●なぜ人は、夏に怪談を好んで話すのか
怪談話をしていると、霊の類を引き寄せると聞く。
話をしている相手だけが、その話を聞いているとは限らない。
だが本当に。引き寄せられるのは、霊の類だけなのだろうか?
とある海辺に立つロッジ。月明かりが見守るそこでは、若い男女のグループが怪談話に花を咲かせていた。
何者かもわからぬ『それら』が聞き耳を立てているとも知らずに、彼らは怪談話を続けている。
『ナーニガ、キャーコワーイダリア充コノヤロウ』
『吊リ橋効果ノツモリカ……ギョリギョリギョリィ……』
『サマーリア充許スマジ……』
もしかすると、耳を澄ませたならば『それら』の聞こえたかもしれない。
しかし。怪談話も山場で、大盛り上がりの彼らにその声が聞こえるはずもなく。
『『『……恐怖ノドン底ニ叩キ落トシテクレヨウゾ
!!!』』』
『それら』がそう発したと同時に、ロッジの明かりが消えた。
その後には。激しい物音と、誰ともつかぬ悲鳴が夜闇に響き渡った。
●シリアスブレイク再び
「お前らは、怪談話は好きか?」
グリモアベースの片隅。淡い空色の髪の青年が、集まった猟兵達を前にして唐突にそう訊ねた。
「悪ィ、いきなり何だって話になるよな。順を追って説明するぞ」
青年――ルイは、今回猟兵達を集めた理由を説明し始める。
「UDCアースで事件が起きるのを予知したんで、その解決を頼みたいんだが……」
ルイ曰く。とある海辺に立つロッジで、夏の余暇を楽しんでいる民間人が、UDCの集団に危害を加えられる事件が発生することを予知したという。
なので民間人に被害が出てしまう前に、猟兵達でUDCを引き寄せて倒してしまおうという話だ。
「UDCが仕掛けてくるロッジはだ。UDC職員に取りつけて貸し切りにしておいてあるから、心配はいらねーよ」
これで心置きなく囮になれるだろと、ルイは笑った。今回はどうやら、夜に怪談話を楽しんでいる所をUDCが狙ってくるそうだ。
故に。UDCを誘き寄せる為に、そのロッジで怪談話をして盛り上がってきてほしいとのこと。
「……そんなワケで。怪談話は好きかって最初に聞いたんだよ」
好き嫌いが分かれるからなと、そうルイは零す。
そしてある程度怪談話が盛り上がった所で、電灯が明滅したり、置物が動き出したり、ラップ音が聞こえてくるという。
「ま、所謂ポルターガイストって奴だな。ビビらせにかかってるんだろ。だが日が出るまでどうにか持ち堪えろよ」
それに耐えたり、止めようとしたりしていれば、その内に太陽が地平線から昇る。
太陽が昇ると、姿の見えなかったUDCがその実体を現す。実体さえ捉えたならば、後は倒すだけだ。
「元凶のUDCの姿が見えたらもうこっちのモンだからな。サクッと倒してこいよ……あと、ロッジ内では蝋燭使用は厳禁だぞ。燃えたら面倒なコトになるし」
そう言って。ルイは猟兵達を送り出した。
雪月キリカ
お目にとめて頂き有難うございます。
はじめまして、もしくはまたお会いしました。夏でも長袖な雪月です。
というか、朝が寒くてストーブを点けてしまう時もあるという。
今年の夏は寒いですね。エルニーニョ。
それはさておき。
1章は日常となっております。
場所はとある海沿いのロッジ。時間帯は深夜。ロッジ内は和室です。
皆様には怪談話をして頂きます。
怪談は創作、実体験など自由ですが、版権モノのお話を怖い話として話すのはおやめ下さいませ。
誰かと御一緒の参加の場合は、fから始まるIDとお相手のお名前、お相手の呼び方があると迷子防止になります。
話が怖かったら布団に潜り込めばいいと思います。
2章は冒険です。
ポルターガイストに耐えたり、止めようとしたり、説得してみたりして下さい。そうしている内に日が昇ります。
枕は飛びます。
3章は集団戦です。
日に当たり、実体を現したオブリビオンとの集団線が待っています。
戦闘はロッジの外になります。海に投げたり、投げ込まれたりとか出来ます。
お察しかもしれませんが、ネタ成分を含んでいます。
どうぞお気軽にご参加くださいませ。
第1章 日常
『怖い話、好きかい?』
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POW : 又聞きの怖い話をする
SPD : 実体験の怖い話をする
WIZ : 創作の怖い話をする
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1章プレイングの受付は13日(土、終日)迄になります。以降の送信は、返却開始まではロスタイム扱いになります。ご参加をお考えの場合は参考にして頂けると幸いです。
話すも聞くも、お好きなようにどうぞ。導入は11日の夜に追加の予定です。
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其処は最低限の家電の稼働音が嫌に響く、簡素な畳の部屋であった。
円形の卓袱台に、映ることはないであろう時代錯誤なブラウン管のテレビ。
海が臨める窓辺には、何故か空の金魚鉢が置かれていた。
押入れには寝具が仕舞われているが、今夜は睡眠の為に使われる事はないだろう。
……さて、どんな話をしようか。
舞音・ミケ
(獲りたての魚にかぶりつきながら)
…さっき魚獲ってた時思い出した話。
この時期になると海の怪談よく聞くけど…
(がつがつ)…ある海水浴場で、泳いでると足を何かに掴まれる、見ると赤目で長い髪の女が恐ろしい形相で睨んでる、ってことが何回もあって遊びに来る人減っちゃって。
それで詳しい人呼んで視てもらったら、「ここに霊はいない」って。
霊はいないってわかったのに遊びに来る人もっと減ったって。ふしぎ。(もぐもぐ)
●猫が語るに
「……さっき魚獲ってた時に思い出した話」
直ぐそばの海で獲ってきたのだろうか。獲りたて新鮮なアジらしき魚にかぶりつきながら、ミケ(キマイラのサイキッカー・f01267)は語りはじめる。
「この時期になると海の怪談、よく聞くけど……」
ある海水浴場でのこと。
泳いでいる最中、何者かに足を掴まれるという事が多発したそうだ。
その被害者達曰く。驚いて掴まれた足の方を見ると、赤い目をした長い髪の女が、恐ろしい形相で睨んでいたと口を揃える。
そんな事が度々起これば、その海水浴場へ遊びに来る客も減るというもの。
このまま放っておいては誰も来なくなってしまうと、急遽霊能力者を呼ぶことになった。
しかし海水浴場を訪れた霊能力者は、予想外の言葉を口にしたのだ。
「『ここに霊はいない』って」
ガツガツと魚を食らいながら、ミケはそう言った。
つまり。その海水浴場には『霊』などいなかったのだ。
「……でも、霊はいないってわかったのに遊びに来る人もっと減ったって。ふしぎ」
ミケはもぐもぐと魚を咀嚼した後に飲み込むと、話を終わらせる。
では、『霊』は居ないと言うならば。一体何者が足を掴んでいたのだろうか。
生きているナニモノかだろうか?
正体不明な存在への恐怖と想像が、客の足を遠ざけさせたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
亜儀流野・珠
(文字がびっしり書かれた札のようなものをあちこちに貼りながら)
…ああ、これは念の為だ!怪談話をすると「呼ぶ」と言うからな!
…こんな話がある。
10年以上前の写真を然るべき手順の後に燃やし、その煙を額に受ける。
するとその夜、その写真の場所の夢を見るらしい。
遠き地への帰郷、今は会えぬ人達との再会。それが叶う訳だ。
だがその夢には必ず「会った事も無い者」が1人紛れ込む。そして一回だけ話しかけてくる。
旧知の友のように。通りすがりの善人のように。
絶対にそれに返事をしてはいけないそうだ。
返事をするとどうなるかを語れる者はいない。答えを知る者達は皆まだ夢の中かもな。
うっかり者は真似せんほうがいいな!
●おまじない
――ぺと。ぺと。
これは目に見えぬ存在の足音等ではない。珠(狐の恩返し・f01686)が室内のあちこちに、文字がびっしりと書かれた御札の様なものを貼っている音である。
「……ああ、これは念の為だ!怪談話をすると『呼ぶ』と言うからな!」
御札らしきもの効果で軽くホラールームと化しているが、寧ろその方が雰囲気があって良いのかもしれない。
手持ちの御札を全て貼り終えたところで、珠は座布団に座ると語り始めた。
「……こんな話がある」
十年以上前の写真を用意する。
それを然るべき手順の後に燃やし、その煙を額に受ける。
するとその夜に、燃やした写真の場所の夢を見るらしい。
「遠き地への帰郷、今は会えぬ人達との再会。それが叶う訳だ」
それだけならば良いのだろう。しかし、これには続きがある。
その夢には必ず『会った事も無い者』が一人紛れ込むそうだ。
その者は一回だけ、旧友の様に、もしくは善人の様に話しかけてくるという。
だが。それに返事をしてはいけない。
返事をした者が、どうなるかを語れる者は存在しないと、珠は言う。
それは、その答えを知る者達は未だ皆夢の中……という事を示しているのかもしれない。
「うっかり者は真似せんほうがいいな!」
珠はからりと笑うが、割と洒落にならない、怖いおまじないの話である。
おまじない。それは『御呪い』とも書くことを忘れてはいけない。
大成功
🔵🔵🔵
榛・琴莉
怪談、怪談…
これ、実体験なんですけど。
久しぶりに祖父の家に行ったら、庭に木が増えてまして。
亡くなった知人が、息子さんの誕生日に植えた木らしいんですけどね。
その奥様に頼まれて、半ば押し付けられる形で引き取ったんですって。
なんでも、『眠れないから』『でも切るのは怖い』と。
その頃から、祖父の家で足音がするんですよね。
庭の、その木が見える縁側で。
パタパタ、パタパタと。子供の足音。
祖父は「悪い子ではないから。遊びたい盛りなだけで」と、あまり気にしてないようでしたが。
昔から、桜の木の下には死体が埋まっているって言うじゃないですか。
そうゆうことらしいですよ、つまり。
…ああ、はい。
祖父、見えるそうです。
●――が、埋まって
「怪談、怪談……」
琴莉(ブライニクル・f01205)は頭の中で、それに当てはまるものは無かったかと思巡らせると、或るコトを思い出す。
「これ、実体験なんですけど」
そうして琴莉は、自身が体験した現象を語り始めた。
琴莉が久々に祖父の家に行った時、その庭に木が増えていた。
その木は祖父の亡くなった知人が、息子の誕生日に植えたという木らしい。
何故それが庭に植えられていたかというと。その知人の奥方に頼まれ、半ば押し付けられる形で引き取ったからだという。
頼まれた理由は、その木が在ると『眠れないから』。でも、『切るのは怖い』からだそうだ。
そして、その木を引き取った頃から。その現象は起こり始めた。
「その頃から、祖父の家で足音がするんですよね」
パタパタ、パタパタと。それは軽く、子供のものだと予想出来た。
その足音は、その木が見える縁側から聞こえて来ていて。
だが琴莉の祖父は足音が聞こえても、『悪い子ではないから。遊びたい盛りなだけで』と、あまり気にしていなかった。
それを聞いた周囲の者は、一つ引っ掛かりを覚え琴莉へ視線を向けて。
琴莉は向けられた視線が何を聞きたがっていたのかを察し、答える。
「……ああ、はい。祖父、見えるそうです」
さて。引き取って来た木と、その頃から聞こえ始めた足音。最後に琴莉の祖父の言葉。それらは話を聞く者の頭の中で、糸を繋ぎはじめる。
しかしそれに構わず淡々、琴莉は続ける。
「昔から、桜の木の下には死体が埋まっているって言うじゃないですか。そうゆうことらしいですよ、つまり」
その木の下には。――の――が、埋まっていたのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
SPD
自分、たまに誰かに体を乗っ取られている気がするんです…。
ある時は気が付いたらトゲトゲの肩パッドが付いた鋲付きの皮のベストにフリル付きのスカートを履いていまして…後で聞いたところによると「世紀末釘バットアイドル『いなづまちゃん』」と名乗っていたそうです。
他にも…何故か自爆装置の付いたコンロを持って暑さ我慢大会に出場していたり…気が付いたら、辺りが爆発四散してました。
後は…巨乳に異常な敵意が芽生えて…そもそも、女性の価値を胸で判断するのが間違っております。天の声さんもそう思いますよね?多分、私達は同士だと思いますので。ひんぬー教団とか作られて崇められても嫌ですが
おや?自分何か言ってましたか?
●操るモノ
「自分、たまに誰かに体を乗っ取られている気がするんです……」
真剣な面持ちで、それを告白するのは零(テレビウムのパラディン・f03921)だ。
零はそう思うに至った経緯を語り始める。
ある時。気が付いたら、零は棘だらけの肩パッド付の鋲が飛び出た皮のベストを羽織り、フリル付きのスカートを履いていた。
それを着たような記憶は零にはなく、後に聞いた話で零は、「世紀末釘バットアイドル『いなづまちゃん』」と名乗っていたらしい。
またある時は、何故か自爆装置付きのコンロを持ち、暑さ我慢大会に出場していたり。
またまたある時は、気が付いたら周囲が爆発四散していたと、零は語る。
何故そのような大会に出場していたのか。何故周囲が残骸だらけだったのか。その理由はわからない。記憶がさっぱり抜け落ちているのだから仕方がない。
「後は……何故か巨乳に異常な敵意が芽生えて……」
そう言った所で。零の雰囲気が一変した。
「そもそも、女性の価値を胸で判断するのが間違っております」
口調は敬語のままではある。しかし何処か女性らしく、そして巨乳許すまじ、という巨乳に対する敵意が滲んでいた。
「天の声さんもそう思いますよね? 多分、私達は同士だと思いますので。ひんぬー教団とか作られて崇められても嫌ですが……」
マシンガンの如く紡がれるその言葉はそこで途切れた。備え付けの冷蔵庫の扉が、いきなりバァンと開いたからだ。
その音で零ははっとする。そしてきょとんと、訊ねた。
「おや? 自分、何か言ってましたか?」
……何者かが零に乗り移った瞬間を、目の当たりにしてしまった猟兵達であった。
大成功
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第2章 冒険
『襲い来る怪奇現象』
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POW : 物理的に押さえ込む
SPD : お札など呪術道具を使う
WIZ : 怪奇現象を起こしている存在へ説得をする
👑11
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初めは、電灯の明滅からだった。
そして貼った筈の御札が、突然ひらひら剥がれ落ち。ごとりと、窓際の金魚鉢が何故か落ちた。
テレビは砂嵐を映し始め、ラップ音が室内に響き渡る。
いきなり押入れが開くと同時に、布団が雪崩落ちて。
誰かが手に取ろうとした枕は、宙に跳ねた。
見えぬ存在による怪奇現象が、猟兵達を襲う。
だが、夜明けまで。この部屋で過ごさねばならないのだ。
それまでどうやり過ごすか。其々は行動に移してゆく。
榛・琴莉
【WIZ】
これが噂のポルターガイスト…
金魚鉢を拾っておきます。
割れ物が飛んで来たりしたら危ないですからね。
まだ姿は見えないでしょうけど…
【聞き耳】を立てて、何か、敵の情報でも探ってみます。
物音から、大きさや数が推測出来るかもしれませんし。
…何か妙な単語が聞こえましたね。
リア充?許すまじ?…ふぅん。
昨今では、リア充は主にカップルに向けられがちな言葉ですが。
元はリアルが充実している人の事を言うんでしたっけ?
残念ですけど、私のリアルは充実しちゃいませんねぇ。
なんせ猟兵ですし?社畜と言う程ではないですが、お仕事で忙しいですし?
ええ、そうですね。貴方たちのせいですね。
夏休み期間くらい大人しく出来ません?
●心を響かせる事だけが、説得の手段ではない
「これが噂のポルターガイスト……」
誰も投げていないにも関わらず勝手に宙を舞う枕や、水道の蛇口から勝手に水が流れ出すのを目の当たりにして、琴莉(ブライニクル・f01205)は独言る。
琴莉は落ちた金魚鉢を拾い上げると、そのまま抱える。金魚鉢はガラス製ゆえ、そのまま放っておいたら今度は壁や他の誰かにぶつかりかねないからだ。
未だ、怪奇現象を起こしている存在は姿を現してはいない。だが見えずとも、物音から情報を集めることは出来ると聴覚を研ぎ澄ます。
……すると何か、鳥が羽ばたく様なばさばさとした音が聞こえて。
逆に、足音らしき音は聞こえない。
つまりその存在が実体を現した場合、地に足をついている可能性は、ほぼゼロと言ってもいいだろう。
それらの音は多方向から聞こえてきている。その存在は複数であると考えて間違いなさそうだ。
『リア充……許スマジ……』
がたがたとした物音に混ざり、耳に入ったその言葉。それは、この場に居る誰の声でもなかった。
「……ふぅん」
リア充。それは昨今では主にカップルに向けられがちな単語である。
だが、元は。
――リアルが充実している人の事を言うんでしたっけ?
自身はそうであるかと問われたならば、それは……
「残念ですけど、私のリアルは充実しちゃいませんねぇ」
琴莉の近くに誰か居たならば、彼女の周囲の気温が微かに下がったのを、感じ取る事が出来ただろう。
「なんせ猟兵ですし? 社畜と言う程ではないですが、お仕事で忙しいですし?」
いつだって。事件を起こす存在というのは、時を選ばない。
それでも、それらに対応するのが猟兵だ。夜中であろうと、世間で言う長期休暇期間であろうと。
「ええ、そうですね。貴方たちのせいですね」
口を衝いて出たその言葉たちは、今この空間に存在している見えないモノ達へと向けたもの。今、事件を起こしているモノが存在する故に、猟兵である琴莉は現場に居るのだ。
『リア充ガ居ルカギ……』
「夏休み期間くらい大人しく出来ません?」
『ピエッ……』
謎の小さい悲鳴が聞こえたと同時に、琴莉の周辺ではポルターガイスト現象が止まった。
そんな都合は知らないと言わんばかりに冷たく言い放った琴莉に、見えぬ存在は隅でぷるぷると震えた……のかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
山梨・玄信
何か物音がするからと来てみれば…何じゃこれは?
ラップ現象?ああ、猟兵が50人以上集まって歌いながら戦ったとかいうアレか。む、違うのかの?
【SPDを使用】
ほう、怪奇現象か。破戒僧じゃが、お経は覚えておるからの。試してみるのじゃ。
飛んで来る物体は見切りと第六感で動きを読み、UCのスピードで躱すぞい。その間もきっちりお経は唱え続けるのじゃ。
「寿限無じゅげむ、五劫の擦すり切きれ、海砂利水魚の、水行末・雲来末・風来末、喰う寝る処に住む処、藪柑子の藪柑子、パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの、長久命長助」
(ツッコミお願いします)
●破戒僧だから
「……何じゃこれは?」
何やら物音がするからやって来て見れば、室内の物品類が宙を舞い、家具類が音を立てると言う現場に出くわした玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)。
なんとなく外へと繋がるドアノブを回してみたら、がちゃがちゃと言うだけで開く事はなかった。閉じ込められたのだ。
外からは開くのに、中からは開かない。心霊現象あるあるである。
何やら家が鳴く音も聞こえる。誰かがまたラップ現象が起きたぞと言ったのを聞いて、玄信は首をひねった。
ラップ現象……猟兵が五十人以上集まり、歌いながら戦ったというアレだろうか……と思ったのだが、現場を見る限り誰も歌っていなかった。
「む、違うのかの?」
……ラップという単語は同じではあるが、違います。
閑話休題。
さて、怪奇現象に対してどう対応するか。
戒律を破った身ではあるが、それでも『経』は頭の中に刻み付けられている。それを試してみることにしようと、玄信はすぅっと一呼吸をした後に、それを唱え始めた。
「寿限無じゅげむ、五劫の擦すり切きれ、海砂利水魚の、水行末・雲来末・風来末、喰う寝る処に住む処、藪柑子の藪柑子」
瞬間、しーん、と静まり返った。
……のだが、その静寂は直ぐに破られる。剛速球の枕が玄信に向かってきたのだ。
『オ経ジャナクテ落語ノ前座噺ジャネーカ!!』
何処からともなく聞こえてきたツッコミの声と共に、他の方向からも枕が飛んで来る。
玄信は今投げた場所に居たのは残像じゃと、目にも留まらぬ速さで枕を躱しつつお経……いや、正確には違うのだが……それを唱え続ける。
『躱スンジャネェエエエエエ!!』
見えない存在、怒り心頭である。姿が見えて居たならば、青筋が浮きまくりブチブチと切れまくっていただろう。
「パイポ・パイポ・パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの、長久命長助ボフゥ?!」
何が起こったか予想は出来るかもしれないが、かっこよく寿限無を唱え終えたと同時に、玄信の顔面に剛速球の枕がクリティカルヒットしたのである。
見えない存在による、執念と渾身の物理的ツッコミだ。玄信は丁度よく崩れていた布団の山に、背中からぼすんと倒れこんだ。
とりあえず、彼は無傷であると言っておく。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
POW
誰ですか!透明化の魔法で枕投げしてるのは!え…違う?
あ、顔の画面は砂嵐にしておきますね。(特に意味はありません)
盾と武器を構え、飛んで来る物は叩き落とします。死角からの物にも備え、全身をオーラで覆います。
「ほう、この程度での攻撃でパラディンに喧嘩を売るとは…舐められたものですね」
適当に走り回り、突然何も無い空間にメイスを気絶攻撃で振り回します。
これをあちこちで繰り返します。(他の人に当たらないようには気をつけます)
「対透明化魔法使用者に有効な戦術…のはずです。ラノベで読みました」
怪我した人はUCで治します。
「これもパラディンの仕事です」
アドリブ歓迎です。
●私はひんny(規制が入りました)
「誰ですか! 透明化の魔法で枕投げしてるのは!」
室内を行き来する枕達を躱しつつ、零(テレビウムのパラディン・f03921)は枕を飛ばしている者へ向け口を酸っぱくする。
だが、室内に存在して居た猟兵達は誰も透明化などしていなかった。
それはつまり、枕投げの犯人は猟兵ではないという事で。
「え……違う?」
そう、違います。あれ、このフレーズ何処かで……?
とりあえず、零は顔の画面を砂嵐にすることにする。特に意味はない。これで旧世代のテレビ画面とお揃いである。
砂嵐の画面のまま零は適当な場所へ向かうと、虚空へ向けてメイスを振る。
ある程度振ったならば他の場所へ向かい、また振るう。
零は他の猟兵達にはメイスを当てないように気をつけながら、それを繰り返し続ける。
「対透明化魔法使用者に有効な戦術……のはずです。ラノベで読みました」
見えない存在に対して、消臭剤を虚空に向かって吹き付けるとその気配が消えるという話がある。それと似たような理論なのだろう。
そこにひゅん、と一つの枕が零へ向かい飛んで来た。
だがそれは、零の身体にぶつかる直前に明後日の方向へと弾き飛ばされる。あらかじめ纏っていたオーラが、枕の軌道を逸らしたのだ。
「ほう、この程度での攻撃でパラディンに喧嘩を売るとは……舐められたものですね」
ちゃきっと零は盾とメイスをその手に持つ。完全に徹底抗戦の構えである。
そんな零の様子を見て、見えぬ存在もスイッチが入ってしまったのだろう。
何ならこれはどうだと言わんばかりに、多方向から枕が零へと襲いかかって来たのだ。
まるで獲物を見つけたサメの如く飛んでくる枕達。零はそれらを盾で受け流し、メイスで叩き落とし、時にはメイスをスイングさせて弾き返す。
それが聞こえて来たのは、いくつめの枕を処理した時だろうか。
『ンナァッ?!』
誰とも知れない悲鳴と共に直前に弾き返した枕が、宙で何かにぶつかった様に落下した。
それと同時に、枕の雨は止む。姿の見えぬ枕投げの首謀者に命中したのだろう。
零は少しの間は枕が飛んでくる事はないだろうと、枕投げに巻き込まれた者が居ないか辺りを見回す。そして布団に倒れ込んでいる猟兵を見つける。
とりあえず気絶をしているだけで無傷ではあるが、治療を施した。
「これもパラディンの仕事です」
その猟兵は、暫くしたら眼を覚ますだろう。
大成功
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亜儀流野・珠
なんだなんだ、折角楽しんでいる所を邪魔しないで欲しいな!
身近に霊と仲の良い奴がいるし怖いとかは無いが…ただ鬱陶しい!
札は剥がれたか…だがそれでいい!
ついでにまだ貼ってなかった札も撒いて舞わせて…奥義「綴り結い」だ!
札の文字を鎖とし元気な家具たちを縛り押さえ付けるぞ!
割れたり壊れたりしそうなもの優先だ。ガラスが散ったりしたら危ないし、壊れたら勿体無いからな!
後は…鎖を蜘蛛の巣のように張り巡らせてみようか。鎖の素材はたっぷりあるしな!
モノが動き辛いように。もし犯人がいるなら引っかかってくれれば面白いんだがな。
それにしても怪談話を聞くのは中々に面白いものだな!
また機会があったらやりたいものだ!
●御札の使い方
「なんだなんだ、折角楽しんでいる所を邪魔しないで欲しいな!」
頭上を舞う枕たちや、突然砂嵐になった旧世代のテレビ。それらに対して、珠(狐の恩返し・f01686)は少し不機嫌になる。
とても身近に霊の類と仲が良い者が居る故に、今起こっている現象に対して怖いという感情はないが、只々鬱陶しい。
それに。貼った御札は剥がれ、床に散らばっていた。
「札は剥がれたか……だがそれでいい!」
そう独言ると珠は突然、未だ貼り付けていなかった御札をばら撒く。
ひらひらと舞ったそれらは満遍なく畳の上に落ちて、まるで絨毯の様だった。それを見て満足気に珠は頷く。
「万の言の葉に縛られろ!!」
そう発したと同時に、数多の御札の文字がしゅるりと宙に舞い上がった。それらは他の文字達とも連なり合い、鎖になる。
長く伸びた文字の鎖。それはがたがたと鳴り止まぬ家具達へ伸びると、巻き付きその動きを封じた。
「ガラスが散ったりしたら危ないし、壊れたら勿体無いからな!」
散らばる白紙に、あらゆる場所に纏わり憑く文字という、軽くホラーじみた光景が広がった。だがタネと仕掛けが分かっている分、恐怖感は減る。
さて、あからさまに何かの意思によって動かされていた家具類は動きを封じた。今度はその何かの行動をどうにかして封じる事は出来ないかと、首をひねる。
そして何気に見遣った部屋の角に、蜘蛛の巣が張っているのを見つける。そうだ、蜘蛛の知恵を使わせてもらおう。
珠は思いついた案を実行すべく文字の鎖を伸ばすと、それを蜘蛛の巣のように張り巡らせた。
こうすれば、室内で悪さをしている見えぬ存在が掛かるかもしれない。後はそれを待てば良いのだ。だが、それは思いの外早く起こった。
『ナンジャコレェエ?!!』
その声がした方に視線を向けると、虚空の文字の鎖がみょいんみょいんと伸び、揺れていた。
……明らかに何かが、引っかかっている。姿は見えないが。
『離シヤガレワレェ!』
じたばたと暴れるような音と、引き延ばされる文字の鎖。鎖は限界まで伸びると、ぶちんと切れてしまった。
見えない存在は、割と脳筋なのかもしれない。
呆気に取られていた間に鎖は千切れてしまったが、それはまた繋ぎ直せば良い。
「それにしても怪談話を聞くのは、中々に面白いものだな!」
すぐに思考を切り替えて。また機会があったらやりたいものだと、珠はからから笑ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 集団戦
『セキセイさま』
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POW : ガブリジャス
【嘴で噛み付くこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : あわだまおいしい
戦闘中に食べた【あわだま】の量と質に応じて【全身の羽毛】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : セキセイまみれ
【沢山のセキセイインコ】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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気がついたら、窓の外が薄ぼんやりと明るくなっていた。
夜明けだ。もうそんな時間になっていたのだ。
これで室内で起こっていたポルターガイスト現象は、収まると誰もが思った……のだが。
室内に黄緑色のふわもこが増えていた。
知っている者も居るだろう。またお前らかと思うものも居るだろう。
セキセイさま達だ。このふわもこ達が、姿を消しポルターガイスト現象を起こしていたのだ。
『アッ、ヤベッ』
セキセイさま達は猟兵達の視線に気付いて、どきりとした顔をする。そして――。
『ニゲルワヨォオオオ!!』
その掛け声と同時にセキセイさま達は一斉に窓へと突撃する。
強行突破するのかと思いきや、セキセイさまは器用に窓の鍵を開け、続々と外へと逃げ出した。
あのふわもこ達が向かった方向は浜辺だ。逃さぬべく、猟兵達は後を追う。
榛・琴莉
「鳥」
あー…お久しぶりです。
相変わらず、可愛らしい姿してますね。
以前お会いした時とは活動方針が違う様ですけど。
【武器改造】でHaroldを個々に分散、逃げた鳥を【追跡】してもらいます。
砂浜で鬼ごっこ、リア充らしいでしょう?
…嗚呼、そうそう。
数時間前、仕事ばかりでリア充じゃないって、私言ったんですけど。
仕事が充実しているのもリア充に入るらしいですね?
知人(AI)が検索してくれまして。
御用、失礼しました。
「だからって許しはしないんですけど」
この充実感、嬉しくも何ともありませんので。
あちらの攻撃に【カウンター】する形でUC(氷の津波)。
せっかく怪談を語ったんですから、存分に冷えてもらいましょう。
「……鳥」
ガスマスク越しに見える浜辺を逃げ回るふわもこ達とは、琴莉(ブライニクル・f01205)は以前遭遇した事があった。その時とは活動方針が全く違う様ではあるが、姿は相変わらず可愛らしい。
「あー……お久しぶりです」
『オ久シブリッテ言レテモ、コッチハ知ラナイワヨォオオ?!』
抑揚無く挨拶をする琴莉とは相反する様に、半ば叫びながら返すセキセイさま。
今のセキセイさま達は、あの時のとは違うというのは理解している。
だが、知らないと言われようとも。今回も情け容赦なくふわもこ達を排除するのが琴莉の『仕事』なのである。
そんなやり取りをしながらセキセイさま達を追うのだが、琴莉一人では沢山を追いきれない。二兎追う者は一兎をも得ずという。
――それならば、二兎以上も追える様にすれば良い。
だから。琴莉は『Harold』を分散させた。
水銀の様に不定形なHaroldの身はぷつりぷつりと分散すると、其々がまた鳥のカタチをとりセキセイさま達を追跡する。
「砂浜で鬼ごっこ、リア充らしいでしょう?」
Harold達のカタチは、翼のあるべき部位に脚が生えていたり、眼があるべき箇所に嘴が生えていたりと、拙く歪だった。
『イヤァアアアSAN値ガ削レルゥウウ!!』
『SAN値ゴリゴリ鬼ゴッコハ御断リナノヨォオオ!!』
セキセイさま達は逃げることに必死で、琴莉の声は聞こえていない。斯様なカタチの存在に追いかけられれば、そんな反応もするだろう。
Harold達はアワアワと逃げ惑うセキセイさま達をその爪で捕らえ、嘴で咥え込む。溶け合わぬその様は、橙と薄青の溶け合う朝焼けの空とは対照的だった。
「……嗚呼、そうそう」
数時間前に物品飛び交うロッジ内で、仕事ばかりでリア充ではないと語り掛けたが、AIの『Ernest』がリア充について電脳の海を検索したところ。
「仕事が充実しているのもリア充に入るらしいですね?」
……少し前に、Ernestはその様な検索結果をレンズに映し出してきたのだった。
Haroldに動きを封じられ、浜辺を転がるセキセイさま達から見れば。ゆっくりと近付いてくる琴莉は、まるで処刑人に見えた事だろう。
『ピェッ……!』
ぷるぷると震え、うるうるとした瞳でセキセイさま達は来ないでと哀願する。しかしそれを受けても、琴莉は歩みを止めることは無い。
今、こうして『仕事』で充実している。つまりリア充だ。
「だからって許しはしないんですけど」
けれどもこの充実感は、嬉しくも何ともない。
『イヤァアアア来ントイテェエエ!!』
絶叫と共に、セキセイさまは数多のセキセイインコを琴莉へ向け放った。
だが、その瞬間に。それまで静かに打ち寄せていた波が大きな津波となり、セキセイさま達をセキセイインコごと飲み込んだ。
その津波は、異様に冷気を放っていた。それもそのはず。普通の津波ではない。エレメンタル・ファンタジアにより発生した、飲み込んだ全てを凍らせる合成津波なのだから。
「せっかく怪談を語ったんですから、存分に冷えてもらいましょう」
悲鳴すら飲み込んだその波が引いた時。セキセイさま達は固く凍り付き、辺りには冷気が漂っていた。ご自慢のふわもふだった羽毛には霜が張り、朝日を受けてきらきらと輝きを放っている。
その側では。凝固点に達しなかったHarold達が、また一つになりはじめていた。
大成功
🔵🔵🔵
高柳・零
WIZ
なぜ鳥がこんな事を…というか、今喋ってましたよね!今まで「ぴー」とか「チッ」としか鳴いてなかったのに。
「さあ、玄信。脱衣だヌギ!ヌギヌギランドの戦士の真の力を見せる時だヌギ!」
そう言うと、ヌギカル☆玄信のテーマを高らかに歌うヌギ。
共感してくれれば、他の猟兵もパワーアップするヌギよ。
ヌギカル☆玄信が飛んで行ったら、自分も走って追いかけるヌギ。
全身にオーラを張って盾を構え、衝撃波でセキセイさまを攻撃するヌギ。
近寄って来たら、2回攻撃で仕留めに行くヌギよ。
セキセイインコの群れは、範囲攻撃で叩き落して威力を削ぎつつ、盾とオーラで耐えるヌギ。
「今はお供の妖精も戦う時代ヌギ」
アドリブ歓迎だヌギ!
山梨・玄信
零殿、助かったのじゃ。
…まさか、またこいつらとはのう。飛んで逃げたなら…やるしかあるまい。
【POWを使用】
褌一丁になって脱ぎ力を高め、テーマ曲を聴いて更にパワーアップするぞい。
何を言ってるか分からないじゃと?心配するな。わしにも分からん。
じゃが、テーマ曲を聴くとなんとなく盛り上がるのじゃ。
脱ぎ力が充分に高まったら、飛んで追いかけるぞい。
オーラ防御で全身を守り、高まった身体能力で範囲攻撃や2回攻撃を使い、セキセイさまを蹴散らしてやるのじゃ!
敵のUCは見切りと第六感で読んで躱すぞい。攻撃を喰らっても激痛耐性で耐えるのじゃ。
「わしの真の力を見せてやるわい!」
「空を飛ぶのは鳥だけではないぞい」
「なぜ鳥がこんな事を……というか、今喋ってましたよね! 今まで『ぴー』とか『チッ』としか鳴いてなかったのに」
開け放たれた窓から逃走するセキセイさま達を遠目に、零(テレビウムのパラディン・f03921)は呟く。え、セキセイさま喋るよ? 結構喋ってるよ?
「零殿、助かったのじゃ」
その声は布団から起き上がった玄信(ドワーフの破戒僧・f06912)のもの。物理的ツッコミによりノックアウトしていたのだが、零の治癒魔法により冥府の彼方から舞い戻ったのだ。多分。
「……まさか、またこいつらとはのう。飛んで逃げたなら……やるしかあるまい」
玄信は零と同じく遠くでころころしているセキセイさま達を見遣ると、ため息混じりに一つ覚悟を決める。
「さあ、玄信。脱衣だヌギ! ヌギヌギランドの戦士の真の力を見せる時だヌギ!」
それを聞いた零はきゃるん☆彡とくるり回りそう言うと、ヌギカル☆玄信のテーマを高らかに歌い始める。
おい、ヌギヌギランドって何だよというツッコミは野暮である。この二人はその国の住人なのだから、野暮って言ったら野暮なんだ。
♪遠く離れた脱衣の国 ヌギヌギランドからやって来た脱衣の使者
♪平和を守る正義の戦士 さあ、今こそ脱ぐんだ!ヌギカル☆玄信!
零の歌を聴いた玄信はスパァンと褌一丁になった。むきぃんな筋肉が、朝日を受けてつやつやと輝く。
一体何でこんなことになっているのか玄信にはわからない。神の視点でもわからない。
だが、零の歌う曲を聴いていると、何となく盛り上がるのはわかった。神にはわからないが。
ヌギ力(ヂカラ)ゲージがぐんぐんと伸び満タンになった所で、玄信は窓の手すりに手を掛ける。
「わしの真の力を見せてやるわい!」
そして、玄信は飛翔した。もう一体全体何が起こっているのかわからない。
零も窓から外へと飛び降りると、玄信の後を追い走っていった。
セキセイさま達へと一直線に向かった玄信が、半ばヤケっぱちに見えたのは気のせいにしておこう。
『キャァアア何カマッチョガ飛ンデクルンダケドォオオ!!!』
『イヤァアア褌一丁ヨォオオ!!?』
お察ししているとは思うが、これはセキセイさま達の悲鳴だ。
セキセイさま達は、猛スピードで向かい来る謎の褌マッチョに戦慄していた。うん、仕方ないね。
「空を飛ぶのは鳥だけではないぞい」
そうだね! 君も飛んでるね!
玄信はそのままセキセイさま達の群れへと突っ込んだ。その衝撃で数羽のセキセイさまが海へと吹っ飛ぶ。
やっと地に足をつけた玄信は、やはり光り輝いていた。これなんてターミネ(ryなんて聞いてはいけない。というかあのサイボーグは飛ばずに走って追いかけるね。
『ヒェエエナンナノヨォオオ!!?』
褌一丁で光り輝くオーラに身を包ませた玄信を目にして、慄くセキセイさま達。
「彼の名はヌギカル☆玄信。ヌギヌギランドの戦士ヌギ!! 因みに自分はお供の妖精だヌギ☆彡」
玄信のかわりに答えたのは、追いついたお供の妖精の零だ。
『ヌギヌギランドッテ一体何ナノヨォオ!!!』
セキセイさま達はやけっぱちになりながら、セキセイインコの大軍を二人に放つ。
やっとまともなツッコミが入ったが、時すでに遅しである。既にこの空間はヌギヌギランドの影響下だ。そうなると、全てのツッコミが無意味になる。空はすっごく爽やかなんだけれどなぁ!!
玄信はその軌道を分かっているかのように躱しつつ、その身を武器にセキセイさま達を蹴散らして。汗が飛び散り、筋肉が輝く。
何だかふわもふしたものが素肌にぶつかっている気がするが、それは気にしない。
「さーて、今はお供の妖精も戦う時代ヌギ」
それを少しだけ見守っていた零は、盾を構えるとその身にオーラを纏う。そしてメイスを握ると、セキセイさま達へ向け振るう。その衝撃波により、何羽かのセキセイさま達は海へと吹き飛ばされた。もうこれはファンシーではなくてカオスだ。
『何デコンナコトニナルノォオオ!!!』
それはこっちが聞きたい。まぁカオスではあるが、二人はきちんとやるべきことはこなしている。
二人が相手をしていたセキセイさま達は、ツッコミを入れていたセキセイさまを残して皆、骸の海へと御還りになっていたのだから。
『嘘デショ
?!!!』
それにやっと気づいたセキセイさまの背後には、二つの影がにじり寄っていた。セキセイさまは冷や汗が背に流れるの感じた。
「お主も、ヌギヌギランドの住人になれば良いぞい。きっとミラクルヌギカルな日々が待っているのじゃ」
セキセイさまが振り返れば、そこには褌マッチョが良い笑顔で立っていて。
「さぁ! ヌギヌギランドへご案内だヌギ☆彡」
自称お供の妖精が、良い笑顔の画面をさせながらがっしりとセキセイさまの両肩(らしき個所)を掴んだ。もう、逃げることは出来ない。
『イ、イ、イヤァアアアアアア
!!!!』
セキセイさまの大絶叫が、爽やかな朝焼け空の下に響いた。最後のセキセイさまが一体どうなったのかは、ご想像にお任せする。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
渡・冥
鳥。
見覚えある鳥だ。
なんで鳥がリア充を目の敵にするんだろうね?
まあどうでもいいけど。
…(鳥たちにルーン剣を向けて)リア充が気にならなくなる方法を教えてあげようか。
誰とも関わらず誰からの接触も拒否して目と口を閉じじっとしていればいい。
何も知らず何も感じなければリア充なんて気にならない。
(掴めそうならセキセイさまをがっしと掴み)
邪魔をする者は敵だ。侵略者だ。全部倒せばいい。斬り捨てればいい。握り潰せばいい。
…つまり僕にとって怪談・睡眠を邪魔した君たちがそれだ。
斬って、潰して、ついでに群れには纏めて電撃もあげよう。
もし次があるなら。大人しく静かにしててくれるなら撫でるぐらいはしてあげよう。
「見覚えある鳥だ」
冥(黒魔・f00873)はセキセイさま達に見覚えがあった。確か前に遭遇した時も、リア充を目の敵にしていた。
何故彼等がリア充を目の敵にするのかわからない。
セキセイさま達がリア充を目の敵にする理由を考えようとして、すぐにやめた。どうでもいい事なのだ。
『ナニコイツヤバイ』
『ヤバイッテ目ガ据ワッテルッテ』
セキセイさま達は、じっと自分達を見ていた冥に気付くとひそひそ話を始める。
身を寄せ合い、何かを話し合うその姿は可愛らしい。
「…………」
だが冥はそれで絆されたりはしなかった。じゃき、と。無言でルーン剣をセキセイさま達に向ける。
その瞳には何の感情も映っている様には見えない。セキセイさま達は慄き、数歩飛び退いた。
『ホラァアア!! ヤッパリヤバイヤツダァア!!』
「リア充が気にならなくなる方法を教えてあげようか」
『ハァア?』
それを聞き、何言ってんだコイツと言わんばかりの表情を見せるセキセイさま達。しかしそれにも構わず冥は続ける。
「誰とも関わらず誰からの接触も拒否して、目と口を閉じじっとしていればいい。何も知らず何も感じなければリア充なんて気にならない」
冥は掴めそうなところに居たセキセイさまをがっしと掴む。その手から逃れようと、セキセイさまはじたじたと身をよじらせるが、力が緩む気配はなかった。
『イヤァアア離シテェエエ!!』
「邪魔をする者は敵だ。侵略者だ。全部倒せばいい。斬り捨てればいい。握り潰せばいい」
ぐぐっと、セキセイさまを顔の直ぐ近くまで引き寄せ、言い聞かせる冥。その瞳には光が無いように見えるのは気のせいだろうか。
「……つまり僕にとって、君たちがそれだ」
『ヤバイヨコノヒトヤバイヨォオオ!!』
握られているセキセイさま、半泣きである。ちなみに他のセキセイさま達は大絶賛逃走中だ。
そのことに気付いた冥は、とりあえず手の中のセキセイさまをキュってしておこうと、手に力を籠める。これで一羽様骸の海ご案内です。
さて、次の標的は個体ではなく集団だ。冥はルーン剣を握り直すと何処かのメガネの大佐も真っ青になる鬼ごっこを始める。
目くらましのつもりなのだろうか。セキセイインコの大軍が冥に押し寄せるが、それらは電撃を放って纏めて片付けた。
冥の進撃は止まらない。目に付いたセキセイさまを片っ端から切り捨て、時には掴みキュっとして骸の海送りにするその姿は、正にジェノサイダーだった。
悲鳴が止み、波のだけ音が響くようになったその時、冥は思った。
もし、セキセイさま達に次があったとしたら。
大人しく静かにしてくれたならば、撫でるくらいはしてあげよう、と。
成功
🔵🔵🔴
亜儀流野・珠
何となく察しは付いていたが…またお前達か!
まあそっちは知らないだろうが…あと何と言うか前のとは温度差が…
まあいい!折角外に出たんだ、朝の運動に付き合って貰おう!
ついでに新技の練習もさせて貰おうか!奥義「化獣懸かり」…両手を「熊の手」に変えるぞ!…おお、随分とゴツいな、手。
少し重くなるが俺は力持ちだから平気だ!
さあ狩られろ鳥たちよ!全力で駆け回りながら次々と熊パンチで海に向かって飛ばす!
俺も海入りたいが生憎さっきので水温が低くなってるようだしな!代わりに入って来てくれ!
ふむ…両腕を翼にすれば飛べるか?後で試してみるか!
その時の為にこいつらを参考に…翼小さいな!参考になるのかこれ…?
この黄緑色のふわもふは、確か前にも遭ったことがある。だが、前回の時の集団とは温度差が激しい。
「何となく察しは付いていたが……またお前達か!」
『マタッテ何ヨ!! コッチハアンタノコトナンテ知ラナイワヨ!!』
目の前のセキセイさまの反応は当然である。珠(狐の恩返し・f01686)からすればもう何度目かになる遭遇だが、このセキセイさま達からすれば、初めての遭遇なのだ。
「まあいい! 折角外に出たんだ、朝の運動に付き合って貰おう!」
夜中はずっと室内に閉じ込められていたから、息が詰まったと小さく零す珠。
『鳥ノ話ヲキキナサイヨォオオ!!』
セキセイさま達は小さな翼をパタパタさせてご立腹の様子。だが珠はセキセイさま達を無視して、掌を握ったり、開いたりしていた。
「よし、新技の練習をさせて貰おうか!」
『ゴーイングマイウェイネアンタ!?』
そんなツッコミをスルーして、珠は両手を前へと突き出す。
するとどうだろう。細くしなやかなその腕は、次第に硬い獣毛に覆われてゆくではないか。それに見合う様に腕の筋肉も肥大化してゆく。
変化が終わった時に在ったその腕は、熊のものだった。
「奥義『化獣懸かり』……おお、随分とゴツいな、手」
少し重くはなったが、この程度ならば許容範囲内だ。珠は、今度は確かめる様に掌を握ったり開いたりしてみる。ヒトの様に器用にモノを掴むには向いていないが、戦う分には特に問題ない。
「さあ、狩られろ鳥たちよ!」
珠は、だっ、と勢いよく駆け出すと、遠心力を利用しながら熊の腕を振り回す。
『ピギャッ?!』
その腕の餌食となったセキセイさま達は、海へと向かい弾き飛ばされていった。
それが猫パンチ程度だったならば、可愛かっただろう。しかしこれは熊パンチ。熊の腕力と言うのは非常に強力である。
つまり。それはそれは恐ろしい速度で、セキセイさま達は海へと弾き飛ばされて行ったのだ。それは轟と風を斬る様な音だった。
「海に入りたいのは山々なんだが、生憎さっきので水温が低くなってるようだしな! 代わりに入って来てくれ!」
とても良い笑顔で、残るセキセイさま達へ遠回しに骸の海へお還り宣告をする。
さっきというのは少し前の、飲み込んだ全てを凍らせた津波の事だろう。
『羽毛ガ濡レルワ!! ソンナノ全力デオ断リヨォオオ!!!』
命を懸けた鬼ごっこが繰り広げられる中で、もう何度目になるかもわからないセキセイさまの絶叫が響き渡った。
珠は浜辺をセキセイさま達を追い回しながら、もしかしたら、両腕を翼にしたら空を飛べるかもしれないのではと思い至る。
その時の為に、セキセイさま達の翼を参考にしようと思ったのだが。セキセイさまの翼は、小さい。これは参考になるのだろうか……と、首を捻った。
因みに。それに答えるならば。参考にするならオブリビオンではなく、野生の鳥類を参考にする方が良いだろう。
セキセイさまは飛ぶことが出来てはいるが、その翼は本来、物理法則の枠には当て嵌まらない。
大成功
🔵🔵🔵
舞音・ミケ
(お腹空いてたので鳥無視して海に魚獲りに行く)
(海での狩りは難しい。1匹しか取れなかった)
(猟兵達と戦ってる鳥に気付く)
(魚を指さして)肉。
(鳥を指さして)…肉。
邪神(マグロ・サバ)も食べられたし。
いける。
「元気な猫が来て遊ぶ」で呼んだ猫の霊たちと、元からついて来てた猫たち、みんなで鳥を襲う。
噛んで、ひっかいて、噛んで、パンチして、噛んで、噛んで。
そういえば、あなたたちはどうやって姿消してたの?
何もない所から現れたの、猫(霊)のみんなみたい。
教えて。私たちに食べられる前に。
ひとり、空腹を満たす事を優先し、セキセイさま達をスルーして海で魚を獲りに行っていたキマイラが居た。
しかし、海での狩りは難しいのだ。小さな魚一匹しか獲ることが出来なかった。
浜に上がり、そこでやっと黄緑色のふわもこがころころとしている事にそのキマイラ……ミケ(キマイラのサイキッカー・f01267)は気が付いた。
それを認めて、その手に握る魚を指差すと、一言。
「肉」
そしてセキセイさま達を指差すと。
「……肉」
と、また一言。
ミケの頭の中では、いつかに遭遇した魚型の邪神が浮かんでいた。あれらは、食べられた。
「……いける」
つまり、今目の前にいるあの鳥達も食べられる筈だと至る。今日の朝食は、あれらだ。
いや、なんでそうなるかな。というツッコミはさておき。
ミケは猫霊達を喚び出すと、元から引き連れていた猫達と共にセキセイさま達へと襲い掛かる。朝の狩猟タイムの始まりだった。
『イヤァアア猫ヨォオオオ
!!!?』
猫は鳥を食す。つまり、セキセイさま達にとってミケ達は天敵になる訳で。
飛び掛かってくるミケ達に、セキセイさま達は逃げ惑う。セキセイさまから抜けた羽根が舞った。
『キャァアア食ベナイデェエエ!!』
憐れ猫まみれになってしまったセキセイさまは、とても見せられない様なことになっていた。表現についてはあえて伏せさせていただく。
仕方がない。弱肉強食なのだから。
セキセイさまはあわ玉を食して羽毛をもっふりとさせ、防御の強化を図る。だが集団で飛び掛かられ、沢山の爪で裂かれれば……その先は言わずともお分かりになるだろう。
「そういえば、あなたたちはどうやって姿消してたの?」
ミケは、ふと浮かんだ疑問をセキセイさま達にぶつける。ロッジ内に突然現れたセキセイさまは、まるで喚び出した猫の霊達みたいだと思った。
「教えて。私たちに食べられる前に」
『ヤメテモウツルツルヨォオオ!!!』
セキセイさま達にはそれに答える余裕は無い。ただひたすらに襲われ、食されるだけだったのだから。
おそらく、これまでの中で現在が一番のホラーなのではなかろうか。
飛び散る羽毛。其処彼処から聞こえる命乞いの悲鳴に絶叫。ぶちり、がりがりという咀嚼音。これはどちらかといえば、スプラッターホラーではあるけれども。
ミケに齧られながら、セキセイさまは思っていた。何でこんな目に遭うのだろう。自分達はただ、リア充の邪魔をしたかっただけなのに。
リア充という存在の邪魔をしようなど考えると、ロクな目に遭わないという式が世界に存在するのだろうか。教えてくれ。
だが。それに答えるものは、居なかった。
阿鼻叫喚の渦が落ち着いた時。其処に残っていたのは、少しだけ位置の高くなった太陽と波の音だけだった。傍迷惑なUDCは、もう居ない。
だが。リア充にジェラシーの炎を燃やす存在と言うのは、リア充が存在する限りまた湧く。
今はそれがまだ先の先であることを、猟兵達は願うのだった。
成功
🔵🔵🔴