーやグミといったお菓子を連想させる蜜ぷに。大変可愛らしい姿でぷるぷると震えているが、油断することなかれ。これでも、凶悪な魔物であることに変わりはない。
 それを証明するように、エリカの姿を確認した蜜ぷには体を揺らしながら一生懸命走りだし、ぽよんと跳ね上って襲いかかってきた。

「うわっと!?」
 蜜ぷにの姿に戸惑っていたエリカだったが、そこは猟兵。考えるよりも先に、迎撃するように手にしたレイピアで一閃するエリカ。
「ぷにぃぃっ!?」
 柔らかな蜜ぷよの体をあっさりと切り裂く……。
「うっ……!」
 エリカの手がぴたりと止まり、レイピアを引いて代わりに盾を前に構えた。

 そんなわけで、執念に突撃してくる蜜ぷにを盾でいなしながら、今に至る。
 しかもぷにぷにと鳴き声(?)をあげながら呼び出した別の蜜ぷにたちが駆けつけ、数も厳しくなってきた。
 さらにこの蜜ぷにたちはみんな色と表情が違うという厄介さだ。
 反撃か、撤退か。脳裏を巡る選択肢にエリカは歯を噛み締め……。

 ――真紅の刃が蜜ぷにを真っ二つに切り裂いていった。


「苦戦しているみたいだったけど、大丈夫?」
 黒い長柄の大鎌を振り抜き、巻き起こる刃の衝撃波で複数の蜜ぷにをなぎ払いながら、リーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)は、蜜ぷにの猛攻を凌いでいたエリカと、今も増えていく蜜ぷにたちを見渡す。

「あ、ありがとう……えぇ、大丈夫よ」
「それなら良かった。美味しい蜜が取れるって話だったけど、この数じゃ大変ね……」
 どこかにこの集団を呼び出している大元の蜜ぷにがいるはずだが、この数では見極めるのは至難だ……それならば。
「この数なら、一掃してしまうほうが早いわね。さっきの今で申し訳ないのだけれど、もう一仕事だけお願いしてもいいかしら?」
「一掃……わかったわ。護りはアタシに任せて!」

 エリカは力強く頷くと、リーファと蜜ぷにの間に壁を作るように陣取り、トリニティ・エンハンスを発動。
 本来は炎、水、風の魔力を使うものだが……。
「光よ、力を貸して……っ!」
 レイピアに宿された光の精霊、その魔力を使い自身の周囲に光でできたオーラの膜を展開、防御を固めて、迎え撃つ体勢を取った。
「さぁ、どっからでも来なさい! 後ろへ行けるとは思わないことねっ!」
 襲いかかる蜜ぷにを正面から次々と受け止め、押し返すように盾で吹き飛ばして下がらせる。
 先程までとは違う、誰かを『護る』ための戦いならば……迷いなど微塵も存在しない。


 自分を護ってくれる背中を見つめながら、パチンとベルトの留め具を外し背負っていた聖書、第八聖典の中から一冊を選び取るリーファ。
 開いた聖書を掲げ、高らかと読み上げる。それは詠唱か、聖書の一節か。紡がれていく言葉に呼応するように、パラパラとページがめくられていく。

「梨の果汁も蜂蜜もないけれど、喰らいなさい」

 蜜ぷにの攻撃を防いでいたエリカは、ふと周囲の空気が変わったことを肌で感じた。いや、もっと明確な……その瞬間、背後から無数の花びらが吹き荒れて蜜ぷにたちを押し返していく。
 エリカが振り返った先には、周囲に舞うページが次々と梨の花びらへと変わりゆく様と、視線に気づいてくすりと笑うリーファの姿。
 舞い上がる花びらはまるで意思を持っているかのようにエリカを避け、蜜ぷにへ襲いかかる。それは花びらの津波か、嵐か。圧倒的な質量と力は一切の抵抗を許さず、その場にいた蜜ぷにの悉くを飲み込んでいった。

「甘いだけではないのよ、梨って」

 花びらに覆われ、次々と体を細切りにされていく蜜ぷにたち。梨の花びらの暴風が収まる頃には二人以外動くものはおらず、蜜の甘い香りが鼻をくすぐる。
 周囲を覆い尽くすほどの花びらがリーファが手に持つ聖書へと戻っていき――ぱたりと表紙を閉じた。
「お疲れ様。守ってくれてありがとう」
「おつかれ……色々と疲れちゃったわ」
 周囲に散らばる蜜の溜まりを見渡して、二人はそれぞれほっと息をついた。

「さて、使えそうな蜜は集めて、次を探しましょうか」
 好みは辛い物だが、それはそれとして甘いものだって美味しい。
 ビンに集めた色とりどりの蜜に上機嫌のまま、再び迷宮を進むリーファ。

 続こうとした足を一旦止め、蜜ぷにが居た場所を見つめるエリカ。
「……うぅ、やっぱり、一匹……いやいや」
 何かを振り払うように左右に首を振り、エリカも歩き出したのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

秋冬・春子
「お菓子ってお酒のおつまみになるかしら? きっとものに寄るわよね!」

今回はまずなんだかスライムに出会いそうだわね!
出会わなくても、お菓子用の蜜があれば美味しくお菓子を作れそうだから、積極的に探したいところよ!
で、見つけたら酒瓶で殴りつけるの。
ごめんだけどこの世界は弱肉強食。私達のために食材になってちょうだいとばかりに酒瓶で殴るの。全力で。
倒せたら酒瓶に採取した蜜を詰めましょうかしらね。ちょっと風味が変わるかもしれないけど、それはそれよ!
万が一反撃があれば・・・・・・その時は、真っ向から酒瓶を叩きつけるのよ!

※アドリブや他キャラとの絡み歓迎しております。


メルエ・メルルルシア
オーブンの故障は大変だよな、オレもパン屋で働いてるから分かる
よし、妖精さんが力を貸してやる……上手く行ったらお菓子持ち帰りさせてくれ。オレがその場で食える量なんてほんのちょっとだし、いいだろ?

まずはスライム退治だな……とりあえず弓から水の蛇を打ち出して攻撃するぜ。基本はこれで押し切れると思うが、スライムが合体してきたら、水で出来た竜を呼び出してぱくりと食べてもらおう

水竜様、ごつい顔して甘い物好きなんだよな、まあ召喚した竜は水で出来てるから、いくら蜜ぷにを食べても最後に甘い水が残るだけなんだけど

基本後衛タイプなんで、誰か前衛タイプの奴がいれば助かるな
他の参加者と協力、行動やセリフの追加等大歓迎


リグレット・フェロウズ
……参ったわね
あの娘には面倒をかけているし、手伝うのはやぶさかではないと来てみたけれど……
私の技は蹴りと炎。蜜集めには不向きね
……私も踏みつけた蜜を口にしたくはないし

と、悩むけど、まあ素通りすることもないわね
「イザ、ボクラノ~」を使った所に手袋を投げつけ、
「控えなさい下郎。その者たちに攻撃を命じることは、私が許さない」
ルールの困難さはこの際関係ないわね
傷つけば、解けるのでしょう? その技は

役割上、誰かの攻略に助力する想定。2度しか使えない手だしね
3度目? 甘えないで
この私に、蜜塗れの手袋を拾って嵌め直せと言うの?

一応、蜜は小瓶にでも回収していくわ

アレンジ、誰かとの連携(特に寮が同じ人など)歓迎


ミーユイ・ロッソカステル
蜜ぷに。
先日もこの子たちとまみえる機会があったけれど。

……びっくりするくらい、歌に夢中になってくれたのよね、この子たち。
……もう一度くらいは、いいでしょう。えぇ。


「誘惑の口づけ 第7番」を、聴衆へと聞かせるように。
より多くの蜜ぷにを虜にし、動きを止められるように。

……最終的には、蜜のために倒すことになるのでしょうけれど。
えぇ、わかってるわ。わかってる、のよ。

……ごめんなさい、ね。


なんて、またも複雑な気持ちを抱えつつ。
……毎回、情を移している訳にも……、と葛藤しながらも、あくまで歌い続けるのだった。




「なるほどオーブンがなぁ、それは大変だ。オレもパン屋で働いているからわかる。焼き加減ってのは、この小さな妖精さんボディのように繊細だからな。死活問題だぜ」
「そうよねー。私もこの前、もう良いかなぁって勝手にオーブンから取ったクッキーがまだ中身生焼けで死にそうになったわぁ」
「それ、100%お前が悪いじゃねーか」

 酒瓶片手に赤くなった顔のまま秋冬・春子(宇宙の流れ星・f01635)は迷宮を歩く。別に何かあったわけでもなく、既に酒が入っているのだ。一応、ほろ酔いくらいに留めているので問題はないと言い訳しながら、ぐびっと酒瓶に口をつける。
 そんなお酒の香り漂う春子の隣をふわふわと飛んでいる全長約25cmの小さな妖精、メルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)は呆れ顔を向けた。

「それにしても、お菓子ってお酒のおつまみになるかしら?」
「チョコで飲んだり、って話は聞いたことあるな。クッキーとかだと、酒のほうを辛めにしてみてるの……いや、オレは両方甘口でも良いかもしれない」
「ものに寄るってことね! ふっふー、早く試してみたいわー」

 妖精の見た目では分かりづらいが、こう見えてメルエは人間でいう成人を超えた大人。そして大の酒好きでもある。
 同じくお酒が大好きな春子と、おつまみ談義に花を咲かせながら、目的である蜜ぷにを探していた。
 しかしこの広い迷宮、手当たり次第に歩き回るには骨が折れる。談義もお菓子の話題からこの前食べたお鍋、その具材で適した酒のおつまみはなんだったかに移ったところで……。

 ふと、迷宮を進んでいた二人は足を止める。

 耳に聞こえてきた、微かな歌声。迷宮の壁に反響しているようで小さいが、距離はそう遠くない。顔を見合わせて、自然と足を進めていった。


「ぷにー……」
「ぷにっぷに」

 寄せ合うように集まりながら、歌声に聞き惚れて時折ふるふると感動で体を揺らす蜜ぷにたち。
 集まった蜜ぷにたちが注目する視線の先に、ミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)は居た。
 唇から零れていく静かな歌声を聞いた蜜ぷには、まるで心に口づけを交わされたかのように動きを止め、ふにゃりと力を抜いて歌声に気持ちを委ねていく。
 金色に濡れる瞳が見つめる度に、伸ばした指先が何かを掴み取るようにゆっくりと閉じられる度に、聴衆となった蜜ぷにはミーユイの虜になっていったのだった。

 その様子を嬉しそうに微笑みながら、内心に別の気持ちを巡らせるミーユイ。
 自分の歌声に夢中になってくれる蜜ぷにたち。それは、最終的には蜜のために倒さないといけない魔物たちなのだ。
 わかっている。この歌も、多くの蜜ぷにを集め、動きを止めるためのもの。
 わかっている。誰に言われずとも……そのために今、歌っているのだから。

 ならば、この歌は誰かへ向けてではなく、ただ自分の都合で歌っているのだろうか?

 ちくりと、胸の奥に何かが刺さった気がした。
 気のせいかもしれない。目的のために集めて、魅了し、そして倒す。
 毎回、情を移しているわけにもいかないでしょう……?
 そう思いながらも、別の感情が乗り始めた歌を紡ぎ続けていく。

 蜜ぷにたちはその歌声にまたふるふると震え、集まってくる――。

「あー、やっぱり居たー!」
「聞こ覚えのある声だと思ったんだよなぁ。おーい! おーい!!」

 なんか別のも集まってきた。


 歌うのを止め、現れた二人をきょとんと見つめるミーユイ。
 視線に答えるように暢気に手を振って駆け寄ろうとした春子とメルエは、足元を覆う蜜ぷにたちへ視線を移した。

「ぷに?」
 蜜ぷにたちも、未だ夢見心地な目で同じく二人を見上げる。この二人は誰だろう、と。ぼんやりとした思考のまま、ただふるふると震えていた。
 そんな蜜ぷに春子はミーユイを見て、再び視線を蜜ぷにへ。

「はい、どーん!!」
「ぷにぃぃぃ!!?」

 殴り飛ばす。そりゃあもう容赦なし、酒瓶での全力の一振りだった。軽々とかっ飛んでいった蜜ぷには壁に叩きつけられ、ぺちゃっと地面に落ちて物言わぬ蜜へと変わった。
 その様子に先程まで騒いでいた蜜ぷにたちが、しーん……と静まり返って春子を見つめ――はっとしたように、一斉に襲いかかってくる。コイツは敵だと、本能が告げた通りに動き始めた。

「お前、容赦ねーな。妖精さんのミニマムハートもびっくりして止まりそうだったぞ」
「何を言ってるの! この世界は弱肉強食ぅ! 食うか食われるかの過酷な世界のなのよ! 見なさい、あの凶悪さを!」
「ぶっ飛ばしたせいだと思うけどな。まぁ、どのみちやるんだけど……さ!」
 飛びかかってくる蜜ぷにへ弓を構えるメルエ。手に矢は持っていないが、その代り周囲から少しずつ水分が集まり手のひらに収まっていた。
 それが今度は蛇の形へと変わり――放つ。
 水の蛇に噛みつかれ、地面に落ちて転がる蜜ぷにを尻目にメルエは透明な翅を羽ばたかせ、蜜ぷにたちをひとっ飛びしてミーユイの傍まで移動する。

「大丈夫かおい。この数だと大変だっただろ。ま、ミーユイの歌が聞こえたからオレたちもここがわかったんだけどな!」
「……ええ、大丈夫。そうね、ちょっと張り切りすぎた、かも」
 心配するメルエに答えながら、ふぅ……と小さく息を吐くミーユイ。
 単純でシンプルな思考を持つ蜜ぷには、楽しそうなことがあれば喜び、邪魔をするものは倒す。
 ミーユイの歌も、その楽しそうなことの一つであり、それが無くなればこうやって襲いかかってくる……今も視線の先の春子が、呼び出された数々の蜜ぷにに埋もれながら酒瓶を振り回しており、大変なことになっていた。

「ぷにぃーっ!」

「ちょ、そっち行ったー! ごめーん!」
「うぉぉ!? ちゃんと引きつけておけよー!?」
「何しているの……」

 少し感傷的な気持ちが生まれそうになっていたミーユイだが、目の前の騒がしさに再びため息をつく。そんな暇はなさそうだと。
 呼び出された勇者ぷにと戦士ぷには春子を素通りして、メルエとミーユイへと向かってくるところだった。
 メルエは弓を構え、ミーユイは動きを止めるため歌を紡ごうと口を開いた。
 どちらが早いか、その様子を眺めながら呼び出した本体の蜜ぷには安全なところにこそこそと移動し……何かがぺたっと体にくっついたのを感じて震える。

「控えなさい下郎。その者たちに攻撃を命じることは、私が許さない」

 響く声と共にぴたりと、飛びかかってきた蜜ぷにが止まる……張り付いたものはどうやら手袋のようだった。
「ぷにっ?」
 蜜ぷにの思考は単純だ。一度驚いたものの、聞こえた言葉の意味など理解しようともせず、再び勇者ぷにと戦士ぷにへ攻撃の命令を出す。
「ぷーにー…………ぷにぃぃっ!!?」
 その瞬間、なにかに殴られたかのように地面を離れ、空中を吹き飛んでべしゃっと地面に落ちる。
 同時に、呼び出された二匹も動きを止め、崩れ落ちるように蜜へと変わっていった。

 刻みつけられたルールを破るものには、罰を。
 燃えるような赤い髪を揺らしながら、一人の女性が姿を現した。


「……貴女たち、騒がしいからすぐわかるわね」
 吹っ飛んでいった蜜ぷにと、蜜塗れになった手袋から視線を外し、リグレット・フェロウズ(幕開けざる悪役令嬢・f02690)は見知った顔を眺める。

「まったく、何を遊んでいるの? まだやることはあるのだから、片付けるなら早くしなさい」
「待ってお嬢! 遊んでないわ、むしろ私すごいことになっているのよ!」
「そうだそうだー! オレは真面目だー!」
「私はちゃんとやることやったわ」
「ミーユイちゃんはむしろ集めすぎだと思うわ。見て、私のこの姿……えぇい、まとわりつくな!」
「そうだそうだー! よく考えたら、オレって飲み込まれたらひとたまりもなくない? やべぇ、蜜ぷに怖えぇ」
「春子が向こう見ずなだけでしょうに、あともしかして酒入ってる?」

 途端に騒がしくなる面々に、ひらひらと扇ぐように手を振って呆れ顔を返すリグレット。
「はいはい。蜜を集めるのでしょう? 私の技はこの通り、焼き尽くす炎だから蜜集めには不向き、あなたたちに頑張ってもらわないと」
 トン、と爪先で地面を鳴らすと、そこから黒く燃え盛る炎がリグレットの脚を覆っていく。見せるためだったのですぐに消しはしたが、蜜ぷにたちは怯えるようにリグレットを見て離れていった。

「お菓子にする前に燃やすのは駄目よねぇ。じゃあ、さっきの手袋バシーン! ってやつは?」
「何度も使えないわ。この私に蜜塗れの手袋を拾って嵌め直せと?」
「そりゃ無理だな。よっし、やっぱオレが居ないと駄目だな! しょーがねーなー、プリティな妖精さんに任せておけ!」
「よろしく。司令官のような奴が居るようだから、それらから優先的に倒していきましょう」

 小さなおててを握りしめやる気十分なメルエと、ブンブンとバットのように酒瓶を振り回す春子。
 炎以外では蹴りが得意なリグレットだが、自分が足蹴にしたものを回収するのは気が引けると、前には出ずに全体の指示を担当することにした。戦場を俯瞰し見極める。味方を優位にして敵の動きをコントロールするように。
 そうして二人に指示を出しながら振り返り、ミーユイに視線を送る。

「ミーユイもそれでいいかしら?」
「ええ、わかったわ……リグレットはやること無いんだし、蜜集めていたらいいんじゃない?」
「それは雑用をしろということ? いい度胸じゃない」
「まぁまぁ、ほら行くぞっ! オレについてこーい!」
「おーっ! うっ、大声出したらお酒が出てきそう……っ」

 この集まった面々、実は全員が同じ寮で暮らしを共にする仲間である。
 それぞれが自分の考えで行動し、そして偶然にも迷宮の中で居合わせた。
 見知った顔と気の置けない間柄、これだけの人数が集まればそこはもういつもの空気が生み出されていく。騒がしいが、どこか安心する。

「騒がしくて考える暇もないわ……」
 ミーユイは胸元に手を添え、皆を援護するように、再び歌声を響かせていく。
 ちくりと感じた胸の奥は、もう痛くはなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ストーンゴーレム』

POW   :    ゴーレムガード
全身を【硬質化して超防御モード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ゴーレムパンチ
単純で重い【拳】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    ゴーレム巨大化
無機物と合体し、自身の身長の2倍のロボに変形する。特に【岩石】と合体した時に最大の効果を発揮する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 迷宮を進んでいった猟兵たちは、大きく開けた部屋へと辿り着く。
 障害物の無い正方形のシンプルな作り。天井は遥か高みへとあり、横にも縦にも動くには十分な広さだ。
 その部屋の中央におかれた大岩……人間の背丈を優に超えるそれは、部屋へと入ってきた猟兵たちに反応をしたのか、ゴリゴリと岩が擦れる重い音を立てながらゆっくりと動き出す。
 
 ――そう、この大岩と思われていたものこそが、この迷宮のボス。ゴーレムだ!

 体はゴツゴツとした岩の塊。人間でいう顔の部分には隙間があり、そこから二つの光、目のようなものが猟兵たちを捉えている。
 知能はあるのかないのか、少なくとも侵入してきた猟兵たちを敵と認識しているのは確かなようだ。
 鈍重な動きで四肢を動かしながら、ゆっくりと攻撃の意思を表していく。
 
リグレット・フェロウズ
「あぁ、良いわね。余程分かりやすい」
蜜ぷに相手に手を抜いた分、前に出ましょう

「鈍いわね。そんな動きでダンスの相手が務まると思って?」
叩いて砕いて、削っていくわ

硬質化して守りを固めるなら――ユーベルコード、断罪を
踵のヒールを打ち下ろし、足下を崩して埋めてしまいましょう
「縮こまっていたいのなら、好きになさい。私たちが去るまで固まっていればいい。……それが出来るのなら、ね」
この隙に動きを止めてしまえば、後は好き放題でしょう

※戦闘スタイルは黒炎を纏った蹴り。防御も基本は蹴りで叩いてそらし、手はいざという時しか使わない
※悪役令嬢という単語は口には出さない
※アレンジ、誰かとの連携(特に寮が同じ人など)歓迎




「あぁ、良いわね。余程分かりやすい」
 見上げるほどの岩の巨人を前にしても、リグレット・フェロウズ(幕開けざる悪役令嬢・f02690)は態度を崩すことなく、むしろ丁度いいと言うように立ちふさがる。

 そんな自分を掴み取ろうと横から迫りくるゴーレムの手を一歩だけ後退して避け、それだけではなく目の前を通り過ぎようとする手の甲に回し蹴りを放って、大きく弾き飛ばした。
 「誰にでも手を抜く、などと思われるのは心外だもの」
 
 こんな小さな存在に手を跳ね除けられるとは思っていなかったのだろう、ゴーレムは目と思わしき二つの目を光らせ――拳を作り先程よりも力を込めてリグレットを狙い振り下ろしていく。
 固い岩でできた体、そして巨大な体躯から放たれる拳は地面を軽々と抉り取り、周囲を巻き上げた砂埃で覆いながら突き刺さった。

 手応えは――無い。

 陥没した地面から自身の拳を引き抜き、眼前に持ってくる。パラパラと落ちていく地面の破片以外は何も、あの人間が居たという痕跡もない。
 ゴーレムが首を傾げていると……。

「――鈍いわね。そんな動きでダンスの相手が務まると思って?」

 何も、ではなかった。だがそれは拳ではなくその上の、甲。迫る拳を軽やかに避けて、ついでと言うように手に乗せてもらい首尾よく目の前まで運んでもらったリグレットが、舞い上がった土埃の向こうから琥珀色の瞳をゴーレムへ向けていた。


 まだ高いわね、とポツリ呟きゴーレムの手の甲を蹴って高く舞い上がるリグレット。
 ゴーレムは慌てたように両手を伸ばし、頭リグレットを掴み掴もうと動き出すが。

「無作法で手を取ろうというの?」

 ゴーレムが掴み取るよりも早く、リグレットが空中を蹴り上げる。
 いや、そのように見えただけで実際は、脚を纏うように燃え上がった黒い炎が勢いをつけたのだ。
 黒炎で加速したまま、リグレットはくるりと体勢を変えてゴーレムの頭上からその体躯を見下ろす。

 ――――頭が高いわ。

 それは振り下ろされた戦斧か、罪人に落とされた断頭台か。
 ゴーレムの頭に黒炎纏う足を叩きつけ、一瞬の静寂――頭にひび割れが起こり、衝撃がゴレームの体を突き抜け地面を抉り破壊した。

「……あら、流石に頑丈なのね」
 堪らず片膝を付くゴーレムと、優雅に降り立つリグレット。
 頑丈な岩でできた体は、リグレットの蹴りでも完全に砕かれることはなかったが、その代わりに衝撃を受け止め抉られた地面は、ゴーレムの片足を捕り身動きを制限させていた。

「そこで無様に縮こまっていたいなら、好きになさい」
 それが出来ればね、と赤い髪を指先ですくいながらリグレットは周囲の猟兵たちに視線を移したのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雪華・グレイシア
キミ相手なら最初から遠慮はいらないね
スマートなやり方ではないけれど、こちらの方が手早いのならそうしよう

マスカレイドビークルを通常サイズに戻してから、そのまま巨大ロボへと変形
ボクのコイツは元がバイクなだけあって機動力重視
サイズさえ合うなら部屋の中でだって動くのには問題ないさ
基本戦術はヒットアンドアウェイ
どんなに重い一撃だろうと当たらなければなんてことはない
振り下ろしたパンチを躱したら蹴りをお見舞いしてあげるよ
地形が壊れようが逆にこちらが【地形の利用】をしてやろう
その鈍い脚じゃ壊れた床は歩き辛いだろう?

【アドリブ、他の方との連携は歓迎です】


リーファ・レイウォール
このまま【先制攻撃】で主導権を握りたいわね

視線を受けて【高速詠唱】でユーベルコードを発動
ゴーレムの周囲に顕現させるのは、紫青色の焔を纏った鎌鼬……炎の旋風
「岩相手に、どれだけ効くかはわからないけど」
有機物相手なら炭化させた実績はあるけど
ゴツゴツした見た目、素材は岩よね?

「でも、魔石を気にしなくていいんだもの。全力全開よ」
と【全力魔法】もユーベルコードに乗せる

通常攻撃は、距離を取って魔法攻撃
【属性攻撃】で炎を、【2回攻撃】で手数を増やす

周囲にも気を払って【援護射撃】
味方の攻撃の軌道や範囲へ誘い込みます(【おびき寄せ】)
私たち『猟兵』は、一人で戦っているわけじゃないのよ

※連携、アドリブ歓迎


メルエ・メルルルシア
おいおい……一人で先走るなよ、お嬢(リグレットの事)
さーて、オレもでかぶつ相手しにいくかね。

ゴーレムは土、土を削り砕くは水流……ってな感じで行けない?
でかすぎて狙う必要もねえのはいいことだが……とりあえずお嬢の合わせて足を重点的にいこうか

動きが制限されている今がチャンス。水で出来た蛇は相手の足に絡みつき、そこを水竜様が噛み砕く。お嬢が地面で片足を、オレが逆の足を水竜で破壊する

あとは動けなくなった奴を矢でちくちくするもよし、他の奴らがずどんとやるもよし……だな
寮の奴らが潰されそうになった助けにはいるつもりではあるが、前に出たら一緒にぺちゃんこになりそうだから、体当たりで避けさせる感じでいきたいな




「おいおい、一人で突っ走るなよお嬢。妖精さんは迂闊に近づけねーんだぞ」
 赤い髪の女性を視線の先に映しながら、ゴーレムが腕を振るう度に巻き起こる風に、メルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)は必死に翅を動かして耐えていた。
 普通の人間サイズならば気にも留めないそよ風も、巨体がおこなえば強風となって猟兵たちへ襲いかかってくる。しかもメルエは人間より更に小さな妖精。影響は大きく、踏み潰される以前に近づくこともままならない。
「あー! 鬱陶しいー! ちくちくやってても埒が明かないぞあれ!」
 仕方なく遠くへ離れて、構えた弓から水の蛇を放っていく。足を取らていない居ない逆側の足を数匹の蛇が絡みついていくが、それだけではびくともしていない。

「うーん。やっぱり、岩相手だと効果薄そう……」
 着弾しよろけさせはするがダメージ自体はそこまででもなさそうだと、自身が放つ炎の魔法がゴーレムの表面を焦がすに留まる様子をリーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)は見つめていた。
 頑丈な体もそうだが、片足を埋めたままではマズいと判断したゴーレムが周囲に散乱した地面の破片を吸い寄せ、腕を肥大化させていったのだ。
 このおかげで腕を振り回した時に生まれる風も大きくなり、リーファが放つ炎も着弾までだいぶ威力を削られてしまっている。

 猟兵たちを寄せ付けないように腕を動かしながら、次々と体を地面の破片で膨らませていくゴーレムに、どうしたもとかと思考を巡らせるリーファ。
「やるなら一気に、全力で行くべきかな。その内、足も抜けそうだし」
「でも、まず風がきちぃぜ……。動き止めてからじゃねーと飛ばされるって」
 再び風にあおられてリーファの近くへ飛ばされてきたメルエが、聞こえてきた言葉に答えながらフラフラと空中を漂う。
 この妖精さんではサイズ的に無理そうだし、ここは自分が。そうリーファが思ったところで、隣に並ぶ人影に気づいた。

「では、その役目は任せてもらっても良いかな?」
 帽子のツバを上げ、怪盗が氷のような青い瞳を向けた。


「動きを止めてくれるのなら、こっちも遣り様はあるから助かるのだけれど」
「オレらじゃ全然近づけないぞ。オレが小さいのもあるけどさぁ」

 リーファとメルエの言葉に、雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)はご心配なく、と答えてから懐からとあるアクセサリーを取り出す。
 それはバイクの形をした小さなものであり、細部まで作り込まれた、本物さながらのアクセサリーだった。
 なぜバイク? と首を傾げる二人の視線には答えず、グレイシアは自分を指すように胸に手を添え。
「ご覧の通り、こっちは勇者でも戦士でもなく……怪盗でね。足止めはできても決め手には欠ける。それをそちらがしてくれるなら、ボクとしても大助かり。どうだい、悪くないだろう?」

 それじゃ、よろしくね。と二人の返事を待たずに駆け出したグレイシアは、パチンと指を鳴らす。
 それを合図として、手から零れ落ちたアクセサリーが姿を変えていく。
 最初は徐々にサイズが大きくなり、グレイシアが纏う怪盗衣装と合わせたようなデザインの等身大の小型バイクへ。
 変化はそれだけではなかった。バイクは更に巨大なサイズへと膨らんでいき――タイヤが輪切りに割れ、ハンドルがスライドし、ボディが立ち上がる。
 人間を思わせる四肢と青く光るマシンアイ。バイクのフロント部だった胸部ハッチが開き、そこに高らかと跳躍したグレイシアが入っていく。

 ――マシン音を響かせながらゴーレムと対峙する巨大なロボ、これがグレイシアのバイク『マスカレイドビークル』が変形した姿だ。

「スマートなやり方ではないけれど、こちらの方が手っ取り早そうだからね……ラストダンスにはまだ早いんだけど、付き合ってもらうよ」


 地面の破片を取り込むのことを止め、ゴーレムは目の前に出現したロボに視線を向けた。
 両腕は二倍ほどに膨らみ、体も初めに比べて大きくなっている。下半身から地面に埋まる足にかけては未だ以前のままでありアンバランスさが目立つが、地面から抜け出せばいずれ完全に巨大化を終えるだろう。

「その前に止めさせてもらう」

 振りかぶるゴーレムの拳に対し、足についたホイールが回転しグレイシアのロボは地面を滑るように移動。
 元はバイクであるこのロボは機動性を活かして難なくパンチを避け、次に自分を追うように横薙ぎに払う巨大な腕に手をついて、そこから宙返りをして回避。
 その場から動けないのならば、こちらを捕らえることなどできはしない。巻き起こす風も、人より大きく重いロボでは効果が薄いようだ。

 グレイシアのロボは、好機と腕を振り抜いて無防備になった横腹に強烈な蹴りを一発。その足を起点に飛び上がった体をねじり、ゴーレムの頭部側面へもう一発蹴りを放った。
 踏ん張りの効かない状態での側面からの二発。堪らずゴーレムは体勢を崩し、両手を地面につける。


「「おー……」」

 眼の前で繰り広げられる、ロボとゴーレムの攻防。
 そんな男の子歓喜な光景を、女性二人はポカンと眺めていた。

「なんか色々と凄い」
「ウチの寮の男たちは好きそうだなぁ」

 視線の先でゴーレムが仰け反るをの見て、はっとしたようにリーファとメルエは動き出す。
 手にした聖書を開きながら、確認するようにゴーレムの足元を指さしてリーファはメルエを見る。
「じゃあ、あの子たち、一緒にしちゃうけど良いの?」
「おう! 気にせずやっちゃってくれ!」

 メルエの返事に頷き、詠唱を始めるリーファ。
 高まる魔力に呼応するように、ふわりと髪に纏う梨の花が揺れる。
 パラパラとめくられていく聖書を掲げ、緋と金、二つの色を携える双眸がゴーレムを真っ直ぐに射抜いた。

「紫青の焔を纏う鎌鼬。とくと味わいなさい」

 ゴーレムの周囲から湧き上がる紫青の焔の柱。一本二本と増えていき、複数の柱が渦巻くように絡み合って、焔の旋風がゴーレムを包み込む。
 巻き起こる炎に気がついたゴーレムはとっさに腕を丸め、体を硬質化させて守る体勢を取る。
先程飛んできていた鬱陶しいものとは質の違う、高い魔力の焔。この身を燃やし尽くすことなどだろうが、災魔としての本能が高い魔力に反応し、防御を選択せざるを得なかった。

 硬質化したゴーレムと、巻き起こる紫青焔の嵐。
 先に音を上げたのは――ゴーレムのほうだった。

 硬質化を解き、即座に両手を振り上げて地面に叩きつける。。
 焔が湧き上がる箇所を崩して潰し、叩きつけたことで発生した風圧で纏わりつく焔を消し飛ばしたのだ。
 視界が開けたゴーレムは周囲を見渡す。侵入者たちはどこだ、と。
 まさか逃げ出したなどということはあるまいと、見渡した視線が一点に止まる。
 青く、小さな何か。ふわふわと浮かぶそれは、待ちわびたというように見つめている。

『巻き起こる焔を跳ね除けた岩の巨人。しかし、安心もつかの間。次に襲いかかるものは――』

 視界が崩れ落ちる。
 ゴーレムが足元を見下ろすと、そこには水の体でできた竜が自身の足を噛み砕こうとしていた。


「やーっと隙、見せたなぁ」

 手のひらの上に水の塊を浮かせながら、物語を語るように告げていたメルエはニヤリと笑う。
 グレイシアが動きを止め、リーファが魔法で視界を遮る。ガードを抜いて魔力ではなく物理的なダメージを与えるなら、自分の出番だった。
 ゴーレムの足に纏わりついていた水の蛇は焔で蒸発してしまったが、水は水蒸気となって消えたわけではない。それら水を回収し、造形し直すのがメルエの力。
 水で作られた、と侮る無かれ。喰らいついた竜の顎は、メキメキと固く鈍い音を響かせながら、ゴーレムの岩の体に牙を突き立てていく。

 足を完全に砕かれる前に、水の竜を退かそうと腕を振り下ろすゴーレム。
 だが、その腕は竜の体に埋もれ、僅かに水分だけを弾いてすり抜けていった。
 しかも弾いた水分は、そのまま竜の体へと戻っていく。

「無理無理、水を払っても仕方ねー……だろ?」

『喰らいついた水竜は巨人の足を砕き、その強靭な力を見せつけるのでした』

 メルエの語りを終えると同時に、バキッと一際大きな音を響かせてゴーレムの片足が砕かれていく。

 岩でできたゴーレムはその上半身を更に巨大化させたことで、片足を失った体では支えることができず完全に機動力を奪われてしまった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エリカ・ブランシュ
(※アドリブなど歓迎)

さっきのに比べると今度は殴りやすいわね。
それに頑丈さが売りってのも面白いじゃない。
アタシとアンタ。どっちがより頑丈か勝負よ!

アイツの攻撃が味方に当たりそうだったら割り込んで【オーラ防御】で自己強化してから【盾受け】で【かばう】ようにはしたいわね。
攻撃は……。さすがにレイピアで直接斬るには向いてない相手よね……。
とはいえ、アイツも今は動きが制限されてるみたいだし、このチャンスに一気に接近して盾で思いっきり殴ってやるわ!
「この盾はただ護るためだけの物じゃないんだからっ!」


天御鏡・百々
【機を見て幻鏡相殺で敵の攻撃を無効化】

ほう、動く岩か
これが妖怪の類ではなく、作られたものとは
やはり世界は面白い

味方が十全に攻撃できるように援護に徹するとしようか

攻撃手段は単純な肉弾戦のみのようだな
であれば、幻鏡相殺も容易にできそうだ

味方が致命傷を受けかねない場面、
もしくは攻撃の相殺で敵に隙ができる場面で
幻鏡相殺を使用し、敵の攻撃を相殺してやろう

幻鏡相殺は連発できぬとしても
神通力(武器)による障壁(オーラ防御12)がある
味方を護る手段には困らぬな

敵の攻撃は防いだ! さあ、今が攻め時ぞ!

●神鏡のヤドリガミ
●アドリブ、絡み歓迎


九十九・九
おや、同居人たちがこぞって出かけていると聞いたから何かと思えばゴーレムかね
思えば私はゴーレム召喚に憧れて造られたと聞く、それならば少しゴーレムと力比べをしてみるのも楽しかろう

さぁ、ご覧あれ私の召喚できる最大の――
いや、あの核がほしかったのだな、危うくそれごと砕いてしまうところだった
ではではしかたあるまい、ここは数で押すとしよう
いくら相手が力強かろうとこちらの機手は一撃で壊れる、だが鈍いその腕ですべてを壊す前にこちらの拳が打ち砕くほうが早いさ
腕の関節、頭部、機能を停止させるにはこう言ったところを狙おうか
行けるのならば、コアを取り出して、終わりにしたいところだな


ミーユイ・ロッソカステル
ゴーレムは、歌を使って御す……なんて、そんなストーリーは誰が考えたのかしら?
誰かのやっていた、古いテレビゲームの中の陳腐な演目を、再現してあげようじゃない。

けれど、そうね。ただ眠ってもらうだけじゃないわ。
――えぇ、物理的に、終わらせてあげる。

そう言って、「影の国 第2番」を奏で、鈍く光る音符をゴーレムへと飛ばして攻撃。
たまには、こうして直接のめすのも悪くはないかもね。……なんて、先んじてやり合っていた方々にあてられてしまったかしら。
貴き立場にも関わらず野蛮な誰かやら、小さな体躯で姉ぶる誰かやらに、ね。


氷室・癒
でかーい! おおきいー! がっちがち!
岩! 岩ですよ! 岩ー!
動く岩! 大きくて強そうですっ! あっ、でもあの上に乗れたら楽しそうですっ!
一体欲しいかもしれません……むむむっ!
はっ、いけません戦い戦い! そしてその後に待つお菓子! 蜜たっぷりのお菓子! 幸せ前回のお菓子っ!

のんびり歩いているので、近づかない方がいいでしょうっ!
そう、つまり! 逃げます!
いやしちゃんの丈夫な足でともかく逃げますっ!
捕まったら危ないですからねっ!

そして隙を見て、うーいんくっ! ぱちこーんっ!
目と目を合わせて、ぱちこーんっ!
たっぷりチャージして、ポーズも決めて、ぱちこーんっ!
いやしちゃんですっ、横ぶいっ!


ティパ・パティ
わーお、さっすが強い人多いね。

もう出る幕ないかもだけど、それならそれで応援ね!
サウンド・オブ・パワーで一曲景気良く響かせて、良かったらノッてちょーだいな!

相手の行動への相殺は出来そうならやってみる。
力強いその姿に似合いの唸りを。

もし自分が狙われたりしたら
走って飛び跳ねて、思い切り逃げの一手。
他の子の攻め時になれば囮も引き受けちゃう。
騒がしい分、目を惹くかもしれないしね。

決め手は私持ってないけど。
決め手に繋がる手はぶんぶん振りまいていくよ!


十河・アラジ
岩のゴーレム……ぷにとは比較にならないくらい強いみたいだね……
でもボクも戦いに慣れてきた。負けるもんか!

幸いみんなが加えた攻撃でゴーレムの機動力はなくなったし、ここが攻め時だね!
とはいえまだ完全に沈黙したわけじゃないし
ゴーレムが攻撃してきたらそれに合わせて絶望の福音を使って回避するよ

そしてすれ違いざまにカウンターで攻撃を叩きこめばいつもより威力の高い攻撃ができるはずだ!
一気に勝負を決めに行くぞ!

※戦闘では体内に封じられてる鎧を両腕と両足の部分だけ解放して装着します。
※武器は十字剣(黒剣)を使います

【連携、アドリブ歓迎】




 片足を砕かれたまま、周囲の猟兵たちに向けて巨大な両腕を振るうゴーレム。
 鈍い動きで上から腕を叩きつけ、そのまま引きずるように前から大きく後ろへ地面を抉り取り、破片を飛ばす。
 残る片足に負荷がかかるのか、ゴーレムがその巨体を捻り大きく動く度にガリガリと岩が擦れる鈍い音を立てていた。

「専門家さんから見て、どうなのかしら」
「専門、というか興味を持っていたのは私はなく、製作者だがね。私はそんなゴーレムへの憧れから生み出された存在さ。しかし、私とは違いゴーレムというものは自らで自律させておくには不向きかもしれないね。行動が単純、あれでは――」
「はいはい、はいはい……」
 
 濁流のように飛んでくる言葉へ面倒臭そうにひらひらと手を振って、遠巻きからゴーレムを観察していたミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)は、今しがたのんびりとやってきた九十九・九(掌中の天地・f01219)を横目で見る。同じ寮に住む仲間である彼女は、とにかく出てくる言葉が多い。
 そんなミーユイの反応に肩を竦めて、九は更に言葉を続ける。

「答えようとしたのだよ? あれは自らに課せられた動きをするだけだ、そしてそこに体への負荷は入っていないのだろうね。人間ならば痛覚という信号が止めてくれるが、なにせ岩だ。聞いたところ随分と手痛くやられているようだ、内部へのダメージは相当だろう」
「平気そうな顔しているけど、動きは鈍くなっているものね」

 視線の先のゴーレムが再び腕を左右に振るう。
 相手に狙いを定め、拳を叩きつけていた最初とは違い、今は引きずりながら腕を振り回すだけ。どうやら狙ってではなく、腕自体があまり上がらないようだ。
 明らかに動きが単調になってきているゴーレムに、今までの攻撃が確実に蓄積していることをミーユイと九は感じ取った。

「――体が傷を負えば、それを動かす意思との繋がりにも影響を与える。ということだな」

 二人の会話にそっと一つ、声が加わる
 太陽の紋が刻まれた鏡を胸に抱きながら、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、自身の本体である鏡の縁を一撫でし、ゴーレムへ視線を移す。

「意思無きものは物になる。あの岩の巨人は今、そうした綻びが生まれたことで体を動かすことも維持することも困難と見える。ふむ、あれが妖怪ではなく、作られたものとは……やはり世界は面白い。繋がり、という意味では私たちに近いだろうか」

 なるほど、と呟いたミーユイはゆっくりと目を閉じ、意識を集中させていく……脳裏に浮かび上がっていく数々の楽譜、その中から一枚を選び取り。
「結論としては?」
 九の周囲に次々と投影されていく図形、それは何かの設計図のようにも術式のようにも見える。描かれた図形は手を形作り、一つ、二つと増えていった。
「あとはしこたまぶっ叩く」
 本体である鏡にゴーレムの姿を映しながら、百々は静かに頷く。
「そういうことだな」

 二人の回答を聞いたミーユイはくすりと笑った。
「シンプルでよろしい。それじゃ、傷だらけのゴーレムにはそろそろ眠ってもらいましょうか。どこか演目のように、歌で誘ってあげましょう――ただし、物理的に、だけどね」
「おや、なんだか随分と張り切っているようだけど、そんなタイプだったかい?」
「さぁてねー、そういう気分なの。たまには、悪くないかなって」
 とぼける返事のミーユイに九は再び肩を竦めて、また周囲の図形を増やしていく。

「では、こちらも文字通り手を貸そう。ご覧あれ私の召喚できる最大の――は、今は都合が悪そうだ。だとすると数でいこうか……少しばかり時間をもらおうかな。その分、仕事すると約束しよう」
「あいわかった。では、我は前に出よう」

 ゴーレムと、その周りにいた猟兵たちへ向かって駆け出す百々の背中を見ながら、ミーユイも歌を紡ぎ始める。

 ――おいで おいで 暗き世界へ

 紡がれる歌は戦場に広がり、ゴーレムの元へと届いてた。
 歌は具現し、音符の形となってゴーレムの周囲に散りばめられていく。
 だが、ゴーレムは気に留めることはない。再び猟兵たちへと腕を振り回し……音符に触れる。

 一瞬、周囲が暗くなり、ゴーレムの腕が意思とは別のほうへと弾かれていった。


「ここが、攻め時だね!」
 十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は音符に触れたゴーレムの腕に合わせて十字剣を振り抜く。
 機動力を失いはしたが、その巨体で暴れまわるせいでどうにも下手に近づくこともできない。
 鎧を両腕、両足に纏っているとはいえ、体格に差がありすぎる。当たればただでは済まないだろう。
 だが、他からの援護があるとなれば話は別。十字剣を手に、アラジは飛び出すようにゴーレムへ接近していく。

「チャンス到来! 一気にいくわよ!」
 同じくエリカ・ブランシュ(寂しさに揺れる白い花・f11942)も動き出した。
 防御を主体とする彼女ではあるが、好機があれば攻めへと転じる柔軟さも持ち合わせている。
 エリカが手にするレイピアでは、岩の体を持つゴーレムには効果が薄いだろう。しかし彼女が持つ攻撃手段はそれだけではない。
「こんな使い方もあるのよっ!」
 そう言って握りしめるものは、守るための、盾。

 そしてもう一人。
 動物のような耳をぴくぴくと動かし、ティパ・パティ(ティパチャンネル・f06496)はピックを持つ手を止める。
 戦場に聞こえてきた歌声、暗くて静かで……どこか悲しいような。
 しかしそれとは別に、音楽に触れているティパには歌に込められた強い気持ちのようなものも感じた気がした。

「わーお。ジャンルはちょっと違うけど、良いノリかも」
 居ても立ってもいられず、ティパは歌声に乗せるようにゆっくりとギターを弾いていく。
 邪魔をしないように、かつ自分の色も加えて、即興で演奏をおこない合わせていった。
 気分良く尻尾を揺らすと、尻尾につけられた連なる輪がしゃらりと音を鳴らす。
 そしてゴーレムへと向かっていく猟兵たちへ気持ちを向ける。直接戦うだけが猟兵じゃない、やれることはいっぱいだと。
 そう、これもその一つ。

「それじゃ、こっちも私なりの応援でいくよー! ノッてちょーだいな!」

 戦っているみんなへ、背中を押すように。静かにコーラスを乗せていった。


 音符が舞う空中を黒い翼で羽ばたきながら、氷室・癒(超ド級ハッピーエンド・f00121)は楽しそうに笑顔を浮かべる。
「でっかーい! おおきな岩ー! 上に乗ったら楽しそう……いやいや、いけません! 今は戦い戦い、ぼくも頑張るぞーっ!」

 ふんわりとした見た目とは裏腹に器用に音符の中を飛び回って、ゴーレムの腕を躱していく癒。
 ゴーレムと戦うみんなの姿に、自分も頑張るとゴーレムに挑んではみたが……彼女は戦う術を持っていなかった。それでも彼女なりに付かず離れず逃げたり騒いだりとしているのだが。
 それが結果的に、ゴーレムの意識を他から逸らす囮となっていた。

 とは言え、戦意を持ってやってくるものにはゴーレムも注意を向ける。
 迫るアラジとエリカを迎撃しようと視線を動かし……。

「あー! よそ見しちゃ、やーですよ! こーなったら!」

 眼の前に躍り出た癒がゴーレムと視線を交わし――ウインク。

「ハッピーいやしちゃんを、おとどけ!」

 バッチリポーズも取って、可愛らしく横ピースをする癒。
 二つにまとめた銀色の髪に、背中で羽ばたく黒い翼。パステルカラーの服も相まってとても愛らしいウインクだった。
 完全に決まった。と、癒は思っている。

 その光景に…………ゴーレムは動きを止める。

 本当に魅了をされたのか、ただ目の前の光景に唖然としたのか。
 ハッキリとした理由はない、だがゴーレムは癒の姿を見て止まったという事実だけはあった。

「やったー!」


 聞こえてくる音、歌。それらはアラジにとって聞き慣れてはいないものかもしれない。
 だが不思議と、十字剣を握る手に力が入る。地を踏みしめる足が強くなる。
 あと、聞こえてくる元気な声に、少しだけ前のめりになりそうだった気持ちを持ち直す。
 どんなときも自分らしく、なんてことが大事なのかもしれない。そう思いながら、ふと体勢を沈ませるアラジ。
「……わかっているよ、それは」
 音符を抜けてきたゴーレムの腕を、視線を向けることもなく避けたアラジはそのまま片足が地面に埋まっているゴーレムの足元まで辿り着く。
 ぐっと握りしめた十字剣が、徐々に光を帯びていった――。

 周囲に浮かぶ音符に足掻くゴーレムを見上げながら思考を巡らせるエリカ。叩きつけるのなら、一番効果のある場所がいい。そうなると……。
「そこしかないわね」
 なにやら突然動きが止まったゴーレムを見て、地を蹴り上げる。
 そしてゴーレムの腕を蹴ってもう一度。黒い翼の少女を通り過ぎながら、高く飛び上がった。
 軽やかにジャンプするエリカは、岩の隙間に光る二つの目を確認し、盾に魔力を込めた――。


「この剣、悪しき咎を断つ!!」
 振り抜かれた十字剣が、光の軌道を残して岩の体を切り裂いた。

「この盾はただ護るためだけの物じゃないんだからっ!」
 ゴーレムの顔面へと叩きつけた盾から、光の魔力が溢れ出し炸裂する。


 背中を打ちつけ、地面へと仰向けに倒れるゴーレム。
 それと同時に周囲の地面が振動し、散らばった破片が吸い寄せられるように転がっていく。
 足が抜けたのならばそれはそれで好都合、体は新しく作り直し再び立てばいい。何度も繰り返す、何度も立ち上がる。
 侵入者を倒すため。今のゴーレムはその一点のみで行動をおこなっている。そのための新たな足を……。

 ――だが、こない。

 力は働いている、はず。だが一向に破片が体に集まらない。
 もがくように地面に手をついて体を起こしたゴーレムは周囲を確認し、その原因を知る。
 破片は集まっている、だがそれはゴーレムではなく、何か大きな鏡の前に積み重なるように集まっていた。

「鏡なれど映りしものは、鏡の中の本物。同じものゆえ、引き寄せてしまうのも仕方あるまい?」
 召喚した鏡と、それに集まる地面の破片。そして両足を失ったままのゴーレムを見据えて百々は合図を送る。

「奴の行動は止めた! そろそろ良いか!」


 創造――完了。
「待たせてしまった、これだけとなると接続に時間がかかる……だが、助かった」

 倒れたゴーレムの視界に、次々と何かが現れる。
 一つ、二つ……十、二十……ゴーレムを囲い込むように浮遊するそれらは、九が創造した機械の手。
 それらが全て拳を固め、狙いを定めている。

「一つ一つは脆い。一回で砕けてしまうのが難点だね。しかし、全てが壊れるまで耐えられるだろうか?

 その言葉を皮切りに、無数の拳が降り注ぐ。
 頭上から衝撃を受け、魔力の焔に焼かれ、足を砕かれ地に伏せ……蓄積されたダメージに岩の体が限界を迎えた。
 土埃を上げながら、次々と叩きつけられた箇所が砕かれていく。両腕、胴体、頭部……全ての手が壊れ切った時、そこにあるのはゴーレムではなく、ただの岩となった存在だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『手作りお菓子を君に』

POW   :    大きなお菓子作りに挑戦!

SPD   :    お菓子いっぱい作るよ!

WIZ   :    お菓子は見た目が命! 出来映えにも拘るよ!

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「ありがとうございます! これでまた、オーブンが使えます!」
 ゴーレムを倒し、災魔の侵攻を阻止した猟兵たちは迷宮から学園へと戻ってきた猟兵たちは、調理部の生徒へ回収した魔石を渡す。
 あくまで魔石は迷宮からの侵攻を食い止めるついでだったのだが……喜んでいるから良しとしよう。
 事前の説明だと、こっちがメインのように聞かされていた気がするが、気の所為だろう。

「ささ、皆さんこちらへどうぞ! 感謝を込めて、今日はいっぱい作りますね! ぜひ食べて言ってください」
 案内されていく家庭科室には、小麦粉に砂糖にバターとマーガリン、卵に各種スイーツとチョコ……学園というには随分と材料の品揃えの良い。もちろん猟兵たちが採ってきた蜜ぷにの蜜もある。
 オーブンも無事に復活したようなので、時間があれば大抵の焼き菓子は作れそうだ。

「この学園の家庭科室は広いですから、ご一緒に作るのも大歓迎ですよ! むしろ入部も大々歓迎ですよ!」
 満面の笑顔で勧誘してくる生徒、恐らく部長に曖昧な返事を返しながら、各自が思い思いの時間を過ごしていく。
エリカ・ブランシュ
(※アドリブ等歓迎)

【WIZ】
色々あったけど、やっとお菓子作りが出来るわけね!
と、言っても……アタシはお菓子作りってしたことないのよね。
せっかくの機会だし、教わりながら少し作ってみようかしら?

クッキー作りに挑戦してみたけど、クッキーの形とかって自分で決めて大丈夫なの?
なら、アタシは迷宮で会ったあの蜜ぷにって生き物の形で作ってみようかしら。
クッキーに顔とかも描けそうなら描いてみたいわね♪

出来上がったお菓子はクッキーメインにだけど、他にも色々と食べてみたいわね!
最後は自作の蜜ぷにクッキーを食べながらあの子達を思い出す事にするわ。
「蜜ぷに……。やっぱり一匹欲しかったわね……」


リーファ・レイウォール
行動指針はPOW×SPD

「どうしたものかしらね」
食事は『ご飯のお供』的な味の濃い物や辛いものが好き。
でもデザートは別。多分に漏れず、女子としてお菓子は別腹なのです。

「大きめのものを、たくさん作りたいのだけど」
ここは、部長?に聞いてみるに限るわね
より上手い人がいるなら、その人に。

料理は得意とは言えないものの、苦手や下手でも無い
生活に困らない態度にはこなします

出来上がりは、無難な仕上がり。
素人レベルなら充分です。
出来上がった物は、持ち帰り用と
この場で食べる用でわけています
食べる量は自重。
「せっかく取ってきた蜜、使い切りかねないじゃない」
私の胃袋は宇宙だとは言わないけれどね。

美味しく堪能しました。


メルエ・メルルルシア
よーし、全員無事だな? じゃあ、あとはお菓子作りの時間だ
……入部はちょっと難しいだろ、部外者だし……沢山作って寮のチビ達にも持って帰ってやろう

カンパネ(カンパネルラのこと)もお菓子食べるだろう? メルエお姉さん特製の甘くて美味しい、お菓子パンだ……評判が良ければ店で売り出すのも……有りだな。こっちは硬めのクッキーを使ったゴーレムパンだ。水とかお茶につけて食べると……うまい!

オレのサイズじゃそんなに食えないからなあ……残りはお土産……ってことで! あいつらの喜ぶ顔が目に浮かぶぜ

【お菓子を作って皆で食べます。他のメンバー、特に寮の仲間とは積極的に絡んで行きたいです。描写の追加等は大歓迎】


雪華・グレイシア
【WIZ】
やれやれ、ようやく一段落
一仕事終えた後は甘い物を食べるに限るね

戻ってくる間にこっそりと怪盗衣装から学生服へと着替え、他の猟兵さんたちの中へとさも最初から居たようにひっそり合流ですっ

えへへー、戦闘ではお役に立てなかった分、お菓子作りは頑張っちゃいますねっ
そんなウソを吐きながら、気合いを入れてお菓子作り
折角ですから、☆にハートにお月様、動物さんたちも混ぜてみて色んな形のクッキーを焼き上げましょう!

焼き上げたら、猟兵さんたちに配って歩きながら私が見ていなかった迷宮の様子を聞きこみしましょう
こうやれば口が軽くなるんだから、ちょろいよね?

【アドリブ、他の方との絡みも歓迎】


ティパ・パティ
うまくいって良かった。
ゴーレムだったことを考えるとアレだけど魔石って便利だね。

お菓子の匂いもすごく良い…
そんなに働いたわけじゃないけど少しご相伴に!

んー、おいし!
ワッフルを特に気に入って。
入部は難しいし少しって言ってたけど、良かったら私も作ってみたいかも
教わることが出来たら、
弟達にも作ってあげられるように、しっかり覚えて行くよ

アドリブややりとりも歓迎!


リグレット・フェロウズ
ま、ご馳走してくれると言うのだもの。喜んで頂きましょうか。
作る? ……この私が、厨房に立つ女に見えて?

ただ座って待つのも暇だし、周りに話しかけましょう。
カンパネルラ。貴女も待つ側なら、話し相手になりなさい。そうね。依頼の間の寮生の話などはどう?
……なによ。私が世間話を振るのは変? ……気になるかと思ったのよ。貴女も初めてなのだし、ただ近くで待っているのは、歯がゆいでしょう。

菓子を口にすれば、
「――あら」
「ええ……悪く、ないわね」


アレンジ、誰かとの連携(特に寮が同じ人など)歓迎
プライドが高く、謝罪と礼は滅多に口にしないが、なんだかんだで↑程度には人が良い面も


九十九・九
ミーユイ(f00401)と共に
アドリブ歓迎

さぁ一仕事した後は腹ごしらえと行こうか
せっかく会えたのだ、何か一品くらい作るのはやぶさかではない
いや、待ってくれ、さすがに私でもお菓子作りの一度や二度くらい経験はあるのだよ
ただただ普段は面倒でしていないだけだがね

調子が良くなったオーブンは若者たちに譲るとしよう
そう、この間面白いものを拾ってきたからな、今回はこれを使おうと思う
作った生地をこれに挟んで焼き上げればそう
ワッフル、と呼ばれる菓子になるんだそうな
おっと、では一緒に作ってみようか
出来栄えに美味しそうだな、と笑って
アイスを載せて、とってきた蜜をかければ出来上がり
口に合えば幸いだがね、と差し出そう


ミーユイ・ロッソカステル
同居人の九十九・九(f01219)と共に

確かにイメージではないけれど。……あなたが見栄を張るタイプではないのはわかっていてよ
……あと私、食べるほうはよくても作る方はあまり経験がないのだけど。

なんて、少し戸惑いながら。とはいえ、一方的に振る舞われるのは気に食わない性質なので、見よう見まねでワッフルを焼こうと
振られたわけでもなく、自然と手は「いいから私にもやらせろ」と言わんばかりに

……あぁ、この形は焼き型のものだったの。なるほどね……。
などと関心する部分もありつつ、上手くも下手でもない程度にこなして

日向では愛用の日傘をかかさずに。
少しでも日光の直射を身体に浴びたら、眠くなってしまうから。


十河・アラジ
待ちに待ったご褒美タイム、かな
うん、実はボクもすごく楽しみにしてたんだ
ボクの世界じゃ普段はあまり食べられない物ばかりだしこの機会にいっぱい食べて……それと、父さんと母さんにも、いっぱいお土産に持って行ってあげるんだ
どうせなら一緒に作るのにも挑戦して作り方を覚えていくのもいいかも

それと今回一緒に戦った人達とも、話ができたらいいなあ
見かけたら積極的に話しかけに行くんだ

みんなが楽しそうにお菓子を食べながら笑顔を浮かべている所を見られたら嬉しいなあ

※15歳以上っぽい人には敬語を使います
※アレンジ、アドリブ歓迎


氷室・癒
「料理ができないわけじゃないんですよっ!」

それほど上手ではありませんし、しっかりぴったり正確にやらなくちゃいけないお菓子作りは、んーーーっ、ですけどっ!
決して料理ができないわけではありませんっ!
近いイベントで言いますと、チョコとか作れるんですからっ!

しかし今回のいやしちゃんは食べる人!
待ちに待ったお菓子の時間!
すんすんすんすんお鼻を鳴らして、くんくんくんくんお腹を空かせて!
にっこり笑顔、甘えるようにお願いしてっ
あまあまあまーい味見の席を勝ち取るのですっ!

「あまーいっ!」
といういやしちゃんのお墨付きがあれば、作った人もきっと笑顔!
幸せ満点スイーツタイム!
最高のスイートエンドです!



●甘いあの子を再現するのなら

 「――そうなんですよー。結局迷っちゃって、みなさんのお役に立つことができなかったんですよね。とほほ、って感じですよ、もう」
 可愛らしいミトンをつけた手でオーブンから取り出した天板には、星にハートにお月様、美味しそうに焼き上がった様々な形のクッキー。出来に満足したように頷き、落ち込み顔を笑顔に変える。
 学友と談笑をしながら雪華・グレイシア(アイシングファントムドール・f02682)は、入れ替わりで今度は動物の形をした生地が並べられた天板をオーブンへ。

 みんなより一足先に学園に帰ってきていた彼……いや、今は彼女と呼ぶべきだろうか。
 今ここに居るのは怪盗ではなく、アルダワ魔法学園に通う女学生、グレイシアとしてお菓子作りに精を出しているのだった。
 頑張ってくれたみんなへお礼……というのは表向きの理由。お菓子を配って、その代わりに自分が見ていない迷宮の様子を聞き込みしようという魂胆だった。

(こうすれば口が軽くなるんだから、ちょろいよね?)

 お仕事終わりに甘い物のプレゼント、気持ちを落ち着かせて油断を誘うならこれが一番。
 そんなことを思いながら、焼きたてのクッキーを一つ摘み、ふーっと息を吹きかけて冷まして、ぱくっと。
 舌の上で踊る優しい甘さ。まだ少し柔らかめだが、しっかり冷ましてあげればサクサク歯ごたえなクッキーになってくれることだろ。
 上手く行ったクッキーと甘い味に上機嫌になるグレイシア。一仕事を終えた後に甘い物が食べたくなるのは、彼女も一緒だった。

「次は何にしましょうか……あれ?」
 オーブンへ入れたクッキーが焼き上がるまで、どうしようか。そう思ったグレイシアの視線の先に、材料を前に悩ましげにしている白い髪の少女を見つける。


 並べられた小麦粉やバター、迷宮で採ってきた蜜ぷにの蜜が入った小瓶などを前に、エリカ・ブランシュ(寂しさに揺れる白い花・f11942)は悩んでいた。
 これだけ揃えられた材料と器具、そしてそのうちの一つを自分たちで取ってきたという実績が、『自分もなにか作ってみたい』という気持ちを芽生えさせるには十分だったのだ。

「作るなら、やっぱりクッキーかしら……形とかも自分で決めていい、のよね?」
 作りたいものが決まったエリカの心に湧き上がる次の気持ち。それは初めてお菓子作りに挑戦する人が少なからず抱くもの、『自分なりのものを作ってみたい』である。
 とは言え、初めて作るのだから当然作り方はわからない。しかしここは家庭科室で、この教室にはお菓子に詳しそうな生徒たちや猟兵たちが居る。
 誰かに聞けばいいのだが……知らないという弱みを見せるようで、プライドが待ったをかけてしまう。

「どうしようかな……」
「何か困りごとですか? よかったら聞きますよっ」
 せっかくの機会、自分で作ってみたい。なにより甘いクッキーを食べたい。
 気持ちをぐるぐるとさせていたエリカだったが、聞こえてきた声にハッと振り向く。

 並べられた材料と、エリカの顔。それぞれに視線を巡らせてから、声をかけたグレイシアはニッコリと笑顔を見せた。


「あっ……えーと、クッキーを作ろうと思って……」
 学生服姿のグレイシアを、この学園の生徒だと判断したエリカは少し気まずそうに言葉を続ける。
「迷宮に蜜ぷにって生き物が居て、あの形だとかわ……面白いかなーって」
「あぁ、ぷるぷるした可愛いやつですよねっ! わかりますわかります。なるほど、ただ丸くして顔つけるのも良いけど、どうせなら色も近づけちゃうのもいいかも! ジャムクッキーならオレンジに青に、色々できますし」
「ジャムで、色? あー……良いわね、そういう感じのが良いっ」

 グレイシアの言葉にうんうんと頷くエリカ。あのぷるぷるした鮮やかな色の蜜ぷにたち、それなら再現できそうだと、思い描いていたものの完成図に近づけそうな予感に心躍った。
「それじゃ、早速始めちゃいましょう。えっと、ジャムジャム……」
 周りに居た生徒の一人を手招きしてジャムをお願いしているグレイシアの後ろで、改めて気合いを入れるように、ぐっと手を握るエリカ。
「……よしっ! 作るわよ!」
 声をかけてくれたグレイシアに心の中でお礼を言って、エリカも準備を始めるのだった。


●お腹いっぱい食べてみたくて

 クッキーを作り始める二人とは少し離れた場所でも、お菓子作りを教えてもらおうと声をかける人が居た

 恐らくこの調理部の部長と思わしき生徒へリーファ・レイウォール(Scarlet Crimson・f06465)は尋ねる。
 実はとっても食べるリーファ。迷宮の探索に蜜ぷにやゴーレムの討伐にと体を動かしたあとでは当然、お腹も空く。
 味の濃い物や辛い物、ご飯のお供になりそうなものが特に好みではあるが、女子として甘いお菓子だって好きなのだ。
 そこで彼女がリクエストするものは……。

「大きめのものを、たくさん作りたいのだけど」

 手に何やら長方形の箱のようなものを持っていた生徒は、その言葉に微笑み。
「大きめの、ですか? それなら今から取り掛かるところでして、丁度よかった!」
 そう言って近くで、ボウル片手に中の生地を混ぜ合わせるのに悪戦苦闘していた、リーファと同じくらいの背丈の男の子に声をかける。


「なかなか上手く混ざってくれない……こんなに難しいんですね」
 声をかけられて二人の傍へとやってきた十河・アラジ(マーチ・オブ・ライト・f04255)は、かき混ぜる手は休めず、だまが残る中身に苦笑した。
 彼もリーファと同じように、生徒へ手伝いをお願いしていたのだ。

「あら、ちゃんと混ざってない……何を作っているの?」
「パウンドケーキって言うらしいですよ。あの型に流して焼くんだそうです。ボクはいっぱい食べたいなって、思って。クッキーよりこっちかなって」

 照れくさそうに笑うアラジに、リーファも同意して頷く。
「わかる、私もそのつもりだったから。お菓子は別腹……いっぱい食べたいものね」
「他のお菓子も興味ありますけどね。ボクの世界じゃ普段はあまり食べられないものばかりだし、この機会にいっぱい食べられたらいいな」
 自分たちが作る以外にも、あちこちでおこなわれているお菓子作り。それぞれが異なる甘い香りを放ち、探索後のお腹を刺激していた。

「生地や焼き方を変えれば、しっとりしたものも、ふんわりとしたものも作れますし、ナッツやドライフルーツを入れるのもいいですね!」
 二人を追撃をするわけではないが、パウンドケーキの説明に続ける生徒。シンプルなのも良いが、好みに合わせて中の具を変えてみるのもいい、と。

「ナッツにフルーツ……父さんと母さんはどんなのが好きかな。うーん、迷う。これはそのまま焼いて、次はそうだな……」
「ケーキと言うだけあって、色々できるのね。ふんわり、しっとり……どうしたものかしら。できたものは今食べるのと持って帰るので分けて……」
 食感や生地、中身の具を考えると多くの組み合わせが思い浮かぶパウンドケーキに、あれもこれもと悩み始めるリーファとアラジを、生徒が笑顔で見守る。

 お菓子作りは、こういう時間も楽しいものだから。


●歌声で広がる甘み

「さてさて、仕事も終わってお疲れ様。と言ったところだね。どうやら盛り上がっているようだし、みんなも居る。どれ、私も今日は一品くらい作ってみようか」
 大盛況となっているオーブン前を見て、九十九・九(掌中の天地・f01219)は持参した物を次々と取り出す。
 真ん中で蓋のように開き、中にはデコボコの溝が彫られたプレートが付けられているそれを、隣に居た女性に見せるようにして。
「こちらはこれを使おうか。作った生地を小さく並べるのではなく、挟んで焼き上げる。そうすれば、ワッフルと呼ばれるお菓子が出来上がるんだそうだ。どうだい、面白いだろう……なんだい、その目は」

 活き活きとワッフルを作るための器具についての説明をしながら挟み込む生地を準備していた九は、疑念を込めた眼差しを向けてくるミーユイ・ロッソカステル(眠れる紅月の死徒・f00401)に一旦、手を止めた。
「……いえ? なんだか珍しいというか、機械以外にも作れるものがあるのね、と」
「いや、待ってくれ。流石に私でもお菓子作りの一度や二度くらい経験あるのだよ? ただ、そう……ただただ普段は面倒なだけで」
「普段は全然、ということじゃないの。まぁ、あなたが見えを張るタイプではないことはわかっていてよ」
「やれやれ、どういう風に見られているかわかったがね」
 そう言いながらワッフルを作るための器具を一つ取り、その中に生地をセット。ゆっくりと挟み込んでいった。
 生地を閉じ込めてからしばらくすると、生地の焼ける甘い匂いが漂ってくる。それを興味深そうに見ていたミーユイは、まだ使われていない他の器具に目を向けた。

 自分もあまり料理などを作った経験はない。しかし、このまま作ってもらって振る舞われるだけというのも面白くはない。そう思い立ったミーユイは、器具を一つ手に取る。
 そして次は中に入れる生地。そっとすくい取った量は、九よりも少なめ……挟むというのなら、多すぎてはいけないと気持ちが無意識に少なく取ったのだ。
「これを、挟む……だけ。よね?」
 見よう見まねで生地を入れ、ゆっくりと閉じて挟み込む。あとは焼き上がりを待つだけ。

 まるで重要な作業をおこなっているかのように、挟み込んだ器具の様子をじっと見つめるミーユイに、気づかれないようにくすりと笑った九は次に使う生地の用意を始めたのだった。


「なんだか美味しそうな匂い……それにあなたって確か……」
「……え?」
「おや、君は……」

 声をかけられて顔をあげるミーユイと、視線を向ける九。
「あ、やっぱりそうだ! 素敵な歌声の人だよね!」
 二人の様子に声をかけたティパ・パティ(ティパチャンネル・f06496)はニッコリ笑顔で駆け寄っていった。

「ミーユイ、君の歌に合わせていたのは彼女だね」
「あぁ、あの聞こえてきた音の。ふふ、ありがと。そういう貴女もやるじゃない。初めて聞く歌だったでしょうに、あの場で合わせてくる人が居るなんて思わなかったもの」
「ふっふーん、即興演奏は得意だからね! そう言ってもらえると嬉しいなー」

 自分の音楽も届いていたことに嬉しそうな顔を見せるティパ。その気持ちが表れるように、細く伸びる尻尾もゆらゆらと揺らめいていた。
 そんなティパの様子と、歌を褒められて満更ではないミーユイを見て、九は作っていた生地を見せて笑う。
「これも縁だ、どうだい一緒に?」
「そうね、せっかくだしどうかしら。私もまだ見よう見まね、という感じなのだけれど」

 二人の言葉に、ぱぁっと明るい顔で答えるティパ。
「良いの? やった、そっちの美味しそうな匂いも気になってたんだよね。ご相伴に預かります!」
 そしてワッフルを焼く器具を一つ手に取り、言葉を続ける。
「あのさ。作り方も、教えてもらっても良いかな? うち、家族が多くてさ。こういうの弟達が喜ぶと思うんだよね」
 はしゃいでいた様子を落ち着かせ、器具を見ながら微笑むティパ。
 お菓子に喜ぶ家族たちを思ってか、姉としての一面を覗かせる姿に九とミーユイは快く頷く。

「あら、お姉ちゃんなの? なるほどね、その感じならなんとなくわかるわ……ね?」
「うむうむ、私やミーユイも同じ量に住む同居人でね。人数が多いと、お姉さん役を買って出ている子はいつも大変そうだからね。もちろんオーケーさ」
 同じ寮の二人は、少し離れた場所に目を向ける。
 ティパも釣られるようにそちらへ視線を動かすと、小さな青と赤、そして黄。三色が集まっている一角があった。


●見守るだけじゃない

「これは渾身の出来だな……流石のオーブンだ。もう少し発酵を効かせてやれば、もっとふわふわになったんだけど、このモチモチ感が甘さを包み込んでくれるってもんさ」
 小さな青こと、妖精のメルエ・メルルルシア(宿り木妖精・f00640)は自信作を差し出す。
「どうよ、お嬢。このメルエお姉さん特製の甘くて美味しい、お菓子パン! 評判が良ければ店で売り出すっていうの……ありだな」

 チョコにカスタードクリームに生地には蜜も入れて。甘い美味しさがぎゅっと詰まったような、なかなかにヘビィなボリュームがあるパンへ、リグレット・フェロウズ(幕開けざる悪役令嬢・f02690)は視線を向け。
「……重そうね」
 一言だけ返した。

「なんだよぉ、このボリュームが結構人気出るんだぞー! オレの小さな胃袋じゃ食ったらすぐお腹いっぱいなるだろうけど」
 もっと反応が欲しかったらしいメルエはお菓子パンを持ったまま、リグレットの周りを飛ぶ。
「ってか、お嬢は何か作ったりしないのかー? 色々揃ってて楽しいぞ」
「作る?」
 その言葉にリグレットは首を傾げる。そしてしれっと言い放った。
「この私が、厨房に立つ女に見えて?」
「えー……」


 結局、それからもお菓子作りに参加する様子もなく、次のアイディアを形にするべく作業するメルエを眺めていたリグレット。
 そんな彼女の前に、人影が一つ降りてくる。床から離れ、空中をふよふよと浮いている人物。
 その見慣れた金色の髪に視線を向け、リグレットは声をかける。
「カンパネルラ、貴女も待つ側かしら?」
「ほえ? おー、リグレットさん! お疲れ様だよー!」

 今回、皆を集めたグリモア猟兵であるカンパネルラ・ラフィナート(アラームアラートアプリケーション・f05829)は、自分へ声をかけたリグレットの隣まで移動し、ニコニコ笑顔を向ける。
「実はそうなんだよねえ。みんな結構、気合い入れてお菓子作りしているから、わたしは大人しくしているってわけ!」
 指先を一つ立てると、その上に小さなモニターがいくつか浮かび上がる。
 じっとオーブン内の焼き上がるお菓子を見ている人。慣れない生地作りに苦戦している人。話し合いながら、時折笑ってお菓子を作る人。生徒たちも猟兵たちも、みんなが楽しそうにしている。

「そう、それなら話し相手になりなさい。そうね……依頼の間の、寮生たちの話などはどう?」
 リグレットの言葉に、モニターを閉じて首を傾げるカンパネルラ。
「……なによ。私が世間話を振るのは変?」
「変ってことはないけど、珍しいなーとは思った!」
 この凛とした視線と佇まい。普段は元気な他の人たちが話題を出していくので、彼女自身からそういう話題を振っていく姿はあまり見たことがなかったのだ。

 カンパネルラの素直な返事に、彼女から視線を外してリグレットは息をつく。
「気になるかと思ったのよ。貴女も初めてなのだし、ただ近くで待っているのは、歯がゆいでしょう」
 グリモア猟兵は、その役割から移動後はみんなを手助けすることができない。そしてカンパネルラが今回はその役割を受け持っている。
「えっへへー。そうだね、皆のこと気になるかも! お話し、聞きたいな!」
 みんなが迷宮に行っている間、待つことしかできない自分を気遣ってくれているのだとわかったカンパネルラは、嬉しそうに笑顔を作る。

「なんだなんだ、楽しそうな話ししてるなー。オレも混ぜろよー」
 ぽふっとカンパネルラの頭に、戻ってきたメルエが乗っかる。
「オレも凄い大活躍だったんだからな! バッチリ聞かせてやる! あ、カンパネはお菓子食うか? 食うよな? お嬢も食えよなー」
「もちろん! 美味しそうなの作ったねえ」
「ご馳走してくれると言うものを無下にする気もないわ。喜んで頂くけど……もう少し静かにはできないのかしら」
 小さな妖精によって賑やかになってきた空気に、肩を竦めるリグレット。二人の様子にカンパネルラはくすくすと、笑い声を零した。


●味見で試食で、もはや実食

 料理ができないわけじゃないんですよっ!

 テーブルにちょこんと座る氷室・癒(超ド級ハッピーエンド・f00121)は心の中で呟く。
 みんながお菓子作りに励んでいる中、既にテーブルに着いている自分。
 料理ができないから、座っているのではない。確かに上手だと胸張って言えるほどではないと自覚はあるが、それでもできないわけではない。
 ただ、お菓子は……料理と違い調整が効きづらいお菓子作りは、なによりも材料に使われる分量の正確さが大事。
 この方が美味しいはず! と入れたものが凄いことになったり、ちょーっとだけ目を離しただけなのにコゲコゲだったり……。
 でも料理ができないわけじゃない。癒は再び心の中で呟いた。
 
 では何もしていないのかと言うと、そうではない。
 今、癒は大事なお役目を果たしていたのだった。

「どうかな? ちょっと焼き方を変えてみたんだけど」
「ぐーです! バッチリです!」
「じゃあさ、こっちは? シロップを足してみたから、風味が良くなったと思うだよね」
「おぉ、あまーいっ! これはこれ美味しいですよ!」

 癒の言葉と笑顔に喜びの声をあげる生徒たち。
 そう、彼女は今、みんなが作るお菓子の試食、味見担当の任についていた。
 初めは自分から申し出たのだが、その一人目を皮切りに、次に次に癒の前に出されていくお菓子の数々。
 子供のように無邪気に喜び、幸せそうに甘いお菓子を食べる癒の姿に、作る方も自然と笑顔になる。
 今では、癒はその場にいるだけで色んなお菓子が食べられる、贅沢なスイーツタイムへと突入していたのだった。


「なんだか凄い感じになってますね、私たちも混ざってみましょうか?」
「へ? そ、そうね……誰かに食べてもらうのも大事だものね」

 癒の前に差し出されたお皿には、様々な動物たちを形作ったクッキーが乗せられている。
 そしてお皿の中央には、クッキーの上にオレンジ緑、青に紫、透明感のあるジャムが乗せられ、よく見ると可愛らしい顔も描かれている。更に周りには砂糖で作った小さなお花の砂糖細工が散りばめられている。
 迷宮から帰ってきたばかりの癒には、それが何かすぐにわかった。

「蜜ぷにです! 蜜ぷにのクッキー!」

 グレイシアは、エリカを手で指してくすりと笑う。
「こちらの猟兵さんが頑張ってくれたんですよっ」
「教えてもらいながらだけど、上手くいった。と思うわ」
 可愛らしいクッキーを前に上機嫌な癒は早速、蜜ぷにクッキーを一枚取り、あーん。
 その様子をエリカが目を離さず見守っていた。

「んっ! クッキーがサクサクで、ジャムがふるふるー! 甘くて、でもでもジャムの酸味がいい感じです! ぐーっ!」

 ほっと安心したエリカは、自分も一枚取って……食べる。
 初めて作ったクッキー、噛めば口の中でほろりと砕けて甘みが広がっていった。加えた蜜の砂糖とは違う風味に、ジャムの果実の甘酸っぱさが合わさりとても、美味しくできていた。


「あれ、味見をしているのかな?」
「それなら丁度いいわね、私たちもお願いしましょうか」

 次のお皿には、薄く切り分けられたパウンドケーキが数枚。
 卵とバターで作った標準のものと、チョコ風味の生地に砕いたナッツが散りばめられているもの、そしてドライフルーツが混ぜられたもの。
 どれも薄くは切り分けられているが、本来は大きめの型で焼かれたものだということが分かる大きさだった。

「全部違うのを作ったんだけど、生地も焼き方もその分違って大変だったよ」
「でも、面白かったわね。いっぱい作ることもできたし」
 リーファは手にした袋を持ち上げて見せる。アラジも同じ袋を持っており、お土産用にと取り分けたパウンドケーキが入っている。

「ほうほう、では早速……ふわふわっ! 優しい味ですねっ。こっちは、おや? さっきのよりぎゅーっとしてますね! それにしっとりで……美味しいです!」

 卵とバターのものはふわふわに、他二つはお腹いっぱいになりそうなしっとりとした質感の生地で焼いてみたようだ。
 癒の反応が狙い通りだったらしく、アラジとリーファは満足そうに笑いあって、それぞれパウンドケーキを手に取る。


「なるほど、そういう催し物があるようだね。これは参加せざるを得ないのではないか?」
「別に勝負事ではないと思うのだけれど」
「でも楽しそう! ねえねえ、次は私たちのを食べてよ、すっごく美味しいんだから!」

 香ばしい表面にデコボコの格子模様が特徴的なワッフルが並ぶ。
 九はそのワッフルの上に丸くくり抜いたアイスを乗せ、取ってきた蜜をかけていく。
 温かいワッフルの熱でアイスが少し溶け、表面のへこみに溜まる……。

「よし……出来上がりだ」
「ホント、そういうところはマメね、あなた」
「あ、そのテクもあとで教えてよ」

 表面はカリカリに、そして中はふんわりもちっと。アイスと一緒に食べれば温かさと冷たさを同時に味わえ、蜜の味がそこにプラスで背を押してくる。

「ふぁぁ……美味しいーっ! ふわふわカリカリもちもち!」

 ご満悦な様子で食べ進める癒に、九は得意げな顔だった……


「……賑やかね。こんなにも騒ぐものなのかしら」
「楽しそうでいいじゃねーか、うちも似たようなもんだろ」

 ワイワイとお菓子作りから、今度は試食会へと移行し始めた様子に目をぱちくりとさせるリグレットの近くを、メルエが笑いながら飛んでいる。
 自分たちが居る寮も騒がしいが、この家庭科室も負けないくらいだ。特に学園の生徒たちが率先しているようにも見える。

「はい、お二人もどーぞ!」
 そんな二人へ、クッキーやパウンドケーキ、ワッフルが乗ったお皿を両手に持ち、カンパネルラがやってくる。
 リグレットの様子に何か気づいたように笑って、自分も癒を中心に集まるみんなへと視線を向ける。

「みなさんを集める前に、聞いたんですけど。調理部って料理やお菓子を作るのが大好きな人、っていうのはもちろんなんだけど……美味しいものをみんなで食べて笑い会えるのが大好きな場所なんだってっ!」
 だから、あの光景は生徒たちが望んでいるものってことかも。と

「わっかるなぁ、オレもみんなと食うご飯や飲む酒は美味いと思うし!」
「なるほどね……ま、理解はできるわ」
 腕を組んで、うんうんと頷くメルエを横目で見てから、カンパネルラが持つお皿から適当に取ったお菓子を一つ、そっと口にして
「――あら」

「ええ……悪く、ないわね」

 ニッコリと笑ったメルエとカンパネルラも、それぞれお菓子を取っていった。


●焼き菓子は甘い蜜と共に

 アルダワ魔法学園の家庭科室。調理部に所属している部員たちが部活動の一環として料理やお菓子を作ったりする場所。
 そんな部屋も、今日は一段と賑やか。

「よーっし、なんだか乗ってきた! せっかくだから一曲、いっちゃおうかなー」
「じゃあ、いやしちゃんは歌っちゃいます!」
「お、曲わかるの?」
「わかりませんっ!」
「オッケー! ノリでいこう!」

 音を奏でて歌って騒いでみたり。

「お、そっちもお疲れー! どうだ、オレの特製ゴーレムパン食うか? 水とかお茶につけて食べると……美味いぜ!」
「ほう、ゴーレム。気にはなるけどそれは、そのままでは食べられないほど硬いということではないかね?」
「結局、寮の人で自然と集まるのね……はいはい、お疲れさま」
「寮のみんなにも持って帰ってあげましょうか、特にこの蜜はあの子が喜びそうだわ」

 知ってる顔で集まってみたり。

「そういえば今回のは凄かったわね、ロボットも出てきたし」
「あれ凄かったですよね、ボクも近くで見たかったなあ」
「あら、好きなの? ああいうの」
「あはは。まぁ、男ですから」
「ぅえ?! へー、ロボットですかぁ! どんな感じだったんでしょうねー。私もその場に行けたらなー!」
(話は聞きたいと思ってたけど、この話題、広げづらい……っ!)

 今日の出来事を話題に話し合ったり。

「美味しかったわ、上手く出来てよかった……でも、うん」
「蜜ぷに……やっぱり、一匹欲しかったわね……」

『――ぷにーっ』

 想いを馳せてみたり。


 甘くて楽しい時間は、まだまだ続きそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月20日


挿絵イラスト