カメラを止めろ! ツチネコを救え!
「ここにあのツチネコが大量発生しているって話だ!」
「監督ゥ~、あれはデマだってネットに書いてありましたよ?」
「馬ッ鹿野郎! 真実は常に隠匿されてるんだ! 口より身体動かせッ!!」
某県の山間の寒村にて、都内からやってきた撮影クルーが騒いでいた。
売れない映画監督率いる一行は、動画配信サイトでのLIVE中継のためロケハン中だ。
何でも、未確認生物の群れがこの山に生息しているのだとか。
「よし、ここから始めるぞ! はい、生放送5秒前! ……ニーイチッ! キューッ!!」
監督の掛け声で、こちらも売れない女性タレントがリポートを開始。
「私は今、未確認生物が出没するという村へお邪魔して……あれ?」
女性リポーターが何かを指差した。
その先には、怪我をしてボロボロのネコ……いやヘビ……でもない、謎の生物が茂みから飛び出してきたのだ。
「み、見て下さい! あれは何でしょうか!? って、今度は何!?」
唐突に響く地鳴り音!
「おい、なんかやべぇぞ、逃げろ!」
監督がカメラで撮影をしながら逃げるも、茂みから飛び出してきた大量のツチネコたちによって全身を刻まれてしまう。そのまま撮影クルー全員がバラバラになる光景を、カメラは静かに世界中に配信し続けるのであった。
「今すぐUDCアースへ転送する! これは蛇神オロチヒメの神託であるぞ!」
蛇塚・レモン(黄金に輝く白き蛇神オロチヒメの愛娘・f05152)の裏人格である、蛇神のオロチヒメが猟兵へと告げた。
「此度の任務はUDC-Pと呼称される友好的なオブリビオンの保護である。ツチネコというUDCの群れが、都市伝説を面白半分で調査しに来た撮影クルーを襲う予知をみたのだが、どうやらその中の1匹がDUC-Pのようなのだ」
ちなみにPとはPeaceの意だとオロチヒメは教えてくれた。
「UDC-Pは既に満身創痍のようなのだ。奴は人間を守ろうと、孤軍奮闘したのであろうが多勢に無勢、返り討ちにあってしまったのであろうな……」
オロチヒメ自身もレモンと共生する元邪神であるがゆえ、何やら思うところがあるのだろう。眉間にシワを寄せて表情を強張らせた。
「ともかく、まずは愚かな撮影クルーの身の安全を確保し、その場から立ち去ってもらえ。なるべく穏便に、時に大胆に撮影を中止に追い込むのだ。彼らを追い払った所へ、ツチネコの大群が貴様ら猟兵を襲う。そして、その中で傷だらけのUDC-Pを保護し、残りを殲滅してもらいたい」
個々の脅威は然程ではないが、如何せん数が多いため、集団戦に有利なユーベルコードを活用すべきであろう。
「UDC-Pを保護したのち、UDC組織へ引き渡すのだが、その前に対処マニュアルを作成せねばならぬ。友好的とはいえUDCという存在ゆえ、何らかの難点が見つかるはずである。貴様らは、現地で個体調査を行った上で対処マニュアルを作成するのだ。これも人道的な協力をUDC-Pに仰ぐために必要なのだ」
オロチヒメは説明を終えると、グリモアで転移の準備を進める。
「人類とUDC-Pとの懸け橋になれるかどうかは、貴様らの双肩に掛かっておることを、努々忘れるでないぞ。さぁ、行くぞ!」
オロチヒメの尊大な口調のなかに、慈愛が混じっていた。
七転 十五起
七転十五起、なぎてんはねおきです。
賛同していた儀式魔術【Q】が成功しました。今回は『友好的UDC(UDC-P)を発見、保護』したのちに『対処マニュアルを作成』してください。
第一章の一般人相手かつ好奇心旺盛です。あからさまにユーベルコードを使うと、逆効果になる恐れがあるため、細心の注意を払って追い払ってください。
第二章は集団戦、数多いです。大量発生してますので、物量で押されないように。
第三章、難点はこの章に到達時点で断章にてご提示致します。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
第1章 冒険
『カメラを止めるんだ!!!』
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POW : カメラを止めろ!
SPD : ネット配信を止めろ!
WIZ : 魔法や魔術で誤魔化せ!
👑11
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的形・りょう
「UDCを無闇に世間の目に晒すのは良くない。あの人達が死んじゃっても寝覚めが悪いしな…」
UDC捕獲計画に対する悪影響(建前)と、例え愚か者であっても放っておけない性格(本音)から出動しました。
「ネット配信を止めろ!(SPD)」に挑戦します。
「でもツチネコねえ。何がそんなに珍しいんだか」。ツチネコに尻尾を噛まれて腰を抜かしたりしながらも、メカニックの素養を活かして電波をジャックするなどして未然に止めようとしますが、乱戦になってしまったら、ユーベルコード「人狼咆哮」を使い、ツチネコの大群と取材一行をまとめて気絶させます。
「でもツチネコ全部動かなくなっちゃったな…。UDC-Pはどれだ?」
予知によって、猟兵たちは撮影クルーが到着する直前に現場へ転送されてきた。
的形・りょう(感情に呑まれる人狼少女・f23502)は真っ先に山の中へ分け入ると、注意深く辺りを見渡した。
「UDCを無闇に世間の目に晒すのは良くない。あの人達が死んじゃっても寝覚めが悪いしな……」
UDC捕獲計画に対する悪影響という建前、そして例え愚か者であっても放っておけない性格であるがゆえに助けたいという本音を内心に携え、先にツチネコの群れを探しだそうと試みる。
「でもツチネコねえ。何がそんなに珍しいんだか?」
UDCメカニックである的形にとって、どうやらツチネコとは身近な存在のようだ。
しかし、野生のツチネコは猟兵でもなかなか発見することが難しい。
そうこうしているうちに、撮影クルーが到着してしまった。
(まずいな……なんとかしないと)
実戦経験がほぼゼロの彼女にとって、撮影の妨害方法は限られてしまう。
(カメラをハッキング……するために、クランケヴァッフェを改造してみるか)
的形は自分の武器をメカニック技能で改造を施し、撮影カメラの電子基板をハッキングするためのケーブル端子を取り付けた。
「監督ゥ~、あれはデマだってネットに書いてありましたよ?」
「馬ッ鹿野郎! 真実は常に隠匿されてるんだ! 口より身体動かせッ!!」
監督にドヤされた助監督とカメラマンがロケハンのため、的形が潜む茂みへ近付いてくる。
的形はケーブル端子を蛇のようにウネウネと地べたを這わせると、カメラマンの背後からカメラへ端子を喰らいつかせるように強制接続!
(ウイルスデータを植え込んで、こっちでカメラを操れるように細工しよう)
データ改ざんを終えると、素早く端子を引き抜いた。
「……なあ、ここ、蛇が出るのか?」
「なに言ってんだ?」
「いや、今、俺の後ろに蛇がいたんだ、たしかに……!」
カメラマンが思わず身震いする姿に、助監督がせせら笑った。
「ビビってんなよ。こんなのインチキに決まってるだろ。あの監督、いままでそういうネタで喰ってきたんだから、どうせ今回も同じだろうよ」
「うーん、おかしいな。って、あれ? カメラが電源入らないぞ?」
「おいおい、バッテリーはあれだけ充電しておけって言っただろ!?」
「い、いえ、たしかにここに来るまで充電器に挿しっぱなしだったはず!?」
「ったく、つかえねーな! 予備のハンディカメラをもってこい!」
「さーせん、いってきます!」
助監督がカメラマンを顎で使ってロケバスまで走らせる。
(どうしよう。カメラは予備があるようだ。ケーブルは警戒されうだろうし、どうすれば……)
的形が困っていると、背後から野生のツチネコが忍び寄って来ているではないか。
そのままツチネコはなんと、的形の尻尾を思いっきり噛み付いた!
「ぎゃあああああああああああああ!?」
驚きと痛みで彼女は咆哮!
奇しくもユーベルコード『人狼咆哮』となって、半径10mに音波攻撃を繰り出した。
背後のツチネコはもちろん、カメラマンを待つ助監督にも衝撃波が直撃!
「グワーッ!?」
ユーベルコードを一般人が食らったせいか、助監督は泡を吹き出してその場で昏倒してしまった。
「助監督、予備のカメラ持ってきました、って、どうしたんですか!?」
「アバッ、アバババ……」
痙攣する助監督に、カメラマンはタタごとじゃないと判断した。
「大蛇の呪いだ……! さっきの大蛇の呪いが助監督に!? ヒィエ〜!?」
助監督を担いだカメラマンは、慌ててロケバスへ逃げていった。
一方、的形は、この流れを一部始終見守っていた。
「いや、誰が呪いだっての。失礼だね……」
ちなみに尻尾から口を離したツチネコは絶命していた。
ほぼ零距離射撃であるので、致し方なかっただろう。
「気絶どころか死んじゃったか。群れを探したかったけど空振りだな。UDC-Pはどこだ?」
やむなく、的形は周囲の捜索を続行することにしたのだった。
成功
🔵🔵🔴
バジル・サラザール
好奇心は猫に殺される……なんてことにならないようにしないとね
プランA
カメラの前でうろうろ
「いえ、私もツチネコを追っているんですが、気候の変動で大移動したといわれてましてね、その証拠に餌であるこの植物がほとんど手つかず。ここから数km先の……」等、出まかせに『催眠術』をのせて誘導。穏便に去ってもらいましょう
プランB
プランAが駄目なら、『睡魔を誘う蛇の果実』で眠らせて、UDCの助けも借りて、安全な所まで運ぶわ
できれば記憶消去銃で記憶を消しておきたいわね
配信されていたら「火山ガス……?」とかの出まかせや『催眠術』で誤魔化しつつ、配信停止、データ削除
かく言う私も正直興味津々だけどね
アドリブ、連携歓迎
担ぎ込まれた助監督をロケバスの中に寝かせたリポーターの女性が監督へ駆け寄ってきた。
「なんだか、酷くうなされていました……」
「だから! 呪いだ! 祟りだ! 監督ゥ、やめましょうよ?」
「うっせぇ! むしろ俺は燃えてきた!! カメラ回せ! いくぞ!!」
カメラマンの制止を振り切り、監督は山道へずんずん進んでゆく。
やむなくリポーターの女性とカメラマンの2人は、監督を追いかけていった。
「好奇心は猫に殺される……なんてことにならないようにしないとね?」
撮影班一行の姿を目視確認したバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)。キマイラである彼女の下半身は巨大な蛇である。猟兵の特性故に怪しまれることがないのは幸いだ。
「それでは早速、作戦開始ね」
山道の脇から木の葉まみれで撮影班の前にバジルは飛び出すと、あたかも偶然を装ってカメラに近寄った。
「あれ? なにかの撮影ですか?」
「えっと、LIVE中継でツチネコ捜索の模様を配信しているんです……」
リポーターの女性がそそくさとカメラの前まで出ると、バジルへマイクを向けた。
「ところで、こんな所で貴方は何をされていたんですか? 凄い精巧な蛇のコスプレまでしてますし……」
バジルはしめしめ、と内心ほくそ笑んだ。
「実は、私もツチネコを追っているんですが、気候の変動で大移動したといわれてましてね。その証拠に、ほら、餌であるこの植物がほとんど手つかず。ここから数km先の……」
バジルは流暢にデタラメなツチネコ情報を、さも事情通の如くカメラの前で披露し始めた。
コメント欄には胡散臭いと避難する声も上がっていたが、バジルの医術知識による生物学談義を次第に視聴者たちも信じ始めてゆく。
「……と言うわけで、昨今の温暖化が原因で、此処にはもしかしたらいないでしょう。私のコスプレも無駄になってしまいました」
「そう……なんですね……」
話を聞いていたリポーターの女性が、いつの間にかぼんやりと意識を朦朧とさせながらバジルの話を聞いていた。
「あれ……? なんか……急に眠たくなってきたような……? ふぁ……っ」
カメラマンも思わず欠伸が出てしまう。
この眠気の正体は、バジルの催眠術とユーベルコード『睡魔を誘う蛇の果実』の催眠ガスに因る効果であった。
(話して素直に帰ってくれそうな人達じゃないわね……悪いけど、おとなしく寝ててもらうわ)
ユーベルコード製の催眠ガスは強力なのだが、監督は自分の頬を平手打ちして意地でも眠気を覚まして堪えていた。
「なんだ、この妙な眠気は!? おい、ふたりとも、寝るな! カメラ回ってんだぞ!?」
「ちょっと待って下さい、有毒な火山ガスが何処からか漏れているのかもしれません! 此処は危険です、山道を引き返しましょう!」
バジルはスマホを操作すると、ガスマスク装着済みの救急隊員に扮したUDC職員を、山道に呼び寄せた。
UDC職員は手際よく担架にリポーターの女性のカメラマンを乗せると、監督に有無を言わさず連れ返してしまった。
「皆さん、決して充分な装備を持たずに登山なんてしないように! ゲホゲホッ!!」
カメラを拾い上げたバジルも、わざとガスで気道をやられたかのように演技。
カメラの電源をオフにした後、監督にカメラを返却すると自身も担架で担がれていった。
(あの監督の執念は想定外でしたが、他2名は無事に身柄を確保できましたね。あとは記憶消去銃で、2人の今日の出来事の記憶を除去してしまえば完璧ですね)
バジルの機転により、こうして、山道には監督独りが残された。
しかし、監督は再びカメラの電源をオンにしてしまう。
カメラは未だに止まっていない……!
大成功
🔵🔵🔵
水鏡・怜悧
人格:ロキ
好奇心で身を滅ぼす…他人事ではありませんが自衛手段も無しとは。自己責任と言いたいところですが…本物を知らないのであれば仕方ありませんか
要は話題性がある未確認生物が撮れれば良いのでしょう?
機械仕掛けの妖精に意識を移し、彼らの前を横切ります
羽を構成するUDCに光属性を取り込んで、いかにも妖精ぽくキラキラしておきます
カメラに映るときは光を操作して、妖精か珍しい蝶か分からない程度までぼかして映るよう細工しておきます
追ってきたら山と反対側へ逃げましょう。適当に追い回して撮影したら満足してくれるでしょう
人格:アノン
山道の木陰で待機
ロキが殺すなって言うから人間に会ったら殺気で恐怖を与えて追い払う
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)は、その身に3つの人格を宿す多重人格者である。
そのうちのひとつであるロキは、今回の事件について研究者として半ば共感してしまうのだった。
「好奇心で身を滅ぼす……。他人事ではありませんが、よもや自衛手段も無しとは。自己責任と言いたいところですが……本物を知らないのであれば仕方ありませんか」
やれやれ、と肩を思わず竦めてしまうロキ。猟兵とは違いって、UDCアースの一般人にはオブリビオンの存在は秘して伏せられている。故に、未確認生物の類として面白おかしくネットなどで曖昧な情報が飛び交う結果になっているのだ。この世界の一般人が、本物のオブリビオンと対峙するなんてことは、本来は遭ってはならないことなのだから。
「つまり、要は話題性がある未確認生物が撮れれば良いのでしょう? ロキちゃんにいい考えがあります」
ユーベルコード『機械仕掛けの妖精(イミテーションフェアリー)』を発動させると、ロキの人格と意識は機械じかけのフェアリー人形へと移行する。
「ロキちゃん、フェアリーモード! この姿でカメラの前を横切って、興味をそそられた監督をツチネコの群れから遠ざけましょう」
「……ロキ、オレは、どうすりゃいい?」
ロキが抜け出た肉体には、凶暴で粗野な人格のアノンが顕在していた。
「あのカメラ持ってる人間、殺していいか?」
「ダメですよ、アノン? それじゃどっちがUDCか分かったもんじゃないですから」
「ハァ? 殺さねぇなら、どうしろって言うんだよ?」
不満そうなアノンに、妖精ロキは嘆息を吐く。
「アノン? そういう時は威嚇すればいいです。ほら、今みたいに歯をむき出しにして、がるる~と唸ればいいんですよ」
「マジかよ、それだけでいいのか!?」
半信半疑のアノンだが、ロキは小さな体で彼をツチネコが群れていそうな竹藪の中に押し込んでゆく。
「いいですか? 私が戻ってくるまで、ここから動いたらダメですよ?」
「チッ……早く戻ってこいよ!?」
飼い主が遠くへ離れて不安がる大型犬のごとく、アノンは宙を舞うロキを恋しそうにじっと見詰めていた。
「ったく、今日はツイてねぇな!? えー、視聴者の皆さん、トラブル多発もLIVE配信のスパイスだと思って、大目に見てもらえると助かります」
監督がひとりカメラを持ったまま、独り言のようにナレーションを入れて撮影を続行していた。
そこへ、ロキが光の羽根を瞬かせながらカメラの視界ギリギリのところを高速で飛来してゆく。
「なんだ!? 今、俺の頭の上を何かが飛んでいったぞ!?」
監督が地面から空中へカメラのファインダーを持ち上げて周囲を見渡す。
そこへ再び、ロキがカメラの上を光の粉を撒き散らしながら通過していった。
「あんな蝶は見たことないぞ!? もしかして新種では!? ツチネコの前に、新種の蝶の正体を暴くべく、これから追跡します!」
監督はすっかりロキに夢中になり、山道を引き返し始めた。
「おや、狙い通り私を追いかけ始めましたね。この撒き散らした鱗粉は実はチャフでして。電波妨害で配信を強制ストップさせましょう」
これもハッキング技術の応用である。電波妨害を促す金属の粉末を鱗粉に見立てて、ロキはキラキラと光を反射させながら飛んでゆく。
「あ、あれ? 電波が急に届かなくなって……圏外だと? そんなバカな??」
配信が中断されてしまい、監督は苛立ちを露わにする。
「クソッ! 何が一体どうなっていやが……ヒィッ!?」
怒鳴り散らしていた監督が、竹林へ視線を向けた瞬間に思わず身が縮んでしまう。
そこには、竹藪の中から殺気を漲らせて監督をに睨みつけるアノンが顔出していたのだ。
「グルルル……。ロキを捕まえたら殺す……!」
「なんだ、アイツ……? なんで竹の中で四つん這いになって俺を唸ってるんだ? 怖っ!!」
状況はカオスだが、ともかく監督は凄まじい恐怖に襲われ、その場から足早に立ち去ってゆくのだった。
「よく分からねぇが、一旦ロケバスに戻るか。助監督も目が覚める頃だろうしな……?」
配信は一時停止したが、監督はまだ諦めていないようだ。
だが、流石にあとひと押しで監督の心も折れるはずだ。
監督の背を見送るロキは、自分のやるべきことは果たしたとばかりにアノンの元へと飛んでゆくのだった。
成功
🔵🔵🔴
木常野・都月
友好的なUDC-Pか。
そういう個体がいるのは、嬉しい?と思う。
俺は猟兵だけど、仲良く出来ればそれに越した事は無いと思う。
それに俺自身も妖狐の枠から少し外れてるから…個人的にも助けたい。
まずは、一般人にお帰り願う訳だけど…
若干手荒かな…。
でも俺の能力で怪我をさせずに帰って貰うならこれしかない。
一般人に悪夢や幻覚を見てもらってお帰り願いたい。
[範囲攻撃、全力魔法、催眠術]で一般人に眠って貰いたい。
その上で、闇の精霊様にお願いして、悪夢を見せて貰いたい。
夢から覚めたら、演出で飛ばした狐火で恐怖感を煽りたい。
あまり魔法を見慣れないUDCアースの人なら、夢との相乗効果で怖がって逃げて…くれるといいな。
高梨・依都(サポート)
最近こちらに所属したばかりで、あの、お役に立てるか自信はないのですけれど…
精一杯がんばりますので、よろしくお願いします…っ!
…でも、お化けとか怖いのは苦手なんです
内気で真面目、常に敬語な優等生
でも弱い者をいたぶるような敵には強く憤る面も
■戦闘
指定したユーベルコードでUDC召喚
本人は後方支援型で、戦闘行為はUDCにお任せしてます
傷つく事を恐怖しつつも守るものがある時は厭わずに
公序良俗に反するのはNG
あとはお任せします
よろしくお願いします
辰神・シエル
●心境
ま、珍しーモンなら見たくなるのが人間の性ってな。
間抜け面でもUDC。仮にもオブリビオンだ。何が起こるかわかんねぇからとっとと退場願うか。
●行動
カメラとか、録画機材をぶっ壊せばいーんだろ?
【闇に紛れる】を使いながら見晴らしのいい場所の死角に潜み、【スナイパー】で正確にカメラや音響マイクなどを弓矢で攻撃だ。
ついでにロケバスも狙っとく。パンクさせる程度で許してやるか。
執念もここまでくりゃあ大したもんだ。
だが、監督のそのプロ根性は意外と好きだぜ。
監督がロケバスに戻ってくるところを隠れて観察していた猟兵たち――木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)、辰神・シエル(ペネトレイトアロー・f02627)、そしてサポーターとして駆け付けた高梨・依都(カシュマールの帳・f23175)の3名は、撮影クルーを置い這うための作戦会議を始めた。
「友好的なUDC-Pか。そういう個体がいるのは、嬉しい……? うん、嬉しいと思う」
モフモフの黒い狐の尾を左右にゆったりと振りながら、木常野は進言した。
「俺は猟兵だけど、仲良く出来ればそれに越した事は無いと思う。それに俺自身も妖狐の枠から少し外れてるから……個人的にも助けたい」
「ま、珍しーモンなら見たくなるのが人間の性ってな」
シエルは腕を組みながら小さく数回頷いてみせる。
「ツチネコか。間抜け面でもUDC。仮にもオブリビオンだ。何が起こるかわかんねぇ。一般人にはとっとと退場願うか」
「あ、あの……私は、何をすればいいでしょうか……?」
猟兵になりたての高梨は、おずおずと小さく挙手をしながら先輩方に尋ねた。
「最近こちらに所属したばかりで、あの、お役に立てるか自信はないのですけれど……。精一杯がんばりますので、よろしくお願いします……っ!」
「そう固くならなくていい。俺もつい最近、猟兵の活動を始めたばかりだから」
木常野はガチガチに緊張している高梨をリラックスさせようと、くるりと背を向けた。
「少しだけなら……触っていいから。多分、少しは落ち着くと思う」
「あ、ありがとうございま……うわ、なんですか、このモフリティーの高さ
……!?」
ふわふわモフモフの木常野の尻尾を両手で触る高梨の表情に笑顔が灯った。
「え、うそ? こんな手触りの良いクッションが実在していたなんて……」
「いや、俺の尻尾なんだが……まだ触るのか?」
「もう少しだけお願いします……! はぁ……癒やされます……」
「あー、新人さんの緊張がほぐれた所で、依都って言ったか? ユーベルコードは何を使えるんだ?」
「へ? あ、はい! えーとですね……」
シエルの問い掛けに、高梨は自身のユーベルコードの効果を説明する。
すると、木常野が驚いて目を見開いてみせた。
「それ、俺がやろうとしていたことなんだ。ユーベルコードで出来るなら、任せていいかな?」
「え!? わ、私が!? が……がんばります……!」
作戦の起点となる要素は、高梨のユーベルコードに託された。
「よかった。俺はこの作戦、若干手荒かな……と思っていたんだ。でも俺の能力で怪我をさせずに帰って貰うならこれしかない」
話し合いの結果、高梨のユーベルコードを起点に、シエルが妨害し、木常野が追い撃ちを仕掛けるという流れに決まった。、
「んじゃ、オレは見晴らしのいい場所の死角に潜んでくるか。要はカメラとか、録画機材をぶっ壊せばいーんだろ? ロケバスもパンクさせておくか?」
「いや、それはやめておこう。ここから帰れなくなるのは、追い払う目的と少し違う気がする」
木常野の言葉を受け、シエルはしばし考え込み始めた。
「……そうか? まーそうなのかもな?」
「ゆ……UDCは、この世界の人々に、知られてはいけない存在ですから……」
事故によってUDCを宿す事となった高梨は、自身に起こった今までの出来事を思い返しながら言葉を繋いだ。
日常から非日常へ転がり落ちるのは、本当にあっという間であった。
そうこうしているうちに、監督だけがロケバスから折りてきた。
「ンだよ、使えねーなァ!? テメェはそこで寝てろ!!」
「蛇の祟りはもう嫌だぁ……!」
車内から助監督の情けない声が聞こえてきた。
猟兵達はしめたとばかりに顔を綻ばせる。
あの監督さえ止めれば、撮影は完全にストップする。
「ったく……最初から俺がカメラを持って探し回ればよかったぜ!」
悪態をつきながら監督は、山道を再び登り始める。
その後ろを気付かれないように注意を払いつつ、猟兵達は静かに尾行を開始した。
だいぶ山道を歩いてきた監督。
日没まではまだ数時間あるが、午前中で終わるはずの撮影が半日がかりになってしまったことに苛立ちを抑えきれない。
「さっさと出てきてくれよ、ツチネコ! このままじゃ、俺のチャンネルの登録数が減っちまう!」
ブツブツ文句を言いながら、山道をそれて茂みの中へ分け入ろうとした、まさにその瞬間だった。
「依都、今だ。頼むぜ!」
「は、はい……!」
シエルが高梨の背中を軽く叩くと、鎮めの力持つ冥界の蓮、その無数の花びらを山道へと放った。
「せめて一時の安らぎを――冥花片の召喚(ビュール
)……!」
風に乗って蓮の花弁が宙を舞う。それが監督の身体を軽く撫でていった。
すると、監督の身体に変化が表れ始めた。
「ふあぁ……っ! なんか、急に眠たくなってきたな……!」
高梨のユーベルコードのお陰で、監督は睡魔を抑えきれなくなってしまう。
それでも、必死にカメラは手放さい監督に、死角へ移動したシエルが思わず苦笑する。
「執念もここまでくりゃあ大したもんだ。だが、監督のそのプロ根性は意外と好きだぜ」
シエルは敬意を払いながらも、『パーフェクト・クライム(完全犯罪)』の名を冠した機械仕掛けの合成弓(コンポジットボウ)に矢を番えた。
「すまねぇが、また新しいカメラを買ってくれよな?」
闇に紛れたシエルの一矢が空を切り裂き、監督のハンディカメラを寸分の狂いもなく射抜いてしまう。
バシッと電気系統のショートする音が山に響き、監督は何が起きたのか理解が追い付かずに思考を止めてしまう。
思考を止めた瞬間、眠気に抗えずにそのまま昏倒してしまった。
「よし、寝たな。カメラも破壊完了だ。おい、2人とも、監督の身体検査は忘れずにな? SDカードやら何やらで映像のコピーがされていたら厄介だぜ?」
「それなら、私が……!」
高梨は恐る恐る監督の衣服をまさぐり、USB端子とSDカードを募集した。
「あとは俺が追い撃ちをすれば……」
木常野は魔法と催眠術を掛け合わせることで、精神感応魔法を眠っている監督の脳内へ流し込み始めた。
「監督に恐ろしい悪夢を見せる。恐ろしい未知の怪物に襲われ、生きたまま全身を喰われる内容だ」
「うーわ、エグいな、それ……」
シエルが思わず顔をしかめた。
そして木常野の隣に浮かぶ黒い人魂の姿に、オバケが嫌いな高梨は戦々恐々である。
「な、なんですか、その人魂
……!?」
「安心して。これは闇の精霊様だ。今、俺は精霊様の力を借りて、監督に悪夢を見せているんだ」
言葉通り木常野の掌から、黒い波動がk南砺区の頭部へ向かって照射されていた。
しばらくすると、監督が目を擦って覚醒を果たした。
猟兵達は山道の脇野茂みに身を潜ませている。
「っ……あ、あぁぁぁ……! なんか、酷い夢だったぜ……。って、いけね! 配信、配信!? って、カメラがぶっ壊れてるじゃねーか!! それに、ない! USBもSDカードも亡くなってやがる! チクショウめ!!」
パニックになる監督。
その背後から、やけに熱い空気が浴びせられてきていた。
「んだよ、熱っちーなオイ! ……て、は???」
監督は凍り付いた。
眼前には、59個もの人魂(※正体は木常野のユーベルコードで生み出した狐火)が、監督の周りをぐるりと取り囲み始めたではないか!
これに監督は遂に、恐怖の許容量を超え、感情の堰を切ったように叫び始めた。
「うわあああああああああああ!? 助けてくれぇぇぇぇ!?」
一目散に登山道入口のロケバスまで逃げ帰ってゆけば、しばらくしてエンジン音が遠ざかってゆくのを猟兵達は各々の耳で聞き取った。
ようやく、監督が撮影を諦めて退散していってくれたのだ。
だが、その光景を陰から見詰める、無数の生物の眼差しがあることに、猟兵達はまだ気が付いていない……。
成功
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第2章 集団戦
『つちねこ』
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POW : ちょこまかちょこまか
【超スピードで走った際に出来たカマイタチ】が命中した対象を切断する。
SPD : ささささーっ しゅばばーっ
【相手の脳波・筋肉運動・その他予備動作から】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : ぬるりとだっしゅつ
【捕獲されない為に】、自身や対象の摩擦抵抗を極限まで減らす。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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撮影クルーに代わって、ツチネコを捜索する猟兵達。
すると、程なくして傷だらけのツチネコが山道へ飛び出してきた!
あれがきっと、今回の保護対象であるUDC-Pなのだろう。
そして、それを追いかけるように、大量のツチネコの群れがあちら此方から飛び出してきたのだ!
UDC-P以外のツチネコは、明らかに猟兵達を排除すべく殺気を向けてきている。
傷だらけのツチネコを一刻も早く保護し、群れの駆除を行わなくてなならない。
君たちは武器を手に取り、臨戦態勢へ移行するのだった。
的形・りょう
「いた!あいつだ…!」
早く捕まえないと…。しかし私の技はどれもこれも周囲を巻き込むものばかりです。どうすれば…。
「ちょっと博打だけど、やってみるか…」
私の【激情咆哮】は、自分が抱いている感情によって異なる追加効果をランダムで発揮します。慈しみやいたわりの感情で、味方を守るような追加効果を上手く引き出せれば、UDC-Pを守りつつ、周囲の敵を一掃できるのではないでしょうか。でもなにぶん自分の感情ですから、そう都合よくコントロールできるかどうか…。とりあえずあの傷ついたUDC-Pを抱きしめてみようとします。
(アドリブ歓迎です。設定等足りなければ適宜補完していただいても大丈夫です)
木常野・都月
UCで傷を治してあげたい所だけど…
襲われている最中じゃ落ち着いてUC使えないな…
[全力魔法、範囲攻撃、火の属性攻撃]で、敵を迎撃したい。
傷だらけのツチネコを[かばう]ようにして立ち、[オーラ防御]を展開しておこう。
加えて[カウンター、火の属性攻撃、2回攻撃]で追撃も行いたい。
手数が足りないなら、UC【狐火】を使用したい。
仮に狐火を使わなくて済むなら、UC【緑の癒しの狐火】で傷だらけのツチネコを回復させたい。
ついでに[動物に話す]で、保護しにきた事、俺から危害は加える気は無い事を伝えよう。
すぐには信用して貰えないかもしれないけれど、そこは仕方ない。
ゆっくり仲良くなっていこう。
辰神・シエル
●心境
あー、大軍だ。大軍。
しかし、ネコなのか蛇なのかどっちかハッキリしろよ謎生物!
なんだその間抜け面ァ!
●行動
ツチネコ保護は誰かに任せるわ。
オレは敵対してるツチネコ潰す方にまわるぜ。
【精密射撃】で保護対象のツチネコ射らんように気をつけながら『慈悲なき血と憎悪の雨』を使用して攻撃だ。
数が多いから、少しでも減らしておきてぇ。そーしたら保護もラクになんだろ。
ある程度減ってきたら、妹への土産話にするためにスマホでツチネコ撮影。
アキラはどうだか知らんが、メイなら喜んでくれるかもしれんからな。
右も左もツチネコだらけの山道のど真ん中で、的形・りょう(感情に呑まれる人狼少女・f23502)は負傷しているUDC-Pのツチネコを発見した。
「いた! あいつだ……!」
早く捕まえなければと気を急き、UDC-Pへ駆け寄ろうとした。
だが、その目の前をツチネコが行く手を遮り、ヌルヌルと素早い動きで的形を翻弄する。
「あっ、ちょっ、退いてって痛ッ! ぶつかんなって!」
ささささーっ! しゅばばーっ!
時折立ち止まって集団でドヤ顔を見せる煽り耐性の高さ……!
「ああもうっ! 邪魔ーッ!! うっぜーなオイ!?」
通れそうで通れない、そんな状況に的形がキレ始める。
そこへ木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)がエレメンタルロッドを振りかざすと、杖先からファイヤーボールを射出した!
ドヤ顔で立ち塞がっていたツチネコの群れがまとめて爆発四散!
「あれがUDC-Pか。ユーベルコードで傷を治してあげたい所だけど……、襲われている最中じゃ落ち着いてユーベルコードを使えないな……むしろ数m先まで辿り着けない」
「あ……ありがとう。すごい魔法だな……? 私は的形・りょう。よろしく、先輩」
「木常野・都月だ。あと先輩というほど猟兵活動は長くはないんだ」
「でも、私はつい最近覚醒したばっかなんで、ほとんどの猟兵が先輩だ! あんな魔法、私は撃てないからな! さすが先輩だ!」
的形から尊敬の眼差しを向けられて戸惑う木常野。
そのやり取りを見ていた辰神・シエル(ペネトレイトアロー・f02627)がツッコミを入れた。
「おーい、無駄話してないで、その傷ついたマヌケ面の所へ行ってやれ、都月」
木常野はコクリと無言で頷く。
「了解、シエル。……りょう、あの子のところまで突っ切るから援護を頼む」
「え、援護!? 私のユーベルコード、敵も味方も巻き込むものしかないんだけど……」
まだ経験の浅い的形、他の猟兵との連携はこれが初体験だ。
故にソロでの猟兵活動した想定しておらず、ユーベルコードも連携に対応していない。
戸惑う的形に、木常野はしっかりと的形の目を見据えて力強く頷いた。
「大丈夫。ヒトは、何かのために強くなれると聞いたことがある。りょう、俺はあの子を助けたい。そのためにも、俺に力を貸してくれ」
「……はい!」
木常野の言葉に的形の頬が紅潮する。誰かに必要とされることが単純に嬉しかったのだ。
「先輩の頼みだ。ちょっと博打だけど、やってみるか……!」
「……行こう。俺の火炎魔法なら、摩擦抵抗を無視して撃破できる」
木常野の周囲にユーベルコードで呼び寄せた狐火が60個浮かび上がる。更にエレメンタルロッドからの火炎弾を携えてツチネコの群れへと飛び込んでいった。
「ツチネコ保護はそっちに任せるわ。オレは敵対してるツチネコ潰す方にまわるぜ」
シエルが背を向け、逆方向でたむろする群れを食い止めるために『パーフェクト・クライム(完全犯罪)』を冠する機械仕掛けのコンポジットボウを構える。
「ほら、先輩が行っちまうぞ?」
「――ハッ!? ありがとうございます! いや、私はここで大丈夫です!」
的形は大きく息を吸い込むと、都月の言葉を思い返す。
(俺はあの子の助けたい、か。……私も、あの子を助けたい。それを邪魔する奴を許さないっ!)
彼女の胸の中で慈愛と使命感が急激に膨張し、遂には許容量を突破して爆発する!
「……聞いてみろ、私の怒りを!」
人狼の的形は、埒外のエネルギーを激しい咆哮として周囲に轟かせた!
このユーベルコード『激情咆哮(フューリアス・スクリーム)』は、本来ならば自分のレベル分――半径35m以内の猟兵・オブリビオン問わず無差別で攻撃するのだが、的形の抱く感情によって追加効果がランダムで付与されるのだ。
「アァァァオオオォォーォォォン――ッ!!」
更に追加で遠吠えする的形の周囲では、ツチネコが全身を痙攣させながらひっくり返ってしまった。
ツチネコが如何に素早く相手の攻撃を回避できるとしても、無差別攻撃にはめっぽう弱かったようだ。
ユーベルコードの相性により、効果は抜群だ!
だが、目の前には猟兵のシエルがいる。シエルにもダメージが及ぶ、かと思いきや?
「なんだか、妙にやる気が出てきたぜ!? オラ、掛かってこいよ? 数が多いから、少しでも減らしておきてぇ。そーしたら保護もラクになんだろ。てか、あー、マジで大軍だ。大軍。うじゃうじゃ何処から湧いてくるんだかな? しかし、ネコなのか蛇なのかどっちかハッキリしろよ謎生物! なんだその間抜け面ァ!? 妹のSNSのスタンプでも見たことねぇぞンなキャラ!?」
どうやらダメージは与えず、士気上昇のバフが掛かったようだ。
そしてサラリとシスコンぶりを口にするシエル。
「おい、狼女? 突っ立ってると危ねぇから、さっさと都月のところへ行けって! 巻き添えを食っても責任持てないからな?」
シエルはコンポジットボウから火を纏った矢を装填すると、そのまま天へ向けて炎のボルトを打ち上げた。
「悪意は誰にだって向けられる。それがお前に向いたのは、ホントに運が悪かっただけだ」
打ち上げられた炎のボルトは、空中で無数に増殖してゆき、重力に引っ張られて炎の雨となって降り注ぎ始めた!
ユーベルコード『慈悲なき血と憎悪の雨(ブラッド・アロー・レイン)』!
「炎上、ご愁傷さまだな? 都月がヒントをくれたお陰だなァ? おーおー、よく燃える」
「うわっ!? え、ヤバッ!? いやー!? こっち来ないで!?」
的形は慌てて射程外へ逃げてゆくと、そのまま木常野の元まで向かっていった。
木常野はUDC-Pを抱いて庇いながら、飛び掛かってくるツチネコの群れを何度も消し炭にしていった。
「燃えてしまえ。邪魔をしないでくれないか?」
摩擦抵抗を極限に減少させた身体は、体当たりをされても実は余り痛くはない。向こうが勝手につるっと滑って衝撃が受け流されるのだ。
とはいえ、ピッチピッチと四方八方から寄って集られると身動きが取れない。
そこへ的形が身体をねじ込み木常野の壁となる!
「都月先輩! 早く! 魔法でどかーんとっ! ぶべらっ!?」
ぺちーんっとツチネコの胴が的形の顔面へダイレクトアタック!
しかし、的形はなんか嬉しそうだ!
「えへへ……ネコチャーンがいっぱーい!」
向こうからツチネコが飛び掛かってくるこの状況、的形にとってウェルカム!
「……りょう、すこし耐えてほしい。俺はこの子を手当するのに、ユーベルコードを切り替えるから」
「了解! 先輩の壁になってみせ、あっ! 3匹同時なんて欲張り! えへへ!」
的形が自分の理性の崩壊と戦いっている間、木常野はユーベルコード『緑の癒しの狐火』を発動させる。
「集中する……」
翡翠色の狐火に炙られたUDC-Pの傷が徐々に癒えてゆく。
「もう大丈夫だ。キミを怖いところから救いに来たんだ」
木常野は優しくUDC-Pへ語り掛けると、ぐったりしていたそれの顔がこころなしか安堵で満ちてゆく気がした。
その後もファイヤーボールを適宜発射しながら肉壁で群れを退け、猟兵の援軍を待つ木常野と的形。
「おー、こっちはまだ数が多いな?」
他の群れを壊滅させたシエルが応援に駆けつけた。
射出したボルトは避けられるので、無理矢理シエルは足蹴にするなどして追い払ってゆく。
「まだたくさんいるのかよ。こりゃ、応援の猟兵を待つしかねぇな? ……って、狼女、大丈夫か?」
「大丈夫。ネコチャーンを吸って元気全開だから」
そんな的形の赤い目は、興奮で充血して更に赤くなっていたのだった。
大成功
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バジル・サラザール
資料とかでは見たことあるけれど、いざ実際に見ると……読めない表情ね
UDC-Pのつちねこを背に、庇いながら戦闘
数には数。「毒使い」「属性攻撃」を生かした「ポイズン・スピア」で弱っていそうな敵を優先、各個撃破を狙うわ
ぬるりと避けられないように、しっかり芯を捉えて刺しましょう
後衛から全体をよく見て、状況を把握、他の人にしっかり伝えましょう
敵の攻撃は「野生の勘」も利用しつつ、回避や防御しましょう
でもUDC-Pに当たりそうな攻撃は庇ったり、相殺したりするわ
可愛いというか、味があるというか……興味深いわね
アドリブ、連携歓迎
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
あれがつちねこ…猫というより蛇のようですね。特徴も似ていると良いのですが
UDCの触手に魔銃から氷属性と水属性を取込み、UC触手式魔導兵器を発動します
大量のつちねこの前方地面を凍らせ、更に表面に薄く水を張り、その先に氷の壁を設置
氷上の水に滑って氷の壁にぶつかったら全方位を氷の壁で囲み閉じ込めます
密閉なら脱出も出来ませんからね
変温動物ならほぼ抵抗も出来ないでしょうし、そのまま凍死してもらいます
周辺気温も下がっていますから、閉じ込められなかった個体も動きが鈍っているでしょう
同じように倒していきます
傷の子も動きが鈍っているでしょうから動向に注意しつつ医術で治療を試みます
先陣の猟兵たちが駆除したとはいえ、まだまだ群れの数と勢いは衰えていない。
応援に駆け付けたバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)はUDC-Pのつちねこを背に、庇いながら戦闘を行っていた。
「資料とかでは見たことあるけれど、いざ実際に見ると……読めない表情ね」
「あれがつちねこ……猫というより蛇のようですね。特徴も似ていると良いのですが」
同じく現場に駆け付けた水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の中の人格『ロキ』は、研究者の感性が刺激されるのか、つちねこの群れをしげしげと緑目で観察していた。
居合わせた2人はほぼ同時に行動を開始した。
「数には数よ。……ねぇ、そこのあなた、前衛をお願いできないかしら?」
バジルは手元で魔力を練りながらロキへ頼んだ。
これにロキは即決して頷いてみせる。
「分かりました。このロキちゃんにお任せ下さい」
ロキは自身の服の下に纏っているUDC-黒く玉虫色に光る液体金属の触手に、銃型魔導兵器-オムニバスから氷属性と水属性を付与してバジルの前まで進み出た。
「触手式魔導兵器-シンフォニア、発動です。さぁ、触手ちゃんたち、お仕事ですよ」
水属性の触手がヌルヌルと素早く動き回るつちねこをずぶ濡れにしたかと思うと、氷属性の触手がロキの周りでびったんびったんと暴れ始めた。
すると、濡れた地面がたちまち白く凍て付き始めたかと思えば、つちねこたちは足元を滑らせてつぅーっと高速で滑ってゆく!
自身の摩擦抵抗を極限まで無視した結果、氷で滑ったら最後、障害物に当たるまで止まれないのだ!
その間にロキは触手で地面と氷を混ぜ込んで壁を自身の前に造り上げ、次々とつちねこたちを受け止めてゆく。
「氷の上で転んだら、摩擦抵抗が極限まで少ない彼らは自力で起き上がれないようですね。しかも変温動物の如く寒さに弱いようです」
あれだけ素早かったつちねこの群れが、氷の上だとピタッと動きを止めてしまうことをロキの観察眼が見抜いたのだ。
「こっちは集めるだけ集めて、氷と土の壁で密閉して凍死させます。これでかなり数が減るでしょう」
「助かるわ、ええと、ロキちゃんって言ったかしら? 私はバジル。どうやら同業者のようだし、心強いわ」
バジルによって練り上げた猛毒の魔法矢が230本全て生成完了した。
「薬も過ぎれば毒となる。元々毒だけど、たっぷりと味わいなさい?」
ロキの凍土の箱に収まりきらなかったつちねこへ向けて、一本一本丁寧に狙って猛毒の魔法矢を射出して突き刺していく。
「この矢は物理攻撃じゃないから、摩擦抵抗の影響を受け辛いようね? 念の為、身体の芯を狙って射抜きましょうか」
1本ごとに力強く撃ち出される猛毒の矢が、突き刺さる度につちねこを激しく痙攣させて命を奪っていった。
中には抵抗して向かってくる個体もいたが、バジルはUDC-Pを体を張って庇った後に返り討ちにしていった。
ロキの触手の発する冷気で動きが鈍っているのも、矢を確実に突き刺すためのアシストになっていた。
「……よし、161匹を冷凍して箱詰めしました。これ、研究材料として持ち帰っていいのでしょうか?」
凍土で出来た大きな立方体をワクワクしながら擦るロキの言動に、バジルはしばし逡巡した。
「い、いいんじゃないかしら……? こっちも、230本の矢がちょうど尽きたところよ」
バジルの周囲には、矢で射抜かれて中毒死したつちねこが大量に打ち捨てられていた。
どうやら、これで大量発生したつちねこの群れは全滅させることが出来たようだ
「このあと、どのみちUDC組織が『後片付け』するでしょうけど、ロキちゃん、少しこの遺骸も持っていく?」
「はい、よろしければ。バジルさんのユーベルコード製の毒もおまけで研究できそうです」
「ロキちゃん、研究熱心ね。その探究心は私も見習いたいものね。さて……」
ぐったりしている傷だらけのUDC-Pに、バジルは応急処置を施す。
消毒液に傷薬を全身に塗布、そして栄養剤を口から投薬する。
「鋭利な刃物のようなもので全身を切り裂かれているわ。失血がさほどではないのが幸いね」
UDCエージェントにして薬剤師のバジルは医者ではないものの、症状の知見については実戦経験で培っている。
「私も手伝わせて下さい。この子も寒さの影響を受けているでしょうし、少し温めてみましょう」
ロキは火属性の触手を生み出すと、極々弱火にしてUDC-Pの傍へかざした。
「触手式キャンプファイヤーなのです。体が温まれば、体力の消耗は抑えられるはずです」
次第にUDC-Pの顔が、苦痛のそれから安堵に満ち足りた表情へ変わった……気がした。
「全然表情が読めないけど、きっと安心してくれているはず。それにしても、可愛いというか、味があるというか……興味深いわね」
バジルが自分の着ていた白衣でUDC-Pを包んで、体温低下を防ぎながら苦笑していた。
先陣の猟兵の活躍と医術の心得のある2名の猟兵の奮起により、無事にUDC-Pの保護に成功した。
だが、実はここからが難関なのであった……。
大成功
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第3章 日常
『UDC-P対処マニュアル』
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POW : UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す
SPD : 超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す
WIZ : UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する
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ある意味、戦闘よりも難易度が高いとも言える、つちねこUDC-Pの対処マニュアルの作成を猟兵がこの場で作成しなければ、UDC組織への引き渡しはままならない。
故に猟兵達はつちねこUDC-Pをつぶさに観察してみると、以下の問題点が浮上した。
・とにかく体表がツルツル。
→摩擦抵抗が極限までなさすぎるので手掴みでの運搬は困難、少しの隙間で脱走する
・何を餌としているのかが全くの不明
→この山の周辺の何かを食べていると推測だが、周囲に食べ物は見当たらない
この2点を解決しない限り、ここより組織へ運搬が出来ない上に餓死させてしまいかねない。
猟兵達は互いの知恵を持ち寄り、対処マニュアルの作成に当たり始めた。
的形・りょう
「捕まえてみたものの、何なんだろうなこいつ…」
人目につかず謎の生き物扱いされていたこと、体格の割に目が小さいこと、やたら短い手足からして、普段は土中か落ち葉の下か木のうろに住んでいるのではないでしょうか。流線型の体や摩擦抵抗の少ない体表も、スムーズに狭い土中や木の中を移動するためと考えたら納得いきます。
だとすれば、ネコ科のような口元の形をしていることからしても、主食はねずみや昆虫などの小動物ではないでしょうか。
群れをなすほど大量に生息していたので、珍しい餌しか食べないというわけではないはずです。
隙間のない水槽のようなケースに、落ち葉や土、昆虫などのエサと一緒に入れて運ぶのが良いと思います。
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
一人称:私
人格:ロキ
生態は先程のUDCもUDC-Pも変わらないでしょう
凍死させた個体のうち、骸の海へ還らなかったものから情報収集します
部分的に凍結を解除し、UDC-Pから見えないように腹部を解体
胃の残留物を調査します
万一、精神や生命力を糧とする場合は胃が無いことで判別可能です
また、毒属性の触手で胃液の成分を調べ食料の素材を想定します
摩擦については冷えた箱に閉じ込めれば運搬可能と想定しますが、今後を考えると耳にピアス穴を開けて紐を通しておくと良いかもしれません
また、食事後など体内に固体がある状態では隙間は抜けられないでしょう
憶測に基づき、UDC-Pが嫌がらない範囲で実行し確認します
木常野・都月
まずは摩擦抵抗が無い点を解決していこうか。
世話するのに、触れ合う事は必要だ。
保護されて、食べ物を用意し、外敵から守ってもらう代わりに、研究や世話に協力するよう[動物に話す]で伝えてみよう。
ヒトが触る時は、俺の尻尾みたいに…毛を逆立てたり出来ないか?
世話して貰えるし、気持ちよく撫でて貰えるぞ。
後は餌か。
狐は肉食寄りの雑食性。
ツチネコは…蛇?猫?どちらも肉食系という気がするけど。
あの森で狐やヒトの視点だけど、用意してみた。
この中で選んで貰って、食の傾向を探るのはどうだろう。
ネズミや小鳥等の小動物、魚、ミミズ、虫類、山イチゴ、果実、きのこ、植物の種子、山芋、ヨモギや葉物。
食べられそうなものはあるか?
バジル・サラザール
こういうときはつちねこの気持ちになるのよ……
目線を合わせてコミュニケーションを試みるわ。ほとんど寝転ぶ感じになるかしら
表情が読めない子だけど、『医術』を生かして治療を続けて、『野生の勘』も使って頑張るわ
寝そべったついでに、『野生の勘』も使いつつ餌の探索。ツチネコの視点から見つかるもの、土、草、何でも試してみましょう
つちねこの意志で檻とかに入ってもらうのが理想だけど、暴れたりでどうしようも無さそうなら、『睡魔を誘う蛇の果実』で回復しつつ眠らせて運搬を試みるわ。まあ、どちらにしろ運搬する直前に眠っててもらったほうがいいかしら
これから色々調べるんだし、相応のおもてなしはしないとね
アドリブ、連携歓迎
猟兵の懸命な判断により、UDC-Pのつちねこは一命を取り留めた。
だが、未だぐったりとしているUDC-Pを、的形・りょう(感情に呑まれる人狼少女・f23502)はまじまじと見詰めていた。
「捕まえてみたものの、何なんだろうなこいつ……?」
相手は生態は完全に謎の生物、何処から取っ掛かりを得ればいいか、的形は腕を組んで考えを巡らせていた。
一方、水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)こと研究者人格のロキは、先程の戦闘で氷漬けにしたつちねこの群れの一部を解凍し始めた。
「生態は先程のUDCもUDC-Pも変わらないでしょう。骸の海へ還らずに存在する個体を調べれば、何か手掛かりが見付かるかもしれません」
「なるほどね。早速、その氷漬けにした個体たちが役立つわけね?」
バジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)は持参した医薬品でUDC-Pの傷の手当を続けていた。
ロキは頷くと、漆黒の刃でできた4本の医療用メス……通称『黒狼の牙』を握り締めた。
「はい、早速、役立たせてもらいましょう。今からこの個体達を解剖して、胃の内容物を調べてみます。……そもそも、胃があるかも不明ですが」
「それはどういう事なのか? 生き物なら胃があって然るべきでは?」
的形の疑問にロキが答える。
「私の推論ですけど、他の生物の精神エネルギーを吸い取っている場合、胃はさほど重要ではないでしょう」
「その発想はなかった……」
感心する的形。
そこへ、木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)が心配そうに顔を曇らせていた。
「解剖するって言ってたが、この子に……襲われたとはいえ、同族が切り裂かれるのを見せるのは避けるべきでは?」
「ご心配無用です。ちゃんとその辺りは考慮します。というと事で、私はあちらで調べてみますね」
ロキが指差したのは巨木の真裏だ。
そこならばUDC-Pからロキの調査が見られずに済む。
ロキの調査結果が出るまで、残る3人は知恵を出し合って論議を重ね始めた。
「人目につかず謎の生き物扱いされていたこと、体格の割に目が小さいこと、やたら短い手足からして、普段は土中か落ち葉の下か木のうろに住んでいるのではないでしょうか?」
的形は持論を述べると、UDC-Pの体表を優しく撫でた。独特の手触り、摩擦抵抗が極端に少ないツルツルさに彼女は着目した。
「流線型の体や摩擦抵抗の少ない体表も、スムーズに狭い土中や木の中を移動するためと考えたら納得いきます」
「りょうちゃんの発想は案外正解かもしれないわね。つちねこの『つち』って、土中にいるからなのかも?」
そういうバジルは、何故かUDC-Pと向き合うように寝転んでいた。
「バジル、キミは一体、何を?」
木常野が不思議そうに首を傾げていた。
「こういうときはつちねこの気持ちになるのよ……。目線を合わせて、コミュニケーションを図るのよ。自分たちもつちねこと同じ気持ち、同じ状態になることで、きっと手掛かりが掴めるはずよ」
バジルはUDCエージェントである。いわば、UDCを扱う専門家と言っていいだろう。
生物学の観点からも併せ、バジルはつちねこになりきるべく、その場に寝転がってUDC-Pのつぶらな瞳をじっと見詰めた。
「表情が読めない子だけど、きっと何かを訴えているはずよ」
「そうか。……でも、会話なら俺を介せば出来るぞ? さっきも戦闘中にやってたから」
「え? そうなの……? それを先に言ってほしかったわ……」
バジルが微妙な顔付きのまま困惑していた。
しかし、UDC-Pはバジルが寝転がって接してくれたことに対して喜んでいるようだ。
「……誠意を見せてくれたことに喜んでいるようだ」
「寝転がることが誠意なのか……」
的形もなんとなくバジルに倣って寝転がることにした。
「ネコチャーン、怖くないぞー。……バジル先輩、気が付きました?」
「りょうちゃんも気が付いた? ええ、この子が何を食べるのか、ちょっと判った気がするわ」
どうやら的形とバジルは、つちねこ視線になったことでヒントを得られたようだ。
「……?? ふたりとも、何に気が付いたんだ?」
「それについては、私がご説明しましょう」
ロキが解剖を終えて此方へ戻ってきた。
「結論から言えば、胃はありました。そして、雑食だと判明しました。肉・昆虫・植物類、はたまた土も食べていたようです。消化能力が高く、私の毒の触手で成分を調べたところ、かなり高い酸性の値を示しました。恐らく、何でも食べられるように進化した結果だと思います」
「そうね、此処ら一帯は食べ物らしきものがない。ただ、それは私たちヒトの観点から、という注釈付きでね? 人間が食べないものを食べる。つまり、『この山の全てが彼らの食料』だとすれば、大量発生しても群れが餓死しなかった理由に繋がるわね」
バジルが起き上がる。的形も起き上がると、気付いた点を述べた。
「ネコ科のような口元の形をしていることからしても、主食はねずみや昆虫などの小動物ではないでしょうか。群れをなすほど大量に生息していたので、珍しい餌しか食べないというわけではないはずです。土や植物だけでは、生物に必要なタンパク質は取れませんから」
「それじゃ、実際に食べさせてみよう。少し待っててくれないか?」
木常野は唐突に野に分け入ると、あれやこれやを採取し始めた。
十数分後、彼は草と泥まみれで戻ってきた。
「あの森で狐やヒトの視点だけど、用意してみた。この中で選んで貰って、食の傾向を探るのはどうだろう? 狐は肉食寄りの雑食性、ツチネコは…蛇? 猫? どちらも肉食系という気がするけど」
そういう木常野のローブの裾に溜められた、様々な品々。
ネズミや小鳥等の小動物、魚、ミミズ、虫類、山イチゴ、果実、きのこ、植物の種子、山芋、ヨモギや山菜などの葉物、粘土質の土壌……。
「食べられそうなものはあるか?」
UDC-Pは鼻先をヒクヒクと動かして匂いを嗅ぐと、まずはネズミをガツガツと食べ始めた。そこから、まるでヒトがおかずを食べるように、木常野が差し出した品々を交互に、そして全て食し始めたではないか。
「本当に何でも食べるのね。でも基本的にはお肉が好きなのかしら?」
肉を中心にバランス良く何でも食べるUDC-Pの姿を、バジルは興味深そうに観察していた。
「これで食料問題は解決ですね。さて、あとはこの子の運搬方法ですが……」
ロキは氷属性の触手を伸ばしつつ猟兵たちへ提案した。
「つちねこは低体温になると極端に動きが鈍る性質を持っているようです。ですので、凍死しないまでの低温の箱に閉じ込めれば、脱走することはないと思われます」
瞬時に凍土を触手で練り上げ、ロキは専用の運搬箱を作り上げた。
「今後を考えると耳にピアス穴を開けて紐を通しておくと良いかもしれません。犬でいうリードですね。首輪は摩擦抵抗の関係ですり抜けてしまうでしょうから、この子が嫌がらなければ、それもありかと。また、いくら消化力が強いとはいえ、食事後など体内に固体がある状態では隙間は抜けられないでしょう」
「私は隙間のない水槽のようなケースに、落ち葉や土、昆虫などのエサと一緒に入れて運ぶのが良いと思う。できるだけ、この山の環境のまま運搬してあげたほうが、この子のストレスも少ないはずだから」
的形はUDC-Pの気持ちに寄り添う運搬方法を提案した。
バジルは自身のユーベルコードについて説明した上で、3人へ提言する。
「つちねこの意志で檻とかに入ってもらうのが理想だけど、私のユーベルコード『睡魔を誘う蛇の果実』なら傷を癒やしながら眠らせる事が可能よ。本人……いや本つちねこの意思確認は必要だけれども、まあ、どちらにしろ運搬する直前に眠っててもらったほうがいいかしら。これから色々調べるんだし、相応のおもてなしはしないとね」
「俺がみんなの意見を通訳しよう」
木常野が3人の意見をUDC-Pへ伝える。
すると、UDC-Pはぶみゃ~とひと鳴きしてみせた。
「全部、採用だって。ちょっとひんやりとした腐葉土が敷き詰められた隙間のない箱で眠らせてほしい、と。耳のピアスも慣れてきたら考える、だって」
「この子は意外と心が広いようですね。いい子ですね」
ロキがUDC-Pを撫でる。だが、ツルツルで指先が流れて撫でるというより弾かれてしまう。
これに木常野がUDC-Pへ尋ねた。
「世話するのに、触れ合う事は必要だ。摩擦抵抗が無い点を解決していこうか。保護されて、食べ物を用意し、外敵から守ってもらう代わりに、研究や世話に協力してほしい」
木常野の動物会話技能の面目躍如である。
ぶみゃ~ぶみゃ~と鳴くUDC-Pに、木常野は少し困った顔をしてみせた。
「触られるのが怖いのか? 大丈夫だ、みんな優しく触れてくれる。そうだ、ヒトが触る時は、俺の尻尾みたいに……毛を逆立てたり出来ないか? 世話して貰えるし、気持ちよく撫でて貰えるぞ」
木常野の提案に、UDC-Pは暫し考えを巡らせているようだ。
その直後、UDC-Pの身体が突然、風船のように丸く膨らんだ!
それは都市伝説でよく見聞きする、あのツチノコの姿のままだった。
「おお、今度はちゃんと撫でられますね」
ロキは先程とうってかわって摩擦が発生したUDC-Pの体表に感動している。
UDC-Pも他者から触れられることを徐々に許し始めている様子だ。
「……もう大丈夫だ。この子も触れられることをもう拒まないと言ってる」
「じゃあ、そろそろUDC組織に連絡しよう」
的形は麓で待機している組織のエージェントに連絡を入れた。
かくして、ロキの作った凍土の箱の中で、スヤスヤと眠るUDC-Pは組織のエージェントに引き取られた。
猟兵たちが作成した対処マニュアルが、UDC-Pの快適な収容環境に役立つはずだ。
だが、まだまだこの世界のUDC-Pは何処かに潜んでいるはずだ。
いつか彼らを全て救いたいと願いつつ、猟兵達は帰投するのであった。
大成功
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