●最後に立ってたやつが勝者。
「正気で言っとんのか、テメーッ!」
叫んだ。
よみがえるのは敗戦の記憶。彼らはいわゆる「負け組」なのだ。
だからこそ彼らが叫ぶ、小さな体で羽をいっぱいに伸ばして、大きく――復讐の資格があると!
「悪戯してほしけりゃ、悪戯したるわッッッ!!!!ザケンナコラーッ
!!!!」
体操よろしくバトンのようにスパナをぶんぶん!ここはアルダワ魔法学園。――間違いなく。
彩られたハロウィンの装飾なんて鉄の前ではただの紙屑同然!!ぶちぶちにちぎればなんてことないね!
小さな体たちで宝の地図のような紙を広げて、さあいざぶち壊し!お菓子なんて甘いものは小さな復讐者たちのひとりじめ!
●そこにないならないですね。
「ハッピー・ハロウィーン!!!お菓子くれなきゃ悪戯するぜッッ
!!!!」
颯爽登場、明朗快活。空気もどかんと蹴りながら、彼は現れる。ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)の中に内在する人格がひとつ、ヘイゼルだ。
お菓子くれ、お菓子。と両手を差し出しつつ、グリモアベースにて集まってくれた仲間たちにねだる。え?仕事?うん、まぁ仕事ね。と頭を掻いて、キリッとした顔を作った。
「妬み嫉みってコエエーーーッつう話なんだけどサ?」
【Q】が成功する。
大規模な儀式魔術は見事成功し、猟兵たちはさらなる救済の余地を見出したのである。
発見されしアルダワの古文書曰く――はるか昔、アルダワでは「装魔封災戦(そうまふうさいせん)」という、人類が災魔の仮装をして災魔の拠点に侵入し、大規模な奇襲で大量の災魔を封印した大作戦が決行された。
「それがちょーど、十月三十一日で。勝利の宴が起源になってアルダワもハロウィーンっつーことよ。」
持ち出したぺろぺろ舐めれるキャンディは渦巻き模様で。どうでもよさそうに話しつつも、もちろんこの事件だって一大事なのだ。
でもまあおいしいものはおいしいのでキャンディもどんどん噛んでいく。これも仕事なので。
「ンでね、負けたことを逆恨みして襲ってくるらしいワ。」
まちきれなくて、キャンディをがりり。
ヘイゼルが鋭い牙でそれをかみ砕いて、猟兵たちに伝えるのは――ちょっと「おばか」になった災魔たち。
敗戦の記憶が残っているのか、今も本能的にハロウィンを忌み嫌う災魔は多く、はた迷惑なことに衝動のまま学園へと現れてくるらしいのだ。
「場所は魔法学園。まーきれいに彩られてるし、ごちそうもプレゼントもダンスステージもあって、そりゃあもうどんちゃん騒ぎよ。こりゃあ、襲われたらみんなひとたまりもねェ。」
そこで。
「だから、俺たちの出番ってわけ。おわかり?」
おかわり。
キャンディをまたひとつ取り出して、口に入れる。口の中で高速で転がしているので振動がすごい!エキサイティンッ!
「まー、奴ら、優先的に仮装してりゃァ襲ってくれるらしいワ。まあね、学生よかこっちのほうが派手な衣装着てるしモーマンタイじゃね?」
ちなみに彼の服もヒーロー・コスチュームである。
ゴロッゴロゴロロロっと口の中で奇怪な音を立てながら、補足説明を付け足す。
「まあ、大事なのは『楽しんでる』っつーことらしい。そうしたら、敵もチョー嫉妬してめちゃくちゃもう隙だらけヨ。」
飲み食いしながらパンチ。
踊りながらキック。
しゃべりながらノールック砲撃。
お菓子おねだりしながら破壊光線。
「大丈夫大丈夫、アルダワだし。広いし」
本当に?
と伺いたくなる仲間たちのモラルにお任せしつつ、うははと笑って。
「派手にやっときゃパンピーは狙わんだろ!」
そういうと彼はいつも通り蜘蛛型のグリモアを召喚しちゃうのであった。今日もちゃんと転移させてくれる優れもの、彼の手のひらから離れて大きく広がっていく。
「ジャー、イッテラッシャイ。楽しんで来いよーッ!!」
大きく腕をぶんぶん。
ゴリゴリッムシャと口の中で甘味を砕きながら、鴉面の彼が笑っていたのだった。
さもえど
Happy Halloween!
十三度目まして、さもえどと申します。
今回のシナリオははっちゃけギャグな感じでお送りいたします。
うるせ~~~~!しらね~~~!はろいんたのし~~~!という気持ちで是非災魔たちを蹴散らしてくださいませ。
猟兵の皆さんがきゃっきゃしてくださるとアルダワ魔法学園の生徒たちに被害が及びません。ぜひお好きな仮装でワッショイ殴り込みに来られてくださいねっ!
パーティをワッショイしてくださると有利かもしれません。
お目に留まりましたら、どうぞよろしくお願い致します!
第1章 集団戦
『グレムリン』
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POW : スパナスマッシュ
【巨大なスパナ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : ツールボックス
いま戦っている対象に有効な【分解用の工具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ : ハイドアンドシーク
自身と自身の装備、【アイコンタクトをとった】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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●ハロウィンSDも拝見します
普段は蒸気と勇気の満ちるこの世界で。
今は学生たちの楽しい時間と愛らしいコスチュームでにぎわっていた。
「Trick or Treat!」
合言葉はたったひとつ。
それだけで誰もが笑顔になれる不思議な魔法がこの世界に満ちている。
勝利を祝う祭――それでにぎわう会場がひとつ。各々の嗜好をこらした精いっぱいのコスチュームは猟兵たちと比べればささやかではあるけれど懸命にこの日を楽しんでいた。
のに。
「馬鹿野郎何がハロウィンじゃ俺らは勝つぞおんどれェッ
!!!!」
どうして関西弁なのか。会場にいる学生らは訝しんだ。
グレムリン。スパナを持ち、ハロウィンパーティーでにぎわう会場の豪奢に飾られる壁を一発、どかんとツッコむ。
「どいつもこいつもよォ……。」
唸る一頭は憎らし気にすべてを見ていたのだ。
その怨嗟はどこまで募ったものかわからぬ。だけれど確かに今の彼らを燃やす本能だ。
「ハロウィンの喜びを知りやがって!!!」
いや喜びも何も、そういうお祭りである。
しかし、それは勝者の言い分!負けた側に救いはないんですか!ないね!構えられたスパナは復讐の証!締めるのは浮かれた生徒たちの首である!!
「学生なら勉学にはげまんかい
!!!!!!!!!!!」
★ごもっともだけどそれは今じゃない――……!
振り下ろされたスパナの行く先は、あっけにとられていた学生の頭を確かに狙っていたのだった!
***
プレイングは 10/31 23:59まで受け付けております。
ぜひ皆様のパワーあふれるプレイング楽しみにお待ちしております!
榎・うさみっち
◎
イェ~~イ、ハッピーハローウィーン!
【こんとんのやきゅみっちファイターズ】のお出ましだ!
この色とりどりの野球ユニフォームが仮装だ!
アニマル要素も取り入れてみた!
兎耳、虎耳、獅子耳、牛の角、鯉の尻尾、鳥さん色々…
おいグレムリン!野球しようぜー!
とっても楽しい野球の試合に誘う!(強制)
さぁそのスパナバットで打ち返してみろ!
色んなクソデカ感情を込めて鉄球を打ち込む!
三年連続ナンバーワンの実力喰らえー!
土壇場快進撃の底力喰らえー!
来年こそはと涙を呑んだ俺達の雑草魂喰らえー!!
狙うはホームラン!ちなグレムリンがボールな!
お?何だ文句あんのか?
クレームが来たらうるせーしらねーと
釘バットで乱闘待ったなし!
●う さ み っ ち の 教 室
ぶん、と空気を薙ぐ慈悲無き嫉妬と醜いスパナに皆がようやっと気づいた頃に――。
硬質な金属同士のぶつかり合う鋭い音が響く。くしゃりと折れ曲がったスパナに、流石の振り下ろした一体も驚きを隠せなかった。
「ええええええーーーーーっっっ
!!!???」
そこそこ硬い金属でできてるんですけど!!?とグレムリンどうしで何度も顔を見合わせる。
俺のスパナちゃんと硬い金属でできてるよな?と確認してしまうくらいには、あっけなく破壊されてしまった。どんなもので相殺されたのか――確認しようとしたときには、小さな竜よろしくの彼らのまえに現れるのは屈強な……。
屈強な……?
「え?何やコレ、ゲテモンか
……???」
「イェ~~イ、ハッピーハローウィーン!」
イェ~~~イなんて全く似合わないけれど、そこに現れたのは、 屈 強 な 野 球 選 手 た ち で あ る ! ! !
スパナで人を殴るな、ボールを打てと言わんばかりの鬼どもがそこに現れていた。明らかに軽く、そして彼らのものではないだろう声が宙を舞う。
はたはたと羽をはためかせながら、赤い鞭を両手でぴしりと伸ばして見せるさまは――まさに女王様もとい鬼コーチであった。しかも彼が連れた野球選手たちの格好といえばもう、半端ない寄せ集めである。
たくましい体に――兎耳。そして獅子耳、牛の角。鯉の尾に鳥の羽。
ナンデヤハン・シンカンケイナイヤロ
そして、なぜか虎耳!
「交流戦かいッッッッッ
!!!!!!!!!!!」
思わず叫んだグレムリンの前できっと野球の話はしていけなかった。荒れる元だからね、しょうがないね。
しかし、そんな彼らの心のうちなどこの可愛さ極振りフェアリー、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)の前では関係ないのだった!
「おいグレムリン!野球しようぜー!」
その宣言とともに、ピエロを模したような愛らしい恰好をしてみせた小さな体で、うさみっちは充分振りかぶって鞭をふるう。
すると――。
チャーチャラッチャチャッチャーッチャーチャラッチャチャッチャーッチャーチャラッチャチャッチャーッ
「何やコレ」
「おい、お前ハロウィンはどうしてん」
「さぁそのスパナバットで打ち返してみろ!学生の頭打つより簡単だろ?」
「いやあのハロウィンは
!!!?????」「アカンこいつ早く何とかしゃーへんと!!」
チャーチャラッチャチャッチャーッチャーチャラッチャチャッチャーッチャーチャラッチャチャッチャーッ
突如流れ出したBGMは【こんとんのやきゅみっちファイターズ(ウサミノ・ジショニ・スポーツマンシップナド・ナイ)】の選手たち、その一人がブルーなトゥースで流しているものらしい。ちょっと音質が悪いあたりリアリティがある!臨場感というのは大事なのだ。人は耳からも情報を多く拾う。
きっとこの会場にいた誰もが――白昼夢のような体験をしたかもしれぬ。
ハロウィン?そんなもの関係ないのだ!うさみっちがここを「野球場」としたその瞬間にここはもうパーティー会場ではない!!「野球場」なのである!!
このフェアリーの前では何もかもが彼の思うがまま!この人生はうさみっちの夢だらけ!と、言わんばかりに選手たちが構えた。
――バッターはもうボックスにいる。
――監督であるうさみっちはただ、彼らのその背中、そして彩られたちょっとファンシーな番号を青空の瞳にうつしていた。
屈強な選手たちである。この暴力的ながらもしっかりと(打算の)愛情を込めたうさみっちの指導(いじり)に耐えてきた彼らの顔は、数多の戦場を超えてきた兵士の顔よりも凛々しく勝利を望んでいる。
グリップを握る手はますます力がこもって、軸足は前へ鋭く踏み出される。大きく振りかぶった体幹がまっすぐであることは、小さな体をしたうさみっちだからこそ全体を見渡せたから知っていた。誰もが、「狙いに」いっていることを。
うさみっちたちのチームは、苦渋をすすった時期もある。イマイチ成績が伸びなくて、己の指導の仕方を改善しようと小さな体でうんうん唸っていて夜しか眠れない日もあった。
選手たちのいざこざもなかったわけではない。それでも、そのいざこざがすべて野球のためにあると知ったのなら容赦なく両成敗をしてきて均衡を保った。
憎まれるのは、俺だけでいいぜ――。
そう、いつでも吐き捨てながら彼らの成長を見守っていたのだ。暑い日も、寒い日も、彼らは走り、素振りをし、フォームのチェックをする。うさみっちは、アイスを食べてまったりするのだ。そして、試合の始まりと終わりを見たのなら、ハイライトで客観的に指導をしてやる。
そうして――このチームが得たのは、三年連続でのナンバーワンの実力だった。
土壇場快進撃である。いつでも、ピンチになった時ほど猟兵も真の姿になれるし野球もそういうシステムでなんとかなったのだ。
だから、この瞬間はうさみっちも、信じるしかなかった。選手たちの希望が満ちた一撃が、無事成功されることばかりを望んでいる。流れる音楽、途切れた歓声、――驚愕するグレムリンたちのことは、まああれボールだし。
「三年連続ナンバーワンの実力喰らえー!」
「ぎゃああああ
!!!!!!!!!!!」
容赦なく金属バットで殴った。
普通に真正面から殴った。パァンとかじゃない、バキュ、と音がして――グレムリンたちは容赦なく吹っ飛ぶ!!旋回する!!軌道はまっすぐ打ち上げられる!!
吹っ飛ばされる仲間に「うわー!」とか「大丈夫かー!」とかいって駆けつけるまだ無事なグレムリンたちのほうがよっぽど青春である。
「ボールは友達だろうが
!!!!!!」
顔をモザイク使用にされた仲間の顔を抱きながら叫ぶグレムリンA!
「 お 前 ら は 友 達 じ ゃ ね ぇ
!!!!!!」
ぐわッと集中戦を抱えるうさみっち!
――そう、オブリビオンはボールでもなければ友達でもないのである
!!!!!!!
「お?なんだ?文句でもあんのか?」
「うわわわわわわわわわちょっとちょっと、ちょい待て」
「待てェエエエエエエ――――――ッッッッ
!!!!????」
絶望するグレムリンたちにも容赦がない。
ばきゃばきゃと打たれていくのは鉄球たちである。千本ノック方式で追加点を稼ごうとする選手たちの瞳は勝利にしか燃えていない。ちなみにさっきの話はほとんど嘘かもしれない!!
うさみっちがぶんぶんと羽をはためかせつつ、この地獄絵図にやれやれと困ったように首を横に振った。
「なんだ、クレームかぁ。これだから、野球を知らないやつは……。」
「いや野球じゃねえから
!!!!!!!!!!!」
やんのかこら。
選手たちの野球をけがした罪は重い。抗議したグレムリンたちに向けられるのは、先ほどのバットではなくて――。
「ヒェ……。」
無数の釘が打ち付けられた――釘バットである。
「あらあら。あそこで野球の中継なんてやってたの?」
「えー?よくわかんない。出し物なんじゃないの?」
「ああ、ハロウィンだから、血糊もまあ舞うよねえ。そうそう、脳みそくらい出る出る。」
出る出る~~~!!!出まくってる~~~~ッッッ!!!!大丈夫です、ハロウィンなので。
場外乱闘には「そうだそうだいいぞ!」とはやし立てる学生たちなんかもいたりして、パーティは大賑わいなのだ。
おいしいお菓子もよりおいしく、飲むジュースもより味わい深い。こういう時に飲む炭酸というのは、ひときわよいものだから――しゅわしゅわと吹き出す泡のように消えていく哀れな敗北者たちなのだった。
え?教育に悪い?
うるせ~~~!!!しらね~~~!!!!Trick and Treat!!!
大成功
🔵🔵🔵
ゼイル・パックルード
◎△
すごいハロウィンのキャラクターみたいなヤツが、嫉妬してるのな……。
小さいガキの楽しみを潰すのは嫉妬抜きにどうよ?
一応ミイラ男の仮装をしてみたけど……左腕以外の手足に鎖つけたけど、邪魔だな。
たまにはイイ人っぽいことでもしてみるかなぁ……楽しむって方向はわからねぇけど、ガキを楽しませれば嫉妬してくるだろ?
UCで高速移動しながら、パフォーマンスで炎の軌道で何か描いたり、敵を炎の竜巻で燃やしたり、学生のガキどもにお菓子とかばら撒いたり、敵を蹴り飛ばしたり。
後、ジャックオーランタンの中に火をつけて【ハッピーハロウィーン】とか言いながら、ジャックオーランタンを蹴り飛ばしてぶつけていく。
●妖怪お前燃えてけ
まだ装飾とか無事なあたりの一角にて。
「すごいハロウィンのキャラクターみたいなヤツが、嫉妬してるのな……。」
嫉妬してるけどなんだかもう充分すぎるような制裁を受けちゃっているのである。
グレムリン――その名の通り愛らしい悪魔の姿をしたオブリビオンがむごすぎる制裁を受けているのを見ながら、肉を食べつつため息一つ。
まともな味をする肉に安心感を覚えながら、悠々とこのミイラ男――ゼイル・パックルード(火裂・f02162)はちゃらりと鎖を唸らせる。
コスチューム、ということで。以前私闘の死闘でダメージを負った左腕をうまいことくっつけた彼は、そこ以外の関節部に枷をつけていた。
「……邪魔だな、結構。」
もっとシルバー巻いていこう!!もっとだ!!
きらきらときらびやかなパーティ会場にいつまでも腰を落ち着けているような彼でない。ぼわりと燃える足元は演出でもなんでもないのだけど、きゃーきゃーと騒がれてしまうのである。
――考えても見てほしい。
――褐色。
――銀髪。
――、そして、今や真っ赤に燃える真紅の瞳。
「かっこいいーーー!!!」
「きゃあああああ
!!!!」
「ああああ!!!」
「ああぁ゛――――ッッッ!!!」
「えっ、何?最後の、何?」
ナイフも振るっていないのに人が倒れたような気がする。勇敢なというよりは、復讐に燃える少年にもうちょっと彼よりも年上の女学生たちは尊さで倒れていった。
「尊いって何??」
悲鳴の意味もわかるまい。なぜなら彼は、そういう男である。
歓声を浴びるのは心地いいけれど、褒められるのは慣れていないし恥ずかしい。彼を見上げる小さい子供たちがきらきらと憧れの視線を送るのもちょっとむずがゆい。視線がちょっと左右に動いて、ますます炎の勢いを強めた。
「――小さいガキの楽しみを潰すのは嫉妬抜きにどうよ?」
小さく唸る。
それと同時に――はじかれたように彼の体は加速した!!炎が彼の痕跡を物語り、オーディエンスのお姉さまたちも大歓喜なのである!
テンショウラクエン
【天翔烙炎】は、普段は「殺すための」確実な手段である。――この一撃は、彼が「友」を超えたい一心でつかんだものだ。だけれど、その「友」が彼を超えたのは、「助けたい」という一心である。
意味が、わからなかった。
ゼイルの命なんていうのは、まるで火薬のようなのだ。投げれば弾けて、あっけなく消える。
そこに名誉なんていうのも意味もいらない、彼はただ己の存在証明のためだけに殺して、殺して、そうしないといけなかった。だから、死ぬべきだと思っていた。なのに、「助ける」彼女に超えられてしまったのである。
「真似ってわけじゃぁ、ないけどな。」
友の「兄」より、大事なのは、楽しむことと聞いていた。面倒くさいけれど、この彼らよりも自分は楽しまなければいけないらしい。パフォーマーなんて慣れたことでもないのだけれど、仕事ならば、「超えるためなら」致し方あるまいと体を精いっぱい伸ばして、まず一芸繰り出した!
足技は彼の得意とする技である。大きく開く股関節と、戦いに慣れて柔らかくなった体でまずばねの様に――いわゆる、バク転を何回と繰り出した。そうすれば、彼の体はたちまち炎の円輪となる!
わああ、と沸き立つのは当たり前だろう。この彼にしかできないパフォーマンスのうち一つだ。それから、右腕一本で自分の体を支えたのなら次は左腕から炎の渦を繰り出す。
――楽しむ子供たちの頭を狙った、黒い竜めがけて。
渦は瞬く間にグレムリンを飲み込む!!「わぶっ」と喉まで焼かれた黒が消し炭になるのを見て、子供が「わ」とか「ひ」とかいうものだから。
「お楽しみは、まだ――、これからだぜ。」
ぱちん、とゼイルがひとつ指を鳴らす。すると、たちまち燃ゆる渦は龍の顔を形どってみせてニイイと笑うのだ。
「すごい!」「生きてるの?あれって本物?!」「かっこいー!」
――アルダワ魔法学園の生徒たちは。
夢見る少年少女でいっぱいだ。みんなが英雄になることを望んでいて、毎日を光いっぱい背負いながら勉学と技術に生きている。
この会場を作る歯車も、その貴金属も――彼らを見守り続けるのだろう。だから、ゼイルは此処を破壊しない手法をとった。
「トリック・オア・トリート。」
グレムリンの小さな頭とその首をへし折るついでに階段代わりで踏みつけて、彼は笑う。
――炎のゆらめきよりも、ずっと穏やかだっただろうか。それとも、いっそ凶悪だったろうか。宙から降り注ぐお菓子を見て感動を言葉にした誰にも、きっとそれはわからない。
「てめェーッ!!!何してくれとんねん!!!」
「あ?なんだよ。こっちのセリフだっつうの。」
テーブルの上に置かれたジャック・オー・ランタンを両腕で持ちながら、ゼイルが抗議に来たグレムリンに言い返す。
「俺らの出番が全くないやないけ!!!これはアカン!!!アカンで
!!!!」
「うるせぇ。ハッピーハロウィーン」
かぼちゃを鋭く蹴り飛ばす。燃え盛る炎を中に入れておいたそれは、「ぐえええ!」とグレムリンを吹っ飛ばしたのちに一緒に爆発した。
「……なんで爆発した?」
できれば夢で落ちがついたほうがよかった。
げんなりとした顔で、ゼイルが視界にかかりそうな包帯を巻きなおしながら――キャンディをひとつ、かみ砕く。
大成功
🔵🔵🔵
サン・ダイヤモンド
【森】◎
はろうぃんって、なぁに?
(黒の「がお」には楽しそうに「キャー!」)
【仮装:比翼の鳥】
そんなわけで仮装をしたのだったー!僕とブラッドお揃いだよ!
花色の瞳を幸せそうに見詰め、黒の手を取り踊る様に回り出す
敵の攻撃はオーラ防御
まだ邪魔はしないで
比翼の鳥、まるで僕達みたいだね
ブラッド、楽しい?
僕は楽しい それに、幸せ
UC【「愛」の「嵐」】
花色ハートの花吹雪が吹き荒れる
ブラッドと合体し飛び上る
猛禽の足には彼がくれた煌めく『破魔爪』を履いて
上から祭りを壊そうとする悪い子を見付け爪で捕まえる
とりっくおあとりーっ!
お菓子をくれなきゃ悪戯するぞぉー!がーおがーお!
お菓子ちょーだい?
無いのー?なら悪戯だね!
ブラッド・ブラック
【森】◎
各世界毎に成立ちは違う様だが
簡単に言えば『仮装をして悪霊を追い払う祭』だ
現在は『Trick or Treat』を合言葉に仮装をした子供達がお菓子を集めて回り
お菓子をくれない者には――悪戯をする(がお)
比翼の鳥、片翼しか持たぬ鳥がお互いを支え合って飛ぶという
(SD無、2ピン完成待、互いに対の片翼と尾羽を装備、目出度い色)
――嗚呼、楽しい
自分が何者かも忘れてしまう程……お前と居れて幸せだ
サンから貰った心(プリンセスハート『大好き』)が煌めく程に
UC発動
自身の体をサンの鎧と翼に変え飛翔
今宵の翼はカラフルにハロウィン仕様だ
敵の攻撃が何処から来ようとも
自在に変形する体(鎧・翼)で完璧にサンを庇う
●愛ゆえに愛だから愛なんだよなって
「はろうぃんって、なぁに?」
サン・ダイヤモンド(甘い夢・f01974)には、実際知恵というものがあまりない。
――というよりは、そういうものに触れあうことが今までなかった。箱入り息子である。籠の中の鳥でもある。知らなくてもまぁ生きてはいける。
だけれど、彼自身はそのままであることは成長の妨げになるのだ。だから、サンはきっと本能的にブラッド・ブラック(VULTURE・f01805)に尋ねてしまっていた。
――ブラッドのほうは、孤独な怪物である。知っていても誰かと楽しむような機会もなかったし、そういうことを己に許すような彼ではなかった。ストイックである。ちょっとこじれてもいる。
うーん、と唸って、どう答えたものか惑う桃色があった。
「各世界毎に成立ちは違う様だが――」
くどくどと説明をしかけて、一度生えそろった牙を閉じる。サンはまだ幼い、言葉をかみ砕いてやらねばいけないなと思いつつ、二人は何をしているのかというと衣装に着替えていた。
比翼の鳥である。片翼しか持たない鳥同士が、お互いを支え合って空を飛ぶことができた伝説があるのだ。
片方が欠けてしまうと空を飛べない。空を飛べない鳥は、獲物を狩ることもできなくてほかの存在に殺されて死ぬ。物悲しい側面もあるけれど、二人のコスチュームはめでたい色だった。
色ぼけているわけでは、ない。
「簡単に言えば『仮装をして悪霊を追い払う祭』だ。」
「追い払っちゃうの?」
「うむ。現在は『Trick or Treat』を合言葉に仮装をした子供達がお菓子を集めて回りお菓子をくれない者には――」
「者には!?」
けして、愛らしいブラッドだけの光に、ブラッドがタールもびっくりゆるゆるでれでれのとろとろになっているわけではない。ガワはまだ、大丈夫である。衣装が汚れてしまうし。
「悪戯をする。」
「きゃー!」
がお、と襲うようなジェスチャーをしてみせて、それを見たサンがけらけらと逃げるように体を跳ねさせてはまたブラッドのところに帰ってくる。笑顔で跳ねまわるかのひな鳥のなんと愛らしいことか。いつまでもひな鳥ではあれないのだけれど、サンのウィキことブラペティアはわりと今日は豊かに、穏やかにそばにあったのである。
「とりっくおあとりーっ
!!!!!とりとりとりとりーーーっっっ
!!!!」
「お菓子しかないぞ??」
ばぁんと参上してみせたのが、次はこの二人であったのだから。
「あーん?なんやアレ」
「けったいな服やのぉ、アベックか、アベック」
「アベックって言い方古ない
????」
「ねえブラック、アベックってな「聞いちゃいけません。」
ソッ……。とサンの両耳をブラックがふさいだのなら、グレムリンたちの嫌味っぽいかんじの事実は届かない!けがされちゃいけないのだ。まっしろだからね。
色んなところで派手に猟兵たちが暴れまわれば、彼らのコスチュームもサンの目に入る。「素敵だね!」「かっこいいね!」と無邪気に笑うサンが愛おしくてたまらないブラックなのだ。敵?割とどうでもいい!
「ねえねえ、僕とブラッド、お揃いなんだよねっ」
「うん?――そうだな。」
比翼の鳥の話をしてやれば、「僕たちみたいだね」なんて笑うこの光がいとおしい。
もっと――サンには、もしかしたらこのような世界のほうがあっていたのやもしれぬと思わされてしまうのだ。
卑屈なのではない、ブラッドとサンはあまりにも「存在」が違いすぎる。正反対の色をして、美醜すら反対側にいて、もっとサンにはサンが見つける幸せがあるのではないかと、絡めた手を放しそうになる。
まだ、この幼い「ひかり」には世界がそこまで広くない。だから、――まだ、ブラッドのそばにいるだけではないだろうかと、不安になることだってあった。
「ふふ、ふふふ!!ねえ、ブラッド!」
なのに。
この「ひかり」はいつだって、微笑んでそんなものを吹き飛ばしてしまう。
今だって、そろいの衣装を着て二人で手を取り踊るようにして彼はくるくる、己の周りを踊る。ブラッドはそれにあわせようにも図体が重いから、軸となって彼を振り回しているような姿勢でいた。
「いや、ラブラブオーラで攻撃できへんな……。」
「めっちゃ楽しそうなんやけどな……。」
「どうなん?好きな人、できたことある……?」
「あるけど、俺ら災魔やぞ……そんなんうまいこといったら、災魔なんてやってへんねん。」
「キレんといてよ……。」
誰にも、二人の邪魔はされない。
【「愛」の「嵐」】にて舞うハートの桜吹雪はざっくざっくとグレムリンたちの傷を増やしていくのだけれど、まぁわりとサンもサンで目の前の彼のことしか今は頭にないのだ。
「楽しい――?僕は楽しい!それに、幸せ。」
笑んで見せる顔は穏やかだった。
大人びたような、それでもまだ幼いような。その心に果たして恋情なんてものがあるのかどうかなんて、ブラッドにもきっとサンにもわからないのだろうけど。
「――嗚呼、楽しい。自分が何者かも忘れてしまう程……お前と居れて幸せだ。」
今この時は、「しあわせ」が同じものでありますようにと
強く願って、信じてしょうがない。きらきらと光るのはサンから与えられたこころである。――彼の『大好き』を今は信じた。
だから、仕上げとばかりに【比翼の鳥】は顕現する。しゅるりと粘液がサンの体を包んで、抱きしめるようにして二人で空を舞う。ぶわりと風圧で周囲のグラスは散ったけれど、なんてことはあるまい。
「飛びよったで」
「え?なんで?」
「愛……ちゃうか……。」
「愛やな」
「愛こわ」
グレムリンたちは、わりと二人の世界には入っていけなかった感じであった。
邪魔をすれば末代まで呪われそうだし――きっと彼らが末代かもしれないのだけれど。なんにせよ、邪魔しようという気が引けるほどラブラブなのである。これ以上なにをせえというのか言うてみい!!!のレベルでラブラブだった。完全敗北した。戦いに挑む前から割と負けた気になってる。愛には勝てない。
きらきらと輝いた翼で片割れとともに輝いたのなら、ブラッドは満足げだ。
急降下してきたサンが静止をかけて、ぐったりするグレムリンたちに「まず」通例通り声をかける。
「お菓子をくれなきゃ悪戯するぞぉー!がーおがーお!」
可愛いジェスチャーには「がお」が大変よく似合った。これにはブラッドもニッコリ。
「いや、あらへんよ……。」
「あるわけないやんそんなん……。」
こてんと寝転がった彼らは比翼の鳥が織りなす愛模様を前にすっかりひがんで意気消沈であった。ラブパワーってすごい。ぱわーがつよい。
「無いのー?なら、悪戯だね!」
残念そうにした太眉が、すぐに楽しそうに吊り上がったものだから。
「おいしいもん、さいごに食べさせてもらいました――」
愛とは――時に人の心をいともたやすく折ることができる。
最強の武器、かもしれない。
★ラブこそ正義……――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
シャオ・フィルナート
【双氷】
仮装:足元が南瓜パンツ風な黒づくめ吸血鬼衣装
憂い気に伏せ目がちな無表情で
何も興味無さげ…と見せかけて内心少しそわそわしながらきょろきょろ
…別に、お腹空いてるわけじゃ(ぐぅ
………す、少しだけ…空いてる、かも…
素っ気ない口ぶりとは対照的にお腹は素直で
少し唇を尖らせながら白状
(敵の攻撃は★氷の翼で防いで無視
はろうぃん…初めて……双葉さん、詳しい…?
お菓子くれなきゃ、イタズラするの…なんで…?
…俺も、お菓子…もらえる…?
別に…ただの、興味…
(【暗殺】経験で敵の気配を読み取り翼から氷の弾丸【属性攻撃】
えっ、お菓子?ぴゃっ
(お化け提灯被せられ、反応薄いように見えるがはわはわと動き回る
アドリブ歓迎
満月・双葉
【双氷】
仮装;から傘おばけの仮装
無表情ながらもアホ毛が面白そうにピコピコ
きょろきょろしているシャオを見つけて寄っていき、話しかけたりしたい
お腹すいてる?
お菓子食べる?
自分の黒猫には猫の餌をあげつつ
お腹空くとイタズラしたくなったりしない?(こしょこしょとくすぐろうとする仕草)
(【野生の勘】で敵の攻撃を【見切り】虹布で【オーラ防御】を展開)
(手を出して、繋ごうとし、繋いでくれたらダンスの1つでも教えようかな)
飴ちゃん大丈夫かな?
(おばけ提灯被せて、動き回っている所に飴玉放り込もうとする子)
攻撃はカエルのマスコットさんのユーベルコードに一任してシャオちゃんと遊ぶことにしようかな
アドリブ歓迎
●
シャオ・フィルナート(悪魔に魅入られし者・f00507)は、こういう場所に馴染みがない。
孤独な生き物だった。命を利用され、そうあることが希少なくらい彼という存在は「嫌われがち」だったのだ。
孤独で、さみしくて、凍てついてしまいそうな生を強いられてきた。己に価値がないと思っていたし、こういうイベントが外であったとしても、己にはどこか、薄い壁一枚向こうの世界に思えてしょうがない。
――不幸な生き物と一緒にいると、不幸になるから。
だから、彼は誰とも接するのをおそれた。誰かの不幸を責任なんてとれない。誰かの自由を守れない。誰かの人生なんて、自分のものだけでも背負えないのに。
――そんな彼が、今日は少しだけ顔を明るくして、そわそわきょろきょろと子猫の様に落ち着きがなかった。
「シャオ。」
それが、面白くって。
表情の変化は乏しいけれど、満月・双葉(神出鬼没な星のカケラ・f01681)の髪の毛は素直だった。
シャオは――愛らしい姿をしていた。黒づくめの吸血鬼衣装は、どこか憎めないかぼちゃパンツなんて履いていてダークセイヴァーのそれとは程遠い。双葉の静かすぎる表情は見慣れたものなのだろうけど、シャオのほうは――双葉の姿に目をぱちぱちと繰り返した。
唐傘のお化けである。
なかなか、真っ赤なお化けであった!!!
まあ、動揺は少なかったのだけれど。
「お腹すいてる?お菓子食べる?」
丁寧に落ち着いた声で、腕の中に抱いた猫にエサをやる。かりかりと食べる黒は愛らしいけれど、唐傘着ぐるみで器用に溶け込んでいる彼女の存在に、シャオも口を開かざるを得ない。
「……別に、お腹空いてるわけじゃ」
ぐぅ。
意識してしまった。
事実、真新しいものを目にしていて緊張はしていたのだ。
きょろきょろと落ち着かない胸中でいっぱいだったから、胃の中が空っぽだったことなんて忘れていた。だけれど、それがまるで――双葉に言われたのなら「そう」だったことを思い出して動き出す。
「……す、少しだけ……空いてる、かも……。」
はずかしい。
そっけなく振舞ってみたけれど、体は素直に反応を繰り出してしまった。言い逃れもできまいと、白状をする。
「そっか。じゃあ、――。まず、軽く踊ろう。」
己らに向き始める敵意が、まぎれもなく嫉妬色である。
その嫉妬は「仲の良さ」へのものだろうか、それとも「幸せであること」だろうか。どちらにせよ、その視線の正体なんていうのは気にいらぬ。
「――『吸い取ってしまえ』。」
吐き捨てるように、双葉がささやく。周りの音がすっかりやかましくなってしまって、シャオはうまくききとれなかったらしい。首をこてりと傾げる彼に、双葉はいつも通りの顔で「なんでもない」と言った。
「ど、どうして、踊るの?」
「楽しむことが、仕事だからね。」
流れてくる音楽は、二人の場所に相応しい穏やかな曲調であった。
腰に手を添えてやりながら、双葉がリードを行う。踊り方なんて、まともに知らないのに――自然と、彼女の動きに合わせていたのは、シャオだって猟兵だからだ。
狙われている――。
「双葉さん。」
「わかってる。」
日和っているわけではない。愛らしい吸血鬼と唐傘お化けのダンスは、きっと足元でころころ転がる猫も相まってなかなかファンタジックである。カオスではない。まだ大丈夫。
飛んでくる魔術は、お互いの氷とオーラが防いでいく。あっけなく崩れ行くそれに、脅威はさほど感じなかった。その「火元」は【カエルの呪い】で召喚された命たちが打ち砕いていく。
気配に鈍感なほど、シャオだって穏やかなたちでない。【absolute zero】をまとった翼で振るわれるはずだったスパナは凍てつき、砕けて、「なんやこれは!!」と叫んだ過去を氷漬けにする。
「……はろうぃん、初めて。……双葉さん、詳しい……?」
「詳しいかな、どうだろう。知ってることは、答えられるよ。」
「……お菓子くれなきゃ、イタズラするの……なんで……?」
そもそも。
この「みんなが幸せになる呪文」というものの語源といえば――それこそ、実はお菓子を集めるものではない。
「ケーキを出さないと死者の魂がさまよう」から、各家庭で用意してあるだけのものを、いつしか子供たちが「お化け」に化けて集めるようになっただけのことだ。
とはいえ、そんなリアリティある話をしてこの何も知らぬシャオの心をわざわざ冷めさせてやるのもなんだかもったいない気がしてしまった。
二人で嫉妬の攻撃なんて言うのをひらひらりとかわしながら、興じるならばもっと別のことがよい。
「お腹空くとイタズラしたくなったりしない?」
そこまで言って、お互いの手を握り合うまえに双葉がこしょこしょと手を動かす。
――くすぐられる。
ぴゃあ、とシャオが震えあがるのなら、なんだか心がちょっと満たされるような双葉なのだ。
「冗談。」
「……ほんと……?」
お互いに向かう攻撃はすべて打ち消す。
氷の翼は正確に弾道を作り上げ、幼い竜の頭を砕き、カエルは首をへし折って黒灰に戻して見せた。
「……俺も、……お菓子、もらえる?」
聞いてみたのは。
本当に、シャオはつくづく何も知らないのだ。不幸の子であることは分かっているからこそ、ぶっきらぼうながらに双葉も隣にいて穏やかである。
ほしいの?と言いたげな静かな視線に、「別に、ただの……興味――」と言い切って見せるさまはどこかいじらしいものだった。
彼は、素直でない。
双葉だって素直なほうではないけれど、同じ「不幸」の生き物だ。同情というよりは、同調だったかもしれない。
――おどけた格好をしているけれど、双葉だって実は、孤独な生き物だ。
親は偉大なのにその身に何度も呪いを受け続け、その影響で彼女は大切な片割れを失う。親から授かってしまった膨大な魔力は行き場をなくしていつもいつも、双葉の中身を傷つけた。いつ死んでもしょうがないだろうな、なんて思いながら生きていても、瞳の中すら「命を視る」ことを許される。
シャオが――「何も持たなかった」のなら。
双葉は――「何もかもを持ってしまった」のだ。
「えい。」
「ぴゃっ」
お化け提灯をおもむろにかぶせた。
――見てほしくなかったのは、きっとシャオも双葉も一緒だっただろうか。
「飴ちゃん、大丈夫かな。」
「えっ、なに、お菓子?」
暗くて何も見えないから、手だけせわしなくあわあわとしてみせるシャオをとりあえず、喧騒から連れ出す。
ひょいひょいとその中に飴を投げ入れながら、双葉はきっと――穏やかな顔を、していたかもしれない。
持ちすぎた一人と、持てなかった一人の夜は、今日くらい穏やかであるべきだったのだから。
「なあ俺ら、邪魔したらあかんかったんとちゃうか……。」
「シッ、言うなッッ!!!」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
加里生・煙
◎
今日はハロウィンで、これは仮装で。
こんなにも楽しくて笑みが浮かんでも、のこのことやってきた災魔たちを、この手で引き裂いて、ひっくり返して、柔らかな中身に触れたくなったとしても。仮装なのだ。これは。俺の思う殺人鬼の軍人さんというだけの。お芝居なのだ。
そう、お芝居 お芝居。
トリック・オア・トリート。
いたずらされたくなけりゃ、お菓子をくれよ災魔くん。
それともイタズラがいいのかい。今は気分がいいから。どちらかと言うと 殺して愛でてやりたい気分だなァ。
中にあまーいお菓子が詰まっていたりはしないかい?
今日は美食家の狼もお腹がいっぱいなようで。
少しくらいなら羽目を外せそうだ。
……もちろん。お芝居ですよ?
リア・ファル
◎
WIZ
仮装:絵師様お任せなので、よきように
盛り上がってるかーい!?
ボクはハロウィン商戦待ったなし!
この後もすぐ年末商戦が控えており、配送も猟兵業もフルスロットルさ!
いえー!!
故に!! 今日はオフ!!
どういうことだか分かるね?
お祭りを全力で楽しむ以外の選択肢は無いってことさ!
今を!生きる!ボクの!つかの間の!息抜きの為に!
決して忙しさのあまりヤケになってるわけじゃないぞ!
と、いうわけで、そこ行くオブビリオン!
ボクのサーモセンサーと集音機能はごまかせないぞ!
トリートオアトリート!
とりあえずボクのイタズラを受けていけ!
UC【召喚詠唱・楽園の守護者たち】!
ハロウィン仮装版のアニマロイズをけしかける
●魔女と軍人と激ヤバ祭り
ひらり。短いスカートが舞って。
――見上げようにもシャンデリアがまぶしいのだ!
「イエーイ!!盛り上がってるかーい
!!!?????」
くッ、見え みえ……。
それも彼女の計算のうちだろうか。それとも偶然の産物だろうか。誰もが彼女のスカートの中の小宇宙を視ようとはしたのだけれど逆光でその前に目を焼かれてしまう!
はらはらばらばらとお菓子をまき散らしながら、箒に乗った「魔女」は高らかに叫び、そして豪速でその場を塗り替えてみせた!
「ハッピー・ハロウィーン!!!」
リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は、一言で言うならとてもまじめな女性である。
彼女の働きぶりったらやばい。彼女といえばスペースシップ・ワールドにて居を構える誰もが「ああいつも使ってるよ」とか「お世話になってますね」なんてことを言うのだけれど、実は彼女、宇宙を駆ける「イルダーナ」に乗りながら運び屋を務めつつ会社のCEOなんかもやっちゃうハイパー・ウルトラ・バリキャリウーマンなのだ。リアちゃん半端ないって!そんなんできひんやん普通!!
「ボクはハロウィン商戦待ったなし!この後もすぐ年末商戦が控えており、配送も猟兵業もフルスロットルさ!いえー!!」
かわいそう。
だけれど、リア自身は割と楽しそうなのだった。敬礼のポーズをビシッと決めながら今後のスケジュールがすでに割と埋まりつつある彼女である。誰かの希望を届けて、誰かのためにひた走る彼女の生きがいゆえ仕方なかろう。
宙から降るお菓子を受け取りながら、子供たちは穏やかに笑む。「おいしー」という声がリアの耳に届けば、割と疲れなんてどうでもよくなってくるのだ。
「――故に!!なんと、今日はオフ!!どういうことだか、分かるね!?」
普段は落ち着いた物腰である。
なにせ、CEOなのだ。COOでもCFOでもなく、彼女はCEOなのである。ジョブズッ(暗号)とかそのあたりの人々と同じくらいの権力を会社の中では有している。
そんな彼女、今はもう大興奮だった。なぜかというと――そう、多忙な彼女の休日なのである!!!!
「お祭りを全力で楽しむ以外の選択肢は無いってことさ!!」
――けして、忙しさのあまりヤケになっているわけではない。
「今を
!!!!」
まさか、この世界どころか銀河をまたにかけちゃうような彼女が。
「生きる
!!!!」
相棒の「イルダーナ」にまたがって走る彼女が。
「ボクの
!!!!」
今日はまたがっているのは箒なんですけど。いや若しかしたら「イルダーナ」かもしれない。変形とかしちゃうかもしれない。
「つかの間の
!!!!」
ポニーテールを振り乱しながら叫んでる顔は苦しんでいるようでもあるけど、泣いてない。だって女の子だもん。
「――息 抜 き の 為 に ! ! ! ! 」
「俺ら息抜きで倒されるんかい
!!!!!!!?????」
――そういうものです。
悲しいかな、叫んでしまったグレムリンたちの意識は体めいいっぱいで輝く(やっとの休暇)(この祭り)(リフレッシュイェーイ)リアの動きに夢中だったのだ。あ、やべ。と口を押さえたところですでに遅い。
「と、いうわけで」
ゆるりと笑んだリアの笑みは、幼くていとおしいものにちがいなかった。
ぐるぐるとしていきた瞳の中すら、いまは爛々と輝きだして疲労を上回る興奮で満ちる。
「トリートオアトリート!」
宣言。
甘いものばかりですよ、なんていうけれど彼女が起動したのは【召喚詠唱・楽園の守護者たち】!!
「あ?なーんじゃこりゃ。」
「大した事あらへんで。」
ぽつ、ぽつりとだいたいざっと500にわずか届かぬ大群の「飴」が降り注いだ。
それは、まるでビー玉をぶちまけてしまったかのようなさまだっただろう。歩けば転ぶやもしれないが、飴ゆえに踏み砕いてしまえば問題もなさそうに見える。
「口だけ達者かァ?おんどれー!降りてこいや!」
「コイヤッ!」「コイヤーッ!!」
きいきい、きゃあきゃあ、と喚くグレムリンたちに、「チ、チ、チ」とリアは穏やかに笑んだまま右手の人差し指を振る。
きっと、グレムリンたちにはまともに彼女の表情も、逆光で見えなかったのだ。
「お菓子はキミたちだよ。」
ぎゃああああああ、と悲鳴が響いて。
「……なんだ?」
気になってやってきてみれば、理解しがたい光景が広がっている。とうとう世界まで狂っちまったのか――なんて思いながら、加里生・煙(だれそかれ・f18298)はただ「演じて」いた。
彼がこの依頼に参加する前に、準備したのは衣装だけではない。「暗示」も含まれていた。
――これは、お芝居、お芝居。
言い聞かせるように、もうそれしか思えないほどに。彼の心を彼自身が食らいつくしている。
楽しくて笑みが浮かんでしまう。「なにか」から逃げまどっているグレムリンたちがいとおしい。のこのことやってきた彼らが、己に気づいたのならば――今なら、きっと「そういう役」だから煙だって己を許しただろう。
理性をなくして馬鹿になったその頭をちぎって、引き裂いて、ひっくり返して――やわらかな中身に触れたい。
あたたかな鼓動が少しずつおさまっていくのを感じながら、涙を流して食ってやりたい。
冷たくなった血液が、どうして赤いのかを知れるようなひと時を味わうことだってきっと。今なら許されるはずなのだ。だって、今の彼はこわい「軍人さん」だもの。
「はは。」
自然と、笑みが出て――自分でもきっと、おそろしかった。
「ぎゃああああああ!!!やめろァアアアアアアアアアア
!!!!!!!!!!!!!」
「ははははは、頑張れー」
「頑張ったってこんなんあばばばばばばばば
!!!!!!!」
阿鼻叫喚である。
リアが放った「飴」たちは、飴ではない。球状になった「アニマロイズ」だ。
折りたたむようにして球状になった彼らは、その正体こそ――小さなカラスで、狼で、猫。わらわらとよってたかってグレムリンたちをつつきまわし、噛み、ひっかいて追い掛け回す。
いじめ?いいえ、致死に至らないのでいたずらです。リアのストレスはここちよく晴れていく。そして、漂う血の匂いが――本当に、わずかあるだけで「本物のけもの」を目覚めさせることに成功した。
「トリック・オア・トリート。」
「ぎゃ
!!!!!???」
ぬう、と。
逃げまどうグレムリンは、どうにかして会場の机の下に滑り込もうとしたのである。頭から滑っていこうとしたところを、背中からの質量で「止め」られてしまった。
低い声で唸る――煙が、そこに立っている。おそるおそる、声のほうを見上げたグレムリンは――。
「いたずらされたくなけりゃ、お菓子をくれよ災魔くん。 」
――死んだわ、コレ。
「それともイタズラがいいのかい。今は気分がいいから。どちらかと言うと 殺して愛でてやりたい気分だなァ。」
「いやいやいやいやいやそっち系の趣味ないんですよオッサン、ちょっと、やめてくれません
!!!????ねえ!!!ちょっと!!!」
ぬるりと腕がか細い竜の腕をつかむ。
スパナなんてものを振り回しているわりに、彼らの腕は少年らしく細っこい。
本当は、「煙は」こんな感情を抱いてしまってはいけないのだ。だって、それは「正義」ではない。己を通常でないと認めてしまうことと同じだ。
「中にあまーいお菓子が詰まっていたりはしないかい?」
つう、とその腹を空いているほうの手で撫でてやる。「ぎ、」と悲鳴をかみ殺す竜をうっとり見た。
「今日は美食家の狼もお腹がいっぱいなようで。」
そして、煙は足元に散らばるお菓子なんかに興味もなくて。
ただ、この場の装飾が彼を「仮想」に立たせるものだから、刺激されてしょうがないだけなのだ。
「――少しくらいなら羽目を外せそうだ。」
外しても、いいだろう?と。
彼の「狼」こと、群青色の彼は見当たらない。足元にもいなければ、影の中にもいないようだった。
誰も、止めてくれない。
「あれ――?ねえ、キミ!こっちに災魔が一匹、逃げなかった?」
ちろりと、青年は口から青い炎を出している。
「ああ、倒しておいたよ。」
当たり前のように、それが答えるものだから。「そっか!ありがと!」と楽しむことでいっぱいなリアは――気づこうとはしていなかったようである。
悪いことなんてしていない。煙は【狂気を喰らう】生き物なのだ。
――だからきっと、この「軍人」もきっと、悪いことなんてしていない。すべて、「軍人」の「役」なのだから。
口の端からこぼれてしまう青い炎を黒い手袋でおしやって、口の中に再び戻す。とろけそうなくらいの熱量が愛おしくて、微笑んでしまっていた。
「――もちろん。お芝居ですよ?」
きっと、都合の悪いことは、すべて!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュジュ・ブランロジエ
◎
お友達のコノさん(f03130)と
仮装は可愛い魔女
メボンゴも黒ドレス
コノさんも人形劇に巻き込んじゃおう
私達は幸せ配りの魔女!
さあ、お菓子をあげちゃうよ~!
はっ、さては貴方も同業者っ!?
どっちがたくさん幸せにできるか勝負しよう!
とコノさんに勝負をふっかけ、その場にいる人にメボンゴがお菓子を配る
『トリートだよ~』(裏声腹話術)
面白可笑しい茶番劇、じゃなくて人形劇を続けながらさりげなく敵を攻撃
がっつり狙ってるけど流れ弾の様にみせる
攻撃を避けるのも偶然っぽく
存在を無視
貴方の幸せ配りの腕前すごいね!
『最高!』
感動を貰ったお礼に白薔薇の魔法を見せるよ!
と白薔薇舞刃を敵に
ふふ、白と黒のコラボレーションだね
コノハ・ライゼ
◎
ジュジュちゃん(f01079)と
和風な魔術師の仮装するねぇ
ジュジュちゃんと対になる感じでいいデショ?
お菓子もたっくさん作ってきたよぉ
その勝負受けて立った!
笑顔の魔法なら負けないからネ
ふふ、其方が黒いドレスの貴婦人なら此方は黒のもふもふ紳士で対抗しようか
くーちゃん、と黒の管狐達を呼び出して
さあ礼儀正しく配っておいで
ひらりふわり彼女らと踊っては敵の攻撃を避け
流れのついで、くーちゃんに火花を纏わせるパフォーマンス……のふりで攻撃ネ
勿論ハロウィンパーティー以外何も見えていませんとも
ご婦人方こそこそなんて素敵な魔法
どうかその華で彩って、と合わせて【黒電】
この場に相応しくないモノに手向けましょう
●かわいい(素直)
折角だから、やはりハロウィンはハロウィンらしく楽しまねばならぬ。
そうも思っていたし、奇術師たるもの用意されたステージをうまく使わねばならないと思っていた。
ジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)は人形を用いて人々を笑顔にするのが得意である。
名づけられた人形の――愛らしい白兎の名前、「メボンゴ」といってちょっとごついのだけれど、それも今日はこの日にふさわしい姿で現れていた。
「私達は幸せ配りの魔女!さあ、お菓子をあげちゃうよ~!」
ぱらぱら、はらはら。
魔女だよ、と言って見せるジュジュの姿は魔女というには愛らしい。
大きな黒いローブ、魔法使いの証である帽子はもちろん、足元まで隠してしまうような長いスカートとと毒林檎の代わりにお菓子でいっぱいになった竹の手提げカバン。
きゃあきゃあと小さな子供たちを中心に徐々に学生たちが集まってくる。そして――。
「ちょっと待ったぁ
!!!!」
ずばんと現れたのはこれまた、美しい魔術師である。
しゃらしゃらと身にまとう貴金属を揺らしながら、かぶった布を振り払う。色とりどりの奇抜な髪色に、みんなが一番最初に気がとられたことだろう。
「――いくらジュジュちゃんでも、ここは譲れないわヨ。」
うーん、この狐。ノリノリである。
ジュジュが魔女ならばコノハ・ライゼ(空々・f03130)は間違いなく神道に準ずる存在であった。
陰陽師?とか闇魔導士?とか言われてるのだけど、まあライゼはこれも「シナリオ」のうちである。演ずるのは、日ごろからやっているから得意なのだ。サラッと闇が深い。
「はっ、さては貴方も同業者っ!?」
お菓子配り職人の朝は早い――。
まず最初に、どれだけの人数を配るのかチェックすることから始まる。
アレルギーを持った子供たちがいるかもしれないから、そういう子たちにも味わえるお菓子は別で作られていた。
生地をこね、味見をし、味見をして、味見を楽しんだらまたなんかいい感じにあたらしいお菓子を作る――。
ざっというと、手間暇が大変かかるものである。マジックにも下準備が必要なのとおなじように、この催しに携わるために二人とも、丁寧に準備を重ねてきた。
「じゃあ――私も、引き下がれないよ!どっちがたくさん幸せにできるか勝負しよう!」
「その勝負受けて立った!笑顔の魔法なら負けないからネ!」
まるで。
遊園地で行われるショーのように二人を中心にメロディが流れ出す。
これも、実は予めに会場へ願い出ていた演出であった。入念に打ち合わせてやろうとライゼが用意した書類を一読して、非の打ちようがないからすぐにGoサインが出たらしい。
身構えていっちゃったけど、大したことなかったわ。なんて言って笑うライゼの手腕はさすがなのだ。割り振ったジュジュも「やったね!」と喜ぶ。
――そう、二人は友達だ。
仲が良く、純粋な性別も種族も超えた友達同士。だけれど、今は「人々を笑顔にする魔法」を競う好敵手。
「『『トリートだよ~』」
愛らしい白の貴婦人が、あきらかにちょっとモロバレなジュジュの声でふわふわと身軽に舞って菓子を配る。
ならば、と対抗してもふもふと冬気になった紳士――黒の管狐たちが受け取れなかった誰かに菓子をくわえてもっていく。
そして白と黒の魔術師たちは、お互いを見合って振りまくように、音楽のリズムに合わせてお互いの手をとりあわず――だけれど、時に腕は組んでシンクロもばっちりにダンスを繰り出していた。
ライゼが見せつけるように「炎の魔術をみるがいいワ!」なんて言って見せれば、管狐たちは火車となってぽんぽん宙を跳ねる。
その矛先は――この演目にふさわしくない「障害物」だ。ちょうど観客たちの視線から外れたところに気づかぬうちに一匹ずつ向かわせてやった。
作られた舞台に、邪魔は許されない。
ライゼとジュジュの友情が織りなしたこの世界に介入はご法度である。素人は黙っとれ――というやつなのだ。
「貴方の幸せ配りの腕前すごいね!」
「『最高!』」
ライゼの火車に負けじと愛らしい魔女二人も負けてはおれぬ。
黒いレースを振り乱しながらも魔法を繰り出す姿は幻想的であった。きらきらとしたナイフたちが舞って、空中で弾けてきらきら光る粒子になる。
※人体には無害なものを使用しておりますがオブリビオンにはまぎれもなく有害です※
――そんな注意書きもなかったものだから、邪魔をしようとしたグレムリンたちも無残に追い出されるというもので。彼らが弾けて消えた粒子に気をとられていたら、さくさくとあっさり頭にナイフは刺さっていた。
対立した二人の終わりというのは、いつもお互いを認め合って美しく終わるものである。
「感動を貰ったお礼に白薔薇の魔法を見せるよ!――『ご覧あれ、白薔薇の華麗なるイリュージョンを!』」
【白薔薇舞刃】。
ふわりと舞ったのは無数の白薔薇とその花弁だ。
天井を覆いつくすほどの大魔術に、「わあああ」と誰もが感動の叫びを口にする。
「ご婦人方こそこそなんて素敵な魔法!――どうかその華で彩って。……『歓迎しよう』」
ほつり、と。
まるで己の醜悪さを知っているのだと憂う美青年が罪の告白でもしにきたかのようなシリアスな顔つきでいうものだから。
「きゃーーーーー
!!!!」
「あああーーーーーー
!!!!!!!すき
!!!!!」
「とうとい
!!!!!とうといよぉ
!!!!!!!!!」
なんてまあ阿鼻叫喚も起こるもので。
――興奮してしまうお客様も静かになってしまうほどの、鮮烈な魔術が瞬いた。
【黒電】。
黒い稲妻を作るように走る狐たちと、白い天井がその輪郭を際立たせる。
ここの誰もが、きっとそれに刻まれた文字を見た。ひらひらと舞う花弁を頭や顔に乗せながら、――Happy Halloween!!
恭しく手を取りお辞儀をする二人の魔法使いによって、演目は無事果たされる。
わあっと沸き立った拍手と歓声に、二人がきっと顔を見合わせてから微笑んだのだ。
「楽しかったわ、ジュジュちゃん。」
「私も!楽しかったよ、コノさん!」
素敵な幻想の終わりは、いつも笑顔で。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
毒島・林檎
オイオイ……妬みとか逆恨みとか……超絶に無意味で勿体ねぇな?
この魔女たるアタシが、「楽しみ方」ってヤツを――骨の髄まで教えてやるよ。
――なんて、え、えへへ……。
やっぱ、アタシにこんな台詞は似合わねぇッスよ……(てれてれ)。
……あ? なにテメエら(オブリビオンたち)笑ってンだ?
アタシを馬鹿にしていいのは猟兵のパイセンたちだけだってそれ一番言われてるから。
オラッ!!!
そんなにお菓子が欲しいなら、いくらでもくれてやるよッ!!
「ガトーショコラ」だッッッ!!!
たくさん浴びて「悶絶」しやがれッッッ!!
ファン・ティンタン
【POW】煩い奴は嫌いだよ(理不尽)
仮装参加、アドリブ可
久し振りのアルダワは、お祭り一色のようだね
私が駆け出しの頃に見たグレムリンも、今改めてみると、感慨深いモノがあるよ
…はい、回想終了。じゃ、
死 の う か ?
無骨な黒剣【砕牙】(仮装SD参照)を【怪力】でぶん回す
しばらくまともに使ってあげてなかったから、鬱憤が溜まってるんだってさ
だから―――【封印を解く】
【砕牙解放】
獣の牙にして、剥き出しの暴力のカタチ
荒れ狂うこの子の食欲は、簡単には収まらない
【大食い】のこの子があなた達程度の餌で黙るとは思ってないけれど
精々、おやつくらいにはなってよ?
歪に膨張した刀身で【なぎ払い】、【範囲攻撃】で抉り喰らう
ニコ・ベルクシュタイン
◎
「パーティの時間だオラァ!!」
ハロウィンSDの狼男姿で部屋の扉を豪快に蹴破って豪快に乱入
(後で弁償します)
いやあ今日はめでたいな、災魔相手に大勝利の記念日とは
此れは盛大に祝わねばなるまい、先ずは乾杯!プロージット!
(ノンアルにしておきますね)
一息に飲み干したら周囲の人々と暫し歓談をしようか
素敵な仮装だなと先方を褒めつつ、自分の仮装もさりげなくアピール
どんな仮装にしたものかと悩んだ末に仕立屋に一任したら
素晴らしい仕上がりにしてくれてな、等とつらつらと
美味しい食事もあるのか、最高だな
オードブルを摘まみながら恨み節を流すグレムリンには
肉球パンチをくれてやろう
勝者が居れば敗者も居る――仕方が無いな!
ヴィリヤ・カヤラ
◎
ハッピーハロウィーン!
やっぱりこういう時は楽しまないとね
!
仮装は猫又モチーフの猫耳と二又の猫尻尾、
服はチャイナ風も取り入れたデザイン。
あ、今は爪は伸ばさないでおくね。
ハロウィンはお菓子もたくさんあるからワクワクするよね!
楽しい時間を壊そうとしちゃうグレムリンはどうしようかな?
どうして欲しい?
氷漬け?爪でザックリが良いかな?
あ、両方にしちゃう?
爪は媒介道具の月輪を使って
影で作って刺してみようかな、
これなら割れてもまた伸ばせるから安心!
氷漬けは【四精儀】でダイヤモンドダストを起こしつつ、
『属性攻撃』で敵の周りの温度を下げて氷漬けかな?
ダイヤモンドダストだけなら見てる人も楽しめるかもしれないしね。
●ハピハロ・ブレイク・ソー・ユルサンデイ
妬み嫉みなど、この魔女の前ではモーレツ!何の意味もなさぬ感情である。
「オイオイ……妬みとか逆恨みとか……超絶に無意味で勿体ねぇな?」
唸りながら――その魔女は「毒」を吐くのもためらわなかった。
事実、この魔女ほど「毒」に理解のある存在はいない。魔女は魔女らしく、それでもビビッドで奇抜な格好をして今日は「主役」となっていた。
毒島・林檎(蠱毒の魔女・f22258)は、実のところこうして凄んでみるのは得意であっても、目立つのなんて苦手なのだ。
おくゆかしい、お姫様になりたかった彼女はちょっぴり卑屈で陰のひとである。
がたりと椅子から立ち上がり、ゆらりと紫の煮立つ光をくらくらとさせながら立ち上がってみれば、それを見たほとんどのグレムリンが「ヒ」とか「こわっ」とか「近寄らんとこ」とか言ってしまうのだ。
完全にヤ印の愛人とか姐さんとかそういうポジションの気迫がある!!!重い!!!圧が重い!!!つよい!!!
ぎらぎらめらめら、口からごはぁと怒りに満ちた吐息を出せば甘ったるい空気なんてすぐに霧散した。
――壁を飾るジャック・オー・ランタンだってどこかおびえて、紙でできたところはめくれあがってしまっている。もう見てられない。
「――なんて、え、えへへ……。やっぱ、アタシにこんな台詞は似合わねぇッスよ……ね?」
「うん?いいんじゃないかな。」
うるさい奴は嫌いなのだ。
さっきからぴいちくぱあちく、好き放題に叫んで死んで血を散らして無残に消える――そんな災魔の存在にはいい加減雷さま、もといファン・ティンタン(天津華・f07547)だってそろそろいらだちが抑えられなかった。
ごろごろと唸るのはまさか、彼女の腹でもグレムリンたちの腹でも、林檎の腹でもあるまい。どう見ても、――彼女の周りに揺蕩う雲からお怒りの音である。
「えっ?なんでここに雲とかあるん?意味わからんのやが」
「わからん……猟兵やからなんでもできるんかもしれん……。」
「ええ……。」割と引いてた。
グレムリンたちは動揺を隠せなかったけれど、それはファンもこっそり同じことである。
彼女も――それこそ、猟兵になりはじめてまだ意識の浅いころに、はじめて訪れたアルダワでグレムリンを見た。
その時は、素直に「戦わねば」という気持ちでいっぱいだったのだ。ファンは、人を殺す道具であれど「ひとに使われる」必要のある存在である。
それに、殺す時は「使い手」を守るときだった。――もう誰も、使い手なんていうのはいないのに。何を守って、戦えばいいのかは漠然とわかっていてもいまいちしっくりこないまま挑んだくらいのときにこのグレムリンたちの別個体と出会う。
なんだかちょっと感慨深い、つい最近のようなことでもあるし、もう――遠い昔のことのようにも思えてしまった。この彼らを前に、己は己がなにをすべきかわかっているのだ。
「 パ ー テ ィ の 時 間 だ オ ラ ァ ! ! 」
ずぎゃしゃ。
ひどい音がしてドアが蹴破られる。豪快に侵入してきた狼男には見事、林檎は「ひぃ」と叫んだしファンの追想はかき消され、吹っ飛んだ扉にグレムリンが一匹おしつぶされて霧散する。これはひどい。
でも大丈夫!!あとで弁償します!!くいっと眼鏡を起用にするどいかぎづめで整えながら現れたのは――桃色のオオカミさん、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)だ!!
ずかずかずかずかと立ち入る足すら今日は獣のそれである。雄々しいニコぱいせんかっけーっす!!まじぱねーーーっす!!!
「いやあ今日はめでたいな、災魔相手に大勝利の記念日とは」
「はぇっ!?ふぇっ、そ、そっすね!!マジ、パネーッす!!イエーイ!!」
「うんうん、めでたいめでたい。」
がしりと肩を組まれた林檎と、そのそばで優雅に雷雲のようなクッションのようなそれに腰掛けて眺めるファンの返事にうんうんと頷くニコ・カラミシュタインなのだった。
割と満足げに終始笑顔であったのならば、「ならば此れは盛大に祝わねばなるまい、先ずは乾杯!プロージット!!!」と宣言一つ。
「ぷ、ぷろーじっと
!!!?」
「ぷろーじっと。」
きんきんきん、と三つのグラスが揺れる。そして最後におくれて「プロージット!」ともう一人。
「ハッピーハロウィーン!やっぱりこういう時は楽しまないとね!」
きん、ひとつ音を軽く愛らしくたてて四人目となるヴィリヤ・カヤラ(甘味日和・f02681)だ。
猫又の姿であるらしいふたつに分かれた尾先をふらふらゆらゆらとさせながら、皆にするりと混じって災魔のことなんて
「ねえねえ、それすごくかわいいね!雷さまってやつかな?」
「ああ、――うん、そうだね。おへそとっちゃうやつ、かな。」
「きゃー!とらないで!お菓子ならあげるよ!」
きゃっきゃと笑うヴィリヤに対して、ファンの表情は変化に乏しいのだけれど。わりと、不快ではない――「やかましい」と「わずらわしい」は別物なのだ。
「わぁ、素敵な衣装だね!もふもふしてるや。暖かそう。」
「む――嬉しいな。其方も素敵な衣装だ。おお、なんと奇遇か!俺は狼で、君は猫でないか!」
「ほんとだ!えっ、それもしかして、仕立て屋さんにお任せしたの?」
「そうだとも!だからこそ、驚いている。こんなに素晴らしい仕上がりで帰ってくるとは思わなんだ。」
猫と狼は真反対のような存在に見えて、「人間を必要としない」生き物たちだ。
人間がいれば「頼る」猫と、人間がいてもいなくても「構わない」狼の衣装をあてがわれた者同士、マイペースに盛り上がりながらもわんわんにゃあにゃあと楽し気に話す。
お互いの衣装をほめあったのなら――金色のヴィリヤの瞳は、林檎を見た。
「素敵な魔女さんだね!かわいいなぁ、カボチャの杖からお菓子が出たりするの?」
「うぇええっ!?ま、まあ、アレっすよ、出そうと思えばってやつっすかね
……!!」
えへへ、と照れ笑いする林檎が「それじゃあ、」と杖を一振りしてみれば、ふわりとお菓子が舞う。
――別に、強い魔術を使ったわけではない。林檎の激情を少しだけ散らして風に乗せてやれば、「毒」に侵された空気は彼女のしもべになるだけである。
四人を中心にふわりと舞った美味しそうなパンケーキやチョコレート、それからキャンディに奇抜な色をしたドーナツ。
「なんか、ほほえましいなぁ。」
「ほんまや、ほんまや。えらい怖い猟兵ばっかで、もう帰りたいなぁって思ててんな。」
「――あ?」
ふんわり、ほんわり。
穏やかな猟兵たちの歓談を眺めているだけでグレムリンたちは割ともう居場所がなかったし、負けでいいやこの戦いと思っていたのだけれど――そこを「ちょっと待った」としたのは林檎である。
「 な に テ メ エ ら 笑 っ て ン だ ? 」
笑うな、話すな、息を吸うな、吐くな、心臓を動かすな――。
どこもかしこもお前らの「毒」でけがされるだけで、頭おかしくなりそうなンだよと林檎がぎろりとにらんでいる。
いや、ギャップ。ギャップがね、怖いっす、林檎姉さん。落ち着いてください。だなんて怯えるグレムリンたちのことなど意にも介さない。
「オラァッッッッッ
!!!!!!!」
「うげぶ
!!!!!!!!!?????????」
一匹のグレムリンの顔に、パイをぶつけるかの如く真黒なケーキがパァン
!!!!!!!!!!!!という音を立てて霧散した!!!
「笑ってンじゃねェよゴミカスがよォ……アタシを馬鹿にしていいのは猟兵のパイセンたちだけだってそれ一番言われてるから。お前どこ中だ?ア?こら」
「待って待って待ってください待ったってください、俺ら別に笑ってなんか」
「笑っとるやろがい
!!!!!!!!!!!!!!!」
「アバーーーーーーーーーッッッッ
!!!!!!!!!!!!!!!!!
ガトーショコラ
容赦ない【黒粘炭毒【Cigarette】】が、神経毒を含んだままほぼ無抵抗だったグレムリンたちを襲う――!!!
ぴくぴくとしばらく悶絶してから息絶えるさまは、さながら地獄であった。神経毒はゆっくり効くのである。
こひゅう、こひゅうと喉から深い息を吐きながら――また両腕に黒油でできたケーキを構える林檎なのだ。だいぶ目がイっちゃってる。
「そんなにお菓子が欲しいなら、いくらでもくれてやるよォ――「悶絶」しやがれッッッ!!」
ガシャンッ、ヒィーッ!オレラマダナニモシテナイジャナイデスカッ!!ウルセーー!ドイツモコイツモオンナジカオニミエテンダヨッッ!!ッッッパァン!!!アバーーーッッッ!!!
「はは、楽しんでいるようだな!」
どこをどう見たらそうなっちゃったのか。もしかしたら、このニコラウス・ウルフシュタイン卿にはもはや――どうでもよかったのかもしれぬ。脳って簡単に誤認しちゃうからね、しょうがないね。
美味しい食事も楽しみながら、彼が起用にかぎづめでお菓子を口にしたのなら、次はオードブルに手を出し始めていた。
グレムリンたちは阿鼻叫喚の――恨み言すらもはや言えないままに逃げ回っていたけれど、それもまた自然の淘汰である。いたしかたなし。
「そうだね――私は、あいにくお菓子を楽しめないし」
ファンは。
実のところ、ニコのように食事ができないヤドリガミなのだ。かろうじて口にできるのは人の身であれば水くらいのもので、彼女の体は不便である。
だから、結局のところ「お菓子」はいただけない。
「 死 の う か ?」
赤い瞳がぎらりとひん剥かれたのは、きっと嫉妬とかはなかった。 たぶん。
むき出しの暴力の象徴たる――【砕牙】を手にした彼女の瞳はすっかり沈黙があって、燃える林檎と同じくらいにおそろしい。
自然と……キュと身を寄せ合ったグレムリンたちもいっそあわれであった。だってそんなん怖いに決まってるやん??
「せいぜい、おやつくらいにはなってよ。」
――私が食べられないぶん。
【砕牙解放】。
無骨な剣はたちまち血と肉に飢え、雷色をしたファンの体に振り回されて唸った。まるで、ようやく飢えを満たされることを喜ぶように――。
がちゅん、とヴィリヤの目の前でグレムリンの頭部が「食われた」のだけど、ヴィリヤはひとつも眉を動かさないで「すごーい!」となぜか喜んでいる。
――だって、ダンピールなのだ。
「じゃあ私もやっちゃおう!ねえ、手伝ってくれる?」
狼の男に声をかけたのならば、猫又ににこりと笑って「俺でよければ」とうやうやしく狼は腰を折る。
やった、やったと飛びはねるヴィリヤが己の両手に氷の魔術をまとって――【四精儀】を呼び出した。少し大きめの地球儀のような大きさから、だんだんそれはミラーボールの様に厚みと大きさを広げていく。ふわり、宙に踊るように浮いてった痕跡がきらきらとしていて「美しいな」と思わずニコも唸った。
「でしょ。ダイヤモンドダストってきれいだなって。」
これなら――見る人も残酷さばかりじゃなくて楽しいんじゃない?なんて一言に、ニコラウス・トウトミシュタインがちょっぴり感動しちゃったのだ。ああ、なんと殊勝なこころがけか!!
「俺も手伝おう!!!」
ルースレス・クロックブレイク
繰り出されるのは――【時計の針は無慈悲に穿つ】!!!
鍛え抜かれ引き締まったからだから放たれた渾身の一撃は、跳ね上がったニコの体から繰り出され――容赦なく、その「ミラーボール」を打ち砕いた!
まるでくす玉を割ったように、冷気がぶわりとあふれていく。
「爬虫類って、寒さに弱いんでしょ?」
ヴィリヤがとどめといわんばかりに微笑んだひとことは、真理だ。
「あれ?」「なんや……」「なんか、ねむぅなってきたで
……。」「おきろ、おき」「おきな死ぬ」「シヌーッ」
ふらふら、くらくら。
悪魔たちが身を寄せ合って僅かな暖を求めて一塊になったのならば、あとは二人のコンビネーションが活きた。
うん、とお互いの顔を見合わせてから。ヴィリヤは己の手袋からにゅうっと爪を伸ばす。
氷漬けと――爪でざっくりをちょっと悩んでいたのである。周りが結構派手にやるものだから、どうせなら美しくきれいに魅せてやろうと考えていた。
「爪、割れないか?」
「大丈夫だよ!これね、割れてもまた伸ばせるから安心!」
――用意周到なことで。
ああ、侮れないなとニコが笑ったのならば――あとはふたりで「にくきゅうぱんち」である。
掌底と、鋭利な爪での串刺し。
彼らにほとんど意識がなかったのが幸いだったやもしれぬ。仕方あるまい、ここからは――勝者の時間なのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
【四君子】
仮装で戦う技量がねえ!
姉さんに任せる
トリックアンドデスで頼むよ、菓子やるからさ
うずまきキャンディ?緑の奴な、はいはい
会場は焼かないようによろしく
はいよ、トリックオアトリート!
穂結には南瓜型のパンプキンケーキ
匡には南瓜の装飾つきレモンスフレ
嵯泉には塩クッキーな、甘くねえからおまえも食えるよ
折角渡すんだ、個人の好みに合わせるくらいはするって
頑張れ嵯泉、ハロウィンなのに菓子持ってねえおまえが悪い
私は今度匡と作る料理の選定してて忙しいから
あー確かにこれ良いな
悪戯考える暇ならあるけど手伝おうか?
……私にしちゃ、はしゃいでねえなって?
甘いもんが得意じゃねえんだ
貰った菓子は食うから、穂結には内緒な
鷲生・嵯泉
【四君子】にて
(ニルズヘッグ:f01811 太刀の娘:f15297 傭兵:f01612)
随分と用意のいい……いや若干一名、凝り過ぎだ
矢張り料理人に転職したらどうだ
しかし菓子が絶対に必要という訳ではないだろう
本来は子供に配るという話だろうが
まあ……今回の趣旨を鑑みれば用意した方が良かったか
確かに正直な所、甘い物は苦手だが喰えないという事もない
折角用意した物なら貰うとし……
いや待て悪戯は必要無い、考えなくて良いから止まれ
――、解った、どうあってもと云うなら逃げも隠れもせん
但し、出来る範囲に限らせて貰うぞ
此の格好であろうが戦うに支障は無い
……では八つ当たりに付き合って貰おうか
私の前に立った不運を恨め
穂結・神楽耶
【四君子】
ニルさん/f01811
鷲生様/f05845
鳴宮様/f01612
お菓子ください!
すみません間違えました。
わたくしも用意してきたんですよ。じゃーん、パンプキンマシュマロです!
はいニルさん交換ですね。
えっすごい…よくここまで…
あとでゆっくり頂きます。
鳴宮様もありがとうございます。
…うん、優しい味で美味しいです。
あ、鷲生様は悪戯ですね? どうしますか?
ちょっとどういうのがいいか一緒に考えてくださいよ皆さん(無茶振り)
あ、災魔はお触り厳禁ですので!
仮装だからって刀捌きが鈍ると思いましたか?
布が多いので《たまし討ち》がしやすいんですよね。
ひとの楽しみを邪魔するなら、もう一度封印されてきなさいな!
鳴宮・匡
◆四君子
ニル、穂結、鷲生と
これめちゃくちゃ動きにくいんだけど
……まあ銃撃つのにはそんな困らないけどさ
菓子? あ、穂結サンキュ
……いやニル準備よすぎだろうが
そんな何種類も用意してねーぞ
……カボチャのクッキーでいい?
宿のやつらに配るやつの残りで悪いんだけど
味は……多分悪くないと思うから
あ、鷲生甘いの駄目だった?
悪い、次から気を付けるよ
戦闘は……隙を見せたやつから撃てばいいのかな
前に出るやつがいるならそっちの援護を主に
……次作るやつなあ、どういうのがいいんだろ
あ、これ美味いんじゃないか
肉も使われてないしよさそうじゃね?
……なんだよ、お前も甘いの駄目なのか
そういうの先に言えよな、次からなんか考えるから
●
――仮装で戦う技量がねぇ!
虚無であった。
いや、しゃーないか。とも思う。今日のニルズヘッグはみんなで「漢服」で集まるつもりが「韓服」で竹釣竿を背負ってえっさほいさとやってきちゃったくらいに浮かれていたのであった。
「姉さんに任せる。トリック・アンド・デスで頼むよ。」
そのあたりにあるらしいお菓子はあげるとして。
すっかりブラコンのお姉ちゃんになった怨霊は、えー、とか、「アッシュじぶんでやってよ」とか、「そういうとこだぞ!」とか言っているのだけど、まあいい感じに聞き流しちゃうのだ。右から左に受け流せる、今の彼は虚無。
そんな弟の様子にちょっとお姉ちゃん泣きそうである。うううううと恨みがましく唸ってから、ニルズヘッグのまわりをくるくる回って耳元でぽそりと声を落とした。
「――うずまきキャンディ?緑の奴な、はいはい。」
なんだそのつっけんどんな態度ー!!
きいきいとわめく姉のヒステリになど付き合ってはおれぬ。今日は彼の大事な友達たちとのパーティなのだ!途中、アクシデントがあったとはいえ――無事に皆が衣装を着て集まれたのである。
会場は焼かないようによろしく、と念じたのは嫉妬する姉への釘だったのかもしれない。ぐすぐすえぐえぐとわざとらしい嗚咽を余韻に、姉は【蜜事(ユグドラ)】の魔術に乗ってしろがねの焔をぽわぽわ宙に浮かせていた。
「 お 菓 子 く だ さ い ! 」
「はいよ、トリックオアトリート!穂結には南瓜型のパンプキンケーキ。匡には南瓜の装飾つきレモンスフレ。嵯泉には塩クッキーな、甘くねえからおまえも食えるよ。」
「随分と用意のいい……いや若干一名、凝り過ぎだ。矢張り料理人に転職したらどうだ。」
「いやニル準備よすぎだろうが。そんな何種類も用意してねーぞ。」
わちゃわちゃ。
ニルズヘッグの訪れからちょっと経って。動きにくそうにした匡がまず、集合時間十分前にやってきていた。
銃を撃つのには――隠せるところが多くて好都合だろうが、何せ飾り立てられる蒼の衣装はなれぬ。どのように歩くのが正しいのかもわからない迷える友人に、ニルズヘッグのほうから駆け寄っていったのだ。
そのあとで、五分前に来たのが神楽耶である。ニルズヘッグのお菓子たちは――準備が良すぎるのは神経質であることも相まってであろうが、神楽耶もしっかり準備をしてきたからこその時間であった。
「すみません間違えました。わたくしも用意してきたんですよ。――じゃーん、パンプキンマシュマロです!」
ほっかほかの笑顔と穏やかなそのにおいに、わあと顔を明るくしたニルズヘッグだ。
――実のところ、喫煙者であるゆえに、甘いものは苦手である。
だけれど、先ほどまで彼のお菓子を「すごい」とか「よくぞここまで」とか言って感動してくれていた神楽耶のこれを「苦手だ」と言って断るわけにもいくまい。
「うまそう、いいなあ!これ」
笑顔をつくるのはうまい。
それこそ、「いきもの」が好きな神楽耶だってそれが演技だなんて見抜けないくらいには、彼の笑顔には「得意でないことが惜しい」がにじんでいたのやもしれぬ。
「宿のやつらに配るやつの残りで悪いんだけど、味は……多分悪くないと思うから。」
それから。
おずおずと匡が皆に差し出したのは、カボチャのクッキーである。
ニルズヘッグほどではなくても、彼だって料理には詳しい。だから、親友の発言にはちょっとおびえて――「鷲生甘いの駄目だったんだな。悪い、次から気を付けるよ」なんて言ってしまった。
「間違う」のが怖い。だから、匡は皆に渡す時にちょっと目に動揺が出たやもしれぬ。だいたい、彼の知る人たちは「甘いものが」好きそうだったからこれは、まずったと思ってしまった。
少し、しゅんとした空気があって――与えられるお菓子を両手に与えられるままいっぱいに眺めていた嵯泉である。
嵯泉も、ニルズヘッグと同じ喫煙者だ。
――甘いものの味をいつしか、「おいしくない」と感じ始めてしまう。
しかし、食えるか食えないかと言われれば「喰えないことはない。」と彼も返事をする。豪奢な着物に彩られながら、亡国の君子らしさもあいまって――なんだか全面的に許された感がある。
匡もそれでほっとして、「つぎ」を考える。目の前にいる神楽耶なんかは「優しい味ですねえ、おいしい」と上品に小さく一口食べたのならほろほろと口の中で崩れるやさしさにうっとりしていた。
菓子が絶対に必要なんて思っていなかったから、嵯泉は何も持ってきていない。
――どういう祭りであるのかはわかっていたので、余計にそうなってしまったといってもいいのだ。このハロウィン、お菓子をもらえるのは「子供」のみである。
28歳、27歳、27歳、17歳(器の年齢で本来のものは不明)。
誰も、いらんだろと。
思ってしまったのが――というか、世間を知らなかったのが運のつきであった。
「鷲生様は悪戯ですね?? どうしますか?ちょっとどういうのがいいか一緒に考えてくださいよ皆さん!」
「いや待て悪戯は必要無い、考えなくて良いから止まれ。」
「頑張れ嵯泉、ハロウィンなのに菓子持ってねえおまえが悪い。私は今度匡と作る料理の選定してて忙しいから。」
「……次作るやつなあ、どういうのがいいんだろ。あ、これ美味いんじゃないか。肉も使われてないしよさそうじゃね?」
じりじりと。
神楽耶が嵯泉を壁に追いやるようにしてうつくしい着物で近寄っていたのならば、悪いのは己であるのを自覚している嵯泉はぐぬぬと唸って壁によりかかる。
助けを求められているような気がして、あらかじめ助けられないことをつたえたのなら――ニルズヘッグと匡は、次はみんなが食べられるものにしようとスマートフォンでレシピを見始めていた。
この状況で、嵯泉の味方など誰もいなかったのである。カワイソス。嵯泉さんカワイソスなのだ。
「――、解った、どうあってもと云うなら逃げも隠れもせん。但し、出来る範囲に限らせて貰うぞ。」
「やったー!ではでは、失礼いたしまして。」
鬼の様な男が折れたらしい。キュポンと軽い音が響いて、――いひひとなぜかニルズヘッグが笑った。
「何されてんだろうなあ。」
「――さあ?俺には、マジックで何か書かれてる音しかわかんないかな。」
「十分じゃねえか。」
テンポよく手の甲で軽く匡の二の腕へツッコむニルズヘッグのうしろで「あっ、よれた」とかそういう神楽耶の声が聞こえてくる。
――こういう時だからこそ、匡は。親友に耳打ちをするようにして、表情を伺いながら話すことにした。
「お前も、甘いの駄目なのか。」
「あァ――まァな。でも、貰った菓子は食うよ。だから、 穂結には内緒な。」
そういうことを。
もっと早くに聴いていれば、余計な気をもませずに済んだかもしれないのに。
この「うっかり」のわりにやたらと「次の一手」を打つのがうまい親友を見る。
生きにくそうにしていて、なんだかんだと生き残るのがうまいニルズヘッグの表情は、なんだか匡にとっては自分よりちょっと大人に見えてしまったのだ。
「そういうの先に言えよな、次からなんか考えるから。」
見破られてしまうからこそ、ニルズヘッグはきっと彼と「親友」でいられる。
にかりと歯を見せて笑って、「おう」と返事をしてから――ぬうっと現れた影に吹きだすまではきっと、少しだけ暖かすぎる時間があったのかもしれなかった。
「災魔はお触り厳禁ですので!」
「ぎゃぶっっ
!!!!!!」バクサーン!!
【鉛丹光露】。
吹っ飛ばされていく小さなグレムリンたちである。なんでや!俺らだってあそびたかったわい!!と叫んでも許されないのだ。
仮装をしていて、ひらひらとした服であるから――動くのは確かに不便だ。だけれど、的確な一撃を放つには無駄な動きが必要ない。
まるでどこから刃が飛び出ていたのかわからないままに、グレムリンたちは無残に、そしてきたねえ花火となった。
「優しいんか優しくないんかわからへん!!」
「鬼子母神じゃ!!鬼子母神
!!!!」
「ばぶみをかんじる!!!あかん
!!!!!あたまおかしなるで
!!!!」
優しいはずである。少なくとも、神楽耶は。
――グレムリンたちの前に現れたもう一人の鬼神を見てしまうまでは、それが実感できていなかったらしい。
ひとりはその姿を見て「ヒェ……。」と声とか内臓とか漏らしてしまった。いや、――知らぬ間に斬られていたといっていい。
【剣刃一閃】。
いつのまにやら眼前に現れた黒の顔は、グレムリンの体高よりもはるか上にある。
ひゅおおおお、とまるで塔になってしまったかのように――静止と沈黙をするのは嵯泉だ。
「な、なんや、お前――それ。」
グレムリンが指差すのは、彼が握る血にまみれたふたつの刀ではない。
その顔にある眼帯でもないし、飾られる金色の装飾のことでもない。――では、なにかという。
「なんやそのヒゲ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
悪戯であった。
ねこひげが、険しい嵯泉の顔に書かれている。
大丈夫、これ水性ですよ!なんて言ってにこにこと非女神がかきやがったものだから、どんな仕上がりになったのかなんていうのは笑い転げたニルズヘッグで初めて知ったのだ。
匡は――正直な男ゆえに、美しい装飾を着たマネキンの様になってそれを見ていた。無になっていた。多分、意識したら笑ってしまいそうだったのだ。凪いだ。せいいっぱい凪いだ。
ちょっとよれてるねこひげは、愛らしい。「かわいいですよ!」と今もいい笑顔でサムズアップをしているものだから、この神楽耶、おそろしい刀。
「私の前に立った不運を恨め。」
――そらあ、不運ですとも。
黄昏た顔をしたグレムリンの首が飛ぶまで、一秒もかからなかったという。この時の感情を説明してみろと言われたのなら、きっと嵯泉はこう言った。
「八つ当たりだ。」
ご乱心である。亡国の皇帝が乱心しているようで、くつくつと笑ってそれを見ているニルズヘッグだ。
匡もとなりで――できるかぎり心を凪がせてそれを眺めていた。
「そういや、匡はちゃんと仕事してんの?」
「したよ、もう撃ったぜ。」
「あ。」
ティアーズ・レイン
ノールックでの、【落滴の音】。匡とニルズヘッグの後方に、いつのまにやら積みあがったグレムリンたちの額はどれも打ち抜かれていて――それを嬉々としてニルズヘッグの姉が燃やす。
ぼわあ~っと穏やかに燃えた薪たちを見て、せめて姉の腹を満たしてくれればそれでいいと願うばかりなのだった。
「猫、かわいいですよね!」
「だれが猫か。」
どっとはらい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【トリック&クリーク】
※フェアリーの仮装。ダークファンタジー風の装いに、ホログラムで作った六枚の翅。混沌を呼ぶ悪しき妖精風味
おっ──明都良の奴、元気いっぱいだな
勢いがあるのは大事だ。そう思わないか鎧坂?
とはいえあのままではちと荷が重いか
ここは一つ導いてやるかね──妖精らしくさ
ニューロリンク接続
あーあー、聞こえるかい?俺は君を導く優しい妖精様さ
ほら、右から来るぞ?3秒後には後ろだ。そうそう、上手だねぇ
動きを小さくして、次の動きに備えるんだ…いい子だ、教育がいいんだね
よしよし、今度は自分で考えて動いてみな…
ってな具合に、直接声だけを届けよう
しかし筋がいい。鎧坂親子は何があっても負け無さそうだな?
鎧坂・明都良
◎【トリック&クリーク】
※カボチャパンツの魔女っ子仮装
こらーー!!(跳び蹴り)
みんながたのしくあそんでるのに、じゃまするのはメッ!だよ!
ウロボロスにかわっておしおきだ!チィ!カァ!いくよぉー!
両手に「Orthros」!かたっぱしからザクザクするよぉ!
あいてがなぐってきたら!「ガジェット」で武器をはらって!むぼーびな首を、切る!
パパはいつも「手が多いのはつえーんだ」っていってたもん!
んい?わーっわーっ!?ちかい!チィ!カァ!助けてー!!
うぇー、やっぱり「じっせんけーけん」はだいじだよぉ…
はえっ!?だれ!?よーせいさま!?
わ、わ、右、うしろ、小さく!
ありがとぉ、よーせいさま!がんばるぞー!おー!
鎧坂・灯理
◎【トリック&クリーク】
※仮装は軍服を着た黒い猫又
Arsene殿と共に物陰からこっそり明都良を支援
同感です。子供は元気な方がいい
でなければ戦うことも出来ない
Arsene直々に教導していただけるとは。光栄の極みですね
私も軍の犬ならぬ黒猫らしく暗躍するとしましょうか
明都良に迫る援軍を【人の見えざる手】で減らす
こちらに気づいたやつも潰しておこう
バカ娘め、敵が迫ったときにしゃがみ込むんじゃない
双子蛇は甘やかしすぎだ、苦労するのはあいつなんだぞ
お褒めの言葉ありがたく
血のつながりはなくとも、私と彼女たちの子ですからね
●ただしくたのしいじょうそうきょういく
「こらーーーーーー
!!!!!!」
「ぶばっっっ
!!!???」「何やこのチビ!!」「チビか
!!???」「俺らのほうがチビかもしれん!!!」
かぼちゃパンツの魔女っ子である。
怖いほうのお母さんが言ってたのだ――「蹴るときは角度が大事ですよ、足の中心で蹴りなさい」と。
颯爽と駆け込んで鋭い飛び蹴りを成功させたのは鎧坂・明都良(六銀一紫・f21348)!!
「みんながたのしくあそんでるのに、じゃまするのはメッ!だよ!」
めきめきと彼女の背後から伸びる足が威嚇と同時に鳴り響く。
「うっ、ロリに言われるとそういう気がしてしまう……」「弱すぎか
!!?」「でもちっちゃい子に言われると実際自覚せん?」「する……。」
そう、小さい子に至極まともなことを言われてしまうと、そんなことも守れていない自分たちがちょっと愚かすぎてへこんでしまうのが普通なのだ。
しょもんとしつつそれでもスパナを握っているあたりが大人の汚いプライドである!きたないなさすが大人きたない。大人か?グレムリン的には成人なのかもしれない。まあ、明都良のすべきことがぶれなければ小さな魔女が迷う必要もないのだ!
「ウロボロスにかわっておしおきだ!チィ!カァ!いくよぉー!」
――明都良の「親」はたくさんいる。
この世に生まれてきたときに産み落とした大いなる存在もそうだし、生みなおした「まま」だってそうだ。
だけれど「まま」は頭の中にいくつもの「まま」がいて、いつのまにか蜘蛛の子の周りにはあっというまに群れができていた。
彼らは意識だけは長く生きていた明都良よりも小さい命であるのに、ずっと賢くたくましい。生きることに執着する必要があったから頭がよくなった存在たちを、心の底から親として慕って小さな蜘蛛は子供らしくしている。
そして、「ウロボロス」は。
そんな「まま」たちのうち一人で、正義の味方というにはちょっと自分勝手な貫き方をする存在であった。
戦うことに執着があって、怒ると大いなる存在であったこともあるこの蜘蛛の子すら震えあがってしまうくらいおそろしい。
だけれど、――「おかあさま」はきっと教えてくれたことであろう。
「ウロボロス」は、皆の笑顔のために毎日、戦っているのだと。
それが、どれほど苦しいことかなんてちっともわかり切ってはいないのだけれど、明都良が悟ってしまったのは「お母さま」の瞳の色である。常にぎらぎらと戦意と威嚇に燃える厳しい目つきが、どこか和らいだ気がして――六つも目があるものだから、気づいてしまったに違いなかった。
「あちょー!!」
「ぎゃあああ!!!つよい!!!つよいわこのロリ
!!!」「やめろ!!そんな長物振り回すんじゃありません
!!!」「どういう教育されとんのや!!!」
手が届かないところがあるのが、苦しいに違いない。
怖い「まま」はふとした時いつも厳しい顔をしてため息をついているのを知っていた。真面目な人なのだと理解するのに時間もかかるまい――日ごろから、仕事に対してはストイックなさまを見ている。
だから。
「パパはいつも「手が多いのはつえーんだ」っていってるもんね!!」
「うわあああーーーなんやそれ」「えっちょっ、その脚そんなに動くん
!!?」「ホンマにこれガジェットかいな
!!???」
――「喧嘩の強い」パパが授けた双剣をふるう。
まだ荒い太刀筋だからこそ容赦がなかった。大きく振るわれる剣にすぱりとスパナが断ち切られ、グレムリンたちに動揺が走る――!そして、間もなく蜘蛛脚のガジェットで払われたのなら無様に転がされていく彼らなのだった。
「ちィ、油断すんな!!ガキやと思て甘くみとったわ!!」「落ち着け!冷静にいこうや!!」
なんだか苛烈なムードである。
かたや小さな魔女が一生懸命に戦って、かたや子竜の群れがきぃきぃ言いながらそれを打ち砕かんと熱い顔をしている。
「おっ──明都良の奴、元気いっぱいだな。」
「いや、何を手間取ってるんだ。あいつは」
――まるで、できの悪い部下を見てしまった上官のようで。
黒い軍服をひらひらと戦いの風圧にたなびかせながら、猫又の愛らしい象徴などあえて隠しもしない。鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)は険しい顔に「やれやれ」といった疲れを浮かべつつも自分の「娘」のさまを見ていた。
そして、その隣にいるのが――真っ黒な妖精である。
愛らしいものではない。先のフェアリーのようではなくて、その少年はむしろ災いの象徴のように見えた。悪魔といったほうが印象はよかったかもしれないが、薄く蒼にまたたく六枚のホログラムたちが翅となって存在をさりげなく照らしていた。
真っ黒な服は「けっして目立たない」ためだ。ゴシックにも近いデザインで、口元まで覆いつくす黒装束を身にしたヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)はゆるりと笑う。
「勢いがあるのは大事だ。そう思わないか鎧坂?」
「……同感です。子供は元気な方がいい。でなければ戦うことも出来ない。」
「違いねぇ。しかも勝つこともできねぇしな――とはいえあのままではちと荷が重いか。」
いい勝負をしちゃってるのだ。
運動会にて子供たちの争いを楽しく見れる親とはいったいどういう気持ちなのだろうな、と二人は思う。
灯理などは、明都良のボディに傷が一つでも入れば修繕にどれくらい時間がかかるのかは知っていたし、かかる費用も素材も部位ごとに違ってくるものだからスペアではたして代用しきれるだろうかをくまなく「霊亀」で観測していた。
ヴィクティムは、仲間の子供が「負ける」のは許せない。彼の目の前で味方すべき存在が「敗北する」のは名端役の名に傷もつくし、シンプルに受け入れられなかった。
「ここは一つ導いてやるかね──妖精らしくさ。」
「Arsene直々に教導していただけるとは。光栄の極みですね。」
「なァに、最高のサポートをさせてもらうよ。お眼鏡にかなうといいが。」
――これで、失敗は無かろう。
灯理こそ、彼の強さというものに敏感である。
同じ電脳をつかさどる手合いであるとはいえ、ヴィクティムはその体を改造した「サイボーグ」なのだ。
灯理には思いつかないことをやってのけるし、実際それを成功させてきた実績も多い。確率からみて、彼の「教え」は己の娘にも絶大な影響を与えられるだろうとふんだ。
信頼がなければ、任せない。――灯理は、誰よりもからだとこころが「ひと」であるからこそ、用心深い生き物なのである。
「では、――私も軍の犬ならぬ黒猫らしく暗躍するとしましょうか。」
ゆらり、二本の尾がしなって。
鬼の切り込み隊長が、その「カタナ」を抜いた。
「んい?わーっわーっ!?ふ、ふえてきた!!」
「馬鹿が!!こちとらなぁ!!ムカついてるやつなんでごまんといるんだよォ!!」「戦争で死んだ分だけ俺たちはおんねん!!」「怨念がおんねん!!!」
圧倒的に数が不利である。
明都良の脚は多い。だから、それで貫いてやるのは簡単だった。だけれど――それを上回る数でやってくる災魔たちはいきいきとしはじめている。
「うううううう!や、やなかんじ!!」
そう、負の感情ばかりだ。
彼らを生んで突き動かすのはそういう思いばかりである。にひにひと笑いながらどんどん距離を詰められ、流石に明都良も己の不利を意識してしまっていた。長距離使いなのだ。脚が届きにくい内側や、刃物の可動域内部に入り込まれすぎると――攻撃がうまくいかない。
自分の弱点を自覚してしまったところで、今すぐに立て直すのも難しい!!どうしよう、どうしよう、と無数の目が仮面の下でパニックになり始めているのが見えなかったのが唯一の救いであろうか。
「ちかい!!――チィ!カァ!助けてーっっっっ!!」
「ぎゃっ」
チィトカァバリア
まあ、そこで必殺【灰色の織布】である。
他力本願時――と吹っ飛ばされて光線とともに消されたグレムリンたちはいっそ哀れであった。蜘蛛の子の首元でいまかいまかと待ち構えていた優秀な蛇たちは、さっさと脅威を強大すぎる力で吹き飛ばしてしまう。
「えっ、なに?なにあれ。死に覚えゲーすぎん?」「初見殺し」「いやいやいや何のんきなこと言うとんねん!!!!お前ら
!!!!」
まだ、次の奴らかって来とんのに――。
そう告げようとした顔面が、「ぷぎゅ」という悲鳴とともに爆ぜた。いいや、正確には握りつぶされている。
「は?」「へ?」「なに?」「世紀末?」
「――生憎胸に北斗七星はない。」
あるのはバツ印だけである。ばっきばきに【心術:人の見えざる手】でグレムリンの頭を砕いたのなら、灯理の「絶対殺す」という意志は彼らの体をまるでティッシュをくしゃくしゃと手のひらで丸くするようにしてこねまわす。それから、あふれた血は近くのテーブルクロスでふき取って、真っ赤になったそれで肉団子を包んでくるっと端と端を器用に結ばせた。
「バカ娘め、敵が迫ったときにしゃがみ込むんじゃない。」
「ふぇ……。」
そんな生ごみ捨てる時の朝のお小言みたいに言うんじゃありません。
くるくると作られていく「ゴミ袋」ならぬ残骸たちを見ながら、明都良が見上げた先には灯理がいた。
「双子蛇は甘やかしすぎだ、苦労するのはあいつなんだぞ。」
やれやれ。
甘やかしている――だなんて灯理は言うのだけど、実際のところまだ明都良は猟兵になって日も浅くってこれがデビュー戦である。やさしくしてあげて!!おかあさん!!!
「うぇー、やっぱり「じっせんけーけん」はだいじだよぉ……。」
しょぼん。
あからさまにテンションが下がっちゃったのである。子供ってそんなもの。はああ、とため息をつきたいのは灯理もだったが、ここで母親がそうするわけにもいくまいと子供の前では沈黙を作る。
――そんな時こそ「天啓」というのはあるものだと、思っていたし。
「お困りだね。あーあー、聞こえるかい?」
「はえっ!?だれ!?」
「俺は君を導く優しい妖精様さ。」
「よーせいさま!?」
子供というのは、純粋だ。
よく、「見えてはいけないものが小さいころ、見えていた」ということをよく聞く。
これは、子供の時期は外からの刺激が何でも新しいのもあって誰もが敏感で「共感覚」の一種でないかと言われているのだ。
――この深淵からあらわれた命を持つ蜘蛛の子だって例外ではない。子供である限り、夢を見るのはあたりまえだ。
だから、【Perfect Control Operate】はどんな教科書よりもきっと楽しい授業を齎せるとヴィクティムにも確信がある。
「ほら、右から来るぞ?3秒後には後ろだ。」
「えっ!!?わ、わ、右、うしろ、――小さく!」
しゃがまない。
迫ってきた敵に臆することなく、腕を小さく引いてグレムリンの胸に斬撃を叩き込む。
「がは――」「何や!?急に強くなりやがっぶげぶ
!!!!!」「ぎゃあああなんじゃこれ、なんやこれーー!!おろしてくれーーーー
!!!!!」
「静かに死ねんのか。」
「念ずる」力だけで握り、ふりまわし、たたきつけ、ぺしゃんこにしてやる。
「犬」ならば果敢に攻め込んだであろうが、「猫」であるから灯理は動かない。――頭を使うほうが、「猫」らしかろうと不敵に笑んだ。きっと、彼女の頭には「猫」らしい悪の顔がうつっていたやもしれぬ。
「いい子だ、教育がいいんだね。よしよし、今度は自分で考えて動いてみな――。」
「ありがとぉ、よーせいさま!がんばるぞー!おー!」
少し「正しく」導いてやっただけで、子供というのはやはり吸収もいい。
幸い、近くに甘い菓子なら山ほどある。がりがりとクッキーをかみ砕きながら、ヴィクティムの思考は並走していた。
>――しかし筋がいい。鎧坂親子は何があっても負け無さそうだな?_
灯理の脳に響くメッセージには、彼女も微笑んで返す。
>――お褒めの言葉ありがたく。血のつながりはなくとも、私と彼女たちの子ですからね_
正義執行の軌跡を見ながら、「妖精」と「軍人」は笑む。
小さな魔女が未来の「正義」へと成長するさまを楽しみながら――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
叢雲・源次
【義煉】
◎
仮装はサクラミラージュ仕様
袴にトンビコートに中折れ帽。ハイカラですね
…目立つのは本懐ではない。
なるほど…実に興味深い結果となったな……『悪』のイメージが強い魔王というテーマを持ってしても、お前の善性から滲み出る人の良さは隠しきれていないようだ。とてもではないが支配など出来ないだろう(※褒めてます)
俺はお前の下僕でも眷属になった憶えも無い。俺とお前は対等だ。以前変わりなく、これからも。
……人を呪わば穴二つ、妬みや恨みは毒となる。か。
貴様らがオブリビオンである以上、是非もあるまい…
俺は相棒のように優しくは無い…ここが貴様らの地獄と知れ。
(範囲攻撃、蒼炎結界。一切の容赦成し)
杜鬼・クロウ
【義煉】◎
仮装は中身残念な黒魔王
角あり
化粧濃い目
結局ツッコミ
源次…その格好
面白味に欠けるわ!地味!
お前案の魔王様どうよ
俺似合ってンだろさァ褒め称えろ全語彙力ぶちかませ(なりきり中
甘いモン苦手だから菓子いらねェし
悪戯させろ下僕めがー(高笑い
ま、俺は正義を絵に描いた男…じゃ今はなかった!
俺のコト褒めてるか?魔王失格じゃね?
敵サンも南瓜祭楽しめや
魔王である俺が許すぞ
UC使用
透明?知らねー
無差別攻撃かませやドーン
魔王は直接手ェ下さねェよ(高みの見物
蹴散らせ眷属共ー(源次含む
え、うん…ノリ悪ィよ俺が滑った感じになるだろヤメろや
ボケ殺しだわ酷い
あァクソ(舌打ちしポーズ取りマントばさっ
仕方なくトドメだけ刺す
●えもいはつよい!
「源次ィ――その格好……。面白味に欠けるわ!地味!」
「目立つのは本懐ではない。」
そうはいってもハイカラですね――。
まず、二人してお互いの衣装を見合うことにしたのだ。
叢雲・源次(蒼炎電刃・f14403)は、常がスーツである。礼儀正しくまじめすぎる彼の異装が見れるというから、ワックワクでわりと杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)なんかは相棒のその代わり映えを待っていたのだけれど。
今日の源次は、サクラミラージュの気分であったらしい。
ショートブーツと気品のある赤紫の袴に、トンビコートと中折れ棒。美しい金の差し色が映えるのは加齢自身が落ち着いた色合いであるからだろう。振る舞いからして、――おしゃれなのにハロウィンらしくないところがこの彼の「残念だけどイケメン」ポイントなのだ。
「っだーーー!!!もっと、せっかくだからオシャレにしてくりゃあよかったのに!見ろよ俺のこの衣装!お前案の魔王様どうよ!!似合ってンだろさァ褒め称えろ全語彙力ぶちかませ!!」
源次とは正反対で。
クロウのほうは、豪奢ないつもの服とはまた違った凝ったあしらいのある服装をしていた。
「なるほど――実に興味深い結果となったな。」
しげしげとカメラアイで眺める源次の顔が語るように、この服装はこの源次の提案である。真面目な彼は割と遊ぶのにもまじめなのだ。遊び方を知らないだけで。
魔王、ときいて。「つよい!」「さいきょう!」「かっこいい!」の男の子大喜び要素に任せとけ!と準備したクロウである。
ひと昔前にUDCアースで流行ったV系メイクよりも濃い目の化粧を施して、ぎらぎらとした眼光はより強く輝く。
捻じれて雄々しい角はまるで彼の力の象徴のようだった。実はちゃんとやすり掛けののちにニスとかぬってある。重くなりすぎないように、実は中身の材質は発泡スチロールで、表面は薄い粘土であった。細かいことが得意なのはクロウの日ごろからのファッションを見ていれば皆が頷けるだろう。黒い装飾の刺繍も装飾も彼のお手製である。やることはとことんやる、そういう男だ!!!
――ドヤァアアアア……ン。
うーん、守りたい、このドヤ顔。
どう見ても雄々しい恰好をしているのに、どこかちょっと抜けているような気がするのは――彼の言葉にあった前後のせいだろうか?
「『悪』のイメージが強い魔王というテーマを持ってしても、お前の善性から滲み出る人の良さは隠しきれていないようだ。とてもではないが支配など出来ないだろう。」
「つらつらつらつらとドーモありがとうよ、褒めてンだな?お?褒めてるンだよな????俺魔王失格じゃね
?????」
腕を組んでうんうんと唸った源次はいたって真面目である。こくこくと静かに頷く姿は嘘など吐けるほど器用な相手でなかろうともわかっていたが――なんかむかついた。クロウはちょっとおこだったけど褒められてテンションぶち上げなのである。やったぜ!
そんでもって。
「甘いモン苦手だから菓子いらねェし!!!!悪戯させろ下僕めがーッッッッ
!!!!!!!」
「ぎゃああああああなんやこのオッサン
!!!!!!」
「オッサン言うなお兄さんだろうが
!!!!!!!!!!蹴散らせ眷属共ー
!!!!!!!!!!!」
うははははははは!!!!と大きく高笑いと同時に鋭いツッコミもさえわたっちゃうのだ。だって魔王だから。
事実、クロウはそれほど甘いものに興味はないので、この催しのほとんどは「仮装」にあった。魔王になりきってみせながら大きく笑って尊大なかんじになるのは普段とは割と正反対である。いかついお兄さんだけれどクロウは優しくも正義を絵にかいた姿が本来なのだ。
「俺はお前の下僕でも眷属になった憶えも無い。俺とお前は対等だ。以前変わりなく、これからも。」
「いやそこでマジレスするかなぁ
?????ノリ悪ィよ俺が滑った感じになるだろヤメろや……ボケ殺しだわ酷い。」
思いっきり出鼻くじかれた。
いや、これは人間と魔王の心温まる友情ストーリィということなのかもしれない。なぜなら源次の衣装はサクミラ仕様なのである!!エモいものはサクミラには必須!!!!
「まァ――いいや。敵サンも南瓜祭楽しめや。魔王である俺が許すぞ
!!!!」
「うわっ絶対やだ
!!!」「逃げるで!!いったんずらかれ
!!!!」
「そうはいかん。俺は相棒のように優しくは無い――ここが貴様らの地獄と知れ。」
「ぎゃあああ!!!!燃えてる!!!燃えてるぅうううう
!!!!!」
【蒼炎結界】と【リザレクト・オブリビオン】。
ハロウィン・ナイトらしい技でここはいっちょシメね?という提案に源次もわりとノリノリで「よし」と言って合わせた技である。
青い炎が火の玉の様に舞ってからお手本の様にぶわぶわっとすべての敵を燃やし始める。混乱するグレムリンをわっしょいと亡霊たちが襲い、持ち上げ、貫き、かみ殺した。
流れるような連携プレーは二人の今までがなせる業で、きっと来年もそうしているのだろう。これからの戦いも、ずっと。
「来年の話をすると鬼が笑うという。」
「かはは!!じゃー倒しちまおうぜ!そんときも!」
透明になろうが知ったことあるまい。亡霊なら普段透明だし見えてるんじゃね?と思って無差別に攻撃させているのが功を奏して悲鳴ばかりが聞こえてくる。魔王は直接手を下さないので、きれいに塗ったマニキュアだってまだくずれちゃいないのだ。ごきげんなクロウである。
「人を呪わば穴二つ、妬みや恨みは毒となる。――是非もあるまい。」
せめてもの、ということで。
今後の学びにもなればいいのだがと思いつつも源次が帽子で己の顔を隠しながら、言うものだから。
「あれ?まだちゃんとやってんの?仕事。あらかた片付いちまったケド」
「――まだ完遂されていない。」
うーんこの真面目。
真面目であるからこそクロウとはちょうどつり合いもとれるのだけれど。まあ、こういうお祭りの日を最後まで楽しめないのは確かに困った。
「あァクソ。」
ばさり、マントを翻したのならば表情が一変した。
――霊どもに追い掛け回されていた一匹の首を、斧で叩き折る。
「これでいいだろ?」
返り血が飛ぶから、いやだったんだよと。
――冷静に相棒が言うものだから、「真面目過ぎる」男である源次は「ああ」とそこでようやく気付いたようだった。
豪奢な衣装に飛び散った赤が黒に吸われてより黒いシミを作るのを見送る。
「――気が回らなかった。」
「シミ抜き手伝ってくれたら許す!」
喧嘩なんてものは御法度である。
人を呪うことももちろん、マナー違反。素敵なハロウィンにすべきだから――今日はクロウが一段と笑って、笑顔を知らぬ冷たい男はおとなしくそれに従っていたのだった。真面目な源次の機械仕掛けな網膜の裏で、きっと文字列が浮かんでいたことだろう。
>Happy Halloween!_
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花剣・耀子
◎
今日のあたしは化け猫よ。
とりっく・おあ・とりーと。にゃーん。
浮かれた空気は嫌いじゃないの。
ごちそうをたべます。
ごちそうを、たべます。
ごちそうをたべにきました。
古今東西、化け猫はこっそりと美味しいものを食べると相場が決まっているのよ。
オードブルを食べてサラダを食べてパスタを食べておさかなを食べておにくを食べておにくを食べておにくを食べるわ。おにく。
お仕事も忘れてはいないので、最優先は学生さんの安全。
……、見て見ぬふりも出来ないわね。
手早く片付けてデザートに行きましょう。
はいはぴはろ。
言い分に一理あろうと、今日に限ってはわざわざ邪魔をする方が悪い。
デザートをくれなきゃおまえを取って食うわよ。
●ぼくの推しは黒いねこ
――今日の彼女は、化け猫なのだった。
「とりっく・おあ・とりーと。にゃーん。」
「まあ!かわいい黒猫さん。Trick or Treat!」
ぱんぱんぱんぷきん柄の羽織をひらひらさせて。
ゴシックな雰囲気をまといながらもどこか幼い空気である。花剣・耀子(Tempest・f12822)は表情の変化こそ乏しいのだけれど、ご機嫌であることはせわしなく動く尾先が物語っていただろうか。
浮かれた空気は、嫌いではない。なぜならば、この食いしん坊――失礼、ごちそう目当ての耀子が紛れ込むには一番の条件なのだ。真面目に見えて、実はおいしいものがだいすきである。多分猟兵たちにとってもステシに記載がもとめられる。かわいい。
だけれど、きっとそれは果たされないのだろう。古今東西、「化け猫」というのはこっそりと美味しいものを食べて帰ると相場が決まっているのだ。
上品な足取りで騒がしい空気に紛れながら、人々とお菓子を交換したり、いっぱい与えられたりしてすっかり耀子の手持ちは常にいっぱいだ。口の中に運ぶお菓子はほろほろととろけて美味であるし、お菓子とご飯はこれまた「別腹」であることが女の子の特徴である。
ご機嫌であるからか、いつもより軽やかな足取りで。てってこてってこ歩いていく耀子の体は、気持ち跳ねていたやもしれぬ。
さて。
会場にたどり着いた耀子の行動といえば、もはや――食い意地・モンスター・クイーンであった。
いや、とてもまじめな性分である。日ごろから依頼に駆けつけ走り戦い守り抜くような、芯の強い少女であるのだ。だから、この会場にある料理などというのは彼女の胃におさめていいだろう。我々の業界ではごほうびですといわんばかりに丁寧な食器の持ち方でひょいぱくひょいぱく食べていくのだ。
グレムリンが途中で現れたけど、猟兵たちがたちまち持って行ってしまったからなんてことはない。
のらりくらりと見なかったことにしつつ、彼女の獲物は――今は食事であった。
まず、オードブル。
丁寧にフォークで刺して食べる。お皿いらなくない?いいや、いる。見てくれというのはやはり大事だ。みっともない食事マナーだけはよろしくない。
次、サラダ。ビタミンは乙女のお肌に大切である。ちなみに疲労回復効果もあるし、なんだかんだと欠かせない栄養素が多い。次、パスタ。炭水化物は大事だ。糖質は脳をいやして筋肉のエネルギーになる。次、魚。ちょっと猫っぽい。おいしいらしくしっぽが揺れた。耳も揺れてる。作り物なのだけれど、デザイナー特注なのだ、今や立派な耀子の表現パーツである。
そして――何よりも大事なものが肉である。
「おにく。」
とりつかれてませんかね???
肉料理が置かれたビュッフェコーナーに来てしまったからには、耀子もただごとではいられなかった。
食べた。ひたすらに、気がむくままに、食べた。食べて食べて食べて食べて食べて食べて飲んで食べた―――。
目についた端からお皿によっそい、のちムシャムシャである。誰もがきっと丁寧なのに欲望駄々洩れパワーフードイーターに驚いたことであろう。きらきらしてくる瞳にはまぎれもなくエネルギーがたまってきているのである。これこそ!猟兵の力の源!!!たんぱく質!!!
「なんやあれ……」「おっ、おま、アカンで、目ェあわせたらあかん。」「シッ!見ちゃいけません!!」
――見て見ぬ振りもできなかった。
むしゃむしゃとハムスターよろしくほほをぱんぱんにしつつも肉を味わっていた耀子なのだけれど、やはり彼女、仕事のことを忘れるなんて言う愚行はできないのである。
彼女の食べっぷりにドン引――びっくり――驚愕――あかんこれ――恐れおののいたグレムリンたちがどうやら最後であるらしい。いやもう、勝てない。あきらめてきていた。この猟兵たち怖い。急にシリアスつっこんでくるし急にギャグで殺してくるし急に食べ始めるんだもん。災魔たちはもうお手上げなのです。帰りたいね。
食器を置く、耀子だ。
「はいはぴはろ。」
「軽いな」「はぴはろ……。」
「言い分に一理あろうと、今日に限ってはわざわざ邪魔をする方が悪い。」
「それは
……。」「ぐうの音もでまへん……。」
ごもっともである。
尤もなことには尤もなことで返すしかあるまい。今年のハロウィンは平日であったから、余計に何がハロウィンだ
!!!!!!!という気持ちになってしまうのもまぁわからないでないのだ。想像はできる耀子である。
だけれど、こうして――楽しい催しであるはずなのは知っているだろうとも思った。わかっていてやってしまうのは、どんなことであれ罪だ。
割とまじめなお説教を受けて――しょんぼりするグレムリンたちに同情はないけれど、さっさと還してやろうとも思った。
「デザートをくれなきゃおまえを取って食うわよ。」
「ひぃいい」「勘弁したって下さい」「あっ、おれ、俺らが勝った時に食べようと思ってたゼリーがあるんで」
「む。」
悩んだ。
うーん、と唸る。ゼリーって結構チープでは?という耀子の右側と、いいやもしかしたらとても高価なごちそうかも、とささやく左側があったのだ。さて、どうしようかと天秤にかけつつ、とりあえず見せてもらうことにした。
「――まあ。」
「へ、へへへ!」「どうですか!結構ええとこのゼリーですやろ!」
「これどうやって」
「店襲ってきました!!!」
テンペスト
――【《花剣》】。
それはアウトである。うわああああと吹っ飛ばされて消えていった悪党どもに、はやり同情も交渉もなかったのだ。さくっと終わらせてやるのが最適であっただろうと耀子が決めた。
てんてんと地を転がる、封を切られていないゼリーたちに罪はない。よいせとかき集めて、とりあえず手ごろな椅子に座り――ひとつ、封を開けたのなら。そこには、ゴーストや蝙蝠なんかをあしらった模様付きのビビッドなゼリーが姿を現す。
おいしそうだな、と思わされたのは――透明な器から透けて見える大きな果実だ。ブドウだろうか。それが中にてぎっちりと中身をつまらせていたものだから、耀子のデザートにはちょうどよかった。食べ応えがありそうだし、こっそり食べるには派手過ぎずちょうどいい。
「いただきます。」
しめやかに。それでいてお上品に。
ぺろりぺろりと猫がなめとるよりもきれいに夢の跡を食べたのならば、きっと――やさしい一日は穏やかに終わることだろう。
素敵な猟兵諸君とアルダワの世界に、君たちで楽しいひとときを。
――Happy Halloween! どうか、来年も楽しみに。
大成功
🔵🔵🔵