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遠足上等! ワル達の課外授業!

#UDCアース



「山はよ~湖はよ~はああぁああん!」
 響き渡る歌声は決して上手くは無く音程も所々外れていた。しかし、ワルが集まる底辺高の高校生達が乗ったバスともなれば話は別である。
「いいぞー! 次はオレにマイク貸せー!」
「待ってました! あ、おい、そっちの煎餅こっちにくれ!」
 私立ムシェ鮭高校は都内でも有数のワルの巣窟とされる。そんなムシェ鮭高校ーー通称『鮭高』の1年生の授業には、二学期の終わりごろになるとバスで某県の湖畔まで行き課外学習をするというカリキュラムがあった。
 もちろんワルばかりが集まったこの底辺校でまともな授業ができるわけもなく、課外学習と言う名の『湖畔でバーベキューをして帰る』という小学生レベルの遠足なのが実態なのだが……。
 そんなこんなで小学生並みにバカ騒ぎをしつつバスは山道を登っていく。
 とはいえ、目的地の湖は山の中腹に有り、右へ左へ急カーブを何度も繰り返すため幾ら歴戦のワル達ばかりとはいえ中にはバスに酔う者もおり……。
「うう……気持悪ぃ……って、なんだ、ありゃ」
 酔い醒ましに窓から外の自然を見ようとした彼は、ソレを目撃する。

 鮭。

 バスを追いかけてくるよう山道を遡ってくる――そう、それは数匹の巨大な鮭達であった……。


「興味深い……実に興味深い……」
 グリモアベースにて8本の尻尾をゆらゆらと揺らしながら陰陽師・五行がそう呟き、集まって来た猟兵達に説明を開始する。
「さてUDCアースという世界にて、とある湖畔へ続く山道に偶然復活した鮭のオブリビオン達が現れ道行く車やバスを破壊しようとしているようです」
 オブリビオンが出現した理由は、道に出来たタイヤ跡やトラックから漏れた液体の跡が、偶然オブリビオンを呼び出す儀式魔方陣となったと言うが、今となっては何度も車に轢かれて擦られ魔方陣は消えたので、これ以上そのオブリビオン達が召喚される事は無いと言う。
「ただ、問題は鮭のオブリビオンが復活したのを察知した別の強力なオブリビオンがいる事です。このままではその強力なオブリビオンが鮭のオブリビオンを迎えに来てしまうでしょう」
 すでに別の強力なオブリビオンは現地に向かってきており、このまま合流すればUDC世界でとんでもない惨事を引き起こすだろう事は想像に難くない。
 そこで、オブリビオン達が合流する前に、順次各個撃破してしまおうというのが今回の作戦だった。
「鮭のオブリビオン達に会うには、とある高校生達が乗ったバスに乗り込めば、バスを追うよう山道を遡ってくる鮭のオブリビオン達に会う事が可能です。もしくは、バスに追いつきそうになった所に何かしらの方法で併走、または追いつき対象を攻撃するか……まあ、やり方や方法は皆さんにお任せ致します」
 一応、と五行はその高校の学生証を配ってから、面白そうに笑みを浮かべると。
「それでは、猟兵たるあなた方がどのように事件を解決するのか……興味深い、実に興味深い……」


相原あきと
 マスターの相原あきとと申します。
 ギャグシナリオです。
 好きにプレイングかけて下さい。

●私立ムシェ鮭高校(通称『鮭高』)
 都内屈指の底辺高でワルのたまり場です。
 今回は課外学習(湖畔でBBQ)。
 第1章は湖畔に向かうバスに生徒は乗っています。
 第2章~第3章は湖畔での話になります。
 知らない生徒がいても鮭高の生徒は気にしません。

●第1章
 鮭高生の乗ったバスに紛れ込み鮭のオブリビオンがやって来るのを待つか、またはバスに迫る鮭のオブリビオンに何らかの手段で追いついたりして、鮭のオブリビオンを倒しましょう。鮭のオブリビオンは数匹います。

●プレイングの募集締め切りについて
 募集期間の締め切りはツイッターでのご案内となります。
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第1章 ボス戦 『クィーンレッドサーモン』

POW   :    対捕食者用パワー(ノーブルレッド)
全身を【体内のタンパク質を分解して放つ真紅の輝き】で覆い、自身の【ここで喰われてなるものか、と言う意志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    鮭泳法(ワイルドスイム)
【滝も登れそうな激しい突進】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    女王は食物連鎖も利用する(ヒグマレンタル)
自身の【体内の筋子の幾つか】を代償に、【ヒグマ型眷属】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い爪や牙、巨躯】で戦う。
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 ――ったく、高校生にもなって遠足たぁ。
 俺はバス内で浮かれハシャグ奴らを憎々し気に睨みつつ心の中で毒づく。
 俺の名前は悪役・商介(あくやく・しょうすけ)、腕っぷしの強さでこの鮭高一年の中でも一目置かれる存在だ。
 今回の遠足――まぁ課外授業だかなんだか知らんが――でも、皆からバスの最後尾の真ん中の席を譲られる程度には一目置かれている。
 だが、しかし……だ。
「(うっぷ……)」
 まさかこの俺が車酔いするとは……。
 気分が悪くなってくると、ハシャイでる馬鹿どもが煩わしくって仕方がなく。
 だいたい何でワルの巣窟なのに、みんな揃って遠足に来てるのかと!
 というか、バス内で唄って騒いで菓子食って笑って……貴様らは小学生かと!
 くっ……イラついてたらさらに気持ちが悪く。
「みんなっ、静かに!」
 そんな時だ、このワルだらけの中で普段から真面目に勉強を続けつつ、いつの間にか俺達に馴染んでた事で一目置かれている桜山の奴が声をあげる。
 そうだ、さすが真面目だ。バス内でハシャいじゃいけねぇからな。ふぅ、これで多少は――。
「悪役君が歌ってないじゃないか、彼にマイクを!」
「うるせぇ!」
「ああっ!?」
 俺は奴に差し出されたマイクを投げつける。酔ってる最中に歌なんか歌ってられるか!
 チクショー。
「おい、どけっ」
 俺は窓際の席の奴に声をかけ、強引に窓際に座り外を眺める。
 桜山の奴は唯一悪くないパスをくれた。俺が窓際に移動する良い口実……不機嫌だから隅っこで独りにしろオーラを出しつつ移動する……を実行できたからだ。
 俺はバス内の喧騒を耳に入れないよう窓の外を眺める。
 すでに秋から冬に踏み込んだ今の季節、紅葉した葉を落とす木々が前から後ろへ流れて行く。
 そうだ、外の冷たい空気を吸えば多少はこの酔いも治るんじゃ。
 そうだ、その通りだ、ナイス俺、ナイス判断!
 俺はさっそくバスの窓を開けると、思いっきり外の空気を吸い込む。
「うげぇ、生ぐせぇ……」
 胸に流れ込んできたのは生魚特有の生臭い空気。
 俺は限界に達するのを意地で我慢しつつ、窓の外を並走する巨大な鮭の姿を見るのだった。
黒木・摩那
走る以外に移動する手段もないので、ここは鮭高のバスに乗り込んで、
ゆったりとオブリビオンがやってくるのを待つことにします。
ちょっかいを出してくるワルたちは【衝撃波】パンチで静かにしてもらいます。

サーモンが出てきたら、バスの上から迎撃します。
ヨーヨー『エクリプス』にUC【偃月招雷】で帯電します【先制攻撃】【属性攻撃】。
重さを重くすることで一撃を大きくすると共に、
【念動力】でワイヤーを操作して、回避を困難にします。

防御は【第六感】とスマートグラスのAIで対応します。
突撃には【念動力】で矛先を逸らしたり、ワイヤーの回転ではじきます。

サーモンを迎えに来る別のオブリビオンとは何でしょうか。


涼風・穹
【動機】
五行の招集とは無関係に、偶々鮭高の課外授業目的地近辺の山中に来ていました
景色を楽しみつつ昼飯をと洒落こもうとした所、巨大な鮭達が突っ込んできて昼飯が…

食物の恨みは恐ろしいってのを、骨身に沁みる程に教えてやるぜ…!

【行動】
愛機『スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ』に飛び乗り、最大戦速で飛ばして鮭達を追撃
速やかに昼飯の恨みを晴らす…もとい猟兵の使命としてオブリビオンを殲滅します

そんな訳で昼飯は焼き鮭だな
鮭を生で食べるのは寄生虫が怖いからな
どうにかするなら暫く冷凍するか加熱するか…
ここは火を通すのが手っ取り早いな
どこぞのヴィランの使っていた火炎放射器を《贋作者》で作成
汚物は消毒だー


アリシア・マクリントック
セーラー服というのも一度着てみたかったんですよね!似合ってるといいんですけれど。一応メガネもかけて、っと……これでよし。鳳刀『暁』は……治安の悪いところらしいですからカタナくらいどうということはありませんね。これでどこからどう見ても普通の女子高生です!
そんな感じで生徒に紛れていきましょう。

なんだかつい最近も大きな魚と戦ったような記憶がありますが……まあいいでしょう。
問題は熊です!さすがに生身で戦えませんね。変身!
パワーアシストを活かして最近習ったジュー・ジツで撃退です!
鮭はルシファーで壁や地面に縫い止めて、暁で三枚おろしにしてやりましょう!
これも食べられるんですよね?


ミア・ウィスタリア
待ってたぜぇぇぇぇ!この瞬間をよぉぉぉ!!(ギャリギャリギャリ

大人しくバスに揺られて現地入りなんて鮭高のワルの流儀じゃないわ!
(特攻服【威華路巣】を羽織る)
こういう時はバイクで塗料付きの鉄パイプを引き摺りながらバスを追いかけんのよ!
鮭よ鮭!サーモン!
あんな大っきいの肉焼き機でぐるぐる回せそうなレベルじゃない!
BBQ食材ゲェェェット!

鮭に追い付いたら追い抜き様にUCで斬りつける。




 コーナリングぎりぎりに影を残しながら、現代のどのメーカーからも発売されていないモデルのバイクが昇り坂を猛スピードで走り抜ける。
「ちっきしょう! あいつら……絶対ぇ許さねぇ!!!」
 道路ぎりぎりまでバイク――宇宙バイク【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】――を倒しコーナリングを最短で曲がると、涼風・穹の目に憎きヤツラの背びれが見え始める。
 ビチビチビチビチッ!
 背びれ胸びれ尾びれを勢いよく動かしながら、穹が追う対象――巨大な鮭達は、産卵時に川を遡るように空中を泳ぎ坂を登っていく。
「背中、捕らえたぜ! ふふふ、追いついた時が……お前等の最期だ」
 目を見開き、恨みはらさでおくべきか、と言った形相で穹が先ほど味わった、いや、味わえなかった時の事を思い出す。

 はぁー……。
 穹は両手を摺り合わせグッパッと握ると「寒くなってきたな」と独り言つ。
 ここは某県の山中、今日は都会の喧噪から離れ、また戦いと無縁でいられない猟兵の仕事を忘れる為、景色の良いこの場所まで気分転換に遠出をして来た所だった。
 だが、今、穹の目の前には来たかいがあると断言できる壮大な自然と、冷たくも澄んだ空気が肺を満たす度に洗われた気分となる。
「来て良かった」
 何度目かそう思い、そして今日の為に特別に作ったアレを取り出す。
「ふっ」
 自画自賛の笑みと共に取り出したるは豪勢な昼のお弁当。
 唐揚げやウィンナーはもちろん、握り飯すら輝いて見える。
「綺麗な空気、素晴らしい景色、生臭い香り、美味そうな弁当、申し分為しだ」
 そう呟き弁当に箸を付けようとし……。
「生臭い香りって何だ!?」
 思わずツッコミを入れる。
 次の瞬間!

 ビチビチビターンッ!
 
 突如洗われた巨大な鮭たちに体当たりをくらい、山を転がる穹。
 スローモーションで空に散り、次々に鮭に食われる弁当のおかず達。
「ああっ!?」
 ビチビチビチっ!
 そしてそのまま山の上の方へと向かって空中を泳ぎ去る鮭たち。
 がっくりと両手を地に着き、そして――。
 
「食物の恨みは恐ろしいってのを、骨身に沁みる程に教えてやる」
 ただの食べ物の恨みを大仰に回想シーンを使ってまで表現してみた穹が、アクセルを全開にして最後尾の鮭の尻尾に手が届こうと――した、その時だ。
「待ってたぜぇぇぇぇ! この瞬間をよぉぉぉ!!」
 ギャリギャリギャリっ!!!
 崖を滑るようにピンクの宇宙バイクに乗った特攻服女が現れる!
「お前は!?」
 知っているのか涼風・穹!
「イカロス!」
「違うわ! ミア・ウィスタリアよ!」
 穹の呟きにミアがとりあえず否定を入れる。
「いや、だって特攻服に威華路巣って……って、そうじゃない! 俺の邪魔をするな!」
「それはこっちのセリフよ!」
 【威華路巣】と刺繍された特攻服を着たミア・ウィスタリアが穹に並走しながらそう叫ぶ。
 もちろん、これにより穹はやっと通常の依頼の流れに思い当たるのだが……。
 ミアはカンカンカンカンッと塗料付きの鉄パイプを地面に引き摺り火花を散らしつつ。
「大人しくバスに揺られて現地入りなんて、鮭高のワルの流儀じゃないわ! 君も鮭高の生徒を名乗るなら、もうちょっと格好に気を付ける事ね」
 ふふんとドヤるミアに対し、穹が「いや、鮭高の生徒じゃねーから」と冷静に返しつつも、目の前の巨大鮭たちは件の鮭高生を乗せたバスに、今まさに追いつこうとしていたのだった。


「森はよ~川はよ~はああぁああん!」
 一方その頃、ムシェ鮭高校一年生を乗せたバスは、相変わらずの盛り上がりの最中にあった。
「(まだでしょうか……)」
 そんな鮭高生に紛れる黒木・摩那は、制服姿で窓の外を眺めつつオブリビオンが来るのを今か今かと待っていた。
 だが、そんなクールビューティーを鮭高生が放っておくわけも無く。
「おいおい、何アンニュイってんだ? もっと楽しもうぜー!」
 モヒカンの生徒がそう言って強引に横の席に割り込んでくる。
 ドゴッ!
「はぎゃっ!?」
 摩那が無言で衝撃波パンチを放ち、逆の窓へと吹っ飛ぶモヒカン。
「ああ、馬田君がっ!?」
「おいおい大丈夫か、はしゃぎ過ぎるなよ馬田!」
「へへっ、なんともねーよ、大丈夫大丈夫」
 意外と仲間想いな鮭高生たちが吹っ飛んだモヒカン――馬田を気遣い、当の馬田くんとやらも意外としぶとく立ち上がる。
 もちろん他の生徒たちは馬田が勝手にスッ転んだと思っているようだが、今の動きを見極めた1人が、スッと摩那の横の席に座り。
「あなたも、目的は私と同じようですね」
 摩那の横に座って来たのはセーラー服に一応メガネまで掛け高校生になりきっているアリシア・マクリントックだった。
 摩那もすぐにアリシアの持つ鳳刀【暁】に気づき、お仲間だと把握。
「あ、これですか? この高校は治安の悪いところらしいですから、カタナぐらいどうという事は無いと思いまして」
「えっと……」
 さも当然と言うアリシアに対し、そんな堂々と刀を持った高校生はいないだろうと思いつつ、バス内ではなぜかパーティーグッツでクラッカーを鳴らしたり、クリスマスや誕生日パーティーでしか被らないような三角帽子をかぶってハシャグ高校生を見て、誰も気にしていないからいいか……とソレを訂正する事を諦め。
「ええ、普通の女子高生……だと思う」
 微妙に歯切れ悪く肯定する摩那だが、その言葉にアリシアはとても満足そうに笑みを浮かべる。
 と、その時だった。
 バスの後方から巨大な鮭たちが迫って来る事に気が付いた一部の生徒が騒ぎ出す。
「おい見ろ! なんかでけー魚が追いかけてくるぞ!」
「マジだ! って誰だよ窓開けたの! なんか生ぐせーぞ!」
「ぎゃー、悪役くんが暴れ出したぞー!?」
「おっ、すげー! 魚達の後ろからバイクが2台すげーコーナリングで追いついてくっぜ! すげーっ!!」
「おい、誰か悪役くんを止めろ!!」
 摩那とアリシアはお互い視線を合わせコクリと頷く。
 見れば確かにバスの後方から巨大な鮭のオブリビオン達が数匹、空中を泳ぐように迫って来てより、そのさらに後方から2台の宇宙バイク(猟兵だろう)が追撃してくるのが見えた。
 さすがにバス内は狭いので、ガッと窓を開けてそこから身を乗り出しバスの屋根へとヒラリと昇る摩那とアリシア。
 バス内では鮭高生たちが「おい、更に窓開けたの誰だ!」「生臭い空気が!」「悪役くんが更に暴れ出したぞ!」と騒ぎが聞こえるが、今の2人はそれらの声は関係ない。
 巨大鮭たち達は今にもバスに追いつきそうになっており、バスが急カーブを曲がり鮭たちも同じくビチビチ跳ねつつ急カーブでスピードを落とさず付いてくる。そしてそれを追う宇宙バイクも。
 最初にギリギリを攻めたコーナリングでカーブに突入したのは【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】、そこに更に内側からカーブに突入してきた特攻服の少女が乗る宇宙バイクが横滑りしつつ――。
 ガンッ!
 先に突入していた宇宙バイクに接触、【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】に乗った猟兵が外縁に押し出されるようにコースアウトし……谷底へ吹っ飛ばれていく。
「ちょ、おい、ふざけんなっ!」
 弾き飛ばされた男の声――穹の声がエコーで山に響き渡る。
「ごめんねぇ~」
 甘い声で一応謝罪しておくミア。
 だが、その時には巨大鮭たちはバスの屋根の上に立つ2人の猟兵の気配に気が付き、ビタンッと大きく跳ねるとバスの屋根の上へ飛び乗っており、ミアもすぐさまバイクで宙を駆けバスの屋根へと飛び乗る。
 バスの屋根の上、前方には摩那とアリシア、後方にはミアと挟まれた形となる鮭たち。
「なんだかつい最近も大きな魚と戦ったような記憶がありますが……まあいいでしょう」
 摩那と並び立つアリシアが鳳刀【暁】を抜き放ちながら言う。
「ウロボロス起動……励起、【偃月招雷】」
 摩那も自身の超可変ヨーヨー【エクリプス】にサイキックエナジーを流し込み帯電させ、バスの屋根の上、猟兵達に挟み撃ちにされた鮭たちは「どうしたものか」とビチビチ跳ねつつ……。
「来ないなら……こちらから行きます」
 最初に動いたのは摩那だった。バチバチと雷を纏わせたヨーヨーの重量を一気に重くしつつ巨大鮭の1匹に向けて投げつける。
 無論、鮭もオブリビオンだ、ただの直線的な動きなら余裕で回避、それが無理でも尾びれで叩き落とそうと抗うも――。
「残念」
 摩那の念動力によってヨーヨーの軌道が変わり尾びれを交して鮭へと直撃、1匹が感電しつつドコリと殴り倒される。
「えっと、この辺でっと……」
 ヨーヨーに殴り飛ばされた鮭がそのまま後方へ転がって来て、ミアが準備していた塗料の線で囲った領域に入った瞬間、巨大鮭が3枚に卸される。
「鮭よ鮭! サーモン! BBQ食材ゲェェェット!」
 鮭の身がそのまま落下しないよう慌てて抑えるミア。
 そんな華麗な連携を目のあたりにした他の鮭たちは、身の危険を感じてかグググッと腹の中の筋子を代償に、自らの眷属を次々に召喚する。
 それは――。
「ヒグマ……ですか」
 のそりと召喚されたヒグマ型眷属に、摩那も防御行動も念頭に置こうとスマートグラスのAIを起動させる。
 だが、そんな摩那の前にアリシアが立ち。
「さすがにヒグマと生身では戦えませんね……」
 グオオオッと叫び声をあげつつアリシア達の方へと突進を開始するヒグマに対し、アリシアは冷静に腰へと手をやり。
「セイバーギア」
 出現した特殊ベルトの右端のボタンを押し、出現した鍵穴にA.キーを斜めに差し込み中央までスライド、流れるような動きで左端のボタンを押し鍵が内部へインストールされる。
 ――GateOpen!
 瞬間、変身しセイバークロスを纏ったアリシアが、突進してくるヒグマとガッシと受け止める。
 だが、鮭は相当量の筋子を代償にしたのだろ、予想外のパワーにアリシア――セイバーギアの足がバスの屋根へとめり込む。
「この……」
 アリシアがパアーアシストを活かしてヒグマの力を受け止め、さらに最近習ったジュー・ジツの動きで力を受け流し――ヒラリ、まるでそんな効果音でも付いてるように軽やかにヒグマが宙を舞い、バスの屋根から外の谷底へと投げ飛ばされる。
「やりますね」
「いえ、そちらこそ」
 摩那とアリシアが褒め合うも、「気を付けて!」とミアが後方から叫ぶ。
 見れば鮭たちはヒグマが簡単にやられた事に危機感を感じ取ったか、それとも1匹目がミアに三枚に卸され食われてなるものかと意志を固めたか、体内のタンパク質を分解して全身を真紅の輝きで覆い戦闘力を飛躍的にアップさせる。これぞ巨大鮭たちの対捕食者用パワー……すなわちノーブルレッドだった。そしてさらに――。
「くっ!」
「これは……!?」
「きゃあっ!」
 鮭たちの本気の鮭泳法(ワイルドスイム)が猟兵達を薙ぎ払い、3人はバスの屋根から道路へと振り落とされる。
 だが、鮭たち自身もお互い仲間を見えてなかったのか、お互いがお互いを傷つけあい、どれもこれも猟兵達と同じように道路へとビタンビタンと落下してくる。
「今のは……捨て身技、だったのでしょうか」
 防御にも対応した凰剣ルシファーで致命傷を守ったアリシアが立ち上がりながら言うと、同じく念動力とワイヤーの回転でなんとか防ぎ切った摩那も可変ヨーヨーを構え、同じく立ち上がったミアも塗料付きの鉄パイプで領域を作成し始める。
 そして鮭たちも「こいつ等はここで倒す」とばかりにその瞳に執念を燃え上がらせ、さらに身体を赤く輝かせた――その時だった。
 ブオンッ! とエンジンが吹く音を高らかに崖下から1台の宇宙バイクが飛び上がり、3人を守るよう鮭達の前に着地する。
 それは――【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】、そう、涼風・穹だった。
「あなたは……」
「さっきコースアウトしていた」
 アリシアと摩那の声に、穹が「猟兵があの程度でおしまいってわけにはいかねーだろ」と背中を向けたままカッコつける。
「あ、さっきはごめんねぇ……みたいな?」
「お前は後で覚えておけ」
 ミアの言葉にだけは少々カチンとしつつ返す穹。
「とはいえ、さっさと昼飯の恨みを晴らす――もとい、猟兵の使命を果たす為、オブリビオンを殲滅するか」
「ええ」
「そうですね」
「アタシ達なら余裕じゃない?」
 穹の言葉に3人が頷き……そして、実際にその後、4人は巨大鮭たちを無事倒し切るのだった。


「三枚に卸しましたけど……これも食べられるのですよね?」
 暁で巨大鮭を卸したアリシアが問えば。
「ああ、だが生で食べると寄生虫が怖いからな、冷凍するか加熱するか……一応、火炎放射器も作れるが……」
 穹が≪贋作者≫で火炎放射器を作ろうかと提案すると、ミアが目をキラキラさせ。
「でっかい肉焼き機は? あのぐるぐる回せて上手に焼けました的なやつ」
「あ、いや、それはちょっと……」
 穹が答えに窮する。
「とりま、この先に湖畔でBBQできる場所があるみたいだし、そこで食べれば良いんじゃない?」
「ああ、それは」
「良いアイディアですね」
 ミアの言葉に摩那とアリシアも賛成するが、穹だけはジト目で。
「で、なんで俺の【スカーレット・タイフーン・エクセレントガンマ】に鮭の身を括りつけてるんだ?」
「だってぇ~、生臭いからワタシのには乗せたくないしぃ」
 ペロと舌を出して可愛いしぐさでテキパキと括り付けるミア。
「いや、俺だって生臭くなるのは嫌だからな!?」
 ツッコミを入れる穹。
 だが、そんな空気を楽しみつつ警戒を怠っていなかった摩那がピクリと何かを感じて、バスが走り去った坂道の先を見つめ。
「どうやら、先ほどのは先遣隊と行ったところだったのかもしれませんね」
 その言葉に3人も異変を感じて坂の上へと意識を向ける。
 確かに、バスが向かった先に先ほど倒した巨大鮭と同じような気配が更に迫っているように感じた。
 だが、今からバスに追いつくのは中々難しいだろう。
 それに……バスにはまだ――。
 そう、まだ猟兵の仲間達が乗っていたのだ。
 後は彼らに任せよう、きっと彼らなら……。
「じゃあワタシらは湖畔のBBQへレッツゴーっ!」
「いや、だからお前の方にも乗せろよ!?」
 とりあえず、4人は無事自らの仕事をやり切ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

トゥール・ビヨン
アドリブ歓迎

パンデュールに搭乗して行動するよ

先ずはあの人達の中に紛れ込まなきゃか

取りあえず、調達したムシェ鮭高校の学ランをパンデュールに着せていけばバレないよね

「おはよう、ボク……オレ、パン沢。夜露四九

最初からバスに乗っちゃえば、後はボクのコミュ力と勢いで乗り切れるよね

しばらくバスで鮭高校のみんなと楽しく過ごしながら鮭のオブリビオンがやってくるのを待つ

敵の気配を感じたら、勢いよく「一発芸、鮭釣り!」といいながら手首からワイヤーを射出し外の敵へ

捕らえたら、ドゥ・エギールで串刺しにして「捕ったどー!」と勢いよくかかげながら倒すことにするよ

手首からワイヤーが出る家系の生まれといっておけばバレないよね


自動・販売機
自動販売機は鮭高の生徒である。

「お前は何を言っているんだ」と呼ばれる向きもあるかもしれない。
だがこれは紛れもない事実である。詳細はきっとこのMSが宣伝するはずなのでプレイング内での説明は省く。

ともかく自販機は生徒である。
バスの適当な部分に括り付けられており、その重量によって速度が落ちてはいるが生徒である。
…形が違う?
アイテム欄を確認するのだ。ちゃんと杞憂となる要素は潰してある。

そう言えばこの依頼には敵がいるのであった。
多分自販機は適当にアイテムを売って援護するんだろう。
レンズ付きフィルムとか売るかもしれないけど。

あとプレイヤーは、この次に出てくる敵を知っているので楽しみにしておきます。
かしこ。


山梨・玄信
何!学校の遠足…リア充イベントではないか。爆破せねば!

【POWを使用】
しまった!RB団の制服を着たくても、ヌギカル☆玄信になるには褌一丁にならなければならんのじゃ。
なので褌一丁に三角錐の覆面を被り、UCを使って高速で飛んで追いかけるぞい。

先ずは鮭に対し食べる意思が無い事を伝え、UCの弱体化を狙うぞい。実際、リア充共のご馳走にする位なら爆破するつもりじゃ。

オーラ防御を全身に展開して、2回攻撃+鎧無視攻撃でガチンコ勝負じゃ!

「誰じゃ、変態とか言ったお奴は?なら聞くが、覆面レスラーは変態か?」
「食べる?お主をリア充共のご馳走などにはさせん!粉々に粉砕して海に捨ててやるのじゃ!」

アドリブ歓迎じゃ。


鹿村・トーゴ
道伝いに山で待伏せ、バス荷物入に潜む…と言うのも考えたけど

しれっとバスに乗っとこ
この世界の同年代に興味あるしー
連中に交じりわいわい騒ぎながら(案外楽しい。音感無いから歌は断固拒否)なんとなーく人間観察
んで一方、相棒の鸚鵡ユキエは空から遠足バスに平行して飛んで鮭が来たら教えてくれる【情報収集】ので窓を見てると窓席で車酔いの子に気付くけど…まあそっとしとく?酔った?って聞いてみる?

鮭が来たら窓を開けてクナイ数本を【投擲】、【念動力】で【追跡】し攻撃して、UCで呼んだ蜂の援護
場合によっては窓からバス天井へ出【地形の利用】て縄を結わえた【ロープワーク】クナイを遠心力を付けて投擲、回収、鎖鎌の要領で攻撃


高柳・零
POW
ムシェ鮭高校…世紀末釘バアイドルいなずまちゃんの出番かと思いましたが、ヌギカル☆玄信が登場するなら話は別だヌギ!

こっそりバスに乗り込んで、モニターのふりをしています。
ヌギカル☆玄信が飛んで来たら、マイクを持って立ち上がり
「さあ、みんな!ヌギカル☆玄信が助けに来たヌギ。一緒にヌギカル☆玄信のテーマ(UCです)を歌うヌギ!」
多分、誰も歌わないでしょうが、気にせず歌います。
歌ってる間は、物理的ツッコミはオーラと盾で防ぎます。終わったら、鬱陶しいでしょうし、処分はお任せします。
無いとは思いますが、似たノリの猟兵が居たら一緒に強化されます。

誰もこっちを見なくなったら、悪役君にエチケット袋を渡します


ミーグ・スピトゥラス
POW
オレ、転校生ニナッテ潜入スル
ケド、コノママデハ、オレ不自然
ダカラ、学ラン、学生帽デ高校生ニ変装スル
少シキツイガ、番長サイズ、問題ナイ
(どうやって入ったのか分からないが、体育座りをしながらバスの中に紛れ込む)

ドウシタ、商介
酔ッタノナラ、背中擦ッテヤル
(何かを感じて股間のセンサーで匂いを感知)
コノ匂イ、魚…サーモンダナ
何ダ、商介…腹ガ減ッタノカ
ナラ、オレ捕マエテ来ル
少シ待ッテロ
(バスの天井をぶち抜いて上半身を車外に出す捕食者VSここで喰われてなるものか、と言う意志で逃げる対捕食者用パワーのクィーンレッドサーモン。尾の付け根を掴まえれば【怪力】でアスファルトに【びったんびったん】叩きつける)


リトルリドル・ブラックモア
クックックッ…呑気なヤツらだ
前回は爆発オチにまきこまれちまったケド
まおーサマ、ふっかーつ!!
今度こそ鮭高の覇者になるんだぜ!
ハーッハッハッ…は?

コラーーー!!
オレサマを置いて出発するなー!!
ヤダヤダ、オレサマも遠足いくもん!!
バスからはなされる前に【バウンドボディ】を使って
カラダをのばしてバスにくっつくんだぜ!!

あっ、アイツはサクタ!!
グググ…でかい顔しやがって
オイ、オレサマも中にいれろ!!(窓をびたびた叩く)
なんかナマグセーし…って鮭じゃねーか!!

このままじゃオレサマの子分どもがやられちまう…
UCでのばしたウデを鮭に巻きつけて
あっちこっちに叩きつけてやるぜ
オレサマの活躍をみとけよオマエら!


久礼・紫草
※絡みアドリブいじり大歓迎

鮭高の制服を折り目正しく着込んでバス内着席、勿論帯刀

ほう、此が平和な童子の集う学び舎
…貧しい農家の生まれの盆暗には寺子屋通いは夢また夢
悪たれ坊主じゃったからのう、真面目な童子の迷惑とならぬよう留意じゃ

悪役とやら、ほれこの丸薬を飲むが良い(吐き気180%アップ
…虹色?!
なんというけったいな顔色!毒でも盛られたのか?!(心配なので背中を叩く
それとも外の悪鮭の仕業か?!なんという穢い真似をしおる
この童子らは殺させぬ

悪役の頭を足場に迫り来るサーモンを薙ぎ払う
車には絶対にあがらせぬわ!
バスの壁を走り剣刃一閃で叩き割り
悪役の方へ血潮や生臭い内臓が流れても事故じゃ人其れを不運と言う


シグルーン・オールステット
※アドリブ絡み歓迎

鮭のオブリビオン、そういうのもいるのか
一応この学生の年齢ではあるけどボクにはバイクがあるからこいつで追いかけよう。

それにしても、この山のコースは中々面白いね。絶妙な間隔で大小様々なカーブがいくつもやってくる。アップダウンも激しいし、ボクは自分で走ってるから平気だけどそうじゃない人、特に乗り物が苦手な人には結構辛そうなコースだ。

初めて走るところだからライン取りがちょっと難しいけど、どうやって上手く走るか。走り屋として腕の見せ所だね。

鮭ビリオンたちとのレースに没頭。光を放ちながらグイグイ攻めて囮になります。さながらその様子は走り屋マンガの世界。バイクと鮭だけど。


ヴィクトリア・アイニッヒ
……また、この場所に来ることになるとは。
……そしてまた学生服なのですね。私、一応成人してるんですが。
いえ、着るしか無いのなら仕方ないのですが。……はぁ(溜息

バスに同乗し学生達と同行。運転席付近の座席を確保する。
邪神の襲撃があるなら、運転中に襲われるのが一番危ないですからね。
運転手を守れる立ち位置にいる事が重要でしょう。

しかし、何といいますか。ここの学生達は魚と縁があるのでしょうか。
ほら、あそこに立派な鮭が泳いで……飛んでますし。
……〆ておろして、身は串焼き……いえ、ホイル焼きでしょうか?
何にせよ、えいっ(唐突な光剣投擲

・アドリブ歓迎です
・今回は『真面目7:ボケ3』くらいのスタンスで行きます


文月・統哉
空はよ~着ぐるみはよ~はああぁああん!
学生は学生らしく
当然の様にバスに乗って旅を満喫♪
窓の外に美味しそうな影が迫る頃には
お腹も空いてくる頃合いで

にゃふふふふ、魚とくれば猫の出番だぜ
使うUCは勿論、着ぐるみの空!
何処からともなく流れてくるBGMと共に大変身
全身をクロネコの着ぐるみで包み
クロネコ・レッド、見参!

【鮭を食うんだという意思の力】で能力超強化
川ならぬ道を遡上する鮭に挑む
その姿は荒ぶる熊のよう?

泳ぐ鮭の動きを見切ったら
両手を合わせ、いただきます!
着ぐるみ猫パンチで跳ね飛ばし
その身を炎の属性攻撃で炙った上に
醤油の属性攻撃をちょいと垂らしたら
その背にガブリと齧りつくぞ

※合わせ・アドリブ大歓迎!




 目の前に迫って来る白いガードレールを視界の端に捕えつつ、視線は常にカーブの先へ。
 右に身体ごと車体を倒し地面に擦れそうになるも流れるように身体を戻し次の左カーブへ備える。
 シグルーン・オールステットは天馬――宇宙バイクを駆りつつ僅かに笑みを浮かべる。
「(この山のコースは中々面白いね。絶妙な間隔で大小様々なカーブがいくつもやってくる。それに……)」
 チラリとバックミラーを見れば、幾つもの銀光が弾丸のようにシグルーンを追いかけてくる。
 ガッ!
「(っ!? 車体が浮いた?)」
 後方に視線を向けた瞬間、石か何かを踏みほんの数瞬操作が不能となる。
 だが、その僅かな隙に後方の銀の弾丸たち、つまりオブリビオンの巨大鮭たちが一気に最短コースを登りシグルーンを追い越そうと――。
「甘い、よ」
 咄嗟にグリップ付近の通所のバイクには無いボタンやレバーを操作、空気中に道が出来たかのようにタイヤが空気を掴み鮭たちの鼻っ面に再び舞い戻る。
「悪いけど、キミたちに追い越されるつもりはないんだよね」
 シグルーンが駆るバイクは実際には宇宙バイクである、通常のバイクのように道路も走れるがいざとなれば空だって宇宙だって走る事が可能だ、今のはその機能を一時的に使用し体勢を立て直したのだ。
 再びシグルーンの背を追いかける事になった鮭たちは、その魚類特有のビー玉のような瞳に苛立ちを浮かばせる。
「(しかしこのコース、アップダウンも激しいし、ボクは自分で走ってるから平気だけどそうじゃない人……特に乗り物が苦手な人には結構辛そうなコースだね」
 もっとも特殊部隊ワルキューレの一員としてSSWの世界で訓練を受けたシグルーンだ、初めて走る初見のラインだろうと、それでフルスロットル出来なくなるような柔な訓練は受けていない。
「腕の見せ所だね」
 この道の先、いくつかのカーブの先をとある高校の高校生たちを乗せたバスが走っているのが見えた。こうやって鮭たちの頭を抑えていれば、このオブリビオン達がバスに追いつくまで多少なりとも時間は稼げる。そして時間を稼げば稼ぐだけ、バスに紛れ込んでいる猟兵達が何かしら準備を整えるはず……だから。
「絶対、キミたちに抜かれる訳にはいかない……」
 カッ! と鮭たちの前でシグルーンの背が、後光が激しく輝く。
 輝くシグルーンと、その光に銀の鱗が反射する鮭たち、両者のデッドヒートは光の尾を引いて山を登っていく。


「空はよ~着ぐるみはよ~はああぁああん!」
 ムシェ鮭高の1年生たちを乗せたバスは、ワルの集まりとは思えない程盛り上がっていた。
「いいぇーいっ!」
 歌い終わった文月・統哉がマイクを次の人に渡しつつ、他の生徒とラッパー同士のようなサインをやり取りし最後にハイタッチする。
 誰だ、時間を稼げば稼ぐだけバスに乗ってる猟兵が何か準備をするとか言った奴は。
「おい、統哉が歌ってる間、パス2回扱いにしたからな?」
「ええ、それ酷くね!? あ、革命で!」
 カラオケの番が回って来るまでやってたカードゲームに復帰する統哉、カード仲間達が統哉の手に悲鳴をあげる。
「ちょ、戻って来ていきなり革命かよ!?」
「能ある猫は爪を隠さないのだよ!」
「くっそー」
 そんな感じでトランプゲームを楽しむ輪もあれば、お菓子を遠慮なく食べる者達、カラオケに合わせて歌う者、ただただ雑談する者達など、ワルの巣窟とは思えないはしゃぎっぷりだ。
 と、そんな車内からの喧騒を耳にしつつ、バスの側面に必死に張り付く人影1つ。
「オ、オレサマを置いてきぼりにして、みんなして楽しみやがって!」
 時速60kmは出ているだろうバスの側面にへばりつきつつ、そう言って歯ぎしりするはリトルリドル・ブラックモア――身長121程度のフードを被った自称『魔王』なブラックタールの子供である。
「ち、ちきしょー、なんでオレサマがこんな目に……」
 そう、それは依頼の内容を聞き鮭高生が乗り込むバスに忍び込もうとした時に遡る。フォワンフォワンフォワンフォワンフォワワワ~~ン(回想の効果音)。

 そこには談笑しつつ停車したバスに次々に乗り込んでいく鮭高の生徒たちがいた。
「クックックッ……呑気なヤツらだ」
 それを道の角から盗み見するはリトルリドル。ひょいと伸ばしていた首を戻し、小さな拳をワナワナと握りしめ。
「前回は不本意ながら爆発オチにまきこまれちまったケド……」
 拳を突き上げ。
「まおーサマ、ふっかーつ!!」
 天を仰ぎ笑い出すリトルリドル。
「そして今回こそオレサマは鮭高の覇者になるんだぜ! ハーッハッハッハッハッハッ!」
 ドルルルルゥゥ――。
 背後でエンジン音が響きプシューとバスのドアが閉まる。
「……は?」
 慌てて道の角から顔を出せば、すでに鮭高生は全員乗り込みバスが出発しようとしていた。
「コラーーー!! オレサマを置いて出発するなー!! オレサマをだれだと思ってるんだ! 魔王だぞー! あっ」
 小石に躓き転ぶ魔王、そのまま出発するバス。
「ヤ、ヤダヤダ! オレサマもいく! オレサマも遠足いくもん!!」
 涙を流して必死に≪バウンドボディ≫を発動させ身体を変化させると、全力で転がり最後は跳んだまま手を伸ばしバスのナンバープレートの上あたりに張り付く事に成功する。
 そこから何とか背面までヨジヨジと登って来て……。
 ――そして、今である。
 リトルリドルはバスの壁面からなんとか窓まで登って来て、窓に張り付いて中の様子を伺う。
「楽しそうにしやがって……」
 やはりバスの中は鮭高生たちがはしゃいでいるようだった。と、そんな中にリトルリドルは見知った顔を見つける。
「あっ、アイツはサクタ!! グググ……でかい顔しやがって、オイ、オレサマも中に入れろ!!」
 ビタンビタンと窓を叩いてアピールするリトルリドルだった。

「ん? 馬田くん、あれを見てくれ」
「なんだぁ?」
 鮭高にて間違って入学した唯一の真面目な生徒、桜山・咲太が窓を叩く黒い小さな子に気が付き、同級生の馬田を呼ぶ。
「ほら、アレ」
「うおっ、窓の外に……よし、わかった」

 ビタンビタン叩いたせいか、偶然にもサクタとその友達っぽいモヒカン(馬田である)がこちらに気づいて窓へと寄って来る。カラオケの音で2人が何を話しているか解らないが、せめてこちらの声は聞こえるだろうと窓に顔をはりつけてリトルリドルは全力で叫ぶ事にする。
「いーーーれーーーろーーーっ!」
 と、その声に反応したのかモヒカンが窓に近寄ると……。
 キュッキュキュ、キューキュッ。
 マジックで窓に落書きし爆笑する。
 なんか教科書の偉人にする落書きみたいなのを窓ごしにされた事に気づき。
「おのれー! モヒカンー! あとでおぼえておけよ――!!」
 ギャーギャーと言うと、車内でモヒカンの行為を首を振り咲太が否定する。リトルリドルに声は聞こえないが咲太は怒ったのだろうか、モヒカンはちょっと残念そうな顔になる。
「(サクタ……おまえ、実はいい奴なんじゃ……)」
 思わずホロリとサクタの評価を改めてあげるかと思うリトルリドル。
 だが。
 キュキュッキュ、キューキュッキュキュキュのキュ。
 咲太が落書きを追加し、大爆笑の咲太とモヒカン。
「ちきしょー! ぜってーゆるさねーからなオマエら!!!」
 リトルリドルは一端窓から下がり背面に回ると、別の場所から中に入ってやると強く思うのだった。


「おい、桜山! スゲエのを見つけたぜ!」
 窓の落書きを掃除していた桜山に、慌てた様子で馬田が戻って来て言う。
「馬田君、きみも窓に落書きしたんだから僕と一緒に掃除したらどうだい」
「いや、そんな事よりスゲエんだって!」
 馬田の様子に桜山はハァと溜息を吐き、窓の掃除を終えると。
「さすがにもう2学期も終わりだしね、いろいろこの学校で変な不良を見て来たから、僕は今更何が出て来ても驚かないの」
「まあそう言うなって! とにかくスゲーんだよ、あんなの初めて見たぜ!」
「変な不良を見つけるたびにきみは同じ事を言ってるよね馬田君」
 馬田に引っ張られるようにバスの中ほどまで連れていかれる桜山。
 そして連れていかれた中央部には、窓際の一角を潰すように自動・販売機が置かれていた。
「はぁ……ほら、どうせこんなもんでしょ? 自動販売機が生徒だなんてこの程度の反応しかできないの、わかった?」
「フン、お前の目はどこについてる、良く見てみろ」
 桜山は自動・販売機をよく見て見る。
 それは自動販売機には見えないBUであったが、アイテム欄の【可変筐体】の効果で、その場の雰囲気を壊さない形に変形しており――すなわち、普通の自動販売機に桜山には見える。
「だから――」
「桜山、良く見ろ! ここだよ、ここ!」
 馬田が指差すのは販売されている缶ジュースが並ぶディスプレイ部分だった。
 もちろん、普通ならコーヒーやらジュースやらが並んでいるのだが……。
「なっ!?」
 そこにはジュースなどの飲料系がまったく売られて無く、端に申し訳程度に家族の思い出を1枚に切り取る使い捨てな機械を置いているだけで、ディスプレイのほぼ9割が――。
「チェーンソーだって!?」
「ああ、チェーンソーが売ってる自販機だ、スゲーだろ!」
 そう、その自販機はディスプレイの9割がチェーンソーであった。
「なんで……チェーンソーが……?」
「わかんねー、とりあえず悪役君にはバレないようにしておいた方が良いだろうな。あいつが暴れた時にシャレにならない事態に発展しかねん」
「う、うん、そうだね」
 と、理由について深く考えないようにその場を離れようとするも、2学期のこの時期まで鮭高で学び、空気感を知った桜山だ。入学時の新米とは違う。グッと脚を止めくるりと自動販売機に向き直ると。
「確かキミは一応この学校の生徒だったよね。なら教えてくれないか? どうしてチェーンソーの自販機なんだい?」
 そう自動販売機は鮭高の生徒なのだ。
 ならば、落ち着いて問いかければきっと納得いく答えをくれるはず!
 すると……。
「このあと、必ずコレが必要となります。かしこ」
「チェーンソーが?」
「いや、なんでソレが必要だって解るんだい?」
 さらに問う馬田と桜山に対し。
「次に出てくるのが解るので、とても楽しみです」
 そう答える自動販売機。オチになっていない。
 どうするんだと言わんばかりの桜山に、馬田は「ちょっと来てくれ」と別の席へと連れて行く。
 そこには立派な白いあご髭を蓄えた老人が背筋を伸ばして座っていた。
 しかも、折り目正しく制服を着こんでいる。
「ジジイも見つけといたぜ」
「うん、パンチが弱いよ馬田君」
「いや、良く見ろ、ジジイの横を!」
「あれは……刀?」
「ああ、あれはただのジジイじゃねぇ……侍のジジイだ」
 馬田の言葉に桜山は頷き、侍ジジイ――久礼・紫草から視線を外す。
「次行ってみようか」
「お、おう」
 そして次に馬田が連れて来たのは全長220cmの……学生服を着たロボだった。
「おい桜山! またか、みたいなツラすんなよ! ロボだぞロボ! どっからどうみてロボだ! 普通に考えてスゲーとしか言えねぇだろう!」
「いや、別にロボを見るの初めてじゃないしね」
 そんな桜山達に対し、そのロボは気さくに。
「おはよう、ボク……オレ、パン沢。夜露四九」
 と、挨拶してくる。「ああ」「宜しく」と2人も挨拶すると、パン沢(パンディールに搭乗したトゥール・ビヨンだが)は、再び周囲の鮭高生たちの輪に戻る。「なにやってたんだパン沢」「お前狼なんじゃねーの?」「いや、そんな違うって」と違和感無く溶け込んでいる。
「ま、やっぱそんなもんだよね」
「くそ、桜山……お前、いつの間にこんなに鮭高に染まっちまいやがって……」


 バス内の誰かが、チカリと何かが光った気がして後部座席の窓から後ろを見る。
 バスはカーブを曲がったところで、次の瞬間、カーブから1台のバイクがその姿を現す。
 さらのコンマ秒も遅れず、バイクの背にぴったりと付くように数匹の鮭たちが姿を現したのだ。
「そろそろ頭を抑えるのも限界だね」
 バイクを駆るシグルーンはそう呟くと一気にアクセルをふかしてバスに並走する。これ以上はバスに乗ってる猟兵達にバトンタッチするしかない。
 事実、シグルーンと代わるように飛んで来る猟兵の姿が……。
 それは後方の窓から見て、更に鮭の後ろから飛んで来るようだった。
 最初は黒い豆粒だったが、凄いスピードで飛んできているのかグングン大きくなり。
 バス内の生徒たちがそれに気が付く。
「おい、あれは何だ!?」
「鳥か?」
「飛行機か?」
「いや――」
 鮭高1年の中でもバカだが目は良い馬田が断言する。
「あれは……変態だ!」

 鳥や飛行機と間違えられそうになったソレは、時速6300kmで飛ぶ山梨・玄信であった。
「ちぃ、いつもよりスピードが出ないわい!」
 それもそのはず、玄信が使うユーベルコード≪ヌギカル☆玄信≫は露出が多い程にパワーも飛翔スピードも上がる技である。いつもなら褌一丁で出力99%に近い力を発揮するが、今回は顔に三角錐の覆面を被って露出面積が減っているのだ。
「じゃが、学校の遠足というリア充イベントを爆破する為にも、本当ならRB団制服を着こなしたい所じゃが、妥協点として覆面のみに褌という姿……くっ、歯がゆいもんじゃ」
 何が歯がゆいのか一般人(一般猟兵)にはさっぱりわからないが、彼の中では天秤にかけて釣り合う程両方大事な事らしかった。
 だが、それでも≪ヌギカル☆玄信≫による飛翔スピードはあっという間にバスに迫る巨大鮭たちに迫り、追い越し、バスに並走するとガラッと窓を開け……。
「誰が変態じゃ――!!」
 地獄耳にてそう呟いていた馬田を見つけ、下半身から飛びかかり両足でガッチと馬田の顔をホールドする玄信。
「ぶべらっ!?」
 褌を押し付けられる形で――褌固めを決められフゴフゴいう馬田に。
「変態と言った奴はお主じゃな? なら聞くが、覆面レスラーは変態か?」
「ふがふごっ!?」
「その通り、レスラーパンツ一丁で戦うレスラーは決して変態では無い! ならば、褌一丁で戦うヌギカル☆玄信とて変態では無いと覚えておくが良い! ふんっ!」
 もんどりをうって倒れる馬田に、そう諭すヌギカル☆玄信。
 突如バス内に乱入して来た変た――褌レスラーに、警戒と威嚇のガン付けを行なう鮭高生たち。
 だが、そんな一触即発の空気を上書きするように、バスの運転席横についた2つのモニターのうち1ツが、ゴトリと落ちて手足を生やす。
「こっそりバスのモニターのふりをし忍び込み、世紀末釘バアイドルいなずまちゃんが出るタイミング測っていましたが……ヌギカル☆玄信が登場するなら話は別だヌギ!」
 グッとモニター……テレビウムの高柳・零がマイクを持ち叫ぶ。
「ヌギカル☆玄信が助けに来たヌギ! さあ、みんな! 一緒にヌギカル☆玄信のテーマを歌うヌギ!」
 そう言って自分の顔の画面にヌギカル☆玄信のテーマ曲のカラオケを流し始める零。
『遠く離れた脱衣の国、ヌギヌギランドからやって来た脱衣の使者。平和を守る正義の戦士。さあ、今こそ脱ぐんだ! ヌギカル☆玄信!』
 いつの間にか零の前には生徒用のマイクを持った馬田が一緒になって歌を歌い出す。歌う事に深い意味は無い、ただなんとなくノリが良かったからだ。
 バス内は先ほどの一喝もあり、レスラーのテーマソングかのような盛り上がりを見せる。
 さらに当のヌギカル☆玄信は窓を開けて入って来た事で生臭い空気が室内に流れ込み、気持ち悪さに顔の色を変えた生徒(悪役君だ)を見逃さず、サッと零からエチケット袋受け取り悪役君に渡す紳士っぷり。
「それじゃあ、行ってくる」
 テーマソングに送られ、窓を高速で開け閉めして外に飛び出し戦いに身を投じるヌギカル☆玄信なのであった。
 そんな変な盛り上がりを見せるバス内で、運転席にほど近い席に座っていたヴィクトリア・アイニッヒは、思わず溜息を付いてしまう。
「(相変わらず、ここの学校の生徒はちょっと……なんというか、いろいろ足りてませんよね……)」
 まぁ、都内屈指の底辺高であるムシェ鮭高校である、学力的に足りない部分は仕方がない。
「(いや、学力というか……はぁ……)」
 ちなみに成人している(21歳の)ヴィクトリアはしっかり学生服を着こんでおり、自分で言うのもなんだがコスプレ感が出ていないか気になってしょうがない。
 もちろん、今回の任務を遂行する上で学生たちに紛れる事が一番効率良く、これ(制服)は仕方がないと解ってはいるのだが……。
 と、一度は撃退した鮭オブリビオン達だが、どうやら本命の群れに追いつかれたらしく数匹の鮭たちが再びバスに追いつき出す。
 とりあえず、バスの運転手が落ちる事だけは防がねばならない、それが出来るのは位置的にも自分だけだ。
 そう思い、ヴィクトリアはもしもに備えいつでもユーベルコードを放てるよう構えるのだった。


 鹿村・トーゴは今回の依頼でこの世界の同世代に混じり、わいわいとバス内で騒ぐのが案外楽しかった。
 元々忍びの里で育った身だ、平和な世で無警戒に遊び騒ぐなど、外の世界を知る前からしたら想像すらできなかっただろう。
「(道伝いに山で待伏せ、バス荷物入に潜む……ってのも考えたけど、やっぱこっちで正解だったな)」
「あ、次トーゴの番な」
「ん? ああ、わかった。えっと……コレで」
「な、それはパスだわ」
「俺もだー」
 このカードでのゲームもルールは単純だが、中々に楽しかった。
 バスに乗っている同年代の学生たちは、世間一般からははみ出し者らしいが、トーゴに取ってはそこまではみ出し者という感じもしなく、逆に初めて会ったはずなのに、それを「ずっとサボってたんか?」とたいして気にせず仲間と認めてくれた彼らは、一緒に居てなんとなく居心地が良かった。
 だが、そんな楽しい時間もそろそろ終わりを迎える。窓の外、バスに並走するよう鸚鵡のユキエが飛び異常事態をトーゴに知らせる。
「あ、オレちょっと抜けるな」
「あ、なんでだよ良いところだろう?」
「いや、ほら、後ろの席の奴が大変そうだし」
 そう言って車酔いしてそうな大柄な学生を顎で指すと。
「ああ、悪役くんか……さっきから暴れてるし、挨拶ぐらいしておいた方が良いかもな」
「え、ああ、わかった」
 とりあえず最後列の窓際の横まで割り込んで、悪役くんと呼ばれた彼に話しかける。
「なあ、大丈夫か?」
「ぁあ?」
「もしかして、酔ったんじゃない?」
「………………(俺が必死に隠してる事を一瞬で……)」
「そうか、わかった。とりあえず椅子に座ってゆっくりしてていいから」
「………………(誰だか知らねぇ顔だが……悪い奴じゃなさそうだな、後でバスが止まったら名前を聞いてやるか)」
「それじゃあ」
 ガララッ、と窓を開けスルリと外へ出るトーゴ。
 車酔いの彼は一端落ち着いているようだ、なら、今のうちに鮭のオブリビオンをどうにかする方が先だろう。
 だが、外に出たトーゴは知る由もない。
「おいいい! また悪役くんが暴れ出したぞ!」
「誰か止めろー!!!」
 至近距離で窓を開けられ、生臭い空気に更に気持ち悪くなった悪役くんが、怒り心頭に暴れ始めた事を……。

 結局、悪役商介は自分の横と前の席から他の生徒が避難し、周囲に人がいなくなった事で最後尾の真ん中の席にどっかりと座り直し、中央通路の先、バスのフロントガラスから見える外の景色を遠く見つめ続ける事でなんとか落ち着く事ができた。
「(よし……このまま遠くを見ていよう、そうしよう……)」
 全身からどっと出た脂汗が冷えて行くのを感じる。
 持ちこたえた。さすがこの鮭高の中でも一目置かれる俺だ。
 だが――。
 ズンッ!
 2人分を1人で体育座りし占領していた見知らぬ生徒が、急に立ち上がり中央通路を塞ぐ。その巨体は3mを越え、身を縮めているにも関わらず頭が天井をガリガリと擦っていた。
 ワイワイと盛り上がっていたバス内がシーンと静まり返る。
 その巨体の生徒は青い肌をし、足は鹿類のように関節がジグザグになっているのが学生服の上からでも解り、学生帽の下の顔は上下の口以外にクワガタのように左右にも開き牙が並んでいた。
「えっと、お前って……」
 1人のワルが思い切って質問する。
「オレ、転校生、ケド、服ナカッタラ不自然、ダカラ、制服ト学生帽デ高校生ニナッタ。番長サイズ、問題ナイ」
「そ、そっか、ああ、問題無いよな、はは」
 上下左右に開く牙だらけな口を近づけられ、質問したワルがコクコクと頷く。
 そんなエイリアンのような学生――バイオモンスターのミーグ・スピトゥラスが、目的はこっちだと中央通路を一歩一歩後ろの席へと……つまり、最後尾の真ん中の席に陣取る悪役に向かって歩いて行く。
「(くそ、なんだこいつ……前の景色が見えねーじゃねーか)」
 向かってくるミーグにピキッと青筋を立てる悪役。
 だが、ミーグは顔が触れるかというぐらい近くまで来ると――。
「ドウシタ、商介……酔ッタノナラ、背中擦ッテヤル」
 他の生徒に聞こえないよう、そう言うと、長く骨ばった異形の手で(爪で?)、さりげなく悪役の背をさすってくれるではないか。
「(こいつ……まさか……!?)」
 悪役商介は2m近い巨漢であり、頭もスキンヘッドで眉も薄く、話す前から見た目で周りから恐れられてきた(もちろん腕っぷしも十分以上に強いのだが)。だからこそ、目の前のエイリアンのような外見の転校生に、どこかシンパシーを感じてしまう。
「(こいつもきっと、俺と同じ外見で判断される人生を送ったんだろう……だが、背をさする感触から俺には解る、お前が俺と同じく、仲間に対する義侠心に溢れた漢の中の漢だって事をな)」
 ミーグを見つめる悪役、ミーグも同じく悪役を見つめる。
「ふっ」
「フッ」
 同時に息を漏らし、それが緊迫した2人の間にあった空気を和ませる。
 そう、今2人は解り合えたのだ。
 だが周囲の者達は違っていた。なぜならミーグの股間から変な器官がニョロニョロと伸びて来てウニョウニョし始めたからだ。無論、股間から何かが伸びて来たので頭の悪い鮭高生達だ……「やべえ、あいつモロ出しじゃねーか」「しかも長え……」「自信満々かよ」と再び距離を取る。
 もっとも、ミーグ自身は股間の器官(センサーである)で、ある匂いを感知し。
「(コノ匂イ、魚……サーモンダナ。何ダ、商介ノ顔色ガ戻ラナイ、エネルギー不足カモシレナイ……ナラ、チョウド良イ、俺ガ捕マエテ来ルカ)」
 そう考え、長い手で横の窓を。
 ガシッ。
 窓に手を伸ばしたミーグの腕を掴む悪役。
「悪ぃ……お前にだから言う、酔っちまってな……窓は開けないでくれるか」
 ミーグにだけ聞こえる声で頼む悪役、こいつならわかってくれる、そんな確信が悪役にはあった。
「ソウカ……ワカッタ」
 ミーグは頷くと窓に伸ばしていた手を引く。
「(やっぱりこいつは俺の同類だ……通じ合うもんがある)」
 満足げに頷く悪役。
 そしてミーグも天を仰ぎ。
「少シ、待ッテロ」
 ドギャッ、バキバキバキッ!
 一気に天井を斬り裂き吹き飛ばすミーグ、バスの後ろ半分の天井が吹き飛び青空が見えるようになる。
 唖然とする悪役に、ミーグはニッと笑みを浮かべサムズアップすると、シャッとジャンプし残っている天井の上へと飛び移る。
 そして車内には全力で鮭の生臭い空気が吹き込む――というか、周囲の空気が生臭い空気へと代わる。
「誰が同類だオラアアアアアアアアッ!!!!!!」
「また悪役君が暴れ出したぞー!」
「止めろ――ー!!!」

 思い出すは農作業、貧しい農家の生まれだった自分が寺子屋通いなど出来るはずもなく、物心付いた事には家族の手伝いを当たり前のように行っていた。
 だからだろうか、紫草は平和な世界で平和な童子たちが集う学び舎が、どこかキラキラと眩しく感じられた。
 この鮭高なる学び舎に集まる子供達は、この世界でははみ出し者の集まりだと言う。実際、窓に落書きしたり、好き勝手に騒いだり、時に童子同士で喧嘩が始まったりしているが、紫草にとってはそのどれもが子供の今だからこそ出来るじゃれ合いのように感じ、思わず愛おしく見守ってしまうのだ。
 だが、さすがに大きな音を立て、バスの後ろ半分の天井が吹っ飛んだ事で、この愛おしい時間も終わりが来たと傍らの伴侶を手に立ち上がる。
「む」
 だが、戦場に向かう前にふと目に移った身体の大きな学童の顔が、あまりに良い色をしていない事に気が付き、紫草はまずは彼をなんとかしてやろうと、最後尾の真ん中の席へ座る悪役商介に話しかける。
「悪役とか言ったな、ほれこの丸薬を飲むが良い」
「ジジイ……?」
 暴れ疲れてさすがに限界が来つつある悪役は、ぐったりしつつ渡された丸薬を見つめる。得たいの知れない丸薬だった。
「しょうがない、手伝ってやろう」
 紫草が丸薬を悪役の口に放り込むと、強引に自身の竹水筒を突っ込み水で流し込む。
「う、ぐふっ」
「これで大丈夫じゃ」
 だが、悪役の顔は赤くなり、青くなり、白くなり、そして虹色に……。
「なんというけったいな顔色に! 毒でも盛られたかのようではないか!? あの丸薬すら効かぬとは!」
 大丈夫かと背中を叩く紫草に、それ以上叩いたらリバースすると目を見開いて紫草の腕を止める悪役。
 謎の丸薬の味も、生ぬるい竹水筒の水も、どっちも最悪だった。
 だが、当の紫草は薬万能説を信じる時代の侍である、効かなかったどころか更に悪化したのは別の要因に違いないと――。
「そうか、さては外の悪鮭の仕業じゃな! なんという穢い真似をしおるか」
 キッと上を向けば、空から車内を目指して振って来る鮭と目が合う。
「車には絶対にあがらせぬわ!」
「ぶっ!?」
 目の合った鮭を切りつける為、悪役の顔を足場に空へと飛ぶ紫草。
 野太刀が鞘走り、銀光一閃、すれ違い様に輪切りとなる巨大鮭オブリビオン。
 ボタボタボタと輪切りにされ絶命した鮭が落下していく中、紫草は屋根の上に着地し。
「儂の目が黒いうちは、ここの童子らを殺させはせぬ!」
 バサバサと髭や髪が風にたなびく中、カチンッと納刀し断言するのだった。
 もちろん、おじいちゃんの目にはバスの車内は映らない。
 そう、輪切り鮭の血やら内臓やらを頭からぶっかけられた悪役商介が白目のまま暴れ出す姿は。


 バスの運転主の真後ろの席で、窓から身を乗り出し運転席側へと回って来る鮭を光の剣で牽制するはヴィクトリアだった。運転席がやられた場合、最悪バスが横転、乗っている学生たちが全員死亡などという洒落にならない最悪の事態になりかねないからだ。
「しかし、何といいますか。ここの学生達は魚と縁があるのでしょうか……えいっ」
 光剣を投擲すると、それに身を裂かれた鮭がバスの逆側や天井、もしくは後ろへと移動する。正直、倒す為にガチに戦う事も考えたが、それで鮭が本気で突っ込んで来て運転席が破壊でもされたら大変だ、今は牽制程度で追い払うのが最適解だろう。
「それにしても……」
 あぁ、〆ておろして身は串焼きに……いえ、ホイル焼きでしょうか?
 丸々と美味しそうな巨大鮭を見ると、ヴィクトリアですら思わず想像してしまう。
「あ、私ったら」
 いけないいけないと頭を振り、献立を振り払う。
 とりあえず一端、こちらに寄って来た鮭たちは追い払ったので、今のうちにやれる事をやっておこうと、ヴィクトリアは窓から乗り出していた身を社内に戻し、騒ぐ学生たちに向かって凛とした声で指示を出す。
「みなさん、落ち着いて下さい! まずは――」
「さあ、今こそ脱ぐんだ! ヌギカル☆玄信!」
「って、うるさいです!」
 ブチッ、と強引にスイッチを切りマイクを取り上げるヴィクトリア。
 零がショックな表情(画面にそういう顔文字)で見上げてくるが、にっこり笑みを浮かべて黙らせる。
「みなさん、落ち着いて下さい。今、このバスは変なのに追われています、可能な限りバスのスピードをあげる為に邪魔な荷物は外に捨てて下さい」
 ヴィクトリアの言葉に、良く解らないまま従う鮭高生たち。手に持ったカードやお菓子を社外に捨て始める。
「せっかくまだ遊んでいたのに……」
 残念がるは統哉、だが、正直お腹も空いて来た頃合いで、外には美味そうな影がチラホラ見えていた。
 遊びを切り上げるには良いタイミングだろう。
「にゃふふふふ、魚とくれば猫の出番だぜ! そこのテレビウムにリクエスト! BGM≪着ぐるみの空≫!」
「了解っ!」
 ネットのどこかに落ちていたのか、曲を見つけてカラオケモードでリクエストされたBGMを流し出す零。
「今こそ、着ぐるみの力をここに。着ぐるみ召喚・着ぐるみの空!」
 統哉はBGMに乗るように、全身をクロネコの着ぐるみで包み、そのまま天井が無い後ろ部分から外に飛び出し、残っている天井の上へとクルリと着地。
「クロネコ・レッド、見参!」
 新しい標的が増えたと屋根の上まで来ていた巨大鮭の1匹が、統哉に狙い定めて突撃。
 だが、統哉――クロネコ・レッドは、僅かに身を捻りながら斜めにジャンプ、突撃を回避しつつ回転するまま右手の手で鮭を引っ掻く。その腕の振りは遡上する鮭をとらえる熊のごとき動きであった。
 引っ掻かれた鮭がビチビチと空中をきりもみしつつ、ぎりぎり天井の端で止まって――しかし、その時にはすでにクロネコ・レッドは猫か特有の弧を描くジャンプで飛びかかっていた。
 両手でガッシとエラと尻尾の付け根を押さえつけられる。
 ビチビチビチビチッ!
 食われてなるものかと強い意志で逃れようとする鮭。
「甘い! こっちの鮭を喰うんだという意志の方が強い!」
 轟ッと炎の属性攻撃が押さえたままの鮭を炙り、さらに醤油の属性攻撃をちょいと垂らせば、香ばしい良い匂いが……。
「いただきます!」
 ガブリ、鮭の背へとそのまま齧りつくクロネコ・レッド。
 他の猟兵が見る中、クロネコ・レッドは他の戦いには目もくれず、目の前の1匹を無事完食するのであった。

 一方、バスの運転手側でない側面では、窓の外にへばり付きながら人知れず鮭たちを迎撃している猟兵がいた。
 リトルリドルである。
「なんかナマグセーし……って思ってたら鮭がもう来るし! あの二人へのお返しは後にするっきゃねーじゃねーか!」
 ≪バウンドボディ≫で伸ばした腕や足を鞭のようにしならせ、近づいてくる鮭たちを叩きまくるリトルリドル。
「あの2人はどうなってもいいけど、このままじゃオレサマが子分にする他のやつらがやられちまうしな……」
 グルルンと鮭に腕を撒きつけ奇襲して来た1匹を捕まえる。
 そのまま少しだけ側面を登って窓から顔を出し、車内を見て。
「オレサマの活躍をみとけよオマエら!」
 そう叫んで鮭をビッタンビッタンと叩きつけてはポイッとする。
「ふふん、これだけ助けてやればみんなオレサマにかんしゃするだろう、おい子分ども!」
 ガララと窓を開いて中に声をかけるリトルリドル。
 その瞬間。
「えいほっ、よいほっ、えいほっ、よいほっ!」
 車内の学生たちの声がハモるような掛け声で、何か大きな物が開けた窓から押し出されて来て、リトルリドルもそれと一緒に外へと押し出される。
「ちょ、おいっ、なんだよコレ! やめろー、オレサマが落ちちゃうだろうがー!?」
 騒ぐリトルリドルだが、車内から押し出されるソレは引っ込む事無く、そのままリトルリドルをくっつけたまま――ガラン、ドシャンッと道路へと捨てられる。


 クロネコ・レッドが鮭を貪る横、バスの天井の上で残った巨大鮭たち3匹と対峙する猟兵達。
 その中で一歩前に出るはヌギカル☆玄信だった。
「鮭たちよ、先に言っておく。わしはお主等を食べるつもりは無い」
 玄信の言葉に鮭たち3匹が一斉にクロネコの方をチラ見し、再び玄信を見つめる。
「あ、いや、信じられんのは解るが……しかし、わしの本音はこうじゃ! リア充どものご馳走にするぐらいなら、爆破する方がマシじゃ、とな! 安心せい、お主等の身は粉々に粉砕し海に捨ててやるのじゃ!」
 3匹は顔を合わせ「食べる気は無さそうだけど」「ダメじゃね?」「だよね」という感じで意見が統一されたか、3本の矢のようにまとまって一気に玄信へと突進する。
「ならばわしのヌギジカラを見せてくれる!」
 ハァッ! とヌギオーラを全身に纏い防御力を上げ、その上で突進してくる左右の2匹を同時に攻撃、内側へ殴りつけそのまま真ん中の一匹も押さえつける。
「ぐぬぬぬぬっ!」
 3匹を1人で押さえつけるも、さすがに多勢に無勢、玄信が鮭たちの勢いに吹っ飛ばされそうに――なる直前。
「遠く離れた脱衣の国、ヌギヌギランドからやって来た脱衣の使者――」
 と零が屋根に上って来てテーマソングを歌い、それに共感する玄信のパワーが上がる。
 ガッチッ、完全に3匹を抑え込む事に成功する玄信。
「そのまま抑えといて! ハッ! ヤッ!」
 そう玄信にトーゴが言いロープを結んだクナイを一斉に投擲、それは慣性を無視して(念動力による操作だ)3匹の周囲を周り、さらに「七針、お前達の出番だ」と見えない七匹の大型蜂を解き放つと、3匹の隙間が無いようチクチクとさして微調整。
「いっちょ上がり!」
 グッと最後にロープを引けば、3匹の巨大鮭がグルグル巻きの簀巻き状態で転がる。
「アトハ、オレ、ヤル」
 トーゴからロープを受け取ったミーグが、その怪力でロープごと3匹を振り回し、ビッタンバッタンと右の道路、左の道路へと3匹まとめて叩きつける。
「倒シタ」
 ぐったりと力が抜けた事を確認し、ドスンと天井の上にグルグル巻きの3匹を戻すミーグ。
 だが、その瞬間に僅かな隙が、それこそ3匹のうち1匹が完全に死んだ事で身体から力が抜け、ロープに隙間が生まれたのだろう――、瀕死だが生きていた2匹がロープの縛りを抜け逃げ出したのだ。
 1匹はバスの左側へ、もう1匹は右側へ。
 だが、それにすぐに反応したのはパンディールに搭乗し戦っていたトゥールだった。
「一発芸、鮭釣り!」
 手首からワイヤーを射出し左側に逃げた鮭の尻尾を捕え、そのまま引っ張り上げると空中で【ドゥ・エギール】にて串刺しにする。
「捕ったどー!」
 そしてもう1匹、右側に逃げた鮭も、バス側面を走り抜け一刀のもとに紫草が斬り捨てたのであった……。


 鮭高生たちを乗せたバスは、無事湖畔のBBQ場へと到着し、生徒たちは我先にとBBQの準備を始めていた。
 先ほどの鮭の襲撃はなんだったのか、その事について疑問に思った生徒もいるだろうが、誰かが言った「鮭は川を昇ってくるんだし、坂道だって昇るんじゃないか?」の一言で納得していた。さすが底辺校である。説明が楽である。
「それにしても……」
 一足先に湖畔に到着していたシグルーンが、屋根が半分吹き飛んだバスを見て呟く。
「あー、まー、そうですよね……でも、先生方が『窓が全面割れて到着する年もありましたから、今年は屋根だけで良かったじゃないですか』と言っていたので、たぶん……」
 何が大丈夫か解らないが、とりあえずフォローしておくヴィクトリア。
「オレ、悪イコト、シタカ?」
「何、学童たちを守る為じゃ、ヌシは良くやったと思うぞ」
 心配するミーグだったが、紫草が褒めるので「ヨカッタ」と顔(?)を綻ばせる。
「で、ヌギカル☆玄信は残った鮭を爆破するんですか?」
「いや、どちらかというと同志っぽいから、やめとく事にするのじゃ」
 零に言われて玄信が首を横に振る。BBQ準備をする鮭高生達は、男が多く色恋とは無縁そうだと判断したのだ。
「よかった! 1匹じゃ足りないって思ったんだ」
「あ、やっぱ美味しかったの?」
 ホッと安心する統哉に、パンディールから降りた妖精のトゥールが味を聞けば、統哉は満面の笑みで肯定する。
「じゃあオレたちも皆に混じってバーベキューをしよー!」
『おーっ!』
 重なる皆の声、トーゴの言葉に皆が拳を上げ、そして我先にとBBQ会場へと向かうのだった。


「なんで……なんでオレサマが置いてきぼりに……」
 バスから捨てられ道路に置き去りにされたリトルリドルが涙ながらに呟く。
 その横で、バスの重量を軽くするために捨てられたソレ――自動・販売機が転がっていた。
「なんだよ! いいよ、ジュースでも買うから!」
 チャリンチャリンッ――ガコンッ。
 出てくるチェーンソー。
「なんでだよ――――――――っ!!!」
 12月の寒空の下、小さな魔王の悲痛な叫びが木霊する。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『六二五『デビルズナンバーいわし』』

POW   :    悪魔の魚群(デビルフロック)
全身を【「デビルズナンバーいわし」の群れ】で覆い、自身の【群れの大きさ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    悪魔の犠牲(デビルサクリファイス)
対象のユーベルコードに対し【数十匹のデビルズナンバーいわし】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ   :    悪魔の共食(デビルカニバリズム)
戦闘中に食べた【犠牲となったデビルズナンバーいわし】の量と質に応じて【悪魔の力が体に凝縮され】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
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●二章のプレイングについて
二章は邪神の『いわし』を倒して貰います。
とはいえ、それに縛られずプレイングは自由にどうぞ。
基本的にギャグの世界は続いています。
すきにBBQしても構いません。

●デビルズナンバーいわし
大量のいわしが湖畔の中をぐるぐる周回しています。
放っておくとBBQ会場の浜辺に飛び出してきます。

●ムシェ鮭高校の生徒達
BBQを楽しんでいます。

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「いや~、今年は屋根でしたか」
「これは全窓無しの年を越えましたな」
「いやはやまったくです」
 鮭高の先生達が軽口を叩く中、バスから降りた生徒達は次々にBBQの鉄板や椅子が置かれた湖畔へと向かっていく。
 どの生徒も我先にと降りていく中、1番ゆっくりバスを降り、そしてどっかり湖畔のBBQ場の鉄板のある場所の一つ――その誕生日席に座るのは悪役・商介(あくやく・しょうすけ)であった。
「ふぅぅぅ~~~」
 心の底から吐き出すような息は、周囲の生徒達をざわつかせる。
「お、おい、やっぱ悪役君の機嫌が悪いぞ?」
「バスの中でも何度も暴れてたしな……」
 こそこそと囁く生徒を恫喝するよう、悪役は「はああっ!!!」と時々大きな声と共に息を吐き、周囲をビクつかせる。
「っ!?」
 腕っ節で一目置かれる悪役である、周囲の生徒が心配そうに寄ってきて――。
「悪役君、やっぱBBQって言えばコレっすよね? ちょっとセンコーらから奪ってくるんで……」
 酒のジェスチャーをしてくる生徒――が、片手一本で吹っ飛ばされる。
「うるせえ」
「ぐふっ!? え、ソレが飲みたいってんじゃ……?」
「馬鹿野郎っ! まずは水だろうが!!!」
 ぶち切れ寸前で叫び、「う゛」と再び蹲るよう椅子に座る悪役。
「悪役君! 水を持ってきたぜ!」
「おう」
 受け取り口を付け。
「悪役君、もう12月だし暖かいお湯にしといたぜ!」
「ぶっ殺すぞっ!」
「熱ぃぃぃぃっ!!!」
 生徒にお湯をぶっかける悪役、叫び転がる生徒。
「俺は水だって言っただろうが! どうせなら氷水をもってこい!」
 叫ぶ悪役に「そりゃそうだ、BBQっていや氷水だ!」と生徒達があせる。
 というか、もう言ってる意味がわからない。
「悪役君、氷水だぜ、間違いない!」
「おう、待ってたぜ」
 そうして悪役・商介が氷水を飲み干そうとした、その瞬間。
 ヒュ――……ポトッ!
 湖の方から飛んできた小さな鰯(いわし)が1匹、氷水のコップにジャストミート。
 冷たい水と共に生臭さが全力で喉に広がり――。
「飲めるかこんなもんっ!!!」
 悪役は全力で鰯水を吐き出したのだった。
涼風・穹
……空中を泳ぎ回る巨大鮭を見た後で何だけど、鰯は海水魚だろうに何故に淡水湖を元気に泳ぎ回っているんだろうな…?

……まあ、相手はオブリビオン
人間の常識や法なんてものの埒外の存在なんだし、多分考えたら負けなんだろう
それに丁度BBQも鮭だけじゃ足りないと思っていた所だしな

そんな訳で法で禁止されていますがダイナマイト漁を試みます
《贋作者》で爆発物を作り出し、鰯の群れの上の水面で爆発させて、その衝撃波で気絶又は死んだ鰯を、同じく《贋作者》で作り出した投網で纏めて回収します
鰯は足が速いしさっさと焼いて美味しく頂きます
もし獲れすぎて食べきれなさそうなら鮭高の方々にでもお裾分けしておきます
食べ物は大切に、だな


黒木・摩那
いよいよ湖畔でBBQですよ。
鮭の切り身はさっとあぶって、イクラが乗ったご飯と一緒に食べる。
いいですね。

しかも、周りにはイワシの踊り食いまで用意してあるとか。
なんて気の利いたBBQでしょう。

ヨーヨーでイワシの群れから、少しずつ捕まえて【武器落とし】【念動力】、
刺身にしたり、たたきにしたり、あぶったり、団子にしたりと、
アレンジを試してみます【料理】。

食べても食べても全然減りませんね。

でも、お魚ばかりでは今ひとつ物足りません。
やっぱりお肉が欲しいですね……

飛びかかってくるイワシは【第六感】とスマートグラスのAIで回避します。


アリシア・マクリントック
イワシ……網で捕るのが効率が良さそうですが、そういう話ではないですよね。
ともあれ、水中戦ならこれですね。変身!
セイレーンアーマー!あまり派手な技はないですし、他の方と連携していきたいですね。私が水中から追い込んで一網打尽とか、群れに突入して散らしたりと水中での機動力を活かして色々やりたいところですね。。
撃ち漏らしや群れから逸れた個体はセイレーンスピアで撃破していきましょう。
せっかくのバーベキューが魚づくしになってしまいそうですが……仕方ありませんね。新鮮ですからマリネにでもいたしましょうか。


シグルーン・オールステット
※アドリブ絡み歓迎

なんとか無事…無事?(バスを見つつ)…辿り着いてBBQなのはいいけれど湖の中にいわしの群れが。
鮭は生臭かった。いわしの群れもきっと生臭い。そんなところに突っ込んだらボクのバイクがいわし塗れになって凄く生臭くなる。……それは嫌だ。
かといってオブリビオンである以上放置もできない。
仕方ないので向かってきたらレギオンを呼び出して対応。時間稼ぎにはなるから、その間にほかの人が攻撃してくれるだろう。

それまでは折角だから生徒たちに交じってBBQを楽しむことにしよう。
足りなくなるのを見越して自腹で材料は持ってきておいたよ。デザートにアイスもね。
アイス足りない?…ボクの分以外はじゃんけんして。




 ドゥルルルルル……。
 ドッドッドッドッ……。
 湖畔の二輪用駐車場でエンジンを切ると、2人の猟兵はそこからバスから降りてくる鮭高生たちを眺める。
「とりあえず無事到着って所だな」
「うん、無事……無事、かな?」
 涼風・穹の言葉に、シグルーン・オールステットは思わず屋根の吹っ飛んだバスを見て呟いてしまう。
「いや、まあ、学生の皆に怪我がなかったんだし、な」
「それは……まあ、確かに」
 それは紛れもない事実なわけで、穹の言葉に頷くしかないシグルーンであった。
 だが、そんな2人の鼻を、鮭とはまた違った匂いが鼻を付く。
 とはいえ、それも鮭と同じく生臭い匂いではあったが……。
 思わず顔を見合わせる2人。
 そしてその視線が同時に湖畔の――湖へと注がれる。
「あきらかに湖の中に何かいるな……」
「鰯の群れ……じゃない?」
 シグルーンたちが見つめる先、湖面にはさざ波が――小魚の群れが泳いでいる為――立っていた。これが海なら鳥が集まって来た鳥山へと早変わりしていただろう。無論、海水魚の鰯たちが淡水の湖にいる事自体が異常事態なのだが……。
「……まあ、相手はオブリビオン。人間の常識や法なんてものの埒外の存在なんだし、多分考えたら負けなんだろう」
「そういうものかな?」
「そういうものだ」
 やけに達観した態度で穹が言えば。
「そういうもの……か」
 と、シグルーンも納得せざるを得ない。
「しかし……空中を泳ぎ回る巨大鮭を見た後で何だけど、鰯は海水魚だろうに、何故に淡水湖を元気に泳ぎ回っているんだろうな……?」
 穹が顎に手を当てて首を傾げると。
「そういうものなのでは?」
「そういうものか……」
 と、今度はシグルーンに言われ納得する穹。
 ただ問題は、だ。
 2人は自然と駐車場に止めた自分のバイクを見て――。
 自分達の愛機が今より更に生臭くなるのはごめんこうむりたいと思うのだった……。


 シグルーンと別れて1人湖畔の波打ち際までやってきた穹は、BBQをし始めている鮭高生たち見て。
「ま、鮭だけじゃ足りないと思っていた所だしな」
 そう言うと溜息一つ、そして「やるか!」と自分の気持ちを切り替えると。≪贋作者≫で爆発物を作るとソレらをロープで結び連結すると、さらにそれらが沈まないよう浮きになる物も括り付け始める。
「それはもしかして……」
 そう声をかけて来たアリシア・マクリントックに、自分がやろうとしているのが禁止されてる『とある漁』の方法だと説明すれば……。
「それでしたら私も協力しましょうか?」
「本当か?」
「ええ、私なら鰯たちを水面近くに誘導できますから」
 ニコリと微笑むアリシアに「どうやって?」と疑問を浮かべる穹。
「それは……変身! セイレーンアーマー!」
 カッと光ってバンクシーン、次の瞬間そこに現れたのは人魚のような姿に変身したアリシアの姿だった。
 そのままアリシアはバシャンと湖に飛び込み水中へと潜る。
 もちろん水中にやってきた猟兵に鰯たちが気が付くが、セイレーンアーマーにて地上の行動を代償に水中行動に特化したアリシアに鰯たちが簡単に追いつく事もできず……。
「(それでは水中から水面に追い込みましょうか……)」
 手にしたセイレーンスピアで鰯たちを牽制し、人魚のひれを使い一気に水中を移動し群れに先回りし、少しずつ鰯の群れを水上へと誘導していく。
「(私1人でやるより、あの方と連携した方が効率良さそうですしね)」
 そう水中でアリシアが呟いた、一方その頃。湖畔に立つ穹は水面がビチビチビチビチと上がって来た鰯の群れによって騒ぎ出すのを確認。
「今だ!」
 と作っていた爆発物を繋いだものをその湖面へと投擲。
「ぽちっとな」

 ドカーンッ!!!

 湖面に着水する瞬間に手にしたボタンを押し、同時に爆発、投げた場所が大きな水柱を巻き上げる。
 これぞ古式ゆかしい禁止漁である。
 湖面には爆発の衝撃で気絶、または死んだ鰯たちが大量にぷかーと浮かび――。
 さらに穹は≪贋作者≫で網を作成、バッと浮かんでいる鰯たちを狙って投網しまさに一網打尽にするのだった。


「くぅぅぅ~……美味しいっっっ!!!」
 湖畔のBBQ場の一角、鰯を無視してBBQのごはんを頬張りその美味しさに声を漏らすは黒木・摩那。
 摩那の手にしているのは飯盒で炊いた白米が入った丼に、鉄板でさらりと炙り焼きにした鮭の切り身と、紅玉色に輝くイクラを持った二色丼(親子丼?)だった。もちろん鮭は道中で調達したアレである。
「脂の乗った鮭の身は炙るとさらに上質な甘みを引き出しトロリと口の中で溶けますし、生のイクラはプチプチと新鮮で食感と良い塩梅の塩気が……」
 一緒の卓についた――というか勝手に摩那が割り込んできたのだが――鮭高生たちも、摩那が振る舞ってくれた二色丼の味に口から光を放ちつつ「うめえ――ーっ」と次々に叫び出す。
「やはり湖畔でBBQは最高ですね」
 そう言いつつすでに2杯目を自分で作る摩那。意外に痩せの大食いである。
 と、その時だった。
 空から鰯たちが数匹降って来て目の前の鉄板(熱々)の上に落ち、そのままビチビチ跳ねてから香ばしい匂いを放ちながら焼かれ出す。
「ええ!? イワシの踊り食いまで用意とか、ちょっと至れり尽くせりではないですかこのBBQ!」
「マジっすね!」
「鰯もウマッ!」
 踊り食いならぬ踊り焼きで鰯を食べだす摩那と鮭高生たち。
 だが、鰯が勝手に振って来たのはその時だけ――穹の行なった爆発漁で舞い上げられた鰯たちだ――で、次が中々来ない。
 それでも二色丼を食べつつ摩那と鮭高生たちが湖畔を眺めていると……。
 ザワザワザワ――。
 水面がざわつき、次の瞬間、バシャンッ! と数十匹の鰯の群れが水面から飛び上がりそのまま空を泳いでこちらに向かってくるではないか!
 キュピーン! 摩那の目が光りいつの間にか手には箸でなく超可変ヨーヨー【エクリプス】が握られ、飛んで来る鰯の群れに投擲、食べたい分(同じ卓の生徒たちの分も含め)の鰯を、器用に選別して叩き落とし、それらが次々に自分達の鉄板の上へと落ちてくる。
「まな板は?」
「ここに!」
 摩那の言葉に側にいた鮭高生がサッとまな板を用意、摩那はいつの間にか手にしていた包丁を片手に、もう片方の手で操るヨーヨーにて丸々太った鰯を数匹まな板の上へと弾き飛ばすと、その上に落とした鰯たちを次々に刺身やタタキにしていく。
「うおおおお、刺身の最高だぜ!」
「タタキもうめぇ――!」
 摩那の料理に鮭高生たちが舌鼓を打ち、もちろん摩那自身も作った端から食べて行く。
「あの……食べる量だけ捕るのもいいですが、それ以外の鰯も少しは気にして下さい」
「うん、一応、鮭高生は一般人なんだし……」
 そんな摩那の元にセイレーンスピアを持ったアリシアと小型のエレクトロレギオン達を従えたシグルーンが駆け寄り、摩那が打ち漏らした――というか食材として微妙だから見逃した分――を、槍で突き刺しなぎ払い、または鮭高生達が襲われそうになるのをレギオンに指示を出し守らせつつする2人。
「いえいえ、一応ちゃんとフォローはしてますよ?」
 と、食べつつ料理しつつ、スマートグラスのAIで警告のでる『鰯が直撃しそうになる学生』の腕を引いたりして直撃から守っていると言う摩那。
 もちろん、食べつつ料理しつつが可能なのはアリシアやシグルーンのフォローのおかげでもあるが……。
「あの……」
「ボクも……」
「もちろん、2人も一緒にどうぞ、材料はたっぷりですし!」
 摩那の料理っぷりにアリシアとシグルーンがみなまで言うまでに食事に誘う摩那。
 動きが格段に良くなる2人。
「それにしても……食べても食べても全然減りませんね」


「どうやら第一陣の波は引いたっぽいな」
 そう言って浜辺から戻ってきた穹が摩那たちに合流する。
 鰯たちは湖の中を群れで回遊しているようで、本体の群れがこのBBQ会場がある浜辺から遠ざかったらしい。
「つまり?」
 摩那に聞かれ穹はニヤリと笑みを浮かべ。
「無論、今が食い時って事だ! おい、鰯が欲しい奴はいるかー! 大量にあるから欲しい班のヤツらに振る舞うぜ?」
 そう他の鉄板を囲む鮭高生たちに大量に捕った鰯を振る舞い出す穹。
「鰯は足が速いし、さっさと食べるに限るしな」
 それに余って捨てる事にでもなれば勿体ない。食べ物は大切に、だ。
 そう他の班に鰯を振る舞い終わった穹の前に、暖かな椀が差し出される。それは摩那たちが作った鰯のつみれが入った汁物だ。
 この12月、山の湖畔で気温も下がったこのタイミングで、つみれの入った椀物は最高だ。
「くはっ!」
 穹の口から湯気と一緒に歓喜の声が漏れる。
 さらに皆の前にスライス玉葱と魚の切り身のマリネが乗った小皿が並ぶ。
「マリネも作ってみました……どうでしょう」
 無論、新鮮な鰯と鮭の身が使われたマリネだ、ひとくち食べた全員が、一斉にアリシアに向かってサムズアップ。
 と、様々な調理法で鮭と鰯を楽しむ皆だったが、摩那が思わず本音を……ある意味、皆が思っていた事を代弁する。
「やっぱりお肉が欲しいですね……」
『それなっ!!!』
 魚ばかりで物足りなかった面子が無言で同意する。
 それは誰もが思いつつ口にできなかった事実。
「あ、それじゃあボクが持って来た材料使う?」
 さらりとシグルーンが荷物を取り出し並べ出す。その中にはもちろん肉類も含まれ。
「すげー!」
「待ってました!」
「シグルーンの姐さん! 一生付いて行くッス!」
 鮭高生たちも大絶賛である。
「あ、でもデザートのアイスはそんな無いからね? どうしてもっていうならボクのも食べて良いけど……その、ジャンケンで……」
 皆の剣幕に少し照れつつ、皆で食べてと遠慮するシグルーンに。
「何言ってるんすか! シグルーンの姐さんを取ろうなんて輩はここにはいないっすよ!」
「そ、そう?」
 まさか足りなくなるのを見越して自腹で材料を多少持って来ただけで、異様に祭り上げらえる状況に、シグルーンは嬉しくも戸惑うのであった……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



 猟兵達が第一陣の鰯の群れを一網打尽にしたのは、鮭高生たちに少なからず衝撃を与えていた。
「どうしたんだい馬田君! 正気かい? 今は12月だよ?」
「止めるな桜山、この湖には美味い鰯が大量にいるんだ」
「いや、だからって――」
 それでも引き留める桜山をモヒカンの馬田は手で制し。

「鮭、魚類、鰯、この湖の全てを手に入れた漢、それこそBBQ王を名乗る者」

 なぜか芝居がかった口調で語り出す馬田。

「王の資格を得る為、漢たちは湖へ飛び込むのだ」

 馬田が服を脱ぎパンイチになりつつ言うと、それに続くように数人の鮭高生たちがパンイチで並ぶ。

「湖の鰯か? 欲しけりゃ獲ってやる……故に! 鮭高の全てよ俺を崇め奉れ!」

 ギリギリだよ! と桜山がツッコミを入れるが馬田と同じ考えに至ったパンイチ軍団はクラウチングスタートの恰好となり――。

「漢達はBBQ王を目指し、夢を追い続ける……! 世はまさに――」

 うおおおおおっとパンイチ軍団が湖へと走り次々に12月の寒水へと飛び込んでいく。そして最後の一言を大声で言う馬田のセリフに被せるように、桜山は慌てて「ピ――ーっ」と効果音を叫ぶのだった……。
自動・販売機
*『メーデー!』のノリでお読み下さい

「初めての運用だったんです」
事故調査員は語ります。
新しい機能、急ぐ顧客、事故を起こすリスクが高まっていました。

「正直、無謀だったとしか思えません」
事故現場に残る巨大な鰯からは果たしてどの様な証拠が出たのでしょうか。

「なんていうか…その…ミートボールのような」
散乱する鱗、飛び散る肉片。この悲惨な衝突事故はどの様に起こってしまったのでしょうか。
その原因を究明します。



その時、リトルリドル氏が後部座席に乗っていました。
「彼はその時手にチェーンソーを持っていたんです。乗り物に乗る時に相応しい状態だったとは言えません」
果たしてこれが事故の原因なのでしょうか。


鹿村・トーゴ
ばーべきゅーだってユキエ。楽しそうだなー(肩に止まった鸚鵡が『楽しい?』と少女の声で返す)
お前が食えそうなの(木の実や果物)さっきバスからくすねといたし『それは素敵』
案外まじめにBBQ準備
あ、わかると思うけどユキエは焼き鳥食材じゃねーから食うなよ(じゃ何?って聞かれたらまー心の嫁って言っとく)
焼いてると食べる前に目ぼしいものがなくなってくなー
隠しといた肉と南瓜とおにぎり焼こ

なーあの運転手すげーよな『引率の先生もでしょ』
ですねー
あ。さっきの車酔いの奴もう大丈夫かなあ…着いた時半死人だったしー

■対いわし
敵遭遇/戦闘に便乗しUCで動きを止め援護→クナイ他小石尖った枝等【念動力】【投擲】を使い攻撃


ミーグ・スピトゥラス
・POW
ムゥ…オレ、少シ反省
皆ト離レテ、隅デ大人シクシテル
(焼き肉用の食材を焼かず、生のまま食べる)
…足リナイ、1人分ナノニ、チットモ足リナイ
カト言ッテ、皆ガ食ベテル肉ヲ貰ウ訳ニモ…ソウダ、狩リダ
アノ湖ニ魚ハ居ルハズ
ソレ、泳ギナガラ、オレ食ベル
ツイデニ捕マエテ、皆ニ分ケル
皆喜ブ、オレモ嬉シイ
(のっしのっしと浜辺から湖畔に入水して水の中へ)

…見ツケタ、魚ダ
湖ニモ鰯ガ居ルノダナ
オレ、ビックリ
(ヤゴのように『デビルズナンバーいわし』を捕まえ、口へ運び食べる)
ウン…ウン、悪クナイ、淡水ノ鰯ウマイ
コレナラ、皆喜ブダロウ
(悪魔の魚群に臆すること無く食べる、夢中になってひたすら食べる)

※アドリブ大歓迎です


リトルリドル・ブラックモア
まおーサマをナメんなよオマエら…
さっき買ったワルな凶器でシメにいくぞ!
ン?ナンだ自動販売機(f14256)、新機能?
タクシーになんのか?
…運賃たけー!!
おこづかい足りねー…ワルだからタダ乗りしてやるぜ!(まおー銀行発行のおもちゃの札を投入)

ヨッシャ、おいついた!おりるぞ!
…ンン?
ヤベ、とまらねー…
やっぱニセ札いれたのマズかったか?
おい、そっちは子分どもがBBQしてる方…
クソッここはオレサマが運転するしかねー!
(急ハンドルを切る)

…ハ?なんで鰯が…ギャワーッ!!!
(鰯を巻き込みながら衝突&爆発)
や、やーらーれーたー…

なんでオレサマばっか…
UCでチェーンソーをふやしてやつあたりだコノヤロー!!


ヴィクトリア・アイニッヒ
目的地には何とか無事に辿り着けましたね。
これで割と平和だなんて、普段の鮭高生はどれだけ猛り狂っているのでしょうかね。
…まぁ、以前のアレコレで大体分かってはいるのですけれど。

とりあえず、今回はBBQ会場で調理に専念しましょうか。
学生達が変に湖畔に向かわないように、こちらに注意を向かせるように…
鮭を香り高く焼き上げ、またホイルで蒸し焼きにしていきましょう。
これでも料理は得意ですし、調味料もある程度は持ってきていますし…え、食材が足りない?
…そこの湖畔に、たくさん泳いでるのがいるではないですか。イワシも良い味のお魚ですよ?

…とりあえず、えいっ。(唐突な光剣投擲(2回連続2回目

※アドリブ歓迎です


高柳・零
WIZ
ヌギカル☆玄信は、脱衣の国ヌギヌギランドから来た脱衣の戦士ヌギ。
脱ぐ事で真の力を発揮し、色んな世界の平和を守る正義の人ヌギよ。
前回、すっかり解説を忘れてたヌギ。

「湖と言ったら電気を使う怪獣が定番ヌギ!大体、イワシは海水魚ヌギ。空気を読んでほしいヌギ」
共喰いされる前に数を減らします。光に範囲攻撃範囲攻撃を組み合わせて光の範囲を広げ、指10本を群に向けて放ちなるべく多くの鰯を巻き込みます。
「さあ、玄信。敵の数は減ったヌギ。一気に片付けるヌギ」

一応、生徒に被害が出ないよう、オーラと盾で庇います。必要なさそうな気もしますが

「さて、この大量の鰯は干して犬神藩に持って帰るヌギ。姫様もきっと喜ぶヌギ」


文月・統哉
BBQ王…青春だな!

着ぐるみクラフトでふわもこ着ぐるみを大量生産
寒中水泳組の制服をそっと着ぐるみと交換しておく
もふもふと柔らかく防寒に優れた着ぐるみは
彼らの冷え切った体を温めるには最適な筈
ゆるっとしたフォルムもまた
荒れがちな心を癒してくれるに違いない

にゃはは、礼には及ばないさ
これもまた着ぐるみ普及の第一歩
先ずは鮭高の制服を着ぐるみに
やがては世界の制服に
目指せ、着ぐるみが世界制服!

一仕事したらまたお腹が空いてきたな
着ぐるみを狙う鰯の群れを網で回収
傷口に塩の属性攻撃をすり込んでから
炎と遠赤外線の属性攻撃でふっくら焼き上げて
カボスの属性攻撃なんかも添えてみようか

皆で美味しくいただくぜ!

※アドリブ歓迎


山梨・玄信
また、魚か…。ムショ行き高校は魚に恨まれでもしておるのか?
………って、お供の妖精、何を解説しておるんじゃ!

【POWを使用】
さて、今回は最初から脱いでおるから全力でぶちかましてやるのじゃ。
空を見上げ「行くぞ、何時もの人!」と言い、神々しい女性を召喚するぞい。(この女性の正体は私も知りません。必要な場合は作った聖山葵MS様にお問い合わせください)。
そして、強風でイワシの群れを吹き飛ばすのじゃ。これで強化が弱体化するはずじゃ。

残った群れは気の放出(範囲攻撃)で叩き落としてやるわい。

何、ギャグなのに普通に戦っているじゃと?
わしは何時でも真面目じゃ。
(などと、黒覆面に褌一丁の男が申しております)




 ムシェ鮭高校の課外授業は、目的地の湖畔に付くまでバスの屋根が半壊するなどのトラブルもあったが、生徒たちに怪我人も途中帰宅組も出ず全員参加のままBBQ会場へと到着していた。
「ふぅ……どうなる事かと思いましたが、何とか無事に辿り着けましたね」
「あの騒ぎの中で運転し続けるって、なにげにあの運転手すげーよな」
 猟兵達の中でも第三者支点で常識人組なヴィクトリア・アイニッヒと鹿村・トーゴが、まだ動くかチェックしているバス運転手を湖畔のBBQ会場から眺めつつ呟けば、トーゴの肩に乗った鸚鵡が。
『引率の先生もでしょ』
 と少女の声でツッコミ、「ですねー」とトーゴが同意し、横のヴィクトリアもうんうんと首を縦に振る。
「まあ、その先生方に聞いたところ、今年は例年に比べればまだましな方だったらしいですよ?」
「え゛……?」
「これで割と平和だなんて、普段の鮭高生はどれだけ猛り狂っているのでしょうかね」
「えっと、それは……」
「(まぁ、以前のアレコレで大体分かってはいたつもりですが……)」
 やれやれと溜息を付くヴィクトリアに、トーゴはアハハと乾いた笑みを浮かべつつ。
「そ、そうだ、さっきバスの中で車に酔ってた奴がいたから、ちょっと見てくるわ。着いた時は半死人だったしな」
「では私はBBQの準備を手伝っておきますね、鮭高生たちでは酷い物が出来そうな予感しかしませんし……」
 そう言って常識人な2人はお互い手を振り別々の場所へと向かうのだった。


「うおおおおおっ!!!!!」
 パンイチ状態で湖へと飛び込んで行った鮭高生たちが同じ雄叫びを挙げながらUターンしてくる。
「ちょ、みんな!? 馬田君!? どうし――」
 皆を見送っていた桜山が事情を聞こうとするも、戻って来る彼らの顔を見れば理由は一目瞭然だった。
『寒過ぎるぅぅぅぅぅぅ!!!』
「だろうねっ!!!」
 BBQ用の鉄板を温めるたき火の周りに集まって暖を取るパンイチ軍団。
「馬田君、BBQ王はどうしたんだい?」
「うるせえっ馬鹿やろう! 死にてーのか!」
「いや、キミ達が勝手に盛り上がって行ったんじゃないか……」
 ガタガタブルブルと火にあたる馬田達にやれやれとジェスチャーな桜山。
 その時だった、火のついてないBBQ用の竈の上に乗り、仁王立ちで高笑いをする黒猫な着ぐるみ1人――否、文月・統哉1人。
「青春なりしBBQ王を目指す若人たちよ! 絶望するにはまだ早い、キミ達の鞄を今一度確かめてみるのだ!」
 ザッとパンイチ軍団に彼らのカバンを投げてよこす黒猫着ぐるみ。
「こ、これは!?」
 それぞれに投げられた自らの鞄には、何かもこもした分厚い服のようなものがめいっぱい詰まっていた。というより、ほぼ教科書すら入れない彼らの薄っぺらい鞄にむりやり詰め込まれた布は3割で、残り7割は口からはみ出てしまっている。
「ちなみに鞄が思ったより小さかったので、中身はこちらの善意で捨てておいたぜ!」
「おいふざけンな! 俺の雑誌が無ぇじゃねーか!」
「俺のエロ本もだ!?」
 ブーブー言うパンイチ軍団だが、統哉は片手で制し鎮めると。
「だが! おかげでソレを入れる事ができた! いうなれば元々鞄の中に有った物は今こそ皆が必要とするソレを得る為に代償となったのだ!」
「そ、そうか、そう言われると仕方がなかった気がしてきたぜ!」
「お、オレもだ」
 俺も俺もと納得が伝搬する鮭高生たち。
 もっとも、冷静な桜山だけは「(明らかに騙される気がするけど……面白いから何も言わないでおこう)」と心の中でツッコミを入れないことを誓うのだった。
 やがて各々が自らのカバンに詰め込まれたソレを取り出し広げてみる。
「こ、これは……!?」
 それは様々な動物の着ぐるみだった。もふもふと柔らかく作られたソレは防寒効果に優れ、ガタガタと震える彼らの身体も心も癒していく。
「こいつは良い!」
 馬の着ぐるみを着た馬田が桜山に自慢すれば、他のパンイチ軍団も次々に着ぐるみに着替え、犬やらアルパカやらカメムシやらそれぞれオンリーワンな着ぐるみに身を包み、いつの間にかパンイチ軍団は着ぐるみ軍団へと変身を遂げたのだった。
「(うんうん!)」
 その光景を満足げに見つめる統哉、≪着ぐるみクラフト≫で頑張って大量生産したかいがあると言うものだ。
「どうだい! 暖かく防寒使用なだけでなく、そのゆるっとしたフォルムもまた荒れがちな心も癒してくれる事間違い無し!」
「おお! ありがとな! えっと……」
「ああ、俺の名前かい? そうだね、俺の事は――」
 キリッと目を(着ぐるみの目を?)を輝かせ、首に撒いた赤いスカーフをたなびかせ。
「着ぐるみ探偵・文月統哉とは――」
「着ぐるみ王か! 解ったぜ!」
「いや、違う、ってか王とか名乗ってないから!」
「みんな! 着ぐるみ王に感謝を! うおーー! 感謝ーー!」
『ありがとよ!』
『最高だぜ着ぐるみ王!!』
 正確に名乗るのに被せて勝手に着ぐるみ王呼ばわりして盛り上がる着ぐるみ軍団たち。
「よっしゃ! この着ぐるみがあれば12月の湖の寒さなんて目じゃねーぜ!」
「ああ、まったくだ! 寒中水泳なんぼのもんよ!」
「行くぞ野郎ども!」
 そう雄叫びを挙げると――。
「うおおおおおっ」と着ぐるみ軍団が湖へと走り出し、次々に12月の寒水へと飛び込んでいく。着ぐるみのまま。
「待つんだみんな! 防寒使用だけど防水仕様じゃないから!!!」
 ドドドッと一気に着ぐるみ軍団がいなくなり、場には統哉と桜山の2人だけが残る。
「あ、僕はBBQに行くんで……」
 じゃっ、と片手を上げ会釈し桜山がBBQの準備が終わった卓の方へと歩いて行く。
 1人残された黒猫着ぐるみは、その背に大きな汗を浮かべ……。
「やっぱ無し無し! そのまま湖は死にに行くようなもんだから!!」
 慌てて着ぐるみ軍団を追って走っていくのだった。


 その一角からは美味しい匂いが立ち昇り、自分達で準備するも失敗した者やそもそも準備が面倒な者達が、自分達もご相伴に預かれないかと鉄板の前へと集まって来ていた。
「はい、焼けた物から渡しますからお皿だけ出して置いて下さいね、生焼けの可能性があるから勝手に鉄板から取らないように」
 その鉄板を仕切っているのはヴィクトリアだった。とりあえずBBQの調理に専念し、その美味しそうな匂いと味で、学生たちが湖に向かわないようこちらに注意を引く作戦であった。
 もちろん、すでに馬鹿な生徒たちは数人で徒党を組んで湖へと向かったと言うが、ある意味でそれ以上の犠牲(?)を出さないでいるのは、ヴィクトリアが誰より早くテキパキとBBQ料理を作り生徒たちをここに釘づけにした結果と言える。
「うわぁ良い匂い! ばーべきゅーだってユキエ。楽しそうだなー」
 再びヴィクトリアのいる鉄板へとやってきたトーゴが鼻をひくつかせて言うと、肩のユキエが。
『楽しい?』
 と少女の声で繰り返す。
「あら、鹿村さん、車酔いの人はもう良いんですか?」
「ん? ああ、なんか一人で静かにしてたいっぽかったから、下手に話しかけない方がいいかなって」
「まぁ、酔いが醒めるまではその方が良いかもしれませんね」
 トーゴの言葉に頷きつつ、ヴィクトリアは鮭のホイル焼きを鉄板の中央から端に避け、菜箸で器用にホイルを破る。
『おおっ!?』
 ホイルの中から現れる鮮やかなキャベツの色と鮭のオレンジ、さらに一緒に入れた玉葱とキノコ類が絶妙なハーモニーの香りを奏で周囲の生徒たちを魅了する。
「これでも料理は得意ですから、調味料もある程度は持ってきていますし、じゃんじゃん作っていくので皆さん食べて下さいね!」
『おおーー!』
 そんな様子を小首をかしげて見ている鸚鵡のユキエを見て。
「お前が食えそうな木の実や果物、さっきバスからくすねといたから」
『それは素敵!』
 自分のバックからそれらを取り出しユキエに食べさせ、微笑むトーゴ。
 そんなトーゴとユキエを見て、生徒の一人がふと――「焼き鳥食いてぇ」と呟く。
 キンッ!
 その生徒の喉元にクナイがいつの間にか当てられ。
「あ、わかってると思うけどユキエは焼き鳥食材じゃねーからな?」
「お、おう、解ってる解ってる……ってか、その鸚鵡は何なんだ?」
「ん? 何って言われても……まー、心の嫁」
『相思相愛!』
 トーゴの言葉にユキエも言葉をかぶせ、トーゴはクナイを戻し生徒を解放する。
「鹿村さん、遊んでないで少し手伝ってくれますか?」
 ――鮭高生をできるだけ多くここに引きつけておくのも目的なので、と小声で伝えるヴィクトリアに、トーゴも腕まくりしBBQを手伝い始める。やってみて解った事だが、トーゴは案外真面目にヴィクトリアをフォローし、料理の手伝いをしている間にめぼしい物が無くなっていく事を嘆く事になるのだった……。


「ムゥ……オレ、少シ反省」
 湖畔のBBQ会場から離れて、独りで木に持たれるように座り込んでいるのはエイリア――ミーグ・スピトゥラスだった。
 四つに開く口をつぼめ、身体を丸くするよう体育座りし両膝に顔をうずめる。
「オレ……何シテル」
 どれもこれも良かれと思ってやった事だった。
 だが、結果的にはどうも迷惑をかけたっぽかった。
 あの人間の中では少し身体が大きいヤツも怒っていた。
 遠くBBQ会場の方から生徒たちの歓声やら怒号やらなにやら楽しそうな声が聞こえてくる。
 だが、自分はその輪に入らない方が良いだろう。
「皆ト離レテ、隅デ大人シクシテル……ソレガ良イ」
 時々波打つ湖畔を見つめつつミーグは呟く。
 どうやら湖には小魚が水面に集まって来ているようで、時々跳ねては魚の背が銀色に光って見える。
「何、悪カッタカ……」
 そんなミーグの横に、ドガッと何かが座る気配がし。
「何も悪くはねぇよ」
「オマエ……」
 それはバスで一悶着あった悪役・商介だった。人間にしては大きな2mもの巨漢が同じように木を背にして座っていた。
「さっきは悪かったな……これ、やるよ」
「ソレ……」
 悪役が渡して来たのはBBQで使う肉だった。肉は1人分が何gか決まっているが、悪役が持って来たのはゆうに6人前はあるようだった。まぁ、1つのテーブルで食べる全員分がまとめて置いてあるのを勝手に持って来たのでその量なのだが、ミーグはそんな事を知らない。
「イイ、ノカ?」
「ああ、俺は(気持ち悪くて)食わねぇからな」
 押し付けるように渡してくる肉を、ミーグは無言で受け取る。
「さっきのお前の独り言……聞いちまってすまねぇな、だが、だからこと言っておく。もう、気にすんな」
 悪役が湖畔の涼し気な空気で胸をいっぱいにするように息を吸いこむ。
「ア、アリガトウ……オレ、ミーグ、ダ」
「……悪役だ」
 目線はお互い湖面に向けたままだが、そこにはお互い見つめ合い認め合ったような空気があった。
「ヘヘ……」
「ふっ……」
 そして――。

 グッチョメチョメチョブチッグメチョグメチョ――。

 ゾッとするような異様な音に、思わず悪役は隣を見てしまう。
 するとそこには、遠く湖を見つめたまま肉を生のままがぶりつくミーグの姿があった。
 それはまるでエイリアンの捕食シーン、綺麗目に言ってもエリート戦闘民族の王子が初登場時に何かの腕だか足だかを食べているシーンのような気持ち悪さだった。
 グフッと酸っぱい物が胃から込み上げてくる感覚に。
「(ざっけんな……っ!)」
 一気に顔色が悪くなる悪役であった。


「説明しようヌギ! ヌギカル☆玄信とは、脱衣の国ヌギヌギランドからやって来た脱衣の戦士ヌギ!」
 唐突に始まる解説。
「ヌギカル☆玄信は脱ぐ事で真の力を発揮し、色んな世界の平和を守ってきた正義の使者なのだヌギよ!」
 堂々と解説を言い切る高柳・零。
 その手にはBBQで焼いて貰った焼きトウモロコシとジュースが握られていた。
「零………じゃない、お供の妖精! お主、今更何を解説しておるんじゃ!」
 そこにツッコミを入れるは褌一丁の山梨・玄信。もちろん玄信の手にも肉と野菜を焼いた串とジュースが握られている。
「いやー、前回、すっかり解説を忘れてたヌギよー」
「だからと言って今言う必要無かろう」
「様式美は大事ヌギ」
「そういうもんかのぅ……?」
 言い合いながらBBQを堪能する2人。
 と、そんな2人が眺めているのはBBQの鉄板ではなく、湖の方であった。
 あきらかにオブリビオンの気配があり、それらは小型ながら群れをなして湖の中を回遊しているようだった。
「まだまだヌギカル☆玄信の出番は終わってないヌギ」
「うむ、そのようじゃな」
 玄信がどこからか(と言っても褌一丁だったので……いや、深く考えるのはよそう)三角頭巾を取り出し装着。
「また魚か……リア充どもの食事にさせる訳にはいかん」
「さすがヌギ!」
「とはいえ……ムシェ鮭高校は魚に恨まれでもしておるのか? なんでこうも魚ばかり……」
 そうは言うが、事前のグリモア猟兵による説明によれば、鮭のオブリビオンが復活したのを察知した別の強力なオブリビオンが、鮭のオブリビオンを迎えに来ようとしている……との話だったので、魚類が魚類を求めるのはそこまで不思議な事では無い気もする……類は友を呼ぶ的な意味で。たぶん。メイビー。
「兎に角、弱そうな魚の群れを殲滅するぞい」
「鰯だけにヌギな!」
 そう言って一気に両手に持った食べ物を食べきり、ジュースを喉に流し込むと、2人は湖へと向かったのだった。


「……足リナイ、1人分ナノニ、チットモ足リナイ」
 実際には6人前の生肉を貪り食ったにもかかわらず、足りないと呟くミーグ。
 まぁ身長3m近いバイオモンスターにすれば、人間の6人前など足りないのかもしれないが……。
「カト言ッテ、皆ガ食ベル分ノ肉ヲ貰ウ訳ニハイカナイ……」
 そうだ、困った時には友に聞けと、住んでる島で仲良くなった(?)住民たちが言っていたのを思い出す。
「教エテクレ悪役商介、オレハ、ドウスレバイイ?」
 そう隣に座る友人の顔を振り返り……。
「悪役商介!? 大丈夫カ!?」
 そこには顔中から冷や汗をかき、倒れている悪役がいた。
 どうやら自分が生肉に夢中になっている間に倒れていたらしい。
「ハッ!? マサカ、オ前……」
 ある事に気がつきハッとするミーグ。
「オ前、オ前マサカ……ハラガ減ッテタ、ノカ」
 そうだ、こいつはオレの為に自分の分の肉を持って来てくれた。1人分がこんな少ないのに、自分の分すら食べられなかったのなら空腹で倒れてもおかしくない。
 人間は時に自分の身を犠牲にしても他人に尽くす事がある。
「オ前、悪役商介……待ッテロ」
 そう言うとミーグは立ち上がる。食べ物が無いなら狩れば良い。
「コノ湖ニ魚ハ居ルハズ……ソレ、泳ギナガラ、オレ食ベル――ジャナイ、食ベナガラ、ツイデニ、オ前ノ分、獲ッテ来ル」
 そして湖に向かって数歩進んだ所で一度足を止め振り返ると、木の下で横たわる悪役を見つめ。
「オ前、喜ブ……ソレ、オレモ嬉シイ」
 そう言い残しミーグは湖へとザブザブと入っていくのだった。
 もっとも……1人残された倒れたままの悪役は――。
「………………(いや、腹が減ったんじゃなく、また酔いがぶり返して来ただけ)」
 結局ミーグに何も言えず、そのままトドのように横たわり続ける悪役であった。


「やれやれ、一仕事したらまたお腹が空いてきたな」
 統哉は着ぐるみのまま湖でバシャバシャする鮭高生たちを眺めつつ、疲れたぜ、と腕や肩を回す。
 と、言うのも、統哉が渡した着ぐるみのまま湖へ飛び込んだ彼らは、ぐっしょりと水を吸って重くなった着ぐるみに全員が溺れかかけ、それを救出し、さらに再度≪着ぐるみクラフト≫を使用し、今度は防水機能までつけた着ぐるみを作成し再配布したのだ。ユーベルコードの連続使用程度では疲れないが、1人1人違うモチーフ(かつ先ほど使わなかったモチーフ)を考えるのが意外に大変だったのだ。
「でも、休むにはまだ早いんだよな」
 統哉は着ぐるみ軍団に背を向け、逆の方角へと向き直り、意識を集中させる。
「……来るっ!」
 それは鰯オブリビオンの群れが回遊してくる方向だった。鰯たちが騒ぐ着ぐるみ軍団に気が付き襲ってくるなら――の方向で統哉は待ち構えていたのだ。
「まずは…――」
 バッサーッ!
 きめ細かい網を投擲する統哉、着ぐるみ軍団を狙って来たほぼ8割方の鰯たちを捕える。
「ほいさっ!」
 投網を絞って一網打尽にしつつ一気に持ち上げると、事前に網糸に張り巡らせていた塩の属性攻撃が時間差で発動、網の糸で擦れて傷がついた鰯の身に塩が擦り込まれる。
「後で炎と遠赤外線の属性攻撃も併用してふっくら焼き上げるから安心しな? おっと、カボスの属性攻撃なんかを添えるのも悪くないな」
 ジュルリと黒猫(着ぐるみ)が垂れそうになる涎を腕で拭うようなジェスチャーをし。
「皆で美味しくいただくぜ!」
 そのまま大量の鰯を担いでBBQ会場へと戻るのであった……。
 もちろん、猟兵にやられっぱなしのオブリビオン達では無い。捕まった網の穴からすり抜けた仲間や、先の爆発漁で逝ったまま放置された仲間を食らってパワーアップを目指す鰯たち。
 だが――。
「させないよ?」
 外から水の中へとクナイが投げ込まれ、共食いでのパワーアップを狙った鰯たちが次々に力を手にする前にプカーと水面に漂い始める。
 それはトーゴの放ったクナイだった。すでに他の猟兵によって大ざっぱには倒されていたが、だからこそ打ち漏らし達が仲間を共食いし強化される危険性は高かった。
 それを1匹1匹、狙いすましたようにクナイでトドメを刺して回っているのだ。
 敵が鰯だと油断してくれるならオブリビオン達も活躍の目途が立っただろう。だが、トーゴのように油断せず処理するような相手はまさに天敵と言えた。
「さーて、次はどいつかなぁ……っと」
 もっとも、サムライエンパイアは忍びの里出身のトーゴにとって、相手が誰であろうと油断などしようはずもなかったのだが……。

「え、食材が足りない?」
 BBQ場で料理の腕を振るい続けるヴィクトリアが声をあげる。
 鮭高生たちの被害を最小限にとどめる為、ヴィクトリアが料理の腕で足止めする作戦は大成功を収めていたが、その分、持って来た食材だけでは足りず、途中でゲットした鮭の身も存分に投入して作っていたつもりだったのだが……。
「じゃあ、そろそろ自分の卓(鉄板)に戻って食うか?」
「それには及びませんよ?」
 三々五々解散しようとする鮭高生たちをヴィクトリアが止める。
「なぜなら、そこの湖畔に食材ならたくさん泳いでいるではないですか。イワシも良い味のお魚ですよ?」
「え? でも今から捕りに行くのは……」
「それも大丈夫です……とりあえず、えいっ」
 唐突に光剣を投擲しこちらに飛んできていた鰯オブリビオンを突き刺す。ヴィクトリアのすぐ近くに串にささった焼き鳥のように、光の剣に刺さった数匹の鰯が転がる。
『おおっ!?』
「では鰯料理と参りましょう」
 ヴィクトリアは再び生徒たちを料理に釘づけに始める。
 チラと見れば時折、先ほどのように湖から飛び出して来た鰯が、文字通り空を泳いで来て集団でいるこちらに飛びかかって来るが、テレビウムの零がオーラと盾で鮭高生たちに被害が出ないよう常に防御――叩き落として被害をゼロにしているのだった。
 零が居る限りここに集まっている生徒たちは安全だろう。
 そんな生徒の護りの要となっている零だが、本音として――。
「湖と言ったら電気を使う怪獣が定番ヌギ! 大体、イワシは海水魚ヌギ。空気を読んでほしいヌギ」
 と、グチグチ言いながら戦っていた。どうにも本人の琴線的に鰯は違うらしい。
 そんな零が飛んで来る鰯が途切れたタイミングで、両手を前……湖の方へと突き出す。
「天よ邪なる力を封じたまえ――≪ジャッジメント・クルセイド改≫」
 突き出した十の指先から光条が放たれ、それは湖の上空で範囲攻撃に――更に細分化するとそのまま湖へと数十本の光条が着弾する。
「かなり巻き込んだはず。さあ、玄信。敵の数は減ったヌギ。一気に片付けるヌギ!」
 零のその言葉を聞き、湖にて褌一丁で佇んでいたヌギカル☆玄信がスッと目を見開く。
「さて、今回は最初から脱いでおるから全力でぶちかましてやるのじゃ」
 玄信はスッと空を仰ぎ。
「行くぞ、何時もの人! 来たれ! ≪脱衣の国より来たりしもの≫!!!」
 玄信の言葉に……とくにユーベルコード名にガタリと鮭高生たちのうち男性学生たちが反応する。無論、この時点では脱衣の国から来るのが男性か女性か動物かすら不明なのだが、男性高校生とはそういうものだ。
 そして、玄信が召喚したのは皆の期待通り――。
『玄信、わたくしも戦いましょう。さぁ、共に正義をなすのです』
 そう、神々しい女性であった。
 鮭高生たちかの歓声が上がる。
 だが、その神々しい女性がどんな姿なのか、美人なのか、服を着ているのか、その辺りは作成者である聖山葵なる人物に直接聞いて貰うとして、少なくとも良い子のリプレイたる当現場では詳細を省かせて頂こう!
 轟ッ!
 神々しい女性が着衣を吹き飛ばすほどの突風を巻き起こし、群れていた鰯たちが散り散りになる。
「今じゃ!」
 そこに玄信が連続で気弾を撃ちこみ、まとめて鰯たちを撃ち落とす。
 やがてグミ撃ちが終わると、パラパラと鰯たちの破片が湖面に散乱し、それが鰯たちとの戦いの終幕となったのだった。
 なんとも見た目と反するドシリアスな演出である。
「誰ぞ、ギャグなのに普通に戦っていると言っておるな……じゃが、わしは何時でも大真面目じゃ!」
 三角頭巾に褌一丁でキランッと決める玄信であった。


「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
 着ぐるみ軍団が悲鳴と共に湖から飛び出してくる。
 湖の中の鰯オブリビオン達は掃討が完了している今、一体何に驚いて上って来たのか……。
「どうしたんだい、馬田君」
 ロバの着ぐるみを着ていた馬田が、鰯を頬張る桜山の両肩を持つと。
「出た、出たんだよ!」
「いや、落ち着いてよ。一体何が出たんだい?」
「そりゃ、見るも恐ろしい悪魔のごとき……」
 そう言ってる間に、湖面が波打ち何かがゆっくり上がって来る。
「ひぃぃ、追ってきやがった!?」
 桜山の背後に隠れる馬田。
「嫌、この学校に来ていろんなのを見たけど、もう本当、ぜんぜん、余裕で何が出て来ても驚かないんだけど……」
「お前はアレを見てねーからそんな事が言えるんだよ!!!」
 馬田の叫びと共に、ザバーッと大量の水を滴らせ、恐怖の対象が湖から姿を現す。
 それはヤゴのように口が4方向に開き、そのどれにも牙が並び、そんな口の端には鰯の身が引っかかっている。
 3m近い巨躯に、股間部から伸びる尻尾のような触手のような器官はキョロキョロと。
 そして――。
「湖ニモ鰯ガ居ルノダナ、オレ、ビックリシタ。デモ、イッパイ捕マエタ、コレナラ皆、喜ブ」
 エイリアン――ミーグ・スピトゥラスがその姿を現す。
 そして……。
「なんだ……バスの中で見たアレがでけーやつじゃねーか」
「驚いて損したぜ、水の中で見たから化けモンかと思ったじゃねーか」
「おい、お前もBBQするだろ?」
 日の下でミーグの姿を見て、同じ学校のメンバーだと認識した鮭高生たちが次々にミーグを認めてフレンドリーに話し出す。
「けっ、脅かしやがって」
「だから言ったじゃないか、もうこの学校で驚くような事は無いって」
「ああ、まったくだ」
 桜山の言葉に馬田が後頭部をかきつつ納得する。
 これぞギャグ空間での一番の問題……つまり、出落ちキャラの二番煎じ問題であった。
「悪役……ドコダ?」
 もっとも、当人はそんな事気にせず、腹が減って倒れた(と思っている)友人をノシノシと探しに行くのだった。


 高校生たちのガッツキタイムが終わり、BBQはまったりタイムが始まっていた。
 料理をしっぱなしだったヴィクトリアなども、やっと落ち着いて料理に有りつけるようになり、トーゴなどはこっそり隠していた自前の肉と南瓜、それにおにぎりを鉄板で誰に取られる心配も無く焼いている。
 生徒たちも食べるより喋る、飲む、にシフトし、特に統哉などは着ぐるみ軍団の生徒たちに囲まれ、それぞれ感謝を言われているようだった。
「にゃはは、礼には及ばないさ? これもまた着ぐるみ普及の第一歩だからな!」
「おお、そうなのか!」
「その通り! 先ずは鮭高の制服を着ぐるみに! やがては世界の制服に! 目指せ、着ぐるみが世界制服!」
「おおー!」
 統哉の宣言に歓声があがり、さらに気を良くした統哉がジュースを一気飲みし笑いだす。
 一方、鉄板の上には弱火で焼かれ続ける大量の鰯が乗っており、さらに地面に置かれた数杯のバケツには余った鰯が入れられていた。さすがに鰯は量が多過ぎて残ったらしい。
「鰯は足が速いヌギ、この大量の鰯は干して犬神藩に持って帰るヌギ。姫様もきっと喜ぶヌギ」
 そんな中、零だけはバケツから次々に鰯を取り出し、干し魚へと加工していくのだった。


 湖面に浮かぶ残骸たち……。
 それは湖に小さな飛行機が墜落したなら、そんな残骸となったかもしれなかった。
 無論、生存者など誰一人いないと想像に難く無く。
 残骸以外にもよく見れば、散乱する鱗に飛び散る肉片、人とは思えない死骸たち……。

 この悲惨な事故がどの様に起こってしまったのか……その原因を究明します。
 おいおい、どうせフィクションなんだろう?
 また作り話かよ?
 そう、チャチャを入れる者達もいるだろうが……。

「初めての運用だったんです」
 それは事故調査員アラン・K・アジーノ(仮名)さんの言葉だった。
「新しい機能を使うには無理な状態だったと言えます。でも顧客はとても急いでおり……」
 つまり、事故を起こすリスクは往々に高まっていたとされる。
 アラン調査員は大仰なポーズで語る。
「正直、無謀だったとしか思えません」
 これは実際の事件現場の写真である。
 ――巨大な鮭、群れ為す鰯。
「なんていうか……その……ミートボールのような……」
 言葉を濁す調査員。
 そこには散乱する鱗に、飛び散る肉片が――。

 "This is a true story. It is based on official reports and eyewitness accounts."
(これは、調査報告書、目撃証言等に基づいて再現された、真実のストーリーです)

 これを見た者達が言う言葉は解っています。
「フィクションじゃないのかよ! 騙された!」
「お前らいつも騙されてるな」
 ――と……。

 『タイトル:交通サービスシステム事故の真実と真相』

 令和元年12月某日、某県の湖畔に繋がる山道に自動・販売機は落ちていた。
 その横に並ぶはブラックタールの魔王、名前をリトルリドル・ブラックモアと言った。
 気候は晴れ、山の中腹である事も含め気温は低め、冬らしく乾いた空気が漂っている。
「まおーサマをナメんなよオマエら……さっき買ったワルな凶器でシメにいくかんなっ!」
 リトルリドルが手にしたチェーンソーを振り回す。
 その時だ、ふと視線が横にある自動販売機に記載された見慣れぬ機能に焦点が合う。
「ン? ナンだ自動販売機の新機能?」
 それは自動販売機がタクシーに変形――トランスフォーム――するような図解だった。
 その様子はまおー心にワクワクが首をもたげる。
 だが、ボタン一つで変形するわけではなく、良く見れば料金を支払う必要があり、その料金は目的地までの距離によって自動算出されるようだ。
「皆が行った湖まで行きたいぜ!」
 リトルリドルの声を自動認識したのか、金額が表示される。
『目的地までの予想金額はこの様になっています。ご利用になりますか?』
「……運賃たけー!! 無理だーー!」
 思わず本音が出るリトルリドル。
 だが、そこで諦めるようならまおーは名乗らない。
 リトルリドルは自動販売機を横倒しにし、その上へとピョンと乗ると。
「おこづかいは足りねー……でも、オレサマ、ワルだからタダ乗りしてやるぜ!」
 そう言ってニヤリと笑うと、ポケットからまおー銀行発行のおもちゃの札を取り出し、自動販売機の金額投入口へと差し込む。
「くっ、戻ってくるな! 銀行の金だぞ! 入れ入れ! えいっ、えいっ、よし!」
 強引にねじ込む。

 この映像を見ている皆がどんなコメントを流すか想像に難くない。
 そう、後に事故調査員アラン・K・アジーノ(仮名)も同様の考えだったらしく――。
「あの時、リトルリドル氏は後部座席に乗っていました」
 それが問題だったと?
「いえ、そこは問題ではありません。ただ彼は、その時手にチェーンソーを持っていたんです。乗り物に乗る時に相応しい状態だったとは言えません」
 ゆっくり大げさに首を横に振るアラン調査員。
 果たしてこれが事故の原因なのでしょうか……。

 お金(おもちゃだが)を入れた事で、支払いが終わったと認識され自動販売機のユーベルコード≪交通サービスシステム≫が動き出す。
 横倒しの自動販売機に乗ったリトルリドルにも振動が伝わって来て、変形に胸がドキドキし始める。
 だが、この時の≪交通サービスシステム≫の成功率はわずか56%を切っており、事実、運搬搭乗ユニットは出現せず、自動販売機はゴゴゴと振動するだけでシステムは起動せずに終わっていたのだ。
「よし、変形してない気がするけど……出発だー!」
 リトルリドルがチェーンソーで地面を叩き、強引に自分が乗っている自動販売機を道から横の崖へと滑らせる。
 そのまま崖の斜面を滑り始め、スピードを上げて行く自動販売機。
「おお、スゲー! はえーぜ!」
 はしゃぐリトルリドル。
 そして――。
「ヨッシャ、おいついた! おりるぞ!」
 崖の斜面を下る勢いのまま、なんやかんやで湖畔のBBQ場へと滑り込んでくる自動販売機(とリトルリドル)。
「……ンン? ヤベ、とまらねー!」
 やっぱニセ札いれたのマズかったか? と今更ながらに気が付くリトルリドル。
「おい、そっちは子分どもがBBQしてる方……クソッ、ここはオレサマが運転するしかねー!」
 横倒しのまますべっていく自動販売機の先頭に座り、ハンドルを握ろうとするリトルリドル。
「ハンドルねーじゃん!!!」
 そう、それはただの横倒しの自動販売機だった。ハンドルなどもちろんついているはずがない。
 それは緊急不時着を試みた飛行機のようにBBQ場を滑って行き、途中、お土産に確保しておいた大量の鰯が入った籠に追突、しかし勢いは止まらず湖へ……。
「なんで鰯が……ギャワーッ!!!」
 最後に浜辺で何かに乗り上げたのか、自動販売機は宙を舞い、そのまま凄い勢いでバシャーンと湖面に叩きつけられる。
 湖面に浮かぶ残骸たち……。
「や、やーらーれーたー……な、なんでオレサマばっかこんな目に……」
 無論、生存者など誰一人いないと想像に難く無く。
 残骸以外にもよく見れば、散乱する鱗に飛び散る肉片、人とは思えない死骸たち……。
 だが、しぶとく生きていたリトルリドルは、湖面から顔を出しこう言ったのだった。
「くそぅ、こうなったらチェーンソーをふやしてヤツあたりだコノヤロー!」
 まおーのジツリョクによって増やしたチェーンソーを二刀流で装備し、そう叫ぶリトルリドル。
 彼がチェーンソーを持ち続ける限り、再びこのような事故が起こる可能性は否定できないのであった……。

「で、なんでメーデー遊びしてるんだろう?」
「したかったんじゃね?」
 BBQを頬張りつつ、桜山と馬田がリトルリドル達を見つつ呟く。
 たぶんその予測は正しい。そしてそのネタがどこまでウケるかもわからない。
 だがこれは、真実のプレイングから導き出されたストーリーである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『サメ』

POW   :    サメは潜航する
【地形に姿を隠した状態からの不意打ち】が命中した対象に対し、高威力高命中の【噛み付き】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    サメは飛行する
全身を【任意の属性】で覆い、自身の【サメ力(ちから)】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
WIZ   :    サメは仲間を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【の任意の属性のサメ】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

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●三章の冒頭について
週中前後あたりに追記します。

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●三章のプレイングについて
三章は邪神の『サメ』を倒して貰います。
とはいえ、それに縛られずプレイングは自由にどうぞ。
基本的にギャグの世界は続いています。
隙にBBQしても構いません。

●BOSS『サメ』
巨大なBOSSサメと、BOSSサメが呼び出した仲間サメたちがいます。
BOSSサメは7mくらい。仲間サメは2mくらいです。

●ムシェ鮭高校の生徒達
大変な中でも自由にやっています。

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 ソレに気がついたのは誰が一番早かったのか……。
 湖面に目を向ければ、いつの間にか湖に巨大な渦が出来上がっていた。
 それは大量に回遊していた鰯たちが行なった真の目的であり、自らより上位種をここに顕現させるべく作られたゲートであった。
 湖面に出来た大渦が僅かに輝き出し、いつの間にか空は大きな黒い雲が覆う。
 そして――。
 ズアアァァァァァァァアアアッ!!!
 大きな音を立て湖の水が空へと螺旋を描きながら昇っていく。
 それは湖に飛来した竜巻が湖の水を吸い上げていくように、水の巨大な竜巻が湖中央に現れたのだ。

 暗くなってきた空模様に、湖畔でBBQを楽しんでいたムシェ鮭高校の生徒たちも、いつ切り上げられてもおかしくないなと思い始めた頃、その男――腕っぷしで皆から一目置かれた存在、悪役・商介(あくやく・しょうすけ)が皆の元へと戻ってくる。
「あ、悪役くん、機嫌はもう良いのか?」
「………………」
 行きのバスで酔って気分が悪いのでBBQ場から離れていたのだが、皆は純粋に自分が『気分』でなく『機嫌』が悪いと思っているようで、そのように接してくる。
 もっとも、悪役自身はわざわざ弁明するのも面倒で、寄ってくる者を無言で睨みつけて追い払っていたのだが……。
「悪役くん、魚焼けたけど、どう?」
「トウモロコシもあるぜ?」
「さ――ジュース何が良いよ?」
 どいつもこいつもまだ完全に酔いが治ったわけじゃねーのに、勝手に話しかけてきやがって……。
 悪役は無言のままドシンドシン歩くと、ふと目に入ったソレを手にする。
「悪役くん、チェーンソーなんて拾ってどうする――」
 悪役は思いっきりチェーンソーのエンジンを掛け、チェーンソーを持ったまま振り向く。
「うるせーって言ってんだよ!」
 瞬間、どこからか振って来た小型のサメが、偶然にも悪役が持つチェーンソーの刃にツッコんでいくように二枚に卸される。
「なっ! さすが悪役君、スゲーや!」
「あぁあっ!?」
 当の悪役は突然のサメに当惑していたが、周囲の生徒たちがすぐにサメの原因を突き止める。
「見ろ! 湖に水の竜巻が!」
「なんだあの竜巻、竜巻の中にサメが、竜巻の周囲の風にも大量のサメがいるぞ!」
「これは……シャークネ――」
 そして次の瞬間、先ほどと同じく風に乗って空からサメが降って来るのだった。
涼風・穹
竜巻に鮫となるとチェーンソーしかないな
今こそ俺の《贋作者》の力を活かす時だ
片っ端から斬ってやるぜ

……しかし問題が一つある
鮭や鰯と違って鮫は食べるにしても色々と手間がかかるらしいから単純に切って焼けば美味しく食べられるというものでもないらしいけど、俺には鮫の調理方法は分からんから鮫の切り身は無駄になるだけだな…
都合良く鮫を調理できる方がいたりしないもんかねぇ…?

……いや待て
海に潜って銛で魚を突いてとったどー!と叫ぶ芸人が鮫を油で揚げて食べていたし、案外食べられるのかも…?
誰かが調理してくれるか、適当に焼いて食べて問題なさそうなら鮭高生達にBBQ食材として提供します
まあ色々とネタにはなるだろうしな


アリシア・マクリントック
今度は大きなサメの群れですね、って空を飛ぶんですか!?私は飛べませんし……どうしましょう。

セイレーンキーが輝いて……こうなったら一か八かです!セイレーンアーマーを纏って湖に飛び込みます。そして……
感じます。新たな力……セイレーンアーマー・神話形態!この翼ある姿が本来の姿なのですね。これなら空でも戦えます!いざ!

「♪さぁ手を 取り合い開いた 世界を映すのは
他の誰でもない 私だと叫んで 触れたもの全てが 未来になっていく
ただ突き進んで行くのも 悪くないでしょ? My way」
この歌とともに未来を斬り開きます!


黒木・摩那
サメ?
サメなの?

サケ、イワシと来たら次はカツオとか、マグロでしょ。
肉ならば牛とか、豚。鴨葱とかもあり。

だけどサメ。
サメじゃ蒲鉾やフカヒレにするのも、
加工しないといけないじゃないですか。

あぁ、せっかく次も食べられるものだと思っていたのに、サメなんて……orz

サメに逆ギレです。
この怒りをそのままぶつけてあげます。

ヨーヨーをチェーンソーに巻き付けて、
それを【念動力】で操作して、サメに叩きつけます【なぎ払い】。

せめて、フカヒレだけは回収しておきましょうか。


ヴィクトリア・アイニッヒ
(残った鮭や鰯やその他諸々の食材を焼き上げ、後片付けの準備を進めつつ)
何やら騒がしいですね。気がついたら空も暗いですし。
…え、サメ? そう言えばサメ料理も中々のお味と…え、違う?
空から? 降って? サメが???
と、ともかく。まずはこの場にいる鮭高の皆の安全を確保しなければ。

小型のサメの数は中々厄介ですね。空から降ってくるのがまた嫌らしい…
ならばこちらも数で対抗しましょう。
主への祈りを捧げまして…

「主よ。この降り注ぐサメを打ち払う力を与え給え!」

光剣の残弾は十分。これだけあれば降り注ぐサメを排除することも適うでしょう。
とりあえず、最初の一撃は…えいっ!(三回連続三回目の光剣投擲

※アドリブ歓迎です




 大勢の鮭高生たちを集めたヴィクトリア・アイニッヒの取り仕切るBBQ卓は、集まった学生たちがほぼ皆満足したのか、一時の騒々しさが嘘のように静かになっていた。もちろん、勤勉なヴィクトリアは静かになっている今の間に、放り出された皿や箸を片付け、焦げた鉄板の清掃をしてと、テキパキ余念がない。
 と、その時だ。周囲の学生達がBBQ時とは微妙に違うような騒ぎ方をし出した事に気が付く。
「何やら騒がしいですね……あら、気がついたら空も暗いですし」
 周囲に気を配れば空を見上げる学生たち、確かにいつの間にか暗くなっているが……。
 そこで唐突に聞こえてくる声は「サメだ!」「振って来た!」「シャークがネードから!」と。
「空から? 降って? サメが???」
 学生たちの指差す方をよく見れば、竜巻が湖から水を吸い上げ、曇天の空からは何かが……そう、サメが降って来るではないか!
「なっ!?」
 あまりの事に思わず驚いてしまったが、すぐさま学生たちの身を案じ。
「皆さん! 早く湖畔から離れて下さい! 可能なら屋根のあるバスの中に避難を!!」
「俺達が乗って来たバスは屋根が吹っ飛んでて無ーぞー!?」
 ヴィクトリアの言葉にすぐさま学生がツッコミを入れる。
「ああ、そうでした……いや、でも、兎に角できるだけここから離れて下さいっ!!!」
 ヴィクトリアが鮭高生たちに避難指示を出し、さすがの非常識な事態に鮭高の生徒も大概がそれに従うが……。
「おい、あいつ、浜辺から一歩も動いてないけど大丈夫なのか!?」
 学生の1人が浜辺でよつんばになって身じろぎしない女性を指差しヴィクトリアに告げる。
「ああ、解りました。あの人は私がなんとかします、だからあなた達は避難を」
「りょ、了解だぜ!」
 すたこらさっさと逃げ出す鮭高生をチラと見送ると、浜辺の女性へ駆け寄るヴィクトリア。
 だが、女性に近づくにつれ聞こえてくるは慟哭の声。
「サメ? サメなの?」
 湖畔の浜辺にがっくりと両膝両手を付き慟哭する女性、それは黒木・摩那であった。
「サケ、イワシと来たら……次はカツオとか、マグロでしょ……。もちろん、予想を良い方に裏切って肉ならば牛とか、豚、鴨葱とかもありなのに……」
 グググッと立ち上がる摩那。
「だけどサメ! サメじゃ蒲鉾やフカヒレにするのも、加工しないといけないじゃないですか!」
 そのまま両手の拳を握りしめ、空を泳ぐ(?)サメたちがいる天に向かって叫ぶ。
「せっかく! せっかく次も食べられるものだと思っていたのにーーー!!!」
 がっくり。
「サメなんて……」
「あの、内心はお察ししますが……」
 お察しするらしい。
「でも、とりあえず今は空から降って来るサメたちを何とかしませんと」
 続けて行ったヴィクトリアの言葉に、摩那ははぁぁぁ……と深くため息をつきつつ「そだねー」と返事するのだった。


「今度は大きなサメの群れですね」
 キッと天空を睨み呟くはアリシア・マクリントック。
 その視線の先には悠然と……ではなく、風に翻弄されたまま風圧が無くなった者から落下を始めるサメたちの群れがあった。
 だが問題が1つ。
 ビュウビュウと巻き起こる渦から発生した竜巻は、その強風でサメたちを中々大地へ落下させない。もちろん、時に落下してくるサメもいるのだが、空を見上げればその大半が今だに空中を漂っているのが解る。
「空を飛ぶってなんですか!? 私だった飛べはしませんのに……いえ、というか本当にどうしましょう」
 サメが暴風によって空に舞いあげられているこのバカげた状況を一笑に付す事はできる。だが、実際に空に舞い上がらねば、あのサメの群れを何とかできそうになかった。
 もちろん、時折落下してくるサメを迎撃するという手もあるが、それでは根本的な解決にはほど遠いし、何より時間がかかる……それはもしかしたら自分達の手の届かない場所で一般人に被害が出る事に繋がるかもしれないのだ。
 最短を理解しつつそれができない自分の力の無さに、アリシアは拳を握りしめる。
 と、その時だった。
「これは……!?」
 アリシアの持っているセイレーンキーが光り輝き、まるで何かを語り掛けてくるかのように――。
「こうなったら一か八かです!」
――Gate open――
 目の前に現れた扉をくぐりセイバーギアへと変身すると、躊躇なく湖へと飛び込むアリシア。
 白く小さな泡たちと共に水の中へ身を投じつつ、アリシアは全身でソレを感じていた。
 今までにない……新たな力を!
「セイバーギア・フォームチェンジ! セイレーンアーマー・神話形態!」
 次の瞬間、湖から光が程走り水柱がまき立つ。
 そして光と水柱が収まったその時、湖の上、空中に浮遊するは輝かしい翼持つセイレーンアーマーに身を包んだアリシアだった。
「この翼ある姿が本来の姿なのですね」
 アリシアが力を確かめるよう一度自分の身を見下ろし、目線だけ上に、そのまま顔ごと、キッと天を睨む。
「これなら、空でも戦えます! いざ!」
 ゴウッと湖を蹴るよう飛びあがり、神話の力まで高まったセイレーンアーマーに身を包んだアリシアは、サメたちが漂う天へと飛翔する。

 ギュララララララララッ!
 回転刃音を高々に、チェーンソーを振り回して振って来るサメを切りまくるは涼風・穹。
 今だ逃げ遅れている鮭高生たちの元へ、宇宙バイクのスカーレット・タイフーン・エクセレントガンマで駆けつけ、片手に持ったチェーンソーで襲い来るサメを切り裂き続ける。
「早く逃げろ!」
 鮭高生にそう告げ、穹は再びバイクを走らせ別の学生を助けに。
 もちろん、バイクを走らせている間も空から狙い目がけて落ちてきているかのようなサメたちを片手一本のチェーンソーで斬り裂く事を辞めない。
「いくらでも来いっ! 片っ端から斬ってやるぜ!!」
 だが、何人目かの生徒を助けた所で、次に向かおうとした穹は思わず空を見つめ逡巡する。
 進路上に降り注ぐ予定のサメたちが、圧倒的に多かったのだ。直線距離で向かえば、確実にどこかで手が足りなくなりサメに……。
 その時だ、そのピンチに引かれて来たかのように可憐な歌声が聞こえてきたのは。
「――……合い開いた世界を映すのは他の誰でもない――」
 それはアリシアの歌声だった。
 天上で歌っているにも関わらず、その神代の詩は何者にも邪魔されず地上へと響き渡る。
「行くぞ相棒!」
 その歌声を聞いて迷いなく直線距離をバイクで走り出す穹。
 その頭上で降りてくる予定のサメたちがズババババッと花火のように破裂していく。
「――触れたもの全てが未来になって……」
 それは一条の光となって空のサメたちを粉砕していくアリシアだった。
 穹の行動は仲間を、アリシアを信じるが故のもの。
 アリシアは穹の進路を阻もうとしたサメたちを一気に片付け、そのまま空で急停止する。
「まだまだいますね……ですが、この歌と共に未来を斬り開きます!」
 チラと穹が生徒を助けたのを目の端に捕え、再び振り返り別の群れへと視線を向けると。
「聞かせてあげましょう……この胸に浮かぶ歌を。響け!神代のメロディ」
 アリシアは胸の奥に浮かび上がる詩を高らかに歌い上げながら、次の群れへと突っ込んでいくのだった。

 ズドドドドドドドツ!
 地上では鈍器で殴られたような音が連続で鳴り響き、ぐるりと輪になっていたサメたちが軒並みぶっ倒れる。
 その輪の中心に独り立つは――。
「私は苛立っているのです! この程度では収まりません」
 怒りからか摩那の口調がいつもより丁寧になっていた。
 その手にはヨーヨーが構えられ、それによってサメたちを滅多打ちにしていたのだが……。
「まだです、私の怒りはまだ収まりません……」
 と、そこにクルクルクルズシャッ! と足元の砂に突き刺さるはチェーンソー。
 ニヤリと摩那が笑みを浮かべる。
 ギャリギャリギャリギャリッ!!!
 摩那はチェーンソーのエンジンを付けるとヨーヨーに結び付け。
「はっ!」
 フワリと浮かび出すチェーンソー、それは摩那の念動力による力だった。
「上だ!」
 唐突に穹の声がかけられ、摩那が空を仰ぐ。
 空からは複数のサメたちが狙いすましたかのように摩那へと向かって振って来ていた。
 ブンブンッ、グルングルングルングルンッ! 轟ッ!!!
 少しずつ速くなっていき、やがて目に見えないほどの速さでチェーンソーヨーヨーをドーム状に振り回し始める。
 そして――。
『シャーーーーーッ、クッ!!!』
 空から降って来たサメたちがドームに触れた瞬間から血煙となって粉砕され。
 パシッ、と狙いすまし振って来た全てのサメたちを粉砕した摩那は、ドームを解除しそれぞれの手にヨーヨーとチェーンソーを持つと、口許に笑みを浮かべさせながら次の獲物――八つ当たり先を探して歩き出すのだった。

「主よ。この降り注ぐサメを打ち払う力を与え給え!」
 空に向かって放たれる光の剣の数は3本の≪神威の光剣(ラ・スパーダ・ディ・マエスタ)≫、ヴィクトリアの信仰する太陽神よりもたらされた悪意を祓う神意の具現化だ。
 出来るだけの避難を行なった後、ヴィクトリアは空から襲い掛かって来るサメたちを光剣にて次々に串刺しにしていた。
「それにしても……小型のサメたちは中々厄介ですね。空から降って来るのがまたいやらしいですし……」
 せめて数には数で対抗しようと光剣を連発して排除にかかっているが――。
 ビチビチビチッ!
 迎撃を逃れた、または別の場所で降ってから砂浜を這って来たサメが砂を蹴って飛び込んでくる。
「(祈っていては間に合わない!?)」
 視界がスローモーションとなる中でヴィクトリアは冷静に判断する、間に合わないなら回避をするべきか、素手で対処するべきか――、だがそのどれでもない選択肢をヴィクトリアは選び掴む。
 スローな視界の中、投げ込まれたチェーンソーをとらえ、自身も回転しながら空中でキャッチ、流れるようにもう片方の手でエンジンを始動させ、クルリと回転し終わるまま襲い掛かって来たサメと交差。
 ズバンッ!
 後には二枚に残されたサメの死骸だけ。
「助かりました」
 ヴィクトリアがチェーンソーを投げ込んで来た男にお礼を言うと。男――穹は「なぁに、俺の《贋作者》がありゃあいくらでもチェーンソーを作れるからな、そいつはあげるさ」
「それはありがとうございます」
「第一陣の群れ――サメの雨は、そろそろ振り終わりだと思う、もう少しだけ頑張ろうぜ」
「ええ、そうですね」
 そう言うとお互いチェーンソーを構え、次の戦地へと別々に走り出すのだった。


 渦より発生した竜巻によって巻き上げられた最初のサメたちは、アリシアによる空での迎撃と、摩那・ヴィクトリア・穹による地上のメンバーにてある程度は捌ききる事ができた。
 湖畔の浜辺に横たわるは大小幾つものサメ、サメ、サメ。
 そんなサメたちの背びれをチェーンソーでギュンギュン斬り離し、袋へと詰めて行くは摩那だ。
「せめて、フカヒレだけは回収しておきましょうか、と」
 口調こそ戻っていたが、目は未だにサメが出て来た事への恨みが晴れてないと言った様子で、再びサメたちに向き直ると、どんよりとした瞳のまま背びれ狩りを再開する。
「背びれ斬りまくるとか、結構ホラーだが……」
 そう呟く穹だが、目に移るは背びれを取られた残ったサメたち。
「しかし問題だよな……鮭や鰯と違って鮫は食べるにしても色々と手間がかかるらしいし、とはいえこの残ったサメの身はどうすれば……俺はサメの調理方法わからんし、このままじゃ無駄になっちまうな」
 できれば勿体ないのでサメも美味しく食べたいものだが、覚えている限り、サメの身は単純に切って焼けば美味しく食べられるというものでは無かったはずだ。
「都合良く鮫を調理できる奴はいねーのかな?」
「サメを食べるのですか?」
 と、ヴィクトリアが穹の呟きを聞き返事をする。
「え、料理できんのか?」
「いえ、詳しい調理法を知っているわけではありませんが、サメ料理も中々のお味と聞いた事がありますよ」
 ヴィクトリアの言葉に「やはり美味いのか」と内心納得する穹。
 そう言えば前に見たテレビ番組で海に潜って銛で魚を突いて『とったどー!』と叫ぶ芸人が、捕った鮫を油で揚げて食べていたのを思い出す。案外簡単な調理でも美味しく食べられるのかも……?
 そう考え、適当に切ったサメの切り身を適当に焼いてみる穹。
 アンモニア臭がキツイと噂で聞いた事があったがそんな事も無く、普通に魚の切り身が焼き上がり……パクリ。
「……普通だな」
 可もなく不可もなく、というかどんな魚もただ焼いただけならこんなモノなのではないだろうか。あえて言うなら皮がサメ肌と言うだけあって硬いとかそれぐらいで……。
「問題なさそうだし鮭高生たちに提供するか」
 穹は焼いただけのサメの切り身を持って行こうとし、その人だかりに足を止める。
 それはヴィクトリアが何かを皿に乗せ鮭高生たちに配っているようだ。鮭高生たちも逃げた奴らが無駄に戻って来てまでヴィクトリアから皿を受け取っている。
「……いや待て、おかしいだろう。さっき調理法知らないって言ってなかったか?」
「え、はい、知りませんよ。だから普通に刺身にしてみたんです。とある地方では鮫の刺身って有名みたいですよ?」
 言われて受け取り食べてみる穹。
「うまっ」
 鮫は新鮮ならアンモニア臭もせず、特に白身部分の刺身は絶品であると、その日、穹は知るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ミーグ・スピトゥラス
・POW&真の姿開放
シャーク…日本ノシャークモ湖ニ棲ンデイテ、地面ニモ潜ルノカ
オレ、マタ賢クナッタ
ソレト、悪役ハ何処ニ…ムゥ、居タ
シャークヲ二枚オロシ…ナルホド
悪役モ猟兵ダッタノカ
オレ、勘違イシテタ
ナラ、気兼ネナク、オレ本気出ス
悪役トノ友情ノ感情ヲ爆発サセ、理性モ吹キ飛バシ、オレハオレノママニ…
シャークヲ食イ尽クス!
ウオオオォォォォォ…!!

(【バイオミック・オーバーロード】と真の姿開放を掛けあせてサメと同じぐらいのサイズまでに巨大化し、サメと怪獣プロレスを行いますが、ムシェ鮭高校の生徒達らはすざまじい闘気で巨大化して見えているかもしれません)
※アドリブ大歓迎です


シグルーン・オールステット
※アドリブ絡み歓迎

鮫……うん、まぁ鮭を追って別の強力なオブリビオンが出てくるっていうのを聞いた辺りでなんとなく予想はしてた。でも、鮫なら鮭や鰯の群れとか襲いそうだけど餌として認識してたのかな?

空を走るのも得意だよ。”天馬”を飛行モードに変形させて空のドライブといこう。
UCに加えて「空中戦」「ジャンプ」「地形の利用」を駆使して竜巻の風に乗って鮫を足場に次々とジャンプ&「吹き飛ばし」。
こっちは走ってるだけでも、その結果地面に叩きつけられたら只じゃすまないよね。

「ヒーローズアースでの戦争ではジェスターやオブリビオンフォーミュラだって轢き飛ばして来たんだ、このぐらい訳ない」


鹿村・トーゴ
えー鮫って海じゃねーの?
『この世界の敵さんでしょ』(と鸚鵡のユキエ)そーですね邪神でした
つーか考えたら負けだな
鮭も鰯も食ってたしーあれ食うヤツすら居そうだな?

よう、バス酔い君やるじゃん!オレなんかそのおっとろしー凶器使えもしねーや
あ。酔い止めのまじない教えよっか?
オレの村だと「耳切って痛みで気を逸らす」…だな
オレもガキの頃忍耐つけろって(忍びの訓練で)やってさー耳半分になるかと思ったよー

対さめ
【ロープワーク】縄を結んだクナイを数本用意
UC羅刹旋風を使い頭上で振って【投擲/暗殺】
あの鮫隠れるっていうし【野生の勘/追跡】を使いある程度目星をつけ攻撃
噛まれたら投擲クナイを【念動力】で頭上から叩き込む


高柳・零
POW
だから!淡水に海水魚が来るなヌギ!
浸透圧の関係で死ぬヌギよ?(邪神に言っても無駄ですが)

「何故か大丈夫な気もするヌギが、無辜の生徒は傷つけさせないヌギ!」
生徒を守る想いを胸にUCを発動。ヌギカル☆玄信と肩を並べて戦います。(お供の妖精とは一体…)

空を飛んで上から湖と地上を監視し、見切りで敵の出現地点を探します。
飛び出して来たらオーラを纏わせた盾で受け、2回攻撃で反撃します。

「え、ぷれいんぐがてぬきにみえる?背中が疲れてるヌギ…」

RB活動をする人が居た場合、何故か画面に黒髪おさげの眼鏡っ娘の顔が映り、零の意識は無くなります。
この後の行動はお任せします。

アドリブ歓迎です。


自動・販売機
神=邪神=サメ
神=チェーンソーで殺せる

以上のことからサメはチェーンソーで殺せる。Q.E.D

そんな事を自動販売機が演算したかどうかは分からない
しかし確かに先程ディスプレイにチェーンソーを並べたのは事実である。
そしていまここにそれが必要な時が来たのだ。

水底に沈んだ自動販売機は水上へと浮かび上がり、武器を必要とする者たちにこう語りかけるのだ。
「皆さんが必要なのは特殊合金のチェーンソーですか? それとも除霊用の銀製チェーンソーですか?」
と。
無論普通のチェーンソーもディスプレイに並んでいる。
どこかの女神とは違ってレパートリーもバラエティに富んでいる。

自動販売機は今日も売る。そこに顧客がいる限り。


リトルリドル・ブラックモア
ワーハッハッハッ!
今のオレサマ…なんだ?アレだ!
キューシニイッショースペシャルだったぜ!
こりゃインタビューがきまくるな…
スターになりゃ世界征服なんかチョロい!
ヒャッハー!祝え子分ども!BBQだー!!

…ン?

なんでサメがいんだよ!!
フツー海にいるモンじゃねーの?
なんでダレもつっこまねーの?
あのアクヤクとかいうヤツ、モブのクセにまおーより目立つんじゃねー!
チキショー!!

ナニ~!?
オレサマの【大声】がまおー的【存在感】を発揮して
サメを【おびき寄せ】ちまうだと!?
そんなんまおーサマチェーンソーで一発…

…サメ、めっちゃこえー!!!
コレ【ESCAPE】するっきゃねーな!
今日はこのくらいでカンベンしてやるぜ!


文月・統哉
鮫=大きなお魚
相手にとって不足なし!

水浸しの着ぐるみも無駄にはしないぞ
クロネコワイヤーを結び【オーラ防御】で包み
鮫釣り開始

鮫が湖に潜航したら竿を振りキャスティング
ソナー【衝撃波・範囲攻撃】で鮫の位置を【情報収集】
鮫の動きを【見切り】ながら
ルアー(着ぐるみ)を生きてるが如く動かし誘う
【念動力・演技・フェイント・パフォーマンス・罠使い】
鮫が噛みついたら【怪力】で釣り上げて
墨の【属性攻撃】で魚拓取るのも忘れずに

にゃふふふふ、解説しよう!
着ぐるみを囮に初撃を躱せば
以降の噛みつきは当たらないという
弱点を突いた作戦なのだ

という事で証明終了
巨大な熊着ぐるみが鮫の動きを封じたら
(両手を合わせて)いただきます!


山梨・玄信
まあ、鰯が湖に居た時点で鮫が居ても驚かんが…ツッコミは入れるぞい。
そんなデカイ鮫が居たら、この湖の生態系が滅ぶわ!

【SPDを使用】
思えば、わしが変態呼ばわりされたり、ヌギカル☆玄信と言われたり、神々しい女性が見えるようになったのも、全てこのUCが原因じゃったのう…。
じゃが、今ではわしのアイデンティティじゃ。行くぞ!
こちらは空を飛べんから、鮫が地上に接近した所を狙って褌一丁になって(覆面も外します)UCを発動し、一気に接近。オーラ防御で身を固め、敵の攻撃を受け止めつつ鎧無視攻撃で鮫肌を切り裂いてやるぞい。

全て終わったら黒サバト服に身を包み、野外RB活動じゃ!
クリスマスが近いからリア充は爆破じゃ。




 湖から立ち昇る水竜巻と、その竜巻によって吸い上げられ天空を漂うサメたちを見上げ、思った事がそのまま口から出るは山梨・玄信と高柳・零の友人二人。
「あんなデカイ鮫たちが居たら、この湖の生態系が滅ぶわ!」
「だから! 淡水に海水魚が来るなヌギ!」
 全力で空に向かって叫ぶ2人。
 ムシェ鮭高校の課外授業について来つつ、どちらかというとボケ倒していた2人だが、さすがにこの状況にはツッコミを入れざるをえなかったようだ。とはいえ――。
「まぁ、鰯が湖に居た時点で、鮫が居ても驚かんがのぅ……」
「いや! だから! 浸透圧の関係で死ぬヌギよ!!」
 ため息交じりの玄信に対し、まだまだツッコミ足りない零。
 もちろん、鰯も鮫もオブリビオンなので常識が通じないのは解っている2人だ。正論が欲しい訳ではなく、戦闘前にツッコミを入れる――言わば『お約束』を踏襲しているに過ぎない。
――シャアッ!
 と、そこに空から突っ込んでくるサメが1匹。
 ドガッ!
 その鮫を空中でインターセプト――宇宙バイクで跳ね飛ばし――するはシグルーン・オールステット。
「大丈夫?」
「おお、スマンスマン!」
「大丈夫ヌギ!」
 2人が問題無いのを確認しつつ、シグルーンは空を見上げつつ。
「うん、まぁ鮭を追って別の強力なオブリビオンが出てくるっていうのを聞いた辺りでなんとなく鮫の予想はしてた……鮫なら鮭や鰯の群れとか餌と思って襲いそうだし」
 そう呟くも、オブリビオンの中でそのような食物連鎖があるのかと真面目に考えが至った所で、すでにその考え自体がナンセンスだと気づき思考を止める。
「………………」
 今はもう目の前のサメをどうするかを考えた方が、いくぶんマシだろう、と。
「鮫と言っても所詮は大きなお魚! ならば相手にとって不足無し!」
 湖畔の浜辺でそう叫んでいるクロネコ着ぐるみ姿の文月・統哉をシグルーンはチラと見て、深く考えないあの姿こそ正しいのではないかと……そう思う事にするのであった。

 ピ、ピピピピ……。
 湖に浮かんだ自動・販売機の小さなディスプレイ(どこにあるかはご想像にお任せします)にドットで描かれた文字が流れて行く。
『ピピ……鮫はチェーンソーで殺せる……神=邪神……』
 寒空の下、湖に浮かぶ自動販売機は証明を続ける。
『ピピッ……邪神=鮫……よって――』
 当たり判定時の演出を挟みつつ。
『サメ=チェーンソーで殺せる。――Q.E.D』
 証明が終了し当たり判定の演出が一際大きくなり。
「さっきからウルセーっ!!!」
 ザバッっと湖の中から浮かぶ自動販売機の上に飛び乗るはリトルリドル・ブラックモア、サメの出現によって一度湖に落とされていたらしい。リトルリドルの声に反応したか解らないが、自販機の表示が止まる。
「ヨシ! ンン……」
 静かになった事を確認し、リトルリドルは両手を腰に当て。
「ワーハッハッハッ! 今のオレサマ……なんだ? アレだ! キューシニイッショースペシャルだったぜ!」
『番組が違います。先ほどまではメーデーでした』
「こりゃインタビューがきまくるな……スターになりゃ世界征服なんかチョロい! チョロい!」
『こちらに誰も注目していません、インタビューは来ません』
「ヒャッハー! 祝え子分ども! BBQだー!!」
『鮭高生を子分と仮定しても、彼らは湖畔にいます。距離的に祝っては貰うのは無理です。また、サメのオブリビオンが大量にいる現状、BBQも不可能です』
「………………」
 言葉を発する度、自動販売機から機械的で無機質な声が響きどの案もへし折られるリトルリドル。
 だが、折られたのは会話だけなく――。
 へにゃん……。
 心を折られるリトルリドル、浮かぶ自販機の上で液状化しつつ。
「なんだよー、別にいいじゃんよー、ちょっとぐらい同意してくれてもよー」
 液状化しつつブーブーと文句を言う。
 と、思い出したように自動販売機が湖へと沈みだす。
「なな!?」
『この後、泉の女神をやる予定なので……沈みます』
「ちょっ!? ブクブクブク……」


 ソレに最初に気が付いたのは天馬を飛行モードにさせ、空を縦横無尽に駆け巡りつつ漂う鮫たちを屠り続けていたシグルーンだった。
「あれは……!?」
 湖から立ち昇る竜巻の周囲を漂うサメたち、その奥――竜巻の中心からゆっくりとソレは姿を現したのだ。
「そう……あれが今回の……」
 それは体長7mを超そうかという超巨大なホオジロザメだった。
 3mや4mのサメたちも十分大きかったが、7m級のその鮫は他と一線を画す巨体で、さらに圧倒的な威圧感を誇っていた。
 遡上する鮭たち、湖を旋回する鰯たち、竜巻と共に空を漂う鮫たち、この一連の事件の首謀者こそ、あの巨大サメだろうとシグルーンは理解する。
 それなら――。
 突っ込んできた3m級のサメを急ブレーキかつ後輪部をぶん回す事で吹き飛ばしてから、再び一気にエンジンをふかし今度はウィリー気味にBOSSサメに向けて空中を疾走、一気に距離を詰め――。
「!?」
 同時、こちらに気づいたBOSSサメが尾びれで空中を一叩きすると、その巨体が一瞬にしてシグルーンの目前に迫る。
 ミサイルのようなその突進に、しかしシグルーンは冷静に愛機たる天馬を自身の一部のように操り、螺旋を描くようにバレルロースし紙一重で巨大サメからの追突を回避。
「ヒーローズアースでの戦争ではジェスターやオブリビオンフォーミュラだって轢き飛ばして来たんだ」
 高速にすれ違いBOSSサメが急ターンするも、その視線の先にシグルーンの機体は無い。シグルーンはすれ違うと同時、すぐに天馬を上向きに急上昇させ――そこから反転するように急降下、目標を見失い戸惑うBOSSサメへ頭上から重力と慣性の乗った一撃を叩き込む。
 ドッガッ!!!
 シグルーンの一撃に地上へと叩きつけられるBOSSサメ。
「このぐらい訳ない」
 さらに追撃しようとシグルーンが天馬の機首を下に向けようとするも、それをさせぬとばかりに漂うサメたちが進路を塞ぐ。
「あれなら只じゃすまない……それに、地上にはもっと仲間の猟兵達がいる」
 そう判断すると下降を取りやめ、周囲のサメたちに視線を向けるとシグルーンは手袋をググッと付け直し。
「じゃあ、キミ達の相手は……ボクがしてあげる」
 そう淡々と宣言するのだった。


 ズドーーーンッ!
 轟音を響かせて空から7m超級の巨大ホオジロザメが落下してくる。
 その巨体に地上にしたどの猟兵も、それこそが今回のラスボスだろうと認識。
 だが、落下と共に巻き上がった砂埃が落ち着いた時、その場に巨大なサメの姿が無く……。
「オレ、マタ一ツ賢クナッタ」
 誰もが敵の姿を見失う中、股間から生えた感覚器官でBOSSサメをロックオンしていたミーグ・スピトゥラスが言う。
「日本ノシャークハ湖ニ棲ンデイテ、地面ニモ潜ルノカ」
 ミーグの言葉にその感覚器官が指し示す方向を皆が一斉に見る。
 そこには湖畔の浜辺――その砂の中を移動する何かがいた。
「今度はビーチシャークか!」
「今度はサンドシャークかヌギ!」
 お互い顔を見合わせる玄信と零。
 まぁ、どっちも同じ事を言ってるのだが……。
 兎に角、砂の中を進む巨大サメに対し、ミーグが一応感知しある程度の方向は解っているものの、砂中のサメをピンポイントで警戒するのは中々に難しい、やはりなんとか砂上に追い出したい所だ。
「にゃふふ、どうやら探偵たる俺の出番のようだな」
 そうキメ顔で言うは統哉、手からクロネコワイヤーを伸ばし鮭高生たちが逃げる時に脱いだ水浸しの着ぐるみの1体を巻き取るとそれをオーラで包み固め、手に持つワイヤーをどこからか取り出した竿に結びつける。
「即席! 鮫釣り道具の出来上がりっと!」
 そのまま竿を大きく振り被り、ハッと気合い一閃浜辺の砂へ叩きつける。水で重くなりオーラで固めたエサ部分の着ぐるみが強引に砂中に埋まる。
 もちろん、これでは砂に埋まっただけの着ぐるみ、巨大サメが食いつくとは思えない。
「(にやり)」
 どやぁと統哉は笑みを浮かべると念動力に集中、砂中のエサ着ぐるみを動かし出す、さらに探偵たる統哉の持てうる技術を総動員し――。
「ヒット!!!」
 竿が大きくしなり、餌に何かが食いついたのが誰の目にも解る。
「さあ、御大のお出ましだ!!!」
 統哉が全力で竿を引き抜き、同時、砂中から7mを越えた巨体が飛び出してくる。
 それを目前にしつつ微動だにしないのは褌一丁に頭巾姿の玄信と、お供の妖精たる零。
「お供の妖精!」
「任せるヌギ!」
 玄信の言葉に零が飛び出す。その心には鮭高の生徒たちを守らんとする心意気!
「(何故か大丈夫な気もするヌギが、無辜の生徒は傷つけさせないヌギ!)……天よ! 人々を護る力を!」
 零の他人を護る想いに比例し、その戦闘力が増加する(具体的にどれぐらい増加したかは言わないでおきます)。
「≪ゴットハンド≫!!!」
 全身を輝かせて巨大サメに突っ込む零、その増加したパワーでサメを喰い止めようとするが、零はテレビウムでありその身長は40cmである。対してBOSSサメは体長7m越え、口を大きく開けたそのサイズは……。
「ヌギカル玄信! 今ヌギ!」
 カッと輝きつつ鮫の口が閉じるのを防ぐ棒のように口の中でバンザイポーズし必死に立つ零が叫ぶ。
「なんか想定と違う気もするが、敵の攻撃を止めてるという結果なら良し!」
 玄信はそう頷き、自身の必殺技たる≪シーブズ・ギャンビット≫を使用しようとし、そこで「そういえば……」と回想に入る。
「思えば、わしが変態呼ばわりされたり、ヌギカル☆玄信と言われたり、神々しい女性が見えるようになったのも、全てこのUCが原因じゃったのう……」
「いや、回想してないで早くするヌギ!?」
 お供の妖精が叫び回想シーンが打ち切られる。少し不満げな玄信は聞かなかった事にし回想を続けると――。
「ふざけるなヌギ! このままじゃ食われるヌギよ!!」
「まったく、お供の妖精とは……まぁ、とにもかくにも、今ではこのUCはわしのアイデンティティじゃ。行くぞ」
「早くするヌギーーー!」
 玄信は意識を集中し≪シーブズ・ギャンビット≫の威力を高める。このユーベルコードは脱げば脱ぐほど身軽となり技の威力は加速する。つまり――。
「致し方なし」
 もったいぶって顔に被っていた三角頭巾を脱ぎ放つ。
「たいして変わらないヌギよ! そんな1枚よりさっさと! さっさと!!!」
「はっ!!!」
 気合いと同時、神速となった玄信がダガー1本で巨大サメに縦横無尽に切り傷を付け、瞬後、サメとすれ違った玄信がダガーをブンと振り血糊を祓うと、巨大サメの傷口から一気に血が吹き飛沫く。
 加えていた零を放り捨て、ビタンビタンと暴れまわる巨大サメ。
「良い連携じゃった」
「し、死ぬかと思ったヌギ……やっぱり、ぷれいんぐがてぬきに――いや、背中が疲れてるヌギからか……」
 いえ、好きにやって良いと受け取りました。


 サメネードの来襲に鮭高生たちが全員避難したかと言えば……実はそうではなかった。
 バスに戻りたくない悪役・商介はもちろん、サメ料理を堪能しに戻ってきた一部生徒、もしくは状況が分かってないバカな生徒たちがいたからだ。
「やべー、やっと着ぐるみ脱いだと思ったらサメが降って来るよ、そんな天気予報だったっけ?」
「晴れ時々豚とかって聞いた事あるから、時々サメってのもあるんじゃね?」
 と、そんな馬鹿な会話をしている学生たちの元へ、自称唯一の真面目生徒たる桜山がやって来て言う。
「みんな、何をのんきな事を言ってるんだ! 早くバスまで、せめてここから離れよう! サメに喰われて死んでもいいのかい!?」
「バッカお前、サメが人を喰うかよ、人を喰うのはジョーズだって知らないのか? 映画ぐらい見ろよ桜山」
「(馬田君、なんて馬鹿なんだ……)」
 馬田と一緒になって笑う生徒たちを前に、1人頭をかかる桜山。
 と、その状況を見かねてか、横の湖から何かがザパーンと浮かび上って来る。
「な、なんだ!?」
『皆さんが必要なのは特殊合金のチェーンソーですか? それとも除霊用の銀製チェーンソーですか?』
 おとぎ話の泉の女神よろしく、そう言って浮かび上がってきたのは自動販売機だった。
 なぜかチェーンソー押しの選択に。
「いや、別に俺は何も落としてねーぞ?」
 素直に答える馬田。
『どうやらあなたは正直者のようですね。良いでしょう、欲の無いあなたには特別に特殊合金のチェーンソーと、除霊用の銀製チェーンソーの両方を上げましょう』
 ガコンガコンボチャ、ボチャ、と自動販売機の口からチェーンソーが2台吐き出され、そのまま湖の水に沈む。
「あ、思い出した。この自販機はバスの中にあった奴じゃないか?」
「桜山の言う通りだ、そういやあの自販機、異様にチェーンソー押しだったな……いらねーけど」
『いらねーじゃありません、武器を必要としなさい』
 馬田の言葉に反論というか命令してくる自販機。
「でも、別にチェンソー欲しくねーぞ?」
『よく見なさい、このサメネードの状況を。今こそチェーンソーが必要な時です』
「なんでだ?」
『それは……チェーンソーがあれば神を殺せるからです』
 先ほど証明した論理を展開する自販機。
「馬鹿だろ」
 プチッ。
 馬田の台詞にカチンとスイッチが入り、自販機の口から何かが勢いよく吐き出され馬田の顔に直撃する。
「いてぇ!?」
『愚か者め! 汝に自販機を使う資格無し!』
 厳しい言葉を残し、自販機がずぶずぶと再び湖の水に沈んでいく。
「なんだったんだ一体……って、なんだこれ」
 馬田が顔にぶつけられた黒いのを引っぺがすと、それは水を飲んで丸々となったリトルリドルであった。

 仲間達と共に巨大BOSSサメと戦っている最中、ミーグは視界の端に友の姿を――その友を背後から襲おうとするサメの姿を発見、一足飛びで駆けつけると、その手でなぎ払い血祭に上げる。
「悪役、無事カ」
「お前は……ミーグ、助けてくれたのか」
「当タリ前ダ、ダガ、必要ナカッタ、カ? シャークヲ二枚オロシニシテイル……」
 悪役の前に転がっている卸されたサメの死骸を見てミーグが言うが、悪役的には偶然の産物だ、そう何回も出来るとは思えない。だが、腕っぷしで一目置かれている立場の悪役だ、ここは「ああ、余計な事をしてくれたぜ」と返事し、しかし助けてくれた行為を伝えるようヘッと笑って見せる。
 だが、相手はエイリアンだ。言葉の裏の機微などには疎く……。
「ナルホド、悪役モ猟兵ダッタノカ。オレ、勘違イシテタ。ナラ、気兼ネナク、オレ本気出ス」
「は? 猟兵? お前、何言って――」
 悪役の問いを聞かず、ミーグは意識を集中させ。
「悪役トノ友情ノ感情ヲ爆発サセ、理性モ吹キ飛バシ、オレハオレノママニ……(≪バイオミック・オーバーロード≫)」
 真の姿が解放され、さらに感情の爆発に比例しその姿が巨大化していく。
「ウオオオォォォォォ……!!」
 ミーグの身長は通常時の倍――6m近く巨大化し、その姿も凶悪なエイリアンその物となる。
 そして、そんな巨大化した凶悪エイリアン状態のミーグの背と首の間に、無言で鎮座するはチェーンソーを持った悪役・商介。
「………………」
「オレ、シャークヲ食イ尽クス!」
 ドッスドッスドッスと悪役を乗せたまま巨大BOSSサメに組み付くミーグ。
「お、おう、うぐ……!?」
 ミーグの上に乗りつつ乗り物酔いが再発し気持ち悪くなる悪役。ミーグと巨大サメが巨大怪獣プロレスバトルを繰り広げるも、なぜか落馬せず気分だけが急降下。
「………………(ぶっ殺す)」
 口を押え必死に我慢する悪役だが、その横にスタッと飛び降りてくる人物が1人。
「よう、バス酔い君やるじゃん! オレなんかそのおっとろしー凶器使えもしねーや」
「………………(話し駆けんな馬鹿やろう)」
「あ。酔い止めのまじない教えよっか?」
「………………(マジか!? 頼む、もう限界だ)」
 何も返事は無いがが何かを察してトーゴはうんうんと頷き。
「これはオレの村に伝わる方法なんだけど……まずは自分の耳を切るんだ。そうすると痛みで気がそらせるから」
 笑顔で言うトーゴに、悪役は懐からハサミを取り出し自分の耳へ当て――。
「やるか! 耳無くなるだろうが!!!」
「大丈夫、オレもガキの頃忍耐付けろってやった事だし、まー、あの頃は耳が半分になるかと思ったよー」
「そんな方法進めんなっ!!!」
 全力でツッコミを入れてくる悪役、ある意味で気がそれて良いのかもしれない。
 そんな悪役の側に。
「オ前、良イツッコミダナ」
 と、凶悪巨大エイリアン化したミーグの身体をよじよじと登って来たリトルリドルが言う。
「あぁん?」
「ホラ、見ロ、ドウ思ウ?」
 リトルドリルが巨大BOSS鮫や空から降って来るサメたちを指してそう言う。
「どうもこうもあるか! なんでサメがいるんだ! 空から降るな! 淡水に棲むな! だいたいデカすぎるだろうが!!!」
 酔いからくる気持ち悪さで顔を青くしながら叫ぶ悪役に。
「ズルイゾ! モブのクセにまおーより目立つんじゃねー! チキショー!!」
 ツッコミが思ったよりキレていた事で自分より目立ってると思ったリトルリドルが理不尽に怒り出し、さらにさっき自販機と共に湖に沈んだ時に手に入れた水草を悪役に投げつける。
 ベチャ……。
 独特のくさい臭いにさらに酔いが回った悪役は。
「てめぇら……いい加減にしねーかーーー!!!」
 ミーグの上でチェーンソーを振り回して暴れ出したのだった。


「モブのクセにアブネーやつだ……ふぅ」
 ピョンピョンとミーグの背で暴れる悪役から逃げだしたリトルリドルは、安全地帯まで飛び退いて一安心。
「って、ココ、サメの上じゃねーか!?」
 足元がやけにザラザラサメ肌だと思ったら、ミーグの上から巨大BOSSサメの上へと避難してしまったらしい。全然批難になっていない。
 しかも、リトルリドルの大きな叫び声が空から降って来るサメたちの注目を集め(存在感?)、サメたちがわれ先にとリトルリドル目がけて降って来る。
「フンッ、雑魚なんてまおーサマチェーンソーで一発……」
 バキッ!
 自販機からガメてたチェーンソーを取り出すも、落下して来たサメの1体がチェーンソーの歯ごと噛み砕いて通り過ぎたのを見てサァァと顔に縦線が降り。
「……サメ、めっちゃこえー!!! コンナン≪ESCAPE≫するっきゃねーじゃん!」
 全力で巨大サメの身から飛び降り浜辺を全力疾走するリトルリドル。
「今日はこのくらいでカンベンしてやるぜ! おぼえてろよオマエら!!」
 同時、飛び降りた際に置いて来た爆弾が巨大サメの背で爆発を起こす。
 足場の巨大サメがグラリと揺らぎ、爆発の煙で一時的にリトルリドルを見失うサメたちだが、その煙の中に黒いリトルリドルの陰影を見つけ、再び狙ったように落下してくる。
 ドドドドドッ!!!!!!
 狙い違わずサメたちがリトルリドルの影に突っ込むも、そこに大した手ごたえは無く、逆に味方の突撃を食らった巨大サメがゆっくり大地に横たわる。
「にゃふふふふ、解説しよう!」
 カメラ目線で統哉が喋り出す。
「リトルリドルの着ぐるみを囮に、サメたちの攻撃をわざとBOSSサメに誘導、双方の自滅を狙った作戦なのだ」
 フリップまで持ちつつ解説する統哉。
 横たわる巨大サメ、その隙を逃さなかったのは凶悪巨大化エイリアンとなっているミーグだ。むんずとサメの頭を掴むとビッタンビタンと大地に叩付け。
「空へ!」
 上から聞こえたその声に、最後に巨大サメを空へと力いっぱい放り投げる。
 巨大サメは宙に投げれつつ、ぎりぎりで意識を取り戻し姿勢を制御しようと尾びれで空気を蹴――ろうとし、その違和感に気が付く。
「探し物は、コレかのぅ?」
 眼下、浜辺で玄信が神速にて斬り落とした尾びれを親指で指差す。
 尾びれを失くし宙を蹴れず姿勢を制御できない巨大サメに。
「これで、終わり」
 先ほど空へ放れと声をかけたシグルーンが天馬に乗ったまま上空から巨大サメを踏みつけ、今度は浜辺へと墜落するBOSS。
 バクバクと口を開け閉じしつつ、大地に叩きつけられた巨大サメが暴れつつ、再び砂に潜って体勢を整えようとする。
「地中からの不意打ち……だけど、それを行なう為に地中に潜る時、その時こそが弱点だ。さぁ、今だ!」
「OKヌギ!」
 統哉の言葉と共に、地中に隠れていた零がオーラで強化した盾を使いサメの鼻っ柱を連続で殴りつける。
 追い出されるように、再び地上に転がりビタンビタン暴れる巨大サメ。
 そして――。
「という事で証明終了」
 統哉の着ぐるみが熊の着ぐるみへと変化、大きさこと桁違いだが、着ぐるみ統哉が巨大サメを抑えると、まるで鮭を抑え込む熊のように、その手から逃れられなくなる巨大サメ。
「それじゃあトドメにしようか」
 動きを封じされたBOSSサメを見つつ、トーゴが念動力に集中。
 ズズズズズズ……。
 そのトーゴの横に、砂浜の砂の中から自販機が上がって来て、ガコンガコンガコンガコンとパチンコでフィーバーの玉が吐き出されるよう、十数台のチェーンソーが次々に転がり出てくる。
「使えって事か? よし、わかった!」
 トーゴは十数本の縄を操りそれぞれチェーンソーに結びつけると、念動力で全機同時にエンジンかけ。
 十数台のチェーンソーが結ばれた縄の端を右手で持ったトーゴが、左手のみで印を切りつつ跳躍。
 上空で縄ごとチェーンソーを振り回し。
「≪羅刹旋風≫……回転鎖鋸流星落とし!」
 大量のチェーンソーが大威力で動けない巨大サメの各所に突き刺さり、細切れとなった巨大ホオジロザメは無事倒されたのであった……。


「よし、終わったぞい! 次は野外RB活動じゃ!」
 嬉々として黒サバト服に身を包む玄信。
「おお、なんだソレ、いけてるじゃねーか!」
「お主からはボッチメンの匂いがする、同志よ、歓迎するぞい」
 玄信から握手を求められ、黒いサバト服を受け取る鮭高生の馬田。
「…………受信受診!」
「なっ、逃げるぞニューカマーよ!」
 玄信が逃げ出す。みれば零のテレビ画面に何か天敵の姿が映し出され――。
 その後、浜辺でアベックを急襲する玄信や馬田やその他の姿と、彼らが吹き飛ぶ姿を見たとか見ないとか……。

「お疲れ」
 自動販売機から普通にジュースを買ってシルグーンは仲間達に配る。
 鮭から始まり鰯に続き、最後はサメで締めと変な流れだったが皆と戦えたのは悪くなかったと、そう思ったから。
 いつの間にか戻って来ていたリトルリドルが美味しそうにジュースを飲み、ミーグは「友ノ分モ欲シイ」ともう1つ貰ってどこかへ行ってしまった。
「しかし、変な相手ばっかりだったな。だいたいなんで淡水に……」
『この世界の敵さんでしょ』
 鸚鵡のユキエに言われトーゴが「そーですね、邪神でした、考えたら負けだな」と納得する。
 ふと鮭高生たちを見れば、サメが降って来なくなったせいかBBQ場へ戻って来て、サメの刺身などを堪能し始めているようだ。バカと何とかは紙一重だが、突き抜けた馬鹿はそれはそれで幸せなのかもしれない。
「鮭も鰯も食ってたし、やっぱアレも食うんだな……」
 トーゴの呟きに「しまった!」と思い出したように叫ぶ統哉。
「魚拓取るの忘れてた! まだ間に合うか!?」
 すでに切り分け始めている巨大サメの元へ、慌てて走り出す統哉。
 その後、なんだかんだと鮭高の皆とサメ料理とBBQを堪能し、猟兵達の課外授業は満腹に満足に、幕を閉じたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月26日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ルシル・フューラーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠アルミィ・キングフィッシャーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト