アースクライシス2019⑭~ヒーローズ・ネバー・クライ
――ギャーッハッハッハッ!
甲高い哄笑が、世界に木霊した。失われた過去の化身は恨みを募らせ、それを糧に世界へ――現在を生きる全てのものへと、手を伸ばす。
恨み、怨み。それは世界の全てに留まらず、自身に向けられる感情にも及んでいたのだ。侮蔑や嘲笑――憐れみや共感でさえも、怨恨の連鎖を断つばかりか益々加速させていく。
――間もなく、この世界には怒涛の過去が押し寄せてくるのだろう。カタストロフは、直ぐ其処まで迫っていた。
オブリビオンに支配された、4つの『知られざる文明』を解放したことで、遂にクライング・ジェネシスが姿を現した。お疲れ様と、ゆっくり労いたい所ではあるけれど――皆には急いで、彼の迎撃に向かって貰いたいのだと言って、篝・燈華(幻燈・f10370)はきゅっとまなじりをつり上げる。
「全世界……ヒーローズアースのあちこちに、クライング・ジェネシスが出現してるんだ。そうして、皆が迎撃に出て来た所で戦いを挑むみたいだよっ」
恐らくは、猟兵たちを撃破する様子を、多くのひとに見せつけることで、鬱憤を晴らそうとしているんじゃないか――と燈華は頷く。
「その一方で『骸の海発射装置』のチャージも行っていて、これが完了してしまうと世界にカタストロフが起きてしまうんだ……!」
――だから、その前に。何としてでもクライング・ジェネシスを撃破しなければならないのだ。しかし、相手はオブリビオン・フォーミュラであり、圧倒的な力に加えて確実に先制攻撃を行ってくると言う。
「だからね、相手の攻撃への対処法を編み出すことが重要になってくると思うんだっ。必ずこれ、って言う必勝法はないかもしれないけれど……ひとりひとりの戦い方は違うんだし、自分ならではの方法を考えて欲しいんだよ!」
かつて無能力者であったものが、殺戮の果てに得た力――其処へ降り積もった恨みは、どれ程のものなのか。きっとこうして想いを巡らせることさえも、クライング・ジェネシスは許さないだろうけれど。
「この世界の存亡を賭けた、最後の戦いだから。あともう少し、皆の力を貸して欲しいんだ!」
どうか――ヒーローがヒーローとして在れる世界を、守って欲しいのだと告げて。燈華は決戦の地、奇岩連なるカッパドキアへと猟兵たちを導いたのだった。
柚烏
柚烏と申します。ヒーローズアースの戦争もいよいよクライマックスが近づいてきましたね! 此方は戦場⑭『クライング・ジェネシス』との決戦となります。
●シナリオについて
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、戦況に影響を及ぼす特殊なシナリオとなります。なお、下記の内容に基づく行動をすると、ボーナスがついて有利になります。
※プレイングボーナス……敵のユーベルコードへの対処法を編みだす(クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してきますので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります)
●戦闘について
クライング・ジェネシスは、見た目が派手な観光名所に出現します。このシナリオの戦場は、トルコにある奇岩地帯、カッパドキアになります。
しかし、自分の活躍を引き立てる舞台装置であると言う考えのようですので、破壊はしません(あくまで雰囲気の参考程度に、建物に気を配ったりはしなくても大丈夫です)
●プレイング受付につきまして
オープニング公開直後から、プレイングを受け付けております。翌日の11月26日一杯までは確実に受付をし、以降は成功度に達するまで受付の予定です。
なお、戦争シナリオと言う特性上、頂いた全てのプレイングを描写出来るかは、こちらのキャパやタイミング次第となりますので、ご了承頂ければ幸いです(特に内容に問題が無くても、採用せずにお返しと言うことも出て来るかと思います)
判定もきっちりと行いつつ、プレイングの内容も見て採用を決めたいと思います。特に、技能は羅列するよりも幾つかに絞って、具体的にどう使うかを分かりやすく書いて頂けると、ボーナスに繋がると思います。
難易度は「難しい」で、厳しい戦いが予想されますが是非とも熱い戦いを繰り広げてみて下さい。それでは、よろしくお願いします。
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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リンセ・ノーチェ
自分の弱さを認めず人にばかり理由を探して―君は
僕の弱さは知ってる
フェイントと見切りに頼る癖から心まで
銃撃後に杖で魔法を叩き込むのが『僕』の常套
僕の銃弾一撃なら耐えられるし
見越して僕の急所は金属で密かに覆ってある
敵の『僕』のリズムを狂わせる為
銃撃は回避せず防御し二撃目を許さぬ【早業】で『僕』をウィップの【ロープワーク】【罠使い】で捕縛し
UCでフォルテ召喚、『僕』をつん裂け!
僕のUCより速く放ったから―『僕』にフォルテは居ない
今の僕にはフォルテがいるし
確かに歩いてきた今の僕は『過去』に負けない
敵本体を【空中戦】の身軽さで翻弄し【全力魔法】で光の【属性攻撃】だ
僕達は弱さを見つめている―だから、勝つよ
ミスト・ペルメオス
【SPD】
愛機たる機械鎧を駆って参戦。
念動力は最大限に発揮。デバイス等を介して機体をフルコントロールしつつ、周辺の情報収集にも応用。
…自身と同質の念動力を発するものがいれば嫌でも気づく。
スラスターをフル稼働させて「敵」の攻撃を回避、或いはビームシールドの防御で致命傷を避ける。
すぐさま【ハイマニューバ】起動、今回ばかりは強烈な負荷も覚悟。
限界一杯の戦闘機動を行いつつ「敵」と砲火を交え、
フェイントを交えてのカウンターで押しやるか振り切って、クライング・ジェネシスへと迫り砲撃を叩き込む。
…解っている。いずれは「そう」なるだろう。
だが…!
今ここで、邪魔をッ、するなァッ!!
※他の方との共闘等、歓迎です
陽向・理玖
なるほど
俺を許さない俺の過去
師匠に庇われた弱い俺
そりゃ俺も許せねぇ過去だ
けど知ってるか
昨日の俺より今日の俺は強い
ましてや3ヶ月前の15の俺に
今の俺が負ける訳がねぇ!!
龍珠弾いて握り締めドライバーにセット
変身ッ!!
衝撃波飛ばし
見え見えなんだよ
同じ姿してようが
同じ能力してようが
この戦争で俺がどんだけ強くなったと思ってるッ!
UC起動
動き見切り
死角に回り込みグラップル
一気に決めるッ!
拳の乱れ撃ち
暗殺で急所狙い
吹き飛ばしでクライング・ジェネシスへぶつける
そのままダッシュで間合い詰め
残像纏いフェイントに足払い
その大きく空いた穴埋めてやるよ
俺の拳でな
乱れ撃ち
俺は過去を乗り越えて
この手で明日を
未来を掴み取る!
――トルコ中央部、カッパドキア。奇岩連なる圧倒的な光景を、沈む夕陽がゆっくりと薔薇色に染め上げていく中で刻々と、滅亡へのカウントダウンが始まっていく。
「ギャーッハッハッハッ! カタストロフはもうすぐだぜ、楽しみだなぁ!」
そんな中で、耳触りな哄笑を浴びようとも――ミスト・ペルメオス(銀河渡りの黒い鳥・f05377)の心は凪いだ水面の如く、波紋のひとつも生まれはしない。
(「……ああ、解っている」)
――超感覚と念動力を備えた、超能力者の一族として。還る星は既に亡く、銀河を巡る終わりなき旅を定められた者として。愛機たる機械鎧を駆るミストは、スラスターを稼働させて荒野を突き進んでいく。
(「いずれは『そう』なるだろう」)
やがて戦闘デバイスの補助を受けた彼は、強化と制御を施された念動力を四方に張り巡らせ――周辺の情報を吸い上げていく中で、嫌でも『それ』に気付くことになった。
――自身と同質の、念動力を発する存在。直後、スラスターの急加速で回避行動を取ったミストの後方に、正確無比なビームキャノンの速射が放たれる。
「過去の、幻影――」
続く黒鳥の不吉な羽ばたきを察し、ミストが咄嗟にビームシールドを構えたその向こうで、陽向・理玖(夏疾風・f22773)も否応なしに、己の過去と向き合わされていた。
「……なるほど」
貴様らの過去は、貴様らを許さねェ――そんなクライング・ジェネシスの言葉は、彼にとって納得できるものだったのだろう。
(「俺を許さない俺の過去、師匠に庇われた弱い俺」)
目の前に現れた幻影は、そんな理玖の過去が具現化したものだった。――ああ、そうだ。そりゃ俺も許せねぇ過去だ、と。失われた過去に刻まれた、鮮烈な別れの記憶にぎりと歯を食いしばりながら、理玖は龍珠を弾いて合図を送る。
「――変身ッ!!」
瞬間――辺りに吹き荒れる衝撃波を伴って、理玖の姿が高速戦闘モードへと変化していった。全身に装甲を纏いつつも爆発的に速度を高めた少年は、己の過去に臆することなく――更にそれを乗り越えようと、幻影の振るう拳を見切り、死角に回り込んで一気に掴みかかる。
「知ってるか、昨日の俺より今日の俺は強い。ましてや、」
――戦う覚悟も、理不尽を憎む想いも。そして何より、師の志を継ぐのだと言う確かな決意も。あの頃の理玖には、無かったものなのだから。
「三ヶ月前の15の俺に、今の俺が負ける訳がねぇ!!」
乱れ撃つ拳が過去を抉り、急所を狙うことにも躊躇しない。その一方で、リンセ・ノーチェ(野原と詩と虹のかげ・f01331)は冷静に、己の弱さを見つめ――それをはっきりと認めることで、過去の幻影に打ち克つ強さに変えていった。
「……僕の弱さは、僕が一番知ってる」
――フェイントと見切りに頼る癖があること。後手に回りつつも、銃撃後には杖で魔法を叩き込んで確実に仕留めるのも常套だ。そうした自身の内気な心が、戦い方にも現れていることだって、リンセには分かっている。
(「そう、僕の銃弾一撃なら耐えられる」)
だから、それを見越して予め急所も護っているし、続く魔法への連携を防ぐ手立てだって、考えることが出来た。『僕』の奏でるリズムに混ざる、不協和音――敢えて銃撃を受けたリンセはそのまま、二撃目が来るよりも早く鞭を振るう。
「今だ、フォルテ――」
風を切る白尾がしゅるりと、過去の幻影を絡め取るや否や――奇跡の友、琥珀色のヒポグリフが舞い降りて、不可能を可能に変える力がふたりの間に溢れていった。
「『僕』をつん裂け!」
――そんな過去と現在のリンセを分けたのは、ほんの瞬き程度の時間であったのに。一方のリンセに友は居らず――もう一方のリンセの傍らには、頼もしいフォルテが翼を広げ、力強い爪を『過去』へと振り下ろしていたのだった。
「確かに歩いてきた、今の僕は『過去』に負けない……」
霧散していく過去の残滓を振り切ったリンセは、弱さを見つめているからこそ勝つのだと言う。一方で過去を吹き飛ばした理玖は、未来への可能性を信じて進み続けるのだと誓う。
「……見え見えなんだよ、同じ姿してようが。同じ能力してようが」
過去を具現化し、無様に翻弄される様子を嘲笑うつもりだったクライング・ジェネシスへ、一気に間合いを詰めつつ足を払って。胸にぽっかりと空いた、骸の海を発射する砲門目掛け、理玖の拳が唸りをあげた。
「この戦争で、俺がどんだけ強くなったと思ってるッ!」
――ほんの僅かな過去の自分では、届かなかったかも知れない拳が、発射装置を大きく震わせる中で。ハイマニューバを起動させたミストも、砲火を交えていた己の幻影を振り切りつつ、更に砲撃を叩き込んでいく。
「いずれ来る『終わり』が、避けられないとしても――」
高速機動戦を想定した戦術プログラムは、高度であるが故に負荷も強烈だったが――ミストはそれでもバレルロールを繰り出し、限界一杯までに幻影を引き付けた上で、ビームキャノンの引き金を引いた。
「今ここで、邪魔をッ、するなァッ!!」
「うるせぇんだよッ、英雄気取りが!! 格好つけやがって!」
――そうして自分の弱さを認めずに、人にばかり理由を探すのか、と。震える吐息を零したリンセは、きっと静かに怒っていたのかもしれない。全力で放たれた光の魔法が辺りを真昼のように照らす中、大きな穴を埋めるようにして、理玖の拳がライング・ジェネシスへと叩きつけられていた。
「俺は過去を乗り越えて、この手で明日を――未来を掴み取る!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
ヴォルフガング・ディーツェ
アドリブ歓迎・真剣な時は~口調
醜い、実に醜い有り様だな
借り物の力のみで威張り散らすな「裸の王様」
【調律・魔獣の咆哮】でグリフォンを召喚・騎乗
フェイントを交え産み出されるオブリビオンを蹴散らしながら接近
その間に【ハッキング・メカニック】を活用し自前の魔導ゴーグルを起動
相手のユーベルコードを分析
微かでも脆弱な点を見つけ出し、取り付いたらハッキングで【精神攻撃】ウィルスを流し込む
甘く、甘く毒を囁こう
真に強くなったと吼えるが、それは真実かな?
「かつてヒーローに屈した弱いお前が」本当に無敵になどなれたのか?
堅牢な城壁ほど僅かな罅に弱いもの
砕けた部位から獣と俺の爪を叩き込もう
地に伏せよ、貴様の自信諸共に
ソラスティベル・グラスラン
無能力者だったこと…それが貴方の原点ですか、この世界の『魔王』
…貴方を討ち、この戦争を終わらせます
迫る敵の激流を即座に【見切り】、
【オーラ防御・盾受け】で守りを固め…竜の【怪力】で受け止めます!
雑兵の群れなど今更です!前後左右から攻撃が飛び交う戦場に比べれば!
放出中は動けないならば、強引にでも動いて貰いましょう…!
故郷の大地を想い、【気合】一発!!
衝撃で周囲の敵を吹き飛ばし、地割れで魔王の足場を破壊
その瞬間に一気に飛翔!【ダッシュ】
【鎧砕き】の大斧を、勢いの止まった胸の大穴へ叩きつけます!
嘗て、幼く無知なわたしは愚直に【勇気】を信じ努力しました
何も無くとも、一つでも信じるものがあれば、貴方も…
影守・吾聞
ボスがユベコを発動したら
魔法剣で風の『属性攻撃』『衝撃波』
繰り出された敵群を牽制した上で後方に『ジャンプ』
ほんの一瞬で構わない
こっちのユベコ発動の時間を稼ぐ
俺のターン【ギガキマイラ】発動!
旅人の守り神の神殿での戦いの後、得た力
この力でぶっ壊してやる…お前の目論見をね!
『オーラ防御』でダメージを軽減しつつ
生み出され続ける敵群を蹴散らしながら
動けない状態のボスに接近
拳の中に捕獲し、力いっぱい握り潰す
俺の攻撃ではボスにダメージ通らないかもだけど
これでもう、オブリビオンの“出口”は塞がれた状態だよね?
自分が繰り出す過去に
圧し潰されるなり、破裂するなりしちゃえよ
過去に捕らわれ続けるのは、お前一人で十分だ
かつての無能力者にして、今は破滅を齎すオブリビオン・フォーミュラ――持たざる者であったが故に、彼の存在は力を得ることに固執し、死した後も『最強』であろうと足掻き続けている。
「それが貴方の原点ですか、この世界の『魔王』……」
生き物めいた奇岩が、ゆっくりと黄昏色に染まっていく中で、ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)の巨大な戦斧が大地を舞った。
「……醜い、実に醜い有り様だな」
――己こそが最強なのだと叫び、オブリビオンを繰り出し続けるクライング・ジェネシスの姿を、そう斬り捨てたのはヴォルフガング・ディーツェ(花葬ラメント・f09192)だ。無敵の代償に身動きの取れなくなった相手の様子を一瞥すると、彼は魔獣の咆哮で召喚したグリフォンに騎乗して、一気に空へと駆け昇っていく。
「借り物の力のみで威張り散らすな――『裸の王様』」
殺し奪い、手に入れた力の行き着く果てが、このように歪な姿であるのなら――そこまで想いを巡らせたところで、ヴォルフガングは酷く冷酷に口の端を上げた。
「否、何にせよ『恨み』が募るのであったか」
「これは、無双……とは行かないかも知れないけど」
そうして迫る敵の群れ、次々に生み出されていくオブリビオン達を前に、影守・吾聞(先を読む獣・f00374)の魔法剣が青白い輝きを纏う。
(「……ほんの一瞬で構わない」)
直後――彼の心に呼応した刃は、風の魔力を衝撃波に替えて撃ち出し、敵群の激流をわずかに押しとどめていた。何とか牽制を行い、後方へと跳び退って時間を稼ごうとする吾聞だが、敵の勢いは彼の予想を上回っていたらしい。
「抑え、きれない
……!?」
「いいえ、わたしが――受け止めます!」
其処で、オブリビオンの進路を即座に見極めたソラスティベルが、吾聞の前に立ち塞がって守りを固める。偉大なる竜の力――驚異的な怪力を発揮した少女は、そのまま押し寄せる敵群を迎え撃ち、決して諦めること無く猛攻を凌いでいった。
「雑兵の群れなど今更です! 前後左右から攻撃が飛び交う戦場に比べれば!」
それでも、無敵と化したクライング・ジェネシスの勢いは止む気配を見せず――やがてじりじりと、ソラスティベルは後退を余儀なくされる。しかし上空では、ヘルメスの双目鏡を起動させたヴォルフガングが耽々と、クライング・ジェネシスへ精神攻撃を行う隙を伺っていたのだ。
(「微かでもいい、脆弱な点が見つかれば――」)
――ユーベルコードを分析し、慢心が生んだ綻びを見出し、それを足掛かりにハッキングを行って。流し込むウイルスは甘く痺れるような、悪魔めいた毒の囁きだ。
『真に強くなったと吼えるが、それは真実かな?』
「あぁ、何だ? テメェもオレを馬鹿にすんのかよ!?」
――『かつてヒーローに屈した弱いお前が』、本当に無敵になどなれたのか?
「知った風な口を! 弱いとか抜かすテメェこそ、オレの強さを知らね、ェ……エ、エエ、テメェは」
――お前は。本当に無敵なのか?
「オレの頭をかき回す、テメェは誰なんだよォォォオォ
!!??」
嗚呼、堅牢な城壁ほど僅かな罅に弱いもの――ヴォルフガングが老獪な仕草でほくそ笑む一方で、集中が途切れた相手の隙を突き、吾聞が高らかに己のターンを宣言する。
「これが先の神殿での戦いの後で、得た力……!」
旅人の守り神の加護を巡り、大規模な破壊を齎す力があればと願う心が、彼に秘められた新たな能力を開花させたのかも知れない――瞬く間に巨人の如き大きさに変化した吾聞は、たてがみの生えた尾を自慢げに揺らすと「俺、推参!」とばかりにポーズを決めた。
「この力でぶっ壊してやる……お前の目論見をね!」
そのまま大地に吐き出された敵群を蹴散らし、動けないままのクライング・ジェネシスに接近した所で、吾聞は拳に捕らえた彼を力一杯握りつぶす。
「グエエエェェェ!!!」
「……まだ無敵は解けないかもだけど、これでもう『出口』は塞がれた状態だよね?」
蛙のような鳴き声をあげてもがくクライング・ジェネシスは、吾聞の言わんとすることに気付いたらしい。オブリビオンを繰り出し続ける胸部は今、巨大化した吾聞の手によって塞がれており、行き場を失っている――たまらず無敵状態を解除し、彼の拳から逃げようとした所で、動いたのはソラスティベルだ。
「強引にでも動いて貰おうと思ったのですが……手間が省けたようですね」
故郷の大地を想い気合一発、衝撃で周囲の敵を吹き飛ばした彼女はそのまま、一気に跳躍してクライング・ジェネシスの元へと向かう。
「……嘗て、幼く無知なわたしは愚直に、勇気を信じ努力しました」
――本当は、臆病な心もソラスティベルにはあるけれど。そんな時は自身に喝を入れて、胸に勇気の灯を燈すのだ。
「何も無くとも、一つでも信じるものがあれば、貴方も……」
それでも、きっと――恨むことを支えにした相手と、憧れを胸に強くなろうとした彼女とでは、求める力の質はまるで違っていたのだろう。
「いえ、今は……貴方を討ち、この戦争を終わらせます」
やがて想いを振り切ったソラスティベルは、蒼空色の大斧を振りかぶると、鎧を砕くようにして一気に――勢いの止まった胸の大穴へと、叩きつけた。
「地に伏せよ、貴様の自信諸共に」
「ああ、自分が繰り出す過去に圧し潰されるなり、破裂するなりしちゃえよ」
その砕けた部位へは更に、グリフォンとヴォルフガングの爪が唸りをあげて振り下ろされて。行き場を失った力の残滓が、ごぼりと大地に吐き出されるのを冷ややかに見つめた吾聞は、なおも必死で逃げようともがくクライング・ジェネシスを、羽虫のように叩き落として告げる。
「……過去に捕らわれ続けるのは、お前一人で十分だ」
成功
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ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【禍竜】
よし、行くとするか
ダークヒーローのブレイズアイ・ドラゴンだ
ふはは、冗談だよ
私は悪役でな
道案内は頼むぞ、灯理
召喚された馬に同乗、掃討は任せる
撃ち漏らしのオブリビオンを蛇竜の黒槍で叩き伏せながら接近する
動けないというのなら僥倖だ
決して外さない位置まで寄ってくれよう
無敵だって?あァ、知っているよ
別に貴様の体を傷付けようってんじゃない
――天罰招来、【氷獄】
ありったけの呪詛を載せてなぎ払いだ
動くことも喋ることも出来んであろうが、安心しろ
痛覚と意識だけは残しておいてやる
じゃ、後は好きに暴れてやれよ、ハティ
そのサンドバッグ、簡単には壊れないってさ
妹の気が済むまで、その体で付き合ってやってくれ
ヘンリエッタ・モリアーティ
【禍竜】
行きましょうか。兄さん、灯理
――こんにちは、悪党
ダークヒーロー・ウロボロスです
【黄昏】を起動
「ほぼ」無敵なら、些細なところはどうかしら
灯理に掃討をお願いする。私はただただ――死樹の籠手で打ち砕くことに集中
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるとはいうけれど、強敵だもの
さらに――頭も悪いわけではないでしょう、こちらも考えて動くわ
フェイントまじえてプレッシャーを与える
拳圧だけでも結構なものでしょ?
さて、そろそろよく冷えてくれた?オーケイ、じゃあ
全 身 全 霊 で 叩き込んでやる
死にさらせ、大馬鹿野郎
兄さんが凍らせたのなら動かない体に滅多打ち
殺すために頭を使うのは得意よ
――お前の明日は無い
絶えて死ね
鎧坂・灯理
【禍竜】
Hey,You Big brat!
どうも、クズ野郎 ダークヒーロー・フェニクスだ
ウソだがね
兄様、私の後ろへ。足下から喚んでそのまま乗る
あとから乗ろうとすると暴れるんだ
この戦争中、発散しきれずに貯蓄してきた怒りと恐怖を切り離し、
出でよ【抑圧の怪馬】 雑魚の群れを踏破しろ
この戦争中私がどれほど怒っていたと思いやがる
今もハティが傷だらけだし
ぽっと出のオブリ共なぞ鎧袖一触だ
踏み潰し弾き飛ばしながら本体へ兄様を運ぶ
いい距離になったら『黄龍』の近距離転移で兄様を飛ばす
おそらく怪馬もボロボロだろうから解除する よくやった
さあ、蹂躙の時間だ
くたばりやがれクソガキ
ひとの形がなくなるまで殴ってやる
海に沈め
――あ、ああ、あぐあぁァァガガガガ!!
最強である筈の能力を破られ、無残に地べたに叩きつけられてなお、クライング・ジェネシスは叫ぶことを止めない。
「オレは、無敵……最強の、オブリビオン・フォーミュラだァァァ!!」
己の強さを引き立てる為、最高の舞台で獲物を仕留める筈だった。綺麗ごとを抜かすヒーロー気取りを、圧倒的な力で叩き潰して――なのに。
「よし、行くとするか」
「ええ、行きましょうか。兄さん、灯理」
クライング・ジェネシスの胸から生み出される、オブリビオンの群れをものともせずに、八本脚の怪馬が広大な大地を駆けてくる。
「抑圧の怪馬……雑魚の群れを踏破しろ」
――それは、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)がこの戦いで発散しきれずに貯蓄し続けてきた、怒りと恐怖が形を成したもの。抑圧されたその感情は、自由を得たことに震えながら、荒々しい蹄を踏み鳴らす。
「道案内は頼むぞ……っ、と」
「ああ、兄様。……あとから乗ろうとすると暴れるんだ」
その背に跨ろうと駆け寄った、ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(竜吼・f01811)にまで襲い掛かろうとする怪物馬を、上手く宥めつつ灯理が導けば――ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)はうっとりと彼女に微笑んで、道中の掃討は任せると囁いた。
「私は、私の為すべきことを。……あなたとの幸せのために、ね」
――そう、世界の為とか平和だとか、そんな高尚なものの為に戦っている訳ではない。ヘンリエッタが戦うのは、極めて利己的な理由からだ。だから――クライング・ジェネシスの好みではないかも知れないが、自分はこう名乗りを上げておくとしよう。
「――こんにちは、悪党。ダークヒーロー・ウロボロスです」
怪馬のいななきが響くと同時、黒き奔流と化したオブリビオン目掛けて、灯理たちが一気に飛び込んで行く。流れに逆らい弾き飛ばして、理性を失ったけものが暴れ――蹄がぐしゃりと、動くものを肉塊へと変えていく。
「どうも、クズ野郎。ダークヒーロー・フェニクスだ、ウソだがね」
「ダークヒーローのブレイズアイ・ドラゴンだ。……ふはは、冗談だよ」
そうして、涼しげな貌で怪馬を操る灯理の後ろでは、ニルズヘッグが呵々大笑しながら、彼女の撃ち漏らしたオブリビオンを黒槍で叩き伏せていた。
「――私は悪役でな」
直後――灰燼の髪から覗く瞳がぎらりと、邪竜の煌めきを宿して骸を射抜けば。大地に描かれた紅に群がる、オブリビオンの群れを一瞥した灯理も「はっ」と吐き捨て拳を振るう。
「この戦争中、私がどれほど怒っていたと思いやがる」
クライング・ジェネシスの元まで辿り着く間にだって、無傷ではいられない――激憤と憎悪を糧に、己を戦わせるヘンリエッタとて傷だらけなのだ。まだまだ暴れ足りないと馬首を巡らせ、漸く周囲が落ち着いた所で、灯理は金環を翳して念を籠めた。
「Hey,You Big brat! ――兄様!」
「あァ!」
――念動力によって、一気にクライング・ジェネシスの傍までニルズヘッグを送り届けた直後、限界を迎えた灯理の怪馬が消滅していく。ボロボロになって消えゆく背に「よくやった」とひと声かけて、彼方を見遣れば――冥府の冷気を帯びたニルズヘッグが、斜陽に包まれてきらきらと輝いていた。
「動けないというのなら、僥倖だ」
「ギャハハ、馬鹿だなァ! 無敵なんだよオレは!」
決して外さない位置で、竜爪を振りかぶる彼の姿を見ても、クライング・ジェネシスの笑みは消えていない。
「あァ、知っているよ」
嘲笑う彼にも鷹揚に頷いて、ニルズヘッグはありったけの呪詛を竜爪に纏う。そう、別に身体を傷つけようと言うのではない。
「――天罰招来、氷獄」
狙うのは、神経回路――ニヴルヘルの呪氷が齎すその力は、本来ならば痛みも恐怖も凍らせる、安らかな死を与えるものだった。
「動くことも喋ることも出来んであろうが、安心しろ。痛覚と意識だけは残しておいてやる」
けれど今、ニルズヘッグはその力を、永遠の苦痛を与える手段として用いており。其処へ入れ替わるようにしてヘンリエッタが、死樹の篭手を鳴らしつつ拳圧を生んだ。
「……『ほぼ』無敵なら、些細なところはどうかしら」
――ひたすら打ち砕くことに集中しつつも、相手の精神に重圧を与え、揺さぶることも忘れない。いつ必殺の一撃が飛んでくるのか分からない緊張感の中――クライング・ジェネシスは其処から目を背けることも、意識を手放すことも赦されないのだ。
「じゃ、後は好きに暴れてやれよ、ハティ。そのサンドバッグ、簡単には壊れないってさ」
妹の気が済むまで、その体で付き合ってやってくれ――『最強』なのだろう、と嗤うニルズヘッグに頷いて、ヘンリエッタが篭手を振りかぶる。
「……さて、そろそろよく冷えてくれた? オーケイ、じゃあ」
――全身全霊で、叩き込んでやる。
蹂躙の時間だと、くたばりやがれクソガキと罵る灯理の勢いを受けて、ヘンリエッタは動かない――動けないクライング・ジェネシスの身体を、滅多打ちにしていった。
「死にさらせ、大馬鹿野郎」
そう、殺すために頭を使うのは得意だから。ありとあらゆる殺害手段を用いて、その生命を絶滅させる一手を考える。――ひとの形がなくなるまで殴って、殴って海に沈めてやる。
「――お前の明日は無い。絶えて死ね」
成功
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マリス・ステラ
「主よ、憐れみたまえ」
『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯り全身に輝きを纏う
『オーラ防御』の星の輝きを球形状で何層にも展開
受け止めた余波で輝きが星屑のように散る
「揺蕩えども沈まず」
【光をもたらす者】を使用
蝶の姿をした星霊達が舞い上がる
半円状に包囲すると、
「灰は灰に、塵は塵に」
星霊達が光線を『一斉発射』
弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
それはまるで極光の顕現
「エリ、エリ……(主よ、主よ」
味方を『かばう』
『カウンター』は光の奔流が流星となって降り注ぐ
「あなたに魂の救済を」
『封印を解く』と聚楽第の白い翼がぎこちなく広がり輝きを束ねる
星の『属性攻撃』は質量を伴う巨大な光弾
「光あれ」
世界が白に染まる
シャルファ・ルイエ
この世界は誰かが帰る場所で、世界を救って欲しいって願いがあって。
それなら、世界を守って願いを叶えるのが、きっとヒーローってものでしょう?
例えヒーローじゃなくても、わたしがそうしたいんです。
外れると相手が強化されるなら、敢えて当たりに行きましょう。
動きやすくて動ける範囲の広い《空中戦》を選んで、《追跡》と《第六感》でぎりぎり掠める位置で攻撃を受けられるように《見切り》ます。ダメージは《オーラ防御》で軽減して、倒れてしまわない様に。
耐えきったら、次の攻撃が来る前に《高速詠唱》と《全力魔法》で【星を呼ぶ歌】を。
あなたみたいに、あなたを恨みはしませんけど……。
それでも、これ以上好きにはさせません。
世母都・かんろ
知ってる
わたしは、わたしが許せないもの
その歌が人を傷つけることも
その身体を愛せないことも
あなたの動きを躱すのは簡単、だわ
【見切り、ダンス、第六感】
わたしがあなたに攻撃できないように
あなたもわたしにこれ以上攻撃できない
だから、歌うの
わたしじゃない猟兵の皆が
戦えるように
♪
ずっと見てたよ
狭い世界の隅っこで
るらら踊るおひめさま
ぴかぴか冠が欲しくって
ずっと見てたよ
昏い世界の隅っこで
姫の手を取るおうじさま
あなたのキスが欲しかった
♪
【高速詠唱、歌唱、パフォーマンス】
この霧雨が、皆の力になる
わたしは
わたしの愛する世界を、守る
愛する、ヒーローの世界を
ジェネシス
あなたも、自分を愛せなかったのね
羨ましかった、ね
広大な大地に連なる奇岩の中には、かつて神の信徒が隠れ、祈りを捧げていた場所もあったのだと言う。
「……主よ、憐れみたまえ」
――時は流れ、空の彼方にぽつりと星が瞬く今も。マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は変わらず祈り、星辰の片目は光を宿して奇跡を行使する。
(「この世の痛みを引き受けましょう。愛の名の元に、全てを――」)
裁くこと、罰することはするまいと。全身に星の輝きを纏ったマリスは、加護の力で何層にも渡るヴェールを編み上げて、クライング・ジェネシスの放つ『過去』に対抗していった。
「消えろォォ!! 骸の海に沈んじまえ!」
チャージの合間を縫って放たれた、大いなる虚無――それを受け止める星の輝きは儚く散っていくが、その余波は星屑となって、きらきらと辺りに降り注いでいく。
「……揺蕩えども沈まず」
(「綺麗、ですね……」)
薔薇色の荒野に散っていく星の光を追いかけて、ぱちりと瞬きをしたシャルファ・ルイエ(謳う小鳥・f04245)も、続く『過去』の砲撃を真っ向から受け止めることにしたようだ。
(「そう、外すと相手が強化されるのなら」)
――その地形を丸ごと、漆黒の虚無に変えてしまうのだとしたら。敢えて当たりに行くことを、シャルファは選んだ。
ならば、動きやすく開けた空で戦う方が良い――髪を飾る白花がふわり風に舞う中、オラトリオの翼が力強く広がって、少女は空へ羽ばたいて行く。
「……この世界は誰かが帰る場所で、世界を救って欲しいって願いがあって」
クライング・ジェネシスに接近し、感覚を研ぎ澄ませつつぎりぎりの所で掠めるように。倒れたりはしない、きちんと受けることを前提に、守りを固めて。
「それなら――世界を守って願いを叶えるのが、きっとヒーローってものでしょう?」
「死ねええェェェ!!」
(「いえ、例えヒーローじゃなくても――」)
――わたしが、そうしたいから。やがて現在を喰らう過去の奔流に耐えきったシャルファは、傷付いた翼を休める間も無く詠唱を開始していた。
(「ほら、空を見て、手を伸ばして」)
確固たる意思をもって紡がれる、星を呼ぶ歌が辺りに響いていけば――空に向けて伸ばされた彼女の指先で、きらりと瞬く光がある。
(「――今なら星にだって手が届く」)
(「光をもたらす者よ。暗闇に輝く灯火として」)
シャルファの呼んだ流れ星が、クライング・ジェネシスを消し去ろうと辺りに降り注いでいく中で、マリスは蝶の姿をした星霊を幻想的に舞わせ、続く言の葉を舌に乗せた。
「灰は灰に、塵は塵に」
――直後、半円状に標的を包囲した、うつくしき星霊たちが一斉に光の矢を放って。星屑の弓を構えるマリスもまた、極光を顕現させるべく流星の矢を次々に射ち出していった。
「ま、まだ、だ……過去は、まだ許さねェ!!」
「――……っ」
そうして追い詰められていくクライング・ジェネシスが、其処で狙いを定めたのは、世母都・かんろ(秋霖・f18159)。戦場にはひどく不釣り合いな、儚げな風貌をした彼ならば、容易に始末出来ると踏んだのだろう――しゃぼん玉のような瞳の中で、過去の幻影が不安げに揺れる。
「知ってる」
――しかし。今は低く変化したかんろの声は一切の迷いも無く、過去の自分を振り切るようにして告げた。
「わたしは、わたしが許せないもの」
同じ姿、同じ能力をした、もうひとりのわたし。その歌が人を傷つけることも、その身体を愛せないことも――過去は今を許したりはしないのだ、と言うことも。
ぜんぶとっくに分かっていると言った様子で、かんろは軽やかに、幻影の動きを上手く見切って躱していく。
「わたしがあなたに攻撃できないように、あなたもわたしにこれ以上攻撃できない」
「ギャハハ、だったらずっとこのままだ! ずっと虚しく踊り続けてろよ!!」
「……だから」
――歌うの、とかんろは囁いた。わたしじゃない猟兵の皆が、戦えるように、と。
(「ずっと見てたよ、狭い世界の隅っこで」)
――この霧雨が、皆の力になる。
(「るらら踊るおひめさま、ぴかぴか冠が欲しくって」)
――わたしは。わたしの愛する世界を、守る。
(「ずっと見てたよ、昏い世界の隅っこで」)
――愛する、ヒーローの世界を。
(「姫の手を取るおうじさま、あなたのキスが欲しかった」)
主よ、主よ――呟く声はマリスのもの。何故、わたしを見捨てたのかと問う言葉へは、泣きたいくらい見てるのだと返そう。
ああ、光の奔流が流星となって降り注いでいく。輝きを束ねる聚楽第の翼がゆっくりと広がり、マリスは魂の救済を願いながら光を呼ぶ。
「あなたみたいに、あなたを恨みはしませんけど……。それでも、これ以上好きにはさせません」
――やがて星を呼ぶシャルファの歌が重なり、世界が白に染まって。
「光あれ」
原初の光が、何も持たなかった存在を静かに消滅させていく中で、かんろはあの頃のまま――美しくのびやかな声で、世界の根源に触れていく。
(「ジェネシス、あなたも、自分を愛せなかったのね」)
――理解するな、共感するなと喚く声を優しく包み込むように、霧雨のうたが過去をゆっくりと骸の海へ沈めていく。
(「……羨ましかった、ね」)
成功
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