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ゲームの喧嘩は街の華?

#キマイラフューチャー

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#キマイラフューチャー


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●往々として喧嘩は人目を集めるものである
 キマイラフューチャー。様々なアーティストが暮らすその世界で、ここ最近にわかに流行り始めた「芸術」がある。
 ――その名も、武闘。舞い踊るような動きでもってして対戦相手と戦う、リアルファイトゲームである。事の発端は、キマイラフューチャーの人気動画サイトにアップされた猟兵たちの戦闘を、どこかの誰かが真似し始めたことによると云う。単に猟兵たちのイカした動きを真似してチャンバラごっこのような遊びだった最初のころの面影は既になく、少数とはいえ卓越した身体技術や様々な技を持つ者も現れ始めている。
 ゲームが始まる条件は、2つ。
 1つ、武闘への参加希望者であることを示すバッジを付けた者2名以上がいること。
 2つ、参加希望者に加え、それを中継できる第三者がその場にいること。
 場所を問わず、ただそこに武闘プレイヤーがいて、それを動画として生放送できる奴がいればいいのだ。手軽さもあって、多くのキマイラフューチャー住人がこのゲームのプレイヤーになっているという。
 今日もまた、イカしたオリジナル装備を持った住人達がどこそこで喧嘩の花火を上げる。

●介入者
 所変わってグリモアベース。猟兵たちを呼び集めるニコラの背後には、既にキマイラフューチャーの風景が映し出されていた。
「もうお察しの方もいると思うけれど、今回はキマイラフューチャーで起きる事件の解決をお願いするわ」
 グリモアを操作し、猟兵たちに示されるのはティラノサウルス怪人の姿。どうやら、そいつが今回の事件の黒幕に当たるらしい。それに加えて、ここ最近キマイラフューチャーで流行っているというリアルファイトゲーム「武闘」の情報が開示される。
「このリアルファイトゲーム『武闘』……現地では他に類似するゲームがないから、単に武闘だとかRFGって呼ばれてるみたいね。これ自体は、そこまで問題ないと思うわ。ごく少数、それこそプロボクサーとかみたいな域に達してる人たちもいるみたいだけれど、大半はチャンバラごっこや、誰かの活躍を辿るような演劇要素が強いみたいだから」
 次々と切り替わる映像の中には、確かに動画サイトにアップされて流行になった猟兵の動きをコピーした演武のようなもの、あるいは演劇形式でRFGを遊ぶごっこ遊びのようなものが目立つ。逆に、それらのレベルと対比されるようにしてニコラのいう「プロレベル」の者が繰り出す技や体術のキレが目立つ結果ともいえる。
「この、ごく少数だけれど現れてきたプロレベルの子たちがオブリビオンに狙われているわ。今のところ予知に引っ掛かったレベルだと、さっき見せた怪人が大規模なストリートファイトイベント……ようは、オフ会みたいなものね……を開いて、参加者の中からプロレベルの子を見極めて、戦闘員に改造するのが目的みたい」
 要するに、プロゲーマーの勧誘が主目的。勧誘、とはいっても、怪人の力で以てすれば勝ち残ったプロレベルの戦闘力を持つ住人であれ、普通の一般人と変わらず誘拐されてしまうだろうが。
「あなた達には、このイベントに潜り込んで勝ち抜いて、オブリビオンの目論見を阻止して欲しいの。幸い、現地でイベントに参加するのは武闘プレイヤーとしてのバッチがあれば問題ないし、バッジそのものは何個も手配することが出来たわ。人数的な問題はないわよ」
 そう言ってニコラが猟兵たちに1人1つずつ、金メッキの施されたバッジを配り始める。中央に「武」の字が刻印されたそれを身につけてさえいれば、イベントへの参加自体は容易いらしい。
「ただ、注意点があるわ。少なくとも、怪人が姿を現すまではユーベルコードを使わないこと……使ってしまうと、住人達に囲まれるっていうのもあるけれど、猟兵の介入に気付いた怪人が撤退してしまう可能性があるわ」
 それに、と顎に指を当て、ニコラは情報を付け加える。
「この依頼の第1フェーズ……イベント参加者として勝ち残る段階では、相手はただの一般人よ。ユーベルコードなんて使ったら、相手を危険にさらしてしまうわ」
 重要なのは、単なるいちゲームプレイヤーとして勝ち残ること。そこにユーベルコードによる介入は余計なのだという。確かに、ユーベルコードの力を使えば易々と勝利できるだろうが、それは主目的ではない。
「第2フェーズでは、他に勝ち残るであろう一般参加者の保護、救出。怪人が姿を表したらこのフェーズよ。だから、その時点からユーベルコードを使っても大丈夫。華々しく活躍して、怪人から彼らを救いだして頂戴」
 猟兵としての本領を発揮してもよいのは、その次の段階から。その段階になれば怪人も姿あらわすというので、状況が切り替わることは判りやすいだろう。
「そして、最終フェーズは現れる怪人の撃退。一般人をきちんと救出・避難させ終えたらこのフェーズよ。遠慮はいらないわ、ぶちのめしてあげなさい?」
 依頼説明はこれで以上、と締めくくり、ニコラはその場に集まった猟兵たちを見回した。


Reyo
 年末ぶりですね。新しいシナリオとして、キマイラフューチャーでの事件をお届けします。
 リアルファイトゲーム「武闘」は、もともとは猟兵たちの活躍を真似する、いわば二次創作のような形でキマイラフューチャーの住人たちが作りだした遊びです。この遊びそのものにはなんの危険性もないのですが、その性質に注目した怪人がいました。戦闘能力の高い一般住民をこのゲームで選別し、戦闘員に改造しようというのです。そんなこと、許してはおけませんよね?
 本シナリオは第1~2章が冒険、第3章がボス戦という構成になっております。
 第1章では、イベント会場に乗り込んで、ゲームプレイヤーの一般人を相手に、怪人に注目されるような戦いを魅せることが目的となります。ただし、このフェーズでは「ユーベルコードは使用禁止」です。自己強化も含めたどんなユーベルコードでも、使用すると怪人に気付かれて撤退されてしまう恐れがあります。どんな技能で、どんな能力で戦って魅せるのか、プレイングをお待ちしております。
 第2章は、絞り込まれた参加者……つまり、優れた戦闘能力を持つ一般人の前に姿を現す怪人から、一般人を救出することが目的となります。この時点でボスである怪人は姿を現していますが、ボスを倒すことよりも一般人の救出が優先です。また、このフェーズからユーベルコードの使用が解禁されます。
 第3章は、毎度おなじみボス戦闘となります。ティラノサウルス怪人の能力については、章開始時に公開されるデータをご覧ください。邪な目論見で己の戦力を増やそうとしたかの怪人をこてんぱんにのしてやりましょう。
 それでは、以上で詳細な案内とさせていただきます。
 どうぞ奮ってご参加いただければ幸いです、宜しくお願いいたします。
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第1章 冒険 『ファイトクラブ』

POW   :    パワーと気合で敵を圧倒!

SPD   :    スピード、テクニックで相手を翻弄!

WIZ   :    頭脳戦でバトルを支配する!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●リアルファイトゲーム
 ――ニコラが転移ゲートを作ったのは、キマイラフューチャーの中でもちょっと名の知れたホールの片隅だった。ちょうど昇降階段の影になる踊り場の下であり、大概は物置き代わりにいろいろと物が置かれるが、このキマイラフューチャーでは必要なものは施設を叩けば出てくる。ぽっかりと空いたその空間は、身を隠すのには丁度いい場所だった。
 ホールはがやがやと賑わっており、ゲームの参加者だけでなく、観客の姿もちらほらと。生放送が行えるような機材を持っているのは、恐らく審判を務める者なのだろう。参加者は胸元や腰、あるいは服の袖といった様々な箇所に金のバッジをつけているため、一目でそれと判る。きっとその中には、このゲームを極めはじめている猛者が少なからずいることだろう。
 
 金のバッジを身につけて、しれっとその喧騒の中に紛れ込んでしまえば、そこに猟兵が居ると気付くのは誰もいない。そう、オブリビオンである怪人さえも……。
鷺宮・志乃
此処でなら…うん
“私”を証明できるはず、だから

まずはあの人に……あ、あのっ
えと、その。わ、私とシませんかっ!?
ええと…こ、怖くないですよ?えぇ、えぇ……恐くないですから
だ、大丈夫です!だから……っ 

あれ?話が噛み合ってないような……でも、うん
何もない“私”だけなら【恐怖を与える】ことなんてないはず、だよね?
これが配信されればこわくないって皆に…

ふふ。うふふ…って

あ、あの…?どうして、そんな顔をするの…?
な、何に怯えてるんです?え?私…じゃないよね?ね?
そんな…“私”が恐いだなんて、そんなことない…よね?
ねぇ?なんで下がるの?逃げないでよやだなんでどうして……!

ほ、ほら?コワく、ないよ?……ネ?



●青い炎
 なにかを決意した表情で、鷺宮・志乃(青鷺火・f10858)は転移ゲートの開かれた階段下スペースから一歩を踏み出した。
(此処でなら……うん、きっと“私”を証明できる、はず、だから――)
 雑踏、すなわち観客の中から抜け出して志乃が歩み行くのは、ホール中央のゲームスペース。その入り口に当たる部分で係員のチェックが入るが、金のバッジを提示すればそれ以上何の確認もなくゲームスペースへの入場が叶う。
 ゲームスペースを埋め尽くすのは、気合の入った掛け声に、あるいは聞き覚えがあるかもしれない技の名前――その中で、明らかに動きの違うプレイヤーを見つけて、志乃は挑む相手を定めた。
 志乃が定めた相手は程なく勝利判定でゲームを終える。
 今だ、と。意気込みとともに志乃はそのプレイヤーに駆け寄った。
「あ、あのっ、えと、その……わ、私とシませんかっ!?」
 一瞬、主語のない問いかけにそのプレイヤーは戸惑った様子を見せる。が、金のバッジを見つけて快く勝負を快諾しようとしたその時。
 ――志乃と目が合ってしまった。
 最初に彼が覚えたのは違和感。まるで、志乃の瞳が炎のように揺らめいて見えた。
「ええと、大丈夫ですか……? 怖く、ないですよ? ええ、ええ――恐くなんか、ないですから」
 返答がないのを拒否と受け取ってか、志乃が言葉で後押しをする。
 ――彼の目には、志乃の青い瞳が揺らめく炎のように映っている。ぼうぼうと、揺れる炎がとんでもなく「恐い」何かに見える。
 ずっ、と彼が後ずさってしまったのを、責める事は誰にもできないだろう。志乃のその青の炎は、UDCが齎す恐怖そのものなのだ。たとえユーベルコードなどなくとも、そこに根ざした恐怖は彼女の青からどうしても滲み出てしまう。
「ふふ、うふふ……これが、配信されれば、皆私が恐くないってわかって――」
 申し訳ないが、とそのプレイヤーが平静を装って切り出せたのは、流石の胆力と褒めて良いだろう。
「え……」
 拒否の申し出に、志乃はあからさまに落胆の声を露にした。
「そんな……まさか、まさか“私”が恐い、なんてこと、ない、ですよね……? あれ、何で後ずさって――どうしてそんな顔をするんですか? 何に怯えてるんです? 私にじゃないですよね?」 
 じり、と。妙な威圧感を伴いにじり寄る志乃に、彼はもはやなりふり構わず背を向けた。あるいは、その青い瞳から逃げたかったのかもしれない。
「……やだ、逃げないで、なんで逃げるんですか? ほら、コワく、ないですよ? ね? ――ね?」
 志乃の言葉にもはや答えることはなく、彼は背を向けてこのゲーム会場を去る。
 後には、己の何かを証明しそこねた志乃が、肩を落として残されるだけであった。
 ……生放送こそされなかったが、浚われる可能性が高いプレイヤーをひとり、安全な場所へと退避させたと見れば、彼女の労力も報われるのだろうか?

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ソーニャ・ロマネンコ
ユーベルコードは使用しない、使うまでもなかろう。

使用技能は【2回攻撃8】【鎧砕き7】【戦闘知識6】【激痛耐性2】【第六感6】【鼓舞8】【視力8】だな。

銃を扱う戦場傭兵だが…侮るなよ?

守りは【激痛耐性】【第六感】【戦闘知識】【視力】
一方的なのはギャラリーもつまらないだろう、戦場には華が必要さ。
相手の手の内を皆に魅せて受けきり、返そう。

攻めは【戦闘知識】【2回攻撃】【鎧砕き】
顔は避け、ボディ狙いで沈むまで攻める。
ダウン中に手は出さないが、立ち上がるなら気力が無くなるまで相手してやろう。

全体を通して【鼓舞】も使う。
動きで魅せて、場を盛り上げるのも大事だろう?
さぁ、陽気なダンスを踊ろうじゃないか。



●Battle Dance
 ソーニャ・ロマネンコ(妖狐の戦場傭兵・f03219)は戦場傭兵である。本来であれば、彼女の戦闘スタイルは銃火器を用いた遠距離戦闘なのだが。
「女だからって、あまり侮ってくれるなよ?」
 徒手空拳ながら、彼女は堂々たる姿勢と言葉でもって、対戦相手を挑発した。服装こそ男っぽいが、そのすらりとした長身と堂に入った挑発はさぞや生放送に美女として映えることだろう。
 ゲーム開始早々のその挑発に血が上るのも仕方がない。ソーニャの対戦相手はロクな読み合いもなしに彼女へと突撃を仕掛ける。どうやら徒手空拳なのはそのプレイヤーも同じのようで、真似から学んだその戦闘技術は確かであり、空を切る音とともに鋭い右ジャブがソーニャへと放たれる。
 ――これは、入っただろう。
 放送をしている審判も、その放送を見ている誰もが、そう思った。
 ふっ、とソーニャが足の力を抜いてわずかに上体を逸らす。たったそれだけで放たれた拳は空を切った。
 ソーニャの崩れた姿勢に対し、追い討ちのように左ストレート。
 とん、と地面を蹴る軽いステップ。ストレートはソーニャの髪に触れるだけで終わる。
 左を戻す勢いを利用しての右ボディ。ジャブから始まる3連撃としてはこの上なく完成された一連のコンビネーション。観客たちも、さすがに此処までくれば、と息を飲んで状況の推移を見守る。
 ――パァン、という派手な音が響く。スウェーからのステップ、流石に回避の手段がこれ以上はなくなったソーニャが、その一撃に捕らえられたのだ。
 ワァ、と歓声が上がり、生放送の画面ではコメントの嵐が巻き起こる。
「……それで?」
 そして、直後にソーニャがこぼした一言で、まずは彼女の対戦相手が力量の差を思い知った。続いて、ソーニャの強さを知ったのは審判で、最後に気づいたのが観客だった。
 ――ソーニャの動きは、ステップ一歩、ただそれのみ。痛烈なボディの直撃をもらいながら、その立ち姿は揺らいですらいない。ただ首をかしげて、ボディを打ち込んできた相手を見るだけだ。
「それで終わりなら――私の番だ」
 下がる対戦相手に吸い付くように、ソーニャの上体が前へ傾ぐ。脇を締め、滑るような足運びから繰り出していくのは左右の拳が腰を中心として回転するような見事な連打だ。連打と共にソーニャが魅せる踊るようなステップは無駄な動きを含んでいるようにも見えたが、実際は連打を途切らせないことに特化して洗練されている。ステップによって打撃の位置を調整しつつ、確実にガードを削っていく連打の動きだ。
 パパパパッ、と軽い音は、まだ対戦相手のガードが残っているからこその音。一方的とも言える連打は、そのガードを継続できるだけの体力を削りきってなお継続し――。
「これで……フィニッシュだ」
 対戦相手のガードが下がったところを、鳩尾を抉りこむような一撃が穿った。
 ソーニャの完成したその連携攻撃に、堪らず対戦相手がグラウンドに沈んだ。
 一瞬遅れて、ソーニャの勝利を称える大歓声が観客から上がる。審判もさすがに試合続行不可能と判断してかソーニャに勝利の旗を掲げ、生放送の場面では「88888」という文字が乱舞だ。
「――さぁ、次の対戦相手はいったいどいつだい?」
 さらに、まだまだ余裕があるというソーニャの宣言に、否応もなく会場の熱気は高まるばかりなのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マイア・ヴェルナテッド
 ……ふむ、こういった暴力沙汰は得意ではありませんが様々な闘法を見て学ぶ良い機会でもあるわね。

 とりあえず参加者の証である金バッチを胸元につけて待機します。

 【武闘】
 戦闘開始時に『礼儀作法』をもって決闘前の挨拶しついでに『誘惑』してこちらのペースに引き込みます。
 「初めまして今回貴方のお相手をさせていただきます。マイア・ヴェルナテッドと申します。どうぞよろしくお願いしますね。
……さて、初手はお譲りします。どこからでもどうぞ?」

 先手を譲った上でその攻撃を『第六感』等を用いて回避した上で相手の攻撃を『学習力』で学習して見切りつつ『闇夜の日傘』で『属性攻撃』『二回攻撃』で戦います。



●華麗なる日傘の貴婦人
 どう見ても武闘のプレイヤーに見えないマイア・ヴェルナテッド(ノーレッジデザイア・f00577)は、しばらく他の参加者から遠巻きに見られる存在であった。胸元に輝く金のバッジは確かに参加者であることを証明しているのだが、その美貌や戦いに向いていなさそうな服装といった要素がどうにも声をかけさせ辛くしているようだ。
 とはいえ、周囲を観察するマイアにとっては声が掛からないのならそれはそれで良い機会だった。彼女の周囲には猟兵の動きをコピーしたようなものから、あきらかな我流闘法まで様々な戦闘手法を持つプレイヤーたちが山ほどいるのだ。百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、これを機会に、と彼女は見聞を広めるために目に付く戦いを片っ端から眺めている。もともと、暴力沙汰は得意ではないと自認しているマイアである。相手から声が掛からない限り、戦う気は薄かった。
 ぽつんと、会場の中で独特な空間を作り出していたマイアに、ついに声をかけたのは彼女と同じ女性プレイヤーだ。どうやら、戦いもせずただ勝負を観察しているだけ、というのがお高くとまって見えたようで、マイアに声をかけた女性プレイヤーはなにやら喧嘩腰である。
「勝負ですか? ――ええ、構いませんよ」
 審判を探して目線を彷徨わせたマイアに、相手の女性プレイヤーは慣れた様子で手隙な審判を引っ張ってくる。もしかして初心者? などと相手が尋ねてくるが、マイヤはどう答えたものかしばらく悩み、結局あいまいに首を傾げて返すことにする。猟兵という意味ではある意味この集団の中で十分上位にはいるだけの戦闘能力を持つが、武闘プレイヤーとしてはペーペーもいいところだからだ。
 その様子が余計に癇に障ったのか、相手の女性プレイヤーが「始めるわよ!」と大声で宣言し――マイアはそこでようやく自発的な動きを見せた。
「改めて、はじめまして。今回貴方のお相手をさせていただきます、マイア・ヴェルナテッドと申します。どうぞよろしくお願いしますね」
 おう、と毒気を抜かれた様子で、対戦相手が構える。わざわざ名乗るというシチュエーションは、どうやらこれまでに経験したことがないようだ。
「……さて、初手はお譲りします。どこからでもどうぞ?」
 マイアの手元には畳まれた日傘がひとつ。あからさまに舐めたように見えるその様子に、毒気を抜かれてなお堪忍袋の緒が切れたらしい。
 チェスト、の叫びと共に、マイアの対戦相手が繰り出すのは模造刀を振りかぶっての大上段の一撃。いかな模造刀とはいえ、切れないだけでその勢いで振り回せば十分な打撃力を持っている。
 あたればひとたまりもない――むしろ、これがあたったら、もうそれで勝負決着でいいんじゃないか?
 試合を見ていた審判がそう思うのも知らず、マイアはスイ、と半身へ構えなおしてその一撃を回避してみせる。ひゅん、と巻き起こった風がわずかにマイアの髪を乱すがそれだけだ。
 まだまだ、と逆袈裟、横薙ぎ、と相手が連打を放ってくるも、そのどれもをひょいひょいと身軽に避けていくマイア。ついでとばかりに日傘の先端を足元に合わせてやれば、それに突っかかるようにして対戦相手が転倒する。
 起き上がろうとした相手の顔面に突きつけるのも、また日傘。とはいえ、そこにはいつの間にか闇夜よりなお黒い何かが出現している――ユーベルコードに拠らない、マイアがただ魔力をそこに纏わせただけの属性攻撃術だ。
「――貴方の戦法は、学ばせていただきました。まだ、続けますか?」
 マイアのその言葉にやや遅れて、あきらかに逆転の目がないと判断した審判がマイアの勝利を告げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

テリブル・カトラリー
POW

戦闘ならともかく、こういう、模擬戦闘ゲーム、というのは
どうも、戸惑うな…それに注目されるのは…とはいえ、
これも依頼。どうにかやるとしよう。

しかし、模擬とはいえ戦闘。
無粋とも思うが、猟兵の真似事で怪我人が
出るやもしれぬと思うとどうも少し…複雑だ。

さて、あまり怪我をさせる訳にもいかない、銃器の類は一先ず使わずに、
スクラップフィストを使おう。
戦闘はパワーで押し切る。
最低限の攻撃を武器で受け止め、多少の攻撃はあえて受け相手に強引に
肉薄、怪力で持って相手を掴んで、地面に引き倒し、
顔面めがけてスクラップフィストで強打、と見せかけて
顔の横側の地面に拳を叩きつけ、相手に
「勝負、あったな?」と語りかける。



●ウォーマシン・イン・モックバトル
 正直、戸惑う部分がないわけではない。それが、いまキマイラフューチャーではやっているというこのリアルファイトゲーム「武闘」へのテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)が抱いた感想だった。
 普段の戦闘と違い、これは模擬戦闘。なかなかそのようなシチュエーションに挑む機会はなく、それに加えてこの試合は生放送という形で中継されている。これも怪人を倒すため、と割り切っても耳目を集めて注目の対象となるのはそう慣れたものでもない。それに、模擬戦とはいえ、自分たち猟兵の真似から始まったというこのゲームでは怪我人が出る可能性もゼロではない。
 様々な心配事がありながらも、ひとまずとして意識を切り替えることができるあたり、テリブルはしっかりとした猟兵である。銃器の類は封印し、両手に纏うのはスクラップフィスト……この世界では使用者も多い、比較的一般的な武装だ。
「さて、誰か私の対戦相手はいるか?」
 両拳を打ち合わせれば、ガン、という重い音。合成音声による淡白な声やその身長も相俟って、テリブルを偉丈夫と間違えたプレイヤーたちが彼女を凄腕とみて列をなす。
 審判がやってくるのを待ち、いざ、生放送が始まるとそこから先はテリブルの圧倒的な連勝が続くことになった。
 ある者は果敢に挑みかかるも巨大なスクラップフィストに攻撃をすべて受け止められ、逆にアイアンクロウで持ち上げられて降参。
 ある者は速度にものを言わせてテリブルを翻弄しに掛かろうとするも、打撃の瞬間を捕えられてそのまま地面に引き倒されるような形になり、審判がストップをかけてテリブルの判定勝ちとなった。
 それならば、と審判に申し入れて何人かが一斉にテリブルに掛かるものの、その巨体と武器による防御で一人ずつ丁寧に対応されてしまえば、結局は1対1と変わらず。時間が掛かったとはいえ、最後にそこに立っているのはテリブルだ。
 俺がやるぜ、と。そのテリブルの様子を見てなおも挑戦の声を上げるものがいた。大型獣のキマイラであろうその男はテリブルに並ぶ巨躯を持ち、威風堂々の態でテリブルの前に進み出た。
 テリブルの側にも、それを断る理由はない――目の前の男が、明らかに怪人に目を付けられておかしくない実力者であることが肌で感じられるからだ。
 両者、見合って。生放送の枠を新たにして、改めて審判が戦場を整える声を上げる。
 始め!
 ――巨躯に見合わぬ素早さで先手を取ったのは、キマイラの男であった。
 これまでのテリブルの試合を見ていたのであろう、テリブルが迎撃に構えたスクラップフィストを掴み、そのまま組み合うようにして拮抗状態へと持ち込む。
(自分の巨躯であれば、どうにか押し切れる……とでも思っているのだろうな)
 男の考えを読み取って、テリブルはフッと笑みを浮かべた。
「パワーには、私も自信があってね」
 何? と返す男に、テリブルは実力で以て応えた。
「そぉら!」
 両腕に力を込める。相手が掴みかかってくる腕を軽く捻り、そのまま地面へと押し付けるように斜めへ。ぐっ、ぐっ、とテリブルが力を込めるたびに拮抗が崩れ、ついにはキマイラの男が地面に膝を着く。さらにテリブルが力を込めてゆけば、そのまま男は仰向けに地面へと押し付けられる形となり。
「――勝負、あったな」
 組み付く男の手を振り払い、スクラップフィストによる打ち下ろしが放たれる。狙いは、男の顔面、そのすぐ横。
 降参、とでもいうように組み付きを解き両腕を上げた男を見て、テリブルは改めて周囲へと問いかけた。
「まだ、私に挑む奴はいるか?」
 いいえ、滅相もない。その勝負を見ていたほかの参加者は、揃って首を横に振ったという。

成功 🔵​🔵​🔴​

エクサ・カラーヌド
【POW】バイクデ参戦ダ。
何、猟兵ニハ宇宙バイクハ珍シクナイシ、俺ハ「テレビウム」ダ。「現地民ガ憧レテ真似シテイル」ヨウニシカ見エナイハズ。

トハイエ全力デ轢ク訳ニハイカンナ。
操縦+騎乗デノジャンプ、ウイリー走行ヲ駆使シテ上手イコト「体当タリ」デ済マセツツ勝チアガルノガ吉カ。
勿論反撃ハ来ルダロウガ、野生の勘ヤ見切りデ上手ク対応シタイ所ダナ。

※アドリブ・絡み歓迎



●踊るバイク
 会場の一角に、いわゆるライダー系の猟兵に憧れてこのゲームを始めた者たちが集まる一角があった。ある者はスクラップで形だけ真似たバイクに、ある者はどこかの建物をコンコン叩いて入手した機械馬に。小型のモノでいえばスラスターがついたローラーブーツや、電動アシストのついた自転車といったところまで、様々な「乗り手」であるプレイヤーたちが集まっていた。
 勝負の方法は馬上槍試合のジョストのようなものが主流で、一定距離で見合った後に乗り物で加速、互いの一撃を入れ合って立っていた方が勝利、という風であった。引き分けの場合はこの手順を繰り返すが、大半は1撃、多くても5撃の間に決着が着いている。生放送では1戦ごとの時間が短く済むこともあってか案外人気の分野のようで、観客の数は他ジャンルと比べても遜色がない。
 さて、そのような中にあって、バイクに騎乗するテレビウムが連戦連勝の絶好調であり、観客の注目を集めていた。何を隠そう、その連勝中のテレビウムこそが猟兵としてこのゲームに参加しているエクサ・カラーヌド(テレビウムのスターライダー・f02365)である。
 このゲームに詳しいであろう何人かの観客が、あんな強い奴いたっけ、などと囁きを交わしているが、なにせエクサは種族的には正真正銘キマイラフューチャーの出である。いつのまにか、凄腕のダークホースが出場していたぞ、という形に噂は収束していくこととなる。
(トハイエ、全力デ轢ク訳ニハイカンカラナァ……)
 当のエクサは噂のことなど意に介さず、むしろ問題はいかに対戦相手を傷つけずに勝利するかという所にあった。曲芸走行でここまで勝利を重ねていはするものの、いつもの調子でやってしまうとうっかり対戦相手を轢いてしまいそうになる。バイクの出力調整や突撃をかける角度など、乗り物の性能差が大きいが故の悩みでもある。こういった悩みは、他の猟兵たちと比べると独特の悩みなのだろう。
 ウーン、と砂嵐混じりの画面に疑問符を浮かべながらエクサが首を捻っていると、対戦希望者が来たぞ、と先ほどからほぼエクサ専任のような形になっている審判が声を掛けてくる。
 OK、と画面に表示して答えて、ひとまず悩みは横に置いて次の試合へと意識を集中。最初のうちは初心者に毛が生えたようなプレイヤーが多かったものの、今はもう、油断をすると猟兵として戦い慣れているエクサですらひやりとするようなライディング・テクニックを持つプレイヤーとの勝負も増えている。
 奇しくも、次の対戦相手はエクサと同じバイク乗り。広く取られたバトルゾーンで向かい合う距離は100m程。乗り物が同じとなれば、あとは乗り手の技量がモノを言う勝負だ。エクサがハンドルを握る力も、緊張と共に高まる。
 ドルン、というやや低いエンジンの起動音。エンジンの拍動に身を任せつつ、試合開始の合図を待つのはレースととてもよく似た感覚。
 ――試合はじめっ!
 エクサはその声と共にアクセルを全開。僅かにタイヤが空転するが、重心を後へ移せばそのままウィリー走行へ。
 一方、対戦相手は前後2輪を設置させての安定した滑り出し。
 初動は見事に前輪を誇示するエクサと、地面に吸い付くような対戦相手とで対称的になり。
 ――すぐさま、2台のバイクは激突する。
 その交叉の瞬間を順番に説明しよう。
 エクサの対戦相手が狙ったのは、重心を低く置いて正面から突撃することによる全重量を活かした突進。対して、エクサが選んだのはこれまで通りの曲芸走法。対戦相手の選択は、その突撃がしっかりと当たっていたのならばこの上なく有効なものだったろう。曲芸走法を取るところに、より安定した走法でぶつかればバランスの悪い曲芸側が吹っ飛ぶに決まっている。
 対戦相手の不運があるとすれば、それは相手がエクサだったことだ。彼の曲芸走行は確かな操縦技術に基づいており、それをアシストするのは戦場で磨かれた勘働きだ。
 ウィリー走行開始と共に、相手が重心を低く持っていることに気付いたエクサは正面からの激突を避け、横合いから相手を転ばせることを選択。ウィリーから前輪を落とす勢いで後輪を跳ねあげ、そのままバイクを横方向に回転させたのだ。バイク同士がすれ違う瞬間にそれをやったものだから、相手の突撃をいなす次いでにふっ飛ばし攻撃を仕掛けるような態だ。
 ――結果として、地面を滑る音と共に派手に吹っ飛んだのはエクサの対戦相手。対して、エクサは対戦相手のスタート地点で悠々とバイクのターンを決める。エクサの画面には、Victory! という文字が浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リシェリア・エスフィリア
始まりが遊びでもひたむきにに打ち込めば、強くなる
……とてもいいこと
裏に妙なたくらみがないのなら、応援したいブーム

……私の見た目はそれほど強そうじゃない。大きくて強そうな人に戦いを挑む
そのほうが、目立ちそう
魔剣は鞘に納めて封印。叩いたり突いたりする棒として使う

幾多の使い手が遺した【戦闘知識】を基本に、【武器受け】、【オーラ防御】で相手の攻撃を受け流す
耐え抜いて、
【鎧砕き】……まではいかなくても、それ相応の力はある、
【傷口を抉る】……まではいかなくとも、どう打てば痛いか、は理解している
防御を砕く激痛必至の大きな一発で逆転を演出してみる
後遺症が残らない程度には、加減しておく(精一杯の【優しさ】)



●魔剣を鞘に封じて
 女性プレイヤーは、決して珍しくはない。けれども、リシェリア・エスフィリア(蒼水銀の魔剣・f01197)のように可憐な姿をしたプレイヤーは確かに珍しい存在だろう。キマイラフューチャーの住人の中でこの武闘をプレイするような女性プレイヤーといえば元から荒々しい気性の者が多く、そのファッションも可愛さや美麗さよりも、機能性やカッコよさを重視していることが多い。つまりは、レースのついやブラウスや上品な仕立てのスカートを纏う者は相当珍しがられる。
 そんな可憐な恰好の彼女――リシェリアの対戦相手は彼女と同じく剣使い。どこの猟兵に憧れたのか、リシェリアが見上げなければ顔を見れない程の巨躯に見合う大剣のような武器を持っている。
 一目見てその勝負の行方を予想しろと言われれば、大半が男の勝利を予想することだろう。まず体の大きさが違う。次いで武器の大きさが違う。さらに言えば、リシェリアとかいうあの女の子の恰好は、とても戦いに向いたものには思えない……それが観客たちの下馬評である。
 が――その予想は見事に覆されることとなる。
 男の側が、ぱっと見はコスプレグッズのように見えてしまう魔剣――すなわりリシェリアの本体――や体躯の差からリシェリアを甘く見ていた部分がないわけでもない。
 だが、そうだとしても男のありとあらゆる攻撃全てを受け流し切り、その上で的確なカウンターと最小限と思える数発の打撃で男を沈めたリシェリアの技量はあっぱれの一言に尽きるだろう。可憐な服装に加え、その体躯や可愛さからは予想すら難しい圧倒的な剣舞の技量。生放送も含め、リシェリアは瞬く間に時の人扱いである。
 痛烈な打撃で見事に膝を着かされた男の側もどこか満足そうな表情でいるのが、この試合がヤラセや八百長でないことを確かに裏付けていた。
「始まりが遊びでもひたむきにに打ち込めば、強くなる」
 その言葉と共に鞘に収めた魔剣を腰に納めるリシェリア。そう声を掛けられた側の男は、怪訝そうに首を傾げるしか出来ない。
「……とてもいいこと。実際、あなた、強かったわ」
 ここで漸く、対戦相手の男も得心いった表情となる。要するに試合後の握手の代わりなのだろう、と受け止めて、彼は膝が笑いっぱなしで立てなくて済まない、と詫びながら軽く手を上げて挨拶とした。
 その挨拶を受け取り、対戦相手に一礼した後にリシェリアはその場を離れた。
 ふぅ、とため息をひとつ。リシェリアは一試合終えて、改めて自分がこの依頼に参加した理由を思い返す。
 もともとは純粋に「カッコイイ猟兵を真似したい」という一心から誰かが作り上げたであろうこのゲーム。何かを作り上げたい、というそのひたむきな情熱は、質こそ異なるかもしれないが方向性としてはリシェリアの生まれと重なる部分が少なくない。幾人もの思いと努力の結実……それがこのリアルファイトゲーム「武闘」なのであれば、リシェリアもまたヤトリガミの一族が連綿と残してきた結果の極致なのだ。
 ――そう、リシェリアにとって、この「武闘」というゲームを悪用しようと企んでいる怪人は許し難いものなのだろう。
 このゲームを純粋に楽しんでいる人を、純粋に応援したい。怪人の魔の手を心配することなく、楽しめる環境を用意したい。
 そう自分の内心を振りかえり、リシェリアは次の対戦相手を探して雑踏へと姿を消すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

蘇芳・薊
こんなイベントがあるのもこの世界ならではですよね
敵が現れるまで一般参加者として、参加者さんと楽しく気持ち良く戦いましょう!

連勝していてオブリビオンに狙われそうな方を探してから、声を掛けて戦いを挑みます
私の外見で相手にしない様なら、その方の技の利点等を褒めちぎってそんな素敵な方と戦ってみたいと本心も交えて説得します
(情報収集,戦闘知識,コミュ力)

戦う場合は周囲を見て、変異しても良さそうなら腕だけそうします
攻撃を技能を駆使して見切り、カウンターを叩き込みましょう
戦闘後は近くのカフェ等で鍛錬のお話を聞きたい等と言って、その場から逃がせたら一番良いですね
(戦闘知識,第六感,見切り,カウンター)



●連勝キラー現る
 さて、詳しい説明をするのが遅くなってしまったが、そもそもこのリアルファイトゲーム「武闘」のイベントで勝ち残るには何が重要であるかを説明させて貰おう。
 単純な勝率? それとも、どれくらい生放送で視聴率を稼いだか?
 怪人が設定した条件は「圧倒的な強さ」を示す数字――つまり「連勝数」である。
 どのような相手と戦っても勝利し、かつ、付け焼刃の対策を講じようともその程度ではハンデにすらならない強さ。つまり、何人を相手に勝ち続けるか。それが怪人の重視した戦闘員としての合格ラインだ。
 それを知ってか知らずか、的確にその連勝ラインを潰して回っている猟兵がいた。
 彼女の名は蘇芳・薊(悪食・f01370)という、UDCアース出身のグールドライバーだ。敵である怪人が現れるまでは一般参加者として参加者さんと楽しく気持ち良く戦おう、という気持ちはこの依頼に参加した猟兵の誰もが持っていた心情だろう。それに加えて、連勝して目立っている者を相手して回ろう、というのが彼女ならではの行動であった。
 彼女の刻印武装――異形の腕も、この世界ではスクラップフィストの一種と認知されて騒がれない。これもまた幸運であろう。
 ある粗野なプレイヤーは彼女の外見から弱いプレイヤーではないかと侮って顔面にカウンターパンチを貰い、ある紳士的なプレイヤーは性差を理由に一度は勝負を断ったものの、薊の美辞麗句で技を褒めちぎる熱烈なアピールに負けて勝負すればその剛腕でノックアウトされた。
 その誰もがもうあと数連勝していれば怪人の目に適っていたであろう強者たちだ。薊が、そんな気は無くとも怪人の暴威に晒されるという危機から救ったのである。
 そうしていればいつの間にか「連勝キラー」等という噂が会場で囁かれるようになり、ついた尾ひれはその「連勝キラー」に勝てれば本戦に出場できるのではないか、などという荒唐無稽の説である。生放送である程度顔が売れてきたこともあって、いつの間にやら薊の周囲には彼女への挑戦者で列が出来ていた。
 そうやって十数人、しかも当初の狙いから外れた者も相手にしてそろそろ疲れてきたな、と思っていた薊の前に、久々に連勝プレイヤーが姿を現す。
「あなた、結構強いでしょう?」
 アンタを倒せば、晴れて20連勝だ。そう答える対戦相手を見て、これで一区切りにしようかという思考が湧く。
「奇遇ですね、わたしも、あなたを倒せば20連勝です。いい区切りですから……ひと勝負終わったら、休憩がてらお茶でもどうですか?」
 連勝キラー・薊の申し出に、対戦相手よりも周囲の観客の方がどよめいた。
 ――だったら、勝たないとメンツがねえよな?
 そう答えて構えを取る対戦相手に、薊は満足そうな微笑と共に刻印武器を前に出した構えた。

 蘇芳・薊、20連勝。
 20戦目の決まり手は、試合開始後1分ごろに放たれた鋭いカウンターアッパーが相手の顎を捉えたことだったという。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『住民戦闘員化計画を阻止せよ』

POW   :    正面突破あるのみ、怪人を張り倒して救出します。

SPD   :    怪人よりも早く一般人に接触、そのまま救出します。

WIZ   :    巧みな話術で怪人の気をそらし、気付いた時にはもう救出しています。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●主催者、登場
 戦闘員候補の選出が終わったのか、何名かのプレイヤーとそれに紛れた猟兵たちに運営からの呼び出しが掛る。
 呼び出しの名目は、本戦出場者が決定したというアナウンス。それに伴って、本戦出場者がメイン会場への集合を促されるという形だ。
 いつの間にか会場での武闘プレイは終わり、参加者の大半が本戦を見るためにメイン会場に集まり始める。
 
 ――本戦出場者に猟兵が紛れている以外、今のところ、ティラノサウルス怪人の計画は順調に進行しているのだろう。
 なんせ、観客たちが集まったメイン会場で、かの怪人は堂々とそこに姿を現したのだから。
 ……まずは、観客の避難や戦闘員候補として呼び集められているプレイヤーの救助だ。ここからはユーベルコードも思う存分に使う事が出来る。
 さぁ、怪人の企みを砕こう。
蘇芳・薊
使用技能【POW】
私が得意なのは力押しです。慣れない言いくるめよりも、襲い掛かって時間稼ぎをした方が貢献出来ると思います!

演説や説明の類があるならその途中に質問等をして自然に近寄りながらゆっくり力を溜めつつブラッド・ガイストで攻撃力を強化して襲い掛かります!
(コミュ力1,時間稼ぎ1,暗殺1,忍び足1,先制攻撃1,だまし討ち1,力溜め1)

その後戦闘に入れたなら味方に救助をお任せします。私は怪人が参加者へ接触出来ない様に敵の攻撃は意識を集中して防ぎ、仕留められそうなのに仕留められない位の状態で敵の注意を引き続けます
(武器受け1,時間稼ぎ1,第六感2,見切り2,戦闘知識2,カウンター1)


リシェリア・エスフィリア
……ようやく首謀者が姿を現してくれたね。
直ぐに倒してしまいたいところだけど、まずは参加者を避難させることが大事
けど、あんまり口は上手じゃないし、追いかけてこられても困るから
ティラノサウルス怪人の気を引いて、その間に参加者に逃げてもらうように動こう

【POW】行動
飛び込んで一撃を加え、ティラノサウルス怪人の注意をこちらに向ける
【魔術師の記憶】を使用
「私が止める。……早く逃げて」

かつての使い手が得意とした戦技も、この魔剣には刻まれている
自由自在、縦横無尽に飛び交う氷の花弁。定めたものだけを切り裂くこの技を防御壁のように展開し、ティラノサウルス怪人の追撃を防ぐようにする



●序を飛ばし、急
 姿を現したティラノサウルス怪人に、ざわりと会場がざわめく。まずは舞台上に上った数名の猟兵を含むファイナリスト十数名の中でそれが巻き起こり、次第に観客へと伝播するような形である。
 ――なんだ? 怪人のコスプレか?
 ――まさか最終戦は主催者とのバトルとか?
 がやがやと、どちらかというとサプライズを期待するような能天気さで観客たちが好き勝手に喋る中、舞台上では怪人を間際にみたファイナリストたちは額に汗を流すハメになる。至近距離……すでに互いが互いの間合いにいる状況。ここまで勝ち残ってきたプレイヤーだからこそ、自分の生殺与奪権が目の前の恐竜面した怪人に握られていると「判ってしまう」のだ。
 ファイナリストと目された、少なくとも強者であるはずのプレイヤーの誰もが口を開くことすらできないその状況で、一歩、前に進み出る姿がある。
 猟兵――蘇芳・薊である。
「主催者さん、ひとつ、質問よろしいですか?」
「……ああ、いいとも?」
 さすがに目前にその姿を捉えれば、その女が己の仇敵であることに気付くのだろう。緊張の色を言葉に滲ませた怪人が慎重に口を開く。
「ファイナリストとして集められましたけれど、一体、どういう種目なんでしょうか?」
 何の気なしに質問を投げかけているように見せかけながら、薊はゆっくりと腕を変異させて臨戦態勢を整えていく。肌の色や形状こそ平常時のままだが、その内部では刻印で飼いならされたUDCがめりめりと音を立てんばかりに力を溜め込み続ける。
「ああ、まぁ、なんだね……」
 怪人の側もさるもので、薊から視線を逸らさないようにしながら状況を確認するように視線をあちこちに飛ばしている。この場にいる猟兵が一体何人であるかを探っているようであり――。
「――主催者とのデスマッチなんてどうだい? もちろん、白旗なんて舐めたマネは無しだ」
「――それは随分と、刺激的な競技ですこと」
 空気が割れる音というのは、そのような音を言うのだろう。ティラノサウルス怪人が繰り出したストレートと薊のユーベルコード「ブラッド・ガイスト」が正面からかち合って派手な音を鳴らしたのだ。
「ちなみに、同時対戦人数に制限はありまして?」
「無しだ。まとめてかかって来るといい、イェーガー」
 140センチ少々という矮躯を押し潰さんとする怪人。体のサイズでは怪人側に優位があり、拳同士がぶつかり合って組み合ったこの状況は薊にとって望ましいものではない。
「なら、お言葉に、甘えるわ……!」
 そこに介入するのは、薊と同じくファイナリストの一人となっていたリシェリアだ。予選の時とは異なる装備の彼女は、深い蒼の刀身を持つ両刃長剣を振りかざして薊と怪人の間に割り込み、拮抗状態を崩す。
「私も、参戦よ――ほかの人は、早く、逃げて」
 背後に居並ぶファイナリストたちに向け、鋭い斬撃からの連携で氷細工の花びらを展開しつつ言葉を投げる。その言葉で、生猟兵に歓喜してサインをもらいに行けばいいのか、それとも怪人を恐れて逃げればいいのか迷っていた数名のファイナリストが離脱を決意する。
 ――ありがとう! これ、生放送されてたら宣伝しとくからな!
 ――生猟兵だぁ! 後で絶対、サインもらいにいくからね!
「……言ってる暇があれば、早く」
 どこか暢気にも聞こえる言葉を投げるファイナリストたちにキマイラフューチャーの住人ならではの強かさを感じつつ、リシェリアは再度逃走を促した。
「彼らに逃げられると、困るんだけど……」
「――そう、なら、目論見通り」
 介入してきたリシェリアに向き直り、愚痴をこぼす怪人。リシェリアは精一杯の皮肉で返しつつ、相対する怪人に隙を見せないよう氷花弁の嵐――ユーベルコード「魔法使いの記憶」を広く展開する。
 一方、避難の方は最初の数名が逃げ出してしまえばあとは雪崩を打つようなもので、最初の数撃という短い間でファイナリストの大半が舞台上から逃げおおせていた。
「ああ、計算が狂ってしまうなぁ――こうなったらいっそ、誰でもいいんだけれど」
 逃げていくファイナリストたちを残念そうな表情で見送りつつ、それでも未だにティラノサウルス怪人の方には余裕が残る。牽制と前線維持だけならまだしも、真っ向からぶつかり合うにはまだ猟兵の数が足りないのだ。その上、猟兵側は避難するファイナリストや観客の方へと攻撃が向かわないように、といった気配りまでしているのだからなおさらである。
「全員がここから逃げてしまう前に、君たちを倒さなきゃいけない」
 鋭利な爪での薙ぎ払いを、薊は変異した腕で受け流し、リシェリアは氷花弁の嵐を防御膜代わりにやり過ごす。
「やれるものなら――」
「……やって、みて」
 返す言葉は、自然とシンクロした。
 2人の、短くて長い耐久戦の幕が開ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鷺宮・志乃
……呼ばれなくて、よかったぁ
そうだよね。うん
戦ってもいないし配信もされてないから…これで呼ばれてたら

…ううん。えっと、お仕事しないと

観客席の隅っこで怪人さんの様子を伺いながらスマホで【情報収集】
会場内の地図と…出入り口までの経路を調べて、猟兵の皆に…恐る恐る送信。
少しは役に立てればいいな

でも。…どうしよう
私のユーベルコードは…【恐怖を与える】ものばかり
こんなに多くの人の前で使ったら……怖がられちゃうよね?

他の皆のお邪魔をしないように避難の誘導と…それから

…あの、危ないですよ?
早く逃げて下さい…っ…その、

怪人さんと喧嘩しようとする人は
『恐喚』した火をちょっとだけ見せて、逃げてもらいます…うぅ…



●その青を畏れよ~縁の下の力持ち~
 視点を変えて、ファイナリストに選ばれることなく、観客席での避難誘導に参加している猟兵を見てみよう。
 時間は少々さかのぼり、ファイナリストたちが舞台上から逃げ出すより少し前……ティラノサウルス怪人がその姿を現すあたりである。
 志乃はスマートフォン片手に会場の案内図を開き、大まかな地図と緊急時の避難経路といったものを調べていた。もっとも、ファイナリストの誘拐が目的であるティラノサウルス怪人がそのようなものを掲示している筈もなく、避難経路は会場ホームページに掲載されているものだ。怪人の根回しによって封鎖されるなどして今回のイベントではいくつか使えない場所もあるが、前もってそれを調べる志乃の存在により避難誘導はある程度スムーズに進むことだろう。
「これで、よし……それにしても」
 呼ばれなくてよかった、という呟きは溜息と共に喧騒に吸い込まれた。
 志乃の予選成績を言うのなら、0勝0敗0引き分けである。対戦を申し込んだ相手が片っ端から泣いて謝る、青ざめた表情をしながら棄権を宣言する、挙句の果てには土下座して勘弁してくださいと言う、というトンデモが連発された所為だ。もっとも、志乃としては生放送されず、ファイナリストにも選ばれずこうやってひっそりと会場に潜伏している方が落ち着くようだが。
 考え事に沈みながら、志乃はダウンロードした会場マップや、使えるであろう避難経路を記したファイルをメールに添付。会場で行き会った他の猟兵や、後方で転移ゲートを守るグリモア猟兵にそれを一斉送信。情報共有を図る。
 ――空気が弾け飛ぶような音が鳴ったのは、その時だった。
 好奇心を主軸としていた観客たちのざわめきが、その音をきっかけに緊張の色を孕んだものに変わる。
 わぁ、と、恐怖と歓喜の入り混じったどよめきが上がり、ある者は会場の出入り口へ、ある者は舞台めがけて走り出す。
「あ、っと――お仕事しないと」
 どのようにしてユーベルコードを使うか、と。己の内面と向き合うことにもつながりかねないその思考に沈みかけていた志乃が、どよめきを受けて己を取り戻す。
「――あの、危ないですから……」
 逃げようとしない、下手すれば舞台の方めがけて走り出している観客たちの波に乗りながら、志乃はユーベルコード「叫喚」を起動する。
「この先は、もっと、恐いものがいますから……早く逃げてください、ね?」
 本当にこの使い方でいいのだろうか、という自問自答は、今は胸の奥にしまっておく。呼び出した青い炎の鷺が、志乃を中心として観客たちをねめつけ――予選で彼女から逃げ出したプレイヤーと同じような反応を引きずりだす。
「うぅ……ほら、早く、逃げてっ――!」
 わぁ、という2度目のどよめき。今度は、その大半が自分に原因のある恐怖の声であることが、少なからず志乃の心に痛かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
【SPD】行動
…こうなるだろうって観戦者の中に紛れ込んでいて正解だったね。
みんなの試合を見ていて思ったけど、私はああいうのはちょっと苦手だったし…

予め観客に紛れながらイベント会場の避難経路を下見をしていたし、鷺宮さんからの情報提供もあったけど…一番怖いのはパニックになって我先に逃げようとする人の波と、押し倒されたりしてその波に飲み込まれる人、ね。

怪人はそうなった人達を見逃さないだろうから、先に避難者と接触。
怪我をしていたら治療、不安がっていたら励まして気持ちを落ち着かせます。
…まさか学校の避難訓練の経験が生かされるなんて、ね。
(医術5、救助活動3、優しさ1、言いくるめ3、鼓舞1、コミュ力1)


シキ・ジルモント
◆SPD
アドリブ歓迎

めーる…ああ、あの便利な板か
あいにく俺は持っていない、グリモア猟兵に情報を提供してもらおう

受け取った情報と自分で歩いて得た会場の構造を照らし合わせ、状況に合わせた適切な避難経路を選択する
ゲームに参加しなかった分、会場を見ておく時間はあったからな

出口以外へ向かう者達を『追跡』し出口へ誘導する
人波をすり抜けて進み易いよう、人の姿より体が小さい狼に変身して追跡
ユーベルコードも使って人波の動きを『見切り』、回避
素早く対象の元へ向かう

話を聞ける状況でければ進路を遮って回り込み、人に戻って上空へ向けて銃で『2回攻撃』
銃声で驚かせて足止め、改めて避難誘導を行う
「出口はあっちだ、案内する」


マイア・ヴェルナテッド
 【リザレクトオブリビオン】で呼び出した死霊騎士と死霊蛇竜を先に足止めを行っている猟兵の援護に向かわせます。
「さて、怪人の方はとりあえずこれで良し…と、この間に一般人の避難を進めてしまいましょう」

 後は一般人の避難誘導を行います。怪人に突っかかっていこうとする一般人には【誘惑】から【礼儀作法】果てはちょっぴり【生命力吸収】などで弱らせるなどして会場の外に押し出すなど口八丁手八丁で避難を進めます。



●ゲームは終わる
 舞台上でティラノサウルス怪人と戦う2名の猟兵の元に介入する影が二つ。死の匂いを色濃く纏ったそれは、マイアがユーベルコード「リザレクトオブリビオン」で呼びだした死霊である。
「さて、怪人の方はとりあえずこれで良し……と」
 突如相手方の人数が倍加する形となり、舞台上ではこれまで防戦一方だった猟兵たちに僅かなりとも攻撃の機会が生まれていた。消極的な牽制から積極的な足止めへと戦局が推移するのを見届け、マイアは観客席を振りかえる。
「あとは、この間に一般人の避難を進めてしまえば――」
 と、逃げる者やその場に残る者が混在する観客たちを見ながらマイアが呟いた瞬間、空気の破裂する音が2連続で響く。
 すわ、グリモア猟兵の予知に無かった敵の増援か、と身構えるマイアだが、その視線の先で目があった相手を認識し、すぐさまその構えを解く。
「――すまない、逃げようとしない奴らの注意を惹こうとした」
 ハンドガンの銃口は上空を向いている。引き金を引いたのはシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)だ。シキの側もマイアを視認してすぐさま発砲の理由を述べており、すぐさま連携の相談が始まる。
「少し驚いただけよ……案内の方はお願いしても?」
「――いや、それならもっと適任がいる」
「適任?」
「ああ。避難経路の下見を済ませて、上手く誘導してる奴だ。最終的な誘導は、俺もそいつに任せている」
 短く現況確認の言葉を交わす間に、発砲を聞きつけてそこに駆けつける猟兵の姿がもうひとつ。メディカルポーチを腰に吊るした秋月・信子(魔弾の射手・f00732)である。
「シキさん、発砲が聞こえました――誰かパニックでも?」
「いや、数が多かったから纏めて止めるために使った。あと、猟兵がもう1人増えたぞ」
「マイア・ヴェルナテッドよ……避難誘導はあなたが中心で?」
「秋月・信子です――学校で避難訓練をしたことがあるので。あと、怪我人の手当ても一部」
 会話を交わしながら、その間にも3人はどこへ逃げれば良いのか判らない、といった表情の一般人たちに手で避難経路を指示。そうもしていれば、暗黙のうちに互いの役割分担が決まっていく。
「避難経路にはメインゲートを使っています。そちらへ誘導を」
 信子はそう一言置いて、避難経路の方向を手で示すとそちらへと走り出す。こうやって猟兵同士で情報共有している間にも、避難する者の中にはパニックに陥る者や怪我をする者がいるかもしれないのだ。それらを制し、混乱なく送りだしていく段取りの良さは、やはり経験によるものだろう。
「了解した、地図はグリモア猟兵から貰っている――俺は時計回りで」
 シキはその言葉と共にユーベルコードを発動。ワイルドセンスの効果も併せて狼の姿へと変じ、観客たちの間を縫うようにして会場の中を駆けていく。途中、逃げまどう者がいても、彼の鋭敏な感覚は誰ひとりとりこぼすことなく誘導しきる。途中、何度か拳銃に頼る場面もあったが、狼モードでの移動速度も相まって避難誘導は迅速に進んでいく。
「では、私は反時計回りで……途中、怪人の方に突撃している方がいたら、少し実力行使をするかもしれませんので、ケアはお願いします」
 シキとは逆側を担当すると宣言したマイアは、その目立つ容姿でもって観客たちの注目を惹きつけ、避難経路を示していく。マイアが想定するよりは少なかったものの、猟兵たちの生バトルを目にして興奮した者や怪人との戦いに加勢しようとする者は、マイアの言う実力行使――かなり手加減した生命力吸収で活気を抜かれることとなった。後は、マイアの指示で避難経路に誘導するだけだ。活気を抜かれた者たちの対処に多少信子が手間取ることになったが、それでもトータルで見れば避難誘導は着実に進行している。
「――こっち半分はオーケーだ」
「ええ、私の方も。取りこぼしはありません」
 互いに会場を半周したシキとマイアの2人は自分たちが辿ってきた経路を一度振りかえる。そこには、空になった観客席が残っているだけだ。
「念のため、ダブルチェックで」
「承知しました。では、メインゲートで」
 情報共有は迅速に。万が一の逃げ遅れを探し、2人はすれ違うようにしてまた会場を走りぬけていく。

 ――最終的に避難に要した時間はおよそ15分。
 猟兵たちとの戦闘に気を取られていたティラノサウルス怪人は、気付けば空になっていた会場の様子に悔しそうな咆哮を上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ティラノサウルス怪人』

POW   :    ザウルスモード
【巨大なティラノザウルス】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ティラノクロー
【鋭く長い爪】による素早い一撃を放つ。また、【装甲をパージする】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    学説バリエーション
対象の攻撃を軽減する【羽毛モード】に変身しつつ、【体から生えた鋭く尖った針のような羽毛】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●実戦が始まる
 空気を震わすティラノサウルス怪人の咆哮。
「――やってくれたな、イェーガー。仕込みに掛った手間が、全てパァだ」
 ぎろり、と。会場内に残る猟兵たちを睨みつける怪人の目線は鋭い。
「こうなったら、お前らを捉えて、エリート戦闘員に仕立てなければ大損だ」
 再度の咆哮――それはユーベルコード「ザウルスモード」の発動キーであった。長い咆哮と共に怪人の体が巨大なティラノサウルスへと変わっていく。全力の戦闘フォーム……それは、裏を返せば怪人側の余裕が無くなったことを示している。

 ここからは、ゲームではない――実戦の時間だ。
秋月・信子
長い咆哮を経て、怪人が巨大なティラノザウルスへと変貌していく。
空気が震え、音の波が彼女を叩きつけ恐怖を覚えた。
しかし、ここで負ければ怪人が宣言した通り、己や仲間たちはエリート戦闘員とやらに改造されるだろう。

決意を秘めた目でザウルスモードで巨大化する怪人を睨み返す。
確かに巨大化すれば力では優位となる。
太古に栄えた恐竜もその巨大さを武器に繁栄を極め、そして滅んだ。

大きく開かれた口に銃口を向ける。
その巨大さの前には拳銃の弾は棘が刺さった程度だろう。
だが、彼女が放つのはユーベルコードという名の魔弾だ。

「燃えろ……」
炎をイメージし、ユーベルコード「紅蓮の魔弾」を口に撃ち込んだ。

(先制攻撃2、戦闘知識3)


蘇芳・薊
小さい状態でも正面切っての力比べで負けそうでしたが、受け流したり回避続ける事ならまだどうにか出来る筈です!

敵は早く動く物を無差別攻撃し続けるとの事なので、化身変生を使い身体を強化してから真っ先に敵へ攻撃します
その後出来るだけ味方のいない方向に走り、戦闘知識を活かし敵の気を引き付けます!
敵の注意が味方へ行きそうなら範囲攻撃等を組み合わせ注意を改めてこちらへ向かわせて、味方が攻撃に集中しやすい様に頑張りますね
小さくても早く動きダメージを与えてくる敵なら無視出来ないですよね……?
(使用技能:武器受け,時間稼ぎ,第六感,見切り,ダッシュ,戦闘知識,範囲攻撃,先制攻撃,鎧砕き,怪力)
アドリブ・連携大歓迎



●激突
 ティラノサウルスへと変じた怪人が猟兵に齎した第一の感情は――恐怖である。
 かつての世界の覇者。史上最大級の肉食獣。例え実物と相対したことがないとしても、遺伝子レベルに刻まれた「弱者としての記録」が彼らの足を、一瞬とはいえその場へ縫いとめる。
「――燃えろぉっ!」
 それを真っ先に破る裂帛の声。絞りだし、叫びとの境界線を孕んだ声と共に解き放たれるはユーベルコードを籠められた信子の弾丸……紅蓮の魔弾だ。信子の想念が籠められたその弾丸は、着弾と共に炎をまき散らす弾丸なのだが――それを見ても怪人は回避の様子を見せようとすらしない。己に勝る個人など存在せず、とでもいうように堂々と受け止める姿勢である。
 しかし、その堂々たる怪人へ挑むのは信子1人ではなかった。
 その紅の軌跡を追うようにして飛び出すは、もう1人の猟兵――薊。その突撃の速度は、先を行く紅の弾丸と距離を離されないどころか、追いつきそうな程のもの。
 恐竜化した怪人の大口を狙った魔弾は吸いこまれるようにしてその喉奥へ。
 そして、その口に封をするようにして薊の強烈なアッパーカットが怪人の大顎を打ち上げる。猟兵たちの足を縛っていた咆哮がその一連の連携で漸く途切れ――暫く遅れて怪人の口からちろりと炎が零れた。薊の速度に反応して恐竜の短い前脚が振りまわされるが――ここでは元の小柄さが味方した。薊はすんでの所で凶悪な鋭利さを誇る恐竜怪人の爪を回避せしめる。
「……巨大化すれば、確かに力では優位となる。けれども、恐竜が栄えたのは太古のことよ!」
 ユーベルコードの相性が悪いのか、決定打にも致命打にも遠い弾丸。薊の追撃で口を閉ざされ、その魔弾の炎で体内を舐めつくされてなお余裕の様子を見せる怪人に対し、けれども信子は毅然と言い放った。怪人側の返答は、ただ短い咆哮のみ。しかし、1度は打ち破った恐怖、2度目の咆哮に怯む猟兵など、もはやこの場には只一人としていない。
「正面切っての力比べならともかく、回避し続けるくらいなら――攻撃は、あなた達に任せます!」
 声こそ以前と変わらずとも、その姿は既に化生のソレ。小刻みなステップや変生した体を用いた最高パフォーマンスの走りで全力で時間を稼ぐことを宣言し、薊は恐竜化した怪人へ毅然と立ち向かう。その速度もあいまって、恐竜化怪人の注意は完全に彼女が引き寄せている状況が生まれようとしていた。
 そして――2人の行動が、後に続く猟兵たちの呼び水となる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

テリブル・カトラリー
デカイな。パワーも耐久力も相当だろうが、
それだけこちらも当てやすいという事だろう。

地形情報を収集。弾丸を叩き込みやすい地形へ移りながら
フルバースト・マキシマム使用。
弾丸を叩き込みつつ敵を観察。

彼らの遊戯に託けて誘拐を企んだ。
そのツケを払ってもらう。

隙を見てブースターで敵の足元へ飛び込み
そのまま全力で敵片足へ向けてスクラップフィストを叩きつける。

転倒する、しないにせよ、その場を素早く離れ、銃撃を継続
此方へ顔を向けていたのなら、丁度良い。
顔面に向けて砲弾を叩きつけてやろう。


シキ・ジルモント
◆SPD
絡み、アドリブ歓迎

俺達を戦闘員に、だと?
面白い、返り討ちにしてやる

味方との協力は積極的に行う
敵の攻撃を受けにくいよう少し離れて、味方への攻撃を『援護射撃』で妨害する
援護をしながら攻撃のチャンスを窺う

敵の攻撃は速さを活かして回避を試みる
こちらの攻撃範囲ギリギリで行動するよう心掛け、接近されたら『逃げ足』で離れ攻撃範囲を離脱する
離れ過ぎたら近付き、適切な距離を保つ

よく観察して動きを『見切り』、ユーベルコードを発動
攻撃力を下げると同時に動きを妨害
ユーベルコードでできた隙を突いて銃で攻撃、更に『2回攻撃』で連続攻撃を仕掛けて駄目押し
味方の攻撃で傷が付いている箇所、脆くなっている場所があれば狙う


マイア・ヴェルナテッド
 さて、避難も終わりましたし後は倒すだけですね。手早く倒してしまいましょう。

【全力魔法】で【高速詠唱】した【ウィザード・ミサイル】に【呪詛】と【属性攻撃(闇属性)】を乗せたものを【二回攻撃】で乱射します。

 「…ちなみに、最新の研究だとティラノサウルス・レックスの羽毛説は間違っていることが判明したそうですよ?元々温帯~亜熱帯が生息域だったそうですし今までの化石からも羽毛の痕跡は無かったとか。」
 等と明日使えない無駄恐竜知識を語りつつ攻撃を加えていくわ。
 「本当に貴方ティラノサウルスなんですか?自分をティラノサウルスと思い込んでいる一般怪人なのでは?」
 等と精神攻撃も加えていきます。



●今を生きる狩人の逆襲
 咆哮による一瞬の停滞を引き裂いた2名の猟兵に、さらに3名の猟兵による攻勢が加わる。先ほどまでのように一般人を守る必要もない彼らの攻撃は一気に苛烈さを増した。
 最も判りやすいのは、マイアの纏うウィザードミサイルによる魔力矢の嵐だろう。都合、90発近い魔力の矢は先の咆哮が途切れてからの一瞬で編み出されたものであり、そしてその1発1発にマイアの持つ闇属性魔力が過剰なまで装填され、炎の色が黒く変化するほどだ。
「……ちなみに、最新の研究だとティラノサウルス・レックスの羽毛説は間違っていることが判明したそうですよ?」
「その羽毛説はともかく、あれだけデカければこちらも当てやすくて助かるな」
 そうやってマイアが口に上らせた冗句に応じるのはテリブル。
「後は手早く倒すだけ。攻撃、ご一緒しても?」
「もちろん――タイミングは合わせるよ」
 戦場で居合わせた猟兵たちの間に、多量の言葉は不要。その一瞬で呼吸を合わせ、マイアの指振りが合図となって放たれるのはマイアの魔力矢85発に加え、テリブルの持つ全火器による一斉射。
 連続し重なりあう事でひとつの大爆発と化した着弾結果は――しかし、恐竜化怪人の肌に少々傷を付け煤けさせる程度に終わる。
「本当に貴方ティラノサウルスなんですか? 自分をティラノサウルスと思い込んでいる怪物の間違いでは?」
 あまりの頑丈さに、呆れとも精神攻撃ともとれるマイアの呟きももっともである。
「言わんとするところも判るが――まだだ、押し込む」
「加勢する……今のを見て、俺の銃が有効に働く場所が判った」
「ああ、援護は――」
「任された」
 シキの持つハンドガン・シロガネの発砲音を合図にテリブルのブースターに火が灯る。
 適正距離を保ってのシキの援護射撃、さらには最前線猟兵による撹乱と囮を加え、テリブルの構えたスクラップフィストが恐竜化怪人の足目がけてねじ込まれるまで、必要とされた時間は秒に満たず。ブースターの加速で音を越えたその拳は、速度と重量、さらには握りしめた拳の握力を乗算して恐竜化怪人をほんの一瞬、宙に浮かせるだけの威力を持っていた。
「彼らの遊戯に託けて誘拐を企んだ、ツケ代わりだ。持っていきな」
 拳で殴り抜けながらの銃撃は行きがけの駄賃。強烈なステップを急制動のパイルバンカー代わりにして方向転換し、最後の一発に特製の砲弾をお見舞いすればさすがの威力に漸く恐竜化怪人が呻く咆哮を上げる。
 そして、テリブルの連続攻撃によって生じたその隙を見逃すシキとマイアではない。
 先ほどの高速詠唱に迫る速度で生み出されたマイアの魔力矢が呻く恐竜化怪人を追撃。
 そして、シキの連射はこの一瞬で恐竜化怪人の特定部位を狙い澄ました3点射、2連続のユーベルコード。
「――大人しくしていてもらおうか」
 暴れる恐竜化怪人の爪や尻尾をすんでのところで見切り、弾丸の威力を最も発揮できる距離からの射撃は見事に恐竜化怪人の四肢、そして目を打ち貫き――。

 悲鳴のような音色を伴う甲高い咆哮と共に、怪人の恐竜化を担うユーベルコード「ザウルスモード」がその効力を失い封印される。

 後に残るのは、強制的に恐竜化を解除されたティラノサウルス怪人。彼は燃えるような憎悪の宿る瞳で猟兵たちを睨みつけていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

秋月・信子
ここまで弱れば……後は、止めを撃つだけ……

――真の力を一部解放。
瞼を閉じ、意識を構えた拳銃に向けさせる。
「――形象、開始。 ――構造、解析。」

脳裏に手に持つ拳銃が浮かび上がる。

「――骨子、形成。 ――形象、完了。」

拳銃のイメージを崩し思い描き直すと、銃が光に包まれた。

「――ロールアウト、魔銃…解凍!』

光が消えると異形の魔銃を握っていた。
そして静かに瞼を開けると黒眼が蒼眼に変わっており、ティラノサウルス怪人を目に捉える。

「太古の失われた世界(ロストワールド)より甦りし覇者よ、再び…亡びなさい。」

天体衝突、火山噴火、氷河期…恐竜が絶滅した因子をイメージした魔弾を装填し、魔銃の引き金を静かに引いた。


シキ・ジルモント
◆SPD
アドリブ歓迎

あちらはまだやる気のようだ
恐竜化を解除させて尚戦意があるという事は、それ以外にも武器があるという事か
警戒は解かず、次の攻撃に備える

引き続き味方への『援護射撃』は続けつつ、相手を観察
ティラノクローを警戒、同時に攻撃のチャンスと判断する
身を軽くする為とはいえ装甲をパージするという事は守りを犠牲にするという事だ、狙わない手は無い
相手の動作を『見切り』、攻撃をユーベルコードも使って回避、死角へ潜り込み
装甲を捨てて防御が薄くなった部位へ弾丸を撃ち込む

即座に離脱する、と見せかける『フェイント』をかけて近距離に飛び込ませ、
再び装甲の薄い部位へ『カウンター』で『2回攻撃』のヒットを狙う


リシェリア・エスフィリア
楽しもうと、強くなろうとした気持ちをあなたは弄んだ。
その報いは、受けてもらうから。

【POW】行動
【蒼水銀の魔剣】にて攻撃
「……強い、硬い」
そして遅くもない
しかし、理性がないなら動きにパターンも出てくるはず
相手の攻撃をいなして隙ができる一瞬に、全力を叩き込む算段でいく

幾多の使い手が遺し、刃に蓄積していった【戦闘経験】を元に動きを読み取り、届く攻撃は【武器受け】や【オーラ防御】で被害を減らす
受ければ鎧ごと破壊し、傷は抉られ、生命力すら奪われる。それが魔剣の一撃だ。一撃でも当たれば無事では済まない事を、思い知ってもらう



●猟兵の砲路
 瞳に憎悪を宿らせたティラノサウルス怪人が、あらためて猟兵たちをねめつける。
「ここまで、てこずらされるとは――想像以上ですよ、イェーガー!」
 もはや巨大化は叶わない身。せめて誰ぞを道連れにとでもいうつもりか、全身の鎧をパージしながらの突撃で怪人は爪を振るった。恐竜化状態の一撃を越える速度の爪撃にあわや、前線の猟兵が切り裂かれようという、その瞬間。
「――楽しみ、強くなろうとした気持ちを弄んだ報いよ」
 キン、という甲高く澄んだ音。怪人の突撃がリシェリアの一閃に迎撃されたのだ。ユーベルコード「蒼水銀の魔剣」の力が宿ったその一線は、ただ怪人の突撃を弾き返すだけでなく、その爪の一部を鮮やかに切断してのけている。
「いくら強く、硬くても……ここから先、一撃でも当たれば、無事では済ませない」
 ゆらりと、魔剣の先端で防御の範囲を示しながらの一言。攻め手の一部を失い攻めあぐねた様子の怪人が低く唸り声を上げ――弾丸が跳ねる音に素早い回避を見せる。リシェリアに気を取られたその一瞬を咎めるようなシキの援護射撃だ。
「まだ、やる気なんだろう。他の手を見せてみろよ、オブリビオン」
 言葉と共に息もつかせぬ3点射。リシェリアとの連携を見せ、遠近双方が揃った攻撃の手を緩めることなく2人は怪人を追い詰めていく。
「ここまで弱れば……あとは止めを撃つだけです――少し時間はかかるけど、任せて!」
「「応!!」」
 そして、怪人を追い詰める2人の後で己の最高を放つべく用意を始める信子。応じるシキとリシェリアは、彼女を守るように怪人の前へと立ち塞がる位置を取った。
「――形象、開始――構造、解析」
「そのような大技を、撃たせてたまるか……!」
 厳かな宣言と共に、信子はゆっくりと拳銃を構える。あからさまに強力な一撃を用意するその様子にティラノサウルス怪人は無理を打ってでもシキとリシェリアの包囲を抜けようと抗うが、2人の連携はそれを許さず拮抗状態を保つ。
「――骨子、形成――形象、完了」
 信子の持つ拳銃が輝き、その形状を現状に最適化したものへと変える――信子の手を呑みこみ、その体躯と一体化した銃の形はただ異形の一言。銃口からはチリチリと焦げるような音が鳴り、引き金が引かれるのを待っていた。
「ええい、味方ごと撃つつもりか、イェーガー!」
「俺達が、そんなヘマをするとでも?」
「――もしそう見えているのなら、あなたの目は、フシアナ」
 リシェリアに爪を切り飛ばされつつも切り結び、あるいはシキの射撃をすんでの所で回避しながら焦り叫ぶ怪人に、前衛の2人は己への、そしてなにより仲間への信頼があると応えるのみ。
「――ロールアウト、魔銃……解凍!」
 かっ、と開かれた信子の瞳は、常とは異なる蒼の瞳。その蒼瞳がティラノサウルス怪人の姿をしかと捉えた。
「ロストワールドより蘇りし覇者よ、再び――滅びなさい!」
「クソがっ……! やめろ、やめろ、やめろぉ、その炎は――やめろぉおおおっ!!」
 最後の抵抗として渾身の回避を図った怪人の足をリシェリアの魔剣が切り払い、最後に残った幾枚かの装甲をシキの射撃が弾き飛ばす。そして、離脱する2人の間を駆けるのは赤熱した烈火の彗星。
「――また、滅びるのか……っ!」
 彗星魔弾の直撃を受け、ティラノサウルス怪人は燃え尽きるようにしてその姿を散らす。じじじ、と燃焼する音と共に灰の一片たりとて残らないのは、あるいはオブリビオンとしての特性なのだろう。
「過去は過去らしく、だ――ようやく大人しくなったな、オブリビオン」
 消えゆくオブリビオンに中指を立てるシキの言葉と共に、かの怪人は完全にその姿を消滅させるのであった。

●現地民の包囲網を突破せよ
 ――その瞬間、会場が圧倒的な歓声に包まれる。どこかで誰かが生中継をしていたのだろう。オブリビオンを倒した猟兵の姿に、現地の住民たちが興奮冷めやらぬ様子で押しかけつつあるのだ。
 急いでこの場から帰らなければ、無限握手会に終わりの見えないサイン会となるのは火を見るよりも明らか。
 もしかしたら怪人を相手取るよりも疲れるかもしれないその情景を想像し、猟兵たちはそそくさとグリモア猟兵の待つ転移ゲートへと走るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月16日


挿絵イラスト