アースクライシス2019⑱〜逃げ行く王を
●グリモアベースにて
猟兵たちの活躍によって、ジェネシス・エイトの居場所が次々と判明していた。
また一人明らかになったオブリビオンの名を、佐伯・キリカ(陽気に元気・f00963)が声高に告げる。
「ついに『スカムキング』の居場所が判明したんだよ!」
その居場所とは、彼が拠点とするニューヨーク州ナイアガラ・フォールズ市の『ラブ・キャナル』。20世紀中頃には『ラブ・キャナル事件』として廃棄物による環境汚染が起きた場所としても有名な場所だ。
「『肥溜めの王』らしいといえばらしい場所だけど……スカムキングは運河の地下を要塞化して乗り物を改造、逃走の準備を整えていたみたいなんだよ。しかも乗り物はスーパープルトンから譲られたUFO、逃走先は宇宙!」
どうしてそんなことに、と猟兵のひとりが呟いた。
「って、思うよね? 元々スーパープルトンのUFOは環境に優しい一人用UFOだったんだよ。でもスカムキングが凄まじい環境破壊と引き換えに行った改造で、多数の人員と資材を宇宙に運び出せるようになってるんだって!」
しかも、とキリカは続ける。
「11月30日までにスカムキングを撃破できなかった場合、スカムキングが乗ったUFOが飛び立っちゃうんだよ。それも世界を汚染しつつっていうから、もう、本当に迷惑この上ないんだよ!」
ただひとつ幸いなことがあるとすれば、スカムキングは猟兵の侵入に気付いてすぐに出向いてくれるということだろうか。それを説明したキリカが、話す速度をわずかに上げる。
「と、いうわけで! 時間のないとこ悪いけど、さっそく猟兵さんをラブ・キャナルの地下に転送するんだよ! ……光化学スモッグをもっとヤバくしたようなものに覆われてるけど」
ごく小声で付け足して、キリカは猟兵たちを転送した。
雨音瑛
スカムキングとの決戦シナリオです。
判定はちょっと厳しめなのでお気をつけください。
●プレイングボーナス発生条件
敵のユーベルコードへの対処法を編みだすこと。
スカムキングは必ず先制攻撃してくるので、いかに防御して反撃するかの作戦が重要になります。
●地下都市について
複雑な構造をしているダストブロンクス市街に似た雰囲気です。都市内には有害物質の霧が発生しており、凄まじい異臭で覆い尽くされています。こちらへの対処は、あってもなくても結果に影響しません。
スカムキングと戦闘になるのは、既に廃墟となったパブの前です。周囲の外灯に加え、パブのネオンがちらついています。
●リプレイについて
猟兵が転送され、スカムキングがパブから出て来たところから始まる予定です。戦闘は、パブ内でも路上でもどちらでも構いません(どちらで闘っても結果には影響しません)。
第1章 ボス戦
『スカムキング』
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POW : キングアンドクイーン
自身の【体重60kg】を代償に、【体内から飛び出した破壊魔術師アシュリー】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【肉弾戦を挑むスカムキングとの連携攻撃】で戦う。
SPD : スーパートニックナイトメア
【アシュリーが禁断の呪文をかけ続ける】事で【近付くだけで敵を侵食する超汚染存在】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ダスト・テリトリー
自身からレベルm半径内の無機物を【汚染物質】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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ビードット・ワイワイ
見たり見たり見たり、汝の破滅を見たり
愛する者と体を共に、愛する者と空の彼方へ
死を恐れるか、人でなし。滅び恐れるか、人でなし
所詮滅びし過去の生。既に謳歌したであろう
多くを求むは破滅を招く。ここが汝の破滅なり
防具改造にて守りを強固にを更に分厚く
更に硬く、堅牢に。オーラを纏いて防御に用い
重厚なりし体を盾にし盾受けせり
思い上がりしその思考。それこそこのUCの使い時
ここにいざ舞わん、瞬間的加速にて吹き飛ばすは衝撃波消えし姿で超えるは音速。ここは見通し悪かろう
あらゆる障害吹き飛ばし行うは蹂躙である
追尾し貫通し汝ら屠らん
どこまで行こうと逃げる術無し
天を見よ我を見よ己を見よ
これにてそれらは見納めである
古代兵器のウォーマシンが、地下都市の路地裏から大通りへと姿を現した。
肥溜めの王と愛人を前にしたビードット・ワイワイ(UFO TAKER・f02622)が語るのは二人の破滅、そして王の抱く恐怖であった。
「汝は既に謳歌したであろう? 多くを求むは破滅を招く。ここが汝の破滅なり」
スカムキングは首を傾げた。それはビードットの語った内容にか、それとも彼の姿にか。おそらく前者だろう。
「こいつぁ驚いた。まさか博物館にでもいそうなのが来るとはな」
「こんな時でもなけりゃあ、どっかに売り払えばいい金になったかもしれないねえ」
「違ぇねぇ。さてどうする、骨董品さんよ? ぶち壊されてぇってんなら、容赦はしねぇぜ!」
「待ちな、アンタ。――まずはこれでも喰らうがいいさ! 金属にはこういうのがいいんだっけねえ!」
スカムキングの胴体に埋め込まれる愛人、アシュリーが何事か呟いた。すると、瞬く間に数本の雷がビードットへと落ちる。その間にビードットの背後へと回り込んだスカムキングが、両手を組み合わせて槌のように振り下ろした。
「――ッ!」
呻くような声は、スカムキングのものだ。
王と女王の連携攻撃を受けたビードットは無傷。改造した防具とオーラによる防御、重厚な体を盾に変じさせての防御態勢は、スカムキングの腕を痺れさせるに至る。
「思い上がりしその思考、まさに好機。ロードルーイン、規格外なる過剰兵装。もっと力を、もっと数を、もっと死を。過剰な力は扱えぬ。何れ刃は己刺す。かくして彼らは滅んだ」
一息に告げられた言葉によって、ビードットは宙へと躍り出た。
瞬間的な加速で起きる衝撃波でスカムキングは吹き飛び、壁面へと体を打ち付ける。
「ぐっ……大丈夫かアシュリー!」
「こっちは平気さ、アンタはどうなんだい!」
「こっちも大丈夫、だ――!?」
スカムキングは目を疑った。確かに先ほどまであったはずの建物が数件、吹き飛んでいたからだ。
あらゆる障害を吹き飛ばすビードットの行動は、まさに蹂躙。音速を超えての行動ゆえ、スカムキングには視認も攻撃もできない。
「ここは見通し悪かろう」
周囲の建造物ごと、スカムキングへの攻撃が繰り返される。
「天を見よ我を見よ己を見よ。これにてそれらは見納めである」
どこへ逃げようと無駄だと、ビードットは地下都市を破壊しながらの攻撃を続けるのだった。
大成功
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九条・救助
大抵の場合、悪臭の原因になるのは雑菌やバクテリアなんだ。
生ごみも冷凍庫に置いとけば、凍ってるウチは匂いもしない。……だろう?
だから、凍らせる。お前も。お前の領域も。全部だ。
敵のコード発動に合わせて氷の【属性攻撃/範囲攻撃】。更に【封印を解く】……俺の血に宿す悪神の力を最大限に引き出し、汚物を湧かしたそばからぜんぶ凍りつかせてやる!
更に【凍神領域】を展開!そうだ。ここは俺が支配する。
俺は『ウェンカムイ』。雪と氷を支配せし悪神の血族。
お前の身体、随分と水を含んでるみたいだな。
なら、俺の力の影響から逃れることはできない。
ここは今から俺の領土だ。
凍れ。逆らうことは許さない。
とどめだ。神水剣を突き立てる
「悪臭の原因が何か、お前は知っているか?」
「あん? そんなの考えたこともねえな」
怒りを滲ませる少年、九条・救助(ビートブレイザー・f17275)の問い。スカムキングはむしろ愉快そうに笑った。
「大抵の場合、雑菌やバクテリアなんだ。生ごみも冷凍庫に置いとけば、凍ってるウチは匂いもしない」
「おい、何が言いたい?」
救助の目に見える範囲にある無機物が、汚染物質へと変わってゆく。
まずは赤茶色の泥に似た姿となった外灯が浮き、回転した。救助目がけて飛ぶそれは、さながら汚染物質の槍だ。
「だから、凍らせる」
その言葉を皮切りに、あたり一帯が氷漬けになる。槍は落ち、地面とともに凍る。
「お前も。お前の領域も。全部だ。――ここから先は……オレが、支配する」
次の瞬間、ただの氷は永久凍土に変わっていた。
「なんなんだい、アンタは!」
スカムキングの腹部に同化しつつある愛人、アシュリーが吼える。
「“俺”か? 俺は『ウェンカムイ』。雪と氷を支配せし悪神の血族だ」
永久凍土を難なく行く少年は、動揺するスカムキングへと歩み寄る。緩やかに、けれど次の瞬間にはスカムキングの背後に回り込んで。
「お前の身体、随分と水を含んでるみたいだな」
「ッ!」
咄嗟に反応して振り返ったスカムキングが感じた冷気は救助によるものか、永久凍土によるものか。判別する時間は与えられるわけがない。
「なら、俺の力の影響から逃れることはできない」
少年は冷酷に告げる。凍れと、逆らうことは許さないと。
救助――いや、ヒーロー『ウェンカムイ』は、スカムキングの腹部、アシュリーの額に神水剣を突き立てた。
地下都市に、女の悲鳴が響き渡った。
大成功
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篝・倫太郎
【華禱】
有害物質には毒耐性で常時対応して臨む
先制攻撃には見切りと残像で対応
必要ならフェイントも織り交ぜて
躱し切れない場合はオーラ防御で防ぐ
防ぎ切れない場合は激痛耐性で凌いでカウンター
反撃の時点で夜彦とそれぞれの敵に個別対応する形で連携妨害
先制攻撃もそれ以降の戦闘も
可能な限り夜彦と互いの死角をフォローするように行動
拘束術使用
二体とも射程内の状況で鎖で攻撃
同時に俺自身も華焔刀でなぎ払い
刃先返しての2回攻撃で範囲攻撃
攻撃にはフェイントも交えて対応
攻撃には総て衝撃波と生命力吸収を乗せて
拘束術は剥がされる前に複数回掛けて強固にしとく
情の強さが連携のコツだってんなら
こっちも負けらんねぇんでな、悪く思うなよ
月舘・夜彦
【華禱】
汚染された大気は毒耐性、悪臭は覚悟と狂気耐性にて精神を平常に保つ
先制攻撃は残像・見切りにて躱し、回避が困難な場合は武器受けにて防御
ただし相手も2体、連携して仕掛けてくる可能性が高い為
倫太郎殿の動きを合わせて凌ぎます
躱した先に彼が居るようでは危険ですからね
視力にて敵の動きを読み、刃で攻撃の軌道を変えられるならば武器落としにて対処
先制攻撃を凌いだ後にカウンター
倫太郎殿の拘束術で敵を捕らえた時こそ合図
早業の抜刀術【静風】併せ2回攻撃・なぎ払いにて反撃
相対するは二人
雌雄を争うは力量と……如何に息を合わせられるか
我々も多くの戦地を渡って来たのですから負けるとは到底思えませぬ
「なあ夜彦、次の相手はアレ、か?」
「ええ、そのようですね」
地下都市には、光化学スモッグや異様な臭いが立ちこめていた。だというのに、訪れた猟兵ふたり、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)はまるで動じることなくスカムキングと相対する。
スカムキングの胴体に一体化しているアシュリーが、けらけらと笑った。
「ねえアンタ、見なよ。こんな汚染された場所でピンピンしてる奴がいるよ?」
「ほお……この状況で何ともねぇなんて、どんな対策してやがるんだ? おっと答えなくてもいい、お前らはどうせここで死ぬんだからな。いくぜ、アシュリー!」
「ああ、任せな!」
アシュリーが何やら呪文を唱えると、上空から襲い来る気配がする。魔術による雷撃を回避する倫太郎、それを読んでいたかのように場所を譲るように動く夜彦。
次は、倫太郎にスカムキングの拳が迫る。
完全に捉えた、とスカムキングがほくそ笑む。腕の力だけで繰り出された拳が、倫太郎――の、残像をかき消した。
「残像だと!? ……なんて、な!」
「後ろにいるのは知ってるんだよ!」
今度はアシュリーも笑った。凍てつく雨が真上から降り注ぐ。その先は、夜彦だ。氷弾となる雨は、虚しく夜彦の残像を貫いてゆく。
「情の強さが連携のコツだってんなら」
手にする薙刀・華焔刀の柄で地面を打ち、それを支点にして倫太郎はスカムキングとの間合いを取る。
「こっちも負けらんねぇんでな、悪く思うなよ」
そう、倫太郎と夜彦は数多くの戦場を渡ってきたのだ。経験は自信に繋がるし、そうでなくとも共に戦う者に背中を預けられるのならば不安など無いというもの。
「それに――我々が負けるとは、到底思えませぬ」
夜彦は、刀の柄を握る。
雌雄を決するのは、力量だけに留まらず。いかにして、息を合わせられるかにかかっていると夜彦は本能的に理解していた。
「勝負ってのは最後までわからねぇものだ……って、おいアシュリー! 体が動かねえぞ!?」
「これは……何か見えないものが縛っているようだね。待ちな、魔術でどうにか――」
アシュリーは、倫太郎が放った見えない鎖を解除しようと動く。倫太郎はそれを許さず、見えぬ鎖による拘束術を再び行使する。
「される前に、何度でもお見舞いしてやるよ!」
次は華焔刀も振るい、スカムキングを薙ぎ払って。刃先を返して一度目と同じ軌跡を描けば、スカムキングとアシュリー両者に傷が刻まれる。同時に放つ衝撃波は、周囲の建物をも揺らしていた。
もう一度、と倫太郎が翻す刃は敵を捉えることなく上方へと滑って行った。フェイントだとスカムキングが認識する頃には、倫太郎は軽やに後方へと下がっている。
そこからは、代わりに前に出た夜彦の仕事だ。
柄を握る手に力を籠め、夜彦はスカムキングを見据える。
「お返し、というにはおこがましいかもしれませぬが」
見えぬ斬撃が、二度。ここを訪れた時から集中していた精神は、並々ならぬ攻撃力となってを襲った。
スカムキングの首が落ちる。アシュリーの首元が埋まる胴が滑り、落ちる。
華禱のふたりは、肥溜めの王を消滅させたのだった。
大成功
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