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エンピイアウォー㉓~屍耀、なおも

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー


●屍耀、なおも
 水晶の輝きが、奥羽の平原を埋め尽くしていた。
 奥羽に生きる武士達が弓をつがえ、輝きに向けて矢を放つ。しかし次々と矢を射たとて、押し寄せるひかりに終わりはない。
 歴戦の兵達ならば、斬りかかることで屍を散らす方が効果的だっただろう。それをしない理由は、屍達の特質にあった。

 ――噛まれれば、あれらと同じに成り下がる。
 ヒトならざるものへと墜ちることとなってはならない。

 弓を引き絞る男が、ぽつり呟いた。

 ――嗚呼、しかし。

「あの場に居るのは、我らだったかもしれないのだ」

●悼影、すぐに
「エンパイアウォーに新しい動きだよ」
 集まった猟兵達を前に、揺歌語・なびき(春怨・f02050)が手早く説明を始める。
「奥羽地方で『水晶屍人』の軍勢が進軍していたんだけど、皆のおかげで彼らの指揮官が撃破できた」
 今は奥羽諸藩の武士達が、残った水晶屍人の掃討作戦を行っている。しかし屍人は数百を越えており、掃討はなかなか思うように進んでいない。
「もう知ってるかな、屍人に噛まれた人間は屍人になっちゃう。ま、要するにゾンビだから、武士達も迂闊に近距離で攻撃を仕掛けられない。でもおれ達猟兵は、彼らに噛まれても仲間になったりしないんだ」
 ちょっとは痛いだろうけど、と零す桜の瞳は普段と変わらずゆるいまま。
「猟兵なら、もっと素早く効率的に屍人を掃討できる。だから、君達にはこの掃討作戦を手伝ってもらいたいんだ」
 多くの水晶屍人を猟兵が掃討できれば、浮いた戦力として奥羽の武士が幕府軍に援軍として加わることが可能だ。
「戦場はなんにもない平原、岩場や木立はあるかな。周囲に人里もないから、一般人のことは気にしなくて大丈夫。屍人はオブリビオンと違ってすごく弱いから、君達が暴れ回ってくれればすぐに終わると思う。少しでも早く戦争を終わらせるチャンスだよ」

 転送の支度を始めながら、灰緑の男はやわく語る。
「これも知ってると思うけど……一応、伝えておくね。屍人になった人々を、元に戻すことはできない。もう、殺すしかない」
 悼む思いがあるならば、なおのこと。
「君達なら終わらせてくれるって、信じてるよ」
 薄紅の花弁のグリモアが、かがやいた。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 このシナリオに成功する事で、1000名の奥羽武士が幕府軍に合流して戦力が増加します。

●成功条件
 水晶屍人の掃討。

 POW/SPD/WIZに関わらず、自由な戦法による無双が可能です。
 戦闘が前提ですが、普段から心情描写が多めですので其方も遠慮なく。

 プレイングは【13日(火)朝8時30分以降】から受け付けます。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 冒険 『水晶屍人掃討戦』

POW   :    多数の水晶屍人の群れに飛び込み、体力の続く限り暴れまくる

SPD   :    群れから逃げ出そうとする水晶屍人を発見し、逃がさないように掃討する

WIZ   :    策略を駆使して、多くの水晶屍人を逃がさずに殲滅できる状況を作り出す

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マルガリタ・トンプソン
こういう仕事は性に合うな
めちゃくちゃ強い敵相手にあれこれ頭使うの、そんな得意じゃなくて

【侵食する鏡界】でリコを呼び出す
ナイフ貸すからちょっとでも数減らしてきてよ
やだ?怖い?知らないよ。俺だって噛まれたくないし
ちゃんと【援護射撃】するからさ

まあ、戦力としてはあまり期待してないけどね
どっちかって言うと本命は餌としての役割
あいつに群がった連中に短機関銃で弾丸をありったけ叩き込む
余程あいつが頑張らない限りそっちのが効率がいい
他の味方を使うのと違ってうっかり撃っても困らないし

死にたくなかったかなぁ、君たち。味方だったかもしれないなら助けたかったけど。ごめんね
せめてなるべく迅速に効率よく死なせてあげないと


萬・バンジ
※アドリブ連携オール歓迎
えげつない兵隊の増やし方するなぁ
一般人でも屍人になればただの武士より強いもんな
やり方としちゃ嫌いやないけど、面倒やから壊したろ

岩場の上まで《忍び足》で移動したら
ユーベルコード『天上天下』発動
一気に倒せた方がいいやんな。最近あっついし…
納涼の気持ちも込めて「氷」属性の「竜巻」とかどうやろ
涼しいし、一気に吹き飛ばしてバラバラにできる
それに取りこぼしても、凍ったもんは壊しやすいから
《全力魔法》で雷落として、残りは皆砕いてしまお

キミらも暑いとか感じるんかな
やとしたら、まあ、暑いより涼しい方がええやろ?
お疲れさん。骸の海やなくて、あの世に行って
もう戻ってきたらあかんで


花邨・八千代
いいねいいねェ!
周りを気にしないで思いっきり暴れられる、最高じゃねェか。

おねんねの時間だぜ、屍人共。
一切合切全部ここで終わらしてやらァ。

◆戦闘
腹から声出して「恫喝」、【雷声】だ。
「挑発」と「殺気」をちょいちょい混ぜつつ敵軍に飛び込むぜ。
武器は黒塚、思いっきり振り回して広範囲に「なぎ払い」だ。
「2回攻撃」で更に敵を巻き込みつつ「空中戦」と「踏みつけ」で戦場を駆けまわるぜ。
重装備のヤツが居れば「鎧砕き」だ、ひとりとして逃がすかよ。

ここは綺麗な地獄だなァ。
なんせ死人も居るし鬼も居る、ちっと綺麗すぎる気もするがな。
はっはっはっ、酒でも飲みながら眺めたい地獄も珍しいもんだ!



 夏の生命に満ち溢れていたはずの平原は、屍と水晶のきらめきによって、本来のうつくしさはうずもれていた。いまや此処にあるのは、潰えてしまったいのちの残骸だけ。
「いいねいいねェ! 周りを気にしないで思いっきり暴れられる、最高じゃねェか」
 惨状を眺めてけらりと笑った花邨・八千代の隣で、萬・バンジがははぁと素直な感想を口に出す。
「えげつない兵隊の増やし方するなぁ。ま、一般人でも屍人になれば、ただの武士より強いもんな」
 鼠算式に増えていく屍の群れになりたくなくば、奥羽の武士は足止めを食らうしかない。いたって効率的な方法だと、感心すらする。
「数は多いけど、こういう仕事は性に合うな。めちゃくちゃ強い敵相手にあれこれ頭使うの、そんな得意じゃなくて」
「あーわかるわかる」
 準備運動だろうか、マルガリタ・トンプソンが大きく伸びをすれば、八千代はしみじみと同意して。す、と息を吸って、吐き出した声は轟く雷鳴のようだった。
「――派手にやろうぜ、なァ!!」

 逢魔時にも似た彩の双眸が、ぱちりと瞬く。ぐにゃりと歪んだ鏡界から現れたのは、マルガリタの中のもう一人。
「出番だ、ちょっとでも数減らしてきてよ」
 これ貸すからさ、と漫画本の貸し借りのようにナイフを渡すと、少女『リコ』は大きく首を横に振る。
「やだ? 怖い? 知らないよ、俺だって噛まれたくないし」
 我儘な同居人に、掌に収まる小型拳銃を見せることで、援護射撃を約束する。ほらほらとせっつかれ、リコは渋々と言った風に屍人の群れへと駆けだした。
「ま、戦力としてはあまり期待してないけどね」
 がむしゃらにナイフを振り回す少女の姿は頼りなく、無数の屍はかよわい哀れな獲物を一斉に取り囲む。
「うわ、お腹減ってたのかな」
 アレに囲まれたくはないと思いながら、マルガリタは構えた短機関銃のトリガーを引く。パパパ、と連続で鳴り響く発砲音と共に、水晶の欠片がはらはらと戦場に舞う。
 リコの存在はあくまで餌――群がる屍人めがけて弾丸の雨を降らすほうが、圧倒的に効率がいい。余程、『彼女』が頑張らない限りの話ではあるけれど。
 それに他の味方と違って、うっかり撃っても困らないし。軽薄な笑みを浮かべていた少女は、ふと誰かに問うた。
「ねぇ、死にたくなかったかなぁ、君たち」
 遠くで屍は破裂し散っていく。その度に、腐臭と水晶のきらめきを遺していく。
「味方だったかもしれないなら助けたかったけど。ごめんね」
 マジックタイムの、丸く大きな瞳が揺れる。
 少女は善を成し、悪を成す。昨日の敵の今日の味方を愛し、明日の敵をたやすく殺す。そして、
「せめてなるべく迅速に、効率よく死なせてあげないと」
 ――とても、情深かった。

 黒塗りの薙刀ただひとつを手に、羅刹は目を見開いて軍勢に突っ込む。
「んじゃ、おねんねの時間だぜ、屍人共。一切合切全部ここで終わらしてやらァ」
 飛び込んできた八千代へと群がる屍達を、まだ少女とも呼べる見目の女は生来の殺気で怯ませる。ぶわりと振るった薙刀の柄は酷く重く、遠心力も相まって文字通り敵を一気になぎ払った。
 毀れたひかりの欠片と屍の肉片を足場に、宙を跳ぶ。その拍子にふわりと仄かに香った白檀を、屍人達が気付くことはないだろう。
 ずるりと重い薙刀を、尋常ならざる怪力が軽々と振り回す度に、肉が千切れる音と結晶が割れる音が不協和音を奏でる。
 無色透明の結晶を情け容赦なく踏み越えて、嬉々として咲く大輪の花は鮮烈な程の紅。
「ここは綺麗な地獄だなァ。なんせ死人も居るし鬼も居る!」
 ちっと綺麗すぎる気もするがな、と満足げに見つめた先、それまでの有象無象よりも甲冑で身を固めた者を見つける。生前は奥羽の武士の一人だったか――そんなことはどうでもいい。
「逃がすかよ」
 八千代のあかい瞳が、ただまっすぐに甲冑の屍を見据えた。薙刀を両手で掴んだまま再び宙に跳べば、大振りの刃を脳天めがけて、落とす。
 めしゃりと割れる兜を被った頭は、水晶と共に砕け散り。女はその屍体を踏みつける。
 ただの一人も残すものか――すべてすべて、鏖殺し。
「はっはっはっ、酒でも飲みながら眺めたい地獄も珍しいもんだ!」
 尖った歯を剥き出しにして笑う女の両角が、彼女を確かに鬼だと云う。

 騒がしい戦場をするりと駆け抜け、誰にも気付かれず岩場に登ったバンジ。数えきれぬ屍達を見下ろして、味方の位置取りを確認する。安倍晴明の創りだした水晶屍人という幾多の駒の使い道は、やはり良く出来ている。
「やり方としちゃ嫌いやないけど、面倒やから壊したろ」
 青年がふわり笑んだと同時、ふるり、大気が震えた。ぱち、ぱちと、冬の風がやってくる。
「一気に倒せた方がいいやんな。最近あっついし……」
 ――万物一切、神の随に。
 杖を軽くひと振りすれば、屍と水晶がきらめく戦場の上空に無数の氷の粒が生まれる。やがて粒はおのおの氷柱へと成長し、木枯らしは氷柱を纏った巨大な竜巻へと育っていった。
 びょうびょうと叫ぶ氷の竜巻は戦場の敵を圧し潰し、水晶のひかりを巻き込んで、妙にまばゆい情景を上空に創りだす。
「キミらも暑いとか感じるんかな……やとしたら、まあ、暑いより涼しい方がええやろ?」
 凍りついた四肢をバラバラに散らした屍達は、無残な姿で地に這いつくばり、そのうつくしさを目にすることもない。
「取りこぼしても、凍ったもんは壊しやすいからな」
 あまり意味はないけれど、何気なく戦場の隅をひぃふぅ指さし数えた先、集団のまま凍りついた群れが有る。其方へ向けて再び振るった杖に惹かれるように、天空から凄まじい雷が戦場に墜ちた。
 雷光は水晶のひかりよりも激しい輝きを以て、瞬時に凍りついた屍達を塵屑に変える。
「お疲れさん。骸の海やなくて、あの世に行って」
 もう戻ってきたらあかんで。男は岩場に腰掛けたまま、やわくいのちをおくり続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

高柳・零
【狐屋】(人数が多い場合は分割でもOKです)

POW
こいつらはここで滅ぼさないとまた増えますからね。
これ以上の被害者は出させませんよ。

「助太刀に来ました。自分達が足止めするので、存分に攻撃してください!」
UCを発動して強化した力で全身をオーラで覆い、盾にで身を守りながら敵に突っ込みます。

「自分は前に出て皆さんを守ります。存分に盾として使ってください!」
前衛に出た味方を庇いながら、2回攻撃で次々と屍人を切り倒して行きます。
後衛に漏らした時は飛んで行って庇います。
「今の自分なら、一瞬で動けますよ」

アドリブ歓迎です。


月凪・ハルマ
【狐屋】

掃討戦、だな

まだ生きてる人達にとっても、屍人にされた人達にとっても、
この状況はよろしくない。早々に終わらせよう

◆SPD

まずUC【魔導機兵連隊】発動してゴーレム達を召喚
6体程夕月さんの周囲に置いていくんで、敵が来たら
盾にするなりして守ってもらってください

残りは向かってくる水晶屍人の相手をしてもらおう。
倒しきれなくても、敵の進行速度を遅らせるくらいはできるだろう

自身は【目立たない】様に【迷彩】を施し、【忍び足】で
敵集団の中へ移動。破砕錨・天墜を振り回し【範囲攻撃】を
仕掛けた後、離脱

その後は手裏剣の【投擲】で零君と玄信君を援護する

敵の攻撃は【見切り】【残像】【武器受け】で回避

※アドリブ歓迎


山梨・玄信
【狐屋】
ここにも居たか。
こいつらだけは根絶やしにせんといかんからのう。

【SPDを使用】
わしは遊撃に回るぞい。
UCのスピードを活かし、突出して来た相手や逃げようとする奴、こちらの後衛に向かう奴を迎撃するのじゃ。

気の放出(範囲攻撃+鎧無視攻撃)をメインに攻撃するぞい。

見切りと第六感で敵の攻撃を回避し、オーラで身を守るのじゃ。
後衛が攻撃に晒されてたら、上着を脱いで更に加速してダッシュで庇うぞい。

「一兵たりとも逃さんぞ。覚悟するのじゃ!」

アドリブ歓迎じゃ。


桜井・夕月
【狐屋】
まっさらな平原なら射線も通りやすいよなぁ
まぁ、その分狙われやすくもあるだろうけれど
そこは仲間に任せて暴れましょう(他力本願)
信頼してますよー。

水晶屍人かぁ、……うん、外れたものは終わらせなければね?
終わってから、弔おう

基本的にスナイパーとして味方のサポートと後衛からの攻撃します
戦況の把握と地形を利用し、零君とか味方の盾役に上手く庇って貰える様な位置取りを心掛けます

味方の攻撃が当たるように足止めしたり、逆に攻撃を妨害したりといった援護射撃
衝撃波の魔弾を使った範囲攻撃が出来ればいいかなぁ

敵が近付かないのが一番だけど、攻撃されたら第六感で回避して影獣でのカウンターを試みます

アドリブ歓迎です


火土金水・明
【狐屋】で参加です。
「これは大量の『水晶屍人』達ですね。掃討戦でもあまり時間をかけている場合ではないですね。」
【WIZ】で攻撃です。攻撃は、他の方に合わせて【援護射撃】にして【高速詠唱】した【破魔】の【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を【範囲攻撃】にして、『水晶屍人』達を巻き込めるようにして纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「これは『水晶屍人』を作り出した陰陽師『安倍晴明』をぶん殴らないと気が済みませんね。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。



 突如現れた猟兵達の蹂躙は、後方から矢を放つので精一杯だった奥羽の武士達を驚かせた。そしてまたこの戦場に、新たな五つの影が現れる。
「助太刀に来ました。自分達が足止めするので、存分に攻撃してください!」
 声変わりもまだの幼い少年の呼びかけが、武士達の耳に届く。ころんとしたフォルムの小さなテレビウム、高柳・零が朗らかな笑みを液晶画面に表示させていた。
「ふむ、ここにも居たか。こいつらだけは根絶やしにせんといかんからのう」
「掃討戦でも、あまり時間をかけている場合ではないですね」
 ひしめきあう屍と水晶の山を見遣るのは、これまた小さな体躯の山梨・玄信。魔女の衣に身を包む火土金水・明も、冷静に状況を把握していく。
「まだ生きてる人達にとっても、屍人にされた人達にとっても、この状況はよろしくない――早々に終わらせよう」
 夜の名を持つ帽子の位置を直して、月凪・ハルマが仲間達に呼びかける。その隣で、桜井・夕月は愛用のライフルに触れた。
「……うん、外れたものは終わらせなければね?」
 ――良識から、常識から、輪廻から。外れてしまったものは消えなくてはならない。
 終わってから、弔おう。少女がそう呟いたのをきっかけに、少年少女はひかりまたたく戦場へ飛び込んだ。

「では、行きますよ!」
 跳ねるような仕草で剣を天空に掲げ、零は液晶に笑顔を表示させたまま宣言する。
「天よ、この手に人々を護る力を!」
 まばゆく神々しいひかりがその身を包みこみ、小さな身体は屍の耀きとは比べ物にならない清らかさを纏っている。
「よーし、今日も絶好調です!存分に盾として使ってください!」
「じゃ、俺も準備といくか」
 指を鳴らしたハルマに応じたように、虚空から転送されたのは50体近いゴーレム。足音を鳴り響かせて地面へと着地したそれらは、数体が後方に残り夕月と明の守りを固める。
「そいつら、いい感じに動きますから。盾にするなりして守ってもらってください」
「ありがとうございます」
「信頼してますよー」
 会釈した明とへらりと手を振る夕月に見送られ、ハルマはゴーレムの進軍を追う。迷彩術式を起動させたその身は、既に誰の目にも映らない。
 援護射撃を目的とした二人の少女は、魔法と魔弾の支度を始める。杖を掲げた明の唇から紡がれる魔術詠唱は歌のよう。
 ――我、求めるは、冷たき力。
 ぱり、ぱり、と雪の結晶が生まれると、それらは徐々に虹の彩持つ杖に集まる。次第にはかない氷晶は互いに集まり、水晶のきらめきすら反射する程の鋭さを宿す。200を越える氷の矢が、明の周囲に並んだ。
「私の全力です――あなた達を終わらせるための、刃よ」
 言い終わるよりも早く、冴えた矢群は屍人達へと飛んでいく。一度は水晶のひかりを砕き、貫いた先でぐるりと方向転換。二度目は背後から、無防備な屍の腐肉を次々散らす。
 魔女が氷の矢を操る隣、ライフルの照準を合わせた夕月がトリガーを引く。放たれた魔弾は着弾と同時に爆発、衝撃波で飛び散るひかりの欠片が妙にまばゆい。
 清いひかりを纏った零の姿はひときわ目立ち、思考能力を持たぬ屍人の群れは一斉に彼を目指している。だからこそ脚や頭を狙い、零の動きを妨げぬよう足止めと妨害に徹している。
「それにしても明さんのは援護っていうか、もう最大火力って感じだねぇ」
「そうですか?」
 金と黒の瞳がやわく揺れて、魔女は不思議そうに小首を傾げる。短期決戦を目指した結果の全力魔法だが、今回の場合はやりすぎという訳でもないだろう。
「これは彼らを作り出した陰陽師、『安倍晴明』をぶん殴らないと気が済みませんね」
「言えてる……っと」
 射手二人に気付いて接近する屍人の姿を夕月が視認した途端、少女の足元からぶわりと獣の影が立つ。多尾の獣達は黒い牙で喰らいつき、主のあらゆる危機を排除する。
 同時に、屍人達には背後に迫る小柄なドワーフの姿が見えていなかった。褐色の掌から放たれる『気』は烈風の如く吹き荒れ、いくつもの甲冑と水晶がぱきりと割れ、腐肉がその場に崩れ落ちる。
「遅いッ」
 短剣を手に戦場を駆け巡る玄信は、屍人が彼を意識するよりも速く疾る。修行道着のような上着を脱いだ身体は鍛え上げられ、更にその速さを増す。
「一兵たりとも逃さんぞ。覚悟するのじゃ!」
「助かりまーす」
「うむ!」
 実年齢よりも随分年上に見えるのは、蓄えたひげと口調のせいだけではない。これまでの旅路による実力が、きっとそうさせている。
 ハルマの喚んだゴーレムと共に、縦横無尽に屍人を屠っているのは零。両手に剣と槌を携え、勢いをつけて武器を容赦なくぶん回す。愛らしい小さな身体が一気に敵影をなぎ払う様はいっそ清々しい。
「(さすがは零君ってところか)」
 迷彩術式で姿を消したハルマが戦況を確かめ、固まっている集団の中へ潜り込む。ゴーレムと零、そして遊撃役の玄信に気を取られている彼らの脚を、じゃらりと太い銀鎖が絡みついた。
 ぶわり、一気に振り回したアンカーは派手な音を立てて屍人達を蹂躙する。破壊に特化させる為に取り付けられたブーストエンジンが加速して、水晶のきらめきをはらはらと毀していく。
 そのきらめきが、ふと消えている姿に乱反射して。ハルマの居場所を知った武者姿の者が刀を振るうよりもはやく、それは飛んできた。
「今の自分なら、一瞬で動けますよ」
 刃同士がかち合う音がして、ハルマの前に清いひかりを纏う零が立ち塞がる。すぐさま手裏剣を投擲するハルマと共に、零の槌が鎧武者を粉砕した。
「助かった」
「自分は盾ですからね!」
 少年少女はいのちの残骸ひしめく戦場を、ただひたすらにぶち壊す。正しく、終わらせるために。


 猟兵達の活躍により、平原を埋め尽くしていた屍は全て息絶えた。平原には水晶のきらめきが、まだそこらじゅうに散っている。
 奥羽の武士達は幕府軍に合流することを約束し、グリモアによって転送される猟兵達を見送る。

 サムライエンパイアの窮地を救うため――次なる戦場へ、いざ征かん。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月16日


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#エンパイアウォー


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト