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糸し糸しと言う心

#サムライエンパイア #シリアス

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#サムライエンパイア
#シリアス


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●離別(わか)れ近し
 さめざめと、ただひたすらにさめざめと、少女は泣き続けていた。
 父親の手によって屋敷の奥座敷に閉じ込められた彼女には、それしかできなかったからだ。扉の前には腕自慢の下女が見張りとして常に待機していて、部屋の外に出してもらえるのは厠へ行く時くらい。
(「誠之助さま……せめて誠之助さまには、この不義理が私の本意ではない事をお伝えしたい……」)
 少女は想う、愛しき人のことを。
(「奈津は無事に、誠之助さまへ文を届けられたかしら……」)
 少女は想う、自分に付いて時には友人のように、時には姉のように接してくれる一番の理解者である女性のことを。
(「あんな人の後妻となるなら、いっそ――」)
 頭の中によぎる考えは、この縁談を聞いた時から浮かび上がっていたもの。けれども。
(「だめだわ……私が命を断ってしまったら、三橋家は破産して、家族は路頭に迷ってしまう……」)
 涙ながらに謝罪を繰り返しながら、この縁談を飲むしか家が生き残るすべはないと少女に懇願する両親。まだ家督を継ぐには幼い弟。
(「……あの男は、私の代わりにまだ幼い妹を要求してくるかもしれない……」)
 心に思う人がいる。本来ならば彼との結婚は認められただろう。けれども、今、家の存続は少女の結婚にかかっていて。断れば家は破産、命を断てば破産か、まだまだ幼い妹が身代わりにされるに違いない。家族を大切に思う少女には、自らの想いを貫き通すことも家族を捨てることもできない――。

 男は自分の無力さに唇をかみしめていた。
 恋仲である彼女の使いの女性の話と彼女直筆の手紙から、彼女がおかれている状況も、自分から心が離れたわけではないこともわかった。けれども。
(「我が家には、三橋家の財政を救えるほどの財はない」)
 武家であっても決して裕福とはいえぬ男の家であったが、彼女とならば慎ましくも温かい家庭を築く事ができるだろうと考えていた。
(「おのれ酒田屋……だが我が家も懇意にしている札差だ。個人的感情で主人の機嫌を損ねれば、我が家も陥れられるだろう」)
 男は確信していた。三橋家の財政難は、娘である志乃を手に入れるために札差の酒田屋が仕組んだものだろうと。だが、証拠はなにもない。あるのは酒田屋の悪評だけ。
 彼女を救いたい。彼女と共に生きたい。けれども、自分にできることはなにもない――。

●恋と悪事とオブリビオン
 グリモアベースの中、長身のその男が立っている場所の背景には、サムライエンパイアの景色が揺らいで見える。
「来てくれたんだね。サムライエンパイアでの事件を予知したのだけれど、聞いていってくれないかい?」
 漆黒の髪に緑の瞳を持つその男性は、結布院・時護(時と絆を結び護る者・f11116)というグリモア猟兵だ。集まった猟兵達に優しい表情で語りかける。
「オブリビオンが絡んでいると予測される事件があるんだ。ひとつひとつ解決していくことで、オブリビオンの情報を集め、そして最終的にはオブリビオンを見つけ出して討伐して欲しい」
 彼が語るには、恋仲であるとある武家の嫡男と、とある武家の長女が引き裂かれようとしているのだとか。
「三橋家の財政は元々それほど豊かであったわけではないのだけれど……最近の逼迫具合が酷く、娘の志乃さんを嫁に差し出せば援助をすると、酒田屋という札差の主人が持ちかけてきたんだ」
 札差とは、今回の場合は今でいう金融業のようなものと考えていいだろう。つまり娘と引き換えに金を貸す、あるいは借金を帳消しにする――そんな提案をしたということだ。
「この縁談話を承服せねば、三橋家は破産し、家族は路頭に迷うこととなる。だが娘である志乃さんには惹かれ合う相手がいて、いや、そうでなくとも親子ほど年の離れた男の元へ後妻として嫁ぐのには抵抗があるだろうね」
 けれども家族のことを思うと、彼女は自分の想いを優先することができない。
「志乃さんの恋の相手は、滝川家の長男、誠之助さん。彼は志乃さんの味方である三橋家で働く女性、奈津さんの話と志乃さんからの手紙によって、彼女が自宅の奥座敷に軟禁されていることと、自分への想いが無くなったわけではないこと、けれども家族のことを思えば下手に動けないということ……そして縁談の相手が酒田屋の主人であることを知っているよ」
 けれども滝川家も、三橋家に援助ができるほど裕福ではなく、酒田屋とは懇意にしている。誠之助が酒田屋相手に勝手なことをすれば、滝川家もただでは済まないだろう。
「酒田屋は悪い評判も多いみたいでね、それらを知っている誠之助さんは、今回のことは志乃さんを手に入れるために、すべて酒田屋が仕組んだと思っているみたいだね」
 けれども証拠はどこにもなく。
「今の時点ではまだ、どんなオブリビオンがどんな風に関わっているのかわからないけれど……目の前にある問題を解決していくことで、情報が集まってくると思うから――向かってくれるかい?」
 時護は猟兵たちの顔をひとりひとり見て、告げた。


篁みゆ
 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、サイキックハーツでお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオの最大の目的は、「黒幕オブリビオンの討伐」です。
 ですが、オブリビオンの姿も目的もまだ分かっていません。
 目の前の問題を解決していくことで、黒幕への道を見つけ出しましょう。

 第一章では、オープニングの通り、不本意な縁談を迫られ、家のために身動きが取れず引き裂かれるしかない彼らを救ってあげてください。

 ■三橋・志乃(みつはし・しの)……15歳。三橋家の長女。誠之助と恋仲。両親と幼い弟妹がいる。自宅の奥座敷に軟禁されている。

 ■奈津(なつ)……20歳。三橋家で働く女性。志乃の世話を主に担当し、志乃の味方。食事や身支度の手伝いなどで、志乃のいる奥座敷に出入り可能。

 ■滝川・誠之助(たきがわ・せいのすけ)……19歳。滝川家の長男。志乃と恋仲。酒田屋を疑っているが、証拠はない。

 ■酒田屋(さかたや)……札差を生業としている男。良くない噂が多い。志乃を後妻に迎える事を条件に、三橋家の財政を救う提案をしている。

 第二章では、新たな問題への対処をしつつ、黒幕オブリビオンへと迫ってゆく予定です。

 第三章では、黒幕オブリビオンとの直接対決になります。

 ご参加はどの章からでも、何度でも歓迎いたします。

 現地まではグリモア猟兵の時護がテレポートしたのち、猟兵のみなさまをお喚びする形となります。

 時護は怪我をしたり撤退する猟兵のみなさまを送り帰したり、新たな猟兵の皆さまを迎えたりと後方で活動しており、冒険自体には参加いたしません。

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

 皆様の行動がどのようなお話へと化学変化するのか、プレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『望まぬ結婚をぶち壊せ』

POW   :    少々過激だが力づくの行動に出る。花嫁誘拐や両親の脅迫等。

SPD   :    すでに別の結婚話の既成事実の証文を偽造したり、結婚に必要な道具を盗み出す。

WIZ   :    破談になるよう交渉する。対象が結婚を断れるよう後ろ盾を作ってあげる。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ライラック・エアルオウルズ
愛しと思う気持ちには、想像でしか添えないけど。
ハッピーエンドを望むのは、平凡な作家の性、だからね。

【WIZ】(情報収集・言いくるめ・恐怖を与える)
僕は酒田屋の行為についての証拠集め、
それを使っての交渉を試みる。

三橋家が借金している相手・酒田屋に借金をしている人物、
…まずは、その辺りを狙って情報収集。
恐らく、心から感謝している人も少なそうだし。
「三橋家の縁談話について、何か知ってるね」
「酒田屋と共倒れしたくないなら、話すべきだよ」
なんて、少しだけ脅しつつ揺さぶりを。

証拠が掴めれば、情報共有。
或いは、酒田屋直接に叩きつけよう。
「この情報、ばら撒いたら…貴方は困るだろうね」
「まあ、時間の問題だけど」


エステシア・プライド
若人の恋路は見ていて心潤うな
二人の恋路が戯曲の如き悲恋に終わるは忍びない

余も尽力するとしよう

酒田屋なる札差、世評の悪い男のようだな
この手の輩は、己の蓄えた財貨という武器が通用せぬ相手の介入を、何よりも恐れるもの

余は江戸幕府の「天下自在符」の権限をもって、町人から酒田屋の話を集めよう
徳川の紋所を持つ見慣れぬ者が、酒田屋を嗅ぎ回っていると、当人の耳に噂が届くようにな

その上で、酒田屋が後妻に迎えようとしている三橋家の者に、
江戸幕府の公儀隠密が接触し、酒田屋の内情を探るように協力を取り付けたと、それらしく世評を操作してくれようぞ

志乃という娘への懸想と、己の保身と

酒田屋の心の天秤は、どちらに傾くかな



●企む者の素顔を探すべし
(「若人の恋路は見ていて心潤うな」)
 時護から説明を聞き、町へと降り立ったのはエステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)。その金色の長い髪を揺らしながら歩き、金の瞳であたりを行く人々を眺める。
(「二人の恋路が戯曲の如き悲恋に終わるは忍びない。余も尽力するとしよう」)
 その手には、江戸幕府から与えられた『天下自在符』が。これがあれば人々から情報を聞き出すことは難しくないだろう。
「そこの女、聞きたいことがある」
「へ、へぇっ……!? な、何でございっ……」
 エステシアの手にある『天下自在符』を見た振売の中年女性が、天秤棒を落としそうになりながらなんとか踏みとどまる。
「酒田屋について聞かせてほしいんだが」
「さ、酒田屋……あんたみたいなとびきりのべっぴんさんが、ま、まさか御公儀の隠密……?」
 女性の言葉を特に否定も肯定もせず、泰然としているエステシアを見て、女性はごくりと唾を飲み込んだ。
「まあ、本物の隠密が問われて『はい』と答えるわきゃないね。……酒田屋の事かい、となればやっぱり後妻のことだろうねぇ。ここだけの話だけどさぁ」
 ここだけの話……それが誠に『ここだけ』で留まらぬものであることを、エステシアは長年の経験から知っている。
「正直、後妻も七人目となると、ちょっとどうなのって思わないかねぇ」
「……七人目とはどういうことだ?」
「どうもこうもそのままの意味だよ。三月前に六人目の後妻が亡くなったばかりなのに、まだ新しい後妻を迎えようなんて、どんだけ好色なんだか……」
 呆れたようにため息を付いた女性は、慌てて「あたしが話したって内緒にしてくれよ」と付け加えた。エステシアはそれに重々しく頷き告げる。
「では、余の事も内密にな」
 女性は「勿論だよ」と告げて去っていったが、職業柄、あの女性はたくさんの住民と話をするだろう。ならば『ここだけの話』が頻出する可能性も高い。酒田屋を探っているエステシアをご公儀の隠密だと思った彼女の口から話が広まれば、エステシアの思惑通り『徳川の紋所を持つ見慣れぬ者が、酒田屋を嗅ぎ回っている』と当人の耳に届くのも遠くはあるまい。
 その後もエステシアは噂の集まる場所、噂の広まりやすい場所に目をつけ、町人たち中心に聞き込みを続けた。

(「愛しと思う気持ちには、想像でしか添えないけど。ハッピーエンドを望むのは、平凡な作家の性、だからね」)
 町を歩いて、酒田屋に借金をしている人物数人に会ってきたライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)は、同じく酒田屋を調べていたエステシアと情報を共有していた。
「他の札差と取引のある者にも聞いたが、酒田屋はいわゆる悪徳……明らかに返済の見込みの立たぬ者へも融資をするようだ」
 通常の手段で返済の見込みが立たなくなった者からの取り立てるのは、恐らく『酒田屋が返済額に値すると思ったものすべて』であろうことはエステシアもライラックもすぐに想像がついた。
「僕の方は酒田屋に今も借金をしている人物を当たったんだけど」

 ライラックがまず接触したのは、借金まみれだったはずなのに最近羽振りがよくなったと噂の浪人。昼間から酒を煽っているその『秋元』という浪人の隣に座り、昏い声でそっと囁く。普段は作家の彼だが、今だけは俳優になりきって。
「三橋家の縁談話について、何か知ってるね」
「っ!?」
 ガタガタガタッ……ガシャン……。
 その囁きに激しく動揺を見せた秋元は椅子から転げ落ち、その拍子に酒瓶が何本か割れた。
「お、俺はただっ……言われた通りに『桜華楼』の座敷で、三橋の旦那の酒の相手をしただけ……」
「へぇ。その座敷では、食事をして酒を飲んだだけかい?」
 言葉だけ見れば優しく問いかけているようにも聞こえる。だが、ライラックの声色とその瞳に宿る光に、秋元は一瞬で酔いから覚めて恐怖を募らせていく。
「酒田屋と共倒れしたくないなら、話すべきだよ」
 脅しを含んだ揺さぶり。通常ならば思い通りに転ぶかどうかは半々だろう。だが、今回は思ったより相手が小物だったからかそれとも少しでも罪悪感を抱いているからか、秋元は震えながら口を開く。
「俺は、今回は、初めて声かけられて……だから、知らなかったんだっ……!! 酒田屋がい、いつも、『桜華楼』であんなことしてるなんて……!」

「『あんなこと』とはなんだ?」
 ライラックの話に耳を傾けていたエステシアが問う。ライラックはメモをめくりつつ、それに答えていく。
「まず『桜華楼』というのは、個室もある料理茶屋で、酒田屋が懇意にしている店らしいよ。で、そこで行われているのは一言でいえば――」

 ――証文の作成。

「証文の『偽造』ではないのか?」
「偽造といえば偽造なんだけど、完全な『偽造』とはちょっと違うみたいなんだよ。酔わせて前後不覚になった相手に署名させたり、イカサマ賭博的なものを使ったり、まあ、違法に借入の証拠を作らせていたみたいでね」
 つまり証文としては有効なものが出来上がるというわけだ。証文自体を『偽造』したわけではないのだから。
「なるほど」
「僕は秋元が口にした『いつも』というのは、相手を罠にはめて借金を背負わせることだと思っていたんだけど、エステシアさんの話を聞いてもうひとつの可能性に気がついてしまったよ」
「もうひとつ――志乃の前の六人の後妻、か?」
 少し考え込んだのちにエステシアが出した答えに、ライラックは満足げに頷いて。
「六人目の後妻が亡くなって三月しか経っていないのに、酒田屋は志乃さんを後妻に迎えようとしている。しかもそれはかなり無理矢理な手段で。ということは」
「それまでの後妻も、似たような手で迎えた可能性があるな」
(「単純な懸想ではなかったということか」)
 顎に手を当て、エステシアは考え込んだ。

 三月前に亡くなった六人目の後妻。短期間に後妻を迎える理由。後妻の死因。謎は多く、酒田屋が黒であるという事実は揺るぎないと思われる。
 だが、酒田屋に突きつける証拠となり得るものは、まだ猟兵たちの手元にはない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●三橋邸奥座敷
「お嬢様、夕餉でございます」
「……、……」
 奥座敷に入ってきた奈津が置いた膳に、志乃は見向きもしない。とてもじゃないが、食事をする気分にはなれぬのだ。
 奈津は誠之助との接触に成功し、事情の説明と文を渡すという役目を果たしてくれた。これで彼は志乃の心変わりを疑ったりはしないだろう。だが、これでなにか状況が好転したわけではない。このままでは、この奥座敷で酒田屋との祝言までの日をただ消費するだけ。
「お嬢様、奈津は今日、奥様のおつかいで町へ出た時、ある噂を耳にいたしました」
「えっ……?」
 すっ……。外で番をしている下女に聞こえぬようにとすり寄った奈津が、志乃の耳に告げるのは。
「御公儀の隠密が、酒田屋の内情に探りを入れているらしいのです」
 公儀の隠密とは言わずもがな、エステシアら猟兵たちのことだろう。
「……確かに、酒田屋さんは悪い評判もあるようだけれど、若い後妻を迎えるたびに早くに亡くされている可愛そうなお方でもあるわ」
「お嬢様……」
 あまりの志乃のいい人っぷりというか、すれていなさに奈津はため息をつく。まあそこが好ましいところなのだが、と思いつつ。
「これはお嬢様には黙っているつもりだったのですが、ご主人様が極端に資金繰りに困られるようになったのは、酒田屋主催の『桜華楼』での宴席に呼ばれるようになってからなのですよ」
「えっ……」
「旦那様がお嬢様への縁談話を断腸の思いで口になさったのも、何度目かの宴席の数日後でございます」
 奈津の知らせた事実に、志乃は青ざめていく。
「御公儀の隠密の方は、酒田屋さんの商いのことだけでなく、今回の縁談も含めて酒田屋さんのことを調べてくださっているの……?」
「恐らくそうかと思います。こうなった今、奈津としてはこれまでの後妻の方が嫁ぐことになった事情や、なぜお亡くなりになったのか、なども気になりますけどね」
 気になったとしてもさすがに奈津ひとりで調べることはできない。だから彼女にできることは。
「隠密の方々が何か掴んでくださり、酒田屋の悪事が明るみに出れば、お嬢様との縁談はなくなるでしょう。ですから、決して悲観しないでくださいまし」
 沈みがちな志乃のことを励ますくらいだ。
アカネ・リアーブル
絡み、アドリブ歓迎します。

アカネはサムライアンパイア出身。
旅芸人などもしたことがございます。
なので、他の皆様の行動をお助けするべく祝いの舞を舞いましょう
こちらに気を引くことが叶いましたら、有利に働くはずです

舞扇を手に、家の前に立ちます

「ここに伏したる我が名はアカネ。各地を回る旅芸人。聞けばこちらの娘御は、婚礼を控えためでたき御方。祝いの席を寿くために、舞わせていただければこれ幸い」

断られそうなら

「婚礼祝いが不要とは、何か事情がおありなので?」

大声を出して周囲の人の気を引きます
娘御にも披露したい旨を伝えます

舞う段になれば、花のみの茜花乱舞も使いながら婚礼祝いの舞を舞います
まずはひと差し、ご覧あれ


法悦堂・慈衛
WIZ重視

愛し恋しは手前の勝手。
他人が押し付けするもんでも、ましてや恋仲を裂かせて良い訳ないなぁ。
先ずは詳細を三橋の家に聞こか。

托鉢の振りで近づこか。読経は得意やねん。
出てくるんが女の子やったら【誘惑】するように目を見よか。
…あんたさん、隠匿の相が見える。それに…泣き声、やろか。
六根清浄六根清浄、よければこの慈衛に話してみぃひんか?

家に上がれば懺悔を聞くという形で詳細を聞く。
いくらなんでも財政逼迫の時期が上手すぎる。怪しい所がなかったかと。
それに娘さんのことはそれでええんかとご両親に優しく聞き、諭す。
たかが20の娘さんや、親のあんたが守ってやらんでええのか?

ま、どんな答えも否定はせぇへんよ。



●娘を売る親の本心は
 舞扇を手にして三橋家の門前に立つのは、銀色の髪を2つに結った藍色の瞳の少女。
「ここに伏したる我が名はアカネ。各地を回る旅芸人」
 名乗りを上げたアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)は、サムライエンパイア出身で、旅芸人をしていた経験もある。それを活かして他の猟兵の手助けになれば、とアカネは続ける。
「聞けばこちらの娘御は、婚礼を控えためでたき御方。祝いの席を寿くために、舞わせていただければこれ幸い」
「そっ、それは……祝言自体はまだ先ですし……」
 応対に出てきた下女はなんだか歯切れが悪い。この縁談が三橋家の望んだものではない上に事情が事情であるからして、三橋家の者の心情を考えれば祝いを受ける心の余裕などない……そういうことなのだろうが、一見の旅芸人に家の不始末を語るわけにはいかず、どう断ったものかと考えているのだろう。だからアカネは。
「婚礼祝いが不要とは、何か事情がおありなので?」
 大きな声で問う。通りがかった人々が、何事かと視線を向けてきた。すると下女は慌ててアカネを玄関まで招き入れて、「主にうかがってまいります」と告げて奥へと引っ込んだ。
 しばらくして、下女と共にやってきたのは、服装からして明らかに格の違う婦人だった。けれども顔には憔悴の色が見える。
「当家の主人が広間で舞を拝見させていただきたいと申しております。どうぞこちらへ」
「婚礼を控えた娘御にこそ、ぜひご覧いただきたく」
 アカネが志乃の事を告げると、婦人――恐らく志乃の母である彼女は一瞬動きを止めて。下女が小さな声で窺うように「奥様……」と呟いた。
「そうですね。当の娘がいなければ……せっかくの寿ぎの舞ですものね」
 夫人は顔を上げて弱々しく微笑んで、下女にアカネの案内を頼み、自身は娘を呼んでくると屋敷の奥へと向かった。

 アカネが待たされること四半時程。三橋家の主人、夫人、そして俯いたままの娘とお付きの女性――恐らく志乃と奈津だろう――が広間に現れ、上座に用意された座布団へと座る。
「この度は、誠におめでとうございます」
 綺麗な作法でお辞儀をしたアカネは、頭を上げて集った人々を見る。皆、一様に表情が暗いのは無理もあるまい。それでも志乃の両親や奈津は普段どおりに振る舞おうとしているが、志乃に至ってはやはり下を向いたままで、一度もアカネを見ようとしない。
「それでは、まずはひと差し、ご覧あれ」
 立ち上がり、優雅な所作で舞扇を操りながら舞うアカネ。
「ほう……これは旅芸人というには随分と洗練された舞であるな」
 感心したような主人の呟き。
「お嬢様、気分転換にご覧くださいませ」
「……」
 奈津が志乃に耳打ちする。だがいくら気分転換とはいえ、自分の望まぬ結婚を寿ぐ舞など見たくないだろう。事情を知っているアカネは志乃のその態度に気分を害する事はないが、志乃の両親は彼女のその様子を見て、バツの悪そうな表情を見せた。
 だが、アカネの目的としてはこれでいいのだ。『婚礼祝い』としてのアカネの舞を見れば見るほどに、家のために娘に無理矢理結婚を強いている事への罪悪感が募れば、『このあと』が上手くいきやすくなるはず――。

 ちょうどアカネが三橋家の座敷で舞い始めた頃、托鉢僧を装った法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)が三橋家を訪れていた。
(「愛し恋しは手前の勝手。他人が押し付けするもんでも、ましてや恋仲を裂かせて良い訳ないなぁ」)
 心の中で呟いて、慈衛は出てきた下女の瞳を見つめる。緑の瞳でじぃ、と見つめられた下女は、頬を赤らめつつも相手が僧侶だということに戸惑いを感じているだろうことに慈衛は手応えを感じ、神妙な表情を作って声を掛ける。
「……あんたさん、隠匿の相が見える。それに……泣き声、やろか」
「えっ……」
「六根清浄六根清浄、よければこの慈衛に話してみぃひんか?」
 下女の表情が凍る。勿論、慈衛の言葉に思うところがあるからだろう。
「そ、そんなっ……あたしは、なに、も……」
「ん? 通りすがりの坊主に話すんでも何か支障があるんか? これでも口は硬いほうやさかい、人様の懺悔を吹聴したりはせぇへん」
 明らかに動揺して否定する下女に、慈衛は後押しとばかりに告げて。すると、下女は少し考えたのち。
「……お坊さまになら、ご主人様も……」
 呟いて、主に許可を得てくると下がった下女。しばしのち、法悦は仏間へと通された。

「今、お坊さまが来てくださったのはきっと、己の娘ひとり守ることすらできぬ我々の不甲斐なさに仏様が遣わしてくださったのでしょう……」
 広間を辞して仏間へと移ってきた志乃の両親は、罪悪感と良心の呵責に耐えかねたように崩れ落ちた。アカネの『縁談を寿ぐ舞』を見て、その舞を美しく感じれば感じるほど、両親の心は苛まれたのだろう。
「ようわからんが、事情を聞かしてくれるやろか?」
 慈衛が穏やかに問いかけると、志乃の父は「誠に恥ずかしきことですが」と、言葉に詰まりながら事の次第を語り始めた。アカネの行動によって罪悪感が強くなったからこそ、こうして簡単に口を開いたのだ。誰かに話すことで少しでも楽になりたい。その相手が僧侶であれば、うってつけだろう。
(「いくらなんでも財政逼迫の時期が上手すぎると思ってたんや……そういうことかい」)
 志乃の父の話によれば、何度か酒田屋が『桜華楼』で催した宴席に呼ばれるようになったことで、酒田屋ゆかりの商人達とも面識ができた。呉服屋や小間物屋に、良い反物や帯、簪などが手に入ったのでたまにはどうかと声をかけられ、古物商からも良い刀が手に入ったなどと声をかけられる事が増え、うまいこと口車に乗せられて購入することが増えたという。それだけならこれまでの蓄えを使えば何とかなりそうだった。
 だが、ある日の宴席で、酒はいつもと同じ量しか口にしていないのに、酷く酔いが回って睡魔にも襲われて。目覚めてみれば自宅の布団の上。聞くところによれば、酔いつぶれて眠り込んでしまったのを酒田屋の使用人が連れ帰ってくれたという。
 その数日後、酒田屋に見せられた証文には確かに自分の手蹟で記載があり、とても返せない額の金子を借り受けた上に、返せない時は全財産、または娘を差し出すと記載があったのだとか。
 確かに自ら署名したのかという慈衛の問いかけに、志乃の父は記憶が曖昧で内容は覚えいていないが、何かに署名したような気がする、という。
(「もし酒に細工したんやったら、『桜華楼』とやらもグルやろな」)
 自らの不甲斐なさに今にすぐにでも消えてしまいたい――そんな様子の父親を宥める母親。明らかに人の良さげな二人の様子を見て、慈衛は小さく息をつく。悪いのは酒田屋であることは明白。けれども、彼らに確かめねばならぬことがある。
「娘さんのことは、本当にそれでええんか?」
 糾弾するのではなく、優しく問う。俯いた母親、握りしめた拳を震わせる父親。答えは明白である、が。
「たかが20の娘さんや、親のあんたが守ってやらんでええのか?」
「守れるものなら守ってやりたいですとも! けれどもうちには幼い息子と娘もおります……」
「あなた……」
 声を荒げた父親の肩に、母親が優しく手を添えて。
「もし、家も財産も失い、家族が皆一緒に住めなくなろうとも……私は、志乃ひとりを犠牲にする方が耐え難いです」
「……、……」
 母親の言葉に父親が返すのは沈黙。だが否定はしない、それが答えだ。父親は家長として、武士として背負うものが多いゆえに衝動のみで動くことはできぬから。
「ふたりの気持ちはよう、わかりました」
 どんな答えでも否定はしない、慈衛は最初からそう決めていた。

 下女からの伝言を受けて、中座することを詫びた父親は、志乃と同じ年頃のアカネに「少し話し相手になってやってほしい」と告げて、母親とともに下がった。けれども奈津とアカネがいくら声をかけようとも、志乃は口を開こうとしなかった。そんな気力すらないのかもしれない。だから。
「志乃様、ご覧くださいませ」
 アカネが発動させたのは、『茜花乱舞』の花びらだけ。
「あかねさす 日の暮れゆけば すべをなみ 千たび嘆きて 恋ひつつぞ居る」
 無数の茜の花びらが、座敷内を舞う光景に、奈津の上げた歓声に釣られるように志乃も顔を上げて。
 そして、堰を切ったように泣き始めた。
 アカネは問わず、ただふわりと志乃の前に跪いて微笑む。
「いつか志乃様と、志乃様が本心で慕われるお方との祝言を寿ぎに、また舞いに参ります」
「――!?」
 それは、約束。それは、希望。
 すべてを知った上での言葉。
 今の状況から救ってみせます――猟兵たちの思いを代弁したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

月隠・望月
三橋殿はわたしと一つしか違わないのに、年をとった人と結婚は、大変
でも……こい? わたしにはよく、わからない
ともあれ、オブリビオンが関わる悪事は見過ごせ、ない

三月前に亡くなったという六人目の後妻の人、について、調べる
どんな人だったのか、どういう経緯で嫁ぐことになった、のか
できれば酒田屋に出入りしている人か使用人から話を聞きたい、ね。内部事情にも詳しそう、だから。少しお金を握らせるか、『悪事はじきにばれる。協力した方が身のため』と軽く脅して、みよう
無理なら、町の人に聞き込み

今までの酒田屋の後妻の人の死因も、調べたい、ね
六人も妻君が亡くなる、のはおかしい、から。オブリビオンに関係している、かも


馮・志廉
そんな悪党、一刀で斬り捨てれば良いだろう。……ダメか?ダメか。オブリビオンに勘づかれてしまわぬよう、証拠をあげるか。

桜華楼とやらが怪しい。酒に薬でも盛っているならば、そこを押さえて脅し、酒田屋との関係を吐かせる。
証文の作成に不正があれば、娘を差し出す約定も無効だろう。
そのために桜華楼で酔客を装い、卓を壊す等暴れる。
お上を呼ぼうとするようなら、癪だが天下自在符を見せる。お上を頼れぬならば、自力で排除しようとするはず。
困らせて、酒に薬を盛ろうとした所、あるいは、薬の入った酒を確認し、問い詰める。
多少毒を盛られても、気功(毒耐性)で何とかする。

「酒田屋の証文は不正であると、証文でも書いてもらおうか」


法悦堂・慈衛
WIZ重視

辛い質問やったな。ご両親にゃ謝らんとなぁ。
さて、気になる桜華楼を調べに行ってみよか。
その前にあれば証文の写しをもらっとこか。

桜花楼に行ったら酒田屋との繋がりを明白に、証文を偽造したっちゅう証拠を押さえたい。
店主と直接話させてもらおか。
酒田屋の悪行について、良心の呵責を信じて交渉や。

相手の虚偽に反応して仏さんが怒ってこの札を燃やすんや、と偏愛真言符を見せる。
ほんで適当な嘘をついて燃やして見せる。これで安易に嘘つけんやろ。
俺が燃やそうと思えばいつでも燃えるんやけどな。

あんたかて女の子の涙を好んで見たくはないはずや。ちゃうか?

どうしても口割らんかったら、無粋やけど天下自在符に頼るとしよか。



●露呈
(「三橋殿はわたしと一つしか違わないのに、年をとった人と結婚は、大変。でも……こい? わたしにはよく、わからない」)
 漆黒の髪を風に揺らし、あまり感情を宿さぬ漆黒の瞳であたりに注意をはらいつつ月隠・望月(天賦の環・f04188)は路地裏で人を待つ。オブリビオンが関わる悪事は見過ごせないから。
「待たせたな」
「待たしてしもうたな」
 そこに訪れたのは馮・志廉(千里独行・f04696)と法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)。ふたりとも『桜華楼』へと入り込む予定だが、その前にどうしても望月は伝えたいことがあった。
「平気。共有しておきたい情報が、ある」
 三月前に亡くなった六人目の後妻を中心に、今まで亡くなった他の後妻についても調べて来た望月。
「酒田屋に出入りしている商人、使用人から聞いた。六人目の後妻、吉乃殿は風邪をこじらせての病死。その他の後妻の死因も事故、怪我からの感染症、病死など、偶発的なもの」
「酒田屋自身が疑われないような死因ばかりなのが逆に怪しく感じるな」
 志廉の言葉に小さく頷き、望月は続ける。
「しかも、後妻の家族はおろか、数人の使用人以外、後妻の『遺体』や『事故現場』、『伏せっている様子』を見た者はいない。亡くなったことを告げられ、遺体はすでに酒田屋の墓に埋葬済みと通達されたのみ」
「へぇ、それは怪しい臭いしかせぇへんなぁ」
 慈衛がそういうのも尤もだ。使用人や後妻の家族も不審に思ったかもしれぬが、主には逆らえぬ、または嫁いだ娘のことだから強くは出れないのだろう。
「ちなみに六人目の後妻、吉乃殿も今回の三橋殿とほぼ同じ形で嫁ぐことになったらしい」
 三人の視線が路地の先の『桜華楼』に集まる。おそらく今回と同じことが、吉乃という娘のときにも行われたのだろう。
「後妻たちの遺体の行方についての情報はあるだろうか?」
「確実ではないけど、後妻が亡くなったと知れる前に、夜更けに酒田屋から荷物が運び出されるのを見たという証言がある。オブリビオンに関係しているかも」
 少しお金を握らせて、そして軽い脅しを交えて望月が得た情報だ。
「今少し、調査を続ける」
「頼む」
「ほな、俺たちは『桜華楼』へと行ってみよか」
 再び調査へと向かう望月と別れ、志廉と慈衛は『桜華楼』へと向かった。

 料理茶屋とは比較的高級な店だ。個室もあることからその格が知れる。
「そんな悪党、一刀で斬り捨てれば良いだろう。……ダメか? ダメか」
「まあ、そうしたい気持ちもわからんわけやないけどな」
「仕方がない、オブリビオンに勘づかれてしまわぬよう、証拠をあげるか」
 今すぐにでも斬り捨ててしまいたい、そんな志廉。だがそれでは駄目なことも重々承知だ。
 店にはまず志廉が入り、個室ではなく入口付近の椅子に腰を掛けた。他にも何人か飲んでる客がいる。
(「酒に薬でも盛っているのか?」)
 まずは注文した酒を飲みながら、あたりの様子に気を配ることにした。
(「辛い質問してしもうたな」)
 三橋邸で志乃の両親に詫びたあと、証文の写しを借り受けようとした慈衛だったが、証文の写しをなくしてしまったのだと父親は言った。酒田屋は渡した、どこぞでなくしたのだろうと言い張っているという。
(「この店と酒田屋との繋がりを明白にして、証文を偽造したっちゅう証拠を押さえたいところや」)
「いらっしゃいませ」
 応対に出てきた女性給仕に、慈衛は直球を投げつける。
「店主と直接話、したいんやけど」
「え、あの……」
「『酒田屋の事』と伝えてみてくれへん?」
 小声で耳打ちすれば、女性は慌てて奥へと引っ込み、戻ってきて慈衛を導く。そこは普段ならば客を通すところではないのだろう。店主の部屋と思しき場所に、涼し気な表情で壮年の男がいた。男は人払いをし、座した慈衛に向かって口を開く。
「お話とは何でしょうか? 酒田屋さんには懇意にしていただいておりますが、手前どもは座敷と料理と酒を提供する、ただの料理茶屋でございます」
「貸した座敷の中で行われることには、関与してへんいうことやろか?」
 慈衛の問いかけは、店主の良心の呵責を信じての交渉。店主が口を開こうとしたその時。
「あの、申し訳ございません……」
「ここには暫く誰も来るなと命じたはずだが?」
 障子の外から声をかけてきたのは女性給仕のひとり。彼女が言うには、酔った客が暴れて困っているという。
「仕方ない。『桜花酒』を出せ」
 指示を受けて女性が下がったのち、慈衛は問いかける。
「『桜花酒』とはどんな酒やろか?」
「ああ、この店のために特別に酒蔵に作らせているとっておきの酒でございますよ」
「ほう……」
 にこり、嘘くさい笑みで答える店主を見て、慈衛は口角を上げた。

「なんだなんだぁ、桜華楼の酒も大したことねぇなあ」
 ガッ、ガゴッ、ガシャン……酔客を装った志廉は、椅子を、机を蹴り倒し、酒瓶や陶器類を割る。女給の悲鳴が響き、奥から用心棒らしき男たちが出てきたが、もちろん志廉の敵ではない。軽く投げ飛ばし、気絶させて『厄介な客』を演じる。
「お前らも俺と一緒に飲むか? 奢るぞ」
 他の客に絡み、女給に絡み、店側が動くのを待つ。程なくして女給達が何か言葉をかわし合い、ひとりが奥へと向かったのを確認した。

「それ、嘘やないやろな? この札はな、嘘に反応して仏さんが燃やすんや。大層怒ってな」
 慈衛が取り出したのは『偏愛真言符』。店主にはただの札にしか見えないだろう。「そんなことあるわけない」と信じようとしない。だがこれは想定内。
「試してみよか? 俺は女や」
 店主にも嘘だとわかる適当な嘘。それに反応して燃え上がる符。本当は慈衛が燃やそうとすればいつでも燃えるのだが、それは内緒だ。
「ひ、ひぇぇっ……」
「じゃあ、ひとつ試してみよか」
 慈衛が店主の腕を掴んで向かったのは、志廉のいる客席のあるところ。
「当店自慢の『桜花酒』でございます。どうかこれで……」
 震えながら女給が差し出した徳利を手にし、志廉は酒の匂いをかぐ。
「まさか薬を盛る気ではないだろうな?」
「!?」
 カサッ……厨房付近の女給が落としたそれを、志廉は見逃さなかった。先ほどまで何かを包んでいたと思われる白い紙。
「ああ、これがご自慢の『桜花酒』とやらか。自慢の酒なら、俺が飲んでもええよな?」
 店主を引きずってやってきた慈衛が徳利を受け取る。すると――彼の手にしていた符が燃えた。
「ひぃぃぃぃぃぃっ!?」
「おかしいな、これ、自慢の酒やろ? 薬なんて入ってへんよな?」
「も、もちろ……」
 ボッ……もう一枚、符が燃える。店主が落ちた瞬間だった。

「酒田屋さんのご指示があった時に、『桜花酒』を提供しておりました……ご指摘の通り、薬入りです」
「酒田屋がここで行っていた悪事、承知の上でか?」
 志廉の問いかけに、店主は力なく頷いて。頼まれれば逆らうことができなかったのだろうが、だからといって見逃せるものではない。
「酒田屋の証文は不正であると、証文でも書いてもらおうか」
「あんたかて女の子の涙を好んで見たくはないはずや。ちゃうか?」
 志廉と慈衛に迫られて、店主は頷き、そして。
「酒田屋さんは用心深く、縁談関連の証文は手元に置かれていません。ここに……」
 店主が部屋の奥から出した箱には、何枚もの証文が入れられていた。

●計画の破綻
 三橋家へ縁談の承諾をとるべく向かおうとしていた酒田屋の耳に、桜華楼店主からの連絡が入った。
「なにっ……証文がっ!?」
 桜華楼に預けていた証文が、『天下自在符』を持つ者達にすべて燃やされてしまったのだという。
「これではあちらへ送る生贄の娘が……いや、それより、これまでのことをお上に知られてしまったということか!?」
 元はふたりともできれば使うつもりのなかった『天下自在符』であるが、証文を燃やしただけでは酒田屋は同じことを繰り返す可能性があると判断し、あえて幕府との関与をちらつかせた。
 これにより酒田屋は自身の保身をはかることに注力するしかなくなり、証文もなくなってしまったことから、三橋家へは縁談及び覚えのない借金の約束は反故になったと伝えられた。
 その報に、三橋家一同が涙して喜んだのは、想像に難くない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『人身御供』

POW   :    村や現場を見張る

SPD   :    村人に聞き込み、罠などを仕掛ける

WIZ   :    生贄のフリをしてわざと捕まる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生贄の村
 その村は山近くにある、そう大きくない村だ。酒田屋の後妻達が、内密にこの村付近に移送されていたのだという。村との直接的な関係はわからない。
 今この村では、次の生贄を決め終えたところだった。
 ここ数年、この村は突然生贄を要求されるようになった。断れば、村全体に災いが襲いかかる。
「そんな……夏に卓さんのところに嫁ぐ予定だったのに……」
「おいと、仕方がない。仕方がないんだ。村のためだ。後生だから……」
 次の生贄に決まったのは『いと』という16歳の少女。夏には村の青年の元へ嫁ぐ予定だったが、その前に生贄の要求が来て、そして彼女が生贄として決まってしまったのだ。
「いやっ!」
 両親を振り切って家を出たいと。いつも卓と逢っていた木の下には彼がいた。だが、すでに話を聞いたのだろう。とても悲しげな顔をして、何かをこらえるような顔をしていたから――いとは彼に駆け寄って、黙って彼に抱きついた。
ライラック・エアルオウルズ
ああ。一難去ってまた、…だね
酒田屋の後妻がこの村付近に移送されていて、
その上、亡くなっているとなると…
遺体についても、調べた方が良かった、かな

【SPD】(情報収集・コミュ力・優しさ)
生贄の話について、が気になるね
僕は引き続き情報収集に励ませて貰おうかな

偶然、村の生贄の話を聞いた旅人や作家の体で
相手によっては同情を込めて村人に話を聞こう
「どうしてまた、生贄なんてものを」
「生贄は『何』に対して捧げるんだい?
 神様?それとも、また別の何かかな」
捧げる対象・場所等を聞き出せたら情報共有

……後は、聞けるなら
「外から来た女性が今までの生贄の中に居なかったか」
それも確認出来たら 答えによっては、目を伏せよう


シホ・エーデルワイス
他の方々と連携希望
アドリブも歓迎です

生贄が必要と聞きましたので
よければ私に引き受けさせて頂けないでしょうか?
冗談ではありませんよ

胸元をはだけて聖痕を見せ(コミュ力)

この印は私が罪人で
いざという時に罪の無い皆さんの身代わりとなる使命を持つ者の証
私にお二人の未来を守らせて頂けませんか?

いとさんに反対されたらこっそり
大丈夫。私の主は簡単に許して死なせてくれませんから
と説得

OKで必要なら
いとさんに(変装)
頭に目印用の花を挿す

わざと無抵抗で捕まる
移動中は要所で花弁をこっそり落として目印にする事を
時護さん経由で皆さんに伝える

基本命の危険が無ければ何をされてもされるがまま
有れば口笛を吹いて無敵城塞で耐える


アカネ・リアーブル
策を弄しての縁談に続いて、今度は贄の要求ですか。
この黒幕は、本当に許してはおけません。必ず炙り出して、成敗してみせましょう。

アカネは、いと様の代わりに生贄になりましょう
アカネの髪はサムライエンパイアにはそぐわないので、黒く染めます。羽も花も隠しましょう
【茜色の手毬】を使い、猟兵の皆様を手毬の内側へと匿います
いと様より着物をお借りし、約束の場所へ出向いて連れて行かれます
涙に暮れ、愛しい人との別れを思いながら、いと様になりきり本拠地へと連れて行かれます
その間、いと様はどこか安全な場所でお隠れになってくださいませ
良い頃合いで、皆様を外へお出しします
悪辣な首謀者は、必ず退治いたします。お覚悟あそばせ。


法悦堂・慈衛
【POW重視】

やれやれ。町での一件が片付いたらもう一件、世は忙しないっちゅうんはホンマなんやなぁ。
生贄っちゅーからには神さんの類なんやろうけど、まぁ…命を欲する善神がいた試しなし。
ここは一つ、苦手やけども体を張ってくとしようか。

ホンマやったら代わりになれればええんやけどな。
ちょっと俺は女と呼ぶには体が合わん。せやから、敵さんの襲来の為の見回りと村に結界を張っとくで。
【七星七縛符】に呪いを込めて村の外周にほかしとく。
踏んだやつがいりゃ、特段悪さが出来なくなるって寸法やな。

まーでもこれめちゃめちゃしんどいんよね。とっとと出てきて欲しいなぁ。
それに…女の子が怯えるん見るのは、俺の趣味やないからさ。


エステシア・プライド
好色な札差が年若い娘に懸想をしているだけかと思えば、その真相は人身供犠か

そして処は変われども、此処にも引き裂かれんとする若き恋人たち
ならば、皆々纏めて、この黄金竜の女王が救いの手を差し伸べようぞ

『いと』なる娘を守護る、もっとも理解り易く、確実な方法は、余が身代わりとなって贄に捧げられることであろうな

村人の協議で次の生贄が決まるのであれば、ことの首謀者が殊更に『いと』という娘に執着している様子は無し、余が代わりとなるに支障はなかろう

それにだ

刮目せよ、天上天下に無二の至宝たる余の美貌、余の<存在感>
ただの娘子よりも、よほどに贄となるに相応しき器の持ち主であろう


神城・澪
よし、思い切って囮というか生贄のふりしちゃいましょ。
…それしか自分が有効に動ける要素が見当たらないのが悲しい所だけれど。
問題は捕まった後うまく情報つかめるかどうかよね。
その辺の技能もってないのが悔やまれるけど、危なくなったらフォックスファイで脅かしたり、なぎなたでも振り回して逃げましょ。
もしかしたら暴れる事でこっちに目が向いて、他の猟兵さんが上手く動けるかもしれないし。
よしよし、女は度胸よ!



●誰がための生贄
「やれやれ。町での一件が片付いたらもう一件、世は忙しないっちゅうんはホンマなんやなぁ」
「ああ。一難去ってまた、……だね」
 当然のことではあるのだろうが、村の空気は重い。そんな中に足を踏み入れようとしているライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)と法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)も、思わず息をついて言葉をかわし合う。
「酒田屋の後妻がこの村付近に移送されていて、その上、亡くなっているとなると……遺体についても、調べた方が良かった、かな」
「生贄っちゅーからには神さんの類なんやろうけど、まぁ……命を欲する善神がいた試しなし――って、もしかして何ぞ思うところがあるんやろか?」
 職業柄(?)というのもあるのだろう、慈衛は『生贄』と聞いて浮かぶ捧げ先は『神』の類だったが、ライラックはもしかしたら何か違うことに思い至っているのだろうか。
「いや、ただ……酒田屋の後妻の遺体を目にした人は少ないという話だったよね。その上この付近に移送されているらしい、ということは……」
「あぁ……そゆこと、か」
 ライラックの推理を聞いて、慈衛にも彼の考えていることがなんとなくわかって。けれどもすでに亡くなってしまった六人を助けることは、できない。だから。
「ここは一つ、苦手やけども体を張ってくとしようか」
「僕は引き続き情報収集に励ませて貰おうかな。偶然、村の生贄の話を聞いた作家の体で行こうと思うよ」
「ホンマやったら代わりになれればええんやけどな。ちょっと俺は女と呼ぶには体が合わん」
「……ごめん、不謹慎だけど、少し想像してしまったよ」
 顔を見合わせて苦笑するふたり。
 じゃあ、と小さく手を上げて、それぞれ別方向から村内を歩き回ることにした。

(「策を弄しての縁談に続いて、今度は贄の要求ですか」)
 他の女性猟兵たちと共に『いと』の家へと向かうアカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)の心中は、穏やかではない。
(「この黒幕は、本当に許してはおけません。必ず炙り出して、成敗してみせましょう」)
 様々な怒りの感情が、愛らしい少女の裡で燃えている。
「好色な札差が年若い娘に懸想をしているだけかと思えば、その真相は人身供犠か」
 呆れたように呟いたのはエステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)。最初に考えていたよりももっと、愚かしい人間が愚かしい思惑で動いているようだ。いや、大元をたどれば、黒幕のオブリビオンが全ての原因なのだろうが、長い時を生きてきたエステシアからみれば、全て等しく『愚かしい』ように思えた。
(「そして処は変われども、此処にも引き裂かれんとする若き恋人たち。ならば、皆々纏めて、この黄金竜の女王が救いの手を差し伸べようぞ」)
 けれどもそれに翻弄され、従わざるを得ない人々は、彼女にとって庇護の対象だ。ならば先の若き恋人たち同様、こちらの恋人たちも救ってやろうと思う。
「あ、たぶんここだね。いとさんの家」
 村人に教えられた家の前にたどり着き、神城・澪(妖狐の戦巫女・f06764)がその戸を叩いた。顔を出したいとの母親と思しき女性に、シホ・エーデルワイス(捧げられるもの・f03442)が告げる。
「単刀直入に申し上げます。今回の生贄について、お話させてください」

 突然の訪問者たち、それも村の者ではない彼女たちが、生贄について何を話に来たのかわからないまま、母親は彼女たちを囲炉裏端へと通し、父親といとと共に近くへと座った。全員の着座を確認し、シホが口を開く。
「生贄が必要と聞きましたので、よければ私たちの中の誰かに引き受けさせて頂けないでしょうか?」
「えっ……」
「冗談ではありませんよ?」
 いとと両親が驚いたように動きを止める。聞き返される前にシホが後を押した。そしてそっと服の胸元をはだけて、いとに見せるのは、その聖痕。
「この印は私が罪人で、いざという時に罪の無い皆さんの身代わりとなる使命を持つ者の証です。私にお二人の未来を守らせて頂けませんか?」
「そ、そんな……だ、だめっ!」
 これはいとにとっては都合の良すぎる話。けれども彼女の理性が、見知らぬ人に生贄の役目を押し付けることに罪悪感を生み出させる。
「大丈夫。私の主は簡単に許して死なせてくれませんから」
 そっと、いとの耳元で囁くシホ。だが、いとの瞳は生贄になることとは別種の不安で揺れている。
「アカネの髪はサムライエンパイアにはそぐわないので、黒く染めます。羽も花も隠しましょう。いと様からは、着物をお貸し願いたく思います」
 すっ……と羽を消して見せて、アカネはいとを安心させるように穏やかに告げる。
「村人の協議で次の生贄が決まるのであれば、ことの首謀者が殊更にいとに執着している様子は無し、我らの中から代わりが出るのに支障はなかろう」
 確かにエステシアの言う通り、生贄を求める首魁がいとを指名したのではないならば、『生贄となる女性』がいれば相手も満足するのだろう。
「それに、だ」
 すっと美しい所作で立ち上がったエステシア。
「刮目せよ、天上天下に無二の至宝たる余の美貌、余の存在感。ただの娘子よりも、よほどに贄となるに相応しき器の持ち主であろう」
 確かにエステシアの美貌と存在感は、村内を歩いている時も過剰なほどに目を引いていた。
「私はこれっていう売りがあるわけじゃないけど、捕まった後、暴れて相手を引きつける度胸には自信があるんだ」
 ん、と頷いてみせ、澪はいとと視線を絡める。
 当のいともその両親も、突然わいた生贄志願者の中からひとりを選ぶことに戸惑っているように見える。
「誰にする?」
 澪が決断を迫ったその時。
「全員、がいいかな」
「俺たちも入れてもらってええやろか?」
 戸を半分ほど開けて中を覗き込んだのは、ライラックと慈衛だった。

●首魁を引きずり出すために
 いとの着物を借り、変装を済ませて村からの生贄を装ったのは、アカネ、エステシア、シホ、澪の生贄志願者四人全員。村人に事情を話し、いつも生贄を送り届けるという場所までの案内を頼んだ。男性であるライラックと慈衛は、アカネの持つ『茜色の手毬』の中で待機している。生贄を引き取りに来る者達と顔を合わせたことはないと彼らは言うが、念の為だ。

「生贄を要求しているのは、村の裏山に住み着いた山賊たち。中でもその頭領が、他の山賊たちと明らかに違って、凄まじい力を持っている。だから、逆らえない……で合ってるかい?」
 ライラックの言葉に頷くいとと両親。
「生贄の要求はほぼ定期的……村の外から来た女性が、今まで生贄になったことはない――けれど、時々、いつもならば次の要求がある時期に生贄選出のための寄り合いが開かれないことがある」
「まあ、『そういうこと』やったわ」
 ライラックと慈衛の報告から察した猟兵達は、不快感を、あるいは怒りを心に宿して。
 のちに慈衛が猟兵達だけに告げたのは、村長宅で村長に追い返された後、その妻が教えてくれた事実。村長の妻はとうの昔に家を出た酒田屋の妹で、実家との連絡は断っていたが、村に生贄の要求が始まり自分の娘が選ばれるのを避けたいあまりに兄への協力を頼んだのだという。まあ、酒田屋との繋がりを山賊の頭領に知られてしまい、別方面から酒田屋にも脅しがかかったらしいというのは余談だが。
「生贄選出の寄り合いがなかった時は、こっそり酒田屋の後妻を生贄として捧げてたんや」
 身内可愛さに他の者を差し出す――罪悪感が無かったわけではないだろうが、糾弾されて然るべき所業だ。
「で、僕たちとしては、その山賊の頭領を引っ張り出したい。だから、全員で生贄のフリをして欲しいんだよ」
 ライラックと慈衛の案で上手く山賊の頭領が出てくるか、確証はない。だが、頭領であれば警戒心は強いだろう。ならばこちらの思い通りに事が運ぶ可能性はかなり高いと思われた。

 毎回村人が生贄を送り届ける場所は、山道の中でも今まで来た道より開けた場所にあった。虫も鳴かぬ夜中、松明ひとつ置いて村人達は帰ってゆく。こんなところにひとり置き去りにされた娘たちは、さぞ恐怖と絶望に囚われたことだろう。
「今ならまだ、大丈夫そうです」
 聞き耳を立てたシホの報告を受け、アカネは手鞠から慈衛とライラックを出す。ふたりは左右に分かれ、木々の間に潜んだ。
 しくしくしく……愛しい人の別れを思いながら、座り込んで涙するアカネ。その隣に澪は膝をつき、シホは聞き耳を立てている。
 正確な時間はわからない。だが月が幾分か移動したかに思えた頃。
「来ます」
 シホに小声で告げられて、澪とアカネは俯くなどして悲嘆に暮れた体を装う。エステシアはあくまでも堂々としていたが、横を向いて憮然とした表情を作った。
「お、いたいた……」
「って多くないか!?」
 やってきたのは粗末な身なりで下卑た表情の山賊三人。下っ端なのだろう、だが人影の多さに警戒する頭はあるようで。警戒しながら近づいてきたが、相手がしおらしくしていると知ると、途端に横柄な態度を取る。
「おい、お前ら全員が今回の生贄か?」
 絶望と恐怖で言葉も出ない……そんな様子で澪が頷けば、山賊たちは何やら戸惑っているようで。
「全員連れてけばいいんじゃね?」
「一応、お頭に聞いてみたほうがいいか?」
「ならお前が行けよ」
 結果、一人の山賊が来た道を戻っていった。このまま予定通りに事が運べば――木々の間から様子を見つつ、ライラックは祈る。
(「とっとと出てきて欲しいなぁ……女の子が怯えるん見るのは、俺の趣味やないからさ」)
 慈衛は山賊たちが来たがわの道に、こっそり七星七縛符を遣って。これを使うのはしんどいのだが、ここは男の見せ所だ。
 残った二人の山賊たちは生贄四人を検分し、「今までにないほど上玉だなぁ」「味見してぇ」など呟いているが、手は出さないところをみれば、頭領が力でもってして彼らを従わせていることが知れる。
「お頭、こっちです」
 程なくして近づいてくる松明。先ほど戻っていった山賊が先導して来たのは、若く美しい青年だ。山賊の頭領と言われてすぐには信じられない容貌をしているが、その青年がオブリビオンなのが猟兵達にはわかる。
「……本当に四人いるな。何かの罠かと思って確かめに来たが……」
 響く青年の呟き。
「お頭……?」
 先導していた山賊が生贄の元へと合流した。だが、青年は一定の距離を保った位置で立ち止まり、その双眸を鋭く光らせる。
「やはり罠だったか。お前たち、ただの生贄ではないな!」
 オブリビオンである青年は、生贄である猟兵達を見て、本能で敵だと理解したのだ。
 だが、山賊の頭領を引っ張り出すのが今回の作戦であるからして、作戦は成功といえよう。
「お覚悟あそばせ」
 立ち上がったアカネのその言葉が、全ての猟兵の心を代弁していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『美形な山賊頭領』

POW   :    行けっ!
【従わせた部下の山賊達】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    死ねっ!
【両手の鉄爪】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    皆殺しだっ!
【我を忘れる程の怒りに満ちた状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『いとしい』を利用する悪
 恋人がいとしい、子どもがいとしい、兄妹がいとしい、家族がいとしい……そんな恋心を始めとする他者への『いとしさ』を利用した悪辣たる山賊の頭領が姿を表した。部下の山賊たちは未だ事情が飲み込めていないようだが、頭領に攻撃をすれば、あるいは頭領が動けば動き出すだろう。
 頭領は自身と生贄たちの間に置かれている符にはまだ気づいていないようだ。

 猟兵側にひとつ、山賊側にふたつの松明を除けば、月明かりのみが照らす広めの山道。
 諸悪の根源たるオブリビオンを目の前にして、躊躇う理由はどこにもない。
アカネ・リアーブル
ついに姿を現しましたね!
人の心を踏みにじり、想い合う二人を引き裂くその所業。
さてはあなた、リア充爆発しろ! な方ですね!(違)

アカネが天誅を差し上げます!
どうぞお覚悟!

退魔封縛の舞を舞います。
鎖舞扇を手にひと指し舞って、真の姿を顕します。
無数の鎖で首領を捕縛し、皆様の攻撃への足掛かりと致しましょう。
皆様、今です!

終わりましたら、いと様に着物をお返しに伺います。
村にも今後生贄は不要になったとお伝えします
お二人ともお幸せに。祝言には、ぜひお呼びくださいませ祝いの舞を舞いましょう

そして、志乃様と誠之助様にも吉報を
お二人のために、お約束の祝いの舞を舞いましょう
幾久しく、仲睦まじくあられますよう
お幸せに


シホ・エーデルワイス
アドリブ歓迎
味方との連携重視
策があれば積極的に協力

なぜ愛し合う人達の仲を引き裂くような事を?
もしかして…誰かを愛おしく想って
でもその想いは満たされず代わりを求めたとか?

≪暗視、第六感、ダッシュ≫と翼で飛んで回り込む等して頭領の逃走阻止を優先
逃がしません!

鈴蘭の嵐で攻撃
部下一名は殺さず捕縛

頭領に隙があれば組み付いて無敵城塞

皆さん私は大丈夫ですから私ごと攻撃して下さい!
狂える程に愛を求めるのなら
せめて今だけでも私が寄り添い看取りましょう

戦後
山賊の生き残りがいれば案内させ
いなければ足跡を≪追跡≫して住処を探し
生贄にされた人達に『祈り』を捧げる

あと遺体か遺品を探して
あれば遺族の元へ帰らせてあげたいです


ライラック・エアルオウルズ
さて、貴方の所為で何人が犠牲になったのかな
…今までの分も、貴方には償って貰わないとね

【WIZ】(時間稼ぎ・かばう・投擲)

存外怒りっぽいね 何て揶揄いつつ、
迅速に『奇妙な友人』をカンテラで呼び寄せて
炎とナイフでの敵への攻撃と共に、
敵の攻撃を誘導する為に標的として動いて貰おう
皆の事も可能な限りに援護出来る様に

攻撃を引き付けたら、隙を突いて栞を投擲
投擲出来たら『理不尽な裁判』を使用、
敵に与えるルールは「動くな」
冷静な頭領で有れば、簡単なルールだと思うけど
…言わずもがな、有罪かな?

いとしさは、その人達だけの物だ
貴方に利用される物、じゃない

(符に重ねて)
(必要に応じ、僕も『鏡合わせの答合わせ』で防ごう)


エステシア・プライド
漸く諸悪の根源との対面が叶ったな

山賊などさせておくには惜しいほどの美丈夫であったか
其方がオブリビオンでなければ余の後宮にて愛でるも愉しそうではあるが

今宵は貴様らが積み上げてきた罪科を贖う時ぞ
黄金竜の女王たる余の裁きを受けるが良い

余のユーベルコード《天地魔竜の構え》を魅せてくれる

余は此の場を動かぬ故、今生に別れを告げた者から、かかってくるが良い

余の美貌と<存在感>に目を奪われれば如何な者であれ<誘惑>され、
<催眠術>で理性を奪われるは必定である

後先考えぬ猪突猛進の果てには、余の、攻撃、防御、魔法の三動作を相手に同時に叩き込む《天地魔竜の構え》からの必殺の<カウンター>が待つぞ


馮・志廉
「生きては帰さん」

 手下共は槍で蹴散らし、頭領に挑む。大きく弧を描くように槍を振り、撓りを利用しての柄による打撃も使う。

「どちらの『爪』が上か、試してみるか」

 槍は放り、頭領に対して素手で挑み『金鷹散手十三式』を仕掛ける。
 『大力鷹爪功』は鍛え上げているとは言え、生身には違いない。相手の鉄爪に触れぬよう、足さばきや潜り抜けなど、激しく動きながら戦う。
 隙をみて敵の腕を左手で掴み、捻って肘、肩の関節を極めつつ崩す。
 体勢が崩れた敵に、至近距離からの右拳を叩き込む。


法悦堂・慈衛
アンタが今回の事件の首魁やね。女の子を泣かすんは許せんよなぁ。
泣かすどころか…いや、口に出すのも憚るな。
ま、俺はアンタが許せん。せやからちっくと退治されてくれや。

と、啖呵は切ったけど俺はなぎなたと符を構えての後衛や。
他の猟兵さんらに気張ってもらって後ろから偏愛真言符で援護するで。
…あぁ、お付きの山賊もおったなぁ。
そっちの方は燃やすんやなくて、マヒの真言を込めて符を当てとこか。

さて…懸念すべきはあのデカイ鉤爪を無差別に振り回されることやろなぁ。
そこはしゃあない。隙をついて七星七縛符で封じさせてもらうで。
あ~しんど。しんどいけど…俺はやっぱりアンタを許せんのよ。
せやからな。閻魔さんに叱られといで。



●誅伐
 微風により松明の炎が揺れる。猟兵たちと山賊たち、そしてオブリビオンである山賊の頭領の影も揺れた。
「ついに姿を現しましたね! 人の心を踏みにじり、想い合う二人を引き裂くその所業。さてはあなた、リア充爆発しろ! な方ですね!」
 アカネ・リアーブル(とびはねうさぎ・f05355)が怒りを込めた言葉を投げかける。後半部分は、そうであったらどれほど良いかという気持ちの表れであろう。単純にリア充爆発願望を形にしているだけならば、今回のように複雑な策謀を巡らせていることもあまりなく、簡単に尻尾を掴むことができた可能性も高い。被害を抑えることも、もしかしたら可能だったかもしれない。仮定の話をしてても仕方がないのだが、それでも――。
「なぜ愛し合う人達の仲を引き裂くような事を?」
 糾弾より先にシホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)の口から出たのは疑問。
「もしかして……誰かを愛おしく想って、でもその想いは満たされず代わりを求めたとか?」
 仮にそうだとしても頭領の所業は許されるものではなく、そして赦すつもりはないけれど、少しだけ、ほんの少しだけ見方が変わるかもしれない――けれども。
「さぁ、どうだろうな。奪えば手に入る、それを知っただけだ」
 頭領はただ、そうとだけ答えた。
「アンタが今回の事件の首魁やね。女の子を泣かすんは許せんよなぁ。泣かすどころか……いや、口に出すのも憚るな」
「さて、貴方の所為で何人が犠牲になったのかな……今までの分も、貴方には償って貰わないとね」
 木々の間から姿を表した法悦堂・慈衛(法悦の求道者・f03290)とライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)から向けられる視線と言葉に頭領は動じる様子を見せない。
「漸く諸悪の根源との対面が叶ったな。山賊などさせておくには惜しいほどの美丈夫であったか」
 堂々としたエステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)のその存在感は、粗末な村娘の着物を纏っていてもありありと伝わってくる王者の風格。
「其方がオブリビオンでなければ余の後宮にて愛でるも愉しそうではあるが」
「後宮? その生活も愉しそうだが、生憎と飼われる趣味はないんでね」
「今宵は貴様らが積み上げてきた罪科を贖う時ぞ。その減らず口を含め、全てを後悔しても遅い。黄金竜の女王たる余の裁きを受けるが良い」
 エステシアは『天地魔竜の構え』をとる。その場から動けなくはなるが、あらゆる攻撃にほぼ無敵となる。彼女のその様子を見て、他の猟兵たちは彼女より後方へと下がった。
「余は此の場を動かぬ故、今生に別れを告げた者から、かかってくるが良い」
「……行けっ!!」
 頭領がその大きな鉄爪で猟兵たちを指し示すと、それまで戸惑いを見せていた部下たちが刀や鉈などを手に動き出す。だが。
 ヒュッヒュッヒュッ……!!
 松明をその場に放り、三方向から向かってきた部下たちを、エステシアは瞬く間に吹き飛ばした。本人たちは己の身に何が起こったのかわからぬだろう。攻撃をしたはずなのに、攻撃・防御・魔法の三動作を同時に叩き込まれて吹き飛ばされたのだ。痛みすら、遅れてやってくるように感じることだろう。
 一瞬で吹き飛んだ部下たちの様子に、頭領が僅かに瞠目した。その隙にシホは走り、飛んで頭領の背後へと回り込む。そして巻き起こした鈴蘭の花びらの嵐で山賊たちを襲う。
「生きては帰さん」
 それは頭領のみならず、その部下に対しても、か。馮・志廉(千里独行・f04696)は、傷を負いながらも体勢を立て直して向かってくる部下共に『鎮八方』を振るう。再び体勢を崩した部下共に、慈衛はマヒの真言をこめて符を放った。倒れた部下共は絶命したかただ動けなくなっただけか、今は確かめる余裕はないが、彼らが動かない、それ自体が大事なのだ。
「貴様らっ!!」
「ま、俺はアンタが許せん。せやからちっくと退治されてくれや」
 部下の動きを封じられたことで、明らかに頭領の表情が変わった。そんな頭領にさらりと告げた慈衛だったが、頭領の様子をしっかりと捉え、警戒は怠らない。
「存外怒りっぽいね」
 ライラックもまた警戒しているのだろう。言葉で揶揄しつつ、カンテラで招いた『奇妙な友人』を頭領へと向かわせた。
「貴様らぁぁぁぁぁぁ!! 皆殺しだッ!」
 頭領の瞳が怒りで満ち溢れる。我を忘れた彼は、身近で動くもの――ライラックの召喚した『奇妙な友人』を鉄爪で切り裂いて。
「させません!」
 頭領の背後に位置していたシホは、素早く彼我の距離を詰めて後ろから彼に組み付いた。そして発動させるのは『無敵城塞』。
「皆さん私は大丈夫ですから私ごと攻撃して下さい!」
「ヴァァァァァァァ!!」
 彼は何とかシホから逃れようともがき、鉄爪を振るう。だが今の状態の彼女は、爪が触れても傷つかない。シホに傷はつけられない、けれども組み付く彼女を振り払うことが絶対にできないわけではない。だから。
 ライラックは金の栞を放つ。トランプを模したそれを身に受けた頭領に向けて発動させるのは『理不尽な裁判』――与えるルールは『動くな』。
「冷静な貴方で有れば、簡単なルールだと思うけど……言わずもがな、有罪かな?」
 目の前の動くものへ攻撃をするべくもがく頭領。我を忘れた彼の耳に、ルールは届いていない。もがけばもがくほど、頭領は傷ついていく。
「アカネが天誅を差し上げます! どうぞお覚悟!」
 手にした『鎖舞扇』を繰りながら、アカネは『退魔封縛の舞』を舞う。真の姿――オマモリサマと呼ばれる姫巫女姿をみせ、その手の舞扇から放つ無数の鎖で頭領を縛り付ける。ほぼ同時に放たれた慈衛の『七星七縛符』が、頭領の様子に変化を与えた。
 頭領は我を取り戻そうとしてているように見える。だが、もう遅い。
「あ~しんど。しんどいけど……俺はやっぱりアンタを許せんのよ。せやからな。閻魔さんに叱られといで」
「皆様、今です!」
 慈衛の言葉の奥に宿るもの。アカネの鎖に宿る怒り。頭領にはそれが伝わるだろうか。
「どちらの『爪』が上か、試してみるか」
 槍を放り、頭領との距離を詰めた志廉が仕掛けるのは『金鷹散手十三式』。それを察したシホが『無敵城塞』を解いて下がる。けれども動けぬ頭領は、シホに代わって『大力鷹爪功』で鍛え上げられた志廉の手で左腕を捕まれ、流れるようにひねられ、肘と肩の関節を極められて体勢を崩される。志廉は体勢を崩した頭領に、一欠片の情け容赦もなく至近距離から右拳を叩き込んだ。

 ドゴッ!!

 岩を砕いたような音、地を揺らすような拳を受けた頭領は、大量の血を吐いて。
「愚かな者よ」
 まだ足りぬようであれば引導を渡してやろうと、『天地魔竜の構え』を解いて頭領に近づいたエステシアは彼を見下ろして呟いた。
「いとしさは、その人達だけの物だ。貴方に利用される物、じゃない」
 ライラックの断罪に、頭領はもう答える力を持たない。
「……」
 シホは、今にも消えゆこうとしている頭領の傍らに膝をついた。そして彼を見下ろしてそっと手を伸ばす。
(「狂える程に愛を求めるのなら、せめて今だけでも私が寄り添い看取りましょう」)
 彼は詳らかには語らなかった。けれども零した言葉から感じられたものがある。それはシホの勘違いかもしれない。けれどももし、それが動機となった『彼の本心』であったのなら――せめて。

 己の赤にまみれた彼は、因果応報――闇に溶けるように消えていった。


●それから
 生き残った部下たちを捕らえ、アジトに案内させたシホは生贄にされた人たちに静かに祈りを捧げた。
 なにか遺品でも見つかればと思ったが、僅かでもカネになるものは売られてしまったのだろう。残念ながら遺品らしきものは見当たらなかった。

 山賊の生き残りを連れ、猟兵たちは村へと立ち寄った。
 今後生贄が不要になったこと、山賊たちはしかるべき相手に突き出すことを告げ、いとへと着物を返す。
「お二人ともお幸せに。祝言には、ぜひお呼びくださいませ。祝いの舞を舞いましょう」
 アカネの言葉に、いとは涙しながら何度も猟兵たちに礼を述べ、卓と寄り添った。

「町に戻ったら、志乃様と誠之介様にもお伝えし、お約束の舞を舞わせていただこうと思います」
「余も同席しても?」
「よろしければ、私にも拝見させてください」
 アカネとエステシア、シホは三橋家へ立ち寄ることを決めて。
「じゃあ、山賊たちは僕たちが連れて行こうか」
「頭領の命に従っていただけという言い訳は通らん。罪を償わせねば」
「せやな。命があるだけありがたいんやから」
 ライラックと志廉、慈衛が山賊たちを引き受けることにした。

 町と村で起こっていた事件は、不思議な繋がりをしていた。
 だが、もう同じ謀略で苦しむ者も、命を落とす者も今後出ないことを祈りながら、猟兵たちは町を目指した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月29日


挿絵イラスト