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空に燃ゆ

#サクラミラージュ


●囚われの令嬢
 その日、登良環財閥の令嬢、登良環・怜乃は飛行船の中の客室に居た。延々と続く雲海を眺めるのにも飽き、何か軽食でも頼もうかと思った矢先。客室の扉を開けて一人の青年将校が入ってきた。
「あの……どちら様でしょうか?」
 見知らぬ男に困惑する怜乃へと微かに笑いかけ、青年は怜乃へと手を延ばす。
「今は説明する時間も惜しい。失礼する。」
 その言葉に怜乃が一歩、後退った時。飛行船が大きく揺れた。

●グリモアベースにて
「皆さん、サクラミラージュでオブリビオン……影朧による事件が発生します。」
 聖典を閉じ、アルトリンデ・エーデルシュタインは足を止めた猟兵達へ説明を続ける。
「場所はシベリアから帝都へ向かう飛行船の中。事件が発生する時は海の上を飛んでいる状況です。」
 その飛行船に乗っていた登良環財閥の令嬢が誘拐され、さらに飛行船が沈められるというのだ。
「皆さんには令嬢の救出と共に、飛行船に乗り合わせている一般の方々の避難誘導をお願いしたいのです。」
 飛行船は動力部で爆発が起こったらしく、このままでは全員が避難する時間はない。そこで速やかに避難をさせる事と、飛行船が落ちるまでの時間を稼がなければならない。影朧との戦闘をしてからでは避難が間に合わなくなる為、先に避難をする事となる。

「飛行船は上流階級向けで、客室は全て個室になっています。ですので幸いにも乗客の人数はそれほど多くはありません。」
 飛行船からの避難には避難艇と呼ばれる小型の折り畳み式ボートを使う。海面まで降りれるだけの能力を持つこの避難艇は乗客乗員を全員乗せられる数が在る。
「ですが、ある程度避難を進めると弱い影朧が数体、邪魔をしに現れます。」
 その影朧『ヒヨリミ』は武器を持つ者を優先的に襲う。その特性をうまく利用すれば戦闘となっても円滑に避難を進められるだろう。

「避難が完了し、ヒヨリミを倒したら令嬢を誘拐した影朧『獄卒将校』を倒してください。獄卒将校は令嬢と共に、飛行船の後方にある大広間に居ます。」
 その頃には飛行船の状況も悪化している為、あまり悠長には出来ないだろう。言葉で輪廻を促す事も出来るかもしれないが、難しいと思われる。
「ですので、通常のオブリビオン同様に倒してかまわないと思います。令嬢の命を第一にお願いします。」
 獄卒将校を倒した後は、近くに避難艇が一つ残っているのでそれで脱出すればいいだろう。或いは猟兵が手段を用意しても構わない。

「難しい状況ですが、皆さんならば大丈夫だと思います。どうか、よろしくお願いします。」
 そう言葉を括り、アルトリンデは猟兵たちを送り出すのだった。


こげとら
 お久しぶりです、こげとらです。
 今回はサクラミラージュで飛行船で起こった影朧の誘拐を阻止するお話です。
 飛行船は大きな気嚢の下に小型の豪華客船をくっつけたようなイメージです。客室の他、食堂やラウンジなどがあります。爆発があってもしばらくは持ちこたえる事ができます。
 転送先は飛行船内の任意の場所となります。

 第1章開始時点で動力部の爆発は起こっている為、飛行船は最終的には沈む事になりますが、猟兵の行動によっては落下するまでの時間を伸ばす事は可能です。後方にある動力部が爆発、炎上している為、前方の脱出路から避難艇のある所まで乗員が誘導しています。

 避難が進み、このままいけば全員助かりそう、という所で第2章になります。
 残っている乗客は僅か、後は乗務員の避難を進めるべく影朧『ヒヨリミ』を相手にしていただきます。猟兵が上手くヒヨリミを引き寄せられれば避難は問題なく進みます。数はそんなに多くはありません。

 ヒヨリミを倒し、乗員の避難も終われば第3章となります。
 いまだ攫われたままの令嬢を、影朧『獄卒将校』の手から救い出してください。
 戦場となるのは飛行船後方の大広間。広さは十分にありますが、爆発した動力部に近いため火の手が回っています。影朧は令嬢を人質に取ったりはしませんが、令嬢を放置するか助けに回るかはお任せします。
 最後の脱出手段を複数の方が用意された場合は、こげとらの判断で起用させていただきます。

 それでは、よろしくお願いします!
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第1章 冒険 『飛行船緊急事態』

POW   :    万一に備えて乗客たちを一箇所に集中させるべく働く

SPD   :    操舵手に代わり舵取りを行い、航路の安全を確保する

WIZ   :    駆動系統に異常が生じていないかを確かめ、必要なら修理する

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東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷転送先
食堂

▷行動
皆さんご安心ください!帝都軍と超弩級戦力がこの船の救助を開始しました、誘導に従い避難を!

まずは指揮官として【団体行動】の経験を活かし避難誘導を行う、一般人には安心を与えるように、係員達には統制を求めるように接して迅速な避難行動を実現。

帝都軍の東雲少佐だ、この場の指揮は任せてもらおう。

物が多く混乱しがちな食堂の避難指揮を担当し、邪魔な椅子やテーブルは係員を動員し速やかに排除して道を作らせる事で避難の妨げにならぬよう留意。
避難中の事故を防ぎ死傷者ゼロを目指すぞ。



 飛行船で起こった爆発。その衝撃は乗客の心を揺するに十分な物だった。避難の誘導を進める乗務員に詰め寄る者も居る。
「おい! 大丈夫なのかね!?」
「大丈夫です、落ち着いて避難艇へ。」
 乗務員たちは落ち着いた声音で不安がる客をなだめ、誘導を進めている。が、内心このままでは間に合わないかもしれないという思いが焦りと共に付きまとっていた。
 東雲・一朗が到着した時、船内はそのような状況だった。一郎が来た食堂の中だけでも乗務員も客の対応に時間を取られえて避難は遅々として進んでいないのが見てとれる。円滑な避難誘導の為にも、まずは客の不安を軽くする方が先か。

「皆さんご安心ください! 帝都軍と超弩級戦力がこの船の救助を開始しました、誘導に従い避難を!」

 声を張る一郎に視線が集まる。彼の着ている帝都軍の軍服、帯刀している二振りに刀、そして付けている少佐の階級章に裏付けされた一郎の言葉に、その場の誰もが息をのみ、そしてその意味を理解する。
「帝都軍! 助けが来たのか……!」
「それに超弩級戦力って言えば、あの噂の……!」
 助かるかもしれない。皆にそう思わせ落ち着かせた一郎は誘導をしていた乗務員に声をかける。

「帝都軍の東雲少佐だ、この場の指揮は任せてもらおう。」
「わ、わかりました。お願いします!」

 一郎の声に、我に返った乗務員が返す。一郎は客を纏め誘導する者とテーブルなどを退けて避難経路を確保する者に分け、指示を出した。食堂はそれなりの広さがあるが、テーブルや椅子が避難するためには邪魔となる。大人数で移動するならば邪魔にならないように移動させなければならない。集団を動かす事に長けた一郎の指示の下、手際よく作業が進められる。だが、その時ぐらりと船体が傾いだ。

「慌てるな! まだ落ちはしない!」

 上がる悲鳴に一郎は力強い言葉をかけてパニックになるのを防ぐ。だが猶予はあまりない。さらに間の悪い事に先ほどの揺れで棚が倒れていた。
「しょ、少佐殿、扉が棚で……!」
 狼狽する乗務員。だが一郎はその肩を叩き、言った。

「こういう時こそ力を合わせて乗り越えるものだ。」

 数人の乗務員と共に一郎が倒れた棚に力をかける。闘気を纏った【スクワッド・パレヱド】が棚を一気に押し退けた。一郎は扉を開け、先の安全を目視で確認してから振り返る。

「さあ! 誘導に従って慌てずに避難を!」

 避難中の事故を防ぎ死傷者ゼロを目指す。その思いを胸に一郎は避難誘導を続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エイル・ヒルドル
恋人の【玲】と参加

火災そのものは玲に任せてアタシは避難誘導を担当するわ
「玲、こっちは任せてアンタはアンタにしか出来ない事をしてきなさいっ」

避難誘導ではまず皆を落ち着かせる事から始めるわ
「皆!猟兵が助けに来たからもう大丈夫よっ」
【優しさ】を込めて【慰め】の言葉をかけて皆を落ち着かせて、アタシの言葉が届くようになってから避難誘導
「こっちよ、焦らず押さず冷静にね!必ず助かるから!」
【残像】が残るほど素早く迅速にあちこち動きながら避難を進める

「玲は上手くやれてるみたいね…皆!焦らないで!まだ時間はあるから!」
玲の飛ばした鳥から情報を得たら、それを元に避難する人達を安心させて避難をスムーズにするわ。


雨音・玲
恋人の「エイル」と参加

見取り図の確認し大まかの配置を確認後
一番ヤバいのは気嚢部分に燃え移り
そのまま海へ墜落すること判断し
避難誘導は彼女に任せ

俺は転送先を指定して「動力室」へ
一分一秒が勿体ないので迅速に行動します

うだうだ悩んでるヒマは無いか
今、俺がやれる最善と思えることやるしかねぇな

燃え盛る動力室の中
煙を吸わない様に注意しながら
炎の熱は無いよりマシの「火炎耐性」と「激痛耐性」で我慢をしつつ
空中に描いた召喚陣から無数の烏たちを召喚
「焔ノ空」の切断能力で
床を切裂いて炎上部分と動力部の飛行船からの切り離しを試みます。
上手く切り離せたら
そのまま1羽の烏に指示を出し、外回りでエイルに報告に行かせます。



 飛行船へと転移する前、雨音・玲は飛行船の見取り図を広げていた。

「一番ヤバいのは気嚢部分に燃え移り、 そのまま海へ墜落することだな。」

 墜落までに避難を完了する事も大事だが、避難する時間を稼ぐ事無くしては成し得ない。その玲をエイル・ヒルドルの言葉が後押しした。

「玲、こっちは任せてアンタはアンタにしか出来ない事をしてきなさいっ」
「ああ、避難誘導は任せる。」

 恋人の言葉に玲は頷く。行く先を、やるべき事を決め、二人は飛行船に降り立った。
 玲が転移した先は飛行船の動力室。原因の判明していない爆発があった場所だ。吹き飛んだ機械に燃え広がる炎、このまま火の手が広がれば気嚢内の浮力ガスに引火しかねない。もしそうなれば、避難する間もなく飛行船は即座に墜落してしまうだろう。

「うだうだ悩んでるヒマは無いか。」

 まだ炎は動力室から広がっていない。すぐに手を打てば火災が広がるのは何とかなるかもしれない。

「今、俺がやれる最善と思えることやるしかねぇな。」

 もはや一秒たりとも無駄には出来ない。煙を吸い込まないように気を付け、玲はすぐさま動いた。
 同刻。エイルは客室の集まる区画に来ていた。そこは不安からパニック寸前になっている乗客たちと何とか誘導しようとする乗務員の姿があった。
「また爆発があっただろう!?」
「すぐに落ちる事はありません! 落ち着いて避難を!」
 このままでは誘導もロクに出来そうにない。まずは皆を落ち着かせないと、とエイルは声を張った。

「皆! 猟兵が助けに来たからもう大丈夫よっ」

 一般市民とて猟兵の事はウワサ程度でも聞いた事のある者がほとんどだ。まして上流階級の者となれば、そのような話に詳しい者も多い。
「助けが来たのか!?」
「何とかしてくれ!」
 ともすればエイルに縋りつかんばかりの人々を優しく慰撫し、その言葉に不安が和らげば皆、話を聞く程度には落ち着いてきた。

「こっちよ、焦らず押さず冷静にね! 必ず助かるから!」

 エイルは避難誘導をしながらも声をかけて励ますのを欠かさない。不安になりやすい状況だからこそ、その声は人々に勇気を与えていた。
 一方、動力室の様子を確認した玲は火災部分を船から切り離す事にした。ここまで燃え広がっていると手持ちの手段での消火は難しい。時間を考えると確実に延焼を抑える方法をとるしかない。

「天高く紅く染めよ我が友よ……」

 既に動力室内の温度は耐えがたい程になっている。焼けるような空気に息をするたび肺腑が痛む。それでも玲は熱に、痛みに耐え空中に召喚陣を描いた。【焔ノ空(ホムラノソラ)】が召喚した烏の大群が動力室に散る。そして、炎を纏った烏たちが一斉に床を、燃える部分を切り裂いた。底が抜け、落下する動力部の一部が海面に落ちる前に爆発を起こす。

「ふう、何とかなったか。」

 無事に炎上する箇所を切り離す事に成功した玲は息をついた。上手くいったことをエイルに知らせる為、一羽の烏を外に飛ばす。しかし爆発の原因は何だったのだろうか。それより今は人命が先かと頭を振った玲の視界の端に、赤い布が見えた気がした。
 エイルは【超集中(フルブースト)】をして、残像を残す勢いであちこちを駆け回り避難誘導をしていた。猟兵が助けに来た事が徐々に広がり、エイルだけでなく乗務員の指示による避難も進んでいる。そのエイルの元に、窓から一羽の烏が舞い降りた。

「玲は上手くやれてるみたいね……皆! 焦らないで! まだ時間はあるから!」

 火災の危険がなくなれば気嚢が燃えてしまう事も無い。ならば落ち着いて誘導すれば間に合うだろう。そんなエイルの様子に人々は慌てる事無く誘導に従うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
避難は順調そうですね。
しかし、客室の中までは様子を見れていません。爆発の揺れで扉が開かなくなる、物の下敷きになる等なんらかの避難できない状態になり、取り残されている人がいる可能性はあります。

【冬の尖兵】を6を7体に5を3体で10体召喚。私と尖兵で手分けをしてまだ個室内に逃げ遅れている人がいないかどうか調査します。
この状況で個室を出る時に鍵を閉めるはずもなし、特に鍵がかかっている部屋があれば銃で鍵を壊してでも調べましょう。

逃げ遅れている人を発見したら、力仕事は尖兵任せになりますが救助を。怪我などで避難が捗らない様子であれば尖兵に背負わせて避難の補助もおこないましょうか。



 揺れる飛行船の中、猟兵と乗務員によって避難誘導は進んでいた。

「避難は順調そうですね。」

 その様子にセルマ・エンフィールドは誘導に手を貸さずとも大丈夫だろうと判断する。

「しかし、客室の中までは様子を見れていません。」

 乗務員の数は限られている。声をかけ、確認もしているようだがすべての部屋を見れる訳もない。爆発の揺れで扉が開かなくなる、物の下敷きになる等なんらかの避難できない状態になり、取り残されている人がいる可能性はあるとセルマは客室を確認すべく駆けだした。

「一人では時間がかかりますが……」

 セルマの周囲に氷の兵士が現れる。【冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)】で召喚された兵士の胴体の刻印が召喚が続くたびに増え、6と刻印された兵士が7体、5と刻印された兵士が3体の計10体となった。氷の兵士を散開させ、セルマも取り残された者が居ないか捜索を始める。通路も爆発の衝撃などで物が散乱している。邪魔となりそうな物は氷の兵士が破壊して退かし、避難経路を手早く確保しながら探す事しばし。

「この扉、開きませんね。」

 この状況で個室を出る時に鍵を閉めるはずも無し。セルマは迷う事無く鍵を銃で壊して扉を押す。が、向こうに何かあるのか扉が開かない。

「氷の尖兵、扉を壊しなさい。」

 破壊した扉の向こうには棚が倒れて塞いでいた。それを氷の尖兵が退かし、セルマは部屋を確認する。その先には、衝撃で倒れた時に頭でも打ったのか気を失っている男と度重なる揺れで怯えている少女。

「もう大丈夫ですよ。」

 セルマは声をかけて安心させ、男を尖兵に背負わせる。そして避難誘導をしている乗務員の元まで送り届けた。その間も確認を続けていた氷の尖兵が閉じ込められていたり、足を物に挟まれて動けなかったりしていた乗客を助け出し、誘導する。セルマの働きによって、逃げ遅れた乗客も避難する事ができたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
飛行船…こんな状況じゃなければゆっくりと調べて回りたかった所だけど…残念ね
またそんな機会を得る為にも、今は仕事ね

少し遅れてきたせいで技術者としての仕事は大部分終わってるじゃないの
爆発の原因は排除済み、避難も続けているのなら…滞空時間を増やしましょうか
『我が元に響くは咆哮』!私にしては力技だけど…外部から持ち上げて飛ぶ事で少しでも時間を稼ぐわよ
私は私で操縦室へ、『咆哮』を経由して外部の状態を【情報収集】
できれば私に【操縦】を変わってもらい、『咆哮』と連携して少しでも【時間稼ぎ】よ

…今回の兵器はあのスチームウルフ、それを正式に私の兵器とした物よ
その力、存分に見せつけなさい!

※アドリブ・絡み歓迎



「飛行船……こんな状況じゃなければゆっくりと調べて回りたかった所だけど……残念ね。」

 呟き、エメラ・アーヴェスピアは飛行船の中を眺める。時折、軋むような音が聞こえるのは船体に負荷が掛かっている為か。

「またそんな機会を得る為にも、今は仕事ね。」

 ざっと見て回っただけでも時間があまりない事は明白だ。エメラは飛行船の状況、猟兵により手が回っている所、まだ足りない所を洗い出してゆく。

「少し遅れてきたせいで技術者としての仕事は大部分終わってるじゃないの。」

 爆発の原因は排除済み、避難も続けている。ならばあとは。

「滞空時間を増やしましょうか。私にしては力技だけど……」

 魔導蒸気操機兵がエメラの傍らに召喚される。【我が元に響くは咆哮(トゥランライオット)】により現れた魔導蒸気操機兵が魔導蒸気製のパワードスーツと重火器を装着した。

「……仕上がりは上々ね。さぁ、その力、存分に見せつけなさい!」

 以前はその都度組み立てていたスチームウルフと名付けた魔導蒸気兵器。それを正式に、エメラの兵器とした物だ。外部へと続く乗降口から魔導蒸気操機兵を空へと送り出し、エメラは船内へ引き返した。向かう場所は飛行船の操縦室。途中障害となる物も無く、エメラは辿り着いた扉を開ける。中では操縦士が何とか高度を保とうと悪戦苦闘していた。

「何だね、キミは!?」
「猟兵よ。できれば私に操縦、代わってもらえる?」

 そのエメラの言葉に操縦士は何か打開する手段があるのだろうと席を空ける。操縦を代わったエメラには外へ出した魔導蒸気操機兵からの情報が流れてきている。その魔導蒸気操機兵は蒸気スラスターで飛び、飛行船を下から支えていた。外部からの情報と合わせ計器の不具合がないかを確認し、エメラは細かく調整を加えてゆく。

「進路上に嵐も無し。浮力がこのまま保てれば、あとはこれで暫くもつわね。」

 飛行翼の角度を魔導蒸気操機兵に力ずくで調整させて飛行船全体のバランスを取り、エメラは一息ついた。気嚢に問題がなければこのまま暫くは墜落はするまい。操縦士を含め、乗務員の避難を促そうとエメラは振り返る。エメラの稼いだ時間があれば、乗務員も含めて全員が避難できるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ヒヨリミ』

POW   :    ヒヨリミ台風
予め【二本の刀を掲げて空中でくるくると回転する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ヒヨリミボディ
自身の肉体を【刃のように触れるものを切り裂く布】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    無縁火
レベル×1個の【血のように赤い色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
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 青年将校が、一人の少女の腕を掴み通路を進んでいた。
「猟兵……思った以上に手早いな。」
 他の乗客を見捨てはすまいと踏み、その間に令嬢を連れて脱出するはずだった。だが。
「放して、放してください……!」
「今は問答している時間はない。大人しく、一緒に来るんだ。」
 怜乃が大人しくするはずもなく、未だ隠した避難艇の場所まで着いていない。このままでは猟兵に見つかるのも時間の問題だ。
「かくなる上は……」

 飛行船の避難は順調に進んでいた。
「確認、終わりました! 逃げ遅れた方も居ません!」
「よし、お客様方を避難艇に誘導し終わったら、お前たちも行くんだ。」
 乗客の乗った避難艇が次々に外へと滑り出してゆく。残る乗客も順番に送り出せるだろう。それが終われば自分たちが脱出する番だ。
「このまま何事も無ければ……」
「船長! 船の中に、赤い影朧が……!」
 それは、赤いてるてる坊主にも見えた。だが、それが持つ二振りの刀を見れば、そんな可愛らしいモノではないと誰もが思うだろう。
「避難艇への誘導を続けろ! パニックになったら助からないぞ!」
「皆さん! 大丈夫です、猟兵の方々も来ています。落ち着いて避難艇へ!」
 赤い影朧『ヒヨリミ』の出現により、人々に動揺が走る。このまま無事に避難が終わるかは猟兵たちにかかっていた。
東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷服装と武装
帝都軍人の軍服、少佐の階級章付き。
刀と対魔刀の二刀流、2振りとも腰に帯刀。

▷行動
「このタイミングで仕掛けてくる…時間稼ぎ、目眩しか…いや、そんな事はどうでもいい」
二刀を抜き放ち、人々を守る為に敵の前に仁王立ちで立ちはだかる。
「帝都軍第十七大隊大隊長、東雲一朗がいる限りここから先は通さぬ!総員、避難を続行せよ!」
【団体行動】を活かして避難指示を出してから戦闘開始。
【残像】による翻弄を軸に敵の注意を逸らしながら【破魔】の力を宿したUC【剣刃一閃】で敵を一刀両断にしていく。
「二刀の剣同士、遅れを取るわけにはいかんのでな!」


セルマ・エンフィールド
このタイミングで……手間取ればその間に登良環さんを連れて逃げられそうですね。
こちらで対処します、そのまま避難を。

フィンブルヴェトはどこかに『物を隠す』で一見丸腰に。
召喚しておいた【冬の尖兵】10体に前線で戦わせましょう。剣と盾で武装した兵士が10体、ヒヨリミはあちらを狙ってくれると思いますが、念のため私は味方後方、乗務員たちや乗客のそばに。

兵士にはツーマンセルで1体は盾で敵を受け止め1体は剣で攻撃させます、狭い船内では強い伸縮性も活かしきれませんし兵士だけでも対応できるでしょう。

こちらを狙ってくる敵がいたら隠し持ったデリンジャーの『クイックドロウ』で撃ち抜き、再び素早く『物を隠す』しましょう。


エメラ・アーヴェスピア
ああもう、わかってはいたけれど次から次へと…
兎に角今は乗員の避難を優先させないと…

と言っても今私がここを去る訳にはいかないわね
『咆哮』と連携した飛行船の【操縦】を継続よ
ここは私に任せなさい、貴方達(乗員)も脱出を!

船内に増殖したオブリビオンの対処は…これね
『出撃の時だ我が精兵達よ』
大盾装備1体と魔導蒸気ライフル装備3体の計4体のLv14を召喚
盾を前にして後ろから銃で射撃
特殊部隊的な連携行動で確実に船内の敵を制圧していきなさい
船内なら射程は兎も角、横から攻撃はされ辛い筈よ

…残りのLv1分?この後に私の代わりに操縦させる為に召喚、横で情報入力・同期中よ
私も決戦には向かいたいもの

※アドリブ・絡み歓迎



 現れた赤い影朧『ヒヨリミ』の姿に東雲・一朗が腰に佩いた刀に手を置く。

「このタイミングで仕掛けてくる……時間稼ぎ、目眩しか……いや、そんな事はどうでもいい。」

 視線の端に映るはヒヨリミの姿に悲鳴を上げる乗客の姿。乗務員にも動揺している者が少なくはない。猟兵たちの妨害をしに来たとしか思えないヒヨリミの出現にセルマ・エンフィールドの【冬の尖兵(ウィンター・ソルジャーズ)】も武器を構えた。

「このタイミングで……手間取ればその間に登良環さんを連れて逃げられそうですね。」

 手間取ればその分、主犯の影朧に時間を与える事になる。それに避難が遅れればすべてを助ける事は叶わなくなるだろう。避難を止める訳にはいかない。その上で、速やかにヒヨリミを倒しきらねばなるまい。一郎が二刀を抜き放ち、人々を護るべく敵の前に仁王立ちで立塞がった。

「帝都軍第十七大隊大隊長、東雲一朗がいる限りここから先は通さぬ! 総員、避難を続行せよ!」
「こちらで対処します、そのまま避難を。」

 セルマの氷の兵士たちも一郎と共にヒヨリミに向かう。セルマは持っていたマスケット銃フィンブルヴェトを散乱していた機材の影に隠し、念のためにと人々の傍へ付いて避難を続けるよう促した。武器を構えた一郎と氷の兵士にヒヨリミも刀を鳴らして向かってゆく。刻一刻と限界へ近づいてゆく飛行船の中、戦闘が始まろうとしていた。
 その様子は操縦室に居るエメラ・アーヴェスピアも把握していた。伝声管から乗務員のやり取りは聞こえており、さらに避難艇の近くでの出来事は外で飛行船を支えながら情報収集している魔導蒸気操機兵からも伝わっている。

「ああもう、わかってはいたけれど次から次へと……」

 飛行船の状況、避難の進み具合。やる事が多いこの状況でのヒヨリミの出現にエメラが胸中を零した。

「兎に角今は乗員の避難を優先させないと……」

 一度吐き出して気持ちを切り替えたエメラは、操縦を手伝っていた乗務員たちを振り返る。

「ここは私に任せなさい、貴方達も脱出を!」

 既に飛行船がすぐに落ちる事が無い程度の操縦データは集められている。それを元にすれば、事件が終わるまでなら一人でも飛ばす事は出来るだろう。エメラの言葉に乗務員たちも避難艇へと向かっていった。

「船内に増殖したオブリビオンの対処は……これね。」

 そして【出撃の時だ我が精兵達よ(メイクアサリー)】によりエメラが召喚した戦闘用魔導蒸気兵もヒヨリミの対処の為、船内へ移動する。
 一郎の刀が襲い掛かるヒヨリミの振った刀を弾き、返す一閃で斬り捨てた。ヒヨリミとの戦闘から逃れるように、乗客たちは足早に避難艇へと乗り込んでいく。

「この程度の影朧、いくら来ようが敵ではない! 皆、焦らず避難を続けるように!」

 効率よく避難が進められるよう一郎の張る声に、乗客はともすれば駆けだしたくなる不安を堪える。そう広くはない避難艇の入り口に人が殺到しては余計に時間もかかってしまう。だからこそ、人々の心を支える者が必要だった。その一郎が囲まれないようセルマは氷の兵士をツーマンセルで向かわせて堅実に戦いを進めてゆく。

「事前の情報通り、武器を持った者を優先して狙うようですね。」

 セルマは避難者の列を守るように立ちながら戦場を把握していた。一郎より少し後ろに居る盾を持つ氷の兵士が横合いから攻めようとしたヒヨリミを防ぎ、受け止められ動きの止まった隙にもう一体の氷の兵士が剣で斬りつける。そう広くはない船内、ヒヨリミたちは数を頼みに包囲する事も出来ずにいた。このまま無事に避難できるか……乗務員の誰かがそう思った時。避難していた乗客の列、その後方の扉が切り裂かれ、数体のヒヨリミが現れた。

「後ろから!?」

 咄嗟にその扉と乗客の間に入ったセルマが懐に隠し持ったデリンジャーをクイックドロウで撃ち放つ。ダメージは与えたが、全てのヒヨリミを止めるには足りない。氷の兵士をこちらへ向かわせるか、その為にはどれほど時間を稼ぐか。必要な手を打つため、指示を出そうとしたセルマの前で、そのヒヨリミたちのさらに後方から銃弾が浴びせられた。

『遅くなったわね。こちら側は私が受け持つわ。』

 近くの伝声管からエメラの声が響いた。現れたのは大盾を構えた魔導蒸気兵とその後ろで魔導蒸気ライフルを構える3体の魔導蒸気兵。その蒸気兵の登場に少し遅れて操縦室から避難してきた乗務員が駆け込んできた。物々しい武装の魔導蒸気兵に近くのヒヨリミは向かってゆく。セルマは無為にヒヨリミを引き寄せないようデリンジャーを素早く懐へ隠す。

「よし! 安全を確保するため一気に押し返すぞ!」

 近接能力に秀でたセルマの氷の兵士に加え、射撃ができるエメラの魔導蒸気兵。戦力的にもヒヨリミを一気に叩き、避難を進める時間を稼ぐ時だと判断した一郎がヒヨリミへと駆ける。迎え撃つべく回転するヒヨリミがその回転の勢いを乗せて振った刀が一郎を捉えたと見えた瞬間、一郎の姿が消えた。ヒヨリミが切り裂いたそれは一郎の残した残像。見失ったヒヨリミに一郎の刀が走る。【剣刃一閃】、破魔の力を宿した刃がヒヨリミを切り裂いた。

「二刀の剣同士、遅れを取るわけにはいかんのでな!」

 返す刀で次のヒヨリミを斬り、一郎は次のヒヨリミへと駆ける。セルマの氷の兵士もヒヨリミを残さず叩くべく前へ出た。盾を並べて押し上げるように迫る氷の兵士にヒヨリミは赤い布を伸ばす。触れた物を切り裂く刃の如きその布は、しかし盾に阻まれ逆に押さえつけられてヒヨリミ自身が引っ張られた。引き寄せられたヒヨリミを剣を構えた兵士が切り裂く。

「狭い船内では、その伸縮性も活かしきれませんね。」

 安定して戦いを進める様子にセルマは兵士だけでも今いるヒヨリミは対処できると判断し、万一に備えて避難の列の傍に控えるのだった。
 戦況は猟兵側の優位に推移している。このままならば避難も無事に終わるだろう。エメラはヒヨリミを相手取る魔導蒸気兵を操りながら作業を進めていた。狭い船内、横合いから攻撃を受けることがまずない状況。盾を破る手段がないヒヨリミに戦況を覆す事は出来ない。それ故に今は傍らの操縦席に据えた魔導蒸気兵に情報入力と同期を行う事に意識を割いていた。これまでの操縦データさえあれば一人でも飛行船を飛ばす事ができる。その為に残した魔導蒸気兵に必要な作業を終え、エメラは操縦席から立ち上がった。

「私も決戦には向かいたいもの。」

 身を翻したエメラを、操縦を任された魔導蒸気兵が見送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エイル・ヒルドル
引き続き恋人の玲と共同で頑張るわ。
「コイツら…邪魔する気なの!?」

▼VS《ヒヨリミ》戦
「アタシがいるんだから、絶対にやらせないわよ!」
UC【超集中】で能力をブースト。
いきなり【ダッシュ】で敵中に飛び込んだら【残像】を残しながら【第六感】で敵を捉え、二丁で一度に【二回攻撃】の光線銃を目にも留まらぬ【早業】で【乱れ撃ち】!
「行かせはしないわっ、乱れ撃つ!」
【地形の利用】で立ち回りも効率的に、もし抜けようとする奴がいても【咄嗟の一撃】を繰り出して行かせないんだから!
「玲、アンタの分は残しておかないわよっ」
コイツらの目的とかよくわかんないけど…アタシはとにかく全部ぶっ飛ばして皆を守るだけよ!


雨音・玲
前章で飛空艇の見取り図を確認済みなので
避難誘導のポイントまで
逃げ遅れた人がいないか客室に声をかけ
確認しながら足早に向かいます。

▼VS《ヒヨリミ》戦
【スキルマスター「クイック」】で【高速移動】の技能値を上げ
飛ぶように高速で廊下を駆け抜け様に
【早業】【戦闘知識】【咄嗟の一撃】【空中戦】の要領で
思いっきり殴りつけ、床や壁に叩きつけます。
死角からの攻撃は【野生の勘】で回避、回避不能な攻撃は【武器受け】で逸らします。

大丈夫だと思うけど、エイル無事か?

俺の女にちょっかい出したんだ、覚悟は出来てんだろうな?

来る途中でアタリは引かなかったから…

コイツらどうも足止め要因ぽいな

この奥か?通らせて貰うぜ!!



 飛行船は大きく揺れる事こそなくなったものの、そこかしこから聞こえる船体の軋む音は大きくなってきている。嫌な音を立てる船内、雨音・玲は逃げ遅れた者が居ないか確かめながら移動していた。

「おい、そこはもういい。早く避難を!」

 乗客の避難は進んでいるようだが持ち場に残っていた乗務員は何人かいた。そういった人を見つけては避難を促し、玲は確認しておいた避難誘導のポイントまで足早に進んでゆく。
 その頃、避難誘導をしている避難艇の近辺でエイル・ヒルドルはヒヨリミと対峙していた。

「コイツら……邪魔する気なの!?」

 すでに乗客の避難はほぼ終わり、乗務員の避難も始まっていた矢先。再び飛行船の奥から湧き出るように現れたヒヨリミにエイルは二丁の光線銃を構える。

「アタシがいるんだから、絶対にやらせないわよ!」

 幸いにしてヒヨリミの数は多くはない。【超集中(フルブースト)】でブーストした能力でエイルはヒヨリミの集団の只中に吶喊した。ヒヨリミたちがその動きに反応するより早く、エイルは両手に構えた二丁の光線銃を閃かせる。

「行かせはしないわっ、乱れ撃つ!」

 瞬きの間に二度、乱れ撃つ光線が何体ものヒヨリミを一息に撃ち抜いた。さらに奥から現れたヒヨリミへエイルが銃口を向け――そのヒヨリミが殴り飛ばされる。

「大丈夫だと思うけど、エイル無事か?」
「玲! ええ、もちろん!」

 【スキルマスター「クイック」】で底上げした移動力で、文字通り飛ぶように廊下を駆け抜けた玲がエイルへ向かおうとしていたヒヨリミを一蹴した。

「俺の女にちょっかい出したんだ、覚悟は出来てんだろうな?」

 言って口の端を歪める玲に並び、エイルも光線銃を手にヒヨリミの前に立つ。前には敵、後ろには避難を続けている乗務員。ならば一体たりとも抜かせず、討ち倒すのみ。

「玲、アンタの分は残しておかないわよっ」

 言うが早いか駆けるエイルが光線銃でヒヨリミを撃った。その隣のヒヨリミを高速で突っ込んだ玲が殴り飛ばして壁に打ち付ける。

「来る途中でアタリは引かなかったから……」

 ヒヨリミの刀を壁を蹴って躱し、玲が上から打ち降ろす。叩きつけられたヒヨリミが床に赤く広がった。

「コイツらどうも足止め要因ぽいな。」
「コイツらの目的とかよくわかんないけど……」

 エイルも四方八方から延びるヒヨリミの赤布を避け、逆に伸びきった布を撃ち抜いてゆく。一体とて抜かせず、残さず、倒してゆく二人。

「アタシはとにかく全部ぶっ飛ばして皆を守るだけよ!」

 徐々にヒヨリミの現れてくる奥へと踏み込んでゆく。派手に戦闘を続ける二人にヒヨリミが集まってくる。戦場が避難艇から離れてゆく事は、避難する者を護り、避難も円滑に行う事に繋がる。エイルは回り込もうとしたヒヨリミを撃ち、狭い通路を活かして光線でヒヨリミの集団を追い込んで撃ち倒す。その隙にさらに奥へと踏み込んだ玲の前に、一つの扉を守るようにヒヨリミが集まった。

「この奥か? 通らせて貰うぜ!!」

 ヒヨリミの攻撃にも止まる事無く、躱し、或いは受け流し。玲はヒヨリミを殴り倒して扉に辿り着いた。これで最後だったのか、これ以上のヒヨリミは現れない。

 二人が辿り着いた扉。それは飛行艇後方にある大広間に続く扉だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獄卒将校』

POW   :    獄卒刀斬り
【愛用の軍刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    影朧軍刀術
自身に【影朧の妖気】をまとい、高速移動と【影朧エンジンを装着した軍刀からの衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    同志諸君!
【かつて志を同じくした帝都軍人】の霊を召喚する。これは【軍刀】や【軍用拳銃】で攻撃する能力を持つ。
👑11
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 扉の先、飛行船の後方にある大広間。最初の動力室での爆発の被害も色濃いその部屋に、その男は居た。
「くっ、あと少しという所で……」
 広間の奥にひしゃげた非常口、その先に避難艇が見える。だが、猟兵を無視して逃げられる距離ではない。その男……『獄卒将校』が攫った登良環・怜乃を後ろに庇う。その腕を払おうともがき、怜乃は猟兵の姿に助けを求めた。
「お願いです、助けてください! 影朧と一緒になど……」
 その言葉を遮るように広間に爆炎が広がる。獄卒将校は咄嗟に怜乃の前に立ち盾になるも、怜乃は衝撃で吹き飛ばされ部屋の隅で気を失った。
「もう、船ももたないか……」
 軋む音に混じり、耐え切れなくなった船体が崩壊を始めている音も聞こえる。破壊が進むにつれ火の手も上がってきていた。先ほどの爆発も近くの何かが壊れて起きたのだろう。

「悠長に構える時間はない。覚悟してもらうぞ、猟兵……!」

 獄卒将校は軍刀を構え、猟兵へとその視線を向けた。
東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷行動
「帝都軍、第十七大隊を預かる東雲少佐だ…貴官の官姓名は?」
帝都軍人の影朧…転生へ導く為に悠長に話す時間はない…ならば軍人同士、剣で語るまで!
「貴官はあの令嬢に執着している、なぜだ?
なぜ貴官は影朧となった、何を求めてここにいる?
答えられよ!」
【戦闘知識】を活かした立ち回りと【残像】で翻弄しつつ、【破魔】の力を込めた二刀流の【二回攻撃】で斬り結びながら、軍人としての【威厳】を持って彼の真意を問う。
「貴官は帝都軍人!
いかなる理由があろうと我らは帝、帝都、臣民の為に剣を執らねばならない!
ゆえに自己の執着に取り憑かれた邪心、斬らせて頂く!」
そして【強制改心刀】でその心を一刀両断!


セルマ・エンフィールド
(避難艇を一瞥し)
準備のいいことですね、飛行船を沈め多くの人を犠牲にしてまでもその人が欲しかったのか……あるいは、船が沈むことを知り、その人だけでも助けようとしたのかは知りませんが。
前者なら……いえ、後者であっても容赦はしません。
私は猟兵であなたは影朧、オブリビオン。それが全てです。

フィンブルヴェトによる氷の弾丸で手や足を狙っていきます。外しても氷で多少は火勢が抑えられるでしょう。

確実に白兵戦を狙ってくるでしょうが……私も全く近接戦闘ができないわけではありません。
敵の剣筋を見切り、重視するものによって回避、銃剣による武器受け、銃剣による受け流しで対応し、【ヘイルショット】によるカウンターを。



 赤く炎に照らされる獄卒将校。その瞳に確たる想いを見て、東雲・一朗が他に先んじて一歩踏み出す。

「帝都軍、第十七大隊を預かる東雲少佐だ……貴官の官姓名は?」

 問わねばなるまい。その心が既に朧であろうとも。糺さねばなるまい。それが過去の影であろうとも。
 一郎の言葉に将校は僅かな間、瞑目し、口を開く。
「……帝都に刃を向けた私に、名乗る名はありません。少佐殿、それでも成さねばならぬ事があるのです。」
 獄卒将校の言葉に迷いはない。だがそこにはいかなる感情も現れていない。帝都軍人の影朧、転生へ導く為に悠長に話す時間はない。

「ならば軍人同士、剣で語るまで!」

 一郎は二振りの刀を抜き、獄卒将校と対峙した。その獄卒将校の様子、そして奥に見える避難艇をセルマ・エンフィールドは一瞥する。

「準備のいいことですね。」

 火災のあった動力室に近く、本来ならば使われないだろう避難艇。迷う事無くそこに向かったのは獄卒将校の予定通りという事か。

「飛行船を沈め多くの人を犠牲にしてまでもその人が欲しかったのか……
 あるいは、船が沈むことを知り、その人だけでも助けようとしたのかは知りませんが。」

 セルマの手が愛用のマスケット銃フィンブルヴェトを確かめる。いつも通り手に馴染む感触は、いつでも仕掛けられると主に伝えていた。

「前者なら……いえ、後者であっても容赦はしません。
 私は猟兵であなたは影朧、オブリビオン。それが全てです。」

 既に炎は部屋に広がり、燻すような熱さを感じる。フィンブルヴェトを構えるセルマ、獄卒将校は一郎から視線を逸らさずにこちらにも意識を向けている。誰かが動けば、即座に将校は斬りかかってくるだろう。その、ピンと張った緊張を断ち斬ったのは一郎の剣閃だった。

「貴官はあの令嬢に執着している、なぜだ?
 なぜ貴官は影朧となった、何を求めてここにいる?
 答えられよ!」

 威厳をもって問いただす一郎が左で振った刀が将校の刀に阻まれる。同時に振るわれる右の退魔刀を将校は一郎の左へと刀を滑らせて躱した。
「己が身勝手、私の未熟と承知している。」
 将校が打ち合う刀を両腕の力を籠めて押し落とし、切先を一郎の喉へと突き込む。
「だが、それでも……あの人は、あの方だけはお救いせねば!」
 一郎を見据え吼える将校。その瞳にある妄念は、いつを見ているのか。一郎は押し下げられた刀の柄頭で将校の腕を打ち上げて刃を逸らし、退魔刀で横薙ぎに払う。飛びすさった将校の胸元が、破魔の力乗せた一閃で浅く斬られていた。再び斬りかかろうとした将校の足元が凍り付く。舌打ち一つ、将校は脚を引き剥がし氷の弾丸を放ったセルマを睨んだ。

「そう簡単に捉えられませんか。」

 セルマが次を狙いながら零す。先ほどの一射も脚を撃ち抜くつもりだったが、直撃を避けられた。だが、放たれる氷の弾丸は例え外れても部屋に回る火の勢いを多少なりとも抑える事ができている。こちらに意識を割かせること自体が一郎への支援にも繋がる為、セルマは獄卒将校の手や足を狙い撃ち続けた。
「このような事で……!」
 獄卒将校の剣術を己が知識で予測し残像を交えて翻弄する一郎と合間合間に氷の弾丸を撃ち込んでくるセルマ。二人を相手にまずは射撃手から倒すと判断したか。獄卒将校が一郎を威力を増した一撃で受けた刀ごと押し退け、セルマへと速度の増した【獄卒刀斬り】を放つ。

「私も全く近接戦闘ができないわけではありません。」

 自分を狙って白兵戦を仕掛けてくる。そう読んでいたセルマは軍刀の一閃を銃剣で受け流す。そのまま刀身を遡るように滑らせ向けた銃口から間髪入れずに【ヘイルショット】によるカウンターを放った。制動を超えた反動、それに見合う威力で氷弾が炸裂する。まともに受けて吹き飛び、たたらを踏んだ獄卒将校へ一郎の刃が振るわれる。

「貴官は帝都軍人!
 いかなる理由があろうと我らは帝、帝都、臣民の為に剣を執らねばならない!
 ゆえに自己の執着に取り憑かれた邪心、斬らせて頂く!」

 言葉と共に放たれた【強制改心刀】が獄卒将校を裂く。それは肉体を傷つける事無く、将校の心に落ちる妄念、過去の残影を打ち据えた。それは獄卒将校がこの場に在る意義とも言えるモノ。ぐらり、と揺れた視界に獄卒将校は膝をついた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

雨音・玲
エイルと共闘
盾になった?…
追いついた『獄卒将校』の挙動に違和感を覚えます

「エイル?アレの相手頼めるか?」

俺は…

【群れなす黒影】を使用

烏の大群を呼び出し「動物使い」と「動物と話す」で使役
戦闘中の目的は二つ

①味方の援護
②怜乃を救出する為の援護

将校の行動から何らかの理由で攫うのが目的と予測
烏の群れを目隠しに使用
一部の烏の群れに頼んで
備え付けのカーテンやシーツ等を利用し
別ルートで空を飛んで怜乃を先に脱出している非難艇へ運ばせ
将校には奥の避難艇で逃がしたと見せかけます
その後、エイルに合流し
援護する形で戦闘に参加
将校の出方をみます

ギリギリまで戦い
うまく退けれれば
烏達に協力してもらい脱出します。


エイル・ヒルドル
玲と共闘

玲の表情を見ればわかる、玲はきっと何かに気づいてあのお嬢様を先に助けるつもりなんだわ
なら、アタシは玲の剣となって戦うだけよ
「任せなさい、アタシが高速剣の異名を理由…見せてあげる」

玲に強気なドヤ顔をかましたら、アタシは戦闘に集中
「軍人さん、アンタの相手はアタシよ!」
言うや否や目にも留まらぬ【早業】で二丁光線銃を【乱れ撃ち】して牽制しながら接近、近づいたら桜織コートを脱ぎ捨て目眩しして【デュエリストロウ】を【騙し討ち】で当てる
「アタシから目を離すな!」
ルールを宣誓したら光線銃を捨て剣を逆手抜刀、敵の攻撃を【野生の勘・第六感】で察知し【咄嗟の一撃】で斬り払い、蹴りと斬撃の【二回攻撃】で攻める



 獄卒将校が最初の爆風から怜乃を庇った様子、そして繰り広げられた戦闘と問答に雨音・玲は違和感を覚えていた。

「エイル? アレの相手頼めるか?」

 玲の言葉にエイル・ヒルドルは頷く。

「任せなさい、アタシが高速剣の異名を理由……見せてあげる。」

 エイルは玲の表情から、玲はきっと何かに気づいてあのお嬢様を先に助けるつもりなのだと察する。ならば、エイルは玲の剣となって戦うだけだ。その想いを胸に、強気なドヤ顔を返したエイルは獄卒将校へと意識を集中させた。獄卒将校は立ち上がり、再び軍刀を構えている。その身に、その意志に負った傷は浅くはないだろうがまだ戦意は衰えていない。

「軍人さん、アンタの相手はアタシよ!」

 エイルは言うや否や目にも止まらぬ早業で光線銃を乱れ撃つ。横殴りの驟雨の如く放たれる光線を将校は軍刀で弾き、体捌きで躱した。
「数を頼む攻撃など!」
 だがそれはエイルも承知の上だ。自分が近づく為の牽制、そして玲を狙わせない為の一手。そのエイルの攻勢に紛れ、玲は【群れなす黒影(キラワレモノ)】で烏の大群を呼び出した。

「悪りぃなちょっと働いてくれっか?」

 玲の指示に従い、烏の大群が将校から怜乃を隠すように広がる。また一部の烏はカーテンを運んで広げた。その目隠しの後ろで、烏に隠され非常口へ運ばれてゆくのに将校の症状が変わった。
「その人を、奪わせるものか……ッ!」
 激昂し、辺りを顧みず突き進もうとした獄卒将校の視界をエイルが脱ぎ広げた桜織コヲトが阻む。狭窄した意識が煩わしいとばかりに払ったコヲトにとられた隙を逃さず、将校に手袋が叩きつけられる。

「アタシから目を離すな!」

 エイルの手袋と共に放たれた【デュエリスト・ロウ】の宣告が獄卒将校を打つ。常人ならば戦う相手から目を離さないなど、ごく簡単な宣告だろう。だが。
「が、はッ……あの人を、喪う訳には……ッ!」
 宣告を破り、目隠しをする烏の群れを睨んで将校が血を吐く。その身を襲ったダメージは生半可な物ではないだろう。その負傷をも構わず、将校の身体を影朧の妖気が包む。瞬刻、【影朧軍刀術】で振るわれた軍刀から放たれた衝撃波が目隠しのカーテン諸共非常口へ向かっていた烏の群れを吹き飛ばした。そこに怜乃はいない。

「そこまでするか……」

 なりふり構わぬ獄卒将校の様子に玲が残っている烏の群れを動かす。すでに一部の烏は怜乃を乗客たちの避難に使った避難艇へ向けて運んでいる。時間を稼ぐフェイクとして非常口の避難艇から逃がすよう見せかけたが、躊躇いなく吹き飛ばされるとは。もし、本当にそこに怜乃が居れば無事とは思えない。それすら判別できないほどだというのか。
「どこだ、どこに……!」
 焦燥滲ませる獄卒将校だが、その猛りは収まる事無く荒れ続けてる。

「ここからは、行かせない!」

 エイルが逆手で抜いたショートソード・マローダーを振り抜き応戦する。エイルの神速の逆手抜刀術とも渡り合う速度、威力で将校は刀を振う。だが一合ごとに獄卒将校の身体からは力の代償として血が滴っている。
「邪魔だ、退けッ!!」
 獄卒将校の軍刀がさらに加速する。エイルの剣を打ち崩すべく剣速を極限まで高めた【獄卒刀斬り】の乱撃。どこまで凌げるか……エイルが剣で軍刀を防ごうとしたその時、玲の拳が将校を打った。レガリアスシューズの加速を乗せたレッドショットの殴打で将校を圧し飛ばす。獄卒将校は度重なる負傷で膝をついた。

「エイル、いったん引こう。」
「それって……」

 時間は十分に稼いだ。怜乃を運ぶ烏が飛行船を脱した事を言外に伝えた玲はエイルと共に急ぎ大広間を出る。
「あの人をこの手から喪うなど……ッ!」
 獄卒将校の血と共に吐き出された言葉。一拍の後、飛行船を放たれた衝撃波が貫いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

東雲・一朗
▷アドリブ歓迎です

▷戦術行動
もはや一刻の猶予も無し、しかしてここで諦めれば軍人の名折れ…ならば私が全てを終わらせる。
「貴官が国を、誇りを捨ててまで固執する彼女は何者だ、彼女を何から救うのだ!
語れ!貴官の生きた意味、影となってもこの世に戻った意味を!」
こうなれば全てを明らかにした上で奴を斬り、救う他ない…心を救わねば影朧は救われない。
だが肯定するだけでは救済にはならない。
「愛、使命感、正義…貴官の想いは影に侵され歪んでいる、それはもはや執着だ。
影を振り払え!転生しろ!貴官が本気で彼女を救いたいなら…気合で転生を果たし人として再び彼女を救いに来い!」
そして【強制改心刀】でその妄執を一刀両断にする!


エメラ・アーヴェスピア
色々とあったけど、何とか間に合ったかしら
救出対象も退避済みのようだし、後は撃滅するだけ
…あなたにも何か理由があったみたいだけど…悪いわね、こちらも猟兵としての仕事よ

弱っているようだしとどめを刺したい所だけど…下手な攻撃は飛行船の崩壊を早めるかしら
…相手をここから先に行かせない為にも…『突き進め我が不屈の兵よ』!
横一列、突撃で相手の攻撃ごと外へと弾き飛ばしなさい
外…空中なら船を気にせず大きな攻撃を叩き込めるし…それを可能とする兵器も既に…そこにいる!
『我が元に響くは咆哮』!重火器を叩き込んでやりなさい!
私の脱出は『咆哮』を使うわ…弾き飛ばすと同時に空に跳んで拾わせるのもアリね

※アドリブ・絡み歓迎



 猛る獄卒将校の放った衝撃波が大広間から飛行船の前方へ向け、部屋も通路も諸共に砕いた。
「ぐっ……どこ、に……ッ!」
 砕かれ、広がる空間に歩を進め、彼女を探す。その前を塞ぐようにエメラ・アーヴェスピアが姿を見せる。

「色々とあったけど、何とか間に合ったかしら。」

 飛行船の状況、そして獄卒将校の様子、ここまでに激しい戦闘があった事は明らかだった。加えて令嬢も烏の群れに運ばれてゆくのが見えた。残された時間は少ないが、救出対象も退避済みならばあとは影朧を撃滅するだけ。

「……あなたにも何か理由があったみたいだけど……悪いわね、こちらも猟兵としての仕事よ。」

 エメラが獄卒将校を見据える。手負いの相手、止めを刺したいところではあるが。

(……下手な攻撃は飛行船の崩壊を早めるかしら。)

 既に飛行船のそこかしこで崩壊が始まっている。急いて船体に負荷をかければ瓦礫と共に海へ落ちるが、時間をかけては燃える火に巻かれるか。何より、他の乗客の乗る避難艇へ運ばれた令嬢を獄卒将校が見つけたらどうなるか。

「……相手をここから先に行かせない為にも……『突き進め我が不屈の兵よ』!」

 エメラの号令の下、【突き進め我が不屈の兵よ(ゴーアヘッド)】により召喚された魔導蒸気重装兵が列を為す。
「まだ、私はッ! あの人を……ッ!」
 腕に滴る血にも構わず獄卒将校が重装兵の隊列を打ち崩すべく力を籠める。エメラが獄卒将校を吹き飛ばすべく重装兵を進めようとしたその時。獄卒将校の後方から一声が響いた。

「貴官が国を、誇りを捨ててまで固執する彼女は何者だ、彼女を何から救うのだ!
 語れ! 貴官の生きた意味、影となってもこの世に戻った意味を!」

 破壊された大広間を抜け、東雲・一朗が獄卒将校へ問う。

 もはや一刻の猶予も無し、しかしてここで諦めれば軍人の名折れ……ならば私が全てを終わらせる。

 獄卒将校はもはや己が意志でのみこの地に在り続けていると言っても良い。それだけの想いを無に、骸の海へと埋める事は一郎には看過できなかった。軍人なれば臣民の為に剣を取るべし、そう語ったのならば。一郎も眼前のかつて帝都に暮らしていたであろう者の為に成さねばならぬ事がある。こうなれば全てを明らかにした上で奴を斬り、救う他ない。
「私は革命を為す……」
 何かを悔いるように、将校が吐く。ゆらり、と一郎に向けられた目に在るは如何な情動か。
「だがッ! それにッ! あの人を、彼女を巻き込むわけにはいかないのだッ!!
 それを邪魔立てする者は、尽く、屠ってくれるッ!!!」
 振われた軍刀を一郎の二刀が受け止める。今までになく重い振り下ろしは将校の裡に積もった想い故か。そしてその言葉に一郎の脳裏に浮かぶ事柄があった。

 この者、革命を起こした一派か……!

 長く続いた大正が常に平和であったわけではない。時に起こった革命という名の暴動は、様々な理由で、様々な者が起こし、そして鎮圧された。その中には軍の派閥が、帝都の未来を憂いて起こした物もある。どちらが正しいか、それは今論じる事ではない。
 心を救わねば影朧は救われない。だが肯定するだけでは救済にはならない。一郎と獄卒将校が打ち合う中、位置を調整し準備を整えたエメラが動く。

「貴方のその想いは、今に持ち込む事ではないわ。……横一列、突撃で相手の攻撃ごと外へと弾き飛ばしなさい。」

 一郎が将校をいなし距離を離した隙に、密に列をなした魔導蒸気重装兵が突進をかける。まともに受ければ船外へ飛ばされるのは必至。ならば獄卒将校が突進を止めるべく軍刀を振うのも必定と言えよう。だが。

「愛、使命感、正義……貴官の想いは影に侵され歪んでいる、それはもはや執着だ。」

 獄卒将校の振る刀が、一郎の言葉と共に振るわれた一閃に止められる。

「影を振り払え! 転生しろ! 貴官が本気で彼女を救いたいなら……
 気合で転生を果たし人として再び彼女を救いに来い!」

 一郎の【強制改心刀】が獄卒将校を裂く。身体に与える傷も衝撃も無い。軍刀を弾いたわけでもない。だが、その一刀は確かに獄卒将校を止めていた。間を置かずエメラの重装兵の突進が将校を空へと弾き出す。

「外……空中なら船を気にせず大きな攻撃を叩き込めるし……」

 エメラが将校を追うように船外へと身を乗り出した。炎と煙の舞う中、エメラは躊躇わずに空へと身を躍らせた。その先に在るは、飛行船を支えた最初の一手。

「それを可能とする兵器も既に……そこにいる!」

 飛ばされた獄卒将校の指が宙を掻く。
「まだ……ぐ、ぅ……」
 だがその身を焦がしていた焦燥は既に無く、けれどその想いは終える事ができず。ふと、揺れる視界に海面に浮かぶ避難艇が映る。そこに居たのは、求めたあの人。
「否、違う、のか……」
 取り戻さねばならぬ、衝動のままに動こうとした腕を押さえ目を瞑る。閉ざされた視界に映るのは――。

 登良環・怜乃は運ばれた避難艇で目を覚ました。あの青年将校に連れ去られ、爆風で吹き飛ばされてからの事も所々だが聞こえていた。あの将校さんが見ていたのは、きっと私ではない。あの人が手を取り、言葉をかけるべきは私を通して見ていた人。もし自分がそう伝えられていたら、あの人は安らいでいただろうか……怜乃は燃えゆく飛行船を見上げていた。

 獄卒将校の身体に重火器の一斉射撃が襲い掛かる。エメラを抱えた魔導蒸気操機兵が将校をこの世に何も残さぬよう爆炎の内に消し去ってゆく。

「……終わったかしらね。」
「もはや残す妄執はあるまいよ。」

 操機兵に抱えられたエメラに操機兵の背に掴まり脱出した一郎が返した。燃え落ちる飛行船の彼方、救助要請を受けた帝国の船が近付いてくるのが見える。茜色に染まる空、風に乗って桜が一片、舞った気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月12日


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サクラミラージュ


30




種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト