●シュガリ渓谷
青々と、緑に覆われる渓谷。
なだらかな高原と高く隆起した山があり、空へと真っ直ぐに伸びるパルマの木が特徴的な渓谷だ。
陽光が満遍なく降り注ぎ、時に霧深く、地味は肥えている。
その土地柄故に、昔からモンスターが住み着きやすい地帯でもあった。
実りの季節を控え、晴天の続くこの時期。
各村から、十を過ぎ志願してきた子らを連れ、数日間の訓練キャンプが行なわれる。
各村の自警団・冒険者は、いずれも訓練キャンプを経験してきた者ばかりだ。
指導員、ディグダは今回集まった十数名の子供たちを見回した。
子供だけでなく、大人も何人か、初参加の者がいる。
「訓練キャンプへ、よく来た!
毎度、指導員をしているディグダだ。普段は冒険者をやっている。
今回は、最初ということもあり、馬や大蜥蜴、山羊の乗り方、戦闘訓練、採取物の見分け、罠の仕掛け方などを教えることになっている。
そのなかで家業として既に習っている者もいるだろうが、その場合は先輩として、初めての者たちを導いてやってくれ」
はい! と意気揚々な子たちが応え、ディグダ含む数名の指導員が頷いた。
「さて、まずは宿泊準備だ。
草地を刈り、テントを立てる。薪の調達、今宵の夕餉の支度など、やることはたくさんだ。
今日は皆で一気にやってしまうが、明日からの食事準備は俺たちの方でやるからな」
ディグダが手を打てば、子供たちが動き始める。
初日、キャンプの準備も訓練の一つだ。
「こうやって、テントを立てる前に、山刀で軽く草を刈るんだ。……蛇が来ないようにね」
「ひえぇ……」
こうして、今期もシュガリ渓谷での訓練キャンプは開かれたのだが――。
●
「――オブリビオンがやってきてしまうのよね。
攻めてくるオブリビオンは、シマエナさまと、だいおーいかたんよ」
事件のあらましを話す、ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)だったが……。
「今なんて??」
「シマエナさまと、だいおーいかたん」
「いかたん、普段は海住まいじゃないんですかね?」
「えーと、だいおーいかたんは、海にいるのが飽きちゃったのね。
で、上流目指して散歩してきたみたい」
「……散歩……」
「お弁当持ってきてるみたい。おにぎりと、焼き……イカかしらね」
ここでようやく、真っ当な疑問「これって共食いになるのかしら?」と呟くポノ。
「でも食いしん坊で、キャンプの美味しい匂いに、釣られちゃって襲いに来るの。
まあ、やってくるまで時間はあるし、戦いの準備も兼ねて、ちょっと皆さんも訓練キャンプに参加してみない?
各村にオブリビオンが襲撃する前に倒せるし」
指導側、生徒側と、どちらで参加しても大丈夫だろう。
キャンプ、戦闘訓練、山岳での騎乗訓練、採取、とやれることは多岐にわたる。
「冒険や戦闘が初めての人たちに、モンスターがどんなに可愛かろうが攻撃することも、猟兵として教えないといけないと思うのよね」
「おにちく……」
「シマエナさまは木の上が好きなのだけど、この地方の木のパルマ――ヤシの木って枝が無いでしょう?
190フィート……およそ60メートルだから、木の上にいたら落とさないといけないし」
放っておいたら、氷の矢を降らせてくるようだ。あぶない。
ある程度シマエナさまを倒した頃合で、だいおーいかたんが到着するようだ。
「縛りつけて、部位を切り取って、イカ焼きしてもいいかもしれないわね。ほら、野外調理の設備ってある程度あるでしょう?」
なんか怖いことにも感じる美味しいことを言うポノ。
「詳細は皆さんにお任せするわね。
楽しんできて頂戴」
そう言って、猟兵たちを送り出すのだった。
ねこあじ
ココラ渓谷をイメージしつつ。
ねこあじです。よろしくお願いします。
ゆる~く、肩の力を抜いていきましょう。
のんびり進行予定です。
第1章は、🔰訓練🔰(戦いの準備)です。
初心者な子や大人に教えたり、教わったり。
鍛えるにしても、体力づくりも兼ねた食育や、伝令のための早駆け騎乗など、色々やり方はあると思います。
第2章は、シマエナさまとの戦いです。
もふもふしてます。
しかし、モンスターは倒さなければいけません。
訓練キャンプの皆を鼓舞したり、ミイラ取りがミイラ(抗えないもふもふ)になったり、楽しんでください。
第3章は、だいおーいかたんとの戦いです。
まあ、イカ焼きにしてもいいんじゃないかなと……思ったり、してますが、基本、お好きにどうぞです。
プレイング締め切りなどが決まりましたらマスターページの上部や、Twitterに記載します。
日程により、プレイング受付開始日が発生するかもしれません(なるべくないようにはしたいですが)、こちらは+リプレイ本文にも記載します。
お手数おかけしますが、ご確認の程、よろしくお願いします。
それでは、プレイングお待ちしております。
第1章 冒険
『民との共闘』
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POW : 戦力になるように訓練を施し、鍛え上げる。
SPD : 罠を仕掛け、装備を整え、迎撃の準備を整える。
WIZ : 戦いの心構えを説く。
👑11
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木常野・都月
「新参者の猟兵です。よろしくお願いします。」
狐としてずっと野生で生きてきて、猟兵としても妖狐としても新参者なので、なんでも吸収したい。
訓練とはいえ、馬に乗る日が来るなんて思わなかった。
森で出会った馬は知的な方達だったけど…
馬達は、自分達より小さい狐の俺を上に乗せて、嫌な気分にならないだろうか。
乗る前は[動物と話す]で、ちゃんと馬に了承を得なければ。
気分を害すようなら、無理強いはしたくない。
まずは友達になるところからだな。
小宮・あき
「こんにちは、私も訓練キャンプに混ぜていただけませんか?」
〔礼儀作法〕〔コミュ力〕
私は猟兵ですが、戦い方は「猟兵だから出来る」ものです。
神罰を落としたり、マスケット銃を複製して空中戦をしたり。
皆さんの役に立てないと思います。
それどころか、アウトドアの知識が、全くないのです…!
UDCアース生まれ、大都会を故郷に持つ上流階級。
『大蜥蜴、山羊の乗り方、採取物の見分け方』を、ぜひ教えてください!
馬は乗馬経験はありますが、慣れた馬です。
罠使いの知識はありますが、やはりUDCアースの知識。
色々知りたいのです!
何か手伝える事といえば、ああ、追いかけっこで体力を付けますか?
「アマネさん、お願いしますね」
「さて、今回の訓練キャンプには他所の冒険者さん――ええと、猟兵さんだったな? ――が、参加するぞ」
と、ディグダが冒険者――猟兵たちの紹介をした。
ぺこりとお辞儀をした少女のピンクの髪がふわりとなびく。
「こんにちは、訓練キャンプに混ぜていただくことになりました、あきです。
皆さんと一緒に頑張りたいと思っています」
笑顔で言う小宮・あき(人間の聖者・f03848)、そして少女に続く木常野・都月(妖狐の精霊術士・f21384)はどこかマイペースに頷いた。
「新参者の猟兵――都月です。よろしくお願いします」
黒狐の尾先がぴょこりと動く。
「よし、では各班移動ー! 頼りになる先輩諸氏は新人に色々教えてやるんだぞー。
それと、イェカ」
「は~い。あきさん、ツヅキさん、今から岩山のふもとまで移動するの。そこの小屋に動物たちがいるから、行きましょう」
三つ編みのイェカと呼ばれた少女が二人を呼ぶ。
馬は高原に適し、山羊は岩山、大蜥蜴は急勾配な坂や岩場を得意とするらしい。
イェカの説明に耳を傾け、ひとつひとつ頷く都月。
狐として、ずっと野生で生きてきた都月は、猟兵としても妖狐としても自身は新参者であると思い日々を過ごしている。
(「なんでも吸収したい」)
風が吹き抜ければ揺れる草地は波を打つ。森とは違う、高原の香り。
続く話題は猟兵としての日々をあきが話すことに。ディグダも興味津々な様子だ。
「私たちは猟兵ですが、戦い方は『猟兵だから出来る』ものなんです。神罰を落としたり、マスケット銃を複製して空中戦をしたり」
言いながらあきが胴を辿るスリングに手を掛け、マスケット銃を見せる。そして肩を竦めた。
「皆さんの役には立てないと思います――それどころか、役に立つ以前の問題が。
アウトドアの知識が、全くないのです……!」
「ええ? 火のおこし方は?」
イェカの言葉にも、首を振るあき。
彼女はUDCアース生まれ、大都会を故郷に持つ上流階級。そう、生まれながらの都会っこであり、人を疑うことを知らない純粋培養なお嬢様なのであった。
「複製しての空中戦……いや、噂で、猟兵なるものを聞いてはいたが、ううむ、想像がつかないな」
ディグダが唸る。猟兵に会ったのは初めてなのだろう。
「ディグダさんがそうなるのは分かるけど~、どうしてツヅキさんもそんな顔に」
「いえ、空中戦をすることもあるんですね――と思って」
やや狐耳を伏せつつ、イェカの問いに応え、尻尾の先をぴこぴこと動かす都月。
すごいなぁ~と、場ののんびりした空気。
そんな会話をしていれば、岩山に到着するのもはやかった。
(「訓練とはいえ、馬に乗る日が来るなんて思わなかった」)
岩山のふもとに着き、都月は今回の相棒となる赤毛の馬・トウリを紹介される。
(「森で出会った馬は知的な方達だったけど……自分より小さい狐の俺を上に乗せて、嫌な気分にならないだろうか」)
ふわふわの尻尾をくるりと自身の脚に巻き付かせるように――しかし、すぐにそれは解かれて、都月は一歩前に出る。
「トウリ。こんにちは、都月です。……今回はよろしく」
まずは友達になることだと判断した都月はトウリに挨拶をすれば、トウリはじっと都月を観察したのちにゆっくりと向かってきた。
受け入れてくれたようだ。
ほう、と安堵の息を吐けば、トウリは都月へと息を吹きかけてきた。
手を差し伸べてみれば、都月の匂いを嗅ぎはじめるトウリ――ゆっくりとした所作で撫でてみる。
慣れてきたら、騎乗だ。姿勢や、手綱の扱い方を教わる。
「一つ一つこなした後に、褒めてあげると馬も喜びますよ」
「わ、わかりました」
あきの助言に、トウリ、よくできたなと馬首をポンポンと叩き褒める都月。都月の姿も声も聞こえているトウリはいななく。
嬉しそうな感じが伝わってきた。
乗馬経験のあったあきは、今回相棒となった馬に慣れたあとは、助言をしながら都月や子供たちを見ていた。
そして、
「これが大蜥蜴ですか」
「キュ」
「キャキャ、ギャ」
個性だろうか、よくよく聞いてみれば、大蜥蜴の鳴き声は微妙に違っていた。きょろっと動く有鱗目は鋭いものではなく、どこかまるっとしていて愛らしい。
主食は草で、匂いはむしろ清涼であった。
あきが撫でてみれば、ひんやりとした鱗の感触。
鞍を付けた大蜥蜴は馬より低く、初心者にも乗りやすい高さだ。
岩場ではたしたしと、確りとした足捌き。
「わ、すいすいと登っていきますね」
駆ければそれなりに揺れるが、騎乗者へ配慮しているのがあきには分かった。良い子ですね、と褒めてやる。
前進ののちは、後退。鼠径部が、なるべく水平に動くような動きが馬とは違う。
次の練習相手となる山羊は、とても大きな山羊であった。
目を瞬かせる都月。
「大きな角ですね」
「私の腕ふたつ分はありますね」
両腕を合わせて、見比べてみるあき。くるんと円を描く山羊の角は立派なものだ。
山羊の背は痛いので、鞍は必須だ。
「山羊の崖のぼりは映像で見たことはありますが――わ、」
最早崖である岩場をカツカツと登っていき、そして跳ぶ。凄い、とあきは山羊を褒めた。
山羊の蹄は馬とは違い動くので、岩を掴むことが出来る――ディグダの説明を受けながら、悲鳴をこらえて進む新人の「冒険者」たち。
「下は見ない方がいいぞー」
「は、はぁい……」
「道が道じゃない……」
山の裂目の間も器用に、左右の脚を動かし歩く。踏み外せば下へ落ちるものだ。強張る彼らの顔に感化されたのか否か、都月の尻尾もちょっぴり強張っている。
『軽く』一周した少年少女、あきと都月は戻った地面の感触にほっとしたものだ。
「ですが良い経験になりました!」
晴れやかな笑顔で言うあき。あきの笑顔に、二周目を行こうとする新人たちは緊張した顔を少し緩めた。
頭数はあまりないので班分けがされていて、明日はまた別班の訓練となる。チーズを使った行動食を取る束の間の休憩ののち、
「ほい、じゃあへたりこんでいるうちに採取の勉強もしていくぞー」
「は……はぁい」
山草の見分け方から始まる訓練。
「野草って、似たものが多いのですね」
葉も花も似ているが、根元が違う植物を見分けつつ、あき。
「かぶれる木は、葉柄が赤味を帯びているのですね」
「羽状複葉はまず、疑うこと、と――ここは森と同じですね」
良く学ぶあきと、植物の方にはやや慣れた様子の都月。森の教えが頭を過る。
何事も実地で学んでいくのが一番なのだろう。
「疲れているところ悪いが、戻りは早駆けだぞー。残った体力は使い切れ」
行きは緩やか、帰りはスパルタであった。
ディグダの言葉に、抗議の声。
あきが挙手をした。
「お手伝いが出来そうです。追いかけっこで体力を付けましょう」
にっこりとあきがかつての友を呼びだす。
現れたのは黒い豹だ。「わあ」と子らが、豹を見つめる。
「アマネさん、お願いしますね」
「……追いかけっこ、頑張ろう」
あきに応じるアマネ。都月は子らを見て、頷いた。
こうして追いかけっこしつつ帰路に着く一行。
キャンプ地が近づいてくると美味しそうな匂いが漂ってきて、自然とその足取りは軽くなっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
百合根・理嘉
湊偲(f01703)とー
キャンプ!
訓練キャンプとか初めてだけどもー
キャンプ!野営!って言うとちょっとココロ踊る?みてーな
ふへへー(インドアでアウトドアな18歳)
湊偲は体鍛える方向か食育とかなんかな?
案外と野生の食べられるやつの採取とかも得意そー
俺は飯作るとかは得意ー
折角だから湊偲と一緒に採取行くのもありかなー
あ、筋トレだった場合はエンリョします
だってよ、湊偲の筋トレとか鍛錬
案外とスパルタだもんよ……
採取する時はOKとNGの見分け方とか素直に聞いとく!
料理、得意つーか元々は好きから始まってんだよ
誰かが美味いーって言ってくれんの嬉しいもんよ
お?なら同好の士募ったらどーだ?
オレ?オレは声援送っとく!
越喜来・湊偲
理嘉さん(f03365)と参加
やっぱり夏はキャンプですよねっ
夏だからこそ楽しめる上に訓練!
でも若い子達が多いからこそ、楽しい訓練にしましょう
体を鍛える……のは子供にはハードですし美味しいものを探しに行きましょう
食べられるもの食べられないものくらいは区別出来ますからね
俺は料理は簡単なものしか作れないので
俺達が採集したものを理嘉さんに料理を教わりましょう
へへ、理嘉さんの料理楽しみですっ
そんなに筋トレハードでした?
あの時は大人の戦士達への指導メニューでしたから流石に子供には出来ませんよ
あっ、ご飯食べ終わったら一緒にトレーニングします?しません?
やっぱり誰かと一緒にする方がやりがいがあるんですよねぇ
アックス&ウィザーズの世界に到着した猟兵たちを迎えたのは、パルマの木がそびえたつ青々とした高原であった。
地平線には山稜。
雄大な自然の景色に向かって、仁王立ちになり両腕を上げるは百合根・理嘉(風伯の仔・f03365)であった。
「キャンプ!」
「やっぱり夏はキャンプですよねっ。夏だからこそ楽しめる上に訓練!」
越喜来・湊偲(綿津見の鱗・f01703)もまた、ぐっと伸びをしながら大きく息を吸う。
空気が美味しい。
「おー、訓練キャンプとか初めてだけどもー。キャンプ! 野営! って言うと、ちょっとココロ踊る?」
みてーな。と。
にかっと笑んだのち、ふへへーと顔を緩める。インドアでアウトドアな18歳男子・ただよし。
うんうんと湊偲は頷いた。彼の耳に届くは、朝ご飯中の子らの声だ。
「若い子達が多いからこそ、楽しい訓練にしましょう」
ぐっと拳を作り、湊偲。
「おおい、兄ちゃんたち、話合いはじめっぞー」
指導員のディグダが二人を呼び、ぱぱっと湊偲と理嘉は指導員たちの輪に入った。
訓練生たちは班分けされていて、一班に付き一人の指導員。その日に皆が皆、すべて同じ訓練を行うわけではない。特に騎乗訓練などは、動物の数が限られているため、日替わりだ。
各村の女衆が交代で、主に食事の仕込みに来るらしく、地方総員で行われているキャンプだというのが分かった。
「湊偲は、体鍛える方向か食育とかなんかな?」
「体を鍛える……のは子供にはハードですし、そうですね、美味しいものを探しに行きましょう」
理嘉の言葉に、途中まで呟き思い直した湊偲がやることを告げる。
「食材調達だな」
言って石板に、石筆で書き込んでいくディグダ。理嘉が覗きこんでみると、この国の字などはよく分からなかったが本日の役割一覧のようだった。
はいっと挙手する理嘉。
「俺は飯作るのとかは得意ー。
んでも、折角だから湊偲と採取に行ってみるー」
「ほいほい。数日分の備蓄確保も必要でな。食材系はたんまりあるとなおいい」
「わかりました」
ディグダの言葉に頷くは湊偲だ。
「とりあえずは、今そこにある備蓄物を覚えて採取してってくれな。今は特に目立つ毒草も生えていない時期だから大丈夫だとは思うが……」
「食べられるもの食べられないものくらいは、区別出来ます」
湊偲の言葉に満足そうに頷くディグダ。
それでは、解散! と掛け声。
一日が始まる。
絶対に必須だったのは、そびえたつパルマとは違う木の幹であった。
「なんか違うヤシの木ー……これか?」
借りた山刀を手に、ぱしぱしと細いパルマの木を叩く理嘉。
太い幹がふくらはぎ辺りまで、そこから先は枝分かれしているような、柔らかめな青の幹が生えている木だ。
「葉も広がってますし、これでしょうね」
湊偲が山刀で葉を切り落とし、幹を切り倒して採取。外皮を向けば真っ白な幹があらわれた。
「生でも食べられるんだっけ」
「ちょっと食べてみましょうか」
白くて柔らかな幹はしゃくしゃくとしていて、例えればタケノコのようだった。
「うま! なんでも合いそーな感じ」
味の主張はなく、炒め、煮つけ、辛い味付けもあうかもしれない。――そんなことを理嘉が言えば、どこか感心したように湊偲は頷いた。
「俺は料理は簡単なものしか作れないので、その辺りは理嘉さんにお任せしたいですね」
食材の使い道をぽんぽん思いつくのは、得意な証拠だろう。
湊偲の言葉に、うーん、と理嘉は空を仰いだ。
「料理、得意つーか、元々は好きから始まってんだよ。誰かが美味いーって言ってくれんの嬉しいもんよ」
言葉後半、今まで貰った言葉や表情を思い出したのか、理嘉は笑む。心がこもっている料理なのだろう。
ばっさばっさと幹を刈り取りつつ、一抱え分を地面に置いた。
「へへ、理嘉さんの料理楽しみですっ」
本当に、楽しみだという笑顔で湊偲は「もっと食材集めます!」と張り切るのだった。
「つーか、これも筋トレの一つじゃね?」
ふと、気付いたような理嘉の声。
幹を縛って背負って、両腕には麻袋にハーブ類。――主に甘味ある葉が採取されている。
結構な重さだ。
「いえ、これぐらいは筋トレにもなりませんよ」
あっさりと、どこか飄々とした様子の湊偲。おまいう、みたいな表情になる理嘉。
「……そりゃ……だってよ、湊偲の筋トレとか鍛錬、案外とスパルタだもんよ……」
ええ? と意外なことを言われたように湊偲は応じる。
「そんなに筋トレハードでした?
あの時は大人の戦士達への指導メニューでしたから、流石に子供には出来ませんよ」
こどもにはやさしい、そうし。
キャンプ地について、どさどさと収穫物を置く。沢の音とは違う水音――見れば、捕らえたばかりの鳥が捌かれているところだった。
お腹を空かせて帰ってくるであろう、訓練生たちのための食事支度は進められている。
「あっ、ご飯食べ終わったらトレーニングしましょうか」
ぽんと手を打ち、わくわくと声をやや弾ませながらの湊偲の提案に、理嘉はにっとした笑みを向けた。
「お? なら同好の士募ったらどーだ?」
湊偲の、理嘉へと真っ直ぐに向かった提案がやや回避される。あれ? と湊偲は首を傾げた。
なんだろう、この、直球投げたのに変化球でしたっけ? みたいな感じ。
「ええ……理嘉さん、一緒にとれーにんぐ……しません?」
「オレは声援送っとく!」
否、ボールはとても正しく見送られてしまったようだ。
――なお、結果的に、冒険者もとい猟兵の技に興味津々であった指導員(冒険者)たちがトレーニングに挑戦してみるのだが――。
のちの惨状に見かねた理嘉は滋養のある料理を追加で作ることとなり、
「やっぱり誰かと一緒にする方がやりがいがあるんですよねぇ」
湊偲は晴れ晴れと、爽やかな空気を醸し出しながらきらりと光る良い汗を拭ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふぇ、あ、あのなんで私はこっち側にいるんでしょうか?
そして、アヒルさんはなんでそっち側なんですか?
確かに私は猟兵になりたてですけど、アヒルさんだって私よりレベルが低いじゃないですか。
アヒルさんはもうヒヨコ時代を終え、アヒルになったからそちら側なんて、アヒルさんは最初からアヒルさんじゃないですか。
それにアヒルさんじゃなくてアヒル教官って呼べって。
ふぇ、あ、アヒル教官。
腕立て、腹筋、スクワット100回なんて無理ですぅ。
ふえぇぇぇ・・・。
「体力作りだぞー、あの旗めがけて走ってこい~」
村でやる鬼ごっこの走りなんて、軽いものだ。
基礎体力向上日となった班。勿論休憩のための昼寝時間もあるが、それはそれ。
本格的な走り込みに、指導員のシビと――アヒルちゃん型のガジェットが四人の子供たちに追従するように走っている。
あわあわと、フリル・インレアン(大きな帽子の物語はまだ終わらない・f19557)は走りながら被っている大きな帽子をぎゅっと掴んだ。
ほとんどが斜面の高原でそのような姿勢で走れば、よたよたとしたものになる。
「フリルさん、気を付けて~。ほら、腕、こう振るの」
同班の女の子にお手本を見せてくれて、こくりとフリルは頷いた。
でも。
「ふぇぇぇ……」
あれ? と、赤い目をぱちぱちとさせて、
「ふぇ、あ、あのなんで私はこっち側にいるんでしょうか?
そして、アヒルさんはなんでそっち側なんですか?」
やや振り向けば、シビと共に駆けるアヒルさんガジェット――アリスラビリンスでフリルが目を覚ました時に、側に転がっていたアヒルさん――共に歩んできたはずの相棒は、指導員側にいた。
もうそりゃあ自然に。スッと。当たり前のように、アヒルさんは指導している。
気付いてしまったか、という雰囲気のアヒルさん。
「ふぇ」
アヒルさんガジェットは、翼をぱたぱた。
「た、確かに私は猟兵になりたてですけど、アヒルさんだって私よりレベルが低いじゃないですか」
おどおどとしながら言うフリル。けれど納得はできないという声。
アヒルさんは加速すると、嘴でツンツンとフリルの肩をつつく。走っているので、両者とも不安定な姿勢だ。駆ける弾みで、たまに痛い。
「つ、つつかないでください~。
アヒルさんはもうヒヨコ時代を終え、アヒルになったからそちら側なんて、アヒルさんは最初からアヒルさんじゃないですか」
「フリルさーん、がんばってー」
「もうちょっとでゴールだよ~」
「ふぇ」
同じ班の子に声を掛けられ、懸命に駆けるフリル。
到着すれば、完全に息は上がっていて、ちょっとずつ歩きながらはふはふと深呼吸。
そんなフリルの後ろをアヒルさんガジェットはついてくる――否、追い抜いた。後についてこい、というように、フリルの先導をして息がおさまるまで歩かせた。
「アヒルさん……」
フリルの声に反応し、くるりと振り向くアヒルさん。
何やら威圧されているようだ。
「アヒルさんじゃなくて、アヒル教官って呼べって……」
――目を潤ませるフリル。
アヒルさん、威圧。ずぉぉぉぉんと、頭部が陰っているような気が、しなくもない。
「ふぇ、あ、アヒル教官」
アヒル教官が言わんとすることを察したフリルは、ぴるぴると震え出した。
「ふ、フリルさん、どうしたの?」
「何か言われたの??」
フリルに共感した子供たちが怯えた声を出し、少女に寄り添う。
ぴるぴると震えながら、アヒル教官、そして指導員のシビを見上げ、そのあとで、ゆっくりと子供たちを見るフリル。
そして、首を振った。
「腕立て、腹筋、スクワット100回なんて無理ですぅ」
アヒルさん、ふたたび威圧。
ふむ、とシビも首を傾け、ぱんと手を打った。
「まあ、やれるところまでやってみようか。な、皆!」
と、こちらはにっこりとした笑顔の威圧。
「この青い空の下、気持ちの良い草地の上の訓練! 己が体力の限界を知るには良い機会だと思わないか?
限界を知ってこそ、冒険者だ!!」
「「「ふえぇぇぇ
……」」」
フリル班、震える。
「大丈夫だ! 倒れる時は、先生が運んでやるからな!」
アヒルさんも、キッス(?)で起こしてくれるようだ――ぶんぶんと嘴を上下に動かしている――突かれるのはとても痛いだろう。
「ふえぇぇぇ……」
大成功
🔵🔵🔵
木元・祭莉
今回は、生徒役で参加だよー♪
おいらも、大蜥蜴乗ったり、新しいお料理習ったりしたい!
……父ちゃんと母ちゃん以外のきょーいく、受けてみたいし(ぽそ)。
知ってる人いそうだし、変装しよー♪(バレバレ)
耳と尾引っ込めて、服装もA&Wっぽく!
具体的には、ポノちゃんみたいな!(女の子だ!?)
はーい、アタイまっきー!(同じ班の人にぺこり)
せんせーに習ったコトを、キチンとなぞっていきまーす。
上手な人のマネしたり、手こずってる人の手伝いしたり。
一般常識、仕入れたり!
冒険者志望の子と仲良くなって。
サバイバルのコツ、みたいな話をして。
夜はキャンプファイアー♪
歌って踊るよー。あ、耳と尾、出ちゃった。
明日も頑張ろうねー♪
自然に寄り添う暮らしの朝は早い。
動物の鳴き声と共に起き、キャンプ地の皆と一緒に食事をとり、各班分かれて二時間程はあちこちで青空教室が開かれている。
年齢ごとだったり、男女分かれていたり、日によって違うようだ。
指導員のトゥイエが自班の皆に「はい、注目~」と声を掛けた。
「今日から新しい仲間になる、まっきーだ。先輩諸氏はよろしく頼むな」
「はーい、アタイまっきー! よろしくね~」
にぱっと笑む木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)――動きやすいアックス&ウィザーズの緑の服とスパッツ。ふわりとなびくスカートは豊かな黄色の花弁のようにも見える。
知っている人もいるだろうからと、今日は狼の耳と尾を引っ込めて変装している祭莉……いや、まっきー。
「べんきょーするの、楽しみにしてたんだ~☆」
……父ちゃんと母ちゃん以外のきょーいく、受けてみたかったし……と、ぽそり呟いてみる。
「よろしくね、まっきーちゃん。あたしはエルルっていうの」
「エルルちゃん」
青髪を三つ編みにした十歳くらいの女子が、まっきーに挨拶。復唱すれば、同班となる二人の男子がジノとアミスタと自己紹介。みんなまっきーより年下だ。
「本日は大蜥蜴に乗って、少し遠くまで行くぞー。有事の際の避難誘導かつ、採取場だ。昼飯は現地調達だ」
「「「はーい」」」
「途中、若パルマを刈っていくぞー」
「「「はぁい」」」
「キュ」
「わあ、せんせー、ココを行くの?」
まっきーの相棒となった大蜥蜴のトトが鳴き、岩山のふもとを登っていこうとする。まっきーがトゥイエに声を掛ければ「そうだぞー」と返ってきた。
「よい、しょ」
たしたしと登っていく大蜥蜴の動きに合わせて、アミスタが声を上げる。
「基本、大蜥蜴に任せるように。だが、方向を変えたい時はその向きへ手綱を取るといい」
トゥイエのお手本を見て、大蜥蜴が辿る岩道を見て、まっきーは手綱をくいくいと動かして微調整。
一方、エルルは苦戦しているようだ。
「きゃあ。あんまりうまくいかない……!」
「大蜥蜴に、声掛けてみるといいかもー。ね、トト」
「キュ」
大事なのは意思疎通。
しばらく登って、到着した場はとても広い洞窟だった。岩の隙間から植物が生えていて、一瞬岩山だということを忘れる。
「戦や、村が壊滅に追い込まれた時の避難場所だ。皆、もしもの時は、家族をここまで連れてこないといけない」
「ここまで逃げてくるのって大変だね」
まっきーが呟けば、そうだな、とトゥイエは頷いた。
「戦火やモンスターが村を平らげてしまうのは、一瞬だからな。
追っ手に見つからない避難場を開拓していくのも仕事の一つでな」
麻縄をほぐして着火剤に。火をおこす。
狼煙の上げ方を教わり、煙で細かな伝達法があることを学ぶ。
「今だ!」
湿らせた布の両端をそれぞれエルルとまっきーが掴み、声に合わせて煙の調整。
山稜にある小屋からキラキラと光が放たれている。
「がんばれ、とさ」
岩山の水は傷の治りが早い水らしく、採取してきた植物で塗り薬の作り方を学ぶ。
「じゃ、まっきー、巻くね」
ジノがまっきーの腕に薬を塗り、水に晒していた葉を巻いた。
「ん。――……あ、じわっとあったかい」
ぺたりと貼りつき、乾いてくるとぎゅっと締まる。調整は要練習だろう。
若パルマの幹――青い外皮を剥けば、中からは白い幹。
穀物とともに炊いて皆で味見をしてみた。
「あ、たけのこごはんだ!」
どこか馴染みのある食感に、まっきーが言う。
「おにぎりにすると、おいしーよねー」
ころころおにぎりを作って、それが昼食となった。
オブリビオン襲来まで、まだ日があるなか、色々と学んでいけば同じ班の子たちとも仲良くなる。
「ジノもアミスタも、冒険者志望なんだー」
「そう!」
とアミスタは習ったばかりのナイフの扱いを懸命に復習していた。
ジノの両親は冒険者をやっているらしく――顔を合わせるのは年に二度くらいらしい。
「なんか気になる素材がいっぱいあるらしくって、あっちこっちしてる」
「……自由だね」
「や、自由なのはいいんだけどさ、うーん、なんだろ」
言葉にならないこの気持ち。
まっきーとジノが深く頷き合う。
冒険者といっても採取専門、戦い専門と色々あるらしい。
やはりというか知り合いも来ていて、窺いつつ、罠やナイフの取り扱いを習うまっきー。
夜はキャンプファイアーだ。ディグダたちがリュートを奏でたり太鼓を叩いたり。
色んな地方の踊りを習う場ともなる。
「集い花 咲き誇りて 憩う庭 想い溢れ」
リズムに合わせてくるくると、まっきーが歌えば不思議とその日の疲れが癒されていく。
(「あ、耳と尾、出ちゃった」)
ひょこっと出てしまった耳と尻尾――ふわふわの頭を両手で押さえる、祭莉。
ふと双子の妹の視線を感じた気もしたけれど。
にっこり笑って。
「明日も頑張ろうねー♪」
大成功
🔵🔵🔵
城島・冬青
アヤネさん(f00432)と
先生みたいでドキドキしますね
いえ、みたいじゃなくて今の私は先生
城島ブートキャンプ始まります!(気合十分)
アヤネさんは大蜥蜴の騎乗講座ですか
分かりやすくて教えるのが旨いな
私も頑張ろう
剣術志望の子達を見ていきます
というかやはり最初から大剣を格好良く使いこなす!と夢見てる子が多いですね
甘い!
基礎体力がつかないうちから大剣や長剣を振り回してもダメダメ
自分に合った扱いやすい剣を使いましょう
まずは木刀で素振りから!
十分に広さを取って
周りに気をつけて行いましょう
アヤネさんにも教えますよ
短刀や脇差を使った護身術はどうでしょ?
手合わせも喜んで!
おおっ
アヤネさん、なかなか筋が良いですね
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
ソヨゴにやる気がみなぎってる
世話好きさんだネ
と微笑み
では僕も教官をやろうか
何度か経験して会得している大蜥蜴の乗り方を教授しよう
鐙に両足をかけて
腰は下ろさずに体重を偏らせず
大蜥蜴の負担にならないように
言葉が通じなくても信頼してかわいがってあげること
だいたいこれで乗れる
ホントだよ
初めて乗る子の手伝いをしたり
アドバイスをする
剣は普段僕は扱わないけど
ちょっとソヨゴに教えてもらおうかしら?
ソヨゴ師範ひとつ手合わせを
扱わないと言ってもそれなりにやれるので
無様は晒さないけど
さすがソヨゴは強い
その後
大蜥蜴に乗ってソヨゴに後ろを指差すよ
はい、乗って
教えるから
負けず嫌い?そんなことないネ
指導員による、朝の話合い。
猟兵も初めての分野を学んだり、得意な分野を教えたりと立ち位置が変わる。
「それでは、二班、計八名の子たちをよろしく頼むぞ」
「はいっ」
ディグダの言葉に、座った状態でぴしっと敬礼するは城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)。
「じゃあ班の子たちを集めて、移動しましょうか」
指導員の一人、サリーが冬青とアヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)へ声を掛ける。
「よろしくね、せんせー!」
今日は剣の扱いだと聞いた子が弾んだ声で話しかけてきたり。
軽食を持って出かけて行く様は、まるでピクニックのようだ。
「先生みたいでドキドキしますね。……いえ、みたいじゃなくて、今の私は、先生」
ぐっと拳を作って、自身に言い聞かせるように呟く冬青。
「城島ブートキャンプ始まります!」
「ソヨゴにやる気がみなぎってる」
おお、と感心した様子でアヤネが言った。
「世話好きさんだネ」
と、ふわり微笑んで。
「アヤネさんは、大蜥蜴の騎乗講座ですね」
「うん、何度か経験して乗り方も会得しているし、丁寧に教えられると思う」
高原を歩いた先にある岩山のふもとに、大蜥蜴たちが飼育されている小屋があった。
訓練のために前頭帰ってきていて、五頭。リーダーはトトという名の大蜥蜴だ。
「僕はアヤネ。トト、よろしくね」
「ククク」
挨拶と一緒に花のついた草を差し出せば、それを食むトト。
「五人が大蜥蜴を経験済みで、残る三人が初めての子たちよ」
サリーの言葉に頷き、初心者の子たちを集めて、アヤネの大蜥蜴の乗り方訓練が始まる。
「え、えーと、よろしくね」
とアヤネを倣って、子供たちは大蜥蜴に挨拶。ちょっと慣れてきたら撫でてみる。
帯を回し鞍を固定して、
「体が低いから、馬よりは乗りやすいと思うよ。
鐙に両足をかけて、腰は下ろさずに」
一度手本を見せてから、やってごらんと告げる。
「わ、わわ……」
「キュ」
「うん、大蜥蜴たちも頑張っているからネ。体重を偏らせず」
「こう?」
一人の子がこんな感じ? という風に声を掛けてきて、そうそうとアヤネは頷いた。
「大蜥蜴の負担にならないようにネ。じゃあちょっと歩いてみようか――トト」
声を掛ければ、たしたしと生徒を乗せたトトが歩き始めた。
ゆっくりなので、アヤネは付き添うように歩いた。
最初はおっかなびっくり、少しずつ慣れていく生徒の様子を見つつ「大事なのは」とアヤネは説明を続ける。
「言葉が通じなくても、信頼してかわいがってあげること。だいたいこれで乗れる」
ホントだよ、とウインクして。
前進と後退。大きな岩を一つ、越えて。
「なれてきたかも……」
「そう? それじゃあ今度は岩山を歩いてみよう」
アヤネ自身も大蜥蜴に乗って、ちょっとした散歩の引率に。
「分かりやすくて教えるのが旨いなぁ、私も頑張ろう」
アヤネの教える姿を見て、よし、と意気込む冬青。
「そよごせんせい! 剣! 剣!」
「俺、ディグダのおっちゃんみたいに、大剣使う冒険者になるんだー」
「わあ、ディグダさんは大剣を使っているんですね~、って」
手にした木刀をぱしんと自身の掌に打つ冬青。
「甘い!」
「!?」
「チャンバラの経験はあるようですが、基礎体力がつかないうちから大剣や長剣を振り回してもダメダメ。逆に振り回されて転ぶのがオチです。
それ以前に、まず、あなたたちは持つこともできません!」
長さ、幅、そして重い。
よく使われるショートソードの刃長も平均、七十~八十センチで何も知らない子供が扱うには長すぎる。
木の棒で地面にがりがりとその長さの線を描く。
「ほんとだ、長いねぇ」
「自分に合った扱いやすい剣を使いましょうね。
今日は基礎中の基礎を教えますから、空いた時間に練習すると良いですよ」
そう言って、子供たちに木刀を渡す。
「まずは木刀で素振りから!」
立ち位置を決めます、と一人一人移動させて、十分な広さを取る。
「周りに気をつけて行いましょう。それでは、まずはお手本を見せますね」
一! 二! 三! と冬青はややゆっくりめの素振りを三回。
「素振りを十回です」
「「「はいっ!」」」
素振りを十回行わせ、様子を見る。
体幹のある子、ない子、木刀をぴたりと止める子、ぶれる子。
一人一人の癖を見つけ、冬青は次にそこを補うためのコツを教えていく。
次は十五回。
「それでは昼の休憩!」
近くの小川と林の側で、休憩時間。
チーズを挟んだサンドイッチと、飲み物は黒砂糖を溶かしたお茶だ。
休憩の場には大蜥蜴もいて、その辺の草を食んでいる。
アヤネと冬青は、それぞれの訓練風景を話す。
普段は剣を扱わないアヤネだが、聞いているうちに少しうずうずときたようだ。
「僕も、ちょっとソヨゴに教えてもらおうかしら?」
「では、短刀や脇差を使った護身術はどうでしょう?」
座っていたシートから立って、広さのあるところへ向かった二人は早速訓練を開始。
「基本は受け流しから、の、こう! ですね」
切り返し、左右の転身、と。体に覚え込ませるように。
何度か繰り返せば、アヤネの動きもスムーズになってくる。
「――うん、分かってきたかも」
確りと頷いたのちに、アヤネは「ソヨゴ師範」と呼びかける。
「ひとつ、手合わせを」
「喜んで!」
扱わないといっても、それなりに扱えることは動きで分かる。アヤネの申し出に、冬青はわくわくと弾む声を返した。
一礼ののち――アヤネから仕掛ける。
カンッ! と木刀の音がした。
袈裟懸けから刃を返し切り上げれば、打ち返した冬青が間合いを取るための後退。
踏みこんでのなぎ払いも、切っ先を狙った返しが打たれた。
「おおっ。アヤネさん、なかなか筋が良いですね」
「――さすがソヨゴは強い」
笑顔の冬青に、ふっと呼気を吐き出し、前傾した体を戻すアヤネ。
正眼に構え――次は冬青が仕掛けてきた。
休憩が終わって、一歩先に進んだ訓練。
陽が傾き、空の色が変わるころに帰路につく生徒たち。
「ソヨゴ」
「?」
夜の帳が降りてくるまで、まだ時間はある。
アヤネが呼べば、不思議そうな顔をした冬青が近づいてくる――アヤネはまだ大蜥蜴に乗っていた。
後ろを指差し、アヤネは微笑む。
「はい、乗って。教えるから」
「ええっ? もしかしてお昼の――?」
そう言いながら、大蜥蜴の後ろに乗る冬青。
その時に冬青の呟きが聞こえたような……いや、聞こえた。
「負けず嫌い? そんなことないネ」
「ええっとー、よろしくお願いしますね、アヤネさん」
「ん。それじゃあ、トト、ゆっくりネ」
太陽のある空はオレンジに。
対岸の空は仄暗く、夜が訪れようとしている。
グラデーションを描く空中に、いっとう輝く星が一つ、二つ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・杏
【かんさつにっき】
新人さん達に挨拶
ん、わたしも春からの新人猟兵
一緒にがんばろ(深々と一礼
UC発動
メイドさんズ、かわいい姿で生徒達緊張をほぐして?
現場監督のアシスタントもお願いね
まずは準備体操
身体が解れたら気持ちも解れる
大切
ん、わたしの担当は食育
冒険の心得
・ご飯がないと冒険出来ない
・材料は現地調達。ノウハウ大事
・おいしいは正義
心得をおぼえたらお料理ね
火加減、味加減
お肉加減……(狩猟組からのお肉に満面の笑み
夜はキャンプファイアー
音楽に歌って踊れば腹筋も鍛えられる
ふふ、あのこしっぽとふわ耳ある
まつりん(双子の兄・f16554)みたい
ん、わたしもタンバリンでリズム
シャン、シャ……ン、シャシャ……ン……
駒鳥・了
【かんさつにっき】オレちゃんことアキで!
準備運動は皆の間を縫って様子を見るよ
二人一組になれない子はオレちゃんと組も!
ん?ぐる眼鏡のあの子って…
面白いから黙ってよっと
終わったら罠講習!
跳ね上げ式で一本釣りするヤツ幾つか作ろ!
しなる枝は『猫の手』を振り回して引き寄せるね
皆には引っ掛けるための枝の細工とかロープ結ぶのしてもらお
餌を設置して罠を落ち葉とかで隠したら完成!
待ってる間はカービンせんせーに大蜥蜴の乗り方教えてもらおー
仲良しさん?鞍とか付けんの?
音に敏感ってコトは静かにした方がいい?(そーっと
終わる頃には獲物がかかっててくれるといいなっ
杏ちゃんのお料理に提供しなきゃっ
アドリブ絡み歓迎!
シリン・カービン
【かんさつにっき】
…?
ふふ、と祭莉を見かけても知らんぷり。
あの子も何かやりたいことがあるのでしょう。
準備体操には一緒に参加。
手間取る子にはお手伝いを。
何事も基本は大事。
ガーネットのナイフ講座はためになります。
アキの罠をつついて。
良い出来です。これは期待出来そうですね。
大蜥蜴と会うのは久しぶりです。
(懐かしそうに眼を細め)
ふふ、この子は怖くないですよ。
子供達に大蜥蜴の乗り方をレクチャー。
彼らは音に敏感で、危険を教えてくれるんです。
乗り方には少しコツがいりますが…
アキ、力を抜いて。
では罠を見に行きましょう。
大蜥蜴に乗って出発です。
杏、料理はお任せしますね。
踊りは眺めていますが、
…え、私もですか。?
ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】
さてさて、なにやら新人教育があるようで。
まずは体操で体をほぐしてからだね。
怪我をしないように、しっかり関節を伸ばそう。
じゃあ、二人一組になってストレッチだ!
罠作りを指導するアキ、オオトカゲを乗りこなすシリン。
料理の得意な杏。
皆たくましいな。私は地上は慣れない環境だから、
みんなが教えてくれることをしっかり覚えておかないと……。
私がに教えられるのは、ナイフの使い方かな。
うさみみメイドさん、アシスタントをお願い。
刃物の持ち方、手入れの仕方、モノの切り方。
サバイバルに刃物は欠かせないから、安全な使い方をしっかり
身に着けるように。食材が届いたら、早速実践してみよう!
アドリブ歓迎です。
「猟兵さんたちに預けたいのは、三班だな。うち、三人の騎乗訓練がまだだ」
石板を持ってディグダが【かんさつにっき】の面々を交えての打ち合わせ。
「大蜥蜴は、全部で五頭でしたね。任せてください」
シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)が頷く。
彼女の隣では、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が一帯の地図を見ながら、指導員のリーガルと周囲の確認かつ本日の計画を立てている。
その間に、新人たちへと挨拶をするは木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)だ。
「ん、わたしも春からの新人猟兵。一緒にがんばろ」
「おんなじ新さん? うん、がんばる」
ユノという名の少女が、杏に頷き返した。
「オレちゃんはアキ! よっろしくね~」
駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)――アキが手を振っての挨拶。
よろしくー! と方々から声を掛けられるのだが、ふと、聞き覚えのある声に「んん?」と首を傾げるアキ。
「アキ、どうしたの」
様子に気付いた杏が尋ねてくるのだが、
「や、なんでもな~い」
手をひらひらとさせてアキは笑顔を返した。
新しくやってきた冒険者――猟兵たちに、子供たちは興味津々だ。村で生まれ育った故「外の世界」の人はどうしても気になる。
うーん、と考えた杏はユーベルコードを発動させた。
「メイドさんズ、かわいい姿でみんなの緊張をほぐして?」
現れたのは、複製されたたくさんのうさみみメイドさん。
「わあ、お人形さん!」
「かわいいー!」
女の子に大人気なうさみみメイドさん。
「うさみみメイドさんも、一緒にがんばる。
まずは準備運動、ね」
体操のじかん。
ガーネットが、ぱんぱんと手を打って注目を集める。
「まずは体操で体をほぐしてみよう」
「たいそう?」
「そう、体操。怪我をしないように、しっかり関節を伸ばそう。
じゃあ、二人一組になってストレッチだ! 隣の組と少し間を取って」
ガーネットが号令に従って、二人組を作ってみる。
杏と組んだユノを含め、一部の子供たちは不思議そう。
「身体が解れたら気持ちも解れる。大切」
杏はこくりと頷いて、説明をする。
「パルグルちゃんはオレちゃんと組もっか! で、ジノちゃんは――」
不思議そうな子の手を取ってアキがぐるりと見回して、その時ジノを呼び、相方となった(知っている)子を見る。
(「面白いから黙ってよっと」)
同時にシリンも気付き、微笑む。
(「あの子も何かやりたいことがあるのでしょう」)
そっとしておくことにして、エルルという子と一緒に組む。
筋肉をしっかり使って、体を温めて。人と組めば気遣うことも学ぶので良い経験になったことだろう。
体幹が目覚めれば、傾斜のある高原での歩みも速くなる。
渓谷の小川を挟む林に入れば、鳥の鳴き声が近くなったように感じた。
獣道があり、周囲を見回したアキが呼びかけて皆を集める。
「はい、じゃあここで罠講習だよ!」
「「「は~い」」」
「捕獲した獲物は、みんなのご飯になるからね。頑張って、幾つか作ってみよ!」
アキの言葉に、杏も頷く。
「材料は現地調達」
「罠は、跳ね上げ式で一本釣りするヤツだよ」
やや大きなトの字型の枝を拾ったり、なるべく弧を描くように細工をしたり。
役目のある枝の特徴や細工を教えて、アキは木々を見上げて歩き始める。
「ナイフで削るんだね。まずは私がやってみよう」
枝と枝が引っ掛かりやすいように、ガーネットが荒めに削っていく。
うさみみメイドさんが良い場所を見つけるべく、がさがさと茂みを揺らして探索に出かけて行った。
「あ、この枝とかイイカンジ」
傾斜から突き出た木を定め、アキが猫の手を振り回せば、先端の三ツ爪型フックが枝を捉えた。ぐいっと引き寄せれば、枝はしなりアキの元へ。
「はい、アキせんせー」
「ありがとー!」
アキに着いてきた子はロープを渡し、背伸びして枝先に結んだアキの下で、指示通りに引っ掛け用の枝を結んでいく。
「で、この下にトの字の枝を打ちこんで……そうそう――こうやって固定すんの」
輪にしたロープを落ち葉で隠し、餌を設置すれば完成だ。
餌に触れれば添う枝が倒れ、軽く引っ掛けた枝が支柱から外れ本枝とともに跳ね上がる。伴い、ロープが締まるのだ。
これをあちこちに仕掛けてみる。
よく固定された支柱をつついてみるシリン。人差し指はロープを辿り、しなっている枝へ向けられた。
「良い出来です。これは期待出来そうですね」
「お肉、たくさん来るといいね」
と、杏も言うのだった。
獲物が掛かるまで、少し時間があるだろう。
一旦場を静めるべく、離れた場所で大蜥蜴の騎乗とナイフの使い方が教えられることとなる。
大蜥蜴の頭数は限られるため、交代での訓練だ。
「ククク」
「大蜥蜴と会うのは久しぶりです」
懐かしそうに目を細めるシリン。撫でる鱗の感触も久しぶりだ。
「ふふ、この子は怖くないですよ――名前は――ルックですか」
首輪に刻まれた名を読めば、ルックが反応し、大きな目が動く。
「彼らは音に敏感で、危険を教えてくれるんです。
モンスターと距離がある時でも、鳥の警戒の鳴き声を聞いた瞬間から、危険が近いことを教えてくれます。
嗅覚も優れていますが、これは、舌で確認しています」
「した、ってこれ?」
べ、と舌を出す生徒に、そうです、とシリンも自身の舌を指差す。
「花粉や、水気、空気中に漂うものを舌にくっつけて、口の中で確認するんです。
ですから、一緒に旅をすれば水場をよく見つけてくれます」
アックス&ウィザーズ世界で、主に旅に使われるのは馬だが、一部、山岳の地域などで運搬に使われる大蜥蜴。
頼れる相棒なのだとシリンは言う。
「キュ」
大蜥蜴は可愛らしく鳴き、大人しく撫でられていた。
「鞍とかつけんの?」
ひんやりとした鱗に触れ、アキが尋ねる。
「ええ。帯を首と胴に回して――」
鞍の付け方からレクチャー。シリンが手本を見せて、皆が倣う。その間大蜥蜴はじっとしていた。
「音に敏感ってコトは静かにした方がいい?」
鞍を取り付けつつ、そーっとした動きになっているアキ。小声だ。
そんなアキの様子に、ふふ、と笑むシリン。
「大丈夫ですよ。敏感に聴き取るのは『危険なもの』に対してですから。
次は騎乗ですね。乗り方には少しコツがいりますが……」
馬とは違い、左右に揺れる。手綱を握り、このまま少し岩山を歩いてみる。
「ユノとアキは、もう少し力を抜いて」
「ひえぇぇぇ……!」
「か、カービンせんせー、なんかこの子、うずうずしてる気がするんですケド」
ぺたりぺたり、たしたしと岩山を歩くユノとアキの大蜥蜴は時々ジャンプしたそうな動きをする。
手綱を引けば、ぴたりと止まるが、それぞれの丸い瞳はユノとアキを見つめた。ジャンプしようよ、という目なのだろう。
「あの大蜥蜴たちは、やんちゃなのだろうな」
大人しい大蜥蜴に騎乗してみたガーネットが、後ろに同乗している杏へと言う。
「大蜥蜴も、性格が色々」
こくこくと杏は頷くのだった。
(「罠作りを指導するアキ、オオトカゲを乗りこなすシリン」)
杏は料理を得意とするという――皆、たくましいな。と雄大な自然の風景を目にしながら、スペースシップワールドの住人であるガーネットは思う。
(「地上は慣れない環境だから、みんなが教えてくれることをしっかり覚えておかないと……」)
果てのない今だ目新しい青空は、不思議と、自身の世界の宙と重なった。
「私が教えられるのは、ナイフの使い方だな」
大きく回って罠を見に行くシリンたちと人数を分け、ガーネットがナイフの扱いを教える。
場所は、林の小川が少し幅広くなった下流だ。
「うさみみメイドさんには、アシスタントをお願いしよう」
任せて! という風に、うさみみメイドさんたちが生徒たちの間へ入っていく。
刃物の持ち方、手入れの仕方。
「先程の枝の細工時にも教えたが、切り方には注意するように。無闇に振り被ったり、力を入れすぎたりは怪我の元だからな」
枝をざっくりと加工するなら刃を入れた後、地面や平らな石に打ちつけて、割るように。
「少し慣れてきたら木彫りをしてみよう。作るのなら――そうだな、魚釣りにも使えるルアーなどはどうだろうか」
そう言った時には、手頃な枝をうさみみメイドさんが拾ってきていた。
薄く削ぎながら作っていく。
「魚のかたちで作ってみる!」
という生徒、アミスタにうさみみメイドさんが手伝い、杏も一緒にルアーを作っている。
「魚のかたち、葉っぱのかたち、色んなルアーがあるね」
悩んで作る時間は楽しいものだ。
生徒たちの間を歩き、たまに助言をするガーネット。
上手い者は鱗も彫っていて、ほう、と感心の声をあげた。
「サバイバルに刃物は欠かせないから、安全な使い方をしっかり身に着けるように。
食材が届いたら、早速実践してみよう!」
「「「はい!」」」
シリンとアキの班が罠にかかったウサギや尾長の鳥などの獲物を持ち帰ってくる。
「あと、まるまるっとした爬虫類! みたいなヤツ!」
網の中でごそごそ動く爬虫類(?)を掲げ、アキが笑顔で杏に渡した。
ガーネットやシリンの指導の元、川で血抜きをし、外皮をはいでいく。
「何事も基本は大事。ガーネットのナイフ講座はためになりましたか?」
「うん! ……じゃなかった、はい!」
シリンの言葉に、赤茶髪の生徒が元気よく返事をする。
ざっと処理を終わらせた獲物を担ぎ、行きよりは短い帰り道。
キャンプ地にて、皆の前に立つのは杏だ。
「まずは、冒険の心得」
ひとつ、ご飯がないと冒険出来ない。
ひとつ、材料は現地調達。ノウハウ大事。
ひとつ、おいしいは正義。
「ご飯をおいしく食べる。みんな、力が湧いて元気に冒険できる」
携帯食も役に立つが、大事なのはしっかりと食べることだと杏は言った。
心得を覚えたら、いざ実践。料理だ。
「今日は網で焼くのと、鍋料理」
火加減を見つつ、肉や採取してきた食材を焼く。
香草も色々と種類があり、ブレンドされるスパイスは家庭により様々だ。
「味加減……お鍋は、出来上がる前に一度味見して」
もう少し、お塩かな……と杏は塩を大きく三つまみ分追加した。
「お肉加減も、いい」
狩猟組の持ってきた肉たちが並ぶ壮観な風景に、満面の笑みで杏。
と、完全に採取したもので作る分。
ぷらす。
麦粉を水と卵で溶かし、下味を混ぜて鉄板に流すガーネット班。
「この上に食材をのせて包んだり、あとで包んで食べたりするのか」
「へぇ~、ガレットとかクレープみたいだね!」
アキが言い、何を挟んでみよっかな、と食材の選定に入る。
出来上がったご飯は夕食に。
別の班の者たちが、駆け戻ってくるのを出迎える。きっと美味しい匂いが向こうにまで流れていたのだろう。
肉は種類によって噛み応えがあったり、柔らかく口の中でほろほろに崩れたり。
葉物とチーズ、照り焼き肉を平らに焼いた麦粉に包んで食べたり――どんな具材にするのか、わいわいと悩む食卓はとても賑やかだ。
夜も深まり、夜はキャンプファイアー。
指導員たちがリュートを奏でたり、太鼓を叩いたり、笛の軽快な音がリズムを先導する。
村によって伝わる踊りも違っていて、それを習う場でもあった。
「音楽にのって歌って踊れば、腹筋も鍛えられる」
杏は頷いた。疲れ切った一日の終わりに、最後の仕上げとなる楽しい運動だ。
たくさん眠れば、栄養とともに、次の日の力になる。
「踊りは、収穫祭の練習にもなるの」
と、ユノが言う。少女の話によれば、一季節分あとに各村の者がここに集まり、数夜の収穫祭が行なわれるらしい。
「みんな仲良し、良いこと。――ふふ、あのこしっぽとふわ耳ある。まつりんみたい」
ふと目に映った子をみて、杏。
大きな火を囲んでくるくると。踊り手が動けば、手足に付けた鈴が鳴る。
踊っていたアキは、踊りを眺めているシリンを見つけ、大きく手を振った。
「カービンサンも踊ろっ! ほら、鈴付きの腕輪、まだあるしさっ」
「……え、私もですか?」
少し驚いたようにシリンが言う。
くるくると、りんりんと軽やかな音を鳴らし、楽しげなアキの姿。声は弾んでいて。
顔を綻ばせてシリンは立ち上がった。
「ん、わたしもタンバリンでリズム」
シャン、シャ……ン、シャシャ……ン……と独特なリズムでタンバリンを鳴らす杏。
ガーネットは指導員が持ってきた地酒をいただきながら、キャンプファイアーの光景を眺める。
煌々と輝く火と、楽しむ者たち。
その輝きにまけじと満天の星空が、世界を覆っている。
夜空は、ガーネットの良く知る宙と同じであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『シマエナさま』
|
POW : ひえひえアロー
レベル×5本の【氷】属性の【魔法の矢】を放つ。
SPD : こおりガード
対象のユーベルコードに対し【氷の盾】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
WIZ : シマエナガ・まきしまむ
【沢山のシマエナガ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
●
その日も、いつもの訓練日となるはずであった。
基礎を習った生徒たちが、もう一歩踏み込んでみる訓練。
モンスターを真似た指導員が戦闘訓練を行う――そんな予定であった。
早朝。
いつもの鳥の鳴き声が、聞こえなかった。
かわりに耳に入ってきたのは、
『ジュルリ、ジュルリリ』
『ぴよ』
『ジュリリ』
独特な、ジリジリとした鳴き声の中に時折混ざるピヨ。
ぱっと跳ね起きたディグダが大剣を手にとり、テントの外に出た。
「――!?」
な、なんだありゃあ。と目を擦り、遠眼鏡をあてる。
朝靄のなか、雲のような、もくもくと迫る白。
否、もふもふと迫るモンスター・シマエナさま。
一部、高いパルマの木を凍らせつつ、てっぺん目指して頑張って飛んで降り立ち、
『ジュリジュリ』
と上機嫌に囀っていた。見晴らしが良いのだろう。
やって来たモンスターもといオブリビオン。
朝靄がより冷たい空気に包まれる――モンスターの集団は生態系を破壊し、村を壊滅にまで追い込む――ディグダは真剣な顔をしているのだが。
「わあ、可愛い!」
「もふもふしてそー」
と、新人な訓練生たちは、シマエナさまの可愛い見た目に反応していた。
確かに可愛い。
だが倒さなければいけない。
猟兵たちは覚悟を持って、もふりたい衝動を殺し(希望)、真摯に、シマエナさまへと向き合う――。
木常野・都月
こんなにもふもふな生き物がオブリビオンなはずない…
何かの間違いなのでは?
だってこんな…つぶらな目をしてる…敵である訳がない…
[動物と話す]で、本当にオブリビオンなのか聞いてみる…
さりげなくもふもふ出来たらいいんだけれど、やはり難しいかな…
本当の本当にオブリビオンなら仕方ないので、ユーベルコード[狐火]で焼き鳥に…する…
『ピヨ』
『ジュリリリリ』
真っ白でふわふわ。
時に雪の妖精とも評されるシマエナガ――じゃなくて、オブリビオン、シマエナさま。
朝靄のなかあらわれた白い生き物を、都月はディグダと同様に目を擦り、
「こんなにもふもふな生き物がオブリビオンなはずない……何かの間違いなのでは?」
と呟いた。
「ツヅキさん、あのこモンスターなのかな? 可愛いねぇ」
訓練生の言葉に、こくりと頷く都月。
『ピヨ』
一体のシマエナさまが近寄ってくる。黒と茶模様の翼をぱたぱた。
じーーーーー、と都月と訓練生を観察しているようだ。
元より、表情の変化があまり見られない彼だが――ぐ、と僅かに唇を結ぶ都月。
(「だってこんな……」)
シマエナさまは、じーーーー、と都月を見ている。
「……こんな……つぶらな目をしている……敵である訳がない……」
都月の言葉に、次に頷くは訓練生だ。こちらは瞳を輝かせてシマエナさまを見つめている。
この子の輝きに比べれば、シマエナさまの瞳はやや虚ろというべきものであったが、やはり、確認をしなければいけないと都月は思った。
「……『シマエナさま』は」
声を掛ければ、『ジュリ?』と頭をカクカクンッと傾けるシマエナさま。
鳥独特の動き。
都月の狐尾がぱたぱたと動いた。
純粋な動きにも見える。
都月は、何を尋ねるのか忘れた。
「ツヅキさん、ちょっと触ってみようよ」
「……ん。気を付けて」
と言いつつ、都月もまたシマエナさまに触れてみることに――白毛がふわふわと。
さりげなくもふもふもふもふ。
もふもふもふもふ。
もふもふしていたら、その丸い胴は何だかもちもちしているよーな気がしてきた。
時が経つのを忘れ、無言でもふもふもちもちする都月と訓練生。
シマエナさまのつぶらな瞳は閉じられ、一種、無我の境地のよーな顔になっている。
もふもふ、もちもち。
「――は」
都月、我に返る。
そうだった。
本当にオブリビオンなのか、聞いてみないと。
素性を明らかにするのは、大事なことだ。
「『シマエナさま』は、本当の本当にオブリビオン――なのか?」
『…………』
ぱちりと目を開く、シマエナさま。
深く、深く、闇先のような、虚ろな、色。
ぶるりと白いもふもふな胴を震わせて、シマエナさまはシマエナガ・まきしまむを放った。
「……!」
黒い狐耳をピッと立て、訓練生の腕を引く都月。
「わ!」
沢山のシマエナガが飛び立ち、二人の周囲を飛び回る。
「仕方ない……燃えてしまえ」
都月の放った数多の狐火が、シマエナガたちの飛び回ってからの体当たりを阻害し、灼く。
『ピヨ!?』
『ピヨォォォ』
炎を扱った攻撃が鳥たちを灼く。
炎を留めることなく、更に放つ都月。幾つかを集わせ、シマエナさまへと大きな狐火を向ける。
『ビヨォォォ!』
「ツヅキさん……何か良い匂いがするね」
目前の光景に、ハッと我に返ったらしき訓練生が呟く。
「そうだな」
と、都月も辺りに漂いはじめた匂いに、深く深く頷いた。
炎で攻撃されたら、焼き鳥の匂い――。
鳥型オブリビオンの宿命ともいえる、末路であった。
成功
🔵🔵🔴
小宮・あき
アドリブ、連携、歓迎です。
ふふ、可愛い鳥さん。
何度かアックス&ウィザーズでお見かけしているけど、やっぱり可愛いなぁ。
オブリビオンでなければ、と何度思ったことでしょう。
攻撃前に、少しふわふわ触れるかしら。
子供たちに見せるには少々酷かもしれませんが、仕方ありませんね。
可愛いからといって放置しては出来ません。
マスケット銃を52本、宙に浮かべて空中戦。
スナイパーで仕留めていきましょう。
氷の壁は…、うん。じゃあ、別方向から撃ちますね。
他の方々が苦戦されていたら応戦しますが…きっと大丈夫でしょうね。
子供が怪我をしていないか、注意をしておきましょう。
『ピヨ、ピヨ』
声は可愛らしく、わぁ、と声を上げる訓練生イェカに気持ちはわかります、とあきは頷いた。
このシマエナさまを初めて見た者は、その可愛らしさに声をあげるのだ。
「ふふ、可愛い鳥さんですよね」
あきの声に、視線はシマエナさまに留めたまま頷くイェカ。
たくさんのシマエナさま。ぴよぴよじゅりじゅりと、爽やかな朝に相応しい鳴き声。
『ジュリリリリ――』
その時、一体のシマエナさまが歌うように囀りながら降りてくる。
ほわんとした笑みを浮かべるあき。
「何度かアックス&ウィザーズでお見かけしているけど、やっぱり可愛いなぁ。オブリビオンでなければ、と何度思ったことでしょう」
そっと触れてみれば、ふわふわとした毛が掌をくすぐる。大きかったり、小さかったり様々な大きさのシマエナさまたち。
あきたちの前に来たシマエナさまは、小さな個体であった。
更に少し押すように手を伸ばせば、ふわふわとした羽毛に指先が埋まる。幼体に近いのかもしれない。
「触っても大丈夫なの? モンスターなんでしょう??」
イェカの、心底不思議そうな問いかけに、あきはくすくすと微笑む。
「このシマエナさまは、触れても大丈夫みたいですよ。可愛いからといって放置はできませんけれど」
放っておけば、世界を滅亡へと導く明確な敵だということを説明する。
「可愛いのに、恐ろしいのね……」
もふもふしながら、理解したイェカは頷いた。
その時、ジュリリリリと一部のシマエナさまたちが騒ぎ始めた。人間の姿に進行を止めた仲間を注意し、促すように。
薄らいでいた朝靄が、明確な光を放つ――凍気だ。
「あなたたちに見せるには、少し酷かもしれませんが――仕方のないことです」
氷の矢が降る前にと、ユーベルコード『愛雨霰』でマスケット銃を複製させたあきは、その五十二本すべてを念力で操り空へと送り出した。
ガガガガガガガッ!
一斉掃射から続く装填音。
高らかな銃声が朝靄をかき消し鳴り響く。
『びよ!?』
ばっ、ばばっと飛立ったシマエナさまたちが凍気を操り氷の盾を張る。
キンッと返される弾の音。
「――うん。じゃあ、別方向から撃ちますね」
あきは力を繰り、くるりとマスケット銃たちを動かす。銃口は常にシマエナさまの方を向き、銃身が半回転。
撃たれ、ぼたっと落ちてくるシマエナさまが複数体。
「イェカさんたちは――」
危ないから離れてと言おうとしたあきは、覚悟をした目の少女を見て言葉を飲みこんだ。
そしてこくりと頷く。
「怪我をしないように、十分に気を付けてくださいね」
キャンプの目的は、未来、様々な意味で身を守れるようになること――自衛だ。
子供たちがその身に取り返しのつかない傷を負わないよう、注意しながらあきはシマエナさまを倒していくのだった。
成功
🔵🔵🔴
越喜来・湊偲
理嘉さん(f03365)と参加します
これはふかふかした愛らしい
……豆大福
いえ、鳥ですって!!
いや……分からなくもないですけども
真っ白な体が大福、目と嘴の黒が豆の部分で
うーん本物が食べたくなってきました……
あんまり豆大福言っちゃうと襲い掛かってこないですかね
いや、襲われる前に襲えば良いんです
はい
えっ!?だいおーいかたん食べられるんですか!?
イカですから食べられるでしょうけど
バーベキュー……イカ焼き……あぁ、もう腹減ってきたっす!
片付けましょ!
俺も理嘉さんに対抗してO・Oでシャチを召喚するっす!
数で勝負っすよ!
バ、バター醤油
シャチさんまで涎垂らしてる……!
理嘉さん!ちゃんとご馳走してくださいね!
百合根・理嘉
湊偲(f01703)とー
…
……
………豆大福
可愛いーとかよりも、こう……なんつーか……豆大福?
や、決して美味そーとかそーゆーんじゃないけどよ
似てねぇ?
思わず湊偲に同意求めてみたりして
シマエナさまへの第一印象が
ソレなのはさておき、ちゃっちゃと片そうぜー
そいや、この後のだいおーいかたんは美味いぜ
俺、今年の夏が来る前に喰った!
海辺でバーベキューして!
言いつつもバトルキャラクターズ使用
召喚したにーさんらで攻撃
攻撃が届かねぇなら念動力で大福叩き落しちまえ!
落っこちて来たり射程に入ってきたら攻撃
あ!バター醤油とかサイコーに美味かった!
Black Diamondを纏わせた手足で攻撃しつつ湊偲に報告も忘れねぇ!
もっふりとした白い羽毛。
『ジュリリリリ』
シマエナさまが動けば、ふわふわと煽られその毛は揺れる。
『ピヨ?』
かくかくんと頭を傾けるシマエナさまの、鳥独特の動き。
「これは」
地面に降り立ち、パルマの木を見上げるシマエナさまの背後からそっと近づいた湊偲は、丸い胴にそおおおおっと触れてみた。
「ふかふかした」
ふわふわ、さわさわ。白に埋もれる湊偲の青の手。
「…………」
理嘉は無言のまま突き、湊偲は湊偲で呟きを続ける。
「愛らしい――」
「豆大福」
「――豆大福」
唐突に挟みこまれた理嘉の声につられる、湊偲。
…………うん?
今、自分は何と言っただろうか? 鳥って言ったつもりであったが、口の名残に「う」の母音を感じた。
「いえ、鳥ですって!!」
「豆大福」
「ですから、豆だい……じゃなくて、鳥ですって!! いや……分からなくもないですけども」
『ビヨ!?』
豆大福、言葉は分かるのか、抗議するように湊偲を見上げてきた。裏切り者を見つけたかのよーな黒い虚ろな目が大きく開いている。
「可愛いーとかよりも、こう……なんつーか……豆大福?
――や、決して美味そーとかそーゆーんじゃないけどよ」
『ビヨ
!?!?』
そこは美味そうって言えよ! という風に、豆大福は抗議の声を上げた。
一歩下がる、湊偲。
顎に手をあて、じっとシマエナさまを見る。
「真っ白な体が大福、目と嘴の黒が豆の部分で……うーん……」
だんだん。
だんだんだんだん、見れば見るほど、豆大福にしか見えなくなってくる。
「本物が食べたくなってきました……あんまり豆大福言っちゃうと襲い掛かってこないですかね?」
『ジュリリリリリリ』
既に、完全臨戦態勢だ。声が怒っている。
それでも今だに襲ってこないのは、理嘉に頭を抑え込まれているからであった。翼を広げようとすると、ぐっと地面に向かう顔。
『ギィィィィ』
「ソレはさておき、ちゃっちゃと片そうぜー」
「襲われる前に、襲ってしまいましょう。はい」
こくんと湊偲は頷いた。
ユーベルコード『バトルキャラクターズ』で戦闘用ゲームキャラクターを召喚する理嘉。
『ジュリリリリ!!』
ばばっとシマエナさまたちが襲ってくるなか、ゲームキャラクターたちが戦い始める。
「頼んだぜ、にーさんたち! 攻撃が届かねぇなら、念動力で豆大福叩き落しちまえ!」
理嘉の言葉通り、彼らは念動力を繰り、叩き落としたり、引き寄せたり。透明度の高い細身剣を振るい、シマエナさまの氷力に対抗する。
「……あ。そいや、この後にやって来るっつーだいおーいかたんは――」
――美味いぜ。
キリッとした声であった。
ぐっと作った拳から出た親指が自身を差す理嘉。そしてニッを笑う。
「俺、今年の夏が来る前に喰った! 海辺でバーベキューして!」
どや! 喰ってやったぜ! という表情。
「えっ!? だいおーいかたん、食べられるんですか!?」
湊偲は驚きの声をあげた。
だいおーいかたんは、ダイオウイカ……イカタンである。
「イカですから食べられるでしょうけど」
そう、イカだ。
「バーベキュー……イカ焼き……」
イカに切れ目を入れ、炭火などを使用する網上に置き、イカを焼く。
焼けば皮が縮み、入った切れ目が模様となる――海鮮の焼ける香り。
甘味を追加したタレを絡ませ、さらに焼けば香ばしい香りが辺りに漂うことだろう。
あつあつ。歯ごたえがあるも、柔らかな、身。
「……あぁ、もう腹減ってきたっす!」
どこからか焼き鳥の匂いが漂ってきて、余計に刺激された湊偲が言う。
豆大福にもなれず、焼き鳥としても、いまいち足りない(主にタレの香り)シマエナさまなど、およびではない。
そして経験者がいるのなら色々安泰だ。きっと解体や調理も手慣れていて、ざくざく捌いてくれるだろう。
「さっさと片付けましょ! そうと決まればシャチのショーの始まりっす!」
巨大なシャチが出現する、湊偲の『O・O』。
シマエナさまがこおりガードをしても、シャチに弾き飛ばされる。
『ピヨォ!?』
食的な意味で、もはや通過点でしかない存在へと押しやられたシマエナさま――もふもふ可愛いだけの彼らなぞ、食欲旺盛な青年二人の前では無力であった。
「あ! バター醤油とかサイコーに美味かった!」
闇色のオーラ。硬度あるBlack Diamondを手足に纏い、豆大福を殴り攻撃する理嘉が、更に食欲を煽ることを言う。
じゅわっと。
バター醤油の香りが、そこに漂ってきた――否、正確にはどこからか漂ってきている鳥の焼かれる匂いなのだが――錯覚するには充分な要素である。
「バ、バター醤油……」
ごくりと喉を鳴らす、湊偲。そして動きを止め、大きな口を開けたままのシャチ――。
「シャチさんまで涎垂らしてる……!
理嘉さん! ちゃんと、責任とって、ご馳走してくださいね!」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
城島・冬青
・アヤネさん(f00432)と
ぐ、敵が可愛い…
もふりたいのは山々だけど
生徒達の今後の為にもここはもふ欲に流されず…ってコラコラー!アヤネさんストップ!何やってんですか!(シマエナさまを引っぺがし遠くにポイ)
生徒達に気付かれないよう耳打ち
今の私達は先生ですよ
生徒の目の前で戦闘そっちのけでシマエナさまをもふったら生徒達が敵はモフるもの…と勘違いしかねません
ガチなドラゴン相手に呑気にもふりに行かれても困りますし…真面目に戦わないとだめです
切替えたアヤネさんに一安心
さぁ武器を構えて私達も戦うよ!油断しないでね
と生徒達に声をかける
しかし切替えたアヤネさんは
容赦が無い
生徒達がトラウマになるのでは…と不安に
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
シマエナさま
かわいいネ
周りのことは深く考えずにまっすぐもふりに行くよ
ふわふわー
わー気持ちいい
すっかり癒されご機嫌
でもソヨゴに注意されて
そう?では仕方ないネ
さっさと切り替えます
Scythe of Ouroborosを袖口から滑るように取り出し
ばっさり斬りつけます
息の根を止めるまでざくざくと
たくさんいるなら続けてざくざく
まとめてきたらUCで阻害して
一匹ずつ倒します
生徒達の方をくるりと振り向いて
切り替えが大事だネ
とにっこり笑顔で
オブリビオンは残さず退治しなくてはネ
僕からのレクチャーはこんな感じ
『ぴよぴよ』
『ジュリジュリ~♪』
弾みをつけて鳴くシマエナさまは、ご機嫌だった。
高いパルマの木から見る景色は、朝靄にかかり、まるで雪原のようだったからだ。
ひんやりとした朝の空気のなか、飛ぶ。
大地に降り立ち、ぴよぴよ。じゅりじゅり。
手分けするように、生徒を率いて対処へと向かう指導員――そのなかに冬青とアヤネの姿もあった。
丸い胴をふりふりと。
カクンッと頭を傾げて冬青を見つめるシマエナさま。
『ジュリ?』
緩みそうになる頬に、力を入れる冬青。
「……ぐ、敵が可愛い……」
見るからに、もふもふしている毛だ。伸ばしそうになる手にも力を入れ、冬青は拳を作った。
(「もふりたいのは山々だけど」)
もふりたい衝動を打ち消すべく、一旦、視界を閉ざす冬青――それでも油断はせず、気配を探るように神経を研ぎ澄ませる。
一方。
「あの鳥さんモンスターなの?」
「可愛い~」
生徒たちが、ふわふわもふもふしてそうな丸いモンスターを見て、口々に言う。
アヤネも同意するように頷いた。
「シマエナさま、かわいいネ」
そう言いながら、ふらっと一歩を踏み出して、真っ直ぐシマエナさまの元に。
丸い体を、包みこむように。腕をやや広げたアヤネはシマエナさまを――もふった。
『ピヨ……』
ふわんふわんと揺れる白い羽毛。
ふわふわー、わー気持ちいいー。と、ちょっぴり小声で呟きもふもふ。更に少し手を差し込んでみれば、むちむちとした鳥肉は、もちもちしているような感じもして。
その時、丁度、もふる衝動との戦いに勝った冬青が、カッと目を開いた。
「生徒達の今後の為にも、ここはもふ欲に流されず……って」
決意溢れる琥珀の瞳に映ったのは、もふ欲に流されているアヤネの姿だった。
「……もふもふぅ」
『――』
アヤネもシマエナさまも、目を閉じて、もふりもふられている。
「コラコラー! アヤネさんストップ! 何やってんですか!」
「あっ」
『ビヨ!?』
シマエナさまを掴み、引っぺがして遠くにポイする冬青。
傾斜のある土地である。すっかり油断していたシマエナさまは転がり落ちていった。
『!? ビヨオオオォォォォ……ォォ……』
ドップラー効果。
アヤネに続こうとしていた女子生徒が「あっ」と残念そうな声をあげる。
彼女たちの視線が敵を追うのを確認しつつ、冬青はアヤネへと耳打ちする。
「アヤネさん、今の私達は先生なんです。
生徒達の目の前で、戦闘そっちのけでシマエナさまをもふったら、生徒達が敵はモフるもの……と、勘違いしかねません」
冬青は、真面目に、キリリとした表情で言う――今まで、可愛い敵と対峙した時などは葛藤しつつ倒す冬青であったが、今日の冬青は違う。
これは、冬青先生だ。
「ガチなドラゴン相手に、呑気にもふりに行かれても困りますし……真面目に戦わないとだめです」
世にはもふもふなドラゴンもいる。そんな敵の前で呑気さを見せたら、即死だ。
「そっか……では仕方ないネ」
こくりと頷き応えるアヤネ。
ほわんと緩んでいた緑の瞳に、やや鋭い光が宿る。
『ジュリリリリリ』
『ピーヨ』
鳴き声は周囲からたくさん聞こえてきて、生徒たちは辺りを見回す。
少しずつ近づいてくる気配。
滑るように袖口から取り出されたのは、Scythe of Ouroboros。
ひゅ、と風を切り、朝靄を裂き、軽やかに動く大鎌がシマエナさまを斬り払う。
初手一閃に二体。弧を描く大鎌は、続けて大きく旋回し、次々にシマエナさまをなぎ払った。
『ビヨ!?』
シマエナさまが沢山のシマエナガを放つ、シマエナガ・まきしまむを発動させれば鳥の群れがアヤネたちを襲いだす。
その一体一体に対応するのは、召喚した小型の戦闘用機械兵器だ。
『!!』
「そこだネ」
自身の背後へと鎌刃を滑らせるアヤネ――見事、丸い敵胴を刃先が貫いている。
『……ピヨ……ッ』
ぼとっと落ちたシマエナさまが骸の海へと還っていく。
ふ、と短く息を吐き出したアヤネは、くるりと生徒たちの方へと振り返った。
「切り替えが大事だからネ」
と、にっこり笑顔で告げる――先程「もふもふぅ」してた人と同一人物であることをここに記す。
アヤネの働きに安心した冬青も、生徒たちを振り返った。
木刀から、本物の剣を持つ生徒たち。
「さぁ、武器を構えて私達も戦うよ! 油断しないでね」
「「「はいっ」」」
シマエナさまへ一刀を放つ冬青――的確に敵を捉えるその斬線を見て、子供たちも頑張る。
「もう少し、力を抜いて! 足先まで意識して」
ここは傾斜だから、注意しないと転ぶよ、と。
剣を持ったまま転がるのは自殺行為である。
「わっ、わかりました……!」
目を配る冬青が、次々と助言を飛ばす――最中、視界に入ったのはアヤネの動きだ。
大鎌を舞わせるように振るい、傷付いたシマエナさまのトドメは生徒たちへ。
「オブリビオンは残さず退治しなくてはネ」
「……っはい」
一体、一体を仕留めていく。
「ん、よし」
アヤネは頷く――わあ、と冬青は頬を僅かに引きつらせた。
ざくざく斬り払っていくその姿。
切り替えた後のアヤネは容赦が無い。
大鎌でシマエナさまを骸の海に還すその姿は……――。
生徒たちのトラウマになるのでは……、とちょっぴり不安に思うのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フリル・インレアン
ふえぇ、もうダメです。
アヒル教官、なんで私だけ早朝マラソンなんですか?
あれ?みなさん、集まってどうしたんですか?
ふわぁ、かわいい小鳥さんがいっぱいです。
ふぇ、て、敵さんなんですか?
ふえぇ、襲ってきました。
えっと、サイコキネシスで飛んできた氷の矢を掴んで防ぎます。
ところで、アヒル教官、いかにも特訓の成果が出たみたいな顔をしてますけど、こんな特訓していませんからね。
朝靄漂う高原を、フリルは懸命に走っていた。
はふはふと、呼吸も懸命にしなければ――やや空気は薄い気がする。
「ふえぇ、もうダメです……。アヒル教官、なんで私だけ早朝マラソンなんですか?」
アヒルちゃん型ガジェット――アヒルさん。否、ここではアヒル教官だ。
アヒル教官は、ガジェット音をたてる。
「ふぇ……びしばしです……」
アヒル教官を抱っこして駆けるフリル。
早朝マラソン――その一周目が終わる頃、フリルはテントから出てきていた訓練生たちのざわめきに気付いた。
「あれ? みなさん、集まってどうしたんですか?」
「あ、フリルさん、おはよ――って、大丈夫? お水飲む??」
「ふぇ、えっと、リンカさん、ありがとうございます」
同班の同じ年頃の女の子、リンカに水を手渡され「いただきます」と、こくこくとフリルは飲んでいく。マラソンによりドキドキと強く動いていた心臓が、少し落ち着いた。
その頃には、何やら賑やかで可愛い声が聞こえてくることにも気付く。
「な、何の声でしょうか?」
「えっとね、ほら、あそこ。見えるかしら?」
リンカが差す指を辿ってみれば、ぴよぴよ、じゅりじゅりと鳴く白い鳥の姿。まん丸だ。
「ふわぁ、かわいい小鳥さんがいっぱいです」
「可愛いんだけど、モンスターなんだって」
「ふぇ、て、敵さんなんですか?」
アヒル教官を抱きしめ、驚きの声をあげるフリル。
そんな会話をしていると、凍ったパルマの木の上から氷の矢が降ってくる。
ひゅん! と風を切る音が、フリルの耳を打った。
「ふえぇ、襲ってきました」
「きゃあ! 盾、盾がいるわよね……!」
リンカがテントへと走っていく――それを追うシマエナさま。
「あっ、リンカさん、あぶないです」
見えないサイキックエナジーを放ち、シマエナさまを弾くフリル。
『ビヨ!?』
シマエナさまがぼたっと地面に落ち、傾斜ある高原のなかを転がり落ちていく。
そのままサイコキシネスで飛来してくる氷の矢を捉え、ばきんと折っていった。
アヒル教官が、よくやった! というようにガジェット音を立て、動く。
フリルが見れば、何やらどやぁとした表情になっているような――気がしなくもない。
「ところで、アヒル教官」
フリルが声を掛ければ、アヒル教官は見上げてくる動き。目と目が合った。
「いかにも特訓の成果が出たみたいな顔をしてますけど、こんな特訓していませんからね」
――!! ――!?!?
「ふえぇ、お、驚いてもダメです。本当に、していません」
ふるふると首を振る、フリル。
対抗し、ぶるぶると首を振るアヒル教官であった。
成功
🔵🔵🔴
木元・杏
【かんさつにっき】
ディグダの声に外に出て見上げる
もっふ…(ずきゅーん
あのねアキ、じゅりじゅりって嘴鳴らす、機嫌がいい証拠…
(はっ
あ、あまりのかわいさにめろめろになんてなってないっ
(アキの問いかけに
ん、たまこも嘴鳴らす……(飼ってる鶏思い出し、嬉しそうに
危険なオブリビオン倒さなきゃ
【白銀の仲間】でシマエナさまに似た鳥を5体
ばっと飛んで、木の幹をぺしって叩いてシマエナさま達を落として?
氷の盾は見切って避けてね
さ、皆、落下した隙を狙い合法的にもふって違う攻撃
シマエナさまを抱き止め
もふってもふって怪力でぎゅっと抱き潰す
鳥はもふられると喜ぶ子、多い
敵を倒すだけでなく
個性をみつけて寄り添う心も
大切にしたい
ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】
突如現れたもふもふした白い塊を凝視
「あれは……! 気をつけろ、オブリビオンだ」
エーテルの流れからして、あの体には相当な冷気が蓄えられている筈。
普通の鳥とは違うぞ。
訓練の続きをやる予定だったが、予定変更だ。
「さがっていなさい」
と訓練生を後退させて、仲間と共に連携攻撃だ。
「なんだかじゅりじゅりと口を鳴らしているが……怒っているのか? え、上機嫌?」
ブラックバングルから<衝撃波>を撃ち、シマエナさまを木の枝から飛び立たせる。
ビックリしてシマエナガ・まきしまむを撃ってきたら<カウンター>発動
【サマーソルトブレイク】で相殺を試みる!
何回連続で落とせるかチャレンジだ。
駒鳥・了
【かんさつにっき】
涼しー!
杏ちゃんは物知りですごい!
シマエナちゃんをカービン先生が獲物呼ばわりで
グレちゃんが物理的に見てんのおもしろーい!
高いトコって生徒ちゃん達の手が届かないね
ならばオレちゃん2人掛り!(UC発動
猫の手を木のなるべく先端に引っ掛けてめっちゃ木を揺さぶる!
落ちてこーい!
氷の盾は第六感で避けるか炎属性を纏わせた靴で踏みつけとく!
揺すりは片方がやってりゃいいよね
落ちてきたのを順番にもふる!
程よくもふったら仲間の中に帰してあげよっ
ナイフ代わりに豪速球で投擲だ!
最後は木を限界まで下ろす!
イカたんの来る方向どっち?
見定めたら手を放そ
シマエナちゃんがきっと弾丸と化すはず!
先制攻撃いっけー!
シリン・カービン
【かんさつにっき】
どんなに可愛らしくても獲物は獲物。
全く躊躇せずに撃ちます。
子供たちも覚えておいて下さい。
外見もまた生存競争に生き残るための手段の一つなのです。
なるほど、シマエナ弾とは面白い手ですね。
一つ私も乗りましょう。
【スピリット・バインド】を発動。
眠りの精霊を宿らせた投網弾で、
皆が落とすシマエナさまを捕獲します。
まきしまむも一網打尽。
このまま弾丸にしちゃって下さい。
眠っているシマエナさまの羽毛をチェック。
良い手触りです。オブリビオンで無ければ
毛皮商に卸せるのですが…
?(子供たちの視線に)
もふるのがいけないのではありません。
油断しなければよいのです。
(目覚めたシマエナ様にとどめ刺しつつ)
――おい、皆、起きろ!
外の、どこか切迫したディグダの声を目覚ましに、杏とアキは起きた。
「……?」
「――んん? あっ、おはよ、杏ちゃん」
お互いに朝の挨拶をしつつ、何だろうとテントの入り口を見る。
オブリビオンの襲撃が予知されているとはいえ、アックス&ウィザーズ世界はモンスターがいる世界だ。何か違うモンスターが出現したのかもしれない。猟兵にとっては小さな存在でも、一般人にとっては大きな存在。
手早く身支度を整え、テントを出て辺りを見回す。
「涼しー!」
アキが腕を上げ、ぐっと伸ばす。
朝靄に覆われる高原は、少し肌寒く、そしてどこか雪原のようにも見えた。
『じゅりじゅりじゅり』
軽やかな鳥の鳴き声を辿り、見上げてみれば――パルマの木上に鎮座するは模様のある白い物体。
「もっふ……」
杏は金の瞳を輝かせた。
ほぼ同時に違うテントから出てくるのは、ガーネットとシリン。
「朝っぱらから何事だろうか――ああ、二人とも、おはよう」
「おはようございます、アキ、杏」
ガーネットとシリンは異様な雰囲気を既に察知していて、朝靄の中から直ぐにシマエナさまを見出す。
「あれは……! 気をつけろ、オブリビオンだ」
「おぶりびおん?」
この頃になってようやく起き出した訓練生たちが、テントから出てきていて、目を擦りつつ寝ぼけた声でガーネットの言った存在を復唱した。
猟兵、指導員、訓練生、と練度の違いが出ている。
「ディグダ、早朝の抜き打ち訓練も必要なのではないか?」
「今まさに思ってたところだ。検討しておこう――皆、急いで支度をして班ごとに分かれるんだ!」
この間にも、シマエナさまの鳴き声はあちこちから迫っていて、猟兵たちが駆けていく。
それにしても、とガーネット。
「なんだかじゅりじゅりと口を鳴らしているが……怒っているのか?」
「ジュルリとか、チュリリとか、不思議な鳴き方だね~」
ガーネットとアキが耳を澄ませてオブリビオンの声を聞いていると、杏が二人を見上げる。
「あのね、ガーネット、アキ、じゅりじゅりって嘴鳴らすの、機嫌がいい証拠……」
「杏ちゃん、詳しいね! あ、たまこちゃんもこんな風に鳴いたりすんの?」
「ん、たまこも嘴鳴らす……」
飼っている鶏を思い出しながら、杏は嬉しそうに頷いた。
大人たちはシマエナさまがこの高原へと入った理由を考えているようだ。
「朝靄を、雪原と間違えているのかもしれませんね」
空から見たら、一面、白い景色のはずだ、とシリンが言い添える。
いつもより、少し肌寒く感じる早朝。
「エーテルの流れからして、あの体には相当な冷気が蓄えられている筈。――普通の鳥とは違うぞ」
キリリとした声で放つガーネットの注意喚起。
何だか虚ろにも思える、つぶらな瞳、丸い胴体。あんなに可愛い鳥のに、と訓練生が呟いた。
杏も、はっと息をのんだ。
「あ、あまりのかわいさにめろめろになんてなってないっ。……だいじょうぶ」
訓練の続きをやる予定だったが、予定変更だ。と、ガーネットは訓練生たちにぴしゃりと告げる。
「さがっていなさい」
「どんなに可愛らしくても獲物は獲物」
精霊猟銃を構えたシリンが初撃を行う。高原に響き渡る銃声の音に――驚いて飛立ったりする鳥や、去る動物の気配は無かった。恐らく、すでに危機を察知し避難している。
全く躊躇せずに撃ったシリンの緑瞳に隙はなく、獲物を狩る時のそれだ。
指導員たちも冒険者の顔つきになっていて、シリンに同調するように頷く。
おお、とアキは周囲を見回した。
「シマエナちゃんをカービン先生たちが獲物呼ばわりで、グレちゃんが物理的に見て解析してんのおもしろーい!」
訓練生の反応も様々で、ちょっとした人間観察の面白さ。
今だ可愛さに戸惑う訓練生――子供たちへ、シリンは覚えておいてください、と言葉を放つ。
「外見もまた、生存競争に生き残るための手段の一つなのです」
「危険なオブリビオンは倒さなきゃ」
杏は念じる。腕を振り上げれば、その手元からシマエナさまに似た白銀の鳥が五体、飛び立つ。
白銀の鳥たちは木の幹へ体当たったり、翼で叩いたり。
高いパルマの木を伝う衝撃。頂上付近では、ぐらんぐらんと揺れる。
『ジュリ……? ――ツリリリ!?』
警戒の声を上げながらシマエナさまは落ちた。
ぼたぼたっと二体。
「さ、皆、落下した隙を狙い合法的にもふって違う攻撃」
さらっと、淀みなく、言葉後半で本音を仕舞いこむ杏。
もふってもふって。
もふと攻撃は同義語である。
「オレちゃんたちは色んな方法があるから届くけど、高いトコって生徒ちゃん達の手が届かないよね」
冒険者サンは――とアキがディグダの方を見れば、あちらはあちらで、投擲武器があるようだ。
飛距離に応じ、普通の木、パルマの木と使いわけている。問題はないようだ。
「じゃ、コッチはコッチで! ちょっと離れててね~」
オルタナティブ・ダブルを発動すれば、もうひとりの自分が現われた。
猫の手を、風を切るように鋭く時計回りに。ひゅっと放てば、遥か上空、先端の三ツ爪型フックが木の幹へと掛かった。
「落ちてこーい!」
時に体重を掛け、鋼糸を引っ張ったりしつつ木を揺さぶる。
『ピ……ビヨォォ!?』
雪の妖精と呼ばれるシマエナガ、否、シマエナさまと言えども、重力には逆らえず、やや弾みをつけて落ちてきた。
『チチッ……!』
シマエナさまは氷の盾を放つ――薄らと残っていた朝靄が晴れ、視界が晴れる。アキは真っ直ぐに放たれたそれらを避け――ぼたっごろごろと転がるシマエナさまとの間に張られた盾を踏みつけた。
炎纏う靴での攻撃に、ばきんと音を立てて割れた盾がじわりと溶ける。
「ふっふっふ」
もう一人の自分に揺すりを任せ、アキは落ちてきたシマエナさまをその手で捕獲しもふった。
『ぴ』
もふりながらよくよく観察すれば、黒とうすい褐色模様。
「わあ、もふもふ」
「こっちはふわふわだよー!」
子供たちと一緒にもふるアキと、目を細め無我の境地っぽい顔になるシマエナさまたち。
シリンは、スピリット・バインドを発動させ、眠りの精霊を宿らせた投網弾を撃つ。
シマエナさまとシマエナガたちを捕獲し、眠らせていく――。
「ぐっすり?」
「ええ、ぐっすりです」
訓練生の言葉に、頷くシリン。彼女は屈み、眠っているシマエナさまへと触れた。
もふもふ……しているわけではなかった。
羽毛に触れ、時に摘み、検分する。
「良い手触りです。オブリビオンで無ければ、毛皮商に卸せるのですが……」
時に魂が抜け体が残るオブリビオンもいるようだが――シリンは、じっとシマエナさまを見た。
消失は時間差で起こる場合もある。卸したところで消失されてしまったら、信用問題に関わるはずだ。内心、むぅ、と悩む。
「先生……?」
真顔で真剣に悩むシリンに、訓練生の一人が声を掛けた。
目を瞬かせるシリン。
「――もふるのがいけないのではありません。油断しなければよいのです」
「えっと、じゃあ……もふ」
「ですが、コレはもう目覚めましたからね。次に行きましょう」
と、シリンはシマエナさまにとどめを刺した。
精霊猟刀で。ざっくり。
ブラックバングルで衝撃波を撃つガーネット。
薄れる朝靄が消えていく様がその軌道を明らかにしている。弧を描くそれが高い場所にいるシマエナさまを撃てば、警戒の鳴き声ともに空へ飛び出ったシマエナさまがシマエナガの群れを纏う。
シマエナガ・まきしまむ!
耳を打つ羽撃き。
沢山のシマエガナを放ち、ガーネットへと特攻してくる。が、飛んで火に入る雪妖精。
「これが、グレイローズ家秘伝の一撃!」
待っていたとばかりに、一旦溜めに身を屈ませたガーネットは、だんっ! と跳躍しサマーソルトブレイクを放つ。
弧を描く宙返りキックに伴う衝撃波がシマエナガを吹き散らし、本命である蹴撃がシマエナさまを襲う。
次々とシマエナガ・まきしまむなあたーっくを相殺し、蹴り落とすガーネット。
『ピヨ……』
落ちて力尽きるシマエナさま。その時、
「あ、しまった」
一体、勢い余って蹴り飛ばしてしまったようだ。
が、
『ビヨオオォォ!?』
シリンの投網弾が放たれ、ゴール。シマエナさまを助けてくれるキーパーはいない。
「ガーネット、次です」
放った投網弾が、高く、空中にてシマエナガとシマエナさまを捕えた。大きな塊となって落ちてくるそれを、宙返りキックで撃破するガーネット。塊はそのまま傾斜を転がり落ちて行った。
眠りの精霊により、すやすやと眠りにつくシマエナさま。
すやぁするシマエナさまは可愛くて、杏が抱き着く。
もふもふする杏とアキ。
そのうちに、アキはもふりに満足したらしく、
「そろそろ仲間のところにお帰り」
どこか優しげ~な口調で、にっこりと笑む――その手はがしっとシマエナさまの胴を掴んでいて。
まん丸な目を、さらにまん丸にさせるシマエナさま。
見つめ合ったのは一瞬。気付けば、シマエナさまは豪速球で投擲されていた。
『ビヨオオオォォォ!?』
シマエナガの群れにぶち当たり、落ちて、ごろごろと傾斜ある高原を転がっていく。……なんというか、UDCアースのボウリング的な……。
まだもふりに満足していない杏は、目覚めて『ジュリジュリ』と鳴くシマエナさまを、もふる。
「鳥はもふられると喜ぶ子、多い」
もふられて気持ち良さそうな、シマエナさま。
「個性をみつけて寄り添う心も、大切にしたい」
杏の言葉に、ふと、訓練生はシマエナさまを見た。確かに――もふられて喜ぶシマエナさま、いやいやするシマエナさまと、いるような、気が、する。
杏は、もふってもふって――――怪力でぎゅっと抱き潰していた。
一見豆大福にも見えるらしいシマエナさまは、餡子こそ出ないが断末魔な声を出す。とりあえず、まだ息はあるようだが。
「えっ……うん……うん??」
先程の杏の言葉に、とある訓練生がやや戸惑い頷きかけて、止めた。
経過と、「獲物は獲物です」と再度、覆らない結果を呟くシリンであった。
「イカたんの来る方向ってどっちだろ?」
アキの声に、ちょっと待ってください、と応じたシリンは風の精霊に呼びかけた。
風に乗って、微かに、海の幸的な香りが届けられる……精霊の観測班かな……。
「あちらのようです」
と、指差すシリン。
「おっけー! じゃあ弾をのせてくれるかな?」
アキがにこやか~に言えば、訓練生がごろごろと、投網に宿る眠りの精霊により深く深く眠っているシマエナさまを転がしてくる。
方向を定め、ガーネットがぴっと腕を伸ばす。
「発射準備!」
「「「ヨ~ソロ~」」」
弾道そのまま真っ直ぐ――……アキの技で、めちゃくちゃ反ったパルマの木先端にソレを乗せた。
アキの罠使いによる準備に、加わるは木を抑え込む杏の怪力と訓練生の手。
「弾丸と化すはずのシマエナちゃん、頑張ってね!」
眠っているシマエナさまにアキの激励の言葉は届かないが、まあ、言霊とは恐ろしいものだ。
「先制攻撃いっけー!」
パルマの木から手を離せば、物凄い勢いで反復運動をこなしつつ木は立つ。
こうして、シマエナ弾は、発射されたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
木元・祭莉
モンスター発見!
アタシ一番のお姉ちゃんだから、同じ班の子たち守らなきゃ!
遠目だと小さく見えるケド、アレ大きいよ?
楽しそうに鳴いてるケド、アレは『餌見つけた』だから!(断言)
トリは、コワイ!
もふもふでカワイイなと思っても、油断しちゃダメ!
気を付けないと……わわっ!?(野生の勘で避ける)
ほら、危ない!?(力説)
アタシは、戦闘もできる冒険者!(の卵)
懐からちゃきっと扇投げる!
エルルちゃん、後衛からぴゅーって笛で威嚇ね!
アミスタ、あちこちのパルマを揺さぶって陽動お願い!
ジノ、氷避け罠、何か思い付いたらヨロシクー!
炎属性で氷を打ち消し、衝撃波で麻痺攻撃!
動きを止め。
れっつ、もふー♪
の後にー、トドメだー!
襲い来るシマエナさまの集団。
『ジュリリジュリジュリ』
パルマの木からパルマの木へ。枝から枝へ。
時に、高原を低速飛行している。
ドラゴンやゴブリンよりは危険度もいくらか低いため、猟兵や指導員のもと班分けされてシマエナさまとの戦いに出される訓練生たち。
「せんせー、モンスター発見! です!」
祭莉こと「まっきー」がすそ野広い高原の一点を指差す。
『ピチュピチュ』
『ジュリジュリ』
「張り切っているな、まっきー」
指導員・トゥイエの言葉に、はい! と頷くまっきー。
「アタシ一番のお姉ちゃんだから、みんなを守らなきゃと思って!」
尻尾があればパタパタと振られているのだろうが、まっきーは今尻尾がない。
第一発見者のもと、遠眼鏡を回して「敵」を視認する、エルル、ジノ、アミスタ。
「わあ、かわいい~」
「なんかうまそー」
エルルとアミスタがそれぞれの感想。
「えっと、遠目だと小さく見えるケド、アレ大きいよ?」
気を付けてね、とまっきーが言えば、トゥイエも頷いた。
「おお、よく分かったな、まっきー。ちょうどいい。皆、彼我の距離を考えつつ、近付いてみなさい」
軽やかで楽しげなシマエナさまの鳴き声は、そっと近づく班の音をかき消してくれる。
草地を踏みしめ、そおっと、まっきーはいつもより注意深く「鳥」を観察した。
こそこそと、小さな声で注意喚起を行う。
「楽しそうに鳴いてるケド、アレは『餌見つけた』だから!」
「えっ、そうなの……?」
断言するまっきーと戸惑うエルル。二人の視界の先では、がつがつと木の幹を抉り、染み出る樹液を上機嫌に吸うシマエナさま。ほらね、とまっきーが言った。
「トリは、コワイ! きっと大蜥蜴も食べちゃう」
真顔であった。
「もふもふでカワイイなと思っても、油断しちゃダメ!」
鬼気迫る真剣な表情に、ごくりと喉をならす同班の面々。
……鳥型のモンスターに襲われたことがあるのだろうか? ――トゥイエは真剣に心配そうな表情になる。
「確かに。鳥型のモンスターは、ドラゴンの定義にも含まれるが……」
「でしょ!? 気を付けないと……」
『チリリリリリリリ』
熱い講義となりそうだったその時、気付いたシマエナさまが急降下を仕掛けてくる。
「わわっ!?」
くせっ毛なまっきーの頭は、何かの巣のように見えたのだろう――威嚇行為であった。思わず頭をおさえ、伏せの状態から転がり避けるまっきー。
「ほら、危ない!?」
『チリリリリリ』
シマエナさまの警戒の鳴き声に、うぐっと顔を強張らせて皆に更なる警戒をとまっきーは促す。
「まあ、ここは実地訓練だ。まっきー、エルル、アミスタ、ジノ、行くぞ」
エルルが携帯笛を取り出して、ピュイイイイイイと高らかに鳴らす。
『……!』
高原に鳴り響く音が、威嚇音としてシマエナさまたちに届く。
「アミスタ、あちこちのパルマを揺さぶって、陽動お願い!」
「わかった!」
エルルに威嚇の笛、アミスタに陽動を頼むまっきー。そしてジノには――、
「氷避けとかの罠、何か思い付いたらヨロシクー! アタシはとっこー♪」
手を振って敵へと向かって行きながら、ふわっと丸投げた。
「ええ……!? って特攻するのー!?」
「ジノはウィザード魔法の適正があるから、それで頑張ってみようか……まっきーは、あいつは大丈夫だろう」
やや呆然としたジノだが、トゥイエの声に頷く。
そして敵へと向かっていったまっきーは、懐から舞扇を取り出し、投げる。
同時にシマエナさまから氷の矢が放たれる。
ひえひえアローに対抗するは、ジノのパチンコから放つ、炎に包まれた木の実弾。パン! と弾け小さな火花が矢をまき込んだ。
加えてまっきーが腕を振るえば炎の属性が衝撃波にのり、氷の矢を溶かす。
『ビヨ!?』
第二波には麻痺攻撃が含まれ、何かに撃たれたようにシマエナさまは動きを止めた。
ぼたっと地面に転がる。
やったぁとまっきー。
「れっつ、もふー♪」
もふもふ。
「あれ? まっきーちゃん、鳥、大丈夫なの?」
エルルの言葉に頷く。きっと、鳥が動かなければ大丈夫なのだろう。
「……ところで何をしているの?」
まっきーがもふもふしているので、同じくもふもふに加わるエルル。女子は好きだなぁこういうの、という目で見ているのはアミスタだ。
「もふもふ――じゃなくて、モンスターの観察をしているの」
『……ビヨ……』
光を映さない虚ろなシマエナさまの瞳。
もふもふしている羽毛。
だがその体は、氷のモンスターだからか、冷え冷えしている。
「モンスターの生態は、発生分布やその予想にもなるし、観察は大事だな」
うんうんと頷くトゥイエ。山の暮らしで特に気を付けたいのはドラゴンの飛来だ。
ただ寄っただけならやり過ごせるが、棲処にされると厄介だ。
「ほんとだ、モフモフしてるのに、冷たいね」
と、ジノ。
ちょっとした勉強会となり、存分にシマエナさまをもふって、しっかりとトドメをさしたまっきーチームであった。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『だいおーいかたん』
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POW : 子分行くイカ!
レベル×5体の、小型の戦闘用【こぶんいかたん】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
SPD : お弁当食べるイカー
戦闘中に食べた【おにぎりや焼き…イカ…?】の量と質に応じて【よくも子分をイカ!と何故か猟兵に逆ギレし】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : イカスミぶはー
【いかたん得意のイカスミすぷらーっしゅ】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を真っ黒に塗りつぶし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑11
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シマエナさまの集団を撃破していく、猟兵と訓練生たち。
この後は、だいおーいかたんが襲って来るとの情報を持っている猟兵たちだが、一体どこから――と周囲を常に警戒していた。
その時、発射されるシマエナ弾。
途中、目覚めたシマエナさまの、
『ビヨオオオォォォ――ォォ……ォォ――』
という叫びが空中に響く、ドップラー効果。
…………ちょっと待って欲しい。
一体何のことだか、分からないと思う。
訓練生も、指導員も、猟兵も、一部の猟兵以外は分からない事態だと思う。
直ぐに発射地点と思われる方向を見た者は、反復運動をしているパルマの木が目に入ったことだろう。僅かな時間で揺れは小さくなり、直立となったが――。
それは発射台になった木だ。後は察して。
●
「イッカイッカ、イイッカ~♪」
上流目指して泳ぎ、地上へと上がっただいおーいかたんはさんぽの歌を歌いながら、歩いていた。
イカの、匂いを感じる器官は多く、わずかな匂いにも反応する。
よって、きっと、だいおーいかたんは、昨夜のキャンプ地にて発生した匂いを嗅ぎ取ったのだろう。
キャンプ地に向かって真っすぐに歩いていた。
急な坂道を越え切ったその時、だいおーいかたんは素晴らしく見晴らしの良い景色に出会った。
「イカァ……♪」
脚のうち四本くらいを広げ、美味しい空気を吸うだいおーいかたん。
ご機嫌に坂を下りる。
その時であった。
なんか、ごうごうとした音に気付く。
『――ォォォオオオ……ビヨッ!?』
「イカッ
!?!?!?」
衝撃はとても大きかった。
まず抉るような攻撃に、イカスミが吐き出されて一部分、漆黒の大地となりイカスミの残滓を撒き散らしつつ、坂道を転がり落ちていく。
「……イカ……」
シマエナさまは絶命し、だいおーいかたんはよろよろと立ち上がろうとして、だが強く残る衝撃に膝(?)をつく。
猟兵と訓練生、そして指導員がわりと戸惑いながら、だいおーいかたんに近付いた。
捕獲は容易い。
たぶん、捌くのも容易い。
もう後は、朝食兼昼食なイカ焼きパーティでいいんじゃないかな……?
敵攻撃「イカスミぶはー」も、自身の戦闘力を高めるのだが最早これはセルフ味付けに見えてくる。
見た目弱っただいおーいかたんを立ち上がらせて――戦う。
イカの柔らかい身を刻んで焼いて、大自然の中の恵みというか骸の海から最早食べられるためだけに蘇った的な恵みに感謝しながら――食べる。
二つの選択肢(イカ)が猟兵たちの前に現れた。
越喜来・湊偲
理嘉さん(f03365)と引き続き
お待ちかねのイカ焼き!
サッと倒しちまいましょう!
O・Oを召喚
さっき食べたそうにしてましたから引っ込める訳にもいかないです
先に食べるのは駄目です!駄目、絶対!
理嘉さんが召喚した人達の仕事っぷりがすごいですが負けていられないですね!
シャチで追い込み、俺が槍で貫くコンビネーションで戦いましょう!
……思ったんですけど、理嘉さん戦ってます?
倒したらイカ焼き
理嘉さんオススメのバター醤油!
シャチには切り分けて食べさせちゃいましょう
味付けはソースもありかな
この香ばしい匂いがたまりませんね
醤油を作った人は神です
はい、またご飯食べましょうね!
運動するともっと美味しくなりますよっ
百合根・理嘉
湊偲(f01703)とー
イカ焼きパーティ為に!
悪ぃな!サクサクっと倒されてくれ!
バトルキャラクターズ使用
召喚したにーさんらで攻撃
あぁ!にーさんら有能だなぁ!
だいおーいかたんを綺麗に捌いてくれてる……
は!切れ目まで入れてくれて、る?!
優秀だな!俺のにーさんたち!
うっし!終わった終わったー!
湊偲ー、イカ焼こうぜ~
バターと醤油も滅茶苦茶美味かったけど!
七味マヨネーズもきっと美味い!
焼きスルメが美味かったんだから
多分だいおーいかたんだって美味いはず!
はぁ~……
醤油の焦げる匂いって滅茶苦茶腹減らねぇ?
食欲マシマシになるつーか……
湊偲ー
また美味いもん食いに行こうなー
あ、筋トレは抜きでな!
ムリムリ、ムーリー
ふしゅるるるると息を吐き出すだいおーいかたん。
食材にしか見えないだいおーいかたんを囲おうとする猟兵たち。
だいおーいかたんであるオブリビオンは結構大きい。
だが、所詮食材なのだ、と認識する猟兵たちは多かった。
「お待ちかねのイカ焼き! サッと倒しちまいましょう!」
「ああ――悪ぃな! サクサクっと倒されてくれ!」
湊偲に頷く、理嘉。オレたちのイカ焼きパーティのために! そう言えば同調し頷く猟兵たち――と、召喚されているバトルキャラクターズ。そして巨大なシャチ。
「イカ……?」
海にいるはずのシャチを見ただいおーいかたんは、ふと顔を上げるのだが――シャチは涎を出しながら、だいおーいかたんを見ている。完全に餌を見る目であった。
ずずい、と空中を泳ぎ、迫ろうとする。
不穏なシャチの様子に気付いた湊偲は慌ててその体を押しとどめた。
「先に食べるのは駄目です! 駄目、絶対!」
『ちぇっ』という感じで、体をくねらせるシャチ。
「んじゃ、にーさんたちよろしく~」
理嘉が手を振れば、一斉にバトルキャラクターズたちが動き始める。
粛々と向こうで野外調理の準備を始める訓練生たち。
猟兵たちとだいおーいかたんのバトルは、なんというか、調理であった。
まあ調理場は戦場であることが多々なので、そう違いはないだろう。
「あぁ! にーさんら有能だなぁ!
だいおーいかたんを綺麗に捌いてくれてる……」
シュバ、ビシィッという効果音。
「は! 切れ目まで入れてくれて、る?!」
うっそ、マジで!? という風に驚く理嘉の視界の先では、やや加減して網目を刻むバトルキャラクターズの下拵え。
「いやあ、優秀だな! 俺のにーさんたち!」
料理シーンなどに合う、調理のはかどる音楽というものがあるが、理嘉の言葉はまさにそれであった。
合いの手を入れ、強弱のテンポを促せば召喚されたゲームキャラクターたちは同じテンポで調理していく。
ほおー、と感嘆の息を吐く湊偲。
「負けていられないですね!」
調理する猟兵たちのアシスタントをするように、シャチが回遊し、まな板の上でぴちぴち動くが如くのだいおーいかたんの動きを抑え込む。
そこを青い鱗纏う長槍で貫く湊偲。
串刺しにし、なぎ払えば開かれるだいおーいかたんの白い身。
雪原のように、陽光の元キラキラと輝くその身は、何となく食欲をそそるものであった。
大きなだいおーいかたんの足一本を瑠璃で絡めとりつつ、仲間が腹開くのを補佐する湊偲。
「……思ったんですけど、理嘉さん戦ってます?」
ちらぁと理嘉の方を見てみれば、うん? と理嘉が首を傾げた。合いの手が止まる。
そして「このうえなく」と大真面目に理嘉は頷くのだった。
捌いたり、炎攻撃で焼いたり、なんやかんやと猟兵たちが協力して仕上がっただいおーいかたん。
「うっし! 終わった終わったー! 湊偲ー、イカ焼こうぜ~」
倒れただいおーいかたんを、食べやすいようにチーム分けして解体していく。
こぶんいかたんも食の対象である。
途中、湊偲が切り分けた身をシャチに与えれば、ようやくイカにありつけたシャチが喜んで食べる。ぽいぽいと端をシャチの口に投げ入れていく湊偲。
組まれた竈に鉄板や網が置かれ、そのまま焼いたり、タレを漬けこみ揉みこんでから焼いたり。
穀物を詰めたり。
「はぁ~……醤油の焦げる匂いって、めっちゃくちゃ腹減らねぇ?」
くるりとイカをひっくり返しながら、理嘉。
「食欲マシマシになるつーか……あ、焼きすぎると硬くなるからな~」
と、理嘉が言えば、あちこちから「はぁい」と良いお返事が。
うんうんと頷く湊偲。
「この香ばしい匂いがたまりませんね。醤油を作った人は神です」
更に、うんうんと頷く猟兵たち。
歴史ある調味料。醤油。加熱をすれば香りも変化し、そこにイカの香りも乗るので何とも言えない美味しい匂い。
湊偲はバター醤油で。
「味付けはソースもありかな」
じゅわじゅわと。
「バターと醤油もめちゃくちゃ美味かったけど!
七味マヨネーズもきっと美味い!」
てってれー! という効果音付きでマヨネーズを取り出す、理嘉。
「焼きスルメが美味かったんだから、多分だいおーいかたんだって美味いはず!」
捌かれ、かぶりつけるサイズのだいおーいかたんをマヨまみれに。
熱された鉄板に入れて焼く。
イカの色が変わったら七味を入れて、ざっと混ぜ合わせる。
七色変化を魅せる香りが辺りに漂った。
「じっくりと漬け込むのも、んまいんだけどなー」
コクとまろやかさ、そしてピリリとくる辛さ。
豊満な香りに満ちるキャンプ地。アックス&ウィザーズの者は、様々な調味料に興味津々だ。
「はい」
と、湊偲が幼さの残る訓練生に出来上がった焼きイカを食べさせてみれば、
「わ……おいしいねぇ」
綻ぶ子供の笑顔。
『♪』
一緒に食べたシャチも先程とは違う美味しさに喜んでいる。
対して、指導員は泣いている。仕事中じゃないのなら、お酒が飲めたのにという感じだ。
香ばしく柔らかな身をはぐはぐと食す理嘉と湊偲。調理法は豊かなので、あれこれと挑戦して作っては食べ、作っては食べ。
たくさんあるので、焼きそばにしたり、甕に漬け込んで明日の仕込みにしたり。
「湊偲ー、また美味いもん食いに行こうなー」
串焼きにしただいおーいかたんを持ち、理嘉がにっこり上機嫌で言えば、
「はい、またご飯食べましょうね! そして運動すると、もっと美味しくなりますよっ」
よく寝て、よく食べて、よく動く。
「あ、筋トレは抜きでな! ムリムリ、ムーリー」
これだけは言っておかねば。理嘉はぱたぱたと手を振った。
「ええっ、でも、この後は理嘉さんと一緒に運動しようと思ってたんですけど」
「ムーリー」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木常野・都月
イカ…初めて見た。
いや…つい先日行った海に並んでいた…『イカ焼き』の看板…
イカ焼きの『イカ』はこのオブリビオンの事か。
あの時は『タコ焼き』を食べたけれど、タコもこんな姿なのかもしれない。
そして、『イカ焼き』のイカならば。
『焼き』という文字から察するに…焼くモノだ。
シマエナさまは、心が痛んだけれど…
どうしてだろう、全く、これっぽっちも、心が痛まない。
おそらく…目の前のイカは、俺にとって捕食対象となっているからだ。
オブリビオンから世界を守る事は忘れた。
これは純粋に、自然界の法則における、食うモノと食われるモノの命のやり取りだ。
ユーベルコード【狐火】で焼こう。
焦がさないように火力に注意したい。
フリル・インレアン
ふえぇ、アヒル教官、逃げるのは卑怯です。
ま、待ってください。
ふええぇ、アヒル教官、すばしこっくて全然追いつかないです。
こうなったら、早朝マラソン前に焼いてきたイカさんクッキーでブレイクタイムです。
ふ、ふぇぇぇぇ、怒られてしまいました。
よくも子分をと言われても、このクッキーはイカさん形をしているだけでいかたんさんの子分さんが入っているわけではないのですが・・・。
ふえぇぇ、全然聞いてくれません。というよりはご自身を気にかけた方がいいと思うんですけど・・・。
何故か、私には三つ目の選択肢怒られるが現れました。
ふしゅるるるると息を吐き、膝(?)をつくだいおーいかたん。
彼……多分彼だろう、彼を心配するようにこぶんいかたんたちが、わらわらと出てきた。
そんなオブリビオンを取り囲む猟兵たち。
都月は目前の白い物体を、じいいいっと見つめる。
「イカ……初めて見た」
呟いて、はた、と何かに思い当った様子だ。
そういえば――。
「どうしたの、ツヅキさん」
訓練生・イェカが都月の様子を不思議に思ったのか、問う。
「いや……つい先日行った、海に並んでいた……『イカ焼き』の看板……」
砂浜にあって、良い香りがしたことを思い出し、都月は狐尾を振る。
「イカ焼きの『イカ』はこのオブリビオンの事か」
納得がいったように都月は頷いた。一つ、また新しいことを覚える。
「あの時は『タコ焼き』を食べたけれど、タコもこんな姿なのかもしれない」
「へえぇ」
海の生物に会うのがほとんど初めてな内陸住まいの者たちは、感心の声をあげた。
一種、海生物の勉強会の雰囲気となっている。
更に、ぴこーんと何かを察した都月の目がやや鋭くなった。
「そして、『イカ焼き』のイカならば。『焼き』という文字から察するに……焼くモノだ」
「イカァ……」
この時になってようやく、だいおーいかたん、立つ。
「……。シマエナさまは、心が痛んだけれど……どうしてだろう、全く、これっぽっちも、心が痛まない」
一つ一つ、言葉を区切って、噛みしめるような都月の声にうんうんと頷く猟兵たち。
都月たちの前にいるだいおーいかたんは、もはや食材という認識であるらしい。
こうして猟兵たちの手によって、ユーベルコード調理が行なわれ始めた。
一方。
シマエナさまを倒したあとも、再開されたフリルの訓練(?)。
うふふふふ捕まえてご覧なさぁい――という様子で動き、駆けるアヒルさんガジェット。
「ふえぇ、アヒル教官、逃げるのは卑怯です。……ま、待ってください」
どうやら今は追いかけっこ的なやつのようだ。
アヒルさん――否、いまはアヒル教官であった――アヒル教官は、すばしっこく動いていて、フリルが近付くと稲妻のようなジグザグ走りを見せた。
引き離され、ふええぇぇと悲鳴をあげたフリルはもう限界とばかりに立ち止まった。息が切れている。
近くでは何やら皆が集まり、わいわいとしていて、鉄板や大きな網を運んでくる訓練生たちの姿。
「あ、リンカさん……」
「あら、フリルさん、また走っていたの? アヒル教官も厳しいね……」
はい、お水飲んでね、とリンカの差し出した水筒で水分補給をするフリル。冷たい水は美味しく、やっぱり、生き返った。
踵を返し、元の場所へ戻るリンカを見送るフリル。
「リンカさん、一体なにをやっているのでしょう?」
朝食の準備でしょうか、と思ったフリルはそういえばと我に返る――早朝マラソンをやっていたので、ちゃんと休憩しようと彼女は思った。
「早朝マラソン前に焼いてきたイカさんクッキーでブレイクタイムです……♪」
趣味で作ったお菓子を手に取り、小さなお茶会を開こうとすると――。
「イカ、イカァアァ!!」
「?」
変な鳴き声が聞こえた。
振り向けば、白い生き物がやや驚いたように、こちらへと向かって来る。
「ふえ?」
「イカ、イカァァ……!」
「ふ、ふぇぇぇぇ?」
怒られてしまった。
アヒル教官の意思が分かるフリルには、だいおーいかたんの言葉が分かるのだろう。
慌てたように、クッキーを手にしたまま、だいおーいかたんへと説明をする。
「よくも子分をと言われても、このクッキーはイカさん形をしているだけで、いかたんさんの子分さんが入っているわけではないのですが……」
そう、クッキーはイカさんの形だった。なんてタイムリー。
そして本物のこぶんいかたんたちは、今、訓練生の手によって腹を開かれ、おこわを詰められているところ。攻撃じゃなくて、調理だからできる芸当だ。
美味しくなる未来を用意されたこぶんいかたんたち――だいおーいかたんはご飯と間違えて既に、子分たちを食べちゃっていた。
「あ、あの、よかったら、おひとつどうぞ」
「イカ!!」
「ふえぇぇ、全然聞いてくれません。というよりはご自身を気にかけた方がいいと思うんですけど……」
調理途中のだいおーいかたんを見つめつつ、フリルが言う。
その時、
「は。おこわをつめる分を捕まえるのに、夢中になってしまっていた」
ごはん。
捕獲の手伝いに精を出していた都月が、ハッとした顔になり、フリルの近くへ――正確にはだいおーいかたんのところへやってくる。
都月の、数多の狐火が弧を描き、だいおーいかたんを取り囲む。
フリルがクッキーを勧めていたせいか、だいおーいかたんの動きはとても鈍くなっているようだ。
「燃えてしまえ」
都月の意のままに操る狐火がだいおーいかたんを焼き、だいおーいかたんは美味しそうな匂いを放った。
焼けば焼くほど、海で香った『イカ焼き』なるものの匂いがしてきて、都月はどんどんと狐火を放ち焼き上げていく――。
「これは純粋に、自然界の法則における、食うモノと食われるモノの命のやり取りだ」
都月は細心の注意を払っていた。
焦がしたら一大事。
火力に注意する都月の目は――真剣な料理人の目であった。
そのうちに、なんやかんやと様々な調理(戦闘)が終わり――。
「これが……イカ焼き……」
瞳を輝かせて、都月は細切れにされ串に刺さっただいおーいかたんを見た。
芳醇なタレが香り、はむ、と口にすれば、熱々だけれども柔らかな身。都月の耳がぴんと立つ。
甘辛い味が口の中に広がり、はむはむと食んでいけば、そのうちに炭火でじっくりと焼き上げた香ばしい味が出てくる。
七色変化とはこのことか。ふわふわと尻尾が揺れた。
「美味い――フリルも、一本」
ほら、と都月が差し出せば、フリルは首を傾げた後におずおずとイカの串焼きを受け取った。
「あ、ありがとうございます。アヒル教官、朝ご飯ですね」
ただイカを焼いただけではない。
イカ飯や、イカのフライやら様々なものが猟兵たちの手で作られている。
内陸部で、初めてイカを食べる者が多く、イカの感想や猟兵が持ちこんだ調味料、狐火での焼き加減など、話題が豊富な賑やかな食卓。
みんなの朝食兼昼食となっただいおーいかたんはとても幸せの味がした。
「思いがけぬ戦いとなったからな。今日は予定を変更して、青空教室だ。皆で、字の書き方や計算の仕方を覚えていこう」
訓練はやるらしい。
指導員のディグダ、そして何故かディグダの傍らにアヒル教官がいて、皆に告げる。
ちょっと特別だったけれど、いつもの訓練の一日が今日もやってきた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
城島・冬青
アヤネさん(f00432)と
…アヤネさんはイカ好きですか?
私は好きです(花髑髏を抜き)
イカの腑を潰して醤油を混ぜたソースにするのも美味なんですよ(【廃園の鬼】使用)
ちょっとえぐみがありますけど(イカをぶった切り返り血ならぬ返り墨を拭う)
さぁレッツクッキング🦑
イカを適度な大きさに花髑髏で叩っ斬ります
料理は愛情ぉ!!
腑を抜きたいけどまずは身の処理ですね
吸盤を取り(刀でベリベリ剥がす)
皮を剥きます(刀で以下略)
皆もイカ焼きとかイカリング食べたいよね?
切ったイカは衣を塗してフライにしたり
カレー粉を塗したフライにもします
イカ焼きも忘れずに
美味しいですか?
嬉しいです
えっお嫁さん?!
それは…どうも(赤面)
アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
イカは…
ちょっとUDCっぽくない?
あまり食べたいとは思わないかな
え、ソヨゴは好きなの?
あ、流れるように切り刻んでる
僕の出番がいつのまにか無いんだけど?
ソヨゴはどうなってもかわいいと思うので笑顔を返す
でもソレはだいぶグロテスクでは?
花髑髏ってナイフの代わりにもなるのネ
と一瞬感心するけど
…いや、やはり使い方間違ってない?
ソヨゴが愛情込めて作ってくれた料理
食べるのは義務かしら?
これがイカ焼きか
しばらく迷ったけど
観念して口に運びます
思いのほか美味しい!
見た目がグロくても愛情を込めれば美味しくなるのかな?
他の料理も美味しくいただく
ソヨゴは良いお嫁さんになれるネ!
よし、かわいい
「これがだいおーいかたん……」
傾斜から転がり落ち「イカァ……」と立ち上がろうとするだいおーいかたんを目の前にして、冬青はどこかしみじみと呟いた。
「イカ……たん」
アヤネはやや目を細めて、だいおーいかたんの様子を観察している。
「……アヤネさんは、イカ、好きですか?」
「えっ。イカは……」
冬青の問いに応じつつ、周囲を見回してみるアヤネ――周囲の猟兵たちがだいおーいかたんを見る目は、完全に食材として向けられたもので、改めて、アヤネはだいおーいかたんを見た。
食材、だろうか?
うねうねとした足。イカイカと声を放つ、オブリビオン。邪神そのものに見える。
「ちょっとUDCっぽくない? ……あまり食べたいとは思わないかな」
「――私は好きです」
花髑髏を鞘から抜く冬青。
すらりとした刀身に映る、だいおーいかたんの白い身。
「イ、イカ……」
「イカの腑を潰して、醤油を混ぜたソースにするのも美味なんですよ」
そう言って刀を振り被った冬青は、封印を解いた花髑髏でだいおーいかたんを攻撃する――否、すぱっと切り込み、引くように。刃が長い方が綺麗に切ることが出来る、刺身を作る要領だ。
「イカ
……!?」
墨袋から尽きぬ墨が弧を描き、冬青の頬へ返り血ならぬ返り墨。
それを拭いながら、
「ちょっとえぐみがありますけど」
そう言うのだけれど、鮮やかな捌きに一瞬目を奪われたアヤネへ声が届くまで二拍。
「でもソレは、だいぶグロテスクでは?」
笑顔を返し、アヤネは言う。どんな冬青も可愛いのだ、覆らない決定的な想い。
可愛いな、と思って、改めて処理工程を脳内で思い描くと、うん、結構グロテスクな画。
「待っててくださいね、アヤネさん!」
にっこり笑顔の冬青。料理に対する姿勢は真摯で、腕がなるなぁ♪ と言っている。
――アヤネは再びだいおーいかたんを見た。
「イ、イカ?」
……。
食材に、見えてきたかもしれない。
れっつ、くっきんぐ!
と猟兵たちが様々な手捌き。
これは戦いではない。否、調理場は戦場であることもあり、戦いの場ではあるが、クッキングタイムだ。
アヤネは、大人しく待つことにした。皆の鮮やかなイカ捌きに、自身の手を入れる隙もないのだ。調理だネ。
冬青がだいおーいかたんを叩き斬れば、こぶんいかたんが召喚されるのだが、それは捕獲され、訓練生の手でおこわを詰められていく。
「おこわ……イカ飯かな?」
興味深げにアヤネは目前の調理場を分析する。
「本来ならば、こぶんいかたんは一撃で消滅するはずだけれど……」
だが、冬青は言うのだ。
「料理は愛情ぉ!!」
「「「はいっ」」」
攻撃じゃなくて、愛を込めた料理なので、消滅せずに粛々と捕獲され調理されていた。
「腑を抜きたいけど、まずは身の処理ですね」
「イ、イカ……!」
しゅばっと足を伸ばし叩きつけようとするだいおーいかたん。まな板の上での抵抗。
その足を絡めとり、ぐっと引っ張る冬青。刃を立てた。
「吸盤を取り」
刀で、吸盤をベリベリ剥がしていく。
「そして、皮を剥きます」
刀で、外套剥ぐ――びろーんと伸びたところで、再び刃を立てた。
「イ、イカァ
……!!」
や、やめてよぅ!! というようなだいおーいかたんの叫び。しかし、そんな悲鳴にも猟兵たちは手を緩めない。下処理はとても大事なのだ。
「花髑髏ってナイフの代わりにもなるのネ」
冬青の匠の技に、感心し頷きながらアヤネは呟いた。
うんうん、うんうん……うん?
いや、と思い直す。
「……やっぱり、使い方を間違っている気がする」
調理……いや、攻撃なのかな? と再び観察するアヤネ。
大きく、力も強いだいおーいかたんを時に狐火で炙り、または串刺しにして動きを止めつつ、皆で協力して捌いていく。
解体を終える頃には、だいおーいかたんも力尽きていた。
「イカ焼きは定番!」
早速網や鉄板で焼いていく猟兵たち。まずはやはりイカ焼きだ。
冬青もまたイカ焼きのための、甘辛タレ、七味、と調味料を用意しつつ、
「後はイカリングでしょうか?」
切ったイカに塩コショウ、粉をまんべんなくまぶして、卵・水・粉を混ぜ合わせてバッター液を作る。
液にくぐらせ、パン粉をつけて油で揚げれば美味しいイカフライの出来上がりだ。
食卓に並べる冬青。
「で、こっちはカレー粉を塗したフライです」
バリエーションにカレー味もある。スッと、イカフライの隣に置く。
「ちゃんとイカ焼きもあります」
じゅわっと醤油の香りたつ、イカ焼き。これも食卓に。
「これが……おぶりびおん……さっきのイカ」
アヤネは、ちょっと難しそーなことを考える真剣な表情で呟いた。
他猟兵の作ったイカ飯や、シンプル炭火焼や、だいおーいかたんの末路が食卓に並べられていく。
(「ソヨゴが愛情込めて作ってくれた料理――食べるのは義務かしら?」)
たくさんのイカフライを盛り付け、食卓に置く冬青の動きを見守りつつ、アヤネは自分自身と戦っていた。
だいおーいかたんと対峙した面々のなかで、ある意味において、一番真面目な戦闘であったかもしれない。
「い、いただきます」
しばらく迷った末に、ようやく観念したのだろう。恐る恐ると、冬青の作ったイカ料理を口に運ぶアヤネ。
まずは皆が薦めるイカ焼きだ。
歯ごたえのある身は、一度口の中に入れ咀嚼すれば、タレの味の中から素材本来のほんのりとした甘み。
足の部分は先端がカリリっとしていて、伴うちょっとした焦げた味が香ばしく。
「――思いのほか美味しい!」
「美味しいですか? 良かったです!」
感嘆の声を上げるアヤネの様子に、どこかほっとして、冬青は嬉しそうな笑顔をみせた。
「見た目がグロくても、愛情を込めれば美味しくなるのかな?」
「はい、料理は愛情ですからね!」
食材へ、食べてくれる人へ、丁寧な手順をこめる様は愛情という他にない。
イカフライもカレー味、七味、色々あってしばらくは食べ飽きることもなさそうだ。
「ソヨゴは良いお嫁さんになれるネ!」
「えっ、お嫁さん?!」
アヤネの褒め言葉に、目を丸くさせ、そして頬を染める冬青。
「……それは……どうも」
やや目を逸らし、もごもごと応じる姿――この頃には顔も真っ赤になっている。
そんな可愛い冬青を堪能しつつ、アヤネは食べ進めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
木元・祭莉
あれ……海じゃないのに、イカだ!?
A&Wって、面白いねー!
ね、エルルちゃんは、お料理、得意?
アタシんち、家族が全部やってくれててー♪(てへ)
だから、今日!
イカ料理をマスターするよっ!(ぐっ)
トトの背中を借りて。
たん、と踏み切って、如意な棒でふわりと空中戦。(孫行者の如く)
アタシ、ゲソ焼きが好きだから、足集中でー!(串刺し)
ジノとアミスタ、エルルちゃんも、得意なコトで頑張ってみてー♪
(危険あんま感じなかったのでテキトー)
あ、アタシは、食べるのは何でも得意っ♪
マンガ烏賊を豪快に焼いて食べたら、仲間たちハグして。
楽しかったねー! また会おうねっ♪
へへー、アタシ、おいらだよ!
びっくりしたー?(にへら)
木元・杏
【かんさつにっき】
シマエナさま、いない?
ん…(いつもの落ち着き取り戻し
選択(イカ)は一択
先輩として生徒の皆に見本みせる
(すちゃっと灯る陽光を出刃包丁に象り
さ、皆、わたし達に続いて?
これからお料理(物理)の時間
……?ガーネットがへんな顔してる
ん、お料理(2度め)
アキはのりのり♪
シリンも……うん♪(やる気)
生徒の皆とも連携して手早くイカを捌く
うさみみメイドさんはおこわ炊いて?
透明の狼達を10体、こぶんいか逃がさず捕まえて生徒達へぶんっ
さ、皆
手早くおこわを詰めて?
食べやすい大きさにカットして
そして皆で食す
……(至福
はい、ガーネットも(イカ飯差し出し
あ、本体も食す
帰りにイカ焼き買って帰るね(お土産)
ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】
あれが、だいおーいかたんか。
よし、皆行くぞ……って何してる。杏は包丁なんか持ってるし。
食べるのか、これを? でもこいつ、喋るよ? イカーとか。
お料理……そう、やっぱり食べるんだ。なら……!
【妖剣解放】でトップスピードを出して、素早くいかたんに接近。
スラッシュストリングで斬りつけて素早く捌く。
鮮度が落ちないうちにどうぞ
美味しそうな匂いが漂い始めたら、思わずお腹が鳴ったじゃないか。
杏に差し出された「いか飯」をおそるおそる口に運ぶ
身を噛むほどにイカのうまみを感じられて、これは……美味しい!
「いかたあああああああん!(グルメ番組風のリアクション)」
あの、よかったらおかわりを貰えないか
駒鳥・了
【かんさつにっき】
いかぁ♪
朝ごはんに丁度良い食材だね!
UCで攻撃力を強化したらこぶんたんへ増量したナイフを投擲!
姿焼きをいっぱい作…あああ消えちゃう!
ダイオーイカたんは消えない?(ナイフでつんつん
気を付けながら日本刀でもらえるトコをもらって行く!
ダイジョーブだよグレちゃん、鳥だって牛だって鳴くじゃん!大差無いって!
ご飯も欲しーからイカたんお弁当のおにぎりを探…ってメイドさんマジ有能
オレちゃんは難しいのパスだから皮をむいたら一口大に切って
アルミホイルにバターと塩胡椒を振って薪の上の網に置いてー…完成!
ふわ耳の子にも届くようお裾分けを広げる!
イカ飯もおいしー!
カービン先生もお代わりどお?
シリン・カービン
【かんさつにっき】
食は世界によって違いますから、とガーネットに返しつつ
大雑把なアキの台詞に笑みをこぼし。
意気揚々と子供達と挑む杏と共に、
私もこぶんいかたんに向かいます。
【スピリット・バインド】の投網弾で捕まえますが、
一撃で消滅する脆さがあるので、柔らかめの網で
弾速も遅めに調整します。身が固くならないよう
眠りの精霊にリラックスさせてもらいましょう。
「今日だけは、漁師気分ですね」と少し苦笑。
捕まえたいかたんは杏に渡します。
なるほど、こんな詰め物料理もあるのですね…
教えてもらえればイカの捌きもお手の物。
イカ飯もイカ焼きも絶品です。
もくもくとおかわり+おかわり。
あら、祭莉。
…ふふ、気づきませんでした。
転がり落ちてくるだいおーいかたんを発見したのは、まっきーであった。
「あれ……海じゃないのに、イカだ!?」
「イカ?」
「モンスターかな。行ってみよう」
丁度大蜥蜴の近くにいたまっきーたちは、トトたちに乗ってだいおーいかたんが落ちて行った地点へと急いだ。
指導員と猟兵たちが先行するように前に立ち、後ろから近付く訓練生たち。
シマエナ弾を喰らって傾斜から転がり落ちただいおーいかたんは、ダメージが大きかったのだろう、のたうち回っていた。
わあ、と目前のモンスターを観察するエルルとジノ。
だいおーいかたんを見る多くの目は、食材に向けられたものであり、まっきーもまた例外ではない。
「ね、エルルちゃんは、お料理、得意?」
「うん。よくお母さんのお手伝いをしているよ」
「そっか。アタシんち、家族が全部やってくれててー♪」
てへ、と笑うまっきーの笑顔は可愛らしい。
やっぱり、お手伝いがしたいんだろうな女の子らしいな、とエルルも笑顔で応じる。
「だから、今日! イカ料理をマスターしてみるよっ!」
「うん、まっきーちゃんなら、できるよ。……って、お料理?」
こてりと首を傾けるエルルに、にぱっと笑うまっきー。
「イカね、おいしーんだよー」
食材イコールだいおーいかたん。
その認識が大半を占めるなか、ガーネットは油断のない視線を『敵』へと向けている。
「あれが、だいおーいかたんか」
やや厳しめな表情。
UDCアースの邪神のような姿、スペースシップワールドにおいては未知なる敵姿。
タコを『悪魔』として忌み嫌う文化圏もあるので、至極、真っ当な反応だと思われる。
「――」
シリンもまた、だいおーいかたんを『獲物』として捉える瞳。
「オブリビオンは危険ですから、一先ずの対処は私たちが行なった方が良いかと」
「それが最善だろうな。よし、皆行くぞ」
きりりとした声を掛けつつ、ガーネットは拳を作り周囲を見回した。うん? と違和感。
もっかい見回す。
あれ? と作った拳がほどけた。
「……って、皆、何をしているんだ?」
シマエナさまを骸の海に還し、落ち着きを取り戻した様子の杏。
その手には、出刃包丁を象る灯る陽光。
「イカを、さばく。筒抜きと開いていくの、どっちが最適かな」
「は?」
さばく? 裁く? 否、違うな……と。杏の言葉の意味を、ガーネットは真剣に考える。
「……なるほど」
察したシリンは頷いた。
「いかぁ♪ 朝ごはんに丁度良い食材だね!」
楽しみだなぁ! とアキは、わくわくした声で、時々片目を閉じてdancing Butterflyで狙いをつけている。
「ごはん……だと。食べるのか、これを? でもこいつ、喋るよ? イカーとか」
「イ、イカァ……!」
ほら、と指差すガーネット。知的生命体である。ガーネットからすれば、宇宙の危険生命体にしか見えない。
「食は、世界によって違いますから」
朝ご飯宣言をしたアキに笑みを零しつつ、シリンはガーネットへと言った。
オブリビオンであろうが、獣であろうが、食材であろうが獲物は獲物。シリンの様子に変わりはない。
「さ、皆、わたし達に続いて? これからお料理の時間」
すちゃっと灯る陽光出刃包丁ver.を手に、杏が言えば――。
「お料理……」
「……? ん、お料理」
変な顔をして呟いたガーネットにこくりと頷き、もう一度、杏は言った。
大事なことなので。
料理(物理)だ。
トリニティ・エンハンスで攻撃力を強化するアキ。
「イカァ!!」
応じてこぶんいかたんたちを召喚する、だいおーいかたん。
普通サイズのイカたちがひゅんひゅん飛び出した。
「わあい、獲物がいっぱい!」
喜んだアキが増量させたバタフライナイフを投擲する。
「姿焼きをいっぱい作っ――……!? あああ、消えちゃう!?」
ガーンとなるアキ。
そう、小型の戦闘用こぶんいかたんは一撃で消滅してしまうのだ。
しかし対処法はある。
料理は愛情!! と叫ぶ猟兵の言葉に、ハッとするアキ。
食材に対する心、手捌き、その一つ一つの行動に繊細さが求められる。
シリンが精霊猟銃を構え、呼気を整えた。
風精霊の息吹を感じつつ、もたらされる合図に頷いて引鉄を弾く。
撃ったのは投網弾。だが、柔らかめの網で、弾速も遅めに調整されたそれはこぶんいかたんたちを容易く捕らえた。
ほわぁと眠りの精霊の力が働き、こぶんいかたんたちはゆっくりと横たわる。
「今日だけは、漁師気分ですね」
少し苦笑気味で呟くシリン。
攻撃ではなく捕獲。
アキがやや恐る恐ると刃を入れれば、すぱりと開かれるこぶんいかたんの胴部。
今のアキの一刀は攻撃ではなく、イカを捌く手つきであった。
こぶんいかたんは消滅せずに、新鮮なイカに。刺身作りの要領。
「……できた! できたよカービン先生!」
「お見事です、アキ」
一方その頃。
うさみみメイドさんに教わりつつ、竈の近くでエルルとジノは甕の水を使い、米を研ぐ。
妖刀の怨念を纏ったガーネットが素早くだいおーいかたんへと迫る。
赤の弧を描く軌跡から一際細い輝きが放たれた。
スラッシュストリング――凶暴な宇宙怪獣の肉体さえ切り裂くワイヤーが鮮やかな舞いを見せ、だいおーいかたんの身を切り離していく。
「鮮度が落ちないうちにどうぞ」
そこに猟兵の狐火が飛ばされてイカの身は焼かれた。
即席、シンプルなイカ焼き。
仲間たちが先に味見をしてみれば、とても柔らかく、香ばしく、海の味がするものであった。
「お、美味いな」
「アミスタ、それもって退避ー!」
まっきーの声で、味見にうつつを抜かしていたアミスタが素早く回収して後退する。
大蜥蜴・トトの背を、たんっと踏み切ったまっきーが高くジャンプした。
「イカー!」
だいおーいかたん、足だか腕だかを振るう。
如意みたいな棒を伸ばし、ばしんとイカの足を払うまっきー。
「負っけないんだから!」
ばしばしばし! と、振るわれる足を捌き、時に土台にし、一本の足を如意みたいな棒で絡めとる。
「アタシ、ゲソ焼きが好きだから、足集中ー!」
ぐぐっと絡まる足との力比べ。
その時、放たれたブレードワイヤーが絡み弱った足をすぱんと切ってくれて、まっきーは勢いで空中に放り出された。
くるんと一回転ののち着地。
「足げっとー♪」
「大丈夫か、少年……いや、少女」
「うん!」
足を手に入れたまっきーは上機嫌で、ガーネットへと頷いた。
やはり、アレを食べるのか。と何とも言えない顔で訓練生たちを見回すガーネット。海の生き物を見るのは初めてだろうに、たくましく順応していた。
杏が丁寧に捌き方を教えているのが、時々見える。
「ダイジョーブだよグレちゃん、鳥だって牛だって鳴くじゃん! 大差無いって! むしろイカって鳴かないし!」
だいおーいかたんは消滅しないので、思いっきり無銘蛇目貫で斬りつけるアキの言葉に、ぽんと手を打つガーネット。
「それもそうだな」
「それよりご飯!」
だいおーいかたんのお弁当を探るべく、胴を引っ張り、内側を覗いてみるアキ。きっとここに色々隠しているのだろう。
「イカァ!」
恥ずかしそうにだいおーいかたんが暴れる。
一方その頃。うさみみメイドさんとエルル。
別途、浸水していたお米を炊き上げ、蒸らしている――ちょっぴり蓋を開けてしまったのか、ふわんと漂って来るおこわの香り。
「……ってメイドさんマジ有能」
アキは呟くのだった。
ユーベルコード・白銀の仲間で透明の狼達を十体を放つ杏。
狼たちは威圧でこぶんいかたんたちを集め、それらをまとめてシリンが投網弾で捕らえる。
「ハーディングドッグのようですね」
網の端をくわえ、狼たちが訓練生の元へこぶんいかたんたちを送り届けた。
「さ、皆。こうやって、足と内蔵を取り外して、手早くお米を詰めて?」
ばたばたもがくこぶんいかたんをひと刺し。トドメをさした杏がこぶんいかたんを筒抜きに捌く。
こぶんいかたんに、先程の米をつめ、鍋に並べていった。
醤油と混成酒、砂糖を入れ、竈の火上に置いて煮る。
「なるほど、こんな詰め物料理もあるのですね……」
「ん、たくさんいるから、たくさん作る」
杏がそう言いながら捌く。――シリンも捌き方を教えてもらい、米を詰めた。
「……。最初の鍋から良い香りがしてきましたね」
くつくつと。
醤油と芳醇な混成酒の良い香りに、シリンが興味深く、鍋を見つめた。
最終的に、撃破され、胴部を切り開かれただいおーいかたん。
内蔵や足と、次々に解体処理されていく――。
「足、焼こっ!」
串刺しにした大きなイカ足二本を、立てた棒と棒の間に掛けて、火で焼くまっきー。
「しょーゆを塗るのが美味しいって教えてもらったぞ」
アミスタが醤油を適宜、塗っていく。
一つは醤油で。一つは、そのまま素材の味を活かして。
「オレちゃんは難しいのパスだから、簡単なの作ってみるね~」
皮を剥いて一口大に切って。
アルミホイルにイカとバターと塩胡椒。
大きな網に合わせて竈を作ったのだろう。火番をやる訓練生が渋滞中な網上を整理している。
その一角に置いてしばらくすれば、ホイル焼きの完成だ!
バターの香ばしくも甘い香り。
「たっくさん作ったからみんな食べてねー! はい、カービン先生のぶん! はい、グレちゃんも!」
まっきーに手渡しつつ、シリンやガーネットにも。
杏は出来上がったイカ飯をまずは食べてみる。
「……」
煮込んだものも、それぞれの素材の味を活かすよう後でおこわを詰めたものも、それぞれの味をゆっくりと味わう杏。
ほくほくと至福の表情だ。
「はい、ガーネットも」
煮込み、蒸らしたイカ飯。
美味しそうな匂いに反応したのか、ガーネットのお腹が鳴った。
「まずは……いか飯なるものを……」
おそるおそる口に運ぶガーネット。はくっと。
次の瞬間、雷に撃たれたかのように、カッと目を見開く。
\ いかたあああああああん! /
拳を作り、美味しさを叫びに変えて表現するガーネット。
「身を噛むほどにイカのうまみを感じられて、これは……美味しい!
イカ焼きも、ホイル焼きにしたものは身が柔らかく、ほっとする甘味」
「おいしいよねぇ」
にこにことアキ。輪に切り分けられたイカ飯は見てて楽しいし、食べて美味しいし。
「カービン先生は――」
と、シリンの方を見るアキ――シリンはもくもくとイカ飯とイカ焼き、そしてアッチから回ってきたイカフライを食べていた。
食の進み具合からして、とても美味しいと思っているのだろう。
いつもとあまり表情は変わっていないが、雰囲気が違う。
「あの、よかったらおかわりを貰えないか」
ガーネットの声に、はい! と出来上がったばかりのホイル焼きを出すアキ。
「カービン先生もお代わりどお?」
「いただきます」
マンガ肉ならぬマンガ烏賊を食べ切ったまっきーたち。
ジノとエルルが手伝ったイカ飯も食べて。
まったりしながら片付けを終える頃、にぱっと笑ったまっきーが両腕を広げてハグしてくる。
「まっきー?」
「アタシ、そろそろ帰らなきゃ!
楽しかったねー!」
しばらく一緒に行動を共にしてきたチームだ。突然の別れであったが、そういえば、出会いも突然だったと思うジノ。
「せんせーもありがと!」
トゥイエは色々察してはいたのだろう、頑張れよとまっきーに言う。
ハグしあって、
「また会おうねっ♪」
手を振り、まっきーは駆けて行った。
「あれ、まっきーちゃんじゃん。どしたのー?」
おかわりかな? と、駆け寄ってくるまっきーに気付くアキ。
その時、ふわふわの髪から耳がぴょこんと出てきて、いたずら成功のような顔で笑うまっきー。
「へへー、アタシ、おいらだよ!
びっくりしたー?」
「あら、祭莉。……ふふ、気づきませんでした」
そう言って微笑むシリンは、何もかもお見通しだったようで、駆けてきた方向へ視線を向ける。
「ああ、祭莉。土産用のイカを焼くのを手伝ってくれないか」
「ええ!?」
すかさずガーネットが声を掛ければ、網の前には杏もいて。
突然現れた祭莉の姿に驚いているようだ。
「ただいまー!」
●
「これにて、今期キャンプを終了する。
皆、よくやった!
家に帰ってゆっくりと休め」
ディグダの終了宣言に、
わぁい! お疲れ様! と声が上がっていく。
モンスターと遭遇してしまったキャンプだったけれど、訓練生たちにとって、とても良い経験となった。
イカの味が忘れられず海を目指そうとする者、モンスターの生態を調べたいと思う者、剣の道を目指す者。
色んな夢ができた数日間。
世界を渡る猟兵たちも、教え、教えられ、と訓練に明け暮れた日々であった。
大成功
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