●天空城の小悪魔
「ふふふ、よく来たわね、侵入者よ!」
玉座の前で自信満々に胸を張り、そのオブリビオンの少女は謁見の間を見渡した。
「この天空城に足を踏み入れ、我が配下を退けた事は褒めてあげるわ。ただ――」
少女の身体から溢れ出す魔力。無数の槍が周囲に生み出され、その一本を手にとって真っ直ぐに突きつける。
「無事に帰れるとは思わない事ね。このリリィ・デモンズの力を味わって、後悔しながらその生を終えなさい!」
その、堂々たる宣言が響き渡り、そして――。
「…………」
バサバサバサ――。
「…………寂しい」
蝙蝠の羽音しか帰って来ない謁見の間を前に、少女――リリィは1人呟いた。
「うぅぅ……これで名乗りの練習も243回目……」
この天空城の城主として君臨する彼女だが、部下は蝙蝠の魔物達のみ。人型のオブリビオンは彼女を除いて一人たりとも存在しない。
とても暇だし、とても寂しかった。
「誰でも良いから早く来なさいよぉ……弱いヤツ希望で」
涙目になりながら、玉座に座り肘掛けに突っ伏すリリィ。
「うぅ……でも負けないわ。ここは私の城なんだから……! ……あと外出るの怖いし!」
●グリモアベースにて
「やあやあ猟兵諸君。くるるちゃんの召集に集まってくれて感謝するねっ」
グリモアベースに集まった猟兵達を前に腕を広げ、鏡繰・くるる(属性過積載型バーチャル男の娘・f00144)は愛らしい笑顔と共に元気よく切り出した。
「今回はアックス&ウィザーズ。『天空城』の攻略に向かってもらうよ!」
群竜大陸を守る巨大幻術が破れた事で、世界の各所で発見された巨岩群と、その上にそびえ立つ城。それは伝承によれば、魔力の暴走によって放逐された古代帝国の城だと言う。
「すでに群竜大陸は見つかってるけど、天空城はまだまだ世界の各地にあるし、そこにはオブリビオンがいる訳で……放置してはおけないよね!」
また、天空城には数多の宝が眠っていると言う。そういう意味でも放置するのは勿体ない、と言うものだ。
「天空城に向かうためには、空中に浮遊する巨岩群を渡って進む必要があるよ」
小さいものでも5m、大きなものになれば数十mに及ぶ巨大な岩がいくつも浮いており、それらを昇り、跳び移り、を繰り返して城へと近づく事になる。
岩は凹凸が激しく足がかりも多いので、根気と体力があれば昇れない事はないが……天空城は上空数百メートルの所にあるため、いくら猟兵と言えどひと仕事である。跳び移るときにうっかり落ちたりしたら……あまり考えたくはない。
天空城に着いてからが本番と言う事も考えれば、道具なり魔法なり、昇るのを楽にする何らかの手段を用意した方が良いだろう。
「一番楽なのは飛んでいく事だね。でも巨岩の周囲には激しい気流が乱れ渦巻いてるから、飛んでいく場合はそれに注意して」
天空城内部には、エレメンタル・バットと呼ばれる、蝙蝠の魔物が住み着いている。
「こいつは魔力を主食とする魔物で、その魔力を使った体当たりが主な攻撃手段だね。かなり速いし、人の身体ならめりこんじゃう位の威力があるよ」
また、魔力を利用して分身を生み出したり、翼から魔力を放ってこちらを魔力酔いに追い込んだりと言ったユーベルコードも使用してくる。
そして最も特徴的なのが『魔力食い』だ。
「こっちが魔法で攻撃すると、その魔力を喰らって逆にパワーアップしちゃうんだ。非殺傷系の呪いとか拘束とかも喰らってくるし、こっちが装備してるマジックアイテムや使ってる強化魔法の魔力なんかも餌にされちゃうよ。神聖力とか巫力とか、魔力以外の神秘的な力でも同じだね」
とはいえ吸収量には限度があるため、吸わせ続ければコアを自壊させて倒す事ができる。例えば強力な大魔法をぶつけるなどすれば、喰らいきれずに自爆するだろう。
また、魔力を用いない武器や科学的な兵器なら、当然魔力を喰われる事はない。コアを狙って破壊すれば一撃で仕留める事ができる。
「ただ……このエレメンタル・バットのコアは良質な魔法石でもあるんだ。魔法使いなら利用価値はいくらでもあるし、売っても結構な値段になるよ」
魔法石を摘出するためには、自壊させないようにしながら、コアを傷つけずに無力化する必要がある。手間と危険は増すが、行うだけの価値はある。
「特に、魔力を多く蓄えた魔法石は価値が高いからね。こっちの魔力を壊れない程度の量だけ食わせてみたり、相手が魔力を消費する前に速攻で倒したりすると良いんじゃないかな」
とはいえもちろん、魔法石の摘出にこだわり過ぎて大怪我をしては元も子もないため、欲張り過ぎも危険だ。
また、エレメンタル・バットは魔法石を主食とするので、摘出した魔法石は早めに回収しないと食われてパワーアップの元になってしまう。質を高めるために意図的に食わせるならまた別だが。
エレメンタル・バットを倒しながら天空城の中心部……謁見の間に向かうと、この城の城主であるオブリビオンが待っている。
「今回の城主は、リリィ・デモンズと呼ばれる少女のオブリビオンだよ。この子の最大の特徴は……あー、なんて言うか。弱いんだ。すごく」
どのくらい弱いかと言うと、エレメンタル・バット一匹とタイマンを張ったら負ける。
「だからまあ……キミ達だったらまあ負けないと思う。倒すのはとっても簡単だよ。ただし……」
謁見の間には、城の宝物庫に眠っていた古代帝国の秘宝が大量に運び込まれている。どれも貴重な品ばかりで、放置するにはあまり勿体ない。
「でも、リリィを倒したら天空城は崩壊を始めて、秘宝を回収するどころじゃなくなっちゃう。だから……『リリィを倒さず足止めしながら、その間に秘宝を回収する』作戦をお勧めするよ!」
リリィがいくら弱いと言っても、完全に放置するとその攻撃で秘宝が壊れてしまうかもしれない。また、基本的にはザコとはいえ、拘束から脱出したり呪いを解いたりするのは意外と上手い。
だが、回避は下手なので、まずは適当に足止めしておいて、自由になるたびに適時無力化していくのが良いだろう。
「ちなみに秘宝はたくさん持って帰ろうとすると魔力が相互干渉を起こして爆発しちゃったり呪われちゃったりする可能性があるから、持ち帰るのは本当に欲しい物だけにした方が良いかなー」
自分が本当に持って帰りたい宝を選ぶためにも、なるべく長時間足止めしておくのが良いだろう。
「まあ、今回は割と気楽に……オブリビオンを倒しにいくと言うよりは、お宝回収にいく、ぐらいのつもりで大丈夫だと思うよー」
楽しげにそう言って、くるるはいつもどおり、わざとらしい可愛らしくポーズを取って猟兵達を見渡す。
「それじゃ、ばっちり解決してきてね。良い知らせを待ってるよ!」
一二三四五六
お宝求めて空の上へ。
ごきげんよう。ダンジョンの宝箱は全部開けたいタイプ。一二三四五六です。
第二章の集団戦『エレメンタル・バット』はフルール・トゥインクル(導きの翠・f06876)さん、第三章のボス戦『『小悪魔』リリィ・デモンズ』はアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)さんの投稿です。ありがとうございます。
第一章はシナリオフレーム共通の公式フラグメントです。
補足。
第二章・第三章ともに、敵を工夫して倒して魔法石やお宝をがっぽり持ち帰ろうと言う趣旨となっています。
まあ持ち帰ってもアイテム発行されたりはしないのですが。もちろん「このシナリオで手に入れた」と主張して各自でアイテム作成するのは自由です。
第二章は普通に戦っても良いですが、第三章は普通に戦うと一瞬で終わるので、お宝に興味がなくても他の人がお宝探してる間は無力化に徹してあげてください。
第三章のお宝は、プレイングで『こういうお宝が手に入った!』と主張してもいいですし『こういう系統のお宝は無いかなー』と探して具体案は一二三に投げて頂いても良いです。
流石にあんまり強すぎるお宝(大陸を滅ぼす超兵器とか)はないです。個人で持てる範囲でお願いします。
それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしています。
第1章 冒険
『天空城をめざして』
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POW : 気合や体力で気流に耐え、巨岩を足場に進む
SPD : 素早く気流を切り抜け、巨岩を足場に進む
WIZ : 気流を見極め、回避したり利用したりしながら巨岩を足場に進む
👑11
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霧沢・仁美
空に浮かぶ岩の上のお城。なんか美術の教科書でそんな絵を見たことある気がするけど…まさか実物を見る機会がくるとはねえ(見上げつつ)
…で、これを登らなきゃいけないんだよね。
登山用の手袋と靴を装備して、凸凹にうまく手足を入れて安定を確かめながら慎重に【クライミング】。
次の岩へ渡る時は、サイキック・ワイヤーロープを【投擲】して次の岩へ、出来るだけ上の方へ突き刺すなり引っ掛けるなりして、それを支えに飛び移るよ。
飛び移ってからは、そのままそれを命綱代わりにする形で。…ちょっと頼りないかもだけど。
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
天空城でのお宝さがし!ロマン一杯の冒険譚だ!
背中の翅を羽ばたいて「空中浮遊」、空を飛んで浮遊する巨石群に沿って進むね♪
天空城のお宝、どんなものがあるんだろう?
とわくわくしながら注意散漫で飛んでたら風に流されそうになっちゃうよ!
わわっ、いけないいけないと【スカイステッパー】で大気を蹴って加速。一気に次の岩場まで退避するね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
フレミア・レイブラッド
お宝回収ね…。お宝自体にも勿論興味あるけど、寧ろ守ってるリリィっていう子の方が興味あるわね♪
【ブラッド・オブリビオン】で「荒野に飛来する氷鳥達」の「氷雪の鷲獅子」を召喚。
わたしと雪花の二人で【騎乗】して飛んでいくわ。
他に乗っていく子がいれば、一緒に乗せて行っても構わないしね♪
【念動力】を自身と鷲獅子に纏わせて気流の影響を軽減させ、風の魔力【属性攻撃、高速詠唱】で気流自体を制御または抑えるか、障壁で影響を遮断する様にして鷲獅子の飛行を補助。
鷲獅子に飛行を任せる分、わたしは念と魔力の制御に集中できるしね♪
可愛い子に貴重な宝…素晴らしい依頼ね♪
「おねぇさま、欲望に忠実過ぎるのー」
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆心情
ふーむ、群竜大陸が発見されたのは喜ばしい事ですが
帝竜ヴァルギリオスを討伐する為にも眷属の力を削がないとですよねー
◆行動
奇をてらうと碌な結果にならないのは良く知っています
此処は【黒竜の騎士】で甲冑を身に纏い空路で天空城を目指しましょう
巨石の辺りは気流が酷いようですが
優れた視力を誇る両の眼で風の流れに翻弄される石の破片を確認し
突然の気流の変化は【第六感】で察知し【空中戦】の要領で回避しましょう
最終的には【気合い】があれば凡その窮地は乗り越えられるのです、はい
天空城にはどんなお宝が眠ってるのでしょうか
今からワクワクしますねー
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーン歓迎です。
とりあえず、【空中戦】の要領で一個一個、岩にしがみついて進むとしましょう。
ふぅ、それにしても長年風雨に晒されている岩の凹凸が激しいなんて、寒暖の差や氷結とかで罅が入るんでしょうか?
それとも……、ひでぶっ!?(岩と岩がぶつかりあって岩に新しく凹凸が出来ました、ついでに銀花は平べったくなって岩に張り付いています)
……、なるほど、こう言う事ですね。(不死身の人狼を使って体が段々と厚みを取り戻していきます)
凹凸の多い部分にも要注意しながら天空城へと向かいましょうか。
露木・鬼燈
冒険とお宝…それは浪漫!
厳しい道中も冒険を彩るスパイスなのです。
とゆーことで、浮遊岩も楽しく攻略していくですよ。
冒険なので能力と頭を駆使しないとね。
ムダに消耗するのは良くないのですよ。
まぁ、ここは安全安心の飛行能力だね。
<黑鐵>と<骸晶>…どちらを使うべきか。
激しい気流が~とかいう情報があったよね。
機動力なら<黑鐵>だけど…
気流への対策を考えて<骸晶>でいくです。
電波と魔力を用いて浮遊岩の位置を把握。
さらに探査術式を起動してサーチャーで気流を観測。
集めたデータを如意宝珠で分析し、気流の変化を予測演算。
これを基に最適なルートを算出。
移動中は気流に合わせて結界の形状を随時変化。
これでイケルイケル!
フランチェスカ・ヴァレンタイン
…成層圏近くからのHALO降下で降り立てるのでしたらラクなんですけどねー、天空城
大きく広げた翼を打つと共にバーニアを噴かし、あえて乱気流に突っ込んでいきましょうか
翼で乱気流をいなして上昇気流に乗り、時には岩壁を蹴って上へ上へと
上へ行くほど気流が激しくなっているとは思われますが、まあある程度までなら問題はないでしょう、と
上方向の気流が少ないところではUCのワイヤーアンカーを上の岩場へと撃ち込み、巻き取ることで距離を稼ぐと致しましょう
途中、難儀している方が居ればお一人ぐらいなら抱えて運べますよ?
…三半規管の無事は保証できませんが、ええ
「空に浮かぶ岩の上のお城、かぁ。なんか美術の教科書で、そんな絵を見たことある気がするけど……」
高校の授業を思い出しながら、しみじみと呟く仁美。大分霞んで見えるとはいえ、地上からでも十分目視できる城。近くへ行けばさぞや壮観な光景が見られるだろう。
「まさか実物を見る機会がくるとはねえ……異世界ってやっぱり凄いわ」
魔導書を見つけて猟兵になる前には、現実にこんな光景を見る事など、想像もしなかった……とは言うものの。
「天空城でのお宝さがし! ロマン一杯の冒険譚だ!」
アックス&ウィザーズでも、こんな光景はそう有るものではない。ティエルもキラキラと目を輝かせる。
「いつか聞いたお話みたい……本当だったんだね!」
妖精の国のお姫様として、吟遊詩人の物語に胸躍らせたあの頃。それを実際に見れば胸躍り、心は弾む。
「さあ、それじゃあしゅっぱーつ!」
羽根を羽ばたかせて一気に上昇するティエル。その背を見送り、仁美は微妙な表情を浮かべる。
「あー……これを登らなきゃいけないんだよね」
仁美の背には、生憎と羽根などない。骨が折れそうだとため息を漏らしながら、登山用の手袋と靴を装備する。
「ま、仕方ない。気合入れますか」
凹凸に手をかけ、一歩ずつ。慎重に、確実に、昇っていく。
「成層圏近くからのHALO降下で降り立てるのでしたらラクなんですけどねー、天空城」
「いやいや、冒険とお宝……それは浪漫! 厳しい道中も冒険を彩るスパイスなのです」
身も蓋もない感想を漏らしながら、白翼をはばたかせるフランチェスカ。乱気流を巧みに乗りこなし、上昇気流を掴んでは一気に上昇する。
それに追随する鬼燈は、魔道士型の鎧装に身を包んで飛翔する。電波と魔力、探知の術式で周囲の情報を宝珠に取り込み、素早い演算で気流の変化を予測していく。
「能力と頭を駆使して楽しく攻略していくですよ」
「そうですわね、ま、この程度は問題ありませんし」
データを収集して確実な飛行で進む鬼燈と、肌で感じる直感に従い羽ばたき進むフランチェスカ。対照的ではあるが、二人ともその飛行に淀みはない。
「やはり上へ行くほど、気流が激しくなって来ますわねー」
フランチェスカは肌でそれを感じ取り、次第に意識を研ぎ澄ます。その飛翔を支えるのは、空を、宇宙を、数え切れぬほどに飛び続けたその経験。
荒れ狂うナミを乗りこなすが如く、行く手を阻む風を翼の助けに変えていく。
「黑鐵じゃなくて骸晶で来て良かったっぽい」
速度重視の鎧装と今の装備を比較し、鬼燈は自身の選択の確かさを認識する。下手に力づくで突っ切ろうなどと思えば、どうなっていた事やら。
リアルタイムの演算で常に最適なルートを更新し、それにそって確実に進んでいく。
「天空城にはどんなお宝が眠ってるのでしょうか……今からワクワクしますねー」
黒竜騎士の甲冑を身に纏い、その飛翔能力で天空を目指すミコ。
「お宝回収ね……お宝自体にも勿論興味あるけど」
フレミアは召喚した鷲獅子の背に乗り、優雅に天空城を目指す。
「寧ろ守ってるリリィっていう子の方が興味あるわね♪」
「まあ、帝竜ヴァルギリオスを討伐する為にも眷属の力を削がないとですからねー」
群竜大陸を発見し、ヴァルギリオスの元へ確実に近づいている。逸る気持ちもある一方で、確実に足場を固めていかなければ。
「そういう興味よりは……ねぇ?」
「大丈夫、それも分かっていますよ……っと」
フレミアの意味深な微笑みに頷いた所で、肌にチリッとした危機感を覚えてその場に急停止する。じっと正面を見据えれば、壁のように侵入者を阻む、吹き下ろしの突風。
「これはなかなか厄介ですねー?」
下手に突っ込めば、その気流に飲まれて吹き飛ばされていた所だろう。だがそれにも怯む事なく、ミコは冷静に両の眼を見開く。
「ふふふ、ばっちり見えてますよー」
捉えるべきは、風に翻弄される小さな石の欠片たち。その動きをしばらく見守れば、目に見えぬ風の流れも手に取るように分かる。
「あっちの方に気流の隙間がありますね、ちょっと狭いですが」
「そう、じゃあそこを広げましょうか」
一つ頷き、風の裂け目の前へと移動するフレミア。飛行を鷲獅子に任せる事で、自身は魔力と念動力の制御に集中する。
「……ふっ!」
そうして生み出した風の力を正面に叩きつけると、荒れ狂う風を豪快に押し広げた。
「さ、それじゃあいきましょうか」
「いやいや、見事なものですねー」
突風の中に生み出される無風の回廊の中、髪一つ乱す事なく、フレミアとミコは悠々と進んでいく。
「よっ……とっ!」
ワイヤーロープに念動力を伝わせ、上にある岩へと投擲する仁美。グッ、グッ、と引っ張ってしっかりと引っかかったのを確かめると、そのロープを昇っていく。
「ふぅっ……大分上まで昇って来たかな」
上を見れば、先程は霞んでいた天空城も大分大きく見えて来た。下を見ればもっとはっきりと進捗が分かるだろうが……ロープ一本の命綱では、あまり見下ろしたくはない。
「大分風が強くなって来ましたわねー」
飛んでいたフランチェスカも、アンカーを岩に打ちつけ、一気に巻き取って距離を稼いでいく。ここから先は、簡単には進めそうにない。
「あー……そのワイヤー、便利そう……」
「難儀しているようなら、お一人ぐらいなら抱えて運べますよ?」
心もとないロープと、巻き取り機構のついたワイヤーを見比べ、思わず羨望を漏らす仁美に、首を傾げて尋ねるフランチェスカ。
「うーん、それは魅力的なお誘いかも」
「ただ……三半規管の無事は保証できませんが、ええ」
まあ、飛べない所を飛んでいく訳で。
「……どのくらい?」
「人によりますけれどまあ……悪い場合は、飛行機酔いの倍くらいでしょうか」
その言葉に、仁美はなるほど、と頷いて。
「自分で昇っていくわ」
「ええ、わかりました。では道中お気をつけて」
気流の隙間に到達し、今度は翼で距離を稼いで飛んでいくフランチェスカ。それを見送ると仁美も気合を入れ直して、確実に一歩ずつ進んでいく。
「天空城のお宝、どんなものがあるんだろう?」
ワクワクと胸弾ませながら、羽ばたいていくティエル。城が近づいてくるほどに、心が躍り胸が弾む。
「危ない!」
「えっ……きゃああああっ!?」
だが、想像のせいで注意力が散漫になったか、突風地帯に踏み込んでしまった。警告の声を聞いた時にはすでに遅く、羽根が回転しながら吹き飛ばされてしまう。
「め、目が回るー……」
「ちょっと待ってね、今……それっ!」
鷲獅子の背の上から、風の魔力を放ち、突風を弱めていくフレミア。それによってかろうじて制御を取り戻したティエルは、脚をばたつかせて空を踏みしめる。
「そぉ、れっ!」
たんっ、たんっ、たんっ、とかろやかに。風を足場に連続して跳ねる。加速して突風地帯を振り切り、近くの岩場にしがみつく。
「ふぃー……いけないいけない。危なかったー」
「大丈夫?」
近づいてきたフレミアに、微笑みながら礼を言うティエル。
「ありがとう、助かったよ!」
「良いのよ、気にしないで」
それに微笑みを返すフレミア……の瞳は、可愛らしい妖精を愛でるように。
「可愛い子の危機ならいつでも助けてあげるわ」
「おねぇさま、欲望に忠実過ぎるのー」
主の背中にしがみついていた眷属の雪花が、ご機嫌なその顔をじとーっと見つめる。
「だって、可愛い子に貴重な宝……素敵な依頼なんだもの♪」
楽しまなくては損と言うもの。心弾ませ、フレミアは空を目指す。
「ふぅぅ……大分昇って来ましたね。あと少しです」
地道に岩にしがみついて昇ってきた銀花。疲労も大分蓄積して来たので、岩の凹みにもたれかかってしばし呼吸を整える。
「それにしても、長年風雨に晒されている岩の凹凸が激しいなんて……」
こうして休憩を取れるし、足場には困らない。有り難いには有り難いのだが、疑問は募る。
「寒暖の差や氷結とかで、罅が入るんでしょうか? あんまり寒くありませんしねぇ」
ここまで高ければ普通は気圧の関係でかなり冷えそうなものだが、若干肌寒くある程度で、そこまでの寒さは感じない。気流の関係なのか、それともこれも古代帝国の技術とやらなのか。
「他に考えられる事といえば……」
しばし思案に耽る銀花……と、その身体に突然影が差す。
「む……ひでぶっ!?」
隣の浮遊岩と、銀花の浮遊岩が激突し、その間にべたーん、と挟まれた。
激突した岩が反動で離れていくと、その岩に張り付いた、平べったいなにか。
「――――なるほど、こう言う事ですね」
明らかに『衝撃の瞬間』的な状態から、その平面が徐々に厚みを取り戻す。類稀なる再生力で元に戻った銀花は、血をびゅーびゅーと流しながら納得したように頷いた。
「凹凸には気をつけて進みましょう」
何事もなかったかのようにすいすいと昇っていく銀花……そしてそれを、偶然にも目撃してしまったティエルは、微妙に顔を青褪めさせる。
「……もう絶対、不注意で飛んだりしないよ!」
「それが良いっぽい」
通りがかった鬼燈は割と見慣れた光景なので動じず、うんうんと頷いた。
「……さて、こっちも流石にちょっと風もキツくなって来たっぽいー」
「いやー、すごい事になってますねー」
宝珠の演算能力をさらに高め、気流の予測精度を高めていく鬼燈。上空の乱気流は複雑で、計算を間違えれば、墜落とまではいかないにせよ面倒なのは間違いない。
ミコも、目の前の風の中で石の欠片が暴れ狂う様を見つめ、面倒そうだと眉を寄せる。
「まあ、でも行けない事もない、かな」
鬼燈は最適ルートを割り出すと、そのルートに沿って身に纏う結界の形状を最適化していく。風を阻むのではなく、風に乗るように。
「うん、これでイケルイケル! ……けど、そっちは大丈夫?」
「ええ、平気ですよ」
無論、ミコの硬い甲冑ではそんな事は出来ない。気遣うように首を傾げれば、堂々と胸を張って答えるミコ。
「気合いさえあれば、凡その窮地は乗り越えられるのです」
「気合いかー。うん、まあ気合は大事っぽい!」
ミコの言葉に、納得したように頷く鬼燈。
割と脳筋気味な回答だったが、心を健やかに保ってこそ身体が動くと言うのは武芸者にとっては割と納得がいく。
「それじゃあ……最後行くっぽい!」
「ええ、行きましょうかー!」
結界を利用して風の合間を駆け抜ける鬼燈に、甲冑の出力と気合で強引に突破していくミコ。翻弄されながらも乗りこなし、跳ね返されながらも突き進み、そして……。
「到……着っ!」
ついに最後の風の壁を抜け……天空城の前に到着する。
「苦労しただけあって、清々しい気分なのです」
これまでの風が嘘のような、晴れ渡った景色。巨大な岩の上、陽光に照らされながらその城は存在した。
「いやぁ、どんなお宝が眠ってるのでしょうか。ワクワクしますねー」
神秘的な光景と、その中に眠る宝を前に、胸躍らせるミコ。他の猟兵達とともに巨岩の上に降り立ち……あるいは下から昇ってくる。
「やっと着きましたか」
一人、やたらと服がボロボロなのがいるが、それはそれとして。フランチェスカも仁美も、その光景に感嘆を漏らす。
「近くで見ると見事なものですわねー」
「ええ、こんなものが空の上にあるなんて」
フレミアとティエルも、城の中に思いを馳せて。
「ふふ、待っていてね、可愛い城主さん」
「それじゃあ……お宝の眠る城の探検に、しゅっぱーつ!」
そして猟兵達は、城の中へと足を踏み入れた。
成功
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第2章 集団戦
『エレメンタル・バット』
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POW : 魔力食い
戦闘中に食べた【仲間のコアや魔法石、魔力】の量と質に応じて【中心のコアが活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 魔力幻影
【コアを持たないが自身とそっくりな蝙蝠】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ : 魔力音波
【コアにため込んだ魔力を使って両翼】から【強い魔力】を放ち、【魔力酔い】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
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城の中に足を踏み入れた猟兵達。
伝承が確かならばこの城は古くから空の上にある筈だが、薄汚れていたり劣化していたりと言った様子は見受けられない。流石に新築同然とまではいかないが、程よく年を重ねた、趣深い美しさを保っている。
そんな城の中を進んでいくと、どこからともなく、バサバサと羽音が響き渡った。
飛んできたのは、美しい魔法石の埋め込まれた蝙蝠たち。色とりどりの輝きは、その石が宿す魔力の輝き。
特に魔力の高い魔法石は、宝石のように美しく輝いている。
蝙蝠達は猟兵と餌を認識したのか、羽ばたきながらこちらへと近づいてきた。
迎え撃ち、ただ打ち倒すか――それとも、その魔法石の摘出を目指すか。
判断は各々の猟兵達に委ねられている。
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆心情
ふーむ、如何なる謂れで力を得たのかは気になりますが
流石に蝙蝠は竜種のカテゴリーではないですよねー
◆行動
【POW】で判定です
ふと疑問に思いましたが神聖力が駄目なら
我が主に聖別さ(のろわ)れた黒剣もアウトですよねー
毒なら効果が有りそうですが周囲の方に迷惑ですし(悩)
でもこういう時こそ【怪力】イズジャスティス
脳内麻薬を過剰分泌させ
【ドーピング】した身だから可能な必殺技
・・・投石です(ドヤ顔)
城に入る前に拾っておいて正解でしたね
石の数が足りなくなりそうでしたら
綺麗に整頓された城の備品を投げて使いましょう
これこそまさに【地形の利用】ですねー(酷)
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
露木・鬼燈
んー、これもお宝には違いないし?
僕に必要かといえば…
魔法増幅器や魔道具の素材としてなら使えるっぽい。
それでもなくてもいい物なんだよね。
まぁ、僕には趣味の範囲だよね。
お金にもそんなに興味ないしなー。
普通に壊してもいいけどね。
あれだけ取りやすい場所に配置されてたらね。
神秘的な力を喰らう能力も僕には関係ないのですよ。
物理で抉り取ればいいのです。
<血霧腕>は純粋な体術だからね。
空を飛んでるのがちょっとめんどくさいけど。
フック付きワイヤーで引き摺り落とせばいいのです。
あとは踏みつけて動きを止めてから抉り取る。
これでイケルイケル!
余裕があれば属性魔力を喰らわせるですよ。
少しは高品質のものもあるといいよね。
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み、ピンチシーン歓迎です。
蝙蝠の弱点……、それは超音波、ひいては音を聞いてしまう事です。
なので私はユーベルコートのワイルドエールで相手を木っ端微塵にする積りでぶちのめします。
あ、割れてても砕けてても宝石は回収します。
砂になるまで砕いた宝石をインクに混ぜて、それで記した魔道書とかなんか凄そうじゃありません?
砂になるほど砕いた宝石で魔法陣の砂絵を描いたりしたらきっと最高でしょう。
と言う訳で、どんどん墜として行きましょう。
霧沢・仁美
わ、なんかキラキラして綺麗かも…って、そんなコト言ってる場合じゃないね。
まずはやっつけないと。
できる限り、コアを集める方向で戦うよ。
サイキック・ワイヤーロープの【投擲】で攻撃、翼を撃ち抜いて音波封じと移動阻害を狙うね。うまく撃ち落とせたらコアの摘出を試みてみるよ。
敵がたくさんいるなら、念動電光球を一つに纏めて一気にぶつけて自壊を誘発させたり、ワイヤーロープをコア狙いで投げて撃破したりして数を減らすことを優先。
逆に一匹だけになったら、念動電光球を一つずつ、自壊しないギリギリぐらいまでぶつけて吸収させ、その後で翼をワイヤーロープで撃ち落としコア回収を狙うね。
フレミア・レイブラッド
一章に続き鷲獅子を引き連れて進行。
自身と雪花、鷲獅子に【念動力】の膜を張って魔力酔いを防御。
敵を接近させない様に鷲獅子を前衛に配置。
魔力意外の力も捕食するという事なので、継続的に【念動力】で捕縛する様に力を注ぎ込み、コアを適度に活性化させ、狩り頃になったら【サイコキネシス】と【念動力】の二重拘束で動きを瞬間的にでも止め、敵の翼を鷲獅子の【爪による連撃】で圧し折る、または自身の魔槍で素早く【残像、早業】斬りおとして戦闘不能にし、コアを摘出するわ♪
分身の方は発生次第、雪花と鷲獅子で即座に始末。
できるだけ高品質のモノが欲しいけど…本命はこの後だしね。
無理はしないでおくわ♪
ティエル・ティエリエル
SPDで判定
ようし、まずは第一のお宝、魔法石の回収目指して速攻撃破だ!
背中の翅を羽ばたいて「空中浮遊」、エレメンタル・バットと「空中戦」で戦うよ!
「見切り」で攻撃を避けながら、コアは直接狙わずに翼を狙ってコアの回収を狙うね♪
何個か回収できたけどあまり質はよくなさそう……?
そんなこんなで魔法石を回収してたら、次は分身して襲い掛かってきたよ!
まとめて薙ぎ払ってやるーと【ハイパーお姫様斬り】で真っ二つにしてやるよ☆
真っ二つにして回ってたらオーラの刃が消えちゃうヤツが……あーっ、こいつが本体だね♪
ちょっとは魔法石よくなったかなってレイピアで翼を刺し貫いてコアを回収しちゃうぞ☆
※アドリブや連携も大歓迎
フランチェスカ・ヴァレンタイン
コレもお城の宝物の内なんでしょうかねー、一応
特段光り物を好んでいるわけではありませんが… まあ、せっかくですしね?
空中戦でのすり抜けざまに斧槍を2回攻撃で閃かせ、蝙蝠の両翼を片っ端から断っていきましょう
墜ち行く個体を蹴り飛ばし、念動ワイヤーアンカーで絡め取って数珠繋ぎに拘束しまして、と
一通り墜としましたら次波が来る前に剥ぎ取r――魔法石の摘出を
コレ、穂先を捻じ込めば刳り抜けますかしら…? この数のガワを剥ぐのも少々手間ですよねえ
確保した魔法石は【月華の桃源に潜むもの】の格納庫に纏めて放り込んでおいて仕分けは後日に
あ、戦利品が重荷になっている方がいらっしゃるようでしたら一時預かりも致しますよー?
「わ、なんかキラキラして綺麗かも……」
蝙蝠達の湛える宝石を見て、目を輝かせる仁美。だがはたと我に帰り、その手にロープを構える。
「って、そんなコト言ってる場合じゃないね。まずはやっつけないと」
それを高速で撃ち出し、羽根に穴をあける。地面に落ちた蝙蝠に駆け寄り、素早くコアを摘出していく。
「いつもと勝手がちょっと違うけど……うん、なんとかやれる、かな?」
普段はロープを念動力で操るのが彼女の戦い方だが、その念動力も近づけば蝙蝠に喰われてしまう。離れた位置なら操作に問題はないため、それを踏まえた上での操作が必要になってくる。
「なるべく手前で軌道を確定して……こうっ!」
そんな差異を修正しながら、一体ずつ蝙蝠を撃ち抜いていく。いつもより少し神経を使うが、しっかりと対応するのは彼女の技量の高さを伺わせる。
「うーむ……我が主に聖別さ(のろわ)れた黒剣もアウトですよねー」
普段の戦い方に修正が要るのは、ミコも同じ。獲物とする黒き九剣は全て、黒竜の力を宿しており、振るっても通じないか……いやむしろ、魔力過多で自爆させかねないか。
「でもこういう時こそ、怪力・イズ・ジャスティス!」
相手に通じないなら、自分に働きかけるまで。脳内麻薬を過剰に分泌させ、肉体を活性化させるミコ。
「さあ、我が必殺の一撃を受けて貰いましょう!」
真っ直ぐに蝙蝠を見据えるミコ。高めた力で右手を強く握り、凛とした表情を浮かべた彼女は、右腕を大きく振りかぶり――。
「てやっ!」
握りしめた石を投擲し、蝙蝠の羽根を撃ち抜いた。
「どうですか、この必殺の――『投石』は!」
「何故ドヤ顔を……?」
胸を張るミコの、あまりに誇らしげな顔に、怪訝そうに首を傾げるフランチェスカ。まあ良いかと気を取り直し、斧槍を構えて羽ばたく。
「コレもお城の宝物の内なんでしょうかねー、一応?」
2人とは異なり、彼女は戦いに魔法を用いる事はない。急接近し、蝙蝠が魔力を放つよりも早く、すれ違いざまに翼を斬り捨てる。その動きに淀みはない。
飛べなくなって堕ちる蝙蝠を巧みに蹴り飛ばし、摘出しやすいよう一箇所に集めると、ワイヤーで巻き取って拘束していく。
「特段光り物を好んでいるわけではありませんが……まあ、せっかくですしね?」
「あれだけ取りやすい場所に配置されてたらね」
魔力を持たない純粋なフック付きワイヤーを絡め、巧みに絡め取るのは鬼燈。もがく蝙蝠を巧みに引きずり落とすと、その羽根を踏みつけ動きを封じる。
「お金にもそんなに興味ないし、僕には趣味の領域だけど……いい物みたいだし、わざわざ壊す事はないよね!」
あらゆる敵の臓腑を抉り出す忍体術の技巧を持ってすれば、体外に露出したコアを抉り取るなど容易い事だ。
「まあ強いていうと……握り潰さないようにするのが面倒っぽい!」
無論、力の調整に失敗するような真似はしないが、引きずり下ろしては摘出していくのは、どうにも戦いより作業感を覚える所だ。
対照的に、全力でそれを楽しむのはティエル。レイピアを引き抜き、翅で羽ばたいて蝙蝠に斬りかかる。
「ようし、まずは第一のお宝、魔法石の回収だー!」
他の猟兵にとっては小動物な蝙蝠達も、フェアリーである彼女にとっては、なかなかの大物だ。だからといって無論、それを恐れる事などない。
「いっくぞー!」
蝙蝠達の叩きつける魔力を、巧みにかわして回り込む。レイピアを振るえば風鳴りが美しい音を奏で、鋭い刺突が蝙蝠の羽根を裂く。
「これで――どうだっ!」
「さて、余裕のあるうちに剥ぎ取……摘出を」
迫って来た蝙蝠達の数が減って余裕ができると、共食いを許す前に素早く摘出作業に移る。肉と魔法石の間に斧槍の穂先をねじ込み、刳り出していくフランチェスカ。
「こんな感じ……ですかしら? なかなか骨が折れますわね……」
「うん、でも……あんまりあまり質はよくなさそう……?」
ティエルもレイピアで摘出した魔法石を抱えて、首を傾げる。無論、これでも決して悪くはないのだが、良質と言うには不満が残る。
「なら、ちょっと魔力を喰わせてみましょうか♪」
鷲獅子の背から手を伸ばし、戦場へ念動力を放っていくフレミア。捕縛するように力を注ぎ込むと、蝙蝠達はそれを喰らって力を増し始める。
「わっ、おねぇさま、暴れ始めたのー!」
「ええ、ちょうど、狩り頃のようね」
翼をはためかせ、余剰の魔力を撒き散らし始める蝙蝠。ぎゅっと腰に雪花が抱きつくのを宥めながら、フレミアは念動力の壁でその魔力を散らしていく。
「魔力を喰らうにしても……ちょっとぐらい、時間はかかるでしょうっ!」
サイキックエナジーと念動力を重ね、蝙蝠を強固に縛り付ける。その力を喰らわれるより早く、鷲獅子の爪が蝙蝠の羽根を切り裂いた。
「っと……うん、なかなか良い出来ね」
落ちていく蝙蝠を魔槍に引っ掛け、槍の魔力を喰われる前に素早く摘出する。煌々と赤く輝く魔力石を見て、満足げに頷くフレミア。
「さて、この調子で……」
「っ、気をつけて、大群だよ!」
戦いの喧騒を聞きつけたか、城の別の場所からも蝙蝠が集まって来た。それに気づいた仁美は仲間に警戒の声を飛ばしながら、念動力でその手にプラズマを生成していく。
「ここで怪我したら、元も子もないし、ね……!」
摘出を一時諦め、集めたプラズマを球にして撃ち出す。荒々しく戦場を駆け抜けた雷球の魔力を喰らいきれずに、コアを自壊させる蝙蝠。一体のみならず、そのまま貫通して6体をまとめて崩壊させる。
「一度に破壊するなら任せてください」
ずいと、大群の前に歩み出たのは銀花。蝙蝠達から敵意を向けられても、頓着する事はない。
「蝙蝠の弱点……それは超音波、ひいては音を聞いてしまう事です。なので……」
大きく息を吸い込み、肺を膨らませる。真っ直ぐに敵陣を見据え、地を蹴って駆け出して。
「ウゥォォォ――オオオオオン!」
人狼の喉が震え、迸るは咆哮。魔力とは異なる物理的な音の波が、蝙蝠のコアを打ち砕く。
「オォォォォォォォ――すぅぅぅぅ――ォォォォォォォ!」
途中息継ぎの最中に蝙蝠に激突されるも、己の傷を全く気にしない。荒々しい咆哮が、戦場に迸る。
そうして数を減らしていくと、今度は蝙蝠達の身体が霞み――そしてさらに数を増していく。
「あら、分身ね……雪花!」
「わかったの!」
フレミアの背中から顔を出すと、精一杯手をのばして吹雪を放つ。鷲獅子も羽ばたき、極寒の風で分身達を凍りつかせていく。
「魔法石も欲しいけれど、本命はこの後だしね。無理はしないでおくわ♪」
待ち構える少女の事を思い笑みを浮かべながら、荒れ狂う吹雪に念動力の波を重ねるフレミア。膨大な魔力と冷気を前に、本体もそれを喰らいきれずに弾け飛ぶ。コアを失えば、分身同様に凍りつき墜ちていくしかない。
「ふむ、石が尽きましたね」
投石用に外から拾ってきた石が尽きたミコは、すたすたと壁際に歩み寄る。手に取ったのは、飾られていた割と高そうな壺。
「……ていっ!」
それを躊躇う事なく叩きつけて、破片に変えた。石の代わりに思い切り投擲する。
「これこそまさに、地形の利用!」
まあ、たしかにどうせ持ち帰れないものではあるのだが。美術品としての価値を考えると、大変に思い切りが良い。
「まとめて、薙ぎ払ってやるー……ハイパーお姫様斬りだぁっ!」
ティエルもまた、レイピアにオーラの力を集め始めた。美しい刃を輝きが包み、豪快な斬撃――分身達など物の数ではないとばかり、縦に横にと両断する。
そんな攻撃の途中、刃の光が消えた。蝙蝠の肉に刃を阻まれるものの、ティエルは満面の笑みを浮かべて刃を翻す。
「あーっ、こいつが本体だね♪」
鋭い刺突が蝙蝠を裂き、刃を立てて魔力石を摘出する。コアを失い墜落していく蝙蝠を尻目に、よいしょ、と両腕で魔力石を抱えるティエル。
「うん、さっきよりいい感じになってるっ!」
オーラを吸わせた事で淡く金色に輝く魔法石を見て、満足げに頷くティエル。
「さあ、この調子でどんどんっ、やっちゃうよ!」
「余裕があるうちに、良いのを取っておくですよ」
鬼燈もそれに倣うように、己の右手に魔力を集めていく。敵を倒すにはその肉体一つで十分、魔力を喰われた所で何ら問題はない。
「うん、こんな感じでイケルイケル!」
握りしめ、輝きを増した所で抉り取る。
「なくても良いんだけど……まあ、魔法増幅器や魔道具の素材としてなら使えるっぽい」
優先するほどではなくとも、有るに越したことはないし――何より彼にとっては、多少力を増すなど大した負担にはならない。むしろ、多少は歯ごたえが増した方が作業感が減って良い。
「取りやすい位置にあるなら取らない方が失礼なのですよ!」
分身達の臓器だろうと、本体のコアだろうとおかまいなし。容赦なく抉り取っていく。
「さて、これで最後の一匹、かな!」
分身の中心をワイヤーロープで撃ち抜いた仁美は、最後に残った本体へと小さな電光球を放っていく。青白く強く輝く光の強さを調整しながら、じわじわと魔力を喰らわせて。
「……そこだっ!」
突進してくる蝙蝠のコアにヒビが入るその直前、翼をロープで撃ち抜き、コアを抉り出した。
「この数のガワを剥ぐのも少々手間ですよねえ」
全ての蝙蝠を無力化すると、まだコアを摘出していない――翼だけを奪った蝙蝠達からコアを摘出していく。
何しろ数が多く、その手間にやれやれとため息を漏らすフランチェスカ。
「とはいえ、まあ置いていくのも勿体ないですしね」
ワイヤーで数珠繋ぎにした蝙蝠達、その胴を踏みつけにすると、斧槍を使って一体ずつしっかりと剥ぎ取ると、豊かな胸の谷間――に繋がる格納庫にしまい込んでいく。
「重荷になっている方がいらっしゃるようでしたら、預かりますよ?」
「それは、うん、お願いしたいかも」
両腕いっぱいに魔法石を抱えたティエルが、それを預けるために駆け寄って来る。結構大きいので、妖精の身体にはかさばるのだ。
「こっちもせっかくですから回収していきましょう」
銀花は、砕け散った魔法石の方を袋に詰めていく。砕けた事で魔力が抜けて大分劣化してはいるが。
「まだ魔力が残ってそうですよね? だったらなんか凄そうじゃないですか?」
砂になっても元は魔力石。魔力の残滓がしっかりと残っているのは、その手の心得が薄い銀花にも感じ取れる。
無論、石そのものに比べれば魔力は少ないが、砂にしか出来ない事もある。
「インクに混ぜて魔道書を記すとか出来ますよね。魔法陣の砂絵を書くとか――きっと最高でしょう」
「ふーむ、それにしても、如何なる謂れで力を得たのかは気になりますが……」
興味深げに魔法石を手にとって眺めるミコ。
「流石に蝙蝠は、竜種のカテゴリーではないですよねー」
竜種の魔力なら、喰らうのだけど。試しにちろりと舌を這わせるが――やはり、あまり美味しくはなかった。
大成功
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第3章 ボス戦
『『小悪魔』リリィ・デモンズ』
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POW : 悪魔の契約~デビルボム~
【悪魔の契約書(対象の署名・捺印が必要)】が命中した対象に対し、高威力高命中の【亀の歩みの様な超低速の誘導魔力弾】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 悪魔の神槍~デーモン・グングニール~
【刺そうと思ったら途中でボキッ!と折れた槍】を向けた対象に、【折れた槍の先端部分を拾い、投擲する事】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 悪魔の魔針~小悪魔ニードル~
レベル分の1秒で【針でチクッ!とされた様な威力の魔力針】を発射できる。
👑11
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「ふふふ、よく来たわね、侵入者よ!」
謁見の間に足を踏み入れた猟兵達。そこへ、大きな――可愛らしい声が響き渡る。
「この天空城に足を踏み入れ、我が配下を退けた事は褒めてあげるわ。ただ――」
すでに戦闘音を聞きつけ、侵入に気づいていたのだろう。城主たるリリィは得意げに胸を張り、その魔力で無数の槍を作り出していく。
その一本を手に取り、彼女は猟兵達にそれを突きつけて。
「無事に帰れるとは思わない事ね。このリリィ・デモンズの力を味わって、後悔しにゃぎゃっ」
……。
「舌噛んだ……」
涙目で口元を抑えるリリィ。その痛みで制御を失った槍が地面に落ちると、ポキポキと盛大に折れていく。槍どころか、串焼きの串ですらもうちょっと丈夫そうなものだ。
「と、とにかく……こにょリリィ・デモンズの力を見せてやるわ――!」
まだちょっと痛がりながら、涙目でこちらを睨んでくるリリィ。だがそんな彼女の身体から溢れる魔力は、猟兵の懐に入っている魔法石よりか細い。
そして、それ以上に魔力の高い様々な財宝が、周囲に無造作に転がされている。リリィが退屈凌ぎのために城中から集めたけれど、使い方が分からなかったり、なんか怖くて放り出したものだ。
それらに猟兵達が気を取られている事に全く気づかず、リリィは気を取り直して精一杯胸を張って言い放つ。
「さあ、まずはこの悪魔の契約書に署名・捺印をなさい! 印鑑がなければ拇印でいいわ!」
弥久・銀花
アドリブ、他の人との絡み、NGなしです
入城に契約書署名とサインが必要、と、では
(しれっと近くに居る他人の名前を書きます)
これで良し
お聞きしますが、勝手に動いて人を拘束してしまう様な物はありますか?
昔、嫌な思いをしたので見つけたら(貴女に使った後に壊して)天空城から落として処分しようと思うんです
あ、早速壊してしまいましょう……、えいっ!
(首、手首、二の腕、腹部、太腿、膝、足首、を全部背面に短い鎖で連結する、虫みたいな足の生えた拘束具の一式がこっちに来ましたのでリリィをそっちに蹴り出します)
準備できたので早速……
うぐっ!?(背後からもう一式来て銀花を拘束し、揃って天空城から出ようと歩き出しました)
フレミア・レイブラッド
二章に続き鷲獅子を引き連れ中
最初はお宝を物色し、魔力の探知や目利きから強力な魔法具やできるだけ高価且つ魔力を蓄えた巨大な宝石類を雪花と物色。
その間、鷲獅子がギロリと睨む様にリリィを威嚇(時には前脚でお手するみたいにムギュっと抑えつけたり、程々に加減した【極寒の風】で少し凍結させたり)して時間を稼ぎ、目ぼしいものを見つけたら交代。
雪花と鷲獅子にお宝の運び出しを指示し、自身はリリィを【魅了の魔眼・快】【誘惑、催眠術】淫惑のフェロモンで魅了し、【吸血姫の魔愛】で魔眼で更に魅了を深めつつ、抱擁の温もり、快楽と幸福感で蕩けさせ、口づけで堕とすわ♪
フフ…期待通りとっても可愛らしい子ね♪さぁ、いらっしゃい♪
黒玻璃・ミコ
※美少女形態
◆心情
ふーむ、予想以上のポンコツさんですねー
まぁ、長らく猟兵をお待ちしてた様なので存分に構ってあげましょう
◆行動
気になっていた『千の竜殺しの勇者の伝説(初版本)』を持ち帰りますよー
契約書に署名・捺印するのですね?良いですよー
(【怪力】でうっかり破き、【毒使い】による腐食毒でぼろぼろにする)
おや?リリィさん、悪気は無かったのですからそんなに怒らなくても
そう言えばお城の中にあった壺は素敵でしたねー
(軽く煽り【おびき寄せ】てみる)
うふふふ、リリィさんには笑顔の方が似合いそうですね
【黒竜の遊戯】による【念動力】で脇や背中をくすぐってみましょうか?
◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK
露木・鬼燈
このぐだぐだ感…テンション下がるわー。
お宝を求めての冒険だし?
最後は盛りあがりが欲しかった!
なんだこのぽんこつかわいい娘は。
すまない…いま求めてるのはそーゆーのじゃないんだ。
このタイミングじゃなかったらなー。
盛り上がりに欠けるけど、お宝の回収はするですよ。
まずは注意を惹かないとね。
隠忍之薬酒瓢箪から気持ちよく酔える甘いお酒を水遁で射出。
なんかソフトな感じで。そう、水鉄砲的な?
お宝を探すためにも時間を稼がないと。
<隠忍の見えざる手>で水遁を強化。
酔いが回ってきたところをお酒の触手で拘束するのです。
念動手に術を維持させている間に僕はお宝を探す。
これでいくっぽい!
ダグザの大釜みたいなもの、ないかな?
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
説明もしないでけーやくしょにサインさせようとするなんてダメなんだぞー☆
リリィの周りをぐるぐるぐるっと飛び回って目を回させるね♪
でたらめに攻撃してきたら、チクッ!ってなる魔力針をするりと「見切り」で避けて
【妖精姫のいたずら】で服の中にもぐりこんじゃえ♪
呼吸困難になるまでこちょこちょしちゃうぞー☆
よし、リリィが呼吸困難で行動不能になっている間にお宝を探して回るよ!
身体が大きくなるようなお宝とかないかな?みんなみたいに大きな身体になったら色々面白そうだよ☆
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
霧沢・仁美
何でこの世界に印鑑とかあるんだろう…。
あまりに強さが感じられなくて可哀想にも思えるけど。お宝、少しもらっていくよ。
リリィはサイキックブラストで拘束して、その間に周りの財宝を見て回るね。リリィの様子には常に注意しておいて、拘束を破ったようならまた拘束。攻撃がくるなら一応【オーラ防御】で防ぐよ。
鑑定眼とかは大して無いから、価値は選ぶ基準として重視しないかな。あとあんまり派手すぎるものも避けたいところ。
指輪か腕輪かイヤリングか、そうしたアクセサリーの類があったらそれを持っていきたいな。あんまり派手すぎないやつで。
リリィは…放置でいいんじゃないかな。この城無くなるの勿体無い気がするし…
アリス・ブラッドキャップ
双六の世界で自分の扉に挑戦中、『ふりだしに戻る』。足元に空いた【うさぎの穴の行き着く先は?】。
猟兵達の頭上に開いたうさぎの穴からしゅぽーんと射出されたアリスはすいこまれるようにリリィに向かって飛んでいく。
そして、少年誌のお色気回のようなどうしてそうなった的なエロトラブルでくんずほぐれつ。お互いになんとかしようとあがけばあがくほどに余計に悪化するのはおやくそく。
そして、その状況にヤる気の『おおかみさん』達がハッスルハッスル。
「このぐだぐだ感……テンション下がるわー」
「な、なんですって!?」
リリィの前口上に、げんなりとした表情を浮かべる鬼燈。
「お宝を求めての冒険だし? 最後は盛りあがりが欲しかった!」
「な、なによ、私がボスじゃ盛り上がらないって言うの!?」
怒った様子で地団駄を踏むが、迫力など一切ない。深くため息を漏らす鬼燈。
「ぽんこつかわいい娘がボスじゃ……」
「なっ……」
その言葉にリリィはカッと顔を赤くして。
「ほ、褒めたって何も出ないわよ!」
「すまない……いま求めてるのはそーゆーのじゃないんだ」
深々とため息を漏らすと、瓢箪を取り出す鬼燈。その口をリリィに向ける。
「ま、盛り上がりに欠けるけど、無力化させて貰うですよ」
「? なにそれ……わきゃーっ!?」
水遁術によって、噴水のように噴き出すのは甘い酒。顔面に浴びたリリィが悲鳴を上げる。
「けほっ、けほっ……ちょ、なに……あー……ふわぁ……♪」
そしてすぐにほんわりと酔い始めた。気持ちよさそうにふらふらし始める――その頭上に突如として開く穴。
「きゃあぁぁぁぁ!?」
「にゃあぁぁぁぁ!?」
そこから落ちてきたのは、ピンクと赤のドレスに身を包んだ可愛らしい少女、アリス。
「い、いたた……ここはどこ……? 私は確か双六の世界で『振り出しに戻る』のマスを踏んで――」
どうも、アリスラビリンスのウサギ穴からここに落とされて来たようだ。と言っても本来同じ世界につながっている筈なので――あるいは、無意識にグリモアを発動させたか。
「ええと、あら? 皆さん、ここで何を……ひゃんっ」
「むぎゅー、むぎゅ、むぎゅー……」
そして落ちてきたアリスのスカートの中、顔をお尻で敷き潰されているリリィ。
「ど、どきなさ、いよぉ……」
「あ、ご、ごめんなさ……きゃあっ!?」
慌てて立ち上がろうとするものの、そこで腰が抜けたように座り込んでしまう。刺激を受けたせい――と言うだけではなさそうで。
「はら……なんでしょう、とってもきもちよく……ひゃんっ!?」
「ひゃうぅっ……な、なによこれぇ!?」
リリィとアリスを絡め取るのは、鬼燈の放った酒。酒はそのまま触手になって、2人の身体を絡め取る。
「……巻き込んだのは僕のせいではないっぽい!」
まあ実際、アリスのせいだろう。ユーベルコードと酒精が混じり合い、意図せぬ形で暴発する。
「え? お、おおかみさん!?」
召喚されたのは、彼女の血に取り憑かいたオウガ。完全に酔っているようで、赤い目でギロリとアリスを見つめる。
「ま、待って、そんなに張り切っちゃダメ……な、なんで分身まで出して……ちょ、いやあああっ!??」
触手に絡み付かれながら襲われ悲鳴を上げるアリス。巻き込まれかけたリリィは、這々の体でそこから逃げ出す。
「ま、待って、助けてぇ……ひゃうぅぅっ!?」
「待たないわよっ!?」
全力ですたこらとおおかみさん達から逃げ出し、ぜぇぜぇと息を切らす。汗をかいたせいで酒精も抜けたか、際どく乱れた服を直しながら猟兵達を見据える。
「さあ……仕切り直しよっ!」
ここまでやっておいてキリッとした表情を浮かべられるあたりは、有る種の才能かもしれない。
「という訳で改めて、契約書に……」
「サインが必要なのですね。ふむ、なるほど」
差し出された契約書を受け取ったのは銀花。ペンを受け取ると、すらすらとサインしていく。
「では……き・り・さ・わ・ひ・と・み、と。これでよし」
「待って!? よくないからね!?」
全力で突っ込む仁美だが、銀花は気にしない。
「あとは捺印でしたね……印鑑持ってませんけど」
この世界でも貴族階級などが印章を使う事もあるのだが、無論、冒険者が普段持ち歩くものではない。だがここはリリィも想定していたようで、頷く。
「じゃあ拇印でも良いわ! ここに朱肉が――ひっ!?」
「ふむ。では……ぺたり」
無造作に指先を切り裂いて、血で拇印を押す銀花。それを見て、リリィは痛そうと青褪める。これから戦うつもりなのに。
「と、とにかく、これで契約は完了よ、えいっ……あら? え、えいっ!?」
涙目で手を振るが、当然、デタラメなサインでは魔法弾は発動しない。いやそもそも攻撃にサインが必要な時点でおかしいのだが。
「くぅ、なんでよ……もう1回サインしなさい!」
「ふむ、良いですよー」
先に探索をすませて気になっていた希少な初版本を手に入れてほくほくのミコが、差し出された契約書を手に取った。
「ええ、物分かりが良いわね、それじゃあ……ひっ!?」
「おっとー、うっかりー」
ビリィッ、と力任せに破り捨てた挙げ句、腐食毒で溶かしてしまうミコ。挑発的に笑みを浮かべて――。
「おや? リリィさん、悪気は無かったのですからそんなに怒らな……怒……」
怒るどころか、怪力と毒にぷるぷる震えていた。
「ふーむ、予想以上のポンコツさんですねー」
その有様に、ある意味で感心したように頷くミコ。そこへ飛んでくるのはティエルだ。
「説明もしないでけーやくしょにサインさせようとするなんてダメなんだぞー☆」
「う、うるさいわね。説明!? 説明すればいいの!?」
説明したら誰もサインしてくれないと思うが。しなくてもサインしないけど。
「こ、こうなったら……ええいっ!」
顔を真っ赤にして、魔力針を放っていくリリィ。当たっても大した事はないが、ティエルは素早く羽ばたいてそれを回避する。
「このっ、このっ、当たりなさい、当たりっ……このっ……このっ、ふにゃあっ!?」
「遅いよー……それー!!」
周囲を回る必死にティエルを目で追った結果、目を回して崩れ落ちるリリィ。ティエルはその服の中に、妖精の力で潜り込んだ。
「え、ちょっと、何を……きゃ……きゃはははははっ!?」
「こちょこちょしちゃうぞー☆」
指でさわさわと、リリィの肌を擽り始めるティエル。敏感肌をくすぐられて、リリィは脚をばたばたさせて笑い転げる。
さらにミコもそれを見ると、黒竜の魔力をのばしてリリィの靴を脱がせ――。
「うふふふ、リリィさんには笑顔が似合いそうですねー」
「ひゃ、ひゃは、ひゃははははっ!?」
足の裏を無数の魔力でくすぐり倒す。2人のくすぐりに悲鳴を上げ、ばたばたと暴れるリリィ――と、突然、城がぐらぐらと揺れだした。
「うわぁっ、何!?」
「ひょっとして……」
2人がくすぐりを止めると、その揺れは停止する。どうも笑い死にしかけて城が崩壊しそうになったようだ。
「ぜはー……ぜはー……」
「逆に凄いですねぇ……」
まさかこれで死にそうになるとはと、感心しきりのミコ。そこで思い出したように、調度品だった壺の欠片を取り出す。
「あ、ところでこれ、壊しちゃったんですけど良いですかね?」
「ぜはー……ぜはー……」
良くないのか睨みつけてくるが、だからと言って何も出来ない様子。
「……この子、本当に倒さなきゃいけないのかな……?」
それを見て思わず呟く仁美。
「放置でいいんじゃないかな。この城無くなるの勿体無い気がするし……」
「はひゅー……はひゅー……あ……あまくみないで……わ、わたしもオブリビオンとして使命を……はひゅー……はたすわー……はひゅー」
必死になって立ち上がろうとするリリィを生暖かい目で見つめながら、両掌から手加減した電撃を放つ。
「ぎゃうっ!?」
「……これ、全力で攻撃したら、感電死しそう」
そういうユーベルコードじゃないんだけどなー、と痙攣して倒れ込むリリィを見下ろす仁美。
「はひぃ……こ、この……ゆるしゃない……」
それでもまだ戦意を絶やさないあたり、良い根性はしている。だが、フレミアの鷲獅子にギロリと睨まれると、あっという間に身を縮ませてしまうが。
「そ、そんなに、おどし、たって、むだ……ひぃぃぃんっ、さむいぃっ……」
前脚で手加減気味に踏まれたり、寒風で冷やされたりして、プルプル震えて怯える。
そうしてリリィを拘束している間に、お宝を物色する猟兵達。
「ふむふむ……これはなかなか使えるかも!」
鬼燈が見つけたのは、魔法金属製の鍋。古代帝国で宴のために使われていた、どんな料理でも大量に生み出す魔法の鍋だ。
流石に無限とまではいかないが、使った魔力は自動で補充されるし、それなりの規模の宴でもまず困る事はないだろう。
「おお、すごいっ……でもちょっと恥ずかしいな?」
ティエルが見つけ出したのは、時間制限つきながら、フェアリーを人間並の大きさにする魔法の腕輪。服も一緒に大きくなる……のだが、微妙に拡大率が足りないらしく、少々気になったりして顔を赤くする。
「私は……鑑定眼とかは無いから、この辺りかなぁ」
仁美は純粋に、見た目の気に入った一揃いのイヤリングを手に取る。派手さのない落ち着いた青色の宝石が輝き、可愛らしい。
「価値とかよりも、自分が気にいるかどうかだよね。……って、これ、呪いとかついてないよね?」
役に立つ魔法があるかどうかは重視しないが、流石に着けて困る効果は避けたい。
「大丈夫だと思うわよ。そんなに強力な魔法はかかってないみたいだから」
「本当? 良かった、ありがとう」
フレミアがそのイヤリングを覗き込み、魔眼で魔力を探知して微笑む。胸を撫で下ろして礼を言う仁美に、気にしないでと答えながら、フレミアが選んだのは巨大な宝石。
「おねぇさま、おっきいのー!」
「大きすぎて宝石としてはちょっと悪趣味かしら?」
真っ赤に輝くその石を見て首を傾げる。だが、触れただけでも分かるその強大な魔力は十分に役に立つだろう。
「よし……じゃあ、雪花、任せたわよ?」
「分かったのー!」
主の命令に胸を張って、鷲獅子と共に宝石を運び出していく雪花。
「はひー、はひー……」
鷲獅子が運搬のために立ち去った事で、ようやく解放されたリリィ。槍を支えに立ち上がり――あ、折れた。
「あぅっ……くっ、ま、まだよっ!」
「ふむ……大丈夫ですか? 大丈夫そうですね」
リリィに、再び話しかける銀花。
「ところで、昔、似たような道具で嫌な思いをしたので……こういうの、天空城から落として処分しようと思うんです」
「え、何?」
顔を上げたリリィが見たのは、虫のように足の生えた自律式の拘束具。
リリィの首、手首、二の腕、腹部、太腿、膝、足首、それを全部背面で拘束する。
「や、ま、待って、何これ、いやぁっ!?」
「ふむ。やっぱりこんな凶悪なものは処分すべきですね」
深く頷く銀花。拘束具はそのままリリィを連れて、城の外へと向かおうとする。
「さあ、それでは墜落して――ちょっ!?」
そして、別の同型機に捕まった。
「いや、待って……ちょっと待ち……うぐっ!?」
拒否しようとするが、首を締められ声すら上げられないまま、城の外へと向かう銀花。
その間にリリィの方は脱出してしまったので、完全に拘束され損である。――まあ、墜落しても生きてそうだし良いか。
「うぐ、うぐーー!?」
「は、はぁー……危なかった……」
息を切らして汗を流すリリィ……の、目の前に立つフレミア。
「うふふっ……待ってたわ♪」
「わ……私は待ってないー……ひゃうぅっ!?」
赤い眼が輝くと、リリィの表情がとろりと表情が蕩ける。フェロモンにすっかりやられたその顔を、うっとりと見つめるフレミア。
「ああ、期待通り可愛い……さぁ、いらっしゃい♪」
「ふぁぁぁ……」
ふらふらとよろめきながら、歩み寄って来たリリィ……その身体をぎゅっと抱きしめ、唇を押し付ける。
快楽と、そして強烈な多幸感が、リリィを支配していく。
「……はっ!? ま、待って待ってー!?」
だが、強い呪詛への耐性を持つリリィは、なんとかその魅了から脱し、悲鳴を上げて暴れ、必死になって逃げ出した。
「あら……もう、つれない子ね」
「わ、私は、誇り高き天空城の城主! お、お姉さまの物にはならないわ!」
ぶんぶんと首を振り、必死に指を突きつけるリリィ。
「気持ちよかったけど! 気持ちよ勝ったけど! ううう~~っ!」
目を潤ませ、顔を真っ赤にして全力で逃げ出した。
大成功
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ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘NG
グロNG
WIZ
【オーラ防御】で魔力針を防ぎ
悲愴の剣の【衝撃波】を【早業】で【乱れ撃ち】
彼女の服を引き裂いて全裸にしつつ弱らせ
闇の【属性攻撃・全力魔法】で辺りを真っ暗に。
私は【暗視】で視界良好
『狂愛』で63体に分裂し
夜魔の翼の【空中戦】で飛びかかり
全身に纏わりつき【吸血】しつつ【呪詛】を注入。
1体1体が【怪力・激痛耐性】でしがみ付いて離さない
拘束や呪いを解くのが上手でも
体力も視界も奪われた状態で
それらを同時にされたら……?
更に 快楽責めも追加よ❤
唇、胸、腋、お尻、局部……
体の全部をしゃぶりつつ【生命力吸収】
宝をあげるから赦して?
私は貴女が欲しくて来たのよ。
心の婚姻届に署名・捺印しなさい❤
「はぅぅぅ……」
息を切らして顔を赤らめ、ふらつきながら逃げるリリィ。その前に、満面の笑みを浮かべたルルが立ちはだかる。
「えいっ♪」
「え? ……きゃあああっ!?」
剣を閃かせ、目にも留まらぬ早業でリリィの服をズタズタに引き裂く。さらに闇の魔法で包み込み、その裸身を覆い隠した。
「やー、なにー、くらいー!? さむいー!? こわいー!?」
「ふふ、可愛い……♪」
暗闇の中、ブルブル怯えるリリィ。一方ルルは闇を見通し、無数の小さな分身体に分かたれる。
「さあ……離さないわよ♪」
「っ……ひあああああああっ!? なに、なになになにぃっ!?」
小さな牙がちくりと刺さり、リリィから血と生命力を吸い上げる。さらに呪詛を注入されると、見る間に衰弱するリリィ。
それを良いことにルル達は、さらにリリィの全身へと吸い付いていく。
「やぁ……許してぇ……なにぃ、いやぁ……なんか気持ち悪いぃ!?」
「ん、あら……そんな所までお子様なのね♪」
快楽を感じる筈の身体も未発達なようで、這い回る舌への嫌悪に身を捩って悶える。それを見たルル達は、一旦口を離して考え込み――。
「でも許さない♪ 心の婚姻届に署名・捺印しなさい♪」
「いーやーーー!?」
でも怯える姿も可愛かったので、結局は思う存分貪りついて生命力を吸い上げる。
「怖いよー!?」
闇の中で、無数の何かに吸い付かれながら結婚を迫られるのは、お子様リリィにはとても怖い。と言うか何もなくても、闇の中って時点で泣きそうな子である。
「あら、私とした事がつい……♪」
「いやああ……」
可愛くてやり過ぎたと笑うルルから、リリィは這うように逃げていく。
大成功
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フランチェスカ・ヴァレンタイン
何やら随分とあざといお嬢さんが出てきましたわねー…
よくある”転んだりドジった拍子に何故か攻撃がクリティカル”的なモノではないようですが……さて?
放たれる契約書を順次砲撃で撃ち落とし、空中戦で身を翻しての斧槍の振り下ろしを
リリィが手にした槍で受け止められるとは思います、が――
突き刺しで折れるような槍で慣性やら縦の遠心力が乗った勢いの斧刃を止められますかしら?
懐に降り立ちましたら土手っ腹を蹴り飛ばして距離を開け、UCの騎槍光焔をリリィの周囲360度に半球状に展開
引きつり顔で何やら捲し立てて懇願してくるお相手に向かってにっこりと
「灼き穿つファランクスのフルコースをどうぞ、たぁっぷり――召しあがれ?」
四王天・燦
「遊びに来たぜー」
リリィが息巻くなら「斬り合いがご所望か?」と戦狂の殺気をぶつける
って戦う気はないんだ。
花札やボドゲを出して勝負を挑む。
リリィが玩具を用意しても構わない。
時間を稼いで皆が宝を漁れる、アタシも可愛い女の子と遊べる。何も問題ないさ
ルールとして負ける度に一枚脱ぐ、裸になったら今度は接吻や吸血で生命力吸収して精気を奪い合うことを提示。
「勝てば猟兵の精気を得られるぜ?」
射幸心を煽る甘い誘惑さ
当然早業でイカサマ。
勝ち負けを程々に調整し、終盤で勝ちを拾うぜ。
「あと一息でアタシの精気に手が届くぜ?」
絶命させる前に符術"琥珀の檻"でアタシのものにならないか交渉。
お目当ての宝はリリィそのものだぜ
「はひー、はひー……も、もう容赦しないわ。絶対に許さないんだからー!」
「何やら随分とあざといですわねー」
涙目で服を着直し、地団駄を踏んでこちらを睨みつけるリリィの姿に、思わず呟きを漏らすフランチェスカ。
「ど、どこがっ!? あ、あざとくなんて無いわよ!」
聞き咎めて怒ったように契約書を取り出すリリィ……それが投げ放たれるより先に、フランチェスカの砲撃が消し飛ばす。
「ひぃっ!?」
「……そういう所がですわ?」
心底怯えきった表情を浮かべるリリィに、思い切り斧槍を振り下ろすフランチェスカ。慌てて槍で受け止めようとするが……当然ベキッと折れた。
「はぐっ!?」
「ほら……召し上がれっ!」
衝撃で悶絶する彼女の土手っ腹へ、重い蹴りを叩き込む。綺麗に吹き飛び、床をバウンドするリリィ。
「げふっ、げふっ、ごふっ……」
「さて……」
距離の開いたリリィめがけ、指をぴっ、と突きつける。その瞬間、リリィを取り囲むように出現する無数の光焔。
「灼き穿つファランクスのフルコースを、たっぷりと……」
「げふっ、げふっ……がふっ
……!!」
だがリリィはそもそもそれを見ていない。柔らかなお腹を抑えて蹲り、涙と唾液を零して悶絶しているので、それどころではない。
ファランクスと言うか焔一本だけでも焼き尽くせそうだし、いっそもう一発蹴るだけでも死にそうだ。
「かひゅー、かひゅー……」
「気が抜けますわねー……」
本気を出すのが大人気ないように感じられ、微妙な表情を浮かべるフランチェスカ。その横を、すたすたと燦が歩み寄る。
「遊びにきたぜー」
「あ、遊びですって……! わ、私は誇り高き天空城の城主よ!
なんとか顔を上げたリリィが燦を睨みつけると、燦は表情を引き締めて……その身から殺気をぶつける。
「――斬り合いがご所望か?」
「……」
その本気の殺気を浴び、気絶しかけるリリィ。もう少し当て続けたら心臓麻痺を起こして倒せるかもしれない。
「ああ、いやいや、ウソウソ、戦う気はないんだ」
慌てて殺気を解き、リリィの前にボードゲームを広げる燦。
「負けたら一枚脱ぐ、裸になったら精気を相手に吸わせる……どう?」
「どうしてそんな勝負をしなくちゃいけないの!」
主に裸と言う所に反応して真っ赤になるリリィだが、燦はにこやかに微笑む。
「勝てば猟兵の精気を得られるぜ?」
「むむむ……わ、分かったわ」
このまま戦っても勝てないのは理解しているようで、仕方なく申し出に応じるリリィ。燦は美少女とのゲームを楽しみながら、他の猟兵が宝を持ち出す時間を稼いでいく。
「む、むー!」
(にしても弱い……)
勝負を長引かせるために時々イカサマで勝ちを拾わせても、なお知恵熱を出しそうなリリィ。結局最後に勝った燦は、リリィを押し倒し、精気を吸い上げる。
「ひ、ぅぅぅ……」
「なぁ……あたしの物にならないか?」
目に見えて衰弱していくリリィの耳元で、燦は囁きかける。
「あたしのお目当ての宝は、リリィそのものだぜ」
「う、ぅぅ……」
琥珀の檻にリリィを捕らえようとする燦。もはやリリィは息も絶え絶え、琥珀に身体が吸い込まれ――。
「い、嫌っ……猟兵なんかに、つかまるもんですか……!」
「あっ!?」
だがリリィは残る全ての力を注ぎ込んで、それを拒絶した。
「わ、わたしはほこりたかき、てんくうじょうのあるじ……りょしゅうのはずかしめは、うけにゃい――」
そして、それで力尽きたリリィは、骸の海へと消えていく。城主の消滅によって、天空城は大きく揺れ、崩壊を始めていく。
各々の宝を手に、猟兵達は城から脱出していく。その最中、フランチェスカはちらりと振り向いて、ぽつりと一言呟いた。
「結局、最期まであざとかったですわねー……」
大成功
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