アースクライシス2019⑭〜カウントダウン
ついにクライング・ジェネシスが出現した。
オブリビオンに支配された4つの「知られざる文明」が無事に解放されたということを意味するが、喜んでもいられない状況だ。
それというのも、クライング・ジェネシスはヒーローズアースにカタストロフを引き起こす『骸の海発射装置』のチャージを行っているというのだ。これが完了するのは、12月1日。つまり、それより前にクライング・ジェネシスを撃破しなければカタストロフは免れない。
「クライング・ジェネシスは多くの人に注目される場所に出現することがわかっているんだよ。その目的は、猟兵たちを撃破するところを人々に見せつけることみたいなんだよ! こんな時に、もうー!!」
佐伯・キリカ(陽気に元気・f00963)が、今にも暴れ出しそうな勢いで猟兵たちに告げる。
カタストロフをもたらそうとするばかりか、自己顕示欲を見たしつつ鬱憤を晴らそうとするクライング・ジェネシス。このオブリビオン・フォーミュラを放っておく理由はどこにも無い。
そもそも残された時間は少ないのだと、猟兵たちに緊張が走る。そして問う、クライング・ジェネシスの居場所を。
「――うん。わたしが予知したところ、クライング・ジェネシスはいまイタリアのコロッセオにいるんだよ! すぐに送るから、急ぎ撃破を頼みたいんだよ!」
クライング・ジェネシスさえ倒せればヒーローズアースを救えるはずだと。そんな希望を抱き、キリカは猟兵たちを送り出すのだった。
雨音瑛
ついにクライング・ジェネシス登場です。
そこそこ厳しい判定となりますのでご注意ください。
●プレイングボーナス発生条件
敵のユーベルコードへの対処法を編みだすこと。
クライング・ジェネシスは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
●戦場について
コロッセオでの戦闘となります。なお、クライング・ジェネシスはコロッセオを「自身が活躍するための舞台装置」だと思っているので、破壊するようなことはしません。
第1章 ボス戦
『クライング・ジェネシス』
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POW : 俺が最強のオブリビオン・フォーミュラだ!
全身を【胸からオブリビオンを繰り出し続ける状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : 貴様らの過去は貴様らを許さねェ!
【骸の海発射装置を用いた『過去』の具現化】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【相手と同じ姿と能力の幻影】で攻撃する。
WIZ : チャージ中でも少しは使えるんだぜェ!
【骸の海発射装置から放つ『過去』】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を丸ごと『漆黒の虚無』に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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栗花落・澪
【呪詛耐性+激痛耐性のオーラ防御】を纏い
対象が自分の過去なら打ち勝つまで
だって、僕には約束があるから!
握り締めた★お守りとネックレスから放つ【破魔】の輝きで相殺狙い
無理でも効果を軽減
遺品は過去の物でも
愛は、希望は
僕を後押ししてくれるものだ
お前なんかに、家族の絆を壊させてたまるか!!
翼の【空中戦】で翻弄
破魔を宿した光の【高速詠唱、属性攻撃】で攻撃
視覚的な【見切り】と
僅かな音の変化も聞き分ける【聞き耳】で反射レベルの回避
更に足場に★花園を生成
破魔が少しでも効くなら防壁代わりにはなるよね
【催眠歌唱】で破魔の花弁を操る【指定UC】と
花園の花弁を操る風の【全力魔法】の二重攻撃
この輝きは、未来への希望だよ
「ギャーッハッハッハッ! 何人でもかかってきやがれ、どうせカタストロフはもうすぐだ。何をしようと無駄だってこと、思い知らせてやるぜ!」
「そんなこと、絶対にさせないよ」
骸の海発射装置から放たれた過去に、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は真正面から立ち向かう。
奴隷として酷い扱いを受けたこと。時には見世物にすらなったこと。なかったことには出来ない、目を背けたくなるような過去ばかりではあるけれど――。
(「大丈夫。僕なら、打ち勝てる」)
立ち止まって握りしめるのは、桃色兎のお守り。ネックレスからは破魔の輝きも放って。
「だって、僕には――約束が、あるから!」
叫ぶように宣言すれば、目の前で過去が弾けてゆく。耐性とオーラのおかげか、感じた痛みは僅かなものだ。
愛は、希望は、自身を後押ししてくれるもの。いっそう強く思って、澪は地面を蹴った。そこで翼を広げ、空中からクライング・ジェネシスを狙う。
「お前なんかに、家族の絆を壊させてたまるか!!」
「まさか過去に耐えるなんてな! 次は空中戦か、面白ぇ!」
クライング・ジェネシスも地面を蹴り、澪を追うようにして跳躍した。しかし、澪が空中から放った破魔の光が動きを押しとどめる。
「ちっ、邪魔くせぇ光だ……ん?」
光を払いのけようとするクライング・ジェネシスの近くで、澪は花園を生成し足場とした。そのまま歌声を響かせて生み出すのは、無数の花弁だ。
「――幸せのままに眠れ」
「花なんざ痛くもなんとも……っ!? なんだ、」
先ほどの光と同じように払いのけようとするが、花弁は全て刃。さらに全力の風魔法が、払いのけることも押し返すことも許さない。
「……この輝きは、未来への希望だよ」
歌い終えた澪がクライング・ジェネシスを見ると、毒々しいな色彩の体には無数の傷が刻まれていた。
成功
🔵🔵🔴
銀座・みよし
過去のわたくしなら箒で叩きに来る
それにコロッセオ…なるほど、つまり地下がございますね?
まず箒の属性攻撃、もといブロアー機能で爆音を出す
その音に紛れさせセトさんに垂直で深いトンネルを掘らせる
ホルスさんは空で待機
相手の箒攻撃には第六感に任せて、こちらも箒を振る
それで敵の箒を部位破壊狙い
頃合を見て敵が近くにいる時に地面に衝撃を与えて穴を開ける
地下へ落ちきる前にもう一度属性攻撃で下に向けて風を放ち、ホルスさんに引っ張って貰いつつ上に向かって箒で飛ぶ
敵の箒が部位破壊できてたら飛んで追ってはこれない筈
そのまま空中まで飛んだら、後はホルスさんとセトさんで攻撃です!
後で穴ぼこ開けた事への謝罪をしに行きますね…
クライング・ジェネシスの手によって具現化する、銀座・みよし(おやしきのみならいメイド・f00360)の幻影。
箒を手に襲いかかってくる幻影との距離を測りつつ、みよしはブロワー機能が付いたハイテク箒を構えた。
「予想通り、過去のわたくしは箒を手にしていますね。ならば!」
スイッチひとつで響き渡る爆音に紛れ、みよしが「ホルスさん」と呼ぶ隼は空中へ待機するよう、「セトさん」と呼ぶツチブタに穴を掘るよう指示を出した。
幻影が両手に握って振りかぶる箒ってくる動きは、予想済み。タイミングを合わせて自身の箒を振りかぶれば、二本の箒が交差して止まる。しかし向こうはただの箒、こちらはアルダワ製。
幻影の手にする箒の方が、成す術なくぽきりと折れた。
「第一段階、成功でございますね。それでは、えいっ、でございます!」
みよしが箒の柄で地面を一突きする。その衝撃で地面は崩れ、幻影が足を滑らせた。ダメ押しとばかりに風を放ちながら、みよしはホルスさんに引き揚げてもらう。
幻影は再び姿を現すことなく、コロッセオの地下へと消えていった。
「おいおいおい、やべえことしやがる猟兵もいるんだな! こんな観光の名所をよお!」
「その件につきましては……そうですね、後で謝りますのでご心配なく! それより、自身の方を心配されてはいかがでございましょう?」
ホルスさんから降り、クライング・ジェネシスを指し示すみよし。
「ホルスさん、セトさん!あの敵を倒して下さいま…なぜそこで互いに攻撃しあうの!?」
「ギャーッハッハッハッ! こいつぁ愉快な見世物じゃねえか!」
クライング・ジェネシスは、笑い声を上げて隼とツチブタを見遣る。2体はもつれあうようにして上下するばかり、であったのだが。
セトさんによって足に噛みつかれたホルスさんが、振り払おうと縦横無尽に飛翔する。次いで、耐えられず口を離したセトさんが勢いのままに飛ぶ。そして、セトさんが鈍い音と共に動きを止めた場所は――なんと、クライング・ジェネシスの腹部だった。
痛みのあまり、クライング・ジェネシスは声を失っているようだ。
「――――!」
「……ということもありますので、ゆめゆめご油断なされぬよう」
エプロンドレスの裾をつまみ上げたみよしは、優雅に一礼した。
大成功
🔵🔵🔵
月舘・夜彦
【華禱】
時間切れまで残り僅か
必ずや討ち取りましょう
相手は動けないものの、その間は攻撃が通用しない
ならば、敵が攻撃を終えた時こそが好機
そこに転じるまで私が奴の攻撃を凌いでみせましょう
倫太郎殿は私の傍にて援護をお願いします
敵の攻撃が開始時に抜刀術『八重辻』を発動
互いに動けない所は同じ、異なるのは奴は攻撃、私は防御
どちらが勝っているか
――いざ、勝負
繰り出されたオブリビオンは視力にて特徴を確認
戦闘知識を活かして攻撃手段を予測
それに合わせて早業で武器受けで防ぐ
または武器落として攻撃の軌道を逸らす
繰り出す敵が途切れたのを合図にカウンター
まだ動けるのならば、倫太郎殿と同時に仕掛けます
篝・倫太郎
【華禱】
オブリビオン・フォーミュラって事は実力も充分、なハズなんだろうけど
この自己顕示欲がこう、物凄い小物臭いンだよなぁ……
ま、油断は禁物ってな
先制攻撃は基本、夜彦に肩代わりを任せる
念の為に俺自身も見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防ぎ、ダメージ軽減
それでも入るダメージは激痛耐性で耐えて凌いでカウンター
攻撃力強化に篝火使用
反撃のタイミングは夜彦と合わせる
呼吸一つで大概に合わせられるからな
踏んだ場数の差が格の違いだってコト、教えてやるぜ
華焔刀でなぎ払い
刃先返してフェイント入れての2回攻撃
攻撃には鎧無視攻撃と生命力吸収を常時乗せて使用
胸部を狙う
近接が叶わない場合は攻撃に衝撃波も乗せて使用
「しっかし、あいつがオブリビオン・フォーミュラねえ……実力も充分、なハズなんだろうけど……」
篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)は、地球全土を覆ったクライング・ジェネシスの立体映像を思い出していた。
自己顕示欲に塗れた発言は、どうにもクライング・ジェネシスを小物くさく見せている。彼を倒せば此度のアースクライシスを終わらせられるのだが、それにしてはどうにも器が小さく見える。
「……ま、何にしたって油断は禁物、ってな」
「ええ、ここが正念場です。必ずや討ち取りましょう」
静かな、それでいて強い意志を感じさせる物言いは、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)によるもの。
相手がどのようなものであれ、残された時間は相変わらず少ないのだ。
「二人でも三人でもまとめてかかってこいよ! ただし、最初に相手をするのはこいつらだがな!」
クライング・ジェネシスの胸から、オブリビオンがあふれ出た。止めどなく溢れるオブリビオンは、コロッセオじゅうを満たしてゆく。
それだけではない。胸部からオブリビオンを繰り出し続けている限り、クライング・ジェネシスに攻撃は一切通じないのだ。
状況を把握した夜彦は、青眼の構えを取った。
「倫太郎殿、援護をお願いします」
「ああ、任せとけ」
薙刀を手に、倫太郎は夜彦の隣に立つ。クライング・ジェネシスの放ったオブリビオンを、夜彦が捌き切るために。
「――いざ、勝負」
まずは最初に仕掛けて来たオブリビオンを、斬る。次の個体も、斬る。襲い来るオブリビオン全てを、どれだけの数であろうと、斬り続ける。
クライング・ジェネシスも夜彦も動けないこの状況、異なるのはその行動が攻撃か防御か、それのみ。
来る個体の特徴を把握し、似た個体が攻撃に出るならばすぐさまその手段を予測し、全て刀にて受ける。相手の力如何によっては押し切って、あるいは武器を落として攻撃の軌道を逸らして。
倫太郎の方も、オブリビオンの動きを見切っては残像を生み出して回避に専念する。
そうして、どれだけの時間が経っただろう。
無限とも思えた攻撃が不意に止み、直線上にクライング・ジェネシスの姿が見えた。
「祓い、喰らい、砕く、カミの力――夜彦、いくぜ」
「参りましょう、倫太郎殿」
好機と見て攻撃力を高める倫太郎と、刀を構え直す夜彦。
駆け出したふたりの手にある刃が狙うはただひとつ、クライング・ジェネシスの胸元だ。
そしてタイミングを示し合わせるために必要なのは、たったひとつの呼吸のみ。
「踏んだ場数の差が格の違いだってコト、教えてやるぜ」
「さあ、お覚悟を」
まずは倫太郎が華焔刀を垂直に振り下ろす――と見せかけて、水平の薙ぎ払いを。刃先を返して二度の斬撃を与えたなら、華焔刀の柄、その下をくぐり抜けた夜彦が胸元を真下から斬り上げた。
「く――そッ、俺がやられるなんざ……認め、ねえぞ……!」
膝を突くのを誤魔化すように、クライング・ジェネシスは拳を地面へと叩きつけた。
大成功
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リンセ・ノーチェ
自分の弱さを認めず人にばかり理由を探して―君は
僕の弱さは知ってる
フェイントと見切りに頼る癖から心まで
銃撃後に杖で魔法を叩き込むのが『僕』の常套
僕の銃弾一撃なら耐えられるし
見越して僕の急所は金属で密かに覆ってある
敵の『僕』のリズムを狂わせる為
銃撃は回避せず防御し二撃目を許さぬ【早業】で『僕』をウィップの【ロープワーク】【罠使い】で捕縛し
UCでフォルテ召喚、『僕』をつん裂け!
僕のUCより速く放ったから―『僕』にフォルテは居ない
今の僕はフォルテに【騎乗】し
確かに歩いてきた今の僕は『過去』に負けない
敵本体を【空中戦】の身軽さで翻弄し【全力魔法】で光の【属性攻撃】
僕達は弱さを見つめている―だから、勝つよ
クライング・ジェネシスを前に、リンセ・ノーチェ(野原と詩と虹のかげ・f01331)
は静かに語る。
「自分の弱さを認めず人にばかり理由を探して――君は、」
「それのどこがいけない? 俺は何も悪くない、悪いのは全部――ジャスティス・ワンと、地球のクズどもだ!」
クライング・ジェネシスがリンセの言葉を遮り、叫ぶ。同時に、リンセの前にケットシーが現れた。リンセと同じ姿の幻影、だ。
幻影はまず、フェイントを仕掛けてきた。そこから引き金を引いて銃弾を一発、続けざまの攻撃のために杖を握る。
けれど銃弾はリンセの心臓部に命中し、跳ね返った。予想外のことに、幻影のリズムはあっさりと崩れる。リンセはその場所をあらかじめ金属で覆っておいたのだ。
「無駄だよ」
自身の弱さなら痛いほど知っているリンセに、死角は無い。すかさずウィップで幻影を捕縛し、声を張り上げる。
「フォルテ、『僕』をつん裂け!」
フォルテ――純白の頭部と琥珀色の体をしたヒポグリフ――は、幻影に嘴と爪を突き立て、容赦なくかき消す。
「このまま行くよ、フォルテ!」
さらにリンセはフォルテに騎乗し、空からクライング・ジェネシスへと迫る。
「ギャーッハッハッハッ! まさか幻影を倒すとはなあ! よし、次は俺が相手をしてやるぜ!」
「言われなくても、そうさせてもらうよ」
杖の先に光を収束させ、リンセはクライング・ジェネシスに狙いを定める。
「確かに歩いてきた今の僕は『過去』に負けない」
それに、とリンセが呟くと同時に、光がお互いの姿を完全に隔てる。リンセの意思ひとつ、光が杖の先から解き放たれて落ちて行く。
「僕達は弱さを見つめている――だから、勝つよ」
フォルテの毛を撫で、上昇するリンセ。その目には、光の中で灼かれゆく人型が見えた。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
アドリブ連携OK
右手に胡、左手に黒鵺の二刀流
同じ姿同じ能力か。なんか普通だな。
まずは全力で回避。【第六感】で感知【見切り】で回避。回避しきれない物は黒鵺で【武器受け】からの【カウンター】。それも出来ない物は【オーラ防御】と【激痛耐性】でしのぐ。
過去の俺なら今よりも弱い。それははっきりと言える。技能だけじゃない、精神的にもな。
基本俺なら小細工するなら隠密だがそれでも物理特化。自分の動きは自分が一番知ってる。
UC写月で分身を作成。分身に幻影を相手してもらい、俺自身は【存在感】を消し【目立たない】ように移動、奇襲をかけるように【マヒ攻撃】を乗せた【暗殺】を敵本体に仕掛ける。
ナギ・ヌドゥー
良い場所に現れてくれたな
世界中に見て貰うがいい
アンタの死に様をな
【毒使い・罠使い】毒噴射の煙幕で視界を塞ぎ視認させない、自分は【毒耐性】があるから普通に動ける
【第六感・野生の勘】で敵の動きを【見切り】
【殺気】を帯びた【残像】を無数に作る【フェイント】で敵UCの狙いを定めさせない
オレの「過去」の怨念を喰らうのはアンタの方だ!
UC発動「咎鬼怨魂」発動
咎人共よ、恐怖の雄叫びを上げろ!
全方位衝撃波で敵を吹き飛ばす
と同時に高速移動で斬り込む
【毒使い】毒を塗った刃で【部位破壊・傷口をえぐる・2回攻撃・早業】
コロッセオ、すなわち闘技場。それが意味するところを理解しているナギ・ヌドゥー(殺戮遊戯・f21507)は軽く周囲を見渡し、クライング・ジェネシスと対峙した。
「随分と良い場所に現れてくれたな」
「だろう? 全世界が目撃するんだ、猟兵が無様に倒れるその時をな! ギャーッハッハッハッ!」
クライング・ジェネシスが、下品な笑い声を響かせる。
それと同時に、骸の海発射装置が人型をしたものを具現化してゆく。数秒空中に留まった後、それはナギの姿を取った。
白髪の強化人間が迫ると同時に、ナギは煙幕を張る。その中には勿論自身もいるが、幸いにしてナギには毒への耐性があるのだ。
幻影も罠だと気付いた頃だろう。
何かが空を切る音を耳にする――それより前に、とうにナギは動いていた。鋸に似た刃を持つ鉈は、ナギの横を抜けてコロッセオへと突き立てられる。
幻影が鉈を引き抜いてあたりを見回せば無数のナギ、その残像が出現していた。本物を見極めようにも、残像の全てが殺気を発している。幻影は忌々しそうな表情をつくり、手当たり次第に残像を襲い始めた。
居合わせた黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)の前にも、自身の幻影が出現していた。
「なんか……普通だな」
嘆息ひとつ、瑞樹(界渡・f17491)は二刀流の構えを見せる。左手には月山派の打刀、胡。左手には黒い大振りのナイフ、黒鵺。敢えて構えに隙を見せれば、幻影はそこ目がけて突っ込んでくる。
幻影の放つ斬撃は、今の瑞樹よりも格段に無駄が多い。瑞樹はそれを受けることなくひたすらに回避し、機会を窺う。それでも、首筋を狙う一撃はなかなかに危険だ。すかさず黒鵺で攻撃を滑らせた、瑞樹は胡によるカウンターで牽制した。幻影は跳躍し、瑞樹と距離を取る。
(「過去の俺なら、次は――」)
そう、過去の自分の動きなら瑞樹が一番よく知っている。目の前から消えた幻影の行き先は――、
「背後――と、見せかけて頭上だ!」
真上からの打撃を受け流し、いなす。今の瑞樹より確実に弱いのは技能だけでなく精神面もだ。真正面からやりあうのは勿論、小細工を用いたとしても負ける気はしない。
「じゃ、そっちはよろしく」
瑞樹が小声で告げる相手は、もうひとりの自分。無論、幻影ではなく瑞樹自身の意思でつくりだしたものだ。もうひとりの自分と自然に立ち位置を入れ替え、幻影の相手をさせる。瑞樹自身がクライング・ジェネシスへと向かうためだ。
存在感を消して極力目立たないように背後へ、そうして閃かせる暗殺の一閃には麻痺効果を忍ばせて。
「なっ、いつの間に!?」
「気付くのが遅かったな、クライング・ジェネシス。――ああ、俺にじゃない。そっちの方に、さ」
瑞樹が黒鵺で示した先には、ナギの姿。ナギもまた、自身の残像に幻影の相手をさせている間、クライング・ジェネシスへと接近していたのだ。
隙を作ってくれた瑞樹に目配せし、ナギはクライング・ジェネシスの正面で歩みを止めた。状況を察し、瑞樹は素早く二人との距離を取る。
「残念だったな。オレの『過去』の怨念を喰らうのはアンタの方だ!」
「ちっ、黙って喰らうかってんだ!」
舌打ちをするクライング・ジェネシスの動きは、瑞樹の与えた麻痺によって阻害される。クライング・ジェネシスが迎撃態勢を整える前に、ナギの体に不吉な気配が漂い始めた。それは怨念だ――ナギがこれまでに殺してきた、咎人の。
「咎人共よ、恐怖の雄叫びを上げろ!」
ナギの呼びかけに応え、コロッセオに響き渡る絶叫。数多の叫びは衝撃波となって、クライング・ジェネシスを吹き飛ばした。ナギは同時に地面を蹴り、クライング・ジェネシスを追う。
その手には、先ほど幻影が振るっていたものと寸分違わぬ鉈。クライング・ジェネシスに追いつくや否や、瞬く間に二度、鉈を振るう。
これ以上は無意味だとナギが足を止めると、クライング・ジェネシスはにたりと笑んだ。
「なんだ、たったそれっぽっちか?」
「ああ、これで終わりだ。そのまま世界中に見て貰うがいい、アンタの死に様をな」
「おいおい、俺は――あ? おい、なんだ、くそっ、この俺が――!」
クライング・ジェネシスの上半身と下半身がずれ始める。やがて上半身が完全にずれ、地面に落ちた。クライング・ジェネシスが断面から黒い霧となって消えゆくのを一瞥して、ナギはコロッセオを後にしたのだった。
成功
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