エンパイアウォー㉚~そして侵略者はにゃーと鳴く~
●侵略者は鶏肉がお好き
阿波国、今でいう徳島県神山町。
その山腹には夫婦滝として名高い雨乞の滝がある。
くねくねと曲がる、滝壺へと降りていく山道の脇、茂みになっているそこに、見るからに新しい、不自然な石造りの祠があった。
その祠の周りで、白黒茶色の毛並みがぴょこぴょこ、人影がいないか探してきょろきょろ。
「誰もいないにゃ?」
「いないにゃん。今のうちにどんどん出るにゃん」
さっと腕を振る、二足歩行でカンフー服に身を包んだにゃんこ。
それが祠の周囲に、次から次から湧き出すように姿を見せる。
二十匹ほどが集まってにゃーにゃー。耳から垂らした布の先で鈴がちりちり。
「よし、集まったら信長様の元へと向かうにゃん。武運を祈るにゃん!」
「にゃん!」
そして十匹のにゃんこを残して、残りのにゃんこが一気に山を駆け上がっていった。
●グリモア猟兵は猫がお好き
「いやぁ、可愛いだけならまだしも、侵略的に行動するなら対処は必要ですよねぇ」
阿瀬川・泰史(酒と杯さえあればよし・f02245)が困ったような表情をして、指先にぐい呑み型のグリモアを浮かべながらそう告げた。
侵略渡来人『コルテス』は、骸の海から渡来人を呼び寄せる、幾つかの財宝を所持していた事が判明した。
その財宝は山陽地方各地のパワースポットに配置され、土地の力を利用して一定時間ごとに勝手に特定のオブリビオンを骸の海から召喚する。
自分は一切手をかけずに、自動で戦力を補充し続ける、コルテスらしい仕掛けと言えるだろう。
「召喚されたオブリビオンは一定の数が集まると、半分くらいの数をその場に残して魔空安土城に移動します。その残りのオブリビオンが祠の守りにあたっているようですねぇ」
ここで祠を潰し、血濡れの財宝を壊すことが出来れば、魔空安土城に駆け付ける敵兵の補充を止められる。信長との決戦の際に、有利に働くことだろう。
して、どんなオブリビオンが召喚されるのかと言えば。
「異国のカンフーにゃんこ、ご存知です?二足歩行で、中華な衣装に身を包んだ三毛猫。あれが出てくるんですよねぇ。わらわらと。いやぁ可愛らしいったら」
そう言いながら泰史は苦笑した。可愛くもふもふした生き物が好きな彼としても、複雑な思いはあるのだろう。実際に彼らは可愛い。強くもあるが。
異国のカンフーにゃんこの攻撃手段はその手に持つ長い棒だ。これで猟兵の身体を掬い上げて地面や木に叩きつけてくる。また、周辺にある無機物を武器に変えて扱うことも出来る。
さらには胸元に付けた鈴が鳴ることの無いほどに洗練された体術で連続攻撃を繰り出してくることもあるようだ。
そこまで説明した泰史は、一つこほんと咳払いをした。気持ちを落ち着かせてから、転移のためのポータルを開く。
「さて、皆さん準備はいいですかぁ?しっかりこなして、無事に帰ってきてくださいねぇ」
屋守保英
こんにちは、屋守保英です。
サムライエンパイアの戦争もいよいよ終盤。
ここが頑張りどころです。
●目標
・異国のカンフーにゃんこ×10体の撃破。
●特記事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●戦場・場面
(第1章)
阿波国、雨乞の滝です。
滝壺へと下る山道の、脇の茂みに不自然に設えられた祠の中に、血濡れの財宝が祀られています。
にゃんこ達はこの祠を守るように陣取って、財宝を守ろうと攻撃してきます。
それでは、皆さんの力の籠もったプレイングをお待ちしています。
第1章 集団戦
『異国のカンフーにゃんこ』
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POW : にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑11
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バロン・ゴウト
カンフーにゃんこ……相手にとって不足無しにゃ。
素早い身のこなしなら負けないのにゃ。ケットシーの剣士、バロンが相手にゃ!
【POW】
まず自分自身に【猫の毛づくろい】を行うのにゃ。
そうすれば相手もボクの服に棒を引っかけられないのにゃ!
攻撃が失敗した隙をついて、【カウンター】で素早く【2回攻撃】にゃ!
敵を倒して祠に近づけそうなら【ダッシュ】で近寄り、血濡れの財宝を【串刺し】にするのにゃ!
連携、アドリブ大歓迎なのにゃ。
タビタビ・マタタビ
ここがにゃんこの湧いて出てくる祠……?
全自動にゃんこ召喚装置……じゃなくてコルテスの秘宝、なんとかしないといけないね。
もう戦いは始まってるのかな? そこの猟兵さん、ボクも加勢するよ……
「…………」(うっかり間近でカンフーにゃんことご対面)
猫が! 出た!
……ボクも猫だけど!
あの鈴が光ると、怒涛の攻撃が!? それは困るよ!
UC【ナイツオブネコチャン】発動!
九連続の攻撃でも、30匹のネコ騎士全員は倒しきれないはず!
そして、にゃんこの攻撃の隙をついて、一斉反撃!
目には目を、猫には猫を!
オブリビオン猫よりケットシーの方が強いっていう事を証明するよ!
(そして祠が猫だらけになっていく)
●猫は日向ぼっこがお好き
雨乞の滝に繋がる山道、茂みの中に埋もれるように設えられた、石造りの祠。
その祠の前を、棒を構えてあっちをきょろきょろ、こっちにそわそわ、たまにスヤァとお昼寝をしているカンフーにゃんこがわらわらと群れているのを、タビタビ・マタタビ(若き猫黒騎士・f10770)は山道の曲がり角から見つめていた。
「ここがにゃんこの湧いて出てくる祠……?」
不思議そうな表情で祠とにゃんこを見つめるタビタビの頭の下から、バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)も頭を突き出す。
その金色の瞳をきりりと細めながら、腰に佩いたレイピアに手を当てた。
「カンフーにゃんこ……相手にとって不足無しにゃ」
「全自動にゃんこ召喚装置……じゃなくてコルテスの秘宝、なんとかしないといけないね」
「血濡れの財宝がただの全自動にゃんこ召喚装置だったら平和だったんだけどにゃー」
そう口々に言葉を漏らしながら、バロンもタビタビも曲がり角から飛び出した。
そして一匹のにゃんこが二人の方に視線を向けるや。
「素早い身のこなしなら負けないのにゃ。ケットシーの剣士、バロンが相手にゃ!」
「ケットシーの騎士、タビタビもいるよー!」
各々の剣を抜いて二人は一緒に地を蹴った。黄金のレイピアを、ゆうしゃのつるぎを、それぞれぐっと握りしめて。
「にゃー!」
「えーい!」
「ぎにゃんっ!?」
二人同時の一閃と一穿。攻撃態勢を整える前のにゃんこを骸の海へと送り返す。
「にゃにゃ!?」
「敵襲だにゃん!」
すぐさまに反応し、こちらに棒を向けてくるカンフーにゃんこたち。一匹が倒されたから残りは九匹。
次の猫に斬りかかろう、とタビタビが方向転換したところで。
彼の目の前に一匹、召喚されたカンフーにゃんこが降り立った。
目と目が合って、触れられるほどの距離で見つめ合う、一人と一匹。
「……にゃん?」
「……猫が!出た!……ボクも猫だけど!」
「ボクも猫だにゃ!」
別の方向に踏み出して、自分の身体をペロペロしながらレイピアを突き出し牽制するバロンが、タビタビの漏らした言葉に反応して声を張る。
対して、召喚されたばかりの三毛猫は状況が飲み込めないでいた。
「毛色の違うお仲間にゃん?あっ違うにゃん猟兵だにゃん!?」
「黒い二匹は猟兵だにゃん!来て早々大変にゃんが追い払うにゃん!!」
タビタビに横から飛びかかるカンフーにゃんこが、新しく出現した一匹へと鋭く声を飛ばした。
自分に棒を振り下ろしてくる一匹の胸元の鈴が、眩いばかりに輝き始めるのを、剣でそれを受け止めたタビタビは見逃さなかった。
「この鈴が輝いた時がお前の最後だにゃん!」
「怒涛の攻撃が!?それは困るよ!」
剣を払って後方に下がりながら、タビタビはその手の剣を高く掲げる。すると彼の周囲に、次々に小さな、にゃんこたちよりも小さなネコ騎士がわらわらと。
「さぁ行くよ、猫さん達!」
「小癪にゃん、この程度にゃんの攻撃で全部蹴散らし……けちら……」
わらわらと、わらわらと。ネコ騎士は次々現れる。
そして山道を埋めるほどのネコ騎士が、総勢33体。
「多いにゃーん!?」
「かかれー!」
「にゃーん!!」
ネコ騎士に一斉に襲い掛かられ、その波に埋もれていくカンフーにゃんこの腕がだんだん見えなくなっていった。
他方では、バロンを囲んでにゃんこ達が、棒の先端を引っかけようとしてはつるっと滑っていくことに悪戦苦闘しつつ混乱していた。
「にゃんっ!?なんで棒が引っかからないにゃん!?」
「猫の毛づくろいのおかげだにゃ!もう、君達の棒はボクの服に引っかけられないにゃ!」
「にゃふんっ!?」
先程のぺろぺろで猫の毛づくろいを使用していたバロンは、敵の攻撃をそもそもさせないことに意識を向けた。
服に棒が引っかからなければ、持ち上げられて叩きつけられることも無い。棒が滑れば隙も生まれる。
その隙を的確に突いてレイピアをシュババと前へ。カンフーにゃんこの胸元と喉を、性格に貫いては無言のうちに骸の海に沈めていった。
「オブリビオン猫よりケットシーの方が強いっていう事を証明するよ!」
「その通りにゃ、ボク達の強さを見せつけるのにゃ!」
そう強気に宣言した猫騎士二人は、改めて侵略者のカンフーにゃんこに立ち向かっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
高柳・零
WIZ
「あー、猫さん達。信長軍はもう殆ど壊滅して大将が敦盛を舞ってそうな状況なので、大人しく異界に帰りませんか?」
提案を受け入れてくれば良し、受け入れなければ
「そうですか、残念です。では思い切り痛い思いをして、骸の海に行って頂きます」
と言い戦闘開始します。
オーラを盾に被せ、しっかりと防御体勢で待ち構えます。
敵の即席武器は見切りで動きを読み、盾とオーラで弾きます。
ダメージを受けても激痛耐性で耐えます。
「簡単には倒れないのが聖騎士です」
攻撃が収まった瞬間、指10本で敵2人に5本ずつ光を落とします。
「魔法も使えるのが聖騎士の強みですよ」
アドリブ歓迎です。
●猫は流れる水がお好き
「あー、猫さん達。信長軍はもう殆ど壊滅して大将が敦盛を舞ってそうな状況なので、大人しく異界に帰りませんか?」
先鋒の二人によっていくらか数を減らされ、ぐぬぬと唇を噛むカンフーにゃんこ達に、高柳・零(テレビウムのパラディン・f03921)は努めて穏やかに声をかけていた。
初手で出鼻をくじかれ、戦意を喪失しているならそれでよし、オブリビオンが相手と言えど、戦意の無い相手を斬り捨てるほど、零は無情ではない。
しかしにゃんこ達もオブリビオン、ひいては信長軍の一員であるからして。
「帰らないにゃん!信長様のお役に立てないまま、おめおめと引き下がるわけにはいかないにゃん!」
「にゃん達は信長様の役に立つためにこうしてやってきたんだにゃん!」
「そうですか、残念です。では思い切り痛い思いをして、骸の海に行って頂きます」
戦意を失わず、手に手に周辺の石やら枝やらを武器に変えて握りしめるにゃんこ達に、零は少しだけ悲しそうな表情を画面に映すと、背負った盾を正面に構えた。
その盾に自分の身体を隠すようにして、オーラを纏わせて両足をしっかと地に着ける。
「盾を構えたからと、にゃん達の攻撃を防ぎきれると思うにゃ!」
「思うにゃ!」
そう力強く告げながら、手にした剣を、斧を振りかぶるにゃんこ。
重量のあるそれらが同時に、零の構える盾目掛けて振り下ろされる。
と。
「「にゃんっ!?」」
キィン、と鋭い音を立てて弾かれる手の中の武器。丸みを帯びた盾の表面を滑るように横へと逸らされ、地面に向かってつんのめるにゃんこ二匹。
「簡単には倒れないのが聖騎士です」
不敵に告げてニヤリと笑った表情をテレビ画面に映しながら、零は盾を手放した。
そのまま両腕を真横に広げ、五本ずつの指先をつんのめったままのにゃんこに向ける。
次の瞬間、青く晴れ渡った空から降り注ぐ眩い光。それが五本と五本、計十本。
「魔法も使えるのが聖騎士の強みですよ」
「「にゃぁぁぁぁ……」」
零の台詞にバックミュージックを添えるように、にゃんこの悲鳴が光に溶けるようにどんどん小さく、微かになっていく。
光が収まった時、そこには地面に転がる石と、小枝があるだけだった。
成功
🔵🔵🔴
山梨・玄信
今回の戦争でこいつらをやたらと見かけると思っておったが、こんな方法で来ておったのか。
では、元から断たせてもらうかのう。
【POWを使用】
褌一丁で脱ぎ力を高め、強化された力で真っ向勝負じゃ!
釣り針を引っ掛ける場所は少ないから(褌と下駄の鼻緒)、そこに気を付けて見切るぞい。
フェイントをされても、第六感で読んでやるのじゃ。
因みに、今は貧乏神のUCのせいでハゲているので髪も無いぞ。
(シナリオ「逆宝船」参照)
数が多ければ気の放出で纏めてダメージを与え、少なければ2回攻撃で1人ずつ仕留めに行くぞい。
「お主らに前から言いたかったんじゃが…何故、ニホンネコのくせに中華風なんじゃ!」
アドリブ歓迎じゃ。
●猫は飛ぶ鳥がお好き
少しずつその数を減らしながらも、なおも猟兵達をねめつけるカンフーにゃんこ。
彼らに真正面から向き合う山梨・玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)は腕を組む。
「今回の戦争でこいつらをやたらと見かけると思っておったが、こんな方法で来ておったのか。では、元から断たせてもらうかのう」
「にゃ……」
変声期を過ぎているのかいないのか、微妙な年ごろらしい声色とそれに見合わぬ口調でキッパリと告げる玄信を、にゃんこ達はぷるぷると震えながら見ていた。
その震えは、どこか怯えと恐れを感じさせるようであって。
やがて、一匹のにゃんこがぐ、と歯を食いしばって一歩前に進み出た。
「にゃん達がこうやってエンパイアに出てきていることは見ての通りにゃん、それを猟兵が止めに来るというのも当然だからいいにゃん……だけど!
にゃんでお前は褌一丁でここに立っているにゃん!!」
声を張り上げるにゃんこの目の端には、きらりと涙が浮かんでいた。
そう、にゃんこの言う通り、今の玄信は褌と下駄以外何も身に付けていなかった。
普段はそこそこある髪も、さるオブリビオンの手によってハゲ散らかされてしまったのでスキンヘッド。髭だけは辛うじて残っているが、逆に威圧感が増していた。
こんな外見じゃ、にゃんこが怯えるのも無理のない話である。
本人曰く「褌一丁で脱ぎ力(ルビ:ぬぎちから)を高め、強化された力で真っ向勝負じゃ!」とのことだが、脱ぎ力ってなにさ。
ともあれ玄信の脱ぎ力は最大レベル、棒で引っかけられる服も何もない。にゃんこ達も引っかけられそうな顎に棒を伸ばすも、見切り続ける上に高速で飛翔する玄信には届いていなかった。
拳をぐっと握りしめ、一匹のにゃんこを殴り飛ばした玄信が、次なるにゃんこに飛びかかりながら口を開く。
「お主らに前から言いたかったんじゃが……何故、ニホンネコのくせに中華風なんじゃ!」
「にゃ?」
玄信の言葉に、カンフーにゃんこたちは揃って首を傾げた。お互いに顔を見合わせた後で、ふんすと胸を張る。
「にゃん達は生まれも育ちも清国だにゃん」
「三花猫っていって、清国にも三毛の猫はいるんだにゃん」
「なんと……」
着地と同時ににゃんこの腹に拳をめり込ませた玄信が声を漏らす。
新たな知識が玄信の脳に刻まれた瞬間だった。
成功
🔵🔵🔴
萬場・了
ほうほう、怪しい祠、血濡れの財宝に、異国のネコちゃん。……ネコちゃん?
そういや。俺の家の近所にも野良がわんさかいてさあ、1匹いたら100匹って……
おっと、第一にゃんこ発見!
この悍ましい【膨張する暗黒】見せてやるぜ!
さあてネコちゃんご注目!!ジャジャンッ、これは、何でしょ~か!
ブラウン管TVのセッティングが済んだら俺はカメラで高みからの見物と行くぜ。
いくらネコちゃんがすばしっこくとも、相手は触手だ。
黒いうねうねの動きでじゃれ……翻弄させ、
敵を引き付けながら、脚を、腕を、武器を、絡め取る!
ふひひ、仲間を呼んでくれたら好都合だな。
疲れさせたらそのままおねんねさせてやる算段だ!良い夢見ろよ!
●猫はネズミがお好き
「ほうほう、怪しい祠、血濡れの財宝に、異国のネコちゃん。……ネコちゃん?」
にゃんこがポコポコと出現して数を増やす中、萬場・了(トラッカーズハイ・f00664)は眼鏡の奥の青空色をした瞳を大きく見開いていた。
ネコちゃんである。骸の海から次々召喚されるネコちゃんである。
それを見て、了はポンと手を叩いた。
「そういや。俺の家の近所にも野良がわんさかいてさあ、1匹いたら100匹って……」
「にゃん達を黒くて平べったい某虫みたいに言うんじゃないにゃん!」
「おっと、第一にゃんこ発見!」
周辺に落ちていた枯葉を手裏剣のように構えながら了を睨むにゃんこ。黒いGと同列に扱われて不服な様子。
こちらに武器を向けるにゃんこの姿を認めた了が、にぃっと笑うとどすんと地面に『それ』を設置した。
「さあてネコちゃんご注目!!ジャジャンッ、これは、何でしょ~か!」
「にゃん……?」
「四角くて、大きな、すべすべした……箱にゃん?」
了の召喚したブラウン管テレビに、にゃんこ達は手に構えた武器を下ろした。不思議そうに、興味深そうに、それを眺めては首を傾げている。
流石にサムライエンパイアのオブリビオン、テレビがどんなものであるか、理解も把握も出来ようはずはない。
そしてにゃんこ達がはっと気が付いたころには、了のピンク色をした頭はどこにも見当たらない。ブラウン管テレビだけを残してどこかに行ってしまったらしい。
「にゃにゃっ!?」
「いないにゃん!逃げられたにゃん!?」
あたりをきょろきょろと見回すにゃんこ達を、了は山道を上った先、高く聳える木の上に上ってカメラを向けていた。
すっかり高みの見物である。
しばらく辺りを伺っても、了の姿を見つけられないことに思い至ったにゃんこ達が、不意に山道に鎮座したままのブラウン管テレビに視線を向ける。
「まさか……」
「この中に隠れているとか、あるにゃん……?」
テレビに、恐れの入り混じった視線を向けた瞬間である。
ぶつん、という音と共に、テレビの画面に映像が映し出された。
びくぅっと尻尾と耳が跳ね上がり、毛がぶわっと逆立つにゃんこ達が目にしたものは。
真っ暗な闇の中、浮かび上がる古井戸の映像であった。
そしてその古井戸から、黒く、粘性を帯びた『それ』が溢れ出てくる。
「にゃ、にゃ……」
「あれは、なんだにゃん
……!?」
猫たちが揃って震えあがった瞬間。
井戸から溢れた『それ』が一気に膨張した。
テレビの画面にべたっと張り付くようにした黒いものが、画面を突き破って次から次へと這い出して来る。
「「に゛ゃ゛ーーー!!」」
にゃんこ達は途端に、テレビに背を向けて駆けだした。
這い出てきたのは真っ黒でねとねとした太い触手だ。それが何本も、地面をのたうつようにしながらにゃんこ達を追いかけていく。
三匹ほど逃げ遅れたにゃんこが、触手に捕らわれて四肢を拘束されていた。
「やだにゃー!きもいにゃー!」
「誰か助けてにゃーん!」
「にゃぁぁ……なんか急にだるくなってきたにゃぁぁ……」
触手に捕らわれたにゃんこが、次々にぐったりとして、触手に飲み込まれていく中。
どんどん増えては膨れ上がる触手を、にゃんこ達は木の上に隠れて震えながら見ているのだった。
成功
🔵🔵🔴
ロータス・プンダリーカ
「むぅ、あれぞ世に聞く、古代中国より猫に伝わる伝説の拳ーーニャン斗聖拳!」
~ニャン斗聖拳~
(略)…これが人間にも模倣され、世紀末を生き抜く拳ともなったのは有名な話である。
(民日月書房「肉球と拳」)
此処はボクのニャン=カタがお相手しますにゃ…!
銃を片手に構え、相手の動きを予測して統計学的な無駄のない動きで敵の拳を捌くにゃ。
隙を見て零距離で撃つことも。
銃と形(カタ)とを合わせたこの技、見切れるかにゃ?
悪に染まった拳に負けるような拳、ボクは持ち合わせていないからにゃ!?
倒したら。
お前は強かったにゃ…しかし間違った強さだったにゃ…!
と、拱手して一礼。
●猫は遊ぶのがお好き
「むぅ、あれぞ世に聞く、古代中国より猫に伝わる伝説の拳――ニャン斗聖拳!」
ロータス・プンダリーカ(猫の銃形使い・f10883)はにゃんこ達が繰り出す一挙手一投足をつぶさに観察してから、そう声を漏らした。
ニャン斗聖拳。
それは猫が作り、猫が伝え、猫が極めた伝説の技。これが人間にも模倣され、世紀末を生き抜く拳ともなったのは有名な話である。らしい。
そしてロータスは腰のホルスターから愛用の銃を抜いた。片手には銃を、もう片手には何も持たず。これぞ正しくニャン=カタの型。
「此処はボクのニャン=カタがお相手しますにゃ……!」
「新手だにゃん!迎え撃つにゃん!」
胸元の鈴をきらりと光らせて、にゃんこの数匹がロータスに向かって拳を繰り出した。
胸元にも帽子にも足元にも鈴をいくつも付けているというのに、その鈴はいずれもリンとも鳴らず、あまりにも洗練された無駄のない動きがロータスへと襲い掛かる。
しかし、ロータスも体術には覚えがある身。片手の銃を盾代わりにして躱したり、相手の動きを見切って隙間に身体を入れ込んだり。次々ににゃんこの拳を捌いていく。
何度目かの攻防の末に、にゃんこの拳が空を切った隙を突いて、眉間に銃口を突きつける。
そして。
「にゃっ……!」
パァンという乾いた音と共に、眉間を撃ち抜かれたにゃんこの頭が後方に振れた。
そのまま地面に倒れる前に崩れ往く身体を一瞬だけ見やると、ロータスはすぐさま次のにゃんこ目掛けて拳打を放った。
「悪に染まった拳に負けるような拳、ボクは持ち合わせていないからにゃ!?」
「こっ、こいつ、やるにゃん……!」
その無駄のない、にゃんこの拳法とは別の意味合いで無駄のない動きに、瞠目するにゃんこ達。
やがて、向かってくるにゃんこがロータスの手によって倒され、残ったにゃんこが恐れの混じった視線を向けてくる中。
「お前は強かったにゃ……しかし間違った強さだったにゃ……!」
彼はそう告げて、ゆっくりと拱手しつつ一礼したのだった。
成功
🔵🔵🔴
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(アドリブ・共闘可)
「ここは一気に畳みかけてケリをつけないとね」
カンフーにゃんこ、覚悟だよ!
【行動】()内は技能
「美味しくなって新登場。またたび爆弾炸裂だよ」
またたびと美味しいカリカリを詰めた袋を(投擲)で投げるよ
にゃんこの頭上にばら撒いて少し混乱させるよ
「今のうちに攻撃だね、フィオ姉ちゃん」
続いて(高速詠唱)でウィザード・ミサイルを放つんだ。
カンフーにゃんこが炎の矢で怯んだら聖箒を掲げてファイナルアタックだよ
(全力魔法)のカラミダド・メテオーロ!
「これで勝負ありだね」
無機物攻撃にはグアルディアン・サトゥルノを展開して相殺するよ
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ/連携可)
「ケットシーとカンフーにゃんこの戦いも見ごたえあるわね」
とは言え見ていても仕方ないので参戦
■作戦
フォルセティとの連携攻撃(WIZ型UC)でカンフーにゃんこを撃破する
■行動
「一気にいくわよ、フォルセティ」
弟のまたたび爆弾?に続いて[高速詠唱]からの【ウィザード・ミサイル】で
無数の炎の矢をカンフーにゃんこに浴びせる
にゃんこの無機物攻撃は【アイギスの盾】で、それ以外の攻撃は[見切り]と[ジャンプ]で
華麗に躱していく
「これで最後よ!」
弟の隕石攻撃とタイミングを合わせて[全力魔法]で【バベルの光】と唱え
戦闘を終わらせる
「祠の財宝は破壊しておくわね」
●猫はまたたびがお好き
にゃんこがどんどん倒されて、残り数匹というあたりになったところで。
フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)とフォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)の姉弟は出番が来た、と言いたげに戦場にその姿を見せた。
「ケットシーとカンフーにゃんこの戦いも見ごたえあるわね」
「数も少なくなってきたし、ここは一気に畳みかけてケリをつけないとね」
「この状況でさらに新手が来るにゃん!?」
フィオリナとフォルセティの姿を認めて、残されたカンフーにゃんこ達は冷や汗を垂らした。
つい先程ににゃんこが召喚されたばかりだから、次の召喚までには時間がかかる。
つまり、なんかすごく手練れそうなこの二人を相手に、現状の人数で立ち向かわなければならないということだ。
人手が足りないなどと言っている場合ではない。
きっとまなじりを決したにゃんこの一匹が声を張った。
「武器を取るにゃ!最後の一匹になるまで諦めちゃだめだにゃん!」
「「にゃん!」」
「逃げないみたいだね。カンフーにゃんこ、覚悟だよ!」
「一気にいくわよ、フォルセティ」
視線を合わせてこくり、と頷くソルレスティア姉弟。そして向き直ったタイミングで、にゃんこ達が一斉に腕を振りかぶった。
「投擲、だにゃん!」
放り投げられたのは尖った石製のナイフだ。その切っ先がまっすぐ二人に向いて飛んでくる。
まず自分が、と前に出たフィオリナが、さっと手を翳した。
「そんな攻撃当たらないわよ。防げ、アイギスの盾よ!」
掌から発せられた光、それが盾となってにゃんこの放ったナイフを弾き飛ばす。
防御を張る姉の後ろで、弟はなにやら手にした袋を振りかぶっていた。
「美味しくなって新登場。またたび爆弾炸裂だよ」
フォルセティの手から放たれた袋が、にゃんこ達の頭上の空中で解ける。
中からばらばらと降るように落ちてきたのは、ドライフード。そしてにゃんこまっしぐらの蠱惑的なパウダー。マタタビである。
予期しないマタタビの香りに、にゃんこ達が目を見張ると。
「にゃぁぁん~」
「ふにゃぁ~」
揃ってぐでんと地面に転がった。オブリビオンであるとはいえ、マタタビに弱い辺りはやはり猫ということだろう。
「今のうちに攻撃だね、フィオ姉ちゃん」
「ええ、これで最後よ!」
にゃんこが無力化されている今がまさしくチャンス。フォルセティは箒を、フィオリナは手の指を地面に転がったにゃんこに突き付けた。
収束する魔力、迸る力。それが二人を取り囲み、渦を巻き、びりびりと空気を震わせている。
そして。
「悠久に揺蕩う無限の星屑よ。星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎。カラミダド・メテオーロ!」
「ただの魔法使いだと思った?貫け、バベルの光よ!」
同時に放たれた詠唱。直後、周囲一帯に轟音が響き渡った。
炎を上げて落下してくる巨大隕石。同時に別方向から降ってくる極太のレーザー。
それがどこから来たのかは知らない。ユーベルコードであるし、虚空から現れても何にもおかしくはない。
そしてその、超大出力の一撃を前にしたにゃんこ達は。
「あははぁ~、空が落ちてくる、落ちてくるにゃん……」
夢心地のまま、降ってくる隕石とレーザーに溶かされ燃やされ、骸の海へと還されていったのだった。
攻撃が終わり、辺りに静寂が戻り、にゃんこの姿が一つ残らず消し飛んだ後。
フィオリナは周囲をきょろきょろと見回した。
「さて、祠の財宝は……」
「フィオ姉ちゃん、あれ」
フォルセティが指さしたそこに視線を向けると、バラバラに崩れてぺっちゃんこになった祠と、中に収められていたであろう小さな箱が粉々に砕かれ、残骸として散らばっているのが見えた。
どうやら、先程の攻撃の余波で一緒に破壊されたらしい。
「……」
「……」
しばし、無言になる姉弟二人。
程なくして、フォルセティが両手を後頭部に回しながら口を開いた。
「まぁ、これでやることはやったんだし、いいんじゃない?」
そう、これで財宝は破壊した。めでたしめでたし、なのである。
大成功
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