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お菓子な国

#アリスラビリンス


●グリモアベースにて
「オウガの大軍勢から、不思議の国を守って欲しいんだよ!」
 猟兵が集まるなり、佐伯・キリカ(陽気な吸血魔法使い・f00963)が告げる。
 どうやら、まだ侵略されていない「不思議の国」に、ついにオウガの大軍勢がやってきてしまったというのだ。
「今回向かってもらう『不思議の国』は、お菓子でできた家やお城が立ち並ぶ場所だよ。どれもかわいい色使いで、つい写真を撮りたくなっちゃうかも。そうそう、そこに住む『愉快な仲間たち』は人間の子どもくらいの大きさで、カップケーキやキャンディーといったお菓子でできているみたいなんだ!」
 住人の種類はさまざま。チョコレートにビスケット、ケーキにグミ。その全員がユーベルコードを使い、猟兵がオウガと戦うのをサポートしてくれるそうだ。
「愉快な仲間たちはみんな楽しく可愛い見た目なんだけど、たとえばカップケーキさんはトッピングを飛ばすユーベルコードを、キャンディーさんは一時的に溶けて相手の足止めをするユーベルコードを使ってオウガの軍勢と戦ってくれるみたい。だから、彼ら彼女らとうまく協力して、オウガのボスまでたどり着いて欲しいんだよ!」
 というのも、押し寄せたオウガ軍勢の数は凄まじく、猟兵だけでは倒しきれないほど。であれば、ひたすらにオウガと戦うより、ある程度のオウガを蹴散らして道を作り、その後ボスを叩くのが得策というものだ。
「最初に戦うことになるのは『はらぺこねこばるーん』というオウガ軍勢だよ。黒猫の頭のような形をした風船がふわふわ浮いてるような見た目をしていて、カタコトで喋るくらいの知性はあるみたいだね。ちょっと可愛い感じもするけど、攻撃はなかなかに恐ろしいから十分に気をつけて欲しいな」
 はらぺこねこばるーんを蹴散らし、ボスにたどり着いて撃破できれば、愉快な仲間たちも勢いの弱まった残りのオウガを蹴散らしてくれるという。そうなれば、不思議の国での戦いは一段落だ。
「オウガのボスを撃破できたら、愉快な仲間たちが歓迎会を開いてくれるんだって。でね、その歓迎会の内容は――なんと、お菓子の家づくり! この国で感謝の気持ちを表すイベントとして、恒例なんだとか!」
 と、キリカがびしりと人差し指を立てる。
 素材となるお菓子は、国をぐるりと囲う『お菓子の森』に自生している。板チョコの実る木や、鈴蘭のようにキャンディを実らせる花などがあるというから、見ているだけでも楽しそうだ。
 その他、現地でお菓子を作って材料にしてもいいらしい。材料や道具は愉快な仲間たちが提供してくれるそうだから、持ち込みはしなくてもよさそうだ。
「それじゃ。オウガから不思議の国を守ってお菓子の家づくりも楽しもう! よろしく頼んだよ、猟兵さんたち!」
 そう言って、キリカは猟兵に信頼の笑みを向けた。


雨音瑛
 今回はアリスラビリンスにてよろしくお願いいたします。

●お菓子の国
 カップケーキやキャンディ、チョコレートといったお菓子でできた愉快な仲間たちが住人の国です。パステルカラーを基調とした色彩になっています。
 住人だけでなく、建物や植物も全てお菓子でできています。お菓子の植物はすぐに生えてくるので、つまみ食いしても問題ありません。

●その他
 2章・3章開始直後、章の冒頭に何かしら文章を記載する予定です。

●補足
 第1章:愉快な仲間たちの攻撃シーンはこちらで任意に描写しますが、希望するサポートお菓子がありましたらプレイングにご記載ください。
 第2章:愉快な仲間たちのサポートはありません。猟兵のみでボスと戦うことになります。
 第3章:森で採れるお菓子の素材、つくるお菓子などはご自由にどうぞ。
 この章のみの参加も歓迎です。
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第1章 集団戦 『はらぺこねこばるーん』

POW   :    I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD   :    I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。
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剣堂・御空
【WIZ】
とりあえずお菓子の国だ。お菓子は大好きだから守る。
相手は黒い猫バルーンだな?なんか「タベチャウゾー」とか、「マルカジリ~」とか言いそうなくらい食欲を包み隠さない奴に見える…俺みたいに。
 こいつらは何をしてくるんだろ?…(相手の行動を見て)やっぱりこいつらはこの世界の人達を犠牲にしてきたんだな。
「せめて目の前の奴は守ろう。お前達は俺の敵だ、猫風船!」
俺は猫風船に敵対心を感じることで水道蓋の悲劇を発動。30個程のマンホールの蓋で猫達に攻撃を仕掛ける。
数で闘うユーベルコードを使って勢いを作って仲間達に援護してもらってこの猫風船を倒していこうか。



 不思議の国のどこかにある、お菓子の国。
 風に揺れるお菓子の植物や立ち並ぶお菓子の家は、鮮やかな色彩だ。
 心弾む色と素材は、来訪者を楽しませてくれる。
 もちろんオウガが来襲していなければ、の話だが。

 金色のポニーテールを揺らして歩く剣堂・御空は、オウガの軍勢を前におもむろに口を開いた。
「こいつが今回の相手か」
 そう呟き、赤い瞳で敵軍を見渡す御空。怯む様子も、戸惑う様子もない。
 グリモアベースで聞いていたとおりの見た目をした敵の名は『はらぺこねこばるーん』だ。
「タベチャウゾー!」
「マルカジリシテヤルー!」
 食欲を包み隠さないところは、どうやら御空と同じらしい。想像していた通りの発言に、御空は思わず口角を上げる。が、連中が『愉快な仲間たち』を喰らう様子を見て、すぐに表情が真剣なものへと変わった。
(「……やっぱりこいつらはこの世界の人達を犠牲にしてきたんだな」)
 もとより、見た目で許すような御空ではない。
「せめて目の前の奴は守ろう。お前達は俺の敵だ、猫風船!」
 奮戦する愉快な仲間たちをちらりと見て、御空ははらぺこねこばるーんを睨み付けた。感じるは、敵対心だ。すると御空の付近に、およそ30のマンホールの蓋が現れる。
 愉快な仲間たちは見慣れぬ物体に動揺を示すが、御空の一瞥でなんとなしに意図を察したらしい。
「理解が早くて助かる」
 マンホールの蓋が勢いよく転がり、はらぺこねこばるーんを追尾しては紐部分を絡め取る。それも1体だけでなく、複数体を、だ。一度絡まったはらぺこねこばるーんは逃れられない。そのままマンホールの蓋の進路上に頭部を晒し、あえなく弾けた。
 マンホールの蓋は御空の周囲にいるはらぺこねこばるーんをことごとく撃破してゆく。どうやら見た目どおり風船のような素材でできているらしい。マンホールの蓋ほどの質量を持つものが衝突したら、ひとたまりもないだろう。
 とはいえ、当然、敵もやられるがままではない。他の個体を犠牲にして追尾をかわしたはらぺこねこばるーんが、御空へと迫る。
「タベル! ソノマエニ、ノロウ!」
 気合いの入った言葉とともに、はらぺこねこばるーんの前にぼんやりとしたシルエットが現れた。ほっそりとした形状は、少女のよういn見える。
「……犠牲になったアリスの霊か」
 反撃に身構える御空の横を、何か星型をしたものがいくつも通り抜けていった。直後、いくつものはらぺこねこばるーんが弾け飛んだ。
 色とりどりのカップケーキたちが、星型の砂糖トッピングを飛ばし、御空を援護してくれたのだ。
「さあ、今のうちに!」
「頼もしい援護だな。その調子で頼むぞ」
 はらぺこねこばるーんは、まだまだ押し寄せる。その数は無限とも思われる相手を前に、御空は再び、いや、何度でもマンホールの蓋を召喚し、つぶさに撃破してゆく。
 この前哨戦にまだ終わりは見えないが、猟兵以外にも背中を、あるいは隣を任せられる相手がいるというのはなかなかに心強い。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリーゼ・ユージル
ほう、ちょっとは可愛いネコじゃな。
じゃが、平和な国を襲うなど、もってのほかじゃ。
妾が成敗してくれようぞ。

犠牲者の霊を使うとは卑怯じゃぞ、ネコ!
そち達を助けられぬのが惜しいのぅ。
呪いには霊符で対抗じゃ。投げつけてやるぞ。
武器を構えてきたら、狐に変身。『野生の勘』で避けるぞ。
そのまま一気に霊の所に走って行って、
元に戻って薙刀で祓ってやろうぞ。

さて、ネコにはとっておきを使うぞ。
「清めの時間じゃ、しかと受け取るがよい!」
【巫覡載霊の舞】で応じようぞ。
薙刀を一振りして祓ってやるのじゃ。



 手当たり次第に『愉快な仲間たち』を襲っている『はらぺこねこばるーん』は、エリーゼ・ユージルの前にも迫っていた。
 ほう、とエリーゼは目を細める。
「ちょっとは可愛いネコじゃな。じゃが、平和な国を襲うなど、もってのほかじゃ。妾が成敗してくれようぞ」
 銀色の狐耳をぴんと立て、9本の尻尾のいくつかを揺らすエリーゼ。
 愉快な仲間たちがそうするように、エリーゼもまたはらぺこねこばるーんの撃破に努める。
 エリーゼが数体まとめて撃破した直後、うまく他の個体に隠れていたはらぺこねこばるーんが左右に大きく揺れた。
「タベサセロ! タベサセロ!」
 歯をがちがち鳴らすはらぺこねこばるーんの前に現れたのは、両手にナイフ持った少女の幻影だ。まるで陽炎のように揺らめく少女を見て、エリーゼは思わず目を見開く。
「犠牲者の霊を使うとは卑怯じゃぞ、ネコ!」
 そう、この亡霊は既にオウガの犠牲となったアリスだ。エリーゼは歯噛みしながらも、はらぺこねこばるーんへと霊符を投げつける。彼女たちを助けられない、というのはエリーゼにとっていたく惜しいと感じられた。
 霊符がはらぺこねこばるーんに到達するが早いか、いつの間にかエリーゼの背後に回った亡霊が両手のナイフを振るう。少女らしいしなやかさと何かに操られているようないびつさは、悲しい踊りのようだ。
 しかし、ナイフの軌跡はただ何もない宙に曲線を描くだけ。
「エサガ、イナイ!?」
 驚くはらぺこねこばるーんは辺りを見回し、エリーゼの姿を探す。すると、先ほどまでいなかったであろう銀色の毛並みの狐が駆けていることに気付いた。
 狐はそのまま一気にはらぺこねこばるーんとの距離を詰め、少女の――
エリーゼの姿になった。
「エサガヤッテキタ!」
「エサダ、エサダ!」
「残念じゃが、食事の時間は無しじゃ。その代わりに清めの時間じゃ、しかと受け取るがよい!」
 他の個体が生み出した亡霊による攻撃が、エリーゼの身体を切り、撃ち、刺す。が、エリーゼが受けるダメージは軽微なものだ。
 それもそのはず、エリーゼは神霊体となっていたのだ。気付けば、エリーゼの手には薙刀が握られている。
 散り散りになって逃げようとするはらぺこねこばるーんに、エリーゼは薙刀を一振りした。
 振るわれたのは刃と、衝撃波。刃はエリーゼの眼前の猫バルーンへ、衝撃波は周囲のはらぺこねこばるーんにそれぞれ到達する。そのどちらも、直後に大きな破裂音を立てて消滅した。
 薙刀を納めたエリーゼは、ふと気付く。先ほどまで背後にあった亡霊たちの気配が消えたことに。悲しそうな、寂しそうな笑みを小さく浮かべ、エリーゼは目を閉じた。
「……安らかに、眠るのじゃぞ」

成功 🔵​🔵​🔴​

ステフ・ウッドワード
不思議の国の一大事です
きっちりしっかり、お助けしますよ!

UDC霊を召喚!
相手は風船です、爪でバーンと割ってやりましょう
おっと、アチラも霊を喚び出しましたか
うーん、犠牲者の霊……ばるーんにやられてしまったアリスでしょうか
同じような霊を増やさないためにも、コイツはここで割っておかないとですね!気合いはいりました!

【2回攻撃】【衝撃波】で、なぎ倒しー!
風圧でヒラユラ避けられないように愉快な仲間のキャンディーさんに足止めのお願いをします
ばるーんに食べられないよう、アタシはある程度距離とっておきます



「きっちりしっかり、お助けしますよ!」
 ラビットキャットに似た姿をしたケットシーの少女は、小さな拳を振り上げた。元気に強気に笑みを浮かべる彼女の名は、ステフ・ウッドワード。
 小さく跳ねたステフは、少し離れたところにいるはらぺこねこばるーんに狙いを定める。
「アイツをズタズタに切り裂いちゃえ!」
 指さし確認、とばかりにステフが突きつけた人差し指の先で、UDCの霊が顕現した。
「タベラレナイヤツ、キョウミナイ!」
 そっぽを向くはらぺこねこばるーんに、UDCの霊は鋭い爪を突き立てる。容赦のない爪の連撃ははらぺこねこばるーんを引き裂き、残った紐は力なく地面へと落ちた。
「やりました! ……おっと、アチラも霊を喚び出しましたか」
 他の個体の前に、剣を持った少女の霊が現れている。はらぺこねこばるーんに食べられてしまった犠牲者の霊だろうか。同じような霊を増やさないためにも、はらぺこねこばるーんはここで割っておかないといけない。
 根っこの臆病なところを奮い立たせ、ステフは次の策を決める。
「そうだ! ――キャンディーさんたち、協力をお願いできますか?」
「もちろんよ! あたしは何をすればいい?」
 ちょうど前方で戦っていた『愉快な仲間たち』のキャンディーたちを呼び、ステフはしゃがみ込んだ。キャンディーたちが近寄ると、彼ら彼女らを包むフィルム、その端がステフのオレンジがかった茶色と白の毛並みに触れて、少しだけくすぐったい。
「……あのね――」
 ステフの耳打ちした内容に、キャンディーたちは力強く頷いた。
「お願い、できますか?」
「当然、任せて!」
「お安いご用だ!」
 言うが早いか、キャンディーたちは一斉にはらぺこねこばるーんの群れに突撃した。色とりどりのフィルムが、戦場に舞う。
「エサガ、ジブンからヤッテキタゾ!」
「ハラペコ! オレガゼンブ、タベル!」
 と、騒ぐはらぺこねこばるーんの思惑どおりには当然、ならないわけで。
 キャンディーたちはいっせいにぺこねこばるーんの紐に絡みついて溶け、固定した。
「ウゴケナイ! タベレナイ!」
「今です! ……いっけえー!」
 キャンディーたちによって足止めをされたはらぺこねこばるーんに向け、ステフはすかさず衝撃波を放った。衝撃波は黒い邪悪な風船たちをなぎ倒し、弾けさせてゆく。
 どうにか回避した個体も、二度目の衝撃波であえなく破裂する。
「キャンディーさんたち、ご協力ありがとうございまます! よーし、この調子でいきますよ!」
 ステフは笑顔を浮かべ、元の形状に戻って再びフィルムに包まれるキャンディーたちに手を振った。

成功 🔵​🔵​🔴​

神宮時・蒼
…とても、平和そうな、見た目の、世界、ですのに、結構、血生臭い、事件、ですね…
…あの、風船も、見た目は、可愛い、のです、けれど…、やる事は、えげつない、ですね…
…周りに、被害が、及ばない世に、早めに、割って、しまいましょう

【激痛耐性】【呪詛体制】があるので、アリスの霊にはあまり動じず。
【破魔】の力を纏わせた【なぎ払い】で浄化出来ないでしょうか…
はらぺこねこばるーん…。風船なのでしたら、熱で傍聴したら割れたり…?
【属性攻撃】で炎を纏わせた【全力魔法】で͡白花繚乱ノ陣を足元へ描いて攻撃します

…可愛くても、不気味な風船は、お断り、です…。



 どこか甘い匂いのただよう戦場で、神宮時・蒼の白い髪が風になびく。氷晶石と琥珀のブローチのヤドリガミである彼女は、食欲むき出しで暴れ回るはらぺこねこばるーんとは対照的な静謐をたたえているように見える。
 感情の見えない瞳は、とても平和そうな見た目の世界をぐるりと見渡した。蒼には実感できないが、この国の色彩は『心躍る』といった表現がきっとしっくり来るのだろう。
 だが、今はオウガの軍勢に蹂躙されつつある。
「……周りに、被害が、及ばないように、早めに、割って、しまいましょう」
 そう呟いて見つめるのは、オウガ『はらぺこねこばるーん』。見た目だけはかわいい彼らは、よだれを垂らしながら、隙あらばお菓子――この国の『愉快な仲間たち』だ――を喰らおうとしている。
 端的にいって、えげつない。とはいえ、そう思う蒼の表情はぴくりとも動かないのだが。
 板チョコレートが半分溶けたチョコレートブロックを作り出して投げつけているのを横目に、蒼も攻撃を開始した。
 いくつかのはらぺこねこばるーんが攻撃を仕掛けて来る前に撃破すれば、押し寄せる他の個体が代わりに攻撃を仕掛けてくる。
 蒼が不吉な気配を感じると、今は亡きものたちの姿が彼女を取り巻いた。
 オウガに犠牲になった、アリスの霊だ。彼女たちはそれぞれの武器を手に、あるいは呪詛を呻くように呟き、蒼へと一斉に仕掛けた。
 それら全ての攻撃は間違いなく到達しているのだが、激痛と呪詛の耐性がある蒼にとっては数滴の雨が肌に触れたくらいに感じられる。
 蒼は瞬きひとつ、破魔の力を纏わせたなぎ払いで周囲の霊たちを消滅させた。
「……予想、通り、ですね……」
 さて、と見遣るは亡霊を生み出したはらぺこねこばるーん。こちらの相手にもひとつの予想をし、蒼は実行に移すことにした。
「…何にも、染まらぬ、誠実なる、白。何にも、染まる、無垢なる、白。…舞え、吹き荒れろ」
 足元に杖で陣を描き、発動させる全力の術。出現した月花ノ吹雪は炎を纏い、はらぺこねこばるーんを熱する。
「……こちらも、予想、通り、です……」
 言葉の端に得意気な色をわずかに滲ませ、蒼は膨れ上がってゆくはらぺこねこばるーんを眺める。元の3倍ほどに膨れ上がったはらぺこねこばるーんは、それ以上は耐えきれない、とばかりに弾け飛んだ。
「……可愛くても、不気味な風船は、お断り、です……」
 風にさらわれてゆく黒い破片――はらぺこねこばるーんの破片をちらりと見て、蒼は小さく息を吐いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

コノハ・ライゼ
あらまあ美味しそ……じゃない、ファンシーなミンナのピンチってワケね
OK、矢面に立つのは任せて頂戴
代わりに背中は任せれるかしら?

風船といったらコレよネ、と【彩雨】呼び『スナイパー』で風船部分狙い撃ち
派手な攻撃で目を惹くようにするネ
威力はそれ程でなくても弱らせるってンならバッチリ
氷の針が刺さった敵から狙っちゃって

敵が霊を呼び出したら『2回攻撃』で針を霊へと集中させ撃ち倒そう
増量は遠慮したいもの
反撃は『オーラ防御』で防ぎつつ
愉快な仲間たちへ敵や被害がいきそうなら動きを『見切り』『かばう』ヨ

戦うのも攻撃を受けるのも慣れてるケド、そうね
オレは回復の術を持たないから、ソコも手伝ってもらえっと嬉しいなぁ



 妖狐の青年は種族の特徴を何ひとつ顕さず、ただひょうひょうと『愉快な仲間たち』とオウガ『はらぺこねこばるーん』を眺めやる。
「あらまあ美味しそ……じゃない、ファンシーなミンナのピンチってワケね」
 お菓子でできた『愉快な仲間たち』を前に、コノハはオウガの軍勢に向かって躊躇なく進み出る。
「OK、矢面に立つのは任せて頂戴」
 知的で美人な青年はそのまま背後を見て、
「代わりに背中は任せれるかしら?」
 まだ先の季節で出会う色をした瞳を、愉快な仲間たちに向けた。
「もっちろん! まかせてよ!」
 頼もしく心強い返答は、心地よい。コノハは愉快な仲間たちにウインクを送り、はらぺこねこばるーんの群れにその身を投じた。
「風船といったらコレよネ」
 軽快に指を鳴らし、コノハは200余りの水晶の針を出現させた。それだけで、はらぺこねこばるーんの視線はコノハへと集まる。
「煌めくアメを、ドウゾ」
 大仰な礼をして、コノハは水晶の針を放った。
 真正面にいる者も、その奥にいる者も、自身に迫る者も、視界の端に一瞬だけちらりと見えた者も。それら全ての風船部分だけを、スナイパーもかくやという精度で狙い撃ちする。破裂音は重なり、続き、針の数だけのはらぺこねこばるーんを撃破した。
 その攻撃と行動は、いっそうコノハへの注目を集める。
「アイツ、オレガクウ!」
「オレモクウ」
「オレモ」
「オレモ」
 はらぺこねこばるーんたちは呼び出した霊をいっせいにコノハへと突撃させた。
「ふふ、アタシってば人気者ネ」
 なんてい言いつつ肩をすくめるコノハは連続で水晶の針を呼び出し、今度は霊たちに攻撃を集中する。
 霊が消滅する前に放たれた飛び道具による攻撃はオーラ防御で防ぎつつ、隙あらばはらぺこねこばるーんを1体でも多く破裂させて。
 愉快な仲間たちもタイミングを見計らって、一気に攻め立てようとする。その中で、勢い余って転倒したグミうさぎに刀を持った霊が迫った。
「あっ……!」
 グミうさぎは怯え、動けない。しかし振り下ろされたであろう刃は一向にグミうさぎには届かず、何か液体のようなものがぽたりと落ちる音だけが聞こえた。
「言ったでしょう、矢面に立つのは任せて、って」
 それもそのはず、コノハが霊の攻撃を見切り、片腕で刃を受け止めていた。落ちた液体は、コノハの血だ。
 コノハが刀を押し返して水晶の針を放った直後、オレンジゼリーが柔らかな光を飛ばして傷を塞いでくれた。
「よ、余計なお世話だったでしょうか……?」
「いや、助かったよ。オレは回復の術を持たないからさ」
 少し恥ずかしそうにするオレンジゼリーに指で優しく触れ、コノハは人懐っこい笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔴​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
オウガたちの好き勝手にやらせてたまるか!
愉快な仲間たちもいつか来るかもしれないアリスたちの為にも勝つぜ!

あの猫風船に食欲を抱かせたら危険な予感しかしないから、
アースジャイアントでケーキの頭部・ビスケットの胴・グミの腕足指を造形させたお菓子風大地の巨人を召喚
ただし、青色の鉱物で作って食欲をげんなり減るだろう青のお菓子風巨人だぜ
「真っ青のスウィーツパンチを食らわせてやるぜ!」
猫風船達が愉快な仲間やお菓子の家を見て食欲を回復させないよう
視界を遮るように動いて攻撃していくぞ

愉快な仲間たちにはお菓子の匂いを嗅がれて食欲が増さない様に、
猫風船の嗅覚を遮断する術がもしあれば頼むぞ!



「今回の相手はコイツか。可愛い見た目のくせになかなか楽しませてくれそうじゃないか」
 グァーネッツォ・リトゥルスムィスは『はらぺこねこばるーん』を前に拳を握り、指を鳴らす。
「お前達の好き勝手にはさせないぜ! 勝つのはオレ、そして猟兵だ!」
 愉快な仲間たちのためにも、そしていつかこの場所を訪れるかもしれないアリスたちのためにも、ここで負けるわけにはいかないのだ。
 意気込むグァーネッツォが拳を掲げたとたん、2メートルほどの巨人が現れた。頭部はケーキ、胴はビスケット、腕や足指はグミでできているように見える。それだけ聞けば食欲をそそりそうではあるのだが、当のはらぺこねこばるーんたちは――
「アレハ、オマエニヤル!」
「イラナイ! オイ、オマエハドウダ!」
「オレハナニモミテナイ!」
 と、どの個体も動揺し、譲り合っていた。
 それもそのはず、巨人の全身は食欲が減退しそうなほどの鮮やかな青色をしている。グァーネッツォいわく青色の鉱物で作った、のだとか。
「嗅覚を遮断するような術を持ってる奴はいないか? いたら、今のうちに頼むぜ!」
「わたし、できる!」
 グァーネッツォの呼びかけに応えたのは『愉快な仲間たち』の一人、莓が乗ったホールケーキだった。莓のホールケーキは全身を震わせ、何かを念じる。すると次の瞬間、はらぺこねこばるーんの一団の上に巨大なケーキドームのようなものが出現した。垂直に落ちる透明素材のそれは、多くのはらぺこねこばるーんを閉じ込める。嗅覚だけでなく、少しの間ならば行動も封じられそうだ。
「助かるぜ! さーて、それじゃまとめて……」
 グァーネッツォが体を反らし、右の拳を後ろに引く。すると、彼女の少し前に立つ巨人もまったく同じ動きをする。
「砕けろッ!」
 叫び、地面に拳を突き立てるグァーネッツォ。巨人の拳は、ケーキドームもろとも複数のはらぺこねこばるーんを潰していた。
「さあ、次はどいつだ! 真っ青のスウィーツパンチを食らわせてやるぜ!」
 巨人の動きを見ながら手当たり次第に拳を、足を用いて、グァーネッツォははらぺこねこばるーんを次々と撃破してゆく。
 一見無軌道なように見えるが、グァーネッツォの、あるいは巨人の動きにはシンプルなルールがあった。
 はらぺこねこばるーんの視界から、愉快な仲間たちを遮るように動き、攻撃を仕掛ける。
 それは、はらぺこねこばるーんの食欲を刺激しないようにするための策だ。
 愉快な仲間たちからの援護を受けつつ、グァーネッツォはまだまだはらぺこねこばるーんを破裂させてゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『ストーリー・テイラー』

POW   :    ああもう、苛々するなぁ!このシナリオは全部没だ!
自身が【望んだ通りに話が進まない苛立ち】を感じると、レベル×1体の【大きなハサミを持った小型のオブリビオン】が召喚される。大きなハサミを持った小型のオブリビオンは望んだ通りに話が進まない苛立ちを与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD   :    必要ないキャラクターは引っ込んでろ!
【本の頁で出来た大型オブリビオンの群れ】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    おっと、その展開は無しだ。
【まるで物語の先を読んだかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
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 オウガの軍勢を従えてお菓子の国を襲撃した張本人は、気だるそうに、かつ怒りを滲ませながら大げさなため息をついた。
「……困るんだよ、脚本どおりに動いてくれないと」
 後頭部を掻き『愉快な仲間たち』と戦う『はらぺこねこばるーん』を見遣る。
「まあ、いい。この僕『ストーリー・テイラー』が直々に猟兵の相手をする――そういう物語にすればいいんだから」
 暗い笑みを浮かべ、ストーリー・テイラーは猟兵たちと相対した。
剣堂・御空
ストーリーテイラー。…俺の母親も似たような事してたって聞いたことあるな。行方不明だけど。
周りをリセットする話は本の中だけに収めておきな、三流作家さん。物語は誰かに見せるためのものだ。自慢話や全て壊した話なんてウケねぇんじゃないか?
俺の行動は血統覚醒からの攻撃をしかけるというものだ。
「我は吸血鬼の子。その深紅の翼と深紅の瞳で忘却の魔物を滅ぼす存在!」
ハサミやらペンやら何でもかかってきな。俺の武器は血統覚醒で引き上げた己の肉体と妖刀と言葉だ。
「ペンは剣よりも強し」って言うんだろ?なら俺も言葉って武器を使わせて貰う!
奴の本を手放す事が出来れば奴の攻撃手段は格段に減るはずだ。



 『ストーリー・テイラー』という名前に、剣堂・御空の記憶の何かが引っかかる。
 そうだ、行方不明となった母親だ。
 彼女が似たようなことをしていたと、以前聞いたことがある。
 御空がそこに気付くまでに数秒とかからなかったのだが、まあ、それはいい。問題は続けて引き出される記憶、すなわち代わりに育ててもらった養母の趣味。それが嫌で、猟兵に目覚めると共に家出しているいま。
 これ以上記憶を追いかけると、どんな思い出が蘇るかわからない。御空は首を強く振り、目の前の敵、ストーリー・テイラーへ向けて歩き出した。
「周りをリセットする話は本の中だけに収めておきな、三流作家さん。物語は誰かに見せるためのものだ。自慢話や全て壊した話なんてウケねぇんじゃないか?」
「なんだ、キミは? 僕の脚本にキミのようなのはお呼びじゃないんだ、でもまあ、どうしてもっていうなら『囚われの姫』にでもしてやろうか?」
「はっ、そんなのはご免だ。それに、俺には名前も存在もちゃあんとあるんでね。――我は吸血鬼の子。その深紅の翼と深紅の瞳で忘却の魔物を滅ぼす存在!」
 そう宣言した御空の姿が、ヴァンパイアのそれになる。
「そうか、僕とやりあおうってのか! 僕が欲しいのは……一方的な勝利なんだ!」
 ストーリー・テイラーが叫ぶと、100近くのオブリビオンが出現した。そのどれもが、手に大きなハサミを持っている。
「ハサミでもペンでも何でも、かかってきな。まとめて相手してやるよ」
 余裕で告げる御空の武器は、己の肉体と『妖刀カワエグリ』。そして、言葉だ。
「『ペンは剣よりも強し』って言うんだろ? かかってこいよ!」
 お望みどおり、と押し寄せたオブリビオンたちは、まるで御空の相手にならない。能力を引き上げた腕力と速度によって、瞬く間にカワエグリの餌食になる。
「ふん、ご苦労なことだ」
 オブリビオンを相手どる御空を面倒そうに眺めるストーリー・テイラー。彼の視線が横に逸れた時、御空はストーリー・テイラーの手にする本に狙いをつけた。下から上へと斬り上げ、本を両断する。
 ストーリー・テイラーは目を見開くが、すぐに口元に笑みを浮かべて片方の眉を吊り上げる。
「そんなことをしても無駄だ。物語は、僕の頭の中にある」
 側頭部を人差し指で示すストーリー・テイラーに、御空は眉根を寄せる。
「ちっ……なんて、顔すると思ったか?」
 すぐさま笑みを浮かべた御空の視線は、ストーリー・テイラーの下肢に向けられている。
「なに?」
 自らの足元を見て、ストーリー・テイラーは絶句した。
 膝下から血が流れている。そう認識すると同時に、やっとのことで痛みが訪れる。
 本だけを切り裂いたと思った御空の刀は、その後認識できぬ速度でストーリー・テイラーの脚に傷を負わせていたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリーゼ・ユージル
おぬしの脚本など知った事か、じゃ!
だけど、自ら出てきてくれるなら好都合というもの。
その脚本ごと燃やしてくれるのじゃ。

【フォックスファイア】じゃ。
真っ正面から狐火をぶつける、
と見せかけて薙刀攻撃じゃ。
薙刀を振り回して気を逸らし、
その隙に死角から【フォックスファイア】の炎で
燃やしてくれようぞ。
避けられたなら、霊符に炎を纏わせて、
足下にでも投げつけてやろうぞ。




ステフ・ウッドワード
なんとかばるーんを退けることができましたが、次はどこのどいつですか!
なんでもジブンの思い通りにならないと気がすまないとかめんどくさいですね

へへーん、敵さんがしもべをたくさんだしてくるなら、コッチはみんなまるっと攻撃です!
【属性魔法】【範囲攻撃】で威力をあげたUCで、空からドーンと光を降らせます
紙でできたページなんて文字通り紙クズにしてやります
あとは敵のあいだを駆け抜けてストーリー・テイラーをひっかいてやります!【2回攻撃】



「なんとかばるーんを退けて道をつくりましたが……」
 ステフ・ウッドワードは、猟兵の攻撃によって斬られた本をつまらなそうに復元する『ストーリー・テイラー』の正面に立つ。
「次の相手はあなたですか。なんでもジブンの思い通りにならないと気がすまないとか、めんどくさいですね……!」
「まったくじゃ。おぬしの脚本など知った事か、じゃ!」
 エリーゼ・ユージルは尻尾の毛を逆立て、ストーリー・テイラーを真っ直ぐに指差した。
 だけど、と続ける際には腕を組んで、不敵な笑みを見せて。
「自ら出てきてくれるなら好都合というもの! その脚本ごと燃やしてくれるのじゃ」
 飛び出したエリーゼは、数多の狐火を自身の背後に発生させる。地面を蹴り、狐火とともに移動しながら真っ正面から熱の球をぶつける――のは、フェイント。狐火たちはストーリー・テイラーの直前で止まり、すぐに引っ込んだ。
 素早く薙刀を振り回し、ストーリー・テイラーを斬り上げようとする。
「おっと、危ない」
「危なくない戦いなどあるものだと思っているのか、じゃ! そもそも、おぬしが一番危険なのじゃ!」
 薙刀を振り回しながら、ストーリー・テイラーへと迫る。振り下ろされる先を正確に把握しているのかのような器用に回避するストーリー・テイラーは、狐火をちらちらと気にしている。
 だが、鬼気迫るエリーゼの振るう薙刀は徐々に速度を増し、ストーリー・テイラーの余裕を奪ってゆく。
「ほれほれ、どうじゃどうじゃ! 物語を作る者が逃げてばかりでは、物語は一向に出来上がらんぞ! おぬしの目指す脚本とやらは、その程度なのかえ!」
「ふん……言いたい放題だな」
 苛立ちを顔に滲ませながら、それでもストーリー・テイラーはひたすらに刃先を避けることに専念している。
 ストーリー・テイラーの視線は、既に薙刀の軌道のみに向けられている。
 エリーゼはにんまりと笑いたいのを堪えて、闇雲に薙刀を振るう。
 ああ、やはりストーリー・テイラーは、まだ気付いていないようだ。
 エリーゼの背後に浮かぶ狐火の数が、減っていることに。
 頃合いだと判断したエリーゼが大振りで薙刀を振るうと、当然ストーリー・テイラーは余裕で避ける。
「ふん、当たらないと知ってヤケクソになっ……うあああっ!?」
 背に熱を受け、ストーリー・テイラーは仰け反った。
「ふふん、薙刀に気を取られ過ぎたようじゃのぅ」
 やっと、エリーゼはにんまりと笑った。
 ストーリー・テイラーが回避行動に集中している間、気付かれぬよういくつかの狐火を彼の背後へと移動させていたのだ。大きな攻撃を仕掛ければ、大きな動きで回避する――その時が訪れて初めて、エリーゼの攻撃は意味を成す。
「……そうだな。君たちの相手は僕じゃない。……こいつらだ!」
 ストーリー・テイラーが叫ぶと、大型オブリビオンの群れが出現した。そのどれもが本の頁でできており、周囲の猟兵たちを無差別に攻撃し始める。
「まってましたよ! そう来るのなら、コッチはみーんな、まるっと攻撃です! エリーゼさん、下がってください!」
 攻撃のタイミングを見計らっていたステフが、大きく両手を振ってエリーゼに呼びかける。
「うむ、承知したのじゃ!」 
 頁オブリビオンの攻撃をよけ、そのまま銀色の狐に変身して、エリーゼはストーリー・テイラーから距離を取った。
 今だ、とステフは攻撃行動に移る。
「さあ、いっきますよー……光の、雨だーっ!」
 威力を底上げして降らせる光属性の魔弾は、頁オブリビオンの数より遙かに多い。戦場を埋め尽くす煌びやかな雨は、ストーリー・テイラーが作り出した流星雨にも似た乱射で頁オブリビオンを掃討せんと降り注ぐ。
「紙でできたページなんて、文字通り紙クズにしてやりますとも!」
 光が頁を貫通するたびにそこから焦げ目が広がり、頁オブリビオンは燃え上がってゆく。燃えずに残った紙切れ部分で動けるはずもなく、オブリビオンだったそれは殆どがステフの言うところの『紙クズ』となった。
 まだ残る頁オブリビオンの攻撃を身軽にかわし、光の雨の中をひたすらに走る。時には宙返りなども織り交ぜながら敵と雨を縫うように駆け、ステフはストーリー・テイラーへの懐へと飛び込む。
「……っ、なんだこの猫っ!」
「ネコではありません、アタシの名前はステフです!」
 攻撃を払いのけようとするストーリー・テイラーの手を足場にし、しゃきん!と爪を出すステフ。
 ステフは緑色の目の瞳孔を細め、右の手で一度、左の手でもう一度、ストーリー・テイラーの腕を引っ掻いた。
「あなたの物語はハタンしたんです! この国のことは、もう諦めてください!」
「諦める、だって……? ははははは! このストーリー・テイラーを舐めないでもらおうか!」
 ストーリー・テイラーは苛立ちと同じくらいの怒りを滲ませ、傷口を指でなぞる。その後は本の頁を適当に開き、指先についた血をぬぐって暗い笑みを浮かべた。
 紡ぐ物語をことごとく妨害される者は、まだまだやる気のようだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

コノハ・ライゼ
ふふ、手当ての恩はちゃあんと返さなくっちゃ
それに、好き勝手決められるのはいけ好かないのヨ

【黒喰】呼び出し雷纏う黒い仔狐を嗾ける
ケド一度目は敢えて避けられる事を狙って敵の反撃引き出すわネ
二度目は敵の動きを『見切り』隙を読んで『スナイパー』でしっかり狙い
仔狐達に敵の反撃を喰らわせに行くヨ
そこからが本番、『2回攻撃』で柘榴引き抜いて敵の体に突き立てよう
先読みを封じられては、この攻撃も避けれないデショ?

さっきは可愛いコ達の手前遠慮したからネ
今度は存分に、その命を食わせて頂戴な
『傷口をえぐる』よう捩じ込んだら『生命力吸収』
その脚本、書き変えないとねぇ
お菓子の国は無事守られました、めでたしめでたしってネ



 コノハ・ライゼは、衣服の上から腕に触れた。痛みはもちろん、袖口からのぞきこんでも傷跡は見えない。
 どこか上機嫌に笑って、愉快な仲間たちが戦う音を背に聞く。
 けれどもう、コノハの狩場はそこではない。あちらは彼ら彼女らが何とかしてくれると解っているから、次の狩りへと移れる。
「手当ての恩はちゃあんと返さなくっちゃ」
 それに、とコノハは軽やかに『ストーリー・テイラー』へと迫る。
「好き勝手決められるのはいけ好かないのヨ。そういうわけだから、アンタ――ここで狩られちゃって頂戴?」
 もとよりストーリー・テイラーの返答は望んでいないコノハだ。
 的確に、無駄な動き一つ無く、人差し指でストーリー・テイラーを示す。
 現れたるは、雷を纏う黒い仔狐。鳴き声ひとつ上げずに宙を駆け、ストーリー・テイラーの元へ一直線。
「ふん、わかりやすい攻撃だ。まあ、それでなくても僕には『読めて』いるんだけどね」
 ストーリー・テイラーは鼻で笑い、仔狐をいなすようにして回避した。
 蔦の絡まる杖を一度振り上げたストーリー・テイラーは、今度は自らコノハとの距離を詰める。
「今度は僕の番だ」
「いいえ、今度はアタシの、いえ、アタシが笑う番。――攻撃を読めるのはアンタだけじゃないのよネ」
 再び仔狐たちを呼んだコノハは、またもやストーリー・テイラーに狙いをつける。
「攻撃はね、読んでからが腕の見せ所なの。読んで回避して満足しているようじゃあ、二流の証拠ヨ?」
 先を読んだかのようなストーリー・テイラーの動きは、既に一度見ている。ならば今度は『先を読む』動きを見切ればいい。そのための狙いをつけるコノハの視線は、スナイパーのそれだった。
 さあ、狩の時間の始まりだ。
 ストーリー・テイラーに衝突した仔狐たちが消えた直後、コノハが引き抜いたのは真紅に濡れる溝を持つ一体型のナイフ『柘榴』。刃の色が周囲の色を映したのは束の間、ストーリー・テイラーへと二度に渡って突き立てた。
「ば、馬鹿な、どうして……! この僕が、攻撃を読めないわけが……!」
「ざーんねん。お得意の先読みは、仔狐たちが飲み込んじゃったのよネ。さ、存分にその命を喰わせて頂戴な」
 傷口を抉るように刃を捻じ込み、コノハはストーリー・テイラーの生命力を吸収して疲れを癒す。どちらも得意とする手段である。
 集団戦の時とまるでスタイルが異なるのは、『可愛いコ』たちの手前遠慮をしていたからだ。慣れた手段での攻撃は、一切の容赦なく躊躇無く行われる。
「そろそろ脚本、書き変えないとねぇ」
 ナイフを引き抜き、コノハは切っ先をストーリー・テイラーへと向ける。
「『お菓子の国は無事守られました、めでたしめでたし』……って、ネ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

グァーネッツォ・リトゥルスムィス
現実はお前のおままごとじゃないんだぞ
しかも他者を虐げるだなんて絶対許さないぜ!

召喚してる大地の巨人と『大地との友情合体』だ!
お菓子を製造・射出できるお菓子工場ロボに変形して、
ハサミを開閉できなくしたり刃の切れ味を妨害する粘着ガム弾を
小型オブリビオンの足止めも兼ねて連射だぜ
「時代はチョキにはグーじゃなくてガムだぞ!」

攻撃を食らわない様に物陰からの奇襲に警戒しつつ
ストーリー・テイラー本人に苛立ち解消……できるかもしれない
リラックス匂い成分たっぷりのマシュマロ砲丸をくれてやるぜ!
「マシュマロを抱き枕代わりにしておねんねでもしな!」
お菓子の国を支配しようとして、お菓子に負ける
そういう物語もいいだろう?



 ボスのお出ましとあって、グァーネッツォ・リトゥルスムィスは集団戦の時に召喚した大地の巨人と合体した。
「大地の恵みと力を見せる時だ!」
 合体して変形した姿は体長2メートルほど、しかも内部でお菓子を製造して射出できる『お菓子工場ロボ』だ。
 お菓子の国、という舞台に合わせたご機嫌なスタイルでもある。
 一方、事件の首謀者である『ストーリー・テイラー』は不機嫌そのもの。
「どうあっても僕の脚本を滅茶苦茶にしたいみたいだな……ああ、苛々する……いいだろう、このパートも没だ! ここまでの話は全部没にして、まっさらなところからまた始めてやる!」
 猟兵たちにことごとく邪魔をされたストーリー・テイラーの苛立ちは、どこまでも募ってゆく。
 大きなハサミを持ったオブリビオンの群れは、お菓子工場ロボとなったグァーネッツォの周囲をぐるりと取り囲んだ。
「時代はチョキにはグーじゃなくてガムだぞ!」
 そう叫んだグァーネッツォの腕から、粘着ガム弾が連射された。ガム弾はオブリビオンたちのハサミや足元に絡みつき、切れ味や動きを阻害する。
 相手の数は多いが、攻撃を鈍化してしまえばどうということはない。
 背後や物陰からの奇襲に警戒しつつオブリビオンたちを蹴散らし、グァーネッツォはストーリー・テイラーに接近する。
「おい! 現実はお前のおままごとじゃないんだぞ!」
「はっ、知ったことか。弱い奴が悪いんだ。好きなようにされたくないなら、抵抗するだけの力を身につければいいだけの話だろう?」
 それを聞いて、グァーネッツォは拳を握りしめた。生身の行動であったならば、爪が掌に食い込んで血が滲んでいたことだろう。
「ふざけるなよ……そんな風に他者を虐げるのは、絶対に許さないぜ!」
 肩を震わせ、グァーネッツォは胸元で腕を交差する。とたん、胸部が展開して砲塔が出現した。
 砲塔から射出されたのは、柔らかな白色のシルエット。リラックスできる香りの成分がたっぷり入った、大きなマシュマロの砲弾だ。
「それを抱き枕代わりにしておねんねでもしな!」
「うわっ!?」
 ぼふん、と大きな音がして、ストーリー・テイラーが吹き飛ばされる。
 ストーリー・テイラーが『お菓子の国を支配する』という物語を描くのならば、グァーネッツォの描く物語はこうだ。
 『お菓子の国を支配しようとして、お菓子に負けるストーリー・テイラー』
 なかなか悪くない筋書きだと、グァーネッツォは満足そうな笑みを浮かべた。

成功 🔵​🔵​🔴​

神宮時・蒼
…顕現。…まさしく、物語に、出てきそうな、見た目、ですが
…意外と、苛烈、ですね
…けれど、現実は、シナリオ、通りには、いかない、もの、です
…自信過剰なのは、結構、ですが、…現実を、見ませんと、足元、…掬われます、よ?

さすが、ストーリー・テイラーを名乗るだけあって、本を媒体とした攻撃が多いですね
でも、其れなら、燃やしてしまえば、いいのではないでしょうか
攻撃が来たら【見切り】で回避
【属性攻撃】で炎を纏った【なぎ払い】で燃やしちゃいましょう
別に、本が、嫌いな、訳じゃ、ありません、よ?

攻撃の隙が出来たなら、巫覡載霊の舞で切り裂いてしまいましょう

現実は、予想も、つかない事が、多い、のですよ



 『ストーリー・テイラー』の姿を、神宮時・蒼は頭のてっぺんからつま先まで眺めた。
 ぱっと見は少年のようだが、頭部に生えた耳がまず目を引く。銀色のくせっ毛の間から覗く瞳は、いまは怒りに歪んでいた。
 杖と本、というアイテムは、いかにも物語の語り手のようだ。
 腰から下に視線を移せば、尻尾、そして足首あたりから下は獣のそれとなっている。
 まさしく物語に登場しそうな見た目ではあるが、行動や言動は意外にも苛烈だ。
「この展開は幕間にしたっておかしいだろ……ぼくが……こんな……くそっ、一度撤退するか……? いや、それでは全部が台無しに……」
「現実は、シナリオ、通りには、いかない、もの、です」
 宝石のような瞳を瞬かせ、蒼はストーリー・テイラーに告げる。
「うるさいうるさい、お前もこの脚本から退場しろ! これは僕のつくる物語だ、誰にも邪魔なんかできるものか!」
 ストーリー・テイラーは手にした杖を掲げ、頁でできたオブリビオンを呼び出した。
「……自信過剰なのは、結構、ですが、……現実を、見ませんと、足元、……掬われます、よ?」
 小さくため息をつく蒼は動揺ひとつせず、オブリビオンの攻撃を全て見切って回避してゆく。正面から来るものも、側面から来るものも。なんなら完全に死角となっているはずの真後ろからの攻撃ですら、見えているかのように避ける。
 蒼にかすり傷ひとつ負わせることのできないオブリビオンたちは、闇雲な攻撃によってただただ疲弊してゆく。
「……本、すなわち、紙。弱点は、わかりきって、います」
 決して本が嫌いなわけではないのですが、と呟いて炎を立ち上らせた蒼は、オブリビオンたちを一気に薙ぎ払った。たちまちオブリビオンたちは燃え上がり、一気にその数を減らす。
「ちっ、数が足りなかったか……それならお前が死ぬまで増やし続けるまでだ!」
 一気に数を減らしたオブリビオンを見て、ストーリー・テイラーは再び召喚をしようとした。
 ストーリー・テイラーが読んでからオブリビオンが顕現するまでには、ほんの僅かな隙がある。常人であれば隙とはいえない、いっそ一呼吸の間ほど、ではあるが。
 しかし、蒼にとっては十分な時間だ。
 神霊体へと変化して薙刀から衝撃波を見舞えば、ストーリー・テイラーの動きが止まる。
「こんな物語、僕は認めな――……!」
 他の猟兵が与えてきたダメージの蓄積も相当のものであったのだろう。ストーリー・テイラーは杖と本を落とし、膝をついた。
 彼の物語は、ここに終わりを告げる。

 現実においては、予想もつかないことが多い。
 だからこそ人々は物語を求めるのだ。
 特に、ハッピーエンドの物語を。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『みんなで作ろう!お菓子の家』

POW   :    柱や壁など、大きなお菓子で基礎になる部分を作る。

SPD   :    机に椅子に食器棚、室内の家財道具もお菓子で作ろう。

WIZ   :    砂糖菓子のガラス窓やチョコペイントの塗装など、外装部分の繊細な作業を。

👑5
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 こうして猟兵たちは、お菓子の国を救ったのでした。
 めでたしめでたし。
 ――という結末を見るのは、もうちょっと先になりそうだ。

 お菓子の国の住人たちは、窮地に駆けつけてくれた猟兵たちに感謝の意を示した。
 そしてあらためて歓迎すべく、国を挙げての一大イベントを開催したのだ。
 それは、お菓子の家づくり。
 猟兵がつくったお菓子の家は、英雄のつくった家ということで語り継がれていく、のだとか。この国では、偉業を成した者が作った家は『記念碑』のように扱われるらしい。

 家を建てる場所はもちろん、家の素材となるお菓子も、ふんだんにある。
 何せここはお菓子の国、お菓子の植物が生えている森で採取してもいいし、住民たちが用意してくれた材料や道具を用いて、自分で作ったお菓子を材料にしても構わない。

 さあ、何を使ってどんな家をつくろうか?
グァーネッツォ・リトゥルスムィス
オウガを倒せて国も愉快な仲間達も助けられてよかった
英雄だなんて気恥ずかしいが、お菓子の家作るぞ!

さっきの戦闘で食欲をなくす色があるって言っちゃったけど
逆に同じ色でも食べたくなるお菓子の家を作るか
壁と天井をミルクをたっぷり練りこんで作った白色のビスケットで基礎を作る
次に紫キャベツを煮込んで、紫色の煮汁を重曹で青色に調整し
天然の素材で出来た青色の着色料でゼリーを作る
「重曹を入れすぎると緑色になるから慎重に……」
青色ゼリーを壁や天井の内外に接着剤代わりの飴でタイルのようにくっつけて
最後に家の中にマシュマロで床を作れば
「食べたくなる青色のお菓子の家の完成だ!」
ああ、オレ自身で食べたくなる出来栄えだぜ♪



「へへっ、なんだか気恥ずかしいぜ!」
 愉快な仲間たちに歓迎されながら、グァーネッツォ・リトゥルスムィスは材料を選び始めた。
「戦闘では食欲をなくす色がある、なんて言っちゃったけど……同じ色を使っても食べたくなるお菓子の家を作ってみるか」
 その場で立ち止まり、建築プランを考え始めるグァーネッツォ。何度かうなずいた後は、笑顔で材料となるお菓子を作り始めた。
 ミルクをたっぷり練り込んだ生地で焼き上げるのは、白色のビスケット。焼く時に焦がさないよう細心の注意を払う様子は、戦闘時の行動とはうってかわって繊細そのものだ。
「このビスケットは壁と天井に……っと。うん、なかなか上手く積めたな♪」
 基礎を固めたのなら次は装飾のためのゼリー、の前に色作りだ。
「このでっかい鍋、借りるぜ!」
 卓上コンロの上に鍋を置き、水を沸騰させる。その中に紫キャベツを入れて煮込めば、紫の色素がにじみ出てくる。ざるで漉した液体に重曹を入れると、みるみるうちに色が変化していく。
「おっと、重曹を入れすぎると緑色になるから慎重に……」
 ちょうどいい青色になったところで手を止め、粗熱を取ってゼラチンパウダーと混ぜ合わせる。
「オウガも倒せたし、この国も愉快な仲間達も助けられたし……ほんと良かったぜ」
 ゼリーが固まるのを待ちながら、平和になったお菓子の国を眺める。最初から平和な国に訪れるのも楽しそうだが、そこはそれ、強い者を求めるグァーネッツォ。強い者とも戦えた、戦った後も楽しいことがあるのなら満足である。
「おっ、固まったな。それじゃ飴を溶かして……細工開始だぜ!」
 タイルのような形に整えたゼリーを、透明な飴を接着剤代わりにしてぺたぺたとくっつけてゆく。室内はもちろん、外側の壁、天井、屋根にも。
 最後の仕上げは、室内の床。マシュマロで丁寧に埋めていけば――
「よし! できあがり、だぜ! 食べたくなる青色のお菓子の家の完成だ!」
 愉快な仲間たちの歓声が、気恥ずかしくも心地よい。
 白壁に映える青いゼリーは、光を透過・反射してきらきらと輝いている。室内に入れば、ふかふかのマシュマロが幸せな感触を与えてくれる。
 グァーネッツォの作ったお菓子の家は可愛らしく、自身も食べたくなるほどに美味しそうな出来映えであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

剣堂・御空
※他者との強力可
お菓子の家か。良く分からないけど今日はマカロンが食べたい!というわけでマカロンをたくさん作ろう。俺が食べる為に。
…分かってるよ、ちゃんと家の材料分も作るからさ。ドアの装飾にマカロン、机の端の装飾もマカロン、投げるのもマカロンで食べるのもマカロンだ。完璧だな。
しかもマカロンはカラフルかつ多彩な形が作れる。俺のゴッドペインターと【アート】の力でカラフルなマカロンを作る。ピンク、緑、黄色、水色、白…材料だけで作ると難しいな??形はハートとかもたまに作っておこう。
 味よりも見た目でいこう。俺は他の猟兵に比べたら料理得意じゃないからな。お、出来上がった。様子はどうかな?


神宮時・蒼
…好奇。…お菓子の、家、ですか。
…本当に、作れる、なんて、思っても、いません、でした。
…ちょっとだけ、ドキドキ、します、ね。
…崩さないよう、がんばり、ましょう

【POW】
クッキーやビスケットで、外壁を作りましょう
丁寧に、丁寧に。崩れないよう気を付けましょう
強く力を籠めると、割れてしまいそうですし…
家具やガラス部分が出来ていなければ、そちらにも手を出してみましょう
家具は…、長い棒状の飴とチョコレートを組み合わせれば出来るでしょうか
…美味しそう、ですね。…ちょっと、食べてみたいけれど、其処は我慢。
えっと、カラフルな飴を伸ばして窓にしましょう

出来上がれば、その外観を見て感嘆のため息を
…素敵、です、ね



 お菓子の家づくりというプロジェクトを前にして、剣堂・御空は閃いた。
「なぜだか今日はマカロンが食べたい。というわけで俺はマカロンをたくさん作るぞ、俺が食べる為に」
「……わかり、ました。……では、ボクは、クッキーや、ビスケットで、壁を、作りましょう」
 御空の発言をとがめることなく頷くのは、神宮時・蒼。
 そこから数秒。周囲の賑やかな色彩とは対照的な、モノクロームに似た沈黙だけがあたりを支配する。
「――わかった。いや、わかってる、ちゃんと家の材料分も作るからさ。俺は装飾用のマカロンを作るから、蒼はベースになる箇所を頼んだ」
「……はい。……では、よろしく、お願い、します、ね」
 少し首を傾げつつ、蒼は外壁づくりに着手した。
「……お菓子の、家。……本当に、作れる、なんて、思っても、いません、でした」
 好奇の色を瞳に滲ませる蒼であるが、同時に緊張もしているようだ。肩に力が入っているのに気付いて、すぐに深呼吸をする。
「……緊張、すると、余計な、力が、入って、しまいそうです、ね」
 特にクッキーを扱う際は、慎重に。うっかり力を籠めてしまえば割れてしまいそうな気もする。
 ビスケットはクッキーに比べれば硬い方だが、それでも結局はお菓子、一定以上の負荷を与えてしまえばあえなくこちらも割れてしまうことだろう。
「順調そうだな。俺の方、つまりマカロンの量産も順調だ」
 御空の前に積み上がるマカロンはどれもカラフルで、たまにハートの形のものが混ざっていたりする。
「マカロンはカラフルかつ多彩な形が作れるのがいいよな。それだけで華やかになる、というか」
 御空は他の猟兵と比べると料理が得意とは言えない方だったりする。であれば、見た目重視のマカロンを作れば――ゴッドペインターである御空がアートの力を発揮すれば容易いことだ――仕上がりにも貢献できるはずだ。

 外壁を作り終えた蒼は、家具の作成に取りかかった。
 長い棒状の飴を足に、チョコレートを台や座面にすれば、割と簡単にテーブルや椅子ができあがる。
「……美味しそう、ですね」
 ちょっと味見をしてみたくなるところだが、ここはぐっと我慢。をしていると、マカロンで屋根を作る御空がマカロンをひとつ、室内のテーブルに向けて落とした。
「こっちならたくさんあるから、好きなだけ食べていいぞ」
「……ありがとう、ございます」
 蒼は礼を述べ、テーブルの上に乗ったマカロンを手に取る。蒼の瞳色をしたマカロンを一口かじると、レモンのような味がした。
 そんな風に時折休憩を挟みつつ、そして作業を分担しつつ、お菓子の家は着実に完成へと向かっていた。

 さて、蒼は飴を薄く伸ばして窓ガラスを作ることにした。さまざまな色彩が混じり合った飴を伸ばすと、緩やかなグラデーションを保ちながら色同士が広がるのがわかる。
 ある程度の厚みを残して形を整えた後は、外壁を作る際に残しておいた空間にはめこむ。すると、窓の完成だ。外の光が透過して揺れると、室内にいる蒼の白色の髪もさまざまに彩られる。
「室内も大体出来たみたいだな。となれば、最後の仕上げだ」
 屋根を作り終えた御空が室内へと入り、蒼の作ったテーブルや椅子の端、そして壁面や窓をマカロンで装飾していく。
 最後のマカロンを窓の下に飾れば、もう御空の手元にマカロンは1個もない。
「これで、完成だな」
「……では、外、からも、見て、みません、か?」

 出来上がったお菓子の家から出て、まずはゆっくりと外側を一周してみる二人。
 隙間無く重ねられたクッキーやビスケットはしっかりしていて、色とりどりのマカロンの屋根が乗せられていても崩れる素振りを見せない。
 色が模様のようにうねる飴の窓はステンドグラスのようにも見えて、なかなか味わい深い。
 マカロンのドアノブをそっと押して再び室内に入ると、マカロンで飾られてたテーブルや椅子、壁面が目に入る。さまざまな色が使われているものの、絶妙な配置と配色のおかげで不思議と落ち着いた雰囲気になっていた。

 甘い香りを吸い込みながら、蒼は感嘆のため息を漏らした。
「……素敵、です、ね」
「ああ。なかなかの仕上がりだ」
 こっそり残しておいたマカロンを囓り、御空は笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

コノハ・ライゼ
たぬちゃん(f03797)を呼んで

好きに作ってイイと言われれば悩むモノで
こんな時はと呼んだ相方に、大丈夫だってと呆れ笑い
それよりどんな家……ていうか何食べたい?
ああウン一緒にネ、分かった分かった

さくふわならドーナツに……カヌレとか?
それメインにして、後はココのお菓子を使わせてもらいマショ
その方が記念っぽいしネ

量ったり混ぜたりを頼んだり
時には部材を調達してきてもらったりで
目指すはカヌレの壁にドーナツ窓の小さな小さな家
中には出会ったコ達のミニチュア人形も飾っておくわ

お疲れサマ、と余分に作ったお菓子を相方に差し出して
やっぱり作る方が好きダケド
たまにはこの家を見に遊びに来るのもイイかもネ


アドリブ等歓迎


火狸・さつま
コノf03130と


コノー!
片手ぶんぶか振り駆け寄って
ちゃんと手当してある。善し。とチェック
お疲れさまっ
ふにゃり笑いかける


コノの、料理、すき
しっぽぶんぶか振って
さくさくーのふわふわ~!たべたい!
俺も、いっしょ、つくるー!
其々作るより
やはりここは一緒にやりたくて
気分は…親子DEクッキング!!(同い年)

ん、ん、任して!
しっぽ愉し気にゆらゆらしながら
手際良くお手伝い

お預け我慢を覚悟してたけど
食べる分、も、ある…の?
お耳ぴこぴこ尻尾ふりふり
お味見…!する!たべるぅ!!
わくわくと目輝かせ
嬉しさいっぱい頬張って幸せいっぱい
お口に広がる美味しさににっこにこ御機嫌


さすが、コノ…!!
立派なの、出来た、ね!素敵!!



「コノー!」
 片手をぶんぶか振りながら、火狸・さつまがコノハ・ライゼに駆け寄る。
 コノハのすぐ近くで立ち止まったさつまは途端に真顔になり、コノハの頭からつま先まで素早く確認、というよりは点検、という様子。そしてコノハの腕を取り、しっかりと傷の手当をしているのを見て力強く頷いた。
「善し。……お疲れさまっ」
 と、そこでやっとふにゃりと笑いかける。一方のコノハは呆れ笑いだ。
「もう、大丈夫だって。それよりどんな家……ていうか何食べたい?」
 好きに作って構わないなんて言われてしまうとむしろ悩んでしまうもの。こんな時は、と呼んだ相方が心強い。今度はたぬき色の尻尾をぶんぶか降りながら、さつまが目を輝かせている。
「コノの、料理、すき。さくさくーのふわふわ~! たべたい! 俺も、いっしょ、つくるー!」
 其々作るより、一緒に作る方がきっと楽しい。それに、今のさつまの気分は『親子DEクッキング』なのだ。たとえ年齢が同じであっても。
「ああウン一緒にネ、分かった分かった。そうネ、さくふわなら……ドーナツに、カヌレとか?」
 それらをメインに使用して、あとはここのお菓子を使わせてもらうことをなんとなく考える。それに、その方がより『記念』っぽいというものだ。
「それじゃ、たぬちゃんはドーナツ用の粉を計って混ぜてもらえる?」
「ん、ん、任して!」
 しっぽをゆらゆらと愉しげに揺らし、言われたことはしゅばばっと手際よくこなしてゆくさつま。その隣で、コノハはカヌレの生地となる材料を混ぜ合わせる。
「うんうん、良い感じ! それじゃアタシがドーナツを揚げてる間に、森でキャンディやクッキーを調達してきてもらえるかしら? キャンディーは支柱に、クッキーは床にしようと思ってるの。可愛いの、お願いネ」
「わかったー! 可愛いの、いっぱいさがしてくるー!」
 途中、一度振り返って手を振るさつまに、コノハもひらりと手を振り返した。

 熱した油に落としたドーナツの生地が、ふわりゆらりと上がってくる。それら全てを掬い上げて冷まし終えた頃には、さつまがキャンディーやクッキーを抱えて戻ってきた。
「コノー! これくらいでいーい?」
「もっちろん! クッキーは床になるように敷いてくれる?」
「敷く敷く! みっちりきっちり、敷くよー!」
 市松模様になるようにクッキーを敷いてゆくさつまは、とても愉しそうだ。
 さつまのぶんぶん揺れる尻尾を横目に、コノハはカヌレづくりを再開する。温めたカヌレの型に蜜蝋を塗って溶かした後は、寝かせておいた生地を流し込んでオーブンへ。こんがりした焼き色がついたのを確認してからオーブンで取り出すと、あたりにふんわりと甘い香りが漂った。
 棒状のキャンディーを支柱にすべく地面に突き立てているさつまの視線を感じたものだから、コノハはくすりと笑って粗熱のとれたものを型から外してゆく。
 そして愉快な仲間達から借りた籠にドーナツとカヌレを入れ、さつまの近くへと運ぶ。
「壁と窓の準備、完了ヨ。たぬちゃん、あとは完成まで一気にやっちゃいましょ!」
「やるー! がんばるー!」
 場所を手分けして、カヌレの壁を順に積んでゆくコノハとさつま。積んで積んで積んで、ひたすらに積みながら、時折ドーナツをはめこんで。
 完成、の声は二人同時に。働いたー! と地面に座り込むさつまに、コノハはドーナツとカヌレを差し出した。
「お疲れサマ、たぬちゃん。これ、余分に作っておいたんだけど、どう?」
「食べる分、も、ある……の? やったー! いただきます!」
 今回は作るだけでお預けだとばかり思っていたさつまは、耳をぴこぴこさせながら尻尾を左右に揺らす。わくわくしながら目を輝かせて頬張ったドーナツもカヌレも、とても美味しい。口の中に広がる甘味や食感は、幸せの味だ。
 食べ終えててからにこにこご機嫌顔で見たお菓子の家は、それはもう素敵な仕上がりなわけで。
 綺麗に並んで積み上げられたカヌレの壁は、意外とシックな雰囲気だ。そこに嵌まるドーナツ窓は、レトロな雰囲気も醸し出している。二人並んでそおっとドーナツの窓を覗くと、コノハが出会った愉快な仲間たちのミニチュア人形がお話しでもしているかのように寄り添っていた。
 さつまは「さすが」という視線でコノハとお菓子の家を交互に見ている。
「立派なの、出来た、ね! 素敵!!」
 そうねと頷き、コノハもお菓子の家を眺める。
「……やっぱりアタシは作る方が好きダケド……たまには、この家を見に遊びに来るのもイイかもネ?」
 愉快な仲間たちによる拍手の音を聞きながら、コノハは満足そうな笑みを浮かべた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月12日


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#アリスラビリンス


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はグルクトゥラ・ウォータンクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト