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神は死んだ、悪魔は去った

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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「ハァーイみんな! 可憐な耀ちゃんの元に集まってくれて感謝するわ!」
 文学少女めいた外見とは正反対な、やけにテンションの高い第一声。対する猟兵たちの反応は様々だが、少なくとも当人の期待にはそぐわなかったらしい。
「っかしいわねー、ツカミは完璧なはずなんだけど。まいっか、本題に入りましょ」
 一瞬不満げな顔をしつつも、黒髪の少女はすぐに表情を切り替えた。

「改めて自己紹介しておくわね、私はグリモア猟兵の白鐘・耀。早速だけどみんなには、アックス&ウィザーズ世界で亡霊退治をしてもらうわ」
 舞台となるのは、とある地方に広がる荒野だ。そこでは夜な夜な、首なしの亡霊騎士が列をなして彷徨い歩くという。
「誰もいない不毛の大地ってやつね。私が調べてみた限りでは、住民から『地虫の荒野』って呼ばれてるらしいわよ」
 てきぱきと説明する耀。だが、彼女が見た予知は凄惨なものだった。
「無人の荒野をうろついてるだけならいいんだけどねえ。こいつらほっとくと、人里までぞろぞろ出てきちゃうのよ。で、途中にある村が滅茶苦茶になる、と」
 それを看過する者はこの場に居ない。一同の顔を見渡し、耀は不敵に笑った。
「予知が現実になるまでは時間があるわ。転移場所は人里から離れてるうえに、連中の進路上だから、すぐに奴らとぶち当たるはず。ちゃちゃっとぶちのめして頂戴」
 正面からの激突。逆を言えば、不意打ちなどの搦め手も難しいということだ。
「まあ、向こうは伏兵とかバンバン召喚してくるんだけど。私たちだって召喚ぐらい出来るんだし、おあいこよね」
 実に軽い調子だが、その裏には集まった猟兵たちへの信頼があらばこそだ。
「どうしてガチンコ勝負しなきゃいけないのか、って? ……理由は簡単、こいつらは前座に過ぎないの」
 亡霊騎士は数こそ多いが、個の強さはさほどでもない。問題はその縦列の奥、正体不明の親玉だ。これを引きずり出すには、正面から叩くのが一番手っ取り早いという。
「てわけで、これがふたつ目の仕事。細かいことを考えなくていいぶん、相手も全力で来るはず。油断せず、確実にぶっとばしてやって!」
 ぐっと握り拳を作り、力強く言い放った。

 敵について説明を終えたところで、耀はもうひとつ仕事がある、と告げた。
「実はこの『地虫の荒野』、もう枯れ果てたはずなのに、遠くから見るとぽつぽつ森や林があるんですって」
 不毛の荒野に蘇る緑。それ自体は喜ばしい出来事だが。
「しかもここって、大昔は貴重な薬草や果実が手に入っていたらしいのよ。そんなとこに、妙な悪影響が残ってたらまずいじゃない?」
 緑が蘇りつつあることがオブリビオンの仕業なのか、自然の底力なのかは分からない。ただ調査の必要はある。すなわち、これが三つ目の仕事だ。
「素人がせっかくの自然を台無しにするより、私たちが調べたほうが確実だしね。もしかしたら、貴重なアイテムとか作れたりして!」
 そういうゲーム好きなのよねー、などと呟きつつ。
「なんだかんだで、近くの村はどこも困窮してるわ。みんなが薬や役立つものを調達して提供すれば、色んな意味で喜ばれるはずよ」
 土地の有用性が噂として広まれば、将来的に人の行き来も増えるだろう。オブリビオンを倒すだけでなく、あるべき未来を守ること。それもまた猟兵だけに出来る仕事だ。
「あ、もし必要なら、戦闘後は私も手伝えるわよ。……手伝えるわよ!」
 二回言った。一同に意味ありげな視線をチラチラ送る耀。誘ってほしいんだろうか。

「……ま、冗談はさておき。あんたたちなら問題ないでしょ? 期待してるわよ!」
 どこからともなく火打ち石なんぞを取り出し、カッカッと叩く。それが転移開始の合図となった――。


唐揚げ
 今回が初仕事、唐揚げと申します。どうぞお見知りおきを。
 オープニング、いかがだったでしょうか。エッ、読んでない?
 そんな方のために、当シナリオのまとめです。

●目的
 『地虫の荒野』と呼ばれる土地を徘徊するオブリビオンの撃破。
 および戦闘後の探索、可能なら薬品(など)の製作。

●敵戦力
 亡霊騎士『宵闇の騎士団』(たくさん。よわよわ)
 正体不明の親玉(一体。つよつよ)

●備考
 『地虫の荒野』は大昔は色んななんかが採れたらしい。薬とか作れるかも!

 だいたいこんな感じです。
 1・2章はいわゆる純戦となりますので、避難だとか防衛なんてことを考えず、クールなアクションやデンジャラスな呪文など、なんかそういうのをばりばりぶちこんじゃってください。
 では前置きはいい加減にして。
 皆さん、お手柔らかによろしくお願いします。

 あっ、そうだ。
 もしプレイングでお誘いくだされば、3章のみですが耀もリプレイに登場します。
 いじょうです。
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第1章 集団戦 『宵闇の騎士団』

POW   :    闇討ち
【自身以外に意識】を向けた対象に、【死角からの不意打ち】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    追討ち
【周囲に潜ませていた多数の伏兵】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    返討ち
いま戦っている対象に有効な【武器を持った多数の援軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


生命の息吹が感じられぬ、ひび割れた赤茶色の土。獣すらろくに姿を見せぬこの地に、棲むものがあるとすれば地中の虫ぐらいであろう。ゆえにいつしか、ここは『地虫の荒野』と呼ばれるようになった。

 だが今、荒野には二通りの気配がある。一つは生命体の埒外にあるもの――すなわちまさにこの瞬間、転移によって出現した猟兵たちだ。……では、もう一方は?
 それらは列をなし、文字通りの幽鬼めいた足取りで、闇の中から現れた。分厚くいかめしい重鎧を纏いながら、あるべき中身は空洞。首なしの亡霊騎士の群れである。生なき枯れ野においてなお異質に映る虚無の軍勢、その数は目視出来るだけでも十を超える。
 がしゃりがしゃりと、狂える地虫の声に似た行軍の音が響く。闇に踊るいくつもの鬼火は、召喚されし援軍、あるいは伏兵の兆しである。
 奴らは迎え撃つ猟兵の気配を察知している……だが足を止める気配はない。悪魔じみた亡霊どもの進軍は、今ここで食い止めねばならないのだ!
ティティモルモ・モルル
亡霊がわらわらとは大変でごぜーますねー。
夜な夜な彷徨われてはおちおち快眠も熟睡もできないじゃねーですか……モルはできるですけど……。
平穏な眠りを守るために、がんばって退治しましょー。

そういうわけで、強いのこーい。素早くこーい。
がんばれー。そこでごぜーますよー。
(【サモニング・ガイスト】。目には目を、亡霊には亡霊を。あと何より自分が楽するために、召喚した霊を突貫させる。技能:全力魔法・高速詠唱)

あ、召喚主狙いなんて地味に賢いことするやつはこうでごぜーます。
くるなー。くるなー。
(オフトゥンで引っぱたいて吹っ飛ばす。追撃のマクラァン投げでダメージは更に加速する。技能:衝撃波・2回攻撃)



●夜の平穏
「亡霊がわらわらと……大変でごぜーますねー」
 戦場には場違いな間延びした声。ブラックタールの少女、ティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)は寝ぼけ眼でオフトゥンを抱き寄せた。なんせ寒い。夜だし。なお、これもれっきとした媒介道具である。
「夜な夜な彷徨われては、おちおち快眠も熟睡もできないじゃねーですか……」
 あくびを噛み殺しつつ、モルはできるですけど、と続けた。だからといって惰眠を貪らずにここへ来たことが、平穏な眠りを守るという彼女なりの使命感を示している。
「強いのこーい、素早くこーい」
 いまいち気の抜ける詠唱とともに、名状しがたいジェスチャーをするティティモルモ。すると彼女の周りに、音もなく戦士の霊が召喚された。目には目を、亡霊には亡霊を、というわけだ。槍を携えた霊が空いた掌に炎を灯すと、ティティモルモは眩しそうに目を細める。いや、ただ眠いだけかもしれない。
 一方で、亡霊騎士どもの反応は劇的だった。対峙する敵影はおよそ四つ、つまり二倍だ。にも関わらず、奴らはその足を止めて鬼火を呼び寄せ、次々に援軍を召喚し始めた。明らかな警戒を露わに!
「さー、モルのぶんまでやっちまってくだせー」
 ティティモルモが号令を下した瞬間、戦士の霊は弾かれたように地を蹴る。亡霊どもに頭があったなら、瞠目し狼狽えたことだろう。その間隙を見逃すことなく、戦士の霊は槍を横薙ぎに振るい、敵陣を吹き飛ばした!
「おー、すげーでごぜーます。がんばれー、そこでごぜーますよー」
 眠たげな応援だが、向けられた先は鉄火場そのもの。騎士どもの振るう剣は霊に一切届かず、返しの槍が一撃で鎧を貫く。炎は夜闇を焦がして亡霊を飲み込み、煌々たる赤い輝きを燃え盛らせる。蹂躙というべき有様だ。
 いかに亡霊どもが数で勝ろうと、所詮は一山いくら。対して、古代の霊はティティエルモが召喚した渾身の一体。楽をするため、愛する眠りを守るためならば、全力を以て魔力を振るう。彼女はそういう性分らしい。

 召喚者を狙う不届きな輩に備え、自慢のオフトゥン(媒介道具である)とマクラァン(魔道書である)を油断なく構えていたティティモルモ。だが亡霊騎士が喚び出す援軍も、戦士の霊の猛撃によってことごとくが返り討ちにされていく。
「やっぱりのんびり楽ちんが一番でごぜーますなー……あふぅ」
 ぬくぬくもっふもふに包まれて、少女がにんまり笑う。誰も、その平穏を妨げることはできなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラハブ・イルルヤンカシュ
亡霊騎士……食べるところが…ない
愕然としながら
【顕現せし災禍の竜魔王】を発動
悪魔の王と化す

『鎧だけとか旨くない。中身も一緒に持ってこい』
ほぼただの八つ当たりで
ユーベルコードで強化された火力の炎とかの[属性攻撃]+[範囲攻撃]で蹴散らす

敵の攻撃は硬質化した鱗で[盾受け]+[武器受け]
その後、爪で[鎧無視攻撃]+[串刺し]+[生命力吸収]
数が多ければ尻尾の[範囲攻撃]でなぎ払う

『食べるとこのない有象無象ども。中身生やしてから出直してこい』

敵の伏兵や援軍には肉ついてるだろうか
ついてたら串刺しついでに食べる
グールドライバーの成せる業
端から見たら悪魔の所業
『だって、悪魔だし』

どっちが化け物かわからない



●悪魔が来たりて
 ラハブ・イルルヤンカシュ(悪魔でドラゴン・f04872)は愕然とした。といっても、無表情のままだが。
「亡霊、騎士……」
 いかにも、彼女の前には首なしの亡霊騎士が三体。がらんどうの鎧には、ただ暗黒の靄が渦巻くのみ。がしゃりと虚ろな足音を響かせ、相対距離が縮まる。中央の騎士が一歩踏み出し、意識の外から闇討ちを仕掛けんと剣を振り上げ……。
 ――ゴォウッ!!
 地獄の業火じみた熱波が、迂闊な敵を吹き飛ばした。残る二体はがしゃがしゃと後ずさり、油断なき構えを取る。無理もなかろう、今やラハブの闘気は膨れ上がり、悪魔の王と形容すべき殺意を放っていたのだから。
「鎧だけとか、旨くない。食べるところもない」
 口にした言葉はずいぶん俗っぽいが……否、だからこそ恐ろしい。空腹だというのに、獲物は誰も彼も食いでがない。災禍の竜が暴れるには十分すぎる!
「来るなら中身も一緒に持ってこい。でなきゃお前らのその存在……残さずぶっ壊すッ!」
 轟! と、悪魔が吼えれば、燻る炎の残滓を振り払い、向かって右から騎士が襲いかかった。ラハブは避けもせず、ただ片腕でそれを受ける。
 鰐の前肢じみた鱗は、融合によって硬質化している。呆気なく刃が砕け、騎士は蹈鞴を踏んだ。そこへ奔るは大気を灼く龍の爪。鎧など紙細工のように串刺しにし、二体目の獲物を貪り食らう。
「まずい」
 爪先にこびりついた闇を払い、悪魔が吐き捨てる。遺された左の騎士は……いや、騎士"ども"は、そこをめがけて襲いかかる。間隙を突いての手勢召喚――。
「邪魔ッ!!」
 ひび割れた地面ごと、鯱の尾がその軍勢を薙ぎ払った。土煙の中で炯々と輝く両目は、いっそ彼女のほうが化物らしく見える。
 伏兵、援軍。鬼火とともに来たるそれらも、どいつもこいつもがらんどう。それを見るたび怒りが募る。飢えは満たされない、だったらみな壊れろ。壊れてしまえ。壊れて消えろ!

 竜巻が荒れ狂ったのような惨状の中、ラハブの周囲には敵の残骸が転がるのみ。名残惜しげに爪をちろりと舐める。やはり腹は満たされない。
「食べるとこのない有象無象ども。中身生やしてから出直してこい」
 もしもここが荒野でなければ。守られたはずの人々は慄き、彼女の所業を怪物と恐れただろう。そして、ラハブは一言こう返すに違いない。
 ――だって、悪魔だし。と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼイル・パックルード
退屈で何もないところから抜け出したいのはわかるけどねぇ、てめぇらの逝き場所はあの世だろ?
俺の炎で案内してやるよ、行先は地獄だと思うけどな。

【POW】で戦うか。

敵の数がわからねぇけど、見た感じ武器は大振りみたいだし、他のやつとの間合いを気にしつつ、まずは近づいいて破灼光撃で一体壊す。
数が少なければそのまま押し切ってもいいか

とはいえ基本は、囲まれないように間合いをとりつつ戦う、そして鉄塊剣で【鎧砕き】すれば砕けてくんじゃねぇかな。

一体に詰めらrたら烈破灼光撃で確実に倒す。

囲まれたらいっそ鉄塊剣大振りして、一網打尽でも狙おうか。
無論囲まれないようにするのが前提、囲まれない限りは上二つの行動が基本だ。



●亡霊が向かう場所
 かくして猟兵と騎士団の戦闘は開始した。すでに二人が前線を切り開いているが、やはり敵の数は多い。闇の奥から、次から次へと亡霊どもが湧いてくる。
「退屈で何もないところから抜け出したい、ってのはわかるけどねぇ」
 身の丈を超える鉄塊剣を肩に担ぎ、浅黒い肌の青年……ゼイル・パックルード(火裂・f02162)はひとりごちた。視線の先、亡霊どもの第二波が近づきつつある。
「てめえらの逝き場所はあの世だろ? 俺の炎で案内してやるよ!」
 行き先は地獄だろうがな、と、言葉は笑みに消える。不毛の荒野など、砂漠育ちのゼイルにとっては慣れ親しんだ戦場だ。ゆえに不足はなしとばかりに、地獄の炎を後に引いて一気呵成に飛び込む!
「っと、そうはいかねえぜ!」
 ゼイルの言葉にやや遅れ、ガギン! と重たい金属音が響いた。何が起きたのか? 死角を狙う不届き者の剣戟を、肉厚の鉄塊剣が見事に防いだのである。
「大振りなんだよなあ、てめえらの攻撃は!」
 一見無謀に見えた突撃。だがその実、ゼイルは敵の数を見極めるため、四方に注意を払っていた。近かれれば同じだけ下がり、常に間合いを保つ。傭兵としての経験と、粗雑に隠れた冷静さを生かし、戦場を俯瞰しているのだ。
「おらよォ!」
 その時、閃光が煌めいた。いや、そうとしか言えない速度でゼイルの拳が振るわれ、亡霊騎士を捉えたのだ。まずは一体目……だがゼイルは、その隙を狙って二、三体目の接近を察知している。崩れ落ちる騎士の鎧を鉄塊剣で砕き、残骸をばらまきながら一定の距離を取る。
 敵は焦れていた。囲んで圧殺しようにも、徹底したヒットアンドアウェイがそれを許さない。そしてまた一体、痺れを切らせて間合いに飛び込んでいく。
「見え見えだぜ?」
 ガキンッ! 鉄塊剣で敵の袈裟懸けを弾く。よろめいたところへ、今度はゼイルから踏み込んだ。懐に入ると同時に金眼がギラリと輝く。好機!
「一足先に地獄を味わいな!」
 先の一撃の正体は実に単純。地獄の炎を纏った拳を、目視しきれぬほどの超高速で叩きつける、ただそれだけだ。前提される超接近距離も、歴戦の傭兵にかかれば朝飯前。必殺の烈破灼光撃が、虚ろなる亡霊を地獄へ叩き落とす!
「さあ、次はどいつだ!」
 次はどうする、囲まれたところを鉄塊剣で一網打尽にしてやるか? 目まぐるしい思考の中、戦闘の興奮に笑みが深まる。趨勢は、最後までゼイルが握り続けた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。
真正面からの殴り合いだな。
任せろ。

と、勇んだは良いが、どうにも虚を突くのが好みの敵らしい。
不意打ち、伏兵、援軍と。しかしそれもまた面白い。
ならば俺は意地でも正面から押し通ろう。

不意を打つ暇を与えず、一気に肉薄し叩き斬る。
鎧砕きは得意でな、怪力と合わせて粉々にしてやろう。
攻撃を受けても怯まず、カウンターと捨て身の一撃て強引に突破する。

数が多いならなぎ払いだな。
仲間と共闘するなら龍翼と龍尾も用いてかばい守るが、
そうでなければ防御系技能は攻撃を掻い潜り隙を突くのにしか使わん。

兎角、暴れる。
油断も余所見も俺はしない。
全身全霊を以て挑ませて貰おうか。



●暴
『真正面からの殴り合いだな? 任せろ』
 転移直後はそう意気込んでいたワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)。だが蓋を開けてみれば、亡霊どもは騎士にあるまじき卑劣な手口を用い、しかし暴威に晒され次々に散っていた。
「不意打ち、伏兵、援軍。虚を突くのが好みの敵か、それもまた面白い」
 炎が、悪魔の咆哮が、鉄塊の轟音が響く戦場で、龍人は呟いた。金色の瞳に映るは、性懲りもなく来やる獲物の群れ。数は四、いや五。龍は、牙を剥く。

 がしゃり、がしゃり、がしゃり。剣を担ぎ、一糸乱れぬ統制のもと、亡霊どもが進軍する。数メートル先に敵影あり、敵はひとりだ。であれば手勢を召喚し――待て。あの男は、どこに消えた?
 ガシャアッ!! と、すさまじい破砕音が闇をつんざいた。敵影を見失った亡霊は、そのまま己の存在核をも失い消え果てる。遺されたのはひしゃげた鎧の破片、そして仁王立ちする龍の孤影。その姿が先ほどより一回り巨きく見えるのは錯覚ではない。2メートルを超える高みから、前傾姿勢を解いた龍は敵を見下ろしていた。
「よもや、今のを不意打ちとは言うまい」
 残る騎士は同期したような動きで身構える。なんだ、奴は何をした? ……簡単だ、ただ近づいて叩き斬った。それだけの動作が、亡霊どもには察知すら出来ず――。
「征くぞ。さあ、俺と殺し合え!」
 ――ゴ、ォオオウウッ!! たとえるならそれは、現代航空機のエンジンが近い。生粋の戦闘狂たるワズラの裡に燃える業炎が解き放たれ、あたりを薙ぎ払った音である。二体目の騎士が沈んだ。なんだ、こいつは? こいつの死角はどこにある!?
「言っておくが」
 左右同時の刺突。たとえ片方が阻まれようと残る一方が少なからぬ手傷を与える……与えられるはずの攻撃は、たゆまなき龍の尾と翼によって阻まれていた。それでも鱗は砕けている。そして、それが亡霊にとっての不運である。傷口から吹き出した炎は、剣を融かしてがらんどうの体を飲み込み、責め苛んだ、
「俺は油断も余所見もしない。全身全霊を以て挑ませて貰う」
 殺し合えとワズラが口にした以上、亡霊に拒否権はない。松明のように燃え盛る二、三体目の騎士をなぎ払い、疾駆。敵の攻撃、受ける、受けながら剣を返す。轟音、破砕、残骸を融かして払い、進む!
「さあ、来い。来い、来い!」
 バチバチと雷が爆ぜ迸る。極限の高揚がもたらした地獄の炎のプラズマ化。次の敵が、次の次の敵が来れば来るほど、それは燃え上がり火花を散らす。暴龍は止まらない、止められないのだ。

 戦いの決着が近づく。
 猟兵たちの嵐のような戦いぶりは、確実に亡霊の軍勢を払い、喰らい、砕き、燃やしつつあった!

成功 🔵​🔵​🔴​

北条・優希斗
後一息ってみたいだね。それなら手伝わせてもらおうか。
『妖剣解放』を使用。
仲間との連携・声掛けOK。
高速移動で周囲の宵闇の騎士団を斬り捨てる。
死角からの不意打ちや、伏兵の『殺気』を感知して対応。攻撃を『見切り』、『カウンター』で反撃を狙う。
また、『残像』で、敵の標的を分散させる。
此方からの攻撃は、ワイヤーによる『なぎ払い』で、一打を与えた後高速移動で踏み込んで二刀で『二回攻撃』を行い、斬り捨てる。
一撃で倒せるならそれでよし。そうで無ければ『二回攻撃』で確実に仕留める。
攻撃を躱しきれなければ『オーラ防御』や『武器受け』で負傷を最小限に抑えきる。
願わくば、鎧袖一触とならんことを。



●妖刀乱舞
 猟兵たちの各個撃破戦術は功を奏し、詭道を好む不埒なる亡霊騎士どもは足並みを崩していた。もはや敵は烏合の衆、前線に飛び出しては狩られ無へと帰するのみ。
 そして見よ。混迷極まる戦場、炎と鉄と爪とが交錯する荒野を、颯爽たる風が征く。否、それは風ではない。それほどまでに疾く、また鋭き刃を振るう新たな猟兵である。文字通りの剣風が縦横を高速移動するたび、敵は数を減らしていくのだ。
「さて、ひとまず周囲の連中はこれで……っと!」
 残心した北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は、刺すような殺気に素早く対応してみせる。流れるような動きで腕を振るえばフック付きワイヤーがそれに応じ、闇に乗じる伏兵を根こそぎ絡め取ってしまったではないか。
 だが敵も悪知恵が利く。伏兵を捨て石に、召喚者らしき騎士が迫る……しかし!
「!?」
 首なし騎士は混乱した。抜群のタイミングで不意を打ち、奴の背中を切って捨てたはず。だが逆袈裟を浴びた猟兵は、そのまま夜霧のように薄まって消えていく!
「悪くない狙いだね、けど俺を捉えるには遅い!」
 すでにそれを見切っていた優希斗は懐に潜り込んでいる。月光を浴び、鋭く輝く二振りの妖刀。その銘はそれぞれ『月下美人』、そして『蒼月』と打たれていた。
「もらった!」
 ひとつ、ふたつ! 今しがた騎士を惑わせた残像を再び生じさせ、剣閃が走る。ずるり、と音を立てて三分割された亡霊が、がらがらと地面に散らばる。それとともに、ワイヤーに囚われた伏兵もまた、ランダムな斬撃痕を生じさせて霧消した。
「……ふう」
 見事な業前、だが妖剣解放の代償は彼の寿命である。いかな超人たる猟兵とて、気軽に支払えるようなチップではない。

 外套を翻し、周囲を素早く警戒する優希斗。もはや敵影はないと見えた。
「ひとまずは、鎧袖一触と相成ったようだね」
 そこで優希斗はふと、空を見上げた。世界は違えど、夜の空はどこも変わらない。彼は、そこに煌めく月や星々を見るのが好きだった。
 ……二秒にも満たない天体観測。短く息を吸い、吐き、思考を切り替え直す。この星空の下、荒野を我が物顔で彷徨う首魁は未だ健在。本番はここからなのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●悪魔去りて、神来たる
 辺り一面に、がらんどうの鎧、あるいは剣だった残骸が散らばる荒野。炎を洗う寒風には、この上なく不吉な気配が漂っていた。
『…………』
 それは名馬よりもしなやかな体を持ち、しかしいかなる猛獣よりも凶悪な殺意を漲らせていた。青白い輝きを放つ幻獣が一歩を刻むたび、死した大地に緑が萌え出る。
 猟兵たちは言葉なしに察する。このオブリビオン――樹海の守護者とも、自然に仇なす復讐者とも云われる――は、神を驕っているのだと。なるほど、歩みとともに命を生み出す御業は、寓話に謳われる霊獣に比肩するだろう。
 だが、オブリビオンに未来を生み出すことはできない。骸の海より来たる簒奪者、形を成した過去。どのような能力を持とうと、奴らがもたらすのは未来の破滅だ。

『クォオオオオ――――!』
 月光が翳り、幻獣が吼えた。異常な速度で草木が伸長し、額に呪わしき数字を刻印された植物の魔へと撚り合わさっていく。
 自然の再生? 何を莫迦な。オブリビオンの所業は、永い時を経て蘇りつつある大地の養分を根こそぎ奪い、我が物としているに過ぎない!
 もはや亡霊の軍勢は無い。だがそれゆえに、この局面ではまた異なる戦術が有効となるだろう。力を合わせ連携することで、戦いを有利に進められるはずだ。

 今は遥か郷愁の彼方へ消え去りし、緑の沃野。
 荒野が辿るべき未来を守るため、驕れる幻獣を討て!
ゼイル・パックルード
養分を吸って我がものに、ね。なら俺の燃え盛る炎の糧になりな。それが食物連鎖ってもんだろ? …ま、死ななきゃいけないヤツってのはいるもんだ。

【POW】で対抗するけど、やっぱあんまり近づかないほうがいいみたいだな、特に蹄には注意しなけりゃダメらしいし、
まずはブレイズフレイムを当ててじわじわと相手の体力を削れるようにするのがいいか。

その後はできるならすれ違い様の隙を見て鉄塊剣で攻撃。すれ違い様も後ろ脚には注意しながら。

とはいえ炎で体力を削るため時間稼ぎメインでいい。こっちは大振りの武器だし隙を晒しやすいのはむしろこちらのほうだ。

止めは刺したいけど、最善はこれな気がするし最悪それは他のヤツらに任せるさ


北条・優希斗
ここからが本番だね。
仲間との連携・声掛け重視。
妖剣解放を使用、【先制攻撃】で【ダッシュ】で接近して【斬撃による衝撃波】で【鎧砕き】。
敵の攻撃は【殺気】を感知しつつ、【見切り】ながら回避するよ。
機会があれば【カウンター】で反撃。
出来なければ【オーラ防御】、【武器受け】で被害を最小限に抑えるよ。
後はワイヤー、双刀で連続攻撃を仕掛ける。
ワイヤーによる【フェイント】で不意を打ち、双刀で攻撃→【串刺し】にする。
隙あらば【二回攻撃】で追撃を。
状況によっては【鎧砕き】で確実に防御力を低下させる。
もし【戦闘知識】で弱点が索敵できたり【鎧砕き】が決まれば皆と共有を。
こう言った強敵には確実に負傷を蓄積させるさ。


ワズラ・ウルスラグナ
ふむ。自然再生か。
超常を用いる時点で自然でも何でも無いな。
せめて過去に返して自然の摂理に戻してやろう。

行動は基本、露払いだ。
植物人間をブレイズフレイムの『なぎ払い』で焼き尽くす。
仲間を庇い、武器受けや盾受けを駆使して支援するぞ。

隙在らば武器改造・防具改造で地獄の焔を武具に纏わせておく。
防御に回りつつ炎でカウンターを入れ易くする為だ。
仲間に延焼しても俺の意思一つで消せるからな、恐れずガンガン焼いていこう。

あと、木霊だな。
運良く見つけられれば渾身の一撃を叩き込む。
共有した五感を通して特大の苦痛と死の感触を届けてやろう。


ティティモルモ・モルル
草木が生えたと思ったら、また敵になったですねー。
今を活かしてるようで、その実殺してるような感じなんでごぜーましょうか。
あとでよく眠れるアロマとか作りたいんでそういうのは止めてほしーです……なくても眠れるですけど……。

あ。
そういうこと考えてたからかそろそろモルは限界みたいでごぜーます……。
他にも猟兵さんいますし……あとは全て託すですよ……。
(丁寧にマクラァンを抱いてオフトゥンにくるまってからパタリと倒れる。寝る)

(スヤスヤ眠る夢の奥、意識の深層部にて、そこに潜むUDCと共鳴。歌うような寝言で、【祈れ、祈れ、我等が夢で】。呪いの言葉を敵へと飛ばす。技能:封印を解く・歌唱・高速詠唱・全力魔法)



●前哨
 鋭い嚆矢が、幻獣の咆哮を斬り裂き疾駆する。鏃の名を、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)と云った。
「ふっ――!」
 鋭い呼気、遅れて剣閃ふたつ。幻獣までの距離およそ三間、それを二条の衝撃波が喰らう。無拍子からの妖剣解放は完璧に決まった形だ。
 妖刀を振り抜いた優希斗の周囲、植物人間四体に斬撃痕が刻まれ――バチンッ! と弾けた衝撃波の反動により、雲散霧消する。然り、剣風を浴びた幻獣は無傷!
「さすがに、一太刀でというわけにはいかないようだね!」
 身の丈をゆうに超える幻獣の像がブレた。突進、いや前肢による踏みつけ!
 これを見切っていた優希斗は横っ飛びに回避する。直後、轟音を立てて地面が砕け、あたりに土煙をばらまく。蹄だけでもこの威力、しかも奴には角まであるのだ。
 脳裏によぎった最悪の予想を振り払い、妖刀を構える優希斗。今の感じなら、回避からのカウンターは十分に可能と判断した。
 ……だが、幻獣は頭をこちらへ向けるだけで微動だにしない。何を狙っている? 周囲には土煙が立ち込めるものの、植物人間であれば発見は容易。そう、植物人間であれば――。
(まさか、『もう一種類』!?)
 答えに至り、実際にそれを発見した慧眼は見事。推察通り、土煙の中にはもう一種類の配下がいた。すなわち、木霊を返す半透明の妖精だ。なんたる潜伏能力か!
 妖精の動きは予想以上に疾い。防御を試みる優希斗だが、それが間に合わないこともわかっていた。幻獣は期待に眼を細め――そして瞠目する。地獄の業火が、妖精と獲物を包み込んだからだ!
『ク、ォオオオオオオ――!?』
 五感共有により伝わった苦痛に、幻獣がのたうち回る。一方で、炎に飲まれたはずの優希斗にそれはなかった。やがて視界が晴れれば、古傷だらけの龍の姿が現れる。
「たっぷり味わうがいい。特大の苦痛と死の感触をな」
ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)は牙を剥いて言う。死霊騎士の手口から見て、幻獣も搦め手を仕掛けてくることは読めていた。
「お前の高速移動ならば、奴の攻撃を避けるくれいは容易いだろう?」
 あちらが伏兵を用いるとすれば、自分ではなく優希斗に対して。緒戦を通しての信頼が正しかったことに、ワズラの声も僅かに弾んでいる。
「ブレイズフレイムなら俺を巻き添えにすることもない、ってわけですか。助かります」
「お互い様だ。奴もまだまだ元気のようだからな」
 然り、幻獣はいまだ健在である。奴が苦悶に暴れて地面を打ち鳴らすたび、あの植物人間が蔓延り、一体また一体と這い寄ってくるではないか……。

●合流
 だが。次々に生まれる植物人間は、横合いから吹きつけた業火を浴びて炭化していく。 ワズラは片眉を釣り上げるような表情をした。彼のブレイズフレイムではない……戦獄の焔は無骨ながらも荒々しい、いわば暴風というべきものである。
 対して今吹き荒れるそれは、たとえるなら砂漠の熱風だろうか。一切の容赦もなく、しかし自然の力強さを感じさせる猛炎。若々しさ、と言ってもいいだろう。
「養分を吸い取ってるだけはあるじゃねえか、よく燃えやがるぜ」
 ゼイル・パックルード(火裂・f02162)は、鉄塊剣を担いだ肩をすくめそう言った。
「迂闊に近寄れねえからな、遅れちまったぜ。旦那がたもやるじゃねえか」
 その言葉に、ワズラの眼が意味ありげに細まる。だがその隣、優希斗は別のところに注目していた。ゼイルが剣を握っていないほうの手で抱えているモノのほうに。
「ええと、ごめんよ。その子は一体……?」
 誰何したわけではない。なにせゼイルが抱えているのは、先の集団戦で見事な英霊を使役していたティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)である。ただし、愛用のマクラァン(魔導書である)を抱いてすやすや寝ているが。
「そうなんだよ!」
 いきなりゼイルが叫んだ。優希斗が先制攻撃を仕掛けていた間、その後ろではなにやらやりとりがあったらしい。
「こいついきなり枕抱えて寝始めたんだぜ? ていうか枕ってなんだよここ戦場だぞ!」
「んー……違うでごぜーます、マクラァンでごぜーますよー……ぐー」
 そういう話ではない。加えて言うと彼女はオフトゥン(媒介道具である)までしっかり装備しており、完全に熟睡モードだ。今の台詞も寝言な気がする。
「アロマとか作りてーですからー……自然破壊はやめてほしーでごぜーます……」
「んなもんなくてもぐっすり寝てるじゃねえかッ!」
 ゼイルのツッコミももっともだ。というかわざわざ抱えてきたあたり、実は彼は子供好きなのかもしれない。鉄火場にあるまじき雰囲気に、優希斗とワズラは苦笑いした。
「モルは限界でごぜーます……あとは猟兵さんたちに託すでごぜーますよー……ぐー」
「「マジか」」
「ふむ、であれば仕方あるまい。我らで露払いをするか」
「「マジか(ですか)!?」」
 予想外のワズラの言葉に、思わず二回連続でハモる優希斗とゼイル。だがワズラはティティモルモが持つ何かの力を察したらしい。最年長ということもあり、ゼイルは渋々その言葉に従い、ティティモルモを下ろしてやった。彼女はもう完全に寝ていた。

●交錯
 ……ともあれ、ひとまず三人(と熟睡中の一人)は、連携して幻獣に対処することを決めた。ワズラが与えた苦痛は筆舌に尽くしがたいものらしく、幻獣はいまだ苦しんでいる。それを守る植物人間数十体も、じょじょにこちらへ意識を向けつつあった。
「まずはダメージを蓄積させないと。先手は俺が行きます」
 優希斗の言葉に、ワズラが頷く。そして妖剣士は、龍の隣に立つゼイルを見て笑った。
「そっちはブレイズキャリバー同士でコンビだね。頼んだよ」
「任せときな!」
 今度は優希斗が頷き、新たにフック付きワイヤーを取り出した。妖剣解放により彼のオーラが変質……約二秒後、その姿がかき消えた。ワズラとゼイルもまた各々の武器を構え、あとに続く!
『クォ、オオオオオォオオオオオオ――ッ!!』
 地獄の苦痛と、それを味わわされた屈辱に、幻獣が吼える。それを聞くと、植物人間は近くにいた同族と絡みあい始める。合体し自分たちを強化するつもりか!
「そうはいかないな!」
 優希斗は言い、フック付きワイヤーを擲つ。集団戦の時と同じように、合体中の群れを絡め取る――かに見えたワイヤーは、そこから飛び出した一体の植物人間に防がれてしまった。結果として強力な個体を生み出せれば、捨て石も厭わぬのがオブリビオンである。
「やっぱりね。そうすると思ったよ」
 優希斗は笑った。然り、彼はすでにワイヤーを手放している。フェイントだ!
「「「!?!?」」」
 不意を突かれた植物人間どもは合体を解き、これを迎撃しようとした。だが甘い。その時にはすでに、優希斗の妖刀が振り抜かれている。双剣合わせて四連斬、さらに逆手持ちからの牙めいた串刺し攻撃!
「「「――――!!!!」」」
 ざわざわと、森の木々がこすれるようなそれは、奴らの絶叫か。合体中の無防備を突かれた群れは崩壊、中核を担っていた無傷の個体も、地面をのたうつ地獄の双炎に飲まれ、断末魔すらなく焼け焦げていく!
『クォオオオオ――!』
 ダカタッ、ダカタッ、と前肢で地面をひっかく幻獣。ショック状態から回復した奴は、猛然たる憤怒を以て猟兵たちを迎え撃つ。しかして、優希斗を追い抜いたゼイルとワズラに恐れはなし。減速せずに急接近する。
「で、どうすんだ旦那! ありゃ食らったらひとたまりもないぜ!」
「俺が先に征く」
「はあ!?」
 ゼイルが素っ頓狂な声を出したのも無理はない。鉄塊剣は巨大だがそれゆえに隙も大きい。優希斗ならばいざ知らず、あの突進を避けるのは自分たちには至難の業だ。腕の多寡の話ではない、得意とする戦闘スタイルの相性である。
 だが言葉通り、ワズラは速度を上げ先行する。幻獣はさらに二度地面をひっかくと、全身の筋肉を瞬発させ駆け出した。蹴り出した大地が爆裂するほどの加速力!
「さあ、俺と殺し合え!!」
 龍は哂っていた。あの他愛なき亡霊どもと違い、神を驕る幻獣のなんたる不遜なこと。超常を以ての再生など自然現象に非ず、ならばせめて骸の海へ還すが流儀なり!
『ブルルルルッ!!』
「「……!!」」
 ゼイル、そして、植物人間を全滅させた優希斗は見た。すさまじい轟音を立てて、幻獣と暴龍がぶつかりあうのを。そして見よ! ひび割れた大地を岩盤ごと引き裂く、伸縮自在の獣角! その余波だけでも、常人ならば身体を両断されることだろう。
 では正面からそれに挑んだワズラは如何に? ……二人が息を呑んだのは、その様にあった。彼は蹄に打たれ、角に裂かれ、しかし健在であった。新たな傷を負いながら、なおも隆々たる笑みを浮かべて!
「どうした、それで終わりか幻獣よ!」
『クォウルルルルッ!!』
 蹄、角、角、そして蹄! 完全に踏み潰し、地面のシミに変えてやろうと片前肢が振り上げられ……打ち下ろされる!
「ぬうんッ!!」
 ガギンッ!! 襤褸めいた『獄墨衣』の下、露わになる重厚な黒鎧。いまやそれは獄焔によって鍛え直され、煮えたぎるほどの熱を放っていた。
『ルルル……ゥウッ!?』
「サルヴァよ、咆えろ!」
 まるで大地の底よりマグマが噴き上がったようだった。夥しい古傷と、いましがた負った新たな傷跡の尽くから漏れる獄焔、それを纏いし龍神の如き剣戟である!
「とんでもねえなありゃあ。負けてられねえ!」
 ゼイルもまた哂い、跳躍した。下から幻獣の片肢を掴むワズマと、その頭上を行く傭兵。それぞれの金眼が交錯し、理解する。自分たちは同類なのだと。
「隙さえ出来りゃあよお! オラァッ!!」
『クォオオオンッッ!?』
 鉄塊剣が、啼いた。砂漠の無慈悲なる太陽光を想起させる、全体重をかけた兜割りだ。
 幻獣の巨体を上下からほぼ同時の斬撃が引き裂き、そして焼灼する。傷口から叩き込まれた地獄の業火は、先の妖精越しとは比較にならぬ激痛を以て燃え盛る!
「なんと苛烈……いや、"火裂"な太刀筋だ」
 蹄ごと幻獣を押し返し、狂乱を逃れるため飛び退りながら、ワズラは呟いた。その隣にゼイルが到着し、ニヤリと笑う。それこそが俺の銘だ、とばかりに。
「畳みかけますよ!」
 優希斗の声は遅れて届いた。陣風と化した彼の斬撃は、二人のそれに比べれば遥かに軽い。だが疾い! ましてや、強烈な二連撃を受けた幻獣には捉えきれない。奴が悪あがきじみて蹄で地面を砕くたび、三日月を思わせる裂傷がその全身に一対ずつ刻まれるのだ。
「行くぜ、龍の旦那!」
「応!」
 そして金眼の戦士が二人、それに続く。あのしっぺ返しがよほど効いたのか、幻獣はもはや妖精を召喚すらせず、蹄で彼らを踏み潰そうとする。だが三人はそれをかいくぐり、あるいは一人が庇い、残る二人の攻撃を支援する。そのたびに敵は吼える!
『クォオオオオ――ッ!!』
「タフだなこいつ、まだ倒れねえのかよ!」
「体力は削れてるはずだよ。けど、スタミナ勝負となると少し分が悪いな……!」
「それも善き哉……とはいえ、好機が必要なのは確かか」
 息を切らしながらも、距離を取って三人が短く言葉を交わす。どうする、とばかりにゼイルが視線を向ければ、ワズラは頷いた。
 好機は来る。彼の見込みが確かならば。眠り姫がそれを届けてくれるはずなのだ。

●眠りの壁を超えて
 ティティモルモは睡眠が大好きだ。であるからして、彼女が睡眠をより快適に、より気持ちよく過ごすために妥協しない性質を持つことは、眠たげな普段の様子からするとアンバランスではあるものの道理とも言えた。
「くぅ……くぅ……」
 そんな彼女にとって、オフトゥン(媒介道具である)とマクラァン(魔道書である)はまさに愛用の品。こんな鉄火場でもぐっすり熟睡できる見事な一品である。ふわふわぬくぬく、そしてふくふくもっふもふだ。まあ、なくても寝れるのだが。
 ……そう。いかにぼんやりマイペースであれど、彼女はれっきとした猟兵である。黒き少女の歌声は世界すら従え、時には天変地異を引き起こす。だがそれだけが彼女の力ではない。彼女にはもう一つの特徴がある。それは――。
「くぅ、くぅ……」
 少女は眠る。オブリビオンに命を奪われ続けた、未来を閉ざされつつある大地の上で。
「くぅ…………ぅ……」
 少女は眠る。ふわふわぬくぬくもふもふの、名状しがたき愛用品に包まれて。
「……lgtm…………tagn……」
 少女は眠る。そして歌う。それはあってはならぬ歌、この世に存在してはならぬモノに呼びかけ、讃え、呼び醒ます禁忌の詞。
「Vulgtm……Vulgtm……」
 風が止んだ。何かを恐れるように。月を隠す黒雲はなお青ざめ、星々もその響きを恐れた。眠りの壁の彼方、少女が共鳴せしモノ、その微かなる気配にすら慄いて。
「fhtagn……。ゔぉるぐ、とむ……ゔぉるぐ……」
 奇妙な音節を以て少女は謳う。おお、巫女よ。"彼ら"に声届かせる黒き童女よ。過去なきもの、眠りの壁を越えし幼子よ。歌え、歌うがよい、そして祈るがよい。
『ゔぉるぐとむ……ゔぉるぐとむ、っごたぁ、ふたぐん。いあ ゔぉるぐとむ っごたぁ』
 祈れ。祈れ。"彼ら"を謳い。
 祈れ。祈れ。"我等"が夢で!
『ゔぉるぐとむ ゔぉるぐとむ っごたぁ ふたぐん』
 風が。風が吹き始めた。忌まわしき風……呪われた言の葉を寒々しき己に載せ、異界の如き旋律が、風となってそよぐ。踊る。戦場へと這いずっていく。おお、おお……!!

●岐路
「あ? なんだこりゃ」
 初めに気づいたのはゼイルだ。歌が響いている。どこから? 思わず視線を巡らせかけ、己を覆う影に我を取り戻す。見上げれば幻獣の蹄は頭上に!
「それは看過出来んッ!」
 ゴォオウン――! 打ち下ろされたストンプを、割って入ったワズラが受ける。ミシミシと音を立て両足が地面に埋まり、クモの巣状のヒビを走らせて砕けた。
「お前の相手はこっちだよ!」
 すかさず双角による追撃を仕掛ける幻獣、その注意を引くため優希斗が斬撃を叩き込む。煩わしげに角を振り回し、三人を振り払うオブリビオン。時折巨体はよろめくものの、その体力は半分を残していると見えた。
「旦那! 好機ってのは……」
「来たぞ」
 歌が響いた。彼らにとってはそれは、かすかな『歌らしき何か』に思えた。だが優希斗は、妖刀が微かに刃を鳴らしたのに気付く。……共鳴しているのか? 何に?
『――!! ク、ォオオ!? ォオオオオ――!?!?!?』
 もっとも激烈な反応を見せたのはオブリビオンであった。
 苦悶とも、憤懣とも違う。それは恐慌に似ていた。見えぬ何か……否、音を恐れ、奴は振り上げかけた前肢を下ろし、狂乱した!
「これは……一体」
「よくわかんねえが、行けそうだな!」
「ああ。仕掛け時だ」
 疲労困憊の身体に鞭打ち、三人は攻勢に臨む!

 ここが死闘の岐路だ。あと三手……否、二手。終局は近い、
 起死回生の一撃、それを以て幻獣を討つのは誰だ。
 彼らか、彼女か、はたまたあるいは――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

北条・優希斗
ここまで来たら一気に攻めるよ。
仲間との連携・声掛けを密に。
植物人間は皆に任せて【残像】を残すほどの【ダッシュ】でボスに肉薄する。
その後、ワイヤー・双刀で【早業】を軸に【フェイント】からの【串刺し】、【二回攻撃】で追撃して【傷口を抉る】。
ボスに刀が届いた所で【夢月蒼覇斬】を使用。
外れたら攻撃が止まってしまうこの攻撃、確実に決める。
防御・回避は【見切り】つつ、【残像】を使用して敵の認識をずらす。
【殺気】を感知して回避を重視。
躱せなければ【オーラ防御】、【武器受け】で被害を最小限に抑える。
【木霊を返す半透明の妖精】の気配については【第六感】で察知。
・・・・・・これでケリがつくといいね。


御狐・稲見之守
おおなんとまあ、荒ぶる鹿神といったところか。
もっとも、オブリビオンなれば情け無用ファイヤーじゃ。

[WIZ]草木燃えようといずれ芽が萌え出でる。
UC「荒魂顕現」、炎の嵐を起こして植物人間ともどもを消し炭にしてやろう。
【範囲攻撃】【属性攻撃】ならワシ得意じゃもんネ。
そぅれ燃えろよ燃えろ炎よ燃えろ。
え、暴走? うん、まあそんな時もある。

……よし、退避ー!


ラハブ・イルルヤンカシュ
ん、こいつは、さっきまでの亡者と違って……とても、美味しそう

前の悪魔の姿のまま突っ込む
反撃は[野生の勘][第六感]で回避か鱗で[盾受け][武器受け]していなしつつダメージ覚悟の[捨て身の一撃][生命力吸収][吸血]で敵を『喰らう』
「ん、いただきます」

喰らったら【顕現せし暴食の悪魔竜】を発動
三つ首の魔竜に姿を変える

『その存在…残さず喰い尽くす』
三つ首からそれぞれ[マヒ攻撃][毒使い][属性攻撃]をのせた三種類のブレスで動きを封じて接近、爪の[串刺し]で捕らえ、
[生命力吸収][吸血]で噛みつき、喰いちぎる

弱肉強食が自然の摂理であるならば
敵以上の『化け物』となって、敵をただただ、捕食すればいい


ティティモルモ・モルル
(漏れ出すは寝言、呪言、朗々と)

眠れ、眠れ。
我等と繋がれ、世界を繋げ。
現世の内へ、幽世の中へ。
(こちらへと誘う。こちらへと惑わす。心を許せと囁きかける。技能:誘惑・おびき寄せ)

さぁ、さぁ、心配することはない。
一人にはならない。独りにはなれない。
お前の「友」も、ほら。
此処に。
(歌にて紡ぐは【眠りに応えて共に在れ、我等が世界】。呼び出すものは誰しもの友。共にゆこうと強請る寂しがり。技能:封印を解く・歌唱・高速詠唱・全力魔法)

(終われば、一度起きて周りを確認)
おー……。
討伐完了済みのご様子。託して良かったーでごぜーます。
じゃーもう少し寝ていても大丈夫ですねー……。
(オフトゥンにくるまる。ぬくぬく)



●焦燥
 猟兵たちの猛攻は熾烈、ならば幻獣の反撃は激甚の一語に尽きた。
『クォオオオオオオ――ッ!!』
 一撃が刻まれれば大地を砕く蹄が振り下ろされ、二撃が放たれれば双角が雲を薙ぎ払う。今や『地虫の荒野』は面影を失い、土砂が崩れた岩山の如き凸凹の様相を呈している。
「本当に、しぶとい……!」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は呻いた。呼吸が荒い……だがそれを整えようと少しでも足を止めた瞬間、右斜め後ろから鋭い殺気を感知する。振り向かずに、手首のスナップで両断。半透明の妖精が斬撃の木霊を零しながら解け消えた。
「みんな! 大丈夫かい!?」
 仲間達の安否を気遣うために叫んだ声は、ブウン、という風切り音にかき消される。見上げるまでもない、幻獣が地形ごと自分を踏み潰そうとしているのだ!
 フック付きワイヤーを手先が霞むほどの早業で投擲。石碑じみて隆起した地面に鈎を引っ掛け、跳躍。コンマゼロ秒後、ズンッ!! という衝撃音とともに新たなクレーターが生まれた。優希斗はすでに、石柱を軸にワイヤーを用いて円を描き退避している。
 こうなっては、妖剣開放による高速移動は障害物との激突を起こしかねない。追い詰められた獣ゆえの本能か、幻獣は荒野を蹂躙することで彼の得手を封じたのだ。
(だが、奴は確実に負傷している。近づきさえできれば!)
 さらなる寿命の酷使を覚悟しかける優希斗――だがそこで、彼は忌まわしい音を聞いた。がさがさ、ざわざわと木々が揺れるような葉擦れ。植物人間の再々召喚……!
「……やるしかない。みんな、俺が懐に飛び込む! 雑魚を……」
『クォオオオオオ――ッ!』
 それはさせじと幻獣が吼え、あたりをランダムに蹄で砕き、角を振るう。それ自体は避けられる、仲間たちも。"だからこそ"幻獣はそれを連発しているのだ。回避を強制し、生まれた空白で少しずつ配下を召喚し続け……今、好機は成った。
 無論、緒戦でやってみせたように、この場に居る猟兵ならば掃討は出来よう。だが隙を生が生まれる。仮に反撃が決まったとして、おそらく一人……否、二人は倒れることになろうか。優希斗は歯噛みした。いっそ自然の助けでもあれば。蹂躙された大地の逆襲、はたまた神の鉄槌でもいい。何か、何かあれば――。

●神来たる
「我成す一切神事也――」
『――!!』
 激戦の中にあって、その祝詞は厳粛な響きを以て全ての耳に届いた。
「天裂け、地割る神業。畏み、畏み、奉願祈るべし」
 ずしんと、大地が揺れた。幻獣の蹄がそれを為したか? 違う。天地万物、森羅万象に至るまで宿りし鬼神が、女の祝詞に応えたのだ。
「そらどうした獣よ、はよう仰ぎ奉るがよいゾ。なにせワシ、お前と違って"本物"じゃからな」
 ずしん。再び大地が揺れる。白衣に緋袴を纏い、その上から千早代わりに羽衣を流す女が一人。御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)である。
『……!!』
 獣は震えていた。恐怖? 畏怖? ……怒りにだ。オブリビオンは本能によって自らの天敵を識る。なおも足掻くこの小虫ども、だが一番気に入らぬのはこの狐だと、獣は憤激した。何と言った? 神。神だと? 荒野を統べる我が身を差し置いて!
 ずしん。三度大地が揺れる。怏々たる幻獣の凝視を浴び、稲見之守は薄い笑みすら浮かべていた。からかうような調子で肩をすくめ、はあとため息をつく。
「改過自新の気配なし。まあわかっておったけどな、カッコつけたかっただけじゃし!」
 軽い調子で言えば、霊符を手繰り幻獣へ突きつける。
「所詮その身はオブリビオンなれば、情け無用ファイヤーじゃ」
 ――ずしん!!
 ひときわ強く大地が揺れれば、まるで地の底から逆巻くようなつむじが立ち上る。剣指に挟まれた霊符が風にさらわれ、千々に乱れ燃え上がる!
 ゴォウ――ッ!! と。たちまち炎の嵐が現出し、大地斜面を這いずる植物の魔どもを飲み込んだ。金眼の戦士たちが繰り出す地獄の炎と、似て非なる炎の渦。それは蛇めいてとぐろを描き、幻獣にすら襲いかかる。
『ッォオオオオッ!!』
 獣は啼いた。呪言がもたらす悪夢を浴びたその時と同じように。すなわち、根源的な畏怖に慄き鳴いた!

●その身、神でも悪魔でもなく
「そらどうした、さっさと行けそこな若人」
「えっ! あ、お、俺かな? ええと――」
 偉そうな稲見之守に対し、優希斗は狼狽えた。稲見之守は渾身のドヤ顔を浮かべる。特徴的とすら言える自信に溢れた表情だ。
「それとも何か、ワシに見惚れたか? ええんじゃゾ、恥じることはない」
「た、たしかに今のはすごかった、かな……はは」
 真面目に答えるとこじれそうなので、優希斗は濁しておくことにした。先の荒魂顕現が驚嘆すべき御業であったことは、事実なのだし。
「で? 征かんのか剣士よ。待っておったのであろう?」
 優希斗は我に返る。そうだ、ここは戦場。植物人間を焼き払った炎の嵐は幻獣を苛んでいる。一気呵成とばかりに、仲間たちも攻撃を仕掛けていた。すなわち、好機。今ならば……!
「ありがとう、お稲見さん!」
 短くそう言い、優希斗が奔る。その場に一瞬生まれた残影を見、妖狐はふうむと顎をさすった。
「あれ、なかなかイケメンじゃなあ。やっぱりわかる者はわかるのじゃな、ワシの魅力――」
「ん、美味しそう」
「そうじゃろそうじゃろ、ワシは美味しそ……んん!?」
 腕組みして頷いていた稲見之守は、新たな声に耳と尻尾をこゃーん!と立てて驚いた。そこにいたのは悪魔……否、ラハブ・イルルヤンカシュ(悪魔でドラゴン・f04872)だ。
「え、ワシ? いまワシのこと言ったのか?」
 やや怯え気味に問いかけた妖狐に対し、しかし無表情な少女はふるふる首を振った。そして視線を嵐の彼方へ戻し、ん、と短く言った。
「ああ。ふむ、偽りとて鹿神を喰らうか。まさに悪魔の如き所業じゃナ」
「ん、そうだね」
 返る声は平坦なもの。それが当然とばかりに頷くと、悪魔めいた少女は大地を砕いて跳躍し、戦場へと馳せ参じる。その背を見送り、稲見之守は超然と趨勢を見守ろうと……。
「……なんでこんなとこに童が寝とるんじゃ1?」
 この騒ぎでいまだ熟睡をキメる黒き少女に気付き、またしても驚いた。

●決着
 一方、鉄火場!
 いまだ勢いを衰えさせぬ、いやささらに烈しさを増す嵐の中、地獄の炎がふたつ荒れては獣を焦がす。幻獣はいまや完全に隙を晒していた。
「よし、行ける!」
「ん、私も行く」
 優希斗の言葉に、追いついたラハブが応じる。二人は束の間視線をかわし、再び敵を見据えた。彼らにはそれで十分だった。目的は同じなのだから!
「これでケリがつくといい……いや、決着させてもらう!」
『ォオオォオオオオ――!!』
 妖剣開放は衝撃波すら起こす剣速を可能とする。だがそれでは足りぬ。ならば重く分厚い一撃を見舞うか? ダメだ、あの金眼の戦士たちに敵う膂力はない。では。
「躍るよ、蒼き月の舞をッ!」
 幻獣は獲物を見据えた。来るか。良かろう。貴様ごとき、こんな嵐があろうと一捻りで――思考は途切れ、驚愕が次ぐ。あの小蝿がいない、一体どこに……!
『ッ!』
 斬撃が生じた。だが易い、あの男の剣は皮は裂くが肉には届かぬ。
 斬撃が生じる。いじましきかな、だが無為なり。斬撃が生じる。……こそばゆいぞ、蝿、斬撃が生じる。これは……斬撃が生じる。斬撃が生じる。斬撃が生じる。
 斬撃が生じる。斬撃が生じる。斬撃、斬撃、斬撃! 斬撃!!
『ク、ォオオオウッ!?』
 ざん! ざん、ざん、ざんざんざんざんッ!!
 捉えきれぬ! 一撃一撃は確かに軽い、だが! なんだこの疾さは! 妖精たちは放つ端から切り裂かれ、その数倍の剣戟が我が身を斬り裂く。猟兵たちにすら剣士の姿は見えぬのだ!
「……ッ!!」
 色のある風となった優希斗自身は、しかし決死の覚悟で刃を振るっていた。この剣、無尽にして不縛、ゆえに一度踏み込めば、仕手自身にすら止められぬ。もしも無理矢理に足を止めれば、速度は彼に牙を剥こう。
 このために優希斗は待っていたのだ。そして掴んだ、もはや逃さぬ! ごうごうと嵐の裡に烈風が吹き荒ぶ。
 その銘を夢月蒼覇斬、ここに成る!
 幻獣は考えた。どうする、どうすればよい? どうすればこの天敵どもを振り払える!? 狂乱し、狂惑し、そして視た。まず初めに、悪魔のシルエットを。
「ん、いただきます」
 それは呟いた。そして来た。眼前に飛び来たった。何をする、貴様まさかその爪で……!?
『ッッッグォオオルルルッ!?』
 ぞぶりとグロテスクな音、そして滂沱の如き血涙。正面から幻獣の頭部に飛びついたラハブは、躊躇なくその爪をもって獣の片目を抉り出し、喰った!
『~~~~~!?!?!?!?!?!』
 痛みに、怒りに、驚きに獣は暴れる。その前肢を縫い止めるのは二振りの鉄塊剣。首を遮二無二振ろうとすれば、そのための筋肉を陣風たる刃が断ってしまう。そして残る隻眼は、不幸にも直視していた。もごもごと咀嚼せし悪魔……おお、おお!
「やっぱり美味しい」
 そいつは哂っていた。ざわざわと像が歪めば、やがて魔竜がそこにいた。怯えすくむ隻眼を、威風堂々たる三首六眸が睨めつける。神でも悪魔でもない。これは……この化物は、相対してはいけないモノだ! 幻獣は喉を絞り悲鳴をあげる。
『その存在……残さず喰い尽くす』
 魔竜の、否、変異したラハブの咆哮はそう云っていた。爪に次ぎ、ぞぶり!! と食い込む幾重もの牙。幻獣は、いよいよ喚叫する。厭だ厭だと体をよじれば、魔竜は食らいついたまま毒のブレスを噴出し、以て体を拘束する。
『!!!!!!! ~~~~~!?!?!?!?!』
 ぶちぶちと音を立て、首の筋肉を噛みちぎられるのがわかった。なお悪いことに、いまだ続く斬撃の雨はその胴を裂き、呪われしはらわたをこぼれ落ちさせる。なぜだ。なぜ我が身が、斯様な、斯様な……!!
『ォオオオオ、オォオオオオオオ――――!!』
 断末魔の叫びは、牙と刃と炎と嵐の中に沈んで消えた。

●幻獣だけが視たもの、あるいは終わらぬ悪夢
 ――はた、と。
 幻獣は、冥い闇の中に屹立していることに気づいた。あの煩わしく忌まわしい天敵どもも、我が身を苛むいかなるものも、無論苦しみも痛みも何もない。
 幻獣は嗤笑した。いかにも! 我が身は神なれば、あのような醜態はありえぬこと。さては彷徨い歩くうち、微睡みが見せたひとときの夢か……。
「そう、これは夢。アナタの夢」
 幻獣はびくりと巨体をすくませた。冥い闇のなか、黒き少女が音もなく浮かんでいる。睨めつける……我を誰と心得るか。我こそは、我こそは。我は……誰だ?
「――――。」
 黒きナニかは、オブリビオンにすら理解しえぬ言語で何かを云った。それはこう囁いているように思えた……『眠れ』と。『眠りて繋がれ』と。
「――――――――。」
 心配することはない。眠れ、眠れ。さあ、繋げ、繋がれ。そして中へ、裡へと。
 幻獣はへたりこんだ。四肢に力が入らぬ。頭を上げることすら億劫だ。だが鋭敏たる知性は叫んでいた……起きろ。従うな。寝てはならぬ。眠ってはならぬ!!
「いあ くふうあやく ゔぉるぐとむ っごうたぁ ふたぐん」
 ここには奴らはいない。我が身は独り。ならばいいのではないか? あの忌まわしい夢を忘れよう、安らかな微睡みを――否、否。違う。これは。これは、なんだ?
 かろうじて獣は目を開けた。見開き、恐怖した。なんだあれは。なんだあれは! 闇の向こう、あそこから来たる、来ているあれは、"あれら"は、なんだ!?
「くしゅぐ ふたぐん ぶぐとらぐるん ぶらー」
 異界めいた呪文は告げていた。もはやお前は独りではないと。独りなどにはさせないと。這いずり来たるものらが呻いていた。呪いの言葉、永劫に魂を苛む音韻を。
『……!! ……!!!!』
 獣は鳴こうとした。否、哭こうとした。それすらも許されない。闇がその身を包んでいく。黒き巫女はそれを一瞥もせず、ふわりと浮かび上がり――。

「……んー」
「おお、起きよったか」
 寝ぼけ眼をこすり、覚醒したティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)。長い髪の妖狐が、その顔を覗き込んでふっと笑った。
「呑気であるのう、もう終わったゾ?」
「おー……。託して良かったーでごぜーます」
 ティティモルモはそういうと、もぞもぞオフトゥン(媒介道具である)をまたかぶり始めた。
「じゃーもう少し寝ていても大丈夫ですねー……」
「いや寝るんかい!?」
 ズビシッ。思わず入れた稲見之守のツッコミも、微睡むティティモルモには届いていなかった。彼女は『あの夢』を見ていない。もはや必要が、ないのだから。

●神は死んだ、悪魔は去った
 猟兵たちは立ち尽くしていた。幻獣は斃れ、ようやく戦いが終わったのだ。そこには、ただ炎の嵐のみが渦巻いている。
 誰ともなく顔を見合わせ、笑った。骨の折れる戦いだった。だがこれで目的は果たしたのだ、少し休んでもいいだろう。……ところで、なんであの炎の嵐は消えないんだ?
「おーい!」
 遠くから声がした。ぐっすり寝ているティティモルモを抱えた稲見之守である。何かを叫んでいるが、嵐がやかましくて聞こえない。というか、なんで解除してないんだ? 問い返そうにも嵐がやかまし……ん? 大きくなってないかあれ?
「おーい! 早く! こっちへ来い! 退避じゃ退避!」
 ああ、うん、そうだよね。「制御が難しく暴走しやすい」って書いてあるもんね。あんだけ大がかりに発動したら、暴走しちゃうか。うん仕方ない仕方ない。
「はーやーくーせーんーかー! あーほら猟兵後ろ後ろー!!」
 ……仕方ないわけあるか!! 誰かが叫んだ。そして全員慌てて駆け出す!

「草木燃えようといずれ芽が萌え出でる、問題はない!」
「なるほど、一理ある」
「ん、お腹すいた」
「あれだけ派手にやっておいてかい!?」
「すぴー……」
「こいつまだ寝てんのかよ……」
 荒野を慌てて走る猟兵たち、その談笑を妨げるものはもういない。

 神は死んだ、悪魔は去った。
 見下ろすはただ、雲間から顔を覗かせし月ばかりなり……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『ポーションを作ろう!』

POW   :    誰も行ったことの無いであろう場所へ探しに行ってみる。

SPD   :    近隣の森を広範囲で探ってみる。

WIZ   :    新たな材料を使って新ポーションの作成方法を考えてみる。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●黎明
 夜が明けてみれば、驚嘆すべき風景が広がっていた。
 それは逆巻く嵐がなした御業か。はたまた、猟兵たちが文字通りに流した血汗の染み込みか?
 砕け爆ぜた荒野。その裂け目から、か細くも力強きいくつもの蔦。あるいは芽……。
 蹂躙者を取り除かれ、正しく命の巡り始めた大地は、まるで猟兵たちにその生命を誇示するかのように萌え出ていたのだ。
 あの幻獣は、何を求めて荒野を彷徨っていたのか。おのが配下でそこを埋め尽くすつもりだったのか。あるいは、我が意のままに蠢く、歪んだ樹海の迷宮を創ろうとしていたのか。
 もはやそれは誰にもわかるまい。確かなのは、彼らが切り開いた路の先、そこにはたしかにぽつりぽつりと森や林が生まれ始めていたということだ。
 『地虫の荒野』は思ったよりも広いらしい。さらに奥へと足を伸ばせば、あるいは幻獣とて見逃した風変わりなスポットがあるやもしれぬ。
 森に足を踏み込めば、そこには初めに聞いたとおり、この世界では貴重な薬草や果実の類が瑞々しく生っていよう。
 戦いは終わった。自然を堪能して休息するも、目当ての薬剤を仕立ててみるも全ては自由。

 日常を堪能せよ。それが勝者に与えられるべき特権なのだから。
北条・優希斗
使用能力:SPD
ポーション作りか・・・・・・あんまり考えたこと無いんな・・・・・・。
まあ、近隣に何かポーションに使える良い材料が無いかどうかを探すための【情報収集】を行う位かな?
と言うわけで近隣の森を散歩しながら広範囲で探って見ることにしよう。
あっ、お疲れ様の意味も込めて耀ちゃんも誘うよ。
・・・・・・もし森の中で食べられそうなものが見つかっても俺だけじゃ食べきれないだろうし、仮に沢山材料とかが見つかって俺一人で持ち運べなくなっても困るしね(笑)。
どうせなら最近この辺りで話題になっているポーションについて近隣の人達に聞いて、その原材料になる草とか木の実を積極的に探してみようかな。


ワズラ・ウルスラグナ
ほう。聞いてはいたが、自然が蘇っているのか。
オブリビオンと違って理に従い蘇るのであれば善いものだ。

そうだな。一応仕事の内ではあるし、俺は俺が出来る事をしよう。
つまりは踏破だ。
可能な限り荒野中を歩き回り、何が有るか、危険は無いかを確認する。
得た情報は仲間へ共有する。薬だ地図だは俺には作れないからな。

荒野も好きだが、緑豊かなのも嫌いではない。
歩き回り、飛び回りつつも、風景を楽しんで次の戦いの為の活力としよう。


ティティモルモ・モルル
もう朝でごぜーますか……。
まだねみーです……。

うー……よく眠れそうな落ち着くアロマ、作りたいんでごぜーました……。
ううー……たぶんこのきれいな花と……ハーブっぽい草と……おいしそうな果物の皮……。
(適当にそれらしき材料を確保)

あとはこれを……ふわぁ……。
…………白鐘さんいねーでしょうか……可憐な白鐘さん……。
(きょろきょろしながら呼びかけ。技能:誘惑・おびき寄せ・存在感)

(来てもらえたら)
これらからオイル絞って……無水のエタノールといい感じに混ぜて……アロマ的なやつ作るのおねげーします……。
(言い終わるやいなやオフトゥンにくるまる)

モルはちょっと休むです……。
(メザマシィンを8時間後にセット)


御狐・稲見之守
ちぃとやりすぎたかの…ともあれ終わりよければ全てよし。
うんおっけーおっけー。

[SPD]
この世界にもワシの知る森の姿があるのは嬉しいゾ。
どれちょいと散歩でも…なにをどうするというワケでもない。
森の中を歩くだけでも楽しいものよ。

風が吹けば草花は踊り木々はざわめき歌う。
虫たちは食事を探して地や幹を這っているであろうし
鳥たちは梢に留まり愛を囁き合っているやもしれぬ。
ややもすれば、獣たちがワシを取って食おうなどということも。
そこには王や神の治世などなく、ただあるがままなり。

そしてこうして歩くワシもまた森の一部たり得る。
ま、年寄りの戯言であるナ。



●厄災去りて
「へえー、思ってたよりいい景色じゃない!」
 手でひさしを作り、白鐘・耀(可憐な猟兵・f10774)が言った。そして振り返り、猟兵たちに笑いかける。
「事件解決お疲れ様、感謝するわ。私も手伝えたらいいんだけどねえ」
 その言葉に、ワズラ・ウルスラグナ(戦獄龍・f00245)が頭を振った。
「仕方あるまい。グリモア猟兵とはそういうものだ」
「そうだね。だから耀ちゃんも誘いたかったんだ。お疲れ様の労いってことで」
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)が微笑む。とはいえ提案者はもう一人いた。彼の隣で眠そうにあくびするティティモルモ・モルル(フトゥンフワット・f03305)だ。
「それに……可憐な白鐘さんにはまだ大事な仕事があるでごぜーますよー……」
 彼らは全員グリモア猟兵だ。そのためか、一同には奇妙なシンパシーが感じられる。例外は、それっぽい顔でうんうん頷いている御狐・稲見之守(お稲見さん・f00307)ただ一人。誰ともなく物言いたげな目線を向け、口を開こうとすると。
「終わりよければ全てよし、じゃゾ。おっけーおっけー」
 と、すかさず割り込んだ。戦闘中の暴走をなかったことにするつもり満々だ。
「……まあ、いいんじゃないかな。ともあれ俺は森を調べてみようと思うんだ」
「では、俺は荒野を見て回ろう。何か危険なものがあるかもしれん」
「真面目じゃナ、ワズラ殿は。ならばワシも森へ行こうかの」
「まだねみーですけど……アロマ、作りてーです……」
 リラックスした様子で和気藹々とする一同。話が落ち着いたところで、耀が手を叩いて言った。
「んじゃ、しばらく自由行動ってことで!」

●夢の跡
「ふむ、こんなところか」
 それからしばらくあと、太陽が中天に差し掛かる頃、ワズラは荒野を一望できる丘に立っていた。赤茶けた大地に、点在する緑。なによりも吹き抜ける風が心地良い。
「こうして理に従い蘇るのであれば、自然は善いものだ」
 誰に言うともなくひとりごちる。生きることは戦いであり、この世の全てはそれに繋がる。
 そんな独特の価値観を持つワズラにとっては、あの死闘も、この日常も、等しく心地いい時間なのだ。金色の瞳が緩く細まる。
「オブリビオンよ、今なおこの景色を、芽吹く命を求めるならば、また蘇ってくるがいい。その時はまた、俺と殺し合ってもらおう」
 獰猛な笑みを浮かべ、龍が言った。風に乗って届く緑の薫りは、傷だらけの体に次なる戦いへの活力を与えてくれる。
 この大地が元通りの沃野となるには、気が遠くなるほどの歳月がかかるだろう。だが本来ならばオブリビオンに喰らわれるはずの未来を、彼らは取り戻したのだ。
「俺としては、このひび割れた大地のほうが好みなのだがな」
 だからといって、青々と茂る緑を嫌っているわけではない。殺し合いだけに意味を見出すならば、あの簒奪者どもと違いはないのだから。
 戦獄龍の銘を持つ男の論理は、単純に見えて複雑、矛盾しているようで一貫している。彼は、そういう男だった。
「このあたりは十分か。では次は、あちらを見て回るとしよう」
 ばさり、と翼を広げ、そよ風を皮膜で打つ。雲ひとつなき青空に、獄焔を秘めし龍が舞った。今はしばし、自由なひとときを楽しむために。

●芽吹く命
 事前情報の通り、森の中には瑞々しい果実や薬草の類が自生していた。
 たしかに珍しく貴重なのだが、おかげでもともと薬調合に素養のない優希斗は苦労を強いられた。そこで役に立ったのが稲見之守である。
「あれはすり潰して軟膏にするのがよい。あちらは身も美味いが、皮を乾燥させて煎じるのがよかろう。苦いので子供に飲ませるときは注意が必要じゃがナ」
「さすがは妖狐だね。ああ、じゃああれなんかはどうなのかな? 村の人達の話だと……」
 目端の利く優希斗が材料を捜し、稲見之守が知識を与える。その足取りは探索というより散歩に近く、彼らは肩の力を抜いて森の緑を楽しむ。
 その後ろをひいこらついてくるのは、(自称)可憐な少女の耀だ。目に見えてバテていた。その後ろでは、ティティエルモがふらふらと鮮やかな花に近づいている。
「あ、あの二人思ったより足早いわね! モルちゃん、ちょっと休憩……」
「うー……このきれいな花も収穫でごぜーますー……」
「話聞いてないわね!?」
 あっちへ行ってはこっちへ、と自由すぎるティティモルモに翻弄される耀。ところで材料には『たぶん』とか『っぽい』など不安になる言葉がついているのだが、ほんとに大丈夫なんだろうか。
「このおいしそうな果実の皮も……ゲットでごぜーますー……」
「ええと、これで全部かしら? また随分集めたわねえ」
 ティティモルモが素材の山を差し出すと、耀はしゃがみこんでそれ受け取る。すると、黒い少女はのんびりした声で言った。
「可憐な白鐘さんに……お願いがあるんでごぜーますよー……」
 小言を発しかけた耀の口がニッコニコの笑顔になる。やれオイルをどうだ、無水エタノールがこうだ、と手順を説明されても満面の笑みである。完全にティティモルモの思惑にハマっていた。
「というわけでー……アロマ的なやつをおねげーします……」
「ウフフフ、まかせなさい! 可憐な耀ちゃんが完璧にこなし、って、あら?」
 言うや否や、オフトゥン(媒介道具である)にくるまるティティモルモ。そしてメザマシィン(シンフォニックデバイスである)を8時間後にセット。
「モルはちょっと休むです……」
 スヤァ。
「いや寝るんかーーーーーーーーい!?」
 驚くべき安眠であったという。

●自然の理
「……そっとしておこうか」
「そうじゃナ」
 先を行っていたふたりは、遠くから聞こえてきた叫び声をあっさり切り捨てた。仕事があるから仕方ないよね。
「それにしてもどの世界でも、森の景色とは変わらぬものよ」
 木漏れ日を見上げ、稲見之守が言う。耳をすませば、木々のざわめきに紛れ、虫たちの鳴き声も聞こえてくる。
「今はまだ獣や鳥までは戻ってきておらぬようじゃが、いずれはこの森が……否、この荒野が命で溢れるじゃろう」
「そうだね。おかげで食べ物を集めても、俺一人じゃ持ち帰れなさそうだよ」
 だから仲間たちがいて助かった、と笑う優希斗。地道な情報収集のかいあって、彼の集めた素材は多くの人々を救うだろう。
「まさに手付かずの自然、ってわけだ。こういうのも、悪くないね」
「うむ。王や神の治世などなく、ただあるがままなり。そしてこうして歩くワシらもまた、森の一部たり得る」
 稲見之守の言葉には、不思議な含蓄があった。優希斗もつられて視線を上へ。きっと夜には、澄み渡った星空が見えるに違いない。
「ま、年寄りの戯言であるナ」
「でもわかる気がするよ……って、ん?」
 優希斗が首を傾げた。年寄り? この子はどう見ても年下……いや、まさか。
「もしかして、ものすごく年上……です、か?」
「お? なんじゃ、もしかしてワシのこと童だと思うとったのか、んん?」
 その反応も慣れたものらしく、途端に面白そうな笑みを浮かべるお稲見さん。優希斗は困った様子で頭をかく。
 そこへ、探索を終えたワズラがやってくると、ふむ、と首を傾げた。話の流れはわからないが、なにやらだいぶ緩い雰囲気である。ならば善き哉。
「楽しげだな。俺も話に混ぜてはくれないか」
「おおワズラ殿、よう戻られた。いや実は北条殿がのう」
「いやいや。そんなことより、ほら、探索の結果とか話しましょうよ!」
 優希斗の慌てぶりに、ワズラはくつくつと笑い……近づいてくる足音に目を向けた。熟睡中のティティモルモを抱え、へとへとになった耀である。
 可憐とは言いがたい雑草まみれの姿に、誰ともなく吹き出した。地団駄を踏むさまがよけいにおかしい。
「まったく、猟兵とは誰も彼も愉快で個性的だな」
 探索結果を話すのはもう少しあとでもよかろう。ワズラは内心でそう呟き、穏やかな時間を楽しんだ。
 それこそが彼らの掴んだ未来なのだから。

 翌日……貴重な薬剤と新鮮な食糧が、近隣の村々に山ほど届けられた。
 『冒険者』たちによる探索の結果と収穫は村人たちの生活を豊かにし、その噂は瞬く間に全土へ広がっていく。いずれ、この地方はかつての賑わいを取り戻すだろう。
 枯れ果てた大地を蘇らせたのはなんだったのか? 多くの歴史家や学者が激論を交わしているが、未だはっきりとした答えは出ていない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月05日


挿絵イラスト