緑柩のティル・ナ・ノーグ
#アポカリプスヘル
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――荒廃した世界に吹きつける風は、虚ろな死者が啜り泣く声にも似ていて。
生命の息吹すら見出せぬ、荒野の果て――風の導きによって辿り着いた渓谷のなかには、深い緑に呑まれた廃墟が、静かに広がっているのだと言う。
(「本当に、あったんだ……」)
奪還者として、拠点に資材を持ち帰ることを決意した少年のひとりは、視界を満たす緑の色彩に圧倒されていた。人間が去って久しい森の廃墟は、突き出た枝葉と太い根に侵食されつつも、緑の揺籠に抱かれてゆっくりと微睡んでいるかのよう。
(「ここなら、きっと」)
天辺からきらきらと降り注ぐ木漏れ日に、微かに目を細めて一歩を踏み出した少年であったが――その足取りが、不意に揺らぐ。おかしいと思ったのは一瞬で、マスク越しの景色が急速に彩を失った。
(「あ、ぁ――、毒……!?」)
――大気の汚染は覚悟していたが、それ以上の毒素がこの廃墟には立ち込めていたらしい。そうだ、此処はあまりにも『静かすぎる』のだ。
緑豊かで、思い思いに植物が葉を茂らせ、花を咲かせてはいるものの――命あるものの声が、音が、息づかいが感じられないのだ。
(「……そう、か」)
うつくしき植物はきっと、環境の変化によって恐るべき毒を宿したのだ。彼らは侵入者を許さない、そうして死者は緑に呑み込まれて糧となるか、或いは――。
――ずるずる、と廃墟を這いずる生々しい音が聞こえて。少年はその先に、無慈悲な己の末路を見た。
(「動く、死体か……」)
ああ、此処は緑の揺籠――否、閉じ込められた柩のなかだったのだ。
新世界、アポカリプスヘル――其処は人類の大半が死滅した、滅びの先を生きる世界なのだと言う。
「しかし……そんな世界でもなお、人々は懸命に生き延びようとしているのだ」
深紅の瞳を細めて、シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)が告げたのは、食材や資材を求めて廃墟を探索する奪還者(ブリンガー)についてだった。
「そんな奪還者たちが踏み込んだ廃墟が、思いの外危険で……オブリビオンが巣食っていたようでな。皆には未然に、事件を防いで貰いたい」
――このままでは、奪還者の少年たちが惨殺されてしまうので、彼よりも先に廃墟から物資を持ち帰って欲しいのだとシーヴァルドは言う。
「場所は……拠点から離れた渓谷にひっそり佇む、森の廃墟になる。荒野の中、ぽつりと緑が広がっているので直ぐに分かると思うのだが、この緑が曲者でな」
廃墟に広がる、うつくしき緑の世界――しかし、その植物たちは禍々しく変貌し、強毒化しているのだ。廃墟には毒素が立ち込め、蠢く枝や根は直接ひとを傷つけて毒を注ぎ込むだろう。
「そんな感じで、侵入者には容赦をしないようだが……どうにか廃墟を突破し、最深部まで辿り着いて欲しいのだ」
強引に切り払って進むか、或いは植物の影響が少ないルートを探し出すか。もしくは毒を以って毒を制すの要領で、毒を無力化する方法を試してみるか。そうして最深部の資材前には、動く死体――ゾンビの群れが蠢いているようだ、とシーヴァルドは付け加える。
「オブリビオン・ストームの影響か、廃墟に飛び込んだ奪還者の成れの果てか……其処までは分からないのだが」
――ちなみに資材の中には、ちいさな花の種も混ざっているらしい。無事に拠点へ戻ることが出来たら、荒れ果てた荒野に花を植えてみるのも良いだろう。
「案外、希望と言うものは、そんな場所から生まれて来る……のかも知れないしな」
――果たしてこの世界に咲く希望は、どんな色をしているのだろう。ふふ、と微かに貌を綻ばせたシーヴァルドは、うつくしき緑の柩のなかへと猟兵たちを導いていく。
「……どうか、未来を」
柚烏
柚烏と申します。新世界アポカリプスヘルが公開されましたね! こちらは荒廃した世界での、ちょっと静かでしっとりした冒険のお誘いとなります。プレイングボーナス多め、判定は緩めに行いますので、新規猟兵さんも気軽にご参加下されば嬉しいです。
●シナリオの流れ
奪還者がオブリビオンの犠牲になるよりも先に、廃墟を突破して資材を運んで来ると言う流れになります。フラグメントは以下の通りです。
第1章:冒険『森に沈んだ街』
第2章:集団戦『ゾンビの群れ』
第3章:日常『この荒廃した世界に花を植えよう』
●補足など
森に沈んだ街では、植物の毒素や妨害が予想されますので、そちらの対策をプレイングに書いて頂ければボーナスがつきます。最低限で問題ありませんので、ぜひ緑に呑まれた廃墟の探索を楽しんでください。
なお、オープニングで犠牲になる奪還者の少年たちは、リプレイに登場しません。皆さんが廃墟に向かった時点で、思いとどまったと言う扱いです。
●前回の感想欄につきまして
特になければ無記入で構いません。空欄が気になる、と言う方がいらっしゃいましたら、オススメの作品やお菓子、ゴリラについて教えて下されば嬉しいです。
(ただし、プレイングの補足は書かないようにして下さい。書かれてあっても参考に出来ませんので、ご注意ください)
●プレイング受付につきまして
第1章は『12月23日 朝8:30~』からプレイングを受付したいと思います。
その後はお手数かけますが、マスターページやツイッターで告知を行いますので、そちらを一度ご確認の上、送って頂けますと助かります。此方のスケジュールの都合などで、新しい章に進んだ場合でも、プレイング受付までにお時間を頂く場合があります。
サポート参加は余力があれば、第2章の集団戦辺りで採用出来たらと思っています。
崩壊した世界、残酷なほどうつくしい緑の廃墟を、静かに進んでいく感じで。雰囲気や情景重視で、心情も交えつつ、しんみり進行していけたらいいなと思っています。それではよろしくお願いします。
第1章 冒険
『森に沈んだ街』
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POW : 強毒に耐えながら、植物を切り払いつつ探索を進める
SPD : 危険な植物を回避できるルートを探し出したり、植物が反応できない速度で前に進む
WIZ : 植物の特性を把握し、その特性を利用する事で、危険を回避して探索する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
薄荷・千夜子
荒廃した中でも懸命に生きる緑は素敵なのですが……
この地だからこそ自身を守るためこのように進化してしまったのかもしれませんね
自身の【毒使い】【情報収集】で植物の状況をよく観察しながら
自身は【オーラ防御】と【環境耐性】で身を守って探索します
少しでもこの場所が、この地に生きる人たちの安らぎとなる場所になれればいいのですが
毒対策もできないものかと思案しつつ
そんな【祈り】を込めてUCを使用
緑と一緒に新たな花が咲きますように
浄化の作用が働けばと【破魔】の力を込めて優しい花畑になればいいなと願って
『操花術具:神楽鈴蘭』の優しい鈴の音に合わせて歌いながら
すぐではなくてもいつかこの場所が変わっていければいいなと
セシリア・サヴェージ
荒野に花を咲かせる……素敵ですね。拠点の人たちもきっと喜ぶでしょう。
何よりこれ以上犠牲者を増やさないためにも、必ず廃墟を攻略して物資を持ち帰りましょう。
暗黒がもたらす【環境耐性】故かこの場の毒にもすぐ侵されることはないようです。
適度に探索しつつ、最深部を目指しましょう。
襲い来る植物は暗黒剣で【なぎ払い】ます。
この植物もオブリビオン・ストームの影響なのか、はたまた環境に適応した結果なのか。
いずれにせよ脅威は排除しなければ。
緑に覆われたこの場所を美しいと感じる一方、人々の営みが失われた結果だと思うと悲しくなります。
また人々が笑って暮らせる日が来るように、微力を尽くしましょう。
太宰・寿
猟兵になって、たくさんの世界を知りました
平凡に生きてきた私には、想像もつかないことがたくさんで
そんな中で私に出来ることは、一体どれだけあるのかな
でも、少しでも出来ることがあるのなら力になりたいと思うんです
毒には耐性がありません
マスク、ないよりマシかなぁ…(一応つけてみる
植物のある場所をなるべく避けて、奥へと進んでいきます
植物に遭遇すれば、習性や動きをよく観察して移動ルートを選ぶ参考にします
植物には触れない様に、必要であれば花散里で退けます
綺麗なのに毒があるなんて、触れられないのはなんだか寂しい
けれど、この世界でそんな事を考えるのは呑気なことなのかもしれないね……
――哀しげな風の音を追いかけて荒野を進み、辿り着いた先は深い森に呑み込まれた街。
「荒廃した中でも、懸命に生きる緑は素敵なのですが……」
乾いた色彩を塗り替えていくような、鮮やかな緑を視界に捉えた薄荷・千夜子(鷹匠・f17474)であったが――自然に親しむ彼女は、僅かな異変も見逃しはしなかった。
(「……やはり、静か過ぎますね」)
鳥の鳴き声、獣の立てる葉擦れの音、ちいさな虫の羽音すらも聞こえてはこない。作り物めいた緑の箱庭の中で、歪な進化を遂げた植物たちだけが、ゆっくりと毒を吐き出して微睡んでいる。
「猟兵になって、たくさんの世界を知りましたけど……それでも」
――平凡に生きてきた自分には、想像がつかないことが沢山あるのだと。マスク越しにくぐもった声を漏らす太宰・寿(パステルペインター・f18704)は、植物の密集している場所を避けるべく瞳を瞬かせた。
「マスクも、ないよりマシかなぁ……」
毒そのものへの耐性は持たないが、彼らの動きや習性を観察することで、影響を少なく出来るだろう。一方で、静かな靴音を響かせて廃墟を進むのは、セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)である。
「成程、すぐ毒に侵されると言うことは無いようです」
彼女が纏う黒鎧から立ち上る、闇の力――時に狂気をもたらす暗黒は、周囲の環境からあるじを守ってくれているらしい。そんな毒に満たされた柩のなかを、悠然と歩いていくセシリアが疎ましいと思ったのか、蛇を思わせる緑の蔦がしゅるりと襲い掛かった。
「……随分と、歓迎して下さるようですが」
――直後、セシリアの瞳が凍てつくような光を宿すと。唸りをあげた暗黒剣が、通路を塞ぐ本体ごと蔦の群れをなぎ払っていたのだった。
「この地だからこそ、自身を守るためこのように進化してしまったのかもしれませんね」
「ええ、オブリビオン・ストームの影響もあるかも知れませんが」
相棒の鷹を飛ばして辺りの様子を探っていた千夜子が、労うように声を掛ける中、セシリアは温厚さを取り戻したまなざしで、ゆっくりと蠢く植物たちを見上げていて。
「……きっとこれが、厳しい環境で生き残ろうとした結果なのでしょう」
――そう。この世界は絶望に閉ざされていたけれど、生あるものは今も貪欲に生き延びようと足掻いている。ならば騎士である彼女がやるべきことは、これ以上犠牲者を増やすこと無く、廃墟を攻略して物資を持ち帰ることだ。それに、
「荒野に花を咲かせる……素敵ですね」
その中に残されている、ちいさな希望の種が花開く時を思えば、セシリアの口元も優しげに綻ぶと言うもの。ああ、少しでもこの場所が、この地に生きる人たちの安らぎになれたのなら――そんなことを願う千夜子の指が祈りの形に組まれると、清浄な神楽鈴の音色が辺りに響き渡っていった。
(「緑と一緒に、新たな花が咲きますように」)
しゃらりと揺れる鈴蘭に合わせて、紡がれるのは千夜子のうたう七彩天趣。廃墟に満ちる毒を浄化し魔を祓って、優しい花畑に生まれ変わるといい。
と――そんな光景をじっと見守っていた寿の手元で、硝子のベルが澄んだ音を鳴らした。
(「この世界で……私に出来ることは、一体どれだけあるのかな」)
――どこか寂しそうな表情は、一瞬のこと。それでも、少しでも出来ることがあれば力になりたいのだと貌を上げた寿は、たおやかな指で絵筆を握る。
「ひらひら舞って、待って――左様なら」
やがて無数の花びらに姿を変えた筆先は、変幻自在の色彩で以って緑の毒を塗り潰していき――淡く優しい輪舞の中で、千夜子の呼んだ花嵐がきらきらと廃墟に虹色の光を降らせていった。
「……綺麗なのに毒があるなんて、触れられないのはなんだか寂しいですけど」
浄化された廃墟の一角、壁を隔てた向こうでは未だ多くの植物が息づいていて。この世界でこんなことを考えてしまうのは、きっと呑気なのだろうと寿は思ったけれど――セシリアも千夜子も、笑顔を浮かべてその考えに頷いてくれた。
「緑に覆われた此処は、美しいと思いますが……それが人々の営みが失われた結果だと思うと、悲しくなりますね」
――だから、人々が笑って暮らせる日が来るように、微力を尽くしましょうと。セシリアの後を追いかける千夜子もまた、直ぐではなくてもいつかこの場所が変わっていければいいと願っているようだった。
「でも……まぁ、何とでもなりますよ! 多分!」
大成功
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マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
輝きが星枢に宿ると青のペンデュラムが静かに揺れ始める
星枢のダウジングを頼りに進みます
「森の毒素が濃い……」
しかし、天蓋の纏う白櫻香の香りが蝕む力を弱めてくれる
こんなに美しいのに、森に生きるものはいない
……いいえ、彼らがいましたか
咲く花を目に留めてにまなじりを下げる
ふと"彼"を想う
蝶の化身、うつくしいひと
彼がいればと寂寥を覚えるけれど
【黄金律】を使用
その御名は尊く
憐れみに限りなく
世の罪を赦す愛に満ちている
ペンデュラムが輝きを増して光の道を示す
注意しながら進み、しかし心は晴れない
私は弱くなった
あなたの側にいたいなどと
気づけば森を抜けていた
イリーツァ・ウーツェ
UCを使用し、毒素を消し去る領域を展開しつつ移動する
植物まで消す必要は無かろう
邪魔ならば全て毟るだけだ
微かな害意の匂いは、植物からする物か
何れ程毒を撒かれても消すだけだ
ニンゲンの作った建造物が並んでいる
壊れている物も、壊れていない物も
此処は、石と鋼と植物で出来た残骸だ
ニンゲンはこれを美と称するのだろうか
美しいも醜いも私には解らない
解る事が出来れば、ニンゲンの心に沿えるのだろうか
最奥へ向かう
此処には、もう何も無い
レザリア・アドニス
ここは、アポカリプスヘル…
荒廃された世界は、こんなにも残酷なのですか…
この植物たちも、生きるためにこうなったのかしら…
夜の色のヴェールを被り、口と鼻を包んで、毒素の吸入を防ぐ
そして体も、肌を露出しない服を着用
さらに翼も収納する
慎重に森の街に入る
新鮮な痕跡を探し、それを追跡して進む
周りや上空の様子も常に注意
特に植物の周りの土の状態や、動物の死骸があるかどうかを観察
怪しいと思う場合は、石ころを投げてみる
足場の状態を視認できない場合は杖でつついて確認
可能な限り緑に覆われない所に歩く
越えにくい所は、ふわっと飛んで越えるけど、あまり高く飛ばないように気を付ける
ここ、は――零れ落ちたレザリア・アドニス(死者の花・f00096)の声は、廃墟に眠る死者たちを悼むようにふんわりと、淡雪の如く大地に溶けていく。
「荒廃された世界は、こんなにも残酷なのですか……」
――アポカリプスヘル、其処は人類の大半が死滅したと言う、どこか遠い未来の世界。夜色のヴェール越しに見える緑は、荒野の中に息づく楽園のようであるのに、その実態は毒と腐敗に満ちた死の都だ。
「この植物たちも、生きるためにこうなったのかしら……」
薄霧の紗幕で口と鼻を覆って、毒素の吸入を防ぎつつ――レザリアは慎重に、森の街の深部へと分け入っていく。肌を見せない喪服のようなドレスを翻し、オラトリオの証である翼も今は隠して。
「ええ、森の毒素が濃い……」
そんなレザリアの隣では、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が星辰の片目に光を灯し、星枢の鎖を片手に祈りを捧げていた。
(「主よ、憐れみたまえ」)
そうして幾度となく紡がれる聖句と共に、星の力を宿したペンデュラムへ輝きが宿ると、青の鉱石が静かに揺れ出して進むべき道を示す。
「こんなに美しいのに――」
カツリ、と靴音を立ててひび割れた石段を登り、広間に流れ込んだ土砂を迂回して――やがて通路に根を下ろした大樹の傍を通り抜けた所で、マリスがゆっくりとかぶりを振った。
「森に生きるものはいない」
やるせないレザリアの吐息は、無言でマリスの言葉を首肯していたのだろう。新鮮な痕跡を探そうと、植物の周囲――土壌の状態や動物の死骸にまで気を配っていたものの、命のいとなみが正しく行われている気配が殆ど感じられなかったのだから。
(「これでは、まるで……」)
レザリアの傍でざわめく死霊たち、忌むべき存在たる彼らの方が余程、身近に感じられてしまうではないか。しかし、そんな中でも彼女は冷静に辺りの様子を窺うと、怪しげな気配を感じた場所に石ころを放り投げる。
「あ……」
「……そうですね、彼らがいましたか」
――廃墟を呑み込む緑のなかで、可憐な花がぽつりぽつりと咲いていた。しかし此処までやって来た、イリーツァ・ウーツェ(黒鎧竜・f14324)には分かってしまう。この花こそが、濃密さを増した毒を生み出しているのだ、と。
「だが――植物まで消す必要は無かろう」
鼻をひくつかせ、目を細めつつ辺りを窺うイリーツァの様子は、ひとと言うよりも獣――否、廃墟に舞い降りた誇り高き竜か。
しかし、微かな害意のにおいを見逃すことはしない。邪魔ならばその元凶を全て毟るまでだと、彼は干渉術域を発動して自身の強化を図る。
「何れにせよ、毒を撒かれても消すだけだ。……寄るな」
そうして望んだ対象を消失させることで、相対的に己の力を高めたイリーツァがふたりを先導していく中、マリスの捧げた祈りがペンデュラムに更なる光を呼んだ。
「その御名は尊く、憐れみに限りなく……世の罪を赦す愛に満ちている」
――黄金律、マニフィカト。輝きを増した青が光の道を指し示す傍らでふと、マリスは咲き続ける花に目を留めてまなじりを下げる。
(「蝶の化身、うつくしいひと」)
思い出した『彼』の姿は、白昼夢のように鮮やかで。彼が居れば、と言う寂寥を振り払うのが酷く難しかったけれど。
「……ニンゲンの作った、建造物か」
淡々と紡がれていくイリーツァの言の葉が、マリスの心を一瞬現実に引き戻してくれて――同時に漂う白櫻香が、蝕む毒も拭い去ってくれた。
「壊れている物も、壊れていない物も。此処は、石と鋼と植物で出来た残骸だ」
かつかつと足場をつつく杖の音に耳を澄ませ、確実に歩みを進めていくのはレザリアだ。永遠の夜を纏い、ふわりと宙を舞う彼女もまた、この廃墟の姿を美と称するのだろうか――しかしイリーツァには、ニンゲンの言う美しいも醜いも理解することが出来ないでいた。
(「だが……解る事が出来れば、ニンゲンの心に沿えるのだろうか」)
――だが今は最奥へ。此処にはもう、何もないのだから。その一方でマリスの足取りは、何処か重い。
(「私は弱くなった。あなたの側にいたいなどと――」)
ああ、気づけば森を抜けていたと言うのに――彼女の心は未だ、深い森のなかに在るようだった。
大成功
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オスカー・ローレスト
【王子と小鳥】
あ、新しい……世界……ゾンビの、群れ……ふ、不安、だけど……俺が行って、助けられる人が、いる、なら……
う、うん……久し、ぶり……こちらこそ……また、よろしく……アイン(おずおず握手に答え
【野生の勘】を頼りに進んで……森の毒は……【毒耐性】でなんとか耐える、よ……枝とか根とかが邪魔してくる、なら……武器の【裁ち鋏】で切りながら、進む、かな……
こう見えて、生まれが森だから、探索は、割と、当てにしてもらって、も……ぴ?!(葉擦れの音とかにビビる頼りがいを何処かに置いてきた小雀
(守ってみせるとの言葉に)あ、ありがとう……俺、なんかを……(アインに眩しいものを見るような目で
【アドリブ可】
アイン・ローズ
【POW】
[グループ名:王子と小鳥][アドリブ:OK]
世界は違っても、困っている人がいるのであれば、見過ごす訳にはいかないな。
あ、あれはローレストさん?
お久しぶりです! あなたも猟兵の仕事でこちらへ? また一緒に仕事ができるなんて、光栄です。今日はよろしくお願いしますね。(握手を求めながら)
森では毒や植物に注意しないと。
植物を剣で【なぎ払い】ながら、盾と【毒耐性】で毒や攻撃を受け切ろう。
ローレストさんは何かを怖がっているみたいだ。僕が【鼓舞】することで少しでも勇気づけられたらいいけれど……もしローレストさんに何かあったら、僕の盾で守ってみせるさ。(幽霊やゾンビが怖くない)
新しい世界に一歩を踏み出した、アイン・ローズ(正統派王子・f18069)は、木漏れ日の中で煌めく金の髪を靡かせ剣を取る。
「世界は違っても、困っている人がいるのであれば……見過ごす訳にはいかないだろう」
当然のように口にした言葉は、彼が抱く高貴なる義務ゆえか――翠の瞳に深い智慧を湛えたまま、アインは毒を吐き出す植物を注意深く観察していた。
「……おや? あちらに見えるのは」
と――廃墟の緑のなかでちらちらと、見覚えのある薄布が揺れたような気がして。直後、小さな雀の羽が顔を覗かせた所で、アインは嬉しそうな声を上げていた。
「あ、あれはローレストさん? お久しぶりです!」
「ぴ?!」
びくり、と身を竦めた小柄な男性は、やはり見知った顔のオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)だったらしい。面布をふるふると揺らして深呼吸をした彼は、やがてゆっくりとアインに向かってお辞儀をしたのだった。
「う、うん……久し、ぶり……」
「あなたも猟兵の仕事でこちらへ? また一緒に仕事ができるなんて、光栄です」
物怖じすること無く、晴れやかな笑顔を浮かべて握手を求めるアインへ、おずおずと手を伸ばして応えるオスカー。そうして力強い握手を交わしたふたりは、よろしくお願いしますと挨拶をしてから、共に森に沈んだ街を探索することにした。
「こちらこそ……また、よろしく……アイン」
「頼りにしています。まだまだ外の世界は勉強中なので」
――そんなやり取りをしている間にも、侵入者を察知した植物が襲い掛かってきたけれど。優雅なアインの剣さばきが一息に蔦をなぎ払えば、オスカーの操る裁ち鋏は邪魔な木の枝を斬り落として、すぐに新たな道を作る。
「こう見えて、生まれが森だから、探索は、割と、当てにしてもらって、も……」
そうして、野生の勘を頼りに廃墟を進んで行こうとするオスカーだったが――不意にガサガサと聞こえてきた葉擦れの音に「ぴ?!」と小さく叫んで飛びのいた。
「……ローレストさん?」
「あ……ゾンビの、群れ……出て、きたかと、思って……」
――辺りの緑よりも深い彩を宿したオスカーの髪が、震えるように小刻みに揺れている。その様子を目にしたアインは、彼が何かを怖がっていることに気付き、少しでも勇気づけられたらと口を開いた。
「大丈夫。……もしローレストさんに何かあったら、僕の盾で守ってみせるさ」
「あ、あの……ありがとう……俺、なんかを……」
廃墟に巣食う、生ける屍――ゾンビや幽霊の類を物ともしないアインの姿を、オスカーは眩しいものを見るような目で見つめていて。
(「そう、だ……俺が行って、助けられる人が、いる、なら……」)
――初めは不安でたまらなかった心に、ぽつりと勇気の灯がともったような気がした小鳥は、勇敢な王子様と更に森の奥深くを目指して進んでいく。
大成功
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ヴェリヴェリ・メリヴェ
は? 僕は緑を求めて旅行に来ただけなんだが?
強毒植物は流石に草超えて森。まあ元々森だが
移動に関しては戦車があるし
植物に直接触れることはないな
が、このままだと水槽内にまで毒素が充満しかねない
【プロジェクト・ディーヴァ】
SNSを通してフィルターの強化を提案するぞ
お前たちが望む景色を見せてやる
その代わり、対価として力を寄こせ
さて、これでどうなるか
蠢く枝や根はソーシャル・レーザーで【蹂躙】
便利な戦車が焼き尽くしてくれるさ。僕は悠々と水槽の中
これまでで緑は見飽きたんだ
廃墟探索では文明の名残でも探してみるか
面白そうなものが見つかればSNSで拡散
僕の海が蘇る日のために知識を蓄えるといい
※絡み・アドリブ歓迎
ウーナ・グノーメ
<判定>
WIZ。アドリブ、他猟兵との絡み◎
<心情>
「この緑と花は、まるで寄せ餌なのです。建物全体が胃袋のようになって、獲物を待っているのです」
「もっとも、わたしを食べたところで……文字通り、砂を噛むような思いしかしないのです」
<行動>
【環境耐性】に加え、【オーラ防御】を展開して毒や枝葉、根を防御するのです。
更に、UCの効果で道を塞ぐ植物を石化させ、【念動力】で粉々に砕きながら道を行くのです。
【念動力】は瓦礫の排除、壊れた扉をこじ開ける、等にも使用するのです。
同時に、建物全体の構造や未知の植物の生態、特徴を【第六感】による超感覚で捉え、同行する猟兵が有利になるよう、全体で共有するのです。
霑国・永一
おぉ、なんと残酷な世界だろうなぁ。俺の好きな金がここでは文字通り紙切れレベルか。ま、盗み欲は満たせそうにないけど、好奇心は刺激されるものだねぇ
それじゃ、毒の森を往く廃墟ツアーと行こうか
あ、植物があるエリアは宜しく頼むよ、《俺》
『ただでさえ緑の少なさそうな世界で環境破壊は楽しそうだなァ!』
一応肌の露出する箇所は少ない服装にし、植物のあるエリアは狂気の戦鬼を発動して高速移動で突っ切りつつ、衝撃波で植物を廃墟や地面ごと抉り飛ばして通り道を切り開く
『ハハハハッ!最初から朽ちてるもんぶっ壊すのはつまんねぇなァ、オイ!』
安全なら戦鬼解いて探索しよう
普通なら貴重な遺跡なんだろうけど、ここではありふれた光景だ
深い緑に埋もれた廃墟の通路を、軽やかな足取りで乗り越えていくのは――多脚歩行戦車を操る、ヴェリヴェリ・メリヴェ(イキリウミウシ・f24366)である。
「は? 僕は緑を求めて旅行に来ただけなんだが?」
苔で覆われた柱をひょいと飛び越えると、戦車に据え付けられた金魚鉢の水が涼しげに揺れる。その中で悠々と寝そべっている、鮮やかなアオウミウシに似た彼こそが――突然変異で生まれた、賢き動物たるヴェリヴェリなのだ。
「まぁ強毒植物は、流石に草超えて森だがな。……元々森な訳だが」
天鵞絨を思わせる、鮮やかな青の体躯を伸ばして「ふふん」と得意そうに頷くヴェリヴェリであるが、その姿とてアニマルアーマーで擬態したもの、であるのかも知れない。しかし、己の手足の如く戦車を乗りこなす、猟兵のひとりであることは確かなのである。
「しかし、直接の妨害は戦車でどうにかするとして……問題は、大気中の毒素か」
――そう。蠢く木の枝や根っこは、携行する荷電粒子砲で蹂躙するとして、その間に水槽内へ毒素が充満したら大変なことになる。うーむ、とヴェリヴェリが伸びをしたところで、緑のなかにきらきらと金砂の煌めきが舞った。
「……この緑と花は、まるで寄せ餌なのです。建物全体が胃袋のようになって、獲物を待っているのです」
透き通る翅を震わせて、柔らかな光に包まれた愛らしい妖精――ウーナ・グノーメ(砂礫のアポリオン・f22960)は、その直後に金の瞳をすっと細めると、感情を窺わせない声でぽつりと呟く。
「もっとも、わたしを食べたところで……文字通り、砂を噛むような思いしかしないのです」
「む? 昔の本で見たことがあるぞ。フェアリーとか言う存在だな」
「……そう言うあなたは、ウミウシなのですか?」
遠い砂漠を渡ってきたウーナと、海の中で揺蕩うようなヴェリヴェリの視線がそっと交わる中で――ハハハッ、と乾いた笑い声が廃墟に木霊した。
「おぉ、なんと残酷な世界だろうなぁ。俺の好きな金がここでは文字通り紙切れレベルか」
それは何処か狂気を滲ませるような、しかし不思議と心をくすぐる魅惑的な声。音も無く、滲み出るように姿を現した霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は、眼前に広がる光景を一瞥してにやりと口の端を上げる。
「……ま、盗み欲は満たせそうにないけど、好奇心は刺激されるものだねぇ」
――そのまなざしが、ウーナとヴェリヴェリにも向けられているのは言うまでも無く。目的は同じと察した彼らは、早速この毒の柩をこじ開けてやろうと植物の群れに向き合った。
「それじゃ、毒の森を往く廃墟ツアーと行こうか」
宜しく頼むよ、『俺』――そんな永一の囁きと同時に、がらりと彼の纏う雰囲気が変わる。もう一人の人格を呼び出した永一は、粗暴さを増した笑みを浮かべると、暴虐に満ちた力を解放して駆け出していった。
『あァ、ただでさえ緑の少なさそうな世界で環境破壊は楽しそうだなァ!』
狂気の戦鬼と化した彼は、凄まじい速度で汚染毒の中を突っ切り――同時に生じさせた衝撃波で、毒を吐き出す植物を地面ごと抉り出しては吹き飛ばしていく。
『ハハハハッ! 最初から朽ちてるもんぶっ壊すのはつまんねぇなァ、オイ!』
更に廃墟の壁を愉しそうに殴りつけると、降り注ぐ瓦礫雨の向こうに新たな道が生まれていて。尚も往く手を阻む大樹の枝葉には、ウーナの魔眼が石の如き静寂を齎していった。
「砂の一粒一粒に、物語は秘められているのです。……ですから」
――石と成れ。厳かに告げた彼女の目の前で、異形の緑が瞬く間に石へと変わる。直後、念動力で粉々に石の大樹を砕いたウーナは、滑るように空を飛んで建物全体の構造を把握しようと飛び出した。
(「一瞬のうちに、永遠をつかむように――」)
そうして超感覚を研ぎ澄ませていくウーナの背を見送りながら、ヴェリヴェリはソーシャル・ネットワークを介してひとびとに呼びかける。
(「……お前たちが望む景色を見せてやる。その代わり、対価として力を寄こせ」)
――緑あふれる、うつくしい廃墟。其処へ誰よりも強くなりたいと言う願いを投影したヴェリヴェリの元へ、やがて賛同する者が次々に現れて。強化されたフィルターによって濃密な毒の空間も悠々と踏破していく彼は、元凶である花にレーザーの一撃を放つと、水槽のなかで溜息を吐いた。
「これまでで緑は見飽きたんだ、今度は文明の名残でも探してみるか」
「……まぁ、ここではありふれた光景だしね」
人格を切り替えた永一も、そう言って肩を竦める中で――ヴェリヴェリは面白そうなものが見つかったのなら、ネットに拡散するのも悪くはないかと想いを巡らせる。
(「そう――僕の海が蘇る日のために、知識を蓄えるといい」)
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴夜・鶯
チーム【とある】アドリブ◎
ボロをローブのように纏って歩を進め
この世界では珍しい深い緑に目を細めます
植物由来の毒による大気汚染なのかな?
事前に聞かされた情報だけじゃなんとも判断がつかないけど―…
結希と一緒なら何とかなるよね?
UBC「コトダマクラフト」で人数分の「防毒マスク」を作成しつつ
頼りにしてるよ相棒っと結希の背中をポンと触れます
しかしまぁこうも黙々と移動だけって気が滅入るね…
歌とか歌いたいけど流石に危険かな?
汗かいて気持ち悪いし…
あぁ~~もぅ!!
早く仕事終わらせて拠点(ベース)でゆっくりしたいなぁ
お互いに声を掛け合い「情報収集」で周囲の変化に気を配りながら
踏破を目指します
春乃・結希
チーム【とある】アドリブ◎
廃墟好きなんですよー
ここにも沢山人がいて、それぞれの生活があったんよねーと思うと切ない気持ちになります
うぐさんありがとー(マスク受け取り)
これが有れば安心ですね、たくさん歩くぞーっ
道を塞ぐ植物があったらwithで払いつつ進んでいきます
ごめんね、ちょっと通してねー
疲れたらチョコ食べて休憩です
えへへ…うぐさんとお散歩楽しいなぁ
これからも、うぐさんと一緒にいろんな景色を見て、いろんな経験をして行きたいです
新しい友達とか出来ても楽しいかもねっ
…それにしても綺麗な場所やねー…うわあのお花とかめっちゃ綺麗ですよっ
歌?ちょっとくらい大丈夫やない?
私アースの歌なら結構歌えますよ
――しぃん、と静まり返った森の廃墟は、静謐と言うよりも何処か冷たく、見えない鎖が張り巡らされているようだった。
(「何だか、昔住んでた家を思い出すなぁ」)
すっぽりと頭から被った襤褸を、知らず知らず握りしめた鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)は――この世界では珍しいであろう深い緑に、目を細めつつ溜息を吐く。
――本家と分家の間でのいざこざ。歴史がある故に、格式に囚われた其処は、鶯にとって酷く息苦しくて。
「私はね、廃墟好きなんですよー」
けれど、春乃・結希(寂しがり屋な旅人・f24164)ののんびりした声が聞こえて来たところで、凍えそうな鶯の心が、ふっと楽になったような気がした。
「ここにも沢山人がいて、それぞれの生活があったんよねー」
「……うん。やっぱり、植物由来の毒による大気汚染なのかな?」
切なそうに廃墟を見渡す結希であったが、ひとびとの営みに思いを馳せるのもまた楽しいのだろう。しかし――濃密さを増す緑のなかでは、恐るべき毒が牙を剥くのだ。
(「なんとも判断がつかないけどー……でも」)
――あれこれ悩んだのは一瞬。直ぐに鶯は明確なイメージを脳裏に思い描いて、毒から身を護るマスクを生み出していく。
「結希と一緒なら何とかなるよね?」
「うぐさんありがとー、これが有れば安心ですね」
早速マスクを受け取った結希が「たくさん歩くぞーっ」と嬉しそうに駆け出していけば、その背をポンと叩いた鶯は、頼りにしていると呟いてその背を見送った。
「ごめんね、ちょっと通してねー」
そんな中でも、直接毒を浴びせようとする植物たちが行く手を阻むものの――彼らを叩き伏せるべく、結希は漆黒の大剣と共に廃墟を舞う。
(「大丈夫、私は――強い」)
呪いにも似た自己暗示を掛けて、怖くないのだと言い聞かせ――人並み外れた怪力を発揮して、叩き斬る。
「しかしまぁ、こうも黙々と……移動だけって気が滅入るね……」
――やがて、息を切らした鶯が汗だくで石段を登っている傍らで、すっかり辺りの邪魔な植物を駆除し終えた結希は、チョコを片手にのんびり休憩をしていたのだった。
「えへへ……うぐさんとお散歩楽しいなぁ」
「あぁ~~もぅ!! 早く仕事終わらせて、拠点でゆっくりしたいなぁ」
それでもお互いに声を掛け合い、時には明るく励まし合って、ふたりは廃墟の踏破を目指していく。これからも、うぐさんと一緒にいろんな景色を見て、いろんな経験をして行きたい――真っ直ぐに結希からそんなことを言われてしまうと、鶯だってこれ位でへばっている訳にはいかないと思うのだ。
「……それにしても、綺麗な場所やねー……うわ、あのお花とかめっちゃ綺麗ですよっ」
「って、結希……訛りが出てない?」
――いつしか、辺りの景色を眺める余裕も出てきた鶯は、歌いたいかもと零して桜の枝を揺らした。
「歌? ちょっとくらい大丈夫やない? 私、アースの歌なら結構歌えますよ」
そう、こんな風に賑やかに歌をうたったりして。――新しい友達なんかが出来ても、楽しいのかも知れない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
POW
崩壊のその先でもヒトは生きている。
ならばボクのやることは変わらないさ。
今を生きる誰かの明日の為に、ね。
元より電子の存在たるボクには毒も効きずらいけど
持てる魔術と演算で、できるだけ毒の無効化を試みようか
「ディープアイズ、起動」
「ディープアイズ」で周辺の環境を演算解析
毒素の組成を解析、『コードライブラリ・デッキ』のデータも利用して
毒素正常化の魔術を組む(毒使い、医術)
風属性魔術も付与して、毒素の無い一帯を演算把握
風の流れを操作して安全なルートを「イルダーナ」で進もう
「ルート策定完了、それじゃあ進もうか」
(情報収集、学習、操縦、空中浮遊)
邪魔な植物はUCで切断対処
「たのんだよ、ヌァザ!」
キラス・レスケール
奪還者たちも危険は承知であろう
この世界では人々は生きるために命がけにもなるのも仕方がない
…俺様が用意できる食料で、この世界の人々全ては救えんからな
だが、それでも危険の芽を摘むことができるのならば、やらない道理はないな
毒そのものへの耐性は持ってはおらぬが、痛みが発生するものであれば【激痛耐性】は効果があるだろうか
効果がなくとも、俺様は人々を守護する使命がある
どれだけの苦痛も、耐えてみせよう
植物への対策は『†猫変身†』で猫に姿を変えよう
可能であれば植物の攻撃を引き付け、他の猟兵を守ることもできるかもしれん
※荒廃した世界に心を痛める俺様神様
※アドリブ、絡み、負傷なんでもどうぞ
スカーレット・ロックハート
毒が怖くて猟兵なんてやってられっか
汚染で毒を宿した植物か、力試しの相手としちゃあ丁度いい
いっちょ暴れさせてもらうぜ
植物の強毒には、『毒には毒を』で耐性を付けて
真っ正面から強行突破していくぜ
にしても邪魔な植物だ、おまけに人に襲い掛かってくるたぁな
だったらUCを使って、全部根こそぎ薙ぎ払ってやる
ドーピングによる高速戦闘モードで刀を振るい
行く手を阻む植物を、片っ端から斬っていこう
こちとら時間が無ぇんでな
キリがなさそうなら、適当なところで先を急いで
そのまま一気に突っ切るぜ
そうして無事に切り抜けたなら
乱れた息を落ち着かせる為、煙草を一服
ったく……かなり手間取らせやがって
猟兵稼業ってのも、楽じゃねぇモンだ
――古き伝承にて謳われる、常若の国の名はティル・ナ・ノーグ。彼の地では老いも死も存在せず、尽きぬことのない実りが約束されているのだと言う。
(「人々の夢みた楽園、永遠の理想郷」)
そして其れは――住むべき大地を失い銀河の果てを流離う、或る星の船に冠された名でもあった。
(「……この世界でも。崩壊のその先でも、ヒトは生きている。生きようとしている」)
電子の海から創造されし、ヒューマンインターフェース――嘗ての中央制御ユニット、星海の羅針盤たるリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は、毅然とした佇まいで彼方を見つめる。
「ならば、ボクのやることは変わらないさ」
「そうだな……奪還者たちも危険は承知であろう」
緑の世界に君臨するように、誇らしげに赤髪を靡かせるキラス・レスケール(†神†・f16415)は正しく、異界よりやって来た救いの神だ。
「……この世界では、人々は生きるために命がけにもなるのも仕方がない」
生命を創造し、世界の根源たる力を振るう神が居ないのだとしたら――禁忌と言われようと、ひとはその秘術に手を伸ばすのだろう。そんなキラスの視線の先では、死から蘇った存在であるスカーレット・ロックハート(叛逆の緋・f24479)が、鋭い眼光で紫煙を燻らせていた。
「毒が怖くて、猟兵なんてやってられっか」
吐き捨てた彼女は、思い出を振り切るように煙草を仕舞うと、踵を鳴らして灰を潰す。汚染で毒を宿した植物なら、力試しの相手としては丁度いい――荒々しい魂の衝動に身を任せれば、スカーレットの指先が火花を散らしていった。
「――いっちょ暴れさせてもらうぜ」
言うや否や、薬品を自身へ一気に投与したスカーレットは、真正面から突入して無銘の刀を振るう。なまくらと名付けたそれは、その名に反して刃毀れひとつも無く――速度を増した鮮やかな太刀筋が、首を刎ねるように次々と、植物の枝花を断ち切っていった。
「……文字通り、危険の芽を摘むということだな。何れにせよ、この世界の人々を救えるのであれば」
――ひとりの力では、出来ることは限られているだろう。しかし、キラスには神である誇りと責任と――それ以上に、人間に対する愛がある。
「やらない道理はないな」
神だから猫にもなれる、との信念のもとで白猫に姿を変えたキラスは、素早い身のこなしで蔦の攻撃をいなしつつ同士討ちを誘い、尚も相手の注意を引き付けて隙間に滑り込んで。
「今を生きる誰かの明日の為に――ディープアイズ、起動」
その合間に、ライブラリのデータへアクセスしたリアは、持てる魔術と演算を駆使して毒素の解析を行い、周辺環境の正常化を行うべく魔術を組み上げていった。
「ルート策定開始……完了。イルダーナ、起動」
廃墟に吹き渡る風もまた、リアの呼び出した魔術によるものであり――次々に流れ込んでくる情報の処理を終えた少女は、安全なルートを突っ切る為にバイクのエンジンを吹かす。
「それじゃあ進もうか、乗って!」
「……にしても邪魔な植物だ、おまけに人に襲い掛かってくるたぁな」
そうして彼らを根こそぎ薙ぎ払おうと、刃を振るい続けていたスカーレットが飛び乗ったのを確認した所で、リアの駆るイルダーナがふわりと宙を舞った。
「お、っと……!」
切りのいい辺りで、白猫となったキラスの首根っこも抱えて回収しながら――邪魔な植物も消えて進みやすくなった廃墟を、ふたりと一匹の神様は一気に駆け抜けていく。
「ったく……かなり手間取らせやがって」
ドーピングの負荷がかかり、乱れた息を吐くスカーレットが煙草を求めて懐に手を伸ばす傍らで、キラスはじっと毒の痛みに耐えるように瞼を閉じていて。
(「俺様は人々を守護する使命がある、だから」)
――全く、猟兵稼業ってのも、楽じゃねぇモンだ。スカーレットの溜息と、リアの繰り出す銀閃が廃墟の風景を揺らしていく中、キラスは楽園に眠る実りを人々に届けることを誓ってちいさな尾を揺らした。
(「どれだけの苦痛も、耐えてみせよう」)
大成功
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冴木・蜜
新しい世界で植物鑑賞と行きましょうか
強毒……と言いましたか
いえ 問題ありません
敢えて植物の多いルートを選びます
臆せず廃墟に入り込み
体内に毒素を取り込みましょう
私、"毒そのもの"ですので
耐性は勿論ありますし
……というか毒、ですし
体内毒を調製し吸収した毒素と相殺するくらいは
問題なく出来ます
少しでも毒素を減らしておけば
後続の皆さんが楽になるかと
ああ
蠢く枝や根は
毒血で融かしたり
取り出した医療器具で切り払いましょう
毒を受けた他の猟兵や生き物を見かけたら
『酔蜜』で解毒薬を作りましょうか
中和剤が必要そうでしたら
そちらも作ります
残念
私の前では毒花もただの花ですよ
バジル・サラザール
環境に適応する過程でこうなったみたいね……植物なりの戦い方ってとこかしら
『毒耐性』や『毒使い』としての知識で、廃墟を進むわ
必要なら『医術』と『毒使い』の知識で自分や他の猟兵、奪還者の治療もしましょう
ついでに植物も少し拝借、『医術』と『毒使い』で少し調べましょう
毒の特性を調べて利用したりしつつ探索するわ
そして薬、あわよくば抗体的なものを作れないかしら。今だけでなく、またここに来る時にでも使ってもらえたら。まあ、個人的な興味もあるけどね
もし植物が直接攻撃して来たら、毒を以て毒を制す、『属性攻撃』、『毒使い』を生かした『ポイズン・スピア』で追い払うわ
荒廃した世界の植物……興味深いわ
アドリブ、連携歓迎
荒野のただ中に突如として現れるのは、緑に呑まれたうつくしき廃墟。見せかけの楽園は一転し、地獄の本性を露わにするが――立ち込める毒の大気や、肌を濡らす毒の雫は、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)の歩みを止めることなど出来はしない。
「……いえ、問題ありません」
強毒の類だと聞き及んでいたそれを、寧ろ積極的に取り込むようにして――蜜はまるで己の庭を散策するようにゆっくりと歩きながら、鮮やかな毒の葉を摘まんで濃密な香を吸い込んでいく。
「私は、『毒そのもの』ですので」
――ほんの少し葉先で傷ついた指先からは、粘り気のある黒液が地面に滴って、小さな染みを作っていったけれど。そのタールのような蜜毒を浴びた植物の根は、苦悶と恍惚で身をよじらせた後、力尽きたように動かなくなった。
「毒に対する備えは、あるのですよ」
何処か自嘲気味に呟いた彼の向かう先では、鮮やかな蛇の尾が緑のなかで踊っていて。どうやら、新しい世界で植物鑑賞と洒落込んだのは自分だけではなかったのだと――ふと顔を上げた所で、目が合った。
「成程、環境に適応する過程でこうなったみたいね……植物なりの戦い方ってとこかしら」
清潔な白衣を纏い、手にしたカルテに何事かを書き込む彼女はバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)と名乗り、その深い知性を湛えた瞳に動揺した蜜が、思わずタールを吐き出して目を逸らす。
「……別に私は、バジリスクなんかじゃないわよ」
「いえ、人の視線が……少し苦手で」
――ちょっぴり面白そうに微笑んだバジルは、蜜の様子に近しいものを感じたのだろうか。薬学のシンボルであるヒュギエイアの杯を見せた彼女は、植物の毒を分析し、他の猟兵たちを助ける抗体のようなものを作れたらと語った。
「まあ、個人的な興味もあるけどね」
「そう言う事でしたら、力になれるかと」
これからのことを考えれば――少しでも毒素を減らし対策をしておくことで、後続の仲間が楽になるだろう。そう結論づけた蜜は酔蜜の力を用いて、精巧な解毒薬の模倣品を作り出していく。
(「……そう。体内毒を調製して、吸収した毒素と相殺するくらいなら」)
――サンプルは自身の肉体、それを形づくる劇薬で。そうして完成した薬の効果を確認したバジルは、問題ないようだと言うように頷いたのだった。
「しかし、荒廃した世界の植物……興味深いわ」
「……残念、私の前では毒花もただの花ですよ」
毒への耐性を持ち合わせ、毒に精通したふたりの前では、廃墟に君臨する植物たちも成す術がない。毒を以って毒を制す――その言葉通り、自在に毒の槍を操って植物を追い払うバジルは、毒手を繰り出す蜜に向かって思い出したように声を掛けた。
「それでも……きっとあなたも、誰かの特効薬なのよ」
大成功
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鳴宮・匡
生きるために強くなるのは自然の理だ
動物も、植物だってきっと変わらないだろう
物資に近い場所の方が植物の密度が高いんじゃないか
獲物が群がる“餌”を利用しない術はないからな
植物の分布を参考にして、奥へのルートを割り出すよ
葉擦れの音や枝の蠢く音、有毒なにおいや肌を刺す毒素の感覚
知覚しうる限りの情報から、なるべく安全なルートを選出して進む
毒素の立ち込める場所は避けて進み
枝や葉、根を用いて襲い来る植物の合間を切り抜けながら奥へ
物理的な攻撃なら見切ることもできるし
必要に応じて銃やナイフで掃うこともできる
……こうならなければ生きられない世界、か
それでも、命は芽吹くし、ひとは生きてる
――その強さを、眩しく思うよ
イア・エエングラ
ほんの少し前まで、人のいた街の形だのに
もうだあれも、いなくって
這う蔦の分だけ置き去りの時間の見えるよう
ここにいた人らは何処へ行ったろな
逃れることが、できただろうか
それとも、なんて思い馳せつつ
きっともう全然違う光景になっているのだろな
全部緑に覆われたなら
また違う街へと変われるかしら
瓦礫の段を越えて落ちる蔦を潜って
多少の毒なら僕は耐性があるけども
あんまし通るに困るのならば
すこし、凍らせてしまいましょ
青い火でおくるよに、平らな路を作って奥へ
空っぽの建物を行きながら
探すのは光の落ちる場所
彼らの憩いの、あったろう場所
いつか芽吹く、いのちたのめに
届かずとも駆けようとした、彼等の祈りのために
(「ほんの少し前まで、人のいた街の形だのに」)
――深い緑の海底で、夜の裾がふわりと揺れる。囁く聲も、すべてが泡沫となって呑み込まれていくような静寂の街を、ゆるりと横切っていくのはイア・エエングラ(フラクチュア・f01543)。
(「もうだあれも、いなくって」)
灰色の瓦礫を覆う苔は分厚く、這う蔦の分だけ置き去りの時間が見えるよう――微かな靴音と同時に、彼の耳元で踊る耳飾りが、新緑のなかで鮮烈な色彩を放って。
(「……ここにいた人らは、何処へ行ったろな」)
既に、その名残さえも見出すことが出来なかったけれど。滅びの街を埋め尽くす植物たちをじっと見つめて、イアはひとびとの行く末に思いを馳せる。
――逃れることが、できただろうか。それとも。
『生きるために強くなるのは、自然の理だ』
彼の先を行く鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、凪いだ海のような瞳で、静かにそう言っていた。それは動物も――植物だってきっと、変わらないのだろうと。
「だったら、きっと……もう全然、違う光景になっているのだろな」
波が大地を削るように、廃墟と化した街はゆっくりと輪郭を失って、自然の一部に変わっていくのかも知れない。そうして全部、緑に覆われたなら。
「また違う街へと、変われるかしら」
そんな森に沈んだ街であっても、微かな感覚を頼りにして、匡は物資が眠る深部へと歩みを進めていた。そう、彼らにとってそれは獲物が群がる『餌』なのだ――ならば、それを利用しない手は無い。
(「恐らく物資に近い場所の方が、植物の密度は高い」)
――葉擦れの音や枝の蠢く音。有毒なにおいに、肌を刺す毒素。凡そ知覚し得るすべての情報から、安全なルートを割り出した匡は、汚染された大気を上手く躱すと廃墟の壁に身を隠した。
「……こうならなければ生きられない世界、か」
直後、彼が居た場所を真っ直ぐに、杭の如き枝が貫いていて。更に襲い掛かってくる植物たちをナイフでいなすと、イアの宝珠も送り火を生んで加勢する。
「あんまし通るに困るのならば。……すこし、凍らせてしまいましょ」
ゆっくり植物たちの熱を奪っていくのは、闇を祓う青い篝火。やがて平らな路がふたりの前に姿を現すと、空っぽの建物を進んで目指すのは、光の落ちる場所――彼らの憩いの、あったろう場所だ。
――毒が満ちた、死の世界。それは遥か太古の大地にも似ていて。海の底に降り積もる鉄錆、それを生み出した酸素も、嘗ては猛毒でしか無かったのだと言う。
「それでも、命は芽吹くし、ひとは生きてる」
――その強さを、眩しく思うよと。呟いた匡の隣で、イアも水の底から手を伸ばすように、希望を掴むべく進んでいく。
(「いつか芽吹く、いのちのために」)
――届かずとも駆けようとした、彼等の祈りのために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ゾンビの群れ』
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POW : ゾンビの行進
【掴みかかる無数の手】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛みつき】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 突然のゾンビ襲来
【敵の背後から新たなゾンビ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 這い寄るゾンビ
【小柄な地を這うゾンビ】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
🦍🦍🍌🦍🦍🍌🦍🦍🍌🦍🦍🍌
第2章のプレイングは、少しお時間を頂きまして『1月4日 朝8:31~』からの受付と致します。
近日中に冒頭の文章も公開しますので、ゆっくりプレイングを考えてみてくださいね。
(前回からは勿論、この章からの参加でも大丈夫です)
🦍🦍🍌🦍🦍(ウホホッ)🦍🦍🍌🦍🦍
緑に呑まれた街――うつくしさの中に毒を秘め、廃墟に根を下ろす植物たちの群れを掻いくぐって、猟兵たちは緑の奥へと歩を進めていく。
其処には、滅びの世界に住むひとびとを救うことが出来る、物資を満載したコンテナが眠っているのだと言うが――一歩を踏み出したその時、おお、と地の底から響くような唸り声が辺りに木霊した。
(「風の音……とは、違う」)
――更に、彼らを悩ませた毒とも異なる異臭が、大気のなかにゆっくりと混ざっていくと。荷が積まれている広間の前には、生ける屍者――ゾンビの群れが現れて、生者の行く手を阻もうとしていたのだった。
(「……奪還者の、末路か」)
或いは――嘗てこの街に住んでいたひとびとの、成れの果てなのか。命あるものの鼓動が絶えた廃墟で、ただ死者の聲だけが、今もこうして虚ろに響いている。
――古き伝承にて謳われる、常若の国の名はティル・ナ・ノーグ。彼の地では老いも死も存在せず、尽きぬことのない実りが約束されているのだと言う。
(「老いも死も存在しない、常若の国……」)
目の前に広がる光景がそうだとするならば、それは何という皮肉なのだろうか。しかし、尽きぬことのない実り――拠点のひとびとを救うだけの実りは、確かに約束されているのだ。
――彼の地は、緑の柩で閉ざされたティル・ナ・ノーグ。
匣のなかでは未だ、生と死の可能性が重なり合って存在している。
リンセ・ノーチェ
【Folklore】アドリブ歓迎
サヴァーさんとユーンさんの言葉を聞いて、考えて、応える
「厳しい世界で前を向いて生きてるこの世界の人達は、強いですね」
ユーンさんの迷路を彼に続き急ぎながら杖に精霊の力を集めてく
この世界の精霊は荒れて扱い辛いけれど、それだけ力強い
希望が残されているんだって、胸が熱い
聴覚と勘、助言も頼りに跳んで攻撃を回避しつつ前へ、前へ
大丈夫、僕はひとりじゃない
ユーンさんの手で足りなければ僕だって銃で牽制するし
サヴァーさんの手と翼はいつも優しい
ユーンさんが舞台を整えてくれたら出番だよ
「猛れ、躍れ、精霊達!」
UCの全力魔法
虹の突風を敵陣に放つ
狭い通路を一方向に吹く強風
きっと全て薙ぎ払う
サヴァー・リェス
【Folklore】アドリブ歓迎
「常若の国…」
永遠の平穏は死
それは
なんとなく…わかる
でも『わかる』と『うなずく』は、違う
「ひとは、世界は、とまっては…いけない」
過去に追いつかれぬよう
駆けるように生きる
ユーンの迷路、導かれ滑る様に低空飛行でゆく
追跡されていても…小柄な敵の攻撃、飛べば被害は少ない、はず
第六感も頼りに二人の回避を助けるよう、声を
「リンセは、左の路地に飛び込んで――ユーンは、十歩走って振り返って、射る」
飛び込むリンセの手を引き飛び助けたり…UCで敵UCを相殺
「あなたは、おわった、おいつけない」
ユーンの舞台でリンセが踊れる様に、UCやオーラ防御で皆、護り続ける
もう、失わない
失わせ、ない
ユーン・オルタンシア
【Folklore】アドリブ歓迎
「ティル・ナ・ノーグ。迷い込む者には厳しい世界である辺り、言い得ています」
流石に笑まずとも気負いもなく
サヴァーとリンセの言葉に頷く
「ええ。私もそう在りたいと思います」
短命の火花眩しき
長命の時に溺れずに、かく在りたい
「―参りましょう」
UCの迷路を展開、お二方を導き迷路を急ぐ
狙いはゾンビ―亡者達を狭い通路に誘い込むこと
四方から追跡されれば厄介ゆえに
視聴覚頼りに助言も聞き入れ攻撃回避しつつ
援護/制圧射撃を折々に行い皆様を守って参ります
追い詰められたかの様な行き止まり
狙い通り且つ敵の油断も誘える舞台
「お願いします」
私が導いたのは―相殺と破壊
安らかなれと亡者への祈りを捧ぐ
廃墟を侵食していく緑は枝葉を絡ませつつも、灰色のキャンバスに複雑な濃淡を描いているようだった。さながらそれは、異教の神殿を彩るアラベスクのようで――その紫の瞳に、うつくしき光景を捉えたユーン・オルタンシア(森の声を聴く・f09146)であったが、柔和な表情に宿るはずの笑みが今は無い。
「……ティル・ナ・ノーグ。迷い込む者には厳しい世界である辺り、言い得ています」
木漏れ日がきらきらと輝く、静謐な世界に似合わぬ呻き声。其処へ、毒と腐敗の入り混じったにおいが混ざっていけば――ユーンの目指す先にはゆらゆらと、生ける死者たちが群がって、生者の行く手を阻もうと襲い掛かって来たのだった。
「常若の国……」
――深緑のなかで踊る白銀は、サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)の髪とこえ。靜かな月を思わせる瞳が、おぞましきゾンビの群れを認めても、彼女はただゆっくりとその現実を受け止め思考する。
(「永遠の平穏は、死……それは、なんとなく……わかる」)
でも、『わかる』と『うなずく』は違う――それが正しいことであると、同意してはいけないのだと、サヴァーは梟の翼を羽ばたかせて未来へと向かう。
「ひとは、世界は、とまっては……いけない」
――過去に追いつかれぬように、駆けるように生きること。それが、生命あるものの在るべき姿なのだろう。骸の海に沈んで、すべてが過去に呑まれた世界はもはや、何も生み出すことは無い。
(「大切なものを受け継いで……未来に伝えていくことも、できない」)
ユーンとサヴァー、大切なふたりの言葉を聞いて必死に考えを巡らせるのは、リンセ・ノーチェ(野原と詩と虹のかげ・f01331)で。彼はややあってから貌を上げると、ふんわりした猫の耳を揺らし――優しさと寂しさの入り混じったこえで、うたうように応えを返した。
「……厳しい世界で、前を向いて生きてるこの世界の人達は、強いですね」
「ええ。……私も、そう在りたいと思います」
まっすぐなリンセのまなざしに、頷いたユーンは不自然に気負う様子も無く。彼はそのまま森の廻廊を生み出すと、一瞬で戦場を迷宮へと塗り替えていく。
「――参りましょう」
芳し麗し、花蔓と樹の織り成すまぼろしの中で、ただユーンひとりが正しい道を知っている。そんな彼に導かれて、亡者の群れを引き付けていくのはリンセとサヴァーだ。
(「この世界の精霊は、荒れて扱い辛いけれど――」)
氷柱のような硝子のペンの先端――其処に精霊の力を集めるリンセは、荒々しい力の奔流に翻弄されつつも、心が躍るのを感じていた。
(「それだけ力強い。希望が残されているんだって、胸が熱くなる」)
――更に彼の背中を押すように、サヴァーの羽ばたきが森の廻廊に響いていくと。滑るようにして亡者の追跡を振り切った彼女は、鋭い囁きと共に蜃気楼を編んで、這い寄る死者の足止めを行っていく。
「リンセは、左の路地に飛び込んで――ユーンは、十歩走って振り返って、射る」
迫る腕を間一髪ですり抜けたリンセは、サヴァーの助言に従い前へ、前へ――惑いの蔓で視界が塞がれていても、怖くなんてなかった。
(「大丈夫、僕はひとりじゃない」)
迷うこと無く茂みのなかに飛び込んだ彼の手を引いて、ふわりと宙を舞うサヴァーのぬくもりは、いつだって優しいから。それに――正確に弓を引いて援護をしてくれるユーンは、いつだって頼もしい。
――やがて亡者の群れを引き連れて、迷宮の奥へ辿り着いた三人の前には、行き止まりの壁が立ちはだかっていて。一見、追い詰められたように見える袋小路はしかし、敵の油断を誘う彼らのとっておきの舞台だったのだ。
「あなた達は、おわった、おいつけない」
銀色の揺らめきで、ふたりを守るサヴァーの胸に灯るのは、もう失わない――失わせない、という祈りにも似た誓いで。吐き出す吐息に眩しく重なる、短き命の火花を思わせる輝きに、ユーンは知らず己の胸に手を当てて空を仰いでいた。
(「……私も。長命の時に溺れずに、かく在りたい」)
――そうして相殺と破壊の導き手は、最後のときを頼もしき仲間へと託すのだ。
「猛れ、躍れ、精霊達!」
直後――リンセの紡いだ虹の突風が、狭い通路にひしめくゾンビの群れを纏めて薙ぎ払っていった。一直線に吹き付ける強風は亡者の泣き声を掻き消し、その肉体を塵へと還していく。
やがて、安らかなれと彼らに捧げる祈りと共に、森の廻廊はゆっくりと、まぼろしの中に溶けていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フルエレ・エルムウッド
(PL:作成直後キャラゆえ
こんな感じどう?と御提案の様にアドリブ色々特に歓迎
連携もOK)
「この世界も、まだ敗北してはいないのですね」
それは
病の雛鳥がそれでも餌を求めて鳴くような
痛ましくも胸に手を添える程に嬉しく、心に希望の灯るよう
私のしごとはまもり、たすけること
そのために今は戦わねばなりません
凛と
「亡者の皆様、骸の海へお還りなさい」
UCでふわり飛び上がり、敵の攻撃を躱せるように飛び回ります
そうして
世界と世界に在るいのちが僅か確かに灯す希望、
その熱を受けて躍る心の鼓動(プリンセスハート)を
亡者達を滅する聖なる言葉(【祈り】)に変えて放ちましょう
心は無限、聖句も尽きることのなく
折れぬ限り墜ちません
バジル・サラザール
まるで毒入りの緑の箱の中に閉じ込められた番人みたいね。少し同情するわ。景色はいいけどね
主に『毒使い』『属性攻撃』を生かした『バジリスク・スモッグ』で新しく現れたゾンビもまとめて攻撃するわ
強力だけどできるだけ苦しまない毒で攻撃ね
ポーションやウィザードロッド等で攻撃をいなつつ集団に潜り込んで仲間や資材を巻き込まない位置で使いましょう
住んでる場所が場所だし、毒耐性もあるかもね。でもあまり気にせずそれを上回る毒で何度も攻撃するわ
敵の攻撃は『野生の勘』も用いつつ回避しましょう
元奪還者か、オブビリオンか分からないけどごめんなさいね。今生きている人のためにその資材貰っていくわ
アドリブ、連携歓迎
冴木・蜜
老いも死も存在しない、か
何という皮肉でしょう
彼らもこんな状態になりたかった訳ではないでしょうに
……眠らせてあげましょう
体内毒を濃縮
体を液状化し
彼らの足下を這い進むことで攻撃を躱しつつ
多く屍達が集合する場所を目指します
攻撃手段が物理である限り
液体の私を捉えるのは難しい筈
新手の屍が現れても然程問題にならないでしょう
寧ろ好都合ですらあります
多くの屍が集まってきたら
そこで『微睡』
後続の皆さまのために
なるべく多くの屍を巻き込みます
私に触れる全ての存在を侵し
融かし落としましょう
私は死に到る毒
触れるのも嗅ぐのも致命的
さあ 私の毒に溺れて下さい
――其処は黙示録にて語られる、終末の先に広がる世界のようだった。知性を持つ獣と、清浄な地では生きられぬひとと――死から蘇ったもの達と。それは何と冒涜的な存在なのかと、異なる世界では眉を顰められたのかも知れない。
「この世界も、まだ敗北してはいないのですね」
しかし――フルエレ・エルムウッド(フローライトのひかり・f24754)の心を満たすのは、懸命に生きるひとびとへ対する喜びと、そんな彼らに抱く純粋なまでの愛情だった。例えるならそれは、病の雛鳥がそれでも餌を求めて鳴くのを見つめるような――痛ましくも胸に手を添える程に嬉しく、心に希望の灯るような光景で。
「……私のしごとはまもり、たすけること」
一見すると、愛らしい少女にしか見えないフルエレだが、彼女は此処とは違う世界の神――創造に関わり、根源の力を振るう存在だ。故に、きっと世界の見方もひととは少し違っているのだろうと、バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は考える。
「例えば、そう……この廃墟はどう映っているのかしら。私にとっては、まるで毒入りの緑の箱の中、」
自らも毒を操るバジルの手のなかで、ゆらゆらと揺れているのは特製のポーションで――彼女は何処か達観した素振りのまま、此方へ向かって押し寄せてくるゾンビの群れを見つめていた。
「そして貴方達は、ここに閉じ込められた番人みたいね。……少し同情するわ」
「……彼らも、こんな状態になりたかった訳ではないでしょうに」
そっと唇から零れ落ちるタールを指先で拭って、バジルの言葉に首肯するのは、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)。老いも死も存在しない、とはひとびとが夢みる楽園の姿で、医学が進歩する原動力にもなったのだが――。
「何という、皮肉でしょう」
――まるで歪んだかたちで願いを叶える、猿の手の寓話のようだ。それは救いたいと言う願いが、毒として結実してしまった蜜自身を嘲笑っているようにも思えて、知らず乾いた笑みが零れてしまう。
「景色はいいけどね……と、それはともかくとして」
「……ええ、眠らせてあげましょう」
背後から突如として現れた、新たなゾンビにも動じること無く、バジルと蜜は毒を用いて亡者の群れに向かっていった。体内の毒を濃縮――そのままタールの体を液状化させた蜜が、滑るようにしてゾンビの足元を這い進んでいく中で、バジルは猛毒のバジリスク・スモッグを辺りに展開する。
「強力だけど……これはできるだけ、苦しまない毒よ」
――押し寄せるゾンビの群れを止める毒霧の壁は、無差別に周囲を巻き込む恐るべきものであったが、地を這う蜜は上手く躱してくれたらしい。
「亡者の皆様、骸の海へお還りなさい」
更に――絢爛なドレスを纏ったフルエレは空を舞い、凛とした佇まいで天へ祈りを捧げていた。亡者の腕をいなしつつ、きらきらと降り注ぐ花びらはまるで、彼女の神威が宿ったように、鮮やかな紫の濃淡を描いている。
(「わかっているのです。まもり、たすける……そのために、今は戦わねばなりません」)
そうして世界と、世界に在るいのちが僅かに――けれども確かに灯す希望を、火にくべるようにして。フルエレの鼓動は熱を受けて高まり、その心は蛍を思わせる燐光に包まれながら、ぱちぱちと弾けて亡者の頭上に降り注いでいった。
「折れぬ限り、墜ちません……!」
彼女は、蛍石の神――その心は無限で、聖句も尽きることが無く。亡者達を滅する、フルエレの聖なる言葉が祈りとなって響き渡る中で、蜜は多くの屍体が集まる場所へと辿り着いていた。
(「新手が現れるのなら、寧ろ好都合ですらあります」)
後に続く者たちの為、なるべく多くの屍を巻き込むようにして、揮発した死毒を辺りに振り撒く。そう、彼は死に到る毒――触れる全ての存在を侵し、融かし堕とすもの。
「……さあ、私の毒に溺れて下さい」
――毒が満ちた柩でひしめく亡者たちも、より恐ろしい毒の前では成す術もなかったらしい。物言わぬ骸へと戻っていく彼らの最期を見届けたバジルは、感傷を振り切るように蛇の尾を揺らし、更に奥へと向かう。
「ごめんなさいね。……今生きている人のために、ここの資材を貰っていくわ」
大成功
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薄荷・千夜子
セシリアさん(f11836)と
セシリアさんとご一緒できるとは心強いです
共に参りましょう
前線をセシリアさんにお任せしつつも
お力を貸してくださいね、と『境界顕現:日輪ノ鴉羽』に【破魔】の力を込めてセシリアさんを守るように光の【迷彩】を
えぇ、ここで彼らを解放して差し上げましょう
もうここは貴方方がいて良い場所ではありません
ゆっくりとお眠りになってください
『操花術具:神楽鈴蘭』を【祈り】を込めて振るいながら≪操花術式:花神鈴嵐≫発動
浄化の白き花弁を舞わして手向けの花と致しましょう
セシリア・サヴェージ
千夜子さん(f17474)と
千夜子さんと一緒なら安心して戦えます。前線での敵の引き付けはお任せください。
暗黒騎士たる私には過ぎたモノですが、彼女が授けてくれた光の加護も存分に活用しましょう。
死が存在しないなど……それはもはや呪いでしかないと思います。
彼らが安らかに眠れるよう、呪縛から解放して差し上げましょう。
UC【闇炎の抱擁】を発動。暗黒の炎を以って彼らを灰に。
敵陣への突撃を敢行し、【なぎ払い】【蹂躙】でなぎ倒します。
敵への攻撃には【咄嗟の一撃】【吹き飛ばし】で対処し、捕まれないように注意を払い立ち回ります。
最後は【力溜め】【全力魔法】で極限まで火力を高めたユーベルコードで【焼却】します。
古来より語り継がれる楽園は、ひとの世界とは境界を隔てて存在していると言う。それは土の下であり、海の底でもあり――彼岸と此岸、生と死のはざまを揺れ動くような、捉えどころのない場所だった。
「セシリアさんとご一緒できるとは、心強いです」
「ええ、私も。千夜子さんと一緒なら、安心して戦えます」
滅びの世界に佇む、緑あふれる仮初の楽園――死者の群れが蔓延る廃墟の深部を目にしても、薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)の瞳に宿る太陽の輝きは、決して衰えることは無い。
(「この世界にだって、希望は残されているのだから」)
共に参りましょう、と傍らのセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)に微笑むと、優しき騎士は暗黒の甲冑を鳴らし、千夜子の前へ歩を進めた。
「前線での敵の引き付けは、お任せください」
「でしたら……この力を、少しでも役立てて下さい」
――少しずつ包囲を狭めてくるゾンビの群れを前に、千夜子が取り出したのは日輪ノ鴉羽。八咫烏の羽を模した霊符に破魔の力を籠めれば、極光を思わせる輝きがセシリアを包み込んで、いつしかその姿は陽炎のように揺らめいていく。
「……暗黒騎士たる私には、過ぎたモノですが。光の加護、有難く使わせて頂きます」
お、おおおおお――洪水の如く押し寄せる呻き声と同時に、セシリア目掛けて伸ばされていく無数の手。囚われれば一気に貪られる死の抱擁だが、光の迷彩を纏う彼女の姿は木漏れ日に呑まれて、その輪郭を上手く捉えることが出来ずにいるようだ。
(「死が存在しないなど……それはもはや呪いでしかないのでしょう」)
此処とは違う、冷たい闇が忍び寄るセシリアの故郷もまた、生ける死者が闊歩する絶望の世界であり――凍える吐息のなかで、未だ見ぬ陽の光を夢みて潰えていった者たちも大勢居た。
「ならば、せめて……彼らが安らかに眠れるよう、呪縛から解放して差し上げましょう」
そうして――ほんの僅か、祈るように瞼を閉じていたセシリアであったが、直後に解き放たれた闇の力は、彼女を恐るべき狂戦士に変えていく。
「お前達に未来など、必要ない――」
噴き上がる暗黒の炎を纏い、より禍々しさを宿した大剣を手に、セシリアは暴風の如くゾンビの群れへと突き進み、一気に蹂躙していって。唸りをあげる暗黒剣の一振りによって生じた炎は、亡者を次々に呑み込み――悲鳴すらも塗り潰して、激しく燃え上がっていった。
「……もう、ここは。貴方方がいて良い場所ではありません」
――死者の腕を振り払い、時に強引に吹き飛ばして戦うセシリアの姿を、ひとびとが畏怖するのも無理からぬことだ。しかし千夜子は、それでも彼女が護る為に戦い続けていることを知っているから、決して目を逸らしたりはしないと誓う。
「どうか、ゆっくりとお眠りになってください」
りぃん、と――神楽鈴蘭が澄んだ音を鳴らせば、旋律に乗せてゆっくりと、浄化の白き花弁が辺りに舞って。誰かを照らせるようにと、ひたむきに捧げた千夜子の祈りはいつしか優しい風となって、手向けの花を廃墟に送り届けていった。
「招かれざる者よ、闇に抱かれ骸の海に還るがいい」
――生命を侵食され、心まで失われようとも、暗黒の力を振るい続けるセシリアが立ち止まることはない。全力で放った闇炎の抱擁は死者を焼き尽くし、二度と蘇ることが無いよう灰に変えて、花びらと共に空へ舞い上がっていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウーナ・グノーメ
●判定
WIZ。アドリブ絡み◎
●心情
「砂漠ですら砂は流れ、風はそよぎ、生と死は流転するのです」
「此処は常若の国などではなく、全ての流れが止まっているだけなのです。約束されるのは、ただ澱み腐ることのみ」
これなるは死に損ない。
かつてヒトであったもの。
妖精は躊躇うことなく、行く手を阻む障害を打ち倒す。
●行動
総数240の砂岩の弾幕で、ゾンビを一体一体刺し貫くのです。場合によっては【念動力】と【衝撃波】で建造物の局所的な崩落を起こし、纏めて押し潰すのです。【念動力】で常に静かに浮遊し、ゾンビの奇襲を避けて、念のために【オーラ防御】も展開するのです。隠れ潜むゾンビに対しては【第六感】による索敵も行うのです。
レザリア・アドニス
うっ、わぁ…
老いも死も存在しないって…皮肉な言葉、ですね…
こんな「常若」とは、幸せとは程遠いですわ…
待雪草の花で飛行力を上げ、地面からの奇襲を避けるように、常に空中を浮遊
ゾンビの行進を警戒しつつ、翼で自身の周りの気流を感知して、背後からの奇襲も警戒
異常な気配を感知すれば、すぐに側面へ避けつつ反撃
視認できるゾンビは、魔法の炎の矢で一気に撃抜く
遠い者と隠れている者は鈴蘭の花吹雪で纏めて吹き飛ばす
こんな形で居続けるのも、辛いでしょう…
今すぐ、解放させます
ああ…でもきみたちには、もう他の選択肢がないんですね…
死ぬか、「死に続ける」か
私が持ってるのも毒花しかないんだけど
せめて最後に、差し上げましょう
霑国・永一
緑のトンネルを抜けると、そこは死の国だった
いやぁさっきの植物たちと違って目にも鼻にも悪いなぁ
うん、こんな愉しい祭りに参加しない手は無い
いざ征かん、屍の行軍に対するは死をも恐れぬ狂気なる神風特攻の濁流だ
狂気の分身を発動
数十体、それで足りぬなら数百体の自爆分身を召喚し、ゾンビたちに特攻させ、ダガーで斬りかかったり、銃で撃ち抜いたりしつつ、多く固まってる場所で自爆して吹き飛ばす
分身たちが死にそうな場合も自爆する
分身が減れば随時追加して特攻させる
一応本体の自身の周囲にも護衛で数体置いとく
『ハハハハッ!おらっ、死ね!』『やべー!俺様死ぬわ!一緒に逝こうや!』『3番!俺様!死ぬぜ!』
「いやぁ、面白いなぁ」
イリーツァ・ウーツェ
楽園を謳うなら、其処に敵が有ってはなるまい
殺す
UCを発動し、片端から杖で薙ぎ払う
力には自信が有る
腐敗した死体の強度等知れた物だ
近付く物から両断して呉れよう
前方は杖で、後方は尾で薙ぐ
横や上から来れば、翼を広げる勢いで殴りつける
腐肉は喰う気に為らん
全て磨潰し地に帰そう
失せろ
「緑のトンネルを抜けると、そこは死の国だった――」
どこかの物語の一節を真似るように、楽しげに――霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は、目の前の光景をそう表した。
「いやぁ……さっきの植物たちと違って、目にも鼻にも悪いなぁ」
嘗て人間であったもの達が蘇り、生者に襲いかかろうとする様子を見ても、永一は普段と変わらず『普通』であり続けている。
「うっ、わぁ……」
その一方で、整った相貌を微かにしかめたのはレザリア・アドニス(死者の花・f00096)で。死に寄り添う少女は、永遠と言う綺麗な言葉のうらに潜む皮肉な現実を目の当たりにして、ちいさく溜息を吐いたようだった。
「こんな『常若』だとは、幸せとは程遠いですわ……」
「そう、砂漠ですら砂は流れ、風はそよぎ、生と死は流転するのです」
福寿草の花を揺らし、かぶりを振るレザリアに続くようにして、ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)の声がさらさらと流れ落ちていく。不毛の地とされる砂漠の下に、密かに眠る水脈のように――一見、無機質に思えるウーナの表情の奥にも、確かな感情が宿っているのだろう。
「……此処は常若の国などではなく、全ての流れが止まっているだけなのです」
そして――約束されるのは、ただ澱み腐ることのみであると。きっぱりと告げたウーナの前では、イリーツァ・ウーツェ(黒鎧竜・f14324)が、これ以上の言葉は不要とばかりに眼光を鋭くして、ゾンビの群れを睨みつけていたのだった。
「楽園を謳うなら、其処に敵が有ってはなるまい」
――もしかしたら、生前の面影を宿しているものも居たかも知れない。しかし、こうしてオブリビオンとして蘇ったのであれば、彼らはもう護るべき徒人ではなく敵なのだ。
「――殺す」
「うん、こんな愉しい祭りに参加しない手は無い」
あくまで淡々と、理性で判断を下したイリーツァとは反対に、永一の方は『愉しそう』だと言う感情で動いたらしい。一方は人外の、もう一方は人間らしい思考を巡らせて――共に繰り出すのは、無慈悲に敵を屠る為の秘技の数々だ。
「いざ征かん、屍の行軍に対するは死をも恐れぬ、狂気なる――」
勇ましくも物悲しい軍歌を口ずさみながら、永一の周囲には次々と――別人格を宿した分身が現れて鬨の声をあげる。
「――神風特攻の濁流だ」
『ハハッ、俺様の扱いひでぇな!』
その数は数十、それで足りないのならもっと。盗み散る狂気の分身たちはからからと笑い、それでも嬉々として銃を手に、ゾンビの群れへと特攻して。
『ハハハハッ! おらっ、死ね!』
――そのど真ん中で派手に自爆し、彼らを巻き添えにして吹き飛んでいった。そうして生まれた空白地帯へはイリーツァが、野火駆けを駆使して突き進んでいく。
(「腐敗した死体の強度等、知れた物だ」)
力に任せて片っ端から、手にした柩杖を振り下ろしていけば――面白いように屍体が宙を舞い、泡沫が弾けるかの如き哄笑が廃墟を震わせる。負号の気を纏ったイリーツァの尾が、背後から襲い掛かるゾンビをなぎ払うと、頭上からはウーナの生み出した砂岩の弾幕が、彼らの一体一体を大地に縫い止めていった。
「これなるは死に損ない。かつてヒトであったもの……」
躊躇うことはせず、ただ行く手を阻む障害を打ち倒す――その想いを大地の牙に代えて、金砂の妖精は静かに空へと舞い上がる。
「あなた達も、こんな形で居続けるのは辛いでしょう……」
――ふわり、砂岩の嵐に舞い落ちる待雪草の花びらは、レザリアの奏でる雪の聖譚歌。雪の雫のひとひらを写し取り、彼女の姿が天使の如く変わっていくと、雪晶で織り上げた翼が銀砂を振り撒いた。
「今すぐ、解放させます」
彼らにはもう、他の選択肢は残されていないから。死ぬか、若しくは『死に続ける』か――そうして羽ばたくレザリアに伸ばされる腕の元へ、念動力を使うウーナが廃墟の崩落を起こせば。
『やべー! 俺様死ぬわ! 一緒に逝こうや!』
『3番! 俺様! 死ぬぜ!』
狂喜のままに飛び込んで行く永一の分身が、瓦礫に押し潰されながら次々と、連鎖爆発を起こしてゾンビ達を道連れにしていく。
「いやぁ、面白いなぁ」
――鈴蘭の花吹雪が咲き乱れるなかで、永一が笑い。毒花を最後に贈るレザリアは、静かに祈りを捧げていたけれど。イリーツァは変わらず竜翼を広げ、逃げ惑う亡者を殴り飛ばしてこう告げた。
「腐肉は喰う気に為らん、全て磨潰し地に帰そう――失せろ」
大成功
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春乃・結希
【とある】
常若の国かー…確かに歳を取るのは私も嫌やなぁ
あーあ、ずっと20歳でいられたりしないかなー?
長寿は要らないから不老の薬が欲しいっ
…うーん、緑が綺麗だからあんまり汚したく無い…そうだ、これなら…!
物理攻撃では色々飛び散りそうなので、
周りの植物を燃やさないようにコントロールしながら、UCでの焼却を主に戦います
…これあんまり使ったことないけど、身体が切り裂かれる痛みはあるのかな?
まぁ私は痛くないので(激痛耐性)両腕が炎で包まれるくらい思いっきり噴出させて焼き尽くします
…こんな身体になっても生き続けるってどういう気持ちなんやろう…
でも、望んでなってる人は居ないよね…
大丈夫、すぐ終わらせるから
鳴夜・鶯
【とある】
もぅ見慣れた光景だね…ボク感覚がマヒしてきてるのかも?
ゆぅがUCでの焼却をメインに戦うようだし
ボクはボクの戦い方でサポートしてみようかな
無機物から式神を作るUC【魑魅魍魎】の応用
まだコレは開発中なんだけど、ちょうど良い相手だし遠慮なく
周囲の空気中の水分を集め…身に纏う式神として使役する
【魑魅魍魎ー天の羽衣ー】
こんな感じかな…空気が乾燥すれば余計に燃えるよね?
実験台になってもらうよ?
結果が出るまで頑張ってほしいなー
常に空気中の水分を吸収しつつ纏った水の式神を使役
全方位のゾンビに向けて圧縮したウォーターカッターを発射
接近してきたゾンビに対しても自動で迎撃します
「水月」とでも名付けようかな
怨嗟の聲を響かせて、四方から襲い掛かる亡者の腕――こんな光景を、昔の映画か何かで見たことがあったかも知れない。地獄が死者でいっぱいになったから、彼らが地上に這い出して来たのだとか、そんな話だった。
「常若の国かー……確かに歳を取るのは、私も嫌やなぁ」
機械仕掛けのブーツを蹴り上げ、ゾンビの群れから距離を取りつつ、春乃・結希(寂しがり屋な旅人・f24164)が思わずぼやく。
「あーあ、ずっと20歳でいられたりしないかなー? 長寿は要らないから不老の薬が欲しいっ」
「……あれ、ゆぅって未だ20歳になってないよね?」
そんな親友の心からの願いに、首を傾げているのは鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)で。其処に、今よりももう少し大人になりたいと言う願望が隠れているような気がして、微笑ましくもなったけれど――今は、ゾンビ達の包囲を突破しなければならないだろう。
「もぅ、見慣れた光景だね……ボク、感覚がマヒしてきてるのかも?」
――廃墟の深部まで辿り着いても、鶯の周りには見渡す限りの緑が広がっていて。それでも植物が綺麗だから、と呟く結希は、ゾンビと戦って緑を汚してしまうことを気にかけているようだった。
「やっぱり……大剣を振り回せば、色々飛び散るよね?」
「色々……うーん」
確かに、豪快極まる結希の戦いっぷりでは、相手もただでは済まない――いや、かなりショッキングな映像が撮れてしまうことだろう。
「……そうだ、これなら……!」
と――少しの間悩んでいた結希だったが、其処で良い方法を思いついたらしく顔を上げて。そのまま、自分の腕に躊躇なく剣先を滑らせると、傷口から一気に炎が噴き上がっていった。
(「痛み、は……大丈夫。このまま行けそう」)
体内で燃え盛る地獄の炎を、更に己を切り裂くことで噴出させて、ゾンビの群れへと一気に放つ。痛覚のレベルを引き下げ、恐怖さえも感じないように――どんな敵が相手でも引いたりしないと、強く自分に言い聞かせながら。
「……なら、ボクはボクの戦い方でサポートしてみるよ」
そうして紅蓮の炎を操り、果敢に敵に立ち向かっていく結希の背後で、陰陽術を操る鶯も何やら考え込んでいたようだ。
(「まだコレは開発中なんだけど、ちょうど良い相手だし遠慮なく……!」)
――無機物から式神を作り出し、自在に使役する魑魅魍魎。其処へ更に、辺りの空気中の水分も集めることで大気を乾燥させ、結希の炎の勢いを増せないかと術を繰り出す。
「名付けて魑魅魍魎ー天の羽衣ー、……さぁ、実験台になってもらうよ?」
結果が出るまで頑張ってほしいなと、さらりと告げる鶯の表情は、術式を追求する陰陽師のもので。吸収した水分を式神に変えた彼女はそれを、圧縮した水の刃にして一気に撃ち出していった。
「これは……『水月』とでも名付けようか」
周りの植物への被害を避けつつ、炎と水の波状攻撃がゾンビの群れをなぎ払っていく中で――結希はそっと、動かなくなっていく死者を見つめながら考える。
(「……こんな身体になっても生き続けるって、どういう気持ちなんやろう……」)
――けれど、彼らも望んでこうなった訳ではないと思うから。彼女が出来るのは灰も残さず焼き尽くして、彼らが二度と蘇らないようにすることだけだ。
「大丈夫、すぐ終わらせるから……!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
キラス・レスケール
老いも死も存在しない、か
…かつて訪れた場も廃墟になっていたな
結局、永遠に続くものなどないのだ
……否、今はそれどころではなかったな
お前たちも好きでこのような姿になったわけではないのだろう
だがな、俺様たちは今を生きる者たちのためにここに来たのだ
歩みを止めるわけにはいかんのでな、先に行かせてもらうぞ
神としての【存在感】でゾンビたちを引きつけよう
その間は【オーラ防御】で凌ぐとしよう
できるだけ多くを引きつけたら『無敵城塞』ですべての攻撃を受けよう
お前たちの爪も牙も。想いが存在するのならそれすらも受け止めてやろう。
スカーレット・ロックハート
緑の廃墟に生ける死者、か
此処が楽園だったら良かったが、現実は甘いモンじゃねぇ
いつまでも夢を見たいなら、俺がこの手で眠らせてやる
ただそれだけだ
一度は死んだ身である俺もまた、ある意味お仲間なのかもしれねぇが
だからこそ、きっちり始末しねぇとな
廃墟の陰に身を潜め、ライフル銃を構えてヘッドショットで狙い撃ち
今は亡き、自分を育ててくれた男の分の思いも一緒に、弾に篭め
……俺はアイツの分まで生きていくって、約束したんだ
てめぇら如きにやられるような、軽い命じゃねぇんだよ
死者は死んだら大人しく、土に還ってもらおうか
最後は身を乗り出して接近し、敵の頭に銃口を押し当て
零距離からの射撃で脳天を撃ち抜き、吹っ飛ばしてやる
リア・ファル
POW
その物資は、今を生きる彼らの明日の為に。
冥界への水先案内は、ボクが務めようか
「生ける屍よ、疾く冥府へと戻るが良いよ」
『イルダーナ』に乗り、上空を取りつつ行動
(空中戦、空中浮遊)
奇襲に関しては、『ディープアイズ』の
動体、超音波センサーでの周辺探査し対応
(情報収集、聞き耳)
UC【召喚詠唱・白炎の不死鳥】でまとめて浄化、黄泉の旅路へご案内
「不死鳥の白き炎よ、聖者に活力を、死者に安寧を!」
生き残りには『ライブラリデッキ』から破魔の属性を付与した弾丸を
『セブンカラーズ』から射撃
(破魔、属性攻撃、スナイパー)
生ける屍は楽園の夢を見るか?
……されば、せめて黄泉路は心安らかに。
マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯り全身に輝きを纏う
放つ光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る
「敵は惹きつけます。攻撃に専念してください」
味方を『かばう』
ダメージに輝きが星屑のように散る
ゾンビが溢れて襲いかかれば、
【神の存在証明】を使用
攻撃を防ぎ弾きます
味方の攻撃で数を減らせば反撃開始
「あまねく魂の救済を」
弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
響く弦音は『破魔』の力を宿し敵の動きを鈍らせる
「主よ、主よ……」
その御名は尊く
憐れみに限りなく
世の罪を赦す愛に満ちている
聚楽第の白い翼がぎこちなく広がり輝きを束ねる
星の『属性攻撃』は質量を伴う巨大な光弾
「光あれ」
世界が白になる
老いも死も存在しない、彼方にある理想郷。それは、ずっと人間が求めてやまないもので――けれど決して手に入らないもの。
(「……そうだ。かつて訪れた場も、廃墟になっていたな」)
そして、今――鮮烈な緑と対を為すかのような、切ない黄昏を思い起こすキラス・レスケール(†神†・f16415)の瞳のなかでは、死してなお現世を彷徨う亡者の群れが蠢いていた。
(「結局、永遠に続くものなどないのだ」)
――無理に求めようとすれば、願いは歪んでしまう。彼らは死なぬかもしれないが、痛みや哀しみももはや感じることはない。こころはとうに、喪ってしまった筈なのだから。
「……否、今はそれどころではなかったな」
吐き出す紫煙がゆっくりと大気に混ざっていくなか、酷く甘い馨りが鼻をくすぐる。これは誰かの、想い出の味――見れば、スカーレット・ロックハート(叛逆の緋・f24479)が、哀しいほどに強いまなざしで空を仰いでいた。
「此処が楽園だったら良かったが、現実は甘いモンじゃねぇ」
――もしかしたら彼女にも、手を伸ばしたい何かがあったのかも知れない。しかし、目の前に広がる光景こそが全てであり。
「いつまでも夢を見たいなら、俺がこの手で眠らせてやる。……ただそれだけだ」
やがてスカーレットは、手に馴染んだアサルトライフルの感触を確かめると、素早く廃墟の影に身を潜めて狙いを定める。
「ああ、その物資は、今を生きる彼らの明日の為に。冥界への水先案内は、ボクが務めようか」
廃墟の上空を浮遊する、二輪の高速戦闘機――『イルダーナ』を駆り、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が冷然と告げれば、その瞳には次々と周囲の情報が文字となって浮かび上がっていった。
「動体、超音波センサー起動……背後に、新たな反応あり」
「了解しました、そちらは私が」
そうして微かな物音を拾い上げたリアに、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)がちいさく頷きを返すと。祈りの言葉と同時に、彼女の身体が星の光に包まれていき――圧倒的な存在感を放つマリスは、その輝きを餌にゾンビの群れをおびき寄せていく。
「敵は引きつけます。攻撃に専念してください」
「……と、一人では骨が折れるだろう。俺様も、神として力を貸すぞ」
――次々に押し寄せてくる死者たちの勢いに、呑み込まれそうになりながらも、マリスと共に盾となったのはキラスだった。襲い掛かる爪と牙を神の威光で退けて、出来るだけ引きつけたところで守りを固める。
「お前たちも、好きでこのような姿になったわけではないのだろうが……」
無敵の城塞と化し、身動きが取れなくなろうとも――キラスは彼らの前に立ちはだかって、すべての攻撃を受け止めようと誓っていたのだ。
「だがな、俺様たちは……今を生きる者たちのために、ここに来たのだ」
「……あまねく魂の救済を」
背後から襲い掛かる死者の爪を弾いて、マリスの纏う光が星屑となって零れ落ちる中、ふたりは神が存在することを証明するように、すべてを受け止め耐え忍んでいた。
(「お前たちの爪も牙も……想いが存在するのならそれすらも、受け止めてやろう」)
「主よ、主よ……」
――ああ、その御名は尊く、憐れみに限りなく。世の罪を赦す愛に満ちているから。と――星辰の瞳に灯る輝きの元、マリスに喰らい付こうとしていた亡者の顔が、不意に柘榴のように弾けて飛んだ。
「一度は死んだ身である俺もまた、ある意味お仲間なのかもしれねぇが……」
舌打ちするような呟きと共に、二度、三度――フルオートで放たれた銃弾が容赦なくゾンビの頭部を狙い撃ち、頭を吹き飛ばされた死体が次々に折り重なって倒れていく。
「だからこそ、きっちり始末しねぇとな」
今は亡き、自分を育ててくれた男の貌がふと脳裏に過ぎり、スカーレットは彼の分の想いも一緒に弾に込めようと引き金を引いた。
――そう、この銃の扱い方も教えてくれたのも彼で。戦火の中、怒号と銃撃の音色が子守歌代わりだった。
(「……俺はアイツの分まで生きていくって、約束したんだ。だから、」)
此方に気付いたゾンビが何体か現れたが、もはや迷うことはない。瓦礫の山から身を乗り出したスカーレットは、彼らの腕を振り切って駆け出し、限界の近づきつつあるキラスの元へ一気に跳躍した。
「てめぇら如きにやられるような、軽い命じゃねぇんだよ……!」
喉元まで迫った牙をへし折るように、銃口を押し当て――そのまま、一気に零距離で脳天を撃ち抜く。死者は死んだら大人しく、土に還るべきなのだから。
「そうだ……生ける屍よ、疾く冥府へと戻るが良いよ」
その一方で、光の神の玉座のもとリアが発動する召喚詠唱は、電子の門をくぐって、現世に白炎の不死鳥を喚び出して。再生を司る白き炎は、動く死者を纏めて浄化し――迷うことなく、彼らを黄泉の旅路へ送り届けていく。
「不死鳥の白き炎よ、聖者に活力を、死者に安寧を!」
――更に、白炎の直撃を免れたもの達へは、破魔のコードを封入したマグナム弾を浴びせ、撃ち漏らしの無いようにしていけば。態勢を立て直したマリスも援護に加わり、弦音を鳴らし流星の矢を放っていった。
「光あれ――」
世界が白に染まっていく中で、せめて黄泉路は心安らかにとリアが祈る。――生ける屍は楽園の夢を見るか、果たして彼らに、こころと呼べるものが未だ存在していたのかは、分からないけれど。
「歩みを止めるわけにはいかんのでな、先に行かせてもらうぞ」
――今は、前に進むだけだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイン・ローズ
[グループ名:王子と小鳥][アドリブ:OK]
あれがゾンビ……。なんて痛ましいんだ。
あなたたちの悲しみ、僕たちがここで断ち切る!
ローレストさんを信じて、僕は前に出ます!
【トリニティ・エンハンス】を使用し、防御力を上げよう。
剣で応戦しながら、ローレストさんが戦いやすいよう、【おびき寄せ】や【盾受け】を使って敵を引き付けられないだろうか。
ローレストさんには指一本触れさせない!(【かばう】)
(剣に付いた血を眺め、ぼんやりと)
──ねえ、愛する人。
僕はあれから、君を殺すこと、少しは上手くなったかな。
(あの時、あの人の悲しみを断ち切れなかったこの綺麗な手を、僕はきっと、永遠に許せない。)
オスカー・ローレスト
【王子と小鳥】
こ、今度は本当に……来たね、ゾンビ……
て、敵は俺達の背後から出てくるのかな。
敵の動きをよく見て(【見切り】)、【切実なる願いの矢】で頭を狙って、不意打ちされる前に倒す、よ……(【スナイパー】)
こ、これで、前を守ってくれるアインの背中も、守れたら……
(矢が命中するのを目視して)
……やっぱり、少しでも人の形をしてると……衝動、が……い、嫌だ、こんな、殺しを楽しんでるような表情、み、見られたく、ない……!
(この引き攣った笑みは、誰にも見られたくないけど)
(どうかあの高潔で、過去の殺しで血に染まった自分なんかより、綺麗な手だろう王子には、特に見られないようにとも、何も知らぬ小雀は祈る)
「あれが、ゾンビ……」
「こ、今度は本当に……来たね……」
お伽の国と呼ぶには残酷な、毒に満ちた森を進んでいったその先で。王子と小鳥のふたりが出会ったのは、哀れな生ける死者――廃墟を彷徨うゾンビの群れだった。
(「なんて、痛ましいんだ」)
――死んでも死にきれない、と言うのはこんな存在を指すのだろう。翡翠の瞳を揺らすアイン・ローズ(正統派王子・f18069)は、それでも臆すること無く愛用の盾を構えると、オスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)の前に立つ。
(「大丈夫。……もしローレストさんに何かあったら、僕の盾で守ってみせるさ」)
森で交わした約束を違えずに、そのままアインはルーンのあしらわれた剣を操り、自身の守りを強化していって。そうして伸ばされる無数の手を振り払い、雪崩のように押し寄せる集団を跳ね除けていくと――後方ではオスカーが、切実なる願いの矢を放とうと深呼吸する。
(「お、お願いだから……当たっておくれよ」)
――敵の動きをよく見て、頭を狙って確実に仕留めるように。前を守ってくれているアインの背中を、今度は自分が守れるように。
「味方には当たらないでくれ、よ……!」
祈りと共に、オスカーの洋弓銃から放たれた魔法の矢は、アインに掴みかかろうとしていたゾンビの頭部を一直線に貫いて。そのまま、どうと後方に倒れた集団を剣で薙ぎ払うと、アインも応戦しつつ更に前へ足を踏み出していった。
「あなたたちの悲しみ、僕たちがここで断ち切る!」
信じている、と彼の背中がオスカーに告げているようで、思わず「ぴ!」と背筋を伸ばしてしまいそうになるけれど、自分だっていつまでも臆病な小雀では居られない。
(「背後から、も……不意打ちされる前に、倒す、よ……」)
今度は、自分の後ろに迫っていたゾンビを躊躇わずに撃ち抜くと――おぞましくも蠱惑的な衝動が、オスカーの全身を震わせていった。
(「……やっぱり、少しでも人の形をしてると……」)
――悪夢のような世界で、哀れな犠牲者に向けて弓を引き続けた過去。何羽のこまどりが殺されて、否、殺して、その度に罪悪感に駆られたことだろう。
(「……い、嫌だ、こんな、殺しを楽しんでるような表情、み、見られたく、ない……!」)
薄布の奥で引き攣った笑みを浮かべ、ぐちゃぐちゃになった感情を誤魔化すように、オスカーは矢を放つ。こんな顔は誰にも――特に、高潔なアインにだけは見られないようにと、懸命に祈りながら。
「ローレストさんには、指一本触れさせない!」
――ほら、アインはいつだって、あんなにも誠実で勇ましい。過去の殺しで血に染まった自分の手とは大違いの、綺麗な手をしている筈だから。
(「──ねえ、愛する人」)
そんな、オスカーのひたむきな祈りとは裏腹に、剣をつたっていく血を眺めるアインの姿は、酷く危ういもので。ぼんやりと、此処ではない何処かを見つめながら――彼はお伽噺の王子様そのままの、優美な笑みを浮かべて呟いた。
「僕はあれから、君を殺すこと、少しは上手くなったかな」
――あの時、あの人の悲しみを断ち切れなかった、綺麗なだけの手は要らない。永遠に許すことなど出来なくて、それでも今度こそ終わらせてみせるから。
「待っててね――僕が君になる、その時を」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
過去に囚われ、自分の形すら見失って
終わりを迎えるためだけに生きていた昔の俺は
この“楽園”に囚われた命と
ほとんど、変わらないものだったんだろうな
知覚機能を総動員して周囲状況を把握
前後左右、頭上や足下にも気を配り
何処から襲い掛かられても応戦できるよう備えるよ
知覚した傍から、敵を撃ち抜いていく
味方の位置さえ確認していれば、それ以外をすべて殺せばいい
意識を張り巡らせていれば
新たに生まれた気配は直感に任せて排除できるだろう
哀れだ、と思ってやれるほど
俺のこころは“ひと”の形をしていない
それでも、終わりだけなら与えてやれる
それしか、できないけど
そうすることに意味があると
今は、思っていたい
もう、囚われるなよ
イア・エエングラ
黄昏の向こうにその国があるならば
流転しえない終焉は、永遠と呼べるのかしら
なあ、お前は誰かひとりでも
それを願ったことが、あるかしら
そうでないなら僕が
今一度終わりを送りましょう
緑の柩の芽吹くよに、また花を咲かせて
そうしてまた、朽ちるよに
ねえお前、
海へ連れていっておやりよと
呼んで招くのはリザレクトオブリビオン
死霊の蛇にあたりを薙ぎ払っておくれと
元より朽ちる身体なら、毒に蝕まれもしないでしょう
僕の傍らには死霊の騎士を、すこし盾となってねえ
可哀想になさみしかろ、どこにもゆけず彷徨うのなら
今一度、嚮導の火と、なりましょう
太宰・寿
美しく降り注ぐ木漏れ日、生き生きと繁る緑
……こんなに美しいのに
唸り声は、やっぱり怖い
気持ちを戦いに集中しなければ、とPolarisを握ります
……出来ることするんだって、決めたんだから
花散里でゾンビから距離を取って戦います
Polarisによるクィックドロウと二回攻撃でゾンビの足元を狙い、弾丸を花びらに変えて
なるべく接近を防ぎます
ゾンビを花びらで包み込むように攻撃、どうしても距離が保てなければ虹霓による近接戦に切り替えます
綺麗な花なら、少しでも手向けになるかな…?
花は気持ちを癒してくれるから
この花は消えてしまうけど、咲けばいいなと思うんです
――美しく降り注ぐ木漏れ日のなかで、生き生きと繁る緑。置き去りにしてきた、どこか懐かしいものに触れるような心地がして、太宰・寿(パステルペインター・f18704)は思わず瞳を細めるけれど――彼女が浮かべる笑みは、どこか寂しげなものだった。
(「……こんなに、美しいのに」)
廃墟に木霊する、死者の唸り声はやっぱり怖い。それは目を背けたいと願う、過去の残滓が責め立てているようでもあり――震える寿の隣では、鳴宮・匡(凪の海・f01612)がゆっくりと、周囲の状況に意識を研ぎ澄ませつつ想いを巡らせていた。
(「ああ、過去に囚われ、自分の形すら見失って」)
――終わりを迎えるためだけに生きていた、嘗ての自分。そんな己と彷徨う死者の姿を重ねながらも、匡の思考は冷静に、敵群をどう排除していくかの最適解を導き出していて。
「……黄昏の向こうに、その国があるならば。流転しえない終焉は、永遠と呼べるのかしら」
やがて張り詰めた緊張の糸をつま弾くように、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)のこえがふわりと空に弾けると、骸の海から現れた死霊蛇竜が首をもたげて主に寄り添っていた。
「なあ、お前は誰かひとりでも。……それを願ったことが、あるかしら」
まるで御伽噺のように、うつくしくも残酷な光景のなかでは、永遠の死者が呻き、襲い掛かる。しかし、それよりも早く匡の拳銃が火を噴いて、知覚した傍からその頭部を正確に撃ち抜いていった。
(「味方の位置さえ確認していれば、それ以外をすべて殺せばいい」)
――前後左右、それから頭上や足下にも。知覚機能を総動員して、何処から襲い掛かられても応戦できるように備えること。それは夥しい死に囲まれていた過去、凪の海と呼ばれていた頃と変わらぬままに。
(「……きっとそれは、この『楽園』に囚われた命と、ほとんど……変わらないものだったんだろう」)
直感に任せて、新たに生まれた気配に向けて引き金をひく――心よりも速く、憐れみを覚えるよりも先に。自分の心は、それ程までに『ひと』の形をしていないと思うけれど、これだけは確かなのだと匡は言う。
「それでも、終わりだけなら与えてやれる」
(「そう、集中しないと。…………出来ることするんだって、決めたんだから」)
――一方で気持ちを戦いに向けながら、寿が握りしめた拳銃からは、ゾンビの進軍を止めるように弾丸が吐き出されていて。足元を穿つ一撃は刹那、変幻自在の花びらと化して舞い上がり、亡者を捕らえる檻へと変わった。
「綺麗な花なら、少しでも手向けになるかな……?」
「ええ、きっとねえ。緑の柩の芽吹くよに、また花を咲かせて――」
身動きの取れなくなった彼らへ振り下ろされるのは、イアの喚んだ蛇竜の尾。元より朽ちる身体なら、毒に蝕まれもしないでしょうと囁いて――死霊の騎士を供に今一度、終わりを送るべく指を滑らす。
「――そうしてまた、朽ちるよに」
ねえお前、海へ連れていっておやりよ、と。溺れるような夢に沈んで、鮮やかな花びらが廃墟に降り注ぐ中、死者を貫く銃弾が極星の煌めきを宿して吸い込まれていった。
(「そう、花は気持ちを癒してくれるから」)
この花は消えてしまうけど――咲けばいいなと寿が願う傍で、イアは静かに嚮導の火となるべく死と踊る。
「可哀想になさみしかろ、どこにもゆけず彷徨うのなら――」
「……終わりを与える、それしか、できないけど」
――人ならぬ身でも『ひと』と歩む道を開く為に、そうすることに意味がある。今は、そう思っていたいのだと呟く匡は、灰となって消滅していく死者たちへ最後の言葉を贈った。
「もう、囚われるなよ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『この荒廃した世界に花を植えよう』
|
POW : 花を植える為に荒れ地を耕したり瓦礫を撤去する
SPD : 花を植えるのに適した場所を探したり、花壇を整えたりする
WIZ : 花の種や苗を植えたり、水やりなどをしてお世話をする
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――現世に迷い出た死者たちを退けた後、緑の奥で眠っていた物資のコンテナを持ち帰ると、拠点のひとびとは顔を輝かせて猟兵たちの帰還を祝い始めた。
「本当に、荒野の向こうには理想郷……ティル・ナ・ノーグがあったのか」
そう言って涙を流す老人には、常若の国の真実――老いも死も存在しない、毒と腐敗の柩――について、何も言わぬ方が良いだろう、と頷きつつ。
そうして暫くの間は十分食べていけるだけの蓄えを前に、復興についての計画が話し合われる中で、猟兵たちは物資のなかに混ざっていた花の種を取り出し、ひとびとに見せていった。
「……花、ってなぁに?」
「それも、食べ物なの」
不思議そうに首を傾げる子供たちはきっと、今まで一度も花と言うものを見たことがなかったのだろう。荒れ果てた大地を耕し、水をあげて根気強く育てて行けば、素晴らしい贈り物をくれるよ――とは教えてみたものの、何と言えば彼らに伝わるだろうかと考えてみる。
「そうだねぇ……希望、って分かるかな」
――きっと明日は、もっと素敵なことが待っていると信じていけるように。ゆっくりと大地に芽吹いていくいのちを、見守っていけたのなら。
「君たちの手で、此処を……新たな楽園に、していくためのもの」
どんな花びらの形をしていて、どんな色に染まるのか。それは花開いてみるまでは分からないけれど――こんな花が咲けばいいと祈りながら、種を蒔こう。
――彼の地は、希望が眠るティル・ナ・ノーグ。もしかしたら何時か、楽園と呼ばれるかも知れない場所。
冴木・蜜
……そう、か
子ども達は花を見たことが無いのですね
ならば
子ども達と一緒に種を植えましょう
すみません
よかったら私のお手伝いをして頂けませんか
一緒にこの種を植えましょう
花壇を整えながら
子ども達とお話をしましょう
花というのは……そうですね
色鮮やかだったり
いいにおいがしたりして
可愛らしくて
うつくしいものです
実際にどんなものなのかは
それは咲かせてみてからのお楽しみ
皆さんはどんな花が見てみたいですか?
あなた達の思い描いた花を
私に教えて下さいな
実物を見るまで
想像力を働かせて待ち望むのも
この世界では希望となるでしょう
今は未だ辛いことが多いかもしれない
それでもいつかきっと
この地が楽園と呼ばれる日が来ますよう
バジル・サラザール
綺麗な花が咲いているのを見るのもいいけれど、ゆっくりと、少しずつ成長してくのを見守るのもいいものよね
花を植えるのによさげな場所を探しましょうか
薬草類なら育てているし、土質とか何となくわかるはず……
そう遠くないところに変わってるとはいえ緑があったのだから、この辺りでも十分育つんじゃないかしら
ついでに肥料も作りましょう、さっき持ち帰った植物と土で使えそうなものに自前の薬を少々、これを絞ったり……
此処が沢山の花で溢れるのならとても素敵な光景になると思うわ
アドリブ、連携歓迎
リア・ファル
SPD
アドリブ共闘歓迎
……花の種か
どうかこの場所も、明日へ繋がる場所となりますように。
ボクは少しでも命が育まれるようにと祝福を捧げようかな
――まあ、具体的には土壌を演算解析し、
複製魔術符『コードライブラリ・デッキ』のデータと
UC【我は満たす、ダグザの大釜】で、
特製アンプルを精製、投与するという、方法だけど!
(情報収集、地形の利用、医術、学習力)
さあ、子供達よ手伝ってくれるかい?
これからボクの示すポイントにアンプルを差し込んで欲しいんだ
世界を変えていくのは、いつだってその世界の人々の、願いと行動だから。
(子供達の笑顔に微笑み返し)
神の祈りではなく、人の祈りから生まれたボクは、そう、信じてるよ。
(「……そう、か」)
瞳に焼きつくほどの緑の世界から一転――見渡す限りに広がる赤茶けた荒野を見渡して、冴木・蜜(天賦の薬・f15222)は静かに溜息を吐いた。
(「子ども達は、花を見たことが無いのですね」)
――不毛の地では、作物さえ満足に育たないのだろう。ただ空のいろだけが哀しいほどに鮮やかで、その眩しさが救いとなることを、彼は祈らずにはいられない。
(「ならば――」)
白衣を翻しつつ拠点の一角にやって来た蜜は、其処で土壌の解析を行っている仲間たちの姿を見つけ、そっと彼らに目配せをする。
「私もね、薬草類なら自分で育てているし……」
そう言いつつ指先で土質を確かめているのは、バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)で――ここからそう遠くない場所に、あの緑の廃墟もあったのだからと頷いてみせた。
「まぁ……変わっていたとは言え、緑には変わりないし。この辺りでも十分育つんじゃないかしら」
「――そうだね。ボク達が思っている以上に、生命とは逞しいものだ」
一方で、複製魔術符を操るリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)も、無事に演算を終えたらしい。その口ぶりからすると、花を育てるのには問題なかったらしく、彼女はそのまま虚空に指を滑らせて自社サイトへのアクセスを行う。
「……なら、ボクは少しでも命が育まれるように、祝福を捧げようかな」
そうして、リアの解析したデータを元に『Dag's@Cauldron』が召喚したのは、この土地に適した特製のアンプルで。それはさながら、神話で語られる――無限の食糧庫たるダグザの大釜、その再現のようでもあった。
「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない……確かにね」
――バジルの居た世界よりも、更に高度な文明を持っていたリアの世界。しかし、人類の還る星は既に残されておらず、彼女は理想郷の名を冠した船で銀河を彷徨うしか無かったとも聞く。
「それでも……可能性の限界を測る唯一の方法は、不可能であるとされることまでやってみること、なんても言うし。……やるしかないのよね」
そうして、廃墟から持ち帰った植物を乳鉢ですり潰していくバジルが、自前の薬を少々加えながら肥料を作っていると。見慣れない作業に興味を覚えたのか、拠点の子どもたちが、次々に此方の方へとやって来た。
「ねぇ、何やってるの?」
「すみません、よかったら私達のお手伝いをして頂けませんか」
これから花の種を植えるのだと伝える蜜に、未だ不思議そうな顔をしながらも――彼らは一緒になって花壇を整えながら、リアから渡されたアンプルを土のなかに埋めていく。
「さあ、子供達よ手伝ってくれるかい? ここと……それからあそこのポイントにも、差し込んで欲しいんだ」
「へー、これでいいのかな」
「ね、ね、これで花が出来るの? でも、花って何なんだっけ」
――白衣の裾をぎゅっと引っ張って尋ねてくる子には、ちょっぴり気おされそうになるけれど。それでも蜜は、その瞳を真っ直ぐに見つめ返し、子ども達に伝わるようにゆっくりと言葉を紡いでいった。
「花というのは……そうですね。色鮮やかだったり、いいにおいがしたりして」
そうだ、綺麗な花が咲いているのを見るのもいいけれど――こうしてゆっくりと、少しずつ成長していくのを見守るのもいいものだと、バジルは思う。
「……可愛らしくて、うつくしいものです」
実際にどんなものなのかは、それは咲かせてみてからのお楽しみ。そう蜜が微笑んでみせると、子ども達はそれぞれが思い描く花の姿を、楽しそうに蜜たちへと教えてくれた。そうして実物を見るまで、想像力を働かせて待ち望むのも、この世界では希望となってくれることだろう。
(「……そう。世界を変えていくのは、いつだってその世界の人々の、願いと行動だから」)
そんな彼らの笑顔に包まれて、神の祈りではなく――人の祈りから生まれた存在であるリアもまた、微笑みを返して信じ続ける。
「どうかこの場所も、明日へ繋がる場所となりますように――」
――いつか此処が、沢山の花で溢れるのなら。それはとても素敵な光景になることだろう。燦々と降り注ぐ陽光のもとでバジルの尾が揺れる中、土に塗れた子ども達は楽しそうに花の種を植えていて。そんな光景を見守る蜜はただ、純粋な願いを抱いて空を仰いだ。
(「今は未だ辛いことが多いかもしれない、それでもいつかきっと」)
――この地が、楽園と呼ばれる日が来ますよう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セシリア・サヴェージ
千夜子さん(f17474)と
この種はきっと美しい花を咲かせる。そんな気がいたします。
今は分からずとも、花が咲いた時は子ども達も必ず喜んでくれるはずです。
花については千夜子さんが詳しいので、私も教わりながら種を植えていきましょう。
千夜子さんの言う通り、愛情を持って育てれば花も応えてくれるはず。
見る人が希望を抱けるような素敵な花に。
では私も……大きくなーれ、と……こんな感じでしょうか?
子ども達や拠点の人々が健やかに暮らせるように
荒涼とした世界の中でも、この場所が希望の花の咲く楽園となるように
私も【祈り】を捧げます。そしてこの世界のために私に出来る限りのことをすると誓いましょう。
薄荷・千夜子
セシリアさん(f11836)と
子供たちは花も見たことがなかったのですね
種が芽吹いて花が咲く様子まで皆で見れるといいですね
セシリアさんと、せっかくなので子供たちとも一緒に種植えできればと
皆さんが毎日水やりをして大事に育ててくれればきっと素敵な景色を見せてくれますよ
ふふ、どんな色の花が咲くのかも楽しみですね
こうやって水を撒きながら大きくなーれ、って話しかけると植物も応えてくれるんですよ、と子供たちに教えながら
最後に、『神楽鈴蘭』をしゃらんと鳴らして豊穣祈願を
鈴蘭の花言葉は「再び幸せが訪れる」
この地が素敵な楽園となりますよう【祈り】を込めて
――もしかしたら、とは思っていた。滅びに瀕した世界では、花さえ知らない子どもがいるかも知れない、と言うこと。
(「……当たり前だと思っていたことが、此処では違うのですね」)
獣と共に森を駆け、大いなる自然の息づかいを感じることも、此処では叶わないのだろう。しかし、薄荷・千夜子(羽花灯翠・f17474)はあたたかな笑みを浮かべると、花壇に集まっている子ども達の元へ元気よく飛び込んで行った。
「セシリアさん、準備できましたよ!」
「ああ……千夜子さん、ありがとうございます。花については千夜子さんの方が詳しいですよね」
其処では、すっかり子どもに懐かれたセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が、彼らに手を引かれながら近くの瓦礫を片付けていて。そうして綺麗に耕した地面の傍へ、千夜子は園芸用の道具を纏めて並べていく。
「せっかくなので、種が芽吹いて花が咲く様子まで……皆で見れるといいですね」
「ええ、時間はかかるでしょうが。この種はきっと美しい花を咲かせる。……そんな気がいたします」
セシリアの隣にしゃがんだ千夜子が、スコップを手に土を掻き混ぜ――柔らかな指先で、そっと花の種を摘まんでみせると。「食べないで埋めるの?」とばかりに子どものひとりが驚く様子を見て、セシリアはこう願わずにはいられなかった。
――いつか彼も『花』と出会って、その姿かたちを知って欲しい。
(「そう、今は分からずとも……花が咲いた時は、子ども達も必ず喜んでくれるはずです」)
けれど、種を蒔いて終わりと言う訳ではもちろんなくて、花が育つには水が要る。続いて千夜子が取り出したのは小ぶりなじょうろで、その先端の蓮口からはきらきらと、雨糸のような水がつたって大地を潤していった。
「皆さんが毎日水やりをして、大事に育ててくれれば……きっと素敵な景色を見せてくれますよ」
「わぁ、それ面白い! きらきら水が出てくるの!」
「ふふ、こうやって水を撒きながら大きくなーれ、って話しかけると植物も応えてくれるんですよ」
乾いた大地に降り注ぐ恵みの雨を見て、子ども達の間から歓声が上がる。そうして千夜子の言う通り――愛情を持って育てれば、いつか花も応えてくれるはず。
――見る人が希望を抱けるような、素敵な花。それはどんな色の花をしているのだろうかと、ふたりは顔を見合わせて微笑む。
「では私も……大きくなーれ、と……こんな感じでしょうか?」
「そうそう、セシリアさん上手い! ……よし!」
と、子ども達と一緒にじょうろを傾けるセシリアの傍で、千夜子が取り出したのは神楽鈴蘭。最後に、それをしゃらんと鳴らして祈りを込めれば――雨の雫にふわりと、優しい虹が浮かんで豊穣の祝福を与えていった。
(「子ども達や拠点の人々が、健やかに暮らせるように。荒涼とした世界の中でも、この場所が希望の花の咲く楽園となるように――」)
――呪われた暗黒騎士の身ながら、セシリアも祈る。この世界のため、自分に出来る限りのことをすると誓いながら。
(「鈴蘭の花言葉は……『再び幸せが訪れる』」)
緑の廃墟に吹き荒れた花神鈴嵐の音の如く、この地が素敵な楽園となりますように――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴夜・鶯
『とある』アドリブ◎
子供たちが「花」という言葉すら忘れてしまう世界
「希望」を与えられるならどんなに素敵だろうか
彼らに花の世話を頼むにしても
そもそも荒れ果てた大地で水すらも貴重なわけで
「すいません。
この拠点の貯水状況はどんな感じですか?」
何処の拠点もカツカツなのは
この世界を巡ってもう知っている
それでも未来で楽園と呼ばれるために、ボクからのささやかなプレゼント
『コトダマクラフト』で「地下貯水タンク」と「水」を生成
60㎥サイズの巨大なタンクと並々と満たされる清潔な水
ベースの規模次第だけど5基ほど作れば、およそ300t分しばらくは持つかな?
汲み上げ式の機構を取り付けて完成
少しでも楽園へ近づけますように
春乃・結希
【とある】
うぐさんは水を用意するんですね?
私は何か作り出すとか出来んから…身体を動かします!ちょっと行ってくるね!
怪力を生かして瓦礫を運びます
丈夫な箱みたいなものが有れば、一気に運べますね
子供達にも乗ってもらって、一緒に運んだりするのも楽しそうっ
瓦礫がある程度片付いたら、種植える場所を耕していきます
私この、クワ?使ったことないんやけど…(見様見真似でやってみる)…こ、こんな感じでいいんです?腰を入れる?(ざくっ)こうですかねっ?
この種からどんなお花が咲くのかなー?
花が何かって?うーん…君は好きな子とかおる?あげたらきっと喜んでくれますよっ
お水あげるの忘れないでくださいね
私もお世話しに来るからっ
――此処とは違う世界のことを、鳴夜・鶯(ナキムシ歌姫・f23950)はふと思い出す。瞼のうらに蘇るのは永久の桜で、その名残は今も彼女の髪で花を咲かせていたけれど。
(「……子供たちが『花』という言葉すら、忘れてしまう世界」)
砂塵混じりの風が吹きつけ、じわりと滲む視界は――鶯の見知った世界と、あまりにも違う。それでも此処で『希望』を与えられるなら、どんなに素敵なことだろうかと少女は思っていたから、止まることはしなかった。
「すいません。この拠点の貯水状況はどんな感じですか?」
「……ええっと、さっき君たちが持ってきてくれた中に、使えるものがあったって聞いたけど」
拠点の人達から話を聞いてみた所によると、物資の中にあった浄水設備のお陰で、だいぶ水の確保が楽になりそうだとのこと。基本、今あるものを整備して使うのが精一杯らしく、自分たちで新しく作り出す技術も無いのでとても助かった――らしい。
「……そうだよね。何処の拠点もカツカツなのは、この世界を巡ってもう知っていたし」
――そんな中で、彼らにこれから花の世話を頼むにしても、そもそも荒れ果てた大地では水すらも貴重なわけで。そうして少しの間、考え込んでいた鶯だったが「うぐさん!」と自分を呼ぶ声が聞こえた気がして顔を上げる。
「こっちの方は、順調なんよー!」
「ゆぅ……って、大丈夫?」
見れば、春乃・結希(寂しがり屋な旅人・f24164)が持ち前の怪力を発揮して、拠点に転がる瓦礫を片付けている所だった。自分には、何かを作り出すとかは出来んから――そう言って笑っていた結希だったが、その作業の間に子ども達とも仲良くなったようで、彼らも一緒になって楽しそうに瓦礫を運んでいる。
「ゆぅお姉ちゃん、この箱も使えそう?」
「そやね、この中にその辺の石も入れて……」
「あー僕、箱の上に乗ってみたい!」
拠点に転がっていた箱を荷台代わりにして、きゃっきゃとはしゃぐ子ども達も、身体を動かすことが面白いらしい。そうしてある程度周りが片付いたところで、鶯が呪符を手に言霊を操り――想像を現実へと変えていく。
「……これはボクからの、ささやかなプレゼント」
――それはいつか、未来で楽園と呼ばれるために。実物を模した偽物かも知れないけれど、地下に水を溜められるだけのスペースを作って、彼らに恵みを与えたいと思ったから。
「まぁ、そこまで本格的なものじゃないけど……少しでも、楽園へ近づけますように」
「よし、これで種も植えられるよね。私、この……クワ? 使ったことないんやけど……。こ、こんな感じでいいんです?」
「おねーちゃん、もっと腰入れないとダメだよー」
そうして出来上がった貯水槽の隣では、おっかなびっくりと言った様子で結希が花壇を耕し始めて。見様見真似もどうにか形になってきた辺りで、子ども達と一緒にさっそく種を植えることにする。
「……さて、と。この種からどんなお花が咲くのかなー?」
それでも、やっぱり花を見たことのない子にとっては、花が咲く――と言ってもぴんと来ないようで。暫し悩んだ末に結希は、その子の顔を覗き込んで楽しそうに問いかけてみた。
「うーん、と……君は好きな子とかおる? あげたらきっと喜んでくれますよっ」
「す、好きな子って! 別にいないし!」
「あはは、お水あげるの忘れないでくださいね。私もお世話しに来るからっ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フルエレ・エルムウッド
不受理お気軽に
アドリブ・絡み歓迎
シーヴァルド(f01209)様と花の種を植えましょう
転送の御礼と
「シーヴァルド様の希望について語る御姿
心に残りました」
昏き世界の闇色纏いつつ
判らぬ色を想い笑む
「それこそ希望の様です
それと判らず訪うもの
皆様が花を目にした時
笑顔の在りますよう」
祈り
大地に種を託して
「自己紹介をしておりませんでした
私は高き視座持つ御方の魂に連なる何十番目の意識
或いは夢…」(無自覚の厨二表現)
上手く表せずすみません
でも何故か
その瞳は輝いていらっしゃる様にも
「シーヴァルド様のことも伺って宜しいですか?」
お好きなことを
お好きな様に
私は言葉が好きなのです
(詩歌好き
厨二表現あれば第二口調で大喜び
嗚呼、彼の地こそは、黙示録にて語られる破滅の世界――吹き荒れる嵐は死者を呑み込んで、生きながらにして死す呪われた存在へ変えてしまうのだと言う。
「長い、戦いでした……」
そんなこんなで緑の廃墟から拠点に帰還した、フルエレ・エルムウッド(フローライトのひかり・f24754)の目の前に、ぽつんと置かれていたのは黒い柩で。
「……もしや、これも」
死体を放置すると高確率でゾンビになってしまうようなので、これも荼毘に付すのかなあと彼女が眺めていると――やがて中からもそもそと、シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)が這い出てきたのだった。
「うほう!」
「あ、お待ちを!」
陰ながら、猟兵の転送やら何やらを行っていたシーヴァルドは、そのままひっそり撤収しようとしていたようであったが、フルエレはどうにか彼を思いとどまらせて御礼を伝えることにする。
「その、シーヴァルド様の希望について語る御姿……心に残りました」
面と向かって御礼を言われていることが、どうにも照れくさいのか「ああ」とシーヴァルドはもじもじ――しかし芸術、特に詩歌を愛する神であるフルエレは、晴れやかな表情で朗々と想いを言葉にしていったのだった。
「昏き世界の闇色纏いつつ、判らぬ色を想い笑む――それこそ希望の様です。ささ、ご一緒に」
「……うむ、闇は影に。人知れずこうして、希望の種を蒔くとしよう」
そうして巧みなフルエレの言霊に乗せられ、いつしかシーヴァルドも一緒に拠点での作業に加わっていって。種を植えて一段落ついた辺りで、厳かにフルエレが自己紹介を始める。
「私は、高き視座持つ御方の魂に連なる何十番目の意識、或いは夢……いえ、上手く表せずすみません」
――嗚呼、浮世離れした言葉も、神々しい気配を纏う彼女が囁けば神秘の切れ端となる。決して厨二とか言ってはならない。永代の記憶と神の意識は、人の言葉に翻訳するのが難しいのである。
(「……あら、何故でしょう」)
普段なら首を傾げられてしまう自己紹介だったが、目の前のシーヴァルドの瞳はきらきらと輝いているような気がして。
「シーヴァルド様のことも伺って宜しいですか?」
透けるような紫の髪を揺らして尋ねれば、彼もまた仰々しく片目を押さえながら、厳かに自分の境遇を語り始めたのだった。
「……どうぞお好きなことを、お好きな様に。私は言葉が好きなのです」
「そうか、夢の化身よ。この邂逅が、目覚めと共に消えてしまう儚きものであったとしても……どうか蝶のように、この世界を羽ばたいていってくれ」
――言葉の意味は良く分からないが、とにかくこの出会いを喜んでいるらしい。そうしてふたりは大地に種を託して、遠い空の向こうへと祈りを捧げる。
「皆様が花を目にした時、笑顔の在りますよう――」
大成功
🔵🔵🔵
ウーナ・グノーメ
●判定
WIZ。絡みアドリブ歓迎
●心情
「理想郷は確かにあったのです。しかしアレは、ヒトの手に届いて良いものではなかった。あそこにあるのは歩みではなく眠り。ヒトらしく生きようと思うのならば、近づくべきではないのです」
「精霊はあらゆる地の、砂粒一粒にすら宿っているのです。土壌が肥え、草木が芽吹き、生命が息づくにはまだまだ遠くても、精霊は見守っているのです」
●行動
欺瞞だとわかっていながらも、本当のことも嘘も言わずに、理想郷について尋ねるものは煙に巻くのです。
そして礫に翅が生えたような姿の下級精霊を召喚し、播種や水やりの手伝いをして貰いつつ、人々を励まし、元気付けるのです。
精霊は確かに、此処にも居ると。
レザリア・アドニス
花は、食べ物ではないけれど、心を満たすもの…
この荒れ果てた大地に、今まで見た色とは違う色を、与えるもの…
子供たちと一緒に、花の種を蒔く
手本に、少し水をやって、育て方を教えてあげる
この種たちもきっとあなたたちみたいに、美しくて、たくましい命であるでしょう
でも、あなたたちみたいに、まだ幼い頃には少し脆いから、大事に育てて、守ってあげましょう…
花という概念を教えるために、自分の花や、壁にチョークでいろんな花を描いて見せる
この種からどんな花が咲くかはわからないけれど、それは楽しみしましょう…
マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げて、復興に助力します
特に傷病者には【不思議な星】を使用
子供や女性、老人などに声をかけて『慰め』られたらと思います
シーヴァルドがいるなら種蒔きを手伝って貰います
「──人はパンのみにて生くるにあらず」
有名な一節です
しかし、実は解釈としては誤解されたものが広まっています
ですが、それは必ずしも間違いとは言えません
「この花の種もそうではありませんか?」
人は息をしなければ生きられない
けれど、息をする為に生きているわけではないのです
必要かどうかではない──
「ならばどうして生きているのでしょう?」
それを探すこともまた生きる
そして花咲く姿を見る為でも良いと思いませんか?
「……主よ、憐れみたまえ」
ひとびとが久しく聞かなかった祈りの言葉を、静かに囁くのはマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)。その、夜空の星が零れ落ちるような音色と共に、彼女の身体が淡い光に包まれる。
「おお、もう動かないと思っていたのに……!」
――やがて腕を押さえていた男が、感覚を取り戻したらしい指をゆっくりと動かし始めると、拠点の一角に集まったひとびとの間にざわめきが広がっていった。
「何か、困っていることはありませんか?」
「いえ……皆様から、こうして色々と助けて貰いましたし、十分なほどです」
幼子をあやしている母親が、そう言ってマリスに微笑む背後では、レザリア・アドニス(死者の花・f00096)が子ども達や手伝いのシーヴァルドと一緒に、花の種を蒔いているのが見える。
「花は、食べ物ではないけれど、心を満たすもの……。この荒れ果てた大地に、今まで見た色とは違う色を、与えるもの……」
――ふしぎ。何だか、なぞなぞみたい。そう言って笑う子ども達にそっと頷きながら、レザリアの繊手が如雨露を揺らすと、優しい水滴がゆっくり大地に吸い込まれていって。
「この種たちもきっとあなたたちみたいに、美しくて、たくましい命であるでしょう」
「……僕たちと、同じ? これも生きてるの?」
土の中で芽吹きのときを待つ、小さないのちをじぃっと見つめる子どもへ、レザリアは自らが手本となることで、花の育て方を教えていくことにしたのだった。
「そう。……でも、あなたたちみたいに、まだ幼い頃には少し脆いから」
――これが、花なのだと。髪を飾る黄色い福寿草を指さしつつ、レザリアは近くの壁にチョークを用いて、いろんな花の絵を描いていく。
「大事に育てて、守ってあげましょう……」
「あ、あたしもお絵かきしたい!」
そうしていつしか、子ども達と一緒にお絵かきを楽しむことになったレザリアを見守りながら、ウーナ・グノーメ(砂礫の先達・f22960)はふわり、宙へ金砂を描いてひとびとへ語り掛けた。
「理想郷は確かにあったのです。しかしアレは、ヒトの手に届いて良いものではなかった」
――ありのままを伝えることはせず、けれど本当のことも嘘も言わずに、ウーナは旅の導き手に相応しい佇まいで言葉を紡ぐ。
「……あそこにあるのは、歩みではなく眠り。ヒトらしく生きようと思うのならば、近づくべきではないのです」
欺瞞だとはわかっている、しかし――無理に知る必要は無いと思うから。開けてはいけない蓋を開けて絶望と向き合うよりは、あらゆる可能性に思いを巡らせている方が、この世界ではずっと生きやすい。
「それでも――精霊はあらゆる地の、砂粒一粒にすら宿っているのです」
そうして理想郷については煙に巻いてから、ウーナは厳かに砂漠の斥候――砂の下級精霊たちを召喚した。礫に翅が生えたような姿をした彼らは、ひとびとの周りを励ますように飛び回ると、レザリア達の元へも向かって播種や水やりの手伝いを始めたようだ。
「……そう。精霊は確かに、此処にも居る。土壌が肥え、草木が芽吹き、生命が息づくにはまだまだ遠くても、精霊は見守っているのです」
「──人はパンのみにて生くるにあらず」
おお、とひとびとが感嘆の声を次々に漏らす中、マリスが呟くのは或る有名な書の一節で。物質と精神両方の充足を説いた、と言う解釈は誤解だと言われているが――そのことは、必ずしも間違いとは言えないのだと彼女は言った。
「人は息をしなければ生きられない。けれど、息をする為に生きているわけではないのです。そしてそれは、この花の種もそうではありませんか?」
必要かどうかではない──ならば、どうして生きているのかとマリスは問う。
「それを探すこともまた生きる、そして花咲く姿を見る為でも良いと思いませんか?」
――一粒の砂に世界を見て、一輪の野の花に天を見ることも、そのひとの心次第であるのだと。精霊と一緒に空を舞うウーナの元ではいつしか、レザリア達が描いた花の絵が、壁一面を覆っていたのだった。
「この種からどんな花が咲くかはわからないけれど、それを楽しみましょう……」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アイン・ローズ
[グループ名:王子と小鳥][アドリブ:OK]
花は人の心を豊かにしてくれるからね、心を込めて植えよう。
可愛い小鳥たちだね。みんなローレストさんのお友達なんですか?(ローレストさんの小鳥を見て)
ローレストさんの小鳥たちが花壇に適した場所を見つけたら、僕の出番ですね、力仕事は任せてください!
まずは瓦礫を崩して、囲いにちょうどいい大きさの石を組み上げたりして、花壇を作りたいな。
あとは土を起こしたり、石を除いたりして耕して……そのあとみんなで種を蒔こう。
種蒔きが終わったら、ルーンソードの水の精霊たちの力を借りて水を撒こうと思う。力を貸してくれるかい?(精霊に問いかけて)
オスカー・ローレスト
【王子と小鳥】
【アドリブ歓迎】
よ、良かった……ぶ、無事に物資を届けることは、出来たみたい、だね……
花の、種……ちゃんとした所にまいてあげないと、か、可哀想、だよな……良い場所を探すのを……【ハシバミの木の小鳥たち】、て、手伝って、おくれ……
(「可愛い小鳥たち〜」の言葉に少し微笑みながら)う、うん……よく、助けてもらって、る……
小鳥たちには種をまく場所の【情報収集】をお願いして……力仕事は、アインに任せ、る……お、俺は……種をまくのを、やる、よ……
……さっき抜けてきた森のみたいな花じゃなくて、もっと、ひとに優しい、花が、咲いてくれたらいい、な……(そんな事を考えながら種をまく
――悪夢のような廃墟を後にして、無事に拠点へ辿り着いた後で。遠くから聞こえてくる子ども達の声を耳にしたオスカー・ローレスト(小さくとも奮う者・f19434)は、其処でようやく肩の力を抜くことが出来たようだった。
「よ、良かった……ぶ、無事に物資を届け、られて……」
食料や医療品など、この世界で生きていくために必要な物資の数々を手にし、拠点も活気づいている様子であり――その様子を眺めるオスカーの手の中では、物資に紛れていた花の種が、何かを待ち望むようにさらさらと揺れていた。
「これ、も……ちゃんとした所にまいてあげないと、か、可哀想、だよな……」
「ええ、花は人の心を豊かにしてくれるからね、心を込めて植えようか」
と、視線を落としたオスカーの元へ、朗らかに声を掛けたのはアイン・ローズ(正統派王子・f18069)。そのまま彼は、なかなか一歩を踏み出せずにいたオスカーの手をさっと取ると、陽の当たる場所へ引っ張っていく。
「じ、じゃあ……良い場所を探すのを……て、手伝って、おくれ……」
――囀るように空へ呼びかければ、何処からともなくハシバミの木の小鳥たちが現れ、ふたりの周りを飛び回っていって。色とりどりの彼らの姿に、思わずアインが溜息を漏らすと、楽しそうな鳥の合唱が響いてきた。
「可愛い小鳥たちだね。みんなローレストさんのお友達なんですか?」
「う、うん……よく、助けてもらって、る……」
可愛い、なんて言葉がアインの口から零れたことに、ちょっぴりオスカーが微笑みつつ、鳥たちの導きに従っていけば――やがて、花壇を作るのに適した場所に辿り着いたようだった。
「さて、それでは僕の出番ですね、力仕事は任せてください!」
そう言って、きりりとした表情で腕まくりをしたアインは、シャベルを手に瓦礫を崩し、同時に丁度いい大きさの石も集めていっている。ちなみにこちらの方は、花壇の囲いに使うとのことで――彼の王子らしからぬ手際の良さに、思わず拍手をしそうになるオスカーだった。
「それ、じゃ……力仕事は、アインに任せ、るから……お、俺は……種をまくのを、やる、よ……」
――きっとアインは持ち前の好奇心で、色んなことを勉強しているのだろう。そうして、土を起こしたり石を除いたりして綺麗に均されていった地面の上では、小鳥たちがふたりを応援するように囀りを響かせている。
「よし、種撒きの方も終わったかな……。なら、力を貸してくれるかい?」
やがて――一通りの作業が終わった花壇をアインが見渡した所で、その手に握られた魔法剣が揺らめき、精霊の力が辺りに降り注いでいった。
「……水の精霊よ、どうか此の地に恵みを」
ふんわりと大地を覆うように、優しく広がっていくのは水のヴェール。きらきらとしたその飛沫を掌で受けながら、オスカーは願わずにはいられない。
(「……さっき抜けてきた森のみたいな花じゃなくて、もっと、ひとに優しい……」)
――そんな花が、咲いてくれたらいい、な。
それはきっと、お伽噺に出て来るような王子様と小鳥が運んでくる――ささやかだけれどあたたかい、素敵な贈り物になるのだろう。
大成功
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スカーレット・ロックハート
ガキの頃から武器の扱い方しか知らねぇ俺が、花の種を蒔くっつーのも不思議なモンだ
こんな荒野に花が育つだなんて、ま、それもやってみなけりゃ分からんか
もし本当に、ここにも花が咲くんだったら
死んじまった連中の、手向け代わりにゃなるだろう
それで救われるなら何よりだ
希望が眠る楽園、か
今まで生き延びるだけで精一杯で、そんなモノはちっとも考えたことはなかったな
無様に死にそびれちまったこんな俺でさえ、希望を持って生き続けてもいいんだな
いや……むしろ俺らこそ、今を生きてる奴らに希望を見せてやらなきゃいけねぇ
その為に、生命の花を一杯咲かせ、色無き世界を俺達の色に塗り替えてやろう
まずは手始めに、この荒地を耕すとするか
霑国・永一
いやぁ知らぬが仏とは言ったものだなぁ。ま、人の夢と書いて儚いと書くし、精々まやかしの希望に微睡めばいいさぁ。俺には関係のない話だしねぇ。
さて、ことのついでだ、園芸でもするとしよう。偶には凡百の人らしく善行を積むのも一興というもの。まぁこの世界に盗みたい金品が無いからこれするしかないってだけだけど。
どうせ花を咲かすなら幅広くやって見応えあるようにするべきだよねぇ。
拠点を囲うようにしたいが、流石に仕事が多いな。とりあえず拠点入口付近だけでも整えておくかぁ。
入口が華やかなだけでもいい気分なものだからねぇ。
花壇を囲う柵、この辺の有り合わせの材料だけど、これでいいだろう
おや、お嬢ちゃん、君もやるかな?
太宰・寿
子どもたちと一緒に、種を蒔きます。
どんな花が咲くと思う?
花を知らないと言う子たちに描いて見せます。
色んな形の花があるんだよ、って話しながら
私が知っているのは、主にUDCアースのもの
チューリップに朝顔、鈴蘭にガーベラ、椿……色んな花を描いていきます。
みんなは、何色が好き?
描いた花に、教えてもらった色をそっと載せます。
最後に、育て方を教えます。
水やりも大切だけど、もっと大切なことがあるんだよ
可愛いね、綺麗だねって言いながらお世話してあげるの
うんと綺麗に元気に咲くから。嘘じゃないよ
沢山咲くといいね
いつもの夢が連れてくるのは、余りにも鮮烈な血と闇の気配で――やがて硝煙のヴェールの向こう側に、遠い戦火の記憶が蘇ってくる。
(「ガキの頃から、武器の扱い方しか知らねぇ俺だが……」)
迷いを振り切るように、深呼吸をひとつ――そうして己の魂を衝き動かす衝動が、ふっと和らいでいくのを感じながら、スカーレット・ロックハート(叛逆の緋・f24479)は赤茶けた大地に視線を落とした。
「……不思議なモンだな、こうして花の種を蒔くっつーのも」
――手に馴染んだ銃の代わりに彼女が手にしたのは、土を耕す為のシャベル。もしかしたら昔、遺体を埋める時に使ったことがあったかも知れない。しかし、そんな記憶とは別に、今はこうして花を育てるべく力を振るっている。
「こんな荒野に、本当に……ま、それもやってみなけりゃ分からんか」
そうして一息吐いて、スカーレットが吐き出した紫煙の向こうでは、太宰・寿(パステルペインター・f18704)が子ども達と一緒に、どんな種を蒔くのか話している様子が窺えて。
「みんなは、どんな花が咲くと思う? 色んな形の花があるんだよ」
花なんて知らないと首を傾げる子には、手にした絵筆を宙に滑らせ、一足先に空へ花を描いていく。チューリップに朝顔、鈴蘭にガーベラ、椿――それは、寿の居た世界ではよく見かける種類ではあったけれど、子ども達にとってはどれも初めて見るものらしく、あちこちで歓声があがっていた。
「え、え、全然かたちが違うのに、これぜんぶ花なの?」
「そう、もっと変わったものもあるんだけど……みんなは、何色が好き?」
――そうして彼らが思い思いに挙げていった色彩を、寿はそっと花びらに載せていく。色とりどりのパレットを用いて空を彩る花たちは、不思議な色合いのものもあったけれど、もしかしたらこの世界では本当に咲くのかも知れないと思わせた。
「……いやぁ、知らぬが仏とは言ったものだなぁ」
と――その時、スカーレットの背後から聞こえて来たのは、霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)の陽気な声。
「が、もし本当に花が咲くんだったら……死んじまった連中の、手向け代わりにゃなるだろう」
「ま、ま、人の夢と書いて儚いと書くし、精々まやかしの希望に微睡めばいいさぁ」
――俺には関係のない話だしねぇ。そう言って口の端を上げる永一へ、それで救われるならばとスカーレットがぶっきらぼうに応えると。そのまま何処かへ行くかと思われた永一は、園芸用品を手に寿たちの方へと向かって行ったのだった。
「さて、ことのついでだ、園芸でもするとしよう。……どうせ花を咲かすなら、幅広くやって見応えあるようにするべきだよねぇ」
偶には凡百の人らしく、善行を積むのも一興というもの――そんな嘘か誠か分からぬ口ぶりのまま、永一は花壇を囲う柵を作ることにしたらしい。出来れば拠点ごと囲うようにしたいけれど、それでは流石に仕事が多くなりそうだから、取り敢えずは入口付近だけでも整えておくことにして。
「入口が華やかなだけでも、いい気分なものだからねぇ……おや、お嬢ちゃん、君もやるかな?」
「えへへ、面白そうだねー!」
やがて、あり合わせの材料を用いて柵を作り始めた永一の元へも、興味を惹かれたらしい子ども達がちらほらと集まって来る。
(「……希望が眠る楽園、か」)
――今まで生き延びるだけで精一杯で、そんなモノはちっとも考えたことはなかったが。無様に死にそびれてしまったこんな自分でさえ、希望を持って生き続けてもいいのだろうかと考える。
「いや……むしろ俺らこそ、今を生きてる奴らに希望を見せてやらなきゃいけねぇ」
想い出の味が肺を満たし――スカーレットは、その癖の強すぎる紫煙を一気に吐き出してから、シャベルを手にゆっくり歩き出した。
「まずは手始めに、この荒地を耕すとするか。……確か拠点を囲う柵を、作るのだったか」
「まぁね、この世界に盗みたい金品が無いから、これするしかないってだけだけど」
にっこり笑う永一と視線を交わし、子ども達と種を蒔く寿を見守りながら、スカーレットは荒野を見据える。水やりも大切だけど、もっと大切なことがあると語る寿は、花の育て方について教えているのだろう。
「それはね……可愛いね、綺麗だねって言いながらお世話してあげるの。うんと綺麗に元気に咲くから。嘘じゃないよ」
――沢山咲くといいね。ああ、とスカーレットは心のなかで確りと頷いていた。
(「生命の花を一杯咲かせ、色無き世界を俺達の色に塗り替えてやろう」)
大成功
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イア・エエングラ
芽吹きの種を植えましょう
ケープは畳んでのけとこな
植えるお手伝いをしましょ
僕らのいなくても、新しい種を
あなたがただけで育てられるよに
ね、これに花の名前はないけれど
どんなお花の、咲くだろな
どんな色で、どんな香りで、どんな形だろう
ゆっくりとなんにも変わらないままのよな毎日にも
きっと少しずつ根を張り、葉を伸ばして、繁るから
いつか蕾をつけ花開くのが手動かす間にも楽しみで
そうしていつか凋んでしまっても
蓄えた種がまた芽吹くのだろな
あなたがたがこの荒野で、それでも楽園を諦めなかったよに
ねえ、僕はその希望がこの地を埋めるのを、まっているの
水をまけば虹がかかるから
やあ、まるで楽園の扉のようね
――芽吹きの種を植えましょう。囁くこえは、イア・エエングラ(フラクチュア・f01543)のもの。繊細な指を覆うケープは畳んで除けて、乾いた大地にそっと足跡をのこして歩いていく。
「ね、これに花の名前はないけれど。どんなお花の、咲くだろな」
彼方の地、緑に呑まれた廃墟に眠っていた種はこうして、新たな場所で芽吹こうとしている。それは、どんな色で、どんな香りで――どんな形をしているのだろう。
(「……僕らは、それを知ることはないかもしれない、でもね」)
――僕らのいなくても、新しい種を、あなたがただけで育てられるよに。ささやかだけれど手伝いをしたいと願うイアの、手繰る指先からはやがて、雨混じりの霧が生まれていって。
(「ゆっくりと、なんにも変わらないままのよな、毎日にも。きっと」)
湿り気を帯びた、優しい土のにおいが大気に溶けていくなかで――種は少しずつ根を張り、葉を伸ばして、繁っていくから。
(「……いつか蕾をつけ、花開く」)
その時が来るのを思えば、手を動かすたびに心は踊り、いつしかイアの足取りも軽やかなものになっていった。
「そうして、いつか凋んでしまっても――」
水の底から手を伸ばすようにして、蓄えた種がまた芽吹くのだろな。それは、空気に溺れてみる夢のようでもあり――緑の柩で微睡む死者たちが、最後に夢みた在り様のようにも思えた。
「ねえ、あなたがたがこの荒野で、それでも楽園を諦めなかったよに」
僕はその希望がこの地を埋めるのを、まっているのとイアは謳う。ああ、ほら――雨霧が陽光に輝けば、いつしか空には虹が架かって。
「……やあ、まるで楽園の扉のようね」
大成功
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