●
廃都――かつて、ダークセイヴァー世界の片隅に造られた小さな都市は、今は無人となって久しい。誰が、いつ、何故そこに造ったのか? それを知る者も途絶えて久しい。
ただ、ダークセイヴァーの辺境地域、森の中に沈むようにその廃都がある……その事実があるだけだ。長い年月放置されたのだろう、建造物そのものが森の木々に飲み込まれ全容を見る事も叶わない。
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
時折、森の中に地の底から響くような音が聞かれることがあった。この音を恐れ、近隣の者達も近づこうとはしなかった。
全ては自然の悪戯か、あるいは――その答えは、自らの目で確かめるしかなかった……。
●
「ダークセイヴァー世界も、色々と複雑なようじゃな」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は、そう髭を撫でながらいくつかの資料を広げて続けた。
「辺境にはヴァンパイア達が支配しておらん地域があるようでな?」
その原因を語るのは、ダークセイヴァー世界の歴史を語る必要がある。
かつてヴァンパイア達は、オブリビオンの軍勢を率いて辺境制圧に乗り出した過去がある。その過程で、いくつもの神々が屠られたと言われている。
「しかし、殺された筈の神々は次々とオブリビオンに憑依し、魂と肉体を奪い取っていったらしい。その結果、ヴァンパイア達は辺境の支配を断念され放置され続けたのが現在じゃ」
しかし、決して辺境も平和という訳ではない。今も神々の影響を受けたオブリビオン達――狂えるオブリビオンが、住み着いているという。
「ただ、この狂えるオブリビオンさえ駆逐してしまえば、ヴァンパイア達に支配されていない土地が出来る……虐げられた人々の居住区ができるはずじゃ」
みんなに今回挑んでほしいのは、森の中に埋もれた廃都だ。いつ、どこで、誰が建造した都市かはわからない。この廃都に、狂えるオブリビオンが潜んでいる可能性が高いのだという。
「まずは廃都の調査、それから狂えるオブリビオンを駆逐する必要がある。どのような敵か事前にわからぬが、柔軟に対処してくれい」
波多野志郎
辺境というのはいい響きですよね、どうも波多野志郎です。
今回はダークセイヴァーでの辺境の調査と、いると思われる狂えるオブリビオンの駆逐となっております。
まずは第一章、森に埋もれた廃都の調査となります。ぜひ、探検をお楽しみいただければ幸いです。
それでは、辺境の地で皆様のお越しをお待ち致しております。
第1章 冒険
『空虚なる廃都』
|
POW : 手当たり次第に怪しい部分がないか探して廻る
SPD : 自身の磨いてきた技術を駆使して探索
WIZ : 魔法や呪術の痕跡を探してみる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
李・雷
極端な話、近隣の人間がいくらビビってようと構わねえ
「俺は正義の心なんて持ち合わせちゃいない、吸血鬼だからよ」
だがこの依頼は喜んで受けるぜ
だって神に憑かれたヤツなんてレアじゃねえか?
どんなマヌケ面だろうか!ワクワクするねぇ!
俺の方針はPOWだ
バケモノ特有の優れた五感を駆使して手当たり次第に探っていく
「相手が俺と同じバケモノなら臭いで分かるさ」
例の地の底から響くような声ってのも気になるな……けどそっちは近寄りたく無いってのが本音だぜ
地の底なんて暗くてジメジメした場所に居るヤツはネクラで陰湿って決まってるからな
そんなのと顔見知りだって知られたら俺の品性まで疑われちまう。だろ?
薬師神・悟郎
あのヴァンパイア共を退ける程とは
祟られたりしないだろうか?
…なんて、今更か
聞き耳にて例の音とやらが聞こえないか試す
視力、暗視でも周囲を探ってみようか
罠使いの能力で廃都に潜む罠に注意、鍵開けも使用し探索
罠があれば解除又は破壊しておく、破壊工作
「盗みを警戒し物を隠すなら…目立たないように迷彩を施すなら…」
もし俺ならばどうするか、と考えつつ第六感、野生の勘にて貴重な品か手掛かりが何か得られないか情報収集+UC
都に住んでいた人々は例の神々を祀っていたんだろうか
敵がその神々とやらの影響を受けているなら、その力がどのようなものか知る事が出来れば良いんだが…
…さて、この先にはどんな運命が待ち構えているのやら
備傘・剱
手あたり次第っても、な
こういう所はカンと経験が生きてくるだろう
一丁、遺跡探索の要領でやってみるかな
とはいえ、警戒や人では多い方がいい
遊戯守護者を呼び出して、警戒させるか
…情報収集とこの周りの様子、人が物を隠したりする地形や場所の当たりをつけて、何かないか探してみるぞ
ダークセイヴァーがヴァンパイアに支配される前に何があったのか、探れれば、この土地に人が住んだ時、警戒する事変や、作る作物や特産を生むヒントになる可能性があるからな
しかしまぁ、狂えるオブリビオン、ねぇ
オブリビオンを狂わせた何かの情報も欲しい所だ
…碌なもんじゃないだろうが、必要な情報だからな
過去は未来を語る
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
茜谷・ひびき
ダークセイヴァーにはこんな所もあるんだな
人々の生活圏が増える可能性があるのはいいが……狂えるオブリビオンっつーのは恐ろしい
……神様が過去の化け物になるのって皮肉みたいだよなぁ
出来るだけ早く対処したいぜ
UCを使ってまずは感覚を研ぎ澄ませる
【野生の勘】も冴えれば調査にも役立つだろう
その状態で廃都を調べていこう
とは言っても、こういう時に俺が出来るのは手当たり次第に調査することだな……
狂えるオブリビオンがどんな相手か分からないけれど、明らかに最近状況が変化したっぽい場所を探してみるか
埃や瓦礫の積もり方や、植物の生え方あたりがヒントになるか?
上手く【情報収集】しつつ狂えるオブリビオンの痕跡を探していくぜ
鬼桐・相馬
足場が悪いな……おっと。
【WIZ行動】
探索開始と同時にUC発動。
黒歌鳥に上空から怪しい場所や淀みがないか見て貰う。時折[視力]と重点的にリンクして探る。
……感覚共有中は虫食いやめろよ?
俺は魔法に対しては殆ど感知できないが、呪術方面なら[冥府の槍]の炎を使い調べられる。普段は俺の悪意を吸収しているが、呪術の痕跡に残る悪意に関しても反応すると思う。炎がゆらぐ等の変化があれば、そこを重点的に調査して[情報収集]してみるよ。[世界知識]に照らし合わせても、何か分かるかもしれないな。
後は手伝いが必要ならそこへ。
この声の主が原因で都市は滅んだのだろうか。まあ、先に進めば分かる事だ。
共闘・アドリブ歓迎です!
リーヴァルディ・カーライル
…ん。吸血鬼に支配されていない土地、ね。
それはこの世界に生きる人達にとって、
黄金を積み上げてでも手に入れたい理想郷のはず。
…殺された神々には申し訳ないけど、
必ず、この地を解放してみせるわ。
事前に自我の存在感を増幅する“調律の呪詛”を付与
狂気耐性や呪詛耐性、精神攻撃耐性を強化して、
左眼の聖痕に魔力を溜めてUCを発動
取り込んだ霊魂と心の中で手を繋いで精神を同調させて、
彼らの見せる残像を暗視して見切り情報を集める
…この地に縛られた、いまだ鎮まらぬ魂よ。
狂気の声で貴方達の眠りを妨げているのは、誰?
…何処にいるのか教えてほしい。
私達の為じゃない。この世界の為でもない。
貴方達自身の安息の為に…。
ヒッツェシュライア・テスタメント
【WIZ】
心情:
廃墟、か。なかなか心躍るモノがありそうだ。
行動:
「さて、魔術や呪術の類は見えぬ様にするか、魔力を持ったモノを配置するか、儀式をしたか……とにかく調べるしかないだろう」
長年魔術師として研究してきたので、呪詛の類は耐性あるので遠慮なく変なモノを調べよう
「隠すなら、こういう場所であろうか?」
壁やら棚があればズラしてみたり、紙切れ一枚でも見つかれば良いだろう
読み取れれば御の字、図ならばなおさら理解しやすい
(まぁ、呪詛の類は自分のモノにもしよう)
楽しい、楽しいぞ、探究心が満たされる!
これだから、ダークセイバーのヤツ等はある意味では好意的になれる。
※内心、魔術師としてとても楽しんでいます!
鏡島・嵐
判定:【SPD】
この世界じゃさして珍しくもねえんだろうけど……人が住まねえと、街ってのはあっという間に寂れるもんなんだよな。
廃墟探索ってのは別に怖いとか気味悪いとか思わねえけど、狂えるオブリビオンがいるってのはおっかねえや。
さしあたっては、人が住む場合の環境がどんな感じなのかを調べてみるか。街があったんだから、オブリビオンの脅威が無いなら住みにくくはねえと思うんだけど。
例えば、水の確保、風の強さ、他の生き物の有無とか。
そういう環境の要素を街の外側から中心に向かって、足を使って調べてみる。足りねえ部分は《残されし十二番目の贈り物》で〈第六感〉〈情報収集〉を強化して情報を補完するかな。
クロム・ハクト
怯えずに暮らすことが出来るなら、それに越したことはないからな。
これから起きる戦闘の事、そしてこの土地を得た後に暮らしていく・守っていくための【地形の利用】を考慮しながら調べる。
居住区として使うなら、早急に塞ぐべき穴、拠点になる場所は見繕っておいた方がいいだろ。
勿論オブリビオンの事もある。
動きの痕跡の有無や通常では付かないような破損などがないか確認しておく。
必要以上に刺激しないように【目立たない】ようにして、【野生の勘】を働かせながら進もう。
本当に地の底の可能性も考えて、夜目(【暗視】)やロープワークで降りる事も考えた方がいいかもな。
アドリブOK
●『空虚なる廃都』
辺境――そう呼ぶにふさわしい深い森にそこはある。そして、その空虚なる廃都は森に埋もれるように存在した。
「ダークセイヴァーにはこんな所もあるんだな」
見上げ、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が呟く。少なくとも、ダークセイヴァー世界において血の匂いではなく、木々や土の匂いの方が強いのは珍しいと言えた。
「……ん。吸血鬼に支配されていない土地、ね。それはこの世界に生きる人達にとって、黄金を積み上げてでも手に入れたい理想郷のはず……殺された神々には申し訳ないけど
必ず、この地を解放してみせるわ」
「怯えずに暮らすことが出来るなら、それに越したことはないからな」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の言葉に、クロム・ハクト(黒と白・f16294)も同意する。
「人々の生活圏が増える可能性があるのはいいが……狂えるオブリビオンっつーのは恐ろしい。……神様が過去の化け物になるのって皮肉みたいだよなぁ、出来るだけ早く対処したいぜ」
ひびきが言う通り、放置されているのには理由がある。ヴァンパイアによって殺された神々、その怨嗟。それがオブリビオンを狂わせるのだ――結果として、この地は捨てられた。まるで、落としてしまったから捨てられる食物のように。
「俺は正義の心なんて持ち合わせちゃいない、吸血鬼だからよ」
クハハ、と嘲笑うのは李・雷(血の衝動に抗え・f24333)だ。極端な話、近隣の人間がいくらビビってようと構わない――雷にとって、そんなものは瑣末事だ。
「この依頼は喜んで受けるぜ。だって神に憑かれたヤツなんてレアじゃねえか? どんなマヌケ面だろうか!ワクワクするねぇ!」
血に飢えた鮫のように、雷は口の端を更に持ち上げる。神に呪われる事を恐れて、何故化物がやってられようか?
猟兵達は、迷わず廃都へと踏み込む。森の飲まれた都は、何者も拒まず受け入れた……。
●呪われた廃都
「足場が悪いな……おっと」
ガラ……と、足元から転がり落ちた小石に、鬼桐・相馬(羅刹の黒騎士・f23529)は足を止める。目の前にあるのは亀裂――ではない、建物と建物の間、恐らくは路地だ。
「上空からだとよく見えるな」
標追いの黒歌鳥(シルベオイノクロウタドリ)の力は、相馬と忠実な黒歌鳥の視覚を共有させている。足を止めた自分の背中から不意に視線が動くと、相馬はピシャリと告げた。
「……感覚共有中は虫食いやめろよ?」
――視線が自分の背中に戻った。その事に安堵しながら、相馬は軽く一歩踏み出す。ふっと軽い感覚を覚えると、すぐに体は落下。暗い路地へと降り立った。
「……ふむ」
相馬の視界を仄暗く照らす、冥府の槍に燃える青白い炎。その炎の揺らぎは先程の相馬と違い、重力に逆らって下へと向かう。
「下か……しかし――」
相馬が視線を周囲に巡らせる。言葉を切ったのは、同じ目的でやってきた猟兵の姿を見つけたからだ。
「さて、魔術や呪術の類は見えぬ様にするか、魔力を持ったモノを配置するか、儀式をしたか……とにかく調べるしかないだろう」
楽しげに、心の底からの笑みを浮かべたヒッツェシュライア・テスタメント(死を恐れぬ魔術師・f16146)の姿が、そこにはあった。ヒッツェシュライアが見上げるのは、建物の壁だ――わずかに呪詛の残滓を感じて、相馬は言った。
「その壁、何かありそうだ」
「ああ、そのようだ。これは意図したものだ」
ヒッツェシュライアが、壁に触れる。指先に残るのは苔と埃――そして、白い粉だ。指跡が壁に残るのを見て、ヒッツェシュライアが言った。
「やはりな。手伝ってくれ」
相馬の手を借りて、ヒッツェシュライアが壁を削っていく。ボロボロと削れる壁に、ヒッツェシュライアは先取って答えた。
「火山灰や石灰、砕石……そして、恐らくは生き物の骨だ。簡単に言えば、コンクリートだな」
ダークセイヴァー世界にコンクリートがあるのか? と言われれば、その答えはNOとは言えない。UDCアースをはじめとした世界にあったローマ文明では、普通に存在した技術だ。それよりも、この場で重要なのは――。
「壁画……宗教画? いや、これはもっと始原的な……ふふ、楽しい、楽しいぞ、探究心が満たされる! これだから、ダークセイバーのヤツ等はある意味では好意的になれる」
そこに現れたのは、巨大な壁画だ。地下から溢れる『何か』、そこから顔を覗かせる竜。そして、それを崇める人々――コンクリートは、この壁画を隠すためのものだったのだ。
歓喜するヒッツェシュライアと相馬は、肌で感じていた――この壁画から滲む呪詛を。ヴァンパイアでさえ疎んだ、その呪いを。
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
不意に地の底から響く音に、相馬は壁画と同調するように揺れる青白い炎を見て言った。
「この声の主が原因で都市は滅んだのだろうか。まあ、先に進めば分かる事だ」
「ああ、もちろんだ」
相馬の言葉に、ヒッツェシュライアは視線を周囲に向ける。この壁画があるという事は、目の前の建物が宗教施設であるのは間違いない。この建物に、答えがある――それは、心躍る確信であった。
●魂の迷う場所
廃墟の十字路に立って、リーヴァルディは呼吸を整えた。
「……この地に縛られた、いまだ鎮まらぬ魂よ。狂気の声で貴方達の眠りを妨げているのは、誰?」
リーヴァルディが、代行者の羈束・断末魔の瞳(レムナント・ゴーストイグニッション)によって左眼の聖痕で吸収した死霊や怨霊の魂を全身に纏わせる。目を瞑り、取り込んだ霊魂と心の中で手を繋ぐイメージ――自分の中の魂と同調し、リーヴァルディは目を開いた。
「――――」
――燃えていた。都市が、燃えていた。炎は平等だ。老いも若いも、男も女も、人も吸血鬼も――敵と味方さえも、等しく呪い燃やし尽くしていく。
これが死霊や怨霊が最期に見た光景――そのはずだ。はず、となるのは確信がいだけないほど、魂達が混乱していたからだ。
(「……諦観? 諦め、どうして
……?」)
オブリビオンと違い、逃げようというものがこの廃都の住人にはいない。理解する、わかっているからだ。こうなってしまえば、もう終わり――逃げ場など、どこにもないと。
「……何処にいるのか教えてほしい。私達の為じゃない。この世界の為でもない。貴方達自身の安息の為に……」
リーヴァルディの問いかけへの答えは、あまりと言えば簡単だった。炎の源、地の底から溢れ出す灼熱の水――マグマ。それが地面から、溢れ出すのを見て――。
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
不意に地の底から響く音に、リーヴァルディは現実に引き戻される。これ以上は背信になる、それを魂達が恐れていたのをリーヴァルディは、痛いほど感じていた……。
●神の恵み――
クロムの視点は、この地の攻略だけに置かれていなかった。その後、人々が住む時の事を念頭に、探索していく。
(「居住区として使うなら、早急に塞ぐべき穴、拠点になる場所は見繕っておいた方がいいだろ」)
もちろん、オブリビオンの事もある。人々にこの場を提供するのならば、脅威の駆逐は当然だ。
「恐らくは、この下が本命だろうな」
森の飲まれた廃都だ、ならば森の飲まれた部分――あるいは、更にその下こそに原因があるはずだ。
「ん~……」
「どうした?」
自分と同じように都市を調べていた嵐が唸るのに、クロムは問いかける。嵐は難しい表情で、言った。
「これはどう見たものかと思ってな」
嵐の目の前にある建物――それは公衆浴場だった。この都市では、ここ意外にも大規模な浴場が、いくつか見つかった。
「森がここまで育つのは、土壌がいいから……なんだろう。ただ、この廃都の植物はここまでの森の植物と系統が少し違う」
嵐が、地面を撫でる。めくれ上がった石畳、それを押し上げる植物。それが伸びる地面は――ほんのりと、暖かさを感じた。
川は少し遠いが、井戸もある。生息している生き物や植物、環境は人が住むのに適している――しかし、嵐の残されし十二番目の贈り物(ベニル・ドゥーズ)が告げている。
「答えは、やっぱり地下だ。ここに都市が出来たのは、宗教的な理由だけではない」
恩恵があるからこそ集まり、神を崇めていたのだ。それが何なのか、彼らはそれとなく察していた。
「……もしかして、火山か?」
「おそらくな」
クロムの答えに、嵐は肯定する。ならば、この地下にあるのは――。
●地下へと至る道
備傘・剱(絶路・f01759)の動きに、迷いはなかった。
「手あたり次第っても、な。こういう所はカンと経験が生きてくるだろう。一丁、遺跡探索の要領でやってみるかな」
遊戯守護者召喚(サモン・イチタリナイ)によって妖怪一足りないを呼び出すと、周囲の警戒を任せる。剱は周囲をよく観察しながら、歩を進めた。
ダークセイヴァーがヴァンパイアに支配される前に何があったのか、探れればこの土地に人が住んだ時、警戒する事変や、作る作物や特産を生むヒントになる可能性がある。その視点があったからだろう、剱もすぐに公衆浴場や植物の分布の違いに行き着いた。
「しかしまぁ、狂えるオブリビオン、ねぇ。オブリビオンを狂わせた何かの情報も欲しい所だ……碌なもんじゃないだろうが、必要な情報だからな。過去は未来を語る」
「盗みを警戒し物を隠すなら……目立たないように迷彩を施すなら……」
剱の隣で、悟郎が呟く。二人が感じるのは、執拗なまでの排斥と恐怖だ。おそらく、この地で呪われたヴァンパイア達が去る時に、呪いを恐れて徹底的に排除しようとしたのだろう。
「逆を言えば、一番消したいと思った場所が……」
悟郎は気付く。この都市にある、四つの建物が念入りに排斥が施されていた事を。そして、そここそが神殿であろう事を察した。
「相手が俺と同じバケモノなら臭いで分かるが――ったく」
雷も、神殿へとたどり着いた。優れた五感と勘――バケモノ特有の精神が告げている。
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
「あっちは近寄りたく無いってのが本音だぜ。地の底なんて暗くてジメジメした場所に居るヤツはネクラで陰湿って決まってるからな、そんなのと顔見知りだって知られたら俺の品性まで疑われちまう。だろ?」
雷が吐き捨てる――その先にいたのは、黒い鎧の群れだ。ガシャン、と神殿の奥から現れた『敵』に、ひびきが言い捨てる。
「……あんまり、やりたくはないんだけどな」
刻印活性化によって、その場に至ったひびきにとってこの先の展開は理解している。黒い鎧の群れ――オブリビオン達がやって来たのは、この神殿の奥にある『神域』からだ。
この都市が、何を奉じていたのか? その答えは、原初の宗教の精神にある。いわば、自然の神聖化――自然の脅威や恵み、その影響を神と崇めたのだ。
ただ一つ、原始宗教との大きな違いがある――ここ、ダークセイヴァー世界には神が実在すると言う事だ。
「……さて、この先にはどんな運命が待ち構えているのやら」
神が出るか魔が出るか――悟郎の疑問の答えを知るためには、踏み入らければならない。
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
オブリビオンがはびこる『神域』――溶岩流れる、地下空洞を……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』
|
POW : リピート・ナイトアーツ
【正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD : 無数の飢牙
【鎧】から【無数に伸びる蛇や狼、竜の首】を放ち、【噛み付きによる攻撃をし、拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 鎧装転生・鋼獣群集
自身の【五体と生命力】を代償に、【吸収してきた生命の形をした鋼の生物たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い探知能力の下、生命力を吸収する牙や爪】で戦う。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●神域の放浪者達――
溶岩流れる地下空洞――それは、廃都の東西南北に位置する全ての神殿奥から、行く事が出来る。
ごぼり、と高温のマグマは地下水を温め温泉に。本来なら地面に悪影響を与えるはずだが、分厚い地面の下のため溶岩や火山の毒は地上に影響を与えなかった。
ようは、火山の恩恵だけを受けた都市――それが滅んだ廃都だった。
その恵みを与える地下に、怪物に堕ちた黒騎士の群れは蔓延っていた。神を討つために侵入した彼らは、今では皮肉な事に唯一の神の従僕だ。この神域に踏み入ったものを許さない守護者でもある。
この黒騎士達を突破しなくては、神域の中心――呪いの元凶に至る事はない。ここに、いつ以来かの侵入者と神の従僕との戦いが始まろうとしていた……。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼らの魂からは、あまり怨みや憎しみを感じなかった。
むしろ信仰する神々の事を心配していた気がする…。
…ならば、その心残りを取り除いてあげる。
それが、断末魔の景色を教えてもらった私の役目だから。
事前に炎熱耐性を強化する“火避けの呪詛”を付与して、
自身の魂(生命力)を吸収する激痛を耐性と気合いで耐え、
左眼の聖痕に呪力を溜めてUCを発動
…いきなさい、私の刃達。
時間属性攻撃のオーラで防御を無視する六本の黒刃を召喚
第六感が捉えた殺気に反応して先制攻撃のカウンターを放ち、
今までの戦闘知識から残像が生じる速度で黒刃を操り空中戦を行う
…その呪わしき命運を断ち切ってあげる。
眠りなさい、安らかに…。
茜谷・ひびき
この世界にも火山がある……当たり前だけどなんか新鮮だな
そしてこの都市はその恵みを受けていた
それをこのまま廃れさせるのは勿体ないな
そのためにもまずはオブリビオン退治を頑張らねぇと
まずはUCを発動、刻印を起動して両腕を殺戮捕食態に
相手は正気を失っていても武人である事に違いはない
攻撃は【野生の勘】で察知しつつ、【ダッシュ】で回避していこうか
どうしても受けざるを得ない時は【オーラ防御】でしっかり身を守るぜ
上手く相手の攻撃を対処して、隙が出来たら反撃だ
相手の武装は【怪力・鎧砕き】で壊しつつ思い切りぶん殴る
【傷口をえぐる】事を意識しつつ、一体一体確実に倒していこう
……この人達も、神の下僕でいたくはないだろ
薬師神・悟郎
俺のやり方がどこまで通じるか分からんが…やるしかない
複数の耐性(火炎、環境耐性重視)、オーラ防御を纏う
戦いに慣れた黒騎士を相手に得意ではない接近戦など仕掛けたくない
UC発動、攻撃力重視
弓の射程範囲ギリギリから攻撃、視力、暗視、スナイパー、地形の利用
先制攻撃の範囲攻撃にて前衛を崩し、範囲攻撃、暗殺、吹き飛ばし
後の黒騎士共の隊列を乱し機動力を削る事を試みる、戦闘知識
俺の攻撃を突破した敵を優先して仕留め
攻撃は見切りカウンター、咄嗟の一撃
但し敵の技の使用を確認すれば、撃破優先順位を切り替える、野生の勘
怪物に堕ちても尚、役目を果たそうとする姿勢には羨望すら感じるが…
邪魔をするなら、徹底的に排除するぞ
●熱き神域
「この世界にも火山がある……当たり前だけどなんか新鮮だな」
神殿から地下へと踏み入り、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が周囲に視線を走らせる。そこにあったのは、薄暗い洞窟だ。光も通らないような地下でほの暗い光を生むのは、灼熱の溶岩があるからだ。
複雑に入り組んだ洞窟、そこに刻まれた『割れ目』から遥か下の溶岩が見える――あの熱が地上の廃都に恩恵をもたらしていた――その事を、ひびきは察していた。
「そして、あの都市はその恵みを受けていた。それをこのまま廃れさせるのは勿体ないな……そのためにもまずはオブリビオン退治を頑張らねぇと」
自然と共に生きる、特にこのダークセイヴァー世界において時にヴァンパイアと共にあるよりも大きな恩恵があるだろう。
「……ん。彼らの魂からは、あまり怨みや憎しみを感じなかった。むしろ信仰する神々の事を心配していた気がする……」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、思い出す。少なくともあの都市で生きていたモノには、感謝の心があった。魂になってまで背信を想うのだ、あの諦観も自然の脅威としての溶岩を思えば当然と言える。
「……ならば、その心残りを取り除いてあげる。それが、断末魔の景色を教えてもらった私の役目だから」
洞窟の中で、無数の動く気配がある――怪物に堕ちた黒騎士の群れだ。オブリビオンになってなお、神の呪いを受けて狂ったモノ。この洞窟自体が彼等への刑場であり、守るべき場所なのだ。
「俺のやり方がどこまで通じるか分からんが……やるしかないな」
フードの下で小さくため息をこぼし、薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)が身構える。この地下の複雑な洞窟を、黒騎士の群れを倒しながら下へ進むしか無い――ここに猟兵達の、神域攻略が始まった。
●狂った騎士を踏み越えて――
ガシャン、と鎧を鳴らして、黒騎士達が立ち塞がる。ある者は剣を、ある者は斧を、ある者は鎌を――黒騎士達は、それぞれの獲物を構えて襲いかかってきた。
「来い」
朱殷の刻印を起動、ひびきは低く身構える。ブラッド・ガイストによって両腕を殺戮捕食態へと変えたひびきが、素早く地面を蹴った。
ヒュオン! とカウンター気味に放たれた黒騎士の長剣が、踏み出したひびきの首筋に迫る――その斬撃を、ひびきは加速し更に身を沈ませて掻い潜った。
「――ッ!!」
ガ、ギギギギギギギギギッ! と黒紅の刻印が輝き、右手の真紅のかぎ爪をひびきは地面に突き立てる。それで急制動をかけた刹那、ひびきの後ろ水平蹴りが先頭の黒騎士を宙に舞わせた。
そこから跳ね上げた左のかぎ爪で黒騎士の鎧を貫き、そのままひびきは引き裂いた。
「……この人達も、神の下僕でいたくはないだろ」
迫る鎌の切っ先を迎撃の拳で破壊し、ひびきが言い捨てる。前に出た斧を持つ三体の黒騎士が、その体から蛇を生やし襲いかかり――その蛇達が、闇に紛れた黒い矢に射抜かれた。物陰から黒弓【影縫】を射た、悟郎によるものだ。
「怪物に堕ちても尚、役目を果たそうとする姿勢には羨望すら感じるが……邪魔をするなら、徹底的に排除するぞ」
カシャン、と黒弓【影縫】を畳み、即座に悟郎は動く。戦場におけるスナイパーもそうだ、撃ったら移動する。放った一射で居場所がばれてしまえば、スナイプという利点を大きく損なうからだ。
それでも、洞窟という地形が完全な隠密を許してくれない。その点を補ったのは、リーヴァルディだ。
「……聖痕解放。その呪わしき刃にて、生と死を断ち切る」
代行者の羈束・生と死を分かつもの(レムナント・カースブレイド)――自身の左眼の聖痕に取り込んだ霊魂を代償し召喚する、飛翔する三対六刃の黒刃外装がリーヴァルディの周囲に展開される。自身の魂を吸収する激痛を耐性と気合いで耐え、リーヴァルディは告げた。
「……いきなさい、私の刃達」
ヒュガガガガガガガガガガガ! と三対六刃の黒刃外装が、黒騎士達へと放たれた。その刃の乱舞を、黒騎士達は狼の牙や剣の一閃で迎え撃ち――『本命』の前に、動きを止めた。
「……その呪わしき命運を断ち切ってあげる。眠りなさい、安らかに……」
音もなく、狼の牙や剣の斬撃が素通りする――残像だ。軌跡を本物と見間違うほどの速度で荒れ狂う黒刃に、フェイクに反応させられたのだ。
ズザン! と黒刃外装が、黒騎士を刺し貫く。大きくのけぞった黒騎士を、ひびきの渾身の殴打が吹き飛ばし、黒騎士達へと激突させ――陣形を乱したそこへ、悟郎の矢が正確に頭や手足を射抜いていった。
――狂気に堕ちてなお、リピート・ナイトアーツという正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技を黒騎士達は誇っていた。しかし、その武技も連携する猟兵達の前では歯が立たない――本来であれば、もっと広く多い数での戦闘を騎士達のそれは想定していたはずだからだ。
単騎ないし少数、それを念頭に練られた猟兵達の技術と培った経験の前に、黒騎士達は突破されていった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
李・雷
最初こそ神に憑かれた存在なんて滑稽極まるヤツの面を見に来た訳だが、こんなんじゃ落胆を隠せないぜ
負けて敵に操られりゃ怪物か?
堕ちてしまえば怪物か?
正気を失って守るものも忘れれば、それで怪物か?
違ぇよボケども
バケモノってのは誇りと矜持を持っていて、何より自由でなきゃいけねえ
気が変わった
テメェらも、テメェらの親玉もぶっ殺してやる
俺をガッカリさせたツケを払わせてやるから覚悟しやがれ……!
どんだけ磨いた技か知らねぇけど
アタマ空っぽで活かせるほど安いモノじゃねえだろ、それ
黒騎士どもが腕を振り上げる度、一歩踏み込む度
その手足に血の糸を引っ掻けて数センチズラしてやる
ブンブン振り回すだけなんてお粗末だっての
愛久山・清綱
(走るような足音が聞こえる……)
何とか間に合ったようだな……さて、此処からは俺も戦おう。
戦いに散った黒騎士たちの魂を救わねばなるまい……
■闘
予め【破魔】の力を『心切』に宿し、非物質化。
刀による攻撃を【鎧無視攻撃】にしてやるのだ。
【野生の勘】を働かせて連続攻撃を発動する瞬間を【見切り】、
仕掛けてきたら【残像】を見せつつ回避を狙う。
それが難しそうなら、【武器受け】しつつ耐える。
攻撃をしのぎ切ったら、此方の番だ。
敵の集団めがけて【夜見・改】を横一線に薙ぎ払うよう放ち、
【範囲攻撃】で大量撃破を狙ってみせる。
騎士たちよ……後は我らに任せてほしい。
※アドリブ・連携歓迎
クロム・ハクト
執念が形になったか、神から授かった力か<無数の飢牙
敵UCの無数の飢牙を熊猫のからくり人形【武器受け】で防ぎつつ、人狼咆哮で屠る(群れ相手には丁度よいだろ)。耐えた者には糸形状の処刑道具(拷問具)で断つ。
地の底の咆哮を打ち消すように、その楔から解き放つように。
あんた達の果たしたかった事は俺たちでケリをつける。
だからもう眠るといい。
UC使用時は極力仲間巻き込まぬよう留意。
アドリブOK
備傘・剱
地下に進んだ結果、皮肉にも、ヴァンパイアの目を逃れ、他の奴にやられたって所か…
まさに、逃げ場無しって奴だな
沢山いるのなら、青龍撃発動、水弾と呪殺弾、衝撃波、誘導弾、頭の上の一足りないのダイスの一斉射撃で殲滅してやるよ
熱い湯につかった後だ、冷たい水は身に染みるだろうぜ
入り組んだ地下だろうから、壁や、落差もあるだろうし、地形を利用すれば、攻撃もそう受けなくて済むだろうし、接近戦でも、ガントレットで受け流すこともできるだろうぜ
しかしまぁ…
この地下にいる奴は、ずっとここに籠ってたって事なんだろうな
って事は、地上の都市は、ここを隠したくて、滅んだって事か?
なんだか、なぁ…
アドリブ、絡み、好きにしてくれ
鏡島・嵐
木乃伊取りが木乃伊になった、ってわけか。
こいつらも下手に手出ししなけりゃ、みすみす死ぬことも無かったのにな。
……怖ぇけど、ここを突破しないといけねーか……!
他の仲間を〈援護射撃〉で支援したり、相手の攻撃を〈目潰し〉や〈武器落とし〉で妨害したりして、戦いが有利に運ぶように動く。
付かず離れずの間合いを保ちつつ、敵の攻撃が自分に向いたら〈見切り〉で避ける。避けられないなら〈オーラ防御〉で耐える。
敵が鋼の生物を呼び出して来たら《逆転結界・魔鏡幻像》の出番だ。〈第六感〉でタイミングを見計らって、ここぞという場面で打ち消しにかかる。
数は多いと思うけど焦ってもしょうがねえ。仲間と協力してじっくり詰めていく。
鬼桐・相馬
いつから彼らはここを守っているんだろうな。
【POW行動】
騎士鎧による武装なら、視界と速さが犠牲になっているだろう。
攻撃を[戦闘知識]により[見切り][武器受け]後、横や後方等の死角に動き[怪力]をのせた[冥府の槍]で攻撃。武器や小手等の継ぎ目付近を狙い[部位破壊]をしてみるよ。[範囲攻撃]で複数に攻撃が当たるのが理想だな。
金属だって疲労する、……亀裂が入っているぞ。
その状態で相手が高速の連続攻撃を出してきたとしても、受けきれるだろう。[カウンター]でUCを発動、周囲の騎士も巻き込む。
威力が減衰していなければ即視界外へ[ジャンプ]し回避。
今日で、神の呪縛から解放してやる。
共闘・アドリブ歓迎です!
ヒッツェシュライア・テスタメント
心情:
なんとも面白い事を……見ているだけは無理そうだな
戦闘:
「毒には耐性があるから良かったものの、あんな数の黒騎士を討伐するのは少々骨が折れそうだな」
火山の毒は【毒耐性】で平気だろうが、熱さは多少の我慢が必要だろうな
「さて、手に入れたアレを試しに使ってみようか」
『無名祭祀書(写本)』で【高速詠唱】【全力魔力】でUCを発動させよう
「狗神と貴様らの能力比べ、だ!」
物理的にも本能が強い獣、人の怨念や憑き物と呼ばれる狗神をぶつけるとどうなるか、とても興味深いぞ!!
「喰らえ、喰らえ、喰らえぇぇ!!」
攻撃は【オーラ防御】を防ぎつつ【呪殺弾】を【全力魔力】で倒してやる!
あぁ、最高のひとときだ!
●地の底より■を込めて
(「走るような足音が聞こえる……」)
廃都の地の底、そこに踏み入った愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)は心切を引き抜き、心切に宿した破魔の力がその刀身を非物質化した。こちらに気付いたのだろう、洞窟の奥からする足音に清綱は言う。
「何とか間に合ったようだな……さて、此処からは俺も戦おう。戦いに散った黒騎士たちの魂を救わねばなるまい……」
「執念が形になったか、神から授かった力か」
同じくクロム・ハクト(黒と白・f16294)が、その足音に身構えた。迫る黒騎士の群れ、そこにあるのは狂気だ。決して神域の奥、神の元には行かせないという気迫……あるいは、強迫観念。
「来る」
ぶっきらぼうにクロムが告げた瞬間、黒騎士達の体から無数の竜が首を伸ばした。その無数の飢牙を、熊猫のからくり人形を糸で操り壁とした。
ギギギギギギギン! と薄暗闇に飛び散る火花。黒騎士の群れが動きを止めたのと同時、クロムが――地の底の咆哮を打ち消すように、その楔から解き放つように――激しい咆哮を轟かせた。
ゴォ!! とクロムの人狼咆哮が、黒騎士の群れを襲う。重い鎧が浮かび上がるほどの衝撃――しかし、黒騎士達はまだ動きを止めようとはしない。
再び放たれようとした餓狼の牙、それが閃くよりも速く――地を蹴った清綱が、迫る!
「秘伝……夜見」
放たれた横一閃、それに斬撃音はない。非実体化した心切の刃は、その怨嗟と神の呪いを宿す鎧を素通りし、断つべきモノだけを断ったのだ。
「騎士たちよ……後は我らに任せてほしい」
ガシャン、と黒騎士達が、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。断つべきは断った、ヒュオ! と清綱は心切を振るうと視線を洞窟の奥へと向ける。
「あんた達の果たしたかった事は俺たちでケリをつける。だからもう眠るといい」
クロムは黙祷を捧げ、先へと進む。この洞窟には、『糸』が多すぎる――神の呪いという名の操り人形が、ここには大量にいるのだ。
新たに迫る足音を聞いて清綱が前へ、クロムも熊猫のからくり人形を操り前進した。
●化物の証明
バキン! と地面に転がった黒騎士の鎧を踏み砕き、李・雷(血の衝動に抗え・f24333)が吐き捨てた。
「最初こそ神に憑かれた存在なんて滑稽極まるヤツの面を見に来た訳だが、こんなんじゃ落胆を隠せないぜ」
自身へ迫る、黒騎士の群れ。振り下ろされる斧、剣、振るわれる鎌――己を殺そうと迫る凶器と狂気を、雷は興味無さそうに一瞥するだけだ。
「負けて敵に操られりゃ怪物か? 堕ちてしまえば怪物か? 正気を失って守るものも忘れれば、それで怪物か?」
不意に、先頭の黒騎士の斧が大きく逸れる。その軌道に踏み込みながら、雷は牙を剥いて言い放った。
「違ぇよボケども。バケモノってのは誇りと矜持を持っていて、何より自由でなきゃいけねえ」
体勢を崩した黒騎士の顔面を無造作に掴み、雷は握り潰す。ビクン! と一つ跳ねて動かなくなった黒騎士の体を鈍器に、雷は大きく振りかぶり――叩きつけた。
「――気が変わった。テメェらも、テメェらの親玉もぶっ殺してやる。俺をガッカリさせたツケを払わせてやるから覚悟しやがれ……!」
黒騎士達が、左右に散る。狂気に堕ちてなお冴え渡る技――だが、それは雷の心を冷やすだけだった。
「どんだけ磨いた技か知らねぇけど、アタマ空っぽで活かせるほど安いモノじゃねえだろ、それ」
グルン、と黒騎士達の体が、面白いように宙を舞う。まるで、見えない何かに弄ばれるように――否、実際に見えない何かがそこにあるのだ。
我流・怪人欺人(カイジンギジン)――見えないほどに細く研ぎ澄ませた血の糸で、ほんの僅かに黒騎士達の手足を逸らしている、それだけなのだ。
「ブンブン振り回すだけなんてお粗末だっての」
まるで無人の野を歩む獣のように、雷は歩き続ける。このような紛い物に足など止めてやるかと――これこそが化物なのだと、証明するために。
●神域を行く者達
亀裂を見下ろして地の底の溶岩にヒッツェシュライア・テスタメント(死を恐れぬ魔術師・f16146)は笑った。
「毒には耐性があるから良かったものの、あんな数の黒騎士を討伐するのは少々骨が折れそうだな」
振り返れば、ヒッツェシュライアと仲間を囲むように黒騎士達が展開していた。背水の陣ならぬ、背溶の陣とでも言うべきか。
「地下に進んだ結果、皮肉にも、ヴァンパイアの目を逃れ、他の奴にやられたって所か……まさに、逃げ場無しって奴だな」
洞窟の構造を把握して、備傘・剱(絶路・f01759)は呟く。遺跡、特に神殿などにはよくある事だ。自然崇拝から昇華した神を崇める場合、その象徴の近くに神域はある。また自然を神格化する場合の多くが、人々の生活を脅かすほどの災害となる――ようするに、自然崇拝の神を崇める場所は、必然的に過酷な環境にあるものだ。
「しかしまぁ……この地下にいる奴は、ずっとここに籠ってたって事なんだろうな。って事は、地上の都市は、ここを隠したくて、滅んだって事か? なんだか、なぁ……」
廃都はこの溶岩――地の熱の恩恵を得て、発展したのだろう。しかし、それが滅びの原因となったのなら、皮肉な話だ。遺跡の探索を生業とする剱からすれば、よく見る結末ではあるのだが――。
何にせよ、脅威が目の前にあるのには変わりない。黒騎士達が武器を構えてにじり寄るのを、ヒッツェシュライアは笑みで応えた。
「さて、手に入れたアレを試しに使ってみようか」
無名祭祀書、その写本を手にヒッツェシュライアは唱える。
「飢えし狗どもよ、我が衝動を糧とし、我の代わりに殺戮せよ」
全力の魔力で紡がれる、高速詠唱。ヒッツェシュライアが無名祭祀書に刻まれた執念と恐怖、そして己のものを加えたそれを媒介に狗神達が溢れ出した。
『グル、ア、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
敵も味方もない、ただ牙を剥く狗神を従え、ヒッツェシュライアが吼えた。
「狗神と貴様らの能力比べ、だ!」
その刹那、狗神と黒騎士が激突した。目の前の対象を、ただただ駆逐する。それは本能であり、衝動だ。まるで己に牙を突き立て、引きちぎるような鏡合わせの激突――!
「喰らえ、喰らえ、喰らえぇぇ!!」
ただの観戦では、満たされない。自身もやたらめったらと呪殺弾を撃ち込んでいく。その光景が、感触が、手応えが、ヒッツェシュライアを滾らせた。
「あぁ、最高のひとときだ!」
「やれやれ」
剱も咎める事はしない。黒騎士の一体に襲われ、その鎌をフォトンガントレットで弾きながら横回転。剱は空気中の水分を凝縮し形成した青龍の爪を、その手に生み出す。
「天よ、祝え! 青龍、ここに降臨せり! 踊り奏でよ、爪牙、嵐の如く!」
ドン! と黒騎士の胴体を穿ち、爪による真空刃が薙ぎ払われる。そして、逆の腕に宿した青龍の牙を放ち、高圧の水弾で後続を吹き飛ばした。
「熱い湯につかった後だ、冷たい水は身に染みるだろうぜ」
青龍撃(バレットスピーディング)を活かすために、剱は止まらない。床や壁、地形を利用して黒騎士を翻弄、切り刻み砕いていった……。
●そして、神域の奥へ――
――いつから彼らはここを守っているんだろうな。
青黒い炎を点す冥府の槍を手に、鬼桐・相馬(羅刹の黒騎士・f23529)は視線を上げる。背後には黒騎士達の無残な残骸が転がっていた。屍、そう呼ぶのにはあまりにも哀れで、冒涜的なソレが。
「木乃伊取りが木乃伊になった、ってわけか」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、自分で言っておきながら顔をしかめてしまう。当然だ、その鎧の中身は木乃伊どころではなかったのだから。
ある者は乾いた肉だった。ある者は白骨だった。ある者はがらんどうだった。神に呪われた歳月は、容赦なく彼等から命と尊厳を奪い続けていたのだ。
「こいつらも下手に手出ししなけりゃ、みすみす死ぬことも無かったのにな……怖ぇけど、ここを突破しないといけねーか……!」
嵐は、小さくこぼす。巨大な亀裂を飛んで降りる、という選択肢もあるにはあるが――それは悪手だと理解していた。そんなショートカットを、黒騎士の群れが許すはずがないからだ。
「結局、地道に下へ進むしか無いか」
「そのようだ」
相馬の視線を、嵐は追う。どうやら、追加らしい――奥からやって来る黒騎士達の姿に、スリングショットを手に嵐が言った。
「援護する」
「任せた」
短いやり取りと終え、迷わず相馬が駆ける。黒騎士達は各々の武器を構え、迎撃の構えを取ったがそれよりも速く、嵐のスリングショットが放たれた。
ボン! と白い煙幕が黒騎士達を包んだ。視界を奪うのは、ほんの一瞬――だが、その一瞬があれば、相馬には十分だった。
「その命脈の火、落としてやろう」
ゴォ! と青黒い炎が螺旋を描き、黒騎士達へ放たれた。焔落とし、青黒い炎と悪意の立ち昇る冥府の槍による単純に重い一撃が黒騎士の群れを吹き飛ばす!
「金属だって疲労する、……亀裂が入っているぞ」
熱に耐えきれず、ビキリ! と黒騎士達の鎧にヒビが入る。それでもなお反撃しようとした黒騎士の武器へ、宙を舞った武具の群れが迫った。
「鏡の彼方の庭園、白と赤の王国、映る容はもう一つの世界。彼方と此方は触れ合うこと能わず。……幻遊びはお終いだ」
逆転結界・魔鏡幻像(アナザー・イン・ザ・ミラー)――嵐の召喚した鏡に映した武具のコピーが、黒騎士達の一撃を相殺する! その間隙に、相馬は再び冥府の槍を振りかぶり――繰り出す。
「今日で、神の呪縛から解放してやる」
ゴォ! と燃え上がる青黒い炎が、黒騎士達を捉え飲み込んでいく。青黒い炎と悪意を込めた、相馬の慈悲を込めた一撃が黒騎士の群れを欠片も残さず粉砕し、燃やし尽くした……。
下へ、下へ、下へ。猟兵達は、神域を下っていく。
どんな神話でも地の底とは、冥府に繋がっているものだ。その連想の元は暗闇であり、入ったが最後戻って来なかった者達の結末だろう。神話とは創作であっても空想ではなく、その多くが逸話だからだ。
ならば、この神域のそこにあるのは何か? 猟兵達は、まさにそれを目撃しようとしていた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『紅竜の異端神ベルザード』
|
POW : 炎滅の吐息
【自らすら焼き尽くさんとする爆炎の身体】に変形し、自身の【命が討たれた時に大爆発が起こる事】を代償に、自身の【放つ炎熱のドラゴンブレスの火力と範囲】を強化する。
SPD : 熱砂を喚ぶもの
全身を【周辺を非現実的な速度で砂漠化させる熱波】で覆い、自身の【発する熱量】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ : 火は炎に、炎は焱に、焱は燚に
レベル×1個の【可燃物が無くとも周辺に延焼し続ける魔】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
●廃都に潜む異端の炎
『――ォオオオオォォオオオオオオォォォ……』
地の底、溶岩の海から『ソレ』は浮かび上がってきた。もはや、狂えるオブリビオンとさえ呼べない存在――紅竜の異端神ベルザードがその翼を広げた。
『オオオ、オオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
熱砂を喚び、岩を砂へと変えていく。元よりベルザードであったのか、あるいはベルザードへと成り果てたのか。もはや歴史の闇に埋もれたソレの正体を知る術はない。
ただ、明らかな事が一つ。ベルザードは、確かな怒りをもって目覚めたという事だけだ。己の神域へと踏み入ったモノを、決して許さない――異端の炎は、全てを焼き尽くすために、動き出した……。
備傘・剱
ヴァンパイアだけじゃなく、こんなもんまで居やがったとはな…
こいつを倒せば、ヴァンパイアに支配されいない土地が手に入るんだな
やってやるよ!
オーラ防御は全力展開、洞窟内だろうから、遮蔽になりそうな物はあるだろう
そいつで攻撃を防ぎつつ、空中浮遊で接近してみる
衝撃波、誘導弾、呪殺弾、頭の上に一足りないの弾幕を張りつつ、羽に対し、部位破壊を仕掛ける
動きが鈍くなった所に、念動力で動きを一瞬でも封じれたら、鎧砕きと鎧無視攻撃を重ねた黒魔弾を叩き込む
ワイヤーワークスのワイヤーで縛り上げて、他の仲間のサポートもできるはずだ
この竜…、倒したら、その肉を食らってやる
捕食される恐ろしさ、味わってみろ
アドリブ、お好きに
茜谷・ひびき
……こいつが異端の神
なるほど、神様だって言われるのも納得だ
あんな炎、まともに喰らったら一瞬で消し飛んじまう……!
鉄塊剣を盾にしつつ戦うぜ
熱波は【オーラ防御・激痛耐性・火炎耐性】で身を守りつつ耐えるしかない
接近戦を行うけれど、危なくなったらすぐに離脱する事を意識しつつ戦うか
近づく時は【ダッシュ】で一気に接近
刻印を起動して、腕であいつに食らいつく!
【怪力】も使って狙うは傷口
【傷口をえぐる】ようにしつつ、食らった部分は【生命力吸収】だ
ドラゴンなんて滅多に食えるもんじゃない
しっかり味は覚えさせてもらう
必要に応じて鉄塊剣でも相手をぶん殴るぜ
鱗も硬そうだしな……
【鎧砕き】でしっかり攻撃していきたいところだ
薬師神・悟郎
…信じられないだろ
異端神であれば、強力な力を持つと予想はしていたが…
予想を裏切り軽々越えていく現状に思わず顔がひきつりそうだ
事前に複数の耐性とオーラ防御
すぐに態勢を整えられたのはこれまでの経験があったからだろう
UC発動
最初から全力でいく
目の前の驚異から無事に生きて帰ることを思えば、削られる寿命など細やかな問題に感じる
弓を使い、遠距離から狙い打つ、スナイパー、視力
地形の利用、逃げ足で立ち回り、硬い部位は2回攻撃で同じところを狙い部位破壊
炎滅の吐息は火炎耐性とオーラ防御を重ねがけし対処しよう
異端神相手に麻痺毒や属性攻撃がどれだけ通じるか…
傷口をえぐり、生命力吸収で少しずつでも確実に積み重ねていこう
●紅竜の異端神
バサリ、と溶岩を払うように紅竜の異端神ベルザードはその翼を広げた。その威風堂々たる姿は、この神域の主である事を見る者に納得させる迫力がある。
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
ベルザードが、飛ぶ。その巨体が浮かぶというのは物理法則を無視した目を疑う光景だが、その場にいた誰もがその事実を受け入れるしかなかった。
「……信じられないだろ。異端神であれば、強力な力を持つと予想はしていたが……」
大地の割れ目からゆっくりと上昇しようとする紅竜の姿に、薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)は自身の表情がひきつりそうだと感じていた。これはもはや、生物に抱く感想ではない。圧倒的な自然、天災や災害を前にした感覚に近い。
『オオオ、オオ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
熱波が、大気を歪める。未だ遠くにあるはずのベルザードが放つそれに、呼吸だけで肺が爛れそうな熱を感じて茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)がこぼした。
「……こいつが異端の神。なるほど、神様だって言われるのも納得だ。あんな炎、まともに喰らったら一瞬で消し飛んじまう……!」
「ヴァンパイアだけじゃなく、こんなもんまで居やがったとはな……」
備傘・剱(絶路・f01759)が、目を細める。紅竜の異端神ベルザードの威風を見て――否、見たからこそ言う。
「こいつを倒せば、ヴァンパイアに支配されいない土地が手に入るんだな――やってやるよ!」
ここまで至った猟兵には、戦う理由がある。ならば、躊躇う理由はない。猟兵達は、姿を見せた紅竜の異端神へと、挑んでいった。
●爆炎の覇者
『――――』
不意に、ベルザードが上昇を止めた。その動きを見て、悟郎は意識して呼吸を整える。
「最初から全力でいく」
目の前の驚異から無事に生きて帰ることを思えば、削られる寿命など細やかな問題に感じる――悟郎は血統覚醒によってヴァンパイア化。黒弓【影縫】を、即座に射放った。ヒュオン! と真っ直ぐに射込まれる、闇に紛れる黒い矢。その矢が、空中で炎に飲まれ燃えていった。
「これほどかっ!」
だが、悟郎は今の矢でベルザードがまとう熱波の『間合い』を把握する。一度黒弓を畳み、走り出した。割れ目や岩場を蹴って、射撃地点を再調整する。
(「……熱波にはムラがある。弱い部分なら十分に――」)
ガシャン、と再び黒弓【影縫】を展開した悟郎は黒矢を射た。ヒュガ! と今度は火の粉を散らしながら、黒矢が真紅の鱗へ届く――そして、弾かれた刹那ほぼ同時に放たれていたもう一矢が鱗を貫いた。
「異端神相手に麻痺毒や属性攻撃がどれだけ通じるか……」
悟郎が呟いた、その時だ。ベルザードが、大きく息を吸い込む。直後、炎熱のドラゴンブレスが放たれた。
「――ッ!!」
その炎の中へ、ひびきが鉄塊剣を盾のように眼前に構え飛び込んだ。赤い世界――オーラで全身を覆うと届く熱を感じながら、一気に落下する!
ズザン! と全体重を乗せて、ひびきが鉄塊剣の切っ先をベルザードへと突き立てた。
「ドラゴンなんて滅多に食えるもんじゃない、しっかり味は覚えさせて――」
もらう、という言葉が、喉奥で燃え尽きた。ひびきが抉った傷口からすすったヘルザードの生命力は、まさにマグマのように熱く濃密なものだった。一口嚥下するだけで、喉や胃を焼けただれさせるような熱の流動体。思わず、自分の中が燃えたような錯覚に襲われた。
「こっちだ!」
「……ッ」
剱のワイヤーを掴んで、ひびきが後退する。ガツンと来る、とはよく言うが、あまりにもキツすぎる生命力だった。
『オ、オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
ベルザードが周囲に展開した魔炎が、洞窟中を荒れ狂う。それに、剱は岩を盾にしながら叫ぶ!
「漆黒の魔弾はいかな物も退ける。罠も、敵も、死の運命さえも!」
ヒュオン! と放たれた漆黒の魔弾が、不規則な機動出魔炎の群れをかいくぐり、ベルザードの翼を撃った。着弾と同時、ベルザードの巨体が大きく揺らぐ。
ベルザードは、そのまま近場の大地へと降り立った。ズン……、と地面を揺らして、ベルザードは虚空を見上げ――吼えた。
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
怒り、確かな怒りがそこにはあった。己の神域に踏み入り、なおも邪魔する者への怒り。その紅竜の異端神が怒りと共に放つ熱波を見下ろし、剱は吐き捨てた。
「この竜……、倒したら、その肉を食らってやる。捕食される恐ろしさ、味わってみろ」
まさに、食うか食われるか。壮絶なまでの命のやり取りが、そこにはあった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鏡島・嵐
……どこの世界でも、つくづく神サマってのはぶっ飛んでるよな……!
理不尽で、傍若無人で、それを裏打ちする力もしっかり持ってると来た!
こんなのと戦り合うとか怖いどころじゃねえけど、やるしかねえ、よな……!
とりあえずコイツの操る火の力を少しでも抑えないと、戦いにもならねえよな。
なので《幻想虚構・星霊顕現》で水の元素を操って、新たに吐き出された炎や燃え続ける炎を片っ端から消して回る。
制御に専念するから防御・回避は〈第六感〉〈オーラ防御〉〈火炎耐性〉を駆使して、最小限度に留めてえな。勿論、そう言ってられない局面ではちゃんと防御を優先するけど。
あとは、他の仲間に合わせて〈援護射撃〉も撃てる時に撃つ。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。凄まじい熱量ね。
まさか正体が赤竜とは思いもしなかったけど…。
この地を解放する為に、人々の平穏の為に…。
紅竜の異端神ベルザード、貴方を討つ。
黒刃外装と“火避けの呪詛”を維持(火炎耐性、環境耐性)して、
不可視の手を繋ぐように空中戦を行う黒刃を操り、
戦闘知識を頼りに敵の殺気を見切り、他の猟兵を援護する
…それが貴方の切り札。ならば此方も…!
第六感が好機を捉えたら黒刃と大鎌を合体し、
自身の生命力を吸収して魔力を溜めUCを発動
全身を超圧縮した魔力のオーラで防御
怪力の踏み込みから弾丸のように突撃し、
限界突破した神剣をなぎ払う時間属性の2回攻撃を放つ
…もう荒ぶり狂う必要は無い。
眠りなさい。安らかに…。
李・雷
かはっ!地下に篭ったトカゲ風情が神だとは笑わせる!
矜持が感じられねぇんだよ、テメェは!
熱波やブレスに身を曝しながら、正面切って威圧するようにゆっくり進む
確かに炎はバケモノに効くもんだ
だが知ってるか?吸血鬼は死んでも蘇るんだぜ
お前はどうだ、トカゲ野郎
殆ど体が炭化していようが関係ねえ
必ずヤツの目と鼻の先まで辿り着いて、本物のバケモノがどういうものかを刻み付けてやる
さぁ、食事の時間だ
”バケモノの怖さ”を思い知って死んでいきやがれ!
縄張りン中でお山の大将気取ってるだけの爬虫類がよォッ!
絶命後の大爆発は考慮に入れずに動くぜ
そんな程度で死ぬなら俺もそこまでだってことだろ
鬼桐・相馬
異端神であろうと、ここより更なる深淵へ送るだけだ。
【POW行動】
ここに至った通路と逆方向に向かうように戦闘。退路を塞がれては困る。
息絶える時に大熱波を引き起こすなら、体積を減らせば被害も少なくなるか。
[ヘヴィクロスボウ]に[凍てついた短剣]を装填し紅竜へ撃ち出す。一瞬の隙でいい、白煙が上がる瞬間を見越して[ダッシュ][ジャンプ]。[火炎耐性][激痛耐性]に加えて自身も冥府の炎を纏い抵抗しながら[冥府の槍]に[怪力][部位破壊]をのせUC発動。片翼、あるいは両方を切断する。
……狂った神にも、痛みはあるのか。
お前が守ってきた神域、ダークセイヴァーの人々の為に使わせて貰うよ。
共闘・アドリブ歓迎です!
クロム・ハクト
あんたはもう神じゃない、神だったモノだ。
―だからここで、終わりにする。
仲間が戦っている間にUC咎力封じの拘束具を用意していた形。(お陰で準備は整った、等と告げ)
その戦闘の隙に(あるいは処刑道具の糸を敵に絡めて)近付き、UCで攻撃する。
そら、あんた専用の装束だ、あんたが気に入るかは知らないが。
そのまま地を這うと良い。
可能なら飛翔(熱砂を喚ぶもの)を、そうでなくとも威力を和らげ今後を含む周囲への影響を抑え(メタ視点では死亡時の爆発含む)、トドメに繋げる。
畳み掛ける流れであれば、からくり人形で傷口をえぐるように攻撃する。
この世界は、今生きる者の場所だ。
アドリブOK
愛久山・清綱
何という……伝承に現れるドラゴンそのものだな。
其の炎は一瞬にしてあらゆるものを灰に帰してしまいそう。
……だが、やはりワクワクするのだよな。
■決
飛んでいる相手なら、此方も【空中戦】で羽ばたくとしよう。
戦場を縦横無尽に駆け回り、相手を翻弄するのだ。
熱波は予め【オーラ防御】を纏うことで耐えよう。
■闘
先ずは熱波を【野生の勘】で感じ取りつつ、空中【ダッシュ】で
ベルザードの攻撃から逃れつつ距離を取る。
相手の死角に潜り込むことができれば、攻めの好機だ。
好機が来たらベルザードを【視力】を凝らして凝視、全身に【破魔】の
力を込めて【心切】を放ち、魂を斬り伏せてやるのだ。
※アドリブ・連携歓迎
●異端の炎
大地に降り立った――否、引きずり堕とされた神竜の怒りは、いかほどか。
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
熱い大気が震え、暴れる。それに肌を焦がされるような感覚を感じながら、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)はガチガチという音を聞いた。
それが自分の噛み合わない歯の音と気付いて、嵐はガキンと歯を噛みしめる。
「……どこの世界でも、つくづく神サマってのはぶっ飛んでるよな……! 理不尽で、傍若無人で、それを裏打ちする力もしっかり持ってると来た! こんなのと戦り合うとか怖いどころじゃねえけど、やるしかねえ、よな……!」
覚悟が決まっている訳ではない、しかし、嵐には決意があった。勝たなければ終わり、それがこの異端の神が住む地に踏み入った者の運命だからだ。
「……ん。凄まじい熱量ね。まさか正体が赤竜とは思いもしなかったけど……」
「何という……伝承に現れるドラゴンそのものだな。其の炎は一瞬にしてあらゆるものを灰に帰してしまいそう……だが、やはりワクワクするのだよな」
リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が黒刃外装を展開し、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)が心切の柄へ手を伸ばす。
まさに英雄譚や神話の一幕のような光景だ。強大なる竜神に挑む英雄達の中で、クロム・ハクト(黒と白・f16294)が告げた。
「あんたはもう神じゃない、神だったモノだ――だからここで、終わりにする」
ベルザードは、その言葉を否定する。咆哮、己こそが神であると宣じるようにベルザードは飛んだ。
●神と呼ばれるモノ、神と名乗るモノ
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
熱砂を喚び、ベルザードは再び飛び上がる。岩が刹那で砂へと変わる温度――それが届く前に、ジュ! と白煙が周囲に溢れかえった。
「Linking to the Material, generate archetype code:X……!」
タイミングを測っていた嵐の幻想虚構・星霊顕現(ガーディアンズ・ファンタズム)が水の元素を操り、熱砂と相殺されたのだ。白煙――そう呼びたくなるほどの水蒸気が、ベルザードと猟兵達を大きく分けた。
「この地を解放する為に、人々の平穏の為に……紅竜の異端神ベルザード、貴方を討つ」
ヒュガガガガガガガガガガガガガガガガ! とリーヴァルディの操る黒刃が、水蒸気を貫きベルザードに迫る。それに合わせたのは、鬼桐・相馬(一角鬼の黒騎士・f23529)だ。
「異端神であろうと、ここより更なる深淵へ送るだけだ」
凍てついた短剣をヘヴィクロスボウへ装填、相馬は射撃する。ベルザードのブレスが、黒刃と凍てついた短剣を迎撃。凍てついた短剣の冷気とブレスの炎が水蒸気爆発を巻き起こし、放った勢いでベルザードの巨体が後方へ飛んだ。
「な、あ!?」
嵐が、驚きの声を上げる。仕方がない、ブレスを吐いた勢いで後方へのけぞったベルザードが空中で後転。その勢いで、その凶悪な尾を跳ね上げたのだから。
ブォ! と水気を払ったベルザードは、そのまま上の岩に着『地』。グッ、と足に力を込めるとそのまま猟兵達へと突っ込んだ!
「――ッ!」
ドォ! と轟音を上げて、足場が砂へと変わって弾け飛ぶ。背の翼で飛んでいる訳ではない、発する熱量に比例する飛翔能力だからこそ可能にする機動力だ。
「これがドラゴン……!」
紙一重で衝撃をかいくぐり、清綱が息を飲む。その動きに、常識は通用しない。生物としての機能はおろか、物理法則さえ嘲笑う絶対強者――彼等が相手にしているのは、ただの竜ではない。紅竜の異端神――竜にして、神たるモノなのだ。
『グル……』
不意に、熱砂の中心でベルザードが視線を下ろす。その先に立つ影に気付いたからだ。
「かはっ! 地下に篭ったトカゲ風情が神だとは笑わせる! 矜持が感じられねぇんだよ、テメェは!」
荒れ狂う熱砂の中を歩くのは、李・雷(血の衝動に抗え・f24333)だ。その肌を火が点いた火薬のように燃える熱砂が炙っている。人であれば、一秒たりとも生きていけないそこで、しかし化物は笑う。
「確かに炎はバケモノに効くもんだ。だが知ってるか? 吸血鬼は死んでも蘇るんだぜ」
お前はどうだ、トカゲ野郎――そう炭化した口元の肉を剥離させながら、雷は笑ってのけた。そこにいるのはもはや人ではない、人の形をした何カだ。
だから、ベルザードは否定する。ベルザードの尾が小石を払うように薙ぎ払われるのを、化物は炭化した黒い体で真っ向から迎え撃った。
●■が堕ちる日
神域が、竜に蹂躙されていく。多くの自然崇拝から来る信仰とは地震や火山の噴火、雪崩、洪水や干魃などなど自然の災害が起きた『後』に発生するものだ。
――どうか、起こってくれるな。
自然崇拝の基本はその懇願であり、最大の神からの恩恵とは何も起きないという事なのだ。ここが神域と呼ばれた理由もそれだ、どうか怒ってくれるな、暴れてくれるなと言う懇願だったのだ。
だが、祈る者のいない神域は神域ではない。ただの被災地だ。ただ、今回は紅竜の異端神ベルザードという形をもった災害であっただけだ。
荒れ狂うベルザードを前に、猟兵達は凌いでいく。竜の姿をした災害を討つ、そのための一手。そレをもたらしたのは――。
『ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
崩れる天井を見上げ、ヘルザードが吼えた。天井が崩れた事にではない、自身の頭上に築かれた巨大な糸の拘束具を察知したのだ。
「そら、あんた専用の装束だ、あんたが気に入るかは知らないが。そのまま地を這うと良い」
ヒュルリ、とクロムが操る処刑道具の糸がヘルザードへ巻き付いていく。強引にヘルザードは、背の翼を広げる――例えるなら、拘束される瞬間に腕を広げておき『隙間』を作っておくのと似た意図だ。こうすれば、拘束されてもすぐに緩む――だが、それを許さない者がいた。
「秘伝……心切」
鞘に納めた心切の柄に手を伸ばし、清綱が飛ぶ。収束する糸をかいくぐり、広げた翼の死角を利用して猛禽の翼で迫ると心切(シンキリ)の居合一閃がヘルザードの翼を断ち切った。
『グ、ガ、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
ヘルザードの巨体が、落下する。なおも足掻こうとするヘルザードへ、必死の想いで嵐はお手製のスリングショットを撃ち込んだ。
「行けぇ!!」
『ッ!?』
弾丸、癇癪玉がヘルザードの眼前で炸裂する! 一瞬瞳を閉じた竜の間隙に、クロムはからくり人形を操り、その片目を抉った。
「この世界は、今生きる者の場所だ」
激痛にヘルザードが身をよじった瞬間、下に回り込んでいた雷が吼えた。
「さぁ、食事の時間だ。“バケモノの怖さ”を思い知って死んでいきやがれ! 縄張りン中でお山の大将気取ってるだけの爬虫類がよォッ!」
突き上げられた血の細剣が、ヘルザードへ突き刺さる。そこへ、上から吸血鬼狩りの業・絶影の型(カーライル)によって決戦形態となったリーヴァルディと冥府の炎をまとった相馬が襲いかかった。
「……もう荒ぶり狂う必要は無い。眠りなさい。安らかに……」
自らを弾丸としたリーヴァルディの突進。そして、黒刃と大鎌を合体させ限界突破した神剣を縦と横の二連撃を繰り出した。
『ガ、ア、アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
「……狂った神にも、痛みはあるのか」
なおも敗北を否定しようとするヘルザードへ、いっそ優しく語りかけ、相馬は青黒く燃える冥府の槍を振りかぶった。
「お前が守ってきた神域、ダークセイヴァーの人々の為に使わせて貰うよ」
ゴォ! と絡み合う青黒い炎と悪意の黒炎――相馬の放った鬼切の一撃を受けて、ヘルザードの巨体がついに地面に倒れ伏した。
雷が、倒れたヘルザードを見る。今にも大爆発を起こす神を見る化物に、異端神は残された片目だけで見て――口の端を持ち上げた。
がらり、とヘルザードの巨体がずれ落ちる。大地の裂け目から落ちた竜は下の溶岩へと真っ逆さまに――ゴゥン! と鈍い爆発を起こし、溶岩の表面が盛り上がった。
その最期、竜として堕ちたのか神として堕ちたのか、定かではない。ただ、その日、ヘルザードはその神域から完全に消え去ったのだった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵