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竜宮想花

#スペースシップワールド #【Q】 #お祭り2019 #夏休み

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●Under The Sea
 海中に咲く花は、月光の色。
 想いを篭めて口づければ、花芯からふわり、色づいて。
 想いに合わせた色となった花々は、天へと浮かんでいく。
 ふわり、ぷかり。ゆらりと揺れながら、上へ、上へ。
 どこまでいっても水しか無い世界を、仄かな灯りを放つ花たちが上がっていく。

 そこは全て、海世界。
 住まうは魚に、お姫様。
 魚が舞う宴会に、中庭には水晶の蓮咲く幻想郷。
 亀に誘われ、竜宮城へとご招待。

●絵巻物を手にした尾鰭のいざない
「竜宮城の話は知っている? サムライエンパイアに伝わる昔話なのだけれど」
 昔々、浦島は……。
 手にした絵巻物を広げながら執事人形の腕の中で童謡を小さく口ずさんだグリモア猟兵――雅楽代・真珠(水中花・f12752)が、君たちへと視線を向ける。
「僕は亀ではないけれど、お前たちを龍宮城へ連れて行ってあげようと思ってね」
 行き先は、リゾート船『アンダー・ザ・シー』。船の内部が全て海水で満たされた、海世界を体現できるリゾート船だ。リュウグウノツカイの形をした船でゆうらりと宇宙を漂い、通常は二箇所の決められた場所に定期便がドッキングし、ハッチを開けて巨大な亀型の乗り物で龍宮城へと案内される。
 一部の場所以外は水で満たされたこの船に人は住んでいない。住人は全て魚の形をしており、AI、機械にホログラム。全権限はスーパー”オート”タスク型”ヒ”ューマン”メ”カニズムAI――通常オトヒメが有している。彼女は時折竜宮城内を巡回しており、衣を靡かせながら沢山の魚たちと歩むその姿は一種のパレードのように見えることだろう。
 亀等の乗り物や龍宮城内には酸素があるが、それ以外は海水。けれど大丈夫なのだと人魚が口にする。
「小さならむね菓子のような物を口にすると、3時間くらいは水中でも呼吸が可能になるらしい」
 これくらいのと親指と人差し指で摘む大きさは、小さい。
 科学の粋を集めて造られた、『人魚の口吻』という名の水中呼吸を可能とするタブレットを口にすれば3時間は呼吸が保証される。そして、水圧等もシステムでコントロールされているため、竜宮城から外へ出ても人体への害は無く、深い海の底ででの息継ぎ無しの遊泳が楽しめる。
 また、泳ぎが苦手な人用に『水精の羽衣』という物も用意されている。これを衣服の上から纏えば服も濡れず、泳ぐことは出来ないが、海底を地上のように歩くことが可能となる。「科学の事は解らないけれど、水圧を操るものらしいよ」とは人魚の談。
 泳ぎが得意ならば、タブレットを口に遊泳。苦手ならば羽衣を纏い、散歩。それ以外にも、亀やジンベエザメ型のお魚船で時間を気にせず見て回ることも出来る。お魚船は外から見るととても大きいだけで普通の魚と見分けがつかないが、中からの景色は全然違う。スケルトンモードのボタンを押した途端、天井も床も透明になり、外が見えるようになるのだ。安全のために内部設備の椅子や机はそのままだが、甘味やジュースを口にしながら海中を楽しみたいのならば此方がおすすめだ。
「それからね、想花というものがある。――様々なところにある、白い蓮のような花。それを見つけたならば、そっと唇を落としてごらん」
 この花は、本物の花ではない。実体を持たない幻の花。ホログラムで造られたそれに触れ、想いを篭めながら唇を落とすと、花の色が変わるのだと言う。喜びなら橙色、幸せなら黄色、楽しさなら黄緑色、愛しさは桃色、哀しみは水色、憤りは紫色……。篭められた色に合わせて色付いた花は、その途端ぷかりと浮かんで行ってしまう。
 想花は海中だけでなく、城内や船内にも用意されている。実体を持たない幻の花に障害物は関係なく、色付けば外へと出ていくためどこからでも可能なのだそうだ。
「生体認証と云うので、機会は一度きり。籠める想いはひとつきり。たった一度の機会に、お前たちは何を想い、何を籠めるのだろうね」
 想いが籠もった花たちが淡い光を灯してたくさん浮かんでいく様は、それはきれいなものだ。
 海中からも海底からも、お魚船からも城内からも見えるそれを、訪れた人々はつい見上げてしまう。
「時間が許すのなら一泊しておいで。客室から見る海底も、浮かんでいく花々も、とても美しいから」
 それじゃあ、行こうか。そう、いざなって。
「そうそう、僕のおすすめはね」
 傍らの女中人形が雑誌を開く。そこには重箱に並ぶ和菓子と洋菓子の写真。蓋を開ければ綿菓子が覗き、その下には宝物のような菓子たち。どうやらこの人魚、花よりも菓子を楽しみにしているらしい。
 楽しみだね。硝子の声が響き、ひらりと宙に金魚が泳いだ。


壱花
 お目に留めてくださってありがとうございます、壱花と申します。
 先月末にグィーが海へのお誘いをしたので、夏の終わりは真珠から。
 月半ばに出す予定でしたが、ずるずると。

 このシナリオは【日常】フラグメント一章のみで終了します。
 オブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなりますのでご了承の程宜しくお願い致します。

●できること
 竜宮城内では、宴会場にて鯛や鮃の舞いを眺めながらの食事、竜宮城内の散策、客室で過ごす……等が出来ます。いずれの場所も硝子張りだったり、客室は大きな月見窓が有り、外がよく見えます。
 城外では大抵OPに出ている通り、遊泳したり散策したりお魚船に乗ることが出来ます。お魚船は亀型とジンベエザメ型が有り、亀型は1~5名、ジンベエザメ型は6~10名で乗れます。とても大きいです。
 城内やお魚船の中で振る舞われる料理での真珠のお薦めは、甘味の詰まった『玉手箱』、レモンベースのカクテル『月の涙』、深海をモチーフとしたゼリー沢山の金魚鉢パフェ『アンダーザシー』です。他にも求めれば色々あることでしょう。

 いろいろな事が出来ますが、どれか『ひとつ』に絞っていただけると幸いです。

 雅楽代・真珠(水中花・f12752)は城内に居ます。城内から外の花を眺めたり『玉手箱』を食べたりしていますが、お声が掛かれば客室に伺ったりもします。(特に無ければ描写はありません)

●迷子防止とお一人様希望の方
 同行者が居る場合はプレイングの最初に、魔法の言葉【団体名】or【名前(ID)】の記載をお願いします。指定が一方通行の場合、判断に迷って描写できない可能性があります。またその際、失効日が同じになるよう調整お願いします。
 確実にお一人での描写が良いと希望される場合は【同行NG】等の記載をお願いします。
 また、文字数軽減用のマークをMSページに用意してありますので、そちらを参照ください。

 プレイングは【8/29(木)8:31~】
 いつも通り3日間ほどの受付を予定しております。

 それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りに勤しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朧・紅
【軒玉】
《紅》人格で行動

竜宮城…僕は知らないのです
綾華さんは知っているです?と見上げて

かくれんぼは任せて下さいですねっ(ふんす
真珠さんどこですかー
覚えたての泳ぎでぱたぱた磯巾着の林や
煌めく小魚たちの群れの中
大きな貝をノックして覗いたり
好奇心旺盛に探索

わ、あれお船なのですか?
オズさんと一緒にはり付いて手を振ってみたり
それじゃどっちも乗っちゃうです♪

真珠さんはっけーん
周りをぴょこぴょこ

僕紅いスイーツがよいです
真珠さんお勧めあるですか?
玉手箱は大人になれる魔法の箱ですか!
僕、ぼんきゅばーんになるですよ
そう言われたのです
大好きお菓子を美味しそうに頬張りながら答える
綾華さんのもおいしそうですね?(じぃ


浮世・綾華
【軒玉】♢

エンパイアでも竜宮城の話はあるなぁ
ちょっと話してくれてたケド
詳しい話は真珠さんにして貰おうぜ
ってわけで、早速散策しつつ探しに行こ

かくれんぼの腕…探す方も得意な感じ?
そいじゃ任せた――と言いつつも
真珠さんはどんな場所にいるのが好きだろうか
静かな場所?賑やかな場所?
甘味を入手できる場所の近く…想像を巡らせ船を回る

亀。ほんとだ。いいな
俺はサメに乗りたい

あ、真珠さん、どうも
嗚呼、だな。じいさんになっちゃう煙
ふ、ひげ。似合わねーと笑う
ぼんきゅばーん?最後爆発した?
できれば最後もぼーんでお願いしたいところ
金魚パフェを頼んでから気づいた
じーっと真珠さんをみて…食べづらいな
…うまいよ
紅ちゃんもドーゾ


オズ・ケストナー
【軒玉】

りゅうぐうじょう、どんなお話?
アヤカはしってる?

シンジュをさがしておさんぽ
クレナイのかくれんぼのうでのみせどころだね

ガラスに張り付くように外を見て
魚がいっぱいだ
あ、あのカメ、船だねっ
あとで乗ろうねっ
いっしょに手を振って

シンジュ、みーつけた
おやつ食べにいこっ

わたし玉手箱にするっ
わ、このわたあめはけむりだね
けむりを浴びたらおじいちゃんになっちゃう
わたあめをひげのように口の前に掲げて
そのままぱくり
おいしい

クレナイだったらおとなになるのかなあ
え、ばくはつしちゃうの?
ぼーんもばくはつじゃないの?

カメのチョコレートだ
シンジュ、すきだもんねっ
そうだ、シンジュもあとでいっしょに船に乗ろうよ
サメとカメっ




 こぽりと溢れた泡沫が、ゆらゆら揺れながら天へと昇っていく。水で満たされているスペース船では天辺まで昇っても水しかないのだろう。けれど泡沫はその習性でこぽりと現れては天へと昇り、その合間をゆうらり小魚たちが優美に游いでいった。
 水底の、世界。
 サムライエンパイアでの昔話。竜宮城の話を知る浮世・綾華(千日紅・f01194)は頭の片隅に昔話過ぎらせながら、その話に出てくる城の中から浮かびゆく泡沫を目に映していた。厚い硝子の向こうに広がる水の世界では魚たちが優美に泳ぎ回り、話に聞いた世界観に成程と小さく頷く気持ちで。
 そんな綾華と共に訪れた朧・紅(朧と紅・f01176)とオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)は龍宮城を知らなかった。どんなお話だろう? と首を傾げるオズといっしょに紅も首を傾げ、そんな二人を見て淡く笑む綾華へと二人の視線が向けられた。
「りゅうぐうじょう、どんなお話? アヤカはしってる?」
「綾華さんは知っているです?」
 見つめる子猫の青色に、見上げる菫色。
 昔話は知っている。知ってはいる、ケド。
「詳しい話は真珠さんにして貰おうぜ」
 散策して、探して、話をしてもらう。その方がきっと、面白いから。
 探しに行こうぜと二人へ告げれば、元気な頷きが返ってくる。
「シンジュをさがしておさんぽだね」
「かくれんぼは任せて下さいですねっ」
「クレナイのかくれんぼのうでのみせどころだね」
 ふんすと気合充分な紅。それもそのはず、紅には隠れんぼへの自信があるのだ。オズも彼女のかくれんぼに付き合ったが、彼岸花の花畑の中に隠れた紅はたくさんの人々が探してもなかなか見つけられなかったのだ。
「かくれんぼの腕……探す方も得意な感じ?」
 そいじゃ任せた。
 そうして探索隊の隊長となった紅は、意気揚々と探索を開始した。
「真珠さんどこですかー」
 竜宮城内の廊下周りは二人に任せ、『人魚の口吻』をぱくりと含んで庭へと泳ぎ出る。覚えたての泳ぎでぱたぱたと磯巾着の林の合間を縫い、煌めく小魚たちの群れの中へとお邪魔して、大きな貝をコンコンコン! けれど真珠は、ぱかりと空いた其処にも居ない。
 そんな紅の姿をオズと綾華は城内から眺めながら廊下や部屋を覗いていく。オズはかくれんぼ! と楽しげに。綾華はぐるりと思考を巡らせて。
(――真珠さんはどんな場所にいるのが好きだろうか)
 静かな場所? それとも賑やかな場所? 賑やかな場所よりは静かな場所のほうが好みそうだな。それとも、甘味を楽しみにしている様子だったから、甘味が入手出来る場所だろうか。
「真珠さん、お庭には居なさそうですねー」
「クレナイ、おかえりっ」
 居なかった、けれど探すのはとても楽しかった。見つけられなかったのに満面の笑みを浮かべて戻ってきた紅をオズも笑顔で迎えて、綾華はお疲れと軽く片手を上げ応えた。
 楽しいことあった? とオズが尋ねれば、紅ははいですと大きく頷いて。城内から見るのとはまた違った煌きがあること、庭の灯籠の中で隠れんぼをしていたお魚が居たこと、好奇心旺盛に見て回ってたっぷり感じた事を明るい笑顔と共に語った。
 そして、探し人はと言うと――
「シンジュ、みーつけた」
 綾華の読み通り、和風のカフェのような場所の前。ちょうど店に入ろうとしていた白い尾鰭を見つけたオズが声を上げ、声に気付いた珊瑚色が向けられる。
「真珠さんはっけーん」
「僕を探していたの?」
「そうですよー」
 真珠の傍へと駆け寄った紅が大きく頷いて、周りをぴょこぴょこ跳ねるように回る。その向こうで、どうもと手を軽くあげる綾華へと真珠は小さく頷きを返した。
「シンジュ、おみせに入るとこ?」
「そうだよ、菓子を食べるんだ」
「僕も食べたいですっ」
「いっしょに食べよっ」
 おいしいお菓子は皆で食べたほうが、きっともっとおいしい。
 いいよと真珠がいとけない笑みを浮かべて頷けば、そうと決まればとオズと紅に手を取られ、四人揃って店内へ。
「わたし玉手箱にするっ」
「僕紅いスイーツがよいです」
 メニューを見てすぐにオズは決め、綾華も真珠も既に決めた様子。けれど紅は悩むように視線をメニューの上に滑らせ、いったりきたり。
「紅いのなら……これはどう?」
 どれが紅い甘味なのかわからないのだろう。助け舟をと真珠が指差したのは。
「おとひめごころ、です?」
「そう、乙姫心。紅いけぇきが貝の器の中に入っているんだ」
 乙姫心は貝の名前だよと告げれば、真珠さんのおすすめならそれにするですと紅が笑みを浮かべる。注文が決まった様子を見た綾華が店員を呼び、全員で甘味を注文した。
 暫く待てば大きな魚がえっちらおっちら運んでくる。おひげのながい、とても大きな錦鯉。思わずマジマジと眺めている間に、四人の前には甘味が並んでいた。
 オズと真珠の前には重箱に甘味が入った『玉手箱』、紅の前には紅くてまんまるな林檎のケーキ『乙姫心』、綾華の前には金魚鉢に入った涼し気なゼリーたっぷりのパフェ『アンダーザシー』。どれも美味しそうだねと甘味たちを見渡して、オズが重箱の蓋を両手で開ければ、もこもこの綿菓子が溢れ出た。
「わ、このわたあめはけむりだね」
 けむりを浴びたらおじいちゃんになっちゃう。
「嗚呼、だな。じいさんになっちゃう煙」
「玉手箱は大人になれる魔法の箱ですか!」
 龍宮城に行った浦島は時を忘れて過ごしてしまった。だから正確には過ぎた分だけ歳を取らせる煙だ。けれど、それを口にしては夢がないだろう。真珠はいらぬことと語らずに、楽しげな姿を見ながら綿菓子を千切って口にする。オズも同じように綿菓子を持ち上げて口に運ぶ――前に、髭のように口周りに掲げれば「似合わねー」と綾華が笑った。
 もし、もしも。大人になれるのなら。
「僕、ぼんきゅばーんになるですよ」
「ぼんきゅばーん? 最後爆発した?」
「え、ばくはつしちゃうの? ぼーんもばくはつじゃないの?」
「ばーんですよ。そう言われたのです」
 誰に? 不思議そうに首を傾げる二人を置いて、ルビーのように紅い林檎のケーキをぱくり。仄かな酸味と丁度いい甘さが口いっぱいに広がって、ほっぺが落ちてしまいそう。
 頬が落ちないようにと両手で抑える紅は可愛らしい。しかし、だ。ばーんよりは、出来ればぼーんでお願いしたいところだと綾華は考える。その綾華の思考を読んだのか、真珠の視線が向けられていた。最初はそう、思った。けれど真珠は諌めるのならば言葉を発するだろう。
 しかしすぐにその視線は外されて。
(――?)
 どうしたんだと思い――そして、やっと気がつく。何の気無しに注文してしまったが、綾華が食べているパフェは金魚鉢パフェ。そして真珠はびいどろ金魚のヤドリガミだ。
(……食べづらいな)
 チラチラと真珠の様子を伺って気にしてしまう。綾華を悩ます張本人たる真珠が、次はあれを食べようくらいにしか思っていないことを知らずに――。
「綾華さんのもおいしそうですね?」
 匙の進みが遅くなっていた綾華の手元を、紅がじぃっと見つめる。
 鉢を狙う猫のように、じーーーー。
「……うまいよ。紅ちゃんもドーゾ」
「わぁいいんです? やったです」
 鉢ごと紅の方へと押し出せば、パッと笑顔の花が咲き。
「あ、カメのチョコレートだ。シンジュのとこにもいる?」
 綿菓子の下に居たチョコレートを摘みあげると真珠も同じチョコレートを摘み上げ、早速ぱくり。
「うん、居た。美味しい」
「シンジュ、チョコレートすきだもんねっ」
「猪口齢糖を最初に考えた人に褒美を取らせたいくらいだよ」
「わかる。美味いもん全部そう思うわ」
「うんうんっ」
「おいしいで賞をあげちゃいたいですね!」
 うんうんと四人で頷きあい、ふふっと笑ったオズが亀のチョコレートを指先でつつく。
「そうだ、シンジュ。さっきサメとカメの船をみたんだよ」
「そうなんです、おーいって手を振ったんですよ」
「鮫も亀も気持ちよさそうに游いでたな」
「それでね、みんなであとから乗ろうって話して」
「どっちも乗っちゃおーってお話したです♪」
 真珠も一緒にどうだろう?
 三対の視線が白い人魚へ向けられるが、マイペースに黒文字に刺した草だんごを頬張った。
 もぐもぐもぐもぐ、こくり。
「そうだね、付き合ってあげてもいいよ」
 しっかり味わってから告げられた言葉に三人は笑みを浮かべ、鮫と亀のどちらへ先に乗るか、甘味に舌鼓を打ちつつ相談を始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

境・花世
綾(f01786)と

月の涙で満たした杯を
ふたり交わす海の底
染み透る酒は酸っぱく、けれど甘く
呑み込めば切なくなるのはどうしてだろう

やさしい、大好きなきみの笑みを
どうしてかうまく見つめられずに
泡沫のようにそっと応える

月はきっと、うつくしいものを見つけたんだよ
胸がいっぱいになって零れてしまうくらいに

静かなくちびるがふれる花を
何色にも染まらず消えてゆく花を
羨ましく思ったのはなぜだろう

――ああ、あの花になりたいな、

追うように掴んで口付けたまぼろしは
右目の花とどこか似た薄紅になって
この掌からすり抜けて波へと還る

その彩の意味など知らない
けれどきみがきれいだと笑ってくれるから
それだけで、月の涙にしずくが落ちる


都槻・綾
f11024/かよさん

透明にしたお魚船にて
海の景観を楽しみ乍ら
檸檬のカクテルで乾杯

爽やかな柑橘の香りが
澄み渡る涼を身の裡に呼ぶ

然れど、

ねぇ、かよさん
月は何故
涙しているのでしょうか

『月の涙』へ唇寄せて謡うのは
ささやかな謎

淡黄の酒精からの印象だとは思えども
余りに美しい名だから
どんな物語が眠って居るのか
紐解いてみたくなりました、と
さやさや笑って
卓上に揺らめく想花の葩を
指先でそっと撫でる

想いに染まる花
私達も海に
ひといろ添えてみますか?

幻影の蓮を両手に掬い取り
幽かに口付けするけれど――彩りにはならず
ただ透き通って泡の如く海へと還っていく様を
仄かに笑んで見送るのみ

傍らのひとが燈す灯りは

あぁ――なんと美しい




 揺らぐ世界は海の底。
 ゆうらり旅する亀の裡、透明と化せば二人の視界は水に包まれる。魚の群れを目で追ってからお互いの視線を合わせたら、何方からともなくカクテルグラスを掲げて乾杯を。
 『月の涙』で満たした杯を交わすは、ふたりっきりの海の底。
 無垢に仄かに色づく酒精を湛えたグラスに顔を近付ければ、爽やかな柑橘の香りがふわりと香る。酒精は然程強くは無い其れは飲みやすく、味わいも澄み渡るような清涼感がありとても爽やかだ。口に含めば仄かな甘さと酸味。喉を通れば後を引かずにさらりと流れ落ちる。
 ――それなのに。
(呑み込めば切なくなるのはどうしてだろう)
 小さな吐息と共に目蓋を微かに伏せる境・花世(*葬・f11024)のその胸の内が、この甘さと酸味に似たものを知っているのかもしれない。
「ねぇ、かよさん」
 傍らの美しい人――都槻・綾(夜宵の森・f01786)が花世の名を呼ぶ。甘い切なさに手の内の水面へと視線を落としていた花世は、掬い上げられるように彼へと視線を移動させた。
「月は何故、涙しているのでしょうか」
 月の涙へと花唇を寄せながら謡うは、手の内の酒精に連なるささやかな謎。
 淡黄の酒精からの印象だとは思えども、余りに美しい名だからどんな物語が眠って居るのか紐解いてみたくなりました。
 そう言ってさやさやと微笑う優しくて大好きなきみの笑みを、どうしてかうまく見つめられない。何故だろう。きみの笑顔はいつだって見れば嬉しくなって、花世の心を熙ばせるものなのに。
 月の裏側のような心地で僅かに視線を落とし、そっと口開く。溢れる言葉は泡沫のようだ。
「月はきっと、うつくしいものを見つけたんだよ」
 胸がいっぱいになって零れてしまうくらいに。
 花世の解にうんともそうとうも返さずに、男は笑みを浮かべながら卓上に揺らめく想花の葩へと指先を伸ばす。
 ――想いに染まる花。月がうつくしいと思ったのは、この花なのだろうか。それとも、もっと別の――。
「私達も海にひといろ添えてみますか?」
 薄紅の花をかんばせに咲かす彼女の返る言葉を待たずに、幻想の真晧の蓮花を両手に掬い取り、緩やかな動きで唇を寄せる。後からさらりと衣擦れの音が追いかけて。
 色付けば、浮かぶ花。けれど、色付かねば?
 想いを篭められなかった幻の花は泡の如く海へと還ることも出来ず、そのままふわりと電子の名残を残して消えてしまう。
 僅か瞬くその横顔を、花世は瞬きもせずに見つめていた。形の良い静かな唇が触れる白い花。何色にも染まらずに真晧のまま消える花。
(――ああ、あの花になりたいな、)
 羨ましくて、胸のどこかが切なくて。
 消えた花や彼に手を伸ばす代わりに幻の花を手繰り寄せ、口づける。ただ胸に浮かんだ想いのままに、花弁に優しく天使の羽根のように唇が触れれば、すぐにぷかりと浮かぶ気配。花世の色を載せた花が、戯れるようにするりと掌から抜けて天へと游いでいく。
 胸に浮かぶ想いを篭めた花の仄かに彩る灯りは、花世の右目の花にも似て。
(あぁ――なんと)
「美しい」
 知らず溢れた彼の言葉と笑みに、花世は花咲くように綻んでみせる。
 想花を染めた彩の意味など知らない。この想いにつける、名もまだ知らない。
 けれどきみがきれいだと笑ってくれる。ただ、それだけで。
 ――ああ、月は、――――。

 月の涙に、しずくが落ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

華折・黒羽
【荒屋】

海の中をゆうるり揺蕩い
幼い頃聞いた御伽噺を思い出す

不意に過ぎ去る波
目を向ければ同じ黒尾を揺らし泳ぐフェレスさんの姿
向かう先で羽衣纏って此方を眺める類さんに気付き
追いかける様泳ぎ彼の元へ

向けられた視線に頷く
どうやら考えてた事は同じだったようだ

確り、掴んでてください

空いてるもう片方の手を取り広い海へ
戯れる様泳ぐ魚に指先遊ばせていれば
その波間に運ばれてきた白い花を見つける

類さんの手も空くよう
花連れゆっくり海底へと

…これが、想花

自身が籠めた想いは過去を切欠に蓋をしていたもの
たのしいという感情のいろ
重ねる毎に増す想いは
目背けぬ程に大きくなっていて

花を見る二人に視線向けながら
ひそり、口元を綻ばせた


冴島・類
【荒屋】
海は美しいし、大好きだけれど
実は泳ぎは得意ではない

なのに
羽衣をお借りしてみたら
憧れの眼差しの先だった世界

青が、こんなにも近い

二人とも気持ちよさそうだなあ
波間を泳ぐ後ろを見守るように追いかけて

苦手というか…沈むんだ…
でも今は羽衣と人魚の口吻?で大丈夫!
フェレスちゃんに返せば
黒羽君も来てどうしたの…?
わっ!

手を引かれたら、空に浮かんでるみたい
すごいね…!これが、魚や
君達のみてる景色
こんなにうつくしい世界なんだ
ありがとう

花を皆で探し見つけたら共有
そっと手を伸ばし
2人の様を見て、目を細め
息吹込めやわく口付けを

込める想いは祈り
喜び、楽しさ
2人の花に宿ったあたたかなものが
これから先も沢山咲くように


フェレス・エルラーブンダ
【荒屋】
濁った川は知っているけれど
こんなに澄んだあおいろの中を揺蕩う機会はなかった

薄布を羽織ったおとこの姿に気付けば
みずを掻いて近付いて

……るい、およぐのにがてか?

是が返るならとなりの『ねこなかま』に視線を投げて
ほら、これなら
ふたりでるいの手を引けばいっしょに泳げる

くろば、るい
さかなをさがそう
あと……そう、はなを

なないろに煌めくさかなが自分たちの上を旋回していく
のぼるあぶくの中、ほのかにひかりを放つ花を見れば
あっとちいさく声が漏れた
触れたらこわれてしまいそうで、手を伸ばすのを躊躇って

くちづけの加減がわからなくて
恐る恐る、食む

……これは、なにいろ?

それが示すのは、『よろこび』と呼ばれるいろだった




 青に沈む世界は、広くて。そして美しい。
 先に『人魚の口吻』を口にして泳ぎでた華折・黒羽(掬折・f10471)とフェレス・エルラーブンダ(夜目・f00338)を見送って、冴島・類(公孫樹・f13398)は天女の羽衣にも似た『水精の羽衣』を身に纏い青の世界へと足を踏み出した。
 羽衣を纏っても、決して泳げる訳ではない。けれど泳ぎが得意ではない類にとって、水の底を自由に動けること自体が類にとっては特別だったから。憧れの眼差しの先だった世界――果てしない青へと手を伸ばす。ああ、青がこんなにも近い。胸に満ちる気持ちに、自然と口の端が上がった。
 濁った川しか知らないフェレスは自在に澄んだ青の世界を堪能し、揺蕩う。濁っていない美しい海の水は遠くの岩礁まで見通せ、魚の泳ぐ様も見せてくれる。上を見て、遠くを見て、そして下を。外の世界と同じように海底の砂漣を踏む類に気付いたフェレスは、足とともに大きな尾をぱたぱたと動かして彼へと近付いていく。
 幼き日に聞いた御伽噺を思い出していた黒羽もまた、のんびりと青の世界に揺蕩っていた。けれど不意に、水の動きに変化が現れて。すぐ近くを游いでいく黒い尾と、その尾を持つ少女が向かう先に居る男に気付き、黒羽もまた尾を追いかけるように後に続いた。
「……るい、およぐのにがてか?」
 上方から掛かる声。フェレスと、彼女に追いついた黒羽の姿に気付いた類が軽く手を振れば、二人は更に間近に寄ってくる。
 人魚の口吻のお陰で呼吸が出来るということは、声も発せられるのか。そう気付いた男は軽く喉に手を当てて便利なものだなぁと思い。
「苦手というか……沈むんだ……」
 苦笑を浮かべながら素直に口にすれば、不思議そうに向けられる視線に「でも今は大丈夫!」と羽衣と喉に触れて答える。泳ぐことはできないけれど、歩くことは出来ると砂漣を踏んで見せて。
 その笑みを見て、フェレスは少し考える。少し、考えて――『ねこなかま』である黒羽へと視線を投げる。どうやら黒羽も同じことを考えたらしく、こくりと頷きをフェレスへと返した。
 どうしたのと視線を向ける類を他所に、二人は左右に別れて類に近寄ると。
「わっ!」
 類の手を片方ずつ掴んで泳ぎだす。
「確り、掴んでてください」
「ほら、これなら」
 いっしょに泳げる。類の手を引きながら振り返り、目元を和らげるフェレス。
 二人に左右の手を取られ、類の足がふわりと水の中で浮かんだ。浮遊感は、ない。けれど青の世界は空のようで、類は瞳を輝かせた。
「すごいね……!」
 これが、魚や君達のみている景色。歩むだけでも美しかったが、泳ぐ視界はまた別で。自分を取り巻く天も地も、全てが青の世界に染まるのがとても美しかった。
「ありがとう」
 溢れた言葉に、類とフェレスは顔を見合わせる。触れている掌越しに、笑う気配が類へと伝わってきた。
 探そうとフェレスが思うまでもなく、魚はあちらこちらに沢山游いでいる。優美に泳ぐ魚の群れへと三人で飛び込んで魚が触れるくすぐったさに身を震わせたり、あっちに大きな魚が見えると報せあったりして三人は海を大いに楽しんだ。
 七色に鱗を輝かせ、ぐるり大きく渦巻いて旋回していく魚たち。のぼる泡の先、魚と戯れる指先の向こうに白い蓮のような花。フェレスは小さく声を上げ、黒羽は指して類にも知らせて。
 触れたら壊れそうと手を伸ばすのを躊躇うフェレスだったが、その傍らで黒羽が招き寄せるように手を動かせば、起きた小波に乗ってふわりと白花が近寄って。
「降りましょう」
 類の手も空くようにと黒羽が提案すれば、フェレスも頷きを返してそれに従う。
 招き寄せた想花とともに海底へと降り立つと、繋いでいた類の手を開放して。連れてきた花を彼の元へと押し出せば、ゆうらり揺れながら想花は類の手に収まった。まだ色付きも灯りを灯してもいないその花は普通の花のようで、これが電子なのかと類は瞳を瞬かせる。
「……これが、想花」
 柔く想花へ触れる類同様、黒羽も囲うように優しく花へ触れる。そうして、過去を切欠に蓋をしていた想いを、唇から花へと託した。
 ふわりと黄緑に染まる花が示すのは、楽しいという感情の色。他者との語り合いや友人たちと過ごす時を重ねる毎に増すその想い。見ないように、気付かないようにと蓋をした筈なのに。いつしかそれは目を背けられぬ程に大きくなっていたのだ。――知っていた。もう、認めてしまおう。想いの色を見つめても、黒羽の瞳は穏やかなまま、ふわりと浮かび始めた花を見送った。
 手を伸ばすのを躊躇っていたフェレスも、二人を真似して柔く手を伸ばす。黒羽が花に口づけるのを見て。けれど、口づけの加減が解らなくて――はむ。恐る恐る口を寄せて、軽く食んだ。
「……これは、なにいろ?」
 花を染めたのは、穏やかな洋灯の灯りのような色。
「わあ、きれいだ。橙色だね」
「だいだい」
 笑顔とともに向けられた言葉に、覚えていようとフェレスは頷いた。
 ふたりの姿を見届けて、柔らかく目を細めた類も花へと唇を落とす。やわく、柔く。息吹を篭めて触れるだけ。
 祈る気持ちを篭められた花は水色の灯りを灯し、先に浮かんだふたつの花を追いかけていく。
 黄緑に、橙に、水の色。
 ふたりの花に宿ったあたたかなものが、これから先も沢山咲くように。そう願いながら見上げる類と、美しいものを目で追うフェレス。
 そんなふたりの横顔を見遣り、黒羽はひそり、口元を綻ばせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杼糸・絡新婦
【翠苑】の皆と参加。
海の中の竜宮城、なかなか粋なもん作られるなあ。
ステラは海苦手そうやったけど、楽しめるんならええことや。
金魚鉢パフェ興味あるんやったら、
流石にでかいし皆で分けよか。
他の料理もつまみたいしな。
暗峠はお酒初体験?美味しく飲めるのがなによりよな。
この魚、あそこにおるやつかいなあと外の光景と比べてみたり。
千歳さんとお酌し合いつつ、
金魚鉢パフェのゼリーをカクテルのグラスに泳がせたりする。
そういや海中に酒を寝かせると美味しくなるらしいなあ、
いずれ試してみるのも一興かもしれんよ。


ステラ・アルゲン
【翠苑】の皆さんと

以前海に行った際に竜宮城の話をしていたのですがこうして来られるとは思いませんでしたね
ちょっと海の中が苦手なので水精の羽衣を着ていきます
地上と同じ感覚なら苦手意識も薄れるので
それに竜宮城は海の底とはいえ明るく綺麗そうなので大丈夫かと

これで食事を楽しめるというものです
私は甘いものが好きなのでお菓子が気になりますね
金魚鉢パフェは私も食べてみたいです!
ええ、皆で分けましょう

お酒…そういえば皆さん飲める歳でしたか
私は来月になれば飲めるようになりますね
お酌をする二人や初めて飲まれるマナコ殿の姿を見て、来月は自分もあのように飲みたいものです
その時は千歳殿オススメの一本をぜひとも頂きましょう


暗峠・マナコ
【翠苑】の皆さんと
竜宮城、ええまさか本当に行けることになるとは
まるで海の中なのを忘れてしまいそうです

ふふ、花より団子ですね
キレイなお料理たち、食べるのが勿体無い位で悩みます
あっ私も金魚鉢パフェ気になります

千歳ちゃんと絡新婦さんのお酌を見てそそそ、とグラスを持って行きます
20歳になったので、お酒に挑戦してみたく
一口呑んで何やらぽかぽかと…、おっと失礼、緩々気分で人型が崩れかけました
お酒は気が緩む飲み物ですね、と気合いを入れて背筋を正します

ステラさんは来月お誕生日でしたか、少し早いですがお祝いですね!
なるほど、そういうお話が。
ふむ、今お酒を寝かせておけば、来月には美味しいお酒になりますかね?


中御門・千歳
【翠苑】で参加

竜宮城に行けるたぁ、長生きはするもんだね

色々と興味が引かれるものはあるけれど、まずは皆で腹ごしらえといこうか

美味い刺身を食べながら、冷酒を貰うとするよ
皆は甘味を楽しんでいるみたいだねぇ
あたしゃそんなに量は入らないけどね、美味しそうに食べている皆を見るのも、楽しくなってくるよ

絡新婦と一緒にお酌し合ったり
ようやく酒の飲めるようになったマナコの飲む様子を、笑いながら見守ってみたり
おや、ステラも酒に興味があるのかい?
来月二十歳になったなら、おススメの一本をプレゼントするから、我慢しときな

ヒッヒッヒ、こうした平和な時間も良いもんだねぇ
楽しい時間があっと言う間に過ぎちまうよ




「竜宮城に行けるたぁ、長生きはするもんだね」
 海底宮殿の中庭と外を望める長廊下に、呵呵と気持ちの良い笑い声が響く。髪を結い上げた白髪の老女――中御門・千歳(死際の死霊術士・f12285)は硝子越しに広がる水の世界を眺めながら歩いていた。
「ええ。まさか本当に行けることになるとは」
 その傍らを歩む暗峠・マナコ(トコヤミヒトツ・f04241)もまた、同じように青々と広がる海の世界を眺めながら笑みを落とす。厚い硝子で隔てられた竜宮城内には空気があり、海の中なのを忘れてしまいそう、と。
 そう、マナコは笑むが。ステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)には、海の中という事は忘れてしまえそうにない。海の中が苦手な彼女は水で満たされていない城内でも『水精の羽衣』を纏っている。纏わなくとも城内や魚船の中ならば地上と感覚は変わらないのだが、心を強く持つためのよすがとするならば、羽衣は軽く邪魔にもならないため程よいアイテムと言えよう。
「以前海に行った際に竜宮城の話をしましたが、こうして来られるとは思いませんでしたね」
 ステラとマナコと杼糸・絡新婦(繰るモノ・f01494)は、以前共に海へと行ったことがある。その際クラゲに乗りながら竜宮城の話をした。まさかこうしてと瞳を輝かせながら、明るく美しい龍宮城に笑みを浮かべて興味深そうに視線を動かしているステラの姿に、絡新婦はひそりと安堵する。以前海に行った際にステラが海を苦手としている事を知ったため、大丈夫だろうかと少し伺っていたのだ。楽しめるんならええことやと、ひらりと揺れる羽衣を視界に収め、絡新婦は静かに微笑むのだった。
「まずは皆で腹ごしらえといこうか」
「ふふ、花より団子ですね」
 散策はお腹を膨らませてからでも遅くはないだろう?
 ニヤリと笑う老女の笑みにマナコが頷きながら小さく笑い、一行は長廊下を抜けて宴会場へと足を運んだ。

 メニューを覗けば、矢張りというか何と言うか、新鮮な海の幸がずらりと並ぶ。それに合う酒の種類も多い様子で、千歳はいいねぇと口にして刺身と冷酒を注文した。
 真っ先に酒と肴を注文した千歳とは違い、三人は甘味のメニューを広げて真剣な表情。
「ステラは何が気になってはるの?」
「それが、どれも美味しそうで……」
「せやったら、皆で金魚鉢パフェを分けへん?」
 絡新婦の指がスッと伸びて、金魚鉢に入ったパフェ『アンダーザシー』の写真を指差す。金魚鉢と言えど、大きさは様々。一人で食べられるサイズから皆でシェアする用まである様子で、『大・中・小』と書かれている。
「金魚鉢パフェは私も食べてみたいです!」
「あっ、私も金魚鉢パフェ気になります」
「決まりやな」
 絡新婦が微笑んで、中サイズを注文した。大サイズは『五~六名様サイズ』と注釈があったからだ。
 でん! と金魚鉢が三人の前に置かれる頃、千歳は既に一杯やっている。大きなパフェに瞳を輝かせ、楽しげに分け合う三人を眺めれば、自然と目つきも柔らかなものとなる。
「美味いかい?」
「美味しいです!」
 問えばすぐさま瞳を輝かせたステラからの返事。そうかいと老女の顔に楽しげな笑みが浮かぶ。
 甘味や千歳の肴以外にも注文をいくつかしたため、四人が囲むテーブルは料理が沢山並んでいる。あまり量が入らない千歳はのんびりと酒坏を傾けながらそれを摘み、絡新婦もまた千歳と酌をし合いつつ酒と肴と甘味に舌鼓。
 そこへそそそと増えるグラスがもうひとつ。
「二十歳になったので、お酒に挑戦してみたく」
「おや、暗峠はお酒初体験? 美味しく飲めるのがなによりよな」
 グラスに添えられた手は、黒いタールの手。数ヶ月前に成人を迎えたマナコのものだ。
 初めての酒に挑戦してみたいと控えめに言うマナコに千歳は破顔し、絡新婦は控えめに冷酒用の小さなグラスに酒精を注ぐ。まずは少し。酒が初めてなマナコは強いのかどうかすら解らないから。
「いただきます」
 注がれた酒を真剣な顔で見つめてごくりと息を飲んでから、そっとグラスに口つけて。まずは控えめに、一口。けれどその一口だけでもマナコの身体は何やらぽかぽか暖かくなってきてしまい……。
 ――どろり。
「おっと失礼」
 気分が緩んで人型を崩してしまったマナコは、気合を入れて背筋を伸ばした。楽しげにヒッヒッヒと笑う千歳に「もう千歳ちゃん、笑わないでください」と頬を染めながらも言うのも忘れない。頬を染める朱色が恥ずかしさからなのか酒精のせいなのか、ぽかぽかふわふわしだしているマナコにはよく分かりはしなかったけれど。
「……そういえば皆さん飲める歳でしたか」
「おや、ステラも酒に興味があるのかい?」
「私は来月になれば飲めるようになりますね」
「ステラさんは来月お誕生日でしたか」
 少し早いですがお祝いですね!
 お酒でふわふわしたままグラスを上げて乾杯とマナコが笑えば、控えめに微笑んだ絡新婦も、明るい笑顔を見せるステラも、楽しげに笑みを浮かべる千歳も、揃って手元のグラスを掲げた。
「来月二十歳になったなら、おススメの一本をプレゼントするから、我慢しときな」
「ええ。その時は千歳殿オススメの一本をぜひとも頂きましょう」
 酒を交わす三人の姿に来月は自分もあのように飲みたいものだとステラは思い、笑みを浮かべる。その時は是非仲間に入れて欲しいと告げれば、そういえばと絡新婦が思い出したように口にする。
「そういや海中に酒を寝かせると美味しくなるらしいなあ」
 いずれ試してみるのも一興かもしれんよ。
 金魚鉢パフェのゼリーをカクテルのグラスに泳がせながら淡く微笑んで見せれば、なるほどとマナコが頷きを返す。
「ふむ、今お酒を寝かせておけば、来月には美味しいお酒になりますかね?」
「おや、いいねぇ。美味い酒が更に美味くなるのは大歓迎だよ」
 ここに寝かせていっても、千歳には取りに来る術がある。
「どうせなら一本と言わず沢山仕込んでみるのはどうだい?」
「そもそもここのお酒はそういったお酒なのかもしれませんよ?」
「一理ありますね」
「やからカクテルも冷酒も、こないに美味なんやね」
 レモンベースのカクテルに浮かんだ海の色をしたゼリーを指先でつついてから、くいっとグラスを傾けてゼリーごと口に含んで美味しいと絡新婦が微笑えば、その食べ方いいなとまた話に花が咲く。
 いつの間にか肩から羽衣が滑り落ちていることにステラが気付かないほどにこのひと時は楽しくて。
 四人は時間も忘れて海の底を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

東雲・咲夜
幼馴染のそうくん(f01798)と

御伽噺に語られとる御城に行けるやなんて
昨晩からほんま楽しみにしとったんよ

落ち着きある客室でルームサービスをお願いしまひょ
わぁ…ほんま玉手箱みたいやわ
こないに繊細なお仕事しはる職人さんはすごいなぁ
後でSNSにあっぷせな(スマホでぱしゃり)
食べるんが勿体あらへんけど
味わってこそのお菓子や

うちの分の紅茶をくれはるそうくん
おおきになぁ
んん~~おいしい…!
この珊瑚のかたちのお菓子、えらい美味ですえ
そうくんも食べてみて?

想花に託すは大好きな皆さんの倖せ
喩え幻花であっても命に愛を注ぐ様に唇を寄せ
初は黄緑、後に桃色、黄色とオーロラの如く
海穹へ吸い込まれ往く蓮達を見送りましょう


朧・蒼夜
幼馴染の咲夜(f00865)と一緒に

本当に竜宮城があるのだな
不思議そうに見上げた後
咲夜、中に入るかい?

月が見える一室に彼女と二人ゆったりと過ごす
ん?この玉手箱はお菓子みたいだね
一緒に食べようか?
紅茶を淹れて彼女に差し出す
美味しそうに食べる姿に愛おしげに見つめ微笑む
ん、本当だ美味しいな
ティータイムを楽しんだ後

花を飛ばしてみるかい?
俺の花は桃色へと変わり、更に黄色へと変化する
本物の竜宮城の乙姫の様な
愛おしい彼女の傍らで
ゆっくりとした時間を過ごす
この時間が俺にとって幸せな時間

咲夜はどんな色になったかい?

咲夜の想いが詰まったとても素敵な色だね
素敵な時間をありがとう
また一緒に出かけような




 揺れる金魚の”門”にて送られた先は、今は昔と語られる御伽噺に出てくる世界。絢爛豪華な宮殿内から美しい青の世界をその目に映し、東雲・咲夜(詠沫の桜巫女・f00865)の胸の内は花が一斉に開くようにふわり、舞い上がるような心地を覚えた。ともに出掛ける約束を傍らの幼馴染――朧・蒼夜(藤鬼の騎士・f01798)として、出掛けるのが楽しみだと幼い少女のような心地で眠りについたのは昨夜のこと。昨日からの気持ちは、こうして訪れた今尚続いている。
 軽くぐるりと城内を散策し、案内された客室前。入り口の優美さとその向こうに見える泳ぐ魚たちの群れに足を止めた咲夜へと蒼夜は「中に入るかい?」と声を掛け、頷く彼女の手を取って客室内へと足を運ぶ。天井近くを游いでいった小魚の群れの影が客室内に映り、追いかけるように見上げた彼女の視線が戻ってこなくとも大丈夫。危険がないようにそっと手を引いた蒼夜が安全にソファへと連れて行ってくれるのだから。
 ゆったりとした広さのあるソファにふたり並んで座り、丸窓の外や天井を見上げてのんびりと過ごす。天井はお魚船と同じシステムが組み込まれているのだろう。通り過ぎる魚たちや浮かんで行く花が時折見え、室内なのに青に染まる世界が美しい。
(そうくんの瞳の中にいるみたいやなぁ)
(咲夜の瞳の中のようだ)
 僅かに色味は違えど、想ったのは同じもの。小さく心に描き、淡く笑んで、青の世界に身を置いた。
 ルームサービスで頼んでいた『玉手箱』が届けば、青の世界へとふわりと浮かんでしまったようだった咲夜の心が身体へ戻ってくる。
「わぁ……ほんま玉手箱みたいやわ」
 ソファの前の光る貝殻の綺麗な螺鈿細工のローテーブルの真ん中には、玉手箱を模した重箱。これも御伽噺のようだと両手を組む咲夜の前で蒼夜がそっと蓋を持ち上げれば、ふわりと溢れ出る綿菓子。煙を模したそれに、またひとつ咲夜はわぁと歓声をあげるのだった。
「一緒に食べようか?」
 和洋の、可愛らしい小さな菓子たちが並んでいるのを嬉しげに眺める咲夜の横顔を見て、蒼夜は席を立ち紅茶を淹れにいく。とは言っても、玉手箱とともに注文した紅茶を真珠色のポットから茶器へと注ぐだけ。
「おおきになぁ」
 給仕してくれる彼に桜が綻ぶような笑みを向け、スマートフォンを取り出して玉手箱をパシャリ。彼が淹れてくれたカップとも一緒に、パシャリ。
「ふふ。後でSNSにあっぷせな」
 携帯端末に記録を残したら、紅茶が冷めない内にと玉手箱へと手を伸ばす。可愛くて繊細な菓子を食べてしまうのは勿体ないけれど、味わってこその菓子。職人が丹精込めて丁寧に仕上げたのなら、しっかりと味わうのが礼儀であろう。
「んん~~おいしい……!」
 口に広がる上品の甘さに、思わず声が漏れる。頬を抑える咲夜の横顔を見守る蒼夜はふっと瞳を和らげる。幸せそうな彼女の姿がとても愛おしい。
「この珊瑚のかたちのお菓子、えらい美味ですえ。そうくんも食べてみて?」
 珊瑚の菓子を指で摘んで、彼の口元へと寄せて。
「ん、本当だ美味しいな」
 浮かべられた笑みに、咲夜も満足気な笑みを返した。こういった、何気ないひとつひとつを共有するのが嬉しい。今までも、これからも。それは幼い頃からずっと変わらない。

「花を飛ばしてみるかい?」
 美味しくて愛おしいティータイムを楽しみ終えた頃、新しく淹れた硝子器に花咲く工芸茶で一息つきながら蒼夜が口を開いた。客室内にもいくつか想花は飾られているため、蒼夜は立ち上がって取りに行き、ふたつの想花を手に乗せ咲夜の傍らへと戻ってくる。
 咲夜へひとつ渡し、蒼夜は早速唇を落とす。
 ふわり色づくのは桃色。想うのは、愛おしい彼女のこと。
 すぐにぷかりと浮かんでいく花を見送り、傍らの天女へと視線を向ける。本物の乙姫が城内に居ることは知っているが、蒼に揺らめくこの場で見る彼女は、蒼夜だけの乙姫だ。
 喩え幻花であっても命に愛を注ぐ様に唇を落とした咲夜の想花は、淡い水色の灯りを灯す。皆の幸せを祈ったため、祈りの色だ。
 籠められる想いはひとつきり。機会も一度きり。祈りの色を灯した想花もまた、蒼夜の花を追いかけて海穹へと昇っていく。
「咲夜の想いが詰まったとても素敵な色だね」
 また一緒に出かけよう。
 水音のように優しい声が室内にそっと落ちる。
 ふたり並んで海の底。
 いつまでもふたり肩を寄せ、浮かぶ想花を見上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768
◇真珠にいさんも誘う

亀のふね?
僕、潜る船は初めて
泳がなくてもいいって不思議
窓にへばりつき外を見る
泳いでも気持ちよさそう
でも櫻は泳ぐの苦手だ
水中で女子会するなら船がいい
……女子いないけど

真珠にいさんも一緒にどう?
僕は金魚鉢
金魚鉢には入ったことない
ぜりーが宝石みたいで綺麗
お裾分け!
ヨルはお魚のあいすね
櫻は玉手箱…僕にもわけて
僕、お団子がいい
皆で食べるとより美味しい


僕はあまり水槽は好きでない
どうしてもと言うならいいけど

お花にきすするの?
触れれば色づく、桜色
愛しいとたのしいと幸せの色
綺麗!

知らないを知れるのは
こんなに楽しいこと
僕にも教えられることがある
それが嬉しくてまた笑顔が咲く


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
◇真珠に声をかける

今日は海底で王子様との女子会なの
リルと一緒に船の中
海底を潜る船は初めてでしょ?
亀の船、女子会の舞台として相応しいわ
女がいない?ここに乙女がいるでしょ

そうよう、真珠も一緒に食べましょ!
リィの大事なお友達だもんね
一緒に女子会よ
あたしは玉手箱
甘味が沢山、リルと真珠とヨルにお裾分け
どれがいい?
リルは金魚鉢ね
あなたの事も水槽にいれたくなっちゃう、なんて
ふぅん
いいんだ…?

そうお花に
綺麗に色付いたわ
リィのキスで照れたのね
あなたの幸せの色は桜色なのね
桜の木龍としても嬉しいわ

海中宿泊なんてロマンチックね
あたし海中で寝るの初めてなの
リルと一緒だと
知らない世界を教えて貰えるわ




「海底を潜る船は初めてでしょ?」
 亀型のお魚船が進む度、あぶくが生まれ、天へと昇っていく。透明化させた船内の壁にぺったりとくっついて、湖の底とは違う青に夢中になっているリル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)の背中に誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)は声を掛けた。
「すごいよ、櫻宵! 湖に居ない魚がいっぱいいる!」
 燥いだ声を返して扇のように開いた尾鰭をはたはたと揺らめかすリルを、あらあらリルったらはしゃいじゃってと櫻宵は見守って。
 どこまでも続く青い世界は広くて。いつもとは違う海水だけれど、泳ぐのはとても気持ちよさそうに思える。けれどリルの愛しい人は泳ぎが苦手なのだ。最近は少しずつ克服しているようにも思えるが、精神的な問題が作用しているため、克服までの道はきっと遠い。それでも焦らずじっくり、こうして水の底に居る環境も体験して、ゆっくりと彼の傍で游いでいけたらなとリルは想うのだ。リルの居場所は、櫻宵の隣以外にないのだから。
「さあさ、リル。女子会を始めましょ」
「……女子いないけど」
「やだ。ここに乙女がいるでじゃない」
 既に真珠が席についているわよと促され、リルはぺったりとくっついていた壁から離れてティーテーブルへと向かう。その横を駆け抜けた式神ペンギンは、リルが座る前にちゃっかり席についていた。
 テーブルセットに座る白い少年の人魚――真珠。別の友人たちとお魚船遊覧をし終えて城内を游いでいた真珠は、櫻宵とリルに声を掛けられ女子会に誘われた。亀の船が女子会の舞台として相応しいと言う櫻宵に「意味わかんないんだけど」と返しつつも、女子会とは甘味を食べる会だと噛み砕いてついてきたのだ。
 そうして席について三人と一体でひとつのテーブルを囲み、上下左右が青の空間のテーブルの上に甘味が並べば――。
「成程ね。甘味を食べる舞台に相応しい」
「でしょ」
 静かに零した声にウインクが返った。
 テーブルに並ぶ甘味は、重箱がひとつにアイスがひとつに金魚鉢がふたつ。重箱に可愛い菓子が沢山並ぶ甘味『玉手箱』が櫻宵。お魚の形をしたアイス『魚っとするほど美味しいアイス』がヨル。金魚鉢に海色グラデーションのゼリーがたっぷり入ったパフェ『アンダーザシー』がリルと真珠だ。聞けば、真珠は既に玉手箱を食べた後らしく、その時に次はコレと決めていたらしい。
「金魚鉢には入ったことがないんだ」
「ふぅん」
 ぜりーが宝石みたいで綺麗だと呟きながらスプーンでつつくリルに、興味がなさそうに返しながらプルリと震えるゼリーをぱくりと頬張る真珠。その胸の内で今度連れて行こうなんて考えていたことは、リルも櫻宵も、まだ、知らない。
「リル、ヨル、真珠。どれがいい?」
 沢山あるのだもの、好きなものを選んで頂戴。お裾分けよ。
「僕、お団子がいい。ヨルは……」
「きゅ!」
 取り分けてあげようとリルが手を伸ばすよりも早く、テーブルの上をパタパタと駆けたペンギンが魚型のクッキーを咥えて持ち去っていった。お魚アイスの上にクッキーを載せて、楽しげにきゅいきゅい鳴いている。何とも言えぬ表情の三対の視線が注がれても彼は気にしない。
「……僕には綿菓子を少し分けて」
 笑みの形になった唇を袖の下に隠した真珠は綿菓子を分けてもらい、リルもお団子を分けてもらうとパフェの上に載せてみる。
「真珠にいさんはお空みたいになったね」
「リルには島が出来たね」
 そんな二人を櫻宵は見守って。
「金魚鉢、可愛いわよね。……あなたの事も水槽にいれたくなっちゃう、なんて」
 ふふ、冗談よ。そう、続けるつもりだった。
 けれど。
「櫻、僕はあまり水槽は好きではない。けど……どうしてもと言うならいい」
 君になら。
 僅かに櫻宵の瞳が見開かれ。
「ふぅん。いいんだ……?」
 そして、僅かに眇められる。
 その瞳が金魚鉢の中の金魚を狙う猫のように見えた真珠は、本当にやりそうだと思いながらも口を挟まずパフェをぱくり。

「僕はこれでも忙しいんだ」
 甘味も海中もたっぷり楽しんだ頃、馬に蹴られたら割れて死んでしまうと真珠が告げ、女子の居ない女子会(乙女は居る)はお開きとなった。
「海中宿泊なんてロマンチックね」
 真珠と別れたリルと櫻宵は客室へ。
「あたし海中で寝るの初めてなの」
 リルと一緒だと知らない世界を教えて貰えるわ。
 楽しげに弾んだ声と明るい笑顔で微笑む櫻宵の姿にリルも微笑みを返して。
「僕もだよ」
 君と会ってから沢山の知らないことを知った。物や形。ううん、それだけじゃない。戀も教えてもらった。君が居たから知れた気持ちだ。
 そんな僕にでも教えられることがある。
 それがとても嬉しくて、愛おしくて。花開くように人魚が咲った。
「あ、リル。想花があるわ」
 お魚船の中からでも見えていた想花がそこにもあることに気付いた櫻宵はリルへと促してみる。
「お花にきすするの?」
 そっと唇を落とせば、白から薄紅へと変わる花。
「桜色になった!」
「ふふ、リィのキスで照れたのね」
 想花に籠められる想いは、ひとつだけ。いくつ籠めようとしても、花に選ばれるのはただひとつ。ただひとつの、一番強い、想い。
「綺麗!」
 すぐにぷかりと浮かんでいく花をふたりで見送って。
「櫻宵は? どんな色になるのかな」
 そう、無邪気に人魚が問えば。
 花を染めた色と同じの桜の木龍は艶やかに微笑い。
 そっと顔を近付け、囁いた。

 ――あたしの色は、もう、決まっているのよ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月04日


挿絵イラスト