オペレーション カントリーロードSO
グリモアベースの作戦会議室に入ると、待っていましたとばかりに男が手招きする。
「オーケイだ。じゃ、ブリーフィングを始めるとしようか」
そう言って資料を手にユウキは言葉を紡ぐ。
「前回参加してくれた者もいるだろうが少し待ってくれ、今回の作戦のブリーフィングの前に簡潔な全体の流れを説明させてほしい」
そう言って簡潔な説明を開始するユウキ。
今回の作戦は複数回にわたって奪還者の小隊を護衛し、彼らの故郷まで送り返すことを目標とした大掛かりな物であるとの説明だった。
「で、だ。一連の作戦群を故郷への道作戦(オペレーション カントリーロード)と呼称し、今回も彼らの元に向かって貰う訳なんだが⋯今回少々困った事態に陥った」
そう言ってホワイトボードの地図を指し示すユウキ。
「初期の予定では比較的安全なルートを移動する予定だったんだが、進行ルート上に大規模な地盤沈下が発生したらしく、大幅な移動ルートの修正を余儀なくされた。結果、どうしてもレイダー共の縄張りを突っ切る必要が出てきたというわけだ」
そう言って張り出した写真に写るのは⋯女性だろうか?
「このぶっくぶくの豚がその縄張りのボスだ。【マンマ・ブリガンダ】を名乗り、この周辺を牛耳っている」
そう言って次々張り出される写真には、簡素な布を着たやせ細った人々を、火炎放射器のようなもので脅すガスマスクの集団や、件のボスが人々に暴行を加えている様子が映し出されていた。
「この布切れを身にまとった人々は、【食料兼労働力】だそうだ。言ってる意味は分かるな?」
そう言いながら煙草に火をつけると椅子に座る。
ギィィ、という耳障りな音が静かな部屋に響いた。
「今回の作戦の要点は二つ。まずは、彼らの保護だ。今はあんな状態だが、元々は軍人やら付近でそれなりに力のあった奪還者達が彼らの素性だということが分かっている。助ければ、必ず現在の護衛対象たちにとっても有益になるだろう。続いて、現在の護衛対象である奪還者の小隊【フィサリス】が、ここを進行ルートにせざるを得ないことは話した通りだが、我々は先行して彼らがここを通過する前にこのレイダーたちを文字通り殲滅する事にした」
そう言ってユウキは猟兵たちを見た。
「奴隷の解放とレイダーの殲滅。これが今回の主要な作戦という事になる。あぁ、奴隷達を開放したら後のことは気にしないでくれていい。【フィサリス】の面々にはすでに事情を説明して解放した奴隷を迅速に保護する用意が出来ている。理非無き時は鼓を鳴らし攻めて可なり。大暴れしてくれて構わん」
煙草をもみ消したユウキは、猟兵たちを送り出すゲートを開くと、作戦開始の号令を放つ。
「それでは諸君。これにてブリーフィングを終了し、故郷への道作戦(オペレーション カントリーロード)の第二段階(セカンドオーダー)を発令、開始する。抜かるなよ」
ユウキ
はじめましてこんにちわ。
(´・ω・)はじめちわ!!
ユウキです。
前回のアポカリプスヘルの依頼から引き続いておりますが、今回から参加されても問題ありません。
(´・ω・)むしろWelcome!!
今回は、最初の日常で奴隷たちを解放した後は、何の気兼ねなく大暴れしてもらって構いません。
「汚物は消毒だ~!」
とか言いそうな奴らを、
「お前の言う通りだ。汚物は消毒すべきだな⋯」
してくださっても結構です。
(いや、ほんとに言うとは限りませんが⋯)
そんな訳で、詳しい注意事項などはマスターページをご覧ください。
個別に質問等がある場合は(答えられるとは限りませんが)今回のグリモア猟兵【ユウキ・スズキ(f07020)】の旅団、狩人の洋館、【ユウキの自室】まで!!
「それではみなさん良い狩りを⋯⋯⋯⋯」
第1章 日常
『奴隷達に勇気を!』
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POW : 自らの力を誇示・先導し、戦う勇気を与える
SPD : 戦いの術を教えて、戦う勇気を与える
WIZ : 武器や知恵を与えて、戦う勇気を与える
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秋山・軍犬
飯食うのは遊びじゃねぇ!
命への感謝を忘れたらお終いなんすよ!
きの子「ぐんけんさんおこなのです?」
怖いのです、いつもの軍犬さんに戻ってほしいのです
その為にも世界を茸で一杯にするのです!(シリアス終了)
うおー!(小声)
軍犬「あの、ちょっと落ち着きましょうよきの子ちゃん」
…とりあえず自分は可能なら夜に行動
獣を狩る要領で隠密,見張りを締め落としたりして
奴隷を開放してくるから(グラップル+早業+暗視)
きの子ちゃんはキノコ兵と待機
奴隷が逃げてきたらフォローしたって
…奴隷が腹減らしてたら
良い感じの茸、生やしていいから食わせたって
…生やし過ぎないでね?
あと匂いとかで目立っちゃだめよ?
静かに隠密行動ね、隠密行動
ベルカ・スノードロップ
「汚物は消毒です。えぇ、消毒が必要です」
【コミュ力】と【優しさ】をもって、【言いくるめ】て、温泉にお誘いしましょう
UC製の温泉旅館
求める対価は『英気を養い、立ち向かうための心身を取り戻すこと』
武器があり力があっても、心が折れてはどうしようもないですからね
心身の健康こそが、今後の作戦成功の要です
温泉で身綺麗にするだけでなく、旅館なので料理も提供されます
心が折れないようにするバックアップにもなるでしょうからね
武器を含めた兵装は別の方にお任せするとします
●食事が生きる糧ならば、風呂は魂洗う休息所。
月明りがきれいな夜だった。
軍犬とベルカは、早々に敵地への潜入を完了させて一息つく。
「意外とザルだったっすね⋯」
軍犬のつぶやきも無理はない。
そもそも、奴隷たちが逃げることも、奴隷たちを助けようなどと考えるものが居ることは想定していないのだろう。
それほどまでに周囲には“何も無ければ誰も居ない”
文字通りの荒野と、今目の前に存在する物と同じようなぽつりぽつりと点在する洞窟。
そして、マンマ・ブリガンダとその手下たちが潜伏しているらしい廃墟群だけが、周囲の景色の全てだった。
「ほーこくです⋯!」
軍犬の相方(?)であるきの子とその配下の菌糸類達が洞窟の偵察から戻ってきていた。
「教えていただけますか?」
ベルカの問いにきの子は答える。
「えっと、しらべてみたかぎり、かくどーくつな⋯」
「あーもう分かり辛い!」
軍犬がきの子の言葉を遮る。
少したどたどしい喋りが分かり辛かったらしく、軍犬が一度聞いてから噛み砕いて説明した。
「各洞窟内部には数人の略奪者と檻に入れられた奴隷がたくさん。略奪者の愚痴によれば、毎日交代で見張りを立ててるみたいっすね」
少しむっとしたような表情のきの子に、ベルカは優しく微笑む。
「ありがとうございました。きの子さん」
まぁ、途中で話を遮られたのがよほど気に入らなかったのだろうが、ベルカの微笑みにすぐにほだされたきの子。
「まぁ、ここは自分に任せるっすよ。ちょちょいのちょいで奴隷を解放してくるっすから、ベルカさんときの子はバックアップをお願いするっす」
ベルカは快諾するが、なぜかきの子はそっぽを向いてしまう。
「⋯⋯⋯⋯茸出していいから。匂いとか煙が出なければ、好きなだけ茸出して食べさせていいから。それでどうっす?」
にっこりと笑ったきの子を見て、溜息を吐くと続ける。
「しっかり元気にしてあげるんすよ⋯⋯⋯⋯」
やれやれといった様子で歩いて行く軍犬と、それを見送るベルカときの子。
――元気になる茸⋯⋯⋯⋯おや?――
ベルカは一瞬嫌な気配を感じたが、とりあえずはきの子のモチベーションを優先して口を閉ざすことにした。
●飯食うのは遊びじゃねぇ!
耳を澄まし、略奪者の言葉を聞く。
「しかし、あぁめんどくせぇ⋯⋯⋯⋯」
ぼやく略奪者を含め、その場に居る略奪者は3人。
かがり火を囲んで談笑を楽しんでいるようだった。
おそらく奴隷たちは洞窟の奥の牢屋に閉じ込められているのだろう。
「正直、牢屋なんて見張る必要あるのか? どうせ逃げたってアレに食われるのがオチだろうに」
【アレ】とはゾンビの事だろうか?
「まぁ、とはいえアレの餌にするくらいなら、俺たちが有効利用してやった方が幸せってもんだろ? どうせ俺たちの胃袋に入るんだけどな」
その言葉に下品な笑いが響く。
「そうだ、今から何人か逃がして追いかけようぜ? なに、2~3人喰っちまったって誰も気づきやしな⋯」
「飯食うのは遊びじゃねぇ⋯⋯⋯⋯」
何者かの声に、気の抜けたあ?という声が上がる。
「飯食うのは遊びじゃねぇ!!」
少々大きな声と共に、略奪者の1人が投げ飛ばされた。
別の略奪者に派手に激突し、二人はそろって目を回す。
「て、てめぇ⋯うぐ!?」
立ち上がろうとしたもう一人を素早く拘束し、首を締め上げる軍犬。
じたばたと暴れる略奪者に、彼とは思えぬ低い囁きを放つ。
「命への感謝すら持たないんすね⋯」
だんだんと締める力が強くなっていく。
ぎりぎりと嫌な音が、パチパチと燃えるかがり火の音にかき消される。
「⋯お前には、食事を味わう資格が無い」
抵抗する力も弱々しくなってきた。
ゴキリ。
鈍い何かが折れる音と共に、抵抗が止んだ。
「さて、こいつらも⋯片付けるっすか」
冷ややかな視線の先にいたのは、先程気を失った二人。
「⋯⋯食い物の恨みは恐ろしいってことを教えてやらないといけないっすね⋯⋯⋯⋯」
●温泉宿。きの子御膳。
軍犬の侵入後、ほどなくして奴隷たちが洞窟から駆け出してくる。
「あ⋯あんたらが逃がしてくれるのか⋯⋯⋯⋯!?」
弱々しい声で聴いてきた男に、ベルカが答える。
「えぇ、ですが⋯少々⋯⋯清潔にするとしましょうか⋯」
男は怪訝な顔をしていた。
「これに触れて頂けますか?」
そう言ってベルカが差し出すのは小さなエンブレム。
「これは⋯?」
それに怪訝な顔のまま触れた男の目の前が、一瞬光に包まれる。
「英気を養って来てください。あなたはまだ戦えるでしょう?」
最後にうっすらと、そんな声が聞こえた。
白い光に目が眩み、生暖かい湿った空気が身体を包む。
だが、不思議と嫌悪感はない。
目の前の光が落ち着くと周囲の様子がぼんやりと霞掛かっているのに気付いた。
否。白い霞が立ち込め、空を見上げれば湯気に霞んでなお煌々と輝く満月が静かに佇んでいる。
「俺は⋯夢でも見ているのか?」
それとも死んだのか。
そう言えばこんな景色を見たことがある。
どこだっただろうか? 世界がこうなる前⋯⋯⋯⋯
まだ世界がまともだったころに見た記憶がある。
霞の出所。温かい湯が張られた石造りの湯船に腰を下ろせば、冷え切った血液が温まる感覚がした。
「こちらを⋯」
女の声がして振り向けば、丸い皿に小さな花瓶の様な焼物と小さな焼物。
⋯確か【オチョコ】とか言っただろうか。
そうだ、遠い昔、一度だけ両親に連れてこられた異国のホテルにそっくりだ。
ならばこの花瓶の中身は⋯
ぐいと煽れば、何年振りかの酒の味。
本当に俺は死んでしまったのだろうか?
体も温まり、風呂を出れば備え付けられていた衣服に袖を通す。
下着を着て、薄い布を羽織るだけ。
だが、先程までの奴隷服とは違う柔らかく着心地のいい異国の装束。
異国の服に身を包んだ女に案内された先に居たのは、同じように捕まっていた奴隷達だった。
聞けば、自分たちもここに連れてこられたのだという。
「はいは~い!! おりょうりをおもちしました~!!」
快活そうな少女(少々目に違和感があるが)やキノコの着ぐるみを着た集団が料理を運んでくる。
「こんな⋯食べていいのか⋯?」
記憶の片隅にすら無いような美味しそうな料理が並ぶ。
「はい!! おかわりもいっぱいありますからね!!!」
たらふく放り込んだ。
食事がこんなに幸せな物だったのだと思い出させられた。
涙が止まらなかった。
「父さん⋯母さん⋯⋯⋯⋯」
父と母を呼ぶ。
あの嵐で死んだ、出来損ないの息子を守って死んだ2人。
動き出した“二人だった物”を、俺は⋯⋯⋯⋯見るに堪えなかった。
ああするしか⋯⋯⋯⋯
「分かってるさ」
不意に響いた懐かしい声に振り向く。
優しそうな笑顔の⋯⋯⋯⋯二人がそこにいた。
「そんな⋯⋯父さん、母さん!?」
やはり自分は死んでしまったらしい。
だが、それでもいいと思えた。
また三人で暮らせるのだ。それ以上何を望めばいい?
⋯だが、抱き着こうとする俺を、二人は静かに静止する。
「お前はまだこっちに来てはいけない」
母さんが言った。
「私達との約束を、忘れてしまったの?」
⋯約束。
お前だけは生きろと。
父は言った。
そして今度はお前が誰かを助けるのだと。
そう言いながら母は死んだ。
「でも⋯俺はもう⋯⋯⋯⋯」
死んでしまったのだろう?
そう言おうとした瞬間、父が言った。
「お前はまだ死んでいない⋯だが、お前が望むなら⋯⋯私たちはそれを拒むことも出来ない⋯⋯⋯⋯よく考えて決めなさい」
よく考えて決めなさい。
これは父の口癖だった。
あぁ、そうだ。
親不孝者だった。
軍に入っても怒られて逃げてばかりで。
⋯⋯⋯⋯⋯でもあの時。
俺は決めたんだ。
静かに首を振り答えた。
「⋯⋯行ってきます。父さん、母さん」
二人が抱きしめてくれた。
あぁそうだ。俺は二人との約束を⋯⋯⋯⋯反故にするわけにはいかない。
「お前はいったい何を食わしたんすかッ
!!!!」
軍犬が怒るのも無理はない。
とりあえずベルカのUCで、【英気を養い、立ち向かうための心身を取り戻すこと】を条件に旅館へと転送した人々を連れて安全な場所に連れてきたところ、出てくる人間が皆一様に虚ろな目をしながら、あるものは涙に頬を濡らしながら。またある者はにやにやと笑いながら出てくるのだ。
ちなみにきの子の脱出条件は、みんなに料理をふるまう。である。
「だって、“げんきがでるきのこ”をっていうから⋯⋯⋯⋯い、いぞんせいは⋯ない⋯⋯と⋯⋯⋯おもう⋯⋯⋯⋯」
アルダワ原産の強い幻覚作用を持つ茸を使ったきの子御膳。
それが、彼らに振る舞われたのだという。
「あぁ、それなら確か依存性は無かったハズですねぇ⋯」
ベルカが思い出すように言った。
「ほら、べるかさんも⋯⋯⋯⋯」
「そういう問題じゃないっす!!」
この状態の彼らを誰かに見られたら何と言われるか分かった物ではない。
「⋯⋯⋯⋯とりあえずは、皆さんが意識を取り戻すまで静かにしていましょうか⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
ベルカの提案に、軍犬は乗らざるを得なかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エメラ・アーヴェスピア
…予定通りにいかないとはついていないわね…
これもお仕事、しっかりとこなすとしましょう
まずは安定のドローンによる【情報収集】
救出対象や相手の位置、周囲の地形の情報が欲しいわね
得た情報は同僚さんにも伝えるとして
『出撃の時だ我が精兵達よ』
突撃銃持ちの突入班と狙撃銃で後方から援護する狙撃班に分け、効率よく人数を重視して助けていきましょう
いつもなら後ろで指示をする所だけど、今回は私も兵を護衛に突入
奴隷達、戦えるのでしょう?『我が紡ぐは戦装束』対象は救出者
派手に出すとストームが怖いから銃火器程度になるけれど…私の制作した銃よ、十分でしょう?
十分助けたらオブリビオンが出る前に一旦引くわよ
※アドリブ・絡み歓迎
アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎
POW
レイダーからの奴隷解放と拠点襲撃、
敵勢力の規模が分からないのが不安。対戦車兵器、装甲目標の有無もある…慎重にいこう。
乗ってきた牽引トラックをレイダーの拠点の近くに停車させて荷台の二足歩行戦車に乗り込む。
…燃料はまだ大丈夫。残弾は残りが少ない。節約しないと。
そのまま歩行戦車で拠点に乗り込む。敷地内で強制労働を敷いているレイダーに機関砲で威嚇射撃をしたり、車両を【踏み付け】で踏みつぶして戦車の存在感を奴隷にアピールする。
レイダーを散らしたらマイクをON。
訳あってこの拠点を制圧する。奴隷にされた人は手伝ってほしい。
――今なら、いける。
● 早朝。荒野の激戦。 強襲部隊
昨晩の二名が奴隷と脱出した後、朝を待って攻撃を仕掛ける事が決定した。
まだ敵はこちらに気付いておらず、派手なパーティーが敵の目覚ましになる事だろう。
――予定通りいかないとはツイてない⋯⋯――
前回の作戦に参加していたエメラは、これでしばらくは問題ないだろうと踏んでいたのだが⋯⋯⋯⋯
とはいえ、先行して保護した奴隷と、飛ばしたドローン。
地形や敵の構成⋯戦うために必要な情報は必要以上に充実している。
「⋯AP弾がちょっと足りないかな⋯⋯HEATなら少しあるけど⋯単価が⋯⋯」
作戦を立てるエメラの隣で、そんなことを言いながら二足歩行戦車の整備を行う少女。アビー・ホワイトウッド。
「弾代なら心配しなくていいわ。請求すれば出るから」
そう言いながら隣の少女を見やる。
油まみれになりながら、相棒の最後の手入れを行っているようだ。
「⋯でも、それだって依頼主に負担がかかるんでしょう?」
彼らと多少なりとも話してみたが、それほど裕福な拠点と言うわけでもなさそうだった。
あまり大きな負担をかけるのは得策ではないだろう。
「あら⋯彼らからの依頼は護衛でしょ? 奴隷の解放は彼らの依頼に含まれないわ」
そうやってにっこり笑ったエメラは続ける。
「そう言えばグリモアが自腹切るでしょ。気にしてたら楽しめないわよ、人生」
さらっととんでもないことを言いきったが、確かに本来の依頼と外れた内容は依頼主の拠点の知るところではない。
あくまでこれは護衛ついでのグリモアからの作戦だ。
「⋯⋯分かった」
そう言ってトラックからHEATの詰まった箱を出して二足歩行戦車【ラングレー】へと搭載していく。
ミサイル、バルカン、主砲にスモークディスチャージャー。
久しぶりにすべての弾薬を積み込んだ気がする。
「燃料も⋯ま、拠点に負担がいかないなら⋯⋯満タンにしちゃうか⋯⋯良かったね、ラングレー」
そう言って相棒を撫でる。
あまり笑わない少女だと思っていたが、その時一瞬、笑ったような気がした。
「それじゃ、作戦会議といきましょうか」
そう言って昨晩保護された奴隷たちを呼ぶエメラ。
「それで、使い方は覚えたかしら?」
そう言って渡した銃を見る。
「あぁ、原理はわからんが引き金を引けば弾が出る。それだけ分かれば十分だ」
そう言って捕虜だった者たちはエメラに顔を向けた。
⋯昨日まで捕虜だったとは思えないほど精悍な顔付き。
少しやつれていることを除けば、彼らが元々名のある者たちだったということが伺える。
「⋯まずは私がラングレーと突っ込む。煙幕を張りながら正面の連中を薙ぎ払うから」
そう言ったアビーにエメラが続ける。
「あなたたちに私の兵隊を預けるわ。私の兵とあなた達、必ず5人以上で行動して。そうしたら、煙幕に紛れて散開。各洞窟を制圧していく」
兵隊たちは人間ではないから何かあれば迷わず盾にしなさい。
そう言って聞かせるエメラ。
後方にも狙撃部隊を編成。
新たに加わる敵への対策も問題ない。
「さて⋯たまには私も前に出ようかしらね」
本来エメラは後方からの火力支援が本領だ。
だが、今回は少々勝手が異なる。
「奴隷を解放したら私のところに連れてきなさい。武器を渡すわ」
全員を守りながら戦うわけにもいかない。
戦えるのなら、自分の身くらいは自分で守ってもらわねばなるまい。
「了解した。彼らの説得は任せてくれ」
さぁ、パーティの時間だ。
● Wilderness Assault 機獣の咆哮。
空は相変わらずの灰色。
寝ぼけた目で歩哨に立った。
隣のやぐらに居たマイクが軽く手を上げる。
あくびをしながらこちらも手を上げ返事をした。
――どうせ、こんなとこに攻撃を仕掛けてくるような暇な連中なんて⋯――
何か⋯⋯聞こえたような⋯⋯⋯⋯?
次の瞬間、派手な音と共にマイクのいたやぐらが吹き飛んだ。
文字通り、吹き飛んだ。
「⋯⋯ッ!? 敵しゅ⋯⋯⋯⋯」
俺が同じ最期を迎えるのに、時間はかからなかった。
「やぐらを潰したッ! ⋯スモーク散布ッ!!」
上空へと撃ち出された煙幕が周囲を煙に包む。
「今よッ! 突撃!!」
エメラの声に鼓舞された部隊が、鬨の声と共に散開していく。
ラングレーの主砲から放たれた二発のAP弾は、寸分違わずやぐらの上部を吹き飛ばした。
何発かHE弾を積んでおいたほうが良かったかもとは思ったが、奴隷を解放した後はいったん撤退するのだ。
これ以上歩兵に対し主砲を使う場面など無いだろう。
エメラ達が洞窟に突入し、銃撃の音が響き始める。
敵の拠点から、襲撃を知らせる警報が鳴ったのはそれと同時だった。
「⋯行くよッラングレー!!」
敵の拠点から、小型の歩行戦車が顔を出し、砲撃を開始する。
間抜けな連中だ。あの距離からではあのサイズの主砲でラングレーに傷などつけられるものか。
ましてやろくな整備もしていないのだろう。二発目の主砲を撃った瞬間に自爆する機体や、どこを狙っているのかだいぶ離れた位置に着弾しているものもある。
「⋯⋯間抜け」
ロックオンを完了するとミサイルラッチを開放し、搭載された誘導弾が牙を剥く。
こちらも大した精度の物ではないが、威嚇には十分だ。
「ジャマよ」
エメラを見た瞬間、彼女の容姿に戸惑った略奪者達に何の躊躇もなく引き金を引く。
「残念だけれど、私は子供じゃないのよ」
そう言って見張りの腰に下げられた鍵を奪い奥へと進んだ。
「これは⋯確かに酷いわね」
檻に囚われていた人々は、外の騒ぎに怯え震えていた。
「あ⋯あんたらは⋯いったい⋯⋯⋯⋯」
エメラに声をかけた男。
古いボロボロの軍服。おそらくまだ捕らえられて日が浅いのだろう。だが体つきは筋肉質だが、瘦せ衰え、顔はやつれ、かつての面影は見る影もない。
「助けに来たのよ、あなたたちを」
エメラはそう言って鍵を投げた。
「逃げるのが怖いならそこに籠っててもいいわ。どうせここは壊滅させる予定だから。その後に逃げればいい⋯あなたたちがそれでいいならね」
男の顔を見た。
恐怖と恥と。
それが入り混じったような複雑な表情。
「⋯⋯でも、もし戦うというのなら」
本来兵士たちの駆動用に使うエネルギーユニットを使い、我が紡ぐは戦装束を発動する。
「ここに力はあるわ⋯⋯⋯⋯自分の意志で立ち上がりなさい」
そこに置かれた武器を見る、篭の中の鳥。
羽ばたく力はあるのに、その勇気の湧かぬ哀れな囚われ達。
エメラが差し出すのは勇気。
「⋯⋯⋯⋯」
檻が開く。
皆が一様に武器を取る。
鳥たちは、再び大空を羽ばたく決意に満ちた。
バルカン砲の弾が切れた。
歩兵掃討用の武器の弾が切れ、これ以上雑魚を押さえていられない。
思ったよりも敵の装甲兵器が少なく、主砲に対戦車用のAPやHEATを満載したのが裏目に出たか。
「⋯まだまだッ!!」
振り上げた足で、群がる略奪者を踏み潰す。
ラングレーの駆動音が、咆哮の様に周囲に響き渡った。
それに呼応するように、背後から武器を手に突撃してくる奴隷達。
「⋯ごめんなさい、予想以上にやる気だわ。あの人達⋯」
エメラから通信が入る。
⋯また予定が狂ってしまったか。
本来なら、奴隷達は撤退させる予定だったのだが⋯⋯⋯⋯
マイクのスイッチに手を伸ばす。
『訳あってこの拠点を制圧する⋯奴隷にされていた人は手伝ってほしい。今なら⋯いけるッ!』
静かな声。
だがそれでいて力強いその一言に。
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ
!!!!!』
理非無き時は鼓を鳴らし攻めて可なり。
奴隷たちの反撃の狼煙が、荒野に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『フレイムアーミー』
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POW : ファイアスターター
【火炎放射器の炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【ゲル状の燃料を燃やすことで生じる】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : トリプルファイア
【火炎放射器】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
WIZ : ヘルファイア
【火炎放射器の炎】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を炎で包み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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敵の拠点から続々現れるレイダー達。
最初の予定は崩れてしまったが、それはそれで仕方がない。
作戦とは現場で変わるものだ。
後方に待機していた【フィサリス】の案内役が後方の猟兵たちに。
【フィサリス】の部隊に無線機による伝令を伝えた。
「合流されたし。作戦変更。これより奴隷達と共にパーティを開始する。合流されたし」
レイダー達と猟兵奪還者連合。その総力戦の幕が開く。
秋山・軍犬
んじゃ、全員 生きて帰って
皆で美味い飯を食うっすよ!
さて、炎と言えば中華鍋
自分は指定UCで無数の黄金の中華鍋を
作成し展開、中華鍋で自身と味方への火炎攻撃を防御しつつ
取り込み、黄金の厨房の強化&カウンターを狙う
自分の間合い、黄金の厨房の中では
簡単に味方を炎で焼かせなんかしないっすよ!
(料理+火炎耐性+オーラ防御+見切り+早業+属性攻撃)
あと、敵さんも炎に耐性あるかもしれんけど
それならそれで、アンタらが馬鹿にしてきた奴らの
気合いの入った攻撃が飛んでくるから安心しろっす!
前回に引き続き
きの子ちゃんはキノコ兵とバックアップ
もう怒ってないけど使う茸は考えて皆を助けてあげてね
(医術+救助活動+オーラ防御)
ベルカ・スノードロップ
アドリブ◎/連携◎/絡み◎
猟兵が猟兵たる理由を見せてあげましょうか
敵の攻撃は、悉く火炎放射器によるもの
ならば、《選択UC》による気体操作
・真空の障壁も敵周辺に展開
・真空の障壁の内側の可燃性気体(酸素やメタンなど)の濃度を増加
敵には、敵の攻撃で自滅していただくことにしましょう
気体は得てして目には見えませんからね
真空の障壁は、炎による害が敵以外に及ばないようにする措置です
熱風や爆風もUCの気体操作・温度操作によって周囲の味方には害が及ばないようにします
「血液が流れている敵なら、液体操作でどうとでもできるのでしょうが……」
血流を止めたり逆流させたり、血液を沸騰させたり凍結させたり、ね
エメラ・アーヴェスピア
ああもう、思った以上に元気ね!
はぁ…こうなったら私がこちらで補佐するしかないか…
とりあえず『戦装束』は維持…今までの事を考えると暴れたいのは仕方ないかもしれないけれど、最低限の指示には従ってちょうだい!
ドローンも継続…まさか敵の行動より、味方の位置を確認するのに使う事になるとは思わなかったわ…
『精兵』は回収、代わりに『突き進め我が不屈の兵よ』を発動、同じ様に盾にするのならこちらの方が有効よ
相手の行動も分かっているのだから兵の装備は耐火仕様に
貴方(奪還者)達、面倒は見てあげるからその意地を見せてちょうだい
但し、相手のボスが出たら絶対に戦わず距離を取る事、それだけは守りなさい
※アドリブ・絡み歓迎
アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎!
しまった、後退するタイミングを無くした。仕方ない。
私の歩行戦車を盾にして元奴隷の被害を軽減させるように立ち回ろう。
機関砲は弾切れ、なら敵が密集していたら主砲を撃ち込んで対応しよう。
…効果は薄い。榴弾を持ってくるべきだった。
敵兵の主武装は火炎放射器。元奴隷の兵士にとっては脅威。近づけさせないようにしないといけない。
敵兵が肉薄してきたらナパーム弾投射機から焼夷弾を発射して奴らを黒焦げにしよう。
これも撃ち尽くしたらいよいよ手が無くなる。
そうなれば後は近接戦闘しかない。
UCで敵兵を踏み潰して、【蹂躙】で足元の敵兵を蹴飛ばそう。
敵兵の気を引きつければ元奴隷の兵士達も戦い易いはず。
● 戦場指揮
まぁ、蹂躙されていた人間に武器を与えて蜂起させればどうなるかなんて、今思えば容易に想像できた。
「ああもう、思った以上に元気ね!」
とりあえず撤退させることが目的だったはずが、気付けば軍隊と化している。
元々“そういう連中”と言う事もあるのだろう。
こちらが何か指示をせずとも、勝手に隊を組んで敵へと応戦していた。
こうなればこちらは補佐に回り“彼らでは手に負えない相手”を処理するに限る。
「聞こえる? 嫌な気配がする。おそらくオブリビオンも居るわ!!」
ドローンに明らかに異質な反応。
あの【マンマ・ブリガンダ】とかいう奴がオブリビオンを従えていたか、あるいはこの騒ぎに引き付けられたのか。
どちらにせよ、こちら側に猟兵が居るように、向こう側にはオブリビオンが居る。
「戦争らしくなってきたじゃないの⋯ッ!」
味方の戦装束及びドローンの維持に気を遣わねばならないのは少々キツい話ではあったが、こうなれば彼らは軍として動く。
だったらやることはただ一つだ。
「各員聞いてちょうだい! ここからは無作為に暴れて勝てる相手ではないわ! 最低限こちらの指揮に従ってもらうわよ!」
各ドローンを部隊ごとに一機随伴。スピーカーとマイクをオンにした。
『Yes ma'am!!!』
了解。とか、普通の返答で良いのだが⋯雰囲気というものは恐ろしい。
――でも、だからこそこちらが制御しなければ⋯⋯――
理非無き時は鼓を鳴らし攻めて可なり。
そんなことを言っていたグリモアの意見は認めるが、それでも勢いに任せて押すだけでは戦いに勝てはしないものだ。
「全員、こちらの指示あるまで現在位置を維持! アビーは一時後退して弾薬の補給を!! 時間は稼ぐわ!!」
『⋯了解、いくらか潰して一旦引くわ』
静かな返答と、元奴隷たちの再びの返答。
「私は指揮官じゃないのよまったく⋯とりあえず、本隊の到着までは持ちこたえて見せるわ」
そう言って、戦場を見渡せる位置まで後退を始めるエメラ。
いくら何でも、猟兵二人で落とすには厳しいのは明白だった。
● 一時後退
『聞こえる? 嫌な気配がする。おそらくオブリビオンも居るわ!!』
通信機からエメラの指示が聞こえる。
「もう目の前にいるわ⋯」
相対する先、火炎放射器を携えこちらへ向かってくる連中が居る。
明らかに異質な気配と、こちらを認めて一直線に向かってくる愚直さ。
普通に考えれば、戦車相手に火炎放射器で突っ込む馬鹿はいない。
「⋯とはいえ、燃料タンクに引火する可能性もゼロでは無い⋯か」
現状、残っている弾薬はHEATとナパーム。
これを撃ち尽くせば、引火の危険に晒されながら近接戦を行うしか手は無くなる。
「儘よ⋯ッ!!」
危険に怯えていては勝てる戦いも勝てなくなる。
まして、自分の後ろには生身の人間。
火炎放射器の格好の獲物となるのは目に見えているのだ。
突っ込んでくる先頭に向け、主砲のレールガンを放つ。
一瞬のチャージの後に青白いスパークを伴って放たれた投射物は、先頭の集団ではなく、その前の地面を抉るように着弾した。
だが、それは彼女の思惑通り。
例え爆風が無くとも、地面を抉る様に放たれた砲弾は、衝撃をもって砂を吹き飛ばした。
これだけの速度と質量で吹き飛ばされた砂の初速を考えれば、近距離ならば充分散弾としての用を足す。
その思惑通り、跳ね上げられた砂にズタズタに体を引き裂かれた先頭集団が倒れる。
アビーとてただの小娘ではない。
この地獄のような世界をラングレーと共に生きてきた。
彼の扱い方は誰よりも知っている。
「あなたと一緒なら、私は負けない⋯」
この程度で怖気づいて判断を誤るほど、彼女は弱くない。
『アビーは一時後退して弾薬の補給を!! 時間は稼ぐわ!!』
再びのエメラの通信。
それと同時に、後方の狙撃部隊がオブリビオンへと標的を変え集中砲火を開始した。
「⋯了解」
場合によってはラングレーの質量で文字通り“轢き殺す”ことも考えたが、後退出来るなら無理に危険を冒す必要はない。
ナパーム弾を広範囲にばら撒くように発射し、炎の壁を形成すると即座に後退を開始する。
引きの手際という物も、彼女は心得ていた。
● 膠着状態
「簡単だけど、これが状況よ。今は私の蒸気兵と奴隷たちが前線にいるけど、敵も立て籠ってるわね」
合流してきた【フィサリス】本隊に、簡潔な説明を終えたエメラ。
膠着状態。
攻めるに固く、向こうも打って出るには分が悪い。
「なるほど⋯⋯では、向こうが回り込んできている可能性は?」
ベルカの問いに、エメラは首を振る。
「想定済よ、敵の拠点はこちらのドローンが監視し続けているわ。ネズミ一匹⋯⋯とはいかないけれど、人間が動けばすぐに分かる」
「じゃあ、今のうちに通り抜けちまうのはどうだ?」
前回居なかったもののために簡単に説明するが、彼はダディ。
現状【フィサリス】の副リーダーの立場にいる男だ。
他に、リーダー格の兄妹、レオンとサラがこの場には居る。
「それは出来ないっすね。勿論、皆さんを先に突破させてもいいんすけど、自分たちはここを潰さないといけない事情が出来ちゃったっす」
オブリビオン。
その存在が現状をややこしくしていた。
軍犬の言った通り、こちらで敵を睨みつつ、フィサリスの面々を先行して突破。敵を睨みながらこの危険地帯を突破することは出来る。
だが、猟兵として目の前のオブリビオンを無視するわけにもいかない。
「⋯⋯でも、こちらからケンカを売ってしまった以上は突破しても報復は免れないわ」
装備の準備を終えたアビーが、会議に加わる。
「それもそうですね。それに、元奴隷の方々もこのままでは腹の虫がおさまらないでしょうし」
そう。もう一つの懸念は奴隷達だった。
「まぁ、殺気立ってるのは分かってるよ」
レオンが肩をすくめた。
今まで、人権など無いに等しい環境で酷使され続けていたのだ。
そう簡単に腹の虫がおさまるとも思えない。
「⋯すいませんね、面倒事に巻き込んでしまいました」
ベルカがサラに微笑む。
「あ⋯あぁ、いや、一応兄ちゃんが居るからリーダーは僕じゃなくて兄ちゃんなんだけど⋯」
そうでした、と悪気も無さそうに笑うベルカ。
「まぁ、いずれにせよフィサリスの方々は待機しててくれて構わないっすよ。兵力は今のままでも十分なハズっすから」
軍犬がそう言いながら拠点を睨んだ。
だが、逆を言えばオブリビオンが相手となるとむしろ彼らの存在は邪魔になる。
後方でおとなしくしていてもらうのも悪くはない。
「⋯⋯いや、俺たちも打って出るべきだ」
レオンがそう言った。
「彼らに協力を要請するなら、言い方は悪いけど恩を売るべきだし、それにここに蓄えられている物資を考えれば、攻めて落とせるのに見逃すのはあまりに惜しい。勿論、君たちとの利害も考えてね⋯君たちだって、慈善事業で僕らを助けてくれているわけでもないんだろ? 向こうが善良な拠点だっていうなら話は別だけど、レイダー相手に慈悲を掛ける理由も無い。潰せるなら⋯⋯そうするべきだ」
驚いたような顔をする軍犬とベルカ。
少し頼りない男だという印象のレオンであったが、なかなかどうして肝は据わっているらしい。
リーダーと言うだけはある。
「⋯⋯決まりね。なら、一応作戦は考えてあるわ」
状況打破のプランは、すでにある。
● 一転攻勢
プランはシンプルだ。
猟兵が突入し、オブリビオンを発見しながら殲滅。
一転突破の電撃作戦で向こうの出鼻を挫き、フィサリスと奴隷たちの面々が周囲に散開。エメラのドローンから得られる情報から、周囲に逃れた残党処理を行う。
その先駆けを務めるのは⋯⋯
「行くっすよッ!!」
軍犬だった。
理由は単純、UC【フルコース・ゴールデン】を使用した彼は機動力に優れ、そして⋯⋯
「さぁ!! これが、限界を超えた力を使いこなす事で到達した新たな領域……フルコースゴールデン・オーラキッチン!!」
領域を自身や味方が戦うに適した空間へと作り変える事が出来る。
黄金に輝くキッチンと化した空間は、彼の支配する領域。
飛び交う銃弾やオブリビオンの火炎放射器は、彼の召喚した調理器具が防ぐ。
リロードに入れば⋯⋯
「隙ありっす!!」
軍犬の高速の拳が炸裂する。
「⋯今度はあなたたちに合わせてあるわ」
榴弾を使えば、建物が破壊され、物資に傷がつく恐れがあった⋯だが。
主砲から放たれたのは、キャニスターだ。
レールガンの砲身から放たれるそれは、縦方向の拡散を極限まで抑え、横方向に大量の鉄球を撃ち出す兵器と化す。
歩兵の散弾銃とは比にならないほどの圧倒的な弾幕が、一瞬で広範囲を覆うのだ。
――取っといてよかった⋯⋯⋯⋯――
正直、ラングレーの弾薬としては使い物にならないと、どこかの拠点に売りつけるつもりで持っていたのだが。
どこで使うか分からないものである。
不用意に近づいてくれば、大質量で踏み潰す。
多少離れたところで散弾か、軍犬の拳が飛んでくる。
オブリビオンは本来、閉所で最も効果を発揮するはずの装備である火炎放射器の利点を生かせぬままに蹂躙されていった。
そもそも、顔を出すこと自体が死を意味していた。
アビーと軍犬の攻撃を掻い潜り、死角を突いて接近しようとすれば、その“瞳”の餌食となる。
顔を出した瞬間だった。
ベルカと目の合った男は、自身の体温が上昇する感覚に包まれる。
そんなバカな。
体が熱い。
戦闘の最中に、こんな⋯いや⋯⋯違う!?
「が⋯⋯あ⋯⋯⋯⋯ッ!?」
熱すぎる。
異様な感覚にのたうち回る。
息をすれば口から湯気が噴き出す。
有り得ない。
外は半裸で歩けるほど暖かいというのに⋯⋯⋯⋯
倒れて薄れる意識の中、ベルカはずっと微笑んでいた。
【エレメンタルノヴァ】
接近して彼の瞳に囚われれば、文字通り火傷では済まないだろう。
⋯内側から沸騰する自身の血液に焼かれていくのだから。
「行くわよ!! セット!…さぁ、蹂躙を始めなさいッ!!」
敵の攻撃が途切れた隙を見て、エメラの蒸気兵達が一斉に軍犬のフィールドを飛び出していく。
物言わぬ無慈悲な兵たちの蹂躙。
火炎放射は意味をなさず、ましてやオブリビオンの火炎放射で燃え移った炎を纏った体当たりが、敵を燃やす。
「う⋯うわぁあああああああああああああああああああああっ!!?」
完璧ともいえる蹂躙。恐慌状態に陥った敵集団は、もはや逃げ惑うしかできない。
だが、例え逃げおおせたとしても、後方のフィサリスや奴隷たちの銃口が、周囲を取り囲んでいた。
逃げられる状況ではないのだ。
バガンッ!!!
そんな中、突如轟音と共に吹き飛ばされる、エメラの蒸気兵。
頑丈なはずのその体が、まるで飴細工だといわんばかりに文字通り粉々に砕け散った。
その先にいたのは⋯⋯⋯⋯
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『🌗マンマ・ブリガンダ』
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POW : マンマ・ザ・フルパワー
【解体用チェーンソー】【爆殺グレネードランチャー】【刃物を通さぬ分厚い皮下脂肪】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD : グレート・マンモス・アーマー
自身が装備する【大型のマンモスダンプトラック】を変形させ騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強する。
WIZ : サクリファイス・カノンボール
自身の【負傷、又は猟兵から逃げ出した子分の命 】を代償に、【人間大砲から放たれる爆弾を巻き付けた子分】を籠めた一撃を放つ。自分にとって負傷、又は猟兵から逃げ出した子分の命 を失う代償が大きい程、威力は上昇する。
👑11
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「何なんだい!? このザマはッ!?」
奥から現れたのは、グリモアが言っていた、ここのレイダーたちのボス。
【マンマ・ブリガンダ】
「あんたら、情けないったらありゃしないねェ!! これだから使えないやつらを率いるのは嫌なんだッ!!」
蒸気兵を粉砕した腕力。明らかに人間のそれではない。
「オラッ!! 逃げて死ぬくらいなら私の役に立って死にな、この愚図ッ
!!!!」
逃げ出そうとした部下の頭部を引っ掴み、まるでボールだとでも言わんばかりにぶん投げると、投げつけられた部下が地面に触れると同時に炸裂する。
⋯間違いない。
おそらくはユーベルコード。
目の前の女は⋯⋯オブリビオンだ。
秋山・軍犬
コイツの性格や攻撃力…
フィサリスや奴隷を直接、狙われたら
生半可な防護領域じゃ攻撃が抜けかねんすね…
…アレやるか
UCは想像力と習熟度
使い方次第で同じUCでも
その姿を劇的に変える…と自分は考える
ボスに高速接近しながら
広域展開していた黄金の厨房の領域を
圧力鍋を鎧の様に変化させ纏うイメージで
自身に集約…名付けて
「オーラキッチン・プレッシャーフォーム!」
自身の戦闘力にブーストをかけボスに接近戦
殴り合いを挑む
(気合い+限界突破+オーラ防御+激痛耐性+火炎耐性
+グラップル+怪力+早業+空中戦+救助活動)
いわゆるタンク役
フィサリスや奴隷を狙う余裕なんぞ与えん!
かかってこいや! クソババア!
※アドリブ連携歓迎
アビー・ホワイトウッド
アドリブ連携歓迎です!
相手は1人、流石にこちらを舐めてる。
一撃でカタをつけよう。
マンマの登場と同時に主砲を照準、一撃で撃破するつもりで発射。
…こいつ、雑魚じゃない。流石にそう簡単にはいかないか。
ボスなら手強いはず、初手で仕留められなかったら気を引き締めて掛かる。
機関砲とナパームも使って追い立ててゆこう。死角の足元にさえ入らせなければどうとでもなる。
マンマのUCで重機メカが現れたら正面から受けて立つわ。
主砲装填、UC発動で一撃を喰らわせる。ダメージを与えたら重機メカに正面から激突してやる。力比べといこう。
情報解析で弱点が分かれば再度主砲装填、今度こそ仕留める。
エメラ・アーヴェスピア
さて、面倒を見るといったからにはしっかりと果させてもらうわよ
でも目標に突撃させる訳にはいかないわ
後方の兵器庫より同僚さん達に通達、獲物が現れた。繰り返す、獲物が現れた
狩場には近くのドローンで案内するわ。至急狩場に向かい、狩ってちょうだい
反対に他の方達は指定された目標から距離を取り、今まで通り他の敵の撃滅を
そいつは我々猟兵の獲物よ…近づいた時に命の保証はできないわ
でも…ここまで来たならあと一歩。あなた達が選んだその道、突き通してみなさい奪還者!
…『戦装束』の再装填や兵器の維持で私は目標の所に行く余裕がないから奪還者の支援をさせてもらうわ
少しでも相手の弾が無くなればいいけど
※アドリブ・絡み歓迎
地鉛・要
【ジュゲム】で参加
連携アドリブ可
大砲で打ち込むのは兎も角、爆発四散させるとかエグイことするな
攻撃は任せてあるから嫌がらせに徹底するとするか・・・
まずは隠れて監視軍蟲で■迷彩、地形利用、目立たないを付与させた大型の蜘蛛を召喚
蜘蛛を一撃で全部が倒されない様に散らばらせるように配置しながら■誘導弾、粘着可燃属性、生命力吸収、呪詛、制圧射撃を付与した糸を大量に飛ばさせる
誘導は味方とフィサリスの面々に当たらない様に
糸は相手全体を捕えるのは勿論だが、弾が込められない様に念入りに敵と武器を絡め捕らないと
念の為、マンマには追加で戦争機構から取り出した■粘着属性の水風船でも投げつけとくか
藻掻けなくなり乍ら苦しめ
ベルカ・スノードロップ
【ジュゲム】
アドリブ◎
連携◎
オブリビオンの兵には何も思う所はない
――はずなのですが……
カチンと来ました
この女には「死すら生ぬるい」
まずは、来てくれた皆にお礼を
「来てくださって、ありがとうございます」
美麗さんの後で《選択UC》
炎属性の武骨で巨大な対ドラゴン用の竜槍を召喚
槍の外殻素材は金属製
【鎧無視攻撃】とマンマへの【誘導弾】を乗せて、美麗さんのUCで射出
ついでです
プラトニック・チェインを【ロープワーク】で操り、解体用チェーンソーを【盗み】ます
「美麗さん、コレもぶつけましょう」
支えますので
状況終了
『フィサリス』の面々が呆気に取られている気がしますが
「言ったでしょう? 『これからもたくさん来る』と」
緋神・美麗
【ジュゲム】
呼び方:名前+さん
アドリブ・絡み歓迎
これはまた最後にえらいのが出てきたわねぇ。見た目も発言も全部気に食わないしさっさと消えてもらうわよ
「なんかもう、存在そのものが許せないわね」
「しかしまぁ、本当に無駄に分厚そうな脂肪ねぇ。これはちょっと貫くのは大変かしら。あれを貫けるだけの弾が欲しいわねぇ。ベルカさん、協力してもらっていいかしら」
ベルカさんに弾代わりの槍を作ってもらってる間にマンマに狙いを定めて力を溜め、槍が完成したら
「これなら十分滅ぼしきれそうね。協力ありがとうね」
【超巨大電磁砲】に気合・鎧無視攻撃・誘導弾・捨て身の一撃を上乗せさせ全力で撃ち放つ
「この一撃で終わらせるわよ」
代神・リゥム
チーム名【ジュゲム】
メンバーの呼び方:下の名前呼び捨て
「私利私欲のために暴力を振るうヤツぁ、捨て置けねぇな。ましてや仲間に! オレの悪魔で裁きを下す!」
左腕の籠手にはめられたダイスを回す、出目に応じて出力が変わる物だが、代償もそれに応ずるUCだ
「六なる面の流転により、今ここに姿を現せ! "人生"というゲームを嗤う小さきアルカナ!!」
「向こう1ヶ月のオヤツを代償に! 現れよ、戦車の悪魔【DDD】《グローリー・ナベリウス》ッ!」
地獄の番犬を模した、三つの砲塔を持つ戦車を呼び出し、マンマに突撃させて注意を引く
「さぁ、地獄の猛火で苦しみな!」
※アドリブ連携歓迎です
ジェイ・ランス
【SPD】【ジュゲム】
・呼び方:ベルカん(f10622)、かなめん(f02609)、リウムちん(f22550)、みれーちん(f01866)、船長(f18077)
おうおう、役に立たないからって使う捨てかい。勿体無いね。
しかも、なんだかでかいもの出してきたねえ。
じゃあ、それこそリサイクルに出しちまうか。
『Ubel:Code schwarzes_Loch Dame.』
さあさ逃げてみなよ、あがいてみなよ。何をしても、こいつは全て吸い尽くすぜ。あんた以外な。
ねえねえどんな気持ち?部下も武器もないまま、すべてが無駄になっていく気持ち。「マンマー」って叫んだってあんたは許されねえぜ。
※アドリブ歓迎
マリア・フォルトゥナーテ
アドリブ連携歓迎
【ジュゲム】
「民衆を傷つけるなどあってはならないこと!その膂力、もっとマシな事に使いなさい!このレディ・ポーク!もっとも、改心する心はこれから削りますけどね!!」
フライングダッチマン号は陸上にあってはならない呪いがあるため、ペットのクラーケンに海から持って来させ、自身はその船に乗って現れる。
【海の墓場】はダッチマンを基点にして展開できる固有結界。そこに飲み込まれた者は、未来永劫、自らが最も望む欲が絶たれる絶望で心が壊される。
今回の様な我欲が肥大したような相手には覿面であろう。
私の役割は他の仲間達の援護。マンマの隙を伺い、この固有結界に取り込んであげましょう。
先手必勝。
口を動かすのは二の次だ、瞬間的に反応したアビーが、ラングレーの主砲からAP弾をマンマ・ブリガンダへと放つ。
「はんッ! ナメるんじゃないよカンカラッ!!」
だが、音速を超えるはずのレールガンから放たれた弾丸を、飛んできた石ころを払うかのように弾き飛ばして見せる。
部下が巻き込まれて悲鳴を上げようが、お構いなしだ。
「⋯⋯嘘でしょ?」
弾丸を弾かれたことは腹立たしいが、腹立たしい以上にその大質量をいとも容易く弾かれたことに驚きを隠せないでいるアビー。
「可能性としては想定してたけど、馬鹿みたいに強いわね、こいつ⋯⋯」
蒸気兵を一撃で飴細工のように粉砕し、音速で放たれた砲弾をいとも簡単に弾いて見せる。
オブリビオンが出てきた時点で、敵のボスがオブリビオンであることを想定していたエメラにとっても、こいつの強さは想定外だ。
こちらの猟兵としての戦力はたった4人。
だが、目の前のオブリビオンのを抑えることは出来ても、これでは有効打を与えられる保証がない。
「待って⋯⋯あの緑髪はどこよ⋯?」
ふと周囲を見回せば、先程まですぐ近くに居たはずのベルカが居ない。
まさか⋯⋯⋯⋯
「今はあいつを押さえることに集中するっす。あいつに後ろの人達を狙われ始めたら手のつけようがなくなる⋯ベルカさんが逃げるなんてことは考えられないっすから。きっと何か考えあっての行動っすよ」
近くに来た軍犬がそっと耳打ちをする。
⋯確かに、軽薄そうには見えるが、それ以上に思慮深さを見せるあの目⋯⋯
いずれにせよ、軍犬の言う通り現状の戦力で何とかして目の前のオブリビオンを足止めするほかない。
本当に考えあっての行動と言うのなら⋯⋯⋯⋯それに賭けるしか勝機はない。
「何をぶつくさ言ってるんだい!? 終わりだってんだったらこっちから行くよッ!!」
先程のアビーの攻撃で下半身が吹き飛び、うめき声をあげる部下に近付いていくマンマ・ブリガンダ。
「おや、こいつは酷いねぇ⋯⋯痛いのかい、坊や?」
まるで子をあやす母親の様な声を出す。
「マ⋯⋯マ⋯⋯⋯⋯助⋯⋯けてぇ⋯⋯⋯⋯マ⋯⋯⋯マ⋯⋯⋯」
目の前のオブリビオンか、はたまた彼の本当の母親に言っているのかは分からない。
だが、それを聞いたマンマ・ブリガンダは、ニィィと薄気味悪い笑みを浮かべる。
「そうだねぇ⋯痛かったねぇ⋯⋯⋯」
そして、頭を撫でるような優しげな動きから一転、ミシミシと頭蓋骨が悲鳴を上げ始めるほどの力でその頭部を鷲掴みにして無理やり持ち上げる。
「ガァァァァァァァッ!? ママァァアアアアアアアアアアアアアッ!!」
悲鳴を上げた男を振りかぶり、猟兵へと放る。
「ほら! 今楽にしてやるよクソガキッ!!」
「危ないっす!!」
軍犬が咄嗟に周囲に散らばる彼の調理器具を、その男の軌道上に盾の様に並べた。
初手ではあまりよくは見えなかったが放られた男をよく見れば、いつの間にか全身にダイナマイトの様な物がくくり付けられている。
調理器具に防がれた男は、最初に投げられた男の様に爆発。
威力そのものは大した事は無い。
だが、広範囲に広がる爆風が砂埃を巻き上げ視界を奪う。
「⋯下種が⋯⋯ッ!」
アビーが憎々しげにつぶやく。
この女は、部下の命を何とも思っちゃいない。
レイダーたちなんてものには正直言ってまともな奴はいない。
だが、奴らにだって矜持はある。
仲間を理由もなくおもちゃの様に殺すなんて行為は彼らだってやらない。
元々この女が狂っているのか、オブリビオンに成り果てその矜持が歪んだのかは知ったことではないが、少なくとも今のこいつには、下種という言葉すら上等に過ぎる。
「ハァッハッハァアァァァァ!!」
耳障りな笑い声と共に、不気味に響くエンジン音。
「⋯ッ!?」
咄嗟に判断したアビーがその声の出所へ、仲間たちを守る様にラングレーの巨体で躍り出る。
「そんなちゃちなおもちゃで止められるかいッ!?」
直後、大音量のクラクションと共に現れた巨大なダンプトラック。
全体に無茶と言えそうな改造が施され、人間がぶつかれば一瞬でズタズタに引き裂かれるであろう凶悪な車体のそれが、ラングレーへと猛加速しながら激突。
「キャアッ!?」
ラングレーと“それ”が衝突すれば、結果は見えていた。
まずは質量が違う。
おそらくは、ラングレーの数倍はあるだろう。
そして安定性。
二足歩行戦車は確かに悪路での走破性は高い。
だが、重心や接地面の都合上、安定性は目の前にあるようなトラックには遠く及ばないのだ。
吹き飛ばされたラングレーが近くの倒壊しかかったビルに激突し、駆動系からはバチバチと火花が散っていた。
「ほら、お釣りだよ間抜けッ!!」
そこに放たれる、マンマ・ブリガンダの爆殺グレネードランチャー。
ラングレーの衝突で崩れかかっていたビルが、その一撃でラングレーを巻き込み倒壊した。
「アビーッ!?」
「アビーさんッ!?」
目の前で起こった出来事が呑み込めなかった。
ついさっきまでその大火力で前線を支えていたアビーとラングレーが、一瞬にしてやられたのだ。
「うそ⋯⋯だろ?」
後方、散っていった残党を狩っていたフィサリスと奴隷たちの士気が目に見えて落ちて行くのが分かる。
「⋯まず一人⋯⋯さぁ、次に挽肉になりたいのはどいつだい⋯?」
トラックから余裕そうな笑いを浮かべながら降りてきたマンマ・ブリガンダが笑う。
⋯⋯勝てない。
相手が強すぎる。
エメラの脳内で思考がグルグルと回っていた。
どうすれば勝てる?
いや、ダメだ。
これもダメ。アレもダメ。ダメだ。
目の前にいるオブリビオンを倒す方法が浮かばない。
――撤退⋯⋯いや、アビーはどうするのよ⋯彼女が死んだなんて限らないじゃないの⋯⋯ッ! 考えて⋯考えるのよ私ッ! ⋯まだ手はある⋯⋯どこかにアイツに勝つ糸口がある⋯ッ!――
だが、いくら考えても答えが出ない。
その時、軍犬が静かに言った。
「あいつは⋯自分が止めるっす。エメラさんは下がって後ろのみんなの指揮を」
こんな状況で、更にオブリビオンと戦う戦力を減らすというのか。
「馬鹿言わないで! 一人でアイツが止められるわけがないでしょう!?」
その言葉に、軍犬は静かに告げる。
「ベルカさんが戻ってくるまでの時間くらいなら⋯耐えて見せるっす」
そのベルカと言う男が戻ってきたところで何ができる?
「それに、向こうのボスが出て来て勢い付き始めた相手に、こっちの部隊が押され始めてる⋯⋯誰かが指揮をしないと、このまま向こうが先に瓦解しかねないっす」
そう言われて味方を見れば、確かにマンマ・ブリガンダの登場とその圧倒的な力に鼓舞された敵のレイダーたちが、こちらの部隊を押し始めていた。
このままでは本当に戦線が瓦解し、今度はこちらが敵に包囲される可能性がある。
「⋯⋯死んだら許さないわよ」
軍犬に一言だけ告げ、後方へと駆けていく。
この状況での後方の瓦解は即ち全滅を意味する。
⋯それだけは避けねばならない。
今は、一縷の希望に賭ける他は無いのだ。
その希望を絶やさぬために、エメラにできることは彼らを導き戦線を維持すること。
それだけだった。
「はッ、かっこいいねぇ⋯でも安心しな、すぐに追っかけて全員皆殺しにしてやるよ!」
笑うマンマ・ブリガンダ。
「勝手に言ってろっす。少なくとも自分の目の黒い内は、一歩たりとて後ろを跨げるとは思わないことっすね」
軍犬は、そう言ってマンマ・ブリガンダを睨みつける。
――かと言って、今の状況であのボスを防ぎきるには無理がある⋯アレをやるっすか⋯⋯――
まだ構想段階。
ぶっつけ本番で試すことになるとは思っていなかったが、今あの女を止めるならば“アレ”しか方法はない。
「行くぞ!! マンマ・ブリガンダッ!!!」
飛び掛かる軍犬の身体に、展開されていた調理器具たちがまるで吸い込まれるかのように集まっていく。
「オーラキッチン・プレッシャーフォーム!!」
レールガンの弾速を止めたマンマ・ブリガンダ。
「真正面からくる間抜けばかりだねぇッ!!」
そう言って、軍犬を受け止めようとした瞬間。
音速を超える速度から放たれる体当たりが、側面からマンマ・ブリガンダの体を吹き飛ばす。
「まだまだぁッ!!」
吹き飛ばした体が壁に到達する前に素早く回り込んだ軍犬が、その脂肪の塊を上空へと打ち上げる。
「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおッ!!」
それで終わりではない。
打ち上げた体をさらに下方から滅多打ちにするように殴りつける。
凄まじい連撃の〆。
「トドメっす!!」
上方に回り込み、渾身の拳を放ち、地面へと叩きつける。
派手な衝突音と共に普通の人間なら一発で粉々になっているであろう速度で叩き付けられた。
だが。
「⋯へぇ、やるじゃないか⋯⋯今のは効いたよ⋯犬っころ⋯⋯⋯⋯」
埃の中から顔を出す。
無傷とはいかなかったようだが、それでも致命傷と言うにはほど遠い。
「バケモノっすね⋯本当に」
再び攻撃に移ろうと構えた瞬間だった。
「うわぁぁぁぁ!!」
不意に聞こえた叫び。
鉄パイプを持ったレイダーの一人が、軍犬へと襲い掛かってきた。
⋯ただの雑魚。
だがそれでも、軍犬から一瞬の隙を勝ち取るには十分だった。
一瞬で距離を詰めたマンマ・ブリガンダが、軍犬に正面から抱き着く。
「なにをッ!? ⋯ガァ!?」
ぎりぎりと軍犬の体を締め上げていく。
「なんてラッキーな奴なんだいこの犬っころは、私の胸の中で死ねるなんてさァ⋯ハハ⋯ッ!」
少しづつ。
その気になれば一瞬で体中の骨をバラバラにできるだろうに、ゆっくりと時間をかけて、その体を締め上げていく。
「⋯このぉ!!」
抵抗を試みる軍犬であったが、動きを封じられた状態では満足な反撃が出来ず、死の抱擁は確実に軍犬の体を蝕んでいく。
⋯その時だった。
「⋯遅くなりました」
凛と響いたその声。
「闇の中において、なお輝きし深紅の王よ、我が声に応え、力を示し――蹂躙せよ!」
それと同時に、マンマ・ブリガンダへと黒き槍が迫る。
「チィッ!!」
軍犬を投げ飛ばし、かろうじてその攻撃を防ぐと、憎々しげに声の出所を睨んだ。
「はん、今更援軍かい!? 一匹二匹雑魚が増えたところで⋯」
「そうですか⋯」
ベルカのつぶやきと同時に、別方向から高らかな声が響く。
「チャージ、セット、いっせーの!!」
放たれる大鉄球。
完全に意識外の攻撃を喰らったマンマ・ブリガンダがついに膝をつく。
「なんかもう、存在そのものが許せないわね⋯」
その一撃を放った声の主。緋神・美麗。
そして、その後ろに続く猟兵たちが居た。
「これか⋯? なんだか無駄に贅肉が多いな⋯⋯羨ましい限りだ」
どこか遠い目で、目の前のオブリビオンに関心が無さそうな目を向ける少年、地鉛・要。
「私利私欲のために暴力を振るうヤツぁ、捨て置けねぇな。ましてや仲間に! オレの悪魔で裁きを下す!」
そう言いながら、憎悪に満ちた目を向ける女。代神・リゥム。
「おうおう、今更「マンマー」って叫んだってあんたは許されねえぜ、逃げてもあがいても、今更結果は変わらねぇぞ?」
そう言いながら笑う男。ジェイ・ランス。
民衆を傷つけるなどあってはならないこと! その膂力、もっとマシな事に使いなさい! このレディ・ポーク! もっとも、改心する心はこれから削りますけどね!!」
そして、なんか少し離れた位置で、四人の陰から目の前のオブリビオンに叫ぶ、マリア・フォルトゥナーテ。
「六人で来た⋯と言ったらどうでしょう?」
ベルカが、目の前のオブリビオンを見下すように微笑む。
「⋯遅いっすよ、ベルカさん⋯」
投げ飛ばされた軍犬が、ベルカを見て言った。
「すいません、皆さんを集めるのに、少々手間取ってしまいまして⋯今傷の治療を」
そう言って、軍犬に歩み寄ろうとした瞬間だった。
「アッハッハッハ!! いいねぇ!! 楽しくなってきたねェ!! アッハッハッハハッハッハッハッハ!!! あんたらもあそこのカンカラみたいにぶっ殺してやるよッ
!!!!」
突如狂ったように笑いだすマンマ・ブリガンダ。
その視線の先には、崩れたビル。
⋯⋯そういえば⋯⋯⋯⋯⋯⋯アビーが居ない。
「⋯私は本来、あなた達オブリビオンには何の感慨も湧かないのですが⋯あなたは別です。少々カチンと来てしまいました⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯あなたには死すら生温い」
そう言って睨むベルカの目。
いつも穏やかな笑みを浮かべている彼とは思えないほどの冷ややかな視線が、オブリビオンを貫く。
「ハンッ! やれるもんなら⋯⋯ッ!?」
突然、何かの気配を感じたマンマ・ブリガンダは背後に思い切りチェインソーを振りぬく。
勿論、そこには何もいない。
「どうした?何か見えたのか?」
要が感情の籠らぬ声で煽ると、マンマ・ブリガンダはは叫んだ。
「くそったれが! まだ仲間が居るのかいッ!?」
何のことやら、と言った様子で首を振る要。
そう、ほかに仲間などいない。
⋯⋯彼の虫以外は。
滅茶苦茶にグレネードを発射し、周囲を爆破していく。
だが、気配が消えない。
当然だ。
たとえめちゃくちゃに吹き飛ばしても、あちらこちらに分散した虫たちが彼女を睨み続けているのだから。
「くそったれがァ!!」
即座にトラックへと乗り込みエンジンを掛ける。
このトラックの中に居れば、多少の攻撃は防げるだろう。
このまま轢き殺そうとアクセルを踏んだ。
「くそッ! どうなってるんだい!?」
エンジンはかかっている。
だが、いくらアクセルを踏み込んでも、タイヤが回る事は無かった。
だがそれも至極当然の話である。
当の昔にタイヤなど無くなっているのだから。
「おーい、うしろうしろ。そんなところにいると危ないぞー?」
ケタケタと笑うジェイ。
その声に釣られて振り向いたマンマ・ブリガンダの視線の先はタイヤ。
本来そこにあるはずのタイヤは無くなり、代わりにぽっかりと黒い穴が開いていた。
それが、動く。
すると、何の衝撃も抵抗もなく、トラックの車体が消えていく。
「なッ!?」
慌ててトラックのドアを開けようと試みるが、次の瞬間、要が何かを扉へと投げつけると、トラックの扉が動かなくなった。
「六なる面の流転により、今ここに姿を現せ! "人生"というゲームを嗤う小さきアルカナ!! 向こう1ヶ月のオヤツを代償に! 現れよ、戦車の悪魔【DDD】《グローリー・ナベリウス》ッ!」
間髪入れぬリゥムの召喚術。
呼び出したるは地獄の門番⋯⋯の様な、三砲門の戦車だった。
いや、この体でおやつとか貰ってもどないせぇっちゅうねん。と言いたげにエンジンをうならせるが、それでも贄は贄。
貰った分くらいは働いてやるといわんばかりにトラックへと側面から体当たりをかまし、その車体を横転させるとグローリー・ナベリウスは燃えて灰となった。
「次から次にィ⋯⋯くそっ!! あの役立たず共は何をやってるんだい!?」
一度は勢いを取り戻し、奴隷達を押し始めていたマンマ・ブリガンダの部下たちは、再び奴隷達に押されていた。
「あなた達が選んだその道、突き通してみなさい奪還者!」
鼓舞するエメラの声と、その的確な指示が、昨日まで奴隷だった者たちを一瞬にして歴戦の奪還者へと立ち返らせたのだ。
「恐れるな!! 俺たちには天使がついてるんだッ!!!」
誰が言ったかは分からない。
だが、その言葉に皆一様に鬨の声を上げた。
――天使⋯⋯か、前にも言われた気がするけどやっぱり悪い気はしないわね――
そんな考えが一瞬脳裏をよぎり、だがそれでもすぐに意識を戦いへと向ける。
「ここまで来たならあと一歩!! 勝利は近いわ!!」
エメラと奴隷達に押される部下を見て、憎々しげな唸りを上げる。
「クラーケンッ!!」
だが、意識を部下に向けている余裕などない。
マリアの叫びと共に、頭上を影が覆う。
巨大なイカの怪物が、その触手に古びた帆船を抱えて、眼科のオブリビオンを見下ろしていた。
それと同時に、目の前の空間が白い砂浜へと変わっていく。
「くそったれ!!」
動かない扉を体当たりでぶち破り、外へと出た。
先程まで銃撃や怒号が飛び交っていたはずなのに、周囲は一面の砂浜。
「⋯なんだってんだい。これは⋯⋯」
すべての気配が消えた。
ここはどこだと歩き出す足に砂が絡み、少し歩いただけで疲れ果てる。
のどが渇いた。
水はどこだ?
腹が減った。
食い物はどこにある?
欲望だけが膨らんでいく。
考えろ。
私はどうしてここにいる?
何が私をここへ連れて来た?
⋯⋯
「そこかっ!!」
上空、何もない空間へグレネードを放つ。
虚空で何かに触れたそれが炸裂すると、周囲が一転して元の空間へと戻る。
それと同時に、上空から落下してくる巨大な触手。
「あぁ! クラーケンッ!?」
その痛みに仰け反ったクラーケンが、船と共に離れていく。
「はッ! ナメるんじゃないよ小娘!! あんなもんが怖くて、略奪者が務まると思うかい!?」
次の瞬間。
「いっせーの!!」
先程も響いた掛け声だ。
鉄球が飛んでくると踏んだマンマ・ブリガンダは身構えた。
⋯⋯が、飛んできたのは一本の槍。
「ガァッ!?」
その槍は、マンマ・ブリガンダの肉体を貫き、壁へと縫い付ける。
彼女の手から、チェインソーとグレネードが落ちた。
「ありがとうベルカさん。流石に、あの贅肉でも槍は効いたみたい」
そういう美麗は、ベルカが生成した槍を弾頭とし、最初に放ったUCと同じものを放ったようだった。
「美麗さん、これも撃ち込んでみましょう。支えますので」
そう言ったベルカが手にするのは、先程落ちたチェインソー。
「はっは⋯⋯負けたよ⋯⋯アタシの完敗さ。」
壁へと縫い付けられたマンマ・ブリガンダは、力なく笑った。
「命乞いは無駄だって言ったはずなんだけどな~?」
ジェイがからかうように言った。
「あぁ⋯⋯分かってるさ⋯⋯だから」
「お前ら全員道ずれだぁあああああああああ!!!」
そう叫んだマンマ・ブリガンダは、何かスイッチのようなものを握っていた。
「しまった!?」
直感的に、それが何だか理解する。
恐らくは、この拠点ごと吹き飛ばすつもりなのだろう。
「しねぇぇぇぇええええええええええええええええええええッ
!!!!」
間に合わない。
誰もが諦めた次の瞬間、マンマ・ブリガンダの体が後ろの壁ごと吹き飛んだ。
「⋯⋯っ!?」
誰がやったのか。
一様に背後を見る。
そこには、倒壊したビルがあった。
「⋯⋯釣りならいらないわ」
あちこちから火花の散るラングレーの機体内で、アビーはつぶやく。
まだ頭がくらくらする。
ラングレーの修理もしなければいけないが、おそらくは自身もしばらくは動けないかもしれない。
肋骨が折れた感覚があった。
「⋯⋯割に合わないわ。本当に⋯⋯」
シ-トに倒れ込むと、小さく奴隷たちの勝鬨が聞こえた。
⋯⋯勝ったのだ。本当に。
あの化け物を殺し、彼らを開放して見せた。
安心と充足と、そして疲れ。
「⋯⋯少しだけ休ませてね、ラングレー。少し休んだら、また一緒に仕事をしようね⋯⋯」
そう言ってラングレーのシートを撫でると、アビーは再び気を失った。
戦いに勝利した後も、やらなければいけないことは多い。
まずは物資の回収と、傷つき疲れ果てた者たちの療養。
だが、比較的被害の少なかったフィサリスの尽力により、そこから先の事はスムーズに進んでいった。
呆れたように、「あんたらみたいなバケモノ、いったい何人いるんだ?」と聞いてくるサラに、ベルカは答える。
「言ったでしょう? 『これからもたくさん来る』と」
結局、物資は分け合うことになった。
ここに残る奴隷達と、フィサリスに合流する者たち。
だが、これはこれで悪くない。
交流先が増えるということは、今後の拠点の安定にもつながって来るのだ。
暫くの休息の後、旅はまだ続くのだろう。
だが⋯⋯彼らに迫る脅威の腕は、すでに彼らの首を捉えている。
大成功
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