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猫も紅葉も朱に染まり

#サムライエンパイア #戦後


 それが言う事には、その山にオブリビオンが集落を作っている、とのことだ。
「集落、というよりは、集まっているだけ、とでもいう方が正しいかもしれませんが」
 廃村に居ついたオブリビオンを中心に、他のオブリビオンが慕うように廃村に住み始めたという事らしい。その数も、実際の所多くは無い。
 深い山の只中にあるその廃村は、廃れた理由もわかりやすく、その不便さの為である。言ってしまえば、そこにたむろしようが、直接この世界の住民に害があるわけではない無いが、彼らがいつ居住地を移すかも分からない。
 ここで討伐するのが、手っ取り早いだろう、と説明しながら、その山の風景を移す。
 燃えているようであった。
 赤、橙、黄、茶に点描画を描くように、山が暖色に染まっている。
 なるほど、山が秋の空の下で紅葉している。
 その山中に見えるのが、件の廃村だ。まるで紅葉に埋もれるように、人の営みの跡が顔を覗かせている。
 砕けた壁から道を呑む紅葉が床に流れ込むのも厭わず、武術の鍛錬にいそしむ小さな影がある。
「村の中心辺りにある道場に住み着いたオブリビオンを中心に作られているようです」
 赤色の衣装を身に着け、機敏な動きで拳や脚、武器を互いに繰り出す二体のオブリビオン。
 全身、滑らかな毛に覆われ、頭頂から二つ、角のように耳を生やし、鼻の両端からひげを伸ばした、それ。
 正に、猫であった。
 いや、猫に似た人型、だった。
「猟兵様方への依頼は、至極シンプルです」
 紅葉の山を越えて廃村に向かい、そこに居ついた猫人を倒し、道場にいるオブリビオンをも倒す。
 つまるところ彼らのボス猫と言うのだろうか。
「では」
 と、楕円球は告げる。
「よろしくお願いします」


雨屋鳥
 サムライエンパイアです。

 章ごとにオープニングを差し込みます。

 宜しくお願い致します。
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第1章 日常 『秋の山を堪能』

POW   :    紅葉といえば肉だよな!肉狩りにいこうぜ!

SPD   :    秋の山と言えばキノコだろ!キノコ!茸狩りいこう!

WIZ   :    紅葉といえば赤や黄色に染まった美しい景色でしょうよ。

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 なぜ、従えているのかと問う。
「珍しい武技をあしらってやれば勝手に居着いただけだ」
 なぜ、留まるのかと問う。
「あれらが強者となるか強者を呼ぶなら、本意に相違ない」
 なぜ、刀を振るうのかと問う。
「さて、あれらもあれで端まで強者」
 答えは返らず、しかし、答えは示される。
「それを越えたのであれば是非もなし」
 口は愉悦を漏らし、瞳を闘気が朱に染め上げる。
「語る言葉ももう要らぬだろう」
 紅色の刀剣を手に、ボス猫と言うよりは鼠と呼ぶ方が納得のいく汚れた風貌の男が立ち上がる。
「死合おうか」
 半壊した道場。朽ちた壁から紅葉が埋めた床が軋みを立てて、始まりを告げた。
 これは少しだけ先の光景。
 猟兵が紅葉の山に踏み込んだ、少し後の話。


●第一章、日常『秋の山を堪能』

 深い山の中の廃村へ向かいます。
 妨害も何もないので、紅葉を楽しむのも、見向きもせず戦場へ急ぐも自由です。

 更新は不定期ですが、一章は手早く済ませるかと思われます。

 それでは皆様の心踊るご活躍お待ちしております。
菱川・彌三八
海晏寺にゃ先日行ったが、山まで出向くなァこねェな時でもねェと
化け猫退治と聞いちゃいるが、堪能せにゃあ罰があたるゼ
笠に股引、腰杯、道中弁当、矢立て…は何時も通りだが、軽く旅支度で向かうとしようか

紅葉を見ながらのそゞろ歩きたァ乙なモンだ
上向きすぎてけっつまづかねぇように用心せにゃあ
暫く行ったら見晴らしの善い場所で、握り飯に目刺と糠味噌漬けで一休み
あんまり見事なもんだから、道中手控えいたそうか
なに、絵仕事始める程野暮じゃねぇヨ
楓がくれなゐだ銀杏が山吹くだの云う話サ
マ、幾つか秋の名残を拾っておくのも悪かねェな

どれ、ここからその村ァ見えるか?
然し猫の住む村たァ奇々怪々
なかなかドウデ、俺ァ物見たさ半分だぜ



 紅葉が花つけぬ木々の花とすれば、山一つが巨大な一房ともいえるかもしれない。
 人も、化け猫も、この怪花と比べれば、矮小とはかくあるものだなあ、等と落ちた橙の葉を踏み分ける。
 手を広げた山の花弁を下から見上げれば、かぶった笠の上にいつの間にやら場所をとっていた紅葉の数枚が乾いた音を立てて舞い落ちる。
 股引き、矢立。平素通りの恰好の上に、若干ばかりの旅装束を着付けた菱川・彌三八(彌栄・f12195)は、足を進めるたびに腰杯を鳴らしながら、無数の赤に染まる山道を進んでいた。
「おっと、こりゃ参るねェ」
 のんびりと歩いていた彌三八ではあるが、幾らか険しくなってきた山道の途中で振り返って、その言葉に反して鯔背に笑い、顎をこする。
 重なり、秋も香しいばかりの道は滑りやすい。紙を幾重にも束ねた坂舞台のようなもので、上ばかり、紅葉ばかり、景色ばかりと見つめていては、ひょうと足を攫われて谷底に真っ逆さまなんてことに成りかねない。
 ならば、移りがちな目を満足させてから、先に進むほうがいいのかもしれないなァ。などとうそぶきながら。
「よいせ」と彌三八は手ごろな倒木に腰を掛けた。
 山も中腹、これから下り、また上りをしていくが、彌三八に「参る」などと言わしめたのは、その険しさにではない。
 見事な紅葉である。
 世界が、丸ごと秋という色をもって山景色を描いたような、赤い金屏風とでもいうべき台地が青空の下に広がっている。
 件の廃村の少し離れた所に転移したが、なるほど、周囲の山々を見れば不便さに廃村となるわけだ、と納得すると同時に、しかし、この景色を手放すなど勿体ないことを、とも思ってしまう。
 さて、贅沢な景色をあてに、握り飯を取り出した彌三八はしばし休息をとる。どうにも今回の状況そのうち脅威となるらしいが、すぐにというわけでもないらしい。
「猫も紅葉に誘われて、ってなもんなのかねえ」
 ならば、手控えをさせてもらっても窘められることはないだろう、
「さて、まだ村は見えぬが」
 猫の住む村、たァ。とくつくつと笑みをこぼしながら軽く炙り目を入れた目刺しの頭を噛み千切った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幻武・極
すっかり紅葉も進んでいるね。
そういえば、ボクの家の方も落ち葉がたまってそうだよね。
帰ったら落ち葉掃きしないとね。
その後は焚火で焼き芋かな。

さて、オブリビオンをさっさと退治しちゃおうか。



 さくさくと、軽い音を立てながら幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)は、慣れた足取りで山道を踏み越えていく。
 高下駄、という平な道でも苦労しそうな履物をして、一切の乱れなく紅葉の間を抜けていく様は、見るものがいれば物の怪か、天狗か、などと噂されるものだが、しかし、付近に人の気配などはなく、ただ時折獣の息遣いが茂みの向こうに聞こえる程度だ。
「そっか、もうそんな季節だよね」
 と赤い瞳が燃え盛るのではないかというような緋色の景色に、困ったような声色と楽しげな表情を織り交ぜていた。
 彼女が想起するのは、自らの武を高めた山奥の棲み家だ。
 どこか近しいにおいのするこの山が、こうも秋に色めいているというのであれば、そちらも落葉に埋め尽くされているかもしれない。
 踏んだ落ち葉が高下駄の歯を串にして団子状になっているのを、飛び上がった拍子に中空で捻りをいれて振りほどいては、その乾き具合に焼いた芋の香りを連想していた。
 落ち葉の焦げた香りを皮にまとわせて、ほくほくと甘みを閉じ込めた黄金色。
「うん、それじゃあさっさとオブリビオン、退治しちゃおうか」
 家の葉掃きを終えたら、その山で焼き芋を拵えることを心に決めて、その足は一層快活に山道を駆けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
アドリブ歓迎

戦場に向かうにしても途中で紅葉くらいは楽しみたいわ
いつもよりゆっくり歩いて景色を楽しみながら進む
ボス猫は気になるけど今くらいはいいでしょ

紅葉って見るの初めてなのよね
宇宙船の中にいた時は縁がなかったから楽しみにしてたけど想像以上だわ

葉っぱってこんなに黄色く、赤くなるものなのね
山全体を赤くしてしまうなんてすごいと思うわ

落ちてくる葉っぱを1枚掴むと空にかざして

もみじって葉っぱも綺麗な形してるのよね
本の中でしか見たことなかったから本物はどうなのかと思ってたけど本で見た通りだわ

手に取ったもみじをクルクルと回して遊びながら空を見上げる
空を覆う紅葉を眩しそうに眺めながらゆっくりと一歩ずつ戦場へ



 大地に根付く木々とは、木々を支える葉とは、こんなにも色づくものなのかと仰ぎ見る景色に、足取りは心なしかゆっくりとしたものになっていた。
 さながら原始的な星が輝いているような、否、台地がかつてのその原始的であった時代を涼やかになった風に懐かしく思い返しているかのような。
 山の連なりを染める木々が、風に揺れてそよぐ様はただ聞いていただけでは想像しえなかった光景であった。
 遠く上空、大空のそのまた向こう、宇宙空間を漂う宇宙船の中にいた時には縁のなかった景色に鶴澤・白雪(棘晶インフェルノ・f09233)は、いつのまにやらゆっくりではあるが、しかし進んではいた足をついに止めてしまっていた。
「これが、紅葉というものなのね」
 原理としては、把握していた。季節の巡り替わりによる光合成活動量の変化に伴い、その内部の色素を変化させてより効率的な運用を行う。
 ただ、捨てるのではなく、それらもすべて有効に。それを聞いた時はなるほど有機的だ等と風情なく思ってしまったものだが、この光景をみれば、それ以上の何かの意思や感情を感じ取ってしまう。
 いや、そこにそう言った何かがあってほしいと願ってしまう、のだろうか。
 ふと、目の前に舞い込んだ赤色の欠片に手を伸ばしてみれば、まるで風が投げ渡したかのように、冬を思わせるような白い肌の上に一枚の葉がするりと舞い降りる。
「綺麗な形」
 細い指につまんだそれを空にかざせば、日の光が複雑に、しかし乱雑ではなく整った葉脈を浮かび上がらせて、本の中で見た通りの形をしたそれが、思っていたよりも澄んだ色をしていることに気づく。
 戦場へと向かう、という目的すらもしばし忘れて、五本の指を広げる赤い椛を眺めていると、もう一度、彼女のオニキスの髪を風が揺らす。
「あら、そうだったわね」
 山にせかされたような気がして、そんなことを思った自分に少しだけ肩を揺らした白雪は、指で紅葉をくるくると躍らせながら、目的地へと再び歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携歓迎
「さてはこれはエンパイア名物のドージョー破りってやつだね!」
「無駄におっきな五重の塔の一階毎にシテンノーが待ち構えてるやつ!」

道中景色は楽しみは楽しみだけど話し相手がいないと暇は暇だから他の猟兵がいればいいな
手持ちぶさたなら紅葉の枝で作った人形に命でも吹き込もうか
ボクよりも頭が良くなるよ!

道中は最初は「なんでそんな遠くに降ろすのさー」くらいのものだけど景色を見れば機嫌がよくなるんじゃないかなボクは単純だから

そしてたどり着いたら第一声はもちろんこれだよね!
「「たのもー!!」」
ところで看板はどこ?勝ったら貰っていいんだよね!



「うーん、やっぱりこれは、エンパイア名物の――」
 我が主は、意気揚々と落ち葉を踏み越え、威風堂々と胸を張りながらそう仰った。
 そう、これは所謂、紅葉狩り、というものだ。
 枝を組まれ命を吹き込まれたそれは、声を出す機能もなく唯々心中にて独白する。
 我々、木々が葉を落とす前準備を、幾らか前から人間たちは風情のあるものだと述べ、山を眺めて、愛でることを紅葉狩り、と称している。
 なぜ彼らが、山の獣を襲う事と、我々の冬支度を眺める事を同じく、狩り、と呼ぶのかは寡聞にして知らないが。
 と思案する私は、我が主が告げた言葉に愕然とした。
「ドージョー破りってやつだね!」
 何と、我が主の答えは違うものであったのだ。
 我が主は、この景色に趣を感じ取りお慰みながらも、しかし、我が主が思し召すのはその先のことであったのだ。
 この先にあるのは、十幾つか季節を廻る前。人間たちが過ごしていた村というものがある。
 その道場とやらに、剣士、というものがあり、その剣士を求めて人間がやってきたこともあった。
 なんたる浅慮か。
 こともあろうに、創造物たる私が我が主のお考えを読み解こうなど、挙句、そのお考えを私が考える浅薄なものと同列に扱ってしまったのだ。
 これを忸怩たる思いと呼ばねばなんというのか。いや、葉を赤く染め、地に落ちた枝でお作りいただいたこの身ならば、紅顔の至りであると、そう形容した方が正しいのだろうか。
 紅葉を求めるのが紅葉狩りというのであれば、その剣士とやらを求めるのは剣士狩りというのか。しかし、その剣士とやらは既に鬼に憑かれ朽ちたと聞いた。
 その剣士が朽ちる前に、人間たちは次々と山を下りて行き、それが朽ちた後、居ついたのはおかしな獣たちと、鬼のような気配を持つ何かであったはず。
「無駄におっきな五重の塔の一階毎にシテンノーが待ち構えてるやつ!」
 シテンノー。
 それが何かも、私は知らない。きっと我が主だけが知りえるような高次元の存在なのだろう。しかし、おっきな五重の塔とは、何を示すのか。
 そのようなものがこの先に無い。であれば恐らく秘された何かを看破なさったのだろう。
 私は、主の後塵を拝するこの光栄を表現し伝える方法を持ち合わせていないことを唯々悔いるばかりだ。
 などと、私が我が主、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)と名乗られた方に尽きぬ思いを馳せているうちに、その朽ちた村に辿り着いていた。
 なら、第一声はもちろんこれだよね! と私に微笑みかけてくださるが、しかし、根を張るばかりに感けた私にはその意図は読めず。
「たのもー!!」
 張り上げられた声に、私は唯々不可思議な獣に、その首を垂れよ、と思念を飛ばすのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
WIZ

うーん何にもなきゃ遠目には紅葉の綺麗な山ってだけなんだよなー
目的は山奥の廃村ね、人里はもちろん里山ですらない感じ
鬱蒼としてんなあ…もう山に飲まれてそうだけど(過去に使われた通い道でもあるかな?と【野生の勘/追跡】でダメもとで探してみる)
笹や藪漕ぎも体力使っちまうし、山の樹を伝って目標の廃村へ向かうかな【地形の利用】
相棒の鸚鵡ユキエには先行して飛んで貰いたまに影のはっきり見える場所で方角確認
山の獣と会えば【動物と話す】でちょっと変わった奴見なかった?と一応尋ねてその道すがら横目に紅葉を楽しむのもいいかな

連中どもの隠れ里ねえ…どんなにひっそり暮らしても予知された時点でなんか災いなんだろうな



 森の間を、赤い髪の少年が駆けていく。
 迷いなく進んでいく鹿村・トーゴ(鄙村の忍者見習い・f14519)は、さながら飛び石を跳ねるかのように、地上から少しだけ空に近く、紅葉をふんだんに湛えた枝を足場にしている。
 とはいえ、何の指標もなく進んでいるのではない。
「里山、ですらない感じか」と撓む枝を踏みながら、山の肌を見下ろしつぶやく。
 道がないわけ、ではない。
 猟師の手が入っていることはわずかに見て取れるような雑木林、という程ではない森は、しかし、人の往来が無くなって久しいらしい。
 元が人の拓いた道が獣によってかろうじて維持されているような、紅葉に埋もれた獣道を見つけ出していた。
 とはいえ、そのまま藪漕ぎもされていない道を進むのは無駄に疲弊してしまうため、こうして彼は木々の上を跳ねて進んでいるのだ。
 その甲斐もあってか、その足の進みは速い。
「あ、お前。そうお前だ」
 とトーゴは、気のざわめきに茂みから飛び出した小さな影に足を止めながら声をかけた。
「最近、ちょっと変わったやつ見なかったか? いいあ、俺じゃなくて。いや、多分そいつらでもなくて」
 動物の言葉を噛み砕いてみれば、出てくるのはどうにも猟兵を思わしき姿ばかり。
「いや、もっとこう、猫みてえな、な?」
 と少し具体的に聞けば、ああ、あれか、というような反応が返ってくる。どうにも、件の廃村はまだ少し離れた場所で、彼、いや彼女かもしれないが、その狐のテリトリーからは離れているらしい。
 そうか、と適当に礼を言いながら、空振りに頭をがしがしと掻いて進んで開けた場所に出ると、再度彼は足を止める。
 と、開いた木々の間に姿を現したとたんに、高い歌声がトーゴの頭上から降ってきた。
 トーゴの足の進みが早い要因のもう一つ、この山に入った時から上空を先行して道を示してくれている鸚鵡のユキエの声だった。
「見えたのか」
 上空を飛ぶその陰が一直線に進みだしたのを見て、トーゴは赤い瞳を燃やすように溢れる緋色の景色を瞼の中に閉じ込めて、軽く背を伸ばす。
 廃村まであと少し。
 留まる理由はなく、彼の足はどんどんと山の中を進んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
サムライエンパイアの秋も綺麗だねー
周りの景色を堪能しながらのんびり歩きます。
静かな山道を鼻歌混じりでそぞろ歩き。

猫人かぁ。
可愛いのかな。
でも強いんだよね。
…目つきの悪いドラネコ?

おにぎりを頬張って一休み。
近くで見つけた山柿も熟し具合はいい感じ。
見事な紅葉と、美味しい食べ物と、
高く澄んだ空と…

「なんでオブリビオンは戦うんだろうね…」
この幸せを感じられるなら争いなんて起こらないだろうに。
でも、何か理由はあるんだよね。
全てを壊したくなるくらいに。
「わたしの世界なら転生してもらうこともできるんだけどね…」

さて、あまり考え込んでも仕方がない。
まずはぶつかってみよーか!
廃村へ向けて、元気よく走り出します!



 オブリビオンはなぜ戦うのか。
 鼻歌まじりの足取りは、決して早くはなく、故郷との共通点、相違点に興味をひかれながら、落ち着いたリズムの中で足を止めて小休憩とする。
 おにぎりを頬に頬張りながら、澄んだ空の下に大輪を広げる紅葉の海に感嘆の声を上げてから、向かう先を思う。
 御桜・八重(桜巫女・f23090)はグリモアベースには距離が遠く朧げにしか映らなかった風貌を想像していた。
「猫人かぁ」
 猫の姿によく似ている、人型。
 というならば、どうしても想像してしまうのは、可愛らしいキャットシーのようなものだが、戦闘力が高いと聞けば多少そこに厳つさが混じってしまい、切れ長の目に少し硬そうな毛並みに、傷跡の体がシルエットに加わっていき。
 結果として。
「目つきの悪いドラネコ?」
 想像の果てにできたのは、結構に生きぎたなそうな風貌の猫であった。
「……違うかな」
 と浮かんだ想像を振り払うようして、最初の疑念に思い当たった。
 オブリビオンはなぜ戦うのか。
 世界をどうして破壊しようとするのか。
「全てを壊したく、か」
 今、八重が感じているような幸せを感じ取れるなら、この世界の幸せを享受できるなら争いなんて怒らないだろうに。
 理由が、あればいいのに。と無意識に思う。理由はなんあんだろうという興味に隠れたその無意識に気づかぬままに、おにぎりを食べきるとそのまま、赤に吸い込まれるようにその場にたたずむ。
 もし、その理由が生への執着や未練なのだというなら。
「もし、わたしの世界なら」
 桜の癒しが届くのであれば、罪を、呪いを雪ぎ新たな命へと転生することもできるのに。
 何を思うのか。
 何を望むのか。
 八重は、一つ肯いて顔を上げた。
 ただここで考えていても何もわかりはしないのだ。まず以て、八重の旅の始まりからして、分からないものを追い求めるものなのだ。
「まずは、ぶつかってみよーか!」
 彼女は、自らが動かないことの理由を持たない。
 悩む時間は終わりだ、とばかりにその足取りは軽く、興味が出たのであれば一足でも早く。
 そんなセリフが聞こえそうな足取りで、彼女は紅葉を踏んで駆けだした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

浅沼・灯人
赤銅(f01007)と
おう、デート行こうぜ

折角秋の山道歩くんだから、景色も堪能しようか
弁当持ってきて食うのもよかったが、歩きながらってのもいいもんだ
っつーわけでおにぎり握ってきたぞ
そっち鮭で、こっち梅干し
あと焼おにぎりもふたつだけ
色付いた紅葉を見て歩きながら飯食って腹も満たす
花も団子も楽しまねぇと損だよな
……うまいか?そうか
俺も鮭にぎり食ったら梅行くかなぁ

風流とか知らねぇけど、いい景色だ
……あ?そうかぁ?
自分が紅葉とか言われても、ピンと来ねぇな……

(見つめ合う熊)
(刹那の宇宙猫)
(おにぎりを食べきり無言の擒餞戈)
(竜は熊に負けない)

今夜は熊鍋か……
えっ、これ担いで行くんか?
担ぐかぁ……(担ぐ)


多々羅・赤銅
灯人(f00902)と
紅葉狩りとかめっちゃデートじゃーん!行こ!

しかし良い紅葉だ、UDCアースなら交通整えて観光地にする手もあったろうになあ
やったあ、私も歩きながらおにぎりとか食えたら最高だと思ってた、気が合う〜!
焼きおにぎり食ってから締めに梅干しでさっぱりさせよ。なんせ私は通だから。

こー見ると灯人かなり紅葉色してんな。
赤い角と薄茶の枯葉みたいな……あーほらほらこの辺の落ち葉とか
(おにぎり片手に拾う)
(視界正面に熊)
(冬眠前の熊は活発で獰猛)
(私達が今から団子だ?)
(そこに無言の料理人灯人パンチ)
(納刀)

熊鍋いいなー。廃村の猫たちも熊食いたいかなー、きっと食うよなー
よっ灯人、熊を担げる好い男!



「灯人ー! デートしようぜー!」
「おう、紅葉狩りかあ」
 等という、会話があったかは定かではないが。
 青い空を埋めるような。
 そんな紅葉に、彼女は背後の気配に振り向いた。
「いやあ、いい紅葉じゃんねえ!」
 と多々羅・赤銅(千早振・f01007)が振り向いた先にいたのは、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)その人だった、
「んだなあ」
 と返す灯人に、返事の十倍以上の言葉を持ってはしゃぐように紅葉を山を蹴り上げる。
 ここがUDCアースだったらさあ、交通機関を整えてさ、盛況な観光地になんじゃねえかなあ、惜しいなあ、いや、でも交通整うなら、景色も半減だし、ゴミとか落っちゃうか。いや、そんなことする奴見かけたら問答無用で私が焼却場に持っていくけどさ。そんな奴の方を。ゴミは分別しなきゃだけど、人間のごみは分別せず集めてまとめて燃やすのが一番じゃん?
「そうだな」
 長台詞に対して、一言である。
 だが灯人の態度にも、慣れているのか、一応の肯定のような返事に満足したか、何も思わぬように赤銅はそのまま、先へ先へと進もうとし。
「おにぎりあるぞ」
「まじでぇ!?」
 その場で綺麗な反回転ターンを決めて、壁にぶつかったボールのように灯人のもとへと跳ね返ってきた。
「弁当もよかったが、歩きながらも乙だろ」
「天才」
 真顔で包みを取り出した灯人を両手の指で差す。
「私も、歩きながらおにぎりとか食えたら最高だと思ってた、今。まさに。つまり私も天才」
「そっち鮭な、こっちは梅干し。あと焼きおにぎりは二つだけ」
「やったあ」
 ひへらと解けるように笑う赤銅に、中身を説明する灯人は花も団子も楽しまねえとな、と一つずつの焼きおにぎりをまず最初につかみ取った赤銅の背を見てから、自らも一つを掴む。
「いやでも、よく見ると」
 と齧ったおにぎりを片手に、色づいた地面に視線を落としながらうろうろとその辺を歩いて思う。
「こー見ると灯人かなり紅葉色してんな」
 赤い角に、薄茶の髪。
「あーほら」
 と一枚の紅葉を拾い上げる。
 広げた五指の二つ程を赤く染め、それ以外は枯れ色をしたそれは、赤と茶の境が焦げたような濃い色をしていた。
 そんな紅葉に、彼女は背後の気配に振り向いた。
「ほら、これとかまさに!」
 と赤銅が振り向いた先にいたのは、灯人その人、ではなかった。
 随分と毛むくじゃらになった灯人だった。腹が減ったとばかりに開いた口には鋭い牙が立ち並び、腕も何倍にか膨れ上がり、その先端にはもう武器も必要もないだろう爪が鋭く光り。
「あー、……灯人みたいじゃね?」
 一先ず言おうとしていた台詞を言いきることにした。
 さて、風情など知らぬが、しかし目の前に広がる景色には、何か心動かされるものがある。と灯人は見上げた紅葉に柄にもなく感じ入っていた。
 ちっぽけな色づいた葉っぱ一枚一枚がまとめて山を幾つも赤に染めている。荘厳ながら、しかし、地味にも思えるような。そんなことを考えていた彼の耳に、連れの声が入ってきた。
 呼ばれた声に振り返った先では、赤銅が片手におにぎり、片手に紅葉をもって、冬眠前の熊と見つめあっている光景があった。
 瞬間、灯人の思考は、深遠なる宇宙世界へと放逐されていた。瞬く銀河に脳のどこから忍び込んだのか一匹の猫が浮かぶ。
 状況を整理した。
 頬にご飯粒を付けた状態で、満面の笑みで、冬眠前の野生の熊と見つめあって、拾った紅葉を突き付けて、挙句。
「あー、……灯人みたいじゃねえ?」
 熊に向けて自分の名前を呼んでいる様に理解を拒否した脳裏に、浮かんだのはそんな光景で。
「なるほど」
 ひとまず、手に残ったおにぎりを平らげる。
 その瞬間、赤銅は紅葉とおにぎりどっちを手放して獲物を握るか、という取捨選択に迫られていた。結果として、咄嗟に何故か紅葉を口に咥えて、刀の柄に手を伸ばし。
 その刀が熊を断つ前に、その熊が腕を振るう前に、赤色の風が吹き込んだ。
 その紅き疾風は、熊の懐へと潜り込むと、その鮮やかな残像を残す蹴りを熊の腹部へと直撃させていた。
 あまりの衝撃に、熊はその身を浮かせて。
「自分が紅葉とか言われても、ピンと来ねぇな」
 しばらく後、なぜか熊を担いで廃村に向かう灯人は、新たな食材に沸く赤銅に渡された紅葉につぶやいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紬雁・紅葉
まぁ…紅葉!
美しい景色…

急ぐ道でもありますまいに
御山の御厚意、堪能して参りましょう

忍び足で音もなく、ゆるゆると山道をそぞろ往く

山風に落ち葉の舞い散る情景に、うっとりと目を細め
月並みですが、正に火の舞うような…

先の戦を気配取り
故に紅葉を楽しみ進む

戦を求む羅刹の気性と自らの名との親近、そして"剣神"の戦巫女としての宿縁
それらが綯い交ぜになった高揚感と期待を胸に

飽くまでもゆるりと赤黄の絨毯を進む…

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※



「ああ、なんて美しい」
 重なる無数の色たちに、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)はうっとりと目を細めながらその足を留めて、揺れる黄色や、赤色の交わりを眺めていた。
「月並みですが、正に火の舞うような……」
 風は冷えるというのに、しかし、この彩に心が温まるような感動が心中を埋めている。
 乾いた葉の絨毯を歩くというのに、その足音は恐ろしく静かなものだ。それは、まるで、今は何も音を立てたくないと、戦いがこの先に待っている気配にこの時を最大限楽しみたいという彼女の願いがにじみ出ているようだ。
「ええ、急ぐ道でもなりますまいに」
 そんな自分に言い聞かせるように、彼女は一人ごちる。
 しゃなりと、風情に頬を赤らめる彼女からは想像がしにくいかもしれないが、しかし彼女は羅刹の血を持つものだ。
 それも剣神の戦巫女だ。
 来る戦闘への高ぶりは、すでに自覚している。そんな自らの熱に対して、彼女はまだこの景色を見ていたいという欲を戦わせながら、その足をゆるりと進めていく。
 この時間に満たされるように。
 これからの時間に満たされるように。
 そんな相反する願いをかける彼女を、赤黄の鮮やかな絨毯は優しく、歓迎するように受け止めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『異国のカンフーにゃんこ』

POW   :    にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:ひろしお

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 その廃村は、しかし、意外と形を保っていた。
 人の営みの跡がはっきりと残っていた。あそこは民家で、あそこは酒屋、商店があって食事処があって、そうして、その向こうに見えるのは、道場。
 通りの正面に見えるそれはしかし、近いようで、遠い。
「侵入者にゃ!」
「ボスに近づかせるにゃ!」
「おれたちより先にボスに挑もうなんて生意気にゃ!」
 遠い原因。それは彼らだった。
 中華服を着こんだ猫の人型。
「ここを通りたくば、タイマンでしょうぶにゃ!」


第二章、集団戦 『異国のカンフーにゃんこ』

 集団戦、ですが、一体ずつと戦ってください。
 連携描写は致しません。

 場所は民家の中やすぐそば、雑多な道具や壁が多くあり、窓や壁も壊れて、適当にカンフーにゃんこが修理したり、と少しだけ雑多な複雑さがあります。
 アクション的な感じです。

 それでは、皆様の心躍るご活躍をお待ちしております。
紬雁・紅葉
一騎打ち…と?
その意気や良し!
謹んで御相手しましょう
一礼

羅刹紋を顕わに戦笑み
【風の魔力】を攻撃、防御、状態異常力に付与

巴を使用
正面からゆるゆると接敵
射程に入り次第破魔風属性衝撃波UCを以て回数に任せ範囲を薙ぎ払う

敵の攻撃は躱せるかを見切り
躱せるなら残像などで躱し
そうでなければ破魔衝撃波オーラ防御武器受けUC等で受ける
いずれもカウンター破魔風属性衝撃波UCを以て範囲ごと薙ぎ払い吹き飛ばす

嗚呼、敵ながら真っ直ぐな良い套路
日々の弛まぬ鍛練が良く現れている
なればこそ、加減躊躇は無礼千万!
渾身の技量を以て打ち果たすのみ!

敵が倒れたら柏手一つ
良いお手合わせでした

※アドリブ、とっさの絡み、大歓迎です※



 カンフーにゃんこの一声に、そして、眼前に躍り出て立ちはだかったその一体に、紅葉は確かな笑みを浮かべていた。
「一騎打ち、と」
 穏やかに瞑目する。
 息を整えるように数度、肩を上下させると、その白い肌に特殊な紋様が浮かび上がっていく。それはさながら、自らが何の寵愛を受けているのか、何の一端としてここにあるかを示すかのように。
「その意気や良し」
 薙刀の刃を、一振りしてその瞳を開眼させた。
 そこに直前までの紅葉を楽しむ嫋やかな女の姿はなく、剣神の鬼巫女たる女の姿があった。
「謹んで、お相手しましょう!」
「参りますにゃ……っ」
 家と家の間は、数mもないか。暖簾店の間、そんな路地で一人と一匹が、ほぼ同時に動き出した。
 揺れた鈴の音を抜き去らんばかりに、カンフーにゃんこが駆ける。
 速い。
 紅葉はその動き出しに目を見張りながらも、しかし、その動きを見逃してはいなかった。
 その小さな体の身軽さもあるが、ただの数歩を見ただけで、その鍛錬の質が手に取るようにわかる。
 手練れだ。
 前傾姿勢のままから、突き出された棒の先をそよぐように体を逸らして避けると、目の端で捉えた棒の動きに、薙刀を咄嗟に引き寄せた。
 と同時に、風の魔力を全身に纏わせ強化を図れば、緩やかな風に色づいた葉が彼女に付き従うように舞う。
「にゃにゃっ」
 棒を躱した逆側面へと柄を構えた瞬間に、強い衝撃が容赦なく紅葉の腕を伝い体に痺れを走らせる。
 棒の突きで紅葉の視線を誘導し、自らは武器を放棄して側面へ。生んだ死角からの襲撃。だが、そこでもまだ終わらない。
 蹴りを受けた薙刀を足場に、軽業のように宙を回り、薙刀の上から紅葉の頭頂を砕く踵。
 初撃の衝撃に強張った足を更に踏みしめ、強引に弛緩させてその一撃を凌いだ紅葉の眼前に、足で跳ね上げたか、尻尾で引いたか、手放したはずの棒を手にするカンフーにゃんこの追撃が喉を狙う。
「……ぐにゃっ!」
 だが、次の瞬間、苦痛の声を上げたのはカンフーにゃんこの方であった。
 流れるような連撃、ひたすら実践に携わった即興演武。そんな追撃を避けきれないと瞬時に判断した紅葉が、体に纏わせていた風の魔力を一部解放し、仕切り直しとばかりにカンフーにゃんこの体を弾き飛ばしていたのだ。
 その小さな体は、彼らの強みであるとともに、弱みでもある。完全に無差別に彼女の周囲を薙ぎ払った風に為すすべなく飛ばされたカンフーにゃんこへと、しかし、油断することなく紅葉は薙刀を構えた。
「……挑むだけはあるようですにゃ」
「光栄ね、あなたに言ってもらえるなんて」
 方や攻勢、方や守勢。ともすれば圧倒されているような光景ではあったものの、その実互いの認識の中で、カンフーにゃんこの劣勢を感じ取っていた。
 だが、それが相手を侮る理由にはなりえない。その動き全てに見える鍛錬は、その力量差を覆して然るものだ。
「なれば、加減躊躇は無礼千万」
「心身束ね、全霊。」
 読みあいは一瞬。
 数歩の間合を刹那に詰め。
 そして紅葉の頭上へと、家が雪崩をおこして降り注いでいた。
 瞬間理解する。店家に掛かっていた暖簾を、カンフーにゃんこの棒が巻き取り、不安定だった家を倒壊せしめたのだ。
 既に紅葉の視界からカンフーにゃんこの姿はなく、崩れる瓦礫の影が彼女を包んでいる。
「お見事です」
 絡め手、それも、罠をしかけるという卑怯とも揶揄される手法に、しかし紅葉は称賛を述べていた。
 この程度、紅葉にとっては決定打にはならない。だが、この瞬間、紅葉の行動はカンフーにゃんこによって決定されてしまった。
 自らに注がれる瓦礫を吹き飛ばすために、紅葉は再び風の魔力を放出して旋風を巻き起こして、家の残骸を巻き上げていた。
 先ほどの一回だけ。この状況で地理の優勢を使い、カンフーにゃんこは紅葉にこの一手を引き出させたのだ。
 そして、その一撃の後の隙。風の隙間へと小さな体が躍り出た。交錯は一瞬。
 瓦礫の雨が降り注ぐ。
 土埃が巻き上がり、その少し後。一緒に吹き上げられた色づいた葉が、倒れ伏したカンフーにゃんこの体の上へとゆっくりと舞い降りていた。
 椛の褥に包まれていくその姿に、彼女は一礼をおくる。
「良い、お手合わせでした」
 意表を突き、来るのは渾身の一撃。紅葉乱れる暴風の中、棒術を薙刀の柄に捌いた紅葉の返す刀によって勝敗は決していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

菱川・彌三八
ウッ

…差しの喧嘩、受けて立つぜ
そっちが得物なら俺ァ筆
さァ、楽しませつくんな

先手必勝、千鳥で牽制
まァ、なんつうかな
猫が立ってこねェに動くなんてなァ、見ときてェのさ
しかもあの手この手ときたもんだ


狭い路地、屋根の上、何処へとも付き合うゼ
右の手甲で武器を見切って受け流し、左手の筆を振り千鳥でつゝく
俺ァ場数は多い方だ
目潰し咄嗟の反撃に吹き飛ばし、意表をついたり何でもござれサ

あゝ

然し

かっわい

何でェその語尾は、その動きは
あゝくそ
化け猫っち云うのは、モットよう
あゝそうだ、此処に住んでこいつらが悪さしねェか見張ろうか
いや
ん~

油断はしねェがこいつァ中々
眼福なんだか、やりづれぇんだか
参った

喧嘩じゃ負けやしめェヨ



 勝負にゃ!
 と快活に構えを取るカンフーにゃんこを睨みつけながら、彌三八は懐から筆を引き出した。
「……、差しの喧嘩、受けて立つぜ」
 なぜか乱れたように息を吐く彼は、言葉を飲み込むように喉を上下させる。
「さァ、楽しませてくんな」
「いくにゃあ!」
 張り上げた声とともに、カンフーにゃんこが駆けだした。彌三八を動きを警戒してか、直線ではなく、わずかに回り込むようにして迫る猫の怪に、彌三八は先手とばかりに宙に筆を走らせる。
 渓流の流れがごとく、宙に線引く腕運びはなだらかで、どう動けば求めるものが得られるのかと悩む素振りすら見せない。
 一歩、カンフーにゃんこが進む度、帯のように引いた千鳥模様から無数の小鳥が飛び立つ。
「にゃんと奇怪にゃ!」と驚愕を口にしながら、カンフーにゃんこは、崩れた壁を駆けあがると、傍の家屋の上で身を躍らせては、千鳥の体当たりを躱しぬいている。
「……っと、と」
 彌三八は、飛来するその音に慌てて身をひるがえす。
 ただ、屋根に上って躱すだけでなく、彌三八の脳天を割ろうと瓦を蹴飛ばしていたのだ。瓦の一枚で命を刈り取る事はできなくとも、頭蓋にそれを直撃でもすれば、どうしても隙を見せる事になる。そうなれば畳みかけられて一貫の終わりというもの。
 そこいらにあるものを手当たり次第に武器にするカンフーにゃんこを相手取るに、高所を取られれば不利。
「にゃにゃんっ」
 そう悟った彌三八は、描いた千鳥の残りを一斉に羽ばたかせて猫を襲わせる。そうして瓦の攻撃を中断させた隙に、彼自身も手ごろな樽を足場にカンフーきゃっとの上った尾根とは向かいの家屋によじ登っていた。
「なんていうかねェ、あの手、この手な事で」
「お前の思惑はわかってるにゃ!」
 ふふんと、向かいの屋根の上で胸を張る猫が、がらりと瓦の剥がれた屋根を踏む。見れば、千鳥模様が埋めているはずの屋根を瓦ごと剥がして、場を支配して彌三八を強化するはずの千鳥が崩されている。
 なるほど、あの稚拙なやけっぱちのように見えた攻撃も思惑があったらしい。
「……ふう」
 のだが、しかし、どうにも彌三八の意識は、警戒からは少し離れた所に着目してしまうのだ。憂うように吐き出されたため息はしかし、含まれるのは憂いではない。
「然し」
 その目は鋭く、カンフーにゃんこを見つめ。
「かっわい」
「……にゃん?」
 思わず、といった具合にそんな言葉が零れ落ちていた。
「いや、にゃん? じゃねェや。何でェその語尾は」
 向かいの屋根の上で、片足でバランスを取りながら尻尾を揺らし首を傾げたカンフーにゃんこに、また切れ長の目をキッと向けながら、しかし、その頬はわずかに緩む。
「何でェ、その動きは」
「にゃんと言われてもにゃんともいえにゃい、にゃっ!」
 叫ぶと同時に、カンフーにゃんこは二人を隔てる通路を飛び渡る。
 化け猫、と聞いて思い描くそれとは。荒々しい毛並みに、鋭い爪、牙の生えた大口に血走った眼。そんなものを思い描いていた彼の前に飛び込んでくるのは、柔らかい毛並みに、丸い手足、こじんまりとした口、円らな瞳。
「あゝそうだ、此処に住んでこいつらが悪さしねェか見張ろうか」などと、彌三八は可愛らしい毛玉が自ら目掛け飛び込んでくる光景に、ふと思いながらも、しかし即座に迎撃へと移る。
「んにゃ!」
「っ!」
 と空中から繰り出した棒の一撃を手甲でいなし、バランスを崩したところに蹴り上げられた瓦を、描いた千鳥で弾き飛ばしては、怯んだカンフーにゃんこを足蹴に距離を離す。
「近づきゃ勝てるなんてタマじゃァ、ねえんでさ、ぁ?」
 咄嗟の足技に、怯んだように見えたカンフーにゃんこの姿が一瞬にして掻き消えた事に、一瞬疑念の声を上げ、考えうる展開に一歩飛びずさった瞬間に、直前まで足を置いていた屋根が、内側から砕け散った。
「っ!」
 それも一つではない。さながら天井裏に張り付いた何かが天井を蹴破りながら迫るように、否、その通りなのだろう。床下、というよりも天井下に潜り込んだカンフーにゃんこが足元から攻撃を仕掛けているのだ。
 逃げても埒が無ェやな。
 二、三歩逃げた後で、崩れた天井へと飛び込んだ直後に筆を走らせ、着地と同じく振り返ると、やはり、梁に棒を通し天井にぶら下がったカンフーにゃんこと目が合う。
「そこにゃ!」
 天井を足場に、それが飛び蹴りを放つ。
 対する、彌三八はただ筆を持たぬ腕を構えるだけ。直前までであったらその一撃に防御を崩され押し負けていたかもしれないが。
「眼福なんだか、やりづれぇんだか」
「……んにゃ!?」
 確かな衝撃とともに直撃した脚撃は、彌三八の腕に阻まれている。
 その足元には、千鳥の模様が広がり。
「ま、喧嘩じゃ負けやしめェヨ」
 むんずと掴み取ったカンフーにゃんこを隣家へと放り投げ、飛び込んだ千鳥の群れに崩壊する家屋に、その姿は見えなくなっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幸村・リヒト
アドリブ歓迎

異国の武術とは興味深い!
存分に楽しませて貰うぞ
目を爛々と輝かせ
まずは正面から観察だ
2回連続で打ち込んで相手の出方を見る
攻撃は鞘を使って咄嗟の一撃
弾いて距離をとり

ととっ、ずいぶんとすばやい猫だ
見切りギリギリで避けつつじっと観察

―ああ、嗚呼!面白い
猫だからできるのか
人の俺でもできるのか
試したくて仕方がない
学習したものを取り入れて
やれるかどうか試してみよう
なぁに死んだら死んだでその時だ

じわりじわりと試したら
元々の技に組み込む様に
伍ノ型―【赤鱗ノ沫!】
グッと踏み込み強く蹴り
次の一歩は勢いを殺さぬ軽い一歩で
舞い、踊るように敵の攻撃を避け
一撃を叩き込む!

ふぅむ…俺も鈴をつけてくればよかったなぁ



 引き抜いた刃を、手首の捻りで回し円を描いて、緩やかに揺らすように低く構える。
 どことなく、浮かれたような刃の閃きは、そのまま彼の心象を現しているのだろう。
「……ああ、興味深い」
 異国の武術とは。
 その矮躯から繰り出される修練の賜物とは。
 は、と一つ笑う。肩にかかるマントを体の動きだけで払うと、満面に浮かんだ、特に瞳を眩いばかりに輝かせる興味と期待のままに、幸村・リヒト(District hero・f22827)は、その足を踏み込んだ。
 対するは、赤い装束に身を包んだ猫の獣人。
「ニ、ィ!」
 接敵に息をつく間も与えない。低く沈んだ体を前傾させ、一切のフェイントもトラップもない直情的とも言えるようなコンタクト。
 最速最短の攻撃を、しかし、カンフーにゃんこは避ける。速いといえど、狙いも軌道も如実に語るような剣閃に、わずかに身を逸らしたカンフーにゃんこはその攻撃がそこで終わりだとも思ってはいない。
 リヒトは僅かに上方を狙った刃を即座に切り返し、逸らした先を狙う。
 確かな手ごたえが返る。刃が物体に滑り込み、結合を分かつ震え。
「おお」
 ちりり、と微かになる鈴の音。
 それに目の前に真っ二つに割れた食事処の看板に気を取られた体を、半ば強引に前方へと跳ねるように運ぶ。
「にゃるほど、今のは躱せるのにゃ」
 振り返った先、倒れた看板を挟んで数歩の距離。手に持った棒で地面を突き、カンフーにゃんこが言い放った。
「今、わざとだな?」
 問いかければ、然りとばかりにカンフーにゃんこは、フン、と鼻を鳴らした。
 主語を除いた言葉に、しかし、目の前の相手は、リヒトの言いたい事を正しく理解していた。看板をリヒトが切った直後の攻撃。ほぼ真横から放たれた獣拳。その直前に聞こえた鈴の音。
 あれを鳴らす事無く攻撃を仕掛けることなど、容易かったように感じていた。むしろ、わざと鳴らすという無駄を挟んで精彩を欠いた動きであった。
 リヒトは笑み、思う。
 鍛錬の相手として相応しいか、を見ようとしたのだと。
「……っ」
 対する、カンフーにゃんこは、静かにリヒトを睨みつけると一足にリヒトへと飛び掛かっていた。
 まさに、電光石火のごとく。
「っ」
 眼球を抉り抜く棒の先端が、逸らした顔面のすぐ傍を掠める。直後に、浮遊感が全身を包み、次いで足に痛みが走る。
「とわ」
 足を払われた浮いた体を、しかし、腰を捻って足先で地面を探し出して、捻りのままに鞘を腰から抜いて振るえば、どこから飛んできたのか。木の丸椅子が鞘に弾かれた。
 素早い。
 転がった椅子の行方を知る前に、一歩距離をとったリヒトにカンフーにゃんこが二歩、三歩を詰める。
 薙ぐ棒術に、放たれた棒を打ち上げるように弾けば、快い音を立てて回転する棒が上空へと打ちあがっていく。手ごたえが軽い、とその行方を追いそうになる顔から視線だけを下へと下げると、カンフーにゃんこの手には先ほどの木の椅子が握られている。
 足で蹴り上げたか、尻尾で引き込んだか。とリヒトは、その武器を手放したばかりのカンフーにゃんこが新たな武器を手にしていくカラクリを推論し、感嘆する。
 椅子だけではない。それを叩き落せば、初めから知っていたとばかりにその手には次の武器が握られ、相応の攻撃が繰り出される。
「ああ、嗚呼!」
 ――面白い。とリヒトは笑む。その手法は、彼の知るものではない。
 場を武器とする。例えば、そこに落ちている木片をどうするか、先ほど壁に立てられていた旗は、この家の中にどれほどの刃物が。一瞬にして考え及ぶ数多の選択肢に、リヒトはこの場を理解する、そんな錯覚が彼の集中を乱していた。
「ぐ、ぷ」
 リヒトの目は、感覚は、敵の姿を一瞬にして見失う。その事に気づいた時には、既にその一撃は、ほんの刹那リヒトの体から自由を奪った。
 武器ではなく、純粋な体術。腹に抉りこんだ拳。それが生んだ隙はそれこそ、ほんの刹那そのものではあったが、カンフーにゃんこの全霊の蹴りがリヒトの頭蓋を打ち抜くには十分すぎる時間だった。
 世界が横滑りする。衝撃と激痛と、一瞬の視界の中で吹き飛んだ体が、家屋の壁を突き破ったことを知る。朽ちた壁の木材が針山の如く、リヒトの頬を穿ち、表面をこそぎ取っている痛みが、熱を持っているが血をぬぐう事もない。
 明滅する視界に、しかし、心地よくもある意識の朦に沈むわけにはいかない、とその身を跳ね上げた。
 視界に文字通り飛び込んだ窓枠を転がるように避けると、そこが廃れた飲食店である事に気づいて、刃と逆の手に掴んでいたはずの鞘の代わりに、近くの椅子を掴んでみる。
 埃と床を埋めていた紅葉が舞う中で耳に拾った風切り音に椅子を振るってみれば、飛んできた何かを弾いていた。
 だが、直後に放たれた何かが首を折らんとばかりに直撃する。
「が、……っ」
 思考をするような絶え間もなく、カンフーにゃんこの連撃が、リヒトの防御を、反撃を、回避を潰して、人体急所を突く。
 真似事をする余裕など最早ない。
 死ぬ、と。
 リヒトは包丁に裂かれた脇腹を抑え、息をのむ。自らに向けられたものに、確かな実感として臓腑を埋める。
 悪意のあるものではない。ただ丹念に磨かれた刃の如く、純粋な殺意。
「……っ!」
 衝動的に取り縋ったのは、溢れた付け焼刃の武器ではなく、手放すことのなかった退魔刀だった。
 遅い。
 自らの両足に体重が落とす時間が惜しい。だが、リヒトはその足を急く事はなかった。煩い程にただの木片であっても醸し出していた存在感など無かったように、息を潜めている。
 そんなもの初めから無かったという考えも、浮かぶ前に殺される。
 踏み込みは、深く。
 確実に意識を断つように振るわれた鉈の一撃を躱したリヒトの体は、さながら舞踊の如く翻り。
 眼前への敵へと刃を振るう。
 それだけだ。
「っ、は、……ぁ」
 いつからか詰めていた息を吐きだす。
 気付けば、胴を別ったという、その感覚だけを握っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
ちょっと、あの猫可愛いわね
出会った場所が此処じゃなきゃ抱き締めさせてってお願いできたかもしれ……いえ、なんでもないわ

ふふ、タイマン勝負なら得意よ
猫ちゃんもそれがお望みなら邪魔も入らないだろうし好都合だわ

片手に精霊銃、片手にガンブレードを構える
オーラ防御を身に纏い
挨拶がてらブレードで突きを放つわ

反撃の予兆があれば反対の手に持った聖霊銃で零距離射撃

流石カンフーにゃんこね

第六感と地形の利用を使いながら2丁の銃で制圧射撃をして動きを牽制する

あら、万物を武器にできるのは此方も同じよ?
無数の尖晶石の剣林、猫ちゃんは避けられるかしら?

全力魔法と範囲攻撃を合わせたUCで周囲一帯を針山に変えて串刺しにしに行くわ



 目の前の可愛らしいそれが、異なる武術を操るもの、というのであれば、白雪も、同じくその呼び名を得るのだろう。
「ふふ、タイマン勝負なら得意よ」
 タイマン、と宣戦布告したカンフーにゃんこの一体に対し、白雪は仄かに笑みながら、自しありげに首肯する。
 白雪は、片手に精霊銃、片手にガンブレードを携える。いずれも黒色に鈍く輝いて、来る激突の瞬間を探っている。
 カンフーにゃんこは、朱色の装束を揺らし、紅葉を踏みしめる。
 果たして、どちらが先に踏み出したのか。
 どちらが、先に踏み出した相手に後の先を取ろうとしたのか。
 その一瞬を見たものがいても、分かるのは、どちらが先だったかではなく、どちらがより短時間で距離を詰められたか、でしかない。
「にゃ、っ!」
 と、その素早い体捌きに、白雪へと飛び込んだカンフーきゃっとが、その手に持った棒の突きを打ち放ち、そして、迎え撃つ形になった白雪が選んだ選択肢も、また、その手にもった獲物での突きであった。
 奇しくも同じ選択をした二人の攻撃は、互いの顔面をかすれるように逸れあい。
「……っ」
 直後、白雪の手に痺れが走る。
 突きの最中に白雪のガンブレードを弾く軌道を取ったカンフーにゃんこの棒が、さらに追撃せんと躍ったのだ。
 白雪は、させない、ともう片腕の先の精霊銃を突きつける。
「ん、にゃっぁ!?」
 放たれた結晶の弾丸が至近距離で打ち抜いたのは、カンフーにゃんこではなく、振るわれようとしていたその武器だ。
「にっ」
 武器が、カンフーにゃんこの手を離れて、地面へと転がる。だが、それが武器をなくした程度で怯むような性質ではないことを、白雪はこの数秒のやり取りの中で確信するに至っていた。
 ゆえに、さらに踏み込んだカンフーにゃんこが白雪の足を足場にした瞬間に、首を大きく上げるように体を逸らすという、瞬間的な回避を可能としていた。
 その小さな体躯から放たれたとは思えない、顎ごと首を砕かんばかりの獰猛な蹴り上げを躱した白雪は、崩れかけた体を近くの家屋の壁にガンブレードを突き立てて支えとすることによって持ち直し、蹴りの勢いでわずかに距離を取ったカンフーにゃんこへと弾丸を発射する。
 それを、足元に転がっていた桶を足で踏み、反動で自らの体の前に弾き上げて、カンフーにゃんこは弾丸を逸らす。
 そのまま蹴りつけられた桶を、壁から引き抜いた刃で切り裂いて二人は再び肉薄していた。
 薪割り用か武骨な斧を拾い上げて力任せにぶつけ、晶石の弾丸を打ち出した瞬間の白雪の腕を強かに抉り抜いた。
 硬質な音がはじけて、その腕が欠片を零し、罅を鳴らす。
「……っ」
 歯車が欠けたかのように、ぎこちなく動く腕の代わりに、ガンブレードから弾丸を放ち、牽制した白雪に、カンフーにゃんこは追撃に躍り出ようとして、その足を一瞬留めた。
 と同時に、白雪もそれに気づく。
 みしり、と。軋む音。その音は、たちまちに拡大し、拡散し、無視しえない事態を呼び起こしていた。それは、白雪が突き立てた刃がとどめとなったのか、限界の近かった家屋が二人へと向けて崩れ落ちる音であった。
 互いの意識が、敵からその家屋へと移ったその一瞬。
「……ここっ」
「させんにゃ!」
 互いの足が地面を打った。
 だが、その意味は違っている。
 カンフーにゃんこのそれが白雪へと肉薄するための踏み込みであったのに対し、白雪のそれは地面その物への干渉であった。
 片手に斧を、片手に棒を握るカンフーにゃんこへと、地面から無数の棘晶体が迫る。
 その棘が、カンフーにゃんこへと届く前に倒壊した家屋が粉塵を巻き上げながら、二人を飲み込み。
「流石、カンフーにゃんこね」
 瓦礫をオーラで弾いた白雪の視界には、地面に砕け散った晶石の破片と宙へと高く飛び上がったカンフーにゃんこの姿があった。
 剣槍の群れをその武術によって叩き折ったカンフーにゃんこが頭上に迫る。
 ひび割れた腕は、すぐさま銃口をそれに向けるには鈍く、重い振り下ろしに片腕のガンブレードは押し切られる。
 だが、初めから白雪は防御など考えてはいない。
 少しでも動きに乱れがあれば、間に合わない賭けだったが、しかし、白雪の体は傷を受けながらも滞りなく動いてくれた。
「出会った場所が此処じゃなきゃ」
 その可愛らしい体を抱き締めたいという、願いもかなったかもしれない。と少しの落胆を笑みに紛れさせ。
「にゃ、っ」
 牙が閉じた。白雪を包みこむように、無数の結晶が天に渦を巻いて、白雪の頭上を狙ったカンフーにゃんこ事、空間を噛み千切った。
 白雪の全力によって、そこに顕現したものは、さながら篠細工の円錐のようであった。一つ一つが、容易く骨肉を貫く威力を持った槍衾。
 白雪が身を屈めたその円錐の中で立ち上がれば、それらはまるで何もなかったかのように地面へと瞬時に姿を戻した。。
「……」
 そこに、ついぞ今まで戦っていた猫の姿はなく。
 崩れた家屋の奥、古びた道場への道が開けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『語り草なき剣豪『徹吉』』

POW   :    一斬一殺の極致
【文字通り「一撃必殺」の鍛え上げた剣技】が命中した対象を切断する。
SPD   :    刹那断つ剣戟
【一撃で敵を葬る為極限まで研ぎ澄ました精神】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【無駄のない動きで接近し、洗練された剣技】で攻撃する。
WIZ   :    揺るがぬ信を力と成せ
全身を【闘気】で覆い、自身の【「一斬一殺」の信念への自負や執着心】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

イラスト:純志

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 剣を振るうものであった。
 眼光は鋭く狂気を孕みながらに、ひどく冷静に澄んでいる。それは、一つの信念に只管に徹し続けたが、故か。
 無造作に、男は剣を振るった。構えを糺すようなごく軽い仕草。だが、その軌道は確かに致命を感じ取るものだ。
 気を抜くような一振りですら、死を連想する練度。
「一斬一殺」
 その声は、猟兵たちには向けられず、ただ己に呼び掛けているようであった。
 余人相手であれば、一つを斬るごとに一人を殺すなど容易いだろう。だというのに、その声は、未だ至らずとばかりに苦渋を呑むような声だ。
 再び構えた男の目は猟兵たちに向けられる。しかし、男が斬りたいと、殺したいと、願うものはその更に先に見据えている。
 構えは、山を思わせるように重い。直前の猫たちを動とするなら、男は静の武を示しているようだった。
 その山が動けば、即ち必殺となる。そんな予感を、猟兵に無意識に認知させている。
 紅葉が騒ぐ。
 猟兵は、語り草なき剣豪と対峙する。


第三章、ボス戦 『語り草なき剣豪『徹吉』』

 ボス、徹吉との戦闘です。

 一撃の必殺を極めた剣豪。
 徹吉の振るう斬撃、刃を受ける事は困難を極めます。

 それでは、皆様の心躍るご活躍をお待ちしております。
菱川・彌三八
猫共もまァ強くはあったが、比じゃあねェな
なればこそ、この間合いに立ち入ろうたァならねぇよ
俺の領分でやらせちもらうぜ

筆は一つでいい
否、あれもこれもと成せる気がしねぇ
然らば
一筆啓上仕り候

見切るは足先、動き出し
同時か刹那速く先制し、早業の如く振るうひと筆に二連の大波
斬って触れれば忽ち腕を麻痺させる程の衝撃波での吹き飛ばし
近付かせぬ侭幾度でも描こう
目を潰せ、指を壊せとするしかあるめぇ
真剣たァ、回りくどくて厭んなるぜ

一つ極めりゃあゝなるならば、何れ俺も画狂に至れるのかね
それはそれで、随分と詰まらねェ噺サ
この紅葉の見事な様すら目に留まらねェようじゃあ
元より、極める事なんざ一生かかってもありゃしねェしナ



 絵師は、対敵する。
 その手に握る筆に刃は無く、ただ墨をなびかせるのみ。
「比じゃあねェな」
 ここに踏み入れる前に、相対したかの猫を思う。
 はて、あれに感じた威圧と言う物は、果たして威圧といえるのか、と笑い伏す程の存在感。
 静かに佇む不動が如き構えに、彌三八はその重心の運び、刹那を瞳へと映しとる。
 足先に重みが加わり、足が滑る。否。山の如き構えをした体が滑る。
「……っ」
 数歩、その距離を剣豪が詰めるよりも早く、彌三八の筆が墨の尾を払い終える。
 描くは波濤。地を削り、押しては崩す波飛沫。
 紅葉を敷く道場の陰りの中を泳ぐように描かれた揺らぐ模様が僅かに落ちた直後に、その質量を弾ませるように天井を飲み込まんばかりに伸び上がり、一歩を踏み込んだ剣豪を諸共に飲み込んだ。
 それは、接近を阻み、海へと踏み出すものを岩肌へと押しやる大浪そのものだ。
 間合いに踏み込めば、致命の一撃が襲う。そう確信してなお、その間合いに踏み込もうという考えは彌三八には振るう筆の毛頭として無い。
「俺の領分でやらせちもらうぜ」
 墨を宙に撫でる。波の一重、二重にて沈黙するなどとは考えていない。
 現実、彌三八が見たものは、墨の波に潰された男などではなく、如何様にか波を切り裂き、剣を振り切った男の姿であった。
「異なる術か」
 沈むように男は言う。言葉は驚きを見せながらも、声色は微塵も揺らがず。
 次いで放った波がその視界を覆いつくしていた。
 その反応を待つこともなく、彌三八は筆を振るう。
 ただ一つの筆を走らせる。
 否、振るうしかないのだ。あれやこれや、と手を増やせば瞬く間に、両断される。
 然らば。彌三八の選択は一つ。
「一筆、啓上仕り候」
 引く波に、三重の波を重ね、更に二重を束ねる。
 地面から紅葉を巻き上げ、天井も梁すら引き込む波すら、男の目は一瞥にとどめる。
「詰まらねえナ」と彌三八は言う。
 この場の紅葉の見事な様すら目に留まらねェようじゃあ。と揶揄した声に。
「いや、見事なものだ」
 そう剣豪が返す言葉に偽りはなく。
「……成程、こいつァ救いようがねェや」
 故に、その無感動に彌三八は嘆息する。
 その技は、自らの鏡として映し出すものではなく、ただ、刀という武器の機能を引き出し、拡張し、現象へと収束させるもの。
 使い手の感情や感性など問うこともない道だ。人であることが、邪魔であるというものだ。
 ならば、眼前の男は極める為に、人である事を捨てたのか。
 剣豪が剣を極めようとし、剣狂に至ったというのならば、彌三八も筆を極めんとすれば、極めんと捨てれば、画狂に至れるのか。
「ああ、詰まらねェ噺サ」
 吐き捨てる。
 笑いもせず。
 寄せた大浪を断ち割った男の剣を見る。
 元より、一生の間に何かを極める事など出来るものか、と。輪廻を外れたのだろうそれを睥睨する。極めることはできずとも。
 重ねた波の咢を、しかし一刀の下に裂いた描いた朱銀の刃が墨を貫き、彌三八の鼻先を掠めて、遠のく。
 更に描いていた波で、剣豪を押し返したのだ。
「恐ろしいねエ」
 薄皮一枚、血一滴すら流れぬ浅傷に、しかし、彌三八は慄きに冷や汗を垂らす。
 みしり、とかろうじて家屋の形を保っていた道場が最期の悲鳴を上げる。周囲を鑑みず、ただ目の前の相手を屠るつもりで繰り出した絵の全ては、その男に傷一つつけず、代わりに男の剣は確実に、この首へと近づいている。
「回りくどくて厭んなるぜ」
 防戦一方、だとしても彌三八はその手を緩めることは無い。
 その目を潰す。その腕を壊す。そうして研鑽を重ねていく。極めることができずとも。
 彌三八は、ただ一人でそれと対敵しているわけではない。
 天井に空いた大穴に、遂に道場の壁が崩れ落ちる、瞬間に複数の影がほぼ同時に紅葉を蹴り上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御桜・八重
【POW】

う。
戦いを始めて日が浅いわたしでもわかるこのヤバさ。
ここまで極めるのに、この人はどんな思いを持ってたんだろう?

まあ、聞くより実際剣で語ってもらうのが一番だよね。
まともに当たったらわたしの未熟な剣技じゃ敵わないけど、
勝って見せれば、何かわかるかも。

二刀流でも捌き切れない手数、威力、速さ!
オーラ防御全開で耐えながら、狙うは『一斬一殺の極致』!
覚悟を決めて集中。斬撃を見切り、剣筋に沿って
身体を桜吹雪に変え、剣が体をすり抜けた様に見せる!

虚を突いた隙を逃さず懐に飛び込み、
腕の腱を断ちつつ鳩尾に突き込む!

強くなりたい想いは間違ってない。
でも、それは生きて行うべきだよ。
次の生でまた強くなってね!



 波を切り裂く剛剣に。
 その目の放つ殺気の鋭さに。
 にじみ出る悪鬼が如き歪んだ執念に。
「……ぅ」
 八重は息を呑んだ。
 剣を握った月日がまだ浅い彼女であってもさえ理解する、その剣戟の練度たるや、一体、オブリビオンと化す前どれ程の修練を積み、オブリビオンと化してからさえどれ程に刃を振るってきたのか。
 そして、どんな思いが、彼をそうさせるのか。
 その思いが、強くなりたいというそれが間違っているとは思わない。だが、それは果たして人の生を捨ててまでして目指すものなのか。
 八重にも問いたい気持ちはあるが、しかし、語る言葉も要らぬ、と告げた相手に、あれやこれやと言葉を投げかけるのは無粋というものだろう。
 ならば、剣で語ってもらうのが一番だ。
 彌三八が放った墨波を切り裂いて踏み込んだその一瞬に、八重は自らの体を敵前へと躍らせた。
 両の手に構えるは、方や陽光に透く花弁を纏うが如き退魔刀、方や夜闇に沈む花弁を纏う妖刀。陰陽合わせ飛び込んだ八重は、その身に紛れもない殺気を受けた。
「ヤ、」
 瞬間、吹き上がる汗に死を悟る。見えたのは、僅かに柄を握る腕を揺らした動作。
 命を刈る一撃が放たれるその瞬間、身構える。左か、右か。そのどちらからの攻撃にも対処しうるように神経を研ぎ澄ませ、体の力を抜きつつ備える。
 心得がないわけではない。それなりに戦場を経た八重は来る攻撃に冷静に対処する術を身に着け始めている。
 敵の僅かな動きも見逃さないと、殺気に負けじとその青い目を見開いた。
 刃先を僅かに下ろした剣豪の揺れる髪の奥で、その朱に染まる瞳が瞬きに瞑られたその瞬間に、蒼の虹彩へと刃がその凶手を伸ばしていた。
 浮かんだ汗が伝う暇もない刹那の攻撃。
 八重の体が、真後ろへと倒れこむように弾かれる。瞳を貫き、頭蓋すら侵さんばかりの突き。
「バいなあ」
 彼女はその双眸の視界が未だ明瞭な事を確かめて、そう声を漏らす。
 刹那、左目には銀の影が映るばかりで、それが刃と知れたのは右目の見る視界があったからだ。瞬間、咄嗟の判断でオーラを迫る刃に巻き付けるように鈍らせ、重力に沿うように体を後ろへと逃がしたのだ。
 体が強張っていなくてよかったと、安堵する間もほぼなく、八重は紅葉の這う床を擦る足音に構えを取る。
 言葉でなく、刃で語る。
「なんて場合じゃないか」
 八重はただ対敵の覚悟を決めた。おそらくに、無謀な横やりは悪手。それを知ってか周囲も、八重へと静かに進む剣豪の動きに注視しつつも、攻撃を止めていた。
 緊張の中で、八重はその相手の動きにどこか既視感を覚えていた。見たことがある。先ほどの突きの一瞬、その直感こそが彼女を救っていた。
 男が動く。
 風に木の葉が舞うように滑る動きから、素早い踏み込み。虚を突かれたわけではない、八重は今度は瞬時に動いた。
 左の退魔刀を防御に置きながら、右を振るう。二刀は取り扱いが複雑な用法だ。攻防の選択肢を常に迫られる。だが、それは常に利点としても働く。
 相手の刀を止めながら、攻撃する事も可能。
 先を制さんとするような横薙ぎを、沈むように躱した男は微塵も乱れぬ剣筋で、攻撃に放った刃と防御に裂いた刃の間を通して八重の胴体を裂かんとする。
 その刃を防ぎ、返し刀で肉を断つ。そのために、体を切り裂く軌道の上に退魔刀を添え。
「え」
 次の瞬間に、その腕が軽い痺れと共に弾かれていた。
 防御した刃。剣豪の剣はそれを上るように走り、鍔を捻って、崩したのだ。
 妖刀は間に合わず、退魔刀を戻しても、上段に振り上げられたその一閃は、一瞬力の抜けた腕では支えきれない。
 男に躊躇などない。
 一斬一殺を為す刃が、八重の肩に沈み、その胸の中心を切り裂く。
「ぁ……」
 その裂かれる一瞬、八重は既視感の正体を看破していた。
 それは男の振るう剣筋だった。戦で鍛え上げられた野良剣術ではなく、術義を根底に敷いた道場剣術。八重自身、サクラミラージュの古神社に育った身、都の祭りなどで試合などを見た記憶は多い。
 朱の刃が八重の体を裂く瞬間、僅かに目を見開いたのは八重ではなく、剣豪であった。
 切り裂いた傷から漏れるのは、桜の花弁。
 否、その刃は彼女の体を切り裂いてはいない。
 八重は上段からの一撃を見切ったその一瞬に、その剣の辿る道を桜の花弁に変化させた。故に、その刃は八重を殺すに至らず。
「っ、」
 腹の半ばを花弁へと変え、刃を擦り抜けた八重が懐へと飛び込んだ。痛みが走る。流石の刃の冴えか、体を裂くつもりの刃で、宙を舞う花弁の幾つかが斬り飛ばされている。
 体を戻せば、体内に無数の針を通されたような傷を生むだろう。
 だが、命には至らない。痛みに腕を鈍らせる事は許されない。
 傷も痛みも覚悟の上だ。
 両の刃を走らせる。
 この一瞬を逃すわけにはいかない。
 身を引く剣豪へと、更に距離を詰め、狙うは腕の剣と、鳩尾への急所貫き。
 放った双つの剣が、初めて剣豪に防御を強き、そして初めて剣豪の腕に傷を入れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・絡み歓迎
「たのもー!」
「こんなとこに篭ってて楽しいの?折角鍛えたんでしょ?もっと楽しいことをしようよ!」

今回はガンガンいくよ!
たっくさんの球体、圧し潰そうとする巨大なもの、弾丸みたいに貫こうとするもの、ビームや雷を放つもの、近づく道を徹底的に塞ぐ大小様々とにかくたくさん使うよ
第六感と勘で動きを呼んで、先制攻撃・一斉射撃・薙ぎ払い・だまし討ち・2回攻撃・一斉発射・その他のフルコース!
それをどうさばくかよ~く見せてね

「形有るものはなんであれって感じだね~」
「じゃあ、形のないものはどうかな!」
球体をすり抜けられたとこでUCを使おっと
それでもなお、ボクが傷つけられたら
「アハッ♥お見事ッ」



 腕の傷は、しかし、その腕に機能不全をもたらすことは叶わず。
 しかし、距離を取った剣豪は未だ上る粉塵の帳の奥でうごめく気配を感じ取る。
「……」
「たーのもーっ!」
 崩壊し、しかし、かろうじて片翼のみ残り、頼りなく傾いていた道場正面の扉。それが、あどけない声と共に猛烈な勢いを以て吹き飛んだ。
 プロペラの如く回転しながら猟兵達の間を潜り抜けたその木板は、剣豪へと飛翔し。
「ひゅー」
 身を逸らし躱す一瞬、寝かせた刀に両断され、剣豪背後の粉塵の向こうへと消えていった。
「何も無いみたいに斬るんだね」
 ロニが、衝撃波を放った球体を突き出した手の上に躍らせながら、臆面もなく軽口を叩く。と同時に空中から飛び込んだ何かが、紅葉を吹き飛ばしながら道場の床を砕き割っていた。
 両手を広げ、ロニは笑む。
「惜しみなく、ガンガン行くよ」
 その中の一つ。直接剣豪の頭蓋を狙った球体が見事に掻っ捌かれたのを見ながらも、彼は楽しげだ。
 落ちたはずの球体が重力を無視したように浮かび上がり、あるものは光を纏い、あるものは振動し、あるものはその体積を膨らませていく。
 呼び出したのはどれほどの数か、それを数える暇もなく。
 それらは一斉に、己の機能を発現させた。
 最も分かりやすいのは、光だった。
 球体から放たれた光が、周囲の光を弾き飛ばす余波を撒きながら宙に線を引く。
 一条ではない、幾つもの光線が四方から剣豪を打ち抜く。
 刹那の差を生んで雷撃が場を満たす。膨大な光の網が顕現すると同時に幾何学な輝きをたたえる球体が砲弾と化し、光の中へと飛び込んでいく。
 ロニは笑む。その笑みは蹂躙することへの愉悦の笑みではない。
「どうさばくか、よ~く見せてね」
 己が暴力を乗り越える姿を睥睨する笑みだ。
 片方の眼窩を覆い隠し、幼げに弧を描いたその片目の奥で、ロニはその姿を逃すまいと捉え続ける。その意思一つで、場を埋め尽くさんばかりに配置された球体が、暴れ狂う。
 初撃の球体の残骸をビームへと投げつけ間隙を生んだ剣豪は、雷撃を紙一重に躱し一足に距離を詰めては球体を斬り飛ばしていく。
 この世ならざる力を孕む浮遊球体。その極彩色を移り変える表面に刃を滑り込ませ、そこに存在するのであれば斬れる、とばかりに傷を刻んでいく。
「わあ、やるう」
 満足げにロニは、両手を合わせてはしゃぐと、軽く指を鳴らして見せる。その表情に、己の武器を傷つけられる憤慨はなく、むしろそれが楽しいとばかりだ。
「じゃあ、こうだ」
 指を鳴らす行為に意味はない。そんな事をせずとも球体群はロニの意思に従う。ただ興が乗るだけ。
 ただ、その瞬間に球体群の動きは僅かに変化した。一直線に伸びていた光線が刃のように横薙ぎに振るわれる。
 何かが来る、と悟ったのか。それともその直感によるものか。剣豪は地に伏せるように転がり、その無数の光刃を逃れていた。だが、そこで留まるはずもない。
 ステージ2だ、と言わんばかりに激しく、球体が躍る。
 一つ、制御が己の手を離れる。
「ふふ、ねえねえ、剣豪さん」
 押し潰さんと落ちた球体に巻き込まれた球体がビームを乱し自壊する。
「こんなとこに篭ってて楽しいの?」
 一太刀、その朱色が振るわれるたびに光が失われていく。
「折角鍛えたんでしょ?」
 思いつく限りをぶつけながら、しかし、それを潜り抜ける敵の獲物は、刀一本。
 それを極めんとその命を、人としての生を捧げ、鍛え抜いた技。
 それを身に感じながら、問いかける。疑問を提示する。
 ならば、それで出来ることがいっぱいあるんじゃないの?
 刃を振るうその目は、ちっとも楽しそうではない。かと言って退屈そうでも、窮屈そうでもない。
 それが不思議だ。
 そんな、それが普通みたいな目をせずに、もっと。
「もっと、楽しいことしようよ!」
 残る全てがその牙を剥く。
 幾重もの光が粉塵を切り裂き、雷撃が空間を焼き、暴圧が肉をすりつぶさんと駆ける。
 返る言葉は無く、ただ、ロニの前を塞いだ巨大な球体が克ち割られる快音が、短く響いただけだった。
 目が合う。
 飛び込んだ男を迎え入れるようにロニは両腕を広げ。
 びゅう、と。
 その姿が掻き消え、風が吹く。
「あは、」
 幾千、幾万の刃を内包し、過ぎる全てを斬り削いでいく暴虐の嵐。形なきそれが剣豪の刃を滑り、その腕に、肩に、胴に、その全身に無数の傷を刻んで過ぎていく。
 粉塵を纏う嵐に姿を変えていたロニが剣豪の背後でその姿を戻し、開いた口から笑いを持たした。
 唇をなめる舌に感じるのは、鉄の味。
 砂風に返り血は着かず、払われる。なればその血は、ロニ自身のものだ。
「お見事ッ」
 体を失っていたロニに傷をつけた剣豪へと彼は称賛を送る。
 その剣は、有形無形を粉砕する神風にすら届きうる。
 ロニは、紙にすら届きうる人の技に、それを繰る敵の存在に、何故か心を沸かせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鶴澤・白雪
連携・アドリブ可

まさに剣豪って感じね
こちとら我流で突くしかできない素人
間違っても刃を交えることは避けたいわ

一先ずオーラ防御で自分を守るわ
下手に近づいたら四肢がお別れしそうだから距離を保って狙撃したいところね
種族柄、血も流れないし痛みもないけど格上相手に五体不満足は遠慮願いたいわ

跳躍して近づいてくるなら高速詠唱のUCで自分を守る盾を作る
刀が大きいなら其方を狙ってスナイパーで狙撃
衝撃波を纏わせて距離を取るよう心掛けるわ

手練れならUCの壁も直ぐに打ち破るだろうから
両手に持った銃の引き金を引く準備はしておく

下がれるなら下がるけど
斬られそうなら覚悟決めて全力魔法のUCで相手にもキツイ一撃をお見舞いするわ



 嬉々と敵を称賛せしめたロニに、白雪は相反するように苦い表情を浮かべていた。
 件の敵は、全身に傷を刻みながらも、しかしその傷のどれもが致命傷とはならない。初めから襤褸布同然であった衣服は半ば崩れ落ちながらも、その構えは揺らがない。
 その手に剣の一振りがあれば、それはそこにある。
「まさに、剣豪って感じね」
 近づけば、白雪の剣術など容易く砕かれ、瞬く間に四肢を切り取られ床に転がされるだろう。ただでさえ、腕に日々を入れている状態だ。
 そんな確信に、白雪は自らの体にオーラを纏わせ鎧とする。
「どうせなら、遠くから狙撃できたらよかったけど」
 と、冗談交じりにこぼしながら、カンフーにゃんこに対しては有効に思えたそれも、今は頼りなく感じてしまう自分を奮い立たせる。
 刃を交えることが危険なら、近づかせないことが肝要だ。その冗談も決して虚言ではない。
 敵の力量を知り、こうも粉塵が立ち上っていなければ、通りから弾丸を走らせる事が安全だっただろう。
 否、安全だったかもしれない、という推測でしかないが。
 銃口を向ける。
 ただそれだけで、剣豪の視線が僅かにこちらを向く。
 引き金を引く。
 その間に、剣豪の足が床を踏む。
 晶弾が走る。
 男の振るった刃が弾丸を弾き砕く。
 斬ったのではなく、恐らく刃の腹を押し当てるように振るったのだ。素直に斬ってくれれば、別れた弾丸が体のどこかに届いていたかもしれないが。
「銃も知ってるってことね」
 つぶやきながらも、対処を誤ることを端から期待はしていない。白雪は弾丸を弾いた刀へと向けて、二、三と続けざまに晶石の弾丸を打ち出す。
 相手が刀で対処するのであれば、着弾の衝撃で接近を妨げられる。あわよくば、武器を叩き落とせでもすれば僥倖だが。
「そう、よねっ」
 刀で弾丸を弾かせ優位を取る白雪に、剣豪が一気に接近を仕掛けてきた。弾丸を極力に避け、軌道を逸らして浅傷であれば臆することなく受け、駆ける剣豪に白雪は、一手を打つ。
 中距離戦を強いる相手に対して近距離の手札しか持たない人間がどう動くのか。
 それも目の前にいるような剣豪であるならば。
 その距離を詰めようとするのは明白。
「……っ」
 両手の引き金を引く、その瞬間に、白雪はそれを発動していた。
 額正面に放たれた弾丸に刃を振るわんとしていた剣豪が、床を強かに踏切、宙に舞ったその瞬間。
 ひび割れた道場の床を食い破り、無数の棘剣が姿を現していた。
 木片を砕く無数の音の上を跳躍した剣豪の先に、しかし、逃げ場はない。着地する地面は全て槍衾に覆われている。
 安易に着地すればその足を、膝まで竹を割るように裂き斬る事だろう。
「成程、これも知らぬ技だ」
 低い声に、男の持つ刀が鍔鳴り、きん、と高い音が響く。
 果たして、剣豪が足を失うことは無かった。宙で体を捻った男は、聳える尖晶石の剣を一閃し、生んだ平面にその足を乗せていたのだ。
 後ろへと跳ね、距離を取りながら剣豪目掛け、尖晶石を殺到させる。
「仕方ないわね」
 時間稼ぎだ。
 その槍が男を貫く前に、刃が伸び行く水晶を刈り取っていく。そうして生まれた隙に剣豪は水晶を足場に白雪へと遂に肉薄する。
 超えてくることは分かっていた。
 この敵は、それだけの力を持つ敵だ。
 飛び掛かる剣豪へと白雪は、二つの銃を発射する。
 弾丸は、一閃の下に砕かれ、そしてそのまま降り下ろされた刃が白雪を狙う。
「ここまでね」
 稼ぐだけの時間は稼いだ。
 あとは、解き放つだけだ。
 オーラの防御を降り下ろされる刃に備え集中させ、そして、降り下ろされる。
 その刹那、彼女の背後から伸びた刃が、その胴体に風穴を空けた。
 刃が宝玉の体を貫く。
 大地から、白雪の体を貫いて伸びた尖石の刃が、その先、オーラに僅かに阻まれながら白雪の肩を刃を沈ませた剣豪の脇腹を抉っていた。
 生成速度、威力、ともに全力で放ったそれは、術者の腹を砕いてなお、その勢いを止めはしなかった。
 衝撃に、剣豪の体が後方へと吹き飛ぶ。踏ん張ることのできない空中にあったその体はそのままに床に激突し、転がる。
「流石に、読めなかったかしら」
 自らの体を砕く晶槍を支えにしながら、白雪は自らの成果に満足げに言う。動けば途端に体を支えきれず倒れるだろう状態だが、しかし、彼女に痛覚は無い。
 人であれば、数分で失血死するだろう傷にも、流れる血は存在していない。
 だからこそ出来た芸当。だが、流石に後は任せるしかない。
 体を起こした剣豪、露わにしたその全身、そこにある傷の中でも一際深いその傷からは、だくだくとばかりに鮮血が溢れ出ていた。
 だが、その瞳には戦意が灯り続けている。
 腹から足に伝う赤を、踏み。
「足りんか」
 それはただ静かに、剣を握っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

多々羅・赤銅
死ぬならばあれに斬られたいと、鬼の体が求めていた。

「抱いてくれ」

夜でも誘うように。
笑って、刀を抜いた。

交わす剣戟、されとてだ。
私の上を遥か征く剣豪だ、求め続ける幽鬼だ
格下の私が出来る事なんざ、
『幾重斬らられど死なない事』
【祈酒】、鮮血による回復の繰り返し。噴き出る血が肉を繋ぐ。斬られる痛みが熱となり、女の身が踊る。
おう、一斬一殺されてるされてる!強欲なもんでな、一殺と言わずに斬り合おう!
お前が殺したいもんって人、いや、己?八百万?神仏?
ああ痛え痛え死にそうだ、骨肉がずれてくっついてら。
もっと「私」を見てくれよ
私は、お前のその刀に、とびきり綺麗に斬られて、たっぷりこびり付いてやりてえんだ。



 官能だ。
 思わず親指で唇を押しながら、息の熱を確かめるように舌を唇に這わせる。すぐにでも下腹部を撫で繰り、空いた腹の疼きを落ち着かせたいという衝動を抑えながら、赤銅は刀の柄を握る。
 抜く鞘に僅かに擦る刃の振動すら心地いい。
 鬼が求めている。
 鬼の体が求めている。
 笑みが抑えられない。否、抑えるという感情が露とも湧いてこない。
 死ぬならば、あれに斬られて、果ててしまいたい。
「ああ」
 殺気に喉が締まり、眼光に鼻先が震え、構えに全身が痺れ上がる。肺に蟠る熱を笑む口角から逃がしながら、赤銅は恍惚とした瞳を歪ませる。
「抱いてくれ」
 刃先が鞘を抜け、胸が空くような爽快な解放感が赤銅を襲う。
 まるで夜を誘うかのような、色がそこにはあった。
 もはや衣服とも呼べぬ襤褸に下帯一枚、それすら頼りなげに揺れる風体の剣豪へと向けられたその言葉は、だがしかしして、語弊なく伝わる。
「なあ、なあなあ!」
 すなわち、殺してくれよと。
 赤銅が踏み出した。走ることは無く、しかし、急いたような足取りは不定のリズムによろめくようだ。
 力を抜き、節を作った棒きれのように腕を揺らし、彼女は叩きつけるように己の大業物を振り上げ。
 懐に入り込んだ男の一太刀が赤銅を斬り捨てる。
「か、ひゅ」
 胴から喉まで逆袈裟に見事なばかりに捌かれた赤銅が、破けた気道から抜けた声が漏れる。
 ひやり、と刃の冷たさを感じたのはほんの一瞬で。
 凍ったかの感覚を、痛覚の烈火が奪い去り、燃やし尽くす。
 はじけ飛ぶ鮮血が傷を捲り上げて、赤銅の肢体が痙攣を起こす。体内を過ぎていった刃の衝撃に伸びた体が揺らいで両腕が垂れるその瞬間に、男は二の太刀を浴びせる。
 振り抜いて首の皮を引き切った刃をそのまま円を描いて下げると、更に一歩踏み込み、赤銅の傍をすれ違うように腰と腹の中間を切り裂く。
 腰と胴を別つ一撃がその肌に届くその寸前、その間に刃が滑り込んだ。
 骨ごと両断せしめんばかりだった剛剣は、しかし、刃に逸らされ半ば程を内腑を割るにとどまっていた。
「……」
 一撃目から既に、致命の一撃であった。肺と心臓、首の骨ごと動脈を掻き切られ、死なぬ方がおかしいのだ。
 だが、血を払い、赤銅を振り向く男の表情に困惑は無い。
 ただ平静として刃を握っていた。
 防がれた二撃目ですら、失血死など待たずして昏倒し死を迎える傷だ。
 だというのに、赤銅は笑っていた。
 噴き上がる血が傷を捲る、いや、捲れるように蠢く皮膚は、まるで血液が意思を持ったように互いを繋ぎ合わせるに合わせて揺れているだけだ。
「ああ、されてる。一つに一つ殺されてるよ」
 傷から溢れた血液による回復。ただの二振りで赤に染まらぬ部位など無くなった女は、その回復すら待たずに距離を詰めた。
 恋人に飛び込むがごとく熱烈に、剣を交わらせる。
「なあ!」
 刀を握る腕が飛ぶ、糸引く血が引き戻し砕けた骨ごと強引につなぎ合わせる。
「お前が殺したいもんって」
 両目を横薙ぎに閉ざされ、球内に満ちた赤が瞼をこじ開ける。
「人? いや己?」
 足を突いた刃が胸までを裂き割れば、解離する肩を残る腕で掴んで断面をこすり合わせて刃を振るう。
「八百万、神仏?」
 ずれていく、赤銅が刀を振る一度で二度は殺され、声の合間に三度は殺され、徐々に赤銅の体がずれていく。
 物の形を認識することすら拒否する眼球の齎す視界が、響く頭痛にかき回される聴覚に更に歪みを見せる世界の中で、嗅覚だけがむしろ鮮明に、血と汗と木と土を感じ取っていた。
「ねえ」
 指は幾つ付いている。足はどこを向いている。思考が徐々に痛みの叫びにだけ侵されていく。
 痛みという炎が、赤銅という蝋を溶かして別の何かの塊に変えていくように、刀を握るのが手か首か臍か。それすら分からない程に、痛みに呑まれていく。
「私を見てくれよ」
 果たして、それは人の言葉の音として体を震わせたのかすら分からない中で、彼女はただ笑った。
 痛みの中で、痛みしか感じず、痛みのままにふるまう事が、快感ですらあった。
 死んでいく。
 と、狂気の中でそれが近づいていくのを感じていた赤銅は、急速にそれが離れていくのを感じた。
 さながら、不意に重力を思い出して落ちるように、熱が冷めていく。
 何故か、は考えるまでもない。鮮血による治療が傷を埋め尽くしていく。それが痛みを冷ましているのだ。
 だが、何故、唐突に傷が癒えたのか。
 それは、赤銅の治療能力が爆発的に向上したのではなく。
 それは、赤銅を殺し続けた剣豪が、その刀を引いたからだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月21日


タグの編集

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 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦後


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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は釘塚・機人です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト