帝都のカフェーで珈琲を
●カフェーの青年
帝都の一角で、あるカフェーが人気なのだという。
メニュウこそ普遍的なものだが、建物がいわゆる「寝殿造り」になっていて、平安時代の雰囲気を楽しめるというのだ。
庭の造りもまた見事なもの。敷き詰められた白砂の輝きは眩く、中島のある池に泳ぐ魚影は優雅の一言。そこにかかる橋を歩む人々は、思わず速度を落としてしまうほど。加えて時折入り込む幻朧桜の花弁も、雅な風景に一役買っている。
そのカフェーができて数日後、ひとりの青年が常連となった。まだ少年らしさの残る顔つきは、黒縁の眼鏡によってほんの少しだけ大人びた容貌に見える。
彼が注文するものはいつも同じ、珈琲とアイスクリン。まずはアイスクリンを食べて、珈琲を一口。それから持ち込んだ書物を開いて、時折笑みをこぼしながら小一時間ほど読み進める――。
ある日、新聞の隅には小さな記事が掲載された。
『夜道で青年怪死。影朧の仕業か?』
●グリモアベースにて
サクラミラージュでの仕事があるのだと、佐伯・キリカ(陽気に元気・f00963)は猟兵たちに声をかけた。
手空きの猟兵たちが集まると、キリカは彼ら彼女らの顔を見て話し始める。
「影朧を倒して欲しいんだよ! というのも、強い『恨み』を持った影朧が、夜道で黒縁眼鏡の青年を殺す風景が見えたんだ」
それはすなわち、予知。猟兵たちの反応を確認しながら、キリカは続ける。
「ターゲットとなっている人は、カフェーの常連である『枝折・史郎』という男性なんだけど……店員さんに挨拶やお礼も欠かさないし、店内では静かに本を読んでいるだけだし、カフェーが混んできたのに気付いたらすぐに店を出るってことだから、とても人の恨みを買うような人には見えないんだよね」
と、キリカは首を傾げる。
彼を狙う影朧が人違いをしているのか、もしくは影朧が恨みを抱く者に史郎が似ているのか。
「詳しい事情については、残念だけど不明なんだ。だから、まずはその調査も含めて彼に接触してほしいんだよ!」
たとえば一般客、あるいは店員を装ってカフェーに入り、彼の様子を探る。あるいは猟兵だと明かして殺されるであろう危険性を説明し、事情を詳しく聞く。情報を引き出せそうな方法があったら色々と試してみるとよいだろう。
「そうそう、もちろん猟兵ならカフェー食べ飲み放題のサアビスチケットも支給されるから――懐のことは心配せずにカフェーでの時間もついでに楽しんで来て欲しいんだよ!」
そう言って、キリカは笑顔で猟兵たちを送り出した。
雨音瑛
今回はサクラミラージュにて事件の解決をお願いします。
まずはカフェーにて情報収集となります。途中参加もどうぞお気軽に。
●各章補足
第一章 日常/オープニングのとおりです。各選択肢に限らず、自由に行動していただいて構いません。
第二章 集団戦/開始時、何かしら記載しますのでお待ちください。
第三章 ボス戦/開始時、何かしら記載しますのでお待ちください。
第1章 日常
『悠久のときを超えて、遙かから』
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POW : 建物や敷地の隅から隅まで見尽くす、味わい尽くす
SPD : 様々な場所へ移動して、時間を無駄にしないように過ごす
WIZ : 一番良い場所を見定めて、のんびり過ごす
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ノイシュ・ユコスティア
一般客を装い、カフェーに入る。
それにしても立派な店構えだ。
サアビスチケットがなかったらそうそう入れないだろう…
この世界で美味しいものを見つけよう!
軽めの食事を取りたい。
コーヒーとおすすめのランチ、それから気になるアイスクリン。
どんな味だろう、楽しみ。
食べ終わったら、のんびりと庭を眺める。
できるなら寝転がりたい。
情報収集。
食事を持ってきてくれた店員に話しかけてみる。
美味しかった、と礼を言い、世間話から入ろう。
「ある噂を聞きつけてね…」
「史郎という人が狙われているようなんだ。」
「彼の周囲、あるいは店内か店の周りで、最近変わったことがあったら教えてくれないかい?」
必要があれば僕が猟兵だと教えるよ。
ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は大層な店構えにやや気後れしつつも、サアビスチケットを手に入店した。
空いた席に座ると、気付いた店員が近付いてくる。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
矢羽根模様の着物に白いエプロンを重ねた女性は、まだ若いながらも慣れた口ぶりだ。
「そうだね、コーヒーとおすすめのランチ、それからアイスクリンをお願いしようかな」
「かしこまりました」
春が訪れたようにも見える庭を眺めつつ、待つこと十数分。
ノイシュの前に置かれた皿には、湯気を立てるオムライスが載っていた。
おいしそう、と思いながら、いただきます、と呟いてスプーンを手に取る。スプーンを差し込んだところからも湯気が立ち上るものだから、できたてであることがわかる。
少しだけ冷ましてから、ゆっくりと口の中へ一口。ケチャップライスの緩やかな酸味を卵のやさしさが緩和して、口の中でちょうどよい味わいに変わる。
(「うん、丁寧に作られていて美味しいな」)
食べ終えた頃に運ばれてくる、珈琲とアイスクリン。
ひんやりした感触に続いてやってくる、少しばかり強い甘さ。けれど、珈琲を口に含めばそれがむしろ丁度良くも感じられる。
溶けきる前にアイスクリンを食べ終えた後は、珈琲を飲みつつ庭を眺めるノイシュだ。
(「散策している人も結構いるから、寝転がるのはまたの機会にしようかな。それに、見ているだけでも――」)
思わず口元をほころばせると、空になった食器を下げようと近付いてきた店員が一礼する。
「ごちそうさま、どれも美味しかったよ。ところで……」
店内がさほど混んでいないのを確認して、ノイシュは店員に話しかける。
「実は、ある噂を聞きつけてね……」
そこから先は、声をひそめて。店員は少しだけ身体を傾け、ノイシュの言葉を聞き逃すまいと真剣な表情をしている。
「この店によく来る『史郎』という人が狙われているようなんだ。彼の周囲、あるいは店内か店の周りで、最近変わったことがあったら教えてくれないかい?」
「申し訳ありません、お客様のお名前については把握しておらず……」
でも、と店員は続ける。
「いつも本を読んでいる方が、ちょっと気になる動きをしていましたね。新聞を読む方がいらっしゃると慌てて帰ることがあるんです、いつもじゃないんですけど。その方が史郎さんかどうかは存じ上げませんが……。店の周りで気になったことといえば――そうですね、ここ数日は『爆弾テロ』の話題でもちきりですね。私の思う『変わったこと』といえば、それくらいでしょうか」
「なるほど……ありがとう、興味深い情報だったよ」
ノイシュが頭を下げると、店員はなぜか目を輝かせて、
「私、お力になれましたでしょうか? お仕事頑張ってくださいね、探偵さん!」
などと、周囲に聞こえぬ程度のボリュームで告げる。その言葉に首を傾げつつも、ノイシュは微笑んだ。
(「――まあ、訂正しなくても不都合はない……かな?」)
大成功
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華都・早紗
【POW】(アレンジ、絡み歓迎です。)
この世界の人間やし、特に警戒される事も無いやろ。
元々気になってた店でもあるし、この気に色々見て周ろかな。
彼の様子を伺いつつ、店を探索します。
気になった事、場所なんかを筆記帳にまとめとこかな。
気になったって言うんは今回の怪しい事もそうやけど
今後来る時にどこに陣取ろかってのも含んでるで。
特におもろい発見無ければ彼に直接話しかけよかな
「この店、相当お気に(入り)のようですね、よくお見かけしますわ。」
ふっかい所は突っ込まんと日常会話させてもらお。
なんかおもろい話聞けるとええなぁ。
ミア・ミュラー
(店内に入ると目を輝かせてきょろきょろ)ん……サクラミラージュの世界から、また別の世界に来た、みたい。素敵なところ、だね。
ん、わたしはお客さんになって、調べてみる、ね。怪しまれないように、店員さんと変わった建物の話とか、メニュウの話とかしながら、その流れで史郎さんについて尋ねてみよう、かな。
頼むのは、せっかくだから珈琲?を飲んで、みる。珈琲は苦いらしいから、一緒に何か甘いものを食たほうが、いいかな。んー、おすすめって何か、ある?
尋ねるときは、性格とか仕事とか、基礎的な情報の他に、兄弟とか似ている有名人がいるかとかも聞いたほうがいい、ね。影朧が人違いしてる人が誰か、見当がつくかも、しれない。
+
カフェーの入り口の時点で目を輝かせるのは、金髪の少女。無表情ではあるが、店内に向けられる藍色の瞳は好奇に輝いている。
サクラミラージュの世界を経て、また別の世界に来たような心地にもなる不思議なカフェーに、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)は思わず嘆息した。
「……ん、素敵なところ、だね」
「もしかして、旅人さん? 素敵やろ、ここ? ……ゆうて、このカフェー来るのは私も初めてなんやけどな」
微笑みつつ片目を閉じて合図をする、華都・早紗(幻朧桜を見送る者・f22938)。モノクロームの色彩の中で帽子を突き破って咲く桜、その花の色が印象的だ。
「実は、元々気になってた店なんや。この機会に色々見て周ろかな、思ってたんよ。事件のにおいもすることやし、ね?」
その言葉で、ミアは早紗が猟兵と気付いた。
「ん、はじめて、なら……せっかくだし、一緒の席なんて、どう?」
「もちろん、ええよ。その方が色々とやりやすいし、美味しく食べれるやろ」
店員に席を案内された二人は、メニュウを見つつ枝折・史郎の姿を探す。
黒縁眼鏡の読書をしている青年は、店内にたったひとりだ。早紗とミアは視線を交わし、うなずきあう。
「ミアさん、同じもの頼んでもらっといてええ? 店内とか庭とか見るついでに、彼の様子も探ってくるわ」
「うん、わかった、よ。わたしは、店員さんに話を聞いてみる、ね」
そういうわけで、二人はひとまず別行動をすることにした。
さて、ミアはまずメニューとにらめっこ。飲んだことのない『珈琲』は外せないとして、一緒に頼むものに悩む。珈琲なる飲み物は苦いらしい、ということだけは知っているから、甘いものがいいのだろう。ならば仕事ついでに店員に聞くのがベスト、と思考したところで店員を呼び止めた。
「ん、珈琲と――んー、何か甘いもので、おすすめって何か、ある?」
メニューから顔を上げて問うミアに、店員は。
「私のおすすめは、ワッフルですね。季節のフルーツもついてくるから、ちょっとお得ですよ」
「じゃあ、ワッフルに、しようかな? 珈琲とワッフル、二人分お願いする、ね。……ところでここ、素敵なカフェー、だね。はじめて来たけど、とても、いい雰囲気」
「珈琲とワッフル、二人分ですね。ふふ、ありがとうございます」
ミアの言葉に、店員は嬉しそうだ。
「居心地、いいから……常連さんとか、いるんじゃない、かな?」
「ええ、嬉しいことに何名かいらっしゃいます。散歩途中の老夫婦とか、本を読みに来る方とか……」
「本を、読みに……その人、どんな仕事してる、人?」
「さあ、ご職業までは……私が知っている限りでは、とても丁寧に挨拶をしてくれる人、くらいですね」
首を傾げる店員。史郎はあまり積極的に店員とやりとりしている方ではないのだろう。
「その人に、似た人が来た、ことは?」
「私が見た限りでは、無いと思いますよ」
そこで、他の客が注文すべく店員を呼ぶ。これ以上引き留めるのも悪いだろうと、ミアは店員にメニューを渡した。
「お話ししてくれて、ありがとう。ワッフル、楽しみにしてる、ね」
「はい、楽しみにお待ちください」
店内を歩いていた早紗は簡単な間取りを筆記帳に書き付けていた。さらり書き加える矢印は、幻朧桜の花びらが入ってきた方向だ。
(「次に来た時に陣取るとしたら――うん、庭に近い方がええな。庭もよう見渡せるし、季節の風も感じられる。特等席間違いなしやろな」)
入り口近くや中程の場所は空席がちらほらあるが、庭に近い方の席は全て埋まっている。開店と同時に来るなど、何かしらの対策が必要だろう。もしくは時間をずらして足繁く通い、空席の多い時間を狙うなどした方がいいかもしれない。
「と、そんなところやろか」
さて、と早紗が店内へと視線を移すと、ワッフルにナイフを入れるミアと目が合った。
早紗は青年の方を小さく指差し、これから直接尋ねることをそれとなく伝える。
そうして青年の座る席へと近付いた早紗は、彼の向かいの空席近くで屈んだ。
「この店、相当お気にのようですね、よくお見かけしますわ」
「そう、ですか……僕、目立ってます?」
困り顔の青年は、本で口元を隠すように萎縮した。
「いやいや、そーゆーのとは違います、良く見かけるだけですわ。おすすめメニュウがあったら、教えてもらお思ってな。ほら、店員さんに聞いてもええんやけど、常連客の視点からだとまた違うやろ?」
「そうですか、それならいいんですが……おすすめメニュウ、ですか――」
史郎は本を閉じてテーブルの上に置き、真剣に考え始めた。きっと真面目な性分なのだろう。早紗は急かすでもなく、史郎の答えを待つ。
「僕のおすすめは、塩を少しかけたアイスクリンですね。店員さんに言うと、ちょっと荒めの塩を持ってきてもらえるんですよ」
「へえ、塩ですか。荒めの塩、というのがええんやろか?」
「何度か通っていたら、店員さんにこっそり教えてもらったんです。『そのままでも美味しいですが、お塩をかけるともっと美味しいですよ』って」
「常連ならではの裏メニュー、って感じやな。いいこと聞かせてもらいました、ありがとなぁ」
早紗は史郎に頭を下げ、ミアのいる席へと戻った。
「……あの人、誰かに気にされることを警戒してるみたいやな。ってことは、自分が目立つと良くないことが起きる、って思ってるんやろうな」
珈琲をすすり、早紗は得た情報をミアに告げる。
「店員さんにも、聞いてみた、よ。史郎さんについては『常連客』としてしか知らないみたい、だね。でも、店員さんの反応を見る限り、やっぱり悪いことする人じゃ、なさそう。似た人、についての情報はなし、だよ。でも、影朧が人違いしてる可能性、高そう」
「なるほどなぁ……」
ミアの言葉に時折うなずいていた早紗は、筆記帳を開いてペンを走らせ始めた。
――なお、彼は目立つことを極端に怖がっている様子。店員への態度や様子から、悪人でもなさそう。影朧が誰かと人違いをしている可能性が高そうだ。また、彼のおすすめメニュウは塩をかけたアイスクリン。店員に頼むと塩をつけてもらえるらしい。庭が見える席を陣取るなら早めの来店をすること。
大成功
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芥生・秋日子
無難に一般客としてカフェーに潜入しましょうか。
調査にかこつけてカフェーで優雅なひと時を、なんてことは、これっぽっちも思って……、
いえ、これっぽっちしか思っていませんので。
まずは影朧に狙われる男性について、調べます。
本人に話を聞いてもいいのだけれど、面と向かっての会話はいろいろとはぐらかされてしまいそう。
幸いにも店の常連客という話だったし、店員さんなら何かご存知かしら?
次の作品の参考にしたいから、なんて嘯いて店員さんに話を聞いてみます。
「あちらの眼鏡の彼は、常連さん?いったいどんな方かしら」
砂糖とミルクたっぷりの珈琲を注文。
カフェーを満喫しながらの情報収集
先ほどカフェーに入店したごく普通の女学生である芥生・秋日子(普通の人・f22915)は、どこにでもいるように見えてその実、猟兵だ。
猟兵であることを微塵も臭わせない態度で空いている席に座ると、店員がメニューを届けてくれた。秋日子はセミロングの髪を軽く払い、店員と視線を合わせる。
「少しお聞きしたいことがあるのですが、よろしいかしら?」
「ええ、もちろんです。どんなことでしょう?」
「実は私、作家として活動していまして」
「まあ! 筆名か作品をお聞きしても?」
この店員は好んで本を読んでいるのだろう。身を乗り出す店員に、秋日子はゆっくりと首を振った。
「いえ、名乗るほどの名前でも作品でもありません。ごく普通の名前ですし、ごく普通の本なものですから」
「まあ、面白い謙遜をされるんですね。では次に本屋に行った際は『もしかしてあの時接客した方のご本?』と思いながら選ばせてもらいますね」
「ふふ、是非そうしてください。……あら、話が逸れてしまいましたね。私が聞きたいのは、あちらの席に座ってらっしゃる、眼鏡の彼のことなんです」
そう、黒縁眼鏡の読書をする青年。すなわち、枝折・史郎だ。店員が彼を見たのを確認して、秋日子は続ける。
「次の作品に出てくる人のイメージにぴったりなものだから、参考にしたくて。彼、常連さん? いったいどんな方かしら」
「なるほど、作品の参考ですか。そうですね、私の知っている範囲では――」
入店も退店も挨拶を欠かさず、いつだって丁寧。店員が珈琲を彼の服に零してしまったときは、咎め立てることもなくむしろ頭を下げていた。たまにびくりとしてそそくさと帰ることがある。『ニュース』とか『爆弾』の言葉に反応して帰ったのを見たことがある。
――といった店員の情報に、ひとつひとつ頷く秋日子。これくらいでしょうか、と店員が話し終えたから、秋日子は頭を下げた。
「ありがとうございます、とても参考になりました。長々と引き留めてごめんなさいね、珈琲をいただけるかしら?」
「いえいえ。次の本が本屋に並ぶのを楽しみにしていますね。では、少々お待ちください」
店員から聞いたことを脳内で整理しながら、秋日子は珈琲が来るのを待つ。
(「爆弾に関わりのあるニュースがあったとして、その関係者だと思われているのでしょうか。」)
不意に雅な庭へと視線を移すと、秋めいた色をした葉が青空に舞うのが見える。
「まあ」
実のところ、調査にかこつけてカフェーで優雅なひと時を楽しもう……なんてことは、まったくぜんぜん、それどころかむしろこれっぽっちしか思ってない秋日子だ。
店内に入ってくる幻朧桜の花弁を何度か視線で追っていると、テーブルの上に何かが置かれる音がした。
注文した、珈琲だ。一緒に届けられた砂糖とミルクをたっぷり入れた後は、スプーンでくるり回して渦をつくって。ゆっくりとカップを口元に運んで飲むこの時間は、確かに「これっぽっち」の優雅な時間であった。
大成功
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日隠・オク
さあびすちけっっとを使いたいので猟兵であることを明かして近づきたいと思います
初めまして、と
あなたのまわりで事件が起きそうなんですが、何か心当たりはないでしょうか、と(直球
私も何か飲み物と、甘いお菓子もあるでしょうか、あったら頼んでまったりしながら聞いてみたいです
変わったことや最近起こった事件とか、何かありませんか?
調査中なんです、といった感じで…
その反応をみてみたいです
枝折・史郎は、自身に落ちる影に気付いて顔を上げた。
「初めまして」
「は、はじめまして」
挨拶の直後、空いていた向かいの席に座るキマイラの少女。緑色の瞳は、真正面からじっと史郎を捉えている。
「――えっと、僕に何か用が……?」
史郎は身を固くし、本を抱きかかえる。こくりと頷く日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)は、僅かに首を傾げた。
「困らせるつもりはありません、むしろその逆なんです。実はあなたのまわりで事件が起きそうなんですが、何か心当たりはないでしょうか」
「!」
史郎が本を取り落とした。床板と本がぶつかる音に、ほんのわずかな時間だけ店内が静まり返る。
けれど、次の瞬間には皆、雑談に華を咲かせ始める。オクはすぐ近くを歩いていた店員を呼び止めた。
「注文をお願いできますか? 飲み物と、甘いお菓子をお願いしたいです。どちらもおすすめので大丈夫です。――そうそう、支払いはこれでお願いします」
オクの取り出した「サアビスチケット」を、店員は笑顔で受け取った。
サアビスチケットとオクを見比べて目を見開く史郎は、むしろ安心したようにゆっくりと本を拾い上げる。
「猟兵さん、でしたか……」
一度本を胸元で抱え、改めてテーブルに置く史郎。どうやら警戒は解けたらしい。
「そうなんです。私は日隠・オクといいます」
「僕は枝折・史郎です。猟兵さんが接触してきたということは、ええと……」
「はい、影朧について調査中なんです。変わったことや最近起こった事件とか、何かありませんか?」
そこまで話したところで、
「お待たせしました、紅茶とカスタプリンです!」
と、店員が飲食物をテーブルに置いた。史郎は少しだけ笑んで、珈琲を一口呑む。
「では、最近起きた事件についてお話ししますね。つい先日、デパアトで爆弾テロがあったんです」
「確かに、事件ですね。それと史郎さんと、どんな関係があるんですか?」
カスタプリンを一口、柔らかさと甘さを楽しむオクが続きを促した。史郎はいったん周囲の目を気にした後、小声で告げる。
「犯人が、僕にそっくりなんです。もう犯人は捕まってるのに、町を歩いているだけで『脱獄したのでは』とか『犯人の兄弟?』とか噂されて。少しでも違う人に見えるよう、こうして眼鏡をかけてるんですよ」
困ったように笑う史郎は、本当に無関係なのだろう。ならば此度の『恨み』を持つ影朧は、きっとその犯人によって殺された者に違いない。
「爆弾テロの被害者について、何か知っていますか?」
今度は紅茶を一口、カスタプリンの甘さを消しすぎないほろ苦さがオクの口の中で広がる。
「デパアト内のカフェーにいた店員さん数名と、女子学生一人が亡くなったと聞いています」
「……そうですか。いろいろと大変なところ、お話しいただきありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。探している影朧、見つかるといいですね」
あまりにも呑気に史郎が笑うものだから、オクはごく小さく笑ってしまった。
「私が調査している影朧は、ほぼ確実に史郎さんを狙っている者です。くれぐれも気をつけてください」
「あ――そうか。ご忠告ありがとうございます、それでは僕はこれで失礼しますね」
史郎は本を抱え、オクに頭を下げた。
店内に舞い込んだ幻朧桜の花弁が、風に乗って再び外に出て行く。
赤紫色に染まり始めた空は、やけに不穏な気配を帯びていた。
大成功
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第2章 集団戦
『果実的野菜『すいかぼちゃ』』
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POW : 闇討ち攻撃
技能名「【先制攻撃/2回攻撃/マヒ攻撃/闇に紛れる】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : ゴールデンすいかぼちゃ
【ゴールデンすいかぼちゃ】に変身し、武器「【三叉槍】」の威力増強と、【蝙蝠の翼】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。
WIZ : 癒し蜘蛛
【癒し蜘蛛】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全対象を眠らせる。また、睡眠中の対象は負傷が回復する。
👑11
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ガス燈が照らす道を、枝折・史郎が歩いてゆく。
「馴染みの書店に寄ったら、もうこんな時間ですか……早く帰らないと」
五冊の本を抱えて、帰路を急ぐ。その顔には、嬉しそうな笑みが広がっていた。
「まさか掘り出し物がこんなにあるとは思いませんでした。今月は少し厳しくなりますが……というかそろそろ仕事を探さないと、貯めたお金も……」
そこまで言って、史郎の表情が曇り始める。
「いや、まあ、うん。今は爆弾テロの犯人と勘違いされやすいですし、仕事を探すのはほとぼりがさめてからにしましょう、うん、それがい――うわっ!?」
史郎は何かにぶつかり、抱えていた本と眼鏡を取り落とした。
「す、すみません! 大丈夫ですか……って、か、南瓜……?」
重なった南瓜の化け物。それもフォークが刺さっていたり、蜘蛛が纏わり付いていたり、魔女の帽子を被っていたりする。
ただの南瓜ではない、影朧だと史郎はすぐに思い至る。影朧に対処できるのは、ユーベルコヲド使いか、あるいは――。
「だっ、誰か――!」
口から零れた声は大して大きくはない。そもそも、掠れ声では音すら不明瞭だ。走り出そうにも、足は震えて動かない。史郎は目を閉じ、助けて、と喉の奥で呟いた。
日隠・オク
南瓜のお化けですね。
季節感ありますが、危ないので退治します。
シーブズギャンビットで切り込みます
飛行される前に近づいたり
攻撃しようと来たところを攻撃に行ったりです
夜道は危ないですよ
危ないので史郎さんは下がっててください
私なりに、頑張ります
地を起点とした素早い動きが得意
死を覚悟した枝折・史郎の耳に、地を蹴る音が聞こえた。
「危ないので史郎さんは下がっててください」
続くのは、落ち着いた声。聞いたことのある声だと、史郎はすぐに気付いた。ガス燈が落とす影を辿った先にいる小柄な少女は、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)。彼女は出現した影朧に目線を合わせ、史郎を背に立っている。
「君は確か……」
史郎が何か言うよりも早く、オクはシンプルな諸刃の短剣を振るった。今まさにオクへと襲い掛かろうとしていた『すいかぼちゃ』が瞬く間に消滅する。だが、すいかぼちゃはわらわらと沸いてくる。
「季節感があるのはいいと思うのですが、そのままにしておくには危なすぎますね」
そう呟いて、オクは逆手に短剣を構えた。
新手のすいかぼちゃに突き刺さる三叉槍が金色に光り、翼が怪しく動く。
「あ、危ない!」
オクの顔に不安や懸念は微塵も無い。
すいかぼちゃが浮くより早く、オクの短剣が突き刺さった。垂直に降ろされた刃はすいかぼちゃの目、鼻、口を通り、動きを止める。
「ご心配なく。私なりに、頑張りますので」
背に気配を感じた後は素早く転回し、短剣で三叉槍を受け流すオク。刃に火花が弾け、三叉槍は地面へと突き刺さる。柄を駆け上がり、一閃。
そこから跳躍し、別の個体を一段ずつ斬りつける。すいかぼちゃは、確実にその数を減らして行く。
「すごい……これが超弩級戦力の『猟兵
』……!」
オクの立ち回り、その凄まじさを目の当たりにした史郎は、逃げることも忘れて見入っていた。
大成功
🔵🔵🔵
華都・早紗
【WIZ】(アレンジ絡み歓迎です。)
あれ~~
なんや、君もこの道の常連はんですか。
カフェに続いて気があいますねぇ。
この道のおすすめメニューなんかあります??
んなわけないか。
しかし・・・君も偉い人気やねぇ
もてる秘訣教えて欲しいもんやわ。
まぁちょっと下がっとき。
んで、外界ではハロウィンってのが在るみたいやけど君はそんな感じの奴?
サクラミラージュでも流行るんやろか楽しみ。
お気に入りの万年筆を空中に放り投げ
幻朧桜曼荼羅を発動
桜の花びらを射出し、敵さんを切り裂いたり討ち払います。
ミア・ミュラー
んー……半分かぼちゃで、半分すいか。不思議なお化け、だね。よくわからないけど、人を襲うのなら、倒すだけ。
ん、数が多いから、史郎さんを守るのだけでも大変、ね。だから、【プリンセス・ホワイト】で来てくれた白鳥さん達に、攻撃は任せる、ね。翼とか嘴で攻撃してくれる、はず。敵が金色になっても、空を飛べるから追っていける、ね。
わたしは傘とプリンセスハートで史郎さんを守る、よ。あと、「視力」を活かして敵の動きをしっかり見て、白鳥さん達が苦戦してるようなら、合体してもらったりとか、指示を出す、よ。
みんな、頼りになる子達だから、大丈夫。きっと、これで終わりじゃないから、気をつけないと、だけど。
+
「あれ~~」
素っ頓狂な声に、枝折・史郎は思わずあたりを見回した。そしてひらり手を振る女の顔を見た後は、あ、とだけ口にした。カフェーでおすすめメニューを聞いてきた者だ。
「なんや、君もこの道の常連はんですか。カフェーに続いて気があいますねぇ」
どこまでもにこやかに史郎へと近寄るのは、華都・早紗(幻朧桜を見送る者・f22938)。
「この道のおすすめメニューなんかあります??」
「ん、半分かぼちゃで、半分すいかの不思議なお化けなんかおすすめ、かも」
史郎の代わりに答えたのは、ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)。
「といっても、影朧なんけど、ね」
徐々に近付いてくる『すいかぼちゃ』たちを見て、早紗はからりと笑った。
「はは、そりゃ素人さんにはおすすめできないようなメニューやわ」
「そういう、わけだから。史郎さん、ここは、わたしたちに任せて」
何度も頷く史郎を一瞥し、ミアが白鳥を召喚する。
「みんな、頑張って、ね?」
その言葉を受け、白い翼に「1」と刻印された白鳥たちは飛び立った。翼をはためかせ、嘴でつつき、すいかぼちゃたちを確かに消滅させてゆく。
「だ、大丈夫……なんですか?」
「うん、大丈夫」
隙あらば史郎を狙おうとするすいかぼちゃたちに、ミアは目を光らせている。盾ほどの強度を持つ傘で史郎を守り、時折白鳥に指示を出してと、忙しく立ち回る。
金色に変化して飛翔した個体も、空を飛べる白鳥ならば難なく追って撃破できるから頼もしい。
「ミアさんの白鳥さん、働き者やねえ。あ、また一体倒した。あ、こっちに向かって来るのがおる……けど、それも倒しとる!」
「みんな、頼りになる子達だから」
どこか得意気なミアの後ろには、地面に座り込んだままの史郎。早紗は史郎へと微笑みかけ、愛用の万年筆を取り出した。
「しかし、君も偉い人気やねぇ。もてる秘訣教えて欲しいもんやわ。って、それはまた今度カフェーで聞こうかな。今はまぁ、そのままちょっと下がっとき」
そう言って、すいかぼちゃたちに向かって踏み出す早紗。
「んで、外界ではハロウィンってのが在るみたいやけど君はそんな感じの奴?」
どんなにフレンドリーに話しかけたところで、答えはない。
「ま、どっちでも構わんけど。もしかしてハロウィン、サクラミラージュでも流行るんやろか。だとしたら――」
手にした万円筆を放り投げる。
「楽しみやね。ほな、一筆書きましょか、桜満開百花繚乱や」
万年筆は、空中で煌めくオーラとなった桜の花びらへと姿を変えた。それは早紗の周囲を取り巻くようにしてすいかぼちゃたちを切り裂く。
「わあ……」
史郎が口を開けてその光景を見遣るのも、当然だろう。
白鳥と桜の花弁が舞うサクラミラージュの夜は、ガス燈に照らされていっそ夢のようだ。次々と消えゆくすいかぼちゃたちすら、夢の片鱗に思える。
「あの……このお化けたちが全員消えたら、僕は家に帰れるんでしょうか……?」
史郎がおそるおそる口にした言葉を聞いて、ミアは静かに首を振った。
「――残念だけど、まだ、安心できない。きっと、これで終わりじゃないから……気をつけて。それに……」
一呼吸置いて、ミアは付け足す。
「お化けたちが、人を襲うのなら、倒すだけ」
藍色の瞳に、過去の光景が一瞬だけ浮かんだ。かつてミアを助けた猟兵のように、いまミアは史郎を助けられているだろうか。
しかし、今は迷うよりも確実に史郎を守れるように。そう思いながらミアは白鳥に指示を出し、出現した蜘蛛たちを蹴散らすのだった。
大成功
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ノイシュ・ユコスティア
武器はロングボウ。
暗視ゴーグルを装備。
史郎を探す。
彼が襲われていたら、敵との間に割って入り攻撃する。
「あ、はじめまして…だったね。」
軽く自己紹介。
「カボチャ?スイカ?
まあ、とにかく僕に任せて。」
ユーベルコードで流花を呼んで騎乗する。
史郎にも乗ってもらおう。
一番近い対象から1体ずつ確実に撃破していこう。
敵が飛行して突撃してきたら流花に避けてもらいつつ、隙を突いて射撃。
最悪の場合でも、史郎に攻撃を行かせない。
連結したカボチャの真ん中を狙ってみる。
「炎付与の矢で焼きカボチャ…
う~ん、どうだろう?」
敵達とは距離を取り、囲まれないように注意して戦うけれど、何かあれば史郎に教えてもらいたい。
『すいかぼちゃ』と自身の間に割って入った人影に、枝折・史郎はびくりとした。さらに飛来する巨大な隼を見て、きつく目を閉じて身構える。
しかしどれだけ待っても痛みも打撃も無いから、恐る恐る目を開いた。
「あ、はじめまして……だったね」
そう言って史郎へと笑いかけるのは、暗視ゴーグルを押し上げる少年。
ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は長弓を手に、自身が『流花』と呼ぶ隼の背へと史郎を誘った。
「僕はノイシュ・ユコスティア。影朧事件をたちどころに解決する、って言われてる『猟兵』――の、旅人だよ」
「て、丁寧にありがとうございます。僕は枝折・史郎っていいます。今は仕事を探していて……いや、そんなことより現在の状況ですよね。よくわからないんですが、影朧に襲われてて……って、見てのとおりですね」
困ったように笑う史郎は、ノイシュに手を引かれて流花の背に乗る。
「ええと、敵は……カボチャ? スイカ? まあ、とにかく僕に任せて」
ノイシュは弓を引き、最も近くにいる個体へと矢を放つ。射貫かれたすいかぼちゃは砕け散り、消えてゆく。その間、たった数秒。
いまいち何が起こったのか理解できない史郎は、ぱちくりしている。
まだすいかぼちゃは残っている。飛翔を開始した個体が迫るが、ノイシュは眉一つ動かさない。
「これは……どうかな?」
矢尻に灯る炎。と、史郎が認識するが早いか、矢は飛翔するすいかぼちゃ目がけて飛び去った。射貫かれながら燃え上がるすいかぼちゃは、力を失って落ちてゆく。
「うん、こっちの方が少しだけ効率的だな」
矢をつがえ、射る。その正確無比な動きが繰り返されるたびに次々と消えて行くすいかぼちゃたち。史郎の口から、感嘆の息が漏れる。
そうして燃えながら落ちて行くすいかぼちゃを見て、史郎は呟く。
「今ので最後、ですかね?」
「だと、思うけど……これで終わりとは思えないんだよね」
流花を着地させ、史郎と共に背から降りるノイシュ。
すいかぼちゃたちこそ消え失せたが、不穏な気配は消えぬどころか、いっそう強まっているように感じられる。それは元『猟師』としてのノイシュの勘だろうか。
大成功
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第3章 ボス戦
『桜火ノ少女』
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POW : ファイヤー・オン・クイーン
自身の身体部位ひとつを【、又は対象の身体部位ひとつを強力な爆弾】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD : 花散る爆弾
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【含む、生物・非生物を生きた爆弾】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
WIZ : バレッテーゼボム
【指定座標に見えない爆弾を設置、起爆する事】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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静寂はすぐに破られた。
「――どうして」
か細い、少女の声が聞こえる。
「どうして、死んでくれないの」
ガス燈とは異なる光が、すぐ近くで灯る。鬼火だ、と枝折・史郎が震える声で呟いた。
浮遊する炎はひとつ、二つと増えてゆき、やがてその中心に少女が現れた。いくつもの炎に照らされた少女の顔、その口元が歪む。
「私を殺した貴方が生きているのはおかしいと思わない? だってそうでしょう、私はデパアトで買い物をしていただけなのに。お父様への贈り物を探していただけなのに。ああ可哀想なお父様、私の命日がお父様の誕生日。ああ可哀想な私、お父様の誕生日が私の命日。うふ、うふふ、あは、あはは、あははははははははは!!」
唐突な笑い声は、同じく唐突に止む。少女は真顔になり、史郎を真っ直ぐに見つめた。
「ねえあなた。せっかくだから私、聞いておきたいわ。どうしてあの日、デパアトで爆弾テロなんてしたのかしら?」
かくん、と少女の首が不自然に傾いた。
「ち、違います、僕じゃありません! あなたが言っているのは、別の人で……その人は、もう逮捕されてるんです! 人違いなんです」
史郎の言葉を聞いて、少女は口元に手を当てる。驚いた、と言わんばかりにわざとらしく目を見開いて。
「ひと……違い? まあ、そうだったの……そうね、世の中には自分にそっくりの人が3人はいる、っていうものね」
そうしていいことを思いついた、というように両手を合わせる。
「だったら『そっくりの人』を全員殺して回れば、私の気持ちはとっても晴れるに違いないわ! だから最初はあなた、あなたを殺すわ。ねえ、お願い。死んで頂戴?」
もはや、彼女に何を言っても無駄だろう。
少女は徐々に距離を詰めてくる。先ほど戦った影朧と同じように、彼女も隙あらば史郎を狙うに違いない。
身構える猟兵たちに、史郎が呼びかける。
「あの! ……もし、できるのなら」
一呼吸、史郎は頭を下げた。
「彼女を『転生』させてあげてください」
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●補足事項
この影朧は、撃破後に桜の精の癒やしを受けて「転生」することが可能です。
●攻撃方法補足
POW:ファイヤー・オン・クイーン
指や髪の毛を爆弾にします。
SPD:花散る爆弾
集団戦のすいかぼちゃの残骸を利用します。
WIZ:バレッテーゼボム
補足なし。
赭嶺・澪(サポート)
基本部分はプロフィール参照
戦闘行動する時は『アサルトブラスター』を使用。モードはその状況に応じて切替。
近くにいる敵を暗殺、至近距離での攻撃の際は『ナイフエッジ』
遠くにいる敵を暗殺、攻撃する際は『スナイプソルジャー』
潜入・隠密工作する際は『ステルスソルジャー』
探索・攪乱する際は『ドッペルゲンガー』
やむを得ない場合は『SOM Mk-25』での非殺傷弾によるマヒ・気絶行動。
後は状況に応じて臨機応変。
専門は主に潜入・捜査・破壊工作。
他の猟兵に迷惑をかける行為は無し。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。(目的である敵に対してはその限りではないが、常識の範囲内で)
アドリブ歓迎。
「事情があるのはわかったけど」
赭嶺・澪(バレットレイヴン・f03071)はまるで怯む様子すら見せず、桜火ノ少女へ向かって駆け出した。
「あたしが『はいそうですか』ってアンタに背中見せて帰る、なんて思ってないよね?」
口角を上げて握ったナイフは、ただの娘には似合わぬほどの重厚さだ。けれど、澪の扱いは甚く慣れたものに見える。
潜入、捜査、破壊工作を専門とする澪であるが、それ以外を不得手としているわけではない。臨機応変に成される判断は、いくつもの戦場を渡り歩いてきたからこそだろう。
「――斬る!」
声とともに放たれた斬撃は、桜火ノ少女が咄嗟に盾としようとした鬼火ごと切断した。少女の掌には、深い傷が刻まれる。
血が滴るような気配がないのは、既に彼女がこの世の者では無いからだろうか。それでも痛みは感じるようで、桜火ノ少女の顔は苦しそうに歪められる。
「くっ、よくも……!」
桜火ノ少女は肩を震わせ、自らの髪を数本、抜き取る。掌に載せて息を吹きかければ、それは火花纏う爆弾と変化した。
「へえ、そう来るんだ」
どこか楽しそうに、澪はSOM Mk-25を取り出す。引き金を何度か絞っても、ハンドガン自体から発せられる音はほとんど無い。
しかし、その音をも引き受けたかのような爆発が起きた。桜火ノ少女の、至近距離で。
自身の放った爆弾に包まれた少女の姿は、上昇する爆煙で未だ見えない。
成功
🔵🔵🔴
ノイシュ・ユコスティア
引き続きロングボウ、暗視ゴーグルを装備。
「史郎は何も悪くないんだよね。
なのに殺されるのは理不尽じゃないか。」
カフェーで聞いた話が頭をよぎるけれど…
彼はその事件と関わりがないと信じたい。
素早く弓を構え、先制攻撃でマヒ攻撃を試す。
史郎には僕の後ろにいてもらう。
敵が彼を狙うなら庇い、攻撃を行かせない。
多少の被ダメージなら大丈夫。
一応猟兵だからね。
敵とはなるべく距離を取り、ユーベルコードを利用して戦う。
狙うなら胴体か…。
爆弾が放たれたら、それを射落とすつもりで射撃。
足元にすいかぼちゃの残骸がないか注意しよう。
敵が消耗してきた頃合いでダッシュで近づき、急所辺りをダガーで攻撃する。
転生したら幸せにね…。
桜火ノ少女の言葉を最後まで聞いたノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)の頭に、カフェーで聞いた話がよぎった。
そう、『デパアトで起きた爆弾テロ』のことだ。同じくカフェーで聞いたことや、枝折・史郎の態度から、彼はその事件に関わりがないはずだ。そう信じたいノイシュは、静かにロングボウを構え、弓引いた。
「史郎は何も悪くないんだよね。なのに殺されるのは理不尽じゃないか」
暗視ゴーグルごしに見える桜火ノ少女は、浮遊する鬼火がいたく明るい。夜の気配を切り裂きながら進んだ矢は、少女の肩へと突き立った。
「……あら、ふしぎ。体が動かないわ。でも、動けなくてもあなたたちをどうにかする方法ならいくらでもあるのよ」
少女が笑うから、史郎は不安そうにノイシュを見る。
「あ、あの、」
「大丈夫、心配しないで。一応、僕も猟兵だからね。多少の攻撃で倒れるほどやわじゃないんよ」
史郎へと笑みを向け、ノイシュは史郎の前に立ち続ける。次の手は、と思案して紡ぐことにした言葉は、風の精霊の加護を喚ぶものだ。
「矢よ、雨となり敵を貫け!」
複数の矢は、少女の体のある一点を目指す。桜火ノ少女はやっと体が動き始めたらしいが、その動きはノイシュの放った矢の速度に比べれば静止しているのと大差ない。
矢はすべて、桜火ノ少女の胴へと突き刺さる。
「まあ、痛い。痛い、痛い、痛い、痛い……ねえ、私、もう痛いのはいやなのよ?」
悲鳴にも似た声を上げ、少女はすいかぼちゃの残骸をひとかけら浮遊させた。
果実の皮に見えるそれは、黄色と赤の光で点滅しながらノイシュへと近付いてくる。
ノイシュは素早く弓を構え、矢をつがえた。
(「足元に残骸は……ないね、このまま射落とさせてもらうよ」)
わずかな間足元に視線を落とした後は、点滅する浮遊物に狙いを定める。ふわふわふらふらしているようだが、それなりにパターンがあるようだ。
「そこ、だね」
弦がしなり、矢が飛ぶ。残骸を砕き、少女の足元に突き刺さる。
ノイシュは一転してダガーを手に、少女に向かって駆け出した。
突然のことに、桜火ノ少女は動けない。ノイシュはそのまま、少女の胸元にダガーを突き立てた。
(「もしも君が転生できたなら……どうか、幸せにね……」)
引き抜き、距離を取るノイシュ。
苦痛に満ちた顔でよろめく少女には、驚くべきことにまだ戦う力が残っているらしい。
それでも弱らせることには成功していると、ノイシュの勘と経験が告げていた。
成功
🔵🔵🔴
ミア・ミュラー
あの人は、爆弾テロの被害者、なんだね。なら、救ってあげたい、な。
まずは、爆弾を何とかしないと、ね。【ドレスアップ・プリンセス】で空を飛んで戦う、よ。爆弾は広範囲な攻撃だから、色んな方向に逃げられた方が、いい。風の属性を付与したプリンセスハートと傘で爆発を防ぎながら、わたしの想いを伝えてみる、ね。あの人を攻撃するときは、プリンセスハートに水を付与した「属性攻撃」に、する。
史郎さんは、あなたを救ってほしい、って。影朧になってもお父さんを気にかけてるのは、あなたが優しいからだと、思う。だから、あなたには大切なものを奪うんじゃなくて……守る人に、なってほしい。奪うのも奪われるのも、嫌なこと、だから。
「わたしに『転生』させる力はない、けど……桜の精が駆けつけてくれると、いい、ね」
ミア・ミュラー(アリスの恩返し・f20357)の言葉に、枝折・史郎は力強くうなずいた。
たとえ自身の手で少女を転生させることはできないとしても、彼女の体力を少しでも削ることができれば、後続の猟兵の一助となるのは確かだ。ミアは史郎の横を通り過ぎ、桜火ノ少女と相対する。
「あなたは、爆弾テロの被害者、なんだね」
「ええ、そうよ。ふふふ、私、爆弾テロで死んじゃったの」
ちょっとした失敗を恥ずかしがるように笑う少女。その後は、狂ったように笑い声を上げ続ける。
「……なら、救ってあげたい、な」
「――なにか言ったかしら?」
その問いにミアは答えない。直後、ミアの衣装が華やかなドレスへと変じた。
「まあ、素敵。けれど、その恰好は戦うのには向いていないと思うの、私」
「そうでもない、よ」
数歩踏み出すミアに向けて、少女は人差し指を突き出した。
「迂闊に歩かない方がいいわ。見えない爆弾を設置したの。その素敵なドレスが台無しになるわよ」
「心配してくれて、ありがとう。大丈夫、だよ。――ねえ。あなた優しい、ね」
予想外の言葉に、少女はびくりとして目を見開いた。
「あ、甘いわ! 空中にだって爆弾は設置できるもの!」
教えてくれて、ありがとう。なんて言ったら、また彼女が動揺するのは見えているから、ミアは無言で飛行を始めた。続いてプリンセスハートに風の力を与え、片手で魔法の傘を開く。
目指すは、少女の懐。全方位に気を配りながら、爆風を逸らし、あるいは防ぐ。先行していた猟兵のおかげで攻撃の威力は抑えられているとはいえ、喰らえばただではすまないだろう。
視認できない爆弾の中をほぼ無傷でくぐりぬけたミアは、桜火ノ少女の正面に着地した。
プリンセスハートに水の属性を変えて攻撃を発動すれば、少女の周囲で浮遊する鬼火のいくつかが消え、彼女自身の動きも目に見えて鈍る。
さらに一歩踏み出したミアを警戒するように、少女は痛みに耐えながら数歩分、下がった。
「史郎さんは、あなたを救ってほしい、って」
「……え?」
「あなたが影朧になってもお父さんを気にかけてるのは、やっぱり、あなたが優しいからだと、思う。だから、あなたには大切なものを奪うんじゃなくて……」
少女は、ミアの言葉を待っている。だからミアはうなずき、続ける。
「守る人に、なってほしい。……奪うのも奪われるのも、嫌なこと、だから」
ほんの少し前まで狂気を滲ませていたはずの少女の瞳は、今にも泣き出しそうなほどに潤んでいた。
成功
🔵🔵🔴
ジェイソン・スカイフォール(サポート)
おもに衛生小隊を使ってメイン参加者がメインの行動に集中できるよう、雑事を引き受けます。本人および衛生小隊は「兵士ができそうなこと」はだいたい行えます。
▼行動例
「自分たちが援護をします。総員戦闘配置!」
敵の数が多い/敵が優勢のとき、衛生小隊を率いて登場。援護射撃を行い、猟兵が行動するチャンスを生み出すほか、敵の足止めや味方の撤退支援などを行う。
「避難は任せてください。さあ、みなさんはこちらへ!」
現場に一般人がいるとき、避難誘導や救助を行う。必要に応じて炊き出しなども可。
「総員、作業にかかれ!」
衛生小隊を指揮し、人手が必要な単純作業を引き受ける(運搬や土木作業など)。
平良・荒野(サポート)
羅刹のクレリック × フォースナイト
年齢 16歳 男 (6月13日生まれ)
外見 174.4cm 漆黒の瞳 黒髪 白い肌
特徴 散歩好き 肌を露出しない 短髪 大切に育てられた 求道者
口調 未熟(僕、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
あわてた時は 未達(俺、あなた、呼び捨て、か、だろ、かよ、~か?)
似非修験者に大事に育てられた山育ちの羅刹です。
似非修験者の息子なのでそれらしい格好をしていますが、似非なので、仏教・神道用語は使いません。
武器は錫杖です。
基本的に生命のあるすべてのものの善性を信じており、可能であるなら対話での解決を試みます。
無理ならPOWが唸ります。
桜火ノ少女の周囲で、鬼火は未だ燃えている。
無念が晴れることはないのだと言うように、この思いはもう止められないのだというように。
「その顔を見るだけで思うの。私が死ななければいけなかった理由はどこにもなかったはずなのに。それを、あなたと同じ顔をした男が奪った。爆弾テロという酷い方法で。私を殺した本人に何らかの罰が下っても、私は死んだまま、影朧のまま――どうしようもないの。それって絶対、おかしいわ」
隙あらば枝折・史郎を見ては歯噛みする、桜火ノ少女。
ジェイソン・スカイフォール(界境なきメディック・f05228)は、彼女の視線から史郎を隠すように立ちはだかる。
「史郎さんは念のためもう少し下がっていてもらえますか? 流れ弾の危険もありますので」
「はい、気にしていただいてありがとうございます。皆さんもどうか気をつけてくださいね」
「ご安心ください、自分たちは猟兵であります! ――荒野さん、有事の際の援護は任せてください!」
ジェイソンが見遣る先は、自身より数歩先で少女と相対する平良・荒野(羅刹の修験者・f09467)。
彼らに背を向けたままゆっくりとうなずいた荒野は、おもむろに口を開いた。
「名も知らない人。あなたは、とても辛かったのですね。史郎さんが、あなたを殺した張本人に『似ているだけの人』であっても――怒りをぶつけなければ気が済まないほどに」
少女は、怒りの形相で荒野を睨む。荒野は怯まず、続ける。
「そう、よく解っていただけたみたいね。それならどいてくれるのよね? 私にあの人を殺させてくれるのよね?」
なるほど、と荒野は即座に判断した。こういう手合いはいくら諭したところで結局は危害を加えてしまうに違いない。ならば、と錫杖を振り回しながら間合いを計る。
「いえ、どきません。それとこれとは、話が全然違いますから」
「そう。なら、あなたもついでに死んでちょうだい?」
少女は自身の髪を数本抜き取り、息を吹きかける。ふわり空中に漂った黒糸は、すぐさま火花散る爆弾へと変化した。
荒野は錫杖を回転させ、爆弾を弾き飛ばそうとする。錫杖が爆弾に触れると同時に起きた爆発は荒野の肌を衣服越しに灼いた。
「荒野さん、これを!」
すかさず、ジェイソンの癒しが飛ぶ。聖なる光は瞬く間に荒野の傷を消し去ってゆく。
「ありがとうございます、ジェイソンさん」
「なんて余計な真似を……! どうして大人しく死んでくれないの
……!?」
叫ぶようにして、見えぬ爆弾を投擲する少女。
直後、オーラの防備を固めた荒野が跳ぶ――と同時に、ジェイソンの喚んだ衛生小隊が援護射撃を開始した。少女が爆弾を投げたのは、少女と猟兵の間。ならばその間に弾丸を撃ち込めば、牽制と爆弾の視認に一役買ってくれることだろう。
「こちらは任せてください、荒野さん!」
「助かります。」
銃弾の雨を一気に飛び越えた荒野は、少女の背後へと着地する。そして振り返る間も与えず、荒野は錫杖の一撃を少女の頭上から叩き込んだ。
仰け反る少女の、短い悲鳴が聞こえる。
一度だけきつく瞬きをして、荒野は錫杖を握り直した。
成功
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日隠・オク
あなたのやっていることはあなたを殺した爆弾テロの人と何も変わりありません
こんなのあなたの為にならない
今のあなたは楽しんでるようにも見えますがどうなんですか?
悲しいんですか?
楽しそうにも見えます
私達が勝ったらこんな虚しいことはもうやめてください
また、ちがう、新しい時を生きてください
シーブズギャンビットで斬り込みます
桜火ノ少女を見据え、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)は語りかける。
「気付いていますか?」
問いかけながらも回答を拒否するかのようなオクの語調に、少女は眉をひそめた。
「あなたのやっていることは、あなたを殺した爆弾テロの人と何も変わりありません」
佇むオクは無表情に続ける。
何の罪もない人の人生を奪うという点において、少女とテロ犯は同等だ。
「今のあなたは楽しんでるようにも見えますが、実際はどうなんですか?」
オクの言う通り、少女の顔には奇妙な笑みが浮かべられている。楽しそうな、愉快そうな。あるいは、何か別の感情を隠しているかのような。
「――楽しいんですか? 悲しいんですか?」
返答を待つ沈黙の間、少女の顔から笑みが消えた。
「楽しい、悲しい? ……そうね、私にはわからないわ。もう、わからない。今の思いが本当に私のものなのか、影朧になってしまったからこんな思いを抱いてしまったのか」
「……そうですか。それなら、お終いにしましょう。そして、私達が勝ったらこんな虚しいことはもうやめてください」
「それもいいわね。それじゃ、勝負といきましょう」
少女が、すいかぼちゃの残骸を浮かび上がらせる。
「わかりました……行きます」
加速の果てで、オクのダガーが銀の直線を描く。無駄も隙もない動きを、少女は視認できない。爆弾と化したはずのすいかぼちゃは、何も出来ずに落ちて砕けた。
そうして、少女の周囲を浮遊していた鬼火がひとつ、またひとつと消えてゆく。少女の肉体、その端が徐々に桜の花弁へと変じ始める。
「いつか――ちがう、新しい時を生きてください」
ダガーを収めたオクは、消えゆく少女をじっと見つめた。笑顔ではなく、どこか寂しそうな顔をしている少女を。
史郎はオクの言葉にうなずいて少女を真っ直ぐに見る。
「そう、ですね……あっ、あの! あなたがいつか、どこかで『転生』したのなら……」
少し俯いた史郎は、再び少女を直視した。少しだけ恥ずかしそうに微笑みながら。
「カフェーで珈琲でも飲みながら、お話でもしませんか」
その言葉に、少女は少しだけ驚いたあと――年相応の、可愛らしい顔で笑んだ。
少女の全てが桜の花弁となって消えゆくのを、オクは史郎と共に眺めていた。
やがて最後の花弁がひらり流れてゆくと、それは幻朧桜の花弁に混じってどこかへと消えて行った。
大成功
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