結成せよ! 勇ある鳩の団!
●えげつない暴力。
暗雲立ち込める辺境の村。
村民に囲まれて倒れた仲間を見回し、『愚鈍のゲイリック』もまた己の力不足を感じながら地に両膝をつく。
所詮、自分たちには無理だったのだ。
周りの人間におだてられ、領主から特命を受けて、いつもは役立たず扱いの彼らが舞い上がってしまうのは無理のないことだった。
しかし。
「……う……うう……」
「畜生、……畜生っ……」
力なく呻く仲間に彼は思う。なぜ、自分たちだけがこんな目に遭わなければならないのかと。
見上げる先で、不気味に眼を光らせた者共。
「ど、どすたぁ、騎士様よう」
「まだまだあるでよ、早く立ってくんねえか」
「ほら、……ほら……!」
「さあさあさあっ!」
迫る村民に気圧されて、震え歯を鳴らすゲイリックは目に浮かべた涙を無念の思いとともに溢す。
本来ならば、幸せのはず。それがこんなにも自分を苦しめる。
なぜこうなってしまったのか。せめて、仲間が、もっと沢山の仲間がいれば。
彼は恥も外聞もなく命乞いをした。
「も、もうこれ以上入りません! お腹一杯なんです、限界なんですぅ!」
しかし彼らはその懇願を聞くことなく、ゲイリックの命を奪おうと……。
…………。
えっ?
●何か流れがおかしかったね?
集まる猟兵を見据えて、バオ・バーンソリッド(戦慄のワイルドタフネス!!・f19773)はまず、力を貸してくれることに感謝をと用意していた手持ちのホワイトボードに文字を書き入れる。
喉の怪我のせいで喋るのが苦手なようで、ささっと文字を消して本題を書き始めた。
『今回、私が予知したのはダークセイヴァーにおけるヴァンパイアへのレジスタンス組織の発足と、その末路だ』
末路ねえ。里帰りした息子夫婦とかに良くありそうなシチュエーションでしたけど。
危機感を覚えない猟兵らであるが、気を引き締めろと掠れた声で注意する。
今回の目的は新しく結成されるレジスタンスへの協力、そして武装強化にあるのだ。
実働部隊であり、予知ではあっさりと負けてしまった三人の騎士はその後、自信を失い騎士の職を辞し、それが噂となり尾ひれを引き永く実働部隊結成が行われなくなってしまうという。
『そもそもこの件、近隣の民から絶対的な信頼を得ている領主が、人々をヴァンパイアの脅威から解放しようと始めた作戦だ。
彼は各村への食料の支援などを行っていて、その武力が上がることは危険なダークセイヴァーの世界において、より確実かつ広範囲への支援が行えることとなる』
今回の件を片付けただけでは、そこまで夢見るのは難しい。が、ゆくゆくは、力をつけていけばそうなることも夢ではなくなるのだ。
だからこそ、始まりの一歩を挫かせる訳にはいかない。
中身がただ大食い勝負に負けたおっさんズの援護だったとしてもだ。
結成される団の名は『勇ある鳩の団』という。ちょっと覇気が足りないね。
『この三騎士が送られた村にはある噂がある。それは、山賊に襲われ身ぐるみを剥がされ、行き倒れになった商人についてだ。
捨てられた彼はこの村の者に助けられ、後日、対吸血鬼用の武器を進呈したという』
行き倒れすら生還したのにこの三騎士は。
しかし、吸血鬼用の武器。事の真偽は定かではないとバオは語るが、おそらく領主もそれを調べる為に彼らを送ったのだろう。
普段は役立たず呼ばわりの三騎だが、彼らに白羽の矢が立ったことには理由がある。
この件にあたる数日前、別の村でオブリビオンへの生け贄として選ばれた花嫁を逃がしてしまったのだ。
もちろん、三騎士は村人の溜飲を下げるため、領主の命により護送する振りをして花嫁の保護に向かったのだが。
『花嫁に全く話をしていなかったので、人気が少なくなったところで抵抗され、逃げられたという訳だ』
こいつらマジで役立たずなんじゃ?
痛む頭に唸る面々。この失態から信頼を取り戻す為に作戦に選ばれた訳だ。とすると、この領主という者はよほどの豪気かお人好しである。
『だが、逃げ出した花嫁、無視できるものではない。
村人からの捜索隊も出ているし、何より武装した騎士三人を相手にしたのだ。ただ者じゃないだろう』
女であるかも疑わしい。
鋭い目でバオ。言いたいことは理解できる。
村人に捕らえられてしまう前に件の花嫁の確保。そして可能であればへっぽこ三騎士だけではなく、その者も戦力としたいのだ。
それだけの力を持った者がどのような理由で村人に捕まったのかは不明だが、村からの保護を保証、あるいは花嫁役をやらざるをえなくなった理由を除けば簡単に仲間になってくれるかも知れない。
『最後に、件の武器を持つとされる村の人々はオブリビオンだが、友好的な存在でもある。
彼らを満足させれば猟兵や騎士の要求も受け入れてくれるだろう』
うーん。さっくりやっつけて村を物色した方がいいんじゃない?
一人の猟兵がぽつりと溢すと、バオは目を丸くした。
『ごはんを食べるだけでいいんだぞ?』
でも食い切れなかったら面倒だし、時間もかかるし。
『特に相手に敵意はないぞ』
でもオブリビオンは倒さなきゃならんよね?
しばしの問答の後、バオはしょんぼりした様子でオブリビオン戦の判断は各自に任せると文字を書く。
さきほどまでと違い小さな文字が彼女の心境を表しているようだった。
メスゴリラの癖に可愛いやんけ。
などと言葉にするはずもなく、ある猟兵は気まずさを感じながら、またある者は食べ物に夢を見ながら、暗雲立ち込めるダークセイヴァーへ降り立つのだ。
頭ちきん
頭ちきんです。
【Q】シナリオ、ダークセイヴァーで抗う者たちの助けを行うシナリオです。
ヴァンパイアに反目する領主がオブリビオンと対峙するために結成さるた初の実働部隊、『勇ある鳩の団』。
三騎士は二つ名を持つ曲者揃いで、まだまだ力不足。戦力を強化していけば、いつかは猟兵とともに戦う姿が見られるかも知れません。
それでは本シナリオの説明をさせていただきます。
一章では花嫁の確保、三騎士への協力を依頼します。村からの保護が第一目的なので、無理に説得する必要はありません。あまりにも理不尽な要求をすると抵抗される恐れがあるので注意してください。
二章は村人の食事を食べ続け、満足された猟兵ごとに件の武器に関する要求が受け入れられます。
戦う、あるいは盗みに入ることも可能ですが、盗む場合は見つかると強制的に食事を行ってもらいます。また、食事をした者はユーベルコードを封印されてしまいます。
戦闘を行う場合は各猟兵を巻き込んでしまいますので描写は可能な限り後半に回しますことをご留意ください。
三章は活躍を見込まれた三騎士とともに、村からの歓迎を受けつつ演舞という形になります。
演舞は手に入れた武器を使用することでその扱い方を三騎士が学ぶことが可能となります。
あなたの思う扱い方を伝授してください。
注意事項。
アドリブアレンジを多用、ストーリーを統合しようとするため共闘扱いとなる場合があります。
その場合、プレイング期間の差により、別の方のプレイングにて活躍する場合があったりと変則的になってしまいます。
ネタ的なシナリオの場合はキャラクターのアレンジが顕著になる場合があります。
これらが嫌な場合は明記をお願いします。
グリモア猟兵や参加猟兵の間で絡みが発生した場合、シナリオに反映させていきたいと思います。
第1章 冒険
『消えた花嫁』
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POW : 捜索隊を押し留める。
SPD : 手当たり次第にいろいろな場所に出向いてみる。
WIZ : 手がかりを元に居場所を推理する。
👑11
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「はあっ、はあっ、はあっ」
花嫁衣装を泥で汚し、スカートの両裾を持ち上げてがに股で走る者。
背に紐で留められた剣、その鞘には騎士の持つ豪華な装飾が施されている。
「…………!」
走るその先、道に人の気配を感じて慌てながらも道を離れて立木の並ぶ茂みへ姿を隠す。
その際、スカートの裾が引っ掛かってびりりと破けたが、動きやすくなったとその者は気にも留めず、道なき道を進み始めた。
「待ってろよクリス、兄ちゃんがすぐに助けてやるからな!」
生け贄を求めるというオブリビオン。
双子を忌み嫌う村人たちに、贄とされてしまった妹を救うため、家の地下に彼女を隠し彼はこのような格好で村を脱出した。
ちょろい騎士を打ちのめしたこの武器があればオブリビオンを倒せる。そうすれば贄になる必要もないのだ。
信じて道を進み、歩いてしばし。
「…………。
そういや誰が生け贄を求めてて、どこに行けばいいんだっけ?」
首を捻る残念な兄ちゃん。
振り返る先に道は見えず、彼の顔は青ざめていった。
・『ラーン・ブライド』の救出が主な目的となります。戦力として組み込む必要はありませんが、説得に成功すれば団員として活躍するでしょう。
・三騎士に劣らずちょろいです。
・生け贄を求めるオブリビオンはお腹を空かせて待っていますが、誰も居場所を知らないので本シナリオとはとくに関係ありません。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎
■行動
まずは「花嫁」を見つける必要が有りますねぇ。
【饒僕】を使用、召喚した『僕』を放って捜しますぅ。
「捜索隊」の方を見つけたら、[情報収集]の能力を使い「追手の会話」等から「事情」を調べましょう。
「村」の位置も把握出来ると有難いですぅ。
「花嫁」を見つけたら其方に向かいますぅ。
『FBS』を四肢に嵌めて「飛行」に用い、障害物をショートカットすれば、早く辿り着けるでしょう。
「花嫁」とお会いしましたら、道に迷っている様に見えますので、事情を尋ねつつ道案内、場合により「妹の救助の協力」を約束しますぅ。
その際「捜索隊」と出会ったら、力を見せて脅し「花嫁」を逃がしましょう。
●豊満なる豊饒の信徒。
良く晴れた夏の陽射しはぎらつくも、熱気に対して清涼と流れる風が心地好い。
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は転送された地にて辺りをきょときょとと見回した。
続く一本道に人影はなく、心なしか安堵した様子で道沿いの茂みへ身を隠す。
誰かしらの視線を気にしての行動のようだが、茂みを押し返す豊満な体をかえって強調する。ただでさえ人気の無かった道でも、その発育の良い体を気にする少女としてはまだ安心できるのかも知れない。
グリモア猟兵の予知した未来をかわすべく、まず彼女がすべきと考えたのは『花嫁』の捜索だった。
「大いなる豊饒の女神の使徒の名において、女神の僕たちよ、私の元へ」
ユーベルコード【豊乳女神の加護・饒僕(チチガミサマノカゴ・ユタカノシモベ)】。
一陣の風とともに地に咲く乳白色の光は形となり、数多の僕としてるこるの前に頭を垂れた。
様々な種類の織り成す羽ばたきは鮮やかに彩られ、鋭い眼光を持つ鷹から愛らしく囀ずる雀まで万別だ。
びちびち、びちびち。
足下からの音に一同の視線が集う。同時に止まる音。るこるは視線の先に不可解な者を見つけるも、こほんと咳払いひとつ。
「あ、あのぅ、皆さんには周囲の捜索、というか、調査をお願いしたいんですぅ」
臆するような口調にも、羽を携えた僕は静かに耳を傾けるのみ。
びちびちびちっ。
視線が集う。ややも待たずにそらされる瞳。
「……えーっと……と、ということなのでぇ、皆さん、よろしくお願いしますぅ!」
びちびちびちちっ!
るこるの言葉に大きく跳ねたその者は魚、トビウオである。
羽ばたき四方八方に散らばる鳥に混じり、空を裂き泳ぐその姿を見送ってるこるは思う。
豊饒の僕になぜ魚がいるのかと――。
草を掻き分け道なき道を迷い歩くラーンは、人気など皆無な茂みの中で不安が隠し切れずに焦りを見せていた。
こんな場所で迷っている場合ではないのだ。
そんな彼の視界に横切り銀の輝き。
即座に背の剣へ手を伸ばしたラーンの反応は鋭く、故に影へ視線を合わせた時、その手が止まるのも早かった。
銀色に輝く体、瞼なくごろりとした目玉、ぱくぱくと開閉する口――、つまりはトビウオである。それが宙に静止しこちらを見つめていたのだ。
「な、なんだこいつぅ!?」
『待つが良い、勇ましき女性よ』
「喋るのかよ!」
及び腰になりながらも剣を抜くラーンへ制止の言葉。口をぱくぱくさせる動作とは一切の関係なく言葉を流すトビウオは、余りの怪しさに斬りかかるラーンの一撃をするりとかわし、嘆かわしいと溜め息を吐いた。
魚に憐れまれるという稀少体験である。
『我が名はフィッシュ・フライング。偉大なる豊饒の女神様に仕え、親愛なる使徒・るこる様の命によりそなたを探しておったのだ』
「けっ、なにが女神だ。お前みたいに気色の悪い野郎を使うなんざ、それだけで怪しいぜ。てめえが件の生け贄を求めてる奴の小間使いなんだろう!」
気持ちは分かる。
喋る魚に信用などあるはずもなく警戒心を高めるラーンであったが陽射しを遮る影に空を見上げて、その目に映る光景に思わず口を開く。
日輪を背負い、晴れやかな空から舞い降りる人の姿。数多の鳥を引き連れて、四肢に輝く光輪がその神々しさに拍車をかける。
天使、否、女神かとその恵まれた容姿に喉を鳴らす。
ラーンにとって地に降り立つるこるは使徒ではなく、豊饒の女神と名乗るに相応しい存在と捉えていた。
【FBS】、正式名称をフローティングブレイドシステム。浮遊する十二の戦輪はビームの刃を持ち、これを四肢に嵌めることで自らの体もまた浮遊させることができるのだ。
「あ、あなたが、……花嫁さん……ですね?」
「…………、花嫁だと? お前、村の連中が雇った人狩りかなにかか?」
「ち、ちちち、違いますぅ!」
武器を構え直すラーンに慌て否定するるこる。
「あ、あなたの、事情はお聞きしましたぁ。双子だからって、その、村の人たちから嫌われていたんですよね?」
そしてオブリビオンの生け贄にされた。
道を行く村の追っ手の会話を僕が拾ってくれたのだ。だが、口調や破れた服から覗く逞しい四肢に、ラーンが男であることに気づく。
男女の双子、男が花嫁として捧げられるはずもなく、兄が妹を守るためその姿に扮したであろうことは容易に想像がつく。
「茂みの外まで、あ、案内しますよぅ」
「そんな言葉、信じられるか!」
「あう、い、急がないと、もう村の人たちが近くまで、き、来てるんですぅ!」
声を張り上げたラーンに思わず縮こまりつつの言葉。ラーンは少女の言葉に周囲を見回し、近づく人の気配に気づく。
ラーンの破れた服を目印にやって来たのだ。
「……こうなったら……!」
「ま、待ってくださいぃ。ここは私がひ、引き付けます。花嫁さんは逃げてくださいぃ」
なぜそこまでしてくれるのか。
驚くラーンへ、るこるは赤らいだ顔ではにかんだ笑みを浮かべた。
妹を救うために身を呈する兄、その絆を守ろうとするのは当然のことだ。道案内のために僕をつけ、我ら猟兵がラーンと、そして彼の妹を救う助力するだろうと言葉を紡ぐ。
「あんた、名前は?」
「ゆ、夢ヶ枝・るこる、です」
「俺はラーンだ
。…………、ありがとよ」
小さくお礼を付け足してラーンは踵を返す。その後ろに続くフィッシュ・フライングさん。
おめーじゃ悪目立ちすんだろが。
「いたぞ、クリスだ!」
「待ちやがれ!」
「? だ、誰だ?」
茂みを掻き分けて現れた三人の男。ラーン扮するクリスを追う村の捜索隊の一部だろう、逃げる白い人影を守るように立つるこるに村人たちは鋤や鍬を構えた。
三馬鹿、もとい三騎士が武器を奪われていることも知っているようだが、武器らしい物もなく、構えらしい構えも出来ていない所を見ると戦う力は遥かに低いだろう。だからこそ、生け贄という手段に頼ったのだろうが。
「見ない顔だな、旅の人かい? 余所者が事情も知らずに首を突っ込んでもロクな目にあわねえぞ!」
「じ、事情なら、わかっています。皆さんも、クリス? さんを追うのは止めて、ひ、引き返してください!」
「なんだと? 女だからって手を出さないと思ってるのか!」
「むしろ女だから手を出したい!」
「そうだぞ、ドえろい体しやがって!」
セクハラですよ。
豊満な体に目の色を変える村人たち。もはや目的が一瞬にして消し飛んだ様子である。
るこるは顔を赤くして自らの体を見下ろし、下卑た笑みを浮かべる男たちを睨み付けた。
その四肢に繋がれた光輪が空を舞い、茂みの影に光の尾が伸びる。高速で飛来するそれらはまるで森の妖精の如く、しかし攻撃的な軌道は山獣のそれで、襲いかかる野生の貴飯となって男たちの獲物を引き裂いてばらばらにしてしまう。
「わへぇ!?」
「分かりましたか? さあ、村にひ、引き返してください!」
僅かに残った握りを手放しなさけない声を上げる男たちへ、るこるは強い言葉をぶつける。
「わわわ、わかった、わかったよう!」
「おい、急げ!」
「ひいいっ」
先程とは打って変わって化け物を見る目だ。それはそれで傷つくが、これで時間を稼ぐことも出来るだろう。逃げ帰った村人たちにより捜索隊は警戒心を高めるかも知れない。
るこるは鳥を一羽、彼らの頭上につけそのまま村へ向かわせる。これで村の位置も分かるだろう。
「ふう。他の皆さんが来ても、これで安心ですぅ」
額の汗を拭い、るこるは柔和な笑みを浮かべた。
・夢ヶ枝・るこるさんの活躍により、花嫁=ラーン・ブライドとの接触が容易になります。また、捜索隊を派遣する村が判明しました。
・村人の警戒心が高まっていますが、彼らの戦闘能力は極めて低いです。
大成功
🔵🔵🔵
ナナシ・ナナイ(サポート)
『皆さん!このナナシ・ナナイが来たからにはもう安心やで!』
『どうしたどうしたぁ~!!こんな攻撃かすりもせんわ!!』
わいの本業は傭兵!金次第で何でもやるで!あ、猟兵としての仕事なら金は取らへんで。
主に戦闘で使う武器は基本『突撃銃型アサルトウェポン』や。ユーべルコードは指定したもんは全部使うで!高慢ちきな敵はとりあえず煽っとくわ。目的達成のためなら恥もプライドも捨てる!
探索ではとにかく大体の当たりを付けたら虱潰しに探していくで。
わいは基本ポジティブ思考や!明るく楽しく気楽に行くわ!でも空気は読むで。
この関西弁はキャラ付けやから適当やで。
誰でも名前+ちゃん呼びや!
あとはおまかせや!
ルーク・エスタル(サポート)
人間のシャーマン×探索者、16歳の男
普段の口調「静なる水面(僕、あなた、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、心を許したら「眠鳥(僕、君、呼び捨て、だね、だよ、だよね、なのかな? )」
エッチ系、ゲテモノとかでなければめんどくせーとか言いながら頑張ります。口調は丁寧、物腰も柔らかいです。よくいる大人しい感じの少年ですが女の子に無理はさせたくないとか一般的な常識はある感じ。ポジションは後衛型、サポート大好き。家族の絆とか家族愛が薄い人です。それでも理解したい気持ちはあります。独りで居ることを強いられているので本心を見せたり弱音を吐いたりはしません。愚痴は言います。戦闘はお任せ。
●戦力差を考えろ!
茂みを掻き分けて走り続け、距離を稼ぎ整備された道へと合流する。
ここまで来れば追っ手もいまい。そう判断したラーンは枝で出来た切り傷に滲む血を払い、苛立たしげに息を吐く。
しかし。
「おっ。見つけたで、花嫁ちゃん」
後方からの声に舌打ちひとつ。
振り向くことすらまどろっこしすく、背中の握りに右手を合わせ、向き直る動きを振りとして引き抜いた剣を声の主へ向ける。
完全な不意討ち。
そう考えたラーンであったが、相手は「おっと」と緊張感の欠片もない言葉を転がして刃の軌道からするりと抜ける。ラーンの攻撃を見切った眼は鋭い赤の輝きを残し、彼の反撃から連なる死を容易に予想させた。
(こ、こいつ!?)
慌てて飛び退く少年に、そない警戒せんでも、と困り果てたように頭を掻く。
「僕たちは敵じゃない。るこるさんから聞いてるよ、あなたが妹を助けるために変装してるんだって」
後ろからの声。挟まれたか、と思うのも瞬きの間だけで、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の名に警戒を解く。
「あんたら、るこる、って人の仲間か」
「せや。自己紹介させてもらうで。わいの名前はナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)。
わいは死なへん、不死身の男や。ナナ『シ・ナナイ』だけに!」
「お、おう」
自信満々の笑みと力強い言葉に頷く少年。確かに、彼のその姿から死という言葉は連想できないほど、活気に溢れていた。
「僕はルーク・エスタル(ヴァルハラの鳥・f17153)、よろしくね」
「俺はラーンだ。その、感謝するぜ」
警戒させないようにとの心遣いか、背後からナナシの隣に回るルークへ、照れ隠しかそっぽを向きつつラーンも応える。
素直な言葉と裏腹な態度に思わず二人が苦笑するが、そもそもなぜこちらに気づいたのかと少年は疑問を口にした。
「……なんでって……」
「ほれ、そいつやそいつ」
二人の指差す先に、ゆらゆらと空を揺らめく魚の姿。
「…………」
『どうやら、我の高貴なる輝きが効を奏したようだな』
「いや、それってつまりよう」
茂みの中に隠れても、空に浮かび陽光を照り返す銀の体。
フィッシュ・フライングさんの高貴なる輝きは効を奏したのだろう、村からやって来た追っ手の連中が慌ただしくラーンらを包囲する。
その数、実に二十に迫るか。
「なんか変なのが見えると思って追ってくれば、正解だったみたいだな」
「クリス、どっから人を呼んだか知らねーが、諦めてこっちに来るんだ!」
「…………、助っ人はエロい女って聞いてたんだけどなぁ」
「ちょっとやる気なくなるよなー」
「男で悪いんか!」
勝手なことを口走る村人に柳眉を逆立てるが、言動はともかく相手は農具を武器とした長物を揃えている。人数もあいまってその手数、攻撃距離を馬鹿には出来ない。
「しゃーないなぁ、ここはわいらでちゃっちゃと片すとしよかぁ」
「めんどくさいなぁ」
ラーンを挟むようにして背中合わせの猟兵が二人。少年は自らと年も変わらない者が戦うのに、守られてたまるかとの血の気の多い反応を見せた。
ルークから一瞬、煩わしそうな金の視線を向けられラーンは言葉を詰まらせる。ひっそりと息を吐き、守るべき人がいるのだろうと青い右目を向けた。
「この場を切り抜けるなら、僕たちだけで大丈夫だよ。それに、何かあったらラーンさんの妹さんが悲しむことになるんだよ」
「せやで。武器だって、あちらさんの方がリーチもあるし、ラーンちゃんじゃ不利になってまうからなぁ」
近づく前に傷だらけや。
頭で考えない若者のために分かりやすくナナシが説明する。ルークの言葉もあって、渋々と承知した少年に、任せておけと男はニカ、と笑う。
「戦闘って程のことも起こらんで。わいら猟兵にかかればな」
「……猟兵……?」
「世界を救うスーパーマンってとこや!」
「多分、それ通じないと思う」
【突撃銃型アサルトウェポン】を構えたナナシに対し、ルークもまた【フック付きワイヤー】を構えつつ言葉を返す。
見慣れぬ代物だが構えた様子に、戦いの気配ありと村人らに緊張が走った。
数において有利とは言え、戦ったことのない彼らにいかにも場慣れした、退く気を見せない猟兵が対峙したともなれば当然か。
冷や汗を垂らし、場の圧に堪えられなくなった村人が先に仕掛けた。雄叫びを上げて走り出す彼らにルークはワイヤーを投擲、【スチームエンジン】を搭載した突端が威勢よく白煙を息吹き、村人らの足元を走る。
驚き足を止める先頭だが、後続がその事態に気づくこともなく。
「よいしょっと!」
『どわわわわっ!?』
道の端になる木へフックを繋げ、ルークの引き上げたワイヤーに足を刈られて転倒する男たち。
更にワイヤーを巧みに操り、数人を絡めつつ武器を奪う少年は、正に朝飯前だと唖然とするラーンへ笑みを見せる。
「な、なんだこいつら──、うひぃっ!」
「お~っと、下手に動くんやないでぇ。手元が狂ったら責任とれへん!」
あっと言う間すらなく半数を無力化してしまったルークに恐れ戦く村人は、手に持つ武器を撃ち落とされて思わず両手を上げた。
構えるナナシのライフルからは硝煙が上り、軽薄な笑みと比べ猛禽類を思わせる鋭い眼光が残る村人へ容赦なく注がれる。
「よ、余所者め。お前たち、こんなことをしてタダで済むと思っているのか!?」
「知らへんがな。諦めて村に帰るんや、詰まらんことで怪我することないでぇ?」
「わかった、降参する! 後ろのも連れて帰るから、攻撃せんでくれ!」
「はえっ?」
追い討ちをかけるつもりがないと見るや即座に土下座を見せた村人。遅れて残りもそれに追従する。
あからさまな掌返しに手間は省けるが、脅し文句をつけた直後だけに肩透かしを食らったようだ。
戦う意思を見せたとは言え所詮は村人、農耕を営む者として人を減らす訳にはいかないと考えたのだろう。立派な判断ではあるのだが。
抵抗の意思を感じないまでも最低限の警戒は解かず、未だにどう攻撃されたかも分かっていない村人たちはそそくさとその場を逃げ出してしまった。
「さっきから、助けて貰ってばっかりだぜ」
「行き掛かりや、気にせんとき」
「まあ、もう一回ぐらい、助けることがあるかもね」
ルークの視線の先に、豊満な体を揺らして走る少女の姿。
「みっ、皆さん、ご無事だったようですねぇ」
『うむ。あいたっ!』
るこるの言葉に当然とばかり頷く魚を張り飛ばし、ラーンは改めてるこる、ナナシ、ルークへ感謝の言葉を渡す。
「助けて貰ってばっかでこんなこと、言えた義理じゃないが、最後に妹を助けるのを手伝ってくれないか。金はないが、俺に出来ることならなんでもせるぜ!」
真剣な目を向けるラーンの言葉に、猟兵らは顔を見合わせた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミラリア・レリクストゥラ(サポート)
やや戦いの不得手なクリスタリアンの旅人です。唄を得意とし、必要であれば口だけではなく全身を震動させ発声します。また、ユーベルコードとして唄う場合は様々なサポートをします。
性格としておっとりしている所はあるものの、尊厳を卑劣に踏みにじる行為を見ると許せないと憤怒します。
ビーストマスター適性はかなり限定的で、『地母の恵み』で活性化した大地の恩恵を求め集まったものと一時的な協力関係が築かれます。
食事も呼吸も不要で、大地の放射エネルギーを糧とします。このためスペースシップワールドには適性がありながら苦手意識が強く、近寄りたがりません。
『お祝いですね!一曲唄わせてください!』
『あら?お困りでしょうか…』
神羅・アマミ(サポート)
自称盾キャラですがあくまで自称なので”絶対に”本当の盾キャラとして働かせないでください
サッと戦場に出てきては敵をブン殴る(またはそのためのお膳立てをする等)とサッと帰っていきます
基本的にはちんちくりんののじゃロリ喋りですが「~じゃぜ?」とか「ふざけんなボケ!」とか「よくないと思いますね?」とかふとした拍子によく崩れる
敵をおちょくったり煽ったりしてゲラゲラ笑いながら猪突猛進する生物ですが他のPL様に不快にならない範囲で…
「10発殴られたけど1発殴り返したからセーフ」とかそういう内容でバランス取ってください
極端にエロとかグロに描写が振れなければ大体の扱いは笑って流すので気軽に動かしていただければ~
●ポンコツ村のクリス。
「ここが例の村じゃの!」
「生け贄なんて、許せませんわ」
神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)は鼻でふふんと笑い、ミラリア・レリクストゥラ(目覚めの唄の尖晶石・f21929)は怒りを滲ませて呟いた。
るこるの僕からもたらされた情報により、いち早く村にたどり着いた二人は、平々凡々とした村の佇まいに瞬く。
もっとおどろおどろしい雰囲気を想像していただけに、行き交い談笑し、畑仕事に精を出す彼らに生け贄を求めるような後ろ暗さは感じられなかったのだ。
その内、一人が気づいて汗を拭いながらお辞儀をする。
「旅の人かい? ここは通り過ぎるだけの人が多いからなぁ、あんた方みたいに足を止めて下さるのほ珍しいよ」
何か用かと愛想笑いを浮かべる村人に二人は顔を見合わせつつ、単刀直入に生け贄の話をぶつけた。男は驚きに目を丸くしたが、周囲をうかがうように目を走らせると、こちらへと人気のない自分の家へ二人を招き入れる。
怪しくない訳ではない。しかし少女とは言え、戦場に立ったことのある猟兵二人、彼に殺意がないことを肌で感じ、その誘いに乗った。
男は独り暮らしのようで、二人を家に上げると窓を閉めて戸板を下ろし、彼女らの座る椅子を二つ取り出した。
「あんたら、領主様に命じられて来たのかい?」
「? いや、妾たちは──」
「実はそうなんですの」
素直に答えようとしたアマミの口を塞いで言葉を返すミラリア。
やはりそうかとしたり顔の村人が語るには、最近のこと、村人が行方知れずになる事件が度々起きているという。事を重く見た村長はこれをヴァンパイアの仕業と考え、花嫁という名の生け贄を差し出すことに決めた。
そこで白羽の矢が立ったのが、双子であり忌み子として扱われたクリスであった。
しかし結局、領主の遣いを名乗る三騎士の登場で逃げられてしまい、だからこそ猟兵を領主の新たな遣いと信じる男は邪魔立てしないよう頼み込んだのだ。
「なぜそのヴァンパイアを退治しようという話にならなかったんですの?」
「無茶言わないでくれ! どうやって戦えって言うんだ。そもそも場所わかんないし」
「ウソじゃろお主」
居場所も分からず生け贄がどうのと言う話をしていたのか。
お粗末な内容にアマミも呆れて開いた口が塞がらないようだ。
「こほん。そ、それで、双子の家はどこにありますの?」
痛む頭を押さえつつミラリアが言葉を投げると、それならばこの家の真向かいがそれだと男は答えた。
何かないか調べておこう。男の言葉を受け入れた振りをして、アマミも返す。男はすっかりそれを信じたようで笑顔で何度も頭を下げた。
「なんか、釈然としないのじゃ」
「右に同じくですわ」
男の家から出て溜め息をひとつ。根っからの悪人という訳ではないようだが、村の人々はどこかこう、おつむが足らないと言うべきなのだろうか。
三騎士にしてもそうだが、所々ふんわりとした雰囲気の彼らに同情する気持ちはないが、やはり人の命に関わることを軽々と決めていることに疑問を感じる。
どこかでお灸を据えねばならないのではないか。
二人はそう考えながら双子の家の扉を開く。家の中はさきほどの男の家より簡素なものであったが人の気配は感じられない。
地下に隠れているとの情報もあるし、と床に敷かれた藁を退かせば案の定、地下への入り口があった。
「とりあえず、妹さんをそれとなく隠しつつ村から脱出、という所ですの?」
「ま、それが確実かのぅ」
ミラリアの言葉に投げ遣りに答えて、アマミは地下への扉を開いた。
●村人らに天罰を! 生け贄事件の顛末。
ここだ。
ラーンに案内された村にたどり着いた一向は、平々凡々とした村の佇まいに以下略。
「ん。あっ、てめえら!? あいや、あなた方は!」
そんな猟兵らの姿に気づいて驚きの声を上げる村人が複数。るこる、ナナシ、ルークらに蹴散らされた村人たちだろう。あからさまに態度を改めて何のご用かとすり寄る村人の一人にラーンは不機嫌に顔を歪めた。
「村長さんはどこにいるのかな?」
「お、お話があるんですぅ」
ルークとるこるが声をかける間、ならばこちらは妹クリスの確保をとラーンと共に家へ向かうナナシ。
「妹さん! このナナシ・ナナイが来たからにはもう安心やで!
──って、うおおおおおっ!?」
意気揚々と家屋の戸を開いたナナシは、次の瞬間に驚きの声を上げて家から飛び出した。
直後には双子の家を粉砕し、中から現れ出でたるは巨大な人影。
「あーっはっはっはっはっはっ!」
「皆さん、ご機嫌よう」
舞い立つ埃を払い、太陽を背に巨人の肩に座る少女が二人。ミラリアとアマミだ。
「な、なんやなんや? オブリビオン!?」
「クリスーっ!」
「えっ、クリス? 妹さん? 嘘やろ!?」
巨人へ走り寄るラーンの姿に目を見開く。
兄者、と野太い声でそれに答え、まるでモアイ像の如き彫りの深さの顔に笑みを浮かべて、巨大な手にラーンを乗せる。
村人連中はもちろん、誰もがそれを呆けて見上げる中、クリスと呼ばれた巨人は村を睥睨する。
双子という話はどこへいったんだとルークが頭を抱える中、アマミはご機嫌に彼女、彼女? ことクリスへ命令を下す。
「人の命を軽んじるなど言語道断、この村を凪ぎ払ってしまえーッッ!」
「ふんがーっ!!」
ごり、と山のような力瘤を見せた巨人に一拍遅れて慌てふためく村人連中の姿にミラリアも微笑む。
人一人を無理やり生け贄と選ぶのだから、その当人から反撃を受けても致し方あるまい。少女はそう笑い、吼える巨人に人々は狼狽する。
「あれがクリスって嘘だろ!?」
「えっ、じゃあ、あれ誰?」
「ラーン、おめー女装の趣味があったのかよーっ!」
「あんだけ可愛けりゃゴーレムみたいなクリスより男のラーンでいいわ」
「てめえ! クリスは天使だろうが!」
この期に及んで素直な言葉を漏らす彼らに怒りを見せる少年。背中に白い羽を生やしても天使には見えないと思います。
猟兵らすら胸中でラーンの目を疑う中、村人たちの間から一人の老人が歩み出た。
曲がった背に杖を突き、しょぼくれたような老躯に似つかわぬ鋭い眼光がクリスを見上げている。
村長。
誰ともなく呟く声に応えて右手を挙げ、村長は一声上げる。
「クリスよ、そしてラーンよ。一先ず待って貰おうか」
「待てだと? 何を待てって言うんだ!」
「決まっておろう。見よ、私のこの姿を!」
叫び、杖を投げ捨て衣服を脱ぎ、褌一丁となった村長。
るこるやクリスは、いやん、とばかりに顔を隠し、何のつもりだと眉を潜めた彼らの前で、村長はにやりと笑う。
「誠に申し訳なく存じますぅ! 今までの非礼をお許し下さいぃぃ!」
この村長にあって村人あり。
完全無欠の土下座を見せた村長に続く村人連中の土下座。強きに媚びへつらうその姿は処世術てあろうが。
「え、えっとぉ、どうしますぅ?」
「ふん、過保護な兄が妹を見せなかったから村人どもが付け上がったのじゃ。威を見せてやりさえすれば、村人どもも、最早この双子に手を出すこともあるまい」
「本当に村を破壊する気なんてありませんわ。クリスさんはとても心優しい子ですの」
「当然だ。クリスは天使だからな」
シスコンには黙って頂きたい。彼らの許しを受けて、ほっと胸を撫で下ろす村人たち。
妹の手の上でドヤる兄者はさておき、どこが双子なのかとナナシはその巨体を見上げる。ラーン曰く、兄として妹を守るべく働く彼の姿に、自らも力になりたいと一心不乱に体を鍛えた結果、クリスは今の体を獲得したのだ。
そこも指してラーンは天使と言うが。ルークは呆れつつも、その盲目的な家族愛が微笑ましく苦笑する。
「ラーンさん、協力してくれるって言うなら、クリスさんに協力してもらいたいな」
「いくらあんたたちの頼みでも、妹を危険に晒す訳にはいかないな。その代わり、さっき言った通り出来る限りの協力はするぜ」
「そんなら、騎士とか、興味あったりせん?」
「騎士?」
にやりと笑うナナシに、ラーンは眉を潜めた。
結果的に、猟兵らの活躍により生け贄騒動は丸く収まり、ラーンとクリス、双子の扱いも良い方向へと変わるだろう。
これによりラーンが守らずともクリスの安全は、まあ当然であるが約束され、彼は騎士団への協力を快諾した。
同時に、ラーンに逃げられておめおめと村へ戻り、仕事が終わったと酒を飲んでいたことで村人の逆鱗に触れて取っ捕まえられた三騎士も解放された。
なにやってんだおっさんズ。
「事件のひとつは片付きましたし、お祝いですわね。一曲唄わせていただきますわ」
「おっ、いいねえ、そんならわいも一曲、披露したるで」
「おお、これは楽しみじゃのう、期待通りにいくと良いがの」
ご機嫌の二人へ軽口を叩くアマミ。ルークとるこるは歌うことをしなかったが、照れた仕種や面倒な仕種の影で、楽しげに手拍子を送る。
陽気な彼らの姿は村人や、双子らからも毒気を抜いていく。
この村での新たな関係を築き、猟兵たちの唄はその祝福となるだろう。
・ラーン・ブライドが次章から三騎士の仲間になります。
・次章では対ヴァンパイア武器の捜索のため、オブリビオンと対峙します。彼らの満足いくまでおもてなしを受ければクリアとなりますが、戦闘を行ったり盗みに入ることも可能です。
・盗みはSPDで失敗した場合、強制的におもてなしされます。探索や隠れるプレイング、UCにはボーナスが付きます。
・戦闘は可能な限り後回しで描写します。あくまで頭ちきんが可能な限りですので、気にせず自由なプレイングをお願いします。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 集団戦
『ずんび百姓と名を棄てられた村』
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POW : 良く来た。これでも食らえ。
【採れたて畑の野菜】【獲れたて山の獣】【獲れたて山の獣】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD : 遠慮はいらん、たくさんお食べ。
【山の様な新鮮なお野菜】【豊かな香りの瑞々しい果物】【この世界で養殖に成功した茸】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : まだまだありますぞ。お客人。
【大地を覆う野菜の群れ】【蔵を埋める燻製、漬物、発酵食品】【この世界ならではの葡萄の飲料(酒含む)】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
👑11
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●自己紹介がまだだったな!
「別に要らねえ」
「冷たいなコイツ!」
新たな仲間となったラーンのドライな言葉にもめげず、笑うおっさんズ。彼らの活躍を見ればこの対応も頷けるか。
村人から解放された三騎士は、おって現れた領主の遣いから新たな伝達を受けて、つまりグリモア猟兵の予知した村へ向けて、対ヴァンパイア武器の存在、その真偽を確かめるべく馬車に乗って移動中だ。
「一時か永きかはともかく、協力するのに互いのことを知るのは重要だ。
これでも我ら三騎士、二つ名を預かる身。自己紹介を聞けば人となりも掴めるというものさ」
熊の如き体躯の男。確かにそれは一理あるかとラーンは気もなく頷く。
肯定を受けたとばかりに一人目の騎士が自らを指差した。
「俺の名はジェンキンス。人は『穀潰しジェニー』と呼ぶ!」
「ん?」
ん?
「朝から飲まなきゃ手の震えが止まらねえ、『酒飲みジョー』!」
「えっ、おいちょっと待て」
「そしてこの私、猪の突撃を受け止める怪力と十メートル走破に二十秒かかる男、『愚鈍のゲイリック』!」
「全部悪口じゃねえか!」
二人の自己紹介があんまりすぎて、ゲイリックが有能に聞こえるがようは怪力だけだ。
不適な笑みを浮かべる三騎士のおっさんズは、これで我らのことが分かったろうと嘯く。仲間内からどのような扱いを受けているのか、よく分かりはしたが。
「そんなんで喜んでいいのかよ、おっさん」
「こうでもしなきゃやってらんないだろうが」
ラーンの言葉に返されたのは正論である。
だがそんな彼らも今回の生け贄事件に引き続き、真偽の怪しい噂の調査とは言え、いつもの仕事と比べれば大役を任せられたのだ。身にも力が入ると言うものだろう。
子供のように目を輝かせるおっさんズに、とりあえず、今のところは悪い人間ではなさそうだと判断したラーンは溜め息を吐いた。
「俺はラーン、ただのラーンだ」
「お前はただのラーンではない。ラーン・ブライドだ」
「へ?」
花嫁衣装だったからな。
下卑た笑みを浮かべる穀潰しに、今は騎士の鎧を身につける少年は怒りに柳眉を逆立てた。
・三騎士はポンコツですが、基本的に猟兵の指示通りに動きます。囮などに使うのも良いでしょう。
・戦闘する場合、ラーン・ブライドが剣の扱いが上手く、ゲイリックは盾として機能します。後の二人はそこまで役に立ちませんのでご注意下さい。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
・やりすぎ◎
■行動
折角の機会です、沢山いただいてしまいましょう。
【夢鏡】を使用し「消化機能」を強化、可能であれば【豊饒現界】で[大食い]も強化して、食べられるだけいただきますねぇ。
【UC】の封印も「食べた際」なら「食べる為の【UC】」は有効でしょう。
まあ、以前は【UC】無しで「巨大猪1頭(推定数百kg)」を食べきりましたし、そこから更に食べる量は増えておりますから、「行き倒れの方が食べきれる程度の量」でしたら全く問題ありません。
食べきれない方(=三騎士等)が居るなら、その方の分も代理でいただきますぅ。
問題は【夢鏡】の反動ですねぇ。
「一時的な胸の肥大」だけで済めば良いのですが。
●まずは茶番に付き合っていただきたい。
「……こ、ここが例の村、ですかぁ……」
その体躯、小柄にして豊満。共に行く人々の視線を釘付けにする少女、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は村の入口で溜め息を漏らした。
さきほどまで伺っていた別の村とは違い、民家は少ないながらも畑が広大で、農作物の多くが下拵えされているのか美味しそうな香りが猟兵たちの元へも漂って来る。
「あぁ、早く、ご馳走にあずかりたい!」
サエ・キルフィバオム(妖狐のサウンドソルジャー・f01091)はるこるの隣で溢れる唾液をじゅるりと啜り、恍惚とした表情を浮かべる。
施しを受けることで、他人からの好意で精を得る妖狐としては異質な彼女にとって、さほど労もなく収穫がある今回の事件は嬉しい限りだろうか。ちなみにチチがデカい。
「でもボク、体も小さいからいくらも入らないかな?」
自らのお腹をぽんぽんと叩くのは、サエの肩に腰を降ろす祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)だ。
フェアリーである彼女は背丈も低く、大食いに適しているとは言えないだろう。しかしお胸はビッグなのだ。
「…………、んんっ。ま、まあ、食べるだけが解決法じゃありませんから」
並ぶ三人の佇まいに顔を赤くしていたカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は誤魔化すように笑う。
少年よ、恥ずかしがる必要はないんだぞ。ただ隣の穀潰しみたいに露骨に見つめるのは駄目だ。
にやにやとカシムの反応を楽しむサエの上目遣いにカシムは顔を反らし、るこるとティファーナは不思議そうにそれを見つめている。
「よし、聞いてくれ。ここで件の行商人だか旅芸人だかが助けられたということだ。村の名前は分からんが、早速、調査に向かおう」
ただでさえ少ない情報のんだから、もう少し覚えておけ。
ゲイリックに促されて進む一行。だらしない顔で女性陣を見つめていたジェニーはラーンに尻を蹴っていただきました。ありがとうございます。
しかし、このまま中に入っては村人に数を覚えられて、単独行動する際の支障になりかねない。
「僕も人並外れた大食漢、というわけでもないので、別行動を取らせてもらいます」
今日の僕は盗賊として少し頑張ってみるとしますよ。
口元を人差し指で押さえてウインクする彼の顔はまだ赤く、逃げるつもりかと笑うサエには誤解だと慌てた。
「それならボクも行こうかな、もしもの時に助けられるよ☆」
肩からカシムの頭の上に移動したティファーナに残念そうな視線を送る辺り、サエは気に入っていた様子だがここでわがままを優先させるつもりはないのか口を噤む。
無理して我慢している末っ子の様相に似て、るこるは思わずサエの頭を撫でた。
「えっ、なに、るこるさん?」
「はぅ、か、可愛いなと、思いましてぇ」
眼福だね?
まだ撫でて貰いたそうであったが、改めて意識すれば恥ずかしい。るこるは手を引っ込めた。
残念だね?
「いつまで遊んでいる気だ。危険はないと思うが、用心するんだぞ。村人とは言え、油断していてはすぐにやられてしまう可能性だってあるんだからな」
具体的でない注意をありがとう、ゲイリック。さきほどまで村人に拘束されていた男の言葉は重みが違う。
ラーン、カシムからじっとりとした視線を向けられても意に介することなく、作戦開始だとなんら作戦内容を説明していないゲイリックを先頭に村へ入る一行。
カシム、ティファーナはそんな彼らから離れて村を迂回し、人気のないところから忍び込むようだ。
「……とは言え、警戒のしようもないが……、おお、あそこの村人たちに話を伺ってみようか。ジェニー、ラーン、頼むぞ」
「ほい来た!」
「なんで俺まで」
新人だからだろう。
客分であり協力者として扱われる猟兵たちは生け贄だか花嫁だかの県を楽に解決して実力もあるのだから、この対応も当然か。
畑を耕す四人組へ何の気構えもなく近付くジェニーはゲイリックの言葉など頭の片隅にもない鳥頭のようであるが、騎士の鎧など初めて着るラーンは装備を確認しながら、警戒はしているようだ。
「な、なんだぁ、あんたたづは?」
「いや驚かせてすまんね、ちょっと話──をををぉおおう!?」
振り返った百姓農家に飛びす去り、尻餅をつくジェニー。驚愕に開かれた目が見つめるのは彼らの異様な風体だ。
土気色の肌に生気は無く、まるで永年を共にした棺から這い上がったようにぼろとなった衣服、瞬きもしない眼からは赤黒い液体が溢れている。
あ、すみません、今回ホラーとかそういうの無しでお願いします。
「どうした、ジェニーッ!」
仲間の危機にのったらこったら走る愚鈍はさておき、グリモア猟兵からの前情報を受けていた猟兵らは落ち着いた様子である。
「くそ、こいつらきっとヴァンパイアの手先だ。見ろよあの姿! バケモンどもめ!」
「バケモン?」
勢い良く剣を抜くラーンの言葉に村人は顔を見合わせると、表情を変えずにけたけたと笑い始めた。
怖いんですけど。
「き、きっとそりゃあ、どこさのお山の狐にバかされたんでねぇか?」
「そうにちげえねえよう、はははっ!」
「それはちょっと聞き捨てならないんだけど!」
彼らの言葉に肩を怒らせたサエ。
それはさておき、と百姓らは農作具を肩に担ぎ、一仕事終わったところだと他の三人を帰し一人残る。
なんでよりによって血涙流してる方を残すかな。目元から流れる赤黒い液体を器用に避けて顔の汚れを汚れた布で拭う。狙ってんのか。
新たな汚れをつけながらも、用件をうかがうその様子に悪意がないことを知る三騎士。
「いやこれは失敬した。実はお尋ねしたいことが」
「いやなんで普通に話してんだよ! こいつら絶対魔物の類いむがーっ!」
まあまあとるこるがラーンの口を塞ぐ。さすがに恩義を感じ、世話にもなった少女の手を煩わせる訳にもいかず、ラーンは押し黙った。
いや反応として正しいのは君なんだけどね?
「これこれこうこうかくかくしかじか」
「それそれほうほうまるまるうまうま。……なるほど、例のアレの件っづーわけだべんな……」
素晴らしきかな意志疎通。
ゲイリックの類い稀なコミュニケーション技術により一行の目的を把握したずんび百姓。心当りがあるのかと喜ぶゲイリックに対し、彼はぎらりと鋭い眼光を見せる。
「確かにそれはあるけんどなぁ、お礼といただいた物ォ、そう簡単には渡せねぇーんだっで」
「そこをなんとかならないか、村長!」
「オラそんちょでねぇしなぁ~」
村長呼べ。
「まあ待てよゲイリック。奴さんの口振りからすりゃ、タダでは渡さんと言ってるのさ」
ジョーの言葉になるほどと、ひとつ頷く。
要は金か。目を鋭くしたゲイリックは、巷で『値切りのゲイリック』と呼ばれる自分の腕前を披露する時が遂に来たようだとほくそ笑む。
猟兵の皆さんは色々と知ってるから茶番を見てるだけなのだが。
大成功
🔵🔵🔵
サエ・キルフィバオム(サポート)
猫かぶりな妖狐になります
直接的な戦闘というよりも、情報を集めたり、不意打ちやだまし討ちのような奇襲を得意とします
猫をかぶってる時は「あたし」と自身を呼び、語尾に「~」が入るような間延びしたしゃべり方をします
真剣な時は「私」呼びになり、口数は少なくなり、語尾の間延びは消え、気に食わない相手には結構キツめの口調になります
「ごめんなさい、あたし道に迷っちゃってぇ~……」
子供らしく振舞って油断を誘う、色気を出して魅力で釣るなど、あの手この手を使います
「は?私がそんな事許すと思った?」
本性を現し後ろからザックリ刃物を突き立てるようなイメージです
基本的に行動はおまかせします
よろしくお願いします
カシム・ディーン(サポート)
口調
基本丁寧なですます唇を
一人称
僕
二人称
呼び捨て、君、あなた、お前(敵には
女好きの盗賊少年だが
サポート参加の場合では基本戦闘やそれ以外の補助をメインとした立ち回りに従事する
本当はもう少し楽しい事をしたいんですけどね
【情報収集】
戦う場所や敵について
その他有用な情報を集め仲間に伝え
戦闘
【属性攻撃】で風を全身に纏いスピード強化
基本攻撃は【盗み攻撃】で敵の武装の強奪による戦力低下を狙う
敵集団には一度【溜め攻撃】で魔力を収束させウィザードミサイル
単体相手にはシーブズギャンビットで服を脱ぎつつ猛攻を仕掛ける
一人で行動はせずにメイン参加者と息を合わせて攻撃を行う
今日の僕は盗賊として少し頑張ってみるとしますよ
●第八千三百二十七回、名を棄てられた村の大食い大会!
『さーぁ、やって参りますだよぅ、レデ~アーンドヅェントルメェン!
第八千三百二十七回、大食い大会の幕開げだぁあっ!』
『ほいきただ~っ!!』
村長が腰痛で自宅療養の中、地の底で這いずり回っていそうな地獄の餓鬼の如き村人が集まりに集まり、その数はすでに三十か。
どう見てもUDCアースなどで見かけるマイクを片手に村人の一人が集まった地獄の住人、もとい百姓村人仲間を煽っている。
「まさか飯を食えば武器を見せるどころか渡してくれるなんてよぉ、いい人たちじゃねーか!」
「酒も出るらしいぜ? うひひっ!」
「……俺の……値切りテク……」
「おいおい、これ本当に大丈夫なのかよ? 飯を食わせた後で今度は俺らを食うって展開じゃないのかよ?」
「そ、そんなことはないと、おも、思いますけどぉ。折角の機会です、た、沢山いただいてしまいましょう」
「いいから早く食べさせなさいよっ!」
口々に語る面々であるが、おっさんズは警戒心無さすぎじゃないですかね?
そんな参加者の態度など一切気にせず、勝手に盛り上がっている村人たちは遂に料理の運び出しだと手拍子を繋ぐ。
『シャイッ、シャイッ、シャイッ、シャイッ!』
『オラの大根はバンペーヤより美人肌! エンドリーナンバー一番、村の入口のちょい左奥の方のアンドーから大根の煮付けだぁあっ!』
ご紹介預かったアンドーさんが口から血のようなものを垂らしつつ満面の笑みで大鍋を運ぶ。
衛生面に疑問が残る。
「良く来たな。これでも──食らえぇえッ!!」
ぎらりと光る眼に宿るは戦士の眼光。
生きるも死ぬも畑に賭けてきた農夫の、潔すぎる大根を煮付けただけの一品はアンドーの手より放たれ、長机一列に座る来客者の前にぴたりと止まる。きちんとオン・ザ・ディッシュだから安心だね!
美白自慢の大根は煮付けられてすっかり白くなくなっているが、うっすらと透き通った肌に優しく光る肌が柔らかく、蕩けた外皮も合わせて食欲を刺激する。
しかし特筆すべきはその量。山と盛られたそれからほかほかと湯気立つ姿はそそられるものの、もはや、一番大柄なゲイリックの顔を隠すほどだ。
『…………、えっ』
るこる以外が頬を引き吊らせる。この一皿でも食べ切れるかという量で、まだまだ後が支えているとばかりの紹介なので当然と言えば当然だ。
「ち、ちょっと待って、これで一品目? 頭おかしいんじゃない!?」
『安心しでくれよう、皆さん最初はそう言うけど、うんめぇから一皿だけならぺろっといっちゃうんだから!』
一皿で終わってんじゃねえか。
じと目で返すラーンだが、三騎士は呑気なもので、食べれば終わりだともう仕事は終わったとばかりの様子である。
「……あなたたちねぇ……! 一皿食べただけで終わるわけないでしょ! 途中で止めたりしたら、絶対に例の武器とかいうの出さないわよ!」
まさか。
常識的に考えて食べられる量ではない。笑うジェニーが司会役の男に声をかけると、男は相変わらずの無表情で血涙垂れる目をぎょろりと向ける。
『えっ、食べれないんですか?』
「えっ?」
『えっ?』
見つめ合う死んだ魚の目とおっさんの目。やがて救いを求めるようにサエへ目を向けたおっさんズに少女は深々と溜め息を漏らした。
「全く。どうする、るこるさん? このままじゃ、あれ?」
「もぐ?」
視線を向けた先で栗鼠のように頬を膨らませたるこる。
皿は湯気と出し汁を残し、山とあった大根の姿はすでに無い。
「え、嘘、えっ。なんで無いの? 食べたの!?」
「あうっ、あ、あのあの、熱々で凄く、美味しかったですよ?」
『さーぁ早速一皿空いたぁぞぅう! 食ぁべれないとかなんとか言っでぇ、農家心を弄ぶんだがら騎士さんはぁ!』
『へぇっ?』
男の言葉に視線が集い、恥ずかしげに顔を伏せた。
これでも、いやむしろ見た目通り彼女は豊穣の使徒。その豊作たる体に比例するような大食らいなのだ。それもそんじょそこらの大食い自慢とは訳が違う。
軽く見ても数百を超えるキロ数の大猪を食い切った実績を持ち、更にはユーベルコード使用による食機能の強化も持つ。大食いに対しては磐石といった体勢だ。
そんなるこるはおずおずと手を挙げる。
「あのぅ、つ、次のお食事、お願いしますぅ」
『もちのろんだぁ、ずんび百姓、ずんびはお~けぇい!
オラの鎌は狙った獲物をノがさねぇ! エントリーナンバー二番、そんちょの隣の家の離れに住んでるアンドーから鹿肉のワッショイ焼きぃい!』
ワッショイ焼きってなんざんす?
どうやら同じ名前が多いらしく、第二の刺客として現れたアンドーさんナンバーツー。体と言わず顔と言わず返り血を浴びたスプラッタな格好で登場する。
「ふ、ふへ、ふへへっ。い、い~いペェスだぁ……えひひっ、……き、今日は、期待できそうだぞう……えひゃっひゃっひゃっ!」
端的に言って危ない。
血塗れの体で引き摺る板の上に乗せられたのは大量の肉、肉、肉。
「俺ぁよう……村の入口のちょい左奥の方のアンドーみたいに甘ぐはねえからよぅ……」
人込みから現れた子供たちが、五つの皿をアンドーさんへ渡す。
小手調べだ。その目は獲物を狙う獣の目。鋭い息吹きと共に打ち出した皿は常識的な量の肉、しかしそれは火の通っていない生の──否、肉の刺身。
透き通るように薄くスライスされた肉は皿の色を映し出し、脂も少なくてらりと、光りもせず。故に気品すら漂う垂涎ものだ。
しかしるこる以外はまだひとつの大根にも口をつけていない。放たれた皿を受け止める術などなく。
「っ!」
るこるが跳ぶ。
迫る皿を空中で受け止め、流れるような動作で口へと流し込む。
舌に移る肉の濃厚な味と刺身ゆえのぷりっとした食感に、るこるは天にも昇る心地でそれを享受した。
「ひへへっ、や、やりやがるっ。ならば遠慮はいらんっ、たぁあくさん、お食べェーッ!!」
ごとん、と正に言葉通りブロックの如き肉の塊は表面が適度に焼かれて香ばしく、溢れる肉汁が皿に溜まりてらてらと光る。
米を寄越せと言いたくなる光景も、自らの頭よりでかいとなれば絶句せざるを得ない。るこるを除き。
「……こ、これは……戦闘にでもならないと役立てそうにないわね……」
頬をひきつらせたサエの言葉。
フラグが建ったぞ!
●これが対吸血鬼用決戦武器、撃刺突剣サルビア!
盛り上がっているな。
村の真ん中から響く声にカシムは思わず溢した。寂れた村の一大イベントなのだろう、おそらくは料理を準備しているであろう家々を除き人の気配はほとんどなく、元々は盗賊の一員であったカシムにとって楽な散策となる。
おまけに姿を消すユーベルコードを持つティファーナもついているのだから、彼としてはすでに仕事も終わったに等しい。
まあ、似たようなことを考えているおっさんたちがいたわけであるが。実際の所、少女の疲弊を抑える為にまだユーベルコードは使用しておらず、ここぞという時のみの使用予定だ。
一先ず目指すは怪しい家屋、村の中でも一番大きな家だ。村長のものだろうか。
足音を立てず、周囲を警戒しながら進むカシムは突然開いた扉の影に隠れて鍋を慌ただしく運ぶ村人を避けるなど多少のトラブルに遭いつつ無事に目的の家に到達する。
「……なんだかワクワクしますねっ……☆彡」
「こんなときは現役だったらと思うよ」
小声で耳をくすぐるティファーナに答えるカシム。
いや、そもそも、そのまま持ち出しても構わないのではなかったか。
ふと浮かんだ考えに、実は自分が一番、事件解決に近い場所にいることに気付き、俄然やる気を漲らせる。
長く続く塀にぽつりと成る扉は閂が掛けられている訳でもなく、音もなく開いて最小限の動きで中へ滑り込む。
人気はない、と思いきや小さいながらも聞こえる男たちの叫び声。
(稽古? ……とすると……例の武器? いきなりビンゴかな)
壁伝いに歩き、そっと、顔を覗かせる。
「あー、お湯が旨いねぇ」
口元をもごもごさせながら啜っていたであろえお湯と赤黒い液体を胸元に溢す土気色の老体。
目は焦点も合わず空を見上げ、ぼろぼろの衣服は死体ですらマシなものを身につけているのではないかと思える程だ。
そんな歩く死体としか思えぬ風体の者が縁側で日向ぼっこする老人のようにのほほんとお湯を啜っているのだから堪らない。
カシムは何も言わずに首を引っ込めて眉間を揉むと、何も見なかったことにして家の裏手へ回った。
敷地は広いが家事態は他とそこまで変わりなく、裏手に畑でもあるのだろうかと疑問のままに赴けば、広い庭で料理をする村人たちの姿があった。
専用の調理器具だろうか、長大な鉄串に野菜や肉を刺し、あるいは下げて焚き火の上でそれらを炙っている。
「早く焼けー!」
「でもシメはじっくり!」
「客人にうめえと言われる料理にすんだぞぉ!」
『ほいきたよしきたーっ!』
気合い十分、上着を脱いで皮と骨ばかりの体を見せる彼ら。まず自分たちがそれを食べるべきではないかというカシムの疑問は風に流れ、ゾンビのような風体で無表情ながら生き生きとした、それこそ三騎士よりも遥かに充実していそうな彼らの姿に言葉が詰まる。
どちらにせよ、ここではなかったか。
家の中も探索するかと踵を返すカシムであったが、ティファーナはその場に留まり首を傾げている。
「どうかしたの、ティファーナ?」
「あの人たちが持ってる物って、剣みたいじゃないですか?」
少女の言葉に思わず苦笑する。距離感も鍛え目に自慢のある盗賊として、カシムは彼らの持つ鉄串の長さを目測しているが、優に二メートル半はあるのだ。
そのような剣など。
(いや、待てよ。だから新しい武器なんじゃないか?)
思い直して彼らを見直すと、熱い熱いと言いながら持ち直しているのは剣の握りだ。
そう、握りだ。
それは長大な、斬るには適していないと思われる刺突剣。
「あ、あれかーっ!」
「やっぱり♪」
思わず声を上げた二人に村人らの視線が集う。
「──身体も貴方も水晶の様に透明に……!」
ユーベルコード、【クリスタライズ】。
即座にカシムに抱き付きその体と共に透明になったティファーナ。しかし、二人の背後にはすでに接近している者がいた。
「!」
振り向いた先で武人の如く佇むご老体。
抜剣の構え、ないし腰元に構えるはすり鉢。なんですり鉢?
「とあああーっ!」
「わっぷ!?」
「ひゃあ!?」
声を張り上げぶちまけられたのは、程よくすられ練られたとろろ。
ふんわりと空に広がったとろろを浴びたことで僅かに姿を見せた上、床にぶちまけられたとろろは踏めば居場所を知らせてしまうだろう。
体についたとろろはすでに透明だが、これ以上の長居は不可能だとカシムは壁を蹴り、屋根の上に移動する。
「客人じゃあっ、逃がすな! もてなすのじゃ、完膚なきまでに徹底的にもてなせぇーっ!」
「客人にする態度じゃないよね!?」
自らの行いも客人とは呼べないが、声を張り上げる老人に思わず突っ込みつつ、屋根の上を移動する。
事が大きくなってしまった以上、戦闘は避けられないだろう。件の武器の場所を発見したことを収穫とし、カシムとティファーナは仲間の元へ走った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
祝聖嬢・ティファーナ
三騎士のゲイリックに防御、ラーンとプライドに剣で戦ってもらいます♪
*アドリブ・支援・共闘・協力は可能な範囲で
『クリスタライズ』で姿を隠して高い位置から『神罰の聖矢』で聖攻撃を『エレメンタル・ピゥシィズ』で風(風)属性攻撃を仕掛けます☆彡
気付かれたら『月世界の英霊』で空間飛翔して回避して『祝聖嬢は静停出来ない』で外部からの攻撃を遮断して『月霊覚醒』で敵のUCを可能な範囲で封印します♪
猟兵には『祝聖嬢なる光輝精』で怪我を治し『シンフォニック・メディカルヒール』で状態異常を癒します☆彡
「死屍霊よ…神様は皆様を“光の園”へと導いて安寧を与えてくださいます♪ さぁ、怖がらずに“光の園”へ魂魄を…☆彡」
ベリザリオ・ルナセルウス(サポート)
人々を救う事、未来を蝕む者を倒す事は責務ですが、オブリビオンにも救いが訪れる事を願ってやみません
オブリビオンが救われる世になれば大切な織久も安らげるかもしれませんから
救助活動や傷の治療は得意です。体の傷を癒し、心の傷も音楽によって癒しましょう
失せ物探しや動物も対象にできる情報収集で探索・調査も行えます。鈴蘭の嵐で花弁の流れや光の屈折率を変えてのカモフラージュの見破りもお任せください
仲間と連携しての戦いこそ私の真価が発揮できます
味方を鼓舞し、援護する事で敵を挑発して引き付け、味方を守る
より強力、広範囲の攻撃なら無敵要塞で庇います
剣と盾で攻撃を防ぎ、敵の武器を払い、味方が攻撃できる隙を作りましょう
ミラリア・レリクストゥラ
……さて、生贄捜索は首尾よく行きましたけれど。
私、食事ができないんですよね……
【WIZ】
容姿に関して指摘はされませんでしたけど、怪しまれる事は避けたいですし。
…宴会という形を取っていただいているのはいいですね?
あの方々がオブリビオンであっても、感情は人と同じと見ました。
でしたら祝い事、宴会である以上『楽しみたい』という根底はある筈。
そこを【世界は果てなく面白い】で膨らませて、給仕の手を遅らせていただきましょう!
…できれば、村の方々にも食事を促して負担減を狙いたいですけど。
…唄が終わってから、食べないのかと聞かれるようなら正直に打ち明けます。
この身が鉱物であり、食べ物も飲み物も摂取はできないと。
●激突、名を棄てられた村。
かっ、と目を見開いて小皿を五枚ずつ片手に乗せて走る百姓村人。湯気立つそれに乗せられた熱々の煮野菜は汁だくで、しかしその汁を溢すことなく最小限の揺れをキープする。
「まだまだありますぞぉぉう、お客人んんッ!」
『ほいきたよしきただーっ!』
投擲。
更に続けて放たれる皿には薫製や漬物など唾液を啜らずにはいられない食べ物が並び、回転するそれは芳醇な香りを撒きながらも皿から落ちることすらない。
すでに限界を迎えたゲイリックすら食そうかと血迷った考えが浮かぶほどの魔力を持つ品々だ。
「ゲイリックさん、ベリザリオさん、防御をお願いします☆」
「応!」
「任せてもらいましょうか」
乱れ飛ぶ皿の数々を、その四角の巨大な盾で防ぐゲイリック。ベリザリオは剣で払い打ち落としながら、更に後ろへは進ませないと盾で受ける。
その間に、ラーンに攻撃をと声をかける前に少年が二つの盾の間から躍り出た。
「へっ、こういうのが分かりやすいぜ!」
腰の剣を引き抜き、空で回転しながら突撃する。基礎もなければ流派もないような我流の剣だが、その動きには目を見張るものがあった。
切り払われた村人はうめき声を漏らして地に倒れる。ラーンの動きに鈍りがない所を見ると、最初から信用していなかっただけに飯もそこまで食べていなかったようだ。
「ういっく、おぶ、うぃ~」
「食後に激しい運動なんて、しちゃ駄目だぜーっ!?」
酔っ払いと食べ過ぎで動けなくなっている者もいるが。
「あぁん、助けてー!」
「むむっ!」
それでも婦女子の危機には耳も鋭く、ジェニーは百姓から大皿を押し付けられるサエの元へ、ジョーを引きずり急ぐ。
「食らえ酔いどれシュート!」
ジョーを村人へ蹴りつけ、その間にサエを助け出す。無論、ジョーは抵抗できるはずもなく村人の群れに飲まれてしまった。
ジェニーほ消えた相棒へ黙祷を捧げた後、だらしない顔でサエへ振り返る。
「サエちゃん、見てくれたかい。おじさんの活躍を!」
「ありがとう~。でーもー、もっと活躍してるトコ、見たいなぁ~」
甘えられて有頂天の男へ前蹴りを放てば、先程のジョーと同じく村人の群れへ突っ込まされる。
「のわぁあっ!」
「大変じゃ、客人が転んでおるぞ! すぐにもてなすのじゃ!」
「ほいきたー!」
「よっしゃ~!」
ジェニーの哀れな姿に、サエは口角を引き上げて【シンフォニックパーソナルスピーカー】を向ける。蒸気機関式の拡声器は、所有者であるサエの声を無差別に周囲へと拡散するのだ。
『たぁいへーん! 役立たずのおっさんどもが薄い本みたいな展開にぃ~っ!!』
爆音。
生み出された衝撃波は容赦なく村人を打ち付け、吹き飛ばす。大地を抉り老朽化した家屋を薙ぎ倒し、吹き飛ばされた中には二人の騎士も混じっていたが。
まあ、村人のお陰で直撃は免れただろうし、大丈夫だろう。
混沌とした戦場を眼下に、ティファーナは舞い上がる空で優しき陽の光の下、慈しみの視線をオブリビオンへ向ける。
「……死屍霊よ…、神様は皆様を『光の園』へと導いて安寧を与えてくださいます♪
さぁ、怖がらずに……『光の園』へその魂魄を……☆彡」
風を纏うティファーナの体。
「歌唱う、我らが精霊・聖霊・月霊よ♪ 歌い、踊り、唄い、舞踏れ♪
──素ノ源ヨリ来タレリ……【エレメンタル・ピクシィーズ】!」
解き放たれた風は天空より降り注ぎ、猟兵らへ迫る村人たちを押し流し、乱れ飛ぶ皿を弾き返す。
形成された風の壁に、守るべき点を集中できると意気込むゲイリック。そのあからさまな隙に脇から走り抜ける村人たち。
何をやっているんだとばかりの失態に、ベリザリオは舌を打つ間もなくユーベルコードを始動する。
「【Sanctuarium benediction(サンクトゥリアムベネディクション)】!」
【Misericordia musica】。優美なる竪琴から放たれた旋律は矢となり、諸手に皿を持つ村人たちへ撃ち込まれた。
貫く音は力となり、しかし次々と倒れる村人を踏み台に後続の村人が通り抜ける。
「遠慮は要らんぞう、たくさんお食べぇえ!」
「はわわっ」
彼らの先にいるのはるこる──なのだが、ふくよか、というよりも丸く膨らんだ体の動きにキレはなく、構える霊刀【純夢天】も億劫だ。
このような姿になっているのも夢鏡の反動であり、短期間とは言え豊満な体をより豊満な、すなわち肥満体型へと変じてしまうのだ。
投擲される皿の群れと共に雪崩れ込む村人たち。あわやるこるは更に肥えてしまうのかと思われたその瞬間、横合いから放たれた【ウィザード・ミサイル】が炎を吹き上げて皿と村人たちを吹き飛ばした。
通常よりも巨大なそれはこの瞬間を狙い強化されたのだろう、決して慌てて放たれた物ではない。
「だ、誰だ!」
「はい没収」
炎の矢が放たれた方向へ振り向く村人。カシムは背後から彼が手に持つ皿を取り上げる。
気付き向き直った時にはすでに遅く、少年の刃が村人を貫いていた。
大分、片付いたか。
刃の血を払いながら、辺りを探るカシムに礼を述べたるこる。
カシムはぽよん、と膨らんでも相変わらず可愛らしい彼女に照れたように頬を掻いた。
「相手はオブリビオン、仕方のない事とは言え、残念ですわ」
瞼を閉じれば、先程まで楽しげに踊っていた彼らの姿が浮かぶ。
「何やら哀愁を漂わせておるなぁ、お客人。我が丹精を込めてふわとろに擦り練ったとろろを食して、身も心もとろとろになるがよいぞ」
すり鉢を腰元に構え、摺り足で迫る老人。こいつ出来るぞ。
しかしそんな彼の姿に、ミラリアは悲しそうに首を横に振った。
「私のこの身は鉱物で構成されておりますの。食べ物も、飲み物も、受け入れることはありませんわ」
「……な、なんとっ……」
驚愕に目を見開く老人は、わなわなと震えた。成り立ちの違いに衝撃を受けたのだろうか、あるいは自分たちの存在意義でもある食事を与えることの出来ない相手に、悲しみを見出だしたのかも知れない。
「ということは、ワシのとろろが初の食べ物になるというワケか。光栄じゃのう!」
こいつ頭とろろだぞ。
しかし他の村人同様、かの老人からも漂うのは攻撃的なユーベルコードだ。最初の食事にはなかったが、敵(おきゃくさま)と認められて以降、彼らの皿にはオブリビオンとしての力が宿っている。
イェーガーとオブリビオンが、そうとして見えた以上は当然か。それでも哀れみを禁じ得ずに思わず目を閉じたミラリアの前に、サエが現れた。
ピンクの髪をひらりと揺らし、老駆を上目に見つめる。
「おじいさま~、ミラリアのことを思っておもてなしして下さるんですねぇ?」
「もちのろんじゃ!」
「じゃーあ、おもてなしだもん、して欲しいこと、して欲しくないことを相手のためにきちんとしてくれるワケですよねぇ~?」
「当たり前田のクラッカーよ!」
ちょれえ。
サエの目がぎらりと光り、ユーベルコードが始動する。
「え~、じゃあその言葉、守ってよねぇ~♪
ミラリアはとろろを食べたくないってさ!」
「…………っ!?」
【チープ・チャーム・チェイン】。
魅了した相手にルールを宣言し、破ったと同時にダメージを与える。そのルールは簡単に守れるほど、破った際のダメージも高くなる。
老人はしばし、息も荒くミラリアとサエを交互に見つめていたが。
「──ええい、不肖、この村を預かる身としてお客人をもてなさぬなどもってのうぼぁーッ!!」
すり鉢を持って迫る老人は、その手が少女たちへ届く前に地に伏すこととなった。
●騒ぎの後で。
傷付いた仲間、ジョーとジェニーを癒すティファーナとベリザリオ。その傷もほとんどはサエによりもたらされたものであるのだが。
それはさておき、カシムはティファーナと共に見つけた対ヴァンパイア武器と思われる代物へゲイリックとラーンを連れていく。
未だに野菜や肉が刺さったままのそれは、しかし確かに剣であった。
「で……っけえ……なんだこりゃ」
「生半可な筋力では使いこなせまい」
余りの武器の大きさに驚くラーンと、両手で持ち上げながらゲイリック。
並んだ三本の鉄串に、己の手の中の鉄串。ゲイリックとラーンは顔を見合わせた。
「どうやって使うんだこれ?」
「俺にもさっぱりわからんな」
彼らの後を追って現れた猟兵に目を向ける二人。
わかるわけねーじゃんね。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 日常
『演劇をしよう!』
|
POW : めっちゃでかい声や豪快な演技で目立つ
SPD : 格好いいアクションで観客を魅了する
WIZ : 暗記した台詞をスラスラ語ったりアドリブで盛り上げる
|
●最初の村の祝い事。
事件を解決した猟兵たちがラーンらを村まで護衛していると、かの村ではお祭り騒ぎであった。
どうやらジェニーとジョーが傷を癒して貰った後に先回りし、名を棄てられた村での出来事を彼らを脅かすヴァンパイアを退治したのだと吹聴したようだ。英雄扱いされもてはやされてご満悦といったところか。
こーの録でなしども!
「まあ、対吸血鬼用武器も手に入った訳だし、一息吐く分にはいいか」
「俺もあいつらが騙されてる分には文句はねーよ」
踊る村人をじと目で見つつ、溜め息を吐く。
彼らの目的となった武器【サルビア】は、それこそ規格外の巨体を誇るラーンの妹、クリスにしか扱えないのではないかという結論に至った。
しかし武器は武器、必ず使い方はあるはずなのだ。
「おお、活躍は聞いておりますよ、騎士のお付きの人々。あなた方もどうぞ踊って下さい!」
誰が付き人じゃい。
猟兵たちから向けられた視線に顔を背けるジェニー。
しかし、これはチャンスにも成り得る。すっかり武器としての使用を諦められた撃刺突剣サルビアを演舞に見立てて振るえば、そこから使用方法を学べるかも知れない。
サルビアは全長二メートル半の長大な剣だ。斬るには向かず突くのに突出した作りとなっているが、その重さから叩くのも狙い安いかも知れない。
また、刃がないことから柄だけでなく刀身を持つことも可能だ。
へっぽこ騎士たちに、強力な武器として扱わせよう。
・対吸血鬼用撃刺突剣サルビアの使い方を想像し、演舞に見立てて騎士たちにご教授してあげて下さい。
・特に思い浮かばない場合、POW、SPD、WIZの三種からそれらしいプレイング(具体的でなくても構いません。POW=力強く振り回した、など)があればそれらしく仕上がります。
・プレイングの使用方法が騎士たちのサルビアの扱い方のひとつとなりますが、ずんび百姓のように非戦闘用の用途でも可能です。
祝聖嬢・ティファーナ
WIZで判定を
*アドリブ・協力・合同を可能な範囲で
『フェアリーランド』の壺の中から精霊・聖霊・月霊を出して上げて“戦隊ヒーロー”みたいなアクションショーを演じて賑わい盛り上げます☆彡
他の猟兵にも協力したり、市民に“こんぺいとう”や他の世界のお菓子を壺の中から出して「どんなのが当たるかな?♪」と手を入れさせてあげて探させたり大きな人には出してある物から選んでもらいます☆彡
小さな子がハズレを引いてひまった際には親御さんに好きなお菓子をこっそり聴いて引かせて「ほら、当たったよ!」と喜んで喜ばせて笑顔を届けます♪
「神様は皆様を見守り、祝福してくださっています♪ 皆様の笑顔が世界を変えますからね☆彡」
フィロメーラ・アステール
「一人で持てないなら、みんなで使ったら?」
サルビア自体は対吸血鬼パワーの貯蔵庫として利用し、攻撃は別の武器でやればいいんだー!
えっ、できない?
こうやるんだよ、こういう感じ!
【第六感】を働かせてサルビアの力を感じ取る!
原理そのものは難しくないぞ!
剣だと思うから斬ったり突いたりしなきゃいけない気になる!
発想を変えるんだ!
これは魔法の杖! もしくは勇気の旗! あるいは勝利の塔!
立てたサルビアの周囲で【ダンス】して力を宿してみせる!
今のが、サルビアの力を引き出す動き!
こういう動きをしたらみんなも同じ効果が得られるさ!
変かな?
でも踊って祈願する儀式はよくあるだろ?
戦闘に組み込むには練習が要りそうだけど!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・移動中に『反動』解除
・アド/絡◎
■行動
成程、それでは扱い方を考えてみましょうかぁ。
『剣』という形状ですが、『2m半』『突き特化』『全体が金属で重い』と言うのは『ランス』と同じ特徴なのですねぇ。
ですので、この様な使い方は如何でしょうかぁ?
【愛柔園】で『馬』を召喚、騎乗して『ランスチャージ』をお見せしますぅ。
見様見真似ですが、方向性は伝わるのではないかとぉ。
私は[怪力]で支え『器具』等無しで扱いましたが、実際は『ランス用の器具』を改造して着ければ扱い易いと思いますぅ。
後は、突撃してくる相手に『パイク』の様に扱ったり、『対吸血鬼用の効果』次第で『旗槍』の様に『旗竿』にしても?
●笑顔を咲かせて。
村人に誘われた時、ならば自分がとまっすぐ手を挙げたのは祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)である。
猟兵たちの間をするりと抜けて、村人たちの前に現れたティファーナは小さな壺を取り出した。
「皆、出ておいで♪」
始動したユーベルコード【フェアリーランド】。彼女の持つ小さな壺の中に造り出した世界、フェアリーランドから現れた精霊たちは楽しげな人々の雰囲気に顔を見合わせると、すぐに笑みを浮かべた。
「精霊!」
「月霊!」
「聖霊!」
「そしてティファーナ!」
『四人揃って人呼んで! 妖精戦隊、フェアリんジャーッ☆彡』
空を飛ぶ四人の妖精は、色とりどりの光の粒を放射して空を巡り、びしりとポーズを決めた。
フェアリんジャーと名乗るティファーナたちは、村人たちの手拍子や太鼓の音に合わせて空を舞った後、目を輝かせて熱い視線を送るこどもたちに気づく。
悪戯を思い付いた子供のように笑みを浮かべて、少女は声を張り上げた。
「悪い子はいねがーっ☆」
「悪のフェアリんジャーが来たよ♪ 逃げろ~!」
『キャー!』
いつの間に悪役となったのか、ティファーナが両手を振り上げると周りの妖精たちが囃し立て、子供たちは歓声を上げて逃げ惑う。
微笑ましい追いかけっこが始まる中で、その雰囲気に誘われたかもう一人の妖精が姿を現した。
「さあ、最高にラッキーな時間のはじまりだぞー! あたしに出会えるなんて、みんなラッキーだなー!」
フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)の言葉はその柔らかな風貌からは想像もつかないような押しの強い性格のようだ。得意気な顔で薄い胸を張るフィロメーラは自らが幸運の星と信じて疑わないだろう。
自信も圧倒的になれば根拠にならずとも説得力になる。それさえあれば、結果がついてくるのもよくある話だ。
「悪い子はいねがーっ☆」
「悪い子はいないかー!」
幸運の流れ星から一瞬で悪のフェアリんジャーにジョブチェンジ。楽しげな追いかけっこに触発されたようだ。
それっ、と他の精霊、聖霊、月霊と共に空に光の華を咲かせる様は、幸運を呼ぶに相応しい活躍である。
「うーん、君は悪い子ではないみたいですね♪」
走り遅れて捕まえた子に、ティファーナは壺を差し出した。中から取り出したのは空に散りばめられた光と同じく、星の如きこんぺいとう、更に異世界のお菓子だ。
目を輝かせた子供にティファーナはお菓子を中に入れ直し、中から選ぶように伝えた。
「わーい!」
「どんなのが当たるかな♪」
嬉しい笑顔をそのままに、壺の中に手を突っ込んで取り出したのは、どこかで見たような、しかし決してこの世界にない包みにされたお菓子だ。
疑問符を頭の上に浮かべる子供に開け方を教えると、途端に顔を輝かせた。
「ありかとう、ちっちゃいお姉ちゃん! わーいっ」
「あっ、いーな~!」
その様子を見ていた子供たちは逃げるのを止め、羨ましがってティファーナの前に集まってくる。
「こらー、慌てない慌てない!」
「お菓子は一人、一個ずつだよ☆」
精霊たちとフィロメーラによって整列した子供たちはティファーナの壺から思い思いのお菓子を掴まえてご満悦だ。
中には別の子のお菓子を羨む子もいたが、そんな子にも後でお菓子を取り替えてあげようと親に月霊がお菓子を渡しに行く。
と、お菓子を貰ってはしゃぎ走り回っていた子が大きな影とぶつかって尻餅をついた。
「ぴっ!?」
間の抜けた悲鳴も上がるだろう、ずんと佇むクリスの姿はモアイ像が歩き出したに等しい。
完全に固まってしまった子供をクリスが困ったように見下ろすが、子供からすれば蛇に睨まれた蛙だろうか。
ティファーナはそんな二人の元へ飛ぶと、クリスの瞳に浮かぶ戸惑いの色に笑みを浮かべた。
「君もいい子だね☆ あっちにプレゼントがあるよ」
クリスがいい子?
子供たちの間に衝撃が走る。鬼のような父親も一目で黙らせる強靭な体に屈強な顔つきと、おおよそ少女に見えない風体に大魔王かと考えていた子供たちだ。
ティファーナの言葉から素直にプレゼントを受け取りに行く巨大な背中。おずおずとその後を追うのは好奇心に負けた子供たちだ。すぐにでも、少女は村の子供たちにも受け入れられるだろう。
●幸をまく者。
フィロメーラはしばらくティファーナの元にいたが、やがて辛気臭い顔をした大人たちの元へ向かう。
「やっぱりよー、渡すだけ渡して終わりでいいんじゃねーの?」
「いや、騎士たる者、仕える人のために万全を期せねばなるまい」
ラーンとゲイリックが難しい顔を付き合わせていると、現れたフィロメーラが巨大な剣に視線を向けた。
「スーパーシークレットレア妖精、流れ星のフィロだぞ!」
「す、すぱし……え、なに……?」
おっさんの耳に聞き慣れない言葉は上手く吸収できないのだ。
ゲイリックが困惑していると、一体何故、この幸運の星が現れたにも限らずそのように詰まらなさそうな顔をしているのだと詰め寄る。
鼻先の美少女にゲイリックは気圧されつつも、かくがくしかじかと語った。
「まるまるうまうま、なるほどな!」
フィロメーラは、にか、と自分に任せろと笑う。
「そもそも前提が間違ってるんだよ。一人で持てない物を一人で持つように考える必要なんてないんだ。
……つまり……一人で持てないなら、みんなで使ったらいいんだよ!」
逆転の発想。いやそれ使いにくくならない?
「なん……と……?」
「その手が!?」
「まさに天才の発想じゃねえか!」
お酒で寝てしまったジョー以外は大絶賛である。君たちがそれでいいならいいんだけどね?
実際のところ、一人で携行できない大型武器を複数名で使用するという前例は無いわけではない。攻城戦などで使用される大型兵器なども考えれば、珍しいものでもない。
恐らくは二人で抱え、破城槌のように敵へ突撃をかけるのだう。その為には相手が動けない、避けられない状況を作るのが大事となる。
「サルビア自体は対吸血鬼パワーの貯蔵庫として利用し、攻撃は別の武器でやればいいんだー!」
?
「えっ、できない? こうやるんだよ、こういう感じ!」
【第六感】を働かせてサルビアの力を感じ取る。
両の瞼を下ろし、第三の眼を開くかの如く気を額へ集中、その潜在能力を高め眼前の獲物の気配を探る。
少女の鋭敏な感覚は眼前の無機物から確実に、その力を探り当てるだろう。それは予知にも似た絶対の感覚。
故に気づくだろう。
(? これただの鉄の塊じゃ?)
──と。
「お、おい、どうなったんだ?」
振り向けば期待に満ちたラーンの視線。
フィロメーラは虚空に視線を流した後、ひとつ頷いて笑みを見せた。
「言ったろ、任せろって!」
全力でノっかるぜ!
再び胸を張った少女は当初の想定通りに事を進めるつもりのようだ。
いいかよく聞けと寝転がったジョーを叩き起こす。
「原理そのものは難しくないぞ!
剣だと思うから斬ったり突いたりしなきゃいけない気になる! 発想を変えるんだ!
これは魔法の杖! もしくは勇気の旗! あるいは勝利の塔!」
即ち、力のシンボルであると。
フィロメーラ力説に、おお、と感嘆の声が上がる。百聞は一見に如かず、少女の指揮により四本のサルビアは大地に突き立てられ、力強くそそりたつ姿を現した。
「後はこの力を引き出すダンスで体に力を宿すぞ! みんなよく見てるんだ」
ごくり。
思わず生唾を飲む一同。彼らの真剣な雰囲気に触発されたのか、続々と集まる村人たちもその動向を見守っている。
フィロメーラは足を肩幅に開くと腰を落とし、両手を真っ直ぐ伸ばして拳を握る。それは中国拳法の鍛練にも似て。
「ふんふんふ~ん♪ あふふふぅのぉ、ふぅ~ん♪」
リズムを刻んで両手を縦にふりふり、腰を僅かに上下し、一歩、一歩、また一歩とサルビアを回り始める。
どこかで見たようなダンスであるが、華麗なる舞を期待していた野次馬からはブーイングが飛び出した。
「なんだそりゃ!」
「もっと色っぽいのないのかよ!」
「……これはこれで中々……」
「お尻もっと振ってほしいです!」
「──ドやかましいっ!!」
しつこい野次にフィロメーラは柳眉を逆立て一喝。
一睨みで野次馬を黙らせると、四人の騎士にも目を向ける。何を突っ立っているのだと叱咤し、こう踊るのだと声を張り上げる。
「今のが、サルビアの力を引き出す動き!
こういう動きをしたらみんなも同じ効果が得られるさ!」
顔を真っ赤にして叫ぶフィロメーラの勢いに圧されて、おずおずと少女の背中に続くラーン。そこにゲイリック、ジョー、ジェニーと続く。
ところでフィロメーラさん顔だけでなく耳まで真っ赤なんですけど、実は恥ずかしいのでは?
「ふ、ふんふん、ふ~ん?」
「ふんっ、ふふふんっ、ふんっ」
「ふふ~ん、ふーん」
「うふふんふん」
レール上を回る列車のように、フィロメーラの後ろに続く騎士の姿は悲哀を感じるに値しよう。だが、少女の力強い言葉は村人たちにも届いていた。
「なあ、これ……この……なんだこれ?」
「なんか知らなねーけど、あの真ん中に立ってるくそでけえ鉄ピンから力を貰う踊りなんだってよう」
「へえ。や、やってみっか!」
馬鹿っぽい仕草ではあるが、真面目な顔でそれをしているのだから好奇心がわかないはずもなく、『力を得られる』という大義名分を元に村人たちも続々とその列に加わっていく。
『ふんふんふーん♪』
「あ、そーぅれ!」
『あふふふぅのぉ、ふぅ~ん♪』
「さーさ、もいっちょ!」
『ふんふんふーん♪』
「それからどーしたっ」
『あふふふぅのぉ、ふぅ~ん♪』
村長から妙な合いの手が混じりつつも、遂には村人全員が参加する巨大な輪となった。
恥ずかしそうにしていたラーンはやけくそ気味に大声を上げていたが、自らの体の変化にはっとする。
「……な、なんだ……? 顔から火の出そうな熱さが、体全体に巡っていきやがる!」
多分それ恥ずかしさとダンスで血行が良くなったせいだと思います。
「それは本当かラーン!? 儀式のダンスは女が踊ってこそ、やはり効果が一番早く出るのはラーン・ブライドだったか!」
「腹刺すぞこの野郎」
険悪なやり取りにも見えるが、その顔は笑っている。彼らだけではない、踊る者たちみんなが笑顔を見せていた。
フィロメーラはいつの間にか輪から抜け、空から光の粉をまくティファーナとともに彼らを祝福している様子であったが、やがてその笑顔に満足したのかその場から消えていた。
星の如く、煌めきを残した彼女はまた、先の騎士らのように辛気臭い顔の者共へ幸運、否、幸福を渡しに行くのだろうか。
幸は独り占めするものではない。少女の自戒は図らずも村人たちへ伝わっただろう。
「ふう。よ、ようやく、落ち着きましたぁ」
みなより遅れて馬車から降りたのは夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だ。
先のオブリビオンらが栄えさせた村において、自らのユーベルコードにより驚天動地の食事風景を造り出した彼女だが、その反動で動きに支障が出るほどの肥満体となってしまった。
今はもう元の体型へ戻っているが、それもやはり、同年代の女子から見れば遥かに豊満だ。
そんな彼女の目に留まったのは皆が仲良く輪になって踊る姿だった。遅々とした歩みのダンスお世辞にも軽やかとは言えないが、浮かぶ笑顔が彼らの心を表していた。
「な、なんだかみなさんっ、幸せそうですぅ」
ほっこりした顔で見つめていると、やがてダンスは終わり、人々の輪も解けていった。
●サルビアは剣ではなく槍だったんだよ!
「サ、サルビアの、使い方、ですかぁ?」
「おうよ」
地に足を投げ出して、息も荒いラーンの言葉に首を傾げたるこる。
例のダンスの後、どれだけパワーアップしたのか調べようとしたラーンは一人で大地に突き立つサルビアを抜こうと試みたものの、てんで歯が立たなかった。
ティファーナも顔を真っ赤にして手伝ったもののやはり動かず、本当に力を得たのかと半信半疑のようだ。そりゃそうだ。
「はっはっは、甘いなラーン」
「ゲイリック」
ダンス後、なぜか元気いっぱいなゲイリックはご機嫌である。
彼が言うにはそもそも、対吸血鬼の力が腕力とは限らないと。内より出る熱き力、それは勇気であり、そして自分たちの血は今、太陽の如く滾り吸血しようものなら相手が溶けてしまうはずだと力説する。
「マジかよ。すげーじゃんサルビア」
それマジ?
しかしその効果を得るにはダンスしなければいけないという大きな制約がつく。
時と場合によるだろうが、やはりそのまま使用するには難しい。
「な、なるほどぉ。それでは扱い方を、か、考えてみましょうかぁ」
まずるこるが注目したのはその形状である。
剣という形を取っているものの、二メートル半の長大さ、突きに突出した性能、全体を金属で作られたその重量と、剣と呼ぶにはあまりにも不自然だ。
そこで彼女はこの撃刺突剣サルビアは、むしろ『ランス』と同じ特徴なのではないかと考えた。
『剣』ではなく、『槍』である。
そう考えた方がしっくり来る武器なのだ。
「……これなら……み、みなさん、下がっていてくださいぃ」
改めて物珍しくサルビアの周りに集まる村人たちを退けて、るこるは意識を集中する。
「……大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、女神の加護を得し愛らしきもの達よ、私の元へ……」
ユーベルコード【豊乳女神の加護・愛柔園(チチガミサマノカゴ・モフモフノラクエン)】は無敵の可愛さを持つ動物の群れを召喚するものだ。今回は群れである必要もないため、喚び出すのは一頭だけであるが。
るこるの優しい喚び声に導かれて現れたのは、小さめな馬であった。小さめとは言ってもそれは体高のことで、通常のものよりかっちりとした体躯であるのは太い足からも想像できる。
しかし何よりその特徴は。
「モ、モッフモフじゃねえか」
「モフモフだな」
「……うおぉ……モフモフ……!」
「モフモフです☆彡」
一同が魅了されるモフモフとした体毛。胴体から首までを覆うそれは鬣となって目元を隠し、それがまた信じられない可愛さを醸し出している。
酔っ払って視界もトチ狂ったジョー以外はモフモフに心を奪われていた。
モフモフだから仕方ないよね。
そんな彼らを尻目に、よっこいしょとるこるはサルビアを引き抜く。ジョーは信じられない光景に酒の器を滑り落とした。
るこるさん怪力だから仕方ないよね。
少女はサルビアを肩に乗せて召喚した馬へ軽やかに跨がる。
「そ、それじゃあ、──行きますっ」
跨がった馬に体を支え、サルビアを固定した状態で手綱を大きくしならせる。
走り出すモフモフと共にるこるは目付きも鋭く、虚空に浮かぶ敵を幻視して敵を貫いた。
短な距離の疾走であるが、少女の言わんとすることは腐っても騎士のおっさんズには伝わったようだ。
『ランスチャージ』。馬に専用の器具等を装着して大重量の槍でも突撃をかける、戦場でも一般的な戦術のひとつ。
今回、るこるは自らの怪力故になんの装備もなくこれを行ったが、前述の器具を用意して装着すれば、馬にさえ乗せてしまえば一人でも運用できるかも知れない。
「ほ、他は、突撃してくる人たちへ、パ、パイクの様に扱ったり、『対吸血鬼用の効果』があるなら、旗槍の様に扱っても、い、良いんじゃないでしょうかぁ」
吸血鬼の手下を迎撃するための拠点防衛用に利用するのであれば、敵の到着前に例のダンスを行う間もあるだろうか。
「なるほど、方向性が見えてきたな」
ゲイリックは自らの顎に拳を当ててしばらく考え込むと、良し、と声を上げて領主様に報告が出来ると朗らかに笑った。
それからしばらく経ち、騎士たちはサルビアを馬車に乗せて帰り支度を始めた。
建前は村を救った英雄、縛られていた時の話はどこへやら、別れを惜しむ村長らに笑顔で応えて、ゲイリックたちはラーンへ顔を向けた。
「さて、お前はどうするのだ? ついてきてくれればすぐにも正式な騎士として領主様がお召し抱えになるだろう。
来なくても、その装備はお前にやろう」
「お、俺は」
ちらりと隣に佇むクリスを見上げる。クリスの体は遊具のように子供たちが登り降りしてきゃっきゃと騒いでおり、賑やかだ。
そう、ラーンが守るべきクリスは村に受け入れられ、守護者としての兄を必要としなくなったのだ。
そもそもこの体躯で守ろうと考えるシスコンぶりはスゴいとしか言えないぞ。
「兄者、私のことは気にしなくて大丈夫だ。兄者の好きなように生きてくれればいい」
「け、けどっ」
「兄者。私は兄者に守られ、立派に育った。だからもう、兄者が心配する必要はないのだ。私は私で、兄者の帰る場所を守ろう。
だから兄者は私を信じて、好きに生きる時が──巣立ちの時が来たのだ」
クリス。
双子の片割れの名を涙ながらに呼ぶラーン。妹さんイケメン過ぎない?
ラーンはクリスの男前百二十パーセントの言葉に後押しされ、おっさんズへついていく。
何度も振り返る兄に手を振る妹に、寂しさがないわけではなかったろう。しかし、その様子を気遣ってお菓子を渡す子供たちや、自分たちの家で夕飯を食べたらどうだと誘う大人たちの暖かさが少女を支えてくれるだろう。
そんな様子を遠くから見つめているのはるこるとティファーナだ。
「い、一時はどうなるかと思いましたけど、丸く収まってよ、良かったですぅ」
「神様は皆様を見守り、祝福してくださっています♪ 皆様の笑顔が世界を変えますからね☆彡」
二人はそう言って笑い、元の世界へと還っていった。
「ところでよー、領主様の騎士には何か名前とかあんのか?」
「そういえば言ってはいなかったな」
「新しく出来たばっかりだけどな、『勇ある鳩の団』、って名前さ」
「ぐ~、ぐ~」
「なんだよそりゃ、獅子とかカッコいい名前なかったのかよ?」
「いやいや、これがいいのだ。平和の象徴である鳥の胸に勇気の炎を宿した旗槍も作られている。我らは平和の礎となるのだ」
「いや俺は死にたくないけどさぁ」
「んぐごごごっ! すぴーすぴー」
「そんなもんかね。ま、何はともあれ、だ。よろしく頼むぜ」
「こちらこそ、ラーン・ブライド」
「よろしくな、ブライド!」
「んぐぅ、ブライド……むにゃむにゃ……」
「だから花嫁(ブライド)は止めろっつってんだろーが!」
こうして、短い旅は終わりを告げ、ダークセイヴァーに新たな希望が誕生した。
まだまだ未熟な彼らだが、この絶望揺蕩う世界の中で、いつか希望のひとつとして数えられる日が来るのかも知れない。
だからこそ彼らは忘れないだろう、自分たちと共に戦い、希望をもたらした英雄たちの姿を。
大成功
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