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甘いお城の舞踏会に慈愛はカケラもない

#アリスラビリンス


●舞踏会への招待状
「アリス達、また招待状が届いたよ」
 申し訳なさそうに告げるのは、郵便屋の格好をしたブリキ製のネコの人形。
「えっ……お母様から、の……」
「またっ……!?」

 ★*:;;;:*☆*:;;;:*★*:;;:*☆*:;;:*★

 可愛い可愛い我が子達へ

  舞踏会を開きます。
  皆、揃って出席するように。
  衣装はいつもどおり、仕立て屋に用意させるので、
  好きなものを選んで正装でいらっしゃいね。

  日時・あと三回眠ったら
  入城開始時刻・夕ごはんを食べる前

 ★*:;;;:*☆*:;;;:*★*:;;:*☆*:;;:*★

 不思議の国の城下町。子どもが喜びそうなお菓子でできた街、その最奥に立つお城では、定期的に舞踏会が開かれている。
 甘い甘いお城に住むのは、アリスたちを『我が子』と呼ぶオウガ。このオウガは自身が開く舞踏会で『優先的に食べるアリス』を決めている。
「またっ……また誰かが……」
「ノヴェッラ、泣かないで。行かなかったら『お母様』に食べられちゃうよ」
「わかってるわ。でも……今度はわたしやセノフォンテがお城を出られない可能性もあるのよ!」
 ノヴェッラと呼ばれたストロベリーブロンドの少女は、自身の名を呼んだ少年――セノフォンテの顔を見つめる。
「……だったら、今回も無事にお城から出られるように頑張るしかないよ」
 この不思議の国にはふたり以外にもアリスがいる。その全員と愉快な仲間たちが舞踏会に呼ばれるのだ。
 逃げ出したいけれど逃げられない。
 誰も犠牲になってほしくないけれど、誰かを犠牲にしなければ自分が食べられてしまう。

 甘い甘いお城で開かれる絢爛豪華な舞踏会。
 その実は、酷い苦さで出来上がっている――。

●グリモアベースにて
「……、……」
 グリモアベースに佇む長身の男の背には、ふぁっさーとした黒い翼が広がっている。髪に咲く花も見えることから、オラトリオなのだろう。
「時間があるなら、聞いていけ」
 ぶっきらぼうな物言いの彼の手には、数枚の羊皮紙。ちなみに特段機嫌が悪いというわけではないようだ。
「……先に言っておく。笑うなよ? 似合わないことは私が一番良く知っている」
 頭の上にはてなマークを浮かべる猟兵たちを前にして、グリモア猟兵リーナス・フォルセル(天翔ける黒翼のシュヴァリエ・f11123)が展開したのは、アリスラビリンスの景色。確かに、似合わないというか、なんというか……。
「アリスラビリンスの事件の解決を頼みたい」
 なんとも言い難い雰囲気が広がりつつあるのを無視するように、リーナスは淡々と予知を語り始めた。
「子どもが好きそうな、夢見るような、お菓子でできた街並みの不思議の国がある。その国の城で、定期的に開かれる舞踏会――オウガの開くそれには、罠が仕掛けられている」
 甘い甘いお菓子の乗ったお皿に一つだけ毒入りのお菓子。
 美味しそうな骨付きお肉の一部分に、猛毒。
 ダンスフロアに巧妙に仕掛けられた、踏むと転んでしまう罠。
 舞踏会ごとに罠は違うようだが、罠に引っかかったアリスは舞踏会が終わっても『城から出てこない』のだという。
「罠にかからなければ、舞踏会終了後に城から出て、街へ戻ってもいい――そういう決まりをここのオウガは作っているようだ。だからまずは舞踏会に参加して、舞踏会終了時点で罠にかかったアリスが一人もいない状態にしてほしい」
 オウガは舞踏会終了まで姿を現さない。だが『舞踏会』という形式を破れば、オウガに脅されている愉快な仲間がたちどころにオウガへと知らせ、オウガをダンスホールへと呼び寄せるだろう。『舞踏会』という形式に則りつつ、アリスたちを助ける必要がある。
「アリスたちは愉快な仲間たちやアリス同士でダンスをしたり、用意された料理に手を付けたりしている。料理を食べない、というわけにはいかないらしい。お前たちは誰かと共にダンスに参加しながらでもいい。給仕の愉快な仲間に混ざってもいい。『舞踏会』という形式から外れない行動を取りながらであれば、アリスたちを手助けしても問題ないだろう」
 リーナスによれば、この日の舞踏会に参加するアリスは全部で十五名前後。他には愉快な仲間が多数参加するという。
「舞踏会終了時点で罠にかかるアリスがおらず、彼らを無事に城から帰すことができるのが最上だ。だが、手が及ばない場合もあるだろう。その場合は……仕方がない」
 仕方がない――本当はそんな事言いたくないのだろう。リーナスの言葉にあった間が、それを示しているようだ。
「どちらにしろ、舞踏会が終わればまず手下のオウガたちが現れる。それを撃破できれば、この城の主と相対することができるだろう」
 告げてリーナスは、三日月型のグリモアを輝かせて。
「お前たちならきっと、上手くやれることだろう。期待している」
 淡々と述べ、猟兵達を導く準備を始めた。


篁みゆ
 こんにちは、篁みゆ(たかむら・ー)と申します。
 はじめましての方も、すでにお世話になった方も、どうぞよろしくお願いいたします。

 このシナリオでは、舞踏会に仕掛けられた罠からアリスたちを守り、城の主たるオウガを倒すことが目標です。

 第一章では、舞踏会に仕掛けられた罠からアリスたちを守っていただきます。
 アリスの数は十五名前後。
 舞踏会終了時に罠にかかっていないアリスは、城から出ることができます。
 舞踏会という形式から逸脱しない形であれば、舞踏会に参加しつつアリスたちを助けることができます。

 ご自身が対応する罠に関しては、舞踏会内で設置されていいもおかしくないようなものであれば、ご指定いただいても構いません。
 ご指定がなければ、書かれた対策からこちらで罠を考えさせていただきます。

 提示されているPOW/SPD/WIZの行動例はあくまで一例ですので、あまりお気になさらず。

 第二章は、舞踏会終了後の集団戦です。

 第三章は、ボス戦となります。

 どれか1章だけの参加や途中参加も歓迎です。

●アリスについて
 舞踏会に参加するのは十五名前後。人数に関してはふわっと考えていただければ。
 OPに出演しているふたりのアリスにも接触可能です。ご希望ありましたらご指定ください。

・ノヴェッラ……10歳。長いストロベリーブロンドの髪を持つ少女。
・セノフォンテ……13歳。ブルネットの髪を持つ少年。

●プレイング再送について
 プレイングを失効でお返ししてしまう場合は、殆どがこちらのスケジュールの都合です。ご再送は大歓迎でございます(マスターページにも記載がございますので、宜しければご覧くださいませ)

●お願い
 単独ではなく一緒に描写をして欲しい相手がいる場合は、お互いにIDやグループ名など識別できるようなものをプレイングの最初にご記入ください。
 また、ご希望されていない方も、他の方と一緒に描写される場合もございます。

●オープニング公開後に、冒頭文を挿入予定ですが、挿入前にプレイングをお送りいただいても問題ありません。

 皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております。
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第1章 冒険 『魔法のお城の舞踏会』

POW   :    自分がトラップに掛かる事で、体を張ってアリス達を守ります。

SPD   :    会場を走り回り、トラップに掛かったアリスや愉快な仲間達を助けます

WIZ   :    会場のトラップを見抜いて、事前に罠を解除します。

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●華やかな上辺
 お城のダンスホールには、優雅な音楽が満ちている。
 ホール中心でダンスを楽しむのは、複数のアリスと愉快な仲間たち。
 ホールの壁際には、真っ白いクロスの敷かれたテーブルが並び、美味しそうな料理やお菓子が並んでいる。
 ダンスで疲れた者のために、壁際に椅子がいくつか設置されていた。

 これだけ見れば、華やかな舞踏会。
 料理もお菓子も好きなだけ食べられる、いたれりつくせりの舞踏会。

 だが、踊っている者たちの表情は固く、あるいは暗い。笑っていても、それは若干引きつっていて。
 料理を、お菓子を皿に取った者たちは、カトラリーを持つ手を震わせている。顔も、青ざめているようだ。

 どうして楽しそうではないの?
 どうしてためらいなく食べないの?

 それはね――。
オウカ・キサラギ
WIZ

ご飯っていうのは笑顔で楽しく食べないとダメなんだよ。
それを悲しい顔で食べざるを得ない状況にするなんて、絶対に許せない!

ボクは故郷で何度も遺跡を探索してたからその時の【情報収集】や経験で罠が置かれている場所を探せるはず!
それだけじゃ全部を看破できないだろうからある程度は【第六感】も頼るよ!
罠がありそうな場所を見つけたらUC炎精でパッと見じゃわからないくらいに小さくしたちびオウカで罠を破壊したり、毒入りのご飯を焼いたりしてアリスたちが罠に引っかからないようにするよ!
工作が見つからないように怪しい場所の近くで踊ったりご飯を探すふりをして【物を隠す】要領で悟らせないようにしなくちゃね!


エイミ・メルシエ
ふふふ、お菓子の国には慣れていまして。
しかしアリスを食べるのは見過ごせないのです。
見かけは甘くとも、中身が苦くちゃ嫌でしょう?
この世界に来ると、なんだか胸騒ぎもしますし……

とにかく、わたしが皆さんの代わりにこの舞踏会を楽しみましょう!
わたし、死なないですし……ね!

ダンスもできなくはないですが、やはりお菓子の国のスイーツを食べてみたいところ。
夢の中じゃ知ってる味しか食べれませんから。
毒が入っていようとお構い無し、痛いのだって大丈夫。
あちこち走り回って、食べて、そうやって罠も毒も潰してしまいましょう。

こんなわたしを、アリスはどう思うのかしら?
でも、これもアリスを笑顔にするためだもの。頑張ろう!



 流れるのは優雅な演奏。ホール奥の一角に集まった、愉快な仲間たちによる生演奏だ。
 ホール内には料理やお菓子の芳しい香りが漂い、曲に合わせてステップを踏むアリスたちと愉快な仲間たち。
 食べ物のたくさん乗せられたテーブルのそばで、何を食べようか迷っている者たちも――。

 ――否。

 よく見ればわかるはず。
 優雅なのは建物の装飾と料理の見た目と音楽だけ。
 肌から感じるホールの空気は、とてもじゃないが舞踏会とは程遠い。

(「ふふふ、お菓子の国には慣れていまして。しかしアリスを食べるのは見過ごせないのです」)
 ダンスホールへと足を踏み入れたエイミ・メルシエ(スイート&スウィート&プリンセス・f16830)は、視線を巡らせてホール内の様子を把握しようと務める。
 壁はビスケット、床はチョコレート、階段はラムネ菓子のような綺麗な白。けれどもこの空間は、全然甘く感じない。
(「見かけは甘いようですが……中身は苦さでいっぱいみたいですね」)
 甘くないものは嫌いと明言する彼女は、わずかに眉根を寄せた。この世界へ来た時から感じている胸騒ぎは、この舞踏会となにか関係があるのだろうか?
「……ご飯っていうのは笑顔で楽しく食べないとダメなんだよ」
 エイミの耳に入ってきたその声は、ワルツの旋律に紛れていく。けれども舞踏会に相応しくない行動だと見咎められぬように極力落としたその声からは、隠しきれぬ怒りが感じられて。
「それを悲しい顔で食べざるを得ない状況にするなんて、絶対に許せない!」
「それ、同感です!」
 エイミが振り返った先にいたのは、怒りに震えるオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)だった。同意を示したエイミに近づきながら、オウカは「だよね!」と嬉しそうに告げる。
 オウカにとって食事は特別なものだ。暗い貧民街から光満ちる世界へ連れ出された彼女。降り注ぐ太陽と温かいスープを口にした時、彼女は生まれて始めて心が満たされたのである。
 そんな彼女にとって今でも食事は、日常の一端だけれど特別で大切なことに変わりはない。それがここでは、死を恐れ、怯え、拒否することさえ許されぬというのだ。オウカがこれに怒らずにいられるだろうか。
 飢えの辛さに耐えるのと、死の恐怖と確率を乗り越えるのとどっちがマシか――そんなこと比べられるはずがない。
 ただ一つ言えるのは。

 許 せ な い ――それだけだ。

「ボクは故郷で何度も遺跡を探索してたから、その時の情報や経験で罠が置かれている場所を探してみるよ」
「もしかして、毒とか罠の仕掛けられてる料理も判別できますか?」
「勘に頼る部分もあるけど、多分できるよ」
 ピンクの髪の同年代の少女が話に花を咲かせる様子は、遠目から見れば微笑ましく見えることだろう。会話の内容はさておいて。
「毒とか罠の仕掛けられたご飯は焼いちゃおうと思うんだ」
「あ、じゃあその処理はわたしに任せてくれませんか? お菓子の国のスイーツを食べてみたかったんです」
 笑顔で告げるエイミの言葉に、オウカは「危険だよ」と驚いた様子を見せたが。
「毒が入っていようとお構い無し、痛いのだって大丈夫。わたし、死なないですし……怪しいと思った食べ物をどんどん教えてください。その分、他の罠の対処に手を割いてもらえると助かります!」
「え、死なないってどういうことなのかな?」
 オウカが戸惑うのも当然だ。だがこれは簡単なからくりである。
 エイミはヤドリガミなのだ。ヤドリガミは肉体が損傷しても器物が無事ならば、肉体の再構築をすることで再び肉体を得ることができる。だから体を張るヤドリガミが後を絶たない気がするが。肉体の再構築だって、しなければならない状況に至らないほうが良いに決まっている。
 だが、今回のように時間が限られ、対象が広域で守るべきものが散らばっている――そんな場合には、少しでも分担できたほうがいいのは確かだ。
「わかったよ。じゃあ一緒にテーブルを回ろう。テーブルを回りながら、ボクは他の罠も探すね」
「はい。食べ物の方は任せてください!」
 取り皿を手に、テーブルを回っていくオウカとエイミ。オウカが「あれが怪しいね」と指す仕草は「あれ美味しそう!」とどれを食べるか迷いながら決めたようにも見えて。それを素早くエイミが皿へ取り、次の料理へとふたりで視線を向ける。
「あ、ちょっと待って。あのテーブルだけテーブルクロスの長さに違和感が……ちびオウカたちに対処させるから、怪しまれないようにテーブルのそばに立って食べててもらえるかな?」
「お任せあれ、です!」
 エイミはテーブルの壁際に立つオウカを、自然な様子で隠すように立つ。
「いただきまーす」
 はむり。ローストビーフとナッツの入ったパウンドケーキ。立食のテーブルマナーでは、冷たいものと温かいもの、料理とデザートなどを同じ皿に取るのはマナー違反といわれるけれど、今はそんなの咎める者はいないだろう。
(「ふむふむ、ローストビーフはこれ、ソースの中に毒が入っていますね。パウンドケーキは甘くて美味しいですが、ナッツの中にブリキの破片が埋め込まれていました」)
 けれども夢の中のお菓子のお城で食べるものとは味が違っていて。甘い味には思わず笑顔がとろけそうになるけれど。
(「危ない危ない、わたしの顔を見て、アリスが『あれは安全だ』って間違って食べたら大変です」)
 はむはむはむ。はむはむはむ。オウカの取り皿の分までエイミが手を伸ばしている間、オウカが何をしていたのかというと。
「このテーブルの下に罠があるよ。テーブルクロスの長さが違うのは、それを隠すためだね」
 その罠を破壊するためにオウカがとった行動は、炎でできたちびオウカの召喚である。ぱっと見でわからないくらい小さくした炎のオウカをテーブル下へと滑り込ませ、自身は落としたヘアピンを拾うふりをしてエイミの影でしゃがんだ。そして落し物を拾うのに不自然でない短時間でテーブルクロスの中の罠の位置を記憶し、立ち上がりながらそれをちびオウカたちに燃やさせれば、破壊工作の完成。テーブルクロスが燃えないように配慮することも忘れない。
「さぁ、次はあっちに行こうよ」
「美味しそうなものがまだまだありますね!」
 オウカのそれを罠の破壊完了の合図と受け取ったエイミは、彼女と共に会場を巡る。
 罠破壊のカモフラージュにふたりで話に花を咲かせてみたり、旋律に身体を揺らしてみたり、もちろん、危険な料理をぱくぱく食べたり。
(「こんなわたしを、アリスはどう思うのかしら?」)
 ちらり、エイミがホール内のアリスや愉快な仲間たちへと目を向けてみれば、驚いた表情の者たちと目が合い、そしてそらされた。まあ躊躇いなく料理を食べているのだから、当然の反応かもしれない。罠の存在を知らない新しいアリスだとでも思われているのだろう。
(「でも、これもアリスを笑顔にするためだもの。頑張ろう!」)
 今は誤解されても仕方がない。アリスたちのためだと思えば、エイミは辛くなんかない。
「あの椅子空いてるね。座る?」
 階段付近の罠をこっそり処理し終えたオウカが次に示した椅子。運良く誰も座っていないが、そこに罠があるのだろう。ならば。
「そうですね。座りましょう!」
 行かないという選択肢は、今のふたりにはない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ハイペリカム・ファニングス
アドリブ連携歓迎

悪趣味な舞踏会ですねぇ……
ですがアリス様を助け出す余地があるのは良い事です
是非利用させて頂きましょう

私は給仕に紛れておきましょうか
時計ウサギが紅茶の給仕をするのは不自然ではないでしょうし
出来るだけ会場内を動き回って罠にかかりそうなアリス様の救出に努めましょうか

【料理】の知識を活かして毒が使われていそうな食べ物を探したり、歩き回って踏んだり座ったりしたら危険そうな場所に目星をつけましょう
最悪私が罠にかかってアリス様を庇う必要もあるでしょうね
【激痛耐性】でどうにか出来れば良いのですが……

いざという時は【紅茶の時間】で危なそうなアリス様の動きを遅くします
その間に私が対処しましょう


吉備・狐珀
見た目は華やかな舞踏会のようですが、とても満喫しようとは思えませんね…。

誰一人として犠牲を出すわけにはいけません。UC【狐遣い】で狐を召喚。愉快な仲間に紛れる為に蝶ネクタイやリボンで少しおめかししてからダンスホールに仕掛けられた罠を探します。
見つけた罠にアリスがかかりそうになったら【かばい】ます。
【踊り】が苦手なわけではないですが、こういったダンスは不慣れなので私が罠にかかってま変ではないですよね。
怪我を負うのは仕方ありません。こういう時ヤドリガミの体は便利ですね…。好ましい行為とはいえませんが。



(「悪趣味な舞踏会ですねぇ……」)
 厨房から手に入れた銀盆に、飲み頃の紅茶の入ったティーポットを乗せて、ハイペリカム・ファニングス(キリサキウサギ・f19355)は会場内を見渡す。
(「ですがアリス様を助け出す余地があるのは良い事です。是非利用させて頂きましょう」)
 時計ウサギが紅茶の給仕をするのは不自然なことではない。特に今回のようなお酒の出されぬ舞踏会であれば、ジュースだけでなく紅茶も需要があろう。
 ハイペリカムは料理の並んだテーブルへと視線を送り、毒や異物混入などが容易そうな料理を見定めようとする。特に厨房から愉快な仲間達が運んできたばかりの料理には、優先的に目を向けた。そして、不自然さを漂わせないように、アリスたちへ紅茶を勧めるべく歩き出す。

 * * *

(「見た目は華やかな舞踏会のようですが、とても満喫しようとは思えませんね……」)
 ホールの様子を覗き見た吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)は、小さくため息を付いた。誰一人として犠牲を出す訳にはいかない――実際に場と参加者の表情がちぐはぐな様子を見ると、その思いが一層強くなる。

「眷属 寄こさし 遣わし 稲荷神恐み恐み白す」

 ワルツの旋律に紛れるほどの小さな声で唱えた狐珀のそれに応じたのは、一匹の狐。しゃがみこんだ狐珀は、用意していた蝶ネクタイとリボンを取り出し、眷属たるその狐の首元と尻尾へと飾り付ける。
「窮屈ではありませんか?」
 愉快な仲間に紛れさせるための手段ではあるが、心優しい狐珀としては気になってしまうところである。だが狐は「だいじょうぶだよ」とでも告げるように、狐珀の手へと頬を擦り寄せてくれた。
「それでは、罠を探しに行きましょう」
 自然と笑んで、狐珀は狐と共にダンスホールへと足を踏み入れる。

 まずは会場を見渡して、アリス達の位置と猟兵達の位置の確認をする狐珀。アリスか猟兵かの判断は、表情や纏っている雰囲気で何となく判別できた。アリスと思われる者たちは、何をしていても一様に表情が暗く、怯えをいだいているように見えるから――。
「……!」
 と、五感を共有している狐が罠を見つけた。歓談の際に飲み物や皿を置けるようにと、料理の乗せられていない小さめの丸テーブルに仕掛けられているようだ。狐珀がそちらに視線を向ければ、料理を乗せた皿を震える手で持ったアリスの少年がそのテーブルへと向かっている。狐珀は早足で彼の元へと向かう。間に合ってと祈りながら、他のアリスや愉快な仲間たちの間を縫って。
「そこの、あなたっ……」
「えっ……?」
 息を切らしながらも絞り出した狐珀の呼び声に、少年は足を止めた。問題のテーブルまでにはまだ距離がある。不思議そうに振り返った少年を別の場所へと誘導するか――だが今の狐珀には、このホール内で『どこが安全なのか』はわからない。
「えっと……その……」
 ダンスを、と誘おうにもホール内どこに罠があるのかまだわからない。それにこのアリスは料理の乗った皿を持っている。それを食べる前に強引にダンスに誘うのは不自然か。だったら罠を見つけたテーブルまで一緒に行き、自分が彼をかばって罠にかかるほうが自然だろうか。
(「怪我を負うのは仕方ありません。こういう時ヤドリガミの体は便利ですね……」)
 狐珀もヤドリガミであるゆえ、本体が無事であるならば傷ついても身体を再構築すればいい。もちろん好ましい行為でないことも、それに頼りすぎるのも良くないことも承知してはいるが、アリスを助けるために役に立つヤドリガミとしての特性なのだから、ここで使わずしてどうする。
「ご一緒させていただいても良いでしょうか?」
「あ、うん……。ぼくはあっちのテーブルから料理をとってきた、よ。君も取りに行くなら……気をつけて」
「いえ、私はまずは飲み物だけで……」
 少年を一人で罠のあるテーブルへと向かわせるわけにはいかない。狐珀が近くのテーブルに飲み物がないか視線を巡らせたその時。

「お二方とも、紅茶はいかがでございますか?」

 聞こえてきた声にふたりが視線を向ければ、そこに立っていたのは給仕の時計ウサギ――ハイペリカムだ。
「おっと、失礼いたしました」
 傾いた銀盆の上のポットから、紅茶が少年の皿の上へと落ちる。少量ではあるが料理にかかってしまった。
「申し訳ございません、大変失礼をいたしました。代わりに私の持ってまいりましたハンバーグのクリームソースがけはいかがですか? 『先程私もこっそりいただきました』が、大変美味でございましたよ。あ、これは内緒にしてくださいね」
「!」
「……!!」
 ハイペリカムの言葉の意味を、狐珀だけでなく少年も理解したようで、少年は促されるままに自身の持っていた皿をハイペリカムへと渡した。
「テーブルをご利用でしたら、こちらよりあちらが良いでしょう。こちらのテーブルは申し訳ございません、クロスに汚れが見つかりまして、交換を行いますので。あちらのテーブルは、先程『点検を行っておりました』ので、汚れもございません」
 そう告げてハイペリカムは少年を、先程オウカとエイミが罠を解除していたテーブルへと誘導してゆく。
「『危険物』の回収完了です」
 狐珀とすれ違いざまにハイペリカムがこそりと告げたその言葉は、少年の手にしていた皿の料理に罠が仕掛けられていたことを狐珀に知らせた。すでにその皿はハイペリカムが粗相を装うことで回収しており、代わりに安全なハンバーグが供されることだろう。
「では私もなにか料理を取ってきます」
 少年をハイペリカムへと任せた狐珀は、たくさん並んだ料理に迷うように動きながら、狐の待つテーブルへと近づいて。

「――っ……」

 足に走った痛みに思わず漏れそうになった声を、懸命に抑える。テーブルの足に仕掛けられた刃が、テーブルの近くの仕掛けを踏むことで飛び出し、狐珀の足を傷つけたのだ。
 狐の目を通してみると、繰り返し作動するような罠ではなく、単純で一度きりの罠のようだ。このような罠がダンスホール内にいくつも仕掛けられているのだろう。
 確かに痛い。けれどもアリスが罠にかかるよりずっといい。一度きりの罠ならば、代わりにかかってしまえば脅威を減らすことができる。

 ならば。

 狐珀とハイペリカムの考えは同じ。
 ふたりともアリスが罠に掛かる前に自身がかかることで、またはアリスを庇うことで罠を減らしていくべく、再びホール内を動き回ることにした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラフィ・シザー
舞踏会ってのは本来なら楽しいもんだろう?
それなのにこんなにもアリス達を怯えさせて…。
ロシアンルーレットのごとく毒の入った食事にお菓子。
ダンスホールには罠がいっぱい。俺は楽しめるかもしれないがアリス達には辛いだけだ。

よし、じゃあまずはUC【My Friends】で俺の『トモダチ』を召喚だ。アリス達のこと庇ってやってくれよ!ハハッ俺の『トモダチ』なんだ毒も罠も怖くないって♪

俺は【ダンス】をしながらアリス達を【盾受け】で守るぜ!

アドリブ連携歓迎です。


ナイ・デス
罠、ですか
即死系ばかり、ではないようですね
転ぶだけのようなものもあった、と
けれどお話は、罠にかからなければ帰っていい、ですか

即死系でなければ【生まれながらの光】で治療して
罠にかかったからと帰せなくても、戦闘中になんとか【かばう】ことで……と、思えなくもですが

これはもし誰か、かかってしまったら、ですね
今はどんな罠にもアリスさん達が、かからないようにしないと

給仕さんに混ざって、料理とか、飲み物持って
【忍び足ダッシュ】で静かに素早く会場内を移動して、罠を解除か、先にひっかかります
【第六感】で罠や犠牲者を感知して
『生命力吸収光線』で罠は今に在れなくして消滅させ
犠牲者は生まれながらの光で治療や解毒して



(「罠、ですか……。即死系ばかり、ではないようですね……」)
 ダンスホールに足を踏み入れる前に、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はグリモア猟兵の話を思い出す。彼が告げていた罠の例は、どれも、必ずしも即死を狙うものではなかった。毒の種類や量にもよるだろうが。
(「転ぶだけのようなものもあった……と。けれどお話は、罠にかからなければ帰っていい……ですか」)
 ナイはカクンと頭を傾けて、考える。ここのオウガは舞踏会で『優先的に食べるアリス』を決めていると聞いた。おそらくオウガにとっては、食べる順はどのアリスからでもよいのだろう。運に任せるような方法をとっているのは、単にアリスたちが怯える様子や罠にかかる様子を愉しみたいからか。
「舞踏会ってのは本来なら楽しいもんだろう? それなのにこんなにもアリス達を怯えさせて……」
「……、……」
 ナイがホールへと足を向けると、すでにその入口には先客がいた。そっとホール内を覗くその人物の頭には、ぴょこっと黒いウサギの耳。
「ロシアンルーレットのごとく毒の入った食事にお菓子。ダンスホールには罠がいっぱい。俺は楽しめるかもしれないがアリス達には辛いだけだ。なあ?」
「……、……」
 ウサギ耳のその人物が自身の感想を声に出していたのは、ナイの接近に気づいていたからだと知れた。だってその人物は、言葉の最後で振り返り、ナイに同意を求めたのだから。
 こくり、とりあえず頷いてみせたナイに対し、その人物――時計ウサギのラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)はナイの真紅の瞳をじっと見て。
「策はあるんだよな?」
 協力し合う意志をみせた。

 * * *

 ダンスホールの中は俄に賑やかさを増していた。
 ラフィの喚び出した『トモダチ』――陽気な小人や動物たちがホール内を動き回っている。
「きゃっ……!?」
 急に皿を持った手に飛びつかれて、ひとりのアリスが料理の乗った皿を落とした。飛びついた犬型のトモダチは、皿からこぼれた料理を食べてみせ、苦しそうな様子を見せる。
「だ、大丈夫……?」
『シンパイするな。料理ダメにしてごめん。別の取ってきなよ……』
 その苦しさを我慢しながら紡がれた言葉に、そのアリスは自分が食べようとしていた料理が毒入りだったと理解しただろう。ありがとう、小さな声で礼を告げ、アリスは小走りで料理のテーブルへと向かう。
「っと……」
 とてっ……がっしゃーん!!
 ワルツの旋律の中に響いた食器の割れる音に、一部の者達が音の出処を探した。だがそれが給仕――に混ざって銀盆を手に素早く移動していたナイ――の立てたものだと知った者たちの殆どは、舞踏会の様相を崩さぬようにと何事もなかったかのようにそれまでの行動へと戻った。
「あ……大丈夫ですか?」
 ぺしゃりと床に倒れたままのナイに声をかけてきたのは、一番近くにいたアリスの男の子だ。
「大丈、夫、です。……私は、アリス、ではない……です、から」
 その言葉に青ざめていたアリスがホッとしたように胸をなでおろす。そう、ナイは転倒の罠にかかったのだ。料理の乗ったテーブルからダンスフロアに出るあたりに仕掛けられたそれを、アリスの代わりに。ナイがその罠に気がついた時にはすでに、このアリスが罠にかかる寸前だったので、なりふり構ってはいられなかった。
「……怪我、ない、です、か……?」
「ぁ、うん。ぼくは大丈夫だよ……ありがとう」
 起き上がったナイのくるりとした赤い目に見つめられ、アリスは頷いて。そして彼の意図がわかったのか、小さく礼を述べた。

 ナイはその後もホール内を素早く動き回り、自身の勘やラフィの『トモダチ』の情報を頼りに罠に対応していく。どうしても間に合わなければ、『トモダチ』たちと同じようにアリスの代わりに罠にかかるのも厭わない。未だ誰もかかっていない罠を見つけたら、オウガに脅されている愉快な仲間に見咎められぬよう、他の猟兵たちや『トモダチ』にカムフラージュを頼み、罠が『存在』するための力を吸収することで消滅させてゆく。
 その時、わぁっと歓声が上がった。この舞踏会では『ありえない』その歓声は、ダンスフロアを見ているアリスや愉快な仲間たちからのものだ。

「俺と踊っている限り、あなたを危険な目にあわせない、約束だ」

 そう告げて、ラフィはアリスの少女をダンスフロアへと連れ出していた。そして愉快な仲間たちによる生演奏に合わせて巧みに少女をリードしつつ、察知した罠を発動させてはダンスに組み込んだ動きで、共に踊る少女だけでなくダンスフロアにいる他のアリスたちを庇ってゆく。
 ワルツとは思えぬほど時に大胆に、時にペアを入れ替えるようにして、罠から庇い、罠を受けてアリスたちを助けてゆくラフィ。
 それはさながら、パフォーマンス。その華やかなパフォーマンスは、他のアリスや愉快な仲間たちの視線を集めるには十分すぎるほどで。
 ラフィがそうしてアリスを守ると同時に罠を無効化させていく間、ナイは見咎められる確率の下がったホール内の罠を探し、壊していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

永倉・鳴
アウレリア(f00068)と行動を共にしましょうか

舞踏会、とても楽しそうじゃない
それに美味しそうな料理もたくさん……
うーん、そんな目で見ないでアウレリア
私だってたまには真面目にやるから

食欲を極力抑えて
舞踏会の給仕として潜入
お料理の毒味を担当しましょう

ヤバいものが入っていも私なら大丈夫
色々と耐性があるもの
それにいざとなったらお薬もあるわ
龍の腹痛さえ治す薬ですもの
絶対に大丈夫

それで毒入り料理とか襲いかかってくる料理は
私が食べてしまいましょ
安全な料理はアウレリアに運んでもらうわ
無愛想だけど、あの子なら子どもたちに安全だって伝えれるでしょ
たぶん

さあ、私はどんどん食べるわよ
これこそ一石二鳥よね


アウレリア・ウィスタリア
鳴(f19348)と一緒に舞踏会に潜入しましょう

ナル、ボクたちは子どもの救出に来たんです
あまり食べ物に気を取られないでください

給仕に変装して料理を運びます
毒味や危険な料理の処理はナルに任せます
ボクは彼女が安全だと判断した料理を運びましょう

子どもたちは怯えて食事どころではないでしょうから
目立たない程度に、舞踏会の音楽に合わせて【空想音盤:愛】で
子どもの不安を少しでも和らげましょう
母が子どもに伝えるように大丈夫だと
安心して食べて良いんだと伝えましょう

黒猫の仮面は子どもに不安を与えるようなら外しますが
変装して紛れ込むのに都合が良いなら着けていた方が良いですよね
迷いどころです

アドリブ歓迎



「あらあら、舞踏会、とても楽しそうじゃない。それに美味しそうな料理もたくさん……」
「ナル、ボクたちは子どもの救出に来たんです。あまり食べ物に気を取られないでください」
 厨房から続々とホールへ料理が運ばれてくる。今日はいつもより料理の減りが早いと、給仕の愉快な仲間と思われるぬいぐるみやカトラリー達が話しているのが聞こえた。恐らく、舞踏会に潜入している猟兵達の動きの影響だろう。アリスたちを守れているのなら良いが、その分新しい料理――新しい『罠』が運ばれてくる頻度が高まるのも当然のこと。ならば、それらからすらアリスたちを守ればいいのだ。
 アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)の、黒猫の仮面の向こうから覗く蜜色の瞳に鋭く射抜かれて、永倉・鳴(暴食ジェイド・f19348)は悪びれた様子もなく口を開く。
「うーん、そんな目で見ないでアウレリア。私だってたまには真面目にやるから」
「お願いしますよ?」
 食が全てといっても差し支えないような彼女だ。多くの料理を前にして本来の目的を忘れてはしまわぬだろうか――信頼していないわけではない、心配しているのだ。アウレリアは彼女に今一度釘を差し、ホールへと料理が運ばれてくる通路へと視線を向けた。
「ナル、どうやら厨房から料理を運んでテーブルにセットするのは愉快な仲間の仕事のようです。ですがボクが見た限り身体が小さな愉快な仲間ばかりで、一度に運ぶことのできる料理の量も少ない様子」
 たとえ力があったとしても重ねて運べるようなものではない。腕の数やサイズで運べる量は限られるし、人間用のワゴンを押すにはそれなりの大きさの身体が必要だ。アウレリアが見たところ、厨房から料理を運んでいるのは一番大きくても人型女性の膝くらいまでの背の愉快な仲間。彼らが使うワゴンはその体長に合わせられており、ホール内を動き回りやすいよう、高さの分長いなどの特殊な形をしていることもない。
 ふたりは厨房とホールを繋ぐ通路を厨房方面へと歩いて行き、そこで出会った給仕の木彫りの人形へと声を掛ける。
「お手伝いしましょう」
「なっ……なんっ……」
「私達は新しく給仕として雇われたのよ。その身体じゃホールまで何往復もしないといけなくて大変よね?」
 アウレリアは声をかけたのち、木彫りの人形と視線を合わせるようにしゃがみ、鳴は人形を見下ろしたままではあるが打ち合わせ通りに言葉を紡ぐ。
「私達がホールまで運ぶわよ。そのほうが効率が上がって、たくさんの料理を運べるわ」
「……確かに。君たちみたいな大きな仲間がいてくれればってずっと思ってたんだ。そうすればみんな、交代で休めるし……」
「ボク達サイズのワゴンはありますか? 二台あればボクがホールに料理を運んでいる間に、ここでナルがもう一台にアナタたちが用意した料理をセットできます。ボクはホールで料理をセットし終えたら、空のワゴンと料理の乗ったワゴンを交換して、またホールへ向かいます」
 どうですか、とアウレリアが告げれば、木彫りの人形はぴょんっと飛び跳ねて。
「君たち頭がいいな! なるほど、城主様に雇われたのも納得がいく! よし、その案通りにやってみよう。こっちに大きなワゴンがある!」
 仲間に話を通すのだろう。嬉々としてふたりを先導する木彫りの人形の背を見て、鳴とアウレリアは頷き合った。

 * * *

「さて、毒味の時間ね」
 城で舞踏会に携わる愉快な仲間たちは城主に脅されて働かされているのだという。ならばどの料理にどんな『罠』が仕掛けてあるのか、聞き出すわけにはいくまい。うっかり喋ってしまったら、脅されているだけの彼らの首が飛びかねない。それに彼らにすらわからない方法で『罠』が仕掛けられている可能性もある。ならば。
(「ヤバいものが入っていも私なら大丈夫。色々と耐性があるもの」)
 片っ端から毒味をしていくしかない。何か盛られていたとしても、アリスを殺さない程度のものならば、鳴にとっては脅威ではない。それにいざとなったら、『ドラゴン印の胃薬』がある。ドラゴンの腹痛さえ一瞬で治すといわれる名薬だ。心強くないはずがない。
「ん……、これはドレッシングに毒が入っているわ。全部駄目ね。これはグラタン? ……これは安全。シュークリーム? 小分けにされているものはどれか一つ、あるいは数個に仕掛けがある可能性があるから危険ね。……私が食べたいから危険な料理として選り分けているわけじゃないわよ?」
「わかっています」
 鳴の毒味をくぐり抜けた料理をワゴンに乗せながら答えるアウレリア。
「スパゲティ……大丈夫。生搾りジュース……安全。これは……ちまき?」
 続けて料理のチェックをしている鳴。彼女の基準で言うならば、バイキング形式用に小分けに盛り付けされた料理の殆どはアウトだろう。どれに『罠』が仕掛けられているか、ホールに出てしまえば作った者にもわかるまい。けれどもだからこそ、ここのオウガは誰が罠にかかるか、それを楽しんでいるのだ。
「ドリアは……ここは駄目。あとは影響ないわ。ポテトと麻婆豆腐は大丈夫ね。さっきのちまきは危険だから置いて行って」
「わかりました。ボクはこれらを運んでいきますね。処理は任せます」
「任せてちょうだい」
 告げてホールへと、ワゴンを押してゆくアウレリア。その後ろ姿を見て、鳴は思う。
(「無愛想だけど、あの子なら子どもたちに安全だって伝えれるでしょ、たぶん」)
「さあ、私はどんどん食べるわよ」
 自身で危険と判断した料理を、微塵の躊躇いもみせずに飲み込んでいく鳴。4つ目のちまきを包む竹皮を開けた時、それは姿を見せた。
「ここにいたのね」
 ちまきには不自然な、大きな口に牙をもったそれは、鳴に噛みつかんばかりに口を広げる。けれども。
「いただきます」
 ぱくりとひとくち。それで、おしまい。
「次の料理が運ばれてくる前に、食べておかないとね?」
 今、目の前で見たポップだが恐怖を与えるような光景などまるでなかったかのように、鳴は次の大皿を手に取る。
「こんな役目なら、いつでも歓迎だわ。これこそ、一石二鳥よね」
 愉快な仲間が新しい料理を持ってくる頃には、料理は皿だけになっていることだろう。ホールから回収してきた皿だと言って渡せば、怪しまれることはあるまい。
 まだまだ続く料理の提供。鳴のお腹はもっともっとと食べ物を要求しているかのようだった。

 * * *

 ワゴンをホールへと運んだアウレリアは、料理テーブルのそばにいるアリスたちを見やる。表情は暗く、料理の乗った皿をじっと見つめているアリスに震える手でフォークを口に運ぼうとしているアリス。当然だ。どの料理のどこに『罠』が仕掛けられているのかすらわからないのだ。その『罠』にかかってしまったら終わり――怯えるなというほうが無理だろう。そして料理に手を付けなければつけなかったで、オウガの怒りに触れてしまう。食事どころではないだろうが、この優雅な地獄から逃れるすべを彼らは持ち合わせていない。
(「少しでも、不安を和らげることができれば……」)
 そっと、愉快な仲間の演奏するワルツに合わせるように、アウレリアは清らかなる調べを紡ぐ。自然と耳から入り、アリスたちの緊張と不安をほぐしてゆく旋律。
「新しい料理です。どうぞ食べてください」
 冷めてしまった料理の代わりにワゴンの上からテーブルへと料理を移すアウレリア。今までの給仕と明らかに違う姿の彼女に、何人かのアリスが警戒するような視線を向けている。
「……今持ってきた料理は、大丈夫です。安心して食べてください」
 黒猫の仮面が子どもたちを惑わせているのだろうか。アウレリアはそっと仮面を外し、アリスたちに頷いてみせる。そして。
「こっそり他のアリスにも伝えてください。お皿やピッチャーの隅にこれと同じ赤い花の印がある料理は安全です」
 はたから見れば給仕が参加者に料理を勧めているようにしか見えぬだろう。そんな動作を意識しながらアウレリアが示したのは、大きなグラタン皿の隅に描かれた五枚の花弁の赤い花。簡単な印ではあるが子どもにもわかりやすいそれは、アウレリアの血から作る魔法の血糸で描かれている。
「いいですか、今夜このホールに居る『見覚えのない人』はあなたたちの『味方』です。舞踏会の終わりまで、監視に気づかれぬよう、もう少し頑張りましょう」
 その言葉にアリスたちが瞳をうるませながら頷いたのを見て、アウレリアは黒猫の仮面をかぶり直す。そして他の猟兵たちが危険だと判断した料理をワゴンに乗せ、厨房への通路を行く。
 中には明らかに手のつけられていない料理もある。手をつけた形跡がなければ食べることを避けていると疑われるのならば、鳴に任せるだけだ。彼女ならば、それらの料理も喜んで食べてくれるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
【WIZ】ダウジングで罠を探す

「主よ、憐みたまえ」

『祈り』を捧げて地縛鎖・星枢に光を注ぐとペンデュラムが揺れ始める
毒入りの料理、室内に仕掛けられた罠を探して解除、除去します
また『第六感』を働かせて、時にはアリス達を罠から『かばう』

「不運と思わなければ不運ではありません」

困難は勇気を試す機会を与えられたということです
語りながら『存在感』を発揮してアリス達を鼓舞します
ダンスを踊り、必要ならその相手を務めましょう

【親愛なる世界へ】を使用

「十二時の鐘が鳴ります。舞踏会も幕が下りるということです」

まず他のアリス達を逃がします
ノヴェッラとセノフォンテの協力が必要です
あなた達は私達が守ります

対策は『祈り』



「主よ、憐みたまえ」
 祈りを捧げてマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)が手にしたのは『星枢』。星の力を宿したその鎖に光を注げば、ペンデュラムが揺れ始める。
 マリスが『星枢』によるダウジングで探すのは、毒や異物入りの料理や罠であるが、それ以外にも重要な目的があった。
 見つけた料理や罠を他の猟兵に伝えて対処を託し、マリスはダンスホールの中を星に導かれるようにゆったりと歩いてゆく。
 一等星の如き存在感を示しながら、彼女が向かった先には。

「ねぇ、今回の舞踏会……今までとちょっと違うと思わない?」
「うん。でも……このまま誰も罠にかからなかったら、本当に城から出られるのかな?」
「出られるわよ、だってそういう約束だもの!」

 ストロベリーブロンドの少女とブルネットの少年が、硬い表情でひそひそと言葉を交わし合っている。

「……そう、だね」
「でも、舞踏会が終わるまでまだあるし……誰かが運悪く――」

 少年の渋い表情に触発されたのか、少女の思考が悪い方向へと傾いていく。マリスは『星枢』の啓示のもと、ふたりへと近づいた。

「不運を不運と思わなければ、不運ではありません」

「えっ……」
「お姉さん……新しいアリス?」
「セノフォンテとノヴェッラですね?」
 問われてマリスは、確認と信頼してもらう意味を込めて彼らの名を呼んだ。
「ぼくたちの、名前……」
「安心してください。『私達』はあなたたちのことを知っています。その上で、助けに来たのです」
「ほん……」
 マリスの言葉に大きな声をあげそうになったノヴェッラの口を、すんでのところでセノフォンテが塞いだ。
「まもなく舞踏会も終わりでしょう。まずは他のアリスたちを逃します」
「そんなこと、無理だよ!」
 囁くように告げたマリスの言葉を、今度はセノフォンテが小さな声で否定した。こんな状況に置かれれば、端から無理だと決めつけてしまうのも無理ないことだろう。だが。

「困難は勇気を試す機会を与えられたということです。ノヴェッラ、セノフォンテ、あなた達の協力が必要です」

「ぼくたちに……」
「私達に、できることなんて」
 俯いてしまったふたり。この国にいるアリスは皆、舞踏会で誰かが犠牲になるのを見過ごし、容認することで、自分たちの命を守っている。それしか、できないのだ。

「大丈夫です。あなた達は私達が守ります」

 じっとふたりを見つめるマリスの瞳には、星が宿っている。ふたりと視線を合わせやすいようにとかがんだマリスの肩越しに見えるホールの景色には、今までになかった『奇跡』を起こしてくれている人達がいる。

「少しだけで構いません。勇気を出してくれませんか? その勇気が、私達の力になり、他のアリスたちをも救います」

「ゆう、き……」
「本当に、みんなを救えるんだね?」
 マリスの言葉に鼓舞されるふたり。感じていた『いつもと違う空気の流れ』が救いに繋がるのだと、マリスに断言されて。。
「ええ。舞踏会終了を知らせる鐘が鳴り始めたら、振り返らずにただちにホールを出て城から出るように、さり気なく他のアリスに伝えてもらえますか?」
 マリスの願いにふたりは素直に頷く。その瞳からは、絶望の色が消えていた。
「いいですか、『何があっても』あなた達は私達が守ります。だから、私達を信じてください」
 怖い思いをするかもしれない。けれども傷一つつけずに城から帰す、それを違えることはない。
「……わかった」
「うん、頑張る」
 誰かが犠牲になるか自分たちが犠牲になるか、選択肢はそれしかなかったのだ。
 もしこのままアリスが誰も罠に引っかからなかったら、城の主である『お母様』は約束を守ってくれるのか。約束通りにみんなを城から帰してくれるのか。前例もなければ、頭から『お母様』を信じてはいないふたりには、今提示された『光る選択肢』を選ばぬ理由がない。
「私を信じてくれて、ありがとうございます」
 マリスは優しい笑みで、ふたりの背中を押した。

 * * *

 舞踏会の終わりは、十二時の鐘と共に訪れると相場が決まっているもの。
 ホールの大時計の長針がてっぺんで短針と重なった時、ひとつめの鐘が鳴り響いた。

「わぁぁぁぁぁっ!!」
「帰れる!」
「早く、走ってお城から出て!!」

 一目散にホールから走り出るアリスたちの声に混ざって、彼らを誘導するノヴェッラとセノフォンテの声が聞こえる。
 ふたりを残してホールからアリスが消えたその時。

「……Alice?」
「Where……?」
「I don't know……」

 聞こえてきたのは幼い声で紡がれる、拙い英語。
「ふたりとも、振り返らずに城から出てください」
「でも、あれ……」
「私達は大丈夫です。私達はあなた達を守ると約束しました。セノフォンテ、あなたはノヴェッラを守ってください」
 その声の主たちを見てしまったノヴェッラは、恐怖で腰を抜かしてしまったようだ。セノフォンテも恐怖を感じているはず。けれどもマリスの言葉に奮い立たされて、彼はノヴェッラを背負う。
「お姉さんたち、また会えますか!?」
 彼のその問いに笑顔を浮かべ、マリスはダンスホールの扉を閉めた。オウガ一匹たりとも後を追わせまいと、守るようにそれを背にして。

「十二時の鐘が鳴りました。舞踏会も幕が下りるということです」

「Niiiiiiiiiii……!!」

 姿を現した黒いオウガ達の口から放たれる無数の棘が、扉を守るマリスへと向かう。

「……主よ」

 しかしその崇高なる祈りが届いたのか、不思議と棘はすべてマリスを避けるようにして、扉へと突き刺さっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『はらぺこねこばるーん』

POW   :    I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

※冒頭文追加をもってプレイング受付とさせていただきます。もうしばらくお待ち下さい。
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 舞踏会の終わりを告げる12時の鐘が鳴り響く。
 見てくれだけ甘い城から、アリスたちは一目散に逃げ出した。

「……Alice?」
「Where……?」
「I don't know……」

 幼子の声で拙い英語を操りながら現れたそれは、形だけ見れば猫型の風船。だがその顔のパーツは子どもの成したの福笑いのように歪んだ配置で、鋭い歯を見せて不気味な笑みをかたどる口からは、待ちきれないというように涎がこぼれ落ちる。
 風船を繋ぐ紐の下、持ち手の部分には『ネコ』と書かれたプレートがついているが、それは汚れと血に濡れていて――。
 姿を現した複数体のオウガ、はらぺこねこばるーんが最後に残ったふたりのアリス、ノヴェッラとセノフォンテを見つける前に、猟兵たちは彼らをダンスホールの外へと向かわせることに成功した。
 そしてダンスホールの扉を閉めてしまえば、あれだけ賑わっていたホール内も猟兵たちとねこばるーんたちのみとなり。
 12時の鐘が全て鳴り終わる頃には、アリスだけでなく舞踏会に参加していた愉快な仲間たちもとっくに逃げ出していた。

「Alice?」
「……Alice?」

 じゅるじゅるとよだれを垂らしながら、ねこばるーんたちはふよふよとアリスを探す。しかしアリスを見つけられぬ彼らの興味は次第に猟兵へと移り。

「Foooooooooooo……!!」
「Niiiiiiiiiii……!!」

 猟兵たちを正しく敵だと認識したねこばるーんたちは、一斉に猟兵達目指して動き出した。
 獲物を横取りされたとでも思ったのだろうか。
 理由は何でもいい。ダンスホールから出て、アリスたちを追おうとさえしなければ。
 猟兵の手によって今は閉じているダンスホールの大きな扉、それさえ開かなければ、このねこばるーんたちは別の道を使って、逃げたアリスたちを追うという思考には至らぬだろう。
吉備・狐珀
アリス達を追わせないためにも、こちらに意識が向いている間に倒す必要がありますね。

複数を相手にするなら、こちらもそれに応じた攻撃を。
UC【破邪顕正】使用。
扉の近くで全体を見渡せる場所を確保し、そこからねこばるーんたちを攻撃します。
万が一、御神矢がはずれて扉に近づくねこばるーんがいたら兄上の炎で燃やして先へ進むのを阻止します。扉を開けてアリスたちを追いかけないように何が何でも扉は死守します。


エイミ・メルシエ
おっと、オオカミ……ではなく、ネコさんのご登場ですね?

ふむ、そうですね……歯があるのなら、これはどうでしょう
茶色のまかろんだまを、ネコさんたちめがけて投げてあげましょう。効果は虫歯ですっ☆

ふふ、ネコさんたちも、甘いものはお好きでしょう?
だったら、あま~いマカロン、召し上がれ!

さて、お次はわたしと鬼ごっこ。もちろん鬼はわたしですよ
割られたらゲームオーバーです。わかりやすいでしょう?
どれだけ逃げたって追いかけてあげます。浮いててもわたしには飛べる『足』がありますしね
さあ……容赦なく、このハニーディッパーの餌食にして差し上げます!
あま~い蜂蜜も……召し上がれ?


オウカ・キサラギ
SPD
アドリブ、絡みOK

獲物だと思ってたアリスがいなくて驚いた?
今日は誰も痛い思いはさせないよ!
あんたたち以外にはね!

敵は見た目風船、しかも実際ふわふわ浮いてる
ここは強風を起こす宝石弾を要所に【スナイパー】で打ち込んだ【属性攻撃】【範囲攻撃】で動きを制限しよう!
動きが止まったらとっておきの【輝き放つ金剛の弾丸】でまとめてやっつけるぞ!
反撃がきたら【ダッシュ】【ジャンプ】【第六感】を駆使してできるだけ被弾を避けるよ!
もし被弾しても【激痛耐性】で我慢しながら攻撃を続けるよ!



「おっと、オオカミ……ではなく、ネコさんのご登場ですね?」
「獲物だと思ってたアリスがいなくて驚いた?」
 エイミ・メルシエ(スイート&スウィート&プリンセス・f16830)とオウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)は、わらわらと湧いて出たねこばるーんたちへと視線を向ける。
(「アリス達を追わせないためにも、こちらに意識が向いている間に倒す必要がありますね」)
 その様子を後方から見ていた吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)は、素早く扉の前へと移動して。

「今日は誰も痛い思いはさせないよ! あんたたち以外にはね!」
「Niiiiiiiiii……?」

 オウカのその宣言に、一斉に不服そうな声を漏らしたねこばるーん達。ばるーんたちが、ふよふよと動作の読めぬ体勢から攻撃を繰り出すより早く――ダイヤモンドの魔力弾と破邪の力を纏う御神矢が彼らへと向かう。
 魔力の込められたダイヤモンドの原石の弾丸にはオウカの魔力が込められており、頭を撃ち抜かれたねこばるーんを起点に強風を巻き起こす!

「Nyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!?」

 強風に巻き込まれて、ダンスホールの天井付近まで吹き飛ばされるねこばるーん達。だがまだホール内に漂うそれらと飛ばされたそれらを、狐珀の放った御神矢が追いかけて貫いた。
「ふむ、そうですね……歯があるのなら、これはどうでしょう?」
 叫び声に近い鳴き声を挙げるねこばるーんは、普段から半開きの口を更に大きく開けていてそこを狙ってエイミが投げたのは、茶色のマカロン――否、マカロンの形をしたけむりだまだ。
「ふふ、ネコさんたちも、甘いものはお好きでしょう? だったら、あま~いマカロン、召し上がれ!」

「Nya!?」
「Nyaahhhhhhhhn!?」

 甘いものの気配を感じて反応を示したねこばるーんの口には、ストライク!
 口内にストライクとまではいかずとも、歯や顔に当たった茶色のマカロンからは、ぼわんっとチョコレートのような甘い香りの煙が吹き出して。

「Ni……iiiiiahhhhhhhhhhhhhhhhhhhhhh!!」

 エイミの投擲したマカロン、あるいはその煙を吸い込んだねこばるーんたちが、ジタバタと悶え苦しむように揺れ動く。よく見れば、そのご自慢の鋭い歯が、所々欠けたり黒くなったりグラグラしている……?
「この茶色のまかろんだまの効果は虫歯ですっ☆」

「Nyau……」
「Mya……」
「Niiiii……」

 虫歯にされたねこばるーん達は痛みを感じているのか、なんだかしょんぼりしているようにも見える。だが。

「Uuuuuuuuu……!」
「Naaaaaaaa……!」

 仲間たちを痛めつけられた恨みというよりは、さっき見たマカロンや猟兵たちを食べたいという食欲からだろう、虫歯になっていないねこばるーんたちが膨れ上がっていく。
「エイミ殿、私が後方から支援します。数を減らしていってください!」
「狐珀さん! ありがとうございます! オウカさんはどうしますか?」
「ボクも数を減らすよ! とっておきの弾丸で、ね」
 扉を背にしたままの狐珀が今一度、御神矢を放ちねこばるーんたちを牽制する。オウカは大きく膨らんだねこばるーんにとっておきのダイヤモンドの原石を打ち込んで、ぱぁんっと狙ったねこばるーんを破裂させていく。
「さて、お次はわたしと鬼ごっこ。もちろん鬼はわたしですよ。割られたらゲームオーバーです。わかりやすいでしょう?」
 とんっ……エイミが天使の羽のついたブーツでチョコレートの床を踏み込むと、彼女の身体がふわりと浮いて、そして――一瞬のうちに一番大きなねこばるーんとの距離を詰める。
「さあ……容赦なく、このハニーディッパーの餌食にして差し上げます!」
「Ni!?」
 そのねこばるーんが気づいた時には、すでにエイミは眼前にいて。
「あま~い蜂蜜も……召し上がれ?」
 毒の蜜を纏った身の丈ほどのハニーディッパーが大きく振りかぶられ――。
「悪い子へのお仕置きです! 」
 生半可な力で叩けばねこばるーんはその増した力でぽよんと跳ね返したかもしれない。だがエイミが繰り出したのは、超高速かつ大威力の殴打。

 ぱぁぁぁぁん!

 大きな音を立ててエイミの狙ったねこばるーんが割れる音に重なるようにして、オウカの弾丸に射抜かれたねこばるーんたちが次々と割れていく音が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マリス・ステラ
【WIZ】他の猟兵と協力します

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝きと星が煌めく『カウンター』

「灰は灰に、塵は塵に」

オブリビオンは骸の海に還します

弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
響く弦音は『破魔』の力を宿して敵の動きを鈍らせる

負傷した味方を『かばう』と同時に【不思議な星】
緊急時は複数同時に使用

首魁を倒しても全てが解決するわけではありません
しかし、だからこそ、私達が光を示さなければならないのです

「光あれ」

星の『属性攻撃』で浄化します
永遠ならざる平和のために


ナイ・デス
私達は猟兵、敵であり……餌でもある人肉、でしょうか
私達を食べようと、狙ってくれると助かりますね
……もちろん、食べさせはしない、ですが

『生命力吸収光』による【範囲攻撃】
動けなくするだけにせず、そのまま【生命力吸収】続け、消滅させます

犠牲になったアリスさんが召喚されたら
……せめて、安らかに

光で動けなくして、そのまま吸収続け、眠るように消滅させる【暗殺】
その制御に集中
アリスさん達の攻撃は、制御乱されてしまうようなものだけ【第六感】で察して回避か武器で自身を【かばう】して
あとは【覚悟と激痛耐性】で受けて、気にしない
手足は【念動力】で動かせる
たぶん脳ぐらい。脳も再生するけど、再生まで何もできなくなるから



「私達は猟兵、敵であり……餌でもある人肉、でしょうか」
 ぽつり、凶暴化したねこばるーんたちを見て、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)が呟く。
(「私達を食べようと、狙ってくれると助かりますね……もちろん、食べさせはしない、ですが」)
 アリスを追って外へ出られるよりは、自分たちを狙ってくれる方が断然良いのは確かだ。
「主よ、憐れみたまえ」
 指を組んで祈りを捧げたマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)の星辰の片目に、光が灯る。全身から光を放つ彼女は、有り余る存在感を示しながら、扉の前からホールの中へとゆったりと歩んでゆく。

「Ni……?」
「Nya……?」

 その光に、その振る舞いに、ねこばるーんたちの意識が向いた。光だけでなく、揺れる金の髪、結紐の房や装飾品などにも気を引かれたねこばるーんたちが、ふよふよとマリスとの距離を詰めてくる。
(「もっと、もっとこちらへ……」)
 それで、いいのだ。それがマリスの狙い。自分へとばるーんたちを引きつける、それが目的。
 ちょうど、ホールの真ん中あたりでマリスは足を止めた。すると、それまで様子を見ていたようなねこばるーんたちが、好機とばかりに一斉に動き出した!

「Uuuuuuuuu!」
「Naaaaaaaa!」

 食欲で巨大化したねこばるーんも、最初のままの大きさのねこばるーんも、我先にとマリスにその歯を突き立てようとする。
 だが。

「灰は灰に、塵は塵に」
「Gya!?」

 マリスの頭に、肩に噛みつこうとしたねこばるーんたちは、文字通り歯が立たずに悲鳴を上げた。だがそれだけではもちろん済まされない。もう一度悲鳴を上げるいとまも与えられずに、マリスが繰り出したカウンターの星の煌めきによって吹き飛ばされてゆく。
 マリスを囲むように集まっていたねこばるーんの最前線が吹き飛ばされると同時に、その後ろに漂っていたばるーんたちもいくらか吹き飛ばされて。吹き飛ばされなかったばるーんたちが今だ、と距離を詰めようとしたその時、彼らをまばゆい光が襲った。

「Niiiiiiiiiii……!!」
「Hurts……Hurts、Hur――」

 光に襲われたばるーんたちが徐々に勢いを失い、しぼんでゆく。ナイの放ったその光は、物体が『そこに在るための力』を吸収していくのだ。普段ならば動けない程度に加減することもあるが、今はそのまま光を照射し続け――しぼませるだけでなく、跡形もなくなるまで消滅させた。

「Foooooooooooo……!!」

 その様子を見たねこばるーんたちが、威嚇のような鳴き声を上げる。先程マリスによって吹き飛ばされたばるーんたちも、再び近寄ってこようとしている。だが、みすみすそれを許すマリスではない。手にした『星屑』から矢を放てば、矢は流星の如くばるーんを射抜き、破魔の力を宿した弦音はいにしえの鳴弦の儀の如く、ねこばるーんたちの動きを妨げる。

「Nya……」
「Ni……」
「Alice……I’m Lonely」

 だが、ねこばるーんたちも一方的にやられるだけではない。彼らのそばに、影のようなものから小さな人影が生まれてはじめた。

『食べられたくない……』
『怖いよぅ……助けてぇ……』
『……食べられたくないなら、戦うしかないの……?』

 視線を向ける角度によって男の子にも女の子にも見えるその人影は――。

「……」
「……犠牲になった、アリスさん、たち……」
 鋭い視線をねこばるーんたちへと向けるマリス。後方から、その存在を正しく理解したナイ。
 そう、ねこばるーんたちが召喚したのは、犠牲になったアリスの霊たちだ。手には武器を、そして呪いのような黒い靄を宿している。
 もしかしたら彼らは、アリスの霊たちを喚び出すことで、猟兵達の動揺を誘いたかったのかもしれない。
 けれども――逆効果だった。
「……せめて、安らかに」
 自分へと向けられた攻撃を、ナイは回避しない。受け止めて、そして光を放つ。
 損傷しても手足くらいは念動力で動かせる。たぶん脳ぐらい無事ならば、問題ないはず。それよりも、アリスたちを――。
 光で動けなくしたアリスの霊からそのまま生命力を吸収し続けるナイ。そうすれば、眠るように消えることができるはず。
 それでも数が多い。アリスたちの霊だけでなく、ねこばるーんたちも襲い来るのだから。
 マリスはナイへと向かった攻撃を、自身の身で受ける。そして全身から放つ星の光でナイの傷を治療していって。
(「首魁を倒しても全てが解決するわけではありません」)
 マリスだけではない、ここにいる猟兵たちが皆、それを知っている。
(「しかし、だからこそ、私達が光を示さなければならないのです」)
 そう、今、自分たちのできるそれが、アリスたちの目指す星の光となるように。

「光、あれ」

 マリスの放つ光とナイの放つ光が、ホール内を満たしてゆく。
 その光は、永遠ならざる平和のために――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ラフィ・シザー
ん♪アリス達は無事に逃げられたみたいだな。
それでもって俺達がこいつらを相手にしている間は安全だ。
はらぺこばるーんか。腹を減らしてるとこ悪いがアリスを食べさせるわけにはいかないんでね!
頭の部分は風船だよな?ならばそれを割って割って割りまくる!それでいいよな。
UC【Dancing Scissors】で攻撃だ!
踊れ!踊れ!踊れ!どんどん風船を割ってしまえ!
俺も踊って(【ダンス】)踊って攻撃は軽やかに回避。その頭の風船を【部位破壊】で破壊だ。

アドリブ連携歓迎。


ハイペリカム・ファニングス
アドリブ連携歓迎

アリス達は一旦安全になりましたが……皆が逃げ切るまでは安心出来ませんね
オウガ達にも出来るだけ早く退場して頂きましょう

相手の出す針に気をつけつつ一気に接近していきましょう
針は出来るだけ時計で【盾受け】したいですが、身体を刺されたならば【激痛耐性】で耐えます
目と腕は守りたいですね

彼らに接近出来たのなら【九死殺戮刃】で攻撃していきます
私の得物はナイフ、これで彼らを次々に切り裂いていきましょう
その際味方は攻撃しません
ここまでに傷ついた仲間も多いですし、皆様に負担はかけられません
その代わりばるーん達にはバラバラになって頂きます
ほら、空腹のままでは苦しいでしょう
死んでしまった方が楽ですよ



「ん♪ アリス達は無事に逃げられたみたいだな」
「ええ。アリス達は一旦安全になりましたが……皆が逃げ切るまでは安心出来ませんね」
「それでもって俺達がこいつらを相手にしている間は安全だ」
「そうですね、オウガ達にも出来るだけ早く退場して頂きましょう」
 素早く言葉をかわしたラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)とハイペリカム・ファニングス(キリサキウサギ・f19355)は、まるで示し合わせたかのようなタイミングでねこばるーんの群れの中へと飛び込んでいった。

「腹を減らしてるとこ悪いがアリスを食べさせるわけにはいかないんでね!」

 ねこばるーんたちに囲まれて、それでも怯えずにむしろ嬉しそうな様子で、ラフィは大量の鋏を複製して。

「踊れ! 踊れ! 踊れ! どんどん風船を割ってしまえ!」
「Ni……」
「Nya……」

 念動力で一つ一つ制御されたその鋏は、的確にねこばるーんの頭へと突き刺さり、他の猟兵達の攻撃で弱っていたモノから順にその頭部を破裂させていく。

 パァンッ! パァンッ! パァンッ!

 相次ぐ乾いた破裂音。その音は恐らくねこばるーんたちにとって忌まわしい音なのだろう。ハイペリカムの周りのばるーんたちが、苛立ったかのように大きく口を開けて迫ってくる。
「っ……」
 いくつかは時計で受けて。けれども受けきれないと判断したものには、耳を差し出した。目と腕だけは、守る必要があったからだ。
「さて……。それでは情け容赦なく、切り裂かせていただきます」
 胡散臭い笑顔で宣言したハイペリカムは、チョコレートの床を蹴る。そして繰り出されるナイフは、瞬く間にねこばるーんたちを多段に切りつけた。
(「ここまでに傷ついた仲間も多いですし、皆様に負担はかけられません」)
 味方を一度も攻撃しなければ、寿命が減るというこの能力。だがハイペリカムはあえて味方を攻撃しないことを選んだ。その代わり、とばるーんたちへと追撃をかける。
「割って割って割りまくる!」
 ラフィもまた、鋏を手にねこばるーんたちの間を踊るようにステップを踏んで。ばるーんたちが気がついたその時には、彼らの頭部は弾けている。

「Gyaaaaaaaaaaaaa!!」

 怒りに我を忘れた様子の特大ねこばるーんの口を、ラフィはひらりとかわし。

「ほら、空腹のままでは苦しいでしょう。死んでしまった方が楽ですよ」
「割れてしまえ!!」

 ハイペリカムのナイフとラフィの鋏がシャンデリアの灯りでキラリと光り、同時にそのねこばるーんを破裂させた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

永倉・鳴
またアウレリア(f00068)と一緒ね

うわ、まずそう
あれはないわー
ないない
食欲失せちゃう
もうちょっと丸々太って肉感を感じれるようならありだったかもだけど

あぁ、そういう話じゃなかったわね
【小さき翡翠龍の群】で小龍たちを呼び出す
小龍たち、敵を監視するのよ
隠れてるのもちゃんと見つけ出すの

そうすればアウレリアがその敵目掛けて攻撃を仕掛けるから
私は高みの見物かな

まあ、近付く不届きな食材にもならないものがいれば
そうね、龍の匙でぶっ叩いて吹っ飛ばしてしまいましょ
どうせ食べる気にもなれないしね

嗚呼、運動するとお腹が減ってしまうじゃない
まだまだ食べたりないんだから


アウレリア・ウィスタリア
永倉・鳴(f19348)と協力します

さて、アリスたちが逃げ出したあとの掃除、といきましょうか
【血の傀儡兵団】を召喚

ナル、うまくいくかわかりませんけど
協力お願いします

彼女の小龍の群れを目に
血人形たちを指揮します
ボク一人では血人形を囮にして集団で攻めることしかできませんけど
彼女が敵を捕捉してくれるなら
攻撃をスムーズに行えます

もちろんボク自身も戦いますよ

魔銃を構えて狙い撃ちます
近距離なら鞭剣を振るい斬り裂いてしまいましょう

さあ、趣味の悪い館の主を引っ張り出してやりましょう

アドリブ歓迎



「うわ、まずそう。あれはないわー。ないない、食欲失せちゃう」
 これは、ねこばるーんたちを目にした永倉・鳴(暴食ジェイド・f19348)の、正直な感想である。
「もうちょっと丸々太って肉感を感じれるようならありだったかもだけど」
「……ナル」
 一番最初に『食』寄りの感想が出てきてしまう鳴に、仮面の下の瞳から表情の窺い難い視線を向けるのは、アウレリア・ウィスタリア(憂愛ラピス・ラズリ・f00068)。
「あぁ、そういう話じゃなかったわね」
「はい。アリスたちが逃げ出したあとの掃除、といきましょうか」
 告げてアウレリアが喚び出したのは、200体をゆうに超える己の姿を模した血人形。対する鳴は、30体を超える小鳥サイズの翼龍を喚び出して。
「ナル、うまくいくかわかりませんけど、協力お願いします」
「ええ、任せて」
 アウレリアの言葉に頷いた鳴は、小龍たちへと視線を向ける。
「小龍たち、敵を監視するのよ。隠れてるのもちゃんと見つけ出すの」
『ピィ!』
『ピィ!!』
 サイズに見合った可愛らしい声を上げて、小龍達はダンスホールへと散ってゆく。
 他の猟兵達の働きもあって、ねこばるーんの数は明らかに減っている。ホール内に点在しているように見える彼らの中には、もしかしたら身を隠している者もいるかもしれない。鳴と五感を共有した小龍たちには、その捜索と監視を命じていた。
「アウレリア、9時の方向、猟兵の向こう」
 鳴の指示に従い、アウレリアはふた色の翼で宙へと飛び、そして他の猟兵が相対しているばるーんの向こうにいる無傷のばるーんへと、破魔の弾丸を打ち込む。
「2時の方向、3匹」
「誘導を」
 アウレリアは血人形達へその3匹を引きつけてくるよう命じる。何体かは誘導の行程で消滅させられてしまうだろうが、それでも十分すぎるほどの数は用意できている。
「11時の――」
「っ――!」
 小龍の目を通してねこばるーんを監視していた鳴の言葉が途切れる。それより早く、アウレリアは鞭剣へと手を伸ばしていた。
「食べる気にもなれないわ」
 突然ふわりと飛び上がり、鳴とアウレリアへと迫ってきたばるーん。鳴はそれを非常に硬い『龍の匙』で思い切り殴打し。
「それで奇襲のつもりですか?」
 アウレリアは鞭剣で切り裂いて、ばるーんが鳴くいとまも与えない。
「嗚呼、運動するとお腹が減ってしまうじゃない。まだまだ食べたりないんだから」
「それなら、終わったあとにまだ残っている料理を食べたらどうでしょう?」
「それ、名案ね」
 肉眼で見ても小龍の瞳を介しても、ホールに残ったねこばるーんは数えるほど。
「さあ、趣味の悪い館の主を引っ張り出してやりましょう」
「料理が冷めきらないうちにね」
 ふたりは協力して、残りのばるーんたちを掃討していく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『慈母を騙る災厄』アルハザード』

POW   :    『大丈夫、怖くないからお母さんに任せなさい?』
【助けたふりをして騙した子供の血肉】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【傷付けた者の魂を啜る槍】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    『あの子は何処に隠れてるのかしら?』
自身が装備する【探し物を串刺しにする道標の杖にして魔槍】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    『見付けた、絶対に手放さないわよ』
自身が【子供の気配】を感じると、レベル×1体の【執念深く残忍な黒い猟犬】が召喚される。執念深く残忍な黒い猟犬は子供の気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
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※第三章冒頭公開は、29日までには行う予定です。
※こちら、諸事情で第三章冒頭公開とプレイング受付を延期させていただいております。
 日程が決まりましたらこちらやマスターページ、Twitterで告知させて頂く予定です。
 どうぞよろしくお願いいたします。
※第3章冒頭公開&プレイング受付は、14日を予定しております。開始はMSページやグリモアベースのシナリオ宣伝スレッド、Twitterなどでお伝えする予定です。
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 コツ、コツ、コツ……。
 はらぺこねこばるーんたちを掃討し、静寂が訪れたホールに、足音が近づいてくる。警戒して身構える猟兵達の前に姿を現したのは、ドレスを身に纏った妙齢の女性だった。
 ホール内の階段の上、バルコニーや二階に位置するその場所へと姿を現した彼女は、ゆっくりとホールを見渡して。

「いつもより猫が鳴くものだから、何かあったのかとは思ったけれど」

 コツ、コツ……一段一段、彼女は階段を降りてくる。オウガである彼女は猟兵をその視界に捉えたと同時に、敵であると認識したはずだ。

「……我が子達はどこにもいないようね。あなた達のせいかしら?」

 答えはわかっているであろう問いを向けた彼女――アリスたちが『お母様』と呼んで恐れていたその女性は、階段を3分の2ほど降りたところで足を止めた。

「ああ……ならば我が子達に、詳しく『事情を聞かなければ』。我が子達を探さなければ。二度とこのような事態にならないように、より一層ルールを厳しくしなくては」

 彼女は階段の上から姿を現した。ということは、彼女の来た方向にホールの外へ繋がる道がある可能性は高い。ねこばるーんたちと違い、万が一がありえる。彼女はアリスたちに固執している。ならば、猟兵たちを捨て置いて、ホールから出てアリスたちの元へと向かう可能性がないとはいえない。

「この母、アルハザードは必ず、あなたたち我が子を見つけてみるわ。お母さんに任せなさい?」

 そう告げた彼女が浮かべた笑みは、瞳の奥が笑っていなかった。
ハイペリカム・ファニングス
アドリブ連携歓迎

貴女が舞踏会の主催者ですか
随分趣味の良い舞踏会でしたね
ですがあのような会はもう開きません
子供達の元へも行かせません
舞踏会はここでお開きです

まずは敵を逃さないように注意しましょうか
彼女の魔槍は探し物を狙う……ホールの外へ向かう可能性もあります
なので魔槍が出てきたのなら出来るだけこちらで対処しましょう
ウサギ時計で【盾受け】したり、それでも足りないなら体で受け止め【激痛耐性】で耐えますね

そうしつつ相手に接近、ナイフで切り裂ける距離までたどり着いたならUCを
【部位破壊】でバラバラにさせて頂きます
この時も仲間は攻撃しません
……この程度、今まで苦しんできた子供達に比べたら何て事はありません


マリス・ステラ
【WIZ】他の猟兵と共闘します

「主よ、憐れみたまえ」

『祈り』を捧げると星辰の片目に光が灯る
全身から放つ光の『存在感』で敵を『おびき寄せ』る
光は『オーラ防御』の星の輝き
と星が煌めく『カウンター』

「ノヴェッラとセノフォンテ達は旅立ちました。母から子はいつの日にか誰もがそうするように」

追わせるわけにはいきません
彼女の前に立ち塞がり道を阻みましょう

真の姿を解放

刹那、世界が花霞に染まる
頭に白桜の花冠
纏うは聖者の衣
背から聚楽第の白い翼がぎこちなく広がる

「あなたを骸の海に還します」

【光をもたらす者】を使用

現れた魔槍や猟犬を星霊で迎撃
弓で『援護射撃』放つ矢は流星の如く
負傷者を『かばう』

「灰は灰に、塵は塵に」



「貴女が舞踏会の主催者ですか。随分趣味の良い舞踏会でしたね」
 細い瞳を更に細めてアルハザードを見据えるのは、ハイペリカム・ファニングス(キリサキウサギ・f19355)だ。
「ですがあのような会はもう開かせません。子供達の元へも行かせません。舞踏会はここでお開きです」
 この様な舞踏会はあってはならないと、この場にいる猟兵たちならば心底思っているだろう。
「ノヴェッラとセノフォンテ達は旅立ちました。母から子は、いつの日にか誰もがそうするように」
 告げながら一歩、前へと進み出たのはマリス・ステラ(星を宿す者・f03202)。

「ああ、やはりあなた達が我が子達に勝手なことを。かわいい我が子達を、この母が迎えに行かねば」

 アルハザードがゆらりと身体を揺らす。ハイペリカムもマリスも、アルハザードの立つ階段の前へと駆け出した。子どもたちを追わせるわけにはいかない、ふたりの思いは同じ。

「あの子たちはどこに隠れているのかしら?」

 アルハザードの手にしている漆黒の魔槍が複製され、彼女の周りにいくつも浮かび上がる。
(「彼女の魔槍は探し物を狙う……ホールの外へ向かう可能性もあります」)
 それだけは、アリスたちを危険に晒すことだけは避けなくては。ハイペリカムはそのまま階段へと足をかけ。
「主よ、憐れみたまえ」
 その間に、階段下で足を止めたマリスは祈りを捧げる。星辰の片目に光を灯し、全身から放つオーラの光は、彼女の存在感を多分に示して。

「邪魔をするのね。大丈夫、あなた達も片付けるわ。舞踏会の『後片付け』はしっかりしないとね」

 マリスの意図通り、アルハザードの意識の少なく見積もっても半分は自分たちへと向いた。あとは――。

「さあ、貫いてしまいなさい」

 魔槍の先がマリスとハイペリカムへと向いて、そして放たれる。
「っ……!!」
 階段をのぼりアルハザードへと近づいていたハイペリカムは、『ウサギ時計』で自分へと向かう魔槍を受け止めた。それだけでなく、自らの身を、腕を、足を差し出して可能な限りの魔槍をその身に受け、マリスへと向かう数をできるだけ減らしてゆく。
 激痛に耐えながら、残りの数段を跳ぶように駆け上がったハイペリカムは、アルハザードが気がついた時にはすでに彼女の懐へと入っていた。

「くっ……!?」

 そしてその紅茶色の瞳を輝かせ、ナイフを振るう。腕を狙い、何度も振り下ろし、振り上げたその刃は、狙い通り彼女の右腕に深い傷を残した。だが、同時に仲間を一度も攻撃しなかった事により、彼の身体は代償を受ける。
 それでも。いくら傷を、代償を負おうとも。
「……この程度、今まで苦しんできた子ども達に比べたら、何て事はありません」
 後方へ跳んでアルハザードと距離を取ったハイペリカム。着地した床の上に、魔槍から受けた傷から鮮血が滴り落ちる。けれども、まだ、戦える。常に怯えてきた、アリスたちのためだから。今まで徒に命を奪われた、アリスたちのためだから。
「!?」
 彼が、負傷により乱れた息を整えようとしたその時。視界が白く染まった。
 否、世界が花霞に染まったのだ。
 その中に凛と立つ人物が見える。
 青と白の聖者の衣を身に纏い、長い金糸を揺らす彼女の頭(こうべ)には、白桜の花冠。背には、ぎこちなく広がる飛ぶ力を持たぬ翼。

「あなたを、骸の海に還します」

 しかと宣言したその声は、マリスのものだ。そう、彼女は真の姿を解放したのだ。
 
「夜が明け、明けの明星が昇るまで、暗闇に輝く灯火として――現れたまえ」

 呼び声に応じて彼女の周囲に現れたのは、無数の星霊。星霊たちは残りの魔槍だけでなく、対抗するようにアルハザードが喚んだ黒い猟犬たちへと向かってゆく。
 
「ギャンッ!」

 猟犬が一際大きな鳴き声を上げ、黒い霧となり消えた。床に落ちたのは、その猟犬を貫いた矢。マリスが援護射撃として放った『星屑』の矢である。

「ああ、ああ、忌まわしい。どうして、母の愛を――否定しようとするのです」

 次々と数を減らされてゆく魔槍と猟犬を見て、アルハザードが投げかけた問い。
 マリスは『星屑』に矢を番え――。

「灰は灰に、塵は塵に」

 ――答えの代わりにと、アルハザードを狙って弓を引いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナイ・デス
……私(ヤドリガミな上にすぐ神隠し、あったみたいで)親というの、知らない、ですが
あなたのような、お母さんは、嫌、ですね……!

逃げたアリスさん達【かばう】ように
【地形の利用】私を倒さなければ、外にはでられない位置へ
【忍び足ダッシュやジャンプ】
【念動力自身吹き飛ばし空中戦】で移動して、戦います

【第六感】で猟犬感じ
光の【オーラ防御】まとった腕で防御
【覚悟、激痛耐性】噛み千切られても、ヤドリガミなのでそのうち再生する。怯むことなく

『生命力吸収光』を広げ【範囲攻撃】
光に触れた敵からだけ【生命力吸収】する
鎧など着ている人も癒せる生まれながらの光を奪う方向に変えた【鎧無視攻撃】

子離れ、親離れの時、です……!



「……私、親というの、知らない、ですが」
 自身の『愛』を否定する猟兵たちへと怨嗟の声を上げるアルハザードへ、ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は真っ直ぐにその瞳を向けた。
 彼はヤドリガミである上に、神隠しにあって世界を巡っていたため、親はおろか本体の記憶すらない。主の記憶も。
 そんな彼でも、確実にわかることがある。

「あなたのような、お母さんは、嫌、ですね……!」

 告げて駆け出したナイは、一気にアルハザードの立つ階段付近へと迫り、床を蹴る。階段の手すりを足場に、念動力で自身の加速を補助しながら、上へ上へ。

「ああ、あなたのような子どもまで……。大丈夫です、母は理解していますよ。誰にでも、反抗期というものは存在するのですから」

 自身より上の場へと上がりゆく彼を視線で追いながら、アルハザードは漆黒の猟犬を呼び出そうとする。その気配を感じたナイは、階段を上がりきったところで着地し、アルハザードを見下ろした。
 アルハザードが階段上へと登場した通路は、今はナイの背の向こう。万が一彼女がアリスたちを追うべくホールの扉以外から出ようとしても、この通路を封じているナイを倒さなければ先に進むことはできない。

「少し、痛むでしょう。ですが、これも母の愛なのです――!」

 半身をナイへと向けたまま、アルハザード猟犬を放つ。黒の獣が小さな彼を覆い尽くすように群がってきた。
 けれどもナイはその獣たちに、光のオーラを纏った腕を振るってみせる。ここを狙え、と。
「っ……」
 狙い通りにナイの腕へと喰い付いた獣たち。その鋭い牙が無数に腕に打ち込まれる痛みは、想像を絶するものだろう。けれどもオーラによって軽減され、そして常人よりも痛みに強い彼は、覚悟を持ってその腕を差し出している。
 ああ、右腕が先に噛みちぎられそうだ。ヤドリガミであるがゆえに後に再生することは可能だが、だからといって痛みやショックがないわけではない。それでも彼は、腕を差し出してでもあの、歪んだ母からアリスたちを助けるという強い意志を持っている。怯むことはない。その意志も、揺らぐことはない。

「子離れ、親離れの時、です……!」
「なっ……!?」

 完全に黒の獣に飲まれてしまった――アルハザードからはそう見えただろう。だから、黒の隙間から光が漏れ出し、それが急速に広がって行くことに、アルハザードは動揺を見せた。
 光に触れた黒が、次々と消滅してゆく。瞬く間にナイを覆っていた黒は、溶けた。
 癒やしの力を持つ生まれながらの光を奪う方向へと変えた――『存在するための力』を奪い、その生命力を吸収する光が、黒の獣たちの存在力を根こそぎ奪い取ったのだ。
 その光は、アルハザードへも迫り、そして。

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 ハイペリカムによって右腕を壊され、マリスによって左肩を射抜かれたアルハザードから、容赦なく力を奪っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
アリスたちの元へ向かわせなどさせません。
アリスを怯えさせ、食べる貴女をここで倒します。

UC【協心戮力】を使用。
私の冷気を兄の起こした炎で水蒸気に変え、再度私が冷やし霧を発生させ、アリスたちを追いかけられないように視界を遮る。
召 喚されたアルハザードと猟犬諸共、動きを封じる目的で霧に【毒】と【麻痺】の効果の【属性攻撃】を施します。
毒と麻痺の効果があるうちに、人形の炎を【全力】でアルハザードと猟犬に【一斉発射】します。

アリスたちは貴女の子供ではないし、帰るべき場所はここではありません。
貴女に二度とアリスたちを会わせはしません。


ラフィ・シザー
俺にはお母さんってのはよくわからないけどみんなアンタみたいな奴なのかい?
あぁ、でも…話で聞くお母さんとはちょっと違うな。
お母さんってとっても暖かいんだろう?
アリス達だってあんなに怯えて…。
だからアンタはきっとお母さんってやつじゃない。

【戦闘知識】で戦況を把握。
さぁ、楽しい【ダンス】のはじまりだ!

UC【Mad party】アリス達を苦しめたアンタへの殺意は十分♪
40の鋏がアンタをどこまでも追いかける!

【挑発】しながら踊るように回避や攻撃を。
好きが出来たなら【暗殺・二回攻撃】

アドリブ連携歓迎。


オウカ・キサラギ
ボクは孤児だから親なんて顔も覚えてない。でも知ってる。
ちゃんとした母親っていうのは、ししょーみたいにどんな時でも愛がある人だ!
目つきが悪くても、怒る時は泣いちゃうくらい怖くても、いつだってボクの事を見てくれてた!
お前みたいに意味もなく子供を泣かせて怖がらせる奴は、絶対に母親なんて言わせない!

敵は小回りの利かない槍使い。
ここは【ダッシュ】で距離を詰めて双短剣での【先制攻撃】だ!
敵の反撃は体の動きを見て【見切り】空気の音を頼りに【聞き耳】であとは勘にも頼った【第六感】で避ける!
隙を作ったら魔力を開放して【封印を解く】とパワーアップするサンライトハートで【襲撃する疾風の刃】を叩き込む!
絡みアドリブ○



「ああ、ああ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 母に、母に何ということをっ……!」

 光よって『力』を吸収されたアルハザードは、大きく身体を揺らした。半身、階段上へ向けていたその身体は傾き、落ちてくるかと思いきや――どん、と手すりに体重を預けることで落下を免れた。
 しかし、それが彼女の大きな隙となったことは火を見るより明らかで。猟兵たちがその隙を見逃すことなど、ありえない。
 一気に彼我の距離を詰めたのは、オウカ・キサラギ(お日様大好き腹ペコガール・f04702)。右腕を壊されたがゆえに左腕に持ち替えられていたアルハザードの魔槍、その先が動くより早く、オウカはアルハザードの懐へと入り込んだ。
「ボクは孤児だから親なんて顔も覚えてない。でも知ってる」
 階段を踏んで跳び、両の手に持つ二本の短剣をアルハザードの肩口にそれぞれ突き刺して。
「ちゃんとした母親っていうのは、ししょーみたいにどんな時でも愛がある人だ!」
 そのまま、重力に従って縦に切り裂いてゆく。
「目つきが悪くても、怒る時は泣いちゃうくらい怖くても、いつだってボクの事を見てくれてた!」
 返り血に染まっても動じず、アルハザードの叫び声すら押さえつけるようにして、オウカは訴える。

「お前みたいに意味もなく子供を泣かせて怖がらせる奴は、絶対に母親なんて言わせない!」

 それは、彼女自らの体験に基づいた結論。それでも。

「時には厳しく接すること、それも子育てには必要なのですよ?」

 アルハザードは荒い息と共に、母としての持論を吐き続ける。
 複製された魔槍が、彼女の周りへと徐々に浮かび始める。一度にすべての複製を出現させないのは、これまで負った傷が深すぎて力が足りないからだろうか。

「俺にはお母さんってのはよくわからないけどみんなアンタみたいな奴なのかい?」

 ガッ……動こうとした魔槍を、青い炎を纏った鋏が止める。大きく口を開いた鋏はその口で魔槍を受け止め、動きを阻害しているのだ。
「あぁ、でも……話で聞くお母さんとはちょっと違うな。お母さんってとっても暖かいんだろう?」

「私がっ、母では、ない……と?」

 複製した魔槍を動かそうとするアルハザード。だが負傷のせいか、その動きと力は鈍い。

「That's right! アリス達だってあんなに怯えて……。だからアンタはきっとお母さんってやつじゃない」

 銀の瞳でアルハザードを射抜き、言葉で断罪するラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)は、口元に笑みを浮かべて。

「さぁ、楽しいダンスのはじまりだ! アリス達を苦しめたアンタへの殺意は十分♪」
 まるでどこからか、陽気な音楽が聞こえてきそう。ラフィがステップを踏むと、浮かび上がる青い炎を纏った鋏がアルハザードへと向かう。先程魔槍の複製を止めた分を除いても、数は30以上。
 切り裂いてその傷を燃やして、切り裂いて燃やして、切り裂いて燃やして――。

「あぁぁぁぁぁっ……やめて、私は母として、我が子達の元へと向かわねばっ……!」

 抵抗しようと複製されたアルハザードの魔槍が飛び回る。けれども小回りのきく鋏を、大きな槍が防ぐことは難しく。ただでさえ小回りのきかぬ大きな槍。アルハザードがその矛先を自分を刻む鋏ではなくラフィやオウカへと向け始めたときは、すでに遅い。
 これまで負った傷とオウカやラフィの負わせた傷が響いているのだろう。魔槍の動きは始めの頃よりも大ぶりで、単調なものになっていた。来る方向さえわかれば、避けることが難しくないほどに。

「アリスたちの元へ向かわせなどさせません」

 凛とした声が響いた。けれども、その姿を目視することはできない。
 何故ならば、ホールの扉付近に霧が発生していたからだ。

「アリスを怯えさせ、食べる貴女をここで倒します」

 その声の主は吉備・狐珀(神様の眷属・f17210)。自身の操る冷気を、兄の魂を封じ込めたからくり人形の起こした炎で水蒸気に変え、再度狐珀が冷やすことで霧を作り出したのだ。

「猟犬、霧の中に隠れている者を探すのよ!」

 アルハザードによって放たれた漆黒の猟犬は、真っ直ぐに霧を目指す。だが、アリスたちを追いかけられぬようにと扉付近に張った霧は、まるで意志を持っているかのように猟犬たちを包み込み、そしてアルハザードへと迫りゆく。
 ばたりばたりと何かが倒れるような音。霧の中から響き続けるそれが、毒と麻痺をもたらす霧によって猟犬たちが倒された音だと、アルハザードは気づくことができただろうか。

「なっ……!?」

 具体的な方法まではわからぬだろう。だが、猟犬たちが次々と倒されていくことを感じたアルハザードは、迫りくる霧から逃れようとした。
 しかし。
「逃さないよ。アンタはもう、釘付けだ!」
 いつの間にかアルハザードの身体と衣服は、手すりに背を預けた状態で、ラフィの鋏によって縫い留められている。

「くっ……!」

 楔を取り除こうと、必死に力を入れるアルハザード。忍び寄った霧を吸い込んだことに気がついたのは、指先すら言うことを聞かなくなってから。
「そろそろラストソングだ!」
 ラフィは巨大な『innocence』を手にアルハザードとの距離を一気に詰め、その腹部を繰り返し切り裂いて。
「アリスたちは貴女の子供ではないし、帰るべき場所はここではありません」
 薄くなった霧の向こうに狐珀の姿が見える。そして彼女の操る人形が、アルハザードに狙いを定めている。
「貴女に二度とアリスたちを会わせはしません」
 放たれた激しい勢いの炎は、倒れている猟犬たちを巻き込んでアルハザードへと迫り、その肢体を包み、激しく燃やす。

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 磔にされて火炙りに――まるで魔女や救国の聖女の最後のようであるが、彼女が後者であることはありえない。
 炎に飲まれ、いつか奪った『母親としての姿』すら保てなくなったアルハザードの醜い叫び声。それを耳にしながら、オウカは魔力をを解放し、『サンライト・ハート』の封印を解いた。現れたのは、太陽光を凝縮したような刀身。

「そんなにうるさくしたら、アリスたちが怯える。だから、一撃で決める!」

 告げたオウカの動きは、追うことも困難なほど早く。
 炎に焼かれるその胸に突き刺すのは、太陽の光。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 アルハザードの断末魔の叫びは、酷く醜く、耳障りだ。だがそれも程なく聞こえなくなり。
 炎の中にあった人型は、ぼろりと崩れ落ちて消え。
 ホール内を見渡せば、猟犬たちの姿も跡形もなくなっていた。

 * * *

 偽りの甘い国で行われていた、偽りの母の偽りの愛の王国は、こうして瓦解した。
 アリスたちが理不尽な舞踏会に招待されることは、もう、ないだろう。
 これから先、アリスたちが自分の扉を見つけて帰ることができるのかはわからない。
 帰ることが彼らにとって最善なのかどうかもわからない。
 だが、常に命の危機を感じながら怯えている――そんな暮らしから、解放することができたのは確かだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月18日
宿敵 『『慈母を騙る災厄』アルハザード』 を撃破!


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#アリスラビリンス


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト