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星罪のサファイヤ

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●星座盤の世界
 迷宮の底に満ちるのは夜の帳が下りたような深い彩。
 黒天鵞絨の色を宿した空間はすぐには端が見えないほど広い。まるで夜空の中にいると錯覚させるほどの静謐さと、澄んだ空気が巡っていた。
 壁には星座の物語を描いたステンドグラス。
 天井から吊り下げられているのは星々の色を宿す天球儀。
 そして、フロアの足元に広がっているのは淡く燦めく金装飾の星座盤。

 森くじら座、月うさぎ座、星の一角獣座。
 砂の銀冠座に六分儀座、海の懐中時計座や炎の番犬座。
 床に広がる星座盤の上、金や銀にひかる線で繋げられた星座の名は聞き覚えがありそうでいて何だか聞いたことのない、不思議なものばかり。
 星が巡るように緩やかに廻る円と線。
 その中で時折、星座盤の上に鏤められた星屑めいた石の欠片がきらきらと光る。
 まるで夜空と星座の上を歩くような心地がした。
 不可思議な空間の中でそっと手を伸ばすと、ふわりと浮く魔力の煌めきが掌に集まってくる。其処に指先を乗せて線を繋げば、宙に自分だけの星座を描くこともできる。
 ――星座盤の夜色迷宮。
 いつしかそう呼ばれはじめた場所にはいつも穏やかな心地が満ちていた。

●罪と罰のアストラ
 或日、星座盤の迷宮にて。
 広い迷宮フロアの中央にはひとりの少女――胸に宝石を宿す人形が立っていた。
 その周囲にはくすくす、カタカタと笑う屑石の宝石人形達。さらに彼女たちの眼の前には膝をついたアルダワ魔法学園の生徒達がいる。
「……おまえ達の罪、たしかに暴いたわ」
 霧状のオーラを纏うミレナリィドールの少女が静かな声を紡ぎ、幾度か瞼を瞬くと長い睫毛が揺れた。生徒には無数の針で串刺しにされた痕や器具による拷問の痕跡があり、胸を押さえて呻いている。彼らに刻まれた身体の傷も要因ではあるが、生徒達は心の重圧に苦しんでいるようでもあった。
「さあ、罪を数えて」
 お前達は罪人なのだと告げるように閻魔の人形は淡々と語る。
 指先を向けた人形の胸に輝く中枢の宝石、サファイヤが周囲の星明かりを反射してきらりと光った。
「真実と向き合って、その重さに潰れてしまえばいい」
 そして、人形達の周りにふわふわと漂う碧玉色のオーラが暗く沈んだ瞬間。罪を暴かれた者達は重圧に耐えきれずに次々と倒れ伏し、その生命は潰えた。
 物言わぬ屍を見下ろした宝石人形達は笑う。
 死と静寂が満ちる星の間にて、星座盤は緩やかに廻り続けていく。

●宝石人形と真実のサファイヤ
「――という災魔絡みの未来が視えたのじゃ」
 グリモア猟兵のひとり、鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)はアルダワ魔法学園の地下にある迷宮内で起こる事件について語りはじめる。
 星座盤の夜色迷宮。
 そう呼ばれるフロアは学生達が迷宮探索の途中で立ち寄る憩いの場所だ。
 だが、其処に宝石人形と呼ばれる災魔が現れた。
「迷宮内はそれはもう美しい星巡りの夜道なのじゃ。しかし、其処を拠点にしようと災魔が現れ、訪れていた生徒達を襲ってのう」
 幸いにして事件が起こる前に生徒達の迷宮探索は止められた。
 しかしこのままでは件の迷宮フロアは宝石人形達に占拠され、美しくも危険な場所になってしまう。その前に現場に赴き、敵を倒して欲しい。
 そう願ったエチカは猟兵達に告げてゆく。
「お主達には宝石人形の尖兵が訪れるまで、そのフロアに居て欲しいのじゃ。奴らが現れるまでは時間があるゆえ、ゆっくりしていてくれて良いぞ」
 星座盤の迷宮と呼ばれる其処は名前の通り、床に様々な星座が記されている。天井の天球儀も美しく、夜色の空間には魔法の星光が浮遊しているので、とても幻想的なひとときを過ごせるだろう。
 そうして時間が来れば屑石の宝石人形が、そして更に刻が経てば首魁であるサファイヤの宝石人形も現れる。
「屑石と呼ばれる者達の力は比較的弱いが、問題はサファイヤの方じゃ」
 サファイヤは対象の罪を映す鏡を持っているという。
 それは強制的に此方の罪を引き出し、物理的・心理的な重圧を与えてくる。
「罪がどんなものであれ、攻撃を受ければ厄介なことになるじゃろう。お主の罪――もしくは真実と向き合う覚悟をしておいた方がいいやもしれぬ」
 エチカは真剣な表情で注意を促した。
 後にそういった戦いが控えているので気は抜けないが、逆に考えればそれまでは敵を気にせずに星座の世界を逍遥できるということ。
 ときには楽しむ時間も必要だとして、エチカはそっと笑みを浮かべた。
「では、転移魔法陣をひらくぞ。暫し星巡りの軌跡を楽しんでくると良いのじゃ!」
 魔力が満ちた星の陣が描かれる。
 迷宮に赴く仲間達を見送った少女は、その健闘と無事を祈った。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『アルダワ魔法学園』
 迷宮内に潜む宝石人形達を倒すことが今回の目的となります。
 此方は星巡りと宝石人形フラグメントのちょっとした合同シナリオです。事件が起きている時刻や日時は別々という扱いなので、ご参加は各シナリオご自由にどうぞ!

●第一章
 冒険『星巡りの夜道』
 夜の色と星座盤が織り成す美しい世界が満ちたフロア。
 舞台は金装飾が美しい、ゆっくりと廻り続ける円形の盤上。様々な星座が記された床。ふわふわと浮かぶ星屑めいた光の中でひとときを過ごせます。
 指先で光を集めると宙に線を引くことが出来ます。自分だけの星座を作ったり、不思議な星座を探したり、星の輝きを眺めてみたりと自由にお過ごしください。

 一章だけのご参加も歓迎致します。
 この章で敵を警戒する必要はありませんので、イベントシナリオ気分で魔法の星々と星座盤の光景をお楽しみください。

●第二章
 集団戦『宝石人形』
 ゆっくりと星巡りの夜道を楽しんだ後、宝石人形がフロアに訪れます。
 胸の宝石は屑石、固体名も無く個性も薄め。フロア内に居る者を囚えようと襲いかかってくるのですべて撃退してください。取り逃す、または戦闘が長引いた場合、三章のボス戦でも戦うことになります。

●第三章
 ボス戦『『宝石人形』真実のサファイヤ』
 大魔王の技術で改修された強化型ミレナリィドール。中枢の宝石はサファイヤで、石言葉は真実。その名の通り真実を暴き、罪人を裁く閻魔の人形。拷問もお手の物。
 皆様が裡に宿している罪を暴く攻撃を行います。
 過去に犯した罪がある場合、プレイングにお書き添えください。
 冷蔵庫のプリンを黙って食べた等でも罪になるので内容は皆様にお任せです。記憶のない方は、もしかすると封じられた奥底の記憶が蘇るかもしれません。
 何も罪が書かれていない場合は言い表せぬ罪悪感に苦しむことになります。

●その他
 戦闘章についてはさくさく進行を目指しております。
 成功ラインに到達した時点でプレイング受付を締め切ることがありますので、ご参加を予定している方はお早めのご参加をお勧め致します。

 お誘い合わせの場合は、お互いのIDや共通のグループ名などを冒頭にお書き添えください。それに加えて、プレイングの送信日時を可能なかぎりで良いので合わせて頂くと迷子防止となります。
 それでは、どうぞ宜しくお願い致します。
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第1章 冒険 『星巡りの夜道』

POW   :    星明かりの導きに誘われて、まっすぐに歩む。

SPD   :    星の瞬きを見落とさぬように、前を見据えて歩む。

WIZ   :    星の位置を確かめて、行く先を定めて歩む。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ハニー・ジンジャー
罪、つみ、ツミ
我らに罪など有りましたろか?
傾ぐも一瞬、星の光に邪気無く笑って

我ら星の名は詳しくないけれど、
おほしさまは、ええよく眺めているのです
星屑は我らについて来てくれますか?
一緒に夜道をお散歩しましょう

おほしさま、こんなに近くにおいでなんて珍しい
いつもはずっと遠くにありますものね
集めた光に唇を寄せ
ひとつくらい、持って帰っても平気でしょうか
なんて、ふふ

我らも星座、つくれますか
我らも何かつくってみたい
けれど思いつきやしなんだから、思いつく儘指を滑らせ
おやま子どもの落書きのよう
歪な光にくすくすと



●星光と罪火の迷宮
 昏く深い夜の最中に落とされたかのような景色の彩。
 周囲は淡く煌めくステンドグラスの壁。
 足元には緩やかに廻る金縁の星座盤。其処に描かれているのは不思議な星座の物語や、聞き憶えのない名前。
 美しく穏やかな迷宮のひとつ。
 此処が今日、重く苦しい断罪の場になるのだという。

 ――罪、つみ、ツミ。
「我らに罪など有りましたろか?」
 星座盤が廻りゆく迷宮を見渡し、ハニー・ジンジャー(どろり・f14738)は軽く首を傾げる。されど、それも一瞬。傍に寄り添うようにふわりと浮かんだ星の光に目を向け、ハニーは淡く笑む。無邪気にも思える微笑みを浮かべながら、ハニーは歩を進めた。
 星の名については詳しくはない。
 名を知らずとも、その光は眺められるから。
 ふわり、ちいさな星のひかりがついてくる。
 星屑の軌跡を瞳に映し、おいでおいでと手招くように指先を伸ばす。
「我らについて来てくれますか?」
 そう問いかければ光は掌の先をくすぐるように揺らめいた。
 一緒に夜道をお散歩しましょう。
 淡い言葉が紡がれ、廻る夜路を星の欠片と共にゆく。
「おほしさま、こんなに近くにおいでなんて珍しい。いつもはずっと――遥かな夜の遠い遠い場所にありますものね」
 集う光を掌に乗せ、ハニーは其処に唇を寄せる。
 仄かに甘い。そんな気がした。
「ひとつくらい、持って帰っても平気でしょうか。なんて、ふふ」
 戯れの言葉をひとつ。
 すると光はハニーの指先に集い、ゆら、ゆらりと尾を引いた。それはまるで星座を描いてくれと云っているのかのよう。
「我らも星座、つくれますか。我らも何かつくってみたい」
 その光に応えるようにハニーは指を宙に翳した。
 けれども何も思いつきやしない。だから、思いつく儘に指を滑らせてゆく。
 描かれたのは六角形のかたち。
 そして、其処に揺らめく蕩けるような線と点。
「おやま子どもの落書きのよう」
 歪な光が宙を游ぐ様にくすくすと笑い、ハニーは琥珀彩の双眸を細めた。
 その星座に与える名前はみつからない。
 それでもきっと――かたちを宿された線は暫し、この迷宮で煌めき続ける。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

サヴァー・リェス
ユーン(f09146)を誘い
アドリブ歓迎

今回の敵と、会わないと、とユーンだけを誘うのは
いつも一緒の小さな少年猫には見せられない私だから
それだけ?…わからない
微笑まれるけれどそっと俯く
「強く、ない…ただ
思い出して、償いたい」
その為に、生きる
でも
その為だけに、生きるのとは
今は、違う
皆と散歩したり
今日は…星屑を、両手で掬って、散らしたり
「……?」
美しいとは、遠くで良く囁かれる
でもこんな近くで
可憐、愛らしい、と
「…ゆ、ユーンは…」
いじわる、とか、ずるい、とか
何故そんな酷いこと、言いたくなるの
きっと、よく分からない熱のせい
瞳外されれば熱も引き
「ユーンも、かわいい」
自然に言葉と笑みが零れる
笑顔、下手なのに


ユーン・オルタンシア
サヴァー(f02271)に誘われ
アドリブ歓迎

彼女が私だけ伴い出掛ける二度目
邂逅を決意した敵の許への伴に選ばれては
頼られていると微か自惚れてしまいそうで
「本当に、あなたは強いのですね」
俯くとわかっていても伝えておきたくて
それでも今はその為だけではないだろうと雰囲気でわかる
遊ぶ様子など幻想的ながら幼い娘
「涙するあなたも素敵ですけれどね
とても、可憐で、愛らしい」
月梟の瞳が真ん丸になり
仄か上気する頬まで
ほら、愛らしい

愛らしいなのか
愛しい、なのか
己の心はまだ霧の向こう
けれどそれは重要でもない
唯この時と場が楽しく
私達の太陽星座や創作星座を描けば彼女が笑う
下手だと思っているのはあなただけですよ、とは秘密です



●猫の星座と君の微笑み
 静けさの中に星の光が浮かぶ光景。
 星座盤めいた円が緩やかに廻る迷宮の中。揺らめく淡い煌めきに手を伸ばしながら、サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)は傍らのユーン・オルタンシア(森の声を聴く・f09146)にそっと目を向けた。
 視線を感じたユーンが首を傾げると、その金の髪が明かに揺れた。
 彼から向けられる紫の瞳と、サヴァーの銀の眸が重なる。
 未だ此処には穏やさが満ちているが、未来視によれば罪を暴かれる場になるという。
 そんな場所だというのに、サヴァーはユーンに伴を願った。
 きっと彼女は邂逅を決意したのだろう。
 其処に自分が選ばれたことにほんの少し自惚れてしまいそうだ。けれどもユーンはその思いを胸の裡に仕舞い込み、サヴァーへと微笑みを向けた。
「本当に、あなたは強いのですね」
「強く、ない……」
 彼の言葉にサヴァーは俯き、首を横に振る。
 断罪を齎す宝石人形。それ会い、罪と向き合わなければならない。そう感じたサヴァーがユーンだけを誘ったのは、いつも一緒の少年猫には見せられない自分だから。
 ――でも、それだけ?
 胸中で自問自答したサヴァーは、わからないと感じてもう一度俯いた。
「ただ、思い出して、償いたい」
 サヴァーが落とした言葉から感じたのは憂いと、もうひとつの読み取れない感情。ユーンはそうっと彼女を覗き込むように視線を合わせる。
 再び重なる眼差し。
 少しだけ顔を上げたサヴァーはちいさな言葉を落とした。
「その為に、生きる。でも――」
 その為だけに、生きるのとは今は、違う。
 続く言葉はなかったがユーンはそれだけで何となく理解した。その為だけではないだろうことは彼女が纏う雰囲気でわかる。
 そして、ユーンは敢えて何も言及することなく道の先を示した。
 其処には先程と変わらぬ星の淡い光と夜色の廻る路が見える。行きましょう、と誘われた声に従い、サヴァーも歩き出した。

「……見て、ユーン」
 壁のステンドグラスが反射する彩と光の下、サヴァーは周りに浮かぶ星屑のひかりを両手で掬ってみせる。さらさらと零れ落ちた光もまた美しく、夜色の世界に散らされた星の欠片はきらりと煌めいた。
 彼女が星と遊ぶ様子は幻想的で、不思議と幼い娘のようにも見える。
「涙するあなたも素敵ですけれどね。とても、可憐で、愛らしい」
「……?」
 彼の言葉にサヴァーは疑問を浮かべた。
 美しい。その言葉は遠くでよく囁かれるものだ。けれど今はこんなに近くで、ユーンが告げてくれる。それだけだというのに特別な言の葉に思えた。
「……ゆ、ユーンは……なんだか、いじわる……」
 名前を呼びながら月梟の瞳を真ん丸にして、仄かに頬を上気させるサヴァー。彼女を見つめるユーンは笑みを深めた。
「ほら、愛らしい」
「ずるい……」
 思わず口をついて出た言葉。何故そんな酷いことを言いたくなるのかはサヴァー自身もよくわからない。きっと、いつのまにか身体を包んでいたこの熱のせいだ。
 頬を両手で押さえるサヴァーを見守りエスコートするように、ユーンはゆっくりと星巡りの世界を歩いていく。
 愛らしいなのか。愛しい、なのか。
 己の心はまだ霧の向こう。
 けれどそれは重要でもないとも思えた。唯この時と場が楽しくて大切だ。
「サヴァー、見てください」
 ユーンは指先を宙に掲げて自分達がよく知る太陽星座を描く。きれい、と彼女から感嘆の声があがったことに気を良くしたユーンは更に創作星座を記していった。
 それは羽のついた杖を持つちいさな猫の星座。
 彼の瞳が星のひかりに向いていると思うと、いつしか熱も引いた。
「ユーンも、かわいい」
 自然に言葉と笑みが零れ、サヴァーはユーンが描いた星座の横に薔薇めいた花の絵を描き加えていく。すると彼も淡く微笑んだ。
 きっと自分のそれはぎこちない笑顔だけれど、彼はこうして一緒に笑ってくれる。
 サヴァーの心の裡にあたたかな感情が宿った。
 自分達だけの星座を見上げる彼女の横顔をそっと見つめたユーンもまた、穏やかな気持ちを覚える。いつだったか、彼女は自分は笑うのが下手だといっていた。
 けれど、下手だと思っているのはサヴァーだけだとユーンは思う。何故なら傍で笑う彼女の表情はこんなにも、星のひかりよりも輝いて見えるのだから。
 宿る思いは秘密にしたまま。
 そうして、ユーンとサヴァーは共に星巡りの夜道をゆく。
 これが束の間の穏やかさであっても、想う儘に。存分に楽しもうと決めて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

…凄いですね、ラナさん
森くじら座とか、俺の世界にある星座とは違うものばかりだけど…
まるで星空を歩いているみたいな感じがして、少し不思議です

夜空の世界でラナさんを見失わないように気をつけながら
見知らぬ星の物語に想いを巡らせる
やっぱり、どこの世界でも星は綺麗だから…
色んな想いとか願いとか、祈りとか、託したくなるんだろうな

ラナさんが繋いだ星…何だろう、うさぎ?かな?
なるほど、確かにうさた(相棒兎)ですね。ラナさん、お上手です
俺は…何を描こうかな
悩んで繋いだ線は少し不格好な魚の形
ラナさんの世界の星座の物語も、いつか教えてほしいです
俺も…その時までにはちゃんと調べておきますから


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

大好きなお星様の中を彷徨えるなんて夢のようで
爪先で金色の煌く星座盤に触れてみて
蒼汰さん、とっても綺麗ですね!

星座の物語って、どの世界でもあるんですね
綺麗なステンドグラスがどこか神秘的で
お星様がどこでも、愛されていることが嬉しいです
ふふ、そうですね
何かを叶えてくれそうな、神秘的な輝きですから

掌を伸ばして、光が集うのを見て微笑んで
お星様に何を描こうかな
空を見上げて軌跡を繋いで
ふふ、何に見えますか?
そうです兎さん…羽の生えたうさたさんです!
蒼汰さんの描いたお魚さんも可愛いですね

じゃあ今度、綺麗なお星様が見える所でご説明しますね
蒼汰さんの世界のお話も、楽しみにしています



●きみの世界と星のいろ
 星明かりの導きに誘われ、光が巡る夜路をゆく。
 不思議な星座の物語を図柄と色とりどりの彩で描いたステンドグラス。其処から反射する仄かな光が迷宮に浮かぶ星に淡い色を宿している。
 大好きなお星様。その中をこうして彷徨えることは何だか夢のよう。
 ラナ・スピラエア(苺色の魔法・f06644)は爪先で金色の煌く星座盤に触れながら、隣を歩く月居・蒼汰(泡沫メランコリー・f16730)を見上げた。
「蒼汰さん、とっても綺麗ですね!」
 同じように星座盤に描かれた図を見つめていた蒼汰と、ラナの眼差しが重なる。
「……凄いですね、ラナさん」
 穏やかに笑む蒼汰の金眸が緩められ、ラナも苺色の双眸を細めた。そしてラナは、見てください、と爪先の少し向こうにある星座の名を示す。
 森くじら座、と書かれた文字。
 その横には点と線で繋がれた、おおきな魚のような図柄が描かれていた。金の装飾絵図は周囲の光を映して薄く煌めいている。
「星座の物語って、どの世界でもあるんですね」
「俺の世界にある星座とは違うものばかりだけど……そうですね、まるで星空を歩いているみたいな感じがして、少し不思議です」
 ラナが足元の星図を見つめる様に倣い、蒼汰も床の星座盤模様を眺めていく。
 少し視線を横に向けるとステンドグラスに鯨が描かれていた。緑豊かな森に座すようにして鯨が星の飛沫をあげている幻想的な風景だ。
 其処にはどんな物語が秘められているのか。まるで本の頁を捲るような気分で、ラナは星巡りの路を歩いていく。
 そして、二人は見知らぬ星の物語を想う。
 昏い夜空の世界で彼女を見失わないよう気をつけながら蒼汰もゆるりと進んだ。
 ふとしたとき、ラナは立ち止まって振り返る。
「ふふ、蒼汰さん」
「ラナさん?」
 再び名前を呼ばれ、どうかしたのかと軽く首を傾げた蒼汰に対し、ラナは行く先に記されていたあらたな星座の名前を見て欲しいのだと示した。
 苺と兎座。
 そのように書かれた星座が其処にあった。まるで自分達みたいだとくすりと口許を緩めたラナの横顔が、ちいさな星のひかりに照らされていた。
「お星様がどこでも、愛されていることが嬉しいです」
「やっぱり、どこの世界でも星は綺麗だから……色んな想いとか願いとか、祈りとか、託したくなるんだろうな」
「そうですね。何かを叶えてくれそうな、神秘的な輝きですから」
 ラナが笑うと、蒼汰も同じように微笑む。
 そうしてラナは掌を伸ばし、指先に光が集う様を眺めた。まるで新しい星を描いて欲しいと告げるかのように光が明滅する。
 何を描こうかと少し考え、ラナは空を見上げて軌跡を繋いでいく。
 その光景を見守る蒼汰に向けてラナが投げかけたのはちょっとした謎掛け。
「ふふ、何に見えますか?」
「……何だろう、さっきの星座と似ているけど……うさぎ? かな?」
「そうです兎さん。羽の生えたうさたさんです!」
 先程の星座から着想を得た図ではあるが、ラナが描いたのは特別な仔。蒼汰が花と獣の街で出逢った、白い翼を持つ灰色の相棒うさぎだ。
「なるほど、確かにうさたですね。ラナさん、お上手です。俺は……何を描こうかな」
 ラナの繋いだ星の横へ蒼汰が指先を掲げる。
 暫し悩んでから描きはじめた点と線は少し不格好な魚のかたち。ラナは微笑ましげに口許を押さえ、可愛くも感じられる星の魚を振り仰いだ。
 羽うさぎの傍に寄り添う星色の魚。ふたつの星座がふわふわと浮かぶ景色を見つめながら、蒼汰は彼女の世界に思いを馳せた。
「ラナさんの世界の星座の物語も、いつか教えてほしいです」
「じゃあ今度、綺麗なお星様が見える所でご説明しますね」
 視線を下ろしたラナと蒼汰の視線が再び、そっと重なった。互いの瞳に映っているのは星彩の煌めきと快い感情。
「俺も……その時までにはちゃんと調べておきますから」
「蒼汰さんの世界のお話も、楽しみにしています」
 いつか、本物の星が瞬く夜に――。
 ささやかだけれど確かな約束が此処で交わされ、星々と共に巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
わぁわぁ!とっても綺麗!
お星様きらっきらで素敵だな!
星空の上にいるみたいっ!
くるくると回って星空を眺める

わぁ、あの星座はなんて言うんだろう?
わ、この星座まるでうさぎさんみたい!可愛いな!
あ、足元に星座の名前が書いてある!
……月うさぎ座って言うのかな?

こんなに沢山の星座があるなんて凄いなっ!
星座って確かひとつひとつに物語があるんだよね?
どんなお話しがあるんだろうなぁ

星空に手を伸ばして
俺も星座を作ってみようかな?
えーと、おっきい丸の中に星と涙を1つずつ
こんな感じかな?

あはは、でーきたっ!名付けてピエロ座!
……ただのボールに見えるかなぁ?

えへへ、本当にそんな星座があると良いなっ!そうだ、探してみよ!



●星とピエロと夜路探索
 深い夜の色が巡る迷宮内。
 周囲にはふわりと舞う星彩の光。足元には金の縁が巡る星座盤の床。
「わぁわぁ! とっても綺麗! お星様きらっきらで素敵だな!」
 クラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)は両手を広げ、まるで星空の上にいるみたいだと感じながらくるくると回る。
 眺める星模様。
 それは描かれた星座が紡ぐちいさな世界。
「わぁ、あの星座は……イルカ? わ、この星座まるでうさぎさんみたい!」
 きらきらと光る線を目で追うクラウンは様々なものに目を向ける。イルカを見た次はうさぎ。目を凝らせば其処には名前が記載されていた。
「あ、足元に星座の名前が書いてある! ……月うさぎ座って言うのかな?」
 光の線はまるで月に向かって駆けていく姿のよう。
 もうひとつの方は硝子のイルカ座というらしく、不思議な雰囲気に満ちている。クラウンは足元でゆっくりと廻っていく星座盤の仕掛けを暫し眺めた。
「こんなに沢山の星座があるなんて凄いなっ!」
 星座には確か物語がある。
 きっと此処に宿っている数々の星座にも纏わる話があるのかもしれない。
 どんなお話があるんだろうと想像を巡らせたクラウンは明るい笑みを浮かべた。この中にはきっと、前に訪れた誰かが創っていった星座もある。
 それならば自分だって好きなお話を描いて行けば良いはず。
 クラウンは宙に手を伸ばす。
 すると其処にふわふわと浮いていた星光が集まってきた。
「えーと、こうやって描けばいいのかな?」
 指先に集った光を滑らせれば、それは線となって空中に伸びてゆく。
 まずは大きな丸。
 その中に星と涙をひとつずつ。こんな感じかな、と少し離れて図柄を確かめたクラウンは満足げに頷いた。
「あはは、でーきたっ! 名付けてピエロ座!」
 自分のペイントと同じように描いてみたのでこれは紛れもないピエロだ。
 けれども、と軽く首を傾げたクラウンは思う。
「……ただのボールに見えるかなぁ?」
 目と口をつけようか。それともこのままにしておこうか。
 星の点と線を見つめた後、クラウンは周囲を見渡す。見れば夜路の奥にはまだ見ていない星座の軌跡があった。
「えへへ、本当にそんな星座があると良いなっ! そうだ、探してみよ!」
 思い立ったならすぐ動くのが良い。
 煌めく床を蹴りあげて、クラウンは星巡りの世界へ駆け出した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
人差し指を立てれば集まる光
いつもは武器を操る指先に灯る光に目を細め新たな物語を紡ぐ
何かを描くことに苦手意識があったのは幼き日の話
今はもう、気にすることはないと知った

まずは大好きな子らを丁寧に描く
寄り添うように眠るねこ2匹
愛猫のヒナタとヒメだ

暫く盤上を歩き変わった星座を楽しみながら
ふと描いてみようと思い立ったのは
最近出会った友人たちを連想させるもの

繋いだ四角の中の一等星は賽の目の壱
あの人も猫が好きと言っていたから隣に猫も添えよう

次は丸を描く
あ。ちょっと歪になった
まあいーだろ
あいつが何と言おうとこれはたこ焼きなので異論は認めない

さて次は何を描こうか
ちょっぴり休憩と胡座をかいて宙を仰いだ

アドリブ歓迎



●星を描く刻
 夜の彩に星が滲む。
 廻る星の位置を確かめて進めば、宙に浮かぶ光に出逢った。
 立てた人差し指。其処に集った光を滑らせていけば煌めく線が宙に躍っていく。
 いつもは武器を操る指先に灯る色。その淡い光に目を細め、浮世・綾華(千日紅・f01194)は幼き日を思う。
 何かを描くことに苦手意識があったのは過去の話。
 今はもう、気にすることはないと知った。だから今はこうして迷わずに指先で点と線を繋ぐことができる。
 そうして綾華が先ず描くのは大好きな子達。
 丁寧に、描き心地を慥かめるように指先を操って記していくのは寄り添う猫。
 眠り姿の二匹は愛猫のヒナタとヒメ。
 白く尾を引く星色の灯。繋げた線で描かれた二匹はそのまま宙にふわりと浮かぶ。それは何だか心地よさそうな光景にも見えた。
 もし他の誰かがこれを見れば眠り猫座とでも評するだろうか。
 綾華は薄く笑み、ゆっくりおやすみ、と猫達に告げた後に歩き出す。暫く盤上を行く彼は目についた星座を眺めていった。
 虹のアリア座、跳ねるモーラット座、呪いの首飾り座。
 どれも一癖ありそうな星座ばかりで不思議だ。そんな中、綾華はふと新たな線を描いてみようと思い立った。
 それは最近出会った友人たちを連想させるもの。
「さて、と」
 繋いだ四角の中の一等星は賽の目の壱。
 そういえば彼も猫が好きだと言っていたので隣に猫も添える。
 それから次に描くのは丸。
「あ。ちょっと歪になったケド、まあいーだろ」
 あいつが何と言おうとこれはたこ焼きだ。
 ついでにクレープも描き足しておけばもし見られても異論も出ないはずだ。四角と丸と三角。宙で煌きはじめた点と繋がる線を見上げた綾華は、よし、と頷いた。
 気付けば先程描いたヒナタとヒメの図柄が宙にふわふわと漂ってきている。きっと偶然だろうが、自分についてきたのかもしれないと思うと微笑ましく思えた。
 綾華はその場に腰を下ろす。
 大好きな猫達に賽とたこ焼き。自ら指先で描いた光は何だか目映く見えた。
 この光景はまるで、そう――幼い頃には想像すら出来なかった世界が描かれ、広がっていく様を表しているかのようだ。
 さあ、次は何を描こうか。
 胡座をかいて宙を仰げば、星巡りの世界に宿る光が淡く瞬いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

彼者誰・晶硝子
まあ、まあ、なんてきれい
きらきらの星たちは、夜空の星々のようで、すこし違う
幻想的で、星物語の世界のよう
星座は、最近図書館に通うようになって、星の本も読むけれど、知らないものばかり
それが、余計に別世界みたいで、ふわふわ、夢見心地
きっと、ここの星座の子たちが姿を持っても、かわいいんだろう、な

きらきらの空間を眺めていたら、そうだわと思いついて
星を映す宝石の指先に光を集めてみる
周りの子たちを参考にして、描いてみた星座は鳥の形
本物の空では無いけれど、きっと飛び回れたら楽しいわ
名前は……夜を目指す鳥座、とか?

この場所に、宝石人形と言われる子たちが居たら美しいのでしょう
けれど、憩いの場所は、守らなきゃ、ね



●夜を目指す光
「――まあ、まあ、なんてきれい」
 迷宮内に広がる夜路。
 そして、星が巡り光が廻る光景。
 彼者誰・晶硝子(空孕む祝福・f02368)は裡に浮かんだ思いを言葉に変え、星座盤の夜色迷宮へと一歩を踏み出した。
 きらきらの星たちは、夜空の星々のようで、すこし違う。
 幻想的な景色は星物語の世界の一頁であるかのようで気持ちも綻ぶ。
「あれは……森くじら座?」
 通りかかったところに描かれていた星座のひとつに眸を向けた晶硝子は、その図柄に手を伸ばして指でなぞってみる。
 近頃に通うようになった図書館を思い出し、口許が淡く緩んだ。
 星の本も読むけれど、星座は知らないものばかり。それも世界が違うとなると星に込められた物語も意味も随分と違ってくるはず。
 そのことが余計に、此処を別世界のように思わせてくれる。
「ふわふわ、夢見心地ね」
 歩を向ける先は知らない路。
 一歩、進む度に未知の光が出迎えてくれるようで心も弾んだ。
 綿雲座、百合の花、青海波座。聞いたことのある、それでいて星座としては初めて聞く名前。点と線。ただそれだけの図柄でも、光を纏った星彩は様々なものに見えてくる。
「きっと、ここの星座の子たちが姿を持っても、かわいいんだろう、な」
 近くに見えた、もこふわ羊座。
 その光やきらきらの空間を眺めていた晶硝子はふと思い立つ。
 そうだわ、と光の集まる場所に向かった彼女は良いことを考えたと小さく頷いた。
 そして、晶硝子は星を映す宝石の指先を空中に伸ばす。すると其処に淡く明滅する光が集まりはじめた。
 見様見真似で、周囲の人達がやっていたことを晶硝子も行う。
 宙に指先を滑らせれば光が尾を引いていった。慎重に、けれども自由に。描いてみた星座は鳥のかたちをした図。
 此処に廻るのは本物の空ではない。けれど、きっと飛び回れたら楽しいはず。
 描かれた烏は穏やかに浮いている。その揺らぎが翼をはためかせているようにも思え、晶硝子は微笑む。
「名前は……夜を目指す鳥座、とか?」
 晶硝子がその光に名を与えると、あらたな星座は浮上しはじめた。
 天井の天球儀――まるで月にも見えるそれを目指すように、ゆっくりと。
 その姿を見送る晶硝子はいずれ此処に訪れるという宝石人形を思う。星と宝石のひかりが重なればきっと美しい。けれど――。
「憩いの場所は、守らなきゃ、ね」
 この先に巡るものを思い、晶硝子は決意を言の葉に変えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラリア・レリクストゥラ
真実……難しい物と、向きあわされそうですね。

【POW】

まあ、きらきら輝く道のり…幻想的です。これも錬金術、と言う事なのでしょうか。
…あら?光は触る事ができるんですね?服に…(つまもうとして透過される指)

服、に……(進もうとする度に光が服について、体に電飾を巻き付けているみたいに)

…とても綺麗な服になりましたけれど。
これは私、あんまり動くとお日様みたいな事になって、誰からも目を背けられてしまいません…?
ひ、光を採り放題ですよー!どなたかー!



●等軸晶と一等星
 星明かりの導きに誘われ、星座の世界をゆく。
 紅いスピネルの身体は星の煌きを反射して淡い色を迷宮に落とした。
「真実……難しい物と、向きあわされそうですね」
 ミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)は星巡りの景色を鏡面めいた瞳に映しながら、一歩ずつ先に進んでいく。
 罪と真実。
 そして、罰。
 今宵、此処に巡ると予知されているものにミラリアは思いを馳せる。
 されど今は束の間であっても穏やかなひととき。
 ミラリアは頭上に双眸を向け、宙にふわりと浮かぶ星のひかりを見上げる。其処から視線を落とせば、行く先に輝く道のりが見えた。
「まあ、きらきら輝いて……とても幻想的です」
 これも錬金術ということなのか。それとも魔力や蒸気機関を用いた何かで創り出されているのだろうか。
 アルダワ魔法学園の地下に広がる迷宮は謎が多い。
 不思議だと感じながらミラリアは思うままに歩を進めていった。
「……あら?」
 そんな中、紅い指先と服の一部に星色の光が触れ、くっつくような感触があった。
「光は触る事ができるんですね? 服に……」
 それをつまもうとしたミラリアだが、指がすぅっと透過されてしまう。擦り抜けてしまったけれどもくっつき続ける光は不可思議だ。
「服、に……」
 動けば離れるかとも思ったが、ミラリアの思いとは裏腹に進もうとする度に光が服についていってしまう。まるで体に電飾を巻き付けているみたいだと感じたときにはもう、ミラリアはぴかぴかと光り輝いていた。
「……とても綺麗な服になりましたけれど」
 腰元も、服の裾にも、そして指先や腕にも光、ひかり、ヒカリ。
 更に尖晶の身体も星明かりを反射するものだから彼女の周りは他よりも眩しい。
「これは私、あんまり動くとお日様みたいな事になって、誰からも目を背けられてしまいません……?」
 はたとした時にはその言葉通りになってしまっていた。
 せっかくの昏い夜道の迷宮なのにこれは困ったもの。ミラリアはぱたぱたと両腕を振り、周囲の誰かに助けを求めた。
「ひ、光を採り放題ですよー! どなたかー!」
 しかしやっぱりミラリアの周りはとても眩しいままで――。
 暫し後、彼女が宿す星光が離れていくまで、周辺はきらきらしっぱなしだったとか。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリト・オリジシン
夜空へと浮かぶ星を結び、そこにはない物語を夢見る
それはどこの世界も同じなのかもしれぬな

輝く星々、星座盤にと描かれ、他の猟兵達に描かれるとする星座
それらを眺め、見守る視線も和やかにとひと時を過ごそう

それにしても、人の想像力とはかくも面白きものよ
如何にして点と線の結びつきから人や動物の姿を思い描けるのやら

ついと指先をあげ、集った光で真似るように線を1つ2つ描いてみて
だが、やはりそこから絵図を見いだせず小首を傾げ

ふむ。やはり難しいものだな

指先の光を散らし、苦笑を1つ
ならば、せめて目の前に広がる光景をこそ楽しむとしよう
嵐の前の静けさであることは重々承知しているが、この平穏が少しでも続くように祈りながら



●星と罪咎と光の徴
 夜空へと浮かぶ星を結び、そこにはない物語を夢見る。
 それはどこの世界も同じなのかもしれない。
 星の軌跡が廻る夜色の迷宮内。リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)は、尾を引きながら宙を舞う光を振り仰いだ。
 天上の月のように淡い光を放つ天球儀。
 輝く星々。そして、星座盤が廻る綺羅びやかなフロア。
 リリトは暫し此処を逍遥することを決め、ゆっくりと歩を進めていく。周りを見渡すと他の猟兵達が描いたらしき星座が浮遊していた。
 それらを眺め、見守るリリトの眼差しは穏やかだ。
 きっと、ひとつひとつに其々の想いが込められているのだろう。和やかに過ぎていくひと時と、此処に宿されたあらたな光にリリトは双眸を細めた。
「それにしても、人の想像力とはかくも面白きものよ」
 ふと、足元の星座盤の一部を見下ろしたリリトは感心するような声を落とす。
 点と線の結びつき。
 其処から如何にして人や動物の姿を思い描けるのかと思うと興味深い。
 リリトはついと指先をあげ、其処に光を集わせる。
「ふむ、こうか?」
 ふわりと光るそれを、周囲の人々の動きを真似るように滑らせていく。線をひとつ、ふたつと描いてみたリリトだが、その際に首を傾げた。
 空中に記されたのは簡易な線の集まり。
 だが、やはりそこから絵図を見いだすことは出来ない。
「やはり難しいものだな」
 指先の光を散らして線を消し、リリトは苦笑を浮かべた。されど目の前でふわふわと浮いているひとつの光が綺麗だということは分かる。
 星明かりの導きに誘われるようにしてリリトは更に奥へと進んでいった。見れば頭上の天球儀を目指すようにして浮かぶ星座がある。
 あれもまた、誰かが思いを乗せて描いた星の徴なのだろう。
 光と線の繋がりには何も見えずとも、己が視る世界は変わらない。
 ならば、せめて目の前に広がる光景を楽しもう。
 迷宮内に満ちるこの空気が嵐の前の静けさであることは重々承知している。
 それでも、この平穏が少しでも続くように――。
 言葉にはしない思いを抱くリリトは星に祈りながら瞳を閉じた。
 瞼の裏で揺らぐ星の残光。
 そのひかりは淡く、不思議と心地よいものに思えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
星空の中に居るようだ
――なんて、僕にしては叙情的過ぎるかな

指先で光を集めれば、思い思いの星を描けるのだろう?
ならば僕が描くものは、ひとつしかない

――嗚呼、綺麗だ
お前が彼女と共に描いたその星座を、僕は、識っている
……と、いうよりも、お前が押し付けてきたものだったね

よぉく見ておくと良い
お前が生きた証が、此処に在るのだから

じっと夜空を見上げる八重の色を見つめて
夜が混じった其が滲むのを、他人事の様に見送る

揺れる灰尾はいつしかその勢いを失い
ぺっとりと床に座す其に、手を伸ばそうか

感傷に浸るのは悪く無い
それを求めたのは、僕だからね

けれど、いつまでもそうはしていられない
これから働いて貰うからそのつもりでいてよ



●常世の宵に
 淡く燦めく星巡りの世界。
 此処に立っていると、まるで星空の中に居るようだ。
 ――なんて、自分にしては叙情的過ぎるだろうか。
 旭・まどか(MementoMori・f18469)は迷宮内の景色を一瞥してから歩を進める。
 周囲に浮かぶちいさな光。点と線で繋がれた図柄がふわふわと漂う空間で、まどかは指先を伸ばした。
 光を集めれば、思い思いの星を描ける。
 それならば自分が描くものは、ひとつしかない。
 まどかは指先を宙にすべらせて思い描いた星の軌跡を記していく。
「嗚呼、綺麗だ」
 思わず零れ落ちたまどかの言の葉を傍に寄り添うよう歩く灰狼が聞いていた。
 揺れる尾。
 其処に滲む感情がどうであるかは、見てすぐに分かる。
「お前が彼女と共に描いたその星座を、僕は、識っている。……と、いうよりも、お前が押し付けてきたものだったね」
 足元に目を向けたまどかは、ほら、と自分が空中に繋いだ光を示してみせた。
「よぉく見ておくと良い。お前が生きた証が、此処に在るのだから」
 じっと夜空を見上げる八重の色。
 それを見つめて、夜が混じった其が滲むのを他人事の様に見送る。
 いつしか揺れる灰尾は勢いを失い、その身体は床に座した。穏やかに頭上を眺める灰狼に手を伸ばし、まどか自身も腰を下ろした。
 星と光の軌跡。
 静謐な空気の中で、夜彩が廻っていく。
 灰狼の背に添えた掌は仄かな温もりを感じ取っている。けれども互いに交わす言葉など持ち合わせていない。思う儘に視線を巡らせて、昏く深い夜と感傷に浸る。
「こんな時間も悪くはないな」
 ――それを求めたのは、僕だから。
 まどかは胸中で独り言ち、星の瞬きを見落とさぬよう天蓋を振り仰いだ。
 暫し、緩やかに廻る金縁の星座盤の上で静かなひとときを過ごす。星を描いて、その軌跡を眺めはじめてから幾許か。まどかは立ち上がり、おいで、と灰狼を呼ぶ。
 赦されるなら此処でもう少し過ごしても良かった。けれども、いつまでもそうはしていられないことは分かっている。
「これから働いて貰うからそのつもりでいてよ」
 呼び掛けたまどかの声を聞いた灰狼も静かに凛と立ちあがる。
 そうして歩き出した彼らの背を見送るように、ちいさな星のひかりが瞬いた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・ペンドリーノ
妹の通う学校としては認識してたけど、自分で来る機会はなかなか無かったのよね
地下迷宮って本当に広いのね……

煌めくとりどりの宝石が作る星空
私の知っている星座とは違う星座
いつまで眺めていても飽きなくて、ついつい見入ってしまいそう……
趣味の写真を撮っても良いかしら

指裂きに集めた光では、自分だけの星座を描けるのね
ええと……せっかくだし、何か描いてみましょうか

……そうね、「魔女と箒座」なんてどうかしらっ
綺麗に描けたら、写真に撮っていきましょう
夢みたいな景色の写真をお土産に、この感動を少しでも伝えられるように

……魔女の隣に、私と妹と模した、二つの明るい星を描いてみるのは
ちょっぴり欲張りかしら



●繋げる星のひかり
 蒸気機械と魔法で創造した究極の地下迷宮。
 そして、その上に建設されたアルダワ魔法学園。
「地下迷宮って本当に広いのね……」
 ステラ・ペンドリーノ(きみと見つける流れ星・f00791)は自分が今いる世界に思いを馳せ、周囲の様子を見渡してみる。
 妹の通う学校としては認識していたが自分で訪れる機会はなかなかない。それゆえにこんなフロアがあるというのも物珍しく、つい気になってしまう。
 夜路のような静謐な空気。
 煌めく色とりどりの光が作る星空めいた場所。
 自分が知っているものとは違う名や物語が描かれた星座盤。
 それらはいつまで眺めていても飽きず、ついつい見入ってしまう。
「綺麗……」
 うっとりと見惚れてしまいながらもステラは光景をしっかりとファインダーに収めていく。写真が趣味であることもそうだが、帰ったら大切なあの子達に見せたい。そう思うと写真撮影にも熱が入る。
 そして、星巡りの景色を存分に撮った後、ステラは指先を宙に伸ばしてみる。
 すると其処に光が集い始めた。
「ええと……せっかくだし、何か描いてみましょうか」
 星座を描けると聞いていたゆえ、ステラには少し考えていたことがあった。
 淡く笑んだステラはゆっくりと点と線を繋げて想う光を描く。
 そして、その図柄は――。
「出来た。……そうね、『魔女と箒座』なんてどうかしらっ」
 その星座は周囲にふわりと浮いたまま、夜空色の世界に揺らめく。不思議と愛しくも感じられるそれはステラ達だけの星。
 綺麗に描けたと感じたステラはカメラを構え、光を写真に撮っていく。
 夢みたいな景色の写真をお土産に、この感動を少しでも伝えられるように。
 そうして暫し星座を眺めたステラは指先をふたたび宙に掲げた。ふわりと浮かぶ魔女の星座の隣、描き加えていくのはふたつの明るい星。
 星光に昴宿。そして、三つの光を慥かな線で結んでひとつに纏める。
「……ちょっぴり欲張りかしら」
 けれども、きっと――これが紛れもない私達のかたちだから、これで良い。
 ステラは並ぶ星々と自分達を重ね合わせ、倖せそうな微笑みを湛えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

火神・五劫
マリス(f03202)と

「ほう?良かったら聴かせてくれないか」

マリスの指し示す先を追いながら
彼女の語りに聞き入る

天文に関する知識が興味深いのも勿論だが
友が己のことを明かしてくれるというのは
信頼を感じて嬉しいからな

「なるほど。月の満ち欠けの影響と原理は同じだろうか」

…ん、ということは
力の具合に波があるというならば
高くなる時期もあれば、低くもなるわけで

「…よりにもよって、今か」

悪い予感はぴたりと的中
思わず溜息が出てしまうが

「俺がお前を守るから、お前は俺の背を守ってくれ」

青い瞳の奥、宿った星の輝きを
見過ごすことなどできるはずもない

しかし、どうにもマリスには振り回されがちなような
…俺の気のせいだろうか


マリス・ステラ
五劫(f14941)と参加

「私と星には縁があるのです、五劫」

私の守護星ミラは、クジラ座にある恒星
または変光星と呼ばれ、その明るさが変わる星なのです

星座盤を指して語り始める

天文学で等級とは、天体の明るさを表す尺度です
ミラは極大時には2等級
これは有名なポラリス──現在の北極星と同等
そっと自身の掌の弱々しい光を見つめ、

「その時は私の力も最大限に高まることになります」

しかし、逆に光度が低下すると、10等級まで明るさが弱くなる

その周期はおよそ332日、約一年です
五劫、あなたに言っておくことがあります

「今の私は、最も力が弱まっている時期なのです」

強さで言えば群れて現れるオブリビオン一体すら手に余るでしょう



●等級と星の守護
「――私と星には縁があるのです、五劫」
 星座盤の夜色迷宮にて、マリス・ステラ(星を宿す者・f03202)は傍らを歩く火神・五劫(送り火・f14941)の名を呼んだ。
 星の灯が巡るこの場で、彼女の口から語られようとしている縁の話に興味を懐き、五劫は軽く首を傾げてみせる。
「ほう? 良かったら聴かせてくれないか」
 静かに頷いたマリスは指先を少し前に差し向け、花唇をひらく。
「私の守護星ミラは、クジラ座にある恒星――」
 または変光星。
 そう呼ばれ、その明るさが変わる星だと彼女は話してゆく。星座盤を指すマリスが示す先を目で追いながら五劫はその声に耳を傾けた。
 天文学において等級とは、天体の明るさを表す尺度だ。
 ミラは極大時には二等級。これは有名なポラリス――つまり現在の北極星と同等。
 マリスは彼にも分かりやすいように有名な星の名をあげる。頷く五劫は、それが確か船乗りの目印とされていた星だと思い出した。
 語られていく天文に関する知識が興味深いのも勿論だが、友が今、己のことを明かそうとしてくれている。そう思うと自分が信頼されているのだと感じられた。
 抱いた嬉しさは胸に秘めたまま、五劫はマリスに目を向ける。マリスはそのとき、そっと自身の掌の弱々しい光を見つめていた。
「ミラは極大時、その時は私の力も最大限に高まることになります」
「なるほど。月の満ち欠けの影響と原理は同じだろうか」
「……はい、そうです」
 彼の言う通り月に喩えるのが分かりやすいだろう。
 逆に光度が低下すると、十等級まで明るさが弱くなっていく。
 その周期はおよそ三百三十二日、約一年となる。なるほど、と五劫が納得する中、マリスは静かに瞳を伏せた。
 だが、ということは――。あることに気付いた五劫は頬を掻く。
「力の具合に波があるというならば、高くなる時期もあれば、低くもなるわけで」
 ええ、と答えたマリスは顔をあげた。
「五劫、あなたに言っておくことがあります」
 悪い予感がする。
 それに此処までの前置きから次に続く言葉が予想できぬ五劫ではなかった。だが、彼女本人からの言葉を待つことにする。
 一拍置いて、マリスは告げた。
「今の私は、最も力が弱まっている時期なのです」
「……よりにもよって、今か」
 予感はぴたりと的中。思わず溜息が出てしまうが、五劫はすぐに首を横に振った。
「強さで言えば群れて現れるオブリビオン一体すら手に余るでしょう」
 マリスは冷静に、今の自分が置かれた状況を伝える。
 その言葉に頷きを返した五劫は彼女の瞳を見つめた。自分を見上げる青い瞳の奥、宿った星の輝き。それを見過ごすことなどできるはずがなかった。
 五劫はマリスに静かな眼差しを向け返し、心配はするなと告げていく。
「俺がお前を守るから、お前は俺の背を守ってくれ」
「――はい」
 しかと答えたマリスは確かな信頼を向けてくれていた。そうして二人は敵が現れるまでの暫しの間、星巡りの夜道を歩くことを決める。
 星座の物語が描かれたステンドグラス。
 天蓋を彩る星々の色を宿す天球儀に、足元に広がっている金装飾の星座盤。それらを眺めるマリスの横顔はいつもと変わりないようにも思えた。
 それでも、彼女はああして自らの力について告白してくれた。五劫は己の力が試されているときだと感じながらも、ふと思う。
(しかし、どうにもマリスには振り回されがちなような……俺の気のせいだろうか)
 だが、まぁいい。
 星の守護者として在れるならば僥倖だ。
 そう考えることにした五劫は先を歩いていくマリスを追い、歩を進めた。
 巡る、廻る、星と罪。
 この先に訪れる宝石と星が匝るひとときは、一体どのような戦いになっていくのか。それはまだ、誰も知らない――。
  

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
ども!エイリアンツアーズでっす☆
(場に合わせて声は抑えめ)

やって参りました、今ウワサの星座盤フロア。
地下にこんな風な
星に纏わる世界が在るなんてロマンチックだなぁ…!
今回の騒動がひと段落したら
是非ツアーの目玉として紹介したいなって。

足音を発てず
しかし軽快なステップで夜色の迷宮を往こう。
掌を開いて煌きに触れたら
五本指を引っ張るようにして五線譜を。
そこに触手でぽんぽんと音符を置いて行こう。
…でーきたっ♪名付けて、譜面座~☆

オレの住まいは、戦乱の後の…星渡りの世界。
別ベクトルのロマンもあるけれど…
ココで見上げる星空ほど澄んではないかもね。

浮かべた譜面は
投獄時に創ったプレリュード。

※絡み&アドリブ歓迎!



●星とフォアシュピール
「ども! エイリアンツアーズでっす☆」
 ついにやって参りました、今ウワサの星座盤フロア。
 今宵は星巡りの夜路とも呼ばれる迷宮をご紹介。――なんてね、と笑み、場に合わせて声を抑えたパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は辺りを見渡す。
 広がっているのは夜色の世界。
 学園の地下にこんな星に纏わる世界が在るなんてロマンチックでしかない。
 今回の騒動がひと段落したら是非ツアーの目玉として紹介したい。そういった思いを抱くパウルはフロア内を進む。
 足音を立てず、けれども軽快なステップで夜色の迷宮を往くパウル。
 その片目には宙に浮かぶ魔法の星光が映っている。
 ゆっくりと巡る足元の星座盤。
 其処に記された不思議な星の名前。壁には幾つかの物語を描いたステンドグラスの彩が見え、雰囲気はバッチリだ。
 パウルは満足げに頷くと、更にステップを踏んで光が集う場所に向かった。
 そして、掌を開いて煌きに触れてみる。
 指先に集った光は淡く尾を引き、宙に躍っていった。このまま指と手を滑らせていけば空中に思うままの線が引けるはず。
 パウルは五本指を引っ張るようにして五線譜を描く。
 其処へ更に伸ばした己の触手で、ぽんぽんとリズミカルに音符を置いてみる。
「……でーきたっ♪ 名付けて、譜面座~☆」
 宙に描かれたのは音の波を表す図。
 それはゆらゆらと揺らめきながら、美しい迷宮の中に漂っていった。片目を軽く細めたパウルはふと己が住まう世界を思い返す。
 其処は戦乱の後の星渡りの世界。それゆえに数多の星々が輝く様を見てきた。
 勿論、その景色にも別ベクトルのロマンがある。けれど、と顔を上げたパウルは天蓋を振り仰いだ。
 まるで月を思わせるような天球儀。
 その周囲に漂う淡い彩の光。その光景は宇宙とは全く違う様相をしている。
「向こうは、ココで見上げる星空ほど澄んではないかもね」
 其々に良いところがあって、似ているものであっても感じることが違う。だからこそ旅行が映えるのだと感じ、パウルは再び周りの雰囲気を慥かめる。
 浮かべた譜面は夜に揺蕩う。
 それは投獄時に創ったプレリュード。きっとこの音は星色の迷宮に相応しい。そんな風に思いつつ、パウルはもう暫しこの場所を眺めていようと決めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎殿と星座盤を見に行きましょう
勿論、差し出された手を繋いで
普段は見上げる星を見下ろしながら歩くのは面白いですね

星座は然程有名ではなかったと思いますが天文学者や
星を見て占い者はおりましたね
それにしても、その星に名前があり星座になった由来の物語もあるとは
考えた方の想像力は素晴らしいものですね

一つ一つ星座の由来を知りたい所ですが日が暮れる所ではなさそうです
倫太郎殿、いつか教えてくださいね

星座を見ていると彼から提案が嬉しい
宜しいのでしょうかと尋ねながらも彼の掌の光を指へ集める
では私が描きますから、仕上げは貴方にお願いします
一人よりも、二人で作った方がずっと良い
これも大切な思い出です


篝・倫太郎
【華禱】
夜彦と手を繋いでのんびりと星座盤を見て廻る

確かに星座の上を歩く、だな……

星座、って概念はエンパイアにはあったんだろか?
そう思うけど、まぁ、星は星だから余り気にしないでいーのかも
第一……知らない事を知ろうとする、のは夜彦の良さだ


夜中と間違えそうな迷宮で良かったよな
無邪気で可愛いこの人を
他の誰にも見せないで独り占めできるのは
まぁ、その、なんだ……?俺の特権だもんよ
そう思っても言わないどくけど!

ん、今度教えてやるよ

手を伸ばして掌に煌きを集めて
なぁ、夜彦
あんたの本体である花簪
星座にして残していかないか?

繋いだ手を解きたくなくて
そう提案して掌を差し出した

この迷宮が続く限り残る、あんたを模した星座



●星と花と光
 差し出された手を繋ぎ、星の路をゆく。
 暗い夜の底のような世界の色ではあるが、周囲を浮遊する淡いひかりと確かに繋ぎあう掌の感触があれば何も怖くはない。
「確かに星座の上を歩く、だな……」
「普段は見上げる星を見下ろしながら歩くのは面白いですね」
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は足元に広がる金装飾を眺め、不思議な心地を覚える。
 星座盤めいた大きな円はゆっくりと、その上を歩く人々の妨げにならぬほどのスピードで周り続けている。
 それはまるで本物の星空が移ろいゆくときの速さのようだ。
「星座、って概念はエンパイアにはあったんだろか?」
「そうですね。星座は然程有名ではなかったと思いますが天文学者や、星を見て占う者はおりましたね」
 倫太郎がふとした疑問を落とすと、夜彦が故郷を思い出しながら語る。
 そっか、と頷いた倫太郎は両腕を首の後で組み、何気なしに頭上を見遣った。天蓋からは月を思わせる天球儀が提げられている。
 その周囲をふわふわと浮かぶ魔法の光は何だか綺麗だ。
 倫太郎の隣を歩く夜彦は、その横顔をそっと見つめてから同じ景色を眺める。そうして、この迷宮に記された星座に思いを馳せた。
「それにしても、その星に名前があり星座になった由来の物語もあるとは……考えた方の想像力は素晴らしいものですね」
「そだな、調べていくと色んな話があるんだろうな」
「一つ一つ星座の由来を知りたい所ですが日が暮れる所ではなさそうです」
 倫太郎が彼の言葉に答える。すると夜彦は興味深そうに星座盤に視線を落とした。
 星は星だからあまり気にしないでいいのかとも思っている倫太郎だが、そんな夜彦の姿勢もとても良いものだと感じた。
 知らないことを知ろうとするのは夜彦の良さだ。
 彼は無邪気にも見える笑みを浮かべて、星座盤に記された文字と物語を想像して楽しんでいる。此処が夜中と間違えそうな迷宮で良かった、と倫太郎は感じた。
 とても可愛らしいこの人を、他の誰にも見せないで独り占めできるのは――。
(まぁ、その、なんだ……? 俺の特権だもんよ)
 そんな思いが裡に巡り、倫太郎は頬を掻きながら密かな照れを隠した。そうして夜彦は星座盤から視線をあげ、此方を向く。
「倫太郎殿、いつか教えてくださいね」
「ん、今度教えてやるよ」
 星座について語るというちいさな約束を交わした二人は再び夜路を進む。
 そうしてのんびりと星座を見ていると、ふと倫太郎から声が掛かった。
「なぁ、夜彦」
「何でしょうか、倫太郎殿」
 手を伸ばし、繋いでいる掌に煌きを集めだした倫太郎は提案していく。
「あんたの本体である花簪、星座にして残していかないか?」
「宜しいのでしょうか」
 その言葉と思いが嬉しくて、訪ねながらも夜彦は彼の掌の光を指へ集わせていった。すると光が等級を増すかのように強くなっていく。
「こんなものか」
「では私が描きますから、仕上げは貴方にお願いします」
 繋いだ手を解きたくなくて、二人は宙に掌を差し出した。そうして描かれていくのは一緒に描く新しい星座。
 一人よりも、二人で作った方がずっと良い。
 記されていく花簪の星彩。そして、点と線で繋がれた星座はふわりと揺らぎながら夜色の世界に生まれた。
「これも大切な思い出ですね」
「ああ、この迷宮が続く限り残る、あんたを模した――俺達だけの星座だ」
 重なる微笑みと確かな快さ。
 同じものを視て、共に進む先を、星の光が照らしてくれているように思えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻と人魚
アドリブ歓迎

綺麗!
星時雨に瞬く光
櫻宵が笑む度に咲いて
舞う桜花弁は戀に染まる星の雫の様
彼に手を伸ばし
絡んだ櫻の指に力を込める
尾鰭の軌跡がなるほど彗星か

ろまんちすとな櫻宵らしい

跳ねるヨルの足元にも星屑が散る
楽しそうな姿に和むね
星座を描こう!
嬉嬉として描くのは星と戯れるヨル
上達しただろ?
櫻が描いたのは僕?すごい
やっぱり誘名先生は絵が上手いや

嬉しげな君を見て思う

僕も――いや
それより心配なのは櫻宵
彼は強そうに見えて脆いから
罪の重さに潰されやしないか不安になって
首に腕からめ抱き締める
流れる星に願うよ
…守ってみせる
君がどんな罪人だって
僕は

励ましてくれる君の笑みに頷いて
今はその無邪気さに救われる


誘名・櫻宵
🌸櫻と人魚
アドリブ歓迎

星座盤の夜色迷宮というのですって!
ロマンチックよね
リルの手をとり踊るように星の盤上をくるり舞う
うふふ、流れ星になった気分ねリル!
靡く尾鰭……あなたは彗星かしら?
ヨルのダンスもなかなかだし負けてられないわよ!

星座を?いいわよ
リルくんがどれだけ上達したか見てあげる!
あら……可愛いヨルね!もうナスじゃないわ
じゃああたしは―リルを描くわ
幸せの人魚座よ
どうかしら?
うふふ
褒められるとこそばゆいわね

罪?
考えたことがなかったわ
でもリルは
都市を沈めた事を罪として心を痛めている
抱きついてきたリルを優しく撫でる
大丈夫
あなたはちっとも悪くないんだから

それよりも
今度は変わった星座を見つけましょ



●君の罪と僕の罰
 光と星と、夜のいろ。
 星座盤の夜色迷宮にて星の位置を確かめて、星明かりの導きに誘われるように進み、浮かぶ光に手を伸ばせば不思議な心地が匝っていく。
「綺麗!」
「ロマンチックよね」
 リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)が光と共に游ぐ中、誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)はその手を取って踊るように星の盤上をくるりと舞う。
 星時雨に瞬く光。
 櫻宵が笑む度に咲き舞う桜花弁。それは戀に染まる星の雫のよう。
 リルも彼に手を伸ばし返し、絡んだ指に力を込める。繋ぐ指先と掌のささやかな熱。仄かな体温を感じられることも今は心地よく、二人は星と踊る。
「うふふ、流れ星になった気分ねリル! 靡く尾鰭……あなたは彗星かしら?」
「なるほど彗星か。ろまんちすとな櫻宵らしいね」
 靡く尾鰭を星に例えてくれた櫻宵に向け、リルは心地よさそうに微笑んだ。その足元では仔ペンギンのヨルがぴょこぴょこと跳ねて星屑の軌跡を散らしている。
「ヨルのダンスもなかなかだし負けてられないわよ!」
「櫻もヨルも、すてき」
 ぴよぴよペンギンダンスに和み、櫻宵とリルも合わせてふわりと回った。
 そして、盤上で二人だけの――もとい三人での舞踏会を楽しむ彼らの周囲に、魔法の星光が集まってきた。
 ふと其方に意識を向けたリルは、櫻宵の手を引いて光の元へ向かう。
「星座を描こう!」
「いいわよ、リルくんがどれだけ上達したか見てあげる!」
 此処では点と線を繋いで新しい星座を宙に描くことが出来るという。リルが嬉々として空中に指先を伸ばす様を見守り、櫻宵は光の軌跡を目で追う。
 リルがナスペンギンを描いたあの日。
 誘名先生の個人授業を行ってからの成果はどれだけ出ているだろうか。期待を懐く櫻宵をちらちらと横目で気にしながらも、リルは光を描く。
 其処に出来上がったのは星と戯れるヨルの姿を模した星座。
「上達しただろ?」
 得意気に胸を張ったリルの傍で、本物のヨルも歓び跳ねている。其処に微笑ましさを覚えてくすりと笑む櫻宵。
「あら……可愛いヨルね! もうナスじゃないわ。じゃああたしは――」
 リルを描くわ、と言葉にした櫻宵は星とペンギン座の隣に人魚の図を記していく。
「これが、僕? すごい。やっぱり誘名先生は絵が上手いや」
「幸せの人魚座よ。どうかしら?」
 素直でまっすぐな言葉がリルから零れ落ち、櫻宵はこそばゆさと嬉しさを感じた。並ぶ二つの星座と、面映そうな彼を見つめながらリルはふと思う。
「罪、か」
 零れ落ちた言の葉には僅かな不安が宿っていた。
 今は穏やかな迷宮だが、罪が暴かれ真実を問う敵が現れるのだという。
 僕も――。
 思わず口にしそうになったリルは緩く頭を振り、櫻宵が心配なのだと言葉にする。
「罪? そうね、考えたことがなかったわ」
 軽く首を傾げる櫻宵だが、彼は強そうに見えて脆いところがある。
 罪の重さに潰されやしないか。そんな風に感じたリルは櫻宵の元に泳ぎ、首に腕をからめてそっと抱き締める。
「なあに、リル」
「櫻、僕の櫻……」
 愛しいひとと、自分の罪。その両方に思いを巡らせているのだろう。
 きっとリルは都市を沈めた事を罪として心を痛めている。そう察した櫻宵はリルを優しく撫でた。頬に触れ、さらさらと揺れる糸髪に指先を通す。
「大丈夫、あなたはちっとも悪くないんだから」
「流れる星に願うよ。……守ってみせる」
 君がどんな罪人だって、僕は――。
 秘めた誓いは胸の裡に仕舞い込み、リルは櫻宵の手に自らも頬を寄せた。心配しなくていいわ、と告げる櫻宵は人魚を抱き寄せてその耳元でやさしく囁く。
「それよりも、今度は変わった星座を見つけましょ」
「うん、いこう」
 励ましてくれる彼の笑みに頷き、リルは星巡りの夜路に眸を向けた。
 その無邪気さに少しだけ、救われた気がした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朝日奈・祈里
ほし、星、煌めく星座
知っている輝きと
識らない煌き

手を伸ばせば届きそうなその輝き
手を伸ばしても手に入らぬ煌き
ぼくは知ってる
望み過ぎてはいけないことを
太陽に憧れたイカロスは、それを手に入れようとして
死んでしまったから

ぼくは知っているんだ

そこかしこで輝くその煌きは
ため息が出るほど綺麗なもので
指を伸ばして線を引きたい気持ちはあれど
それは、ぼくには出過ぎたことのように思えて
伸ばしかけた右手をそっと下ろす

このまま、この美しい空間に
この迷宮に、永遠に惑っていられたら
迷宮に鎖され続けられたら
きっと、しあわせだ

じかんよ、とまれ
このあたたかでこうふくなときよ、えいえんに



●届かぬ光に祈る星
 ほし、星、煌めく星座。
 此処にあるのは知っている輝きと、識らない煌き。 
 淡い星明かりの導きに誘われ、朝日奈・祈里(天才魔法使い・f21545)は星座盤が廻る迷宮の奥へと進んだ。
 一歩、静かに踏み出せば周りに浮かんでいる星めいた光が近付いてくる。
 手を伸ばせば届きそうなその輝き。
 それは、手を伸ばしても手に入らぬ煌きでもある。
 ――ぼくは知ってる。
 祈里は頭上にふわふわと浮遊する光を振り仰ぎ、首を横に振った。
 此処では星を手にすることが出来る。
 束の間であっても、光を手に入れられると言っても過言ではない。
 けれども、望み過ぎてはいけないことは過去の様々な寓話や物語が教えてくれた。
 太陽に憧れたイカロスは、それを手に入れようとして死んでしまった。
 あの光を手中に出来ると信じてしまったから。
 ――ぼくは知っているんだ。
 祈里はただ、近くて遠い光の揺らぎを瞳に映し続けている。
 そこかしこで輝くその煌きは、ため息が出るほど綺麗なものだ。周囲の皆がそうしているように、指を伸ばせば光はその先に集うだろう。
 無意識に腕をあげる。
 指を伸ばして線を引いてみたい。そんな気持ちはあれど、祈里にはそれが自分には出過ぎたことのように思えた。
 伸ばしかけた右手をそっと下ろした祈里は一歩、後ろに下がる。
 近付いてきていた星の光は、すい、と何処かに離れていってしまった。祈里は尾を引きながら遠くなっていく光から視線を逸し、違う方向に歩き出す。
 昏い、暗い路。
 光から離れれば離れるほどに闇は深くなっていく。
 それでも、この迷宮は誰かを暗闇に閉じ込めるようなことはしない。ただ穏やかで綺羅びやかな世界として在るだけ。
 このまま、この美しい空間に――この迷宮に、永遠に惑っていられたら。
 迷宮に鎖され続けられたら、きっと。
「……しあわせだ」
 思わず声として零れ落ちた思い。口許を押さえた祈里は軽く息を吐き、俯く。その際に月と星を模した耳飾りが迷宮内に游ぐ光を反射して幽かに揺れた。

 じかんよ、とまれ。
 このあたたかでこうふくなときよ、えいえんに。
 
 少女はいのり、瞳を閉じる。
 その瞼の裏には暫し、淡く揺らぐ星色の残光が残っていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

楠樹・誠司
未来視の導き、ひかりの洗礼に少しばかり目が眩んでしまった
此れが、異なる世界
唇から零れ落ちるは感嘆ばかり
咄嗟に言ノ葉を紡ぐ事も忘れた

蛍火にも似た星の瞬き
此れは、時計……否、天球を模して居るのだらうか
星詠みが何時か語って聞かせてくれた世界はきっと
此の様な輝きに満ちて――、

脳裏に朧げな輪郭が浮かび掛かった所で、顳顬が酷く傷んだ
嗚呼、何故だ、また
切っ掛けへ、記憶の欠片へ
蜘蛛の糸を求めるが如く伸ばした手は
如何しても届かない
如何しても、思い出せない

掛かった靄をかぶりを振って払い
慰めるように寄り添う淡いひかりを指先に導いた
名も紡げぬ『誰か』が教えて呉れた星座を辿って

嗚呼、あゝ……まるで、命のともしびのやうだ



●静寂に揺らぐ
 未来視の導きと、ひかりの洗礼。
 迷宮に繋がる転送魔方陣を潜れば其処はもう夜色の星世界。
 廻った感覚に少しばかり目が眩んでしまったかと感じ、楠樹・誠司(静寂・f22634)は眉間を軽く掌で押さえる。
 されど、誠司はすぐにその手を下ろした。何故なら目の前に広がっていた光景は驚きを感じさせるに十分なものだったからだ。
 此れが異なる世界なのか。
 思うと同時に唇から零れたのは溜息。其処には感嘆が宿っており、咄嗟に言ノ葉を紡ぐことも忘れていた。
 静かに、一歩を踏み出す。
 足元で緩やかに廻る金装飾の星の盤。
 天蓋を仰げば見える、天球儀めいた豪華な集合灯。
 そして、蛍火にも似た星の瞬き。
「此れは――」
 誠司は其々を順繰りに眺め、初めて見るものばかりの景色を慥かめていった。
「時計……否、天球を模して居るのだらうか」
 興味深く零れ落ちる聲。自分なりに考察をして、納得していく中で誠司はふと何時か星詠みが語って聞かせてくれたことを思い返す。
 嗚呼、きっとあの世界は此の様な輝きに満ちて――。
 其処まで考えたところで誠司は思わず顳顬に手を添えた。如何してか急に酷く痛み始めたのだ。脳裏に朧げな輪郭が浮かび掛かっていたというのに、思考も意識もこの痛みの方に引っ張られていってしまう。
「何故だ、また、……」
 顳顬を押さえた儘、誠司は強く眸を閉じた。
 切っ掛けへ、記憶の欠片へ。
 蜘蛛の糸を求めるが如く伸ばした手は、如何しても届かない。
 如何しても、思い出せない。
 この星々の迷宮世界が何かを思い起こさせてくれたというのに。直ぐ傍に迄、記憶の波が揺らいできたというのに。寄せては返すように波は掴めぬまま。
 誠司は裡に掛かった靄を払うようにかぶりを振る。
 顔を上げれば、すぐ近くにまで浮遊する星彩が漂ってきていた。
 まるで慰めるように寄り添う淡いひかり。其処に意志や思いは無いと解っていても、誠司には光達に手を伸ばす。
 彼に呼応するようにして光はその指先に導かれた。
 そして、誠司は光を紡ぐ。
 名も紡げぬ『誰か』が教えて呉れた星座を辿って、宙に想いの欠片を描いた。
「嗚呼、あゝ……まるで、命のともしびのやうだ」
 零れ落ちた言葉は深く、深く、星のひかりと静寂の中に匝ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

泉宮・瑠碧
この星々も魔法なのか…
星や月、夜空も好きだからか
こういった場所は綺麗と同時に落ち着く気もする…
通常の星図は見た事もあるが
緩やかに円や線が動くのは実際の星の巡りを思い起こすな

巡る星座盤にある星座達を眺め
知らない星座は、誰かが新しく描き添えたのだろうか
それとも、僕がただ知らないだけか…
神秘的なのもあるが、可愛らしいものもあるな

星屑の様な光は、見ていると、こう…
ふわふわ浮いている様が小さな生き物みたいで可愛くも感じる
近付いて触れようとしたりと少し戯れたら
指先に光を集め…
自分でも星座の線を引いてみよう

何が良いか…鳥や花、木々…
…そうだ、花の鳥、をイメージして線を繋いでみる
…止まり木も繋いで良いだろうか



●止まり木と花の鳥
 夜の帳が下りたような静謐で穏やかな世界。
 降り立った迷宮に感じたのは不思議な心地とそんな印象だ。
 泉宮・瑠碧(月白・f04280)は周囲に広がる星座盤と淡い光の光景を瞳に映し、緩やかに一歩を踏み出していく。
「この星々も魔法なのか……」
 感心と感嘆が織り混ざった言葉を落とした瑠碧は足元の盤が燦めく様を見遣り、続けて辺りの暗い空気に目を向けていった。
 星や月、夜空は好きだ。
 それゆえにこういった場所は綺麗だと思うと同時に落ち着く気もした。
 通常の星図は何度か見たこともあるが、この仕掛け床めいた場所で円や線が動くのは何とも幻想的だ。星座盤の名が示す通り、実際の星の巡りが思い起こされる。
 瑠碧は巡る盤に記された星座達を眺めた。
 銀帽子座、氷の竜座。
 それから黒薔薇座に波間の聲座。
 聞いたことのない知らない星座が多く見受けられ、瑠碧は双眸を細めた。
 これは誰かが新しく描き添えたのだろうか。それとも、自分がただ知らないだけか。そう考えながら瑠碧は星の名を指先でなぞる。
 神秘的だったり、可愛らしかったりと星座を眺めているだけでも飽きない。
 それに足元だけではなく、頭上にも月を思わせる天球儀めいたのオブジェが吊り下がっている。夜色の空気の中、廻る星と見下ろす月。
 不可思議だけれど、心地良い時間が此処に巡っていた。
 そうして瑠碧は歩を進めていく。
 不意に自分の方に寄り添うように浮かんできた星屑のような光。それを見ていると、何だか気持ちが僅かに浮き立ってくる。
「……可愛いな」
 ふわふわ浮いている様が小さな生き物みたいだと思えて瑠碧は淡く笑む。
 そっと近付いて手を伸ばす。すると光は瑠碧と戯れるように周囲をふわりと舞い、その指先に自ら集まってきた。
 瑠碧はその光で、自分でも星座の線を引いてみようと決める。
「何が良いか……鳥や花、木々……そうだ」
 暫し何を描くか悩んでいた瑠碧はふと浮かんだものを形にしていく。
 ゆっくりと、されど確かに描かれていくのは花の鳥。
 花の翼を持ち、甘い香りと共に飛ぶ鳥。そんなイメージを抱いた瑠碧は点と線を繋ぎ、天の下に新たな星座を創った。
「これでよし、と」
 最後の仕上げに止まり木の線を繋ぎ、瑠碧は星の光を見つめる。
 宙に浮かぶ星座が煌めきながら揺らめく。その光景はとても穏やかに思え、瑠碧は花が綻び咲くような淡い微笑みを宿した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
シーヴァルド(f01209)さんと星巡り

わぁ……!綺麗ですね、シーヴァルドさん。
聞いたことのない星座ばかり、と手を預け案内して頂きながら好奇心旺盛にキョロキョロ。

(シーヴァルドさんの緊張をほぐすように)
シーヴァルドさん、見ててください。
これは、なんでしょうか?クイズですよ。
指先で描くのは、棺桶やかえるの星座。
浮かんだ笑顔と、隣に描かれたかたつむり座に私も思わず笑顔に。

そうですね……この空に生まれた主人公の星座がたくさんの宝物を見つけていく、というのはどうでしょう?
宝物は、物だけじゃなくてお友達だったり思い出だったりするんです。
なんだか、世界が広くて冒険譚になりそうですね。


シーヴァルド・リンドブロム
寿(f18704)殿と

自分の人見知りを克服出来たら、そんな想いで彼女をエスコートだぜ
緊張の余り、ロボットみたいな動きで手を取りつつも
暗い足元に気をつけて、不思議な星座を見て行こう

寿殿の描く星座の軌跡を、じっと見つめながら
愛らしいかえるの姿を発見して、思わず口元に笑みが浮かぶ
緊張を解してくれた……その心遣いに感じ入って
星屑のような光に手を伸ばし、俺も星座を作ってみよう
(かえるの隣に、かたつむり座を作る)

そう言えば、寿殿は絵本を描かれているのだったか
此処の星座の物語を作るとしたら、どんなものになるのだろう
……教えて貰った優しい物語には、そっと頷き
自分も沢山の宝物を、見つけていけたらいいなと願うのだ



●描く星座と物語
 浮かび游ぐ星の彩と夜道を思わせる静謐な空気。
 足元で緩やかに巡る星座盤の金装飾は、空中に舞う光を反射して煌めいている。
「わぁ……! 綺麗ですね、シーヴァルドさん」
 太宰・寿(パステルペインター・f18704)は美しい景色が広がる迷宮を眺め、思いきって一歩を踏み出してみる。
 爪先を向けた先にあるのは訊いたことのない星座ばかり。
 シーヴァルド・リンドブロム(廻蛇の瞳・f01209)は瞳を輝かせる彼女の手を引き、こっちだと告げる。
 けれどもその声には緊張が入り混じっていた。
 元より自分の人見知りを克服出来たら――と、そんな想いで彼女をエスコートすることを決めてきたのだ。
 まるでロボットのような堅い動きではあったが、寿にとってはそっと導いてくれる彼の存在がとても頼もしく思えた。
「暗いから、足元に気をつけて。向こうの星座を見に行こう」
「はい!」
 シーヴァルドがやっと紡ぎ出した言の葉もまた、とても優しく感じられる。
 好奇心旺盛な瞳を周囲に向けていた寿は浮遊する光がたくさん集まっている場所を見つけた。まだ少しばかり緊張しているらしきシーヴァルドに笑いかけた寿は彼を呼びながら、指先を宙に掲げてみせる。
「シーヴァルドさん、見ててください。これは、なんでしょうか?」
 クイズですよ、と告げた彼女は空中に星図を描いていった。
 描かれる星座の軌跡をじっと見つめるシーヴァルドはその点と線が形をなしていく様に目を奪われている。
 寿が指先で描くのは、棺桶やかえるの星座。
「これは……かえる?」
「正解です!」
 ああ、とその存在に気付いて感嘆の声を落としたシーヴァルドの口元にちいさな笑みが浮かんだ。寿はその笑顔に気付き、更に嬉しげに微笑む。
 彼女は自分の緊張を解してくれたのだろう。
 その心遣いに感じ入り、シーヴァルドも指先を頭上に向けた。集う光に双眸を細めた彼は、かえる座の隣に新しい星座を描く。
 星屑のような光と戯れ、記していくのはかたつむり座。
 寿は六月の雨景色を思わせる星座達を振り仰ぎ、其処に微笑ましさを感じた。素敵ですね、と彼女が笑うとシーヴァルドの裡にも心地好さが巡っていく。
「そう言えば、寿殿は絵本を描かれているのだったか」
 そしてシーヴァルドは寿に問いかけてみる。
 此処の星座の物語を作るとしたらどんなものになるのだろうか。
 その質問に暫し考え込んだ寿は、かえるとかたつむりと棺桶座が浮かぶ空中の景色を瞳に映してみた。
「そうですね……この空に生まれた主人公の星座がたくさんの宝物を見つけていく、というのはどうでしょう?」
 宝物は物だけじゃなくて、お友達だったり思い出だったりする。
 主人公がどのようにして宝を大切だと思うようになるのか。そう思うと綴り甲斐がある物語だと思えた。
「それはまた壮大だ。良いと思う」
「なんだか、世界が広くて冒険譚になりそうですね」
 シーヴァルドが優しい物語に感心して、そっと頷く中で寿も思いを馳せる。
 星座の主人公達がこれからどのような冒険を繰り広げ、どんなものを見つけていくのかは未だ誰も知らない。
 けれども、これが二人で創った物語のはじまりだということは間違いない。
 淡く瞬く星彩を寿と共に眺めながらシーヴァルドは思う。
 いつか自分も沢山の宝物を見つけたい。
 密かに願った穏やかな思いは、静かな夜色の世界に宿されていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鳩宮・哉
相棒の舜(f14724)と一緒
アドリブ大好き!

ぴゃっ! きれぃ――
感動のあまり思わず大きく響きそうになった声
きみに口を押さえられ、えへへってはにかむ
きれいだね、舜
今度は小声で、ひそひそ囁くよ

小鳥を招くみたいに手を差し出せば、導かれるきらめき
それらを大切に繋いで生み出す俺だけの星座
これはねぇ、かたぶつ時計座!
えへ、分かった? 舜の星だよ
この星座は、かたぶつで、とっても鈍いの!

甘えん坊のうさぎ座…
やっぱり俺のこと? どーりで可愛い形だと思った!
馴れ馴れしいってちょっと聞き捨てならないんだけど
俺が誰にでも甘えるって思ってるの?
やっぱりかたぶつ時計さんは鈍くておばかさんだなぁ
ふん、おばか! にぶにぶ!


雨埜・舜
相棒の哉(f21532)と
アドリブ歓迎

感嘆をそのまま大きく表そうとする君
その口許を掌で覆い
……哉。此処では静粛に
態と畏まった声音で云う
理解してくれたらしい君の囁き声には、ああ、と肯いた

君が作り出す星座をゆるりと見遣り
……かたぶつ、
もしかして俺の事か?
よく分からない設定に耳を傾け乍ら
それ、何だか悪口に聞こえるのだが

では俺は――
己が生み出した星座は、歪ながら贔屓目に見れば兎のような形
この星座の名は、甘えん坊のうさぎ座だ
無論、君の事なのだが
愛嬌があって馴れ馴れしい星座だ

……?
寧ろ俺の方が聞き捨てならないぞ
鈍いか否かは知らないが、俺は馬鹿ではない
――先程の星座を改名しよう
甘えん坊改め、小癪なうさぎ座だ



●時計と兎と星の路
 星図が煌めく夜色の世界。
 手を伸ばせば届きそうな星彩に、苹果のような紅い瞳をまあるくした鳩宮・哉(さよならパライソ・f21532)は思わず感嘆の声を零す。
「ぴゃっ! きれぃ――」
 感動のあまり、大きく響きそうになった声。それを紡ぎ終わる前に雨埜・舜(游雨・f14724)の掌が哉の口許を掌で覆った。
「……哉。此処では静粛に」
 静けさこそがこの場に相応しい。だから、と態と畏まった声音で云う舜にこくこくと頷いた哉は、ぷは、と掌から口許を出した。
 えへへ、とはにかんだ哉は聞き分けがよく、次に紡ぐ言葉は密やかだった。
「きれいだね、舜」
「ああ、」
 彼が理解してくれたのだと判断した舜はその囁き声に肯いた。
 ひそひそと話す言葉はまるで秘密のお話のよう。そう思えば不思議とどきどきしてくる。あっちにいこう、と舜を誘った哉は星座盤の迷宮を駆けていった。
 そうしてふと立ち止まった場所。
 其処には宙に浮かぶ星色のひかりがたくさん集まっているところだ。
 小鳥を招くみたいに哉が手を差し出せば、其処に煌めきが導かれていく。
「舜、みてて」
 指先に集めた光を空中に滑らせていくと淡い輝きが尾を引きはじめた。目映い点と線。それらを大切に繋いで生み出すのは、自分だけの星座。
「それは?」
 哉が創り出す星座をゆるりと見遣った舜は問いかける。すると哉は得意気に笑った。
「これはねぇ、かたぶつ時計座!」
「……かたぶつ。もしかして俺の事か?」
「えへ、分かった? 舜の星だよ。この星座は、かたぶつで、とっても鈍いの!」
 そうとしか思えないと感じて舜が予想を口にすれば、哉が何だかよく分からない設定を告げてくる。それに耳を傾け乍ら舜は肩を竦めてみせた。
「それ、何だか悪口に聞こえるのだが」
「悪口じゃないよ。舜らしいってこと!」
「そうか。では俺は――」
 そうして舜は時計座の横にうさぎの形をした星図を描いていく。
 とはいっても贔屓目に見れば何とか動物だと呼べるような歪な絵だ。なんだろ、と首を傾げた哉の隣で星座はふわふわと浮いている。
「この星座の名は、甘えん坊のうさぎ座だ」
「やっぱり俺のこと? どーりで可愛い形だと思った!」
 舜がそう告げると哉の口許が嬉しげに綻んだ。正解だと答えた舜は時計とうさぎを見比べ、指先を哉に向ける。
「無論、君の事なのだが。愛嬌があって馴れ馴れしい星座だ」
「馴れ馴れしいってちょっと聞き捨てならないんだけど」
 その説明を聞いた哉は少しだけ頬を膨らませる。星座は愛らしいがやはり説明を聞くと妙に引っかかるものがあった。
「……?」
「俺が誰にでも甘えるって思ってるの?」
 何のことだと舜が疑問符を浮かべると、哉はずいっと彼に詰め寄った。しかしその身長差からただ見上げているようにしか見えない。哉を見下ろした舜は頭を振り、自分なりの反論を述べていった。
「寧ろ俺の方が聞き捨てならないぞ」
「やっぱりかたぶつ時計さんは鈍くておばかさんだなぁ」
「鈍いか否かは知らないが、俺は馬鹿ではない」
 巡る口論は止まらない。決して険悪になっているわけではないのだが、哉はぷいっとそっぽを向いてしまった。
「ふん、おばか! にぶにぶ!」
 哉の態度にちいさな溜息をついた舜は自分達の周囲にふわふわと浮かび続ける光の星図を手繰り寄せ、指先で示す。
「――先程の星座を改名しよう。甘えん坊改め、小癪なうさぎ座だ」
「もー、名前は良かったのに!」
 ちらりと星座を振り仰いだ後、哉は舜の横顔をじっと見つめた。
 星の光が彼を淡く照らしている。
 うさぎと時計。並んで光るその星座は不思議と仲良しに思え、哉はまぁいっかと明るく笑った。怒った兎がすぐに笑ったかと感じた舜だが、機嫌が治ったならそれでいい。
「舜、次はあっち! 天球儀をみにいこう」
「ああ、構わないが静かにな」
 ぱたぱたと駆け出した哉が手招く先を目指して舜も歩きはじめる。
 二人で共に進む路。その向こう側にはきっと、もっと楽しいことが待っている。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葉月・零
アドリブ歓迎

罪ねぇ……うーん、なんだろね。

向こうにしたら、罪を暴くのが正義なのかも知れないけど……必ずしもそれが正しいともいえないし

まぁ、難しいことはあとで考えよっかー、うん

それにしてもどーなってるんだろねぇ、ほんと不思議な空間

天球儀も星座盤にも興味津々
仕組みはわからないけれど
綺麗な景色を見せてくれるこの場所は護りたいなぁ、思わず呟き

星々には確か、ひとつずつ物語があるんだよね
なら、ここの星々にも
新しい星座を紡いだ人の数だけの物語があるのかな

そう考えると楽しくなってきちゃうね、キミもそう思わない?ナハト

と傍の猫を模した夜空纏う物語の精霊に声をかけて

思うままに光を集めたらどんな線を描くのだろう?



●描いた星が游ぐ世界
 星の光が瞬く迷宮の奥に進む。
 不思議な星座と空気が巡るこの空間に静謐さを感じながら、葉月・零(Rien・f01192)は首を傾げた。
「罪ねぇ……うーん、なんだろね」
 この後に此処に訪れるという宝石人形を思い、零は軽く肩を竦める。
 断罪の力を持つというサファイヤ。
 向こうにしたら、罪を暴くのが正義なのかもしれない。しかし、必ずしもそれが正しいとだとは言えないだろう。
「まぁ、難しいことはあとで考えよっかー、うん」
 そんな思いひとまず余所にやることにきめ、零は迷宮内をぐるりと見渡す。
 足元は巡りゆく星座盤。
 空中にはふわふわと浮かぶ星彩。
 そして、天井には月のような天球儀。
「それにしてもどーなってるんだろねぇ、ほんと不思議な空間」
 天球儀はもちろん、星座盤にも興味津々な様子の零はフロア内を散策していく。
 それらの仕組みはわからないけれど、綺麗な景色を見せてくれることは間違いない。
「この場所は護りたいなぁ」
 呟いた言葉は本心からのもので、そう思えばやる気も少しは巡るというもの。気怠げではあるが、零の瞳はしっかりと星の光を映している。
 そして、零は思う。
 星々には確か、ひとつずつ物語があったはずだ。
 それならば、ここの星々にも新しい星座を紡いだ人の数だけの物語があるのだろう。
「たくさんの物語が満ちた場所、かぁ。そう考えると楽しくなってきちゃうね、キミもそう思わない?」
 ナハト、と零が呼びかけたのは傍の猫を模した夜空纏う物語の精霊。
 そうして零は宙に指先を向け、其処に光を集わせた。
 思うままに光を滑らせれば線が繋がる。ナハトが見守ってくれていると感じる中、零は気儘に指先で星座を描いた。
「これは……ううん、ペンギンかなー」
 少しいびつな、それでいて愛らしくも思える点と線の繋がりはそう見えた。
 何だか不思議だね、と零した零は双眸を静かに緩める。
 そうして、あたらしいペンギンの星座はふわりと浮かんでいく。それがまたひとつ、この迷宮に新たな物語を宿した気がして、零は暫しその光景を眺めていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
学園の下に広がる星の迷宮
こんなに綺麗な場所が幾つもあったんですねえ
アルダワのまだまだ知らぬ広さに驚くな

円盤の上に立てば、ただただ見惚れてしまいたい光景
秋から冬にみる星の辺りを歩こうか
ただの空ではないのだから、知らない
名もない輝きも見つけられるだろうか

…見つけたら、その側で座って
少し、落ち着かないのは
この迷宮にいる災魔の話が思い出されてしまうから

罪はあるかと問われたら
思い当たることは、ある

賑やかな星座盤の上輝く星に思うのは
暴かれるなら、今日、一人で助かったなんていう情けないこと
明るい星々、仲間を思う
見せたくないだなんて、柄にもない
罪も罰も、確かにあろうと
まだ…

まだ、止まるわけにはいかないんだよ



●罪と花
 此処は、学園の下に広がる星の迷宮。
 星座盤と夜という性質を宿す不思議な場所に立ち、冴島・類(公孫樹・f13398)は感嘆と関心の言葉を落とした。
「こんなに綺麗な場所が幾つもあったんですねえ」
 アルダワのまだまだ知らぬ広さに驚きながら、類は歩を進めていく。
 歩む先には星めいた彩の光が浮いていた。
 それを追うように視線を頭上に向ければ、夜空を照らす月を思わせる天球儀のオブジェが見える。そうして床に巡る円盤の上に立てば、ただただ見惚れてしまいたい光景が周囲に広がっていた。
 類は双眸を細め、暫し此処から見る景色を瞳に映し続ける。
 息をつき、そろそろ次に進もうかと考えた彼は視線を違う方向に向けた。
 秋から冬にみる星があれば、その辺りを歩きたい。そのように感じた類はゆっくりと歩を進めていった。
 けれど、此処はただの空ではない。
 知らない、名もない輝きもきっと見つけられるはずだ。
 類は星図を目印にしながら季節を感じさせる星座を探していった。そうして、見つけたのは秋桜座と題された星座。
 他にも煌めく孔雀草座、皇帝ダリア座、緋色のカルーナ座など聞いたことのない名前ばかりが見つかった。
「花の星座なのかな。成程、綺麗ですね……」
 その側で座り込んだ類は指先で記された名前をなぞってみる。
 この星図にもきっと何らかの物語が秘められているのかもしれない。そう考えると興味深く、機会があるなら知ってみたいと思った。
 けれども少しばかり落ち着かない。
 きっとその理由は、暫し後にこの迷宮に訪れるという宝石人形の災魔の話が思い出されてしまうからだ。
 罪はあるかと問われたら、思い当たることは、ある。
 それを深く考えることは今は野暮に思えて類は敢えて思考を止めた。
 賑やかな星座盤の上。
 輝く星に思うのは――暴かれるなら、今日、一人で助かった、という情けないこと。
 類は明るい星々のひかりに、仲間を重ねて思う。
「見せたくないだなんて、柄にもないな」
 零れ落ちた呟きだって今は誰にも聞かれることはないだろう。
 罪も罰も、確かにあろうと、まだ。
「……まだ、止まるわけにはいかないんだよ」
 類は掌を強く握り締める。
 たとえどんな罰があろうとも折れはしない。そう在れれば良いと願って――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘズ・エイス
獲物の進入路に見当
装飾に紛れ、トラバサミを敷く
一介の狩人には出来てこの程度だろう
猟兵の、エイスでない人との戦い方を私を知らない
鞄に腰掛け、仲間が掛からぬよう注意を

――星座、か
狩人にとって星は、途を知る標だ
そこに物語は要らない
雑念は獣だ
散漫であるほどに彼らは肥え、
私達の喉笛に涎を垂れる
狩人が最も恐れるべき獣に姿はない
それは、己の裡に潜むのだから


私達エイスは、幼少から説かれたものだった
森の外を知ってなお、誤りでないと思う
見える限りが、生きる世界だ
私達は、そういうつくりなんだ

さて
エイスだてらに、ひとつ考えてみようか
耳もない、尾もない
『ヒト座』
……感性に乏しいのは承知だ
おまえが見たら、笑っただろうか



●エイスの世界
 獲物の進入路に見当を付け、トラバサミを敷く。
 装飾に紛れさせたそれが仲間を捉えぬよう注意をはらい、ヘズ・エイス(遠き溢綵のレラ・f01595)は静かに頷いた。
「さて、一介の狩人には出来てこの程度だろうか」
 猟兵の、エイスでない人との戦い方をヘズは知らない。これで一先ずは戦いの準備が出来た。鞄に腰掛けたヘズは迷宮内を見遣り、ちいさく息を吐く。
「――星座、か」
 この場に集う星の図には様々な物語が込められているという。
 狩人にとって星は、途を知る標だ。それゆえにそこに物語は要らない。

 雑念は獣。
 散漫であるほどに彼らは肥え、己の喉笛に涎を垂れるもの。
 狩人が最も恐れるべき獣に姿はないのだ。
 それは、己の裡に潜むのだから――。

 そんな風に、自分達エイスは幼少からよく説かれたものだった。そう思い返すヘズは静かに、それでいて警戒を解くことはなく迷宮を眺め続ける。
 あの教えは森の外を知ってなお、誤りでないと思っていた。
 見える限りが、生きる世界だ。
 私達はそういうつくりなのだと改めて感じたヘズは星々や金装飾の星座盤に浪漫を重ねるようなことはしない。
 光は光。ただ、それだけのことだ。
 そうしてヘズは近くを浮遊している光に手を伸ばした。
「さて、」
 敵への罠は仕掛け終わったが、このまま手持ち無沙汰でいるのも妙だ。
 エイスだてらに、ひとつ考えてみようかと思い立ったヘズは指先に集った光を宙に滑らせていく。それは周囲の人々がそうしているように、空中に星座を描く行為だ。
 すい、と指先が宙に揺れる。
 それから暫くして、ヘズの前にはあるかたちが出来上がった。
 耳もない、尾もない。
 それは名付けて『ヒト座』とでも云うべきだろうか。何の物語も込めてはいないが、今のヘズが描けるのがこのかたちだ。
「……感性に乏しいのは承知だ」
 ――おまえが見たら、笑っただろうか。
 そんな風に呟いたヘズは空中から指先を離してみる。するとその星座が天蓋高くまでふわりと浮かび上がっていった。
 その光を見送り、ヘズは氷棘の眸を幾度か瞬く。
 殆ど彩のない、世界だけれど。煌めく光だけははっきりとひかって視えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【翠彩】
アドリブ歓迎
メボンゴ=絡繰り人形名

わぁ、すごい!すっごく綺麗だね!
星空の中を歩けたらきっとこんな感じかもしれないね
ヴィルさんは星を見慣れてるだろうけどこういう風に歩くのは初めてかな?

自分だけの星座を作り出せるなんて面白いね!やってみようよ!

さすがヴィルさん!素敵なバレリーナ!
星空のステージで踊れて楽しそう

よーし、私も!
わくわく楽しげに光を集めて描いたのは兔の頭
そしてクイズを出題
はい、これは何座でしょ~か!
答えはメボンゴ座!
『メボンゴだよ!ヴィルルン、惜しい!』(裏声でメボンゴの台詞)
私も描いてくれるの?
わーい、可愛い!
じゃあヴィルさんも!
(拙い絵だが自信満々に楽しそうに似顔絵を描く)


ヴィルジール・エグマリヌ
【翠彩】

此処が迷宮……宇宙船の外の眺めと似ているな
確かに、斯うして星屑の中を散歩するのは初めてだ
凄くキラキラしているね、綺麗だと思うよ

嗚呼、地上の人達は夜空に星座を描くのだっけ
とても楽しそうだね、私もひとつ描いてみよう
絵心には自信があるから、とっておきの星を造りたいな

指先で光をなぞり描くのは
星の海を踊るバレリーナの姿
ほら、此の円盤上が君の舞台だ

ジュジュの星座は随分と愛らしいね
このフォルムは勿論わかるよ、答えは兎座だろう?
嗚呼、メボンゴ座――君達らしいな
じゃあ、隣にジュジュも描かないと(ヴィルルン……?)

再び光を指先に集めれば
デフォルメした友人の姿を描いて
おや、私の似顔絵も?
可愛い絵姿だ、有難う



●繋げる星座に宿すもの
「わぁ、すごい! すっごく綺麗だね!」
 星々に似た淡い光が導く迷宮の一角にて、明るい声が響く。
 きっと、星空の中を歩けたらこんな感じかもしれない。そんな風に語りながら微笑むジュジュ・ブランロジエ(白薔薇の人形遣い・f01079)は、隣を歩くヴィルジール・エグマリヌ(アルデバランの死神・f13490)を見上げた。
「此処が迷宮……宇宙船の外の眺めと似ているな」
 その視線を受け止めたヴィルジールは頷く。
 彼は興味深そうに周囲を見渡し、星座盤が巡る床に目を向けた。
 ジュジュも倣って足元の星図を眺め、淑女人形のメボンゴを歩かせていく。星座を追うようにぴょこんと軽く飛ぶメボンゴ。その姿はまるで迷宮の道案内を担ってくれているようにも見えた。
「ヴィルさんは星を見慣れてるだろうけどこういう風に歩くのは初めてかな?」
「確かに、斯うして星屑の中を散歩するのは初めてだ」
 ジュジュが問うとヴィルジールが穏やかに答える。
 凄くキラキラしていて、綺麗だ。
 そう話す彼の言葉もまた、この星座盤の迷宮に相応しい静謐さを宿している。そしてヴィルジールはふと、宙に星光を描く人影を見つけた。
「嗚呼、地上の人達は夜空に星座を描くのだっけ」
「そうそう。とくにここだと、自分だけの星座を作り出せるんだって。面白いね! やってみようよ!」
 ジュジュも星座が記されていく様を見ていたらしく瞳を輝かせる。
 周囲には光が集まってきていた。
 其処に目を向けたヴィルジールは指先を空中に軽く掲げてみる。
「とても楽しそうだね、私もひとつ描いてみよう」
 すると光は彼の指に集っていく。
 絵心には自信がある。それゆえにとっておきの星を造りたいと話す彼に笑顔を向け、ジュジュも指を宙に滑らせた。
 お互いに何を描くのか、それも楽しみになってくる。
 ヴィルジールが指先で光をなぞり、描くのは星の海を踊るバレリーナの姿。
「ほら、此の円盤上が君の舞台だ」
 そういって指先を光から離すとふわりと星座が浮かんだ。その光景を見たジュジュは思わずぱちぱちと拍手する。
「さすがヴィルさん! 素敵なバレリーナ!」
 星空のステージで踊る星座は何だか楽しそうに思えた。
 ジュジュはそれならば自分も、とわくわくしながら楽しげに光を集めていく。そして、其処に描かれていくのは兔の頭。
 けれどすぐに名前を言ってはつまらないと感じ、彼女はクイズを出題した。
「はい、これは何座でしょ~か!」
「ジュジュの星座は随分と愛らしいね。このフォルムは勿論わかるよ、答えは――そうだね、兎座だろう?」
 ヴィルジールが図の形から答えを紡ぐと、ジュジュは得意気に胸を張った。
「残念、答えはメボンゴ座!」
『メボンゴだよ! ヴィルルン、惜しい!』
 その際にメボンゴを操り、裏声で台詞を付け加えることも忘れない。
 彼女の無邪気さに思わず笑みを浮かべたヴィルジールは口許を押さえた。ヴィルルンとは何だったのか。それは聞き損ねたが、ジュジュ達が楽しそうなのでそのままでもいいだろうと思えた。
「嗚呼、メボンゴ座――君達らしいな。じゃあ、隣にジュジュも描かないと」
「私も描いてくれるの?」
 再び指先で光を紡ぐヴィルジールの隣、ジュジュはその様子を見守る。デフォルメされた自分の姿が描かれていく様にジュジュは嬉しさを覚え、もう一度光を集めた。
「わーい、可愛い! じゃあヴィルさんも!」
「おや、私の似顔絵も? では全て並べてみようか」
 拙い絵ではあったが自信満々に、楽しそうに似顔絵を描くジュジュの様子は快い。ヴィルジールは一列に並んでいく自分達だけの星座を見つめ、そっと双眸を細めた。
 穏やかさの中に巡る楽しさ。
 此処に巡る心地良さを大切にしようと感じて、二人はひとときを過ごしていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

天図盤と夜のフロア、か
本当に美しい景色だ
まるで宵そのものの中に居る様で少々照れくさいが…と
星迄浮かんでいるのだな

以前教えて貰った北極星は何処だろうかと視線を漂わせつつも一際輝く金星を見止めればそっと指先でなぞって見よう
お前の名の由来になった星なのだろう?つい、な?
だが…俺にとっては導くような北極星こそお前の様だと思うがと、指で北極星まで線を引き宵の元へ戻る様に指を向ければ其の侭宵の髪をくしゃりと掻き混ぜんとしつつ笑みを宵へ向ける―も
宵の声に頷けば二人でなぞるかと、宵の手を取りシリウスへ線を引いて行こう
俺とお前の星を結ぶ星座、か
地だけでなく天でも共に在れるならばこれ以上ない幸運だ


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

天図盤と夜のフロアとは、とても親しみを覚えますね
おや、ザッフィーロ君。僕そのものの中に、などと、ふふ
このように美しい世界であったらよいのですが、と笑って

僕はザッフィーロ君がつくりだす星座を眺めましょう
ええ、宵の明星……僕の名の由来です
そして髪を撫でられ嬉しげに

ねえ、ザッフィーロ君 その線をシリウスまで引きませんかと問いかけて
僕にとってのきみはシリウス、天を焼き焦がすものです
僕の愛おしい星が、きみの選んだ星と同じ星座になるならばとても嬉しいですからと
そうして取られた手にて線を引かれシリウスに繋げれば
天でも地でも、どこにだって僕はきみといたいですと笑って



●ポラリスとシリウス
 ひかりが巡る天図盤と夜のフロア。
 その取り合わせはザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)と逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)にとって、親しみを覚えるものだ。
「本当に美しい景色だ」
「ええ、とても綺麗ですね」
 ザッフィーロが星座盤と天球儀が織り成す景色を眺める中、宵も双眸を細める。二人で逍遥する迷宮内は穏やかで、自然と心も落ち着いてくるようだ。
「まるで宵そのものの中に居る様で少々照れくさいが……」
「おや、ザッフィーロ君。僕そのものの中に、などと。ふふ、僕もこのように美しい世界であったらよいのですが」
 彼が落とした言葉が嬉しく思え、宵は静かに笑う。
「と、星迄浮かんでいるのだな」
 ザッフィーロは周囲に浮遊する光を見つけ、以前に教えて貰った北極星は何処だろうかと視線を漂わせてみる。
 だが、此処は魔法の星の世界。自分達がよく知る星はない。あるのは誰かが作った名前の知らない星座ばかり。
 されど、それならば作ってみるだけだとしてひときわ輝く金の星を見止め、ザッフィーロはそっと指先でなぞってみる。
 すると其処に目映い光が生み出された。
「随分と光を重ねたみたいですね、ザッフィーロ君」
「お前の名の由来になった星なのだろう? つい、な?」
「ええ、宵の明星……僕の名の由来です」
 ザッフィーロにとって導くような北極星こそ、宵のようだ。
 指で線を引き終えた彼は宵の元へ戻るように指を向け、そのまま宵の髪をくしゃりと撫でた。髪に触れる彼の手は大きくてあたたかい。
 嬉しげに笑む宵はザッフィーロが描いた星を見つめた後、提案を投げかけた。
「ねえ、ザッフィーロ君。その線をシリウスまで引きませんか」
「そうだな、二人でなぞるか」
 しかし、シリウスの星もこの迷宮内にはなかった。
 宵は自分でその光を描き、ザッフィーロと共に北極星の光を繋げてゆく。手を取り合い、線を描く二人は微笑みあう。
「僕にとってのきみはシリウス、天を焼き焦がすものです」
 愛おしい星が、きみの選んだ星と同じ星座になるならばとても嬉しい。宵がそんな風に伝えてくれる想いを噛み締め、ザッフィーロは頷く。
「これが俺とお前の星を結ぶ星座、か。地だけでなく天でも共に在れるならば、これ以上ない幸運だ」
「天でも地でも、どこにだって僕はきみといたいです」
 重なっているのは手だけではない。
 互いに抱く想いも一緒に重ねられているのだと感じて、二人は光を見つめる。
 そして――彼らの傍に浮かぶ星は、いつまでも目映く瞬き続けていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
【梟】

点と線で描かれた星座のひとつひとつに
どんな物語が謡われて居るのか
語り歩く星図盤の道

傍らで躓いた姫君へ
まろばぬようにと手を差し伸べれば
優美な黒髪が天の川の如く煌いて

――おや、

瞳を瞬く間に自身もまた纏わされた耀きは
花のひとの可愛い悪戯

礼をせねばなりませんね、と
指先にひかりを燈し
生まれたばかりの星のいのちで
数多の星花を綻ばせた彼女を
りぼん結びする線を描こう

花束のようでしょう

なんて
ささめき笑えば
背なの光翼が楽し気に羽搏き揺れる

手と手を繋ぎ紡ぐひかりの軌跡の
何とあたたかいこと

きっと
ひとつ名に留まらぬ星座ですよ

皆と航り往く旅路は
未知の物語に溢れているに違いないから
幾つもの星の名を綴ってまいりましょう


紫丿宮・馨子
【梟】
長い間ひとりで見上げていた星空
少し前に初めてひとの温もりと共に見た
そして今日は三人で
徐々に増えゆくは星の如く

物珍しげに星を見ながら歩いていると
うっかり裾を踏んでしまうなんていつもはしない失敗を
支えの手には
微笑み礼を述べて

笑われてしまったかしらと振り向けば
自身の動きに倣うその長き川は
いつの間にやら天の川に

まあっ……

頭上に戴く天冠の瓔珞に負けずとも劣らない煌きに
動けば揺れるそれを楽しんで

花の君への返礼中の
同胞とも言える彼の背に
そっと翼の星を繋いで

花の君にはたくさんの
煌めく花を結びましょう

差し出された手を取らぬという選択肢はなく
こうして繋がるわたくしたちは
どんな名を持つ星座になりましょうか?


境・花世
【梟】

星座盤の夜空往く旅人になって、
北へ南へどちらへ行こうか
子午線を辿るように進みながら、
伸ばす指先にひかりを灯して

ねえ、こんな魔法はどうだろう?

悪戯っこの顔で笑って、
先歩む姫君へいくつも星を蒔いたなら
射干玉の長い髪はまるで天の川みたい
さらさら流れるその傍らで、
夜森の髪には氷の環を戴冠してあげよう
ほら、大きな星のように見えるはず

やさしいお返しをふたり分受け取って
くすぐったく咲ったなら
わたしという花束はきらきらと瞬いて、
いつのまにか星のひとつになる

――ねえ、お揃いだね、わたしたち

傍らの星たちに手を差し出せば、
つなぐひかりの軌跡はきっと
星座のように見えるにちがいない



●軌跡を歩む旅
 点と線で描かれた星座のひとつひとつ。
 其処にどんな物語が謡われているのか。皆で語り歩く星図盤の道の中、都槻・綾(夜宵の森・f01786)は想いを馳せていた。
 その隣を歩く境・花世(*葬・f11024)もゆるりと歩む。
 星座盤の夜空往く旅人になって、今日は北へ南へ、どちらへ行こうか。
 二人の少し前をゆく紫丿宮・馨子(仄かにくゆる姫君・f00347)は、迷宮の景色をそっと瞳に映した。
 長い間ひとりで見上げていた星空。
 少し前に初めて、ひとの温もりと共に見たもの。
 そして、今日は三人で。徐々に増えゆく思い出は星の如く煌めいているかのよう。
 物珍しげに星を見ながら歩く馨子は不意に、うっかり裾を踏んでしまう。しかし、それに気付いた綾がまろばぬようにと手を差し伸べる。
「大丈夫でしたか」
「ええ、申し訳ありません……」
 いつもはしない失敗だというのに、今日は気持ちが浮き立っていたからだろうか。馨子は綾からの支えの手に微笑み、礼を述べた。
 綾もそれなら良いと笑み、彼女の優美な黒髪が天の川の如く煌く様に目を細める。良かった、とほっとした花世もつられて口許を緩める。
 そして花世は子午線を辿るように進みながら、伸ばす指先にひかりを灯す。
「ねえ、こんな魔法はどうだろう?」
 そういって、悪戯っこの顔で笑った花世は紫の姫君と、青磁色の双眸を持つ彼に向けていくつもの星を蒔いた。
「まあっ……」
「――おや、」
 瞳を瞬く間に纏わされた耀きは、花のひとの可愛い悪戯。
 一瞬、笑われてしまったかしらと振り向いた馨子だったが、すぐに違うと分かった。何故なら、射干玉の長い髪がまるで天の川みたいだと微笑む花世が、さらさら流れるその傍らで光を描いていたからだ。
 夜森の髪には氷の環を戴冠して、大きな星のように見えるはずだと告げる。
 馨子は自身の動きに倣うその長き筋が天の川になっていくようだと感じた。そして、頭上に戴く天冠の瓔珞に負けずとも劣らない煌きに綻ぶ。
 綾も口元を緩め、花世の行いに倣った。
「礼をせねばなりませんね」
 指先にひかりを燈した綾は、生まれたばかりの星のいのちで数多の星花を綻ばせた彼女を結ぶ線を描いていく。
 馨子も花の君への返礼中の同胞の背にそっと翼の星を繋いでいった。綾は彼女からの贈り物を慥かめ、穏やかな心地を覚える。
「花束のようでしょう」
「ええ、たくさんの煌めく花を結びましょう」
 そう示してささめき笑えば、背の光翼が楽しげに羽搏き揺れた。花世は二人分のやさしいお返しを受け取り、くすぐったそうに淡く咲き笑う。
 ――わたしという花束はきらきらと瞬いて、いつのまにか星のひとつになる。
 そんな風に思えた。
「ねえ、お揃いだね、わたしたち」
 そういって花世は傍らの星たちに手を差し出す。
 綾にも馨子にも、その手を取らないという選択肢はなかった。手と手を繋ぎ、紡ぐひかりの軌跡の何とあたたかいことか。
 つなぐひかりの軌跡。
 それは星座のように見えるにちがいないと花世には思えた。
 そんな中でふと、馨子は思い返す。此処では描いた星座や星に自分達だけの名をつける者が多いのだという。
 それならば――。
「こうして繋がるわたくしたちは、どんな名を持つ星座になりましょうか?」
「きっと、ひとつ名に留まらぬ星座ですよ」
「ひとつだけ名前をつけてしまったら、もったいないかも」
 馨子が問うと綾と花世が其々に穏やかな声を紡いで答えた。馨子はその通りだと感じて静かに頷き、巡る星々の世界を振り仰ぐ。
 星明かりの導きと瞬き。
 そして、そのひかりが示す往く先へ。
 皆と航り往く旅路は、未知の物語に溢れているに違いないから。
 幾つもの星の名を綴って、共に――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
星鉱石の迷宮へ行ったときも美しく落ち着く場所であったが、ここも良い場所だな

これは面白いな。星座が作れるのか。(線を1本描き)ミヌレ座、なんてな。

槍の姿のつもりだったが、気に召さなかったらしい。ミヌレは不服そうだ…
わかった、今のお前の姿でやり直そう。…少し難しくないか?角と尻尾はいるよな。
ミヌレだけでなくロワ(獅子)やタイヴァス(鷲)のも作ってみるか。
そういえば、獅子に鷲だったら既にあるんだよな?…いや、俺にとっては無二の存在であることに変わりないから構わないか。
あまり器用ではないが許してくれよ。

あれは、何座なんだろうな。
色々想像してみるのも楽しそうだ


星を眺めつつ、楽しい時間を過ごせたらと思う。



●遊色のひかり
 思い出したのは、いつか訪れた星鉱石の迷宮。
 星々のような光が浮かぶ景色を眺め、ユヴェン・ポシェット(Boulder・f01669)はゆっくりと歩を進めていく。
「彼処へ行ったときも美しく落ち着く場所であったが、ここも良い場所だな」
 ミヌレもそう思わないか、とユヴェンは傍らの槍竜に問う。
 すると槍竜も興味深そうに周囲を見渡した。
 そうして星座盤めいた床を確かめながらユヴェン達は進む。その間、彼の肌に露出する石が周囲に浮かぶ光を反射して微かに煌めいた。
 その髪もまた、オパールの遊色効果によって様々な色を見せている。
 ユヴェンは自分についてきている光に気付き、其処に手を伸ばした。
「これは面白いな。星座が作れるのか」
 見ていろ、と竜に告げた彼は空中に一本の線を描く。たったそれだけで綴られた光をミヌレが不思議そうに見上げた。
「ミヌレ座、なんてな」
 それは槍の姿のつもりだったが、どうやら本人は気に召さなかったらしい。不服そうにぷいっとそっぽを向いてしまったミヌレを見たユヴェンは肩を落とす。
「わかった、今のお前の姿でやり直そう」
 ユヴェンは星の光を描き直していくが、竜の姿となると少し難しい。
 角と尻尾はいるよな、と考えつつ次第に慣れてきたユヴェンはミヌレだけでなく獅子のロワや鷲のタイヴァスの星座も描きはじめた。
「そういえば、獅子に鷲だったら既に星座があるんだよな?」
 その際に既存の星座を思い出したユヴェンだったが、ふと考え直す。今描いているのは自分にとって無二の存在。それならば、唯一の星座になる。
「あまり器用ではないが許してくれよ」
 竜と鷲と獅子。
 それぞれの星座を並べると何だか様になってきた気がする。ミヌレもまんざらではない様子で星の光を眺めていた。
 その中で見知らぬ星座が浮かんでいる光景が視えた。
「あれは、何座なんだろうな」
 微笑ましげに双眸を細めたユヴェンに対し、ミヌレも首を傾げてみせる。
 ああいった光から想像を巡らせてみるのも楽しそうだ。
 行こう、とミヌレを誘ったユヴェンは再び歩き始めた。暫しの楽しい時間を過ごせたら良いと感じながら、一人と一匹は星の世界を逍遥していく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
罪のない命というものはきっとありません
生きるということ、ただ存在するということ、それだけで何かを害するのです
それでも、私は、それでも――

星の光がこんなに詰め込まれている空間は初めてのはずです
それでもどこか懐かしいような。これが夢というものなのでしょうか
不思議ですね、こんなにも静かで優しい世界があるなんて、と思っているのに
星空は、温かいものではなかったはずなのに

見たいところがたくさんあります、目も時間も足りません
灯りを放つ天球儀も、見たこともない星空が広がる星座盤も、知らない物語を語るステンドグラスも
それでも気付くと、楽しそうな方々の笑顔を見ているのです
私は、この笑顔を守りたいと、そう思うのです



●守りたいもの
 星の間に巡るのは罪と罰。
 美しくも儚げな空気に満ちた迷宮内にて、天蓋を見上げる。
 ユウイ・アイルヴェーム(そらいろこびん・f08837)は星彩の光を双眸に映し、此処から繋がっていく少し先の未来を思った。
「罪のない命というものはきっとありません」
 光を眺めたユウイが言葉にしたのは宝石人形が暴くという罪について。
 生きるということ。
 それはただ存在するということ。
 だが、生きていればそれだけで何かを害していく。
「それでも、私は、それでも――」
 周囲を浮遊する光から目を離したユウイは僅かに俯く。そうして次に顔を上げたとき、ユウイはこの迷宮を逍遥しようと決めていた。
 ゆっくりと辺りを見渡したユウイは綺羅びやかにも思える光景を眺める。
 星の光がこんなに詰め込まれている空間は初めてのはず。
 少なくとも記憶にはない。
 ユウイはゆるりと星座盤の小路を進みながら、それでもどこか懐かしいような気がすると感じていた。
「これが夢というものなのでしょうか」
 こんなにも静かで優しい世界があるなんて、と思っていることが不思議だ。
 ――星空は、温かいものではなかったはずなのに。
 そんな思いを抱き、ユウイは歩き続ける。
 星明かりの導きに誘われるように金装飾の星路を行き、月を思わせる天井の天球儀を見て進む。記された星座の名前は様々で興味深くもある。
 深海の百合座、烏の寝床座。
 花蔦のつるぎ座もあれば、水晶のオルゴール座というのもあった。
 見たいところがたくさんで、目も時間も足りなくなりそうだった。
 灯りを放つ天球儀も、見たこともない名前ばかりの星座盤も、知らない物語を語ってくれるステンドグラスだって様々なことを教えてくれる。
 ユウイはひとりだったが、すれ違う人達が挨拶や会釈をしてくれた。指先で星を描いている彼や、彼女の姿を目で追う。
 其処には笑みが咲いており、ユウイは快い穏やかさを感じた。
 楽しそうな声と穏やかな笑顔。
 それこそがこの迷宮に宿る何よりも大切なものなのかもしれない。ユウイは胸に手を当て、星と光の光景を振り仰いだ。
「私は――」
 あの笑顔を守りたいと、そう思った。
 だからこそ罪になど押し潰されていてはいけない。決意にも似た思いを抱いたユウイは、もう暫しこの星のひかりと人々の笑顔を見つめていたいと願った。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユハナ・ハルヴァリ
星座盤の金色を橋の様に渡りながら
アルダワの星は、こんな風なんですね
故郷とも、持っている盤の星座とも違うそれは
新しい事を教えてくれる教科書のよう

指先に集まる光を眺めて
それで夜空に線を描こうとして
何を描こうか、指が止まる
欲もなく、願いもなく
望むものは疾うに忘れたまま戻らないから
それなら

歩きながら指で光を描く
空をなぞって
描く星座はないけれど、流星になら、なれるかもしれない
夜に星が流れる時、人はそこに願いを掛けると云うから
誰かの願いを引っ掛けて、夜の彼方まで
流れて行けばいい

ただ、少しだけ
望みがあるとするなら
あの人がしあわせであればいい
心に描いた錆色の赤と、胸に揺れる祈りの石と
ほんの少しの、さびしさと。



●流れ星と軌跡
 巡る、廻る、金の星。
 星座盤の装飾の上を橋のように渡りながら、迷宮を進む。
「アルダワの星は、こんな風なんですね」
 ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は星座盤の金色を踏み締め、浮かんだ思いを言葉へと変えた。
 故郷とも持っている盤の星座とも違う星の名前。
 星の物語を描いているという綺羅びやかなステンドグラス。
 それはまるで新しい事を教えてくれる教科書のようで不思議な心地がした。
 ユハナは周囲でふわりと揺らぐ星の彩光に眸を向け、其処へ指先を伸ばしてみる。集ったひかりの欠片は何だかあたたかい気がした。
 その光を眺め、夜空色の世界に線を描こうとしてみる。
 何を描こうか。
 そう考えるながら無意識に指が止まった。望む星座が、思い描く星が記せるというのに。ユハナには欲もなく、願いもなく、望むものは疾うに忘れたまま戻らない。
 それなら、とユハナは歩きながら指で光を描く。
 空をなぞって、煌めきを繋ぐ。
 其処に描く星座はないけれど、流星になら、なれるかもしれない。
「流れ星は、ここに」
 夜に星が流れる時、人はそこに願いを掛けると云う。
 だからこうして誰かの願いを引っ掛けて、夜の彼方まで流れて行けばいい。
 ユハナが描いていった星の徴は綺羅びやかな尾を引き、星座盤の夜迷宮に確かな軌跡を残してゆく。
 自分が願うことは浮かばないけれど、誰かの心に、ひかりが灯るように。
 けれど、少しだけ。
 ただ、ほんの少しだけ。望みがあるとするなら。
 ――あの人がしあわせであればいい。
 心に描いた錆色の赤と、胸に揺れる祈りの石と。その彩を思ったユハナは天蓋をゆるりと振り仰いだ。
 頭上に見えたのは月を思わせる銀の天球儀。
 くるくると廻るその動きを目で追い、ユハナは胸元に手のひらを乗せた。
 幽かなさびしさには、気付かないふりをして。
 深い海の瞳は心を照らす星を探して、緩やかにそうっと細められた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『宝石人形』

POW   :    【ダブルUC】ジャムバレット+テレポアタック
【宝石弾で対象を攻撃する。また、敵意】を向けた対象に、【瞬間移動で任意の場所に転移し、両手の剣】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    【ダブルUC】テレポアタック+彼岸の投剣
【敵意を向けた対象に、瞬間移動で任意の場所】【に転移し、両手の剣でダメージを与える。】【また、複数人で投擲する様に剣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    【ダブルUC】ジャムバレット+スーサイド・ドール
【宝石弾で対象を攻撃する。また、中枢の宝石】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【瞬間移動後、対象に自爆攻撃を行う状態】に変化させ、殺傷力を増す。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●罪の導きと屑石人形
 星明かりの導きに誘われて。
 光の瞬きを数えて、星座の位置を確かめる。
 穏やかで静かだった星巡りの時間にも、やがて終わりが訪れた。
 
 不意に、からん、と上品に響かせた下駄の音が迷宮内に響く。
 くすくす、くすくす、と続けて幾つもの笑い声がこの場にいる者達の耳に届いた。
「罪を持つ者達よ」
 そんな声を共に現れたのは何体もの宝石人形達だった。おそらく予知されていたサファイヤの配下として、そしてその尖兵として先に此処に訪れたのだろう。
 彼女達の胸元には宝石が宿っていた。
 その石は輝きが低く、周囲に浮かぶ星彩を反射する光も薄い。それゆえだろうか、彼女達には明確な個というものが見えなかった。
「皆、頭を垂れて一列に並べ。サファイヤ様に裁かれる為に――」
 有無を言わさず命じるかのような鋭い口調で宝石人形達は猟兵に言い放つ。
 だが、誰もその言葉に従うようなことはしない。
「そう、その心算なら……」
「多少痛めつけてもいいとサファイヤ様は云っていた」
 屑石人形達は猟兵を見据え、各々に両手の剣を抜き放って身構えた。おそらく此方を攻撃するつもりだろう。
 まもなくサファイヤの宝石人形が訪れるというならば、彼女達を先に倒してしまうべきだ。そのように感じ取った猟兵達も其々に身構える。
 そして、戦いの幕はあがってゆく。
 
楠樹・誠司
輪廻の巡りから外れし者
なればこそ、一思いに斬り伏せるが情けと云ふものでせう
しかし多勢に無勢となれば
此方も手数を増やすが得策でありませう

懐に隠し持っていた残月を取り出し
ヒトの耳には届かぬ音色を奏で

――出でませ、出でませ
蠱毒の底より生まれ出づるもの
『くくり』。我が霊力を対価とし
……ヒト成らざる悪鬼、喰らい尽くし給え

蛇の如く長い胴体をくねらせて
自爆せんとする宝石人形達へ喰らいつく狗神を見届けるより早く抜刀
最も近い個体へ斬り掛かり薙ぎ払う
攻撃優先順は残HP低>前衛>後衛

うつくしき者達よ
貴女方に私の罪は裁けますまい
私は、……余りに長く生き過ぎた

星々の導きに満たされた此の場所を
決して血で穢させは致しませぬ



●人形と光
 災魔、鬼、邪神に魑魅魍魎。
 幾多の呼名は有れど、総てに共通するのは輪廻の巡りから外れし者だと云う事。
 よく識る影朧とは違う。されど何処か似た魂や、在り方を抱いているかのようにも感じられる人形の災魔達。
「なればこそ、一思いに斬り伏せるが情けと云ふものでせう」
 其れ等を見据え、誠司は太刀に手を掛けて抜き放とうとする。僅かに刃を見せた澄清の名を冠する刀身。それが周囲の星彩を反射して鈍く煌めく。
 だが、多勢に無勢となれば此方も手数を増やすが得策。
 刃よりも此方が佳いと察した誠司は緩く首を振り、懐に隠し持っていた残月を取り出した。其れは月光を宿す銀笛。
 其処からヒトの耳には届かぬ音色を紡ぎ、誠司は狗神を召来してゆく。
 ――出でませ、出でませ。
 蠱毒の底より生まれ出づるもの、『くくり』
 その名を喚べば彼の傍に炎が渦巻きはじめ、焔を纏った狗神が顕現した。
 すると此方に気付いた宝石人形が、まあ、と言葉を落とす。
「犬畜生を呼ぶなど下等な……」
 そして、宝石人形は誠司に向かって宝石弾を解き放った。それだけではなく、弾を追い越すが如き疾さで此方に転移してきたではないか。
 されど誠司は極めて冷静に、くくりに告げる。
「我が霊力を対価とし……ヒト成らざる悪鬼、喰らい尽くし給え」
 刹那、蛇の如く長い胴体をくねらせた狗神が咆哮をあげるように牙を剥き、自爆せんとして近付く宝石人形達へ喰らいついてゆく。
 誠司は自身も、その狗神を見届けるより早く澄清を抜刀した。
 狙うのはくくりが狙う個体とは別の人形。
 星迷宮の光を映した刃が閃いた瞬間、振り下ろされた斬撃が人形を穿つ。側方でくくりが喰らいついた人形が爆発した。
 其れに怯むことなく、誠司は目の前の敵を斬り伏せ自爆を防ぐ。
 斬った人形の腕と足が星座盤の床に転がり落ちる様を見遣り、誠司は静かに告げる。
「うつくしき者達よ」
「……、おの、れ……サファイヤ様のご命令が、あるというのに……」
 呼びかけた声に人形が弱々しい言葉を返した。
 主である青玉の名を呼んだ人形は動けずにいる。瀕死とも呼べる状態だと云うのに、未だ此方の罪を暴こうと狙っているのだろうか。
「貴女方に私の罪は裁けますまい。私は、……余りに長く生き過ぎた」
 くくり、と誠司がその名を紡げば、狗神が蛇の如く人形を取り巻いた。そして誠司は地を蹴り、瞬きすら赦さぬ程の疾さで魔を斷つ刄を振り下ろす。
 迸る一閃。
 そして、人形はその場に崩れ落ちた。
「星々の導きに満たされた此の場所を決して、血で穢させは致しませぬ」
 屑石の人形達が骸の海に還っていく。
 その様を見送り乍ら、誠司は懐く思いを言の葉に変えた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルネ・プロスト
以前別のサファイアと戦ったのも、こんな星に満ちた迷宮だったっけ
それにその自分達には罪がないとでも言わんばかりの口ぶり
サファイアの配下らしいといえばらしいか
でも、ここで裁かれるべきは先に手を出した君達の方だよ

それじゃ、いつもの前口上だ
君達を壊し(弔い)に来たよ

人形達は死霊憑依&自律行動
森の友達は敵の転移と自爆を警戒
駒盤遊戯は森の友達と連携して転移した敵を対処

開幕UC
ポーン8体は上空から味方の行動に合わせて援護射撃と敵の行動に合わせて乱れ撃ちによる行動妨害
ビショップ2体はオーラ防御によるルネの防護と雷撃魔法(属性&マヒ攻撃)による攻撃
ルーク2体は盾受けで味方の護衛、転移した敵は盾で遠くに殴り飛ばす



●星座と駒の遊戯盤
 確か以前、訪れたのも星に満ちた迷宮だった。
 ルネ・プロスト(人形王国・f21741)は嘗ての戦いを思い返しながら、目の前に立ち塞がる宝石人形を軽く見遣る。
「罪を持つ者達よ」
 すると彼女達は此方にそう呼びかけてきた。
 まるで自分達には罪がないとでも言わんばかりの口ぶりだと感じ、ルネはサファイアの配下らしいといえばらしいと肩を竦める。
 罪がない者などいない。
 きっとそれは自分自身も含めての事実だ。
「でも、ここで裁かれるべきは先に手を出した君達の方だよ」
 ルネは自らが使役する人形達に死霊を憑依させ、自律行動をさせてゆく。そして宝石人形に宣言するのは、いつもの前口上。
「――君達を壊しに来たよ」
 それは弔いの意味も併せ持つ言葉だ。
 ルネは自らが森の友達と呼ぶ動物人形達に敵の転移と自爆を警戒させ、駒盤遊戯の騎士団達には森の友達と連携するよう命じる。
 そして、動き出した宝石人形が転移した瞬間。
 森の友達が騎士に合図を送り、その転移先に駆けた騎士が武器を振り下ろした。
 確かな一撃が敵を穿ち、敵を揺らがせる。
 その間にルネ自身も力を紡いだ。
「……真の姿を見せることを許すよ、軽装歩兵。君達を侮ったこと、存分に後悔させてあげよう。さぁ、変身――プロモーションだ!」
 その言葉と共に八体のポーンがそれぞれ麗しい姫騎士の姿に変身する。
 魔法剣と化したポーンの銃剣が的に差し向けられ、その身から溢れ出る膨大な魔力が戦場に広がった。
 そのまま上空から援護射撃を行う姫騎士達は、ルネ達に迫ろうとする敵を妨害する形で乱れ撃ちを行っていく。
 そしてビショップ二体はオーラの防御陣を展開させることによってルネの防護を担い、雷撃魔法による攻撃で敵を穿った。
 更にルーク達は転移してきた宝石人形の自爆を受けるべく盾を掲げる。
「……我らと共に散れ」
 敵は騎士ごと自爆に巻き込もうと狙い、吶喊した。
 刹那に響く爆発音。更に爆風が辺りに迸った。だが、ルーク達は見事にその衝撃を防ぎきり、揺らいだ宝石人形を盾で以て遠くに殴り飛ばした。
 ぐしゃり、と人形の身体が崩れ落ちる。
 他にも迫り来る敵は居たが、ルネは何の心配も懸念も抱いていなかった。
「何体でもおいで。全て葬ってあげるから」
 ルネの言葉と眼差しはただ真っ直ぐに、斃すべき物へと向けられてゆく。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

サヴァー・リェス
ユーン(f09146)と
アドリブ歓迎

いつもは皆の後をついてゆく
今は私から歩いてゆく
【オーラ防御】を纏い皆に広げ贖罪の途をゆく
媒介道具翳し【衝撃波】で倒せる敵から確実に滅ぼしていく
ユーンの弓を信じるから平気―それは、幸せ
共に重ねた戦場や日常の記憶が【第六感】澄ませ
敵の動き・転移場所や彼の求める私の動きが判るままに注意喚起や行動を

先日から現れる様になったUCの月の魔法使い、愛おしい幻も力をくれている
月光を敵に撃ち降ろし私達を庇い、味方を月光で清かに照らし護りと癒しを広げる
あなたがどこの誰で私の何なのかわからずとも
何もできなくとも大好き
「ありがとう、だいすきよ」
勿論頼り切らず自分で出来る事は全て行う


ユーン・オルタンシア
サヴァー(f02271)と
アドリブ歓迎

サヴァーに応える為UC使用後【援護射撃】
彼女が眼前の敵に集中できる様
僅かの傷もつかぬ様
【視力】活かし彼女と敵の動き【見切り】連携
必要なら【聞き耳】も用い敵の転移予測
弓や剣による光の【属性攻撃】で先手を
彼女の注意喚起に従い迅速に対応
あなたが私を信じて歩み
私もあなたを信じて弓を引く
戦の内に満ち足りて

彼女の幻にも短く礼を
初めて現れた日彼女の喜ぶ涙はそれは尊く
子を慈しむかの愛を幻へ注ぐ姿は見惚れるばかり
「想いとは素晴らしいものですね、サヴァー」
目細め一矢を放つ
これ程清らな夢紡ぐ彼女の言う罪とは
真に罪としても深い理由があると思え
それをこそ取り戻せる様【祈り】また一矢



●月はひかり、風はうたう
 静謐な世界に響く無情な声。
 罪を暴く為に並べと告げた宝石人形達に明確な感情は見えない。
 サヴァーは敵を前にして身構え、ユーンも人形を見据えて幾度か瞼を瞬かせた。
「さて……如何しましょうか」
 ユーンの瞳の色が不可思議に揺らめき変化していく。その間、サヴァーは宝石人形達に向けて一歩を踏み出していた。
「私が、行くわ」
 ――いつもは皆の後をついてゆく。けれど今は、私から歩いてゆく。
 防護の魔力を纏い、サヴァーは贖罪の途を進む。
 その力は、皆を、そしてユーンを守ると決めた意志に呼応するように広がっていった。媒介道具であるスマッジングフェザーを翳したサヴァー。彼女が解放していく衝撃波は宝石人形達を穿っていく。
 そして、其処にユーンが放つ援護射撃の一閃が重なった。
「サヴァー、無理はしすぎないでくださいね」
「ええ、大丈夫よユーン」
 互いの名を呼び合い、戦いへの意志を確かめる二人。
 ユーンは彼女が眼前の敵に集中できるよう、そして僅かの傷もつかぬようにしかと守る誓いを立てていた。
 持ち前の視力と聴力を活かし、サヴァーと敵が織り成す動きを見切り、弓を引く。
 ユーンの一撃はサヴァーの放つ衝撃と見事に調和し、まるで響かせる風の音で歌を奏でているかのように巡った。
 それだからだろうか。前線に出ているサヴァーの裡には恐怖などはなかった。
 ――ユーンの弓を信じているから、平気。
 共に重ねた戦場や、日常の記憶。それらが感覚を研ぎ澄ませてくれる。
 それはきっと、幸せとも呼ぶのだろうとサヴァーは感じていた。
 戦うサヴァーの背を見守り、同時に護っているユーンもまた、戦いの中に不思議な感覚をおぼえていた。
 次第に戦いの呼吸が、テンポが、そして心までもが合わさっていくようだ。
 ――あなたが私を信じて歩み、私もあなたを信じて弓を引く。
 戦の中だというのに、ユーンの心が満ち足りていく。
 その間も宝石人形は両手の剣を用いてサヴァーを切り裂こうと動き続けていた。だが、今の彼女の前には月光の人影が付いている。
 それは先日から現れるようになった月の魔法使い。
 愛おしい幻もまた、力をくれている。
 月光を敵に撃ち降ろしてサヴァー達を庇う魔法使いは、月光で清かに照らし護りと癒しを広げてゆく。
 信じ続ければ月の人はずっと、自分や皆を守ってくれる。
 あなたがどこの誰で私の何なのかわからずとも、何もできなくとも大好き。
「ありがとう、だいすきよ」
 そう感じたサヴァーは影に告げ、自らも出来得る限りの力を揮っていく。
 サヴァーの姿を瞳に映し続けるユーンはふと、影が初めて現れた日の彼女の喜ぶ涙を思い出していた。
 それは尊く、子を慈しむかの愛を幻へ注ぐ姿は見惚れるばかり。
「想いとは素晴らしいものですね、サヴァー」
 先程、彼女から零れ落ちた言葉はユーンにとっても快いと感じられた。月光と共に前に立つサヴァーの背を、想いを、自分も支えたい。
 湧き起こる強い思いを抱いたユーンは目を細め、更なる一矢を放つ。
 これほど清らかな夢を紡ぐ彼女の云う、罪とは――。
 サヴァーが星座盤の路で語っていたことを思い返し、ユーンは僅かに俯く。
 されど、真に罪としても深い理由がある。
 それをこそ取り戻せるよう祈ったユーンは再び聖樹の弓を引き絞った。解き放たれる月の光と、それを反射して煌めく神秘の矢。
 解き放たれる力は重なり、罪を問う宝石人形達を次々と穿っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クールナイフ・ギルクルス
仲間とこなす依頼での私の役目は斥侯だった
独りで動くようになって、さらにその重要性を感る
情報は武器

闇に紛れ気配を消し
敵の数、位置、動きを見極める
数が多いなら囲まれたら不利
ならば確実に一撃で仕留める

数は多くとも種は同じ
ならば弱点も似た場所でしょう

猟兵の仕事は冒険者の依頼と同じ
誰かが苦しむから、困るから
んな事はどうでもいい
私にとっては金を得るための手段なだけ

じじいに――トグに示された道を進んでいるだけ
名の通りに進め、と

私にとってどうでもいい存在に向ける敵意などない
あるのは請け負った依頼を遂行することだけ

外套を外しても色は闇
動き出したら止まらない
宝石に黒い刃を突き立てて
親玉が来る前に掃除をしましょう



●闇に沈む星
 星の煌めきは幽かなはずなのに、何故か眩しい。
 宝石人形達が現れた星座盤の夜迷宮の最中、クールナイフ・ギルクルス(手癖の悪い盗賊・f02662)は闇に紛れ、身を隠していた。
 息をひそめて窺う先には戦う猟兵達の姿が見える。
 クールナイフはただ様子を確かめているだけではない。嘗て仲間とこなす依頼での自分の役目は斥侯だった。
 今こうして独りで動くようになって、更にその重要性を知った。
 情報は武器。
 今此処に何体の敵が居るのか。どの位置や場所に点在しているのか。
 動きを見極めることこそ勝利に繋がる道だ。
 数が多いならば転移の力で囲まれることになるだろう。不利な状況になれば、強敵が訪れる前に手傷を負いすぎる可能性も高まる。
 ならば、確実に一撃で仕留めるのみ。
(数は多くとも種は同じ。ならば、弱点も似た場所でしょう)
 冷静に分析を行いながら、クールナイフはダガーを握る。
 猟兵の仕事は冒険者の依頼と同じ。誰かが苦しむから、困るから。なんて、そんな事はどうでもいい。
 自分にとっては金を得るための手段なだけ。
(じじいに……トグに――)
 彼に示された道を進んでいるだけ。名の通りに進め、と。
 懐かしい顔が裡に過ぎり、クールナイフは軽く首を振った。感傷めいた思いは今の状況では捨て置くものだ。
 その間にも宝石人形はくすくすと笑い、他の猟兵達へと吶喊していっている。
 どうやら彼女達は互いに連携し、複数人で剣を投擲する戦法を取っているようだ。成程、と感心しつつもクールナイフは敵の動きを見極めた。
 確かに複数での剣攻撃は厄介だ。
 だが、剣を投げる際に僅かな隙が出来ることも読み取れた。
 クールナイフにとってどうでもいい存在に向ける敵意などない。あるのは請け負った依頼を遂行することだけ。
 そして、彼は狙いを定めた敵に意識を集中させる。
 数秒。数拍。瞬刻。
 ――今だ。
 そう感じた瞬間、クールナイフは一気に外套を脱いで宙に放り投げた。闇色にひらめくそれに人形達の視線が向いた、刹那。
 その時には既に彼は人形の前に回り込み、一体目の敵の胸に黒刃を突き立てていた。胸の屑石が真っ二つに割れたかと思った時にはもう次の一体へ。
 二体の敵が同時に迫ってきていたが、クールナイフはダガーを横に薙いだ。刃の切先は正確無比に両方の人形の胸石を斬り裂き、其処に罅を刻む。
 動き出したら止まらない。
 怯んだ敵の宝石へと瞬時に、順番に黒い刃を突き立てていく。
 やがて宝石人形達はその場に崩れ落ちる。散らばる屑石の欠片が、迷宮に浮かぶ星彩を反射してきらきらと燐いていた。
 親玉が来るまではまだ少しあるだろうか。顔を上げたクールナイフは星のように煌めく欠片から目を逸らし、次なる標的を探すべく闇に身を潜めた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

葉月・零
アドリブ、共闘歓迎

さて、綺麗で楽しい場所はちゃんと護らせてもらうよ

とりあえずサファイアさま、とやらにお目にかかるにはここを乗り切らなきゃダメかぁ

テレポートとかすごいめんどくさそうだよなぁ……

それなら、こっちは数で勝負だ!
リーフ、力を貸してね
氷の精霊呼び出して
たくさんの氷の矢を放とう

流石にこれだけの量あれば数減らさないかな
それに出てくる場所にうまく矢が向けばラッキーだよね
猟兵の皆のアシストにも慣れば幸い
少なくとも目眩しにはなると良いけど

あ、リーフ猟兵のみんなには当てないようにね

ナハトは危ないから俺の近くにいてね

思い当たる罪……ってのはなくはないんだけど
覚悟は決めておかなきゃね


パウル・ブラフマン
なーるほど!
合流されたら厄介そうだし
先にこのコ達を全滅させといた方が良さそうだね☆

行くよGlanz―UC発動!
オレの前に瞬間移動してきた個体相手には
展開させたKrakeで
即【カウンター】の【零距離射撃】をお見舞いするね☆
投擲されてきた剣は【野生の勘】で【見切り】つつ
壁面【ダッシュ】からの大【ジャンプ】等
日頃鍛えた【運転】テクを駆使して避けまくっちゃうぞ!

他の猟兵さんのピンチ時はそっこーフォロー!
Glanzの前輪をぶつけて【なぎ払い】をしたり
車体を盾にして【かばう】ようにしたりとかね♪
必要に応じて、後部座席へご案内したいな。
機動マシマシなら任せて☆しっかり掴まってて!

※絡み&同乗&アドリブ歓迎!



●駆ける流星の如く
 星座盤のフロアに現れた人形達の数は多い。
 それらが猟兵達に其々に襲いかかって行く様を見渡し、零は思いを言葉に変えた。
「さて、綺麗で楽しい場所はちゃんと護らせてもらうよ」
 自分にも向かってくる宝石人形がいると気付いて零は身構える。それらはテレポートを行い、見る間に零に近付いてきた。
 だが、零は敵が迫りくる前に行動に出る。
「リーフ、力を貸してね」
 氷の精霊を呼び出した彼は数多の氷の矢を作り出し、一気に解き放つ。
 宝石人形はそれを剣で弾く為に構え、身を翻した。何本もの矢が落とされたが零は怯むことなく次の一手を放った。
 敵が厄介ならば此方も数で勝負だ。
 零はリーフに願い、更なる攻撃を紡ぐように視線を送る。
「とりあえずサファイヤさま、とやらにお目にかかるにはここを乗り切らなきゃダメかぁ……と、あの動きって――」
 テレポートだ、と気付いた時にはもう零の眼前に敵が迫ってきていた。
「木端微塵にしてあげる」
 くすくすと笑った人形は自爆を行う心算だ。
 このままでは巻き込まれ、言葉通りの事態になってしまう。されど避けられない。ナハトを庇うように強く抱いた零が痛みと衝撃を覚悟した、そのとき。
 白銀の宇宙バイクが戦場を駆けた。
「危ない!」
 同時に誰かの声が響いたと感じた刹那、零の身体が宙に浮く。
 正確には、引き上げられた。
 少し離れたところ。つまり、先程まで零が立っていた場所で人形が爆発する。
 爆風の残滓が肌をちりちりと焦がす中、零は自分の危機を救ってくれたバイク乗りの誰か――パウルの顔を見上げた。
「あれ……?」
「危機一髪ってところかな? ども! エイリアンツアーズでっす☆」
 戸惑う零にパウルはいつもの調子で笑いかける。
 先程の迷宮見学の間、敢えて声を潜めていた分だけ明るく元気よくびしっと決めたパウル。彼は今、己の触手を使って零を抱えたまま、搭乗する白銀の宇宙バイクで戦場を駆け抜けていた。
「ピンチ時はそっこーフォロー! それが助け合いだからね!」
「ありがとう……」
 助かったよ、と告げた零はすぐに体勢を立て直し、そのままパウルの白銀のバイクの後部座席へと攀じ登った。抱えられた状態ではお互いに戦い辛いと感じた事と、ナハトを無事な場所に置いておきたかったゆえの行動だ。
 するとパウルは口許を緩めて問う。
「おっと、このまま乗ってく? ここなら機動マシマシで援護できるよ」
「そうしようかな。あの自爆を避けるのは難しそうだから……」
「それなら任せて☆ 飛ばすからしっかり掴まっててね!」
 殆ど成り行きではあったが、零はパウルが運転する宇宙バイクの同乗者となった。歓迎だよ、と伝えたパウルはクラッチを握って駆動音を響かせる。
 武骨なフォルムに艶やかな蒼き光線を纏う宇宙バイク。それは星座の世界を航るかのように、鋭く疾く駆けていく。
 その後部座席で零は意識を集中させる。
「リーフ、もう一度たくさんの矢を放てる?」
 猟兵のみんなには当てないようにね、と氷の精霊に告げた零は戦場の様子を確かめる。其処から狙うのは誰かに向かっている個体。
 またあの自爆攻撃が行われるのならば止めておかなければならない。
「――サファイヤ様が来るまで大人しくしていて」
 宝石人形はテレポートと剣を駆使しながら猟兵達に襲いかかっていく。其処に鋭利な氷の矢が降り注ぎ、敵を貫いていった。
 パウルは零が攻撃を行いやすいようにバイクを操りつつ敵の様子を窺う。
「なーるほど! サファイヤ様か」
 青玉の宝石に仕えているらしき屑石人形の言葉を聞き、パウルは軽く頷いた。人形達が口にしている通り、間もなく親玉が訪れるのだろう。
「合流されたら厄介そうだし、先にこのコ達を全滅させといた方が良さそうだね☆」
「容赦なく、行こう」
 パウルに同意を示し、零は魔氷の矢を絶え間なく降り注がせていった。
 そしてパウルも触手の表面に装着した固定砲台で敵を次々と穿っている。剣が投擲されれば触手で弾き返し、零が狙いを定められるよう援護していく。
 飛ぶ魔氷の矢。疾走る蒼の光線。
 似て非なる青色を宿す二つの閃きはまるで夜を裂く流星のようだ。
 そんな中、宝石人形が大きく揺らいだ。
「よーし、フィニッシュだ!」
 パウルは好機を見出し、壁面を駆け上がるようにダッシュした。そして其処からの大ジャンプで以て距離を詰め、一気にバイクの前輪で敵を巻き込む。
 今だよ、と告げられたパウルの言葉に反応し、零も氷矢をひといきに放った。
 刹那、貫かれる胸の宝石。
 轢かれて崩れ落ちる屑石人形は戦う力を失い、ぴくりとも動かなくなる。やったね、と笑むパウルに頷いた零はそっとバイクから降りつつ周囲を見渡した。
 宝石人形は次々と倒れていた。
 パウルも順調だと感じながら辺りを眺め、警戒態勢に入っていく。
 真実のサファイヤ。
 それは罪を暴く為に動く人形だという。
「思い当たる罪……ってのはなくはないんだけど、覚悟は決めておかなきゃね」
 零が落とした言葉はただ静かに、宝石が煌めく星の戦場に響いていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
🐟櫻と人魚
アドリブ歓迎

たくさん星座が見つかって瞬く君の笑顔に安堵していた、けれど
きっとこれはまだはじまりだ
罪はないと言い放つ君が罪を自覚してしまったら?
僕はそれが怖いんだ
僕の罪は
明確だけど

櫻宵はそれでも優しくて僕を励ましてくれる
ならば、僕も
君が傷つかぬよう守ろう
この歌で

どんなに綺麗な宝石も、君には叶わないよ
水泡のオーラ防御で君を包んで弾から斬撃から櫻を守る
歌唱にこめるのは君への鼓舞の気持ちだ
櫻宵の背中は僕が守るんだから
瞬間移動してくるの…は面倒だ
誘惑をとかして歌う「魅惑の歌」
罪も何もかも蕩かせてとめるよ
君の刃がしっかりと届くようにね

僕が不安がれば、櫻宵が心配してしまう
大丈夫、きっと
僕らは――


誘名・櫻宵
🌸櫻と人魚
アドリブ歓迎

せっかく変わった星座をたくさん見つけて楽しんでいたのに……水を差すなんて
それこそ罪ではなくて?
あたしの罪、など……そんなもの
無いもの!

リル
そんな顔しないの
大丈夫よ……あなたはあたしが守るから
綺麗な宝石を砕き人形の首を刈るのも楽しいかしら
あの宝石が核かしらね!
刀抜き放ちなぎ払い、斬り裂いて
衝撃波を放ち間合いをとって不意をつかれないよう注意ね
宝石弾ごとなぎ払う
2回攻撃の斬撃に這わせるのは生命力吸収の呪詛
蝕ませてもらうわ
桜花のオーラ防御で攻撃いなし見切り躱すわ
瞬間移動してきたなら都合がいいか
その空間ごと断ち斬ってあげる
怪力のせて放つ「絶華」

不安がるリルを
早く安心させてあげたい



●あなたの歌とあたしの刃
 たくさん星座が見つかって瞬く君の笑顔。
 一緒なら楽しくて、嬉しくて、幸せな気分になれるから安堵していた。
 けれど、とリルは俯く。
 星座盤の迷宮内には宝石人形達が次々と現れはじめていた。櫻宵は刃を抜き放ち、それらへと鋭くも艷やかな眼差しを向けていた。
「せっかく変わった星座をたくさん見つけて楽しんでいたのに……水を差すなんて、それこそ罪ではなくて?」
「吠えるな、罪を持つ者達よ」
 対する人形は虚ろな声と言葉で言い返す。その後ろに並ぶ別の人形達はくすくすと笑い続けている。
 櫻宵は頭を振り、そう呼ばれる筋合いなどないのだと断じた。
「あたしの罪、など……そんなもの、無いもの!」
「櫻宵……」
 リルは彼の名を呼び、自分の掌を強く握り締める。
 ――きっとこれはまだはじまりだ。
 罪はないと言い放つ櫻宵。そんな君が、罪を自覚してしまったら?
 眼下に煌めく星座盤の光が妙に目映い。この光が暴かれた罪を照らしてしまったらと思うと怖くて仕方がなくなる。
 僕の罪は、明確だけど。
 言葉にしない思いを懐くリルの薄花桜の眸が僅かに曇っていた。
 そのことに気が付いた櫻宵は傍に寄り添うようにして身構え、優しく微笑む。
「そんな顔しないの、リル」
 屠桜の紅い刃を敵に差し向けた櫻宵はそっと言葉を続けた。
「大丈夫よ……あなたはあたしが守るから」
「うん、僕も」
 君が傷つかぬよう守ろう。
 この歌で。
 櫻宵が励ましてくれる声に頷き、リルは自分もそうありたいと感じた。懸念を彼に告げることは出来なかったが、今は互いに守り合えればそれでいい。
 そして、リルは力を紡ぐ。
「どんなに綺麗な宝石も、君には叶わないよ」
 煌めく宝石人形に目を向けながら、リルは大好きな櫻宵を想う。
 水泡でふわりと彼を包めば敵から放たれた宝石弾が弾かれた。しかし、すぐに人形は転移の力を使って櫻宵へと迫る。
 だが、櫻宵とてその動きを読んでいないわけではなかった。眼前に現れた人形に怯むことなく、彼は血桜の太刀を振り上げる。
「綺麗な宝石を砕いて、人形の首を刈るのも楽しいかしら」
 逆に至近距離まで近付いてきてくれるなら駆ける手間も省ける。櫻宵は胸の宝石が核だと察し、刃を横薙ぎに振るった。
 一閃は正確に核を斬り裂き、真二つに砕く。されど櫻宵の手がそれで止まるはずがない。刃を切り返した彼は二の字を描くように宝石人形を更に薙ぐ。
 刹那、その首が乾いた音を立てて転げ落ちた。
 これで一体。
 リルは瞬く間に敵を屠った櫻宵の姿に双眸を細める。そして次に迫りくる人形の気配に気付き、リルも打って出た。
「櫻宵の背中は僕が守るんだから」
 思いを込めた言葉の後、戦場に響かせていくのは澄み切った透徹の歌声。
 その唱にこめるのは君への鼓舞の気持ち。
 リルの澄み渡った聲を聴き、櫻宵も笑みを深める。宝石人形を見据えた櫻宵は即座に衝撃波を放ち、間合いを取った。
 次の瞬間、宝石弾が迸ったが屠桜で衝撃ごと薙ぎ払う。
 だが、宝石人形は此方を嘲笑うかのように転移の力を繰り返した。その動きが厄介だと感じたリルは更に歌に力を籠める。
 誘惑をとかして謳い上げる魅惑の歌は人形の耳にも届く。
 罪も何もかも蕩かせてとめる。
 守ると告げてくれる、君の刃がしっかりと届くように――。
 願うリルの聲は相手の魂を惹き付けた。かくん、と操糸が切れたかのように動きを止めた人形は人魚の歌に聞き入っているかのようだ。
 その機を狙って敵を捉えた櫻宵は太刀を真正面から差し向けた。
 気丈に、そして麗しく歌ってはいてもリルの内心には未だ不安が残っている。それはいつも歌を聞いている櫻宵だからこそ解る機微だ。早く安心させてあげたい、と思う一心で櫻宵は駆ける。そして、刃に宿すのは呪詛。
「蝕ませてもらうわ」
 人形が立つ空間ごと断ち斬るが如く、渾身の力を乗せて放つ絶華。敢えて斬りではなく突きで――鋭い一閃は人形の胸の核を粉々に砕く。
 硬質な音が響いた後、刃は引き抜かれる。同時に人形が宿していた宝石の破片が星色の空間に散らばった。
 煌めきを宿して散る欠片。
 それすらもまるで罪を導く兆しのように思えてしまう。しかし、リルは櫻宵が心配してくれているのだということにも気付いていた。
 だからもう、こんな不安など押し込めてしまおうと思った。
「大丈夫、きっと僕らは――」
 その先の言葉は紡がぬままリルは尾鰭をふわりと揺らがせる。月に踊るヴェールを思わせる尾鰭を見つめ、櫻宵も眸を細めた。
 罪が巡れば、罰も己に還る。
 そのときが刻一刻と近付いていることには、気付かぬふりをしながら――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火神・五劫
マリス(f03202)と

尖兵のお出ましか、数が多いな
(マリスの様子から戦おうとする意を汲み取り)
…無茶はするなよ

『オーラ防御』は常に展開
攻撃は火影にて広範囲の『薙ぎ払い』中心に

敵の宝石弾は『武器受け』で弾き
剣攻撃は『第六感』で察知して『カウンター』をお見舞い

「…マリス!」
少し前に出すぎたか
駆け寄ろうとするも、彼女に制される
可能な限りその意志は尊重する、が

「この馬鹿!少しは自分の身を労われ!」
俺の傷など構うな、もう放っておけん
負傷を厭わずマリスを『かばう』
傷口からの【ブレイズフレイム】で
敵を焼き尽くしながらな

「言っただろう、お前を守ると」
手の届くものは必ず守る
それが、俺の罪の意識から来る想いでも


マリス・ステラ
五劫(f14941)と参加

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光は、星の加護である輝きと煌めき

弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く

しかし、事もなげに弾き返される
敵の攻撃は全く防げずに切り裂かれて血飛沫が舞う

「……大丈夫です」

振り返る五劫を制し戦闘を継続
『カウンター』からの投げで対応
が、ダメージを与えられないと気付かれると強引な力押しに圧倒されて吹き飛ばされる

五劫、自身が負傷時に【不思議な星】を使用

回復力こそ変わらないが、疲労は蓄積して消耗
体力の低下後はサンドバッグ状態になる
派手なダメージ描写を歓迎

「囮くらいにはなります……」

非情な現実にも立ち上がり前を向く



●星と焔
「――主よ、憐れみたまえ」
 宝石人形が現れる最中、マリスは両手を重ねて祈りを捧げた。
 五劫は彼女の前に立ち塞がるように布陣して敵の数を目視で数えていく。
「尖兵のお出ましか、数が多いな」
 猟兵も揃っているとはいえど相手は侮れない。オーラの防御を張り巡らせた五劫は、自分の後方で祈るマリスにちらと目を向けた。
 星辰の片目に光が灯る。
 マリスの全身から放たれる光は星の加護である輝きと煌めき。だが、その光は普段よりも妙に弱々しく思えた。
 あの話を聞いていたからだろうか、今のマリスには光が足りない。
 されど彼女の様子から戦おうとする意を汲み取り、五劫は静かに声を掛けた。
「……無茶はするなよ」
「……大丈夫です」
 彼の声に答えたマリスは星屑の弓を構える。
 火影を抜き放った五劫はその言葉に信頼を宿し、一気に床を蹴り上げた。宝石人形が動く前に断ち切る。転移を行う厄介な敵相手にはそれが良いだろう。
 五劫が刃を振り下ろそおうと狙う中、マリスは援護射撃を行った。放つ矢は流星の如く星座の迷宮を翔け、人形の腕を貫く――と思いきや、事もなげに弾き返される。
 だが、それも目眩まし程度にはなった。
 五劫がその間に敵との距離を詰め、ひといきに宝石の核を斬り裂いたからだ。
 しかし敵の数は多い。
 一体を倒したとてまた別の一体が此方に向かってくるだけ。そして或る一体が瞬時にテレポートをしながら宝石弾を撃ち放つ。
 はっとしたマリスは咄嗟に身構えたが、今日は星の防御陣が巡らない。
 全く防ぐことが出来ず、穿ち貫かれたところに別の個体が現れ、マリスに刃を振り下ろした。斬り裂かれたことで激しい血飛沫が舞う。
「……マリス!」
 その様子に気が付いた五劫が振り返った。
 少し前に出すぎたかと察して駆け寄ろうとする五劫。だが、マリスは彼を制して戦闘を継続した。星の加護が使えぬのならば、と近付いてきた人形の服を掴んだマリスは相手を投げ飛ばす。しかし其処にダメージは発生しない。
「ふふ、無様なやつ」
 宝石人形はくすりと笑み、身を翻しながらマリスに反撃を放った。強引な力押しに圧倒され、彼女はそのまま敵の剣圧に吹き飛ばされる。
 五劫とて可能な限りその意志は尊重したかった。だが、マリスがああまで言われていては黙ってなどいられない。
 五劫はマリスを狙う宝石人形を蹴散らすべく、自らの身体を斬り裂く。
 其処から地獄の炎を解き放った彼は群がろうとする宝石人形を一気に焼き払った。屑石が燃えていく中、マリスはよろめきながら祈る。
 不思議な星の力は癒やしとなり、幽かな光を周囲に宿していった。
「この馬鹿! 少しは自分の身を労われ!」
 俺の傷など構うな、と五劫が強く告げるもマリスは首を横に振る。
「いいえ、力になれないのでしたら囮くらいにはなります……」
 するとマリスが弱っていることを察したのか、宝石人形達が集ってきた。捕らえよう、甚振ろう、腕を折ろう、などと人形達は口々に好きなことを言っている。
 来るな、と火影を振るった五劫だが、テレポートを使った敵は彼を擦り抜けてマリスを取り囲んでしまった。
「この――!」
 五劫はそのうち一体を斬り伏せたが、他の人形はマリスを標的とし続けている。
 宝石弾がマリスの腕を穿ち、鋭い痛みが巡った。振り下ろされた剣がその糸髪を裂いて散らし、彼女の身にも深い傷を刻む。散った血も床を汚しながら広がっていく。
 太刀打ちが出来ない。それは非情な現実だ。
 腕を押さえたマリスは膝を付きそうになりながらも、前を向いた。
「……、私は――」
 彼女が何かの言葉を紡ぎかけた中、宝石人形の刃が無慈悲に振り下ろされる。だが、その瞬間に人形が焔に包まれて倒れた。
「マリスから離れろ!」
 それは阻む敵を散らした五劫が放った地獄の炎だ。マリスと人形の間に割り込むように駆けた彼は剣を受け止め、次々と敵を焼き尽くしていく。
「どうして……」
「言っただろう、お前を守ると」
 囮になると言ったはずです、と見上げたマリスに対して五劫は力強く告げた。
 手の届くものは必ず守る。
 それがたとえ、己の罪の意識から来る想いでも――。
「これ以上、お前に無茶はさせん」
 有無を言わせぬ勢いで五劫はマリスの前に立ち、更に激しい地獄の焔を迸らせていく。マリスはそんな彼の言葉を聞き、そっと目を閉じた。
 ただ、祈りを捧げる。
 幽かでも良い。星に思いが届くように。彼の背を少しでも支えられるように。
 そして、戦いは巡ってゆく。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ミラリア・レリクストゥラ
はぁ、一時はどうなる事かと……あら。

【WIZ】

…事前の忠告…というには些か刺々しい文句ですね。
私、楽しそうな声は好きですが、この笑い声は好きになれそうにありません。
徹底的に、相手を貶める為の笑いなんて――

――と言っても、私は打ち倒す力は持っていないんですが。
皆さんの戦闘が少しでも楽になるような唄、となりますと…

ああ。そういえば、ここは『地下』でしたね?
でしたら、【地母の恵み】はいつも以上に効果が出る筈。
全方位が、大地の中。人によっては、傷口を確認しようとしたらもう消えていた――なんて具合もあるかも。
…私の【宝石の体】だと本当にそうなりそうですね?



●恵みの聲
「はぁ、一時はどうなる事かと……あら」
 纏わりついていた光が離れていったことに安堵したのも束の間。
 ミラリアはフロア内に現れた宝石人形の言葉を聞き、軽く首を傾げた。
 罪を持つ者よ、と呼びかける人形。それはまるでこちらが罪にまみれていると言わんばかりの強い口調だ。
「……事前の忠告……というには些か刺々しい文句ですね」
 ミラリアは肩を落とす。
 くすくすと笑う人形達の声は良いものには思えなかった。あの笑い声はただ、誰かを嘲笑っているだけのものだ。
「私、楽しそうな声は好きですが、この笑い声は好きになれそうにありません」
 ヒトを罪の塊としか見ていない。
 徹底的に、相手を貶める為の笑いなんて――。
 ミラリアは決意にも似た思いを抱き、その双眸に敵である宝石人形を映した。
 反射する瞳に映るのは幾体もの人形が他の猟兵に襲いかかっていく姿だ。このままにはしておけない。そう感じたミラリアは注意深く敵の動きを見つめた。
 自分は打ち倒す力は持っていない。
 だが、戦う仲間を支える力を歌として紡ぐことは出来る。
「皆さんの戦闘が少しでも楽になるような唄、となりますと……」
 ミラリアは後方に下がり、戦う仲間達が見渡せる場所へと身を引いた。それは敵を避けるためだけではなく、傷ついた者を確かめるためでもある。
「ああ。そういえば、ここは地下でしたね?」
 そう、この迷宮はアルダワ魔法学園の地下に広がっている場所だ。
 それならば、とミラリアが歌うのは地母の恵み――ソロ・ヴォカリーズ。
「♪ Ah――」
 その聲は星座盤の迷宮に穏やかな音となって響き渡ってゆく。
 此処は全方位が、大地の中。
 宝石人形に剣で穿たれた者の傷も、宝石弾に貫かれた者の痛みも、歌がすべて癒やしていく。ミラリアの歌に共感しきった者の傷口は確認しようとしたらもう消えていた、なんてことだって起き得る。
 それほどの勢いと効果が迷宮内に廻っていく。
 誰かの為に懸命に歌うミラリア。宝石で構成されたスピネルの身体は今も星色の明かりを反射して煌めき、奇跡のような眩さを作り出していた。
 たとえ誰かが傷付いたとしても、この歌と聲で守ってみせる。
 ――大地よ、元気を分けてください。
 謳うミラリアの声は、皆を優しく支える大地のように戦場に響き続けてゆく。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

朝日奈・祈里
痛めつけられるのは、お前たちのほうな?
長杖【銀絲の檻に囚われの箒星】で人形たちを指し示す
サモン:ハルモニウム!奴らの中核、屑星を砕け!

ふわり、桃色のメッシュが浮き、召喚するのは音を司るハルモニウム
指向性のある音の衝撃は、そのままソニックブームへと成りそれを砕くだろう
蛇を従え、クスクス笑う女精霊ハルモニウムが言う
「行き過ぎた友愛の感情は私の物ヨ」
分かっている
仕事を終えたらさっさと帰れ

石を砕けど、意志は砕けぬ、か
見上げた根性だ
杖を振り回して弱体化した人形を叩き壊していこう
…自爆か、小癪な真似を
良いよ、抱いてやろう
ぼくのかいなで眠れ
他に被害を出させはしない!

屑でも、星になれるなら羨ましい限りだよ



●スーパーノヴァ
 宝石人形の胸に宿る屑石が鈍く光る。
 その輝きが視界に入り、祈里は僅かに目を細めた。笑ったわけでも関心を抱いたわけではない。ただ、ほんの少しだけ目映く見えただけだ。
「痛めつけられるのは、お前たちのほうな?」
 祈里は先程聞いた宝石人形達の言葉を捉え、長杖で敵を指し示す。
 ――サモン:ハルモニウム。
 銀絲の檻に囚われの箒星。その名を冠する杖先に魔力が渦巻いたかと思うと、ふわりと桃色のメッシュが浮きあがった。そして、其処から精霊が顕現する。
「奴らの中核、屑星を砕け!」
 祈里が命じると音を司るハルモニウムがその力を解放した。
 放たれるのは指向性のある音の衝撃。それはそのままソニックブームとも呼べる一閃と成って宝石人形を穿つ。
 衝撃に身を穿たれた敵はよろめきながらも反撃に入り、宝石弾を放ち返すと同時に転移の力を使った。
 祈里のすぐ傍まで人形が迫る。
 だが、続けて放たれたハルモニウムの音が正確無比に相手の胸を貫いた。
 一撃目で罅割れていた核は木端微塵に砕け、その場に破片が散る。蛇を従えた精霊ハルモニウムは祈里に目を向け、クスクスと笑った。
「行き過ぎた友愛の感情は私の物ヨ」
「分かっている。仕事を終えたらさっさと帰れ」
 祈里は掌をひらひらと振り、もういい、と告げて精霊を還す。
 その瞬間、祈里の中から感情が抜け落ちた。それが何であったのかは対価として持ち去られてしまったゆえ、今の祈里には『何か』としか言いようがなかった。
 ただ、喪失感だけが残る。
 そんな祈里の前で宝石人形がよろよろと立ち上がった。核を砕いたはずであるのにまだ動けるようだ。
「サファイヤ様の、ために……」
「石を砕けど、意志は砕けぬ、か。見上げた根性だ」
 譫言のように呟いた声を聞き、祈里は宝石人形を見据える。
 精霊はもう返してしまった。それならば、と祈里は弱体化した人形を叩き壊さんとして杖を振り回す。だが、弱っているとはいえ敵にも攻撃手段がある。
「共に散って」
「……自爆か、小癪な真似を」
 力を振り絞って祈里の眼前まで転移した人形が告げた言葉は不穏だった。其処から次の手を読んだ祈里はどうあっても自爆は避けられぬと判断する。
「良いよ、抱いてやろう」
 ――ぼくのかいなで眠れ。
 敢えて腕を広げ、人形を抱き締めた祈里。それは自分以外に被害を出させはしないと決めたからこその行動だ。
 刹那、ちいさな腕の中で人形が爆ぜた。
 その際に見えた光はまるで超新星のようだった。
 激しい痛みが巡り、幾許か肉も削がれた気がする。だが、何とか耐えた祈里は膝を付きそうになりながらも杖で自分の身を支えた。
「屑でも、星になれるなら……羨ましい限りだよ……」
 荒い息を吐きながら落とした言の葉は、誰にも聞かれることなく戦いの喧噪に紛れて消えていった。何処か遠くで癒しの歌が響いていることに気付いた祈里は体勢を立て直し、星迷宮の天蓋を見上げる。
 まだ戦える。天才だから。そう自分に言い聞かせながら――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

冴島・類
頭を垂れろとは物々しいねえ
うーーん
断る、が答えだ
罪人だとして、君らに裁かれるいわれは無い

こんな美しい場で戦うのは惜しいが
鯉口をきり、駆ける

移動の瞬間が読めぬなら
…いっそ機を作る、誘うかな
投げ剣は、放たれた軌道に薙ぎ払い放ち
衝撃で狙いを逸らす

瓜江手繰って、追いかけ
彼を防御に、自身は攻撃にと言う姿を印象付けさせ
途中、わざと瓜江を自身から少し距離開けさせ
深追いを演出、彼女らが至近で
両手剣で攻撃するのを誘い
来た瞬間、脱力し、受ける

いらっしゃい
左様なら

力をそのまま彼女らに返す
生まれた隙があれば…宝石を貫くよう二回攻撃

見知らぬものの罪を裁くを前にして
楽しそうに笑うもんじゃないよ
まあ…僕に言えた話じゃないか



●割れた宝石
「頭を垂れろとは物々しいねえ」
 宝石人形達から告げられた言葉を思い、類はちいさな溜息をつく。
 うーーん、と暫し考える仕草を見せた彼は一拍置き、屑石を胸に懐く人形に告げる。
「断る」
 それが答えだと断じるように短く、たった一言だけを告げる類。すると類に狙いを定めた宝石人形が剣の切先を差し向けてきた。
 こんな美しい場で戦うのは惜しいが、ならばこそ此処を穢させはしない。類は枯れ尾花の鯉口をきり、駆ける。
「それなら、力尽くでそうさせるだけ」
「罪人だとして、君らに裁かれるいわれは無い」
 互いの眼差しが交差した瞬間、宝石人形がその場から消えた。
 転移だ、と感じた類だが怯みはしない。咄嗟に刃を前に掲げれば、瞬間移動してきた人形の赤い刃が其処に振り下ろされた。
 それを弾き返し、身を翻した類に対して人形は距離を取る為にまた転移する。
 流石にあの移動の瞬間は読めない。
 それならばいっそ機を作り誘うべきか。類は冷静な判断を下しつつ敢えて隙を見せるように立ち回る類は機会を窺った。
 そして、宝石人形の姿が視界から消え去る。
 それと同時に死角だった側面から剣を投げ放とうとする気配が感じられた。
「――そこか」
 放たれた軌道に即座に読んだ類は刃を薙ぎ払い、其処に衝撃を乗せて狙いを逸らす。
 だが、人形の姿がまた消える。
 再びの転移だと察した類は瓜江を手繰りながら素早く後方に下がった。此処まで攻防を繰り返せば出方も徐々に分かってくる。その読み通り、人形はそれまで類が立っていた場所の前にテレポートしてきた。
 其処へ瓜江を向かわせた類。彼を防御に、自分は攻撃に回るのだという姿を印象付けるべく、類はわざと瓜江と自身の距離を開かせる。
 そして人形を追った類は深追いを演出し、相手の攻撃を誘った。
「地に伏せろ」
 冷たく告げた宝石人形の両刃が類に迫る。しかしその瞬間、完全に脱力した類はその攻撃を抵抗することなく受けた。
「いらっしゃい、左様なら」
 かの力をそのまま、彼女らへ。
 瓜江から排出された力の奔流が人形達を貫き、その身を大きく揺らがせる。
 そして――類は枯れ尾花を胸の宝石に突き立てた。途端に、からんと乾いた音がして人形が崩れ落ちる。
「見知らぬものの罪を裁く刻を前にして、楽しそうに笑うもんじゃないよ」
 動かぬ人形を見下ろした類は肩を落とし、刃を鞘に収めた。まだ残っている人形はいるが何れは他の猟兵達に屠られていくだろう。
「まあ……僕に言えた話じゃないか」
 零した言の葉は誰にも届くことなく、戦いの音に紛れて消えていった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

旭・まどか
群れでお出ましのようだ
仕えるものというのはどうしてこうも……
嗚呼、何でもない

お前の仕事は一匹でも多くアレを壊すことだ
解るね?
そのご自慢の爪と牙で、傀儡を海に還しておいで

さぁ、本当は手下だけに働かせたい所だけれど
これだけ量が多いんだ
少しは肉を切らないと、ね

純血が淀むと共に産まれ出る夜のいきものたち
傀儡の相手として醜い其らは、お似合いだろう?

因果が歪んだ者同士
いっそ、通じ合えるものがあるのかもしれないね
なんて

この後のこともある
あまりに失いすぎるのは得策ではないから
引き際は見誤らないように、気をつけておこうか

ねぇ、手を貸して
お前の背の上で、少し休ませてよ



●血の代償
 フロアに現れた宝石人形達はくすくすと笑っていた。
 まどかは傍に灰狼を呼び、群れでお出ましのようだ、と彼女達を一瞥する。
「仕えるものというのはどうしてこうも……嗚呼、何でもない」
 すぐに首を横に振ったまどかは一歩分だけ後ろに下がり、手下に敵を示した。屑石達に差し向けられた指先。その向こう側を灰狼が見据える。
「お前の仕事は一匹でも多くアレを壊すことだ」
 解るね? とまどかが告げれば手下は地を蹴り、一気に駆け出した。それでいいと頷いたまどかは灰狼の背を見送る。
「そのご自慢の爪と牙で、傀儡を海に還しておいで」
 掛けた言葉に呼応するように短く吼えた灰狼は敵に飛びかかった。
 本音を言えば手下だけに働かせたい所だが、宝石人形は数が多い。致し方ないかと肩を竦めたまどかは自らも力を紡ぎはじめた。
「これだけ量が多いんだ。少しは肉を切らないと、ね」
 骨まで断たせるつもりはないけれど、と少しの皮肉を混ぜ込みながらまどかはその身に巡る血を糧としていく。
 純血が淀むと共に産まれ出る夜のいきもの。
 常闇から召喚されたものたちに軽く視線を向け、まどかはそれらを解き放つ。
「傀儡の相手として醜い其らは、お似合いだろう?」
 きっと、因果が歪んだ者同士。
 いっそ互いに通じ合えるものがあるのかもしれない。なんて思いながら、まどかは双眸を鋭く細めた。
 されどこの戦いは前哨戦。失いすぎるのは得策ではない。
「真実、ね」
 罪を暴くという宝石人形に思いを巡らせ、まどかは視線を灰狼に向けた。
 その爪が人形を引き裂いたところへ夜の眷属が迸る。暗闇の中に宝石を沈めるかのように廻った力は次々と屑石達を屠っていった。
 其処には慈悲などない。
 まどかは引き際は見誤らぬよう力を抑え、数体の人形を斃した所で力を解除した。
 其処へ灰狼が駆け、鋭い牙で以て宝石人形に喰らいつく。かくん、と不自然な動きをして倒れ込んだ人形はもう動かない。
 これで周囲の敵を一掃したと確認したまどかは静かに息を吐いた。
 気付けば、すぐ傍まで灰狼が戻ってきている。
「ねぇ、手を貸して」
 呼びかけたまどかは其処に凭れ掛かった。
 少しだけ。青玉の宝石人形が訪れるまでの束の間でいい。お前の背の上で休ませて、と告げたまどかは、暫しその背中に身体を預けた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クラウン・メリー
罪……。俺にとって犯してしまった罪は、村の人々を亡くしてしまったこと?
それとも――。

ううん、今はそんなこと考えている場合じゃないよね!
そんな命令されても、簡単に従わないしやられる気も無いよ!
サファイヤの宝石人形が来る前に早めに対処しないとだね
弱点はあの心臓の辺りにある宝石かな?隙を見てそこを狙うよ!

よーし!それじゃあジャグリングを見てもらおうかな!
色んな色をした棒付きキャンディーを大玉に乗りながらくるくる

甘くて美味しいキャンディーはお好きかな?
敵の前に投げだせば甘い香りのフリチラリアに変身!
目を遮っているその隙に【早業】で【鎧も砕く】大玉を操り
宝石に向って【二回攻撃】!

敵の攻撃は黒剣で防ぐよ!



●星海に花と飴
 罪を持つ者達よ。
 宝石人形から呼びかけられた言葉を聞き、クラウンは俯く。
(罪……。俺にとって犯してしまった罪は、村の人々を亡くしてしまったこと?)
 それとも――。
 頭の中に過ぎった思いにはっとしたクラウンはすぐさま顔を上げた。
「ううん、今はそんなこと考えている場合じゃないよね!」
 罪を暴き、裁くという宝石人形の主は未だ此処には居ない。今はただ、親玉の人形が訪れる前にこの場の配下達をどうにかする方が先決だ。
「頭を垂れよ」
「そんな命令されても、簡単に従わないしやられる気も無いよ!」
 再び告げられた人形の命令など聞く気はない。
 クラウンは身構え、宝石人形達をじっと見据えた。その名や見た目からするに弱点はあの心臓の辺りにある宝石だろうか。
 きっとそうに違いないと直感したクラウンは其処に狙いを付けようと決めた。
 されど敵もそう易々と攻撃を許してはくれないはず。それでも、クラウンが立ち向かうと決めた意志は変わらない。
「よーし! それじゃあジャグリングを見てもらおうかな!」
 大玉をひょいと目の前に投げたクラウンは恭しく、けれども愛嬌たっぷりにお辞儀をした。そして取り出した棒付きキャンディーを手に持つ。
 跳躍して大玉の上へ。くるくると色とりどりのキャンディーを投げながら、クラウンは宝石人形に笑いかけていく。
 その最中に宝石人形が転移の力を使い、クラウンに迫った。
 けれどピエロは身のこなしだって抜群。振り下ろされた剣をジャンプでひらりと躱して、再びにっこりと笑う。
「甘くて美味しいキャンディーはお好きかな?」
 その言葉と共に投げ放たれるキャンディー。それはくるりんと空中で回りながら甘い香りのフリチラリアに変身していく。
 舞う花弁。
 星の迷宮に巡る花の軌跡は敵の視界を遮りながらふわふわと揺れる。
 其処に生まれた一瞬の隙を狙い、クラウンは一気に駆け出した。相手に反応すらさせぬ程の早業で大玉を操り黒剣へと変える。
 其処に広がる光景は、まるで星の海に花の雨が降っているかのよう。
 そしてクラウンは敵の眼前まで迫った。
「ごめんね、砕かせてもらうよ!」
 刹那、宝石人形の核に目掛けて刃が突き立てられる。
 砕かれ、散った宝石の欠片がきらきらと光を反射して地面に落ちた。それと同時に宝石人形が崩れ落ちて動かなくなる。
 これで一体、と倒れ伏した人形を見遣ったクラウンは短く息を吐いた。
 まだ敵は残っている。
 それならば戦い続けるだけだと決め、クラウンは剣を構え直した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

彼者誰・晶硝子
まあ、いきなり横暴なのね
さすがに水を差された気持ちになってしまうわ
罪を裁くからと、その立場がえらいなんてことは無いでしょう
公平に、平等に、それでいて、赦しを与えるために
……なんて、伝わらないのでしょうけれど

解ってもらえないのは、かなしいわ
けれど、しょうがないのね
エレメンタル・ファンタジアで宝石のダイヤモンドダストの攻撃を
あまりこの空間を傷つけたくは無いから、自爆しそうな人形を包み込むようにして、威力をころせないかしら……
それから、もし深く傷付いた仲間がいたら、きみに贈る祝福でお祈りして、回復してあげたいわ

きっと使命を遂行するのは、この子たちのお役目なのでしょう
……でも、やっぱりかなしいわね



●果たすべきこと
 美しく煌めく星座盤の迷宮に響いた、無粋な声。
「まあ、いきなり横暴なのね」
 声を荒らげることのない晶硝子もさすがに水を差された気持ちになり、宝石人形達を星彩の眸に映した。
 くすくすと笑う人形達。だが、其処に個々の感情はないように思える。
 ただ主の為に動くだけのもの、というのが晶硝子の感じた印象だ。人形達は剣を取り、此方を大人しくさせるために動きはじめる。
「頭を垂れよ、でなければ地に伏して」
「罪を裁くからと、その立場がえらいなんてことは無いでしょう」
 解き放たれた宝石弾を見切り、咄嗟に避けた晶硝子は頭を振った。宝石人形は更に光の弾丸を放つべく身構え直す。
「大人しくして。これはサファイヤ様の命令だから」
「罰とは痛めつけることではないわ。公平に、平等に、それでいて、赦しを与えるために……なんて、伝わらないのでしょうけれど」
 淡々と告げる人形に己の思いを語った晶硝子だが、相手は聞く耳を持たない。
 きっと、どれほど言葉を尽くしても届かない。
 解って貰えないと察してしまったからこそ、何だかとても悲しかった。
「けれど、しょうがないのね」
 人形は与えられた命令と役目を果たそうとしているだけ。
 それならば此方も、猟兵としてすべきことを行うのみだ。晶硝子は周囲の魔力を集わせ、其処に精霊の力を宿す。
 掲げた腕、その指先から渦巻くのは細氷。
 宝石めいた光を宿すダイヤモンドダストが戦場に迸り、きらきらと輝きながら敵を穿っていった。すると宝石人形は不利を感じたのか、晶硝子に鋭い眼差しを向ける。
 何かをする気だと感じた。
 晶硝子が身構えると、宝石人形は転移の力を巡らせる。
 刹那、晶硝子の眼前に人形が現れた。
「爆ぜろ」
「――!」
 その一言で敵が自爆攻撃を行うのだと分かった晶硝子は即座に力を紡ぐ。
 美しく静かなこの空間を傷つけたくは無い。だから、護る。晶硝子が再び解き放ったダイヤモンドダストは人形を包み込むようにして巡り――。
 次の瞬間、まるで超新星の光のような瞬きが戦場を照らした。爆発の威力は削がれ、かわりにきらきらした細氷が散っていく。
 晶硝子は粉々になった屑石と人形の手足を見下ろし、そっと俯いた。
「きっと使命を遂行するのは、この子たちのお役目なのでしょう」
 でも、やっぱりかなしい。
 それでもまだ戦いは終わっていない。顔をあげた晶硝子は戦い続ける仲間に祈りの祝福を与えるべく、星眸を前に向けた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

篝・倫太郎
【華禱】
確かに罪は持ってるけども
なんつーか、罪の概念がズレてそうなのが
何ともだよなぁ……

拘束術使用
射程内の敵全てに鎖での先制攻撃
同時に俺も華焔刀でなぎ払いの範囲攻撃
刃先返して2回攻撃
拘束術も俺の攻撃も常に衝撃波と鎧無視攻撃を乗せてく

夜彦と背中合わせになるように位置取って行動
互いの死角を常時フォローするように意識して立ち回り

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避不能時はオーラ防御で防いでカウンター
夜彦への攻撃はオーラ防御を使用しながらかばう

瞬間移動で拘束術が外された場合は第六感も駆使し
回避不能時同様に対応
即座に拘束術を使用

特に互いの死角への移動と攻撃は警戒
死角を取った敵には吹き飛ばしを乗せた攻撃で対応


月舘・夜彦
【華禱】
……正直の所、罪は思い当たる所が多過ぎるので
何に対してのものかは分かりかねますが
少なくとも貴方達に痛めつけられる為に作ったものではありません
生憎と、痛めつけられるつもりもありませんのでお断りします

倫太郎殿の拘束術を合図に、拘束術を受けていない敵をダッシュして接近
早業の抜刀術『陣風』にて斬り込む
使用時に2回攻撃にて手数を増やし、なぎ払いと衝撃波で一掃
深入りはせず、その後は倫太郎殿と距離を維持しながら
拘束術を受けて身動きが取れないものを手分けして追撃

敵からの攻撃は残像・見切りよりカウンターの斬り返し
ただし躱した後に倫太郎殿へ攻撃がいかないよう
視力にて攻撃を読み、武器受けにて受け流す



●背を預ける刻
 倫太郎と夜彦の前に立ち塞がった宝石人形は二体。
「もう一度、言う」
「頭を垂れて並べ。我らが主、サファイヤ様に裁かれる為に」
 彼女達は淡々と告げ、感情のない声でくすくすと笑う声を響かせた。夜禱の柄を握る夜彦と、華焔刀を構えた倫太郎は宝石人形を見据える。
「確かに罪は持ってるけども、なんつーか……」
「……正直の所、思い当たる所が多過ぎるので何に対してのものかは分かりかねますね」
 二人は特に動じてはおらず、其々に感想を落とす。
 すると宝石人形が床を強く蹴った。
 相手が来ると察した夜彦は倫太郎に目配せを送る。その視線を受けた倫太郎は即座に動き、災いを縛る見えない鎖を解き放った。
 だが、瞬間的に転移した宝石人形にそれを躱されてしまう。
 抜刀した夜彦は数メートル先に現れた宝石人形を捉えていた。陣風の斬撃で以て敵を斬れば、相手の紅衣が裂かれて散る。
「倫太郎殿、其方です」
「よっ、と! これでどうだ?」
 そして、夜彦はもう一体の敵が現れた方向を示した。その声に応えた倫太郎が二度目の拘束術を放つと、次の一手は見事に命中した。
「小癪な……」
 揺らいだ宝石人形は二人を睨みつける。
 なかなかに効いたろ、と軽く口端をあげた倫太郎は夜彦と背中合わせになるように位置取り、周囲を探った。
「罪の概念がズレてそうなのが何ともだよなぁ……」
「少なくとも罪も行為も、貴方達に痛めつけられる為に作ったものではありません」
 彼等は再び転移した宝石人形の姿を見つけ、其々に駆け出す。
 夜彦は倫太郎の死角を補うように、逆に倫太郎は夜彦の背を守るように。こうして互いに守り合うように動けるのもこれまで戦いを重ねてきた賜物だ。
 華焔刀でなぎ払う倫太郎。抜刀術を確実に当てて相手を揺らがせる夜彦。
 そんな二人に対し、宝石人形の一体が呟く。
「黙って従えば良いものを」
「誰が従うかってんだ」
「生憎と、痛めつけられるつもりもありませんのでお断りします」
 各々の意見を述べた彼等は狙いを定めた相手との距離を詰めた。それを察した人形達はテレポートで避けようとする。
 だが、既に夜彦も倫太郎も敵の出方をしかと理解していた。
 背中合わせで互いの姿が見えずとも、空気と呼吸で動きがわかる気がする。
 そして、テレポート先に回り込んだ倫太郎。
 此処で勝負をつけると決めた華焔刀を一気に薙いだ。
「いい加減、倒れとけ!」
 衝撃波を織り交ぜた其の一閃は敵が構えた防護すら破る勢いで巡る。敵も苦し紛れに宝石弾を放ったが、焔の刃がそれを弾いた。
 そして、一体目の宝石人形が断末魔すら遺さずに倒れ伏す。
 それと同時に夜彦も敵を倒すべく距離を詰めていた。転移されても即座に身を翻し、追い縋り、夜彦は敵についていく。
 されど相手も両手の剣で夜彦を切り裂こうと狙った。
 素早く抜刀した夜彦は右手の剣を弾き、左手の剣は鞘で受ける。二撃を受けられたことで思わず敵が体勢を崩した刹那、後方から声が響いた。
「夜彦!」
 倫太郎の声だと気付いたそのときにはもう彼が放つ災縛の鎖が迸っていた。
 夜彦は敵の動きが鈍ったことを確かめ、即座に刃を切り返す。
「虚ろなひとがたに、終幕を――」
 そして、鋭い一閃が人形の胸を斬り裂いた。罅割れた屑石が割れて散らばる中、二体目の人形は事切れる。
「やったな、夜彦」
「倫太郎殿のお陰です。ですが……」
 軽く手と手を重ね合った二人は勝利を喜ぶ。だが、夜彦が辺りを見渡したことで倫太郎も訝しげな表情を浮かべた。
「ああ、なーんか見られてる気がするんだよな……」
「警戒を解かずに行きましょう、倫太郎殿」
 倫太郎が妙な視線を感じるのだと告げ、夜彦も同じだと話す。
 きっと何処かで宝石人形の親玉が視ているのだろう。新たな戦いが始まる予感を覚えながら、二人は互いに歩み寄った。
 離れぬよう、離されぬよう、最後まで戦い抜く為に――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
紅玉を胸に頂き乍らも
煌と燈らず
儚く消える潔さもなく
うつくしく耀き切れぬことが
あなた達の罪でしょうか

淡く咲かせる憐憫の笑み
優しく深い声色へ言外に含ませたのは
断罪を謳う青玉の姫御前に
暴かれることすら無い石屑の無価値さ

人形が怒りを覚え
連携を忘れて向かってくるのなら重畳

誠、残念です
然うして昂る双眸は
いのちの煌きにも思えるのに
燃やせる筈の魂は、あなた達にはもう無いのですから

――そうでしょう?

剣閃で人形の揮う刃を抑え
刀を交えながら
間近で覗き込む睛

敢えてふわりと力を抜いて半歩下がり
体勢を崩させたところで
胸の宝玉を符で穿つ

一瞬の艶めく微笑み
高速詠唱で紡ぐ花筐
石から咲き零れし花の嵐に包まれて
永久の海に眠りなさい



●煌めきの花筐
 ――罪を持つ者達よ。
 宝石人形達は此方を其のように呼んだ。綾はその声の平坦さや、くすくすと笑う声の感情の無さに訝しげな表情を浮かべた。
「此方に罪があるというなら、」
 綾は屑石達を見据え、緩やかに冴の刃を構えてゆく。
「紅玉を胸に頂き乍らも煌と燈らず儚く消える潔さもなく、うつくしく耀き切れぬことが、あなた達の罪でしょうか」
 其の言葉と共に淡く咲かせるのは憐憫の笑み。
 優しく深い声色へ言外に含ませたのは、断罪を謳う青玉の姫御前に暴かれることすらない石屑の無価値さを感じたから。
 すると綾の前には一体の人形が立ち塞がった。
 どうやら他の個体は別の猟兵を相手取っているらしい。成らば、この一体が綾の相手となるのだろう。
 大人しくしろ、と冷ややかに告げる人形が両手の紅剣を掲げる。
 刹那、放たれた宝石弾が綾に迫った。
「誠、残念です」
 敵に告げた綾は宝石の一閃を身を翻して避け、地を蹴りあげる。
 然うして昂る双眸はいのちの煌きにも思えるのに。燃やせる筈の魂も意志も、屑石たる彼女達にはもう無い。
「――そうでしょう?」
 問いかけながら相手に肉薄した綾は剣閃で人形の揮う刃を抑え込む。
 敵も片剣を振るったが、刃を切り返した彼はそれと鍔迫合う。間近で覗き込む睛には矢張り意志が見えない。
 ただ光を映すのみで、何も煌めきやしないもの。
 そして、綾は敢えてふわりと力を抜いて半歩だけ下がった。
 追い縋ろうとした宝石人形だが、思わず体勢を崩してしまう。刹那、綾はその胸の宝玉へと符を解き放った。
 穿たれ、罅割れる石。その欠片が床に零れ落ちた。
 一瞬、綾に艶めく微笑みが咲く。
 其処へ詠唱を紡ぎ、形を成すのは花筐の力。
 真冬の彩を宿す冴える刃から四季を謳うかのように花弁が咲き零れ、花の嵐を巻き起こしていった。
 輝きを得られなかった石を葬送するかのように散る花。
 其れが骸の海に還っていく様を見下ろす彼はそっと冴をその手に戻す。
「永久の海に眠りなさい」
 花の波間に落とした綾の言葉は穏やかに、消えゆく人形に向けられた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

オブリビオンは基本傲慢ということがよくわかりますねぇ
ほかの存在を裁くということは、己もその可能性があるということだというのに
ええ、ザッフィーロ君の命は僕のものなので
ほかのだれかにさしあげる気はありませんね
背中はお任せください、ザッフィーロ君

ザッフィーロ君の死角や己の死角にも注意を払い
好機・危機と見れば「属性攻撃」「高速詠唱」をのせた
【天撃アストロフィジックス】にて攻撃しましょう

攻撃されそうになったならば「野生の勘」で察知に努め
「オーラ防御」で防ぎ、「カウンター」にて「衝撃波」で「吹き飛ばし」を試みましょう
問答無用で襲撃するあなた方のほうが、よほど罪深い……


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

…裁かれろ、か
これから命を奪おうと言う者が可笑しな事を言うものだ
肉を得てから過ごした日々に細やかな罪が全くないとは言いはせんが…俺の身は爪一欠け迄宵の物ゆえお前達にやる命はないのでな
…宵、背は頼んだぞ?

瞬間攻撃が厄介と聞くのでな
戦闘と同時に唇から毒性の有る【罪告げの黒霧】を放ち『マヒ攻撃』にて動きを鈍らそうと試みた後は己から積極的に間合いは詰めず【罪告げの黒霧】とカウンター狙いで動いて行こう

『聞き耳』を使い風の流れに注意しつつ『武器・盾受』けで攻撃を受け『カウンター』を
又常に宵は『かば』いながら行動を
…俺の大事な者に攻撃を仕掛けるお前らの方が余程罪深い者達だと思うがな?



●散りゆく屑石
 頭を垂れよ。並べ。
 罪を暴かれよ、と口々に告げる宝石人形達。
 それらが剣を抜く様を見渡し、宵とザッフィーロは其々に構えを取る。
「……裁かれろ、か」
「オブリビオンは基本傲慢ということがよくわかりますねぇ」
 有無を言わさぬ宝石人形に抱いたのは呆れのような感情。宵の言葉にザッフィーロが頷きを返し、肩を竦めてみせる。
「これから命を奪おうと言う者が可笑しな事を言うものだ」
 肉を得てから過ごした日々。
 其処に細やかな罪が全くないとは言えないが、罪を暴かれ、なおかつ裁かれる相手は宝石人形などではない。
「ほかの存在を裁くということは、己もその可能性があるということだというのに」
 宵も溜息をつき、宵帝の杖を床についてかつりと鳴らした。
 同じくザッフィーロもメイスを敵に差し向ける。
「俺の身は爪一欠け迄宵の物ゆえお前達にやる命はないのでな」
「ええ、ザッフィーロ君の命は僕のものなので。ほかのだれかに、ましてやオブリビオンなどにさしあげる気はありませんね」
 互いに視線を交わした二人は宝石人形に抵抗する意思を見せた。
 すると人形達は剣を抜き、此方を睨みつける。攻撃が来ると察したザッフィーロは己の力を巡らせながら宵の名を呼んだ。
「……宵、背は頼んだぞ?」
「背中はお任せください、ザッフィーロ君」
 その名を呼び返した宵も杖先を敵に差し向け、しかと頷いた。
 前に立つザッフィーロの死角を埋めるよう注意を払う宵は杖に魔力を集めていく。その間、宝石人形はテレポートの力を使った。
 普通ならば読み切れぬ動きだ。
 だが、ザッフィーロには策があった。
 唇から毒性の有る罪告げの黒霧を放った彼は戦場に麻痺毒を振り撒く。それによって敵が何処に転移しても、相手を蝕むことが出来るだろう。
 だが、宝石人形は毒霧を受けながらも両手の剣を振るった。
 ザッフィーロがメイスで剣戟を受け止める中、宵は彼の援護になるべく拘束で詠唱を紡いでゆく。
 天撃の力は巡り、星の矢が一気に解き放たれた。
 その一矢ずつがまるで流星のように戦場に流れ、鋭く迸っていく。穿たれた宝石人形は矢を引き抜き、更なる攻勢に入ってきた。
 宵の前に敵が転移した来たのならばザッフィーロが即座に駆け、身を挺して護る。
 逆にザッフィーロの死角を狙って敵が動くならば、宵が星の矢を放って止めた。
 支え合い、互いを守る。
 それはこれまで共に戦い続けてきた二人だからこそ声を掛けたり視線を交わさずとも自然とできる動きだ。
「小癪な奴ら……」
 宝石人形は忌々しいと言わんばかりに剣を振るい、此方を切り裂こうとする。
 テレポートの力は厄介でしかない。
 だが、戦い続ける間に徐々にその癖と狙いが読めてきた。ザッフィーロは聞き耳を使い、風の流れに耳を傾ける。
 その中で、ひゅん、と小さな違和を感じさせる音がした。
「そこか」
 人形が転移する先を察したザッフィーロは此れまでで一番濃い黒霧を其処に満ちさせる。その瞬間、読み通りに現れた人形が霧に包まれる。
 怯んだ敵に隙ができたと感じた宵は杖を大きく掲げた。其処から頭上に解き放った矢はまるで雨の如く、宝石人形に降り注ぐ。
「問答無用で襲撃するあなた方のほうが、よほど罪深い……」
「罪、深き者が何を……」
 宵が静かに告げる中、人形は反論するように頭を振った。
 しかし、すぐにハッとして後ろを振り返る。其処には既にメイスを振り上げたザッフィーロが迫っており――。
「……俺の大事な者に攻撃を仕掛けるお前らの方が余程罪深い者達だと思うがな?」
 宵は傷つけさせない。
 そんな意志を込めた重い一撃が宝石人形を穿った。
 からん、とオブリビオンが手にしていた剣が床に落ちる。其処に続いてくしゃりと崩折れるようにして人形が倒れ込んだ。
 その胸元で鈍く光る石が崩れ落ちたかと思うと、その身体は消えていった。
「やりましたね、ザッフィーロ君」
「ああ、宵に怪我がなくて良かった」
 互いの無事を確かめあった二人は笑みを交わし、そして再び身構えた。そう、戦いは未だ終わっていないのだと彼等は知っている。
 何処かから感じる妙な気配を探り、二人は星彩の迷宮を再び見渡した。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鳩宮・哉
相棒の舜(f14724)と一緒
アドリブ大好き!

下駄の音を拾う聡い兎耳
なぁに? もうおしまいなの?
舜と俺のわくわくタイムを邪魔しないでよ
先程までの蜂蜜みたいに甘い表情が嘘のように
冷ややかな目で屑石人形たちを睨み付ける

ちっ、五月蠅いなぁ
耳障りなその声、すっごく苛々する

――きみたち、うざいんだよね。目障りなんだよね
ぼそりぼそり、厭悪の言葉を銃へ注ぎ込み
「憂鬱のポルカ」で彼女たちを先制攻撃

舜を狙う奴が居たら、携えたナイフで切りつけつつ阻止
……おまえさぁ、身の程を弁えなよ
舜に触れていいのは、傷付けていいのは、俺だけ
……死んじゃえよ、出来損ない
彼女と俺にしか聞こえない声で言って
拙い輝きの石に刃を突き立てた


雨埜・舜
相棒の哉(f21532)と
アドリブ歓迎

ぴくりと揺れる哉の耳
穏やかなひと時も一先ず終いのようだ
機嫌を損ねてしまったらしい彼の頭にそっと掌を置き
哉。あまり暴れ過ぎないように
――行くぞ

魔鍵を掲げ、雷の【属性攻撃】を行いつつ
哉の霰弾攻撃で弱った敵を狙い【終の理】で追撃
確実に数を減らしていけるよう努める
彼女らの攻撃は【見切り】や【残像】で躱せるように

罪の無い生涯を送る者など居ないだろう
俺だって幾つも罪を犯してきたさ
星の数ほどとまでは言わないが
今にも記憶の闇へ消え入りそうな星から
一等星の如く己の中で訴え続けるもの
それでも、

大丈夫だ。君が居るならば
哉が居るなら、どんな真実にでも向き合える
そんな気がするんだ



●罪深き星
 星のひかりと揺らぐ煌めき。
 楽しいひとときの最中、真白な兎耳が微かに揺れた。これまでは聞こえなかった下駄の音に、ぴくりと反応する哉。
 顔を上げた哉は片目を眇め、その音の主を見遣った。
「なぁに? もうおしまいなの?」
「そうだな、穏やかなひと時も一先ず終いのようだ」
 哉の声色が変わったことを察した舜は、どうやら迷宮に現れた宝石人形達が彼の機嫌を損ねてしまったのだと感じる。
「罪を持つ者達よ」
 そう呼びかける宝石人形は淡々と、されど嘲笑うようにくすくす笑っていた。
「舜と俺のわくわくタイムを邪魔しないでよ」
 哉の表情は一転して鋭いものになっていた。先程まで舜と戯れていた時の蜂蜜のように甘く、ころころと変わっていた表情が嘘のようだ。
 彼が冷ややかな目で屑石人形を睨み付ける中、舜はその頭にそっと掌を添えた。
「哉。あまり暴れ過ぎないように――」
 行くぞ。
 そう告げた舜は魔鍵を掲げて其処に雷の魔力を纏わせていく。うん、と舜にだけ先程までと同じ声色で答えた哉は宝石人形を睨み付けていた。
 此方に剣を向けたのは二体。
 人形は宝石弾を解き放ってきたが、哉はエデンの名を懐くナイフを振るう。弾丸をいとも簡単に弾き返した少年はちいさく舌打ちをした。
「ちっ、五月蠅いなぁ」
 耳障りなその声も弾丸もすごく苛々する。くるりとナイフを手の中で回して呟いた哉は銃に持ち替え、ぼそりぼそり、と厭悪の言葉を注ぎ込んだ。
「――きみたち、うざいんだよね。目障りなんだよね」
 その言葉は力と成って巡り、尽きせぬ霰弾が其処から解き放たれる。そして舜は哉の攻撃に合わせて紡いでいた雷撃を重ねてゆく。
 霰弾と寒雷。
 響きあうように敵へと迸るそれらは人形の身を穿った。だが、宝石人形達も転移の力を用いて此方との距離を詰めてくる。
 哉はまた弾いてやると身構えたが、相手が舜に狙いを定めていることに気付いた。
「おっと、狙いは此方か」
「舜!」
 彼自身も身構えて攻撃に備えたが、哉が跳ねるようにその前に割り込む。
 気付けば考えるよりも先に身体が動いていた。ナイフで投剣を受け止めたが、それはたった一本だけ。哉の身にはもう一本の剣が深く突き刺さっていた。
 されど、哉は痛みなど感じていないかのようにゆらりと一歩踏み出した。
「……おまえさぁ、身の程を弁えなよ」
 これまで以上に冷ややかな声がその唇から零れる。
 舜に触れていいのは、俺だけ。
 傷付けていいのだって、俺だけ。
 剣を引き抜いて地面に棄てた哉は更なる厭悪の言葉を落とした。すると宝石人形が可笑しそうにくすくすと笑う。
「お前たちはどうやら、罪だらけのようね」
 哉と舜を嘲笑する人形は新たな剣を魔力で生成して身構えた。
 対する舜はいつでも不可視の寒雷を紡ぎ放てるように魔鍵を敵に差し向ける。そうして首を横に振ってみせた。
「罪の無い生涯を送る者など居ないだろう。俺だって――」
 幾つも罪を犯してきたさ、と事もなげに云う。
 しかしそれは言葉の上だけでのこと。罪は深く、裡に巡っている。
 星の数ほどとまでは言わないが、今にも記憶の闇へ消え入りそうな星から一等星の如く己の中で訴え続けるものまで様々だ。
 それでも、と舜は自分を守ってくれた哉の背を見つめた。
 哉は耳をぴんと立てて最大限の警戒と嫌悪を人形達に向けている。こんなに懸命になってくれる彼とならば、という思いが舜の中に生まれていた。
「哉、決めるぞ」
 舜がその名を呼べば、哉がひといきに床を蹴り上げる。
 その背を見守る舜はスルテゥルを掲げ、不可視の寒雷の力を広げていった。
 終の理――フィムブルヴェト。
 その名に相応しく迸った雷が駆ける哉を追い越し、人形達を真正面から貫く。其処に合わせて楽園の刃を振り下ろした哉は冷たく告げた。
「……死んじゃえよ、出来損ない」
 自分と彼女らにしか聞こえない声で囁き、哉はその胸に刃を突き立てる。
 罅割れた宝石が崩れる様を確認すらせずに引き抜いた哉は、もう一体の胸の核に目掛けて刃を薙いだ。
 その赤い瞳には慈悲すら宿っておらず、閃く刃は瞬く間に屑石達を屠った。
 人形達が崩れ落ちる中、哉はそれらから興味を失ったように目を逸らす。否、元より何の感情もなかったものが元に戻っただけだ。
「哉、傷は大丈夫か?」
「これくらい平気だよ、舜。それよりも触られたりしなかった?」
 舜が哉のもとに駆け寄ると、平気だという声が返ってきた。そして哉は彼にこそ傷がつけられていないかを確かめはじめた。
 そんな哉を見下ろし、舜はゆっくりと息をつく。
 罪は無かったことには出来ない。
 けれど、大丈夫だ。
 君が居るならば。哉が居るなら、どんな真実にでも向き合える。
 そんな気がした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュジュ・ブランロジエ
【翠彩】
アドリブ歓迎

捨て身の攻撃なんて悲しいね
人形にだって命はあるのに
なんて貴方達を倒しにきた私が言うのもおかしいかな

白薔薇舞刃に氷属性付与
私とヴィルさんの周りに花弁を布陣
どこに瞬間移動しても引っ掛かる様に

動きを見切り第六感や聞き耳で瞬間移動を察知し、早業で素早く対処を試みる

自爆しようとする人形に集中して二回攻撃

別の世界の爆弾処理の方法なんだけど急速冷凍する仕方があったからいけるかなって
自爆阻止できなくても動きを止められたらこっちのもの!

宝石弾はオーラ防御+範囲攻撃で私とヴィルさんを守るよう展開
ヴィルさんのカウンターの炎に合わせて氷属性付与したナイフ投擲
熱した後に急に冷やすと割れやすくなるよね


ヴィルジール・エグマリヌ
【翠彩】

生憎、お前達に垂れる頭なんて持っていないな
それに――断頭台に立つのは、オブリビオン
お前たちの方が相応しいと思うよ

断罪人を気取る敵への嫌悪感を隠さぬ侭に
頸無し騎士達を召喚して敵へと嗾ける
君達は追尾能力に長けているだろう
敵が自爆する前に追い付いて、斬り伏せて仕舞え
もし防げなくても君達が盾に成っておくれ
或いは敵を盾にして防ごうか

宝石弾はとても綺麗だけれど、当たる訳にはいかないな
剣で武器受けして防御しよう
その後は剣に炎を纏わせ属性攻撃でカウンター
赤い宝石の人形には、きっと業火も似合うんじゃないか

嗚呼……私には只の人形にしか見えないけれど
ジュジュはとても優しいんだね
其の心の豊かさを眩しく思うよ



●人形の命
 罪を暴かれ頭を垂れよ、と宝石人形は云った。
 その言葉は高慢かつ傲慢。ほとんど感情が揺らいでいないというのにくすくすと笑う不気味な様も合わせて、とても云うことを聞く気になどなれない。
「生憎、お前達に垂れる頭なんて持っていないな」
 ヴィルジールは断罪人を気取る敵への嫌悪感を隠さぬ侭の言葉を返した。すると、その周囲に闇を纏う頸無し騎士達が現れる。
 その傍らでジュジュは銀のナイフを握り締めた。
 どう打って出るかを考えた刹那、星座盤の迷宮に激しい爆発音が響く。
 僅かに此方まで届いてきた爆風から身を守り、ジュジュがはっとする。おそらくそれは宝石人形達が別の猟兵の動きを止めるため、自爆を選んだ音だ。
「捨て身の攻撃なんて悲しいね。人形にだって命はあるのに」
 ジュジュはぽつりと呟く。
 しかし、自分達とて人形を屠るために此処に来たのだ。哀れみの思いなど抱かないほうがいいのかもしれない。
「なんて、貴方達を倒しにきた私が言うのもおかしいかな」
 ジュジュは刃に氷の力を巡らせ、自分とヴィルジールの周囲に白薔薇の花弁を舞い散らせていった。
 それは相対する宝石人形への対策だ。
 敵が何処に瞬間移動したとしても花に触れ、引っ掛かるように。その策が実に有効だと感じながらヴィルジールは目の前の人形に語りかける。
「――断頭台に立つのは、オブリビオン。お前たちの方が相応しいと思うよ」
 その声と共に頸無し騎士達が人形へと吶喊していく。
 剣を掲げる騎士を避けるように宝石人形はテレポートして姿を消した。だが、今はジュジュが張り巡らせた白薔薇がそこかしこに舞っている。
「そこっ!」
 ジュジュは敵がひとひらの花弁に触れたと察し、新たな花を其方に解き放った。
 されど宝石人形も宝石弾を撃ち返してきた。
 一瞬で眼前に迫る弾丸。しかしジュジュは咄嗟に身を逸らすことで既の所で攻撃を躱すことに成功する。
 大丈夫かい、とヴィルジールから掛けられた声。彼の言葉にしっかりと頷きを返し、ジュジュはすぐに体勢を立て直していった。
 その間、人形はひそひそと何かを呟いて囁きあっている。
「厄介な者達ね。やはり我らが自ら……」
「また自爆?」
 その声に気付いたジュジュが思わず予想を言葉にすると、ヴィルジールもそうではないかと答えた。
 そして、ヴィルジールは騎士達に願う。
「敵が自爆する前に追い付いて、斬り伏せて仕舞え。もし防げなくても君達が盾に成っておくれ」
 その願いに答えるように騎士は敵に向かっていった。
 転移されようとも構わず、次に現れた場所を狙って剣を振るう彼等は頼もしい。だが、自爆を試みる宝石人形は騎士達になど構わずにヴィルジールを目指してきた。
「お前から、地に伏せ」
 淡々とした言葉が響いたかと思った刹那、ヴィルジールの眼前に人形が現れる。
 避けきれないかと感じた時。
「ヴィルさん! 伏せて!」
 ジュジュの声が聞こえ、ヴィルジールは言われるがままに身を低くした。其処に迸って行くのは数多の氷薔薇。
 あわや爆発する寸前だった少女人形はその力によって氷漬けにされる。
「これは……すごいね、ジュジュ」
「良かった。間に合った! 別の世界の爆弾処理の方法なんだけど、急速冷凍する仕方があったからいけるかなって……!」
 自爆を防げたことにほっとしたジュジュは笑みを浮かべた。
 その間にヴィルジールの騎士達が凍りついた敵を一刀両断することで、一体を屠ることが出来た。だが、まだすべての敵を倒せたわけではない。
 ヴィルさん、とジュジュに名を呼ばれたことでヴィルジールは身構えた。
 次の瞬間。
 別の宝石人形から放たれた宝石弾は彼が構えた剣によって弾かれた。
「とても綺麗だけれど、当たる訳にはいかないな」
「援護するよ、ヴィルさん!」
 そのまま剣に炎を纏わせた彼に合わせ、ジュジュがナイフを掲げる。反撃として迸る焔が人形を穿つ中、氷の一閃が突き刺さった。
「ああ。赤い宝石の人形には、きっと業火も似合うんじゃないか」
 燃ゆる炎。
 煌めく氷。
 すると、ぱきりという甲高い音が鳴り、人形の身体が罅割れた。
「ほら、熱した後に急に冷やすと割れやすくなるよね?」
 ジュジュは崩れ落ちた人形を見下ろしながら自分達の勝ちだと宣言する。そうして、これで二人を狙う人形は居なくなった。
 勝利は得ることが出来たが、ジュジュはふっと哀しげな横顔を見せる。
「メボンゴ、お祈りしてあげよう」
『優しい世界に還れますように!』
 淑女人形を操り、冥福を祈ったジュジュは真剣だった。ヴィルジールはそんな彼女の行為をそっと見守る。
「嗚呼……私には只の人形にしか見えないけれど、ジュジュはとても優しいんだね」
「うん、人形を見ると他人事とは思えないから……」
 メボンゴを抱いて瞼を閉じたジュジュ。
 その姿を見つめるヴィルジールは頷く。敵は敵でしかないと感じられなかった。
 けれども今は、彼女の心の豊かさが眩しく思えた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
罪を持たない者なんていないのです
その中で、皆生きているのです
私は、あなた達を倒します。それが罪なのだとしても

ひとり残さず、今、倒してしまわなければ
そのために、私が役に立つために、何ができるでしょう
なにか糸口を見つけなければ、観察しながら戦います

なるほど、あなた達は自爆攻撃を行うのですね
私にできること。引き寄せて、自滅を誘うこと
他の方からなるべく離れて剣を掲げ、【おびき寄せ】た所に【天からの光】を撃ちます
できるだけ多く来てくれるといいのですが
それだけ他の方の負担が減ります

私は大丈夫です、人形ですから
動ける程度の損傷ならば問題ありませんし、壊れたところは取り替えればいいのです



●人形と人形
 ユウイは識っている。
 罪を持たない者なんていない。皆、その中で生きている。
 それはこの迷宮で起こる罪と罰の話を聞いたときからずっと胸に抱いていること。変わらぬ思いを確かめ、ユウイは宝石人形達を見つめた。
「私は、あなた達を倒します。それが罪なのだとしても――」
 他を屠ることもまた罪。
 自らの事情を優先して他を省みぬことに繋がるのかもしれない。
 それでも、と誓った思いがユウイの中にある。彼女達が誰かの未来を穢す可能性があるならば、ひとり残さず、今、倒してしまわなければならない。
「そのために、私が役に立つために、何ができるでしょう」
 ユウイは一度後方に身を潜め、宝石人形の標的にならぬよう下がった。
 なにか、糸口を。
 転移に剣、宝石弾。様々な力を宿す彼女達を倒す切欠を見つけなければと考え、ユウイは悉に敵を観察していく。
 観察、とはいってもユウイ自身も戦いに加わっていた。
 天からの光で敵を貫き、他の猟兵の援護を行っていく。そんな中、ユウイは遠くで爆風が巻き起こったことに気付いた。
 其方に目を向けると、残骸となった人形の腕や足が転がっている。
「なるほど、あなた達は自爆攻撃を行うのですね」
 即座に理解したユウイは床を蹴り、敢えて目立つように飛び出した。すると一体の宝石人形がユウイを狙って動き出す。
「お前も爆ぜるといい」
 相手は転移を駆使してユウイの眼前まで迫ろうとしていた。
 だが、それでいい。
 ユウイが己の役目だと判断したのは自分に敵を引き寄せ、自滅を誘うこと。
 彼女は他の猟兵から出来得る限り離れるように駆け、人形だけをおびき寄せた。
「さあ、こちらへ」
 全て受け止めてみせる。
 ユウイが両手を広げたところへ宝石人形が迫り、そして――。
 轟音。
 爆風と火花が散る中、ユウイは胸の核が崩れ落ちた宝石少女を抱いていた。彼女自身も破損していたが、倒れるには至っていない。
「私は大丈夫です、人形ですから」
 動ける程度の損傷ならば問題はない。壊れたところは取り替えればいい。
 これが、これこそが自分の在り方なのだとして、ユウイは壊れて崩れた屑石人形を見下ろす。自分の腕の中で宝石少女の身体が消えはじめ、骸の海に還っていく。
 そして――ユウイは暫し、その様を見つめ続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘズ・エイス
空も木も凍てた風もない
私が弓を絞るべき獲物は人の形をし、
しかし生物ですらない
初めて狩りに出た日以来だ
首筋を焦がすこの感覚は

罠と敵が直線になる位置をとりつつ射撃
弾は鞄で防ぎ、瞬間移動に併せ【飄雪】
罠に押し込み脚を奪う
死の気配を嗅いだ獣は、動けずとも果てるまで牙を剥く
彼女らは、瞳に何を浮かべるのだろうか
【花濁】、最期までを見届ける

おまえとの出会いを切片に、私の世界は広がったよ
広がってしかし、生き方が分からなくなってしまった
星に座を描き、狩りの最中に物思う私はもはや、
エイスですらないのかもしれない
おまえという灯すら見失い、私はどこへと歩めばいい
この姿と変わらない
今の私はただの、心細い迷子だ



●世界の隔たり
 此処は蒸気と魔法が巡る地下の迷宮。
 空も木も、凍てた風もない。広がっている星空めいた景色すら投影だ。
 ヘズは周囲の空気を改めて確かめ、敵であるものを瞳に映した。かの人形達がくすくすと笑う声は空虚で、やけに耳にこびりついた。
 今、弓を絞るべき獲物。
 それは人の形をしているが、生物ですらない。
 ヘズは妙な心地をおぼえ、それに似たものを抱いたときのことを思い出す。
 首筋を焦がすこの感覚。
 ――初めて狩りに出た日以来だ。
 ああ、と静かに頷いたヘズは木弓を構えた。見据える先には此方を狙う宝石人形の姿があった。ヘズは其方を見つめ続けたまま、先程仕掛けた罠の位置を探る。
 罠と敵。ふたつ直線になる位置。
 それを崩さぬよう距離を取り、弓の弦を引き絞る。解き放たれた一糸が人形に迫るが、それは振るわれた剣によって弾かれてしまう。
 代わりに宝石弾が撃ち放たれたが、ヘズもそれを鞄で防いでみせた。
 そして、敵は瞬間転移の力を紡ぐ。
 瞬く間に人形の姿が消えたかと思うとヘズのすぐ傍にまで気配が近付いた。しかし、ヘズとてただ手を拱いて居たわけではない。
 敵の姿が視界に入った瞬間、反動を利用し跳び退く。
 同時に引いた弓から吹雪を纏う矢を打ち放てば、宝石人形の足が冷たき一閃によって貫かれた。揺らぐ人形、更に其処へ打ち込まれる第二矢。
 後退させられた宝石人形は哀れ、仕掛けられた罠の上。
 連撃によって脚を奪われた敵は剣を支えにして動こうとしていた。
 死の気配を嗅いだ獣は、動けずとも果てるまで牙を剥く。ならばヒトガタで在りながら人ではない彼女らは、瞳に何を浮かべるのだろうか。
 ヘズが注意深く見据える中、人形は微かに呟く。
「サファイヤ様の、ために……」
 主を思う声だ。
 その言葉を聞くヘズは手を緩めず、彩とりどりに染められた羽矢を降らせる。
 花濁の雨で止めを与え、ヘズは少女人形の最期を見届けた。
 
 そうして、ヘズは頭を振る。其処に巡ったのは感傷めいた不思議な思い。
「おまえとの出会いを切片に、私の世界は広がったよ」
 広がって、しかし、生き方が分からなくなってしまった。
 星に座を描き、今のような狩りの最中に物思う自分。それもはや、エイスですらないのかもしれないとヘズは思う。
「おまえという灯すら見失い、私はどこへと歩めばいい」
 片手を下ろし、その掌を見下ろしたヘズは思わず思いを言葉にした。
 この姿と変わらない。
 今の私は、そう――ただの、心細い迷子だ。
 宝石人形が骸の海へと還り消えていく中で、ヘズは暫し弓を握り締めていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

泉宮・瑠碧
屑石と言えど、石には違いなかろうに…
どこか憐れには思う
僕は、そういう石も好きだしな
…たが、見逃す訳にはいかない

僕は杖を手にデバイスを開放して歌唱し微睡誘眠
眠るかは分からないが機能不全や一時停止になれば
同時に自爆の防止を

攻守に第六感を研ぎ澄ませ
特に瞬間移動は視界から消えたと感付くと同時に飛び退る

動きが止まったり鈍る等になれば
中枢の宝石を狙って氷の槍を撃ち出す属性攻撃
対象が複数ならば氷の槍を増やして範囲攻撃
一撃で落とせる様に、風の精霊と共に狙いを調整してスナイパー

一撃が叶わない場合は
先の攻撃で目覚めた対象へ同じ攻撃を

被弾へは主に見切り
追い付かない場合はオーラ防御

役目を解いて躯の海へお帰り…安らかに



●星を映して光るもの
 宝石人形の胸に光る石には輝きが少ない。
 それがあれらが名もなき人形である理由なのだろうか。瑠碧は此方に敵意を向ける人形達を見つめ、軽く首を振った。
「屑石と言えど、石には違いなかろうに……」
 どこか憐れには思う。
 自分はそういった石も好きだった。星とて等度で魅力が決まるものではなし、宝石もカラットの高さだけが価値に繋がる訳ではないはず。
「……だが、見逃す訳にはいかない」
 憐れみも何も、今は押し込めておくべきときだ。
 瑠碧は一体の宝石人形が自分を狙っていることを察して杖を手にする。其処に風精ノ輪舞の力を開放した瑠碧は、静かに花唇をひらいた。
 微睡誘眠――イーズ・ララバイ。
 此処に、夢の扉は開かれん。
 自らが謳いあげる子守唄と共に、浄化と休息を与える眠りの精霊が顕現する。
 それによって僅かに宝石人形の身が揺らいだ。
 しかし相手は何とか耐える様子を見せ、両手に握る剣の切先を瑠碧に向けた。
「意思が強いのか、それとも……」
「お前も黙ってサファイヤ様に罪を暴かれなさい」
 人形には歌が効き辛いのかと考えた瑠碧だが、その考えと声は人形の声によってかき消される。刹那、敵から宝石弾が放たれた。
 瑠碧は咄嗟に後方に跳躍することでその軌道から逃れる。
 だが、宝石人形は瑠碧の動きを読んだらしい。瞬時に視界から消えた敵は瑠碧のすぐ側面に転移してきた。
 はっとした瑠碧は攻撃の機を捨て、更に其処から飛び退く。
 どうやら宝石人形は自爆を狙っていたらしい。瑠碧を巻き込めないとわかると人形は動きを止め、剣を振り下ろしてきた。
「そう思い通りになるとは思わないことだ」
 瑠碧は身を引き、杖で一閃を弾き返しながら敵との距離をひらく。
 そして、反撃として氷の魔力を紡いだ。中枢の宝石を狙って撃ち出された力は槍の形を成し、一直線に飛んでいく。
 だが、宝石人形も手強い。
 相手が剣で槍の軌道を逸したことに気付き、瑠碧は更なる一手に出る。
 自爆をされる前に、あの胸の核を砕く。
 そう心に決めた瑠碧は今一度、氷の槍を紡いだ。次の一撃で落とせるよう傍に呼んだのは風の精霊。
 疾風の勢いに槍を乗せ、瑠碧はそれをひといきに解き放った。
「もういいんだ。役目を解いて躯の海へお帰り」
 どうか、安らかに。
 思いを込めて解放した一閃は宝石人形の胸を貫き、その動きを完全に止める。崩れ落ちた人形の核は屑石だという。
 けれども瑠碧には、きらきらと光るその石がとても綺麗なものに思えた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ステラ・ペンドリーノ
なんとも数が多いのね……
しかもテレポートまでしてくるというのでは、ちまちまと狙い撃つわけにもいかないか
ジリ貧になってはこの後まで響いてしまうはず

落ちついて地形を把握……【地形の利用】が寛容ね
敵をまとめて視界に収められるようになったらユーベルコード【百億の星】を発動
範囲内に向けて【乱れ撃ち】
時を巻き戻す星の光で、まとめて生まれる前の石ころにしてあげるわ
真実のサファイヤが出て来る前に、できるだけこの宝石人形を削っておかないとね

……「罪を持つ者達」なんて、呼んでくれたわね
御覧なさい。この破壊の権化のような力
何もかも無に帰す星の光が……私の罪の証

見たければ見せてあげる
それが最後の景色になるでしょうけど



●時流の星と屑石
 星に座を宿し、光を描くひととき。
 それを邪魔するように現れた宝石人形達の数は多い。どれもがよく似た顔で、個性の薄い声でくすくすと笑っていた。
「なんとも数が多いのね……でも、なんとか対処できるかしら」
 ステラは周囲の様子を確かめる。
 人形の数も侮れないが、此方側で対処する猟兵も多い。
 相対する人形は散らばり、ひとりにつき一体もしくは二体で猟兵を抑えようとしているようだ。
 大丈夫、と頷く彼女は先程まで見てきたこのフロアの構造を思い返す。
 そして、其処から紡ぐのは己の力。
 百億の星――アンドロメダ・シリンダー。
 周れ、回れ、廻れ。
 ステラの花唇から紡がれる言葉と共に超高速回転する無数の超小型中性子星がその場に顕現していく。その動きに気が付いた宝石人形が剣を構えたが、そのときにはもう人形は時流逆行の渦の射程に入っていた。
「何だ、これは……」
 咄嗟にテレポートで逃れようとした宝石人形だが、見る間に手にしていた剣が崩壊した。だが、それに構わず人形はステラとの距離を取る。
 だが、それこそステラの狙いだ。
 あれほど速い転移を繰り返すのならば、ちまちまと狙い撃つわけにもいかない。此方が後手に回ればジリ貧になり、この後まで響いてしまうからだ。
 ステラは標的から目を離すことなく、全てが見渡せる場所まで駆けた。
「真実のサファイヤが出て来る前に、できるだけ……」
 ステラが先程の宝石人形に更なる光を乱れ打とうとしたとき、言葉は遮られた。その背後に転移してきた人形がステラに剣を突きつけたからだ。
「罪を持つ者よ、観念しろ」
「……よくそんな呼び名で、呼んでくれたわね」
 だが、ステラは怯みなどしない。振り向いたことで刃が頬をかすって薄い切り傷を作ったがその程度の痛みなど無いも同然。
 逆に間近で標的を視認できるならば願ってもないことだ。
 そして、宝石人形の背後には猟兵達と戦う別の人形達の姿が視えた。
「御覧なさい」
 ステラの言が落とされると同時に、時を巻き戻す星の光が迸る。
 その力で纏めて生まれる前の石ころにでもしてあげる。薄く微笑んだステラの双眸が鋭く細められた。
「この破壊の権化のような力。何もかも無に帰す星の光が……私の罪の証」
「……!」
 宝石人形は自らの身体が消えてなくなる様を味わっていた。声すら紡げず、仲間や自分の時が巻き戻されていく感覚。
 ステラは敢えて時の巻戻り方を僅かに緩めながら、静かに告げた。
「見たければ見せてあげる」
 ――それが、最後の景色になるでしょうけど。
 人形は続けて落とされた言葉を聞くことが出来なかった。何故なら既に其処にはもう何も存在していなかったのだから。
 ころり、と足元に転がった屑石を拾い上げ、ステラはそっと瞼を閉じた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

あの人形達も災魔じゃなければ、もっと綺麗だったんだろうか
…なんてあれこれ考えている暇はなさそうで
ラナさんを守るように一歩前へ
裁かれるのはオブリビオン、あんた達の方だ

出来ればこの綺麗なフロアが傷つかないように
ラナさんの炎の矢に合わせ、なるべく同じ個体を狙いつつ
破魔の力を乗せた願い星の憧憬で範囲攻撃を
反撃の隙を与えぬよう高速詠唱で連続攻撃、着実に倒していく
自爆が防げないならオーラ防御で耐えつつ
ラナさんに攻撃が及ばないよう庇います

…罪、なんて
災魔からすればこっちはきっと、生きてるだけで罪だろうし
それでも、…オブリビオンはこの世界にいてはいけないものだから
俺達はそれを倒すだけ


ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

現れたお人形さんが、どこか儚く見えるのは何故でしょう
その敵意に思わず一歩引いてしまうけれど
蒼汰さんの頼もしい背を見れば、どこか勇気付けられるようで
裁かれるつもりも、負けるつもりも無いですから
こんなにも美しい場所を、占拠するなんて許せません

星の瞬きに乗せるように、祈りを込めて
出来る限り多くの対象を狙って、ウィザード・ミサイルで攻撃を
辺りを傷付けないよう、逃げられないように集中します
自爆される前に倒したいですけど…
傷を負ったら癒雨ノ雫で回復を

きっと、星々を愛する人が作った迷宮です
星を愛する生徒さんに、返してくださいね
彼女達の紡ぐ罪が何なのか
それは、私には分からないけれど



●罪は未だ識れず
 輝きの薄い、曇った宝石。
 迷宮内に現れた災魔の人形達を見たラナが感じたのは不可思議な儚さ。
 そして、きっと彼女達とは解り合えないだろうこと。
 淡々とした、それでいて嘲笑するかのような笑み。彼女達から滲む敵意にラナは思わず一歩引いてしまう。
 しかし、其処に蒼汰が踏み出した。
「あの人形達も災魔じゃなければ、もっと綺麗だったんだろうか」
 ラナが引いた代わりに、一歩前へ。
 彼女を守ると決めた思いは無意識に蒼汰をそうさせた。その背を見つめたラナは先程までの戦きが和らいでいくことを感じている。
 頼もしい背を見れば、どこか勇気付けられるようでラナは自らの掌を握り締めた。
「罪を持つ者達よ」
 頭を垂れよ、と宝石人形は再び告げてくる。
 彼女達の剣が自分達に向けられていると察した蒼汰は叡智の杖を構えた。あれこれ考えている暇はなさそうだと感じながら、彼は杖に魔力を注いでゆく。
 同時にラナも祈るように両手を重ねた。
「裁かれるつもりも、負けるつもりも無いですから」
「裁かれるのはオブリビオン、あんた達の方だ」
 ラナの言葉を継ぐように蒼汰が敵へと言葉を送り、二人は其々の力を解放する。星の瞬きに乗せるように炎の矢を放ったラナに合わせ、蒼汰が敵に指先を向けた。
 星の世界を駆ける炎の流星に、彼方の空から降る星の輝きが重なる。
 宝石人形の腕がそれによって貫かれた。
 先手は取れたとして頷き、ラナは断罪を騙る者をしっかりと見つめる。
「こんなにも美しい場所を、占拠するなんて許せません」
「それに、この綺麗なフロアも傷つけさせはしないよ」
 人形達への思いを其々に紡ぎ、ラナと蒼汰は敵の出方を窺った。その瞬間、光のない瞳を此方に向けた人形の姿が消える。
 転移だと察した二人は気配を探った。一瞬後、人形はそれまでとは全く違う方向から現れ、宝石弾を解き放ってくる。
「ラナさん!」
 彼女に攻撃が向いたと察した蒼汰は即座に駆け、防御の力を巡らせた。ラナを守る形で敢えて弾丸を受けにいった蒼汰。その身にきらきらと煌めく一閃が迸った。
「蒼汰さん……!」
「大丈夫。まともに受けたわけではない、ですから」
 ラナから心配の声があがったが、確かに防御陣で弾いたと蒼汰は示す。
 そして蒼汰は更に詠唱を紡いでいった。
 願い星の憧憬の名を冠する星の魔力が反撃として振るわれていく。其処にラナが癒雨ノ雫の力を解放していった。
 ――いたいのいたいの、とんでゆけ。
 動けるとはいっても、痛みを負ったらしき蒼汰を放ってはおけなかった。
 見る間に戦場に色とりどりの薬瓶が召喚され、彩りの雨雫となって降り注ぐ。その恵みを受けた蒼汰は穏やかに笑む。
 大丈夫だといったのに。けれど、そんな彼女の優しさが雫と共に染み渡っていくようで心強かった。
 そしてすぐに表情を引き締めた蒼汰は敵を見据える。
「……罪、なんて」
 災魔からすればヒトなど生きているだけで罪だ。
 過去から滲む残滓のような存在から見れば、きっと。
 其処まで考えて頭を振った蒼汰はラナに視線を向けた。その眼差しに気付いたラナはこくりと頷く。
 遠くから別の個体が自爆したらしき轟音が響いてきていた。言葉を交わさずとも次に何をすべきかは互いに理解していた。
 自分達が相手取る人形がそうする前に、屠る。
 意志を確かめあった二人は災魔からこの迷宮を取り戻すことをそっと誓った。
「きっと、星々を愛する人が作った迷宮です。だから星を愛する生徒さんに、返してくださいね」
 彼女達の紡ぐ罪が何なのか。
 それは、自分には分からないけれど。それでも此処で屠ることが自分達の役目なのだと感じ、ラナは導きの光を宿す杖を胸の前に掲げる。
 其処から巡っていくのは全力を込めた炎の魔矢。
 蒼汰も戦う意志を持って、指先を宝石人形に差し向けた。渦巻く炎と星の輝きで、哀しき存在に終幕を。
「……オブリビオンはこの世界にいてはいけないものだから」
 ――俺達はそれを倒すだけ。
 宝石人形からも煌めく魔弾が解き放たれたが、炎の矢と彼方の星が衝突することで相殺されていく。そして、二人の力は敵に転移すら行わせぬまま迸り――。
 星が煌めき、炎が燃ゆる。
 瞬刻。屑石を宿した人形は、断末魔すら遺さずその場に崩れ落ちた。
 その胸から零れ落ちた宝石が鈍くきらりと光る。その石が砕け散り、人形の身体が霧散していく様を見送ったラナと蒼汰は視線を交わしあった。
 叡智の杖と夢見る花杖。二人は其々の得物を握る。隣に立っていてくれる互いの存在を確かめることで覚悟を抱いた彼らは、続く時への思いを巡らせた。
 まだ、戦いは終わらない。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
俺が罪を持とうが持つまいが
お前らには関係ねーだろ

自分の何を罪だと言うのだろうか
きっと間違いばかりだった
本当に正しいことなんて知らなくて
でも、そうやって生きていくのだと知ったから

痛い思いすんのは、お前らのほーだよ

柘榴石のピアスをゆらり、誘惑
そう、きれーだろ、この宝石

両手の剣を黒鍵刀で受け止めようとも
片方の刃に紅は流れ
――なるほど、そーくるわけネ

動きが読めていなかったわけじゃない
油断していたと見せかけ
引き付けている隙に――取り囲むのだ

もう、おせーよ

ずらりと宙に浮かばせた黒鍵刀
1体につき数本を向かわせ炎の属性・範囲攻撃で数を減らす
投擲される剣は自分のすぐ周囲に控えておいた刀を向かわせ相殺 



●最期の耀き
 ――罪を持つ者達。
 宝石人形達は確かにそう呼びかけてきた。それはまるで此方の罪を見透かしているとでも語るような、高慢で見下した態度と言葉だった。
 綾華は肩を竦め、自分に向かってきた一体の宝石人形を一瞥する。
「俺が罪を持とうが持つまいが、お前らには関係ねーだろ」
 自分の何を罪だと言うのか。
 屑石の人形達はただ、すべての者が罪深き存在だと思っているだけ。本当に見透かされているわけではないことは綾華にも分かった。
 けれど、きっと間違いばかりだった。
 本当に正しいことなんて知らなくて、でも、そうやって生きていくのだと知ったから。
 裡に浮かんだ思いは言葉にせず、綾華は鍵型のピアスに指先を伸ばす。
 確か、人形達は此方を痛めつけるとも言っていただろうか。
「痛い思いすんのは、お前らのほーだよ」
 思い通りになんてさせるか、と告げた綾華は不敵に笑んでみせた。同時にゆらりと揺れた緋色の柘榴石が誘惑の力を放つ。
「それは紅榴……ガーネットね。嗚呼、そんな宝石になりたかった……」
 するとその輝きに魅入るように宝石人形が呟いた。
「そう、きれーだろ、この宝石」
 一瞬。たった一瞬ではあるが敵の動きが鈍くなった。綾華は黒鍵刀を構え、其処に攻撃を与えようと駆ける。
 だが、はたとした人形が剣を振るい返した。
 両手の剣を黒鍵刀で受け止めようと構えた綾華だが、片方の刃に紅が流れる。
「――なるほど、そーくるわけネ」
 なかなかに疾い。それに威力だって侮ることができなかった。
 綾華が不覚を取ったわけではない。その動きが読めていなかったわけでもなく、それは油断していたと見せかけるための敢えての行動だ。
 すべては敵の意識を自分自身だけに向けさせるための動き。
 そう、つまり引き付けている隙に――相手を取り囲み、転移すら無駄であると思わせるほどに追い詰める。
「……!」
 その瞬間、宝石人形は自分が置かれた状況を察する。
 ずらりと宙に浮かぶ黒鍵刀。それが激しい炎を纏いながら人形の周囲に張り巡らされていた。すげーだろ、と口端を緩めた綾華は無慈悲に宣言する。
「もう、おせーよ」
 その言葉が紡がれ終わった刹那、四方八方から焔の黒鍵が投擲された。それは災魔を葬送するかのように迸り、戦場に紅を揺らがせる。
 決着は一瞬。
 崩れ落ちる宝石人形。その胸元で鈍く輝く光を見つめた綾華は手にしていた刀を差し向け、其処に目掛けて刃を振り下ろした。
「じゃーな、おやすみ」
 砕かれ、散る屑石。その欠片はきらきらと光って消えていく。
 その軌跡を見送った綾華の眸は暫し、哀しき人形の残骸に向けられていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

リリト・オリジシン
妾を前にして不遜であるな、人形共よ
首を垂れるは汝らであろう
出来ぬなら、疾くと砕けよ

分かっていたことではあるが、折角の光景に水を差されたのだ
手加減など無用であろうな
血統覚醒。己の中にある血と罪を励起
それと怪力とを合わせて振るう血染めの流星。それでなぎ払ってくれようぞ
何、瞬間移動されたところで気にはせぬ
剣で斬りつけてくるのであれば、触れ合えるほどに近いということであろう
オーラ防御で身を守りつつも、刺されれば刺され、斬られれば斬られ、しかし、逃がしはせぬ
その身を捕らえ、怪力でもって抱きしめ、その身に宿る罪咎を、生命を喰ろうてやろう

こう見えて、妾は大食いでな
汝ら全て、等しくと平らげてやろう



●罪咎を喰らう者
 まさに傲慢不遜。
 豪然と唯冷やかに眼を据えてくる宝石人形達に対し、リリトは一瞥をくれてやった。
「妾を前にして不遜であるな、人形共よ」
 斯様に云われる筋合いはないと断じるようにリリトは腕を組む。
 罪を持つ者。
 頭を垂れよ、などと告げられた言葉を受け取る気は一切なかった。
「首を垂れるは汝らであろう」
「……サファイヤ様の裁きを受けよ」
 リリトが宝石人形達に告げるも彼女らは聞く耳すら持っていない。ただ自分の告げたいことを口にするだけなのだと察し、リリトは僅かに肩を竦める。
「出来ぬなら、疾くと砕けよ」
 剣を振り上げた宝石人形を見据えたリリトは冷たく宣言する。
 宝石弾が解き放たれたことを察した彼女は即座に床を蹴って後方に下がり、その軌道から逃れた。
 そして、己の力を解放する。
 ――血統覚醒。
 己の中にある血と罪を励起したリリトは血染めの流星を敵に向けて振るう。
 怪力を乗せた一閃は重く鋭く、人形の半身を穿った。
 だが、宝石人形は痛みや衝撃など感じていないかのように身を翻して転移の力を使って距離を開く。
 その際も周囲に星の彩光はふわふわと浮いていた。
 分かっていたことではあるが、折角の光景に水を差された現状。穏やかだった迷宮内の空気は張り詰めている。
「手加減など無用であろうな」
 また薙ぎ払ってやろうと告げたリリトは人形を追う。
 転移先は数メートル先。
 其処へ一気に跳躍したリリトは再びモーニングスターによる重い一撃を振り下ろした。しかし、次は人形が構えた両手の剣で受け止められてしまう。
 それでもリリトは怯まずに其処に力を込めた。
 触れ合えるほどに近い距離。リリトと人形の視線が交差していた。
 素早く身を引いた敵は右手の剣でリリトを刺し、左手の剣でその身を斬る。対するリリトは刺されれば刺され、斬られれば斬られるがまま。
 しかし、それは相手を逃がさぬ意志があるからこそ。
「こう見えて、妾は大食いでな」
 ――その身に宿る罪咎を、生命を、喰ろうてやろう。
 一瞬の隙をつき、リリトは敵の身を捕らえ怪力で以て抱きしめる。耳元で囁くように告げたリリトは薄く笑んだ。
「汝ら全て、等しくと平らげてやろう」
 そして、そんな言葉が落とされた後、宝石人形の身体から力が奪われた。

 こうして屑石達は屠られていく。
 やがて、リリトに斃された最後の一体が骸の海に還るように消えていく中でふと、猟兵達は妙な視線を感じる。
 戦いの最中、妙な違和を覚えていた者もいるだろう。
 纏わりつくような視線は確実に猟兵達の動きを追っていた。
 まるで其処にある罪を見透かして捉え、暴いていくかのように――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『宝石人形』真実のサファイヤ』

POW   :    人形を呪わば穴二つ
全身を【敵の行った罪(攻撃)を裁く霧状のオーラ】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を敵の肉体に転写した後、負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    浄玻璃裁判~ニードルマウンテン~
【あらゆる障害を無視して対象の罪を映す鏡】を向けた対象に、【その内側から生じた無数の針で串刺しする事】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ギルティ・アンド・パニッシュメント
【対象の身体】から【対象のLvが高い程に重量が増す、罪の意識】を放ち、【罪の意識で物理的・精神的に押し潰される事】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●罪霧と青の宝石
 屑石の人形がすべて倒れ伏した後。
 不意に、迷宮内の空気が張り詰めるような感覚が巡った。
 それと同時に霧状のオーラが周囲に満ち、透き通った声が猟兵達の耳に届いた。
「――人形を呪わば穴二つ」
 感情のない声が紡がれたかと思うと、霧の中から少女が歩み出る。
 さらりと揺れる羽飾りと糸髪。
 胸に宿されているのは深い青を映す宝石。
 耳元や手首、身に纏う装飾にすべて碧玉があしらわれていることから、彼女こそが宝石人形の首魁『真実のサファイヤ』だと分かった。
 サファイヤはこれまでずっと、配下の人形が壊される所を視ていた。
 おそらく敢えてそうしていたのだろう。
 そして今、彼女は罪の意識を植え付ける霧を展開した。罪を自覚しているにしろ、いないにしろ、猟兵達の裡には罪悪感のような重い感情が生まれている。
「……おまえ達の罪、たしかに暴いたわ」
 サファイヤは抱えた鏡を此方に向け、静かに口をひらいた。
 罪を映す鏡には、各自が罪だと意識している物事が投影されている。
 視えるものは人それぞれに違う。だが、見せられている光景と与えられた感情が心を蝕むように出来ているということは同じ。
 サファイヤは無感情にぱちぱちと瞼を瞬き、無慈悲に告げた。
 
「さあ、罪を数えて――真実と向き合って、その重さに潰れてしまえばいい」
 
ステラ・ペンドリーノ
……幼いころ、一匹の、捨てられた子犬と仲良くなったの
あの時の私は本当に幼かった。力も、心も

ある日、不意に芽生えたばかりのユーベルコードは、意思とは関係なく暴走
その小さな命を巻き込んで、あたり一面を氷漬けにした
……ごめんなさい。一日たりとも、忘れたことは無いわ

私の【真の姿】は、空間を引き裂いて現れる【巨大な瞳】
この邪眼。私に宿る力こそが、私の罪そのもの

貴女に見せられなくたって、覚えている
私が化け物だと、私の力が危険な物だと

視線を媒介として発動する私の【邪神殺影】は詠唱の必要もなく、この瞳が見つめる空間に【乱れ撃ち】される

さあ、暴きたければ暴きなさい
――貴女もあの子犬と同じ、氷漬けにしてあげる



●過去の影
 鏡が映し出す罪。
 それは小さな鏡だと云うのに、まるですぐ其処に広がっているかのような重圧を感じさせる光景を巡らせていた。
 ステラは思わず後ろに下がり、鏡の景色から目を逸らしそうになりながら堪える。
 その罪は、幼い頃のもの。
 いつだったか、一匹の捨てられた子犬と仲良くなった。
(あの時の私は本当に幼かった。――力も、心も)
 思い出す。
 本当ならこんな場所で思い出したくはないものを、見せられている。
 そう、あの日。
 芽生えたばかりのユーベルコードは不意に意思とは関係なく暴走した。
 駄目、と手を伸ばしても届かない。ステラの暴走した魔力はその小さな命を巻き込みながら、あたり一面を氷漬けにした。
「……ごめんなさい。一日たりとも、忘れたことは無いわ」
 過去の幻影とも云える罪の形を見つめるステラは、そっと呟いた。
 鏡に映るのは真の姿。
 空間を引き裂いて現れる、巨大な瞳。
(――この邪眼。私に宿る力こそが、私の罪そのもの)
 貴女に見せられなくたって、覚えている。
 私が化け物だと、私の力が危険な物だと。
 真実のサファイヤから齎される力なのか、ステラの胸の裡には重苦しい感覚が巡り続けていた。それと同時に鏡の中の過去だけではなく、現在のステラも真なる姿へと変わっていく。
「でも、それは私だけの罪なの」
 こんなところで無理矢理に思い出させられ、裁かれるものなどではない。
 サファイヤを見据え――否、その瞳に映したステラは断じる。
 視線を媒介として発動する力に詠唱は要らない。
 ただ、殺影した邪神の瞳が見つめる空間に舞う凍結の力に穿たれれば良い。鋭い時流の力が解放され、宝石人形を貫いていく。
 罪は罪。
 されど、此処で押し潰されるほど自分は弱くない。あの子達がいるから。繋いだ星彩の光には自分も入っている。それは共に在りたいと願った証。
「さあ、暴きたければ暴きなさい」
 ――貴女もあの子犬と同じ、氷漬けにしてあげる。
 告げた言葉は冷ややかに、されど罪を忘れぬのだと語るように落とされた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

サヴァー・リェス
ユーン(f09146)と

恐怖
絶望
諦観
逃走
激痛
落下
いたい
いた
くるし
し、
なぜ忘れていられたの
慟哭
「わた、わたし、あ、赤ちゃ、私の…」
こ の
 手
  で
「捨て…、!」
ユーンはユーンのかみさまの、子
穢い私に触れては、駄目!
離れて
駄目
どうして
いつも優しいのに
どうして

耳に注がれる言葉と熱い息
どう思…?
壊れた魂の底
何時か何処かの私が叫ぶ
「まもる
まもるから

こわれても―」

赦される訳じゃない
ないのに
熱い想いと涙溢れ
UC愛し子の幻はなぜ今も私に力を与え護る
わからないけど、いい
まもる
恨まれて、いい
まもる、ずっと
たった一つの【覚悟】籠め【オーラ防御】
ユーンも皆も護る
敵の隙にUCが攻撃
あなたは負けない
何処かで絶対幸せに―


ユーン・オルタンシア
サヴァー(f02271)と

彼女の喉と魂を裂く言葉なき悲痛
恐慌の彼女をかき抱く
泡の様な言を理解し尚残る疑問
落ち着く迄決して離さない

「サヴァー
どう思い
それをしたのです?」

やはり其処には愛が在る
「手放す事でしか護れない
あなたはそう思い全力を尽くした」
罪から余りに遠い高潔
「さぁ
まず生きて護りましょう
あなたの内に在るその子を」
懺悔より強き愛が成長した子の幻を鮮烈に描き続け
その愛に私も護られる
罪は襲いくる
覚えあるものもなきものも
けれど
拷問は疑心が生む儚き人の闇
痛み超え【勇気】【覚悟】示す時
皆様を【援護射撃】で支援しつつ
【祈り】光の【属性攻撃】籠めUC攻撃

万物の主たる光が征く
今のみは
影すら此処に在り得ない



●愛し君
 恐怖、絶望。
 諦観、逃走、激痛。そして、落下。
「いたい……いた、くるし、」
 苦しい、と震える声で零したサヴァーがその場に膝をついた。何かの直接攻撃を受けたわけではない。宝石人形が掲げる鏡の中に映る罪と、同時に齎される重い罪悪感が彼女を貫いていた。
 ――なぜ忘れていられたの。
 声にならない慟哭。
「わた、わたし、あ、赤ちゃ、私の……」
 この、手、で。
「捨て……!」
 必死に絞り出した声は断片的な意味しか成していない。
 彼女の喉と魂を裂く言葉なき悲痛を聞きながら、ユーンは傍に寄り添う。恐慌の彼女をかき抱き、泡のような言の葉を何とか理解する。
 それは他ならぬユーンだからこそ出来ることだが、其処に尚残る疑問があった。
 彼の手が自分に触れていると気付き、サヴァーは首を振る。
 ユーン。
 彼はのかみさまの子――。
「穢い私に触れては、駄目!」
「いいえ、サヴァー」
 力なく振り払おうとするサヴァーをそっと抱いたまま、ユーンは落ち着く迄は決して離さないと囁いた。
 しかし取り乱したままの彼女は困惑と混乱が入り混じった瞳でユーンを見上げる。
 離れて。駄目。
 どうして。
 いつも優しいのに、どうして。
 言葉にされなくとも彼女が抱いている思いは手に取るように分かった。そしてユーンはもう一度、サヴァー、とその名を呼ぶ。そして浮かんでいた疑問を言葉にした。
「どう思い、それをしたのです?」
 耳に注がれる言葉。熱い息。
「どう、思……?」
 するとサヴァーが目を見開いた。彼の声によって、ただ罪悪感が巡っていただけの苦しくて仕方ない心境が僅かに凪いだ。
 壊れた魂の底。
 何時か、何処かの自分が叫ぶ声が聞こえた気がした。
「まもる まもるから 私 こわれても――」
 気付けば、その言葉がサヴァー自身の唇から零れ落ちていた。
 赦される訳じゃない。
 そうだと云うのに、熱い想いと涙が溢れる。震えるサヴァーの身体を強く抱き、その手を握ったユーンは改めて感じたことを裡に巡らせた。
 やはり其処には愛が在る、と。
「手放す事でしか護れない。あなたはそう思い全力を尽くした」
 そうでしょう、と呼び掛けるユーンの声は何処までも優しい。
 彼女はそれを罪だと認識している。
 だが、罪からあまりに遠い高潔さをユーンは感じ取っていた。サヴァーはユーンから感じる温もりと穏やかな声を聞き、呼吸を整える。
「ユーン……」
「さぁ、まず生きて護りましょう。あなたの内に在るその子を」
 サヴァーがその名を呼べば、ユーンはそっと頷いた。
 そして、護るためには此処を切り抜けねばならないと示し、宝石人形のサファイヤへと目を向ける。その間も触れあう二人の手と手。
 サヴァーも敵を見遣る。
 その視線に呼応するように月光を纏う魔法使いの影が敵へと向かっていった。
 愛し子の幻がなぜ、今も自分に力を与えるのか。
 その理由はわからない、けれど――。
「まもる。恨まれて、いい」
 ゆっくりと思いを言葉にしたサヴァーはユーンに支えられながら立ち上がった。
 そして、ユーンは月影を見つめる。
 懺悔より強き愛が成長した子の幻を鮮烈に描き続ける。その愛に自分も護られていると感じられた。
 罪は襲いくる。
 覚えあるものもなきものも。けれど、拷問は疑心が生む儚き人の闇。
 胸に宿る痛みを超え、今は勇気と覚悟を示す時だ。
「夜明け齎す光輝なる御方、いと高潔なり――」
 今、万物の主たる光が征く。
 祈りは一条の光芒となり、暁の女神の恩寵を受けながら敵へと迸っていった。
 其処に並び立つサヴァーも決意を抱く。
「まもる、ずっと」
 其処から巡っていったのは守護の力。ユーンも、皆も、護り続ける。
 サヴァーは誓いにも似た思いを抱き続け、愛しき月の背を見つめた。
「あなたは負けない。何処かで絶対幸せに――」
 強さを取り戻した彼女の声に合わせるように、ユーンは更なる祈りを紡いでいく。罪とは名ばかりの重圧など祓ってしまえばいい。
 そう、今のみは影すら此処に在り得ないほどに、光の祝福を。
 隣に貴方が、貴女が、いる。
 二人で描いた星座。あの光のように、繋がる想いが確かに此処にあった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨埜・舜
相棒の哉(f21532)と
アドリブ歓迎

甦ったのは疾うに忘却していた記憶
鏡に映る、黒髪に赤い眸の少年
確か星の丘で一度会っただけの子だ
名前は思い出せない

「独りになりたくないな」と微笑むその少年は
引き留めて欲しいようだったけれど
俺は繋いだ手を解いて、彼と別れたんだ

それから彼とは会っていない
何処に居るかも分からない

……これが、俺の罪――?

隣で酷く動揺した様子の相棒
彼は過去の記憶が無いと話していた
閉じ込めていた過去を暴かれたのなら、
取り乱すのも当然の事だ

その手をぎゅ、と握り
落ち着け、哉
俺は君を独りになどさせない

哉の援護を得ながら寒雷で攻撃

そう
俺は"もう"君を独りにはしない
口が勝手にそんな言葉を紡いでいた


鳩宮・哉
相棒の舜(f14724)と
アドリブらぶ!

鏡に映ったのは、血塗れで倒れた人たちと
立ち尽くす黒髪の少年
その手には見覚えのあるナイフ
……あぁ、これはきっと、昔の俺だ

過去の記憶なんて俺は持ち合わせていないけど
脳裏に交錯するこの映像は、きっと俺のもので

そっか。これが、俺の罪なのか

でもさぁ、なんで、殺しちゃいけないの?
寂しかったんだもん
羨ましかったんだもん
へらへら幸せそうに笑う親子を殺して、何がいけないの?

振り回すナイフは虚空を切るばかり
俺は悪くない! 悪くないもん!

掴まれた手
そこで漸く我に返る
いやだ、寂しいのは嫌
「兎園会のマズルカ」で舜の援護に徹して
ちゃんと動かなきゃ。きみに見捨てられたら、俺はもう、



●過去に独り
 鏡に投影された罪。
 それは視る者によって違う光景を巡らせる。
 すぐ隣に立ちながらも、哉と舜の瞳には全く別の光景が映し出されていた。
 
 哉が見ているのは血の色。
 立ち尽くす黒髪の少年。そして、その足元に血塗れで倒れた人達。
 少年の手には見覚えのあるナイフが握られている。
(……あぁ、これはきっと、昔の俺だ)
 何処か他人事のように哉は胸中で独り言ちた。
 過去の記憶。
 そんなものは持ち合わせてはいないけれど、罪の光景だという鏡の映像と自分の脳裏に交錯する感覚を照らし合わせると、きっと自分のものだ。
「そっか。これが、俺の罪なのか」
 血溜まりとナイフ。
 哉は鏡の中に立つ少年の姿を暫し、見つめていた。
 
 舜が見ているのはいつかの記憶。
 鏡に映る、黒髪に赤い眸の少年。確か星の丘で一度会っただけの子だ。
 それは疾うに忘却していた記憶が蘇ったもの。
 だが、その子の名前は思い出せない。
『独りになりたくないな』
 微笑む少年は引き留めて欲しいようだった。けれど、そのときの舜は繋いでいた手を解き、彼と別れることを選んだ。
 それから彼とは会っていない。何処に居るかも分からない。
「……これが、俺の罪――?」
 舜が疑問の感情を浮かべた刹那、其処に哉の声が重なるように響いた。

「でもさぁ、なんで、殺しちゃいけないの?」
 寂しかったんだもん。
 羨ましかったんだもん。
 へらへら幸せそうに笑う親子を殺して、何がいけないの?
 そんな言葉を並べてエデンの刃を振るう哉。そのナイフは虚空を切るばかりで何にもなりやしない。だが、刃は幻影を切り裂くように振り回された。
「俺は悪くない! 悪くないもん!」
 隣で酷く動揺した様子の哉に目を向け、はっとした舜。
 確か、哉は過去の記憶が無いと話していた。
 それならばあの動揺と焦燥も理解できる。あの罪を映す鏡に閉じ込めていた過去を暴かれたのなら、取り乱すのも当然のことだ。
 舜は虚空に刃を向ける彼の元へ駆け、その手を伸ばす。
 不意にナイフの切先が舜の腕を切り裂いた。
 掠っただけではあるが、僅かな痛みが其処に走った。しかし舜は怯むことなく、そして迷うこともなく哉の手を握る。
 その手をぎゅ、と握った舜は落ち着いた声色で呼びかけた。
「落ち着け、哉」
 掴まれた手。血の匂い。
 ――また傷つけた。このナイフで、きみを。
「舜……」
 刃を下ろした哉だが、うまく言葉を紡げないままでいた。すると舜はその刃と痛みごと包み込むように哉を自分の方に引き寄せ、その耳元にちゃんと声が届くようにそっと口許を寄せた。
「俺は君を独りになどさせない」
 そう、あのときとは違う。
 その言葉を聞いた哉は一瞬だけくしゃりと表情を緩めた後、顔を上げた。
「いやだ、寂しいのは嫌」
「大丈夫だ。今は俺がいる。何処にも行きやしない」
「……うん」
 首を振った哉にそう告げれば、確かな頷きが返ってくる。
 漸く我に返ったらしき彼の手をもう一度強く握ってから、舜は身構えた。次に視線を向けたのは罪を暴いた宝石人形。
 確かにあれは己の罪であるのかもしれない。しかし、あのようなものに暴かれ、なおかつ裁かれる理由など何処にもない。
 魔鍵の末つ方をサファイヤに差し向けた舜は力を紡ぐ。
「返報の時だ」
 刹那、不可視の寒雷が戦場に疾走る。
 其処に合わせて哉は援護に入った。リボンで容作った蝶と菫のアミュレット、極光箔のアステリズム。
 其々を解き放って敵の力を削ぐべく、彼の寒雷に続く。
(ちゃんと動かなきゃ。きみに見捨てられたら、俺はもう、――)
 一瞬、哉が苦しげな表情を浮かべた。
 それを見逃さなかった舜は哉を護るようにその前に立ち、そっと口をひらいた。
「俺は“もう”君を独りにはしない」
 先程と似た、けれども確かに違う意味を持つ宣言。気付けば口が勝手にそんな言葉を紡いでいた。
 その声が何だか不思議な心地を宿してくれる気がして、哉はちいさく頷く。
「――舜」
「ああ、哉」
 互いに名前を呼び合う。此処に居ると確かめあうように、深く。
 そして、二人は真実のサファイヤを見据えて更なる力を紡ぎあげていく。
 雷とアステリズム。
 どんな真実にも負けないと告げるように、ふたつの力が戦場に巡っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

葉月・零
アドリブ、共闘歓迎

罪……ねぇ、思い当たることがないわけじゃないけど……

鏡に写るのは恩人の残し子
真実は伝えるべきじゃないと……そう思って伝えていないことがある

伝えなかったことは間違いなのか?

あー、なんだか考えると苦しいね

不意に猫の鳴き声と、心地の良いひんやり感に思考を戻され、みたのは
力を貸してくれる2人の相棒の姿

ん、そうだね。戻ったらちゃんとあの子に話をしてあげよう
まだ間に合うもんね

ありがと、ね。リーフ、ナハト。

よし、話をする覚悟はできた。
あとは無事にここから戻らなきゃだなー

ナハト、力を貸してくれる?

キミは何か痛み、罪はあるのかな?目を晒したくなるような真実……そのままお返しするね



●零から壱へ
(罪……ねぇ、思い当たることがないわけじゃないけど……)
 零の目の前で鏡の中の景色が歪む。
 其処に映っているのはこの迷宮のものではなく、ひとつの人影。
 恩人の残し子。
 真実は伝えるべきじゃない。そう思ってあの子には伝えていないことがある。
 ――伝えなかったことは間違いなのか?
 その人影を見つめて浮かんだのはそんな思いだった。
「あー、なんだか考えると苦しいね」
 思わず零れた言葉に零は頭を振る。胸を衝くような罪悪感が重苦しさを感じさせた。きっとあの宝石人形の力が巡っている所為もあるのだろう。
 動かなければいけないというのに、何故か手も足も言うことを聞いてくれない。
 このままではサファイヤの思う壺だ。
 そのとき、零の意識を引き戻したのはふたつの感覚だった。
 不意に聞こえた猫の鳴き声。
 それから心地の良いひんやりとした冷たさ。それら思考を戻され、傍らに目を向けた零が見たものは力を貸してくれる二人の相棒の姿。
「ん、そうだね」
 次の瞬間、零の気持ちは穏やかに凪いでいた。
 それまでの罪悪感が嘘のように晴れたのは、二人がサファイヤの支配下から逃れる切欠を与えてくれたからだ。
「戻ったらちゃんとあの子に話をしてあげよう」
 まだ間に合う。
 話をする覚悟はできた。あとは敵を倒して無事にここから戻るだけだ。
 そう決めた零は真実のサファイヤを瞳に映した。
「ありがと、ね。リーフ、ナハト。力を貸してくれる?」
 精霊に呼び掛ければもちろんだと言うように周囲に力が巡っていった。既に敵からの攻撃は受けている。その感覚と効果を精霊が宿る魔術書に記し、零は静かに佇む宝石人形を見つめた。
「キミは何か痛み、罪はあるのかな?」
「…………」
 問いかけてみても宝石人形は何も反応せず、答えもしない。しかしそれには構わず、零は魔術書を大きく掲げた。
「目を晒したくなるような真実……そのままお返しするね」
 ――物語の終わりはハッピーエンドじゃなきゃ。
 零の言葉が戦場に響いた刹那、罪を訊い返す力が巡っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミラリア・レリクストゥラ
《ah―――》、ーー…この霧は…

【WIZ】

貴女が、件の人形さんですね。…罪と言うのがどれほど大事な事かは知りませんが。
人を人とも思わないその態度、赦されていいものではありません!!
鏡が何ですか!!!何が映ってるって?私以外映る筈が無いでしょう!!!1小馬鹿にするのも大概にしなさい!1!!
私は怒ってるんです!!カンカンです!!!怒りのあまりこの体の【狂気耐性】も上がりましたよ!!!

皆さんが苦しんでいる?貴女の蔑むような行いのせいですね!!!許せません!!1
体が重い?誰が重量級ですか!!1!!!!立てなくても唄は唄えるんですよ!!!
【過去は過去たる地へ沈む】で貴女も地面に這いつくばりなさい!!1!



●尖晶石の怒りと大地の歌
《ah――――》
「この霧は……」
 僅かな逡巡。鏡に映る光景。
 ミラリアは敵から齎された奇妙な感覚に首を振り、目の前の存在を見据えた。
「貴女が、件の人形さんですね」
 宝石人形、真実のサファイヤ。ただ静かに佇む敵に呼びかけたミラリアは身構える。
 彼女達、人形が語っていた罪。
 それがどれほど大事なことかは知らないと断じることが出来る。ミラリアは無反応な人形に指先を突き付け、言い放った。
「人を人とも思わないその態度、赦されていいものではありません!!」
 その際に鏡に光が反射する。
「お前の罪は、何?」
 するとサファイヤが不意に問いかけてきた。だが、ミラリアは怒りのままに裡に浮かんでいく思いを告げていく。
「鏡が何ですか! 何が映ってるって? 私以外映る筈が無いでしょう!!」
 小馬鹿にするのも大概にしなさい、と強く巡らせたミラリアの言葉に対し、宝石人形は肩を竦めるような仕草を見せる。しかし、サファイヤはそれ以上の反応を見せないまま別の猟兵に目を向けた。
 無視されたのかと感じたミラリアは其方に向かおうとした。
 だが、身体が重い。
 鏡に映るものの有無に関わらず、サファイヤの力はミラリアを縛り付けていた。
 それでもミラリアは抵抗し続けようと決める。
「私は怒ってるんです!! カンカンです!!! 怒りのあまりこの体が燃え上がっているような感覚もしますよ!!!」
 妙な罪悪感に押し潰されそうだとしても、それを怒りで塗り潰す。
「皆さんが苦しんでいる? 貴女の蔑むような行いのせいですね!!! 許せません!! 体が重い? 誰が重量級ですか!!!!!!!」
 それに、たとえ立てずとも――。
「歌は唄えるんですよ!!! 貴女も地面に這いつくばりなさい!!」
 ミラリアは両手を胸の前で重ね、凛と宣言した。
 過去は過去たる地へ沈む。
 アッシュ・トゥ・アッシュ・ダスト・トゥ・ダスト。
 ――未来を夢見た あの日の幻 とこしえに 底へと 眠りなさい。
 罪が何だというのか。
 罰など巡らせはしない。
 ミラリアが奏でる歌は敵を害する力へと代わり、迷宮に深く響き渡っていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

火神・五劫
マリス(f03202)と

鏡に映る影絵は…マリスの罪、なのか?
常に背筋を伸ばし立つ、凛とした在り方は
罪の意識もあってのことか?

彼女に何か問うより先に
鏡が映し出す像が揺らぐ
男女の影は、少年と女性のものへ変わり
女性は少年の前で赤に染まり、人から肉塊へ

それは、俺の罪
里が妖に滅ぼされた日の光景
俺の目の前で恩師は――愛した人は食われた
手が届かなかった、守れなかった
やめろ、やめてくれ…二度と償えぬと分かっているんだ!

突き付けられる事実、弱すぎた己
折れそうになるも顔を上げる
マリスの背が其処にある

彼女の抱えた想いは分からぬが
その姿は美しい
【鳳火連天】発動
マリスと並び、共に敵を討つ

「無茶はするなと言っただろうが」


マリス・ステラ
五劫(f14941)と参加

鏡には寝台で絡み合う男女のシルエット
愛の名の下に退廃の日々に溺れた
祈りを忘れて、全てを彼に委ねた

「自ら立つことを放棄した、それが私の罪です」

憐憫と失望の眼差しは、トラウマであり後悔に魂が抉られる
浅ましい私を見て五劫もまた失望するだろうか?
それでも私は戦う

真の姿を解放
刹那、世界が花霞に染まる
聖者の装いを顕して、罪に苦悶する五劫の前に出る

「私があなたを守る番です」

【機械仕掛けの神】を使用

花冠が星の宝冠に変わる
星の加護の弱まった今の私にできる全て
全力の殴打に腕が折れるが、構わずに千切れるまで叩きつける
首を絞め上げながら、唇がうっすらと弧を描く
暴力を振るう程に私は壊れていく



●鏡に映る影
 寝台で絡み合う男女のシルエット。
 片方はマリス。もう片方は――……。
 愛の名の下に退廃の日々に溺れた。祈りを忘れて、全てを彼に委ねた。
 自ら罪と意識する光景を見せられ、マリスは満身創痍の身体を引き摺る。先程の戦いの中で他の猟兵の治療があったとはいえ、彼女の身体は疲弊していた。
「自ら立つことを放棄した、それが私の罪です」
 憐憫と失望の眼差し。
 それは心的外傷であり、鏡に映る後悔そのものに魂が抉られるようだった。
 マリスを庇うように立つ五劫。
 彼にもまた、たった一瞬ではあるがマリスが見たものが視えていた。
 あれが彼女の罪なのか。
 常に背筋を伸ばし立つ、凛とした在り方は罪の意識もあってのことなのだろうか。
 そう考える五劫が立ち尽くしている。
 彼の背を見遣ったマリスは思う。
 ――浅ましい私を見て五劫もまた失望するだろうか、と。
 
 そんな中で五劫もまた、鏡によって自らの罪を映されていた。
 見えたのは少年と女性の姿。
 女性は少年の前で赤に染まり、人から肉塊へと変わる。
 あれは里が妖に滅ぼされた日の光景だ。
 五劫の目の前で恩師は――愛した人は妖に食われた。
 伸ばした手が届かなかった。あの人を守れなかった。それこそが、己の罪。
「やめろ、やめてくれ……」
 五劫はその光景から目を逸らした。二度と償えぬと分かっている。今此処で突き付けられた事実は己の弱さを否応なしに自覚させた。
 胸を衝く罪悪感と焦燥めいた感情に折れそうになるも、其処に声が響いた。
 
「……それでも、私は戦います」
 それは凛と響き渡るマリスの声だった。
 それまで鏡の過去に囚われていた感覚が現実に引き戻され、五劫は顔を上げる。
 マリスが其処にいる。いつのまにか自分の前に立つように踏み出していた彼女の背が、確かに此処にある。
 刹那、マリスは真の姿を解放した。
 途端に世界が花霞に染まる。
 顕れたのはそれまでの弱々しくも思えた光ではない。聖者の装いは言葉通りの神聖さを宿しながら辺りを目映く照らした。
 そして、罪に苦悶する五劫の前でマリスは両腕を広げる。
「私があなたを守る番です」
「マリス……」
 彼女の抱えた想いは五劫には分からない。しかし、その姿は美しかった。
 五劫の視線を感じながらマリスは力を紡いでゆく。
 機械仕掛けの神――デウス・エクス・マキナ。
 花冠が星の宝冠に変わる。星の加護の弱まった今の自分にできる全ての力を此処に集わせて、放つ。
 瞬時に地を蹴ったマリス。
 その全力の殴打が宝石人形を穿った。暴走とも呼べる程の圧倒的な力。
 そのあまりの反動にマリスの腕が折れた音が響いた。だが、それすら構わずに千切れるまで叩きつける心算で彼女は動く。更にはサファイヤの首を締め、握り潰す勢いで力を込めた。
 その唇が、うっすらと弧を描く。
 ――嗚呼、暴力を振るう程に私は壊れていく。
 そのように感じた瞬間、宝石人形は身を翻してマリスから逃れた。追おうとするマリスの前に五劫が立ち塞がり、首を横に振る。
「……五劫」
「無茶はするなと言っただろうが」
 そう告げた彼の表情にはもう、迷いはなかった。
 罪悪の感情など、その身に纏った鳳凰の力が吹き飛ばしてくれた。何よりも今、マリスの力になりたいと感じた思いこそが、彼をしかと立たせている。
 罪は罪だ。それは間違いない。
 それでも今、此処で受ける罰など必要ない。
「往くぞ、マリス」
「――はい」
 彼女を止めても無駄であると知っているゆえ、五劫は敢えてそう呼びかけた。
 頷いたマリスは敵を見据える。最後まで、この力を揮い続けると決めて――。
 鳳凰と花霞。
 ふたつの力は重なりながら巡り、星彩の戦場に迸っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楠樹・誠司
頭に鈍い痛みが走る
まるで、其れこそが罪其の物だと告げるやうに

鏡に映る、唯、うつくしい光景
私の記憶の奥底に眠る
届かぬ筈の蜘蛛の糸
人々の笑顔が――如何しても、

……そう、思い出せぬこと
其れが私の罪
けれど、

かぶりを振った
痛みを、迷いを断ち切るやうに

此れは、私の罪
そして、私の罰
決して誰にも渡しはしますまい
此の痛みは……、……此の痛みこそが
思い出せぬ『大切なもの』達との
たったひとつの繋がりなのだから

太刀を抜き、一気に踏み込む
霧を断つ様に薙ぎ払い、蒼玉人形ごと断ち切らんと

……貴女に感謝を
ひととき、懐かしい景色を見る事が出来ました

私は此れからも。償う為に、歩み続けませう
貴女も……もう、誰も呪わなくて良いのです



●罪過
 霧が視界に広がり、頭に鈍い痛みが走る。
 まるで其れこそが罪そのものだと告げるように、深く、深く――。
 誠司が目にしているのは鏡の向こうの景色。
 それは唯々、うつくしい光景だと表わす他なかった。きっと己の記憶の奥底に眠る景色なのだろう。
 然れど其処にあるはずの人々の笑顔が如何しても、思い出せない。
 それは届かぬ筈の蜘蛛の糸。
 頭が痛む。
 鏡の景色が滲む。
 ――此れが、其れが私の罪。
 靄が掛かったような感覚の中でそう自覚しながら、誠司は胸を押さえた。
 伸し掛かるような重圧と罪悪感はおそらく、あの宝石人形から齎されているものだ。此の大本が己の裡にある事も理解していた。
 けれど、とかぶりを振る。
 それは痛みを、そして迷いを断ち切るような仕草だった。
「此れは、私の罪」
 誠司は浮かんだ思いを言葉にする。
「そして、私の罰。決して誰にも渡しはしますまい」
 決意を込めた言の葉を巡らせ、顔を上げた誠司は蒼玉の姿を瞳に映した。
 未だ頭も胸も酷く傷んでいた。
 それでも、
「此の痛みは……、……此の痛みこそが――」
 思い出せぬ『大切なもの』達との、たったひとつの繋がりなのだから。
 澄清を鞘から抜き放った誠司は一気に踏み込む。
 周囲の霧を断つが如く刃を薙ぎ払い、その先に佇む蒼玉人形ごと、そして偽りの罰の力ごと断ち切らんとして。
 誠司の接近に気付いた宝石人形は咄嗟に身を引いた。
 されど誠司の方が一瞬だけ疾い。
 宝石人形の腕から繋がる鎖を其の刃が切り裂き甲高い音を響かせた。刹那、人形と誠司の視線が交錯する。
「どうして、罪に潰れないの」
 蒼玉の眸が疑問を呈するように向けられ、相手から淡々とした言葉が紡がれた。
 対する誠司は僅かに目を伏せ、首を横に振る。
「……貴女に感謝を」
 ひととき、懐かしい景色を見る事が出来たから。
 この裡に人形への憎悪などは宿っていない。だが、彼女が与えられるべきでない罰を誰かに与え続けるというのならば、自分達は相容れない。
「私は此れからも。償う為に、歩み続けませう」
 だからこそ、と誠司は刃先を切り返す。
 宝石人形が後方に引く前にもう一閃。ああ、という声が人形から零れ落ちた。しかし蒼玉はそのまま身を翻して距離を取ってしまう。
 誠司は刃を差し向けたまま人形の行く先を目で追い、静かに告げる。
「貴女も……もう、誰も呪わなくて良いのです」
 何の為に彼女が存在するのか。
 其れを識る事は出来ないだろうから、此処で骸の海に還す。今は唯其れだけを目指せばいいとして己を律し、誠司は口許を引き結んだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
『君は両親を──』
囁かれる言葉

記憶から消していた罪を思い出す
懐かしくて残酷な思い出

過去に大きな過ちを犯してしまった

それは決して赦されないことも分かっている
なら、もうこれ以上皆の笑顔を奪わないように
愉快に笑顔を絶やさず涙を見せず、
少しでも皆を笑わせるように俺は披露するよ

そして、自分がやった行いに後悔はしないように思ったことをやりたい

前までは受け入れられなかった記憶を
拒絶して忘れてしまった過去を
受け入れることで本当の自分になれた気がする

大切な友達も相棒も俺にはいる
──だから、今は生きたいと思う
強く、強く

きっと、もう大丈夫
過去に押し潰されないよ

前に進む為に

だから、君を倒す
この黒剣で心臓(宝石)を貫く



●記憶と罪
『君は両親を――』
 囁かれる言葉が、確かに耳に届いた。
 そうだ、あれは。
 クラウンは鏡に映った影こそが記憶から消していた罪だと思い出した。
 懐かしい。けれど残酷な思い出だ。
「俺は……」
 過去に大きな過ちを犯してしまった。それが今暴かれたのだとしたら、この胸に宿る重苦しい気持ちが罰だというのだろうか。
 このまま此処で消えてしまいたいような罪悪感。
 きっとこれは真実のサファイヤが宿す重圧なのだろうけれど、今のクラウンの心には逃れられない鎖のように巻き付いていた。
 分かっている。
 それは決して赦されないことを。
 でも、とクラウンは俯きかけていた顔をあげる。
「それなら、もうこれ以上皆の笑顔を奪わないようにするんだ」
 今の自分が身に纏っているのは愉快なピエロの衣装と明るい雰囲気。愉快に笑顔を絶やさず涙を見せず、少しでも皆に笑って貰えるように努める。
 災いの子と呼ばれたのは過去。
 クラウン。
 この名前が示す通り、笑顔を運ぶ道化役者としての自分が現在。
「俺はこの笑顔と技を披露するよ。これで誰かが笑ってくれるなら――」
 そして、クラウンは決意する。
 自分がやった行いに後悔はしないように、思ったことをやりたい。
 何も無かったことには出来ない。前までは決して受け入れられなかった記憶を、拒絶して忘れてしまった過去を、此処で受け入れる。そうすることで本当の自分になれた気がするから。
 それに、大切な友達も相棒もいる。
 ――だから、今は生きたい。
 強く、強く、こんな重圧に押し潰されることのないように。
「きっと、もう大丈夫」
 自分自身に告げたクラウンは黒剣を構え、その刃をサファイヤに差し向ける。感情を映さぬ眸が此方に向けられたがそれすら受け止め、クラウンは駆け出した。
 未来に進む為に。
 この先も、皆に笑顔を与えて自分も笑っていたい。
「だから、君を倒すよ」
 宣言と同時に心臓の宝石を貫かんとして刃が振り下ろされた。
 硬質な音が響き、剣が弾かれる。しかしその切先は確かに蒼玉に触れており、僅かな罅を刻んでいた。
 身構え直した彼の髪に咲くフリチラリアの花が揺れる。
 その花の懐く意味を叶える為に。必ず勝って、皆のもとに帰るんだ。新たな誓いを抱いたクラウンの眼差しは鋭く、倒すべき敵に向け続けられた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

篝・倫太郎
【華禱】
大なり小なり、罪はある

でも、その事実に潰れて足掻いたから
俺は今ここに居る

もしも、真実の重さってのが
再び俺や夜彦を潰そうとするんだとしても
潰されねぇし、潰れさせねぇよ
夜彦が潰れそうなら俺が支えるし一緒に抗う

心無い人の誹りに、息が詰まっても
当人がその誹りに揺らいでも……
俺は手を離さねぇと決めてる

夜彦
あんたの覚悟がこんなモンに潰される程度じゃねぇって
俺は知ってるぞ?

拘束術使用
射程内なのを確認して鎖で攻撃
同時に華焔刀でなぎ払い
刃先返してフェイントを入れての2回攻撃
総ての攻撃に生命力吸収と衝撃波を常時乗せてく

見切りと残像で対応可能なら敵の攻撃はこれらで対応
対応不能時はオーラ防御で防いでカウンター


月舘・夜彦
【華禱】
罪から目を逸らすも逸らさなくとも消える事は無い
その痛みも然り……それが罪でしょうね

己の積み重ねてきた殺生は罪である
例えオブリビオンであっても、極悪非道の者であっても
命の一つであり、それを心の拠り所にしていた者も居たのでしょう
だからこそ、背負わなければならない
潰れる様なら私の覚悟が足りないだけ

……彼にも罪があるのは知っている
それでも私はそれを含めた彼と共に居る事を選んだ
今更迷いなどありません

ダッシュやジャンプを使って接近戦を維持
2回攻撃を主に、霧は衝撃波となぎ払いにて対処
受けた攻撃は激痛耐性で耐える

攻撃は残像・見切りより躱してカウンター
倫太郎殿の拘束術の後、早業の抜刀術『静風』



●共に戦う事
 サファイヤはこれまで、猟兵達の戦いを見ていた。
 その事実が示すように彼女と戦う倫太郎と夜彦は苦戦していた。
 射程内だと確認してから鎖を解放する。其処から同時に華焔刀でなぎ払い、刃先を返してフェイントを入れようとする連続攻撃。
 其処に衝撃波などを常時乗せていく戦い方は、倫太郎が得意とする攻撃方法だ。しかし今、得手であるはずの攻撃はすべてうまく巡っていない。拘束術の鎖が命中しておらず、続く一閃も跳躍で躱されてしまっている状態だ。
「当たらねぇだと……!?」
「倫太郎殿、此処は私が」
 強敵だと実感する彼が歯噛みする中、夜彦が前に出て敵との距離を詰めた。駆ける勢いに乗せての跳躍。
 そして早業から繰り出す抜刀術、陣風。
 その一閃がサファイヤの身を掠り、僅かに周囲の霧を散らした。
 されどその一撃もサファイヤは把握しているらしく、深手を与えるには至っていない。夜彦の最初の動きは先程とは出方が違っているゆえに命中させる隙もあるが、倫太郎の動きは完全に読まれている。
 先程の名前のない宝石人形相手には通じた攻撃も、同じままであれば首魁であるサファイヤには通じない。
 それに加えて今は鏡に映された罪が身体を重くしている。
「何故、通じると思うの? あの子達を殺した同じ動きで、私が倒せるとでも?」
 サファイヤは再び動き、罪を裁く霧状のオーラを辺りに満ちさせていく。それによって敵の戦闘力が増強されてしまった。
 其処に先程からの罪の意識が重く伸し掛かり、二人の身を取り巻いていた。
 ――大なり小なり、罪はある。
 倫太郎は胸に渦巻く、与えられた罪悪感を意識しながら頭を振る。
 苦戦はしているが負ける気など欠片もなかった。
「罪はあるぜ。でも、その事実に潰れて足掻いたから俺は今ここに居る」
 倫太郎の声を聞き、夜彦も頷く。
 罪から目を逸らすも逸らさなくとも、あの鏡に映っているように消えることはない。
「その痛みも然り……それが罪でしょうね」
 夜彦は思う。
 己の積み重ねてきた殺生は罪であると。例えオブリビオンであっても、極悪非道の者であっても、命の一つであり、それを心の拠り所にしていた者も居たのだろう。
 だが――。
「だからこそ、背負わなければなりません。潰れる様なら私の覚悟が足りないだけ」
 夜彦は強く宣言し、傍らに立つ倫太郎を見遣った。
 彼にも罪があるのは知っている。
 それでも、と夜彦は夜禱を強く握り締める。
「私はそれを含めた彼と共に居る事を選んだのです。今更、迷いなどありません」
 凛と響き渡る夜彦の声は頼もしい。
 倫太郎は胸に燻る重圧感を振り払うように華焔刀を構え直した。
「もしも、真実の重さってのが、再び俺や夜彦を潰そうとするんだとしても……潰されねぇし、潰れさせねぇよ」
 万が一に夜彦が潰れそうなら自分が支え、一緒に抗うと決めている。
 心無い人の誹りに、息が詰まっても。
 そして、当人がその誹りに揺らいでも。
「俺は手を離さねぇ」
「……倫太郎殿。ええ、私もです」
 その宣言に同意を示した夜彦は、倫太郎と共に更に打って出た。霧は衝撃波でなぎ払い、敵から齎される攻撃から響く激痛は耐える。
 其処へ倫太郎がもう一度刃を振るった。
「これでどうだ――!」
「……その刃先を返す動きで、次の攻撃が読めるわ」
 サファイヤは表情を変えぬまま冷静に、二回攻撃を見切ってしまった。此方だけではなく、向こうにも見切る能力があることを忘れてはいけない。
 そう自戒した倫太郎は夜彦に視線を送る。
 今までとは違う戦い方も必要になっている。同じ拘束術でも違う発動の仕方を――そして、鎖が迸った後に続くだけではない、別の出方を夜彦も狙わねばならない。
「夜彦!」
「はい、倫太郎殿」
 呼びかけに答えた夜彦が、はっとする。行くぜ、と告げた倫太郎はフロア内でも星の光が薄い場所に駆けていった。そう、あの闇に紛れるつもりだ。
 その動きは星空の様相を宿す暗い迷宮だからできること。
 即ち、フィールドの特性を利用するのだ。
 夜彦はそれを察し、彼よりも先に敵へと駆けた。同時に自分の羽織る外套を大きく広げるように翻して、一瞬だけ倫太郎の姿から敵の気を逸らさせた。
 その間に倫太郎は暗闇に身を隠し、夜彦は夜禱に破魔の力を乗せる。
「――参ります」
 刹那、静風の抜刀術が敵を切り裂いた。
「……疾いわね」
「貰った、そこだ!」
 サファイヤが痛みを受ける中、其処に合わせて飛び出した倫太郎が華焔刀を振り下ろす。不意を突かれた形になり、宝石人形はその一撃をまともに受けてしまった。
 すかさず倫太郎は拘束術を発動させる。
 災いを縛る見えない鎖が敵に纏わりつき、相手の拷問器具を取り落とさせた。
 要するにターゲットする部位を変えたのだ。
 大まかに敵を縛るのではなく、武器や、もしくは手元や足元を狙う。不可視の鎖はそういった使い方もできる。そして夜彦が先に動いて自分に敵を引きつけたように、二人で協力するならばどんな動きだって可能であるはずだ。
「やりましたね、倫太郎殿」
「ああ、けどまだまだこれからだぜ」
 攻撃は上手く巡っても、敵が倒れる気配はまだない。
 しかし二人ならば乗り越えられる。そう信じて、彼らは其々の得物を構え直した。
 

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジュジュ・ブランロジエ
【翠彩】
アドリブ歓迎

吸血鬼が庇護する故郷では皆が領主に心酔してた
それをおかしいと言う私は家族と解り合えず一人で逃げた
いつまで平和が続くかわからないのに今も何もできない
嗚呼、胸が痛い

ヴィルさんの姿に勇気付けられ気持ちを立て直しオーラ防御
ありがとうと心の中で

私が逃げたことには意味がある
外に出たから今があるんだ
多くの人を笑顔にできた
素敵なお友達に出会えた

それを知っていたはずなのに術に嵌まるところだった
勝手に心の奥を覗いた罪を償ってもらうよ
罪には罰が必要だよね

炎属性付与したワンダートリート二回攻撃
ヴィルさんの攻撃の補助&加勢
『やっちゃえ、ヴィルルン!』

後悔なんてしない
前を見る
答えはこれから進む道の先に


ヴィルジール・エグマリヌ
【翠彩】

罪か――
思い当たる事は一つ

昔、私は妻を手に掛けた
あれは……色々と込み入った事情が有ったし
正しい選択だったと信じているけれど――
人の命を奪ってしまった事に変りは無い
その事実が時に重く心にのしかかる事もある

けれど私が選んだ道なのだから
重さも痛みも総て受け止めるべきだ

だから、逃げる訳ないだろう
正面から向き合ってやる、と攻撃を確り見据え
剣を構えて針を武器受け

人の心に土足で踏み入るその所業――気に入らないな
私からもひとつ、お前に罰を与えよう
眠れぬ夜の揺籃歌で鋸の群れを一斉に嗾けつつ
暗殺技能で隙を突き、炎を纏う剣で捨て身の一撃を
ふふ、君達のフォローは頼もしいな
……ところで、ヴィルルンって私のこと?



●祓う罰
 罪を暴くという霧が濃くなる。
 戦場に不穏な空気が満ちていく中、鏡に罪が映されてゆく。
「罪か――」
 身構えたヴィルジールが思い当たる事は一つ。
 次第に鏡に過去の光景が映されていくことで、彼は予想が当たっていたと察する。
 妻を手に掛けた瞬間。
 忘れもしない、あの光景が鏡の中にあった。
 だが、あれは色々と込み入った事情が有ったうえに正しい選択だった。そう信じているが、やはり人の命を奪ってしまった事に変わりは無い。
 現にあの事実は、時に重く心に伸し掛かってくる。
 正しき事を成しても、罪として巡るのだと現状が教えてくれていた。だが、そんな事は望んでなどいない。
 人形の能力が与える、押し付けがましい罰などお節介なだけだ。
 頭を振ったヴィルジールは胸の奥に燻るような重圧感に耐えながら、隣に立つジュジュに目を向ける。
 其処には、別の光景を見せられている彼女の姿があった。
 ジュジュに見えているのは故郷の景色。
 吸血鬼が庇護するあの場所では、皆が領主に心酔していた。それをおかしいと感じたジュジュは家族と解り合うことができず、たった一人で逃げた。
 あの場所とて、いつまで平和が続くかわからないのに、今も何もできない。
 ――嗚呼、胸が痛い。
 逃げ出したという罪の意識に押し潰されそうになる。それも宝石人形の力の所為だと分かっているが、ジュジュには耐えきれそうになかった。
 だが、其処へ凛々しい声が響く。
「これは、私が選んだ道なのだから――重さも痛みも総て受け止めるべきだ」
 それゆえに逃げる訳がない。
 それはヴィルジールが己に言い聞かせるように紡いだ言葉だ。
 しかし、その思いはジュジュの心にも響いた。はっとして見つめる彼女の前で、ヴィルジールは正面から向き合ってやるのだと告げて剣を構え直す。
「ヴィルさん……」
 ありがとう、と心の中で告げたジュジュは鏡から目を逸らした。そうして気持ちを立て直したジュジュは防御の力を巡らせていく。
 自分が逃げたことには意味がある。
 外に出たから今がある。
 多くの人を笑顔にできた、素敵なお友達に出会えた。
 それを知っていたはずなのに術に嵌まるところだった。けれども彼の言葉と思いが確かな勇気をくれたと感じて、ジュジュは宝石人形を見据える。
「勝手に心の奥を覗いた罪を償ってもらうよ!」
「人の心に土足で踏み入るその所業――気に入らないな」
 ジュジュが我に返ったことを確認し、ヴィルジールは鋸の群を己の周囲に複製していく。その際に敵の力である鋭い針が巡ったが、剣で以てそれを受けた。
 そして、痛みを弾き返した彼は告げてゆく。
「私からもひとつ、お前に罰を与えよう」
 眠れぬ夜の名を冠する力。それは奈落に至る揺籃歌。
 鋸の群れを一斉に嗾けたヴィルジールに続き、ジュジュも更なる力を紡いだ。
「罪には罰が必要だよね」
 炎を宿したナイフ、そして紙吹雪とお菓子。トリートとトリックを織り交ぜたジュジュの補助と加勢が敵を揺らがせる。
「更なる罪を思い出して……潰れて」
 真実のサファイヤは更なる攻撃で此方を苦しめようとしてくる。
 だが、二人がそうはさせない。
 ジュジュはメボンゴを操り、サファイヤを惑わせるようにくるくると踊らせた。
『やっちゃえ、ヴィルルン!』
 その掛け声は彼女の裏声であり、メボンゴからの呼びかけだ。それに応えるようにヴィルジールは敵へと駆けた。
 隙を突き、炎を纏う剣での一閃。二つの炎が巡る中、サファイヤの身が傾ぐ。
 だが、まだ宝石人形は力を残しているようだ。
 ヴィルジールとジュジュは警戒を強めながらも、隣に立つお互いの存在を確かめる。罪の意識は完全に消えずとも、今はこうして協力しあえることが心強い。
 その際、ヴィルジールはふと問いかけた。
「ふふ、君達のフォローは頼もしいな。……ところで、ヴィルルンって私のこと?」
『そうだよ、ヴィルルン!』
 するとメボンゴが答え、ジュジュもくすりと笑んだ。
 そして、二人は続く戦いへの思いを強める。
 後悔なんてしない。ただ、今は前を見て行くのだとジュジュは心に誓った。
 きっと、答えはこれから進む道の先にあるのだから――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラナ・スピラエア
蒼汰さん(f16730)と

罪、というものが
どういうものなのか、いくら考えても私には分からなくて
けれど…この胸に重くのしかかるような気持ち
これが、罪の意識なのだと思ったらとても苦しくて
…この重みを知らないことが
私にとっての罪なのかも

息をするのも苦しいけれど
蒼汰さんが戦いの意思を宿せば現実へと引き戻されるよう
全てはまやかし
気持ちを振り払って、ウィザード・ミサイルで攻撃を

蒼汰さんの顔を見たら、何故か安心して思わず笑みが
いつだって自分を持っている姿が頼もしくて、眩しくて
あの苦しい気持ちを忘れないようにしながら
それでも私は、前を向いていきたいです
苦しむ人を救える魔法使い
それが私の幼い頃からの夢ですから


月居・蒼汰
ラナさん(f06644)と

サファイヤが暴いたであろう俺の罪は
これまでに多くのオブリビオンをこの手に掛けてきたこと
鏡に映る俺の両手はどす黒い血の色で染まっていることだろう
これまでに倒してきた奴らの怨嗟の声が聴こえてくるよう
だけどオブリビオンは骸の海へ還すことが猟兵である俺の使命だから
例えその真実が罪だとしても、その重さに押し潰されたりなんてしない
真っ直ぐに狙いを定め、煌天の標の光の矢の全てを全力で叩き込む

ラナさんに変な顔、見せちゃったかな
せめて戦っている時くらいは格好いい所だけを見せたかったけど
でも、ラナさんの顔を見るたらそれだけでほっとして
心に重く伸し掛かっていたものが晴れていくような気がした



●夢の標
 暴かれる罪。重圧のように思い罪悪感。
 言い知れぬ感情が裡に巡る。
 ラナが見つめる鏡に映る光景は揺らぎ、霧がかかったように霞んでいる。
「――罪」
 思わず言葉にした一言は虚空に消えていった。
 それがどういうものなのか、いくら考えても今のラナには分からない。けれど、とラナは自分の胸元に掌を置いた。
 この胸に重くのしかかるような気持ち。
 これが、罪の意識なのだと思うと胸裏から苦い思いと、苦しさが更に沸いてくるかのようだった。
「……この重みを知らないことが、私にとっての罪なのかも」
 ぽつりと呟く言の葉。
 それもまた、誰にも聞かれぬまま霧が深くなる星彩の迷宮に沈んでいく。
 同じように今、蒼汰も深い罪悪感に苛まれていた。
 鏡に映る彼の罪。
 サファイヤが暴いたであろうそれは、これまでに多くのオブリビオンをこの手に掛けてきたこと。
 鏡の中に居る蒼汰の足元には転がる仔竜。
 オブリビオンじゃなければ、仲良くなれたかもしれないけど。そんな思いを抱きながらも容赦なく屠った仔達。
 それだけではない。鏡内の光景は移り変わり、嘗て人であったものを映す。
 たすけて。ころして。
 そう言って縋ってきた化け物と成り果てたものを、望み通りとはいえど殺した。
 蒼汰の両手はどす黒い血の色で染まっている。それが本当の血なのか、影が映す幻なのかも分からない。これまでに倒してきたもの達の怨嗟の声が聴こえてくるようで、蒼汰は思わず耳を塞ぎそうになる。
「蒼汰、さん……」
 そのとき。ラナが彼の名を呼び、短く息を吐いた。
 胸を衝く罪悪感という名の攻撃は息をするのも苦しくさせるほど。
 すると、彼女の声を聞いた蒼汰が顔をあげた。ラナさん、と呼び返すように声を紡ぎ、蒼汰は首を振る。
「……だけど」
 例えその真実が罪だとしても、その重さに押し潰されたりなんてしない。
 意思を示す眼差しが敵に差し向けられる。その視線にはっとしたラナも彼と同じ方向に瞳を向けた。
 現実へと引き戻されるように、その意思を確かめあうように。
 幾度か瞼を瞬き、身構える。
 次の瞬間、二人は其々の力を紡いだ。
 全てはまやかし。
 淀む気持ちを振り払ったラナは花杖を掲げて炎の矢を。そして、狙いを定めた蒼汰が煌天の標を描き、光の矢を放つ。
 真実の名を冠するサファイヤへと、一切の容赦なく迸る炎と光の矢。それらが見事に命中する中、ラナと蒼汰は互いに視線を向け合う。
 彼の顔を見たら、何故か安心した。
 ――いつだって自分を持っている姿が頼もしくて、眩しくて。
 思わず零れた笑みは信頼の証。彼女が不意に笑うものだから、蒼汰は変な顔を見せてしまったかと軽く首を傾げる。
 しかし、花のような微笑みにつられて蒼汰もそっと笑みを返す。ラナの顔を見ただけでほっとして、心に重く伸し掛かっていたものが晴れていくような気がした。
「ラナさん、大丈夫?」
「苦しい気持ちはまだ消えていませんが、それでも……私は、この気持ちも忘れずに前を向いていきたいです」
「オブリビオンを骸の海へ還すことが、猟兵である俺の使命だから……」
 行こう、と蒼汰が告げるとラナも頷いた。
 蒼汰の懐く思いはきっと自分と似ている、とラナは感じる。
 苦しむ人を救える魔法使い。それがラナの幼い頃からの夢だったのだから。
 そして、二人は言葉通りに前を見据える。
 罪を暴き、罰を与える。そのような敵であっても、災魔としてこの世界の平穏を揺らがせるならば、ただ屠るだけ。
 それが自分達が抱く意志なのだと示すように、強く、強く――。
 渦巻く炎と月と星の加護。
 二人が解き放つ、思いを宿した魔法の矢は真っ直ぐに戦場を翔けていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

泉宮・瑠碧
罪…沢山あると思うが
姉が間接的にでも僕の所為で亡くなった事と
オブリビオンとはいえ手に掛けている事もだろうか…

赦されなくて良い、そんな資格など有りはしない
ただ、すまない…悲しい、苦しい…
でも
…姉の最期の願いは、僕…私が生きる事でした
だからどんな罪過があろうと、自ら命の放棄は出来ない
…ごめんなさい

僕は杖を手に精霊羽翼
場から動けないと思うので
オーラを吹き飛ばす風の刃や氷柱で属性攻撃
第六感でタイミングを計り
一瞬でも隙があれば全力魔法

…改修されたといえ、サファイヤは優しいのかも知れない
死とは救いにも成り得る
生き続ける方が辛い事だってあるのだから
…罰されて息絶えるなら、どんなに…

…いや
どうか安らかにと祈る



●願われた想い
 姉の姿が、罪を映す鏡の向こうにある。
 瑠碧が見つめる先には過去の光景が揺らいでいた。
 間接的であったとしても、自分の所為で亡くなった姉。そして、オブリビオンとはいえ彼女を手に掛けていること。
 同時に胸を衝くのは重苦しい罪悪感。
 ――赦されなくて良い、そんな資格など有りはしない。
 瑠碧は元よりそう思っていた。だが、宝石人形の魔力で齎される罪悪の感情は押し潰されてしまいそうな程の痛みを伴う。
「すまない……」
 悲しい、苦しい。助けて、と呟いてしまいそうなほどだ。その魔力は本来なら、耐えきれぬ罪の意識で命を断つことを選ばせるほどの重圧なのだろう。
 でも、と胸を押さえた瑠碧は顔を上げた。
 姉が最期に願った事を思い返す。
 願われたのは、僕――『私』が生きることだった。
「どんな罪過があろうと、自ら命の放棄は出来ない。……ごめんなさい」
 そう宣言して己を保った瑠碧は無意識に謝罪の言葉を付け加えていた。その言の葉が届くとは思っていなかったが、それこそが贖罪の気持ちの顕れでもある。
 そして、瑠碧は精霊杖を地につく。
 ふらつきそうになるも、それを支えにして敵を見据えた瑠碧。その眼差しはただ真っ直ぐにサファイヤに向けられ、敵対の意志を示している。
 ――我は願う、力を翼と成し、我が意と共に在ることを。
 瑠碧が詠唱を紡ぐと共に、幻の翼と精霊達の加護がその周囲に宿っていった。
 まだ続く重圧に足は動かない。
 それでも、紡ぐ魔力は霧を吹き飛ばす勢いで駆け巡る。
 風の刃に氷柱。其々の力を解放する瑠碧はタイミングを計り続けた。霧を払いながらも、目指すのはサファイヤへと全力魔法をぶつけること。
「――視えた」
 瑠碧は宝石人形が別の猟兵からの攻撃を受けた瞬間に狙いを定めた。
 そして、穿つ風刃が人形の腕を貫く。
 されど敵は力を残している。まだ、もう一度。何度でも魔力を放つと決めた瑠碧は少女の形をしたそれを瞳に映す。
 もしかしたら、サファイヤは優しいのかもしれない。
 死とは救いにも成り得る。
 生き続ける方が辛い事だってあるのだから。
「……罰されて息絶えるなら、どんなに……いや、」
 自分の裡に浮かんだ思いを振り払うように首を横に振り、瑠碧は杖を掲げる。人形にどんな思惑があろうとも、自分達は斃すことでしかこの手を伸ばせないから。
 どうか安らかに。
 祈る思いは力となって巡り、戦場に解放されてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
罪を写す、鏡
鏡が写すのは
在るものを、あるように

広がった景色は、赤々と
熱は伝わらぬ、ほのお
届かなかった嘆き
間に合わなかった悔いの奥底で過ぎったもの

何故、おわってからかたちどったのだと
かたちではなく…
ともに生き、ともに終わりたかった
なんて

確かに、これは罪だろう

のしかかる重みに身体が軋む音

彼らの叶わなかった願いを託されたからこそ
ここにある己が
自分の願いを燻らせる事自体が

けれど、歯を食いしばり
鞘を杖にしても、無理矢理前へ
攻撃は転がってでも直撃避け
指を伸ばす

罪を数えるより、抱いていくしかない
やる事がある、潰れない
今は、暴いてばかりの君と繋いで
赤く、赤く
ヒトの内側を曝けた罪を燃やす為

駄目だよ
内緒なんだから



●冬枯の罪火
 ――罪を写す、鏡。
 違う。本来の鏡としての役目は在るものを、あるように写すだけだと云うのに。
 そのような思いが巡った刹那、類の目の前に広がる景色。
 鏡の向こう。
 本当なら自分が映っているはずだというのに、其処には赤々とした炎が見えた。
 熱は伝わらぬ、ほのお。
 届かなかった嘆き。
 間に合わなかった悔いの奥底で過ぎったもの。確かに、これが罪だ。
 類は立ち尽くしていた。
 胸を衝く痛みはきっと宝石人形から齎らされたものなのだろう。しかし、湧き出す罪悪感の源は自分の中にあることも知っている。
「何故、」
 どうして。
 類は自分の胸元を掻き抱くように拳を握った。
 おわってからかたちどったのだと。
 かたちではなく、ともに生き、ともに終わりたかった。なんて、と浮かぶ思いを懐き、痛いほどに唇を噛み締める。
 のしかかる重みに身体が軋む音がした。
 彼らの叶わなかった願いを託されたからこそ、ここにある己が、自分の願いを燻らせる事自体が――きっと、そうだ。
 刃の鞘を握り締めた類は歯を食いしばる。
 類はそれを支えにしながら無理矢理にでも前へと進んだ。その動きに気付いた宝石人形が鋭い針を顕現させて類を貫こうと狙う。
「倒れなさい」
「――!」
 その瞬間、類は身を低くしてそれを避けた。重圧に耐えきれずその勢いのままに転がってしまったが、これでいい。
 ただ、指を伸ばす。そして、其処から巡るのは絡繰糸から生じる炎。
 罪を数えるより抱いていくしかない。
 やる事があるのだから、こんな場所で潰れたりなんて出来るはずがない。
「暴いてばかりの君と、繋ごう」
 業を滅する。そんな名を冠する糸を、断罪の人形へと。
 ただ赤く、赤く。ヒトの内側を曝けた罪を燃やす為に迸る絲は戦場に廻る。そして、震える脚で立ち上がった類は人差し指をそっと口許にあてがった。
「駄目だよ、内緒なんだから」
 これ以上は暴かせたりなどさせやしない。
 そう告げるように類は指先を再び宝石人形に差し向けた。瞬時に張り巡らされていく絡繰糸は紅を描きながら、終わりを導く一閃のひとつに変わった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫丿宮・馨子
わたくしは器物として在った、それだけで主を死に追いやる原因となりました
これが罪であると長らく思ってまいりました
今でもその思いは変わりませんし
わたくしはまだ
愛と罪を切り離して考えられません

それに…最近、忘却という罪を背負っていると知りました

けれどもわたくしが今一番罪だと思うのは
わたくし自身の『弱さ』にございます

長い間他人と一線を引いて生きてきた頃は知らなかった

外の世界に触れてもよいのだと教えてくれた人がいる
様々な物に深く触れ始めたら
恐怖や嫉妬、絶望や消滅欲求などに気づき
自分の弱さを知った

守られるだけでは嫌だと思っているのに
心配させてばかり
その弱さがあの方を悩ませる
罪以外の何者でもってございません



●罪の焔は静かに燃ゆる
 己は永く器物として在った。
 それだけで主を死に追いやる原因となり、今という現実がある。
 馨子は宝石人形が掲げた鏡の向こう側を暫し見つめていた。其処には嘗ての主の姿が映っていたが、次第に揺らいで消えていく。
「――嗚呼」
 鏡の中の影に思わず手を伸ばしそうになる。あれが自らの罪であると、馨子は長らく思っていた。今でもその思いは変わらずにいる。
 そして未だ愛と罪を切り離して考えることは出来ずにいた。
 しかし今、鏡の中は不可思議に揺らぎ続けている。
 それは自分が思い出せない罪をあらわしているのだろうか。馨子が自覚していなかった罪は形を成さず、ただ不穏な色を宿しているのみ。
 忘却と云う罪。
 己が背負っていると知ったそれは、まだ暗闇の中にあるようだと感じられた。
 きっと、あの手紙の迷宮で端的に知ったそれがそうなのだろう。されど、それ以上に馨子の裡に巡る思いがあった。
 胸を貫くかのような罪悪感の源。それは――。
「わたくし自身の、『弱さ』……」
 敵の力によって齎される胸の痛みを確かめるように、馨子は胸元に掌を添えた。
 長い間、他人と一線を引いて生きてきた頃は知らなかった。外の世界に触れてもよいのだと教えてくれた人がいる。
 様々な物に深く触れ始めたとき、徐々に識らぬ世界が広がっていった。
 恐怖。嫉妬。
 絶望。そして、消滅への欲求。
 それは自分の弱さを知るに十分な感情であり、今の馨子に深く根差すもの。
 守られるだけでは嫌だと思っているのに、心配させてばかりだ。
 この裡の感情が、思いが、悩ましい。そしてこの弱さこそが、あの方を悩ませているのだとも解っていた。
「そうですね、わたくしの存在が罪以外の何物でもございません」
 そう口にした馨子は俯く。
 その姿が罪に押し潰されたように見えたらしく、真実のサファイヤは問いかける。
「償う為に、死ぬ?」
 淡々とした言葉に慈悲はない。命を断て、と言われているも同然だった。
 だが、馨子は緩く首を振る。
 幾ら罪の意識が消えずとも、此処で潰える選択をするはずがない。
「我が名と馨りをもって命ず――」
 武勇の誉れ高き左大将と右大将を召喚した馨子はゆるりと顔を上げた。たとえこの身が罪に塗れていようとも、戦わぬ理由にはならない。
 そして――馨子の意思のもと、破魔の光矢と浄化の炎刃が戦場に舞った。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

彼者誰・晶硝子
罪……わたしの罪悪感……
ひとの願いを受ける偶像でありながら、ひとの幸福を祈っておきながら
わたしに出来ることは、本当に祈ることしかできないこと……
幸福も祝福も、きっと本人の意識と星の巡りで、わたしに叶えられることなんて無い
それが……、心苦しい
ほんのすこし、背中を押して、癒すように祈るだけ

でも、でも、だからこそ
わたしは祈り続けたい
それでも笑ってお礼をしてくれるひとのために、
少しでも癒しを求めて来てくれるひとのために

罪とは赦すものだわ
然るべき罰を受けたなら、なおさら
だって、そうでなければ
生きて償えないもの

きみに贈る祝福の祈りを
全ての傷付いたひとに
少しの慰めにしかならなくても
それが、わたしの出来る償い



●晶石の祝福
 祈る。ただ、祈る。
 ひとの願いを受ける偶像でありながら。
 ひとの幸福を祈っておきながら、ただそうすることしか出来ない。
「罪……わたしの罪悪感……」
 きっと、それが罰されるべきことだ。
 それはあらたよとかくりよの狭間のような光景。晶硝子は宝石人形が掲げた鏡に映る曖昧な境界を見つめていた。
 其処に射し込んでいるのはひとすじの光。
 光とは、照らすものである。光とは、降り注ぐものである。光とは、平等に救うもの、であるというのに――。
 晶硝子はこれまで、産まれてからずっと祝福あれと光り続けた。
 でも、たったそれだけ。
 幸福も祝福も、きっと本人の意識と星の巡りに左右されるだけのもの。だからこそ、自分に叶えられることなんて無いと感じてしまった。
「それが……、心苦しいの」
 ほんのすこし、背中を押して、癒すように祈るだけの自分は何なのだろう。
 押し潰され、砕かれてしまいそうな重圧が晶硝子の身に廻っていた。たとえそれが宝石人形から齎される痛みであったとしても、祝福を与えるべき行為に懐く罪悪の感情の大元は晶硝子自身にある。
 苦しくて、苦しくて、生きることを止めてしまいそうになる重圧。
 抗い続けるくらいなら、いっそ。
 そんな思いすら過ぎらせる苦しみが裡に巡っている。だが、晶硝子は顔を上げた。
 ――でも、でも、だからこそ。
「わたしは祈り続けたい」
 それでも笑ってお礼をしてくれるひとのために。
 少しでも癒しを求めて来てくれるひとのために。
 言葉にした思いの後に、祈る理由を与えてくれる人々の姿を思い浮かべる。あの人形は罪に潰されろと告げていた。それが罰なのだと言うように。
 けれど、晶硝子はそうは思わない。
「罪とは赦すものだわ。然るべき罰を受けたなら、なおさら」
 胸を衝く重さに抗うように、晶硝子は真実のサファイヤをその瞳に映した。
 死ぬことが罰?
 そんなの、絶対に違う。
「だって、そうでなければ……生きて償えないもの」
 凛と宣言した晶硝子の髪を、その身を、周囲に浮かぶ迷宮の星彩が淡く照らした。其処から生まれる光は夜明けの色を宿している。
 そして、晶硝子は両手を重ねる。
「きみにしあわせあれ」
 晶硝子が紡ぐのは穿つ力ではなく、きみに贈る祝福の祈り。
 全ての傷付いたひとに、ささやかでも光を。
 たとえ慰めにしかならなくても、たとえ僅かでしかなくとも、祈る。祈り続ける。
 ――それが、わたしの出来る償い。
 宝石の煌めきは深く、深く、誰かを癒やす恩恵となって戦場に広がっていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
主が
香炉たる『私』を地に落とした時に
割れて砕けなかったことが、罪

お前はもう要らないよ、と囁いた彼のひとの聲
いつまでも消えぬ残響

今更暴かれたとて
淡い吐息が零れるのみで
ひときわ優しい微笑みを人形へ向ける

――御存知ですか
重すぎるとね
却って心は虚ろになるのですよ

己を責めることで満たされるなら
自己満足に過ぎず
主亡き今
誰が為の贖罪になるのだろうか

ねぇ、誠
人形を、――『ヒトガタ』を呪わば穴二つ、ですよ

香炉からヒトガタの身となりし己もまた
人形と似たようなモノだから

罪悪という呪縛へ
返呪の言霊を高速詠唱で紡ぐ、鳥葬

――過去の残滓が
現し世に介在することこそ、罪でしょう

真実を暴き返し
清澄なる水の羽搏きで青玉の罪を濯ぐ



●ヒトガタ
 ――罪。
 それは、主が香炉たる『私』を地に落とした時に割れて砕けなかったこと。
 綾が見据える鏡の中で、主は云う。
『お前はもう要らないよ』
 囁いた彼のひとの聲。それはいつまでも消えぬ残響。
 されど、と綾は頭を振った。
 今更暴かれたとて、淡い吐息が零れるのみ。そして綾はひときわ優しい微笑みを青玉の人形へと向けた。
「――御存知ですか」
「……?」
 真実のサファイヤは軽く首を傾げた。お前は罪に潰れないのかと問うような眼差しを受け止め、綾は一拍置いてから口をひらく。
「重すぎるとね、却って心は虚ろになるのですよ」
 己を責めることで満たされるなら自己満足に過ぎない。
 主亡き今、誰が為の贖罪になるのだろうか。
 綾は一歩を踏み出し、宝石人形と距離を詰めた。そして、もう一度呼び掛ける。
「ねぇ、誠」
 そうだ、確かあの人形は顕れた瞬間にああ云った。
 それは名もなき宝石人形を壊した自分達に向けられた言の葉だが、目の前に立つ真実の名を冠する人形にも云えることだ。
「人形を、――『ヒトガタ』を呪わば穴二つ、ですよ」
 同じ言葉を繰り返し、綾は薄く笑む。
 しかしその瞳は笑っていない。この胸に宿らされた重圧の痛みの返礼だとでもいうように、反撃の力を紡いでいく。
「そう、痩せ我慢も見れば見るほど滑稽ね」
 対する宝石人形は淡々とした言葉を返す。現に今、綾の身体には言い知れぬほどの罪悪感と鈍く重い痛みが巡っているはずだ。
 だが、綾はそんなものなどないように振る舞い続けていた。
 香炉からヒトガタの身となりし己もまた、人形と似たようなモノだから。
 罪悪という呪縛へ。
 礼、もとい返呪の言霊を疾く紡き、繰り出すのは鳥葬の力。
 ――時の歪みに彷徨いし御魂へ、航り逝く路を標さむ。
 其処に顕現するのは陰陽五行。纏う彩りに染む鳥の、疾てなる羽搏き。
「過去の残滓が、現し世に介在することこそ、罪でしょう」
 ならば、己は真実を暴き返すのみ。
 戦場に迸り、激しく巡っていくのは清澄なる水の羽搏き。
 その力は渦巻き迸る。宛ら青玉の罪を濯ぐが如く、深く、深く――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハニー・ジンジャー
重い躯にきょとりと傾いで
罪、と、言われましても
困りました。我ら罪などありませんのに

そんなことよりねえお前
胸元の青い宝石、きらきらしていて素敵です
我らの手元にあれば良いと思う
或いはその、宝石のよな瞳でも
我らの手の中にあればいいと思う
思う。思った
だから うん
いいなあソレ
アア。イイナソレ
我らにも、それをおくれ

薄翅蜉蝣

いいですか?
いいでしょう?
いいですよね
我らにそれをくれるなら
あとはお前に返してあげる

鏡に映る、今の自分にぱちぱちと
曇りない声をしてどろりと笑う
我らは我らの欲しいものを手に入れるだけですよ
だからこれは罪ではない
ほら、やっぱり
我らに罪などありはしない



●罪なき者の渇望
 重い躯。胸に宿る不可思議な感覚。
 ハニーはきょとりと首を傾ぎ、奇妙な光景が映る鏡を見つめる。
 其処には、何もない。
 普通なら自分の姿が正反対に映るものだというのに、鏡の中には渦巻く妙な世界しか見えなかった。
「罪、と、言われましても……」
 困りました、とハニーは胸を押さえる。
 ――我ら、罪などありませんのに。
 此処に訪れたばかりのときも似たようなことを感じたと思い出す。されど敵から宿らされているのは罪悪感めいた思い。
 ならば、これは偽りのものでしかないのだろう。
 ハニーは胸を衝く痛みには構わず、真実の名を冠する宝石人形に目を向けた。
「そんなことよりねえお前」
 見据えるハニーの眸が捉えたのは人形の胸元に光る青玉の宝石。
 青く光る石はとても綺麗だ。あれが彼女の核であることは問わずとも分かった。仮初の生命でありながら、星の光を反射して煌めく石。それが動力代わりに息衝いているように見えたからだ。
「きらきらしていて素敵ですね、その心臓」
 ハニーは戯れに手を伸ばす。
 無論、その手で宝石に触れることはまだ出来ない。
 けれど、それが我らの手元にあれば良い。
 或いはその宝石のような瞳でも手の中に収められたら――。
 思う。思った。
 だから、うん。
「いいなあソレ」
 ハニーは宝石人形に歩み寄る。
「アア。イイナソレ」
 ひとりだというのに、ざわざわとした感覚が周囲に広がる。
「我らにも、それをおくれ」
 そして、ハニーがそう告げた瞬間。夜色の底無し沼が彼の足元から広がった。
 とっさに宝石人形が後方に跳躍したが、その片足に沼が纏わりついている。敵が霧状のオーラで自らを強化するのにも構わず、ハニーは語りかけ続ける。
 いいですか?
 いいでしょう?
 いいですよね。
 紡ぐ言葉は止まらない。
 そして、その声に呼応するように何も映していなかった鏡にハニーの姿が現れる。
 まるでこれが罪だと云うように。
 その姿が、彼自身がそれに塗れていると告げるように。
 だが、ハニーはぱちぱちと幾度か瞼を瞬かせ、曇りない声をしてどろりと笑う。
「我らにそれをくれるなら、あとはお前に返してあげる」
 我らは我らの欲しいものを手に入れるだけ。
 だからこれは罪ではない。
 不意に夜色の泥が跳ね、サファイヤの胸に付着した。煌めきが僅かに汚される様はまるで、自分達がそれを手に入れる予約が成されたかのようだ。
「ほら、やっぱり。我らに罪などありはしない」
 笑うハニーはもう一度、薄翅蜉蝣の力を周囲に撒き散らす。
 おくれ。その光を、おくれ。
 その声は暗く淀む夜の色に沈むかのように、迷宮に静かに響いていった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クールナイフ・ギルクルス
盗み
生きるために足掻いて何が悪い

身体が重い

殺したこと
他人に見透かされるのが指摘されることが
どうしようもなく頭にくる

心が重い

……るっせえな
トグの金を掏ろうとしなければ出会わなかったかもしれない
今もどこかで笑ってるかもしれない
んなこと何度も考えたさ!

過去を変えられんならなんだってしてやるよ!
俺を裁いていいのは、責めていいのはあいつらだけだ
関係ないテメエじゃねえ!

動けないのは好都合
頭に血が上がっては役立たず
幸い他にも猟兵がいる

Gwaew linnar
Cuil en-vinyanta alagos
(風は歌う 命癒す嵐)

エルフの言葉で紡ぐ音
猟兵の追い風となれ
意識が保てる力が残ればいい
あとは何とかすんだろ



●歌う風に思いを
 これまで、どれほどのものを盗んできただろうか。
 数など覚えてはいない。ただ、それは生きるための行為だったから。
 ――そのために足掻いて何が悪い。
 クールナイフは目の前の人形が持つ、罪を写す鏡を見据えた。
 身体が重い。
 胸の奥に鉛玉でも撃ち込まれたような鈍い痛みが響いている。鏡には見たくない光景が揺らいでいるというのに目が離せない。
 殺したこと。
 それを他人に見透かされ、指摘されることがどうしようもなく頭にきた。
 心が重い。
 だが、それは相手から齎される重圧でしかないと分かっている。
「……るっせえな」
 戦いの最中だというのに、クールナイフの口調は普段のものに戻っていた。冷静さを欠くなと言われたゆえに自分に課したルール。それを破りながらも、今の彼は敢えて言葉を正そうとはしない。
 師匠の、トグの金を掏ろうとしなければ出会わなかったかもしれない。
 あのことがなければ、彼らは今もどこかで笑っていたかもしれない。
「んなこと何度も考えたさ!」
 鏡に映っていたのは出会いの景色。そして、其処から巡っていく彼らと過ごした日々。共に何度も冒険に出て、笑いあい、仲間のあたたかさを知って、それから――最後に映ったのは、彼らを見た最期の光景の断片。
 まるで、出会ったことが罪だと言わんばかりに鏡は景色を歪ませる。
「過去を変えられんならなんだってしてやるよ!」
 クールナイフは叫ぶ。
 それは罪なのかもしれない。だが――。
「俺を裁いていいのは、責めていいのはあいつらだけだ」
 身体は動かない。
 されど逆に好都合だ。頭に血が上がった自分が闇雲に動くのでは足手纏いになる。幸いにも、前方には道化師の彼が戦っている姿が見えた。
 鏡から目を背けたクールナイフは宝石人形に視線を向け、己の思いを告げてゆく。
「罪を告げるのも、断罪を齎すのも、関係ないテメエじゃねえ!」
 その言葉の直後、静かな詠唱が紡がれる。

 ――Gwaew linnar
 ――Cuil en-vinyanta alagos

 風は歌う。命癒す嵐。
 エルフの言葉で紡ぐ音は癒力となり、猟兵の追い風となって巡る。
 疲弊が身体に走った。しかし自分にはただ意識が保てる力が残ればいい。後は皆が、人を笑顔にしたいと願う彼がやってくれるはずだ。
 未だこの胸に重く宿る罪悪感は消えてくれない。きっとこの戦いを終えようとも大元となった感情は燻り続けるのだろう。
 だが、ひとつだけ確かなことがある。それは――。
 自分達は此処で潰えてはいけないということ。勝って、地上の世界に戻る。そのことだけは揺るぎないことだと感じながら、クールナイフは更なる風の力を紡いだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

旭・まどか
鏡に映る姿は、僕
僕が背負う罪は、僕がこの世に産まれ落ちたこと
それだけだ

短い生を閉じたお前
これから幾百もの夜を重ねて往く筈だったお前

それを、奪った
――奪われた

罪悪感は無い
“僕”自身は、何もしていないからね

けれど、否定するつもりも、逃げるつもりも、無いよ

僕は罪ごと受け入れて生きて征く
“お前”と共に、この先を

行くよ
この身を裂く棘を、そっくりそのまま、返しておやり

お前が僕に出来得る全てを賭して
僕の血と成り肉と成り、そして、糧と成るんだ

お前の屍の上に僕は立とう
朝を迎えた日から、その決意は疾うに、出来ているのだから



●受け入れる意志
 罪を映す鏡の向こう。
 其処にあったのは、まどか自身の姿。
 ただ、此処に在ること自体が罪だというように、自分が見えた。
「ああ、そうだね」
 まどかは頷き、その姿を見据えた。それは今の自分を正確に写しているわけではない。此方が僅かに身動ぎしても動かず、ただ其処に立っているだけ。
 分かっている。
 僕が背負う罪は、僕がこの世に産まれ落ちたことだと。
 けれど、それだけだ。
 そして鏡の中の景色が不自然に歪む。その中に見えはじめたのは違う姿。
 短い生を閉じたお前。
 これから幾百もの夜を重ねて往く筈だったお前。
 それを、奪った。
 ――奪われた。
 されどそんなものが見えようとも、まどかの胸に罪悪感は巡らない。現に重い痛みが宿っているが、それは敵の魔力によるものでしかない。
「……“僕”自身は、何もしていないからね」
 緩く息を吐き、まどかは鏡の中から視線を外した。そしてこの光景を見せている元凶である宝石人形に目を向ける。
「けれど、否定するつもりも、逃げるつもりも、無いよ」
「そう。罪を知っていても贖わないなんて……」
 人形がぽつりと呟くと、まどかに軋むような痛みが走った。
 だが、こんなものはまやかしだ。罪の痛みだと錯覚させられているだけ。まどかは敵を見つめたまま、静かに告げる。
「僕は罪ごと受け入れて生きて征く。“お前”と共に、この先を」
 傍らには灰狼が凛と控えていた。
 行くよ、と告げれば地を蹴った灰狼が人形に立ち向かっていった。その背を目で追うまどかの瞳にはもう、鏡の幻影など見えていない。
 されど人形は鏡を再び向け、生じる無数の針でまどかを串刺しにしようとする。
 だが、まどかは敢えて力を抜く。
「この身を裂く棘を、そっくりそのまま、返しておやり」
 受けた痛みは巡らず、代わりに太陽を孕む風の仔から排出されてゆく。
 そう、これでいい。
 お前が僕に出来得る全てを賭して、僕の血と成り肉と成り、そして、糧と成る。
 だから、お前の屍の上に僕は立とう。
 朝を迎えた日から、その決意は疾うに、出来ているのだから。
 相対する宝石人形を屠り、此処に立ち続ける為に。
 戦いに身を投じるまどかの眼差しは鋭く――過去ではなく、先を見据えていた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルネ・プロスト
殺業
オブリビオン相手とはいえ殺すことに変わりない
けど、以前会った君を弔った時からルネは決めたんだ
殺した以上はその罪を負って、その魂を弔い続けようって

だから改めて
――君を壊し(弔い)に来たよ

人形達は死霊憑依&自律行動
森の友達は敵の攻撃動作を警戒

ルネはナイトに騎乗して『悪意』による機動戦
多少の傷は敵の生命力を奪って補完
防げる攻撃は武器受け
無理そうならナイトのダッシュ、ジャンプで回避

敵がUC発動しようとしたら先んじてUC発動
相手の腕を操って鏡を遠くへ投げ捨てさせる
投げ捨てられた鏡はもう1体のナイトが回収して戦線離脱
それ、以前別の君と戦った時に直撃食らったからね
また食らって穴だらけにされるのは御免だよ



●弔いの人形
 殺業の為、ルネは此処に立っている。
 過去から滲出した存在。オブリビオンが相手とはいえど殺すことに変わりない。
 以前、同じ存在を元にする災魔と出会った時、ルネは決めた。
 殺した以上はその罪を負って、その魂を弔い続けよう、と。
「だから、改めて」
 ――君を壊し(弔い)に来たよ。
 そう告げたルネは自らが操る死霊達を人形に憑依させ、自律行動に移らせる。
 胸に巡るのは奇妙な罪悪感。
 それは今対峙する敵、サファイヤが齎す厄介な力だ。しかし、ルネは怯まずに森の友達は敵の攻撃動作を警戒させていく。
 動けぬほどの不可思議な罪の意識が宿っているが、ルネはナイトに騎乗する。
 こうすれば自分が動けずともナイトが動いてくれる。そして、ルネは悪意の名を関する鎌で宝石人形に斬りかかった。
 後方に跳躍したサファイヤはひらりとそれを躱す。
 代わりに敵は鏡から生じさせた無数の針でルネを串刺しにしようと動いた。針が突き刺さるも、半分はナイトが動くことで防いでくれた。
 更に解き放たれる針は悪意で弾き、被害を最小限に抑える。
 ――駄目、速い。
 言葉には出さない思いがルネの中に巡った。
 本当なら敵が動く前に十糸で操ろうと思っていたが、その動作よりも先に攻撃を放たれてしまう。あの鏡さえ捨てさせられれば、と狙うルネは諦めない。
「それ、以前別の君と戦った時に直撃食らったからね」
「あのね、教えてあげる。お前はわたしを知っているような口をきくけれど、わたしはお前なんてこれっぽっちも知らない」
 ルネが告げた言葉に反するようにサファイヤは静かに口をひらいた。
 そうして、一拍置いて語る。
「わたしは、わたし。他と混同しないで」
 確かに元は同じ人形だろう。だが、今の自分は違う己であり、別のものであると主張するように眼差しが向けられた。
 中には同じ存在だと認識するものもいるだろうが、このサファイヤは違う。
 ああ、とルネは頷く。
 確かにそうだ。自分の騎士はチェスのナイトではあるが、別のチェスの駒と同じにされては堪ったものではない。特に自分にとってのママとパパは、と其処まで考えたルネは首を振り、十糸を解き放つことに集中する。
「それでも、また食らって穴だらけにされるのは御免だよ」
 そして、ルネは攻撃に移る。
 たとえあの鏡を取り落とさせることが出来ずとも、戦い続ける。
 その先に勝利が、そして弔いの刻が待っているのだと知っているから――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

リリト・オリジシン
罪。妾の罪を数えよと来たか!
ハハハッ、面白いことを言う
この身に帯びた罪咎など、喰らった罪咎など、最早数えることも出来ぬよ
それこそが妾の歩んだ道
それがいつか妾を地の底に引き摺り込む日も来ることだろう
だが、地の底に落ちるは少なくとも今ではない
さて、人の罪を暴く者よ。汝こそ己が罪を数える用意は良いか?

霧裂くように血染めの流星を振るう
狙うべきは身体ではあるが、手足を狙う牽制を織り交ぜ、それは態勢を崩した時にこそ
攻撃を叩き込めば、霧が痛みを返しもしよう
だが、その痛みは覚悟と激痛への耐性で捻じ伏せる

汝に示されるまでもない
妾の罪はここにある

そして、本命たる罪喰の、真骨頂たる血と呪いの竜が一撃を



●罪咎は深く、濃く
 ――罪。
 そう、罪だとあの人形は告げた。
「妾の罪を数えよと来たか! ハハハッ、面白いことを言う」
 真実の名を冠する宝石人形を見遣り、リリトは思わず笑い声をあげた。八重歯を見せ、くだらないと告げるかのように笑うリリトは、鏡と人形を交互に眺める。
 そして、緩やかに息を吐いた。
「この身に帯びた罪咎など、喰らった罪咎など、最早数えることも出来ぬよ」
 そう語る彼女の瞳に偽りは映っていない。
 宝石人形から向けられた鏡には様々な光景が揺らぎ、瞬時に移り変わっていった。鏡の向こうに映し出されたものには目もくれず、リリトは薄く笑む。
 この胸に齎された罪悪感めいた重圧など関係がない。
 血と罪に塗れた過去。
 それこそが妾の歩んだ道だと自覚している。
 そして、それがいつか己を地の底に引き摺り込む日も来ることだろう。だが――少なくとも、地の底に落ちるは今ではないことは確かだ。
「さて、人の罪を暴く者よ」
 サファイヤに呼びかけ、口端を上げたリリトは地を蹴った。
 押し潰されるような圧が何だというのか。そんなものまやかしに過ぎない。
 血染めの流星を振るい、人形の周囲に渦巻く霧を裂く。
 狙うべきは身体。
 敵は身を翻してリリトの一撃を避けようとしたが、その棘の切先が僅かに相手の腕を穿った。サファイヤの態勢が崩れたことを察し、リリトは更に打って出る。
 叩き込む一閃。
 一撃が命中した刹那、血と呪で形成された竜が顕現した。
 それこそがリリトの懐く罪の形。
「なんて悍ましい」
「汝に示されるまでもない。妾の罪はここにある」
 サファイヤが呟いた言葉を聞き、リリトは頭を振った。
 敵が広げた霧がその身を包んだが、痛みも罪悪感もすべて耐えて堪える。そしてリリトは迷いも衒いもなく、更なる力を巡らせた。
「真実の、といったか。汝こそ己が罪を数える用意は良いか?」
 問いかけながら解き放つは罪喰の力。
 その真骨頂たる、血と呪いの竜から繰り出される一撃が鋭く叩き込まれた。相手の示した罪ごと抱くように――。そして、祝呪の刻印が巡る。
 罪を喰らう度に深くなるそれは、此処でも確かにその身へと刻まれていった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

朝日奈・祈里
…一番の罪は、まぁ、友人をやめたことだよな
感情とか思い出とか
精霊との契約時は取るに足らないものだと思ってた
そんなものくれてやるって思ってた
でも研究室を飛び出して
友と呼べる人ができて、知った
ぼくが些事だと切り捨てたものの
どれだけ愛おしいことか

これから先ぼくさまは『行き過ぎた友愛』を持たない
一定のラインでストップさせる
もう、友と呼んだ人にあんな顔をさせない為にな

罪を知った
思い知った
それを乗り越えて、ぼくは進む
潰れたところで贖罪にはならん
進むことが、罪滅ぼしになるから

クロノス
奴を止めろ
ごっそりと魔力と記憶が消える
宝石を砕いて魔力を補充して
ルーンソードで斬り付けていく
未来の為に

ああ、何を忘れたっけかな



●忘却という罰
 思い当たる、一番の罪。
 それは『友人をやめたこと』だと祈里は自覚していた。
 感情だとか思い出だとかには形がない。手にすることも見ることも出来ず、自分の裡だけにしかない、たったそれだけのものだ。
 それゆえに精霊との契約時には取るに足らないものだと思っていた。
 そんなもの、くれてやる。
 そのときはそう考えて出した答えだった。
 しかし、研究室を飛び出して、友と呼べる人ができてから、祈里は知った。
 些事だと切り捨てたもの――それがどれだけ愛おしくて、大切なことか。
 
 罪を映す鏡の中にはあの契約を交わした時分の祈里の姿があった。
 解ってる。知っている。
 胸中で呟いた祈里は羽織っている白衣外套の腕を捲くって身構えた。この胸に巡る罪の意識が、宝石人形から齎されたまやかしだとも分かっている。
 だから、と祈里は腰に提げた宝石を握った。
「これから先、ぼくさまは『行き過ぎた友愛』を持たない」
 少女は自らに言い聞かせるように宣言する。
 友愛は一定のラインでストップさせるべきだと強く思った。その理由は、友と呼んだ人にもう二度とあんな顔をさせない為だ。
 罪を知った。
 思い知った。
 ならば、どうするのか。天才の頭脳は答えを導き出していく。
「それを乗り越えて、ぼくは進むんだ」
 潰れたところで贖罪にはならない。進むことが、罪滅ぼしになると考えたから。
 すると祈里の言葉を聞き、様子を見ていた宝石人形が問いかけた。
「本当に、それでいいの?」
 相手の名は真実のサファイヤ。その名の通り、正真を見透かすような言葉だ。一瞬、人形が己の心の裡を読んだかのように思えたが、祈里は首を横に振った。
「さあな。それをキミに答えて何になる?」
「……そう」
 サファイヤはそれ以上を問い糾すようなことはしなかった。代わりに解き放ったのは更なる罪の意識を齎す色濃い霧。
 それらが周囲に広がれば自分はおろか、他の猟兵にまで再度の重圧が巡る。
 肉体的にも精神的にも重い体を引き摺り、祈里はルーンソードを掲げた。
「――コード:クロノス」
 詠唱と同時に祈里の髪がふわりと浮いた。濡羽色のメッシュが風になびいたような動きをしたとき、召喚空間から精霊クロノスが現れた。
 奴を止めろ、と祈里が告げれば精霊は応え、標的たる宝石人形の時を凍り付かせるが如き魔力を解き放っていった。その瞬間、敵の動きが僅かに止まり、祈里からもごっそりと魔力と記憶が消え、行使の代価として奪われていく。
 先程の負傷もあって身体がふらつく。
 しかし祈里は手にしていた宝石を砕き、即座に魔力を補充した。
 螺子巻く為に切り拓く未来。その名を持つ刃で以て、動きを止められた宝石人形を斬りつけ、反撃としていく。
 敵はすぐに動き始めたが、他の猟兵が好機を得るには十分な隙ができていた。
 そんな中、身を翻して更なる攻撃の機を狙った祈里はぽつりと呟いた。
「……ああ、何を忘れたっけかな」
 空虚な言の葉が零れ落ちる中、迷宮での戦いは巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸櫻と人魚
アドリブ歓迎

重苦しい空気
胸が軋んで痛いわね
リル、大丈夫?

これが罪?
何が罪なの?
ひとの首を刎ね斬り殺したこと?
屍細工で遊んだこと?
愛した人を喰ったこと?
それは無数に瞬く星のよう
ヒトはそれを罪だというけれど
違うわ
甘い血の香りに唄うような悲鳴
これは
愛の記憶
この胸の痛みは愛の痛み
そうでしょう

刃に破魔宿し
生命力吸収の桜花を舞わせ春嵐のように衝撃波と共になぎ払い
続け2回攻撃で傷口を抉る
攻撃見切り避けたらカウンター
リルは悪くない
リルを閉じ込めて見世物にしてたあいつらが悪いのよ
あなたを苦しめるものは全部―悪なのよ

開き直り?そうかもね
あなたに裁かれるいわれはないわ
暴き立てる悪趣味な罪ごと斬り捨てるわ


リル・ルリ
🐟櫻と人魚
アドリブ歓迎

軋むように胸が痛い
息ができない
溺れそう

僕の罪、は
街を一つ湖底に沈めたこと
ただ一度だけでいいから
水槽から出て
桜をみてみたかったんだ
禁忌を歌って
皆、水にとけた

いつだって僕を苛む
けれど潰されるわけにはいかない
どんな罪を侵しても
……櫻宵のそばにいたいから

君は本当に仕方がないね
でも好きなんだ

オーラ防御の水泡で櫻への攻撃を防ぎながら
霧祓うように歌うのは『薇の歌』
傷も痛みもこの一瞬だけなかったことにする
本当になかったことになれば…いいなんて夢想…けれどそれは望まない
そうだったら櫻宵に出会えなかったから

だから
どんな罪でも僕は受け入れる
痛みごと抱きしめる
この罪は僕のもの
裁かせなんてしない



●其々の罪
 重苦しい空気と重圧。
 胸が軋んで痛い。櫻宵は周囲に漂う不穏な空気に堪えながら隣を見遣る。
「リル、大丈夫?」
 問いかけても返事はなかった。
 櫻宵の傍らにいるリルの眼差しは今、宝石人形が持つ鏡にそそがれている。
 息ができない。
 口をひらいても声が出ない。溺れそうなほどに軋む、喉。
 首元を押さえたリルは魚のように唇を震わせた。その視線を追うように櫻宵も目を鏡の方に向ける。其処には、各々の罪が映し出されていた。

 リルが見ていたのは、水底に沈む街の光景だ。
 それは自らが常に自覚する罪。その街のすべてを、湖底に沈めたこと。
 ただ、一度だけ。
 たった一目で良かったから、水槽から出て桜を見てみたかった。
 鏡には唇をひらく自分の姿がある。
 ――やめて。
 声にならない思いは過去のリルには届かない。届いたとしても、止められない。
 紡がれるのは禁忌の歌。
 そして皆、みんな、水にとけていった。

「……これが罪?」
 櫻宵は鏡の中に映されている光景を見つめ、疑問の言葉を落とした。
 何が罪だというのだろう。
 櫻宵が見る鏡に映るのは殺戮や惨殺、死に纏わる遊戯と呼ぶに相応しい光景が次々と移り変わっていた。
 或る時はひとの首を刎ね、斬り殺した。
 或る時は屍細工で遊んだ。
 また或る時は、愛した人を喰らった。
 そんな光景は無数に瞬く星のように煌めいていたはずだ。ヒトはそれを罪だというけれど、櫻宵にはそうは思えなかった。
 
 そして今、物陰に隠れていたヨルにも鏡の魔力は迫っていた。
 いつだったか、確か何処かの学園内だ。何の意味もなく櫻宵のお尻をちゅんと突いてしまったこと。痛っ、と声があがったときに若干の罪の意識が生まれていた。
 その光景がヨルに見えており、罪悪感に苛まれていたのだが、それはさておき。

 リルは胸を衝く重圧に耐え切れなくなりそうだった。
 あの記憶は、あの歌は、いつだって己を苛む。痛みは消えない。罪の意識だって、そう簡単には忘れられない。
 けれど、とリルは鏡から視線を落とす。
 潰されるわけにはいかないのだと静かな決意を抱いた時、隣から声が聞こえた。
「違うわ」
 それは櫻宵が鏡に向けて否定の言葉を紡ぐ声だ。
 血の香りに唄うような悲鳴。紅い色が散る時の熱。首が落ちる時の感触、喰らう時の甘美な心地。
「これは愛の記憶。この胸の痛みは愛の痛み。そうでしょう」
「……櫻宵」
 彼の言葉から、リルは其処に何が見えていたのかを凡そ理解してしまった。そして、どうしてか自然に声が出た。
 知っていながらも認める。それもまた自身の罪なのかもしれないと感じながら、リルはふわりと笑む。
「君は本当に仕方がないね」
 でも好きだから。どんな罪を侵しても、櫻宵のそばにいたいから。
 君が隣にいてくれるなら、こんな偽りの重圧なんて消してしまえる。たとえ尾鰭が千切れても、心臓が潰されても、喉が切り裂かれても。
 そして、鏡に映された罪を振り払った二人は真実のサファイヤへと視線を向けた。
「そのまま罪に溺れていればよかったのに」
 宝石人形は無感情な言葉を落とす。
 しかし、それには構わず櫻宵は屠桜を抜き放ち、その刃に破魔の力を宿した。
 同時にリルが水泡の防御陣を張り巡らせ、彼を護る力へと変える。
「あら、私達をそんなもので囚えられると思ってたの?」
「確かに君の力はすごい、けれど……」
 櫻宵は地を蹴り、花を舞わせた衝撃波を解き放つ。春嵐のように迸る一閃を受け止めた宝石人形は対抗するように霧状のオーラを周囲に広げたが、首をふるりと振ったリルが歌を紡ぐ。
 霧を祓うが如く歌うのは、薇の歌。
 硝子のように透き通った静謐の歌声。それは囁くように時の砂時計を蕩かし、ひっくり返していく。そして、傷も痛みもこの一瞬だけなかったことにする。
 ――本当になかったことになれば。
 そんな夢想が浮かんでも、リルは決して望まない。
 そうだったら櫻宵に出会えなかった。今このときも、無かったことになるから。
 物思いに耽る様子のリルに気付き、櫻宵は思いを言葉に変えた。
「リルは悪くないわ」
 彼を閉じ込めて見世物にしてたあいつらが全部、悪い。
 だから、そう。
「あなたを苦しめるものは――悪なのよ」
 あいつらだけではなく、目の前に立つ宝石人形だってそうだ。それならば斬り伏せ、首を落とすしかないのだと告げるように櫻宵は更なる一閃を与えに駆ける。
「ありがとう、櫻」
 リルは彼の声を聞き、君との道を選んで良かったと実感した。
 するとサファイヤは肩を竦め、どうしようもない二人だと呆れた様子をみせる。
「お馬鹿さんね、お前たち。罪に対して開き直るなんて」
「そうかもね。でも、あなたに裁かれるいわれはないわ!」
「そうだね。でも、この罪は僕のもの。裁かせなんてしない」
 人形の言葉に同時に答えた二人が抱く思いは、とてもよく似ていた。その後方には片羽をあげ、いけっ、と示すようにぴょんぴょこと飛ぶヨルが居る。
 どうやら皆が完全に罪悪感を取り払えたようだ。
 そして、刃を掲げた櫻宵は絶華の力を解放する。リルもその背を支えるために懸命な歌を響かせていった。
「暴き立てる悪趣味な罪ごと斬り捨てるわ」
「どんな罪でも僕は受け入れるよ」
 その痛みごと抱きしめるのだと決めて、高らかに――。
 続く戦いの中。二人の決意と想いは重なり、星彩の世界にまざりあってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

太宰・寿
シーヴァルド(f01209)さんと

私が犯した罪は、冷凍庫のアイスを勝手に食べた事です。
後からちゃんと買って返しましたが、少し残念そうに「別にいい」と言われた事が却って辛かったです……。
うう、とっても些細な事なのに、今思い出しても申し訳なさでいっぱいです。

ふと気付くとシーヴァルトさんの気遣ってくださる視線を感じて。
私も確りしなくちゃ。
頑張りましょう、シーヴァルトさん。

白や黄色で、足元に広がる夜空に星を描きましょう。
頼もしい友人の、その行く先に星の道を描くように。
流星で、サファイアとサファイアの持つ鏡を攻撃します。
うまく鏡を壊せなかった場合のためにも、私は距離を取って戦います。


シーヴァルド・リンドブロム
寿殿(f18704)と

思い出すのは、子供の頃の罪
嫌いだったニンジンをこっそり捨てたことを、俺は今でも夢に見る
ニンジンさんごめんなさい――そう叫んで跳び起きた後は、薄らと頬を涙が伝うのだ

人によっては「些細なこと」と笑うかも知れない
しかし俺の生まれた世界では、日々の糧を得ることさえ困難で
決して粗末に扱って良いものでは無かったのだ

隣には、酷く思いつめた顔の寿殿
きっと彼女も、重い十字架を背負っているのだな
その罪を知ることは叶わぬけれど
共に乗り越えて行こう

血統覚醒を使用し、此方も戦闘力を増強
寿殿を庇うように前へ、生命力吸収を行いつつ黒剣で攻撃
彼女が教えてくれた物語のように
宝物を見つけに行きたいと願うから



●それが仮令、些細な罪でも
 鏡の中に罪が巡る、廻る。
 罪を暴くという人形が持つ鏡。其々に違う光景が宿るというその中には、各自が罪だと思う事柄が不思議に揺らぎながら映っていた。
 
 寿は今、自分がアイスを食べている過去の光景を見ていた。
 一見は幸せそうに見えるがそうではなかった。
 あれは自分のアイスではない。冷凍庫に入っていた物を勝手に食べているのだ。
「ごめんなさい……」
 寿は思わず謝る。今のように謝罪して、後からちゃんと買って返した。
 けれども相手は、少し残念そうな表情を見せてから「別にいい」と言った。そう告げられたのが却って辛かったことが今、蘇っている。
 うう、と小さく唸った寿は項垂れる。とっても些細なことではあるが、今思い出しても申し訳なさでいっぱいになった。
 その気持ちが今、サファイヤの罪を暴く力によって増幅させられているのだ。
 
 シーヴァルドもまた、子供の頃の罪を見ていた。
 其処に映っているのはニンジンをこっそり捨てる自分の姿。大嫌いだったのでどうしても食べられず、誰にも見つからないようにしたのだ。
 そのことは今でも夢に見る。
 それが今、映像となってシーヴァルドに見せつけられている。
 ――ニンジンさんごめんなさい。
 そう叫んで跳び起きた後は薄らと頬を涙が伝う。今だってそうだ。寿の前であるゆえに堪えているが、辛いことは変わりない。
 人によっては些細なことだと笑われるかもしれない。だが、シーヴァルドの生まれた世界では、日々の糧を得ることさえ困難だった。嫌いだからといって決して粗末に扱って良いものではなかった。
 
 二人は同時に肩を落とす。
 罪悪感が胸の奥を貫くように巡り、痛みを与えてくる。
 はたとしたシーヴァルドは隣に酷く思いつめた顔の寿がいることに気が付いた。
 きっと彼女も重い十字架を背負っているのだろう。その罪を知ることは叶わぬと分かっているが、言葉をかけることくらいは出来る。
「寿殿、共に乗り越えて行こう」
 向けられた視線と言葉に顔を上げた寿は我に返った。
 彼が自分を気遣ってくれているのだと思うと、いつまでも俯いてはいられない。
 私も確りしなくちゃ、と気を取り直した寿は頷く。
「頑張りましょう、シーヴァルドさん」
 そして、寿達は敵を見つめた。鏡に映る過去になど目もくれず、今はただ相手を倒すことだけを考えればいい。
 ――ホワイト・キャンバス。
 寿は白や黄色の色を広げ、足元に広がる夜空に星を描いてゆく。
 隣に立つ頼もしい友人。その行く先に星の道を描くように鮮やかに、美しく。
 シーヴァルドは描かれていく道を見つめ、己の真紅の瞳を覚醒させる。そして寿を庇うように前へ踏み出し、真実のサファイヤへと黒剣で以て斬りかかった。
 其処に寿が流星を重ねる。
 鮮やかな黄色の絵星はサファイヤにぶつかり、弾けて消える。それでもまだまだだと宙に星を描く寿は敵が持つ鏡を狙った。
 されど、あの鏡は敵の持つ最大の武器。そう簡単には取り落とさせることは出来ない。
 それでも寿も、シーヴァルドも戦うことを諦めはしない。
「寿殿、援護は頼んだ」
「はい、シーヴァルドさん!」
 声を掛け合い、前衛と後衛として立ち回る二人は其々の役目を全うしようと決めた。
 確かに自分達にも罪はある。
 それが小さかろうが、大きかろうが関係ない。此処で潰れるわけにはいかない。
 何故なら――。
 彼女が教えてくれた物語のように、この先に宝物を見つけに行きたいと願うから。
 星の彩と血色の瞳。
 寿とシーヴァルドの力は巡り、戦局を動かす一手となって迸っていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

司教の指輪として慈悲や悩み、苦しみを救い赦しを与える為に造られた身で在りながら
赦される人間を妬ましいと想ってしまっていた感情を
そしてかくあれと願われた様に生きず人間の為でなく唯一人の為に行きたいと願ってしまうという罪を見せられればじわりと罪悪感が胸を襲う

だが…隣で欲深くとも良いのだと、そう同じ石を持つ相手に説く愛しい相手を見れば自然と心は晴れて行く
物ゆえ神の赦しが無くとも信じる者の赦しがあれば、俺は迷わん

そう確りと宣言しつつ【蝗達の晩餐】を敵へと放とう
…視せ心を終わらせるお前とは違い、赦し前に進ませる為に己の身に溜め込んだ人々の穢れだ
同族ならば少し肩代わりしてくれても良かろう?


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

ふふ。
ふふふふふ、罪。
罪、ですか

僕自身が清廉で潔白で、罪なき者とは申しませんが……
ふふ、それにしたって罪、ですか!

僕が罪ある者だというのなら唯ひとつ、強欲の罪を犯していることでしょう
自身の幸せを希い、周囲の人々に福あれと望み、身にすぎるほどの幸福を祈っているのですから
彼を愛したこともそうですね、倫理観に倣うなら産み殖やせぬゆえ罪なのでしょう

ですが、それがどうしたというのです?
強欲ならば強欲らしく、求め続けるだけのことです
貴女こそ、人を裁く自分に罪はないと驕っていませんか?

「属性攻撃」「全力魔法」「高速詠唱」を重ねた
【天航アストロゲーション】で攻撃しましょう



●穢れても尚
「ふふ。ふふふふふ、罪。……罪、ですか」
 宝石人形を前にして宵は笑っていた。
 それは楽しくてそうしているわけではない。罪を数えろと告げてきた人形の言葉と、其処から齎された胸の痛みに対して笑うしかなかったからだ。
「……宵?」
 隣に立つザッフィーロは彼の名を呼ぶ。
 しかし自分にもまた、胸を衝くような痛みと奇妙な違和が巡ってきていると感じて、ザッフィーロは胸元を押さえた。
 宵は笑う。痛みなど感じていないかのようにただ微笑む。
「ああ、僕自身が清廉で潔白で、罪なき者とは申しませんが……ふふ、それにしたって罪、ですか!」
 朗々と謳うように宵は虚空を振り仰いだ。
 罪悪感は重い。
 されどそれは敵から齎されているものだということも分かる。
 己が罪ある者だというのなら唯ひとつ、強欲の罪を犯していることだろう。
 そのように感じた宵は掌を握り締める。
 強欲。それは自身の幸せを希い、周囲の人々に福あれと望み、身に過ぎるほどの幸福を祈っているということ。
 くすくすと笑む宵の傍ら、ザッフィーロも己の罪を思っていた。
 司教の指輪として在った日々。
 慈悲や悩み、苦しみを救い赦しを与える為に造られた身で在りながら、赦される人間を妬ましいと想ってしまっていた感情。
 そして、かくあれと願われた様に生きず、人間の為でなく唯一人の為に生きたいと願ってしまう現状。
 そんな罪が、ザッフィーロの見つめる鏡に映っている。
 宵もまた、自分の姿を鏡に映されているようだ。そのような光景を見せられればじわりとした罪への思いが広がり、胸裏を蝕んでいく。
 だが、彼らはそれに押し負けているわけではなかった。
 宵は鏡から視線を外し、ザッフィーロを見つめる。そして、次に宝石人形へと目を向け直した。
「僕の罪……それは彼を愛したこともそうですね」
 倫理観に倣うなら、産み殖やせぬゆえ罪。だが、それは一般的な見方で云えばという話に過ぎない。ザッフィーロが俯く中、宵は言葉を続けた。
「ですが、それがどうしたというのです?」
「宵……」
 ザッフィーロはもう一度、その名を呼んだ。
 そうしてはっとする。欲深くとも良いのだと、そう同じ石を持つ相手に説く、愛しい相手。彼を見れば自然と心は晴れていった。
「そうだな。物ゆえ神の赦しが無くとも信じる者の赦しがあれば、俺は迷わん」
「ええ、ザッフィーロ君。強欲ならば強欲らしく、求め続けるだけのことです」
 二人はしかと宣言する。
 罪がどうしたというのだろう。罰が何だというのだ。
 自ら選んだ道が罪とされるのならば、そんなものは振り払ってしまえばいい。
 確りと意思を持ったザッフィーロは敵を見据えた。そして振り上げた腕を相手に向け、其処から蝗達の晩餐を発動させてゆく。
 人々の罪穢を蝗の大群の影に変え、吶喊させるザッフィーロ。
「……幻を視せ、心を終わらせるお前とは違う。罪を赦し、前に進ませる為に己の身に溜め込んだ人々の穢れだ。同族ならば少し肩代わりしてくれても良かろう?」
 真実のサファイヤに向けた影は遠慮なく相手を穿っていく。
 更に彼に続き、宵帝の杖を掲げれた宵が属性攻撃と全力魔法、更には高速詠唱を重ねた魔力を紡いだ。
「貴女こそ、人を裁く自分に罪はないと驕っていませんか?」
 ――星降る夜を、あなたに。
 宵がそう告げた刹那、招来した隕石が落ちてくる。
 罪穢の影に流星の塊。彼らの力は重なり、一片の容赦すらなく巡っていった。このような場所で、災魔に罰など与えられる謂れはないと示すように。強く、強く――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユウイ・アイルヴェーム
人は、忘れられたときに死ぬといいます
私は、忘れてはいけなかったというのに

私の罪は、願いを持ったこと
あの人との時間を忘れたくないと思ったこと
ひとつを選んで、気付かないまま他を取り落としたこと
だからこそ、私は取り戻さなければいけないのです
もう二度と、誰も、忘れてはいけないのです

穴も弔いも、人形には必要ではありません
あなたを壊すためにできること。あなたに、この剣を振り下ろすこと
正面から接近します。他の方を見る隙を作らないように
攻撃は【ミレナリオ・リフレクション】で相殺します
この罪は脚を止める理由にしてはいけません、進まなければ

私は、出会う全てを忘れません
あなたも、ここにいる方も、いない方も



●真白き決意
 人は、忘れられたときに死ぬという。
 肉体の死を迎えたとしても、誰かの記憶に残っていれば生き続ける。
 だから――。
「私は、忘れてはいけなかったというのに」
 ユウイは俯き、胸の前で両手を重ねて呟く。先程まで見つめていた、罪を映すという宝石人形の鏡には自分が写っていた。
 それは今のユウイにも似ているが、少し前の自分のように思える。
 揺らぐ鏡の向こう側の景色。
 顔をあげれば、もう一度それが視えた。そして胸の奥に重圧のような罪悪感めいた思いが巡ってくる。貫くように痛い、敵の力が齎す感情だ。
 ユウイは思う。
 私の罪は、願いを持ったこと。
 あの人との時間を忘れたくないと思ったこと。
 ひとつを選んで、気付かないまま他を取り落としたこと。
 思えば思うほどにそれが罪だと感じてしまう。でも、とユウイは緩く頭を振り、鏡を持つ宝石人形へと視線を向けた。
「だからこそ、私は取り戻さなければいけないのです。もう二度と、誰も、忘れてはいけないのです」
 記憶を。大切なものを。そして、誰かの生きた証を。
 ――なにひとつ、消えたりしない。
 そう知ったからこそ、未だ思い出せぬ過去に何かがあると信じられる。
 それゆえに魔力で生み出された偽りの罪悪感になど負けてはいられない。ユウイは胸に響く痛みを押し込め、真実の名を宿す人形を見つめた。
「穴も弔いも、人形には必要ではありません」
「罪に押し潰されてしまえばいいものを」
 対するサファイヤは淡々と答え、ユウイを見つめ返す。
 其処から放たれるのは更なる罪の意識を増幅させる魔法の霧。だが、その攻撃は一度この目ではっきりと見ている。
 ユウイはそれを見極め、全く同じ霧を紡ぐことで相殺した。
 そして、白剣を握って駆け出す。身体は未だ重い。けれども、此処で立ち止まることなど許されないと思った。
 この罪を、脚を止める理由にしてはならない。
 私は、進まなければ――。
「あなたを壊すためにできること。あなたに、この剣を振り下ろすことです」
 そう告げたユウイは剣を振るう。
 宝石人形の身を白蓮の刃が掠め、その衣服を散らした。手応えは浅いがまだこれから、只管に打ち込めば良いだけ。
 覚悟を決めたユウイはしっかりと宝石人形を瞳に映し続ける。
「私は、出会う全てを忘れません」
 ――あなたも、ここにいる方も、いない方も。
 剣に重ねた思いは強く、そして深く、戦いの終わりを導くために振るわれてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
俺の、罪 …

思い出されるのは、燃えあがる炎
焼けていく木々
消えていく生き物たちの声…。

俺がやった訳ではない。
だが、
俺が原因で起こったものだという事は、当時子どもであった俺でも理解できた。

それなのにまもることもたすけることも、叶わなかったんだ


苦しい…

が。
だからこそ俺はこうして今戦うのだろう。
後悔はあるが迷いはない。

さぁ いくぞ…!



●罪は深く
「俺の、罪……」
 重苦しい衝撃のような感覚と共に襲いかかってきたのは激しい罪悪感。
 そして、宝石人形が掲げた鏡に映る景色。
 ユヴェンは立ち尽くし、暫し鏡の中で揺らめく赤い色を見つめていた。
 燃えあがる炎。
 紅く染まる葉、焼け落ちて崩れる樹々。
 掠れた悲鳴のような、消えていく生き物たちの声。
 目を逸らしたくとも逸らすことの出来ない、過去の光景が其処に視えた。
 幼い頃の記憶だ。
 忘れもしない、あの日の――。
 拳を握りしめたユヴェンの腕がかすかに震えていた。
 それはユヴェンがやったわけではない。
 だが、自分が原因で起こったものだということは、当時何も知らない子どもであったユヴェンにも理解できていた。
「それなのに……」
 まもることもたすけることも、叶わなかった。
 鏡の中ではあの頃の自分が立ち尽くしている姿が映っている。背格好は変わっても、まるで今と変わらないように思えた。
 苦しい。
 辛い、逃げてしまいたい。
 胸に宿る罪悪感はユヴェンの心を大きく掻き乱し、揺らがせていた。だが、同時に思うこともあった。
「違う。確かにあれは罪だが――だからこそ俺は、」
 顔をあげれば傍にいたミヌレが槍に変じる。自分を握って戦えと言っているかのようだ。そう、こうして今戦う理由は此処にある。
 後悔はあるが、迷いはない。
「さぁ、いくぞ……!」
 ユヴェンは未だ払いきれぬ重苦しい重圧に耐えながらも、地を蹴って駆け出した。
 たとえどれほど痛めつけられようとも。
 勝手な罰を与えようとする宝石人形になど負けぬと決意して――。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

小日向・いすゞ
【狐剣】
里で修行を積む事が出来る事は誉れで蠱毒
そこで落ちこぼれる事は家の没落に直結するっス

決して出来の良い狐じゃ無いあっしは足掻いたっス
あっしが原因で消えた相弟子も居たのでしょう

修行を終えて家に収まってからもずっと同じ
競争は人を蹴落とす事
あっしは家の為に狐で在ろうとしたっス

自らの為に人を使い捨てる事は、努力と言えば綺麗っスけれど
それは
狐の陰陽師で在る為に仕方の無い事だと、積み上げた罪っス

それでも今
あっしは狐の陰陽師で在る事を選ぶっス
今は自分の為に

相剋符を放ち、罪の重さを引き剥がし
ソードの器物を手に
ええ、アンタはあっしの剣っスから
アンタの罪ごとあっしが持っていってやるっス

炎の矢を伴に、刃を振り


オブシダン・ソード
【狐剣】
僕は剣のヤドリガミだ
持ち主の手に在り、それに従って僕は何人も斬って、殺した
振るったのは使い手だ、と言い訳もできるけれど、僕は、僕の本体は、血に塗れている

罪として見るのならば、きっとそれなんじゃないかな

ヒトの身を得た今だって、僕はそれを償うつもりはない
在り方を変えるつもりもない
僕はいつだって、使い手の願いを叶えるために、他の全ての願いを斬り捨てよう

矛盾も、論理の破綻も自覚している
だから僕はきっと重苦しくて動けないと思うんだけど
君の願いを叶えたいとは思っているんだよ、いすゞ

だから、全力で、指先くらいは動かしてみせようじゃないか
敵にそれを向けられたら、UCを発動

後は任せたよ相棒



●罪と共に
 星の彩と夜の色が巡る星座盤の迷宮。
 駆け付けた先で掲げられた宝石人形が持つ鏡の中。其処に映し出されていくのは、其々が懐く過去の光景。
「これが、あっしの……」
「成程ね、これが僕の……」
 ――罪。
 いすゞとオブシダンが見据える視線の先には、互いに違うものが視えていた。
 
 里の景色が見えた。
 懐かしく思ったのか、忌々しく感じたのか、今のいすゞはその感情に名前をつけるつもりがなかった。ただ、其処に巡る光景を見つめる。
 里で修行を積めるのは誉れであり、蠱毒の中に放り込まれたのも同じ。
 そこで落ちこぼれる事は家の没落に直結する。
 不意に、幼い頃のいすゞが人気のないところで悔しげに唇を噛み締めている光景が映った。思い出すのはあのときの感情。
 ああ、自分は決して出来の良い狐ではなかった。
 だから、足掻いた。
 自分が原因で消えた相弟子も居たのだろう。あの時はただ必死だった。それゆえに他者がどうなったかすら些事であり、今も知らぬままだ。
 やがて鏡の光景は修行を終えた後に移り変わる。
 家に収まってからもずっと同じだった。
 競争は人を蹴落とす事。いすゞは家の為に狐で在ろうとして、実際にそう務めた。
 自らの為に人を使い捨てる事は、努力と言い換えれば綺麗に聞こえる。
 けれど、それは――。
 狐の陰陽師で在る為に仕方の無い事だと、積み上げた罪だ。
 それでも今、いすゞはそのまま此処に立っている。積み重ねた罪の上に、然と。
「あっしは……狐の陰陽師で在る事を選ぶっス」
 家の為? 違う。
 誰かの為? それも、違う。
 今は、そう――ただ自分の為に。

 オブシダンが見ていたのは、ただの剣であったときの己。
 鏡の中には黒曜石の剣、即ち自分が振るわれている光景が映っている。その刃が振り下ろされ、誰かの影が地に崩れ落ちた。
 そう、自分は剣だ。
 持ち主の手に在り、それに従って何人も斬って殺した。
 今もまた、鏡の中では別の誰かが斬り伏せられ、その血が刃に濡れる。
 振るったのは使い手だと言い訳もできるだろう。けれどもオブシダンは――黒曜石の剣は血に染まっている。
 滴る血の赤が青い刀身を汚していく。
 入り混じった彩は黒い。それはまるで死者の怨念が色を得たかのように思えた。
 それは罪だ。
 命を断ち切るという、紛れもない罪なのだろう。
 だが、オブシダンは表情を変えずにただそれを見つめていた。確かに、この胸に宿る鈍い感覚がある。だが、それもサファイヤが与えた偽りの痛みだ。
「僕は、在り方を変えるつもりはないよ」
 オブシダンは己の中にある思いを言葉に変えた。
 罪だと示されようが、ヒトの身を得た今だって償うつもりはない。自分はいつだって、使い手の願いを叶えるために他の全ての願いを斬り捨てるものであった。
 無論、矛盾も論理の破綻も自覚している。
 それだからこそきっと重苦しくて動けないのだろう。偽りであっても、根源となる感情は裡に眠っていたのだから。
「でもね、」
 胸に手を当てたオブシダンは隣の少女へと視線を向けた。
 そして、その名を呼ぶ。
 
「君の願いを叶えたいとは思っているんだよ、いすゞ」
「ええ、ええ」
 名を呼ばれたことでいすゞが顔をあげた。彼女にも罪の意識が重くのしかかっていただろう。だが、もう答えは出している。
 相剋符を放ち、罪の重さを引き剥がしたいすゞは傍らに手を伸ばす。オブシダンも動かぬ身体に鞭を打つように、指先を彼女に向けて差し伸べた。
 触れ合う手と手。
 その瞬間、オブシダンが真の姿へと変わった。
 いすゞの手の中に収まった黒曜石の剣は実によく馴染んでいる。
「後は任せたよ相棒」
「アンタはあっしの剣っスから、アンタの罪ごとあっしが持っていってやるっス」
 言葉と共に剣の周囲に炎の矢が広がる。
 先んじて敵へと飛来していく魔法の矢を追うように、剣を握ったいすゞが駆ける。
 罪が何だというのか。
 そんなもの疾うに受け入れている。
 共に足掻き、共に進み、共に戦い、そして――共に生きる。そう決めたのだから、これからも世界の理不尽に抗い続けよう。他の誰でもない、二人で。
 そして、剣刃が宝石人形の胸に振り下ろされる。
 黒曜石と蒼玉。
 真正面から衝突したふたつの石は戦場に甲高く鋭い音を響かせていった。
 まるで戦いの終わりを導く音のように、高く、高く――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユハナ・ハルヴァリ
もぞもぞと落ち着かない、気持ち
重たい、居心地の悪い、振り払いたい、痛み

僕はそれを、覚えていない
思い出しても、忘れてしまう
昔のことをうまく、辿れなくて
君がそれすら暴けるというなら、僕にとっては
よいこと、なのかもしれません

記憶を手繰るように
一面に拡げる雪の氷、透いた花原
サファイヤ。ふかいふかい青色
埋もれて閉ざして、あげましょう
凍らせた君に突き立てる短刀は
罪の味が、したでしょうか

(誰かを、あやめたことがある
それが如何な虫の息の、途絶えそうな命だからと
魔獣に殺され損なったたくさんの吐息を凍らせ
ひとりきり遺された僕の罪は、きっとあの雪の中に今も)

銀世界に星空
失した記憶に重なるそれは
どんなにか、悼むだろう



●銀世界に星空
 胸の奥で鈍く響く感覚。
 もぞもぞと落ち着かない、気持ち。重たい、居心地の悪い、振り払いたい、痛み。
 ユハナは、これが罪悪感なのかと考える。
 宝石人形が見せる鏡の向こうには何も映っていなかった。
 ただ、何かが見えた気もする。揺らいだ白い景色の奥に誰かが、幾つもの影が見えたような気もした。それでも鏡にははっきりしたものは映らない。
(――きっと、僕はそれを、覚えていないから)
 思い出しても忘れてしまう。
 だからだろうと考えながら、ユハナは深い海を思わせる瞳を鏡に向け続ける。
 昔のことはうまく、辿れない。
 鏡を持つ宝石人形を見遣ったユハナは胸元に手をあてた。
「サファイヤ。君がそれすら暴けるというなら、僕にとっては、よいこと、なのかもしれません。けれど――」
 真実という意味を持つ宝石の名を呼ぶ少年は首を振る。
 鏡は何も見せてくれない。
 彼女の力ですら映せないというのならば、この胸に巡る罪の意識は何なのだろう。
「可哀想。罪を知らぬ者とは、なんて哀れなの」
「……僕は、」
 サファイヤから投げかけられた言葉にもうまくは答えられず、ユハナは僅かに俯いた。しかし、其処から記憶を手繰るように腕を伸ばす。
 魔力で紡ぎあげる銀世界。
 一面に拡げる雪の氷。透いた花原は戦場たるこの場所を美しく彩っていった。
「蒼玉の、ふかいふかい青色」
 そう、サファイヤ。
 もう一度彼女の名を呼んだユハナは軋む胸の痛みから目を背け、氷花の嵐が舞う先に踏み込んだ。
「埋もれて閉ざして、あげましょう」
 そう告げながら、凍らせた人形に突き立てたのは銀鉤の短刀。
 もしかすれば、これが罪の味と云うのか。
 すると呻くような小さな声が宝石人形から零れ落ちた。
「触らないで」
 刃から逃れたサファイヤはユハナから距離を取るべく身を翻し、霧のオーラを色濃く纏う。その瞬間、ユハナの脳裏に奇妙な感覚が流れ込んだ。
(僕は――誰かを、あやめたことが、ある)
 幽かに思い出す。
 それが如何な虫の息の、途絶えそうな命だからと。魔獣に殺され損なったたくさんの吐息を凍らせて。
 ひとりきり遺された己の罪。それは、きっとあの雪の中に今も――。
 感覚はたった一瞬だった。
 この迷宮に広がる夜の色と、自分が作り上げた銀の景色が失した記憶に重なった。
 どんなにか、悼むだろう。
 されど記憶はまた忘却の霧に包まれる。ふと浮かんだ思いもまた、宝石人形が生み出した霧によって隠されていくかのようだ。
 それでも今はこの戦いを終わらせる為に。
 もう一度、短剣を握り締めたユハナは氷花を創り、冷たき世界を更に拡げてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
壊れてしまった片割れの鍵
助ける術はなかったと言い切ってしまえれば楽になれただろうか
違う、本当の罪は、自分を守る為に大切な彼奴を忘れていたことだ

忘れたかった
本当は忘れたくなかった
でもそうしなければ己を保てなかった弱さこそ罪だった

でも、俺はもう思い出したからさ
――責められるべきなんだろうが
それで彼奴に縛られても
お前に縛られる謂れはねーよ

使うのは巫覡載霊の舞
多少動きが止まっても神霊体で耐える

嗚呼、いてぇ
でもこれが彼奴のいない世界で生きていくってことなんだろう

重圧をはねのけるように振るう刃、カウンター
やられっぱなしは性に合わねーんだ
ピアスをゆらり、誘惑で引き付けて引き付けて
衝撃波の傷を狙って抉る



●片割れの記憶
 鏡に映っていたのは自分の姿ではない。
 宝石人形が掲げている鏡面の向こう側。綾華が見据える先に写し込まれているのは、壊れてしまった片割れの鍵。
 助ける術はなかった。
 そうと言い切ってしまえれば楽になれただろうか。
 綾華は揺らぐ鏡の中の景色から目を逸らすことが出来なかった。胸を縛り付け、心に自ら鍵をかけてしまいそうな感覚が重く巡る。
「――違う」
 綾華は胸を押さえ、何とか声を絞り出した。
 助けられなかったことが罪ではない。本当の罪は、自分を守る為に大切な彼奴を忘れていたことだ。
 忘れたかった。本当は忘れたくなかった。
 相反する思いが心を軋ませる。
 でもそうしなければ己を保てなかった。その弱さこそ罪だったのだと自覚する。
 此れを罪悪感と呼ぶのだろう。
 譬え敵から齎された痛みであっても、巡る思いの根源は己の中にある。
 でも、と言葉にした綾華は鏡から視線を外した。代わりに目を向けたのは真実の名を抱く宝石人形、サファイヤだ。
「罪から目を逸らすの?」
 すると彼女は綾華に問いかけてきた。
「そうじゃねーよ、俺はもう思い出したからさ。――本当は責められるべきなんだろうが、それで彼奴に縛られても……お前に縛られる謂れはねーよ」
 首を横に振り、綾華は敵を睨みつけた。
 この罪は己だけのもの。勝手に土足で踏み込まれて贖えと云われても従う義理などない。対するサファイヤは「そう」とだけ答えて霧を更に色濃く巡らせていく。
 綾華は自らを神霊体へと変え、襲い来る重圧に耐えた。
「嗚呼、いてぇ」
 痛みが軽減されているとはいえ、胸を衝く重さも苦しみも消えないまま。
 けれど、きっと――。
 これが彼奴のいない世界で生きていくってことなんだろう。
 綾華は重圧をはねのけるように黒鍵刀を振るった。衝撃が襲い来ようとも、この鍵で必ず勝利への扉をひらく。
 そう告げるかのように差し向けられた瞳は真っ直ぐに敵を映していた。
「やられっぱなしは性に合わねーんだ」
 そのとき、緋色の柘榴石が揺らいだことで、宝石人形の気が其方に向く。
「……きれい」
 宝石を抱く者としての性なのか、サファイヤもまた石の光に惑わされたようだ。
 好機を掴み取った綾華は黒鍵の刃を振るう。其処から解き放れた衝撃波は深く、敵の傷を抉った。
 きっと、後少しだ。間もなく敵は斃れる。
 戦いの終わりが訪れる予感を覚え、綾華は身構え直した。
 此処で罪など償わずともいい。抗えばいい。少なくとも、今だけは――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘズ・エイス
外界を知らず、自らをヒトと信じていた無知が罪か
本物のヒトを里に入れ、無知でいなくなったことが罪か
私を若返らせたために魔女と謗られ、忽然と消えた
おまえを守れなかったこと、見つけられなかったこと、それが罪か

冷然たる宝石人形は
朦朧と眺めた吹雪のように、悍ましくもうつくしい
辛いとは知れていて
なぜここに来たのだろう
きっと
報いにより罪を贖えるのなら、罰は救いだろうかと――

…ッ
いいや
功罪じゃない
あるのは後悔、それだけだ
【四本足の踊り】
拒みも、踏み越えもしない
私は…過去を引き摺って
その重みに縋りながら生きていく

欠片で構わない
もし宝石が残っていれば持ち帰ろう
私の生き方が正しかったか
いつかそちらで、聞かせておくれ



●真実の石
 無知は罪なのか。
 外界を知らず、自らをヒトと信じていた無知が罪であるのだろうか。
 ヘズは今、鏡に映された過去の自分を見ていた。
 其処には嘗ての光景が揺らいでいる。
 重苦しく伸し掛かる胸の痛みは蒼玉の宝石人形から与えられたものだと分かった。だが、ヘズの裡にその根源となる感情があったのも事実である。
 本物のヒトを里に入れ、無知でいなくなったことが罪か。
 ヘズを若返らせたために魔女と謗られ、忽然と消えた――『おまえ』を守れなかったこと、見つけられなかったこと、それが罪なのか。
 鏡の中の光景は次々と移り変わる。
 最後に映った森は何処か寂しく、遠いもののように思えた。
「……ッ」
 あれは幻影だ。ただの魔力が齎す幻に過ぎない。
 下唇を噛んだヘズの姿を冷然たる宝石人形は静かに見据えている。ちらと彼女を見遣れば、朦朧と眺めた吹雪のように、悍ましくもうつくしいと思えた。
 彼女や己の罪と対面することが辛いとは知れていて、なぜここに来たのだろうか。
 ヘズは重圧に耐えながら考える。
 ああ、きっと。
 報いにより罪を贖えるのなら、罰は救いだろうかと――そう、思ったからだ。
 ヘズは掌を強く握り、胸に巡る痛みを押し込める。未だ罰は与えられていない。こんなものは違うと感じてしまった。
「いいや、」
 声を絞り出したヘズは顔を上げ、鏡ではなく宝石人形だけを見据える。
 功罪じゃない。
 あるのは後悔、それだけだ。
 言葉すら紡がぬまま、ヘズは雪色の白狐へと変じた。
 過去の光景は未だ鏡の中で揺らいでいる。しかしそれを拒みも、踏み越えもしない。
(私は……過去を引き摺って、その重みに縋りながら生きていく)
 だから、とヘズは銜えた氷柱を標的に差し向けた。
 狙うはただひとつ、真実のサファイヤが胸に宿す蒼玉の石。
 既に多くの猟兵が心臓部たる其処を刃で斬り裂き、魔力で穿ち、短剣を突き立てた。罅割れた宝石を砕くなら、今しかない。
 迫りくるものを拒むように罪の霧は深く立ち込めてゆく。しかしそんなものなどこの四足が飛び越えていける。
 その宝石を砕き、欠片でもいいから手にしてみたい。
 ――己の生き方が正しかったか、いつかそちらで、聞かせておくれ。
 そう思い、ヘズは一気に肉薄する。
 刹那、振るわれた氷柱が宝石人形の胸を貫いた。
 
 
 罅割れた宝石が砕ける。
 きらきらとひかる蒼き石の欠片が戦場に散らばっていった。誰もがその光景を目にし、戦いの終わりが訪れたのだと確信する。
 鏡が取り落とされ、それもまた音を立てて割れていった。
 膝をついたサファイヤは床に散った自分の石と、崩れ落ちた鏡を虚ろな眸に映す。
「ああ、ああ……」
 それと同時に猟兵達の裡にあった言い知れぬ罪悪感が晴れていった。魔力で増幅されていた感情や重圧が、サファイヤが力を失うと同時に解除されたのだろう。
 そして、宝石人形はゆるりと顔を上げた。
 傷付いた人形の身体が、乱れた髪が、そして胸にぽかりと開いた穴が、彼女がもう長くはないことを教えている。
 人形は静かに双眸を細め、唇をひらいた。
「おまえたち、の罪は……たしかに暴かれた。その罪は、消えることはないわ……」
 ふふ、とサファイヤが幽かに嗤う。
 そうして彼女は最期の言葉を猟兵達へと向けた。
「――いつか、真実と向き合って……その重さで、潰れてしまえ」
 怨嗟にも似た声が落とされる。
 次の瞬間。崩れ落ちた人形の姿は薄れて消え、彼女は骸の海へと還っていった。
 
 こうして、星と罪が巡る迷宮の一幕は終わりを迎える。
 星座盤の夜色迷宮には元あった穏やかさが戻ってきていた。皆が其々に描いた星座の光もふわふわと浮かび、揺蕩っている。
 罪は罪だ。
 確かに消せず、向き合う真実は時に残酷なものであるのかもしれない。
 けれども此処にはもう死の気配など満ちていない。猟兵達は確かにこの場所を取り戻し、使命を果たした。今はきっと、それだけでいい。
 そして――平穏と静けさの中で、迷宮の星座盤は緩やかに廻り続けていく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月07日


挿絵イラスト