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徒も殻

#UDCアース

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#UDCアース


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 空が赤く染まる夕刻。帰路を知らせるメロディが、拡声スピーカーから流れている。どうにもこの音は苦手だ。
 どこか懐かしさのある音楽を聞きながら、先ほどまでのことを思い出す。

 先を歩く友人の後を追っていたが、いつしかあるべき影がひとつ足りず。先に帰ったのだろうと結論付け、しばらく歩いたところで、見知ったバットとグローブを積んだ自転車が乗り捨てられていた。見上げればそこは神社に続く道の入り口。もう一人の友人が、見てくると言い残して消えてからどのくらい経っただろう。

 僕も友人達を探しに神社へと向かおうと。意を決して一段一段、階段を登り、その最中だった。

『×××』

 名前を呼ばれている。

『×××』

 まただ。
 二つの声は確かに先ほどまで共にいた友人達のもので。僕が慌てているのを、彼らは隠れて笑っているのだろうか。

『ユースケ』

 背後からはっきりと名前を呼ばれ、いい加減にしろと怒りを込めながら振り返れば。
「ひ……っ」
 バケモノがいた。鳥か、人か、よくわからないモノ。大きく裂けた口に、大きな翼。その真っ黒な眼孔が僕をじっと見ている。

『たすけ、』
『ああぁぁああ、ああぁ!!!!』

 バケモノから溢れ出た断末魔は確かに友人の声そのもの。血に濡れたその口元は、嘲るように笑っているのが嫌に目について。
 僕は悲鳴をあげる間も無く。視界は黒く染まって、それからぷつりと途切れた。

●ともがらよ
 急いで欲しいんだ。鏡面のような瞳をしたグリモア猟兵、花菱・アオイ(ヤドリガミの妖剣士・f01037)は今飛び起きましたと言わんばかりの寝癖をつけたまま。ひとつ深呼吸をしてから、猟兵達に呼びかける。
「現代の地球、UDCアース。日本の……そうだね、とある神社に向かって欲しい」
 神社の敷地内で、邪神の使いとされるオブリビオンが少年達を襲い喰らってしまう。その凄惨な出来事を視てしまった青年は頭を抱え、寝癖はくしゃりと潰れてさらに酷くなる。
「予知、だから。急いで駆けつければまだあの子たちは救える」
 急行すれば、少年達が神社の敷地内へと足を踏み入れる前にオブリビオンと相対することが出来る。そうなれば標的は猟兵達へと集中し、一般人への被害はなくなるだろう。
 それでも少年達以前に何人か犠牲になっているようで、その奇怪な翼人はころころと幼い子どもの声を操るようだ。

 件の使いは本命に非ず。オブリビオンの親玉は神社の本殿を拠点としており、本殿までの道中で翼怪は猟兵達の進路を阻もうとする。
「本殿までは坂や石段になってるから、駆け上がりながらの戦いになるだろうね」
 段数はさることながら、幅は充分に広く傾斜も緩やかなため道中での戦闘に支障はない。周りは木に囲まれているため人気もないはずだ。
 普段であれば、運動不足の僕に坂道はしんどいなあと冗談めいて笑みを湛えていたアオイであるが、今回ばかりは真剣に猟兵達へ訴えかける。

 「お願い、頼むよ」

 救えるのは、君たちだけだから。


日生慎
 日生です。よろしくお願いいたします。

 今回はUDCアースの現代日本、とある神社が舞台となります。神社がオブリビオンの拠点になっていますので、道中の敵を蹴散らし拠点を制圧、最も有力なオブリビオンを討伐する事で拠点を壊滅させるのが目標です。

●一章、二章
 純戦です。一章では本殿までの道を塞ぐ使いとの集団戦。二章にてボスオブリビオンの討伐となります。

●三章
 日常パートです。神社に住み着いているねこさまたちとのふれあいタイム。
 三章からの参加ももちろん歓迎しております。

●執筆について
 なるべく複数人での描写にしたいと思っていますが、日生のスケジュールやタイミングによって一人ずつの描写になってしまうことも多いです。
 また、ソロ希望の方は【ソロ】など文頭に付けていただけたらと思います。

 成功度に達する前にプレイングが不採用になった場合は、スケジュールの都合がほとんどですので、お気持ち変わりなければ再送していただければ…!
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第1章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

松本・るり遥
未だ間に合うなら
俺じゃなくても救えるけど、今動いたのは俺の心臓だ

駆けて急行、ああ少年はいないと安堵。それから恐怖と怒りが湧き上がる。この感情をうまく繰れるのは、『勇気のない』俺だから。『優しくない』俺はもう少し出番は後。

ナンセンスの侮蔑で目で狙撃。
『クソ野郎、クソ鳥野郎……!!!もう一人も喰わせねえぞ、どうだよ悔しいか!』
酸素続く限り稚拙な悪態を吐き、しっかりと敵を視認し、撃ち落とす。

断末魔が聞こえたら、悔しいが俺の出番じゃない。音楽を切り替え人格交代、
ーー笑わせる。腑抜けは兎も角、俺は。子供の泣き声に、何か思うような『お優しさ』はない。なあおい、『汚い口しやがって。ガキは美味かったのか?』


逢海・夾
許せねぇよ、なぁ。
とはいえ、これは仕事だ。冷静に成功を狙うぜ。そうしなきゃならねぇからな

駆け上がりつつ、一つに纏めた【狐火】で先制攻撃
羽だしな、よく燃えてるな。熱いか?
…さて、これで揺さぶりにでもなりゃいいんだが、な

【ダガー】を用いた近距離戦闘が主。スピードを生かした立ち回りを好み、防御は最小限に
余裕があれば周囲の状況を確認しつつ、【狐火】で攪乱
何よりもまずは目の前のコイツを倒さなきゃねぇが、無駄な犠牲を払う必要もねぇ
…だけどな、隙が出来ればそれに越したことはねぇだろ?


マリベル・ゴルド
こ、こわくないもん!
こわくないんだから!
こ、このくらいでビビってちゃ『わるいこ』になんか到底……うう……。

も、もちろん怯えてばかりじゃ事態は解決しないよね。
子供の悲鳴を放って恐怖と狂気を与えてくるのなら、こちらは【楽器演奏】と【歌唱】を併せ、
【枢ノ鍵盤】を使用して皆が恐怖に陥らないように『勇気が出る曲』をその場で演奏するよ。
勿論、その曲には【サウンド・オブ・パワー】の力を込めておくよっ……!
みんなを惑わせる声をボクの曲で少しでもかき消せれば……っ!


ジン・エラー
予知様様だぜ全く
本人から直接聞けねェーのはちと残念だが
悲鳴だって懇願だって
本当はねェー方が良いに決まってらァな

別に階段だろうがなンだろォーが
【箱】も【オレの救い】も鈍るこたァねェーし
好きに暴れさせてもらうぜ

おい
お前ら
何人殺した
何人食った

痛かったよな
怖かったよな
死にたくなかったよな
紛い物でも別に構わねェーから
"お前"の声を聞かせてくれ

……そうか

オーケー
そしたらお前らは用済みだ

オレが一人残らず


救ってやるよ


アスカ・ユークレース
子供の悲鳴……ですか。聞いててあまり気分のよいものではないのです。これ以上おかしくなる前に早いとこ片付けてしまいましょう

【視力】【スナイパー】で撃ち落としましょう?

命中させるのが前提ですが、
万が一外してもそれはそれで。
当てられずとも動きを制限するくらいはできるはずなのです。
というか、当てるだけが【援護射撃】ではないのですよ。

おやおや、空からは狙い放題、ってわけなのですか?それはこちらも重々承知、【第六感】フル活用で避けましょう

回避に【地形の利用】も出来そうなのです



グリモア猟兵の要請から一息も経たず、UDCアースへと急いだ松本・るり遥(不正解問答・f00727)は神社の入り口に少年のものと思われる自転車がないことを確認して、安堵した。どうやらはじめに犠牲になった少年が神社を訪れる前に、辿り着くことができたようだ。駆けた足の裏は痺れるように痛く、汗がこめかみを伝う。酷く響くのは己の鼓動。
 安堵すれば湧き上がるのは恐怖と怒り。この感情をうまく繰れるのは、『勇気のない』俺だから、『優しくない』俺の出番はもう少し後。

 駆けつけた猟兵はひとりではなく、るり遥の背後には五つの影。彼らもまた少年達を救う為に駆けた猟兵達だ。るり遥は坂道を見上げて、その先にあるであろう敵の拠点を睨む。
「未だ間に合うなら俺じゃなくても救えるけど、」

 今動いたのは俺の、俺達の心臓だ。


「許せねぇよ、なぁ」
 子どもばかりを狙って喰らう邪神の使いに、怒りを露わにする白毛美しい妖狐。逢海・夾(反照・f10226)は下駄の歯を石段で削りながら、駆け上がる。だが感情のままに怒りをぶつけてはいけないと、心を冷たく。そうしなければならないのだ。
「ええ、早いとこ、片付けてしまいましょう」
 夾の呟きに同調するように、息を切らしながら駆けるアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)。敷地内へ侵入した猟兵達に反応するように、次第に聞こえてきた子ども達の悲鳴や声に眉を顰めて。気持ちのいいものではないと、フェイトノートをしかと強く握りしめた。
 夾とアスカに少し遅れて、後を追うのはマリベル・ゴルド(ミレナリィドールの人形遣い・f03359)、くせのある金髪に散ったそばかす。少年特有のあどけなさ残る少年人形は恐怖に震えながら。けれど確かにその小さな足で石段を登る。このぐらいで怯えていては勇敢で自由で快活な、【わるいこ】のようになれないから。

 振り返れば入り口が狭く見える頃、待ち構えるように数体の翼怪が猟兵達の前へと立ち塞がった。
『ママ、どこ?』
『こわいよお』
『おうちにかえりたい』
 そのどれもが幼い子どもの声を操り、口元をひどく歪ませていた。
 しかしそんなオブリビオンに怯むことなく、夾は駆け上がりながら揺らめく狐火を発現させる。一つが二つ、二つが四つ。分裂した狐火が十つほど並んだ頃、収束させればそれは一つの大きな火の玉と成る。
 翼怪が行動を起こす前にまずは先制、合体させ強化された狐火──フォックスファイアを翼怪へと放てば、きゃあきゃあと騒いで翼へと燃え移った火を消そうと羽ばたく。が、風が起こり酸素がまわったことで余計に燃焼は広がるばかりであった。
「羽だしな、よく燃える。……熱いか?」
 問いに答えは必要ない。その幼い声を零す前に、コイツを仕留める。
 先を駆けた夾の後ろ、アスカは狐火によって出来た隙を利用してクロスボウを構えていた。量子燦めくような青い瞳で標的を捉えて、訓練を欠かさない射撃の腕は磨きがかかっている。必要な時間は10秒、仲間によって十分にその時間は足りる。命中させるのが前提だが、当てられずとも動きを制限するくらいはできるはずだと。
「というか、当てるだけが援護射撃ではないのですよ」
 そう、たとえば誘導。電子の海流る射手が放った矢は一直線にその翼を掠め、翼怪が矢を避けた先にて鳴るのは下駄の音。
「余所見していていいのか?」
 夾は懐に忍ばせていたダガーを手にとって、その荘厳な衣装を裏切るほどの軽快さを見せて躊躇なく、その切っ先を羽纏う身体へと沈み込ませた。


 同胞が一体倒れ、近くにいた別の翼怪がぎょろりと虚ろな目で二人を見た。いっそう口元を歪め、そして発せられるのは。
『いやあああぁあぁあああ───!!!!』
 少女の断末魔。おそらくその最期。その凄惨な叫び声から、彼女がどうやって命尽きたのか想像にはかたくない。悲鳴に擽られる恐怖と狂気に、夾とアスカは金縛りにあったように動きを止めてしまう。そんな二人を狙うのは上空から羽ばたいて嗤う化物。このままでは。

「お、怯えてばかりじゃ、いけないんだっ!」

 大きな瞳に涙の膜を貼りながら、それでも懸命に叫んだのはマリベルだ。ショルダーキーボード型のからくり人形、枢ノ鍵盤を抱えて細い指を滑らせる。繊細かと思えば意外にも激しく、翼怪の発する悲鳴を上書きするように。
 みんなを惑わせる声をかき消すぐらいの、『勇気の出る曲』を! 
 鍵盤からの跳ねるような旋律に乗るのは少年の歌声。澄んだその声を前にして、ただ模倣された偽物など恐るるに足りず。サウンド・オブ・パワーの力を含んだその曲が猟兵達に届けば、恐怖に凍った身体が不思議と解けた。マリベルの勇気が、伝染して拡散する。
 空から迫る怪腕を夾は間一髪身を捻って躱し、アスカは坂を転がり地形を利用して避けることができたのだった。
 

 小柄なミレナリィドールが歌声を響かせる中で、二人の猟兵が彼らを抜いて翼怪へと肉薄する。るり遥とジン・エラー(救いあり・f08098)だ。影は二つでありながら、その内に秘める人格は幾人か。
「さァて、好きに暴れさせてもらうか。なァ?」
 ジンの口元を覆うマスクにはジッパーが走り、開かずともまるで裂けた口のようで。その中の肉を見てオブリビオンのようだと言ったのは誰だったか。ニヤリと目だけで笑んで、見知った少年を伺う。
 るり遥はというと、未だ上空にあるオブリビオンを侮蔑を孕んだ目で捉えていた。その眼差しはただの視線に非ず。
「クソ野郎、クソ鳥野郎……!!! もう一人も喰わせねえぞ、どうだよ悔しいか!」
 くそ、くそ、と酸素続く限り稚拙な悪態を吐けば、視線の先の翼怪達はまるで見えない何かに刺されたように、苦しみながら落ちていく。
 一気に酸素を吐き出した為、ヒュ、とるり遥の喉が鳴り反動で息を深く吸ってしまう。有り余る空気に噎せ、不足する酸素にくらりと脳が揺れた。酸欠の酩酊感を覚ますのは、再び聞こえた子どもの悲鳴。複数の悲鳴は先程までより強力だ。
 溢れた唾液を拭い、恐怖と狂気に犯される前にるり遥はワイヤレスイヤホンに意識を集中する。悔しいが俺の出番じゃない。ロック、オルタナ、ジュブナイル、世界を塞ぐ爆音にて変わるのは曲調だけでなく。さあ、脳髄に直接注いでしまえ!
 変わらず響く悲鳴の合唱に、重なるのはくつくつとした笑い声。笑わせる。腑抜けは兎も角、俺は。子供の泣き声に、何か思うような『お優しさ』はない。
「なあおい、汚い口しやがって。ガキは美味かったのか? まさか、いつまでも捕食者側だって思ってないよな?」
 いただきます。そう聞こえたかと思えば、鋭い視線と共に見えぬ刃が翼怪の身体を貫いた。

「ヒュウ~~~~!」
 るり遥が撃ち落とした翼怪を棺桶で潰しながら大げさに口笛──といっても吹いてはおらず声で発している──で囃したてるのは泥のような肌をした青年だ。
 一体の翼怪がその腕をジンへと伸ばそうとすれば、その前に棺桶が狂気を防ぐ。
「本人から直接聞けねェーのはちと残念だが、悲鳴だって懇願だって。本当はねェー方が良いに決まってらァな」
 幾つの悲鳴が響いても、それは偽物で。本当の悲鳴は誰にも届くことはなく、誰にも助けてもらえず、消えてしまった幼い命。
 ジンは手近に居た翼怪の胸ぐらを引っ掴んで、迫る。汚れることも傷つくことも恐れずに。それよりも今は。
「おいお前ら。何人殺した?何人食った?痛かったよな、怖かったよな、死にたくなかったよな。紛い物でも別に構わねェーから、"お前"の声を聞かせてくれ」
 その問いに答えたのか。それとも偶然か、何を思っているのか分からないがらんどうの目でジンを見ながら、歪んだ口を引き上げる。
『たすけて、たすけて、たすけて!!!!!!』
 幼い男の子の声だった。嘲笑うような表情はそのままに、声だけが悲痛なのがより苦しい。
「……そうか」

 オーケー。
 そしたらお前らは用済みだ。

 言い終わる前にジンの身体が激しく光る。それは神々しくもありながら、見たものを焼くように苛烈。全てを救うという傲慢・驕傲・不遜が聖者の輝きとなったもの。
「オレが一人残らず、救ってやるよ」
 その光の中に、確かに救いを見た。威力を増した棺桶が、翼怪を処刑するように降り落ちて。男の子の声を模倣しただけの怪物は、引き潰されるように圧死したのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジン・エラー
オイ、【松本・るり遥】
まだイケるだろ、なァ?
オレはまだまだ、まァだまだイケるぜ
それともお前、へばったか?おォ?
救いに行くぞ

あァそれとも
「一緒に救うぞ」の方がいいか?

さっき見てたろオレの戦い方
【箱】と【光】だ
オレは好きにする
お前も好きにしろ
【オレの救い】を目の前で拝みな

“お前”の声を聞かせろ!”お前”も!”お前”もォ!!

“一人残らず”
オレは言ったことは守る主義だ


松本・るり遥
へばってるもんかよ【ジン・エラー】!あんな声聞いてへばれねえから、俺は猟兵なんだ。ああ、けどーー一緒に救うなんて傲慢、俺には荷が重い。いけよ。やれよ。落とすまでが、俺の仕事。ーー深呼吸。

『ああ"あ"聞こえるかよ天国!!落ちてる場合じゃねえぞ地獄!!!今からこのクソ聖者が!!!てめえら全員、救ってくれるぞ!!!!』

喉が痛い。救う?この状況で?何を言うんだと、嗤え、嗤えよ。嗤ったが最後、てめえらの翼はマヒをして落ちるだけ!
一人残らず。一人残らず。助けてを、聞いてくれる奴は、ちゃんとこの世にいるんだよって、その目開いて焼き付けろ。
俺も、この目耳で、見てるから。



「オイ、”松本・るり遥”。まだイケるだろ、なァ?」
 潰れて棺桶にへばりついた羽を刮ぐように、じゃりりと地を擦り。ジン・エラー(救いあり・f08098)はその溶けるような桃と光を思わせる金で、肩で息をするるり遥を流し見た。
 「オレはまだまだ、まァだまだイケるぜ。それともお前、へばったか?おォ?」
 挑発するように伺えば、すぐに吠える声が返ってくる。
「へばってるもんかよ”ジン・エラー”! あんな声聞いてへばれねえから、俺は猟兵なんだ」
 ごくごく平凡で、勇気もなければ優しさもない。けれど自分にだけにしか聞こえない声も、視た未来だって見捨てられないんだ。己の秘めたものと葛藤して、臆病だというのに逃げもせず、るり遥はしっかりとその足で立つ。
 そんな様子の少年を見て、聖者は満足そうにその瞳を蕩けさせる。マスクの下を伺うことはできないが、きっとジッパーと同じように弧を描いている。
「おっし、ンじゃあ、救いに行くぞ。あァそれとも」
 一緒に救うぞ、の方がいいか?。そう零れた言葉はちょっとした聖者の気まぐれ。
 けれど生まれながらの聖者に、彼の光を前にして、共に救うなんて傲慢だと少年は思う。

 だってさ、カミサマの前で救うとか、言えるか?

「ジン、いけよ。やれよ。落とすまでが、俺の仕事」
 そうして目一杯、息を吸う。深呼吸。ああ、膨らんだ肺が破裂しそうだ。
 翼怪達が羽音を立てて飛翔する。隠れていたモノも集って、二人に相対するのは化け物の群れ。ジンは棺桶を背負って、踏み出した。そして告げる。
 「さっき見てたろオレの戦い方。
オレは好きにする、お前も好きにしろ」

 オレの救いを目の前で拝みな。

「ああ"あ"聞こえるかよ天国!!落ちてる場合じゃねえぞ地獄!!!今からこのクソ聖者が!!!てめえら全員、救ってくれるぞ!!!!」
  ジンが翼怪へと向かうと同時に、るり遥は叫んだ。喉が裂けようが構わない、裏返ったって恥などない。
 けれどそんなるり遥を、救いなど、と嘲るように翼怪達は嗤う。途端、麻痺したように翼が痙攣し、何が起きたのか分からぬまま醜い鳥はその全てが墜落したのだ。落ちた翼怪を待ち受けていたのは。
「“お前”の声を聞かせろ!”お前”も!”お前”もォ!!」
 光を纏う聖者。ジンだ。その救いの光はひとりの男の力を増大させる。
『たすけて───!!』
『死にたくなぃ、死にたくない!!!」
『生きた、』
 翼怪達はその一体一体、否、子どもたち一人一人が最期の声をジンへと向けた。まるで神へと縋るように。
 一人残らず。一人残らず。助けてを、聞いてくれる奴は、ちゃんとこの世にいるんだ。
「その目開いて焼き付けろ」
 俺も、この目耳で、見てるから。るり遥は聖者のその背中から、その光から、視線を逸らしはしない。

 紛い物、けれど確かに子どもたちのものであった声を聞き届けて。ジンは背負っていた棺桶を──。

「“一人残らず”。オレは言ったことは守る主義だ」
 ヒトを救う。そうするべきだと聖痕が痛む。もうヒトではなくなってしまったけれど、それでも等しく。

 彼は救世主であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

忍冬・氷鷺
風の様に走り、奔る
其れが惨劇を止める手立てとなるならば

子供達が居ない事を確認し、
先に戦う仲間達の音がする方へ

敵を視認次第、速やかに氷刃裂破を使用
その大翼で躱せるほど、俺の氷は優しくないぞ
無数の氷刃を放ちつつ接近し、縛霊手による攻撃を仕掛ける
狙うは頭部、歪に笑う血濡れた口
【マヒ攻撃】で動きが鈍ってくれれば僥倖
【残像】を利用し敵の攻撃をいなしつつ、確実に一手一手をあてていく

響く幼子の声は胸に痛みを残すけれど
俺は此処で立ち止まるわけにはいかないんだ

武器を握る手に力を込め
今一度禍つの鳥に向かい、駆ける
この身体を奮い立たせるのは今は亡き彼等の慟哭
嗚呼、決してこれ以上奪わせない。同じ目にはあわせやしないさ


クラム・ライゼン
弟と妹よりちょっと年上くらい、かなぁ。
……別にさ。
もう居ない子たちは食うものが無かった訳でもないし、
悪いことした訳でもないんだろう?
ーーー駄目だ、クッソ腹立ってきた。
そこを退けよ、バケモノ共。
俺は、お前らの親玉に一発ぶち込まなきゃ気が済まない!!


・戦闘/ユーベルコード
【WIS】
〈高速詠唱〉+〈全力魔法〉
+《エレメンタル・ファンタジア》

魔法が暴走しないよう気をつけつつ
翼怪が集まってるトコを狙って
【光】属性の【集中豪雨】を発生させる。
乱戦状態だったら【落雷】で各個撃破狙い。

ユーベルコード以外の攻撃はディア(ドラゴンランス)で行う
至近に接近された場合はルフェ(短剣型ロッド)に持ち替え



 猟兵達の活躍により、翼怪は着実にその数を減らしていた。
 未だ少年達が訪れていないことを確認して、忍冬・氷鷺(春喰・f09328)は疾る。
 すり潰されたような血の跡を越え。本殿の敷地内、その前に構えられた大きな鳥居の下でおそらく最後の数体であろう翼怪がいた。
『おにいちゃん、たすけて』
『いたいよう』
 兄に助けを求める少女の声を聞いて、遅れて駆けてきたクラム・ライゼン(つぎはぎフリークス・f02003)は拳を握る。この化け物達が口にしたのは、確かに子ども達だ。そう、例えば己の妹や弟と歳が変わらないくらいの。
「……別にさ。もう居ない子たちは食うものが無かった訳でもないし、悪いことした訳でもないんだろう?」
 犠牲になったのは何か罪を犯したわけでもない子ども達。ただ偶然、最悪な事に、この化け物に出会ってしまっただけ。そうして命を貪ったのだこの使いは。
「───駄目だ、クッソ腹立ってきた」
 握りしめた拳を解いて、クラムが手にしたのは炎のようなドラゴンランス──Dear。
「そこを退けよ、バケモノ共。俺は、お前らの親玉に一発ぶち込まなきゃ気が済まない!!」
 柘榴石のような赤い瞳が怒りに震えて、翼怪を睨む。そしてはたりと黒い翼が揺れて、一陣の風が吹いた。
「──切り裂け」
  それは無数の氷刃。大気中の水分を凍てつかせ、刃と成して放つ氷鷺のユーベルコードだ。その鋭い冷たさが、翼怪の翼を切り裂いていく。
「同意見だ。俺は此処で立ち止まるわけにはいかないんだ」
 其れが惨劇を止める手立てとなるならば。無数の氷刃を放ちながら、氷毒滴る黒爪が翼怪に迫る。その大翼で躱せるほど、氷鷺の氷は優しくない。氷雪華が狙うのはその頭部、歪に嗤うその口元。
 クラムもまた、翼怪を倒さんと高速詠唱にて全力魔法を展開する。溢れる力を制御しながら、翼怪達を見据えて。
 翼怪の頭上でいっそう煌めく光はまるで雲のように膨らんで流る。

 ぽとり。ぽとり。

 一粒、二粒。零れ落ちたのは光の雫。何事だと翼怪達が見上げるが、もう遅い。雫は連なり途切れることなく、雨のように降り注ぐ。勢いは激しく、まるでクラムの怒りを表すように。光の豪雨が黒い体躯を貫いていく。

『いたい! やめてぇ!』
『きゃあぁあぁああ!!』

 口々に子ども達の悲鳴を吐く翼怪。その悲鳴は氷鷺の胸にもちくりと痛みを残す。けれど、それでも、許すわけにはいかないのだ。武器を握る手に力を込め
今一度禍つの鳥に向かい、氷鷺は駆ける。この身体を奮い立たせるのは、今は亡き彼等の慟哭。

 嗚呼、決してこれ以上奪わせない。

「同じ目にはあわせやしないさ」
 命奪われる子どもはもういない、いま目の前にいる化け物を屠ってしまえば。
 最後の抵抗と言わんばかりに、血に濡れた腕で氷鷺に組みつかんと襲いかかる。しかしその腕に届いたのは氷鷺の影、残像であった。かき抱くことなく現に消える。
 殆どの翼怪はクラムの光の雨──エレメンタル・ファンタジアにその身を打たれ倒れた。残るはこの一体。最期はせめて、一息に。
「おやすみ」
 雪の華象る黒爪が子どもの血で汚れたその身に潜る。虚ろな眼孔はじぃと美しい銀を見ていた。
ぱきり。氷が割れるような音がして。子どもを襲う恐ろしい化け物は、いなくなったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『鑼犠御・螺愚喇』

POW   :    友、死にたまふことなかれ
【友を想う詩 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    怪物失格
自身の【友の帰る場所を守る 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    永遠の怪
【皮膚 】から【酸の霧】を放ち、【欠損】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


【お知らせ:二章の執筆は都合により16日(水)からになります。以前に失効になるプレイングは流れてしまう可能性が高いです。再送歓迎です】
 ああ、ああ、何処にゐる。

 邪神の使いを撃破し、赤い境界線を越え。境内へと突入した猟兵達が耳にしたのは、声だ。それも胸に響くような、それでいて澄んだような、とても綺麗な声だ。
 しかしその声に混じるように、ずるりずるりと肉を引きずるような音がする。
 そして本殿から姿を現したのは肉塊の怪物──鑼犠御・螺愚喇。

 ラグオ・ラグラはただそこで、いつしか別れた友の帰りを待っている。しかし紛れもなく邪神であり、このまま放っておくわけにはいかないのだ。
 この善良な怪物を、君達は殺さねばならない。

 友よ。朋よ。ともがらよ。
 貴方は今、何処にゐる?
アスカ・ユークレース
何が友、ですか。少年らを拐って喰っているだけでしょう貴方は。ちゃんちゃら可笑しくて笑えてくるのですよ。


【クイックドロウ】で【属性攻撃:毒】の矢を撃ち込みましょう
ときおり【フェイント】【誘導弾】を織り交ぜて。
【酸の霧】は【第六感】で察知して【ジャンプ】【地形の利用】で風上に移動することで対処しましょう。
【迷彩】を上手く使えば攪乱もできそうなのです。

チャンスがきたら【UC】で攻撃

安心してください……一瞬で終わらせますから。

アドリブ歓迎



「何が友、ですか」

 本殿から姿を現した怪物、鑼犠御・螺愚喇が語る言葉に。アスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は心のさらに奥底から湧いてくるような怒りに声を震えさせる。
 この邪神はただ待っているだけなのかもしれない。けれど儀式のために多くの命は貪られ、今もまた子供達の命が犠牲になろうとしていた。
「少年らを拐って喰っているだけでしょう貴方は。ちゃんちゃら可笑しくて笑えてくるのですよ」
 そう告げながら、決してアスカは笑みを浮かべない。フェイルノートを強く握りしめ、その矢の先を怪物へと向ける。
「終わらせましょう、此処で。貴方に友とやらを待つ資格はありません!」
 怒りと共に、放たれたのは毒を纏った鋭い矢。その矢はアスカの狙い通りの軌跡を描き、醜い肉塊へと突き刺さった。

 ゐたい。居たい。痛い。

 ぶじゅりと肉の崩れる音がして、矢の生えた傷口から漏れ出したのは酸をはらんだ霧だ。その霧はあたりに生えていた雑草を枯らしながら広がっていく。
 しかしその毒性に第六感でいち早く気づいたアスカは、風上へと避難することで難を逃れて。酸が霧散する頃には体勢を整えた射手が、その苛烈な青で怪物を捉えていた。その矢の狙いは天高い空。
「安心してください、一瞬で終わらせますから──降らせよ星嵐!メテオストーム!」
 上空へと放たれた矢はただの矢ではない。高エネルギーを収束した矢であり、その数は無数。一度空へと還り、それは流星群のように鑼犠御・螺愚喇へと降り注ぐ!

 嗚呼、嗚呼、あぁぁああ──。

 その美しい声を苦しげに濁らせながら、肉塊は高エネルギーの矢の雨にうたれ、その身を己の血で濡らすのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


※トミーウォーカーからのお知らせ
 ここからはトミーウォーカーの「一本三三七」が代筆します。完成までハイペースで執筆しますので、どうぞご参加をお願いします!
一門・楔
友を待つ、ね。わかんなくはないぜそういうの。オレだって、親友がなんでいなくなったのかわかんねェし、できることなら待ちたいぜ?
でもよォ……ゲームでもなく子ども喰っちまうのは、ただの化けもんだろ

UC発動、オレが先に霧を纏う! 透明化で避けれるか知らんが【先制攻撃】で動けばイイだけの話
支えになっているっぽいところを殺人道具(大斧に変形)でたたっきる!【部位破壊】できれば儲けもんだ。無理でもダメージは入れる

多少酸を喰らうのはこの際仕方ねェ。上手いこと敵の狙いから外れて動けたらイイんだけどな。きつそうなら【盾受け】の要領で身を隠すぜ

アドリブ・連携、大歓迎


仲佐・衣吹
キレイなもの、カワイイもの、ぶち壊そうなんて許さないんだから
バトルだって芸術よ。美しく戦いなさい

衣吹の人格の一つ美術好きな女性、アタシことネイルよ
口調はいわゆる女言葉かしら
身のこなしが一番軽いみたいで
接近戦より距離をとってダガーで戦うのが好きよ

だけど衣吹一同、基本だまし討ちの使い手だから
正面勝負と見せかけて陰から分身体、脱いだ外装を投げて視界を塞ぐ、武器を放り投げて別の武器で攻撃……何でも使うわよ

こんなところかしら
あとは状況によりけりね。お任せするわ
ガンバリましょう


ファランス・ゲヘナ
【心境】
「オブビリオン。せめて祈ろウ。汝の思いに救いアレ…」

【戦闘】
懐から“バス停”を取り出シ、【怪力】+【鎧砕き】+【力溜め】による全力攻撃ダ。

敵の攻撃は【第六感】を頼りニ、質量のある【残像】で【見切り】回避。
当たらなければどうということはあばら~~
ふッ残像ダ(ぁ)

ピンチはチャンス『UC:自慢拳』を発動。
これがオレの自慢の拳ダー(体当たりじゃね?と言ってはいけない)


アドリブ、他猟兵との絡みOK


香神乃・饗
 ヤドリガミの妖剣士×化身忍者、19歳の男です。
 普段の口調は「明快(俺、~さん、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)」、相棒には「親愛(俺、相手の名前、~っす、~っすよ、~っすね、~っすか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


春日・氷華
氷の異能を持つ寡黙な少女。
身体が異常に低温な為、冷気や熱を遮断する火浣布の防具を身に纏う。
「……あたしは、あなたのことを知らない」
静かに見据えて
「……けれど、ここで終わらせなきゃいけないことだってのは分かるわ」

触れるものを凍らせる絶対零度の冷気を使い、味方を守る壁役として動きます。
「……あたしに任せて」
酸の霧は触れる前に凍らせて落としたり、氷の壁で包み込み受け止めます。
【氷属性攻撃】

危険な時は全身を氷に変化させて【無敵城塞】で体で受け止めます。
【激痛耐性】【毒耐性】
「……大丈夫。あたしの体は特別だから」

敵がこちらに触れたら【カウンター】で凍らせます。
「……あたしに触れたら危ないよ?」



 鑼犠御・螺愚喇の苦し気な声は、次第に高く低く旋律を奏でるように変化していく。

 友よ。朋よ。ともがらよ。
 貴方は今、何処にゐる?

 そして、その呻き声はいつしか唄と変わり、怪物の身を癒していった。
 ボコリボコリと、肉塊の貫かれた穴が、あらたな肉芽によって埋められ、流れ出した筈の腐汁が吸い寄せられるように体内へと戻っていく。
 それは、生命の営みを冒涜する情景であった。

その背徳的な肉の蠢きを前に、ファランス・ゲヘナ(     ・f03011)は、極限まで力を溜めると懐から取り出したバス亭を大きく振り上げた。
 ただ力任せに振り上げられたバス亭。
 しかし、その力の程は想像の埒外だった。
 彼の『自慢拳』の効果によって、ぐんぐんと巨大化していく拳。
 その拳が70mを超えたあたりで、ファランスはそれを振り下ろした。
 轟音と共に、鑼犠御・螺愚喇の腐肉が爆ぜ、境内の地形すら大きく変化していく。
 その惨状を満足げに見やったファランスは、バス停を再びしまうと、振りぬいた拳を見せつけるようにニッカリと笑い、

「オレは好きにしタ、君らも好きにしロ。」
 と、後に続く猟兵達に、攻撃を即したのだった。

 ふしゅるーふしゅるーふしゅるー。
 ファランスの一撃で爆ぜた、鑼犠御・螺愚喇の腐肉は解け落ちて酸の霧を発生させつつ、飛び散った肉をかき集めるように蠢めいている。
 一門・楔(電子デスゲーマー・f19330)は、その様相を憐れに見下していた。
「友を待つ、ね。わかんなくはないぜそういうの。オレだって、親友がなんでいなくなったのかわかんねェし、できることなら待ちたいぜ?」
 だが、そこに邪神への共感はこもらない。
 何故なら、
「でもよォ……ゲームでもなく子ども喰っちまうのは、ただの化けもんだろ」
 鑼犠御・螺愚喇の友への思いが、紛い物である事を十分に理解していたから。
 楔は、ゆらりと霧を纏って姿を消すと、再生途中の鑼犠御・螺愚喇へと歩を進め、その腕を大斧へと変化させると、再生しようとする肉塊の支柱となる一点を、正確に断ち切った。

 斬り飛ばされた肉塊は、ぐちゃりという嫌な音と共に玉砂利の上へと落下して、その汚らわしい腐汁をまき散らす。
 楔は、それを見届けると、霧化を解除して戦域から離脱した。

 楔の離脱と入れ替わるように前に出たのは、春日・氷華(氷の女王・f22182)だった。
 肉塊を震わせ必死に回復をしようとする鑼犠御・螺愚喇に、無造作に近づいていく。
 だが、しかし、それは無造作ではあったが無防備では無かった。
 その証拠に、周囲に散らばった肉塊が氷華に群がろうとしても、その全てを凍らせ弾きかえし、そして、攻撃を全て受け切って更に近づいて行ったのだ。
「……あたしは、あなたのことを知らない」
 苦し気に喘ぐ肉塊を静かに見据えた氷華は、言葉を紡ぐ。
「……けれど、ここで終わらせなきゃいけないことだってのは分かるわ」
 触れるもの全てを凍らせる絶対零度の凍気が氷華の決意となり、酸の霧を凍らせ、そして、彼女の氷の刃が、鑼犠御・螺愚喇を切り裂いていた。
「あなたが、いくら再生しようと、あたしはそれを凍らせよう」
「だから、あなたは、あたしに触れる事すらできはしない」
 薄く微笑んだ氷華の姿は、鑼犠御・螺愚喇にとって、まごう事無き死の使いであったのだろう。

 氷華の氷の刃によって切り刻まれていく鑼犠御・螺愚喇。
 だが、鑼犠御・螺愚喇はここで、理不尽な行動に出る。
 息も絶え絶えな状態であるにも関わらず、自らの体を盾にするようにして、神社の灯篭をかばうように動いたのだ。
 何故、そんな事を? 氷華が疑問に思うよりも前に、鑼犠御・螺愚喇の体が大きく膨れ上がった。

「危ないですわっ!」
 鑼犠御・螺愚喇の身体能力の増大を感じ取った仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)が、慌てて、鑼犠御・螺愚喇と氷華の間に割って入った。
 氷華の無敵城塞が間に合えば、ダメージは無いだろうが、彼の人格の一つであるネイルの美意識が、それを許さなかったのだ。
「キレイなもの、カワイイもの、ぶち壊そうなんて許さないんだから」
 彼女はそう言うと、バサリと黄砂色の外装を脱ぎ、その外套で氷華を包んで庇い、構えたルーンソードを構える素振りのまま投擲してのけた。
 意外な攻撃に鑼犠御・螺愚喇が怯むと同時に、同一の生地で仕立られたジャケット、ベスト、スラックスの3セットの三つ揃えを脱ぎ捨てるように鑼犠御・螺愚喇に接近し、ダガーの早業で切り裂いた。
「これが、シーブズ・ギャンビットですわ!」
 加速の極みというべき攻撃が、肥大した鑼犠御・螺愚喇の体を切り刻み、その力を封殺する。

「今よっ! やっちゃいなさい」
 脱ぎ捨てた衣服を素早く着込みながら、ネイルが叫び、まってましたとばかりに、赤い法被に梅鉢紋をなびかせて、香神乃・饗(東風・f00169)が飛び出した。

「止めは俺が貰うっすよ! 友と口にしながら、それを喰らうような悪は、許せないっす!」
 饗が懐から苦無を取り出して投擲すれば、

『一つが二つ、二つが四つ、香神に写して数数の』

 その言葉と共に50以上に複製されて、その一本一本が、鑼犠御・螺愚喇の切り裂かれた体を縫い留めるように突き刺さり、その動きを縫い留めていく。

 もうひとつたりとも悪さは許さない。
 その思いが炎となりて、鑼犠御・螺愚喇の肉片を余すところなく貫き通すのだ。
 伸ばした手が届かない哀しみを知る饗にとって、鑼犠御・螺愚喇の偽りの友情を許す事は出来はしないのだから。

 そして、熱き魂と共に、邪神の肉片を全て塵へと変え尽くし、ここに、少年たちをおびき寄せて喰らう邪神、鑼犠御・螺愚喇は、完全に滅せられ、事件は猟兵の活躍により解決したのだった。

 邪悪を滅した響は一息つくと、戦場を見渡し……、

「あとは、このあたりを片付けて、一休みっすね」

 明るく、そう言うと、軽く腕まくりをしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ねこねこねこ』

POW   :    不動。俺はキャットタワーださぁ上っておいで!

SPD   :    猫じゃらしをふりふりと、捕まえられないギリギリを狙う!

WIZ   :    猫の好い場所をくすぐり撫でくりツボをつくならおまかせ!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ファランス・ゲヘナ
判定:SPD
「タールは食べ物じゃない…じゃないんダー」
(猫に襲われて転がって逃走中)
ふゥ、死ぬかと思っタ。
オレのこの黒光りな球体ボディは魅力的らしいナ。
いや、待っテ爪とぎもダメよダメダメ~。
えーい、UC:大軍団発動。
戦いは数だヨ。

ヘタに抵抗して猫を傷つけるわけにはいかなイ…ぎゃーー分身がまた爪で削られター
ヘルプヘルプヘルプ~

●アドリブ。他猟兵との絡みOK


春日・氷華
素敵なリプレイをありがとうございました。
アドリブや絡みなどはお任せします。

可愛らしい猫や猟兵達との触れ合いを見て、優しく微笑みます。
能力を抑えていても……あたしが触れると危ないから。


その後、先ほど皆で倒した邪神について少し考えます。
おもむろに取り出した『精霊の魔導書』をめくり、何か答えが浮かび上がらないか確認します。
「……そう」
静かに本を閉じて、空を眺めます。
「--」
何か呟きます。


愛久山・清綱
思うところがあり、UDCアースの神社を訪れてみた。
階段を登って、鳥居をくぐったその時……
何故か猫たちに囲まれてしまった。
■行
【POW】
懐かれたのか、物珍しさで近づいてきたのかは分からないが、
体中を登られて少々動きづらい……まるで塔になった気分だ。

肩の上に乗ってくる奴がいたら、【動物と話す】力を用いて
『お前さん、俺が怖くないのかい?』と聞いてみよう。
怖くないと言われたら、雑談でもしてみようか。

ふと思ったのだが……俺は、人間に怖がられることはあっても
「動物」に怖がられたことはあまりないのだよな。
一応猛獣(鷲・蛇)の特徴を持つキマイラなのだが……何故だろう。

※アドリブ歓迎、『』は猫語


胡・翠蘭
WIZ

まぁ…可愛らしい猫ですわね。

ふふ、膝に乗せて…喉をくすぐったり、お腹を撫でたり…
柔らかでふわふわしていて…
ああ、本当に癒しを与えてくださいますのね…

あまり遊んでは、うちで飼っている仔に…帰ってから、妬かれてしまいそうですけれど…
ふふ、それはそれ。

今はこちらの猫たちと戯れて…今暫くの間は、仕事を忘れて癒して頂きましょう

わたくし、器用ですのよ
ですから、こう…(猫ちゃんを的確にマッサージ)
…ふふ、気持ち良いでしょうか
愛くるしい姿…こちらまで心地良くなってしまいますわ…

ほんの少しだけ、お礼にマタタビなど置いてから、帰りましょうか



 鑼犠御・螺愚喇の存在が消え去った境内。
 猟兵達は、戦闘で荒れた境内を修復し、整えていく。
 来た時よりも美しく……とまではならないが、気は心である。

「いまこそオレの力が唸りをあげルゼ! 第二形態、首から下はパワーローダー!」
 そんな神社の修復で活躍したのは、ファランス・ゲヘナ(     ・f03011)であった。
 パワーローダーは、決して伊達では無いのだ。
 ギュイーンギュイーンと、重機的に速やかに、境内の穴を埋めていく。
 そして、一仕事終えて第一形態に戻ったファランスの労を労うかのように、どこかに避難していた猫さん達が、つぎつぎと駆け寄ってきた。
 思わず、相好を崩すファランス。
「かわいいノー。猫さんには、オレの黒光り球体ボディの魅力がわかるのかナー」
 タールぼでーでにこやかに猫さんを手招きしたのだが……、その余裕はすぐに恐怖に変わった。
「うわー、だめヨ、だめヨ。タールは食べ物じゃないんダー。あと、爪とぎでもないんダー」
 多数の猫に襲われて、這う這うの体で逃げ出す事になったのだ。
「オレがなにをしター」
 あっ、境内に自慢拳撃ち込んだっけ……。
 ちょっとだけ反省したファランスは、だが、すぐに反省を記憶の彼方に投げ捨てると、
「かつテ、とある宇宙攻撃軍総司令官が言っタ。「戦いは数ダ」とナ」
 の言葉と共に、2000以上に分身し、逆に猫さん達を圧倒……、しようとした所で、愛久山・清綱(飛真蛇・f16956)に止められてしまった。

「うむ、思う所があり、この神社を訪れたのだが、貴殿はなにをしようとしているのだ?」
 神社の守護者たる天狗のような姿の清綱に、ファランスは、分身を引っ込めて、タール的に精いっぱい姿勢を正してへにょんと頭を下げ、猫さん達に削られながら、しょんぼりと言い訳した。
「戦いは数なんだよ、アニキ」
 と。
「貴殿の兄貴になった覚えは無いのだが……」
 清綱は、少し呆れながら、ファランスに群がる猫さん達に手を伸ばして、ファランスを救出する。
 猫さん達は、うにゃーおと行儀よく清綱に近づくと、なうなうと可愛らしく、清綱の足元にすがりつき、そのまま、服をつたって肩にのったり頭にのったり、遊びだした。
『お前さん、俺が怖くないのかい?』
 清綱がそう問いかけるが、猫さん達は『安心する―』『一緒うれしー』というように、ぺったりと触れ合ってきた。
 清綱は、俺は猛獣のキマイラの筈なのだが……と、微妙な表情をしたが、まんざらでもないように、猫さんと戯れた。
 なお、
「なんか、納得いかないでスヨ」
 猫さんの群れから助けられた形になったファランスは、それを見やって、ぶーたれていたらしい。

 そんな微笑ましい光景に、烏の濡れ羽色の黒髪が麗しい美女、胡・翠蘭(鏡花水月・f00676)は、
「あらあら、なかよしさんですわね?」
 と、猫さん達と戯れる清綱に、声をかけてみた。
 猫のような金と緑の瞳が、好意的に清綱を見ており、清綱は、その蠱惑の微笑みに、思わず赤面しそうになった。

「可愛らしい猫さんに好かれるのは、可愛らしい男の子に決まってますわね」
 見かけは偉丈夫ではあるが、まだ14歳の清綱に、からかうように声をかけ、翠蘭は猫さん達に手を差し伸べる。
 すると、清綱に群がっていた猫さん達は、行儀よく翠蘭の足元に集まると、遊んでくれろというようになーなーと鳴き声をあげた。
 翠蘭は、その猫さん達を順番に膝の上にのせたり、のどをごろごろして、遊んであげると、そのふわふわの毛を楽しんでみせた。

「あまり遊んでは、うちで飼っている仔に…帰ってから、妬かれてしまいそうですけれど……」
 そう言いつつも、猫さん達の急所を攻めるように、撫でてあげて、すっかり、猫さん達をくつろがせていく。それは、まさに、プロの手業といって間違いないだろう。

「貴殿は、猫に慣れているようだな。猫たちも嬉しそうだ」
 清綱は、翠蘭に遊んでもらって満足げな猫たちをなぜながら、そう称える。
「それほどでも、あるかしら」
 その清綱の賛美に、翠蘭はミステリアスに微笑んで答えたのだった。
 一方、その頃。
 猫さん人気をすっかり2人に取られてしまったファランスは、
「なんか、納得いかないでスヨ」
 とブーたれていたらしい。

「楽し……そう」
 そんな猫さんと猟兵達の戯れから少し距離を置き、春日・氷華(氷の女王・f22182)は、優しく微笑んでいた。
 触れた物を凍らせてしまう彼女にとって、小動物との触れ合いは望むべくもないが、遠くから見ているのは嫌いでは無かった。
 と、そんな彼女の足元にも、白茶のブチの子猫が近づいてきたが、
「危ないから……向こうに……」
 氷華は、その子猫に他の猫さん達のほうに行くようにと促した。
 子猫は、少しだけ迷うような仕草を見せるが、氷華の足元近くにチョコンと座ると、小首を傾げて、にゃうんと鳴いた。
 まるで「ここにいちゃダメ? 邪魔なの?」と聞いているかのように。

 氷華は膝の上で開いて読んでいた『精霊の魔道書』を閉じた。
 今回の邪神について、魔道書に何か情報が無いか調べてみようと思ったが、今は、それより大事な事があるはずだから。

「……邪魔……じゃない」
 静かに本を閉じた氷華は、触れるか触れないかギリギリの所で子猫に手をかざす。
 子猫は、チロりと氷華の手を舐めて、にゃうんと鳴く。
 その子猫の鳴き声に、氷華は微笑み、そして空を眺めた。

「今日は……良い日」
 今日の氷華は、とても幸せそうに見えたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月01日


挿絵イラスト