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「集まってくれてありがとう。今日はアックス&ウィザーズでの事件をお願いするね」
グリモア猟兵のユェン・ウェイ(M.Y.W・f00349)は集合した猟兵達へと声をかけ始めた。
「悪事をはたらこうとしているオブリビオンの根城が発見されたから、先に乗り込んで退治して来て欲しいんだ。ただ肝心のボスが用心深いみたいで。だから最初は配下を相手にしてボスを誘き寄せてね」
そう言ってユェンは資料を渡していく。そこに書かれているのは目的地である森の地図や敵の詳細だ。
森は人里から少し離れた位置にあり、戦闘において支障になりそうなものは何もない。
「最初に相手をして欲しいのは『虹色雲の獏羊』だよ。この子達は相手を眠らせて夢や生命力を食べるんだけど……皆には敢えて夢を見てきて欲しいんだ」
この森にいる『虹色雲の獏羊』が見せるのは「欲しいものに関する夢」らしい。
ボスはそれを利用しようと目論んでいるため、敢えて夢を見て誘き寄せてしまおうという作戦だ。
森に入ってしばらく進めば花畑があり、獏羊達はそこで待ち構えている。
まずはそこまで赴き彼らに導かれるまま眠りに就けば大丈夫との事。
「夢の内容は欲しいもの、とか取り戻したいもの、に関する内容になるそうだよ。物でもいいし事でもいいみたい。夢の内容も幸せなものから悪夢まで様々みたいだね」
夢の内容は見てみなければ分からない。その猟兵にとって大切なものが関わってくるのではないか、とユェンは補足した。
「夢を食べられ始めた頃に覚醒出来ると思う。そうしたら獏羊達をやっつけてね」
夢を齧られた事で少し疲労は感じるが戦闘に支障はないようだ。戦闘は普段どおりに行えるだろう。
「獏羊達に何かあると思ったらボスが出てくるから、次はそいつと戦闘だね」
ボスの名は『ミスティ・ブルー』。妖艶な女の上半身と蛇の下半身を持つオブリビオンだ。
彼女は他者を惑わし、毒によりじわじわと苦しめる能力を持つ。
そして彼女は獏羊が食べた夢の残滓を元に猟兵達を誘惑してくるようだ。
「夢で見たものを手に入れられる啓示を示してくるんだけど、オブリビオンの誘いだからロクなものじゃない。例えば彼女の言うことを聞けばいいとか、夢に関する幻を見せてくるとか……勿論普通に殺しに来る可能性もあるよ」
誘惑に飲まれれば彼女の言いなりになったりそのまま殺されてしまうだろう。
猟兵達にはそれを跳ね除けて退治して来て欲しいとの事だ。
ボスさえ討伐出来れば事件は無事に解決出来る。
「そうそう、この森の近くには『月湖』っていう不思議な湖があるんだよ。全部が終わって夜になったらそこに遊びに行くのもいいんじゃないかな」
月湖はとても大きな湖で、周囲には草花による美しい光景が広がっているという。
そしてこの湖の中にも不思議な植物が生えているようだ。
「月の光が差すと、そこに向かって湖の中にある植物が伸びてくるそうだよ。その植物はすっごく綺麗な金色で、上に乗る事も出来るみたい。それに乗ると湖に浮かぶ月に直接乗ったような不思議な体験が出来るんだって」
その日はちょうど満月で、植物による月も複数人が乗れるくらいの大きさになるという。
湖に浮かぶ月に乗って遊ぶも良し、湖のほとりで満月や景色を楽しむも良し、との事だ。
「この光景を守るためにも、皆には無事に事件を解決して来て欲しいんだ。改めてよろしく頼むね」
ささかまかまだ
こんにちは、ささかまかまだです。
今回はアックス&ウィザーズを舞台にした事件です。
一章は「『虹色雲の獏羊』との集団戦」です。
ボスをおびき寄せるために獏羊達に夢を覗いてもらいましょう。
彼らは「欲しいもの」や「取り戻したいもの」に関する夢を見せてくるので、皆様が見たい・見そうな夢があればプレイングに記載して下さい。
獏羊に夢を食べられ始めた頃に猟兵達は目を覚まします。
さっくりと敵を退治しましょう。
二章は「『ミスティ・ブルー』とのボス戦」です。
彼女は他者を幻惑・誘惑したり毒で体を蝕んだりしてきます。
そして獏羊から得た情報を元に「夢で見たものを手に入れる道を示してあげる」と誘惑してきます。
それは間違った手段や彼女の見せる幻覚として示されるでしょう。
その誘惑を退けてオブリビオンを討伐して下さい。
三章は「月湖でのんびりする日常パート」です。
金色の植物が月光に惹かれて湖面へと浮上する幻想的な湖でのんびりしましょう。
その植物には乗る事が出来て、湖に浮かぶ月に直接乗っているような不思議な体験が出来ます。
また、複数人が一緒に月に乗ることも出来ます。
実際に月に乗ってみるのも良し、湖のほとりでのんびりするも良し、他にもやりたい事があれば気軽にどうぞ。
どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
それでは今回もよろしくお願いします。
第1章 集団戦
『虹色雲の獏羊』
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POW : 夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
👑11
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ゲートから転移し終えた猟兵達は早速森へと入っていく。まだ日も高い時間だからか森の中は明るい。
しばらく進めば綺麗な花が咲く花畑があった。
……そこには虹色の毛を持つ『虹色雲の獏羊』達も待ち構えている。
獏羊達は猟兵の接近に気付くとふわふわ浮かんで近付いてきた。
そして彼らの毛が淡く輝いたと思うと、猟兵達は凄まじい眠気に襲われだすだろう。
幸い地面は柔らかな花畑。寝心地は悪くない。
森の奥に潜むオブリビオンを誘うために、猟兵達は暫し眠りに就く事になる。
果たして彼らはどのような夢を見るのだろうか。
摩訶鉢特摩・蓮華
虹色雲の獏羊ってどんな生き物なんだろう?すごく気になるね!
WIZ
わぁ…!ホントに虹色の雲みたいなの!とっても綺麗だし、めっちゃ可愛いね!
でも欲しいものはいっぱいあるけど、蓮華の取り戻したいものかぁ…なんだろう?
獏羊さんはどんな夢を見せてくれるんだろう、ちょっと楽しみ♪
暗く陰鬱とした雰囲気とはかけ離れた、どこまでも青く澄み渡る空。
顔も名前も朧げで、でもとても優しい父や母。そして仲の良い友達。
特別なにかあるわけじゃないけど、それでも幸せだと感じられる日々。
そんなごくありふれた何気ない日常の夢を見た気がした。
なるほどね、これが蓮華の夢…
とりあえず獏羊は炎鶴の千羽ちゃんたちで焼き払っちゃおう!
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花畑へと辿り着いた摩訶鉢特摩・蓮華(紅蓮眼・f09007)は内心ワクワクしていた。
虹色雲の獏羊の姿はどんな感じだろう。獏羊さんはどんな夢を見せてくれるんだろう。
そのワクワクは実物を見た時に更に膨れ上がった。
「わぁ……! ホントに虹色の雲みたいなの!」
ふわふわと近付いてくる獏羊達はとても綺麗で愛くるしい。果たして彼らはどんな夢を見せてくれるのか。
期待を胸に抱きつつ、蓮華は彼らに誘われるまま花畑へと身を沈める。
蓮華が最初に見たのは、暗く陰鬱とした雰囲気とはかけ離れた、どこまでも青く澄み渡る空。
小さい時は当たり前に広がっていた懐かしい風景。
ふと誰かが呼びかけてくる声に気がついて、そちらを見れば男女の姿が見える。
姿こそはっきりしないし名前も思い出せない。でもこの人達が誰かは分かる。とっても優しかった父と母。
その傍には別の小さな影が蓮華の事を呼びかけていた。こっちは大好きだった友達だ。
皆の声に誘われるまま歩み寄れば、彼らは蓮華を暖かく迎え入れてくれる。
今日のご飯は蓮華の好物でいっぱいにしてみたんだ。
明日はどこに遊びに行こう。何がしたい?
大人になったら遠くの町で暮らしてみたいな。
これまでもこれからも一緒だよ。
こんな他愛ない会話をしてゆっくりと日々が過ぎていく。
特別なにかあるわけじゃないけど、それでも幸せだと感じられる日々。
そんなごくありふれた何気ない日常の夢。これが蓮華の取り戻したいもの。
でもこれは夢だから。終わりがあるし、目も覚まさなきゃ。
覚醒した蓮華の傍には既に何体もの獏羊達が集まっていた。
後は彼らを退治するだけ。
「お願いね、千羽ちゃんたち」
蓮華は手元から何羽もの炎の折り鶴を生み出すと、そっと獏羊達を燃やしていく。
出来るだけ彼らを苦しめないように。それでいてしっかりと炎が舞い上がるように。
炎が消えると同時に、獏羊達も夢のように消え去った。
成功
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ノイシュ・ユコスティア
武器はロングボウ。
「いや、こんなところで眠ったら敵にぼこぼこにされるんじゃ…」
と言いつつ眠る。
夢の内容:
森の中の花畑(まさにこの場所のような所)で、幼なじみの女性が花を摘んでいて、僕は花のスケッチをしている。
彼女とは現在離ればなれで、取り戻したい対象。
夢の終わり方はお任せ。
起きた時はぼーっとしているけれど、敵を見て体勢を整え矢をつがえる。
1回攻撃してから、ダッシュで敵達と距離を取り、以降はユーベルコードを利用して攻撃する。
近づいてきた敵から一体ずつ確実に倒す。
戦闘中は眠らないように気を引き締めよう。
「ふわふわな毛を触りたいけど、そんな余裕はないね。」
逃走する敵は回り込んで攻撃する。
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ノイシュ・ユコスティア(風の旅人・f12684)は不安げに花畑に腰を下ろしていた。
(いや、こんなところで眠ったら敵にぼこぼこにされるんじゃ……)
猟師である彼からすれば敵の前で無防備に眠るのは有りえない作戦のように思えるだろう。
だが獏羊達はのんびりと近くを漂っており、他には猟兵の気配しか感じられない。
これも敵のボスを呼び出すためだ。覚悟を決めてノイシュもまた眠りについた。
夢の中でもノイシュは花畑に座っていた。
手元にあるのは愛用のロングボウではなく、何枚ものスケッチが描かれたスケッチブック。
夢のノイシュは周りに咲く花々を一生懸命スケッチしている。
そして彼の傍にいるのは一人の女性。
女性は楽しげに花を摘んでいた。綺麗な花を見つけてはノイシュに見せてくれたりもする。
それを聞いたノイシュも楽しげに笑った。彼女と一緒に過ごす時間はとても大切なものだったから。
共に話す女性は幼馴染だった。そして……今は彼女と離れ離れになってしまっている。
ノイシュが取り戻したいのはこの女性。そしてこんな風に楽しく話していた日々。
それを取り戻すためにも、ずっと夢の中にいる訳にはいかない。
目を覚ましたノイシュはぼんやりと辺りを見回し、自分を囲む獏羊を視認した途端急いで戦闘態勢を整えた。
ロングボウから弓を放ちながらまずは彼らと距離を取り、残りも仕留める算段を。
「矢よ、雨となり敵を貫け!」
風の精霊の加護を帯びた矢は次々に獏羊達を穿ち消滅させていく。
接近されればまた眠りに落ちてしまうかもしれない。そうならないように気をつけなければ。
「ふわふわな毛を触りたいけど、そんな余裕はないね」
気を引き締めつつ次々に敵を撃ち落としていけば、ノイシュの周りにいた獏羊達は全て消え去っていた。
だがこの森の脅威はまだ存在している。ノイシュはそちらへも意識を向け始めていた。
大成功
🔵🔵🔵
吉備・狐珀
取り戻したいものは決して叶わないものだとわかっていても夢に見てしまうものなのですね…。
私の優しく呼ぶ声、私に何時も優しく笑いかけてくれた兄上を未だに私は求めてしまうのですか…。
夢だとわかっていても、声を聞けば嬉しくて、笑いかけてくれれば傍に駆け寄りたくなって…。
大丈夫です。わかっています。これは夢。
貴方は今も私の傍にいてくれる。私がそうしたのだから。
ここに来たのはこんなものを見る為ではありません。
悪い夢は燃やしてしまいましょう。貴方の炎で。
何もかも。
※アドリブ等歓迎です
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夢の中の、懐かしい社にて。
吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)は静かに周囲を見渡していた。
どこを見ても懐かしい光景が広がっていて、柔らかな日差しや風の匂いも思い出のまま。
(取り戻したいものは決して叶わないものだとわかっていても、夢に見てしまうものなのですね……)
狐珀はこの光景を夢だときちんと理解している。だからこそ、本当に取り戻したいものがここにあるのも分かってしまう。
後ろから呼びかける優しい声。私に何時も優しく笑いかけてくれた大切な人。
振り返れば、そこに兄上が待っていた。
いつものように私の事を呼ぶ兄上。声を聞けば嬉しくて、笑いかけてくれれば傍に駆け寄りたくなってしまう。
でもこれは本物の兄上ではない。本物の兄上は今も狐珀の傍にいる。
夢の中でも愛用のからくり人形は狐珀の元にあった。狐面を被ったこの人形の中にいつもと変わらず兄上の魂は宿っている。
この人形に兄上の魂を宿したのは狐珀自身。
貴方は今も私の傍にいてくれる。私がそうしたのだから。
だから、夢の中の兄上と再会する必要はない。ここに来たのはこんなものを見る為ではないのだから。
「悪い夢は燃やしてしまいましょう。貴方の炎で」
囁きと共にからくり人形から炎が放たれた。炎は狐珀達を中心に夢の光景を燃やしていく。
懐かしい社が燃える。でもそれは記憶の中にある恐ろしい光景とは違っていて。
だが炎が何もかもを飲み込むのは同じかもしれない。狐珀はそっと目を閉じて、夢の終わりを待った。
目を開けると辺りに広がっているのは社ではなく一面の花畑だった。
周囲には炎が舞い上がった名残も見える。夢の中と同様に兄上の炎が立ち上がり、獏羊達を燃やしていたのだろう。
ならば次に備えるべきはより強大な敵の襲来。
ここに来たのはそのためなのだから。狐珀はからくり人形を、その中に宿る兄上の魂を感じながらその時を待った。
大成功
🔵🔵🔵
鈴木・志乃
皆が幸せになれたらいいなぁ
誰も悲しんでる人なんていなくて
【皆】が笑って過ごしてる
そんな夢
……不可能な夢だ
どうやって夢にしてくれるのかな
【皆】にはオブリビオンも含むんだけども
さ、お目覚めの時間だ
【失せ物探し第六感】で周囲の意志を集めてUC発動
聖属性で睡【魔】を【衝撃波】と共に【なぎ払え】
光の鎖を【早業念動力】で操りこちらも追撃をかけよう
万が一攻撃してくる場合は【第六感で見切り】【武器受けからカウンター】かますよ
さらにさらに【歌唱の衝撃波】で追撃!!
トリプル衝撃波!
……ま、【皆】の中でも幸せになって欲しい
とびきりの一人がいるけどね
これは見なかったことにしよう
直視したら心臓が熱くなるから
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鈴木・志乃(オレンジ・f12101)は夢を見ていた。
皆が幸せになれたらいいなぁ。そんな理想を体現する夢。
彼女の周りには沢山の人の影。そしてその誰もが幸せそうな笑みを浮かべている。
ある者は仲の良い者と談笑し、ある者は自らの幸福を噛み締めていて。
その中にはオブリビオンの姿さえあるが彼らにも悲しみの色はない。
誰もが笑って過ごす世界。これが志乃の望むもの。
これが不可能な事だって分かっている。でも目の前に広がる光景は望むものそのもので。
志乃は彼らの事を確かめるべく周囲を見回し……その視線が一つの影を捉えた。
それは志乃が一番幸せになって欲しい人。彼女にとってとびきりの人。
頭が動くより早く心臓の鼓動を感じて、志乃は敢えてその人から目を逸した。
これ以上見ていると、もっと心臓が熱くなるから。
どくん、という自らの鼓動に合わせて志乃は飛び起きた。
周囲にいるのは笑顔の人々ではなく獏羊達。彼らも志乃の起床に合わせて何かしらの行動を始めようとしていた。
それより早く敵を討たねば。
志乃は勘を働かせて周囲から思念を集めていく。周囲で眠る猟兵から、獏羊達から、少し離れた場所にある人里から。
それを聖なる光へと形成すれば、一気に解き放つ!
「最後の想いを遂げて、おかえり?」
花火のように広がる光は獏羊達を薙ぎ払うがまだ足りない様子。
それならば今度は光の鎖を生み出して、それを手繰る事でさらなる衝撃を生み出していく。
更に追い打ちと言わんばかりに志乃は歌った。
パフォーマーとして活動する彼女の声には確かな力がある。
光の花火、光の鎖、力強い歌。
全ての衝撃が周囲の獏羊へと降り注ぎ、彼らは次々に消滅していく。
一通り無事を確認した所で志乃は大きく深呼吸してみる。花の香りと森の香りが胸に満ちる。
だが彼女の鼓動は少し早いままだった。
理由は戦闘による疲労だけではない。きっとさっき見た夢のせい。
「……直視してたら、どうなったでしょう」
誰にも聞かれない呟きを一つ。その答えは志乃にも分からないままだった。
大成功
🔵🔵🔵
リード・ユースレス
寝るのは嫌いではないですが、敵地でですか。こんなこと滅多にないでしょうね。
取り戻したいもの、ですか。それならばひとつ。
揺れる麦畑、回る風車、僕を呼ぶ農園の皆。
変わり映えのない、ずっと続くはずの日々。
ええ、もう焼けたものです。
起きましょう、僕には役目がある。
これはまた変わった色の毛並みですね。手触りも良さそうですし、ただのぬいぐるみならよかったんですが……。敵なら倒すだけです。
懐かしいものを見せてくれましたね。一匹ずつ捕らえて、丁寧に仕留めましよう。
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(寝るのは嫌いではないですが、敵地でですか)
こんなこと滅多にないでしょうね。そんな事を思いつつ花畑に腰掛けたのはリード・ユースレス(案山子になれなかった人形・f16147)。
自分に近付く獏羊の様子ものんびりとしたもので、どこか緊張感に欠ける雰囲気が感じ取れる。
今は彼らの導くままに眠りに就こう。
獏羊に誘われるまま、リードは夢へと入りこんだ。
夢の中でまず見えたのは、広い広い麦畑。
遠くでは風車が風を受けてゆっくりと動いている。
近くに目を凝らせば何人もの農夫が忙しなく麦畑を動き回っていた。
彼らはリードを視認すれば手を振って彼を呼ぶ。リードもそれに応えて農具を手に取る。
何度も何度も繰り返してきた光景。
変わり映えのない、ずっと続くはずの日々。
農園の皆や旦那様、そして主人と暮らしていた何でもない日々。
でもそれは、全て焼け落ちてしまった。
取り戻したい気持ちはある。だからこうやって夢に見る。
それでも今は起きなくては。僕には役目がある。
主人の願いが今も胸の内にあるのだから。
目を覚ましたリードの傍には何体もの獏羊が寄り添っていた。
彼らの虹色の毛は木漏れ日を受けてきらきらと輝いている。
「これはまた変わった色の毛並みですね。手触りも良さそうですし、ただのぬいぐるみならよかったんですが……」
残念ながら、敵なら倒すだけだ。リードは手近な一体を捕まえると、懐から取り出した拷問具で彼らの生命を奪っていく。
だが出来るだけ苦しまないようには心がけた。彼らは懐かしいものを見せてくれたのだから。
ならばせめて、丁寧に仕留めてあげたい。
リードは何度も手を動かし……近くにいた獏羊達を倒しきる。
その光景は静かなものだった。まるでまだ夢が続いているようだ。
だがここは現実。リードは花畑から立ち上がり、森の奥を見やる。
そろそろ現れるはずのオブリビオンの気配を感じながら。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『ミスティ・ブルー』
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POW : 邪の道は蛇
【幻惑】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【青い鱗の蛇】から、高命中力の【猛毒】を飛ばす。
SPD : 神秘的な青
【艶やかな唇から】から【摩訶不思議な予言】を放ち、【幻惑すること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : プワゾン
自身の【体から発する甘い香毒】を代償に、【敵】を虜にして、もしくは【既に虜にした者】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【無我夢中】で戦う。
👑11
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猟兵達が獏羊を倒しきった頃。
森の奥からしゅるしゅると何かが這う音がする。そして次の瞬間には女が現れた。
ベールのようなもので顔は隠れているが、それが見えずとも女は蠱惑的な魅力を振りまいている。
「アナタ達が獏羊に導かれた冒険者ね。いいわ、アナタ達が望むものを授けましょう」
女は誘うように手招きするが、猟兵達は皆分かっている。
これがこの森に潜むオブリビオン、『ミスティ・ブルー』。
彼女は辺りに散らばっていた獏羊達の虹色の毛を手元に集め、猟兵達に囁きかける。
「うふふ、アナタの運命は私が紡ぐ。幸せでしょう?」
それと共に女が前へと進んでいけば蛇の下半身も顕になった。
彼女は猟兵達に「望むものを与える」と嘯くだろう。
失った者との再会を。願わない夢の実現を。或いは別の何かしらを。
だがその誘いは欺瞞。彼女は他者を惑わせたいだけなのだ。
その誘惑に打ち勝ち、オブリビオンの進行を止めなければならない。
※
オブリビオンから「こんな提案をされるかも?」というのがあれば自由に書いて下さい。
なければこちらで内容を考えます。
また、2章から参加される方がいらっしゃれば同時に「貴方の欲しいもの」も教えて下さい。
それではよろしくお願いします。
鈴木・志乃
お任せ
何を言われた所で動じない
全員が幸せなんて不可能
それこそ洗脳でもしない限りはね
重々承知してんだから私
……あー目敏いねそれも見てたの
でもダメだよそれも効かない
それも紛い物って知ってるから
UC発動
【早業歌唱】の要領で叫ぶよ【衝撃波】
はい周辺一体ぜーんぶ私の聖域だ
意志無き幸福を幸福とは呼ばない
故に私は貴女を許さない
敵攻撃は【第六感】で【見切り】
光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動
【念動力】で縛り上げるよ
貴女の方法の先に
皆の本当の笑顔はない
なればこそ、私は私を貫く
どれだけ茨の道であろうと
皆の為に生き続ける
それが私の幸福だと
私は胸を張って言ってやる!(笑って)
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「アナタの望みは私が共に叶えてあげるわ。ほら、この香り。これを使えば誰もが幸せになれる」
ミスティ・ブルーは甘い香りを漂わせながら志乃へと迫る。
気を抜けば香りに夢中になりそうになるが、志乃はそれ以上に敵の発する言葉が気になった。
「それって洗脳だよね。それで全員が幸せなんて不可能だよ。重々承知してんだから、私」
志乃の強い否定の言葉を受けても蛇女は構わず近付いてくる。
口元に浮かべた妖しい笑みが更に強まり、誘う言葉は続く。
「……アナタにとってとびきりの人も、幸せに出来るのよ?」
その言葉を受け、志乃の表情が微かに歪んだ。確かにそれは大事なもので見られる事も予想はしていた。
だからこそ、その言葉こそ否定してやらねば。
「……あー目敏いね、それも見てたの。でもダメだよ。それも効かない」
それも紛い物って知ってるから。だから志乃は全力で叫び、歌った。
彼女の声に合わせて空間が揺れる。呪詛は祈りになり力になり、敵の身体を叩きのめす!
「心は自由だ、どこにでも行ける。私達は自由に生きていける! 意志無き幸福を幸福とは呼ばない。故に私は貴女を許さない」
「……生意気ね」
言葉が聞かないと分かればミスティ・ブルーも方針を変えてきた。纏う香りを強い毒へと変貌させ、それで志乃を飲み込もうとしてきたのだ。
だがそれこそ自由意志を阻害する存在。志乃の歌う『This is what we are.』はそれを打ち払うだけの力があった。
志乃は歌いながら身を翻し、強い香毒から距離を取った。そして手元に光の鎖を形成すると一気に敵へと投げ込む!
光の鎖はミスティ・ブルーの身体を縛り、志乃の方へと引き寄せていく。
「貴女の方法の先に皆の本当の笑顔はない。なればこそ、私は私を貫く」
「理想だけは立派ね……人の力でそれが為せると思うの?」
蛇女は志乃の意志の籠もった言葉を嘲笑うが、そんな事は知るものか。
「どれだけ茨の道であろうと皆の為に生き続ける。それが私の幸福だと、私は胸を張って言ってやる!」
力強い笑みと共に、志乃は再び全力で叫んだ。
声は衝撃波と化し蛇女を身体を吹き飛ばしていく。
理想も大切なものも、自分の手で選び掴み取る。その意志を持った声は、悪しき者の身を貫く確かな武器になっていた。
大成功
🔵🔵🔵
吉備・狐珀
【提案されるもの】兄の狐像が元に戻り、もう一度ヤドリガミとして人の身を得る。
もう一度名前を呼んでくれたら、笑いかけてくれたらと思わなかった日はない。確かにその提案は魅力的です。ですが…。
貴女の力で蘇ったのなら、もうそれは兄ではない。
オブリビオンの手先になったということ。
私はそれを決して望まない。
UC【青蓮蛍雪】使用。惑わされた敵諸共凍らせ動きを封じる。
封じた上で兄の炎で燃やす。
離れたくないという我侭で兄の魂を愚かにも私は確かに封じた。
それでもオブリビオンに縋るほど私は落ちぶれてはいない。
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狐珀はからくり人形を構えながら、起き上がるミスティ・ブルーを睨む。彼女が提案してくるのはきっと……。
「アナタのお兄さんのための身体を、私が作ってあげるわ。もう一度狐像のヤドリガミにしてあげる」
予想通りだ。だが狐珀の顔には苦々しい色が浮かぶ。
大切な兄がもう一度名前を呼んでくれたら、笑いかけてくれたら。そんな風に思わなかった日はない。
それでも狐珀は誘いには乗らなかった。
「確かにその提案は魅力的です。ですが……貴女の力で蘇ったのなら、それはもう兄ではない」
オブリビオンの力を借りる以上、実際にそれが叶ったとしても兄はその手先になってしまうだろう。
狐珀は、決してそれを望まなかった。
「交渉決裂かしら……それならこれはどうかしら?」
狐珀の意志が固いと判断した蛇女は、甘い香りを纏わせながら接近してきた。
それは思考を鈍らせる毒だ。香りに包まれてしまっては彼女に捕らわれてしまうだろう。
これ以上の接近は許したくない。狐珀は周囲に青い狐火を生み出すと、それらを一気に蛇女へとけしかける!
「言の葉のもとに魂等出で候」
この『青蓮蛍光』で生み出された炎は強い冷気を纏っていた。炎が蛇女へと集まる度に彼女の身体は凍りつき、身動きを取れなくさせていく。
「冷気の炎
……!?」
「はい、これが私の力……そしてこれが兄の力です!」
動けないミスティ・ブルーに対し、今度は凄まじい熱が襲いかかった。狐珀の持つ人形が炎を操り蛇女を焦がしたのだ。
「私の誘いを断りつつ、兄の力を……魂を使うのね?」
炎に焼かれながらも蛇女は狐珀へと言葉を投げかけてきた。だがその言葉にも狐珀は揺れない。
「ええ、離れたくないという我侭で兄の魂を愚かにも私は確かに封じた。それでも、オブリビオンに縋るほど私は落ちぶれてはいない」
兄の魂がこれからどうなるかは分からない。ずっと共に戦い続けるかもしれないし、何かのきっかけで新しい器を手にいれる可能性もあるだろう。
それでも、オブリビオンに頼る事だけは決してない。
狐珀と彼女の兄が操る炎はこれからもオブリビオンを倒していくだろう。
その意思を示すように、狐珀は炎を見つめ続けていた。
大成功
🔵🔵🔵
黒鵺・瑞樹
亡くした主との再会もすでに終わらせた俺に何を見せるというのか。
それに夢は夢でしかない。一度なくした夢をまた見せられたとしてもなびくものか。
それはただ哀しいむなしいだけじゃないか。
右手に「胡」、左手に「黒鵺」の二刀流。
UC菊花で攻撃。代償は己の寿命。誰かを傷つける夢なら叶わなくてよい。UCの代償も同じ事。
一撃一撃に【暗殺】を乗せる。
幻惑には【呪詛耐性】で対処。もしかしたら【失せ物探し】で本体を見つけられるかもしれないので、試す価値はあるか。
物理攻撃には【第六感】【見切り】で回避。回避しきれない分は「黒鵺」で【盾受け】してからの【カウンター】を叩き込む。
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猟兵達はオブリビオンの誘惑に乗らず、それぞれが強い意志を持って戦いに挑んでいる。
ミスティ・ブルーはその事に改めて危機感を抱いていた。状況を打開すべく、蛇女は獏羊の残滓を探る。
そこで目に留まったのは、後から森に踏み入った黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)の欲しいもの。
ちょうど彼は近くにいる。そしてミスティ・ブルーの方をじっと見つめながら武器を構えていた。
「お前がここのボスだよな? 一体何をするつもりだよ」
「……アナタの望むものは、これでしょう?」
言葉は幻惑となり瑞樹へと届く。幻惑は彼にとって大切な存在の姿を取っていた。
それは、彼のかつての主。二人が向き合う様子は鏡写しのようだ。
そして主は手招くような仕草をして瑞樹を誘っている。こちらへ来い、と。
「……残念だが、亡くした主との再会もすでに終わらせた。それに夢は夢でしかない」
その姿を見た瑞樹は落胆したように肩を落とす。確かにこれは望むものだけれど、これで心は満たされない。
一度なくした夢をまた見せられたとしてもなびくものか。それはただ哀しい、むなしいだけじゃないか。
瑞樹はその幻を打ち払うように左手を振るった。握ったダガー『黒鵺』は偽物の主をかき消して、進むべき道を切り開く。
蛇女は焦って香毒を発しだしたが、毒が瑞樹を満たすよりも彼が武器を構え直す方が早かった。
「ミスティ・ブルーだっけか。あんたの見せる幻は誰かを傷付けるものだ。誰かを傷つける夢なら叶わなくていい」
否定の言葉と共に瑞樹は駆けた。それと同時に青色の瞳が輝いて、彼の両手にある武器の力を引き出していく。
左手には『黒鵺』。右手には打刀『胡』。どちらも彼にとって身体の一部のような存在だ。
それらに『菊花』のユーベルコードを乗せて、何度も敵へと振り下ろしていく。
身体に大きな負担がかかるが構うものか。この力も誰かを傷付けるようなもの。それなら傷つくのは自分だけでいい。
凄まじい勢いで振るわれる刃は蛇女の身体を切り裂き、確実にダメージを与えていく。
「どうして誘いに乗らない
……!?」
「さっきも言っただろ。誰かを傷付ける虚しいものなんて、誰も望んではいないんだぜ」
焦る蛇女に最後の一閃。それは瑞樹としての、否定と決意の一太刀だった。
大成功
🔵🔵🔵
ノイシュ・ユコスティア
メリナ(f13268)と二人描写希望。
メイン武器はロングボウ。
あの夢は夢であり現実じゃないとわかっているんだ。
とはいえ「私は過去に戻れる術を知っている」等と言われて惑わされたら、過去に戻りたいと一瞬でも思ってしまうかな。
メリナの助けもあり、正気に戻れたら、すぐに攻撃体勢になる。
「メリナ、ありがとう。」
ユーベルコードで流花を呼び、その背に乗って戦う。
敵の下半身を狙い、数回マヒ攻撃を試した後、胴体を攻撃する。
敵がメリナの方に行かないように、周囲を迂回しながら援護射撃してこちらに気をひかせる。
狙えれば、敵の背後から高速で近づき、ダガーで敵の弱点を刺す。
敵の幻惑は偽物だと割りきって回避する。
メリナ・ローズベル
ノイシュ(f12684)と参加
・欲しいもの
ノイシュの彼女になりたい
超強力な魔法を使えるようになりたい
「でも、欲しいものって自分で手に入れなければ意味なんてないじゃない」
「ノイシュ、現実を見て!」
彼の前に立ち、注意する
そうやって人を誘惑するなんて許せないわ!
ロッドを振りかざし鈴蘭の嵐を呼ぶ
敵に対しては距離を取りながら動く
炎属性の全力魔法でいろいろな部位を狙って弱点を探ってみる
弱点がわかったらノイシュに教えるわ
基本は本体を狙うけれど、別のものが召喚されたら手早くそれを倒すようにするわ
敵からの攻撃(幻惑含む)はオーラ防御で身を守る
もちろん、操られないためにしっかりと気を張るつもりよ
●
猟兵達に打ちのめされても蛇女は諦めない。まだ獏羊の残滓は残っているからだ。
彼女が次に狙いを定めたのはノイシュだった。彼の望みは夢で見た光景のような過去に戻る事。
「……アナタの望みは、私が叶えてあげるわ。力をつければ過去に戻る術も編み出せる」
「過去に……?」
その言葉を受けノイシュは一瞬揺らいでしまう。
あの夢は夢であり現実じゃないとわかっている。
それでも蛇女の言葉は心の隙間に付け入り、夢の実現が可能だと思わせてしまう何かがあった。
「……本当に、戻れるのかい」
「ええ、共に望みを叶えましょう?」
蛇女が差し伸べてくる手が救いの手に思えてしまって。ノイシュは思わず自分の手を伸ばしそうになり……。
「ノイシュ、現実を見て!」
突如、二人の間に誰かが割り込んだ。その人物は鈴蘭の花を纏いながらノイシュを守るように立ち塞がる。
「メリナ!」
「そうやって人を誘惑するなんて許せないわ!」
鈴蘭を纏った少女、メリナ・ローズベル(紅い花・f13268)は杖を突きつけ蛇女を睨んだ。
ノイシュもメリナの姿を見やれば、伸ばしかけた手を引っ込めてすぐに戦闘態勢を整えていく。
「メリナ、ありがとう。助かったよ」
「正気に戻ったならいいのよ。とにかく敵を倒すわ!」
感謝のやり取りは短くともしっかりと気持ちは通じ合っている。二人はそれぞれ別の方向へと駆け出し、悪しき蛇を倒すために戦い始めた。
「おいで、流花。一緒に飛ぼう!」
ノイシュは大きなハヤブサの流花を呼び出し、その背に飛び乗る。これで動き回りながらロングボウを扱う事が出来るのだ。
メリナは彼とは反対方向に走り出し、再び杖を構えて魔術の構えを取り始めた。二人で挟み撃ちにする作戦だ。
勿論新たな介入者により作戦が崩れたミスティ・ブルーは苛立った雰囲気を纏うが……すぐに獏羊の残滓をかき集め、彼らを惑わす言葉を続けていく。
「本当にいいのかしら。私はアナタの望みも叶える事が出来るのよ?」
「私の望み? あなたに分かるの?」
メリナの夢は直接覗かれてはいない。だが蛇女は構わず言葉を続けていく。
「ええ。私ならアナタに偉大な魔術を教える事も出来るし……意中の相手を意のままにする方法も教えてあげられるわ?」
その言葉と共に蛇女はチラリとノイシュの方を向く。その動作の意味を理解し、メリナの顔に一瞬だけ焦りの色が滲んだ。
だがすぐに彼女の表情は強い意志を示すものへと変わる。
「でも、欲しいものって自分で手に入れなければ意味なんてないじゃない」
だからこんな誘いには乗らない。そんな気持ちを杖に籠めて、メリナは一気の炎の魔術を発動していく!
杖から発する炎は幾重にも枝分かれしていき、蛇女の全身を満遍なく燃やし始めた。
「そんな攻撃、簡単に避けられ
……!?」
「僕も忘れないで欲しいね」
炎から逃れようとした蛇女だが、ノイシュが的確に弓を撃ち込んだ事で動きは見事に阻止される。
彼は流花と共に動き回りつつ、次々に矢を放っていた。最初は蛇の部分に、次に身体の部分に。
全ての矢に麻痺毒が塗られており、矢が刺さる度に蛇女の動きは鈍っていく。
その行動により彼女の注意は完全にノイシュに向いていたのだが、これも二人の作戦通りだ。
「ありがとう、ノイシュ。あと少しで……!」
メリナも次々に炎を放ち、蛇女の反応を観察していた。
何度も炎を撃ち込んでしっかりと相手の反応を見極め……メリナは気付く。相手の弱点は人間の心臓がある位置、左胸だ。
「ノイシュ、心臓の所が弱点よ!」
「ありがとう、メリナ!」
二人の様子を見て蛇女は自身を守るべく香毒を纏うが……流花の羽ばたきとメリナの鈴蘭の嵐が一気にそれを打ち払っていく。
その隙にノイシュは敵の背へ回り、すぐさま武器をダガーに持ち替えた。
「僕らの大切なものを利用した事を……償ってもらうよ」
「欲しいものは、私達自身が掴み取るわ!」
言葉と共に、ノイシュのダガーとメリナの炎が煌めく。
二人は前後から同時に蛇女の心臓部を穿ち、彼女の身体を大きく傷付ける事が出来た。
だが相手はオブリビオン。人間なら致命傷の攻撃だが、まだ何とか戦えるようだ。
それなら何度でも攻撃するだけ。そして彼女の誘いを跳ね除け、二人で共に戦い続けるだけだ。
ノイシュとメリナは再び顔を見合わせて、続く戦いに覚悟を示した。
大成功
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リード・ユースレス
何を馬鹿なことを。もう全て過去のことです。
骸の海から取り戻せるとでも?
なるほどアナタが言うと出来そうな気がしなくもない。
そちらに従えば思いのまま、と。
……戯言は聞きたくないですね。【轡】を噛ませて黙らせてしまいましょう。逃げられると厄介なので【縄と枷】もつけましょう。
聞き入れるとでも思ったのですか?これでも僕はお嬢様(主人)一筋ですので、諦めてください。
【Night Works】で希望も何も纏めて叩き潰します。
お嬢様に会ったらよろしくお伝えください。それではご機嫌よう。
●
ここまで猟兵達の攻撃を受け続けたミスティ・ブルーは最後の希望を求めて獏羊の残滓を辿った。
最後に目についたのは、リードの望むものだ。
「……アナタにとってかけがえのない日々を、取り戻させてあげるわ」
蛇女がこちらを視認し言葉を投げかけたのに気付いたリード。麦わら帽子の下、藍色の瞳が微かに歪む。
「何を馬鹿なことを。もう全て過去のことです。皆を骸の海から取り戻せるとでも?」
「ええ、そもそも私は骸の海から出てきた存在よ。私に従えばそこから何かを取り戻す術を教えるわ」
彼女の艷やかな唇から出てくる言葉には妙な説得力がある。これが幻惑の力なのだろう。
リードは考え込むように帽子のつばを摘んで蛇女を見た。
「なるほど、アナタが言うと出来そうな気がしなくもない。そちらに従えば思いのまま、と」
リードの言葉を受けた蛇女はほくそ笑む。ようやく猟兵を掌握出来るのだ。
ここから彼を他の猟兵へとけしかければ逃げる時間くらいは稼げるだろう。そう思い、ミスティ・ブルーは更に言葉を続けようとした。
「そうよ、だから私と……ぐっ!?」
だがそれ以上の言葉は続かなかった。リードは放った猿轡が蛇女の口を塞いだからだ。
更に続けて手枷と縄が飛来すれば、ミスティ・ブルーの全身を次々に拘束していく。
「……戯言は聞きたくないですね」
リードは決して誘惑には乗っていなかった。敵の油断を利用し『咎力封じ』を放った彼の表情はどこか決意を秘めている。
「聞き入れるとでも思ったのですか? これでも僕はお嬢様一筋ですので、諦めてください」
言葉と共に大槌『Night Works』を握りしめ、リードはゆっくりと蛇女に近付いていく。
猿轡とベール越しではあるが彼女の表情がどんどん歪んでいくのが分かった。だがこれも、きっと当然の報いなのだろう。
敵の目の前まで来たのなら、リードはNight Worksを高く掲げる。
「お嬢様に会ったらよろしくお伝えください。それではご機嫌よう」
別れの挨拶と共に、何度も何度も槌は振り下ろされる。彼女が抱いた希望も、他の人を苦しめた幻も全て叩き潰すように。
しばらく重い音が森中に響き渡った。最後に残ったのは猟兵達と静かな森だけ。
リードも一仕事終えた後のように槌を片付け森を見回す。
そこに残った静けさは、猟兵達を優しく包む。
こうして猟兵達は悪しきオブリビオンの根城を攻略する事が出来たのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『月湖』
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POW : 湖の月面に勢いよく乗ってみる
SPD : 湖の月面に恐る恐る乗ってみる
WIZ : 湖の月面を湖の外から眺める
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森での戦いが終わってからしばらく。
時刻はすっかり夜になり、空には綺麗な満月が輝いている。
森の近くの『月湖』では、その月に呼応するように湖面にも月が輝いていた。
その正体は湖の中に生息する不思議な植物。
キラキラと輝くそれは湖面にもう一つの月を作り上げているのだ。
植物によって出来た月は頑丈で乗って遊んだりする事も出来る。
湖の周囲でも綺麗な草花が幻想的な光景を作り上げていた。
ちょうど気温も過ごしやすい涼しさで、柔らかな夜風も吹いている。
どのように過ごすかは遊びに来た人の自由だ。
日が昇るまではここでのんびりと過ごす事が出来るはずだ。
※お願い
出来るだけ多くの方のプレイングを採用したいので、場合によっては再送をお願いする場合もございます。
適宜マスターページの方も確認していただけると幸いです。
黒鵺・瑞樹
アドリブOK
月に呼応する植物か。穀物神の神格持つ月読さん思い出すな。
乗るっていうより触れてみたいんだが、どうしようか。
……。
おとなしくほとりで景色を眺めよう。
あとはうっかり寝てしまわないように気を付けて。
●
月湖の畔にて、瑞樹は湖面を見つめていた。
きらきらと輝くのは月に呼応する植物。空にも同じように綺麗な満月が輝いている。
思い出すのは穀物神の神格を持つ月読尊。
瑞樹がヤドリガミとして目覚めた社が祀っているのも月読さんだった。
頭の中にそこで過ごした日々も浮かび上がっては消えていく。共に過ごした人達は今どうしているだろう。
ぼんやりとした思考は続く。この世界にも月読さんのような神様はいるのだろうか。
その神様も神殿があって、そこで誰かが目覚めたりして、同じように旅に出たりして。
そういう事もあるかもしれない、なんて思いつつ瑞樹は改めて湖面を見つめた。
水面も湖面の月もゆらゆらと揺らめき輝いている。
乗るのは遠慮しておきたいが、少し触るくらいなら……。
瑞樹は湖の縁までそっと歩を進め、手を湖面の月へと伸ばしていくが……結局は月に触れずに手を引っ込める事にした。
何となく、触れるよりは眺めていたい。
それなら再びこの景色を楽しもうと、瑞樹は開けた場所まで歩いていく。
草原に腰掛けて空を眺めれば月だけではなく星の輝きも目に入った。
視点を下に向ければ湖面にも星が輝いている。そしてその周りには美しい花々が、夜風に吹かれてそっと揺れていた。
美しい光景だと思う。夜が明けるまでは眺めていたい。
瑞樹は大きく深呼吸をしてから、再び景色を楽しみだした。
うっかり眠ってしまわないように気をつけて。瑞樹の月夜は静かに優しく更けていった。
大成功
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ノイシュ・ユコスティア
メリナ(f13268)と二人描写希望。
湖の月、綺麗だなぁ。
近くに行きたいけど、少し花畑でくつろいでからにしようかな。
「これは珍しい花だね。
何ていうか知っているかい?」
この景色を残しておきたい。
スケッチブックを取り出し、絵を描き始める。
メリナの質問に
「欲しいと願ったのは村にいた時の幼なじみだよ。
手に入らないとわかっていたからつい求めてしまったのかな…。」
メリナは?
…よくわからないなぁ。
ちょっと月の所まで行ってみよう。
服が濡れても気にしない。
流花を召喚して、メリナには流花に乗ってもらう。
月に乗ってみる。
「メリナは乗らないのかい?」
風が気持ちいいな…。
しばらく無言でゆったりする。
メリナ・ローズベル
ノイシュ(f12684)と参加
わぁ…、とても神秘的ね
私はここで月を眺めるだけで十分
花畑でのんびり過ごさない?
私…、ノイシュが欲しいものって何だろうと思ったの
あなたが教えてくれないなら私も教えないわ
私の欲しいもの
うん…、こんな幸せを繰り返せばいつかはね
わからないならいいのよ!
この花は前に図鑑で見たかしら…
それにしても違う世界にも似た花はあるのね
私はひまわりの花畑が好き!
今度一緒に行きたいわ…
でも誘う勇気がない、ダメな私
ノイシュが行くなら私も!
流花ちゃんに乗せてもらうわ
あら、おとなしい、いい子ね
私は植物の生態を見てみたいと思っただけよ!
ノイシュの隣に座ってシンフォニック・キュア
性格はツンデレです
●
月湖の傍の花畑にて、ノイシュとメリナは周りの景色を楽しんでいた。
「わぁ……、とても神秘的ね。私はここで月を眺めるだけで十分かしら」
「湖の月も綺麗だなぁ。周りの植物も……あ、これって」
突然ノイシュが花畑の中に何かを見つけ、いそいそとスケッチブックを取り出した。
「これは珍しい花だね。何ていうか知っているかい?」
彼が見つけたのは小さなオレンジ色の花だ。小さいながらひまわりのようなフォルムをしておりとても可愛らしい。
ノイシュはその花を中心に周りの景色をスケッチしだし、メリナも一緒にその光景を眺めていた。
「この花は前に図鑑で見たかしら……。それにしても違う世界にも似た花はあるのね、この花もひまわりみたいで」
愛らしい花を前にメリナの表情も思わず綻ぶ。
「私はひまわりの花畑が好き! だから……」
今度一緒に行きたい。でもその言葉はどうしても口に出せなくて。
恥ずかしいし、ついつい意地を張ってしまう。
「どうかしたかい?」
「べ、別に。何でもないわ。それより……私、ノイシュが欲しいものって何だろうと思ったの」
誤魔化すために出たのは先程の戦闘に関わる話。メリナの言葉を受けて、ノイシュはスケッチブックから目を離す。
「欲しいと願ったのは村にいた時の幼なじみだよ。手に入らないとわかっていたからつい求めてしまったのかな……」
言葉と同時にノイシュは空を見つめた。空に浮かぶ星や月のように、届かないから思ってしまったのだろうか。
「そう、だったの。だからあの時……」
思わず蛇女の手を取りそうになったノイシュを思い出して、メリナの表情が微かに曇る。
止めたことは決して後悔していない。けれど彼の心の傷を思うと自分まで悲しくなってくる。
「……メリナは何を願ったのかい?」
彼女の暗い様子に気付き、ノイシュは優しく声をかける。
質問の返答にも勿論興味はあるが、今は話を変えてあげたい。
「私の欲しいもの……うん、こんな幸せを繰り返せばいつかはね」
その言葉を受けた彼女の反応はノイシュからすれば意外なものだった。
怒るのでもなく、誤魔化すのでもなく。少し悪戯っぽい笑みを浮かべて返された言葉の意味を、ノイシュはまだ理解出来ない。
「……よくわからないなぁ」
「わからないならいいのよ!」
こんな風に一緒にいればいつか分かる時が来るのだろうか。
そんなやり取りをしながら二人は再び周りの景色を楽しみだした。
ノイシュのスケッチが一段落した頃。彼はゆっくりと立ち上がり、湖の方を指差した。
「ちょっと月の所まで行ってみようかな」
「ノイシュが行くなら私も!」
メリナも一緒に立ち上がり、二人は湖の縁まで歩いていった。
このまま進めば湖の月まで行けるだろうが少し服が濡れてしまうかもしれない。
ノイシュはそれでも構わなかったが、メリナの服が心配だった。
「おいで、流花。メリナを乗せてあげて」
「ありがとう、ノイシュ、流花ちゃん」
そこでノイシュはハヤブサの流花に手伝ってもらう事にした。
「あら、おとなしい良い子ね」
「僕の頼れる相棒だからね」
メリナも流花の事が気に入ったようで、暖かな背中を満喫している様子。
ノイシュもその様子に笑顔を浮かべながら進み、無事に湖の月まで辿り着いた。
湖の月はふかふかとした不思議な感触をしており乗り心地はとても良い。
先に乗ったノイシュはメリナの方へと手を伸ばす。
「メリナは乗らないのかい?」
「私は……そうね、乗ってみようかしら。植物の生態を見てみたいと思っただけよ!」
再び誤魔化すような言葉が出てしまいメリナはついつい後悔してしまう。
だがノイシュはそんな彼女の様子を微笑ましげに見つつ、彼女の手を取って共に月の上を進んでいった。
湖の月は思ったよりも大きく、再び座ってのんびりする事が出来そうだ。
二人は月の中央で再び座り込み空と景色を眺める。
澄んだ夜風と共に、静かな時が流れていく。
「風が気持ちいいな……メリナ、今日はありがとう」
「こちらこそ。また一緒に冒険しましょう」
感謝を伝え合えばそれ以上の言葉はいらない。
けれど気持ちを伝える歌くらいは。
メリナはそっと歌を歌い始め、ノイシュは静かにそれに聞き入る。
それは戦いの傷も心の傷も癒えていくような暖かな歌で。
その様子を空と湖の月が優しく見守っていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
吉備・狐珀
植物の上にのって満月を鑑賞。
見事な満月だと思う一方でどこか心ここにあらずとなってしまうのは、夢とはいえ兄の姿を見ただけでなく、声を聞いたからか。
大好きだった村も社も兄の笑顔ももう見られなくなってしまったけれど。
もしかしたら獏羊の見せた夢の残骸がもう一度見せてくれないだろうか…。
馬鹿げていると思いつつ、今日だけ、今だけでいいからと願う自分もいて。
柔らかな夜風の心地よさと、優しい月明かりを感じながら目を閉じて少しだけ眠ろう。
会えるかどうかはわからないけれど。
●
湖の月の上で狐珀は空を眺めていた。
空に輝く満月は見事なもので、下を向いても輝く植物が美しい月を形成している。
見事な満月だと思う。
だけど狐珀の心はどこか浮ついてしまい未だ夢の中にあるようで。
それはきっと、夢の中で兄に会ったから。姿を見るだけでなく声を聞いたからだろう。
目を閉じれば大好きだった村も社も、そして兄の姿も浮かんでくる。
忘れた事は決してない。あの大好きな光景はずっと心の中にある。
さっき見たのが夢なのも分かっている。だから蛇女の誘いを断り、これからも共に兄と進むと決めた。
傍らには兄の魂を宿した人形もあるのだ。兄は今もここにいる。
それでも、声を聞いてしまった以上は心がそちらに惹かれてしまうのも道理というもの。
(もしかしたら、獏羊の見せた夢の残骸がもう一度見せてくれないだろうか……)
これは純粋な願い事だ。
馬鹿げていると思いつつも、今日だけ、今だけでいいからと願う自分もいて。
だから狐珀は湖の満月にそっと腰掛け目を閉じた。
植物の感触はふかふかで休むにもちょうどいいだろう。
他に感じられるのは心地の良い夜風と、瞼を通して伝わる優しい月明かり。
このまま少し眠ってしまおう。そう思い狐珀は静かに月の上に横たわった。
会えるかどうかはわからないけれど。
願わくば、再び夢の中で兄と会えますように。
そしていつか、夢が現実になりますように。
そっと願いを籠めながら狐珀は静かな眠りに落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
リード・ユースレス
今夜は月が明るいですね。ランプもいらないでしょう。
せっかくですので、月に乗ってみましょう。光の海に浮かぶ船のように感じます。僕は好きですよ。こういうの。
それにしても、同じ植物なのに麦や粟とは随分違うのですね。丈夫で大きくて輝いている。お嬢様が知れば喜ばれるでしょう。
まあまだ暫くは会いたくないですが。
●
「今夜は月が明るいですね」
ランプもいらないでしょう、とリードは槌に取り込まれたランプを切る。
それでも周りは月と星、そして湖の月のおかげで心地の良い明るさに包まれていた。
せっかくだから湖の月にも乗ってみましょう。そう思いリードは湖を進んでいく。
辿り着いた湖の月はきらきらと輝いており、光の海に浮かぶ船のように感じられる。
このような光景は好きだ。リードの顔も少し綻ぶ。
いざ乗ってみた植物はふかふかで、リードの知っているどの植物とも違った感触があった。
柔らかいが丈夫で大きく輝く植物。ずっと麦や粟を触ってきたリードからすればこの植物はとても興味深い。
近くで観察してみたり、ゆっくりと撫でてみたり。鉈で少しだけ切って手にとってみたり。
その最中に浮かぶのは主人であったお嬢様の事だ。
彼女がこの植物を知ったならとても喜んだと思う。
実際に育ててみたいと言うだろうか。それならきっと大きな湖を見つけて、一緒に植物の世話をしただろう。
最初は小さな月から。そしてずっと育てれば二人で乗れるくらいの大きさには出来ただろうか。
……そんな事を思いつつも、まだお嬢様とは再会したくない自分もいる。
彼女のお願いは今も胸の中に生きている。それを改めて実感したのだから。
だからこの月が沈む頃、リードは再び誰かを助けて、息をして、彼女の願いを果たすべく動き続けるだろう。
お嬢様と再会するのはその後だ。
その時の事を思い、リードは少しだけ目を閉じた。
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こうして猟兵達はオブリビオンを倒し、アックス&ウィザーズの平和を守った。
美しい月湖もそこにあり続け人々を癒やすだろう。
その輝きは優しい夢のようで。
だからこそ、それぞれの願いを励ますような優しさがあった。
大成功
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