エンパイアウォー㉑~魂揺さぶる、渦潮の海峡へ
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「よォ、お疲れ。『大帝の剣』、その使い手たる『弥助アレキサンダー』とやらの居場所を掴んだぜ」
フィッダ・ヨクセム(停スル夢・f18408)は地図を手に、この辺、と指差す。
ほぼほぼ海の上、そこをフィッダは指差していた。
「この場所の名前は資料によると、『関門海峡』……つまり、海上だ」
『大帝の剣』の能力によって洗脳された、長州藩の水軍である『毛利水軍』が配置されている。彼らは一般人であり、オブリビオンではない。
「現在は一般人の水軍が関門海峡を封鎖しててな、気軽に先へは進めない。つまり、どうにか突破しねェといけねェ」
長州藩の武士達は総じて『大帝の剣』による洗脳を受けているだけ。
大帝の剣の能力が途切れれば、彼らはやるべき事を思い出すだろう。
「んで……奴らの先に居るのは、隠し将『豊臣秀吉』。義と忠に厚い、すげェ奴らしいが
…………」
猟兵の進軍を体を張って拒むように、立ちふさがる。
「俺様にも意味を図りかねるが、異形強化する能力を持つ、鈍く光る十字架メガリス『逆賊の十字架』とやらを使い、反応速度を強化しているそうだ」
しかし『逆賊の十字架』の所持は『豊臣秀吉』ではない。彼は、使ってもらった側だ。
力あるもの、メガリス、という代物ということだが、これは多数存在するものなのだろう。重要なのは恐らく、そこではない。
「関門海峡の海上を、体を丸め、まるでゴムマリのように飛び跳ねながら、あらゆる角度からの弥助への攻撃を超高速で受ける」
反応速度が早く、攻撃を受け止める。機敏な存在だ。変幻自在にその体を使う。
豊臣秀吉をなんとかしなければ、弥助への攻撃は届かない。まさしく盾の如く、忠義に燃えて君臨するだろう。
「大帝剣『弥助アレキサンダー』はなァ……『関門海峡の大渦』の中心を浮遊しながら、所持するメガリス…………三つの力を高めているそうだ」
着目するべきは、メガリス『闘神の独鈷杵』によって発生した『関門海峡の大渦』の上に浮遊している、ということ。
決して高度のある飛行ではないが、メガリス『大帝の剣』、『闘神の独鈷杵』、『逆賊の十字架』を所有する。
それらを武器としても扱うので、集中するタイミングは、そう多くない。隙であり、チャンスであもあるのだ。
「……倒しきれなければ、高まったエネルギーが天変地異を起こすだろうな。俺様達はその場から派手に吹き飛ばされるだろうぜ」
メガリスはそれほどに、危険な力を溜め込み続けるだろう。
「…………。話は少し逸れるが、てめェらは大渦に、何を思う? 力の余波で起こッただけの大渦だとしたら、何をする?」
小耳に挟んだ話では、その海峡の潮の流れは、気紛れに向きを変えて逆巻に渦潮をつくるというのだ。関門海峡の潮流の速さと複雑さは、良くその場を知る者でも切り替わるタイミングの、判断を迷うという。
「弥助はそれを、知るだろうか……ハハ、んなわけねェか。勝ちも負けも月の満ち欠けと同じ感じだ、やッてみなければわからねェさ」
タテガミ
こんにちは、タテガミです。
めがりすときくと、てぃんかーべるってこたえます。
どっこしょ、って字面かっこいいよね。
この依頼では、全ての章を通して「海上での戦い」となります。
もう一度、言います。海上です。気をつけて下さい。
戦闘はもちろん、判定は、普段より厳しく見られるものです。
洗脳を受けた一般兵といえど、彼らは毛利軍に所属する者達。
弱いわけでは有りませんが、洗脳が解けた後、記憶を持ち越した場合何が起こるかと言えば……という感じなので、殺害行脚はあまりオススメ致しません。豊臣秀吉との意思疎通は、わりと期待しないほうが良いです。タテガミはそれだけを言います。
必要とあれば断章は差し込まれますが、基本的には向かう猟兵次第。
差し込まれない事もありますので、よくご検討頂けますと、幸いです。
特殊ルールは下記の通りです。
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大帝剣『弥助アレキサンダー』および隠し将『豊臣秀吉』は、先制攻撃を行います。
これは、『猟兵が使うユーベルコードと同じ能力(POW・SPD・WIZ)のユーベルコード』による攻撃となります。
彼を攻撃する為には、この先制攻撃を『どうやって防いで、反撃に繋げるか』の作戦や行動が重要となります。
対抗策を用意せず、自分の攻撃だけを行おうとした場合は、先制攻撃で撃破され、敵にダメージを与える事はできないでしょう。
対抗策を用意した場合も、それが不十分であれば、苦戦や失敗となる危険性があるので注意してください。
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第1章 冒険
『毛利水軍を突破せよ』
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POW : 邪魔する船をひっくり返すなど、力任せに毛利水軍を突破します。
SPD : 毛利水軍の間隙を縫うように移動し、戦う事無く突破します。
WIZ : 毛利水軍の配置、天候、潮の流れ、指揮官の作戦などを読み取り、裏をかいて突破します。
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形代・九十九
抜けば魂散る氷の刃を発動。水軍の隙間を縫うように、海面を凍てつく太刀風で凍結させて作り上げた道の上を(【地形の利用】)、【残像】で幻惑しながら突き進む。身に纏う冷気によって、船団及び迎撃の勢いを削ぎ、或いは【属性攻撃】によって冷気を纏った愛用の妖刀での【武器受け】で払い除けながら、悠々と通り抜けていく。
これだけの船団を相手にすれば消耗するばかり。
だが、後方には強力な武将が控えている。……余力は割けんが、迂回する時間も惜しい。
ゆえに少々強引だが、おまえたちの相手をせずに正面から切り抜けることにしよう。……嘗ての関ケ原では島津家が似たようなことをしたそうだな。
せいぜい悪く思え。
アドリブ・連携歓迎
クリスティア・エルンスト
海上の戦い、船から落ちないように気をつけなくちゃ。
様々なことを考えなければいけないけれど、相手の船団の配置を確認して、疎になっている所を【見切り】ながら突破する方針で突き進むよ。
潮の流れについては、持ち前の【学習力】を生かして、事前に良く知る人から聞いておけたら素晴らしいかも。
近寄ってくる相手の船に対しては【氷華の庭園】を使用した牽制を仕掛けることで対応。出来る限り近寄れないように弾幕を張るイメージ。
極力戦闘は避ける方向で、消耗を避けられたら良いなぁ、なんて。
●Freeze way
見渡す限りに海はあり、数えるのも億劫なほどの船団が海上を埋めていた。
立ち塞がるという意味では上出来の光景。
口々に『逃がすな』、『敵だ』とわりと賊軍のような殺意ある声が上がる。
「海上の戦い、落ちないように気をつけなくちゃ」
あ、とクリスティア・エルンスト(舞い散る真白の(スノー・ドロップ)・f03593)は様々な事を考えながら、海上の船団の配置を確認するが、軍として、まとめ上げる者はどうやら居ない。指示をするでもなく、海上で陣形を取るでもなく。
猟兵の邪魔をする配置を各々が勝手に定めているようだ。
「あそこと、あそこ。疎かになってるみたいだね。やっぱりこういうのは戦果が大事なのかな」
ぶつかったりしないようにお互いが距離を取り合う一定の隙間。
一定の距離までくると船首が急に別の方向を向く事に気がついたクリスティア。
それを隣に居る猟兵に指差し示す。
「ふむ。……うむ」
形代・九十九(抜けば魂散る氷の刃・f18421)は船団を眺めて、隙間を確認し、頷く。洗脳されている情報の根幹は『猟兵は敵だ』という単純なものらしいが、正しく機能しているようだ。慣れた手捌きで緊急用の櫂を操り、船を進め、仲間内を避ける様は、よく訓練されたもの。
「心せよ
。…………おまえの血で、紅い蓮の花が咲く」
数秒後、数分後、過去か未来の時間をエネルギーとして凍結し、体に纏う冷気として扱う言葉。
――事はまぁ、避けれられればと。無理に触れてくれるなよ?
海を、波を知るもの達の間を見切り、海面に凍てつく剣戟を放つ。
凍てつく太刀の軌跡は風となり、凍結した冷気によって海をも凍らせる。
「おれは通るだけだ。それでも来るなら、狙うといい。本物のおれが、分かればな」
作り上げた氷の道を、駆ける足を動かす力に迷いはなく、冷気による残像を複数残し続け、九十九の姿が、徐々に増えゆく。
「上を歩くなら気をつける事だ、決して落ちないように。いつ崩れても責任は取れんから」
最後に駆けていく残像がクリスティアに言付けて、本体の後を追いかけていった。
「うん? 大丈夫だよ、多分。凍てつく冷気は私、馴染み深いもの」
九十九の作った冷気の道を、クリスティアも駆けていく。
「どれが本人かはわからないから、近場の子にさくさく知識を披露しちゃうよー」
事前に、海をよく知る近場の村人に訪ねて来たクリスティアは氷の道の上で、持ち前の学習力を生かして解説する。
関門海峡の潮の流れはよく変わる、というが、毛利水軍はそれをよく知っていると言う。構成されている水軍の半数以上が常に海賊衆。
つまり無差別に商船を襲う等、頻繁に海に出ることを生業としている者たちばかり。狙い定めた商船に素早く到達するための最適解を、第六感的な直感で見抜くのだ。だから、決して船首同士がぶつからず、船同士がぶつからない。
「成程。ではそれらを利用するのは容易だな」
弓を番えて、猟兵を狙う者があれば九十九はわざと船に乗り込んで、身に纏う冷気によって萎縮させる。ヒトがそんな冷気を放つだろうか? という疑問が生まれれば、戦う意欲はどこかへ消えるもの。
「そう! 私達は歪な氷の道を走り抜ければ、抜けられるってわけだね!」
右からも左からも弓を番える船が氷上の二人を狙っていた。
「現出するは、銀の花園。舞い散る水晶、咲き誇る六花。万象凍てつき、静謐に停まれ。魅入られし仇に安息を――氷華の庭園!」
武器の形状を溶かす言葉。水晶のような輝きは花弁となり、敵対者をそよぐ。
「さ、さみぃ! ?」
カラン、と番えた矢を取り落した様を見届けて、クリスティアは微笑む。
舞い踊る花びらを、道の外側で舞わせて氷の道は水晶で彩られる。
海上のフロストガーデンは、短期しか持たないのが難点か。
「極力戦闘は避ける方向でいいよね。消耗を避けられたら良いなぁ、なんて」
「同意だ。これだけの船団を相手にすれば消耗するばかり」
――だが、後方には強力な武将が控えている。
走る足は軽やかに道を造る。滑るように前へ前へと進んでいく。
たまに氷の道に気付かずぶつかった船が、次々と玉突き事故をおこしていたが、船体に穴が開く、ということはなさそうだ。
「……余力は割けんが、迂回する時間も惜しい。蛇行くらいなら、さほど変わらんだろう」
切り込んで蹴散らす事が本望ではない以上、と九十九は道を征く。
――……嘗ての関ケ原では島津家が似たようなことをしたそうだな。
「せいぜい悪く思え」
防衛を突破した弓を、物欲し竿で払い除けて進む。
凍れる海道と凍える冷気を纏う猟兵二人は、なるべく平和的に船団を抜けて。
――やや開けた場所を、見るのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。
まずは雑魚の相手ってかい。
正面からやりあうまでもねえ。
この水上バイクでとっとと突破してやるぜ。キーラ、後ろに乗れ。落ちんなよ。
サムライエンパイアの船なんかで追いつかれるとは思わねえが、なんかあって邪魔されると面倒だな。
キーラ!俺がギリギリ近づくから、お得意のぬいぐるみで敵さんの船を妨害してやれ!殺すなよ!
……なんかまた変なぬいぐるみのレパートリー増やしてやがんなこいつ。
初めて乗ったけどこの水上バイクってやつはなかなか良いですねえ。今度また仕事抜きで海行きます?
さっさとこの仕事終わらせたらな!
冬晴・キーラ
フィリップ(f05496)の野郎と参戦するぜー☆
狙いは首級! 雑魚は放置して戦線突破だー☆
バイク、あんまり飛ばすなよな★ 舌噛むから☆
進路を邪魔されないように最適な海上ルートを検索してフィリップにナビゲートするぜ☆
あのすげー、船がごっちゃごちゃしてるゾーンを抜ければ最短ルートだぞ、フィリップ☆
兵士ちゃん達は殺すの可哀想だから、邪魔な船は無力化に専念するぜ☆
すれ違いざまの船に【バトルキャラクター】で召喚したワカメさんぬいぐるみを帆とか櫂に絡めて移動困難にしちゃう☆
しっかし水上バイクもけっこーいいじゃん☆
戦争が終わったら、次は平和な海でバカンスだな☆
●Advancement Seaweed
ざざーんと若干落ち着いた水の音を耳にした猟兵たちが居た。
「うーん良い音。まずは雑魚の相手ってかい? 正面からやりあうまでもねえ」
体重をぐっ、とハンドルバー越しに押し込んで波に乗り軽く跳ねる水上バイク。
フィリップ・スカイ(キャプテンスカイ・f05496)は楽しげに笑っていた。
持ち込んだバイクの調子は良好。
「この水上バイクでとっとと突破してやるぜ、キーラ後ろに乗れ。落ちんなよ」
「おうおうおうフィリップ! 狙いは首級! 雑魚は放置して戦線突破だー☆」
海を割く程の劈く音は突如として、関門海峡の流れを砕き自由に驀進していた。
尚、この場合の劈く音、というのは、わー☆とかキャー☆というキーラの声なので注意して欲しい。
「バイク、あんまり飛ばすなよ★舌噛むから☆」
「はいはい。でも噛んでも噛まなくても大きな声だすでしょうよ」
「細けぇこたぁ気にするな☆進路は良好! つまり……」
キーラは進路を邪魔されないような海上ルートを、海上でおもむろにスマートフォンを取り出して検索し始める。すごい。酔わないのだろうか。
隙と見られたのか、遠方より弓が放たれるが、フィリップは軌道を感で避ける。
原理は少々異なるが、水上バイクも宇宙バイクも大差はない。
速度こそ無いが、ハンドルがある。似たようなものだろう。
「ピピッ★と、やって、カカッ☆として、こうだ!」
慣れた手付きで操作するかと思えば、まさかの声操作。
まるで魔術的な単語がポンポン飛び出す中で、はじき出される最適解。
「入れてて良かったサムライエンパイア完全網羅型ナビゲートアプリ☆……ってなわけで、前方のあのすげーとこ!」
ナビゲートというより、戦略パターンをはじき出すアプリであったが、それはこの際どちらでも良いだろう。すげーとこ、と指示してピンと来るのは相当の相棒でなければならないが、フィリップは成程、と納得顔になる。
「船のごっちゃちゃしてるゾーンを抜ければ最短ルートだぞ、フィリップ☆」
「サムライエンパイアの船なんかで追い抜かれるとは思わねぇが、なんかあって邪魔されると面倒だな」
速度という意味でも、サムライエンパイアの船は本気を出せばひとたまりもないだろう。だが、『ひとたまり』となって船団が今ココにあるのだから、懸念はもっともである。
「キーラ! 俺がギリギリ近づくからお得意のぬいぐるみで敵さんの船を妨害してやれ! 殺すなよ!」
「兵士ちゃん達は殺すの可哀想だからな、邪魔な船は無力化に専念するぜ☆」
ニヒヒ、とギザギザな歯をむき出しにキーラは笑う。
まるで夏のバカンス真っ最中という様相だが、大丈夫です。
ここは戦場です。間違っていません。
波の打ち上がりを利用し、跳ね上がり、船団の隙間を縫うように紛れ込むドライビングテクニックを発揮するフィリップ。
――すれ違いざまのタイミングは、ここだな☆
「さぁさぁ来い来い、キーラちゃんのワカメさんぬいぐるみーず★」
ポポポンと可愛い音を立てて召喚された戦闘用のキャラクターは穂に、櫂に絡みつくように深刻な移動妨害を開始した。風を救い取れなければ、緊急回避に櫂を動かせなければ、仲間同士の衝突は避けられない。
「な、なんだぁ! ?」
「しまった! 櫂がいうことを…………あぁあああああ! !」
可愛い顔してワカメさんたちはいい仕事をしてしまうんだ。どがっ、とぶつかる音が一気に多発すると道は勝手に拓けていく。
――……なんかまた変なぬいぐるみのレパートリー増やしてやがんなこいつ。
悲鳴の方向を気にしてちらりと盗み見ると、ワカメさんたちがうにょうにょと踊っていた。フィリップにとってはそれだけで十分、だった。
ぬいぐるみの群れの一段に時折海産物が混ざるだけだ、何もおかしいことはない。
「しっかし水上バイクもけっこーいいじゃん☆」
障害物レースのような走りを楽しむキーラはそう言い切った。
銛を投擲しようとした者を幾つかを合体させた強化版ワカメちゃんでぐいっと縛り上げて、素知らぬ顔。
「いやぁ、初めて乗ったけどこの水上バイクってやつはなかなか良いですねえ。今度また仕事抜きで海行きます?」
「戦争が終わったら、次は平和な海でバカンスだな☆」
同意が取れたところで、未だ終わらぬ夏模様を夢見る。
「さっさとこの仕事終わらせたらな!」
ザッパーン、といい波の音を聞きながら走り抜けていく猟兵たち。
水上バイクのカッコよさに、一部の毛利水軍が渡来兵器の導入を検討したとか。
――しないとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『隠し将『豊臣秀吉』』
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POW : 墨俣一夜城
自身の身長の2倍の【墨俣城型ロボ】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : 猿玉变化
自身の肉体を【バウンドモード】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ : グレイズビーム
【腹部のスペードマーク】から【漆黒の光線】を放ち、【麻痺】により対象の動きを一時的に封じる。
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蜘蛛の子を散らすように、毛利水軍は猟兵に近づく事をやめた。
『大帝の剣』による情報が更新されたのだ、曰く『猟兵を逃がすな』。
まるで土俵を真ん中に据えておくように、『関門海峡の大渦』は隠されていたようで、その上に、予知で聞き及んだ姿が見える。剣をその手に掴み、独鈷杵を握る者。
視認はしにくいが、首元に十字架が鈍く燦めく、『弥勒』。その人が。
「フェン………。フェンフェン。フェン!」
おぉ、と周囲の船団からざわめく声が上がった。
幾つかの船が、彼の足場になろとうと舵をきり、若干近場に集まってくる。
「フェン、フェンフェン! ……フェン」
カッ、と身軽に毛利水軍の船に飛び乗って、隠し将『豊臣秀吉』は宣言するのだ。
――覚悟を持って、護る。故に、壁となり、戦いに赴こう。
「――フェンフェン。フェフェフェン!」
――覚悟せよ。決して潰えぬ、忠誠心にかけて。
フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。
なんだよあの毛玉は。
海の生き物って感じはしねえが、どうも手強そうだ。
序盤はバイクで避けながら隙を伺うしかねえな。
つっても逃げるだけじゃジリ貧だ。
適当なところでキーラを降ろして作戦開始ってな。
キーラが敵を引きつけるのに成功したら、俺も腰を落ち着けて準備できるってもんだ。
ガジェットショータイムで水鉄砲だ。
いや、これだけのサイズなら水大砲ってところですかね。
とにかく水を溜めて圧力を強めるのに時間がかかるが、キーラがなんとかするでしょ。
十分に力が溜まったら、派手に一発かましてやるぜ!
冬晴・キーラ
フィリップ(f05496)の野郎と参戦するぜー☆
狙いは毛玉ちゃんだ☆
壁になる覚悟はリスペクトすっけどー、わりーが海の藻屑になってもらうかんな☆
今回はキーラちゃんが引きつけ役でー、攻撃パートはフィリップ担当な☆
《パフォーマンス》で秀吉の注意をひくべく、露骨に隙だらけな様子を見せるー。ぬいぐるみさんチームとお菓子食べたり、自撮りしたり☆
相手が猿玉变化で突っ込んできたら、合わせて【オペラツィオン・マカブル】だー☆
お菓子をたらふく食ったぬいぐるみさんチームの柔らかさで包み込んで弾力満タンの毛玉を跳ね返すぜ☆
後はあいつがなんとかするだろ。しろ★
●
黒い毛玉のような『豊臣秀吉』は毛利水軍の船の上でぴょこぴょこと跳ねる。
まるで、駆ける準備運動のような動作で、飛び移り、徐々におかしな速度で手を伸ばし、足を伸ばして、弾む。
「フェン。……フェフェン」
――こちらへ接近されるより疾く。……撹乱と防衛を一足に果たそう。
水に沈むより早く、足や体を海の上を滑らせて走る。加速した勢いのまま、猟兵の方へ突っ込んでいく。勇ましい姿。
彼には足場すら必要ない。ただ、敵がアレば、そのようなことだってやってみせるのが、豊臣秀吉なのである。
「おいおいなんだよあの毛玉は」
フィリップ・スカイは思わず、目を疑う。見るからにふかふかそうな体毛のある者が、時折にょーんと体を伸ばしながら、撹乱行動のように、左右に弾んでこちらを目指しているのだから。
恐ろしい速度で接近する豊臣秀吉に人らしい片鱗はどこにもなく、耳に届く声は音のように言語として届かない。
……なんとなく、そうかも知れないと、直感では思うが、本当にそう言ってるかは定かではないのだが。
「海の生き物って感じはしねえが、どうも手強そうだ。海の上走ってんぞあれ」
「その勢いやよーっし☆壁になる覚悟はリスペクトすっけどー、わりーが海の藻屑になってもらうかんな☆」
二人乗りする水上バイクの上で指差すように冬晴・キーラが言い放つと、目移りすること無く豊臣秀吉は狙い定めで駆け寄ってくる。
ドドドドド、と撹乱する走りで、水上バイクの傍をダダダ、と高速が走ると海が波が、狂い出す。
「くっ……!」
ひっくり返らないようにフィリップはハンドルバーを抑えるが、速さが起こす風が次の方向を狂わせる。本体が来る方向と、波が動く方向が別になり、その場に留まる事しか出来なくなるのだ。
――完全に、遊ばれてんじゃねえか。チッ……。
フィリップは陽動を続ける豊臣秀吉が防衛に徹し、決して攻撃してこないさまを予見した。それを証拠に、ここまで何度もすれすれを弾んで居るのに一度たりとも水上バイクや二人に当たっていない。
「キーラ、あの船だ。丁度いいから、あの船にお邪魔させて貰って作戦開始ってな!」
「合点承知の助、キーラちゃんが無賃乗車失礼しますよーっとぉ☆」
ぴょーんと小柄な体格のキーラが毛利水軍の船に飛び乗るが、乗組員は誰ひとりとして刀や弓を向けたりしなかった。
『逃がすな』という洗脳の中に、『敵対しろ』、という暗示がないからだ。
猟兵が来たぞ、小さい子だな、みたいな顔はしている。
「さぁさぁこっちだ、秀吉ちゃん? キーラちゃんは、船酔いだ☆」
乗り続けていた水上バイクに酔った、と主張し、わざとらしくへたり込むキーラ。
「……フェ?」
――……戦意喪失?
おかしな光景を見ている、と豊臣秀吉以外も思っただろう。
しかし、これを好機と動く男がいる。フィリップだ。
後ろの危険も、周囲の危険もない。つまり、準備に時間を裂けるのだ。
「こういう時は、濡れない毛並みをずぶ濡れコースですかね」
キーラを乗せていた所に魔導蒸気機械を駆使した変な形の、大きめなガジェットを召喚する。
「ガジェットショータイムで水鉄砲勝負だ」
――いや、これだけのサイズなら水大砲ってところですかね。
ぷしゅーっと煙が上がらんばかりの駆動音が高まる。
原理は理解出来ないが、ゼンマイが蒸気が吹き上がるタイミング、巻き上げる海水を濾過し、錆びない水分への変換はやや時間がかかる。
水圧の圧縮には、魔法と蒸気と機械でも即座にとはいかない。
――でもまぁ、この辺はキーラがなんとかするでしょ。
そんなフィリップの攻撃準備を誤魔化すように、のらりくらりとパフォーマンスするキーラ。
「でもでもでも、船酔いでもキーラちゃんはぬいぐるみさんチームとお菓子食べたりはしちゃうー★」
キーラ自慢の鳥や蛇、その他たくさんのぬいぐるみがポポンと船の上に、お菓子を沢山持ち寄ってプチパーティが開始される。
もぐもぐもぐもぐ、と無造作にお菓子を頬張るキーラを、ぬいぐるみ達がむぎゅっと囲んでハイポーズ。
「いえーい、自撮りの写りも絶好調ー☆」
「フェフェン!」
覚悟と信念を持ち、身を賭す毛玉……豊臣秀吉はひたすらに、許しがたかった。
主張のぶつかりが起こる場所は、戦場。戦場で、一人女子会を開く小さな子が。
遠足気分をだしている、等とは誰が予想しただろう。
「……フェフェーン!」
向きを変え、体当たりよりも突進の勢いで、キーラへ明確な敵意を持って、豊臣秀吉はキーラ目掛けて突っ込む。
キーラはどふっ、と体当たりを避けずに当たるが、その顔はどうも安らかだ。
「もふっ、と利いたー★」
ぴこっ、と頭上にHPバーが浮かび上がり、少し何かが減退してすぐ消える。
「……ほらほら、これを見な。お菓子をたらふく食ったぬいぐるみさんチームは無敵なんだぜ☆」
多少威力を殺し損ねたが、キーラとパーティしていたぬいぐるみさんたちの柔らかさで速度を和らげて、ついでに跳ね返す。
後ろに仰け反らせるように、呼吸を合わせてどーん、と。
――後はアイツがなんとかするだろ。
「むしろ、しろ★」
「しろ、と言われたらそりゃあね。派手に一発かましてやるぜ!」
ぽちっ、と謎のスイッチを押せば水大砲は、見た目よりもかなり水圧の強度が高められた水を吹き出した。
「フェブォ
!?!?」
まるでひっくり返るタイミング、その最高のタイミングで水撃を顔面に受けて、どぼん、と豊臣秀吉は――海に沈んだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クリスティア・エルンスト
相手は高速移動しながら、ビームを打ったり巨大ロボで攻撃してくるみたい。
であれば私は、相手の移動とビームの2つに絞って、対策してみようと思う。
相手の高速移動を【見切り】ながら、移動経路を巻き込むように【氷華の庭園】を展開するよ。
早くて攻撃を当てにくいなら、面攻撃で当たりに来てもらう算段。設置型の罠のイメージ。
相手のビームについては、【氷華の庭園】で撒き散らした水晶の花で散らせないか試してみるね。
上手くいけば攻防一体の手になるし、上手くいかないならビームは要注意、って感じで。
連携とかは歓迎なので、頑張っていくよー!
形代・九十九
アドリブ・連携歓迎です。
ビームは【属性攻撃】で作った氷の【盾受け】と冷気を纏った刀での【武器受け】で凌ぎ、凍りつかせた海面からワイヤーを仕込んだ左腕を船に飛ばし、そのまま船へと乗り上がる。(ロープワーク、地形の利用)ユーベルコード絡繰大道芸を使用し、秀吉の全身の関節を破壊する事で身動きを封じ、他猟兵たちの攻撃を支援する。
おまえもまた、自分の信じるものの為に戦うのだな。……その在り様は尊いと思う。だがしかし、それを斬って散らすのが、おれ達のやらねばならぬ事。このサムライエンパイアを平穏から遠ざける者……それを看過はしてやれぬ。さあ、いざ尋常に。……せいぜい悪く思え。
●Loyalty broken
海から勢いよく飛び出して、豊臣秀吉は毛並みの水滴を振い落そうとするが、全身が吸いに吸った海水は移動速度を異様なほどに減退させた。
「フェフェフェフェーン!」
反応速度には不備はなく、戦意を失ったわけでもない。それを見せつけるように、威嚇射撃に興じ、腹部のスペードマークが怪しく存在を主張させて……光らせる。
黒く、鈍い光の筋を無造作に放って、激しく海の水面を割り裂いた。
「相手は高速移動しながら、ビームを打ってくるみたいだし……」
ビームの風圧でザッパァ! と巻き上げられた波を頭から被る、クリスティア・エルンストは冷静を装って誤魔化す。
「でも、移動の方は……うん、あれは多くを心配しなくても、良さそうかな?」
――でも油断は出来ないから、移動するなら移動経路は断たないと。
カツリ、を靴音を鳴らして武器形状を無数の水晶へと変えて、警戒に務める。
水晶の花びらを体の周りに舞わせて、考え続けるクリスティア。船から船へ飛び移りながら、身を振って水滴を落とす豊臣秀吉だがなかなか上手くは進まない。
「射程に入ればそうも言ってはいられぬだろう」
凍りついた道を来た形代・九十九は狙い付けられた時を思い、相手の先制に備え構える。その瞬間、黒いビームが猟兵二人を狙って――放たれる!
「びーむに真っ向勝負を挑まれる日が来ようとは!」
氷の属性を防衛に集めに集め、形成した盾はビーム着弾に間に合った……が、足場の氷道後方に、ずりずりと威力で押される重み。
「盾がダメなら、武器でも受けよう」
冷気を纏った物干し竿も添えてなんとか凌ぎきると、その手はパチパチと電気を帯びて動かしづらい。気の所為では、ないようであった。
――麻痺か? いや、痺れを齎されたところで、おれは何も変わらない。
「どうせこちらに走り来るのだ、あちらに足場を据えた方が良い」
凍りつかせた海面からいつの間にか逃していた左腕を繰り、巻取り式のワイヤーを伝って近場の船に乗り上がる。勿論、もともと乗っていた毛利水軍は驚き顔をしたが、気にすることでもない、とすぐさま背を向ける。
「じゃあ私もそっちに、っとー!」
水晶を足元に集めて、とん、とん、と身軽に移動するクリスティアを、毛利水軍たちは魑魅魍魎の類と幻視した。雪の時期に現れる、そんな幻想的な存在に。
「フェンフェン、フェンフェーン!」
――どうせなら、その場から動けないままに終わればいい。黒き終焉を、齎そう!
決死の覚悟を持ったのか、その体躯が誇る最高スピードで船から船へ飛び移りながら猟兵へ迫る。
胸部に黒い光を集めて、最大威力の光撃が必ず齎されるその場所まで。
「あ。そこね、うん。その辺。その辺は」
――設置した罠が、あったような気がするんだよねー。
クリスティナはエネルギーを溜めながら迫りくる豊臣秀吉が一定のポイントに突っ込むのを感じた。花びらとして漂わせていた水晶がぱらぱらと、その辺りで風に舞う木の葉のように、漂っている。
「……フェ!?」
突如、顔面に水晶の花が咲いた。氷華の庭園に触れ、エネルギーが顔を覆ったのだ。海水に塗れた毛並みに沿うようにパキパキと凍りついて行く。
近場の船の上に、顔面から突っ込むように豊臣秀吉が被弾する。
「人形が、人形繰りの真似事など烏滸がましいとは思うのだが……ちゃんす、と見た」
場所を確かめ、船の上を見様見真似で飛び跳ね、落ちた標的のもとへ急ぎながら、両方の掌から、無数の操り糸を出現させる九十九。
ふわ、と糸を絡め全身の関節を締め上げる。
九十九からすれば、不思議な生き物体でも、走る時に活用される関節の場所は一切変わらないと読んだ。
手を握り込むように繰り糸を一度交差させると。
――ばきりぼきりと、次々に折れ壊れる音が、聞こえる。
「フェン
……!?」
「ひとおもい、だ。痛みはあるだろうが」
九十九の顔は通常通りに仏頂面であったが、走る為の手足を破壊した事は思うところがあった。
「おまえもまた、自分の信じるものの為に戦うのだな。……その在り様は尊いと思う」
煌々と胸に輝く光は、まだ消えていない。
走る足を喪っても、盾となろうとするようだ。
「だがしかし、それを斬って散らすが、おれ達のやらねばならぬ事…………っ」
最後に放つ最大のエネルギーの充填が終わったようで、それは一気に放たれる。
「やっと追いついたね。撒き散らした水晶の花なら……まだ間に合うと思うんだ!」
やや遅れて同じ船にたどり着いたクリスティアが九十九と豊臣秀吉の間に咲かせる花。それは質量全てを持って一輪の花として、間近のビームを受ける。
ビームの光撃を散らせることは出来ないものの、容易く壊れもしない水晶は美しく輝いていた。未だ濡れる毛並みに冷気を移し、徐々に全身を凍らせていく。
ビームを受けているので、ゆっくりだが確実に。
「そのままだと全身氷漬けになっちゃよー?」
花びらでビームを少しずつ拡散させて、集中するビームの出力を徐々にだが減らす。その事に……豊臣秀吉は気がついていない。
「フェフェフェフェフェン!」
――負けられぬ戦いがある! 例え手足が砕け散っても、光撃は可能だ。意識がある限り!
「このサムライエンパイアを平穏から遠ざける者……それを看過はしてやれぬ」
砕いた関節を無視し、糸を繰る。動けぬ体はビームを放つその一点に集中していた。体を、信念を砕き斬るには、こうするほか無いと九十九は思う。
「さあ、いざ尋常に。……せいぜい悪く思え」
這わせた糸は、既に体を巻き抱える程。それを一気に絞る。
「ほら、これで……ビーム破れたり! なんてね」
ぱぁん、と音がある。溜め込んだエネルギー尽きたのだ。
クリスティアの水晶はビームを防ぎきり、豊臣秀吉の体に一気に張り付かせ、花は咲き誇らせる。一気に凍りつく速度が加速し、完全に凍りついた毛並みは、九十九の手の動きで、ガラス細工のように砕け……上と、下とで胴が生き別れとなった。
「フェフェ……フェン
…………」
停止する思考。しかし、彼は時間を文字通り身を挺した。
「これぞ、……絡繰大道芸。これにて閉幕とする」
――全ては、………の為に
…………。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第3章 ボス戦
『大帝剣『弥助アレキサンダー』』
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POW : 大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : 逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ : 闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
👑5
🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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●Reverse I inhale.
「秀吉殿……」
独鈷杵を握り込む手に、力が篭もる。
渡来人の至宝は、どんな力でも容易く壊れるものではない。
ひび割れることも、軋むことも。――相当なことがなければ。
『関門海峡の大渦』の上、『弥助』は先を行く男が破れた事を確信した。
――奴らが来る。正念場、いや、この場の真打ちにして殿。
「……しっかり務めないと、だな」
『弥助』の足元の荒ぶる大渦は、巡る渦におかしな磁場を発生させている。『闘神の独鈷杵』によって発生したものなので、何らかの影響が生まれているのだろう。
……それは弥助の浮遊し、君臨する渦に関してだけだ。
他の場所に点在していた野生の渦は、徐々に存在を緩めて消えていっている。
丁度猟兵が挑みかかる頃、それらは全て、逆巻いて発生し直すのかも知れない。そうなった時、『闘神の独鈷杵』によって発生した大渦は、どうなるのだろうか。
『全ては信長様の為に』と忠誠心を顕にする弥助は細かいことまで気を払わない。――ただ、此処までに至った猟兵に闘志を燃やすのだ。
クリスティア・エルンスト
最後の最後は、真正面から全力勝負。
下手な小細工をするくらいなら、ノーガードの殴り合いってことで。
【高速詠唱】で素早く氷の足場を作りつつ、【全力魔法】【属性攻撃】で氷の魔力をぶつけるよ。
相手の攻撃は極力【見切り】で回避したり、ダメージの少ない受け方をして、諦めない姿勢でがんばるよ。
大技を叩き込める隙があるなら、【エレメンタル・ファンタジア】で氷の津波を叩き込む感じ。
勝てるかどうかは未知数だけど、全力を尽くして頑張るよ。
●Freeze!
「水を繰る操舵の人員は俺のもとへ集い続けた! ……誇れ、その勇姿を!」
「最後の最後は、真正面から全力勝負」
クリスティナ・エルンストは大渦の中心に浮遊する弥助が、集った強者への感謝を述べているうちに詠唱する。
――下手な小細工をするくらいなら、ノーガードの殴り合いってことで。
「来るか? いや、その考えは……おそらく、半歩以上も、遅い!」
闘神の独鈷杵(スカンダのどっこしょ)を強く握り、勝負を仕掛けようとするクリスティナの居る船、その周囲の海水を雷槌を放ち続ける『闘神の渦潮』へと変換していく。雷に船は穿たれ、どんどん水没し、同じく乗船していた毛利水軍の者達も、雷轟く渦潮への落下を余儀なくされた。
「お前たちの勇姿は、俺がしかと見届けた! ……強力に、感謝する」
弥助は、見た目の強面さとは真逆に、軽く目を伏せて黙祷。
武を誉れとする者として、感謝の意を込めて。無尽蔵のエネルギーの坩堝に落ちた普通の人間が、はたして生き残るか、という点が彼にそうさせる。
「あわわ……足場を全て消し飛ばされちゃ大変だよ。でも、これで完成ー!」
足場に氷の足場を作成し、その上に降り立ち、渦への落下を防ぐクリスティナ。
やや心もとない氷を、海の上に浮かべてそれを耐えたのだ。
渦の渦中より逃げられては、いない。渦の流れに乗るように、引き寄せれるように渦に巻き込まれている。一歩でも動けば、破壊の雷槌がクリスティナを貫く。そんな安心には早い小さな希望のような足場だ。
「足場が出来ればこっちのものだよ!」
青氷銀の細剣に余剰詠唱として漂わせていた冷気を集め、やや遠い距離からではあるが、細剣を振るうと同時に、氷の魔力をぶつけんと飛ばす。細剣の振り抜きと共に射出された全力の魔法は、魔法の矢のように狙い定めて飛んでいく。
「いうならば氷の矢、といったところ……しかし、それだけだ」
遠方より飛来した魔術は両手剣のメガリス『大帝の剣』を軽く振るい、弾き……打ち消される。
「そこから落ちればそれだけであんたの負け。分かってやったんだよな?」
『関門海峡の大渦』の中心から、滑るように弥助が動く。やや浮遊しているものの、その移動姿は走るよりも、磁石に反発して動くような機敏さ。
「俺はここから動けないと、誰が決めた? ……動けないなら、その渦ごとこちらの『大渦』に巻き込んでしまえば逃げ道はないぞ」
じりじり、とクリスティナを捕らえた『闘神の渦潮』は大渦に引きずられ飲み込まれて合体していく。より強大な渦に『闘神の渦潮』は逆らわずに溶け込んでいくようで、力の分散は起こらない。むしろ、大渦へとジリジリと引き寄せられたことで、もうすぐ大帝の剣の圏内へと、捕捉されてしまう。
考える時間は、……もう、そう多くない。
渦の流れに乗り、剣の起動を回避するにも足場が心許なすぎてそれは不可能だ。
「どうした? それで終わりか?」
「諦めない、……私、がんばるよ」
両手に氷の属性を、乱れ荒ぶる足元の渦潮に働きかけ、かけ合わせ合成し……持ち上げる。
――重い! そして、……痛い、でも、全力を尽くすんだから。
海水とは思えぬ重さ、利用して気がついた、渦に発生していた謎の磁場。
それらを強引に持ち上げて唇をやや噛む。
集中を切らさずに、なるべく空へ持ち上げて、一気に凍らせ降らせる。
自然現象たる渦巻く物を、持ち上げたそれは回転する力を殺しきれずに高所から雪崩れるように降り注くのだ。
「ほおう、氷の……津波、か」
観心の様相を見せた弥助。
「しかし、それは俺が作り出したものを利用したな? であれば……」
独鈷杵を持つ手を掲げ集中する。
――命じるものは一つ。『変換した無機物の解除』。
大量の氷が雹となって降り注ぎ、無機物の海はただの津波となって弥助を襲った。
「あ、あ……!」
目前に迫った大帝の剣。
構える男の目に迷いはなく。クリスティナは呆然と成り行きを見届ける事しか出来なかった。
「これで切り札も終わりとみた。此処までご苦労さん、だ」
大きく薙ぐように、一閃。それは、腹部を捕らえており……勢いよく吹き出す鮮血と共に、クリスティナは海へと叩き落された。
苦戦
🔵🔴🔴
形代・九十九
船やその残骸、自身のUCによって凍りついた海面を足場に。
視肉による攻撃を、氷【属性攻撃】で形成した【盾】と妖刀での【武器受け】で凌ぎ、わざと自分を傷つけて痛みで戦意を奮い立たせる。(激痛耐性)
UC【抜けば魂散る氷の刃】を発動、敵の動きを【学習力】で分析し、視肉ごと弥助を凍りつかせて叩き斬る。
視肉……太歳とやらを目の当たりにするのは初めてだ。
しかし、そのような物を見たとて、おれが歩みを止める理由にはならん。
弥助・アレキサンダーよ。その忠勇、敬意を抱こう。
だが――……それも此処で終わりだ。民草の平穏を乱すものは、斬って散らすが我が士道。
その物騒な剣ごと、骸の海へと還ってもらおう。せいぜい悪く思え。
●Fall down!
「まだ居るだろう? 俺は此処だぞ、仕掛けてこい」
相手をしてやる、と誠意を見せる弥助は武将を名乗る貫禄を見せつける。
渦に破壊された船やその残骸に、形代・九十九は凍結を齎し、凍りついた海面を足場に無言で見つめ返した。
「無論。しかし、おれは出方を伺っていただけだが」
さらっと九十九が言い返すと、弥助はただ、笑った。
「そりゃあ傑作だな、倒しに来たハズのお前は俺の出方をみるという! くく…………ククっ、笑えていけねぇ!」
弥助は思わず笑いを引きずりながら、意識を戦闘へ向けていく。
バカ正直な剣士に、こんな場所で逢うとは。海の上、非常識の上で、逢うとは。
「伺う必要なんてあるか、今行くぞさぁいくぞ、覚悟しろ!」
鈍く光るメガリス、『逆賊の十字架』をその手に握りしめた途端、握りしめた腕は異形へと変質していく。人のもとのは思えない、元の腕の存在を忘却させる程の身の丈二倍以上はありそうな、超巨大な肉塊。
「これは『視肉』という! 決して酔狂な見た目だけが目的じゃあないぞ」
大渦の上、弾かれたように弥助は滑るように飛ぶ。所々に表現し難い物が脈動し、真実、目と呼ぶべき物がわらわらと瞳を開ける。それを、腕として変質させた弥助はそれを、正しく何に使うかを認識しているのだろう。
「そら、どうする!」
牙を向く蛇のように肉塊は九十九を取り込まんと大きく、伸ばされる。
「知れたこと。こうするまで」
足元に作り出した氷の道と同様に、氷で盾を形成する……なるべく造形には拘らない、ただ分厚い物を。そして、妖刀「物欲し竿」で護りを固め、耐える意志を瞳に移し、弥助を見返した。
「本当にそれでいいんだな?」
弥助と九十九は至近距離に切迫し、九十九は武器で『視肉』を利用したベアナックルを受ける。何度も、何度も。
『視肉』はどうも、生暖かく、不気味なものだった。生々しくそれは生きる肉であると、存在を主張する。殴った部位も、それ以外の部位もぎょろりと目を向けて九十九を見つめてくるのだ。
――っ、痛みとすればこの程度。であれば、希望は……!?
九十九は受けた『視肉』の拳の分だけ、闘志を削り奪われていっていた。
何故戦うのか、何故戦っているのか。攻撃の意志を何故持つのか。
何故、何故。何故。浮かぶのは疑問。ここに刀を切り結ぶ理由。ここにある理由。
傷つける為の連続打撃ではなく、戦意を削ぐ攻撃であるという認識が足りなかったようである。
妖刀を徐々に降ろし、氷の盾は闘志に反映されて砕けて消えた。
連続で殴っていた腕を止め、弥助は静かに言い放つ。
「痛いか? わざと傷つけられただろう。それで俺の戦意の破片でもわかったか?」
「視肉……太歳とやらを目の当たりにするのは初めてだ」
弥助の問に応えるでもなく、九十九は返答する。
「厳密には恐らく違うが、それで?」
「しかし、そのような物を見たとて、おれが歩みを止める理由にはならん。弥助・アレキサンダーよ。その忠勇、敬意を抱こう」
闘志を削がれたところで、想ったことまで削がれたわけではない。
それらを九十九は口にする。
「だが――……それも此処で終わりだ。民草の平穏を乱すものは、斬って散らすが我が士道」
敵対の意味を持つ妖刀を九十九は自分に向けて持ち直す。見た目が悪いからと、念動力で浮遊させた左の腕がそれを持ち、九十九自身を狙っていた。
「自身の刃で自身が散るなど、笑い草だ」
自身の体を思い切り、躊躇うこと無く妖刀で切り裂き、喪った分の闘志を無理やりに引き戻す。激痛耐性を信じ行ったことだが、思いの外、痛みが強かった。
流石、妖刀の、切れ味か。
「奪われた分の、闘志ごと。凍死を彩る太刀風にて両断する……いや、させてもらおうか」
自信の時間を凍らせた冷気は、体の周囲を凍らせつつ漂う。
ほぼ生身とも言える『視肉』はそれを敏感に察知し、弥助は顔を険しくする。
「両断? ほう。そうかそうかやってみろ」
戦いを面白がるように、待ち受けるものを試すように、『視肉』化した腕で次の攻撃を待つ。
「それは触れた者の熱を略奪し、凍結させる……似たような物と、侮るなかられ」
妖刀を振り飛ばす凍結された剣風の一閃は視肉をガリガリと遠距離から血塗れに染め上げた。
「略奪ねぇ……俺は正々堂々、奪っただけ。略奪のほうがより一層、言葉の意味は悪い」
血塗れの腕で、九十九の頭をガッ、と掴む。痛みなど、関心無いと言わんばかりに堂々と。赤い蓮の花が、咲き誇るばかりの腕で。
「この腕がそれだけしか起こさない物と読んでいるなら、――甘いぞ、激甘だ」
大帝の剣を握り、抵抗を極力抑え込んだ九十九を横薙ぎに叩き斬る。
「『繋ぐ』基盤となり得るもの。つまり、これは今――『繋がってる』のさ」
――何に?と問いかける意識は九十九に残されておらず。
九十九の体は無造作に海へ放られた。
成功
🔵🔵🔴
冬晴・キーラ
フィリップ(f05496)の野郎と参戦するぜー☆
【グッドナイス・ブレイヴァー】で戦闘の様子を配信すんぜー☆
これまでの戦いと自撮り配信の間に渦潮の流れも集めといたんよ☆
渦潮地帯の流れを利用して敵の攻撃をかわすルートをフィリップにナビゲートする☆
敵さんが『闘神の渦潮』で特大のでっけー渦潮を使うタイミングを見計らって、あえて渦に突っ込ませるー☆ おらーいけー★
渦潮がぐるぐる回転してるってことは、中央に弥勒がいるってことだからー、流れに乗れば相手に近づけるぜー☆ 飲み込まれなければなー☆
衝突ギリギリまで接近したらマジカルメガホンで☆を至近距離からぶっ放してやんぜ☆
うずしおぐるぐる大作戦・滅だ☆
フィリップ・スカイ
キーラ(f05497)と参戦だ。
わお、でけえなオイ。
こりゃあ、距離取らねえとだ。
もっかいキーラを拾ってからな。
周りを走りながらブラスター撃ってみるか。
的がでかいから当てんのは難しくねえが、あんまり効いてる気はしねえな。
おい、キーラ、なんか作戦あるか?
お、あるならいっちょやってみるか!
この荒波を走るとなると、俺も気合い入れて操縦しねえとな。この水上バイクちゃんの力を見せてやるよ。
ナビはしっかり頼んだぜ。
おいおい、渦潮の流れを掴んで逆に加速しろってか。おもしれえ、やってやるよ!
キーラの攻撃にバイクのスピードを乗せて思いっきりかましてやれ!
●Mineral Mail storm.
「わお、渦もだが色々でけえな。オイ」
フィリップ・スカイは水上バイクの上で、圧倒的な敵意を感じた。
――こりゃあ、距離取らねえとだ。
「もっかいキーラを拾ってから、だな」
ハンドルバーを操作し、冬晴・キーラの回収しに急ぐ。
キーラの居た毛利水軍の船は、損壊なども無く、まだまだ無事の水域にあった。
「お迎えご苦労ー☆よし行くぞさぁ行くぞそれいけフィリップ☆」
走り出した水上バイクは、潮の流れに圧されるように若干、真っ直ぐの走行を妨害されていた。それに、ところどころに自然の渦潮も発生している始末。
傍を通り過ぎると渦の巻く力で海流が乱れ、安定しない。
「走る小型船か? それで来るなら俺はこうする……」
目を閉じ、祈るようにメガリス『闘神の独鈷杵』(スカンダのどっこしょ)に力を溜め込む。両手剣型メガリス『大帝の剣』は既に力の溜めが終わっているのか、刀身自体も若干光を放ち、生きるエネルギーに満ちあふれていた。
『逆賊の十字架』にも必要なエネルギーが集まりきったのか、十字架に触れるだけで弥助の片腕は、超巨大肉塊『視肉』へと変異する。
メガリスは惜しみなくその力を、弥助アレキサンダーへと貸し与えているのだ。
溜め込んだ力を解き放ち、雷槌を放つ『闘神の渦潮』を、点々と点在発生させる。
一つ一つの規模はやや小さく、ばちりばちりと音を立てており、触れることも入ることもお勧めされないだろう。
「お? タイミングはここか? それいけキーラちゃんのグッドナイス・ブレイヴァー☆」
動画撮影ドローンは高く、高く飛んでいく。なるべく被弾しない高さに。
なるべく、多くの情報を流せるように。
そしてキーラの手を離れた時点で、ドローンは放送中になっている。
「解説しよう☆現在放送中なのはこれまでの戦いと、自撮り配信だ決してリアルタイムじゃあない☆」
集計や応援自体はリアルタイムだけどな、とキーラは言うが見ている試聴者からのコメントは続々届いている。
『海すげー!』『渦潮すげー!』
『俺も渦潮の中心になりてぇw』『台風の目的な? w中心は無だぞww』など、山の民からのコメントばかりだが。
……ぎぎぎ。
木造の船が軋む音ではなく、猟兵二人が発する音でもない。
弥助の腕がわざめいて奇声をあげたわけでもない。おかしな音が、フィリップの耳に届いた。
「……何の音だ?」
「さぁ? 渦潮地帯と言えるこの流れ、最大に利用するなら今しかねーぜ☆集めた情報をもとに、はじき出した勝利へのルートは、まずは右左左左左右右下右下だ☆」
「それ本当に航路の話なんですよね?」
ぐい、とハンドルバーを切ると先程まで不安定だった水上バイクの動きが一段と良くなる。説明の仕方はともかくも、内容までは調査を最大限に活かしており、最適解なのかも知れない。
右へ左へ、時々下へとおかしなハンドルさばきをこなしながら、弥助の居る大渦を目指す二人。周りを走り抜けながら、ワイルドファルコン-RAYを構えて片手運転でもなんとかなりそうな場所で、放つフィリップ。
ブラスターの射撃は的たる弥助まで確かに飛翔したが、当たるまでに速度が殺され、大帝の剣で弾くこともせず、『視肉』の手で掴み取る。
「的がでかいから当てんのは難しくねえが、あんまり効いてる気はしねえな」
『視肉』に目立つ傷は他の猟兵が付けた大量の切り傷と凍傷の跡……どれも痛そうに視えるが、肉が脈動し、真剣に眺める気持ちを圧倒的に削いだ。
「おい、キーラ、なんか作戦あるか?」
「ここまでの経験を生かした最高でスペッシャルな奴があったりしちゃうー★」
「お、あるならいっちょやってみるか!」
「敵さんが『闘神の渦潮』で特大のでっけー渦潮を使うタイミングを見計らって、あえて渦に突っ込ませるー☆」
轟々と渦巻く渦潮を抜けると、弥勒が浮いている『関門海峡の大渦』がある。
一番大きいのはそれであり、特大サイズだ。背中を叩いて、キーラはフィリップの運転を後押しする。
弥助は猟兵の進行を眺めており、何も言わない。ただ、見据える。
…………ぎぎ、ぎぎぎ。
敵が何も言わない事も、おかしな音も気になるフィリップではあったが。
「この荒波を走るとなると、俺も気合い入れて操縦しねえとな。この水上バイクちゃんの力を見せてやるよ」
ハンドルをひとつ撫でて。作戦に乗った。
「ナビはしっかり頼んだぜ? 操縦は、しっかり任されたからな!」
「オッケー☆最速のルートは右右左左右左右右だ☆」
弥助の浮遊する大渦の上でも、ルート検索を欠かさないキーラ。
「渦潮がぐるぐる回転してるってことは、中央に弥勒がいるってことだからー、流れに乗れば相手に近づけるぜー☆」
「おいおい、渦潮の流れを掴んで逆に加速しろってか。おもしれえ、やってやるよ!」
徐々に盛り上がる二人は気が付かない。
……ぎぎ…………ぎりぎりぎりぎりィ。
音が、『関門海峡の大渦』に接近するにつれて、余計に怪奇音を発している事に。
「作戦名はその名も! うずしおぐるぐる大作戦・滅だ☆ おらーいけー★」
おかしな事は、後で調査すればいい。
加速した速さも追加した攻撃で、打ち勝てればそれでいいはずだ。
そうして、猟兵二人は『関門海峡の大渦』へと水上バイク単体で出せる最高スピードで突っ込むのだった。
バキン! バチ、バチチチチチチチチ!
…………が、渦潮の流れを掴むより疾く、水上バイクは闘神の独鈷杵の力を受けて、雷を放ちながら姿を変形させていく。
無機物である水上バイクは、なるべく形状をそのままに雷を纏う渦潮のエネルギーへと。初撃の時点で、それは弥助仕組まれていた。怪奇な音は徐々にさせられていった音だ。渦潮の上で泳ぐそれは、さながら雷を纏う渦の竜。それに意志は付属せず、操る弥助の操作に従った。
猟兵が齎したスピードを利用して、渦の体をくねらせてフィリップとキーラを大渦に突き落とす。
「わぷっ☆」
「……チッ!」
無尽蔵に破壊の雷槌を大渦に向けて放ち続ける水上バイク・メイルストローム。
海水に浸かった事により、体が痺れ、思考が霞む。先に海へ投げ込まれた猟兵たちもまた、自由を奪われそれを見ていることしかできなかった。
●Exit
「勢いだけでは大渦は越えられない。そして――俺は『信長様の為に、確かに、成し遂げた』」
弥助は集め続けた力を最大限に開放し、『視肉』の手で大渦のど真ん中に手を突っ込む。『視肉』は何かを掴んでいた。物ではない。
それは――全てを飲み込む大嵐。
その腕は、『視肉』が持つ特性を活かし、どこか、別の場所とこの場を繋いだようだ。大渦の中心は『入り口』となり、それらは排出されるだけ。
「メガリスの力は十分に溜めた。それの片鱗を、見せてやろう――じゃあな、お前ら」
闘神の独鈷杵を握り、『関門海峡の大渦』自体を『闘神の渦潮』へと姿を変えて、雷が迸る。嵐が天変地異を助長し、目も開けていられない程の突風が吹いた。
雲は真っ黒になり、大雨が注ぐ。本物の雷が、大渦に呼び寄せられて奔る。
こうして、徐々に高まる波に飲み込まれ、猟兵達はひとり、ひとりと波の間に揉まれるように消えていく。
弥助本人は、渦の中央に『視肉』の手を突き出し、――消え去った。
追えるものは、もう居ない。弥助はどこへ、消えたのか――。
それを知るすべは、猟兵側には存在しなかった。
失敗
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