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アースクライシス2019⑦~サムライガール編

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス


「さあ、ダストブロンクスへ乗り込むわよ!」
 分厚い本を抱えたグリモア猟兵、メルティス・ローゼが、グリモアベースに帰還した猟兵たちに声を掛けた。
「ニューヨークを救った直後で疲れてるとこ悪いんだけど、一緒にがんばりましょう」
 彼らを労いながらも、メルティスは今回の依頼内容を説明する。
「スカムキングの本拠地がわかったの。場所はさっきも言ったけれど、ダストブロンクスよ」
 ダストブロンクスは、ニューヨークの地下に広がる地下都市だ。
『下水道迷宮』とも呼ばれているだけに、なかなか近寄りたくない場所である。
「さっさとスカムキングを倒したいところなんだけど、そうもいかないのよね……。今回みんなにやってもらいたいのは、ダストブロンクス上層に配備されたオブリビオンの討伐よ」
 スカムキングは猟兵たちの進行を阻むため、上層に強力なオブリビオンを配備した。
 彼らを倒さない限り、スカムキングの元には辿り着けないというわけだ。
「わたしが予知したオブリビオンは、サムライの少女よ。かなりの手練っぽいけど……まぁ、あなたたちなら大丈夫でしょう」
 あまり心配していない口調でそう言いながら、メルティスは『それよりも』と指を振って続ける。
「今回最も厄介なのは『汚染水』よ。ダストブロンクスでは、一定間隔で汚染水が噴き出すんだけど……この汚染水、オブリビオンが浴びると回復するらしいのよね……」
 彼女の言葉に、猟兵たちがどよめく。
 汚染水が噴き出す場所は、マンホールや下水管の割れ目など、思ったよりわかり易い場所らしい。
 予知で見た情報を付け加えて、メルティスは猟兵たちを見渡した。
「汚染水で回復させないように、工夫して戦って貰う必要があるわね」
 神妙な面持ちでそう告げると、両手で抱えた本を勢い良く開き、猟兵たちの転送の準備をはじめる。
「そーゆーわけだから、よろしくね! 大丈夫、何とかなるわよ。あ、帰ってきたらシャワー浴びてね?」
 最後に余計なこと――メルティスにとっては何よりも重要なこと――を告げて、転送を開始するのだった。

 ●
 猟兵たちが送り込まれた場所は、嫌な臭いが立ち込める、街の一角だった。
 人通りの全くない道路は、街灯で照らされているとは言え薄暗い。
 時折、あちこちからブシュウという音を立て、水が吹き出している。
 あれが『汚染水』だろう――マンホールや下水管、地面の割れ目から噴出するのが見て取れた。

 ――とんたんたん、刀震える今日の僕♪

 突然、どこからともなく歌声が聞こえてきた。
 やけにハスキーな少女の声――どうやら例のオブリビオンのようだ。

 ――とんたんたん、予感的中至極悦楽♪

 猟兵たちの前に、すとん、と少女が降ってきた。
 桃色の髪を赤い紐で結い上げた、和風眼鏡少女。
 手にした抜身の刀が、街灯を反射してギラリと光る。
「スズリ・ムラサメ、だよー」
 気の抜けるような声でそう名乗ると、オブリビオンはニヤリと嗤って刀を構えた。
「さ、殺し合おうか」


霧雨りあ
 ※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 ヒーローズアースからこんにちは。霧雨です。
 下水道迷宮……なかなか不快な場所での戦闘ですね。
 とは言え、戦争に勝利するためにも、猟兵のみなさんには頑張って頂かなければなりません(霧雨はニオイを気にしながら眺めています)

 さて、今回は特別なプレイングボーナスが用意されています。
 冒頭でも述べましたが、敵が汚染水を浴びてしまうと回復して撃破が難しくなってしまいます。
 これを回避するような行動を行えば、プレイングボーナスが加算されます。
 ぜひ、活用してくださいね。

 それでは、みなさまの冒険が良きものとなりますように。
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第1章 ボス戦 『スズリ・ムラサメ』

POW   :    秘剣『返し燕』
【刀】が命中した対象に対し、高威力高命中の【見えない斬撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    秘剣『霧雨囃子』
いま戦っている対象に有効な【妖刀】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    秘剣『朧』
【高速の踏み込み】から【影を本体から切り離す斬撃】を放ち、【呪縛】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:椿

👑11
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カーバンクル・スカルン
汚染水に触れたら回復するのであるなら水に触れる前に消滅させるのみですよ。

【熱烈峻厳】で機械仕掛けのワニの表面温度を上げて、周囲にある水を蒸発させてから、ムラサメをロープワークで拘束。そんで斬られる前に引きずりこんでワニの口の中に閉じ込める!

水が一切入らない閉鎖空間で蒸し焼きにしてる間に壊れてる下水管やら何やらを一気に修理して、脱出出来たとしても回復手段の無い状況を作り出してやりますよ!



「よいしょっと」
 どすん、という音を立てて、赤眼赤髪の少女が重たそうな工具箱を傍らに置いた。
 逆隣には、ワニ。それも機械仕掛けの。
 ぱっと見には活発な可愛らしい少女が、何やら違和感たっぷりなモノを従え、スズリの前で戦闘準備――たぶん戦闘準備を整えている。
「えーと、キミ、何してるの? 殺し合わないの?」
 スズリがぽりぽりと頬を掻きながら、ワニを連れた少女――カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの咎人殺し・f12355)に声を掛ける。
「……汚染水に触れたら回復するのであるなら、水に触れる前に消滅させるのみですよ」
 あ、聞いてない……。
 スズリは諦めて刀を構えた。
 まずは一撃喰らわせてやろう――そんな笑みを浮かべたその時。

 カッ!

 突然、機械仕掛けのワニが光った。
 同時に、銀色のワニのボディが徐々に赤熱していく。
 カーバンクルのユーベルコードによって灼熱の金属と化したワニは、そのままバタバタと走り出した。
 ワニが通った場所から、シュウシュウ音を立てて蒸気が立ち上る。
 空間を熱して、汚染水を蒸発させているのだ。
「あ、面倒なことしてくれるねー」
 スズリがやれやれと肩をすくめると、
「……あれ?」
 気付けばロープでぐるぐる巻きにされていた。
 ロープの先は、カーバンクルの手に握られている。
「隙だらけよ」
 カーバンクルは呆れた顔でそう突っ込みながら、ロープを思い切り引っ張った。
 宙を舞うスズリ。
 向かった先は、ぱかーんと開かれたワニの口だった。
「えーうそー」
 やる気のない声を上げながら、スズリはワニの中へと収納された。
「はい、一丁上がり」
 カーバンクルは満足気に頷くと、足元の工具箱を開いた。
 この工具箱、彼女が持つ拷問器具を調整したりするのに使うらしい。
 歴史ある宇宙船で育てられた彼女が、一体何故そんなものを――いや、今気にすることではない。
 カーバンクルは、様々な工具を取り出すと、街路の脇で朽ちている下水管を修理し始めた。
「回復手段のない状況を作り出してやるわ」
 彼女が手際良く修理していく間、スズリも大人しくワニの中に収まっていた。

 視界に収まる下水管は、すべて修理し終えたカーバンクル。
 この後、他の猟兵たちが有利に戦える状況を作ったことは間違いない。

成功 🔵​🔵​🔴​

フィーナ・ステラガーデン
ん!私はフィーナよ!(自己紹介を受けて)
ところであんた、さっきグリモア猟兵の子から聞いたのだけど下水で汚水を浴びると体調良くなるの?
ちょっとその趣味は私はどうかと思うわよ!?
絶対体に良く無いわ!そんな気分になってるだけよ!
もうちょっと自分を大事にしなさい!

あ、それはそれとして戦闘ね!
私はサポートに回りたいわね!
汚水対策として全部蒸発させるわ!!
吹き出そうな場所に前もって移動して
敵の攻撃と汚水を同時に塞ぐ形でUCの炎の壁を配置するわ!
あとは普段通り【属性攻撃】による火球を飛ばして牽制よ!
メイン火力は出来れば仲間猟兵に任せたいわね!
厳しそうなら【全力魔法】で焼くわ!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)


クトゥルティア・ドラグノフ
※アドリブ共闘大歓迎

刀かぁ。
父さんも刀を愛用していたし、私もメインでは無いにしろ刀を使う以上、どうしても意識しちゃう相手だね!

最初は【戦闘知識】と【怪力】を使って剣での戦いを挑むよ!
返し燕には最大の注意を払いつつ、攻撃の予兆を【見切り】、【カウンター】を叩き込んだりして攻めるよ!

汚水対策は【野生の勘】で回復や汚水の吹き出すタイミングを【見切り】、回復に向かうのなら【サイコキネシス】で強引にこちらに引っ張るよ。
これで汚水から引き剥がせる上に、私の射程に連れ込める!

あなたが秘剣を使うように、私も見よう見まねではあるけど、父さんの秘剣を使えるんだよ!
鏡花水月・絶で、次元ごとその体を切らせてもらうよ!



「ん! 私はフィーナよ!」
 スズリの自己紹介を受けて、フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)が元気に名乗った。
 隣にいた長身――背が低いフィーナと並ぶと幾分か高く見える――のクトゥルティア・ドラグノフ(無垢なる月光・f14438)が、驚いてフィーナの顔を見たが、すぐに優しい笑みを取り戻す。
「私はクトゥルティア」
 同じように名乗って、ちらりとスズリの手の中に収まる刀に目を向けた。
「あなたは刀の達人だって?」
【伝説の英雄】とまで言われたクトゥルティアの父――彼の武器もまた、刀だった。そんな父を追うように猟兵業をやっている彼女にとって、今回の敵の刀はどうしても意識させられる。
「達人? いやいや、そんな。ただ、殺すのに適した武器だとは思ってるよ」
 眼鏡の縁に手を当てて、スズリがそう嘯いた。
 何か言おうと口を開きかけたクトゥルティアよりも早く、フィーナが口を開いた。
「ところであんた、さっきグリモア猟兵の子から聞いたんだけど、下水で汚水を浴びると体調良くなるの? ちょっとその趣味は、私はどうかと思うわよ!?」
 突然のフィーナの指摘に、スズリ本人だけでなく、クトゥルティアも思わず吹き出す。
「下水で汚水……」
「違う、汚水じゃない。汚染水だ」
 眉間を押さえて首を左右に振りながら否定するスズリに、フィーナはびしっと指を突きつけた。
「どっちでもいいわよ! 何にしろ絶対体に良くないわ! そんな気分になってるだけよ!」
 断言するフィーナに、もはや何も言えずに口をパクパクするスズリ。
 クトゥルティアが体を折って笑っている。
「もうちょっと自分を大事にしなさい! わかった!?」
 トドメのひとこと。
 訪れる沈黙。
 数秒間停止した後、スズリがずり落ちた眼鏡をくいっと上げた。
「……いやぁ、まさか猟兵から説教受けることになるとは思わなかったよ。あんた、面白いねー?」
 相変わらずやる気のない声でそう言って、スズリは刀を彼女たちに向ける。
「すぐに殺し合いたくて、ウズウズしてきたなぁ、僕」
 目を三日月のように細めると、そのまま地を蹴った。

「させない!」
 クトゥルティアが大剣で、スズリの刀を受け止めた。
 刃同士が重なり火花を散らす。
「お、イイ剣だねー」
 スズリは楽しげにそう言うと、一旦身を引いて体勢を立て直し、凄まじい速さで剣戟を繰り出した。
 クトゥルティアは器用に躱しつつも、隙を見て反撃を撃ち出す。
「ほほー、なかなかの達人じゃないか」
 スズリが賛辞を述べ、にやりと笑う。
「とんたんたん、僕の殺す剣とは大違い、だね♪」
 歌うようにそう言うと、ぐっと身を屈めた。そこから不可視の一撃がクトゥルティアに伸びる。
 クトゥルティアは、体を捻って避け――スズリの刀は、ふわりと舞った薄菫色のコートの端を斬り裂いた。しかし、直後には何事もなかったかのように元の形へと戻っている。
 クトゥルティアの父が遺した装備品――それらは、多少壊れても自己再生してしまう、不思議なものがほとんどだった。
 スズリはコートの再生に僅かに眉を上げるも、気にせず上段からの一撃を繰り出す。
 その斬撃をクトゥルティアは見切りつつ、同時に自らの大剣を横薙ぎにした。
 斬撃はスズリの胴を薙いだかのように見えたが、浅く傷を残しただけだった。
「ほーい、休憩」
 スズリが後方へ飛び退いて、辺りに目を走らせる。
 しかし――。
「回復? させないわよ!」
 上空から降って来たのは、フィーナの声と火球だった。
 直後、地面の隙間から噴き出した汚水――もとい汚染水を、火球たちが蒸発させていく。
 しかし、留まることなく湧き出す汚染水。
「ポイント、たくさんあるよー?」
 スズリがのんびりとした口調でそう言うと、止めの一撃とばかりに大きな噴水が出来上がった。
 ――フィーナの目が、逆三角になった。
「それが……どうしたって言うのよー!!!」
 叫んだ言葉が詠唱となって、ユーベルコードが発動。とんでもない炎の壁が立ち上り、あちこちで噴き出した汚染水を一気に蒸発させる。
「だから、体に悪いって言ってるじゃない!!」
 ぎゃーぎゃー騒ぐフィーナに何か言ってやろうと口を開きかけたスズリは、ハッとその表情を強張らせた。
 嫌な気配にバッと振り返ると――そこには刀を携えたクトゥルティア。
「あなたが秘剣を使うように、私も見よう見まねではあるけど、父さんの秘剣を使えるんだよ!」
 見えない速さで左手が動き、『魔刀クトゥルティア』から放たれる一撃――『鏡花水月・絶』。父親の奥義『鏡花水月・命滅』の下位互換とは言え、その威力は絶大だ。
 先程まではなかった竜のようなサイキックオーラを背後に立ち上らせたクトゥルティアは、魔刀を抜き放った姿勢のまま、視線のみをスズリに向けた。
「あーあ、お気に入りの妖刀だったのになぁ」
 残念そうなセリフとは裏腹に、愉しげな表情で呟くスズリ。直後、彼女の刀は真っ二つに折れた。
 惜しみもなくポイっと柄を放り投げると、再び虚空からひとふりの刀を手に取る。
「ちょ~っとだけ威力は落ちる、かなぁ? ま、いっか」
 ひょいと肩を竦めると、再び猟兵たちに向き直った。

 二人の少女は、オブリビオンの戦力を減らすことに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
オーケー!殺しあおう!存分にな!

【修羅闘争】発動!
戦ってる間は影響はないけれど、逃げようとした瞬間に
ごりっと影響出るぞー?

さぁ戦おう闘おう! 存分に! 目の前の敵のことだけ考えて!

回避は致命傷以外無視で【野性の勘・見切り】で。
【怪力・薙ぎ払い・衝撃波・二回攻撃】で攻める!

相手が逃げようとしてUCの影響で動きを遅くしたら
【グラップル】で捕まえて、汚染水から離して、
そのまま掴んだまま攻撃。



「オーケー! 殺しあおう! 存分にな!」
 吹き付ける腐った風に、揺れる銀のポニーテール。
 青いリボンが印象的な少女、宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、刀を構えてそう告げた。
 明るい笑みを浮かべたその姿は、スズリとは対照的で。
「いいねー、元気な少女。だけど――此処とは違う腐臭を感じるような? キミ、何だか……ナカが痛そうだよね?」
 目を細めて嗤うスズリに、しかしライアは何も答えない。
(殺戮に非ず。蹂躙に非ず。虐殺に非ず。私は闘争を誓う。闘争を楽しめよ?)
 ただ、静かに。
 スズリが気付く間もなくユーベルコードを展開。
 そして、口を開く。
「さぁ戦おう闘おう! 存分に! 目の前の敵のことだけ考えて!」
 まるで詠うように紡がれる声と、地を蹴る音。
 滑るようにスズリへと肉薄し、上段から斬り付ける。
「おっとー、太刀筋は正義感満載♪」
 文字通り歌いながら、スズリは虚空から召喚した紅色の妖刀で受け止め、そのまま横に流した。
 すぐさまライアは、突き、斬り上げ、袈裟斬りというコンボを見舞う。
 少女たちの刀がぶつかり合い、火花を散らした。
「とんたんたん、ってね♪」
 そう言ってスズリから繰り出される剣戟は、先ほどのライアと同じコンボ――妖刀が揺らぎ、太刀筋は見えない。
 しかしライアは感覚的にすべてを躱し、隙を見て刀を横に薙いだ。
 生まれる衝撃波。そこに袈裟斬りを重ねると、衝撃波は十字型となってスズリに迫る。
 生まれる負の感情。スズリは目を細めて、大きく後ろに飛び退こうと――。
「あれ?」
 体が何やら重い。と言うか、むちゃくちゃ遅い。
 迫り来る衝撃波は、仕方なく妖気を纏ってやり過ごした。
 だが、続いて迫るヒーローは、果たしてやり過ごせるだろうか?

 気付けば、目と鼻の先にライアの顔があった。
「はーっはっはっは!!」
 ヒーローのように高らかに笑いながら、そのままスズリに抱き着く――否、それは組み技だ。
 スズリの顔が思わず引きつる。
 ……きっと、きっと、痛いやつだ。
「んぎゃっ」
 クリーンヒット。
 ライアの勝ち誇った顔と、スズリの痛がる顔が対照的で。

 スズリは妖気を纏って何とか抜け出したが、それはそれは――痛そうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラモート・レーパー
「そっか!最初からこうすればよかったんだ!」
UC【大量絶滅】で下水道に溶岩を引き込む。溶岩で汚染水を蒸発させつつ、溶岩の上を自身が立てば自分の力を高められる。僕自身、死の概念でだから焼け死ぬことはないからね。
それに、相手は溶岩で自分を間合いに入れられないはず。その間に僕は黒剣を飛び道具の狩猟武器に変えて攻撃をしていくよ



 廃ビルの屋上から、小柄な少女が下界を見下ろしている。
 ラモート・レーパー(生きた概念・f03606)は、ペタンと床に座り込んでいた。
 ずいぶんと、入り組んだところまで来てしまったようだ。
 激化した戦いが、オブリビオンをここまで連れて来たか――しかし、ここには整備されていない下水管が所狭しと並んでいる。
 闇夜へといざなうような漆黒の瞳は思案気に揺れ――何事か思い至ったのか、かっと目を見開いた。
「そっか! 最初からこうすれば良かったんだ!」
 歳相応――実年齢ではなく、見た目――な反応をして立ち上がると、そのままひらりと虚空へ身を躍らせた。

 ゆらゆらと足音を立てずに歩くスズリの前に、タタッとラモートが着地する。
「おやまー、今日はよく少女を見る。眼福眼福♪」
 冗談まじりにそう言うスズリは無視して、ラモートは地面に手をつくと、ユーベルコードを発動させた。
「『』の名において試練を与える」
 聞き取れないコトバの混ざった力ある言葉を紡ぐと、地下から地鳴りが響いた。
 音はゆっくりと近付いて来たかと思うと、突如下水管から、あろうことか『溶岩』が噴き出したのだ。
「おおっと、これは予想外」
 スズリが近くの建物に飛び乗る。
 ラモートは――そのまま、そこに。街路の真ん中に佇んでいた。
 彼女にも容赦なく襲いかかる、溶岩。
 真正面からそれを浴びても、しかしラモートが焼けることはない。
 それどころか、彼女の戦闘力はどんどん上がっていった。
「なかなか厄介なユーベルコードを使うね?」
 スズリは言葉ではそう言いながらも、愉しげに嗤った。
 ラモートは、にこりと笑って剣を構えた。
 愛剣『黒剣』は、彼女の意思で形を変える<呪われた剣>だ。
「さ、いくよー!」
 ラモートが勢いよく投げると、剣は空中でブーメランのような形になった。
 黒い妖気を纏って飛来するソレを、スズリは大きく跳ねて避ける。
 しかし、黒剣は途中で軌道を変え、執拗にスズリを追い回した。
「ほらほら、ちゃんと逃げないと切り刻まれちゃうよ?」
「あーあー、何だか僕の刀、振る機会がないぞ?」

 やる気のない声を上げながら、結局スズリは最後まで障害物競走のごとく、走り回る羽目になった。
 ラモートは、オブリビオンの体力を減らすことに成功したのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

蝶ヶ崎・羊
相手が手練れならワタシは数で勝負です
UC発動で風鼬さん達は風の【属性攻撃】で攻撃
ワタシはC・Cで【鎧無視攻撃】で接近戦を仕掛けます

汚染水で回復するならを浴びせなければ良いこと…汚染水のポイントを記憶して、敵が汚染水のポイントに近寄った時に敵を汚染水から【かばう】ことにしましょう
【オーラ防御】と【毒耐性】で暫くは無茶出来るでしょう
『…殺し合いに回復は些かフェアではありませんから』
大分不快…いえ、戦闘に集中しなければ…

庇ったことで接近出来ればヒアデス・グリモワールから炎の【全力魔法】を撃ちましょう
『高火力で…燃やし尽くしてしまいましょう』

相手の攻撃は【武器受け】で防御します


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

汚水を浴びて回復する可憐な少女。……目の毒です。
猟兵の義務を果たすべく一刻も早くここら一帯を全て凍らせましょう。もう何も動かないように。

文字通り全てを凍らせます。
私のホワイトブレスの『範囲攻撃』ならそれが可能です。敵は勿論のこと、壁も通路も、ひびや穴等関係なく。
汚水が吹き出ないように『時間稼ぎ』です。
貴方はサムライを名乗るのでしょう?ならば下手な小細工を使っていては、その腕が泣くというものですよ?
『挑発』し、汚水を使わせないよう動きましょう。
敵や汚水の勢いが激しいのであれば『全力魔法』です。姿形に惑わされませんよ。
この場を氷の世界と化し、勝利を猟兵の手に。


ヘスティア・イクテュス
ふぅ…閉所に相手は剣士
少々不利な戦場ね…おまけに匂いも…
帰ったらお風呂に入りましょう

それじゃあビームセイバー一刀流、ヘスティア・イクテュス
お相手お願いするわ!


苦手だけど近接戦で勝負、近づいて汚染水に向かわないようにする戦法よ
動きはティターニアのブースト噴射で補助&アベルで剣筋を予測【情報収集→見切り】

戦いながらもフェアリーズを遠隔操作、噴き出る汚染水の場所を破壊、瓦礫に埋めて汚染水を断つ!


付近の場所を埋めたら、後は倒すだけ!
ホログラムで自身を投影【フェイント】
SSW流、ホログラム分身、これで止めよ!



 複雑に入り組んだ路地を、三人の猟兵が進んでいた。
「ふぅ……閉所に相手は剣士、少々不利な戦場ね」
 透き通った水色の髪に、藍色の瞳。
 華奢だが意外と長身の少女、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は、ため息と共に言葉を吐き出した。
「しかも手練れです。あまり接近して戦いたい相手ではありませんね」
 ヘスティアの左を歩く鮮やかな緑のローブを羽織った青年、蝶ヶ崎・羊(罪歌の歌箱・f01975)が肯定してそう言うと、頭の上に乗っていた鼬がコロコロ転がる。
「おっと」
 羊はそっと宙で受け止めて、肩の上に降ろした――鼬らしからぬ仕草で、肩の上でふんぞり返っている。
「――おまけに、においも……」
 ヘスティアがそう付け加えると、三人は揃ってため息をついた。
「早く帰ってお風呂に入りたいわね」
「同感です。サムライの少女とやらが、どんなオブリビオンかはわかりませんが……早々に退場して頂かねば」
 ヘスティアの右隣で、蒼氷色の瞳を細めたアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)がそう言った時、最も近いビルの上から歌声が聞こえてきた。

 ――とんたんたん、次なる獲物はどんな味♪
 
 ストン、と影が落ちる。
「や、猟兵諸君。スズリ・ムラサメだよー」
 のんびりした口調でそう告げた少女は、肩にかかった桃色の髪をさらりと掻き上げた。
「なっ……!?」
 その姿を見たアリウムが、呻き声を上げてよろよろと後退る。
「可憐な……少女、そんな……」
 確かに『サムライの少女』とは聞いていた。しかし、まさかこんなマトモな少女が出て来るとは、微塵も思っていなかったのだ。
「どうしました? アリウムさん」
「どうしたの?」
 羊とヘスティアが怪訝な表情で尋ねる。
「……汚水を浴びて回復する少女……目の毒です……猟兵の義務を果たすべく一刻も早くここら一帯を全て凍らせましょう……もう何も動かないように」
 アリウムからは、まるで呪詛のような呟きが漏れていたが、誰の耳にも届くことはなかった。

「さ、殺し合うよー。準備は良いかな?」
 刀を構えるスズリ。
 この路地一帯は、下水管やマンホールが点在している。
「出るわ。援護、頼めるかしら」
 近接戦は苦手だけど、と付け加えながら、ヘスティアがビームセイバーを構える。
「わかりました。では私が援護を」
 地形を注意深く見ていた羊はそう言って頷くと、ユーベルコードを展開した。
「風の神よ……目の前の罪人に罰を与えたまえ!」
 羊の声に、現れたのは小刀を口に咥えた風鼬たち。その数、五十五。
 彼らが放射状に散開していくと、羊の肩の上の鼬が手を振った。
「それじゃあビームセイバー一刀流、ヘスティア・イクテュスお相手お願いするわ!」
 ヘスティアの声を合図に、戦闘が開始された。

「はっ」
 ヘスティアのビームセイバーが、蒼い尾を引いてスズリの眼前を通り過ぎる。
「結構な腕前だよ、キミ。惚れちゃうなー」
 スズリは軽口を叩きながら躱すだけで、まだ攻撃はして来ない。
「余裕ね」
 ヘスティアは表情を変えずにそう言いながら、フェイントを交えた剣戟を繰り出した。
 スズリは笑みを浮かべたまま躱し切ると、突然その右手が閃いた。
 ――恐ろしい程、正確な一撃。
『右でございます』というアベルの助言がなかったら、斬られていたかも知れない。
 ティターニアの噴射で滑るように右に移動しながら、遠隔操作でフェアリーズからビームを撃ち出す。
 そこに、羊の鼬たちが放った風魔法が追従した。
「へぇ、手札も手数も多いことだ」
 スズリが愉しげに笑う。
 彼女の妖刀から放たれた斬撃がビームを弾き返し、その勢いで巻き起こった妖気の嵐が風魔法を相殺した。
 更に何か言おうと口を開きかけたスズリの背後から、今度は羊本人が襲い掛かる。
 手には鈍器――失礼、指揮棒『C・C』だ。
「おや、珍しい武器?」
 スズリがにこりと笑いながら、返す刀でC・Cを受け止める。
 しかし羊の一撃はとてつもなく重く、スズリの立つ地面がミシッと割れた。
「こ、れは、重、い、ね!」
 赤い妖気を纏って何とか押し返したスズリが、一気に跳躍する。
 向かう先は――。
「させません!」
 バシュッと汚染水が地面から噴き出し、そこへ着地しようとしたスズリを『かばった』羊は、そのまま茶色い汚染水に身を晒した。
「嘘、羊!?」
「っ!?」
 ヘスティアの叫び声と、アリウムの声にならない声が響く。
「大丈夫です、オーラを纏っていますから」
 微笑む羊は、確かに薄く黄金色の光りに包まれている。
 汚染の効果は受けておらず、無論、濡れてもいない。
(とは言え大分不快……いえ、戦闘に集中しなければ……)
 酷い臭いにクラクラする頭を振って、後方のスズリへと不意打ちの炎を見舞った。
 牡牛が表紙に描かれた魔導書から噴き出した炎は火柱となり、スズリを燃え上がらせる。
「くっ」
 あまりのことに一瞬唖然としたスズリは、藍色の妖気を纏って既のところで火柱を防いだ。

 ――しかしここで、誰もが異変に気付く。

 いつの間にか、地面が白く輝いている。
 薄っすら積もっているのは、雪。否、氷。
 まるで空気そのものを凍らせようとするかのように、宙を冷気が渦巻いていた。
 その中心にいるのは――アリウム。
「……限界です」
 酷い臭気、可憐な少女が汚水――正確には汚染水――で回復、かと思いきや青年が汚染水まみれ。
 ぷつり、とアリウムの何かが切れた。
「姿形には惑わされません――オブリビオン、汚水と共に凍らせる」
 カッと見開いた瞳には、蒼い炎が揺らめいていた。
「あ、アリウム落ち着いて……」
「アリウムさん、気持ちを鎮めてください」
 ヘスティアと羊の声は、もう彼には届かない。
 ユーベルコード、ホワイトブレス。
 発動したそれは、極低温魔力の波涛となって、すべてを凍らせていく。
 下水管や地面の割れ目から冷気が侵入し、汚染水はすべて凍りつき、砕けた。
 建物までもが氷の彫刻と化し――ようこそ氷の世界。
「な、に、これっ」
 引きつった笑顔で、スズリが叫ぶ。
 彼女の足は、氷の中に閉じ込められていた。

 もちろん、こんなチャンスを逃す猟兵たちではない。

「蝶のように舞い……蜂のように……」
 ユーベルコードによって超速を得たヘスティアが、ビームセイバーを片手に肉薄し、躊躇なく振り下ろす。
 しかしスズリは、冷静だった。
 虚空から新たな妖刀を召喚し、物理法則を無視した動きで横薙ぎにした。
 だが――捉えたのはヘスティアの分身。ザザッとその姿が掻き消える。
「残像か」
 それでも冷静に。
 彼女が上段で構えた妖刀に、ヘスティア本体の一撃がヒットする。
「はい、まだまだー」
 ゆるい声で、スズリが笑う。
「――まだまだ、ですか?」
 殺気は、なかった。
 背後から伸びた手が、スズリの肩を掴む。
 アリウムの手から放たれた冷気が、スズリの全身を凍らせた。
 氷の彫刻となったスズリ――しかし、赤い妖気が彼女から立ち上り、氷は瞬時に蒸発した。
「けはっ」
 空気を喘ぐように吸い込みつつ、スズリが後退する。
 目には暗い焔――羊の目には、それが見えた気がした。
「まて!」
「深追いは危険です」 
 追おうとしたヘスティアを、羊が止める。
 去る瞬間にただならぬ気配を纏っていた手負いのオブリビオンは、一度体勢を整える必要があると感じたのだ。

 とは言え、三人はオブリビオンの体力をごっそり削ることに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
殺しあう?
お断りです
戦闘は専門外なもので格上相手に正面から望まない主義です


ユーベルコード使用
狙いは結界による汚染水の封鎖と炎による蒸発、或いはそこに向かう敵の足止めです
【学習能力・視力・聞き耳】にて噴出箇所を予想し、警戒する
敵本体への交戦手段は【スナイパー・念動力】で撃ちだす金平糖の散弾
あるいは結界での足止めで、剣術は【咄嗟の一撃】の最終手段として考えます

まともに付き合わず、距離を取りながら牽制攻撃を重ねるとしましょう
…下手に範囲攻撃を撃つと汚染水のカバーが大変ですし、ちまちまと遠目から削りつつ…
したたかに遠巻きに【学習力・戦闘知識】で敵を観察し、白兵戦時の技量差を縮める対策とします


弥久・銀花
「ええ、殺し合いましょう」
「あ、弥久銀花です、宜しくお願いします」

実は割と珍しい、純粋な剣術のみで戦うオブリビオン。
性別年恰好も同じくらいで斬り殺しても後腐れないとなれば挑まない理由なんてあんまりありません、あれば猟兵なんてやってないのです。

愛刀の白嵐玉椿を抜刀術の構えにしてゆっくり接近し、一足の間合いに入るギリギリの位置で睨み合って情報収集と見切りで斬り掛かる機を伺います。


こう言う時、攻撃のチャンスは

1、息を吐いてる途中(吐き切る2割手前くらい)
2、重心と、それを維持する足の筋肉の疲労状態
3、眼光に籠められた攻撃の意思

タイミングを見付けたら鋭刃線閃で攻撃です!



 暗く狭い通路。
 下水管やガス管が剥き出しになり、無秩序な都市拡大が繰り返されたことを物語るその場所に、ひとりの青年が潜んでいた。
 白きドラゴニアン、 ベルベナ・ラウンドディー(berbenah·∂・f07708)。
 緑と黒のツートンカラーの髪に、紅のコートという目立つ風貌ではあったが、今は技能を駆使して闇に紛れている。
 ベルベナは、通路先から聞こえて来る、オブリビオンと猟兵の声に耳を傾けていた。

――さあ、殺し合おう。
――ええ、殺し合いましょう。

(殺し合う?)
 拾った単語を鼻で笑う。
(お断りですね。戦闘は専門外なもので――格上相手に正面から望まない主義です)
 口の中でそう呟くと、音を立てないようにその場を立った。
 ここからでは彼らの姿が見えない。気取られず、戦っている姿が見える場所を探すのだ。

「あ、弥久銀花です、宜しくお願いします」
 もふもふとした白い耳に尻尾、そして白い髪――人狼の少女、弥久・銀花(隻眼の人狼少女剣士・f00983)は、自分と背丈の変わらないサムライガールにぺこりとお辞儀をした。
「うん、よろしく銀花」
 先程までの斜に構えた笑みではなく、普通の笑顔でスズリはそう言うと、虚空から刀を取り出した。
 右手で刀を掴むと、そのままだらりと腕を下ろす。
「何だかキミ、素直だねー。そういうの好きだよ。好きだから――さあ、殺し合おう」
「ええ、殺し合いましょう」
 欠片も笑わずにそう応えた銀花の、赤い右目が――静かにスズリを見つめている。
(――実は割と珍しい、純粋な剣術のみで戦うオブリビオン)
 先程、別の猟兵と戦っている姿を見たが、スズリは剣術以外を駆使してはいなかった。
(――性別年恰好も同じくらいで、斬り殺しても後腐れないとなれば……挑まない理由なんて、あんまりありません)
 ふう、と一呼吸。
 銀花は愛刀『白嵐玉椿』を構えた。
「あれば猟兵なんてやってないのです」
「ん? 何か言ったかな?」
「直往邁進なのです」
 全く違うことを言い放つ銀花に、スズリはニヤリと笑うと、まぁいいかと呟いて刀を構えた。
「しかし――義眼、義腕ね。銀花ちゃんは修羅の道でも歩んでるのかな?」
 そう言って強く地を蹴ると、一瞬で間合いを詰める。
 想像していたよりも格段に速い斬撃。
 銀花は息を乱すことなく刀を斜に構え、その一撃を受け止めた。
 ギン、と澄んだ音が響き、互いに数歩下がる。一足の間合いに入る、ギリギリの位置。
 銀花は、白嵐玉椿を抜刀術の構えにすると、相手を観察した。
(こういう時の攻撃のチャンスは、三点)
 銀花は身動ぎ一つしない。
 スズリも同じように刀を納め、銀花を見つめている。
(一、息を吐いてる途中――吐き切る二割手前くらい)
 ジリッと、スズリの左足が鳴る。
(二、重心と、それを維持する足の筋肉の疲労状態)
 僅かに上下する胸。呼吸は落ち着いている。
 そして――。
(三、眼光に籠められた――攻撃の意思!)

「研ぎ澄まされた刃に斬れぬ物無し! 鋭刃線閃!」
「秘剣、返し燕!」

 同時に叫び、同時に手が動く。
 少女たちの刀は銀の軌跡を引いて、再び鞘へと納まった。
「……な、るほど」
 よろめいたのは、スズリだった。
 脇腹から血が滴り、数歩後退する。
「良い太刀筋だねー、銀花ちゃん」
 賛辞を述べ、すぐさま後方へと跳躍。
 そのまま汚染水が噴き出すポイントへと向かい――。

「食う者を食らう物。貪る者を貪る物。猫の足音、女の髭、岩の根、熊の腱、魚の息、鳥の唾液。現れ、閉じ、燃え、その命脈を永劫に貪り尽せ」

 地を這うような声に、スズリがはじめて動揺の表情を浮かべた。
 ユーベルコード『拘束結界生成』。
 ベルベナが放ったそれは、スズリが向かったポイントに結界を張り巡らせ、内部を――汚染水を、聖なる炎で蒸発させた。
「いつの間に……」
 気配を察することが出来なかったことに舌打ちしながらも、スズリは再び刀を構える。
 しかし、辺りには誰もいない。
 と、突如後方から飛来した何かを、スズリは振り向き様に放った斬撃で撃ち落とした。
 タタタッと地面に落ちたそれは――。
「だ?」
 スズリが変な声を上げる。
 それは、どう見ても金平糖だった。
 ふかーく地面にめり込んでいるため、見間違えそうではあったが。
「うっそーん。金平糖の硬さじゃないでしょ……」
 脇腹の傷の痛みも忘れ、スズリが呟く。
 続いて別方位から襲来する金平糖に、慌てて刀を構え直した。
 小ささと言い、数と言い、避けたり撃ち落としたりするのにも限界がある。
「誰かなー? 姿も見せずちまちまと攻撃して、くるの、は!」
 膨れ上がった闘気と共に、薙いだ妖刀から衝撃波が奔る。
 向かった先の廃屋が、瓦礫となって吹き飛んだ。
 しかし、そこにも生命の気配はない。
「あーもう、面倒だなー」
 苛立ちが、徐々に彼女を蝕む。
 ――太刀筋が鈍る。

(やはり、彼女はこういった攻撃に弱い)

 スズリの立つ位置から幾分か離れたビルの影から、ベルベナは仕上げとばかりに金平糖を撃ち出す。
 それは、寸分違わず狙った軌道を進み、彼女の利き手にヒットした。
「くっ」
 貫通する金平糖。そこから止めどなく溢れる赤い液体。
 スズリの刀が、カランと地面に落ちた。

 今まで傷を負うことがなかった彼女に、二人は深いダメージを与えることに成功したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
入り組んだ地形に、張り巡らされた配管……。
遮蔽物が多いのは、接近を阻むにはありがたいですが……さて。

射撃と言うのは、ただ正確に相手に打ち込むばかりではありません。やりようはあります。
マシンガンに氷結弾を装填。……今回ばかりは、出し惜しみなく行きます。
【戦闘知識】等で、地形から見えない部分のパイプラインを推測、敵をその予測位置から追い出すように弾幕を張り、水源を凍らせつつ、そこから離れこちらに向かわせるように誘導。【地形を利用】し相手の侵攻ルートを絞り込み、向こうから寄ってきたところを【咄嗟】の【早業】、ショットガンの抜き打ちで仕留めるとしましょう。



 ぐねぐねと曲がりくねった、細い道。あちこち分岐し、まるで迷宮のようだ。
 大通りから外れたそこは、細い上に多彩な配管が張り巡らされており、非常に見通しが悪かった。
 そんな配管の影に、金髪蒼眼の少女。
 まるで騎士や王子を彷彿とさせるその姿は、あまりにもこの場所に似つかわしくない。
「遮蔽物が多いのは、接近を阻むにはありがたいですが……さて」
 そう呟いて、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)は辺りを注意深く見渡した。
 オブリビオンは、ここへ向かっているようだった。負傷しているようだったから、回復目的だろう。
 シャルロットは両手で抱えた巨大な銃を立てると、氷結弾を装填した。
 そう、彼女の得物は銃だ。マシンガンにショットガン。どちらも、魔術処理が施されている。
 ショットガンは近接に耐えうる作りになっているが、普段狙撃用に使っているマシンガンは、そういうわけにはいかない。
 そもそも、彼女が今からやろうとしていることは、敵に向かって射撃することではないのだ。

 シャルロットは、先程から観察・推測していたパイプラインを思い描いた。
 地形から見えなくとも、彼女の戦闘知識をもってすれば予測は容易い。
「……来ましたね」
 オブリビオンの気配を察知すると、彼女は銃口を水源であろう場所に向けた。
「今回ばかりは、出し惜しみなくいきます」
 言葉の通り、惜しみなく氷結弾――ユーベルコード『術式刻印弾・氷結』をぶち撒ける。
 見えはしないが、汚染水はすべて凍りついただろう。
 そのまま、オブリビオンをパイプラインに近づけないよう、弾幕を張っていく。
 彼女の意図通り、オブリビオンはパイプラインから離れて行った。
 手に取るようにわかる、侵攻ルート。
 先回りをしたシャルロットは、配管の影から十メートル先の角を睨む。
 数秒もしないうちに、タタッと軽い足音と共に、銀髪の少女が現れた。
「あー、もー、面倒だなぁ。白兵戦にしようってば猟兵」
 あれが今回のオブリビオンだろう。
 ハスキーな声でふざけたことを言っているが、視線は鋭く辺りを探っている。
 ――ザコではない。が、こちらも気付いていない。
 そう判断したシャルロットは、引き金を引いた。
 先程までのマシンガンではない。ショットガンだ。
 この距離から放たれた散弾を避けるのは、いくら『達人』とは言え無理だろう。
 コンマ五秒遅れて、オブリビオンが刀を構え――。
「遅い!」
 弾丸は、太ももから膝に命中した。
 元より纏っていた妖気で、幾らかは防いだようだ。
「ぐっ」
 オブリビオンは躊躇なく跳躍した。
 ぱっと宙に赤い血が舞う。
 そのまま、手近なビルを飛び越え、あっという間にシャルロットの視界から消失した。
「……ふう。手応えあり、ですね」

 シャルロットの抜き打ちは、オブリビオンの体力を確実に奪ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
【POW】
殺し合うのは構わないが……
残念ながら楽しめる場所ではない。
早々に退場を願おうか。
(オーラ防御により汚れも悪臭も寄せ付けないとはいえ)

オド(オーラ防御)を『維持の魔力』で強化、活性化。
『破壊の魔力』を込めたオーラセイバーを具現化して戦闘態勢へ。
剛柔自在の剣術で戦う。
(先制攻撃×怪力×鎧砕き)(フェイント×2回攻撃×鎧無視攻撃)など

敵POWUC対策
直感(第六感×見切り)で察知して回避。

汚染水の噴出しそうな場所を凍らせる。(属性攻撃:氷結×維持の魔力)


双代・雅一
やれやれ、衛生上最低最悪だな。
どうやら感染症とは無縁らしいな、この地下世界は。

氷蛇槍を手に構え、敵の斬撃よりも長い射程より突きを。
薙払い牽制しつつ、隙を見て一気に距離詰めてチャージ攻撃。串刺しに貫いてやろう。

汚染水には吹き出た所に氷の矢を放ち。
着弾点から凍り付けば、ただの汚い色した氷。
液体でなければ浴びることは出来ないだろう?
ついでに君も凍らせてやろうか。
汚染水封じた後は敵にも氷矢を放ち。
足元濡れているならそこ目掛けて撃ってもいいな。足ごと凍らせて動き止められれば占めたものだ。

シャワー浴びるだけじゃなく、服も処分しなきゃいけないな。
怪我だけは避けたいけど、普段以上に、な。



 迷宮のように入り組んだ街路を、二人の青年が歩いて行く。
 片や紅。真紅のスーツに身を包み、余裕のある黄金の瞳――いつもより若干疲れたような瞳――を虚空に向けている。
 片や蒼。深い青色の髪に、氷のような透き通った優しげな瞳。白衣を翻し歩く姿は優麗だが、今日の表情は実に苦い。
 シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)と双代・雅一(氷鏡・f19412)。どちらも二十八歳だ。
「やれやれ、衛生上最低最悪だな……」
 歩みを止め、雅一が呟く。
 医師の資格を持つ彼にとって、この地下都市は地獄のようだった。
「どうやら感染症とは無縁らしいな、この地下世界は」
「猟兵でなければ、既に死んでいてもおかしくはないと思うが?」
 雅一に視線を向けてそう言ったシーザーの、口の端が上がった。
「――来客のようだ」
 シーザーの言葉を待っていたかのようなタイミングで、地上に降り立つ少女がひとり。
「やあ、青年諸君。スズリ・ムラサメ、登場だよー。ささ、そんなところで立ち話なんかしてないで、殺し合おう」
 ニタリと笑うスズリ。見た目と言ってることのギャップが凄い。
「殺し合うのは構わないが……残念ながら楽しめる場所ではない。早々に退場願おうか」
「殺し合うんじゃなくて、死んで貰おう」
 笑顔のままそう言い放つシーザーと、氷のように冷たく言い放つ雅一。
 スズリは、おや残念と言いながら、刀を抜き放った。
「聞いてくれるかい? 他の猟兵がね、僕の妖刀をどんどん壊していくんだ」
 不思議なくらい殺気はないまま、スズリが語る。
「だからそろそろ『折れないとっておき』でも出しちゃお……」
 スズリの言葉が掻き消える。
 雅一の氷蛇槍『ラサルハグェ』から繰り出された突きが、彼女の言葉共々貫いたのだ。
 後方への跳躍で何とか躱したスズリが、避難の声を上げた。
「えー、今のは反則でしょー」
 スズリはそのまま、空中から斬撃を見舞った。
 膨れ上がる瘴気。
 しかしそれは、シーザーのオーラセイバーから放たれた衝撃波によって相殺された。
 今日シーザーが纏っているオドは、いつもよりも濃い。
 汚れ悪臭対策、ということだろう。
 シーザーはオーラセイバーに『破壊の魔力』を込めると、一気にスズリとの距離を詰めた。
 本気で短期決戦を望んでいるのか。
「いいねー、これは楽しそう、だ!」
 スズリが細い妖刀から、不可視の一撃を放つ。
 シーザーはそれを躱さず、オーラセイバーで受け止めた。
 バヂッと嫌な音を立てて、紫の火花が散る。
「さすがにパワーじゃ分が悪いね」
 一旦身を引いたスズリは、刀を鞘に納めた。
「ふむ、居合か」
 シーザーは呟くと、不意に左へステップを踏んだ。
 残像を残したその動きは、一瞬スズリの目をくらます。
 その残像の中から、唐突に伸びる蒼い一閃。
 後方から一気に距離を詰め、その勢いを乗せた雅一の一撃が、スズリの脇腹を貫通する。
「おーびっくりだねー。やるじゃーん」
 痛覚がないのか、誤魔化しているだけなのか。
 スズリは不敵な笑みを浮かべてそう言いながら、右へと走った。
 その先には、様々な種類のパイプがある。
「回復? そうはさせない」
 雅一の手から蒼い光が放たれた。
 ユーベルコード『蒼氷の矢弾』。
 二百を超える氷の矢が、パイプから噴き出た茶色い汚染水を一瞬で凍らせる。
「……」
 何故か顔をしかめる雅一。臭いまでは消せなかったか。
「氷系の魔法、禁止だよー」
 回復に失敗したスズリは、余裕の笑みを浮かべたまま刀を構え――ふっと笑みが消えた。
「秘剣『朧』」
 ズダンと踏み込み、高速の斬撃――否、自身の影を放つ。
 相手を拘束する敵のユーベルコードに、雅一は自身のユーベルコードを撃ち込んだ。
「ついでに君も凍らせてやろうか」
 氷の矢は影を凍らせ、そのままスズリ本体へと向かう。
「――まさか、僕が大人しく凍ると?」
 クスッと笑うと、迫りくる数十本の矢をすべて刀で叩き落とす。
「凍るとは思っていない」
「凍るとは、ね」
 雅一の言葉に、シーザーの声が重なる。
 直後、スズリの背中に炎の塊がぶつかった。
「!?」
 熱さより、その衝撃に小柄な体が吹き飛ぶ。
 スズリの視界にいたはずのシーザーは残像で。
 気配を消した本人は、気づかれないようにその場を離れ、後方から攻撃を放ったというわけだ。
 雅一の冷気が充満しているからこそ、為せる技。見事な連携技である。
「やー、油断した」
 スズリが参ったなーと体を起こすと、そのまま刀を地面に突き立てた。
 ブワッと妖気が噴き出し、彼女の姿はこつ然と消えたのだった。

「シャワー浴びるだけじゃなく、服も処分しなきゃいけないな……」
 雅一がぽつりと呟く。
 怪我は避けられた。これで変な病気の感染の心配はない。
「オーラ防御を突き破る臭気、か。スカムキングはあまり相手にしたくないね」
 シーザーは珍しく苦笑い――彼をよく知っている人間でもわかるかどうか――気味にそう言うと、スズリが消えた辺りに視線を向けた。
 そこには、おびただしい数の血痕が落ちていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
だいぶ臭いがきついですね……

白い着物の姿になり、氷の魔力を身に纏う(属性攻撃・オーラ防御)
白いので汚れが目立ってしまいますね……

凍結波動を放ち、マンホールや割れ目を氷で塞いでしまう(地形の利用)
これで少しは戦い易くなりましたね

斬撃を強化された【視力】と豊富な【戦闘知識】で【見切り】、【スライディング】で躱したり、白刃取りする
蹴り飛ばして距離を取る(吹き飛ばし)
カタナ……サムライエンパイアに使い手の多い武器ですね

回復のために氷を砕こうとしたら、今度は本人へ【全力魔法】【氷獄滅塵葬】で凍結波動を放つ
【怪力】の鉄拳で氷ごと粉砕する
回復手弾があるとそれを前提にしてしまう……利用させていただきました



 金と銀の刃が重なり、火花を散らす。
 黄金の瞳と瞳が交差し、一瞬時が凍りつく。
 ピクリとも動かない刀と槍は、少女たちの力が拮抗している証。
 銀髪金瞳、赤縁眼鏡――自分と似通った姿をした少女が、ニタリと嗤った。
「はっ!」
 それを合図に、一度引いた槍を鋭く突き出す。
 いつものシスター服ではなく、真っ白い着物の裾がひらりと翻った。
 まるで儚い雪女のような少女――オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、ちらりと足元に張り巡らされたパイプたちに目をやった。
(――そろそろ、汚染水が噴き出しそうな気配がありますね。氷の魔力を纏っているとは言え……せっかくの衣装が汚れてしまいそうです)
 そんなことを考えつつも、意識はオブリビオンを向いている――スズリ、と名乗っていたか。
「ほらほら、もっと斬り合おう」
 スズリが嬉しそうにオリヴィアの突きを受け流すと、返す刀で斬撃を放った。
 この少女、エンカウントした際も殺し合おう、とか言っていた。
 オリヴィアにとって、オブリビオンは単に滅ぼすべき敵だ。
 とは言え、汚染水にまみれて戦うつもりは微塵もない。
 スズリの斬撃を聖槍で弾くと、一旦後方に飛び退き、左手を真下へ向ける。
 迸る蒼い光。
 ブシュウ、と噴き出した汚染水が、あっと言う間に凍りつく。
「これで、回復は出来ません」
 オリヴィアが表情を変えないまま言うと、スズリは苦笑した。
「今日、それ、何度もやられてるんだよねー」
 汚染水を凍らせ、パイプを凍らせ――場合によっては爆発させ、猟兵たちは様々な方法で汚染水からオブリビオンを遠ざける。
「殺し合いたいのであれば、正々堂々と刀で戦いなさい」
 オリヴィアの正論に、スズリはそうだねーと応え、刀を構えた。
「じゃあ、本気でいこうか」
 言うが早いか、強い踏み込みから一瞬でオリヴィアに肉薄した。
 上段からの斬り下ろし。
(カタナ……サムライエンパイアに使い手の多い武器ですね)
 オリヴィアは、とあることを思いつく。
 そう、刀と言えば――。
「えっ」
 パシッという音。
 オリヴィアが両手で刃を受け止めたのだ。
 そう、これが『白刃取り』というやつだ。
「えー……ちょっとショックー」
 スズリが眉をハの字にして、さっと刀を引いた。
 そこに、オリヴィアは死角からの足払いを掛ける。
 予想していなかったのか、避けきれずによろめくスズリ。
 彼女の小柄な体を、オリヴィアは思い切り蹴飛ばした。
 予想以上に吹き飛ばされ――。
「おっと、良いもの見っけ♪」
 スズリが飛ばされた先には、オリヴィアが凍らせた汚染水の柱が散在していた。
 スズリは素早く身を翻し、氷柱を砕こうとする。
 ――回復されると、厄介だ。
「顕現せよ、氷の絶対牢獄。時すらも凍てつかせる永劫の縛鎖となれ!」
 オリヴィアがユーベルコード『氷獄滅塵葬』を発動させ、一気にスズリとの距離を詰める。
「許すわけないでしょう」
 氷のような声で、右手を振りかぶり――耳をつんざくような音とともに、スズリごと辺りの氷柱を打ち砕いた。
 殴り倒されたスズリは、一瞬白目を向いて後方へと吹き飛ばされ、廃屋に背中を強打して咳き込んだ。
「ゴッゲッゴホゴホ……な、なんてパワーさ、……ゴホゴホッ」
 血を吐いてゆらりと起き上がる。
 スズリはそのまま妖刀の妖気を纏うと、ゆらりと消えた。
「回復手弾があるとそれを前提にしてしまう……利用させていただきました」
 表情を柔らかに、オリヴィアが囁く。
 しかしその表情も束の間――辺りの臭気に顔をしかめた。
 そして、自分の着物を見回し――シミひとつ付いていないことに安堵するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウィリアム・バークリー
こんにちは、サムライガール。友達にニンジャガールがいましてね。誘ってみたけど来てるかな?

さて、始めましょう。Active Ice Wallで「盾受け」の障壁を作り敵の攻撃を防いでいる間に、術式を構築。皆さん、巻き込まれないでくださいね!

氷の大渦となって吹き荒れろ、Disaster!(「全力魔法」氷の「属性攻撃」「範囲攻撃」「高速詠唱」)
これでフィールドの汚染水は全て凍らせて、回復のための成分もその裡へ封じ込めました。
さあ、正々堂々殺し合いましょう。

牽制にIcicle Edgeを放ちながら接近して、魔法剣で刀と打ち合いながら、
Slipの魔法で相手に隙を作らせ、ルーンスラッシュでとどめを刺します。



「こんにちは、サムライガール」
 柔和な表情で、銀髪灰眼の少年が声を掛ける。
「やあ、しょうじょ……少年か。うーん、いいね。今度は可愛い男子と殺し合いか」
 スズリはにこりと笑ってそう言うと、虚空から刀を召喚した。
 妖刀らしく紫のオーラを纏ったそれは、スズリ自身をも妖気で包み込んでいく。
「僕はスズリ・ムラサメ、だよー。君は?」
「ぼくは、ウィリアム。ウィリアム・バークリーです」
 丁寧にそう名乗ると、きょろきょろと辺りを見渡した。
「友達にニンジャガールがいましてね。誘ってみたけど――来てないかな」
 途中、猟兵は何人か見かけたが、黒髪碧眼の少女はいないようだった。
 負傷した猟兵が十数名、その辺で休んでいるが、その中にいるとは微塵も思っていない。
「ニンジャかー。でも残念、僕は自分をサムライだなんて思ってないから。ほら、刀も殺すのに便利な道具くらいにしか、ね?」
 本気かどうかわからないセリフを吐きつつ、スズリがゆらゆらと刀を振る。
「……手合わせしてみれば、わかることですね。では、はじめましょうか」
 ウィリアムはそう言ったが、ふとスズリの足元に目を向けた。
「その前に――」
 にこりと笑って、意識を集中する。
「……うん?」
 魔力の流れを察し、スズリは怪訝な表情をした。意図せずして、妖刀を振り下ろしてしまう程の、危険な魔力。
 スズリから放たれた斬撃がウィリアムに迫るが、彼は『Active Ice Wall』で防いだ。
 程なくして、術式の構築完了。
「皆さん、巻き込まれないでくださいね!」
 ウィリアムは周りの猟兵たちに声を掛けると、そのまま高速で詠唱した。
「Elemental Power Critical……Liberate……氷の渦となって吹き荒れろ! Disaster!」
 制御された災厄ほど、恐ろしいものはない。
 ウィリアムによって導かれた嵐は、一瞬にしてフィールドを凍りつかせた。
 無論、スズリの足元にあった地割れや、そこら中のパイプも凍り付き、中身が外に飛び出すことはもうない、というわけだ。
 再びウィリアムが微笑む。
「さあ、正々堂々殺し合いましょう」
「……いいよ、殺し合おう」
 嬉しそうに笑うスズリの目は、もはや笑っていなかった。
 一気に距離を詰めようと地を蹴るスズリに、牽制の氷の矢を放ちつつ、一定の距離を保ったままウィリアムが走る。
 時折『slip』を放ち、相手の隙を伺った。
「氷の扱いが上手だねー」
 余裕の表情でスズリはそう言うと、妖刀から衝撃波を撃ち出す。
 紫の風に臭気と妖気が混ざり、ウィリアムへと迫った。
 それを魔法剣で斬り裂いて、一気にスズリに肉薄する。
「はっ!」
 呼気鋭く、炎を纏ったルーンソード『スプラッシュ』を繰り出すが、スズリは妖刀を横に薙いで弾き返した。
 しかしそれは、フェイント――。
 死角からのslipがスズリの足元をすくう。
 体勢を崩しつつ、次に来るであろうウィリアムの攻撃を防ぐために刀を構えるが、そんな甘い防御が通用する攻撃ではない。
「スプラッシュ!!」
 ウィリアムの鋭い声に合わせて繰り出された斬撃は、スズリの妖刀を砕き、彼女の腕をも斬り落とした。
「がっ!」
 呻いて左手で傷口を押さえ、一気に後退する。
 そのまま、虚空から出現した妖刀の妖気を纏い、姿を消した。
「逃しましたか――しかし致命傷、ですよね」
 落ちたスズリの右腕は、黒い塵となって消滅した。

 一見、健康体に見えたスズリも、先の戦いで傷だらけだった。
 回復する暇もなく、ここまで戦って来たが――クライマックスは近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

枯井戸・マックス
戦場にたどり着いたら少しの間だけ経過観察
敵の素早い動きに目を慣らし、ついでに汚染水の湧き出る位置もチェックだ

「あらまあ、可愛い子が汚染水なんか浴びて茶台無しだぜ?」
満を持してユーベルコードで全身鎧を纏いながら出陣
選択するは清水を湧き出る『グレイスポッド』を両肩に備えた水瓶座の鎧
スズリの攻撃を【フェイント】をいれて躱し、両肩の高圧水流砲で攻撃だ

「これで体にまとわりついた汚染水は洗い流せただろ? ついでにこの汚い場所もお掃除だ! これでも喫茶店オーナー、衛生管理には気を使ってるんだぜ?」
一発入れた後は水流をスプリンクラーのように発射し続け、降り注ぐ汚水や溜まった水も洗い流す

アドリブ・連携も大歓迎



 怒号、刃の交わる音。そんな中で、ため息ひとつ。
「ぎゃー、とか、わー、とか……もうちっとマトモな声は出せないのかねぇ」 
 姿は見えない。
 少し開けたビルの合間で、サムライガールと猟兵十数名が暴れている中だ。特定は難しい。
 廃ビル、配管、割れた道路――何より、この異臭。
 UDCの路地裏でも見かけるような風景だが、臭いが異質過ぎて猟兵たちの感覚を狂わせる。
 ブシュウ、と噴き出した汚染水が、僅かにサムライガールにかかると、そこにあった傷が消えた。
「あー、ありゃダメだわ」
 そして繰り出される斬撃――口笛でも吹きたくなるようなそれ――は、彼女の目の前の猟兵をあっさり斬り倒した。
 そんな彼女も、見る者が見ればわかる。満身創痍だ。

――そろそろ頃合いか。

「星辰の導きに従い来たれ! 召喚武装(サモンアーマー)!」
 小さく叫ぶその者は、黄道十二星座に祝福されし鎧騎士に変身すると、身を隠していた廃ビルから『飛び降りた』。
 枯井戸・マックス(マスターピーベリー・f03382)――古物と珈琲の店タムタムのマスターにして、イェーガー。
 普段彼から漂う珈琲の芳醇な香りも、今や辺りの臭気によって掻き消されてしまっている。
 彼を知る者からすれば……遺憾に堪えない。

「あらまあ、可愛い子が汚染水なんか浴びてちゃあ台無しだぜ?」
 奮闘する猟兵を斬り倒した少女に向かって、マックスは告げた。
「あっれー? やっと殺し合いも終了かと思ったのになー」
 突然現れたマックスに、笑いながらそう言ったスズリは、遠くから見るより明らかに消耗していた。
 右腕はなく、和服の脇腹あたりも真っ赤に染まっている。
 太ももには、モザイクをかけたくなるような怪我――しかし、彼女からは死臭がしない。
 マックスは笑った。
「は! これはなかなかの怪物だったな!」
「やだなー、元からわかってたくせにー」
 ゆるい声で言うスズリから漂うのは、純粋な『化け物の気配』だ。
 左手の妖刀をすっと持ち上げ、マックスに向ける。
「この刀、名前はないんだけど、取っておきなんだよねー」
 幾分か猟兵の血を吸って、紅に染まった刀。
 ぎらり、と刀身が光った。
 それを合図に、地を蹴るスズリ。太ももの傷がまるでフェイクかと思わせるような速度で、マックスに肉薄する。
「ふっ」
 呼気と共に振るった一撃には、思わず笑みが溢れる。
「いい太刀筋だ!」
 マックスは叫びながら、殴りかかるような仕草を仕掛け――突如、両肩から水が噴き出した。
「ぷあ!?」
 まともに浴びたスズリが、あまりの勢いに後方へ吹き飛ばされる。
 彼の鎧は、水瓶座の鎧だ。両肩に装備された『宝瓶宮グレイスポッド』から高圧水流砲が発射される。
 ただの飾りかと思っていたスズリには、思いがけないフェイントだった。
「これで体にまとわりついた汚染水は洗い流せただろ?」
 ニヤリと笑うマックスは、そのまま高圧水流砲を容赦なくスズリに撃ち続ける。
 弱った素振りを微塵も見せなかったスズリだが、その目がはじめて恐怖に揺れ――そして笑った。
「は、はは……殺し合った、たくさん――僕は、満足だよ……」
 水砲によって穿たれた穴。
 辺りのパイプが破裂し、噴き出す汚染水も、グレイスポッドの清水によって清められていく。
 スズリが事切れたことを感じつつも、マックスは更に水圧を上げた。
「ついでにこの汚い場所もお掃除だ! これでも喫茶店オーナー、衛生管理には気を使ってるんだぜ?」


 かくして、ダストブロンクス上層の一角は綺麗に清められ、配備されたサムライガールも討伐された。
 猟兵に被害は出たものの、死者が出ることもなく、制圧に成功したのである。

――とんたんたん、こころあたたか今日の僕♪
――とんたんたん、予感的中至極悦楽♪

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月16日


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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シズル・カンドーヤです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト